1: 2010/02/11(木) 23:37:10.94 ID:62cTwFsR0

4月

岡部「次~」

キョン「えーと……です、よろしく」

パチパチ

キョン(いつになっても自己紹介って奴は慣れんな)ハア

ストン

キョン(どうせ大概の奴とは半年後には仲良くなってんだから)

キョン(この行程をとばしたい…)

岡部「はい次」

ハルヒ「東中学出身……」

キョン「……!」クルッ
涼宮ハルヒの憂鬱 Ⅱ
2: 2010/02/11(木) 23:39:31.53 ID:62cTwFsR0

ハルヒ「東中学出身、涼宮ハルヒです」

ハルヒ「一年間よろしくお願いします」

パチパチ

キョン(お、おお)

キョン(すげえ美人だ……)

岡部「おーし、次の奴」

キョン(入学早々ツイてるんじゃないか、俺!)



3: 2010/02/11(木) 23:41:51.25 ID:62cTwFsR0

昼休み

国木田「いやー、キョンの後ろの子」

国木田「えーと涼宮? さんだっけ?」

国木田「すごい美人だったね」

キョン「ああ、全くそれには同意だ」

キョン「ちょっと憂いをもった目がまた儚い感じでな」

キョン「入学早々ラッキーだったかもな」

谷口「おいおいお前ら、そりゃアイツの中学時代を知らないから言えるんだよ」

国木田「ああ谷口はそういえばあの子と同じ中学だったっけ」

キョン「なんかしたのか、涼宮」

谷口「なんかもコンガもあるか。俺たちの界隈じゃ有名なんだぜ涼宮」

谷口「アイツぁな、ちょっとココがよ」トントン

谷口「俺たちとは違う思考回路してんだよ」

国木田「へー、興味あるな。もしかしてすんごい頭いいとか?」

キョン「IQ200とか?」

6: 2010/02/11(木) 23:44:06.46 ID:62cTwFsR0

谷口「ばっか。そんなんじゃねーよ! ……まあ元々頭はいいんだろうけどな」

谷口「お前ら覚えてないか? 新聞に載ったあの謎のミステリーサークル事件」

国木田「あーー、あったねそんなの。あれがどうかしたの?」

キョン「おいおいまさかあの子がやったとか言うんじゃないだろうな?」

谷口「ご名答」

谷口「ありゃ涼宮の仕業だって話だぜ」

キョン「何を根拠にそんなこと……」

谷口「根拠もクソも、涼宮が自分で言ったんだからな。私がやったって」

国木田「へーー」

キョン「……なんかの間違いじゃないのか」

谷口「一度だけだったらな」

谷口「それだけじゃないんだよ。朝教室に行ったら机が全部廊下に出されていたこともあったな」

谷口「校舎の屋上に星マークをペンキで描いたり、学校中に変なお札、キョンシーが顔にはっ付けているようなやつな、あれがベタベタ貼りまくられていたこともあった。意味わかんねーよ」


9: 2010/02/11(木) 23:46:11.20 ID:62cTwFsR0

キョン「……」

国木田「それが本当なら……なにがしたいのかな、彼女」

谷口「さあな。凡人の俺には涼宮の考える事なんざ、想像の範疇外だね」

谷口「まあ、それに懲りたのか三年になった頃には落ち着き始めてぱったりさ」

キョン「……」

谷口「成績の方も、ぱったりになったみたいだけどな」

谷口「真面目に勉強してりゃ光陽園にだって行けたって噂なのによ」

国木田「ふーん」ジー

谷口「な、なんだよ?」

国木田「なんか谷口、妙に詳しくないかい?」

キョン「ま、な。ただのクラスメイトに対する興味本位を超えてるように思えるな」

谷口「ばばバッカちげえっつーの! たまたま俺の情報網にアイツの奇行が入っただっけだって! まじで!」

国木田「たまたまねえ……」

キョン「谷口、言うわりにはおまえも彼女に惚れてたクチじゃないのか?」


10: 2010/02/11(木) 23:48:28.76 ID:62cTwFsR0

谷口「ちがうっつーの! 確かにあいつは美人だし、運動もできるからモテたけどほとんど誰とも会話しなかったしクラスの女からなんか不気味がられてたんだぜ、何考えてるかわからないってな」

谷口「だから涼宮が誰かと付き合ったーなんて話はなかったし、涼宮狙いの奴はたくさんいたが奴の奇行を前にして誰ひとりとして行動には移らなかったんだぜ」

キョン「必氏さが窺えるな」

国木田「ほんとに」クスッ

谷口「だーーー! 信じろ! 俺は涼宮なんかなんとも……!」ガタン

ガラガラ
ハルヒ「……」

キョン「おい、谷口!」

国木田「声が大きい……!」

谷口「!」

スタスタ

谷口「……!」


11: 2010/02/11(木) 23:50:48.46 ID:62cTwFsR0

ハルヒ「……」

キッ

谷口「ヒぃ!」

スタスタ
ストン

国木田「こ、怖かったあ……」

キョン「お前は声がでかすぎるんだよ」

谷口「す、すまん」

キーンコーンカーンコーン

教師「席座れー」


12: 2010/02/11(木) 23:53:14.54 ID:62cTwFsR0

2週間後

放課後

キョン「さてと……」

キョン「さっさとうちに帰ってやり残してるファイナルファイトでも…」

キョン「……」

テクテク

キョン(あー国木田と谷口はバスケ部に美人マネージャーがいるとか言ってたからな)

キョン(見に行ったんだろう)

テクテク

キョン(しかしそういう有望株は得てしてその部のイケメンエースくんが既にモノにしているものなのさ)

キョン(よく行くぜ、あいつらも)

キョン(暇人だな)

キョン(……)

キョン(……人の事は言えんか)


13: 2010/02/11(木) 23:55:26.51 ID:62cTwFsR0

パコーンパコーン

キョン「……ん?」

ヒョイ

キョン(ほおー、二階の窓からでもテニスコートは見えるのか)

パコーンパコーン

キョン(うめーな、やっぱり。俺じゃラリーなんて一本も続かないぜ)

キョン(しかしそれにしても……)

キョン(かたやユニフォーム。相手は指定ジャージか……)

パコーン! ゲーム、スズミヤ!

キョン(新入生の子のほうが強いじゃないか)

キョン(あの長いポニーテールをフリフリしながら打つ姿)

キョン(正直たまりません……!)

キョン(……)


15: 2010/02/11(木) 23:59:49.23 ID:62cTwFsR0

パコーンパコーンパコーンパコーン

キョン「……」ボケー

キョン「あ!」

キョン「どっかで見たことあるかと思いきや、ありゃあ……」

キョン「あの涼宮じゃないか!?」

キョン「おいおいおい、確かに運動神経はいいと聞いてたが……」

キョン「しかも攻めてるのは涼宮みたいだな……」

キョン「……」

パシコーン! フォーティフィフティーン!

キョン「素人目にみても、ユニフォームの子、かなり上手いんじゃないか?」

キョン「すげえ、な」

キョン「……」

キョン「あ、パンツ見えた…」ホクホク

キョン「……」


17: 2010/02/12(金) 00:02:03.50 ID:20Soq4Pd0

パコーン!

ゲームマッチウォンバイスズミヤ!

キョン「終わった、のか?」



ハルヒ「……」

ズンズン

パンチラ「チョ、チョットアイサツクライ!」

ブイン「マッテ、ゼヒウチノブカツニ!」

ハルヒ「……」



キョン「なんだ、揉めてんのか?」

キョン「……」

キョン「涼宮、カバンを持って……」

キョン「玄関の方へ……」


18: 2010/02/12(金) 00:04:07.77 ID:20Soq4Pd0

キョン「……」

キョン「……」

キョン「……さて、俺も帰るか!」

キョン(他意はないぞ、たまたまだ)

キョン(偶然放課後残っていた俺は偶然テニスをし終えた涼宮とばったり会うだけ)

キョン(それだけだ!)

タッタッタッタ!





19: 2010/02/12(金) 00:06:56.05 ID:20Soq4Pd0



玄関

キョン「……」

キョン(……)

キョン(まだか、まだこないのか……!)

キョン(いい加減俺も靴ひもを結び直す作業に疲れてきたぞ)

ズンズン

ハルヒ「……」

キョン(来た!)

キョン「よ、よお!」

ハルヒ「……」

キョン「すごいテニス上手なんだな! 俺、たまたま上から見てたんだけど……相手は上級生じゃないか?」

ハルヒ「……」


20: 2010/02/12(金) 00:10:52.21 ID:20Soq4Pd0

キョン「テニスやってたのか? 中学の時にでも」

ハルヒ「……見てたの」

キョン(無視かよ)

キョン「あ…ああ」

ハルヒ「……」

ハルヒ「……ねえ」

キョン「うん?」

ハルヒ「あんた、誰よ? ストーカー?」

キョン(……)

キョン「え」

ハルヒ「こんな時間まで待って、覗いてるなんて」

ハルヒ「それに顔が変Oっぽいわね」

キョン「」

ハルヒ「……」

21: 2010/02/12(金) 00:13:02.74 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「ねえ」

キョン「……え、あ、ああ?」

キョン(俺、コイツとクラスメイトだよな。つーか目の前で自己紹介したはずだよな……)

ハルヒ「上から見てたんでしょ」

キョン「いや、違うんだ、今日ほんとにたまたま図書館に寄ったりしてて遅くなっただけで、別に君を待ってたなんてことはほんとに……!」

ハルヒ「……」

ハルヒ「あたしさ」

ハルヒ「傍から見て、楽しそうに見えた?」

キョン「え?」

ハルヒ「充実してるように見えた?」

キョン「た、楽しそう?」

ハルヒ「そう、何かに没頭してるときって真剣だったり、どこか楽しそうだったりするじゃない」

ハルヒ「そんな風に、見えたかって聞いてるの」

22: 2010/02/12(金) 00:15:33.41 ID:20Soq4Pd0

キョン「……」

キョン「……なんだかよくわかんないが」

キョン「学校で席に座ってるときよりは、楽しそうだったんじゃないか……たぶん」

キョン「涼宮、つまらなそうじゃないか。いつも」

キョン「まるでさ」

キョン「『世界は終わる』って題名の絵みたいだぞ。変な喩えだが」

ハルヒ「…」ジー

キョン「はっ!」

キョン「いや、これも別に他意はないんだ!?」

キョン「たまたま視界に入った時がいつもそんな風ってだけで!」

ハルヒ「……そう」


23: 2010/02/12(金) 00:18:46.63 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「やっぱりね」

キョン「…やっぱり?」

ハルヒ「……」

ハルヒ「あんた、名前は?」

キョン「一応俺も、お前と同じクラスのクラスメイトなんだがな」

ハルヒ「あたしクラスの名前なんて一人も覚えてないわよ」

キョン「それもまたすごい話だな」

ハルヒ「そう? どうせすぐに忘れる名前だもの。無駄な労力、使いたくないわ」

キョン「俺の名前は覚えてくれるのか?」

ハルヒ「……警察行く時に名前も知ってた方が早く捕まるでしょ」

キョン「え」

ハルヒ「で、なんなの」

ハルヒ「ほんとにストーカーで覚えるわよ」

キョン「え、ああ! ……だよ。みんなからはキョンって呼ばれてる」

24: 2010/02/12(金) 00:21:04.53 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「キョンね」

ハルヒ「気が向いたら覚えとくわ」

キョン「そうかい」

ハルヒ「……じゃああたし行くわね。着替えなきゃならないし」

スタスタ
ピタッ

ハルヒ「ついて来ないでよ? ていうか覗きに来ないでよ?」

キョン「ばか、行かねーよ」

キョン「……」

キョン「……じゃあな、涼宮」

スタスタ

ポツーン

キョン「気が向いてたら、か……」

キョン「……」

キョン「そうなることをできるだけ願うよ」

25: 2010/02/12(金) 00:23:09.56 ID:20Soq4Pd0
朝のHR前
キョン「……!」

ハルヒ「なに」

キョン「なにって訳でもないんだが……」

キョン「髪、切ったのか」

ハルヒ「それが?」

キョン「けっこう長いのも似合ってたのにな、と」

ハルヒ「あんた、それセクハラよ」

ハルヒ「出会ってひと月も経たない女の子に向かって」

キョン「いや、そんなつもりはないんだが……」

ハルヒ「ふん、怪しいとこね」

キョン「……」

キョン(しかしそれはそれで似合ってるな……と思ったが口にだすのは控えておこう。何を言われるかわかったもんじゃない)

ハルヒ「言いたいことがあるならどうぞ」

キョン「いーえ、とんでもない」

ハルヒ「どうだか」

26: 2010/02/12(金) 00:25:14.19 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「……そういえば」

キョン「ん?」

ハルヒ「あんたどっか仮入部した?」

キョン「ああ部活か。涼宮と違って、残念ながら俺はどこの運動部にはついていけなさそうでね」

キョン「文化系も一応パンフだけはもらったんだが……」

キョン「どれも家にいても出来そうなものばかりだったから、やめた」

ハルヒ「ふうん、やる気ないのね」

キョン「そういう涼宮はどうなんだ? お前さんなら運動部は引く手数多だろう」

ハルヒ「てんでだめね。運動部は」

ハルヒ「……」

ハルヒ「あの馬鹿面した男と友達なら聞いてるんでしょ」

キョン(馬鹿面……ああ谷口ね)

ハルヒ「あたしがどんなことをしたか」

ハルヒ「そこからあたしの求めてるモノがないのもわかるでしょ」


28: 2010/02/12(金) 00:27:59.67 ID:20Soq4Pd0

キョン「……」

キョン(校庭にミステリーサークルを作り、キョンシーの札を貼るような奴が求めてること?)

キョン「……さあ。皆目見当もつかないな。オカルト研究か?」

ハルヒ「違うわよ。一応文化部も見たけどお話にもならない。そもそもこの学校に期待したのが間違いだったわね」

ハルヒ「馬鹿みたい」

キョン「……」

キョン「それじゃあちなみに聞くがな」

キョン「お前は何がしたいんだ? でかいUFOでも連れてきてキャトルミューティレーションでもされたいのか」

ハルヒ「…まあ、あながち外れちゃないわ」

キョン(まじかよ)

ハルヒ「ミステリーサークルを作ったのはそのため」

ハルヒ「いろんな文献読んで、夜通しやったけど来やしなかった」


キョン(そりゃそうだ)

キョン(一介の女子中学生がマジモンのUFO呼んだとなりゃ、それこそニュースどころの騒ぎじゃなくなる)

29: 2010/02/12(金) 00:30:14.70 ID:20Soq4Pd0

キョン「それじゃ、お前はUFO、ひいては宇宙人に会いたいと……」

ハルヒ「違うわよ」

ハルヒ「あたしの望むのは」

ハルヒ「宇宙人、未来人、異世界人、超能力者、またはそれに準じるものと」

キョン「ものと?」

ハルヒ「ともd……」

キョン「?」

ハルヒ「……」

ハルヒ「コンタクトをとること、それが目的よ」

キョン「……」

キョン「……そりゃ、また」

キョン「なかなか難儀な望みだな」

ハルヒ「うるさい」

ハルヒ「あんたなんかどうせこんな平坦な毎日に飲み込まれて、のうのうとくだらなく過ごしていくんでしょ」

ハルヒ「あたしはそんなの絶対にごめんよ」

30: 2010/02/12(金) 00:32:36.70 ID:20Soq4Pd0

キョン「そうか……」

ハルヒ「なによ、笑えたければ笑えばいいわ。みんな馬鹿にするし、あたしもそれならそれでいいと思ってるわ」

キョン「んなことねーよ?」

キョン「うーん、案外涼宮の言うことの方が正しいかもなと考えたり」

キョン「俺もそういう毎日がくればいいとも思ったりすることも、ままある」

キョン「あ、断っとくがこりゃ別にお前に話を合わせるためーとか可哀相だから慰めにーとかそんなつもりは全くないからな。そんなつもりならさっさと話なんか切り上げてるさ」

ハルヒ「……」

キョン「ほいで、ええと、なんだっけ」

キョン「そう、俺もそんな毎日が来りゃいいなーなんて思う」

キョン「でも悲しいことに俺は平々凡々な人間で、この世界の物理法則に逆らうような事象を本気で見つけようとする才能も、努力も、根気もない」

キョン「とりあえずは今のこの毎日を受け入れてるってことだ」

キョン「情けないことに、諦めることを余儀なくされてる」

ハルヒ「……」


31: 2010/02/12(金) 00:34:46.79 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「……」

キョン「だからさ」

キョン「お前さんが本当にそういう、この現実に逆らうようなものを探し求めてるってんならな」

キョン「俺はな、ちょっとだけ羨ましいよ」

キョン「変なこと言うようだが」

キョン「自分に嘘つかず生きるってのは、けっこう難しいことだからな」

キョン「運命に逆らう、ってのは言い過ぎかもしれんが……自分の求めるものに対してちゃんと向かっていけるってのはすげーことだと少なくとも、俺は思うぜ?」

ハルヒ「……」ポケー

キョン「おーい、聞いてるかー。俺今いいこと言った気がするんだけどー」

ハルヒ「え、あ、ううん?」ポロポロ

キョン「ちょ、え。お前泣くことじゃないだろ」

ハルヒ「な、泣いて? あたし、ちちち違う! これは花粉で……」

キョン「俺なんかマズイこと言ったかね?」

ハルヒ「ううう。あ、あたしちょっとトイレ……」

ダダダー

32: 2010/02/12(金) 00:37:20.39 ID:20Soq4Pd0

キョン「お…おい! HRもうすぐ……!」

キョン「……おーい」

国木田「……」ジー

谷口「……」ジー

キョン「……」

キョン「……な、泣かしてしまった」

キョン「……」ポリポリ

キョン「……どうしたもんかな」

岡部「おら座れー、あれ? おい涼宮ドコ行ったー」

谷口「キョンが泣かしてましたー」

エーマジカヨー ナカスナヨ-

キョン「……谷口」

キョン「てめえ後で覚悟しとけ」


34: 2010/02/12(金) 00:39:36.26 ID:20Soq4Pd0

教師「えー、であるからして」

ガラガラ

ハルヒ「……」

スタスタ

教師「おいー、ドコ行ってたー?」

スタスタ

ハルヒ「……」キッ

教師「いや睨まれても」

ハルヒ「……」キッ

キョン(俺か!?)

ハルヒ「……」ジーーー

キョン(いやいやいや!)

ハルヒ「……トイレです」

教師「そ、そうか。悪かった、席に戻っていいぞ」

ハルヒ「……」プイ

35: 2010/02/12(金) 00:41:58.44 ID:20Soq4Pd0

キョン(……)

スタスタ

ストン

ハルヒ「……」

キョン(気まずい)

キョン(視線が痛い)

キョン(なにか声をかけた方がいいものなんだろうか?)

キョン(……泣かしちまったのは俺?)

キョン(だよな)

キョン(うーむ、さっきはゴメンなとでも言えば丸く収まってくれるのか)

キョン(俺自身は別に何も悪いことを言ったつもりはないし、涼宮としても謝られるよりは放っておいてもらった方がいいんじゃ……)

キョン(いやしかしだな。俺に悪気はなくても相手を傷つけるってことも無きにしも非ずであって……)

キョン(やはり一言謝って)


36: 2010/02/12(金) 00:44:45.09 ID:20Soq4Pd0

ブスッ!

キョン「いってえっ!?」

クラスメイト「……」クルッ

ジー

キョン(う、みんなの視線が……)

教師「うるさいぞぉ」

キョン「すみません……」

キョン「さ、どうぞ授業をお続けに」

ハルヒ「ふふふ!」

キョン(……涼宮の野郎!)


37: 2010/02/12(金) 00:47:17.32 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「ちょっとアンタ」

キョン「……」
クルッ

キョン「なにしや……!」

ハルヒ「また怒られるわよ」

ハルヒ「前向いてないと」ニヤニヤ

キョン「……くそ」
クルッ

キョン「涼宮」

ハルヒ「なによ」

キョン「確かに俺がお前を泣かしてしまったかもしれんがな、後ろから無防備なクビを刺すというのは……」

ハルヒ「…泣いてないわよバカ」ベー

キョン「そ、そうなのか?」

ハルヒ「当たり前でしょ」

キョン(じゃあなんで俺は刺されたんだよ)


39: 2010/02/12(金) 00:50:11.93 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「そんなことより」

キョン「……」

ハルヒ「あんたさ、なんか部活とかには入ってないんでしょ」

キョン「へ? ああ、さっき言ったとおりだ」

ハルヒ「じゃあ放課後暇でしょ?」

キョン「いや、まあそれはそうだが」

キョン(なんだなんだ。嫌な予感しかしないぞ)

ハルヒ「あんだけ言ったんだから、少し付き合ってくれてもいいでしょ」

ハルヒ「あたしのやりたい事に」

キョン(……)

ハルヒ「なに、さっきの言葉は嘘だったわけかしら」

キョン「……」

キョン「……はぁ」

キョン「俺に拒否権はあるのか?」


40: 2010/02/12(金) 00:52:17.59 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「……分かるでしょ?」

チクチク

キョン「首を刺すな首を」

キョン「はあ、了解だ。OKだOK……」ヤレヤレ

ハルヒ「よし!」

ハルヒ「じゃあ放課後、行動開始は部活してる以外の生徒が帰ってから」

ハルヒ「この教室に集合ね」

ハルヒ「ちゃんと、残ってるのよ」

キョン「へいへい」

ハルヒ「へいは一回」

キョン「へい」



42: 2010/02/12(金) 00:55:45.01 ID:20Soq4Pd0
放課後
キョン(粗方の人がいなくなってから。だったよな)

キョン(もう外じゃ運動部しか活動してないし)

キョン(そろそろかな)

ガラガラ

キョン「おいーす」

ハルヒ「遅いわよ」

キョン「……」

キョン「人がいなくなってからって言ったのはお前だろう?」

ハルヒ「もうちょっと早くてもよかったのよ!」

キョン「注文の多い奴だ」ハァ

キョン「それでなんだ」

キョン「放課後に呼び出しなんて、愛の告白か? それとも決闘の申し込みでもする気か」

ハルヒ「ふん。バカも休み休み言ってよね」

ハルヒ「どうしてあたしがアンタみたいな冴えない男に告白なんかしなきゃならないのよ!」

キョン「そら失礼」

44: 2010/02/12(金) 00:58:08.58 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「それで」

キョン「?」

ハルヒ「本題に入るわよ、あんまり時間もないし」

キョン「なんだ?」

ハルヒ「……」

キョン「なんだよもったいぶるなよ」

ハルヒ「……あんたさ」

キョン「ああ」

ハルヒ「……」

ハルヒ「…今日言ってたことはホントよね?」

キョン「今日言ってたこと?」

キョン(えーと……)

ハルヒ「俺もホントは不思議が沢山ある毎日が過ごしたかった、って言ってたでしょ」


45: 2010/02/12(金) 01:00:25.63 ID:20Soq4Pd0

キョン「え、あ、ああ」

キョン「そら言ったが……それとこれとに何の関係があるんだ?」

ハルヒ「勘が悪いわね、ちょっと考えたら分かるでしょ」

キョン「……」

ハルヒ「不思議探しよ不思議探し!」

キョン「ふ、不思議探し?」

ハルヒ「あんたの望みをあたしが叶えてあげるのよ」

ハルヒ「感謝してよ!」ババーン

キョン「……」

ハルヒ「……なによ」

ハルヒ「なにか言いたげな顔ね」

キョン「ああ、よくわかってらっしゃる」


46: 2010/02/12(金) 01:02:48.63 ID:20Soq4Pd0

キョン「確かにな、俺はなんだっけ、そういろんな不思議っつーか非日常的な毎日を望んでいたさ」

キョン「だがな、コレも言った通り」

キョン「俺は残念ながらそういう毎日を諦めちまったんだよ」

ハルヒ「諦めちまった、んでしょ?」

キョン「ああ」

ハルヒ「だ! か! ら!」

キョン「!」

ハルヒ「あたしが叶えてやるって言ってんでしょ、このスカポンタン」

ハルヒ「諦めてた夢を叶えてくあげるんだからそれはもう盛大に感謝してほしいわね」

キョン「……」


48: 2010/02/12(金) 01:08:24.43 ID:20Soq4Pd0

キョン(大きなお世話っちゃ、それでおしまいだが……)

キョン(こいつ、たぶん本気で俺のことを助けてくれる気なんだろうなってのは伝わる)

キョン(無下に断るのも……良心の呵責が)

キョン(こんなとこで大して持ってないお人好しスキル発揮すんのもどうなんだ、俺)

ハルヒ「で、どうすんの。叶えて欲しいの! 欲しくないの!?」

キョン「……」

キョン(まあ放課後は特段やることもなく暇だし)

キョン(いやらしい考えかもしれんが涼宮は美人だし。佐々木とおんなじくらいかなーとか思ったり思わなかったり)

キョン(若いんだから、ちょいとばかし美少女とモラトリアムな放課後活動したって、悪くはないんじゃないか?)

キョン「……」

ハルヒ「聞いてんの!?」

キョン「メンバーは」

キョン「メンバーは俺とお前だけなのか?」

ハルヒ「そうねえ……まあ、あんたが誰かあてがあるってんなら考えてみてもいいけど」

キョン「いや、特には」

51: 2010/02/12(金) 01:13:52.96 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「なんだ。じゃあ当分はあたしとアンタだけでいいんじゃない?」

ハルヒ「下手に誰か入れても動きづらくなるだけよ」

ハルヒ「要は量より質よ!」

キョン「そういう…もんなのかねぇ」

キョン(つーかそもそもの話、入る奴なんかいるわけねーか)

ハルヒ「と言うことで、あんたもあたしの活動に参加するってことでOKね」

キョン(なんか最初と話がズレてきてるが……)

キョン「うーむ、まあ成り行き上仕方のないことだがOKだ」

ハルヒ「なによ、やるって言ったからにはちゃんと毎回参加するのよ!?」

ハルヒ「来なかったら氏刑だからね!」バンッ

キョン「……はあ」ヤレヤレ

キョン「ああ、わかったよ」

キョン「氏刑はいやだからな…」


52: 2010/02/12(金) 01:16:45.39 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「ふふふ。よーし、あーなんかワクワクしてきたわ!」

キョン「そらよござんす」

キョン「だがよ、ちょっとまて涼宮」

ハルヒ「まだなんか文句ある訳?」

キョン「いやいや、具体的にはまず何すんだよ。当てもなく学校内をさまよい歩くなんて絶対ゴメンだぜ」

ハルヒ「ひひひ~! ちゃあんとそのへんは計画立ててるわよ」

キョン「ほう」

キョン「そいじゃその計画って奴をお聞かせ願おうか」

ハルヒ「まずは活動拠点を手にいれるわ」

キョン「活動拠点?」

ハルヒ「そう。何か行動を起こすにしても土台がしっかりしてなきゃ計画倒れになるわ」

キョン(こんな行き当たりばったりでできたモンに土台もカカシもあるもんなのか)

ハルヒ「文化部の部室棟に空きがあるわ」

ハルヒ「そこを戴くのよ!」

53: 2010/02/12(金) 01:19:11.28 ID:20Soq4Pd0

キョン「戴くってなあ、お前……そんなのたまたまいなかっただけじゃないのか?」

キョン「それに顧問もいないのに部室なんて使えないだろ」

ハルヒ「あーもうそんなのは後からどうにでもなるのっ!」

キョン「おいおい……」ハァ

ハルヒ「いいから行くわよ」

グイグイ

ハルヒ「ほらっ立って!」

ダダダッ!

キョン「お、おい行くってどこにだよ」タッタッタ

ハルヒ「文化棟!!」

キョン「今からかよ!? 校門あと30分で閉まっちまうぞ!」ズルズル

ハルヒ「善は急げ! 思い立ったが吉日! 雨降って地固まるよっ!」

キョン「最後は意味わかんねえよ!」ゴロゴロゴロ



54: 2010/02/12(金) 01:22:11.87 ID:20Soq4Pd0


文化棟

キョン(やれやれ……)

キョン(引っ張られてここまで来たはいいが)

キョン「涼宮。それで空き部室ってのはどこなんだ」

ハルヒ「文芸部室よ」

キョン「……誰かいたら?」

ハルヒ「平和的に譲ってもらうわ」

キョン(その顔はどう見ても頃してでも奪い取るって言ってるぞ…)

キョン「鍵閉まってたらどーすんだよ」

ハルヒ「うん?」

ハルヒ「ぶっ壊すに決まってんじゃない」

キョン(……入学してからひと月も経たないうちに停学は勘弁してくれよ)



56: 2010/02/12(金) 01:27:00.39 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「ここね」

ガチャリ

ハルヒ「…」ニヤ

キョン(開いてんのかよ。つーかその顔は完全に空き巣犯にしか見えんぞ)

ハルヒ「いくわよ……!」

キョン「……」コクリ

バン!!!

ハルヒ「はい! ちょっと失礼するわよ!!!!!」

ガラーン

ハルヒ「……って」

ハルヒ「誰もいないじゃないの」

キョン「よかった……」

キョン(ん……?)



58: 2010/02/12(金) 01:33:26.00 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「なに?」

キョン「いまソコのパイプ椅子に誰か……」ゴシゴシ

ハルヒ「パイプ椅子? 誰もいないじゃない」

ハルヒ「なに、早速幽霊でも見たの!?」

キョン「いや、幽霊っつーか普通にウチの制服着てた子が」

ハルヒ「ははーん。あんた、あたしをビビらそうって訳?」

ハルヒ「一万年と二千年早いわよ!!」

キョン「ほんとに……」

ピタッ

キョン(パイプ椅子が温かい、ような気が)

キョン(って暖房の前だから当たり前か)

ハルヒ「何にせよ、空いてて良かったわ」

ハルヒ「これから放課後活動はココで行うから」

ハルヒ「よろしく~!」


59: 2010/02/12(金) 01:39:21.47 ID:20Soq4Pd0

キョン「鍵どーすんだよ。今日はたまたま開いてたからよかったけどよ」

ハルヒ「そんなの簡単よ」

ハルヒ「文芸部に部員はいないじゃない」

キョン「ああ」

ハルヒ「あたしと」

キョン「はい」

ハルヒ「あんたが」

ハルヒ「文芸部に入る」

ハルヒ「学校の決まりで部員のいる部は潰せない」

ハルヒ「顧問ゲット、鍵ゲット」

ハルヒ「オールオッケーてわけよ」

キョン「……」

キョン「お前つまり…」

ハルヒ「そ」


62: 2010/02/12(金) 01:48:52.13 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「文芸部を合法的に乗っ取るわ」

キョン「いいのかよ」

ハルヒ「さあ? 顧問も部員が二人の部活にやる気出したりしないでしょ」

キョン「そりゃあそうかもしれんが」

ハルヒ「はいはいアンタもグタグタ言わない」ビシッ

キョン「んぐ」

ハルヒ「……?」

キョン「……」

ハルヒ「……それにしてもさ」

キョン「今度はなんだ」

ハルヒ「文芸部って去年で部員がいなくなったっぽいじゃない」

キョン「まあ、今だれもいないしな。今年新入部員がいなけりゃ潰れんじゃねーのか」

ハルヒ「そうよね。なのにさ」

キョン「ああ」

63: 2010/02/12(金) 01:56:30.74 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「妙に……何だか廃部寸前にしては、設備揃い過ぎじゃないかしら」

キョン(言われてみれば……)

キョン(本棚、長机はいいとしてパソコン、ボードゲーム、ポット、湯のみ……コンロに土鍋? なんだ鍋でもしてたのか?)

キョン(それに一番異彩を放ってるのが……)

キョン「なんだあのコスプレ衣装は」

ハルヒ「ええ、仮装大会でもしてたのかしらね」

スタスタ

ポチ

キョン(ついた)

ジジジジー

キョン(ちょいとばかし起動に時間がかかるのか)

ヒョイ

キョン(なんだこりゃ。三角錐に「団長」?)

ハルヒ「……」


66: 2010/02/12(金) 02:04:51.05 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「どう、なにかパソコンにはいってる?」

キョン「ちょっと待てよ……もうすぐだ。幸いユーザ設定もしてない」

ハルヒ「……」

ハルヒ「なんかついさっきまで人がいたみたいね」

キョン「おいおい」チラッ

キョン「……」

キョン「まさか、な」

ハルヒ「ちょっと怖い……かも」ギュッ

キョン「ふふ、らしくないじゃないか」

キョン「不思議を求めてる癖に幽霊はお断りか?」

ハルヒ「うっさいわね。あたしが求めてんのは宇宙人未来人超能力者異世界人またはそれに……」

キョン「あーはいはい。悪かった」

ハルヒ「ふん!」プイッ

キョン「お、どうやら動くみたいだな」


67: 2010/02/12(金) 02:10:30.81 ID:20Soq4Pd0

キョン「マイドキュメントには……」

キョン「空だな」

キョン「他には……」

ハルヒ「……」テクテク

キョン「うーんコレといって特にはない、か?」

カチカチ

ハルヒ「……」ヒョイ

カポッ

キョン(後はドコを調べりゃ……っていつの間にか俺も泥棒みたいなことしてんな)

カチカチ

ハルヒ「……」ニヤニヤ

ソローリソローリ

キョン(あ、お気に入りも見とくか……)

カチカチ


70: 2010/02/12(金) 02:17:38.18 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「……ねえ」

チョンチョン

キョン「ああ、ちょっと待て。今お気に入りを見てるから何かあれば知らせるさ」

カチカチカチ

ハルヒ「ねえってばあ……」

グイッ

キョン「あん? ってうおおおおおああああ!? カエルのバケモンっっ!??????」

バタバタ!

ハルヒ「ひゃひゃひゃ!!! あーーーはははは!!!」カポッ

ハルヒ「アンタの今の顔! 写真に撮っときゃよかったわ!!」バシバシ

キョン「て、てめぇ……」

ハルヒ「カエルのバケモン!!!」

ハルヒ「だって!!! ひーーーふふふふ!! おっかしいわ!!」




72: 2010/02/12(金) 02:25:03.01 ID:20Soq4Pd0

キョン「はあ」ヤレヤレ

ハルヒ「ひひひ!! あたしをバカにするからよ!」

キョン「おまえなあ…」

ハルヒ「いやー案外面白いもんね、コスプレも」

ハルヒ「で、何かあったの?」

キョン「お前のせいでブラウザ閉じちまったよ!」

ハルヒ「なによ、あれぐらいで怒らないでよ。短気は損気よ」

キョン「お前が言うな」

ハルヒ「いいからさ。ホラ早く」グイグイ

キョン(顔がちけーよ)

キョン「ええと……お気に入りは」

キョン「うわ、どんだけ整理してねーんだよ。グチャグチャじゃねーか」

ハルヒ「性格が出るわよね、こういうの」

ハルヒ「きっとズボラで自分勝手なタイプよ、この人」

キョン(お前がそれを言うか)カチカチ

74: 2010/02/12(金) 02:33:10.31 ID:20Soq4Pd0

キョン「オカルト関連、ミステリーサークル、MMRってなんだよ」

ハルヒ「さあ?」

キョン「『夏休みは孤島で決まり!』ってどんなサイトだよ」

ハルヒ「その下は『冬休みは遭難で決まり!』よ」

キョン「『恋のライバルを蹴落とす方法』」

ハルヒ「『バストアップマニュアル』」

キョン「『朴念仁を振り向かせろ!』」

ハルヒ「『時代はツンデレ!』」

ハルヒ「どんな人が使ってたんでしょうね」

キョン「なんかお前に似てそうな……」

ハルヒ「失礼ねバカ」ギューーー

キョン「いってえ!!」


77: 2010/02/12(金) 02:40:45.51 ID:20Soq4Pd0

キョン「ん?」

ハルヒ「なんかあった?」

キョン「いや、なんかって訳でもないんだが……このSOS団ウェブサイトってなんだ?」

ハルヒ「宗教のサイトじゃないの? 気になるんなら見れば」

テクテク

ハルヒ「うわーメイド服まである」

ハルヒ「あは、みくるって書いてあるわ」

キョン(開いてみるか)

ハルヒ「こっちはウェイトレスね」

キョン「……」

カチカチ

キョン「えすおーえす団のウェブサイトへようこそ……」

キョン「それだけかよ! メールしか送れねーじゃねーか」


88: 2010/02/12(金) 03:34:00.03 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「なんかあったー」ゴソゴソ

キョン「いんや」

キョン「さっきのもただのお遊びサイトだった」

ハルヒ「あら、そう」

キョン「で、どうすんだ。もう時間も時間だ」

キョン「今日はこれで解散でいいのか?」

ハルヒ「そうねえ……」コツコツ

ハルヒ「取りあえず部室のメドもついたし」

ハルヒ「教師になんだかんだと言われるのも面倒ね」

ハルヒ「解散でいいわね」

キョン「そ~かい」

ハルヒ「……明日は」

キョン「明日もあんのかよ!?」

ハルヒ「あったりまえじゃない」


89: 2010/02/12(金) 03:40:26.35 ID:20Soq4Pd0

キョン「明日って土曜日だよな」

ハルヒ「そうだけど?」

キョン「休日だよな?」

ハルヒ「そうだけど?」

キョン「……」

ハルヒ「なに、嫌なわけ?」

キョン「……いやじゃないですよ」

ハルヒ「よろしい」

キョン「不思議探しってドコに行きゃできるんだよ」

ハルヒ「そうねえ……」

キョン(いきなり山登ったり、訳の分からないとこに連れられるのか……)

90: 2010/02/12(金) 03:50:19.62 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「まず始めは街中ね」

キョン「はあ? 不思議なモンがんなとこにあるのか?」

キョン「お前なあ、街中にそんなもんあったら今頃パニックだよ。映画じゃねーんだから」

ハルヒ「はあ……」ヤレヤレ

ハルヒ「これだから凡人は困るわね」

キョン「なにぃ?」

ハルヒ「普通の人が見逃すようなところに宇宙人とかは隠れてんの! 身近なところをマークしないでどうすんのよ」

キョン「それは……」

キョン(まあ俺としても下手に心霊スポットやらに行くよりは……街中ならデートに見えんこともないしな)

キョン(言ったは良いものの、俺としても願ったり叶ったりか)

ハルヒ「異論はないようね」

キョン「……」

ハルヒ「ほいじゃ、明日は西宮駅の北口前公園ね」

キョン「へいへい」


91: 2010/02/12(金) 03:57:39.75 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「時間は九時! 遅刻したら罰金だからね!」

キョン「く、九時!? 早すぎねーか?」

ハルヒ「昔っから言うでしょ、早起きは三文の得ってね」

キョン「じいさんみたいなこと言うんだな」

ハルヒ「うっさいアホ! それに朝の間に不思議が逃げちゃったらどうすんのよ!」

キョン「そんなに逃げたりするもんなのかねえ」

ハルヒ「するの! 男のくせにゴチャゴチャ言わない!」

キョン「はあ……」

ハルヒ「じゃあそういうことでね」

ハルヒ「あたしはもう帰るわ」

スタスタ

キョン「おい、涼宮。お前この辺に散らかしたコスプレやらなんやらはどうすんだよ」

ハルヒ「ああ、片付けといて!」

ハルヒ「じゃあねー! 明日遅刻すんじゃないわよー」

バタン

93: 2010/02/12(金) 04:04:21.98 ID:20Soq4Pd0

キョン「なんつー女だ……」

キョン「パソコンも俺が切らなきゃならんし」

キョン「教師に見つかったらどうすんだよ」

キョン「はあ……」

カチカチ

フィーーン

キョン(しかしながら……)

キョン(この年になって不思議探しねぇ)

キョン(本当にやるとは思わなかったぜ)

キョン「よっこいせ」

ヒョイ
バサバサ

キョン「み、く、る……か」

キョン(…どんな人だったんだろうな)


94: 2010/02/12(金) 04:11:12.14 ID:20Soq4Pd0

ガリガリガリ

キョン「ん?」

キョン「フリーズしたか?」

ーーーーーーsleeping beauty

キョン「なんだこりゃ?」

キョン「すりーぴんぐびゅーてぃー?」

キョン「これってたしか……」

キョン「白雪、姫」

キョン「だよな」

キョン(白雪姫ってあのガラスの靴履いて十二時になったら魔法が解けるって言う……)

キョン「いやいや、それはシンデレラだ」

キョン(ガキの頃に学芸会でやった記憶があるぞ)

キョン(俺は森の木Cだったけな、くそ)



95: 2010/02/12(金) 04:19:55.60 ID:20Soq4Pd0

キョン(そうだ、思い出した。白雪姫は……)

キョン(お姫様が悪い魔女に毒リンゴを食わされて)

キョン(氏んじゃうんだっけか)

キョン(いや、氏んだら物語にならないよな)

キョン(眠るんだ。そうだ)

キョン(そして小人たちの看病の甲斐無く氏にかける白雪姫)

キョン(するとどこぞのイケメン王子様がどこからともなくやって来て)

キョン「キスをした」

キョン(そして白雪姫は目を覚ます)

キョン(最後は王子と結婚して大円団だったよな)

キョン(ガキながらも俺は腑に落ちない気持ちが沸々と湧き上がったのを覚えてるぞ)

キョン(結局顔かよクソッタレ! ってな)

キョン(王子が冴えない野郎だったら白雪姫は寝たフリこいたんじゃないかってずっと思ってた)

キョン(つーか王子じゃなくて村人Aが来たらどうすんだよ)


97: 2010/02/12(金) 04:29:01.31 ID:20Soq4Pd0

キョン(ましてや森の木Cじゃ面会すら許可してくれないか……やれやれ)

キョン「……」ストン

キョン(昔なんかの本で読んだことがある)

キョン(そうだあれには……白雪姫は姫でも何でも無く)

キョン(本当はただの村の娘だった)

キョン(それで意中の男と会うために森の奥深くに入っていき)

キョン(そしてそこで男と何度も交わった)

キョン(だから白雪姫は童話なんかじゃない)

キョン(少女から一人の女の女性への成長を描いた物語だったと)

キョン(ただ教育上望ましくないから)

キョン(村娘は姫に)

キョン(男は王子に)

キョン(そしては禁じられたものとして毒リンゴになったと)

キョン(……)

キョン「何考えてんだ、俺」

98: 2010/02/12(金) 04:34:32.00 ID:20Soq4Pd0

キョン「バカバカしい」

ヒューーン

キョン「お、よしよし。パソコンもちゃんと終了した」

キョン「よいしょ」

ヒョイヒョイ
カチャカチャ

キョン「なんで俺が涼宮の散らかしたモノを片付けにゃならんのだ」

カチャカチャ

キョン「よし、と」

キョン「さあ俺もさっさと帰らねーと面度くさそうだな」

キョン「……」


ガラーン


キョン「なんか、なんだろう」

キョン「……」

100: 2010/02/12(金) 04:37:49.07 ID:20Soq4Pd0

キョン「気のせいか」

キョン「うし、さっさと帰ろう」

スタスタ

ギィ

キョン(立て付けの悪い戸だな)

ギコギコ

キョン「誰か蹴ってんじゃねーのか」

ギシギシ

キョン「んなわけねーか」

キィーー



バタン





シーン

102: 2010/02/12(金) 04:43:36.65 ID:20Soq4Pd0




ヒューーーン

ガリガリガリガリ

ーーーーーーーs

------sl

------sle

------sleepin

------sleeping

------sleeping b

------sleeping be

------sleeping bea

------sleeping beau

------sleeping beaut

------sleeping beauty

104: 2010/02/12(金) 04:52:40.44 ID:20Soq4Pd0

翌日

キョン「くぁ……」

キョン「ねみい」

キョン「俺も律儀な男だよ」

バタン!

妹「キョンくん起きてーーーー!!!!!」

妹「って起きてる!? すごおい! お母さんキョンくん土曜日なのにおきてるよぉ!」

キョン「妹よ……わかったから静かにしてくれ」

キョン「半覚醒状態の頭にお前のソプラノボイスは酷過ぎる」

妹「ソプラノ?? あー私ねえ! ソプラノリコーダーでアマリリス吹けるようになったんだよ!」

キョン「あーわかったわかった。今度ぜひ聴かせてくれ」

キョン「あーよっこいしょ」

スタスタ

妹「わかったぁ!! ぜええええったいきかせるね!」

キョン「ああ……恩にきるよ」クァ

106: 2010/02/12(金) 05:02:30.97 ID:20Soq4Pd0

30分後

キョン「よし、準備は終わったし……」

スッ

[8:30]

キョン「時間にも余裕がある」

キョン(まあ5分前に着いてりゃ十分だろ)

キョン「コーヒーでも飲みますか」

バタバタバタ

妹「あーーー! キョンくんお出かけするの? ずるいずるいずるい!」

キョン「あー違う違う。これからちょっと……その」

妹「ずるいずるいずるいずるいずるいずるい!!!」

キョン「……」

妹「わたしも連れてってよお!!」

キョン「いや、そういうわけにはいかないからな……」


108: 2010/02/12(金) 05:08:00.21 ID:20Soq4Pd0

妹「キョンくんすぐわたしのことのけ者にするぅ!」

キョン「いやいや、そんなことはないから。今度ちゃんとどっか連れってってやるから。な?」

妹「今度っていつ?」

キョン「え」

妹「何時何分何秒地球が何回回ったとき!?」

キョン(うわー余計な知識つけてきやがったな……)

キョン「……参ったな」

妹「ほら言えないじゃん! だから連れってってよお!」

キョン「!」

キョン「あーー。おふくろー!」

キョン「俺もう出るからコイツ頼むわ!」

スタコラサッサ

妹「キョンくーん! 逃げるなー!」

バタン

109: 2010/02/12(金) 05:16:22.36 ID:20Soq4Pd0

駅前

ハルヒ「……」

ズーン

キョン(はえーよ……)

キョン(こえーよ……)

キョン(般若かお前は)

ハルヒ「なにか」

ハルヒ「言い訳は用意してきたのかしら」

キョン「……」

キョン「…だってまだ15分前じゃないか」

ハルヒ「……」ゴゴゴゴゴ

ハルヒ「遅刻は?」ニコッ

キョン「……罰金」


111: 2010/02/12(金) 05:25:15.81 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「あたしが先に来てるの」

ハルヒ「だから罰金よ!」ビシィ

キョン「ンな無茶な……」

ハルヒ「まずは手始めにあたし朝ごはん食べてないのよね」

ハルヒ「ソコの喫茶店でいいわ」

スッ

キョン「……はあ」

スタスタ

ハルヒ「ほら! キビキビ歩く!」

キョン「まじかよ……」

ズルズルズル

ハルヒ「あたし朝はパン派なのよねー」

キョン(しらねーよ!)




146: 2010/02/12(金) 14:36:44.54 ID:20Soq4Pd0

カランカラン

ハルヒ「ふー、食べた食べた」

キョン(なんで喫茶店で札三枚も使うんだよ……)

スタスタ

ハルヒ「さあて、じゃあ早速始めるとしますか」

ハルヒ「まずは」

ハルヒ「あそこよ!」

ビシッ

キョン「……ありゃあ」

キョン「俺にはデパートにしか見えんのだが」

ハルヒ「何いってんの。そうに決まってるじゃない」

キョン「……デパートに不思議は売ってないと思うぞ」

ハルヒ「知ってるわよ」

キョン「ならなんで…」


148: 2010/02/12(金) 14:47:10.29 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「あたしが買い物しに行くからよ」

キョン「……」

ハルヒ「もちろん同時並列的に、周りの怪しいものにも目を光らせるわ!」

キョン(……)

ハルヒ「アンタは荷物持ち兼不思議探し!」

ハルヒ「さ、いくわよー!」

スタスタ

キョン(こりゃ本格的に……)

キョン(この活動についての認識を改めた方が良さそうだな)

キョン(……)

キョン(若い男女が待ち合わせして喫茶店に行き、デパート巡りをする)

キョン(これをデートと呼ばずなんと呼ぶ!?)


150: 2010/02/12(金) 14:55:35.53 ID:20Soq4Pd0

三時間後

キョン「……」

ズッシリ

キョン(俺は……)

キョン(間違っていた)

キョン(なんだこの買物袋の量は……!)

キョン(もはや両手じゃ持ちきれんぞ!)

ハルヒ「いやー、買い物なんて久しぶりだったからついつい買いすぎちゃったわね」

キョン「これがついついの量なのか……?」

キョン「こんなんじゃパトロールなんぞできないじゃないか」

ハルヒ「だめよ」

ハルヒ「メインはそっちなんだから!」

キョン「……」ズッシリ

キョン(腕が悲鳴を上げているよ……)


151: 2010/02/12(金) 15:02:17.49 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「さあ次は7階よ」

キョン「ま、まだ買うのか!?」

ハルヒ「それが?」

キョン「それが、ってよ…」

キョン「お前この量の買い物袋持って帰れんのかよ?」

ハルヒ「あら家まで持ってくるのはアンタよ」

キョン「……マジで言ってんのかよ」

ハルヒ「マジマジ! 大マジ!」

キョン(失敗したな……これじゃほんとにただの荷物持ちじゃねーか)

キョン「……」ヤレヤレ

「おや?」

キョン「ん?」

ハルヒ「?」


153: 2010/02/12(金) 15:09:28.49 ID:20Soq4Pd0

佐々木「キョンじゃないかい」

キョン「おお! 佐々木!」

ハルヒ「……」ムスー

佐々木「今日はデートかい?」

佐々木「少し見ないうちにもう彼女をつくってるなんて君もプレイボーイだな」

キョン「違う違う」

キョン「見ての通りの荷物持ちだ」

ズッシリ

佐々木「くつくつくつ」

佐々木「なかなか尻にしかれてるようだね」

キョン「ははは、バっカ違うっつの」

ハルヒ「……」ムスーーーーーー

チョイチョイ

キョン「あん?」


154: 2010/02/12(金) 15:17:30.64 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「……誰よ」

キョン「ん? ああ、中学の時の友達の佐々木だ」

キョン「佐々木。こっちは俺と同じクラスの涼宮」

佐々木「こんにちは、涼宮さん」

ハルヒ「……」キッ

ペコリ

佐々木「いろいろキョンの至らないところもあると思うけど仲良くしてあげてね」

佐々木「基本的には優しいはずだから」

ハルヒ「……」

キョン「なんだそりゃ。お前はおふくろか」

佐々木「くつくつくつ。そんなわけないだろう」

佐々木「親友として君のフォローも仕事の一つさ」

キョン「やかまし!」

ハルヒ「……」イライラ


156: 2010/02/12(金) 15:24:38.00 ID:20Soq4Pd0

佐々木「見たところ今日はデパートに買い物みたいだね」

キョン「まあそれだけじゃないんだけどな」

佐々木「ほう、ほかに何か目的があるのかい?」

キョン「ああ、いや、目的ってほどでもないんだけどな」

キョン「俺とコイツで……」

ハルヒ「!」

ギュー!

キョン「いってぇえええええええええええええ!」

ハルヒ「……」

グリグリ

キョン「す! 涼宮! 踏んでる! 足!」

ハルヒ「あら? ごめんなさい」

佐々木「くつくつくつ」

佐々木「面白い人ね、涼宮さんて」


158: 2010/02/12(金) 15:32:41.28 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「そうかしら」

佐々木「そうよ?」

キョン「いてぇ……」

ハルヒ「キョン行きましょう」

ハルヒ「佐々木さんもこのあと予定があるみたいだしね」

キョン「あ、ああ」フーフー

佐々木「特に予定はないけれど……ここは譲るわ」

キョン「そ…それじゃあな佐々木」

キョン「なんかありゃ連絡するから」

ハルヒ「……」ピキッ

佐々木「ああ、期待せずに待ってるよ」クツクツ

ハルヒ「ほら! いつまで足抱えてんの!」

キョン「だってお前……」

トントントン


159: 2010/02/12(金) 15:46:15.35 ID:20Soq4Pd0

キョン「あーいてえ」

ハルヒ「……」

キョン「それにしても、ここで佐々木に会うとは思わなかったぜ」

キョン「あー、アイツとは塾が同じだったんだ」

ハルヒ「…」

キョン「帰る方向もおんなじだったしいろいろ勉強とかも教えてもらってたりしたんだ」

キョン「けっこう面白い奴でな、喋り方も男に対しては男言葉でしゃべるんだよ」

キョン「変な奴だろ?」

キョン「ただ顔は、ほら、見て分かるかもしれんが整った顔立ちしてるだろ?」

キョン「中学の頃なんかは佐々木狙いの奴がいてな」

キョン「ラブレターなんてもんよく貰ってたんだが……」

キョン「アイツ自身は恋愛なんて精神病の一種だー、なんていうからな」

キョン「よく俺が頼まれて、断りの返事してたんだよ」

キョン「ははは、変な話だろ?」


163: 2010/02/12(金) 16:00:03.93 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「……そう」

キョン「…どうかしたか?」

ハルヒ「なんでもない」

キョン「?」

ハルヒ「……」

テクテク

キョン(う……なんか空気が重みを増してきたぞ)

キョン「な、なあ?」

ハルヒ「なに」

キョン「……」

キョン「いやー、佐々木の奴何しに来てたんだろうな!?」

ハルヒ「……」

キョン「俺が誘っても全然街中なんかには来なかったんだぜ?」

キョン「参考書でも買いに来てたのかねー?」

キョン「アイツ頭すげーいいんだぜ」

168: 2010/02/12(金) 16:08:15.16 ID:20Soq4Pd0

キョン「一緒に勉強してたとは言ってたがな、佐々木の奴はずっと頭のいい高校狙ってたんだ」

ハルヒ「……」

キョン「北高よりずっと頭いいとこな! しかもちゃんと受かるっつーのがすげーよな」

ハルヒ「……」

キョン「それでな、前に遊んだときなんかフェルマーの……」

ハルヒ「……」

ハルヒ「……もう」

ハルヒ「……もういいわ」

キョン「え?」

ハルヒ「ごめんね。本当は佐々木さんと遊びたかったんでしょう?」

ハルヒ「あたしのワガママに付き合わせちゃってごめん」

ハルヒ「今日はもう解散しましょう」

ハルヒ「ちょっと体調悪くなってきたの」

キョン「え、ちょ……」


171: 2010/02/12(金) 16:14:55.98 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「……」

スタスタ

キョン「お、おい荷物どうすんだよ」

ハルヒ「……」

バッ

キョン「うお」

ハルヒ「ごめんね荷物持たせて」

キョン「そんな荷物お前一人じゃ持てないだろ」

ハルヒ「……」

ハルヒ「タクシー乗ってくから大丈夫」

ハルヒ「心配してくれてアリガトウ」

ハルヒ「さよなら」

タッタッタ

キョン「……」


173: 2010/02/12(金) 16:22:45.41 ID:20Soq4Pd0

キョン「なんだよ……」

キョン「……」



ポツーン



キョン(……俺が悪いのかよ!)

キョン(友達の話ししただけだろ)

キョン(それでいきなり機嫌悪くなるって…なんだよ)

キョン「意味分からん……」

キョン(あーなんかすげー損した気分)

キョン「モヤモヤする」

キョン「……」

ガヤガヤ

キョン「帰る」


182: 2010/02/12(金) 16:39:51.33 ID:20Soq4Pd0

キョン(次の月曜日、俺は気持ちの整理もついたので普通に涼宮に話しかけた)

キョン(きっと涼宮の方も一日おけば頭が冷えてるだろうと思ったからだ)

キョン(だけど涼宮は俺に挨拶は返すものの、それは酷く他人行儀なものだった)

キョン(その対応に俺は憤りとともに……一抹の寂しさを感じた)

キョン(ここ何週間かで俺と涼宮は仲良くなってたと思っていたけれど……)

キョン(結局それは俺の一方的なものでしかなかったのか、と)


キョン(国木田と谷口にも土曜日のことを話した)

キョン(あいつらも最初はニヤニヤしながら野次馬精神丸出しで聞いていたものの)

キョン(佐々木が登場してからの話を聞くと徐々に顔をしかめた)

キョン(国木田はまだしもアホの谷口にまで苦言を呈されるとは思わなかった)

キョン(お前は女心と言うものが一つもわかってないと一番わかってなさそうな野郎から言われる屈辱と言ったらなかった)



187: 2010/02/12(金) 16:59:17.62 ID:20Soq4Pd0

キョン(そこからの数週間は何か味気ないものに感じた)

キョン(当然放課後、休日の不思議探しはなくなった)

キョン(どうにも堪らなくなり、俺は涼宮を引っ張り職員室の文芸部顧問のところに行った)

キョン(顧問の教師はめんどくさそう顔をしながら適当に入部届けを俺たちに渡し、自由に活動しろとのことだった)

キョン(おざなりな態度だったが俺は鍵と部屋を手にいれ、自由に活動できることを許されたので構わなかった)

キョン(涼宮は入部届けを一瞥したがどうでもよさげだった)



キョン(入部したはいいが俺と涼宮はどちらとも話すことなかった。各々同じ文芸部室内で自由な行動をしていた)

キョン(あのついさっきまで人がいたかのような部屋の中で涼宮はネットサーフィン)

キョン(俺は借りてきた本を読んだり、一人で詰将棋をした)

キョン(同じ部屋にいるはずだった)

キョン(だが誰が見たって俺たちは一人だった)

キョン(俺と涼宮の間には渡ることのできない、見えなくて大きな川が流れていた)


188: 2010/02/12(金) 17:11:23.88 ID:20Soq4Pd0

キョン(そんな毎日の中)

キョン(ある時涼宮が口を開いた)





ハルヒ「あ……」

キョン「……」

ハルヒ「明日流星群……来るんだ」

キョン「……流星群?」

ハルヒ「そう……」

ハルヒ「空に見えるの……」

キョン「……」

ハルヒ「たくさん……」



193: 2010/02/12(金) 17:21:57.13 ID:20Soq4Pd0

キョン「見に行こうか?」

ハルヒ「……」

キョン「この辺だと……鶴屋山なら見えるんじゃないか?」

ハルヒ「……」

キョン「……」

キョン「ここにいたって……不思議は見つからないだろう?」

ハルヒ「…そう、かも」

キョン「明日の何時頃なんだ? 見えるの」

ハルヒ「ちょうど0時みたい」

ハルヒ「でも見えないかもしれないじゃない」

ハルヒ「天気が悪かったらきっと見えないわよ」

キョン「まあ、な」

キョン「そうかもしれない」

キョン「でも見えるかもしれないだろ?」

キョン「確率に意味なんてないさ」

196: 2010/02/12(金) 17:32:50.89 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「……」

キョン「じゃあ明日の23時に校門の前に集合」

キョン「なんか必要なモノとかないよな」

ハルヒ「……肉眼で見えるみたいだけど」

キョン「じゃあOKだ」

キョン「俺が言うのもアレだが……」

キョン「遅刻すんなよ」

ハルヒ「……」

ハルヒ「そりゃこっちのセリフよ」

ハルヒ「遅刻したら罰金」

キョン「りょうかい」


219: 2010/02/12(金) 21:10:44.77 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「……じゃああたし帰るわね」

キョン「…おお」

ハルヒ「戸締り、お願いね」

キョン「わかった」

ハルヒ「……」

スタスタ

キョン「……気をつけて帰れよ」

ハルヒ「…うん」

キョン「…じゃあな」

ハルヒ「……うん」

キョン「どうした?」

ハルヒ「いや、その……」

ハルヒ「一応明日ついてきてくれるし……ありがと…」

キョン「……きにすんな」

ハルヒ「……」

220: 2010/02/12(金) 21:15:48.04 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「……それだけ」

キョン「ああ」

ハルヒ「……」

スタスタ

キィ

バタン

キョン「……」

キョン「ありがと……か」

キョン「言わなくちゃいけないのはどっちだよ…」

キョン「……」

スタスタ

キィ

バタン


221: 2010/02/12(金) 21:18:04.70 ID:20Soq4Pd0

キョン(このときの俺はちょっとばかしどうにかしてたかもしれない)

キョン(やっぱり国木田と谷口に言われたのが堪えたのだろうか)

キョン(俺が涼宮を怒らせたからっていう、下らない引け目があるから俺はこんな小学生みたいな計画を実行するんだろうか)

キョン(ホントのことを言えば俺は涼宮ハルヒのことなんてどうでもよかったんだろうか)

キョン(……)

キョン(いや、違う)

キョン(アイツらに言われてってのがきっかけになったのも有るだろうけど……)

キョン(……)

キョン(……たぶん俺は)

キョン(俺自身の意思で涼宮とまたちゃんとした不思議探しに行きたいと思ってる)

キョン(それはきっと涼宮との仲をここで終わらせたくないからだ)

キョン(ちょっとの間でもアイツと一緒にいろんな無茶するのが楽しかったからだ)

キョン(前に俺が教室で言ったことは嘘じゃない)

キョン(確かに救われたんだと思う)

キョン(俺も非日常的な事が現実にあって欲しいと思ってたから)

224: 2010/02/12(金) 21:25:59.98 ID:20Soq4Pd0

ーーーーーーーーーーーーーーーー

ハルヒ「あんたの望みをあたしが叶えてあげるのよ」

ハルヒ「諦めちまった、んでしょ?」

ハルヒ「だ! か! ら!」

ハルヒ「あたしが叶えてやるって言ってんでしょ、このスカポンタン」

ーーーーーーーーーーーーーーーー


キョン(……)

キョン「俺は……」

キョン「アイツに言わなきゃならないことがまだ残ってるはずだよな」

キョン(そして俺の中で……)


226: 2010/02/12(金) 21:35:26.98 ID:20Soq4Pd0

翌日

22:30

キョン「……」

スタスタ

ハルヒ「……また遅刻ね」

キョン「……お前一体何時に来てるんだよ」

ハルヒ「さてね」

ハルヒ「……」

ハルヒ「どうしてもらおうかしら…ね」

キョン「……」

キョン「……悪かったよ」

キョン「すまなかったよ」

ハルヒ「……まあ今回は不問にしてあげる」


227: 2010/02/12(金) 21:50:39.20 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「学校ってことはすぐそこの鶴屋山なんでしょう?」

テクテク

キョン「ああ」

キョン「流石に電車乗り継いでまで行かないさ」

キョン「裏のとこでも十分見えるしな」

ハルヒ「そ」

ハルヒ「じゃあ行きましょう」

キョン「あいよ」

テクテク


230: 2010/02/12(金) 22:08:37.59 ID:20Soq4Pd0

鶴屋山

23:00

キョン「この辺でいいんじゃないか」

ハルヒ「……」

ハルヒ「山の頂上に……こんな拓けたところがあるのね」

キョン「ああ、前に佐々木に…」

キョン(あ)

ハルヒ「ふうん」

キョン「あ! いや違うんだ……」

ハルヒ「別に。構わないわよ」

ハルヒ「アンタが誰と仲良くしてようとアンタの自由でしょ」

キョン「……」

ハルヒ「……」




235: 2010/02/12(金) 22:22:50.46 ID:20Soq4Pd0

キョン「……」

ハルヒ「…さっきから気になってたんだけど」

キョン「…ああ」

ハルヒ「その大量の荷物は何? 肉眼で見えるって言ったじゃない」

キョン「これは望遠鏡じゃない」

ハルヒ「?」

キョン「涼宮さ、中学の頃にミステリーサークル作ったんだろ?」

ハルヒ「…そうよ」

キョン「あの時、なにで絵? 文字? かよく分からないが描いたんだ?」

ハルヒ「それは…あの体育のときに使う」

キョン「石灰、だろ?」

ハルヒ「そうよ」

ドサッ!
ドサッ!
ドサッ!

237: 2010/02/12(金) 22:31:19.66 ID:20Soq4Pd0

キョン「あのコロコロ、線引きだっけか。あれまでは持ってこれなかったが」

ドサッ!
ドサッ!

キョン「石灰ぐらいならなんとかなった」ヤレヤレ

ハルヒ「あんたねえ……学校にバレたら停学ぐらいにはなるわよ」

キョン「へ。もう部室の件で俺は既に前科一犯さ」

ハルヒ「……あれとはちょっと訳が違うでしょ」

キョン「ふふ、なんだよ。今更恐がってんのか?」

キョン「バレちまったらお前は知らないの一点張りでいいだろ」

ハルヒ「……」

ハルヒ「それ、どうすんのよ」

キョン「体育以外の使い方ならお前さんの方がよく心得てるんじゃないか?」

キョン「経験者、だろ?」ニコ

ハルヒ「そりゃあそうだけど…」


238: 2010/02/12(金) 22:40:22.36 ID:20Soq4Pd0

キョン「あの時は流星群なんてなかっただろ」

キョン「だからUFOは来なかった」

キョン「それに」

キョン「今度は二人だ」

キョン「もっと上手にできればきっとUFOだって来るさ」

ハルヒ「そんなわけ…」

キョン「きっと……そうなんだよ」

キョン「ほら、いいから教えてくれよ」

キョン「なんて描けばいいんだ?」

キョン「あの時お前は校庭に何を描いたんだ」

ハルヒ「……」

キョン「教えてくれ……ハルヒ」

ハルヒ「……」


239: 2010/02/12(金) 22:52:13.56 ID:20Soq4Pd0


ハルヒ「そっちの木の端から……向こう側の端までまっすぐ線を引いて」

キョン「!」

キョン「ああ!」

ハルヒ「ほら、あと一時間しかないんだから……」

ハルヒ「急がないと流星に間に合わないわよ!」

キョン「よっこいせ」

ズリズリズリ

ハルヒ「次はそっち!」

ハルヒ「丸く円を三つ描いて!」

キョン「へいへい!」

ハルヒ「あー違う違う違う違う違う違う違う違う!」

ハルヒ「そこは四角! こうよ!」

ズリズリズリ


241: 2010/02/12(金) 22:59:33.23 ID:20Soq4Pd0

キョン「おいー! まだ終わらんのか!」

ズリズリ

ハルヒ「もうちょっと!」

ズリズリ

キョン「おいおい……!」

ハルヒ「アンタが持ってきたんでしょ。責任持って最後までやんなさいよ」

キョン「わかってるっつーの!」

ズリズリズリ

ハルヒ「そこは半円!」

キョン「あいよ!」

ハルヒ「次はあっちの端よ! 一番大きな円を描くの!」

キョン「この辺でいいn……ってうお!?」

ドシーン!

ドサドサ!


243: 2010/02/12(金) 23:07:41.16 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「あっはっは! バカね! 後ろ向いて歩いてるからよ」

キョン「しょうがねえだろ!」ペッペッ

ハルヒ「ほら、この円で終りよ。あたしが向こうの反対から描くからアンタはこっちから!」ポンポン

キョン「へいへい!」

ハルヒ「へいは一回!」

キョン「へい!」

ハルヒ「……んしょ」

ズルズル

キョン「よっこらせ! っておい! 曲がってるぞそこ!」

ハルヒ「曲がってないわよ! あんた暗すぎて目がどうにかなってんじゃないの!?」

キョン「なってねーよ!」

ズリズリ

ズリズリ



245: 2010/02/12(金) 23:27:50.84 ID:20Soq4Pd0

ズリズリズリ

キョン「……」

ハルヒ「……」

キョンハル「「できたーーー!!!」」

キョン「はーーーつかれた!」

ハルヒ「ホントに疲れたわー!!!」

ハルヒ「時間は!?」

キョン「……23時58分42秒」

キョン「なんとか、ギリギリで間に合ったみたいだな」

ハルヒ「ほんと、なんとかだわ!」

キョン「あーー駄目だ!」

ゴロン

ハルヒ「ちょ、ちょっと! そんなとこに寝たら汚いわよ」

キョン「気にしねーよ」

ハルヒ「もう……」

247: 2010/02/12(金) 23:34:52.74 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「……」

ゴロン

キョン「なんだお前も寝転がることにしたのか」

ハルヒ「ふ、ふん! この方が流星が見やすいだけよ!」

キョン「ふふ…そーかい」

ハルヒ「なによぉ!」

キョン「いんや、なんでもねえよ」

キョン「……」

ハルヒ「……」

キョン「この方がきっと宇宙人も見つけやすいだろ……」

ハルヒ「そうね…」

キョン「キャトルミューティレーションされたらどうする?」

ハルヒ「望むところよ」

キョン「ふふ、お前らしいよ」


249: 2010/02/12(金) 23:46:41.67 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「ふぅ…」

キョン「……」

ハルヒ「後何分?」

キョン「後……三十秒」

ハルヒ「……そう」

キョン「……」

ハルヒ「……」

ハルヒ「ねえ」

キョン「ん?」

ハルヒ「あたしさ……」


250: 2010/02/12(金) 23:58:41.53 ID:20Soq4Pd0

ハルヒ「ホントは……」

ハルヒ「意地はってただけなのかも」

キョン「……」

ハルヒ「言ったじゃない、宇宙人もとかとコンタクトを取りたいって」

キョン「ああ」

ハルヒ「でもそういうのって全部あたしがさ…」

ハルヒ「その、家族とか社会とか学校とかそういうコミュニティーに上手に組み込まれることが出来なくて、目を背ける為に創ったものじゃないかって思うときもあるの」

キョン「ああ…」

ハルヒ「だからただ……眼に見えないものに対して自分を認めてくれるんじゃないかって」

ハルヒ「ありのままの自分でもいいんだって思わせてくれたのが宇宙人であり、未来人であり、超能力者なの」

ハルヒ「きっと白雪姫とか何でも良かったのよ」

ハルヒ「誤魔化してくれるものなら」

ハルヒ「そういうのを探して駆け回ってる間はアタシでいられるじゃない」

キョン「……」


252: 2010/02/13(土) 00:06:01.33 ID:I+PcZUlz0

ハルヒ「あ」

ハルヒ「もちろん、いて欲しいとも思ってるわよ」

ハルヒ「それもホント」

ハルヒ「……」

キョン「……」

ハルヒ「それでアンタ言ったじゃない」

ハルヒ「『自分の求めるものに対してちゃんと向かっていけるってのはすげーこと』だって」

ハルヒ「……あたし、あの時にわかったのよ」

ハルヒ「ああ、アタシはアタシでいいんだって」

ハルヒ「コイツならアタシのことちゃんと、色眼鏡に通さないで見てくれるかもって」

キョン(……)

ハルヒ「だから前に行ったデパートの時はショックだったのよ」

ハルヒ「あー、やっぱりコイツもおんなじかあって」

ハルヒ「あたしのこと大多数の一部としか思ってないのか、ってね」


255: 2010/02/13(土) 00:15:08.59 ID:I+PcZUlz0

キョン「……」

ハルヒ「それにアンタをあの佐々木って子に持ってかれるのが嫌だったの」

ハルヒ「これが恋愛感情なのか、なんなのか……まだあたしにはよくわかんないわ」

ハルヒ「でもなんにせよ、奪われるぐらいならこっちから渡してやるわって」

ハルヒ「子供よね」クスッ

ハルヒ「……ごめん、やな思いさせて」

キョン「いや、違う、そんなことは……」

ハルヒ「それに……」

ハルヒ「今日もわざわざここまで付き合ってくれて……」

ハルヒ「ありがとう、キョン」

キョン「……」

ハルヒ「……」

ハルヒ「ふふ、今度はちゃんと顔見て言えた」

キョン「……」


257: 2010/02/13(土) 00:23:01.45 ID:I+PcZUlz0

ハルヒ「あ!」

キョン「!」

スッ

ハルヒ「0時2分」

ハルヒ「流星群を確認しました」

キョン「…ああ」

ハルヒ「綺麗……!」

キョン「……」

ハルヒ「本当に流星が地球に落ちてくるみたいね……」

キョン「……ハルヒ」

ハルヒ「……ん?」

キョン「このミステリーサークルは……どんな意味が込めてあるんだ?」

ハルヒ「……んふふー、知りたい?」




258: 2010/02/13(土) 00:27:08.27 ID:I+PcZUlz0

キョン「ああ」

ハルヒ「どーしても?」

キョン「……ああ。どうしてもだ」

ハルヒ「しょうがないわねー。誰にもまだ言ってないのよ」

キョン「……そら光栄だ」

ハルヒ「これにはね……」







ハルヒ「『私は、ここにいる』って」








キョン「……」

259: 2010/02/13(土) 00:33:20.89 ID:I+PcZUlz0

ハルヒ「だからアタシを見つけて」

ハルヒ「宇宙人」

キョン「あ、ああ……」

ハルヒ「未来人」

キョン「……」コクリ

ハルヒ「超能力者、異世界人……またはそれに準じるもの」

キョン「ああ!」


ハルヒ「あたしと……」

キョン「……」

ハルヒ「あたしで良ければ友達になってくださいって」

キョン「……」

ハルヒ「そうやって、願いをこめたの!」




260: 2010/02/13(土) 00:45:57.77 ID:I+PcZUlz0

キョン(今ここにUFOが下りてくるといいと俺は思う)

キョン(ゆっくりと静かに)

キョン(俺とハルヒは見せるためにこのミステリーサークルを描いた)

キョン(だからこそ、UFOは下りてくるべきなんだ)

キョン(UFOでなくたっていい)

キョン(無口な宇宙人だっていい)

キョン(迷い込んだドジな未来人だって構わない)

キョン(きざな似非スマイル超能力者も許そう)

キョン(今ここにいる俺たちに不思議を見せてくれ!)

キョン(胸が躍るような非日常を俺たちに示してくれ!)


263: 2010/02/13(土) 01:05:58.53 ID:I+PcZUlz0

キョン(こうやって祈りながら俺はUFOが来ないことをわかっている)

キョン(現実はそんなに甘くない)

キョン(しかしながら、来ないとわかっていながらこんなふうに祈る行為は無駄なんだろうか?)

キョン(わからない)

キョン(ただ……少なくとも)

キョン(可能性を捨てないことでいつかは叶うものもあるのかもしれない)

キョン(俺は自分で言った)

キョン(確率は関係ない、と)

キョン(起こるべき事象が1%だろうが99%だろうが起こるものは起こるし、起らないものは起こらない)

キョン(俺はこれを、自分に都合のいいように解釈する)

キョン(可能性がある、ということは俺たちに日常への希望をもたせる)

キョン(それだけで十分じゃないか)



264: 2010/02/13(土) 01:16:50.02 ID:I+PcZUlz0
煙草休憩してくる

もうすぐで終わる

274: 2010/02/13(土) 02:12:55.74 ID:I+PcZUlz0

キョン「ハルヒ」

ハルヒ「うん?」

キョン「UFOさ」

ハルヒ「うん」

キョン「来るといいな」

ハルヒ「ふふ、そうね」

キョン「……宇宙からでもみえてるかなぁ。俺らのメッセージ」

ハルヒ「……」

ハルヒ「きっと見えてるわよ」

ハルヒ「だってあたしとキョンが頑張って作ったのよ」

ハルヒ「火星からも金星からも、それにもっと遠い銀河にいる宇宙人も」

ハルヒ「今日は地球で流星群があるぞーって集まってる」

ハルヒ「そいつらにかかれば西宮のメッセージもナスカのメッセージもおんなじ意味をもってるはずよ」

キョン「……そうだよな」


275: 2010/02/13(土) 02:20:11.63 ID:I+PcZUlz0

ハルヒ「……」

ギュ

キョン「!」

ハルヒ「星が綺麗だもの」

ハルヒ「手ぐらい繋いだって、バチは当たらないわよ」ニコッ

ギュー

キョン「そういうもんか……」

ハルヒ「そういうもんよ」

ハルヒ「佐々木さんは怒るかもね!」

キョン「お、おいおい」

ハルヒ「んふふー、それはあたしの知ったこっちゃないわ」

キョン「ヤレヤレ」

キョン「……まあいいか」ギュ


279: 2010/02/13(土) 02:39:43.53 ID:I+PcZUlz0

月曜日

キョン「おいーす」

ハルヒ「あら、今日は早いのね」

キョン「ははは生憎うちには妹って言う生きた目覚ましがいるからなー」ヤレヤレ

ハルヒ「いい妹ちゃんじゃない、今度紹介しなさいよ」

キョン「やめとく。お前を紹介しちまうとあいつドコにでもついてこようとするからな」クァ

ハルヒ「いいじゃない。私たちの活動に参加させましょうかしら」

キョン「勘弁してくれ……」

ハルヒ「やなこった!」

ベー

キョン「はいはい」

キョン「ほいで今日はどうすんだ? 部室に集合でいいのか……ってもいつもと同じだがよ」

ハルヒ「今日は出かけるわよ」

キョン「げ」


280: 2010/02/13(土) 02:48:21.58 ID:I+PcZUlz0

ハルヒ「ふふーん! ここ最近はアンタのせいで無為な毎日を過ごしたからね」

ハルヒ「それを取り戻すためにも今日からキリキリいくわよ!」

キョン「…お手柔らかにな」

ハルヒ「じゃあまずは……市内パトロールからかしらね」

キョン「へいへい……」

ハルヒ「へいは…」

キョン「じゃなくて、へい!」

ハルヒ「よろしい」

キョン「で、まあその話もいいがな」

ハルヒ「なによ、話の腰を折らないでよ」

キョン「ちょっとばかし一限の数学の宿題を見せて欲しかったり……」

ハルヒ「はぁ!? そんなのもやってないの?」

ハルヒ「だめだめね。ダメキョンよあんたは」

キョン「まあそういわずに……頼むよ、な?」


283: 2010/02/13(土) 02:55:14.43 ID:I+PcZUlz0

ハルヒ「ソングライヤットクノガアタリマエデショ」

キョン「イヤソウハイウガナ、キノウハササキカラサソイガ」

ハルヒ「ナニィー!? アンタマダコリテナイヨウネ!」

キョン「チガウゴカイダ!」

ハルヒ「マタイイワケ!」

ーーーーーーーーーーー

谷口「おい……国木田!」

国木田「なんだい?」

谷口「ありゃどういうことだ!?」

国木田「あれって?」

谷口「バッカ! キョンと涼宮に決まってんだろ!」

国木田「あぁー、あの二人かい? どうやら仲直りしたみたいだね」

国木田「よかったよかった。平和が一番だよ」

谷口「なに暢気なこと言ってんだ!」


285: 2010/02/13(土) 03:04:31.95 ID:I+PcZUlz0

谷口「もう完全にカップルじゃねえかよ! あいつら!!」

国木田「うるさいなぁ…もともとあんな感じだったじゃないか」

谷口「なんでお前はそんなに余裕こいてんだよ? また一人、仲間が……!」

国木田「あの二人だもん、まだ付き合ってないんじゃないかい? 傍から見れば夫婦喧嘩だけどね」

谷口「だろ!? ああ、不幸だ!」

国木田「それに僕、もう彼女いるよ」

谷口「」

谷口「……」

谷口「え?」

国木田「うん。ほら、あそこにいるだろ。阪中さん」

谷口「なにぃぃぃぃぃぃぃぃいぃぃぃぃぃぃぃ!?」

国木田「あーうるさい。だから谷口には言いたくなかったんだよ」

谷口「てんめぇえええ! 抜け駆けしやがったな!!!」

国木田「抜け駆けもなにも、阪中さんの方から告白してきたんだもの」


288: 2010/02/13(土) 03:12:11.63 ID:I+PcZUlz0

谷口「なんだとぉぉぉぉぉ!!!」

グイグイ!

国木田「痛いって!」

谷口「なぜだーーーー!!!!!」

国木田「何故だって、ねえ。僕もいいなーって思ってたからさ」

谷口「そんな……」

テクテク

阪中「国木田くん、ちょっとお話してもいい?///」

国木田「ああ、阪中さん。今いくよ」

タッタッタ



谷口「……」

ポツーン




291: 2010/02/13(土) 03:31:57.11 ID:I+PcZUlz0

放課後

部室


ハルヒ「さあ、キョン。そろそろでかけるわよ!」

キョン「あいよー」

カチカチ

キョン「よっこいしょ」グイ

ハルヒ「あ」

キョン「どうした」

ハルヒ「体操着教室に忘れちゃったわ」

キョン「あー、なら先に取ってこい。俺まだパソコンの電源切れてないしついでに戸締りしとくから」

ハルヒ「ほんと! サンキューキョン。じゃあ玄関前に集合ね」

キョン「わかった」

ハルヒ「ほいじゃ行ってくるわ!」



294: 2010/02/13(土) 03:41:14.85 ID:I+PcZUlz0

ダダダダダー

ギィ

バターーン!

キョン「忙しい奴だな」

キョン「扉が壊れるぞ、おい」

ヒューーーン

ガリガリガリ

キョン「……なんだ?」



ーーーーーーーーHappy End ?


キョン「ハッピーエンド?」


ーーーーーーーーReady ?

10

9

298: 2010/02/13(土) 03:56:55.61 ID:I+PcZUlz0

キョン「な、なんだおい?」

8

7

キョン「う、ウィルスかなんかか? これ」

キョン「カウント始まってるぞおい!」

キョン「どうすりゃいいんだよ!」

6

キョン「えーあー……エンター押しゃいいのか?」

キョン「いや、でも……」

5

キョン「やばいもう後5カウントしかねえぞ!」

キョン(押す!?)

4

キョン(押さない!?)


301: 2010/02/13(土) 04:07:27.68 ID:I+PcZUlz0

3

キョン「……」

2

キョン「……」

ゴクリ



1











キョン「だーーーー! どうなっても俺は知らんぞ!」

ターーーーン!


304: 2010/02/13(土) 04:20:34.16 ID:I+PcZUlz0

シューーーーン

プツン

キョン「な、なんだ?」

キョン「消えた? のか?」

カチ

ヒュイーン

キョン「……普通に電源はつく」

キョン「……」

キョン「ログイン画面も普通」

キョン「……」

キョン「特にデータが消えてる訳でもないし…」

キョン「なんだったんだ……?」




308: 2010/02/13(土) 04:36:59.29 ID:I+PcZUlz0

ダダダダダダ!

バーーーン!

ハルヒ「キョォン! なーにたらたらやってんのよ!?」

キョン「うお!」ビクッ

ハルヒ「なに? アンタの工口動画からウィルスにでも感染したの?」

キョン「あほう。学校でそんなもん見るか」

ハルヒ「へえ」

ハルヒ「家では見るってコトね……!?」

キョン「そういう意味じゃない!」

ハルヒ「だーーー! 吐けキョン! いつ見たのよ!?」

キョン「そんなことお前に話す義務はない!」

ハルヒ「いいから言えーー!」グワングワン

キョン「ぐえ! 絞、まって……るつ…の」



310: 2010/02/13(土) 04:53:49.14 ID:I+PcZUlz0

ハルヒ「ふうん……」

ハルヒ「白雪姫にハッピーエンドねえ……」

キョン「ったく話を聞けよお前は……危うくマジで落とされるとこだった」

ハルヒ「むむむー」コツコツコツ

キョン「なんか心当たりでもあんのか?」

ハルヒ「いや、心当たりってほどでもないんだけどさ」

ハルヒ「この部室に初めて入ったときのこと、覚えてる?」

キョン「部室に入ったときって……お前と一緒にきたときの事だろ」

キョン「覚えてるさ」

キョン「そうだ、お前がカエルのコスプレして俺のことおどかしてそんまま一人で帰りやがった時だ!」

ハルヒ「大事なのはそこじゃないわよ」

キョン「あん?」

ハルヒ「あんた自分で言ったことくらいちゃんと記憶しときなさいよ」




311: 2010/02/13(土) 05:04:56.82 ID:I+PcZUlz0

キョン「へ? 俺なんか言ったか?」

ハルヒ「覚えてないの?」

キョン「えーと……」

コツン

キョン「いて」

ハルヒ「ばかねー。言ってたでしょアンタ」

ハルヒ「パイプ椅子のところに制服来た女の子がいるって」

キョン「ああー……そんなようなこと言ったような言ってないような……」

ハルヒ「はあ」ヤレヤレ

ハルヒ「それであたしは」

キョン「その子がやったとでも?」

ハルヒ「そう」

キョン「そりゃちょいとばかし話が飛躍しすぎだろ」

ハルヒ「……でもそう考えた方がワクワクするし、整合性があるじゃないのよ!」


313: 2010/02/13(土) 05:19:55.06 ID:I+PcZUlz0

キョン「まあねえ…そうだと面白いとは思うけどよ」

ハルヒ「なによお!」

ハルヒ「じゃあアンタはなんかこの意見を論破できるような素晴らしい見解があるっての?」

キョン「いやぁ、全然」ポリポリ

キョン「単なる不調でリカバリー的ななんかでもしてたんじゃねえのと俺は結論づけた」

ハルヒ「何よそれ……的を得てないどころか意味不明じゃないのよ」

キョン「そら悪かった」

キョン「だがそれが一番ありえんじゃねえのかな、と」

ハルヒ「う……まあ。一理あるとは思うけど……」

キョン「だろ?」

ハルヒ「ああ、でもだめだめ! そんなんじゃ不思議を追い求めるモノとして情けないわ!」

キョン「情けないってなあ……」

ハルヒ「そうよ。やっぱりあの子は不運な氏を遂げた可哀想な女子高生で、パソコンを使って私たちにコンタクトを……!」

キョン「あーはいはい。わかったよ。そうだそうだ」


316: 2010/02/13(土) 05:28:03.23 ID:I+PcZUlz0

ハルヒ「ちゃんと話を聞けぇ!」バン

キョン「お前がそれを言うか!」バン

ハルヒ「だいたいアンタはねぇ……!」

キョン「……あ! つーか忘れてた! 今日中に入部に伴う活動目的だかなんだかを書かなくちゃなんねーんだよ!」

ハルヒ「はぁ? そんなのあんた一っ言も言ってなかったじゃないのよ」

キョン「あー忘れてたんだよ。ここ二、三日ドタバタしてただろ」

ハルヒ「あほ! どれよ?」

キョン「まあ、大部分はもう完成してんだけどよ」

ゴソゴソ

ペラッ

キョン「これだこれだ」

ハルヒ「ええと、なになに……」





318: 2010/02/13(土) 05:41:18.81 ID:I+PcZUlz0

文芸部入部に関する所信表明

僕たち文芸部は校内での文芸活動はもちろんのこと、空き時間を使っての学校外での創作活動を行いたいとも考えてい

ます。また周囲の住民の皆様方に対しても何かできることはないだろうかと考えた結果以下のような同好会も共に立ち

上げたいと思っています。

「生徒社会を応援する世界造りのための奉仕団体(同好会)」

(略称・SOS団)

活動内容
「学園生活での生徒の悩み相談、コンサルティング業務、地域奉仕活動への積極参加」



ハルヒ「なによコレ」

キョン「所信表明と校外活動の許可を貰うために捻り出した結果」

ハルヒ「こんなんじゃゼンゼンだめよ!」

ビリビリビリ!

キョン「だーーーー! 何しやがる!」



321: 2010/02/13(土) 05:46:23.79 ID:I+PcZUlz0

ハルヒ「予備の紙は?」

キョン「あるけどよ……お前イチから書き直す俺の身にもなってみろよ」

ハルヒ「ははーん。それならあたしにまっかせなさい!」キラーン

キョン(嫌な予感しかしない)

キョン「……ほれ」

ペラッ

ハルヒ「ペン!」

キョン「おらよ」コロコロ

ハルヒ「…ふんふふふん~」

カキカキカキ

カキカキ

カキ

キョン(スラスラ書いてるが……出来上がりが怖すぎるぞ)




322: 2010/02/13(土) 05:54:37.26 ID:I+PcZUlz0

カキカキカキ

カキカキカキ

キューキュッ!

ハルヒ「できた!」

キョン「はえーなおい」

ハルヒ「我ながら会心の出来だわ……これなら顧問も首をたてにするしかないでしょう!」



SOS団結成に伴う所信表明

わがSOS団はこの世の不思議を広く募集しています。過去に不思議な経験をしたことのある人、今現在とても不思議な

現象や謎に直面している人、遠からず不思議な体験をする予定の人、そうゆう人がいたら我々に相談するとよいです。

たちどころにー解決に導きます。確実です。ただし普通の不思議さではダメです。我々が驚くまでに不思議なコトじゃ

ないといけません。 注意してください。 メールアドレスは・・・

「世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団」 (略称・SOS団)

活動内容
「宇宙人や未来人や超能力者を探し出して一緒に遊ぶこと」

324: 2010/02/13(土) 06:04:16.91 ID:I+PcZUlz0

キョン「……」プルプルプル!

キョン「……こんなもんでOKが出るわけねーだろ! バカハルヒ!」

ビリビリビリ!

ハルヒ「あーーーー! なんてことすんのよドアホキョン!」

ハルヒ「せっかくあたしの書いた素晴らしい表明文を!」

キョン「常識的に考えて、あんなもんでOK出したらそっちの方が頭おかしいだろ!」

ハルヒ「分かってくれるかもしれないじゃない! やってみなきゃわからないわ!」

キョン「はあ…だからさっきの俺の文でよかったんだよ! ちょいちょい手を加えりゃそのままOK出たかもしんねーのに!」

ハルヒ「いーーーや、あんたの蜘蛛の巣張った頭が書いた文章じゃ読まれる前にポイよ!」

キョン「なんだと!」

ハルヒ「なによ!」

キョン「あのなあ!」チラッ

[17:30]

キョン「だーーもう時間がねえ! おいハルヒ! 職員室に予備の紙もらいにいくぞ!」

ハルヒ「なんであたしまで!」

325: 2010/02/13(土) 06:13:32.72 ID:I+PcZUlz0

テクテクテク

キョン「お前がそもそも最初に破らなきゃこんなことにゃならなかったんだよ!」

ハルヒ「うっさい! あんただって破いてたじゃないの!」

キョン「だいたいなあ、前から言おうと思ってたが、ハルヒ! お前は後先考えず行動しすぎだ!」

ハルヒ「あーーら! 石灰盗んできたコソ泥は誰かしらね」

キョン「それはお前のことを思って……!」

ハルヒ「よく言うわ! 未だに佐々木さんに誘われたらホイホイついていく癖に!」

キョン「だからそれは違うと何度言ったら……!」

ハルヒ「この前は一緒に水族館に行ったらしいじゃないの! あたしなんて動物園も連れってって貰ってないわ……!」

キョン「ソレハ……!」スタスタ

ハルヒ「ホーラボロガデテキタ…!」スタスタ

ギャーギャーギャー!



ギィー

バタン

329: 2010/02/13(土) 06:23:14.01 ID:I+PcZUlz0

部室

ヒューーン

ガリガリガリ

---------任務完了




ヒューーーン

ガリガリガリ

シュン

長門「……」

長門「……帰還する」



ヒュン!



シーーーン……

330: 2010/02/13(土) 06:31:34.72 ID:I+PcZUlz0

????

古泉「……」

みくる「ふぇ……」

長門「……」

長門「以上が今回のシークエンス」

古泉「……非常に興味深かったですよ」

みくる「涼宮さんもキョンくんも…」

長門「現在観察対象に特段の異変は見られない」

長門「全て許容範囲に収まっている」

古泉「そうですか」

みくる「……」

古泉「長門さん」

長門「なに?」

古泉「他の『彼ら』はどうなっています?」


332: 2010/02/13(土) 06:42:25.07 ID:I+PcZUlz0

長門「1~1500までは既に崩壊」

長門「残っていて安定しているのは1642、1894、2605、2933」

長門「ほかは全ていつ終わってもおかしくない」

古泉「そうですか……やはり僕たち抜きのSOS団は成立し辛いということですね」

みくる「でも本当にこんなことしてもいいんですか……?」

みくる「これじゃまるでキョンくんと涼宮さん…」

古泉「モルモットみたい、ですか?」

みくる「ふぇ、そ、そんな」

古泉「ですが仕方が無いでしょう」

古泉「僕らがより良い未来を描くには」

古泉「二人の周りから僕らを消すこと」

古泉「そう、決めたでしょう……」

みくる(……)

古泉「といっても決めたのは皆僕らの上司ですがね」


334: 2010/02/13(土) 06:51:45.67 ID:I+PcZUlz0

古泉「しかし……んふっ」

古泉「途中のパソコンには何か意味があったんですか?」

古泉「もし彼があの時エンターキーを押していなければどうなっていました?」

長門「……」

長門「……あれにも意味がある」

長門「彼を試した」

古泉「ほう」

長門「もしエンターキーを押していなければ……」

長門「オートリセット」

長門「世界はもう一度最初からやり直し」

みくる「ふぇ!?」

古泉「危なかったですね」


335: 2010/02/13(土) 06:57:09.75 ID:I+PcZUlz0

長門「……」

長門「うそぴょん」ペロ

古泉「え」

みくる「え」

長門「あそこまで到達するシークエンスは少ない」

長門「それをみすみすあんなところで消したりはしない」

古泉「……」

みくる「長門さんが冗談なんて…初めて見ました」

長門「私もたまには嘘をついてみたくなる」

古泉「……徐々に人間に近づいてるんではないでしょうか」

長門「そう」

長門「感情機能の発達が著しい」




338: 2010/02/13(土) 07:08:36.60 ID:I+PcZUlz0

長門「……それは恐らく二人の会話を観たり聴いたりしていたから」

長門「少し」

長門「心の理解ができるようになった」

みくる「いいことですよ、長門さん」

長門「……ありがとう」

古泉「んふ」

古泉「それで……これからはどうしますか?」

長門「……」

長門「情報統合思念体は現状維持を推奨している」

古泉「ではそれでいいでしょう」

長門「当分の間は対象をしぼりつつ、観察を続行……」

長門「でも、近いうちに多元化された宇宙は一つになる」


340: 2010/02/13(土) 07:21:02.11 ID:I+PcZUlz0

古泉「ええ」

みくる「……」

長門「それまでもうすぐ……」

長門「……」

古泉「僕らの求めた安定には……」

古泉「所詮、鍵と鍵穴も装置でしかなかったというわけですね」

長門「……」

長門「道具があってもそれを使うものがいなければなんの意味もない」

長門「そんなことは子どもでも知っていること」

古泉「……」

古泉「……ですから」

古泉「彼らにはもう少し…僕らのために、本来の自分たちの役割を果たしてもらおうじゃないですか」

長門「……」コクリ

みくる「……」コクリ

                     終劇

341: 2010/02/13(土) 07:26:37.85 ID:I+PcZUlz0

ヒャッハー終わったぜーーーーwwwwwwwww

マジだらだらだらだら長げーコト書いてすwwwww

もう氏ぬぜwwwつーか佐々木もSOS団三人も出すきなかったのにいつの間にか出てるし

ホント中だるみがひどすなあwww


支援、保守、面白いって言ってくれたひとありがとう!

励みになった!

まあ近いうちにまた書くからそん時はよろしく!

読んでくれたひと本当にありがとうございました!

347: 2010/02/13(土) 10:33:02.46 ID:b1Om7ESk0

引用: キョン「今ここにUFOが下りてくるといいと俺は思う」