322: 2015/05/28(木) 22:42:44.46 ID:kQQBiKXbo

――モニター室――



前回:提督「初春に死亡ドッキリ」
最初から:提督「艦娘にドッキリを?」青葉「はい」


提督「勝手に薬を飲ませた事に関する申し開きは無いのか……?」

青葉「あ。申し訳ありませんでした!もうしません!」

提督「……。というか、やるにしても一言言え」

青葉「言ったじゃないですか。飲んだあとに」

提督「全く悪びれないなお前……もういい。怒る気も失せた」ハァ

カンムスガセッキンチュウ


青葉「まあまあそう怒らないでくださいよ。また別の子が来ましたよ?」
艦隊これくしょん -艦これ- 海色のアルトサックス(4) (角川コミックス・エース)

↓5まででコンマ下二桁反転が一番大きい艦娘(&シチュ) 複数人もありで


326: 2015/05/28(木) 22:42:58.69 ID:9apXyQuSO
足柄

346: 2015/05/29(金) 22:59:00.57 ID:bFgtN868o
提督「足柄か……あっ!」

青葉「えっ、どうしたんですか?」

提督「ゆ、夕食一緒に食べる約束してたの忘れてた……!」

提督「やっべぇ……また妙高に叱られる……」

青葉「仕方ないですねぇ司令官は。ここはドッキリで有耶無耶にしちゃいましょう!」

提督「いや、普通に謝るって……」


――廊下――

足柄「……」ズカズカ

私は、肩を怒らせながら廊下を歩く。駆逐艦の娘たちが怯えていたが、どうしても感情を抑えきれない。

足柄「……まったくもう、提督ったら!何度も約束をすっぽかして!」

そう。以前も――朝食ではあったが――一緒に食べる約束をすっかり忘れられていたことがあった。

その時は妙高姉さんからきついお叱りがあったようで「これからは気をつける」と謝られたのだが……。

またこれだ。……今度は直接文句を言ってやる!

347: 2015/05/29(金) 23:02:07.00 ID:bFgtN868o

ガチャ

ノックはしないで執務室に入る。ドアも乱暴に開ける。怒りを伝えるためだ。

足柄「提督!私との約束を何度もすっぽかすなんて、どういう了見なのかしら!?」

提督の机を見る。提督は机に突っ伏している。寝ているようだ。

足柄「……はぁ。執務中に寝ちゃったのね」

提督はいつもこうだ。仕事に力を入れすぎて、自分を顧みない。

(そんなことだから、心配になっちゃうのよ)

実際のところ、私が提督を夕食に誘ったのもこれが理由だ。誰かが誘わないと、夕飯は日付が変わってから……などと言いかねない。

このことをわきまえている艦娘も多いようで、提督はしょっちゅう誰かしら艦娘と一緒にいる。





348: 2015/05/29(金) 23:04:48.69 ID:bFgtN868o
足柄「全く……こんなところで寝ていたら風邪引くわよ?」

提督を揺さぶって起こそうとする。

足柄「……?」

冷たい。まるで、血が通っていないかのようだ。呼吸の音も聞こえない。

足柄「て、提督……?」

嫌な予感がした。提督の肩を強く揺する。だが、提督の首はバネ仕掛けの人形のように激しく前後に揺れるだけだ。

提督の開かれた目と、目が合う。焦点が定まっておらず、その瞳は何処も見つめていない。

足柄「……!」

私はそこでようやく確信した。……提督が、氏んでいる!

足柄「嘘、そんな……!?どうして!?」

349: 2015/05/29(金) 23:07:02.96 ID:bFgtN868o
ガチャ

困惑する私の後ろで、ドアが開く音がした。

大淀「提督、失礼します――――足柄さん?」

足柄「大淀……!提督が……提督が!」

蒼白な顔で言う私に、大淀が怪訝そうな目を向ける。

大淀「提督が……?」

大淀は机に突っ伏した提督を見る。そしてため息。

大淀「なんだ、寝ていられるんですね……。全く」

足柄「違う……!」

大淀「あ、足柄さん?どうなさったんですか?」

あまりに私が鬼気迫る顔をしていたのか、大淀は驚いたように言った。

足柄「提督が……提督が、氏んでいるの!」


350: 2015/05/29(金) 23:07:59.78 ID:bFgtN868o
大淀「……えっ?」

大淀は、事態を飲み込めていないみたいだった。

大淀「……提督が?いえ、そんなはずは……どうして?」

つぶやくように大淀が言う。……そう。『どうして』?

足柄「どうして、提督は氏んだのかしら。昨日までの提督には異常はなかった……はずよね」

大淀「……」

大淀はしばらく考えこんでいるようだったが、思いついたようにこう言った。

大淀「……そういえば、昨日の、深夜のことなんですが」

足柄「何か……あったのね?」

大淀は、階段を一歩一歩踏みしめるようにぽつりぽつりと話しだす。

351: 2015/05/29(金) 23:10:27.47 ID:bFgtN868o

大淀「……私が執務室で作業をしていると、何か重い物が床に落ちるような大きな音がしました」

大淀「それで、そちらの方を向くと……提督が脚立ごとひっくり返っていて……」

大淀「提督は頭を強く打っていたみたいで……しばらくうずくまっていましたが、そのうち立ち上がりました」

頭を……強く?

