422: 2010/05/05(水) 21:48:26.66 ID:00slXHU0

突如、麦野の周囲に現れた青白く輝く光線は、空気中に放たれた拡散支援半導体(シリコンバーン)にぶつかり四散した。
垣根は能力で発現させた白い翼で自身を包み込む。超高速で宙を駆ける無数の細い光線が白い翼へ容赦なく降り注ぐ。

ドガガガガガッ!!

人の手から離れて幾年も放置されていた廃工場の中に凄まじい轟音が鳴り響いた。
床に蓄積されていた埃が風にまう。麦野は鼻をむず痒くさせる空気に思わず舌打ちをした。
白い翼と粒機波形高速砲の衝突で生まれた煙が辺りに広まり、やがて薄れていく。


「あっぶねえな。突然襲ってくるなんて、フェアプレーって言葉知らないのか? 原子崩し」


煙の中からゆらりと1つの影が動いたのが見えて、麦野が眉をしかめる。
白い翼にぶつかって進路を強制的に変えられた光線は、廃工場の壁にいくつもの穴を作っていた。
それらの穴から、轟っ、と強い風が廃工場の中に流れてくる。
煙も埃も一瞬にして風に攫われて、麦野と垣根の視界は急にクリアなものとなった。


「チッ、殺り損ねたか」


取り逃がした獲物が姿を現したことを確認した麦野は、鋭い眼光を垣根へと突き付けた。

438: 2010/05/05(水) 22:17:40.66 ID:/sHk.Y.0
未元崩し萌えた……なんだよやべえ切ねえよ……乙でしたー!!!!

あの、ほんとくだらないピクニック話なんですけど5レスくらい借りますうううう

439: 2010/05/05(水) 22:20:12.07 ID:/sHk.Y.0

 まさか、自分がピクニックなどというふざけたイベントに参加するはめになるとは思わなかった。
 一方通行は重いため息とともに、その体をシートに預ける。
 隣ではしゃぐ打ち止めはシートベルトを装着していなかったので、横目で見やって彼は仕方なしに、
 「おいガキ、シートベルトつけろボケ」と注意した。
 いそいそとシートベルトを引っ張る打ち止めを確認しながら、
 一方通行はどうしてこんなことになってしまったのかと思案に暮れる。
 そもそも、こういうイベントは自分にはまったく似つかわしくない。
 たとえるなら氏神が結婚式に出るようなものであって、彼からしてみれば、

 なぜ自分のような闇の住人が華々しい光の行事に参加するのだろう、
 
 と疑問を抱かずには入られないのである。

 ――ねえねえ、今日はピクニック日和だねってミサカはミサカはみんなに提案してみる!

 たしか、朝起きてリビングに行った矢先に打ち止めがそう宣言しているのを聞いたのだった。
 ああそうですか、となおざりに返した一方通行だったが、その他の皆さん――、
 つまりは黄泉川と芳川が打ち止めの提案に賛成したことでピクニックに狩り出される運びとなった。
 彼は芳川の微笑みを思い出し、ぎり、と奥歯を噛む。あれは完全に遊ばれていたと思う。

 運転手である黄泉川は鼻歌まじりでスピードを上げた。楽しくて仕方がないらしい。
 数分ごとに「いやあ、この年になってピクニックに行くとは思わなかったじゃん」だの、
 「義務付けられてる学校行事とはまた違ったゆるい楽しさがあるね」だの、
 挙句の果てには「実はこの車、ピクニック用のレジャーシートもばっちり装備してるんだよなあ」と言い始めている。
 とどのつまり、彼女は嬉しくてたまらないのだろう。
 ここまでくると、空気を壊すように「俺を途中で降ろせ、歩いて帰る」だなんて言えるわけがない。

