314: 2014/06/26(木) 01:49:37.33 ID:Bd1RtlBSO
前回:範馬勇次郎「時速5000キロメートルッッッ!!!」【前編】
病院
ドガドガドガドガ!!
シュドドッ! ド ズ ッ !
ゴ ガ ッ !
スペック「クァッ!!」ブ ン !
紅葉「ッッッ!!」サッ
グ ワ キ ィ ッ !
紅葉「………~~~ッッッ」ザザザザザッ…
紅葉(流石は負け無しを誇っただけはある…全て防御して尚このダメージとは…ッッ)
スペック「悪いねェ、試運転に付き合わせちゃって♪」ニイィ~
紅葉「何が試運転だよ…起きた瞬間にベッドぶん投げてきやがって…」フゥ…フゥ…
紅葉「おまけに壁は砕くわ天井はブチ抜くわ……好き勝手もほとほどにしろ」
スペック「オイオイ、好き勝手ならアンタもしてるじゃねえか。警察も呼ばせないでよォ」ククク…
紅葉「呼ばせるさ。警察如きで貴様の相手が勤まるならな」
紅葉「だが警察にそれが出来ない以上、私の手で貴様を安静にさせるしかない」タッ!
ガ ッ !
紅葉「!」
スペック「惜しい♪」
ド キ ャ ッ !
紅葉「~~~~~~ッッ」ドサァッ
スペック「良い前菜になったゼ、センセイ」クルッ
紅葉「ま…待て…まだだ…」ググッ…
バウンッ!
紅葉「………」ハァ…ハァ…
紅葉「クソッ…飛び降りやがった…」
315: 2014/06/26(木) 02:28:40.36 ID:Bd1RtlBSO
病院の4階から飛び降りた男は音も無く着地して、疾走った
バイクを追い抜かし、自動車を追い抜かし、疾走った
野蛮極まる、ある衝動に突き動かされ、疾走った
今まさに、闘争のゴングが鳴る
重役「ところで今の私だが、何に見える?」
正明「?」
上司「?…それは…一体どのような意味で…?」
重役「見た目さ。私は壮年の男性で髭を伸ばし、メガネを掛け、髪は白く、スーツはブカブカだね」
重役「しかしだ、実は私に髭はいらないと言ったら、驚くよね?」
プチッ
上司「!?」
正明「!?」
重役「髪も」ズボッ
パサッ
重役「スーツも」ガシッ
バリバリバリバリバリ!
上司「な…ッ…あッ!!?」
正明「えっ!!?」
重役「メガネも」ポイッ
パキン
バイクを追い抜かし、自動車を追い抜かし、疾走った
野蛮極まる、ある衝動に突き動かされ、疾走った
今まさに、闘争のゴングが鳴る
重役「ところで今の私だが、何に見える?」
正明「?」
上司「?…それは…一体どのような意味で…?」
重役「見た目さ。私は壮年の男性で髭を伸ばし、メガネを掛け、髪は白く、スーツはブカブカだね」
重役「しかしだ、実は私に髭はいらないと言ったら、驚くよね?」
プチッ
上司「!?」
正明「!?」
重役「髪も」ズボッ
パサッ
重役「スーツも」ガシッ
バリバリバリバリバリ!
上司「な…ッ…あッ!!?」
正明「えっ!!?」
重役「メガネも」ポイッ
パキン
316: 2014/06/26(木) 02:53:26.15 ID:Bd1RtlBSO
身分を偽り、外見を偽装した男は、己に課した拘束を自ら解く
期待に跳ねる胸の内で、秘めた荒波が狂い、溢れる
重役「今の私に必要なのは『泥』だ」ヌチャッ
重役「そして…」グリュリュ…
上司「!? !? !?」
正明「~~~~~~ッッッ!!?」
ゲバル「メイクだ」
今まさに、殺戮のゴングが鳴るッ
オリバ「空港はあそこか…」
嵐が吹き荒れるであろう空港を眺め、アスファルトに手を着け…
オリバ「届くと良いなァ…」ガゴン
その男は、マンホールの蓋を外し、指で弄ぶ
今まさに、破壊のゴングが鳴るッッ
期待に跳ねる胸の内で、秘めた荒波が狂い、溢れる
重役「今の私に必要なのは『泥』だ」ヌチャッ
重役「そして…」グリュリュ…
上司「!? !? !?」
正明「~~~~~~ッッッ!!?」
ゲバル「メイクだ」
今まさに、殺戮のゴングが鳴るッ
オリバ「空港はあそこか…」
嵐が吹き荒れるであろう空港を眺め、アスファルトに手を着け…
オリバ「届くと良いなァ…」ガゴン
その男は、マンホールの蓋を外し、指で弄ぶ
今まさに、破壊のゴングが鳴るッッ
317: 2014/06/26(木) 03:09:16.49 ID:Bd1RtlBSO
そうッッ!
今まさにッッ!!!
自衛隊員「総司令部、正面玄関の前方500メートルにオーガを確認、どうぞ」
総司令部「了解。総員、作戦開始。フォーメーション構成を開始せよ」
自衛隊員「了解」
勇次郎「…………」クスッ♪
暴虐のゴングが鳴るッッ!!
血の雨が降るッッッ!!!
319: 2014/06/26(木) 03:48:14.31 ID:Bd1RtlBSO
自衛隊員達「………」タッタッタッタッ
貴樹「!!」ピクッ
明里「?」
貴樹「………」
施設の奥へと退いていく自衛隊員達を目撃し、遠野貴樹は瞬時に異変を察知した
異変の詳細など考えもせず、しかし意識を張り詰めさせて
これから何が起きるのか……その一点のみに、彼は全神経を集中させていた
空港内の一般人達が、にわかにザワめき始める
貴樹は立ち上がり、落ち着かない素振りで周囲を見渡す
明里「貴樹君?どうしたの?」
声を掛ける幼なじみすら、彼は無視した
明里「!」
そして、静寂は唐突に訪れた
空港の中の誰もが、言葉を発するのを止め、動きさえ止めた
遠野貴樹の背後で、篠原明里の背後で…
ズチャッ
足音は響き…
ズチャッ
その足音は実体を伴い…
ズチャッ
二人の背後を通り過ぎ、十数歩ほど進み…
ジャリ…
止まった
320: 2014/06/26(木) 04:27:42.49 ID:Bd1RtlBSO
胸に感じる圧痛。吹き出す冷や汗と、定まらない目線
震える足と、震える手。背中を走る強烈な悪寒
今振り返れば、きっとあの人はそこにいる
貴樹はそう強く感じていたが、まるで全身の間接が溶接されたかのように硬直し、動けない
真っ暗な頭の中を半生が巡り、出会った人々が現れては消えていく
その中でたった一つ…すぐ隣にいる人影が、消えずに残った
彼女は貴樹の手をしっかりと握りしめていた
震えるその手は暖かく、繊細だった
遠野貴樹は勇気を振り絞り、振り向いた
貴樹「!」
そこには、貴樹に背を向けて立つ鬼の姿が
地上最強の生物の姿があった
震える足と、震える手。背中を走る強烈な悪寒
今振り返れば、きっとあの人はそこにいる
貴樹はそう強く感じていたが、まるで全身の間接が溶接されたかのように硬直し、動けない
真っ暗な頭の中を半生が巡り、出会った人々が現れては消えていく
その中でたった一つ…すぐ隣にいる人影が、消えずに残った
彼女は貴樹の手をしっかりと握りしめていた
震えるその手は暖かく、繊細だった
遠野貴樹は勇気を振り絞り、振り向いた
貴樹「!」
そこには、貴樹に背を向けて立つ鬼の姿が
地上最強の生物の姿があった
323: 2014/06/26(木) 12:31:20.00 ID:Bd1RtlBSO
貴樹「…………」
貴樹(居た…間違いない、あれは……)
貴樹(どうする…何をする?…なんて話しかければ…)
明里「…………」フルフル
勇次郎「…………」ズチャッ…
貴樹(!? 移動する!?)
貴樹(今なんだ!チャンスは今しかない!今彼を逃したら…もう二度と…!)
貴樹「っ!!」タッ
明里「!? たっ、貴樹君っ?」
貴樹「………」タッタッタッ
明里「待っ…」
明里「まっ…待って!」タッタッ
貴樹「ぁ…あの!!」
勇次郎「………」ぴたっ
呼び止めに応えた漢は歩みを止めた
そして振り返る
普通の男女。普通の若者と、その漢は対峙した
勇次郎「…………」
貴樹「っ…!」
明里「!!!」
勇次郎「遠野貴樹だな」
貴樹「!!?」
勇次郎「フンッ、このバカが」
勇次郎「夢中になり過ぎて気付かなきゃならねェ事にまで気付かねェか」
貴樹「………」
貴樹「…ぇ?」
貴樹(居た…間違いない、あれは……)
貴樹(どうする…何をする?…なんて話しかければ…)
明里「…………」フルフル
勇次郎「…………」ズチャッ…
貴樹(!? 移動する!?)
貴樹(今なんだ!チャンスは今しかない!今彼を逃したら…もう二度と…!)
貴樹「っ!!」タッ
明里「!? たっ、貴樹君っ?」
貴樹「………」タッタッタッ
明里「待っ…」
明里「まっ…待って!」タッタッ
貴樹「ぁ…あの!!」
勇次郎「………」ぴたっ
呼び止めに応えた漢は歩みを止めた
そして振り返る
普通の男女。普通の若者と、その漢は対峙した
勇次郎「…………」
貴樹「っ…!」
明里「!!!」
勇次郎「遠野貴樹だな」
貴樹「!!?」
勇次郎「フンッ、このバカが」
勇次郎「夢中になり過ぎて気付かなきゃならねェ事にまで気付かねェか」
貴樹「………」
貴樹「…ぇ?」
324: 2014/06/26(木) 12:51:58.26 ID:Bd1RtlBSO
ガキュッ! チュイン!
貴樹「!!」
明里「あっ…」
突然、何かの衝撃音が響き、それと同時に漢の髪が跳ねる
しかし、漢は微動だにせず言い放った
勇次郎「狙撃だ」
貴樹「…狙撃…」
勇次郎「間に合わねェぜ、もう」
明里「貴樹君…」
貴樹「! なに?」
ドサッ
貴樹「えっ」
明里「 」
貴樹「………」
貴樹「…明里?」
貴樹「!!」
明里「あっ…」
突然、何かの衝撃音が響き、それと同時に漢の髪が跳ねる
しかし、漢は微動だにせず言い放った
勇次郎「狙撃だ」
貴樹「…狙撃…」
勇次郎「間に合わねェぜ、もう」
明里「貴樹君…」
貴樹「! なに?」
ドサッ
貴樹「えっ」
明里「 」
貴樹「………」
貴樹「…明里?」
325: 2014/06/26(木) 13:09:48.48 ID:Bd1RtlBSO
狙撃班班長「オイ、ウソだろ…」
総司令部<どうした?何があった?>
班長「こちら狙撃班、三方同時狙撃は完了。しかし、目標未だ沈黙せず」
総司令部<…どういう事だ?>
班長「分かりません。しかし効果が無いのは明らかです」
総司令部<…分かった。狙撃班は撤退後、本隊と合流。その他各班は行動を開始しろ。民間人には構うな。目標の沈黙を最優先に行動しろ>
班長「狙撃班了解」
そう、今まさに
勇次郎「………」ギ ン ッ
ゴングは鳴った
334: 2014/06/26(木) 14:30:29.49 ID:Bd1RtlBSO
頭の中が真っ白になった
範馬勇次郎への興味も、ここが何処かも、僕は忘れた
貴樹「…明里…?」
仰向けに倒れた明里の肩からは、血が滲んでいた
貴樹「なんで?…どうして…?」
「え…お、おい、アレ…」 「ぅうわぁ!マジかよ!!」
「きゃああああああああああ!!」「うわあああああ!」
「撃たれたァ!撃たれたァ!」 「逃げろおおおッ!!」
「Fuck!!」 「Oh!!Shit!」
「何だ!?どうした!?」「人が撃たれた!!」
「わああああああああああ!!」
空港は一瞬にして大混乱に陥った
貴樹「…なんで…」
彼らは皆叫び、走り回って僕らの周りからいなくなった
明里と僕に構う人は一人もいなかった
貴樹「明里…ね、ねえ…明里…」
貴樹「明里!起きてよ!明里!!」
明里「………」
ガシャン! ガシャン! ガシャン!
空港の出入口と大窓は、鉄のシャッターで閉ざされ…
ダダダダダダダダダダダダ…
透明な盾を持った一団がフロア内になだれ込んで、銃を構えた
特殊部隊隊長「撃てェッッ!!」
範馬勇次郎への興味も、ここが何処かも、僕は忘れた
貴樹「…明里…?」
仰向けに倒れた明里の肩からは、血が滲んでいた
貴樹「なんで?…どうして…?」
「え…お、おい、アレ…」 「ぅうわぁ!マジかよ!!」
「きゃああああああああああ!!」「うわあああああ!」
「撃たれたァ!撃たれたァ!」 「逃げろおおおッ!!」
「Fuck!!」 「Oh!!Shit!」
「何だ!?どうした!?」「人が撃たれた!!」
「わああああああああああ!!」
空港は一瞬にして大混乱に陥った
貴樹「…なんで…」
彼らは皆叫び、走り回って僕らの周りからいなくなった
明里と僕に構う人は一人もいなかった
貴樹「明里…ね、ねえ…明里…」
貴樹「明里!起きてよ!明里!!」
明里「………」
ガシャン! ガシャン! ガシャン!
空港の出入口と大窓は、鉄のシャッターで閉ざされ…
ダダダダダダダダダダダダ…
透明な盾を持った一団がフロア内になだれ込んで、銃を構えた
特殊部隊隊長「撃てェッッ!!」
336: 2014/06/26(木) 17:11:05.22 ID:Bd1RtlBSO
バ ギ ャ ア ! !
しかし、彼らはシャッターを突き破って飛んできた『巨大な何か』に跳ね飛ばされ、呆気なく全滅した
何かはそれでも止まらず、地面にぶつかって何度かバウンドし…
ド ガ シ ャ ッ !
僕の前で、潰れるようにして止まった
貴樹「あ………」
それはまるで戦車のようだった
車種は分からない。けれど雑巾のように捩り曲がったそれには、金属の円盤が突き刺さっていた
勇次郎「機動戦闘車か…こんな物まで持ち出してきやがるたァな」クスクス
破られたシャッターの外からは、悲鳴と、風を切る爆音が溢れる
バ バ バ バ バ バ バ バ …
ヘリコプターが出すようなその音で、明里は目を覚ました
明里「貴樹君…なに、この音…?」
貴樹「あっ、明里!?明里、僕が分かる!?見えてる!?」
明里「うん…見えて…あぅっ!」
明里「!! なに…これ…!?」
貴樹「だっ、大丈夫、大丈夫だから!すぐに治るよこんなの!!」
明里「っく…いっ…つ……」ポロポロ
貴樹「明里!?きっ、肩押さえるから、傷押さえるから我慢して!」
ギュウウッ
明里「んあぁっ…!」
貴樹「大丈夫!!大丈夫だから!!」
しかし、彼らはシャッターを突き破って飛んできた『巨大な何か』に跳ね飛ばされ、呆気なく全滅した
何かはそれでも止まらず、地面にぶつかって何度かバウンドし…
ド ガ シ ャ ッ !
僕の前で、潰れるようにして止まった
貴樹「あ………」
それはまるで戦車のようだった
車種は分からない。けれど雑巾のように捩り曲がったそれには、金属の円盤が突き刺さっていた
勇次郎「機動戦闘車か…こんな物まで持ち出してきやがるたァな」クスクス
破られたシャッターの外からは、悲鳴と、風を切る爆音が溢れる
バ バ バ バ バ バ バ バ …
ヘリコプターが出すようなその音で、明里は目を覚ました
明里「貴樹君…なに、この音…?」
貴樹「あっ、明里!?明里、僕が分かる!?見えてる!?」
明里「うん…見えて…あぅっ!」
明里「!! なに…これ…!?」
貴樹「だっ、大丈夫、大丈夫だから!すぐに治るよこんなの!!」
明里「っく…いっ…つ……」ポロポロ
貴樹「明里!?きっ、肩押さえるから、傷押さえるから我慢して!」
ギュウウッ
明里「んあぁっ…!」
貴樹「大丈夫!!大丈夫だから!!」
338: 2014/06/26(木) 17:50:59.38 ID:Bd1RtlBSO
総司令部<突入した地上一・二班と連絡が取れない。対戦車ヘリコプター隊、そちらで確認出来るか?>
ヘリコプター隊隊長「こちらヘリコプター隊…地上一・二班は全滅しました…施設外部から車両の投擲を受けたと思われます」
総司令部<投っ……目標は施設内にいるオーガ唯一人のはずだ。何故連絡をしなかった?>
隊長「連絡をする前にそちらが連絡を」
総司令部<…分かった。では警戒体制を取りつつ分隊、君はその未確認目標の対…>
オリバ「フンッ!!」バ オ ッ ! !
ズ ギ ャ ッ ! !
隊長「!!」
隊員<被弾したッ!被弾したッ!敵はマンホールを投げています!!マンホールを投げていま…ああああ!!?>
ド オ ン ! !
隊員< >ザザッ ザーーー
隊長「各機本隊の指令に従いオーガを攻撃ッ!未確認目標への対処は…」
ブ オ ッ ! !
隊長「!!!」
ヘリコプター隊隊長「こちらヘリコプター隊…地上一・二班は全滅しました…施設外部から車両の投擲を受けたと思われます」
総司令部<投っ……目標は施設内にいるオーガ唯一人のはずだ。何故連絡をしなかった?>
隊長「連絡をする前にそちらが連絡を」
総司令部<…分かった。では警戒体制を取りつつ分隊、君はその未確認目標の対…>
オリバ「フンッ!!」バ オ ッ ! !
ズ ギ ャ ッ ! !
隊長「!!」
隊員<被弾したッ!被弾したッ!敵はマンホールを投げています!!マンホールを投げていま…ああああ!!?>
ド オ ン ! !
隊員< >ザザッ ザーーー
隊長「各機本隊の指令に従いオーガを攻撃ッ!未確認目標への対処は…」
ブ オ ッ ! !
隊長「!!!」
339: 2014/06/26(木) 18:16:31.74 ID:Bd1RtlBSO
「ああ、あの事件の事ですか」
隊長「忘れるはずはありません」
隊長「食い詰め者だった私でも、こういう職業に就いたんですから、そりゃ覚悟はしてましたよ。いつか誰かを頃す事も、いつか誰かに殺される事も」
隊長「でも、そんな覚悟はクソの役にも立ちませんでした」
隊長「私は演習とかで、兵装の運用テストだかもするんですけどね」
隊長「何回もやってると色々と慣れるんですよ。ロケット弾が白い尾を引いて飛ぶのを見ると、そのスピードにも」
隊長「時速何キロかは分かりませんが、何となく目で追えたり、大体何処にぶち当たるかとかは分かりますかね」
隊長「でも、アレは分からなかった…」
隊長「違いすぎるんですよ。発射体勢も、弾道も」
隊長「そして速度も」
隊長「…………」
隊長「アレはロケット弾より速い」
隊長「忘れるはずはありません」
隊長「食い詰め者だった私でも、こういう職業に就いたんですから、そりゃ覚悟はしてましたよ。いつか誰かを頃す事も、いつか誰かに殺される事も」
隊長「でも、そんな覚悟はクソの役にも立ちませんでした」
隊長「私は演習とかで、兵装の運用テストだかもするんですけどね」
隊長「何回もやってると色々と慣れるんですよ。ロケット弾が白い尾を引いて飛ぶのを見ると、そのスピードにも」
隊長「時速何キロかは分かりませんが、何となく目で追えたり、大体何処にぶち当たるかとかは分かりますかね」
隊長「でも、アレは分からなかった…」
隊長「違いすぎるんですよ。発射体勢も、弾道も」
隊長「そして速度も」
隊長「…………」
隊長「アレはロケット弾より速い」
340: 2014/06/26(木) 18:42:06.58 ID:Bd1RtlBSO
ド ド ド ド ド ド ! ! !
ガラガラ… パラパラ…
隊員1「こっ、こちら地上五班ッ!ヘリコプター部隊壊滅ッッ!繰り返すッヘリコプター部隊壊滅ッッ!」
隊員2「あっ」
オリバ「どうかしてるぜ。こんな真っ昼間から市街戦なんて」ズチャッ
隊員1「ッッ…止まれェッ!!」ジャキッ
オリバ「ところでキミ達、ターミネーターって映画は知ってるかな?」ズチャッ
隊員1「撃てェッ!!」
パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ!!
オリバ「あの映画が好きでねェ~…昔はよく見てた物さ…」バスバスバス ドスッ ドッ ビッ
パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ!!
オリバ「ただ…まぁ…ンーー」ドスッドスドスッ ドッ ドッ ドッ
パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ!!
オリバ「チョイトばかしショックなんだよなァ~」ドッドッドッビシッ ドドドッ
パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ!!!
オリバ「だってさァ」ガシッ
グ オ ン ! !
隊員1「は?」
オリバ「ターミネーターってヘリ振り回せないんだぜェッ?」
ゴ バ シ ャ ア ア ア ! !
ガラガラ… パラパラ…
隊員1「こっ、こちら地上五班ッ!ヘリコプター部隊壊滅ッッ!繰り返すッヘリコプター部隊壊滅ッッ!」
隊員2「あっ」
オリバ「どうかしてるぜ。こんな真っ昼間から市街戦なんて」ズチャッ
隊員1「ッッ…止まれェッ!!」ジャキッ
オリバ「ところでキミ達、ターミネーターって映画は知ってるかな?」ズチャッ
隊員1「撃てェッ!!」
パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ!!
オリバ「あの映画が好きでねェ~…昔はよく見てた物さ…」バスバスバス ドスッ ドッ ビッ
パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ!!
オリバ「ただ…まぁ…ンーー」ドスッドスドスッ ドッ ドッ ドッ
パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ!!
オリバ「チョイトばかしショックなんだよなァ~」ドッドッドッビシッ ドドドッ
パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ!!!
オリバ「だってさァ」ガシッ
グ オ ン ! !
隊員1「は?」
オリバ「ターミネーターってヘリ振り回せないんだぜェッ?」
ゴ バ シ ャ ア ア ア ! !
342: 2014/06/26(木) 20:51:54.87 ID:Bd1RtlBSO
明里「はぁ…はぁ…」
貴樹「…ダメだ…血が止まらない…」
貴樹「どうやって…どうやったら止まるんだ…」
勇次郎「おい」
貴樹「っ!!」
勇次郎「上着を貸せ」
貴樹「…え…」
勇次郎「二度は言わねェぞ」
貴樹「! はっ、はい!」ササッ
勇次郎「………」しゅるしゅるっ
貴樹「!?」
勇次郎「………」ビーーンッ
シュババッ ギュッ
明里「あっ!…!…つっ…」
勇次郎「押さえてな」
貴樹「ぁ…あ、ありがとうございますっ…」
勇次郎「………」
ジャリッ
オリバ「元気そうだなオーガ」ジャリッ
貴樹(!!?)ビクッ
勇次郎「フ…おめェもな」
オリバ「いやァ~…まさかこんな明るい内からおっぱじめるとは思わなかったぜ。一体どんな恨みを買ってたんだい?」
勇次郎「おめェがそれを言うか」クスクス
オリバ「ハハハ、その通りだな」
オリバ「…それで、このご両人は?」
勇次郎「遠野貴樹。女の方は知らねェな」
オリバ「エッ?トオノ?」
貴樹「!…なん、ですか…?」
オリバ(オー、ジーザス……最悪の状況だよ、ミスカナエ)
オリバ(この二人、どー見てもカップルじゃん……)
貴樹「…ダメだ…血が止まらない…」
貴樹「どうやって…どうやったら止まるんだ…」
勇次郎「おい」
貴樹「っ!!」
勇次郎「上着を貸せ」
貴樹「…え…」
勇次郎「二度は言わねェぞ」
貴樹「! はっ、はい!」ササッ
勇次郎「………」しゅるしゅるっ
貴樹「!?」
勇次郎「………」ビーーンッ
シュババッ ギュッ
明里「あっ!…!…つっ…」
勇次郎「押さえてな」
貴樹「ぁ…あ、ありがとうございますっ…」
勇次郎「………」
ジャリッ
オリバ「元気そうだなオーガ」ジャリッ
貴樹(!!?)ビクッ
勇次郎「フ…おめェもな」
オリバ「いやァ~…まさかこんな明るい内からおっぱじめるとは思わなかったぜ。一体どんな恨みを買ってたんだい?」
勇次郎「おめェがそれを言うか」クスクス
オリバ「ハハハ、その通りだな」
オリバ「…それで、このご両人は?」
勇次郎「遠野貴樹。女の方は知らねェな」
オリバ「エッ?トオノ?」
貴樹「!…なん、ですか…?」
オリバ(オー、ジーザス……最悪の状況だよ、ミスカナエ)
オリバ(この二人、どー見てもカップルじゃん……)
348: 2014/06/27(金) 03:20:50.58 ID:/ob6npSSO
オリバ「よろしくミスタートオノ。私はビスケット・オリバだ」
貴樹「えっ…は…はい…」
オリバ「せっかくだが、この子の傷の手当は誰がしたのかな?怪我の原因と状態を知りたい」
貴樹「そ…それは…あの、ゆ…勇次郎さんが…」
オリバ「エ?」
勇次郎「………」
勇次郎「チッ」
オリバ「えぇーーz___!!??」
貴樹「っ!?」
オリバ「なんでェ!?」
勇次郎「この生娘が俺の側に立ったのは俺の責任じゃねェが…」
勇次郎「負傷に関しては俺の責任の範疇だ。尻ぐらい拭く。コレっきりだがな」
オリバ(生娘って……酷いなオイ、勝手にバラすなよ…)
オリバ「………ンー、言いたい事は色々とあるが、まあいい。それで怪我の原因は?」
勇次郎「跳弾だ。三方向からのフルメタルジャケット弾を俺が頭で貰い、内一発がお嬢ちゃんの肩を撃ち抜いた」
オリバ「ナルホド、肩を貫通ね……トオノ君」
貴樹「っ…はいっ」
オリバ「嬉しいニュースだ。彼女は助かるぞ」
貴樹「!! 本当ですか!?」
オリバ「ああ本当さ。おめでとう」ニッ
貴樹「えっ…は…はい…」
オリバ「せっかくだが、この子の傷の手当は誰がしたのかな?怪我の原因と状態を知りたい」
貴樹「そ…それは…あの、ゆ…勇次郎さんが…」
オリバ「エ?」
勇次郎「………」
勇次郎「チッ」
オリバ「えぇーーz___!!??」
貴樹「っ!?」
オリバ「なんでェ!?」
勇次郎「この生娘が俺の側に立ったのは俺の責任じゃねェが…」
勇次郎「負傷に関しては俺の責任の範疇だ。尻ぐらい拭く。コレっきりだがな」
オリバ(生娘って……酷いなオイ、勝手にバラすなよ…)
オリバ「………ンー、言いたい事は色々とあるが、まあいい。それで怪我の原因は?」
勇次郎「跳弾だ。三方向からのフルメタルジャケット弾を俺が頭で貰い、内一発がお嬢ちゃんの肩を撃ち抜いた」
オリバ「ナルホド、肩を貫通ね……トオノ君」
貴樹「っ…はいっ」
オリバ「嬉しいニュースだ。彼女は助かるぞ」
貴樹「!! 本当ですか!?」
オリバ「ああ本当さ。おめでとう」ニッ
349: 2014/06/27(金) 04:04:32.02 ID:/ob6npSSO
五班の生存者「はぁ、はぁ、こちら地上五班…みっ…未確認目標の空港内侵入を確認…」
総司令部<了解。地上五班は撤収せよ>
総司令部<これより未確認目標を目標Bと呼称。攻撃目標に追加する>
総司令部<地上三・四班、機動戦闘車部隊を中心に警戒体制を取りつつ前進。施設正面からオーガと目標Bを砲撃にて攻撃せよ>
三班班長「三班了解」
四班班長「四班了解」
総司令部<空挺一・二・三班は施設上空にて待機。地上三・四班の砲撃及び『特空』の施設侵入が完了し次第突入。特空を支援しろ>
一班班長「了解」
二班班長「二班了解」
三班班長「三班了解」
総司令部<特別空挺隊は地上三・四班の砲撃が終わり次第、M.P.B.Mを各機起動させ投下。投下後は指示があるまで待機せよ>
特別空隊隊長「了解」
総司令部<了解。地上五班は撤収せよ>
総司令部<これより未確認目標を目標Bと呼称。攻撃目標に追加する>
総司令部<地上三・四班、機動戦闘車部隊を中心に警戒体制を取りつつ前進。施設正面からオーガと目標Bを砲撃にて攻撃せよ>
三班班長「三班了解」
四班班長「四班了解」
総司令部<空挺一・二・三班は施設上空にて待機。地上三・四班の砲撃及び『特空』の施設侵入が完了し次第突入。特空を支援しろ>
一班班長「了解」
二班班長「二班了解」
三班班長「三班了解」
総司令部<特別空挺隊は地上三・四班の砲撃が終わり次第、M.P.B.Mを各機起動させ投下。投下後は指示があるまで待機せよ>
特別空隊隊長「了解」
354: 2014/06/27(金) 17:40:40.51 ID:/ob6npSSO
そのオリバという人は、僕らの前に立った
この人についての情報は全く無い
何故ここにいるのかも、何故あの範馬勇次郎と対等な会話が出来るのかも、僕には分からない
でもこの人は、全くの赤の他人であるはずの僕らを守ると言い、誓いまで立てた
彼が何処の誰であろうと、その事だけで、彼は信じるに値する人であると分かった
勇次郎「………」ググッ…
バ ン ッ !
