29: 2013/08/24(土) 01:25:26 ID:nI.Z1Swo
ミカサ「珍しい、アルミンが私の部屋に1人で来るなんて」

アルミン「そうだね、いつも来るときはエレンと一緒だから」

ミカサ「なんだか変な感じがする」

アルミン「ふふ」

ミカサ「コーヒーでも淹れよう」

アルミン「ありがとう」
進撃の巨人(34) (週刊少年マガジンコミックス)

30: 2013/08/24(土) 01:32:32 ID:nI.Z1Swo
アルミン「僕、ミカサの淹れるコーヒー好きだなあ」

ミカサ「ありがとう。なんだか照れる」

アルミン「ふふ。…ミカサ、髪伸びたね」

ミカサ「切る暇があまり無くて。長いと危ないってわかってはいるけど」

アルミン「人類最強の傍で働いてたらなかなか時間ないよね。大変そう」

ミカサ「大変。だけど、苦痛ではない。やるべきことがあるのはいいこと」

アルミン「確かに」

31: 2013/08/24(土) 01:45:02 ID:nI.Z1Swo
ミカサ「アルミンも大変そう。毎日遅くまで作戦会議をして、その上ハンジ分隊長の補佐。こき使われてるんじゃない?」

アルミン「まあね。結構毎日大変だよ。寝る時間があまり取れないのは辛いかな」

ミカサ「心配」

アルミン「ありがとう。でも、やるべきことがあるのはいいこと、でしょ?」

ミカサ「うん」

アルミン「…ミカサのその髪見てると、訓練兵に志願したときを思い出すよ」

ミカサ「懐かしい」

32: 2013/08/24(土) 01:47:51 ID:nI.Z1Swo

アルミン「あのときまだ僕らは12歳だったね。あれからもう7年か」

ミカサ「そう。そして調査兵団に入って4年経った」

アルミン「時間が経つのは早いね」

ミカサ「よくここまで生きてこられたなと思う」

アルミン「何度も危ない目にあってきたしね」

ミカサ「本当に。いろいろあった」

アルミン「その度にみんなに助けられたなあ」

ミカサ「仲間だから」

アルミン「仲間。いい言葉だよね。ああ、そういえば」

33: 2013/08/24(土) 11:54:27 ID:nI.Z1Swo
ミカサ「何?」

アルミン「明後日で最後なんだ」

アルミン「ライナーとベルトルトの実験」

ミカサ「…そう」

アルミン「あらかた調べ尽くしたから」

ミカサ「うん」

アルミン「僕は今まで2人の実験には直接参加してなかったんだ。調査書をまとめるとかそれぐらいしかしてなくて」

ミカサ「そう」

アルミン「多分ハンジさんが気を遣ってくれてたんだろうけど。本当はとても優しい人だから」

アルミン「でさ、今日ハンジさんに言われたんだ。明後日で最後になるって。そのとき」

アルミン「なんでかとても悲しくなったんだ。思わず涙が出るほどにさ」

34: 2013/08/24(土) 11:59:49 ID:nI.Z1Swo
ミカサ「…うん」

アルミン「僕はさ、当然2人の事は憎いよ。彼らのせいで、僕たちはたくさん失った」

ミカサ「…領土も、命も」

アルミン「大切なものが消えていった」

アルミン「でも、ふとしたときに訓練兵時代の事を思い出してしまう。彼らと一緒に過ごした3年間を」

アルミン「訓練は辛かったけど、その分ライナーやベルトルト、アニと居て楽しいこともたくさんあった。大好きだったんだ。憧れていたし、仲間だった」

アルミン「彼らにはあの3年が嘘で塗り固めた生活だったとしても、僕にとってはそれが大切な日常で、思い出なんだ」

ミカサ「アルミン」

35: 2013/08/24(土) 12:09:32 ID:nI.Z1Swo
アルミン「僕は過去にしがみついて離れられない。あんなことをした人たちなのに、2人がいなくなるってわかったら、やっぱり辛いんだよ」

