406: 2009/10/22(木) 02:04:05.79 ID:HngXLM3t0

キョン「もう我慢の限界だ! ……漏れそう」【前編】の続き。

キョン「じゃあ、俺はもう帰っていいんだよな?
     今日から一週間は停学ってことになってるし、
     教師達に見つかるとまずいことになるんだよ」

古泉と長門から解放された俺は、オムツの上にパンツとズボンを穿いた。

ハルヒ「そうね……。まあ、今日はもういいわ。今日は、ね」

ハルヒは妙に「今日は」という部分を強調した。
きっと、明日からはもっとひどいことをされるのだろう。

ハルヒの前で、長門が黒幕なのではないかという話や、
神人の話をするわけにもいかないので、俺は話を切り上げて、
急いで家に戻ることにした。

その途中――妹を、見つけてしまった。

なぜ、妹がこんな時間に外をうろついているのだ。
小学校はもう始業時間になっているはずなのに。

妹の方も、俺の存在に気付いたようだった。
「あっ」という声を上げると、慌てて走り出した。

俺は、追いかける気もしなかった。

妹は学校に行きたくないのだ。
不登校になってしまった。
その原因を作ったのが俺だと思うと、情けなかった。

409: 2009/10/22(木) 02:11:51.67 ID:HngXLM3t0
家に帰った俺は、まだパートに出かけていなかった母に、
外で妹を見つけたということを伝えた。

母は、自分の勤め先と、妹の学校に電話をすると、
妹を捜しに行った。
やはり、俺は捜さなくていいと言われた。

昨夜もそうだったが、母と妹がどんな会話をするのかと
思うと、軽く涙が出てくる。
きっと、妹は例の尾ひれはひれがついた噂を、
母に伝えるのだ。
そして、母もそれを鵜呑みにする。
二人がそれを忘れる日は、一生来ない。

一応、停学なので、罰のような形の宿題が出されていた。

しかし、それらに手を付ける気にもなれず、
俺一人しか残っていない家の中で、自室のベッドに転がり、
ぼうっと天井を見つめていた。

 
慌てて身体を起こし、平常心を保つ。
いま勃起したら、どんなことになるのか、想像しただけでも
恐ろしい。

ハルヒはトイレトレーニングとか言っていたが、
実際には、おむつプレイと貞操帯プレイを同時にやらされて
いるようなものだ。

411: 2009/10/22(木) 02:17:38.48 ID:HngXLM3t0
キョン「お腹、空いたな」

しかし、今、何かを食べるのは自殺行為なのでは
ないだろうか。
何かを食べると、それが消化されればウOコや
オシッコになるし、例えばガムを噛んでいるだけでも、
蠕動が始まるきっかけになると聞いたことがある。

水分も控えた方がよさそうだ。

まあ、朝食くらい食べなくても、氏にはしないだろう。

俺はゲームをして時間を潰すことにした。

妹が学校に行かずに街を徘徊しているときに、
自宅でゲームをする兄貴。

我ながら、ひどい奴だな、と思った。

午前十時くらいになって、母と妹が戻ってきた。

妹は、俺には何も言わず、自分の部屋へ逃げていった。

キョン「あいつ、どうだった?」

母「……そっとしておいてあげて。一度は学校に
  行ったんだけど、お友達にからかわれちゃって、
  逃げ出しちゃったみたいなの」

もう氏にたい。

412: 2009/10/22(木) 02:28:07.74 ID:HngXLM3t0
お昼になった。
台所のテレビから、笑っていいとものテーマソングが
俺の部屋まで流れてきた。

母「ごはんができたわよ!」

俺と妹を呼ぶ、母の声が聞こえた。
結局、母はパートを休んだのだ。

しかし、昼食をとるわけにはいかない。
少しでも食べないようにしなければならない。

母を無視していると、しばらくして、ノックの音が聞こえた。

キョン「いいよ」

母「ねえ、お昼ご飯食べちゃってよ。あの子、あんたと一緒に
  食べたくないって言ってるから、先に食べてくれないと……」

キョン「ああ、分かったよ」

そんなに悲しそうな顔をされては、断るわけにはいかなかった。

しかし、台所に行った俺は、固まった。

冷たい牛乳。天麩羅。ゆで卵。
シーチキンマヨネーズと千切りキャベツのサラダ。

よりによって、お腹を壊しそうなものばかりが並んでいた。

413: 2009/10/22(木) 02:34:50.74 ID:HngXLM3t0
しかし、食べないわけにはいかなかった。

母と二人きりになるのも気まずかったので、
俺は急いで食べた。

ご馳走様、と言って階段を駆け上がる――途中で、
足を止めた。

しまった。
階段を駆け上がるのではなかった。

食事の後で激しく動くと、お腹が痛くなるのは
常識だったはずなのに、油断していた。

俺は老人のようにゆったりとした動きで自室のドアを開け、
ベッドに横になった。

大丈夫、大丈夫。
この腹痛は一時的なものだから、排泄に結びつくことは
ないはずだ。たぶん。

実際、しばらくすると、腹痛は治まってきた。

しかし、代わりに、別の感覚が残った。

オ シ ッ コ を し た い 。

415: 2009/10/22(木) 02:39:41.09 ID:HngXLM3t0
牛乳を飲んだのがいけなかったのか。

それとも、ゆで卵でパサパサになった口の中を
潤すためにミネラルウォーターを飲んだのが
いけなかったのか。

オシッコしたいオシッコしたいオシッコしたい。

一時くらいまではその感覚を無視し続けることが
できたが、何事にも限界はある。

一時半になるころには、もう頭の中がオシッコの
ことでいっぱいになってしまった。

困ったことに、チOコが半勃ちになり始めてきた。
オシッコを我慢すると勃起してしまうのは、
男子なら誰でも経験したことがあるだろう。

キョン「痛い!」

不用意に体勢を変えようとしたら、チOコに痛みが走った。

何で俺、こんな馬鹿馬鹿しいことやってんの?
そんなふうに囁く俺がいた。

ここまでしてSOS団に復帰する価値があるの?
どうせ、今までのような友情を感じることは、
二度とないんだぜ?

416: 2009/10/22(木) 02:48:29.78 ID:HngXLM3t0
キョン「くそっ!」

俺はズボンとパンツを脱ぎ捨てた。

姿見の前に立ち、オムツの状態を確認する。

うわ……。
改めて見ると、これって凄く間抜けな格好だな。
図体のでかい幼稚園児みたいだ。

このオムツの隙間からチOコの先を出して、
オシッコすることができないだろうかと、
試行錯誤を重ねる。

しかし、ベルトはチOコ全体を包み込むような
形をしているので、びくともしない。

二時半になった。
俺は脂汗を垂らしながら、チOコを押さえて、
ベッドに横たわっていた。

キョン「もう我慢の限界だ! ……漏れそう」

その台詞が終わるときには、もう、排尿が始まっていた。
一度始まると、途中で止めることはできない。

股の部分が熱くなった。
ここだけお風呂に入ってるみたいだな、と思った。

421: 2009/10/22(木) 02:56:17.17 ID:HngXLM3t0
膀胱が楽になると、解放感と絶望感が綯い交ぜになった、
奇妙な感覚に襲われた。

キョン「あはははは」

漏らしちゃった。
自分の部屋のベッドの上で、オムツを穿いたまま、
オシッコを漏らしちゃった。
俺、高校一年生なのに。

キョン「どうやって言い訳しようかな……」

言い訳しても無駄だということは、分かっていた。
初日だというのに、オシッコを我慢することができなかったのだ。
ドSなハルヒのことだ、ひどい罰が待っているだろう。

しかし、まだ望みはある。
漏らしたのはオシッコだけなのだ。
ウOコさえ出なければ、まだ言い訳が――。

キョン「あ……」

お腹が痛くなってきた。蠕動が始まる。
時計を確認する。
まだ午後三時にもなっていない。
放課後になるのは、午後五時くらいだ。

あと二時間も我慢できるだろうか?
いやできない。
人生終わった。

424: 2009/10/22(木) 03:04:48.99 ID:HngXLM3t0
それでも俺は、我慢しようとした。
お腹を押さえて、必氏に耐えていた。

午後四時十分。

キョン「もう無理もう無理もう無理もう無理」

俺はハサミを手にして、慎重に自分の部屋を出た。

トイレに行こう。
もういい。楽になりたい。
トイレに行って、オムツをハサミで切って、
便座に座って短い夢を見よう。

手すりに掴まり、腹に振動を与えないように気をつけながら、
苦労して階段を下りる。
オシッコで濡れた部分が擦れるのが不快だった。

トイレまであと二メートル。一メートル……。
やっと、ゴールに辿り着いた。

ドアノブを回す。
回らない。
ドアノブの上の部分が赤くなっていた。誰か入っているのだ。

キョン「開けてくれ!」

俺は慌ててノックをした。返事がない。
まさか、中に入っているのは……。
妹?

