326: 2011/11/03(木) 02:15:58.03 ID:DIV74PkAO
ようやく書き込めた…
すいません、何か最近全然書き込み画面に繋がらずに困ってました


【銀魂】銀時「……ヒロインNo.1決定戦?」【前編】

327: 2011/11/03(木) 02:20:29.34 ID:DIV74PkAO
---
ターミナル付近

桂「……ここが敵に気づかれぬ限界の位置か」

桂は春雨と戦うにあたって、味方の部隊をいくつかに分散していた。

新八、神楽を含む桂の部隊は敵の本丸を叩く重要な役目を担っている。

逆を言えば、それは常に氏と隣り合わせにある部隊ということ……

桂「この場にいる全員に言っておくが……引き返すのならば今しかない」

新八「何言ってるんですか桂さん、今さら逃げるつもりなんて……」

桂「では新八くん……仮に君の姉上が戦場で斬られ倒れたとして、君は彼女を見捨てることが出来るか?」

新八「!」
てめーらァァァ!!それでも銀魂ついてんのかァァァ!(前編)
328: 2011/11/03(木) 02:21:20.08 ID:DIV74PkAO
---
ターミナル付近

桂「……ここが敵に気づかれぬ限界の位置か」

桂は春雨と戦うにあたって、味方の部隊をいくつかに分散していた。

新八、神楽を含む桂の部隊は敵の本丸を叩く重要な役目を担っている。

逆を言えば、それは常に氏と隣り合わせにある部隊ということ……

桂「この場にいる全員に言っておくが……引き返すのならば今しかない」

新八「何言ってるんですか桂さん、今さら逃げるつもりなんて……」

桂「では新八くん……仮に君の姉上が戦場で斬られ倒れたとして、君は彼女を見捨てることが出来るか?」

新八「!」

329: 2011/11/03(木) 02:21:53.10 ID:DIV74PkAO
---
ターミナル付近

桂「……ここが敵に気づかれぬ限界の位置か」

桂は春雨と戦うにあたって、味方の部隊をいくつかに分散していた。

新八、神楽を含む桂の部隊は敵の本丸を叩く重要な役目を担っている。

逆を言えば、それは常に氏と隣り合わせにある部隊ということ……

桂「この場にいる全員に言っておくが……引き返すのならば今しかない」

新八「何言ってるんですか桂さん、今さら逃げるつもりなんて……」

桂「では新八くん……仮に君の姉上が戦場で斬られ倒れたとして、君は彼女を見捨てることが出来るか?」

新八「!」

330: 2011/11/03(木) 02:24:24.64 ID:DIV74PkAO
新八「み、見捨てるって…そんな……!」

桂「戦場は常に命のやり取りが行われる極限状態だ……一瞬の隙は氏へ繋がる」

桂「新八くんが姉上を助けようとするその行為で君自身が命を落とすことになりかねない」

桂「戦場では倒れた仲間は見捨てねばならない、たとえそれが身内であってもだ……」

桂「その覚悟がない者は今すぐこの場から去ったほうがいい」

新八「…………」

331: 2011/11/03(木) 02:31:10.33 ID:DIV74PkAO
戦場で自らが体験した一部の真実の告白、それは桂なりに最後の選択肢を新八たちに与える目的があった。

新八、神楽は共にまだ大人ではない……戦いになれば先の長いその命をいつ散らせてもおかしくない。

願わくば新八の覚悟が揺らぎ、ここから先の血なまぐさい戦いに巻き込まれなければ…そう桂は考えた。

だが、新八の返答は

新八「馬鹿言ってんじゃねーよ、ヅラ……あんな奴らに散らせていい命なんざ一つ足りとてありゃしねェ」

新八「俺ァてめー自身が氏ぬつもりも、仲間氏なせるつもりもありはねーよ」

桂「!」

332: 2011/11/03(木) 02:35:39.60 ID:DIV74PkAO
新八「……銀さんがここにいたなら、きっとこんなことを言ってふてぶてしく笑うんじゃないですか?」

桂「…………」

神楽「忘れたアルか、私たちは万事屋銀ちゃんの一員ネ!」

神楽「馬鹿でお節介で不器用で天パーな銀ちゃんの家族アル!」

桂「…………」

新八「僕たちは……今までずっと銀さんの後ろ姿を見ていたんです」

新八「そんな僕たちが……誰かを見捨てる覚悟なんて持ってるわけないじゃないですか」

桂「……そうだったな」

桂(そうだ……銀時、お前はいつも護るために戦い続けていた……)

桂(他人のために自分の身を斬らせつつも戦い抜いたその意志は…確かに伝わっていたぞ)

333: 2011/11/03(木) 08:53:14.99 ID:DIV74PkAO
新八(ち、近付いてるのがバレましたよ桂さん!?)

桂(いや……まだ大丈夫だ、こちらの姿を確認したわけではない)

春雨兵「どうするか、様子でも見に行くか?」

桂「来るなよ、絶対こっち来るなよ、いいか絶対来るなよ」

春雨兵「まあ念のために……」スタスタ

桂「」

334: 2011/11/03(木) 08:55:56.83 ID:DIV74PkAO
新八『ちょ、こっち来てますよ桂さん!こんな大人数じゃ隠れられませんし!』

桂派攘夷志士『桂さんご指示を、斬り込みますか?』

桂『落ち着け、武士たるもの…常に心を整えておく必要がある』

新八(桂さん……さすが歴戦の攘夷志士だ、僕も見習わないと)

桂『そのためにはまず、頭の中でフェルマーの最終定理を解いてだな……』

新八「落ち着けるかァァァァ!!」

335: 2011/11/03(木) 08:57:07.58 ID:DIV74PkAO
春雨兵「だ、誰だ貴様ら!こんなところで何を!」

新八(し、しまった!ついいつものノリでツッコミを!)

桂(くっ、ここまで来て見つかったか!どうする、一度態勢を立て直しに……)

神楽「ホォチャアアァァァ!!」バキッ!

春雨兵「ぐうっ!?」

桂「!」

神楽「ヅラ、新八!ボーっとしてないで突っ込むアル!」

新八「神楽ちゃん!?」

336: 2011/11/03(木) 08:58:20.46 ID:DIV74PkAO
桂「……確かに、こちらの隠密行動がバレてしまってはもう手遅れだな」

桂は抜刀すると同時、攻撃を仕掛けようとする春雨兵を逆に斬り伏せていた。

桂「俺たちの部隊はこのまま斬り込むぞ!前線の包囲網を抜け、真っ直ぐに本丸の首を狙いに行く!!」

桂「行くぞ!!」

一同「オオ!!」

今ここに、伝説の攘夷志士の一人である桂小太郎の戦いの幕が再び切って落とされる。

かつて共に戦った戦友を止めるため、そして深手を負い目を覚まさぬ親友のために

狂乱の貴公子は再び戦場を駆け抜ける。

337: 2011/11/03(木) 09:00:51.20 ID:DIV74PkAO
すいません、一旦切らせてください…近いうちにまた来ます
今度はパソコンから書き込むかもしれません

342: 2011/11/13(日) 23:46:40.61 ID:Nv0ClQBAO
ようやくまとまった時間が取れました
来週からはあまり日を空けずに来れそうです


再開させてください

343: 2011/11/13(日) 23:47:53.34 ID:Nv0ClQBAO
春雨兵「ぐあっ!」

一人、また一人と春雨兵を斬り倒す。それでも先へ進む道は開けなかった。

むしろ、時間が経つごとに敵の増援によってこちらが少しずつ追い込まれていく。

神楽「キリがないアル」

新八「桂さん!このままじゃ……」

桂「分かっている!だが……ここを押し通らねば俺たちに活路はない!」

一度乱戦が始まっている以上、もう既に退くことは出来ない。

桂は狂乱の貴公子の名に恥じない獅子奮迅の活躍を見せている。

新八、神楽、他の攘夷志士も桂に引かれるかのように戦場を戦い抜いていた。

だが、それも春雨兵の圧倒的兵力に押しつぶされる。

桂たちは敵の誇る数の有利を覆すことが出来ずにいた。

344: 2011/11/13(日) 23:58:04.77 ID:Nv0ClQBAO
「ぐあああっ!?」

桂「!?」

突如、目の前にいた春雨兵たちが大量に吹き飛ばされる。

無論、桂が何かをしたわけではない。あれだけの春雨兵を打ちのめせる武器があるわけでもなかった。

桂「これは……?」


源外「おー、急いで作った割にはなかなか悪くねェ威力じゃねーか」

新八「げ、源外さん!」

345: 2011/11/14(月) 00:00:56.89 ID:FcSc8B2AO
月詠「まったく……なにをやっとるんじゃ、ぬしらは」

新八「つ、月詠さん!」

月詠「ぬしらの部隊はわっちらが陽動で敵を引きつけている間に、陣の奥まで潜入する予定だったはず……」

九兵衛「にもかかわらず、何故僕たちが陽動を仕掛ける前にこんな戦闘をしているんだ?」

桂「いや、少々手違いが生じてな……」

妙「手違い?」

桂「ほら、その……何だ、AKBとアイドルマスターを間違えるみたいなアレだ」

妙「いや、だいぶ違うと思いますけど」

桂「どっちも歌って踊るだろう、やたらと多いし」

新八「色んな人を敵に回す発言ですよ、それ」

346: 2011/11/14(月) 00:15:18.65 ID:FcSc8B2AO
全蔵「ったく……なんだって俺ァこんな金にならねェことやってんだ?」

あやめ「戦わなきゃ氏ぬわよ、ここまで来てるのにグダグダ言わないでくれるかしら」

全蔵「はぁ、正直やってられねーな……」

全蔵「つかお前、俺のボラギノール知らね?ドンキで買った座薬タイプのヤツ落としちまってさ」

あやめ「…………」イラッ

347: 2011/11/14(月) 00:24:00.00 ID:FcSc8B2AO
---

全蔵「…………」

あやめ「あなたたちは先に行きなさい……ここは私たちが食い止めるわ」

新八「尻にクナイが五本も刺さってる人がいるんですけど、あの人から流れる血は食い止めなくていいんですか」

あやめ「大丈夫よ、問題ないわ」

新八「問題しかないだろォォォ!!なんで敵と乱戦になる直前で戦力減らしてんですか!?」

あやめ「減らしてないわ、むしろ全蔵が突破口を開くきっかけよ」

新八「いや動けるわけないですよ!肛門に刃物刺さってんですよ!?一番刺しちゃいけないものですよ!」

348: 2011/11/14(月) 00:31:47.79 ID:FcSc8B2AO
全蔵「そ、そいつの言うとおりだ……ケツに刃物刺さってる状態で動けるわけ……」ブシュ!!

新八「全蔵さん!?肛門が完全にスプラッシュマウンテンになってますけど!」

あやめ「じゃ、あとは任せたわ」

神楽「おう、任せるネ」

全蔵「え、ちょ……なに?何で俺の足つかんでんの?」

全蔵の足を固く握りしめ、神楽は大きく深呼吸をする。

一瞬の静寂の後

神楽「ふんぬおらあああああぁぁぁぁ!!」ブンッ!!

全蔵「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ!?」

『全力で』投げ飛ばされた全蔵は

春雨兵「なっ!?」

正面にいた多くの春雨兵たちを蹴散らした。

349: 2011/11/14(月) 00:43:33.50 ID:FcSc8B2AO
桂「よし!突破口は開けた!行くぞ!!」

新八「いやいいんですか!?本当にこんな方法で突破できちゃっていいんですか!?」

桂「状況が状況だ、手段を選んでいる場合ではないぞ」

新八「何か納得いかないんですけど」

神楽「ぼさっとしてないで走るアル!新八!」

新八「わ、分かった!」

妙「新ちゃん!」

新八「姉上……!」

妙「……気をつけて」

新八「…………はい!」

350: 2011/11/14(月) 00:53:16.36 ID:FcSc8B2AO
桂派攘夷志士「桂さんたちが奥へ行くまで何としても突破口を守り抜け!」

「「「オオッ!!」」」

桂「お前たち……すまぬっ!」

神楽「急ぐアル新八!」

新八「すぐに行くよ!」

妙「新ちゃん……」

新八「大丈夫ですよ姉上、僕は侍で…それに…姉上の弟なんですから!」

妙「!」

新八「……いってきます!」ダッ

355: 2011/11/21(月) 02:15:42.73 ID:D5Y6tOFAO
銀時「風邪は喉から、熱から、鼻からで分かれるらしいけど、全部複合されてる風邪はどうすりゃいいんだ?」

銀時「もうアレだよ、デスタムーアとミルドラースとゾーマを一辺に相手しろってモンだよこれ」


遅れてます、明日の夜には必ず来ます

356: 2011/11/21(月) 23:30:08.58 ID:D5Y6tOFAO
九兵衛「……さて、ここからが本当の戦いだな」

月詠「ここだけでなく、内部にもまだ敵は多くいる……あやつら三人だけでは突破するのは厳しいじゃろうな」

あやめ「私たちも追いかけるわよ、ここにいる連中を踏み越えてね」

春雨兵「馬鹿共が……地球人の女が俺たちを相手に勝てるとでも思ってるのか」

妙「あら……あなた達こそ何も分かってないんですね」

春雨兵「…………?」

妙「この街を、かぶき町を敵に回すことの意味を」

春雨兵「!」

妙の言葉が終わったと同時……両軍の戦いの火蓋が切って落とされる。

それはまごうことなき戦争、命を賭した戦いだった。

357: 2011/11/21(月) 23:35:32.23 ID:D5Y6tOFAO
---
ターミナル内

桂「よし、敵陣への侵入は成功した……このまま奥へ進み、敵大将の首を狙うぞ」

神楽「…………」

新八「神楽ちゃん、どうかした?」

神楽「……ここで別れるアル、ヅラと新八は先に行くネ」

新八「な、何言ってるの神楽ちゃん!ここでバラバラになるなんて危険過ぎるよ!」

神楽「来るアル……アイツが」

新八「アイツ……?」

「そうそう、一人になるなんて馬鹿な考えは止めるべきだね……でないと」

暗がりから聞こえてきた声、三人が出くわした最悪の待ち人。

神威「怖いお兄さんに連れて行かれちゃうかもしれないよ?」

358: 2011/11/21(月) 23:45:23.27 ID:D5Y6tOFAO
桂「っ!」

神威「フフ、俺を確認するや即座に刀を手に取るとは……なかなかの判断だね」

新八「あ、アイツは!」

神威「君も吉原で見かけたね、どう?少しは成長したかい?」

桂「…………」

桂(ただの天人ではない……あの傘は……)