アルミン「ねえミカサ、君はこんな僕をおかしいって笑う?」

ミカサ「アルミン、落ち着いて。泣かないで」

アルミン「……うん、ごめん」

ミカサ「よしよし」

アルミン「…はは。久しぶりに頭撫でられたね」

ミカサ「昔はよくこうしていた。いつの間にかやらなくなったけれど」

アルミン「たまに撫でられるといいもんだなあ」

ミカサ「うんうん」

アルミン「ありがとう、ちょっと落ち着いた」

36: 2013/08/24(土) 12:15:54 ID:nI.Z1Swo
ミカサ「…ねえアルミン、多分そう思っているのはあなただけじゃない」

ミカサ「みんな彼らを仲間だと思っていた。私だってそう。大事だった」

ミカサ「だから憎いし、失うのも辛い」

アルミン「……」

ミカサ「でも、受け入れないといけない。この結果を」

アルミン「…うん」

ミカサ「彼らはたくさん奪った。そして捕えられた」

アルミン「そうだね」

ミカサ「過去は変えられない。どう足掻いても」

アルミン「うん」

37: 2013/08/25(日) 01:21:03 ID:oa800gjA

ミカサ「アルミン。過去にしがみつくんじゃなく、過去を抱えていけばいい」

アルミン「抱えて?」

ミカサ「うまく説明できないけれど、抱きしめて離さないか、優しく撫でるかの違い」

アルミン「わかるような、わからないような…」

ミカサ「私は昔から説明が下手」

アルミン「はは。落ち込まないでよ。一生懸命伝えようとしてくれているのはわかるから」

ミカサ「…アルミンは賢いからいつかわかってくれると思う。あと」

アルミン「うん?」

38: 2013/08/25(日) 01:22:10 ID:oa800gjA
ミカサ「あの3年全てが嘘な訳ではないはず。それはアルミンもよくわかってるでしょう?」

アルミン「…そうだね。そうだった」

ミカサ「うん」

アルミン「ミカサ、ありがとう」

ミカサ「気にしないで。私とアルミンの仲だから」

アルミン「頼もしい」

39: 2013/08/25(日) 01:23:16 ID:oa800gjA
ミカサ「ふふ。そうだ、アルミン。未来の話をしよう」

アルミン「未来?」

ミカサ「そう。私たちが巨人を絶滅させて、壁のない世界を創る」

アルミン「うん」

ミカサ「外の世界を探検する。アルミンの言っていた海にも行く」

アルミン「楽しみだね。その為にももっと頑張らないとなあ」

ミカサ「平和な世界がこの先ずっとずっと続くように尽くす」

ミカサ「そして氏んだら、その平和な世界でまた生まれ変わって生きていけたらいい」

40: 2013/08/25(日) 01:24:08 ID:oa800gjA
アルミン「輪廻転生?」

ミカサ「そう。輪廻転生」

アルミン「ミカサがそんなこと言うなんてなんか意外」

ミカサ「最近思うようになった」

アルミン「はは…でも、輪廻転生ってあるのかなあ。非科学的」

ミカサ「とても曖昧な話。誰も証明なんてできない」

41: 2013/08/25(日) 01:24:49 ID:oa800gjA
ミカサ「でも、輪廻転生が本当にあるのだとすれば、これから何百年、何千年先になるのかわからないけれど」

ミカサ「私たちが創る巨人のいない平和な世界で、彼らともっと違う形で出会えたらいい」

ミカサ「命を奪った人が生まれ変われるのかわからないけれど。私も含めて。でも」

アルミン「…それぐらい、願ってもいいかなあ」

ミカサ「…大丈夫。未来に希望を持つくらい」

ミカサ「それはとても、素敵な事」

42: 2013/08/25(日) 01:25:34 ID:oa800gjA
今度こそ終わり。

引用: ベルトルト「思い出話でもしようか」