1: 2010/03/03(水) 13:54:01.87 ID:NxFbS8JM0


───谷口家 リビング

TV「カンッケーないから、関係ないからっ」

谷口「プッ、WAハハハハ」

TV「朝日で構ってもらえないからTBSでやるお!」

谷口「WAハハハハ」

谷口父「……ゴホッゴホッ。おい、お前もう学校の勉強はすんだのか?」

谷口「あとでやるよ」

谷口父「いつも口先ばかりだ。基礎固めをしている今が大切な時期なんだぞ」

谷口「だからわかってるって!この番組終わったら勉強するから!」

2: 2010/03/03(水) 13:56:41.73 ID:NxFbS8JM0

谷口父「そういいだしてからもう3時間だ。その番組はなんだ?まさか24時間テレビだとかいうんじゃないだろうな」

谷口「ちげーよ!後15分で終ーわーりーまーすー!」

谷口父「どうだか。お前は補欠合格だった自覚があるのか?」

谷口「!!」

谷口父「他の人が遊んでる時にどれだけ頑張れるかがだな……」

谷口「うるせぇ!後で勉強するっつってんだろうが!」

谷口父「なんだその口のきき方は!」

谷口「もういい!興ざめだっての!」

ドタドタドタドタ(2階に上がる音)


谷口父「おい!……まったく。……ゴホッゴホッ」



4: 2010/03/03(水) 13:58:47.33 ID:NxFbS8JM0

───谷口の部屋

谷口「毎夜毎夜同じ会話の繰り返し……」

谷口「ったく、TVぐらい気分よくみさせろよ」

谷口「自分が一流大学出だからってよ」

谷口「へん、人は勉強できるかできねえかだけで評価されるもんじゃないぜ」

谷口「親父は確かに頭が良いと思うし、同期でも出世頭だろうさ」

谷口「それはすげえと思うけど、俺とは価値観が全然違うんだよな」

谷口「親父は知らないかもしれねえけど」

谷口「俺にはもっと別の取り柄ってもんがあるんだよ」

谷口「お? 今チャイムが鳴ったな。だれか来たのか? ……どーでもいいな」

谷口「……さっさと寝るか」

5: 2010/03/03(水) 14:01:02.29 ID:NxFbS8JM0

───翌日 昼休み 学食

谷口「おーい!ここだここ!」

キョン「なんだ、ここ人の荷物が置いてあるじゃないか。席取りされてるんじゃないか?」

谷口「俺が前の休み時間からリザーブしといたんだよ。わざわざ体育着袋を教室から持ってきたんだぜ?」

国木田「そんな大事な席に僕も座っていいの?」

谷口「サービスサービスゥ、だ。さあさ、座ってくれ」

キョン「……いるよな、こういうやつ」

谷口「なんだ、文句あるのか? 席とっておいた男にその物言いはないぜ」

キョン「はいはい。と、その体操着袋名前が書いてあるな」

谷口「お、ホントだ。こりゃ有名人になっちまうな、WAハハハハ」

国木田「前の時間から席取りをするような小さい男としてね」

谷口「……食券買いにいってくるわ」

6: 2010/03/03(水) 14:03:26.63 ID:NxFbS8JM0
sageとか悠長なこと言ってると、この時間帯でも軽く落ちる気がしてきた。




谷口「ズビビビビ。お、あそこの女子いいな。確か1年9組の沢崎! B+だったつもりだが、ありゃA-か。高校入って化粧覚えたみたいだな」

キョン「……モグモグ」

国木田「谷口はホントに女子のことが好きだね。彼女作ったりしないの?」

谷口「馬鹿やろう! 作れるもんならとっくに作ってるっての!」

国木田「ふーん。その割には誰かにモーションかけてるようにも見えないけどね」

谷口「あのなぁ。まるで俺がチキンみたいな物言いじゃねえか! ズビビビビ」

国木田「別にそうはいってないけどさ。お目当ての女子とかいないのかな、って」

谷口「そうだな……。朝倉涼子のことは狙ってたんだけどな。なんですぐに引っ越しちまったんだろうな、おかげさまでクラスのグレードが1ランク下がったぜ」

キョン「……。……モグモグ」

8: 2010/03/03(水) 14:06:07.38 ID:NxFbS8JM0

谷口「うちのクラスは今、涼宮でもってるようなもんだ」

キョン「なんでそうなる」

谷口「決まってんだろ? ミスコンやる、って話になったときのこと考えてもみろよ。かわいい女子が一人もいないクラスはみじめじゃねーか」

国木田「前提が意味わからないけど、言いたいことはわかるなぁ」

谷口「中身は最悪だけどな。付き合ってるキョンの気がしれないぜ」

キョン「おかしな物言いをするな」

9: 2010/03/03(水) 14:09:56.80 ID:NxFbS8JM0

谷口「でもうらやましくもあるな」

国木田「どこが?」

谷口「どこもここもないだろ。SOS団だっけか? 女子部員三人、涼宮朝比奈さん長門ってお前、どんだけだよ」

国木田「確かにねー。傍目から見ても可愛い子ばっかりが集まってるもんなぁ」

キョン「……ひとついいか」

谷口「ああん?」

キョン「例えばだ。無理やり付き合わされている部活があったとする。その部員が全員顔や性格がよろしくない連中だったらどうする?」

谷口「なんだそれ? いじめじゃねーか」

キョン「つまりだ。本来いじめ級の問題を、なんとか外見でごまかしてるようなもんなのさ」

国木田「案外面食いなんだね、キョン」

キョン「健全な高校男子だからな」

10: 2010/03/03(水) 14:12:05.04 ID:NxFbS8JM0

谷口「ま、涼宮の常軌を逸した行動の数々は知ってるしな、イーブンってとこか」

キョン「三人の眼福で涼宮を相頃したとして、おつりは出るぞ」

谷口「何?」

キョン「朝比奈さんがお茶を出してくれる」

谷口「なんですとっ!?」

キョン「それがまた美味くってな……」

谷口「……なんだか泣けてきたぜ」

国木田「どうして?」

谷口「コイツの高校生活に比べて、おれの高校生活がなんと華のないことか……」

女子「あのさー、隣の荷物どけてもらっていいかな?」

谷口(2年生の紺野先輩か……B+だな)

谷口「うおう、勿論おkっすよ!」

紺野真琴「いやー、わるいねー! 千昭! こっちこっち! 席取れたわよ!」

11: 2010/03/03(水) 14:14:21.91 ID:NxFbS8JM0

谷口(これはアタックチャンス!)

千昭「は? なんで俺がこんなむさい男の隣に座んなきゃいけねーんだよ。絶対ごめんだね」

谷口「む、むさ……!?」

千昭「第一、昨日俺との約束ブッチしといて昼飯暇だから呼ぶってどーゆー神経してんだよ」

真琴「いやー、いろいろあってさー! どーしても野球見に行けなくなっちゃったんだってー!」

千昭「俺楽しみにしてわざわざメガホンまで持ってったんだぜ? なのに妹がプリン買って来たぐらいでこねーってどーゆうことだよ。ったく、それにこんなジメジメしたとこで飯食うの俺はごめんだ。じゃあな」

真琴「あ、ちょっと! ……」

谷口(いっちまった……。なんか険悪なムードだったな)

谷口「そ、そんなに落ち込まないでくださいよ、水飲みます?」

ガタッ

紺野「……ホント今日はついてない。なーにがナイスの日よー、もー!」


国木田「いっちゃったね……」

谷口(いつもながら、眼中になし、か)

12: 2010/03/03(水) 14:16:10.42 ID:NxFbS8JM0

国木田「そういえば来週から期末テストだね。谷口は勉強してる?」

谷口「……してねぇーよ! なんもかんもうまくいかねー! ブルー入りましたー!」

キョン「もう少ししっかりしないとな、お前」

谷口「わーったよ。ったく、どいつもこいつも」

国木田「さて、食器片付けようよ」



谷口(……キョンがうらやましいぜ)

谷口(俺にはなにもない。キョンも似たようなもんなのに、何が違うんだよ?)

13: 2010/03/03(水) 14:18:16.70 ID:NxFbS8JM0

───放課後

生徒A「おい! 理科のノート、先生が持ってこいっていってなかったか? 日直!」

谷口「おいおい、日直誰だよ? ルーズすぎねぇか?」

国木田「今日の日直は谷口だよ」

谷口「……キョン、手伝ってくれねえ?」

キョン「仕方ないやつだな……」

ハルヒ「キョン! 団室行くわよ! さっさと用意するっ!」

キョン「……ということだ。悪いな」

谷口「……」

15: 2010/03/03(水) 14:20:39.11 ID:NxFbS8JM0

───理科室

ドスッ

谷口「ふぃーやっと半分。ったく、一人で運ぶ量じゃねーぞ! なんで何度も一号館と二号館を往復しなきゃいけねえんだ」

谷口「あーだりー。ごみ箱とかにテスト問題のコピーとか入ってねーかなー」

谷口「入ってねーよな。そううまくはいかねぇよな」

谷口「……たばこでも吸うかな。誰もこねーだろ。臭いは……窓の近くで吸えばダイジョブダイジョブーだろ」

カチッカチッ


谷口「……ふぅー。たまんねー。始めて一か月、もう既にやみつきです」

17: 2010/03/03(水) 14:22:49.06 ID:NxFbS8JM0

スッ フゥー

谷口「こうでもしなきゃ世の中の不条理なんて無視できねーよ」

谷口「なんでキョンの周りにだけ女子が寄ってくるんだろうな」

谷口「ありゃ一種の超能力だな。涼宮のやつ、超能力者は来なさい! とか言ってたし」

谷口「それで寄ってったんだからキョンは超能力者に違いない」

谷口「じゃああれか? SOS団のやつらみんなおかしな連中なんじゃねーか?」

谷口「涼宮は他に何を呼んでたっけな? コスプレーヤーにホ〇に綾波レイがいたら来いっつってたっけ?」

谷口「WAハハハハ、ま、いいや。さて、ノート取ってくるか。吸殻は……水道でも流しとくきゃいいべ」

ジャー

谷口「さてと……」

18: 2010/03/03(水) 14:24:59.80 ID:NxFbS8JM0

ガタッ


谷口「!!!???」

谷口(誰かいる!?)

谷口(や、やべぇ……)

谷口(音源は準備室か……?)

谷口(吸ってっとこ見られたかな……。顔は? バレたか?)

谷口(いや、音がしただけだし……見られたとは限らねーぞ……)

谷口(確認する必要があるな……)


ギィィィ(ドアをあける音)

谷口『……おいーす。だ、誰かいますかぁ?』(小声)

……

谷口(誰もいない?)

19: 2010/03/03(水) 14:27:13.02 ID:NxFbS8JM0

谷口「っかしーな、確かに物音したんだけど」

谷口(隠れてるのか? 驚かしてみるか)

谷口「……WAっ!!」

……

谷口「反応なし、か」

谷口「気のせいだったかな……と、あれ? なんか落ちてるな」

谷口「くるみか……? これがどっかから落っこちたのかな?」


ガタッ

谷口「だ、誰だっ? うおっ!」

谷口(こ、こける!)

ブィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン

谷口(な、なんだ!??)

20: 2010/03/03(水) 14:29:46.50 ID:NxFbS8JM0

テテーテレテレテレテレテレテレテー

谷口「ウァアハアハッハハハハッヒィイイイイヤアァアアアアアア」

谷口(なんぞなんぞこれなんぞこれええええ!!)

谷口(時計だらけな世界だ! うお、バッファローの群れかあれ? 何ぞこれ?)

谷口(新手のドラッグかぁあああああああ????)

谷口「うああああああああああああ」

21: 2010/03/03(水) 14:31:59.67 ID:NxFbS8JM0

ドンッ

谷口「いってぇええええ……」

谷口「ここは?」

谷口「理科準備室か……」

谷口「ただこけただけだったのか? じゃあ今のは一体なんだ?」

ギィィィ

谷口「だ、誰だ!!??」

国木田「ビックリしたー。いきなり大きな声出さないでよ」

谷口「な、なーんだよ、国木田か」

国木田「なんだとは何さ。いつまでたってもノートが置きっぱなしだからわざわざ持ってきてあげたってのに」

谷口「ありがとな……。そうだ、今近くで誰か見なかったか?」

国木田「見てないけど……?」

谷口「そ、そうか……」


谷口(夢だったのか……? いったいなんなんだよったく)

22: 2010/03/03(水) 14:34:09.18 ID:NxFbS8JM0

───その頃、SOS団室

ハルヒ「だーかーら! あんたがやればいいでしょそんなこと! 団長が手をだすまでもないわ!」

キョン「あ、あのなぁ、だからってなんで俺がやらにゃならんのだ! 汚したのはお前だろうが!」

ハルヒ「団長命令よ! さっさとやりなさい!」

キョン「民主党の誰かさんみたいに権力に居座るな!」

ハルヒ「うるさいうるさいうるさーい!あたしは汚職なんてしてないもん!当然の権利を行使してるだけよ!」

キョン「意味のわからんもん作って食器を汚してるじゃねーか!」

ハルヒ「それが?」

キョン「そ、それだけだが……」

ハルヒ「じゃあさっさと洗ってきなさいっ!」

キョン「ちくしょう……」


古泉(汚食器、おしょき、おしょくというわけですか……。さすがに安易すぎますね)

23: 2010/03/03(水) 14:36:29.62 ID:NxFbS8JM0

長門「……」

古泉「? どうしたんです?何か気になることでも?」

長門「4分15秒前、想定外の情報爆発を確認した」

古泉「……一体どういうことです? 涼宮さんのケーキを彼が食べたのはたった今のことですよ?」

長門「それより、いくばくか前のこと」

古泉「では涼宮さんとは関係を持たないものであると?」

長門「断定できない。なんらかの干渉は行われた可能性がある」

古泉「なるほど……。その情報爆発について説明願えますか?」

長門「統合思念体が現在データベースから情報を策定中。全体の解析には多くの時間が必要」

古泉「具体的にはどれだけの時間が?」

長門「……解答できない。過去に似た事例が発見できた場合、明日にも解析は完了できる」

古泉「発見できなかった場合は……」

長門「涼宮ハルヒのように観察対象として指定される可能性がある」

24: 2010/03/03(水) 14:38:56.62 ID:NxFbS8JM0

古泉「なるほど。なかなかに由々しき事態ですね」

長門「そう」

古泉「しかしながら我々の機関では、現在の涼宮さんに関するチームと同様の人員や資金を用意できません」

長門「……」

古泉「機関の規模には自負がありますが、それでも二兎を追うことには多大なリスクが伴うと、おおよそ考えられるでしょう」

長門「……」

古泉「したがって、涼宮さんとその情報爆発の関連性が希薄な場合、我々は傍観の立場をとることになりそうです」

長門「饒舌」

25: 2010/03/03(水) 14:41:20.42 ID:NxFbS8JM0

古泉「我々も、少々統合思念体の力を計りかねているのですよ」

長門「……」

古泉「できることならばなるべく統合思念体のことは刺激しないよう、という方針なんです」

長門「……」

古泉「こちらの行動指針を知ってもらい、テリトリーについて一線引きたいとおもいまして」

長門「……」

古泉「あくまで我々は涼宮さんに興味がある訳ですよ。統合思念体の興味と我々の興味の対象は、被ることはあれど完全に一致している訳ではない、ということです」

26: 2010/03/03(水) 14:43:29.97 ID:NxFbS8JM0

長門「WINWINゲーム」

古泉「そのとおりです。流石ですね」

長門「今回私は貴方の機関に対し、この一件に手を出さないことを期待している」

古泉「!? 珍しいですね、私的な意見を伺えるとは」

長門「かもしれない」

古泉「それは一体何故ですか?」

長門「涼宮ハルヒと関係性を持たない事柄において、私的感情の行使は規制されていない」

古泉「……なるほど。では手を出してほしくない理由について、伺えますか?」

長門「……」

古泉「わかりました。とりあえず今回の一件は機関にはまわさないことにしましょう」

長門「……感謝する」


古泉(長門さん個人の関心が向くこと、ですか。んふ、興味深いですね)