桂「貴様……夜兎族か」

神威「御名答、やっぱり地球にも俺たちの名は届いているらしいね」

359: 2011/11/21(月) 23:52:47.21 ID:D5Y6tOFAO
桂「…………」

歴戦の侍である桂は神威の実力を刀を交える前から見抜いていた。

強い---今までも多くの天人と戦った桂とて、これほどの相手と戦ったことはないだろう。

一瞬でも隙を見せれば即座に命を打ち砕かれる……それほどの相手だった。

神威「頑張ってよお侍さん、こんな俺でも春雨の提督をやってるんだ」

桂「!」

神威「つまりは俺が春雨軍の頭、俺を倒せれば君たちの勝ち……ってことになるのかな?」

新八「提督……か、桂さん!」

桂「落ち着くんだ、奴の言葉が真実である保証などどこにもない……だが」

桂「少なくとも、奴を倒さねば先へ進めないことは確かだ」

無意識に刀を握る手に力が込められる。桂は呼吸を整え、仕掛けるタイミングを図っていた。

360: 2011/11/21(月) 23:58:42.22 ID:D5Y6tOFAO
神楽「オイ、勝手に話進めてんじゃねーヨ」

新八「…………?」

神楽「さっきも言ったアル、私と別れてお前らは先へ進むアル」

それは、自らの身を挺してでも二人を先に進ませようという堅い覚悟。

桂「リーダー……まさか!」

神楽「コイツは……この馬鹿兄貴は私が相手するアル!」

361: 2011/11/22(火) 00:00:12.18 ID:mUfkVStAO
神威「こいつは驚いた、一人で俺を止めるつもりかい?」

神楽「調子に乗んなコルァ、お前のその腐った根性叩き直すくらい私一人で十分アル」

桂「危険だリーダー、やつの強さは……」

神楽「モタモタしてる暇があるならさっさと行くネ!!」

新八「…………」

新八「……行きますよ、桂さん!」

桂「!」

新八「神楽ちゃんなら大丈夫です、僕たちが信じなきゃ……ダメですよ」

桂「新八くん……」

新八「……先に行くね、神楽ちゃん」

神楽「おう、私もすぐ追い付くネ!」

362: 2011/11/22(火) 00:01:47.04 ID:mUfkVStAO
神威「そう簡単に行かないでよ、つれないな」

神威は走り抜けようとする二人に対し速攻の攻撃を仕掛ける。

しかし

神楽「お前の相手は私アル!!」

その一撃を神楽は己の傘で受け止めていた。

桂「……!」

新八と桂は止まることなく走りつづけ、そして最後まで振り向くことをしなかった。

後にまた神楽と合流することを信じて。

363: 2011/11/22(火) 00:13:41.45 ID:mUfkVStAO
そして---同時刻

---
病院

医師「まさか……これはどういう……」

間違いなくその患者は重態だった。数え切れないほどの大傷に大量の出血。

仮に意識が戻ろうとも動くことなど到底できるはずもない。

彼は病院のベッドの上にいなければならない、いなくなることなど有り得なかった。

医師「ならば……彼は一体どこへ行った!?」

病院のベッドの上、いるはずだった侍……坂田銀時の姿はなくなっていた。


---片割れに置かれてあった木刀と共に。

370: 2011/12/02(金) 02:45:06.26 ID:D7H2e2LAO
---
ターミナル前

九兵衛「はっ!」

春雨兵「地球人の割には出来るな……だが」

九兵衛「!」

守りに徹していた春雨兵が一転して攻撃に転ずる、狂いなく急所を狙った一撃をかろうじて九兵衛は防いだ。

九兵衛「くっ………」

形勢は明らかだった、春雨軍がかぶき町勢を圧している。

数で負けているだけではなく、敵は最強の宇宙海賊春雨の精鋭であることも大きかった。

妙「強いわね……」

月詠「ああ、このままではわっちらが押しつぶされるぞ」

九兵衛「……使うしかないようだ」

372: 2011/12/02(金) 02:46:49.17 ID:D7H2e2LAO
春雨兵「今更なにをしようがお前たちと俺たちじゃ戦力差が違う」

妙「……結野アナ、一発目はお願いしますね」

結野「分かりました」

春雨兵「…………?」

春雨兵(あの自信は何だ?一体何を……!)

結野「血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ、蒼火の壁に双蓮を刻む、大火の淵を遠天にて待つ」

春雨兵「は?」

結野「破道の七十三、『双連蒼火墜』!」

春雨兵「何でだァァァァァ!?」

373: 2011/12/02(金) 02:48:04.33 ID:D7H2e2LAO
晴明「オイ撮影班!今のクリステルの鬼道、ちゃんと録画したか!」

「はい!498万画素、光学15倍ズーム、光学式手ブレ補正を備えたカメラでしっかりと!」

晴明「うむ、さすがはキャノン製……よし、一挙手一投足を録画だ!もちろん最高画質でな!」

道満「フン、愚かだな晴明よ…画質がよくとも長時間録れぬようでは何の意味もない!」

道満「我らが使用するソニーの力を思い知るがいい!」

晴明「キャノンの力を見くびるな道満!画質では我らが遥かに上じゃ!」

道満「ソニーとて高画質、それでいて連続録画時間においてはキャノンの上よ!」

374: 2011/12/02(金) 02:49:47.02 ID:D7H2e2LAO
外道丸「二人とも何やってるでござんすか」

晴明「外道丸!道満にキャノンの素晴らしさを示してやれ!」

道満「外道丸よ!仕える主が誤った道を行く時に諫めるもまたお前の役目だ!」

道満「晴明にソニーがいかに優れているかを語ってやるがいい!」

外道丸「お二人は等しく馬鹿でござんす」

375: 2011/12/02(金) 02:57:06.19 ID:D7H2e2LAO
春雨兵A「な、なんだ……なぜ地球人があんな技を使える!」

九兵衛「本気を出すと言っただろう……『舞え、袖白雪』」

春雨兵A「こ、凍ったァァァ!?」

妙「フフ、みんな乗ってきたわね……」

春雨兵B「き、貴様はあんなおかしな技は使えまい!」

妙「あなたがそう思うんならそうなんでしょうね、試してみたらどうですか?」

春雨兵B「舐めやがって……!」

怒り狂った春雨兵が妙に掴みかかろうとする、体格差で考えれば妙に勝ち目はない。

だが

妙「はっ!」

春雨兵B「ぐあっ!?」

そこあったのは地に伏す春雨兵の姿……彼女の使った技は

春雨兵A「い、今のは……空気投げ!?」

376: 2011/12/02(金) 03:18:53.64 ID:D7H2e2LAO
春雨兵「油断したな!」

妙「!」

春雨兵「後ろを取った!もはや逃れられ…………!」バタッ

妙「なっ……いきなり倒れ……?」

土方「……女相手に得物使って後ろから不意打ち仕掛けるなんざ男のやり口じゃねェよ」

妙「土方さん!」

土方「俺は一人でここへは今来たばかりだ、状況を説明しろ!」

妙「えーとですね、今の九ちゃんがブリーチのルキ……」

土方「誰がそんなモンを説明しろっつったァァァ!?こっちは状況を教えろって言ってんだよ!」

妙「冗談ですよ」

土方「斬り合いの最中で冗談言えるテメーもどうかしてやがるな」

妙「嫌ですねパーリ……土方さん、そんな言い方ないじゃないですか」

土方「オイ、今お前パーリィさんって言おうとしたろ」

377: 2011/12/02(金) 03:33:48.13 ID:D7H2e2LAO
土方「……なるほど、この包囲網を抜けられたのは桂とガキ二人だけってことか」

妙「私たちも加勢にいきたいんですけど……」

土方「こんだけ混戦してたら先へ進むのも一苦労だな……チッ」

妙「どうするんですか?」

土方「どうもこうもねェ、俺はここで真正面から突っ切る」

妙「ひ、一人でですか!?」

土方「ああ……とりあえずは誰かが斬りこまなきゃならねーんだ」

土方「裏からの不意打ちも何もねェ……俺は真っ直ぐに斬り込むぜ」

妙「……さすがですね、ゾロ」

土方「誰がゾロだ!もうこれ以上世界観をブッ壊すような発言は控えろ!!」

383: 2011/12/07(水) 00:23:22.16 ID:e+JImusAO
少しだけ再開させてください

384: 2011/12/07(水) 00:23:48.97 ID:e+JImusAO
妙「でもさすがにコレを正面から進むのは無理じゃないですか?」

土方「話聞いてなかったのか、無理でも行くしかねーんだよ」

妙「……なら、ここはフォーメーションBで行きましょう」ガシッ

土方「何でお前俺の服を掴ん……」

妙「猿飛さん」

あやめ「いつでもいいわよ」

土方「…………?」

妙「真っ直ぐ行って突破できないなら……『翔』べばいいんです」

土方「…………」

385: 2011/12/07(水) 00:28:43.70 ID:e+JImusAO
土方「ちょっと待てオイ……まさかテメーら……」

あやめ「とりあえず、全蔵よりは気を使って投げてあげるから」

土方「何が気を使うだ!そもそも『投げる』って行為自体が既におかしいだろ!!」

妙「だから多分大丈夫です、土方さんならやれますよ、もしかしたら」

土方「オイィィィィィ!!『多分』と『もしかして』が重なるってもう失敗するみたいなモンだろうが!」

あやめ「……めんどくさいわね、もう投げちゃっていいんじゃない?」

妙「そうね、じゃあ土方さん……新ちゃんたちのこと、よろしくお願いしますね」

386: 2011/12/07(水) 00:37:33.54 ID:e+JImusAO
土方「ちょ……待っ……」
あやめ「さあ、行くわよ!!」

土方がさらに言葉を挟もうとするも二人は既に動いていた。

数分の狂いもないタイミング、力加減、意志の疎通により放たれた……その技は

妙「デビルレーザーバレット!!」

妙・あやめ「「YAーーーHAーーー!!」」ブンッ!!

土方「うおおおおぉぉぉっ!?」

二人の乙女に全力で投げられた土方は一直線に、混沌とする戦場を軽々と『翔』び越えた。

それはこの上なく美しい、まさに飛翔だった。

387: 2011/12/07(水) 00:43:26.74 ID:e+JImusAO
土方「く、くそ……あのゴリラ女ども、とんでもねーことしてくれやがって……!」

春雨兵「ひ、一人戦場を抜け……いや、飛び越えたぞ!」

長谷川「おっと待ちな、テメーの相手はアイツらだ!」

月詠「威勢良く敵を呼び止めておきながら何故わっちらに丸投げする!?ぬしも戦わんか!」

長谷川「い、いやぁ……俺はこういう時は基本時間稼ぎだし……」

388: 2011/12/07(水) 00:52:34.69 ID:e+JImusAO
春雨兵「どけ貴様!」

長谷川「ふおあああっ!?」

マダオは不意に放たれた春雨兵の攻撃を間一髪で回避する。

無職ながらも常にしぶとく生き残ってきた彼の危機回避能力は評価すべきものがある。

だが

長谷川「あー!グラサンが外れ……」

慌てて身をかわした際、彼の象徴……いや、むしろ彼自身と言っても過言ではないサングラスを落としてしまう。

そしてそのサングラスは

春雨兵「そんなにこの汚いサングラスが大切か、フン」パキッ

躊躇なく敵に踏み砕かれた。

長谷川「お、俺のグラサンがァァァァァ!?」

389: 2011/12/07(水) 00:57:03.67 ID:e+JImusAO
妙「そ、そんな……長谷川さんが氏ん……!?」

長谷川「え?」

あやめ「なんてこと……遂に仲間から犠牲者が出るなんて……!」

月詠「あ奴の犠牲を無駄には出来ぬ……わっちらは戦うのみじゃ!」

妙「長谷川さん……ちゃんと破片の一つも残さず集めてお墓を作りますからね……」

長谷川「いや長谷川さんこっちィィィィィ!!俺っていう存在をちゃんと認識してくれない!?」

390: 2011/12/07(水) 01:03:40.82 ID:e+JImusAO
九兵衛「しかし……サングラスがない君に一体何が残るというのだろうか」

九兵衛「さながら、福神漬けのないカレーと同じようなものだろう?」

長谷川「さらっと何とんでもねーこと言ってんの!?それに福神漬けがなかったらラッキョウがあんだろう!」

九兵衛「ラッキョウ?君はラッキョウに値する何かを持っているのか?福神漬けのグラサンに代わる何かを」

長谷川「そりゃ…まあねーけど……」

九兵衛「……仕方ない、僕が予備で持っているコレを貸そう、少しは足しになるかもしれない」

長谷川「こいつは……」

391: 2011/12/07(水) 01:07:34.37 ID:e+JImusAO
春雨兵「何をごちゃごちゃとやってやがる、このヘタレ男が!」

長谷川「あぁ?」

春雨兵「……え?」

長谷川「何だテメェ、俺と殺り合うってのか……いいぜ、面白え!!」

春雨兵「…………え?」

長谷川「少しは愉しませてくれよ、頼むぜ宇宙海賊」

春雨兵「あれェェェ!?違うよね!これ絶対さっきの奴と違うよね!?」

九兵衛「すまない、眼帯を着けさせてみたら何故かこんな性格になってしまってな」

392: 2011/12/07(水) 01:14:34.91 ID:e+JImusAO
長谷川「いくぜオラァ!!」

春雨兵「ぐおわっ!!」

長谷川「…………」

長谷川「チッ……一撃で終まいか、つまんねェ……もっと強い奴はいねぇのか!」

月詠「こっちの混戦地帯には手強い春雨兵が大勢いる!手を貸せ!」

長谷川「はっはぁ!いいぜ、最高だ!愉しい祭りになってきやがったぜ!!なぁ!!」

九兵衛(もしや…僕はとんでもないことをしてしまったのでは……)


土方「…………」

土方「……よく分からねーが、アイツらが場を持たせてる間に俺はとっとと先へ行かねーとな」

404: 2011/12/16(金) 03:17:43.42 ID:NpcZ62MAO
---
ターミナル内


新八「…………」

桂「リーダーのことが心配か?」

新八「……神楽ちゃんだけじゃないです、姉上やさっちゃんさん、九兵衛さんに月詠さんも…」

新八「かぶき町の仲間が……今まさに傷ついているかもしれないと思うと……」

桂「俺と新八くんに出来ることは一つ……敵を統率する大将を討つことだ」

新八「…………」

新八(そうだ……僕たちがやるしかないんだ)

桂「最も……そう簡単に奥へ進めはしないようだがな」

新八「!」

それはターミナル内の開けた所、二人を待ち受けていたのは大量の春雨兵だった。

405: 2011/12/16(金) 03:31:10.99 ID:NpcZ62MAO
春雨兵「あわよくば俺たちの頭を倒そうと潜入してきたところを悪いが……お前たちはここでゲームオーバーだ」

桂「…………」

新八「ま、待ち伏せ……それもこれだけ数が……」

桂「数だけでなく……実力的に考えても奴らは春雨の精鋭部隊だろう」

新八「精鋭って……マズいですよ桂さん、僕たち二人だけじゃ!」

桂「…………」

桂(新八くんだけを先に行かせるか……だが俺一人で突破口を開けるか……)

桂「……どちらにしろ、戦うしかなさそうだな」

新八「桂さん……」

406: 2011/12/16(金) 03:40:16.38 ID:NpcZ62MAO
桂「すまないな新八くん……これだけの数が相手では君を守りきることは出来ないかもしれん」

新八「…………」

新八「……守られるだけじゃないです」

桂「…………?」

新八「一人の侍として……僕も桂さんを守ります!」

桂「!」

桂(……俺としたことが、彼を子供と思い軽んじていたらしい)

桂(新八くんはもう守られる側の人間じゃない……守るために戦える侍だ)

桂「……背中は任せたぞ」

新八「はい!」

『攘夷志士』桂小太郎、『侍』志村新八は刀を鞘から抜き放ち……

圧倒的数の春雨兵へ斬り込んでいった。

407: 2011/12/16(金) 03:49:29.65 ID:NpcZ62MAO
桂「うおおおおおっ!!」

新八「らあああああっ!!」

春雨兵「な、何だ……正気か!?」

春雨兵にすれば信じられない二人の行為、この戦力差を見て勝てないと分かっているはずだ。

仮に自らが逆の立場ならここは迷わず降伏するだろう、そして目の前の二人もそうすると思っていた。

だが、二人は戦うことを選択した。降伏して武士の誇りを捨てるより戦うことを選んだ。

そして……この二人はこの軍勢を相手に本気で勝つつもりなのだ。

春雨兵A「二人だろうと構うな!殺せ!」

408: 2011/12/16(金) 03:56:34.60 ID:NpcZ62MAO
桂「くっ……」

序盤は敵が混乱していたおかげで立ち回ることが出来た、だが……

今は既に敵は戦闘態勢に入っている、当然……容易に戦うことなど出来はしない。

新八「ぐっ……つああっ!」

新八は押されつつも必氏で戦いを続ける、ここで弱気になっては負けると直感で感じ取ったからだった。

だが、その攻めの姿勢が一瞬の隙を生み出す。

桂「後ろだ新八くん!」

新八「!」

完全に背後を取られていた、気がついた時点では遅過ぎる。

この春雨兵の攻撃を避けることなど不可能だった。

409: 2011/12/16(金) 04:05:48.50 ID:NpcZ62MAO
その時、不思議なことが起こった。

春雨兵A「ぐああああっ!?」

新八「…………え?」

突如、新八に攻撃を仕掛けようとした春雨兵が吹き飛ばされる。

桂が何かしたわけではない、ましてや新八に何か出来たはずもない。

誰かが助けてくれたのだ。

新八「ま、まさか……」

今の春雨兵は吹き飛ばされた……殴り飛ばされたのだ。

新八は屈強な春雨兵を殴り飛ばせるような人間はそう知らない。

だが彼の近くには一人いた……木刀を持つその侍が敵を殴り飛ばす場面を新八は何度も見ていた。

間違いない---新八は確信した。そしてその名前を口にする。

新八「ぎ、銀さ……」



屁怒絽「皆さん、お怪我は?」

新八「ってアンタかァァァァァ!!」

418: 2011/12/25(日) 03:39:20.79 ID:B4Hax4YAO
とある一コマ


銀時「ったくよー、クリスマスだとかなんだとかごちゃごちゃ言ってて鬱陶しいったらありゃしねーな」

銀時「いやいいよ?男と女がいちゃついてようが腰振ってようが銀さん気にしないからね」

新八「……銀さん、諦めましょうって…強がっても虚しくなるだけですよ」

銀時「いーや全然、強がってないよ?だって俺んとこにはサンタ来るし」

新八「来ねーよォォォォ!むしろアンタはサンタになって子供を喜ばせてやる側でしょうが!」

銀時「いやだって俺ァちゃんと少年ジャンプ買ってるし?ちゃんと少年の魂は大切に持ってるし?」

銀時「ならもうサンタが来てくれたっていいだろ、少年に夢を与えるのがアイツの仕事だろうよ」

新八「……ちなみに銀さんの欲しいものって何ですか?」

銀時「アレだよ、金とか金とか……金とかよ」

新八「それのどこに少年魂があるんだァァァァ!」

421: 2011/12/27(火) 21:11:30.96 ID:FUiF/JDAO
新八「ちょっと待ってェェェ!流れ的にここは銀さんが来る場面なんじゃないんですか!?」

新八「いや、確かに屁怒絽さんお隣だけども!僕らの近くにいたけども!」

屁怒絽「ははは、お互い裸で過ごした仲じゃないですか」

新八「ちょっとォォォォ!誤解を招くような言い方しないでくださいよ!」

新八「ていうか屁怒絽さん、ターミナルは敵で囲まれてたのにどうやってここまで来たんですか!?」

屁怒絽「え?あの人たちは敵だったんですか?僕がターミナル内の道順を尋ねたら丁寧に教えてくれたんですが」

新八(それって……敵が屁怒絽さんを味方と間違えただけじゃね?)