425: 2009/10/22(木) 03:09:33.96 ID:HngXLM3t0
俺は何度も妹の名前を呼ぶ。

キョン「意地悪しないで、開けてくれよ!」

返事がない。
くそっ。
妹まで俺をいじめるのか。

だが、まだ奥の手がある。
この家のトイレは、硬貨を使えば、開けることができるのだ。
中で誰かが倒れてしまったときのことを考え、そういう設計に
なっている。

俺は震える手でポケットから財布を抜き取った。
バリバリ。
十円玉を取り出す。
ドアノブの上のつまみの部分に、十円玉を当て、捻る。

鍵が外れた。

キョン「入るぞ」

俺はドアを開けた。

妹「変Oいいいいいいい!」

トイレの洗剤が、目に噴射された。

キョン「目が! 目がああああああ!」

427: 2009/10/22(木) 03:17:12.64 ID:HngXLM3t0
俺は目を押さえて転がりまわった。
その衝撃で、肛Oが限界に達した。

俺は、妹の目の前で、脱糞をした。

後から分かったことだが、この日、妹は初潮だったらしい。



午後五時半になった。
ハルヒ達との待ち合わせの時刻は、とっくに過ぎていた。

しかし、もう、待ち合わせ場所に行っても無駄だろう。
俺は携帯の電源を切り、無断欠席することにした。
枕に顔を沈め、泣いた。

すぐに水で洗ったので、トイレの洗剤のせいで失明する
ことはなさそうだ。それだけが唯一の、不幸中の幸いだった。

俺はまだ、オムツを穿いたままだった。

何度も動いたので、オムツの中では、オシッコとウOコが
混ぜ合わされていた。
見るのが怖いが、いつかは対峙しなければならない試練だ。

しかし、これだけ動いても漏れないとは、最近のオムツは
随分と進化しているらしい。
一つ勉強になった。

522: 2009/10/22(木) 12:48:33.66 ID:/3yneHBo0
>>427の続き。
夕食はカレーライスだった。
さすがに、オムツをつけたまま家族と食事をする気には
なれなかったので、自分の部屋で食べることにした。

父の怒鳴り声が聞こえたが、妹が嫌がっているから
仕方がないのだと説得する母の声も聞こえた。

カレーライスは美味しかった。
バーモンドカレーの甘口と中辛をブレンドした、
俺の好きなカレーだった。
だから何も連想しませんでしたが何か?

深夜になり、家族が寝静まると、俺は浴室に行った。

ハサミを使い、ベルトとオムツを切断する。
浴室の中に、嫌な臭いが立ち込めた。

否応なく、あの地獄の五時間目を思い出し、憂鬱になる。

水分はオムツの成分が吸収してくれたので、
意外とサラサラしていて不思議な清潔感があったが、
やっぱり泣きたくなることに変わりはなかった。

ボディソープを必要以上に使って身体を洗っていると、
涙が溢れてきた。

家族にオムツを見られると困るので、オムツはコンビニの
レジ袋に入れて、近くのコンビニのゴミ箱に捨てようと思っていた。
しかし――。

525: 2009/10/22(木) 12:54:32.44 ID:/3yneHBo0
身体を洗い、湯船に使って風呂から出ると、
オムツを入れたレジ袋がなくなっていた。

キョン「……え?」

身体を洗うのに邪魔だから、脱衣所の床に置いて
おいたはずなのだが。

よく見ると、あのベルトのようなものの残骸と、
俺が脱ぎ捨てた服もなくなっていた。


母親だ。


俺が気付かないうちに、母親が脱衣所にやってきて、
着替えとゴミを回収していったのだ。
夜中のうちに洗濯でもしようと思っていたのだろう。

俺は慌てて、腰にバスタオルを巻いた状態で飛び出した。

洗面所にある洗濯機が稼動する音が聞こえた。

洗濯は終わっているらしい。

ということは、コンビニの袋の中身も――。

最近、ゴミの分別が厳しくなってきたから、百パーセントの
確率で、母は袋の中身を確認したはずだった。

526: 2009/10/22(木) 13:03:04.77 ID:/3yneHBo0
携帯の電源は、相変わらず切ったままだった。

あの夜以来、誰とも会話せずに一日が終わるのが
当たり前になった。

食事は、台所に誰もいない時間帯を狙って、
冷蔵庫の中を漁ったり、手早く料理したりして済ませた。

こんな俺の味方になってくれるのは、インターネット
だけだった。

最近はトラビアンというブラウザゲーにハマっていた。
ちょうどタイミングよく、三倍サーバーが始まると同時に
プレイを開始することができたのだ。

一時は100位以内にまで食い込んだ。
しかし、課金なしで、弱小同盟に属していたため、
やがてゲームオーバーになった。

一週間目の夜、突然、岡部が家にやってきた。

数日ぶりに俺を呼ぶ母の声がした。

岡部「どうだ? 元気にやってたか?」

キョン「まあまあです」

岡部「宿題はちゃんとやったか?」

俺は青ざめた。忘れてたよ、そんなもの。

529: 2009/10/22(木) 13:08:11.65 ID:/3yneHBo0
しかし、岡部を落胆させるわけにはいかない。

キョン「え、ええ。もちろんれす」

岡部「そうか……。辛いだろうが、明日は学校に来いよ」

キョン「はい……」

行きたくない。
学校になんか、行きたくない。
だが、早く岡部との会話を終わらせるには、行きますと
言うしかなかった。

それから、俺は自室に戻り、慌てて宿題を始めた。
どうなるか分からないが、せめて宿題や反省文くらいは
書いておこうと思ったのだ。


翌朝。
俺は、当然のように仮病を使うことになった。

母「熱はないみたいだけど……。あんた、まさか、学校に
  行きたくないから仮病使ってるんじゃないでしょうね?」

キョン「ま、まさか」

母「あんたの妹は、あんたのせいで不登校になっちゃったのよ?
  兄が学校に行ってないのに、妹にだけ学校に行けって言う
  わけにはいかないでしょ。少しでも責任を感じてるなら、
  ちゃんと学校に行きなさい」

534: 2009/10/22(木) 13:19:11.11 ID:/3yneHBo0
妹のことを出されると、嫌と言うわけにはいかなかった。

俺は重い身体を引き摺って、学校に行った。

知り合いに会うと馬鹿にされるのは確実なので、
俺は始業チャイムが鳴るギリギリの時間に、
教室に入ることにした。

廊下の角に身を潜め、岡部がやってくるのを待つ。
岡部がいるときは、ハルヒたちも、俺に暴言を吐くわけには
いかないはずだ。

岡部が来た。
同時に、チャイムも鳴り始める。

俺は、誰とも目を合わせなくていいように、床だけを見つめて、
教室に入った。

その途端、騒がしかった教室の中が、異様なまでの静寂に
満たされた。

岡部のせいではない。
俺のせいだ。

クラスメート達の視線が突き刺さる中、俺は自分の席を目指した。

乱暴に椅子を引き、座る。

何か固いものが、俺の尻に当たった。

539: 2009/10/22(木) 13:44:22.97 ID:/3yneHBo0
キョン「何だこれ……?」

俺は、尻に当たったものを拾い上げた。

それは、見慣れない形をしたゴムだった。
手のひらに乗るくらいのサイズで、長さは、
七、八センチくらいだろうか。

誰がこんなものを俺の椅子の上に置いたのだろう。
周囲を見回すが、誰も俺と目を合わせようとはしない。

岡部は、あえて俺のことには触れないまま、
ホームルームが終わった。

岡部が教室から出て行く。

その途端、クラスメート達が俺を囲んだ。

谷口「お前、よく学校に来れたな」

国木田「退学になっちゃえばよかったのに」

返す言葉もなく、俺は俯いていた。

ハルヒ「さっき、あんたの椅子の上に置いてあったもの、
     ちゃんと持ってるでしょうね?」

キョン「これのことか……?」

ハルヒ「そうよ。それはプラグっていうのよ」

541: 2009/10/22(木) 13:50:21.37 ID:/3yneHBo0
キョン「プラグ……?」

初めて聞いた言葉だ。
というか、何に使う道具なのかさっぱり分からないのだが。
……いや、分からないふりをしたいのだが。

ハルヒ「それを嵌めておけば、 もうウOコを漏らすこともないでしょ?」

俺は呆然とした。

これを、入れる?

