289: 2018/12/01(土) 23:12:20.09 ID:651egkh80

隊長「魔王討伐?」【その1】

隊長「魔王討伐?」【その2】

隊長「魔王討伐?」【その3】

隊長「魔王討伐?」【その4】

~~~~
葬送のフリーレン(1) (少年サンデーコミックス)


大の大人達が、砂浜で大の字で倒れている。

旅の疲れ、なれない海中、そして陽気なお天道さま。

勝てるわけがなかった、彼らは睡魔という敵に呪われる。


隊長「はぁ...いい日差しだ」


女賢者「正直...動きたくないですね」


帽子「...夕方までこうしてないかい?」


女賢者「...さっさと済ませて賢者の塔のやわらかぁ~い布団で寝るか、今のままか...」


隊長「...前者だな」


帽子「同感だ」


女賢者「...立てません」


帽子「同感だ」


隊長「ほら、立て」


帽子「やめろ! 無理やり立たせるな!」


女賢者「きゃぷてんさんの鬼...」


隊長「俺は一刻も早く布団で寝たいんだ...」


~~~~

290: 2018/12/01(土) 23:13:45.09 ID:651egkh80

~~~~


女賢者「買いものは済みましたね...帰りますか」


帽子「お、重い...」


隊長「お前、俺をみてもそれを言えるか?」


帽子「...」


女賢者「さぁ、さっさと帰りましょう」


先日の買い物袋はどこかに置いてけぼりにしてしまったようだ。

つまりは全てを買い直した、そんな大荷物を持たされるのは彼らであった。

ようやく賢者の塔に帰ることが許される、その帰路で帽子がつぶやいた。


帽子「そういえば今日で5日目だよね」


女賢者「そうですね...予定通りならあと2日以内で修行が終わると思います」


隊長「...早いもんだな」


帽子「そうだね...それにしても、ここから荒野地帯を抜けるのは大変そうだね」


女賢者「...弱音を吐かないでください、実感しちゃうじゃないですか」


帽子「と、いうか海中だとろくに食べた気しないからもうペコペコだよ...」


隊長「昼食を済ませてから出発すればよかったな」


帽子「いや...それは一昨日と同じハメになるよ」


女賢者「失礼ですね」

291: 2018/12/01(土) 23:14:36.56 ID:651egkh80

帽子「...この距離、魔法で何とかならないかい?」


女賢者「大賢者様なら、転地魔法を使えるんですが...あいにくですね」


帽子「その魔法はどんなものなんだい?」


女賢者「そうですね、転移魔法の長距離版ですね...転移魔法自体がとても高等な魔法なのですが...」


女賢者「転地魔法は、例えるなら...賢者の塔から塀の都まで一瞬で到着させることのできる魔法です」


帽子「...すごいな」


女賢者「ただし、とても長い詠唱が必要ですけどね」


帽子「ふぅん...私も使ってみたいね、魔法」


帰路の雑談は魔法の話題で会話が弾んでいた。

そんな中、女賢者はそれに関連するある思いを告げる。

それは先程の帽子に関する出来事、海底都市の激戦を沈めた白きあの光。


女賢者「それなんですが...」


帽子「ん?」


女賢者「海底王国でその剣が光輝きましたよね?」


隊長「...やはりソレの仕業だったか」


女賢者「あの光...どことなく魔法に似ていましたね」


帽子「...そうなのかいッ!?」


女賢者「魔剣の研究は進んでいないので確証はできないですけどね」


女賢者「思えば、その剣からは微妙に魔力を感じることが...」


帽子「そうか...ついに魔法剣士にでもなってしまったか!」


女賢者「いえ、だから魔法かどうかは────」


帽子「──なんだか気分が高揚してきたよ!」キラキラ


隊長「...はしゃいでるな、あの荷物をもって」


女賢者「...案外、子どもっぽいですよね」


隊長「...だな」


~~~~

292: 2018/12/01(土) 23:15:09.00 ID:651egkh80

~~~~


帽子「やっと賢者の塔がみえたね」


隊長「...流石に疲れたな」


女賢者「...」


女賢者「...急ぎましょう」


帽子「どうしたんだい?」


荒野地帯、その地平線の先には目的地の塔が見える。

到着は間もなくだが、この遺跡の入り組んだ道のりが彼らの足を阻む。

やっと休息を取ることができると表情を緩めたそんな時だった、ただ1人だけは違っていた。

なぜ急ぐ必要があるのか、それはすぐに分かる。


???「お前が、噂の奴か...」


隊長「──!」スチャッ


その只ならぬ雰囲気に思わず、彼は荷物を捨ててまで武器を構えた。

そこにいたのは至って普通の見た目をした人物が1人。

人間か魔物かはわからないが、その姿だけを見ればやや逞しい男と表現できるだろう。


女賢者「...どちら様で? 魔王軍ではなさそうですが...」


帽子「...」


魔闘士「...俺の名前は魔闘士」


魔闘士「そこの人間...」

293: 2018/12/01(土) 23:15:34.91 ID:651egkh80










「手合わせ願おうか...」










294: 2018/12/01(土) 23:16:46.65 ID:651egkh80

隊長「──ッ!?」


──ピリピリピリッ...

空気が張り裂けそうな程の威圧感が発せられる。

その男の名は魔闘士、すでに臨戦状態であった。

一体彼は何者なのか、そしてなにが目的なのか。


帽子「やれやれ、また戦闘か...」


魔闘士「...俺はそいつにだけ用がある、他は邪魔だ失せろ」


隊長「...どうやら俺が目当てのようだな」


女賢者「1対1をお望みのようですが...そうはいきませんよ?」


魔闘士「...手は打ってある」


帽子「...なんだと?」


魔闘士「俺の連れが1人、この塔にいる」


魔闘士「...早く行かないと、大賢者が氏ぬぞ」


女賢者「な...ッ!?」


隊長「──俺に構うなッ! 行けッッ!!!!」


帽子「しかしっ!」


隊長「相手の条件を飲むんだッ!」


魔闘士「早くいけ、邪魔だ...」


女賢者「...すみません、きゃぷてんさんっ!」ダッ


帽子「くッ...氏ぬなよッッ!!!」ダッ


魔闘士の要望通り、1on1に持ち込まれてしまった。

彼には例の入れ墨が見当たらない、どうやら本当に魔王軍ではない模様であった。

ならばなぜ、この隊長という男を狙うのか。

295: 2018/12/01(土) 23:17:44.95 ID:651egkh80

隊長「...」


魔闘士「...こないのか?」


隊長「────ッ!?」ピクッ


相手の様子を見てから、動くつもりであった。

しかしそれは出来なかった、それはなぜか。

気がついたときには、眼前に魔闘士が迫っていたからであった。


魔闘士「...遅い」スッ


隊長「──グアァァッ...!?」


──ドガッァァッッッ!!

強烈な一撃、不意打ちでもないというのに真正面から受けてしまう。

その蹴りは凄まじく、人間にしては大柄な彼を吹き飛ばした。

だがそれだけなら話はわかる、隊長が驚いたのはその跳躍距離であった。


隊長「ゲホッ...ゲホッ...ふざけてる...どんな蹴りならここまで吹き飛ぶんだ...」


隊長(まずい...今のでアサルトライフルがどこかに...)


魔闘士「さぁ立て」


隊長「──ッ!」スチャッ


魔闘士「...!」


──ダンッ ダンッ

隊長は牽制程度にハンドガンを仕方なく放つ。

だが魔闘士は動かずにいた、その必要がないと瞬時に理解したために。

そして彼は何かを掴んだ。


隊長「────ッ!?」


魔闘士「...フッ、確かに大した威力だな」


魔闘士「だが、俺には見えるぞ」パッ


──からんからん...

彼が手を開くとそこには。

地面に落としたのは弾丸であった、金で出来た偽物だが差し支えない威力を誇るというのに。

それをわざとらしく地面に捨て落とす、その光景に思わず隊長は息を呑む。


隊長「...まるでHollywood movieだな」


~~~~

296: 2018/12/01(土) 23:18:25.47 ID:651egkh80

~~~~


帽子「くそッ! 次から次と闘いばかりだなっ!」


女賢者「おしゃべりは後です! それよりも早く...!」


多忙が重なる、だが今回のソレは今までの比ではない。

嫌な予感が彼らの原動力となり、遺跡を駆け抜ける。

そして到着した賢者の塔、その1階には奴がいた。


???「俺様を探してるのかァ?」


帽子「──ッ!」


女賢者「...魔闘士とやらのお連れですか?」


魔剣士「そうだァ...俺様の名前は魔剣士、待ってたぜェ?」


口調に特徴のあるこの男、まるでゴロツキのような喋り方をしている。

名は魔剣士、背中にはその名に相応しい妙な感じのする大剣を背負っている。

この男も、魔闘士と同様にかなりの手練なのかもしれない。


帽子「くっ...!」スッ


魔剣士「おォ...お前も剣士か、しかもその剣...魔剣だなァ?」


魔剣士「奇遇だな、俺様も魔剣だぜェ?」スッ


女賢者「な...なんて魔力の量なんですか...その剣...っ!」


女賢者(帽子さんの魔剣...ユニコーンの比にならないっ!?)


魔剣士「...俺様は、お喋りより闘いのほうが好きなんだ」

297: 2018/12/01(土) 23:19:40.07 ID:651egkh80










「いくぜェ?」










298: 2018/12/01(土) 23:20:20.81 ID:651egkh80

帽子「──うっ...!?」


──ピリピリピリッ...

剣を構えただけだというのに、すでに冷や汗が止まらない。

やはりこの男、魔闘士と同等の実力者であることが伺える。


女賢者「────帽子さん前ですっ!」


帽子「──えっ...」


魔剣士「...おせぇよ」


魔剣士「──斬り上げェェッッッ!!!」ブンッ


―――ザシュッッッッッ!!!!!!

あんなに大きなエモノを持っているというのに。

その速度は、何も荷物を持たないでいる帽子の全力疾走よりも遥かに速い。

決して目で負えない速度ではない、だがその予想外な疾走が帽子の意識を鈍くさせていた。



帽子「──なっ...」


──バキィィィッ...

疾走からの剣撃、帽子は腰から肩にかけて斬り上げられた。

そのはずだった、本来なら胴体が離れていてもおかしくない威力。

だが聞こえる音は肉が離れる音ではなく、何かが割れる音であった。


帽子「...グッ!?」


女賢者(あれは防御魔法...そうかあの瓶をまだ持っていたんですね)


帽子(今ので壊れたっぽいなぁ...)


魔剣士「...結構ずるいことするんだなァ」


魔剣士「ブチ殺されても文句いうなよ?」


帽子「...悪かったね、もう油断しないよ」


~~~~

299: 2018/12/01(土) 23:21:08.71 ID:651egkh80

~~~~


隊長「はぁッ...はぁッ...!」


魔闘士「...どこへ隠れた」


隊長(...!)ピクッ


ザッ...ザッ...ザッ...

足音が聞こえる、彼は遺跡の遮蔽物で身を隠している。

乱れる呼吸を一瞬にして整え、来るべき時を待つ。


隊長(...)


隊長(......)


隊長(.........)


魔闘士「...隠れても無駄だぞ」


隊長「────ッ!」スチャッ


隊長への牽制、その発言が決め手であった。

その声の聞こえ方から察するに、すぐ近くに違いない。

隊長が物陰から奇襲を行った。


魔闘士「──そこかッ!?」


隊長「────デヤッッッッ!!!!!」


──バキィィィィィィッッ!!!!!!

魔闘士の顔面に拳が決め込まれた。

普通の人間が喰らえば顔面崩壊もあり得るその威力。

だが彼は人間ではない、魔物であった。


隊長「なッ...!?」


魔闘士「...いい拳だ、人間にしてはな」


隊長「──ッ!」スチャッ


──ダンダンッ!

効果が得られないとわかれば、すぐさまに対応を変化させる。

先程は無力化されてしまったが、この距離ならいけるかもしれない。

隊長は急いでサイドアームのハンドガンを抜き、撃ちこんだ。

300: 2018/12/01(土) 23:22:08.31 ID:651egkh80

魔闘士「あたらんぞ」スッ


隊長(...避けただとッ!? この距離でかッ!?)


隊長「...クッ!」スッ


魔闘士「刃物か...それも無意味だ」ガッ


隊長「──なッ!?」グググ


今度はナイフを取り出すが、不発に終わってしまう。

彼の腕が魔闘士によって簡単に抑えられてしまった。

その腕力は、筋骨隆々であるこの隊長の力を寄せ付けなかった。


隊長(全く動かせないッッ!!!)グググ


魔闘士「...復讐者を倒したと聞いて期待をしていたが...興ざめだ...」スッ


―――ドガアアアァァァァァァァァァアンンッッッ!!!!!!

おそらく利き腕ではない左腕から繰り出した。

その拳力は凄まじく、先程蹴飛ばされたときよりも身体が吹っ飛ばされてしまう。

吹き飛ばされ着地した、その余波により遺跡の一部が瓦礫へと変貌する。


隊長(だ、だめだ...強すぎる...)


隊長(一旦、隠れなければ...)ズルズル


魔闘士「チィ...また隠れたか...」


~~~~


~~~~


魔剣士「...あっけねェな」


帽子「はぁッ...はぁッ...!」


女賢者「っ...っ...!」


魔剣士は別に特別なことはしていない。

ただ、剣を振り回していただけ。

だがそれだけで、帽子と女賢者の息を上がらせていた。


魔剣士「...そんなんで良く、魔王軍に喧嘩を売ったなァ」


帽子「...私にはやることがあるんでね」


魔剣士「...何が目的かしらねェけど、このままじゃここで氏ぬぞ?」


帽子「...氏ぬわけには...行かないんだッ!」


301: 2018/12/01(土) 23:23:18.98 ID:651egkh80

女賢者「けほっ..."衝魔法"」


──ゴォォォォォォォ...!

空気中に現れたのは、衝撃を纏う魔法。

だがそんなモノ、魔剣士の前では唯の的に過ぎなかった。


魔剣士「...おらよォッ!」ブンッ


――――スパッ...!

剣から放たれた気のようなモノが、彼女の魔法を真っ二つにする。

その光景が彼らの絶望感を強くする。


女賢者「う...そ...」


帽子「魔法を...斬っただと...?」


魔剣士「"竜"の魔剣を甘く見すぎだァ...お嬢ちゃん」


女賢者「────っ!?」


──ぞくっ...!

魔剣士が彼女に向かって睨みつけた。

魔法を使ったわけではない、ただ本当に睨んだだけ。

それがキッカケであった、彼女を支える精神力が斬られてしまった。


女賢者「うっ────」フラッ


帽子「女賢者さんっ...!?」


魔剣士「気絶したか、まァ仕方ねェよな...しっかし、お前の魔剣」


帽子「...っ!」ビクッ


魔剣士「全然活かせてねェな...氏ぬ前に教えてやるよ」


帽子「...なんだと?」


魔剣士「俺の教え方はひどいぜ? 魔剣を活かすまえにやっぱ氏んじまうかもなァ!」ダッ


帽子「──速いっ!?」


魔剣士「オラッ! 前方だァ! 剣構えろオォォォ!!!」


帽子「──クソッ!! 舐めやがってッ!!!」スッ


──キィンッ カンッ ギィィィィンッ!!!!

大きな動物ですら斬り伏せれそうな大剣、それに対峙するのは刺突用の細い剣。

とても不安定な鍔迫り合いが発生する、絶対的に後者が不利だというのに耐えれている。

これが魔剣同士の争いというモノであった。

302: 2018/12/01(土) 23:24:12.22 ID:651egkh80

魔剣士「オラオラオラオラァァ!! 魔剣ってのはなァッ!」


魔剣士「もっと豪快に使うんだよォッ! ちょっとやそっとのことでは折れねェからなァッ!」


帽子「──くそッ! お喋りは嫌いなんじゃないのかッ!」


──キィンッ! ガチャァッ!!! ガギィーンッ!!!

激しい剣撃同士が牙を向き合う。

だがそれを可能にしているのは、彼側の配慮であった。


魔剣士「お喋りできる程に手ェ抜いてんだァ! 退屈なんだよォッ!!!」


帽子(くっ! 私が交えられる程度まで手を抜いてるのかっ!)


魔剣士「──おらよォッッッ!!!!!!」ブンッ


帽子「しまっ────!」


――――ガギイィィィィィィィンッ!!!!

この男、口調とは違いかなり曲者である。

力加減を調節する、その細かな動作が可能にしたのは弾き落とし。

帽子の魔剣は吹き飛ばされてしまった。


魔剣士「...ホラ、拾いに行けよ」


帽子「...どこまでも下でに見やがって」スッ


魔剣士「よォし...行くぞォッ!!!!」


帽子「...その油断、後悔させてやるからなッ!」


~~~~

303: 2018/12/01(土) 23:25:26.65 ID:651egkh80

~~~~


隊長「くっ...くっ...」ズルズル


隊長(くそっ...勝てる策がみつからん...!)


瓦礫の中を匍匐前進で進んでいく。

こうすることで身を隠し、一時的にこの場を凌ぐ。

それしか行えない、今の隊長に魔闘士を倒せる手段などない。


魔闘士「...どこだ」


隊長(まずい...魔闘士がすぐ近くにいる...)


ザッ...ザッ...ザッ...ザッ...

息を潜め、時が流れるのを待つ。

すると聞こえたのは足音、それが徐々に離れていく。

危機はさった、そんな隊長は息苦しい瓦礫の中である物を発見する。


隊長(アサルトライフル...!)


隊長(拾いに行きたいが...それだとここから出なければならない...)


隊長(...身を隠せる場所は見当たらない、奴が完全に離れたら向かうか)


ザッ...ザッ...ザッ...

耳をすませば、まだ魔闘士の気配を感じることができる。

遺跡の残骸を隠れ蓑にするしかないこの現状。

この世界に来て一番のピンチ、一体どうすればいいのかを彼は考え尽くす。


隊長(どうするッ...どうやってあの怪物を倒す...ッ)


隊長(氷竜、暗躍者、追跡者、捕縛者、復讐者、クラーケン...)


隊長(今まで倒した奴らは総じて銃器の威力に驚いていた...)


隊長(だが、今回の魔闘士は格が違う...銃弾が当たる気がしない...)


隊長(...魔闘士の動き、全く目が追いつかん...それに銃弾を素手でつかみやがる...)


隊長(...どうやら遠ざかったようだな、今がチャンスだ...とりあえずアサルトライフルを拾おう)


隊長が瓦礫から身を出し、アサルトライフルを拾おうとした瞬間。

なぜこの男がここに立っている、足音は完全に遠くに向かったはずなのに。


魔闘士「...やはり、ここにいたか」

304: 2018/12/01(土) 23:26:21.71 ID:651egkh80

隊長「──Jesus...」


魔闘士「残念だったな」


隊長「...遠ざかってると思っていたが」


魔闘士「悪いな...生憎、足は速いのでな」


隊長(ふざけるな...秒速100mとかそんな次元の話になるぞ...ッ!?)


魔闘士「興ざめだ」


隊長「──!」ビクッ


隊長がついに、恐怖心を魔闘士に植え付けられてしまった。

そして隊長は首を捕まれ、身体を持ち上げられてしまう。

その苦しみは、復讐者の時とは比べ物にならない。


魔闘士「フンッ、期待しなければよかったな」


隊長「ガハァッッ...ク、クソォッ...!」グググ


魔闘士「氏にぞこないが────」


魔闘士「────」


魔闘士の声が聞こえなくなった。

それは己が氏にかけているからであった。

魔闘士の首絞め、彼を仕留められるのはもう時間の問題であった。


隊長(くそ...この世界にはこんな奴らがいるのか...)


隊長「I'm not...ready to die────」


視界が真っ暗になる、どうやら本当に終えてしまっていた。

異世界へと訪れた隊長の冒険はここまで。

彼は魔闘士という男に息の根を止められてしまったのであった。