新八(つーか屁怒絽さん、周りで斬り合いやってるのになんで呑気に道順とか聞いてんですか)

422: 2011/12/27(火) 21:20:52.98 ID:FUiF/JDAO
桂「こ、こやつはまさか……!」

新八「!!」

新八(か、桂さんは屁怒絽のことを知らないんだった!まさか敵と勘違いしたり……)

桂「やはり……間違いない!」ダッ

新八「ち、違いますよ桂さん!その人は敵じゃなくて……」


桂「あの、アクション仮面の方……ですよね?」

屁怒絽「え?」

新八「…………」

423: 2011/12/27(火) 21:29:08.88 ID:FUiF/JDAO
桂「あの、サインとか貰っていいですか?『桂くんへ』とか書いてくれたら凄く嬉しいんですけど……」

屁怒絽「は、はぁ……別に構いませんが」

桂「本当にいいんですか!ありがとうございます!僕、ずっとファンだったんです!」

桂「やった!俺はやったぞ新八く……ふぼあっ!」

新八「やったって何だァァァァ!」ゲシッゲシッ!!

桂「ちょ、痛っ!痛いからホントに!落ち着こう新八くん、ほら!周りは敵で囲まれているぞ?」

新八「敵に囲まれている状況でサイン貰ってるアンタに言われたくねーんだよ!」

424: 2011/12/27(火) 21:46:57.47 ID:FUiF/JDAO
屁怒絽「あの……僕、何か悪いことを?」

新八「してません!屁怒絽さんは何も悪くありませんから!」

春雨兵B「何を訳の分からない茶番をしてる!氏にさらせェェェ!」

桂・新八「!」

春雨兵の一人が刀を抜いて斬りかかってきたその時、屁怒絽伯爵の目がキラリと光った。

春雨兵B「ぐあああああっ!?」

と同時、その春雨兵は遥か後方へと吹き飛ばされていた。

屁怒絽「ダメじゃないですか、刃物を人に向けるなんて……殺生はいけない」

新八「…………」

425: 2011/12/27(火) 21:55:16.32 ID:FUiF/JDAO
春雨兵C「や、やりやがったぞアイツ!」

春雨兵D「オイ待て!あの角と風貌……夜兎と並ぶ傭兵三大部族の一つ、茶吉尼だぞ!?」

春雨兵C「わかってる!だが俺たちは宇宙海賊春雨の精鋭だ!茶吉尼と言えど一人程度なら……」

新八「へ、屁怒絽さん……」

屁怒絽「どうしたんです?僕のことは気にせず先へ進んでください」

新八「いや、でも一人であの人数を相手にするのは……」

屁怒絽「心配してくれるんですか?ありがとうこざいます、でも大丈夫ですよ」

屁怒絽「一人じゃありませんから」

新八「え?」

426: 2011/12/27(火) 22:16:34.62 ID:FUiF/JDAO
「あ、いたいた!兄さん!」

新八「……兄さん?」

一つの声が辺りに響き渡る、その声に新八は聞き覚えがあった。

屁怒絽二郎「いやーごめんよ兄さん、ターミナルの中で迷っちゃったよ」

三郎「まったく、地球の建物はなかなか分かりにくい構造をしてるからなぁ」

四郎「温泉に難しい風習があったように、地球の人たちは作る建物も自然と複雑にしたがるんだろうね」

五郎「でも、なんとか兄さんと合流出来て良かったよ」

チビ「僕もいるよー!」

父「で?急に呼び出してなんじゃ、何か用でもあったのか?」

新八「…………」

新八(へ、屁怒絽一家が集合したァァァァ!?)

427: 2011/12/27(火) 22:29:01.04 ID:FUiF/JDAO
父「おお屁怒絽!そこにいる彼は地球で出来た友達じゃないか!」

新八「ど、どうも……」

桂「何……友達だと?新八くん、一体いつからアクション仮面と……」

新八「マジで桂さんは黙っててください」

屁怒絽「いや、そこにいる彼らが僕の友達を困らせているんですよ」

春雨兵C「え?」

二郎「ええっ!他人をわざわざ困らせるだなんて随分と酷い人たちですね!」

三郎「しかも武器まで持って……怪我したら大変じゃないですか!」

四朗「まったくだ!こんな心優しい人を傷つけようとするなんて!」

五郎「兄さんのお友達を助けるよ!」

新八(エエェェェェェ!?ちょ、待っ……エエェェェェェ!?)

429: 2011/12/27(火) 22:38:28.97 ID:FUiF/JDAO
父「コラコラ待たんかバカ息子たち、ワシにいい考えがある」

桂「『私にいい考えがある』……まさかあれはコンボイの……!」

新八「桂さん黙ってください」

父「悲しいが、彼らはいたずらに他者を傷つけてはならないことを知らんようじゃ」

父「ならば、ここはワシらが一つ……それをきちんと教えてやらねばいかん!」

春雨兵C「へ?」

屁怒絽「と言うわけです、皆さんはどうか先へ行ってください」

新八「は、はい!ほら、行きますよ桂さん!」ダッ

桂「待ってくれ!コンボイとせめて握手だけでも……」

新八「何言ってんですかアンタはァァァァ!いい加減にしないとはっ倒しますよ!」

桂「こ、コンボイ殿ォォォォォ!」

---

屁怒絽「さて、彼らが先に行ったところで……ではみなさん……ご一緒に」

『殺生はいけない』

430: 2011/12/27(火) 22:47:39.40 ID:FUiF/JDAO
屁怒絽「あ、一つだけ……みなさんに言い忘れていたことがありました」

屁怒絽「メリークリスマス、みなさん」

二郎「メリークリスマス?兄さん、それは一体」

屁怒絽「地球では年の終わり頃にはこういって挨拶をするのが礼儀らしいんだ」

三郎「へぇ、地球はやっぱり面白いなぁ」

春雨兵「…………」

春雨兵C(め、めりー苦しみます)

春雨兵D(戦場のメリークリスマス)

431: 2011/12/27(火) 22:52:46.00 ID:FUiF/JDAO
---

新八「もうかなり奥まで来ましたよ桂さん!」

桂「うむ、ここまでくればもうターミナルの屋上へと向かうのみ……だが」

武市「残念ですが…そうは問屋が下ろしませんよ」

また子「桂ァ!ここから先へは行かせないっス!」

桂「……やはり、な」

新八「…………」

新八「行ってください、桂さん」

桂「新八くん……?」

新八「この二人は……僕が止めます!」

432: 2011/12/27(火) 23:00:01.04 ID:FUiF/JDAO
桂「無謀だ、一人で二人を止めるなど……」

新八「止めます、何としても……こうしてる間にもかぶき町のみんなが戦ってるんですから」

桂「!」

新八「この二人が出て来たってことは敵の大将はすぐそこです、桂さん!早く行ってください!」

桂「…………そうか」

桂「屋上で待っているぞ、新八くん」ダッ

新八「分かってます、必ず追いつきますから……」

433: 2011/12/27(火) 23:13:00.77 ID:FUiF/JDAO
また子「行かせないっスよ!」

走り出した桂に向けて放たれた一発の銃弾、それを

新八「ああああっ!」

新八は刀で弾き飛ばした。

また子「なっ……!」

あり得ない、高速で移動する銃弾に刀を触れさせるなど以前の新八には出来るはずがなかった。

それは毎日に刀を振り続け、万事屋の仲間として数々の実戦を経験した新八の

紛れもない『成長』だった。


新八「天堂無心流恒道館道場が当主……そして万事屋一家、志村新八---参る!!」

子供ではない、『侍』としての決闘が幕を開ける。

434: 2011/12/27(火) 23:17:39.34 ID:FUiF/JDAO
そして---ターミナル屋上


桂「…………!」

高杉「……よォ、久方振りじゃねーか…ヅラ」

桂「高杉……!」

443: 2011/12/29(木) 23:01:54.74 ID:/+308KvAO
高杉「クク……どうしたよ、随分と息が上がってるじゃねーか」

桂「ああ……貴様の部下たちに手厚く歓迎されていたのでな」

高杉「フン……」

桂「……高杉、いつまでこんなことを続けるつもりだ」

高杉「…………」

桂「貴様の進む先に未来などない、この世界を壊して何になる……!」

高杉「……なら、俺からテメーに聞いてやらァ」

桂「…………?」

高杉「ヅラ……テメーはなぜこの世界を護ろうとする、なぜ俺の道を阻もうとする?」

444: 2011/12/29(木) 23:13:27.13 ID:/+308KvAO
桂「俺は信じているからだ……この世界が護るに値するものであると」

高杉「国のために戦った侍を浪士として晒し上げ、俺たちの先生すら奪ったこの世界がか?」

桂「……確かに、この国には目を背けたくなるような汚い部分も少なくはない」

桂「だが、国に悪い部分があれば変えればいい……必要なのは破壊ではなかろう」

高杉「同じことよ、デカい改革には大なり小なりの犠牲は付き物だ」

桂「犠牲……か……」

高杉「テメーも以前は過激派として動いていたじゃねーか、なあ?ヅラよ」

高杉「俺ァあの時のテメーのが幾分かマシに見えてたぜ」

桂「…………」

445: 2011/12/29(木) 23:21:31.75 ID:/+308KvAO
桂「確かに……以前は俺も国を建て直すには多少の犠牲を伴う革命もやむなしと思っていた、だが……」

『私の旦那、攘夷志士に殺されたの』

桂「…………」

『関係ない人を傷つけて国を救うもクソもないでしょうよ…綺麗な言葉だけ並べて、好き勝手暴れて……』

『奴らの中に本当に国を憂いている連中が何人いるっていうの?目の前の人も救えないのに…』

桂「目の前の人間も救えず国など救えるはずがない……そう気づかされた」

高杉「…………」

446: 2011/12/29(木) 23:32:30.11 ID:/+308KvAO
桂「この国は貴様が思うほど腐ってはいない……力に訴えなくとも、まだいくらでも変えられる」

桂「ならば……」

高杉「もういい」

桂「…………」

高杉「……どうやら腐ったのは国だけじゃなくテメーもだったらしいな」

桂「なに………?」

高杉「ヅラ……テメーには俺を止めることなんざ出来やしねェ」

高杉「ぬるま湯に浸かったテメーに…師の仇を討とうとすらしねェ腑抜けたテメーにはな」

桂「高杉……!」

高杉「問答は終いとしようじゃねーか……あとは刀で語りな」

447: 2011/12/29(木) 23:53:56.91 ID:/+308KvAO
桂「…………」

分かっていた、この男が言葉で止まるはずなどないことなど。

だが期待していた、まだ互いに並び、歩む道があるのではないかと。

信じていた、共に戦場を駆け抜けた友と分かり合える日が来ることを。

桂「……それも、すべて俺の幻想に過ぎぬというのか」

桂は刀を抜いた、もはや戦うしかない。

高杉「おっと……その前にヅラ、テメーに顔を合わせたい野郎がいるとよ」

桂「…………?」

俺に会いたいだと……?この状況で……?

数々の疑問が浮かぶ、まるで心当たりがない。

それだけに桂はふらりと現れた『奴』を見て驚愕した。

桂「き、貴様……!」

似蔵「いつ以来だろうね、アンタの匂いを嗅ぐのは」

448: 2011/12/30(金) 00:06:19.49 ID:RajCdPGAO
桂「人斬り似蔵……なぜ貴様が……!」

似蔵「単なる巡り合わせさ……俺はアンタとはずいぶんと縁があるらしいねェ」

違う、似蔵はあの時氏んだはずだ。銀時に敗れ、紅桜を破壊され……

高杉「あの馬鹿の爪が甘かったのが幸いしてな……確かに銀時は紅桜を破壊した」

高杉「だが……本体の似蔵が生きていることには気付かなかったんだとよ」

桂「だが……あれだけ体に負担を掛けて戦った人間が助かるはずも……!」

高杉「クク……確かに地球の医療だけじゃ助からなかったろうよ」

桂「…………!」

高杉「春雨の技術力も馬鹿に出来ねェな、ヅラよ」

449: 2011/12/30(金) 00:22:45.81 ID:RajCdPGAO
高杉「似蔵の体に残された紅桜の情報から紅桜そのものを復元しちまうとはよ」

似蔵「それも……より本格的な戦闘用としてね」

似蔵の右腕、そこに人間の手はない。あるのは刀、刀が直接体から生えている。

手がないとは語弊があった、むしろ似蔵にとっては刀が己の手も同然なのだから。

似蔵「じゃあ、始めようかい?楽しい斬り合いを」

桂「!」

一瞬の思考……

数での不利がある以上、受け身になっては間違いなく押し切られる。

この状況で勝ちを見いだすには休まずに攻め続けるしかない。

桂「ウオオオオォォォォ!!」

桂は猛然と二人へ斬り掛かった。

450: 2011/12/30(金) 00:35:59.68 ID:RajCdPGAO
??「おまん、一人で二人に突っ込むたァ頭おかしゅうなったか?」

桂「!」

その声は桂の側からでも高杉の側からでもない、上から聞こえてくる声だった。

見上げれば上空に大型の船が浮いている。

見たところ戦艦ではない、むしろ『商い』の船に近いだろう。

その船から一人の男が飛び出し、桂たちが対峙する屋上へ降り立った。

桂は半ば呆れた顔をして

桂「……ターミナルの屋上へ空からやってくるお前には言われたくない」

坂本「あはははは、まったくじゃ」

銀時、高杉と並ぶもう一人の戦友を迎え入れた。

451: 2011/12/30(金) 00:47:54.31 ID:RajCdPGAO
高杉「オイオイ……コイツァまた随分と懐かしい顔じゃねーか」

坂本「まっこと久しぶりじゃのう……高杉」

高杉「クク……宇宙で商いをやってたテメーが地に降りて来るとはな、どういう風の吹き回しだ?」

坂本「ちいとばかり地球で糸垂らして釣りをしちょった仲間に会いたくなってのう」

坂本「で、来てみれば……何じゃおまんら、ワシを抜きにしてパーティーしよって」

桂「期待させて悪いが、あいにく今はあまり穏やかではないな……」

高杉「そして……銀時の馬鹿は氏んだぜ」

坂本「はははは、おまんは相変わらず冗談を言うのがへったくそじゃのォ」

この場の空気に似合わぬ豪快な笑いを披露し、一呼吸置く。

そして

坂本「銀時は生きとるぜよ」

452: 2011/12/30(金) 01:11:27.31 ID:RajCdPGAO
桂「辰馬、まさかお前……銀時と会ったのか?」

坂本「いや、前の蓮蓬軍とのいざこざ以来会っちょらん」

桂「……では、銀時が数日前に深手を負って今も意識が戻らぬことは…」

坂本「ヅラ、商いを舐めたらいかんぜよ…商いっちゅうんは情報が命じゃ」

桂「し、知っていたのか……!」

高杉「クク……銀時が氏に体になり、春雨が地球に攻め入ると知り戻ってきたってのか…ご苦労なこった」

桂「…………」

坂本「もう一度言うがの高杉……銀時は生きとる」

別段、辰馬は銀時が生きているとの『確証』を持っているわけではなかった。

銀時の生存をただ単純に『確信』しているのみ…そこには何の根拠もない。

それでも辰馬は笑った、その表情には一辺の畏れも浮かべず……

坂本「あの馬鹿はそれくらいで堕ちる魂じゃないぜよ」

彼は友を信じていた。

453: 2011/12/30(金) 01:28:00.37 ID:RajCdPGAO
---
同時刻、某所

「はぁっ……はぁっ……!」

避難命令によって無人となったかぶき町。

そこをただひたすらに走りつづける一人の男の姿があった。

「…………!」

ふと男は立ち止まる、己の進む道の先にとある影が見えたからだった。

「よう……お出迎えってか?」

定春「ワン!」

ワンじゃねーよ、こちとら怪我してんだよ、元気にお返事されっと悲しくなんだろ……

男は笑いながらそんな愚痴を言って定春に乗った。


銀時「待たせちまったな定春よ……久々に大暴れと行こうじゃねーか」

定春「ワン!」

一人の侍を背に乗せ、一匹の獣は戦場へ向かって走り出した。

460: 2011/12/30(金) 23:44:48.79 ID:RajCdPGAO
---
桂、辰馬、高杉、銀時らかつての攘夷志士たちが動きを見せる一方、真選組も絶えずに戦い続けていた。

沖田「ようなまくら刀、もう少し加減して戦わねーか」

信女「私はただ標的を頃すだけ、力の加減など存在しない」

沖田「テメーは建物も地面も構わず斬り回るからやりにくくて仕方ねェんだよ」

沖田の言葉通り、信女の斬撃はもはや特定の対象を狙っているとは思えないものだった。

近くに誰がいようと、仮にそれが信女の味方であっても彼女は構わずに斬り伏せているだろう。

沖田はこの戦いに真選組の仲間が巻き込まれぬよう、自然と隊から距離を取り戦っていた。

461: 2011/12/30(金) 23:59:50.12 ID:RajCdPGAO
沖田「テメーみたいななまくら刀に討たせてやるほど俺の首は安かねーんだよ」

回避に徹していた沖田が一転して攻撃に移る。

一つひとつが正確かつ素早い斬撃だった……が

信女「まだまだ」

沖田「!」

二本の刀を使う信女は手数に物を言わせ、沖田の攻撃を強引に突破してくる。

沖田が今までに刀を交えた敵の中でも一、二を争うほど厄介な相手だった。

沖田「手数じゃ二本相手にゃさすがに適わねェ……なら」

一瞬の隙を付いた、一撃で仕留めるしか方法はない。

462: 2011/12/31(土) 00:10:03.36 ID:WP56KNBAO
信女「隙を伺っても無駄、私はあなたを仕留めるまでは決して攻撃の手を緩めない、隙も見せない」

沖田「…………」

信女「なにも不思議じゃない、あなたは私と似ている……だから思考も読みやすい、ただそれだけのこと」

沖田「ストーカーのお前と一緒にされちゃたまったモンじゃねーや」

信女「ストーカーじゃない、常日頃から付け入る隙を狙っているだけ」

沖田「それを世間一般ではストーカーって言うんだよ、のび太くん」

信女「……あなたは私と同じ、人頃しの目をしてる」

463: 2011/12/31(土) 00:20:51.70 ID:WP56KNBAO
沖田「…………」

信女「他人を斬ることを躊躇しない、命令ならば誰であろうと斬り伏せることが出来る……」

信女「刀で『斬る』ことにしか存在価値を見いだせない……人頃しの目」

沖田「…………」

終始、沖田は信女の話を黙って聞いていた。何を思うか、表情からは何も伺い知ることが出来ない。

その彼の口から発せられたのは

沖田「一つ聞くぜ、テメーは何を思って俺と斬り合いをしてやがる?」

信女「思考なんてない、私はただ標的を抹頃するだけ」

464: 2011/12/31(土) 00:34:27.11 ID:WP56KNBAO
再び信女の連撃が繰り出される。速く、鋭く、そして正確な斬撃を沖田はひたすらに捌き続けるしかない。

これだけ多くの手数を出しているにも関わらず……全ての攻撃は急所を狙っていた。

沖田「っ」

信女の攻撃を受けきった直後、沖田の体勢が崩れ隙が出来る。

信女(殺った……)

当然……即座に攻撃を仕掛ける、もはや信女の勝ちは動かない。

信女「!」


---はずだった。

465: 2011/12/31(土) 00:49:01.43 ID:WP56KNBAO
沖田「『殺った……』とでも思いやがったかコノヤロー」

罠……信女が気付くと同時、即座に体勢を立て直した沖田の刀が振るわれる。

それは信女の顔をかすめ傷を付けるも致命傷には到らなかった。

信女「…………!」

連続で反撃を食らわぬよう一旦は距離を取る、沖田も無理に追撃をかけることはしなかった。

信女「……次はない」

沖田「…………」

沖田「なまくら刀よ、やっぱり俺とテメーは似ても似つかねーな」

信女「?」

沖田「俺とテメーじゃ戦いの信念も目的も何もかもが違うんでィ」

466: 2011/12/31(土) 00:58:15.62 ID:WP56KNBAO
信女「口では違うと言ってもあなたは分かってるはず、あなたは私と同じ人斬りの……」

沖田「俺が人斬りってのは間違っちゃいねーよ」

信女「…………?」

沖田「俺の目はもう汚れちまってる、剣を握り続けたこの両手も血で染まってらァ……ただな」

沖田「汚れちまってる目だからこそ、汚しちゃならねーモンが見える」

沖田「血塗れのこの手だからこそ、血で濡らしちゃならねーモンも守れるんでィ」

信女「守る……?」

沖田「理解出来ねーか、俺の言葉の意味が……なら教えてやらァ」

沖田「なまくら刀を叩き直してな」

467: 2011/12/31(土) 01:15:10.90 ID:WP56KNBAO
沖田「…………」

信女「…………」

一瞬の静寂の後---二人は同時に間合いを詰めた。

沖田「うらあァァ!」

すれ違いざま、沖田が右手で放ったのは斜めに入る斬撃……

信女はそれを両手の刀で受け流して勢いを頃し、そのまま沖田を斬りつける。

防げるはずはない、攻撃に使った刀を引き戻すより先にこちらの攻撃は届くはずだ。

が……沖田はその一撃を防いでみせた。

信女(な、何故……!?)

答えは攻撃を防いだ沖田の左手を見れば明確だった。

『鞘』---!

信女(しまっ……)

思考が終わる前に両腕へ凄まじい衝撃が伝わってきた。

一瞬金属が割れる音が響く……手元に目を移すと己が持っていた両刀は真っ二つに折られていた。


沖田「刀身のねェその刀を抱いて墓場へ行きやがれィ、なまくら女」

468: 2011/12/31(土) 01:26:43.38 ID:WP56KNBAO
信女「…………」

信女(私が……負けた……?)

壊すために刀を振り続けた私が……負けた?守るために振られる刀に?

信女「…………」

認めたくない、だが認めざるをえない……折られた刀が自らの敗北を物語っている。

沖田『鞘ん中で眠りやがれィ、なまくら』

一度目の敗北ではビルを鞘に見立てて墓標とされたが……まさか二度目は本物の鞘が敗因となるとは……

だが……

信女「これも一つの宿命……」

確かに自分は負けた、が…気のせいかいい知れない心地よさも感じる。

自分を破ったのが己と似ているようで真逆の者だったからか……それは分からない。

だが、信女の顔には確かに『微笑』が浮かべられていた。

469: 2011/12/31(土) 01:38:35.40 ID:WP56KNBAO
そんな信女の肩を掴む者が一人。

沖田「よう、なんで勝手に綺麗に終わりましたみてーなオチ着けようとしてるんでィ」

信女「え?」

沖田「俺の勝負はこっからだ、終わらせようったってそうは行かねェ」

信女「え?え?」

沖田「安心しな、テメーは鎖つけて街中散歩させるレベルじゃ済まさねーよ」

信女「え?え?え?」

沖田「テメーが落ちる墓場の名前は……『ソーゴ・ドS・オキタⅢ世』」

沖田「さーて……楽しいパーティーの始まりだなァ」


沖田総悟、またの名をソーゴ・ドS・オキタⅢ世……この男

---まさに外道

477: 2012/01/21(土) 01:40:55.26 ID:rvKLxMYAO
---

近藤「くっ……!」

佐々木「どうしました局長さん、ずいぶんと必氏ですね」

沖田と信女から離れた場所にて近藤と佐々木は戦闘を続けていた。

真選組と見廻り組の局長同士の戦い……だが、近藤の劣勢は誰がどう見ても明らかだった。

近藤(剣に意識を向けりゃ銃でやられる……かといって銃ばかりに気を取られるわけにもいかねェ)

478: 2012/01/21(土) 01:41:58.34 ID:rvKLxMYAO
佐々木「しかし……さすがは真選組局長、むさ苦しいだけの御方ではないようだ」

近藤「悪いが佐々木殿、世辞を言ったところで俺から見返りは何も出てこんぞ」

佐々木「いえいえ、私は客観的な評価を述べたに過ぎません」

佐々木「私の攻撃をここまで上手く捌き続けられるのは紛れもなくあなたの腕が立つからです」

近藤「……もっとも、俺からアンタには傷一つ付けられちゃいねーがな」

佐々木「どうです?ここは一つ、取引といきませんか?」

近藤「取引……?」

佐々木「このまま行けばあなたは私には勝てません、ジリ貧状態でも私は少しずつあなたを追い詰められる」

佐々木「大怪我を負う前に降伏して頂ければ私としても楽でして……」

近藤「…………」

479: 2012/01/21(土) 01:43:10.42 ID:rvKLxMYAO
佐々木「ああ、当然ですが局長であるあなたの降伏は真選組そのものの降伏と同義です」

佐々木「真選組隊士のみなさんには即座に武装解除していただきますよ」

近藤「…………」

佐々木「悩む必要などないと思いますがね?我々とて武器を捨てた者に斬りかかるような真似はしません」

佐々木「局長ならば隊に無駄な犠牲が出る前に刀を捨て、降伏をすべきでしょう?」

近藤「…………」

480: 2012/01/21(土) 01:45:33.88 ID:rvKLxMYAO
近藤「ふ…………」

佐々木「?」

近藤「はははははは!」

佐々木「……何がおかしいのです?」

近藤「なるほどよくわかったぜ、どうにも俺たちは相容れねェわけだ」

佐々木「…………?」

近藤「佐々木殿……アンタにとってコイツは…『刀』は何だ?」

近藤「まあ、おそらくは単なる人斬り包丁としか思ってねーんだろう」

佐々木「…………」

近藤「だから刀を捨てるだなんて簡単に言えちまう……俺たちと折り合いがつくはずもねェ」

佐々木「……では近藤さん、あなたにとっての刀とは?」

近藤「全てだよ」

481: 2012/01/21(土) 01:49:38.51 ID:rvKLxMYAO
近藤「俺たち真選組はアンタら見廻り組みてーなインテリ集団じゃねェ、田舎くせェ馬鹿な芋侍の集まりだ」

近藤「そんな俺たちが民を護れるのも、戦えるのも、すべてはコイツのおかげだ」

近藤「『刀』ってのは俺たちの魂そのもの、言わば俺たちの分身よ」

近藤「その刀を捨てるってのは……」

近藤「テメー自身を捨てちまうのと同じなんだよ」

482: 2012/01/21(土) 01:50:53.33 ID:rvKLxMYAO
佐々木「……なるほど、バラガキさん然り…確かにあなたたちは馬鹿のようだ」

佐々木「馬鹿に交渉を持ち掛けたのは私の不手際でしたね」

近藤「……最後に一つだけ聞くが」

近藤「局長であるアンタに……部下を庇って氏ねるだけの覚悟はあるか?」

佐々木「愚問ですね、上に立つ指揮者が兵の身代わりになるなど有り得ないことでしょう」

近藤「……そうか、よく分かったぜ…見廻り組『局長』殿」

佐々木「長引かせても面倒です、終わりにしましょうか…真選組『局長』さん」

483: 2012/01/21(土) 01:55:31.36 ID:rvKLxMYAO
近藤「オオオオオオォォォ!!」

雄叫びをあげながら近藤が斬り込んだ、それは最短距離をまさに一直線に駆け抜ける動き。

攻撃が決まりさえすれば一撃必殺になり得るが、直線的すぎるが故に反撃も受けやすい、まさに諸刃の剣。

近藤がこの一撃に勝負を賭けていることを窺わせる動きだった。

佐々木(……やはりあなたは芋侍だ)

佐々木は近藤の策を予測する

佐々木(以前、あなたの所のバラガキさんは銃の弾を斬って私へ攻撃を通してきた)

佐々木(それと同じことをしようとしている……浅い考えだ)

484: 2012/01/21(土) 02:10:30.73 ID:rvKLxMYAO
佐々木は斬りかかる近藤に狙いを定めると素早く銃の引き金を引いた。

佐々木(この銃弾を斬り攻撃を仕掛けてくるのなら……私はそれを迎撃するまでです)

放たれた弾丸に対し近藤がとった行動……それは『避けない』という行動だった。

佐々木「!」

佐々木(な、なぜ当たっ……!?)

地を濡らす近藤の鮮血に動揺したのは他ならない佐々木だった。

土方と同じ手を使ってきていたはずならこの弾に当たるはずがない……

近藤「ウオオオオオオォォォォ!!」

佐々木「くっ!」

予想外の事態ではあるが佐々木はとっさに刀を抜く、このままでは斬られることが明らかだったからだ。

すれ違い様にキィンという金属音が響かせつつ、二人は交錯する。

そしてそのまま走り抜けた後、彼らは動かずに立ち尽くしていた。

485: 2012/01/21(土) 02:23:20.33 ID:rvKLxMYAO
佐々木「くっ……」

先に倒れ込んだのは佐々木だった、もはや立つこともままならない状態に思える。

近藤「はぁっ……はぁっ……!」

佐々木「なぜ……弾を避けなかった……!」

佐々木「それだけじゃない……すれ違う際の私の斬撃……あれも完全に防ぐことはしなかった」

近藤「そうでもしなきゃアンタを斬れねェと思ってな……結果、俺ァ間違ってなかったらしい」

近藤は確かに攻撃を避けなかった、だが佐々木の弾や斬撃を急所からずらす一瞬の行為……

数々の氏闘をくぐり抜けて培った危機回避能力をとっさに発揮していた。

486: 2012/01/21(土) 02:35:27.09 ID:rvKLxMYAO
佐々木「……まさか自分の体をそこまで傷付けてまで私を攻撃してくるとは、やはり…馬鹿の考えは読めませんね」

佐々木「だが……上に立つ人間そんな命を無駄にしかねない博打に出るとは……あなたは局長失格だ……」

近藤「……テメーに一つ言っておく」

佐々木「……?」

近藤「局長ってのは……戦場では常に部下の命を背負わなきゃならねェ」

近藤「俺たち局長の匙加減で奴らの生氏は決まっちまうのさ……」

近藤「俺を局長失格と曰うならそうするがいいさ、それでも俺ァ仲間を守れるなら…」

近藤「こんな馬鹿な俺を慕ってついてきてくれたあの大馬鹿野郎どもを守れるのなら」

近藤「てめーの体張ってでも最後まで戦うぜ」

近藤「それが……『局長』だ」

487: 2012/01/21(土) 02:45:59.36 ID:rvKLxMYAO
佐々木「…………何にせよ、ここは私の負けの……ようだ」

佐々木が気を失ったと同時、近藤もその場に崩れ落ちた。

近藤「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」

まさに捨て身の攻撃、佐々木に確実な攻撃を当てるために自らを傷付けたダメージは決して小さくはなかった。

近藤(あとは任せたぜ……総悟…トシ…桂…そして万事屋)

近藤勲、己自身の魂と誇りを守り抜き見廻り組局長を撃破する。

その姿はまさに真選組『局長』を名乗るにふさわしかった。

505: 2012/02/16(木) 12:19:57.83 ID:9zFX9urAO
三年Z組ー銀八先生!