貴樹「!!?」
明里「っ!!!?」
オリバ「………」
そう思いを巡らせていた瞬間、耳をつんざく爆裂音が響いて、いつかタクシーの中で見た光が一瞬、爆発的に広がった
明里「な…なに? 今の…なんなの…?」
オリバ「何でもないよ。キミらを護る守護天使さ」
目を見開いて怯える明里を、オリバさんは励ます
こんな状況でも気さくな言葉を言える彼は、この上無く頼もしかった
勇次郎「…………」ギュウウウウゥゥゥゥゥゥ……ゥ…ゥ……ッッ
今度は弓を引き絞るような音が響き、止まった
その音は弓道部で聞いた音とは違い、何本もの鉄棒をねじり絞るような音だった
カ ッ ッ ! ! !
この人についての情報は全く無い
何故ここにいるのかも、何故あの範馬勇次郎と対等な会話が出来るのかも、僕には分からない
でもこの人は、全くの赤の他人であるはずの僕らを守ると言い、誓いまで立てた
彼が何処の誰であろうと、その事だけで、彼は信じるに値する人であると分かった
勇次郎「………」ググッ…
バ ン ッ !
貴樹「!!?」
明里「っ!!!?」
オリバ「………」
そう思いを巡らせていた瞬間、耳をつんざく爆裂音が響いて、いつかタクシーの中で見た光が一瞬、爆発的に広がった
明里「な…なに? 今の…なんなの…?」
オリバ「何でもないよ。キミらを護る守護天使さ」
目を見開いて怯える明里を、オリバさんは励ます
こんな状況でも気さくな言葉を言える彼は、この上無く頼もしかった
勇次郎「…………」ギュウウウウゥゥゥゥゥゥ……ゥ…ゥ……ッッ
今度は弓を引き絞るような音が響き、止まった
その音は弓道部で聞いた音とは違い、何本もの鉄棒をねじり絞るような音だった
カ ッ ッ ! ! !
360: 2014/06/28(土) 11:16:56.56 ID:Jgb6UEfSO
三班班長「機動戦闘車部隊、配置に着いた、どうぞ」
四班班長<了解。四班各員、機動戦闘車の後方に迫撃砲を展開、火力支援に備えろ>
ガチャガチャガチャ カチッ チャキッ
四班班長<展開完了、火力支援出来ます>
三班班長<了解。各員、攻撃開始>
カ ッ ッ ! ! !
三班班長「ッッッ!!?」
四班班長<!!!!>
「…なんだ今の…!?」 「光った……空港が光ったぞ…」
三班班長「慌てるなッ!攻撃開…」
ゴ ガ ッ !
三班班長「!?」
「た、タイヤですッ!壁を破ってタイヤが飛…」
ビ ュ バ ボ ッ ! !
ドスッ ザクッ ドッ ガッ ビキュッ ズカッ ドッ ドッ
「ぎゃああああああ!!」 「うぐぉえっ」 「うわあああああああ!!」
三班班長「おぶふっ」ビチャビチャ
四班班長<どうした!? 何があった>
隊員「てッッ!鉄クズが跳んで来ましたァッ!」
四班班長<そんな事は分かってる!!班長に何があったッ!!>
隊員「は…班長は頬に被弾ッ!鉄片が突き刺さって…」
バ オ ッ ッ ! !
隊員「ゔッ…!!」ザクッ!
四班班長<ーz_ノ¬_/\!!!!>
ドスッ ガッ ガッ サクッ スパッ ガズッ ズシュッ
「あああああああああ!!」 「オグッ!」
「ぶほぉっ!」 「耳が…耳が…」 「ぶっ」
「ぃ…痛え…抜いてくれェ…」
バ ヒ ュ ッ ッ !
四班班長<了解。四班各員、機動戦闘車の後方に迫撃砲を展開、火力支援に備えろ>
ガチャガチャガチャ カチッ チャキッ
四班班長<展開完了、火力支援出来ます>
三班班長<了解。各員、攻撃開始>
カ ッ ッ ! ! !
三班班長「ッッッ!!?」
四班班長<!!!!>
「…なんだ今の…!?」 「光った……空港が光ったぞ…」
三班班長「慌てるなッ!攻撃開…」
ゴ ガ ッ !
三班班長「!?」
「た、タイヤですッ!壁を破ってタイヤが飛…」
ビ ュ バ ボ ッ ! !
ドスッ ザクッ ドッ ガッ ビキュッ ズカッ ドッ ドッ
「ぎゃああああああ!!」 「うぐぉえっ」 「うわあああああああ!!」
三班班長「おぶふっ」ビチャビチャ
四班班長<どうした!? 何があった>
隊員「てッッ!鉄クズが跳んで来ましたァッ!」
四班班長<そんな事は分かってる!!班長に何があったッ!!>
隊員「は…班長は頬に被弾ッ!鉄片が突き刺さって…」
バ オ ッ ッ ! !
隊員「ゔッ…!!」ザクッ!
四班班長<ーz_ノ¬_/\!!!!>
ドスッ ガッ ガッ サクッ スパッ ガズッ ズシュッ
「あああああああああ!!」 「オグッ!」
「ぶほぉっ!」 「耳が…耳が…」 「ぶっ」
「ぃ…痛え…抜いてくれェ…」
バ ヒ ュ ッ ッ !
362: 2014/06/28(土) 12:20:37.96 ID:Jgb6UEfSO
オリバ「ハハ…雪合戦ならぬ鉄合戦か…」
オリバ「おまけに全弾命中…よくやるよまったく…」
勇次郎「………」ド ヒ ュ ! ! !
ギャアアアア…
オリバ「スゲェ悲鳴だな。こっちまで響いてきやがる」
オリバ「大丈夫かい?二人とも」
貴樹「…ええ…まあ…」
オリバ「ならばいいんだが」
貴樹「………」
そう言いつつも、僕は内心気が気じゃなかった
明里を怖がらせない為に、両手で彼女の耳を塞いでいる僕は、物凄い爆風も、その後の悲鳴も、全て聞いてしまっていた
演技なんかじゃない、身を切るような金切り声
彼らがどんな目にあっているのか、オリバさんの陰に隠れている僕には分からない
でも、その見えないという事が僕の想像力を掻き回して、恐怖を二倍にも三倍にも増やした
勇次郎「………」
爆風が止まった
悲鳴も聞こえなくなった
貴樹「…!!…」
それは、彼らが一人残らず氏んだ事を意味していた
オリバ「ンー…砲撃するなら、畳み掛けるような突撃も定石として用意しているハズだが、どこから来るのかな?」キョロキョロ
勇次郎「………」
「フツーは背後からだろ」
オリバ「!」
364: 2014/06/28(土) 20:09:25.75 ID:Jgb6UEfSO
ゲバル「おや? 予想外だったかな?」ジャリ…
貴樹「?…?…」
オリバ「…………」
オリバ「フフッ…正直の所そうでもない。我が母国が関わっているのなら、当然来るものだろうと思っていた」
ゲバル「チェッ、あ~あ~つまんねーの」
ゲバル「………」ギョロッ
貴樹「っ!?」
勇次郎「…………」
ゲバル「ほお…これはまた…随分と珍しい事も起きるんだな」
ゲバル「美女と野獣どころの騒ぎじゃ無い……花とウサギと悪魔?…ゴロ悪いか、ハハハ」
勇次郎「フフ…」
勇次郎「上だぜ」
ゲバル「ン?」
M.P.B.M「………」ゴ オ ォ ッ !
368: 2014/06/28(土) 22:12:30.47 ID:Jgb6UEfSO
バ ッ シ ャ ア ア !
M.P.B.M「………」ゴ オ オ !
顔に土色の化粧をした男が出てきたと思えば、次は天窓が割れて、巨大な黒い物が降ってきた
心休まる事が無い状況に置かれた僕は、その黒い物を凝視する
でも、その姿を確認した僕の頭には、恐怖や驚愕が来るよりも先に、可笑しさにも似た感情が生まれてしまった
その黒い物が、どう見ても人型のロボットにしか見えなかったからだ
しかし、その可笑しさも次の瞬間には空っぽになった
ド オ オ ォ ン !
貴樹「…?…」
着地する寸前、ロボットは轟音を上げて、両手と下半身を残して消えてしまった
ゲバル「………」ザウッ
化粧をした男は振り返って…
ゲバル「にっげろ~~♪」スタタタ
と、無邪気な様子で走って来た
何から逃げているのかさっぱりな僕は、彼の笑顔の後ろに…
ズ ド ド ド ド ド ド ド ド ! !
次々と落下してくる巨大ロボットと…
ド グ ワ シ ャ ア ! !
そのロボットを押し潰す、ロボットより更に大きいヘリコプターを見た
M.P.B.M「………」ゴ オ オ !
顔に土色の化粧をした男が出てきたと思えば、次は天窓が割れて、巨大な黒い物が降ってきた
心休まる事が無い状況に置かれた僕は、その黒い物を凝視する
でも、その姿を確認した僕の頭には、恐怖や驚愕が来るよりも先に、可笑しさにも似た感情が生まれてしまった
その黒い物が、どう見ても人型のロボットにしか見えなかったからだ
しかし、その可笑しさも次の瞬間には空っぽになった
ド オ オ ォ ン !
貴樹「…?…」
着地する寸前、ロボットは轟音を上げて、両手と下半身を残して消えてしまった
ゲバル「………」ザウッ
化粧をした男は振り返って…
ゲバル「にっげろ~~♪」スタタタ
と、無邪気な様子で走って来た
何から逃げているのかさっぱりな僕は、彼の笑顔の後ろに…
ズ ド ド ド ド ド ド ド ド ! !
次々と落下してくる巨大ロボットと…
ド グ ワ シ ャ ア ! !
そのロボットを押し潰す、ロボットより更に大きいヘリコプターを見た
373: 2014/06/30(月) 19:15:19.78 ID:SJ2/yXbSO
ブオワアアッ
貴樹・明里「っ!」
オリバ「おっと」ズイッ
バフゥッ モワモワモワ…
オリバ「なっちゃいないなゲバル。怪我人にホコリをかけるな」
ゲバル「鉛弾をかけるよりは良いと思うけど?」クイッ
肩を竦めて、親指で後ろを指した彼の背後には、ヘリコプターとロボットが積まれている
その山のように積まれたロボットの腕には、兵器についての知識が無い僕でも分かり、尚且つそれでも背筋を凍らせるような武器が取り付けられていた
ガトリング
漫画でも小説でも、映画でも、娯楽物を楽しんだ人なら、フィクションの中で一度は目にする兵器
大量の弾丸で、相対した相手を粉々にする兵器
その存在は、僕がこのロボットに対して抱いた甘い認識を改めさせるのに、十分なインパクトを放っていた
ゲバル「よしOK、もう出てきていいぞ~」
オリバ「……?」
正明「………」キョロキョロ
貴樹「っ!」
正明「あっ!?」
明里「…正明さん…」
正明「明里?」
正明「明里!!?」ダダダダ
貴樹「………っ」
正明「明里っ…おい、嘘だろ…なんだよこれッ…!?」
明里「大丈夫…治るみたい、だから…」
正明「大丈夫って、そんなわけないだろォ…ッ!」
正明「貴樹ッ!!なんで明里がこんな事になってんだよ!!」
貴樹「…勇次郎さんが、弾丸を跳ね返して…それが明里に当たったんだ…」
正明「!? なん……え、なんだそれ?勇次郎って…」
貴樹・明里「っ!」
オリバ「おっと」ズイッ
バフゥッ モワモワモワ…
オリバ「なっちゃいないなゲバル。怪我人にホコリをかけるな」
ゲバル「鉛弾をかけるよりは良いと思うけど?」クイッ
肩を竦めて、親指で後ろを指した彼の背後には、ヘリコプターとロボットが積まれている
その山のように積まれたロボットの腕には、兵器についての知識が無い僕でも分かり、尚且つそれでも背筋を凍らせるような武器が取り付けられていた
ガトリング
漫画でも小説でも、映画でも、娯楽物を楽しんだ人なら、フィクションの中で一度は目にする兵器
大量の弾丸で、相対した相手を粉々にする兵器
その存在は、僕がこのロボットに対して抱いた甘い認識を改めさせるのに、十分なインパクトを放っていた
ゲバル「よしOK、もう出てきていいぞ~」
オリバ「……?」
正明「………」キョロキョロ
貴樹「っ!」
正明「あっ!?」
明里「…正明さん…」
正明「明里?」
正明「明里!!?」ダダダダ
貴樹「………っ」
正明「明里っ…おい、嘘だろ…なんだよこれッ…!?」
明里「大丈夫…治るみたい、だから…」
正明「大丈夫って、そんなわけないだろォ…ッ!」
正明「貴樹ッ!!なんで明里がこんな事になってんだよ!!」
貴樹「…勇次郎さんが、弾丸を跳ね返して…それが明里に当たったんだ…」
正明「!? なん……え、なんだそれ?勇次郎って…」
377: 2014/06/30(月) 20:57:46.31 ID:SJ2/yXbSO
勇次郎「…………」
正明「~~~~~~~~ッッッッ!!?」
オリバ「混乱しているようだし、私が今の状況を早口で説明してあげよう。時間もあまり無いからよく聞きたまえ」
正明「えっ…あの…あの人って…」
オリバ「聞けって」ガッ
正明「ッッ!?」
オリバ「私はビスケット・オリバ。法の外に君臨し、地上で最も自由な男だ」
オリバ「キミをここに案内した男はジュン・ゲバル。小さな島の王様にして、アメリカと対等の軍事力を操る海賊だ」
ゲバル「ハ~イ♪」
正明「???」
オリバ「そしてあそこの彼は範馬勇次郎。地上最強の生物にして、全男子の憧れ。世界中の政治家にとっての『目の上のタンコブ』だ」
オリバ「で、ここは、その勇次郎を抹殺せんとする勢力との戦場というワケだ。ディス・イズ・ウォー、OK?」
正明「ィ…イエス…」
ガガッ ガガガガガ…
正明「!!」
ゲバル「オッ、まだ動けるのか?」
オリバ「想定の内さ」
M.P.B.M「………」ガシャガシャガシャガシャッ!!!
ゲバル「ひーふーみー…全部で10機か。よく集めたなァこんなに」
オリバ「歩兵は無しか。ヘリで氏んだか、上で散ったか…」フフ…
勇次郎「いずれにしろだ」
オリバ・ゲバル「!」
勇次郎「離れてなお三方」
正明「……ッッ」
貴樹「っ、あっ、はいっ。明里、立てる?」
明里「うん…多分…」ヨロヨロ…
ゲバル「えっ、お三…って…」
オリバ「お優しいコトで…」ボソ
勇次郎「あ?」
オリバ「失礼」
ゲバル(聞いてたのと違うじゃんッッ)
380: 2014/06/30(月) 23:47:09.99 ID:SJ2/yXbSO
離れるように促された僕らは、明里を庇いながら空港の受付窓口に隠れた
その時、正明さんは「今なら逃げられるだろ」と言ったが、僕は首を横に振った
範馬勇次郎に関する情報を、何故政府は隠したがるのか
戦闘という過剰な行動にどうして踏み切ったのか
何故踏み切ろうと思ったのか
特殊部隊は何故、範馬勇次郎と一緒に僕らにまで銃を向けていたのか
血を流して倒れている明里を、どうして保護しなかったのか
それらについて考えてしまうと、逃げ出そうなんてとても思えなかった
保護してもらった先が本当に安全なのか、僕には疑問しかなかったのだから
シャリリリリリ…
金属が擦れるような音がする
明里に目をつぶるように言い、彼女の耳を塞いで、僕は正明さんにも耳を塞ぐように促した
正明さんは何が起きるかを察し、耳を塞いで体を丸くした
ド ガ シ ャ ッ !
想像していた音より先に、金属的な打撃音が響いた
ジャリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!
その音を追うように、機械的な轟音が鳴り響く
凄まじく重い鎖を、高速で擦り合わせるような音が
383: 2014/07/01(火) 01:32:32.16 ID:4o8v1MzSO
ド ガ シ ャ ッ !
最初の一発。繰り出したるは範馬勇次郎
使用したのは背足蹴り上げ
先頭のM.P.B.Mの足は床から離れ、股間部は衝撃により大破
パイロットの粉砕された恥骨ごとパーツが宙を舞う
1機が戦闘不能
ジャリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!
残る9機が発砲。前方の床が爆発するかのように砕け散る
しかし、そこにはオーガの姿は無く、アンチェインもミスターセカンもいない
ガシャガシャッ!
円周防御の陣形に入ったM.P.B.Mの内…
ガ ッ
脚を捕まれた者が一機
掴んだ者はビスケット・オリバ
ド ン ! !
筋肉の神に愛されし男の放った『押し』は、鋼鉄製の脚をもぎ飛ばし、その機体を転倒させた
転倒した機体の横にいた機体は、腕を振り上げ、オリバに対しガトリングを叩きつける
バ ア ン !
パイロット「!?」
しかし、カウンター効果によって破壊力が数倍に跳ね上がったオリバのアッパーカットは、ガトリングなど物ともせずにちぎり飛ばし、天窓の穴から青空むけて吹き飛ばした
オリバ「ンー、なるほどね」ガ キ ョ !
片腕を失った機体を蹂躙し、他の機体への破壊へと移りながら、男は呟く
ゲバル「何がだッ?」ガゴッ!
バ ガ ッ !
その呟きに応えたゲバルは、飛び散る鉄片を掴んでは、狙った機体の銃口にそれを叩き込み、ガトリングを破裂させていた
無論、風の如く動き回る彼を捉える者はいない
オリバ「見当がついたのさ。この戦争のスポンサーのね」ガ ッ
オリバ「キミも本当は分かってるだろ?」メキメキメキ… グ シ ュ
ゲバル「アメリカについてはなッ!でもニッポンは知らないッ!」バッ!バッ!
オリバ「そりゃあ意外だ。じゃあチョイト教示しよう」ブ ン !
ド ギ ン !
最初の一発。繰り出したるは範馬勇次郎
使用したのは背足蹴り上げ
先頭のM.P.B.Mの足は床から離れ、股間部は衝撃により大破
パイロットの粉砕された恥骨ごとパーツが宙を舞う
1機が戦闘不能
ジャリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!
残る9機が発砲。前方の床が爆発するかのように砕け散る
しかし、そこにはオーガの姿は無く、アンチェインもミスターセカンもいない
ガシャガシャッ!
円周防御の陣形に入ったM.P.B.Mの内…
ガ ッ
脚を捕まれた者が一機
掴んだ者はビスケット・オリバ
ド ン ! !
筋肉の神に愛されし男の放った『押し』は、鋼鉄製の脚をもぎ飛ばし、その機体を転倒させた
転倒した機体の横にいた機体は、腕を振り上げ、オリバに対しガトリングを叩きつける
バ ア ン !
パイロット「!?」
しかし、カウンター効果によって破壊力が数倍に跳ね上がったオリバのアッパーカットは、ガトリングなど物ともせずにちぎり飛ばし、天窓の穴から青空むけて吹き飛ばした
オリバ「ンー、なるほどね」ガ キ ョ !
片腕を失った機体を蹂躙し、他の機体への破壊へと移りながら、男は呟く
ゲバル「何がだッ?」ガゴッ!
バ ガ ッ !
その呟きに応えたゲバルは、飛び散る鉄片を掴んでは、狙った機体の銃口にそれを叩き込み、ガトリングを破裂させていた
無論、風の如く動き回る彼を捉える者はいない
オリバ「見当がついたのさ。この戦争のスポンサーのね」ガ ッ
オリバ「キミも本当は分かってるだろ?」メキメキメキ… グ シ ュ
ゲバル「アメリカについてはなッ!でもニッポンは知らないッ!」バッ!バッ!
オリバ「そりゃあ意外だ。じゃあチョイト教示しよう」ブ ン !
ド ギ ン !
385: 2014/07/01(火) 03:41:10.57 ID:4o8v1MzSO
オリバ「まず一つ」
M.P.B.M「………」ブ ン !
オリバ「このデカブツと機動戦闘車は、俗に言う新兵器であること」ガッ
オリバ「二つ目は」バ オ ッ !
バ ガ ア ァ ン ! ! !
パラパラ… カラン カチャッ
オリバ「それらに対する期待は、お世辞にも高いとは言えないという事」
オリバ「そして最後の三つ目は、オーガは世界最大のビッグネームである事」
M.P.B.M「……」ジャリリリリリリ!!
ゲバル「オワッと!」サッ
オリバ「核が『帯に短し襷に長し』と影で叫ばれる現代……必要とされるのは、殲滅兵器ではなく『量産可能な汎用兵器』」ググッ
オリバ「要するにッッ」ボ ッ ! ! !
ガ ゴ ! !
オリバ「兵器産業の新商品…その売名計画にまんまと乗せられたのだ。我が国のボーイ達も、ミスター石波もね」シュウウゥ…
ゲバル「フフッ…くだらないな」
オリバ「ああ、結局はボッシュの時代と何も変わらんのさ」
勇次郎「いや」
オリバ「!」
勇次郎「そうでもねェ」ギリッ
褐 ッ ッ ! ! !
M.P.B.M「………」ブ ン !
オリバ「このデカブツと機動戦闘車は、俗に言う新兵器であること」ガッ
オリバ「二つ目は」バ オ ッ !
バ ガ ア ァ ン ! ! !
パラパラ… カラン カチャッ
オリバ「それらに対する期待は、お世辞にも高いとは言えないという事」
オリバ「そして最後の三つ目は、オーガは世界最大のビッグネームである事」
M.P.B.M「……」ジャリリリリリリ!!
ゲバル「オワッと!」サッ
オリバ「核が『帯に短し襷に長し』と影で叫ばれる現代……必要とされるのは、殲滅兵器ではなく『量産可能な汎用兵器』」ググッ
オリバ「要するにッッ」ボ ッ ! ! !
ガ ゴ ! !
オリバ「兵器産業の新商品…その売名計画にまんまと乗せられたのだ。我が国のボーイ達も、ミスター石波もね」シュウウゥ…
ゲバル「フフッ…くだらないな」
オリバ「ああ、結局はボッシュの時代と何も変わらんのさ」
勇次郎「いや」
オリバ「!」
勇次郎「そうでもねェ」ギリッ
褐 ッ ッ ! ! !
386: 2014/07/01(火) 05:06:19.34 ID:4o8v1MzSO
強大に過ぎる漢が、兇悪極まる拳を掲げた時
既に6機ものM.P.B.Mが戦闘不能に陥っていた
残った4機には既に戦意など無い
しかし、闘いとは片方が仕掛ければ始まり、片方が退いても終わりはしないものである
ここまで来てしまった以上、もはや戦意の有無は関係無い
そこにあるのは単純なる二進法のみ
生か氏か!ただそれだけである!!!
褐 ッ ッ ! ! !
漢の拳が消えた時、爆心地からは閃光が炸裂し…
ビ ッ シ ャ ア ア ア ア ア ! !
天地を揺るがす大轟音と共に、残った4機の脚部と駆動部。更には空港の床が粉砕した
直径20メートルものクレーターが形成されたその場所は、小型の隕石が墜落したかのような様相を呈した
ゲバル「………ッッッ!?」
オリバ「フゥー…あっぶねェ~」
床から離れ、腕力によって壁に身体を固定していた二人は、辛うじて被害は免れている
勇次郎「俺が居る今とは、兵器と金と権力の時代ではない」
勇次郎「現代とは素手の時代だ」
勇次郎「ボッシュの野郎が握れる代物じゃねェ」
華々しいデビューを飾るはずだった新兵器は…
一個人の暴力により、血の海に沈んだ
既に6機ものM.P.B.Mが戦闘不能に陥っていた
残った4機には既に戦意など無い
しかし、闘いとは片方が仕掛ければ始まり、片方が退いても終わりはしないものである
ここまで来てしまった以上、もはや戦意の有無は関係無い
そこにあるのは単純なる二進法のみ
生か氏か!ただそれだけである!!!
褐 ッ ッ ! ! !
漢の拳が消えた時、爆心地からは閃光が炸裂し…
ビ ッ シ ャ ア ア ア ア ア ! !
