741: 2010/05/22(土) 16:35:10.29 ID:CL0euPs0
この世に神という存在が居るとして、
その神様が、こんな皮肉な結末を用意したというのならば。
(―――なんて、意地の悪いお方ですの)
ささいな少女の願いすら、簡単に打ち砕いた神様に。
そっと大切にしまいこんでいた少女の想いを、あっさりと切り捨てようとする男に。
ふざけるな、と黒子は全力で引っ叩いてやりたい気分だった。
「じゃあ、また後で」
普段以上に、はつらつとした美琴の声が空しく部屋の中に響く。
懸命に手の震えを抑えようとしている美琴が、電話の向こうの彼に悟られないようにと気丈に振舞う美琴の姿が、視界に映る。
「あはっ。もう、後戻りできないわ」
ツンツン頭の少年との電話を切った美琴が、観念したような声を漏らす。
カチカチ、カチカチ。部屋の壁時計の秒針の音が、黒子の耳に鮮明に聞こえてきた。
一人の少女の恋の終わりを告げる、無情なカウントダウンが始まった。
(……本当に、終わりにしてしまうのですね)
御坂美琴の恋が終わろうとしている。
大好きなお姉さまの、幸せに包まれていた恋が終わろうとしている。
(面白く、ありませんの)
あの類人猿のことを、美琴はようやく諦めると言ったのに、黒子はどうしても喜べなかった。
彼女が涙してしまう結末を、歓迎することなんて、黒子にできるはずがなかった。
――――だって、お姉さまの幸せが、黒子の幸せですのに。
742: 2010/05/22(土) 16:38:28.76 ID:CL0euPs0
黒子は今にでも溢れ出てしまう涙を、必氏に堪える。
(黒子は、何もできませんの。お姉さまのお力に、なれませんのっ……!)
美琴を見守ることしかできない歯痒さに、ギリッと奥歯を噛む。
所在なさげに揺らめく美琴の背中に飛びつきたくなる衝動を、ぐっと我慢する。
「お姉さま、がんばってくださいませ」
頑張って、とありきたりなことをしか黒子には言えない。
「ありがと、黒子。『失恋パーティ』だっけ? 楽しみしてるわ」
「いえ、違いますの。佐天さんが言うに『男なんて星の数! 女の恋は上書き保存よっ!』パーティだそうですの」
「プッ、何それ」
この後、主催・佐天涙子の鶴の一声により『失恋パーティ』改め、
『男のなんて星の数! 女の恋は上書き保存よっ!』パーティが開かれることになっている。
「私さ、アイツに好きだったって、言おうと思うの」と美琴が黒子らに告げた時、佐天が迷わずこう言ったのだ。
『なら、皆で馬鹿騒ぎしましょうよっ! 御坂さんは前に進むために想いを伝えるんだから、湿っぽくしちゃ駄目駄目ッ!』
美琴がどれだけ一途にツンツン頭の少年想いを寄せていたかを、
美琴が自分のことをそっちのけにして、ツンツン頭の少年の恋に協力したことを、みんな、ちゃんと知っている。
(少しでもお姉さまの悲しみがまぎれるように)
たくさんたくさん、笑おう。めいっぱい笑い飛ばそう、と三人で決めたのだ。
(黒子は、何もできませんの。お姉さまのお力に、なれませんのっ……!)
美琴を見守ることしかできない歯痒さに、ギリッと奥歯を噛む。
所在なさげに揺らめく美琴の背中に飛びつきたくなる衝動を、ぐっと我慢する。
「お姉さま、がんばってくださいませ」
頑張って、とありきたりなことをしか黒子には言えない。
「ありがと、黒子。『失恋パーティ』だっけ? 楽しみしてるわ」
「いえ、違いますの。佐天さんが言うに『男なんて星の数! 女の恋は上書き保存よっ!』パーティだそうですの」
「プッ、何それ」
この後、主催・佐天涙子の鶴の一声により『失恋パーティ』改め、
『男のなんて星の数! 女の恋は上書き保存よっ!』パーティが開かれることになっている。
「私さ、アイツに好きだったって、言おうと思うの」と美琴が黒子らに告げた時、佐天が迷わずこう言ったのだ。
『なら、皆で馬鹿騒ぎしましょうよっ! 御坂さんは前に進むために想いを伝えるんだから、湿っぽくしちゃ駄目駄目ッ!』
美琴がどれだけ一途にツンツン頭の少年想いを寄せていたかを、
美琴が自分のことをそっちのけにして、ツンツン頭の少年の恋に協力したことを、みんな、ちゃんと知っている。
(少しでもお姉さまの悲しみがまぎれるように)
たくさんたくさん、笑おう。めいっぱい笑い飛ばそう、と三人で決めたのだ。
743: 2010/05/22(土) 16:40:45.17 ID:CL0euPs0
「お姉さま、終わりましたらご連絡くださいね?
今日は私と、お姉さまと、初春と、佐天さんの四人で。騒いで、騒いで、楽しく笑って過ごしましょう」
「そーね。きっと、楽しすぎて、悲しい気持ちなんて吹っ飛びそう」
「えぇ、えぇ。吹っ飛ばしてしまいましょう」
大切なお姉様のために、大切な友人のために。
黒子たちは思い切り楽しい一時を過ごそう。御坂がつられて笑ってしまうほど、楽しい一時を。
自分たちが御坂にしてやれることは、それくらいの、小さなことだけだけど。
「いってらっしゃいませ、お姉さま」
ただ、好きでしたと伝えるためだけに、ツンツン頭の少年に会いに行く美琴を、黒子は微妙に引きつった笑顔で見送る。
「うん、黒子。いってくるね」
美琴は最初で最後の恋の戦場へと足を進めた。
(―――お待ちしておりますわ、お姉さま)
恋に幕が下りた時、御坂美琴は、悲しいと泣くのだろうか、楽しかったと笑うのだろうか。
(大丈夫ですの、黒子も、初春も、佐天さんも、待っていますから)
決して、一人ではないから。
美琴の帰りを待っている人がいるから。―――だから、
「いってらっしゃいませ、お姉さま」
すでに見えない美琴の背中に向かって、黒子はもう一度、そう言った。
744: 2010/05/22(土) 16:42:17.49 ID:CL0euPs0
すいません、3レスでした……orz
黒子も佐天も初春も、ガッツのある優しい子だと思うんだよっ!
ではでは、お邪魔しましたー。
黒子も佐天も初春も、ガッツのある優しい子だと思うんだよっ!
ではでは、お邪魔しましたー。
745: 2010/05/22(土) 18:35:23.06 ID:I9CI5XA0
乙
超電磁砲のヒロインたちは、強いって言うより健気って印象があるね
超電磁砲のヒロインたちは、強いって言うより健気って印象があるね
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