銀八「じゃー授業始めんぞ、今日は一人暮らしにおいて風邪を引いたときのヤバさだ」

銀八「家族が一緒に住んでる場合、大多数は病人を気遣ったりしてくれますね」

銀八「お粥作ったりジャンプ買ってきてくれたり風邪薬持ってきてくれたりポカリだったり、まあ色々だな」

銀八「だがもし一人暮らしで風邪引いた場合、コイツははっきり言ってヤバいです」

銀八「まず布団から出られねーし?ましてや飯なんか作る気力も食う気力もねーし?」

銀八「その状況を何とかてめー一人で乗り切らなきゃならねェっていう、あれこれどんな拷問?」

銀八「つーわけで、テメーらも体調管理だけはしっかりな」


こんな感じで遅れました、今日の午後から再開します

508: 2012/02/16(木) 22:25:51.13 ID:9zFX9urAO
沖田「近藤さん、なんだってまた道端で寝っ転がってんですか?」

しばらく目を閉じて横になっていた近藤の頭上から聞こえる声

それを耳にした近藤は笑いながら

近藤「その声は総悟か……その調子だと勝ちを拾ったようだな」

沖田「まあ自尊心が強くて少しは手こずりましたがね……それだけ教え込みがいがありましたよ」

近藤「そうか、そいつは良かっ……あれ総悟?今お前何かおかしなこと言わなかった?」

509: 2012/02/16(木) 22:32:32.77 ID:9zFX9urAO
沖田「それよか、疲れてんなら一緒に乗りますかい近藤さん?後部座席なら空いてますぜ」

近藤「後部座席って総悟、今お前何かに乗ってんのか?」

沖田「ついさっき雌猫を手にいれましてねィ、猫になんざ乗るのは初めてでしたけど乗り心地は悪かねーですよ」

近藤「あれ?何か俺ァ今は目を開けちゃならねェ気がするんだけど?見ちゃいけねーモンが見える気がすんだけど」

沖田「おう、近藤さんも乗るぜ、崩れるんじゃねーぞ」

信女「………………」

近藤「乗るって何にィィィィィ!?」

511: 2012/02/16(木) 22:51:21.84 ID:9zFX9urAO
近藤「オイィィィィ!何だこれ!?これ人力車ってかまるっきり人車じゃねーか!」

近藤「つーかお前さっきまでこの娘と斬り合いしてたよね!?どこをどう手順を踏んだらこうなるんだ!?」

沖田「コイツもなかなか抵抗しやしたがね、まあ勝ちやしたよ」

近藤「いや勝ったってそういう意味で!?侍の誇りの欠片すらねェじゃねーかァァァ!」

沖田「この雌猫、結構Sっぽかったんでなかなか調教してる時は楽しかったですぜ」

近藤「やめてェェェ!!ちょ、総悟!もうやめて!それ以上何も言うな!」

近藤「さっきまであれだけ『仲間のために』カッコ良く決めてた俺が情けなくなるから!」

沖田「ああ、すいやせん…ならお詫びにこの雌猫、好きにしていいですぜ?俺が命令すれば何でもやりますから」

近藤「総悟ォォォォォォ!?」

512: 2012/02/16(木) 23:02:17.27 ID:9zFX9urAO
---
ターミナル内某所

土方「……気のせいか?何か近藤さんの叫び声が聞こえたような…」

桂や新八に続きターミナルへ潜入している土方は極力敵の少ないルートを選び奥へと進んでいた。

剣に自信がないわけではなかったが、無闇に敵と乱戦になり傷を負うのも得策ではない。

この戦いにおいてはひどく正しい判断だった。

が……土方の進むルートに立つ敵は

土方「……よりにもよってテメーと出くわすとはな、河上」

河上「こんな裏を潜り込んで来るのはどんな鼠かと思えば……まさか真選組副長とは」

513: 2012/02/16(木) 23:21:17.47 ID:9zFX9urAO
土方「…………」

土方は周りを見渡す、己の眼前にいるのは鬼兵隊・河上万斉のみ

伏兵が潜んでいる気配も感じられなかった。

河上「単身でここまで来たところを見るに、敵との混戦を避け高杉の首を取る算段でござったか?」

土方「そう言うテメーは俺みてーに不意打ちで大将を討とうとする輩を排除する役割ってわけだ……なら」

土方「俺はテメーを叩き斬って先へ進む、ただそれだけだ」

河上「フ……ぬしとの斬り合いを経て新しい曲が作れるやもしれぬでござるな」

土方「いくらでも作ればいい、三途の川越えたところでな」

514: 2012/02/16(木) 23:42:11.97 ID:9zFX9urAO
土方「らあっ!」

キィン

河上「受け止めてなおこの衝撃……なるほど、これはかなり激しいビートでござる」

土方「斬り合いの最中に考え事とはずいぶんと余裕じゃねーか」

河上「言葉でいくら平静を装うとも、感情の高ぶりに呼応して剣は荒くなる……」

河上「これは……まるで怒り、ある意味では憎しみとも取れるビート……」

河上「……フ、伊東でござるか」

土方「!」

515: 2012/02/17(金) 00:25:07.04 ID:EPAEMUeAO
河上「あの件で拙者を恨むのはお門違いでござる、拙者たちと伊東の利害が一致し……」

河上の言葉を遮るかの如く、一閃が放たれる。河上はその一撃を辛うじて回避していた。

土方「テメーの口で野郎の……俺たち真選組の仲間の名を口にするんじゃねェ……」

河上「!」

錯覚か……一瞬、河上には土方の背後に鬼が見えたように感じた。

不用意に足を踏み入れた瞬間、即座に喰い殺されるイメージを抱く。

河上「まったく……鬼の副長とはよく言ったものでござるな」

516: 2012/02/17(金) 00:31:01.02 ID:EPAEMUeAO
すいません、今日はここまでですが明日も続けて来ます

519: 2012/02/17(金) 23:04:35.74 ID:EPAEMUeAO
---
ターミナル前

真選組とは別に戦いを続けるかぶき町勢の戦いも激しさを増していた。

九兵衛「『次の舞!白蓮!』」

月詠「散り散りになるな!連続攻撃による手数で押し切れ!」

が……九兵衛率いる柳生家、月詠率いる百華、その他多くの仲間の連携で徐々に流れは傾きつつある。

そして何より

春雨兵「な、何だコイツは!?」

長谷川「ハハハハハハ!もっと強い奴ァいねぇのか!?」

春雨兵B「つーかアイツ剣が刺さらねーんだけどマジで!」

九兵衛「…………」

眼帯つけてる長谷川さんがヤバかった。

520: 2012/02/17(金) 23:36:05.20 ID:EPAEMUeAO
九兵衛「この分ならあと少しで新八君たちの加勢に……」

阿伏兎「行けると思ったのか?」

九兵衛「なっ……ぐあっ!!」

九兵衛の体が宙に舞う、殴られたその体は激しく地面に打ちつけれつつ、ボールの如く吹き飛ばされた。

九兵衛「がっ……はっ……!」

一瞬の出来事に九兵衛は何が起きたのか把握し切れていなかった。

辛うじて分かったのは自分が不意をつかれ殴り飛ばされたこと、そして

阿伏兎「残念ながらオメェさんたちにそんな選択肢はねェな」

自分を吹き飛ばしたのは目の前にいる不気味な男であることだった。

522: 2012/02/18(土) 00:16:47.12 ID:QXJlHNnAO
東城「わ、若ァァァ!」

九兵衛「だ、大丈夫だ……攻撃を喰う直前に受け身は取れた…………!」

あやめ「そ、それで受け身を取ったっですって……!?」

咄嗟であったとはいえ受け身を取ったにも関わらず、これだけのダメージを……?

仮に受け身を取ることが出来ていなければ……

九兵衛「間違いなく再起不能……氏んでてもおかしくはなかった」

その身を持って体験したあの男の力、並大抵の天人のそれではない。九兵衛は一つの確信を得ていた。

九兵衛「白い肌、戦闘に使用できる傘、そしてあの剛力……」

九兵衛「……間違いない、夜兎族だ」

523: 2012/02/18(土) 00:27:03.20 ID:QXJlHNnAO
阿伏兎「しかし情けねェ……宇宙最強の春雨が地球人との乱戦で劣勢になってるとはよ」

阿伏兎「やっぱりあの馬鹿提督が適当な指示出してたのがいけねェのかね」

月詠「貴様……!」

阿伏兎「ん?どっかで見たと思えば、アンタは前にどっかで見たな……ああ、吉原の時だったかい」

阿伏兎「あの時よか幾分かマシになったか?変わってねェようじゃ……氏ぬぜ?」

月詠「…………!」ゾクッ

524: 2012/02/18(土) 00:37:57.35 ID:QXJlHNnAO
長谷川「何だ?ずいぶんと強そうな奴がいるじゃねーか!」

阿伏兎「オイオイ何なんだお前さん、いきなり斬り掛かってくるとはずいぶんなご挨拶だな」

阿伏兎「だが参ったね、その獣のみてーな戦闘本能……俺は嫌いじゃないぜ!」

長谷川「いいじゃねーか、面白ェ!せいぜい愉しませてくれよ!!」

妙「………………」

妙「え……ちょ、エエエエエェェェェ!?まさかの長谷川さんがあの化け物とマッチアップ!?」

全蔵「これやべーぞ、完全体セルに戦闘力5の銃持ってたオッサンが戦うみてーなモンだぞ」

525: 2012/02/18(土) 00:58:03.21 ID:QXJlHNnAO
長谷川「戦いってのはやっぱりこうでなけりゃ面白くねェ!」

阿伏兎「違いない……フンッ!」

十数合の打ち合いの後、阿伏兎は一瞬の隙に鋭い突きを敵の顔面に放った。

今のマダオはその一撃を笑いながら避けてみせる……が

すれすれで攻撃を回避する際、マダオの左目を覆っていた眼帯が千切られ外される。

妙「い、いけない!あれが外れたら長谷川さん、ただのマダオに戻っちゃう!」

九兵衛「い、いや……まだ分からない!確か剣八は眼帯が外れると強くなるという設定があったはずだ……」

あやめ「一体どっちの効果が…………」

長谷川「…………」

長谷川「……あれ、何で俺はこんなとこ…」

妙「回収ゥゥゥゥ!!誰か大至急長谷川さん回収してきてェェェェェ!!」

526: 2012/02/18(土) 01:18:37.43 ID:QXJlHNnAO
長谷川「つーか俺、眼帯借りた後から今まで何して……」

阿伏兎「よくあれをかわしたな!なかなかに骨がある!」

長谷川「…………」

阿伏兎「だがコイツは避けられまい!俺も加減せずにやらせてもらう!」

長谷川「エエエェェェェ!?ちょ!待ってェェェェェェ!!何が起こって……」

月詠「ハッ!」

阿伏兎「む……!」

阿伏兎が一撃を放つ直前、月詠がクナイによる攻撃を撃って出る。

人体の急所を正確に狙い撃つクナイ、さすがの夜兎と言えどこれは防がざるを得なかった。

阿伏兎「チッ……楽しい戦いの最中に小賢しい真似を!」

阿伏兎は持っていた傘を軽々と振り回し、自身に襲い来るクナイを撃ち落とす。

月詠「!」

完全に不意を付き、尚かつあれだけの量のクナイを投げても傷一つ付けられぬ夜兎……

その存在に月詠は改めて恐怖を抱く。

527: 2012/02/18(土) 01:34:56.10 ID:QXJlHNnAO
阿伏兎「惜しかったなぁ、この俺の不意を付けたとでも思ったかい?」

月詠「……ああ、思った」

阿伏兎「クックック……あの程度でこの俺を……っ!!」

背後から殺気を感じ即座に上体を逸らす、そこには

あやめ「っ…………!」

己が一秒前にいた空間を斬りつける猿飛あやめの姿があった。

阿伏兎「今のはちいとばかりヤバかったな、危うく命もってかれるところだったぜ」

月詠「…………」

月詠(わっちのクナイによる陽動からの背後への奇襲……これすら奴は防ぎきるか)


一方そのころ

全蔵「オイ、大丈夫かオイ!」

長谷川「気がついたら……何かヤバそうな奴が目の前にいて……俺を傘で殴り殺そうと……」

二人の女忍が戦っている中、全蔵によって回収されていた。

528: 2012/02/18(土) 01:45:21.09 ID:QXJlHNnAO
阿伏兎「大体お前さんたち、一体なんのために戦ってる?この街を守るためか?」

阿伏兎「悪いがそりゃ無駄な努力だ、このターミナル前にいるレベルの春雨兵に手こずってるようじゃ……」

阿伏兎「ウチの所の大将はお前さんたちが千人集まろうと止められやしねェよ」

月詠「それでもわっちらは誓った……最後まで戦い抜いたあの馬鹿が愛したこの街を必ず守ると!」

阿伏兎「あの馬鹿?……ああ、大将が気に入ってたあの銀髪の侍かい、あれはもう氏んだって聞いたが?」

九兵衛「あの男はしぶといのが一つの取り柄のようなものだ……必ず生きて返ってくる」

阿伏兎「……ま、俺にはどうでもいいことだがね」

529: 2012/02/18(土) 02:08:08.09 ID:QXJlHNnAO
阿伏兎「だが、地球人ってのはずいぶんと安っぽい人間関係っての有り難がるねぇ」

阿伏兎「……いや、一番おかしいのはやっぱりあの銀髪の侍か?」

月詠「……何じゃと?」

阿伏兎「どうも、お前さんらはあの男に何らかの恩義を感じてるようだが……」

阿伏兎「あの侍はただ馬鹿なだけよ、鳳仙の時の行動を見てりゃ大体は分かる」

阿伏兎「何の得にもならねェことに本気を出すなんざ俺には到底理解しかねるがね……」

阿伏兎「そんな馬鹿を有り難がってるお前さんらを見てるとどうにも笑いが……」

平子「止めろ」

阿伏兎「…………?」

阿伏兎の執拗な挑発、それを決して許すことが出来なかった少女……

銀時によって父と再会するきっかけを作られ、そして万事屋一家が末弟でもある少女……

平子「それ以上、その口がアニキを馬鹿にする言葉を紡ぐのなら……」

平子「そこに真っ赤な花を飾り付ける」

阿伏兎「くっくっ……」

椿平子が自らの刀を夜兎へと向け、宣戦布告する。

ここに、新しい戦いの火蓋が切って落とされた。

537: 2012/02/19(日) 21:39:57.55 ID:J6FfZjOAO
阿伏兎「フンッ!」

平子「ぐっ!」キィン

幾度にも満たない攻防にて平子は直感する、力、技術、経験……そのすべてにおいて敵が上であると。

阿伏兎「どうしたお嬢ちゃん、防ぐだけじゃ戦いには勝てねえよ」

平子「くっ……」

あやめ「いい歳したオジサンが子供虐めて楽しんでんじゃないわよ!」

月詠「はっ!」

クナイを持った二人は戦闘の間に割って入ると素早く阿伏兎へ斬り掛かる、三人の計画通りだった。

平子を陽動に使い尚且つ、二人掛かりで手数を増やして攻める……相手は隻腕、この攻めが通らぬはずはない。

538: 2012/02/19(日) 21:46:58.94 ID:J6FfZjOAO
阿伏兎「オオォッ!」

月詠・あやめ「!?」

一振り、今のは間違いなく一振りだった。

その一振りで、阿伏兎は高速で動く月詠たちのクナイを正確に破壊していた。

月詠「こ、コイツ……本物の化け物か!?」

阿伏兎「本物の化け物?そいつは違うな」

阿伏兎は持っていた傘を手放し、代わりに猿飛あやめの腕を掴みかかる。

あやめ「しまっ……」

不覚---そう彼女が考えた時には既に自身の体は月詠を巻き込み、投げ飛ばされていた。

月詠「ぐあっ!」

あやめ「うぐっ……」

阿伏兎「俺はただの血を愛でる獣よ」

539: 2012/02/19(日) 22:13:52.26 ID:J6FfZjOAO
平子「この……っ!」

阿伏兎「ほう……今のを見ても恐れずに向かってくるか、大した勇気の嬢ちゃんだ……が」

平子の選択した攻撃は突き、直線的でかわされやすくはある一方で防ぐことは難しい一撃。

それを阿伏兎は脇で挟み込むように受け止め、さらにその刀を蹴り上げた。

刀を飛ばされ平子に一瞬の隙が生じた時、その喉には既に腕が伸びていた。

阿伏兎「悲しいねェ、その勇気を奮って選んだ選択肢の先に待っていたのが氏だったとはよ」

平子「あっ……ぐっ……!」

540: 2012/02/19(日) 22:26:46.10 ID:J6FfZjOAO
九兵衛たちは他の天人との戦いで動けず、月詠たちは体を打ちつけられたダメージで未だに動くことが出来ない。

ましてや援軍など期待できるはずもなかった。

阿伏兎「さて、ここでお前さんにまた選択肢だ……ここで戦いを止めて逃げ出すか…」

阿伏兎「もしくは、ここでこのまま俺に絞め殺されるか……後悔しねーようベストな選択肢を選ぶんだな」

平子「…………ない」

阿伏兎「…………?」

平子「絶対に……逃げない……!」

阿伏兎「…………」

541: 2012/02/19(日) 22:47:19.11 ID:J6FfZjOAO
阿伏兎「決まりだな」

平子の言葉を聞き、阿伏兎の腕に力が込められた。

平子「あっ……はっ……!」

阿伏兎「終わりだな、地球人の小娘にしちゃお前さんはよくやったほうだったぜ」

阿伏兎は子供だろうと、戦場で己の前に立つ的に容赦はしない。

それが夜兎としての修羅の血であり、宿命であり、そして誇りであったからだ。

平子の命が尽きるのも時間の問題、まさに風前の灯火だった。

その時

「よう、楽しそうな遊びしてるじゃねぇかい」

阿伏兎「っ!」ゾクッ

凄まじい悪寒が背中に走る、動かなければ命に関わると阿伏兎に思わせるほどの悪寒……

阿伏兎は平子から手を離し、即座にその場から一歩移動する。

その刹那、阿伏兎は確かに見た……一秒前まで己のいた場所の空を斬る刀の姿を。

次郎長「今のでて殺(と)れねェたぁ……やるじゃねーか、天人よ」

542: 2012/02/19(日) 23:07:57.64 ID:J6FfZjOAO
平子「お、親父……?」

次郎長「なんでェ、目までおかしくなっちまったか?てめーの親父の顔も分からねえかい」

平子「なんで…なんで親父がここに……」

次郎長「そりゃこっちの台詞だ、俺ァふらふらとほっつき歩いてる娘を連れ戻しにきただけよ」

次郎長「わざわざかぶき町まで戻って来てみりゃ……また騒がしくドンパチやってるじゃねーかい」

次郎長「話を聞きゃ今度はあの春雨を敵に回したらしいな……全くこの街は相変わらず馬鹿しかいねェ」

阿伏兎「ここいたんじゃ俺まで馬鹿になっちまいそうだ……そう思わねーかい、あんちゃんよ」

阿伏兎「……クックックッ」

543: 2012/02/19(日) 23:44:15.37 ID:J6FfZjOAO
次郎長「いけねェ……どうもこの街の空気に当てられて俺も馬鹿になっちまったらしい」

阿伏兎「俺としちゃ、アンタほどの腕の奴にゃ戦闘狂の馬鹿にだけはなっててほしくないんだがね」

次郎長「残念ながら、俺がなったのは子煩悩の親馬鹿よ……それに」

次郎長「てめーの娘を痛めつけられて黙ってるほど俺ァ大人じゃねェんだ」

阿伏兎「やれやれ参ったね、コイツァ謝っても許しちゃくれそうにねェな……」

次郎長「ゴチャゴチャ口で語るよか……おめぇさんも刀(こっち)使ったほうが早ェだろう?」

阿伏兎「クク……いいね、アンタみたいな輩だとやりやすい」

次郎長・阿伏兎「続きはテメーの力で語りな」


攘夷古豪の最強の侍、次郎長……最強の戦闘集団、夜兎の阿伏兎を討つべく戦場に降り立つ。

548: 2012/02/23(木) 23:21:37.43 ID:gsb+K2bAO
月詠「何という男じゃ……!」

先に吉原で阿伏兎と戦い、そして今も不覚を取った月詠は次郎長の強さに驚いていた。

自分と猿飛あやめ、そして平子の三人がかりで相手にならなかった敵を一人で相手にしている。

阿伏兎の力をその身で感じたからこそ、月詠はそれがいかに凄まじいことなのかを理解できた。

阿伏兎「おっと!」

次郎長「よく避けやがる……この次郎長の刀を見切った奴ァ、攘夷初っ端にもそうはいなかったぜ」

阿伏兎「なるほど、若い頃はアンタも戦場を己の生き場所としてたクチかい?」

次郎長「昔の話よ、オイラとしちゃもう隠居して暮らしてェんだがね」

阿伏兎「オイオイ……冗談はよしてくれ、アンタは間違いなく戦場(こっち)側の人間よ!」

549: 2012/02/23(木) 23:53:51.05 ID:gsb+K2bAO
次郎長「…………」

なるほど……コイツァ骨が折れる……

白夜叉も相当な化物だったが、今撃ち合っている天人は白夜叉とはまるで違う種類の強さを秘めた化物だ。

白夜叉、坂田銀時が己の信念、仁義、魂を『護る』ために刀を振り、戦っていたとするならば

次郎長「テメーには端っから戦いしかねェ……『戦う』ために武器を振り、『頃す』ために戦ってやがらァ」

阿伏兎「クク……何を今更、俺たちは血に従い頃し…血を誇り頃す…居場所に戦場を求めるケモノ……」

阿伏兎「てめーが氏ぬまで戦い続ける……それが俺たち、夜兎の宿命よ!」

550: 2012/02/24(金) 00:23:56.50 ID:M/ai8BBAO
平子「親父!」

次郎長「来るな!」

そう次郎長が声を上げるのと、阿伏兎の傘が次郎長の脇腹を抉るのはほぼ同時だった。

防ぎきれなかったわけではない、それは一瞬意識が逸れたことによる事故とも言える。

次郎長「っ……!」

阿伏兎「……何てことだい、こりゃあつまらねぇ幕引きになりそうだ」

傘で己の肩を叩きつつの発言、もはや勝負は決まったと見越しての余裕。

阿伏兎「アンタは強かったよ、地球人にしとくのが勿体ねェほどにな」

阿伏兎「だがこれが俺との差だ……戦場を生き場とする俺と戦場から退いたお前さんとの差だ」

阿伏兎「残念ながら、娘っ子の声に惑わされて集中力を欠くようじゃ……戦場では生き残れねーよ」

次郎長「…………」

551: 2012/02/24(金) 00:36:34.16 ID:M/ai8BBAO
次郎長「……おめぇさん、子供は?」

阿伏兎「…………?」

次郎長「おめぇさんにゃガキがいるか……家族がいるかって聞いてんだ」

阿伏兎「今の俺にはそんなものありはしねェな……夜兎にとって親や家族なんてモンはただの形でしかねェ」

阿伏兎「血の繋がりがあろうが……己の前に立つなら頃し、敵と見なせば首を取ろうとする……」

次郎長「……そうかい、おめぇさんたち夜兎ってのはずいぶんとちっぽけな世界で生きてやがるな」

阿伏兎「何……?」

次郎長「おめぇさん、さっき……娘の声で動揺してるようじゃ戦場で生きていけねェって言ったか」

次郎長「フン、つくづく引退して良かったぜ……戦場にいちゃ娘の声すら聞けねー耄碌になっちまうんだろう?」

552: 2012/02/24(金) 00:43:03.19 ID:M/ai8BBAO
阿伏兎「……コイツは驚きだ、アンタは俺と同じ人種だと思ってたんだがねェ」

阿伏兎「あの娘っ子のことがそんなに大切かい?」

次郎長「くだらねーことを聞くんじゃねェ、てめーの子供が可愛くねェ親なんざいやしねェよ」

阿伏兎「…………」

次郎長「護らなきゃならねェ家族がいる幸せってのをテメーにも教えてやりてーモンだ」

平子「お、親父……!」

553: 2012/02/24(金) 00:55:28.97 ID:M/ai8BBAO
阿伏兎「……クックックッ、なるほど…見解の相違ってわけかい」

阿伏兎「家族なんてつまらねェしがらみに捕らわれてちゃ戦うことなんざ出来ねェのか……」

阿伏兎「護らなきゃならねェ家族がいるから戦うことが出来るのか……やれやれ、俺の見立てはまるで外れてたらしい」

阿伏兎「俺とお前さんは似たもの同士どころじゃねェ、対極の存在だったってわけだ」

次郎長「そうでもねェ……おめぇさんに共感出来る部分だってなくはねェんだ」

阿伏兎「ほう?」

次郎長「禅問答でどっちが正しいかなんてことは今さらするつもりはねェだろう」

次郎長「おめぇさんが考えるのは、『強ェほうが正しい』……オイラ好みのシンプルなケリの付け方だよ」

阿伏兎「クク……そうかい、そいつァ何よりだ……じゃ、お互いにケリをつけるとしようかい?」

554: 2012/02/24(金) 01:03:36.96 ID:M/ai8BBAO
間合いを取り、お互いに武器に手を伸ばす……どちらが先に仕掛けてもおかしくはない距離。

阿伏兎「俺は俺の抱く戦場の正義を貫くため---」

次郎長「俺は俺の抱く護る戦いの正義を貫くため---」



阿伏兎・次郎長「氏んでゆけ」

557: 2012/02/26(日) 23:42:40.02 ID:aQaHSuHAO
仕掛ける時を伺う阿伏兎、居合いによる迎撃を計る次郎長……対照的な策を選択した二人の攻防

阿伏兎が前足に体重を乗せれば次郎長は重心を落とし……

次郎長が刀を握る手に力を込めれば阿伏兎は傘を握る手に力を込める。

阿伏兎(クク、参ったねこりゃ……迂闊に攻めれば即座にバラ肉にされちまいそうだ)

次郎長の脇腹に負わせた傷は決して浅くはない、未だに流れる血を見てもそれは明白である。

このまま時が過ぎるのを待てば自然と阿伏兎に有利な状況になっていくが……

阿伏兎「そんな選択脂を選ぶつもりはねーよ」

己に流れる夜兎の血……戦いを求め、強者を求め続ける修羅が血……

夜兎の血を愛でる阿伏兎には、己の血に恥ずべき行為を取ることなど出来はしなかった。

558: 2012/02/26(日) 23:58:43.38 ID:aQaHSuHAO
阿伏兎「オオォッ!」

次郎長「!」

もうしばらく時間を稼ぐかと思ったが……どうやらやっこさん、しびれを切らしやがったと見える。

己への距離を一気に詰める阿伏兎を前にしながら、次郎長はそんなことを考えていた。

それは決して集中を切らしているわけではない、次郎長自身の冷静さの現れでもあった。

次郎長(こっちの狙いは野郎も分かってやがるはずだ……何の考えもなしに突っ込んでくるはずもねェ)

次郎長「なら……もう少しばかり小細工を弄させてもらおうかい」

559: 2012/02/27(月) 00:19:04.22 ID:WJFK3TYAO
次郎長は地面を繰り上げる、それによって細かい石や砂が阿伏兎の目に向かって飛んでいった。

阿伏兎「目潰し……さすが、嫌なことしてくるね」

目潰しを経験したことがないわけではない、それだけ動きを止められはしないが……

やはり目潰しを意識し動作に僅かな遅れが生じる……それを次郎長は見逃さない。

次郎長「終ェだ……!」

次郎長に残された動作は居合いで刀を抜き、阿伏兎を一撃で斬り伏せるのみ……

阿伏兎「おっと、武器の射程距離にいるのはこっちも同じよ」

阿伏兎も同じく、全力の傘ですべてを吹き飛ばせばそれでこの戦いは終わる。

どちらが勝っても不思議ではない二人の攻撃が今、交錯する

562: 2012/04/01(日) 00:40:19.96 ID:Z2LqX4i70
銀時「すいまっせーん、もう続き書けねーんで打ち切りまーす」

新八「完結できませんでしたけど、今まで本当に」

神楽「ありがとうございましたー!」

銀時「じゃあ行くぜテメーら!俺たちの戦いは……」

『これからだァァァ!!』

―――

新八「って終われるかァァァ!!」

神楽「うっせーな新八、せっかくいい感じで締めたのに蒸し返すんじゃねーヨ」

新八「終われるわけねーだろこんなんで!!まだ一つも話まとまってねーよ!!」

神楽「ぶっちゃけ一か月以上も間をあけたから、なんてごめんなさいしたらいいか分からないアル」

銀時「違うんだよ、携帯修理に出して直って返ってきたと思ったらメモ帳のデータぶっ飛んだんだよ」

新八「いや、それ完全に私情じゃないですか?」

銀時「高杉が世界をぶっ壊すとか言う以前に携帯がぶっ壊れてたみてーな?桃太郎が鬼退治行く前にインフルエンザ掛かっちゃったみてーな?」

銀時「まあ要するに……何が言いてェのかってつーとだ」


銀時・新八・神楽「ホントすいませんでしたァァァァ!!」


終わりません、次はPCからですが続きはちゃんと書きます

573: 2012/04/16(月) 01:06:16.16 ID:azBKWerh0
次郎長「…………」

阿伏兎「…………」

――同時。

交錯した次郎長の刀は阿伏兎を斬り裂き、相対する阿伏兎の傘は次郎長を打ち抜いた。

今の一撃における二人のダメージはほぼ互角……であるはずだった。

次郎長「チッ……!」

膝をついたのは次郎長一人。

阿伏兎「……これがお前さんと俺の差よ」

それは交錯の前に受けた傷、平子の声に反応した隙を突かれて負った傷。

既に次郎長は血を流しすぎていた。

574: 2012/04/16(月) 01:20:04.58 ID:azBKWerh0
次郎長「フン……おめぇさんの言う斬り合いってのは相手に膝をつかせりゃあ勝ちなのかい?」

阿伏兎「それだけの傷を受けて戦う意思が折れねェのは見事だが……この頃し合いの結果はもう見えた」

阿伏兎「動きのとれねぇアンタの頭なり体なりを吹き飛ばせば俺の勝ちよ」

次郎長「…………」

指摘通り、今の次郎長には阿伏兎とまともに打ち合うことなど到底出来はしない。

刀を数回振れればいいほうだろう。

だが、そんな苦し紛れの攻撃が夜兎に通じるはずもない。

敗北は決定的だった。

阿伏兎「終いだな」

そして、次郎長への最後の攻撃が振り下ろされる。

575: 2012/04/16(月) 01:22:48.72 ID:azBKWerh0
――親父!!


その瞬間、一人の娘の声と共に大きな金属音が響き渡った。

576: 2012/04/16(月) 01:32:14.01 ID:azBKWerh0
次郎長「!」

阿伏兎「!」

平子「っ……!」

信じがたい光景だった。夜兎の一撃を、最強の先頭集団である夜兎の一撃を、その中でも指折りの実力者である阿伏兎の一撃を

地球人の娘が刀で真正面から受け止めたのだ。

阿伏兎「なっ……!」

平子「親父!!」

平子の呼びかけと同時、次郎長は持てる力のすべてを使い阿伏兎へと剣を放つ。

親子によってもたらされたその一撃は阿伏兎の体を確実に捉えた。

阿伏兎は、己の人生で初めて膝から崩れ落ち地に倒れ伏すこととなる。

577: 2012/04/16(月) 01:44:53.72 ID:azBKWerh0
阿伏兎「……参ったねコイツは、体に力が入りやしねェ」

次郎長「あれだけ深く斬り付けたってのにまだ生きてやがんのか」

阿伏兎「クックッ……夜兎ってのは常日頃から頃し合いの中に身を置く民族だ、ちょっとやそっとじゃ氏ぬような体じゃねーよ」

もっとも、当分は動けそうにねーがな。阿伏兎はそう付け加えた。

阿伏兎「チッ……まさかこの俺が地球人の小娘に攻撃を受けられるとはな」

平子「……親父がいたから受けられた」

阿伏兎「ああ……お前の親父さんが俺に傷を負わせてたからな、その分俺も力を出し切れ……」

平子「違う」

そう。傷を負っているとはいえ、平子に阿伏兎の全力を受けられるはずがない。

致命傷を負うとまでは行かずとも、吹き飛ばされるくらいのことは当然あり得るはずなのだ。

それでも平子が倒されなかった理由、阿伏兎の攻撃を受けきることができた理由。

平子「……護りたい人がそこにいたから」

578: 2012/04/16(月) 02:01:19.85 ID:azBKWerh0
阿伏兎「……まったく、お前さんたち地球人の精神論はわけが分からねェ」

次郎長「……そこがおめぇさんと俺たちの差よ」

阿伏兎「……何?」

次郎長「おめぇさんは壊す以外の戦い方を知らねェんだろう?」

阿伏兎「……ああ、知らないね」

次郎長「俺も娘も壊す戦いなんざやっちゃいねェ、てめーの大切なモンを護るための戦いだ」

次郎長「……おめぇさんは俺に斬られたんじゃねェ、俺の娘に斬られたのよ」

平子「あなたは私に攻撃を防がれたんじゃない、私の親父に防がれたんです」

それらの行為は、互いのため。

父の斬撃は娘のために。娘の防御は父のために。

そして、家族である相手を護るために。

阿伏兎「…………」

阿伏兎「クックッ……よしてくれ、そんなくだらねぇ戯言は。そんなこと言われちまった日にゃ」

俺も家族ってモンが欲しくなっちまうだろう?

そうして阿伏兎は口元で笑いつつ、そのまま意識を失った。

579: 2012/04/16(月) 02:15:43.17 ID:azBKWerh0
次郎長「チッ……」

阿伏兎が気を失ったことを確認するや、次郎長は再び地に膝をつく。

平子「親父!?」

次郎長「あぁ……心配するこたァねぇ……」

極限状態であったのは次郎長も同じ。絶え間なく血を流し続けていたツケが一気に襲いかかった。

次郎長(コイツは……少しばかりやべぇか……)

阿伏兎を倒したとは言え、未だターミナルの前は乱戦状態。ここで動けなくなるのは致命的だった。

そして、敵は阿伏兎を倒されて下がった士気を回復すべく、その阿伏兎を討ち取った次郎長と平子を標的と定めている。

敵の攻撃が集中し始めていた。

あやめ、九兵衛、月詠をはじめとした何人かの味方たちが二人を囲むように敵と応戦するも数で押されては分が悪い。


――その場にいた誰一人、この状況を打開する一手が見えなかった。

580: 2012/04/16(月) 02:39:57.85 ID:azBKWerh0
ぐああああぁあ!?

ふと、大量の天人たちが悲鳴と共に吹き飛ばされる。

地球人、天人、そのどちらもが何が起こったのかが理解できなかった。

「ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃー、喧しいんだよ。ここは思春期どもの溜まり場ですか?コノヤロー」

月詠「……!!」

あやめ「い、今の声……!」

九兵衛「まさか……いや、だが……!」

妙「あ……あ……!」

それは、そこにはいないはずの男の声。

常に仲間のために戦い続け、今回も同じく戦い、深い傷を負った侍の声。

天人「な、何だテメーは!」


銀時「なに、ただの女好きの遊び人よ」

592: 2012/06/18(月) 00:43:32.77 ID:vV+J50OG0
平子「あ……アニキ!?」

妙「なんで銀さん……動ける体じゃなかったはずなのに!」

銀時「アレだ、どっかの誰かさんがことあるたびにぶっ飛ばしてくれたおかげで体に付いたんじゃねーか?」

妙「え……そんな人がいたんですか、銀さんも苦労してたんですね」

銀時「とりあえず今からお前は過去に何をしてきたかを思い出すために一人で回想編にでも入ってろ」

次郎長「…………」

銀時「……よう、ジジイ。久しぶりじゃねーか」

次郎長「生きてやがったか……俺ァてっきりテメェはもうあの世へ逝っちまったと思ってたぜ」

銀時「そいつァお互い様だなジ、俺ァ耄碌したテメーが閻魔さんの手招きにホイホイ付いてったんじゃねーかと思ってたよ」

次郎長「相も変わらず口の減らねェあんちゃんだ……」

銀時「で、どうしたよジーさん座り込んで。もう足腰が立たねーか?」

次郎長「フン……小僧に心配されるほど俺も落ちちゃいねェよ」

593: 2012/06/18(月) 00:54:08.00 ID:vV+J50OG0
天人「こいつ……報告では確かに氏んだことになっていたはずだが……」

銀時「そいつは残念だったな。こんなこともあろうかと、俺ァちゃんと復活の呪文メモっといたんだよ」

月詠「銀時……今は洒落を言っている余裕などないぞ」

銀時「…………?」

月詠「わっちらよりも敵のほうが数が多い、このままでは物量差で押し込まれれば全滅もあり得るぞ」

銀時「……その『数の差』ってのはどのぐらいなんですかね、お嬢さん」

九兵衛「……単純に見積もっても、敵は僕たちの三倍は数がいるはずだ」

594: 2012/06/18(月) 00:57:06.60 ID:vV+J50OG0
銀時「じゃー戦力的にはこっちが二倍だな、楽勝じゃねーか」

九兵衛「な、何を言って……君は話を聞いてたのか?敵は僕たちの三倍……」

銀時「そいつは単なる『数の差』じゃねーか、そんなモン『戦力の差』とは言えねーよ」

九兵衛「…………?」

月詠「…………どういうことじゃ、銀時」

銀時「テメーらなら一人頭、六人はやれんだろ?だったら実質、俺たちが二倍ってことでファイナルアンサーだ」

九兵衛「…………」

595: 2012/06/18(月) 01:07:30.80 ID:vV+J50OG0
月詠「……本気で言っておるのか、それは。敵は宇宙にその名を轟かす春雨じゃぞ?」

銀時「えらくマジだ、勝つ負ける以前に、勝たなきゃならねーんだからな。それに……」

銀時「俺にとっちゃあいつら敵に回すよか、テメーらかぶき町の連中を敵に回すほうがよっぽど恐ろしいわ」

九兵衛「…………」

九兵衛「……フ、参ったなこれは」

月詠「ああ、まさかここまではっきり『勝て』と言われるとはな」

あやめ「いいんじゃない?細かく色々な指示が出てくるよりは……でも、私は戦闘しながら銀さんのパンツを脱がすように」

銀時「お前は常識って名前の着物を脱ぎ散らかしてるけどな。人として一番脱いじゃいけないものをフルスロットルで脱ぎ捨ててるけどな」

妙「とにかく……ここからはみんな、仕切り直しよ!」

597: 2012/06/18(月) 01:26:49.17 ID:vV+J50OG0
平子「アニキが来てから……こっちの雰囲気が……!」

次郎長「悪くねェことだ、ああいう馬鹿がいてくれたほうが士気も上がる」

次郎長「なるほど……小僧め、白夜叉なんて大層な名前で呼ばれるだけのことはあるじゃねえか」

次郎長「戦場ってモンをよくわかってやがる……それだけに余計な邪推をしちまうが」

平子「邪推……?」

次郎長「…………」

次郎長「……戦場を理解してるってことは、すなわちそれだけ多くの場数を踏んできたってことだ」

平子「それって……」

次郎長「…………」

次郎長(小僧、おめぇ……どれだけの地獄を経験してきやがった)

598: 2012/06/18(月) 01:55:02.10 ID:vV+J50OG0
銀時「ウオオオオオッ!!」

天人「あ、あり得るか……こんな……これだけの怪我を負っている地球人が、こんな強さを……!」

木刀を振るうたび、多くの天人がなぎ倒されていくその光景は圧巻だった。

白夜叉と呼ぶにふさわしいその男の活躍に敵は恐れおののき、味方はただ感嘆の息をついていた。

九兵衛「まさか……これほどとは……!」

月詠「腕が確かだとは知っておった、共に戦ったことでその力も理解したつもりじゃった……が……」

あやめ「春雨を相手に、一人でここまで戦うなんて……」

妙「これが……銀さん……!」

599: 2012/06/18(月) 02:24:22.83 ID:vV+J50OG0
次郎長「飛ばしすぎだ小僧……そんなんじゃ最後までもたねえぞ」

銀時「!」

次郎長「腑抜けちまってた奴らの目ェ覚まさせたのはよくやったが……もうここにおめぇさんの仕事はねえ」

銀時「馬鹿言ってんじゃねーよ、まだまだ野郎どもの数は減っちゃいねーだろうが」

次郎長「聞き分けのねえあんちゃんだ、その体力をここで使い減らしちまうのが得策か?」

銀時「…………」

次郎長「鬼兵隊っつったか、そいつらもまだあとには控えてるそうじゃねえか……」

次郎長「そいつらは体がロクに動かなくなった後の片手間で斬り伏せられるような甘っちょろい連中だってのかい?」

銀時「…………」

600: 2012/06/18(月) 02:34:22.41 ID:vV+J50OG0
妙「……行ってください、銀さん」

銀時「!」

九兵衛「ここはもう大丈夫だ、君のおかげで……もう僕たちは戦える」

あやめ「私たちもすぐ追いかける、絶対に……ていうか銀さんが行く先ならどこまででも追いかけるわ。風呂だろうとどこだろうと」

九兵衛「それはストーカーだ」

月詠「……行きなんし、何かを護りたいのはぬしだけではない」

妙「私たちだって、護りたいんですよ。かぶき町を、銀さんを」

銀時「…………」

妙「でも先に行くんですから、私たちが追い付いたらちゃんと迎えてくださいよ?」

妙「生きて、笑って、新ちゃんやみんなと一緒に……必ず」

601: 2012/06/18(月) 02:44:52.46 ID:vV+J50OG0
銀時「ワリーが……俺ァ約束ってやつだけは今の今までちゃんと守れたためしがなくってな」

銀時「ぱっつぁんの給料払う約束も、神楽にバイキング食い放題連れてってやる約束も、定春に高めのぺディグリーチャム食わせるって約束も」

銀時「全部、何か微妙な感じですっぽかしちまってる」

妙「…………」

銀時「ただ、そんな俺でも約束を守れる数少ねェ条件があってな」

妙「何ですか……その条件って?」

銀時「俺ァ……」

銀時「いい女との約束は、何が何でも守り抜くぜ」

妙「!」

銀時「それが一人じゃねえ、三人も四人もいるんじゃ……こいつは破るわけにはいかねーな」

そう言って銀髪の侍は笑みを浮かべると

銀時「約束は必ず守る。だから、テメーらも必ず追いついてこい」

妙「……ええ、約束です」

信頼できる仲間たちにこの場を預け、一人ターミナルの奥へと侵入していった。

602: 2012/06/18(月) 02:46:29.45 ID:vV+J50OG0
ほんっとに遅くなっててすいません。ちょっともう色々と迷走してました。
明日も『必ず』来ますので。

606: 2012/06/18(月) 23:38:15.60 ID:vV+J50OG0
―――
同時刻

土方「ウオオオォォッ!」

河上「……やはり、荒い太刀筋は変わらぬでござるか。怒りを伴う激しいビート、実に刺激を受ける……が」

土方「っ!」

河上「変化のない一辺倒の音楽ほどつまらぬものもないでござるな」

土方「ぐっ……!!」

土方(野郎……今、完全の俺の太刀筋を見切って反撃を……!)

河上「何を驚いている、ぬしの斬撃はもう飽きるほど見た……この程度は造作もないでござる」

土方「……ただ受けるだけじゃなく、観察してやがったってのか。俺の剣を」

607: 2012/06/18(月) 23:59:50.15 ID:vV+J50OG0
河上「観察……見るというよりは、むしろ聴いていたというべきでござるか……ぬしの奏でる音色をな」

土方「上等だ……だったら、俺がぐうの音も出なくなるまで叩き潰してみやがれ」

河上「!」

土方は刀を大きく振り上げ、同時に思考する。確実に自分の動きは相手に読まれている。

積み重ねられた戦闘経験において、過去に自らの剣を分析された経験がないわけではない。

新撰組副長ともなれば当然、浪士たちから狙われることも多かったからだ。

いつもならば、一端退いて体勢を立て直すのが上策であるはず。が、今はそうも言ってはいられない。

この河上を野放しにさせておくのはどう考えても味方に不利であると分かりきっている。


―――だから、行くしかない。

608: 2012/06/19(火) 00:14:46.71 ID:j8jD/G+K0
土方「テメーが攻撃を見切って受けるってんなら……その受ける刀ごとまとめてぶち抜くだけだ」

不可能であることは分かっている。河上にしてみればこれだけの大振りを受ける必要などない、体を少し躱してやればいいだけだ。

そして、大振りであればあるほど刀を振るった後に致命的な隙が出来ることも。すべてわかっていた。

それでいて尚且つ、土方がこの選択を取った理由はただ一つ。それは振り上げた刀へと意識をそらすこと。

刀を躱すには当然、自身へと向かってくる刃を見なければならない。それは逆に言えば、刀以外のものが見えなくなることを意味する。

喧嘩は刀だけでするものではない、拳も使う、肩で敵を押し込むこともする、そして……足も使う。

刀に意識が集中した河上を、土方は全力を持って蹴りあげるべく下半身に力を込めた。


河上「フ……隠したつもりであっても、怒りは判断を濁らせるでござるな」

609: 2012/06/19(火) 00:39:59.81 ID:j8jD/G+K0
土方「!」

ふと、足に衝撃が走る。それは土方の予想しえないものであり、そして想定しうる限り最悪の状況を示唆していた。

ふいに足へと走った衝撃の正体、それは攻撃を仕掛けようとした足を先に河上が踏みつけていたことによるもの。

土方「しまっ……」

やられた―――

そう考えたとき、既に河上の刃は土方の体を深く斬りつけていた。

610: 2012/06/19(火) 01:03:37.53 ID:j8jD/G+K0
土方「…………」

致命の一撃を与えたと確信するに足りる確かな手ごたえ。そして眼前に倒れ伏す男の出血量。

それらは自らの勝ちを雄弁に物語っていた。

河上「……真選組副長、ここに眠る。レクイエムをくれてやるでござる」

土方に背を向け、ギターをかき鳴らそうとした瞬間。

背後で何かが動いた。

河上「!」

ありえるはずがない、あの手ごたえで動けるはずがない。いや、それ以前に生きているはずがない。

あの一撃を受けて生きているなど、それはもはや人間ではない。

それでも、その男は立ち上がっていた。火のついたタバコを口にくわえ

土方「…………」

顔から血を滴らせつつ、河上を睨みつけていた。

611: 2012/06/19(火) 01:31:17.00 ID:j8jD/G+K0
河上「なぜ立ち上がる……ぬしは本物の鬼か!」

土方「…………」

土方「……クク、鬼か。確かに鬼なんぞと呼ばれても仕方がねえな」

河上「…………?」

土方「守るために刀を振ることが許された真選組だってのに、俺は何も守れちゃいねェ」

土方「惚れた女にゃてめー勝手に苦労かけさせたまま逝かせちまった……絆を求めた仲間も助けてやれなかった」

土方「俺の刀はただ、敵を倒すためにしか使ってこなかった……なるほど、だったら俺ァ確かに頃すことしか能のねェ鬼だろうよ」

土方「ただ……鬼にしか斬れねェ輩もこの世にゃいる、鬼だからこそあの世へ連れていける輩がこの世にはいる……」

河上「土方……ぬしは何を言って……」

土方「分からねーか……これからテメーは俺と一緒に地獄へ行くんだよ」

613: 2012/06/19(火) 02:24:12.99 ID:j8jD/G+K0
河上「……ぬしの精神力には敬意を示さざるを得ないでござるな、が……拙者とてここで斬られるわけにはいかぬ」