天地を揺るがす大轟音と共に、残った4機の脚部と駆動部。更には空港の床が粉砕した
直径20メートルものクレーターが形成されたその場所は、小型の隕石が墜落したかのような様相を呈した
ゲバル「………ッッッ!?」
オリバ「フゥー…あっぶねェ~」
床から離れ、腕力によって壁に身体を固定していた二人は、辛うじて被害は免れている
勇次郎「俺が居る今とは、兵器と金と権力の時代ではない」
勇次郎「現代とは素手の時代だ」
勇次郎「ボッシュの野郎が握れる代物じゃねェ」
華々しいデビューを飾るはずだった新兵器は…
一個人の暴力により、血の海に沈んだ
389: 2014/07/03(木) 14:11:29.10 ID:8FgRAT+SO
貴樹「………ッッッ」
凄まじい音が響くだろうと思い、覚悟はしていた
だから明里の耳を塞いで、僕自身は耐える事を選んだ
でも耳の中で雷が鳴るのは想像していなかった
床の振動で脚が痺れてしまうなんて、誰が想像できるだろうか
明里「!…!…!」
明里も目を固く閉じて、小刻みに震えている
僕の両手に大した意味は無かったんだと、彼女の表情を見て僕は悟った
オリバ「終わったぜ。もう安心だ」ぬうっ
貴樹「!!……ッッ」
オリバ「ンー……まァ、当然と言えば当然の反応…」
オリバ「…アレ?」
明里「!…!…」フルフル
オリバ「………」
オリバ「ミスター遠野、失礼だがミス明里を診させてくれ」
貴樹「えっ…は…」
オリバ「………」ガバッ タッタッタッ…
オリバさんは一言断りを入れると、返事も聞かずにカウンターに入って明里を抱き抱え、元来た道を走っていった
何事かと思い、僕は正明さんと一緒に、震える足で明里の元へと駆け寄った
さっきまで動いていたはずのロボット達は、部品をバラバラに散らばらせて、全て倒れている
装甲の隙間から流れる血のようなものは、出来るだけ見ないように努めた
床に明里を寝かせたオリバさんは、明里の額に手を置いたあと、ハッとした顔をした
そして、彼は明里の手首に指をつけ、首筋に指をつけ、鼻下に指を一瞬添えたあと、ため息をついた
オリバ「マズいぜ…こりゃあショック状態だ」
正明「!?」
貴樹「……ショック、状態…?」
オリバ「ミスター遠野、負傷前の彼女の健康状態について何か知らないかな?昔ここを怪我をしたとか、そのような物でも構わない」
貴樹「健康…昔のも、ですか…」
正明「び、病院に通ってました!仕事で身体壊して、それで…今日も通うはずだったんですが…」
凄まじい音が響くだろうと思い、覚悟はしていた
だから明里の耳を塞いで、僕自身は耐える事を選んだ
でも耳の中で雷が鳴るのは想像していなかった
床の振動で脚が痺れてしまうなんて、誰が想像できるだろうか
明里「!…!…!」
明里も目を固く閉じて、小刻みに震えている
僕の両手に大した意味は無かったんだと、彼女の表情を見て僕は悟った
オリバ「終わったぜ。もう安心だ」ぬうっ
貴樹「!!……ッッ」
オリバ「ンー……まァ、当然と言えば当然の反応…」
オリバ「…アレ?」
明里「!…!…」フルフル
オリバ「………」
オリバ「ミスター遠野、失礼だがミス明里を診させてくれ」
貴樹「えっ…は…」
オリバ「………」ガバッ タッタッタッ…
オリバさんは一言断りを入れると、返事も聞かずにカウンターに入って明里を抱き抱え、元来た道を走っていった
何事かと思い、僕は正明さんと一緒に、震える足で明里の元へと駆け寄った
さっきまで動いていたはずのロボット達は、部品をバラバラに散らばらせて、全て倒れている
装甲の隙間から流れる血のようなものは、出来るだけ見ないように努めた
床に明里を寝かせたオリバさんは、明里の額に手を置いたあと、ハッとした顔をした
そして、彼は明里の手首に指をつけ、首筋に指をつけ、鼻下に指を一瞬添えたあと、ため息をついた
オリバ「マズいぜ…こりゃあショック状態だ」
正明「!?」
貴樹「……ショック、状態…?」
オリバ「ミスター遠野、負傷前の彼女の健康状態について何か知らないかな?昔ここを怪我をしたとか、そのような物でも構わない」
貴樹「健康…昔のも、ですか…」
正明「び、病院に通ってました!仕事で身体壊して、それで…今日も通うはずだったんですが…」
393: 2014/07/06(日) 14:28:32.08 ID:yfrbC8SSO
オリバ「フム…」
貴樹「…昔は身体が弱くて、学校も休みがちでしたけど…僕が知っているのは、それぐらいです……」
オリバ「大怪我とかは無いのかい?」
貴樹「怪我とかは…そんな酷いのは…」
正明「俺が知る限りでも、多分無いです…」
オリバ「ナルホドネ」
オリバ「………」
オリバ「どうやら私は事態を甘く見ていたようだ」
貴樹「…どういう意味ですか、それ」
オリバ「彼女の命が危うい」
貴樹「え…?」
貴樹「なんで、ですか?…大丈夫だって…怪我したのは、肩で…」
オリバ「出血も完璧に抑えられている。しかしそれでも、ショック状態は起こりうる」
オリバ「負傷による脳を含めた神経系統及び、循環器系への負荷の大小は、その時の健康状態…そして『負傷の経験』によって大きく変化する」
オリバ「ダメージの処理にも経験や訓練は必要であり、痛みから離れた生活を送る現代人には、程度の差はあれショック状態の危険が常について回っている」
オリバ「指を切っただけで負傷ヶ所を見てもいないのに、目眩や頭痛を訴える者」
オリバ「足首を軽く捻挫しただけで、胃袋を痙攣させて嘔吐し、発熱までしてしまう者」
オリバ「痛みから来る肉体の不具合…医学さえ予期が不可能な、ダメージへの身体の反応」
オリバ「過去には、バスケットボールが胸に当たっただけで心停止に陥った青年の例や、跳躍からの着地で足の指を折り、そこから来るショックで心不全を起こし、そのまま氏亡した少女の例などもある」
オリバ「敵側の戦力を弱め、隙を突いて突破しようと考えていたが……そうもいかなくなった」
貴樹「………」
正明「そうもいかないって…や、やれるだろアンタらなら!軍隊をこんな風に出来るんだから、突破ぐらい…」
貴樹「…昔は身体が弱くて、学校も休みがちでしたけど…僕が知っているのは、それぐらいです……」
オリバ「大怪我とかは無いのかい?」
貴樹「怪我とかは…そんな酷いのは…」
正明「俺が知る限りでも、多分無いです…」
オリバ「ナルホドネ」
オリバ「………」
オリバ「どうやら私は事態を甘く見ていたようだ」
貴樹「…どういう意味ですか、それ」
オリバ「彼女の命が危うい」
貴樹「え…?」
貴樹「なんで、ですか?…大丈夫だって…怪我したのは、肩で…」
オリバ「出血も完璧に抑えられている。しかしそれでも、ショック状態は起こりうる」
オリバ「負傷による脳を含めた神経系統及び、循環器系への負荷の大小は、その時の健康状態…そして『負傷の経験』によって大きく変化する」
オリバ「ダメージの処理にも経験や訓練は必要であり、痛みから離れた生活を送る現代人には、程度の差はあれショック状態の危険が常について回っている」
オリバ「指を切っただけで負傷ヶ所を見てもいないのに、目眩や頭痛を訴える者」
オリバ「足首を軽く捻挫しただけで、胃袋を痙攣させて嘔吐し、発熱までしてしまう者」
オリバ「痛みから来る肉体の不具合…医学さえ予期が不可能な、ダメージへの身体の反応」
オリバ「過去には、バスケットボールが胸に当たっただけで心停止に陥った青年の例や、跳躍からの着地で足の指を折り、そこから来るショックで心不全を起こし、そのまま氏亡した少女の例などもある」
オリバ「敵側の戦力を弱め、隙を突いて突破しようと考えていたが……そうもいかなくなった」
貴樹「………」
正明「そうもいかないって…や、やれるだろアンタらなら!軍隊をこんな風に出来るんだから、突破ぐらい…」
394: 2014/07/06(日) 15:50:41.30 ID:yfrbC8SSO
貴樹(…明里が…)
貴樹(明里が、氏ぬ…?)
説明を聞きながら、僕はただ呆然としていた
説明の中身は分かるのに、その状況への認識が追いつかなかった
明里が氏ぬかもしれない
明里が倒れた時に頭を巡った言葉
ありえないと思いたくて、一度は本当にありえない事になった言葉
その言葉が戻って来た
明里は、肩を撃たれるような世界にはいなかったのに
銃なんて単語が出るのもおかしいくらい、明里の周りは普通だったはずなのに
ゲバル「出来るだろうね。少なくとも無理矢理な突破は」
貴樹「!!」
正明「! じゃあ…」
ゲバル「でも君達はついて来れるのか?」
正明「!?」
ゲバル「敵の照準は全部が正確な訳では無い。それに俺達は100%弾丸を回避するだろう」
ゲバル「第一に、飛び交うのは弾丸だけじゃない」
ゲバル「手榴弾にロケット弾。戦車砲に、場合によってはミサイルも考えられる」
オリバ(俺は爆発以外はよけないけどネ)
ゲバル「それらが全部流れ弾になるワケだが、君達はそんな物が飛び回る戦場を、予断許さぬ負傷者を抱えて突破出来るのかい?」
正明「………それは……」
ゲバル「それに戦とは流動的な物だ。一度通った道が安全とは限らないし、敵は常に配置を変え、戦法を変え、攻撃を加えてくるだろう」
ゲバル「そして、今やその敵の目的はこのように移行している」
ゲバル「ジュン・ゲバル、ビスケット・オリバ、範馬勇次郎の三名を殺害しろ。民間人の被害は考慮しない…とね」
ゲバル「つまりは敵を殲滅でもしない限り追われ続けるから、突破したところで意味は無いというワケだ」
ゲバル「まあ、俺達から離れて怪我人を庇いながら、民間人を考慮しない砲撃をかい潜って安全圏まで逃げ延びるというのなら、止めはしない。行きたいのなら行けばいい」
正明「………ッッッ」
勇次郎「クスクスクス…」
オリバ「!」
ゲバル「!」
勇次郎「ならヤル事は一つしかねェよなァ?」
ゲバル「………」
ゲバル「…いや、それは流石に無い」
勇次郎「此処で潰す」
ゲバル「いやいやいやいや…ッッ」
貴樹(明里が、氏ぬ…?)
説明を聞きながら、僕はただ呆然としていた
説明の中身は分かるのに、その状況への認識が追いつかなかった
明里が氏ぬかもしれない
明里が倒れた時に頭を巡った言葉
ありえないと思いたくて、一度は本当にありえない事になった言葉
その言葉が戻って来た
明里は、肩を撃たれるような世界にはいなかったのに
銃なんて単語が出るのもおかしいくらい、明里の周りは普通だったはずなのに
ゲバル「出来るだろうね。少なくとも無理矢理な突破は」
貴樹「!!」
正明「! じゃあ…」
ゲバル「でも君達はついて来れるのか?」
正明「!?」
ゲバル「敵の照準は全部が正確な訳では無い。それに俺達は100%弾丸を回避するだろう」
ゲバル「第一に、飛び交うのは弾丸だけじゃない」
ゲバル「手榴弾にロケット弾。戦車砲に、場合によってはミサイルも考えられる」
オリバ(俺は爆発以外はよけないけどネ)
ゲバル「それらが全部流れ弾になるワケだが、君達はそんな物が飛び回る戦場を、予断許さぬ負傷者を抱えて突破出来るのかい?」
正明「………それは……」
ゲバル「それに戦とは流動的な物だ。一度通った道が安全とは限らないし、敵は常に配置を変え、戦法を変え、攻撃を加えてくるだろう」
ゲバル「そして、今やその敵の目的はこのように移行している」
ゲバル「ジュン・ゲバル、ビスケット・オリバ、範馬勇次郎の三名を殺害しろ。民間人の被害は考慮しない…とね」
ゲバル「つまりは敵を殲滅でもしない限り追われ続けるから、突破したところで意味は無いというワケだ」
ゲバル「まあ、俺達から離れて怪我人を庇いながら、民間人を考慮しない砲撃をかい潜って安全圏まで逃げ延びるというのなら、止めはしない。行きたいのなら行けばいい」
正明「………ッッッ」
勇次郎「クスクスクス…」
オリバ「!」
ゲバル「!」
勇次郎「ならヤル事は一つしかねェよなァ?」
ゲバル「………」
ゲバル「…いや、それは流石に無い」
勇次郎「此処で潰す」
ゲバル「いやいやいやいや…ッッ」
396: 2014/07/06(日) 16:17:31.31 ID:yfrbC8SSO
勇次郎「無いか?」
ゲバル「いや、無いでしょフツー」ハハ
勇次郎「ほう…なら何すりゃ良いんだ?」
ゲバル「だからソレを今から考え…」
勇次郎「てめェの腕っぷしは何の為にある」
ゲバル「!」
勇次郎「終わらせたい時に終わらせる為。立ち塞がる理不尽を屠り、砕き、己の我を通す為」
勇次郎「技術や戦略と言った小細工を不要と断じ、力のみを押し通す為」
勇次郎「それが強さだ」
勇次郎「それが腕っぷしだ」
勇次郎「そんな腑抜けた野郎だから、てめェは負けたんだぜ。ビスケット・オリバによ」
ゲバル「………ッッ」ぞわっ
オリバ「フンフフーンフーンフーンフ~~ン♪」
ゲバル「…………」
勇次郎「此処を以って終わりとする」
ゲバル「いや、無いでしょフツー」ハハ
勇次郎「ほう…なら何すりゃ良いんだ?」
ゲバル「だからソレを今から考え…」
勇次郎「てめェの腕っぷしは何の為にある」
ゲバル「!」
勇次郎「終わらせたい時に終わらせる為。立ち塞がる理不尽を屠り、砕き、己の我を通す為」
勇次郎「技術や戦略と言った小細工を不要と断じ、力のみを押し通す為」
勇次郎「それが強さだ」
勇次郎「それが腕っぷしだ」
勇次郎「そんな腑抜けた野郎だから、てめェは負けたんだぜ。ビスケット・オリバによ」
ゲバル「………ッッ」ぞわっ
オリバ「フンフフーンフーンフーンフ~~ン♪」
ゲバル「…………」
勇次郎「此処を以って終わりとする」
398: 2014/07/06(日) 18:42:58.20 ID:yfrbC8SSO
衆議院赤坂議員宿舎
石波「……………」
亜部「どうなった…ええ?」
亜部「長年溜まった鬱憤を晴らしてどうなったッ?」
亜部「あァ~~~~ッ?」
石波「…まだ負けたわけじゃありません…ッ」
亜部「負けてんじゃねーかどー見ても!!どーすんのこの被害と散財!」
亜部「上手い話に乗せられて戦力を借り出した結果がコレッ!俺の話を無視した結果がコレッッ!!」
亜部「どーすんだよッッ!!あの核弾頭三つッッ!!! アメリカでさえ持て余す化け物2匹に範馬勇次郎だぞッ!?馬鹿じゃねェのかお前ッ!!」
石波「……………ッッッ」
コン コン
亜部「なんだッ!」
<司令部からです。石波議員にお伝えしたい事があると…
亜部「あー…入れっ」
議員秘書「失礼します」ガチャッ
亜部「ん?」
石波(無線…?)
石波「こちらへ」
秘書「失礼致します」スッ
石波「なんだ?何があった?」
司令部<あの…至急そちらに伝えたい事がありまして…>
石波「それはもう聞いた。誰からだ」
司令部<…匿名です…>
石波「匿名?何故名前を聞き出さない」
司令部<聞けば分かるとの事でしたので…その…とにかくお繋ぎします>ザザッ
石波「?」
石波(どういう事だ?…何が起きている?)
ザザッ プツッ
<クスッ…クスクス…>
石波「…誰だキミは。何のマネだ?」
<まだそんな所に染み着いていやがったか、石波茂雄>
石波「!!!!」
石波「……………」
亜部「どうなった…ええ?」
亜部「長年溜まった鬱憤を晴らしてどうなったッ?」
亜部「あァ~~~~ッ?」
石波「…まだ負けたわけじゃありません…ッ」
亜部「負けてんじゃねーかどー見ても!!どーすんのこの被害と散財!」
亜部「上手い話に乗せられて戦力を借り出した結果がコレッ!俺の話を無視した結果がコレッッ!!」
亜部「どーすんだよッッ!!あの核弾頭三つッッ!!! アメリカでさえ持て余す化け物2匹に範馬勇次郎だぞッ!?馬鹿じゃねェのかお前ッ!!」
石波「……………ッッッ」
コン コン
亜部「なんだッ!」
<司令部からです。石波議員にお伝えしたい事があると…
亜部「あー…入れっ」
議員秘書「失礼します」ガチャッ
亜部「ん?」
石波(無線…?)
石波「こちらへ」
秘書「失礼致します」スッ
石波「なんだ?何があった?」
司令部<あの…至急そちらに伝えたい事がありまして…>
石波「それはもう聞いた。誰からだ」
司令部<…匿名です…>
石波「匿名?何故名前を聞き出さない」
司令部<聞けば分かるとの事でしたので…その…とにかくお繋ぎします>ザザッ
石波「?」
石波(どういう事だ?…何が起きている?)
ザザッ プツッ
<クスッ…クスクス…>
石波「…誰だキミは。何のマネだ?」
<まだそんな所に染み着いていやがったか、石波茂雄>
石波「!!!!」
406: 2014/07/06(日) 20:34:25.84 ID:yfrbC8SSO
ガタッ
石波「ゆ、勇次郎…ッッ!!」
勇次郎<方づけちまったぜ、全部……日本産のゴミも、アメリカ産のゴミも>
勇次郎<しかも無線まで取られちまってよ…どうすんだよオマエ>
石波「……~~~~ッッッ!!」
勇次郎<キサマに命令する>
勇次郎<全軍突撃だ>
石波「!!?」
勇次郎<やれよ。やりたいように>
勇次郎<逃げも隠れもしないぜ>
石波「…正気か?…何を企んでいる?」
勇次郎<この範馬勇次郎が策謀を巡らすと思うかい>
石波「…………ッッッ」
勇次郎<全身全霊を掛け頃しに来い>
勇次郎<来なければ、キサマは生きては帰れねェぜ>
石波「ッッッ!!!」
プツッ
石波「…………」フルフル
亜部「……どうした?誰からだッ?」
石波「…………ッッ」フルフル
亜部「!! オーガからだな!?そうなんだなッ!?」
石波「…ってやるよ…」
亜部「えっ」
石波「やってやるよッッ」
亜部「はァっ!?」
石波「やらねばやられるのなら、先にやる以外に道はありません。これは既に暗殺では無く、総力戦であり殲滅戦なのです」
亜部「お、おい…」
石波「だとするならば、取れる最終手段は一つ」
亜部「…おい…」
石波「爆撃です」
石波「ゆ、勇次郎…ッッ!!」
勇次郎<方づけちまったぜ、全部……日本産のゴミも、アメリカ産のゴミも>
勇次郎<しかも無線まで取られちまってよ…どうすんだよオマエ>
石波「……~~~~ッッッ!!」
勇次郎<キサマに命令する>
勇次郎<全軍突撃だ>
石波「!!?」
勇次郎<やれよ。やりたいように>
勇次郎<逃げも隠れもしないぜ>
石波「…正気か?…何を企んでいる?」
勇次郎<この範馬勇次郎が策謀を巡らすと思うかい>
石波「…………ッッッ」
勇次郎<全身全霊を掛け頃しに来い>
勇次郎<来なければ、キサマは生きては帰れねェぜ>
石波「ッッッ!!!」
プツッ
石波「…………」フルフル
亜部「……どうした?誰からだッ?」
石波「…………ッッ」フルフル
亜部「!! オーガからだな!?そうなんだなッ!?」
石波「…ってやるよ…」
亜部「えっ」
石波「やってやるよッッ」
亜部「はァっ!?」
石波「やらねばやられるのなら、先にやる以外に道はありません。これは既に暗殺では無く、総力戦であり殲滅戦なのです」
亜部「お、おい…」
石波「だとするならば、取れる最終手段は一つ」
亜部「…おい…」
石波「爆撃です」
409: 2014/07/06(日) 22:40:20.68 ID:yfrbC8SSO
勇次郎「………」フー
ゲバル「…やりやがった…ッ」
オリバ「やれやれ、ホントに躊躇いが無いな。マジでやるとは」ハハハ
貴樹「…な…何が…?」
ゲバル「何したのかって?宣戦布告だよ」
貴樹「宣戦…?」
ゲバル「決着つけるんだよ。ここで」
貴樹「!!?」
オリバ「で、何が来るんだ?歩兵はダメ、車両もダメ、上からもダメ、特殊兵器もダメで一般市民を度外視とくれば、残るは一つだろうが」
勇次郎「ならば考えるまでも無ェ」
オリバ「あ~やっぱりね。爆撃か」
貴樹「ばっ…」
オリバ「裏世界一のビッグネームを三人纏めて潰せば、一般人を犠牲にしても世界的には体制が保てると踏んだか」
オリバ(フフ…まるで人質テロに対するロシアじゃないか……まあ、オーガの脅迫に屈したからだろうが)
ゲバル「ンー…参ったな…予定を繰り上げなきゃイケない」
ゲバル「ミスターオーガ、悪いが無線を…」
ヒュッ
ゲバル「おっと、流石に話が早い」パシッ
カーン! カラカラカラカラ…
ゲバル「あ、ランチャー…」
パシュウウウウウウウウウウウウウウウウウ…
勇次郎「来たぜ」
オリバ「催涙ガスか。キミ達は目と口を塞いで伏せてなさい」
貴樹「えっ…でも…」
オリバ「カウンターに隠れる暇は無いぞ、ホラ来た」
シュウウウウウウウウウウウウウウウウウ…
貴樹「!!」サッ
正明「……ッッ」サッ
勇次郎「…………」
オリバ「………」吸~ッ
オリバ「……ッ」ぴたっ
ゲバル「ああ、頼む。じゃ、切るるから」プツッ
ゲバル「スゥ~~……ッッ」ピタッ
ゲバル「…やりやがった…ッ」
オリバ「やれやれ、ホントに躊躇いが無いな。マジでやるとは」ハハハ
貴樹「…な…何が…?」
ゲバル「何したのかって?宣戦布告だよ」
貴樹「宣戦…?」
ゲバル「決着つけるんだよ。ここで」
貴樹「!!?」
オリバ「で、何が来るんだ?歩兵はダメ、車両もダメ、上からもダメ、特殊兵器もダメで一般市民を度外視とくれば、残るは一つだろうが」
勇次郎「ならば考えるまでも無ェ」
オリバ「あ~やっぱりね。爆撃か」
貴樹「ばっ…」
オリバ「裏世界一のビッグネームを三人纏めて潰せば、一般人を犠牲にしても世界的には体制が保てると踏んだか」
オリバ(フフ…まるで人質テロに対するロシアじゃないか……まあ、オーガの脅迫に屈したからだろうが)
ゲバル「ンー…参ったな…予定を繰り上げなきゃイケない」
ゲバル「ミスターオーガ、悪いが無線を…」
ヒュッ
ゲバル「おっと、流石に話が早い」パシッ
カーン! カラカラカラカラ…
ゲバル「あ、ランチャー…」
パシュウウウウウウウウウウウウウウウウウ…
勇次郎「来たぜ」
オリバ「催涙ガスか。キミ達は目と口を塞いで伏せてなさい」
貴樹「えっ…でも…」
オリバ「カウンターに隠れる暇は無いぞ、ホラ来た」
シュウウウウウウウウウウウウウウウウウ…
貴樹「!!」サッ
正明「……ッッ」サッ
勇次郎「…………」
オリバ「………」吸~ッ
オリバ「……ッ」ぴたっ
ゲバル「ああ、頼む。じゃ、切るるから」プツッ
ゲバル「スゥ~~……ッッ」ピタッ
411: 2014/07/06(日) 22:52:49.57 ID:yfrbC8SSO
勇次郎「………」フー
ゲバル「…やりやがった…ッ」
オリバ「やれやれ、ホントに躊躇いが無いな。マジでやるとは」ハハハ
貴樹「…な…何が…?」
ゲバル「何したのかって?宣戦布告だよ」
貴樹「宣戦…?」
ゲバル「決着つけるんだよ。ここで」
貴樹「!!?」
オリバ「で、何が来るんだ?歩兵はダメ、車両もダメ、上からもダメ、特殊兵器もダメで一般市民を度外視とくれば、残るは一つだろうが」
勇次郎「ならば考えるまでも無ェ」
オリバ「あ~やっぱりね。爆撃か」
貴樹「ばっ…」
オリバ「裏世界一のビッグネームを三人纏めて潰せば、一般人を犠牲にしても世界的には体制が保てると踏んだか」
オリバ(フフ…まるで人質テロに対するロシアじゃないか……まあ、オーガの脅迫に屈したからだろうが)
ゲバル「ンー…参ったな…予定を繰り上げなきゃイケない」
ゲバル「ミスターオーガ、悪いが無線を…」
ヒュッ
ゲバル「おっと、流石に話が早い」パシッ
カーン! カラカラカラカラ…
ゲバル「あ、ランチャー…」
パシュウウウウウウウウウウウウウウウウウ…
勇次郎「来たぜ」
オリバ「催涙ガスか。キミ達は目と口を塞いで伏せてなさい」
貴樹「えっ…でも…」
オリバ「カウンターに隠れる暇は無いぞ、ホラ来た」
シュウウウウウウウウウウウウウウウウウ…
貴樹「!!」サッ
正明「……ッッ」サッ
勇次郎「…………」
オリバ「………」吸~ッ
オリバ「……ッ」ぴたっ
ゲバル「ああ、頼む。じゃ、切るから」プツッ
ゲバル「スゥ~~……ッッ」ピタッ
ゲバル「…やりやがった…ッ」
オリバ「やれやれ、ホントに躊躇いが無いな。マジでやるとは」ハハハ
貴樹「…な…何が…?」
ゲバル「何したのかって?宣戦布告だよ」
貴樹「宣戦…?」
ゲバル「決着つけるんだよ。ここで」
貴樹「!!?」
オリバ「で、何が来るんだ?歩兵はダメ、車両もダメ、上からもダメ、特殊兵器もダメで一般市民を度外視とくれば、残るは一つだろうが」
勇次郎「ならば考えるまでも無ェ」
オリバ「あ~やっぱりね。爆撃か」
貴樹「ばっ…」
オリバ「裏世界一のビッグネームを三人纏めて潰せば、一般人を犠牲にしても世界的には体制が保てると踏んだか」
オリバ(フフ…まるで人質テロに対するロシアじゃないか……まあ、オーガの脅迫に屈したからだろうが)
ゲバル「ンー…参ったな…予定を繰り上げなきゃイケない」
ゲバル「ミスターオーガ、悪いが無線を…」
ヒュッ
ゲバル「おっと、流石に話が早い」パシッ
カーン! カラカラカラカラ…
ゲバル「あ、ランチャー…」
パシュウウウウウウウウウウウウウウウウウ…
勇次郎「来たぜ」
オリバ「催涙ガスか。キミ達は目と口を塞いで伏せてなさい」
貴樹「えっ…でも…」
オリバ「カウンターに隠れる暇は無いぞ、ホラ来た」
シュウウウウウウウウウウウウウウウウウ…
貴樹「!!」サッ
正明「……ッッ」サッ
勇次郎「…………」
オリバ「………」吸~ッ
オリバ「……ッ」ぴたっ
ゲバル「ああ、頼む。じゃ、切るから」プツッ
ゲバル「スゥ~~……ッッ」ピタッ
412: 2014/07/07(月) 00:34:24.33 ID:DTMBn7sSO
種子島空港
花苗「………」
姉「…全然アナウンス無いね」
花苗「うん……」
姉「今日は飛ばないんじゃないの?」
花苗「そんな事無いよ。チケットにはちゃんと今日の日付書いてあるし」
姉「………」
花苗「多分、何かあったんだよ。例えば…エンジントラブルとか」
姉「それにしたって、何で遅れてるかは放送するじゃない?」
花苗「…それはそうだけど…」
姉「それでも待つなら…まぁ別にいいけどさ。ずっとこのままは暇じゃない?」
花苗「暇だけど、他にやる事とかも無いし」
姉「向こうでテレビ見るとか?」
花苗「テレビ…うーん…」
姉「ほらアレ。ドラマの再放送やってるよ?」
花苗「昼ドラでしょ?ああいうのはなんか、微妙かな」
テレビ<ザザッ>
姉(? あれ?)
テレビ<私は緊急時報道協会の報道部記者、カモミール・レッセンです。只今、戦闘の続く東京の羽田空港からお送りしております>
姉(!!?)
花苗「私はドラマとかそういうのより…」
花苗「……お姉ちゃん?聞いてる」
姉「かっ…花苗!!アレ!!アレ!!」
花苗「? ちょっと何?アレっ…」
花苗「…って…」
花苗「…………」
テレビ<現在、テログループと思われる三人の男が空港内部に立て篭もり、自衛隊と米軍の連合軍に対して激しい抵抗を続けております>
テレビ<空港内部には一般人が数名取り残されているとの情報が入っておりますが、詳細についてはまだ分かっておりません>
テレビ<しかし、もしそれが事実ならば、連合軍側は一般人の人命を無視した作戦を展開していると言えるでしょう。既に催涙弾が数発撃ち込まれ、地上部隊が突入しました>
テレビ<今、空港内部からは激しい銃撃音が聞こえます>
413: 2014/07/07(月) 17:19:31.84 ID:DTMBn7sSO
「えー…何これ…」 「映画だろ」 「はあ?」
「なんだコレ?」 「空港でテロだってさ。東京の羽田」
「嘘だろ……」 「えっ、うわスゲェ!マジやばいだろ!」
花苗「!!!」ダッ
姉「あっ、待っ、花苗!」
姉「あーもうっ!」ダッ
花苗「すみません!通して!通してください!」
「うおっ」 「っ、なんだよ!」
花苗「ごめんなさいっ!通してくださいっ!」
テレビ<えー、向こうを見ます通り、空港の周りには大破した戦車や、墜落したヘリコプターなどが多数確認出来ます>
テレビ<空港周辺の一般人は全員避難しているとの事ですが、この状況を見ていますと、果たして本当に避難するだけの時間があったのかは疑問です>
花苗「…………」ハァ、ハァ
テレビ<ダアアアアァァ…ン ドガガガガ…>
花苗「あっ…!」
「うわ…」 「おい…コレ…」
テレビ<今空港が崩れました!空港の天井が墜落して、施設の中に落ちてしまいましたッ!>
テレビ<あー…これは酷い。これでは取り残された一般人達の生存は、えー……残念ながら、絶望的な物になった言えるでしょう>
テレビ<連合軍側の攻撃が止みました…どうやら戦闘が終わったようです>
花苗「…………」
姉「花苗、これ、羽田空港だよね」
花苗「………」
姉「………」
テレビ< カ ッ ! >
花苗「!?」
姉「っ!?」
「エッ!?」 「わっ…」
「!?」
テレビ< バガアアアアン… ドドオォォン…>
「崩れた…」 「爆発したぞ、今」
「見た?」「うん、見た……」
「なんだコレ?」 「空港でテロだってさ。東京の羽田」
「嘘だろ……」 「えっ、うわスゲェ!マジやばいだろ!」
花苗「!!!」ダッ
姉「あっ、待っ、花苗!」
姉「あーもうっ!」ダッ
花苗「すみません!通して!通してください!」
「うおっ」 「っ、なんだよ!」
花苗「ごめんなさいっ!通してくださいっ!」
テレビ<えー、向こうを見ます通り、空港の周りには大破した戦車や、墜落したヘリコプターなどが多数確認出来ます>
テレビ<空港周辺の一般人は全員避難しているとの事ですが、この状況を見ていますと、果たして本当に避難するだけの時間があったのかは疑問です>
花苗「…………」ハァ、ハァ
テレビ<ダアアアアァァ…ン ドガガガガ…>
花苗「あっ…!」
「うわ…」 「おい…コレ…」
テレビ<今空港が崩れました!空港の天井が墜落して、施設の中に落ちてしまいましたッ!>
テレビ<あー…これは酷い。これでは取り残された一般人達の生存は、えー……残念ながら、絶望的な物になった言えるでしょう>
テレビ<連合軍側の攻撃が止みました…どうやら戦闘が終わったようです>
花苗「…………」
姉「花苗、これ、羽田空港だよね」
花苗「………」
姉「………」
テレビ< カ ッ ! >
花苗「!?」
姉「っ!?」
「エッ!?」 「わっ…」
「!?」
テレビ< バガアアアアン… ドドオォォン…>
「崩れた…」 「爆発したぞ、今」
「見た?」「うん、見た……」
414: 2014/07/07(月) 17:22:02.42 ID:DTMBn7sSO
「えー…何これ…」 「映画だろ」 「はあ?」
「なんだコレ?」 「空港でテロだってさ。東京の羽田」
「嘘だろ……」 「えっ、うわスゲェ!マジやばいだろ!」
花苗「!!!」ダッ
姉「あっ、待っ、花苗!」
姉「あーもうっ!」ダッ
花苗「すみません!通して!通してください!」
「うおっ」 「っ、なんだよ!」
花苗「ごめんなさいっ!通してくださいっ!」
テレビ<えー、向こうを見ます通り、空港の周りには大破した戦車や、墜落したヘリコプターなどが多数確認出来ます>
テレビ<空港周辺の一般人は全員避難しているとの事ですが、この状況を見ていますと、果たして本当に避難するだけの時間があったのかは疑問です>
花苗「…………」ハァ、ハァ
テレビ<ダアアアアァァ…ン ドガガガガ…>
花苗「あっ…!」
「うわ…」 「おい…コレ…」
テレビ<今空港が崩れました!空港の天井が墜落して、施設の中に落ちてしまいましたッ!>
テレビ<あー…これは酷い。これでは取り残された一般人達の生存は、えー……残念ながら、絶望的な物になったと言えるでしょう>
テレビ<連合軍側の攻撃が止みました…どうやら戦闘が終わったようです>
花苗「…………」
姉「花苗、これ、羽田空港だよね」
花苗「………」
姉「………」
テレビ< カ ッ ! >
花苗「!?」
姉「っ!?」
「エッ!?」 「わっ…」
「!?」
テレビ< バガアアアアン… ドドオォォン…>
「崩れた…」 「爆発したぞ、今」
「見た?」「うん、見た……」
「なんだコレ?」 「空港でテロだってさ。東京の羽田」
「嘘だろ……」 「えっ、うわスゲェ!マジやばいだろ!」
花苗「!!!」ダッ
姉「あっ、待っ、花苗!」
姉「あーもうっ!」ダッ
花苗「すみません!通して!通してください!」
「うおっ」 「っ、なんだよ!」
花苗「ごめんなさいっ!通してくださいっ!」
テレビ<えー、向こうを見ます通り、空港の周りには大破した戦車や、墜落したヘリコプターなどが多数確認出来ます>
テレビ<空港周辺の一般人は全員避難しているとの事ですが、この状況を見ていますと、果たして本当に避難するだけの時間があったのかは疑問です>
花苗「…………」ハァ、ハァ
テレビ<ダアアアアァァ…ン ドガガガガ…>
花苗「あっ…!」
「うわ…」 「おい…コレ…」
テレビ<今空港が崩れました!空港の天井が墜落して、施設の中に落ちてしまいましたッ!>
テレビ<あー…これは酷い。これでは取り残された一般人達の生存は、えー……残念ながら、絶望的な物になったと言えるでしょう>
テレビ<連合軍側の攻撃が止みました…どうやら戦闘が終わったようです>
花苗「…………」
姉「花苗、これ、羽田空港だよね」
花苗「………」
姉「………」
テレビ< カ ッ ! >
花苗「!?」
姉「っ!?」
「エッ!?」 「わっ…」
「!?」
テレビ< バガアアアアン… ドドオォォン…>
「崩れた…」 「爆発したぞ、今」
「見た?」「うん、見た……」
416: 2014/07/08(火) 16:02:37.64 ID:Q014xV4SO
テレビに集まる人を掻き分けて、人混みの一番前の列に出ていた私は、テレビの映像に釘付けになっていた
普段は絶対見ようとは思わないし、見る機会も無かったはずの光景
その恐ろしい光景の中で、空港は一度崩れ、もう一度崩れた
でも二度目の崩れ方は、一度目とは違っていた
雷のような光が輝いた一瞬あとに、爆発するかのように瓦礫が飛んで、灰色の煙が上がる
その様子は、崩れたと言うよりは、瓦礫が内側から弾き飛ばされたかのように見えた
テレビ<…今の爆発はなんでしょうか…>
テレビ<………>
テレビに映っているリポーターも、テレビを見ている私達も、同じように息を飲んだ
画面の中の戦場も静かになって、空港から上る大きな土埃は、少しずつ晴れていった
そして、埃が晴れ切った時
明里「あっ…」
私は小さく声を上げた
テレビ<…何か…いや、誰かが出て来ました…>
テレビ<!! 範馬勇次郎ですッ!東京で氏闘を繰り広げた地上最強の生物が今、我々の前に姿を現しましたッ!>
テレビ<…隣に、バンダナを頭に巻いた男性が見えます…あの男性は何者なのでしょうかッ?>
テレビ<ガアアアン…>
テレビ<また爆発ですッ!>
テレビ<次は何が現れるのでしょうか…>
テレビ<!>
テレビ<…え~…黒人男性のようです。シャツに血痕のようなモノが見えますが、撃たれたのでしょうか…それともアレは返り血なのでしょうか…>
テレビ<ここから見る限りでは判断がつきません>
花苗「…………」
421: 2014/07/11(金) 13:21:31.83 ID:HabiKv7SO
テレビを見ている人達が一斉にざわつき始めた中で
息を飲み、瞬きするのも忘れるくらい画面を注視していた私は、二人が瓦礫の中から出て来た時、少し驚いた
そんな驚きの小ささが、意外だった
種子島で出会い、私に歩み出すきっかけを与えた人達
あの人達が持つ『違い』が、画面の中の異様な光景と馴染んでいるからだろうか
それとも、私がテレビの中で起きている事を、現実の物事として受け止めきれていないからだろうか
どちらにしても、私は変に落ち着いた気持ちでテレビを見ていた
テレビ<あっ、待って下さい。また何か動いているように見えます>
あの二人と肩を並べて、辺りを見回している人は、一体どういう人なんだろう
画面の中ではもうその事ばかりが気になって、私はアナウンサーの言葉を聞き逃した
テレビ<! あれは一般の方でしょうか!?倒れた女性と、その女性を支える男性の姿が見えます!>
テレビ<もう一人男性が現れました!どうやら無傷のようですが…>
でも、映像は私の思いどおりに動く訳じゃない
テレビカメラは私が見る三人とは違う、別の三人を映した
画面には、倒れた女性を抱き抱える
花苗「…あ………」
貴樹君がいた
息を飲み、瞬きするのも忘れるくらい画面を注視していた私は、二人が瓦礫の中から出て来た時、少し驚いた
そんな驚きの小ささが、意外だった
種子島で出会い、私に歩み出すきっかけを与えた人達
あの人達が持つ『違い』が、画面の中の異様な光景と馴染んでいるからだろうか
それとも、私がテレビの中で起きている事を、現実の物事として受け止めきれていないからだろうか
どちらにしても、私は変に落ち着いた気持ちでテレビを見ていた
テレビ<あっ、待って下さい。また何か動いているように見えます>
あの二人と肩を並べて、辺りを見回している人は、一体どういう人なんだろう
画面の中ではもうその事ばかりが気になって、私はアナウンサーの言葉を聞き逃した
テレビ<! あれは一般の方でしょうか!?倒れた女性と、その女性を支える男性の姿が見えます!>
テレビ<もう一人男性が現れました!どうやら無傷のようですが…>
でも、映像は私の思いどおりに動く訳じゃない
テレビカメラは私が見る三人とは違う、別の三人を映した
画面には、倒れた女性を抱き抱える
花苗「…あ………」
貴樹君がいた
425: 2014/07/14(月) 22:00:31.99 ID:+UDqfW/SO
今の貴樹君が、どんな顔をしているのかすらも分からないのに、私は感じた
彼は貴樹君なんだ、と
でも懐かしさと愛おしさを感じる前に、心臓を鷲掴みにするような圧迫感が、私を襲った
これは現実
今起きている、紛れも無い本当の事
テレビに映っている戦場はドラマでも映画でもない
怪我をした女性を、心配そうに見つめる貴樹君も…
花苗「……っ…」
こんな映像を見て、貴樹君を心配する事より先に、貴樹君に抱き寄せられている女性の事が気になってしまう自分が、情けなかった
氏傷者も絶対出ているのに
あの女性も肩を怪我しているのに
私は二人の関係について勘繰ってしまった
そんな自分がたまらなく恥ずかしくて、憎らしく思えた
彼は貴樹君なんだ、と
でも懐かしさと愛おしさを感じる前に、心臓を鷲掴みにするような圧迫感が、私を襲った
これは現実
今起きている、紛れも無い本当の事
テレビに映っている戦場はドラマでも映画でもない
怪我をした女性を、心配そうに見つめる貴樹君も…
花苗「……っ…」
こんな映像を見て、貴樹君を心配する事より先に、貴樹君に抱き寄せられている女性の事が気になってしまう自分が、情けなかった
氏傷者も絶対出ているのに
あの女性も肩を怪我しているのに
私は二人の関係について勘繰ってしまった
そんな自分がたまらなく恥ずかしくて、憎らしく思えた
426: 2014/07/17(木) 05:25:35.20 ID:hKUoFB1SO
秘書「失礼します」ガチャッ
石波「! なんだノックも無しに」
秘書「申し訳ございません。ですが緊急の用事がございましたので」
石波「緊急?」
秘書「テレビをつけて下されば分かります」
石波「………」
石波「…報道などされないハズだ…が…」
石波「!!ッッ」ガタッ
ピッ
テレビ<あッ!再び銃撃が開始されましたッ!>
テレビ<タタタタタン ガガガッ! バババババババ…>
亜部「!!?」
石波「バッ…バカなッ!何処だ!?何処が流しているッ!?」
秘書「緊急時報道協会という、支持者からの援助によって成り立つ非営利団体です」
石波「!?」
秘書「もっとも、彼らには地上波を使う権利も、その権利を買う財力もありませんが」
石波「そ、それは分かっている!!しかし現に映っているじゃないかッ!」
石波「こんなものが流されている中でミサイル爆撃なんぞ出来んッ!放送を止めさせろッ!!今すぐッッ!!」
秘書「彼らは否定しています」
石波「か…何?」
秘書「映像にレポーターとして映っている、カモミール・レッセンという人物は、同団体には所属していないようです」
石波「………じゃあ、緊急時報道協会は関係無いのか…?」
秘書「はい。恐らくは」
石波「………」
石波「何故それを私に言わず…何処でどうやってその情報を仕入れたのかは今は聞かない…」
石波「…しかし、後で必ずソレについては聞かせてもらうからな」
秘書「………」
427: 2014/07/17(木) 18:56:29.14 ID:hKUoFB1SO
石波「………クソッ」
石波(…仕方ないが、この映像がどこぞの過激な個人によるものならば、爆撃は中止せざるを得ない)
石波「おい」
秘書「なんでしょうか」
石波「至急伝えろ。爆撃は中止だ」
秘書「何故中止するのですか?」
石波「は?」
石波「…………」
石波「……あのな…この映像を流しているヤツが、法と金に縛られた『社会』という物に属しているなら、確かに我々の思いのままだ」
石波「しかし、何処にも属さずにチャンネルをジャックし、所属を詐る事の出来る奴なんぞ、どう考えても無法者だ。 そんな連中には金も法もゴミ同然であり、鎮圧するには武力を以って事に当たらなければならない」
石波「しかし今の状況でこのレッセンとかいうのを制裁するのは不可能だろ」
石波「で、あるならばだ……こちらが策を講じるしかない。 テロ鎮圧の為なら、国民の犠牲も厭わないという強権姿勢は、今の我々には不適切なんだ」
石波「そうだな…この場合は、爆撃が駄目なら『誤って銃撃戦に巻き込んでしまった』という策が適切だ」
石波「幸いにして、手加減なんてしてられない相手もいる事だからな」
秘書「………」
石波「なんだ、まだ分からんのかッ?」
秘書「ンー…違いますね」
石波「なに?」
秘書「ワカってないのはアナタの方だ」
石波「………?……」
秘書「策など無意味です。既に、王手は刺さっているのですから」
石波「王……手…?」
秘書「このカモミール・レッセンという男……まァ私の先輩なんですが、実は純・ゲバルというテ口リストの部下でして、中々の厄介者だそうです」
秘書「武器も持たず、単身で原子力潜水艦の制圧すら可能だとか」
石波「?……」
石波「……あッッ!?」
秘書「ワカりましたか?今の貴方の状況が」
石波(…仕方ないが、この映像がどこぞの過激な個人によるものならば、爆撃は中止せざるを得ない)
石波「おい」
秘書「なんでしょうか」
石波「至急伝えろ。爆撃は中止だ」
秘書「何故中止するのですか?」
石波「は?」
石波「…………」
石波「……あのな…この映像を流しているヤツが、法と金に縛られた『社会』という物に属しているなら、確かに我々の思いのままだ」
石波「しかし、何処にも属さずにチャンネルをジャックし、所属を詐る事の出来る奴なんぞ、どう考えても無法者だ。 そんな連中には金も法もゴミ同然であり、鎮圧するには武力を以って事に当たらなければならない」
石波「しかし今の状況でこのレッセンとかいうのを制裁するのは不可能だろ」
石波「で、あるならばだ……こちらが策を講じるしかない。 テロ鎮圧の為なら、国民の犠牲も厭わないという強権姿勢は、今の我々には不適切なんだ」
石波「そうだな…この場合は、爆撃が駄目なら『誤って銃撃戦に巻き込んでしまった』という策が適切だ」
石波「幸いにして、手加減なんてしてられない相手もいる事だからな」
秘書「………」
石波「なんだ、まだ分からんのかッ?」
秘書「ンー…違いますね」
石波「なに?」
秘書「ワカってないのはアナタの方だ」
石波「………?……」
秘書「策など無意味です。既に、王手は刺さっているのですから」
石波「王……手…?」
秘書「このカモミール・レッセンという男……まァ私の先輩なんですが、実は純・ゲバルというテ口リストの部下でして、中々の厄介者だそうです」
秘書「武器も持たず、単身で原子力潜水艦の制圧すら可能だとか」
石波「?……」
石波「……あッッ!?」
秘書「ワカりましたか?今の貴方の状況が」
428: 2014/07/17(木) 20:36:34.65 ID:hKUoFB1SO
石波「………」
石波「………」
石波「…いつからだ…」
秘書「初めからです。貴方が今の地位に着いた時から、ずっと」
石波「!!……ッッ」
秘書「いつでも勃発せました、いつでもです」
秘書「しかし、可能な事なら貴方達が自滅する様に『我々が追い込んだ』…という方向で、裏社会に分からせたかった」
秘書「だから『オーガ』と『アンチェイン』が貴方達を潰す前に、先に貴方達から潰れて欲しかったのです」
秘書「我が国がアメリカと対等ならば、アメリカの傘下にある貴方達の国にも、我々の力を裏からでも理解してもらいたいのです」
石波「………」
石波「…もし、私がキミから無線を奪おうとすれば…」
秘書「その時は貴方の首はねじ折れる。そこの総理にも消えてもらいます」
亜部「エッ!?」
石波「………ッッッ」
秘書「分かったのなら、私を試すようなマネはどうかお控え下さい」
秘書「貴方の地位を粉々にする選択肢が、今の貴方にとって最も適切なのです」
秘書「さァ、見ると良いでしょう。 国が下した決断…テ口リストもろとも一般人を消し炭にする瞬間を」
秘書「一般人へのアップで、尚且つ全国放送でね」
石波「……狂っている…」
秘書「? 何がですか?」
石波「そのゲバルとかいうテ口リストがだ…ッ」
秘書「………」
秘書「まァ、確かにクレイジーではあります。自ら爆撃の的になるとか言い出しましたからね」
石波「……?……」
秘書「頭にバンダナを巻いた男……彼がそうです。我らが主導者、純・ゲバルです」
石波「!? な、何をバカなッ!私をからかって…」
秘書「からかってはいますが嘘ではありません。彼には確信があるのでしょう。生き残れるという確信がね」
石波「……そんなバカな…」
秘書「国が全国放送で無差別爆撃をした……この事実さえあれば良いのです。 もっとも、私のボスがどうやって生き残るのかは、私も知りませんがね」
石波「………」
石波「…いつからだ…」
秘書「初めからです。貴方が今の地位に着いた時から、ずっと」
石波「!!……ッッ」
秘書「いつでも勃発せました、いつでもです」
秘書「しかし、可能な事なら貴方達が自滅する様に『我々が追い込んだ』…という方向で、裏社会に分からせたかった」
秘書「だから『オーガ』と『アンチェイン』が貴方達を潰す前に、先に貴方達から潰れて欲しかったのです」
秘書「我が国がアメリカと対等ならば、アメリカの傘下にある貴方達の国にも、我々の力を裏からでも理解してもらいたいのです」
石波「………」
石波「…もし、私がキミから無線を奪おうとすれば…」
秘書「その時は貴方の首はねじ折れる。そこの総理にも消えてもらいます」
亜部「エッ!?」
石波「………ッッッ」
秘書「分かったのなら、私を試すようなマネはどうかお控え下さい」
秘書「貴方の地位を粉々にする選択肢が、今の貴方にとって最も適切なのです」
秘書「さァ、見ると良いでしょう。 国が下した決断…テ口リストもろとも一般人を消し炭にする瞬間を」
秘書「一般人へのアップで、尚且つ全国放送でね」
石波「……狂っている…」
秘書「? 何がですか?」
石波「そのゲバルとかいうテ口リストがだ…ッ」
秘書「………」
秘書「まァ、確かにクレイジーではあります。自ら爆撃の的になるとか言い出しましたからね」
石波「……?……」
秘書「頭にバンダナを巻いた男……彼がそうです。我らが主導者、純・ゲバルです」
石波「!? な、何をバカなッ!私をからかって…」
秘書「からかってはいますが嘘ではありません。彼には確信があるのでしょう。生き残れるという確信がね」
石波「……そんなバカな…」
秘書「国が全国放送で無差別爆撃をした……この事実さえあれば良いのです。 もっとも、私のボスがどうやって生き残るのかは、私も知りませんがね」
433: 2014/07/18(金) 19:55:08.51 ID:SFadju6SO
テレビ<バオッ! ドガガガバゴバゴバゴ…
テレビ<範馬勇次郎側も譲りませんッ!何をしているのかは速過ぎてよくは分かりませんが、何かを投げているのでしょうかッ!?>
テレビ<おわッッ! ド ゴ !>
テレビ<こっちまで飛んで来ますッッ!まるで環境破壊ッッ!>
紅葉「……………ッッッ」
助手「先生…これは…」
紅葉「楽しい事さ…スペックにとってのな」
助手「楽しいって……コレ、戦争…」
紅葉「マズい」
助手「マズッ…マズいどころじゃ無いですよ!?こんな一大事…」
紅葉「俺達が心配したところでどうにもならない。気にするだけ無駄だ」
紅葉「俺が言っているのは戦争についてじゃない。彼女の事だ」
紅葉「よく見てみろ。あの女性だ」スッ
助手「えっ?」
助手「…………アッ!?この人、先生の患者ッ!?」
紅葉(肩を撃たれている…ヤバイぞ…)
紅葉(弱った免疫に、平均より低い体温と血圧)
紅葉(肩に負傷…止血は成されているが、ホコリは舞い、辺りは不衛生極まりない)
紅葉(下手をすれば、コレは…)
紅葉「救急車を出せ…」
助手「えっ…」
紅葉「救急車だッ 負傷者を助けるのが我々だろッ」
助手「!! ちょ、無理ですよ!あんな戦場に行くなんて自殺行為じゃないですかッ!」
紅葉「処置の間に合う患者を目前にして術を施さぬなど、俺の中の技術が許さんッ!!」
紅葉「しかも彼女は俺の患者だッ! 自分の患者を救える時に救わぬ医療従事者など、医療には必要ないッッ!!」
助手「せ、先生…」
紅葉「行くぞッッ!!」ザッ
テレビ<範馬勇次郎側も譲りませんッ!何をしているのかは速過ぎてよくは分かりませんが、何かを投げているのでしょうかッ!?>
テレビ<おわッッ! ド ゴ !>
テレビ<こっちまで飛んで来ますッッ!まるで環境破壊ッッ!>
紅葉「……………ッッッ」
助手「先生…これは…」
紅葉「楽しい事さ…スペックにとってのな」
助手「楽しいって……コレ、戦争…」
紅葉「マズい」
助手「マズッ…マズいどころじゃ無いですよ!?こんな一大事…」
紅葉「俺達が心配したところでどうにもならない。気にするだけ無駄だ」
紅葉「俺が言っているのは戦争についてじゃない。彼女の事だ」
紅葉「よく見てみろ。あの女性だ」スッ
助手「えっ?」
助手「…………アッ!?この人、先生の患者ッ!?」
紅葉(肩を撃たれている…ヤバイぞ…)
紅葉(弱った免疫に、平均より低い体温と血圧)
紅葉(肩に負傷…止血は成されているが、ホコリは舞い、辺りは不衛生極まりない)
紅葉(下手をすれば、コレは…)
紅葉「救急車を出せ…」
助手「えっ…」
紅葉「救急車だッ 負傷者を助けるのが我々だろッ」
助手「!! ちょ、無理ですよ!あんな戦場に行くなんて自殺行為じゃないですかッ!」
紅葉「処置の間に合う患者を目前にして術を施さぬなど、俺の中の技術が許さんッ!!」
紅葉「しかも彼女は俺の患者だッ! 自分の患者を救える時に救わぬ医療従事者など、医療には必要ないッッ!!」
助手「せ、先生…」
紅葉「行くぞッッ!!」ザッ
440: 2014/07/19(土) 01:41:54.95 ID:hqjhlN4SO
テレビ<しかし、これは何でしょうか…>
テレビ<あの範馬勇次郎と他の二名が、この騒動の発端…いわゆるテ口リストと見てよいのでしょうが…>
花苗「………」
姉「………」
テレビ<まるで一般人の三人を庇うかのように…戦闘による被害を、彼らが被らないように戦っている……そう見えるのは何故なのでしょうか>
テレビ<そもそも…地上において並び称される者の無い男に、テロ行為を行うメリットなどあるのでしょうか>
テレビ<そしてテロに走った彼らが、何故一般人を守るのでしょうか>
テレビ<なんといいますでしょうか……矛盾のような物を感じてしまいます>
テレビ<彼等は、本当にテ口リストなのでしょうか?>
テレビ< パシュッ >
テレビ<! ロケット砲が撃…>
テレビ<!? キャッチしましたッ!黒人男性が弾頭を捕らえ…投げましたッッ!連合軍側に投げ返しましたッッ!>
443: 2014/07/19(土) 17:47:22.44 ID:hqjhlN4SO
お姉ちゃんも、私達を囲む人だかりも
軍隊を相手にして、一歩も退かないあの人達の様子を、空港にいる誰もが固唾を飲んで見守っている中で、私だけが、何かに取り残されていた
貴樹君が危ない目に逢う事はない
私には理解する事さえ難しい程の強さが、貴樹君を守っているから
オリバさん達の強さがどういう物で、どれくらい揺るがない物なのか、私は知っているから
それなのに、胸の中に生まれたモヤモヤとした違和感は消えてくれない
その違和感は、不安や恐怖じゃない
嫉妬とか諦めとかに近くて、それでいてもっと複雑で、卑屈な想い