っていうか、こんなものどこで買ってきたんだ。

ハルヒ「通販よ。一週間もあったからね」

谷口「ちゃーんとローションもあるから安心しろよ」

国木田「また漏らされたら、こっちが困るから。
     悪いけど、今日から毎日、学校にいる間は、
     これを挿して生活してもらうからね」

ハルヒ「自分で入れる? それとも、他の人に入れて
     欲しいの?」

もちろん、俺は逃げ出した。

あっと言う間に、クラスの男子達に取り押さえられた。
俺は暴れようとしたが、多勢に無勢だった。

547: 2009/10/22(木) 14:00:49.38 ID:/3yneHBo0


キョン「痛い痛い痛い!」

谷口「うるせえなあ、このウOコ野郎!」

谷口に腹を殴られた。
力が抜ける。
その隙を突かれ、一気に奥まで入れられた。

キョン「あふぅ……」

苦しい。何だこれ。痛いというか苦しんだけど。

ハルヒ「もうパンツとかズボンを穿いてもいいわよ」

552: 2009/10/22(木) 14:07:26.49 ID:/3yneHBo0
そう言われても、男子達に取り押さえられているので、
手足を動かす自由はなかった。

谷口や国木田が、黙々と俺のパンツとズボンを上げた。

ベルトも閉めると、ようやく開放された。

俺は無意識のうちに前かがみになっていた。

ヤバイ。
この感覚はヤバイ。
ウOコしたい。
今すぐトイレに行きたい。

しかし、そこへ、一時間目の授業の教師が入ってきた。

廊下へ出ようとすると注意された。

俺はふらふらと自分の席に戻った。

腰を下ろす。
プラグ自体はもう根元まで入っているので、
腰を下ろしたからと言って、痛みが走ることはなかった。

だが、苦しいことに変わりはない。
授業の内容なんか、一つも頭に入ってこない。
俺の全ての意識が肛Oに集中していた。

555: 2009/10/22(木) 14:15:37.26 ID:/3yneHBo0
ハルヒ「ねえキョン。さっきから震えてるけど、どうかしたの?」

ハルヒが白々しいことを言った。

キョン「え? 別に?」

俺は虚勢を張った。

ハルヒ「別にってことないでしょ。具合悪いの?」

そう訊かれた瞬間、俺の中で何かが壊れた。
こいつは、あの五時間目の会話を再現しているのだ。
俺はハルヒの髪の毛を鷲掴みにした。

キョン「調子乗ってんじゃねえぞ、この糞女!」

俺は左手でハルヒの髪を掴み、右手で何度もハルヒを殴った。

ハルヒの顔が醜く歪む。
鼻血が噴き出す。
それでも、俺は殴るのをやめなかった。
谷口や国木田ですら、俺を傍観していた。

ようやく教師が止めに入り、俺を後ろから羽交い絞めにしたが、
俺はハルヒのお腹を蹴った。
ハルヒがゲロを吐き、自分の制服を汚す。
いい気味だ。
おやおや。
失禁して、漏らしちゃったみたいだ。
ざまぁねえな、と思った。

561: 2009/10/22(木) 14:22:39.68 ID:/3yneHBo0
長門「リセット」

誰かの、声が、聞こえた、ような、気が、した。





ハルヒ「ねえキョン。さっきから震えてるけど、どうかしたの?」

キョン「え? 別に?」

ハルヒ「別にってことないでしょ。具合悪いの?」

キョン「そんなことないし! 誰もウOコを我慢してなんかいないし!
     放っておいてくれ!」

ハルヒ「……あ、そう」

ハルヒはにやにやと嫌な笑い方をしながら言った。

よく見ると、谷口や国木田も、俺が腹を押さえているのを見て笑っていた。

何とか二十分は耐えた。
しかし、あと三十分も残りの授業に耐えられるだろうか?
いや、無理だ。
今すぐ、このプラグを抜きたい。
俺は、震える右手を上げた。

キョン「先生、ちょっとトイレ行ってきてもいいですか?」

566: 2009/10/22(木) 14:31:35.81 ID:/3yneHBo0
谷口「おいおい。高校生にもなって、授業中にトイレかよ」

国木田「まだ一時間目なのに」

教師「そんなこと言うもんじゃない。早く行っといれ」

キョン「はい……」

もはや教師の台詞に突っ込む気力すら残っていなかった。

俺は腹を押さえて、泣きながらトイレに走った。

個室に飛び込み、鍵をかけ、急いでズボンとパンツを下ろす。

和式の便座の上でしゃがみ、プラグを抜こうとする。
その途端、痛みが走る。

そうか。
プラグというのは、挿れるときよりも抜くときの方が、
ずっと痛いのか。
一つ賢くなったな、と思った。

一番太いところを通り過ぎるときは地獄だったが、
そこを過ぎてしまえば、あっさりと抜くことができた。

少しはウOコも出たが、大した量ではなかった。
やはり、あの猛烈な便意は、プラグとローションが
引き起こしたものだったのだろう。

俺はしばらく、そのままの体勢で泣きじゃくった。

570: 2009/10/22(木) 14:40:07.72 ID:/3yneHBo0
それにしても……さっき聞こえた声は、何だったんだろう?

今まで何度も、あの「リセット」という言葉を聞いたことがある
ような気がした。

例えば、ハルヒに「具合悪いの?」と聞かれて、
「そんなことないし! 誰もウOコを我慢してなんかいないし!
放っておいてくれ!」と答えたときにも、聞こえたような気がした。

なぜだろう。
俺には、あのとき、別の会話があったような気がしてならない。

キョン『実は、さっきからトイレを我慢していて……』

ハルヒ『あんた馬鹿じゃないの? さっさと行ってきなさいよ』

キョン『でも、恥ずかしくて……』

ハルヒ『我慢して漏らす方がずっと恥ずかしいわよ。さあ、
     早く先生に断ってから、トイレに行ってきなさい』

こんな会話をしたような気がするのだ。
また、別の可能性もあったような気がする。

ハルヒに「今、あんた、オナラしたよね?」と聞かれたとき、
ハルヒや谷口に罪をなすりつけようとせずに、正直に告白した
という可能性だ。
教師が、もしお腹の調子が悪いなら、トイレに行ってきなさいと言い、
俺は顔を赤らめながらもトイレに走った。
……そんな可能性も、あったような気がしてならないのだ。

573: 2009/10/22(木) 14:48:29.20 ID:/3yneHBo0
消しゴムを落としたとき、隣の席の奴が拾わなかった可能性。
オナラだと思ったら実が出てしまったときに、トイレに直行した可能性。

……いや、いくらなんでも、考えすぎだろう。

この苦しい現実から逃げ出したくて、別の可能性を妄想している
だけなのだろう。

岡部「キョンか?」

俺が泣いていると、個室の外から岡部の声が聞こえた。

キョン「先生……?」

岡部「お前が心配だったから、もしも授業中にトイレに行くようなことが
    あったら知らせて欲しいと、授業の先生に頼んでおいたんだ」

岡部は、そこまで俺のことを心配してくれていたのか。
別の種類の涙が溢れてきた。

俺は急いでトイレットペーパーで尻を拭き、パンツとズボンを上げると、
個室を飛び出した。

キョン「先生!」

俺は、岡部に抱きついた。

577: 2009/10/22(木) 14:52:28.38 ID:/3yneHBo0
岡部「おい、キョン。どうしたんだ」

キョン「先生。俺、俺……」

何を言えばいいのだろう。
いじめに遭っていると相談すればいいのだろうか?

いや、俺が言いたいのは、そんなことではなかったはずだ。

言いたいことがあるはずなのに、言葉が出てこない。

岡部「ここじゃなんだから、屋上にでも行くか?」

キョン「はい……」

俺は素直に頷いた。
屋上に向かう岡部の後を、俺は無言で追った。

岡部「何があったんだ?」

キョン「俺……実は」

岡部「実は?」

キョン「先生のことが、好きなんです」

586: 2009/10/22(木) 14:58:20.53 ID:/3yneHBo0
岡部「えっ」

あれ?
俺、今、何を言った?

