220: 2018/11/26(月) 22:40:46.82 ID:HaEGZX9A0
隊長「魔王討伐?」【その1】
隊長「魔王討伐?」【その2】
隊長「魔王討伐?」【その3】
~~~~
女僧侶「──えぇっ!? 犯人はユニコーンだったんですかっ!?」
女賢者「えぇ、無事に退治? というより帰っていただきました」
隊長「...あの様子じゃ、ここには二度と現れんな」
朝食を囲みながら、彼たちは会話を進めていた。
女僧侶が作ってくれた料理がすごい勢いで消化されていく。
3人とも朝の食が太いタイプであった、ただ1人を除いて。
帽子「あ、あの...反省会やるのかい...?」
女僧侶「...反省会ですか?」
女賢者「あ、その料理取ってもらってもいいですか?」
帽子「あ、はい...どうぞ...」スッ
食が細いのは、体質ではない。
これから始まる説教に緊張をしているからであった。
思わず敬語を使ってしまう程、彼の心情が伺える。
隊長「じゃあ、反省会を始める」
帽子「うぅ...」
隊長「...俺が言いたいのは2つだ」
女賢者「...」
女僧侶「...」
隊長「1つ目、あの行動は危険すぎだ」
帽子「う、ぐ...」
女賢者「...まぁ、そうですよね」
女賢者「もし、ユニコーンに敵意があったままなら...わかりますよね?」
言葉を濁した、どうやら女僧侶に気を使ったらしい。
だがあの場面、彼女の言う通り敵意が残ったままならどうなっていたか。
どうして彼は突撃したのか、その理由はあまりにも理にかなわないモノであった。
221: 2018/11/26(月) 22:41:53.67 ID:HaEGZX9A0
隊長「...なんで突っ込んだ」
帽子「...ユニコーンの声が聞こえたような気がしたんだ」
女賢者「それって...鳴き声ってことですか?」
帽子「いや、人の言葉だったんだ...」
隊長「...」
帽子「辛そうな声だった...なんとかしてやりたい、と思ったら」
帽子「足が先に動いてしまってね...」
お花畑、そう言われても仕方ない。
隊長と女賢者はつい黙り込んでしまう、どのようにして彼を諭させるかを。
だが彼女は違う、神に仕える女は帽子の発言に対して言葉を交わした。
女僧侶「...ユニコーンは、純潔な人には心が通じ合うって聞いた事があります」
女僧侶「きっと、心の底からユニコーンのことを助けてあげたかったんですね...」
女僧侶「その心にユニコーンは理解してくれたんですね」
女僧侶「それって...とっても素敵なことだと思いますっ!」
彼女の笑顔は輝かしかった。
僧侶のその屈託のない言葉、それを聞いて隊長と女賢者は顔を合わせる。
ここは彼女に免じてやる、そのような意図を伝心する。
帽子「...いやぁ、照れるな」
女賢者「はぁ...」
隊長「まぁ...氏なずにいれたからこの事は不問にしてやる」
帽子「次から、無茶な行動は慎むy──」
隊長「────2つ目」
222: 2018/11/26(月) 22:43:48.60 ID:HaEGZX9A0
帽子「まだあるのか...」
隊長「...お前にはやるべき事がある、そしてそれを望む者たちがいる」
帽子「...っ!」
隊長「最後に...お前のことを大事に思ってる者がいることを忘れるな」
やや不貞腐れていた帽子の表情、それは彼の言葉をきっかけに消え失せた。
なぜこのようなことを頭に入れておかないのか。
隊長の言葉を聞いて初めてそれを認識した自分を恥ず、そのような顔つきに変わる。
隊長「慎むじゃない、無茶な行動は"しない"...だな」
帽子「そうだね...」
隊長「...どうしても、って時には」
帽子「...?」
隊長「俺や仲間を頼るんだな、そうすれば何でもうまく行くさ」
帽子「...フフ、相変わらず面白いね」
女僧侶「ふふっ、素敵ですねっ!」
女賢者「...そうですね」
隊長「早く食え、料理が冷めるぞ」
帽子「フフ、そうだね...そうだよね」
~~~~
~~~~
隊長「世話になったな」
女僧侶「いえ、こちらこそ!」
女賢者「もし、また何か起きたら遠慮なく」
女僧侶「よろしくお願いしますねっ!」
帽子「それじゃ、行きましょうか」
女僧侶「また会いましょうねぇ~っ!」
ふりふり、と彼女は手を振った。
荒野の畑はもう荒らされることはないだろう、それに帽子が精神的に成長することができた。
とても有意義な経験であった、そう彼は帽子を深く被りながら道を歩んでいく。
~~~~
223: 2018/11/26(月) 22:45:16.65 ID:HaEGZX9A0
~~~~
女賢者「もう少しでつきますね」
帽子「そうだね...はぁ...はぁ...」
隊長「相変わらず体力がないな...」
既に息を切らしていて、限界が近い帽子。
先程は精神的に成長できたが、次は身体的な成長が必要のようだった。
そんな彼に思わず笑みを浮かべていると、彼女はある気配に気がついた。
女賢者「──これは...」
帽子「うん?」
それは彼女にしか気づくことができない。
気配、それは人の気というよりかは、魔力に関する気配。
遠くからこちらに向かってくる、ナニかを察知する。
女賢者「...膨大な魔力がこっちに迫ってきてます」
帽子「そ、それって...」
隊長「────ッ! もうそこにいるぞッ!?」
ここまで来れば魔力云々の話ではない。
とてつもない覇気のようなモノを感じる、それは左方から。
彼らはゆっくりとそちらを向いた、するとそこにいたのはあの入れ墨をした男。
???「貴様ら...だな?」
やや大柄の男が、鬼のような形相で此方を睨んでいた。
その睨みだけで足がすくんでしまう程に、臆することを我慢しながら女賢者が返答する。
女賢者「...なにがですか?」
???「貴様らが我が同胞を...頃したのか?」
帽子「...魔王軍か?」
復讐者「そうだ...我は魔王軍の...復讐者だ」
隊長「────ッ!」スチャッ
男の名は復讐者、彼が背負う気配とてつもないモノ。
今まで遭遇してきた相手の中で一番かもしれない。
隊長の中で警鐘が鳴り響く、この男は非常に危険だと、有無を言わさずに彼は武器を構えた。
復讐者「...貴様らが暗躍者、追跡者、捕縛者を頃した者に違いないな」
224: 2018/11/26(月) 22:46:20.91 ID:HaEGZX9A0
「氏んで詫びろ...」
225: 2018/11/26(月) 22:47:30.82 ID:HaEGZX9A0
隊長(こいつ...いままでの奴らよりかなり強いな...)
隊長「...離れろ、絶対に油断をするな」
帽子「──わかったよ...私にも感じるよ...嫌というほどの殺気を...」
女賢者「..."防御魔法"」
見えない鎧が纏われる。
彼女の唱えた魔法が彼らの生命線を確保する。
これである程度の負傷は肩代わりしてくれるはず、準備は万端だ。
復讐者「────"雷魔法"」
────ドッッッッゴオオォォォォォォォォォンッッッ!!!!
荒野の地に強烈な雷が落ちる。
その威力は凄まじく、地割れが各所に起きていた。
そして聞こえたのは落雷の音だけではない、身近なモノが割れる音も。
女賢者「けほっ...大丈夫ですかっ!?」
帽子「あぁ、なんとか...君の魔法でね」
女賢者「くっ...もう防御魔法が破られた...凄まじすぎる...っ!」
隊長「ぐっ...」
帽子「大丈夫かいっ!?」
隊長「...今は自分の身を第一に優先しろッ!」
復讐者「──ここだ」
女賢者「あ、あぶないっっ!!」
帽子「っ...!」スッ
復讐者「ほう、剣を抜いたか...それで断罪の斧を受けてみろ...」
魔法を使わずに、復讐者という男はいつの間にか肉薄してきた。
ただならぬ緊張感が、彼らの平常心を煽り注意力を散漫にさせる。
巨大な斧を手に取り帽子に向かって振り下ろす、気が動転して細い剣で受け流そうとする。
226: 2018/11/26(月) 22:48:40.70 ID:HaEGZX9A0
隊長「──受けるなッッ! 避けろッッ!」
帽子「────っ...!!」ダッ
──ガッッッッッシャアアアアアァァァアンッッッ!!
隊長の一声で我を戻し、横に飛び込むことで攻撃を回避する。
空振りした斧をみていると、大地が尋常じゃないほどえぐれている。
これを受けていたらどうなっていたか。
女賢者「な...なんて威力ですか...」
復讐者「──貰った...」
女賢者「────なっ!?」
──ガッッシャン...!
先程よりは威力が抑えられた斧の一振り。
帽子の一幕に気を取られていると、背後まで取られていた。
しかし相手は斧、その攻撃発生速度はお世辞にも速いとは言えない。
彼女はなんとか回避に成功した、回避は成功したのであった。
復讐者「..."属性付与"、"雷"」
──バチバチバチバチバチバチッッ!!
回避は成功した、しかし復讐者の狙いはコレだった。
新たに唱えられたこの魔法、それを聞いた彼女は思わず度肝を抜かれる。
女賢者「属性付与っ!? しまっ────」
その魔法は、斧に纏わりつく。
すると起こるのは、神の鳴り音と呼ばれる稲妻の唸り声。
属性付与、その文字通り斧に雷の属性が付与される。
女賢者「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!?!?」
227: 2018/11/26(月) 22:50:01.12 ID:HaEGZX9A0
隊長(──感電しただとッ!? なんだ今の魔法はッ!?)
隊長「...まずいッ!」スチャッ
──バババババババババッッッ!!
魔法が当たったわけでもない、斧が当たったわけでもない。
だというのに、女賢者は感電して身体の身動きができずにいる。
これ以上の負担は危険だ、そう察知した隊長は復讐者に向けて弾幕を放つ。
復讐者「ぐうぅ...そう何度も喰らうべきじゃないなこれは...」
隊長(そう言っている割には顔色一つ変えていない...先に女賢者をどうにかしたほうがいいな)
隊長「...チッ、悪いが蹴飛ばすぞッッ!!」ダッ
──ドガァッ...! ドサァッ...!
隊長が女賢者のもとに走り出す、そして鈍い音を彼女にぶつけた。
これは感電している者に対しての一般的な対処法、それを行った隊長は地面に叩きつけられる。
ドロップキックなんてモノは女性に向けて行うものではない、彼女は吹き飛ばれた。
女賢者「──あ...げほっ...ぅ...」
帽子「大丈夫かッ!?」
復讐者「...まずは1人...あと2人だ」
彼女は潰された、とてつもなく強い電気が気絶に追い込んだ。
ドロップキックを早急に行っていなかったら、感電氏をしていたかもしれない。
起き上がった隊長は帽子に耳打ちをする。
隊長「...帽子」
帽子「...なんだい?」
隊長「女賢者を守っててくれ...今の俺には守りながら戦うことはできん」
帽子「...わかった、すまない...役に立てなくて」
隊長「...ッ! とにかく下がっててくれ」
言葉を濁したというのに、彼には伝わってしまった。
接近戦は控えたほうがいい、そう予感した隊長は剣術しか扱えない帽子を退避させる。
勝負の鍵は、やはりこの現代兵器でしかない。
228: 2018/11/26(月) 22:51:10.00 ID:HaEGZX9A0
隊長(あの地割れは...)チラッ
復讐者「...」
──ブンッ、バチバチバチバチッッ!!
斧を振り回すと同時に、雷の轟音が鳴り響く。
やはりあの斧に近づくだけで、あの稲妻の餌食になることは間違いないようだった。
隊長「二度も同じ手にはやられん...」スチャッ
──バババババッッッ!!
銃撃、まともに喰らえば負傷することは間違いない。
復讐者は弾幕を巨大な斧を盾代わりにして身を守った。
しかし斧を盾代わりにすることによって、それは遮蔽物にも変貌する。
復讐者「...なに?」
復讐者「...見失っただと?」
辺りを見渡しても遠くに女賢者と帽子が見えるだけ。
ここは荒野地帯、木々など存在せず、隠れる場所などないはずなのに。
隊長「...」
しかし彼は隠れていた、ここは先程の地割れの箇所。
大地の僅かな溝にに身を潜めて、様子を伺っている。
衣服が泥だらけになろうと構うものか。
復讐者「...そこだな?」
隊長「──ッ...!?」
──グイッ、ガシィッ...!
しかし、その策は刹那で破られた。
僅かな溝には逃げ場などない、見破られれば袋のネズミであった。
完全に息を潜めていたはずなのに、この男の洞察力は凄まじかった。
ネズミは首を掴まれ、そのまま外に引きずり出された。
229: 2018/11/26(月) 22:52:19.82 ID:HaEGZX9A0
隊長「────がァッ...グッ...は、離せェ...ッ!!」
復讐者「...我が同胞の復讐...晴らさせてもらうぞ」
隊長「ゲハッ...ゴホッ...」
隊長(アサルトライフルは...地面...に落ちている...)
隊長(ハンドガン...駄目だ、両手で抵抗しないと首の骨が持ってかれる...)
復讐者「審判の雷...贖罪してもらおうか...」
復讐者「..."雷魔法"」
──バシュンッッ
1つの閃光が隊長の身体を貫いた。
人は雷に打たれると、どのようなことになるのか。
鍛え抜かれた隊長の身体、それを支える力が徐々に失われていく。
隊長「────ッ」
復讐者「...2人目だ」
~~~~
230: 2018/11/26(月) 22:54:42.19 ID:HaEGZX9A0
~~~~
帽子「はぁっ...はぁっ...はぁっ...」
女賢者「ぁ...ぅ...」
帽子(女賢者さん...無事でいてくれ...)
女賢者を背負い、この王子は退避を行う。
きっと彼が解決してくれる、今は彼女の安全を確保するのが先決だ。
そう自分に言い聞かせる、しかし背後から迫る者がをソレを許してくれなかった。
???「──残りは貴様だ...覚悟しろ」
帽子「────彼はどうしたんだ...ッ!?」
復讐者「...贖罪してもらった...次は貴様だ」
帽子「くそっ...ここで終わるのかっ...」
強い絶望が彼の中で生まれる。
この鬼のような男と対峙してしまった、余所見をすれば氏に繋がる。
彼に目線を合わせ、どのような行動をしてくるかを予期する、それが最後の抵抗策であった。
復讐者「...貴様の心は綺麗だな」
しかし、彼が第一に発した言葉は唐突だった。
一体なぜこのタイミングなのか、確かに初めて目線を合わせたのは事実だが。
帽子「...どういうことだ?」
復讐者「楽に逝かせてやる...」
帽子「...」
帽子(...すまない...みんな...スライム)
最後に思い浮かべた顔は、あの魔物。
それにどのような意味が込められているのか。
231: 2018/11/26(月) 22:55:59.43 ID:HaEGZX9A0
復讐者「これで...最後だ────」
──ブンッッ、バチバチバチィッ...!
雷を伴う斧が振りかざされた。
もう終わり、このまま首をはねられて彼は果てるしかない。
そんな時だった、眼の前から白き音が鳴り響く。
復讐者「────なッ!?」
──□□□□□□□□□□□□□□□ッッ!
どこかで聞いたことのある、懐かしささえ覚えるこの未知の音。
だが何色と尋ねられれば、白と答えることができる。
帽子「...」
帽子「...へ?」
帽子「...あれ...生きている...?」
復讐者「...貴様の出る幕か?」
???「...□□□」
その見た目、不気味なほどに神々しい姿。
頭には角が生え、その毛並みは絶するほどに美しい。
そこにいたのは先程助けた、あの馬がいた。
帽子「──ユニコーン...?」
復讐者「なぜ、庇う...魔物の仇だぞ...」
ユニコーン「...」
復讐者「...邪魔をするなら、どうなるか分かっているな?」
ユニコーン「...」
復讐者「貴様がいかに魔力のある種族であるが、我は倒せんぞ...」
ユニコーン「...」スッ
復讐者の脅し、そのような雑言には耳を貸さず。
ユニコーンはそのまま、後ろにいる帽子と目線を合わせた。
すると彼には声が聞こえてしまった、これからなにをしてくれるかを知らせてくれる声が。
帽子「...」
帽子「......わかったよ」
ユニコーン「...□□□」
232: 2018/11/26(月) 22:57:13.27 ID:HaEGZX9A0
復讐者「──これはッ!? させんぞッッ!」
──ブンッ......!
何かを察知した復讐者は雷の斧で帽子とユニコーンに襲いかかる。
しかしなぜだろうか、稲妻が走ることはなかった、まるで魔法が封じられたかのように。
しばらくして、彼は馬から生まれる輝きに包まれる。
復讐者「────光か...厄介な...ッ!」
復讐者がこれ以降、斧を振り回してくることはなかった。
まるでその行為が無駄だとわかりきっているような。
やがて光は消え失せた、すると帽子にはある感覚が芽生えていた。
帽子「──これは...魔力って奴か?」
復讐者「...魔剣か」
帽子「魔剣?」
復讐者「──答えてはやらん...氏ねッ!」
──ブンッッ!
────キィィィンッッ!
一体何が起きたのか、まるで細い彼の剣が復讐者の大きな斧を受け止めたような。
しかしそれは現実の出来事であった、その通りのことが起きていた。
復讐者「な...」
帽子「す、すごいなこれ...よっとッ!」
──グググッ...!
か弱そうな剣で斧を押し返す。
その剣をよく見てみると、先ほどとは若干変化していた。
豪華な装飾がついた柄、その周りにはとても奇妙な紋章のようなモノが。
復讐者「────この力...ッ!」
帽子「──今だッッ!!」
──キィンッ! カンッッ!! カッ!!
帽子の最も得意とする、受け流しの型。
そしてそこから派生させられる連続の刺突と切りかかり。
この猛攻に、復讐者は思わず臆してしまう。
復讐者「──クッ...」
復讐者(この攻撃、隙間がない...かと言って反撃しても弾き返される...)
233: 2018/11/26(月) 22:59:08.67 ID:HaEGZX9A0
帽子「────そこだぁッッ!!」
──ズバッッ!!
一撃が決まる、斧を持つ腕に一筋の切り傷が生まれる。
血が止まらない、銃撃すらある程度は耐えられていたはずなのに。
復讐者「ぐはぁ...ッ!?」
復讐者(ユニコーンの魔力か...あの細い一撃が重い...)
復讐者「く...ッ!」
──バチバチバチッッ!!
なけなしの反撃、それは意外にも成功する。
淡い雷が帽子の顔面に当たりかける、それを反射的に避けようとすると当然生まれるのは。
帽子「──うわッッ!?」
復讐者(どうやら光は扱えていないようだな...隙は逃す訳にはいかない...)
復讐者「..."雷魔法"」
──バシュンッッ...
隊長を葬りさった一撃、その稲妻が帽子に襲いかかる。
これが当たれば、当たりさえすれば形成は逆転するはず。
???「"地魔法"」
──ぐちゃっ...
しかし、あたったのは泥。
どこからか声が聞こえると同時に、魔法陣から弱々しく泥が飛んできた。
それは復讐者の魔法に当たり、稲妻を消し去っていった。
復讐者「...貴様ぁ」
帽子「──女賢者さんッ!?」
女賢者「風属性にはっ...地属性ですよ...っ...」
風属性に含まれる雷、それに反するのは地属性。
魔法の相性、それは反する属性を後出しでぶつければ勝ることができる。
例えそれが圧倒的な稲妻でも、後出しの泥には勝てない。
234: 2018/11/26(月) 23:00:27.66 ID:HaEGZX9A0
復讐者「────ッ!」ピクッ
帽子「──はぁッッ!!」
──グサァッッ!!
魔法に気をとたれた瞬間、懐に剣が刺さる。
このままでは勝負がつくのは時間の問題であった。
復讐者「ぐうううううううううぅぅぅぅ...」
復讐者「な...舐めるなっ...」
──ガシィッ!!
最後の抵抗、彼は帽子の首を掴んだ。
たとえ絶対的な力を持つ剣を持っていても、所有者はただの人間。
帽子「──ぐぅ...ッ...けほッ...!?」
女賢者「まずい...首を絞められてる...」
復讐者「氏ねっ...!」
???「────NOT A CHANCEッ!」
──バババババババババババババババッッッ!!
すると遠方から聞こえた、謎の言語と激しい音。
それをまともに受けれる者など存在しない、想像を絶する激痛が襲いかかる。
復讐者「ぐううううううぅぅぅぅ...貴様ぁ...」
帽子「キャプテンッ!!」
隊長「──NOWッ!」
帽子「────うおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!」
言語は分からないが、チャンスを与えてくれたことはわかった。
グググググッ、徐々に剣がが深く沈んでいく。
力を振り絞る、ここで勝てなければ後はない。
235: 2018/11/26(月) 23:01:55.44 ID:HaEGZX9A0
復讐者「ぐっ...くそっ...」グッ
復讐者が最後の力をこめて殴りかかろうとする。
しかし、彼はそれを許してはくれなかった。
隊長「────ッ」スチャ
──ダンッ!
それが決め手であった、彼の放った1つの銃撃が復讐者の手のひらを貫く。
力はもう湧かない、彼を支えていた身体は崩れるしかなかった。
復讐者「あああああっ...」
復讐者「あああぁぁぁぁ...っ...」フラッ
帽子「はぁ...はぁ...やったのか...ッ!?」
隊長「...まだ注意しろ」
帽子「...わかった」
隊長「一先ず...女賢者のところに運んでくれ」
帽子「うん」
帽子に肩を貸してもらい、立ち上がる。
ハンドガンの照準を合わせたまま、女賢者のもとへ運ばれる。
帽子「大丈夫かい?」
女賢者「ちょっと...休めば大丈夫です...すみません、まだ魔法を使える程落ち着いていなくて...」
隊長「...水筒だ、飲め」スッ
女賢者「ありがとうございます...」ゴクッ
隊長「...あの電流は、女の身体にはきつかったな...俺も氏にかけたぞ」
236: 2018/11/26(月) 23:03:14.17 ID:HaEGZX9A0
帽子「...」
帽子が2人の元を離れ、復讐者の所へ向かう。
倒れ込んだ彼はもう立つ気配がなかった。
微かに息があるだけの存在へと成り果てていた。
隊長「気をつけろ...」
帽子「...」
復讐者「...ッ...ッ」
復讐者「────ッ...!」スッ
女賢者「──っ!」
そして取り出したのは小瓶。
女賢者はそれがなにかがわかっていた。
暗躍者、追跡者、捕縛者を正真正銘の化け物に変えた代物。
女賢者「──それは魔力薬ですっっ!!」
隊長「──なにッ!?」
隊長(飲まれるとまずい!!)スチャ
──バキィンッ
瓶が割れる音がした。
ただそれだけであった、発砲音はしなかった。
それが意味するのは、彼の強さであった。
帽子「...どうしてだい?」
復讐者「...我は誰にも縋らんッ!」
復讐者の手が、割れた瓶の破片によって真っ赤になる。
そして帽子は、心の底から思っている事を口にする。
紅の液体、それには見覚えしかなかった。
帽子「...同じ血の色なのに...どうして魔物と人間は争うんだろうね...」
復讐者「...」
復讐者「...貴様がユニコーンに好かれる理由がわかった」
帽子「...」
復讐者「...別の出会い...なら気があったかもしれんな...」
帽子「...ありがとう」
237: 2018/11/26(月) 23:04:39.89 ID:HaEGZX9A0
復讐者「...殺せ、俺を良く思ってしまったならな」
帽子「あぁ...わかったよ」
奇妙な模様の剣を掲げ、首を狙う。
帽子のその目、どこか据わっていた。
そんな彼に、復讐者は言葉を残した。
復讐者「...気をつけろ」
帽子「...?」
復讐者「魔王はここ数年の内に戦争に近い侵略を起こす気だ...」
復讐者「今はまだ、計画段階だ...我らを頃したからといってすぐに戦いをふっかけることはない...」
復讐者「だが...魔界の体制は着々と強化されていっているだろう...」
復讐者「魔界にいくのなら...精々足掻いてみせろ...」
帽子「そうか...忠告ありがとう...」
復讐者「...最後に...だ...」
復讐者が隊長を見つめる。
その目、復讐者という男は見覚えがった。
過去の自分と同じ目をしている、そんな彼に忠告を促した。
隊長「...」
復讐者「貴様の瞳...復讐に襲われるだろう...」
隊長「...そうか」
復讐者「...先に逝っております」ボソッ
復讐者「────殺せッッッ!!!!!!!!!」
──ズバッッッ! ゴロンッ...