「ずっとだんまりしてるけど、もしかして嫌だった? ってミサカはミサカは無言を貫いているあなたを気遣ってみる」

 打ち止めが一方通行を見つめて言った。気遣ってみる、という言葉のわりに、彼女の顔は明るい。
 一方通行がここで嫌だと言わないであろうことを、彼女はちゃんと理解している。
 チッ、と一方通行は小さく舌打ちをした。壊せるわけがない、こんなおだやかでやさしい日常を。
 そこに自分が組み込まれていることを除けば、一方通行が望んだものに違いないのだから。

「嫌じゃねェ。眠ィだけだ」

 一方通行の返答に満足した様子で、打ち止めがぱあっと笑った。やり込められたな、と思ってしまう自分が情けない。
混乱
423: 2010/05/05(水) 21:50:42.45 ID:00slXHU0


「もったいない。そんな顔すると、せっかくの美人が台無しだぜ?」


麦野の攻撃にも牽制にも、垣根は余裕の表情を崩さない。


「ふんっ。相変わらずムカつく野郎ね、アンタ。
 その余裕アリアリみたいな態度。自分が偉いとでも思ってんのかにゃー? 
 俺様なんて今時モテねーよ。猫なんざ被るのやめてさっさと本性だせや、未元物質さんよぉッ!!」

「どんなに見た目がキレイでも、出てくる言葉が下劣だと、男を萎えさせるだけだぞ」

「あぁ!? てめぇ何ぞに媚びうる必要なんてねぇだろっ!」

「だから、そんな形相で睨むなよ……」


鬼のような形相で睨んでくる麦野を見て、垣根は小さくため息をつく。
白い霧となって消えていった吐息とともに、今の現状を苦々しく感じる未練たらたらの情念を、垣根はつい漏らしてしまう。


「―――ったく、俺の腕の中で可愛く鳴いてた女は何処にいった?」


そう、遠い昔の話ではない。

乱雑に閉められたカーテンの隙間から差し込む日差しで眼を覚ました女が、
女の腰に手をまわし強く抱きしめて顔を覗き込む男に、重い瞼を擦りながら「おはよう、帝督」と天使のように微笑んだのは、つい先月のこと。


「―――てめぇの目は節穴かよ。目の前に立ちふさがってる奴の顔も見えないほど、視力ガタ落ちでもしたか?」


天使の笑みを浮かべていた女は今、悪魔のような笑みを浮かべて男を地獄へと誘う。

424: 2010/05/05(水) 21:52:40.91 ID:00slXHU0

互いに、まっとうな道を進んできたとは言い難い。
幼いころに超能力者として頂点を極めてから、暗部へ真っ逆さまに落ちていったくだらない人生だった。
垣根は暗部組織『スクール』の、麦野は暗部組織『アイテム』のリーダーとして、学園都市の闇で暗躍を繰り広げる日々。

血と暴力、それだけの世界に、2人はいつしか疲れ切っていた。


「っ痛~い……」

「おい、大丈夫か?」


パンプスのヒールが突然折れて路上で転んでしまった麦野に、偶然垣根が声をかけた。
それが、2人の出会い。
日常の中での出会いに、超能力者も、暗部も、関係なかった。


「お店までつきあってくれてありがとう。私、貸しとかつくるの嫌いなの、だから今度ご飯でも奢るわ」

「君みたいな綺麗な人とデートできるなんて光栄だね。連絡、待ってる」


夜景のきれいなイタリアンレストランでの初めてのデートは、麦野の殺伐とした意見がきっかけだった。
2人は、ただただ、どうでもいいような話題で何時間も笑い続けた。楽しい時間はあっという間に過ぎた。


「……また、会える?」

「ああ、いつでも会いにいく」


もう会えないことが凄く名残惜しくて、麦野は垣根に次の約束をお願いした。
垣根は寂しそうに肩を小さくさせる麦野を無理やり抱きしめて、その可愛らしい唇に小鳥のような口付けを落とした。


そうやって、2人の恋ははじまった。


425: 2010/05/05(水) 21:55:15.65 ID:00slXHU0


恋がはじまった春は、小鳥のように愛を囀り頬を寄せ合った。
体温の心地よさを知った夏は、全身が汗だくになっても互いを求めて止まなかった。
冷たい風に身を寄せ合った秋は、わざわざ言葉にしなくても愛を信じられるようになった。

―――けれど、白い雪に見守られるはずだった冬は、とうとう訪れなかった。


出会って、恋をして。
少しづつ、不器用な手つきで2人で綴った幸せな時間は、季節を巡ることなく終止符がうたれた。


垣根も麦野も、学園都市の闇に翻弄され続けた人生を送ってきた。
壊れてしまわぬように大切に包んで守っていた想いもまた、学園都市の闇の前に無残にも引き裂かれた。

楽しい時間はあっという間に過ぎた。
血と暴力、それだけの世界に、2人はまた舞い戻る。


426: 2010/05/05(水) 21:58:14.88 ID:00slXHU0

「……なぁ、沈利」


垣根の脳裏には麦野との想い出が、走馬灯のように映し出されていた。
「原子崩し」ではなく、呼びなれた彼女の名を垣根は口にする。
この世の不条理をまだ受け入れることが出来なくて、垣根は苦虫を噛むように声を荒げた。


「沈利、俺さ。お前のことが、好きなんだ」


麦野がいつもせがんでいたのに、恥ずかしいからと突っぱねてきた言葉を、今ようやく垣根は紡いだ。

高飛車で傍若無人な麦野のわがままに付き合わされる日々が、どんなに大切だったか。
いつも虚勢ばかりはって不器用にしか生きられない麦野が、どんなに愛しいか。

それらがどれほど自分を救ってくれていたか。
今この瞬間に、垣根は嫌というほど思い知らされていた。


「……帝督。私も、アンタの事が好きよ」


ようやく聞けた垣根の言葉に気が緩んで、ふいに麦野も自分の正直な気持ちを伝える。
メールするたびに、電話するたびに、身体を重ねるたびに垣根に告げた言葉。

仕方ねえなと困ったように笑って垣根が付き合ってくれた日々が、どんなに大切だったか。
一人ぼっちだった自分を見つけ出してくれた優しい垣根が、どんなに愛しいか。

それらがどんなに自分に光を与えてくれたか。
麦野もまた、今この瞬間に嫌というほど思い知らされていた。


「好き」といった後に、かなしげな目つきで「ううん」と麦野は小さく首を振った。


427: 2010/05/05(水) 22:00:07.17 ID:00slXHU0


「ううん。愛してるわ、帝督。今も、昔も。―――これからだって」


ずっとずっと愛している、と震える声で。
麦野は、そう言った。


「俺も、愛してるよ。沈利」


垣根がつられる様に言葉を紡いだ。


「うん、だから。アンタの事、愛してるから。私がこの世で1番アンタの事愛してるから」


―――――だから、私がアンタを頃す。


狂おしく踊る歪んだ人形のように、ごめんなさいと泣いて謝る子どものように、麦野は口を弓形にして微笑んだ。


「…………ハッ、とんだ愛の囁きだな。『原子崩し』」

「クソ嬉しくもないお褒めの言葉ありがとう。『未元物質』」


もう、垣根は麦野のことを「沈利」とは呼ばなかった。
もう、麦野は垣根のことを「帝督」とは呼ばなかった。


ポッポッポッ、と再び麦野の周囲に白い光線を放つ玉が現れる。
垣根は六枚の翼の一翼をゆらりと動かし、麦野の動きを牽制する。


轟ッ!!!


人気のいない廃工場の中に、再び戦いの音が木霊した。

430: 2010/05/05(水) 22:06:50.98 ID:00slXHU0
意味不明だけど、暗部垣根麦野でした。
垣根麦野好きがもっと増えればいいなぁと思う今日この頃。
お邪魔しましたー。

440: 2010/05/05(水) 22:22:08.86 ID:/sHk.Y.0

 車はとある公園に向かっている。近場ではなく、あえて遠い場所を選んだ理由は実に単純だった。
 芳川が「ずっと向こうの公園、人工芝じゃないのよねえ」と発言したからである。
 学園都市内でも人工芝ではない緑が広がる公園は珍しく、その言葉に黄泉川と打ち止めが食らいついた。
 べつにどこでピクニックをしようが同じだろうと一方通行は思ったものの、女に口で勝てるわけのないことくらい熟知している。
 彼が黙って彼女達に従ったのは道理だった。

「あとちょっとで着くじゃんよー」

 黄泉川がそんな言葉を発して数分後、天然芝の広がる公園に一方通行達は立っていた。
 打ち止めが真っ先に駆け回る。
 たんぽぽが乱れ咲いている風景と少女は違和感なく調和していて、一方通行はここでも居心地の悪さを感じた。
 自分だけが浮いているような気がしてならない。

 朝食を簡単にすませたせいかしら、と芳川が呟いた。おなかすいたわね、と。

「早ェだろ。まだ11時過ぎ……」

「あ、そうだった! ミサカが一生懸命サンドイッチを作ったんだよってミサカはミサカは自分が料理上手であることをアピールしてみる!」

 走ることに飽きた打ち止めが、一方通行の足に抱きついて見上げる。
 はて、と一方通行は首を傾げた。
 サンドイッチが作れることと、料理上手という事実は果たして等号成立するのだろうか。
 からかうつもりで言ってやろうかと思うのだが、打ち止めの表情があまりにも誇らしげで、思わず違う言葉が口から突いて出てしまった。

「……あァ、そォ。ンじゃ、期待するわ」

 それは、普段の自分よりも数段甘やかすような台詞で、その言葉を聞いた打ち止めが嬉しそうに頷くのを一方通行は見てられない。
 そして、さらにその奥で忍び笑いをする保護者をにらみつけることさえできないのだ。
 車に積んでいたというレジャーシートは大きかった。少なくとも、黄泉川がひとりで使うには大きすぎる。
 そう指摘した一方通行に、黄泉川は笑って答えた。

「いつか、誰かと使いたかったんだよ。お前達がいて本当によかったじゃん」

441: 2010/05/05(水) 22:23:48.56 ID:/sHk.Y.0

 一方通行はごろりと横になって、打ち止めがバスケットからサンドイッチやらフルーツやらを取り出しているのを見つめる。
 彼女が胸を張って作ったと言ったサンドイッチは、形こそ歪だったものの、味に支障はなかった。つまり、まずくはない。

「どう、おいしい? ってミサカはミサカはおそるおそるあなたに訊ねてみる」

「まずくはねェよ。ただ、肉が足りねェけど」

 口を動かしながら彼が考えたことは、肉。それだけである。
 朝はコーヒーしか飲んでいないうえに、サンドイッチはどれもこれもレタスやトマト、卵やチーズがはさまれているものばかり。
 そこに少しハムが申し訳なさそうに顔を見せている。足りない、と思ったのだ。

「そう言うと思って、こんなものも作ってみましたーってミサカはミサカはずずいとあなたに大きなサンドイッチをすすめてみたり!」

「あァ?」

 打ち止めがにこやかに差し出してきた、先ほど食べていたサンドイッチの3倍はありそうな分厚いそれを一方通行はとりあえず受け取る。
 受け取ってから、眉をひそめた。でかすぎる、ということは置いておくとして、何かがはみ出している。
 なんだこれ、と一方通行が口を開く前に、芳川が解説した。

「そのサンドイッチには照り焼きチキンをはさんであるわ。肉ばかり食べる君のために、打ち止めが考えたのよ」

 おい、と一方通行はつっこみそうになった。たしかに肉は好きだ、大好きだ。肉を食っているときに氏ねたらそれはそれでいいんじゃないかと思っている。
 だが、手作りのサンドイッチに照り焼きチキンをはさみこまれるとは思わなかった。
 予想の斜め上を行く少女は、照れたように下を向いた。
 どう返答すればいいのかわからない。何か言葉をかけるべきか、それとも物は試しと食ってみるか。
 普段は饒舌なくせに、ここぞというときに言葉が涸れる自分を恨んだ。
 