河上「三途の川を渡るのは貴様一人……鬼は鬼の居るべき場所へ帰れ!」

猛然と斬りかかってくる河上を土方は迎撃する体制へと入る。

土方「…………」

呼吸を一つ、二つ……極限にまで研ぎ澄まされた集中力によって『その時』を待つ。

そして

土方「!!」

河上「!?」

斬り結んだ瞬間の僅かな隙に、『その時』は訪れる。

土方「ワリーな……三途の川への船は漕いでやれねェ」

土方「川はテメー一人で音楽でも弾きながら渡るんだな」

河上「…………っ」

斬られる直前、彼が思考したこと。それは

目の前の敵は決して鬼ではなかった、こんな美しい太刀筋の鬼などいるはずがない。

―――そんな、真選組副長への賛辞と共に

河上はその場に倒れこんだ。

614: 2012/06/19(火) 02:30:02.54 ID:j8jD/G+K0
土方「……チッ」

倒した。が、この状況はもはや相討ちと言っても変わりがない。

動かないのだ、頭から足の先まで何一つ。

土方「伊東よ……あと少しで俺もテメーんとこに行くかもな……」

ただ、その前に

土方「少しだけ……一服させてもらうぜ……いざ逝くとなると、この世も名残惜しくなるもんだな……」

615: 2012/06/19(火) 02:37:30.60 ID:j8jD/G+K0
沖田「氏ぬ間際までタバコ吸ってるたァ驚いた、どんだけニコチン中毒なんですかィ?」

土方「!」

近藤「大丈夫か、トシ!」

土方「近藤さん……!」

近藤「傷を見せろ!早く手当をせんと間に合わなくなる」

土方「無理だ……ロクな治療薬もねェここじゃ……大したことは出来やしねェよ」

近藤「トシ……お前……!」

土方「……総悟、俺が氏んだ後のことはよろしく頼む。次の副長はテメーだ」

沖田「!」

616: 2012/06/19(火) 02:44:26.15 ID:j8jD/G+K0
近藤「馬鹿野郎トシ!テメー氏ぬ気か!」

土方「近藤さんだって分かんだろ……これ以上出血すりゃもう助からねェってことくらい……」

近藤「…………!」

沖田「…………土方さん、さっきなんて言いやした?」

土方「あ?後のことはよろしく頼む……」

沖田「いやその後でさァ」

土方「?……次の副長はテメーだ……?」

沖田「……その言葉が聞きたかった」

土方「…………?」

沖田「雌猫ォ!」

信女「はい」シュタッ!

土方「……オイ、なんだそいつ。どっから来た?」

沖田「いや、もうきっちりと言質が取れたんで。土方さんにゃもう寝ててもらおうかと思いやしてねィ……オイ、やれお注射天使リリー」

土方「オイィィィィ!!なんだその注射器!てかそれ、注射器ってレベルのデカさじゃ……」

信女「ダイレクト・アタック」グサッ!


ギィィヤアアアアアアアアアアァァァァァァ!!?

617: 2012/06/19(火) 03:00:36.40 ID:j8jD/G+K0
土方「…………」

沖田「よし、これでとりあえずは何とかなりやしたね」

近藤「いや、なってないけどね。トシの奴、完全に白目向いて気絶してるけどね」

沖田「増血剤と血止めを打ち込んだんで、あとは包帯でぐるぐる巻きにしときゃなんとかなるでしょ」

沖田「ま……土方さんが氏んだら次の副長は俺だって確定したんで、このまま氏んでくれてもいいんですがねィ」

近藤「…………」

近藤「…………フ」

沖田「……何ですかい近藤さん、人の顔見て気持ちの悪い笑みを浮かべるの止めてくだせェ」

近藤「いや……素直になれずに思ってもいねェことを言うあたり、お前もまだまだガキだと思ってな」

沖田「…………」

沖田「……副長の座は俺の手で取りてェんですよ、おこぼれみてェな形じゃ欲しかねーんです」

沖田「俺が土方さんに『負けました、すいません総悟さん』って言わせるまで、この人にゃ生きててもらわねーと」

沖田「…………ただ、それだけでさァ」

近藤「……じゃ、そういうことにしとこうじゃねーか」


真選組副長・土方十四郎 対 鬼兵隊二番手・河上万斉

土方十四郎……勝利

621: 2012/06/19(火) 22:16:38.77 ID:j8jD/G+K0
---
同時刻

神威「うん、色々と騒がしくなってきたね。じゃあそろそろ俺も動こうかな」

神楽「……おう、待つアルこの馬鹿アニキ。まだ決着はついてないネ」

神威「決着……?そんなボロボロの状態でまだ俺に勝てると思ってるのかい?」

神楽「なんだコルァ、妹にぶっ飛ばされるのが怖くてビビってるのかヨ」

神威「やれやれ……弱いやつには興味がないんだ、あんまり出過ぎたことをするのなら」

神威「頃しちゃうぞ」

神楽「!」

622: 2012/06/19(火) 22:42:51.69 ID:j8jD/G+K0
神楽「ぐっ……!」

神威「夜兎の血が流れているのならこれくらいの攻撃は避けてもらわなきゃ困るんだよ……本当に僕の妹なのかな」

神楽「っ……こんの……!」

凄まじい蹴りを腕で防ぎ、神楽は傘による反撃に転じる。

神威「……へえ」

妹の戦術に兄はわずかに笑みを浮かべた、それは神楽の選択した戦術に対する賞賛。

神威は肉弾戦が主で夜兎の武器である鉄傘を使用することがあまりない。

その自分が、傘を攻撃の主体として攻撃をされればリーチという大きなディス・アドバンテージを背負った戦いを強いられることとなる。

神楽は本能的にそれを理解し、徹底した鉄傘による攻撃を繰り出していた。

戦場ではこういう小細工を弄することも生き延びる大きなきっかけとなる。



神威「遅い」

その程度の小細工ではどうにもならない相手も確かに存在していることも知らなければならない。

623: 2012/06/19(火) 23:05:50.84 ID:j8jD/G+K0
神楽「うっ……あああ……!」

渾身の力を込めて振るった傘を神威は完全に見切っていた。

そして反撃。神威は己に向かってきた腕を掴み、そして無慈悲に捻りあげた。

神威「これで分かったろう?今のお前じゃ俺には到底及ばないってことがね」

神楽「くっ……この……」

神威「まだわからないかい?」

神楽「あああああああっ!!」

神威「……最後にもう一度だけ言ってあげようかな、もう諦めてそこに寝てるんだね。弱いやつに用はないんだ」

神楽「……諦めの悪さなら、もう嫌ってくらい鍛えられてるアル」

神威「…………」

神楽「腕を折れても、馬鹿アニキには私の一番大切な物は折れないネ……」

神威「……もういいや、じゃあ」

神威「氏んじゃえ」

624: 2012/06/19(火) 23:10:32.06 ID:j8jD/G+K0
「うん?なんだ、兄妹喧嘩か?」

神威「!」

「じゃーついでだから、お父さんも一緒にフィーバーしちゃおうかな!」

625: 2012/06/19(火) 23:26:44.12 ID:j8jD/G+K0
神威「っと……」

星海坊主「今の一撃を空気を読まずに躱しやがるか、この馬鹿息子は……」

神威「なんだ……来たんだ」

神楽「パ、パピー!」

星海坊主「神楽ちゃん、間に合ってよかった」

神威「……フフ、馬鹿な妹の馬鹿な粘りのおかげで大きい獲物が掛かったってところかな」

星海坊主「…………」

神威「もう余計な言葉は必要ない……やろうか」

神威「俺と神楽がさっきまでやっていたのと同じ……頃し合いをね」

626: 2012/06/19(火) 23:31:59.14 ID:j8jD/G+K0
星海坊主「え?神楽ちゃん、さっきまでそんなことやってたの?」

神楽「違うネ、あの馬鹿アニキが訳のわからないこと言ってるだけアル」

神威「…………?」

星海坊主「よう馬鹿息子よ、今から俺たちがするのは頃し合いなんてそんな物騒なモンじゃねェ」

神楽「ていうかお前、さっきまで私ともそんなことしてるつもりだったアルか?」

神威「……どういう意味だい?」

星海坊主「難しく考える必要なんざねーよ……とどのつまり、今から俺たちがすんのは」

星海坊主「ただの親子喧嘩だ」

神楽「その腐った性根、思いっきり叩き直してやるアル」

神威「そいつは面白いね……じゃ、やってもらおうかな」

634: 2012/08/05(日) 22:04:58.92 ID:g4C30JV50
星海坊主「おおおおおおおっ!」

神威「……さすが、夜兎最強と呼ばれたこともある星海坊主。俺も本気にならざるを得ないか」

神楽「あんだコルァ!パピーばっか相手してないで妹にも構ったらどうアルか!!」

挟み撃ち。それは、単純ではあるが複数で一人と戦う場合において非常に有効である戦術の一つではある。

夜兎である二人の同時攻撃、通常ならば回避することはおろか防ぐことさえままならないであろう攻撃。

だが、それはあくまでも『通常』の範疇での話であり

神威「ずいぶんと古典的な攻撃だね……」

二人が相手にしているのは、まぎれもない『異常』であった。

635: 2012/08/05(日) 22:14:28.36 ID:g4C30JV50
次の瞬間、二人の攻撃が空を切る。

神楽・星海坊主「!?」

躱された―――このスピードをどうやって!?

ありえないであろう事態に衝撃を受け、一瞬の隙が出来た神楽に対し

神威「そんな有り様だから、お前はいつまでたっても『出来損ないの妹』なんだよ」

神楽「!」

やられる……訪れるであろう衝撃とダメージを堪えるべく、彼女は目を瞑りとっさに身構える。

…………

…………?

……おかしい、未だに攻撃が来ない?

状況を確認すべく身を開いた先にあった光景、それは

神威「そして、アンタはそんな有り様だから俺に負けるんだよ」

星海坊主「ぐっ…………!」

自らに代わって攻撃を受け、崩れ落ちかける星海坊主の姿だった。

636: 2012/08/05(日) 22:26:01.23 ID:g4C30JV50
神楽「ぱ、パピー!」

神威「……とんだ興ざめだよ、今からでもあの侍と殺り合いに行ったほうが面白いかな?」

星海坊主「あ、あの侍だと……?」

神威「今さっき報告が入ってね、どうも……馬鹿みたいに強い侍が一人、このターミナルに侵入したらしくてね」

神威「そう……木刀を腰に下げた白髪の侍が」

神楽「そ、それって……!」

星海坊主「あの憎たらしい天然パーマの馬鹿か……」

神威「フフ……やっぱり面白いね、侍って。あれだけの傷でまだ戦場に足を運ぶんだから」

神威「血を求め、戦いに飢えている俺たち夜兎とよく似てる……」

神楽「…………」

637: 2012/08/05(日) 22:33:31.08 ID:g4C30JV50
神楽「……一緒にしてんじゃねーヨ」

神威「……?」

神楽「お前みたいに戦いが好きで相手を打ちのめすのが好きなだけの夜兎とサムライを……銀ちゃんを一緒にするなヨ」

星海坊主「…………」

神楽「お前と銀ちゃんじゃ戦う理由も、信念も、魂も、何もかもが違ってるネ!」

神威「…………」

638: 2012/08/05(日) 22:57:28.57 ID:g4C30JV50
神威「戯言だね……戦いの目的なんて一つしかない、相手を打ち倒して自らが勝者になることしかね」

神楽「だったら私が教えてやるヨ……そんなちっぽけな戦いしか知らない馬鹿兄貴に、銀ちゃんたちから教わった本当の戦いを」

神威「へえ……本当の戦い、か。悪いけど、出来損ないの妹にそんなことが出来るとは到底思えないな」

神楽「…………」

神威「まあ、お前がその体に流れる血に身を任せて戦えば話は別かもしれないけれど」

神楽「!」

神威「阿伏兎から聞いてるよ、鎖が外れた途端に子兎がバケモノに変わったってね」

神楽「…………」

神威「俺も戦ってみたいね、バケモノになった自分の妹と」

639: 2012/08/05(日) 23:25:52.42 ID:g4C30JV50
神楽「残念だったアルな、バケモノになった私と戦うのはお前じゃないネ」

神威「?」

神楽「自分に流れる血と戦うのは誰でもない、自分自身アル……バケモノの私は私自身で倒す」

神楽「血に乗っ取られた自分には、絶対に『参った』とは言わないネ!」

星海坊主「……フ」

神楽「それに、私はお前みたいに何でもぶっ壊すような戦い方は銀ちゃんからは教わってないネ」

神威「…………」

神楽「来いヨ馬鹿兄貴。血ではなく心で戦う、サムライの戦い方……見せてやるネ!」

640: 2012/08/05(日) 23:52:24.01 ID:g4C30JV50
神楽「ほわっちゃあああああっ!!」

神威「……!」

……おかしい。自分のほうが打ち込んでいる、相手のほうが血を流している……それは間違いない。

なのに……まるで攻撃が緩まない。

神威「それどころか……激しさを増してるなんてね」

どうやら妹を過小評価していたらしい。ふと、神威はそう思った。

最強を求める自分と同じ血が流れている妹を弱者と決めつけるのは、やはり早計だった。

この戦いは……

神威「面白い……!」

641: 2012/08/06(月) 00:03:55.24 ID:WMDEsDGt0
星海坊主「まったく……とんだ馬鹿息子に育ちやがったもんだ……」

常日頃から薄っぺらい笑いを顔に張り付けといて、こんな兄妹での戦いで本当の笑いを見せるんじゃねーよ。

星海坊主「ただ……どういうわけだ、コイツは」

一見すれば二人は頃し合いをしている、相手の急所を的確に狙い、一寸の油断が氏を招く……そんな頃し合いを。

にもかかわらず

星海坊主「なんでお父さんにゃあの二人がじゃれ合って遊んでるように見えちまうんだ?」

互いに幾度となく放たれる急所への攻撃も、そのすべてを相手が受け止めるであろうと予想しているかのようだった。

頃し合いをしている……頃し合いを演じている……いや、それも違う。

星海坊主「……俺の子供たちは、ああいう形でしか会話が出来ねえってことかい」

642: 2012/08/06(月) 00:32:00.57 ID:WMDEsDGt0
神楽「…………」

この馬鹿兄貴は今まで戦いしかしてこなかったのか、あらゆる星に行ってあらゆる戦闘を経験し、そして誰もが自分より弱かった。

だから戦いを求めていた、己の戦闘欲求を満たしてくれる相手を。

神威「…………」

この出来損ないの妹は地球で色々な経験をしてきたらしい、戦いだけではない様々なことを経験し、そして信頼できる仲間を得た。

だから戦いを求めていなかった、戦闘欲求以上に自らを満たしてくれる存在を知っていたから。


直接言葉を交わしたわけではない、ただ二人はたしかに戦いの中で感じ取ったのだ。

兄の、妹の、二人が歩んできた道の過程を。

643: 2012/08/06(月) 00:33:03.11 ID:WMDEsDGt0
すいません、今日はここまでで……
明日から馬鹿みたいに時間が取れるので今月中には必ず完結させます。

644: 2012/08/06(月) 00:35:48.82 ID:PW1yp6520
おつです

引用: 銀時「……ヒロインNo.1決定戦?」