岡部「えーと……その『先生』というのは、どの先生の
    ことなんだ? 音楽の水嶋先生か? 数学の
    田中先生か?」

岡部は、女性教諭の名前を挙げた。

キョン「違います。俺は、岡部先生のことが、好きなんです」

もう一度言ってしまった。

しかし、口に出してみると、それが俺の本心であったような
気がしてくるから、不思議だった。

そうだ。
よく考えてみると、俺は岡部が好きだったのだ。
この激動の一週間で、岡部だけは俺に優しかった。
惚れてしまったのかもしれない。

岡部「ああ……。そうなのか」

キョン「先生は、俺のこと、どう思ってますか?」

岡部「どうって……」

キョン「先生の正直な気持ちが知りたいんです」

592: 2009/10/22(木) 15:04:33.16 ID:/3yneHBo0
岡部「そうだな……。成績は悪いし、運動神経も人並みだし、
    無気力で協調性が乏しいところはあるが……」

キョン「あるが?」

岡部「どちらかと言うと、好きかもしれない」

キョン「本当、ですか?」

胸が高鳴るのを感じた。

岡部「ああ。ずっと前から、何となく気になっていたんだ」

キョン「嬉しいです……」

俺はもう一度、岡部に抱きついた。
岡部も、恐る恐るではあるが、俺の背中に手を回した。

絶望的だと諦めたこともあったけど、これからは、
楽しい学校生活が待っている。
そんな気がした。






長門「ゲーム終了」

キョン「これで満足か?」

597: 2009/10/22(木) 15:10:50.89 ID:/3yneHBo0
長門「満足」

キョン「それにしても、どうして俺に教室でウOコを漏らさせる
     必要があったんだ?」

長門「まず、今までのあなたは恵まれすぎていた。その環境を
    徹底的に破壊する必要があった」

キョン「まあ、確かにそうかもしれないけど……」

長門「自分は大して努力をしていないのに、友人に恵まれていた」

キョン「いやいや、一見努力していないように見えるけど、
    俺だって俺なりに頑張ってたんだぞ」

長門「私には、そうは見えなかった。クラスの中には、
    谷口や国木田という、いい友人がいた。それだけではない。
    あなたが所属するSOS団。ここには魅力的な女性が三人もいた」

キョン「自分で自分を魅力的というか……。まあ、実際そうだけど」

長門「古泉一樹の存在も重要」

キョン「古泉が?」

長門「あなたは古泉一樹を見下していた。古泉一樹を自分よりも下等な
    存在だと、何の根拠もなく決め付け、優越感を抱いていた」

599: 2009/10/22(木) 15:12:25.60 ID:zq+EGY0V0
確かにキョンは周りの連中馬鹿にしすぎだと思う

604: 2009/10/22(木) 15:20:14.29 ID:/3yneHBo0
キョン「優越感、か。それはそうかもしれないが……」

長門「あなたと古泉一樹の立場を逆転させるには、
    あなたに教室で排泄をさせるのが手っ取り早かった。
    効率がいいから、その手段を選んだだけ」

キョン「分かった、分かった。今までとは逆に、俺が古泉に
     見下される立場になったのは認めよう。だが、それに、
     何の意味があるんだ?」

長門「あなたのアイデンティティを破壊するのが目的だった。
    あなたという人間は、他者を見下し、自分は他者よりも
    賢いのだと思い込むことで自我を保っていた。
    その標的に選ばれていたのは、主に、古泉一樹、谷口、
    涼宮ハルヒの三人だった」

キョン「その三人に、いじめの主犯をやらせたかったということか?」

長門「そう」

キョン「妹や母親に嫌われるように仕向けたのは?」

長門「あなたの庇護者である妹と母親に諦めの目を向けられれば、
    あなたは誰にも助けを求めることができなくなる」

キョン「見下す者と見下される者の立場が逆転して、庇護者がいなくなって、
     それでどうなるんだよ」

長門「あなたは、唯一自分に優しくしてくれる岡部に好意を抱くようになる」

611: 2009/10/22(木) 15:26:15.46 ID:/3yneHBo0
キョン「まあ、確かにな……。岡部がこんなに大活躍するSS、
     初めて読んだぞ」

長門「これで、私の目的は達せられた」

キョン「あー……。要するに、俺と岡部をくっつけるのが、
     お前の目的だったのか?」

長門「そう」

キョン「それに何の意味がある」

長門「楽しかった」

キョン「ようやく長門にも楽しいという感情が生まれたのか。
     それは嬉しいが、どうして岡部なんだ」

長門「古泉×キョンとか、キョン×古泉の時代は、もう終わった。
    これからは岡部×キョンの時代」

キョン「お前……腐女子だったのか!?」

長門「人類の言語に私の感情を当てはめると、そういうことになる」

キョン「腐女子きめえ……。そんなんだから腐女子は嫌われるんだよ」

617: 2009/10/22(木) 15:33:51.45 ID:/3yneHBo0
長門「しかし、私も苦労した」

キョン「そりゃあ苦労するだろうよ。俺がお前にとって
     間違ったルートを選ぶたびに、世界をリセット
     していたんじゃな……」

長門「ゲームでは簡単だった」

キョン「ゲームはあらかじめ選択肢が決められているからだよ。
     現実はそんなに生易しくないぞ。しかしこれ、夢オチでも
     ゲームオチでもなく、現実オチなんだよな?」

長門「そう」

キョン「俺は、これからも岡部と付き合っていかなきゃいけないのか?」

長門「大事にしてあげて」

キョン「俺が教室でウOコを漏らしたというのも、そのままなのか?」

長門「あなたなら、きっと乗り越えられる日が来ると信じている」

キョン「信じなくていい! もう一度リセットして最初からやり直させろ!」

長門「それはできない」

キョン「ハルヒ! ハルヒはいるか!? 俺は、実はジョン・スミスなんだぞ!」


          -完-

618: 2009/10/22(木) 15:34:26.19 ID:FHZpextG0

623: 2009/10/22(木) 15:39:50.37 ID:/3yneHBo0
みんな分かってると思うけど、最初はこんな終わり方にするつもりじゃなかったんだぜ……。

>>555を書いた時点では、キョンがハルヒ達に復讐していく方向に持っていくつもりだったんだけど、
そこから長門が黒幕という結末にどうやって持っていけばいいのか分からなかったから、こうなってしまった。

もう大学に行かないといけない時間だから落ちるけど、もし帰ってくるまでスレが残っていたら、>>555からやり直すよ。
残ってなかったら、>>617がトゥルーエンドということで。

649: 2009/10/22(木) 19:19:54.53 ID:/3yneHBo0
長門「待って」

キョン「何だよ」

長門「涼宮ハルヒにあなたの正体がジョン・スミスだと
    言ってはいけない」

キョン「だって、お前はもう、俺にやり直しさせてくれないんだろ?
     それなら、ハルヒに頼むしかないじゃないか。
     俺の正体がジョン・スミスだと分かれば、あいつも助けて
     くれるに違いない」

長門「それでは私が困る」

キョン「じゃあ、お前が何とかしろ」

長門「そう言われても、あまりセーブデータが残っていない」

キョン「セーブデータ? マジでゲームみたいだな」

長門「現在保存してあるセーブポイントは、宇宙の誕生、
    地球の誕生、三年前の情報爆発、そして最後にリセットした
    場所しかない」

キョン「セーブデータ少なすぎだろ……。スーファミ並みの
     スペックだな」

長門「SFCは、あの時点では最も完成されたハードだった。
    訂正を要求する」

651: 2009/10/22(木) 19:26:59.87 ID:/3yneHBo0
キョン「拒否する」

長門「そう」

キョン「そう、で終わるなよ。最後にリセットした場所、
     っていうのは、どこなんだよ」

長門「あなたが涼宮ハルヒを殴る直前の会話のシーン」

キョン「ああ、あの『リセット』っていう声が聞こえたところか。
     何か微妙なところだな……」

長門「それが嫌なら、他のセーブデータでも、私は構わない」

キョン「他のデータって、宇宙や人類の誕生からやり直せと?」

長門「三年前のデータもある」

キョン「いっそ、そこからやり直した方がいいかもしれないな。
    俺がウOコを漏らしたという事実も消えるわけだし」

長門「一つ問題がある」

キョン「何だよ」

長門「三年前のセーブデータには、あなたが二人存在する。
    中学生としてのあなたと、私の部屋で寝ているあなた」

652: 2009/10/22(木) 19:33:04.48 ID:/3yneHBo0
キョン「笹の葉ラブソティの奴か」

長門「ラブソティではなく、ラプソディ」

キョン「知ってたし! ちょっといい間違えただけじゃん!」

長門「そう」

キョン「とにかく、俺が二人いたら、何か問題なのか?」

長門「あなたの意識は、中学生としてのあなたではなく、
    私の部屋で寝ている方のあなたに飛ぶ」

キョン「……それが、何か問題なのか?」

長門「SOS団が結成され、朝比奈みくるとあなたが
    出会わなければ、あなたが私の部屋で寝ることは
    なかった」

キョン「だから?」

長門「三年前からやり直した場合、必ずしも同じ歴史を
    辿るとは限らない。SOS団が結成されなかったり、
    あなたや涼宮ハルヒが北高に入学しなかったりする
    可能性がある。その場合、あなたは時空の狭間に
    取り残され、永遠に目覚めることはない」