形容することができない。
とても残酷で、それでいて彼の為の行動。
238: 2018/11/26(月) 23:06:06.39 ID:HaEGZX9A0
隊長「...」
帽子「...」
女賢者「...」
隊長「...行くぞ」
帽子「...キャプテン」
隊長「...どうした?」
帽子「...今までの敵は全て君が頃してきた」
帽子「私はそれに目を向けず、私のやったことではないからと目を背けていた...」
帽子「だけど...この前、魔王の件で決心して...今は頃し殺さずに敏感になっている」
帽子「そして今日...初めてこの手で魔物を頃した」
帽子「私がやっていることは...間違ってるかい?」
女賢者「...」
隊長「...戦争とはこんなものだ」
隊長「どちらかが勝つまで、争いは終わらん...」
帽子「...」
隊長「...平和にするには、戦争相手をいち早く倒さないといけない」
隊長「それが...戦争だ...」
帽子「...そう...だよね」
~~~~
239: 2018/11/26(月) 23:07:05.25 ID:HaEGZX9A0
今日はここまでにします、近日また投稿します。
下記はTwitterIDです、日常的な投稿は皆無なのでお知らせBOTとしてご活用ください。
@fqorsbym
下記はTwitterIDです、日常的な投稿は皆無なのでお知らせBOTとしてご活用ください。
@fqorsbym
241: 2018/11/27(火) 21:55:16.38 ID:SoEFle0w0
~~~~
??1「はぁ...はぁ...うぅ...」
誰かが、暗いどこかを逃げ惑う。
その者たちは深手を負っている、そして魔法を唱えている余裕もない。
いったいなにが起こったのか、彼女たちは優れた人物であるのに。
??2「...大丈夫か? 女勇者...?」
女勇者「う、うん...はぁ...はぁ...女騎士は...?」
女騎士「私は大丈夫だ...それより魔法使いが見当たらん...」
彼女たちは、勇者一行の選りすぐり。
魔王を討つべく、平和を掴み取るために冒険に旅立つ者たち。
そんな彼女らが追い詰められている、風は正面に、向かい風が彼女らに直面する。
女勇者「魔法使いくん...一体どこに...?」
女勇者「まだ...人間界にいるのに魔物によく襲われるね...」
女騎士「...そうだな、まさか魔界に突入する直前であのような規模の魔法を扱う奴に遭遇するとは」
女勇者「...あっ! あれって、魔法使いくんじゃないっ!?」
魔法使い「...」
どうやら彼女らは、思わぬ強敵に遭遇したようだった。
そして逸れてしまった味方と、奇跡的にも遭遇することができた。
だが彼の面持ちは、とても妙なモノであった。
女騎士「──まてっ! なにか様子がおかしいぞっ!?」
女勇者「えっ...?」
魔法使い「────"拘束魔法"」
彼が唱えたのは、彼がその魔法を向けた先は。
そして彼の背後には、一体どれほどの業を背負うのか。
最後に響いたのは、彼女らの叫び声であった。
~~~~
242: 2018/11/27(火) 21:57:00.11 ID:SoEFle0w0
~~~~
女賢者「はぁ...疲れましたね」
帽子「...」
隊長「...あぁ、そうだな」
復讐者との戦いが終わり、彼らは賢者の塔に到着した。
旅の疲れを癒やしたい、だがこの空気感がソレを許してはくれなかった。
重荷に耐えきれない女賢者は、都合のいい言葉を残す。
女賢者「...少し、大賢者様の様子を見てきます」
隊長「あぁ...」
帽子「...」
やはり、彼の中ではまだ納得をしていない。
初めて殺めた魔物、それはよき理解者になりえる存在だったかもしれない。
とてつもない罪悪感が帽子に襲いかかっていた、その様子を見かねたのは彼であった。
隊長「...なぁ、帽子」
帽子「...なんだい?」
隊長「...俺の仕事はな、犯罪者...罪を犯したものを捕まえることだ」
帽子「...」
隊長「聞こえはいいかもしれないが...どうしようもなく犯罪者を頃したりする場面もある...野蛮な仕事だ」
帽子「...!」
隊長「...俺は犯罪者には一切の容赦はしない、そう決めてある」
帽子「それは...どうしてだい?」
隊長「...それは、その容赦が時として俺の仲間に襲いかかるからだ」
帽子「...」
隊長「...例えばだ、俺が犯罪者に情けをかけて見逃したりするとしよう」
隊長「だがそいつは恩を仇で返すかもしれない...それで俺の仲間が氏んでしまったらどうなるか...」
帽子「それは...」
隊長「もちろん、情けをかけた全ての奴がそうじゃないってことはわかっている」
隊長「だけど仇で返すような奴に殺されて、俺はいったいどの面をしてその仲間の墓に行けると思うか?」
243: 2018/11/27(火) 21:58:07.01 ID:SoEFle0w0
帽子「...」
隊長「俺にも頃すという選択には抵抗がある...だが仲間が俺のせいで殺されるのはもっと嫌だ」
隊長「俺が罪悪感に襲われるだけで仲間が助かるなら、俺は情けを捨てる...」
隊長「復讐者...俺は奴に殺されかけた...意識を取り戻した後も、女賢者の治癒魔法がなければ歩行は困難のままだった」
隊長「...あの時、俺が意識を取り戻せなかったら...もし自力での歩行が全くもって不可能だったら...みなは言わない」
帽子「...」
隊長「...Captainという名前は...隊長って意味だ」
隊長「お前は人間と魔物の平和を護る隊長になるわけだろ?」
帽子「────あ...」
隊長「...俺はお前は間違えていないと思っている」
あの時に復讐者を頃したのは間違えではない、もし奴が、あの時に魔力薬を飲んでいたのなら。
敵と対峙する以上は情けをかけてはならない、修羅の道を通らずに人間と魔物の平和など勝ち取ることはできない。
仲間の為なら、人頃しと言われようとも彼は任務を遂行するだろう。
帽子「キャプ...テン...」
隊長「覚悟を決めろ...泣くのは、平和を勝ち取ってからにしろ」
帽子「────あぁ...あぁッ...!!」
隊長(調子が戻ったか...)
目元は帽子で隠れている、そこを覗くような野暮なことはしない。
彼の中の罪悪感は完全に消え去った、隊長の強すぎる正義の観念により。
そんな様子を後ろから見届ける彼女が話しかけてきた。
女賢者「...あなたは、強い人ですね」
隊長「...これは受け売りだ、それよりも大賢者の様子はどうだった?」
女賢者「伝言をあずかりました...1週間以内には終わる、だそうです」
隊長「一週間か...早いのか?」
女賢者「早すぎです、普通は1年程度かかります」
隊長「...なるほどな」
女賢者「恐らく...基礎的な部分を全て飛ばしてますね」
女賢者「ここまで早いと、体力が心配ですね...習得は疲れますし」
244: 2018/11/27(火) 22:00:37.63 ID:SoEFle0w0
帽子「...大丈夫さ...彼女らなら」
呼吸を整え、彼が会話に参加した。
なんの根拠もない信頼、だがそれは女賢者も同意見であった。
女賢者「...私も、なぜか大丈夫な気がします」
女賢者「それと...これをきゃぷてんさんに」ガシ
女賢者「ふっ...お、重い...」ヨロヨロ
帽子(...こういうところは普通の女の子だな)
隊長「...これは」ガサガサ
隊長「凄い...もう出来たのか...」
隊長(今まで消費したのを補充できる...いや、もっとあるな)スッ
その荷物に詰められていたのは、弾丸であった。
隊長はナイフで弾丸を解体する、それが本物と遜色ないモノであるかを確認する。
黄金で作られたこの代物、果たして彼の御眼鏡に適うか。
帽子「へぇ...中身はそうなってるんだ」
女賢者「これは...粉ですか?」
隊長「それは火薬だ、これを発火させて先端の部分を発射させる」
女賢者「異世界の武器...興味深いですね」
隊長(...というか、これ全部Goldからできてるのか)
隊長「完璧な仕上がりだ...早速、補充させてもらうぞ」
帽子「...さて、これからどうしようか」
女賢者「よろしければ、買い出しを手伝ってもらってもいいですか?」
隊長「かまわんが...足りないのか?」
女賢者「ええ...大賢者様が数日分の食料もって篭もられたので...」
帽子「なるほどね...どこにいくんだい?」
女賢者「港町ですね」
隊長「あそこか」
女賢者「きゃぷてんさん、期待してますよ」
隊長(...荷物持ちか)
~~~~
245: 2018/11/27(火) 22:01:51.11 ID:SoEFle0w0
~~~~
隊長「着いたか」
風が潮の香りを運ぶ、この町は海岸地方の港。
時刻は昼過ぎ、早朝はユニコーン、朝は復讐者戦となかなかの密度な一日。
治癒魔法で身体は健康そのものだが、その気分はすでに疲弊の極みであった。
帽子「買いものが終わったら、しばらく寝て過ごそうよ...」
女賢者「正直、今日はそうしてたかったですけど...さすがに食べ物がないとなると...」
帽子「さっさと済ませようか」
女賢者「まずは、紙を調達しましょう、あれがないといろいろ困ります」
隊長(どの世界も、紙は必需品のようだな)
帽子「あとは何を買うんだい?」
女賢者「そうですね...水は賢者の塔に井戸があるので」
女賢者「紙と物持ちのいい食べ物を大量にってところですかね」
隊長「...了解」
~~~~
~~~~
帽子「紙、なかなか見つからないね」
女賢者「どこも品切れですね...もう少し粘りましょう」
隊長「もうすぐ夕暮れだな」
──ぐぅ~...
時間の経過を告げる音が響き渡る。
思えば朝食である女僧侶の手料理以来、なにも食べていない。
鳴ってしまうのは当然であった。
女賢者「...す、すみません///」
帽子「仕方ないさ...それより、どこかで遅めの昼食でもどうだい?」
隊長「...賛成だ」
女賢者「は、はい...///」
帽子「...ん、あの人に聞いてみようか」
隊長(時々、帽子の行動力には驚かされる...)
246: 2018/11/27(火) 22:02:49.78 ID:SoEFle0w0
帽子「そこの方」
???「...ん? なんだ?」
帽子「ここらでオススメの料理店はあるかい?」
???「お、それなら俺がやってる店にきな!」
帽子「おぉ! それはいいねっ!」
店主「そんじゃ、ついてきな!」
隊長「...強運だな」
女賢者「もしかしたら、固有能力かもしれませんね...」
帽子「うん? 早くいこう」
隊長「あぁ...」
~~~~
~~~~
帽子「お、葡萄酒...」チラ
隊長「...好きにしろ」
女賢者「え、いいんですか?」
帽子「すみません、私はとりあえず葡萄酒で」
女賢者「私は桃酒で」
隊長(...女賢者も向こう側だったか)
店主「あいよ、で、ガタイのいい旦那は?」
隊長「...俺は水────」
偶然にも出会うことのできたこの隠れ家的な料理店。
当然彼はいつもどおり、効率的に水分を得ることができる水を選ぼうとした。
しかしそれは少数意見であった、民主主義が彼を追い込む。
247: 2018/11/27(火) 22:03:35.45 ID:SoEFle0w0
帽子「──キャプテン、飲まないのかい?」
女賢者「おいしいですよ?」
隊長(アルハラか...腹をくくるか)
隊長「...林檎酒で」
店主「あいよ! ちょっとまってな!」
帽子「いまのうちに、食べ物を選ぼう」
女賢者「あっ、これおいしそうですね」
隊長(...えぇい、もうやけくそだ)
店主「はいよ、飲み物お待ちどう!」
帽子「きたきた、楽しみだね」
女賢者「ふふっ...これだけは堪りませんね」
隊長「あぁ...どうにでもなれ」
──かんぱ~いっ!
3人の声が重なる、1人はここまで元気ではないが。
隊長は大学生活振りに酒を摂取するハメとなってしまった。
それがどれ程の地獄を生み出すか、帽子はまだ知らない。
~~~~
248: 2018/11/27(火) 22:04:18.40 ID:SoEFle0w0
~~~~
帽子「...」
女賢者「わたしなんてっっっ!!! どうせよわいですよっっ!!!!」
隊長「そんなことはないッッッ!!!! おまえはつよいッッ!!!」
女賢者「うそですっっっ!!!! あのときだってあんまりやくにたてなかったですもんっっ!!!!」
隊長「おまえのまほうがなければしんでいたッッッ!!!!」
帽子「ほら、店の方に迷惑になるよ...」
店主「...なんだかしらねぇが、面白いから別にかまわねぇぜ、今は他の客もいないし」
帽子「そんな...」
帽子(しまった...2人ともかなり弱いみたいだな...)
女賢者「きゃぷてんさぁん...」キラキラ
隊長「...つよくなりたいなら、おれについてこいッッ!!」
女賢者「はいっ!!」
帽子「...どーしよっか」
帽子(でもまぁ、キャプテンの面白い姿みれて良しとするか)
~~~~
249: 2018/11/27(火) 22:05:12.89 ID:SoEFle0w0
~~~~
女賢者「...うぅん」
女賢者「...へっ?」
女賢者「どこ...ここ...」
???「...起きたかい?」
目がうまく開かない、町の街灯が眩しく感じる。
酒というものは恐ろしい、先程まで一緒にいた人物を把握することができない。
帽子を被ったこの金髪の男、彼以外の何者でもないというのに。
女賢者「...だ、誰ですかっっ!?」
帽子「誰って...帽子だよ」
女賢者「ぼ、帽子さん...? 何が起きたんですか?」
帽子「...ふたりとも酔いつぶれたんだよ」
帽子「もう夜になっちゃったから、今日は宿に連れてきたってとこさ...」
隊長「グォオオオオ...」スピー
女賢者「な、なんかすみません...」
帽子「いや、構わないさ」
帽子(キャプテンの面白いの見れたし)
女賢者「...」
女賢者(まさか...私のだらしない寝顔見られた...?)
女賢者「...///」
帽子「うん? まだお酒抜けてないならお風呂入ってきたら?」
女賢者「だ、大丈夫ですっ、おやすみなさいっ!///」
帽子「...うん? さぁて、私も寝るか」
~~~~
250: 2018/11/27(火) 22:06:19.20 ID:SoEFle0w0
~~~~
隊長「頭が痛い...」
女賢者「...奇遇ですね、私もです」
帽子「...ふたりとも弱いね」
隊長「俺は滅多に飲まないからな...」
女賢者「私は、強くありませんからね...お酒は好きですけど」
帽子「まぁまぁ、ところで朝一番なら紙が簡単に手に入るんじゃないかい?」
女賢者「そ、そうですね...いきましょうか」
隊長「あぁ...あとなるべく大きな声をださないでくれ...」
帽子(弱々しいキャプテン、面白いな)
女賢者「さぁ、いきましょうか」
~~~~
~~~~
女賢者「紙は買えましたね」
帽子「あとは食料だね」
隊長「Oh...jesus...」フラフラ
帽子「...キャプテン、ほらいくよ」
隊長「Okay...」
帽子「...異世界語はわかんないよ」
女賢者「...なにか人だかりができてますね」
帽子「本当だ、なんだろうね...いってみるかい?」
女賢者「まぁ...時間はありますしね、いきましょう」
思わず異世界語を漏らしてしまう隊長、そんな彼と共に帽子は前に進む。
そこにはなにやら人だかりが、まるでなにかを心配しているような声が聞こえる。
いったいそこに何があるのか、帽子は手前側にいた漁師に話しかけた。
251: 2018/11/27(火) 22:08:27.16 ID:SoEFle0w0
帽子「やぁ、何かあったのかい?」
漁師「いやそれがよ、空から女の子が降ってきたんだよ」
帽子「...空から? ちょっと通してくれ」グイッ
女賢者「ほら、きゃぷてんさんも」
隊長「Understand...」フラフラ
帽子「──こ、これは...」
雑踏を掻い潜る、そこには確かに女の子が寝転がっていた。
よく見ると傷だらけ、なにか暴行された後なのかもしれない。
だがそこではなかった、帽子が思わず息を呑んだのは彼女の足であった。
帽子「...足がない、まるで魚のような下半身だ」
女賢者「...人魚ですかね」
女賢者「とりあえず..."治癒魔法"」ポワァッ
漁師1「なんだ、ねぇちゃん魔法使えるんか」
漁師2「じゃああとは任せたぞ~、仕事が始められねぇからな」ゾロゾロ
帽子「あ、ちょっと! ...もうみんな行ってしまったか」
帽子(まぁでも魔物の心配をしていたみたいだし...ここの人たちは温厚だな)
さすが商業主義、魔物に対しての偏見などない。
そんな理想にも近い光景を彼は目に焼き付ける。
彼女の魔法がこの子を癒やす、すると彼女は目を覚ました。
人魚「────うん...? ここは...?」
女賢者「こんにちは」
人魚「──に、にんげんっっ!?!?」
帽子「まってくれ、別に悪さをするわけじゃないんだ」
人魚「そ、そんなこといわれてもしんじられないっっ!!!」
女賢者「...わかりました、せめて海まで連れて行ってもいいですか?」
人魚「へっ...? ってここ陸っ!?」
帽子「...よければ、何があったか教えてくれるかい?」
帽子「私たちは君がここで倒れてたのを発見して、そこで彼女が魔法を使って治癒させただけなんだ」
帽子「...ただ、それだけさ...信じてくれるかい?」
252: 2018/11/27(火) 22:10:02.49 ID:SoEFle0w0
人魚「...ありがとうございます...でも、何があったかは喋れません」
女賢者(...ユニコーンといいこの方、魔物との協調性が高いですね)
帽子「そうか...ねぇ、やっぱり海に戻したほうがいいのかい?」
女賢者「そうですね、基本的にお魚と一緒なので、長時間の陸活動は身体に悪いみたいですよ」
帽子「だ、そうだ...せめて海まで連れてってもいいかい?」
人魚「...おねがいします」
帽子「よしキャプテン、出番だ...って...」
隊長「────」
女賢者「...氏んでますね、よっぽどお酒に弱いみたいですね」
帽子「...女賢者さんは人魚さんを、私はキャプテンを運ぶよ...」
女賢者「わかりました、さぁ安心してくださいね」
人魚「は、はいっ」
~~~~
~~~~
隊長「...なるほどな、そんなことがあったのか」
浴びるほどに水を飲む、乾ききった喉が癒えていく。
これで二日酔いがマシになるだろう、久々に襲いかかった頭痛は隊長をボコボコにしていた。
帽子「...そういえば自己紹介をしてなかったね、私は帽子」
女賢者「女賢者です」
隊長「...Captainだ」
人魚「わ、わたしは人魚です...」
帽子「そんなことをいっているうちに、綺麗な砂浜についたね」
女賢者「港町ですからね、海は近いです」
女賢者「...それじゃ、放しますね」
人魚「あ、ありがとうございましたっ!」
人魚「このご恩は一生忘れませんっ!」
淡々とした会話、この程度の距離感が丁度いい。
深く介入することはこの子にとって不都合である、そう察知した帽子。
せっかくの奇縁だがここは手放すしかない、女賢者が海に彼女を戻そうとしたその時。
253: 2018/11/27(火) 22:10:57.34 ID:SoEFle0w0
隊長「──待てッッ!!!! 放すなッッッ!!!」
女賢者「──えっ?」
???「ミツケタミツケタ...ニンギョヒメミツケタ...」
――――バシャッッッン!!!!!
聞こえたのは、辿々しい言葉。
そして巨大な魚影とともに現れたのは、赤き悪魔。
帽子「で、でかいぞ!?」
人魚「ひっ...いやぁッ!!!」
女賢者「──ク、クラーケン...っ!?」
隊長(今度はクラーケンか...本当になんでもいるな...)
クラーケン「ソイツヲヨコセ、ニンゲン」
人魚「ひっ...」ブルブル
帽子「...どうやら、迎えに来たってわけじゃないみたいだね」
女賢者「同感です、これでは渡すことはできません」
クラーケン「ソレジャ...ッ!!!」
―――シュウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ...
吹き付けられたのは黒い何か。
タコだろうがイカだろうか、この手の軟体生物はこれを仕掛けてくる。
墨が地上の空気に馴染む、それが目くらましになることは必然であった。
女賢者「──きゃあっ!?」
帽子「煙幕ッ!? 女賢者さんと人魚さんがッ!!!」
隊長「女賢者ッ! 海から離れろッッ!」
女賢者「しまったっ────」
煙幕に包まれたのは、女賢者と背負っている人魚。
そして感じたのは背中が軽くなる感覚、それが何を意味しているのか。
あの海洋生物の触手が、彼女だけを拉致する。
隊長「──クソッ!」ダッ
帽子「キャプテンッ!?」
隊長が煙幕の中に突っ込む。
未だ二日酔いが冷めていないというのに。
頭痛に苦しめられた怒りを込めて、彼は奇策に身を委ねる。
254: 2018/11/27(火) 22:13:18.62 ID:SoEFle0w0
隊長(――――見えたッッ!!!)スッ
──グサァッッ!
何かが刺さる音、そして続くのは痛みに悶える大声。
一体何が起きたのか、その様子は直に明るみになる。
クラーケン「────アアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!?」
隊長「帽子ィッッ!! 手伝えッッ!!!!」グググ
帽子「わかったッ!」ダッ
女賢者「...めちゃくちゃですね、あの小さな刃物であのデカブツを止めてるのですか」
人魚はクラーケンに捕まってた、そこまでは理解ができた。
しかし隊長はうつ伏せの状態、ナイフでクラーケンの足を地面ごと串刺しにしていた。
文字通りの足止め、とても人間技には思えないが、意外にもこの魔物は非力であった。
クラーケン「ハ、ハナセェ...!」
隊長(まずい、ここは砂地だ...もうもたない...!)グググ
帽子「──はぁッッ!!!」グサッ
帽子も続いて、奇妙な柄の剣で足を串刺す。
その剣はナイフよりも深い地盤に刺さり、支えの強い泥の部分まで到達していた。
そして更に拘束を補助する、それは彼女の魔法。
女賢者「ブツブツ..."拘束魔法"」
女賢者(拘束魔法は苦手なんですけど...詠唱が長く出来た分なんとかなりましたね...)
クラーケン「クッソッオ...」
隊長「──!」スチャッ
──ダンッ ダンッ ダダンッ
足をハンドガンで狙い撃ち、足を千切る。
その足が掴んでいたのは人魚、彼女の身体は開放されそのまま落下し始めた。
落下地点にいるのは彼女、先程拉致を許してしまったせめてもの償い、落下する人魚を受け止めようとする。
クラーケン「ギャアアアアアアァァァ...」
人魚「──きゃっ!?」
女賢者「おっと、大丈夫でしたか?」グイッ
人魚「は、はいぃ...」
255: 2018/11/27(火) 22:14:46.46 ID:SoEFle0w0
隊長「帽子、もう離していいぞ」
帽子「ふぅ...意外と貧弱だったね...見掛け倒しか」
クラーケン「クソォ...オボエテロォ!!!!」ザブン
クラーケンは拘束魔法をうけつつ、器用に足を駆使して海へ逃げていった。
命を奪うまでもない、そう判断した彼らはその様子を眺めるだけであった。
隊長「なんだったんだ...?」
帽子「さぁね...よかったら教えてくれるかい?」
人魚「...じ、実は」
女賢者(どうやら、話す気になってくれたみたいですね...)
人魚「わ、わたしは人魚姫なんです!」
帽子「そ、そうなのか」
女賢者「詳しくは知らないですけど、たしか海底に人魚の王国があるらしいですね」
隊長(大層な話だな...)
人魚「それで...今は王国と反乱軍とで戦争状態なんです...」
帽子「──!」ピクッ
人魚姫と称する彼女の話。
そこには反応せざる得ない言葉が存在していた。
帽子の雰囲気が変わる、それは当然であった。
人魚「だから、外出も制限されていて...とてもさみしかったんです...」
人魚「出来心だったんです...今日、無断でお城の外に...」
人魚「そしたらわたしは、さっきのくら、くらー...クラーケンに...ひっく...」
帽子「...落ち着いて、ゆっくりでいいからね」
人魚「は、はい...野生のクラーケンに追われて...攻撃されて...その衝撃でふきとばされて...」
隊長「...なるほどな」
256: 2018/11/27(火) 22:16:01.70 ID:SoEFle0w0
女賢者「状況はつかめましたね...どうしますか?」
帽子「ど、どうしようか...」
帽子「うーん...」オロオロ
人魚「ぐすっ...」
隊長(...悩んでいるな、一押ししてやるか)
隊長「...帽子、俺は雇われだ」
帽子「...キャプテン?」
隊長「だから、なにがあろうとお前に着いて行く」
帽子「...ありがとう!」
多くの言葉はいらない、それが彼を支えてくれる。
一見ドライに見えて、その中には熱きナニかが秘められている。
そんな関係性、とても魅力的と思えてしまった彼女も動く。
女賢者「...私も、ここで去るのはひどいですからね」
帽子「決まりだね! よし、人魚さん?」
人魚「な、なんですかぁ...? ひっく...」グスグス
帽子「私達をその王国に連れてってくれないかい?」
人魚「──で、でもいま戦争中であぶないんですよ...っ?」
帽子「大丈夫、彼らならきっと、"慣れてる"」
隊長「...そうだな」
女賢者「ですね」
人魚「でも、でも...」
???「良いのではないですか?」
会話に突然参入する、第三者。
その声の主は、聞き間違えではければ海の方から聞こえる。
声色は女のもの、そこにいたのは間違いなく、この子と同じ種族の者。
257: 2018/11/27(火) 22:17:34.37 ID:SoEFle0w0
隊長「...誰だ」
???「申し訳ありません、立ち聞きしてしまいました」
人魚「人魚衛兵っ!? どうしてここにっ!?」
帽子「...味方か」
衛兵「先ほどの闘い、助かりました...あなた方がいなければ今頃、姫は...」
衛兵「...そこで、こちらから頼みがあります」
帽子「...なんだい?」
衛兵「恐らく、戦争はここ数日で終わるでしょう」
衛兵「ですが、その数日はどうしても人員が足りなくなる...ので、あなた方に姫を護衛してもらいたいのです」
願ってもいない、姫を護る王国側からそうお願いされるのなら話は早い。
だが彼には1つ気がかり、疑問に思うことが芽生えていた。
なぜ戦争という複雑な代物を、数日で終わらせることができると豪語するのか。
隊長「なぜ、終わると確信できる?」
衛兵「...王国側の最終兵器の発動許可が下りたからです...これで、反乱軍は壊滅でしょう」
隊長「...」
帽子「...わかった、その要求は飲もう」
女賢者「思ったより、大事なことになりそうですね」ヒソッ
隊長「なにがあれ、俺は帽子に着いて行く」ヒソヒソ
女賢者「...私も、大賢者様にあなた達に着いて行けと言われてるので」
隊長(最終兵器とやら、気になるな...まさか核みたいなモノじゃないだろうな...)
大事になる、そう女賢者は隊長にだけ囁いた。
そんな中、彼はその最終兵器の危険性を妄想し始める。
だが危険なのは隣りに居た、彼女は海に散らばったモノを見てしまった。
女賢者「──って...ああああアァァァァ!!!!!!」
隊長「ど、どうしたッ!?」
女賢者「か、紙が...海に...」ガーンッ
帽子「あ、あちゃー...」
女賢者「...クラーケン...許されません...!」メラメラ
258: 2018/11/27(火) 22:18:42.44 ID:SoEFle0w0
衛兵「...ではいきましょう、さぁ姫こちらに」
人魚「まって! 人間は海じゃ息ができないよ!」
帽子「あ」
隊長(...異世界ならなんとかなると思っていたが...だめなようだ)
衛兵「しまった...すっかり忘れてました、どうしますか?」
女賢者「...ちょっとまっててください」
隊長「なにか策があるのか?」
女賢者「単純な調合でなんとかなりますよ」
帽子「さ、さすが賢い者...」
~~~~
~~~~
女賢者「この魔法薬...そしてこの欠片を調合して、瓶にいれれば...」
女賢者「...完成です」
彼女が作り出したのは、液体の入った瓶に何かしらの欠片を入れた物であった。
これで一体、どうすれば海に突入できるのか。
心底疑問に思った帽子は尋ねた。
帽子「なんだいコレは?」
女賢者「この欠片は、魔法を一定時間維持できる代物なんです」
女賢者「厳密に言うと特殊な鉱石なんですが...魔法の欠片と呼ばれています」
隊長「...ほう」
女賢者「それに..."防御魔法"」
瓶の欠片に防御魔法をかけた。
これがどのようにして、効能を見せるのか。
彼女は説明を続ける、不思議そうにこちらを見ている人魚たちを尻目にして。
女賢者「防御魔法は、いうなれば身体の周りの環境が固定されるものなんです」
隊長「...なるほどな」
帽子「えっ、わかったのかい?」
女賢者「まぁ、実際海にはいればわかります」
~~~~
259: 2018/11/27(火) 22:21:01.45 ID:SoEFle0w0
~~~~
女賢者「全員もちましたか?」
帽子「...本当に大丈夫かい?」
隊長「さっさといくぞ」スッ
女賢者「そうですね」
帽子「ちょ、ちょっと! ってあれ...?」
隊長「...つまりは防御魔法で、周りの空気を固定したってことだ」
隊長(身体全体が1つの大きな気泡に包まれている...子ども向けの映画で見たことあるな)
女賢者「砕けた言い方をするなら、海水を防御しているってところですかね」
女賢者「まぁ、陸地にいるようなものなので、水の影響を受けないので泳いだりはできませんが」
帽子「な、なるほどね...でもこれ、時間制限あるんだろ?」
女賢者「まぁ、防御魔法なら半日もちますかね」
帽子「は、半日すぎたらどうするんだい?」
女賢者「そのときは、瓶に魔法薬をいれれば引き続いて欠片が維持してくれます」
女賢者「ほら、こんなにたくさん買ってきましたよ」
隊長「重そうだな、持とう」
女賢者「ありがとうございます、優しいですね」
帽子「いやぁー...なんか新鮮な気分だよ」
見えない鎧が、海水を防御する。
太陽に照らされる海面、魚はいつもこの神秘的な光景を見ているのだろうか。
人間たちが海底を歩く様をみて、人魚たちも新鮮な気分に陥る。
260: 2018/11/27(火) 22:21:54.84 ID:SoEFle0w0
衛兵「...すごいな」
人魚「人間が海の中を歩いてる...」
女賢者「おや、これは...」
隊長「海藻?」
海藻からは気泡が多くでている。
隊長の世界でも見ることができるその光景。
光合成をする海の植物、こちらの世界のソレは排出量が多いようだった。
女賢者「これは、新鮮な空気を作ってくれる海藻ですね、すこし採取しておきましょう」
隊長(...酸素の問題も大丈夫そうだな)
衛兵「さっ、こちらについてきてください」
隊長(...しかし、弾丸はどうしても水中に放つことになるな)
隊長(...威力は期待できないな)
水中に向かって銃弾を放てばどうなるか。
それは過去にも軍事訓練で行われていた、どうやっても無残な結果になる。
彼が強敵と対峙してしまったら、どうすればいいのか。
~~~~
262: 2018/11/28(水) 22:31:01.47 ID:UeIGh+A90
~~~~
女賢者「...綺麗ですね」
帽子「そうだね...とても美しい」
隊長(俺の世界じゃ見ることはできないな...この光景は)
そこにあったのは、太陽光が微かに届く海底世界。
綺羅びやかな海底都市の繁華街を歩いてく中で、その幻想的な光景に思わず視線を奪われる。
そして彼らは都市中心の城門へとたどり着く、すると近寄ってくるのは。
???「──姫様ッ!? お戻りですかッ!?」
人魚「はいっ!」
???「おぉ...なんということでしょう...」
???「む...なぜ人間がここにッ!?」ジャキッ
塀の都でも見たことのある役職。
彼はこの都市の警備を担っている。
人魚の門番、そのエモノはとても鋭い槍であった。
衛兵「...彼らは姫をお救いくださりました...なので客人です」
人魚門番「そ、そうでございますか...失礼」
衛兵「さぁ、いきましょう...いつ戦闘になるかわかりませんのでお早く」
帽子「あ、あぁ...」
隊長(しかし、海底を歩くのはなれないな...)
女賢者「いきましょう」
そして彼らは門を通ることを許された。
そこはとても荘厳な造りをしている、海中でこのような建築技術をどのようにして得たのか。
そのような事を不思議に思いながらも城内廊下を歩いていく、すると到着したのは。
263: 2018/11/28(水) 22:33:41.03 ID:UeIGh+A90
衛兵「こちらに」
帽子「...本当に入って大丈夫なのかい?」
女賢者「ここは...王室じゃないですか」
衛兵「姫を助けていただいたので王が直々に話をしたいと...」
隊長「...帽子、頼んだぞ」
帽子「...え!?」
女賢者「すみません、私はこういった場になれていないので...」
隊長「まかせたぞ、王子」
帽子「...仕方ないなぁ」
衛兵「では、あなた方はあちらから傍聴席へと...帽子殿はこの扉から...」
──ガチャッ...
重々しい扉が開く、そしてそこに鎮座するのは当然。
この海底世界を統べる最高責任者、人魚の王がそこに。
衛兵「王よ、彼の者達を連れてまいりましたっ...!」
人魚王「...ほう、貴殿らが我が娘を...」
帽子「お目にかかれて光栄です...」
彼は跪く、それが王に対する最大の礼儀。
その佇まいは正しく王子、徹底的に叩き込まれた所作に育ちの良さが伺える。
そんな様子を彼ら2人は傍聴席で眺めていた、眺めることしかできなかった。
人魚王「...よい、貴殿らの活躍は聞いておる」
人魚王「是非、我が軍に力を貸してくれ」
帽子「...わたくし共でよければ、喜んで」
帽子「ですが...失礼ながら、いくつか質問をしてもよろしいでしょうか?」
その瞬間、海中だというのに空気が張り詰める。
ややピリついたその雰囲気、王室の周りで警護する者がたちがざわめいた。
衛兵たちから無礼であるぞ、とそのようなヤジが聞こえたが王がそれを受理する。
264: 2018/11/28(水) 22:35:11.50 ID:UeIGh+A90
人魚王「...よい、質問を許可する」
帽子「...ありがたき幸せ...では早速」
帽子「1つめ...なぜ、戦争が起きているのですか?」
人魚王「ふむ、それはだな...少し前にこの城を襲ったものがいる」
人魚王「其奴は今の反乱軍の"統率者"と言う者だ」
人魚王「そして統率者を英雄視してる奴らが集まり、戦いを吹っかけてきておる」
帽子「...なぜ襲われたのですか?」
人魚王「知らぬ、だが許しがたいことが起きたのだ」
人魚王「それは城が襲われた時に、我が妻にケガを追わせたことだ」
帽子「...話し合いはしたのですか?」
人魚王「...奴らの話は聞きとうない」
帽子「...」
これ以上は深く追求することは許されない。
周りの衛兵どもがざわついている、自分の好奇心でソレを煽れば問題だ。
気持ちを切り替える、そのために彼は質問を飲み込んだ。
265: 2018/11/28(水) 22:36:49.12 ID:UeIGh+A90
帽子「...わかりました、次の質問で最後です...最終兵器とは?」
人魚王「それを聞いてくるか...それは秘密だ」
人魚王「しかし、これで反乱軍を根絶やしにできるのは確かだ」
帽子「...一方的な虐殺は、遠慮したいですね」
まずい、自分でそう思ったときには遅かった。
思わず口に出てしまった、その不敬極まりないその発言。
衛兵たちの顔を伺うことができない、そんな俯いたままの彼に王は問いた。
人魚王「では、問おう...なにが正解なのかを」
帽子「...」
人魚王「...どちらかが勝つまで、争いは終わることはないだろう」
人魚王「平和にするには、戦争相手をいち早く倒さねば...国民がそう望んでいる」
隊長(...)
帽子「...失礼致しました」
人魚王「よい、若い者はいろいろ考えるだろう」
人魚王「皆の者、そう目くじらを立てるな...丁重に饗せ、我が娘の恩人だぞ」
謁見はこれにてお開き、王は彼らに猜疑心を抱く衛兵を宥めた。
帽子はここまで連れてきてくれた衛兵に導かれ、王室から退室した。
そんな彼の様子をみて、女賢者は吐露する。
女賢者「...大丈夫ですかね」
隊長「...今、あいつは同じ壁にぶつかっているな」
女賢者「...そうですね」
~~~~
266: 2018/11/28(水) 22:38:26.86 ID:UeIGh+A90
~~~~
衛兵「では、こちらの部屋をお使いください」
女賢者「はい、ありがとうございます」
隊長「...」
衛兵「それでは、呼ばれるまで待機をお願いします」
彼女に連れられたのは、客間だろうか。
そこで待機を命じられる、おそらく戦いが始まるまで待たされるだろう。
だが時間の経過などどうでもいい、今は帽子で目線を伏せている帽子が気がかりであった。
帽子「...はぁ」
隊長「...言いたいことをここでぶちまけろ」
女賢者「貯めこむのは身体に毒です、私たちがしっかりと聞きますよ」
帽子「...そうだね」
帽子「私たちの今の目標は、魔王を倒して新たな魔王に云々...ってことなんだけど」
帽子「それが、この王国とかぶちゃってね...」
帽子「この王国側からすれば、統率者とかいう人たちは魔王軍みたいなモノさ」
帽子「だけど王は...その人たちを根絶やしにすると言った、先日まで私が悩んでいたことをしようとしている」
悩んでいたこと、それは魔王をただ討てばどうなるか。
統率する人物を失えば魔王軍は壊滅するどころか、敵意のない魔物まで残党刈りされるだろう。
それがこの海底世界でも起こり得ようとしている、それが帽子の懸念であった。
267: 2018/11/28(水) 22:42:16.42 ID:UeIGh+A90
帽子「同族同士ですら戦争をするだなんて...本当に、魔王を倒して魔物と平和に共存できるんだろうか」
隊長「...どうだかな」
帽子「...うん?」
隊長「たぶん、逆だ」
帽子「逆?」
隊長「...妻を傷つけられたことに激昂しているんだろうな」
隊長「恐らく何度かは話し合いに応じる場面はあっただろう...だがここの王はそれに応じなかった」
隊長「確かに向こうから仕掛けられた戦いだ、非はあちらにある」
隊長「...だがそれを考慮しなければ人魚王のやっていることは魔王と同じだ」
帽子は統率者が魔王と同じことをしていると思っていた。
だがその事実は逆であった、この王国側が魔王と同じことをしているに違いない。
そう睨んだ彼はここがその本拠地であることを憚らずに言い放ってしまった。
女賢者「先程の謁見で私も思いましたが...侵略こそはしていませんが、攻撃的な部分は魔王に似たものを感じましたね」
帽子「...なおさらこの戦争を放置はできない」
帽子「でも、どうするか...」
隊長「そうだな、反乱軍の"帽子"みたいな奴の話を聞いてみたらどうだ?」
帽子「────ッ!」ピクッ
268: 2018/11/28(水) 22:44:18.57 ID:UeIGh+A90
隊長「...いいか、気をつけろ」
隊長「お前の目標は頃しではない、聞く耳を持たない魔王を倒し無理やり説得させることだ」
隊長「だが反乱軍のお前は人魚王を殺そうとしているに違いない」
扉の外から、何やらドタバタと音が鳴り響く。
だがそれを厭わずに彼は話を進めていく。
そして彼らも、ただ、隊長の話を聞くのみであった。
隊長「...言いたいことは1つだ」
隊長「お前の力でこの戦争を平和にできれば、魔物との共存を勝ち取る為の経験値になるはずだ」
帽子「...やってやろうじゃないか!」
──ガチャッ!
客間の扉が突然開かれた、そこにいたのは顔なじみのあの衛兵。
一体何が起きたのか、そんなことは言わずともわかる。
もう準備は完了だ、彼ら人間3人はすでに立ち上がっていた。
衛兵「──失礼します! って...あれ?」
女賢者「...お呼ばれのようですね」
隊長「...行くぞ」
帽子「...あぁ!」
~~~~
270: 2018/11/29(木) 21:54:11.43 ID:A+drxOym0
~~~~
衛兵「──では、私と共に姫をお守りください」
城の中が慌ただしい、状況は切迫した模様であった。
様々な兵たちが槍を構え外に飛び出しているなか、彼女だけは違っていた。
この衛兵の職務は姫を護衛すること、そのためにこの人間たちを誘致したのであった。
隊長「今はどういう状況だ?」
衛兵「反乱軍が攻めてきました...が、どうやらこの戦いで最終兵器を使うみたいですね」
帽子「──ッ!」ピクッ
女賢者「...姫はどこに?」
衛兵「こちらです! 急いで!」
隊長「...反乱軍はどこから攻めてきている」
衛兵「西の方向です! さぁ早くっ!」
急いでいるというのに、彼女は質問攻め合っていた。
少しばかり口調が乱暴に、それに伴うのは集中力の欠如。
隊長は彼女に聞こえない程度の小さな声で指示を仰ぐ。
隊長「...お前と女賢者は反乱軍に迎え」
帽子「...キャプテンは大丈夫なのかい?」
隊長「まかせろ、絶対になんとかしてみせる」
女賢者「...任せましたよ」
隊長「衛兵が扉を開けたら行け...」
女賢者「...」
帽子「...」
衛兵「ここの部屋に姫がいる! 今扉を開けますね!」
──ガチャッ
いち早く姫を安全な場所へと誘導しなければならない。
そんな焦燥感が許してしまったのは、逃走者であった。
何が起きたのかわからない、突然この場から去っていった2人に目を丸くする人魚が1人。
人魚「────へ?」
271: 2018/11/29(木) 21:55:45.57 ID:A+drxOym0
衛兵「──どこに行くつもりだっ!?」
隊長「...まて、姫のほうを優先しろ...どうやら重荷に耐えきれなくなって逃げたようだな...腰抜け共め」
衛兵「...くそっ! この忙しいときにっ!」
隊長のその言葉、味方を蔑むことで妙な信頼感を産ませていた。
腰抜け共め、そのような言葉に共感してしまった彼女は納得してしまう。
いやこの場合は納得せざる得ない、真偽を確かめている暇などないからであった。
人魚「な、なにがあったんですか?」
衛兵「反乱軍が来ました! 私たちと逃げましょう!」
~~~~
~~~~
帽子「──はぁッ...はぁッッ...!」
帽子「...くッ、水中だとうまく走れないな!」
女賢者「我慢しましょうっ! 急いで反乱軍と話をしなければっ!」
帽子「──いたぞッッ!!」
そこにいたのは、衛兵たちに食って掛かる野蛮な者共。
身なりはお世辞にも、良いとは言えない。
それはなぜか、衣服に意識を向かせる余裕がないからであった。
反乱軍1「王国軍めェ! 人魚王を解雇させろォッ!!!」
反乱軍2「貧民の現状を無視しやがって!!」
女賢者「...原因は貧富の不満ってところですね」
帽子「原因がしっかりしてて助かるよ...それより統率者を探そう!!」
反乱軍3「人間がいるぞッ!?」
反乱軍4「王国側のようだ!! 構わずに殺せ!!!!」
帽子「...海中でどこまでいけるか...頼むぞユニコーン...ッ!」スッ
女賢者「ブツブツ..."地魔法"」
帽子は剣を抜き、女賢者は魔法を唱えた。
海底の砂底から大地がめくり上がり、襲いかかる。
その威力は怪我をしない程度に、絶妙に調整されていた。
272: 2018/11/29(木) 21:56:51.36 ID:A+drxOym0
女賢者「...足止めはまかせてください」
帽子「ありがとう! さぁ統率者と話がしたい!!」
衛兵1「な、なにをいってるんだッ!? 貴様ら王国側だろ!!」
衛兵2「反乱軍に耳を貸すな! 人間!!!」
女賢者「混沌としてきましたね...」
帽子「これでいいッ! 戦況を掻き乱して時間を稼げればッ!!」
~~~~
~~~~
隊長「...どこに向かっているんだ?」
衛兵「王国から少し離れた...! あの塔です!」スッ
人魚「──あ、あれ!」
彼女が指さしたのは隔離された塔、その見た目はとても堅牢な造りをしている、
これなら戦火がこちらに向いても一安心と言えるだろう。
だがこの人魚が反応したのはそこではない、目に前に現れた奴に反応したのであった。
クラーケン「──コンドハニガサンゾ...!」
隊長「...またか」
衛兵「く、クラーケン...お前を相手にしている暇はないんだぞっ!?」
クラーケン「オマエニヤラレタアシ、イタカッタゾ」
クラーケン「...コロシテヤル、ゼンインコロス」
人魚「ひっ...」
隊長(見事に治ってやがる...治癒能力持ちか?)
隊長「恨むなよ...先に仕掛けてきたのはお前だからな」
顔つきが変わる、彼の正義とは敵に一切の容赦をしないということ。
頃すまでもないと先程はリリースした、だが向けられた殺意がこの軟体動物を敵として判断させる。
この場にいる護衛対象を狙っていなければ、動物みたいな相手にこのような睨みを効かせることはないだろうに。
~~~~
273: 2018/11/29(木) 21:57:31.83 ID:A+drxOym0
~~~~
帽子「はぁッ...はぁッ...」
反乱軍1「この人間...つえーぞッ!!!!」
衛兵1「貴様らァ...人間の分際で王国に歯向かうつもりかッッ!」
女賢者「まずいですね...キリがありません...」
女賢者(私たちは地面から足を離して動くことはできない...)
女賢者(一方で人魚たちは海中を自由自在に...対等に戦えてるだけで凄いというのに...)
帽子「頼む...もう少しだけ頑張ってくれ...私の身体...ッ!」
女賢者「ぐっ..."衝魔法"」
──ガッシャアアアアアアァァァンッ!!!!!
絶妙に調整された魔法、というわけではなかった。
疲労感が隠せない、鎧のみを丁寧に破壊してのではない。
鎧しか破壊できなかった、もうそれほどの力しか残っていない。
衛兵2「──鎧が砕けたッ!!!」
衛兵3「クソォ! 邪魔するなァ!!」
反乱軍2「統率者はまだか!? あいつがいればここを打開できるッ!」
帽子「──女賢者ぁ! 耐えるぞ!!」
女賢者「わかってますっっ!!」
~~~~
274: 2018/11/29(木) 21:58:33.68 ID:A+drxOym0
~~~~
隊長「──ッ!」スチャ
──バババババッ
発砲音とは裏腹に、その弾速は申し訳程度のものであった。
水中での弾速は鈍みの極み、その一方でクラーケンの動きは機敏であった。
ここは奴の環境、海洋生物相手に人間が勝る要素などない。
クラーケン「アタラナイ...アタラナイヨ...」
隊長(クソ...水中じゃ速度も威力も期待できない)
クラーケン「──クラエ!!!」
──ヒュンッ!
その音は風を切る音、ではなく海を切る音であった。
鞭のようにしなるクラーケンの足が、なぎ払い攻撃をしてきた。
被弾はしなかったが、その動きで発生した水圧に隊長が吹き飛ばされてしまう。
隊長「──うおおおおおおおおおおッッ!?!?」フワッ
隊長(足が地面から離れ...踏ん張りが効かない...ッ!)
衛兵「大丈夫ですか!?」ガシッ
まるで無重力空間、宇宙で身を投げるとどうなるか。
それ最も近い表現であった、妙な浮遊感で彼は動けずにそのまま吹き飛ばされかける。
その様子を察知した衛兵が素早く泳いで隊長を受け止めてくれた。
隊長「あぁ...助かる」
隊長(はやり、人間ってだけで圧倒的に不利だ...どうする...)
衛兵「まずいですね...」
~~~~
275: 2018/11/29(木) 21:59:36.77 ID:A+drxOym0
~~~~
帽子「──ほらほら、そんなんじゃ、止められないよッッ!!!」
──キィンッ カンッ ガギィンッ!!
帽子の華麗な剣撃に、対抗していた者は為す術なし。
一体その細身の身体のどこに、その体力が眠っているのか。
長時間に渡る戦況は、未だに人間にかき乱されたままであった。
衛兵3「こ、降参だ...」
帽子(...統率者はまだかッ!?)
女賢者「──帽子さん後ろっっ!!!」
反乱軍4「──オラァッ!」
──ガギィーンッ!
その音は直撃した音ではなく、弾かれた音。
一瞬意識をそらしたが為に許してしまったその攻撃。
それは魔法によって守られる、だがそれが女賢者の顔色を青くする。
帽子「──ッ!?」
反乱軍4「なッ!? どうなってやがる!?」
帽子(欠片の防御魔法か...助かるが...)
女賢者「──喰らわないで!! 防御魔法が壊れたらあなたはっ!!」
帽子「...やっぱりね、じゃあ気をつけないとねっ!」
彼たちは防御魔法によって、海中での行動を得ている。
それが破れてしまえばどうなるか、ここは海底、すぐさまに浮上など不可能。
呼吸ができなければ待っているのは暗い海、もう二度と攻撃を受けることは許されない。
そんな時であった、ついに目的の人物が現れる。
???「...お前が場を乱している人間か」
帽子「あれはッ!」
衛兵5「──統率者が現れたぞ!!! "アレ"をもってこいッッ!!!」
276: 2018/11/29(木) 22:02:58.39 ID:A+drxOym0
女賢者「統率者...っ!」
統率者「...お前ら、何がしたいんだ?」
帽子「...聞けッ! 王国側と話し合って、この戦争を終わらせてくれ!」
統率者「...それができんから、実力行使をしているわけだ」
帽子「私がッ! 私が仲介役になるさッ!! だから戦いをやめてくれッ!!!」
衛兵4「貴様、王国を裏切るのかッッ!?」
帽子「黙れッ! 貴様らがやろうとしてることは魔王と同じだ!!!」
帽子「とにかく話を聞いてやってくれ...ッ! 貧富の差の現実をッ!」
全くの部外者である帽子という男、それはまるで当事者のような口ぶりであった。
魚は熱に弱い、この水温以上の熱を見せる偽善者に告げる、それは反乱軍たちの覚悟。
統率者「...お前の熱意は伝わった、だがもう引くことは出来ん!!」
統率者「────お前らッッ!!!! 一斉にかかれェェェッッッ!!!!!!」
女賢者「くっ..."地魔法"」
統率者の号令により、反乱軍は一斉に突撃し始める。
それを阻止しようと女賢者は海底の大地を荒らし、目くらましをする。
だが泳ぎだした反乱軍はもう止まることはない、そんな彼らに用意されたモノとは。
衛兵7「──最終兵器をもってきたぞッッッ!!!!」
帽子「...なんだあの巨大な大砲みたいなのはッ!?」
女賢者「...あれはっ!?」
帽子「知っているのかッ!?」
女賢者「いいえっ! でも、あれからとてつもない魔力を感じますっ!」
女賢者「あれを使われては、どんな魔法でもとんでもないことにっ!?」
帽子「くそッ! なんとしても止めないとッ!」
統率者「恐れるなッッッ!!!! 押し通れええええェェェェェェッッ!!!!」
帽子「────とまれえええええええええええええええええええええええ!!!!!!!」
──□□□□□□□□□□□ッッッッ!!!!!
戦場の轟音は、白に包まれる。
そして海底世界に響き渡るのは、存在しないはずの生物の声。
聞き間違えでなければ、馬の嘶きのような音が聞こえた。
~~~~
277: 2018/11/29(木) 22:04:22.91 ID:A+drxOym0
~~~~
クラーケン「ヒヒヒ...ニンゲンヨワイナァ...」
隊長「クソッ...銃弾が当たらん...」
衛兵「...クラーケンには前々から手を焼かされていましたが...今日は特にですね」
クラーケン「クッチマウゾ...」
隊長(銃器も役に立たん...かと言ってあの巨体相手にナイフや体術は...)ピクッ
隊長(...そうだ、まだこれがあるッ!)
アサルトライフルやハンドガンでは遅すぎる。
そもそもあたったところで致命傷すら与えることはできない。
ナイフも当然だめ、だが彼にはもう1つ選択肢がある。
隊長「...あいつの動きを数秒でもいいから止められるか?」
衛兵「なにか、策があるんですか?」
隊長「一か八かだ...このままジリ貧のままよりはいいだろう?」
衛兵「私が命に変えても止めてみせます...っ!」
長くに渡る戦闘で、彼たちにあらたな信頼が芽生えていた。
どちらにしろここでクラーケンに殺されてしまえば、後ろで隠れている人魚もヤラれてしまう。
自分には策など思い浮かばない、ならばこの赤の他人であるこの男に賭けるしかない。
衛兵「...クラーケン、私が相手だ!」
クラーケン「ニンギョガカテルカナァ...?」
衛兵「──やぁっっっっ!!!!!!」ダッ
──ブンッ! ブンッ! シャッ!
彼女が得意とするのは、突撃型の槍術。
海水の中だというのに、その槍捌きは見事なものであった。
短距離水泳と伴うその攻撃が、クラーケンを思わず怯ませる。
クラーケン「グッ...」
―――シュウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥ...
そんな危機を感じ取れば、行ってくるのは生物としての習性。
海の水が墨と馴染む、とてつもない精度の目くらましが彼たちを襲う。
278: 2018/11/29(木) 22:05:52.11 ID:A+drxOym0
隊長(また蛸墨かッ!)
──ババババババッッ
闇雲に墨の中を射撃する。
だがお粗末な速度の銃撃など当たるわけがなかった。
クラーケン「アタランヨ...アタラン!!」
衛兵「...軟弱者のお前が窮地になるとそれを行う、ずる賢い者ということは知っている」
衛兵「私が唯一できる魔法...受けてみろっっ!!!」
衛兵「全ての魔力を...」
衛兵「"属性付与"..."水"っっ!!!」グッ
隊長「──今だッッ!!!」
──ババババババッ
だがこの射撃の真意は別物であった。
闇雲に発射していた訳ではない、クラーケンの行動を誘発させるために行っていた。
あの軟体は銃撃を一度我が身に受け威力を知っている、必ず回避しようとする臆病さを逆手に取った策。
アサルトライフルからの攻撃を避けようと動き回る、それが墨の範囲外へと誘導しているとも知らずに。
クラーケン「────!?」
衛兵「──そこだああああああああああああッッッ!!!!!」ブンッ
隊長(──速いッッ!?)
──グサァッッッ!!!!!!!
彼女の投げた槍は、とてつもない速度。
まるで水と同化したようにも見えた、槍はクラーケンの足の付け根を捕らえ深く地面に突き刺さっている。
砂浜で見せたあの足止めを、この海底でも行なったのであった。
衛兵「──今ですっっ!!!」
隊長「──ッ!」ダッ
クラーケン「クッ...ナメルナァ!!!!」グググ
衛兵「まずい...槍が抜けそうだっ! 急いでっ!!」
隊長(間に合わんッッ!!!)
──□□□□□□□□□□□ッッッッ!!!!!
その時だった、クラーケンに何かを施そうと走り出す。
だが逃げられるかもしれない局面、隊長の背後からとてつもない光が差した。
279: 2018/11/29(木) 22:07:12.32 ID:A+drxOym0
クラーケン「──グッ!? ナンダッ!?」
隊長「────今だッ! これでも喰いなッッ!!」ピンッ
衛兵(何かを口の中にいれたっっ!! あれが策なのかっ!?)
隊長「...離れろッ!!」
衛兵「──っ!」
―――――――――ッッッッ!!!!
音にならない何かが起きた、彼が蛸の口の中に入れたのは手榴弾であった。
爆発はせずとも、とてつもない衝撃がクラーケンの身体の内部から生まれる。
その魔物の最期は物凄く惨たらしいモノであった。
クラーケン「────」グチャァッ
隊長「...Yuck」
衛兵(破裂...食べさせたのは爆弾だったのか...)
衛兵「...姫様、もうでてきて大丈夫ですよ」
人魚「もう平気...?」
衛兵「えぇ...大丈夫です、クラーケンは仕留めました」
衛兵(あの氏に様は、見てないようですね...よかった)
隊長「...悪いが俺は仲間と合流する...状況を乱して済まなかった」
衛兵「...お好きにどうぞ、私はあの塔の中で姫を護衛します」
衛兵「ありがとうございました...乱されたとはいえあなたが居なければクラーケンに殺されていましたから」
隊長「...あぁ」
不貞腐れてはいても、隊長という男に助けられた。
なんとも言えない絶妙な空気感、それを背中に彼は城の方へと向かっていった。
衛兵「...」
~~~~
280: 2018/11/29(木) 22:08:23.51 ID:A+drxOym0
~~~~
統率者「...なにが起きたんだ」
帽子「はぁッ...はぁッ...」
女賢者「はぁっ...はぁっ...あ、あなたの剣...」
帽子「凄い輝いているね...はぁッ...よくわからないけど...」
帽子「も、もう立っていられない...」バタン
女賢者(今のは...もしかして魔法...?)
女賢者(でも帽子さんは魔力をもっていない...もしかして、この剣が...)
女賢者(魔剣の資料は少ない...謎が多いですね...それもユニコーンのだなんて...)
女賢者(深く追求したいですけど...私も体力が限界みたいですね...)
光りに包まれたとと思えば、殆どの者が倒れている。
意識を失っているわけではないが、立つことが困難なようだった。
なんとか立ち上がっているのは統率者という実力者のみであった。
帽子「はぁッ...はぁッ...軍が戦闘不能になっても...まだ闘いを続けるのかい?」
統率者「...それでも、闘う、弱き者たちのためにっ...!」
???「...本当にそれでいいのか?」
立ち上がっているのは彼だけではなかった。
この海の世界を統べる、その王が君臨しておられた。
その面持ちはどこか震えている、先程の光による影響なのだろうか。
統率者「...人魚王」
人魚王「...最終兵器が出たのでな、ついてきてみれば...周りの者は全員倒れてしまっていた」
統率者「...今更、話し合いなど許されないぞ」
人魚王「...許す許されないを一旦置いてくれ」
人魚王「あの光を見て、不思議とこう思った...一度、話を聞かせてくれないか?」
帽子が創り出したあの光、その眩しさが一度己を冷静にさせたのだろうか。
話し合いなどしないと言っていた王が、自らの発言を撤回した。
応じる機会は今しかない、こんな単純なことをなぜ今まで意気地になっていたのか。
281: 2018/11/29(木) 22:11:37.56 ID:A+drxOym0
統率者「...いいだろう」
統率者「話は簡単だ...貧民街は実在している、しっかり見てくれ...」
人魚王「...」
統率者「知っているか?貧しい者たちは、1日の食い物すらとれない日がある」
統率者「頼む、彼らの...生きる姿を見てくれないか?」
人魚王「...前々から、どうするか悩んでいた」
人魚王「この国民たちが、貧民街の者たちに暴力的な事件に巻き込まれることが多発していた...」
人魚王「私は制裁として、そこを見ないことにした...まるで、餓鬼の仕返しのようだ」
統率者「...こちら側に非があることを、俺は目をつむっていた...更には最愛の妻にケガが起きれば、激怒するのも...」
統率者「...王よ、お互いに見直さないか? この国を」
人魚王「...そうだな、より良い国を作ろう」
──わあああああああああああああああああああああっっっっ!!!!!
海底に歓喜の雄叫びが轟く、どこにその様な力が残っているのか。
例え立つことができなくとも、彼らは喜ぶことができる。
人も魔物も関係ない、喜べば自然と腹から声を出すことができるだろう。
人魚王「なんだ、お前たち、起きてたのか」
統率者「...ハッハッハッ!」
女賢者「凄い...まるで物語の結末みたい...」
帽子「はは...身体を張った甲斐があったよ...」
人魚王「帽子殿...貴殿の行動に我は心を撃たれたのだ」
統率者「...そうだな、お前があんなに叫ぶからつい喋っちまったよ」
人魚王「貴殿のその優しさ、そしてあの温かい光がなければ統率者を理解できなかっただろう」
人魚王「単純な原因でも、意地になって耳にしなかっただろう」
統率者「...人間に借りができたな」
帽子「はははは! やったね!」
282: 2018/11/29(木) 22:12:38.68 ID:A+drxOym0
???「Happy end?」
喜びでこの戦場が満ち溢れている。
様々な声がかき乱されているなか、異世界の言葉が聞こえた。
そこにいたのは当然彼であった。
帽子「──キャプテン戻ってたのか!」
隊長「あぁ」
女賢者「今の言葉は?」
隊長「いい結末になったか? って意味だ」
帽子「それはもちろん! そのはっぴーえんどってやつさ!」
衛兵「...ついてきてみれば、凄いことになってますね」
人魚「お父さん!」
人魚王「おぉ、我が娘よ...もう争うことは永遠にない」
人魚王「もう厳重な鍵のかかった部屋にいる必要もないのだ」
人魚「うん!」
隊長「...帽子、やったな!」
帽子「あぁ! やったよ!」
女賢者(...人魚...魔物の国を人間が平和にするだなんて)
女賢者(...これなら...本当にこの世界を平和にできるんじゃ)
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帽子「はぁ...疲れたな、ひっく」
当然行われたのは宴である、時はあっという間に過ぎ去っていた。
王や統率者の仲間たちに囲まれ、さらにはお礼を受け取れと要求された。
したがって彼は隊長や女賢者と一緒に飲めずにいた、英雄というものは忙しい。
帽子(お礼なんか、いらないんだけどなぁ...)
帽子(っと...この部屋だっけ)ガチャ
隊長「おう、帰ってきたか」
女賢者「おかえりなさい」
283: 2018/11/29(木) 22:13:39.88 ID:A+drxOym0
帽子「おや、ふたりとも飲んでないのかい?」
隊長「弱いからな」
女賢者「ですね」
帽子「そうか...しょうがないね」
隊長「だからいまから飲むぞ」
帽子「...へっ?」
女賢者「今日は帽子さんも悪酔いしてもらいますからね」
帽子「げぇ...」
隊長「お前が人魚たちに大量に飲まされるのは予測できた」
隊長「さぁ覚悟しろ」
帽子「まってくれ...もう私は既に飲み過ぎてるんだ」
女賢者「問答無用です」
──ガチャっ
それだけではない、彼を落とすために追加されたのは。
偶然が帽子を追い込む、まさかこの堅物衛兵も酒の魔力には抗えないようだった。
衛兵「失礼します、今日はこの部屋で泊まってくださ...なんだ二次会ですか? 私もまぜてくださいっ!」
人魚「わっ! 楽しそう!」
帽子「はは...どうにでもなれ」
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284: 2018/11/29(木) 22:14:27.12 ID:A+drxOym0
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隊長「やりやがったなッッ!!! これで魔王もなんとかなるなッッ!!!!」
帽子「あっはっはっはっはっ!!!! まかせろっっ!!!」
衛兵「ぐすっ...もっと魔法が使えるようになりたいんですっ...」
女賢者「うふふふふ...私が教えてあげますよ...」サワサワ
衛兵「あっ...どこさわっているんですか...」
隊長「...PORNOは許さんッッ!!!!」クワッ
女賢者「うわっ!! ごめんなさいごめんなさいっ!!」
衛兵「きゃぷてんさぁん...」キラキラ
帽子「あっはっはっは!!」
人魚「...地獄だ」
お酒を飲むことが許されなかった人魚の姫。
その言葉通り、この光景は地獄であった。
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285: 2018/11/29(木) 22:15:39.01 ID:A+drxOym0
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人魚王「...もういってしまうのだな」
帽子「...そうですね」
帽子(頭痛いし)
隊長「だな」
隊長(二日酔いが厳しいし)
衛兵「本当はもっと一緒に痛かったんですが...」
衛兵(頭痛がひどいし)
女賢者「申し訳ありませんが、時間が迫ってるんで」
女賢者(帰って寝たい)
人魚王「ふむ...せめて、我が妻を一目見てくれ」
人魚「ふわぁ~あ」
人魚王「コラ、客人の前であくびなどするな」
人魚「ごめんなさい...」
???「ふふ、楽しそうですね」
昨夜の1件の影響で、この場にいる者たちの大体が二日酔いを患っている。
正直言って、帰りたい、だが王様を無碍にすることはできない。
そんな絶妙な感情を抱いていると、透き通るようなキレイな声が聞こえた。
286: 2018/11/29(木) 22:17:41.78 ID:A+drxOym0
人魚王「調度良かった、あれが我が妻だ」
人魚妃「初めまして、人魚妃です」
帽子「...どうも、お初にかかります」
人魚妃「このたびは多大な恩を...」
帽子「いえいえ、私は正しいとおもった行動をしたまでです」
人魚妃「...あなたのような人が、たくさんいれば良いですね」
帽子「...どうもありがとうございます」
人魚王「ふむ、時間が限られているみたいだな」
人魚王「また、時間があるときに訪ねてくれ、そのときは大歓迎をする」
帽子「ええ! ではまたっ!」
衛兵「帽子さん、きゃぷてんさん、女賢者さん...本当にありがとうございました!」
隊長「...あぁ、またな」
人魚「また会いましょうねっ!」
王室を出るとそこには、大量の衛兵や元反乱軍、そして民間人が並んでいた。
それは海底都市の出口まで続く、未来永劫において忘れることのできない光景であった。
彼らは語り継がれるだろう、人間3人が険悪だったこの都市を和合したことを。
隊長「ん...? あれは」
統率者「...待っていたぞ」
287: 2018/11/29(木) 22:19:38.35 ID:A+drxOym0
帽子「どうしたんだい?」
統率者「急いでいるようだが...せめて、これだけでも貰ってくれ」
女賢者「これは...?」
統率者「それだけだ、じゃあな! お前らのことは忘れないぞ」
統率者は気を使ってくれたのか、早く去っていった。
彼から渡されたのはボール状のなにか。
これはどこかで見たことのある代物であった。
帽子「なんだいこれは?」
女賢者「...微かに、魔力を感じますね...水属性の」
隊長「貰っておいて損はないだろう」
帽子「...これ、スライムの奴とちょっとだけ似てるな」
女賢者「コレは?」
隊長「あぁ、たしか盟友の証だったか?」
女賢者「これも、魔力を感じますね、水属性の」
帽子「綺麗だな、大事にとっておこう」
隊長「しかし...ここから港町までどのくらいだったか?」
女賢者「......いまのうちに魔法薬と海藻を補充しておきましょうね」
隊長(長距離に備えろってことか...)
帽子「...賢者の塔に戻ったら、大賢者さんたちが出て来るまで寝てようか」
女賢者「賛成ですが、そのまえに買い物が残っています...」
隊長「...はぁ、荷物持ちか」
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288: 2018/11/29(木) 22:20:24.81 ID:A+drxOym0
引用: 隊長「魔王討伐?」
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