テレビ画面を見ながら、私は薄く冷や汗をかいて、自分の心臓の音を聞いていた
テレビ<………>
テレビ<…銃撃が止みま……あ、いえ、まだ続いているようです>
テレビ<ですが疎らな射撃です。威嚇をしながらの撤退という事でしょうか>
テレビからの木が割れるような音は急に静かになり、胸の鼓動が際立ってうるさく聞こえはじめる
遠くから聞こえる子供のはしゃぐ声も、妙に大きくなった
テレビ<……撤退ですッ!連合軍側が撤退していきますッ!これは戦闘が終了したと見てよろしいのでしょうか!?>
その大きくなった周りの音以上に、レポーターの声が大きく聞こえた
周りの人混みからもため息が聞こえて、お姉ちゃんの鼻息の音も耳に入った
私も静かにため息をついた
全ては終わった
テレビ< キィィィィイイイ…… >
はずだった
テレビ< ギ ュ ゴ ッ ッ ! ! >
割れた音が響いた一瞬、それがテレビの中の風の音だとは気付かなかった
軍隊を相手にして、一歩も退かないあの人達の様子を、空港にいる誰もが固唾を飲んで見守っている中で、私だけが、何かに取り残されていた
貴樹君が危ない目に逢う事はない
私には理解する事さえ難しい程の強さが、貴樹君を守っているから
オリバさん達の強さがどういう物で、どれくらい揺るがない物なのか、私は知っているから
それなのに、胸の中に生まれたモヤモヤとした違和感は消えてくれない
その違和感は、不安や恐怖じゃない
嫉妬とか諦めとかに近くて、それでいてもっと複雑で、卑屈な想い
テレビ画面を見ながら、私は薄く冷や汗をかいて、自分の心臓の音を聞いていた
テレビ<………>
テレビ<…銃撃が止みま……あ、いえ、まだ続いているようです>
テレビ<ですが疎らな射撃です。威嚇をしながらの撤退という事でしょうか>
テレビからの木が割れるような音は急に静かになり、胸の鼓動が際立ってうるさく聞こえはじめる
遠くから聞こえる子供のはしゃぐ声も、妙に大きくなった
テレビ<……撤退ですッ!連合軍側が撤退していきますッ!これは戦闘が終了したと見てよろしいのでしょうか!?>
その大きくなった周りの音以上に、レポーターの声が大きく聞こえた
周りの人混みからもため息が聞こえて、お姉ちゃんの鼻息の音も耳に入った
私も静かにため息をついた
全ては終わった
テレビ< キィィィィイイイ…… >
はずだった
テレビ< ギ ュ ゴ ッ ッ ! ! >
割れた音が響いた一瞬、それがテレビの中の風の音だとは気付かなかった
444: 2014/07/19(土) 18:49:26.09 ID:hqjhlN4SO
テレビ< ボ ボ ボ ボ ボ ボ ! ! >
花苗「!」
姉「あっ」
「あ…」 「なに?」 「終わりじゃないの?」
「わっ」 「なに今の」
テレビ< ボボボ… ヒュィィィ…ィ…ン ン >
テレビ<大変ですッ!今、我々の真上を戦闘機が2ッ!いや3機通過して行きましたッッ!>
花苗「…?…」
姉「ん?」
「戦闘機?」 「撤退したじゃん」「は?」
「これマジ?」 「戦闘機とか…」
「あー…」
テレビ<これを見ている方は分かるでしょうかッ!?戦場で戦闘機が飛ぶとすれば、ヤル事は一つしかありませんッッ!>
テレビ<爆撃ですッッッ!!>
花苗「!!!」
姉「えっ…!?」
テレビ<コレがどういう事かワカるでしょうかッ!?民間人がまだいるにも関わらず、国が爆撃を指示したのですッッ!!>
「はァ…?」 「おい、これ絶対映画だよな?」
「ウソだろ?」 「ヤバイだろこれ」「おいおいおい…」
「やべぇぞこれ…」「責任とかどうすんの?」
戦闘機と聞いて思い付く形は、ぼやけていた
でも、戦闘機についての印象ははっきりしていた
羽があり、ジェットエンジンがあり、ヘリコプターより速い兵器
爆弾やミサイルを落として、人を頃す乗り物
オリバさん達は、きっと車にも戦車にも負けない
でも、あの人達も空が飛べる訳じゃない
高く跳び上がる事は出来ても、翼があるわけじゃない
降って湧いた違和感は、それまでの違和感を押し潰して、膨れ上がった
本当の不安が訪れて、私はうなじが震えるのを感じた
450: 2014/07/20(日) 18:07:38.27 ID:v9Olj4JSO
カモミール・レッセン「ああ、あの時の事か」
レッセン「覚えてる。忘れようハズも無い」
レッセン「あれはウチのボスに命じられて…というか、俺がボスの計画に乗って、ニッポンに潜入していた時のコトだ」
レッセン「ニッポンのお偉方が血迷った時、その乱心から生じたミスを派手にしてやるのが俺の仕事だったんだが…」
レッセン「ボスからの連絡で予定が早まってね……予め用意しておいた偽のポジションを駆使って、首脳陣の失態をニッポンの国内放送に乗せたんだ」
レッセン「まァ、それは例の『親子喧嘩』と、前々から俺達の流していた『範馬勇次郎にまつわる噂話』と相乗して、結果的には良い効果を生んでくれたよ」
レッセン「羽田空港の破壊と民間に出た被害は、地上最強の生物を危険視した国家が、空港にいる範馬勇次郎氏を襲撃した事によって勃発した戦争に原因があり、テロへの警戒というのは襲撃の為に国家が立てた隠れみのである………ここまで細かく報じはしなかったが、大事なのは断片のみを視聴者に拾わせて、そのパズルを視聴者自身が完成させる事だ」
レッセン「あまりに細かく言い過ぎるとボロが出るし……ン?」
レッセン「…せっかちなヤツだな。ワカったよ」
レッセン「アレは全国放送の時、俺がカメラの前でレポーターの演技をしていた時だった」
レッセン「3機の戦闘機が俺達の頭上を過ぎて、空港の上を通過していった」
レッセン「普通、戦闘機の爆撃ってのは、地上の相手に限るなら射程距離に入った時点で即ファイアで済む。 しかし、その3機はそうしなかった」
レッセン「考えられる理由は三つ……一つは、破壊目標は飛ぶことが出来ず、また、高速で飛行する戦闘機を撃墜する手段も持ち合わせていない」
レッセン「二つ……幾ら地上最強とはいえ、音速を超えて飛行する3機もの戦闘機を追い抜かしたり、撹乱したりする事は出来ず、逃げ切られる心配は無い」
レッセン「三つ目……しかし相手は重点破壊目標ゆえ、確実な破壊が求められる」
レッセン「つまり爆撃部隊は、作戦を遂行するのに焦りは必要無いと判断したワケだ」
レッセン「真っ当かつ正当な判断…非の打ち所は無い」
レッセン「だがそれこそが最も危険だった」
レッセン「地上最強を相手にするにはね」
451: 2014/07/20(日) 19:16:20.03 ID:v9Olj4JSO
レッセン「正直言うと、弧を描いて再接近の体勢に入る編隊を見ながら、俺は少し不安になってた」
レッセン「ウチのボスはオーガと組んでるとはいえ、どうやって切り抜ける気でいるんだろうってね」
レッセン「相手は時速700キロを超えながら、その速度より速いミサイルをぶっ放す鉄の塊だ」
レッセン「ロケット砲や手榴弾を一々かわさなきゃならない人間には、到底太刀打ち出来ない代物。 飛び立つ前に潰す以外に、撃墜方は無い」
レッセン「こう言ったらボスは呆れるだろうが、最低でもハンドガンくらいは必要だ」
レッセン「それを素手で、しかも戦闘機は空中に3機も居るのにだ。逃げずに戦って撃ち落とそうってんだからさ」ハハハ
レッセン「少なくとも、俺には全く方法が思いつかなかったよ」フフ…
レッセン「でだ…そんな感じに俺が考えてる所で、ボスの方に動きがあった」
レッセン「見ると、いなくなってたんだよ。範馬勇次郎が」
レッセン「撤退を知らない彼が逃げるハズは無いって分かってたから、捜してみると、すぐに発見出来た」
レッセン「立ってたよ。ボス達から見ての前方、50メートルくらい離れた所に、何も持たないでね」
レッセン「いつ移動したのかはさっぱり分からなかったが、これだけはワカった」
レッセン「彼は、戦闘機に負ける事などまるで考えていない」
レッセン「それどころか勝つ気でいる。三対一で屠るつもりでいるってね」
レッセン「石コロみたいに小さかった戦闘機のシルエットが、段々と大きくなってきた辺りで、彼は右手をこう、上に挙げたんだ」
レッセン「勝ち名乗りを挙げてるみたいだったが、それは既に構えになっていた」
レッセン「体勢は槍投げに近い……でもそれよりも、もっと戦闘的な、拳を前に突き出す事以外何も考えていない様なポーズだった」
レッセン「そして、戦闘機が再接近を開始した時に、彼はその拳を思いっきりブン回したんだが…」
レッセン「…………」
レッセン「いやァ…スゴかったね」
レッセン「俺ちびっちゃったよ」ハハ…
レッセン「ウチのボスはオーガと組んでるとはいえ、どうやって切り抜ける気でいるんだろうってね」
レッセン「相手は時速700キロを超えながら、その速度より速いミサイルをぶっ放す鉄の塊だ」
レッセン「ロケット砲や手榴弾を一々かわさなきゃならない人間には、到底太刀打ち出来ない代物。 飛び立つ前に潰す以外に、撃墜方は無い」
レッセン「こう言ったらボスは呆れるだろうが、最低でもハンドガンくらいは必要だ」
レッセン「それを素手で、しかも戦闘機は空中に3機も居るのにだ。逃げずに戦って撃ち落とそうってんだからさ」ハハハ
レッセン「少なくとも、俺には全く方法が思いつかなかったよ」フフ…
レッセン「でだ…そんな感じに俺が考えてる所で、ボスの方に動きがあった」
レッセン「見ると、いなくなってたんだよ。範馬勇次郎が」
レッセン「撤退を知らない彼が逃げるハズは無いって分かってたから、捜してみると、すぐに発見出来た」
レッセン「立ってたよ。ボス達から見ての前方、50メートルくらい離れた所に、何も持たないでね」
レッセン「いつ移動したのかはさっぱり分からなかったが、これだけはワカった」
レッセン「彼は、戦闘機に負ける事などまるで考えていない」
レッセン「それどころか勝つ気でいる。三対一で屠るつもりでいるってね」
レッセン「石コロみたいに小さかった戦闘機のシルエットが、段々と大きくなってきた辺りで、彼は右手をこう、上に挙げたんだ」
レッセン「勝ち名乗りを挙げてるみたいだったが、それは既に構えになっていた」
レッセン「体勢は槍投げに近い……でもそれよりも、もっと戦闘的な、拳を前に突き出す事以外何も考えていない様なポーズだった」
レッセン「そして、戦闘機が再接近を開始した時に、彼はその拳を思いっきりブン回したんだが…」
レッセン「…………」
レッセン「いやァ…スゴかったね」
レッセン「俺ちびっちゃったよ」ハハ…
455: 2014/07/20(日) 20:14:06.69 ID:v9Olj4JSO
レッセン「ブン回す直前に、とんでもない事が起きた」
レッセン「雷が墜ちたんだ。範馬勇次郎の頭に」
レッセン「雲一つ無い晴れだっていうのに、轟音を響かせて、閃光がピカッとね」
レッセン「彼?ああ、ピンピンしてたよ。 怪物みたいな顔したまま、姿勢は一切変わってなかった」
レッセン「ただ、光が収まらなかった」
レッセン「消えなかったんだよ。彼に命中した雷の輝きが」
レッセン「花火が爆発する瞬間を写真に撮ったみたいに、彼は光ってたよ。バリバリ音出して」
レッセン「それでだ…その後、何が起こったと思う?」
レッセン「?……イヤ、お前が考えろよ」
レッセン「ヒント?…ヒントか…」
レッセン「うーん…」
レッセン「………」
レッセン「…そうだな…ちょっと話が逸れそうだけど…」
レッセン「お前、SFって知ってるか?サイエンスフィクションってヤツ……ロボットとか宇宙とかのアレだ」
レッセン「俺もその手のは詳しくは無いが…………あっ、知ってるか。それなら話は早いな」
レッセン「じゃあ聞くけど…」
レッセン「プラズマライフルって分かる?」
468: 2014/07/20(日) 23:57:37.79 ID:v9Olj4JSO
プラズマライフル
世界に名だたる科学者達が開発に乗り出し、その如々くを挫折させてきた『未来の兵器』
『レーザーガン』と並び称された架空の武器であり、21世紀という未来に期待された理想の遺物の一つ
しかし、訪れるはずだった近未来は忙殺され、今や日常と地続きの平淡な現代があるばかり
そして、宝を手にした者は科学者ではなく…
バ リ バ リ バ リ バ リ バ リ バ リ ! ! !
レッセン「~~~~~~~~~~ッッッッ!!!??」
嘩 ッ ッ ッ ! ! !
宝を手にした者は、皮肉にも、科学を嘲笑う者であった
ズ バ ゥ ッ ! ! !
漢の拳によって指向性を与えられた雷は、光の次に位置する速さを以って放射状に広がり、漢の視界に入る物全てを焼き尽くした
瓦礫も、戦闘車両も、戦闘員も、骸も
そして戦闘機も
音速を突破する強靭な構造と、障害を克服する為の防御機構すら、自然の産んだ破壊現象の前には無力だった
ミサイルを回避する為のフレア(熱源を発生する囮)も
半端な銃撃なら跳ね退ける装甲も意味を成さない
機体の進行方向から、音速を遥かに超える速度で『雷』が撃ち込まる事など誰が想像しようか
岩をも砕く10億ボルトに包まれて、なおも耐える戦闘機など、誰が設計出来ようか
475: 2014/07/21(月) 02:49:37.59 ID:6+rVfweSO
テレビ<ザザッ バリッ ガガ…>
雷撃が生んだ電磁波は撮影機材に影響を及ぼし、カメラからの映像には音が充分に記録されていない
石波「~~~~~~~~ッッッ!!?」
亜部「~~~~~~~~ッッッッ!!!?」
だが不条理という物には力が宿る
刃牙「はァ……!!?」
音は無く、映像が鮮明で無くとも
花苗「!!? !?!?」
姉「!!!?………ッッッ」
理解を超えた現象は人の心を揺さぶる
ゲバル「!!?………ッッッ」
貴樹「~~~~~~~~ッッッッ!!!!??」
正明「~~~~~~~~~ッッッッ!!!!?」
映像としてではなく、それが実体を持って眼前にあるのなら、尚の事
オリバ「クレイジー……」
オリバ「…流石だゼ……オーガにとっては、自然への認識が違う…」
オリバ「…雷を…」
オリバ「ブッ放つという発想……」
オリバ「もう意味がワカらん……」
あらゆる外敵を破壊し尽くした鬼は、大股開きに立ったまま
バ ッ ! !
両拳を天に突き上げた
雷撃が生んだ電磁波は撮影機材に影響を及ぼし、カメラからの映像には音が充分に記録されていない
石波「~~~~~~~~ッッッ!!?」
亜部「~~~~~~~~ッッッッ!!!?」
だが不条理という物には力が宿る
刃牙「はァ……!!?」
音は無く、映像が鮮明で無くとも
花苗「!!? !?!?」
姉「!!!?………ッッッ」
理解を超えた現象は人の心を揺さぶる
ゲバル「!!?………ッッッ」
貴樹「~~~~~~~~ッッッッ!!!!??」
正明「~~~~~~~~~ッッッッ!!!!?」
映像としてではなく、それが実体を持って眼前にあるのなら、尚の事
オリバ「クレイジー……」
オリバ「…流石だゼ……オーガにとっては、自然への認識が違う…」
オリバ「…雷を…」
オリバ「ブッ放つという発想……」
オリバ「もう意味がワカらん……」
あらゆる外敵を破壊し尽くした鬼は、大股開きに立ったまま
バ ッ ! !
両拳を天に突き上げた
484: 2014/07/21(月) 15:13:10.18 ID:6+rVfweSO
レッセン「後でボスから聞いたんだが……どうやらボスは生き残る確信はあったらしいが、どう切り抜けるかは考えていなかったらしい」
レッセン「イヤ、考えてはいたが、オーガの取った方法が余りに予想外だった…と言うべきか」
レッセン「まァ、あんな事を想定してしまうようなら、逆にボスの指揮能力に疑問を感じてしまうよ」
レッセン「『プラズマレーザー撃つかも知れないから』……なんてね」フフ
レッセン「ン? 雷がなんで降ってきたのかって?」
レッセン「知らないよそんなの。考えた所で正解を見つけようが無い」
レッセン「…………ンー…」
レッセン「……雷と言っても、所詮は静電気だ」
レッセン「そこに空気があり、粒子があり、伝導物質があるのなら、極論だがどこででも発生しうる」
レッセン「それに世界的に見ても珍しい現象ではあるが、晴れの日の落雷というのも無くはない」
レッセン「しかしだ…そう考えるにしたって、ねぇ?」
レッセン「イヤ、考えてはいたが、オーガの取った方法が余りに予想外だった…と言うべきか」
レッセン「まァ、あんな事を想定してしまうようなら、逆にボスの指揮能力に疑問を感じてしまうよ」
レッセン「『プラズマレーザー撃つかも知れないから』……なんてね」フフ
レッセン「ン? 雷がなんで降ってきたのかって?」
レッセン「知らないよそんなの。考えた所で正解を見つけようが無い」
レッセン「…………ンー…」
レッセン「……雷と言っても、所詮は静電気だ」
レッセン「そこに空気があり、粒子があり、伝導物質があるのなら、極論だがどこででも発生しうる」
レッセン「それに世界的に見ても珍しい現象ではあるが、晴れの日の落雷というのも無くはない」
レッセン「しかしだ…そう考えるにしたって、ねぇ?」
485: 2014/07/21(月) 15:51:48.39 ID:6+rVfweSO
ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ! ! ! !
レッセン「…………」
ド ガ ! ! ド ガ ! ! ド ガ ! !
ド ガ ! ! ド ガ ! ! ド ガ ! !
ド ガ ! !
ド ガ ! !
連打だよ、連打
オーガに向かって雷の連打
滝みたいにさ、ババババって
あの時は漏らしてたね、もう俺は
ぶっちゃけ感電して氏ぬんじゃないかと思った
カメラも壊れたし
ド ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ! ! ! !
彼?だから大丈夫だって
ピンピン、いやピカピカしてたよ
不思議なものでさ、雷って遠くで見たら青いのに
近くで見たら黄色かったり赤かったりするんだよ
俺初めて知ったよ
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!
レッセン「………」キ~ン
もう何も聞こえなくなってたな
目も変になってたみたいで、雷以外、辺り一面真っ暗なんだ
見えるのはピンボケのオーガだけよ
いやァ、思わず呟いちまったね
レッセン「…神だ……」
もうニッポンには二度と行かないよ
意味ワカんねーよあの国
見に行くんなら、あと一世紀は待った方がいいぜ
487: 2014/07/21(月) 16:25:12.85 ID:6+rVfweSO
15分
開戦から終戦までの時間、僅か15分
6人……いや、3人の『民間人』が圧倒的戦力を相手に殲滅戦をやってのけた、前代未聞の大規模戦闘は
オリバ(…終わった……)
戦争史上最速で終わりを迎えた
隊員「」 隊員「」
隊員「」
氏者多数
ゲバル「………」
生存者8名
明里「………」ハァ、ハァ…
そのうち負傷者は1名
貴樹「………」
正明「………」
一時的な心神喪失に陥っている者2名
レッセン「」
カメラマン「」
気絶した者2名
勇次郎「………」チリチリ… パリッ バチッ
帯電している者1名
氏
闘
決
着
ッ
ッ
開戦から終戦までの時間、僅か15分
6人……いや、3人の『民間人』が圧倒的戦力を相手に殲滅戦をやってのけた、前代未聞の大規模戦闘は
オリバ(…終わった……)
戦争史上最速で終わりを迎えた
隊員「」 隊員「」
隊員「」
氏者多数
ゲバル「………」
生存者8名
明里「………」ハァ、ハァ…
そのうち負傷者は1名
貴樹「………」
正明「………」
一時的な心神喪失に陥っている者2名
レッセン「」
カメラマン「」
気絶した者2名
勇次郎「………」チリチリ… パリッ バチッ
帯電している者1名
氏
闘
決
着
ッ
ッ
495: 2014/07/21(月) 18:09:07.25 ID:6+rVfweSO
ダダダダダダダダダダダ…ッ
ダンッ!
ゲバル「おっ」
オリバ「ン?」
スペック「………ッッッ」ハァハァ
隊員「」
機動戦闘車「」
ヘリコプター「」
戦闘機「」
スペック(……オッ…)
スペック(終了ってたァ~~……ッッッ)
ゲバル「誰だ?アンタ」
オリバ「スペック」
ゲバル「?」
オリバ「深海刑務所脱獄犯。アメリカ出身の氏刑囚……犯罪歴では私の先輩に当たる。 なんでも、自由の女神像を素手で破壊したらしい」
ゲバル「へェ……良いね。そういうのは」
スペック「いつだッ!? いつ終了ったッ!?」
オリバ「ついさっきさ。見てなかったのかい?さっきの雷柱」
スペック「見たから来たんじゃねェかッッ!」
オリバ「それは間の悪いコトで」フフ…
スペック「ハァ~……」
スペック「ン?」ギョロ…
貴樹「……」
明里「………」ハァ、ハァ
正明「……」
オリバ「ああ、彼らには手出ししないでくれ。これから病院に…」
バ キ ィ !
スペック「!」
オリバ「まあ落ち着けよジイさん」
スペック「♪」
オリバ「俺に不意打ちは効かねェよ。特に顔面にはね」
ダンッ!
ゲバル「おっ」
オリバ「ン?」
スペック「………ッッッ」ハァハァ
隊員「」
機動戦闘車「」
ヘリコプター「」
戦闘機「」
スペック(……オッ…)
スペック(終了ってたァ~~……ッッッ)
ゲバル「誰だ?アンタ」
オリバ「スペック」
ゲバル「?」
オリバ「深海刑務所脱獄犯。アメリカ出身の氏刑囚……犯罪歴では私の先輩に当たる。 なんでも、自由の女神像を素手で破壊したらしい」
ゲバル「へェ……良いね。そういうのは」
スペック「いつだッ!? いつ終了ったッ!?」
オリバ「ついさっきさ。見てなかったのかい?さっきの雷柱」
スペック「見たから来たんじゃねェかッッ!」
オリバ「それは間の悪いコトで」フフ…
スペック「ハァ~……」
スペック「ン?」ギョロ…
貴樹「……」
明里「………」ハァ、ハァ
正明「……」
オリバ「ああ、彼らには手出ししないでくれ。これから病院に…」
バ キ ィ !
スペック「!」
オリバ「まあ落ち着けよジイさん」
スペック「♪」
オリバ「俺に不意打ちは効かねェよ。特に顔面にはね」
496: 2014/07/21(月) 19:25:31.77 ID:6+rVfweSO
ゲバル「手癖の悪い爺さんだな」ハハハ
オリバ「イイじゃないか。ボケてるよりは余程良い」
スペック「…………」
オリバ「ゲバル」
ゲバル「ん?」
オリバ「ミス明里と他の二人を頼む。私は少し用事が出来た」
ゲバル「…の、ようだな」
スペック「ワルいね♪気をつかわせちまって」
オリバ「構わんさ。じゃ、行こうか」フッ
スペック「……」ニコッ
ザッ
ザッザッザッザッ…
ゲバル「………」
ゲバル「ん~…頼むって言われてもなァ」
貴樹「………」
ゲバル「おーい。キミ」ポンポン
貴樹「?」
ゲバル「耳、聞こえてる?」サッ サッ
貴樹「……?…??」
ゲバル「ハハ、まだ聞こえてないか」
ピーポーピーポー
ゲバル「! …ああ、救急車か」
オリバ「イイじゃないか。ボケてるよりは余程良い」
スペック「…………」
オリバ「ゲバル」
ゲバル「ん?」
オリバ「ミス明里と他の二人を頼む。私は少し用事が出来た」
ゲバル「…の、ようだな」
スペック「ワルいね♪気をつかわせちまって」
オリバ「構わんさ。じゃ、行こうか」フッ
スペック「……」ニコッ
ザッ
ザッザッザッザッ…
ゲバル「………」
ゲバル「ん~…頼むって言われてもなァ」
貴樹「………」
ゲバル「おーい。キミ」ポンポン
貴樹「?」
ゲバル「耳、聞こえてる?」サッ サッ
貴樹「……?…??」
ゲバル「ハハ、まだ聞こえてないか」
ピーポーピーポー
ゲバル「! …ああ、救急車か」
511: 2014/08/03(日) 21:49:58.34 ID:IZFxvwFSO
貴樹「…?…」
ゲバル「おーい」
貴樹「! ぁ…」
ゲバル「やっと気付いたかい。遅いぞキミ」
ぼんやりと響いていた音が急に明確になって、真っ白だった視界に色が映り始めた時、僕の耳に何かのサイレンが入った
でも何のサイレンかが分からない
思い出そうにも、頭の中から考えという考えが抜け落ちてしまっている
目の前の男性が何か言っている
僕の周りには瓦礫がある
ここが何処なのかも、今僕は何をしているのかも思い出せない
ズ ン
貴樹「ッッッ!!!!」
不意に、僕の頭に日本刀が刺さった
鋭い痛みが後頭部と額に走り、僕は酷く慌てながら、傷口を両手で確認する
貴樹「…あ…あれ…?」
けれど、頭には傷口も出血の跡も無く、気付けば思考が鮮明になっていた
「闘争を知らず…」ズチャッ…
貴樹「!」
ゲバル「!」
勇次郎「殺意の感知も出来ぬ、本能を忘れ去った小童も」
勇次郎「濃密な闘争の空気を知れば、多少なりとも殺気に対し鋭敏になり、危機に呼応して体勢を立て直しうるというコトだ」
勇次郎「遠野貴樹…呆けている場合でもあるまい」
貴樹「!!」
僕は思い出した
ここがどこなのかも、今何が起きているのかも
紅葉「おいキミッ!」
病院でお世話になった先生が、救急車から降りて僕らの方へ走ってくる
何故先生がここにいるのかは、僕にとってはどうでも良かった
貴樹「せ、先生…」
貴樹「明里が…!」
512: 2014/08/04(月) 14:48:20.00 ID:MK4Vgh3SO
病院
バンッ!
ガラガラガラガラガラガラ
助手「心拍・血圧共に低下ッ!体温も上がりませんッ!」
紅葉「輸血パックと投薬の用意ッッ!開いてる手術室はッッ!?」
オペ・ナース1「第三、開いてますッ!」
紅葉「ならば第三に搬送して患者の容態を維持しろッ!」
紅葉「私はオペの準備をするッ!先に行っててくれッ!」
オペ・ナース2「はい!」
ガラガラガラガラガラガラ…
紅葉「………」ザッ
貴樹「先生…」
紅葉「! 何か?」クルッ
貴樹「明里は…助かるんですよね…」
紅葉「………」
紅葉「私は患者に対しては真実のみを伝える様に努めています」
紅葉「それが善かろうと悪かろうと事実としてそこにある以上、隠すコトは出来ないし、隠すべきでは無いと信じているからです」
紅葉「ですからハッキリと申し上げますが、助かる確率は40パーセント…ひいき目で見ても五分五分と言ったところでしょう」
貴樹「!!……ッッ」
紅葉「では失礼を。オペの準備があるので」シュキッ
ザッザッザッザッ
貴樹「…………」
バンッ!