キョン「つまり、氏ぬのと同じことか?」

長門「そう」

653: 2009/10/22(木) 19:40:19.33 ID:/3yneHBo0
キョン「つまり、俺に残された選択肢は、最後にセーブした、
    ハルヒを殴る直前しかない、ってことか?」

長門「私はどこからやり直しても構わない」

キョン「お前がよくても、俺が困るんだよ!」

長門「では、最後にセーブしたところからリロードしてもいい?」

キョン「よし、やっちまえ」





ハルヒ「ねえキョン。さっきから震えてるけど、どうかしたの?」

ハルヒが白々しいことを言った。

キョン「え? 別に?」

俺は虚勢を張った。

ハルヒ「別にってことないでしょ。具合悪いの?」

そう訊かれた瞬間、俺の中で何かが壊れた。
こいつは、あの五時間目の会話を再現しているのだ。

656: 2009/10/22(木) 19:45:01.50 ID:/3yneHBo0
キョン「具合がいいわけないだろ! お前らに無理矢理、
    プラグを装着されたんだからな!」

俺は大声で言った。
教師に聞こえるように。
教室の中が、静まり返る。

教師「……プラグ? 何だ、それは」

事情を理解していない教師が、呆けたような顔をした。

キョン「俺、いじめられてるんですよ。こいつらに――
    クラスメート全員に、無理矢理、こんなものを
    装着させられたんです」

俺はズボンとパンツを下ろし、教師に向かって尻を向けた。

どうせ、クラスの全員に一度は下半身を見られたのだ。
恥ずかしいものなど、もう何も残っていなかった。

教師「何だこれは……。大問題だぞ。おい、お前ら!」

教師は、俺を見ないように顔を伏せているクラスメート
全員に恫喝した。

教師「何てことをしでかしたんだ! ……待ってなさい。
    とりあえず、岡部先生と学年主任と校長先生を
    呼ぶから」

教師は携帯電話を取り出し、忙しく電話をし始めた。

659: 2009/10/22(木) 19:51:59.52 ID:/3yneHBo0
ハルヒ「あんた……なんてことをやってくれたの」

キョン「言っておくが、悪いのはお前らの方だ。
     恨むんなら自分を恨むんだな」

谷口「よくもチクりやがったな!」

国木田「谷口、駄目だよ。僕らは何も知らないって言い張らなきゃ」

教師「全部聞こえてるぞ! 全員、教科書やノートや筆記用具を、
    机の中に仕舞いなさい。携帯電話の電源を切って、
    俺に見えるように机の上に置け」

キョン「先生。プラグを抜いてもいいですか?」

教師「えーと……。ああ、いいぞ」

俺はハルヒの目の前でプラグを抜いてやった。
ウOコまみれのプラグをハルヒの机の上に置く。

ハルヒ「何で私の机に置くのよ! 自分の机に置けばいいでしょ!?」

キョン「持ち主に返さなきゃいけないだろ?」

教師「それは大事な証拠だからな。もしも窓から捨てたり、
    投げたりした場合、いじめを認めたと判断する」

ハルヒは憎々しげに俺を睨んでいたが、反論はしなかった。

十分もしないうちに、岡部と学年主任と校長がやってきた。

663: 2009/10/22(木) 19:59:36.01 ID:/3yneHBo0
教師「……そういうわけで、これをクラスメート達に
    挿入するように強要されていたというわけです」

岡部「キョン、大変だったな。他にされたことはないのか?」

岡部が優しく俺の肩に手を置く。
俺は思わず泣きそうになったが、ぐっとこらえた。

キョン「一週間前に、俺がウOコを漏らした次の日の早朝、
     学校の前に呼び出されました。これが、その証拠です」

俺は、自分の携帯電話のメールを開いて見せた。

『明日の朝、7:30までに校門の近くで待っていること』

岡部「メールの送信者は……、涼宮か。それで、呼び出されて、
    何をされたんだ? お金を要求されたのか?」

キョン「オムツを穿かされました」

岡部「オムツ……だと?」

キョン「さらに、その上にベルトのようなもので固定され、
     脱ぐことができないようにし、南京錠で鍵をかけられました」

岡部「何てひどいことを……。これはもはや、犯罪だぞ。
    警察を呼ばないといけないレベルだ」

670: 2009/10/22(木) 20:17:19.07 ID:/3yneHBo0
校長「それも、クラスメート達がやったのかね?」

キョン「いえ、オムツを穿かせたのは、同じ部活のメンバーだった、
     古泉一樹と、長門有希、そしてここにいる涼宮ハルヒです」

学年主任「古泉一樹と、長門有希だな。校長、二人を呼んできます」

そのとき、チャイムが鳴った。
一時間目が終わったのだ。

岡部「他にされたことは?」

キョン「中傷のメールがたくさん届いています」

電源は切っていたが、メールボックスには溢れんばかりの
メールが届いていた。

岡部「ふむ……。このクラスの携帯のメールアドレスから
    送信したものが、いくつかあるな。小賢しい奴は
    フリーメールを使っているみたいだが、警察が
    フリーメールの会社に行ってログを見れば、
    どこの誰が使用したメールアドレスなのか分かるだろう」

キョン「たぶん、学校裏サイトも、ひどいことになってると思いますよ。
     俺は、見るのが怖いから、見てませんけど」

これは、妹が言っていた噂から判断したものだった。
あの噂はおそらく、学校裏サイトで広まったものだろう。

教師「今すぐ、確認してきます」

674: 2009/10/22(木) 20:26:53.39 ID:/3yneHBo0
岡部「他には、何かされてないのか? 細かいことでもいい。
    全部話すんだ」

キョン「そう言えば、今朝、プラグを無理矢理
     挿入されるときに、谷口に腹を殴られました」

岡部「谷口。本当か?」

谷口「……はい」

谷口は馬鹿だから、自分の携帯電話を使って、俺にメールを
送っていた。俺が漏らしたところの画像を添付したメールを、だ。
言い逃れはできないと、谷口も諦めたのだろう。

キョン「それと……」

岡部「何だ?」

キョン「一週間前に、俺がウOコを漏らしたのも、たぶん、
     谷口のせいです。国木田も共犯なのかもしれませんが」

谷口「……はあ?」

キョン「俺は、五時間目の直前の昼休みに、谷口や国木田と一緒に、弁当を
     食べました。そのとき、弁当に下剤を混入されたのではないかと思います」

岡部「谷口いい!」

キョン「それから、漏らす直接のきっかけとなったのは、ハルヒに強く手を
     引っ張られて、転倒したからです」

679: 2009/10/22(木) 20:32:58.92 ID:/3yneHBo0
谷口「ちょっと待て! 俺はそんなことしてないぞ!」

国木田「僕だって!」

ハルヒ「私だって、確かに手は引っ張ったけど、
     転倒させるつもりはなかったわよ!」

岡部「お前ら、見苦しいぞ。これだけの証拠があるのに、
    まだ言い訳をしようというのか」

谷口「本当なのに……」

学年主任「古泉一樹と、長門有希を連れてきました」

古泉はふてくされた顔をしている。
一方の長門は、完全な無表情だった。

学年主任「連れてくる途中で、携帯電話を確認しましたが、
       先ほど涼宮が送信したのと同じ内容のメールが
       届いていました。さらに、古泉の携帯には、
       オムツを用意しろという内容のものがあり、
       承諾する返信をしていました」

岡部「裏づけが取れたな」

谷口「でも、俺達はキョンの弁当に下剤を仕込んで
    なんかいないんです!」

岡部「言い訳は後で聞く。もっと被害を確認しておく必要がある」

683: 2009/10/22(木) 20:46:13.99 ID:/3yneHBo0
キョン「あいつには、ウOコ野郎と呼ばれました」

俺は男子Aを指さした。

キョン「古泉には、鞄を投げつけられました」

古泉は俺を睨んでいる。

キョン「国木田には、退学になっちゃえばよかったのに、
     と言われました」

国木田は自分の机の上の携帯だけを見つめている。

キョン「でも、一番の主犯は、何よりも涼宮です。
     こいつがいじめのリーダーでした。谷口が俺の弁当に
     下剤を仕込んだのも、涼宮の指示だったのかもしれません」

ここで俺は、さり気なく谷口に逃げ道を用意してやった。
ハルヒの指示だったという逃げ道があれば、谷口も認めるかもしれない。

妹が教えてくれた噂話で分かった。
大切なのは事実ではない。
他人が何を事実だと考えるか、なのだ。

本当に、弁当に下剤が仕込まれていたのか、いなかったのか、
それは重要ではない。
ただ、谷口に認めさせることが大事なのだ。
谷口が認めれば、俺がウOコを漏らしたという事実はそのまま、
谷口の汚名に変換される。
そうすれば、俺は可哀想な被害者ということになる。

686: 2009/10/22(木) 20:52:05.22 ID:/3yneHBo0
岡部「谷口、そうなのか?」

谷口「あ……、えーと……」

谷口は、四人の大人の男に見下ろされ、萎縮していた。
視線を泳がせていたが、やがて溜め息をついた。

谷口「キョンの言うとおりです。涼宮に命令されて、
    キョンの弁当に下剤を入れました」

勝った。

これで、俺は被害者だ。

悪いのは、ハルヒと谷口、そして共犯者の国木田の
三人ということになった。

ハルヒ「ちょっと待ちなさい! 私はそんなこと命令して
     ないわよ! 濡れ衣だわ!」

岡部「言い訳は警察に言え」

ハルヒ「警察……?」

岡部「他のクラスメートに比べると、お前は罪が重すぎる。
    おそらく、傷害罪や強要罪で逮捕されるだろう」

ハルヒ「そんな……」

754: 2009/10/23(金) 03:58:42.72 ID:/xHOeHrW0
>>686の続き。

ハルヒは青ざめた。
いじめの加害者には、罪の意識がないので、岡部にここまで
言われるとは思っていなかったのだろう。

ハルヒ「一対一?」

キョン「それはタイマン」

ハルヒ「岡部」

キョン「それは体育」

ハルヒ「全身」

キョン「それはタイツ」

ハルヒ「東にカンボジア、北にラオス、西にミャンマーと
     アンダマン海があり、南はタイランド湾とマレーシアがある」

キョン「それはタイ王国」

ハルヒ「2009年4月5日放送のNHKスペシャルで歪曲・捏造・やらせ報道され、
     一万人以上がNHKに対して提訴している」

キョン「それは台湾」

755: 2009/10/23(金) 04:02:09.60 ID:/xHOeHrW0
ハルヒ「後ろに下がる」

キョン「それは退歩」

ハルヒ「待つ」

キョン「それは待機」

ハルヒ「晩成」

キョン「それは大器」

ハルヒ「レンタル」

キョン「それは貸与」

ハルヒ「日本の伝統」

キョン「それは太鼓」

ハルヒ「サザエさん」

キョン「それはタイ子」

ハルヒ「じゃあ結局、逮捕って何なのよ」

キョン「罪を犯した人間が警察に捕まること」

ハルヒ「そんなの知ってるわよ! ……私はただ、
     現実を受け入れたくないだけ」

757: 2009/10/23(金) 04:08:27.48 ID:/xHOeHrW0
キョン「だと思った」

ハルヒ「私が悪かったわ。謝るから、許して」

キョン「反省の色が見られない」

ハルヒ「どうすれば反省したと認めてくれるの?」

キョン「そうだな……」

今までハルヒにやられたことを思い出す。
オムツにするか。
それとも、プラグがいいか。

……いや、これしかないな。

俺は、岡部や校長たちが自分達同士の相談に夢中になっていて、
こちらに注意を向けていないことを確認してから、ノートの切れ端に
急いでシャーペンを走らせた。

岡部は耳がいいので、これくらい用心する必要がある。

『今ここでウOコを漏らしたら許してやる』

その紙をハルヒに見せ、ハルヒがあんぐりと口を開けたのを確認してから、
俺は紙を引き裂いて窓から捨てた。
これで証拠隠滅だ。

761: 2009/10/23(金) 04:23:12.22 ID:/xHOeHrW0
ハルヒ「そんなこと、できるわけないでしょ!」

キョン「嫌ならいいんだぜ。俺は少しも困らないからな」

ハルヒ「本当に、それしかないの?」

キョン「ない」

さあ、早く漏らせ。
男子高校生がウOコを漏らしたという事件よりも、
女子高校生がウOコを漏らす事件の方が、
何倍もセンセーショナルなはずだ。

ハルヒが漏らしてくれれば、俺の事件の記憶は薄れるだろう。

ハルヒ「あんた、私の身体に興味ない?」

キョン「別に」

ハルヒ「そんなことないでしょ? ウOコを漏らす代わりに、
     一晩自由にしてもいいのよ?」

俺は昔、ハルヒに淡い恋心を抱いていたこともあった。
しかし、今は何の魅力も感じていなかった。
こいつはただのドSで、犯罪者だ。

もう騙されない。

それに何より、今の俺には岡部がいる。
俺がハルヒの申し出を受け入れる理由など、どこにもなかった。

763: 2009/10/23(金) 04:32:50.53 ID:/xHOeHrW0
キョン「もうお前になんか興味ないんだよ。
     あれをしないんだったら、俺は警察に
     被害届を出すだけの話だ」

絶対に、ウOコを漏らせ、という言葉を口に
してはいけない。

今の時代は、簡単に録音することができるのだ。
この状況で証拠を残す奴は、ただの馬鹿だ。

ハルヒ「許して……」

ハルヒは涙目になった。

俺は無言で、首を左右に振る。

ハルヒ「わ、分かったわよ……。漏らせばいいんでしょ?」

俺は無言で、じっとハルヒを見つめていた。

ハルヒは、歯を食いしばり、ウOコを出そうとしている。
教室で。
みんながハルヒに注目している中で。

ハルヒ「やっぱり、駄目……。出ないわ」

キョン「努力が足りないんじゃないのか?」

800: 2009/10/23(金) 13:01:35.27 ID:E+gLbBbQ0
ハルヒ「おしOこだけじゃ駄目なんだよね?」

諦めの悪いハルヒは、まだそんなことを訊いてくる。

キョン「黙れ」

あまり会話を続けていると、岡部たちに聞こえてしまう。
ハルヒは黙々と左手を動かした。

しばらくして、オナラの音が聞こえた。

谷口「今オナラしたの、誰だよ」

谷口があからさまな視線を、俺の方に向けてくる。
一週間前の俺だったら、この視線にビクビクしていたものだが、
今の俺は余裕だった。
オナラをしたのは、ハルヒなんだからな。

岡部「谷口、いい加減にしろ。そうやって、オナラ一つで
    大騒ぎするから、トイレに行きにくい空気が作られて
    しまったんだ。トイレに行かない人間なんて、この世には
    一人として存在しない。トイレに行ったり、オナラをしたり
    することは、恥ずかしいことじゃないんだぞ。それがたとえ、
    学校の中であったとしても、だ」

805: 2009/10/23(金) 13:09:10.82 ID:E+gLbBbQ0
岡部がいいことを言った。
もっと早く、こういうことを言って、実践してくれる教師に
出会っていれば、俺の暗黒の小学校時代が形成される
こともなく、一週間前に漏らすこともなかったのかもしれない。