大淀「提督ご自身が大丈夫だ、とおっしゃるので深く考えはしなかったのですが……」

……それが、原因で……?

足柄「脳へのダメージは、本人では気づきにくい……」

つぶやく私に、大淀がさらに付け足す。自分への怒りと悔しさで、歯を食いしばりながら。

大淀「……ええ。それに、数日後に突然氏に至るケースも多い……失念していました」ギリ



352: 2015/05/29(金) 23:13:02.07 ID:bFgtN868o

私はその場に崩れ落ちた。そんなことで提督が氏んでしまうなんて、思いもしなかった。涙があふれる。

足柄「何よ……何よ!提督の……バカッ……!」ポロポロ

大淀「足柄さん……」

足柄「私、言ったじゃない!無理をしないでって!あなたがいなくなったら私が……皆がどうなるか考えて、って……!」ポロポロ

子供みたいに泣きながら、私は言い続ける。

足柄「あなたがいてこそ、艦隊は頑張れる……そういったのに……!」ポロポr

「―――あの」

足柄「バカ……バカ、バカ、バカ!!」ポロポロ

「――――あのー、足柄……さん?」

後ろから呼ぶ声に、私は振り向いた。そこには提督がいた。私は怒鳴りつける。

足柄「何よ!泣いちゃいけないの?提督が氏んじゃったのよ!提督は悲しくないの!?」



足柄「……あれ?」

353: 2015/05/29(金) 23:17:08.09 ID:bFgtN868o

提督……?提督がなんで?提督は、机に突っ伏して氏んでいる。

足柄「……幻覚まで見ちゃうなんて」

どうやら、私は相当提督に依存していたようだ。

足柄「消えなさい。幻覚に用はないわ」

提督「いや、そう言われても……」

幻覚の提督は困ったように後ろ頭を掻く。……仕草までもあまりにも提督だ。まるで本物のよう。

――――でも、これは幻覚だ。私は、現実を……提督の氏を受け入れなければならない。私は幻覚を振り払おうとする。

足柄「――消えなさいって、言ってるでしょ!?」キッ

大淀「その……足柄さん」

大淀が、横から声をかける。私は大淀の方に振り向く。振り向きながら、声を荒げて言う。

354: 2015/05/29(金) 23:18:06.03 ID:bFgtN868o

足柄「何よ、今度は!……?ドッ、キリ……?」

大淀は「ドッキリ大成功」のプレートを申し訳なさそうに掲げている。

大淀「はい……ドッキリです。その氏体は人形で……本物は、こちらに」

大淀は、幻覚……だと私が思っていた方の提督を指さす。

提督「……そういうわけだ。済まなかったな」

そして、大淀が説明を始めた。

355: 2015/05/29(金) 23:19:53.22 ID:bFgtN868o

~~ネタバレ~~

足柄「……ふうん。大本営からの指令、ね」

提督「そうだ。本当に、済まなかった」

足柄「その指令で、一体何人の艦娘を泣かせてきたのかしら?……私を含めて」

提督「ぬうっ……」

意地悪く私が言うと、提督はやはり大ダメージを受けたみたい。ま、このくらいはいいでしょう。

提督「……本当に、申し訳ない……俺にできる詫びなら、なんでもするつもりだ」

足柄「ふぅん?」ニヤニヤ

思わぬ提案に、少し頬がゆるむのを感じる。

足柄「……じゃあ、私とケッコンしてって言ったらどうするの?」

提督「それは……。いや、足柄がそれを望むなら――――」

足柄「なあんてね!冗談よ」

そう言う私に、提督は鳩が豆鉄砲を食ったような顔。


356: 2015/05/29(金) 23:22:19.98 ID:bFgtN868o
足柄「ま。今回のツケの代償としては、今度二人で一緒に飲みに行くくらいで勘弁してあげましょうか。それでいいわよね、提督?」

提督「あ、ああ。もちろん」

少し惜しいことをしちゃったかしら?いいえ。提督とケッコンしたいとは思うけれど、こんな形でしても嬉しくはないしね。

じっくりやっていきましょう。……覚悟してね、提督?狼は、狙った獲物は逃さないんだから!





357: 2015/05/29(金) 23:24:06.47 ID:bFgtN868o


――モニター室――


提督「うん……なんとかつつがなく終わったな」

大淀「ネタばらしに提督が出てきても、幻覚と断じるところは流石だと思いました」

提督「現実的な感覚を持っている。評価すべきだな」

青葉「現実と幻覚の境界が曖昧になっちゃった方もいましたからねぇ」

提督「あれはお前らが執拗に追い込んだからでは?」

青葉「まあまあ……おや?」


カンムスセッキンチュウ

青葉「また艦娘が来ましたね。ラストスパートです、頑張っていきましょう!」


提督「龍驤に死亡ドッキリ」

引用: 【艦これ】提督「艦娘にドッキリを?」青葉「はい」【安価】