27: 2010/03/03(水) 14:45:41.27 ID:NxFbS8JM0

───下校中、人のほとんど通らない裏道にて

谷口「ったく一体なんだったんだ? 煙草も見られたかもしんないし、今日はついてねーぜ」

谷口「あーあ。テストやべーよ。出来る気がしねー。高校のテストってどんな感じなんだあ?」

谷口「高校入れたのだって奇跡みたいなもんだし。山張りあたりーのあたりーのだったもんな」

谷口「まったく山本勘助も真っ青だぜ」

谷口「まぁいいや。とっとと帰って勉強でも、っとその前に一服……」

谷口「一服……」

谷口「……ねぇ!!」

谷口「え、まじで? ……マジマジマジ!」

谷口「ねぇよねぇよねぇよ! ど、どっかにおとしたってかぁ!?」

28: 2010/03/03(水) 14:47:50.99 ID:NxFbS8JM0

谷口「おいおい勘弁してくれよシャレになんねーって!」

谷口「あ! あの準備室でこけたときに落としたのか!?」

谷口「やべーよそれはやべーよ!」

谷口「日直で理科室入ったたのばれてるし!」

谷口「幸いなことに、まだ学校の近く!大して時間も経ってない!」

谷口「急いで戻れば間に合うかもしれねぇ! ここはダッシュだ!」

29: 2010/03/03(水) 14:50:01.40 ID:NxFbS8JM0

ダダダダダダ

谷口「うお、こんなとこに自転車が! しゃーない、ぎっちまうか!」

ガチャガチャッ

谷口「ちゃんと返すからよ!ちょっと借りるだけだから!」


キコキコキコキ

谷口「なんでこんなときに赤なんだっつの!」

谷口「こちとら学生生活がかかってるんだ! 喫煙で停学とかださすぎだぜ」

谷口「ここは強行突破だな!信号なんてきにしてられっかよ!」


ププーーーーーー!!!

谷口「えっ?」

30: 2010/03/03(水) 14:52:11.78 ID:NxFbS8JM0

谷口(あ、トラックだ。馬鹿なの、氏ぬの?)

谷口(くだらなすぎるけど、俺にはふさわしいかもな)

谷口(WAWAWA……)

谷口(……でも氏なずにすむなら……)

谷口(親父と……)


バーン!!

31: 2010/03/03(水) 14:54:21.36 ID:NxFbS8JM0

───理科室前の廊下

谷口「ノートも置きっぱなしだったし、箱も動いてなかった」

谷口「ふー、とりあえず誰にも見られなかったってことだよな」

谷口「よかったよかった」

谷口「しかしさっきのはなんだったんだぁ?」

谷口「事故ったと思ったら、怪我もなくて自転車をギッた場所に戻ってた」

谷口「……時が、戻ったみたいだったな」

33: 2010/03/03(水) 14:56:33.29 ID:NxFbS8JM0

谷口「んなばかなことあるかよな……」

ガチャッ

キョン「ふぅー」

谷口「お、よおキョン」

キョン「谷口か」

谷口「家庭科室からなんか出てきて、何やってたんだ?」

キョン「みてのとおり、皿洗いだ」

34: 2010/03/03(水) 14:58:41.69 ID:NxFbS8JM0

キョン「昨日朝比奈さんがケーキを持ってきてくれたんだが、それがまたうまくてな」

谷口「ふーん」

キョン「それに涼宮が対抗心を燃やして、今日材料買い込んできたんだ」

谷口「ふんふん」

キョン「で、結果出来たのがケーキとは呼べないような見かけでな」

谷口「なるほど」

キョン「それをみんなに食わせたくないもんだから全部自分で食おうとしたんだが、もったいないから俺が一切れ食ってやったんだ」

谷口「ほう……」

キョン「それから、うまいぞ、って言ってやったのさ」

35: 2010/03/03(水) 15:00:41.47 ID:NxFbS8JM0

キョン「そしたら顔を真っ赤にして皿洗いをしてこいとか言うもんだから……」

谷口「……」

谷口「なぁキョン……」

キョン「そこで俺は……ん? どうした?」



谷口「時を跳ぶことってできると思うか?」

キョン「!!!!」

36: 2010/03/03(水) 15:02:51.76 ID:NxFbS8JM0

キョン「どこでそれを!!??」

谷口「何もそんなに驚かなくてもいいだろ、そんな真剣な話じゃねーよ」

キョン「……なんでそんなこと聞くんだ?」

谷口「べ、べつに? おまえらおかしなことしてるだろ? その一貫でそーゆう実験とかしてねーのかな、と思ってさ」

キョン「……」

谷口「いや、悪かったな。お前は涼宮菌におかされてないんだったっけな。おかしなことを聞いちまった。わすれてくれ」

キョン「……跳べるんじゃないか?」

谷口「……え?」


キョン「跳べると、思うぞ」

37: 2010/03/03(水) 15:05:02.34 ID:NxFbS8JM0

キョン「年頃の奴にはありえる話だそうだ」

谷口「だ、だけどよ、ど、どうやって跳ぶんだ??」

キョン「方法はわからんが……やっぱりピンチのときとか、勢いじゃないか?」

谷口「……」

キョン「でも、なんでこんなことを聞くんだ?」

谷口「……笑わないか?」

キョン「俺がいつも誰の相手をしてると思ってるんだ……」

谷口「誰にも言うなよ、涼宮二世はいやだからな!」

キョン「わかったわかった。で?」

谷口「かくかくしかじか……」


キョン「……なんだって……」

38: 2010/03/03(水) 15:07:32.28 ID:NxFbS8JM0

谷口「な、なぁ、おかしなことになっちまったのか? 俺」

キョン「い、いいじゃないか。手から火の玉を出せる奴よりは随分実用的だ」

谷口「茶化すなよ」

キョン「は、はは。まあ、害のあることじゃないし、そんなに深刻に考えることないんじゃないか?」

谷口「それは、そうだが……」

キョン「そそそ、そうさ。じゃあ俺は団室に戻らないといけないから、もういくよ」

谷口「ああ、悪かったな、おかしな話につきあわせて」

キョン「いいさ。気にするな」




キョン(何か朝比奈さんと関係しているのか? 朝比奈さんに聞いてみるべきだろうか……いや、どうせ禁則事項に決まってるな)

キョン「ま、古泉やら長門もいるし、俺の出る幕ではないよな。ささ、早いとこ部室戻らんとまたハルヒが怒りだしそうだ」

39: 2010/03/03(水) 15:09:41.39 ID:NxFbS8JM0

そして時をおいて期末テスト明け


───期末テストの上位者発表掲示板

ガヤガヤガヤ

キョン「さすが国木田だな、学年3位とはうらやましいぜ」

国木田「ありがとう。でも、キョンも載ってるじゃない」

キョン「まぁな。うちの団長のスパルタ教育があったからな」

国木田「SOS団だっけ? 涼宮さんが2位、古泉君は5位、それに長門さんが22位。加えてキョンが49位とは、すごい集団だね」

キョン「涼宮はあそこで悔しがってるがね」

涼宮「むむぅ……」

谷口「……」



谷口(ブ、ブービー賞……)

40: 2010/03/03(水) 15:11:52.08 ID:NxFbS8JM0

ハルヒ「ちょっとキョン! あんた49位ってふざけてんの?」

キョン「ふざけてるとはなんだ! お前が言った”団員は50位以内であるべし”をちゃんと守ったじゃないか!」

ハルヒ「かー、これだから昨今の若者は困るのよ。いーい? 1やれと言われたら2をやってくるぐらいじゃないと、社会じゃ通用しないわよ!」

キョン「でかい口叩いてるがな、お前だって公言してた一位、取れてないじゃないか!」

ハルヒ「うるっさいわね! バカキョンの癖に生意気よ!」

谷口「……49位だってすげえじゃねえか」

涼宮「何? 部外者は黙ってなさい」

谷口「キョンだって頑張ったんだ! みんなお前と同じようにはいかねぇんだよ!」

キョン「谷口……」

ハルヒ「……言うじゃない。で、あんたは何位なのよ?」

谷口「それは……」

41: 2010/03/03(水) 15:13:32.50 ID:NxFbS8JM0

ハルヒ「それだけ言うんだから、あたしより上なんでしょうね?」

谷口「なーんでそうなる。そりゃ一位じゃねぇか」

涼宮「ふーん、なのにそんな大口叩いてるわけ」

谷口「ひ、人の取り柄ってのは勉強だけじゃねえんだよ!」

涼宮「それはそれ、これはこれ。さあ、その順位票みせなさいよ!」

ドゥシッバシュッ トリャー

キョン「お、おいハルヒ、やめろ」

谷口「ちょ、おまっ」

涼宮「いいじゃないちょっとぐらい! ほいっとー! へへーん!」

谷口「よ、よせよ!」


涼宮「さーて、順位はどーなのかしらねぇ? ……あ」

谷口「……」

42: 2010/03/03(水) 15:15:44.32 ID:NxFbS8JM0

涼宮「……」

キョン「ハルヒ……?」

谷口「もういいだろ、返せよ」

バシッ

涼宮「えっと、その……」

谷口「お前は勉強もスポーツもできるし、顔もいいだろうさ」

涼宮「……」

谷口「だが、出来ない奴を馬鹿にする権利があるのかよ」

涼宮「……」

谷口「わりいなキョン、先生に呼ばれてっからもういくわ」

キョン「お、おう」


ハルヒ「……」

43: 2010/03/03(水) 15:17:52.82 ID:NxFbS8JM0

───放課後、団室

朝比奈「……うぅー、胃が痛いです~」

キョン「大丈夫ですよ、何か文句をいってきたら、俺がガツンといってやりますから」

朝比奈「でもキョン君がそんなことしたら……」

キョン「そんなこと気にする必要ありませんよ。なあ、古泉?」

古泉「やれやれ。多少のバイトぐらいは覚悟することとしましょう。仲間のためですからね。とはいえ、涼宮さんも厳しいことは言わないと思っていますが」

朝比奈「だけど今度はどんなかっこをさせられるかと思うと……」


バタンッ

朝比奈「ヒッ」

ハルヒ「……」

44: 2010/03/03(水) 15:20:02.07 ID:NxFbS8JM0

ハルヒ「……」

テクテクテク スワッ

朝比奈・キョン・古泉「……」



ハルヒ「……ハァ」

朝比奈・キョン・古泉「!!」



キョン「た、ためいきをついたぞ。これもお前のバイトの前兆じゃないか?」

古泉「いえ、今のところそういった連絡は……。涼宮さんの様子の原因について、何かご存知で?」

キョン「いや、そんなこと……あ」

45: 2010/03/03(水) 15:22:17.14 ID:NxFbS8JM0

古泉「何か知っているようですね。話していただけますか?」

キョン「さっき期末テストの順位発表があったろ?」

朝比奈「す、涼宮さんに聞こえないようにしてくださぁい……」

キョン「わかってます。そこで、ハルヒは一位を取れなかったことを悔しがってたんだ。あいつは2位だったんだがな」

古泉「ふふ……涼宮さんらしいですね。とはいえ、まさかそれが理由だとは思っていませんよね?」

キョン「だったら今頃どなりちらしてるだろうさ。その後の話だ。あいつは俺の順位にあたってきたんだが……」

かくかくしかじか

48: 2010/03/03(水) 15:24:24.76 ID:NxFbS8JM0

古泉「なるほど……そんなことが」

キョン「谷口の順位がどれほど悪かったかはしらんが、どうやら谷口の言葉が効いたみたいだな、今の様子からすると」

朝比奈「谷口さんというのは、キョン君の友達なんですか?」

キョン「そうです、クラスメイトなんですよ」

朝比奈「谷口さんはすごいですね、涼宮さんにそんなこと……」

キョン「はは、馬鹿ばかりする奴ですけどね」


ガタッ

ハルヒ「ああああ、もう!」

50: 2010/03/03(水) 15:26:32.83 ID:NxFbS8JM0

キョン「ど、どうしたんだ」

ハルヒ「あんた、まさか私が勉強なんかで人を評価するちっさいやつだと思ってないでしょうね!?」

キョン「べつにそんなこと思っちゃいないが」

ハルヒ「今回のだってゲームみたいにした方が試験勉強が楽しくなると思っただけなのよ!」

キョン「だ、だからわかってるって、そんなこと」

ハルヒ「さ、さっきあのアレにつっかかっちゃったのだって一位がとれなくて、ちょっと不機嫌になっちゃってただけで……」

キョン(名前ぐらい覚えてやれよ)

ハルヒ「……決めた! 私がどれだけ器の大きな人間か、アレに見せ付けてやるわ!」


長門「……」

51: 2010/03/03(水) 15:28:42.87 ID:NxFbS8JM0

キョン「ほほう、で、何をする気なんだ?」

ハルヒ「それをこれから考えるのよ。そうねぇ、何かあの男子生徒がビックリするようなのがいいわよねぇ」

キョン「なんだそれ、器を見せ付けてやるんじゃなかったのか?」

ハルヒ「そうよ! だから、勉強のことをちまちまいうしか脳のない人間じゃないっていう風に、あたしのことを見直させるようなことをしてやんのよ!」

キョン「だが、驚かせば人の価値観を変えられるってもんじゃないぞ」

ハルヒ「むむ……。それもそうね……。あんた何かいい考えないの?」

キョン「何で俺なんだ」

ハルヒ「あんたあの男子生徒と良く話してるじゃない」

キョン「そりゃあ、そうだが。んー、そーだなー……」

ハルヒ「やっぱいい! 自分で考えるから! あんたは黙ってなさい!」

キョン「……」

52: 2010/03/03(水) 15:30:54.07 ID:NxFbS8JM0

───下校中

谷口「はぁ……。職員室に呼び出されてこってりしぼられた」

谷口「一番へこんでるのが俺だってことが何故わからない……」

谷口「叱りたがる、それは教師のエゴだぜ……」

谷口「土日もほとんど勉強しなかったからな」

谷口「俺だって良い成績とりてえけど、ついついさぼっちまうんだよなぁ」

谷口「やり直せるならがっつり勉強するんだが……」

谷口「また親父に怒られるぜ……」

谷口「あの目、絶対馬鹿にしてる。なんといってもそれがいやだ……」

谷口「ったく胃がきりきりまいだぜ……」

53: 2010/03/03(水) 15:33:04.60 ID:NxFbS8JM0

───家、リビングへ

ガチャッ

谷口「ただいまー、うおっ!」

谷口父「……」

谷口(な、なんで親父がこんな時間に家にいるんだよ)

谷口「お、おかえり。今日は早いんだな」

谷口父「ああ、ただいま」

谷口(なんとなく雰囲気がおかしい、か?)

谷口母「あら、帰ってたの。おかえり」

谷口「た、ただいま」

54: 2010/03/03(水) 15:35:13.85 ID:NxFbS8JM0

谷口母「そういえば今日期末テストの結果発表だったんじゃないの?」

谷口「な、なぜそれを……」

谷口母「母親はね、子の表情からいろいろ読み取れるものなのよ。とにかく、どうだったの?」

谷口「……」

谷口母「まさか、ブ-ビー賞?」

谷口「なっ……!」

谷口母「ええっ! あんた、そんな成績とっちゃったの!」

谷口父「お前……」

谷口(ちくしょうちくしょうちくしょう……)

谷口「畜生っ!」

55: 2010/03/03(水) 15:37:23.15 ID:NxFbS8JM0

───河川敷

谷口「……」

谷口「誰も俺のことをわかってなんかくれねえんだな……」

谷口「ミスッたことなんて重々承知なのに、傷に塩を塗るようなことをしてくれやがって」

谷口「あー俺がこんなに悩んでるってのに、子供は川で遊んでるぜ……。あの頃は何も考えなくてよかったから楽だったな」

谷口「明日のことなんて気にもとめなかった。怖いものなんてなかったな」

谷口「……俺は何が怖いんだろうな。なんでこんなに毎日苦しいんだ?」

谷口「考えて、なんとかなるもんでもねーんだろうな。おれ、頭悪いし」



子供「この石をこーやって投げると、ワープするんだぜ?」

ポチャッ ポチャッ ポチャッ

子供「な、すごいだろ?」

子供「すげー!」

57: 2010/03/03(水) 15:39:33.88 ID:NxFbS8JM0

谷口「ワープなんかしてねーよ、もっと目をこらせっての。必氏に跳ねてるんだぜ? それ」

谷口「あー、でも俺さっきワープしたよな。カカカ、必氏に自転車こいでよ!」

谷口「……でも……ワープ、か……。」


───キョン:……跳べるんじゃないか? 跳べると、思うぞ


谷口「やりなおしてえな」

谷口「がっつり勉強して、あの掲示板にのってやりてえ」


───涼宮:さあ、その順位票みせなさいよ!


谷口「そしたらみんなの俺を見る目が変わるだろうし」


───谷口父:いつも口先ばかりだ。


谷口「親父だって、俺のことを……」

58: 2010/03/03(水) 15:41:43.33 ID:NxFbS8JM0

谷口「……決めた、いっちょやってやろーじゃねぇか!!」

ダダダッ


谷口「うおおおおおおおおおおお」

子供「うわ、男の人が河に飛び込もうとしてる!」

子供「ほ、ほんとだ! すごい顔!」


谷口(がんばるから、帰れたらがんばるから! 俺にチャンスをくれ!)

バッ



谷口「いっけぇえええええええええええ!」

60: 2010/03/03(水) 15:43:54.00 ID:NxFbS8JM0

ブィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン

テテーテレテレテレテレテレテー

谷口「ヒーーーーーハーーーーーー!」

……


ガラガラガシャッ

谷口「……っててて……」

谷口「こ、ここは? 家のリビング?」

TV「カンッケーないから、関係ないからっ」

谷口「この番組、見たことあんぞ……」

61: 2010/03/03(水) 15:46:13.77 ID:NxFbS8JM0

TV「朝日で構ってもらえないからTBSでやるお!」

谷口「……もしかして……」

谷口父「……ゴホッゴホッ。おい、お前もう学校の勉強はすんだのか?」

谷口「……おおおおおお!」

谷口父「おい?」

谷口「まかせろ!」

谷口父「!?」


ダダダダダダ(階段を登る音)



谷口「俺、跳べんじゃん!!」

谷口「うおおお!やりなおしてやるぜえええ!」

62: 2010/03/03(水) 15:48:25.08 ID:NxFbS8JM0

───期末テストの上位者発表掲示板


ザワザワ

キョン「国木田が2位、俺が50位、そして15位が……」

谷口「へっへーん! そう、俺様だぜ!」

キョン「まさか谷口がこんなに勉強できる奴とはな。授業中は先生からおこられてばかりだったのに」

谷口「脳ある鷹は爪を隠すってな!」

国木田「でもほんとに驚きだなぁ。まさか谷口が家で勉強してるなんてね」

谷口「WAハハハハ、まーあんまり褒めるなって!」

谷口(一度また期末を受けて、模範解答もらって、それだけ丸暗記して過去に跳んでやったぜ!)

谷口(労せずこの順位!)

谷口(うは! この力おいしすぎるぜ!)

63: 2010/03/03(水) 15:50:34.76 ID:NxFbS8JM0

ハルヒ「……」

キョン「どうしたんだ?」

ハルヒ「……べつに? なんでもないわよ」

谷口「涼宮は7位か。なんで不機嫌なんだ? 十分じゃねーか」

ハルヒ「うるさい!」

ダダダダダダ


谷口「な、なんだ?」

キョン「期末前から、テストのこととなるとずっとあの調子でな。ったく、何が気に食わないんだか」

谷口「ふーん、ま、どうでもいいけどな」

64: 2010/03/03(水) 15:52:50.14 ID:NxFbS8JM0

───下校時

谷口「よし、テストも終わったし!カラオケでもいこーぜ!」

国木田「カラオケかぁ。うん、いいよ」

谷口「よし! キョンはどうだ?」

キョン「せっかくの団活オフの日だしな、やぶさかじゃあない」

谷口「よし、じゃあ今日は俺のおごりだぜ!」

国木田「太っ腹だね、何かあったの?」

キョン「なんだなんだ、人が変わったようじゃないか」

谷口「がっはっは! 今日はテストもよかったし機嫌がいいんだよ!」

65: 2010/03/03(水) 15:55:15.14 ID:NxFbS8JM0

───歌広にて

国木田「また後でソレはソレで♪ ちょっとしたネタに変わるって♪」


プルルルルル

谷口「はい」

店員「お時間5分前になりましたが、延長どうなさいますか?」

谷口「延長っすかぁ? それきいちゃう? 俺に?」

店員「はい?」


ブィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン

テテーテレテレテレテレテレテー

谷口「ヒーーーーーハーーーーーー!」

……

国木田「一曲目何にしようかなぁ……とりあえず"友達としてはソレが"あたりかな」

谷口「……あれだ、他人のキャラソン以外を歌ってみるのもいいんじゃねえか?」

66: 2010/03/03(水) 15:57:24.80 ID:NxFbS8JM0

───下校中

谷口「ひー、つかれたぜー!」

国木田「いきなりどーしたの? さっきまで不気味なぐらい元気だったのに」

キョン「ひどいガラガラ声だな」

谷口「WA、わばばば」

谷口(結局10時間歌ってから、金払いたくないからこの時間まで戻っちまった)

キョン「テストも終わったし、カラオケでもいかないか?」

国木田「いいね、久々にキョンの美声を聞きたいし」

キョン「ほめてもなんもでないぞ」

谷口「スマン!今日はちょっと用事あってよ、さっさと家かえんねぇといけねえんだわ」

国木田「えー、つれなーい」

キョン「テストであんだけの点とっておいて、また家帰って勉強でもすんのか? お前勉強フェチなのか?」

谷口「だから謝ってんだろ? 今度なんかおごっからよ、じゃあな!」

68: 2010/03/03(水) 15:59:35.27 ID:NxFbS8JM0

───家の玄関

谷口(ついにこのときがきた)

谷口(毎度毎度成績の悪かった俺が、高校入っていきなり上位入賞)

谷口(親父も俺のことを見直すに違いないぜ)

谷口(……まぁ今回はちょっとせこい手使っちまったけど)

谷口(次からは自力でやるから、いいよな!)

谷口(よし!)

ガチャッ

───リビング


谷口「ただいまー!」

69: 2010/03/03(水) 16:01:45.38 ID:NxFbS8JM0

谷口父「……」

谷口母「あら、おかえりなさい」

谷口「今日期末テストの結果発表だったんだが、いやー最高の結果だったね!」

谷口母「あら、そういえばそういう時期ね」

谷口「そうなんだよ!」

谷口母「それにしても珍しいわね、あんたが勉強の話題をふるなんて」

谷口「いいじゃねえか!」

谷口母「ふーん? で、何位だったの?」

谷口「それがなんと……学年で15位だぜ!!」

谷口母「すごいじゃない! 遊んでばっかりだと思ってたけど、あんた頑張ってたのねー」

谷口「まぁな! 頑張らなくても出来る子なんだよ!」

70: 2010/03/03(水) 16:04:01.37 ID:NxFbS8JM0

谷口父「……」

谷口(お、親父は……?)

谷口父「期末テストの結果なんてどうでもいい」

谷口「え……?」

谷口母「ちょっとあなた、いくらなんでもそれは……」

谷口父「勉強とは、テストで結果を出すということではない」

谷口「……」

谷口「べつに親父の意見なんてきいてねーよ!」

ガチャッ ダッダッダッダッ


谷口父「……ゴホッゴホッ」

71: 2010/03/03(水) 16:06:12.19 ID:NxFbS8JM0

───部屋


谷口「……」

谷口「力抜けちまった」

谷口「あー、彼女欲しー」

谷口「勉強にうつつを抜かしてた俺がバカだったぜ」

谷口「ったく……」

谷口「あーあ……」

谷口「良い点とるのもそんなにいいもんじゃねえな」

谷口「……」

谷口「……寝よ」

72: 2010/03/03(水) 16:08:22.07 ID:NxFbS8JM0

───翌日、朝、教室

キョン「いやー、今日も熱いな。夏真っ盛りだ」

谷口「……」

キョン「? どーしたんだ?」

谷口「え、あ、なんだ? なんか用か?」

キョン「朝っぱらからボーっとしてると昼には熟睡コースだぞ。しこりすぎて寝不足か?」

谷口「……期末の結果さ、俺よかったよな?」

キョン「そうだな。正直びっくりしたぞ。で、しこりすぎて腱鞘炎にでもなったか?」

谷口「だよな。……俺のこと、見直したりとかしちゃったりしたか?」

キョン「どーだろうな」

谷口「それはどーゆう……」

キョン「まぁ、勉強はできるやつなんだな、と思い直したよ。だが……」

谷口「だが?」


キョン「友達が勉強できるかどうかなんて、正直どうでもいいな」

73: 2010/03/03(水) 16:10:32.26 ID:NxFbS8JM0

谷口「……それは、そうだけどよ」

キョン「勉強なんて一つの要素でしかない、人の取り柄ってのはべつにある。そういってたのはお前だろ?

谷口「それは、そうだけどよ」

キョン「ま、世の中は下からでしか支えてやれないような奴が沢山いるのさ」

谷口「??……おいおい、それは俺が底辺の人間だってことか?」

キョン「そうはいってない。だがお前の姿に安心できる奴がいるってことだ」

谷口「つまり?」

キョン「“ああ、谷口みたいな奴もいるんだから、俺も平気だろ”みたいな」

谷口「……もうどっかいってくれ」

キョン「す、すまん」


キョン(はて、そういやいつ谷口からそんなリア充めいた言葉を聞いただろう? ……あいつからまともな言葉なんて聴いた覚えがないが)

74: 2010/03/03(水) 16:12:42.19 ID:NxFbS8JM0

───昼休み 団室

ハルヒ「草野球大会にでるわよ!」

キョン「なんだよいきなり! 面子全然足りないじゃないか! それにお前ルールしってんのか?」

ハルヒ「るっさいわね! でるったらでるの! いい? これは団長命令なんだからね!」

朝比奈「……」

ハルヒ「7月だからかしら? なーんだか気持ちがそわそわするのよねぇ。大事なことを忘れてるような気がしちゃって、テストも全然手につかなかったのよ」

キョン「そういやお前1位とるとかいってたくせに、全然だめだったじゃないか」

ハルヒ「あー、そんな話もあったわね。でもそんなのもうどーでもいいのよ。テスト勉強を頑張る要素の一部になった、それで十分じゃない。結果なんてどうでもいいの」

キョン「ほう……」

朝比奈「ほっ……」

古泉「ふむ……」

長門「……」

75: 2010/03/03(水) 16:14:59.52 ID:NxFbS8JM0

ハルヒ「そんなこんなでうやむやしてるのを、パーッと吹き飛ばすならやっぱりスポーツよね!」

キョン「お前にしちゃあまともな意見だな」

ハルヒ「まぁね。奇をてらってばかりでは奇じゃなくなっちゃうもの。それじゃ不思議も不思議とわかんなくなっちゃうし」

キョン「なんかの言葉遊びか?」

ハルヒ「いちいちうるさい! とにかく! 草野球大会にでるんだからね!!」

キョン「百歩譲って出るとしよう。面子はどうするんだ?」

ハルヒ「集めればいいじゃない」

キョン「誰が?」

ハルヒ「集めなさい」

キョン「おれかよ! なんでおれだよ!」

ハルヒ「だんちょーめいれい」

キョン「またかよっ! お手軽すぎだろ! マッククーポンじゃないんだぞ!」

76: 2010/03/03(水) 16:17:09.82 ID:NxFbS8JM0

ハルヒ「黙りなさい。じゃあ私は昼休み中にしないといけないことあるから、また教室でね!」

バタンッ


キョン「カースト制の一番下の気持ちがわかってきたぜ」

朝比奈「私も友達を誘ってみますね」

古泉「おや、多少乗り気のようですね? 野球はお得意ですか?」

朝比奈「いえ、私の時代ではもう教科書にすら載ってないスポーツですから、やったことはないんです。でも……」

キョン(まぁ、マイナースポーツだし、仕方ないだろうな)

朝比奈「でも勉強のことで、何も言われなかったのでうれしかったんです。そのお礼じゃないですけど、協力したいな、って」

古泉「野球がどんなスポーツか知ってます?」

朝比奈「いえ。でも、子供でもやれるんでしょう? なら私にも……」

古泉「野球というのはですね……かくかくしかじか」


朝比奈「100km近いボールを至近距離で打つんですかぁ?……え、それはないと思います……」

77: 2010/03/03(水) 16:19:41.68 ID:NxFbS8JM0

朝比奈「私にできる訳ないですよ~!」

古泉「まぁまぁ、別に涼宮さんも朝比奈さんがヒットばかり打つことを期待してはいないと思いますよ。ただ、彼女はSOS団で何か大会に出たいのでしょう」

キョン「そーいや6月中に、“台風のやつのせいで草野球大会が延期されちゃったのよ! 腹立つわー!”とか言ってたな。そのしわ寄せか」

朝比奈「……はぁ、意思は固いみたいですねぇ……」

キョン「七月か……もうすぐ夏休みですね。その前の最後の難関だと思って、がんばりましょう」

朝比奈「どーせ夏休みだって涼宮さんに振り回されるに決まってますよ……」

キョン「……ひ、否定はできませんね」

古泉「ふふふ、退屈しないですみそうではありませんか。高校生活の夏休みなんて忙しいぐらいがちょうどいいですよ」

朝比奈「……じゃあ私、教室に戻りますね」

キョン「あ、じゃあまた放課後!」

朝比奈「はい……」

78: 2010/03/03(水) 16:21:49.96 ID:NxFbS8JM0

───放課後

キョン「まさかの千本ノック。みてるだけで疲れたわ」

キョン「と、面子集めないとな。どーしたものか」

キョン「谷口と国木田はきっとおkしてくれるだろ」

キョン「谷口といえば、朝、なんか様子がおかしかったな」

キョン「スポーツやりゃあ気が晴れるとハルヒですら言ってるんだ、谷口にも悪影響はあるまい」

キョン「早速電話かけるとするか」

ピピピピピッ


prrrrr ピッ


谷口「どうした?」

79: 2010/03/03(水) 16:24:01.20 ID:NxFbS8JM0

キョン「よう。いきなりなんだが、土曜暇か?」

谷口「特に用事はねえけど、なんかあんのか?」

キョン「草野球大会に涼宮が出たいっていいだして、その面子を探してるんだ。出てくれないか?」

谷口「なーんで俺がそんなこと」

キョン「何やら落ち込んでるようだったが、いい気分転換になると思うぞ」

谷口「野球なんかやったって面白くもなんともねーよ。授業でしかやったことないぜ」

キョン「……朝比奈さんのコスチューム姿みたくないか?」

谷口「……」

キョン「しかも応援してくれるんだぞ? どうだ?」

谷口「ったくしかたないねーな! そこまでいうならいってやるよ!」

キョン「よし! じゃあまた詳しいことはメールする。土曜日あけといてくれ」

谷口「ラージャ」

キョン(ちょろい。後は国木田と……妹でいいか)

80: 2010/03/03(水) 16:26:20.97 ID:NxFbS8JM0

───大会当日


谷口「行く、っつったのはいいもののな、ずぶの素人がただ応援してもらうってのも気がひけるぜ」

谷口「こうなりゃ一発、かっこいいところ見せ付けてやんないとな」

谷口「たかが草野球大会、よくボール見て思いっきりバット振りゃなんとでもなるだろ!」

谷口「そんで女子の黄色い声を浴びながらホームベースを踏む俺……」

谷口「……絵になる! こいつは絵になるぜ! 才能だけで打ちました! みたいな!」

谷口「ここはおれの力の出番だな! コースみてから時間まきもどせば……ウヒヒ」

谷口「おれの人生バラ街道が始まりを告げそうだ! 待ってろよギャラリー達!」

谷口「さてさて、そうして俺は大会会場にやってきましたよっと」

81: 2010/03/03(水) 16:28:28.76 ID:NxFbS8JM0

谷口「お、いたいた。おーい、キョン!」

キョン「ああ、谷口か。よくきてくれたな、こっちだ」

谷口「わざわざ土曜だってのに来てやったんだ、感謝しろよ?」

キョン「わかってるわかってる。俺達は第一試合だからもうみんなベンチの方いってるんだ。急いでくれ」

谷口「あいよ」


───ベンチ付近


ハルヒ「キョン? それで全員?」

キョン「ああ。そうだ」

ハルヒ「……あんた、どっかで……」

谷口「ああ?」

キョン「何言ってんだ? クラスメイトだろうが」

ハルヒ「まぁいいわ、今日はよろしくね」

谷口「お、おう」

82: 2010/03/03(水) 16:30:38.59 ID:NxFbS8JM0

鶴屋「君がキョン君かい? へー、ふーん」

キョン「あ、あの……」

谷口「谷口です! 今日はホントは大事な用があったんですけど、親友の頼みだから断れなくって」

鶴屋「!! 君が谷口君? へぇー、ふーん、あれぇ~……きいてた話とちょっと違うにょろ……」

谷口「ど、どうかしたんですか?」

鶴屋「え、あはは、こっちの話っさ! よろしく、谷口君っ!」

谷口「こちらこそよろしくおねがいしますっ!」


谷口(なんやしらんけど脈ありげぞこれー!)

83: 2010/03/03(水) 16:40:11.38 ID:7LWv0Tpp0

谷口「よろしければメアドとか交換しま……」

鶴屋「あ、いたいた! おーい、みくるー!」

朝比奈「こんなところでなにしてるの? ……えーと」

鶴屋「谷口君っさー! ほら、みくるの言ってた……」

朝比奈「!!ちょ、いや、それは、そうじゃなくてっ」

谷口「どうも、谷口です!」

朝比奈「あの、別に裏で噂とかしてた訳じゃなくてですねっ」

鶴屋「なーにいってるんだいみるく! とりあえず自己紹介にょろ」

朝比奈「そ、そうですた、朝比奈みくるです、よろしくおねがいしますっ」

84: 2010/03/03(水) 16:41:47.82 ID:7LWv0Tpp0

鶴屋「てんぱってるみくるもかわいーにょろ! あははは」

朝比奈「うー……」

谷口(朝比奈さんか……。キョンはどんだけ恵まれた環境にいるんだ? ってかさっき噂がどうとか……)

谷口「さっき俺の噂がどうのっていってましたけど、それ……」

朝比奈「え、ええとですね」チラッ

谷口「まさかキョンが裏でなんかいってるとか!? ぜ、全部嘘ですからね!? 俺は校則をしっかり守る健康優良不良少年を目指してますから!」

朝比奈「わ、わかりました。えっと、陰口とかじゃなくて、ただいつもキョン君と一緒にいるから、いつも一緒にいるなぁ~、みたいなことを鶴屋さんと話してたんですよ」

谷口「いや、最近はキョンが涼宮のやつに振り回されてるみたいで全然つるんでないですよ。と、朝比奈さんもそうですよね?」

朝比奈「そうなんです、っていや、えと、振り回されてるというか……好きでここにいるんですよ!」

谷口「またまたー。あいつの奇人ぶりは中学のときから有名でしたから。苦労してんのよくわかりますよ、うん」

朝比奈「いや、えーと、その」

鶴屋「なーにやってんだいっ! みくるは二年生にょろ? 敬語なんてつかってたら谷口君が困っちゃうじゃないか。ねぇ?」

谷口「そーですね!(ちょっと態度でかくなってたか? 鶴屋さんけっこう上下関係に厳しいのかもしれん)」

85: 2010/03/03(水) 16:44:14.14 ID:7LWv0Tpp0

朝比奈「わ、わかりました。気をつけます」

鶴屋「それから谷口君? ミクルが裏で話してたのはキョン君と一緒にいる子ってだけじゃないっさ!」

谷口「え、ほかになんていってたんですか??」

朝比奈「いや、ちょ、鶴屋さん、それは!!」

鶴屋「へへーん、気になる気になるいってたにょろ!なぜなら……」

朝比奈「やめてくださーい!!」グググッ

鶴屋「ぐ、ぐ、わ、わかったから首締めるのやめ……て……」

朝比奈「……口に気をつけてください」


鶴屋「ゼェ、ゼェ、じょ、冗談が過ぎたっさ……」

86: 2010/03/03(水) 16:45:52.41 ID:7LWv0Tpp0

谷口「え、ええとー」

涼宮「あんたたちなにやってんの! もう試合開始よ!? さっさときなさい!」

朝比奈「は、はい、今行きますっ」


───プレイボール前

涼宮「どまんなかストレートを空振りなんかしたら後でどーなるかわかってるわよねぇ? 試合するからには絶対勝つのよ! 使えない奴は即氏刑だから!」

キョン「相手はカミガハラパイレーツ、優勝候補筆頭だそうじゃないか」

涼宮「っるっさいわねぇ。優勝のためにはどっちにしろ越えなきゃいけない壁じゃない。つべこべいわずに打つ! いいわね?」

キョン「へいへい。ったく簡単に言ってくれるもんだぜ」

87: 2010/03/03(水) 16:47:41.51 ID:7LWv0Tpp0

古泉「やれやれ、打順は予想通りといいますか、貴方が4番。これは負けフラグですかね」

キョン「……言い返せないがな、どっちにしろ俺の妹が入ってるんだ。間違っても勝つことはないだろ」

古泉「さて……どうでしょうか。我々は宇宙人超能力者未来人、そして神を揃えてますからね」

キョン「お前の超能力やミクルさんの力が野球に役立つとは思えないが、長門はやっかいだな。釘さしとかねば」

古泉「貴方は負けたい、そうおっしゃるのですか? それはすなわち、僕のバイトが48時間連続シフトになるという意味ですが」

キョン「シフト代わってもらえないお前が悪い。もっとバイト先の仲間と仲良くするんだな」

古泉「無茶をおっしゃいますね。求人を出せないもので万年人手不足なんですよ」

キョン「あっそ。不幸自慢か?」

古泉「困ったものです」

88: 2010/03/03(水) 16:49:52.52 ID:7LWv0Tpp0

朝比奈「うー、胃がキリキリしてデビル痛いですぅ」

キョン「大丈夫ですよ、朝比奈さんはボールが来たらよければいいだけですから」

朝比奈「そしたら涼宮さんがまた……」

キョン「そんなコトあったら俺がガツンと言ってやりますから、安心して下さい」

朝比奈「この前も同じ様なコト言ってましたけど、結局守ってくれなかったよね……」

キョン「……」

古泉「まぁまぁ、そんなに深刻にことを構える必要はありません。我々には長門さんがいます。いざとなれば彼女の力を借りれば、試合には十分勝てると思いますよ」

朝比奈「なんで私が野球なんか……。でも私には人数合わせぐらいしかできませんから……がんばりますね」

89: 2010/03/03(水) 16:51:34.98 ID:7LWv0Tpp0

───プレイボール


ハルヒ「いい!? 見てなさいよ? 一発でかいのお見舞いしてくるから!」

キョン「へいへい」



古泉「さっきの朝比奈さんのことですが……」

キョン「顔近いぞ、なんだ」

古泉「軽くメンヘラ入ってきているようですね」

キョン「ひどいこと言うんじゃない。……しかしわからないでもないな。どうやらSOS団は朝比奈さんにとって付き合いで入ってる義務みたいな存在らしい」

古泉「朝比奈さんにとってはまさしくそのままな訳ですが。つまり、SOS団は彼女にとって職場であるわけですから」

キョン「なるほどな。しかしそれは俺にとっちゃ少し嫌な捉え方だがね。朝比奈さんがいやいやコーヒーを入れてくれてると思うと、申し訳なくなる」

90: 2010/03/03(水) 16:53:58.69 ID:7LWv0Tpp0

古泉「確かに。ですが、やや幼い考え方とはいえ彼女の気持ちもわからないではないんですよ」

キョン「なにがだ」

古泉「SOS団に参加したくない、というその気持ちですよ。もとはといえば、朝比奈さんはどうやら涼宮さんとは接触する予定はなかったようですし、その言動からも未来人の核心からは遠い位置にいることがわかります」

キョン「末端だ、と言っていたような気がするな」

古泉「自分が何をしているかもよくわからない、ただ上の命令にしたがっているだけ」

古泉「そのような状態で、もしかしたら静かなれど一人の女子高生として過ごせたかもしれなかったその日々を、緊張の中でメイド服を着ていなければならなくなった。これは悲劇といっても過言ではないでしょう」

キョン「なるほどな」

古泉「僕も中学時代はずっとそうでしたから、気持ちはよくわかるんです。これでも三年前から比べたらずいぶん昇進したんですよ」

キョン「お前のことはどうでもいい」

古泉「ふふ、若いというのは一つの特権です。それが許されないというのは結構きついものなんですよ」

キョン「時間、とかか?」

キョン「それもあります。ですが他の何よりも……いえ、これ以上は邪推でしょう。本人に確認の取りようもないでしょうから」

91: 2010/03/03(水) 16:56:55.56 ID:7LWv0Tpp0

キョン「??」

カキーン

キョン「お、ハルヒのやつホントに打ったぞ」


ハルヒ「ヘヘーン、どう? ってちょっとキョン!! 今のちゃんと見てたでしょうね!?」

キョン「見てた見てた。ナイスバッティーン」

ハルヒ「そういうのは打ってからすぐに言いなさいよ! っていうかベンチの奥に座ってないでちゃんと前に出てきて応援しなさいっ!」

キョン「言われなくてもそうするよ。次は朝比奈さんだしな」

ハルヒ「……!!」


prrrrr
古泉「おっと、携帯が。まったく、時々あなたを後ろから刺したくなりますよ」

キョン「せめてナイフにしとけ。おかしなもんは刺されたくないからな」

92: 2010/03/03(水) 17:01:09.20 ID:ThzEBh7B0

谷口・キョン「朝比奈さーん! がんばってくださーい!!」

谷口・キョン「ピッチャーびびってる、ヘイヘイヘイ!」


朝比奈三振


ハルヒ「タイム。コラー!! 何やってんのみくるちゃん!!」

朝比奈「ひゃぐっ!」

谷口「おいおい、あんな球打てる訳ないだろ! 朝比奈さん責めるのはお角違いってやつだぜ!」

ハルヒ「じゃあピッチャーを責めればいいわけ? おいピッチャーちょっとは空気よみなさいよ!」

谷口「……それもちょっと違うかもしれないけどよ」

93: 2010/03/03(水) 17:04:15.75 ID:ThzEBh7B0

ハルヒ「何あんた、部外者なのに口出ししないでよ。これはSOS団の問題なのっ!」

谷口「あ、あのなぁ。ミニマム級一回戦の選手がヘビー級のチャンピオンと試合させられてるのを見れば観客だってだまっちゃいないぜ。ましてや俺はチームメート! そりゃ文句の一つだってでらーな」

ハルヒ「……だまりなさい」

谷口「ヒッ!」

ハルヒ「数合わせがチームメートとは笑わせるわね」

キョン「ま、まぁまぁ。とにかくまだ回の途中だ、ハルヒはランナーなんだから塁に戻ってくれ。没収試合になるのは嫌だろ」

ハルヒ「フンッ」

谷口「……フゥー、アイツの睨みは凄味があるな・・・・・・思わずちびるところだったぜ」

朝比奈「……」

95: 2010/03/03(水) 17:06:50.95 ID:ThzEBh7B0

キョン「次、こっちの打席何人目だっけ?

長門「多分三人目。そしてそれは私」

キョン「おう、応援任せとけ」


───ベンチ

谷口「あんな球誰も打てないですって、気にすることないっすよ」

朝比奈「そ、そうですかぁ?」

キョン「そうですとも。あれはいったい何kmぐらいなんですかね」

鶴屋「いやー、130km近く出てそうにょろー。これは歯ごたえがあるっさ」


デデーン、ナガモン、アウトー


長門「……ぽかぽか」

キョン「エヴァ破ってアスカのインパクト強すぎてレイのことが全然思い出せんな」

96: 2010/03/03(水) 17:08:33.58 ID:ThzEBh7B0

ハルヒ「ジー……」

キョン、ストラックアウトー

キョン「……ハルヒよ、そんな目で見られても打てないものは打てんのだ」

ハルヒ「ホンット使えないわね、あんた。四番の自覚あんの? 今の球ぐらいバックスクリーンに打ち返すぐらいしなさいよ」

キョン「阿弥陀様に選ばれた四番って自覚ならあるがな。っていうか、当てるのも難しいのにお前どんだけ期待してんだよおい」

ハルヒ「まぁいいわ。ほら、守備よ。さっさと守備位置つきなさい」

キョン「へいへい」


谷口(やっぱこの二人できてるんだな。薄々気づいてたけどよ)

谷口(……うらやましいことで)


97: 2010/03/03(水) 17:10:20.66 ID:ThzEBh7B0

─── 一回裏 上ヶ原パイレーツの攻撃


ハルヒ「しまっていこー!」

ストラックアウトー

谷口「すげー球投げるな。こりゃ守備も楽できそうだ」

ストラックアウトー


ハルヒ「ふん、あたしの力にかかればこんなもんよ! そこのショートとは器が違うんだから」

谷口「いちいちうるせえな! 守備範囲には自信あるっての! 一本よこせよ!」

古泉「彼がいうと年齢層に聞こえますね」

ハルヒ「言うじゃないの。ま、あんたのところにボールはいかないから見せ場なんてないでしょうけど」

98: 2010/03/03(水) 17:11:27.66 ID:ThzEBh7B0

ハルヒ「そりゃっ」

カキーン ホームラン


谷口「ギャハハハッハハハハハ! 確かにありゃ俺にはとれねーわ! 俺の負けだ!」

ハルヒ「っるっさいわねぇ!! あーホント腹立つ。ちょっとバッター! 打たせてあげるからコイツにライナーぶつけなさいよ!」

谷口「お前じゃ、俺どころかバックスクリーンに直撃させられるだろうぜ」

ハルヒ「言ってくれるじゃないの。じゃあアウト取れたら金属バットであんたのバットへし折ってやるから覚悟しときなさいよ!!」


審判「さっきから口が汚いよ! これ以上そんなんだと没収試合にするからね!!」


ハルヒ「……」


prrrrr

古泉「……そう……斎藤君と鈴木君が……。彼等は勇敢でした。遺族の方にはできる限りのことをしてあげてください」ピッ

古泉「フゥ。……谷口さん……おいたが過ぎますね」

99: 2010/03/03(水) 17:13:47.41 ID:NxFbS8JM0

ハルヒ「さあ締まっていくわよー!!」

古泉「まだ一点許しただけですし、落ち着いていきましょう。さっきのはラッキーホームランです、次はありませんよ」

ハルヒ「ふふん、ビギナーズラックが二発続いたらたまらないものね」

キョン「ビギナーズラックが続かないと俺らに勝ち目はないけどな」

ハルヒ「あんたはいちいちプロ精神が足りないのよ。ビギナーズラックなんていらないわ! 実力でもぎ取ってやるの! タイトル取れないからって他のチームに移籍したい、とか言いだしたら許さないんだから」

キョン「へいへい」

100: 2010/03/03(水) 17:15:57.53 ID:3ddahPeo0

一回裏 上ヶ原パイレーツがハルヒのストレートのタイミングがつかみきれず、結局一点に抑えることに成功する。

二回表 妹古泉国木田が簡単に凡退する。

そして二回裏の上ヶ原パイレーツの攻撃を迎える。まともな守備のいない外野狙いのフライで得点を重ねる上ヶ原パイレーツ。


キョン「走れ!……妹!……走れ……そうだ、いいぞ……妹……」

妹「もう飽きたー、キョン君、帰ってもいいー?」」

キョン「しっかりしろ!君は強い女の子じゃないか!」


谷口(ツーアウトとはいえ、外野は長門とキョン妹と……朝比奈さんか。ここまで外野フライで5点とられた、そろそろキョン妹もストレスが限界に達してるようだ……)

101: 2010/03/03(水) 17:17:19.98 ID:3ddahPeo0

ハルヒ「チッ、外野陣が頼りなすぎ! 防御力が紙すぎるわ。もう少しなんとかならないかしら……いえ、言い直しましょう。なんとかならないなら氏ね、と」

キョン「いいすぎだろ」

ハルヒ「みくるちゃん? いまどき草食系女子なんて流行らないの、どんなヒット性のボールでもがっついていきなさい!」

朝比奈「で、でもぉ」

ハルヒ「それで後ろに抜けちゃったなら許してあげるけど、無難なことしようとしてトチったりしたらメイド服で逆立ちしながら町内練り歩く刑だからね!! オーバー?」

朝比奈「……オーバー……」

102: 2010/03/03(水) 17:19:03.47 ID:3ddahPeo0

実況「フライがまた高々と打ち上がったぁあああ! 朝比奈みくるの頭上からゆっくりとしかしg=GM/R2乗*r^の重力加速度の公式にしたがって間違いなくスピードを増しながら落ちてくる!!」

ハルヒ「さあみくるちゃん! 今こそその真価を見せるときよ! 脱皮しなさい脱皮! なんでもいいから脱いで!」

キョン「なんかナマナマしいからやめてくれ」

朝比奈「よ、よーし……やってみますね」

谷口(あんなフライ……俺も取れないぜ……)


朝比奈「いや、これ、その、あの、あの、えと、あの、その、これ、その、えと、あの、やっぱり、無理じゃ……」(この間3秒)

ボカッ……


朝比奈「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ」ガクッ


ブィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン

テテーテレテレテレテレテレテー

谷口「グロいよ! グロすぎるよ今の絵づら!!!!」

……。

103: 2010/03/03(水) 17:20:41.73 ID:3ddahPeo0

ハルヒ「メイド服で逆立ちしながら町内練り歩く刑だからね!! オーバー?」

谷口「はっ!! え?」

朝比奈「……オーバー……」

谷口(あ、朝比奈さん、無事だったのか……? いや、そうか、あまりにトラウマ的な絵面だったもんでつい時を跳んじまったのか……)

谷口(……ってぼーっとしてる時間はないんじゃまいか!? 助けねぇと!!!)

ダダダッ

キョン「な、おい、谷口、お前どこいくんだ!」

実況「フライがまた高々と打ち上がったああああ……」

ダダダダ


朝比奈「よ、よーし、やってみますね!」

104: 2010/03/03(水) 17:21:09.25 ID:NxFbS8JM0

谷口(ヤベェ、間に合うか?? 間に合うのか??)

谷口(ボールは朝比奈さんの眉間に直撃した……つまりそこをグローブで守れば!)

ダダダダ

朝比奈「……いや、これ、その、あの、あの、えと、あの、その」

谷口「……間に合ってくれ!!!」

ダダダダ

朝比奈「これ、その、えと、あの」

谷口「間に合え!!!」

ダダダダ

朝比奈「やっぱり、無理じゃ……」

谷口「うおぉおおっ!!!」

ダッ   ドシン


「……アウトー!!」

105: 2010/03/03(水) 17:22:22.29 ID:3ddahPeo0

朝比奈「……あ」

谷口「ふぃー、あぶねー、間に合ってよかったっす」

谷口(やっべ、思いっきり頭打った……。ダイビングキャッチは素人がすると悲惨なことになるな……)

朝比奈「……」キュウ

谷口「……?」

キョン「ナイスキャッチだ! 谷口! ってかよくショートからここまで走ったな!」

谷口「お、おう、それより朝比奈さんが……」

キョン「……え? あ、気絶してらっしゃる。あまりの恐怖に耐えられなかったみたいだな」ヨッコラセックス

谷口(な、朝比奈さんを背負うなんてなんてうらやましい!)

106: 2010/03/03(水) 17:24:17.28 ID:3ddahPeo0

ハルヒ「ちょっと、キョン!?」

キョン「負傷退場だ」

ハルヒ「見りゃわかるわよ! 大丈夫なの? けがはしてない?」

キョン「ああ。谷口のおかげでな」

ハルヒ「そう、よかった……」

谷口(大事なところでは団員思いなんだな、コイツ)

キョン「それより、谷口に何か言うことがあるんじゃないか?」

ハルヒ「え?」

107: 2010/03/03(水) 17:25:01.16 ID:NxFbS8JM0

キョン「相手が外野狙いになってたのは明らかだった。実際レフトとセンターにぼてぼてのフライでヒットにされてたからな」

ハルヒ「それが何よ。あたしはヒット性のボールは打たせなかったわよ? 記録はエラーじゃない!」

キョン「それでもだ。お前が無理を言って集めたメンバーで、SOS団の団員とは言え朝比奈さんは大変な目に会うところだったんだぞ?」

ハルヒ「そ、それは……」

キョン「まぁ、運良く大惨事は避けられたがな。お前は誰かにお礼を言わないといけないんじゃないか?」

ハルヒ「……」

谷口「キョ、キョンよう、なにも起きずに済んだんだ、ラッキーだったと思ってよ、次気をつければそれでいーんじゃねーか?」

キョン「……ふぅ。じゃあ俺は運営のとこで朝比奈さんを休ませてもらってくるから」

ハルヒ「……」


谷口(に、睨んでらっしゃる!!)

109: 2010/03/03(水) 17:26:57.14 ID:3ddahPeo0

ハルヒ「……」

谷口「ええとー……」

ハルヒ「……ああ、もう!! とにかく! ありがとね!」

谷口「え、あ、おう」

谷口(何がとにかくなのかわかんないが、涼宮から礼を言われる日が来るとは思いもよらなかったぜ)

ハルヒ「なんかアンタ気に食わないのよねぇ。前に何かあたしにつっかかってきたことない?」

谷口「そ、そんなことあったか?? 全然覚えてないが」

谷口(試験の発表の時は時間を跳ぶ前のことだから、こいつには関係ないハズだしな)

ハルヒ「ふーん、なら生理的に受け付けないだけかしら?」

谷口(さっきの礼の言葉より心に残る一言だぜ……)

110: 2010/03/03(水) 17:27:49.73 ID:3ddahPeo0

結局、朝比奈さんは運営につく前に目を覚まし、守備に戻った。
キョンは朝比奈さんを止めたが、閉鎖空間がどーの、とかいう古泉の言葉に渋々頷いて、試合は再開された。


谷口(閉鎖空間? SOS団の合言葉かなんかなのか? なんか疎外感あるぜ)


そして3回表の攻撃でファーストバッター鶴屋さんがアウトになり、谷口がバッターボックスに入った時に事は起こった。


朝比奈(リアリーダーver)「が、がんばってくださーい!」



谷口「ま、任せといてください!!!」

111: 2010/03/03(水) 17:28:10.70 ID:NxFbS8JM0

谷口(うひょー、やべえ、あれはやべええ!! 下手すりゃバッターボックスでテント張るハメになりかねねえぜ!!)

谷口(あんまり見ないようにしねぇと……)

ハルヒ「ちょっとあんた! 何もじもじしてんのよ! みくるちゃんのチアリーダー姿おがんでるんだから打たなかったら罰金だからね!」

谷口「おーし、絶対打ってやるぜっ!」

谷口(おれがリアリーダーに応援された試しがあっただろうか? いや、ない! 今俺人生の絶頂期! 打たない手はない嘘ではない!)

112: 2010/03/03(水) 17:30:24.59 ID:3ddahPeo0

谷口「よっしゃ、こい!」

バンッ   ストラーイク

谷口(は、はええええ。こええええええ!!)

ハルヒ「ちょっと、何地面にへたりこんでんのよ!」

谷口「む、無理……」

ハルヒ「あんたホントにヘタれね! みくるちゃんもなんか言ってやんなさいよ!」

朝比奈「え、えーと。や、やーい、へたれー」

キョン「なんとっ!!??」

ハルヒ「アハハハ! やーい、へたれー! これからあんたのことへたれって呼んでやるから!」


キョン(もう応援でもなんでもない、ただの罵詈雑言になってる……。しかし朝比奈さんがへたれなんて言うとはね……)

113: 2010/03/03(水) 17:31:28.48 ID:NxFbS8JM0

谷口(あの朝比奈さんに……へたれ言われた……)

谷口「み、みてて下さい! 絶対次は打ちますんで!」

ハルヒ「アンタが出塁するにはデッドボールぐらいしかないわ! ほら、もっとベースに覆いかぶりなさいよ!」

谷口「うるせえ! お前になんか言ってねえんだよ!」

ハルヒ「へたれが何言ってもこっちまでは聞こえません。あーあー(耳をふさぐポーズ)」


谷口(こうなりゃ能力使ってでも打ってやる!!)

114: 2010/03/03(水) 17:32:18.61 ID:3ddahPeo0

谷口(となると、今回は球筋だけを確認するのが必要だ。なるべくベースよらねぇと……)

ハルヒ「ちょっと、ホントにデッドボール狙う気じゃないでしょうね?」

谷口「……」

ハルヒ「ねえ!」

谷口「うるせえ、ちょっと黙ってろよ!」

ハルヒ「……チッ」


ピッチャー振りかぶって   投げた!

谷口(ベースのどこを通るか、自分の体のどれぐらいの高さを通るか覚えるんだ!!)

115: 2010/03/03(水) 17:34:34.82 ID:NxFbS8JM0

バシッ  ストラック


ハルヒ「プハハ! また尻もちなんて学習能力まったくないのね! 猿? いいえ、へたれです。せめてバットぐらい振りなさいよ!」

朝比奈「……クスクス」

谷口(ちくしょう、朝比奈さんにまで笑われてる……)


キョン「古泉、朝比奈さんのあんな笑顔、見たことあるか?」

古泉「いいえ。言ったでしょう? SOS団は仕事場ですから、僕らがいやされている笑顔は営業スマイルみたいなものです。今のように笑いをこらえきれない、といった表情は僕の記憶にはありませんね」

キョン「それに……」

古泉「ええ。まさかへたれ等という言葉が朝比奈さんの口から伺えるとは思ってもみませんでした」

キョン「……」

116: 2010/03/03(水) 17:36:15.81 ID:kS6L35lh0

谷口「よっしゃ! コースは覚えた! 絶対打ってやるぜ!」

ブンッ ストラック アウトー

ハルヒ「ダッハハハハ、やーい、へたれキングー!」


ブィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン

テテーテレテレテレテレテレテー

谷口「つ、次こそは!」

カキン バシッ アウトー

ハルヒ「ダッハハハハ、やーい、へたれキングー!」


ブィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン

テテーテレテレテレテレテレテー

谷口「次こそはああああ!!!」

ハルヒ「ダッハハハハ、やーい、へたれキングー!」

117: 2010/03/03(水) 17:36:44.33 ID:NxFbS8JM0

谷口「はあ、はあ」

ハルヒ「あんた、打つ前からなんでそんなに疲れてんの?」

谷口「う、うるせえ。お前こそそんだけ笑っててよくつかれねえな」

ハルヒ「?」

谷口(これで12回目のバッターボックス。今度こそ涼宮を笑わせねえ……)


ピッチャー、投げた。

谷口「うおおおおお!!」

カキン ヒュー ポテン セーフ!!


谷口「いいいよっしゃあああ!!」

118: 2010/03/03(水) 17:37:36.74 ID:kS6L35lh0

ハルヒ「ふーん」

谷口「どーだ! 出塁したやったぜ! この俺の雄姿! さながらジャングルの王者たーちゃんだぜ!」

ハルヒ「しょっぼいポテンヒットだったけどね」

谷口「うるせえ!おまえの評価なんてどうでもいいんだよ! 朝比奈さん、出塁しました!」

朝比奈「わ、わー。すごいなー」

谷口「……」



谷口(からぶった時の方がうれしそうなのって、どーゆうことだよ……)

119: 2010/03/03(水) 17:38:46.11 ID:NxFbS8JM0

 ハルヒの三塁打でおれは塁にかえった。しかし結局朝比奈さんがアウトになり、三回を終える。
 その裏、ぼこぼこにやられる。
 四回表を迎え、1-9。

谷口(こりゃ勝ち目ねえだろ。この回の裏で終わりだな、こりゃ)

谷口(なんか古泉と長門が話してる? 涼宮の機嫌取りの話か? もう爆発しそうだもんな)

谷口(しかし長門かわいいな。かわいい。うん。お人形さんみたいだぜ。しょーじきたまらん)

谷口(はぁはぁ、長門、かわいい、長門……ってホームラン打ちやがった!!!)

120: 2010/03/03(水) 17:40:48.19 ID:kS6L35lh0

谷口(結局よくわからんけど俺もホームランになった……。訳がわからん……。夢でもみてんのか?)

谷口(でも俺の力もそれを言ったら……案外世界って不思議でいっぱいなのかも……)

谷口(なんかSOS団に……いや、何言ってんだ。正常なライフ、これ大事)


アウトー チェンジッ


谷口(12-9……。逆転か。でも試合時間の制限で、この守備が最後か)

谷口(……。)

121: 2010/03/03(水) 17:41:58.39 ID:NxFbS8JM0

谷口(そして訳のわからない魔球使って、そんでアウトか。なんだそれ)

谷口(結局勝っちまった。一体……どういうことだぜ?)


古泉「そうだ、谷口さん」

谷口「え、あ、おう?」

古泉「これから僕は私用でこの場を離れなければなりません。すると試合の人数が足りなくなるため、つい今二回戦辞退を申し込んできたところなんです」

谷口「つまり、もう帰ってもいいってことか?」

古泉「ええ、一応そういうことになりますね」

谷口(さて、家帰って……っと今日は休日だから親父が家にいるのか……。……漫喫でもいくかな……)


古泉「ですが、よろしければSOS団の打ち上げに参加しませんか?」

124: 2010/03/03(水) 17:44:41.49 ID:kS6L35lh0

谷口「え?」

朝比奈「……!」

ハルヒ「ちょっと! 古泉君何言ってるのよ! 部外者が参加する打ち上げなんてありえないわ!」

古泉「しかし、女子三人に囲まれて男子が一人では、彼も流石に肩身が狭いのではないでしょうか。ねぇ?」

キョン「別に俺は……っとなんだ、顔近いぞ!」

古泉「ボソリ」

キョン「……なるほどね。ったく、仕方ない」

谷口(何を……)

キョン「おいハルヒ、谷口の参加を許可してくれ」


谷口「!!」

125: 2010/03/03(水) 17:45:34.26 ID:NxFbS8JM0

ハルヒ「キョンまで何言い出すのよ! まさか男がいないと楽しくないなんてことじゃないでしょうね? あんたホ〇だったの?」

キョン「ちっがーう! 四月の上旬は谷口や国木田と遊ぶ時間があったが、今はSOS団に時間をつぶされておちおちゲーセンに寄ることもできんのだ。せっかくこうして一緒にいるんだし、打ち上げに参加するぐらいいいだろ」

ハルヒ「……ちっ。仕方ないわね。へたれの参加を許可します。あんた、感謝しなさいよ」

谷口「別に頼んでなんか……」

キョン「よかったよかった。数は多い方が楽しいし、朝比奈さんもうれしいですよね?」

朝比奈「え、え、え、ええ」

谷口「行きます! 是非行かせてください!」

ハルヒ「……まぁ、いっか」

126: 2010/03/03(水) 17:47:31.46 ID:kS6L35lh0

───カラオケ

ハルヒ「タイムウェイツフォーノーワーン♪」




谷口「しかしどーゆー気だ? 俺をSOS団の打ち上げに誘うなんてよ」

キョン「ん? ああ、野球大会に誘ったのは俺だし、何の礼もなしに帰らせるのもなんだろ」

谷口「ってことはおごってくれんのか?」

キョン「おう。ま、どっちにしろ全部俺の払いになるんだ。一人増えようが大した痛手でもないさ」

谷口「そうなのか。お前も苦労してんな」

キョン「まぁな」

谷口「しかしバイトもしてねーのによくもつな」

キョン「お年玉貯金だ。高校入るまで特に金使うこともなかったしな」

谷口「ふぅーん。あーゆーのってゲームボーイとか高いの買うのに使うもんだと思ってたぜ。ま、なんでもいいけどよ。ちょっとトイレ行ってくるわ」

127: 2010/03/03(水) 17:49:19.36 ID:kS6L35lh0

スッ フゥー

谷口「ふぃー。みんなの前で吸う訳にもいかんしな」

谷口「スポーツの後の一服、これ大事」

スッ フゥー

谷口「……しかもアウェイ感半端じゃないから部屋にはいづらいぜ。サークルって怖いのね、内輪ネタとかで盛り上がりやがるし」

谷口「この前の不思議探索の時のアレやりなさいよっ!キョンッ! いや、やっぱやんなくていいわ。ギャハハハハ」(ハルヒの物まね)

谷口「うOこっ!っ! でもそんなに意識してやってるようにも見えんし、おそらく素で俺の存在忘れてるんだろうな」

スッ フゥー

谷口「長門は黙ってるだけ、朝比奈さんは振り回されてばかり。キョンは何やらハルヒに飴と鞭。めんどくさそうなサークルだな、俺はゴメンだね」

128: 2010/03/03(水) 17:50:04.66 ID:NxFbS8JM0

スッ フゥー

谷口「さて、そろそろ行きますかね」

朝比奈「あ、谷口君……」

谷口「え、あ!」

谷口(やべっ!)

ケシケシ

朝比奈「……」

タッタッタ


谷口「あーあ、みられちまった」

谷口「……ま、どうせ朝比奈さんもハルヒに引っ張られてるだけだし、俺のことなんてどうでもいいだろうから大丈夫だろ……」

129: 2010/03/03(水) 17:51:22.01 ID:kS6L35lh0

ガチャッ

長門「かーわらーないーものーさがーしてーいたー」



谷口「へぇー、長門も案外うまいじゃねーか」

キョン「遅かったな。大の方か?」

谷口「イエスイエスイエスイエス」

キョン「長門が歌ってるのは俺も初めてみるんだ。極めて珍しいから、よく聞いておくことだな」

谷口「ふーん」



長門「ぼーくはーいまーすぐー君にーあいーたいー」

パチパチパチパチ

130: 2010/03/03(水) 17:53:17.68 ID:kS6L35lh0

ハルヒ「うまいじゃないの有希! なんでいつも歌わないのよ」

長門「……」

ハルヒ「ふんふん。気が向いただけなのね、でもなんか得した気分だわ」

長門「……」

ハルヒ「あはは、なるほどねー。そういう見方もあるわよね!」



谷口「長門の無言からどれだけ涼宮は感じ取ってるんだ……」

キョン「まさか。ハルヒもハルヒなりに文学部を乗っ取ったことをまだ悪く思ってるんだろうよ。だから、長門に必氏に話しかけてるのさ」

谷口「涼宮がねぇ……」

キョン「長門はハルヒにはうなづくことしかしないがな」

谷口「長門がねぇ……」

131: 2010/03/03(水) 17:54:34.05 ID:NxFbS8JM0

ハルヒ「あ、次の曲入ってないじゃない! じゃあ次は誰に歌ってもらおうかしら……」

朝比奈「……谷口さんどーですかぁ?」

谷口「え? 俺??」

ハルヒ「そーね! あんたまだ歌ってなかったものね」

谷口「よっしゃ、そんじゃ何入れよっかなー。俺様の美声を披露してやんよ、って、え? 曲流れだしたけど入れたの誰だよ??」

朝比奈「私です~」

谷口「しかもチョコレイトディスコて!! 男が歌ってどーするんすか! 止めて下さいよ!」

朝比奈「えー? 歌わないんですかぁ? そしたらさっき見たことを……」

谷口(まさかの朝比奈さんからの脅迫かよ!!)

谷口「うお、え、あー。歌います! 見せつけてやるぜっ!」




谷口「計算する女子~ 期待してる男子~」

133: 2010/03/03(水) 17:56:07.33 ID:kS6L35lh0

谷口「チョコレイト・ディスコ~」


谷口(ふぃー、やっと歌い終わった)

キョン「お、おう、お疲れ」

谷口(もちろん音程取れる訳なし。まともに歌ったつもりだが周りからは失笑が絶えなかったぜ)

谷口(畜生、他人の選曲で事故らされるなんてっ!!)

谷口「いやー、ちょっと勘弁してくださいよホント~、perfectloveいいっすか?? 十八番なんで」

ハルヒ「……」

朝比奈「へ、へ、下手すぎだよwww」

谷口(なぜか朝比奈さんだけつぼに入りまくってる!!)

キョン「朝比奈さん、笑いすぎですよ、そんなに面白かったですか?」

朝比奈「だってみんな上手でwwこんなにヘタな人私以来だったからwww あーあw」

136: 2010/03/03(水) 17:58:38.60 ID:kS6L35lh0

ハルヒ「じゃー次はさくらんぼ入れるから、またあんた歌いなさいよ」

谷口「おい! 無理言うなって! 長門みてみろ! 冷めまくってるじゃねーか!」

ハルヒ「うるさいわね! 有希もいいわよね?」

長門「ワンスモア」

ハルヒ「ほら!」

谷口「畜生、わかったよ歌うよ! もうどーにでもなれっての!」



谷口「笑顔咲く~ 君~と~」

朝比奈「勘弁wwww勘弁wwww」

138: 2010/03/03(水) 17:59:50.65 ID:NxFbS8JM0

───3時間後、カラオケの外


ハルヒ「あーあ、ホンットあんた歌下手ね! しかもミクルちゃんみたいに愛嬌のある下手さじゃないから聞いててイラっとしたわ」

谷口「あんだけ……歌わせといて……それはねえだろ……喉いてえ……」

朝比奈「はぁーあ……。聞き疲れました……」

キョン「朝比奈さんツボにハマり通してましたもんね」

朝比奈「だって……。谷口さん……ブホッwwww」

キョン「思い出し笑い!?」

谷口「……」

谷口(まぁ、朝比奈さんの笑顔だけは仰山見れたし……。それだけでもいいとしといてやるか)

139: 2010/03/03(水) 18:01:12.95 ID:kS6L35lh0

ハルヒ「……ジー」

谷口(なんか涼宮が俺と朝比奈さんを見比べてるぜ……。コイツとかかわるとめんどくさいことにまた巻き込まれてそうだ)

谷口「じゃ、じゃあ今日は面白かったぜ、またなんかあったら誘ってくれよ、もう時間もないしそろそろ……」

ハルヒ「よし、決めたわ!」

キョン「何をだ?」


ハルヒ「へたれ、あんたをSOS団の副団員にしてあげる!」

140: 2010/03/03(水) 18:04:39.45 ID:NxFbS8JM0

キョン「!!!!」

谷口「ッハァ!? 何言い出すんだお前」

ハルヒ「何? いやなの? まあ、どっちにしろあんたに拒否権はないわ。こんだけ下手な歌であたし達の貴重な打ち上げを汚してくれたんだからね」

谷口「歌わせたのてめーだろーが!」

ハルヒ「歌ったのはあんたでしょ。それに感謝されても文句を言われる筋合いはないわ。どーせあんた部活も何もしてないんでしょ?」

谷口「別に部活入ってねぇから、って暇な訳じゃねーよ!」

ハルヒ「へー、じゃああんたいつも学校終わったら何やってるのよ?」

谷口「それは……」

ハルヒ「やーい暇じーん! ぼっちー! 一人飯ー!」

谷口「う、うるせえ!」

141: 2010/03/03(水) 18:07:49.43 ID:QYy/dJJL0

ハルヒ「そんなあんたのつまんない高校生活に華をあげよう、って言ってるの。ねじまがってるあんたはどーせずっと嫌なフリをするだろうから、もうあんたの言い分なんて聞きません。とにかく明日から放課後は団室に来ること。いいわね!?」

谷口「……ったくなんだよそれ」

長門「……」

キョン「どんまい、谷口。同情するね、だが俺を助けると思ってとりあえず一度団室に顔出してみろよ」

谷口「わーったよ。しかしどういう気だ? 涼宮、お前超能力者とか変人を募集してたじゃねえか。俺は正真正銘の普通にかっこいい日本人だぜ?」

ハルヒ「るっさいわね。どーでもいいでしょそんなこと。団活ってのは複雑なの! 時にはガラクタでも歯車になるときがあんのよ」

谷口「……やっぱりお前俺のこと嫌いだよな」

ハルヒ「好きも嫌いもないわ。名前を知ったのだって今日なんだから」

谷口「そおい! 中学で同じクラスになったことだってあんだぞ」

ハルヒ「え! うそ! マジ?」

谷口「そのまま忘れててくれチクショウ」

142: 2010/03/03(水) 18:08:05.17 ID:NxFbS8JM0

ハルヒ「そーゆーことだから! いいわよね? みくるちゃん、有希?」

朝比奈「え、あ、はい、いいと思います」

長門「……」

ハルヒ「有希?」

長門「了解した」

ハルヒ「じゃ、古泉君にはあたしからメールしとくから! 今日はここで解散! また月曜日に会いましょ!」

タッタッタッタ...

144: 2010/03/03(水) 18:09:49.12 ID:QYy/dJJL0

谷口「俺が……SOS団、ねぇ。なあ、なんでだ?」

キョン「ん? んー、団長様がSOS団にお前が必要だと思ったんだろうさ」

谷口「おれが……必要?」

キョン「とりあえず、俺も帰るわ。妹もねぎらってやらんといかんしな」

谷口「お、おう。またな」


谷口(……下手な歌でも好きなのか? 涼宮は。わからんけど……。なんとなくニヤけがとまらね。必要、ね。フヒヒ)

朝比奈「それじゃあ、谷口さん、私も行くね」

谷口「は、はい。おつかれさまーす」

朝比奈「おつかれさまー! 部室で会えるの楽しみにしてますね!」ニコッ

谷口(Oh..... Summer has passed and spring has come....!)

ミーンミンミンミンミンミン……

145: 2010/03/03(水) 18:11:30.70 ID:QYy/dJJL0

谷口(なんとなく朝比奈さんの口調もくだけてきたな。鶴屋さんが下級生に敬語を使うな、って言ってたからかね)

谷口(そーいや野球大会中はつまらなそーだった朝比奈さんだけど、打ち上げは楽しそうだったな)

谷口(よかったよかった。ってか再確認したけど、朝比奈さんめっちゃくちゃかわいい)

谷口(こんなに笑ってくれる人、始めてだったし……。笑顔もホントやばい……)

谷口(明日から同じ部活の一員か。やべー、おらwktkしてきたぞ)


谷口「さーて、おれも帰るとするか!」

谷口「み、み、みらくるーみっくるーんるーん♪」



長門「……待って」

146: 2010/03/03(水) 18:12:58.63 ID:NxFbS8JM0
>>143
谷口の「聞いた話だって! マジで!」ってのを信じたケースでお願いします


谷口「な、今俺に待ってって言ったのは長門か??」

長門「そう」

谷口(A-の長門が俺に話しかけてくるってことはこれなんかのフラグかああ?? でも俺には朝比奈さんがー!)

谷口「お、俺にいったい、なんのようかな?」

長門「ついてきてほしい」

谷口「お、おお、おおおお、おお。いいぜ! そしてこれは断じて裏切りではないぜ! SOS団の仲間のことを知るためのだな……」

長門「……」

148: 2010/03/03(水) 18:15:49.55 ID:QYy/dJJL0

───長門の部屋

谷口(とは言ってもいきなり部屋かい)

長門「とりあえず一杯」プシュッ

谷口(しかもビール缶あけやがった!)

長門「どうぞ」

谷口「お、おう、ありがとよ」

ゴクゴクゴクゴク

149: 2010/03/03(水) 18:17:01.80 ID:QYy/dJJL0

谷口「かー、うめー。夏の夜とかけまして、スポーツ後の酒と解く! その心は! 旨すぎて氏ぬ! 俺酒には自信あるんだよな」

長門「そう。なら、どんどん飲むといい」

谷口(しかし男を家に上げて酒を飲ますとは……。これは無防備なのかそれとも……アーユービィーッチ?)

谷口「で、要件はなんだよ?」

長門「かいつまんで話すから、よく聞いて」

谷口「お、おう!」

長門「かくかくしかじか」


谷口(ハルヒが自立進化の可能性で長門が統合思念体でキョンがハルヒのキーだってぇええ!?)

谷口「え、じゃあ俺は?」

長門「涼宮ハルヒにとってどうということはない存在」

谷口「Oh....彼女は何を言っているのでしょう」

150: 2010/03/03(水) 18:18:11.77 ID:NxFbS8JM0

長門「涼宮ハルヒにとって、どうということはない存在」

谷口「大切なことだから二回言ったんだよな?」

長門「非常に大切。貴方にとってではなく、私にとっても」

谷口「? ってかお前こんなにおしゃべりだったのか?」

長門「つまり、あなたは涼宮ハルヒの持つ自立進化の可能性とは、何ら関与するものではない」

谷口「無視ね。そんなもんと関与してたって嬉しくも何ともないからいいもんぜー」

長門「それを聞いて安心した」

谷口(?)

長門「これから話すことをよく聞いて」

谷口「お、おう」

151: 2010/03/03(水) 18:19:05.33 ID:QYy/dJJL0

長門「涼宮ハルヒに極力近づかないようにしてほしい」

谷口「なんだ、そんなことかよ。でもSOS団入らないといけなくなったからどーしても近づくことになるぜ」

長門「何故この様な事態になったのか。不覚。迷いから、私が後手に回ってしまったのが原因。貴方が力を得た地点で、すぐに行動を起こす必要があった」

谷口「は?」

長門「……貴方は時を跳ぶことができる」

谷口「お、え!?」

長門「統合思念体によって、貴方の力による情報爆発がすでに何度も観測されている」

谷口(ホントは宇宙人かどーかとか疑うとこなんだろーが……)ゴクゴクゴク プハー

谷口「もうなんでもいいや! よくわかったな! 俺、跳べまーす! ついでに6本目あけまーす」

長門「統合思念体のおごり。好きにするといい」

152: 2010/03/03(水) 18:20:53.74 ID:QYy/dJJL0

谷口「で、その情報爆発があったからなんだ?」

長門「その情報爆発はどうでもいい」

谷口「どーでもいいのかよ」

長門「貴方はテストの際に、その力によって不正を行った」

谷口「あー、したねー、そーいや」

長門「先生に言いつけることも考えた」

谷口「……」

長門「だが不正もどうでもいい」

谷口「本日二度目のどーでもいい入りましたー、はーいドドスコスコスコ~」

153: 2010/03/03(水) 18:21:38.59 ID:NxFbS8JM0


長門「そのテストの点数が悪かった際、涼宮ハルヒと貴方は言い合いをした」

谷口「……そんなこともあったかもな」

長門「結果、涼宮ハルヒは大きく落ち込んでいた」

谷口「え?」

長門「それを見て、朝比奈ミクルは貴方に興味を持った」

谷口「……でもそれ、時間跳ぶ前の話だぜ?」

長門「そう。だが、SOS団は様々な力に対して強い耐性がついているため、残留思念が残ることを想像するのは容易」

谷口「ふーん」

長門「とにかく、その時から私の中に一つの計画が生まれた」

谷口「ほうほう、その計画とやらをきかせてもらおーじゃねーか」

155: 2010/03/03(水) 18:24:26.41 ID:NxFbS8JM0

長門「聞いて驚いてほしい。見て驚いてほしい」

谷口「おうおう!!」

長門「目の前でスイーツ漫画みたいな恋愛を見たい! 題して時をかける少年少女!」

谷口「ぱぱぱぱくーった!!!」ガビーン

長門「今更。大概のSSはパロの塊」

谷口「……あっちょんぶりけ」

156: 2010/03/03(水) 18:27:19.23 ID:x5jVBKlt0

谷口「当事者の俺が言うのもあれだが、もしそれが俺と朝比奈さんの二人を指してるとしたら、SOS団に俺が入るのはそんなに悪い展開じゃないんじゃないのか?」

長門「激しい葛藤がある。貴方が朝比奈ミクルに近づくことは、私の個人的な欲求のためだけではなかった。だから私の計画は十分に正当化されるものであったと考えられる」

谷口「かー、さすがに13本目空けてもーなんかやばくなってきたぜ。え? なんか言った?」

長門「……私は貴方達に手を貸したいと考えている。だが涼宮ハルヒが貴方と強く関わりを持ってしまった場合……」」

谷口「その場合どーなるんだ?」

長門「涼宮ハルヒの力に貴方が関与していると判断された場合、私は私的感情の行使を抑えなければならなくなる」

谷口「そしたら?」

長門「非常に面白くない。観測者とはいったい何なのか。答えは、ファミスタのコンピュータ対戦をずっと見ている存在のようなもの。しーゆーのあらまんちゅと言わざるを得ない」

谷口「チョーどーでもいいな、俺らをおもちゃ扱いしてるよね」

157: 2010/03/03(水) 18:27:43.68 ID:NxFbS8JM0

───谷口の家の前

谷口「おーおー、ずいぶん飲んじまった。足元がふらつくわ」


──長門:とにかく、あなたは涼宮ハルヒに近づきすぎてはならない。そうすれば古泉一樹の機関もあなたに手を出さない。それだけは覚えておいてほしい


谷口「そんなこと……俺は朝比奈さんとなかよくなりてーだけだってのー」

ガチャッ

谷口「ただいまー」

谷口母「遅かったわねー。ってあんた、また酒飲んできたの?」

谷口「記憶にございませーん」

160: 2010/03/03(水) 18:29:45.30 ID:x5jVBKlt0

───リビング

ガチャッ

谷口「ただーいまー」

谷口父「お前、高校生なのに酒なんて飲んでるのか」

谷口「おやじだって酒ぐらい飲んでただろ?」

谷口父「いいや、飲まなかった」

谷口「……」

谷口父「お前、期末テストが終わったからってあまり油断していると……ゴホッゴホッ」

谷口「説教かよ、あーあー、聞きたくない聞きたくないね!」

タッタッタッタッタ



谷口(楽しい気分のまま、なにも考えずに今日は寝たいってんだーい)

162: 2010/03/03(水) 18:32:08.06 ID:NxFbS8JM0

───翌日、月曜の朝

谷口「ちくしょー、力使って二度寝したのに、まだ頭いてーぜ」

谷口「お、なぜか知らんけど洗面所にウコンが!」

谷口「これ、あとから飲んでも何気に効くよのな」ゴクッ

谷口「ふー。ラッキーラッキー、ウコンがあってラッキーだったぜ」

谷口「ん? なんだこの手首の数字……」

谷口「3? ま、どーでもいっか!」

谷口「よっしゃ、元気出して学校いかねーとな! なんってったって今日からは毎日放課後に用事がある!」

谷口「わりい、俺これから部活なんだ! また誘ってくれ!」

谷口「うひひ、言い方練習しとかねーとな!」

谷口「いってくっぜ!!」

163: 2010/03/03(水) 18:36:26.13 ID:NxFbS8JM0

───団室前

ジージージージー

谷口「セミがうるせえ」

谷口「暑くてシャツが体に張り付く」

谷口「たまに吹く風がここちいいが、それも一瞬のことだ」

谷口「とにかく暑い。夏の日」

谷口「そんな日に、俺の新しい章が幕をあける」

谷口「さあ、その扉をノックしようじゃないか……」


キョン「さっさと開けてくれ。中は冷房きいてんだから」

谷口「ひたらせてくれよ!!」

キョン「それに幕か扉かハッキリしてくれ」

谷口「うるせえしこまけえし!」

164: 2010/03/03(水) 18:39:44.06 ID:NxFbS8JM0

───団室

谷口「おー! なんか遊び道具たくさんあんな! しかもPCもあるじゃねーか!」

キョン「まーな。うちの団長はやり手なんだ。極めて悪質だが」

谷口「それに……長門がいるぜ?」

キョン「文学部部長兼SOS団団員だからな。そりゃいるさ」

谷口「そっかそっか。それで、手を振ってる古泉の前に広げられてるボードゲーム、ありゃなんだ?」

キョン「大将棋だ。初めて三日目になるが、未だに終りがみえん」

谷口「……是非羽賀さんにやってもらいたいもんだな」

キョン「羽賀さん相手でも二日ぐらいは粘れる自信がある」

谷口「駒の動き覚えるのにまず一日かかりそうだぜ」

165: 2010/03/03(水) 18:42:46.72 ID:NxFbS8JM0

谷口「で、で、他にももう一人団員いなかったっけか?」

キョン「朝比奈さんか?」

谷口「そうだ! 朝比奈さんだ! 彼女はまだ来てないのか?」

キョン「そろそろ来るんじゃないか?」


ガチャッ

谷口「!!」

ハルヒ「たのもー!」

谷口「f**k」

ハルヒ「なんかいった?」

谷口「別に……」

166: 2010/03/03(水) 18:45:56.48 ID:NxFbS8JM0

ハルヒ「っていうか、なんであんたいるのよ?」

谷口「お前が放課後部室に来いっつったんだろ!」

ハルヒ「そーだっけ? あー、そーいえばそんなこともあったかもね」

谷口(おいおい追い返されるのか!?)

ハルヒ「なんてね、覚えてるにきまってるじゃないの。ふふん」

谷口「な、なんだよきもちわりーな」

ハルヒ「わかった、そわそわしてるのはミクルちゃんがいないからでしょ!?」

谷口「え、あ、うん?」

ハルヒ「そーこなくっちゃぁ! 健全たる男子たるもの、女のケツを追いかけてなんぼ、ってなもんなのよ!」

谷口「珍しいな、それは同意だぜ!」

167: 2010/03/03(水) 18:49:25.97 ID:NxFbS8JM0

ハルヒ「ってことですが、ミクルちゃんなら今野球場いるわ。ほら、高校横にある公園のトコ」

キョン「そりゃまたなんで?」

ハルヒ「さあ? 野球にハマったんじゃない? でも団員が何かにやる気を出すのはいいことよね! ということで、今日の団活はあの公園で行います。ほら、さっさと準備する!」

キョン「はいはい」

谷口「こんなあっついのによくやるぜ。団室内で涼んでる方がいいんじゃねーのか?」

ハルヒ「ミクルちゃんが動いてんのよ? レアじゃないの! これを協力しない手はないわ! もしかしたら未来人からのメッセージかもしれないし!」

谷口「そーいやそーゆう趣旨のサークルだったっけか」

キョン「ま、どっちにせよ、だ。制服姿の朝比奈さんが野球やるとか、みたいだろう?」

谷口「見たい訳……見たいです!!!!」

キョン「んじゃ、とりあえずそこにあるグローブと金属バット持ってきてくれ」

谷口「お前は何持ってくんだ?」

キョン「カメラだ」

谷口「……」

168: 2010/03/03(水) 18:51:25.18 ID:TCu8oAIY0

───野球ができそうな公園

ハルヒ「やっほー! みくるちゃん! 連れてきたわよー!」

朝比奈「あ、涼宮さん。連れてきた、って??」

キョン「こんにちは、暑いのに精が出ますね」

朝比奈「み、みんな! どーしたんです?」

ハルヒ「それはこっちのセリフよ! 突然野球したいから今日は団活休みますー、なんて言われてもOKできるわけないわ! 原稿用紙20枚分の反省文と20文字以内で理由を簡潔に述べなさい、って言いたいところだけどそれは許してあげます」

ハルヒ「代わりにみんなで野球しましょう!」

朝比奈「や、野球、ですかぁ?」

キョン「あれ、野球してたんじゃないんですか?」

朝比奈「いいえ、未来からのあっ……」

ハルヒ「未来からの?」

朝比奈「えと……」

170: 2010/03/03(水) 18:52:45.90 ID:TCu8oAIY0

キョン「未来からの、いいえあえて言い直しましょう、未来への! ですよね?」

ハルヒ「?」

朝比奈「そうなんですよぅ! 未来へのタイムカプセルを埋めようとしてたんです!」

ハルヒ「で、タイムカプセルからの?」

キョン「いちいち無茶振りすぎるぞお前」

朝比奈「でも、どうして私が野球してたなんて??」

ハルヒ「だって野球場にいくって言ってたじゃない! 火のないところに煙はたたない、野球場にいたら野球してるに決まってるの!」

朝比奈「そ、そーなんですかぁ?」

古泉「まぁまぁ、せっかくグローブとボールを持ってきたので、キャッチボールでもしませんか?」

キョン「そうだな。天気もいいし、不思議探しするよか健全にスポーツする方がよさそうだ」

谷口「クーラー効いた団室でガリガリ君のがよっぽどいーけどな。あーあちー」

171: 2010/03/03(水) 18:53:40.74 ID:NxFbS8JM0

シュッ パシッ シュッ パシッ

ハルヒ「どりゃっ、里中ボール!」シュッ

キョン「うおっ! 親指使えないハズなのにシンカーが投げられるだとっ!」パシッ

ハルヒ「ふふん、スカイフォークもいけるわよ!」

キョン「大会でなげてりゃ長門の力も借りずに済んだだろうに」

ハルヒ「有希が何かやってたっけ?」

キョン「こっちの話だ」シュッ

谷口「大会ってったら、おれのダイビングキャッチがダイジェストだったよな!」パシッ

古泉「あれは見事でしたね。主に走行距離においてですが」

谷口「へへーん、打者の目線、俺の経験、俺イケメン、気づいたら俺は突っ走ってたんだよ。さすが天才は違うねー」


朝比奈「別に、谷口さんが来なくてもキャッチ出来たもん!」

172: 2010/03/03(水) 18:57:10.94 ID:dBt05hL+0

キョン「!」

朝比奈「ヘーイ! パスくださーい!」

谷口「パス? え、あ、はい」シュッ

朝比奈「うおう!」ドシッ

谷口(が、顔面直撃! ワンバンボール投げたのに!)

朝比奈「う、うぐぅ」

谷口「す、すみませっ。大丈夫っすか!?」

朝比奈「平気です! それっ」シュッ


ドシッ

朝比奈「あだー!」

谷口(すっぽ抜けて真上に投げたー!!)

173: 2010/03/03(水) 18:57:51.67 ID:dBt05hL+0

谷口(そんなこんなで、日が暮れるまでキャッチボールと簡単なノックが続いた)

谷口(なんだか想像できないぐらい朝比奈さんがやる気で、キョンや古泉も驚いてたからやっぱりいつもどおりではなかったんだろう)

谷口(朝比奈さんは正直運動音痴の典型で、体の動かし方からしてスポーツ向けじゃない)

谷口(それでも彼女が一生懸命にボールを投げる姿を見ていると、不思議な感情が自分の中で芽生えるのをかんじた)

谷口(なぜだろう。朝比奈さんと俺が似てるような気がする)

谷口(茜色に染まる空の下で、汗と一緒に穏やかな時間が流れていった)


朝比奈「えいっ!」シュッ

谷口「うおっ!」バシッ

朝比奈「やった! 届いた! 届きました!」

キョン「やりましたね、朝比奈さん!」

朝比奈「はい!」

谷口「……」

174: 2010/03/03(水) 18:58:39.43 ID:NxFbS8JM0

ハルヒ「じゃ、野球の練習はここまで! もう日も暮れてきたし、今日はこの場で解散にしましょ!」

キョン「そうだな」

ハルヒ「明日は普段通り団室に集合だから!」

朝比奈「待ってください!」

ハルヒ「え? なあに? ミクルちゃん」

朝比奈「えと、そのー。明日も……野球しませんか?」

キョン「!!」

古泉「これは驚きですね。朝比奈さん、野球が気に入ったんですか?」

朝比奈「……はい」

古泉「どうでしょう、涼宮さん、明日以降もしばらくここで練習するというのは?」

ハルヒ「そうねぇ……」

谷口「俺も野球やりてー! 夏っぽくていいじゃねえか、な、野球しようぜ?」

ハルヒ「ふーん。ま、いいわ。もうすぐ夏休みだし、夏休みまでのしばらくの間、放課後はここで野球をやりましょ」

朝比奈「ありがとうございます!」

176: 2010/03/03(水) 18:59:10.12 ID:dBt05hL+0

ハルヒ「じゃあとりあえず今日は解散! 練習道具は団室に戻しておくこと、谷口は野球やりたいー!って言ったんだからそれぐらいしておいてね。それじゃっ」

古泉「では、僕もバイトがあるので、これで」

キョン「じゃー谷口、片付けは任せたぞ」

谷口「なーんでそうなるんだよ!」

キョン「これまではいつも俺一人がやってたんだ。今日ぐらいは楽させてくれ。それじゃ、また明日な」

谷口「ったく……」



谷口「あー、重い重い重いっぜー」

朝比奈「あの、手伝います」

谷口「え? あ、大丈夫っすよ!」

朝比奈「じゃあ、金属バットだけでも」

谷口「えっと、じゃあ、お願いします」

177: 2010/03/03(水) 19:00:23.21 ID:dBt05hL+0

───団室

ドサッ

谷口「ふー」

朝比奈「お疲れ様ー。お茶入れますけど、飲みますか?」

谷口「あ! あざーす! いただきます!」


カチャカチャ チャー チャッチャッ


朝比奈「どうぞ」

谷口「うお、うまそー!」ゴクゴクッ


谷口「うまっ!!! 聞いてた通りっす!!」

朝比奈「聞いてた? 誰から?」

谷口「いや、キョンが朝比奈さんの入れてくれるお茶は最高だっつってたんで。その通りだなって」

朝比奈「ふふ、ありがとう」

178: 2010/03/03(水) 19:01:27.11 ID:dBt05hL+0

ゴクゴクゴク

谷口「……」

朝比奈「……」

谷口(ふ、二人きり……。しかしほとんど話したことないし、何話せばいいかよくわかんねえ)

谷口「……」

朝比奈「……」

谷口(……沈黙を共有できるのは腹の知れた相手だけだ、ってのはホントだな。とにかく何かしゃべらないと……)

谷口「え、えと」

朝比奈「今日は付き合ってくれてありがとう」

谷口「……え?」

179: 2010/03/03(水) 19:01:57.89 ID:NxFbS8JM0

朝比奈「野球。みんな、手を抜いてくれてたでしょ?」

谷口「手を抜く?」

朝比奈「ホントは思いっきり速い球投げたり、思いっきりボールを打ったりしたかったハズなのに、私が下手だから、それを気にしてみんな力を抑えてたよね」

谷口「えと……」

朝比奈「実はそれに気づいてたけど……気づいたところで野球がうまくなれる訳じゃなくて……」

谷口「……」

朝比奈「この前の大会は悔しくかった。でも涼宮さんが野球やりたいって言ったらそれをやらないといけないから……。私がイヤって言っても意味ないし、言っちゃいけないから……」

谷口(そういえば、朝比奈さんもSOS団……。涼宮のためにいる人間なんだよな)


朝比奈「……今日は楽しかった?」

180: 2010/03/03(水) 19:03:23.33 ID:dBt05hL+0

谷口「楽しかったっす」

朝比奈「……」

谷口「……」

朝比奈「……実は私も」

谷口「え?」

朝比奈「思った通りのところにボールは行ってくれないし、ボールが体にぶつかったところも痛いけど……。だけど私も、楽しかった」

谷口「……」

朝比奈「みんなの足を引っ張ってるの感じても、最後にボールが届いたとき、本当にうれしかった」

谷口「……」

朝比奈「こんなに一生懸命になったの久し振り。だから、もっと上手くなりたくなっちゃって……ふふ、私らしくないなぁ、涼宮さんに意見するなんて」


谷口(この人は……やっぱり俺と似てる)

181: 2010/03/03(水) 19:04:16.17 ID:dBt05hL+0

谷口(人の目が気になるけど、自分でどうこうできる訳じゃなくて)

谷口(自分に自信がなくて、自分の存在意義を他人に預けてしまってる)

谷口(……何もできない、自分がダメな人間だと思ってる)

谷口(でも、そんな自分に満足してる訳じゃなくて……何かしたくて……)




朝比奈「明日からまた野球につき合わせちゃってごめんね?」

谷口「……」

朝比奈「でも、どうしてもやりたいんだ、……野球」

谷口「いいと思います。それで」

182: 2010/03/03(水) 19:05:18.59 ID:dBt05hL+0

朝比奈「本当に?」

谷口「俺も付き合いで野球やる訳じゃないっす。おれも今日楽しくって、だから野球やりたいんです」

朝比奈「楽しかった?」

谷口「……そうっす。なんていえばいいんだろうな……。あれなんす、朝比奈さんのこと見てると、すごく穏やかな気持ちになるんすよ」

朝比奈「え? え?」

谷口「たぶん、みんなそうだったと思います。朝比奈さんは、全力出せずに不完全燃焼のみんなはつまらなそう、って思ってるかもしれないっすけど」

谷口「……そんなことないんですよ。楽しみ方なんて人それぞれなんです」

朝比奈「……」

183: 2010/03/03(水) 19:05:23.99 ID:NxFbS8JM0

朝比奈「……ふふ、君、すごくはずかしいこと言ってるよ?」

谷口「え、あ、す、すみませ」

朝比奈「……でも、ありがとう。なんだか、すごく自信がついたよ」

谷口「そうっすか? それは……よかったっす」

朝比奈「じゃあもう時間も遅いし、そろそろかえろっか?」

谷口「そ、そうっすね」

谷口(なんか朝比奈さん、感じ変わったな)

185: 2010/03/03(水) 19:06:49.80 ID:dBt05hL+0

───団室前

朝比奈「じゃあまた明日。二年生のげた箱、こっちだから」

谷口「はい。また、明日」

タッタッタ


谷口「ふ、ふぅ」

谷口(朝比奈さんの雰囲気におされっぱなしだぜ)

谷口(でも……。なんか人の力になれた気がする)

谷口(すこぶる気分がいいです……)

谷口(さーて、おれも帰るとするか、な)


長門「ハロー」

谷口「ぬおあっ!」

186: 2010/03/03(水) 19:07:59.84 ID:dBt05hL+0

長門「長門の恋のアドバイスコーナーへようこそ」

谷口「もうお前なんでもありだな、ってかようこそも何もお前からきたんだろ!」

長門「細かいこと言ってる男はモテない、ここメモするとこ」

谷口「付き合いづらい上司みたいなこと言うんじゃねー。なんでここいるんだよ!」

長門「団室の鍵を締めに来た」

谷口「なるほどな。で、いつからいたんだ?」

長門「ながいこと」

谷口「……(略して長門ってか)」

187: 2010/03/03(水) 19:08:31.74 ID:NxFbS8JM0

長門「ということで、長門の恋のアドバイスコーナー」

谷口「いえー、ぱちぱちぱちぱち」

長門「女子高生の登下校の夢といったらなんでしょう」

谷口「え? あー、わっかんね」

長門「適当でもいいから要回答」

谷口「えーと、じゃー校門にリムジンで迎えに来てくれるどこぞの御曹司と一緒に帰ること? とか?」

長門「惜しい」

谷口「惜しいのかよ」

長門「すこぶる惜しい。ニュアンス的には正解」

谷口「褒めるねぇ」

長門「頭の良い生徒は嫌いじゃない。涼宮ハルヒにくっついてる彼ときたら、わざとフラグ折ってる疑惑があるぐらい、見ていて腹が立つ」

谷口「?」

188: 2010/03/03(水) 19:10:05.56 ID:dBt05hL+0
>>184
それ言われるとホント弱い。申し訳ない。


長門「とにかく、正解を発表する」

谷口「おう?」

長門「THE GIRL WHO LEAPT THROUGH TIME」

谷口「ワーッツ?」

長門「自転車で2ケツしての登下校。これ、女子高生の夢」

谷口「そうなのか? 男の夢の間違いじゃないのか?」

長門「ということで、明日から自転車で高校に来るように」

谷口「俺、自転車持ってねーんだ」

長門「そういうこともあるだろうと思って、用意してきた」

谷口「どこに?」

長門「あなたの家の車庫」

谷口「お前、なんか怖いよ」

長門「できる女、と言ってほしい」

189: 2010/03/03(水) 19:11:18.45 ID:NxFbS8JM0

長門「とにかく、そういうことだから」

谷口「そういうこと? 自転車で登校してこいってか? あの坂道を? 上り続ける?」

長門「心肺機能のトレーニングにもってこい。それに登校時間の短縮。加えて後ろに彼女を乗せて帰ってこれる。お得ってベルじゃない」

谷口「いやいやいやいや。トレーニングってこの夏に汗かき放題で教室にin、しかも登りだから大して時間短縮にもならず、加えて後ろにのってくれる彼女もいねーよ! 虐殺じゃねーか!」

長門「シモ・ヘイヘもトレーニングが狙撃のすべてだと言っていた。貴方もトレーニングこそ心肺機能のすべてだと知るべき」

谷口「趣旨かわってんじゃねーか、そーじゃねーそーじゃねーんだよ! そこはわかっとけ!」

長門「わかった。とりあえず、乗ってみるべき」

谷口「何を言っても無駄か……」

長門「暇を持て余した宇宙人の遊び。そう思って付き合うべき」

谷口「あいあい、わかったよ、ったく」

190: 2010/03/03(水) 19:11:45.43 ID:dBt05hL+0

───翌日、朝

キコキコキコイコ

谷口「ゼェ、ゼェ、ゼェ、ゼェ」

キコキコキコキコ

谷口「ハァ、ヒィ、ハァ、ウプ」

タッ

谷口「この坂を行けば……どうなるものか……。こんなフッツーのママチャリなんか車庫に置いときやがって、どーせなら電動やらロードレーサーにしてほしかったぜ」

谷口「ふぅ……。でもま、なんかきもちいいからいいか。あんぱんッ」

ギコギコギコギコ……

谷口「フゥ、フゥ、フゥ」

谷口(自転車との語り合い、パーフェクトペダリングを目指す……)

谷口(ああ、今日もいい天気だぜ)

ギコギコギコギコ


引用: 谷口「俺、とべんじゃん!」【ハルヒSS】