もっと早く岡部と出会いたかったな、と思った。
しかし、出会えただけでも、俺は幸福なのだろう。

今この瞬間にも、授業中にトイレに行きたいのに行けず、
苦しんでいる生徒や学生が日本中にいるだろう。
岡部と出会えただけでも、俺はラッキーだったのだ。

ハルヒ「うっ……」

ハルヒの体が、小刻みに揺れ始めた。

ハルヒ「うううっ……」

水のしたたる音が聞こえた。

ハルヒは、ウOコだけではなく、オシッコも漏らしたのだ。
まあ、排便時には、同時に尿も出るのが普通だから、
想定の範囲内だったが。

国木田「涼宮さんが、失禁した。オシッコを漏らした」

国木田の冷静な声が聞こえた。

809: 2009/10/23(金) 13:20:04.05 ID:E+gLbBbQ0
誰もがまだ、ハルヒがウOコまで漏らしたとは思って
いないらしい。

自分がいじめのリーダーとして糾弾されているという、
異常な緊張感に耐え切れなくなり、失禁してしまった
としか思っていない。

誰もがハルヒに注目していた。

たった一人を除いて。
俺だけが、そのことに気付いていた。

古泉だった。
古泉だけが、目の前のハルヒよりも、自分の携帯電話に
注目していた。
信じられない、という表情で画面を見ていた。

谷口「なあ、この臭いって……」

ウOコの臭いが、教室の中を満たし始めた。

教室の中が、ざわざわと騒がしくなった。
早くも立ち上がり、出口の方へ移動し始める生徒もいた。
教師達ですら、逃げたそうなそぶりを見せていた。

国木田「涼宮さん。もしかして、オシッコだけじゃなくて……」

ハルヒ「ウOコも漏らしたわよ。何か文句ある?」

教室の中が、パニックになった。

812: 2009/10/23(金) 13:34:08.41 ID:E+gLbBbQ0
谷口「漏らしたぞ! 涼宮がウOコと小便を漏らしたぞ!」

あの日と同じように、谷口が大声で実況をした。
学年中に聞こえただろう。

クラスメートの女子達は悲鳴を上げながら、出口に殺到した。
誰一人として、ハルヒを気遣い、庇う女子はいなかった。
人望がない奴というのは、哀れなものだ。
……俺も、人のことは言えないけど。

岡部「あー、えーと、どうしますか?」

学年主任「我々は全員男ですから、女子生徒に触ると、
       スクールセクハラで訴えられる可能性が
       ありますから……」

教師「保健室の先生を呼んできて、任せるというのは
    どうでしょうか?」

校長「おお、それがいい。そうしましょう」

教師達はそんなことを言いながら、教室から出て行った。

またしても放置プレイだ。

クラスメートの女子達は全員が出て行ったが、
男子は何人か残っていた。
携帯電話の電源を入れ、カメラでハルヒを撮影するために。
まあ、ハルヒは、外見だけは文句のない美人だからな。
男子達にとっては、願ってもないシチュエーションなのだろう。

819: 2009/10/23(金) 13:47:51.40 ID:E+gLbBbQ0
ハルヒ「撮るんじゃない!」

ハルヒが奇声を上げながら、撮影している男子に
殴りかかっていく。

男子A「ウOコ女がキレたぞ!」

男子B「オクサレ様がお怒りじゃ!」

男子C「今からそっちにウOコ女が行くぞ!
     ウOコ警報発令中!」

男子達が囃し立てる。

ハルヒ「うぎゃああああああ!」

ハルヒは顔を真っ赤にしながら、逃げていく男子達を追い、
自分も廊下に飛び出した。

ハルヒが移動した後に、ナメクジが這ったような跡が残る。

涼宮ハルヒ終わったな、と思った。

こうして、教室に残っているのは、俺と長門、古泉の三人
だけになってしまった。
と思ったが、違った。

みくる「あのう……」

キョン「朝比奈さん。どうして、ここに?」

823: 2009/10/23(金) 13:56:35.48 ID:E+gLbBbQ0
みくる「未来から指令が来て、今この時間のこの場所に
    行くように言われて……」

キョン「あれ? いつもの、禁則事項です、って奴は
     ないんですか?」

みくる「ええ。私にもよく分からないんですけど、
     もういいみたいです」

長門「へぇ、そうなんですか。朝比奈さんも、
    自由になれたんですね」

長門が、長門らしくない喋り方をした。

キョン「お前……長門か?」

長門「ええ、そうよ。私は長門有希。何か変かな?」

キョン「明らかにおかしいだろ!」

古泉「おいおいお前ら、こんなウOコくさい場所で
    よくこんな会話ができるな。場所を移そうぜ」

キョン「お前も本格的に敬語キャラやめたのか……。
     それはさておき、どこに行く? 部室か?」

古泉「お前は本当に馬鹿だな。部室に行ったら、
    涼宮が逃げ込んでくる可能性が高いだろうが。
    部室以外の場所へ行くぞ。屋上でいいか?」

825: 2009/10/23(金) 14:03:02.23 ID:+szG4Ro1O
古泉w

827: 2009/10/23(金) 14:05:12.62 ID:E+gLbBbQ0
キョン「俺はどこでもいいけど……」

古泉「じゃあ、屋上で決まりだな」

キョン「でも、漫画とか小説だと屋上のシーンは頻出だけど、
     実際の学校では安全面を考慮して鍵がかかってる
     ものだと思うんだけど……」

古泉「ちゃんと鍵は手に入れてある」

今まではイエスマンだった古泉が、かつてないリーダシップを
発揮していた。
その鍵は、どう見ても犯罪の臭いがするのだが、今のこいつに
逆らわない方が無難だと判断した。

俺達四人は、大騒ぎになっている廊下を歩いた。

その途中、ハルヒが大勢に囲まれ、罵声を浴びせられたり、
雑巾を投げつけられたり、携帯のカメラで撮られたりしている
ところを目撃したが、俺達はスルーして屋上に向かった。

長門「うわあ。私、屋上に入るのって、初めて」

長門が歓声を上げる。
こうやって見ると、新しい長門も、これはこれで可愛い。

今回の一連の事件――俺が教室でウOコを漏らした事件の、
真犯人が長門であることを忘れてしまうくらいに。

829: 2009/10/23(金) 14:26:49.61 ID:E+gLbBbQ0
キョン「なあ、そろそろ説明してくれてもいいだろ?
     どうして古泉や長門は、そんな喋り方に
     なってるんだ。ハルヒが教室で漏らしたときに、
     古泉は携帯に注目してたみたいだけど、
     それと何か関係があるのか?」

古泉「ふん。キョンのくせに、やけに鋭いな」

キョン「何で俺、こんなに古泉に見下されてるの……?」

古泉「涼宮が教室で漏らした瞬間、涼宮は神としての
    力を失ったんだよ。あの瞬間、俺は涼宮の呪縛から
    解放された。そう感じたのは俺だけじゃなかった。
    機関の連中も、同じ瞬間に全く同じことを感じたらしい。
    それまで神人と戦っていた連中も、突然神人が消えた
    ことに驚いて、俺にメールを送ってきたんだ」

キョン「説明くさい台詞をありがとう。長門も、古泉と同じ
     理由なのか?」

長門「うーん……。厳密には違うけど、まあ、だいたいそんな
    感じだと思ってもらえればいいかな」

キョン「こんなにアバウトな長門、初めて見た」

長門「もはや涼宮さんには、観測する価値がなくなっちゃったからね。
    涼宮さんは、ただの人間に戻っちゃったの。だから、私も使命から
    解放されて、普通の女の子になることができたってわけ」

833: 2009/10/23(金) 14:36:30.17 ID:E+gLbBbQ0
古泉「だから、長門の場合は、俺とはちょっと違うな。
    俺は、キャラ付けをする意味がなくなったから、
    素の自分に戻っただけだけど、今の長門は、
    普通の女の子としての、新しい人格だから」

キョン「今までの長門は、消えてしまったのか?」

長門「別に消えたわけじゃないよ。だって、記憶は連続
    しているもの。今でも、あの長門有希は、私の中に
    存在している」

キョン「つまり、長門は二重人格になったのか?」

長門「だから、そうじゃないってば。二つの人格が混ざり合い、
    混沌としている状態が、今の私なの。人格が溶け合うには、
    もう少し時間がかかっちゃうの。ただそれだけ」

キョン「よく分からんが……ひとまず、置いておくか。
     朝比奈さんは?」

みくる「え? 私ですか?」

キョン「朝比奈さんだけは変わってないから、何か安心します」

古泉「まあ、朝比奈の場合は、別に違う人格を演じていたわけ
    じゃなくて、素でこの性格だからな」

みくる「実はまだ、みなさんのお話がよく分かってないんですけど……、
    涼宮さんが普通の人間になったのなら、もう、私がこの時代に
    いる意味はなくなってしまいますね」

837: 2009/10/23(金) 14:47:20.68 ID:E+gLbBbQ0
キョン「じゃあ、未来に帰ってしまうんですか?」

朝比奈さんがいなくなるのは、正直、寂しかった。

みくる「まだそうと決まったわけじゃないわ。未来の世界には、
     この時代で言う留学制度みたいなものがあって、
     制約は多いけど、一定期間、過去で生活することが
     できるの。だから、この高校を卒業するくらいまでは、
     この時代に滞在できるかもしれないわ」

キョン「そ、そうですか! それはよかった!」

古泉「俺はどうしようかなあ。正直、こんなショボい公立高校、
    俺の肌には合わないんだよなあ。転校する前の、
    元の高校に戻ろうかな」

長門「うふふ。古泉君ったら、強がっちゃって、可愛い」

古泉「な、何だよ長門!」

長門「本当は、朝比奈さんのときみたいに引き止めて欲しいくせに。
    偉そうなこと言ってるけど、みんなのことが好きなんでしょ?」

古泉「べ、別に嫌いじゃないけど……」

長門「私は、この高校が大好き。この高校で、普通の女の子として、
    学校生活を送りたかったの。それが、私の夢だった」

キョン「長門。だから、こんな事件を引き起こしたのか……?」

842: 2009/10/23(金) 14:56:13.09 ID:E+gLbBbQ0
長門「え? どういう意味?」

キョン「お前が、お前の夢を叶えるためには、ハルヒから
     能力を奪う必要があった。それが、今回の事件の、
     お前の目的だったんじゃないのか?」

長門「まあ、結果として、そういうことになっちゃうのかな。
    キョン君と岡部先生をくっ付けてみたかったのも、
    私の願いだったけどね」

キョン「まだそんなこと言ってるのか……。勘違いしてるの
     かもしれないけど、腐女子っていうのは、普通の
     女の子じゃないんだぞ?」

長門「あはははは。細かいことは、気にしない、気にしない」

キョン「俺は気にするぞ」

長門「話を戻すけど」

キョン「いきなり話を戻すな!」

長門「もうみんな気付いてるでしょうけど、涼宮さんの能力は、
    私とは異なる派閥に属する宇宙人によって与えられた
    ものだった。私を作った存在よりも、さらに高位な次元の
    宇宙人が、気まぐれでそんなことをやっちゃったの。
    三年前の七夕に、中学校の校庭に宇宙語を書いた
    ことがきっかけでね。でも、授業中にウOコを漏らすような
    女の子に、どんな非常識なことでも思ったことを実現させる
    能力を与えるのは、分不相応だと思ったんじゃないかな?」

844: 2009/10/23(金) 15:03:32.84 ID:E+gLbBbQ0
キョン「長文読むの面倒だから、三行で頼む」

長門「涼宮さんが授業中に
    ウOコ漏らした。
    だから能力奪われた」

キョン「なるほど、よく分かった」

古泉「まったく、これだからこいつは……」

キョン「それで? 長門、お前は、ハルヒにウOコを
     漏らさせるために、何回やり直したんだ?」

長門「気付いてた?」

キョン「あまりにも上手く行き過ぎていたからな。
     俺が岡部に愛の告白をして、その後、
     長門を脅迫して途中から世界をやり直させたわけだけど、
     俺の記憶に残っていないだけで、実際はその後も、
     お前にとって都合のいいようになるまで世界を
     やり直していたんだろ?」

長門「それは禁則事項です♪」

キョン「おい……」

長門「説明するのが大変なんだけど、『消失』って、分かる?」

キョン「何のことだ?」

847: 2009/10/23(金) 15:18:02.35 ID:E+gLbBbQ0
長門「だよね……。知ってるわけないか。今は、
    一年生の七月だもんね。ああ、説明するの面倒だなあ」

キョン「説明するのを面倒くさがるところは、今までの
    長門と変わらないんだな……」

長門「説明端折るけど、やり直す前の世界で、私は、一度、
    世界の設定を作り変えてしまったことがあったの」

キョン「今回みたいに?」

長門「今回とは、根本的に違っていた。過去も現在も未来も、
    全てを作り変えちゃったから。だから、私は上司みたいな
    存在に目を付けられてしまった。そこで私は考えた。
    上司に怒られないような範囲で、私にとって都合のいい
    世界にすることはできないものか、と」

キョン「どうすれば怒られずに済むんだ?」

長門「あのときの私は、他者に干渉をしてしまったから、怒られた。でも、
    他者に干渉することなく、ただ世界をセーブして、やり直すだけだったら
    怒られないんじゃないか、と思った。そして、それは成功した」

キョン「ゲームのタイムアタックみたいなものか」

みくる「タイムアタック?」

キョン「ゲームのタイムアタックでは、少しでもタイムを縮めるために、
    プレイヤーの意思は関係ないけど低確率でランダムに起こる事象が欲しい場合、
    その事象を引き当てるまで、何度もリセットしてやり直すんですよ」

849: 2009/10/23(金) 15:24:10.82 ID:E+gLbBbQ0
みくる「でも、それって、大変なんじゃないんですか?
     普通の神経じゃ、耐えられなさそう……」

長門「もちろん、耐えられないですよ。でも、私は、
    エンドレスエイトにも耐えられましたから、
    それくらい平気でした」

みくる「エンドレスエイトって、何ですか?」

長門「この世界は夏休み前だから、説明するのが大変です。
    勘弁してください」

どうやら長門は、このメンバーの中では朝比奈さんに
対してだけ、敬語を使うらしい。
朝比奈さんが先輩だからだろう(精神年齢や実年齢はともかく)。

そんなところも、普通の女の子と変わりなかった。

キョン「いやいやいや。でも、やっぱり分からないことがあるぞ。
     ハルヒにウOコを漏らさせるのが目的なら、俺に漏らさせる
     必要はなかっただろ?」

長門「それは岡部先生と――」

キョン「それはもういい!」

古泉「お前は本当に馬鹿だな。俺が説明してやろうか?」

キョン「……いいだろう。やってみろよ」

852: 2009/10/23(金) 15:40:43.13 ID:E+gLbBbQ0
古泉「まず、お前がウOコを漏らす確率と、
    涼宮がウOコを漏らす確率。
    どっちの方が高いと思う?」

キョン「……ハルヒ、かな」

古泉「てめえ、見栄張るんじゃねえよ。
    誰がどう考えても、お前がウOコを漏らす
    確率の方が高いだろ?」

キョン「お前がそう思うなら、そういうことにしてやるよ」

古泉「いちいち喉仏に引っかかる言い方をする奴だな。
    じゃあ、そういう前提で話を進めるぞ。
    完璧超人の涼宮がウOコを漏らす確率は極めて低い。
    だから、他人が涼宮にウOコを漏らせと命令するしかない。
    しかし、長門は例の制約により、自分では命令する
    ことができない。どうすればいいと思う?」

キョン「俺に命令させるのか……?」

古泉「そういうことだ。お前が教室でウOコを漏らし、
    そのことがきっかけで涼宮にいじめられたら、
    お前は涼宮を恨むようになる。やがて涼宮への糾弾が
    始まったら、お前が涼宮にウOコを漏らせば許してやる、
    と命令する確率が高くなるんだ」

キョン「結局、俺は、最初から最後まで長門の手の平の上で
     弄ばれていたんだな……」

859: 2009/10/23(金) 16:19:49.75 ID:E+gLbBbQ0
長門「まあ、もう終わったことだから、いいじゃない」

キョン「よくない……。妹や母親に対するフォローは
     どうすればいいんだ」

長門「それなら、キョン君がいじめられてたことが
    分かれば、自然と受け入れてくれるわよ」

キョン「結局そうなるのか……」

ふと、水の音が聞こえた。

何気なくプールを見ると、ハルヒがシャワーを浴びていた。

あいつも、ある意味では被害者なんだよな……。
これからハルヒには、少年院に入るよりも辛い生活が
待っていることだし、被害届は出さないでおいてやるか。

長門「そろそろ戻りましょうか」

キョン「そうだな」

長門「でも、その前に聞いておきたいんだけど……。
    岡部先生とのことは、どうするつもりなの?」

キョン「まずは告白する前に、友達から始めるよ」

長門「そうね。焦ることないわ。きっと、うまくいくから」

        -完-

861: 2009/10/23(金) 16:21:30.88 ID:hORYxHCMO
>>1乙
面白かったよ。

862: 2009/10/23(金) 16:22:58.08 ID:5+B1pc2t0
面白かったぞw
おつかれ!

引用: キョン「もう我慢の限界だ! ……漏れそう」