1:◆4hcHBs40RQ 2013/10/20(日) 16:52:18.52 ID:wClx6zhA0
★このSSはダンガンロンパとドクターKのクロスSSです。
★プロローグまではネタバレなし、チャプター1から全力ネタバレ。
★ダンガンはアニメ組+クロスSSのため設定違いが多々あります。


・ドクターKとは ~これだけ知っていれば十分な情報~

主人公:KAZUYA。通称ドクターK。本名は西城カズヤ。    
    ケンシロウのボディ+ブラックジャックの頭脳と台詞量+熱血
    ということだけわかっていればおk。世界一かつ最強の医者。

K一族とは:KAZUYAの祖先は代々世界的な外科医であり名門医師一族。
      全員イニシャルがKのためK一族と呼ばれている。あまりにも
      凄腕なため裏世界から目をつけられがちであり、体を鍛えている。

・ダンガンロンパ

ニコ動でアニメ一話が無料で見られるのでそちらを見た方が早い。
とにかくキャラ数が多いが、全員個性的なため一度の視聴で大体覚えられる。


どちらかの作品を知らなくてもなるべくわかるように書きます。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1382255538

2: 2013/10/20(日) 16:56:06.44 ID:wClx6zhA0
― Prologue ―


私立希望ヶ峰学園とは――

超高校級と呼ばれる特殊な才能を持った人間だけが入学を許され、
卒業すれば必ず成功すると言われている、いわばエリート養成学校。


苗木(僕は、その希望ヶ峰学園に抽選で選ばれた。『超高校級の幸運』として)

苗木(僕みたいな普通の学生が入っちゃってもいいのかなーって思ったけど、
    わざわざ辞退する理由もないし、僕は期待に胸を膨らませ学園に来たんだ)

苗木(そして、悪夢のような事件に巻き込まれた…)

3: 2013/10/20(日) 16:57:15.05 ID:wClx6zhA0

学園に入ってすぐに気を失い、教室で目を覚ました苗木は
全ての窓に鉄板が嵌めこまれ外との出入口が塞がれた異様な状況に気付く。


苗木「なんだよ…これ…ん? この紙…」

『入学おめでとうございます、オマエラ。入学式は8時から体育館です』

苗木「汚い字だな…それに、あそこにあるのってまさか監視カメラ?」


念の為エントランスに行ったが、入り口は分厚い鉄の扉で封じられていた。
仕方なく、苗木は謎の紙に書かれていた通り、体育館に向かう。
体育館には既に14名の生徒が集まり、この状況に困惑していた。

4: 2013/10/20(日) 16:58:24.63 ID:wClx6zhA0

石丸(超高校級の風紀委員)「遅いぞ、君! 既に集合時刻を過ぎている!」

苗木「あ、ご、ごめんなさい!」

朝日奈(超高校級のスイマー)「こんな状況で集合時刻も何もないでしょ!」

桑田(超高校級の野球選手)「閉じ込められてんだぜ俺達!」

セレス(超高校級のギャンブラー)「騒いでもどうにもなりませんわ」

大神(超高校級の格闘家)「その通り。今は脱出方法を考えるべきだ」

山田(超高校級の同人作家)「しかし、目的は一体なんなのでしょうな」

葉隠(超高校級の占い師)「さっすが希望ヶ峰! 派手な入学イベントだべ」

腐川(超高校級の文学少女)「あんたまだそんなこと言ってんの…?」


5: 2013/10/20(日) 16:59:06.18 ID:wClx6zhA0

江ノ島(超高校級のギャル)「マジありえないんだけどー」

大和田(超高校級の暴走族)「犯人は見つけ次第シメてやるぜ!」

十神(超高校級の御曹司)「フン、くだらん」

不二咲(超高校級のプログラマー)「僕達…どうなっちゃうんだろう…」

霧切(超高校級の???)「…………」

舞園(超高校級のアイドル)「あの、苗木君ですよね? 同じ中学だった」


見知らぬ人間ばかりで気まずい中、突然話しかけられ驚く苗木。


苗木「もしかして、舞園さん?」


6: 2013/10/20(日) 17:00:12.32 ID:wClx6zhA0

舞園「良かった。知ってる人がいて」

苗木「まさか舞園さん、僕のこと覚えてるの?」

舞園「当然ですよ、三年間同じ中学だったんですから」


苗木と舞園はクラスこそ違えど、同じ中学校出身である。
当時既に人気アイドルの舞園に覚えられていたことを喜ぶ苗木だったが、
和やかな時間はすぐに終わりを告げ、謎のぬいぐるみが姿を現した。


7: 2013/10/20(日) 17:01:09.86 ID:wClx6zhA0

モノクマ「えーマイクテスッ、マイクテスト」

苗木「ぬいぐるみ?」

モノクマ「違うよ、ぬいぐるみじゃないよ。モノクマだよ。
     この学園の学園長なのだっ! よろしくね!」

石丸「おはようございます!」

腐川「なに平然と挨拶してんのよ…!!」


前触れ無く現れた白黒ツートーンのぬいぐるみのようなクマ、
『モノクマ』は彼らに一つの残酷なルールを突きつける。


モノクマ「オマエラにはこの学園で一生を過ごしてもらいます。
     卒業する方法はただ一つ、仲間を頃すことです!」


8: 2013/10/20(日) 17:02:16.38 ID:wClx6zhA0

一同「ハア?!」

モノクマ「頃し方は問いません。なんでもいいからぶっ頃しちゃって下さい。
     あ、でもみんなにはバレないようにね。あと勢い余って全員
     頃しちゃダメだよ。一人が殺せるのは二人までだからね!」

桑田「ワケわかんねえ…」

江ノ島「なんであたし達がそんなことしなきゃなんないのよ!」


一斉に不満を漏らす生徒達。誰もが現状を理解出来ずざわめく中、
あたかも混乱を切り裂くように、鋭く力強い声が響き渡った。


???「――そこまでだ!!」


9: 2013/10/20(日) 17:03:49.00 ID:wClx6zhA0

モノクマ「なっ?! お、お前は…!!?」

「え? だ、誰?!」「ナニモンだ?!」「何あの格好…?」「……」


その男は長身で筋骨隆々。
赤いマントを纏い、野獣のような肉体から鋭い眼光を放つ。
天才的頭脳を持ち、神技のメスを持つその男の名は…


K「俺の名はKAZUYA。人は俺をドクターKと呼ぶ! そしてこの学園の校医だ!」

「こ、校医~~~?!」




― Prologue 完 ―


11: 2013/10/20(日) 17:11:30.75 ID:wClx6zhA0


※ 注 意 ※


ここから先はネタバレしかありません
黒幕とか真相とか知りたくない人はアニメかゲームを先に見ること推奨



12: 2013/10/20(日) 17:12:33.75 ID:wClx6zhA0


Chapter.1 イキキル(非)日常編



突然の闖入者に驚きを隠せない生徒一同。
だが誰よりも驚いていたのは黒幕こと江ノ島盾子であった。


― モニタールーム ―


江ノ島「はあああああっ?! なんで?! なんであのオッサン生きてんの?!」


江ノ島「どういうことよ?! ちゃんと始末したって言ってたじゃん!」


13: 2013/10/20(日) 17:14:03.49 ID:wClx6zhA0

江ノ島と同様に驚いていたのは、江ノ島に変装して生徒達に
紛れ込んでいた彼女の双子の姉・戦刃むくろ(超高校級の軍人)であった。


戦刃(え、どういうこと?! 私ちゃんと頃したよ! ちゃんとありとあらゆる
    罠を仕掛けて物理準備室で奇襲したし、盾子ちゃんが念入りに頃しとけって
    言うから、普通なら1回で十分なのをわざわざ7回も撲頃したのに…)

戦刃(しっかりトドメに銃も四発撃ったもん。私のせいじゃないもん…)

モノクマ「……」

KAZUYA「俺が生きててさぞかし驚いているようだな。貴様の罠や
    奇襲はなかなかだったが、唯一見誤ったのは俺の生命力だ」


14: 2013/10/20(日) 17:17:03.15 ID:wClx6zhA0

KAZUYA「七回頭部を強打され四発銃で撃たれたが、幸い銃弾は俺の筋肉を
     貫通出来なかった。この程度で俺を殺せたと思ったのが甘かったな」

大和田「いやそんだけやられてなんで生きてんだよ」

葉隠「ば、化物だべ…」

KAZUYA「貴様は俺が氏んだと思いすぐにその場を離れたようだが、
    あれは仮氏状態でその後俺は息を吹き返し、自ら体を手術した」

KAZUYA「流石にダメージが大きすぎてその後しばらくは意識を失ったが、俺は
    まだ生きている。俺の目の黒いうちは貴様の好きになどさせん!」

モノクマ「引くわー。自分で自分を手術しちゃうとかマジでドン引きだわー」


15: 2013/10/20(日) 17:18:38.93 ID:wClx6zhA0

モノクマ「…というか、階段の前には格子状のシャッターがあったと
     思うんですけど、どうやってこの体育館まで…」

KAZUYA「当然、邪魔な物は全て破壊させてもらった!」

モノクマ「ちょっとおおおおお! 何してくれてんのおおおおおお?!」

江ノ島「事件のたびに一階ずつ開放して殺人を煽るつもりだったのに!
    こいつのせいで計画メチャクチャじゃん!」

江ノ島「あああああ、終わったあああああああ。こいつに外の状況を全部
    説明されてこのコロシアイ生活も終了。準備大変だったのになぁ…」

モノクマ「む、むうぅぅ…」


16: 2013/10/20(日) 17:20:39.78 ID:wClx6zhA0

形勢は逆転したかに見えた。が、


石丸「これはこれは先生でしたか。風紀委員の石丸清多夏と申します。
   これからどうかよろしくお願いします!」

KAZUYA「ウム、よろしく」

偽江ノ島「…ちょ、ちょっと! なに普通に挨拶してんのっ!」

偽江ノ島「あんな胡散臭い奴がアタシ達の先生なワケないじゃん!!」

山田「確かに。あの格好で校医って…不審者殿、設定に無理がありすぎますぞ」


17: 2013/10/20(日) 17:21:51.92 ID:wClx6zhA0

桑田「校医って普通は女の先生だろ。体育とかならまだしもさぁ」

葉隠「あの凄まじい筋肉。先生というよりオーガその2だべ」

セレス「わざと一芝居うって我々の仲間になり、内部に侵入した後
    殺人を煽る黒幕の仲間なのかもしれませんわね」

不二咲「そ、そうなのぉ?」


生徒達の不審がる視線に思わずKAZUYAも動揺する。
だが、一人の生徒が一歩前に出た。


18: 2013/10/20(日) 17:23:27.69 ID:wClx6zhA0

十神「フン、ドクターKか…俺は知っているぞ。
   日本医学界の最高権威・帝都大医学部を首席で卒業し、若くして
   国際レベルで活躍。その執刀技術は特Aランクだそうだ」

苗木「へ、へえ。そうなんだ」

十神「そう、だからこそ言える。そんな大物が高校の校医などするはずがない!!
   何故わざわざドクターKの名前を出したかは知らんが、つまらんミスをしたな」

K「……」


しかし、実際(原作でも)そうなのだから仕方がない。

※KAZUYAは過去に加奈高校という学校の校医を臨時に引き受けたことがある。


19: 2013/10/20(日) 17:24:24.40 ID:wClx6zhA0

K「ち、違う。俺は本当にこの学園の校医だ!」

K(マズイな。完全に疑われている。血のついた白衣で現れたら生徒達を
  怖がらせてしまうと、いつものマントに着替えたのが仇となったか…)

K「(…そうだ)朝日奈、舞園。君達は既に俺に会っているだろう?
  俺が初めてここに来た時、学園長室に連れて行ってくれたじゃないか」


KAZUYAは、この学園に初めて来た時出会った二人の少女が
目の前にいることに気付いて話しかけた。

しかし、返ってきたのは見知らぬ人間に対する恐怖と警戒の目線である。


20: 2013/10/20(日) 17:26:48.77 ID:wClx6zhA0

舞園「…え? あ、あの…」

朝日奈「私、おじさんと会ったの今日が初めてだけど…」

K「…何を言っているんだ? 確かに会っただろう! それに桑田、苗木!」

桑田「ええっ? 俺?!」

K「桑田、野球で怪我をした苗木に付き添って二人で保健室に来たはずだ。
 よもや忘れたとは言わせんぞ」

21: 2013/10/20(日) 17:27:38.98 ID:wClx6zhA0

桑田「し、知らねえよ! オッサンの勘違いかなんかだろ!」

苗木「…ごめんなさい。僕も、おじさんとは一度も会ったことないと思う」

K「そんな、馬鹿な…」

腐川「…や、やっぱり、こいつ犯人の仲間よ。怪しすぎるもの…!」

葉隠「俺達を騙すための黒幕の作戦だべ。俺の占いは三割当たる!」

大神「待て。まだ決めつけるな。…KAZUYA殿と言ったか。
   そなたは襲われる前、どこで何をしていたのか?」

K「襲われる前…ムウ、何だ?! ここしばらくの記憶が無い。クッ…
 執拗に頭部へ打撃を受けたために一時的な記憶喪失を起こしているのか。
 確かにこの学園に来て三日程働いた記憶はあるのだが…」


22: 2013/10/20(日) 17:28:19.76 ID:wClx6zhA0


― モニタールーム ―


江ノ島「散々苦労して練りに練った計画が発動する前から潰されるなんて
    絶望的ぃぃぃぃ、って……あれ? あれあれあれ?」

江ノ島「え、なになに? 記憶喪失?! マジで?! 私様最高にツイてる…」


いまだ計画が潰えてないと気付くや否や、悪魔の頭脳はフル回転し始める。


モノクマ「いやあ~、みんなには早速バレちゃいましたか!」


23: 2013/10/20(日) 17:29:36.43 ID:wClx6zhA0

K「何だと?!」

モノクマ「うぷぷ。大正解! KAZUYA先生にはみんなの仲間になってもらって
     撹乱したり煽動してもらうつもりだったのに、もう演技下手すぎ!
     服装もありえないほどダサいし、やる気あんのぉ?」

K「何を言っている…?! お前達、騙されるな! 全てデタラメだ!!」

一同「……」

モノクマ「まっ、バレちゃったけどここは学校なんだし、一人くらい
     大人がいてもいいでしょ? みんな、仲良くしてあげてねー」


24: 2013/10/20(日) 17:30:27.95 ID:wClx6zhA0

K「おい、ふざけるな! 貴様ぁッ!」


KAZUYAがモノクマを掴んで持ち上げる。
と、同時に妙な機械音が鳴り始めた。

ピピピピピピピピピピピ……


霧切「いけない! 投げて!」

K「! フンッ」


25: 2013/10/20(日) 17:31:27.88 ID:wClx6zhA0

ドーーーーーーーーン!


「きゃああああああああ」「うわあああああああああああああ」


KAZUYAが放り投げたモノクマが空中で爆散する。
と同時に、あざ笑うかのごとく別の場所から新たなモノクマが現れた。


モノクマ「そうそう。学園長に対する暴力は校則で禁止されてるから。
     違反したらお仕置きだよ。それじゃあ入学式は終わり。じゃーねー」


26: 2013/10/20(日) 17:32:26.78 ID:wClx6zhA0

K「おい! まだ話は終わっていないぞ! 待て!!」


制止の声も虚しくモノクマはどこかへ消えてしまった。
ふと、刺さるような冷たい視線に気付いたKAZUYAが後ろを振り向くと、
そこには自分を見つめる疑念と不信感に満ちた30の瞳があった。


K「違う、違うんだ。俺は本当に…」

大和田「なあ、こいつどうするよ?」

葉隠「捕まえてふんじばっちまった方がいいんじゃねえか?」


27: 2013/10/20(日) 17:33:30.78 ID:wClx6zhA0

腐川「で、でも…もし暴れたりしたら、私達全員殺される! 殺されるわ!」

不二咲「そんな! 怖いよぉ…」

石丸「……」

K(皆、怯えている。下手に刺激しない方がいい。今は、流れに身を任せる他ない)

K「……」


28: 2013/10/20(日) 17:34:34.18 ID:wClx6zhA0

捕まえるという話にはなったものの、KAZUYAの人間離れした体格に
皆一様に恐怖を抱き、実際に実行に移そうとする者はいない。
気まずい雰囲気とヒソヒソ声だけがいつまでも場を支配する。


舞園「…苗木君、苗木君はどう思いますか?」

苗木「え、僕? …うーん、確かに怪しいし会ったこともないのに
   僕のことを知ってるって言われて不気味だけど、でも…」

苗木(でも、なんでだろう。あの人の困っている顔を見てると、
   助けてあげた方がいいような気がしてくる。何の根拠もないけど、
   あの人は多分、悪い人じゃない。…そんな気がする)


29: 2013/10/20(日) 17:35:46.33 ID:wClx6zhA0

苗木「ね、ねえ! みん 霧切「待って」

霧切「…ねえ、KAZUYAさん。何か、あなたの身元がはっきりわかる物は
   ないのかしら。例えばあなたが本当にここの教員なら教員証があるはず」


霧切の質問に思わず罰の悪い顔をするKAZUYA。


K「それがだな…教員証はない」

霧切「…どういうこと?」


30: 2013/10/20(日) 17:37:40.09 ID:wClx6zhA0

K「俺が臨時で来た校医だからだ。ここの本来の校医は俺の大学時代の
 同期なのだが、急病で半月ほど入院することになり急遽代理を頼まれたのだ」

K「だから…教員証やそれに準ずるものはない」

山田「なんというか、怪しさの針が完全に振り切れてますなぁ…」

セレス「ここまでくると、どうしようもないですわね」


34: 2013/10/20(日) 17:47:33.00 ID:wClx6zhA0

>>32
あ、書き忘れてたけど自分はその作者さんとは別人です
まどマギとドクターKのクロス見て触発されて書き始めました

あれは原作愛を感じられる良SSでしたね!自分も頑張ります

41: 2013/10/20(日) 23:51:16.62 ID:TxnK6XCN0

霧切(マズイわ。私の推測ではこの人は本当に黒幕とは何の関係もない。
   …というか、推測以前に黒幕の立場に立って考えれば明白よ)

霧切(だって彼の服装、経歴、そもそも存在自体が怪しすぎるもの。
   もし私が黒幕なら、スパイにはもっと地味な教師を選ぶ。
   もしくは、より疑われないように『生徒の中に紛れ込ませる』…)

霧切(確かにあからさまに怪しい人間を入れて場をかき回すということも
   考えられなくもないけど、それでも彼の雰囲気は異様すぎるわ)

霧切(何より、彼が名乗ったドクターKという通り名も――)


十神「フン、番狂わせにもならなかったな。つまらん」


42: 2013/10/20(日) 23:52:27.48 ID:TxnK6XCN0

大神「どういうことだ、十神?」

十神「コイツが本当に黒幕の仲間かどうかは俺にとってどうでもいい。
   大事なことはここの愚民達を納得させられない以上、事の真偽は
   どうであれこの男は黒幕の仲間になるということだ」

K「…! いや、待ってくれ。俺の身分を証明するものならここにある」


KAZUYAが懐から出したのは、肌身離さず持ち歩いている医師免許であった。


43: 2013/10/20(日) 23:53:21.30 ID:TxnK6XCN0

K「これだけでは俺が本当にここの校医かどうかの証明は出来ないだろう。
 だが、少なくとも俺が本物の医者であるという証明にはなるはずだ」

霧切「見せてもらってもいいかしら? …本物のようね」

苗木「西城カズヤさんっていうんだ」

石丸「ううーむ…なるほど。成程。…そうか! わかったぞ!!」


KAZUYAの医師免許を見つめながら、今まで沈黙を貫いて
ずっと考え込んでいた石丸が突然叫びだした。


44: 2013/10/20(日) 23:55:31.29 ID:TxnK6XCN0

朝日奈「なに? なにがわかったの一体?!」

石丸「西城先生はやはりこの学園の校医で、僕達と同時に学園に来たのだ!」

大和田「なにを根拠にそう思うんだ?」

石丸「だって、常識的に考えて怪しすぎるだろう! スパイならもっと
   目立たずに行動するはずだ。怪しまれるような発言は慎むはず」

セレス「ですが、スパイではないというならば朝日奈さん達のことを
    知っているのは何故なのでしょう?」

石丸「希望ヶ峰の生徒の情報なんて、ネットで調べれば簡単に出てくる。
   先生は黒幕に頭を何度も殴打されたことにより記憶が混乱し、
   既に僕達と会ったことがあると錯覚してしまっただけなのだっ!」


45: 2013/10/20(日) 23:57:03.63 ID:TxnK6XCN0

朝日奈「そっか! それなら何もおかしくないね」

不二咲「じゃ、じゃあ本当に僕達と同じ巻き込まれただけの先生?」

K「……」

K(俺は確かにこの学園で働いた記憶がある。何人かとは会って話もしたし、
 その内容も全て覚えている。だが今それを言っても、証明できない以上
 不審がられるだけだ。今は記憶が混乱しただけということにした方がいい)

K(だが…この食い違いは何か非常に大きな意味を持っている気がする。
  それが何かはまだわからん。が、深く心に留めておくとしよう…)


46: 2013/10/20(日) 23:58:34.09 ID:TxnK6XCN0

とにかく今は生徒達を安心させることが最重要と考えたKAZUYAは、
自分の中の矛盾をひとまず置いておくことに決めた。


K「…ああ。どうやら俺は気付かないうちに記憶が混乱していたようだ。
 ただでさえこんな状況なのに不安にさせてすまなかった」

葉隠「いやぁ、一時はどうなることかと思ったべ~」

舞園「良かった。先生がいるというだけでなんだか少し安心できますね」


47: 2013/10/20(日) 23:59:29.76 ID:TxnK6XCN0

苗木「そうだったんだ。じゃあ改めてよろしく、KAZUYA先生!」

大神「よろしく頼む、西城殿」

石丸「そうだ。西城先生にみんなのことを紹介しよう!」


わいわいと自己紹介する面々を見ながら、霧切はあえて黙っていた。


霧切「……」

霧切(一見筋が通っているように見えるけど、石丸君の説明には
   一つだけ大きな穴があるわ。それは…)


    閃きアナグラム開始!


ん な ぎ く え ま の え な


48: 2013/10/21(月) 00:02:50.68 ID:aNG6zLSm0

風呂行ってきまー

50: 2013/10/21(月) 00:58:27.78 ID:aNG6zLSm0


霧切(そう。苗木君の名前。確かに他の生徒達の情報はネットで調べることが
   出来るけど、抽選で選ばれただけの苗木君の名前を彼はどこで知ったのかしら)

霧切(彼が本物の校医なら、たまたまどこかで苗木君の情報を知っただけ
   かもしれない。でも同じ理屈で黒幕から生徒の情報を得たとも言える)

霧切(ただ、今は変に場を混乱させるより黙っていた方が賢明でしょうね…)

石丸「…で、最後にこちらの女性が霧切響子君です」

K「ん、霧切…? そうか(学園長が娘も通っていると言ってたな)」

霧切「……!」


51: 2013/10/21(月) 00:59:22.58 ID:aNG6zLSm0


その時KAZUYAは、今まで頑なに無表情を貫いていた霧切の僅かな変化を感じ取った。


石丸「どうかされましたか?」

K「…いや、なんでもない」

桑田「本当にこのオッサン校医なのかぁ? なんっか怪しいよな」

山田「まあ、校医すら特別なのは流石希望ヶ峰と言えなくもありませんが…」

セレス「警戒するにこしたことはありませんわね」

十神(……ドクターK)


52: 2013/10/21(月) 01:00:27.64 ID:aNG6zLSm0


モノクマ「あ、そうそう」

「わっ!?」


一息つこうかというタイミングで、再び現れるモノクマ。


朝日奈「ちょっとなによいきなり!」

モノクマ「突然のハプニングのせいで一つ大事なこと言い忘れてて」

モノクマ「みんなには電子生徒手帳を配っておいたから、
     校則とか諸々のことはそれで確認しておいてね」


53: 2013/10/21(月) 01:01:28.10 ID:aNG6zLSm0

苗木「どれどれ…あ、これが電子生徒手帳か」


生徒手帳では学園内のフロアマップや校則が確認できる。


◇校則

1.生徒達はこの学園内だけで共同生活を行いましょう。共同生活の期限はありません。

2.夜10時から朝7時までを“夜時間”とします。夜時間は立ち入り禁止区域があるので、注意しましょう。

3.就寝は寄宿舎に設けられた個室でのみ可能です。他の部屋での故意の就寝は居眠りとみなし罰します。

4.希望ヶ峰学園について調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません。

5.学園長ことモノクマへの暴力を禁じます。監視カメラの破壊を禁じます。

6.仲間の誰かを頃したクロは“卒業”となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。


54: 2013/10/21(月) 01:02:32.62 ID:aNG6zLSm0

モノクマ「あ、そうそう。さっき少し説明したし校則ちょっと加えるね」


ピロリン♪


7.コロシアイ学園生活で同一のクロが殺せるのは、2人までとします。

8.鍵の掛かってるドアを壊すのは禁止とします。


モノクマ「もう壊しちゃった物は仕方ないけど、これ以上ぶっ壊しまくるのは
     ダメだからね、先生! 破ったらどうなることか…」



55: 2013/10/21(月) 01:03:41.13 ID:aNG6zLSm0

K「……」

十神「おい、モノクマ」

モノクマ「はいはい、なんでしょう」

十神「貴様は俺達にコロシアイを強要しているはずだ。にもかかわらず、
   何故それを阻害するようなルールが設けられている」

モノクマ「そりゃそうだよ。だって、正面勝負なら腕力のある大神さんが
     有利だし、僕はみんなに平等に頃しあってもらいたいんだよ」

十神「聞き方を変えてやる。もし頃しがバレた場合、ペナルティはあるのか」

モノクマ「そりゃあ学園の秩序を乱したんだから、
     犯人にはオシオキがあるに決まってるよね」


全員、嫌な予感がした。


56: 2013/10/21(月) 01:04:53.73 ID:aNG6zLSm0

K「そのお仕置きとは何だ?」

モノクマ「オシオキって言ったら『公開処刑』に決まってるでしょ。
     それもとーってもスペシャルでグレートでエキサイティングな奴ね」

「なっ?!!」


残酷な宣告はあまりにもあっさりと口にされた。
誰もが呆気にとられて言葉を失う中、モノクマは一人続ける。


モノクマ「そのくらいのリスクがあった方が殺る方もワクワクするでしょ。
     まあ、頃す人数に関しては本来制限はいらないんだけどね。
     ただあんまり最初に人数が減りすぎちゃうと裁判がつまらないし」


57: 2013/10/21(月) 01:06:32.25 ID:aNG6zLSm0

K「裁判? おい、それは一体 大和田「ふざっけんなぁぁ!!」

大和田「コロシアイだのオシオキだの、いい加減にしろよ!
    ぬいぐるみだかラジコンだか知らねえが今すぐぶっ壊して…!」

十神「フン、これだからプランクトンは困る」

大和田「あ? なんだぁテメエ?!」

十神「学習能力がないんだな。先ほどの爆破を見ていなかったのか?
   そいつに手を出せば今度こそ木っ端微塵だぞ」

大和田「ぐうぅ、クソッ!」


58: 2013/10/21(月) 01:07:59.28 ID:aNG6zLSm0

十神「理不尽だろうがなんだろうが、もうゲームは始まっているんだ。
   ゲームである以上俺は勝つ。貴様ら愚民もせいぜいない頭を使うんだな」

K「……!」

大和田「ゲ、ゲームってお前?! 頭イカれてんじゃねえか?!」

モノクマ「お、仲間割れですか。いいねえ! やれやれ、殺っちゃえ!」


素知らぬ顔で二人を煽るモノクマに嫌悪感を抱きながら、
苗木たちはなんとか仲裁しようと間に入る。


59: 2013/10/21(月) 01:08:42.20 ID:aNG6zLSm0

苗木「ね、ねえ! 二人ともケンカはやめようよ! 僕達、協力しなくちゃ」

葉隠「そうだべ。今は言い争ってる場合じゃないべ!」

石丸「二人の言う通りだ。十神君、そういう言い方はあんまりではないかね…!」

十神「フン、俺はお前達と馴れ合うつもりはない。一人で行動させてもらう」

大和田「テメエ、さっきから勝手なことばっかヌカしやがって!
    いい加減にしろっ!!」

舞園「あ、危ない!」 不二咲「きゃっ!」


60: 2013/10/21(月) 01:09:25.18 ID:aNG6zLSm0

ガッ!


K「大和田、拳を降ろせ」

大和田「せ、先公…」


とうとう堪忍袋の尾が切れ十神に殴りかかった大和田の右腕を
KAZUYAは片手で掴んで止めていた。


桑田「う、嘘だろ…」

大神(あの動き…力。まるで往年のケンイチロウのようだ。本当に医者なのか?)


61: 2013/10/21(月) 01:11:51.29 ID:aNG6zLSm0

K「大和田、お前の怒りは最もだ。しかし本当の敵は別にいるだろう?」

大和田(くそ…ビクともしねえ。左手一本で俺のパンチをとめやがるとはな…)


バッ


大和田「チッ、今回は先公に免じて勘弁してやるよ」

十神「負け犬め」

大和田「んだとぉっ?!」

K「十神もやめろ。これ以上煽るなら俺のゲンコツを喰らうかもしれんぞ」


62: 2013/10/21(月) 01:14:23.59 ID:aNG6zLSm0

十神「……」クルッスタスタスタ

腐川「あっ」


何も言わずに去っていく十神。その姿を追いかけていく腐川。


大和田「なんなんだよ、アイツ…!」

石丸「まあ、十神君に関しては僕から後で言っておこう。それより先生、
   これからどうしますか? 手分けして学園を探索すべきかと思いますが」

K「ああ、そうだな。各自別れて脱出の手がかりを探そう。十一時に食堂に集合だ」


そして生徒達は散り散りになって広い学園の中を探索する。



63: 2013/10/21(月) 01:27:35.55 ID:aNG6zLSm0

        ― モノクマ劇場 ―


モノクマ「今日はここまで! マイナー過ぎる作品とのクロスで正直一人も
     見てないんじゃないかとちょっとガクブルしてたけど
     何人か読んでいてくれているみたいで一安心」

モノクマ「ま、>>1は一週間分の書き溜めをほとんど使ってしまって
     いい感じに絶望した顔をしてるけどね。うぷぷぷぷ」

モノクマ「マイナーだし古いけど、ドクターK自体は凄く面白い良い漫画だよ。
     主人公が色々トンデモだけど、このSSと違ってちゃんと監修が
     ついてるから医療描写や人間ドラマは凄くしっかりしてるしね」

モノクマ「文庫本なら場所も取らないし、古本屋で簡単に全部集められるから
     一度読んでみることをオススメするよ。ま、希望に溢れてて僕は嫌いだけど」


モノクマ「じゃ、またね~」



74: 2013/10/23(水) 02:02:39.97 ID:MPC9XTcq0

― 寄宿舎 1階 ―


苗木「ここが寄宿舎か。僕達の個室があるね」

山田「中は広いし、ベッドはフカフカですぞ~」

朝日奈「私達全員分の部屋があるみたい。ちゃんとネームプレートもあるよ!」

桑田「…そういやさ、オッサンは部屋ないんじゃね?」

石丸「黒幕にとって本来イレギュラーな人間だっただろうからな」

K「俺は保健室でいいさ。そもそも野宿には慣れているから、
  屋根と壁さえあればそれで十分だ」

苗木(野宿に慣れてるお医者さんてなんなんだろう…)


75: 2013/10/23(水) 02:03:44.96 ID:MPC9XTcq0

舞園「あ、でも…校則に個室以外での就寝は認めませんってあったような」

葉隠「破ったらオシオキだべ」

石丸「先生だけ外に放っておく訳にはいかない。僕の部屋に来ますか?」

K「まあ、俺はそれでも別に構わないが。(チラッ)…おい、モノクマ!」

モノクマ「ハイハイ!」

石丸「うわああっ!」

苗木「よ、呼んだら出てくるんだ…」


KAZUYAが呼ぶと、物陰から様子を見ていたのか意外とあっさりモノクマが出てきた。


76: 2013/10/23(水) 02:05:04.86 ID:MPC9XTcq0


K「俺の寝場所についてだが…」

モノクマ「校則破ったらオシオキだからね!」


あくまで校則を守れというモノクマにKAZUYAは不敵な笑みで返す。


K「おや、俺はお前の仲間なんじゃなかったのか?
  寝る場所くらい融通を効かせてくれてもいいだろう」ニヤッ

モノクマ「っくうう。しょうがないなぁ! これだけだからね!
     もう何か言われても特別待遇とかしてあげないからね!」


そのまま去ろうとしたモノクマだが、ふと何かを思い出して戻ってきた。


77: 2013/10/23(水) 02:06:35.27 ID:MPC9XTcq0


モノクマ「…そういえばさ、保健室って確か鍵がかかってたはずなんだけど」

K「ああ、手術で使った薬品類の補填とマントを取りに保健室に立ち寄ったが、
  鍵がかかっていたので破壊させてもらった」

モノクマ「んもうっ! どんだけ壊せば気が済むんだよ君!
     ドクターKじゃなくて次からデストロイヤーKって名乗れば!!」

K「断る」

朝日奈「あれー? 結構格好良いと思うんだけど」

苗木「朝日奈さん、プロレスラーじゃないんだから…」


こうしてKAZUYAは保健室で寝泊まりすることになった。


78: 2013/10/23(水) 02:07:46.26 ID:MPC9XTcq0

その頃、保健室。


江ノ島「…この扉、なんかひしゃげてない?」

大神「鍵が壊されて中に入れるようだ。恐らく西城殿の仕業だろう」

セレス「入ってみましょう」

大和田「まあ、普通の保健室だよな。…っておい、あれ」

不二咲「つ、机の上に血のついた白衣があるよ!」


バサッ


大神「うむ、大きさから考えて西城殿のものだろう。それにしても夥しい血だ…」


80: 2013/10/23(水) 02:14:01.33 ID:MPC9XTcq0

大和田「普通氏ぬよな。黒幕からこんなにやられたってことは、やっぱ味方ってことか?」

セレス「どうでしょう? まだわかりませんわ」

江ノ島「……」


― 2階 図書室 ―


十神「遅かったな。待ちくたびれたぞ」

苗木「待ってた? 僕達を?」


ふと見渡すと図書室に16名全員が集結していることに気付く。


81: 2013/10/23(水) 02:15:39.35 ID:MPC9XTcq0

石丸「十神君、こんな所にいたのか」

十神「貴様らがモタモタしてる間に、この俺が面白い物を発見した。見てみろ」


そう言って十神は一枚の封筒をKAZUYAに渡す。
KAZUYAが長身のため、苗木は背伸びをしながら横から覗きこんだ。


苗木「学園長からのお知らせ? 一体なんだろう?」

K「……。これは…?! 馬鹿な!」


82: 2013/10/23(水) 02:17:20.32 ID:MPC9XTcq0

渡された封筒の中の書類をKAZUYAが読み上げ、一同は愕然とする。


そこには『希望ヶ峰学園廃校のお知らせ』が入っていた。


K「…近い将来問題が解決したら活動を再開させる。これで全てだ」

舞園「一体どういうことなのでしょうか…?」

霧切「そのままの意味よ。私達が来た時、この学園は既に学園としての
   役割を終えていたということ」

苗木「つまり、先生の記憶がなくなっている間に実は学園は閉鎖されてたってこと?」

大神「しかし、我はそんな話聞いたことがない」


83: 2013/10/23(水) 02:18:32.42 ID:MPC9XTcq0

石丸「僕もだ。希望ヶ峰ほどの学園が廃校になったなら必ずニュースになるはず。
   この場にいる誰一人何も知らないと言うのはありえない」

十神「誰一人? いるじゃないか。真相を知っている男が目の前に」

朝日奈「だ、だれよっ! …あ」


全員の視線がKAZUYAに集中する。


K「…俺だな」

セレス「先生が本当にここの校医だったなら、学園廃校の情報を知らないはずがない。
    全ての真相は先生の失われた記憶の中にある、ということですわね」


85: 2013/10/23(水) 02:21:47.87 ID:MPC9XTcq0

江ノ島「でもおかしくない? 無人になった学園を黒幕が乗っ取ったのなら、
    何で校医のコイツはここにいるの? やっぱり黒幕の仲間なんじゃ…」

大和田「俺もまだ怪しいとは思うけどよぉ…お前も見ただろ血まみれの白衣」

桑田「メチャメチャになった物理準備室も見たぜ」

江ノ島「そんなの、ただ仲間割れしただけかもしれないじゃん!」

十神「黒幕が俺達を混乱させるために置いた偽装工作の可能性もある。断定は出来ん」

十神「…まあ、本物の方が面白いがな。こんな緊張感のあるゲームはそうそうない。
   謎は多ければ多いほど張り合いがある。折角だ。お前達ももっと楽しんだらどうだ?」

大和田「テメエまだゲームとかふざけたこと言ってやがるのかっ!
    …本っ当に殴られたいみたいだな!!」ポキポキ…

K「大和田、落ち着け」


87: 2013/10/23(水) 02:27:10.61 ID:MPC9XTcq0

不二咲「コロシアイなんて…仲間同士で頃しあうなんて、そんなの嫌だよぅ」

石丸「そんなものは起きない! みんなで団結して事に当たれば…」

十神「団結? 今日会ったばかりの赤の他人がか?」

石丸「……」

十神「とにかく、前にも言ったが俺はお前達と仲間ごっこするつもりは毛頭ない。
   このゲームにおいて俺達は全員敵同士だ。それを忘れないことだな」


― 3階 物理室の前の廊下 ―


苗木「先生はこの部屋の隣の物理準備室で襲われたんですよね?」

K「そうだ」


88: 2013/10/23(水) 02:28:26.91 ID:MPC9XTcq0

葉隠「覗いてみたけど、部屋の中はとにかくメチャクチャだし、
   壁や床にとんでもない量の血がついてたべ…」

桑田「あんだけやられてピンピンしてるって、マジありえねー…」

大和田「この部屋の中は…ってなんだこりゃ?!」

大神「ム、この巨大な装置は一体…不二咲よ、わかるか?」

不二咲「うーん、こんな凄い装置見たことないや。ごめんね」

K「なんだこれは…(磨毛がいたら何かわかるだろうか)」


今ここにいない機械の天才を思いながら、KAZUYAは操作盤に触れようとする。


モノクマ「ああ! ダメダメ! 危ないよ!」


89: 2013/10/23(水) 02:33:36.11 ID:MPC9XTcq0

K「!」


一同が目をやると、そこにはいつのまにかモノクマが立っていた。


葉隠「本当に神出鬼没な奴だべ」

モノクマ「これは巨大な空気清浄機だよ。ここから学園中に空気を供給しているのさ。
     壊れたら大変だから、絶対触っちゃダメだよ。氏にたいならいいけど」

K「密閉空間であるこの学園に、これで酸素の量を調節しているという訳か?」

モノクマ「ま、そんな所。それだけじゃないけどね」

K(それだけではない? 何か特殊な役割でも持っているのか?)


90: 2013/10/23(水) 02:39:22.70 ID:MPC9XTcq0

モノクマの言葉を受け、KAZUYAはその頭脳をフル回転させ始める。


K(…そもそもこんな巨大な装置、一朝一夕に設置出来るのか?
  俺の怪我の治り具合からして、恐らく俺が奇襲を受けてから今日までは
  せいぜい二、三日といった所だ。その間にこんな巨大な物を設置出来る訳がない)

K(しかし現に存在してる以上は…)


ここでつい先ほど図書室で見た学園廃校の書類を思い出す。


K(きっと、何か関係があるのだろう。そうなるとあの書類は本物である可能性が高い。
  この機械は規模から考えて、恐らくこの学園生活において非常に重要な物だ)

K(クソッ、俺の記憶さえ取り戻すことが出来れば…)


焦燥を感じるが、焦りとは反対にKAZUYAの記憶が戻る気配はまるでなかったのだった――

99: 2013/10/25(金) 21:38:33.83 ID:VK/X53P40


― 十一時 食堂 ―


時間になり、全員が食堂に集う。流石に最初だからか十神も出席していた。
各自で入れる場所、手に入れたものを報告しあう。


 ◇現在行ける場所

・一階(大浴場、倉庫以外。保健室はKAZUYAにより解錠済み)
・二階
・三階

 ◇手に入れた物

・何故か物理室にあった山田のデジカメ(山田に返した)
・図書室の謎の書類


いくつか気になる物はあったが、黒幕の正体に繋がる物や
脱出の手がかりになりそうなものは何もなかった。


大和田「結局、わかったのは出口になりそうなとこはねえってことか」

不二咲「僕達、これからどうすればいいんだろう…」


101: 2013/10/25(金) 21:49:25.91 ID:VK/X53P40

セレス「簡単なことですわ。この環境に適応すればいいのです。幸い、黒幕が
    直接わたくし達に手を下すことはないようですし、食料は毎日補給して
    くださるとのこと。この環境に適応し、コロシアイなどしなければいいのです」

石丸「その通りだ。とりあえず提案だが、これから毎日朝食会を開かないか?
   その日の方針を決めたり、みんなと親睦を深める機会にしたいのだが」

桑田「めんどくせえなぁ。ここは学校じゃないんだから自由でいんじゃね?」

K「いや、なかなか良い提案だと思うぞ」


基本的には黙って議論を聞いていたKAZUYAが珍しく口を挟む。


K「人間には体内時計というものがあり、個人差はあるが一日24時間10分と言われている」

桑田「え、おかしくね? それじゃあちょっとずつズレるじゃん」

K「そうだ。そのズレをどうやって修正しているかわかるか?」

霧切「日光ね。毎日陽の光を浴びることによって、ズレた分をリセットしているの」


102: 2013/10/25(金) 21:54:17.55 ID:VK/X53P40

K「その通り。ここは窓が全て塞がれていて、陽の光がない。
 つまり、放っておくとどんどん体内時計がズレていってしまう」

K「体内時計のズレは不規則な生活に繋がり、自律神経やひいては
 ホルモンバランスを崩壊させ、それらは情緒不安定な状態を導く…」

K「ただでさえストレスの多い環境だ。自己管理をしっかりしないと、
 ちょっとした機会に暴発して、それこそ頃し合いが起きないとも限らん。
 各自、しっかりと心身を引き締め臨むことだ」

朝日奈「…怖いね。気をつけないと」

桑田「わーったよ。わかったからあんま脅かさないでくれよ」


その時、セレスがスッと手を挙げる。


石丸「セレス君、何かね?」

セレス「わたくしからも一つ提案があるのですが」


103: 2013/10/25(金) 21:56:11.26 ID:VK/X53P40

セレス「みなさん、夜時間に関するルールは覚えていらっしゃいますか?
    これに関して、もう一つルールを定めたいと思うのですが」

江ノ島「ルール? 何を?」

セレス「夜時間の出歩きを禁止したらどうでしょう? 今のままではわたくし達は
    夜になるたび、誰かが頃しに来るのではないかと怯えることになります。
    そんな生活が続けば、あっという間に憔悴してしまいますわ」

大神「成程、一理あるな」

K(……)


こうして、朝食会と夜時間の出歩きについて取り決めが出来た。

報告会が終わり、一同は会話をしながら昼食をとり始める。


石丸「先生があの帝都大医学部を主席で卒業されたというのは本当ですか?」

K「まあな」


104: 2013/10/25(金) 21:57:38.23 ID:VK/X53P40

苗木「凄い! もしかして、先生って希望ヶ峰の卒業生だったりとか?」

舞園「肩書きは超高校級の医者という所でしょうか」

K「いや、俺は普通の高校出身だ。希望ヶ峰からスカウトを受けたことはあるが、断った」

不二咲「え、どうしてですか?」

K「俺の一族は代々医者をやっていてな…裏世界から目をつけられがちで、
 あまり目立つのを良しとしなかったんだ。…そもそも、超高校級の医者を
 名乗ろうにも、医者は国家資格を取得しないとなれんだろう?」

苗木「ハハ、確かに(裏世界から目をつけられる医者って一体…)」

石丸「代々続く名門の医者…先生もまた天才なのですね」ボソッ

江ノ島「……」


105: 2013/10/25(金) 21:58:28.55 ID:VK/X53P40

朝日奈「さくらちゃん、二階にプールがあったんだよ、プール! あとで一緒に泳がない?」

腐川「フン、泳ぐって言っても水着がないじゃない…」

朝日奈「あ…」

大神「なら、我と一緒にトレーニングをしないか? 体を動かせば気も紛れるだろう」

大和田「呑気なもんだな。こんな状況だっつーのに」

葉隠「ま、焦っても仕方ないし俺達はこれからどうすっぺ?」

桑田「もうちょっと探索してみっか? あと三階に娯楽室があったから後で行こうぜ!」

セレス「山田くん、お皿をさげてくださる?」

山田「はいっ、ただいま!」

十神「……」

霧切「……」



106: 2013/10/25(金) 22:01:18.00 ID:VK/X53P40

― 午後 ―


昼食を取ると、各自解散して再び探索に戻っていった。
KAZUYAも注意深く辺りを観察しながら廊下を歩いていたが、その目前に
今までほとんど口をきかなかった霧切響子が立ちはだかる。


霧切「…ドクター、少しよろしいでしょうか?」

K「霧切か。どうかしたのか?」

霧切「自己紹介の時、ドクターは私の名前を聞いて何か反応をしましたが、
   私について一体何を知っているのでしょうか?」

K「? 俺はそんな大したことは考えていなかったが。
 ただ名前を聞いて君が霧切学園長のお嬢さんなのだなと」

霧切「!!」


その瞬間、霧切は酷い頭痛と目眩に襲われてよろける。


K「おい! どうした!」


107: 2013/10/25(金) 22:04:49.41 ID:VK/X53P40

霧切「なんでもないわ…」

K「ない訳なかろう! 頭が痛むのか? 見せてみろ」


頭を抱える霧切の手を払いのけて、KAZUYAは手早く霧切の頭部を見た。
そこでKAZUYAは、左右対称についた長方形の火傷のようなものを見つける。


K(何だ、これは?)

霧切「さわらないでっ!」バシッ

K「ムゥ…君は、何か隠してないか?」

霧切「何も隠してなんかいないわ…」

K「頭部に妙な跡があった。それが原因で体調不良を起こした可能性がある」

霧切(頭部に跡ですって? 何のこと?)

K「もし良かったら俺に診察させてくれないか? 何かわかるかもしれん」

霧切「…人のことにズカズカ足を踏み入れてくるのが医者の仕事なのかしら?」


108: 2013/10/25(金) 22:07:08.68 ID:VK/X53P40

K「その必要があればな。俺は医者だ! 苦しむ者を放っておくことは出来ん。
 話したくないならば、今は無理に聞いたりはしない。だが、学園長からも
 君のことを頼まれている。何かあればいつでも俺を…」

霧切「待って! …待って!」

K「霧切?」


頭を抱え表情を歪ませながら、霧切はKAZUYAの言葉を遮る。
見覚えのある男の顔が頭のなかに浮かんだ。


霧切(…少し思い出せた。そう、私の父はこの学園の学園長…私は、私は父に…父に何?)

霧切(この人は父のことを知っている。恐らく、私が何者なのかも…
   でも、知らない人間に弱みを見せるのは後々弱点になるかもしれない)


109: 2013/10/25(金) 22:09:05.85 ID:VK/X53P40


自分の秘密を、このよく知りもしない不審な男に打ち明けるかどうかで
霧切は逡巡していた。恐らく相手も自分が品定めされていることに
気付いているのだろうが、ただ黙ってじっと霧切の判断を待ってくれた。


霧切(…わかってる。わかってるのよ危険だって。それでも、私は自分が
   何者なのか知りたい…! 自分の中に何もないというのは、恐ろしい…)

霧切「ここでは監視カメラがあるので…男子トイレにきて下さるかしら?」

K「俺は構わないのだが君は…」

霧切「私は大丈夫です」

K(…俺は大丈夫ではないのだが)


110: 2013/10/25(金) 22:19:39.94 ID:VK/X53P40

     ― モノクマ劇場 ―


モノクマ「一旦ここまで。で、今回は重要なお知らせがあるよ!」

モノクマ「僕はクロスSSの醍醐味ってキャラの絡みにあると思うんだよね。
     で、今まで長々とチュートリアルやってた訳だけど、やっと校内探索も終わって
     必要な設定も出しつくしたので、次回から自由時間を設けようと思います!」

モノクマ「自由時間とは、まあ原作ゲームでいう所の日常編だね。安価使って指定された
     生徒達と会ったり移動したりとか。そうやって先生と生徒達の仲を深めて行きます」

モノクマ「本編にいちいち数字書かないけど各生徒達には親密度という隠れゲージがあり、
     この親密度を上げることによってイベントが起きたり、本筋にも影響したりします。
     主に氏傷者の数や事件の被害レベルとかがね…」

モノクマ「より多くの生徒と仲良くなれば当然エンディングも良くなります。みんな頑張ってね!」


モノクマ「さて…人いるならこのまま投下続行するけど、誰かいるかな?」


113: 2013/10/25(金) 22:24:06.37 ID:VK/X53P40
では続行します。



― 男子トイレ ―


K「…成程。記憶が一部混乱している。どのくらいだ?」

霧切「……」

K「言いたくない気持ちも分かるが、症状を正確に把握しないとこちらも対処出来んぞ」

霧切「…ドクターは、記憶喪失の事例を過去に診たことがありますか?」

K「見たも何も、俺自身が二度目の記憶喪失患者だ」

霧切「?!」

K「今回は部分的な記憶の混乱といった所だが、以前は自分の名前も素性も全て忘れた」

霧切「…そ、それで! 一体どうやって戻ったのですか?」

K「手術だ」

霧切「…え」


114: 2013/10/25(金) 22:25:27.57 ID:VK/X53P40

K「怪我人がいたのだがその場に俺しか医者がなく、周りから
 緊急手術を求められたのだ。医者としての記憶がないのにも関わらず」

K「だが不思議と、幼い時から繰り返し訓練していたからか、
 手術の手順は体が覚えていたのだ。そして自然と記憶を取り戻した」

霧切「……」

K「君の肩書きは『超高校級の探偵』だ」

霧切「!!」

K「この学園の謎を解いていけば、失われた記憶も戻るやもしれん。
 それでもダメなら俺の元に来い。いつでも診てやる」


そう言い残し、去ろうとするKAZUYA。


115: 2013/10/25(金) 22:27:53.15 ID:VK/X53P40

霧切「待ってちょうだい! …何故なんの対価も見返りもなしに情報を教えたの。
   私の秘密を知っていれば、後々役に立ったかもしれないのに」

K「言っただろう。君の父親――霧切仁氏に君のことを頼まれたと。ついでに言うと、
 君の家は代々探偵をしていて、理由は知らないが君は父親と不仲だったらしい。
 だが学園長は君のことをとても心配していた。これが今俺が知っている情報の全てだ」

霧切「……」


今度こそ去ろうとしたが、そこにタイミング悪く葉隠が入ってくる。


葉隠「ちょ、先生と霧切っち…こんな所に二人っきりで何やってるべー?!
   ま、まさか教師が女子高生を男子トイレに連れ込んであんなこんなを…!」

K「誤解だッ!」(いかん、ただでさえ警戒されているというのに…)


116: 2013/10/25(金) 22:30:10.50 ID:VK/X53P40

不味い所を見られたとKAZUYAは内心肝を冷やしたが…


霧切「そうよ。私が先生を連れ込んだのだから」

K「な…?!」ポカーン

葉隠「で、でええええ?! 霧切っち、こういうタイプが好きなんか?
   なんにしろまだ会ったばかりだっつーのに大胆だべなぁ」

霧切「行きましょ、先生」


茫然とするKAZUYAを尻目に颯爽と男子トイレから出て行く霧切。


K「お、おい! いいのか?! 誤解されたぞ!」

霧切「ただで情報をもらうのはフェアじゃないわ。『超高校級の探偵』なら尚更ね」ファサッ

K「……(その心構えは立派だが、ウーム)」イイノダロウカ


その後、葉隠の活躍によりあっと言う間に変な噂が広まってしまった。


117: 2013/10/25(金) 22:32:47.13 ID:VK/X53P40


― 自由行動 ―


これ以上一緒にいられる所を見られると不味いので、
霧切と早々に別れたKAZUYAだが、特にすることも浮かばなかった。

K「さて、どうするかな?」

誰かに会いに行く?
どこかに行く?


安価下(人に会うなら人名も)


123: 2013/10/25(金) 22:41:58.55 ID:VK/X53P40

K(とりあえず、石丸に会うか。あいつは『先生』である俺に好意的だからな。
  情報はなるべく共有しておくのがいい)


― 購買部 ―


石丸「あ、先生! 探索お疲れ様です!」

K「こんな所で何をしていたんだ? このマシーンは一体…?」

石丸「モノモノマシーンというらしいです。校内の至る所に落ちている
   この『モノクマメダル』というものを投入することで物をもらえるようです」

K「そういえば俺も何枚か拾ったな。やってみるか」


チャリーン


124: 2013/10/25(金) 22:46:03.10 ID:VK/X53P40

【サバイバルナイフ】をゲットした!


K「」

石丸「」

K「…このマシーンは凶器を生徒達に与えて頃し合いを促進させるものなのか?」

石丸「いや、そんなはずは…僕が今まで見たのはおもちゃやガラクタだけですが…
   みんながもらった物も見ましたけど、こんなものは初めて出ました」

K「(たまたまだな)…もう一回だ」


チャリーン


126: 2013/10/25(金) 22:52:37.79 ID:VK/X53P40

【ベアクロー】をゲットした!

説明:僕の爪じゃないよ! ウォ○ズマンの奴だよ!

【トゲトゲメリケンサック】

説明:撃ち抜け! 貫け! 本能のままに!!


K「…何故俺のばかり…」

石丸「…たまたまですよ! 逆に考えると、生徒に危険な物が
   行かなくて良かったではないですか! 危険物は没収すべきです!」

K「…ああ、そうだな」


出たものは石丸にあげようと思っていたが、凶器を渡す訳にもいかないので
全て保健室に持っていく羽目になった。こんなものを持っている所を見られたくない…



K「さて、次はどうするかな?」

誰かに会いに行く?
どこかに行く?



安価下(人に会うなら人名も。現在Kが認識している人のみでお願いします)


134: 2013/10/25(金) 22:59:29.26 ID:VK/X53P40
苗木把握





136: 2013/10/25(金) 23:03:36.39 ID:VK/X53P40

K「苗木に会ってみるか。あいつも比較的俺に好意的だった。さっそく他の生徒とも
 上手くやっているようだし、苗木を通じて他の生徒とも親しくなれるかもしれん」

苗木「あ、先生」

K「何か発見はあったか?」

苗木「うーん、残念ながら何も…でも、諦めちゃダメですよね! まだ半日しか経ってないし」

K「前向きなんだな」

苗木「僕、運でこの学園に選ばれただけの平凡ど真ん中、好きな漫画や映画は常にランキング一位みたいな
   地味で普通の学生なんですけど、人よりちょっと前向きな所が長所なんです」


138: 2013/10/25(金) 23:10:53.09 ID:VK/X53P40

K「そんなに自分を卑下するな。こんな状況なのに前向きでいられるということは大したものだ」

苗木「そ、そうですか? そう言ってもらえると嬉しいです」

K「そういえば、お前は舞園さやかとよく行動を共にしていたな」

苗木「舞園さん、僕と同じ中学出身で。…舞園さんて、凄いんですよ! 凄く勘が良くて、
   僕が考えてることをズバズバ当てちゃうんです! それでエスパーですからって
   言われて、彼女は冗談のつもりなんですけど、僕は本当にエスパーなんじゃないかって…」


その後、苗木の舞園トークに付き合った。
生徒達のことを前より少し知れたし、仲も良くなった気がする。

やはり色々な生徒と話し、相手を理解せねばこの学園生活は乗り切れまい。


K「さて、次はどうするか」

誰かに会いに行く?
どこかに行く?



安価下(人に会うなら人名も。現在Kが認識している人のみでお願いします)

139: 2013/10/25(金) 23:14:25.65 ID:S3qnden9o
舞園さん

141: 2013/10/25(金) 23:19:54.18 ID:VK/X53P40


苗木と別れたら、その直後にちょうど舞園と会った。


K「む、舞園か」

舞園「あ、先生。こんにちわ」

K(超高校生級のアイドルと言われているだけあって、非の打ち所のない鮮やかな笑顔だな。
 …しかし俺にはわかる。彼女は会ったはずのない俺が彼女を知っていたことでまだ警戒している)

K(しかしあからさまに避ける訳にもいかん。最初はあたりさわりのない会話をして離れるか)

K「さっき苗木と会って、君のことを聞いたぞ」


142: 2013/10/25(金) 23:27:27.60 ID:VK/X53P40

舞園「え? 苗木くんが、ですか? どんなことを言ってました?」

K(反応は悪くない。この場で唯一の顔見知りだ。信頼しているようだな)

K「君のことを褒めていた。まるで超能力者のようにとても勘が良く、気が利くと。
 苗木の助手になったそうだな?」

舞園「はい! 私、いきなりこんな所に連れて来られてとても不安で…
   そんな私を苗木君は励ましてくれたんです。だから苗木君のお手伝いができたらな、と」

K「良い助手を持てて苗木は幸せ者だな。俺も優秀な助手が欲しいものだ」

舞園「でも、先生は助手なんて必要ないんじゃないですか?」

K「何故そう思う?」


143: 2013/10/25(金) 23:31:55.69 ID:VK/X53P40

舞園「…なんとなくですけど、先生はどこか人を遠ざけている気がします。
   別にその人のことが嫌いなのではなくて、何か事情があって…」


KAZUYAは舌を巻いた。確かに、周囲の人間を危険に巻き込みたくなくて
必要以上は仲良くしないようにしている節はあった。


K「…噂に違わぬ鋭さだな」

舞園「フフッ、エスパーですから」


まだ完全に警戒は解けていないが、苗木と信頼関係を築けば
彼が緩衝材になって、近い将来信用してもらえるかもしれない…



本日ラスト

誰かに会いに行く?
どこかに行く?


安価下(人に会うなら人名も。生徒15人のうちで)


144: 2013/10/25(金) 23:33:24.02 ID:tkJoUB9I0
江ノ島になりすましてる戦刃 Kなら筋肉とかで気づきそうな気がするが・・・・

145: 2013/10/25(金) 23:40:21.25 ID:VK/X53P40

K(あれは…江ノ島盾子か…)

江ノ島「……」


探索しながら廊下を歩いていたら、同じようにブラブラと歩いてきた江ノ島と出会う。


K(彼女は…俺に強い警戒心を持っている一人だな。まあ、それも無理はない。
 確かにこの状況であんな現れ方をしたら警戒するのが普通の人間だ)

K(しかも彼女の風貌や格好からして…恐らく教師と言った生き物は嫌いだろう。反発心も強そうだ)


思わず目が合う。


江ノ島「…なに? 何か用?」








148: 2013/10/25(金) 23:47:16.28 ID:VK/X53P40



K「いや、特に用はないが」

江ノ島「あっそう。んじゃあね」

K「…待て。その、個人行動が多いようだがみんなとは仲良く出来ているか?」

江ノ島「なに? おセッキョー? 余計なお世話だから。アタシ先生とか好きじゃないしー。
    …あんたのこともまだ信用してないから」

K(…やはりこうなるか)


江ノ島はさっさと行ってしまった。
彼女と親しくなるにはだいぶ時間がかかりそうだ。


・・・


いや、そもそも親しくなれるのか?

何か、教師や社会のルールに対する反発心以外の感情を感じる。


それが何かは、今の俺にはまだわからなかった。



149: 2013/10/25(金) 23:53:34.44 ID:VK/X53P40
モノクマ「今日はここまで~。いやぁ、自分の遅筆っぷりに愕然としたよ!
     安価スレやってる作者さんて凄いね! 僕も見習わないと」

モノクマ「もうちょっと様子見るけど、あまりに遅くなりそうだったら
     事前安価制にして、次回にまとめて投下ってことにするかも」


モノクマ「ところで、さっそく過ぎるけど攻略のヒント聞きたい?」


151: 2013/10/25(金) 23:58:16.28 ID:VK/X53P40

モノクマ「ヒント聞きたいって? ブヒャヒャ! 教える訳ないじゃん!
    絶望した? ねえ絶望した?」


ドガッ!


モノクマ「誰だ?! いま僕の頭にかかと落としをした奴は!」


「この俺だぁ!」


モノクマ「な、なんだコイツ? 花形満みたいなふざけた前髪しやがって」

TETSU「俺こそKの宿命のライバル、ドクターTことTETSU様だ! 本編じゃ出番がないからな。
    俺がこの白黒ブタに代わってお前達にヒントを教えてやるぜ!」

モノクマ「僕はブタじゃない! クマ型ロボット!」


152: 2013/10/26(土) 00:10:14.74 ID:WfdwnmRX0


― ドクターTETSUのヒントコーナー ―


TETSU「で、早速だが。Kの奴、第一印象が悪い上にモノクマの野郎に嵌められて、
     一部の生徒を除きかなり警戒されてるな。全く、不審者みたいな格好してるからだぜ」

モノクマ「いやお前だって相当怪しいだろ」

TETSU「俺はあいつと違ってまともな服装してる」


※KAZUYA先生の赤いマントに対し、TETSU先生は白のロングコートを愛用されています。


モノクマ「髪型だよ! その前髪おかしすぎるだろ! マキシマム怪しいよ!」

TETSU「(無視)ゴホン。で、ヒントだが正直いるのか? 今回の安価、かなりわかってる感じだぜ。
    とにかく序盤は今回みたいに警戒心の弱い奴から仲良くなって外堀を埋めていくのがいいな」

TETSU「俺のおすすめは苗木、朝日奈、石丸。あとは桑田あたりか。このへんは親密度が上がりやすいし
     アクティブだから色々と良いイベントを起こしてくれる。あと、当然のことだが事件の前には
     しっかり関係者を押さえておくことだな。大体キーになる奴がいるからそこを重点的に攻めろ」

TETSU「今回は以上だ。>>1はみんなが楽しめるSSを目指してるから、疑問質問があったら気軽に答えるぞ。
    SSはゲームと違ってやり直しがきかないしな。さて、俺は研究に戻る。じゃあな。頑張れよ!」

モノクマ「やっと帰ったよ…。他にもこういう組み合わせやシチュ見たいとか意見感想は出来るだけ応えてく予定だよ!
      特にほのぼの系や和み系は早めに言った方がいいかもしれないね。事件が起こるとどうしてもギスギスしてくるから…」


モノクマ「長くなったけど、それではー」


158: 2013/10/26(土) 23:46:42.68 ID:Phb9Sq3m0

投下再開


そういえば余談ですが、最初は体内時計は一日25時間周期と書いていたんですね
ただ間違ってたらどうしようと不安になってなんとなく投下直前にググッたら、
今年辺りに新しい論文が出て現在では24時間10分が一番正確のようですよ

まあ、トリビアということで


159: 2013/10/26(土) 23:50:38.47 ID:Phb9Sq3m0


― 食堂 PM6:00 ―


夕飯時、そこではKAZUYAの恐れていた事態が起こっていた。
昼食時には男女入り乱れて座っていたのに、
今は男女で真っ二つにグループが分かれている。

明らかに自分の席と思われる空席にKAZUYAは座った。


桑田「聞いたぜ、オッサン! いやぁ、あのクールな鉄仮面女がまさかねえ」

山田「霧切女史からはどんな風に迫られたのですかな?! kwsk(イケメンボイス)!」

K「だから、それは誤解d 石丸「先生ッ!!!」

石丸「僕は見損ないました! いくら声をかけたのは霧切君の方からだとしても、
   教師ならそれを毅然とした態度で断るべきなのではないですかっ?!」

大和田「うっせえな! 優等生は黙ってろよ!」

苗木「そ、それで? なんて言われたんですか?」


160: 2013/10/26(土) 23:51:52.47 ID:Phb9Sq3m0

K「だから誤解だ! 俺は医者として彼女から相談を受けた。それだけだ」

石丸「相談? 彼女はどこか悪いのですか?」

K「医者が患者のプライバシーを口外する訳なかろう。監視カメラの前では
 言いたくないと彼女が言ったから必然的にあそこで話すことになったのだ」

桑田「監視カメラの前で言えない相談? 医者に相談っていうと当然体のことだよな。
   っておいおいまさかアレ? アレだったりしちゃうワケ?」

苗木・大和田・山田・葉隠「「「「あ……(察し)」」」」ピーン!

大和田「おい、この話はもうやめだ」

桑田「だな。俺ってマジ紳士だしぃ、これ以上はさぁすがにちょっとなぁ」

苗木「霧切さんに悪いしね」

山田「で、ですな! ムフフ」

石丸「んん?! アレとは何かね? みんな知っているのか?」


161: 2013/10/26(土) 23:52:57.13 ID:Phb9Sq3m0

大和田「バカ! デカい声出すなっ!!」

葉隠「石丸っち、空気読むべ!」

石丸「先生、教えて下さい。アレとはなんですか?」

K「(ギョッ)…おい苗木、すまんがあとでこっそり教えてやってくれ」

苗木「ええ! 何で僕が…?!」

K「俺の口から言うのは立場上不味い。頼んだぞ」

苗木「そ、そんなぁ…(僕って絶対超高校級の不運だよね…)」

山田「苗木誠殿、もし説明しづらいというならこのわたくしにお任せあれ!
   彼にしっかりねっとりレクチャーをry 苗木「いや、僕がやるよ」

K(別の勘違いをされたが…まあ、最初の誤解よりはマシか? 霧切は大丈夫だろうか…)


162: 2013/10/26(土) 23:54:04.48 ID:Phb9Sq3m0


チラリと霧切の方を見てみたが、同じようになんだか盛り上がっているようである。
いや、むしろ女子達の方がより激しく盛り上がっているかもしれない…


江ノ島「ねえねえ霧切! あのオッサンを男子トイレに連れ込んだって本当?」

不二咲「や、やめようよぉ。きっと嫌がるよ、霧切さん」

舞園「でも、私もちょっと興味があります」

霧切(こういう場合は変に疑惑を否定してもかえって火に油を注ぐ結果になるだけ。
   事実のみを簡潔に伝え、毅然とした態度を貫けば噂も自然と消滅する)

霧切「ええ、本当よ。といっても相談があっただけだけれど」

腐川「ふん…わかってんのよ…あんたの考えてることなんて。どうせ診察にかこつけ
   服を脱ぎ、篭絡しようとでもしたんでしょ! アイツを手篭めにして
   守ってもらえば、この生活でもあんたは安泰だものね! ああ、汚らわしい」


163: 2013/10/26(土) 23:56:10.03 ID:Phb9Sq3m0

セレス「まあ、はしたない。クールな霧切さんがそのような下品なことを
    するような方だったなんて、人は見かけによりませんわねぇ」クスクス…

霧切「どう取ろうとそれはあなた達の自由よ。でも私は 朝日奈「ちょっとやめなよ!」

朝日奈「霧切ちゃんはそんな不純な気持ちじゃなくて、純粋に先生が好きなんだよねっ!!」

霧切「いえ、そうじゃなくて…」

朝日奈「うんうん! わかるよ! 大きい人ってなんか安心感あるもん!
    さくらちゃんもすっごく頼りになるしね!」←全く聞いてない

霧切「ええと、朝日奈さん?」

朝日奈「渋かっこいい先生だし、なにより私の好きなジェイソン・ステイサムに似てるし!」

不二咲「似てる、かな?」

舞園「先生もかなり渋い方ですし、体格や雰囲気だけなら、まあ…」

腐川「ふふん…いやらしい女同士気が合うのね」

朝日奈「い、いやらしいってなにが?!」


164: 2013/10/26(土) 23:57:56.79 ID:Phb9Sq3m0

腐川「あんたは体つきが既にいやらしいのよ! そうよ、二人で仲良く
   夜の授業でもしてもらえばいいじゃない。先生の太いチョークで…」

朝日奈「ちょ、ちょっと! やめてよ…あたし、そういう話苦手なんだって」カアァ////

腐川「カマトトぶってんじゃないわよ…!」

大神「腐川、もう止さぬか」

セレス「まあ、いい退屈しのぎにはなりそうですし、わたくしは
    お二人の仲を応援して差し上げてもよろしいですわよ?」

舞園「私に出来ることがあったらなんでも言って下さいね?」

江ノ島「…あ、あたしもあたしも! 色恋はギャルの得意分野っしょ?!」

不二咲「僕…いや私も協力するよ」

朝日奈「もちろん私もだよ! さくらちゃんも協力してくれるよね?」

大神「ウム、任されよ。男を掴むならまず胃袋だぞ」


165: 2013/10/27(日) 00:00:11.10 ID:rA4jwqp00

朝日奈「それよく聞くよね! じゃあ私があとで先生に好きな物聞いてきてあげる!」

霧切「え? …ええ? あ、ありがとう」

霧切(そ、そうよ。ドクターとはこれからも二人で話す必要があるかもしれないし、
   かえってカムフラージュになるじゃない。ええ、これでいいのよ。ええ…)


なるようになるしかないと、霧切は半ば諦めの境地で適当に相槌を打っていた。


K(…………)

K(霧切は顔色一つ変えていない。良かった。大丈夫のようだな。ウム)


そして主人公キャラの例に漏れず、KAZUYAも色恋沙汰にはてんで鈍いのであった。


166: 2013/10/27(日) 00:02:10.69 ID:rA4jwqp00

― 自由行動 ―


K(さて、誰かに会うか? それともどこかに行くか?)


安価下


167: 2013/10/27(日) 00:09:59.10 ID:Wb3M2M9DO
保健室に何か記憶のヒントないか探す。
手伝いに苗木頼む

168: 2013/10/27(日) 00:16:07.34 ID:rA4jwqp00

K「苗木、さっきは妙なことを押し付けて悪かったな」

苗木「本当ですよ! いやぁ、とにかく恥ずかしかったなぁ。
   石丸君も顔真っ赤にしてお互い気まずいなんてレベルじゃなかったし」

K「お詫びに、保健室で茶でも淹れよう。黒幕が盗んでいなければ、良いのがあるはずだ」

苗木「本当? やった!」


169: 2013/10/27(日) 00:23:17.99 ID:rA4jwqp00

― 保健室 ―


苗木「先生は、ここでしばらく働いてたんですよね」

K「ああ」

苗木「じゃあ、保健室にいれば記憶も戻るんじゃないかな」

K「そうだな。記憶喪失患者が記憶を取り戻す可能性が一番高いのは、
 かえって日頃やっていたことをやったり日常の中だったりするようだ」

苗木「役に立てるかわからないけど、僕も先生の記憶が戻るよう手伝います!」

K「ありがとう。…そもそも一つ聞きたいのだが、お前は俺を疑っていないのか?」


苗木が誰にでも親切な少年だというのは見ていてすぐにわかったが、
それにしても不審人物である自分に対し警戒心が薄い気がする。


170: 2013/10/27(日) 00:32:39.25 ID:rA4jwqp00

苗木「僕は舞園さんみたいに勘が良い訳でもないし、他のみんなみたいに何か
   特技があるわけじゃない。でも、なんとなく先生は『良い人』のような気がするんです」

K「……」


KAZUYAの脳裏に、野球の怪我で保健室に来たのに逆に付き添いで来た
桑田を気遣ったり、自分に対して大丈夫だと笑う苗木の顔が浮かんでいた。


苗木「根拠もないのにこんなこと言って、脳天気だなとか警戒心ないな、って
   思われたかもしれないけど、でも…」

K「いや、そんなことはない。お前のその優しさで俺は今とても助かった」


171: 2013/10/27(日) 00:33:42.23 ID:rA4jwqp00


まだ記憶は戻らないが、少なくともあの記憶は間違いではないと確信が持てた。
それだけでもとてもいい収穫だ。


苗木「本当ですか? 良かった」


その後、苗木と他愛ない談笑をして別れた。



誰かに会う?どこかに行く?

安価下

172: 2013/10/27(日) 00:37:26.48 ID:vlCpOdsGo
皆集める

174: 2013/10/27(日) 00:45:18.98 ID:rA4jwqp00

全員はマズイので下の桑田で行きます。



まだ夜時間まで少し間があったので、KAZUYAは見回りをしていた。
食堂に行ってみると桑田が一人退屈そうに座っている。


K「桑田」

桑田「お、オッサンじゃん」

K「そんな所で何をやっているんだ?」

桑田「別にぃ。部屋にいてもやることないから、ここでボケーっとしてただけ」


と、ここで桑田は現在食堂に自分とKAZUYAしかいないことに気が付く。


175: 2013/10/27(日) 00:53:58.55 ID:rA4jwqp00

桑田「ちょ、オッサンまさか…俺のこと頃しに来たんじゃねえだろうな?」

K「まさか。俺はここの校医だと言ったろう?」

桑田「本当かよ…医師免許だかなんだかも偽造しようと思えば偽造できるし」


外見の派手さに対して、意外と臆病なようだ。


K「いくら口で言っても信じてもらえないだろうが本当だ。
 校医をする前は市井の病院でも勤務していた」

桑田「…じゃあさ、それが本当なら俺の質問にこたえてくれよ」


176: 2013/10/27(日) 00:59:55.90 ID:rA4jwqp00

K「質問? ああ、構わないが…」


超一流の医師であるKAZUYAに答えられないことなどほとんどないが、
そもそも自分に質問するだけの知識をこの少年が持っているか疑問だった。


K(超高校級の野球選手だから、それに関した質問か? 過去にした怪我や、
 より効率の良い動きなどについてだろうか? あるいは…)


KAZUYAは真剣に考えて質問を予想していた。…が、


桑田「どこの病院の看護婦さんがレベル高いとかある?」


177: 2013/10/27(日) 01:10:48.68 ID:rA4jwqp00

K「……ム?」


思わず静止し、質問の意図を考える。


K「…彼女達は皆訓練を受けたプロフェッショナルだ。やはり都会の大病院に優秀な人材が
 集まりがちではあるが、日本の医療教育はしっかりしているので病院規模で明確な差は…」

桑田「そうじゃなくてー。顔だよ顔。顔面レベル!」

K「…顔?」

桑田「なんかほら、白衣の天使って男の憧れじゃん! 可愛い看護婦さんがたくさんいる
   病院教えてくれたら、適当な怪我してそこ通ってみようかなーなんて」


178: 2013/10/27(日) 01:12:26.40 ID:rA4jwqp00


流石のKAZUYAも渋い顔になる。軽く説教したい。ボヤキたい。
だが今は信頼関係が大事だ。とにかく相手に合わせなくてはならない。

KAZUYAは大人なので本心はそっと胸にしまった。


K「…………」

K「…すまんが、俺はそういうのはよくわからん」

桑田「ちぇー、クソマジメでやんの。つまんねえなぁ」


その後二言、三言交わしてその場を後にした。



時間も時間なので次がラスト

人名or場所

安価下


179: 2013/10/27(日) 01:34:27.29 ID:wrbj9x8Ho
ふかわ

可能ならジェノサイダー

180: 2013/10/27(日) 01:45:29.52 ID:rA4jwqp00

KAZUYAは図書室に向かっていた。
空いている時間に読む医学書を借りようと思ったのだ。

しかし、何故か図書室の前には腐川が立っている。


腐川「あ、あんたは…!」


仕方がないとはいえ、心底嫌そうな目で見られて少し傷ついた。


K「腐川、そんな所で何をしているんだ」

腐川「…別に、いいでしょ」


181: 2013/10/27(日) 01:51:44.16 ID:rA4jwqp00

K「中に入らないのか?」

腐川「…白夜様が、読書の邪魔だって」

K(白夜…様? どういう関係なんだこの二人は?)

腐川「あんたも…入っちゃダメよ。邪魔になるんだから」

K「長居するつもりはない。本を借りに来ただけだ」

腐川「…そ」


嫌々ながら扉の前から退く腐川。


K(何があったか知らんが、俺に限らずとにかく他人に対する警戒心が高い。
 彼女の警戒を解くには相当の時間がかかるだろう…)


刺激しないように速やかに用を済ませてKAZUYAはその場を後にした。


182: 2013/10/27(日) 01:55:02.50 ID:rA4jwqp00


見回りをしながらKAZUYAは思い出した。


K(そういえば…霧切の頭部にあったあの奇妙な跡…電極のようなものを
 取り付けられたのか? そして記憶が無い…まさかあの火傷に関連している?)

K(他の生徒の頭部も調べたい所だが、俺はまだ完全に信頼されていない。
  妙な行動を取ればまた不審に思われるだろう)

K「ム、ちょうどいい。苗木」

苗木「なんですか、先生?」

K「お前の髪にゴミがついている。取るぞ」

苗木「え、本当? お願いします」ワシャワシャワシャ

K「(! これは…)取れたぞ」

苗木「ありがとうございました」タタッ

K(……)


183: 2013/10/27(日) 01:57:24.38 ID:rA4jwqp00

K(これは一体どういうことだ? 霧切ほどはっきりついている訳ではないが、
 苗木の頭部の同じ位置にもうっすら火傷跡のようなものが見られた…)


その後、石丸と不二咲に同じことを行い、同じように微かな火傷跡を発見した。


K(この調子なら全員ありそうだな。最初は記憶喪失に何か関係があるのかと
  思ったが、苗木達は別に記憶喪失という訳ではない。気のせいか?)

K(…いや、待てよ。初めて彼らに会った時、俺と彼らの記憶には食い違いがあった。
  もしやそれが関連しているのか? …断定するには情報が足りなすぎる)


決めつけで視野を狭めたくなかったので、なるべく仮説という形式をとって考える。


K(今言えることは『黒幕が生徒達の体に何かした形跡がある』ということだけだ。
 相手は超高校級の生徒ばかり…何かを調べたのか? その影響で記憶が…?)

K(…その可能性はあるかもしれんな)


184: 2013/10/27(日) 01:59:35.70 ID:rA4jwqp00

KAZUYAは保健室に戻り、次に現在の状況の整理をし始めた。


K(まず大前提だが、ここは本当に希望ヶ峰学園なのか? 都内のど真ん中にある
  学校を誰にも知られず丸ごと乗っ取るということが果たして可能なのか)

K(やはり、俺が忘れているだけで学園は廃校になったのだろうか…?
  しかし廃校になったのなら俺は役目を終え、病院に戻っているはずだ。
  何故誰もいないはずのこの学園に俺はいた? 一体何のために?)

K(そもそも、悪趣味な黒幕が何らかの目的で頃し合いを見たがったとする。
  それを学校でやる意味はなんだ? 山の中の廃屋にでも閉じ込めた方が、
  より生徒達の精神を追い詰められると思うのだが。ここでやる意味は何だ?)


保健室が本当に自分がよく見知った保健室なのか確認するために、
KAZUYAは細かい机の傷や壁のシミなどを調べる。


K(間違いない。ここは確かに俺が使っていた保健室だ…
  ならばここは正真正銘本物の希望ヶ峰学園内部で合っているのか)


185: 2013/10/27(日) 02:00:52.00 ID:rA4jwqp00

K(しかし…舞園は誰もが知っているアイドルだそうだ。十神は大財閥の御曹司。
  そんな輩が消えて誰も気が付かない訳がない。そうだ、待っていれば助けが来るはずだ。
  俺はその時、内部から協力すればいい。それまで事件を起こさないことが俺の使命だ)


ここで、KAZUYAの脳裏にゾッとするような恐ろしい仮説が浮かんでしまった。


K(…ここまで大掛かりな行動をとる輩が、そんなすぐに破綻する計画を立てるか?
  警察がきちんと機能していれば助けが来るはずだ。もし、機能していないなら…)



K(…外の世界は、今どうなっている――?)


鉄板は自分と大神の二人がかりでかかれば取れなくもなさそうだ。
だが、剥がそうとすれば今まで静観していた黒幕が生徒に危害を加えるかもしれない。

それに、何故か今は不思議とそれをしようという気にならなかった…


188: 2013/10/27(日) 19:37:26.96 ID:Gnt0DdCt0


― モニタールーム ―


気まずい顔をしながら戦刃は部屋に入り、頭を下げる。


戦刃「盾子ちゃん、ごめんっ!」

江ノ島「今更どのような顔をして私様に会いに来たのでしょうか」

戦刃「だって、だってちゃんと頃したはずだったんだよ?!」

江ノ島「頃した後、氏体の処理をするまでを私様は頼んだはずですが」

戦刃「そ、それは…頃した後盾子ちゃんに呼び出されちゃってそれで…」

江ノ島「それで、忘れてたってーのっ?!」

戦刃「忙しかったんだもん、ゴメーン! それに、三階ならしばらくみんなも
   入って来れないし、処理は後でゆっくりすればいいかななんて」


189: 2013/10/27(日) 19:38:43.02 ID:Gnt0DdCt0

わたわたと言い訳をする双子の姉を、江ノ島は冷ややかに眺めていた。
本物の江ノ島盾子は非常に飽きっぽく、口調や態度をコロコロと変えるのだが、
今度は顔の横に手でポーズを作り、男性のような口調で話し始める。


江ノ島「それでこの事態か。まったく、君は本当に残念な姉だな。だから残姉と呼ばれるのだ」

戦刃「ほ、本当にごめんね…なんなら今からもう一回奇襲をかけようか?
   まだ傷も完全に治ってないみたいだし、今ならきっと…」

江ノ島「ダメに決まってんでしょうがっ! このコロシアイはあくまで生徒が
    自主的に行うから意味があるのっ! なのに、イレギュラーとはいえ
    一度内部に入った人間を黒幕が直接手を下しちゃったらルール違反でしょ!」

江ノ島「校則違反でもないのにこちらから手を下したら、常にクロの候補は
    黒幕ということになるから『学級裁判』自体が成り立たなくなる」


190: 2013/10/27(日) 19:41:03.38 ID:Gnt0DdCt0


学級裁判という意味深な単語を挙げて江ノ島は戦刃を牽制する。


江ノ島「こうなっちゃった以上、もうあいつに対しては静観するしかないの」

戦刃「……」シュン

江ノ島「ああもう、しばらく残姉に頼むことはないからとっとと帰ってくれる?」

戦刃「わ、わかった。私、帰るね」トボトボ


肩を落として去る姉の後ろ姿を、江ノ島は少しだけ感慨深く見ていた。


江ノ島(そう、残姉の仕事はこれで終わり。もうやることはない――)


191: 2013/10/27(日) 19:47:35.04 ID:Gnt0DdCt0

モノクマ「ハイハイ、オマエラこんばんは。えー、ここから先はちょっとしたオマケです」

モノクマ「もうあとは二日目にちょっと自由行動入れて、三日目は何もないからスキップだし
     その次はいよいよみんな大好きD・V・Dの時間に突入しちゃうんだよ!」

モノクマ「てな訳で、まだ事件起こってない平和なうちに小ネタいっときます。ではでは~」



― オマケ劇場 ① ~ 食事当番 ~ ―


石丸「僕達は今、早急に決めなければならないことがある! それは食事当番だ!」

葉隠「いくら食材があったって誰かが作んねえと食べられねえしな」

石丸「僕は家の手伝いをしていたので多少は作れる。レパートリーは数えるほどだが、
   当番の日までに図書室の料理本を見て勉強しよう! なに、何事も努力だ!」

セレス「まず料理を作れる人に挙手して頂いて、その方達をその日の料理長、
    副料理長に任命し残りをお手伝いに振り分ければよろしいのでは?」

セレス「ちなみにわたくしは作れません。作って頂く立場ですので」ニコ

石丸「では料理の出来る人、速やかに挙手したまえ!」ノ


【朝日奈】ノ 【大神】ノ 【舞園】ノ 【江ノ島】ノ 【KAZUYA】ノ


192: 2013/10/27(日) 19:49:35.43 ID:Gnt0DdCt0


一同「え…?!」


あまりにも意外な面子に一同の視線が二人の人間に集中する。

朝日奈「ちょっとー、なんでみんなそんな顔してさくらちゃんを見るの?
    さくらちゃんは料理が得意な乙女なんだよー」

大神「……」ズゥゥゥゥン!

一同(乙女とか言われても…それに…)

K「俺が料理をするのはそんなにおかしいか?」ムスー

苗木「い、いや! そういうワケじゃないですけど…」

K「…お袋が幼い頃に氏んで、ずっと親父と二人暮しだったからな。その親父も仕事で
 家を空けがちで、半分一人暮らしのようなものだった。だから家事は一通り出来る」

苗木(なんか先生って…過去が凄そうだよなぁ。話してもらったら絶対一日で済まなそう…)


実に単行本54巻、文庫本にして27巻分の厚みである。


193: 2013/10/27(日) 19:51:36.32 ID:Gnt0DdCt0


― オマケ劇場 ② ~ 山田レポート ~ ―


山田「さてさて、食事当番は以下の料理長を中心にメンバーを振り分けたのですぞ。
   料理長を務める人間によってその日の傾向がガラリと変わるようです」


初日(KAZUYA):普通の家庭料理。和食中心。病院食のように栄養バランスが綿密に計算されている。

二日目(舞園):魚と野菜中心のヘルシー料理。アイドルの手料理とかご褒美過ぎるだろJK…

三日目(朝日奈):とにかくゴッテリ! カ口リー無視の豪快料理。そのため味は一番かもしれない。

四日目(大神):筋肉をつけるメニュー。全体的に栄養価も高くプロテインドリンクが付属する。

五日目(石丸):ザ・男の手料理! 見た目はイマイチだがレシピを完全再現してるので味は悪くない。

六日目(江ノ島):料理が出来るとは意外ですな。しかしどこか野戦食のようなワイルド感満載でござる。


194: 2013/10/27(日) 19:55:47.46 ID:Gnt0DdCt0

山田「ちなみに班決めの際、桑田怜恩殿は女子の多い班に行こうとしたのですが、石丸清多夏殿に
   ムリヤリ自分と同じ班にされたのですぞ。あと、十神白夜殿は意外にも西城カズヤ先生と
   同じ班を希望したのです。あんなに警戒していたのに不思議ですなぁ」

山田「で、一週間味わってみたワケですが…うん、イケる! 意外とイケる気がしますぞ!!」

不二咲「こってり系とさっぱり系がほぼ交互に並んでいて栄養のバランスもいいんだよぉ」

霧切「この抑圧された環境下で、食事に不満を持たなくていいというのは数少ない救いだわ」

セレス「わたくしの舌を満足させるとは、みなさんなかなかやりますわねぇ」

山田「…閉じ込められてさえいなければ一生ここに住んでも良いんですがなぁ」

195: 2013/10/27(日) 19:57:14.35 ID:Gnt0DdCt0


― オマケ劇場 ③ ~ 桑田くんとKAZUYA(>>178の詳細) ~ ―


桑田「なあなあ、オッサンも俺のモテモテ伝説聞きたい聞きたい?! 聞きたいよなっ?!」

K「……」


まだ何も言ってないのに桑田はペラペラと喋りだした。


桑田「でさぁ、その試合の後にうちのジャーマネと~…」

桑田「インタビューに来た女子アナのお姉さんと仲良くなって~…」

桑田「っつーワケなのよ! さすが俺って感じで~…」

K「(……)あー、そうか。ウム、凄いな」


半ば上の空の状態で適当に相槌を打ってやるKAZUYA。


196: 2013/10/27(日) 19:59:41.18 ID:Gnt0DdCt0


K(ここに、高品がいればなァ…)


KAZUYAは友人の腹腔外科医である高品龍一を思い出していた。


KAZUYA『~とまあ、こういうことがあったんだ。全く、最近の学生という奴は…』

高品『まあまあ、いいじゃないッスか! 高校生なんて大体そんなもんですよ。
   それより久しぶりに今夜は飲みませんか? 上手い鍋の店見つけたんで!』

KAZUYA『なら今日は俺がおごるとしよう。積もる話もあるしな』

高品『本当ですか? 流石K! よーし、今日は思い切り飲みましょう! ハハハッ!』


K(今頃どうしているのだろうか…)


そんなに長期間会っていない訳ではないはずなのに、なんだか無性に懐かしいのだった。




197: 2013/10/27(日) 23:16:51.18 ID:3XGVL8NDO

連絡です。今日もう一回投下に来る予定だったけど、明日早いし無理かもしれません
かと言って平日だと上手く安価さばけるか不安なので二日目の自由行動は
事前安価にして、次回投下分と同時に落とそうかと考えております。ご協力お願いします。


人名or場所
>>200
>>202
>>204
>>206

モノクマ「上でも言ったけどそろそろ事件だから今回の安価は結構重要だよ!
     まあどんな結果になっても僕は楽しめるけどね。うぷぷ。それじゃ頑張ってね!」



207: 2013/10/28(月) 22:14:43.33 ID:F6BVrD+DO
モノクマ「お前ら、夜です。夜になりました~…」

モノクマ「えー安価は桑田君、舞園さん、苗木君、江ノ島(戦刃)さんだね。把握」

モノクマ「いやぁ、みんなガチで安価取りにきてるね。ガッチガチだね!
     いいよいいよ!それでこそ殺りがいがあるというもの。希望が大きい程、
     絶望もまた大きいってものさ。僕も頑張るよ!」




モノクマ「話は変わるけど、初日終了でキリも良かったので今回初めて小ネタいれてみたけどどう?」

モノクマ「折角のクロスだし、今後も息抜き代わりにキリの良い所で時々いれようかなと
     思ってるけど、さっさと本筋進めろよって意見があったら本筋頑張ります」

209: 2013/10/30(水) 15:09:46.10 ID:HA+y27wE0


― 翌日 食堂 AM8:00 ―


食堂に集まっていたのは石丸、朝日奈、大神、不二咲、舞園、苗木、そしてKAZUYAである。
今この場にいる生徒達は、いわゆる健全で真面目な学生たちに当たる。

そして真面目な学生代表の石丸は、目に見える程イライラしてテーブルの前を行き来していた。


石丸「8時! 8時だ! 他のみんなは一体何をしているのだっ?!」

KAZUYA「まあ、多少は大目に…」

石丸「乱れてるぅぅぅ! 風紀が乱れてるぅぅぅぅぅ!!」 KAZUYA「」ビクッ!


眉間にシワを寄せて絶叫する石丸に思わずKAZUYAも引いてしまう。
そこにあくびをしながら桑田が入ってきた。


桑田「ふぁあ~。なんだよ、朝っぱらからうっせーな」

石丸「桑田君! 遅刻だぞ遅刻!」


210: 2013/10/30(水) 15:12:13.66 ID:HA+y27wE0

桑田「あぁ? 8時じゃん! 時間通りなんて俺にしちゃ奇跡だぞ!」

石丸「いや、二分過ぎている! これは重大な遅刻だ!
    時間を守るということは人間にとって最も重要であり社会のルール…」

K「少し落ち着け石丸! あんなことがあったばかりで
  昨晩は皆よく眠れなかったのだろう。今日くらいは許してやれ」

桑田「ほ~ら、先生様もいいって言ってんじゃん。セーフだよセ・ー・フ!」

石丸「そんな! 僕は10時には快眠していたというのに!」

苗木「なんというか、さすが石丸君だね…」

舞園「ブレませんね…」

石丸「とにかく、先生もいるのにこれ以上遅刻を許す訳にはいかん! 起こして来ます!」

K「いや、俺はまったく構わんのだが…」


話も聞かずに石丸は食堂を飛び出して行ってしまった。


211: 2013/10/30(水) 15:14:25.21 ID:HA+y27wE0

K(今までに色々な人間と出会い、中には一癖も二癖も持つ人間はいたが、
  あそこまで個性が強くて激しい人間は初めてかもしれんな…)汗


流石のKAZUYAも、頬をポリポリと掻きながらやや呆れていた。
しばらくすると石丸に追い立てられるようにぞろぞろと遅刻組がやって来る。


石丸「全員揃ったな。ではこれより、第一回朝食会を始める。いただきます!」

一同「いただきまーす」


雑談などしながら、一同は朝食を取る。


苗木「今日の食事当番って舞園さんだよね? じゃあこれ舞園さんが?」

舞園「そうですよ。おいしいですか?」

苗木「もちろん! 家でも作ってたりするの?」


212: 2013/10/30(水) 15:15:48.58 ID:HA+y27wE0

舞園「はい。仕事に穴を空けたりしたら大変ですから、健康には気を使ってるんです」

苗木「フーン、そうなんだ。(やっぱり普段はロケ弁ばっかりなのかな)

舞園「そうなんですよ。だから家にいる時くらいはちゃんとしようって」

苗木「…ふ、普通に僕の思考と会話するね」

舞園「だって私エスパーですから」ニコッ♪


・・・


桑田「なあなあ、オッサン。超有名な世界的な医者ってマジで?
   じゃあさじゃあさ、芸能界とかにも知り合いいたりすんの?」

K「まあな。顔は広い方だ。それがどうかしたのか?」

桑田「マジで? じゃあこっから出たら俺を紹介してくれよ!」

K「…お前は野球選手だろう?」


213: 2013/10/30(水) 15:17:35.37 ID:HA+y27wE0

桑田「野球なんて泥臭いしダセエから嫌いだし! そもそも俺が天才だから周りが
   ムリヤリやらせるだけで練習だって一回も出たことないんだぜ! 俺の本当の
   夢はミュージシャンだっつの! ま、歌もギターもそんな上手くないけどさ!」

K「……」


実はKAZUYAは学園に来る前から桑田については知っていた。自分が以前
赴任していた加奈高校で、野球部の面倒をよく見ていたからである。

『桑田のやつまた完封だってよ! うちにいたら甲子園優勝間違いなしなのになぁ…』

『プロ顔負けだな。いきなりメジャーに行っちまうんじゃないか?』

『同じ高校生とは思えないぜ! メジャーでもこいつを止められる奴なんていないだろ!!』

楽しそうにスポーツ新聞を囲んで談笑する生徒達の姿を思い出す。


K「(…とてもあいつらには見せられん)才能がありすぎるというのも不幸だな」ボソッ

桑田「ん? なんか言った? とにかく頼むぜオッサン! ハハハッ!!」


・・・


大神「時に江ノ島盾子よ。一つ聞きたいのだが、雑誌とは少し雰囲気が違うのだな」


214: 2013/10/30(水) 15:19:18.21 ID:HA+y27wE0

江ノ島「(ギク)…雑誌のカバーショットのこと? ギャハハ、あんなん盛ってるんだって!
    画像編集ソフトって知ってるっしょ? 胸とか目とか、今はみんなやってるよ!」

大神「なんと!」 朝日奈「えー、そうなの?! なんか夢が崩れるー…」


監禁されているというのに、どこか緊張感のない一同であった。


― 自由行動 ―


桑田「おーっす、オッサンー!」


廊下を歩いていたら後ろから桑田に声をかけられた。何やら上機嫌のようである。


桑田「なあなあ、聞いてくれよ! さっきそこで舞園ちゃんと目が合ってさぁ!
   あれは絶対俺のこと意識してるって! 舞園ちゃんてさ~…」


頼んでもいないのに舞園の魅力や自分ならお似合いだとか付き合いたいとか話してきた。
いい加減扱いがわかってきたKAZUYAは、適当に相槌を打って話に付き合ってやる。


215: 2013/10/30(水) 15:24:47.47 ID:HA+y27wE0

K「~ああ、ウム。そうか。凄いな(真面目そうな彼女と合う要素はないと思うが…)」

K(…しかし、何度か話してわかった。こいつは全くと言っていいほど裏表がない。
  大概の人間には何かしら一つはコンプレックスや劣等感がある。…俺ですら
  もし父が今も生きていたらそういう面もあっただろう)


だが、桑田からはそういった負の面は欠片も感じられない。幼い時から周囲に
チヤホヤされて育ったからだろう。練習せずとも成功を掴める程抜きん出た才能、
万人並の外見、勉強は苦手らしいがスポーツ特待生なので特に困らない。


K(それでいて好き放題わがままに生きてきたかと言うと、親や監督から
  しょっちょう小言を言われるらしく、善悪の感覚は一応しっかりしている)


伸び伸び育ったと言えるだろう。本能のままに生き、問題発言ばかりなのに
どこか憎めない所があるのはそれが所以か。好意的に解釈して、子供が一生懸命
自慢話をしてくるようなものだと思えば…まあ許せなくもない。


K(だがそれは大人の俺だからそう思えるのであって、あの無神経な発言の数々が同年代の
  友人達に果たしてどう映っているか…想像に難くない。悪気はないのだろうが…)


216: 2013/10/30(水) 15:30:14.91 ID:HA+y27wE0

K(桑田の相手をまともにしているのは俺を除けばあとは苗木と葉隠のみ。
  葉隠は実質大人のようなものだから同年代では性格が穏やかな苗木だけだ)


石丸は厳しい、大和田はすぐ怒るから怖い、山田は住む世界が違いすぎる、十神は論外。
女子達には軽くあしらわれるので、結果的に苗木達の所に行くのだろう。


K(しかし、よりによって舞園さやかを気に入っているとは…下手に手を出して
  こじれれば、苗木すらも去ってしまうぞ。もう少し親しくなったら釘を刺すか…)


基本的には遠くから見守ることの多いKAZUYAだが、今回ばかりは流石に心配になった。
しかし、この悪い予感が見事に的中しまうことをこの時のKAZUYAはまだ知らない。


・・・


KAZUYAがランドリーに行くとそこには舞園がいた。


舞園「あ、こんにちわ。西城先生もお洗濯ですか?」

K「ああ」

舞園「……」

K「……」


217: 2013/10/30(水) 15:40:14.09 ID:HA+y27wE0

K「(気まずい。何か話すか)君は森山千夏君を知っているか? 同じアイドルなら顔見知りでは…」

舞園「も、森山さんをご存知なんですか?!」


芸能に疎い自分は森山を知らなかったが、友人の高品曰くトップアイドルらしいし業界人なら
絶対知っているだろう、とは思ったがここまで大きな反応を見せるとは少々意外だった。


K「あ、ああ。知り合いか?」

舞園「知り合いも何も、うちの事務所の大先輩ですよ! 私もとてもお世話になっています。
  先生は一体どこでお知り合いになられたんですか?」

K「(本当のことは言えん)…三年前、彼女が体調を崩していた所をたまたま通りがかってな」


舞園の一つ前の世代のトップアイドル森山は作詞作曲も行うマルチアイドルで、抜群の歌唱力と
スタイルもあり今でも高い人気がある。そんな彼女が実は広節裂頭条虫症…いわゆる寄生虫の
サナダ虫に寄生されていたのをKAZUYAが見抜き、極秘に治療したことがあったのだ。


舞園「そうだったんですか…そういえば、あ…ああ! 私、思い出しました!」

K「何をだ?」


218: 2013/10/30(水) 15:43:29.49 ID:HA+y27wE0

舞園「そうだ、私先生のこと知ってました…昔、森山さんが言ってたんです。裏世界の
   すっごいお医者さんと知り合いになったから、もし病気になったら紹介してあげるって」

舞園「マッチョな赤いマントを着た大男で、鋭い目付きをしていて、
   頃し屋かターミネーターみたいだよ!って言ってました」

K「頃し屋…」ターミネーター?

舞園「冗談だと思ってたんですけど、なんだ。先生のことだったんですね!」


この時初めて、舞園の警戒が少しだけ緩んだ気がした。


K「森山君が言っていたが、芸能界とは大変な世界のようだな」

舞園「はい。とても…大変ですよ。華やかな舞台の裏にあんなドロドロとした世界が
   あるなんて、普通の人にはきっと想像も出来ないと思います」

K「プレッシャーが凄いようだな」

舞園「勉強や運動と違って、氏に物狂いに頑張っても結果が出ないこともあるし、
   何よりみんなライバルですからね…一見仲が良くても、陰で足を引っ張り合うなんて
   日常茶飯事なんです。私だってイヤなこと…したりされたりしました」

舞園「そうやって、やっと掴んだ場所なんです。だから、私にとって本当に安心出来る仲間は
   グループのメンバーとマネージャーさんだけ…私にとっては家族も同然なんです!」

K「そうか」


219: 2013/10/30(水) 15:45:59.91 ID:HA+y27wE0

舞園「…あれ、私なんでこんなこと先生に話したんでしょう。誰にも言ったことないのに…」

K「それは、恐らく俺が他人だからだろう。親しい人間だと、しがらみがあったり
  心配をかけまいと無意識にセーブしてしまう。家族や親友にも言えないことを
  酒場で同席しただけの人間にポロッと漏らすなんてことは、よくある」

舞園「そうなんですか。なんだか愚痴を言ってしまったみたいですみません」

K「気にするな。俺は校医だからな。生徒の心のケアも仕事のうちだ。
  何か言いたくなったら来るといい。いくらでも聞いてやる」


舞園はとても努力家のようだ。いや、努力だけではなく多くの物を犠牲にして頂点に
上り詰めたのかもしれない。彼女の情熱的な瞳に、KAZUYAは執念に近いものを見たような気がした。


・・・


KAZUYAが保健室で医学書を読んでいると、ノックと共に苗木が入って来た。


苗木「こんにちは、先生」

K「どうした? 腹痛か何かか?」

苗木「そういう訳じゃなくて…今日も学園を探索したんです。でも何も見つからなくて。
   部屋に戻ってもやることなくて暇だから、遊びに来ちゃいました」


220: 2013/10/30(水) 15:48:45.77 ID:HA+y27wE0


ここが平和な学園なら保健室は遊び場じゃないぞと言うKAZUYAだが、
周囲に避けられている今のような状況では、正直苗木の存在はありがたかった。


K「フ、それは嬉しい限りだな。みんな俺を避けているから、
  ここに来てくれるのはお前くらいなものだぞ」

苗木「アハハ…みんな悪い人じゃないんだけどな。現に昨日は何も起きなかったし
   多分今日も起きない。明日だって明後日だって…」

苗木「…それで、いつかそのうち助けが来てくれるよ。多分」

K「フフ、お前のそういう前向きな所、俺は好きだぞ。そうだ。みんなのことを
  教えてくれないか? 俺は警戒されていてあまり話せないからな」

苗木「僕も、昨日会ったばっかりだからほとんどは『希望ヶ峰学園新入生スレ』で
   読んだ内容の受け売りだけど、それで良ければ…」


苗木は各生徒達の能力や実績、実際に自分が触れ合った印象等をわかりやすく
まとめて教えてくれた。この情報があれば、うっかり失言する危険も減るだろう。


苗木「朝日奈さんと大神さんはもう意気投合して一緒にトレーニングしてます。
   不二咲さんも誘ってて、最初は三人でやるつもりだったみたいだけど、
   何故か急にやっぱり疲れるからって言って不二咲さんは断ったみたいです」

苗木「そりゃそうだよね。僕だってあの二人にはついていけなさそうなのに、小柄な
   不二咲さんじゃ倒れちゃうよ。…あ、そうだ。先生に伝えることがあったんだ」

K「何だ?」

221: 2013/10/30(水) 15:51:07.48 ID:HA+y27wE0

苗木「プールとトレーニングルームに繋がる更衣室なんですけど、この電子生徒手帳が
   ないと開かないんです。他人に貸すのはどうか? ってモノクマに聞いたら
   新しい校則を作られちゃって、貸し借りも出来ないから先生は入れません」

K「わかった。覚えておく(プールで事故があっても助けに行けないのか。不味いな…)」


その他、誰と誰が仲が良い、悪い。こんなことがあったなど苗木は逐一教えてくれた。


K「為になった。ありがとう」

苗木「いいんです。他のみんなと比べると僕はこのくらいしか出来ないから。
   本当、なんで僕みたいなのが選ばれちゃったんだろう」

K「運も実力のうち、だ。だが、気になるなら今から実力をつけるという手もある。
  勉強なら俺が教えてやるぞ。先に始めておけば、ここを出た時一歩リード出来る」

苗木「…そうですね。他にやることないし、それもいいかも」


KAZUYAは苗木に勉強をつけてやった。


・・・


江ノ島「…またあんた?」


KAZUYAは江ノ島の元に話をしに来ていた。何故だかわからない。
しかし、他の生徒には感じない妙な胸のつかえのようなものを彼女に感じるのだ。


222: 2013/10/30(水) 15:53:14.02 ID:HA+y27wE0


K(俺の気のせいでなければ、昨日よりも更に敵意が強くなっている)

K「…何かあったのか?」

江ノ島「…!」ギクリ


まさか、あんたのせいで妹に怒られたとは言えない。


江ノ島(どうする? 無視してどっか行きたいけど追っかけられたら困るし。
     それに今の私は盾子ちゃんなんだから、あんまり目立つ行動はまずいかも)

K「(何か話そう。何を話せば…そうだ)好きな食べ物とかあるか?」

江ノ島「ハア?! 突然なに? 好きな食べ物? そりゃレーショn…」

K「レーション?」


慌てて口をつぐむが時既に遅し。こうなれば全力で話を逸らすしかない。



224: 2013/10/30(水) 15:55:42.98 ID:HA+y27wE0

江ノ島「んなワケないでしょ?! ギャルがんなもん食べるかっつーの!
     つかマジでウザいんですけど。なんでアタシの周りをやたらうろついてんの?
     やっぱりあんた黒幕の仲間で、アタシを殺そうとしてるんじゃないの?!」

K「いや、それは違…」

江ノ島「ただでさえストーカーとか多いのに、オッサンなんかに追いかけられたら
     超キモいし! これ以上アタシに近づいてきたらみんなに言うから!!」


そう一方的に言い放って江ノ島は早足で去って行ってしまった。


K(食べないも何も、普通のギャルはレーションなど知らないと思うのだが…)


モヤモヤが解消されるどころか、会えば会うほど謎が増えるのであった。


226: 2013/10/30(水) 15:59:39.23 ID:HA+y27wE0


一旦ここまで。更新遅くてゴメンネ!



229: 2013/10/30(水) 21:46:25.74 ID:HA+y27wE0


投下再開!


230: 2013/10/30(水) 21:49:57.66 ID:HA+y27wE0

だがその前にオマケだ!



― オマケ劇場 ④ ~ プレゼント大作戦! ~ ― (>>222の少し前)


朝日奈「約束通り先生に好きな食べ物聞いてきてあげるね!」

霧切「…私的にそれは単なる口約束だった方が嬉しいのだけれど」

朝日奈「じゃあ、行ってくるねー!」ダダダダダ…


・・・


朝日奈「セーンセー!」

K「どうした、朝日奈?」

朝日奈「先生の好きな食べ物ってなんスか?」

K「食べ物? 俺は食べられる物ならなんでもいいが…
 そうだな。塩鮭、青菜のひたし、里芋の煮っころがしが好きだ」

朝日奈「ちがうちがう! 甘いもの! 例えば、ドーナツとか! むしろドーナツ好き?」

K「ウーム、甘い物はあまり食べないな。血中の糖度、中性脂肪が上がるし体が酸化する元だ」


231: 2013/10/30(水) 21:52:08.60 ID:HA+y27wE0

朝日奈「そんなのつまんないよ! そこをなんとか!」

K「なんとかと言われても…では、羊羹かな」

朝日奈「ヨーカンだね! ありがとー!」ダダダダダ…

K「?」


・・・


朝日奈「霧切ちゃん! 先生ヨーカンが好きだって! 手作りしてプレゼントしよう!!」

霧切「それは違うと思うわ!!」BREAK!!


232: 2013/10/30(水) 21:53:51.24 ID:HA+y27wE0


― オマケ劇場 ⑤ ~ 男の戦い ~ ―


苗木「(ガラッ)先生、大変です! 大和田君と葉隠君が喧嘩してるから
   先生を呼んできて欲しいって石丸君に…!」

K「何だと? 場所はどこだ? 今行く!」タタタッ


・・・


石丸「喧嘩はやめたまえ!」

大和田「うるせー! 男の戦いに口出すんじゃねえよ優等生!!」

葉隠「そうだべ! 石丸っちは引っ込んでるべ!!」

K「どうした? 何があった?」

大和田「石丸、テメエ先公呼びやがったな?!」

石丸「当然だ。仲間同士での喧嘩を見過ごすわけにはいかんからなっ!」


233: 2013/10/30(水) 21:56:17.29 ID:HA+y27wE0

K「それで、一体何を揉めていたんだ?」

大和田「ああ、決まってんだろ! 俺とコイツの」

葉隠「どっちの髪型が上か決めてたんだべ!」

K「…は?」

大和田「俺の自慢のリーゼントがテメエみたいなウニヘッドに負けるかよ!」

葉隠「モロコシ頭がなーに言ってるべ。これはドレッドって言ってなぁ、ちゃんと歴史が…」

石丸「だから喧嘩はよさないかと言ってるだろうっ!!」


ワイワイギャーギャー!!


K「…………帰っていいか?」

苗木「うん、いいと思います…」


234: 2013/10/30(水) 21:57:37.34 ID:HA+y27wE0



Chapter.1 イキキル(非)日常編  ― 完 ―



236: 2013/10/30(水) 22:04:53.24 ID:HA+y27wE0


Chapter.1 イキキル 非日常編


― 学園生活4日目 朝食後 ―


この学園に囚われてから丸三日が経った。恐れていたコロシアイは起こらず、
生徒達もこの環境に慣れ始めたのか、少なからず緊張が取れてきた。
今日もきっとコロシアイは起こらない。明日だって明後日だってこれからも…


ピンポンパンポーン


モノクマ『全員、体育館に集合して下さい。繰り返します。体育館に集合して下さい』

KAZUYA「…何だ?(今までこんなことはなかったというのに)」

十神「何の用かはわからんが、ろくでもないことだということだけはわかる」

舞園「苗木君…」

苗木「どうしたの、舞園さん?」

舞園「行くのが…怖い」

苗木「怖いのは僕も一緒だよ。でも、行かないとどんな目に遭わされるか
   わかったもんじゃないし。大丈夫、舞園さんには僕がついてるよ!」


237: 2013/10/30(水) 22:06:35.62 ID:HA+y27wE0

大和田「おうおう、朝っぱらからイチャついてんなよ。さっさと来い!」

苗木「わ、わかった。さ、行こう舞園さん」

舞園「……」コク


体育館に行くと、そこではモノクマが一同を待っていた。


モノクマ「お前ら! 遅い、遅いよ。もう何やってんの。まあそれについてはいいけど」

腐川「じゃあなんで言うのよ…」

モノクマ「それよりねぇ、なんなの君達? 初日から先生を誘惑して男子トイレに
      連れ込んだり、どいつが好みとかあの子かわいいとか…緊張感なさすぎ!!」

モノクマ「あげくの果てに大丈夫、舞園さんには僕がついてるよ! だってさ。ププー。
     先生はそんな子に育てた覚えはありません!」

苗木「うるさいなぁ。お前に育てられた覚えなんてないし」

舞園「クスッ」

モノクマ「もう三日も何もしないでダラダラ過ごして、学校に何しに来てるの?!
      恥ずかしいと思わない? 学校はコロシアイをする場所でしょ!」


238: 2013/10/30(水) 22:10:48.55 ID:HA+y27wE0

石丸「否! 学校はコロシアイをする場所でも、ましてや恋愛をする場所でもない!
   学校とは教育の場であり、勉学の場であり、研鑽の場所だッ!! 大体神聖な学校で…」

朝日奈「あんたちょっと黙ってて。話進まないから」


なんだか長くなりそうだったのでとりあえず黙らせる。


モノクマ「まったくさあ、ゆとり世代って奴はど~してこう殺る気がないんだろうね。
      君達の平々凡々な学生生活なんて視聴者は面白くもなんともないんだから」

KAZUYA「御託はいい。何が言いたい?」

モノクマ「え~、そこで僕は思ったのですよ。僕の経験から考えて、君達には危機感が
      足りないんじゃないかなと。まだ心のどこかでこれは遊びだと思ってるんじゃないの?
      ジッと待っていれば助けが来る? 甘いよ! 甘々激甘だよ!」

苗木「そんなことない! 待っていれば必ず警察が…」

モノクマ「ケ~サツゥ? …うぷぷ。うぷぷぷぷ。来てくれればいいねぇ…?」

一同「!!」


239: 2013/10/30(水) 22:12:22.95 ID:HA+y27wE0

K「…!(やはり、警察に何かあったのか? この状況はおかしい。外で一体何が…)」


モノクマの含みのある言い方に、一同は押し黙ってしまう。


モノクマ「とにかく、そんな危機感の足りないお前らに先生はこんな物を用意しました!」

不二咲「DVD?」

山田「僕達の名前が書いてありますな」

モノクマ「これは動機です。動機があればコロシアイしようって気になるでしょ?
     みなさんには今からこれを視聴覚室で見てもらいます」


そこに一体何が写っているのか、もはや恐怖しかないが生徒達は足取り重く視聴覚室に移動した。


240: 2013/10/30(水) 22:13:54.35 ID:HA+y27wE0


― 視聴覚室 ―


汚い字で生徒達の名前の書かれたDVDをモノクマは配っていく。


モノクマ「あ、ちなみに先生の分ないから。どんな気持ち? ねぇねぇ今どんな気持ち?」トントン

KAZUYA「……」

モノクマ「もう! 無視しないでよ! ほら、先生のために特別編集した
     この僕のお気に入り『特選絶望映像特集』貸してあげるからさ!」

KAZUYA「いらん!」

モノクマ「ちぇー、感じ悪いの」ポイッ


KAZUYAは部屋の一番奥に立って、全員の映像を盗み見ていた。そこには…


苗木(このDVD、一体なんなんだろう…あ、僕の家族だ。うちの映像じゃないか)


苗木のDVDには、学園入学を祝う家族のメッセージ映像が入っていた。


苗木(ハハッ、なんか照れるな――え?)


241: 2013/10/30(水) 22:15:39.04 ID:HA+y27wE0

笑顔の家族の姿に僅かばかり安堵していたが、突然映像が乱れたかと思うと、暗転。
次の瞬間目に入ったのは、家族が消え廃墟のように荒れ果てた我が家だった。


苗木「何だよ、これ…なんなんだよっ!!!」バンッ!


周りを見渡すと、皆同じような反応で悲鳴や怒号が聞こえる。
特に大きな反応を示したのは舞園さやかだった。


舞園「いやああああああああああああああああああっ!」

苗木「舞園さん!」 KAZUYA「……!」


錯乱して部屋を飛び出した舞園の後を苗木は追う。


舞園「何で…何でこんなことに?! 出なきゃ! 早くここから出なきゃ! 戻らなきゃ!!」

苗木「舞園さん! 落ち着いて!」ガシッ


242: 2013/10/30(水) 22:16:46.72 ID:HA+y27wE0

舞園「イヤッ! 離してっ!!」

苗木「みんなで協力すればきっと脱出出来る! 待っていれば助けだって来るかもしれない!」

舞園「助けなんて来ないじゃないっっ!!!」


ここに来て初めて、舞園が怒りを露わにした表情を…自分の本心を見せたのをKAZUYAは見逃さなかった。


苗木「僕が君をここから出してみせる! どんなことをしても、絶対に! 絶対にだ!」

舞園「苗木君…わあああああああああああああああ」

K「……」


誰も何も言葉を発せなかった。

一人また一人と解散し、その場に残ったのはKAZUYAだけだった。


243: 2013/10/30(水) 22:23:03.56 ID:HA+y27wE0

風呂行ってる間に安価取っておこう。


K「先に言っておくが、今回は皆ピリピリしていてあまり話し回れる雰囲気ではない。
  故に、人名安価は二つ。残り二つは場所安価であり、場所も限定されている。慎重にな」


人名(ただし江ノ島は除く)

>>245


245: 2013/10/30(水) 22:25:53.77 ID:tXRnOD0po
大神

252: 2013/10/31(木) 00:08:54.66 ID:0LGsU0Xv0

― 自由行動 ―


KAZUYAはフラリと食堂に来た。
皆早くに部屋に戻ってしまったから誰もいないのはわかっていたが、
実際に誰もいない食堂を見るとやはりどことなく寂しい。


K「ん、あれは…」

大神「西城殿か」


調理室の方から盆を手に大神がやって来た。
盆の上には二人分の紅茶のセットとドーナツが乗った皿がある。
誰の元へ行くかはすぐにわかった。


K「朝日奈の所に持っていくのか」

大神「左様…朝日奈はあのDVDのせいで怯えていてな。今は部屋で休ませている」

K「そうか…」


253: 2013/10/31(木) 00:11:44.00 ID:0LGsU0Xv0


先程の錯乱した舞園の姿を思い出すKAZUYA。


K「大神、お前は大丈夫なのか?」

大神「問題ない。…と言えば嘘になる。だが、今は怯えているものを
   支え、励ますのが我の仕事と思っております故」

K「もし俺の力が必要な時があれば遠慮なく言ってくれ。逆に怖がるかもしれんが」

大神「いや、朝日奈はそなたのことをあまり恐れていないと思える」

K「本当か?」

大神「ウム。落ち着いたら直接聞かれるが良かろう。では、失礼する」


そう言って、大神は去っていった。大神は非常に安定しているようだ。
恐らく殺人などは起こさない。そしてその大神が見ているのなら朝日奈も大丈夫だろう。


人名(江ノ島以外)

>>255


255: 2013/10/31(木) 00:12:58.84 ID:foYv0wDno
桑田

257: 2013/10/31(木) 00:23:52.27 ID:0LGsU0Xv0

用を足しに男子トイレに来ると、そこには桑田がいた。


桑田が「…よう、オッサンじゃん」


いつも元気に話しかけてくる姿とは対照的過ぎて、
KAZUYAもどう声をかけたらいいか一瞬考えてしまった。


K「桑田…その、大丈夫か?」


思わずストレートに言ってしまう。


桑田「大丈夫って…大丈夫なワケねーじゃん! あんなもん見せられてよ!」

K「…そうだな。すまなかった」

桑田「あ、いや…オッサンがわりぃワケじゃねえよ。ちっくしょう!
   モノクマのヤツ…全部あいつのせいだ!」


258: 2013/10/31(木) 00:37:45.23 ID:0LGsU0Xv0

K「そうだな。何が目的でこんな残酷なことをするのか」

桑田「ぜってーイカれてるぜ! あーとっ捕まえてボッコボコにしてやりてえー!」

K(確かに、正常な思考の持ち主ではないだろう。だが、それとは反対に
  恐ろしいほど高度な頭脳を持っているような気もする。侮れん…)

桑田「なんかむしゃくしゃしてきたな。久しぶりにちょっと体でも動かすか。
    なあオッサン、どうせヒマなんだろ? 付き合ってくれよ」

K「構わんぞ」


体育館に行き、二人でキャッチボールをした。
最初はあんなに暗い顔をしていたのに、なんだかスッキリしたようである。
少しだが生徒の心の支えになれたようで良かった、とKAZUYAは思った。


場所安価

1.食堂
2.ランドリー
3.男子トイレ
4.視聴覚室
5.図書室

>>260


260: 2013/10/31(木) 00:50:53.52 ID:hmIXJUOio
1で包丁潰すか

261: 2013/10/31(木) 01:08:47.74 ID:0LGsU0Xv0

今日はKAZUYAの食事当番の日ではなかったが、意気消沈している当番の何人かが
来ないかもしれないので、自分も手伝おうとKAZUYAは食堂を訪れる。


石丸「あ、先生。お疲れ様です」

K「石丸か。…お前、こんな所で何をしているんだ?」


石丸は端のテーブルでひたすらジャガイモの皮を剥いていた。


石丸「見ての通り、ジャガイモの皮を剥いています」

K「それはわかるが、お前の当番は確か明日だろう? しかも、何故調理場でやらない?」

石丸「調理場にいては正規の当番の邪魔になるので、ここで練習させてもらっているのです」

K「練習?」


262: 2013/10/31(木) 01:23:10.01 ID:0LGsU0Xv0

石丸「はい。見ての通り、僕はとても不器用なのです。勉強も、授業の前に必ず予習復習をして
   臨みます。才能がないので、何事も人の何倍も努力しなければならないのです」

石丸「明日が僕の当番なので、それまでに少しでも上手くなっておこうと…」


熱っぽく語る石丸だが、その表情は普段よりも明らかに力がなかった。


K「…あれについて、お前はどう思う?」

石丸「……」


いつも力強い石丸が、珍しく視線を落とした。


石丸「わかりません。そもそも、あれに映っているものが本物かわからないし…
   …そうだ、あれは本物であるはずがない。そうです! でっち上げですよ!」

石丸「僕は何に怯えていたんだ? あんな映像、今の技術ならいくらでも作れるじゃないか。
    あんなものに怯えたりして、まったくもって馬鹿馬鹿しい」


しかし、威勢よく啖呵を切ったかと思うとまたすぐに元気がなくなる。


263: 2013/10/31(木) 01:34:12.60 ID:0LGsU0Xv0


石丸「先生…僕は、常に思っているんです。努力こそ至高だと。どんなことでも、
   諦めないで努力し続ければいつか必ず報われる時が来ると信じているんです」

石丸「…でも、今みたいに努力でどうにでもならないような状況になって、
   僕は少し揺らいでいる。結局どうにもならないのかと」

K「石丸…」

石丸「ハッ…し、失礼しました! 弱音など吐いてしまって…! 僕は風紀委員として
   みんなを守らなければならない立場なのに、まったくもって不甲斐ないっ!!」

K「誰にだって弱音を吐きたい時はあるさ。それに、俺はお前の信念は間違ってないと思うぞ。
  とりあえず、今は皮むきに集中するか。どれ、俺がコツを教えてやろう」

石丸「ありがとうございます!」


石丸は落ち込んではいたが、殺人などするタイプには到底見えない。
話していて少し元気も出てきたようだ。いつもは引くくらい騒々しい男だが、
やはりこいつには元気でいてくれないと調子が出ん、とKAZUYAは軽く笑った。


場所安価

2.ランドリー
3.男子トイレ
4.視聴覚室
5.図書室

>>265

眠いので投下はまた後日


265: 2013/10/31(木) 02:00:35.57 ID:Mgw1XLs60
4

267: 2013/11/02(土) 01:25:07.14 ID:NHAcXfGF0


KAZUYAはいつものように見回りをしていたが、ふと視聴覚室の中に人の気配を感じた。
配られたDVDは一枚だけのはずだし、一体誰が何をしに?
訝しんだKAZUYAは静かに扉を開け、中へと侵入する。


K(舞園?)


そこにいたのは舞園さやかだった。遠目なのでハッキリとは見えないが、
どうやらあのDVDをもう一度見ていたようだった。


K(どうする?声をかけるか?)

1.話しかけてみる
2.黙って観察する
3.何も言わずに去る

重要選択肢なので安価下5までの多数決



271: 2013/11/02(土) 02:13:04.38 ID:NHAcXfGF0

えっと、まだ全部出てないけど先に三人集まったから2で行きます。


KAZUYAは黙って舞園を観察していた。少し位置を移動し、DVDの映像を盗み見る。
どうやら、彼女がアイドルとして活動している時の映像のようだ。そして、暗転すると
彼女が今まで築いてきたものが全て失われているという気分の悪くなる映像。


K(そんなものを何故もう一度見ている? いや…)


一度ではなかった。彼女は再びその映像を最初から見始めた。
まるで取り憑かれたかのように、何度もそれを繰り返している。不気味だった。


K(声をかけてみるか…)


KAZUYAは今まで盗み見ていたのがバレないよう、気配を消して入り口まで戻り
あからさまに音を立ててドアを開ける。


舞園「…西城先生」


272: 2013/11/02(土) 02:19:02.24 ID:NHAcXfGF0

K「舞園、こんな所でどうかしたのか?」

舞園「いえ…なんでもないです」


一瞬慌てたように見えたが、すぐにいつもどおりの笑顔を見せる。


舞園「先生こそ、見回りですか? いつもご苦労さまです」

K「ああ。そんなことより、今朝の件はもう大丈夫か?」

舞園「今朝は取り乱してしまってすみませんでした! 私、思わず動揺してしまって…
   でも、今はもう大丈夫です。苗木君が助けてくれたので。私には苗木君がいるから…」

K「そうか、なら良いが」

舞園「では、私は失礼しますね」ニコ


そう言って舞園は部屋を出て行く。



273: 2013/11/02(土) 02:24:50.29 ID:NHAcXfGF0

いつもと変わらない笑顔、いつもと変わらない物腰。
少し前に妙なことをしていた以外は、何らおかしな点はない。


K(だが、本当にそうか…?)


今日KAZUYAが出会った面々は、みな見るからに怯えていたではないか。
朝にあれほど取り乱し錯乱していた舞園が、いくら苗木の支えがあるといっても
こんなにも早く平常心を取り戻せているのはおかしい。いつもどおりの笑顔がかえって不自然だ。


K(何か、あるな…)


KAZUYAは持ち前の勘の良さで、何かただならぬものを感じ取ったのだった。


274: 2013/11/02(土) 02:25:56.03 ID:NHAcXfGF0


― 保健室 ―


KAZUYAは己の拠点である保健室に戻ったが、なんだかソワソワしていた。


K「警察はあてに出来ない…やはり、俺の考えは正しかったか」

K「…しかし、今夜は危ないな」


生徒達を信じたい。信じたいが…何分、相手はまだ高校生なのだ。
しかも、家族や大切なものの安否がわからないとなれば、
早まった行動を取る生徒が出てもおかしくない。


K「何も起きないに越したことはないが、警戒はしておいた方がいいだろう…」



― 苗木の部屋 PM9:40 ―


苗木(舞園さん、大丈夫かなぁ? 他のみんなも、平気だといいけど)


ピンポーン


275: 2013/11/02(土) 02:26:52.34 ID:NHAcXfGF0


苗木「あれ? もうすぐ夜時間なのに誰だろう?」


まさかとは思ったが、警戒しながらドアに隙間を開ける。


舞園「苗木君…」

苗木「舞園さん? どうしたの?」

舞園「その、苗木君に相談があって…苗木君しか頼れなくて…」

苗木「わかった。とりあえず、中に入って」


酷く怯えた様相で舞園は苗木の部屋に入ってきた。どうやら、舞園によると
何者かが彼女の部屋のドアノブを乱暴に回し、中に押し入ろうとしたらしい。
恐怖を感じた彼女は隙を見て外に出、苗木を頼ったのである。


舞園「それで、お願いがあるんです。無理な頼みだとはわかってるのですが…」


そして舞園はこう切り出した。

また部屋に不審者が来たら怖い。

一晩だけでいいから部屋を交換してくれないかと――



276: 2013/11/02(土) 02:29:37.19 ID:NHAcXfGF0


舞園「ごめんなさい、苗木君。苗木君が私の代わりに危険な目に遭うかもしれないのに…」

苗木「いいんだ! もしその不審者がまた来ても、ドアを開けなければいいんだし。
   こんなことで舞園さんが安心出来るならお安いご用だよ!」

苗木「あ、そうそう。僕の部屋のシャワールーム立て付けが悪いから気をつけて!
   開ける時はドアノブをひねりながら持ち上げるようにグイッと、ね」


苗木は舞園の申し出に快諾すると部屋を後にした。
その後ろ姿を舞園はじっと見つめる。


舞園「本当に…ごめんなさい、苗木君…」


『ピンポンパンポーン。夜です。夜になりました。…』



― AM 1:24 ―


誰もいない薄暗がりの廊下。
扉を薄く開き、辺りを伺う人影一つ。
廊下に誰もいないのを確認し、部屋からスルリと抜け出ると静かに扉を閉める。


「ハァッハァッ…ハァッハァッ…」



277: 2013/11/02(土) 02:30:19.29 ID:NHAcXfGF0


その人物は酷く動揺していた。
乱れた呼吸を整えることもなく、ただ急がなくてはとだけ思っていた。


「ハァッハァッ…ハァッハァッ…」


ガシッ!

太くて力強い手に突然肩を掴まれる。


「ッ?!!」

「ここで何をしている」


見上げたその先にいたのは、赤いマントを羽織った大男・KAZUYAだった――


284: 2013/11/02(土) 20:17:07.92 ID:AjDXD9WO0


K「ここで何をしている?」


もう一度、低い声で問いただすKAZUYA。


「……」

K「何をしているんだ。答えろ――桑田!」

桑田「!!」


名前を呼ばれて桑田はビクリと反応するが、次の瞬間には少し落ち着き反論する。


桑田「ト、トイレに行こうとしただけだって! いくら夜時間でも尿意は仕方ねえだろ…」

K「そうか」パッ


KAZUYAは掴んでいた桑田の肩から手を放した。


桑田「へ、ヘヘ…」


285: 2013/11/02(土) 20:18:18.37 ID:AjDXD9WO0

そして足早に去ろうとした桑田の首根っこを、再度KAZUYAは強引に掴んで引き寄せる。


桑田「っこの! なにしやがる?!」

K「トイレにそんなものを持っていく必要があるのか?」

桑田「…っ!!」


KAZUYAの目線の先には、男子生徒達に配られた工具セットがあった。
薄暗くてもわかるくらいハッキリと、桑田の顔から血の気が引いていく。


桑田「…こ、これは、そのっ…」

K「それに今お前が出てきた部屋…舞園の部屋だな。この中で何をしていた? 来いッ!」


有無を言わさず扉を開け、腕の力で桑田を中に放り込む。
そしてKAZUYAも中へと入った。そこには…


K「こ、これは…!!」


286: 2013/11/02(土) 20:21:20.78 ID:AjDXD9WO0


中は酷い有様だった。壁には、床に落ちている模造刀で切り刻んだのか、
刀傷がいくつもついていた。家具は倒れ、室内はメチャクチャになっている。


ギ口リ!

K「お前がやったのか?!」

桑田「ちがう! ちがうちがうッ! 俺のせいじゃないッ!!」


その時KAZUYAはシャワールームの中に人の気配を感じた。
ここは舞園の部屋なのだから、恐らく中にいるのは…


K「舞園かっ!! どうした?!」

舞園「う……うう……」


シャワールームの中で、舞園は血まみれになり倒れていた。
腹部にはしっかりと包丁が刺さっている。



287: 2013/11/02(土) 20:24:22.60 ID:AjDXD9WO0


K(包丁が刺しっぱなしになっていたため、大網や腸管の脱出は見受けられない。
  だが、腹腔内部の状況を確認するため、早急に開腹手術の必要があるな)


大網:正式名称・大網膜。内蔵を覆っている腹膜のうち、胃の下方から腸の前まで
   エプロン状に垂れ下がっている物を言う。

脱出:腹部に穴が開くと、腹圧で中の腹膜や腸管が飛び出ることはよくある。


KAZUYAは冷静に舞園の状況を見定め、手術しやすいよう部屋の中央まで運んだ。
そして念の為にと持ってきていた医療カバンを開け、手際よく手術の準備を始める。
だが同時に、どうしても早急に確認しなければいけないことがあった。


K「桑田ァッ! これは一体どういことだ! 説明しろっ!!!」

桑田「アホアホアホアホアホアホアホアホ! ちがう!! ちがうんだって!
    俺のせいじゃないってぇ! そいつが! 舞園があっ!」


288: 2013/11/02(土) 20:25:28.93 ID:AjDXD9WO0


もはや半泣きになりながら桑田は喚き始めた。
往生際が悪いとKAZUYAは思ったが、その様子に少し違和感を覚える。


K「…舞園が、どうかしたのか?」

桑田「そいつが最初に包丁持って俺を襲ってきたんだって!!」

K「何だとっ?!」

桑田「俺はこいつに呼び出されて部屋に来ただけなんだよ! その後色々あって
   こうなっちゃったけど…本当だって! 信じてくれよオッサン!!」


確かにKAZUYAの目から見ても、桑田は殺人など起こせるタイプではなかった。
しかし、片方の言い分のみを鵜呑みにする訳にはいかない。


K「わかった。とりあえずはお前の言い分を信じよう。事件の真相は舞園の治療が
  終わってから改めて明らかにする。今はとにかく手術が優先だ!」



289: 2013/11/02(土) 20:37:03.50 ID:AjDXD9WO0



 ※ 注 意 ! ※


モノクマ「ここから先、手術シーンが入ります! え? だってドクターKは医療漫画だよ?
     クロスSSとはいえ当然手術シーンが入るに決まってるよね?」

モノクマ「で、一応最低限は調べて書いてるけど、>>1は医療関係者でもなんでもありません!
     だから言ってみりゃテキトーです! イメージです! こういうのは勢いが大事なんです!!」

モノクマ「もしこのスレに本物の医療関係者がいて、手順が違う!とか道具や薬が違う!て思っても
     間違いはスルーしてくれると嬉しいな。だって二次SSなんてみんなが楽しめればいいんだから。
     まあ、>>1に絶望を味合わせるためにあえての指摘だったら、それもやむなしだけど。うぷぷ…」


モノクマ「では、再開。舞園さんが氏なないようにみんなも応援してあげてね」



290: 2013/11/02(土) 20:38:57.39 ID:AjDXD9WO0



 !      手      術      開      始      !



K(患者(クランケ)は上腹部中央に刺創(しそう)を負っている。エコーで確認出来ないのが辛いが、
  傷の位置、大きさ、深さから鑑みて腹腔内に中程度の出血をしている模様。まずは
  上腹部正中切開を行い、止血を行いながら実質臓器及び腸管の損傷状況を確認する!)


手慣れた動きで道具や傷口の消毒を行うと、KAZUYAは麻酔をかける。
舞園の呼吸や心拍が落ち着いたことを確認し、メスで一気に開腹した。


K「メス! コッヘル! ペアン!」


コッヘル・ペアン:共に鉗子というハサミに似た形をした手術器具。先端の形状が違う。
         止血鉗子と呼ばれているが、止血に限らず物をつまんだり留めたりと万能。


まずメスを皮膚に入れ腹膜を切り裂く。当然ながら傷口からは血が流れ、
内臓が顕わになった。横で眺めていた桑田が思わず悲鳴を上げる。


桑田「ひぃっ! 血、血がぁっ…!」


291: 2013/11/02(土) 20:40:57.82 ID:AjDXD9WO0

K(とりあえず刺創は胸腔内には達していない。気胸(ききょう)の恐れはないな)


気胸:胸腔内に気体が入ると肺を圧迫し、肺が外気を取り込めなくなってしまう。
    刺されたのが腹部でも刃先が胸部に行った場合は外傷性気胸に注意する必要がある。


K「…目を逸らすな。襲ったにしろ襲われたにしろ、これはお前のやったことだ」

桑田「……」

K(良し。実質臓器に傷はついていない。行けるぞ)


KAZUYAの手つきは慣れたものだった。桑田は犯人扱いされなかったことで
少し落ち着きを取り戻したが、同時にふと別の心配が出てくる。


桑田「…なあ、そいつ助けるのか? 助かったら、また俺のこと襲ってくるんじゃ…」

K「……」


292: 2013/11/02(土) 20:42:30.64 ID:AjDXD9WO0

桑田「つか、自分が外に出たいからって人頃しをする奴だぜ? ほっといてもいいんじゃ…?」


腹壁の血管を結紮(けっさつ)止血しながら、KAZUYAは驚いて桑田を見た。


結紮止血:血管を縫合糸で縛り止血する方法。


K「…お前、自分が今どういう状況に立たされているのかわかっていないのか?」

桑田「どういう状況って…」

K「モノクマの言っていた言葉を忘れたのか。卒業するには人を殺さないといけない。
  …ただし、誰にも見つからずに行うこと。お前は俺に見つかってしまったのだぞ?」

桑田「…へ? だ、だってこれ、正当防衛じゃね…? 俺からやったわけじゃ…」

K「外の世界の法律ならな。だがここでの法律は奴だ。
  モノクマこと黒幕がそんな甘い判断をしてくれるとでも思っているのか?」

桑田「ちょっと待て、ちょっと待てよ。え、それって…」


293: 2013/11/02(土) 20:43:35.92 ID:AjDXD9WO0


たった数日前だが今も強烈に残っているモノクマの言葉が脳裏に鮮明に蘇った。


モノクマ『学園の秩序を乱したんだから、犯人にはオシオキがあるに決まってるよね』

モノクマ『オシオキって言ったら“公開処刑”に決まってるでしょ』


桑田(え、な、なに? 処刑? こいつが氏んだら…俺が処刑されんのっ?!)

桑田「う、嘘だ。処刑とか…だって、そんな、そんな…!!」

桑田「イヤだああああああああああ。氏にたくないいいいいいいいいいい!!
   俺はまだまだやりたいことがあるんだ! 氏にたくねえよおおおおおっ!」


錯乱し、泣き叫び始める桑田。手の動きは一切緩めずに、KAZUYAも叫ぶ。


K「落ち着けっ! 俺がなんとかする!」


294: 2013/11/02(土) 20:49:05.05 ID:AjDXD9WO0


KAZUYAが必氏に落ち着かせようとするが、桑田にその言葉は届いていない。


桑田「うわあああああああああああああああああああああっっ!!」

桑田(腹を刺したんだぞ! あんなに血が出てるし、病院でもねえのに助かるかよっ!
   イヤだ、イヤだ! 氏にたくねえ! 氏にたくねえよおおおおお!)


その時、恐ろしい考えが桑田の脳裏によぎった。犯人が露見するから処刑になる。
頃していいのは二人までだ。つまり、仮に犯行を見られても一人までなら口封じに殺せば…

ちょうど足元には、金箔の貼られた黄金の模造刀が自己主張するように怪しく輝いている。


桑田(今…オッサンは背中を向けていて両手もふさがってる。今なら俺でも…)


模造刀にゆっくりと手を伸ばし引き寄せると、桑田は構えた。
さっきまであんなにガクガクと震えていた膝が、今は微動だにせず体を支えている。
呼吸が落ち着いてきた。頭の中も嫌に冴え渡っている。

そして桑田は――天高くそれを振り上げた!



295: 2013/11/02(土) 20:50:50.36 ID:AjDXD9WO0


ここまで


300: 2013/11/02(土) 22:36:01.28 ID:AjDXD9WO0


              ・

              ・

              ・


            ピキーン!




301: 2013/11/02(土) 22:37:09.51 ID:AjDXD9WO0

その時、いつも自分の武勇伝をちゃんと最後まで聞いてくれたり、
一緒にキャッチボールをしてくれた優しいKAZUYAの姿が眼前によぎった。


ハッ

桑田(俺、今なにしようと…そうだ。舞園はともかく、オッサンは完全に無関係じゃねえか!
    自分が助かりたいからって無関係の人間を頃したら、俺も舞園と同じだろーがっ!!)


カタッカンッカラララ…

手からスルリと模造刀は抜け落ち、乾いた音を立てる。


K「…………(桑田……)」


KAZUYAは幾度も修羅場を超えてきた歴戦の医師である。その中で命を狙われることも
多々あったため、殺気を読むことには人一倍長けていた。桑田が自分の背後で何をしようと
していたかはわかっていたが、あえてKAZUYAは桑田を信じていた。無言のまま手術を続ける…


302: 2013/11/02(土) 22:39:35.88 ID:AjDXD9WO0

一方桑田は、一瞬でも自分が悪魔のような考えを抱いたことを嫌悪し、
膝から崩れるとただひたすらに涙を流していた。


桑田「イヤだ! イヤだよぉ…今度から真面目になるから…練習だってちゃんと出るからさあ!
   こんな所もうイヤだ! 出して、出してくれよ…誰か助けてくれよぉ…!!」

桑田「こんな学校来なきゃ良かった! 前の学校に戻りてえ。もっかい野球やりてえよお…
   監督にも、チームのみんなにも謝るからさぁ…!! 土下座だってなんだってするからっ!!」

K「!! 桑田、お前…!」


衝撃を受けたKAZUYAは思わず立ち上がり、桑田の前に膝をついてその両肩を掴む。
野球選手だけあって、見た目よりも遥かにその肩はガッシリとしていた。


K「お前――今の言葉に嘘偽りはないな?」

桑田「え?」


303: 2013/11/02(土) 22:40:51.70 ID:AjDXD9WO0

K「男に二言はないな! と言っている」

桑田「う、うん」

K「安心しろ。舞園もお前も氏なせたりはしない! 俺が助けてみせる! 絶対にだッ!!」

K「とりあえず、俺の指示通りに動け」


すでに全ての止血は終えていたのだが、出血量と今後の処置を考えると輸血が欲しい。
何故かこの学園の保健室には輸血パックがありそれを誰かに持ってきてもらいたいのだが、
混乱している桑田に任せるのは少し不安があった。


K「急いで石丸と大神…あと苗木をこの部屋まで連れてきてくれ」

桑田「わ、わかった!」


部屋を飛び出す桑田。程なくして三人を連れて戻る。


304: 2013/11/02(土) 22:42:00.51 ID:AjDXD9WO0


石丸「こんな時間に舞園君の部屋で一体何を…な、なんだこの部屋はっ?!」

大神「一体何があったのだ?!」

苗木「そ、そんな…舞園さんっ!!!」


舞園を手術しているKAZUYAを見つけ、苗木は駆け寄った。


苗木「舞園さん! 舞園さん! 何でこんなことにっ?! 先生、舞園さんは?!」

K「大丈夫だ! ほぼ処置は完了している。そこで苗木、お前に輸血用の血液を
  取ってきてもらいたい。場所は前に見せただろう? 念の為に全ての型を頼む」

苗木「は、はい! 行ってきます!!」


転がるように部屋を飛び出し廊下を一目散に駆け抜ける苗木。
まだ状況が飲み込めていない石丸と大神は呆然とその姿を見送る。


石丸「ま、舞園君は怪我をされたのですか?」

K「ああ。桑田が包丁で刺した」


305: 2013/11/02(土) 22:43:57.94 ID:AjDXD9WO0

石丸「な、なんと! 君という男は…!」 大神「桑田!」

桑田「ち、ちがっ…!」

K「落ち着け。まだ真相はわかっていないのだ。桑田によると先に襲ったのは舞園らしい」

石丸「舞園君が桑田君を?! 一体何故っ?!」

K「…まだわからん。とにかく石丸、お前は他の生徒達を起こしてここに呼んでこい」

石丸「分かりました!」


今度は石丸が走って出て行く。


大神「それで西城殿。我は何をすれば良い?」

K「桑田についててやってくれ。真相がわかるまでは一応容疑者ということになるからな」

大神「承知した」


手術は終盤に差し掛かっていた。


306: 2013/11/02(土) 22:47:11.49 ID:AjDXD9WO0

K(包丁は胃壁を後壁まで貫通し、後腹膜へ血腫も出来ていたが幸い重要な臓器に損傷はなく、
  処置も早かったため命に別状はない。恐らくカッとなって刺しただけで桑田も本気では
  なかったから、刃先が腹部大動脈や下大静脈を切り裂くこと無く済んだのだろう)


後腹膜:腹膜の一種ではなく、腹膜と後腹壁(要は背中のこと)の間にある空間のこと。

血腫:出血が一箇所にたまって塊になっている状態。

腹部大動脈・下大静脈:背骨の手前にあるとにかく太くてデカい重要な血管。


K(もう少し深かったり、何度も刺していたら危なかったな…)

桑田「それにしてもよ…」グスグス

K「どうした?」

桑田「なんでこいつ、俺を狙ったりしたんだよ…」グスグス

K「……」

桑田「俺、こいつになんもしてねえし。むしろ、親切にしてたほうだし…」

桑田「(俺は舞園のこと好きだったんだぞ…)なのに、なんでだよ…なんでだよ…」

K「…さてな。彼女が目を覚ませば、明らかになるだろう」


307: 2013/11/02(土) 22:48:39.75 ID:AjDXD9WO0


しばらくすると、生徒達が次々に部屋に訪れ辺りは騒然となった。
戻ってきた苗木から輸血を受け取り、全ての血管、筋繊維、上皮を縫合し手術は無事終了した。



 !      手      術      完      了      !



一度生徒達を退室させ、力のある朝日奈と大神に手伝ってもらい舞園の血のついた服を替える。
その後ベッドに寝かせ、再び生徒達を招集した。


苗木「先生! 舞園さんは、舞園さんは…!!」

K「もう大丈夫だ。発見が早く手早く処置が出来た。命に別条はない」

苗木「よ、良かった~~~!!!」


その場に泣き崩れる苗木。一部の生徒からも歓声が上がる。

だが、手術が終わってもKAZUYAにはまだすることが残っていた。



308: 2013/11/02(土) 22:52:56.22 ID:AjDXD9WO0

本当に今日はここまで。

あそこで止めると桑田がクズっぽく見えるので、結局手術終了まで投下してしまった



モノクマ「ちなみに手術開始で学級裁判開始のBGMを勝手にイメージしてるのはここだけの秘密」


313: 2013/11/04(月) 00:34:12.06 ID:2oYGm7590


十神「さて、この状況を説明してもらおうか。誰が舞園さやかを殺そうとした?」

朝日奈「待って! 本当に襲われたの? なにかの事故じゃ…」

セレス「あら、それはありませんわ。そこに、血のついた包丁が落ちているではありませんか」


床に無造作に置かれた血のついた包丁は、確かに事件の存在を証明している。


不二咲「この状況に耐えられなくて、自頃しようとしたのかも…」

大和田「朝もすっげー錯乱して叫んでたしな…」

十神「舞園は自殺などをするタイプには見えなかったがな」

苗木「僕も、自殺ではないと思う。いや、自殺な訳がない! だって夜時間に入る少し前に、
    僕の部屋に舞園さんが来て相談されたんだ。誰かが部屋に押し入ろうとしてるって!」

苗木「酷く怯えた感じだった。だから、犯人はきっとそいつだよ!」

江ノ島「それ、本当? じゃあ、そいつが犯人で間違いないじゃん!」


314: 2013/11/04(月) 00:35:01.96 ID:2oYGm7590

石丸「待ちたまえ! 誰が舞園君を刺したかについては、もうわかっているのだ」

腐川「誰よそれ…まさか、この中にいるんじゃ…」

石丸「ああ、桑田君だ。しかし、まだ状況はよくわかって…」


さらりと石丸は知っている情報を開示するが、同時に女性陣から
悲鳴があがり、石丸大神を除く全員が一斉に桑田から離れた。


大和田「桑田! テメエって奴は!!」

朝日奈「最低だよあんた!」

桑田「ち、ちがう! ちがうんだって! これにはワケが…!」

K「みんな、待て! 話を…!」


KAZUYAは桑田に対する糾弾を制止しようとするが、
集団ヒステリーを起こした生徒達の口撃はとどまることを知らない。


315: 2013/11/04(月) 00:35:57.39 ID:2oYGm7590


朝日奈「何が違うのよ!」

腐川「汚らわしい! 近寄らないで!」

不二咲「桑田君…そんな…」

桑田「だからちがうって…俺じゃねえって…」


雨あられのように全方位から責められ、桑田も思わず涙ぐむ。
だがそんなことでこの糾弾が終わる訳がなかった。


葉隠「ひ、人頃しだべ!」

山田「人間のクズですな!」

江ノ島「泣けば済むと思ってんの?!」

苗木「そんな、信じてたのに…」

大和田「女に手ぇ出しやがって! このクズ野郎っ!!」


一度起こってしまった混乱はそう簡単には止められない。ならば。



316: 2013/11/04(月) 00:39:24.74 ID:2oYGm7590



K「お前達――  い  い  加  減  に  し  な  い  か  !  !  」 ク ワ ッ !



ドドオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!


普段は穏やかなKAZUYAが修羅の顔になり、雷のような怒号で生徒達を一喝する!


