1: 2012/01/16(月) 00:54:39.32 ID:ckBIGJs1O
エルルゥ「私はエルルゥ、薬師見習いをしています。倒れていた貴方の手当てをしていたんです」

ジャギ「……そうか」

エルルゥ「良ければ、貴方の名前……聞かせてくれませんか?」

ジャギ「名前か? 俺は……」



ジャギ「おいお前、俺の名を言ってみろ」

エルルゥ「え、いや、わかりませんし」

2: 2012/01/16(月) 00:57:56.10 ID:ckBIGJs1O
ジャギ「名前、名前……」

エルルゥ「もしかして、記憶喪失とか……」

ジャギ「ぐぬ……自分の事を何一つ思い出せん」


ジャギ「いや……弟が憎くて仕方ないって事だけは覚えている!」

エルルゥ「それは忘れて良かったんじゃ……」

6: 2012/01/16(月) 01:05:00.27 ID:ckBIGJs1O
エルルゥ「その仮面は取れないんですか?」

ジャギ「そんな事ないと思うが……というか、何だこの鉄仮面?」

エルルゥ「まだ貴方が寝ている時に、お顔を拭く為に脱がそうとしたんですけど、手をかけたら物凄く暴れて……」

ジャギ「別に仮面を取るぐらいどうって事……」グッ

ズキッ

ジャギ「ぐあっ!?」

エルルゥ「どうしました!?」

ジャギ「顔がッ!? 痛ぇぇ!!」

8: 2012/01/16(月) 01:07:19.34 ID:ckBIGJs1O
……

ジャギ「はぁ……はぁ……」

エルルゥ「大丈夫ですか?」

ジャギ「すまん、仮面は取れなさそうだ……」

エルルゥ「いえ、無理を言ってすいません……」

ジャギ「……」

エルルゥ「……」



トゥスクル「騒がしいと思ったら……気がついたみたいだね」

エルルゥ「おばあちゃん」

10: 2012/01/16(月) 01:12:07.45 ID:ckBIGJs1O
トゥスクル「トゥスクル。エルルゥの祖母で薬の師じゃ」

ジャギ「俺は……」

エルルゥ「おばあちゃん、この人記憶がないみたいなの」

トゥスクル「なんと。それは不便じゃな……」

トゥスクル「ならばハク……」

ジャギ「……」

トゥスクル「ンンッ! ジャギオロ、今日からジャギオロと名乗るがよい」

ジャギオロ(なんと……南斗…………)

エルルゥ「これからよろしくお願いしますね、ジャギオロさん!」

12: 2012/01/16(月) 01:16:18.04 ID:ckBIGJs1O
ジャギオロ「で、さっきから覗き見しているガキの紹介はしてくれないのか?」

アルルゥ「!」ササッ


アルルゥ「……」チラッ

エルルゥ「アルルゥ! 出てきてご挨拶なさい!」

アルルゥ「や!」テテテ

エルルゥ「もう! アルルゥったら!」

トゥスクル「すまんな。人見知りが激しくて」

ジャギオロ「気にしてねぇよ。あんま興味ねーし」

16: 2012/01/16(月) 01:23:37.01 ID:ckBIGJs1O
……

エルルゥ「肩お貸ししますか?」テクテク

ジャギオロ「いらねーよ」テクテク

「おーい! エルルゥ!」

エルルゥ「あ! テオロさんにソポク姉さん!」

ソポク「こんにちはエルルゥ」

テオロ「そっちは怪我してたアンチャンだな? もう歩いて大丈夫なのか?」

ジャギオロ「……知り合いか?」

エルルゥ「村の仲間のテオロさんとソポクさん。この村ではみんな家族みたいに仲良く暮らしているの」

ジャギオロ「平和なんだな」


ドドドドド

テオロ「……それが案外そうでもないんだよ」

19: 2012/01/16(月) 01:29:38.73 ID:ckBIGJs1O
「ヒャッハー! 徴収だー!」

「さっさと作物を出しな!」

トゥスクル「税ならこの間払ったじゃろ! とぼけた事言っとらんで、さっさと帰りなさい!」

ヌワンギ「ところがどっこい、今期から増税する事が決まってんだ!」

トゥスクル「増税じゃと!?」

ヌワンギ「ああ、領主である俺の親父、ササンテが正式に決定した事だ。痛い目見たくなかったら、さっさと出す物出しな!」

23: 2012/01/16(月) 01:35:36.41 ID:ckBIGJs1O
エルルゥ「ヌワンギ……」

ヌワンギ「ようエルルゥ! 会いたかったぜ!」

エルルゥ「どうして……こんな事するの? 村の暮らしが豊かじゃない事ぐらい、知ってるでしょ」

ヌワンギ「決まりだからな。この村に限らず、親父の領主の村は全部増税している」

ヌワンギ「いくらエルルゥの村とはいえ、無条件で免除って訳にゃいかねぇんだ」


24: 2012/01/16(月) 01:40:05.91 ID:ckBIGJs1O
ヌワンギ「貧しいのは嫌だろ? 辛いよな?」

ヌワンギ「だったら俺と一緒に来い! 最高の贅沢をさせてやる!」ガシッ

エルルゥ「イヤッ! 離して」

トントン

ヌワンギ「なんだ! 今は取り込み中……うわ!?」

ジャギオロ「その汚ぇ手を離せ」

エルルゥ「ジャギオロさん!」

27: 2012/01/16(月) 01:44:07.36 ID:ckBIGJs1O
ヌワンギ「なんだコイツ……変な仮面被りやがって!」

「オウオウ、なんだテメェ!」

「ヌワンギ様に逆らうのか?」

ジャギオロ「もう一度だけチャンスをやる。その汚ぇ手を離しやがれ!」

ヌワンギ「この野郎! 言わせておけ……ばわっ!?」ビクッ

ピキーンッ

ヌワンギ「あがが!? 手が……勝手に!」グググッ

ジャギオロ「氏にたくなかったら、二度とエルルゥに触れるな!」

29: 2012/01/16(月) 01:48:18.27 ID:ckBIGJs1O
「お、おい! ヌワンギ様の様子がおかしいぞ!」

「こいつがやったのか!?」

ヌワンギ「く……! 殺せ! 何してんだ!」

「は、ハッ!」

ザザザッ

ジャギオロ「なんだ? 俺とやるのか?」コキコキ

トゥスクル「いかんジャギオロ! せっかく助かった命を投げ捨てるでない!」

31: 2012/01/16(月) 01:52:50.96 ID:ckBIGJs1O
「ヒャーッ!」

「氏ねぇー!」

エルルゥ「ジャギオロさーん!」


『なんだそりゃ? 攻撃のつもりか?』


「へ?」

ドスッ

ジャギオロ「スローすぎて欠伸が出るぜ」スタッ

「減らずくひぉ!?」ビクッ

ピキーンッ


「からだが!?」ググッ


35: 2012/01/16(月) 02:02:38.91 ID:ckBIGJs1O
「ぐ……がぁ!」グググッ

「な……何故だ!?」ググッ

ヌワンギ「お、お前ら何やってんだよ!」

ザッ

ジャギオロ「おいお前!」

ヌワンギ「ひぃ!?」ビクッ


  俺 の 名 を 言 っ て み ろ

ヌワンギ「し、知らない! お前の事なんか知らない!」

ジャギオロ「……そうか。この胸の傷が手掛かりになると思ったんだが」

36: 2012/01/16(月) 02:09:03.69 ID:ckBIGJs1O
テオロ「一体……どうなってんだ?」

ソポク「兵士の奴ら、まるで金縛りにあったみたいに動かないよ!」



ヌワンギ「ぐぇ!?」グイッ

ジャギオロ「さっき税金がどうとか言ってた気がするが……気のせいだよな?」ギロッ

ヌワンギ「は、はひい……!!」ブルッ

ジャギオロ「それでいい」ズッ

ヌワンギ「うげっ!?」ビクッ


ジャギオロ「俺の気がかわる前に失せろ! そして二度とそのツラ見せるんじゃねぇ!」

39: 2012/01/16(月) 02:15:21.39 ID:ckBIGJs1O
……

エルルゥ「あ、ありがとうございました……」

ジャギオロ「……」


ジャギオロ「すまねぇ。ついカッとなって暴力を……」

テオロ「アンチャンは悪かねぇよ! いつもいつも無理難題を押し付けてくるササンテが悪いんだ! なぁ、みんな!」

…………

テオロ「あれ……?」

トゥスクル「皆テオロと同じ気持ちじゃ。じゃが、一層ササンテからの風当たりが強くなる事を考えると……どうしても声を大にしては言えんのじゃ」

44: 2012/01/16(月) 02:20:45.32 ID:ckBIGJs1O
ジャギオロ「すまねぇ。俺のせいで、周りの村にまで被害がいくかもしれねぇ」

トゥスクル「……そうならん事を願うしかないね」




ヌワンギ「クソッ! クソッ! あの仮面野郎……俺様を見下しやがって!」ガッガッ

ヌワンギ「何がエルルゥに触れるなだ……コノッ!!」ガゴッ


――ウォォォオオオンッ――


ヌワンギ「ひぃ!? な、なんだこの鳴き声?」

48: 2012/01/16(月) 02:32:03.50 ID:ckBIGJs1O
…………

エルルゥ「隣村で氏人が!?」

テオロ「ああ。食いちぎられた氏体から察するに、森の主(ムティカパ)様の仕業みたいだ」

エルルゥ「でも、なんで急にムティカパ様が……」

トゥスクル「ムティカパ様を祀った祠が、誰かに壊されておったらしい」

エルルゥ「おばあちゃん」

ソポク「村の人間じゃないね。ムティカパ様を怒らせたらどうなるか、私達は知っているもの」

50: 2012/01/16(月) 02:40:49.01 ID:ckBIGJs1O
ジャギオロ「そんな危険な獣なら、なんで力を合わせて退治しねぇんだ?」

エルルゥ「村を襲っているのはムティカパ様の使い。もし、危害を加えたら、更に祟りが降りかかるかも……」

トゥスクル「それに、ムティカパ様の毛は鋼より硬く、槍をも通さぬ。しなやかで賢く、強靭な身体を持っておる。わしらは、嵐が去るのを待つしかない……」

ジャギオロ「……」

54: 2012/01/16(月) 02:49:33.40 ID:ckBIGJs1O
…………

ムティカパ「グルルル……」ザッ


『やっと現れおったか』

ムティカパ「!」ザッ

ジャギオロ「テメェがムティカパか。何かと思えば育ちすぎの虎じゃねぇか」

ムティカパ「グルルル……!」

ジャギオロ「来いよ化け物」スッ

ムティカパ「グガァッ!!」バッ

56: 2012/01/16(月) 02:54:38.36 ID:ckBIGJs1O
ムティカパ「ガウッ!」ブゥンッ

ジャギオロ「よッ!」ザッ

ムティカパ「グァッ!」バッ

ジャギオロ「ふッ!」スッ

ジャギオロ(はっきりと奴の攻撃が見える! 後は奴の攻撃パターンを見極め……)

ムティカパ「ガァッ!!」ブォッ

ジャギオロ「見えた!! その首貰ったァ!!」グォッ


――ガギィンッ


ジャギオロ「なにっ!?」

58: 2012/01/16(月) 03:00:34.65 ID:ckBIGJs1O
ムティカパ「ギャオッ!!」グァッ

ジャギオロ「ぐあぁッ!?」ズザァァッ


ジャギオロ「ぐうぅ……!?」ブシャッ

ジャギオロ(硬いとか……そういう問題じゃねえ! 俺の拳が当たる瞬間、奴の体毛が俺の攻撃を防ぎにきた!!)

ムティカパ「ガウァッ!」バッ

ジャギオロ「ちィ!!」ゴロゴロッ


ジャギオロ「はぁ……はッ!」ダラダラ

61: 2012/01/16(月) 03:07:38.73 ID:ckBIGJs1O
ムティカパ「グルルル……ッ」ジリッ

ジャギオロ「……ッ、はぁ……後はゆっくり追い詰めるってか? 確かにそこらの肉食獣とは違って、慎重さを兼ね備えてるみてぇだな」ジリッ

ジャギオロ「あんま使いたくなかったが……背に腹は代えられんな」チラッ

ムティカパ「ガァッ!!」グァッ

フッ

ムティカパ「!?」ザッ キョロキョロ

バチャァッ

ムティカパ「ギャウ!?」


『丈夫が自慢の毛皮みてぇだが、耐火性はどうかな?』


ボウッッ

64: 2012/01/16(月) 03:14:05.29 ID:ckBIGJs1O
メラメラメラメラ……!

ムティカパ「ギャウ!? ギャオンッ!!」ゴロゴロッ

ジャギオロ「いかに毛皮が硬くとも、液体ばかりは防げまい! どう足掻こうと貴様は助からんわ!」

ムティカパ「ギィィ……ギャウァッ!!」ダッ

ジャギオロ「! 逃がすか!」タタッ


…………

65: 2012/01/16(月) 03:16:06.78 ID:ckBIGJs1O
アルルゥ「……おしOこ」テクテク

エルルゥ「はいはい……」

エルルゥ「……? あれ、ジャギオロさんがいない」

アルルゥ「おしOこ?」

エルルゥ「そう、なのかな……」



エルルゥ(……嫌な予感がする)

66: 2012/01/16(月) 03:20:58.82 ID:ckBIGJs1O
……

ジャギオロ「ちッ、見失ったか」

ジャギオロ(どうする……ムティカパを狩るには絶好の機会だが、見知らぬ森での深追いは危険だ)

ジャギオロ(しかも相手は手負いの虎。捨て身になると何をするかわからん)


ベチャッ

ジャギオロ「!」

ムティカパ「グルルル……ッ!」ビショ…

69: 2012/01/16(月) 03:28:43.74 ID:ckBIGJs1O
ジャギオロ(体毛が水を吸って垂れ下がっている! 奴はもう、さっきのような防御はできない!)

だが、それは同時に、防御を捨てた必殺の一撃を繰り出す事を意味していた


ジャギオロ「ハァァァ……!」スススッ


ムティカパは、ジャギオロと相対し氏を覚悟した!!


ムティカパ「…………ッ」ギラッ


そして、ジャギオロも、ムティカパを仕留めるには捨て身の一撃を加えなければならぬ事を悟っていた!!

72: 2012/01/16(月) 03:34:19.86 ID:ckBIGJs1O
ジャギオロ「…………」

ムティカパ「…………」



――――ピチョン



ムティカパ「グァァアッッ!!」ゴウッ
              ジャギオロ「北斗羅漢撃!!」バババッ



―――ガガガガガガガガガッッ―――



74: 2012/01/16(月) 03:37:15.32 ID:ckBIGJs1O
エルルゥ「くぅ!?」ビリビリッ

エルルゥ(何か……力と力がぶつかり合っているような……)

アルルゥ「おねーちゃん……」ギュ

エルルゥ「大丈夫。大丈夫だから……」ギュ

アルルゥ「ん……」


アルルゥ「!」ビクッ

エルルゥ「どうしたの?」

アルルゥ「しんじゃう」

エルルゥ「氏ぬ? ジャギオロさんが!?」

81: 2012/01/16(月) 03:46:33.94 ID:ckBIGJs1O
アルルゥ「こっち!」ピョンピョン

エルルゥ「ちょっと! 待ってって……」

エルルゥ「!? ジャギオロさん!」タタタッ


ジャギオロ「え……るるぅ……?」

エルルゥ「しっかりして下さい!」

ジャギオロ「……ムティカパは」

エルルゥ「え……」

ジャギオロ「ムティカパは氏んだか……?」

エルルゥ「……はい」

ジャギオロ「そう……か」

ジャギオロのすぐ側には、血まみれになったムティカパの亡骸があった

その氏顔は、とても獣とは思えない程安らかで、あるいは、強敵と氏力を尽くして戦えた事への満足感が表れていたのかもしれない

82: 2012/01/16(月) 03:47:29.96 ID:ckBIGJs1O
ちょっと休憩します

86: 2012/01/16(月) 03:51:05.99 ID:ckBIGJs1O
シナリオうろ覚えだからちょっと読み返してくる
インカラ倒すぐらいまでは頑張りたいけど、どうだろ

95: 2012/01/16(月) 04:08:52.42 ID:ckBIGJs1O
……

トゥスクル「馬鹿者! ムティカパ様と戦うなど、無茶な事をしよって!」

ジャギオロ「……傷に響くだろうが」

トゥスクル「生きてるのが不思議なぐらいじゃ! 痛くて泣き叫ぶぐらいが丁度ええわい!」ベシッ

ジャギオロ「いっっってぇぇえ!?」

トゥスクル「フンッ」スタスタ

ジャギオロ「クソッ! あのババア!」

96: 2012/01/16(月) 04:14:23.78 ID:ckBIGJs1O
テオロ「まぁまぁアンチャン、心底心配してるからこそ、村長はアンチャンの行動が許せねぇんだよ」

エルルゥ「そうですよ。ジャギオロさんも、もう私達の家族なんですから、命を投げ捨てるような事はしないで下さい」

ジャギオロ「…………善処する」

エルルゥ「約束して下さい」

ジャギオロ「お前、結構頑固なのな」

エルルゥ「おばあちゃんの孫ですから」

ジャギオロ「ケッ」



エルルゥ「これは私を泣かせた分です」ベシッ

ジャギオロ「あいたぁッ!?」

テオロ「見せつけてくれるねぇ!」

98: 2012/01/16(月) 04:16:57.34 ID:ckBIGJs1O
ジャギオロ「ったく、見舞いに来るのはいいが、これじゃあオチオチ寝れやしねぇ……」

ジャギオロ「ふぁ…………やっと寝れる」





トテトテ

ジャギオロ「……ぐぅ」

トテトテトテトテ

モゾ

ジャギオロ「……んぁ?」

ジャギオロ「……ぐぅ」

99: 2012/01/16(月) 04:19:43.02 ID:ckBIGJs1O
ジャギオロ「くかー」

『アルルゥー! どこいったー!』

ジャギオロ「すぴー」

『アルルゥー! 出てきなさーい!』

ジャギオロ「……うるさいな」モゾ

ムニュ

ジャギオロ「あ? なんだ?」バサッ

アルルゥ「しーっ」

ジャギオロ「は!? アルルゥ?」

100: 2012/01/16(月) 04:22:42.89 ID:ckBIGJs1O
ジャギオロ「なんで俺の布団に?」

アルルゥ「……かくれんぼ」

ジャギオロ「…………そ、そうか」


『アルルゥー! いい加減にしなさい!!』

『ムティカパを生かしておくのがどれだけ危険かわかっているだろ!』


ジャギオロ「ムティカパ……?」

アルルゥ「知らない」ボテ

ジャギオロ「…………」

103: 2012/01/16(月) 04:29:07.61 ID:ckBIGJs1O
アルルゥ「あー!?」ヒョイ

コロン

「ニャーウ」

アルルゥ「ムックル!」

「ニャー!」

ジャギオロ「ムティカパの子供か……」

「ニャー」ペロペロ


ジャギオロの脳裏に、氏闘の夜が蘇る

最後の一撃を放つ寸前、ムティカパはジャギオロの瞳をじっと見つめていた

それは、先までの「読み合い」ではなく、目と目……心で交わす「会話」のように思えた

幾重も、幾重にも牙と拳を交わした二人には、いつしか友情に近いものが芽生えていたのかもしれない

105: 2012/01/16(月) 04:33:36.22 ID:ckBIGJs1O
エルルゥ「アルルゥー! アルルゥー!」

ソポク「アルルゥのやつ、どこにいっちまったんだい!」


ジャギオロ「アルルゥならここだ」

テオロ「アンチャン! それにアルルゥも!」

エルルゥ「アルルゥ! 探したんだからね!」

アルルゥ「……」

テオロ「さ、ムティカパをこっちに渡すんだ」

109: 2012/01/16(月) 04:44:06.77 ID:ckBIGJs1O
アルルゥ「……」スッ

ムックル「ニャー!」

テオロ「いい子だ」

ヒョイ

テオロ「あ!」

エルルゥ「ジャギオロさん!?」

ジャギオロ「おいムックル! 俺の名を言ってみろ!」

ムックル「ニャーン」

ジャギオロ「そうだジャギオロだ。みんな聞いたか? こいつは俺の名をちゃんと言えた。家族と言っても過言じゃない」

テオロ「あ、アンチャン!」

ジャギオロ「村の仲間は家族同然。家族は助け合わないとな!」

アルルゥ「あわないと!」

ムックル「ニャーン!」

114: 2012/01/16(月) 04:51:59.25 ID:ckBIGJs1O
テオロ「む、村長ぁ」

トゥスクル「……ジャギオロ、ムティカパと共存できると思うかえ?」

ジャギオロ「こんだけ懐いてんだ、大丈夫だろ」

ジャギオロ「それよか、こいつがデカくなったら荷駄を引かせたり、ササンテの兵を追い返したり、色々使えそうだ」

ソポク「ま、まぁ、ウォプタルよか力はありそうだね」

ジャギオロ「力はいくらでも欲しいんだ。可能性は全て拾う。駄目だったらまた倒すまでだ」

アルルゥ「だめ」

ジャギオロ「じゃあお前がちゃんと躾ろよ」

アルルゥ「わかった」

116: 2012/01/16(月) 05:01:09.74 ID:ckBIGJs1O
……

ジャギオロ「確かに育ちが悪いな」

テオロ「だろ? 開墾した頃は結構順調だったんだが」

ジャギオロ「だが俺は農業の知識なんかねぇぞ。期待はするな」

テオロ「そう言わずに! 後で一杯つけてやるから! 頼んだぜ」

ジャギオロ「…………はぁ、土なんか見ても何もわからねぇよ」

118: 2012/01/16(月) 05:09:46.67 ID:ckBIGJs1O
ジャギオロ「芋の育て方なんかわからねぇしなー」ゴロンッ

ジャギオロ「……というか、俺には弟が憎いという記憶しかないんだよな」

ジャギオロ「俺は…………」



エルルゥ「ジャギオロさん!」

ジャギオロ「……エルルゥか」

エルルゥ「お昼、持ってきました」

119: 2012/01/16(月) 05:13:24.13 ID:ckBIGJs1O
エルルゥ「畑の調査は捗ってますか?」

ジャギオロ「いや、さっぱりだ。農業に関してはズブの素人だしな」モグモグ

エルルゥ「そうですか……」

ジャギオロ「……」

エルルゥ「……」



エルルゥ「あの、この前はありがとうございました」

ジャギオロ「この前?」

エルルゥ「あの、ヌワンギと揉めた時……」

ジャギオロ「誰だヌワンギって」

エルルゥ「……」

122: 2012/01/16(月) 05:21:23.83 ID:ckBIGJs1O
ジャギオロ「ああ、あのへんなの頭に巻いた奴か」

エルルゥ「ジャ、ジャギオロさん!」

ジャギオロ「随分とエルルゥに執着してるみたいだったな」


エルルゥ「……ヌワンギは私の幼なじみで、一緒にこの村で育ったんです」

ジャギオロ「あのひねくれ者がか」

エルルゥ「昔は真っ直ぐで、明るくて、いつも私を笑顔にしてくれてました」

ジャギオロ「……」

125: 2012/01/16(月) 05:29:04.51 ID:ckBIGJs1O
エルルゥ「ササンテの跡取りが氏んだ事で、ヌワンギは城に呼び戻されました」

ジャギオロ「そして、歪んだ」

エルルゥ「…………」



ジャギオロ「ヌワンギに帰ってきて欲しいか?」

エルルゥ「え……」

ジャギオロ「今でも、ヌワンギとヤマユラで暮らしたいと思っているか?」

エルルゥ「…………はい」

ジャギオロ「そうか」

126: 2012/01/16(月) 05:37:43.85 ID:ckBIGJs1O
…………

オボロ「遠路度々申し訳ありません」

トゥスクル「いいんだよ、孫に会いに来るようなもんじゃて」

オボロ「そう言っていただけると助かります」

ギィ

オボロ「ユズハ、トゥスクル様がお見えになった」

トゥスクル「ユズハ、こんばんわ。どうだい? 身体の具合は」

ユズハ「こんばんわトゥスクル様。おかげ様で最近は大分いいの」

ユズハ「……ところで、後ろの方はどちら様でしょう?」

オボロ「なに!?」バッ


ジャギオロ「……フフ」スッ

129: 2012/01/16(月) 05:46:39.89 ID:ckBIGJs1O
オボロ「貴様何者だ!」チャキッ

トゥスクル「ジャギオロ、いつから気づいておったんじゃ?」

ジャギオロ「最初からだな。バアさんがどこに行こうが興味が無いから放っておくつもりだったが、事情が変わった」

オボロ「……知り合いなのですか?」

トゥスクル「ジャギオロ、ウチの居候じゃ。わしの患者のユズハ、その兄のオボロじゃ」

130: 2012/01/16(月) 05:50:37.98 ID:ckBIGJs1O
ユズハ「ユズハと申します。ジャギオロ様、以後お見知り置きを」

ジャギオロ「ご丁寧にどうも。ユズハの方が兄貴より勘がいいみたいだな」

オボロ「なんだと!」

トゥスクル「さあ診察を始めるよ。さっさと出て行きな」

オボロ「……ほら、出ろ」

ユズハ「あ……」

132: 2012/01/16(月) 05:57:58.30 ID:ckBIGJs1O
ジャギオロ「目が見えねぇのか」

フォンッ

ジャギオロ「あぶねぇな」スッ

オボロ「ユズハの事を口にするな。次口にしたら……頃す」

ジャギオロ「わかったわかった。カッカするな」

オボロ「……今日のところはトゥスクル様に免じて見逃してやる。さっさと出ていけ」

ジャギオロ「そうもいかん。まだ用事が済んでないからな」

オボロ「こっちはお前に用などない」

ジャギオロ「ケナシコウルペの悪政について調べて欲しい」

オボロ「……なんだと?」

133: 2012/01/16(月) 06:05:35.63 ID:ckBIGJs1O
ジャギオロ「ケナシコウルペの皇……インカラだっけか。あいつとササンテ、以下腹臣を洗い出してくれ」

オボロ「俺の知った事ではないな。さっさと出ていけ」クル


ジャギオロ「妹に光を与えたくはないか?」


オボロ「!!」

ジャギオロ「聞くのはタダだ。全て聞いてから判断しても遅くは」


ヒュオッ

シュンッ ビッ


ジャギオロ「……」ザッ

オボロ「軽々しく……希望を口にするなッ!!」

134: 2012/01/16(月) 06:16:15.98 ID:ckBIGJs1O
オボロ「お前にわかるか! 生まれつき万病を患っているユズハの苦しみが! 治療法など無いと知らされた時の絶望が!」

ジャギオロ「わからねぇな。何せ絶望した事がねぇからよ」

オボロ「貴様……ッ!!」ブチッ

ドリィ・グラァ「若様!?」

オボロ「ドリィ、グラァ、下がっていろ! やはりこいつは生かしておけん!」

ジャギオロ「妹の前に、まずテメェの性根を直す必要があるな……!」スッ

136: 2012/01/16(月) 06:25:28.60 ID:ckBIGJs1O
オボロ「……殺!」タンッ

フォンッ ビュッ

タッ シュンッ ピッ ヒュンッ


ザッ

ジャギオロ「……速いな」ツー

オボロ「大口叩いた割に、手も足も出ないか!」ススッ

ジャギオロ「いや、指ならとうに出している」

オボロ「指だ……?」

ビキーンッ

オボロ「なっ!? あげぇ!!」ギギ

137: 2012/01/16(月) 06:33:55.59 ID:ckBIGJs1O
ドリィ「わ、若様!?」

グラァ「一体どうしたんです!?」

オボロ「目がぁ!! 光が!?」ガクッ

ドリィ・グラァ「貴様! 若様に何をした!」

ジャギオロ「俺の話を信用してもらうのには、これが一番速いだろうと思ってな」スッ

ピキーンッ

オボロ「は……! はァッ!!」

ジャギオロ「俺の話を聞いてくれるな?」

オボロ「はぁ……はぁ……」

140: 2012/01/16(月) 06:42:42.42 ID:ckBIGJs1O


ジャギオロ「落ち着いたか?」

オボロ「……フンッ」

ジャギオロ「反発する力があるなら十分だな。本題に入るぞ」


ジャギオロ「俺の狙いは、ケナシコウルペ悪の枢軸を抹頃する事だ」

オボロ「なんだと!? 皇だけでなく、全員頃すというのか!?」

ジャギオロ「腰巾着程度なら、首脳陣が氏ねば自然消滅するだろうが、諸悪の根元はそうもいかん」


ジャギオロ「手心を加えるつもりはない。禍根は全て断つ……!」

142: 2012/01/16(月) 06:50:35.70 ID:ckBIGJs1O
オボロ「だが、インカラ達を頃した後はどうするんだ。また、同じように悪漢が皇になるやも知れぬぞ」

ジャギオロ「その為に、お前にはインカラ派の調査と同時に、反インカラ派の洗い出しも頼みたい」

ジャギオロ「と言っても、内情を探っていれば、おのずと分かる事だが」

グラァ「その反インカラ派を」

ドリィ「次の首脳陣に据えるんですね」

ジャギオロ「そうだ」

オボロ「できるのか?」

ジャギオロ「駄目ならまた潰す」

オボロ「アンタ、馬鹿だろ」

ジャギオロ「お前には言われたくねぇよ」

143: 2012/01/16(月) 07:06:50.47 ID:ckBIGJs1O
ジャギオロ「報酬はユズハの治療だ。期限は14日。以上だ」

オボロ「14日!? いくら何でも短すぎる! 人間関係なんて、そう簡単に浮かび上がってくるもんじゃない」

ジャギオロ「14日で何とかしろ」

オボロ「クッ……わかった! やりゃあいいんだろ!」

ジャギオロ「わかればいいんだ」


ジャギオロ「では、俺は帰る」

オボロ「待て! なんでアンタはこんな事をしようと思ったんだ?」

ジャギオロ「……」



ジャギオロ「今の世界が気にくわない。それだけだ」

1: 2012/03/26(月) 00:00:58.16 ID:RkUPf8OCO
前回のあらすじ

重傷を負って倒れていたところを村娘エルルゥ達に助けられた鉄仮面の男
記憶を失った男は、村長トゥスクルから「ジャギオロ」という名前をもらい、ヤマユラという小さな村で生活を始める

祠を壊された事に怒った大型肉食獣ムティカパを、ジャギオロが激闘の末に撃破
再び村に平穏が訪れるかと思ったのも束の間
ヤマユラ周辺の小村に重税が敷かれる事となった……

4: 2012/03/26(月) 00:09:58.09 ID:RkUPf8OCO
……

トゥスクル「ユズハ、元気しとったか?」

ユズハ「こんばんは、トゥスクル様。おかげ様で最近は本当に調子がいいんです」

ジャギオロ「ようユズハ、元気そうだな」

ユズハ「ジャギオロ様っ」ピク

オボロ「挨拶は済んだろ。さっさと来い」

ジャギオロ「へいへい。んじゃなユズハ」


ユズハ「あ……」

7: 2012/03/26(月) 00:16:18.52 ID:RkUPf8OCO
オボロ「ユズハに近づくなとあれほど!」

ジャギオロ「挨拶しただけじゃねーか。肝の小せぇ野郎だな」

オボロ「なにい!」

ドリィ「若様、抑えて下さい!」

オボロ「離せドリィ!」

ジャギオロ「で、ケナシコウルペの内情は」

グラァ「はい、これにまとめてあります」

オボロ「グラァ!」

ジャギオロ「でかした」

オボロ「約束! 絶対に守ってもらうからな!」

9: 2012/03/26(月) 00:31:13.17 ID:RkUPf8OCO
ジャギオロ「ユズハの目の治療は、こいつに目を通してからだ」

オボロ「っ! ……さっさと読め!」

ジャギオロ「そうさせてもらおう」ペラ



ジャギオロ(ケナシコウルペ、皇インカラによる独裁が続く国……)

ジャギオロ(…………行政はほとんど機能していないな。インカラのやりたい放題でよく今日まで生き残れたものだ)

ジャギオロ(……! 侍大将ベナウィ、か。こいつが実質)



ガシャーン


ジャギオロ「!」

オボロ「なんだ!?」

11: 2012/03/26(月) 00:36:27.83 ID:RkUPf8OCO
ユズハ「ゴホッ! ゴホッ!」ベチャッ

オボロ「ユズハ……!? トゥスクル様!」

トゥスクル「水と布を用意しな! ユズハを助けたくば、兄のお前がしっかりするんだよ!」

オボロ「! はい……!」

オボロ「ドリィグラァ! 布を用意しろ!」タタッ



トゥスクル「アンタも見てないで手伝いな!」

ジャギオロ「……」

12: 2012/03/26(月) 00:40:31.00 ID:RkUPf8OCO
ユズハ「……ッ ァあ……!」ガクガク

ジャギオロ「……」スッ

ズグッ

ユズハ「ぅ!?」ビクッ

トゥスクル「これ! ジャギオロ!」ガタッ

ジャギオロ(気の流れに淀みが出来ている……)


オボロ「トゥスクル様、布を……!? 貴様! ユズハに何をしているッ!」ダッ

バキッ

ジャギオロ「……ッ」

14: 2012/03/26(月) 00:47:02.13 ID:RkUPf8OCO
バキッ ドカッ

ジャギオロ「……ッ、く……っ」ガスッ


ジャギオロ(経絡が滅茶苦茶だ……これだけ気が体内でうねっていれば、普通なら秘孔を突くまでもなく絶命するだろう)

ジャギオロ(ユズハとオボロ、か……面白い!)


オボロ「離さぬならその腕切り落として」
ズグッ

オボロ「っぐ!?」ビクッ

ジャギオロ「ギャアギャアうるせぇんだよ!」

16: 2012/03/26(月) 00:52:45.98 ID:RkUPf8OCO
ジャギオロ「さて、治療を始めるか」ボキボキッ

オボロ「貴様! これ以上ユズハに触れ――!?」ピキーン


 北 斗 神 拳 奥 義

残  悔  積  歩  拳


オボロ「あ!? 足が……勝手に!!」ヨタヨタ

ドリィ「若様!?」グラァ「若様!?」

ジャギオロ「お前は外で待ってろ」

オボロ「ゆ、ユズハー!!」ヨタヨタ

19: 2012/03/26(月) 01:01:30.55 ID:RkUPf8OCO
<ウオー!! ユズハー!!

ジャギオロ「うるせぇ野郎だ……」

ユズハ「ゼェ……ゼェ……」

トゥスクル「ジャギオロ、何をするつもりじゃ」

ジャギオロ「なに、ちょいと血行を良くしてやるだけだ」ズグッ

ユズハ「ぅぁ……!」ビクッ

トゥスクル「……っ」


ジャギオロ(……ッ、思ったより複雑だ。もたもたしてるとユズハの体力が保つか……)

21: 2012/03/26(月) 01:09:20.71 ID:RkUPf8OCO
…………

ユズハ「く……ぅぅ……」ガクガク

ジャギオロ「鎮痛薬は」ズグッ

トゥスクル「これ以上の投与は危険じゃ。後遺症が残ってしまう」

ジャギオロ「…………」


ジャギオロ(おかしい……淀みは一通り解消したのに、気の流れが改善しねぇ)

ジャギオロ「何故…………」


――――ドクン――――


ジャギオロ「!!!!」

23: 2012/03/26(月) 01:13:00.88 ID:RkUPf8OCO
トゥスクル「どうしたんじゃ?」

ジャギオロ「心臓だ」

トゥスクル「心臓……?」

ジャギオロ「心臓の腫瘍が血液の吐出を妨げている! その所為で身体に負担が掛かっているんだ」

トゥスクル「く……」

ジャギオロ(どうする…………どうすれば…………)

24: 2012/03/26(月) 01:19:27.18 ID:RkUPf8OCO
――今の俺なら痛みすら気づかせぬうちにその心臓を抜き取ることもできる――

ジャギオロ「! 今のは……」

ユズハ「……ハ、……はっ」

ジャギオロ「……迷っている場合ではないな」


ジャギオロ「ババア! ユズハの身体を起こせ!」

トゥスクル「! いきなり何を言うかと思えば! ユズハの身体に負担をかける事は」

ジャギオロ「孫助けたかったら言うとおりにしろ!」

27: 2012/03/26(月) 01:25:34.34 ID:RkUPf8OCO
トゥスクル「よい……せ」

ユズハ「……っ、…………」

ジャギオロ「動かすなよババア。少しでも動いたらユズハは助からん」カキカキッ

トゥスクル「……わかった。ユズハを頼むぞ」

ジャギオロ「…………」



ユズハ「…ジャギ……さ…ま」



――――南斗邪狼撃――――


31: 2012/03/26(月) 01:31:59.76 ID:RkUPf8OCO
ジャギオロ「…………」スゥ…

ツプッ

ユズハ「」ガクッ

トゥスクル「ユズハ!?」

ジャギオロ「なんとか腫瘍は取り除いた。後はユズハの体力次第だ。」

ジャギオロ「こっからはお前の領分だ。頼んだぜ、ババア」

トゥスクル「こ、これ、ジャギオロ!」

32: 2012/03/26(月) 01:36:19.55 ID:RkUPf8OCO
ジャギオロ「ふー、疲れた」

オボロ「貴様! 俺の身体に何をした!」ヨタヨタ

ジャギオロ「…………ああ、忘れてた」


ズグッ

オボロ「ッ、ユズハー!!!!」ダダダ


ジャギオロ「……兄、か」

38: 2012/03/26(月) 01:53:05.20 ID:RkUPf8OCO
……

ジャギオロ「ふぁぁ……眠」


「ジャギオロさん」


ジャギオロ「!」

エルルゥ「……お帰りなさい」

ジャギオロ「……」

エルルゥ「外は冷えますよ。さ、中へ」


ジャギオロ「……何も聞かないのか?」

エルルゥ「……聞いたら答えてくれるんですか?」

ジャギオロ「……」

40: 2012/03/26(月) 01:57:10.72 ID:RkUPf8OCO
ジャギオロ「すまん、俺からは何も」

エルルゥ「いいんです。こうして……ちゃんと帰ってきてくれたから」

ジャギオロ「……」



ジャギオロ「今夜、また出掛ける」

エルルゥ「ちゃんと、戻ってきて下さいね」

ジャギオロ「ああ、約束しよう」



43: 2012/03/26(月) 02:02:38.91 ID:RkUPf8OCO
…………
……


ジャギオロ「容態はどうだ」

オボロ「まだ目は覚ましていないが、随分落ち着いた」

オボロ「以前に比べて、顔色もいい気がする。…………お前のおかげだ」

ジャギオロ「礼ならいらん。代わりにしっかり働いてもらうからな」

オボロ「…………わかっている」

44: 2012/03/26(月) 02:09:09.61 ID:RkUPf8OCO
オボロ「ドリィ、グラァ」

ドリィ「はっ」サッ

グラァ「ここに」サッ

ジャギオロ「お前達には、俺と共に皇都に行ってもらう」

ジャギオロ「狙うは暴君インカラの首!」
ドリィ「!」グラァ「!」


オボロ「…………」


ジャギオロ「覚悟はできているか?」

オボロ「……無論だ」

45: 2012/03/26(月) 02:14:57.57 ID:RkUPf8OCO
オボロ「トゥスクル様」

トゥスクル「なんだえ」

オボロ「ユズハの具合は……」

トゥスクル「お前はそればっかりだね」

オボロ「……」



トゥスクル「氏ぬんじゃないよ」

オボロ「!」

トゥスクル「目が覚めた時、お前の姿がなかったら、ユズハは悲しむ」

トゥスクル「だから、ユズハの為にも生きなさい」

オボロ「………………ユズハを、お願いします……!」バッ

46: 2012/03/26(月) 02:22:39.25 ID:RkUPf8OCO
……

衛兵「おう、止まれ!」

番兵「怪しい奴め、城に何の用」

バキッ

番兵「だべっ!?」ドサッ

衛兵「なっ!?」


「おい、お前」

衛兵「な、なんだ!」



ジャギオロ「俺の名を言ってみろ……!」


48: 2012/03/26(月) 02:34:43.33 ID:RkUPf8OCO
「賊だ! 賊が入り込んだ!」

「出会え出会えー!!」


兵士「あろっ!?」バキッ

ジャギオロ「グフフ……雑魚が!」

警備兵「な、なんだあいつ!」

巡回兵「滅茶苦茶強いぞ……」

ジャギオロ「歯ごたえのねぇ連中だ。戦う気がねぇなら失せろ!」ギラッ

警備兵「ひい!?」ビクッ


「何やってんだてめぇら!!」


ジャギオロ「!」ガキィンッ

クロウ「敵一匹に何ビビってんだ! それでも男か!」ググッ

51: 2012/03/26(月) 02:43:09.64 ID:RkUPf8OCO
ジャギオロ「ベナウィの腹心、クロウか……」ギギッ

クロウ「俺を知ってんのか、嬉しいねぇ」ギギッ

クロウ「ついでにその首も置いてってくれっともっと嬉しいんだがな!!」ブォンッ

ザッ

ジャギオロ「俺の首が欲しくば、ベナウィと二人がかりで掛かってくるんだな」

クロウ「……あ? てめぇ、ナメた口利いてっと本当に頃すぞ?」

ジャギオロ「『その』刀でか?」

クロウ「何」

バキンッ

クロウ「!」

53: 2012/03/26(月) 02:52:14.17 ID:RkUPf8OCO
クロウ(刀が!? いつの間に……)

ジャギオロ「ケナシコウルペ一の猛将と言ってもこの程度か、こりゃベナウィの方もあまり期待」


ブォンッ


クロウ「久しぶりにトサカに来ちまったぜ…………」



クロウ「生かして返さんッッ!!」ゴウッ




55: 2012/03/26(月) 03:01:59.95 ID:RkUPf8OCO
インカラ「ん……うるさいにゃも……何事でおじゃるか?」

「畏れながら聖上、城内に賊が入り込んだ模様です」

インカラ「賊? 数は」

「一人との事ですが、陽動の可能性が高いかと」

インカラ「たった一人にゃもか! さっさと片付けてこんか! うるさくてかなわんにゃも!」

「申し訳ございません。聖上の御身は、この身に代えても必ず御守りします故、ごゆるりと……」

インカラ「当然にゃも! 虫一匹通すでないぞ、ベナウィ」


ベナウィ「はっ」

56: 2012/03/26(月) 03:10:37.05 ID:RkUPf8OCO


クロウ「ぬん! ぬん! ぬんッ!」

ガキンッガキンッガキンッ

ジャギオロ「スローすぎて欠伸が出るぜ」

クロウ「ぬおおおおッ!!」グオッ

バキンッ

クロウ「……チッ」

ジャギオロ「何度やっても同じだ。貴様の剣が俺を捉える事」

ガシイッ


クロウ「刀が駄目なら力比べはどうだい?」ググ

ジャギオロ「……」ググ

58: 2012/03/26(月) 03:16:35.94 ID:RkUPf8OCO
クロウ「オラオラ!! どうした!! もう終いか!?」ググッ

ジャギオロ「……」

キラッ

クロウ「うお!?」バッ

クロウ(含み針!?)


「に、逃げたぞ!」

「追え! 兎に角追うんだ!」


クロウ「糞!!」ダッ

59: 2012/03/26(月) 03:21:49.09 ID:RkUPf8OCO
……

ユズハ「……ん」

トゥスクル「気がついたかえ?」

ユズハ「トゥスクル様……おはようございます」

トゥスクル「おはよう、ユズハ」



ユズハ「お兄様は……?」

トゥスクル「少しばかり出掛けておる。このババと一緒に帰りを待とうか」

ユズハ「はい……」

87: 2012/03/26(月) 07:48:44.45 ID:RkUPf8OCO
タタタ…

ジャギオロ「インカラの野郎はどこにいるんだ……こう広いと探しづら」

フォンッ

ジャギオロ「やっと現れおったか」スタッ

ベナウィ「今のを苦もなく避けますか……」ザッ

ジャギオロ「てめぇが出てきたって事は、この先にインカラがいるって事だな」

ベナウィ「さあ、どうですかね」チャキッ

ジャギオロ「フ……目は正直だぜ」ススッ



ガキィンッ

89: 2012/03/26(月) 08:00:51.57 ID:RkUPf8OCO
ガキィンッ キンッ ドガッ

インカラ「……にゃぷぅ、うるさにゃも」モゾ

ドゴォッ

インカラ「……誰ぞ! 誰ぞおらんか!」

兵士「……」

インカラ「遅いにゃもよ。お前、さっさ騒ぎを収めてくるにゃも」

兵士「」グラッ

ドサッ

インカラ「にゃも!?」


「残念だったな。ここには貴様の腰巾着はもういないぜ」


インカラ「な、何者にゃも!?」

オボロ「今から氏ぬお前に教える名などない!」チャキッ

91: 2012/03/26(月) 08:06:11.01 ID:RkUPf8OCO
インカラ「べ、ベナウィ! 早く来るにゃも!」ダッ

ドリィ「逃がしませんよ」ザッ

グラァ「観念しなさい」ザッ

インカラ「ぐ、ぐうぅぅ~!!」

オボロ「辞世の句はあるか?」チャキッ

インカラ「い、嫌にゃも! 氏にたくないにゃも!」

オボロ「そうか」


――シュパッ


インカラ「――――ぁ」

オボロ「確かに聞き届けたぞ」


ブシャアア……

94: 2012/03/26(月) 08:18:51.50 ID:RkUPf8OCO
ドガッ

ベナウィ「つ……」ザザザッ

ジャギオロ「寸でのところで全て受けきるか……流石は一国の侍大将」

ジャギオロ「いや、実質お前がこの国を治めているようなものだったな。何故、インカラのような愚君に尽くす」

ベナウィ「……」

ジャギオロ「それが、侍という生き物……てか? 下らねえな」


ドドドドド

ベナウィ「!」

ジャギオロ「この足音……」


98: 2012/03/26(月) 08:28:37.04 ID:RkUPf8OCO
ドドドドド

「大将ー!!」


ジャギオロ「騎兵隊……!」

ベナウィ「はっ!」バッ


クロウ「すみやせん、取り逃がしました」

ベナウィ「……正直、想像以上でした」

クロウ「大将……」



ベナウィ「騎兵隊全騎に告ぐ! これより、我らの脚で眼前の敵を蹂躙する!!」

「応ォ!!」

ベナウィ「続けえッ」パシッ

103: 2012/03/26(月) 08:39:20.92 ID:RkUPf8OCO
騎兵「でぁー!!」 騎兵「はーッ!」

ジャギオロ「ふッ! は!」サッ

クロウ「こっちだ!」ドドド

ブォンッ

ジャギオロ「くッ」バッ

ジャギオロ(こんな室内でウマを使うとは……どんな鍛え方してんだ!)

騎兵「もらった!」ドドド

ブウンッ

ジャギオロ(間髪入れずに次から次にウマが突入してきやがる!)

107: 2012/03/26(月) 08:49:46.11 ID:RkUPf8OCO
ベナウィ「どうですか、ケナシコウルペが誇る騎兵隊は」

ベナウィ「我が軍の強さは用兵に在り。人馬が一体となり、敵を呑み込む激流を生み出す」


ベナウィ「今の貴方は、滝壺に陥った一片の木葉に過ぎません」チャキッ



騎兵「吶喊!!」騎兵「吶喊!!」騎兵「吶喊!!」騎兵「吶喊!!」

ジャギオロ「四方から!?」


ベナウィ「これで――――詰みです」ダッ

クロウ「了解」ダッ

109: 2012/03/26(月) 08:58:00.21 ID:RkUPf8OCO
ジャギオロ「ハァッ!!」バッ


「そうですね。この場合、空中以外に逃げ道はありません」

ジャギオロ「!」


クロウ「この時を待っていたぜ……!」


ベナウィ「我らが心に曇り無し」

クロウ「我らが前に敵は無し!」


――――バシュウッッ――――



110: 2012/03/26(月) 09:05:51.58 ID:RkUPf8OCO
クロウ「決まったな」ザザッ

ベナウィ「……我らの勝利です」ザザッ






「馬上の不利を知れ」


クロウ「がはッ!?」ブシャッ

ベナウィ「! これは……!?」



  北 斗 七 氏 騎 兵 斬



ベナウィ「ぐ……ゴフッ!」ブシャッ

112: 2012/03/26(月) 09:13:26.23 ID:RkUPf8OCO
ベナウィ「ぐうッ!?」ドサッ

騎兵「ベナウィ様!」

ザッ

ジャギオロ「俺の勝ちだな」

ベナウィ「く……」


「まだだ……」


クロウ「まだ、俺は氏んでねぇぞ……!」ググッ


113: 2012/03/26(月) 09:23:20.91 ID:RkUPf8OCO
騎兵「クロウ様! そのお体では……」

クロウ「うるせぇ! 大将守れなくて部下が務まるか!」

ベナウィ「クロウ……」



ベナウィ「名は、なんと言うのですか」

ジャギオロ「ジャギオロだ」

ベナウィ「ジャギオロ……」

ザッ

ベナウィ「ジャギオロ殿、貴方は下らないと言いましたが、これが我らの唯一の生き方……」

ベナウィ「一度誓った忠義に殉ずる。それが、我ら侍の『ちっぽけな誇り』なのです」チャキッ

114: 2012/03/26(月) 09:33:41.55 ID:RkUPf8OCO
「暴君インカラ皇、討ち取ったァ!!!!」


ベナウィ「!!」クロウ「!!」


ベナウィ「やはり陽動でしたか……」

ジャギオロ「俺は本気で正面突破するつもりだったぞ。予想以上にてこずったが」

ベナウィ「インカラ皇を倒し、貴方はこれからどうするんですか」

ジャギオロ「俺か? 俺は帰るぞ。家族が待っているしな」



ベナウィ「……はい?」

117: 2012/03/26(月) 09:44:50.15 ID:RkUPf8OCO
ベナウィ「一国の皇を倒しておいて、何の責任も負わないつもりですか?」

ジャギオロ「何故俺が責任取らにゃならんのだ」

ジャギオロ「お前らは負けたんだ。選択の余地なぞ無いと思え」

ベナウィ「…………貴方は、何を望んでいるのですか」

ジャギオロ「甘えんな。ガキじゃあるまいし、そんな事ぐらい自分で考えろ」



ジャギオロ「強いて言えば、『二度と俺に手間掛けさせない国』を作ってもらいてぇな」

ベナウィ「……わかりました」

118: 2012/03/26(月) 09:49:46.31 ID:RkUPf8OCO
……

クロウ「負けちまいやしたね」

ベナウィ「そうですね」

クロウ「自害とかしなくていいんですかね」

ベナウィ「あの方は我らをそう簡単に氏なせてはくれないでしょう」

ベナウィ「氏にかかったこの国を、今一度立て直せ。……簡単に言ってくれますね」

クロウ「本当に、どっちが暴君だかわかんねぇっス」

121: 2012/03/26(月) 10:08:42.07 ID:RkUPf8OCO
暴君・インカラの悪政に堪えかねたケナシコウルペ家臣団は、インカラ皇に対し反旗を翻した

ケナシコウルペの侍大将・ベナウィを総大将とするこの謀反は、僅か一晩の内に収束する


夜明けと共に、ベナウィは腹心クロウを引き連れて、民衆のもとへと姿をあらわした。

「ここに約束しよう! 二度と民百姓に手間を掛けさせぬ、屈強な国を作ると!!」


皇らしからぬ発言に、民衆は少々戸惑ったが、日に日に良くなってゆく国政を目の当たりにし、次第にベナウィ皇の約束が本物であると確信するのだった……

122: 2012/03/26(月) 10:12:22.34 ID:RkUPf8OCO
……

エルルゥ「…………」


エルルゥ「……あ」

タタタ




ジャギオロ「ただい……うお!?」ボフッ

エルルゥ「……」ギュ


ジャギオロ「…………ただいま」



123: 2012/03/26(月) 10:14:52.40 ID:RkUPf8OCO
シリアスパート終わり
これだと、他のヒロイン出ない気がする

朝ご飯食べます

129: 2012/03/26(月) 10:49:10.87 ID:RkUPf8OCO
……

ジャギオロ「ぐう」zzz

エルルゥ「もうっ、帰ってきてからちょっとぐうたらしすぎですよ!」

ジャギオロ「ぐう」zzz

エルルゥ「オヤジさんも、畑はどうなってるんだって言ってましたよ!」

ジャギオロ「ぐう」zzz

エルルゥ「~~っ! もう知りませんからね!」プンプン


ジャギオロ「むにゃ」

130: 2012/03/26(月) 10:54:10.78 ID:RkUPf8OCO
……

テテテテ

ジャギオロ「すぴー」

アルルゥ「じゃぎ、おきる」ユサユサ

ジャギオロ「んがっ」zzz

アルルゥ「……む」

ムックル「にゃー?」

アルルゥ「せーのっ」


ボスンッ


\ばわっ!?/

132: 2012/03/26(月) 11:01:01.66 ID:RkUPf8OCO


ジャギオロ「おい、そこに座れ」

アルルゥ「おきた」

ジャギオロ「あんなもん誰でも起きるわ!」

ジャギオロ「ったく、これだからガキは……」ゴロン

アルルゥ「じゃぎ」

ジャギオロ「ガキは外で遊んでこい。あと、勝手に略すな」

アルルゥ「じゃぎも行く」

ジャギオロ「嫌だ」

アルルゥ「む」



ガブッ


\アッー!?/

133: 2012/03/26(月) 11:06:41.59 ID:RkUPf8OCO
ジャギオロ「あのガキチョロチョロと……どこ行きやがった?」

アルルゥ「じゃぎ」ガサッ

ジャギオロ「! バカめ! わざわざ叱られに現れるとは」

アルルゥ「がんばる」ベチッ

ドサッ


ジャギオロ「……なんだこりゃ?」

アルルゥ「ハチミツ」



ジャギオロ「蜂の巣ー!?」

ブブブブブブブブブブブブブブブブブブ


アルルゥ「がんば」

136: 2012/03/26(月) 11:09:42.26 ID:RkUPf8OCO
<ホクトセンジュサツ!!


アルルゥ「んーっ」ホッコリ

ムックル「ハグハグ」

アルルゥ「おいしい」

ムックル「にゃー!」


<ホクトラカンゲキィヤ!!


<タ、タスケテクレー!!

139: 2012/03/26(月) 11:15:09.86 ID:RkUPf8OCO
……

エルルゥ「アルルゥー! ご飯よー!」

エルルゥ「もう、どこ行ったのかしら」


アルルゥ「ただいま」テテテ

エルルゥ「もう、また遅くまで遊び回って」

アルルゥ「ん」

エルルゥ「! 蜂の巣……また危ない事して!」

アルルゥ「大丈夫」

エルルゥ「何が大丈夫なのよ」

アルルゥ「じゃぎが手伝ってくれた」

エルルゥ「ジャギオロさんが?」

アルルゥ「ね」

ムックル「にゃー」

140: 2012/03/26(月) 11:16:43.40 ID:RkUPf8OCO
エルルゥ「そういえば、ジャギオロさんは?」

アルルゥ「ねてる」

エルルゥ「……もう、本当にしょうがないんだから」








ブブブブブブブブブブブブ

ブブブブブブブブブブブブブブブブブブ


ジャギオロ「」☆

142: 2012/03/26(月) 11:28:13.17 ID:RkUPf8OCO
……

トゥスクル「……ん、脈拍も落ち着いとるな。またしばらく薬は使わず様子を見ようかね」

ユズハ「最近は、ちょっとなら立ち上がる事もできるようになったんですよ」スッ

オボロ「こら、ユズハ。あまり無理をするな」


オボロ「ここ数週間、発作らしい発作もないんです。なんと御礼を言っていいか」

トゥスクル「礼ならジャギオロに言うんだね。もっとも、そういうのを嫌がる男だが」

ユズハ「そういえば、ジャギオロ様は?」

トゥスクル「今は自宅療養中じゃ」

ユズハ「?」

143: 2012/03/26(月) 11:34:01.95 ID:RkUPf8OCO
トゥスクル「さ、今日はお休み」

ユズハ「でも、もう少しトゥスクル様とお話が……」

トゥスクル「ババならまたすぐ来るよ。それより、早く元気になって友達を作りなさい」

ユズハ「…………はい」





トゥスクル「ユズハが元気になったら、どうするんじゃ?」

オボロ「……」

145: 2012/03/26(月) 11:42:28.47 ID:RkUPf8OCO
オボロ「ユズハは身体が弱いから、俺が守ってやらないといけない…………そう、思っていました」

オボロ「でも、ジャギオロとトゥスクル様のおかげで、ユズハに快復の兆しが見えてきて、ユズハも普通の娘のように、幸せになれるんじゃないか……と思うようになりました」

トゥスクル「確かにの。ジャギオロが何をしているかは知らんが、ユズハの目も見えるように出来るらしいしの。順調にいけば、普通の子供のように生活できるようになるじゃろ」



トゥスクル「だがオボロ、勘違いしてはならんぞ」

オボロ「勘違い?」

146: 2012/03/26(月) 11:50:54.93 ID:RkUPf8OCO
トゥスクル「ユズハは今までも、ユズハなりに幸せだったと、ババは思うんじゃ」

オボロ「馬鹿な! 満足に歩く事も出来ず、目も見えぬのに幸せな訳が」

トゥスクル「たわけ!!」



オボロ「……」

トゥスクル「例え狭い部屋で一生が終わろうと、肉親の顔が見えずとも、お前みたいな妹想いの兄を持って、ユズハは十分幸せだと思っているだろうよ」

トゥスクル「純粋な子だ。皆にどれだけ想われているかちゃんとわかっているよ」

オボロ「………………」

トゥスクル「泣くんじゃないよ馬鹿息子。さ、送っていっておくれ」

オボロ「……はいっ」グシッ

147: 2012/03/26(月) 11:55:03.02 ID:RkUPf8OCO
バタン


スウッ

ジャギオロ「さて、泣き虫兄貴をちっとばかし驚かせてやろうか」コキャコキャッ

ユズハ「スゥスゥ」

ジャギオロ「フフフ……! イテテ、腫れに響くわ……」

149: 2012/03/26(月) 12:17:09.43 ID:RkUPf8OCO
その後、極悪非道なもう一人のジャギ様が出てきたり、「我が生涯に一片の悔いなし!」とか言っちゃったりする事になるが、それはまだまだ先の話……


ごめんなさい時間なくなっちゃった
ユズハが元気になって、特に国家間大戦もなくゆるゆる過ごす話にするはずでした

151: 2012/03/26(月) 12:32:33.39 ID:RkUPf8OCO
本当ごめんなさい
ラオウだったら皇の器だったけど、ジャギ様ってそういうタイプじゃないよね…

保守と支援ありがとうございました

153: 2012/03/26(月) 12:53:59.15 ID:0ibWBp/J0

ジャギって元々いい奴だったけどどうやってもケンシロウに勝てなかったり恋人殺されたからああなってしまったんだよな
外伝の設定だけど

引用: エルルゥ「気がつきましたか?」ジャギ「なんだテメェは?」