676: 2009/01/29(木) 21:52:29 ID:V8PlO7C5
ラブレター 自分としては珍しくエイラニパ。やっぱ自分で書いてしまった。

「なぁ、イッルはさ…どんな告白されたら嬉しいと思う?」

そう頬を赤らめて、幸せそうにニパは笑った。
しかし、私にはお前がなにを言っているのかが理解できなくて…いや、理解したくなかったと言った方が正しかった。
あぁ、お前はその微笑みの先に誰を浮かべているのか…くらりと意識が途切れそうになるのを少し舌を噛むことでどうにか防ぐ。

「ははっ…好きなヤツでもできたカ?」

精一杯の強がりを見せるが、その声はきっと震えていて、本当は今すぐにでも逃げ出したかった。
誰かの心の変容を止めることなど、どだい無理な話なのだ。
ニパがどこの誰を好きになろうとも、私にはそれを妨げることはできないし、ましてやそのようなことをする権利などあるはずもなかった。

「うん…だからさ、ラ、ラブレターを書こうかと思うんだ。でもさ、私、なに書いたらいいか分からなくてさ。」

ニパはもう耳まで赤く染め、俯きながらもそう答えた。
頭をガツンとハンマーで叩かれたような衝撃がはしり、胸に溢れるのは後悔の念。
この思いをいくら叫んだとしても、今更遅いのだ。

いつのことであっただろうか…お前に惹かれていたことに気づいたのは。
私はニパが好きだった。
けれども、そう言ったとしても信じてはもらえないであろう。
なぜなら私は、自らの気持ちを自覚すればするほど、素直になどなれなくて、それはもうまるで子供みたいに反発してしまうのだ。

好きな相手に意地悪してばかりいてはだめです。
いつか後悔することになってしまうかもしれませんよ?

あなたがそう言ったことは確かに真実であった。
しかし、後悔ってものはしてからでは遅いのだ。
つまり、現状はまさに後の祭としか言いようがなかった。
私にはニパの笑顔の先に立つことはもう不可能だという現実が、どこまでも胸を押し潰す。

「やっぱりさ、ニパの気持ちを素直に書けば一番ダヨ。ちゃんと女の子らしい可愛い手紙にするんダゾ~!!」

いつも通り。私はいつも通りを心がけなくてはいけないのだ。
気を緩めたらこの気持ちも涙も全て溢れだしてしまう。
今更そんなことをしてもニパを困らせるだけで、その様な事態は私にとって、そしてもちろんニパにとっても、望ましいことではない。

「あの、イッルはさ、どんな色が好きなんだ?」

あぁ、本当に、本当にニパはソイツが好きなんだ…いつもなら何事もはっきりと自らで決めることを好むニパが、私にまでこんなに意見を求めるなんて。

677: 2009/01/29(木) 21:53:01 ID:V8PlO7C5
「ニパはバカだなぁ。私の好きな色を聞いても何の参考にもならないだろ?ソイツはどんなヤツなんだよ?一緒に考えてやるからさ。」

ニパの頬の朱が濃さを増す。
もうその顔は、なんだかまるで熟れたリンゴみたいで、見ているこちらまで恥ずかしくなってしまう様であった。
もし相手がニパでなかったとしたならば、私もそんな様を見て穏やかな気持ちをもてたのだろう。
あぁ、しかし、それは紛れもなくニパで、私の心を訪れるものは痛みだけであった。

「ソイツはさ、優しくないんだ。意地悪でさ、いつもヒドイことばっかするんだよ。」

そう述べたニパは、それでもなんだか嬉しそうで、誰だかわからないソイツが憎くてたまらなかった。
どうしてか、どうしてそんなヤツがいいのか。
そんな嫌なヤツなんかやめて…私もさ、オマエに優しくするからさ、だから行かないでくれ。
どんなにそう言ってやりたかったことか。でも、そんなこと言う権利が私にないのは私が一番知っていた。

「なんでそんなヤツ好きなんだよ?ニパって変Oなのカ?」

「そんなことねーよ!ソイツはそんなだけどさ、ほんとは優しいの知ってるんだ。カッコよくて優しくて、私に感謝なんてさせてくれない卑怯なヤツさ。」

ニパが子供みたいに、どんなにかソイツがイイやつなのかを語る様は本当に幸せそうで、
私はニパの気持ちを助けてやらなければ嘘だと思うしかなかった。

「じゃあさ、ソイツにお前が一番似合うと思う色の便箋を使ってさ、お前の気持ち全部詰めてやれ。
  お前はさ、黙ってれば可愛いし、性格もまぁ悪くないからきっと上手くいくサ。」

ニパは少しムッとした顔をしたが、なにか少し考えると微笑みを見せた。

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もう手紙渡したのかな?
そんなことばかり考えてしまって、ここ数日訓練だって手につきやしない。
ニパときたら私の気も知らないで、必氏に机に向かってペンを走らせていて、どうしてもその気持ちの先にいる相手が羨ましかった。
こんな気持ちのときは部屋でごろごろしているのが一番だと決めた私は、部屋への帰路を急ぐ。

バタンッと大きな音を立て、ドアが開くとニパが飛び出して行った。
あぁ手紙を渡しにいくんだな、と思うととうとうきてしまったという恐ればかりが胸に募って、急に身体を気だるさが襲う。
もう今日は寝てしまおうと、ニパが開け放した扉を通ると、ベッドの上には空色の手紙が置いてあった。
ニパのヤツ忘れていったな…見てしまおうか、どうしようか、好奇心と罪悪感を天秤にかけ、随分と重かったらしい好奇心に身を任せた。

エイラ・イルマタル・ユーティライネン様へ。

ふんっ、バカじゃねーの。様なんて使う間柄じゃねーだろ。
そう文句を言うと、私はニパを探しに行くことにした。

Fin.

引用: ストライクウィッチーズでレズ百合萌えpart18