~~~~

305: 2018/12/01(土) 23:27:32.35 ID:651egkh80

~~~~


???「□□□□、□□□」


???「目を覚ませ」


???「瞳を開けなさい」


──ぱちりっ

謎の声が聞こえる、その指示通りに視界を開くとそこには。

なぜなのか、たった今命を落としたばかりだというのに。

それどころではない、彼は遺跡とは全く別の場所へと佇んでいた。


隊長「...What's」


???「初めまして、異世界の者よ」


隊長「...Who are you?」


???「記憶が混乱しているようだ」


隊長「What are you talking about?」


???「少し、記憶を正してあげよう」ポワン


体長「────ッ!?」ピクッ


(「え、えぇっと...私は少女です...」)


(「私の名前は...魔女よ」)


(「私の名前はそうだな...帽子だ」)


隊長「...あぁ」


(「いたたた...誰か助けてぇ~」)


(「どこまでもついていきましゅ!」)


隊長「思い出した...」


???「君は、この世界でCAPTAINと名乗っていた」


隊長「...そうだ」

306: 2018/12/01(土) 23:28:31.34 ID:651egkh80

???「君の行動は、とても素晴らしい」


隊長「...お前は誰だ?」


???「私は神、いえ...神に最も近い存在と言おうか」


隊長「...GOD?」


???「君は今、魔物に殺されかけている...だがまだ氏んでいない」


隊長「...」


???「だから、君の奮闘に免じて...1度だけ機会をあげよう」


隊長「...どういうことだ?」


──ぽわぁっ...

優しい明かりが隊長の身体を包み込む。

それだけではない、なにか別の光も入り込んだような。


???「君に1つだけ、魔法を貸してやろう」


???「...神業を受け取るんだ」


隊長「ま、まってくれ...」


隊長「なぜ俺はこの世界にいるんだ...?」


???「...君に幸あれ」


隊長「頼む...教えてくれ...っ!」


???「□□□、□□□□□□」


~~~~

307: 2018/12/01(土) 23:30:13.36 ID:651egkh80

~~~~


隊長「──ガハッ...!」


魔闘士「...驚いたな、まだ息があったか」


氏亡したと思われていた、気がついた時には首絞めから開放されていた。

地面にボロ布のように投げ捨てられたこの身体、だがそれは今までのモノとは違う。

なぜだろうか、隊長のここ数日分に渡る戦闘による疲れがとれているような気がする。


魔闘士「トドメを刺してやる...」ダッ


魔闘士が一瞬で間合いに入ってきた。

先程までの隊長ならここでまた蹴り飛ばされていただろう。


隊長「──Eat thisッッ!!」


魔闘士「────グッ!?!?」


──ドスッッ!!

あまりにも鈍い音が鳴り響いた。

隊長は魔闘士にかなり重そうなボディブローを炸裂させた。


魔闘士「...なッ!?」


隊長「──Oneッッ!!」


──ドスッ...!

透かさず隊長は追撃を始める。

再びのボディーブロー、鈍い音が2発目。


隊長「──Twoッッ!」


魔闘士「────ゲハァッ...!?」


──バキィィッ...!

そして軽めのストレート、それは魔闘士の胸元に決まる。

魔物とて身体の構造は人間、そう踏み込んだ隊長は急所であろう左胸を殴る。

そこにあってほしいのは心臓、彼の思惑は的中し、魔闘士は悶た。


隊長「────HAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」


──バギィィィィッッッッッッッ!!!!

そして最後に放ったのは、渾身の一撃。

フィニッシュブロー、強烈な拳が魔闘士の顔面にぶち当たる。

先程は余裕の表情で受けていたその顔を、思い切り吹き飛ばす。


魔闘士「──グゥゥゥウウウッ...!?」ドサッ


隊長「...ふぅ」

308: 2018/12/01(土) 23:31:47.88 ID:651egkh80

魔闘士「グッ...人間程度が、調子に乗るなよ」ムクッ


魔闘士「...どうやら先程まで本調子じゃなかったようだな?」


隊長「...」


魔闘士「...面白い」


魔闘士「この魔闘士の業...その眼で確認するがいい────」スッ


──ガシィッッッ!!

気づいたら取っ組み合いをしていた。

お互いの両腕からミシミシと音がなる、とてつもない圧力同士がぶつかりあう。


隊長「────グッ...!」グググ


魔闘士「ほう...これを反応するか...」グググ


隊長「...魔法か?」


魔闘士「残念ながら魔法は得意じゃない...俺はただ、ひたすら早く動いているだけだ」


隊長「...ふざけているな」


魔闘士「悪いが、しゃべる余裕は貴様にないぞ」スッ


隊長「しまっ────」


────ガクンッ!

魔闘士は足をさばいて隊長を転ばせてきた。

取っ組み合いをしている最中だというのに、とても軽やかな足業であった。


隊長「──グッ!?!?」ドサッ


魔闘士「────喰らえッ!」スッ


そして腹部めがけてかかと落としを仕掛けてきた。

これを喰らえば、胴体に深い傷を追うことになるだろう。

なんとか力を振り絞り、横に向けて転がることで回避する。


隊長「──あぶないなッ!」スチャッ


隊長「――――ッ!?」


隊長(な、なんだ...この感覚は...)


──ダンッ ダダンッ!!

回避後はすぐに立膝の状態に、そしてハンドガンを構えた。

その時、妙な感覚が隊長の身体を包み込む、だがそれを気にしている場合ではない。

違和感を覚えながらも彼は発砲する、そして魔闘士はそれを受け止めようとする。

彼の銃弾は再び魔闘士の手のひらに吸い込まれた。

309: 2018/12/01(土) 23:32:34.56 ID:651egkh80

魔闘士「それは効かぬと────」バッ


──□□□...

弾丸を掴み取ったその手の内から、この音が聞こえた。

それは彼に鳥肌を立たせる、なぜ人間がこの代物を得ているのか。

そしてなぜ自分は、こんなにも激痛を味合うハメになったのか。


魔闘士「────グゥゥゥウウウウウウッッ!? これはッ!?」


隊長(なんだがわからんが、チャンスだ!)ダッ


魔闘士「...しまっ────」


隊長「────ハッッ!!」


──グサ□□□...ッッ!!!

隊長は首をめがけた、そして魔闘士に刺すことができた。

魔闘士は反応が遅れた、が腕を盾にすることで首を守った。

しかしそこにも、あの白い音が付着する。


魔闘士「──ッ!? ...これもかッ!?」


隊長「なんだこれは...?」


魔闘士「グッ、これは...光...なぜ...ッ!?」


先程まで通用しなかった隊長の攻撃、今はなぜだか効果的であった、先程とは何が違うのか。

隊長の頭の中で浮かび上がるのは、先程の神業とかいう代物。

あれは現実だったのか夢だったのかはわからない、だが己の身に何かが授けられたのは確かであった。


魔闘士「────1分だ」


隊長「...?」


魔闘士「悪いが、残された時間は1分だ」

310: 2018/12/01(土) 23:33:07.49 ID:651egkh80










「その1分で貴様にもう一度地べたで寝てもらう...」










311: 2018/12/01(土) 23:34:17.72 ID:651egkh80

隊長「――ッ...!?」


その言葉の威圧感、それは脅しではない。

彼はついに本気をみせた、己に危害を産ませるこの男に。


魔闘士「...遅いぞ」シュンッ


隊長「──わかっているッ!」


──バシッ!

気づけば魔闘士は隊長の背後に回っていた。

それに気づいた彼は背面左エルボーを繰り出すが、手のひらで受け止められてしまった。

だがそれだけではない、彼は同時に右手も背面に向けてハンドガンを構えていた。


隊長「──ッ!」スチャ


魔闘士「小細工を...ッ!」スッ


──ダン□□ッ!

ギリギリのところで回避されたが、耳に銃弾のかすり傷を当たることができた。

これは完全に不意打ち、白き音が混じっていなくとも魔闘士に傷つけることができるだろう。


魔闘士「──くッ!?」


隊長「────ハァッッ!!」ドガッ


避ける動作を予測して、隊長は魔闘士に蹴りをいれる。

それは魔闘士の鳩尾に入る、回避行動に気を取られ防御策を取ることができずにいた。


魔闘士「──ゲホッ...!?」


隊長「────ッ!」スチャッ


──ダン□ッ ダン□ッ ダダン□ッ!

軽快な発砲音、それはすべて魔闘士を捉えていた。

鈍い痛みが彼の動きを制限する、銃弾キャッチや回避もすることができない。


魔闘士「──グッ...ッ...!?」


隊長(全弾命中...)


隊長「見えても避けれなければ意味がないぞッ!」


魔闘士「黙れっ...!」ヒュン


──ドゴッォォォッッ!!!!

彼は銃痕の激痛をこらえながらも、隊長の懐に入り込んだ。

そして浴びせるのは信じられない威力の掌打。

防弾チョッキ越しでも感じるその衝撃が、彼の身体を遠くまで吹き飛ばした。


隊長「──ゲハァッ...!?」ドサッ

312: 2018/12/01(土) 23:35:57.99 ID:651egkh80

隊長「ぐッ...」スチャッ


──ダン□ッ ダン□ッ!

吹き飛ばされたその場所は、衝撃の影響で土煙がこみ上げる。

それが隊長の身を隠してくれた、その中から発砲を行う。


魔闘士「...危ないな」スッ


隊長「...今の感じ、避けられたか」


隊長(...腕ほど足は発達してないってことだな)


距離がなければ避けることが出来ない、距離がなくても弾を掴むことができる。

魔闘士の情報が徐々にあけてゆく、それ故に対処方も徐々にわかってゆく。

完全に隊長のペースが戻ってきている。


隊長(なら...)


隊長(────今だ!)ダッ


魔闘士「──そこかっ!」


魔闘士(──刃物ッ!)


土煙から突如飛び出してきた隊長、その右腕にあるナイフを彼は目視してしまった。

どうやら隊長は魔闘士の胸めがけ、右手でナイフを刺そうとしているようだった。

そう認識してしまった、左手に忍ばせたハンドガンを見逃してしまう程に。


隊長(かかった...!)


──ダン□ッ ダン□ッ!

刃物を蹴りで弾き落とそうと身構えていたら、突如身体に激痛が走る。

如何に武の達人だとしても、初めて見るその武器の性能を完全に把握することができない。

この反則地味た攻撃速度、そして隠密性、それを予測することは極めて難しい。


魔闘士「──貴様ぁ...ッ!?」


隊長の思惑通り、蹴りを入れようとした足に全弾命中させる。

それを耐えきれる者などいない、思わず膝をついてしまった。

その圧倒的な隙を逃す訳にはいかない。


隊長「────AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッッ!!」


──バキィッッッッッ!!!!!!!

強烈なアッパー、それが魔闘士の身体を吹き飛ばすのは簡単だった。

身体が宙に浮いたと思えば、そのまま倒れ込んでしまう。

このまま犯人確保をすることは難しくないだろう。


隊長「──ッ!」ササッ


隊長(よし、マウントポディションを取ったぞ────)

313: 2018/12/01(土) 23:36:38.66 ID:651egkh80

魔闘士「──どこを見ている...」


倒れ込んだ魔闘士にのしかかり、眉間にハンドガンを構えようとした。

マウントポディション、それが成功していたのなら勝利は目の前であった。

しかしこの男は素早すぎた、気づけば横に手刀の構えをして立ち尽くしていた。


魔闘士「動くな」スッ


隊長「...早すぎるぞ」ピタッ


魔闘士「...詰みだな」


隊長「...」


隊長(この手刀が、本物の刀のように俺の首をはねることは簡単だろうな...)


魔闘士「...氏ね」


隊長「──ッ!」


2度目の敗北、今度は完全な調子だと言うのにも関わらず。

殺される、その現実が彼の目を泳よがせる。

その目線の先には腕時計、針がある事実を知らせてくれていた。


魔闘士「...と、いいたいところだが」


魔闘士「時間が過ぎた...また、頃しに来てやろう」


隊長「...」


魔闘士「...名は?」


隊長「...Captainだ」


魔闘士「...そうか、覚えておこう」


魔闘士「──さらばだ...」


魔闘士は影を残すほど素早く移動し、どこかへ消えてしまった。

その時、隊長の身体にも異変が起こる。

常時微かに聞こえていた、白き音が止む。


隊長「...帽子たちと合流せねば」


~~~~

314: 2018/12/01(土) 23:37:41.29 ID:651egkh80

~~~~


魔剣士「...へっ、口ほどにもねェな」


帽子「ぐっ...そぉ...っ!」


魔剣士「これじゃ、その魔剣も可哀想だぜ」


帽子は扱かれていた、魔剣士による剣術の授業に。

だがそれは暴力の限りであった、魔物である彼に追いつけるわけがない。

息が上がる、身体は痛い、もう彼は動けない。


帽子「私は...平和のために...闘わねばならない...っ!」


魔剣士「...頭のなかお花畑かよ」


魔剣士「それができれば、魔王もやってらァ」


帽子「うるさいッ...はぁッ...はぁッ...魔王の政策は平和を求める魔物にも辛いだろうに...!」


魔剣士「...まァ、俺様には関係ねェな、魔王直属の部下でもなんでもねェし」


帽子「ゲホゲホッ...じゃあ君は...なんでここにいるんだい...?」


魔剣士「...さァな、探しものついでに魔闘士に連れられてな」


帽子「はぁッ...くっ...はぁッ...」


魔剣士「...たく、魔王の気が違ってから禄な事になってねェな」


帽子「ッ...?」


魔剣士「...初めて会った時の魔王は、良い奴だったんだがなァ」


帽子「どういう...ことだ...?」


魔剣士「さぁな、クソ爺の痴呆でも始まったんじゃねェの?」


魔剣士「...お喋りはもういい」


帽子「くッ...!」


魔剣士「...その魔剣、寄越せばお前らを見逃してやるよ」


魔剣士「まァ、魔闘士を相手にしてる奴の命は、俺様には保証できねェけどな」


帽子「...ふざけるな」


魔剣士「...あっそ、じゃあ氏体漁りでもしてその魔剣を助けてやるか...」

315: 2018/12/01(土) 23:38:11.87 ID:651egkh80










「じゃあ...氏ねッッ!!!!」










316: 2018/12/01(土) 23:39:09.91 ID:651egkh80

帽子「私はッ...民のために...薄幸の魔物のためにッ...」


────□□□□ッッ...!

光が帽子を包み込む、その発光源は彼の右腕。

ユニコーンの魔剣だ、それは身体だけではなく、言語も白くする。


帽子「□...まだ...□□ッ...氏□わけには...」


魔剣士(──この光...まさかッ!?)


魔剣士「へェ...良い線いってるなァ...その魔剣、差詰めユニコーンの代物だろ?」


魔剣士「──みせて...みろやああああアァァァァァァァァッッッッ!!!!!!」


帽子「────いかないんだあああ□□□□□□□□□□□□□□□ッッッッッ!!!!!!」


―――――――ッッッ!!

音にならない鍔迫り合い。

衝撃と衝撃がぶつかり合う音、その余波で賢者の塔の壁が悲鳴を上げている。


帽子「□□□□□□ッッッッ!!!!!!」


魔剣士「へェ...お前キテるぜェッッ!!!!」


帽子「□□□ッッ!!!!」


魔剣士「小細工なしだァ!!! お前を頃してやるよォォォッッッッ!!!!!」


帽子「□□ッッッ!!!!!」


―――ッッ!!!! ッッッッッ!!!! ――ッッ!!!

激しい轟音、それは意識を失っていた者を起こすのには申し分なかった。

この世のものとは思えない光景に、女賢者は戸惑いを隠せなかった。


女賢者「な、なにが起こってるんですか...」


女賢者(目は覚めましたけど...と、とても参加できない...激しすぎる...)

317: 2018/12/01(土) 23:39:54.51 ID:651egkh80

魔剣士「オラオラオラオラァッッ!!! どうしたァッッ!?」


帽子「□□□□□□□□□□□ッッッッッ!!!!」


女賢者「た、建物がボロボロに...」


女賢者(剣気だけで...魔法のマの字もないのに、この規模の戦いができるのですか...!?)


帽子「□□ッッッ!!!!」


魔剣士「はっはァッ! わりィけど、もう時間がねぇみたいだァッ!」


帽子「...□□ッッ!!!」


魔剣士「これが最後の一撃だァ...てめぇも繰り出してみろォ! できんだろッ!!!」


時間がない、それは本来の意味ではない。

魔剣士は帽子の限界を予期していた、あの戦い方じゃ持たないことを。

だからこそ誘った、本気が出せるうちに全力をぶつけてもらう為に。


女賢者「──まずい! "防御魔法"っっ!!!」


帽子「□□□□□ッッッッッ!!!!!!」


魔剣士「喰らいな..."竜"の一撃をなァッッッ!!!!」


―――――――――――――――――ッッッッッ!!!!!!!!!!!!!

お互いの魔剣から発せられるのは、剣の気。

魔法ではない何かが、飛ぶ斬撃が耳を貫く重音を鳴り響かせた。


