1: 2010/04/15(木) 23:45:45.12 ID:e/eccs260


「24時間授業」







炎天下の灼熱地獄のなか重たい体をようやく運んでこれた。
朝の階段ほどつらいものはない。

キョン「ついた••••••」

谷口「おお••••••キョン」

気の抜けたあいさつを交わし自分の席についた。
その後ろにはもちろんこいつ。

キョン「おはよう」

ハルヒ「あ、キョン•••••」

なんだなんだ、みんな元気ないな。
俺だって無理やり明るく振る舞ってるのに。

2: 2010/04/16(金) 00:01:06.62 ID:3Nq9YzIu0







キョン「••••••」

キョン「••••ん」

しまった、いつの間にか寝てしまった。
今、何時だ?


キョン「••••••」

キョン「•••••なんだ、まだ5分しか経ってないじゃないか」

ガラッ

先生「号令~••••」

キョン「••••••」

あんたまで元気ないと俺のモチベーションも下がらざるを得ない。
今日はなんか嫌な行事とかあったか?

5: 2010/04/16(金) 00:05:56.67 ID:3Nq9YzIu0
先生「今日の日程を言います•••」

先生「1限目、数学••••」

いつもより1オクターブ低いトーンで日程を伝える先生。
その周りはというと全員うつ伏せという異様な光景だった。

先生「7限目、国語••••」

キョン「•••••ん」

課外かなにかか?
7限目なんて初耳だぞ。

6: 2010/04/16(金) 00:12:20.94 ID:3Nq9YzIu0






おいおい••••

先生「18限目、体育••••」

先生「19限目、全校集会••••」

これは冗談のつもりなのだろうか。
それにしても全く笑えないな。

先生「23限目、数学••••」

先生「24限目、現代社会•••• そして帰宅です••••」

一同「はぁ••••」

キョン「••••」


なんだこれwwww

キョン「おい、ハルヒ」

ハルヒ「なによ••••」

8: 2010/04/16(金) 00:18:15.78 ID:3Nq9YzIu0
キョン「これなんだ?」

ハルヒ「なにが?」

キョン「いや、この状況に決まってるだろ」

ハルヒ「あんた今、寝とかないと大変よ」

キョン「は?」

ハルヒ「今日はサバイバルみたいなもんでしょ••••」

キョン「••••」

今、俺の頭上はクエスチョンマークが占めている。
さっぱり意味わからない。

ハルヒ「人生がかかってるんだから•••」zzz

キョン「••••」

11: 2010/04/16(金) 00:27:22.12 ID:3Nq9YzIu0





キョン「••••」

誰一人席を立たない••••
鳥のさえずりしか聞こえてこない。

どうなってんだ••••

キョン「••••」ガタッ

俺が席を離れたその時、クラスの連中が一斉にこっちを見た。

キョン「うぉ••••」ビクッ

男「音たてんな•••• 眠れねぇだろ••••」ボソツ

女「迷惑なんだけど••••」ボソッ

キョン「•••••」
クラスの連中は各々で俺の愚痴を吐き捨て、再びうつ伏せになった。

キョン「••••••」

キョン「••••••」

ハルヒの仕業か? これは

15: 2010/04/16(金) 00:33:55.76 ID:3Nq9YzIu0
1限目、数学。





キョン「••••」

いつもの授業風景となんら変わらない。
ただ違和感といえば、谷口が真面目に授業を受けてる事くらいか。

先生「じゃあ、この問い2。 誰か解いてください」

バッ

キョン「は?」

キョン「•••••」

前例のほとんどが挙手している••••• 谷口ま••••
いや待て•••• 俺以外全員挙げてないか?

キョン「••••••」

先生「じゃあそこの君」

17: 2010/04/16(金) 00:43:06.16 ID:3Nq9YzIu0
先生「正確、2ポイントおめでとう」

男「ありがとうございます」

キョン(2ポイント?)

先生「そこの君」

キョン「え•••• 俺?」

先生「意欲が見られない、マイナス2ポイント」

キョン「は••• はあ」

先生「このままでは泣くめにあうぞ」

キョン「•••••」

ザワザワ•••

キョン「••••」

なんだよこれ•••• お前らこっち見るな•••
なんで笑ってやがる•••

先生「座れ」

キョン「••••」

18: 2010/04/16(金) 00:52:19.38 ID:3Nq9YzIu0
休み時間、先生がホワイトボードを持ってきた。

男「よしっ!! このままいけば••••」

女「私このままじゃ••••」ウルッ

キョン「••••」

順位? クラスメイトの名前が立てずらりと••••
俺は••••  一番したに掲示されている••••

マイナス2ポイント?

ハルヒ「よかった••• 10位以内にはいってる••••」

キョン「ハルヒ8位か。 7ポイント」

ハルヒ「あんた最下位なの?」

キョン「みたいだな」

ハルヒ「あんた今日なんの日か知ってんの?」

22: 2010/04/16(金) 01:01:05.72 ID:3Nq9YzIu0
ハルヒ「日本人削減計画の実行日よ?」

キョン「あ?」

ハルヒ「今、全国で実施されてんの」

ハルヒ「有能な人間、10名が生き残れる」

キョン「すまん、もう一回頼む」

ハルヒ「だからポイントのたかい10人以外は処分されるっていってるじゃない」

キョン「•••••」

ハルヒ「マイナス5ポイントは自動的にぼつよ、その場で処分」

キョン「は? 処分•••?」

ハルヒ「あんたこのままじゃ危ないわね•••」

キョン「••••」



これは夢か?
夢だろ•••• 笑えないんだが

23: 2010/04/16(金) 01:06:32.91 ID:3Nq9YzIu0
ハルヒ「••••」

キョン「••••」

キョン「おい••• ハルヒ•••」

ハルヒ「どうしようかしら••••」

先生「あと2分で2限目始めます」

キョン「お、俺はどうすれば•••」

ハルヒ「••••」

ハルヒ「今回だけだからね••••」

キョン「え?」

ハルヒ「先生、ポイントの移動お願いします」

26: 2010/04/16(金) 01:13:47.14 ID:3Nq9YzIu0
ハルヒ「この人に2ポイント」

先生「はい、涼宮さんの支援によりポイントの移動がありました」

ザワザワ•••

キョン「あ••• 41位から38位に•••」

ハルヒ「そしてあたしは16位か••• まあいいわ•••」

ハルヒ「キョン、頑張りなさいよ」

キョン「••••」

男「涼宮バカだな•••」

女「見捨てればいいのに••••」

キョン「••••」

キョン(ハルヒに救われたのか? 突然すぎて処理できない•••)

先生「授業開始10秒前」

28: 2010/04/16(金) 01:23:21.10 ID:3Nq9YzIu0





ハルヒ「あたし34ポイントね」

キョン「俺は25位か」

4限目が終了、これが現時点でのスコアだ。

男「え•••」

男「マイナス5ポイント? 俺が?」

先生「只今、あなたの処分が決定しました」

男「•••」

キョン「•••」


なにかが吹っ切れたみたいに教室が静まりかえる。
クラスメイトの処分が決定した。

先生「さ、この薬を」

男「は••• ふふふ、ふざけんな、は?」

先生「安楽氏を提供します」

31: 2010/04/16(金) 01:41:27.18 ID:3Nq9YzIu0
先生「さ、はやくお飲みください」
男「•••」

キョン「•••」
あまり親しくない奴だが他人事で済ませれるわけがない。
いまからクラスメイトが氏ぬといわれても実感がわかない。
俺の頭の中はもうパンク寸前だった。
男「た、谷口!!」
谷口「•••」
男「頼む!!頼むからポイントをくれ!!!」

谷口「•••」
男「頼むっ!!!! 谷口っ!!!」

キョン「•••」
谷口は男の必氏の哀願を同情するよりむしろあざ笑った。

谷口「どうせ処分されるんだからはやく楽になれ」
キョン「•••」

男「谷••口••?」
谷口「はやく氏ねよ」

女「そうよ、はやく楽になったら?」
女「来世で頑張って」

男「•••は、おい••• 嘘だろ•••」

男「クラスメートだろ!? 助け合う仲間だろ!? 頼むよ!! ポイントをくれっ!!」
男「頼むっ!!! 一生のお願いだ!!!」

34: 2010/04/16(金) 01:53:10.16 ID:3Nq9YzIu0
キョン「……」

みんなが男に冷たい視線をおくる。
誰も助けないのか……?


キョン「……」

次の一言で教室は修羅場と化した。

ハルヒ「さっさと飲みなさいよ」

キョン「……」

キョン「ハル……ヒ…?」

ハルヒ「はやく」

男「……」
キョン「ハルヒ…… お前…」

ハルヒ「なにその目」

ハルヒ「じゃあキョンが助けたら?」

キョン「……」

ハルヒ「助けたら?」

キョン「……」

43: 2010/04/16(金) 02:03:07.15 ID:3Nq9YzIu0
キョン「……」

キョン「……」
ハルヒ「結局そうなるでしょ?」

キョン「……」

ハルヒ「あんたはあたしの部員だから助けたけど他人だったら見捨てるわ」
キョン「……」

反論できず自分に腹立たしさを覚えた。

先生「だれも居ないみたいです。 さ、はやく」

男「……う」
男「うああああ!!」ダッ

先生「……」カチャ

バンッ!!!

恐怖のあまり逃げ出した男をすかさず撃った。
恐らくわざと足を撃ったのだろう。

男「い……!!」
男「あああああああいてえぇえ!!!」

先生「違反者とみなしました」
先生「では私が殺害します」

45: 2010/04/16(金) 02:10:13.90 ID:3Nq9YzIu0






キョン「……」

ハルヒ「……」

目の前でクラスメイトが殺害されたんだ、昼飯がすすむわけない。

俺はどうしてこうなったのか考えた。



キョン「……」

キョン(……やはりハルヒか?)

キョン「……」

キョン(古泉なら…… あいつなら……)

82: 2010/04/16(金) 20:49:46.49 ID:3Nq9YzIu0


――――――――
キョン「……」

こっちも昼休みだというのにまるで葬式みたいだ。
席を立つ者はもちろんのこと誰一人として顔をみせない。
全員うつ伏せ……うつ伏せ……うつ伏せ……

キョン(古泉探すの面倒だな)

俺は窓越しから古泉を探した。
あの個性あふれる容姿ならすぐ見つけ出せるはずだ。

キョン「……」

キョン「……」

キョン(いない……?)

キョン(待て…落ち着け……そんなはずはない)

83: 2010/04/16(金) 20:58:23.83 ID:3Nq9YzIu0






キョン「……」

キョン「嘘……だろ……」



今現在教室に腰をかけている生徒を何度も見直した。
しかしあのキャラに似合うものは誰一人としていない。
あの妙なオーラも感じられない。

キョン「……」

まさか…… 最悪の展開を想像すると一斉に血の気がひいた。

キョン(あ… そうだ! ホワイトボードを見ればわかる)

キョン(古泉がもし処分されているのなら掲示されていないはずだ……)

ガラッ

大勢の冷たい視線も気にせずに俺は教室へと足を踏みいれた。

84: 2010/04/16(金) 21:04:29.93 ID:3Nq9YzIu0
キョン「……」

キョン「……」

キョン「な……い……」

男「なんだあいつ……」

女「なによあれ、うざいんだけど」

キョン「う… 嘘だっ」

キョン「おい! お、お前!」ガッ

男「な、なんだよ」

キョン「古泉はっ! 古泉一樹はどこにいる!」

男「は、はあ?」

キョン「古泉だよ!! さっさと答えてくれ!!」

男「あいつは……」

男「もう氏んだ…… よな…」

キョン「――――――――」

女「う、うん…… 古泉君はもう処分されたよ……」

85: 2010/04/16(金) 21:11:49.05 ID:3Nq9YzIu0


――――――――
体に電撃が走り、その電流は未だ俺を震えさせていた。


キョン「……」


俺は体育館のトイレ、3つ手前の個室にいた。


キョン「……」


トイレットペーパーの芯が地面を荒々しく飾る。
ほどよい異臭が今の俺に落ち着きを取り戻してくれた。


キョン「……」


古泉の氏――――――――

87: 2010/04/16(金) 21:20:29.66 ID:3Nq9YzIu0


――――――――
いつからこんなゲームが始まったのか知らん。
起きたらこんな状況が待っていたんだからな。
とりあえずこの世界は狂っている。それは間違いない。

この世界はあの世界ではない。

キョン「……」

キョン「そうだ…… この世界は狂っている」

非現実的なハルヒの消失だって体験しているんだ。
否が応でも体が見抜いてしまう。

キョン「長門がヒントを残してるはずだ……」

キョン「元に戻るヒントを……」

90: 2010/04/16(金) 21:25:45.02 ID:3Nq9YzIu0


――――――――
キョン「……」タタタッ


体を汗で濡らしながら向かう先は部室だった。
あの部室にはいろいろとお世話になったからな。


そして昼休みには必ず長門がいる。



キョン「はあ… はあ…」タタタタッ



早くしなければ間にあわなくなってしまう。
いや、もう手遅れかもしれん。


それでも心の奥底で、今回もなんとかなる、と思っている自分がいた。

キョン「長門っ!」ガラッ

91: 2010/04/16(金) 21:33:14.59 ID:3Nq9YzIu0


――――――――
キョン「……」

キョン「……」

窓から差し込む太陽は風になびくカーテンを神々しくみせた。
そしてそこは無人の空間。
いるはずの”人”がいない無人の空間。

キョン「……」

キョン「……くそっ」

俺は部室を勢いよく飛び出し長門の教室へと向かった。

キョン(あいつは何組だ…! くそっ、わからん!)

苛立つ俺をさらに憤慨させたのは校内放送であった。

「授業開始まであと……」

キョン「ああああうるせえええ!!」タタタタ

93: 2010/04/16(金) 21:39:52.15 ID:3Nq9YzIu0


――――――――
一年の教室がずらりと並ぶ廊下を一つずつ確かめた。
俺の騒動に文句たれる奴なんか気にしない。

元の世界に戻ればすべて元通りだ。

キョン「……!」

キョン(あのシルエットは……間違いない!! 長門だ!!)

まるで人形のようなショートカットの少女から頼もしいオーラを感じた。
うつ伏せの光景にただ一人、読書をしていた。

キョン「長門っ!」ガラッ

長門「……」

94: 2010/04/16(金) 21:49:19.19 ID:3Nq9YzIu0
キョン「長門、よかった、どうなってんだこれは」


机を無視する勢いで長門へと一方通行した。
そして当たり前の事だが絡まれる。

男「おい、待てや!」ガッ

キョン「すまん、あとで相手してやるから」

男「ふざけんな!! 喧嘩売ったのはお前だろうが!!」グッ

こいつとタイマンはったら確実に負ける。
今の俺に余裕があったらな。
まるでプロレスラーのような手を全力ではらった。

キョン「うるせぇ!!! 後で相手してやるっていってんだろ!!」

男「あ…… あァ……?」

男は一瞬怯んだ。 もうこれは俺の勝ちだろ。
とこんなことしてる暇はなかった。

キョン「長門っ」

長門「なに?」

キョン(嗚呼、そのまっすぐな眼差しを待っていた)

キョン「この状況はハルヒか? 誰の仕業なんだっ」

96: 2010/04/16(金) 21:56:13.68 ID:3Nq9YzIu0
長門「……」

キョン「……」

キョン「長門……?」

長門「……」

俺は見逃さなかった。 長門の事はよく知っているつもりだ。
知らぬ間に無表情の中の表情を見抜く力をつけた。
今の長門の心境も手にとるようにわかる。

だからこそ信じたくない。

今、長門は間違いなく戸惑った。

長門「……」 

長門「状況を把握できない」

キョン「な、なに言ってんだよ! この状況だろ!」

長門「……」

長門「この状況のどこが異常?」

キョン「……」

キョン「おい… 冗談はよせ…」

98: 2010/04/16(金) 22:04:46.74 ID:3Nq9YzIu0
長門「冗談ではない」

長門は間を置かず答えた。
その眼差しからは真実が伝わってくる。


キョン「……」

キョン「じゃあこの状況は……」

長門「あなたは記憶を同期し損ねたのだと思われる」

キョン「なに?」

長門「あなたの記憶に編集点が作られ、情報操作を行われた」

長門「と私はあくまで仮定を挙げた」

キョン「始点から終点のあいだがないって?」

長門「おそらく」

キョン「……」


俺はこの状況の始まりへとさかのぼった。

105: 2010/04/16(金) 22:44:56.10 ID:3Nq9YzIu0


一つずつ整理しながらさかのぼろう。
俺はくそ暑い中、教室に入った、それは確かだ。

それでみんなと挨拶を交わして……。

キョン「……」

キョン「俺は寝てしまった……」

長門「……」

キョン「思い出した! 俺は5分間だけ寝たんだ!」

長門「おそらく始点と終点の間がその5分」

長門「何者かがその間を編集した」

キョン「編集?」

長門「この世界が終わる頃が現実世界での五分」

キョン「なっ……」

キョン「誰がそんな事……」

107: 2010/04/16(金) 22:59:58.01 ID:3Nq9YzIu0
先生「あなたは何組ですか?」

キョン「……」ゾクッ

嫌悪感が全身に鳥肌を作らせた。
感情の込められた言葉でなかったがゆえだ。

先生「あなたみたいなルーズな方は必要ありません」

先生「マイナス10ポイント」

キョン「……」

キョン「ああ、そうかい。 別に構わないね」スタスタ

キョン「この世界は居心地が悪い、すぐ帰るさ」

バタン

先生「……」

長門「……」

109: 2010/04/16(金) 23:17:53.80 ID:3Nq9YzIu0


――――――――
キョン「誰だ……」

キョン「一体誰が……」

ガラッ

先生「遅刻、マイナス10ポイント」

キョン「……」

キョン(はあ……)

キョン「さっき向こうのクラスの奴にいわれたからそう何度も」

先生「向こうのクラスの先生にもつけられたのですか?」

キョン「え? いや、だから」

先生「ではマイナス20ポイントですね」

キョン「は!?」

先生「さ、席について」

キョン「……」

キョン(確か俺のポイントは……)

110: 2010/04/16(金) 23:24:56.09 ID:3Nq9YzIu0


――――――――
俺は今、相当焦っている。 それは勿論ポイントの事だ。
俺のポイントは現在11ポイント。

20ポイントひかれるとマイナス9ポイント。

次の休み時間に処分決定……。

だが焦る傍ら俺は安心していた。
ハルヒは5位で30ポイント以上手にしている。
こいつはこの時間もまだまだたくさん稼ぐだろう。
だからこいつには悪いが4ポイント借りよう。

キョン(そして一刻も早く、この世界から脱出する)




タイムミリットは明日の午前8時。

112: 2010/04/16(金) 23:32:27.85 ID:3Nq9YzIu0


――――――――
休み時間に入り、ホワイトボードが書き加えられる。
そして俺の名前が静かに外された。

先生「~君、あなたの処分が決定しました」

奴は俺の本名を口にすると周りに問いかけた。
ポイントの移動はないと思いますがどなたかいらっしゃいますか、と。

俺には親しい友人がいる、ほかの連中とは違う。

キョン「……」

先生「いますか?」

キョン「……」

ハルヒ「……」

谷口「……」

キョン(おい……)

先生「いないみたいですね」

キョン「ち、ちょっと待て!」

116: 2010/04/16(金) 23:39:20.13 ID:3Nq9YzIu0
先生「……はい?」

キョン「は? いやいや」

キョン「ハルヒ? なんで黙ってんだよ」

ハルヒ「……」

キョン「た、谷口… おい国木田……」

谷口「……」

国木田「……」

キョン「は……」

キョン「はははっ、おいおいそういう悪ノリはいらないって」

キョン「誰でもいい、4ポイントくれるか?」

多少焦りつつも抑え、平静を保った。
しかし俺の言葉に続く人間は誰一人としていない。

キョン「お、おい… いい加減にしろよ…」

ハルヒ「……」

117: 2010/04/16(金) 23:48:07.40 ID:3Nq9YzIu0
キョン「ハルヒっ!」

ハルヒ「……」

キョン「なに黙ってんだよ」ガッ

ハルヒ「離して」

キョン「あ? おまt…」

ハルヒ「今から氏ぬ人間に用はないわ」

キョン「――――――――」

キョン「え? 今なn……」

谷口「はやく氏ねよ……」ボソッ

キョン「――――――――谷g」
女「邪魔者はいないほうがいいの」

男「はやいとこ氏んでくれ」

ハルヒ「はやく氏んだら?」

キョン「ちょ……」

先生「ではこのお薬を」

キョン「……は… ははは……頼むから…よ、止してくれ」

119: 2010/04/16(金) 23:54:41.09 ID:3Nq9YzIu0


心臓がマシンガンを撃ち、体に力が入らない。
どうみても冗談を言っているようには見えない。


そうだ。

この世界は完全に狂っている。


こいつらは俺の知っているこいつらじゃない。


長門曰く、誰かに創られたんだ。




はやく元の世界に戻らないと……。

今すぐにでも……


キョン「……っ」

キョン(しかしどうする……)

122: 2010/04/16(金) 23:59:43.51 ID:3Nq9YzIu0
先生「……さ、お飲みください」

キョン「……」

ハルヒ「はやくして」

谷口「はやくしろよ」

キョン「……」


こんなこいつらは他人だ。 俺への友人としての意識がまったく感じられない。
こいつらは創りもの……。


キョン「……」


この状況を打開すべく俺はすぐさま行動な移した。

元の世界に戻る為に――――――――

125: 2010/04/17(土) 00:07:09.91 ID:c+A2Bhkc0
先生「あぐっ…」ドタッ

全身全霊を込めてみぞおちに体当たりをした。
先生は後ろに飛ぶようにころげる。

周りの声は雑音にしかならなかった。
とにかくこいつの拳銃を奪ってしまえば……。

キョン「はあ… はあ…」ガッ

教卓のパイプ椅子を手に取った。
錆防止加工がされていて光沢は艶をだしている。

先生「うぅ……」

キョン「そんなに効いたか……?」

先生「けほっ……」

キョン「拳銃を床に置け」

127: 2010/04/17(土) 00:12:34.28 ID:c+A2Bhkc0
ハルヒがどんな顔をしているかなんて考えもしない。
だってこいつは所詮”創り物”なんだからな。

キョン「はやくしろ」

先生「……」

先生は胸ポケットにゆっくりと手を入れた。

キョン「……」






馬鹿が。






ドッ!!

先生「あ゛あぁ!!」

美しい艶に真紅の液体が彩りを加える。
先生の頭からは鮮血が吹き出していた。

132: 2010/04/17(土) 00:20:32.89 ID:c+A2Bhkc0

創り物の悲鳴が教室を震わせる。
しかしそんな事など気にも止めず俺は創り物の頭めがけて二発目を打った。

ドキャッ

キョン「……」

手ごたえあり…… 確実に頭蓋を割った。

先生「……」グタッ

キョン(逝ったか……)

胸ポケットに手を入れ、拳銃を取り出している時。


初めて外部の声が俺に届いた。



ハルヒ「キョ… ン…?」ブルブル



聞き慣れたその声は微かに上擦っていた。

138: 2010/04/17(土) 00:29:10.95 ID:c+A2Bhkc0
キョン「この世界は狂ってるんだよ」

ハルヒ「……」

キョン「ま、創り物に言っても無駄だな」

ハルヒ「……」


拳銃を取り出し、気がつくと教室にはハルヒと俺しかいなかった。
ほかの連中は逃げ出したんだろう。

キョン「でも一言謝っておく」

ハルヒ「……」

ハルヒ「こんなの… キョンじゃない……」

キョン「……」

ハルヒ「キョンじゃない!!」

キョン「……」


ふつうなら悲しく響いたであろうその声は俺に届かなかった。
創り物の言動はどう足掻いても戯れ言止まりだ。

139: 2010/04/17(土) 00:33:04.89 ID:c+A2Bhkc0
キョン「そうかい」

キョン「悪いが俺には用事がある」スタスタ

ハルヒ「……」

キョン「はやくしないと帰れないかもしれん」

ハルヒ「…ひ… し…」

キョン「ん?」

ハルヒ「人頃しっ!! この人頃しっ!!」

キョン「……」










人頃しだと?

144: 2010/04/17(土) 00:37:12.81 ID:c+A2Bhkc0
ポイントを分けてくれなかったのは何処のどいつだ。
あそこで分けてくれりゃこんな事しなくて済んだんだぞ?




その癖に人頃し呼ばわりか。





そうかい。






この世界のおまえは好きになれないな。







バンッッッッ!!

146: 2010/04/17(土) 00:41:36.74 ID:c+A2Bhkc0
初めて聞く銃声。 初めて感じた反動。

そして――――――――





キョン「え……」

キョン「は… ハルヒ……?」



目の前には血だまりをつくったハルヒの姿があった。


キョン「……」



頭がこの状況に追いつけずにいた。


キョン「俺は……ひきがねを…… ひ… ひいたのか…?」

149: 2010/04/17(土) 00:47:45.31 ID:c+A2Bhkc0
キョン「……」

キョン「お… 俺じゃない…」

キョン「は… ハルヒを頃したのは俺じゃないっ!!」

キョン「……」

警備員「手を挙げろ!!」

キョン「……」

廊下には拳銃を構えた警備員がずらりと並んでいた。
盾のようなものまで用意してこちらに対抗している。

キョン「……」

キョン「そうだ…… すべて創造なんだ……」

キョン「俺が今、居るべき場所は此処ではない……」

キョン「現実世界へ… はやく帰らないと…」

151: 2010/04/17(土) 00:52:17.37 ID:c+A2Bhkc0

俺はようやく答えを見つけた。



現実世界へ帰る方法――――――――





警備員「動くなっ! 撃つぞ!」

キョン「構わん…… 撃てよ……」

警備員「なに?」






実に簡単だった。 夢と一緒だ。
目を覚ませばいい。 そう。

この世界での氏は夢から覚める事と同義なんだ。

156: 2010/04/17(土) 01:00:28.54 ID:c+A2Bhkc0
警備員「近づくな!」

キョン「そうだ… 目を覚ませばいつも通りの朝……」

警備員「発砲用意!」

キョン「そして…… 」

パンッ!

キョン「――――――――」

続けて俺の体を弾丸が貫く。
俺はその弾丸の嵐に踊り、静かに倒れこんだ。



キョン「……」

キョン「……」ゴプッ

キョン「いつ… も通…り… の…」







さあ、朝へ ――――――――

157: 2010/04/17(土) 01:05:21.32 ID:c+A2Bhkc0





キョン「はっ……」ガバッ

キョン「……」

キョン「……」







朝だ――――――――





キョン「戻ってこれたあああ!!」ガタッ

キョン「よぉっしゃああああああ!!!」

先生「号令~」

160: 2010/04/17(土) 01:10:45.83 ID:c+A2Bhkc0


どう見てもいつもの朝だ。 先生は確かに6限授業といった。

キョン「……」

鳥のさえずりはクラスメイトの声にかき消される。



いつもどうりの朝だ、戻ってこれた。




キョン「……」ジワッ

いかん、俺としたことが……。
感動のあまり涙が……。

165: 2010/04/17(土) 01:17:01.31 ID:c+A2Bhkc0


――――――――
5限目、あの世界では俺の処分が確定した時だったな。

キョン「……」

メタボ気味の数学講師は片手にハンカチ、片手にチョークを握っている。
こんな愉快な光景はなかったはずだ。

キョン(戻ってこれた……)


戻ってこれた喜びを何度も噛みしめていた。

ハルヒ「キョン、今からあたし寝るから」

ハルヒ「いい具合に壁になって、いいわね?」

キョン「はいよ」

167: 2010/04/17(土) 01:23:16.24 ID:c+A2Bhkc0
休み時間――――――――


机にうつ伏せになっていた。



ハルヒ「ねぇキョン……」

キョン「ん?」

ハルヒ「ひ… し…」

キョン「え?」

ハルヒ「なんでもないわ」

キョン「……」



今、ハルヒ……  んなわけないか。
帰ってこれたんだからな。



帰ってこれたんだよな。

キョン「……」

172: 2010/04/17(土) 01:37:25.91 ID:c+A2Bhkc0


――――――――
婆「ひえ~爺さん、これみなっせ」

爺「なんや」

婆「高校生が教師と生徒ば殺害したてばい」

爺「物騒になってきたな」

婆「そいでその高校生も自頃したて」

爺「なにがしたいのかの」

婆「さあ…… 物騒な世の中だねぇ」 





テレビの画面には殺害された方の名前が映っていた。
女子高生と男性教諭両者の名前。

そして画面が変わり容疑者の名前が表示された。

173: 2010/04/17(土) 01:38:12.89 ID:c+A2Bhkc0


――――――――
容疑者はおとぎ話の世界から現実世界へ戻ってこれた。



果たして本当にそうなのか?



容疑者のいた世界がもし現実世界だったら……。

そして逆にこの世界がおとぎ話の世界であったら……。



キョン「とにかく帰ってこれたんだよな……」

キョン「ふーっ、一件落着だ」









「24時間授業」 終わり

174: 2010/04/17(土) 01:40:00.51 ID:Qu0Tp7Wu0



引用: キョン「涼宮ハルヒの世にも奇妙な物語」