394: 2012/09/05(水) 10:14:02 ID:iCeyLlnE
農家「魔王とかフザけんな」
農家「魔王とかフザけんな」【その2】
農家「魔王とかフザけんな」【その3】
――――……
農家「例えばこう、枝で線を一本引くだろ?」がりがり…
農家「これが『創造』で」ぴたっ
農家「線を引くのを終わらせるのが『終焉』なわけだ」
召喚師「はい」
農家「で、今あるこの一本の線を逆向きに辿る」つつつ…
農家「これが『回帰』だな、簡単に言えば」
395: 2012/09/05(水) 10:15:15 ID:iCeyLlnE
召喚師「なるほど……」
農家「姫さんの治癒魔法やらテメエの“召喚”やらはこれの応用で……」
農家「ちょっと線の途中が消えたとして」ざりざり
農家「線を逆行して消えた部分を再現するわけだ」がりがり がりっ
召喚師「ズレましたけど」
農家「そう、ズレるんだよ」
召喚師「え?」
農家「姫さんの治癒魔法やらテメエの“召喚”やらはこれの応用で……」
農家「ちょっと線の途中が消えたとして」ざりざり
農家「線を逆行して消えた部分を再現するわけだ」がりがり がりっ
召喚師「ズレましたけど」
農家「そう、ズレるんだよ」
召喚師「え?」
396: 2012/09/05(水) 10:16:30 ID:iCeyLlnE
農家「仮に真っ直ぐ引き直せたとして、それは元のとは同じ線じゃない」
農家「土の抉れ方も、枝のすり減りも、見かけは変わらなくても元通りにはならない」
農家「そいつの過去は覆らない」
召喚師「…………」
農家「言ってる意味はわかるよな」
召喚師「はい……」
農家「土の抉れ方も、枝のすり減りも、見かけは変わらなくても元通りにはならない」
農家「そいつの過去は覆らない」
召喚師「…………」
農家「言ってる意味はわかるよな」
召喚師「はい……」
397: 2012/09/05(水) 10:17:36 ID:iCeyLlnE
農家「お前が気にするのもわかるけどよ、割り切らねえとしんどいぜ?」
召喚師「それは、そうなんでしょうけど」
農家「まあ無理に割り切る必要ねえけどよ」
召喚師「」ずるっ
召喚師「いやなんですかそれ!?」
農家「だから無理ならするなっつっう話だ」
召喚師「それは、そうなんでしょうけど」
農家「まあ無理に割り切る必要ねえけどよ」
召喚師「」ずるっ
召喚師「いやなんですかそれ!?」
農家「だから無理ならするなっつっう話だ」
398: 2012/09/05(水) 10:18:57 ID:iCeyLlnE
召喚師「それじゃもやもやしっぱなしじゃないですか……」
農家「そうか?」
召喚師「そうですよ」
農家「ならそれでいいだろ」
召喚師「丸投げですか」ジトー…
農家「じゃあ何て言ってほしいんだテメエは」
召喚師「それは……」
農家「そうか?」
召喚師「そうですよ」
農家「ならそれでいいだろ」
召喚師「丸投げですか」ジトー…
農家「じゃあ何て言ってほしいんだテメエは」
召喚師「それは……」
399: 2012/09/05(水) 10:19:47 ID:iCeyLlnE
農家「俺は助言はするが手は貸さねえ。何か決めるなら自分で決めろ」
農家「考えろ。好きなだけ悩んで迷ってぶつかって自分なりの答えを出せ」
農家「納得できなきゃ後に残るのは後悔だけだ」
農家「他人に答えを求めるな」
召喚師「答えを……自分で……」
召喚師「…………」
農家「考えろ。好きなだけ悩んで迷ってぶつかって自分なりの答えを出せ」
農家「納得できなきゃ後に残るのは後悔だけだ」
農家「他人に答えを求めるな」
召喚師「答えを……自分で……」
召喚師「…………」
400: 2012/09/05(水) 10:20:31 ID:iCeyLlnE
農家「ま、あれだな」
召喚師「?」
農家「そんでテメエが勝手やったとしても、誰も咎めやしねえよ」
農家「間違ってると思やそりゃ喧嘩にもなるだろうが、そんだけだ」
召喚師「いやダメじゃないですかそれ」
農家「アホかテメエ」
召喚師「えー……」
農家「間違えてたらぶん殴る。当たり前のことだろうが」
召喚師「普通は殴らないと思いますけど」
農家「こまっけえことはいいんだよ」
召喚師「いえ貴方に殴られる時点で既に氏活問題です」
召喚師「?」
農家「そんでテメエが勝手やったとしても、誰も咎めやしねえよ」
農家「間違ってると思やそりゃ喧嘩にもなるだろうが、そんだけだ」
召喚師「いやダメじゃないですかそれ」
農家「アホかテメエ」
召喚師「えー……」
農家「間違えてたらぶん殴る。当たり前のことだろうが」
召喚師「普通は殴らないと思いますけど」
農家「こまっけえことはいいんだよ」
召喚師「いえ貴方に殴られる時点で既に氏活問題です」
401: 2012/09/05(水) 10:22:32 ID:iCeyLlnE
農家「ま、とにかくだ」
農家「テメエがこれからも“召喚”を使うってんなら、ひとつだけ覚えとけ」
召喚師「はい」
農家「敬意を払え」
召喚師「はい?」
農家「テメエに力を貸してくれる“氏んだ奴ら”にだ」
召喚師「…………」
農家「忘れんなよ。テメエはそいつらに支えられてここにいる」
農家「もし忘れることがあるようなら」
農家「その時は、俺が思い切りぶん殴ってやる」
……――――
_
農家「テメエがこれからも“召喚”を使うってんなら、ひとつだけ覚えとけ」
召喚師「はい」
農家「敬意を払え」
召喚師「はい?」
農家「テメエに力を貸してくれる“氏んだ奴ら”にだ」
召喚師「…………」
農家「忘れんなよ。テメエはそいつらに支えられてここにいる」
農家「もし忘れることがあるようなら」
農家「その時は、俺が思い切りぶん殴ってやる」
……――――
_
402: 2012/09/05(水) 22:15:44 ID:iCeyLlnE
悪魔の鎖を解き放つ者は、
その手にかかる覚悟を持たねばならない。
これはとある氏霊使いの言葉である。
_
403: 2012/09/05(水) 22:16:24 ID:iCeyLlnE
回帰の神「面白い、見定めてあげよう」
両の手に光が集う。
それは神の魔力。回帰の力。
回帰とは、言い替えれば戻るということ。
キングレオ「カアァ――――!!」
回帰の神「『静止障壁』」ヴン…
キングレオ「ッ!?」ガクンッ
光が弾け、神の前に不可視の盾が生じる。
そこに触れた獅子の拳が、空中で動きを止めた。
両の手に光が集う。
それは神の魔力。回帰の力。
回帰とは、言い替えれば戻るということ。
キングレオ「カアァ――――!!」
回帰の神「『静止障壁』」ヴン…
キングレオ「ッ!?」ガクンッ
光が弾け、神の前に不可視の盾が生じる。
そこに触れた獅子の拳が、空中で動きを止めた。
404: 2012/09/05(水) 22:17:42 ID:iCeyLlnE
キングレオ(腕が動かん……!)ぐ…っ
回帰の神「どうした、その程度かい?」
キングレオ「っ、舐めるな! ぬあアッ!!」
気合いと共に獅子の闘気が膨れ上がり、不可視の盾に亀裂が走る。
ガラスが砕けるような音が響き、不可視の盾が霧散する。
回帰の神「ははは、気迫だけで打ち破るか」
眼前で吼える獅子を賞賛するように。
神は尚も笑っていた。
回帰の神「どうした、その程度かい?」
キングレオ「っ、舐めるな! ぬあアッ!!」
気合いと共に獅子の闘気が膨れ上がり、不可視の盾に亀裂が走る。
ガラスが砕けるような音が響き、不可視の盾が霧散する。
回帰の神「ははは、気迫だけで打ち破るか」
眼前で吼える獅子を賞賛するように。
神は尚も笑っていた。
405: 2012/09/05(水) 22:20:15 ID:iCeyLlnE
……獅子が駆ける寸前まで、鬼神は考え事をしていた。
神の目的。実験と魔力の回収。
聖樹がそびえる地には、初代勇者による強固な結界が幾重にも張り巡らされている。
それは地下を流れる魔力の大河を含め、回帰の神が力を取り戻すのを阻害するためのものだ。
そのため、たとえ今のようにその場に魔力をかき集めたとしても、魔力は霧散し元の場所へと帰ってしまう。
ではどうするか。
結界は、意図的なのか事故なのか、龍脈からの魔力を制限しきれていない。
つまり龍脈から魔力を流し込むことは可能だということだ。
外から崩せないなら、内から溢れさせればいい。
覇王の復活を図ったのはその実験と、龍穴に施された封印を排除するためなのだろう。
_
406: 2012/09/05(水) 22:21:39 ID:iCeyLlnE
上空に集まった魔力は渦を巻き、中心部は太陽の如き光を発している。
これは高純度の魔力の密度がピークに達し、結晶化し始める兆候だ。
通常、魔力の塊を龍脈からどこかへと流そうとしても、それ以外の膨大な魔力に飲み込まれてしまい、不可能である。
故に先代魔王は流れ自体を制御し、聖樹への魔力を覇王にと動かしていた。
その制御が壊れれば龍脈は本来の流れを取り戻し、一時的に激流と化す。
その中で聖樹へと魔力を送るためには……。
_
407: 2012/09/05(水) 22:23:02 ID:iCeyLlnE
キングレオ「――万氏に値する!」
獅子が駆けた時、鬼神は姫を見つめていた。
今まで気が付かなかったが、姫に弾き飛ばされた際、召喚師の首は彼女に奪われ、今はその手の中にあった。
『勝手に動いてはいけないよ、姫』
神の言葉が思い出される。
鬼神の中でいくつかの疑問と仮説が解け合って、真実へと答えを導いていく。
回帰の神「……姫」
呼びかけられてからの行動。
姫と獅子の衝突。
姫が殴り飛ばされ、それを避けた神。
この時、鬼神はそれまでの違和感と、その理由を理解した。
後は、確信を得るのみ。
_
獅子が駆けた時、鬼神は姫を見つめていた。
今まで気が付かなかったが、姫に弾き飛ばされた際、召喚師の首は彼女に奪われ、今はその手の中にあった。
『勝手に動いてはいけないよ、姫』
神の言葉が思い出される。
鬼神の中でいくつかの疑問と仮説が解け合って、真実へと答えを導いていく。
回帰の神「……姫」
呼びかけられてからの行動。
姫と獅子の衝突。
姫が殴り飛ばされ、それを避けた神。
この時、鬼神はそれまでの違和感と、その理由を理解した。
後は、確信を得るのみ。
_
408: 2012/09/05(水) 22:23:57 ID:iCeyLlnE
しかしその前にやることがまだ、ある。
獅子の咆哮を耳にしながら、鬼神は密かに力を溜める。
鬼神「頼むぜ、相棒」ボソッ
応えるように、大鉈が微かな煌めきを放つ。
回帰の神「なるほど、ただの猫ではないようだ」
……回帰の神の意識が、獅子の王に集中した。
鬼神「『残影』」
その一瞬の隙に、全霊を込めて、
彼は音もなく、跳んだ。
_
409: 2012/09/10(月) 12:18:14 ID:qHIFE8ek
高く。
雲よりもっと高く、光より速く。
鬼神は飛ぶ。力の渦の中心へ。
そこはさながら嵐に荒れ狂う大海。
飲み込まれれば瞬く間に藻屑と化す程の濁流。
それでも躊躇いなく、彼は飛ぶ。
_
410: 2012/09/10(月) 12:19:33 ID:qHIFE8ek
たったったったったったっ……
国王「揺れが弱まってきたか」
女勇者「僧侶ちゃん大丈夫なの?」
暴れ猿「気を失っているだけだ。だが、魔力が全く感じられん」
暴れ猿「それより……」
姫様「…………」
暴れ猿「……いいのか?同行させて」
女勇者「置いてくわけにもいかないじゃん。何が起きてるのかもわかんないんだし」
国王「農家がいりゃあなあ……何やってんだあいつは」
411: 2012/09/10(月) 12:20:27 ID:qHIFE8ek
女勇者「おじさんもだけど、魔法使いちゃんも心配だよ」
国王「あの子のことだからそう問題はねぇだろ。なんせ魔女の娘だし」
暴れ猿「魔女というと、昔仲間だったという女か」
女勇者「さりげに初耳なんだけど」
国王「魔女は娘じゃねえっつってたけど、やたら似てるんだよなぁ。胸とか」
女勇者「…………」
暴れ猿「…………」
国王「なんで離れるんだよお前ら」
国王「あの子のことだからそう問題はねぇだろ。なんせ魔女の娘だし」
暴れ猿「魔女というと、昔仲間だったという女か」
女勇者「さりげに初耳なんだけど」
国王「魔女は娘じゃねえっつってたけど、やたら似てるんだよなぁ。胸とか」
女勇者「…………」
暴れ猿「…………」
国王「なんで離れるんだよお前ら」
412: 2012/09/10(月) 12:21:26 ID:qHIFE8ek
暴れ猿「しかし、凄まじい魔力だな……」
女勇者「まるで太陽が落ちてきたみたいだよ」
国王「流すなよ……何者かは知らねえが、ただモンじゃなさそうだ」
女勇者「心当たりはないの?」
国王「遠くの他人の魔力まで強引にかき集めるなんてデタラメ、先代の魔王にだってできやしねえよ」
国王「そういう術式でもありゃ別かもしれねえが、規模がでかすぎて現実的じゃねえ」
暴れ猿「しかし実際に僧侶の魔力はあそこに引き寄せられていったぞ」
国王「だから本来有り得ねえんだって。俺だってわけわかんねぇんだ」
女勇者「まるで太陽が落ちてきたみたいだよ」
国王「流すなよ……何者かは知らねえが、ただモンじゃなさそうだ」
女勇者「心当たりはないの?」
国王「遠くの他人の魔力まで強引にかき集めるなんてデタラメ、先代の魔王にだってできやしねえよ」
国王「そういう術式でもありゃ別かもしれねえが、規模がでかすぎて現実的じゃねえ」
暴れ猿「しかし実際に僧侶の魔力はあそこに引き寄せられていったぞ」
国王「だから本来有り得ねえんだって。俺だってわけわかんねぇんだ」
413: 2012/09/10(月) 12:25:53 ID:qHIFE8ek
女勇者「ねぇ、君は何か知らないの?」
姫様「…………」
国王「だんまりか。そういうのよくねぇぞ」
姫様「…………狂化の」
暴れ猿「?」
姫様「我が父が魔人へとなるために使った術式がある」
女勇者「それって狂化薬じゃなくて?」
姫様「その代用と言うべきか……」
国王「おいおい、ンなデタラメなモンがマジであんのかよ」
姫様「私とて幼少の頃に城の研究者達の話を耳にしただけだ。確証などない」
姫様「ただ、元は初代勇者が用いた魔法の一つだと聞いている」
姫様「…………」
国王「だんまりか。そういうのよくねぇぞ」
姫様「…………狂化の」
暴れ猿「?」
姫様「我が父が魔人へとなるために使った術式がある」
女勇者「それって狂化薬じゃなくて?」
姫様「その代用と言うべきか……」
国王「おいおい、ンなデタラメなモンがマジであんのかよ」
姫様「私とて幼少の頃に城の研究者達の話を耳にしただけだ。確証などない」
姫様「ただ、元は初代勇者が用いた魔法の一つだと聞いている」
414: 2012/09/10(月) 18:13:22 ID:qHIFE8ek
国王「初代勇者だあ!?」キキッ
女勇者「おわあっ!急に止まらないでよ!」ととと…
国王「おう悪い。だがちょっと待てよ、どういうことだ!」
国王「魔人化ってのは錬金術師どもの失敗で、ただの偶然の産物じゃねえのか!?」
女勇者「あっ!」
暴れ猿「元々存在した魔法の一つだということか?」
姫様「私とて詳しくは知らん」
姫様「だが、遥か昔から禁術として我が王家のみに伝わっているのは事実だ」
姫様「私には使えないが、な」
女勇者「おわあっ!急に止まらないでよ!」ととと…
国王「おう悪い。だがちょっと待てよ、どういうことだ!」
国王「魔人化ってのは錬金術師どもの失敗で、ただの偶然の産物じゃねえのか!?」
女勇者「あっ!」
暴れ猿「元々存在した魔法の一つだということか?」
姫様「私とて詳しくは知らん」
姫様「だが、遥か昔から禁術として我が王家のみに伝わっているのは事実だ」
姫様「私には使えないが、な」
415: 2012/09/10(月) 20:35:02 ID:qHIFE8ek
姫様「ともすれば、代用というよりも原型と表現すべきかもしれん」
国王「頭こんがらがってきた……つまり何か?」
国王「あの魔力は誰かを魔人に仕立て上げるために集められてるっつーことか!?」
姫様「さて、な。私の知る所ではない」
姫様「もとより、仇である貴様なぞに答える義理もない」
国王「っ、チッ。ここでそれを言うかよ……」
国王「頭こんがらがってきた……つまり何か?」
国王「あの魔力は誰かを魔人に仕立て上げるために集められてるっつーことか!?」
姫様「さて、な。私の知る所ではない」
姫様「もとより、仇である貴様なぞに答える義理もない」
国王「っ、チッ。ここでそれを言うかよ……」
416: 2012/09/10(月) 20:35:56 ID:qHIFE8ek
姫様「だが、何者の手でこの術式が使われているにせよ」
姫様「我が父はこれを使うことを良しとはしていなかった」
女勇者「……? じゃあなんで使ったの?」
姫様「それこそ私は知らん。使ったのか、使われたのか。それさえわからん」
姫様「だから私は父に会わねばならんのだ。真実を知るために」
姫様「そしてこのふざけた術を使った者を、生かしておくつもりもない」ギリ…
暴れ猿「…………」
暴れ猿「もしや、お前が一人だったのは……」
姫様「我が父はこれを使うことを良しとはしていなかった」
女勇者「……? じゃあなんで使ったの?」
姫様「それこそ私は知らん。使ったのか、使われたのか。それさえわからん」
姫様「だから私は父に会わねばならんのだ。真実を知るために」
姫様「そしてこのふざけた術を使った者を、生かしておくつもりもない」ギリ…
暴れ猿「…………」
暴れ猿「もしや、お前が一人だったのは……」
417: 2012/09/10(月) 20:36:41 ID:qHIFE8ek
姫様「…………」
姫様「他の者は皆、この術式に喰らわれた」
国王「なっ!?」
女勇者「そんな……」
姫様「おそらくだが、今起動しているのは二回目だ。一度目がどうなったかは見当もつかん」
姫様「しかしこれだけははっきりしている」
姫様「術者は私の、我々の、敵だ!」
姫様「他の者は皆、この術式に喰らわれた」
国王「なっ!?」
女勇者「そんな……」
姫様「おそらくだが、今起動しているのは二回目だ。一度目がどうなったかは見当もつかん」
姫様「しかしこれだけははっきりしている」
姫様「術者は私の、我々の、敵だ!」
418: 2012/09/11(火) 10:20:04 ID:w3fxKtO6
国王「…………」
国王「……似てんなぁ」ポツリ
女勇者「ん? 誰に?」
国王「なんでもねぇよ」
国王「とにかく急ぐぞ。何か起きてるなら、俺達はそれを調べなきゃならねえ」
女勇者「そうだね。やること知らないと」
暴れ猿「でなければ何もできない、か」
国王「……似てんなぁ」ポツリ
女勇者「ん? 誰に?」
国王「なんでもねぇよ」
国王「とにかく急ぐぞ。何か起きてるなら、俺達はそれを調べなきゃならねえ」
女勇者「そうだね。やること知らないと」
暴れ猿「でなければ何もできない、か」
419: 2012/09/11(火) 10:20:33 ID:w3fxKtO6
国王「つーわけで一緒に行かせてもらうぜ」
姫様「ふん……勝手にしろ」
国王「うし、んじゃさっさと」
フッ……
暴れ猿「何だ? 急に暗く……」
女勇者「! 見てあれ!」
姫様「ふん……勝手にしろ」
国王「うし、んじゃさっさと」
フッ……
暴れ猿「何だ? 急に暗く……」
女勇者「! 見てあれ!」
423: 2012/09/22(土) 12:53:49 ID:E1JNlCF6
その猛攻は災禍に似ていた。
キングレオ「はぁあ――っ!!」
剛腕が繰り出す数多の轟拳。
大気を引き裂き真空を生む二十の爪撃。
地が抉れ弾ける程の技の数々は、その全てが一撃必殺の威力を持っている。
回帰の神「おおっと、怖い怖い」
しかし、神には届かない。
不可視の盾が、それらをことごとく防ぎきる。
キングレオ「チィ……!」
獅子の額に汗が浮かぶ。
所詮は神と獣、その力の差は歴然としていた。
424: 2012/09/22(土) 12:54:56 ID:E1JNlCF6
キングレオ「オオオオオオ!!」
それでも――。
それでも、獅子は拳を振るう。振るい続ける。
勝てるなどとは思わない。
ただ一撃、たった一撃でもいい。
願いにも似た強い意志で、獅子は想いを拳に乗せる。
間違いなどではなかったと。
けして無駄ではなかったと。
神を否定し、未来を願った主のために。
その姿は美しかった。
力強く、雄々しく、
そして、儚かった。
それでも――。
それでも、獅子は拳を振るう。振るい続ける。
勝てるなどとは思わない。
ただ一撃、たった一撃でもいい。
願いにも似た強い意志で、獅子は想いを拳に乗せる。
間違いなどではなかったと。
けして無駄ではなかったと。
神を否定し、未来を願った主のために。
その姿は美しかった。
力強く、雄々しく、
そして、儚かった。
425: 2012/09/22(土) 12:55:59 ID:E1JNlCF6
回帰の神「くくく、いいなぁ、すごくいい」
神の顔が醜く歪む。
それは狂喜。
予定外の獲物を見つけた狂人の笑み。
回帰の神「だが、まだ足りない」
迫り来る獅子の眼を見つめながら、ぱちん、と指を弾く。
……――――ヒュンッ
キングレオ「つ、チイ…!」
風を切る音。
それを耳にし、獅子はとっさにその身を退く。
神と獅子の間に、異様なほど綺麗な直線が刻まれた。
姫『…………』
回帰の神「いい反応だ」
神の顔が醜く歪む。
それは狂喜。
予定外の獲物を見つけた狂人の笑み。
回帰の神「だが、まだ足りない」
迫り来る獅子の眼を見つめながら、ぱちん、と指を弾く。
……――――ヒュンッ
キングレオ「つ、チイ…!」
風を切る音。
それを耳にし、獅子はとっさにその身を退く。
神と獅子の間に、異様なほど綺麗な直線が刻まれた。
姫『…………』
回帰の神「いい反応だ」
426: 2012/09/22(土) 12:57:01 ID:E1JNlCF6
回帰の神「ではこれはどうかな?」
神は姫を下がらせ、再び指を弾いた。
ぱちん
微かな魔力のゆらぎ。
風を切る音。
直線。
左両腕に熱が走り、重さを失う。
キングレオ「な――!?」
姫は動いていない。
ただ神の傍に立ち尽くす。
回帰の神「何を驚くことがある」
神は実に愉快そうに、
回帰の神「先程の斬撃を『再生』しただけだろう?」
そして、嘲笑うように告げた。
神は姫を下がらせ、再び指を弾いた。
ぱちん
微かな魔力のゆらぎ。
風を切る音。
直線。
左両腕に熱が走り、重さを失う。
キングレオ「な――!?」
姫は動いていない。
ただ神の傍に立ち尽くす。
回帰の神「何を驚くことがある」
神は実に愉快そうに、
回帰の神「先程の斬撃を『再生』しただけだろう?」
そして、嘲笑うように告げた。
429: 2012/09/22(土) 15:30:04 ID:E1JNlCF6
攻守が逆転した。
キングレオ「ぐ……ぁああっ!」
研ぎ澄ました感覚を頼りに、ただひたすらに『斬撃の再生』を避け続ける。
その数は無尽蔵。
神を中心に、あらゆる方向に一直線の斬り跡が刻まれていく。
キングレオ(なんてデタラメだ……!)
獅子の腕を容易く切り裂いた斬撃を、神は僅かな魔力だけで再現し続ける。
430: 2012/09/22(土) 15:30:37 ID:E1JNlCF6
本来、ただの斬撃であれば獅子の獣毛は容易く弾き返していただろう。
姫の一撃を避けたのはあくまで反射的な反応であり、仮に受けても精々吹き飛ばされる程度で済んでいたのだ。
しかし、この『斬撃の再生』は“斬撃が走ったという結果”だけを繰り返している。
故に、何が遮ろうとも無関係に、その斬撃は真っ直ぐ走る。
防御は一切意味をなさない。
射線上にあるものには、“斬られたという結果だけ”が与えられる。
431: 2012/09/22(土) 15:31:15 ID:E1JNlCF6
回帰の神「ははははは、速い速い!」
無邪気に、無慈悲に。
神はただ笑う。
その表情は新しい玩具を手にした子供に似ていた。
回帰の神「では、今度はこれでどうだい?」
斬撃の再生が止み、三度神が指を弾く。
――瞬間、獅子の体が宙を舞った。
無邪気に、無慈悲に。
神はただ笑う。
その表情は新しい玩具を手にした子供に似ていた。
回帰の神「では、今度はこれでどうだい?」
斬撃の再生が止み、三度神が指を弾く。
――瞬間、獅子の体が宙を舞った。
432: 2012/09/22(土) 15:32:10 ID:E1JNlCF6
キングレオ「ガ……は……っ!」
キングレオ(これは、鬼神の……!?)
反応できたのは奇跡に近かった。
とっさに受けた右両腕が、ひどく鈍い音をたてて、潰れた。
回帰の神「おやおや、殴る腕がなくなってしまったね」
笑う、笑う、笑う。
神は笑う。無邪気に笑う。
心の底から、一切の悪意もなしに、子供のように嘲笑う。
キングレオ(これは、鬼神の……!?)
反応できたのは奇跡に近かった。
とっさに受けた右両腕が、ひどく鈍い音をたてて、潰れた。
回帰の神「おやおや、殴る腕がなくなってしまったね」
笑う、笑う、笑う。
神は笑う。無邪気に笑う。
心の底から、一切の悪意もなしに、子供のように嘲笑う。
433: 2012/09/22(土) 17:17:08 ID:E1JNlCF6
しかし、それでも。
キングレオ「それが――」
地を滑るように体勢を直し、
キングレオ「――どうしたぁああ!!」
獅子の王は尚も吼える。
そう。
それでも、獅子の王は倒れない。
剣を砕かれ、敗北しても。
腕を失い、その身が最早無力でも。
彼の心は、砕けない。
434: 2012/09/22(土) 17:19:12 ID:E1JNlCF6
この時、神は気付くべきだった。
獅子が立ち続ける理由が、誇りだけではないことに。
_
436: 2012/10/02(火) 10:19:59 ID:82fEsITg
空を覆い尽くす魔力の海。
矢の如き速さでそれに迫る鬼神は、非常にゆっくりとした動作で大鉈を構えた。
鬼神「“影流”――」
そして、一閃。
鬼神「――“雲裂き”」
ヒュッ……
――――ゴァッ!!
大気を大鉈の『面』で叩き、鬼神は激しい風を生む。
本来立ち込めた霧を打ち払うだけの不殺の技は、鬼神の手で天をも引き裂く斬撃に昇華する。
魔力の海は両断され、その先の青空が姿を見せた。
「……合図」
遠く、武教の城の頂点。
ただ一人それを待っていた少女は、静かに魔力を解放した。
437: 2012/10/02(火) 10:22:35 ID:82fEsITg
女魔法使い「遅延解除、転移魔法を起動。術式逆算、座標解析」
その目は鬼神の姿を追う。
魔力の海を突き抜けて、鬼神は空の上へと跳んでいく。
女魔法使い「完了。座標設定、環境対応術式の構成を開始」
少女の周囲で、色とりどりの魔力が帯状になってくるりと廻る。
その帯の上に文字らしき紋様や数字が浮かび、凄まじい速さで次々と書き替えられていく。
女魔法使い「……完了。対象に許可を申請……承認確認。起動条件を設定、完了」
やがて無数の帯は水平に並び、少女を中心に廻りだす。
それを待ち、彼女は杖を空に掲げた。
魔力帯が霧散し、杖の先に魔法陣が現れる。
女魔法使い「空間魔法『遠隔転移』」
そして、魔法陣は光の矢となって、鬼神の元へと飛んだ。
その目は鬼神の姿を追う。
魔力の海を突き抜けて、鬼神は空の上へと跳んでいく。
女魔法使い「完了。座標設定、環境対応術式の構成を開始」
少女の周囲で、色とりどりの魔力が帯状になってくるりと廻る。
その帯の上に文字らしき紋様や数字が浮かび、凄まじい速さで次々と書き替えられていく。
女魔法使い「……完了。対象に許可を申請……承認確認。起動条件を設定、完了」
やがて無数の帯は水平に並び、少女を中心に廻りだす。
それを待ち、彼女は杖を空に掲げた。
魔力帯が霧散し、杖の先に魔法陣が現れる。
女魔法使い「空間魔法『遠隔転移』」
そして、魔法陣は光の矢となって、鬼神の元へと飛んだ。
438: 2012/10/02(火) 10:24:24 ID:82fEsITg
鬼神「――来たか!」
魔力の海の遥か上で、鬼神は空を背に待っていた。
己目掛けて迫る光の矢を、恐れることなく身に受ける。
その直後、鬼神の背後に魔法陣が展開し、一際強い光を放った。
魔女「っとお!空の上!?」
錬金術師「高い所は苦手なのだけれど……」
鬼神「文句言うなボケコンビ」
魔女「誰がボケだっつーの」
錬金術師「背中失礼するよ」トサ
鬼神「落ちんなよ」
魔女「無視かこんにゃろう」ガシッ
魔力の海の遥か上で、鬼神は空を背に待っていた。
己目掛けて迫る光の矢を、恐れることなく身に受ける。
その直後、鬼神の背後に魔法陣が展開し、一際強い光を放った。
魔女「っとお!空の上!?」
錬金術師「高い所は苦手なのだけれど……」
鬼神「文句言うなボケコンビ」
魔女「誰がボケだっつーの」
錬金術師「背中失礼するよ」トサ
鬼神「落ちんなよ」
魔女「無視かこんにゃろう」ガシッ
439: 2012/10/02(火) 10:26:02 ID:82fEsITg
上昇を続けていた体が勢いを失い、ゆっくりと降下し始める。
魔女「しっかし、また無茶なこと考えるわねあんた」
鬼神「まあ別に『虚数転移』で諸とも吹っ飛ばしてもいいんだが、人手が足りねえしな」
錬金術師「その代わりとしては少々無理がすぎると思うがね。やれるのかい?」
鬼神「たりめえだ。俺を誰だと思ってやがる」
魔女「畑作マニア」
錬金術師「史上最強の農家」
鬼神「褒めても何もでねえぞ」
魔女「いや褒めてないし」
錬金術師「変わらないなぁ君は」くすくす
魔女「しっかし、また無茶なこと考えるわねあんた」
鬼神「まあ別に『虚数転移』で諸とも吹っ飛ばしてもいいんだが、人手が足りねえしな」
錬金術師「その代わりとしては少々無理がすぎると思うがね。やれるのかい?」
鬼神「たりめえだ。俺を誰だと思ってやがる」
魔女「畑作マニア」
錬金術師「史上最強の農家」
鬼神「褒めても何もでねえぞ」
魔女「いや褒めてないし」
錬金術師「変わらないなぁ君は」くすくす
440: 2012/10/02(火) 10:27:26 ID:82fEsITg
鬼神「始めるか」
三人の表情が変わる。
背には大空、視線の先には魔力の渦。
全身に風を感じながら、三人は光の中心部を目指す。
錬金術師「……『錬成、巨神の弩弓(いしゆみ)』」
袖口から赤色の透明な石を取り出し、弓の姿をイメージする。
すると、赤い石が静かに輝き、鬼神の眼前に巨大な弓が生まれた。
鬼神「相変わらず便利な技だな。だがちとデカすぎねえか」
錬金術師「制限はあるけどね。君が使うにはこれくらいでなくては保たないだろう?」
鬼神「それもそうか」
弓を掴み、弓幹に足を乗せる。
矢の代わりに大鉈をつがえた所で、魔女が魔力を解放する。
三人の表情が変わる。
背には大空、視線の先には魔力の渦。
全身に風を感じながら、三人は光の中心部を目指す。
錬金術師「……『錬成、巨神の弩弓(いしゆみ)』」
袖口から赤色の透明な石を取り出し、弓の姿をイメージする。
すると、赤い石が静かに輝き、鬼神の眼前に巨大な弓が生まれた。
鬼神「相変わらず便利な技だな。だがちとデカすぎねえか」
錬金術師「制限はあるけどね。君が使うにはこれくらいでなくては保たないだろう?」
鬼神「それもそうか」
弓を掴み、弓幹に足を乗せる。
矢の代わりに大鉈をつがえた所で、魔女が魔力を解放する。
441: 2012/10/02(火) 12:06:23 ID:82fEsITg
魔女「あの子の技を再現するのって骨なのよね……」
鬼神「あいつも規格外だったからなあ……」
魔女「ま、できるんだけど。……術式は自動解放、二番から十二番まで全プログラムを装填」
言うやいなや、突如としておびただしい数の魔力帯と魔法陣が発現した。
そしてその全てが、鬼神の大鉈へと吸い込まれるように『装填』される。
魔女「一番を待機、解放は射撃動作に連動」
装填の完了を待ち、魔女が用意していた魔法の最後のひとつを展開。
それに続く形で、錬金術師が更なる錬成を行う。
錬金術師「『錬成、翼竜頃しの矢』」
大鉈を軸にして、巨大な一本の矢が鬼神の手元に錬成された。
鬼神「あいつも規格外だったからなあ……」
魔女「ま、できるんだけど。……術式は自動解放、二番から十二番まで全プログラムを装填」
言うやいなや、突如としておびただしい数の魔力帯と魔法陣が発現した。
そしてその全てが、鬼神の大鉈へと吸い込まれるように『装填』される。
魔女「一番を待機、解放は射撃動作に連動」
装填の完了を待ち、魔女が用意していた魔法の最後のひとつを展開。
それに続く形で、錬金術師が更なる錬成を行う。
錬金術師「『錬成、翼竜頃しの矢』」
大鉈を軸にして、巨大な一本の矢が鬼神の手元に錬成された。
442: 2012/10/02(火) 12:19:29 ID:82fEsITg
鬼神「巨神だの翼竜だの物々しいなオイ」
錬金術師「錬成術はイメージが全てだからね。特にモデルがあるわけではないよ」
鬼神「また適当な……」
魔女「てかさ、その弓ちゃんと引けるわけ?」
鬼神「全身使やなんとかなるだろ」
錬金術師「真っ直ぐ飛ぶかは保証しかねるね」
魔女「……補助術式構築。もしかして私が一番仕事してない?」
鬼神「ただの役割分担ってやつだ」
魔女「なんっか納得いかないのよね……」
錬金術師「錬成術はイメージが全てだからね。特にモデルがあるわけではないよ」
鬼神「また適当な……」
魔女「てかさ、その弓ちゃんと引けるわけ?」
鬼神「全身使やなんとかなるだろ」
錬金術師「真っ直ぐ飛ぶかは保証しかねるね」
魔女「……補助術式構築。もしかして私が一番仕事してない?」
鬼神「ただの役割分担ってやつだ」
魔女「なんっか納得いかないのよね……」
443: 2012/10/02(火) 12:31:57 ID:82fEsITg
魔女「そういえば、あの子が弓術を使う時って何て言ってたっけ」
錬金術師「確か、The seven deadly sins. だったかな」
鬼神「そこはやらなくてもいいだろ」
錬金術師「いやいや、仮にも技を借りるんだ。彼女に倣うのが礼儀というものだろう」
魔女「まあ最後の一言だけは合わせてあげるから、やるだけやんなさいよ」
鬼神「俺が言うのかよ……ったく」
面倒くさそうに溜め息を吐き、眼下に視線を投げる。
魔力の海はすぐそこまで迫っていた。
錬金術師「確か、The seven deadly sins. だったかな」
鬼神「そこはやらなくてもいいだろ」
錬金術師「いやいや、仮にも技を借りるんだ。彼女に倣うのが礼儀というものだろう」
魔女「まあ最後の一言だけは合わせてあげるから、やるだけやんなさいよ」
鬼神「俺が言うのかよ……ったく」
面倒くさそうに溜め息を吐き、眼下に視線を投げる。
魔力の海はすぐそこまで迫っていた。
444: 2012/10/02(火) 12:36:06 ID:82fEsITg
鬼神(…………狩人。お前の技、借りるぜ)
僅かに呼吸を整え、彼は目を細める。
見据える先は最大濃度の魔力溜。
光の渦の中で更に強く煌めく中心部へ、三人は一体となって落ちていく。
鬼神「――『The seven deadly sins』……」
そして、魔力の海に触れる直前。
「「「『“Gula”』」」」
『七つの大罪』から、『暴食』を。
唄うように言葉を重ねて、鬼神は弓を引いた。
僅かに呼吸を整え、彼は目を細める。
見据える先は最大濃度の魔力溜。
光の渦の中で更に強く煌めく中心部へ、三人は一体となって落ちていく。
鬼神「――『The seven deadly sins』……」
そして、魔力の海に触れる直前。
「「「『“Gula”』」」」
『七つの大罪』から、『暴食』を。
唄うように言葉を重ねて、鬼神は弓を引いた。
445: 2012/10/02(火) 12:38:46 ID:82fEsITg
……獅子の王の巨体が、瓦礫の中に沈む。
回帰の神「ふむ、ここまでかな」
残念そうにもらし、回帰の神は獅子の下へと歩み寄る。
回帰の神「たかが猫がこうも食い下がるとは驚いたよ」
コッ コッ コッ …
回帰の神「君ならば、良き駒となるだろう」
コッ コッ ザリッ
立ち止まり、瓦礫に横たわる獅子を見下ろす。
回帰の神「君の【コア】は私が貰い受けよう。安心したまえ、すぐに再生させてやるさ」
回帰の神「我が忠実な僕として、だがね」
スゥ…、と手のひらを獅子に向け、術式を展開する。
その一連の所作を見ながら、
キングレオ「…………は……はは」
しかし、獅子は堪え切れぬとばかりに笑いを漏らした。
446: 2012/10/02(火) 12:39:55 ID:82fEsITg
回帰の神「……? 何がおかしい?」
キングレオ「おかしいさ……貴様の愚かさも、鈍さもな……」
獅子は笑っている。
神の頭に疑問が浮かぶ。
回帰の神「壊れたか、惜しいな」
キングレオ「いいや……正気だとも」
視線が交わる。
神の見下すような目を睨み、獅子の王は言葉を続ける。
キングレオ「一撃でいい……ただの一撃だけでいい……」
キングレオ「その為ならば、腕如き惜しくもない……」
回帰の神「……何を言っている」
キングレオ「おかしいさ……貴様の愚かさも、鈍さもな……」
獅子は笑っている。
神の頭に疑問が浮かぶ。
回帰の神「壊れたか、惜しいな」
キングレオ「いいや……正気だとも」
視線が交わる。
神の見下すような目を睨み、獅子の王は言葉を続ける。
キングレオ「一撃でいい……ただの一撃だけでいい……」
キングレオ「その為ならば、腕如き惜しくもない……」
回帰の神「……何を言っている」
447: 2012/10/02(火) 12:41:19 ID:82fEsITg
神の言葉に答えずに、獅子はただうわ言のように呟く。
キングレオ「守りたいものがあるのだ……ならば、惜しむことなどあるものか」
回帰の神「……答えろ、貴様一体」
獅子が空を見上げる。
キングレオ「…………この命ひとつで済むのなら、なんとも安い代償だ」