~~~~

318: 2018/12/01(土) 23:40:50.95 ID:651egkh80

~~~~


隊長「...塔の1階部分が消し飛んでいる...ッ!?」


隊長(帽子達は大丈夫かッッ!?)ダッ


隊長「──帽子ッッ!! 女賢者ッッ!!!」


消し飛ばされた賢者の塔の一部。

激戦が伺える、彼らの安否を確認する為に彼は走り出した。

するとそこにたのは、3人であった。


女賢者「──きゃぷてんさんっ!?」


隊長「──お前はッ...!?」スチャッ


魔剣士「...あァ? 魔闘士はどうした?」


隊長「...撃退してやった」


魔剣士「...へェ...やるじゃねぇか」


隊長「...帽子から離れろ、今すぐにだ」


帽子「ぐっ...あっ...」


魔剣士「へーへー、わかったよ...これ以上なにもしねェッて」


帽子「ま...て...」


魔剣士「...はんッ、"馬"が"竜"に勝てると思うなよ」


魔剣士「じゃあな────」


魔剣士は颯爽と、どこかへ消えてしまった。

それを追うものはいない、今必要なのは応急処置。

倒れ込んだ帽子に治癒魔法を施す彼女が情報を共有してきた。

319: 2018/12/01(土) 23:41:44.87 ID:651egkh80

女賢者「な、何者だったんでしょうか...魔王軍でもなさそうですし」


隊長「さぁな...それより帽子は大丈夫か」


帽子「あぁ...だが、もう何もやる気はおきないよ...立てやしない」


女賢者「わ、私も...」ヘタッ


隊長「...ほら、おぶされ」


女賢者「へっ、きゃぷてんさんは大丈夫なんですか?」


隊長「お前らよりは大丈夫だ、早くしろ」


女賢者「は、はい...」


隊長「よっと...おい帽子、手をとれ」


帽子「あぁ...ありがとう」


女賢者「私と武器をおぶさり、帽子さんの肩をもつなんて...どんな体力してるんですか?」


隊長「さぁな、俺ももう限界が近い、さっさと布団に入って寝よう」


帽子「と、いうか...ホコリ立ってない2階ならどこでも寝れそうだよ...」


女賢者「私も...恥ずかしながら」


隊長「そうか...じゃあ、そこで我慢してくれ...」バタン


女賢者「──びっくりした...でも...私も...」スヤァ


帽子「正直...どうでもいい...寝たい...おやすみ...」スヤァ


やはり、彼も限界であった。

2階にたどり着くやいなや、倒れるようにゆっくりと意識を失った。

そして彼らもそれに続く、隊長たちの激動の1週間は終わった。


~~~~

320: 2018/12/01(土) 23:42:19.46 ID:651egkh80

~~~~


大賢者「なぁ~に倒れておるんじゃ...」


隊長「...ん?」パチ


大賢者「おはよう」


隊長「...大賢者か」


大賢者「女賢者も、帽子も氏んでるように寝ているのう」


隊長「いろいろあったからな...」


大賢者「ふむ、まぁその話はあとで聞こう」


大賢者「修行はおわったぞ、丁度1週間でな」


隊長(...海底王国をでたときは5日、つまり2日間ここで寝てたわけか)


隊長(...記憶が正しければ、この世界にきてから2週間目か)


隊長「...魔女たちは?」


大賢者「お主らと同じで、どこかで氏んだように寝てるわい」


隊長「...とりあえず、一旦集まるか」


大賢者「そうじゃのう...ほれ、女賢者」


女賢者「うぅん...ふぇ...ん?」


女賢者「...だ、大賢者様!」


大賢者「ふむ、大分打ち解けたようじゃのう」


女賢者「す、すみません! 顔洗ってきます!」ピュー


大賢者「...歳相応の女賢者を見るのは初めてじゃ、いいことじゃのう」


隊長「いくつなんだ?」


大賢者「ふむ、引き取って8年...当時は13歳じゃったかから21歳かのう」


隊長「...若いな」


大賢者「...手を出すなよ?」


隊長「...ボケが始まったか?」


大賢者「ほっほっほっ! 帽子を起こしてやるのじゃ」

321: 2018/12/01(土) 23:43:13.97 ID:651egkh80

隊長「...帽子、起きろ」


帽子「────」


大賢者「...氏んでいるんじゃないかのう」


隊長「...帽子、スライムたちに会えるぞ」


帽子「────ッ」ガバッ


帽子「おはよう」


大賢者「うむ、おはよう」


隊長(...現金なやつ)


隊長「...あーそうだ、マガジンに弾を込めないと」


~~~~


~~~~


女賢者「おはようございます」


帽子「おはよう」


隊長「...まる2日は寝てたぞ」


女賢者「...どおりでお腹の虫が」


帽子「どうしようもない程、お腹減ったね」


女賢者「私は食事の準備をしてきます」


女賢者「...この1週間の事はそこで語りましょう」


隊長「...だな、気になることは山ほどある」


女賢者「...そろそろですかね、ではお二人で水入らずで」スタスタ


帽子「...変に気を使ってくれたね」


隊長「まだ21歳らしいぞ、若いのにしっかりとしている」


帽子「私の1つ下か」


隊長(...こいつもこいつで若いな)


―――ガチャッ!

すると突然、扉は開けられた。

わずか一週間だというのにもかかわらず、懐かしく思えてしまう。

心なしか顔つきが変わった、それでいていつもどおりの彼女たちがそこにいた。

322: 2018/12/01(土) 23:43:59.88 ID:651egkh80

魔女「はぁ~...疲れた」


スライム「まだねむいよ...」


ウルフ「ふぁ~あ...! この匂いは...ご主人っ!」


隊長「おう、久しぶりだな」


ウルフ「♪」スリスリ


スライム「...帽子さんっ!」


帽子「やぁ、見違えたね」


スライム「あなたも? なにか顔つきが変わった?」


帽子「...いや、決心がついただけだよ」


スライム「??」


魔女「...きゃぷてん、久しぶりね」


隊長「...あぁ、どうだったんだ?」


魔女「ふふっ、それは実戦までお楽しみに!」


隊長「...頼りにしてる」


帽子「さて、女賢者さんが食事の準備をしてくれてるし、行こうか」


ウルフ「ご飯っ!」


魔女「...やっとまともなモノを食べれるのね」


隊長「...何を食べてたんだ?」


魔女「...魔法薬を固形化したモノ」


隊長「...ものすごくまずそうだな」


魔女「ものすごくまずいのよ...」


~~~~

323: 2018/12/01(土) 23:44:59.62 ID:651egkh80

~~~~


大賢者「ほっほっほっ、ではまずこちらから話そう」


大賢者「皆は食べながら聞くといい」


食卓を大人数で囲む、皆もの凄い勢いで食らう。

各々空腹の事情があった、食べることに集中せざる得ない。

そんな彼らに大賢者は図らう、彼1人だけが会話を続けてく。


大賢者「まず、ウルフについてじゃ」


隊長「...」モグモグ


大賢者「ウルフには、魔力を体術に活かすモノを教えた」


帽子「と、いうと?」モグモグ


大賢者「魔力で身体を強化したのだ、格闘術はずば抜けているぞ」


隊長「ほう」モグ


ウルフ「わふっ」モグモグ


大賢者「スライムには、補助魔法とスライム固有の能力を強化した」


帽子「ふむ..."水化"とか言うやつかい?」モグ


大賢者「そうじゃ、今のスライムに炎属性や水属性は無意味じゃのう」


大賢者「水化、それは身体を水と同化させることで様々な恩恵を受けれるのじゃ」


スライム「えっへん!」ゴクゴク


大賢者「じゃが、スライム族は自身の属性関係なく風属性に弱いのじゃ、それを気をつけろい」


大賢者「まぁ、恐らく一番成長したのはスライムじゃな、楽しみにしておれ」


スライム「...えっ!? そうなのっ!?」


魔女「う~ん...私もそう思うなぁ」モグモグ


帽子「すごいな、スライム...」モグ

324: 2018/12/01(土) 23:45:54.02 ID:651egkh80

大賢者「最後に魔女、彼女は本来の修行に近い強化をした」


大賢者「彼女の属性である、風属性と補助魔法を強化...この3人で一番魔法が使える者は魔女になったのう」


魔女「ふふん!」モグモグ


大賢者「それに、錬金術も習得したから...お主のその武器も思う存分に使えるじゃろう」


隊長「なんだと...それは助かる」モグ


大賢者「特に雷魔法に注目じゃな、期待しておれ」


魔女「だってさ!」モグ


隊長「あぁ、頼りにしている」モグモグ


彼女らの修行の成果、それはかなりのモノであった。

場の雰囲気はかなり明るいもの、だがどうしてもそれを変えなければならない。

食事を一旦やめ、帽子は真剣な声色で話を振った。


帽子「...では、こちらで起きたことを話そう」


女賢者「...そうですね」


大賢者「...何が起きたんじゃ?」


帽子は、この1週間に起きたすべて語った。

それはあまりにも、沢山の出来事であった。


大賢者「...なるほどな」


魔女「そんなことがあったのね...」


スライム「...」


ウルフ「くぅーん...」

325: 2018/12/01(土) 23:46:48.97 ID:651egkh80

大賢者「...分かる範囲で順に答えよう」


大賢者「まずその剣はその通り、"魔剣"じゃの」


帽子「魔剣かぁ...」


大賢者「残念じゃが、魔剣については強力な剣ということしかわからんのう...」


帽子「...なるほど」


大賢者「...では次に、復讐者が使った"属性付与"という魔法...単純なおかつ、強力な魔法じゃのう」


帽子「どういう魔法なんだい?」


大賢者「簡単にいえば、武器や物に属性をつけることじゃ」


大賢者「剣に炎の属性付与をすれば...その剣に炎が帯びる、そういうことじゃ」


魔女「私も、覚えたわよそれ...とても覚えるのに時間がかかったわ...」


女賢者「え...凄いですね、私には無理だったのに...尊敬します」モグモグモグモグ


魔女「ありがと、きっとあんたもそのうち習得できるわよ」


大賢者「まぁ、魔法を維持させればそれに近いこともできるが、それだと魔力の消費量が凄まじくなる」


大賢者「一方で属性付与なら、一度かけてしまえば数時間はそのままじゃ」


大賢者「魔法で一番魔力を消費させられるのは維持することなんじゃ、だからこそ属性付与の手軽さは強力なのじゃ」


帽子「...なるほど」


大賢者「そして...あくまで仮説じゃが、その魔剣には"光属性"の魔力を感じる」


女賢者「光属性...通りで感じたこともない魔力なわけです」


大賢者「海底王国や、その魔剣士のときに帯びたのは光属性のなにかじゃ」


帽子「...そんな大層な武器なのかこれ」


大賢者「うむ、大事にするがよい...そうすれば自身も強くなる」


スライム「...難しくなってきた」

326: 2018/12/01(土) 23:48:17.53 ID:651egkh80

大賢者「次で最後じゃ..."魔闘士"と"魔剣士"については宛がある」


帽子「...いったい何者なんだい?」


大賢者「あれは魔王軍ではなく、魔王の息子"魔王子"の付き人達じゃ」


帽子「魔王子...?」


大賢者「じゃが、魔王子は数年前に行方不明になったと噂されておる」


帽子「...もしかして彼らはその魔王子を探しているのか」


大賢者「うむ...そして、もしかしたら魔王子は交友的かもしれんぞ」


帽子「え、なんだって...?」


大賢者「魔王子が失踪した直前に...父の政策が気に入らず、歯向かったと噂もたっている」


大賢者「可能性の話じゃが、魔王子と利害の一致ということで味方にできるかもしれん」


帽子「...魔王の息子となれば、色々と心強いな」


大賢者「...魔王城に向かいつつ、魔王子も探してみればどうじゃ?」


大賢者「そしたら、魔王子に平和的交渉を...とにかく可能性が増えるってことじゃな」


帽子「...そうだね! 探したほうが良さそうだ!」


隊長「それなら、あいつらより先に魔王子を見つけなければな」


帽子「そうだね...魔王子がどんな考えをしているのか置いておいて、彼らがいては交渉する暇もない」


隊長「...どうやら、次の目的が決まったようだな」


ウルフ「がんばるっ!」


スライム「魔王の息子...怖かったらどうしよう...」


魔女「どっちにしろついていくだけよ」


帽子「準備ができ次第、出発だ!」


大賢者「ふむ、では出発時にまた尋ねれおくれ」


女賢者(...ごちそうさまでした)


魔女(どうでもいいけど、この子すごい食べてたわね...)


隊長「魔女、これも複製できるか?」


魔女「できるけど...ってこれは?」


隊長「これは手榴弾だ、爆弾だな」


~~~~

327: 2018/12/01(土) 23:49:09.98 ID:651egkh80

~~~~


大賢者「それにしても、海底の戦争を止めるなんてな」


帽子「あれはさすがに骨が折れたよ」


スライム「なんかすごいことしてたんだね」


隊長「...準備できたぞ」


魔女「おまたせ」


魔女に手榴弾を複製してもらった。

だがその間に帽子は1つ案を持ち出してきた。

それは冒険のしおり、これから先の目的地についてだ。


帽子「キャプテン」


隊長「どうした」


帽子「一度、塀の都に寄ってもいいかい?」


帽子「民になにもいわずに出て行って、心配をかけてると思うんだ」


帽子「...一度、旅を宣言してこないとって思ってね」


隊長「...たしかに、そうとも言えるな」


魔女「それなら、そこで旅の支度をするっていうのはどう?」


帽子「それはいいね、そうしよう」


隊長「それじゃ、きた道を戻るとするか...」


大賢者「まてまて、そこで出番のようじゃな」


女賢者「転地魔法の出番ですね」


隊長(例の魔法か...)


隊長「...では、頼む」


帽子「...大賢者様、本当にありがとうございました」


大賢者「いいんじゃ、いいんじゃ」


大賢者「皆がいなければ、氏んでいたし...女賢者も成長しなかったじゃろう」


女賢者「...帽子さん、きゃぷてんさん...どうかご健闘を」

328: 2018/12/01(土) 23:49:52.95 ID:651egkh80

大賢者「...復讐者の言葉が本当なら、まだ時間があるようじゃな」


大賢者「魔界に突入するための準備をしっかりするんじゃぞ...」


帽子「えぇ、問題は魔界の戦闘がどれほどのものか...」


大賢者「大丈夫じゃ、魔剣士や魔闘士より強い者はそういないはずじゃ...」


大賢者「それに打ち勝ったのなら、きっと魔界でも勝てる...」


大賢者「...話が長くなってしまった、では気をつけるのじゃぞ」


隊長「あぁ...また会おう」


帽子「さらば...」


魔女「...この恩は忘れないわ」


スライム「がんばってくるよ!」


ウルフ「バイバイ!!」


大賢者「..."転地魔法"」


隊長たちが光にまみれる。

光が消えると隊長たちも消えていた。

魔法が彼らを遠くまで運んでくれた。


大賢者「...頼んだぞ」


女賢者「ご達者で...」


大賢者「ところで、1階を修理せねばじゃのう...」


女賢者「げぇ...」


~~~~

329: 2018/12/01(土) 23:50:35.01 ID:651egkh80

~~~~


隊長「ここは...」


気がつくと、彼らは草原に足を踏み入れていた。

見覚えがあるここは、草原地帯。

大賢者の魔法が、確かに彼らを運んでくれた。


帽子「すぐそこに塀の都があるね」


スライム「わたしたちはどうしよう...」


隊長「...お前たちはここで待機しててくれ」


帽子「悪いね...ここは魔物への偏見があるんだ」


ウルフ「わんっ!」


魔女「はいはい、早く戻ってきてよね」


隊長「あぁ...なにか欲しい物はあるか?」


ウルフ「おかしっ!」


スライム「お水っ!」


魔女「うーん...あっ、錬金術に火種と紙がいるの」


隊長「そうなのか」


魔女「一応今もある程度あるけど...予備も買っておいて!」


帽子「うん、わかったよ」


隊長「...ではいってくる」


~~~~

330: 2018/12/01(土) 23:51:28.09 ID:651egkh80

~~~~


門番1「止まれ」


門番2「...この前の奴じゃないか」


相変わらず、門番の2人は隊長を呼び止める。

だがそこにはもう1人いる、その彼は帽子を脱いだのであった。


隊長「...」


帽子「いや、私だ...通してくれないか?」


門番1「──お、王子様!?」


門番2「いままでどちらに...まさか、そいつに連れさらわれていたのですか!?」


帽子「違うよ、彼は私を護衛してくれていたのさ」


門番2「し、失礼いたしました...」


帽子「いや、勝手にいなくなった私に非がある...」


帽子「悪いが、通らせてもらうよ」


門番1「はっ! どうぞお通りください!」


隊長「...本当に王子だな」


帽子「いや、今は帽子だよ」


~~~~

331: 2018/12/01(土) 23:52:41.84 ID:651egkh80

~~~~

帽子「──な、なんだこれは...!?」


人混みは前回きた時と同じだが、明らかに様子がおかしい。

街には、魔物に対しての掲示物が散乱されていた。


隊長「こんなに魔物は恨まれているのか...?」


帽子「...魔物氏すべし、騎士団が魔物駆除作戦決行、根絶やしにしろ...なんて物騒なことを書いているんだ」


隊長(何だこの街...なにか違和感...雰囲気を感じる...)


隊長(そうだ...これは神と名乗る者の────)ピクッ


隊長「──帽子をかぶれ!」


帽子「──ッ!」サッ


町民1「貴様ら、よそ者だな...これを読めッッ!!」グイッ


帽子「これは...聖書?」


この世界にも宗教は存在する。

しかしこの宗教の教え、昔から魔物を悪く扱うモノであった。

それがこの都の魔物嫌いを助長させてしまったのか。


隊長「まさか...これを読んでか...?」


帽子「い、いや...聖書自体は昔から読まれていたさ...この都にもある程度は浸透していた」


帽子「確かに、魔物を悪く書かれていたけど...ここまで煽られるようなはずでは...」


帽子「これではまるで...」ピクッ


そこで、ある張り紙が目に入る。

その内容はこの都の王の謁見を伝えるものであった。

なぜ今になって昔から読まれていた聖書に煽られてしまったのか、答えはこの国の者に聞くしかない。


帽子「...」


隊長「いくぞ...」


帽子「あ、あぁ!」


~~~~

332: 2018/12/01(土) 23:53:50.96 ID:651egkh80

~~~~


帽子「間に合った...」


隊長「あぁ...どうなっているんだ...?」


広間にたどり着いた、そこは人だかりでとても進む事はできない。

そして中心の櫓に存在するのは当然彼の父であった。

これを王と呼ばずになんと呼ぶのか、彼はついに発言を行う。


王「妻は...私の優しい妻は...庭にケガをしている魔物を見つけて...癒してあげていた...」


王「当時の私は魔物に嫌悪感をもっていなかった...とても微笑ましいとおもっていた...」


王「なのに...魔物は恩を仇で返した...!」


王「私の妻は...憎きことに、魔物に殺された...」


王「...赦されることではいッ!!」


町民1「そうだそうだ!」


町民2「魔物を根絶やしにしろッッッ!!」


町民3「殺せッッッッ!!! 魔物を殺せッッッ!!!!」


王の言葉に煽られて、町民たちは興奮してゆく。

父の言っていることは事実ではないかもしれない、帽子はそれに怒りを感じ始めていた。

なぜ決めつける、謀頃したのは魔物ではないかもしれないというのに。


帽子「ど、どうなってるんだ...ッ!?」


隊長「落ち着け...」


王「...そして、私の最愛の息子...」


王「それも行方不明に...きっと魔物の仕業であろう...」


町民4「なんだって!?」


町民5「やっぱり、魔物は信じられん...」


帽子「待て、私はここに────」ダッ


隊長「──ッ!」ガバッ


あらぬ発言に、帽子が声を上げようとした。

それを隊長が抑える、ここで動いてはいけない。


帽子「ど、どうして止めるんだッ!?」


隊長「今注目をされたら、何が起こるかわからん...ともかく抑えろ...」

333: 2018/12/01(土) 23:54:42.13 ID:651egkh80

王「そして私は...神から啓示を頂いた...魔物を根絶やしにしろと...」


王「私は決断した...城の兵士たちで騎士団を作成し、魔物を駆逐することを...」


王「彼らたちなら草原地帯一辺を駆逐してくれているだろう...その神の力を得た装備を持つ彼らなら」


帽子「...ッ!」


隊長「...」


隊長(まるで悪質なCult...読み手の曲解だ)


帽子「く、狂っている...こんなもの...まるで神の狂信者だ...」


隊長「...」


さすがの隊長も、冷静いられなくなりそうだった。

しかし、王の一言でふたりとも青ざめてしまう。

それはなぜなのか、騎士団と呼ばれる者たちが影響していた。


王「──そして今日! 騎士団が帰ってくる!」


町民6「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


町民7「祭だ! 祭りを開け!!!」


町民8「穢れた魔物が少しでもいなくなったのね!」


帽子「キャ、キャプテン...?」


隊長「ッ...!?」


帽子の顔が真っ青になる、隊長も硬直してしまう。

騎士団は草原地帯の魔物を駆逐した、ならば彼らはどこにいるのか。

彼らはどこからこの都へ帰還するのか、それは魔女らがいる草原地帯である。


帽子「──も、戻るぞ!!!」


隊長「──あ、あぁ!」


彼らはきた道を戻ろうとする、だが時はすでに遅かった。

後ろを振り返れば、そこには甲冑を着た者たちが行進をしていた。

そして、先頭のリーダーと思わしき人物が王に向けて発言する。


王「おぉ! 騎士団よ、よくぞ戻ってきた」


騎士団長「はっ、募る話はありますがまずはこちらを御覧ください...」


隊長「──なっ...」


帽子「あああああ...」

334: 2018/12/01(土) 23:57:13.73 ID:651egkh80

騎士団長「今日、ここに帰還する際に...愚かにも都付近に居座っていた魔物を捕らえました」


指示通りに動いてる騎士団の中から、囚われている者が3名。

その顔は知りたくないほど知っていた、似合わない鎖でつながった首輪をしていた。

一体なぜ、賢者の修行を終えた彼女たちがこうも簡単に囚われているのか。


町民9「お、おい...魔物を連れてきて大丈夫なのか...?」


騎士団長「ご安心を...神のご加護を頂いている...魔物など怖くはない」グイッ


スライム「いたいっ...」


魔女「放しなさいよ!」


ウルフ「がるるるるるる...」


魔女、スライム、ウルフは囚われの身に。

首輪を繋がれそれを引っ張られているその姿など見たくもなかった。

なぜ彼女たちは魔法を使わないのか、なぜか光り輝いている槍を突きつけられているからなのか。


帽子「──キャプテン! はやくなんとかしなければッッッ!!」


騎士団1「黙ってこっちにこい!!」グイッ


魔女「きゃっ────」


──ドサぁっ...

乙女の悲痛な叫び、婦女暴行が彼の逆鱗に触れる。

だがまだ彼は動けない、その現実味のない光景が足を縛る。


隊長「は...?」


帽子「──キャプテンッッッ!!!」


ウルフ「──はなせっっ!! はなせって言ってるだろおおおおぉぉっっ!!」


彼よりも早く動いたのは、同じく囚われている狼。

魔女が虐げられたことをきっかけに、ウルフの感情が爆発する。

だが抵抗虚しい、首輪が彼女を犬にしてしまう。


騎士団2「うるさい犬だ...」グイッ


ウルフ「ひっ────」


帽子「──キャプテンッッッ! おいッッ!」


──バキィッ!

ウルフのお腹はそんな音をたて殴られた、隊長のモノに比べれば生ぬるすぎるそのパンチ。

それが彼女の目元に涙を溢れさせる、その光景が嫌という程視認できてしまった。


ウルフ「ぁ...ぅ...」

335: 2018/12/01(土) 23:58:14.91 ID:651egkh80










「た...たすけて...ごしゅじん...」










336: 2018/12/01(土) 23:59:44.03 ID:651egkh80

その声は誰にも回りにいるギャラリーたちには聞こえなかっただろう。

だが消えゆくような声は、隊長にはしっかりと聞こえていた。

感情が爆発する、ようやく彼も硬直の仮面を剥ぎ取ることができた。


隊長「────ッ」


隊長「...ウルフゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウッッッッッ!!!!!」


声を荒げながら野次馬を押しのけて、見世物と化している場所に特攻する。

街人たちがざわめく、そしてその場から離れようとして視界が晴れてゆく。


町民10「な、なんだ!?」


町民11「きゃぁあああっ」


魔女「...キャプテンっ!?」


スライム「帽子さんも...っ」


ウルフ「ご...ごしゅじん...」


騎士団長「...魔物の肩を持つ者か? 捕まえろ」


隊長の目の前に数十人の騎士団が現れた。

だがそれが何だというのか、彼は隊長である。

これまで様々な障害を押しのけてきた、あまつさえは人頃しのプロでもある。


隊長「────帽子ッ!!!」


帽子「わかってるッッ!!!」


隊長「──いけッッ!!」


帽子「あぁッ!!」ダッ


──ガキィィィイッィィンッッッ!!!

隊長は甲冑越しにストレートを決め込む。

拳に鈍い痛みが走るが、今はそれどころではなかった。


騎士団1「うわあああぁっっ!?」


騎士団2「なんで馬鹿力だ...こいつも魔物か!?」


騎士団3「お前ら、剣を抜け!!」


隊長が一人で騎士団を陽動し、帽子を魔女たちを助けにいった。

人間業とは思えないその暴れっぷりに騎士団は慌てふためく。

337: 2018/12/02(日) 00:00:58.11 ID:t/n958LI0

騎士団長「王よ、こちらに避難を...」


王「あ、あぁ...」


騎士団長は帽子を察知し、王を避難させる。

その間に帽子が彼女たちに接触した。


帽子「──大丈夫かッ!?」


スライム「帽子さんっ...ごめんなさい...」


帽子「話は後だッ!」


魔女「首輪を外して! まともに動けないわっ!」


ウルフ「そ...そいつが...っ!」


騎士団4「...鍵は渡さんぞ!!」


帽子「クソッッッッ!!!!!」スッ


──キィンッ! カチャッ!

騎士団と帽子の剣劇が始まる、だがその優劣は明らかだった。

この程度の騎士なら簡単に勝てるだろう、そのはずだった。


帽子「────逃げるなッッ!!」


騎士団4「時間稼ぎをすれば、お前の仲間などすぐに...」


帽子(このままじゃ時間がッッッ...!!)


時間を稼がれてしまえば、状況は不利になる。

光を放つ槍がコチラに向いている、そして徐々に距離を詰めてきている。

槍兵がこの剣劇に参加されては、どう考えても帽子が負けてしまう。


隊長「──帽子ッッ!!」


帽子「────ッ!?」


隊長「待ってろッ...!」


──ガッッッ!

騎士の剣をアサルトライフルで防御する。

彼のその眼差しは、すでに騎士団に向けていなかった。


騎士団1「──オラァッッ!!!」ドカッ


──ガチャンッ...!

だがよそ見は禁物、いくら帽子の様子が気になるからといえ。

騎士団の1人が彼のアサルトライフルを蹴飛ばした。


騎士団1「氏ね!!!!!!」

338: 2018/12/02(日) 00:02:12.27 ID:t/n958LI0

隊長「──ッ!」スチャ


─ダンッ!

彼にはもう1つ武器がある、むしろこちらのほうが恐ろしい。

手のひらサイズのその武器、その視認性の悪さと威力が相まる。

騎士団の持つ剣がハンドガンの射撃により弾かれる。


騎士団1「ぐっ...剣が吹っ飛んだだと...」


隊長「──どけッッ!」ドカッ


騎士団1「うああっっ!?」


騎士団2「なんて力だッ!?」


隊長は騎士たちに捨て身のタックルを浴びせる。

すると見世物広場と化している方向への視界が開く。

そのまま彼は僅かな隙間へ飛び込んだ、そして構えたのは。


隊長「────ッ!」スチャ


──ダンッ ダンッ ダンッ!

帽子にはその光景がスローモーションで見えていた。

ありえない、あの小さな武器から発射される鉄のようなモノがこちらに。

その軌道にはブレがない、とてつもない精度を誇っていた。


帽子「なッ...!?」


騎士団4「──うわっっ!?!?」


──チャリンっ カラカラカラ...

本当に僅かな隙間からあの音速で鉄を飛ばす武器を構えてた。

1秒も経っていない、その時間で照準を合わせていた。

それは奴の篭手を捉えていた、篭手ごと弾き飛ばされた鍵が帽子の足元に転がる。


帽子「──みんなッ!」ガチャガチャ


ウルフ「げほっげほっ...」


魔女「いたた...」


スライム「うぅ...ありがとう」


帽子は一番ぐったりしているウルフを背負う。

槍兵は愚か、騎士団の多数は状況を悪く思ったのか。

少し距離を置き始めていた、逃げるなら今しかない。

339: 2018/12/02(日) 00:02:52.83 ID:t/n958LI0

帽子「...逃げるぞッ!」


スライム「う、うん...っ!」


魔女「──わかったわっ!」


2人ともすぐに走りだそうとした。

その時であった、肝心の人物が合流していない。

飛び込みからの射撃を行えば、その身体は無防備になる故に。


騎士団5「いいかげんにしろ!!!! この化け物め!!!!」ガシッ


隊長「くッ...!?」


騎士団6「全員でのしかかれ!」


魔女「──きゃぷてんがっ!!」


帽子「────そんなッ!?」


隊長は完全に拘束された。

帽子たちは立ち止まり、彼を助けようとする。

すると彼は吠える、その自己犠牲が帽子を惑わす。


隊長「俺に構うなッッッッ!!!!!!!!!!!」


騎士団7「そいつらも逃がすな!!!!!」


騎士団8「処刑しろッ...!!」


帽子「──くッ...行くぞッッッ!!」


魔女「待ってよっ!!! あいつが氏んでもいいのっ!?」


騎士団長「逃しはせんぞ...」


気づくと進路には騎士団長が立ちふさがっていた。

時間をかけている暇はない、逃げるか、立ち止まるかの2つ。

その2つの選択肢が帽子を悩まさせる。


帽子「くッ...」


魔女「帽子っ! どうすればいいのっ!?」


隊長「──いけえええええええええッッッッ!!」


騎士団長「貴様ら...覚悟しろ」


スライム「帽子さんっっ!!!」


帽子が選択を迫られ軽く混乱する中、耳元で声が聞こえた。

忘れてはいけない、仲間の大切さを思い出させる一言。

340: 2018/12/02(日) 00:03:20.12 ID:t/n958LI0










「ごしゅじんを...たすけてあげて...」










341: 2018/12/02(日) 00:04:11.66 ID:t/n958LI0

帽子(──あぁ、彼はいつもすぐに決断してくれていたな...)


帽子(キャプテン...君はすごい...)


帽子「──頃すなッ、いけッ!!」


魔女「──"雷魔法"」


──バチバチバチッ...!

稲妻が彼を拘束している騎士たちにぶちあたる。

その雷は仲間を助けたいだけである、威力は絶大でいても殺傷力はなかった。


騎士団6「うわああああ!?!?」


騎士団7「魔法だ!! 魔物の仕業だ!!」


騎士団8「皆の者! 槍を...槍兵はどこに行ったッ!?」


帽子「スライムッッ! ウルフをッッ!!」ポイッ


スライム「──ウルフちゃんっ!」ダキッ


なかば強引にウルフをスライムに向けて投げる。

彼も助太刀しなければならない、あの大切な異世界の男を。

だから、目の前の障害を斬り伏せなければならない。


騎士団長「どこの馬の骨かしらぬが...王に恥をかかせた罰だ」


帽子「馬の骨にめちゃくちゃにされてるのは誰だろうねッッ!!!」


──ガギィィィィィィインッ...!

大男と華奢な男の鍔迫り合いが始まる。

体格では圧倒的に帽子が不利だが、なぜか帽子が圧倒していた。

それは、ユニコーンの魔剣が彼に力を与えているからであった。


騎士団長「ちぃぃ...貴様ら...」


帽子「悪いけど、とっとと逃げさせてもらうよ!」


騎士団長「...」


騎士団1「反逆者を殺せッッ!!!」


騎士団2「逃すなッッ!!!! 処刑だッッ!!」


隊長「──魔女ッッ!」


魔女「あんた達...ただじゃ置かないんだから...!」


──バチバチバチ...

魔女の周りに電気のオーラが纏う。

感情が彼女の魔法を強くする、電撃が人を頃すことなど容易。

342: 2018/12/02(日) 00:05:16.40 ID:t/n958LI0

隊長「...頃すなッッ!!!」


魔女「わかってるっっっ!!!!!!!!!!」


──バチィンッッッ!

その言葉と裏腹に、雷魔法が最高の威力に達した音が聞こえる。

それには訳があった、なぜ魔女たちが捕まっていたのかが理由であった。


魔女「こいつら! 魔法を無力化してくるのよっ!!」


隊長「...何ッ!?」


魔女「そうじゃなきゃ、簡単に捕まらないわよっっ!!!」


騎士団9「恐れるな! 我々には神のご加護がある!!」


騎士団10「囲め!!! 逃すなッッ!! 槍兵の到着を待てッ!」


スライム「魔女ちゃん!」


魔女(本当は私がウルフに治癒魔法をしたいけど...そんな余裕ないっ!)


魔女「スライム! 私たちが壁になるからウルフを癒やしてあげてっっ!」


スライム「うん!」


隊長「スライムも治癒魔法を使えるのか!」


魔女「そういうのは後! それより前ッ!!」


騎士団10「貴様の罪は重いぞっっ!!!」


隊長「──デヤッッッッ!!!!」


──ガキィィィィィィンッ!!!!

鉄を殴る音が響き渡る。

彼の手はもう血だらけ、アドレナリンが痛みを緩和させていた。


騎士団10「こ、こいつ...鎧越しにこの威力...!」ガクン


隊長「くっ...拳が痛むな...」


スライム「..."治癒魔法"」ポッ


ウルフ「あ...ありがとっ!」


魔女のものと比べると、少し頼りない光がスライムから現れる。

それでもウルフを癒やすのには十分であった。

気力を取り戻した狼は立ち上がった。

343: 2018/12/02(日) 00:06:48.47 ID:t/n958LI0

騎士団9「突撃しろっっっ!! 何を恐れているっっ!!!」


騎士団11「あの人間、化け物みてぇだっっ!!!」


隊長(...魔法は無力化してくる奴がいるみたいだな、ならば頼れるのは物理的な攻撃だけだ)


隊長「...俺とウルフで突破するぞ! 魔法はだめだッッッ!!」


隊長「ウルフ! 殺さない程度に力を発揮しろッッッ!!」


ウルフ「わかっった!!」


スライム「帽子さんはっ!?」


隊長「あっちだッッ!!! いくぞッ!」


ウルフ「――──ハッ!」


──ダダダダダダダダダダダダダダダッッッッ!!!!!

その蹴りからは、魔剣士が使った剣気のような質量のある何かが飛び出していた。

それが何十回にも及ぶ連続蹴りから発せられる、威力と殲滅力はこの場にいる者の中で一番。

ウルフは立ちふさがった騎士団のすべてを退けた。


隊長「...あとで褒めてやる!」


ウルフ「やった!!」


魔女「行くわよっ!!」


~~~~


~~~~


帽子「──よっと」


──ギィンッ カンッ!! ガギィィンッ!!!

細い一撃が、騎士団長の剣を押しのける。

魔剣士と戦い、圧倒的な経験を積んだ彼に勝てる人間などそうそういない。


騎士団長「貴様...やるな...」


帽子「それはどうも────」


──ガギィィィィイィィィィィイィィィンッッ!!!

完全に冷静さを取り戻した彼。

そんな帽子に騎士団長は剣を弾き落とされてしまう。

勝敗はついた、神のご加護とは何だったのか。


騎士団長「くっ...剣が...」


帽子「剣術に神のご加護は効かなかったみたいだね────」

344: 2018/12/02(日) 00:07:55.98 ID:t/n958LI0

騎士団12「──一斉にやるぞッッ!!!」スッ


騎士団13「者共! かかれぇぇええええいっっっ!!!」


帽子「──ッ!?」


──ザクッ ザクッ! ザクッ!!

帽子は突如として囲んできた騎士団に刺突される。

油断したわけではない、彼だもなかなかの手練であった。

だがその剣撃は不発に終わる、彼らが斬ったのは帽子ではなく水であった。


帽子「...!」ゴボボ


騎士団12「な、なんだ!?、水!?」


スライム「帽子さんっ! 大丈夫っ!?」


帽子(そうか、これはスライムの中か...!)ゴボボ


少し大きくなったスライムが帽子を体内に取り込む。

水に剣を刺してもなにも起きない。


隊長「出来したッッ! ウルフッ!!」


ウルフ「あたたたたたたたたたたっっ!!」


──ダダダダダダダダダダダダッッッ!!!

今度は拳の百烈拳が繰り出される。

当然、そこからは拳気と比喩できるモノが発射される。

それが騎士団を屠るのは簡単であった。


帽子「...ふっ、そういえば初めて全員で闘うね!」


隊長「あぁ!」


魔女「そういえばそうね」


スライム「ふっふっふ...私に物理攻撃は無意味だよ!」


ウルフ「ガルルるるるるるるるるっっ!!」


隊長「...このまま前方を強行突破だッ!!!」


魔女「それなら時間を稼いで! 私に策があるわよっ!」


スライム「あれをやるのね!」


ウルフ「ご主人! 魔女ちゃんを守ってね!!」


隊長「まかせろッッ!!!」

345: 2018/12/02(日) 00:09:13.15 ID:t/n958LI0

騎士団14「覚悟ッッ!!!」ブンッ


帽子「おっとっとっ! そうはいかないよ!」


魔女を護るべき、仲間の4人がそれぞれ抵抗する。

隊長はハンドガンや体術で、ウルフは卓越した格闘技で。

帽子は剣術で、そしてスライムは己の身を盾にすることで騎士団の攻撃を無力化させる。


魔女「ブツブツ...」バチバチ


魔女「ブツブツ...」バチバチバチ


魔女「ブツブツ...」バチバチバチバチ


――――――バチィンッッッッッッ!!!!!!

そして、彼女は充電し終えた。

今まで聞いたことのないその雷の音は凄まじかった。


魔女「いくわよっっっ!!!!!」


隊長「―――ッ!」


魔女「これでも無効化できるかしらっ! "雷魔法"ッッ!!!!!!」


――――――――――――――!

聞こえない、何も聞こえなかった。

その尖すぎる雷は、すべてを飲み込む。


騎士団14「よけろおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


魔女から超巨大な、とてつもない威力の雷球がとび出す。

雷球が通った場所には何も残らなかった、これが賢者の修行を終えた者に許される魔法。

人が巻き込まれた形跡は無し、絶妙な軌道であった。


魔女「...どうだっ!」


隊長(Comicbooksでこんな技を見たことあるぞ...)


帽子「...このまま城の外へッ!!」


そんな様子を影から見張る者が。

先程剣を弾かれてしまった、この国の兵の長。


騎士団長「...」


騎士団1「団長、氏者は今のところ出ていません、どういたしますか!」


騎士団長「...アレをもってこい...1人でも捕まえてみせる」


~~~~

346: 2018/12/02(日) 00:10:34.49 ID:t/n958LI0

~~~~


帽子「もう少しで外だ...ってッ!?」


魔女「──あいつらっ!!」


精鋭1「精鋭部隊の名にかけて、貴様らを捉える!!」


精鋭2「この光り輝く槍を受けてみろッ!」


スライム「あいつら!! 魔法を無効化する奴らだっっ!!!」


精鋭3「この槍の前では魔法は使えんぞ...魔物共め...っ!」


隊長「あいつらか...ッ!」


魔女「...だめ、魔法が使えないっっ!!!」


帽子「クソッ!!」


精鋭4「隙ありっっ!!!!」ブンッ


魔女「きゃっ!!!」


帽子「しまったッ!!!」


隊長「まずいっ! 分断されたッッ!!!」


隊長と帽子、魔女とウルフとスライムに分断されてしまった。

それよりもスライムたちの様子がおかしい、どうやらあの槍が封じているのは魔法だけではなさそうだった。

だがそれを伝えている暇などない、隊長にも襲いかかる者が続く。


隊長「──ッ!」


精鋭1「行かせはしないぞ...っ!」


隊長(...頃すことができるのなら、簡単なのだが)


隊長(流石に鎧相手に銃殺は厳しい...やはり頼れるのは体術か)


隊長「──ウルフッッ!!! 俺たちが行くまでスライムと魔女を守ってくれっっ!!」


ウルフ「うんっっ!!!!」


スライム「ごめんね、ウルフちゃん...」


魔女「あいつら...本当に厄介ね」


精鋭2「魔物め...頃してやる...」

347: 2018/12/02(日) 00:11:29.73 ID:t/n958LI0

スライム(──そうだ!)


スライム「ウルフちゃん! 魔女ちゃん! おねがい!」


魔女「──えっ!?」


魔女(スライムの身体の一部がどこかに伸びている...?)


スライム(どこだ...どこだ...っ!)


ウルフ「あたたたたたたたたっっっ!!!」


──ダダダダダダダダダダダダッ!!!!

ウルフの拳気が精鋭たちを近寄らせない。

だがそれはいつまで持つのか、獣だとしてもその体力は有限である。


精鋭3「これは魔法ではない! 神のご加護は無意味だっ!!」


精鋭4「チィィ、近寄れん...!」


精鋭5「攻撃の合間を狙えッッ!!!」


精鋭6「獣とはいえいずれは体力が尽きるであろうっ!!」


魔女「くっ...ウルフが止まるまでにスライムの策がきまれば...!」


ウルフ「はぁっはぁっ...」


──ダダダダダダダダダダダダッッッッ!!!!

心なしか速度が落ちた、鍛え上げられたといってもまだその身体には慣れていない。

彼女は力を得てからまだ1週間も経っていない、体力のペース配分など熟知できるはずがなかった。


スライム(──これだ!!)


ウルフ「も、もうダメ...っ!」フラッ


魔女(キャプテン達も足止めされてる...もうだめっ...!)


スライム(えぇっと、確か...!)


(ウルフ「これ、どうやってつかうの?」)


(隊長「こうやって、ねらいをつけるんだ」)


(ウルフ「こう?」)


(隊長「そうだ、で、そのひきがねをひけばおわりだ」)


精鋭3「──かかれぇっっ!!!!」


──バババババババババッッッ!!!!

強烈な発砲音、だがその狙いは甘く本来の威力は発揮されなかった。

しかし、その狙いの甘さが人を殺さずに済むものであった。

348: 2018/12/02(日) 00:12:55.95 ID:t/n958LI0

精鋭3「うわあああっっっ!?!?」


魔女(この音...きゃぷてんの武器の音?)


スライム「うひゃぁ~...すごい重たいし反動がきつい...」


魔女「──それを持ってこようとしてたのね!」


スライム「なんとかみつけたよ...身体の一部を伸ばして...」


ウルフ「スライムちゃん、ありがとう!」


精鋭1「くそっ...」


隊長「どうやら分断作戦も失敗のようだな」


──ガギィィィィンンッ!!!

分断していた精鋭たち、その武装が徐々に解除される。

帽子の剣術や、隊長の蹴りなどにより弾き落とされた、この場には大量の剣が落ちてる。


帽子「キミの剣もどこかへ行ってしまったよ」


精鋭1「畜生...っ!」


隊長「...よし! このまま門から出るんだッッ!!!!」


スライム「な、なんとかなりそうだねっっ!」


魔女「早く行くよっっ!!!」


ウルフ「わんっ!」


すると、士気を挙げるためかある人物が大声を挙げる。

それは唯一無二の存在、彼の大切な肉親である。

だが今は、父親を見るその目はとても冷ややかであった。


王「反逆者共を捕まえるんだっっっ!!!」


帽子「――父さんっ...!」ピタッ


隊長「帽子――ッ!? 足を止めるなッ!」

349: 2018/12/02(日) 00:14:15.85 ID:t/n958LI0










帽子「――――っ!?」










350: 2018/12/02(日) 00:16:11.46 ID:t/n958LI0

──グサァッッッ...!

その時、彼の胸を貫いたのは。

赤黒く染まるその弓、一体誰から放たれたのか。


騎士団長「...私の弓技からは決して逃れることは出来んぞ」


騎士団1「おおおおおおおおおおおおおおおっっっ!」


精鋭3「ついに一人を頃したぞっっ!!!」


王「この勢いに続けぇっっっっ!!!」


帽子「―――っ」


──バタンッ...!

彼はそのまま、力を失い倒れる。

もう起き上がれない、身体が冷たくなる感覚が迫る。


スライム「──いやあああああああああああああああああああああああああああああっっっ」


スライム「いやだああああああぁぁぁぁぁぁっ、帽子さんっっっ」


魔女「う、嘘...でしょ...?」


ウルフ「──っっ!?」


隊長「...帽子? 帽子ぃ...?」


帽子「あ...く...」


隊長「──帽子ッッ! しっかりしろッッ!!!」


隊長(まずいッッ!! 完全に胸を貫いているッッ!!!)


隊長は応急的に手で止血をする。

手が紅に染まる、だがそれは胸から出る一方。

止まらなかった、どうしても止めることはできなかった。


隊長「血が止まらないッ! 止めてくれ...ッ!」


帽子「キャプ...テン...」


隊長「喋るなッ...! 喋らないでくれ...命に関わる...ッ!」


スライム「"治癒魔法"っっ!! "治癒魔法"っっっ!!!!」


覚えたてのその魔法、しかし発動しない。

憎たらしいほどに輝くあの槍がそれを許してくれない。


精鋭2「無駄だ! 魔法はこの槍の前では使えんぞ!」


騎士団5「今だ! かかれっ!!!!」

351: 2018/12/02(日) 00:20:21.55 ID:t/n958LI0

ウルフ「―――ッッッ!」


──ダダダダダダダダダダダダダダダダダッッッッ!!!!

その威力は今までのとは桁が違う。

彼女の心理の奥底には、理性があった。

だが今は違う、この拳気は人を殺せてしまうかもしれない。


騎士団5「ぐあああああああああああああッッッ!?」


精鋭2「よ、鎧が砕けた...今までの威力じゃないぞッッ!!!」


ウルフ「フッー...! フッー...! 近寄るな...ッッ!!!」ギロッ


精鋭2「ひっ...」


スライム「"治癒魔法"っっっ!!!」


魔女「スライムっっ! 落ち着いてっっ!!!」


スライム「いやだっ! "治癒魔法"っっ...お願いっっ!」


隊長「帽子ッッ! 氏ぬなッッ!!!」


帽子「み...んな...わ...たし...の...夢...まかせ...たよ...」


隊長「任せるなッッ!!! 夢を実現させるのはお前だッッ!!!」


スライム「氏なないでっっ!!! 帽子さんっっ!!!」


帽子「くやしい...ま...だ...やりた...いこと...あるの...に...」


魔女「嘘でしょ...お願い...夢なら覚めて...っ!」


隊長「お前はここで氏ぬような奴ではないッ...弱音を吐くなッッ!!」


帽子「...魔女...さん...あなたの...ま...ほう...にはお世話に...なった...よ」


魔女「やめて...っ」


帽子「ウルフ...キミ...の...勇敢さ...そして...癒やしは...素晴らしかっ...た」


ウルフ「ひ...ぐっ...」


帽子「スライム...私は...キミに...恋を...してた...」


スライム「わたしもよ......置いて行かないで...」


帽子「キャプテン...君は...最高の仲間だ...よ...」


隊長「...」


帽子が隊長の手を強く握る。

紅きその手が、帽子の美しい手を染め上げる。

その手はあの時の、復讐者のような。

352: 2018/12/02(日) 00:21:34.57 ID:t/n958LI0

帽子「頼む...どうか...平和を...勝ち取ってくれ...っ!」


帽子「憎しみなどない...世界にしてくれ...」


隊長「...あぁ、任せろ」


帽子「...あり...がとう...友よ」


強く握られていた手は次第に弱々しくなっていく。

命が尽きるその時は、あまりにも呆気なかった。

帽子が息絶える、それと同時に帽子が外れて綺麗だった顔を見せてくれた。


帽子「――――」


隊長「...」


スライム「やだ...やだやだ...もういや...」


魔女「こんなのってないよ...」


ウルフ「...」ポロポロ


町民1「お、おい...あれって...」


騎士団6「王子じゃないかっっっ!?」


騎士団長「なっ────」


王「────なんだとっ...!!!!」


次第に王子の氏が都を駆け巡る。

だがそれが何だというのか、失った者は二度と戻ることはない。

彼らは立ち尽くすことしか許されない、王子の遺体を連れ去ろうとする彼らを止めることすらできなかった。


隊長「...いくぞ」グイッ


隊長(軽い...こんな身体で今までの氏闘を繰り広げていたのか)


魔女「...うん」


スライム「いや...いやだよ...」


ウルフ「スライムちゃん...いこっ...?」


先程まで氏に物狂いで隊長たちを追いかけてきた。

だが、今になってはもう誰も跡を追おうとするものは誰もいなかった。

そこに残ったのは、夕焼けの紅と彼の紅であった。


~~~~

355: 2018/12/02(日) 21:43:59.74 ID:t/n958LI0

~~~~


隊長「...」


魔女「スライム...」


スライム「ひっぐ...ぐすっ...」


ウルフ「スライムちゃん...」


夕焼けに染まりながら歩き出す。

頭を強く殴られたような感覚が続く、これは本当に現実なのか。

そんな時、隊長とスライムはあることを思い出した。


隊長(ここ、確か...)


(帽子「綺麗だな...墓はここに立てたいね」)


隊長「...ここに墓を建てよう」


スライム「...ここって帽子さんが言ってた場所だよね...ぐすっ」


隊長「...冗談が現実がなるなんてな」


隊長「...ウルフ、手伝ってくれ」


ウルフ「...うんっ」


隊長とウルフは自分の手が泥だらけになるのを厭わずに、穴を掘り始める。

やがてその穴は、人が入れるほどの大きさへと変わる。

土葬、それは彼の世界でも行われる弔いである。


隊長「...このくらいでいい」


ウルフ「...」


隊長「...埋めるまえに、声をかけてやれスライム」


スライム「うん...」


隊長「...俺たちはすこし距離をとるぞ」


魔女「わかった...」


ウルフ「...」


スライムのプライバシーに配慮して、聞こえないように距離をとる。

そんな心配りができる程に彼は冷静であった。

仕事柄、仲間が命を失うことは慣れている、嫌な慣れであった。

356: 2018/12/02(日) 21:44:59.38 ID:t/n958LI0

隊長「...」


ウルフ「...」


魔女「...そもそも、私たちが捕まらなければ...」


ウルフ「ひっぐ...」


隊長「捕まったのは魔法を封じられて、ウルフは魔女たちを人質にとられた...ってところか」


魔女「...そうよ」


隊長「...」


隊長「...頃したのはお前たちではなく、あの民たちだ」


魔女「...そう、そう言ってくれるだけで助かるわ」


ウルフ「帽子...」


スライム「...もういいよ、ありがと」スッ


隊長「...わかった、埋めてくる」


隊長「...」


帽子「────」


隊長「......帽子」


帽子「────」


隊長「...Rest in peace」


~~~~

357: 2018/12/02(日) 21:46:10.68 ID:t/n958LI0

~~~~


隊長「...埋めてきたぞ」


魔女「...それは?」


隊長「...あいつの形見だ、この冒険で役に立てよう」


亡き帽子が愛用していた、このレイピアのような剣。

そこには彼の意思、それはユニコーンをも懐かせるモノ。


魔女「...そうね、それなら帽子も喜ぶわね」


隊長「あぁ...さて、進むか」


魔女「...そうね」


スライム「...ごめんなさい、わたしはいけないよ」


スライム「わたしはここで...帽子さんといる...」


隊長「...そうか...そうだな、スライムは帽子に着いてやってくれ」


ウルフ「...あたしも、スライムちゃんといる...ごめんなさいご主人...」


ウルフ「せっかく強くなったのに...やくにたてなくてごめんなさい...」


隊長「いや、いいんだ...お前たちは十分助けになった...だからそんな悲しいことを言わないでくれ」


隊長「...2人とも、気をつけろよ」


ウルフ「うん...」


スライム「これ...忘れてるよ」


隊長「...拾っといてくれたのか、ありがとう」


スライムが拾ってくれた、彼の主要武器。

手渡されたアサルトライフルを握るその腕は、とても力強かった。


隊長「...魔女、行くぞ」


魔女「...またね、ウルフ、スライム」

358: 2018/12/02(日) 21:47:00.25 ID:t/n958LI0

スライム「...まって!」


隊長「...どうした?」


スライム「...これ、あなたの分」スッ


隊長「...これは?」


スライム「帽子さんに売っちゃったから...持ってないんでしょ?」


スライム「きゃぷてんさんも...とっても大事な友だちだから」


隊長「...あぁ」


隊長は少し力みながら、手渡されたものを握る。

手のひらサイズのボールみたいなものをしまいながら先を進みはじめる。

こうして、隊長はスライム、ウルフ、そして帽子と別れを告げた。


~~~~


~~~~


隊長「...」


魔女「...」


隊長「...魔王はどこにいるんだ?」


魔女「...魔界の中心にある魔王城ね」


魔女「人間界の端っこにある、魔界に通ずる大橋を渡れば魔界に行けるのよ」


魔女「そこへ行くには...このまま山を登って麓の村から"暗黒街"に向かう直線距離が近いわ」


魔女「山を遠回りすることもできるけど、面倒くさいでしょ?」


隊長「...そうだな」


隊長「麓の村か...久しぶりだな」


隊長(少女は元気にしているだろうか...)


魔女「今日は山にある大賢者の別荘に泊まろうよ」


隊長「...あぁそうだな」


~~~~

359: 2018/12/02(日) 21:48:05.92 ID:t/n958LI0

~~~~


魔女「ふぅ...久々ね...ここ」


隊長「お前と出会ったのはここだったな」


魔女「...そうね、それより早く入りましょう?」


隊長「ここの景色は綺麗だったが...今日は天候が悪いみたいで見えないな」


魔女「そもそも、夜だしね」


隊長「...」


魔女「...私...隣の部屋で寝てるわね」


隊長「...あぁ、おやすみ」


本当なら話したかった、だがそんなことはできない。

隊長は1人、書斎の椅子に腰掛けて休息を取ろうとする。

溶け切っていない氷の影響でやや肌寒い、そして張り詰める静寂が彼を狂わせる。


隊長「...帽子」


隊長「...」


隊長「...」


隊長「...」


隊長「...」


旅で誤魔化していたが、感情がじわじわと押し寄せてくる。

1人というものは、これ程にも残酷な孤独なのか。

耳をすませば、聞きたくない彼女の声が聞こえてしまう。

360: 2018/12/02(日) 21:48:31.10 ID:t/n958LI0










「ひっぐ...ぐす...えぐっ...」










361: 2018/12/02(日) 21:49:17.82 ID:t/n958LI0

隊長「────...ッ」


隊長「ッ、Fuckッ...!」


隊長「俺は氏と隣合わせの仕事をしている...っだから慣れてるのに...っ!」


隊長「グッ...ウゥッ...!」


隊長「帽子ぃ...ッ!」


~~~~


~~~~


魔女「おはよう!」


隊長「...元気だな」


魔女「いつまでも、悲しい顔してたら、あいつだって喜ばないわ」


隊長「...」


隊長には帽子の存在が大きすぎた。

この異世界での、かけがえのない親友であった。


隊長「...そうだな」


魔女「それじゃ、麓に向かおっか」


魔女「ちゃんと、この山を凍らせてたのは氷竜ですって弁解してよね!」


隊長「...あぁ、いくか」


隊長(...今日も景色はみえないか)


魔女「うわっ...霧に覆われてるわね...」


隊長「あれなら、下山したときには晴れてるだろう」


魔女「そうね...じゃあ行きましょうか」


隊長「あぁ...」


~~~~

362: 2018/12/02(日) 21:50:28.25 ID:t/n958LI0

~~~~


隊長「────嘘...だろ...?」


あまりの出来事に隊長は絶句する。

麓の村、その惨劇を目の当たりにしてしまう。

どうして、一体何が起きたのか、彼の情報処理能力は著しく劣り始める。


魔女「なにこれ...村がないじゃない...っ!?」


魔女「こ、これって...ば、爆発跡...?」


隊長「...」


―――ガサガサッ...

その時、物音が鳴り響いた。

あまりの光景に固まることしかできない彼がようやくハッとする。


隊長「──少女かッ!?」ダッ


魔女「まってっ!」


隊長「少女ッッ!? どこだッッッ!!!」


魔女「...落ち着きなさい、もう誰も居ないみたいよ」


隊長「そんなはずはないッ! ここには俺の恩人がいるんだッッッ!!!」


魔女「きゃぷてん...」


隊長「少女ッ! 少女母ッ! いるのなら返事をしてくれッッ!!!」


魔女「...落ち着いてっっ!」


隊長「...FUCKッッ...どうしてこんなことにッ...!?」


魔女「──うっ...!」


冷静になってみると、ひどい臭いが放たれていた。

それは人間だった物が腐り始めた、とても嫌な臭いであった。

隊長は瓦礫に埋まってる人を見つける、それは見慣れていた人であった。


隊長「──少女母ッ!?」


少女母「────」


隊長「大丈夫かッッッ!? いま助けるぞッッッ!!」グイッ


―――ボロンッッ...

瓦礫の下敷き担っている彼女の腕を引っ張った。

するとそのような音を立ててしまった、何かが抜ける。

363: 2018/12/02(日) 21:51:35.81 ID:t/n958LI0

隊長「―――ッ」


魔女「―――う゛っ...」


あまりの出来事に魔女が催してしまった。

口を抑えることで、なんとか吐き出さずに済んだ。


魔女「げっほっ...げほっ...ひどいっ...」


隊長「...」


???「──いやはや、側近様の命令でまた訪れてみたら...まだ人間がいたか」


魔女「──誰ッッ!?」


偵察者「無礼だぞ小娘、この偵察者に質問など愚かだ」


突如現れたその男の名は、偵察者。

腕には例の入れ墨、どう考えても魔王軍であった。

その口ぶりから察した、魔女は彼に追求を始める。


魔女「...あんたがやったの...これを?」


隊長「...」


偵察者「あぁ、そうさ」


偵察者「私がここの村の人間の1人を洗脳し、勇者が訪れたら自爆魔法を唱えるように仕掛けていたのさ」


魔女「ひどいっ...許せないっ...!」


偵察者「許さなくて結構、貴様らも同じく洗脳して有効活用してやる」


偵察者「まぁ安心しろ、自爆魔法を使っても奇跡的に周りの人間は助かるかもな」


魔女「...どういうことよっ!」


偵察者「クハハ、面白い話をしてやろう」


偵察者「ここで洗脳したものは自爆魔法でこの村を消し去ったが」


偵察者「なんと、そいつの娘は奇跡的に助かったのだ...貴様らも同じ機会が訪れたら奇跡を祈るんだな」


隊長「...」ピクッ


娘という単語、それに反応してしまった。

魔王軍が現れたというのにも関わらず、ずっと硬直していた彼が動く。

364: 2018/12/02(日) 21:52:40.42 ID:t/n958LI0

隊長「...おい」


偵察者「なんだ?」


隊長「洗脳したのは誰だ」


偵察者「名前など知るか、金髪の村人だ」


隊長「―――─ッ!」


偵察者「...お喋りは終わりだ、貴様らはここで私に捕まってもらう」


偵察者「..."拘束魔法"」


―――――......

先制の魔法、その詠唱速度はかなり早い。

この惨劇を前に軽く平常心を失っている魔女には反応できない代物であった。

だがおかしい、彼の魔法は発動しなかったのだった。


魔女「...あれっ?」


偵察者「なっ!? なぜ魔法が使えぬッ!?」


魔女も偵察者も理解が出来ない、その一方輝かしい光が現れる。

原因はこれしかない、帽子の魔剣が光り輝く。


隊長「...□□」


偵察者「なっ...!」


偵察者「その光...! 光魔法かッ!?」


隊長「...お前」

365: 2018/12/02(日) 21:53:20.23 ID:t/n958LI0










「楽に氏ねると思うなよ...」










366: 2018/12/02(日) 21:54:29.69 ID:t/n958LI0

魔女「ひっ...」


──ダン□ッ!

殺意と共に放たれた、白き音を伴う銃弾。

偵察者の右足にハンドガンを発砲する、当然偵察者は跪いてしまう。


偵察者「──ぐぅぅぅぅうぅ!?!?」ドサッ


偵察者(なに...!? 私の身体は側近様によって強化されているはずっ!?)


隊長「...どこをみてる」


偵察者「──速いッ!?」


──バギィィィィィィィィィィイイイイイッッ!!!!!

強烈なストレートが決まり、偵察者の身体が吹き飛ばされる。

魔闘士程とはいかないが、人間がこの跳躍距離を出せるのか。

とてもない怒りが彼に力を与える。


偵察者「はぁっ...ぐぅ...なにが起こった...?」


偵察者「はぁっ...はぁっ...た、立てん...それに...」


隊長「...」スッ


隊長が魔剣を抜く、その魔剣は光り輝かくモノだった。

しかし徐々にその光は鈍く、色が濃く変貌する。

その光景が、偵察者を震え上がらせた。


隊長「...■」


偵察者「な、なんだ...!? この魔力、光と闇...両方感じるぞ...!?」


隊長「...■■」


偵察者(まずいっ...にげなければ...)ズルズル


──グサ■■ッッッッッッ!!!!!!

逃げようとする偵察者の足に魔剣が突き刺さる。

クラーケンを足止めしたこの索、同じく偵察者も餌食になる。

剣は黒い音を交えて、彼を苦しめる。


偵察者「があああああああああああああああああああッッ!?!?」


偵察者(くそッ...地面にまで刺さって動けん...ッ!)


隊長「You can't run away...」


偵察者「ま、まて! ...た、助けてくれッ...!」

367: 2018/12/02(日) 21:55:39.44 ID:t/n958LI0

隊長「...」


偵察者「悪かった...ッ! 望みはなんだッ!? できることなら叶えてやるッ!」


隊長「...」


偵察者「頼むっ...まだ氏にたくないんだっ...」


隊長「...DIE」


偵察者「...へっ?」


──ぐしゃああぁぁぁっっっ...!

隊長は思い切り、踏み込んだ。

この憎たらしい男の腕を。


偵察者「ぐああああああああああああああ腕がああああああああああッッ!!!」


隊長「...」


偵察者「やめてくれえええ...踏まないでくれ...ッ」


──ぐしゃあぁっっっ...!

何度も、何度も彼は踏み込む。

やがて奴の腕はひしゃげてしまう。


偵察者「ぎゃあああああああああああああぁぁぁぁぁあ!!!!!!」


隊長「DIE DIE DIE DIE...」


──ぐしゃっ ぐしゃあっっ めきゃっっっ...

腕に踏み心地を感じなくなると、次は足。

偵察者という男を心が晴れるまで踏み潰す。


偵察者「た、たすけてええええええええええええぇぇぇ...」


隊長「DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ!」


──ぐしゃっ ぐしゃっ ぐしゃあああっっっ ぐちゃっ

もう、彼に踏める場所などない。

だが隊長は止まらない、憎しみが晴れるまで永遠に。


偵察者「あああぁぁぁぁぁぁ......」


隊長「DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ! DIEッ!」


隊長「────MAST DIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIEッッッ!!!」


──ぐちゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁあぁっっっ!!!!!!

────ぐちゃっ! ぐちゃっっ!!

この世界にきて最も残酷な頃し方だった、だが踏みつける音は一向に終わらなかった。

気づくともう黄昏時であった、深緑のマフラーが首元の寒さを忘れさせていた。

368: 2018/12/02(日) 21:56:53.15 ID:t/n958LI0

偵察者「────」


隊長「...■■」


隊長「...」スッ


偵察者だったモノから魔剣を引き抜き、鞘に収める。

すると彼を包んでいた、黒い音は消え失せた。


隊長「...」


魔女「ひっぐ...ひぐっ...」


ぽろぽろっ...そんな音が聞こえるぐらい涙を流していた。

彼の変わりように、泣くしかなかった。


隊長「...どうしてこんなことに」


魔女「しらないよぉ...もうやだよぉ...こわいよぉ」


隊長「...」


(復讐者「貴様の瞳...復讐に襲われるだろう...」)


隊長「...もう、着いて来るな」


隊長「俺は...またこんなことをしてしまうだろう...」


魔女「いやだぁ...1人にしないでよ...」


隊長「...いまからでも、村に帰るんだ」


魔女「ひっぐ...ひっぐ...」


隊長「...ほら、水だ...これを飲んだら行け」スッ


隊長が水筒を取り出し渡そうとする。

それが限界であった、我を忘れ朝から夕方まで踏みつけを行えばそうなる。

隊長の体力は限界であった、足元はふらつく。


隊長「――ッ...」グラッ


魔女「──きゃぷてんっ!」


~~~~

369: 2018/12/02(日) 21:58:30.02 ID:t/n958LI0

~~~~


隊長「...ここは?」


帽子「...」


隊長「──帽子ッッ!?」


少女「...」


隊長「少女もッッ! 大丈夫だったか!」


隊長「どうした...? ふたりとも無言だぞ?」


少女「...■■■」


少女の口から、聞き取れない言語が発せられる。

その黒い音は、隊長に鳥肌を立たさせる。


隊長「しょ、少女...?」


隊長「背筋が...なにが起きた...?」


帽子「■■■■」


──ゾクゾクゾクッッッ...

背筋が凍りつく、その音はとても不快であった。

大切な彼らであるはずなのに、隊長は距離を取ろうとする。

すると、何者かに足を掴まれた。


隊長「あ、足が...ッ!?」


少女母「──どお゛じで...どお゛じでだずげでぐれ゛な゛い゛ん゛でずがぁああああああああ」


隊長「────は、離せッッッ!!!!」


隊長「やめろッッ!!! 近寄るなッッッ!!!」


────■■■■■■■■■■■■■

黒が隊長の身体に触りこむ。

まるで売女に撫でられたかのような不快感。

吐き気まで催すそれは、隊長を狂わせる。


隊長「触るなッッッ...!」


隊長「誰かッ...誰か助けてくれェッッッ!!!!」


隊長「Help...me...ッ」


???「...大丈夫、大丈夫だから」ギュッ


~~~~

370: 2018/12/02(日) 21:59:44.73 ID:t/n958LI0

~~~~


隊長「―――ハッ...」


魔女「私が...いるから...」


隊長「はぁッ...夢...ッ!?」


魔女「起きた...? すごいうなされてたわよ...大丈夫?」


隊長「はぁっ...はぁっ...」


魔女「まだ震えてるわ...」


―――ぎゅっ...

暖かい、乙女という者はこれほどに心安らぐものなのか。

悪夢にうなされていた彼を癒やすのには魔法などいらない。


魔女「...寒くない? 恐くない?」


隊長「...魔女」


魔女「1人じゃ...全部抱え込んじゃうでしょ...?」


魔女「私は...ずっと一緒にいるわよ...」


隊長「ま、じょ...」


魔女「大丈夫だからね...?」


隊長「...暖かい」


魔女「...でしょ?」


隊長「...もう、深夜か」


魔女「そうよ...冷えて凍氏するのはいやだから、こうしてましょ?」


隊長「...凍氏はいやだからな」


魔女「...ふふっ」


~~~~

371: 2018/12/02(日) 22:00:47.96 ID:t/n958LI0

~~~~


隊長「...!」パチッ


隊長「...朝か」


隊長「...」


魔女「すぅ...くぅ...」スピー


隊長「...魔女、起きろ」


魔女「ん...! ...ふわぁ~あ...おはようぅ」


隊長「いい日差しだな...」


魔女「そうね...ちょっといろいろ済ましてくるわね」


隊長「あぁ...」


隊長「...」


起きたそこには、魔女が肌を重ねてくれていた。

暖かい、人の温もりが彼の狂気を祓ってくれていた。

彼女がいなければ、隊長はどのような男に変貌していたのだろうか。


~~~~


~~~~


隊長「それで、どこに向かうんだ?」


魔女「このまま暗黒街に向かうわ」


隊長「暗黒街?」


魔女「魔界に最も近い都のことよ、治安は最悪よ最悪」


隊長「なるほどな...」


魔女「そういえば、魔王子はどうするのよ」


魔王に歯向かい、それから消息不明になってしまったという噂。

大賢者が言うには利害の一致でともに行動してくれるかもしれない。

そんな彼のことをどうするか、隊長は一先ずの考えを提案した。


隊長「...暗黒街で手がかりがあれば探そう、ひとまずな」


魔女「わかったわ、とりあえず向かいましょうか」


隊長「あぁ、行くか」


~~~~

372: 2018/12/02(日) 22:01:55.74 ID:t/n958LI0

~~~~


魔女「綺麗な紅葉ね、ここ」


隊長「...俺がこの世界にきた時、俺はここで倒れてた」


魔女「えっ! そうなの?」


隊長「あぁ...もしかしたら、なにか手がかりがあるかもしれん...少し探索してみよう」


魔女「えぇ」


隊長「...」


(少女「え、えぇっと...私は少女です...」)


ここは少女が彼を助けてくれた場所、だからこそ思い返した。

そんな彼女の父親は、偵察者の卑劣な策により無惨なことに。

だが偵察者の話が本当なら、消息は不明だが奇跡的に助かっているとのこと。


隊長(...奴の話によると、少女はまだ生きている)


隊長(どうか、無事でいてくれ...ッ!)


隊長「...」


──スタスタッ...ガッッ!

そんな腸煮えくり返りそうなことを冷静に考えていると。

なにかに足が引っかかった、紅葉の落ち葉だらけ故に足元のでっぱりに気が付かなかった。


隊長「──おわっ!?」フラッ


魔女「な、なに? 大丈夫?」


隊長「躓いただけだ...」


隊長(...)ジー


隊長「ん...! これはッ!?」


──ガサガサガサッ...

なんとなく、何に引っかかったのか気になった。

躓いた箇所をよく凝視してみる、落ち葉によって全貌が見えないが、その見覚えのあるシルエット。

373: 2018/12/02(日) 22:03:32.69 ID:t/n958LI0

魔女「なにかあったの?」


隊長「これは...なぜここに...ッ!?」


魔女「それって、あんたがいつも使ってる武器に似てるわね」


隊長「あぁ...これは俺の世界にある武器だ...なぜここに...?」


隊長(...どこか、見覚えがあるな)


隊長(...)


隊長(...)


隊長(...ッ!)ピクッ


(犯人3「う、うごk」)


(隊長「遅いッッッ!!!!」ドガッ)


隊長(──あの時、犯人から蹴っ飛ばした時の奴かッ!)


そこにあったのは、頼れる新たな武器。

どういう因果かはわからないが、隊長と共にこの世界に訪れていたようだ。

この武器の名はショットガン、アサルトライフルにはできない芸当をしてくれる心強い銃器。


隊長「これは...戦力になるぞ」


魔女「異世界の武器ってことは、すごい威力なんでしょうね」


隊長「俺の世界の中でも、こいつは特に威力が高いぞ」


魔女「へぇ...」


隊長「...7発内蔵、6発付属ってところか」


隊長「これも、弾を複製できるか?」


魔女「むしろ、そっちのほうが単純そうで楽だわ」


隊長「では早速頼む」


魔女「はいはい、ちょっとまっててね」ガサゴソ


ショットガンに付属しているシェルラックから、1発の実包を魔女に手渡した。

すると彼女は衣服にある小さな収納から物を取り出し、錬金術の準備を行う。

理科の実験に使いそうな容器やらマッチ、紙や針など、どれも手軽なものであった。

374: 2018/12/02(日) 22:05:20.23 ID:t/n958LI0

魔女「うーん...炎魔法を覚えられなかったのが悔しい」ボッ


隊長「これに何を入れるんだ?」


魔女「ここに紙と私の血を入れるのよ」


隊長「血か...痛くないのか?」


魔女「もう修行で慣れちゃったわよ...っ」チクッ


魔女「それで、錬金術用の詠唱をするの...これは大賢者様しかしらないみたいよ」


隊長「ほう...紙が金に変わるのか」


魔女「そうよ、ブツブツブツ...」ポワッ


魔女「...無事、完成ね」


隊長「もう金になったのか」


魔女「慣れってやつね...それじゃ、弾を貸して」


隊長「おう」スッ


魔女「..."複製魔法"っ!」


容器に入ったドロドロの金が、形を変え始める。

その現実味のない光景、やはり魔法というものは凄い。

まるで手品師のトリックを見るような、そんな純粋な気持ちで彼は見ていた。


隊長「おぉ...」


魔女「あとはこれの繰り返しね...何個つくるの?」


隊長「とりあえず6の倍数個で頼む」


魔女「じゃあ18個ね..."複製魔法"」


隊長「助かるぞ...魔女」


魔女「どうってことないわよ」


隊長(この弾は、いままでレーションに入れていた部分に入れておこう...)


隊長(レーションには悪いが...水筒と同じ場所に...ちょっと窮屈だがしかたない)

375: 2018/12/02(日) 22:08:27.26 ID:t/n958LI0

魔女「それにしても...両手に今までの大きい方の武器を持って、背中に今の武器...重くないの?」


隊長「...慣れってやつだな」


魔女「ひぇーおそろしい、おそろしい」


隊長(...両方の銃器にベルトがついてるとはいえ、両方背負った時は持ち替えが大変だな)


魔女「ついでに、他のやつも作ろうか?」


隊長「ならハンドガンとアサルトライフルのも頼む」


魔女「まかせなさいっ!」


~~~~


~~~~


??1「ぐっ...どうしてこんなところに...」


暗闇、それも牢屋のようなところで細い声が響く。

そこに下衆が話しかける、この男は隊長も遭遇したことのある者。

最も鎖に繋がれている彼女も見たことがあるだろう。


??2「残念だったねぇ...女騎士?」


女騎士「──魔法使いっ! お前っっ!!!」


魔法使い「なんだい、僕のお陰で君はこうして生きてるんじゃないか」


女騎士「ふざけるなっっ!!! お前は私たちを裏切ったんだぞっっ!!」


魔法使い「うるさいなぁ...また、ひどいことされたいの?」


女騎士「──っっ...!!!」ビクッ


魔法使い「怯えちゃって...馬鹿力なのに女っぽさは残ってるんだな」スッ


女騎士「────近寄るなっ!!」


魔法使い「ふふふ...」


女騎士「ひっ...いやっ...」


魔法使い「綺麗な耳飾りだね、女勇者がくれたんだっけ...でももう二度と会えないよ?」


魔法使い「お前はここで...僕の奴隷になるんだ...楽しみにしててごらん」


いやらしく耳元でささやく彼は魔法使い、勇者一向の裏切り者。

そして彼女は女騎士、不幸にも囚われてしまった逞しき者。

女を捨て武の道に心を貫いたというのに、彼女はすでに折られてしまっていた。


~~~~

376: 2018/12/02(日) 22:09:29.70 ID:t/n958LI0

~~~~


隊長「ここが...暗黒街...」


魔女「そうよ、あんまり人と目を合さない方がいいわよ」


隊長「...」


隊長(...スラム街か)


見渡すと、そこいらに浮浪者が寝そべっている。

その者達は醜く、そしてどこかでみたような顔つきをしている。

バツが悪い顔をして、魔女が耳打ちをする。


魔女「ここの街には、快楽作用のある薬が流通してるみたいなのよ」ボソッ


隊長(...ドラッグか)


隊長「...どの世界も一緒だな」


魔女「え...?」


隊長「...進もう、絡まれたら面倒だ」


魔女「そうね、いきましょ」


隊長「ところで、どこで情報収集をするか」


魔女「うーん...こんな街だけど、中心部は富裕層がいて安全だからそこにしましょう」


隊長「...おう」


~~~~


~~~~


隊長「...やたらと暗いな、この街は」


中心部、そこは先程のスラム街とは打って変わって綺羅びやか。

とは言い切れず、いたる建物が黒く、暗黒に満ちていた。


魔女「あ、あそこに掲示板があるわよ」


隊長「...どれどれ」


魔女「う~ん...どれもどうでもいい情報ばかりね」


―――ポタッ...

肌に感じる水気、ふと見上げてみるとそこには濃い雨雲が。

これは一雨どころか、局地的豪雨が予想できる降り方であった。


隊長「...ん?」

377: 2018/12/02(日) 22:10:38.98 ID:t/n958LI0

魔女「最悪...雨ね...」


隊長「しかたない...あの建物の軒先に避難しよう」


指示通り彼らは雨宿りを開始する。

強い振り方の雨、地面に打ち付ける音がやけに心地良い。

その様子を沈黙しながら、ただ見つめているだけであった。


隊長「...」


魔女「...」


隊長「...どうするか」


魔女「さすがに、風邪を引くのはいやね」


隊長「でも...この降り方はすぐ止みそうだな」


魔女「分かるの?」


隊長「あぁ...」


魔女「...そういえば、あんたは元の世界でなにをやってるの?」


隊長「うん? そうだな...」


隊長「犯罪者...罪を犯したものを捕まえている」


魔女「...へぇ、偉いことしてるわね」


隊長「聞こえはいいかもな...だが、仕方なく捕まえきれずに頃してしまう時がある」


魔女「...そう」


隊長「...」


魔女「...子どもとかいるの?」


隊長「...いると思うか?」


魔女「...思うわよ、甲斐性があるしね」


隊長「...子どもも妻もいない、ずっと独身だ」


魔女「へぇ...」


隊長「...」

378: 2018/12/02(日) 22:12:11.20 ID:t/n958LI0

魔女「...私は、雨は嫌いだけど、雨の音は好きよ」


隊長「...わからんでもない」


魔女「この雨音に紛れて、なにか大胆に行動したくなるのよね」


隊長「...」


魔女「...まぁ、いまは止んでくれるのを待ってるんだけどね」


隊長「そうだな...! クシュッ!」


魔女「ぷっ...可愛いくしゃみね」


隊長「うるせぇ...」


魔女「はぁ~もうつかれちゃった...地べたに座っちゃお...」ペタッ


隊長「...」


魔女「...魔王をどうにかしたら、どうするのあんたは」


隊長「...大賢者が言うには、魔王が元の世界に戻れる魔法を使えるらしいからな」


隊長「...魔王を倒して、帽子の願いを果たし...そしたら帰るってところだな」


魔女「...なら新しい魔王は、帽子の代わりに魔王子に任せればいいんじゃない?」


隊長「魔王子が信用できる奴ならの話だがな...」


隊長「魔王子が信頼できなければ、このまま二人で進み...魔王を倒すだけだ」


魔女「...新しい魔王はどうするのよ?」


隊長「...」ジー


魔女「...私は嫌だからねっ!」


隊長「はぁ...こうなれば今の魔王に無理やり要求を飲むまで説得だな」


魔女「...拷問?」


隊長「場合によってはあり得る」


魔女「魔王に拷問する人間なんて前代未聞よ...」

379: 2018/12/02(日) 22:14:11.35 ID:t/n958LI0

隊長「そうなりたくなければ魔王子に祈っとけ、そもそも出会えるかわからんがな」


魔女「はいはい、あー神様、どうかうまくことを進めて下さい」


隊長(神...か)


(「神業を受け取るんだ」)


(「これは魔法ではない! 神のご加護は無意味だっ!!」)


隊長が出会った神を名乗る者、それは彼に神業とやらの力を与えた。

だが別の神なのだろうか、それは塀の都の民たちを狂わせた。

同じ神でもここまで違うのか、だが隊長はある1つの共通点を見出していた。


隊長(俺のあの神業とやらと...あの光る槍の力はどこか似ていたような...)


隊長(魔法の無力化...俺もあの時、魔闘士の魔法を無力化してたのか?)


(魔闘士「残念ながら、魔法は得意じゃない...」)


隊長(いや...そうではないのかもしれない...)


隊長(そしてこのユニコーンの魔剣...これも神業に似ている...)


(大賢者「...あくまで仮説じゃが、その魔剣には光属性の魔力を感じる」)


隊長(ユニコーンの魔剣=神業なら...俺に宿っているのは光属性のなにかなのだろうか)


隊長(...だめだ、魔法に関してはからっきしだ)


隊長「...魔女、光属性ってどんなものなんだ?」


魔女「ふわぁ~あ、ごめん知らないわよ」


魔女「光属性と闇属性は参考資料が少なすぎて大賢者様ですら詳しくわからないのよ」


隊長「...まぁそのうちわかるか」


魔女「なによ」


隊長「なんでもない...ん?」


──ポタッ...ポタッ...

彼が深く考え事をしている間に、彼女が眠気と抗っている間に。

薄暗い暗黒街に太陽の明かりが刺した、雨は過ぎ去ったようだった。


魔女「止んだわね」


隊長「ひとまず、ここで魔王子を探そう」


魔女「まぁ、暗黒街にすらいない可能性のほうが大きいけどね...」


~~~~

380: 2018/12/02(日) 22:15:25.76 ID:t/n958LI0

~~~~


??1「あァ...だりィな...やっと雨があがったか」


??2「フン...うるさい奴だ...」


??1「あァ? なんだ魔闘士ィ...やんのか?」


そこにいたのは、例の2人組であった。

1人はとてつもなく奇妙な大剣を背負い、ゴロツキのような喋り方。

もう1人は只ならぬ雰囲気を醸し出している、見間違えるはずがない。


魔闘士「...竜の魔剣士と名高いお前も、案外餓鬼だな」


魔剣士「うっせーな...ってか本当にここに魔王子いんのかァ?」


魔闘士「魔王と戦った後、最後に目撃があったのはここ..."暗黒街"だ」


魔剣士「...さっさと魔王子見つけて、魔王ぶっ飛ばしにいこうぜ?」


魔剣士「あのクソ爺、痴呆始まってかしらねェけど...やる事無茶苦茶でやる気でねェぜ」


魔闘士「知るか、俺はただ魔王子に着いていくだけだ」


魔剣士「へいへい、信頼の厚い部下なこったァ...」


──ポタッ...ポタッ...

先程降ったばかりだというのに、太陽も覗き込んでいるというのに。

お天気雨、再び大地に恵みが降り立つ予兆。


魔闘士「また...雨か、面倒だな」


魔剣士「冷えるのは勘弁だ、酒屋にいこうぜ?」


魔闘士「...仕方ないな」


魔剣士「あァ...でも、このまま魔王子がいなければ人間界ともおさらばか...人間の造った酒はうまかったなァ」


魔闘士「フン、どうでもいいな」


魔剣士「お前なァ...魔王子大好きっ子かよ...」


魔闘士「そういうお前は、酒大好きっ子だな」


魔剣士「あァ? やんのかァ?」


魔闘士「...ひとまず、雨を避けるぞ」


魔剣士「あァ」


~~~~

381: 2018/12/02(日) 22:16:24.96 ID:t/n958LI0

~~~~


隊長「...」


魔女「...まともな人間いないわね」


隊長「魔王子のことを聞いても、薬か酒の話になるな...」


魔女「はぁ...どうしよ」


──ポタッ...ポタッ...

先程降ったばかりだというのに、太陽も覗き込んでいるというのに。

お天気雨、再び大地に恵みが降り立つ予兆。

それは当然彼らにも襲いかかった。


隊長「またか...最悪だな」


魔女「また雨...! そうだっ!」


魔女「酒屋なら雨宿りになるし、話が通じるんじゃないの?」


隊長「...そうだな、話ができない奴だと店として成り立たないからな」


魔女「そうと決まれば、行きましょう?」


隊長「...本題は酒じゃなくて、情報だからな?」


魔女「わ、わかってるわよっ!」


~~~~


~~~~


──からんからんっ

雰囲気が暗いこの街にしては、軽快な音であった。

人の入りは少ないが、ここは歴としたお店。

やや寡黙な酒屋の主人がそこにいた。


酒屋「...いらっしゃい」


隊長「すまない、聞きたいことが」


酒屋「...聞きたいことは、注文をしてからにしろ」


魔女「じゃあ、私は葡萄酒にしようかしら」


酒屋「...あんたは?」


隊長「...水だ」


酒屋「湿気てんな...」


魔女「湿気てるわね...」

382: 2018/12/02(日) 22:17:22.14 ID:t/n958LI0

隊長「...」


酒屋「...座って待ってろ」


魔女「ほら、いきましょ?」


隊長「はぁっ...」


──からんからんっ

隊長と魔女が椅子に座ると新たなお客様が。

なぜその顔ぶれがここで見れてしまうのか。

先に店内にいた彼らはその光景に驚いてしまう。


酒屋「...いらっしゃい」


魔剣士「適当に2杯たの────」ピクッ


魔闘士「────ッ!」ギロッ


隊長「──なッ...!?」


魔女「ど、どうしたの?」


魔闘士「なぜ貴様がここに...」


魔剣士「へェ...面白れェ偶然だな」


魔女「...ねぇ、誰なの?」


隊長「魔闘士と魔剣士だ...ッ!」


魔女「──こいつらがっ...!?」


魔剣士「おいおい...戦いに来たわけじゃねェからな?」


魔闘士「...お前に構っている暇などない」


隊長「...ッ!」


魔女「ど、どうするの?」


酒屋「なんだ、お前たち仲間か」


隊長「違う...」


酒屋「仲間なら、奥の4人席に座ってくれ...そこは騒がれると邪魔だ」


~~~~

383: 2018/12/02(日) 22:18:13.98 ID:t/n958LI0

~~~~


魔剣士「で...なんで素直に4人で座ってんだァ?」


魔闘士「知るか」


隊長「...」


魔女「...ここの葡萄酒おいしいわね」


魔剣士「呑気な嬢ちゃんだなァ...こっちは数日前、命かけた戦いをしてた相手なんだぜ...?」


魔女「わ、私は闘ってないし...」


魔剣士「肝座ってるんだが、座ってないんだか...」


魔闘士「...」


隊長「...」


魔剣士「さっさと酒飲んで行こうぜェ? 魔闘士よォ」


隊長「...ちょっとまて」


魔剣士「あァ?」


隊長「お前たちは魔王子を探してるんだよな?」


魔剣士「...そォだ」


隊長「...お前らがここにいるってことは、ここのどこかに魔王子がいるってことだな?」


魔剣士「...」


魔闘士「...貴様」


魔剣士「わりィがよ...返答次第で頃すぞ」

384: 2018/12/02(日) 22:18:41.40 ID:t/n958LI0










「魔王子に何の用だァ...?」










385: 2018/12/02(日) 22:20:29.45 ID:t/n958LI0

魔女「ひっ...!」


──ピリピリピリッ...!

初めて目の当たりにする、圧倒的な実力者の怒気。

思わず魔女は声を上げてしまうが、隊長は臆せずに会話を進める。


魔剣士「...早く答えろ」


隊長「...俺たちは魔王子を仲間にし、魔王を倒す」


魔剣士「...はァ?」


隊長「そして最後に魔王に無理やり、平和的交渉をうなずかせこの世界を平和にすることだ」


隊長「魔王が頷かない場合は無理やり辞退させ、新しい魔王を魔王子に就任してもらい平和的交渉をうなずいてもらう」


魔剣士「...本気か?」


隊長「...本気だ」


魔闘士「...もう少し、賢いと思っていたが...とんだ馬鹿だな」


隊長「悪いが、託されたんでな」


魔剣士「託されたァ...?」


魔剣士「...そういえばそのユニコーンの魔剣、なんでお前がもってんだァ?」


魔剣士「アイツはどうした、あの帽子被った奴」


魔女「...」


隊長「...」


答えることはできない、まだその現実を完全に受け入れていないからであった。

だがその様子をみて察することのできない者なのいない。

口を開かない彼らの代わりに、魔剣士が事実をつきつける。


魔闘士「...氏んだか」


隊長「────あぁ」


魔剣士「なるほどねェ...ま、ユニコーンが懐く位だ、そんなこと託すわけだなァ」


魔剣士「...だが、それは無理だなァ」


隊長「...」


魔闘士「確かに、恐らくだが魔王子は魔王を討とうするだろう...利害の一致でも狙ったか、だが」


魔剣士「...お前らじゃ足手まといだ、いらねェんだよ」


魔闘士「さらに、魔王子は平和などに興味はないだろう」

386: 2018/12/02(日) 22:22:01.75 ID:t/n958LI0

隊長「...」


魔剣士「まっ、お前らは指くわえてみてろってなァ」


隊長「...ダメだ、帽子が無念だ」


隊長「せめて、魔王子に会わせろ」


魔剣士「...誰に向かって口聞いてんだ...あァ...?」


魔闘士「人間程度が、調子に乗るなよ...!」


隊長「魔王子が平和を勝ち取るのであれは身を引こう」


隊長「...そうでない場合は」


魔剣士「...ヤるつもりっていうのかァ?」


隊長「...」


魔剣士「ふざけるなよ...人間の甘っちょろい考えが通じてると思うなァ?」


魔剣士「平和ァ? ふざけるな...てめェの言う平和ってのは魔物を迫害することじゃねェか...」


隊長「...帽子の思想はそんなモノではない」


魔剣士「知るかァ...興味ねェな────」ピクッ


興味などない、それは嘘であった。

1つの要素が帽子という男の正体を証明していた。

あのユニコーンが魔剣となり、その男に従えているという事実が魔剣士に興味を沸かせていた。


魔剣士「...」


隊長「帽子の言う平和とは、人間だけの一方的な平和ではない」


隊長「...人間と魔物の共存だ」


魔剣士「...ケッ、あまェ...砂糖よりあめェよ」


隊長「アイツは根っからの甘い奴だ」


隊長「だが、それで海底都市の戦争を止めた」

387: 2018/12/02(日) 22:23:39.41 ID:t/n958LI0

魔剣士「...海底都市だァ?」


隊長「帽子の思想...ただの脳天気野郎と同じにしてもらっては困る」


魔剣士「...海底都市の真偽はともかく、ユニコーンのことを見るとそうみてェだけどよォ...」


魔剣士「...チィ! うまく反論できねェなァ!!! 畜生がァ!!!」


反論ができない、この馬鹿正直な人間に与える言葉が見つからない。

だがそんな中魔闘士が口を開いた、それは意外な言葉であった。

一度拳を交えた関係性だからだろうか、なぜ彼は隊長に施すのか。


魔闘士「...いいだろう」


隊長「──ッ!」


魔闘士「会うだけなら、許してやる」


魔闘士「だがそれ以上のことは魔王子、本人に祈れ」


魔女「うへぇ...うまくいったわねぇ」


隊長「そうでなくては、帽子が困る」


魔剣士「たくよォ...馬鹿みてェな反論されるとこっちは何も言い返せねェぜ...」


魔闘士「だが...1つ問題がある」


隊長「...なんだ?」


魔闘士「この暗黒街の地下に隠された遺跡がある、その奥に魔王子はいるだろう」


隊長「...どうしてわかる」


魔闘士「...ここが、魔王子が最後に目撃された場所だからだ」


魔闘士「それに、魔王の部下の配置にもある」


隊長「配置...?」


魔闘士「...魔王はそこに"異端者"を配置している」


隊長「...」


魔闘士「俺が無理やり口を割らせた魔王軍の奴によると、そうらしい」


魔闘士「アイツは俺たちでも厄介だ...近づけさせないようにしてるとしか思えない」


魔剣士「異端者なァ...あのアホは半端無くだりィな...」

388: 2018/12/02(日) 22:24:58.90 ID:t/n958LI0

魔闘士「...そして恐らく、魔王によって魔王子は封印されているだろう」


隊長「...異端者を倒し、その封印を解けば完了か」


魔闘士「...まぁそういうことだ、遺跡も恐らく罠だらけだろう」


隊長「では、早速いくか」


魔闘士「...最初の問題は遺跡を探す所だな」


隊長「...魔王の配置は知っているのに、遺跡の場所はわからんのか」


魔闘士「...」


魔剣士「しょーがねェよ、魔闘士は案外抜けてる所あるからよォ」


魔闘士「黙れ」


魔剣士「おーこわ」


魔女「...ってことは、また情報収集...?」


隊長「...そういうことになるな」


~~~~


~~~~


魔剣士「じゃ、月が真上になったらまたこの酒場に集合だ」


魔闘士「...」


隊長「あぁ...頼んだぞ」


魔剣士「へいへい...なんでこんな事なっちまっただァ?」


魔闘士「...我々がユニコーンについて熟知していたからだな」


魔剣士「あァ...アイツに懐かれたことなんざ、ここ500年生きてるけど一度もねェな」


魔闘士「...それを説得に持って来られたら、こちらは反論できん」


魔剣士「...めんどくせェ」


わりと俗世めいたことを語りながら、夕焼けに消えていった。

一時的に、魔王子と対面するところまでは協力体制することになった。

これほど心強い者たちはいない、そんな彼らを見送ると隊長たちも動き出した。


隊長「さて、こちらも探すか」


魔女「...不審な箇所を町の人に聞けばいいのかしら」


隊長「そうだな」


~~~~

389: 2018/12/02(日) 22:25:37.77 ID:t/n958LI0

~~~~


隊長「...収穫なしか」


魔女「まともなやつを見つけても、特に答えがなしってのが応えるわね...」


隊長「はぁ...あいつらに小言を言われそうだ」


魔女「こうなったらこの街の地図から怪しいと思った場所にいきましょ」


隊長「...とりあえず、地図が張ってある掲示板のところにいくか」


魔女「そうね...」


~~~~


~~~~


魔女「...特に地図をみても解決しなかったわね」


隊長「...手詰まりか」


魔女「はぁ...人訪ねしかないようね」


隊長「途方も無いな」


魔女「うーん...あ、丁度いいところに人が...あの~っ!」


そこに人が通りかかる、その様子には至って健常。

薬物中毒ではなさそうだ、これなら会話が可能だろう。

だが彼は、1つだけ違和感を覚えていた。


???「...なんですか?」


隊長(...こいつ、どこかで見たような)


魔女「ここらへんで、なにか怪しい場所を探してるんですが...遺跡の入り口とか」


隊長(魔女の質問も...なんか間抜けだな)


???「...知らないね」


隊長(──...?)ピクッ


魔女「そ、そうですか...では」


???「僕は急いでるんだ、じゃあね」

390: 2018/12/02(日) 22:26:40.48 ID:t/n958LI0

隊長「...まて」


???「...なんだ?」


隊長「散歩でもしてるのか?」


???「...そうだ」


隊長「この冷える夜、それに散歩にしてはすごい汗だな」


???「...」


魔女「ちょ、ちょっと...なに言ってるのよ」


隊長「...」


隊長には確証がなかった、が長年犯罪者の口を割らせている。

質問を答えた時の表情、経験、勘を頼りにし強引に話を進める。

証拠もないのに始めたこの尋問、隊長の世界では許されないだろう。


???「...た、たまたま汗をかいてるだけだ...そういう体質なんでな」


???「何度も言わせるな、僕は急いで家に戻りたい」


隊長「...あぁ、悪かったな」


そういうと、尋ねた者は早足で去っていった。

そんな彼から目線を逸らさずに、去っていった方向を注視する。


魔女「どうしたのよ...」


隊長「...尾行するぞ」


魔女「...へっ?」


隊長「...あいつはお前の質問に対して嘘をついている気がする」


魔女「そうなの...?」


隊長「...正直、なにも進まない人尋ねよりはマシだ」


魔女「まぁね...どうしようもないし尾行しましょ」

391: 2018/12/02(日) 22:27:17.58 ID:t/n958LI0

魔女「...そういえば、あの人から強い魔力を感じたわね」


隊長「そうなのか?」


魔女「うん、女賢者さんぐらいのね...それがこの街にいるって考えると、ちょっと怪しかったかもね」


魔女「多くの人は、この暗黒街に好感を持ってないから...家なんてここに持ちたくないし」


魔女「あれだけ強い魔力をもってるなら、暗黒街からいつでも引っ越すことも簡単だろうしね」


隊長「そうか...遺跡でないにしろ、なにか手がかりがあることを祈ろう」


~~~~


~~~~


魔闘士「...」


魔剣士「手がかりねェな」


魔闘士「...1つだけ、遺跡には関係ないが情報を手に入れた」


魔剣士「あァ?」


魔闘士「...勇者一行の"魔法使い"がこの街にいるらしい」


魔剣士「勇者ァ? なんでだ?」


魔闘士「ここは魔界に行くには通らざるえない場所ではあるが...」


魔剣士「盗人、ヤク中、ゴロツキがうようよだ、長いこと滞在したくねェな」


魔闘士「...情報によると、1週間はいる計算になる」


魔剣士「...くせェな」


魔闘士「...魔法使いを探すぞ」


魔剣士「あァ」


~~~~

392: 2018/12/02(日) 22:28:13.16 ID:t/n958LI0

~~~~


隊長「...」


魔女「...」


???「...」


隊長「あそこが家か...」


魔女「えらく、郊外なのね」


隊長「...普通の民家のようだな」


──ガチャッ...バタンッ!

先程の男を尾行する、すると彼は家に到着したようだった。

家の外観には特に不審なところはない、だからといって家の中に踏むこむ訳にはいかない。

己の猜疑心は過敏すぎたようだ、どうやら慧眼は鈍ったのかもしれない。


隊長(...どうやら、見当違いか...疑ってすまなかったな)


隊長「魔女、引き上げ...」


魔女「うぇ~...」


隊長「...どうした?」


魔女「な、なんかすごい...気分がおかしくなる臭いがする...」


隊長「...? 俺には感じないぞ」


魔女「気持ち悪い...」


隊長「...」


魔女はほんのり、頬を紅潮させている。

まるでアルコールを摂取したかのように表情が軽くとろけている。

そんな女の顔をされ、隊長はたじろぐしかなかった。


隊長「だ、大丈夫か?」


魔女「ちょっと...大丈夫じゃないかも...うぇ────」


――あぐぅっ!!!!

その時だった、先程の男の家からそれは聞こえた。

口をふさがれてるような女の人の叫び声、魔女ではない。

393: 2018/12/02(日) 22:31:07.36 ID:t/n958LI0

隊長「──今、建物の中からッ!?」


魔女「う...い、いってみよう...」


隊長「...お前はここで待ってろ、すこし離れて休め」


魔女「げぇ...そ、そうする...ごめんね...」


隊長「...」


──ガチャッ...バタンッ!

彼は一般市民に家に突入した、これは許されることではない。

特殊部隊である彼が無許可でソレをするならば、不祥事トップニュースの仲間入りだろう。


~~~~


~~~~


隊長(...暗いな)


――パリンッ!

隊長はアサルトライフルを構えながら、今まで出番のなかったライトを照らす。

建物が少しだけ、灯りに満たされる。すると内装がみえる。


隊長(何かを踏んでしまったか...)


隊長「これは...」


建物の中、注射器が大量に転がっていた。

隊長も見たことが有る光景、くすり中毒者の家に似ている。


隊長(...女の叫び声...少なくとも被害者がいるのか)


隊長(遺跡の手がかりでないにしろ...進んでみる価値はあったな)


隊長「...」


隊長(血なまぐさいな...)


―――ぐぅぅぅぅっっっ!!!

そして消えたのは、唸り声。

それは下から聞こえる、どうやら地下室があるみたいだ。


隊長(唸り声...下からか...階段を探そう)


??1「ははは! いい声だねぇ女騎士ぃ!!!!」


??2「もっ...もお...やめへぇ...」


隊長(...性犯罪者で、くすり中毒か...そんな奴は俺の世界にゴミのようにいたな)

394: 2018/12/02(日) 22:32:15.10 ID:t/n958LI0

隊長(階段か...そろそろライトを消すか)


階段を下っていく、そしてライトを消して暗闇に身を隠す。

目はもう慣れており少しぐらいなら周りが見えていた。

女の悲鳴が響き渡る、どうやらあの男は性犯罪者であることは間違いないようだった。


隊長「...」


隊長(...扉の向こうにいるな)


??2「あっ...あひっ...やだぁっ...」


??1「早く、僕に素直になりなよ」


??2「くっ...わっ、わたしはぁ...屈しないっ...!」


??1「とかいいつつ、すっかり僕のを気に入ってるじゃないか」


??2「それはっ...薬を使ってるからだろっ...!」


??1「...本当にそう?」


??2「こっ...いつぅ...裏切り者...めっ...!」


??2「おまえが裏切ったからっ...女勇者は魔王軍にっ...!」


??1「知らないね、僕は君とこうしてたかったんだよ」


??2「...くずがっ!」


隊長「...Scum■■」スッ


―――ドガァァァァッッッッ!!!!

怒りがこみ上げる、隊長がドアを蹴破った。

そしてユニコーンの魔剣が一瞬だけ黒く光っていた。


??1「──なっ!?」


隊長「────Fuck off...」スチャ


──ババッッッ

容赦のない射撃、それは男の足に被弾する。

当然その痛みに耐えられるわけもなく、彼は跪いた。


??1「──がああああああああああ足があああああああああっっ!!!」

395: 2018/12/02(日) 22:33:14.33 ID:t/n958LI0

隊長「―――ッッ!!!」スッ


──バキィィッッ...!

先ほどの尋ね人が軽く吹っ飛ぶ、強烈なアッパーであった。

そして隊長は直ぐにマウントポディションを取り、拘束する。


隊長「...動くな」スチャ


??1「ッ...!? お前はさっきの...ッ!?」


??1「くそっ!! 足がっ...!」


隊長「...お前が存在しているだけで、吐き気がする」


??1「な、なんだとっ!!」


隊長「...Die」


―――バッ

そして彼はその軽すぎる引き金を引いた。

脳天に直撃、耐えられるわけがなかった。


??1「――──」ガクン


隊長「...」


??2「...頃したのか?」


隊長にしてはらしくない行動であった。

どうやら拘束魔法を受けていたようだ、それが解けて女が裸で近寄ってきた。


隊長「...不味かったか?」


??2「...いいや、そんな屑、氏んで当然だ」


隊長「...お前は?」


女騎士「...女騎士だ、そいつは魔法使い...裏切り者だ」


魔法使い「―――─」


女騎士「...お前は?」


隊長「...Captainだ」


女騎士「きゃぷてんか...助かったぞ」


隊長「礼は後だ、その格好を何とかしてくれ、目も合わせられん」


彼女の名前は女騎士、そしてこの卑劣漢は魔法使いと言うらしい。

薄暗い部屋のなか、女らしく適度に肉々しい桃色の身体がうっすら見えている。

396: 2018/12/02(日) 22:34:12.01 ID:t/n958LI0

女騎士「あっ...す、すまない...」


隊長「...この落ちている布を使え」


女騎士「あぁ...」


隊長「...一度、外にでるぞ」


~~~~


~~~~


隊長「...!」ガチャッ


扉を開け、外の空気を感じ取る。

するとそこには彼ら2人が魔女の様子を眺めながら待っていた。


魔剣士「あァ、待ってたぜ」


隊長「魔剣士、魔闘士もか」


魔闘士「...どうやら、一足遅かったようだな」


魔剣士「やるねェ」


魔女「あぁ...やっと楽になった」


女騎士「...うん?」


魔闘士「...誰だ?」


魔剣士「誰だよ?」


魔女「ほぼ裸じゃない...」


隊長「...魔法使いとやらに拘束され、暴行を受けていたみたいだ」


魔剣士「なるほどなァ...って、お前勇者一行の女騎士じゃねェか?」


女騎士「──なぜ知っている!」


魔剣士「至る所の都の新聞で写真が記載されてんだ、分かるに決まってんだろ...」


魔闘士「...魔法使いはどうした?」


隊長「...やむなく頃した」


魔女「...!」


魔闘士「...まぁいい、この建物を調べよう」

397: 2018/12/02(日) 22:35:02.07 ID:t/n958LI0

魔剣士「ところで、女勇者はどこだよォ...なんでお前らだけがここに居るんだァ?」


女騎士「...話せば長くなる」


魔剣士「...要点だけ言ってみろ」


女騎士「...ここの近くで魔法使いに裏切られ、女勇者は魔王軍に連れて行かれた」


女騎士「そして私は...魔法使いに...」


魔剣士「...なるほどなァ、結構面倒くせェ事態だな」


魔女「ね、ねぇ...大丈夫なの?」


女騎士「あぁ...大丈夫だ...女の自分はとうに捨てた...」


女騎士「捨てた...はずだったのに...っ...っ!」


隊長「...魔女、女騎士とここで休んでいてくれ」


魔女「うん...もう大丈夫だからね?」


女騎士「っ...あ、あぁ...っ!」


隊長「俺たちは建物の散策に入る」


魔闘士「...誰に指示をしている?」


魔剣士「いいんじゃね? こいつ、お前より指示がうまいぜェ?」


魔闘士「...」


~~~~

398: 2018/12/02(日) 22:35:37.77 ID:t/n958LI0

~~~~


魔剣士「...くせェ」


隊長「...なにも感じないぞ」


魔闘士「...これは淫魔の雄の血か」


魔剣士「あァ...雌にだけ効果絶大のヤツか」


魔闘士「俺たちにはただ臭いだけだな」


隊長「そうなのか...」


魔闘士「...この氏骸が魔法使いか」


隊長「...おい、この服の中にこれが」


魔剣士「手紙ィ?」


隊長「...」


魔闘士「...なるほど」


隊長「どうやら、ここが当たりだったようだな」


魔闘士「魔王の側近からの手紙か...」


魔剣士「なになに...貴様に遺跡の番人を任せるゥ?」


魔闘士「...女勇者を裏切ったわけではなく、最初から魔王側だったようだな」


隊長「...徹底的にここを調べよう」


魔闘士「そんなことはわかっている...」


魔剣士「それより一旦でようぜ? 長いこと居ると臭くてたまんねェわ」


隊長「...これは」


~~~~

399: 2018/12/02(日) 22:38:46.79 ID:t/n958LI0

~~~~


魔女「あなた、何歳?」


女騎士「...20だ」


魔女「本当? 私も20よ!」


女騎士「そうなのか...」


魔女「...」


女騎士「...」


魔女(か、会話が続かない...そりゃ元気ないならそうなるわよね...)


女騎士「...なぁ、あのきゃぷてんとか言う男」


魔女「...なに?」


女騎士「凍った山を1人で制圧したそうだな」


魔女「知ってるの?」


女騎士「...麓の村で聞いた」


魔女「...今、その話をあいつにしないほうがいいわよ」


女騎士「...すまない、私たちが訪れたから」


魔女「...やったのは魔王軍よ、あんたたちのせいじゃない」


女騎士「...ありがとう」


魔女「...」


――ガチャッ...

扉を開けると、充満する嫌な匂いが微かに香る。

よく見ると扉だけではなく窓も全開、どうやら換気をすることにした様だった。


魔剣士「あァ...新鮮な空気だ」


魔闘士「雄淫魔の血は、人間の雄には何も感じないと聞いたが...本当だったな」


隊長「ふぅ...」


魔女「...おかえり」


隊長「あぁ...おい、女騎士」


女騎士「なんだ?」

400: 2018/12/02(日) 22:41:29.72 ID:t/n958LI0

隊長「これ、お前のだろ」


──ガシャンッ!

隊長が持ってきた鎧と巨大なランスを地面に置く。

鎧は男モノにしては細すぎる、そして胸部は膨らんでいる。

どう考えても女騎士の装備であることは間違いない。


女騎士「私の装備...あったのか!」


隊長「それを着れば、人目を注目させないだろう...裸よりはな」


女騎士「...助かる」


魔女「なにか、手がかりあったの?」


隊長「あぁ...ここに遺跡の入り口があるのは間違いないようだ」


魔女「...運がいいわね」


隊長「自分でもびっくりするぐらいな...」


魔剣士「で、今からもう潜入するのか?」


隊長「...悪いが、人間の俺はそろそろ眠気が限界だ」


魔剣士「大丈夫だ、魔物もそこは同じ...眠ィ」


隊長「なら、今日はここで夜を越そう」


魔剣士「そんじゃ、俺様はさっさと寝るぜェ」


魔闘士「...なぜ、俺の指示には文句をいうくせに、あの人間の指示には従順なんだ?」


魔剣士「あァ...? アイツのほうが上に立つ者としての威厳が似合ってるからだ」


魔剣士「お前の指示は、なんか偉そうなだけなんだよ」


魔闘士「...貴様」


隊長(...こいつら、案外面白いな)

401: 2018/12/02(日) 22:42:41.59 ID:t/n958LI0

魔剣士「そもそも、別に個人的に憎しみ合ってるわけじゃねェしな...」


魔剣士「アイツらと戦ったのも、お前が興味あるとかいって暗黒街よりも先に向かったからだろ?」


魔闘士「...」


魔剣士「それに俺様も巻き込みやがって...楽しかったからいいものをよォ...」


魔剣士「まっ、コレ以上はお前が可哀想だし、寝るわ」


魔闘士「...」


魔女(...もうすでに可哀想なんだけど)


女騎士「着替えたぞ」


隊長「あぁ、今日はここで野宿をする」


女騎士「そうか...ところできゃぷてん」


隊長「...何だ?」


女騎士「お前の旅、魔女から聞いた」


隊長「...」


女騎士「魔王軍に攫われた、女勇者...まだ生きてるかもしれない」


女騎士「そもそも、私の旅も魔王を討つため...」


女騎士「...私も、お前の旅に付いて行ってもいいか?」


魔女「ちょっ...」


隊長「...好きにしろ」


女騎士「よろしく頼む!」


魔女「...」ゲシッ


隊長「な、なんで蹴るんだ...?」


魔女「し~らないっ! よろしくね! 女騎士!」


女騎士「女同士、仲良くしてくれ! 魔女!」


~~~~

402: 2018/12/02(日) 22:43:23.43 ID:t/n958LI0
今日はここまでにします、近日また投稿します。


隊長「魔王討伐?」【その5】

引用: 隊長「魔王討伐?」