4 : 2012/02/14(火) 21:41:31.44 ID:/9oUzGc50


キョン「なぁ長門、今日が何の日か知ってるか」

昼休みの文芸部室。

長門「バレンタインデー」

キョン「あぁそうだ、で、お前は俺に渡すものとかそういうものはないのか」

長門「……」

キョン「あーなんかこう、コーヒーに合う甘いお菓子が食べたいなぁ」

長門「……」

キョン「……」



涼宮ハルヒの憂鬱 「涼宮ハルヒ」シリーズ (角川スニーカー文庫)
5 : 2012/02/14(火) 21:44:50.95 ID:/9oUzGc50


数分の沈黙の後、昼休みが終わることを告げる鐘が鳴った。

キョン「はぁ……んじゃ、教室戻るわ」

長門「……私も」

キョンと長門有希は少し急ぎ足で教室へと向かった。


6 : 2012/02/14(火) 21:46:56.92 ID:/9oUzGc50


放課後の文芸部室。

ドアを開くのも大変そうな量の荷物を抱え、古泉一樹が現れた。

古泉「どうも」

キョン「……」

古泉「挨拶くらいは返していただきたいのですが」

キョン「抱えたゴミを焼却炉にでもぶち込んでから話しかけてこい」

古泉「そうもいきません。義理、本命に関わらず、僕はきちんとお返しをするつもりですし」

古泉「そのためには1つ1つの手紙を読んで、お返事を書かねばなりません」

キョン「……忌々しい」




8 : 2012/02/14(火) 21:53:15.74 ID:/9oUzGc50


部室のドアが開き、童顔の少女が顔を出す。

朝比奈「遅れちゃってごめんなさい」

朝比奈「わぁ、すごい数のプレゼントですね!これ全部チョコレートですか?」

古泉「中身は確認していませんが、おそらくそうでしょう」

古泉「困ったものです……」

キョン「……」

古泉「朝比奈さん、今日はお茶ではなくコーヒーを頂けませんか?」

古泉「捨てるのはもったいないですから、今からみんなで食べましょうか」

キョン「このやろう……お前の貰ったチョコ何か食えるか!」

古泉「あなたに、食べて欲しい/////」

キョン「可愛く言ってもダメ!」

古泉「ふふ、ダメでしたか」

キョン「大体、女の子から1個ももらえなかったのに男から受け取れるわけがないだろうそれが冗談だったとしてもだ!」


10 : 2012/02/14(火) 21:57:52.11 ID:/9oUzGc50


朝比奈「え、キョンくん涼宮さんからもらえなかったんですか!?」

キョン「えぇ、えぇそうです、誰からも!」

朝比奈「それなら……これをもらってもらえませんか?」

朝比奈みくるは自分のかばんから1つの可愛らしい包みを取り出すと、キョンに手渡す。

キョン「……朝比奈さんから……チョコレート……」

キョン「ありがとうございます!本命チョコなんて!」

朝比奈「え?義理ですよ?市販のですし」

キョン「……」

朝比奈「あと古泉くんにもこれ、どうぞ」

古泉「あはは、ありがとうございます」


12 : 2012/02/14(火) 22:02:57.92 ID:/9oUzGc50


朝比奈「涼宮さんが変に思っても良くないと思ったので、渡すかどうするか悩んだんだけど……」

朝比奈「さすがに誰からも貰ってないんじゃ可哀想ですもんね!」

古泉「その言い方ではキョンくんが本当に可哀想ですよ、朝比奈さん」

朝比奈「え?なんでですか?」

キョン「……」


14 : 2012/02/14(火) 22:05:43.02 ID:/9oUzGc50


古泉「それでは僕もこれを」

そういうと古泉一樹はかばんから大きな包みを取り出す。

キョン「なんだこれは」

古泉「チョコレートではありません」

古泉「想いを伝えるイベントとしてのバレンタインにはふさわしくないかもしれませんが」

古泉「日頃お世話になっている方に、感謝の気持ちを伝えるのには良い日だと思いましたので」
   
朝比奈「まめですねぇ」

キョン「このクソイケメン野郎……」

そのときけたたましい音を立ててドアが開いた。

ハルヒ「やっほー!遅れてごめんなさいね!」

キョン「もうちょっと静かに入って来い。ドアが壊れるだろうが」

ハルヒ「うるさいわね、喪男。そんなだからモテないのよ」

朝比奈「こんにちは。お茶とコーヒーどちらにしますか?」

古泉「涼宮さんも、よろしかったらこのクッキー食べてください」

古泉「日頃の感謝の気持ちです」


16 : 2012/02/14(火) 22:10:02.78 ID:/9oUzGc50


ハルヒ「気が利くわねー。そこのプレゼントの山、古泉くんのね!」

ハルヒ「通りでモテるわけだわ、キョンとは大違い!」

キョン「余計なお世話だ……」

ハルヒ「ところで有希は?今日来てないの?」

キョン「そういやあいつどこだ。昼休みには部室にいたんだが……」

ハルヒ「あら、そうなの?何か予定でもあったのかしら」

ハルヒ「まぁいいわ!鶴屋さんに貰った高級そうなチョコ、みんなで食べましょう!」

その瞬間ドアが開き、長門有希が姿を表した。

長門「遅くなった」

キョン「……こいつ、チョコに釣られて……」


17 : 2012/02/14(火) 22:13:07.32 ID:/9oUzGc50


長門有希はキョンに近づき囁く。

長門「あなたに」

キョン「え?」

長門「あなたに話がある。部室に残っていて欲しい」

キョン「?とりあえず、わかった」

長門はそう言うと、定位置、ではなく、部室中央のテーブルに向かって座った。

長門「甘いチョコレートにはコーヒーが良い」

朝比奈「……あ!はい!今すぐいれます!」

長門「濃いめ、砂糖抜き、ミルクは入れて」

朝比奈「は……はぁ……」

古泉「この人は……ふふふ」

ハルヒ「さぁ!みんな揃ったし、鶴屋さんご自慢のチョコレートタイムね!」


18 : 2012/02/14(火) 22:18:11.23 ID:/9oUzGc50


テーブルの上に広げられたチョコレートの缶から、食べたいものをそれぞれ手に取っていく。

朝比奈「甘くて美味しいです!」

ハルヒ「みくるちゃん、語彙が足りないと将来グルメリポーターになれないわよ!」

キョン「局所的すぎるだろその夢」

古泉「語彙の足りないアナウンサーによるリポートは、なかなか侮れない可愛げがありますよ」

ハルヒ「確かに……。さすが古泉くんね!でもいくら何でも甘くて美味しいだけはないわよ」

古泉「甘いのはチョコレートとしてほぼ当然ですし、不味いとは言えないですからね」

ハルヒ「ブランドの名前間違えるとか、入れ物を褒めだすとかすると良いかもしれないわね!」

キョン「その無駄な妄想をそろそろやめろ」

朝比奈「あのー、さっきから気になってたんですけど……」

朝比奈「語彙って何て読むんですか?」


20 : 2012/02/14(火) 22:20:55.26 ID:/9oUzGc50


高級そうなチョコレートに満足した涼宮ハルヒは、食べ終わると帰り支度を始めた。

ハルヒ「やっぱり高いのは違うわねー」

ハルヒ「でも足りないし、古泉くんの幾つかもらって行ってもいい?」

古泉「えぇ、どうぞ。手紙だけ先に取らせてください」

ハルヒ「ありがと!それじゃ今日はもう解散でいいわ。またあしたね!」

キョン「何なんだあいつは……。バレンタインをチョコ食べるイベントと勘違いしてないか」

古泉「まぁいいじゃないですか。大きな問題も起こらず、僕は安心しました」

みくる「それじゃ私も帰りますね」

古泉「僕も失礼致します」


22 : 2012/02/14(火) 22:24:36.10 ID:/9oUzGc50


部室に残った長門有希とキョンは向かい合う。

キョン「それで、何の話だ?」

長門有希はおもむろにかばんに手を差し入れ、小さくも可愛らしくラッピングされた小箱を取り出した。

長門「……あなたに」

キョン「えっ!?」

キョン「でも昼間は……」

長門「あなたが欲しそうにしていたから、午後の時間を使って用意した」

長門「バレンタインデーが、どのようなイベントかわからなかったため調べてみた」

長門「カカオの豆からチョコレートにするのに少し時間がかかってしまった」

長門「チョコレートを手作りするのは初めてで、あなたの口には合わないかもしれない」

長門「どんな外装が流行なのかもわからなかった」

長門「参考になるものは街中にあふれていたため、良いと思われるものを選んだ」

長門「あなたに……受け取って欲しい」


24 : 2012/02/14(火) 22:27:25.85 ID:/9oUzGc50


キョン「あ……えっと……」

キョン「ありがとう」

長門「……それだけ」

最後にそういうと、長門有希はかばんを手に取り部室を後にする。

残ったキョンは小さな包みを眺めるのに飽きると、部室を出た。

キョン「あいつ、心なしか顔が赤かったような……」

キョン「……気のせい、だよな」

キョン「やれやれ……甘いチョコには濃いめ砂糖抜きミルク入りコーヒー、だったよな?」


25 : 2012/02/14(火) 22:27:56.73 ID:/9oUzGc50


今回はここで終わりなんだ


26 : 2012/02/14(火) 22:29:13.55 ID:lOYsXcd80


良い終わり方である
すばらしい