回帰の神「何を――」
――――フッ……
回帰の神「――ッ!?」
キングレオ「守りたいものがあるのだ……ならば、惜しむことなどあるものか」
回帰の神「……答えろ、貴様一体」
獅子が空を見上げる。
キングレオ「…………この命ひとつで済むのなら、なんとも安い代償だ」
回帰の神「何を――」
――――フッ……
回帰の神「――ッ!?」
448: 2012/10/02(火) 12:42:29 ID:82fEsITg
――魔導術式連動、マナドレイン最大出力、範囲最大。
鬼神の手を離れると同時に、大鉈に装填された術式が動き始めた。
――高濃度の魔力溜を確認、マナドレインに連動し魔力溜に干渉、ベクトルを中心方向へ固定。
瞬間的に魔法陣が広がり、魔力の海の端にまで達する。
――連動、ベクトルブースト起動。
そして、全ての魔力が大鉈へと向けて瞬く間に収束する。
ここまで凡そ一秒。
この時、光源が急に失われたことで、地上にいた生物は僅かに視界を遮られた。
それは神でさえ例外ではなかった。
449: 2012/10/02(火) 12:43:06 ID:82fEsITg
キングレオ「慢心しすぎだ、愚か者め」
_
450: 2012/10/02(火) 12:43:40 ID:82fEsITg
回帰の神「なっ……!」
突然暗くなった視界に狼狽し、神は思わずして空を見上げた。
しかし目が慣れずに何も見えず、致命的な隙が生まれる。
そのほんの一瞬に――、
――獅子の牙が、神の身体を貫いた。
突然暗くなった視界に狼狽し、神は思わずして空を見上げた。
しかし目が慣れずに何も見えず、致命的な隙が生まれる。
そのほんの一瞬に――、
――獅子の牙が、神の身体を貫いた。
451: 2012/10/08(月) 12:17:57 ID:AbZ5NYac
――連動、魔力安定化術式を展開。
地上目掛けて落ちながら、装填された術式が次々と高速で発動していく。
――マナドレインによる超高濃度化を確認。結晶化抑制術式を発動。
圧縮されていく魔力に耐えきれず、大鉈に亀裂が走る。
――発動媒体の形状維持に問題発生を確認。自動維持術式起動開始。
それでも強引に、限界を超えて莫大な魔力が大鉈に集まっていく。
――マナドレイン完了、進行方向に自己修復型障壁を展開。
――加速術式を解放、最大出力。
そして、一本の矢となった大鉈は、流星の如く落ちて、一筋の光となった。
452: 2012/10/08(月) 12:19:31 ID:AbZ5NYac
回帰の神「ぐ……っ!」
メキメキメキメキ……!!
回帰の神(喰いちぎる気か……おのれ!)
左肩から食らいついた獅子の牙が、一切の容赦もなく深々と突き刺さる。
それを退けようと、神は指を弾いて鬼神の技を再生する。
爆発にも似た轟音と共に、獅子の腹を衝撃が撃ち貫く。
至近距離での一撃に内臓が破裂し、獅子の口から大量の血が吐き出される。
しかし牙は緩まない。
神は何度も繰り返す。
それでも牙は緩まない。
一撃で致命傷たり得る衝撃が、何度も何度も獅子の体を撃ち抜く。
しかし。
骨が微塵に砕けても、
胴が裂け臓腑を撒き散らしても、
牙はますます深く強く、神の身体に食い込んでいく。
メキメキメキメキ……!!
回帰の神(喰いちぎる気か……おのれ!)
左肩から食らいついた獅子の牙が、一切の容赦もなく深々と突き刺さる。
それを退けようと、神は指を弾いて鬼神の技を再生する。
爆発にも似た轟音と共に、獅子の腹を衝撃が撃ち貫く。
至近距離での一撃に内臓が破裂し、獅子の口から大量の血が吐き出される。
しかし牙は緩まない。
神は何度も繰り返す。
それでも牙は緩まない。
一撃で致命傷たり得る衝撃が、何度も何度も獅子の体を撃ち抜く。
しかし。
骨が微塵に砕けても、
胴が裂け臓腑を撒き散らしても、
牙はますます深く強く、神の身体に食い込んでいく。
453: 2012/10/08(月) 12:20:29 ID:AbZ5NYac
回帰の神(こいつ、氏ぬつもりか!)
肉が裂け、骨が軋む。
最早どちらのものかもわからないおびただしい量の血が、両者を赤々と染め上げていく。
回帰の神(まずい……この【器】を壊されるわけには……っ!)
回帰の神「ガ……あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」
神は冷静さを欠いていた。
がむしゃらに拳を振り回し、獅子の頭を殴る。
殴る。
殴る。
しかし獅子はものともせずに、残る力の全てを込めて喰らいつく。
肉が裂け、骨が軋む。
最早どちらのものかもわからないおびただしい量の血が、両者を赤々と染め上げていく。
回帰の神(まずい……この【器】を壊されるわけには……っ!)
回帰の神「ガ……あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」
神は冷静さを欠いていた。
がむしゃらに拳を振り回し、獅子の頭を殴る。
殴る。
殴る。
しかし獅子はものともせずに、残る力の全てを込めて喰らいつく。
454: 2012/10/08(月) 12:21:51 ID:AbZ5NYac
メキメキ……ベキッ!
耳の奥で、骨が砕ける音が響く。
回帰の神「ぎ――――……!!」
激痛。
喉の奥から血が溢れ、視界が霞み、意識が途切れかける。
その時、
「――陛下、ご無礼を!」
ひとつの影が獅子の頭を打ち据え、
神の背後で、閃光が地を貫いた。
455: 2012/10/08(月) 12:22:43 ID:AbZ5NYac
――対象接近。封印システムを解析。亜空間に干渉。侵入術式自動構築。
――マナチャージ準備開始。
――全術式の強制破棄プログラム起動。待機モード。
――連動、マナチャージ術式解放。魔力充填準備完了。
「いつまでも微睡んでんじゃねえよ、クソボケ」
456: 2012/10/08(月) 12:23:35 ID:AbZ5NYac
――――ドクン
大地が揺れ、封印の間に走った亀裂が大きく広がっていく。
そしてその中心から、天と地を繋ぐように、
巨大な光の柱が伸びていった。
457: 2012/10/08(月) 18:52:12 ID:AbZ5NYac
「遅くなり申し訳ありません」
回帰の神「……その声は、白面か」
弱々しい声で訊ね、視線を向ける。
空狐「今は空狐です。それよりもすぐに治療を」
回帰の神「任せる……心臓に届きかけたか……」
回帰の神(まさしく命懸けとは、恐れ入る)
己を追い詰めた獣に対し、神はささやかな敬意を抱いた。
空狐「……覇王が目覚めました。治療が終わり次第ここを離れます」
回帰の神「何……?」
回帰の神「……その声は、白面か」
弱々しい声で訊ね、視線を向ける。
空狐「今は空狐です。それよりもすぐに治療を」
回帰の神「任せる……心臓に届きかけたか……」
回帰の神(まさしく命懸けとは、恐れ入る)
己を追い詰めた獣に対し、神はささやかな敬意を抱いた。
空狐「……覇王が目覚めました。治療が終わり次第ここを離れます」
回帰の神「何……?」
458: 2012/10/08(月) 18:52:52 ID:AbZ5NYac
回帰の神(まだ封印は残っていたはず……)
回帰の神(――待て、先程あの猫はどこを見ていた!?)
ばっと顔を上げ空を見る。
失血のために視界がはっきりしないが、その先では青色が一面に広がっていた。
回帰の神「まさか……」
鬼神が?
その疑念に答えるように、
鬼神「よう。少し見ねえ間にボロボロじゃねえか、屑餓鬼」
彼は静かに現れた。
回帰の神(――待て、先程あの猫はどこを見ていた!?)
ばっと顔を上げ空を見る。
失血のために視界がはっきりしないが、その先では青色が一面に広がっていた。
回帰の神「まさか……」
鬼神が?
その疑念に答えるように、
鬼神「よう。少し見ねえ間にボロボロじゃねえか、屑餓鬼」
彼は静かに現れた。
459: 2012/10/08(月) 18:53:20 ID:AbZ5NYac
錬金術師「……矢と一緒に落ちていったぞ、彼」
魔女「どんだけ非常識なんだか……」
錬金術師「ところで着地は?」
魔女「そろそろ遠隔転移の二回目が、ああ来た来た」
錬金術師「正直転移自体苦手なのだけれど……」
魔女「はいはい、文句言わないの」
光が二人を包み込む。
*魔女と錬金術師は転移した!
魔女「どんだけ非常識なんだか……」
錬金術師「ところで着地は?」
魔女「そろそろ遠隔転移の二回目が、ああ来た来た」
錬金術師「正直転移自体苦手なのだけれど……」
魔女「はいはい、文句言わないの」
光が二人を包み込む。
*魔女と錬金術師は転移した!
460: 2012/10/08(月) 18:54:02 ID:AbZ5NYac
封印の中心に生じた眩い光の柱。
それは空間の裂け目。
地下の封印により亜空間へ閉じ込められていた魔人の、
ただのシステムのいち部品として組み込まれてきた覇王の、最期の玉座。
回帰の神「よもや、自ら引き金を引くとは……私はふられたということかな……」
鬼神「やけに物分かりがいいな。氏にかけて性格が変わったか?」
回帰の神「ふん……減らず口を……」
空狐「陛下、あまり無理は」
回帰の神「……ああ」
それは空間の裂け目。
地下の封印により亜空間へ閉じ込められていた魔人の、
ただのシステムのいち部品として組み込まれてきた覇王の、最期の玉座。
回帰の神「よもや、自ら引き金を引くとは……私はふられたということかな……」
鬼神「やけに物分かりがいいな。氏にかけて性格が変わったか?」
回帰の神「ふん……減らず口を……」
空狐「陛下、あまり無理は」
回帰の神「……ああ」
461: 2012/10/08(月) 18:54:30 ID:AbZ5NYac
鬼神「神様の分際で大した有り様だな。一発ぶん殴ってやろうかと思ってたんだが」
空狐「っ」キッ
鬼神「そう睨むなよ。こちとら元々そいつにゃ用はねーんだ」
回帰の神「何?」
鬼神「覇王とケリを着けに来ただけだからな、俺は」
空狐「っ」キッ
鬼神「そう睨むなよ。こちとら元々そいつにゃ用はねーんだ」
回帰の神「何?」
鬼神「覇王とケリを着けに来ただけだからな、俺は」
462: 2012/10/08(月) 18:55:47 ID:AbZ5NYac
回帰の神「…………私を利用したと?」
鬼神「いやんなわけねーだろ。たまたまだ、たまたま」
回帰の神(偶然で利用されたのか、私は……)
鬼神「なんつーかなあ、やっぱテメエ、違うな」
回帰の神「何?」
鬼神「召喚師じゃねえだろ、お前」
回帰の神「……そこまで気付くか」
鬼神「確証はなかったが、野郎の性格はよく知ってんだよ、俺は」
鬼神「……お前の体、召喚師と姫さんの子供だろ」
鬼神「いやんなわけねーだろ。たまたまだ、たまたま」
回帰の神(偶然で利用されたのか、私は……)
鬼神「なんつーかなあ、やっぱテメエ、違うな」
回帰の神「何?」
鬼神「召喚師じゃねえだろ、お前」
回帰の神「……そこまで気付くか」
鬼神「確証はなかったが、野郎の性格はよく知ってんだよ、俺は」
鬼神「……お前の体、召喚師と姫さんの子供だろ」
463: 2012/10/08(月) 18:56:17 ID:AbZ5NYac
回帰の神「…………」
鬼神「図星か。ったく、回りくどい野郎だなテメエ」
回帰の神「……いつ気付いた?」
鬼神「気付くも何もねーよ。誰が召喚師に力の使い方を教えたと思ってんだ」
回帰の神「くくく、全く、恐れ入る」
空狐「……陛下。そろそろ」
回帰の神「わかった」
鬼神「逃げるのか?」
回帰の神「いいや、帰るのさ」
回帰の神「魔王の座にね」
鬼神「図星か。ったく、回りくどい野郎だなテメエ」
回帰の神「……いつ気付いた?」
鬼神「気付くも何もねーよ。誰が召喚師に力の使い方を教えたと思ってんだ」
回帰の神「くくく、全く、恐れ入る」
空狐「……陛下。そろそろ」
回帰の神「わかった」
鬼神「逃げるのか?」
回帰の神「いいや、帰るのさ」
回帰の神「魔王の座にね」
464: 2012/10/08(月) 18:56:50 ID:AbZ5NYac
回帰の神「ひとつ教えておこう。私は我が身を解放するためにここへ来たのではない」
鬼神「あん?」
回帰の神「封印は既に壊れている。ここに来たのは貴方達人間が作り上げたものを利用し」
回帰の神「これまで利用されてきた我が力の全てを奪い去るためだ」
回帰の神「もっとも、貴方がその手で使い果たしてしまったが……結果は同じことだ」
鬼神「…………」
回帰の神「人間は二度と【回帰の力】を使えまい。後はただ、醜く足掻いて氏を待つのみだ」
回帰の神「貴方の選択は人間全てを追い詰めたのだよ、鬼神」
鬼神「…………」
鬼神「あん?」
回帰の神「封印は既に壊れている。ここに来たのは貴方達人間が作り上げたものを利用し」
回帰の神「これまで利用されてきた我が力の全てを奪い去るためだ」
回帰の神「もっとも、貴方がその手で使い果たしてしまったが……結果は同じことだ」
鬼神「…………」
回帰の神「人間は二度と【回帰の力】を使えまい。後はただ、醜く足掻いて氏を待つのみだ」
回帰の神「貴方の選択は人間全てを追い詰めたのだよ、鬼神」
鬼神「…………」
465: 2012/10/08(月) 18:57:44 ID:AbZ5NYac
鬼神「……ははーん、お前さてはバカだな?」
空狐「なっ、無礼な!」
回帰の神「私は事実を述べただけだ。それとも、何か間違えているとでも?」
鬼神「間違いしかねーよ、この有頂天バカ」
回帰の神「は?」
空狐(有頂天……?)
鬼神「ったく、千年も何してたんだテメエ。なんだ? ただグースカ寝こけてただけか? あ?」
回帰の神「む……」
鬼神「人間ナメてんじゃねえよ、こーのスットコドッコイ」
回帰の神「スットコ……」
空狐「ドッコイ……」
空狐「なっ、無礼な!」
回帰の神「私は事実を述べただけだ。それとも、何か間違えているとでも?」
鬼神「間違いしかねーよ、この有頂天バカ」
回帰の神「は?」
空狐(有頂天……?)
鬼神「ったく、千年も何してたんだテメエ。なんだ? ただグースカ寝こけてただけか? あ?」
回帰の神「む……」
鬼神「人間ナメてんじゃねえよ、こーのスットコドッコイ」
回帰の神「スットコ……」
空狐「ドッコイ……」
466: 2012/10/18(木) 12:29:13 ID:4SvpeZDU
空狐(今時本当にそんな言葉を使う輩がいるとは……)唖然
回帰の神(どういう意味だ……?)
鬼神「はあ……まあいい。言っても仕方ねーしな」
鬼神「失せるんならさっさと失せろ。巻き添え食うぞ」
空狐「……いまいち納得できませんが、いいでしょう」
空狐「さようなら、鬼神」
回帰の神(スットコドッコイ……?)もやもや
*空狐は転移魔法を使った。
空狐「せいぜい悪あがきを」
*空狐と回帰の神は転移した!
鬼神「……さてと」
回帰の神(どういう意味だ……?)
鬼神「はあ……まあいい。言っても仕方ねーしな」
鬼神「失せるんならさっさと失せろ。巻き添え食うぞ」
空狐「……いまいち納得できませんが、いいでしょう」
空狐「さようなら、鬼神」
回帰の神(スットコドッコイ……?)もやもや
*空狐は転移魔法を使った。
空狐「せいぜい悪あがきを」
*空狐と回帰の神は転移した!
鬼神「……さてと」
468: 2012/10/31(水) 00:16:18 ID:IuI8iJiM
地の底から天の果てへ。
高く伸びた光の柱はその周囲を引きずり寄せ、空の上では暴風が巻き起こる。
遠く空の端から白雲が集まり、その密度を増して黒雲へと変化していく。
光の柱は歩みのような速さでその直径を広げ、封印の間は既に完全に飲み込まれていた。
ゴ ゴン …
ゴ ゴン …
重く響くその音は、魔人の鼓動。
人であることを捨て去り、
魔物にもなりきれず、
ただ生前の意志のまま、万物に終焉をもたらす者。
かつての名は覇王。
武教の国の最期の王。
そして、
勇者であることを否定された、終焉の神の司。
469: 2012/10/31(水) 00:17:25 ID:IuI8iJiM
―――――
―――
―
~ 武教の国 王城 玉座の間 ~
鬼神「そいつを棄てろ、覇王!」
覇王「ふ……できぬ相談だ」
そこには2人の男だけがいた。
返り血に濡れ、深紅に染まった若き日の鬼神。
膝をつき、脇腹から流れ出る血を抑えながら小さなクリスを構える覇王。
覇王「狂気の研究は止めねばならん……これは必要なことなのだ」
鬼神「そんな理由で氏のうってのか! チビ助はどうする!」
悲痛にも思える鬼神の叫び。
彼の手に剣はない。
覇王の傷は、自ら負ったものだった。
覇王「人の親として生きることなど、私にはできないのだ、鬼神」
470: 2012/10/31(水) 00:18:37 ID:IuI8iJiM
鬼神「ざっけんなクソボケ!! そんなもんテメエの都合じゃねえか!!」
覇王「そうだ。これは私の我が儘にすぎない。……それでもだ」
覇王はクリスを自分の心臓へと向ける。
その刀身は黒く、透明で、魔力に満ちている。
鬼神「っ、止めろこの馬鹿!!」
鬼神が駆け寄る。それよりも早く、
覇王「……後は任せる」
ただ一言を呟いて、覇王は己の心臓を突き刺した。
鬼神「……! この、馬鹿野郎がああああー―――――っ!!」
絶叫と閃光。
クリスの刀身が、覇王の体へと溶けていく。そして……、
覇王「たとえ悪魔と呼ばれてもいい……」
覇王「せめてこの命が、全ての者の糧とならんことを」
――覇王は、魔人へと変化した。
471: 2012/10/31(水) 00:19:27 ID:IuI8iJiM
*悉く貪る終焉の王が現れた!
_
472: 2012/10/31(水) 00:21:21 ID:IuI8iJiM
光の柱が砕け散り、巨大な影が地に降り立つ。
山よりも大きく、
闇よりも暗く、
炎よりも不鮮明で、
魔王よりも凶々しく。
彼は生前の意志のままに、万物の敵としてそこに立つ。
辺りには轟風が巻き起こり、あらゆるものが彼の元へと引きずり込まれていく。
鬼神「……随分とデカくなっちまったなあ、覇王」
しかし鬼神は悠然と、ただ懐かしげにそれを見上げる。
鬼神「ったく、勝手になんでもかんでも押し付けて行きやがって……」
鬼神(まあ俺も人のこと言えるモンでもねえが……)
彼は溜め息をひとつ吐き、
鬼神「全く、俺に何を期待してんだか知らねえけどよ」
ゆっくりと、終焉の王が動き出す。
473: 2012/10/31(水) 00:22:14 ID:IuI8iJiM
鬼神「――――俺は、ただの農家だっつーの」
そして、
「■■■■■■■■■■■ー―――!!」
言葉にならない咆哮と共に、その巨大な拳が振るわれた。
476: 2012/11/25(日) 19:14:33 ID:rFusqDWg
・ ・ ・
姫様「…………何だ、あれは……」
光の柱を砕いて現れたそれは、一見すれば漆黒の巨壁のようでもあった。
国王「マジかよ……」
その底知れぬ威圧感に、後退り、言葉が漏れる。
感じたものは恐怖。
そして確信めいた予感。
暴れ猿「く……こんな、馬鹿げたものが……」
女勇者「…………」
恐怖に身をすくめ、あるいは茫然と、その存在を確かめるように空を仰ぐ。
人の形でありながらも、あまりにも大きすぎるその姿は、まさに巨人。
魔力の飽和の果てか、それとも初めからこうなることが決まっていたのか。
姫様「あれが…………父上、なのか……?」
失意と絶望がじわりと胸に広がり、膝から力が抜ける。
覇王“だったもの”は、最早人の手でどうにかすることなど到底不可能と思えるほどの、最悪の怪物と化していた。
477: 2012/11/25(日) 19:15:56 ID:rFusqDWg
三人と一匹が見上げる先で、終焉の王が拳を握る。
巨体がわずかに身を反らし、その腕をゆらりと持ち上げ、
国王(っ、やべえ!)
咆哮。それと共に、爆ぜるような速さで拳が振り落された。
国王「お前ら伏せろ!!」
暴れ猿「!」
―― ズ ド ォ ォ ン……!!
轟音と震動。
それより数瞬早く全員の前へと飛び出し、両の腕を正面に突き出す。
国王「『収束・高位風壁・十二連!!』」
自らが繰り出せる最大限の障壁を展開して、猛スピードで迫りくる“余波”に身構える。
女勇者「え、ちょ、何?」
暴れ猿「いいから屈め!」ぐいっ
*終焉の王の一撃が衝撃波を生み出した。
巨体がわずかに身を反らし、その腕をゆらりと持ち上げ、
国王(っ、やべえ!)
咆哮。それと共に、爆ぜるような速さで拳が振り落された。
国王「お前ら伏せろ!!」
暴れ猿「!」
―― ズ ド ォ ォ ン……!!
轟音と震動。
それより数瞬早く全員の前へと飛び出し、両の腕を正面に突き出す。
国王「『収束・高位風壁・十二連!!』」
自らが繰り出せる最大限の障壁を展開して、猛スピードで迫りくる“余波”に身構える。
女勇者「え、ちょ、何?」
暴れ猿「いいから屈め!」ぐいっ
*終焉の王の一撃が衝撃波を生み出した。
478: 2012/11/25(日) 19:17:20 ID:rFusqDWg
ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド……!!
ゴ オ オ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ ォ……!!
*収束した暴風の渦が盾となって全てを打ち払う!
国王「こ、な、く、そ ぉぉお!!」
――大地がめくれ上がり、えぐれ飛ぶ程の衝撃。
ぐらぐらと足場は揺らぎ、暴風、否、“爆風”があらゆるものを薙ぎ払っていく。
女勇者「何これどうなってんの!?」
女僧侶と共に暴れ猿に庇われながら、想定外の状況に思わず悲鳴を上げる。
風の盾に弾かれながらも、土石流さながらの“余波”が地を削り、巻き込まれた土砂が視界を覆い尽くした。
姫様「く――――そ……っ!」
その中で、武教の姫は這うようにして前へ進む。
縋るように、
祈るように、
拒むように。
在りし日の父の背中を想い、迷子のように前へと進む。
479: 2012/11/25(日) 19:18:28 ID:rFusqDWg
国王「前に出んな!吹っ飛ばされんぞ!!」
ピシ――パキィン
風の盾が、甲高い音を立てて一枚、また一枚と砕けていく。
国王「つ、おぉぉおぉど根性おお お お お お あ!!」
しかしそれに屈するまいと、国王はさらに強く魔力を込める。
―― 一般的に、攻撃・防御魔法の威力は6つの階級で分類される。
基礎である『初級魔法』
応用系魔法とも呼ばれる『低級魔法』『中級魔法』
発展系として存在する『上級魔法』『高位魔法』
そして限られた者しか使えない奥義とされ、絶大な威力を発揮する『極大魔法』
通常、高位障壁を破壊できる威力を有するのは、同じ高位魔法、もしくは極大魔法だけとされる。
国王「冗っ談じゃねぇぞあんにゃろ……!爆風だけで収束高位魔法クラスかよ!!」
国王(こんなモン直撃したら、それこそ極大魔法並みじゃねえか……!!)ゾ…ッ
冷たい汗が背筋を伝う。
ピシ――パキィン
風の盾が、甲高い音を立てて一枚、また一枚と砕けていく。
国王「つ、おぉぉおぉど根性おお お お お お あ!!」
しかしそれに屈するまいと、国王はさらに強く魔力を込める。
―― 一般的に、攻撃・防御魔法の威力は6つの階級で分類される。
基礎である『初級魔法』
応用系魔法とも呼ばれる『低級魔法』『中級魔法』
発展系として存在する『上級魔法』『高位魔法』
そして限られた者しか使えない奥義とされ、絶大な威力を発揮する『極大魔法』
通常、高位障壁を破壊できる威力を有するのは、同じ高位魔法、もしくは極大魔法だけとされる。
国王「冗っ談じゃねぇぞあんにゃろ……!爆風だけで収束高位魔法クラスかよ!!」
国王(こんなモン直撃したら、それこそ極大魔法並みじゃねえか……!!)ゾ…ッ
冷たい汗が背筋を伝う。
480: 2012/11/25(日) 19:19:55 ID:rFusqDWg
ゴオオォォォ……ォォォ……
……衝撃波が収まっていく。
国王「っは、くそ……ブランクがキツいぜ……」
荒野の只中で、国王はただ一つ残った風の盾を前に、膝をついた。
渦を巻いた風が砂塵を連れ去り、視界が急速に開けていく。
最初に目に映ったのは、爆風に全てを持っていかれた真っ平らな地面だった。
暴れ猿「魔物達の骸すら……」
立ち上がり、呆然と言葉を零す。
女僧侶「ぅ……」
女勇者「あ、僧侶ちゃん気が付いた?」
女僧侶「……あ、れ? 私、どうなって……」
姫様「気を失っていただけだ。無理はしないほうがいい」
女僧侶「……? 誰?」
女勇者「後で説明するよ。猿さん、背負ってあげてくれる?」
暴れ猿「ああ」
481: 2012/11/25(日) 19:21:23 ID:rFusqDWg
国王「ヤバいな……こりゃもう近付くどころじゃねえ、逃げるぞ!」
姫様「何?」
国王「今のでわかんねぇか? あんなモン、俺らの手にゃ負えねえよ!」
ぎり、と歯噛みし、国王は終焉の王を見上げた。
幸いにも動き出す気配はないが、次また同じことをされれば、守り切れる自信がなかった。
もしもこちらに気付かれ、直接攻撃を受けたりしたら……。
極大魔法。
その最大威力は、世界最大の山脈に軽々と“風穴”を開けるほどのものである。
仮に正面から受け止めれば、無事で済む人間はいないであろう。
―― ただ一人を除いて。
_
姫様「何?」
国王「今のでわかんねぇか? あんなモン、俺らの手にゃ負えねえよ!」
ぎり、と歯噛みし、国王は終焉の王を見上げた。
幸いにも動き出す気配はないが、次また同じことをされれば、守り切れる自信がなかった。
もしもこちらに気付かれ、直接攻撃を受けたりしたら……。
極大魔法。
その最大威力は、世界最大の山脈に軽々と“風穴”を開けるほどのものである。
仮に正面から受け止めれば、無事で済む人間はいないであろう。
―― ただ一人を除いて。
_
482: 2012/11/25(日) 19:22:13 ID:rFusqDWg
農家「……こんなもんかよ、クソボケ」
非常識がそこにいた。
_
483: 2012/11/25(日) 21:56:15 ID:rFusqDWg
農家は立っていた。
平然と、何事もなかったかのように。
左手一本で終焉の王の拳を掴んだままで、えぐれた地面の中心に立っていた。
「――■■■■■■!!」
終焉の王が拳を引こうと動く。
しかし、ピクリともしない。
自身より圧倒的に軽いはずの農家に掴まれ、終焉の王は動くことさえままならない。
農家「魔人に“成り下がって”、ちったあ気が晴れたかよオイ?」
「■■■■……ッ」
農家「情けねえツラあ晒してんなよ……!!」
ギシリ。農家の右腕が軋む。
右足をわずかに引いて体をひねり、作った拳を腰の横に揃える。
農家「テメエの強さはよお……、こんなモンじゃあねえだろうがよ!!」
農家「――寝惚けてんじゃねえぞこの大ボケがあああああああああああ!!」
平然と、何事もなかったかのように。
左手一本で終焉の王の拳を掴んだままで、えぐれた地面の中心に立っていた。
「――■■■■■■!!」
終焉の王が拳を引こうと動く。
しかし、ピクリともしない。
自身より圧倒的に軽いはずの農家に掴まれ、終焉の王は動くことさえままならない。
農家「魔人に“成り下がって”、ちったあ気が晴れたかよオイ?」
「■■■■……ッ」
農家「情けねえツラあ晒してんなよ……!!」
ギシリ。農家の右腕が軋む。
右足をわずかに引いて体をひねり、作った拳を腰の横に揃える。
農家「テメエの強さはよお……、こんなモンじゃあねえだろうがよ!!」
農家「――寝惚けてんじゃねえぞこの大ボケがあああああああああああ!!」
484: 2012/11/25(日) 21:56:56 ID:rFusqDWg
ド
ゴ ォ ン!!
_
485: 2012/11/25(日) 21:57:24 ID:rFusqDWg
半歩踏み込んでの、腰の回転を乗せた一撃。
ごく普通の、なんの変哲もないパンチ。
たったそれだけのものが、
「■■■■■■ー―――!!」
ぐらり…
山より巨大なその体を、いともたやすく揺るがせた。
ごく普通の、なんの変哲もないパンチ。
たったそれだけのものが、
「■■■■■■ー―――!!」
ぐらり…
山より巨大なその体を、いともたやすく揺るがせた。
486: 2012/11/25(日) 22:16:59 ID:rFusqDWg
農家「農家アッパー……からの」
跳ぶ。
否、飛ぶ。
矢のような速さで空に舞い、傾いだ巨人の真正面に姿を晒す。
農家「素手じゃ手加減利かねえからなあ……歯ア食いしばれやああああ!!」
「■■■■!!」
巨体からは信じられないほどの速度で、終焉の王は防御に回る。
それは本能だった。
もしそのまま受けたなら、自分はただでは済まないと。
そして、
農家「農家ハンマアアアアアア!!」
―― ズ ン !!
……農家の拳が、巨人の両腕を粉々に打ち砕いた。
跳ぶ。
否、飛ぶ。
矢のような速さで空に舞い、傾いだ巨人の真正面に姿を晒す。
農家「素手じゃ手加減利かねえからなあ……歯ア食いしばれやああああ!!」
「■■■■!!」
巨体からは信じられないほどの速度で、終焉の王は防御に回る。
それは本能だった。
もしそのまま受けたなら、自分はただでは済まないと。
そして、
農家「農家ハンマアアアアアア!!」
―― ズ ン !!
……農家の拳が、巨人の両腕を粉々に打ち砕いた。
488: 2012/11/26(月) 10:21:31 ID:/qxpn/GQ
ズゥゥ――ン…
国王「」
暴れ猿「」
女勇者「」
女僧侶「」
姫様「」
ぽかーん…
女勇者「……えーっと」
女勇者「気のせいかな、すごい見覚えある人がアレ殴り倒したように見えたんだけど……」あはは…
国王「なんじゃそりぁああああああああああ!!?!?」ごーん
暴れ猿「非常識だ……」
女僧侶「夢……これは夢……そう夢です……」
姫様「なんだ夢か……」
錬金術師「紛れもなく現実だけれど」
国王「いやいやいやあり得ねぇだ――うぉう!?」ビクッ!
錬金術師「ハァイ、マイファミリー」やあ
489: 2012/11/26(月) 12:47:00 ID:/qxpn/GQ
女勇者「ママ!?」
女僧侶「お妃様!?」
錬金術師「くっくっ、そう呼ばれるのは久しぶりだね。元気かい?」
国王「元気かいじゃねぇよ!何でいんの!?」
暴れ猿「言いながら何故俺様の後ろに隠れる……」
姫様「おい、この白衣の女は誰だ」
女僧侶「えっと」
錬金術師「初めまして武教のお姫様。僕は錬金術師。マイダーリン国王のお嫁さんさ!」キリッ
姫様(……何故決め顔で)
女僧侶「えっ、貴女武教の国のお姫様なんですか?」
姫様「ん? ああ」
国王「んなこたどうでもええわ!説明をしろ説明を!」
暴れ猿「隠れながら叫ぶな」
錬金術師「ふむ、ゆっくり説明したいところだけど」
女僧侶「お妃様!?」
錬金術師「くっくっ、そう呼ばれるのは久しぶりだね。元気かい?」
国王「元気かいじゃねぇよ!何でいんの!?」
暴れ猿「言いながら何故俺様の後ろに隠れる……」
姫様「おい、この白衣の女は誰だ」
女僧侶「えっと」
錬金術師「初めまして武教のお姫様。僕は錬金術師。マイダーリン国王のお嫁さんさ!」キリッ
姫様(……何故決め顔で)
女僧侶「えっ、貴女武教の国のお姫様なんですか?」
姫様「ん? ああ」
国王「んなこたどうでもええわ!説明をしろ説明を!」
暴れ猿「隠れながら叫ぶな」
錬金術師「ふむ、ゆっくり説明したいところだけど」
490: 2012/11/26(月) 15:15:35 ID:/qxpn/GQ
「■■■■■■ー―――ッ!!」
「だあらっしゃああああああああああ!!」
ゴォン……! ドォォン……!!
錬金術師「まずはここを離れるほうが先決だろうね」
魔女「そうそう。さっさか退かないと巻き添え喰らうわよ」
国王「ゲェッ、魔女!!」ギュッ
暴れ猿「体毛を掴むな!」痛いだろが!
女勇者「情けなぁ……」
姫様「錬金術師と魔女……」
姫様「もしや20年前の英雄か!」
魔女「そんな柄じゃないけどね」
錬金術師「魔女、ペガちゃんは?」
女魔法使い「連れてきた」
女僧侶「あ、魔法使いちゃん」
姫様(急に大人数に……)
491: 2012/11/26(月) 15:23:11 ID:/qxpn/GQ
「馬車の修理は完了しています。皆さん早く!」
錬金術師「すまないね」よっ
国王「ちゃんと説明はあるんだろうなオイ」
暴れ猿「貴様はいい加減離れろというに」
女勇者「何しにここまで来たのかわかんなくなってきた……」
姫様「これが聖獣ペガサスか……」
ぞろぞろぞろ…
錬金術師「一時離脱後、アレが見える距離で止まってくれ」
「はっ」
*ペガサスは翼を大きく広げた。
*柔らかな光が周囲を包み込む……。
*女勇者達は大空に飛び立った!
錬金術師「すまないね」よっ
国王「ちゃんと説明はあるんだろうなオイ」
暴れ猿「貴様はいい加減離れろというに」
女勇者「何しにここまで来たのかわかんなくなってきた……」
姫様「これが聖獣ペガサスか……」
ぞろぞろぞろ…
錬金術師「一時離脱後、アレが見える距離で止まってくれ」
「はっ」
*ペガサスは翼を大きく広げた。
*柔らかな光が周囲を包み込む……。
*女勇者達は大空に飛び立った!
494: 2012/11/26(月) 18:28:48 ID:/qxpn/GQ
~ 武教の地 東端 上空 ~
国王「どうなってんだ。なんで覇王が目ぇ醒ましてる」
暴れ猿「…………」←諦めた
魔女「順を追って話すわ。まず覇王だけど、覚醒させたのは元々そういう予定だったからよ」
国王「……俺それ聞いてねぇんだけど」
魔女「あんたに話したら王様やるどころじゃなくなるじゃない。ただでさえ危ない橋なんだから」
国王「お前も知ってたのかよ」
錬金術師「まあね。というか、僕の研究こそ必要不可欠なものなのさ」
姫様「どういうことだ?」
錬金術師「その前に君の意思を確認しておこう」
姫様「?」
錬金術師「君は覇王――お父さんと話をしたいかい?」
姫様「何?」
国王「は? おいそりゃどういう」
魔女「あんたはちょっと黙ってな」
499: 2012/11/26(月) 21:31:26 ID:/qxpn/GQ
錬金術師「今の覇王は内包した魔力が飽和し、暴走状態にある」
錬金術師「特に先程大量の治癒の魔力を身に受けたお陰で、見てごらん」くいっ
錬金術師に促され、全員が幌の隙間から戦いの場を覗き見る。
農家と覇王の衝突……その度に覇王の腕は砕かれ、しかし次の瞬間には復元する。
錬金術師「あの姿は溢れ出した魔力が象った偶像のようなものさ。それ故に農家でさえ終わらせられない」
錬金術師「膨大すぎる魔力をどうにかしなければ、アレを倒すより先に世界が滅びるだろうね」
女勇者「そんな悠長な……」
姫様「貴女達は、それをわかっていてこんなことを……」
錬金術師「別に世界を滅ぼすためじゃないよ。まあ、ある意味では似ているけれどね」
暴れ猿「何だと?」
魔女「錬金術師」
錬金術師「わかってる。その話は後回しだ」
錬金術師「で、どうだい、武教のお姫様」
錬金術師「あの姿を見て、その上で君は彼と話をしたいと思うかい?」
姫様「…………」
錬金術師「特に先程大量の治癒の魔力を身に受けたお陰で、見てごらん」くいっ
錬金術師に促され、全員が幌の隙間から戦いの場を覗き見る。
農家と覇王の衝突……その度に覇王の腕は砕かれ、しかし次の瞬間には復元する。
錬金術師「あの姿は溢れ出した魔力が象った偶像のようなものさ。それ故に農家でさえ終わらせられない」
錬金術師「膨大すぎる魔力をどうにかしなければ、アレを倒すより先に世界が滅びるだろうね」
女勇者「そんな悠長な……」
姫様「貴女達は、それをわかっていてこんなことを……」
錬金術師「別に世界を滅ぼすためじゃないよ。まあ、ある意味では似ているけれどね」
暴れ猿「何だと?」
魔女「錬金術師」
錬金術師「わかってる。その話は後回しだ」
錬金術師「で、どうだい、武教のお姫様」
錬金術師「あの姿を見て、その上で君は彼と話をしたいと思うかい?」
姫様「…………」
500: 2012/11/26(月) 21:44:47 ID:/qxpn/GQ
女勇者「あれと話を……って……」
女僧侶「そもそも意識があるのかもわかりませんよ?」
錬金術師「そのために僕の研究成果が必要なのさ」
錬金術師「といっても、研究そのものはずっと前に完成していて、実用化するのに20年もかかってしまったわけだけど」
国王「」ビクッ
暴れ猿「20年もか……」
女勇者「あれ? 最近そんな話を聞いたような……?」
錬金術師「ぶっちゃけると魔力強制拡散力場の研究だよ」
女勇者「魔力……」
女僧侶「強制……」
暴れ猿「拡散……」
女魔法使い「力場~」だらーん
3人+1匹「「「「あー……」」」」
国王「なんでこっちを見る……はっ! まさかお前ら農家からなんか聞いたのか!? その目は聞いたんだな!? 止めろそんな目で見るな俺は悪くねぇ!!」
魔女「国王うるっさいっつーの!」
女僧侶「そもそも意識があるのかもわかりませんよ?」
錬金術師「そのために僕の研究成果が必要なのさ」
錬金術師「といっても、研究そのものはずっと前に完成していて、実用化するのに20年もかかってしまったわけだけど」
国王「」ビクッ
暴れ猿「20年もか……」
女勇者「あれ? 最近そんな話を聞いたような……?」
錬金術師「ぶっちゃけると魔力強制拡散力場の研究だよ」
女勇者「魔力……」
女僧侶「強制……」
暴れ猿「拡散……」
女魔法使い「力場~」だらーん
3人+1匹「「「「あー……」」」」
国王「なんでこっちを見る……はっ! まさかお前ら農家からなんか聞いたのか!? その目は聞いたんだな!? 止めろそんな目で見るな俺は悪くねぇ!!」
魔女「国王うるっさいっつーの!」
501: 2012/11/26(月) 21:56:53 ID:/qxpn/GQ
姫様(緊張感のない……)はぁ…
姫様「……質問に質問で返すようですまないが、ひとつ確認したい」
錬金術師「いいよ」
姫様「…………、武教の禁術を使ったのは貴女達か?」
女勇者「っ!」
錬金術師「禁術? なんだいそれ?」
魔女「あれでしょ、神様(自称)が魔力集めに使ってたやつ」
姫様「貴女達ではないのか?」
錬金術師「よくわからないけれど、僕達ではないね」
魔女「まー結果だけ見たら利用したようなもんだけど……あんな“存在しない術式”なんて止めようもなかったもんねぇ」
姫様「存在、しない?」
錬金術師「説明するとややこしいから後にしよう。とにかく、僕達は関わっていないよ」
錬金術師「ただ、止めることができなかったのは事実だ。すまなかった」す…
姫様「あ、いや……」
姫様「……こちらこそ、無礼な質問をして申し訳ない」深々
姫様「……質問に質問で返すようですまないが、ひとつ確認したい」
錬金術師「いいよ」
姫様「…………、武教の禁術を使ったのは貴女達か?」
女勇者「っ!」
錬金術師「禁術? なんだいそれ?」
魔女「あれでしょ、神様(自称)が魔力集めに使ってたやつ」
姫様「貴女達ではないのか?」
錬金術師「よくわからないけれど、僕達ではないね」
魔女「まー結果だけ見たら利用したようなもんだけど……あんな“存在しない術式”なんて止めようもなかったもんねぇ」
姫様「存在、しない?」
錬金術師「説明するとややこしいから後にしよう。とにかく、僕達は関わっていないよ」
錬金術師「ただ、止めることができなかったのは事実だ。すまなかった」す…
姫様「あ、いや……」
姫様「……こちらこそ、無礼な質問をして申し訳ない」深々
502: 2012/11/26(月) 22:06:31 ID:/qxpn/GQ
錬金術師「で、どうする? 覇王と話してみるかい?」
姫様「私はその為に来ました。しかし……」
魔女「じゃあ話は早いわ。さっさと準備しましょ」
姫様「は? いや、でもですね」
錬金術師「そうだね。マイスッウィ~トダーリン、聖霊の剣はあるかい?」
国王「その珍妙な呼び方は止めて下さいお願いします。一応あるが、どうするんだ?」
魔女「そんなん決まってんでしょ」
一同「「「「「?」」」」」
錬金術師「覇王を叩き起こしに行くのさ」
女魔法使い「らりほー」おー
魔女「マホ、それ違うから」
女魔法使い「?」きょとん
姫様「私はその為に来ました。しかし……」
魔女「じゃあ話は早いわ。さっさと準備しましょ」
姫様「は? いや、でもですね」
錬金術師「そうだね。マイスッウィ~トダーリン、聖霊の剣はあるかい?」
国王「その珍妙な呼び方は止めて下さいお願いします。一応あるが、どうするんだ?」
魔女「そんなん決まってんでしょ」
一同「「「「「?」」」」」
錬金術師「覇王を叩き起こしに行くのさ」
女魔法使い「らりほー」おー
魔女「マホ、それ違うから」
女魔法使い「?」きょとん
503: 2012/11/26(月) 22:28:53 ID:/qxpn/GQ
・ ・ ・
『いいかい? まず覇王と魔人は雛と卵のような状態にあるんだ』
『しかし今は殻があまりに硬く、雛も眠ったままだから、覇王の意識は外に出てこられていない』
『ではどうするか。自力で出てくるのを期待するのは少々楽観的に過ぎるからね、ここは乱暴でも確実な手を打ちたい』
『さしあたっては――』
女勇者「ボクが聖霊の剣で穴を開けて」
女魔法使い「ウチが道を作る」
魔女「で、私がお姫様と一緒に中心部の覇王の所に乗り込んで」
姫様「直接父上を目覚めさせる……か」
女勇者「そんなうまくいくかなぁ」んー…
魔女「今更文句言うんじゃないの。ところで……」チラッ
暴れ猿「何だ?」
魔女「あんたモンスターよね。いいの? 勇者一行についてきたりして」
暴れ猿「ふん、俺様はもう氏んだ身だからな」
暴れ猿「それに……」
504: 2012/11/26(月) 22:30:10 ID:/qxpn/GQ
ぽむっ
女勇者「に?」
暴れ猿「農家に頼まれているのでな」ぐりぐり
女勇者「ちょ、お、わ、ゆ、ら、す、なあああ!」かくんかくん
魔女(随分律儀な魔物ね……)
姫様「ここからでは遠いぞ。どうするのだ」
女魔法使い「転移魔法、使う」
魔女「次に農家が殴り倒したらすぐ跳ぶわよ。心の準備はいい?」
暴れ猿「ああ」
女勇者「ばっちこーい!」
姫様「大丈夫だ」
魔女「よーし! それじゃあ……」
―― ド…ゴォォン! …ズー―――ン!!
魔女「行くわよ!」
一同「「「応!」」」
女魔法使い「『転移』」キィーン…
505: 2012/11/26(月) 22:31:23 ID:/qxpn/GQ
*女勇者たちは転移した!
_
506: 2012/11/27(火) 12:28:00 ID:TLaPQX.o
錬金術師「さて、もう一つの問題に移ろうか」ぴとっ
国王「引っ付く必要はあるんですかねえ!」ぞぞぞわ…っ
錬金術師「あるとも。何故なら僕が癒される」
国王「そうか、俺は逆に嫌な汗が溢れるけどな!」
錬金術師「くっくっ、ダーリンの、照・れ・屋・さん♪」つんっ
国王「耳元で囁くな胸をつつくな頬を赤らめるなあああああああ!!」鳥肌があああああ!!
女僧侶(私は空気……私は空気……私は空気……)
「大変そうっすね……」
女僧侶「あ、お気遣いなく」
国王「でええいくそっ離れろ!」
錬金術師「あんっ、ダーリンのいけずー。……まあいいや、そろそろ真面目な話をしよう」
国王「頼むぜホントお前……くっつくならせめて人のいないとこでしてくれよ……」はあぁ…
錬金術師「……ほう」キュピーン
国王「……はっ!」しまった!
女僧侶(全然話が進まない……)
国王「引っ付く必要はあるんですかねえ!」ぞぞぞわ…っ
錬金術師「あるとも。何故なら僕が癒される」
国王「そうか、俺は逆に嫌な汗が溢れるけどな!」
錬金術師「くっくっ、ダーリンの、照・れ・屋・さん♪」つんっ
国王「耳元で囁くな胸をつつくな頬を赤らめるなあああああああ!!」鳥肌があああああ!!
女僧侶(私は空気……私は空気……私は空気……)
「大変そうっすね……」
女僧侶「あ、お気遣いなく」
国王「でええいくそっ離れろ!」
錬金術師「あんっ、ダーリンのいけずー。……まあいいや、そろそろ真面目な話をしよう」
国王「頼むぜホントお前……くっつくならせめて人のいないとこでしてくれよ……」はあぁ…
錬金術師「……ほう」キュピーン
国王「……はっ!」しまった!
女僧侶(全然話が進まない……)
507: 2012/11/27(火) 12:28:58 ID:TLaPQX.o
錬金術師「それじゃ、次の話に進もう」にこにこ
↑後でべったべたに甘える約束取り付けた
国王「……おぅ」ずーん…
↑約束させられた
女僧侶(テンションの差が……)
錬金術師「まずおさらいしよう。回帰の神の正体は初代魔王……いわば大魔王だった。ここまではいいね」
国王「おう」
錬金術師「そして大魔王の封印は既に壊れ、根源を失ったことで治癒の魔法はもう誰にも使えない」
女僧侶「はい」
錬金術師「と、大魔王は勘違いしているわけだ」
女僧侶「はい?」
国王「違うのか?」
錬金術師「要は“回帰”の魔力に頼らなければいいだけだよ。その研究も完了しているから、そこはもう無視していい」
錬金術師「何日かしたら魔術師協会から魔導書が配布される予定だしね」
国王「んじゃあ、何が問題なんだ?」
錬金術師「【教会】さ」
↑後でべったべたに甘える約束取り付けた
国王「……おぅ」ずーん…
↑約束させられた
女僧侶(テンションの差が……)
錬金術師「まずおさらいしよう。回帰の神の正体は初代魔王……いわば大魔王だった。ここまではいいね」
国王「おう」
錬金術師「そして大魔王の封印は既に壊れ、根源を失ったことで治癒の魔法はもう誰にも使えない」
女僧侶「はい」
錬金術師「と、大魔王は勘違いしているわけだ」
女僧侶「はい?」
国王「違うのか?」
錬金術師「要は“回帰”の魔力に頼らなければいいだけだよ。その研究も完了しているから、そこはもう無視していい」
錬金術師「何日かしたら魔術師協会から魔導書が配布される予定だしね」
国王「んじゃあ、何が問題なんだ?」
錬金術師「【教会】さ」
508: 2012/11/27(火) 12:29:34 ID:TLaPQX.o
女僧侶「あ……!」
錬金術師「教会は知っての通り、回帰の神を信仰する宗教だ。あれの封印の要の樹を聖樹などと呼んでいるし……」
錬金術師「何より一般の信仰者の絶対数は世界一だ。【連合】を最も強力にバックアップしているのも教会だね」
錬金術師「さあここで問題。そんな彼らの神である大魔王を討とうと試みたら、人々からはどう見られると思う?」
国王「……敵、ってことになるか」
女僧侶「そんな……でも、相手は大魔王ですよ!?」
錬金術師「そんなもの黙っていればわかりはしないさ」
錬金術師「第一、一般人からしたら魔王がどうこうなんて、ぶっちゃけ何の関係もないからね」
錬金術師「人々が求めているのは、平穏だ」
錬金術師「それを崩そうとするのなら、何が敵でも味方でも、どうだって構わないんだよ」
錬金術師「教会は知っての通り、回帰の神を信仰する宗教だ。あれの封印の要の樹を聖樹などと呼んでいるし……」
錬金術師「何より一般の信仰者の絶対数は世界一だ。【連合】を最も強力にバックアップしているのも教会だね」
錬金術師「さあここで問題。そんな彼らの神である大魔王を討とうと試みたら、人々からはどう見られると思う?」
国王「……敵、ってことになるか」
女僧侶「そんな……でも、相手は大魔王ですよ!?」
錬金術師「そんなもの黙っていればわかりはしないさ」
錬金術師「第一、一般人からしたら魔王がどうこうなんて、ぶっちゃけ何の関係もないからね」
錬金術師「人々が求めているのは、平穏だ」
錬金術師「それを崩そうとするのなら、何が敵でも味方でも、どうだって構わないんだよ」
510: 2012/11/27(火) 21:47:39 ID:TLaPQX.o
・ ・ ・
「大総統閣下、出撃準備が整いました」
大総統「ご苦労様。副指令君、状況は?」
副指令「鬼神らしき人物と肥大化した魔人が交戦中です」
大総統「ひと段落したら地図の書き換えが必要そうだね」
副指令「冗談になりませんよ……何なんですかあれは」
大総統「人間と人間さ。それ以外の何でもない」
副指令「事実だとしても常軌を逸しています。……今回の出撃も、本当に意味があるのですか?」
大総統「君はどう思う?」
副指令「失礼ながら、必要だとは思えません」
大総統「だろうね。だが、我々が向かわなければ彼は連合の手に落ちる」
副指令「確信があるのですか?」
大総統「ああ。彼は人間を殺せない。頃したこともない」
副指令「戦争となればそうも言っていられませんよ。鬼神ともあろう者が……」
大総統「まあ、彼は甘いからね」
511: 2012/11/27(火) 21:49:07 ID:TLaPQX.o
大総統「4年前、総司令君をうちに迎えた時の事件は聞いているかい?」
副指令「確か、北方大陸東部で魔王軍の残党による襲撃を受けたと」
大総統「ふむ、少し違うね」
副指令「は」
大総統「襲撃事件の実行犯は当時の魔王一人、だったそうだよ」
副指令「なっ!? まさか、魔王が自らなど……」
大総統「むしろ冴えたやり方さ。何故なら、魔王は人間……それも彼の友人だった男、だからね」
副指令「人間が魔王に……?」
大総統「そして彼は魔王を殺せずかけがえのない者を亡くし、総司令君も命を落としかけた」
副指令「……」
大総統「それでもあの2人は泣き言ひとつ口にしない。全く、頭が下がるよ」
副指令「……今の総司令からは想像もできませんが」
大総統「うん? ん、あー……うん、まぁ、ほら、あれだよほら、親が親だもの」
副指令「……あー」
?「…………」そ~…っ
副指令「確か、北方大陸東部で魔王軍の残党による襲撃を受けたと」
大総統「ふむ、少し違うね」
副指令「は」
大総統「襲撃事件の実行犯は当時の魔王一人、だったそうだよ」
副指令「なっ!? まさか、魔王が自らなど……」
大総統「むしろ冴えたやり方さ。何故なら、魔王は人間……それも彼の友人だった男、だからね」
副指令「人間が魔王に……?」
大総統「そして彼は魔王を殺せずかけがえのない者を亡くし、総司令君も命を落としかけた」
副指令「……」
大総統「それでもあの2人は泣き言ひとつ口にしない。全く、頭が下がるよ」
副指令「……今の総司令からは想像もできませんが」
大総統「うん? ん、あー……うん、まぁ、ほら、あれだよほら、親が親だもの」
副指令「……あー」
?「…………」そ~…っ
512: 2012/11/27(火) 21:50:19 ID:TLaPQX.o
大総統「男の子は母親に似るって言うしねぇ」
副指令「あまり納得したくないのですが……」
?「なんの話だい?」わしっ
ふにゅん
副指令「ひにゃっ!?」びくーん!
大総統「おや総司令君」
総司令「どうも閣下」もみもみ
副指令「ふやっ、ちょ!総司令っ!?」
総司令「ん~、相変わらずの柔らかさ。流石は副指令ちゃんのちっぱいだ」もみもみもみもみ
副指令「う、後ろから揉まないで下さっ、ふぁっ!」
大総統「……ほどほどにね」
副指令「とめて下さいよ閣下!っあん!」
総司令「あー、癒されるー」もみもみもみもみもみもみ
副指令「ひっ、や、は……んんっ!」びくびくっ
大総統(振り払えばいいのにねぇ)
副指令「あまり納得したくないのですが……」
?「なんの話だい?」わしっ
ふにゅん
副指令「ひにゃっ!?」びくーん!
大総統「おや総司令君」
総司令「どうも閣下」もみもみ
副指令「ふやっ、ちょ!総司令っ!?」
総司令「ん~、相変わらずの柔らかさ。流石は副指令ちゃんのちっぱいだ」もみもみもみもみ
副指令「う、後ろから揉まないで下さっ、ふぁっ!」
大総統「……ほどほどにね」
副指令「とめて下さいよ閣下!っあん!」
総司令「あー、癒されるー」もみもみもみもみもみもみ
副指令「ひっ、や、は……んんっ!」びくびくっ
大総統(振り払えばいいのにねぇ)
513: 2012/11/27(火) 21:51:21 ID:TLaPQX.o
総司令「ふー、やっぱりおっOいはちっぱいに限るね!」ツヤツヤ
副指令「いい仕事したみたいな顔しないで下さい……」ぜー…ぜー…
大総統「満足いったかい?」
総司令「そりゃあもう、これでまた今日一日生きられますよ!」キリッ
副指令「毎日揉む気だこの人ぉ……」
副指令「どうせなら部屋で2人きりの時に……」ぶつぶつ…
大総統(若人は見ていて飽きないねぇ)
大総統「準備は万端かな?」
総司令「広域転送魔法を待機中です。連合の動きがあればすぐにでも介入できます」
副指令(切り替えが早い……)
大総統「ふーむ、そうなるとしばらくは暇だね」
総司令「まあぶっちゃけそうっすね」はい
大総統「どうだろう、動きがあるまで花札でも」
総司令「お、いいですね」
副指令「ちょっ!?」
副指令「いい仕事したみたいな顔しないで下さい……」ぜー…ぜー…
大総統「満足いったかい?」
総司令「そりゃあもう、これでまた今日一日生きられますよ!」キリッ
副指令「毎日揉む気だこの人ぉ……」
副指令「どうせなら部屋で2人きりの時に……」ぶつぶつ…
大総統(若人は見ていて飽きないねぇ)
大総統「準備は万端かな?」
総司令「広域転送魔法を待機中です。連合の動きがあればすぐにでも介入できます」
副指令(切り替えが早い……)
大総統「ふーむ、そうなるとしばらくは暇だね」
総司令「まあぶっちゃけそうっすね」はい
大総統「どうだろう、動きがあるまで花札でも」
総司令「お、いいですね」
副指令「ちょっ!?」
514: 2012/11/27(火) 21:53:21 ID:TLaPQX.o
やっべ、名前がっつり間違えた
× 副指令
○ 副司令
× 副指令
○ 副司令
515: 2012/11/27(火) 22:28:09 ID:TLaPQX.o
錬金術師「――君は今、分かれ道の上にいる」
錬金術師「ひとつは、このまま教会に戻り、弱き者の助けとなって生きる平穏な道」
錬金術師「ひとつは、僕達と共に万人を敵に回し、神頃しに全てを賭ける修羅の道」
錬金術師「あるいは、何もかもを投げ出して終わりを待つ道、なんてのもある」
錬金術師「個人的には3つ目がお薦めだね」
錬金術師「もし幸せになりたいと願うのなら、君は今ここでこの戦いを降りるべきだ」
錬金術師「君は……僕達とは違う、使命もなければ手も汚れていない」
錬金術師「この先は血と泥にまみれた、喪うばかりの氏の道だ」
錬金術師「戻ることはできない。ただひたすらに進み続けるしかない。立ち止まることさえ赦されない」
錬金術師「……それでもこちら側に来るというのなら」
錬金術師「僕達は、君の力を自ら望んで求めよう」
錬金術師「選ぶのは君だ」
錬金術師「答えを聞かせてくれ」
564: 2013/02/10(日) 22:24:38 ID:2PoCuJUc
晴天。
僅かな白雲は薄く伸び、風は優しく。
その下でそれぞれの生活を営む人々の表情は、誰もが明るく。
鬼神「随分と様変わりしたもんだな」
覇王「そうだな」
武教の国、大きな噴水を中心とした広場の端で、二人の男は少ない言葉を交わす。
「ちちうえー!」
「姫様、あまりはしゃぎすぎませぬように……」
「む、じいはかたいぞ! こんなにいいてんきなのに」
ほら! と空を仰いでくるくると回る少女。
その姿を眺める男二人の顔に、僅かに笑みが浮かぶ。
565: 2013/02/10(日) 22:25:21 ID:2PoCuJUc
覇王「お前のお陰だ」
鬼神「またそれか。俺は何もしてねえだろ」
覇王「私を止めてくれただろう?」
平和で穏やかな景色を見つめ、心は温かく、陽射しは暖かく。
覇王「私には、この国を変えることはできなかった」
覇王「誰もが強さだけを求めて血を流し、骸を積み重ね、永遠に氏と破壊を繰り返してきた」
覇王「私には変えることはできなかった」
顔を上げる。
太陽に目が眩み、視界が白に染まる。
吹き抜けていく一陣の風。
目を細め、木々が揺れる音が雑踏を掻き消していく。
――音が、消える。
_
566: 2013/02/10(日) 22:25:54 ID:2PoCuJUc
「友よ。私にはできなかったんだ」
そして、幻想は瓦解した。
「私は希望になろうとした」
「しかし、私では届かなかった」
「だから終わらせることを選んだ」
「せめて絶望であろうとした」
「逃げてくれるならそれでもよかった」
「ただ、生きることを知ってほしかった」
「だが結果はどうだ? 私はただの破戒者に終わり、武教の国はもはやない」
「私は失敗したんだよ、鬼神」
「だから、もういい」
「もう、いいんだ……」
567: 2013/02/10(日) 22:26:25 ID:2PoCuJUc
私を生かそうとしなくてもいい。
私を助けようとしなくていい。
終わらせてくれれば、それでいい。
その最期の願いは――――……
農家「甘えたことぬかしてんじゃねえぞ、クソボケええ!!」
雄々しき一撃と共に、容赦なく叩き伏せられた。
(……それでも――――)
_
568: 2013/02/10(日) 22:27:00 ID:2PoCuJUc
友の拳が我が身を揺らす。
どこまでも熱く、力強く、
諦めなぞ知らぬとばかりに、その手は私を掴もうとする。
けれど、私にその資格はない。
だから、友よ。諦めてくれ。
どうか私を諦めてくれ。
もう何も要らないから。
もう救おうとしなくていいから。
もう見棄ててくれていいから。
友よ。
お前が私を友だと思うなら、
どうか、私を滅ぼしてくれ。
どうか、私を頃し尽くしてくれ。
_
569: 2013/02/10(日) 22:27:26 ID:2PoCuJUc
彼の手は掴み取るために。
彼の手は振り払うために。
交錯し、衝突し、互いの意志が絡み合う。
武人ではなく、友として。
武人ではなく、王として。
諦めない男と、
諦めた男とが、
ただひたすらにぶつかり合う。
何故だ。
何故お前はそうまでして、私を――、
農家「気に入らねえんだよ、このヘタレ野郎」
それはシンプルな答えだった。
570: 2013/02/10(日) 22:28:00 ID:2PoCuJUc
農家「気に入らねえからブン殴る」
農家「許せねえからブチ頃す」
農家「ムカつくからブッ飛ばす」
農家「どんだけ理由を後付けしようが、俺のやり方はそれだけだ」
空中に立つ。
用いる魔法は空間固定。
ただ何もない場所に見えない足場を設けるための、誰でも使える基本魔法。
それは農家が使う、たった三つの魔法のうちの一つ。
農家「『空間固定、装填(セット)』」
ディレイを利用し、魔力の溜めを最小限に。
右腕は殴るため。
左腕は掴むため。
農家「今度は逃がさねえ」
571: 2013/02/10(日) 22:28:32 ID:2PoCuJUc
蠢く闇の塊のような魔人を見据え、農家はその拳を振り落す。
どこから絞り出されているのか。獣のような咆哮が耳を劈き、巨大なその身が大地に沈む。
農家「――『解放(エミット)』!」
同時に空間固定魔法を発動。
狙いは倒れた覇王の四肢。
農家が内包する、魔王にも匹敵するといわれる強大な魔力が、ただ覇王を止めるためだけに放たれる――。
「■■■■……!」
覇王の動きが、止まった。
農家「そら行け、ガキども」
_
572: 2013/02/10(日) 22:29:13 ID:2PoCuJUc
何故だ。
何故諦めてくれない。
私には最早何もないのに。
国も、
民も、
夢も、
志も。
何もかも間違えて、何もかも失って、
ただ滅ぶためにここにいる私を、
何故諦めてくれないのだ。
何故眠らせてくれないのだ。
何故逃げさせてくれないのだ。
やめてくれ。
頼むから。
私は、
573: 2013/02/10(日) 22:29:48 ID:2PoCuJUc
――私は、もう氏にたいのに……。
姫様「父上ぇ!!」
……どうして、来てしまったんだ。
_
574: 2013/02/10(日) 22:36:20 ID:2PoCuJUc
引用: 農家「魔王とかフザけんな」
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります