1: 2012/04/04(水) 19:27:33.90 ID:4w8jPlx/0
M=独白、傍白
×=時間経過、回想
×=時間経過、回想
2: 2012/04/04(水) 19:29:01.84 ID:4w8jPlx/0
◇向日葵の部屋・夜
閉じられたカーテンから入る込む月光で仄暗い室内。
向日葵は片隅のベッドに横たわっている。
しかし暗がりの中で、その表情までは捉えることは出来ない。
向日葵M「私が櫻子への気持ちに気づいたのはずっと前。
でも、そのときにはもう今のような関係。
中学生になれば、それも変わるかもしれないなんて考えていましたのに……」
向日葵は側にある枕をたぐり寄せ、抱きしめる。
向日葵M「……私が変わるしかありませんわ。
私が素直になれば、櫻子もきっと」
閉じられたカーテンから入る込む月光で仄暗い室内。
向日葵は片隅のベッドに横たわっている。
しかし暗がりの中で、その表情までは捉えることは出来ない。
向日葵M「私が櫻子への気持ちに気づいたのはずっと前。
でも、そのときにはもう今のような関係。
中学生になれば、それも変わるかもしれないなんて考えていましたのに……」
向日葵は側にある枕をたぐり寄せ、抱きしめる。
向日葵M「……私が変わるしかありませんわ。
私が素直になれば、櫻子もきっと」
3: 2012/04/04(水) 19:34:16.73 ID:4w8jPlx/0
◇通学路・朝
学校へ向かう生徒達の中に向日葵と櫻子の姿。
2人は隣り合って、他の生徒より幾分ゆっくりと歩いている。
――と、向日葵は口元に手をやり。
向日葵「ふわぁ……(大きなあくび)」
櫻子「向日葵、寝不足?」
向日葵「ええ。少し」
学校へ向かう生徒達の中に向日葵と櫻子の姿。
2人は隣り合って、他の生徒より幾分ゆっくりと歩いている。
――と、向日葵は口元に手をやり。
向日葵「ふわぁ……(大きなあくび)」
櫻子「向日葵、寝不足?」
向日葵「ええ。少し」
5: 2012/04/04(水) 19:38:53.08 ID:4w8jPlx/0
櫻子は、後ろ手に向日葵の前に躍り出る。
そのまま後ろ歩きをしながら。
櫻子「なんか悩み事?私で良ければ相談乗るよ?」
向日葵は少し目をそらして。
向日葵「結構ですわ。櫻子に相談してもややこしくなるだけですし」
向日葵M「(はっとして)またやってしまいましたわ……」
櫻子「なんだよ! せっかく心配してやってるのに」
そのまま後ろ歩きをしながら。
櫻子「なんか悩み事?私で良ければ相談乗るよ?」
向日葵は少し目をそらして。
向日葵「結構ですわ。櫻子に相談してもややこしくなるだけですし」
向日葵M「(はっとして)またやってしまいましたわ……」
櫻子「なんだよ! せっかく心配してやってるのに」
6: 2012/04/04(水) 19:43:16.22 ID:4w8jPlx/0
向日葵「(目を伏せ)ごめんなさい、櫻子」
櫻子「え?」
櫻子は呆気にとられ、足が止まる。
それに合わせて、向日葵もまた立ち止まる。
向日葵は表情を曇らせ。
向日葵「せっかく心配してくれているのに…私…」
俯く向日葵の顔をのぞき込むようにして。
櫻子「向日葵? ホントに大丈夫なの?」
向日葵はすぐに表情を戻し。
向日葵「ええ。昨日、少し寝付けなかっただけですわ。
さ、急ぎましょう。遅刻してしまいますわ」
向日葵は歩き出す。
櫻子「う、うん」
櫻子は腑に落ちない様子で向日葵を追う。
櫻子「え?」
櫻子は呆気にとられ、足が止まる。
それに合わせて、向日葵もまた立ち止まる。
向日葵は表情を曇らせ。
向日葵「せっかく心配してくれているのに…私…」
俯く向日葵の顔をのぞき込むようにして。
櫻子「向日葵? ホントに大丈夫なの?」
向日葵はすぐに表情を戻し。
向日葵「ええ。昨日、少し寝付けなかっただけですわ。
さ、急ぎましょう。遅刻してしまいますわ」
向日葵は歩き出す。
櫻子「う、うん」
櫻子は腑に落ちない様子で向日葵を追う。
7: 2012/04/04(水) 19:49:00.04 ID:4w8jPlx/0
◇教室・昼休み
机をくっつけて昼食をとっているいつもの4人。
しかし、櫻子は箸が動いていない。
向日葵は上の空の櫻子に気づいて。
向日葵「櫻子、さっきから全然食べてませんわよ?」
あかり「具合でも悪いの?」
櫻子「え? あ、全然! さあ、お昼お昼!」
櫻子は慌てて弁当を掻き込むが、むせてしまう。
ちなつ「そんなに慌てなくても、ご飯は逃げないよ」
向日葵「櫻子ったら。ほら、お茶ですわ」
そう言って向日葵は自分のペットボトルを差し出す。
机をくっつけて昼食をとっているいつもの4人。
しかし、櫻子は箸が動いていない。
向日葵は上の空の櫻子に気づいて。
向日葵「櫻子、さっきから全然食べてませんわよ?」
あかり「具合でも悪いの?」
櫻子「え? あ、全然! さあ、お昼お昼!」
櫻子は慌てて弁当を掻き込むが、むせてしまう。
ちなつ「そんなに慌てなくても、ご飯は逃げないよ」
向日葵「櫻子ったら。ほら、お茶ですわ」
そう言って向日葵は自分のペットボトルを差し出す。
8: 2012/04/04(水) 19:55:09.75 ID:4w8jPlx/0
櫻子「あ、ありがと」
櫻子は素直に受け取って飲む。
向日葵「大丈夫ですの?」
櫻子「うん、もう大丈夫」
櫻子は向日葵にお茶を返す。
向日葵はそれを受け取って。
向日葵「なら、よかったですわ」
微笑む向日葵に対し、櫻子の表情は暗くなる。
しかし、すぐに笑顔になり。
櫻子「ありがと。向日葵」
櫻子は素直に受け取って飲む。
向日葵「大丈夫ですの?」
櫻子「うん、もう大丈夫」
櫻子は向日葵にお茶を返す。
向日葵はそれを受け取って。
向日葵「なら、よかったですわ」
微笑む向日葵に対し、櫻子の表情は暗くなる。
しかし、すぐに笑顔になり。
櫻子「ありがと。向日葵」
9: 2012/04/04(水) 20:00:18.35 ID:4w8jPlx/0
◇生徒会室・放課後
千歳「ほな、うちらはごらく部に行ってくるわ」
綾乃「すぐ戻るけど、その間よろしくね」
と言って2人は生徒会室を出る。
向日葵と櫻子はそれを見送る。
向日葵「さ、櫻子。さっさと済ませてしまいましょう」
向日葵はプリントの束を櫻子に渡す。
櫻子「えっと、これをクラスごとに仕分ければいいんだっけ?」
と櫻子は受け取ったプリントを睨みながら尋ねる。
千歳「ほな、うちらはごらく部に行ってくるわ」
綾乃「すぐ戻るけど、その間よろしくね」
と言って2人は生徒会室を出る。
向日葵と櫻子はそれを見送る。
向日葵「さ、櫻子。さっさと済ませてしまいましょう」
向日葵はプリントの束を櫻子に渡す。
櫻子「えっと、これをクラスごとに仕分ければいいんだっけ?」
と櫻子は受け取ったプリントを睨みながら尋ねる。
10: 2012/04/04(水) 20:05:13.13 ID:4w8jPlx/0
向日葵「各クラスの、委員会の人数ごとですわよ」
それだけ答えると、向日葵は自分の作業を始める。
少しだけ不安げな表情になる櫻子。
向日葵「どうかしましたの?」
櫻子「う、ううん。何でもない」
櫻子も作業を始める。
2人はプリントの枚数を数えては分ける作業を黙々とこなす。
向日葵M「今日は疲れましたわ。ですが、いつもみたく憎まれ口を叩いていては、
変わる物も変わりませんし。
(ため息)……素直にって難しいですわね」
それだけ答えると、向日葵は自分の作業を始める。
少しだけ不安げな表情になる櫻子。
向日葵「どうかしましたの?」
櫻子「う、ううん。何でもない」
櫻子も作業を始める。
2人はプリントの枚数を数えては分ける作業を黙々とこなす。
向日葵M「今日は疲れましたわ。ですが、いつもみたく憎まれ口を叩いていては、
変わる物も変わりませんし。
(ため息)……素直にって難しいですわね」
12: 2012/04/04(水) 20:08:46.36 ID:4w8jPlx/0
× × ×
会話はなく、ただ紙が擦れる音が響く室内。
耐えかねなくなった櫻子は立ち上がり。
櫻子「ごめん! 向日葵!」
勢いのままに頭を下げる。
向日葵「え……え? 櫻子?」
目をパチクリさせる向日葵。
会話はなく、ただ紙が擦れる音が響く室内。
耐えかねなくなった櫻子は立ち上がり。
櫻子「ごめん! 向日葵!」
勢いのままに頭を下げる。
向日葵「え……え? 櫻子?」
目をパチクリさせる向日葵。
13: 2012/04/04(水) 20:12:43.65 ID:4w8jPlx/0
櫻子はそんな向日葵にお構いなしで。
櫻子「よく分かんないけどごめん! 私なんか怒らせることしちゃったんだよね?
(目をそらして)向日葵、朝から素っ気ないし……」
向日葵「別に怒ってなんていませんわよ。それに素っ気なくしてたつもりも――」
櫻子「とにかく、ごめん!」
そう言ってまた頭を下げる。
向日葵「ですから、私は怒ってなんていないですわ」
櫻子「……本当に?」
櫻子は視線だけ向日葵に向ける。
櫻子「よく分かんないけどごめん! 私なんか怒らせることしちゃったんだよね?
(目をそらして)向日葵、朝から素っ気ないし……」
向日葵「別に怒ってなんていませんわよ。それに素っ気なくしてたつもりも――」
櫻子「とにかく、ごめん!」
そう言ってまた頭を下げる。
向日葵「ですから、私は怒ってなんていないですわ」
櫻子「……本当に?」
櫻子は視線だけ向日葵に向ける。
14: 2012/04/04(水) 20:18:43.65 ID:4w8jPlx/0
向日葵「(ため息)嘘ついてどうするんですの」
櫻子「よかったぁ……(床に座り込み)私、向日葵に嫌われたんじゃないかって」
向日葵は少し赤くなって。
向日葵「そ、そんなこと、あるはずないですわ」
向日葵は櫻子に手を差し出す。
櫻子「ありがと」
櫻子はそれを握り、立ち上がる。
櫻子「よかったぁ……(床に座り込み)私、向日葵に嫌われたんじゃないかって」
向日葵は少し赤くなって。
向日葵「そ、そんなこと、あるはずないですわ」
向日葵は櫻子に手を差し出す。
櫻子「ありがと」
櫻子はそれを握り、立ち上がる。
15: 2012/04/04(水) 20:25:02.76 ID:4w8jPlx/0
櫻子「(目元を拭って)でも、怒ってないなら何で素っ気ないの?」
向日葵「だからそんなつもりでは――」
櫻子「だって、今日ノート忘れた時とか何も言わずに見せてくれたし、
おっOいって言っても無視したし」
向日葵「それは……」
向日葵は櫻子から目をそらし、俯く。
櫻子はしっかりと向日葵を見据えて。
櫻子「(語気を強めて)さっきだって、指示の内容忘れてたのに何も言わなかったじゃん!」
少しの間。
向日葵「だって……」
向日葵「だからそんなつもりでは――」
櫻子「だって、今日ノート忘れた時とか何も言わずに見せてくれたし、
おっOいって言っても無視したし」
向日葵「それは……」
向日葵は櫻子から目をそらし、俯く。
櫻子はしっかりと向日葵を見据えて。
櫻子「(語気を強めて)さっきだって、指示の内容忘れてたのに何も言わなかったじゃん!」
少しの間。
向日葵「だって……」
16: 2012/04/04(水) 20:30:30.79 ID:4w8jPlx/0
俯いたまま、向日葵はつぶやく。
向日葵「だって、私が素直になれば、きっと櫻子も素直になってくれるって。
そう思って……」
櫻子は驚き。
櫻子「え……それって」
向日葵はこぶしを握りしめ。
向日葵「私……(顔を上げて)櫻子が好きですわ!!」
みるみる向日葵の顔が赤くなる。
向日葵「昔みたいに、もっと櫻子の近くにいたいんですの!
だから……私と付き合ってください!」
向日葵は頭を下げる。
目をぎゅっと閉じ、不安げに祈るような表情。
櫻子「……ごめん」
向日葵「だって、私が素直になれば、きっと櫻子も素直になってくれるって。
そう思って……」
櫻子は驚き。
櫻子「え……それって」
向日葵はこぶしを握りしめ。
向日葵「私……(顔を上げて)櫻子が好きですわ!!」
みるみる向日葵の顔が赤くなる。
向日葵「昔みたいに、もっと櫻子の近くにいたいんですの!
だから……私と付き合ってください!」
向日葵は頭を下げる。
目をぎゅっと閉じ、不安げに祈るような表情。
櫻子「……ごめん」
18: 2012/04/04(水) 20:35:27.07 ID:4w8jPlx/0
向日葵「え……?」
向日葵が頭を上げると、櫻子はとっさに目線をそらして言葉を続ける。
櫻子「いや、その……付き合えないとかじゃなくてさ、少し、考えさせて」
向日葵「そ、そうですわよね。こんなこと、いきなり言われても困りますわよね」
向日葵は目に涙を浮かべるも、すぐ隠すように拭う。
そして感情を押し頃した声で。
向日葵「わかり、ましたわ」
櫻子は暗い表情で目をそらしたまま。
櫻子「ごめん。明日までには答え出すから……ごめん」
向日葵は無言のまま頷き、仕事に戻る。
櫻子もそれに続く。
向日葵が頭を上げると、櫻子はとっさに目線をそらして言葉を続ける。
櫻子「いや、その……付き合えないとかじゃなくてさ、少し、考えさせて」
向日葵「そ、そうですわよね。こんなこと、いきなり言われても困りますわよね」
向日葵は目に涙を浮かべるも、すぐ隠すように拭う。
そして感情を押し頃した声で。
向日葵「わかり、ましたわ」
櫻子は暗い表情で目をそらしたまま。
櫻子「ごめん。明日までには答え出すから……ごめん」
向日葵は無言のまま頷き、仕事に戻る。
櫻子もそれに続く。
21: 2012/04/04(水) 20:41:21.34 ID:4w8jPlx/0
◇古谷家・キッチン・夜
私服にエプロン姿の向日葵。
包丁を手にニンジンを切っているが、まな板からはどこかぎこちない音。
× × ×
◇生徒会室・放課後
暗い顔の櫻子。
櫻子「……ごめん」
櫻子「少し、考えさせて」
× × ×
◇古谷家・キッチン・夜
向日葵M「……まだわかりませんわ。なのに、なんで……」
涙が向日葵の頬を伝う。
私服にエプロン姿の向日葵。
包丁を手にニンジンを切っているが、まな板からはどこかぎこちない音。
× × ×
◇生徒会室・放課後
暗い顔の櫻子。
櫻子「……ごめん」
櫻子「少し、考えさせて」
× × ×
◇古谷家・キッチン・夜
向日葵M「……まだわかりませんわ。なのに、なんで……」
涙が向日葵の頬を伝う。
22: 2012/04/04(水) 20:45:23.06 ID:4w8jPlx/0
向日葵M「櫻子なら大丈夫って、必ず受け入れてくれるって……
そんな気持ちがどこかにあったのかも知れませんわ。
勝手ですわね、私――」
向日葵「痛っ……」
指の先から血が滲み出る。
すぐに楓が駆け寄ってくる。
楓「どうしたの?」
向日葵「大丈夫。指を切ってしまっただけですわ」
楓は向日葵の涙に気づき。
楓「お姉ちゃん、泣いてるの?」
向日葵は慌てて、手で涙を拭う。
そんな気持ちがどこかにあったのかも知れませんわ。
勝手ですわね、私――」
向日葵「痛っ……」
指の先から血が滲み出る。
すぐに楓が駆け寄ってくる。
楓「どうしたの?」
向日葵「大丈夫。指を切ってしまっただけですわ」
楓は向日葵の涙に気づき。
楓「お姉ちゃん、泣いてるの?」
向日葵は慌てて、手で涙を拭う。
24: 2012/04/04(水) 20:50:19.98 ID:4w8jPlx/0
向日葵「た、タマネギを切っていて、そのせいですわ。(笑顔を作り)さ、楓。
今夜はカレーですわよ」
楓は元気よく。
楓「やったの! 楓、カレー好きなの」
◇大室家・櫻子の部屋・夜
カーテンを閉め、電気も付いていない部屋。
鞄が無造作に転がっており、すぐ隣のベッドには制服のままの櫻子。
暗闇の中で、壁を背に両膝を抱えている。
今夜はカレーですわよ」
楓は元気よく。
楓「やったの! 楓、カレー好きなの」
◇大室家・櫻子の部屋・夜
カーテンを閉め、電気も付いていない部屋。
鞄が無造作に転がっており、すぐ隣のベッドには制服のままの櫻子。
暗闇の中で、壁を背に両膝を抱えている。
27: 2012/04/04(水) 20:55:06.40 ID:4w8jPlx/0
× × ×
◇生徒会室・放課後
顔を真っ赤にしている向日葵。
涙目で櫻子を見つめ。
向日葵「私……(顔を上げて)櫻子が好きですわ!!」
――だから……私と付き合ってください!」
× × ×
◇生徒会室・放課後
顔を真っ赤にしている向日葵。
涙目で櫻子を見つめ。
向日葵「私……(顔を上げて)櫻子が好きですわ!!」
――だから……私と付き合ってください!」
× × ×
28: 2012/04/04(水) 20:57:09.97 ID:4w8jPlx/0
◇大室家・櫻子の部屋・夜
櫻子はそのままの体勢で横に倒れる。
櫻子M「私、向日葵とどうなりたいんだろ。
考えたことなかったな……今の関係、結構好きだし」
櫻子は膝を放し、仰向けに大の字を書く。
櫻子M「そもそも、私、向日葵のことどう思ってたっけ?
友達、というよりもっと大事な……姉妹?
……恋人?」
櫻子は頭を振り。
櫻子M「ないないない! そんなのあり得ない!
向日葵が好きとか……好きだけどさ……
あああ! もう! 訳分かんない!!」
櫻子はそのままの体勢で横に倒れる。
櫻子M「私、向日葵とどうなりたいんだろ。
考えたことなかったな……今の関係、結構好きだし」
櫻子は膝を放し、仰向けに大の字を書く。
櫻子M「そもそも、私、向日葵のことどう思ってたっけ?
友達、というよりもっと大事な……姉妹?
……恋人?」
櫻子は頭を振り。
櫻子M「ないないない! そんなのあり得ない!
向日葵が好きとか……好きだけどさ……
あああ! もう! 訳分かんない!!」
30: 2012/04/04(水) 21:00:16.51 ID:4w8jPlx/0
櫻子はベッドの上でじたばたと手足を動かす。
同時にドアがノックされ開く。
撫子「うわっ! 暗! 櫻子、電気くらい付けなさいよ」
櫻子は驚き、素早い動きでベッドに正座する。
櫻子「ね、ねーちゃん! 開けるならノックくらいしてよ」
撫子「したわよ! ほら、ご飯できたからさっさと来なさい」
櫻子「いい。食欲無い」
撫子「珍しい、なんかあったの?」
櫻子「別に、なんにも」
同時にドアがノックされ開く。
撫子「うわっ! 暗! 櫻子、電気くらい付けなさいよ」
櫻子は驚き、素早い動きでベッドに正座する。
櫻子「ね、ねーちゃん! 開けるならノックくらいしてよ」
撫子「したわよ! ほら、ご飯できたからさっさと来なさい」
櫻子「いい。食欲無い」
撫子「珍しい、なんかあったの?」
櫻子「別に、なんにも」
31: 2012/04/04(水) 21:05:54.65 ID:4w8jPlx/0
撫子「そんなことないでしょ」
そう言って、撫子は部屋に入ろうとする。
櫻子は声を荒げて。
櫻子「いいから! 1人にしてよ!」
撫子は少しムッとするが、それを声には出さず。
撫子「そ。じゃあ勝手にしなさい」
と、撫子はドアを閉める。
再び暗闇に戻る部屋。
櫻子は足を投げ出し、壁にもたれ掛かる。
櫻子M「向日葵が好き。もっと一緒にいたい。
(天井を見上げて)それは昔からずっと変わらないのに……なんで――」
そう言って、撫子は部屋に入ろうとする。
櫻子は声を荒げて。
櫻子「いいから! 1人にしてよ!」
撫子は少しムッとするが、それを声には出さず。
撫子「そ。じゃあ勝手にしなさい」
と、撫子はドアを閉める。
再び暗闇に戻る部屋。
櫻子は足を投げ出し、壁にもたれ掛かる。
櫻子M「向日葵が好き。もっと一緒にいたい。
(天井を見上げて)それは昔からずっと変わらないのに……なんで――」
32: 2012/04/04(水) 21:10:28.79 ID:4w8jPlx/0
× × ×
櫻子はベッドの上で、丸めた布団に顔を埋めるように抱きつき横たわっている。
ドアがノックされる。
櫻子は顔を布団から離し、涙で赤くなった目でドアを見るるが、
すぐにまた元の体勢に戻る。
撫子「櫻子。起きてるんでしょ? 入るよ」
声がしてすぐにドアが開く。
櫻子は身体を壁に向ける。
撫子は部屋に入ると、手探りで電気を付ける。
撫子「どうしたの? 学校でいじめられでもした?」
撫子はベッドに、腰掛け。
撫子「まぁ、それならひま子が黙ってないか。
(ため息をついて)大方、ひま子に告白でもされたってところかしら」
櫻子はベッドの上で、丸めた布団に顔を埋めるように抱きつき横たわっている。
ドアがノックされる。
櫻子は顔を布団から離し、涙で赤くなった目でドアを見るるが、
すぐにまた元の体勢に戻る。
撫子「櫻子。起きてるんでしょ? 入るよ」
声がしてすぐにドアが開く。
櫻子は身体を壁に向ける。
撫子は部屋に入ると、手探りで電気を付ける。
撫子「どうしたの? 学校でいじめられでもした?」
撫子はベッドに、腰掛け。
撫子「まぁ、それならひま子が黙ってないか。
(ため息をついて)大方、ひま子に告白でもされたってところかしら」
34: 2012/04/04(水) 21:15:48.54 ID:4w8jPlx/0
櫻子は身体を震わせる。
撫子「図星みたいね……櫻子だって、ひま子のこと好きなんでしょ?」
撫子は無反応の櫻子を一瞥して、優しく。
撫子「話してみなよ。私はいつだって櫻子の味方だからさ。
なんたって、ねーちゃんだもん」
櫻子の反応は無い。
撫子「なら、ひま子に彼氏が出来てもいいの?」
櫻子「そんなの嫌!!」
と櫻子は震えた声で即答する。
撫子「図星みたいね……櫻子だって、ひま子のこと好きなんでしょ?」
撫子は無反応の櫻子を一瞥して、優しく。
撫子「話してみなよ。私はいつだって櫻子の味方だからさ。
なんたって、ねーちゃんだもん」
櫻子の反応は無い。
撫子「なら、ひま子に彼氏が出来てもいいの?」
櫻子「そんなの嫌!!」
と櫻子は震えた声で即答する。
36: 2012/04/04(水) 21:20:57.20 ID:4w8jPlx/0
撫子「ならどうして?」
櫻子「だって……怖いから」
撫子「怖い?」
櫻子「今の関係を壊して、もしうまくいかなかったら。
元に戻せなくなったら……そっちの方が嫌だもん」
櫻子の声を押し頃した嗚咽。
撫子は身を返し、櫻子の髪を撫でる。
櫻子「だって……怖いから」
撫子「怖い?」
櫻子「今の関係を壊して、もしうまくいかなかったら。
元に戻せなくなったら……そっちの方が嫌だもん」
櫻子の声を押し頃した嗚咽。
撫子は身を返し、櫻子の髪を撫でる。
38: 2012/04/04(水) 21:25:22.45 ID:4w8jPlx/0
撫子「誰だってそうよ。櫻子は、ひま子とどうなりたいの?」
櫻子「わかんない」
撫子「(ゆっくりと)嘘」
櫻子は布団を抱く腕にぎゅっと力を入れ。
櫻子「……もっと一緒にいたい」
撫子「手とか繋いで?」
櫻子は無言のまま、ゆっくりとうなずく。
櫻子「わかんない」
撫子「(ゆっくりと)嘘」
櫻子は布団を抱く腕にぎゅっと力を入れ。
櫻子「……もっと一緒にいたい」
撫子「手とか繋いで?」
櫻子は無言のまま、ゆっくりとうなずく。
39: 2012/04/04(水) 21:30:33.85 ID:4w8jPlx/0
それを見た撫子は立ち上がり。
撫子「なら、それを伝えればいいじゃない。
答えがどうであれ、櫻子のその気持ちは変わらないんでしょ?」
櫻子は再びうなずく。
撫子「よし。でも、その答えを決めるのはあんた、私は助けないからね。
さて、(腰に手を当て)分かったらさっさと涙拭いて、晩ご飯食べる。
でないと、いつまでも片付けられないから」
撫子「なら、それを伝えればいいじゃない。
答えがどうであれ、櫻子のその気持ちは変わらないんでしょ?」
櫻子は再びうなずく。
撫子「よし。でも、その答えを決めるのはあんた、私は助けないからね。
さて、(腰に手を当て)分かったらさっさと涙拭いて、晩ご飯食べる。
でないと、いつまでも片付けられないから」
41: 2012/04/04(水) 21:37:02.54 ID:4w8jPlx/0
◇生徒会室前廊下・放課後
入り口に鞄をもった千歳と綾乃。
千歳は室内に向けて手を振る。
千歳「ほな、うちらは帰るで~」
綾乃「2人とも、あんまり遅くならないようにね」
扉を閉め、歩き出す2人。
綾乃「いいの2人きりにして?」
千歳「心配いらへんて~」
入り口に鞄をもった千歳と綾乃。
千歳は室内に向けて手を振る。
千歳「ほな、うちらは帰るで~」
綾乃「2人とも、あんまり遅くならないようにね」
扉を閉め、歩き出す2人。
綾乃「いいの2人きりにして?」
千歳「心配いらへんて~」
42: 2012/04/04(水) 21:41:04.78 ID:4w8jPlx/0
◇昇降口・放課後
綾乃は腑に落ちない顔で。
綾乃「でも、今日は2人とも様子がおかしかったし……」
千歳は下駄箱から靴を取り出し。
千歳「心配性やなぁ、綾乃ちゃんは。
でもうち、綾乃ちゃんのそういう所好きで」
綾乃は頬を染めて。
それを隠すように靴を履きながら。
綾乃「だ、大事な後輩なんだから心配するのは当然でしょ!」
千歳「あはは~。照れない照れない」
綾乃「千歳!!」
綾乃は腑に落ちない顔で。
綾乃「でも、今日は2人とも様子がおかしかったし……」
千歳は下駄箱から靴を取り出し。
千歳「心配性やなぁ、綾乃ちゃんは。
でもうち、綾乃ちゃんのそういう所好きで」
綾乃は頬を染めて。
それを隠すように靴を履きながら。
綾乃「だ、大事な後輩なんだから心配するのは当然でしょ!」
千歳「あはは~。照れない照れない」
綾乃「千歳!!」
43: 2012/04/04(水) 21:46:06.68 ID:4w8jPlx/0
◇生徒会室・放課後
千歳達を見送った2人は向き直り。
向日葵「櫻子……その、昨日の答えですけど」
向日葵は不安げに尋ねる。
櫻子「うん。えっとね……」
櫻子も不安そうに向日葵から目をそらす。
それを見た向日葵は、うわずった声で。
向日葵「櫻子……」
櫻子は俯き。
櫻子「ごめん」
千歳達を見送った2人は向き直り。
向日葵「櫻子……その、昨日の答えですけど」
向日葵は不安げに尋ねる。
櫻子「うん。えっとね……」
櫻子も不安そうに向日葵から目をそらす。
それを見た向日葵は、うわずった声で。
向日葵「櫻子……」
櫻子は俯き。
櫻子「ごめん」
44: 2012/04/04(水) 21:50:06.48 ID:4w8jPlx/0
向日葵が噎び泣く声。
櫻子が顔を上げる。
そこには、何度も目元を拭い、涙を隠そうとする向日葵の姿。
櫻子「向日葵、違うの……」
向日葵「大丈夫ですわ。私は……大丈夫、ですから」
向日葵は言葉の節々で幾度もしゃくりながら話す。
櫻子「向日葵!」
櫻子は震える向日葵の肩に腕を回し、抱きしめる。
向日葵「嫌ぁ! 離して!」
向日葵は離れようともがくが、櫻子はそれ以上の力で向日葵を抱く。
櫻子が顔を上げる。
そこには、何度も目元を拭い、涙を隠そうとする向日葵の姿。
櫻子「向日葵、違うの……」
向日葵「大丈夫ですわ。私は……大丈夫、ですから」
向日葵は言葉の節々で幾度もしゃくりながら話す。
櫻子「向日葵!」
櫻子は震える向日葵の肩に腕を回し、抱きしめる。
向日葵「嫌ぁ! 離して!」
向日葵は離れようともがくが、櫻子はそれ以上の力で向日葵を抱く。
45: 2012/04/04(水) 21:55:37.32 ID:4w8jPlx/0
櫻子は叫ぶように。
櫻子「私も向日葵が好き! 大好き!!」
向日葵が止まる。
そしてくぐもった声で。
向日葵「いい加減なこと言わないで……」
櫻子「私本気だもん!」
向日葵「でしたら、なんで……?」
櫻子「私、今の関係が好きなの!
嫌み言って、喧嘩して、仲直りして、また嫌み言って……
それが好きなの!」
向日葵「私は嫌ですわ! 好きなのに悪口ばかりいって、意味も無く張り合って。
櫻子は変わるのが怖いだけですわ!!」
櫻子「私も向日葵が好き! 大好き!!」
向日葵が止まる。
そしてくぐもった声で。
向日葵「いい加減なこと言わないで……」
櫻子「私本気だもん!」
向日葵「でしたら、なんで……?」
櫻子「私、今の関係が好きなの!
嫌み言って、喧嘩して、仲直りして、また嫌み言って……
それが好きなの!」
向日葵「私は嫌ですわ! 好きなのに悪口ばかりいって、意味も無く張り合って。
櫻子は変わるのが怖いだけですわ!!」
46: 2012/04/04(水) 22:02:41.40 ID:4w8jPlx/0
櫻子はすすり泣き、その場に崩れる。
そして、向日葵のスカートをつかみながら。
櫻子「怖いよ……怖くないわけないじゃん!
恋人でいられなくなって、友達にも戻れなくて……
離ればなれになるのが怖いの!!」
櫻子は言葉を絞り出すように。
櫻子「昨日の向日葵、すごく優しかった。
付き合ったら私、向日葵に頼りっきりになっちゃうかもしれない。
迷惑ばっかり掛けて……向日葵に、嫌われちゃうかもしれない。
だから、今のままが良いの」
向日葵「櫻子を嫌うなんて……
そんなこと、あり得ませんわ。絶対に」
櫻子「そんなの分かんないじゃん!」
櫻子は声を上げて泣きじゃくり、涙が向日葵のスカートを濡らす。
そして、向日葵のスカートをつかみながら。
櫻子「怖いよ……怖くないわけないじゃん!
恋人でいられなくなって、友達にも戻れなくて……
離ればなれになるのが怖いの!!」
櫻子は言葉を絞り出すように。
櫻子「昨日の向日葵、すごく優しかった。
付き合ったら私、向日葵に頼りっきりになっちゃうかもしれない。
迷惑ばっかり掛けて……向日葵に、嫌われちゃうかもしれない。
だから、今のままが良いの」
向日葵「櫻子を嫌うなんて……
そんなこと、あり得ませんわ。絶対に」
櫻子「そんなの分かんないじゃん!」
櫻子は声を上げて泣きじゃくり、涙が向日葵のスカートを濡らす。
48: 2012/04/04(水) 22:06:26.94 ID:4w8jPlx/0
向日葵「わかりましたわ」
向日葵は膝をつき、櫻子を抱き寄せる。
向日葵「私のこと、好きなんですの?」
櫻子「うん。好き……友達とかじゃなくて恋人として。
向日葵が誰かと付き合うなんて嫌」
櫻子は向日葵を抱き返す。
向日葵は膝をつき、櫻子を抱き寄せる。
向日葵「私のこと、好きなんですの?」
櫻子「うん。好き……友達とかじゃなくて恋人として。
向日葵が誰かと付き合うなんて嫌」
櫻子は向日葵を抱き返す。
49: 2012/04/04(水) 22:10:15.24 ID:4w8jPlx/0
櫻子「ごめん……私が弱いから、勇気が無いから」
向日葵「それだけ分かれば、十分ですわ」
向日葵の涙が頬を伝い、櫻子の肩に落ちる。
櫻子「ごめん」
向日葵「謝るくらいなら、ひとつだけ約束ですわ」
櫻子はうなずく。
向日葵「それだけ分かれば、十分ですわ」
向日葵の涙が頬を伝い、櫻子の肩に落ちる。
櫻子「ごめん」
向日葵「謝るくらいなら、ひとつだけ約束ですわ」
櫻子はうなずく。
51: 2012/04/04(水) 22:15:10.13 ID:4w8jPlx/0
それを肩で感じた向日葵は、一拍おいて。
向日葵「付き合えとは言いませんわ。
でも、せめて2人きりのときは、素直になってくださいな」
櫻子「うん。うん」
櫻子は何度もうなずく。
向日葵「付き合えとは言いませんわ。
でも、せめて2人きりのときは、素直になってくださいな」
櫻子「うん。うん」
櫻子は何度もうなずく。
56: 2012/04/04(水) 22:20:39.75 ID:4w8jPlx/0
◇河川敷・路上・夕方
夕日に向かって歩く2人。
櫻子「向日葵……手、繋ご」
向日葵「い、いいですわよ」
向日葵は頬を染めて、櫻子の手を握る。
櫻子は空いてる手で頬を?きながら。
櫻子「なんかさ、結局付き合ってるみたいだね」
夕日に向かって歩く2人。
櫻子「向日葵……手、繋ご」
向日葵「い、いいですわよ」
向日葵は頬を染めて、櫻子の手を握る。
櫻子は空いてる手で頬を?きながら。
櫻子「なんかさ、結局付き合ってるみたいだね」
57: 2012/04/04(水) 22:25:15.11 ID:4w8jPlx/0
向日葵は笑って。
向日葵「まだ友達ですわ。私は、こんな曖昧な関係、早くやめたいですのに」
櫻子「ごめん」
向日葵は顔を背け。
向日葵「ま、まぁ卒業するまでくらいは、待って差し上げますわ」
櫻子「ねぇ……やっぱ腕組んでいい?」
向日葵「な――もう。し、しょうがないですわね!」
夕日を受け、長く伸びる影が2つ。
寄り添って遠ざかる。
終わり
向日葵「まだ友達ですわ。私は、こんな曖昧な関係、早くやめたいですのに」
櫻子「ごめん」
向日葵は顔を背け。
向日葵「ま、まぁ卒業するまでくらいは、待って差し上げますわ」
櫻子「ねぇ……やっぱ腕組んでいい?」
向日葵「な――もう。し、しょうがないですわね!」
夕日を受け、長く伸びる影が2つ。
寄り添って遠ざかる。
終わり
59: 2012/04/04(水) 22:28:03.74 ID:ElBIgUvuP
乙乙
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