ガラガラガラガラガラガラ
助手「心拍・血圧共に低下ッ!体温も上がりませんッ!」
紅葉「輸血パックと投薬の用意ッッ!開いてる手術室はッッ!?」
オペ・ナース1「第三、開いてますッ!」
紅葉「ならば第三に搬送して患者の容態を維持しろッ!」
紅葉「私はオペの準備をするッ!先に行っててくれッ!」
オペ・ナース2「はい!」
ガラガラガラガラガラガラ…
紅葉「………」ザッ
貴樹「先生…」
紅葉「! 何か?」クルッ
貴樹「明里は…助かるんですよね…」
紅葉「………」
紅葉「私は患者に対しては真実のみを伝える様に努めています」
紅葉「それが善かろうと悪かろうと事実としてそこにある以上、隠すコトは出来ないし、隠すべきでは無いと信じているからです」
紅葉「ですからハッキリと申し上げますが、助かる確率は40パーセント…ひいき目で見ても五分五分と言ったところでしょう」
貴樹「!!……ッッ」
紅葉「では失礼を。オペの準備があるので」シュキッ
ザッザッザッザッ
貴樹「…………」
515: 2014/08/04(月) 20:49:30.24 ID:MK4Vgh3SO
鎬紅葉(シノギ・クレハ)
史上最高のドクターにして、優秀な人体破壊者
過去に行った人道に反する人体実験によって、通常の医療には決して踏み込めぬ領域に辿り着きし男
そんな彼にも、踏み越える事の出来ぬ壁がある
生命力における『格差』という巨壁
出産後の妊婦の衰弱氏。不十分な施術で回復してしまう老人
風邪を拗らせて命を落とす若者。感染症から生還する赤子
全身を銃弾に貫かれて尚、身体を起こし戦いに身を投じる極道
地上最強に叩きのめされて尚、命をつなぎ止めた青年
後天的要素では無く、個人が生来に備える力
それは決して量る事は出来ず、変える事も出来ない
それは、人が運命と呼ぶ概念に似る
そして今…
紅葉「………」ザッ
助手「!」
その概念にまたも挑まんとする男が、一人いる
彼は不可能を可能とする為に技を磨き、禁忌までも犯した
その培った技術
紅葉「開始めよう」
今こそ使う時
521: 2014/08/11(月) 01:39:08.44 ID:9juDpKCSO
貴樹「………」
正明「…………」
手術が終わるまで、ここで待っていて下さい
そう言われてから、どれくらいの時間が経ったのだろうか
10分にも感じるし、30分にも思える。1時間は経ったのだろうか
いずれにしても確かめる手段は無い
時計を見ても、明里の手術が何時に始まったのかを確認していないのだから
看護婦「………」スタスタ…
看護婦さんが、ベンチに座った僕らの前を足速に通り過ぎた
あの人に聞けば良いのかもしれないとも考えたけれど、やめた
今余計な事をすれば、明里の手術に響くかもしれない
そんな訳は無いと頭では分かっていたのに、聞く気になれなかった
自分から何か行動を起こすのが、恐ろしかった
正明「……なあ」
空港から病院まで、一度も口を開かなかった正明さんが、僕に話し掛ける
貴樹「……なんですか」
正明「…………」
でも僕が返事をしても、正明さんはうなだれて黙ったまま、合わせた手を震わせているだけだった
正明「…………」
貴樹「…………」
正明「…なぁ……なんでだろうな…」
正明「なんでこんなんなっちまったのかなぁ…?」
俯いたまま不意に喋りはじめた彼の鼻声は、震えていた
表情は見なくても、彼が泣いている事は分かった
でも、彼のいる方を直視する事も、彼に慰めの言葉を掛ける事も、僕には出来なかった
僕は…いや、多分正明さんも、本当は分かっているんだ
明里をこんな目に遇わせたのは、僕ら自身である事を
自分の中で鳴っていた警報を無視して、関わってはいけない者に近付き過ぎて、引き返す事も間に合わなかった僕らのせいで、明里は生氏の境をさ迷っているという事を
だから僕は、正明さんを慰められなかった
僕自身も打ちのめされて、心も、身体も、疲れ切っていた
正明「…………」
手術が終わるまで、ここで待っていて下さい
そう言われてから、どれくらいの時間が経ったのだろうか
10分にも感じるし、30分にも思える。1時間は経ったのだろうか
いずれにしても確かめる手段は無い
時計を見ても、明里の手術が何時に始まったのかを確認していないのだから
看護婦「………」スタスタ…
看護婦さんが、ベンチに座った僕らの前を足速に通り過ぎた
あの人に聞けば良いのかもしれないとも考えたけれど、やめた
今余計な事をすれば、明里の手術に響くかもしれない
そんな訳は無いと頭では分かっていたのに、聞く気になれなかった
自分から何か行動を起こすのが、恐ろしかった
正明「……なあ」
空港から病院まで、一度も口を開かなかった正明さんが、僕に話し掛ける
貴樹「……なんですか」
正明「…………」
でも僕が返事をしても、正明さんはうなだれて黙ったまま、合わせた手を震わせているだけだった
正明「…………」
貴樹「…………」
正明「…なぁ……なんでだろうな…」
正明「なんでこんなんなっちまったのかなぁ…?」
俯いたまま不意に喋りはじめた彼の鼻声は、震えていた
表情は見なくても、彼が泣いている事は分かった
でも、彼のいる方を直視する事も、彼に慰めの言葉を掛ける事も、僕には出来なかった
僕は…いや、多分正明さんも、本当は分かっているんだ
明里をこんな目に遇わせたのは、僕ら自身である事を
自分の中で鳴っていた警報を無視して、関わってはいけない者に近付き過ぎて、引き返す事も間に合わなかった僕らのせいで、明里は生氏の境をさ迷っているという事を
だから僕は、正明さんを慰められなかった
僕自身も打ちのめされて、心も、身体も、疲れ切っていた
522: 2014/08/11(月) 16:02:06.76 ID:9juDpKCSO
「よォ」
そんな僕らを意に解さないような、やけに間延びした声が廊下の奥から聞こえた
僕は顔を上げて声のした方向を見たけれど、正明さんは動かなかった
ゲバル「あのオーガを調べてたんだよな?」
空港で、何も言わない正明さんとパニックになりそうだった僕を救急車に押し込んで、どこかへ行ってしまった人が、廊下の奥から歩いて来る
あの範馬勇次郎と同じく、僕らの居る世界とは違う世界にいるはずの人
彼は、空港で見た時とは違って、まるで近所にでもいるかのような普通の男性に見えた
ゲバル「こう言っちゃワルいが、自業自得だな」
そして彼もまた、僕らを慰めはしなかった
ゲバル「世界を翻弄する一人軍隊に夢中になり、偶然とはいえ接触する………世間一般におけるオーガの知名度が高まった事が、そもそもの原因ではあるが、余りにも無鉄砲に過ぎた」
ゲバル「アブない事はアブない連中に任せて、大人しく諜報気分で済ませておけば良いものを…」
貴樹「…………」
ゲバル「手術室にいる女性…」
正明「!」
貴樹「っ……」
ゲバル「あのドクターが何をキミらに言ったのかは知らないが……多分助かるかな、あのドクターの顔だと」
貴樹「…それって、どういう意味ですか?」
ゲバル「あの鎬紅葉ってセンセイ、かなりの凄腕で有名なんだよ。俺らの方でも」
ゲバル「なんでも素手で氏人を生き返らせたり、全身ハチの巣になった男を手術で快復させたりしたらしい」
ゲバル「そういうスーパードクターってヤツなのさ。あのお医者さんはね」
貴樹「………」
ゲバル「俺はもう帰るが、一つ忠告」ヂャリ…
ゲバル「これからは自分で処理出来る行動をしろ」
ゲバル「じゃね♪」ザッザッザッ…
貴樹「…………」
そんな僕らを意に解さないような、やけに間延びした声が廊下の奥から聞こえた
僕は顔を上げて声のした方向を見たけれど、正明さんは動かなかった
ゲバル「あのオーガを調べてたんだよな?」
空港で、何も言わない正明さんとパニックになりそうだった僕を救急車に押し込んで、どこかへ行ってしまった人が、廊下の奥から歩いて来る
あの範馬勇次郎と同じく、僕らの居る世界とは違う世界にいるはずの人
彼は、空港で見た時とは違って、まるで近所にでもいるかのような普通の男性に見えた
ゲバル「こう言っちゃワルいが、自業自得だな」
そして彼もまた、僕らを慰めはしなかった
ゲバル「世界を翻弄する一人軍隊に夢中になり、偶然とはいえ接触する………世間一般におけるオーガの知名度が高まった事が、そもそもの原因ではあるが、余りにも無鉄砲に過ぎた」
ゲバル「アブない事はアブない連中に任せて、大人しく諜報気分で済ませておけば良いものを…」
貴樹「…………」
ゲバル「手術室にいる女性…」
正明「!」
貴樹「っ……」
ゲバル「あのドクターが何をキミらに言ったのかは知らないが……多分助かるかな、あのドクターの顔だと」
貴樹「…それって、どういう意味ですか?」
ゲバル「あの鎬紅葉ってセンセイ、かなりの凄腕で有名なんだよ。俺らの方でも」
ゲバル「なんでも素手で氏人を生き返らせたり、全身ハチの巣になった男を手術で快復させたりしたらしい」
ゲバル「そういうスーパードクターってヤツなのさ。あのお医者さんはね」
貴樹「………」
ゲバル「俺はもう帰るが、一つ忠告」ヂャリ…
ゲバル「これからは自分で処理出来る行動をしろ」
ゲバル「じゃね♪」ザッザッザッ…
貴樹「…………」
523: 2014/08/11(月) 18:46:10.08 ID:9juDpKCSO
紅葉「………ッッッ」
紅葉(患部を切開し、傷口に巻き込まれた衣類の切れ端を取り除き………貫通の衝撃でズレた鎖骨をハメ直し、撃ち抜かれて割れた肩の骨を固定具で接合して、修復不可の骨片は取り除いた…)
紅葉(血管も神経も筋肉の健も繋ぎ直して、切開ヵ所も閉じた……術中の患部洗浄にも抜かりは無かった)
紅葉(やるべき事は全てやった)
紅葉(しかし……)
助手「………先生…」
紅葉(分かっていたさ……運び込まれた時点で、半ば手遅れだった事は…ッッ)
紅葉(応急処置は成されてはいた…しかし真に適切な処置など、あの状況では望めるハズも無い。 医学的には、戦場の最前線以上のハードな環境に、彼女はいた事になる)
紅葉(本来ならば元々病弱な患者を、そのような環境には絶対に近付かせないが……今、現に彼女は危篤状態にある)
オペ・ナース「先生…容態が安定しません……このままだと、この患者さんは…」
紅葉「分かっている。安定する術は残されていると言いたいんだろうが、この状況での投薬はマズい。 今の彼女に、薬物の負荷に耐えられるだけのキャパシティーは無いんだ。 無論、これ以上の施術も受けられる状態に無い」
助手「しかし、これでは術後の経過も…」
紅葉「期待は出来ないだろう。彼女は緩やかに氏を迎える」
助手「………ッッ」
紅葉「やりたく無かった……こんな手術は…」
オペ・ナース「先生…」
紅葉「こんな運否天賦な手術は…ッッ」サッ
助手「!?」
オペ・ナース「!?」
プツッ チュウウゥ~…ッ
助手「あっ!」
オペ・ナース「せっ、先生ッ!?何を…今、投薬は…」
紅葉「そりゃ危険だろうさ…」
紅「だが…生きる道がコッチにはギリギリあるんだよ。崩れかかった可能性ではあるがね…」
紅葉(どれだけ技術を高めようとも、最後の最後は運に頼るしかない……)
紅葉(一度外道に堕ちて尚…こうなるか、やはり……)
紅葉(患部を切開し、傷口に巻き込まれた衣類の切れ端を取り除き………貫通の衝撃でズレた鎖骨をハメ直し、撃ち抜かれて割れた肩の骨を固定具で接合して、修復不可の骨片は取り除いた…)
紅葉(血管も神経も筋肉の健も繋ぎ直して、切開ヵ所も閉じた……術中の患部洗浄にも抜かりは無かった)
紅葉(やるべき事は全てやった)
紅葉(しかし……)
助手「………先生…」
紅葉(分かっていたさ……運び込まれた時点で、半ば手遅れだった事は…ッッ)
紅葉(応急処置は成されてはいた…しかし真に適切な処置など、あの状況では望めるハズも無い。 医学的には、戦場の最前線以上のハードな環境に、彼女はいた事になる)
紅葉(本来ならば元々病弱な患者を、そのような環境には絶対に近付かせないが……今、現に彼女は危篤状態にある)
オペ・ナース「先生…容態が安定しません……このままだと、この患者さんは…」
紅葉「分かっている。安定する術は残されていると言いたいんだろうが、この状況での投薬はマズい。 今の彼女に、薬物の負荷に耐えられるだけのキャパシティーは無いんだ。 無論、これ以上の施術も受けられる状態に無い」
助手「しかし、これでは術後の経過も…」
紅葉「期待は出来ないだろう。彼女は緩やかに氏を迎える」
助手「………ッッ」
紅葉「やりたく無かった……こんな手術は…」
オペ・ナース「先生…」
紅葉「こんな運否天賦な手術は…ッッ」サッ
助手「!?」
オペ・ナース「!?」
プツッ チュウウゥ~…ッ
助手「あっ!」
オペ・ナース「せっ、先生ッ!?何を…今、投薬は…」
紅葉「そりゃ危険だろうさ…」
紅「だが…生きる道がコッチにはギリギリあるんだよ。崩れかかった可能性ではあるがね…」
紅葉(どれだけ技術を高めようとも、最後の最後は運に頼るしかない……)
紅葉(一度外道に堕ちて尚…こうなるか、やはり……)
524: 2014/08/11(月) 19:34:47.35 ID:9juDpKCSO
看護婦「遠野貴樹さん、篠原正明さん、手術が終わりましたので診療室までお越しください」
貴樹「!」
正明「!! 明里は!?明里はどうなったんですかっ!?」
看護婦「っ、落ち着いて下さい。詳しい話は先生からお聞きいただけますので、まずは診療室の方に…」
527: 2014/08/12(火) 06:11:37.52 ID:mHn4DlZSO
診療室
紅葉「なんとか一命は取り留めました」
貴樹「!! ほん…」
正明「本当ですかっ!? は、ははっ…良かった……ありがとうございます、本当にッ……」
紅葉「ですが、手放しで喜べる話でもありません」
正明「えっ?」
紅葉「負傷ヵ所への手術自体は大した問題にならずに済みましたが、彼女の体質に問題が生じていました」
紅葉「明里さんの低めの血圧と体温は、明里さんの循環器系……つまりは血液を身体に行き渡らせる、心臓や血管等の生体システムの事ですが、それが平均より弱い事を表しています」
紅葉「その弱さが、負傷直後の大量出血や、非常事態に対する極度の興奮状態と重なり、深刻化していました」
紅葉「幸いにも処置は成功しましたが、衰弱が著しく、予断を許さない意識不明の状態がしばらく続くでしょう」
紅葉「いわゆる、昏睡状態です」
正明「…こん、すい…?」
貴樹「…いつ起きるんですか?」
紅葉「分かりません。今の所は」
貴樹「分からないって…それじゃあ…」
正明「ずっ……ずっと寝たきりになるってんですかっ!?」
紅葉「残念ですが、その可能性も低くはありません」
貴樹「…………」
正明「そんな……」
紅葉「万が一を考え、一応の覚悟はしておいて下さい」
紅葉「なんとか一命は取り留めました」
貴樹「!! ほん…」
正明「本当ですかっ!? は、ははっ…良かった……ありがとうございます、本当にッ……」
紅葉「ですが、手放しで喜べる話でもありません」
正明「えっ?」
紅葉「負傷ヵ所への手術自体は大した問題にならずに済みましたが、彼女の体質に問題が生じていました」
紅葉「明里さんの低めの血圧と体温は、明里さんの循環器系……つまりは血液を身体に行き渡らせる、心臓や血管等の生体システムの事ですが、それが平均より弱い事を表しています」
紅葉「その弱さが、負傷直後の大量出血や、非常事態に対する極度の興奮状態と重なり、深刻化していました」
紅葉「幸いにも処置は成功しましたが、衰弱が著しく、予断を許さない意識不明の状態がしばらく続くでしょう」
紅葉「いわゆる、昏睡状態です」
正明「…こん、すい…?」
貴樹「…いつ起きるんですか?」
紅葉「分かりません。今の所は」
貴樹「分からないって…それじゃあ…」
正明「ずっ……ずっと寝たきりになるってんですかっ!?」
紅葉「残念ですが、その可能性も低くはありません」
貴樹「…………」
正明「そんな……」
紅葉「万が一を考え、一応の覚悟はしておいて下さい」
528: 2014/08/12(火) 18:30:27.66 ID:mHn4DlZSO
ピッ ピッ ピッ ピッ
正明「…………」
貴樹「…………」
明里「………」ピッ ピッ ピッ
正明「…………」
貴樹「…………」
正明「……起きないな、本当に」
貴樹「ええ、そうですね…」
正明「…………」
正明「……なんか、ダメだな俺…妙に落ち着いちまってて…」
正明「明里がこんな事になってるのに……」
正明「最低ってヤツだよな」
貴樹「…………」
貴樹「今日は、色々ありましたから…仕方が無いですよ」
正明「…………」
貴樹「…………」
正明「……ホント悪いとは思ってるけど…二人だけにしてくれないか…」
貴樹「…………」
貴樹「………」ガタッ
スタスタ…
正明「…………」
正明「…………」
貴樹「…………」
明里「………」ピッ ピッ ピッ
正明「…………」
貴樹「…………」
正明「……起きないな、本当に」
貴樹「ええ、そうですね…」
正明「…………」
正明「……なんか、ダメだな俺…妙に落ち着いちまってて…」
正明「明里がこんな事になってるのに……」
正明「最低ってヤツだよな」
貴樹「…………」
貴樹「今日は、色々ありましたから…仕方が無いですよ」
正明「…………」
貴樹「…………」
正明「……ホント悪いとは思ってるけど…二人だけにしてくれないか…」
貴樹「…………」
貴樹「………」ガタッ
スタスタ…
正明「…………」
529: 2014/08/12(火) 18:42:01.18 ID:mHn4DlZSO
貴樹「………」ガチャッ
正明「貴樹」
貴樹「………」ピクッ
正明「ごめんな」
貴樹「…………」
バタン
正明「…………」
明里「…………」ピッ ピッ ピッ
ピッ ピッ ピッ ピッ
正明「…………」
ピッ ピッ ピッ ピッ
531: 2014/08/13(水) 04:10:28.82 ID:pkErtgoSO
正明さんを残して、僕は病室を出た
貴樹「……ぁ…」
病院の中を歩きながら、唐突にレンタルカブを店に返していない事を思い出したけれど、空港近くまで取りに行く気にはなれなかった
取りに行ったとしても、多分カブは戦闘でバラバラになっている
それに今の羽田空港には人の氏体と瓦礫しかない
そんなものは見たくなかったし、もうこれ以上関わりたくなかった
貴樹「!」
新聞記者1「あ、すみませーん!お話良いですかァー!?」
記者2「話聞かせてくださーい!」
記者3「空港にはどんな用で!?」
記者4「あの二人とは面識があるんですかー!?」
記者5「取材良いですかー!!」
記者6「あの女性はどうなったんですか!?」
記者7「お話聞かせてもらえませんかー!?」
記者8「せめてお名前だけでも…」
記者9「範馬勇次郎氏とはどのような関係にあるのですかッ!?」
記者10「あの黒人の方と面識はありますか!?」
カシャッ カシャッ パシャッ カシャカシャ
警察1「下がって!ホラ!」
警察2「シャッター切らないでください!患者さんの迷惑です!」
警察3「やめなさいって!!」
病院の正面玄関では、どこから話を聞き付けたのか、報道陣が塊になってカメラを光らせている
警察官が列を作って記者を食い止めているけれど、その警察も何故ここにいるのか分からない
テロへの警戒の為だろうか、それとも病院で何かが起きていたのだろうか
頭にバンダナを巻いた彼に関係があるのだろうか
とにかく、僕は早く病院から抜け出したかった
これ以上何にも関わりたくなかった
看護婦「遠野さん。向こうの非常口が開けてありますので、そこからどうぞ」
玄関近くにいた看護婦さんに案内されて、僕は病院を出た
532: 2014/08/13(水) 12:10:45.67 ID:pkErtgoSO
病院を出た後はタクシーを拾った
運転手は何も言わずに運転を続け、タクシーの中は道路を走る音以外何も聞こえない
でも、僕にはそんな車内が有り難かった
空港での戦闘が始まったのは、覚えてる限りでも朝の8時3~40分頃
今も日は明るく、東京はいつにも増して異様に活気立っている
何処を見ても空港の事ばかりで、ビルの大型スクリーンには現場の中継映像が流れ、新聞配りが号外を配っている
それらを茫然と見流していた僕は、運転手の声で我に返り、料金を払った
いつの間にか着いていた見慣れたアパートの前で、タクシーが走り去っていくのを確認した後、玄関のドアを開ける
「すいません、ちょっとお話良いですか?」
背中に掛けられた声に、僕はドアを開けっ放しにしたまま振り向いた
貴樹「…………」
記者「あ、どうも」
そこには、薄ら笑いを浮かべてメモ帳を片手に持った、新聞記者が立っていた
貴樹「……やめて下さいよ…」
記者「? はい?」
貴樹「やめて下さいよ!!」
その記者に僕は激昂した
個人に本気の怒りをぶつけたのは、生まれて初めてだった
性も根も尽きて何もする気が起きなかったのに、この時だけは力が出た
それほどまでに、僕は苛立ちを抑え切れなかった
記者「いや、すいません…でもコッチも仕事でして…」ヘヘ…
それでも記者は嫌らしい笑いを浮かべたまま、話を聞こうと近寄ってくる
僕はもう泣きそうだった
いい加減にしてほしかった
「あ、ちょいと兄ちゃん。道教えてくんねェかな?」
記者「? なんだよアンタ、取材の邪…」
サングラスを掛けた男に呼び止められた記者の口から、大量の歯が飛び散った
運転手は何も言わずに運転を続け、タクシーの中は道路を走る音以外何も聞こえない
でも、僕にはそんな車内が有り難かった
空港での戦闘が始まったのは、覚えてる限りでも朝の8時3~40分頃
今も日は明るく、東京はいつにも増して異様に活気立っている
何処を見ても空港の事ばかりで、ビルの大型スクリーンには現場の中継映像が流れ、新聞配りが号外を配っている
それらを茫然と見流していた僕は、運転手の声で我に返り、料金を払った
いつの間にか着いていた見慣れたアパートの前で、タクシーが走り去っていくのを確認した後、玄関のドアを開ける
「すいません、ちょっとお話良いですか?」
背中に掛けられた声に、僕はドアを開けっ放しにしたまま振り向いた
貴樹「…………」
記者「あ、どうも」
そこには、薄ら笑いを浮かべてメモ帳を片手に持った、新聞記者が立っていた
貴樹「……やめて下さいよ…」
記者「? はい?」
貴樹「やめて下さいよ!!」
その記者に僕は激昂した
個人に本気の怒りをぶつけたのは、生まれて初めてだった
性も根も尽きて何もする気が起きなかったのに、この時だけは力が出た
それほどまでに、僕は苛立ちを抑え切れなかった
記者「いや、すいません…でもコッチも仕事でして…」ヘヘ…
それでも記者は嫌らしい笑いを浮かべたまま、話を聞こうと近寄ってくる
僕はもう泣きそうだった
いい加減にしてほしかった
「あ、ちょいと兄ちゃん。道教えてくんねェかな?」
記者「? なんだよアンタ、取材の邪…」
サングラスを掛けた男に呼び止められた記者の口から、大量の歯が飛び散った
533: 2014/08/13(水) 15:18:14.06 ID:pkErtgoSO
ペ キ ィ !
貴樹「!!?」
記者「~~~~~~~~ッッッッッ!!??」コポポポ
樹の枝を折るような音とともに、口から血泡を吹く記者
その記者の胸倉をサングラスの男はひっ掴むと、記者のスーツをまさぐった
そして記者の在り来りな身なりとは、全く不釣り合いな程ケバケバしい財布を抜き取って、財布の中味を歩道にぶちまけると、その散らばった中味を楽しげに眺め始めた
サングラスの男「あ~あ…やっぱロクなもんじゃなかったねェ」
貴樹「?…?…ッッ」
サングラスの男「堅気じゃねェが、筋者とも違う。 揺すりか詐欺か……まァ、いずれにしろ偽の記者…いわゆるチンピラだな」ポイッ
記者「………」ドサァッ
無造作に投げ捨てられた記者らしき男は、細かく痙攣している
僕は血の臭いだけで色々思い出し過ぎてしまい、壁に手を付けて息を調えた
サングラスの男からは、あの別世界の三人と同じ空気を感じる
実際に、彼が何をしてこの記者をこんな風にしたのかが、僕には分からない
範馬勇次郎が行ったと思われる、異常な何かの数々と同じように
貴樹「なっ…なんなんだ…誰なんだ…」ハァハァ
サングラスの男「観客さ。つっても立見席にもイケなかったがよ」
貴樹「か…観客?」フゥ…
サングラスの男「短過ぎなんだよ。15~6分じゃ現場ァ向かうだけで精一杯だ」
サングラスの男「他の連中もみ~んな見逃しちまって、皆して悲しいやら悔しいやら……」クスッ
貴樹「…?…」
サングラスの男「ま、つーワケで…おいらはもう帰るがよ」
サングラスの男「このチンピラの件、内緒にしておいてくんな」ザッ
ザッザッザッザッ…
貴樹「!!?」
記者「~~~~~~~~ッッッッッ!!??」コポポポ
樹の枝を折るような音とともに、口から血泡を吹く記者
その記者の胸倉をサングラスの男はひっ掴むと、記者のスーツをまさぐった
そして記者の在り来りな身なりとは、全く不釣り合いな程ケバケバしい財布を抜き取って、財布の中味を歩道にぶちまけると、その散らばった中味を楽しげに眺め始めた
サングラスの男「あ~あ…やっぱロクなもんじゃなかったねェ」
貴樹「?…?…ッッ」
サングラスの男「堅気じゃねェが、筋者とも違う。 揺すりか詐欺か……まァ、いずれにしろ偽の記者…いわゆるチンピラだな」ポイッ
記者「………」ドサァッ
無造作に投げ捨てられた記者らしき男は、細かく痙攣している
僕は血の臭いだけで色々思い出し過ぎてしまい、壁に手を付けて息を調えた
サングラスの男からは、あの別世界の三人と同じ空気を感じる
実際に、彼が何をしてこの記者をこんな風にしたのかが、僕には分からない
範馬勇次郎が行ったと思われる、異常な何かの数々と同じように
貴樹「なっ…なんなんだ…誰なんだ…」ハァハァ
サングラスの男「観客さ。つっても立見席にもイケなかったがよ」
貴樹「か…観客?」フゥ…
サングラスの男「短過ぎなんだよ。15~6分じゃ現場ァ向かうだけで精一杯だ」
サングラスの男「他の連中もみ~んな見逃しちまって、皆して悲しいやら悔しいやら……」クスッ
貴樹「…?…」
サングラスの男「ま、つーワケで…おいらはもう帰るがよ」
サングラスの男「このチンピラの件、内緒にしておいてくんな」ザッ
ザッザッザッザッ…
539: 2014/08/22(金) 16:39:00.08 ID:dxr2LUUSO
サングラスを掛けた白いスーツ姿の男は、記者風の男を置いて本当に行ってしまった
そして僕も、動かない記者風の男に構わず、アパートに入って自分の部屋のある階に上っていった
警察に通報しなければと思いはしたものの、記者風の男の財布から散らされた物騒な名刺は、僕から通報する気力を奪った
源王会や花山組などは、雑誌の事件・事故の欄で一度見掛けた『警察でさえ持て余す』組織
そんなのに関わっている男が、血まみれで倒れている
そんな事を『空港の戦闘の渦中にいた一般人』が警察に通報したら、どんな重要人物扱いをされるか分からない
あのサングラスの男がその筋の者だったとしたら、尚更に何をされるか分からない
面倒事はもう見たくも聞きたくない
自分から関わるなんて真っ平だった
貴樹「………」ガチャッ
ドアを開けて部屋に入る
そこには閑散としたいつもの光景があって、僕は心底ほっとした
靴を脱ぎ捨てて揃え直しもせず、上着を着たまま、僕はベッドに倒れ込む
全身は汗ばみ、頭は痒く、空腹感が胃袋を刺激する
それでも僕は起き上がらず、泥のように眠る事を選んだ
意識が溶ける瞬間、病院のベッドに横たわる明里の姿が、頭の中に浮かんだ
そして僕も、動かない記者風の男に構わず、アパートに入って自分の部屋のある階に上っていった
警察に通報しなければと思いはしたものの、記者風の男の財布から散らされた物騒な名刺は、僕から通報する気力を奪った
源王会や花山組などは、雑誌の事件・事故の欄で一度見掛けた『警察でさえ持て余す』組織
そんなのに関わっている男が、血まみれで倒れている
そんな事を『空港の戦闘の渦中にいた一般人』が警察に通報したら、どんな重要人物扱いをされるか分からない
あのサングラスの男がその筋の者だったとしたら、尚更に何をされるか分からない
面倒事はもう見たくも聞きたくない
自分から関わるなんて真っ平だった
貴樹「………」ガチャッ
ドアを開けて部屋に入る
そこには閑散としたいつもの光景があって、僕は心底ほっとした
靴を脱ぎ捨てて揃え直しもせず、上着を着たまま、僕はベッドに倒れ込む
全身は汗ばみ、頭は痒く、空腹感が胃袋を刺激する
それでも僕は起き上がらず、泥のように眠る事を選んだ
意識が溶ける瞬間、病院のベッドに横たわる明里の姿が、頭の中に浮かんだ
544: 2014/08/23(土) 05:06:32.02 ID:tE2AclnSO
どこかの路地裏
オリバ「………」
スペック「イイ場所あるじゃなァい」ククク…
オリバ「人通りは少ない。空港の件もあるだろうし、まず誰も来ないと見ていいだろう」
スペック「武器はありかい?」
オリバ「あらゆる意味で無しだ。違うかね?」
スペック「ハハハ…そりゃあそうか。アンタにゃ武器は通用しねェ」サッ
ヒュッ キン! キャリーン!
スペック「ホラ、ナイフも刺さりゃしねェもの」
オリバ「腹筋を固めているからね。そりゃナイフも弾くさ」
スペック「フフ…」
オリバ「まァ、それでも諦めないアンタも流石だ」
スペック「諦めていない?オレが?なんでそう言えるのかな?」
オリバ「そりゃあワカる」
オリバ「勃起してるゼ、アンタ」
スペック「それはキミもだろう」
オリバ「…フフ……」
スペック「………」
オリバ「相思相愛……愛し合う恋人同士が、ベッドに向かい、服を脱ぎ…」
スペック「女は濡れ、男は股ぐらをいきり立たせての、全てをさらけ出す行為に似る」
オリバ「そう…まるでだ。闘いと性交はかくも姿を近くしている」
スペック「………」ザッ
オリバ「出会いの喜びを、共に噛み締めよう」
ゴ ガ ッ ! ! !
オリバ「………」
スペック「イイ場所あるじゃなァい」ククク…
オリバ「人通りは少ない。空港の件もあるだろうし、まず誰も来ないと見ていいだろう」
スペック「武器はありかい?」
オリバ「あらゆる意味で無しだ。違うかね?」
スペック「ハハハ…そりゃあそうか。アンタにゃ武器は通用しねェ」サッ
ヒュッ キン! キャリーン!
スペック「ホラ、ナイフも刺さりゃしねェもの」
オリバ「腹筋を固めているからね。そりゃナイフも弾くさ」
スペック「フフ…」
オリバ「まァ、それでも諦めないアンタも流石だ」
スペック「諦めていない?オレが?なんでそう言えるのかな?」
オリバ「そりゃあワカる」
オリバ「勃起してるゼ、アンタ」
スペック「それはキミもだろう」
オリバ「…フフ……」
スペック「………」
オリバ「相思相愛……愛し合う恋人同士が、ベッドに向かい、服を脱ぎ…」
スペック「女は濡れ、男は股ぐらをいきり立たせての、全てをさらけ出す行為に似る」
オリバ「そう…まるでだ。闘いと性交はかくも姿を近くしている」
スペック「………」ザッ
オリバ「出会いの喜びを、共に噛み締めよう」
ゴ ガ ッ ! ! !
552: 2014/08/23(土) 19:32:51.82 ID:tE2AclnSO
貴樹「!」
僕は目を覚ました
貴樹「…?」
部屋を見渡して、ベッドから起き上がって天井を見る
空港に行く時に消したままの電気は、やっぱり点いていない
なのに部屋は薄明かりに照らされている
窓を見ると、太陽の日差しが部屋の光源になっていた
貴樹「………」シャッ
眩しかったから、思いの他早く起きてしまったんだと思い、僕はカーテンを閉めて、目覚まし時計を見る
もう夕食を作らなければいけない時間になっているはずだった
貴樹「…ぁ…」
でも時計は進んでおらず、むしろ針が戻っていた
時刻は朝の7時40分過ぎ
思えば窓からの光も、夕日にしては弱い
貴樹(一日中寝てたのか…)
そう自覚した途端に、空腹感が思い出され始めた
考えてみれば、昨日から何も食べていない
僕は気だるい身体を動かして台所に向かうと、カップラーメンを一つ取り出し、作って食べた
なんの味気も無かったけれど、空腹感は無くなった
そして、机上にあるカップラーメンの空の容器を見て思う
今日は何をする日なんだろうと
553: 2014/08/23(土) 20:03:42.11 ID:tE2AclnSO
何も無い
するべき事はもう何も無い
全てを賭けて得たものは何も無い
残ったのは、凄惨な事件と、昏睡状態の明里と、疲れ切った男が二人だけ
僕の中のなにもかもが、全て消えていた
虚しさだけを残して
貴樹「………………」
椅子に座ったまま動けない
動く理由が見つからない
会社を辞めた当初の予定通り、フリーで仕事をしてみようか
でも仕事をする事になんの意味があるのだろう
このまま何十年も仕事をして、仕事だけをして生きる
たったそれだけの人生を生きて行けるのだろうか
わずか数年の孤独にさえ、音を上げた僕に
病院に行く…
明里の見舞いに行くべきなのだろうか
でも行ってどうするのだろうか
僕には明里に合わせる顔も、正明さんに合わせる顔も無い
行ったところで明里が目覚める訳じゃない
貴樹「…………」
でも、行くべきなんだ
明里に氏んでほしくない
ただそれだけでもいい
打ちひしがれるのは、明里が治ってから
そう、治ってから
貴樹「…………」
貴樹「もしもし、あの、遠野貴樹と言います。篠原明里さんの付き添いだった……はい、そうです」
貴樹「お見舞いに行きたいのですが、いいですか?」
するべき事はもう何も無い
全てを賭けて得たものは何も無い
残ったのは、凄惨な事件と、昏睡状態の明里と、疲れ切った男が二人だけ
僕の中のなにもかもが、全て消えていた
虚しさだけを残して
貴樹「………………」
椅子に座ったまま動けない
動く理由が見つからない
会社を辞めた当初の予定通り、フリーで仕事をしてみようか
でも仕事をする事になんの意味があるのだろう
このまま何十年も仕事をして、仕事だけをして生きる
たったそれだけの人生を生きて行けるのだろうか
わずか数年の孤独にさえ、音を上げた僕に
病院に行く…
明里の見舞いに行くべきなのだろうか
でも行ってどうするのだろうか
僕には明里に合わせる顔も、正明さんに合わせる顔も無い
行ったところで明里が目覚める訳じゃない
貴樹「…………」
でも、行くべきなんだ
明里に氏んでほしくない
ただそれだけでもいい
打ちひしがれるのは、明里が治ってから
そう、治ってから
貴樹「…………」
貴樹「もしもし、あの、遠野貴樹と言います。篠原明里さんの付き添いだった……はい、そうです」
貴樹「お見舞いに行きたいのですが、いいですか?」
555: 2014/08/23(土) 20:07:42.69 ID:tE2AclnSO
何も無い
するべき事はもう何も無い
全てを賭けて得たものは何も無い
現実に残ったのは、凄惨な事件と、昏睡状態の明里と、疲れ切った男が二人だけ
僕の中からは、何もかもが全て消えていた
虚しさだけを残して
貴樹「………………」
椅子に座ったまま動けない
動く理由が見つからない
会社を辞めた当初の予定通り、フリーで仕事をしてみようか
でも仕事をする事になんの意味があるのだろう
このまま何十年も仕事をして、仕事だけをして生きる
たったそれだけの人生を生きて行けるのだろうか
わずか数年の孤独にさえ、音を上げた僕に
病院に行く…
明里の見舞いに行くべきなのだろうか
でも行ってどうするのだろうか
僕には明里に合わせる顔も、正明さんに合わせる顔も無い
行ったところで明里が目覚める訳じゃない
貴樹「…………」
でも、行くべきなんだ
明里に氏んでほしくない
ただそれだけでもいい
打ちひしがれるのは、明里が治ってから
そう、治ってから
貴樹「…………」
貴樹「もしもし、あの、遠野貴樹と言います。篠原明里さんの付き添いだった……はい、そうです」
貴樹「お見舞いに行きたいのですが、よろしいでしょうか?」
するべき事はもう何も無い
全てを賭けて得たものは何も無い
現実に残ったのは、凄惨な事件と、昏睡状態の明里と、疲れ切った男が二人だけ
僕の中からは、何もかもが全て消えていた
虚しさだけを残して
貴樹「………………」
椅子に座ったまま動けない
動く理由が見つからない
会社を辞めた当初の予定通り、フリーで仕事をしてみようか
でも仕事をする事になんの意味があるのだろう
このまま何十年も仕事をして、仕事だけをして生きる
たったそれだけの人生を生きて行けるのだろうか
わずか数年の孤独にさえ、音を上げた僕に
病院に行く…
明里の見舞いに行くべきなのだろうか
でも行ってどうするのだろうか
僕には明里に合わせる顔も、正明さんに合わせる顔も無い
行ったところで明里が目覚める訳じゃない
貴樹「…………」
でも、行くべきなんだ
明里に氏んでほしくない
ただそれだけでもいい
打ちひしがれるのは、明里が治ってから
そう、治ってから
貴樹「…………」
貴樹「もしもし、あの、遠野貴樹と言います。篠原明里さんの付き添いだった……はい、そうです」
貴樹「お見舞いに行きたいのですが、よろしいでしょうか?」
556: 2014/08/23(土) 22:22:47.15 ID:tE2AclnSO
病室
テレビ<空港で起きた範馬勇次郎襲撃事件に対して、新たな展開です>
テレビ<先日、亜部総理大臣の開いた緊急会見に際して、石波…>
コンコン
正明「!」
ピッ
テレビ<>プツン
正明「はい」
ガチャッ
正明「!」
貴樹「………」
正明「…貴樹…」
看護婦「失礼します」ペコリ
貴樹「はい、ありがとうございました」
看護婦「………」スタスタ…
貴樹「明里さんは……?」
正明「変わらずさ…ずっと寝てるよ」
正明「あ、でも小康状態にはなってるらしい。呼吸機も必要無いって」
明里「………」
貴樹「………」
正明「………」
貴樹「…正明さん、何見てたんですか?」
正明「っ…見えてた?」
貴樹「いえ。でも、音だけは」
正明「あ、ああ、ニュースをちょっとな…」
正明「でも、あんまり良いもんじゃ無かったし、点けてんのもなんかなってさ」
正明「あ、椅子あるから、座って良いよ」
貴樹「っ、はい」
テレビ<空港で起きた範馬勇次郎襲撃事件に対して、新たな展開です>
テレビ<先日、亜部総理大臣の開いた緊急会見に際して、石波…>
コンコン
正明「!」
ピッ
テレビ<>プツン
正明「はい」
ガチャッ
正明「!」
貴樹「………」
正明「…貴樹…」
看護婦「失礼します」ペコリ
貴樹「はい、ありがとうございました」
看護婦「………」スタスタ…
貴樹「明里さんは……?」
正明「変わらずさ…ずっと寝てるよ」
正明「あ、でも小康状態にはなってるらしい。呼吸機も必要無いって」
明里「………」
貴樹「………」
正明「………」
貴樹「…正明さん、何見てたんですか?」
正明「っ…見えてた?」
貴樹「いえ。でも、音だけは」
正明「あ、ああ、ニュースをちょっとな…」
正明「でも、あんまり良いもんじゃ無かったし、点けてんのもなんかなってさ」
正明「あ、椅子あるから、座って良いよ」
貴樹「っ、はい」
557: 2014/08/24(日) 05:03:31.68 ID:thkS0bqSO
貴樹「………」
正明「………」
正明「…終わってみるとさ…」
貴樹「?」
正明「ああ、あー……実際に見たり体験したりした後で、冷静になって考えたらって意味な」
正明「あの範馬勇次郎って人について、結局何も分からなかったよな、俺達」
貴樹「………」
正明「分かった事と言えば、噂通りに強かったって事ぐらいで……結局、俺達の何かが変わる訳でも無い」
正明「ただ、明里を危険なヤツらに巻き込ませただけで…」
正明「………考えてみりゃあ、あんなのについて調べたって…生き方のヒントとか、後悔しない人生とか、そんな物……都合良く見つかる訳無かったんだよ…」
明里「………」
貴樹「…僕らは見たかっただけなのかもしれません」
正明「?」
貴樹「見たことの無いような…例えようの無いような、素晴らしい物を」
貴樹「ただ生きてるだけじゃ手に入らない、見ることさえ出来ないような、そんな何かを」
貴樹「でもそれは、手にしたり、見たりしてはいけない物だった」
貴樹「…きっと、僕らは夢を見ちゃいけないんです」
貴樹「受け入れるしか無かったんです。今までも…これから先も…」
正明「………」
正明「………」
正明「…終わってみるとさ…」
貴樹「?」
正明「ああ、あー……実際に見たり体験したりした後で、冷静になって考えたらって意味な」
正明「あの範馬勇次郎って人について、結局何も分からなかったよな、俺達」
貴樹「………」
正明「分かった事と言えば、噂通りに強かったって事ぐらいで……結局、俺達の何かが変わる訳でも無い」
正明「ただ、明里を危険なヤツらに巻き込ませただけで…」
正明「………考えてみりゃあ、あんなのについて調べたって…生き方のヒントとか、後悔しない人生とか、そんな物……都合良く見つかる訳無かったんだよ…」
明里「………」
貴樹「…僕らは見たかっただけなのかもしれません」
正明「?」
貴樹「見たことの無いような…例えようの無いような、素晴らしい物を」
貴樹「ただ生きてるだけじゃ手に入らない、見ることさえ出来ないような、そんな何かを」
貴樹「でもそれは、手にしたり、見たりしてはいけない物だった」
貴樹「…きっと、僕らは夢を見ちゃいけないんです」
貴樹「受け入れるしか無かったんです。今までも…これから先も…」
正明「………」
558: 2014/08/24(日) 10:45:28.17 ID:thkS0bqSO
貴樹(明里)
貴樹(僕に雑誌を渡した日、明里が言った事、僕は覚えているよ)
貴樹(僕の人生は明里の為じゃない。 明里の人生が僕の為にあるわけでもない)
貴樹(もう僕達は他人同士で、お互い巣立ってしまった。 もう、一緒に同じ道を歩く事もない)
貴樹(なのに、明里は空港で僕を呼んだ。 見て見ぬ振りを出来なかった)
貴樹(僕達はまだ…多分…まだ微かに繋がっている)
貴樹(いや、きっと本心では、微かに繋がっていたいと思っているんだ)
貴樹(…でも、やっぱり離れなきゃ駄目なんだよ)
貴樹(僕達はもう戻れない。 一緒にいても、辛い目に遭うだけなんだ)
貴樹(それに、明里はもう前に進み出したんだろ?)
貴樹(だから止まる必要なんて無い。振り返らなくて良かったんだよ)
貴樹(空っぽな僕なんか放っといて、忘れてしまって良かったんだよ)
貴樹(だから、早く目を覚ましてほしい)
貴樹(正明さんの所へ帰って来てほしい)
貴樹(正明さんは、明里の事を待ってるから)
貴樹(明里の居場所は、もうあるんだから)
559: 2014/08/24(日) 14:10:26.41 ID:thkS0bqSO
自分勝手な想いだとは分かってる
僕は勝手に引きずって、忘れられなくなって、そして今、勝手な考えで自己完結している
でも、明里に生きていて欲しいという想いも、明里が治ったら、僕は明里と関わらないどこか遠くに移るという考えも、紛れも無く僕の中の真実だった
正明さんも、僕も、看護婦さんが呼びに来るまでは、明里のいる病室から動かなかった
何も言わず、ただ静かに
今にも眼を覚ましそうな明里と、僅かに動き続ける心電図と脳波計を眺めていた
560: 2014/08/24(日) 14:27:24.73 ID:thkS0bqSO
何処かの川
明里「………」
明里(? ここ、どこなの?)
ザアアアア…
明里(川沿いに桜…昔見た事あるような、無いような…)
明里(でも、こんなに綺麗な桜じゃなかった気はする…)
明里(綺麗は綺麗だったけど、ここのは、なんだか……夢みたいな…)
ザアアアア…
明里(今、何時なんだろう…)
明里(他に人、いないのかな…)
明里(凄く風が気持ちいい……)
明里(このまま眠ってしまいそう……)
ザアアアア…
562: 2014/08/25(月) 23:41:51.79 ID:8t8aoVBSO
「お嬢ちゃん」
明里「? はい…?」
?「それともお嬢さんの方が良かったかい?」ぬおおっ
明里「!!?」
大男「………」
明里「…えっと、じゃあ、お嬢さんで……」
大男「ん、じゃあそれで呼ばせてもらう」
明里「………」
大男「…何をジーっと見てるんだい?」
明里「!! ぁ、いや、あの…身体大きいんですねって、思って…」
大男「フフ…」
明里「ごめんなさい…失礼でしたよね…」
大男「構わんよ。柔道やってりゃデカくもなる」
明里「それで、貴方は…」
大男「それにしても、ここに来ちまうなんてお嬢さんも随分と不運だ」
明里「っ?」
大男「私の服装は分かるかな?」
明里「えっ…それは分かりますけど…」
大男「な~んだ?」
明里「…半ズボン、だけです」
大男「正解」
明里(…この質問、何の意味があるんだろう…)
明里(いかにも普通じゃない人なのに、気味悪く思えないのは何故なの?)
大男「お嬢さん…『俺』と『此処』で出会っちまったってコトは、向こうでエラいモンと関わったみたいだな」
明里「?」
566: 2014/08/26(火) 05:33:59.76 ID:AayOW66SO
明里(偉いもの…ここ…?)
明里(何か、話が見えない…)
大男「フフッ……相も変わらずのようだ、あやつも」
明里「……あの、何の事ですか?」
大男「お嬢さん、此処に来る前に何か見たかい?」
明里「えっ」
ザアアアア…
明里(ここに来る前……そう言えば私、何でこんな所にいるんだろう)
明里(ここは何処なの? どうやって来たの?)
明里(ここに来る前、私は……)
明里(!!!!)
大男「…………」
明里「…わっ…私、空港で……!」フルフル…
明里「!! 傷が…!?」
大男「傷?」
明里「は、はい!肩を怪我して……でも、傷が…」
大男「此処に来りゃ消えるのさ、そういうのはね」
明里「えっ?」
明里(…何それ……)
明里(…どういう事なの…?)
明里(それじゃあ私、あのまま、氏んで…)
大男「完全には氏んじゃいねェな」
明里「!!!」ビクッ
大男「此処はまだ半端な場所でね。 ちょいと力みゃあすぐ出られるんだ」
大男「丁度、向こうから呼ばれてるヤツも居る。 ソイツに掴まれば、お嬢さんも帰れるだろうよ」
明里(何か、話が見えない…)
大男「フフッ……相も変わらずのようだ、あやつも」
明里「……あの、何の事ですか?」
大男「お嬢さん、此処に来る前に何か見たかい?」
明里「えっ」
ザアアアア…
明里(ここに来る前……そう言えば私、何でこんな所にいるんだろう)
明里(ここは何処なの? どうやって来たの?)
明里(ここに来る前、私は……)
明里(!!!!)
大男「…………」
明里「…わっ…私、空港で……!」フルフル…
明里「!! 傷が…!?」
大男「傷?」
明里「は、はい!肩を怪我して……でも、傷が…」
大男「此処に来りゃ消えるのさ、そういうのはね」
明里「えっ?」
明里(…何それ……)
明里(…どういう事なの…?)
明里(それじゃあ私、あのまま、氏んで…)
大男「完全には氏んじゃいねェな」
明里「!!!」ビクッ
大男「此処はまだ半端な場所でね。 ちょいと力みゃあすぐ出られるんだ」
大男「丁度、向こうから呼ばれてるヤツも居る。 ソイツに掴まれば、お嬢さんも帰れるだろうよ」
568: 2014/08/28(木) 04:44:05.46 ID:8e3b4ovSO
明里「まっ、待ってください!」
大男「?」
明里「そんな…いきなりそんなに言われても、私………何が、何だか…」
大男「………フム」
大男「まァ、ワケは分からんだろうな」
大男「だが、まだ時間もあるコトだ。ゆっくり考えると良い」
明里「…………」
大男「………」ホワァ~…ッ
明里「…あの…」
大男「ン?」
明里「ここ……天国とかじゃないんですよね…?」
大男「氏後の世界であるコトは確かだが、天国じゃねェのも確かかな」
明里「…確かって言えるのは何故ですか?」
大男「此処が人の言う『天国』だとしたら、私は既に満たされているハズだからだ。 倅と孫の親子喧嘩に、野次馬する必要も無い程に」
明里「…お孫さん……」
明里「? お孫さん、ですか?」
大男「オヤ、気付いたかね?」
大男「私はこう見えて結構な歳なんだ。 どういうワケかね」
大男「そのせいか、勇次郎に殺られた時から服装が変えられん。 短パンの幽霊なんざ、神秘性が無くていけねェ」フフ…
大男「?」
明里「そんな…いきなりそんなに言われても、私………何が、何だか…」
大男「………フム」
大男「まァ、ワケは分からんだろうな」
大男「だが、まだ時間もあるコトだ。ゆっくり考えると良い」
明里「…………」
大男「………」ホワァ~…ッ
明里「…あの…」
大男「ン?」
明里「ここ……天国とかじゃないんですよね…?」
大男「氏後の世界であるコトは確かだが、天国じゃねェのも確かかな」
明里「…確かって言えるのは何故ですか?」
大男「此処が人の言う『天国』だとしたら、私は既に満たされているハズだからだ。 倅と孫の親子喧嘩に、野次馬する必要も無い程に」
明里「…お孫さん……」
明里「? お孫さん、ですか?」
大男「オヤ、気付いたかね?」
大男「私はこう見えて結構な歳なんだ。 どういうワケかね」
大男「そのせいか、勇次郎に殺られた時から服装が変えられん。 短パンの幽霊なんざ、神秘性が無くていけねェ」フフ…
571: 2014/08/28(木) 13:56:41.22 ID:8e3b4ovSO
明里「勇次っ…」
明里「! いえ、その前にあのっ、取られたって…それは一体…」
大男「オウ、殺されちまった」
明里「!?」
大男「まァ、大したハナシじゃない。 感謝こそすれ、怨んではいない」
明里「えっ?」
大男「?」
明里「感謝って、なんで…だって、殺されたんじゃないんですか…?」
大男「あ~…なんかなァ…」
大男「生前は格闘家ってモンだったんだが…」
大男「疲れちまったんだ、人生ってヤツに」
明里「………」
大男「目標も無く、唯一の寄り処である『強さ』を安売りする日々」
大男「その癖、報われる時ってヤツが中々来なくてねェ……見え透いた試合カードに、格下相手への猿芝居…揚げ句に八百長…」
大男「正直、自分の強さで自分の幸せを掴んだコトは、一度も無かった」
大男「掴んだと思えば、ソイツは砕けたりすり抜けたり偽物だったりで…やんなってね…」
明里「………」
大男「そんな時だ、アイツが産まれたのは」
大男「俺の血を引く俺以上…アイツは見る見る強くなった」
大男「嬉しかったねェ、追い抜かれるってのは」
大男「全力で立ち向かい、砕け散るってのは」
明里「………」
大男「分からんだろう?こういう人種」
明里「っ……」
大男「ビクビクせず、正直に言ったら良い」
明里「………」
明里「ごめんなさい…貴方の言う通り、私には、あまり…」
明里「! いえ、その前にあのっ、取られたって…それは一体…」
大男「オウ、殺されちまった」
明里「!?」
大男「まァ、大したハナシじゃない。 感謝こそすれ、怨んではいない」
明里「えっ?」
大男「?」
明里「感謝って、なんで…だって、殺されたんじゃないんですか…?」
大男「あ~…なんかなァ…」
大男「生前は格闘家ってモンだったんだが…」
大男「疲れちまったんだ、人生ってヤツに」
明里「………」
大男「目標も無く、唯一の寄り処である『強さ』を安売りする日々」
大男「その癖、報われる時ってヤツが中々来なくてねェ……見え透いた試合カードに、格下相手への猿芝居…揚げ句に八百長…」
大男「正直、自分の強さで自分の幸せを掴んだコトは、一度も無かった」
大男「掴んだと思えば、ソイツは砕けたりすり抜けたり偽物だったりで…やんなってね…」
明里「………」
大男「そんな時だ、アイツが産まれたのは」
大男「俺の血を引く俺以上…アイツは見る見る強くなった」
大男「嬉しかったねェ、追い抜かれるってのは」
大男「全力で立ち向かい、砕け散るってのは」
明里「………」
大男「分からんだろう?こういう人種」
明里「っ……」
大男「ビクビクせず、正直に言ったら良い」
明里「………」
明里「ごめんなさい…貴方の言う通り、私には、あまり…」
576: 2014/08/30(土) 04:56:45.42 ID:3jdZbU0SO
大男「そりゃワカらねェさ。 むしろ、ワカってしまう人生など不幸そのもの」
大男「知らぬ方が余程イイ」
大男「で、私の倅がどうしたって?」
明里「! いえ、あの…私の知人が勇次郎さんについて調べていたので、驚いてしまって……」
大男「ホウ…成る程…」
大男「当てようか。 お嬢さんはその知り合いに巻き込まれ、今の状況に陥った。 違うかな?」
明里「い、いえ違います!あれは…」
大男「………」
明里「…あれは…」
明里「…あれは私が、貴樹君を呼び止めたから……貴樹君についていったのが、いけなかったんです」
明里「貴樹君は、何も悪くない」
明里「だから…私は貴樹君を責めてはいません」
大男「………」フフ…
ザアアアア…
大男「風が強くなりつつあるな」
大男「思いの外早く時が来たようだが、準備は良いかい?」
明里「いえ、何をどう準備するのか、よく分からないので…」
大男「ハハッ、確かに」
ザザアアアア…
大男「知らぬ方が余程イイ」
大男「で、私の倅がどうしたって?」
明里「! いえ、あの…私の知人が勇次郎さんについて調べていたので、驚いてしまって……」
大男「ホウ…成る程…」
大男「当てようか。 お嬢さんはその知り合いに巻き込まれ、今の状況に陥った。 違うかな?」
明里「い、いえ違います!あれは…」
大男「………」
明里「…あれは…」
明里「…あれは私が、貴樹君を呼び止めたから……貴樹君についていったのが、いけなかったんです」
明里「貴樹君は、何も悪くない」
明里「だから…私は貴樹君を責めてはいません」
大男「………」フフ…
ザアアアア…
大男「風が強くなりつつあるな」
大男「思いの外早く時が来たようだが、準備は良いかい?」
明里「いえ、何をどう準備するのか、よく分からないので…」
大男「ハハッ、確かに」
ザザアアアア…
577: 2014/08/30(土) 14:45:44.71 ID:3jdZbU0SO
大男「………」スッ
明里「!っ なっ、なんですかっ?」
大男「何でもない。 持ち上げただけだよ、キミを」
ザアアアアアアアア…
大男「桜舞う風に乗り、夢うつつから現世へ」
大男「こう言えば洒落ているが、やる事と言えば…」
明里「あ、あのっ…」
大男「槍投げ」グググ…ッ
明里「ちょっ…」
ザアアアアアア…
大男(今ッッ)
バ フ ォ ッ ! !
明里「!!?」
ゴ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ ! ! !
明里「~~~~~~~~~ッッッッ!!!!」
大男「おーい、お嬢さーん」
大男「宮本武蔵に掴まれェ~ッ」
明里「!!? みや、何ぃぃぃ!?」ゴオオオオ…
大男「宮本武蔵だァ~。忘れるなよォ~」
明里「!!!??」ゴオオオオ…
大男「最後にひとォ~つ」
明里「なッ、なんですかああっ!!」ゴオオオオ…
大男「倅に『敗北おめでとう』と伝えといてくれェ~」
大男「俺は勇一郎だァ~」
明里「分かりましたあああ あ あ
あ あ ぁ ぁ
ァ ァ ァ
………
…」ゴオオオオオオ…
勇一郎「フフ……」
580: 2014/08/30(土) 17:23:37.92 ID:3jdZbU0SO
ブオワアアアアアアアアアアアアア!!!
明里「~~~~~~~~ッッッ!!!!」
ババババババババババババババババババババババババ…
明里「!?」
ガシッ!!
明里「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」ゴオオオオオオ…
男「………」ゴオオオオオオ…
男「何用か」
明里「!!? すみっ、すみませんっ、ごめんなさい…」
男「?」
明里「あの、変な事聞きますけど宮本武蔵…さんって、どちらにいますか?」
男「某であるが」
明里「!!! じゃあ…貴方が、宮本…武蔵、さん?」
武蔵「いかにも。 しかし奇な事よ」
武蔵「異邦の者同士、声を違えながら意を通ずる」
明里「?……あっ」
武蔵「よばれし者に飛び付きたるその心中……察するに、現世に未練が御座ろう」
武蔵「ならば、拙者と行きを同じくしてはならぬ」
明里「えっ…そんっ、そんな事言われても…」
武蔵「我が身に詰められたくなくば、身を投げられよ」
明里「投げ……」
ガシッ
明里「ちょっ、ちょっと待って!」
武蔵「幾度と雑多を振るってきたが……思えば女人を振るうは初」
武蔵「不慣れな故、許されよ」ブ ン
明里「!」
シ ュ バ ッ ッ ! ! !
明里「ああああああああああ あ あ
あ あ あ あ あ あ
ぁ ぁ ぁ ぁ
ァ ァ ァ
……
武蔵「フム……人とは、かくも羽の如く飛び行くのか」
明里「~~~~~~~~ッッッ!!!!」
ババババババババババババババババババババババババ…
明里「!?」
ガシッ!!
明里「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」ゴオオオオオオ…
男「………」ゴオオオオオオ…
男「何用か」
明里「!!? すみっ、すみませんっ、ごめんなさい…」
男「?」
明里「あの、変な事聞きますけど宮本武蔵…さんって、どちらにいますか?」
男「某であるが」
明里「!!! じゃあ…貴方が、宮本…武蔵、さん?」
武蔵「いかにも。 しかし奇な事よ」
武蔵「異邦の者同士、声を違えながら意を通ずる」
明里「?……あっ」
武蔵「よばれし者に飛び付きたるその心中……察するに、現世に未練が御座ろう」
武蔵「ならば、拙者と行きを同じくしてはならぬ」
明里「えっ…そんっ、そんな事言われても…」
武蔵「我が身に詰められたくなくば、身を投げられよ」
明里「投げ……」
ガシッ
明里「ちょっ、ちょっと待って!」
武蔵「幾度と雑多を振るってきたが……思えば女人を振るうは初」
武蔵「不慣れな故、許されよ」ブ ン
明里「!」
シ ュ バ ッ ッ ! ! !
明里「ああああああああああ あ あ
あ あ あ あ あ あ
ぁ ぁ ぁ ぁ
ァ ァ ァ
……
武蔵「フム……人とは、かくも羽の如く飛び行くのか」
592: 2014/09/01(月) 03:00:38.03 ID:TLBoZ4nSO
明里が入院してから六日が経った
貴樹「………」バタン
今日も、明里の見舞いから帰って、僕は部屋に閉じこもる
範馬勇次郎や明里と出会う前の、無目的な生活に、僕は逆戻りしている
いや、何の仕事もしていない分、今は生活すらもしていないのだと思う
起きて、見舞いに行って、明里の病室でただ途方に暮れるだけの毎日は、僕を社会から孤立させる他人から向けられるのは、好奇と同情の眼差しだけだった
貴樹「………」カチッ
やるせない気持ちのまま、いつものように僕はテレビを点ける
テレビは今、どこのチャンネルも空港の惨状についてと、範馬勇次郎と他二人についての情報と、事件に対しての責任問題の話しか流さない
事件の関係者とやらが出て来たと思えば、次は見たことも聞いたことも無いような評論家が、まるで現場に居合わせたかのように饒舌を奮う
僕と正明さんの自宅には、一度も警察もマスコミも来ていないのに、彼らは調査を進めていると言い、真相を皆さんに伝えると言い続けている
何か見えない力が、僕と彼らの間に敷居を立てているかのように
僕らは、彼らの手からすり抜けている
でも、そんな事はどうだっていい
調査が進んで明里が起きる訳じゃない
真相を報じたら明里の怪我が治る、なんて事も無い
何も出来ないなら、せめて放っておいて欲しい
テレビ<…この肩を負傷した女性についてなんですが、病院側が「個人情報保護の観点から、個人名」は明かせないと言ってるんですね>
テレビ<その理由はですね驚くべき事に、ここにはあのスペックが…>
593: 2014/09/01(月) 03:05:59.31 ID:TLBoZ4nSO
明里が入院してから六日が経った
貴樹「………」バタン
今日も、明里の見舞いから帰って、僕は部屋に閉じこもる
範馬勇次郎や明里と出会う前の、無目的な生活に、僕は逆戻りしている
いや、何の仕事もしていない分、今は生活すらもしていないのだと思う
起きて、見舞いに行って、明里の病室でただ途方に暮れるだけの毎日は、僕を社会から孤立させる
そんな僕に他人が向けるのは、好奇と同情の眼差しだけだった
貴樹「………」カチッ
やるせない気持ちのまま、いつものように僕はテレビを点ける
テレビは今、どこのチャンネルも空港の惨状についてと、範馬勇次郎と他二人についての情報と、事件に対しての責任問題の話しか流さない
事件の関係者とやらが出て来たと思えば、次は見たことも聞いたことも無いような評論家が、まるで現場に居合わせたかのように饒舌を奮う
僕と正明さんの自宅には、一度も警察もマスコミも来ていないのに、彼らは調査を進めていると言い、真相を皆さんに伝えると言い続けている
何か見えない力が、僕と彼らの間に敷居を立てているかのように
僕らは、彼らの手からすり抜けている
でも、そんな事はどうだっていい
調査が進んで明里が起きる訳じゃない
真相を報じたら明里の怪我が治る、なんて事も無い
何も出来ないなら、せめて放っておいて欲しい
テレビ<…この肩を負傷した女性についてなんですが、病院側が「個人情報保護の観点から、個人名」は明かせないと言ってるんですね>
テレビ<その理由はですね驚くべき事に、この病院にはなんと!あのスペックが…>
594: 2014/09/01(月) 03:23:20.64 ID:TLBoZ4nSO
漫然とテレビを眺めていた僕の頭に、肩、怪我、女性という単語と、苦しそうに顔を歪める明里の写真が飛び込む
貴樹「………」
彼女を想わない日は無い
後悔しない日は無い
僕が座るように促さなければ
あの時、彼女を冷たくあしらう事が出来たのなら…
ピリリリリリッ ピリリリリリッ
貴樹「!」
自責の念に潰されている時、僕の携帯が鳴る
電話に出ると、男性の声が聞こえた
紅葉<遠野貴樹さんですね?>
電話の相手は、鎬先生だった
595: 2014/09/01(月) 03:56:26.72 ID:TLBoZ4nSO
バンッ!
勢い良くドアを開けて、僕は飛び出した
エレベーターなんて乗っていられず、階段を人生初の三段抜かしで降りた
家に帰った後、着替えてはいない
シャワーも浴びてない
食事も取ってない
時刻は夕方の6時半
走る僕を夕陽が照らす
道を行く人が皆振り返り、中には携帯を取り出して僕に向ける人もいる
それでも僕は構わず走る
とても構ってなんていられない
貴樹「タクシー!!」
ずっと閉じてた喉を急に動かしたものだから、僕の声は裏返った
子供が笑う
サラリーマンが顔をしかめる
タクシーがゆっくりとスピードを落とし、僕に近付く
それが余りにも遅いので、僕は自分から走り寄ってボンネットに手を着けた
運転手「バカお前ッ!危ないだろッッ!減速中に…」
運転手が叫ぶ
貴樹「病院!!病院に行って下さい!!早く!!」
僕も叫んだ
運転手は面食らった鳩のように固まって、僕の顔を見た
僕の焦りは空回りしていて、肝心の病院の名前が思い出せない
運転手「あんた、羽田の……ッッ」
貴樹「お願いです!明里が起きたんですよ!!」
こんな訳の分からない答えでも
運転手「!!ッッ」
運転手は何かを察した
運転手「だァもうッ!乗れッッ!!」
勢い良くドアを開けて、僕は飛び出した
エレベーターなんて乗っていられず、階段を人生初の三段抜かしで降りた
家に帰った後、着替えてはいない
シャワーも浴びてない
食事も取ってない
時刻は夕方の6時半
走る僕を夕陽が照らす
道を行く人が皆振り返り、中には携帯を取り出して僕に向ける人もいる
それでも僕は構わず走る
とても構ってなんていられない
貴樹「タクシー!!」
ずっと閉じてた喉を急に動かしたものだから、僕の声は裏返った
子供が笑う
サラリーマンが顔をしかめる
タクシーがゆっくりとスピードを落とし、僕に近付く
それが余りにも遅いので、僕は自分から走り寄ってボンネットに手を着けた
運転手「バカお前ッ!危ないだろッッ!減速中に…」
運転手が叫ぶ
貴樹「病院!!病院に行って下さい!!早く!!」
僕も叫んだ
運転手は面食らった鳩のように固まって、僕の顔を見た
僕の焦りは空回りしていて、肝心の病院の名前が思い出せない
運転手「あんた、羽田の……ッッ」
貴樹「お願いです!明里が起きたんですよ!!」
こんな訳の分からない答えでも
運転手「!!ッッ」
運転手は何かを察した
運転手「だァもうッ!乗れッッ!!」
596: 2014/09/01(月) 04:32:04.89 ID:TLBoZ4nSO
運転手は僕を乗せると、タクシーを飛ばした
周りの車を抜き去り、蛇行運転までして先を急いだ
パトカーが捕まえに来ないのが不思議なくらい、制限速度を超過した
それでも不運は起きる物で、タクシーは渋滞に捕まってしまった
貴樹「………っ」
運転手「クソッ!どけよお前らッッ!」バンバン
ブーッ!ブーッ!ブーッ!
運転手は激昂しながらクラクションを叩き、道路に騒音が響く
周りの車の何台かも、そのクラクションに苦情を言うかのようにクラクションを鳴らす
運転手「クソがラチ開かねェ!!」サッ
運転手は激怒しながら携帯を取り出すと、物凄い勢いで番号を入力した後、こいこいこいと連呼する
最初に彼と会った時から、かなり彼の印象が変わった気がするけれど、僕はそんな彼に嫌悪感を示さなかった
運転手「シャアア掛かったァッ!!」ピッ
運転手「チワッス総長ッッ!!お疲れ様ッス!! 今ニュースに映ったスケの彼乗っけてんすけど!渋滞でタコってます!!自分彼のコト尊敬してますんでッ、チカラァ貸して下さいッッ!!」
貴樹(えっ、総長?)
貴樹(尊敬?なんで?)
疑問が頭に次々と浮かぶ
でも運転手は電話に出ているので、当然疑問には答えてくれない
運転手「近いッスか!?えっ?」
運転手「あッ、ありゃッス!!」
ピッ
運転手「オイ兄ちゃんッッ!!」クルッ
貴樹「!?」
運転手「ウチの総長もう来るぜッ!!ツイてるな!!」
貴樹「そ…総長…?」
そして、疑問が何一つ解決されないまま…
<ガンダムゥゥゥ!!
タクシーの外から「ガンダム」という声が聞こえて来た
そう、確かにガンダムと
周りの車を抜き去り、蛇行運転までして先を急いだ
パトカーが捕まえに来ないのが不思議なくらい、制限速度を超過した
それでも不運は起きる物で、タクシーは渋滞に捕まってしまった
貴樹「………っ」
運転手「クソッ!どけよお前らッッ!」バンバン
ブーッ!ブーッ!ブーッ!
運転手は激昂しながらクラクションを叩き、道路に騒音が響く
周りの車の何台かも、そのクラクションに苦情を言うかのようにクラクションを鳴らす
運転手「クソがラチ開かねェ!!」サッ
運転手は激怒しながら携帯を取り出すと、物凄い勢いで番号を入力した後、こいこいこいと連呼する
最初に彼と会った時から、かなり彼の印象が変わった気がするけれど、僕はそんな彼に嫌悪感を示さなかった
運転手「シャアア掛かったァッ!!」ピッ
運転手「チワッス総長ッッ!!お疲れ様ッス!! 今ニュースに映ったスケの彼乗っけてんすけど!渋滞でタコってます!!自分彼のコト尊敬してますんでッ、チカラァ貸して下さいッッ!!」
貴樹(えっ、総長?)
貴樹(尊敬?なんで?)
疑問が頭に次々と浮かぶ
でも運転手は電話に出ているので、当然疑問には答えてくれない
運転手「近いッスか!?えっ?」
運転手「あッ、ありゃッス!!」
ピッ
運転手「オイ兄ちゃんッッ!!」クルッ
貴樹「!?」
運転手「ウチの総長もう来るぜッ!!ツイてるな!!」
貴樹「そ…総長…?」
そして、疑問が何一つ解決されないまま…
<ガンダムゥゥゥ!!
タクシーの外から「ガンダム」という声が聞こえて来た
そう、確かにガンダムと
597: 2014/09/01(月) 05:09:49.59 ID:TLBoZ4nSO
ババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババ!!!
パラリラパラリラ パラパパパ パラパパパ
様々な不協和音が混ざり合った騒音
夜遅くにこの音で起こされて、そのまま朝を迎えた事もあった騒音
それが渋滞の遥か後方から迫ってくる
渋滞しているにも関わらずに
貴樹「……運転手さん、コレって…」
運転手「オウッ!ウチの本隊よ!!」
嫌な予感がした
キドウバクダン・ガンダム
機動爆弾巌駄無・構成員A「巌駄無ゥゥゥゥ~~~~~~~ッッッ!!!」
構成員達「応ッッッ!!!!!」
構成員A「巌駄無ゥゥゥ~~~~~ッッッ!!!」
構成員達「応ッッッ!!!!!」
ババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババ!!!!!
パラパパパ パラパパパ パラリラパラリラ パパパパパパパパ
車列の間を通り抜けたり、車列の上を跳びはねたり、歩道を走ってきたり
無茶苦茶な方法で渋滞を無視した『暴走族』は、あっという間に僕の乗るタクシーを取り囲むと、エンジンをやたらと吹かし始める
ブオン!!ブオン!! ババババババ!!バォン!!
ブワババババ!!ブオン!!ブオォン!!!
凄まじい騒音の中で、運転手さえもガンダムと声を挙げて
ザウッ
彼らのリーダーらしき人物を迎える
千春「 押 忍 ッ ッ ッ ! ! 」
リーダーの発した号令のような物は、騒音をぴたりと止めた
パラリラパラリラ パラパパパ パラパパパ
様々な不協和音が混ざり合った騒音
夜遅くにこの音で起こされて、そのまま朝を迎えた事もあった騒音
それが渋滞の遥か後方から迫ってくる
渋滞しているにも関わらずに
貴樹「……運転手さん、コレって…」
運転手「オウッ!ウチの本隊よ!!」
嫌な予感がした
キドウバクダン・ガンダム
機動爆弾巌駄無・構成員A「巌駄無ゥゥゥゥ~~~~~~~ッッッ!!!」
構成員達「応ッッッ!!!!!」
構成員A「巌駄無ゥゥゥ~~~~~ッッッ!!!」
構成員達「応ッッッ!!!!!」
ババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババ!!!!!
パラパパパ パラパパパ パラリラパラリラ パパパパパパパパ
車列の間を通り抜けたり、車列の上を跳びはねたり、歩道を走ってきたり
無茶苦茶な方法で渋滞を無視した『暴走族』は、あっという間に僕の乗るタクシーを取り囲むと、エンジンをやたらと吹かし始める
ブオン!!ブオン!! ババババババ!!バォン!!
ブワババババ!!ブオン!!ブオォン!!!
凄まじい騒音の中で、運転手さえもガンダムと声を挙げて
ザウッ
彼らのリーダーらしき人物を迎える
千春「 押 忍 ッ ッ ッ ! ! 」
リーダーの発した号令のような物は、騒音をぴたりと止めた
606: 2014/09/04(木) 02:01:31.27 ID:52+KhTaSO
千春「…………」ダン!
紫色の地下足袋を穿き、引き締まった上半身を露にしている男は、腹にサラシ、頭に鉢巻きを巻いていた
男はバイクから降りてタクシーの前に立つと、吹き捨てたタバコを踏みにじる
それを合図にするかのように、運転手は後部座席側のドアを開け、僕に目配せをする
運転手とは初対面だけれど、彼の視線の意味は分かった
貴樹「………」トッ…
空港の事件に比べれば、全然たいしたことの無い事態かもしれない
だけど僕に、いかにもな武闘派の暴走族と顔を合わせた経験なんてある訳が無い
ましてや、タクシーを降りて自分から顔を出しに行くハメになるなんて、思いもしてなかった
千春「兄さん、名前、なんつーんだい?」
貴樹「…遠野、貴樹です…」
千春「ヘェ……」
貴樹「…………」
千春「あの大将でも敵わねェオーガ……アイツの闘いに巻き込まれてなお、テメェの保身のみには走らず、女を守護った男」
千春「俺らん中じゃ、こいつァどんな強者かと盛り上がりはしたがよ…」
千春「フタ開けてみりゃ、なんてこたァ無いただの素人。 男の中の男ってワケでも無ェ」
貴樹「………」
千春「そーだよな?」
貴樹「……はい」
千春「………」
貴樹「僕には、勇気なんてありません……ましてや強さだなんて…」
千春「いや」
貴樹「?」
千春「弱いアンタだからこそ、俺らはアンタを尊敬している」
貴樹えっ」
千春「なけなしの勇気に、からっきしな腕っぷし」
千春「ソイツらを総動員して、アンタは守護った」
千春「普通は出来ねえ……自分の貧弱さを自覚した野郎は、そんな事ァやらねェ」
609: 2014/09/07(日) 18:25:50.43 ID:OaiBSAbSO
貴樹「………」
貴樹「やめてください…僕はそんなつもりで明里を庇った訳じゃないんです」
貴樹「ただ、明里と離れるのが怖かっただけで……明里を氏なせる事が、怖かっただけで…」
千春「だから守護ったんだろ?」
貴樹「はい、でも…」
千春「ンなら、やっぱ完璧だぜ」
貴樹「っ?」
千春「無くしたくねェから守るヤツ……辛い目に遭いたくねェから戦うヤツと」
千春「無くしたくねェから、ハナッから持たねェヤツ……辛い目に遭いたくねェから、何もかんも放っぽってハナッからケツ捲るヤツ…」
千春「俺なら前者をシバき倒す」
千春「理由はなんでも構わねェ。動機も関係無ェ」
千春「『どう動くか』にこそ、性根が出るんだ」
貴樹「…………」
千春「遠野さん…アンタには勇気はある」
千春「証人は俺らだ」
貴樹「…………」
千春「つまり、だ…」
千春「乗ってけや、俺のマシンに」
貴樹「!?」
貴樹「やめてください…僕はそんなつもりで明里を庇った訳じゃないんです」
貴樹「ただ、明里と離れるのが怖かっただけで……明里を氏なせる事が、怖かっただけで…」
千春「だから守護ったんだろ?」
貴樹「はい、でも…」
千春「ンなら、やっぱ完璧だぜ」
貴樹「っ?」
千春「無くしたくねェから守るヤツ……辛い目に遭いたくねェから戦うヤツと」
千春「無くしたくねェから、ハナッから持たねェヤツ……辛い目に遭いたくねェから、何もかんも放っぽってハナッからケツ捲るヤツ…」
千春「俺なら前者をシバき倒す」
千春「理由はなんでも構わねェ。動機も関係無ェ」
千春「『どう動くか』にこそ、性根が出るんだ」
貴樹「…………」
千春「遠野さん…アンタには勇気はある」
千春「証人は俺らだ」
貴樹「…………」
千春「つまり、だ…」
千春「乗ってけや、俺のマシンに」
貴樹「!?」
612: 2014/09/07(日) 22:48:18.52 ID:OaiBSAbSO
貴樹「………」
貴樹「やめてください…僕はそんなつもりで明里を庇った訳じゃないんです」
貴樹「ただ、明里と離れるのが怖かっただけで……明里を氏なせる事が、怖かっただけで…」
千春「だから守護ったんだろ?」
貴樹「はい、でも…」
千春「ンなら、やっぱ完璧だぜ」
貴樹「っ?」
千春「無くしたくねェから守るヤツ……辛い目に遭いたくねェから戦うヤツと」
千春「無くしたくねェから、ハナッから持たねェヤツ……辛い目に遭いたくねェから、何もかんも放っぽってハナッからケツ捲るヤツ…」
千春「俺なら後者をシバき倒す」
千春「理由はなんでも構わねェ。動機も関係無ェ」
千春「『どう動くか』にこそ、性根が出るんだ」
貴樹「…………」
千春「遠野さん…アンタには勇気はある」
千春「証人は俺らだ」
貴樹「…………」
千春「つまり、だ…」
千春「乗ってけや、俺のマシンに」
貴樹「!?」
貴樹「やめてください…僕はそんなつもりで明里を庇った訳じゃないんです」
貴樹「ただ、明里と離れるのが怖かっただけで……明里を氏なせる事が、怖かっただけで…」
千春「だから守護ったんだろ?」
貴樹「はい、でも…」
千春「ンなら、やっぱ完璧だぜ」
貴樹「っ?」
千春「無くしたくねェから守るヤツ……辛い目に遭いたくねェから戦うヤツと」
千春「無くしたくねェから、ハナッから持たねェヤツ……辛い目に遭いたくねェから、何もかんも放っぽってハナッからケツ捲るヤツ…」
千春「俺なら後者をシバき倒す」
千春「理由はなんでも構わねェ。動機も関係無ェ」
千春「『どう動くか』にこそ、性根が出るんだ」
貴樹「…………」
千春「遠野さん…アンタには勇気はある」
千春「証人は俺らだ」
貴樹「…………」
千春「つまり、だ…」
千春「乗ってけや、俺のマシンに」
貴樹「!?」
613: 2014/09/09(火) 18:52:45.03 ID:rIY9+WESO
突然現れた暴走族から、一団のリーダーらしき男が出て来て、僕を尊敬していると言い、バイクに乗れとまで言う
考える暇は無く、僕は殆ど一方的にバイクに乗せられた
構成員A「巌駄無ゥゥゥ~~~~ッッッ!!!」
構成員達「応ッッッッ!!!!」
貴樹「……ッッッ」
凄まじくうるさい号令と、バイクの走行音が辺りに響く
遠くからパトカーの警報が聞こえ始める
千春「おい」
構成員「ウスッ!」ガポッ
貴樹「あっ!?」
すると、リーダーの合図と同時に、僕を乗せたリーダーのバイクと並走していた男が、僕に何かを被せた
貴樹「な、何ですかコレっ…」
千春「察避けのパーティーマスクだ。 普通、こんなモン使わねェが……アンタぁカタギだからな」
貴樹「うっ! ごほっ」
千春「ハハハ……まァ、使わねェし、ホコリがね」
構成員A「総長ォッ!あとチョットで病院っス!!」
千春「おう」
千春「いいかァッテメッらァ!!こっからは『予定通り』私語厳禁ッッ!!本隊はペース落としてけッッ!!」
千春「分隊ッッッ!!!」
構成員達「押忍ッッッ!!!」
ギャリリリリリ!! ブォアアアアアアアァァァ…
貴樹「…あの、さっきから一体…」
千春「なんてコタぁ無ェ。 前々から練ってたんだよコレ」
千春「アンタをテレビで見た時……ビビッときちまった時に、咄嗟に思い付いちまってよ。 適当に回ってアンタを見かけたらヤルつもりだった」
貴樹「なんでここまで…」
千春「決まってるぜ」
千春「タッパ張っていいヤツぁ、やりたい事やり切ったヤツだけだからよ」
考える暇は無く、僕は殆ど一方的にバイクに乗せられた
構成員A「巌駄無ゥゥゥ~~~~ッッッ!!!」
構成員達「応ッッッッ!!!!」
貴樹「……ッッッ」
凄まじくうるさい号令と、バイクの走行音が辺りに響く
遠くからパトカーの警報が聞こえ始める
千春「おい」
構成員「ウスッ!」ガポッ
貴樹「あっ!?」
すると、リーダーの合図と同時に、僕を乗せたリーダーのバイクと並走していた男が、僕に何かを被せた
貴樹「な、何ですかコレっ…」
千春「察避けのパーティーマスクだ。 普通、こんなモン使わねェが……アンタぁカタギだからな」
貴樹「うっ! ごほっ」
千春「ハハハ……まァ、使わねェし、ホコリがね」
構成員A「総長ォッ!あとチョットで病院っス!!」
千春「おう」
千春「いいかァッテメッらァ!!こっからは『予定通り』私語厳禁ッッ!!本隊はペース落としてけッッ!!」
千春「分隊ッッッ!!!」
構成員達「押忍ッッッ!!!」
ギャリリリリリ!! ブォアアアアアアアァァァ…
貴樹「…あの、さっきから一体…」
千春「なんてコタぁ無ェ。 前々から練ってたんだよコレ」
千春「アンタをテレビで見た時……ビビッときちまった時に、咄嗟に思い付いちまってよ。 適当に回ってアンタを見かけたらヤルつもりだった」
貴樹「なんでここまで…」
千春「決まってるぜ」
千春「タッパ張っていいヤツぁ、やりたい事やり切ったヤツだけだからよ」
614: 2014/09/09(火) 19:19:54.96 ID:rIY9+WESO
パトカー<止まりなさい!!>
分隊員「ケーサツ来たッスよ!! 部隊ッス!」
分隊長「オウッ!行くぜテメェらァッッ!!」
分隊員達「ウオッシャアアアアアアア!!!!!」
ギャバババババババババ!!!
パトカー<いよーし、止まっ……ン?>
ババババババババババババババババババ!!!!
パトカー<!?>
分隊長「自首じゃオラァッッ!!!逮捕まえてみぃッッ!!!」
分隊員達「うおらあああああああああああッッッ!!」
ババババババババババババババババババ!!!
パトカー<バ、バカッ!止まれッッ!>
分隊長「氏ィ晒せああああああ!!!」
ドワッシャアアアアアアアアン!!!
「うわああああ!!」 「なっ、なんだコイツら…ッッ」
「突っ込んできたァッ!!」 「ちょっ…」 「氏ねこらぁ!!」
「ぐえッ」 「おごぉっ」 「逆逮捕じゃあ!!」
「しゃあ!コームシッコーボウガイだぜィ!!」
警察官「動くなッ!」
分隊長「うるせェッッ!チャカ弾けェダボがァッッ!!」
パン! ビスッ
分隊長「おぅ………ッッ」
警察官「…馬ッ、馬鹿ッッ」
分隊長「……そ」
警察官「!?」
分隊長「それがナンボんじゃあッッ!」ガコッ!
警察官「~~~~~~ッッッッ」プシュー…
分隊長「おおおおおおおコイツぁ戦争じゃああああああああああ!!!!」バキッ ガッ
分隊員「ケーサツ来たッスよ!! 部隊ッス!」
分隊長「オウッ!行くぜテメェらァッッ!!」
分隊員達「ウオッシャアアアアアアア!!!!!」
ギャバババババババババ!!!
パトカー<いよーし、止まっ……ン?>
ババババババババババババババババババ!!!!
パトカー<!?>
分隊長「自首じゃオラァッッ!!!逮捕まえてみぃッッ!!!」
分隊員達「うおらあああああああああああッッッ!!」
ババババババババババババババババババ!!!
パトカー<バ、バカッ!止まれッッ!>
分隊長「氏ィ晒せああああああ!!!」
ドワッシャアアアアアアアアン!!!
「うわああああ!!」 「なっ、なんだコイツら…ッッ」
「突っ込んできたァッ!!」 「ちょっ…」 「氏ねこらぁ!!」
「ぐえッ」 「おごぉっ」 「逆逮捕じゃあ!!」
「しゃあ!コームシッコーボウガイだぜィ!!」
警察官「動くなッ!」
分隊長「うるせェッッ!チャカ弾けェダボがァッッ!!」
パン! ビスッ
分隊長「おぅ………ッッ」
警察官「…馬ッ、馬鹿ッッ」
分隊長「……そ」
警察官「!?」
分隊長「それがナンボんじゃあッッ!」ガコッ!
警察官「~~~~~~ッッッッ」プシュー…
分隊長「おおおおおおおコイツぁ戦争じゃああああああああああ!!!!」バキッ ガッ
615: 2014/09/11(木) 03:28:12.24 ID:iRpFj7FSO
ブオオオオォォゥゥン……ッ
千春「…………」スタッ
貴樹「………」タッ
荒っぽい彼の印象とは裏腹に、渋滞を抜けてからの彼の運転は丁寧な物だった
急発進もせず、急停車もしない
病院に着いたこの瞬間も、彼のバイクは回転数を上げない
彼の後ろをついて来ていた仲間達の走りも、リーダーにならって静かなものだった
千春「クレハっつったか、アカリちゃんの担当医っての」
貴樹「はい」
千春「…ンなら、意識ィ戻るのも当然だな」
貴樹「………」
千春「行ってこいッ」
パシッ
貴樹「!」
背中を叩かれ、僕は二、三歩ほどよろめく
強めに叩かれたせいか、背中がヒリヒリと痛い
貴樹「…行ってきます」
知り合いどころか、十数分前までは顔すら知らなかったのに
何故だか、僕の口からはその言葉が自然に出て来た
範馬勇次郎「時速5000キロメートルッッッ!!!」【後編】
千春「…………」スタッ
貴樹「………」タッ
荒っぽい彼の印象とは裏腹に、渋滞を抜けてからの彼の運転は丁寧な物だった
急発進もせず、急停車もしない
病院に着いたこの瞬間も、彼のバイクは回転数を上げない
彼の後ろをついて来ていた仲間達の走りも、リーダーにならって静かなものだった
千春「クレハっつったか、アカリちゃんの担当医っての」
貴樹「はい」
千春「…ンなら、意識ィ戻るのも当然だな」
貴樹「………」
千春「行ってこいッ」
パシッ
貴樹「!」
背中を叩かれ、僕は二、三歩ほどよろめく
強めに叩かれたせいか、背中がヒリヒリと痛い
貴樹「…行ってきます」
知り合いどころか、十数分前までは顔すら知らなかったのに
何故だか、僕の口からはその言葉が自然に出て来た
範馬勇次郎「時速5000キロメートルッッッ!!!」【後編】
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります