1: 2010/01/24(日) 14:32:24.47 ID:kimgoZj1O
あの現実離れした高校生活から10年。

「はあ・・・」

あの頃がまるで嘘だったかのような平凡な日常。サラリーマンの俺は朝会社へ出勤し、上司に嫌味を言われながら仕事をこなし、定時を過ぎた後も残業をして帰る。

一体誰がこんな未来を予想しただろうか。あの頃はこんな平凡な生活とは無縁だったからな。

「・・・」

いや、これでいい。人間平凡が1番だ。俺は電車の中吊りに目を向けた。

「連続殺人事件ねえ・・・」

「涼宮ハルヒの憂鬱 Ⅱ」

2: 2010/01/24(日) 14:34:59.48 ID:kimgoZj1O
ハルヒとはかれこれ大学卒業以来全く会っていない。その頃には大分一般的な性格になってはいたが、あのトンデモ能力は相変わらずだったな。

長門や朝比奈さん、古泉とはたびたび連絡は取っていたが、ハルヒと会わなくなってからは疎遠になっちまった。3人とも元気にしてるだろうか。

そんなことを考えながら電車を降り、改札を出ると辺りはもう真っ暗だった。

「もう22時か・・・また妹に遅いってどやされるな」

そんな想像をしながら自宅へと向かう。すると突然携帯の着信音が鳴り出した。

4: 2010/01/24(日) 14:38:24.17 ID:kimgoZj1O
「誰だこんな時間に・・・?」

俺が携帯の画面を見るとそこには懐かしい人物の名前があった。

「ハルヒ?急になんの用だ・・・もしもし?」

「・・・・」

「もしもし?ハルヒか?」

「はあ!!はあ!!はあ!!」

どうやら走っているようだ。というか応答してもらいたいんだが。

若干イライラし始めた俺は立ち止まっていた足を再び動きだした。電話口からは相変わらず走っている音が聞こえるだけだ。

「なんなんだこいつは?」

7: 2010/01/24(日) 14:45:12.53 ID:kimgoZj1O
「・・・なんで・・・!?」

「え?なんか言ったか!?もしもし!?ハルヒ!?」



ドン!!

「痛って!!」

どうやら俺は電話に気を取られ過ぎていたようで、曲がり角を曲がった瞬間誰かと衝突したらしい。

「すみません、怪我は・・・ってハルヒ!?」

「え・・・キョン?」

偶然というのはいつも突然だ。たった今電話をしていた・・・まあ会話は成立してなかったが。その相手が突然目の前に現れた。これはあれか、運命の出会いってやつか?

8: 2010/01/24(日) 14:51:22.98 ID:kimgoZj1O
「キョン!!あたし・・・!!」

「どうした?」

「・・・いや、なんでも無いわ。あたし急いでるから」

ハルヒはそう言ったかと思うと全速力で走り去って行った。

「なんなんだあいつ?何か言いたそうだったが。」

俺は走っていくハルヒの後ろ姿を見続けていた。









「次のニュースです。3件目の連続殺人事件が発生しました。警察は1件目、2件目の事件と同一犯とみて・・・」

9: 2010/01/24(日) 14:54:32.59 ID:kimgoZj1O
「久しぶりだな、古泉」

「ええ、お元気でしたか?」

「ああ。まあな」

俺が古泉と会っているのには訳がある。休日なので俺が寝ていると突然こいつから電話が来たのである。どうやら大事な話があるらしいが・・・・

「僕はコーヒーで。あなたは何にしますか?」

「俺も同じでいい。大事な話ってのはなんだ?」

「まあゆっくり話しましょう。せっかくの再会なのですから」

「・・・ハルヒのことか?」

「・・・」

「そうなんだな」

10: 2010/01/24(日) 14:57:28.29 ID:kimgoZj1O
「どうやらあなたの勘もずいぶん鋭くなったようだ」

「急に電話してきて大事な話があるって言われたらな。ハルヒ以外思いつかん」

「その通り、実は涼宮さん絡みの話なんです」

「相変わらずニヤニヤしやがって。で?ハルヒがどうした?」

俺が尋ねるとそれまでニヤニヤしていた古泉は急に真剣な表情に変わった。

「実際に彼女にお会いしてからお話しましょう。とりあえず我々機関としても無視出来ない事態が発生しました」

11: 2010/01/24(日) 15:00:30.64 ID:kimgoZj1O
喫茶店を出た俺と古泉は公園へと向かった。そこには・・・森さんとハルヒがいた

「お久しぶりです」

「森さん久しぶりですね。よう、ハルヒ」

「・・・」

「ハルヒ?」

「あんた誰よ?」

「は?」

「なんであたしの名前呼び捨てにしてんの!?あんた何様!?」

「いや・・・いつもハルヒって呼んでただろ?」

「あんたなんか知らないわよ!!」

こいつは一体何を言ってるんだ?昨日だって会っただろうに。すると古泉がニヤケ顔で近づいてきた。

12: 2010/01/24(日) 15:03:06.86 ID:kimgoZj1O
「実は僕らのことも覚えてないんですよ」

「覚えてない?」

「ええ。記憶喪失というやつです」

「記憶喪失だって・・・?」

「ええ・・・では森さん、お願いします」

古泉が森さんに合図すると、彼女はハルヒを連れどこかへ行ってしまった。

「涼宮さんは彼女の家で保護していますから安心してください」

「とりあえず詳しい話を聞かせろ」

「そうですね・・・実は昨日の夜のことです。涼宮さんの力が発動した反応がありました」

「昨日?何時頃だ?」

「22時過ぎのことです。どうかしましたか?」

「いや・・・続けてくれ」

13: 2010/01/24(日) 15:06:04.57 ID:kimgoZj1O
「そのあと機関の人間・・・まあ僕なんですが。彼女の跡を追跡したところ、公園で座っている涼宮さんを発見したんです」

「その時にはもう・・・」

「ええ。僕を覚えていませんでした。」

「一体どうして・・・俺と会ったときはいつものハルヒだったのに・・・」

「会った?いつお会いしたんですか?」

「昨日の・・・22時直前だったな」

「その時は記憶があったと?」

「ああ。その前にあいつから電話があってな。電話してる最中に前からあいつがやってきたんだ。」

「電話では何と?」

「それがな、よくわからないんだ。向こうから電話しておいて何も言わないんだ。」

14: 2010/01/24(日) 15:09:04.88 ID:kimgoZj1O
「何も言わないとは?」

俺は電話の内容を一通り話した。それを聞いた古泉は何かを考えているようだ。

「・・・」

「しかしハルヒのやつ、一体何があったんだ?」

「・・・あなたは最近起こっている殺人事件をご存知ですか?」

「ん?ああ、それがどうした?」

「昨日もその事件が起こっているんですよ。21時50分頃にね」

「それって・・・」

「我々が彼女の力の反応を感知した時間とほぼ同じなんですよ」

「たまたまだろう」

「そう、たまたまかもしれない。ですがこの事件にはもう一つ彼女と共通していることがあるんです。」

「何だそれは?」

15: 2010/01/24(日) 15:12:07.16 ID:kimgoZj1O
そう言った古泉は俺に紙を差し出してきた。

「なんだこれ?」

「殺された3人の名前です」

「これがどうかしたのか?」

「実はそこに載っている3人全員・・・涼宮さんの関係者なんですよ」

「なんだって?」

「まず第一の事件、被害者は涼宮さんの働いている会社の上司でした。」

「第二の犠牲者は同会社の部下でした」

「・・・」

「そして昨日の第三の犠牲者は彼女と同僚の人間でした」

「そんな馬鹿な・・・」

「偶然にしては・・・ずいぶんと出来すぎた話だと思いませんか?」

16: 2010/01/24(日) 15:15:07.33 ID:kimgoZj1O
「そりゃあ確かに出来すぎた話だが・・・」

「それにあなたから聞いた話と統合し、僕はある仮説を考えてみました。」

「言ってみろ」

「あなたが涼宮さんと会った時間と、3人目の犠牲者が出た時間、多少のズレはあるものの一致することがわかりました。」

「・・・」

「あなたの話によると涼宮さんはずいぶんと慌てていたと・・・そうですね?」

「ああ」

「慌てていた理由は・・・何かを目撃したからとは考えられませんか?」

「目撃って・・・まさか!?」

「ええ。3人目の犠牲者が殺された場面。それを彼女は目撃した可能性があります」

17: 2010/01/24(日) 15:18:47.34 ID:kimgoZj1O
「そんな・・・」

「それなら彼女が慌てて走っていた理由も説明が付くと思いませんか?」

「・・・だが古泉」

「はい」

「どうしてあいつの記憶は消えたんだ?俺達のことだけさっぱりと」

「そう、そこがわからないんですよ。何故記憶が消えたかは大方推測出来ます。」

「あいつの力か」

「ええ。ですが何故我々のことだけを忘れてしまったのか。それがさっぱりわかりません」


ハルヒ・・・あの時一体何があったんだ?

18: 2010/01/24(日) 15:22:39.62 ID:kimgoZj1O
「では僕はこれで。何かあったらまた連絡しますよ」

「ああ・・・なあ古泉?」

「なんですか?」

「どうして俺に伝えてくれたんだ?俺はおまえらと・・・」

「友達だから・・・ではダメでしょうか?」

「古泉・・・」

「あなたと僕達は3年間を過ごした仲間です。」

「仲間・・・か」

「例え何年も会っていなくても、仲間であり友達であることに変わりはない。それは僕だけでなく、朝比奈さんや長門さんも同じですよ」

「お前・・・」


19: 2010/01/24(日) 15:25:10.99 ID:kimgoZj1O
古泉と別れた俺はある場所へ向かった。そこには俺が最も信頼するSOS団メンバーがいる。

「俺だ。えっと・・・キョンって言えばわかるか?」

「・・・入って」

カチャリと鍵の開く音がする。俺は若干緊張しながらあいつのもとへ向かった。

「久しぶりだな・・・長門」

「そう」

久しぶりに見る長門はあの頃と全く変わらない。まだ北高に通っているんじゃないかと思える姿だった。

「相変わらずみたいだな」

「変わっていない。私が思念体に望まない限り身体的に変化することはない」

やはり相変わらずのようだ。

20: 2010/01/24(日) 15:28:05.21 ID:kimgoZj1O
「ところでハルヒのことなんだが・・・」

俺が尋ねると長門は首をほんの少し下げ頷いた。

「知っている」

「一体何があった?」

「わからない」

「わからない?」

「そう。涼宮ハルヒの力が発動したのは事実。でもそれ以上は不明」

「そうなのか・・・古泉の予想最近起こっている殺人事件に関連しているらしいんだが」

「それは古泉一樹本人から聞いた。私もそこまでしかわかっていない」

「そうか・・・そうだ長門」

「なに」

俺は長門にあの夜のことを話した。

「それでだな。俺の携帯からあいつの残留思念みたいなのを辿る・・・って出来たりしないか?」

「・・・」

「いや無理ならいいんだ。ただお前なら出来そうかなって思ったから・・・」

21: 2010/01/24(日) 15:31:34.59 ID:kimgoZj1O
「出来る。貸して」

「本当か?」

俺は長門に携帯を渡した。長門は携帯をじっと見つめると徐に口を開いた

「・・・」

「・・・どうだ長門」

「・・・わかった」

「なにがわかったんだ?」

「涼宮ハルヒがあなたに電話をかけた理由」

「本当か!?」

長門はコクリと頷くと再び喋り始めた

「この電話から涼宮ハルヒの強い思念を感じた。その思念が発信したと思われる」

「どういう意味だ?」

「涼宮ハルヒ本人がかけたものではなく、彼女の潜在的意識がかけたもの」

「無意識のうちに繋がったって言うのか?」

「そう」

22: 2010/01/24(日) 15:34:11.70 ID:kimgoZj1O
「そんな馬鹿な話・・・いや、あいつならありえるな。」

「そう」

そうかそれならあの夜のことも説明がつく。あいつは電話に応答しなかったんじゃない。お互いの電話が勝手に繋がってたから気づかなかったのか。

「でもどういうことだ?なんで俺の携帯に繋がったんだ?」

「それも涼宮ハルヒの意思」

「あいつの・・・?」

「彼女が望んだからあなたに繋がった。」

「ハルヒ・・・」

23: 2010/01/24(日) 15:39:22.93 ID:kimgoZj1O
一体あいつに何があったのかはわからん。だがあの時あいつは誰よりも先に俺を頼ろうとした。そういうことか。

「長門・・・」

「なに」

「ありがとな。おかげで何か気づいた気がする」

「そう」

「じゃあ俺は帰るよ」

「そう」

「・・・どうした?何か言いたいことでもありそうだが?」

「何もない」

「そうか。じゃあな長門」

「・・・じゃあ」

25: 2010/01/24(日) 15:42:39.51 ID:kimgoZj1O
それから数日後、再び古泉から連絡が来た。

「実はあなたに折り入ってお願いが。」

「なんだ?」



「古泉」

「なんですか?」

「どういうことだ」

「というと?」

「なんでハルヒと俺がデートしなきゃいけな・・・ぐあっ!!」
「馴れ馴れしいのよ!!」

「しかもまだ記憶は戻ってないのか・・・」

「ええ、残念ながら」

「ったく!なんであたしがあんたみたいなのとデートしなきゃいけないわけ!?」

「俺だって同じ気持ちだ」

「なんですって!!?」

26: 2010/01/24(日) 15:45:25.46 ID:kimgoZj1O
「まあまあ、場所は既にセッティングしてあります。○×遊園地です」

「遊園地って・・・」

「お二人で楽しんできてください。」

「おい古泉・・・」

「なにか質問でも?」

「これはどういうことだ?なにか意図があってのことか?」

「意図というか・・・彼女の記憶が戻るかもしれないので、実験です」

「実験?それに俺を巻き込むのか!?」

「まあまあ、あなたも彼女の記憶が戻ったほうがいいでしょう?」

「まあそりゃあ・・・」

「では問題無しということで」

「やれやれ・・・あとで覚えてろよ」

27: 2010/01/24(日) 15:48:06.48 ID:kimgoZj1O
というわけで遊園地に着いたわけだが・・・

「何に乗るんだ?」

「はあ!?あんたが決めなさいよ!!あんた男でしょ!?」

「なあハルヒ、少しは楽しそうにしろよ」

「ぜんっぜん楽しくない!!それにハルヒって呼ばないで!!」
「はいはい、じゃあ涼宮さん、何に乗りましょうか?」

「ふんっ!!行くわよ!!」

「はあ、やれやれ」



その後ハルヒはジェットコースターに5連続で乗った挙げ句「大したことないわね」とか言ったり、お化け屋敷に入ったはいいがちっともビビらず「あんたの演技力はなってないわ!!」などとお化け役に説教しだす始末だった。

28: 2010/01/24(日) 15:51:08.32 ID:kimgoZj1O
そんなこんなで一日はどんどん過ぎていき、既に時間は夕方6時を回っていた。ハルヒもなんだかんだで楽しんではいるらしい。

「さあさっさと次行くわよ!!」
「はいはい」

「・・・ねえ」

「なんだ?」

「あんたはあたしの何なの?」

「え・・・?」

「別に変な意味じゃないわよ!?ただ・・・」

「?」

「あんたがあたしのことハルヒって呼ぶと・・・なんでかわからないけど嬉しいのよ」

「・・・」

「古泉君だっけ?彼が言うにはあたし記憶が無くなってるらしいじゃない」

「・・・」

29: 2010/01/24(日) 15:54:07.44 ID:kimgoZj1O
「もしかして記憶があった頃のあたしはあんたのこと・・・」

「お前・・・」

気がつくと周りには誰ひとりいなくなっていた。俺とハルヒの2人だけ。普通に考えたらありえない話なんだがこのときの俺は全く不思議に思わなかった。

「・・・」

「えっ・・・誰?」

俺達の目の前に立っているそいつはフードを被っていて顔が全く見えない。ただ一つ言えること、右手にナイフを持ったそいつは明らかに危険だということだ。

「逃げるぞ」

「えっ?でも・・・」

「いいから!!」

俺はハルヒの腕を引っ張り、一目散に逃げ出した。そうしないとハルヒが殺される・・・そんなきがしたからだ

30: 2010/01/24(日) 15:57:19.39 ID:kimgoZj1O
俺はひたすら遊園地内を走った。しかし一向に出口が見えない。それどころか走っても走ってもひとっこ一人いないのだ。俺はこんな光景を知っている

「閉鎖空間・・・!?」

だがおかしなことがある。俺が知っている閉鎖空間は全てが灰色の世界のはずだ。だがこれは灰色じゃない。普通の世界の光景だ。

「閉鎖空間じゃないのか?じゃあこれは一体・・・」

「ちょっと!!」

「なんだ!?」

俺が振り向くとそこには奴が立っていた。

「くそっなんだこいつは!!」

俺が再び逃げようとした瞬間、俺とハルヒの後ろは行き止まりの壁に変わっていた。

「なんなのよこれ!!さっきまでこんな壁・・・」

31: 2010/01/24(日) 16:00:02.79 ID:kimgoZj1O
「これは閉鎖空間じゃない。これは・・・・」

振り向くとナイフを持ったフード野郎が。後ろは行き止まり。これはもう絶対絶命だ。

「ちょっとどうすんのよ!?」

「安心しろ」

「え・・・?」

「お前は絶対に守ってやる。」

「あんた・・・」

「俺はお前と離れて普通の生活に戻ってからそれが幸せだと思ってた。」

「・・・」

「でも違ったんだ。俺の幸せはそんなんじゃない。ハルヒや古泉、長門や朝比奈さんと一緒にいることだ。」

「あんた・・・」

32: 2010/01/24(日) 16:03:10.68 ID:kimgoZj1O
「あーそうだもうひとつ」

「なによ?」

「・・・好きだぞ、ハルヒ」

「えっ?」

ハルヒの表情を見もせずに俺はフード野郎に突っ込んで行った。

「ハルヒ!!早く逃げろ!!」

「で、でもあんたが!!」

「俺は大丈夫だ!!だから早く!!」

「勝手に命令してんじゃないわよ!!」

「くそっいいから早く・・・」

その瞬間俺の腹部に何かが刺さる感覚があった。前を見るとフード野郎のナイフが俺を突き刺している。

ハルヒの方を見る。顔が青ざめている。何かを叫んでる気がするが、全く耳に入ってこない。俺は感じたね。「ああ・・・俺は氏ぬんだ」ってな。

「いやあああああ!!」

34: 2010/01/24(日) 16:06:27.39 ID:kimgoZj1O
キョン君!!キョン君!!

誰だ・・・誰の声だ?

俺が目を開けるとそこには古泉がいた。

「大丈夫ですか?」

「俺は・・・確か・・・」

「キョン君!!」

「朝比奈さん・・・?」

「よかった・・・キョン君が氏んじゃったかと・・・ふぇぇぇん」

全く状況が飲み込めない俺はとりあえず古泉に聞いてみることにした。

「大丈夫。あなたは氏んではいませんよ。涼宮さんもそこで寝ています。」

「でも俺は確か刺されて・・・」

「それは事実です。でもあなたは氏んでいない」

「長門か?」

「いいえ、あなたを治したのは彼女です」

35: 2010/01/24(日) 16:09:33.50 ID:kimgoZj1O
「喜緑さん・・・?」

「久しぶりですね」

「どうして喜緑さんが?」

「喜緑さんにそれを尋ねるまえに、僕は1つあなたにお詫びをしなければいけません」

「お詫び?」

「実は今回のデートは全て機関が仕組んだ囮作戦だったんです。」

「どういうことだ?」

「機関は涼宮さんが第3の事件の現場、そして犯人を目撃したと判断し、調査していました。」
「・・・」

「しかし犯人のあしどりは掴めない。そこで我々は涼宮さんを利用することにしたんです。」

36: 2010/01/24(日) 16:13:30.38 ID:kimgoZj1O
「利用だと?」

「涼宮さんが犯人を目撃しているとしたら当然犯人も涼宮さんを見ているはず。だとしたら犯人が次に狙うのは・・・」

「ハルヒか」

「そういうことです」

「ふざけるなよ古泉。俺とハルヒを囮に使いやがって。」

「すみません。ですが我々としてもあなた達に危害が及ばないよう万全の体制で臨んでいたんですよ。」

「じゃあなんでこんなことになった?」

「不測の事態が発生したんですよ。それにより我々は手を出すことが出来なくなった。」

そう言う古泉の表情は何と言うか悲しげな表情をしていた。

37: 2010/01/24(日) 16:16:54.49 ID:kimgoZj1O
「そこに喜緑さんと朝比奈さんが現れたんです」

「喜緑さんと・・・朝比奈さんが?」

「そう。私と彼女は目的が共通していたの。私はキョン君と涼宮さんを助ける」

「私は犯人を止めるために」

「だから協力することにしたの。そして喜緑さんが犯人を足止めしている間に私がキョン君と涼宮さん、喜緑さんを連れて1時間前に飛んだ。」

「じゃあ今は」

「ええ、5時になったばかりですよ。」

「犯人もまさか私とともに朝比奈みくるが現れるとは思わなかったでしょう。」

39: 2010/01/24(日) 16:29:15.92 ID:kimgoZj1O
「・・・ところで喜緑さん?」
「はい」
「あなたの口ぶりからしてもしかして犯人を・・・」

「はい。知っています。」

「そいつは一体・・・?」





「よう」

「・・・」

「あの時と同じだな」
「・・・」

「どうして言ってくれなかった?」

「・・・」

「言っても無駄だからか?」

「・・・」

「何か言えよ・・・長門」

まさか古畑に当てられるとは思わなんだ・・・

40: 2010/01/24(日) 16:37:05.99 ID:kimgoZj1O
「ごめんなさい長門さん。私はあなたの異変にすぐ気づくことが出来なかった。」

「・・・」

「私があなたの異変に気づければこんなことには・・・」

「あなたは悪くない」

「長門さん・・・」

「悪いのは私。ウイルスの侵入を許してしまった私の責任」

「全部そのウイルスが原因なんだな?」

「そう。ある一定の時間のみ私に障害を引き起こす。障害が発生している間私の意思とは無関係に行動させられていた」

41: 2010/01/24(日) 16:50:14.76 ID:kimgoZj1O
「でもどうして涼宮さんの関係者を・・・?」

「このウイルスは急進派によってもたらされたもの。急進派は涼宮ハルヒの関係者を頃していくことで事態の進展を図った」

「そしてあの日・・・ハルヒに見られたわけか」

「そう。急進派にとっては想定外の事態。混乱した急進派はいつ記憶が戻るかわからない涼宮ハルヒを完全に消去することを選んだ」

「・・・」

「ごめんなさい」

「お前が謝ること・・・無いだろ」

「でも私は傷つけてしまった・・・あなたを」

「長門・・・喜緑さん、長門を治すことは・・・」

43: 2010/01/24(日) 16:58:11.59 ID:kimgoZj1O
「出来ます」

「よかった!なら今すぐ・・・」

「でも出来ないんです」

「え?」

理解出来ない俺に朝比奈さんが続いた。

「長門さんは自分の意思と関係無いとはいえ、大変な罪を犯した・・・罪を償わなければいけない。」

「償うって・・・」

「そろそろ」

その瞬間長門の足がサラサラと砂になって消えだした。

「長門!!?」

44: 2010/01/24(日) 17:04:55.69 ID:kimgoZj1O
「思念体は私の処分を決定した」

「処分って・・・!?」

「思念体の決定は覆せない・・・私が長門さんを治しても、こうなることに変わりは無いんです」

「それならハルヒを!!あいつなら思念体なんて・・・!!」

「キョン君ダメです。涼宮さんは長門さんが頃す場面を目撃してるの。記憶がそのまま戻ったら涼宮さんの心は壊れてしまう!!」

「そして特大の閉鎖空間・・・ですか・・・それなら涼宮さんの記憶を改竄したほうがいい。そういうことですね」

「ええ・・・悲しいですけど」

47: 2010/01/24(日) 17:09:31.73 ID:kimgoZj1O
「古泉も朝比奈さんも何言ってんだ!!長門が消えちまってもいいのかよ!!」

「・・・」

「・・・」

「大丈夫」

「長門?」

「私が今後再構成される可能性はある」

「本当か!?」

「はい・・・ですがそれが何年後か何十年後になるか・・・もしかしたらあなたたちが生きている間にそれが実現するかすら・・・」

「そんな・・・」

「それに再構成されたとしても今までの記憶があるかどうか・・・」

48: 2010/01/24(日) 17:15:48.17 ID:kimgoZj1O
「お願いがある」

「なんだ長門?」

「私はあなたを傷つけた。あなたが私を嫌ってしまったなら仕方がない」

「・・・」

「でももしも私をまだ仲間・・・友達だと思っているなら・・・」

「・・・」

「待っていてほしい」

「長門・・・」

「私が再構成される時まで待っていてほしい・・・ダメ?」

「長門・・・何言ってんだ?」

「・・・」

「当たり前だろう?俺も古泉も朝比奈さんも、みんなお前のこと待っててやるよ」

「そう」

「ああ、だからな長門、約束だ」

「なに?」

49: 2010/01/24(日) 17:24:38.54 ID:kimgoZj1O
「何年後でも、何十年後でもいい。絶対帰ってこいよ」

「わかった」

朝比奈さんは長門を直視出来ないでいる。あの古泉ですらそんな状態だ。俺はもうすぐ完全に消えちまう長門に言った。

「じゃあ・・・行ってこい」

長門はコクリと頷くと

「行って来る」

とだけ言った。そして長門は俺達の前から完全に消えた。















数ヶ月後・・・

51: 2010/01/24(日) 17:39:32.04 ID:kimgoZj1O
「朝比奈さん、涼宮さんの様子はどうなんでしょう?」

「良好なようです。きっと今頃キョン君と・・・」

「そうですか。でも彼女は長門さんのことを・・・」

「・・・」

「SOS団も4人しかいなかった。そういうことにしてあるんですね?」

「はい・・・」

「そうですか。ところで朝比奈さん?」

「はい?」

「ひょっとしてあなた・・・知ってるでしょう。長門さんが戻ってくるか」

「ええっ!?それは・・・」

「是非知りたいですねえ」

「えっと・・・それは・・・」

「禁則事項。そうですよね?」

「えっ!?・・・は・・はい・・・」

僕は困り果てている朝比奈さんを見て笑った。彼女の顔を見ていればわかるのだ。長門さんが戻ってくることは。

52: 2010/01/24(日) 17:47:06.28 ID:kimgoZj1O
「キョン!!早く行くわよ!!」
「はいはい。わかってるよ。」

「あんたのせいで映画間に合わないじゃない!!」

「仕方ないだろ!?昨日残業だったんだから。大体今何時だ!?朝の7時だぞ!!映画余裕で間に合うだろ!!」

「うっさいわね!!あたしはあんたと違って時間に余裕を持つタイプなの。こんなの大遅刻だわ!!」

ハルヒの記憶が戻ってからというもの、俺達は頻繁に会うようになった。だからと言って付き合っているわけでは無いからな。


54: 2010/01/24(日) 17:54:28.98 ID:kimgoZj1O
「そういえば今度SOS団メンバー全員で久しぶりに集まろうと思うの。」

「そうだな。5人で集まるのもかなり久しぶりだな。」

「何言ってんの?SOS団は4人しかいなかったじゃない」

「え・・・ああ、そうだったな」

そう、今のハルヒの中にあいつはいない。

「そんときに重大発表をしようと思うの!!」

「ほう?どんな発表だ?」

「それは当日までのお楽しみよ!!」

「ああそうかい」

こいつの言い出すことだ。またろくでもないことに違いない

55: 2010/01/24(日) 17:58:42.92 ID:kimgoZj1O
それから数日後・・・

「みんな久しぶりね!!」

「ええ、涼宮さんもずいぶん元気そうで」

「当たり前じゃない!!みくるちゃんも元気?」

「は・・・はい・・・」

「どうしたんですか朝比奈さん?なんかあったんですか?」

「えっと・・・実はこのあと・・・」

「このあと?」

「いえっ!!やっぱりなんでもないですぅ!!」

「?」


さあ!!お待ちかねの重大発表よ!!

やれやれ、一体なんの発表だ?

56: 2010/01/24(日) 18:03:05.36 ID:kimgoZj1O
実は・・・我がSOS団の活動を再開したいと思います!!

マジかよ・・・

「みんな仕事あるから土日祝日だけの活動ね。来なかったら罰金だからね!!」

「はあ・・・で?発表ってのはそれで終わりか?」

「まあ待ちなさいキョン。もうひとつあるのよ。」

「なんだ?早く言え。」

「SOS団活動再開といっても、今までと同じじゃあ面白くないわ。」

「なるほど」

「そこで!!新メンバーを加入したいと思います!!」

57: 2010/01/24(日) 18:08:58.86 ID:kimgoZj1O
「新メンバー?」

「そう!!私が偶然町で見かけて即スカウトしたの!!あまりの可愛さにきっとみんなびっくりするわよ!!さあいらっしゃい!!」








「涼宮さん・・・これは・・・」

「ハルヒ・・・お前・・・」

「どう?すごい可愛いでしょ?長門有希っていうのよ。」

俺は朝比奈さんを見た。朝比奈さんはこちらを見て苦笑いしている。

なるほど・・・知ってたのか。

58: 2010/01/24(日) 18:18:24.40 ID:kimgoZj1O
「この子を見てるとなんだか初めて会った気がしないのよね。」

そりゃあそうだろ

「とにかく有希!!みんなに挨拶しなさい!!」

「・・・・ただいま」

ハルヒがキョトンとしている。

「なに?あんたたち知り合い?」

俺達3人は顔を見合わせて苦笑いした。

「ええ、実はそうなんです」

「なによ!!それならあたしにも教えなさいよね!?」




後で聞いた話だが長門がこんなに早く帰ってきたのは・・・やはりというかなんというかハルヒのおかげらしい。ハルヒの「こんな女の子をスカウトしたい!!」という願望が長門に繋がったらしい。


61: 2010/01/24(日) 18:33:29.75 ID:kimgoZj1O
「しかしハルヒのやつ、とんでもないことしやがったな」

「まさか長門さんを・・・恐れ入りました」

「でもキョン君・・・これは果たしてよかったことなんでしょうか?」

「・・・」

「確かに長門さんは帰ってきたけど、殺されてしまった3人は・・・」

「・・・なあ長門」

「なに」

「俺達はお前がしたことを許さないなんて思っちゃいないし、俺を刺したことも別に許すぞ」

「・・・」

「だけどな、それ以上にお前はやっちゃいけないことをやっちまったんだ。」

「そう」

「これからずっと、罪を背負っていかなきゃいけないんだ。わかるな?」

「わかっている」

62: 2010/01/24(日) 18:45:26.62 ID:kimgoZj1O
「そうか・・・なら俺も手伝ってやる」

「私もですぅ!!」

「おや、奇遇ですね、僕もお手伝いしましょう。」

長門はじっとこちらを見ている。

「俺達は仲間・・・だろ?俺達も一緒に背負ってやる。」

「・・・そう」

「・・・ありがとう」

63: 2010/01/24(日) 18:51:20.68 ID:kimgoZj1O
一応これで終わりです。勢いで書いたけど長門復活させないほうがよかったな・・・

66: 2010/01/24(日) 19:14:44.20 ID:d3LY5pTn0
ハッピーエンドいいじゃないか、乙

引用: キョン「ハルヒ元気にしてるかな・・・」