603: 2009/01/28(水) 21:37:41 ID:esNTV3r0
~酔いどれ狼~
「ホントにおいしいわねぇ、このお酒」
「ああ……扶桑から取り寄せたとっておきのヤツだ」
ぐい、とミーナはもはや何杯目かわからない扶桑酒を己が体に流し込んだ。
顔が赤い、あからさまに飲み過ぎている。
「飲み過ぎじゃないか?」
「そうかしら? そんなことは無いと思うけど?」
いさめる言葉も聞きやしない。どうしたものだろうか?
×
ことの発端は一時間ほど前。
私が手伝ったこともあって、ミーナが今日、(既に昨日となったが)やるべき仕事は全て片付いていた。
で、一息ついていたミーナに私は激務におわれる彼女をねぎらうつもりで、久しぶりに飲まんか?――と持ちかけたのだが……
やめておきべきだった。
ミーナは他愛のないこと話しながらみるみるうちに扶桑酒を飲んでいき、すっかり出来上がってしまったのだった。
結果、誘った手前置いていくわけにもいかず未だ私は彼女の隣に居る。
ねえ美緒――と言いながら真っ赤な顔のミーナが口を開く。
「最近ね、私のとんでもない呼び名があるの……知ってる?」
呼び名? 心当たりがない。
「知らないが……。何なんだ?」
「聞いて驚きなさい! 『ミーナさんじゅうはっさい』ですって……あんまりだわ……」
成程。確かに読点の位置を間違えるとかなり無残な呼び名となる、だれが考えたのだろう? ミーナには悪いが中々の発想力だと思う。
「別に落ち込むことは無いと思うがな? 悪意のあるものじゃないよ、多分」
「悪意なんて関係ないわよッ! トゥルーデも18なのにそんな風には呼ばれてないじゃない!」
「そりゃそうだが……」
彼女だってお姉ちゃん、などとからかわれる事は度々あるのだが……黙っておこう。今のミーナはいつもと完全に違う。
「美緒ぉ……私は花も恥じらう18の乙女なのよ……それなのにい……」
花も恥じらう乙女は同僚に愚痴りながら酒をあおったりはしない。
ぐびりぐびりぐびり! 酒瓶から直接飲んでいる。たしなめる気はとっくに失せている。こうなったら最後まで付き合うまでだ。
604: 2009/01/28(水) 21:38:30 ID:esNTV3r0
「う、うふふふ……なんだか気持ち良くなってきたわぁ……」
適当に相槌をついてやりながら、さらに十数分程たった――
やたら楽しそうな顔なのが腹立たしい、私はちっとも酔えてない……。
ミーナの頭に使い魔の耳と尻尾が顕現する。魔力の抑制がきかなくなったか?
「魔力が抑えれていないぞ? まったく、これじゃ皆に示しがつかん」
私が頭を抱えていると、ミーナはおもむろに目を閉じ、とんでもないことを口走った。
「あらあら~宮藤さんとリネットさん……何で同じ部屋にぃ?」
「馬鹿、何をしてるんだ! そんなことに自分の力を使うな!」
もう限界だ――これ以上の暴走を看過することはできない。かといってどうしたものか? まったくもって始末に負えない。
「ひっ……く、馬鹿は無いでしょう……馬鹿は? もしかしてあなたも……『五月蠅いさんじゅうはっさいだなあ』とか思って、る?」
今度は泣き顔。誰か、助けてくれ。
「思ってない、思ってないぞ!」
「嘘よぉ! うそうそ! 年上の美緒にさえわたしはおばさん扱いなのよお! うわあぁぁ!」
むせび泣くミーナなんて普段の姿からは想像もできなかった。酔った勢いもあるのだろうが、よほどおばさん扱いを気にしていたのだろう。
ならばこれはその悩みに気付いてやれなかった私のせいでもある。なんとかして慰めてやりたいところだが……
「私は戦友をおばさん扱いなどしないッ! お前は紛れもなく『ミーナさん、じゅうはっさい』だよ」
「ぐす……本当に?」
「あたりまえだろう、もっと自分に自信を持て」
「ううう、ありがと、みおぉ……あいしてるわ……」
潤んだ眼。赤らんだ頬。そんな艶めかしい顔なのも酒の所為か――。
そんな顔で変な事を、言わないでほしい。
ろくに飲んでいないはずの私まで赤くなってしまう。……うむ、もう寝るか。
「……さて、すっかり遅くなってしまったな。そろそろお開きにするか」
顔を赤らめてしまったのを隠すようにそそくさとコップやら空の酒瓶やらを片付ける。そんな私をミーナはどことなくうつろな目でじっと見ていた。もう夢を見ているのだろうか。
「さぁ部屋に帰るぞ、もう遅い」
ミーナをうながして席を立つ。そして食堂から出ようとした瞬間、後ろから衝撃を受けて私はつんのめった。抱きしめられたのだ、後ろから、ミーナに。
「いきなりどうしたミーナ?」
肩に体を預けられて少々重いが、とても温かい。どうにも酒臭いのは閉口させられるが。
「あたたかいわ……美緒。とっても、ね」
「お前もな」
「それにやわらかい……そんなに大きくは……ないかしら」
ミーナは私にもたれかかったまま、躊躇いなく私の胸をまさぐった。手つきがいやらしい、とてもいやらしい。
「ひゃ、あッ……。馬鹿! 投げ飛ばすぞ?」
思わず恥ずかしい声が上がってしまった。動揺が魔力の集中を激しく妨げる、情けないことに既に魔力で強化されたミーナを振りほどけない。
「美緒になら何をされても本望よ……。それよりこんな服着てたら暑い、わよね? 脱がせて……あげる」
ぷちぷちと片手だけで器用に軍服のボタンを外されて、下に着込んだスーツが露になる。まずいことになってきた。
「いい加減にしろ! 飲み過ぎだぞ!?」
「そうかし……ら? そんな……ことはないとおもうわ?」
ちょっと前の会話が繰り返された。ただし、ちょっと前のミーナは後ろから私を抱きしめた上で胸をもんだりしていない。
力が抜ける。思考がぼやける。体が疼く。
ひょっとして私はもう眠っていて悪夢を見ているに過ぎないのではないか? もうどうでもいい。
×
「はぁ、はぁ……ミーナ?」
そして、無限に感じられた十数秒後。ミーナの動きが緩慢になって、止まった。不気味だ、あれほどやめろと言っても手を止めなかったのに。すぐそばにある、ミーナの顔を見てみれば――
「すー……」
安らかな寝顔があった。
「はっはっは、いい気なものだな、酔っ払いめ」
思わず笑いがこみ上げる。胸を弄られたのも、この寝顔に免じて許してやるとするか。
これで良いのだ。散々だったが普段じゃ絶対に見れない色々なミーナが見れた。それだけで良かったと言うことにしよう。
「明日、どうする気だ?」
「んん、むう……」
無論、後ろからの返事は無い。ここで寝かせるのは流石に不憫だな……寝室まで運ぶとするか。私はそのままミーナをおぶって、今度こそ寝室を目指す。
こんな夜も悪くは無い。まぁ――当分の間はゴメンだが。
了
もっさんが全然それらしくない……と、言うよりSSを書くのがこんなに大変とは……職人様は凄すぎます。
お付き合いいただきありがとうございました。
適当に相槌をついてやりながら、さらに十数分程たった――
やたら楽しそうな顔なのが腹立たしい、私はちっとも酔えてない……。
ミーナの頭に使い魔の耳と尻尾が顕現する。魔力の抑制がきかなくなったか?
「魔力が抑えれていないぞ? まったく、これじゃ皆に示しがつかん」
私が頭を抱えていると、ミーナはおもむろに目を閉じ、とんでもないことを口走った。
「あらあら~宮藤さんとリネットさん……何で同じ部屋にぃ?」
「馬鹿、何をしてるんだ! そんなことに自分の力を使うな!」
もう限界だ――これ以上の暴走を看過することはできない。かといってどうしたものか? まったくもって始末に負えない。
「ひっ……く、馬鹿は無いでしょう……馬鹿は? もしかしてあなたも……『五月蠅いさんじゅうはっさいだなあ』とか思って、る?」
今度は泣き顔。誰か、助けてくれ。
「思ってない、思ってないぞ!」
「嘘よぉ! うそうそ! 年上の美緒にさえわたしはおばさん扱いなのよお! うわあぁぁ!」
むせび泣くミーナなんて普段の姿からは想像もできなかった。酔った勢いもあるのだろうが、よほどおばさん扱いを気にしていたのだろう。
ならばこれはその悩みに気付いてやれなかった私のせいでもある。なんとかして慰めてやりたいところだが……
「私は戦友をおばさん扱いなどしないッ! お前は紛れもなく『ミーナさん、じゅうはっさい』だよ」
「ぐす……本当に?」
「あたりまえだろう、もっと自分に自信を持て」
「ううう、ありがと、みおぉ……あいしてるわ……」
潤んだ眼。赤らんだ頬。そんな艶めかしい顔なのも酒の所為か――。
そんな顔で変な事を、言わないでほしい。
ろくに飲んでいないはずの私まで赤くなってしまう。……うむ、もう寝るか。
「……さて、すっかり遅くなってしまったな。そろそろお開きにするか」
顔を赤らめてしまったのを隠すようにそそくさとコップやら空の酒瓶やらを片付ける。そんな私をミーナはどことなくうつろな目でじっと見ていた。もう夢を見ているのだろうか。
「さぁ部屋に帰るぞ、もう遅い」
ミーナをうながして席を立つ。そして食堂から出ようとした瞬間、後ろから衝撃を受けて私はつんのめった。抱きしめられたのだ、後ろから、ミーナに。
「いきなりどうしたミーナ?」
肩に体を預けられて少々重いが、とても温かい。どうにも酒臭いのは閉口させられるが。
「あたたかいわ……美緒。とっても、ね」
「お前もな」
「それにやわらかい……そんなに大きくは……ないかしら」
ミーナは私にもたれかかったまま、躊躇いなく私の胸をまさぐった。手つきがいやらしい、とてもいやらしい。
「ひゃ、あッ……。馬鹿! 投げ飛ばすぞ?」
思わず恥ずかしい声が上がってしまった。動揺が魔力の集中を激しく妨げる、情けないことに既に魔力で強化されたミーナを振りほどけない。
「美緒になら何をされても本望よ……。それよりこんな服着てたら暑い、わよね? 脱がせて……あげる」
ぷちぷちと片手だけで器用に軍服のボタンを外されて、下に着込んだスーツが露になる。まずいことになってきた。
「いい加減にしろ! 飲み過ぎだぞ!?」
「そうかし……ら? そんな……ことはないとおもうわ?」
ちょっと前の会話が繰り返された。ただし、ちょっと前のミーナは後ろから私を抱きしめた上で胸をもんだりしていない。
力が抜ける。思考がぼやける。体が疼く。
ひょっとして私はもう眠っていて悪夢を見ているに過ぎないのではないか? もうどうでもいい。
×
「はぁ、はぁ……ミーナ?」
そして、無限に感じられた十数秒後。ミーナの動きが緩慢になって、止まった。不気味だ、あれほどやめろと言っても手を止めなかったのに。すぐそばにある、ミーナの顔を見てみれば――
「すー……」
安らかな寝顔があった。
「はっはっは、いい気なものだな、酔っ払いめ」
思わず笑いがこみ上げる。胸を弄られたのも、この寝顔に免じて許してやるとするか。
これで良いのだ。散々だったが普段じゃ絶対に見れない色々なミーナが見れた。それだけで良かったと言うことにしよう。
「明日、どうする気だ?」
「んん、むう……」
無論、後ろからの返事は無い。ここで寝かせるのは流石に不憫だな……寝室まで運ぶとするか。私はそのままミーナをおぶって、今度こそ寝室を目指す。
こんな夜も悪くは無い。まぁ――当分の間はゴメンだが。
了
もっさんが全然それらしくない……と、言うよりSSを書くのがこんなに大変とは……職人様は凄すぎます。
お付き合いいただきありがとうございました。
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