 ――いつも、こうだ。打ち止めが自分に何かをしてくれるたびに、似合いもしない言葉が一瞬浮かんですぐに消える。

 たとえば、おいしい。


 たとえば、ありがとう。

 たとえば、いとおしい。

 柄じゃない。そう、自分が一番わかっている。自分が一番理解している。自分が一番自覚している。
 胸にわきあがってくる、むず痒い感覚。どうすれば、この感情をおさえることができるのだろう。

442: 2010/05/05(水) 22:26:03.86 ID:/sHk.Y.0

 打ち止めの期待に満ちた眼差しが痛い。
 自分に絡みつく視線を振り払うように、一方通行は口にサンドイッチを詰め込んだ。
 むぎゅ、という効果音がぴったりだと密かに芳川は考える。

「え、えっと……、その、無理に食べなくてもいいのってミサカは」

「……、……うめェ」

「!」

「ちゃンとうめェから――ンな顔してンじゃねェ、クソガキ」

 ぽんぽんと一方通行は打ち止めの頭を撫でる。ちょうど、指の隙間から彼女のトレードマークが飛び出している。
 たまに、意志を持ったようにへたりこんだりつんと立ったりするそのアホ毛を一方通行は内心気に入っているのだが、口が裂けても言うことはない。

 えへへ、と持ち前の明るさを取り戻した打ち止めが一方通行に笑いかける。
 撫でられている現状がお気に召したらしい彼女は、今度は何を思ったか近くに咲いていたたんぽぽを摘んでいく。
 一方通行は撫でていた手を止めた。

「お? 打ち止め、もしかしてたんぽぽで冠でも作る気じゃん?」

 黄泉川が思いついたことを喋り、その言葉に打ち止めは驚きながらも同意した。
 すごいね、なんでわかったの、と打ち止めが無邪気に訊ねるのを聞きながら、まだガキだな、と一方通行は呟きをもらす。
 でも、きっと彼女ならたんぽぽの冠だって似合うだろう。
 光の象徴である、打ち止めなら。
 なんとなく彼女がたんぽぽの冠を頭にのせている姿を想像して、一方通行はしばらくの間、ぼうっとしていた。

 だから、気づかなかったのだ。自分の頭上にそっと置かれた冠に。

 ふと、意識を呼び戻した一方通行は目の前にいたはずの打ち止めが忽然と姿を消していることに焦り、視線を彷徨わせた。
 彼はまず黄泉川と芳川のにやついた笑みを視界におさめ、次に後ろに気配を感じ振り向いたときにぱさりと何かが落ちる音を聞いた。

「あン? ……ンだよ、これ」

「あなたのための冠だよってミサカはミサカはたんぽぽの花冠がとってもあなたに似合っていたことを主張してみる。だからもう一度のせてもいい?」

「ふっざけンじゃねェ、イイわけあっかァ!」

「えー、でもほんとに似合ってるのにってミサカはミサカは――隙ありぃ!」

 一度怒ってやろうと体を少女に向けたときの隙をついて、打ち止めがもう一度一方通行の頭にたんぽぽの花冠をのせた。
 いつもは緩慢な動きでだらけているはずの芳川の動きはいつになく俊敏で、
 一方通行が冠を頭にのせられて払いのけるまでの数秒間のうちにカシャリとシャッター音が響く。

443: 2010/05/05(水) 22:28:59.21 ID:/sHk.Y.0
「オマ、芳川ァァァアアアアアアア!!!!!」

「思い出って色褪せるから、やっぱり写真で残しておかないと」

「桔梗もいいこと言うじゃん。あとでそれちょうだい」

「ミサカもほしいなあってミサカはミサカはカメラ係の芳川に頼み込んでみる!」

「ぜってェ渡すなクソったれェ!」

「あら、すべての権限はカメラ係のわたしにあるのよ。嫌なら頼んでみなさい?」

 芳川が笑い、これ見よがしに自分の携帯をアピールし、一方通行が電極に手を伸ばす。
 黄泉川はサンドイッチをつまみながら、片手で打ち止めの頭に花冠をのせてやった。

「似合う? ってミサカはミサカはヨミカワに訊ねてみたり」

「うんうん、よく似合うじゃんよ。ほら、一方通行! 桔梗を相手にしてないで、こっちのお姫様になんか言うことないのか?」

「あァ!?」

 一方通行が振り返る。打ち止めはにっこり笑ってその場でくるりと回ってみせた。黄泉川の笑顔がいっそ憎たらしい。
 何が、あなたのための冠、だ。
 なにが、とってもあなたに似合っていた、だ。
 自分なんかよりも、目の前で微笑む少女のほうが、よっぽど似合っているじゃないか。

「……、クソが」

「え、聞こえないってミサカはミサカはあなたに近付いてみる」

「……似合ってる、っつってンだよ」

 そうやって、彼女がずっと陽の下で笑っていること。
 一方通行の望みはそれだけだ。彼女が笑顔であり続けることが、彼の、たったひとつの願い。
 だから、その笑顔を曇らせないためならどんなことだってする。
 自分の柄ではないことだって、口にすることが恥ずかしい言葉だって、言ってやる。
 それは、紛れもなく彼の本音だった。

444: 2010/05/05(水) 22:31:39.95 ID:/sHk.Y.0

「オマエはそォやって、バカみてェに笑ってりゃイイ」

 一方通行は、少しずれている打ち止めの頭の上の花冠を正す。ぴょん、とアホ毛が立った。
 もしかすれば、このアホ毛は目の前の少女の気分で動くのかもしれない。
 そう思うと、一方通行はこみあげてくる笑いをおさえるのに必氏だった。
 打ち止めが首を傾げると、アホ毛がゆれる。
 もォだめだ、と一方通行はしゃがみこんで思いっきり笑う。

 そんな彼の白い髪が、日光のおかげできらめいて見えた。
 きれい、と打ち止めはめずらしく大笑いしている一方通行のすぐ近くにしゃがんで、そっとその白い髪に手を伸ばす。
 きらきらと毛先が透き通っている彼の髪は、とてもきれいでうつくしいと思うのだ。
 はやく、彼がそのことに気づいてくれればいい。
 自分がどれだけきれいなものを持っているのか、どれだけうつくしいものを抱えているのか。
 汚れている、だなんて。
 陽の下を歩くべきじゃない、だなんて。
 目の前で、無邪気に笑う少年にはそんな言葉は似つかわしくないと、打ち止めは思う。

「だったら、あなただってもっと笑っていいと思うのってミサカはミサカはあなたの髪にたんぽぽを挿してみる!」

 呆然とした表情で打ち止めを見つめ返す一方通行の白い髪に映える黄色い花は、とても眩しかった。

445: 2010/05/05(水) 22:33:44.69 ID:/sHk.Y.0
すみませんでした最後50行オーバーしてたんで結局6レス借りましたほんとすみませんでしたあああああ
黄泉川家でピクニック行ってたらいいなあって思っただけですなんかもうすみませんでしたありがとうございました!!!!

446: 2010/05/05(水) 22:33:58.08 ID:RGZpXmY0
あう、その、湧き上がってくる感情を抑えこまなくていいのよ、と一方さんに言ってあげたい
ほのぼのなのに胸が締め付けられるな…
たんぽぽ頭に乗っけた一方さん萌えすぎる
ヨミカワ一家は総じてお姫様だな!!みんな一方通行のこと大好きなんだな!!

乙!!!!

引用: ▽ 【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ2冊目」【超電磁砲】