シィーーーーーン……


あれだけ混迷を極めていた場が、一瞬で鎮まった。


K「ここをどこだと思っている? 怪我人がいる以上ここは病室だ。静かにしてもらおう」

K「それに俺がお前達をここに集めたのは、犯人探しでも犯人を糾弾することでもない。
  何故このような事態になったのかその真相を明らかにし、正しい情報を共有するためだ」


317: 2013/11/04(月) 00:40:59.30 ID:2oYGm7590

K「確かに桑田は舞園をこの包丁で刺した。だが、桑田によると先に襲ってきたのは
  舞園らしい。確かに俺としても、桑田が殺人など犯すような人間には見えん」

K「この場で何が起こったか…ただ事実のみを追求する。感情に任せて責めたてることは許さん」

一同「……」


全員の顔を黙って見回し、生徒達が了解したと判断してKAZUYAは続けた。


K「さて桑田よ、お前は舞園から呼び出しをくらったと言ったな? いつ頃どのようにだ?」

桑田「えっと、夜中の一時くらい? 今朝あんなことがあって眠れなくてさ…部屋で寝転んでたら
    チャイムが鳴ったんだよ。で、なんだろうと思ったらドアの下からメモが…あっ!」

K「そのメモを見せてみろ」


慌ててポケットからクシャクシャになったメモを取り出しみんなに見えるよう差し出す。


318: 2013/11/04(月) 00:42:33.83 ID:2oYGm7590

大神「確かに、舞園のサインが入っているな」

腐川「で、でも…自分で書いた可能性はないの? 外なら筆跡鑑定とか出来るでしょうけど…
    ここには舞園の書いた物なんてないし、あっても処分しちゃえば…」

桑田「ちげーし! 俺の字はもっときたねえよ!」

石丸「確かに、先入観で語るのは失礼かもしれないが桑田君が書いたにしては綺麗だ」

セレス「字なんてどうとでもなりますわ。確実に舞園さんが書いたという証拠がなければ」

霧切「――証拠ならあるわ」


今までずっと黙っていた霧切があるものを掲げる。それは鉛筆で表面をこすったメモ帳だった。
そこには驚くべきことに、桑田のメモと全く同じ文面が浮き上がっている。


霧切「これはこの部屋に備えつけられていたメモ帳よ。彼女、余程緊張していたのね。
    筆圧で下の紙に跡が残っていたから、鉛筆でこすって浮き上がらせたの」

セレス「…桑田君が誰かに見つかった時の言い訳のために書いたという可能性は?」


319: 2013/11/04(月) 00:44:31.01 ID:2oYGm7590

霧切「ないわね。犯罪心理として、犯人は一刻も早く現場から去りたいのが普通だもの。
    こんな小細工をするくらいなら、事件を起こす前か自分の部屋に戻ってからするはず」

十神「では桑田を呼び出したのは舞園さやかで、呼び出したのち包丁で襲い掛かった。
    これはほぼ確定事項で構わないな。ところで一つ気になることがあるんだが」

十神「床についた血の跡から考えて、犯行現場はシャワールームだったと推測するが、
    何故あのドアノブは外されているんだ? 誰かが外した跡がある」

桑田「それは、俺が工具セットを使って外したから…」

朝日奈「え? じゃあ舞園ちゃんは一度シャワールームに逃げ込んで鍵をかけたの?」

苗木「鍵じゃないよ! 単に建て付けが悪いだけなんだ。そもそも、この部屋は
    本当は僕の部屋なんだよ。舞園さんが怯えてて、一晩だけでいいから部屋を
    交換して欲しいって言われたから…」


事件の話をしていたのに、唐突にシャワールームの鍵やら立て付けの
話が出てきて、流石のKAZUYAも意味がよくわからなかった。


K「…話がよく分からないのだが」


320: 2013/11/04(月) 00:47:57.83 ID:2oYGm7590

不二咲「あ、そうかぁ。先生は個室がないから知らないんだね」

石丸「僕らの部屋には、モノクマが書いたと思われる部屋の説明書きがあり、
    それによるとシャワールームに鍵があるのは女子の部屋のみとなっているのです」

霧切「他に三点、夜時間にはシャワールームの水が出ないこと、男子の部屋には工具セット、
    女子の部屋には裁縫セットが置かれていることが明記されていたわ」

K「成程。つまりこの部屋は本来男の苗木のものだからシャワールームに鍵はついてないが、
  女の舞園の部屋だと勘違いしていたことと、建て付けが悪いことを知らなかったことで、
  桑田は中から鍵をかけられたと勘違いした、という訳だな」

大和田「…ちょっと待てよ。じゃあお前、先に襲われたとはいえ一度は舞園を撃退したんだろ?
     その後わざわざ工具取ってきてトドメ刺そうとしたってことか?」

桑田「仕方なかったんだよっ! 怖かったんだって! また追っかけて来て
    襲われるかもしれないって思ったし、とにかく先に殺らなきゃ殺られるって…!」

大和田「…たかが女一人相手にか? それに怖かったなら助けを呼びゃあいいだろ」

桑田「……」


大和田の軽蔑するような視線に桑田は居心地が悪くなる。


セレス「そういえば、わたくしも一つ気になることがあるのですが…この部屋は苗木君の
     部屋でよろしいのですよね? ですがネームプレートは確か舞園さんのものでしたわ」


321: 2013/11/04(月) 00:51:19.09 ID:2oYGm7590

K「…!」


KAZUYAは気付いた。そうだ。自分もネームプレートを見て勘違いしていたではないか。
しかし、一体誰がそんなことをする? 部屋を交換したのは二人だけしか知らないことなのに。


K(まさか…)

苗木「ネームプレートが違う?! そんな馬鹿な。それじゃあ部屋を交換した意味がないじゃないか!」

十神「フッ、成程な。読めたぞ」

苗木「何? どういうこと、十神君?」


十神の意地の悪い笑みに、苗木は嫌な予感がしていた。
KAZUYAも一瞬で真実を察し、止めようとする。


322: 2013/11/04(月) 00:56:22.98 ID:2oYGm7590

K「待て。お前は聞かない方がいいかもしれんぞ」

十神「それは苗木が判断することだ。おい苗木、もし舞園の犯行計画が完遂されていたら
    お前の部屋が殺人現場になる訳だが、その場合お前はどうなっていたんだろうな?」


予想外の言葉に、苗木は動揺した。今まで怪我をした舞園に気を取られていたが、
本来ならばこの部屋に桑田の氏体が転がっていたはずなのだ。
そして、恐らく明日の朝食会の時間辺りに発見されていたことだろう。


苗木「…え?」

十神「その女はな、お前に罪を被せて自分は平然と逃げ切るつもりだったんだよ」

苗木「…ウソだ」

十神「嘘じゃない。他にどうこの状況を説明する?」

苗木「ウソだウソだウソだ! 舞園さんがそんなことする訳ないっ!」


323: 2013/11/04(月) 01:01:13.67 ID:2oYGm7590

腐川「そんなことする訳ないって…既に人一人殺そうとしてんじゃない…!」

セレス「かたや個室に逃げ込んだ女の子に怯えてトドメを刺しに戻り、かたや親身に
     なってくれた男性を裏切り罪を被せようとする。どっちもどっちですわね」


顎の下で両手を組む独特のポーズを取りながらセレスは皮肉を言う。


十神「いや、桑田はビビりなだけだ。どちらかと言えば舞園の方が悪質だし罪は重い。
    …さてドクターK。ここで質問だが、その女を一体どう対処するつもりかな。
    まさか怪我をしてるから無罪放免という訳ではあるまい?」


十神はまるでKAZUYAに挑戦するような口調で迫った。


K(この男…)


KAZUYAは気付く。この男・十神白夜はKAZUYAのことを試しているのだと…



347: 2013/11/07(木) 22:11:43.75 ID:OcziN7gf0


K(まさか俺の半分程度しか生きていない子供に試されるとは…俺も舐められたものだ)

K「舞園の処遇を決める前に、一つ確認しておきたいことがある。苗木、いいか?」

苗木「…何ですか?」


突然の裏切りに苗木の表情は沈みきっていたが、KAZUYAはどうしても確認しなければならなかった。


K「舞園が憎いか?」

苗木「……」


元々暗かった苗木の表情が、その質問でますます曇る。


K「自分を裏切った舞園さやかを、お前はどう思う?」

苗木「そりゃあ…何も感じていないって言ったら嘘になります。凄く、ショックだったし…」


俯き、少しの間沈黙と葛藤に至る。
だが、次に顔を上げた時の苗木の顔は何かを決意した男の顔だった。


348: 2013/11/07(木) 22:13:19.76 ID:OcziN7gf0

苗木「でも、あんなDVDを見せられて平気でいられる訳がない! 僕も外に出なきゃ、
    早く帰らなきゃって強く思ったし、たまたま舞園さんが最初だっただけで、
    明日には他の誰かが事件を起こしていたかもしれない。もしかしたら僕だって…」


キッとKAZUYAの顔を見上げ、苗木は宣言する。


苗木「だから、僕は舞園さんは悪くないと思う! 彼女が責められるのなら、
    その前にこんなことをしたモノクマや黒幕を責めないと、不公平だよ!」

苗木「僕は…僕は絶対、みんなと一緒に黒幕を倒してここを脱出する!
    そこには舞園さんや桑田君もいるべきだよ! だって仲間なんだから!!」

K「成程、それがお前の考えか。――舞園の処遇は決まった」

十神「ほう、どうするんだ?」

K「舞園さやかは俺の患者として責任を持って治療に当たる。以上だ」

江ノ島「は?」

セレス「あら、それって実質無罪放免ということですわね」

石丸「先生、流石にそれは…」


349: 2013/11/07(木) 22:14:32.00 ID:OcziN7gf0


石丸ですら疑問の眼差しを向けてくる。確かにそうだ。
未遂で済んだから良かったものの、彼女が殺人を試みたことは間違いない。


K「勿論、舞園が再び妙な真似をしないよう俺の監視のもと保護下に置き、
  同時にカウンセリングをしながら彼女の心の治療も行っていく」

一同「……」


KAZUYAを恐れてあからさまに反対する者こそいなかったが、何人かの表情には不信がある。


K「…お前達は目先の感情に囚われてしまって、大切なことを見失っているな。
  たった今苗木が言っただろう。全てはこんなことを仕組んだ黒幕の責任だと。
  舞園も桑田も、普通に生きていれば到底犯罪など犯すタイプではない」

K「お前達をこんな所に閉じ込めた黒幕は何を望んでいると思う? お前達を
  極限まで追い詰め、疑心暗鬼にし、互いに憎ませ頃し合わせることだ」

K「舞園が助かってかえって黒幕は喜んでいるかもしれんな。不協和音の元になってくれる、と」

一同「……」


KAZUYAの言葉に生徒達はうなだれる。確かに、放っておけば彼女を中心に
争いが起こり、それが不和の元になっていたのは間違いなかった。


350: 2013/11/07(木) 22:16:25.96 ID:OcziN7gf0

K「そもそもこの件に関して意見出来るのは第三者の我々ではなく、被害者の桑田と
  被害者になりかけた苗木だけだ。そして苗木は不問でも良いと言っている。
  桑田、お前もやられた分はきっちりやり返したのだから、もうそれでいいだろう?」

桑田「えーっと、ちょっと納得いかねえけどオッサンがそうしろって言うなら俺はいいぜ!」

K「こんなことが起こってしまったからこそ、我々は尚更結束を強めなければならない!
  以後舞園にも桑田にも、今後この件で責めることは一切俺が許さん! いいな!」

K「…解散だ」


こうして事件は一応の終息を迎え、一同は部屋に戻って行った。



     ◇     ◇     ◇



舞園はずっと夢を見ていた。それは悪夢だった。
少し前に自分がしたこと、それによって引き起こされたこと。


351: 2013/11/07(木) 22:19:12.61 ID:OcziN7gf0

舞園『……』


舞園は苗木の部屋に一人佇み、何度もこの先のことをシミュレートする。
苗木は優しいから、きっと自分の事情を汲んで黙って犯人役を引き受けてくれるに違いない。
バレてはいけないというのがどれくらいの期間かわからないが、苗木が時間稼ぎを
してくれている間に自分は卒業出来るだろう。そして晴れて外に出られるのだ。


舞園(そのために、さっさと氏んで下さい…桑田怜恩)


案の定、呼び出しに応じてのこのこと桑田はやって来た。自分がこれから殺されるとも知らずに。


桑田『ヤッホー、呼ばれたから遊びにきちゃったぜー。へへっ』

舞園『こんな時間に呼んだりしてごめんなさい。どうしても話したいことがあって…
    とりあえず、こんな所じゃなんなので中に入って下さい』

桑田『ええっ、いいのかよ? 女の子の部屋に入れてもらっちゃったりして…』

舞園『(デレデレ鼻の下を伸ばして…馬鹿な男)大丈夫です。ベッドにでも座ってて下さい』

桑田『んじゃっ遠慮せずに入らせてもらうぜ。おじゃましまーす!』


舞園はドアのすぐ横に立ち、桑田を招き入れる。モノクマ曰くこの部屋は防音らしい。
恐らく悲鳴が上がっても外に漏らさないためだろう。一刻も、一刻も早く扉を閉めなければ…


352: 2013/11/07(木) 22:23:42.30 ID:OcziN7gf0

バタン!

舞園『(今だ!)すぅッ!』


深く息を吸い込み、包丁を構えて強く握りしめる。
まさに今踏み込もうとした瞬間……たまたまこちらを振り向いた桑田と目が合った。


『ッ?!?!』


そこから反射的に繰り出された桑田の鮮やか過ぎる身のこなしは、敵ながら見事と言わざるを得なかった。
桑田は包丁を視界に捉えた瞬間、まるで向かい来るデッドボールを避けるがごとく自然に体を捻り、
わざと重心を崩して転ぶ。そのまま転がって距離を取ると、素早く立ち上がって態勢を立て直していた。
…奇襲に失敗して態勢を崩した舞園が、再び攻撃態勢に入るよりもやや早くに。


舞園(かわされたっ?!)


しかしこちらには武器がある。まだ有利なはずだと舞園は再度突っ込むが、彼女の不運は続いていた。
護身用に部屋に置いていた金色の模造刀。恐らく女の部屋にあの刀は異質過ぎて印象に残ったのだろう。
桑田は反射的にそれを取り、包丁の突きをガードする。


舞園『ッ!!』


353: 2013/11/07(木) 22:26:43.24 ID:OcziN7gf0

男と女。刀と包丁。既に勝敗は決していたが、突然の危機に桑田は完全に理性を失っていた。
野球の天才である桑田は当然バッティングも両打ちである。左打ちにスイングする要領で
まずは舞園の右手を砕き一瞬で包丁を叩き落とした。


桑田『っの野郎ぉぉ! そっちがその気ならこっちもやってやるぅううっ!』


包丁を落としたことで余裕が生まれたのか、かえって目茶苦茶な動きで桑田は刀を振り回し始める。
舞園はその無駄な動きの隙を縫ってシャワールームに逃げ込むのが精一杯であった。


舞園(ハァ…ハァ…罰が当たったんだ。無関係な苗木君の善意を利用しようとしたから…
    自分が外に出たいからって、犯罪者でもない人間を殺そうとしたから…)


桑田が怒鳴りながらドアノブを乱暴に回す音と、捨て台詞を吐いて部屋を駆け出す音が聞こえた。
恐らく、工具セットを取りに行ったのだろう。だが、自分はここから出て行く事は出来ない。
足が恐怖ですくんでいるというのもある。だが一番の理由は、桑田は足が速いだろうから
誰かに助けを求めている間に結局見つかってしまうのだ。逃げ場など、どこにもない。

そんなことを考えていたら、案の定もう戻ってきた。


桑田『舞園ぉぉっ! 覚悟しやがれぇぇっっ!!』


354: 2013/11/07(木) 22:30:07.28 ID:OcziN7gf0


ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ


舞園『い、いや…いやああああああああああああああああああああああああああっ!!』










        ◇     ◇     ◇



舞園「ハッ…!」


370: 2013/11/10(日) 00:44:02.02 ID:iCDfe/670


全身汗だくになりながら目を覚ました舞園は、自分がベッドに寝かせられていることに気付いた。
骨折した右手はギプス包帯でしっかり固定され、腹部にも何か違和感がある。


舞園「う、うう…」

K「目が覚めたか?」

舞園「西、城先生? ここは…ハッ! わ、私…?! うっ!」

K「動くな。腹部を刺されていたから俺が手術した。もう命に別状はないぞ」

舞園「……」

K「俺がどこまで知っているのかを知りたいのだろう? 説明しよう」


そしてKAZUYAは舞園を刺して部屋を出た桑田を捕まえたこと、緊急手術を行ったこと、
全員をこの場に集めて全てを明らかにしたことを話した。


舞園「残念ながら、お前の計画は全て暴かせてもらった。部屋の交換も含め、な」

舞園「……」

K「……」


重い空気の中、舞園がポツリと呟く。


371: 2013/11/10(日) 00:45:24.42 ID:iCDfe/670

舞園「…私は、裁かれるのでしょうか」

K「いや、みんなお前を許すと言っている。まあ一部の口の悪い奴らは嫌味くらい言っていたが」

舞園「…嘘、です。そう、苗木君…苗木君はっ?!」

K「お前を許した筆頭がその苗木だ。裏切られたにも関わらず、全てはこの頃し合いを
  仕組んだ黒幕が悪いと言い切った。お前のことを少しも恨んでなどいない」

舞園「嘘、嘘! 嘘です!! こんなことして、許してくれる訳なんかないっ!
    中途半端な優しさなんてない方がマシです! 本当のことを言って下さい!」

K「俺は本当のことしか言ってないのだがな。いつもの勘の良さも、頭に血が上っていると働かないか?」

舞園「……!」

K「苗木も…桑田もお前のことは恨んでいない。まあ、俺の言葉が信じられないと
  言うのなら、直接本人に聞いてみるといい。苗木を連れてこよう」


そう言ってKAZUYAが立ち上がろうとすると、舞園が必氏に止める。


舞園「待って、待って下さい! 私…苗木君に…合わせる顔がないです…」


372: 2013/11/10(日) 00:47:24.93 ID:iCDfe/670

K「舞園」

舞園「……」


顔を見られたくない、といわんばかりに手で顔を覆う舞園にKAZUYAは語りかけた。


K「お前が思っているより、苗木はずっと出来た男だぞ。お前の裏切りが
  明らかになった時、正直俺は苗木にどう言葉をかけたら良いかわからなかった」

舞園「……」

K「そこで俺は、苗木にお前を憎んでいるかと聞いた。たとえ殺人犯だろうがなんだろうが、
  俺は医者として、ここの校医として、生徒に頃し合いなどさせる訳にはいかないからな。
  そのために苗木の気持ちを確かめておきたかったのだ」

K「だが、その答えは先程言った通りだ。俺の目を真っ直ぐ見上げ、何の疑念も
  迷いもなく苗木は黒幕を倒すと宣言した。フ、まだ若いのになかなか見上げた奴だ」

舞園(どうして…どうしてそんなこと言えるの? どうして苗木君はそんなに強いの…?)


373: 2013/11/10(日) 00:49:04.88 ID:iCDfe/670


苗木が恐らく自分に好意を持っていることは舞園も知っている。
だが、自分は彼の好意を利用したのだ。憎まれても恨まれてもおかしくない。


舞園「どうして…どうして…苗木君」ポロポロ

K「……。苗木を呼んでくる。大人しく待っていろ」

舞園「はい…」


・・・


生徒達はずっと食堂に集まっていた。何かしようという気にならなかったからだ。
KAZUYAが食堂に姿を現わすと、一斉に視線が向く。


K「舞園が目を覚ました」

苗木「良かった…」ホッ

K「お前と話がしたいそうだ。一緒に来てくれ」

苗木「はいっ」


力強く立ち上がり、苗木はKAZUYAの後を付いていく。


374: 2013/11/10(日) 00:51:23.27 ID:iCDfe/670


― 苗木の部屋 PM6:47 ―


ベッドに横たわっていた舞園の姿は、いつもより一層細く見えた。顔も青白い。
だがそれは怪我のせいというよりも、むしろ心因性のような気がした。


舞園「…苗木、君。私…」

苗木「言わないで舞園さん!」

苗木「舞園さんが悪い訳じゃない! 全部、僕達にこんなことをさせるモノクマが悪いんだ!
    だから舞園さんは謝らなくていい! 僕は少しも怒ってなんてないから!」

舞園(今になったからこそわかる…私がどんなに酷いことをしようとしたのか)

舞園「…苗木君。ごめん、なさい…ごめんなさい…」

苗木「だから、謝らなくていいんだって! 一緒にモノクマと戦おうよ。仲間なんだから!」


375: 2013/11/10(日) 00:54:41.05 ID:iCDfe/670

舞園(どうして…私はこんなに優しい人を利用しようとしたりしたんだろう…)

舞園(どうして、私はこんなに弱くて醜いんだろう…)

舞園「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」

苗木「舞園さん…」

苗木「だから、舞園さんは【少しも悪くない】んだって! もう、それ以上自分を責めなくていいんだ!!」


舞園を必氏に慰めようとする苗木に、唐突にKAZUYAは待ったをかけた。


K「それは違うぞ、苗木!」


                    BREAK!!


苗木「何言ってるんですか、先生? 先生だって、舞園さんを責めるなってみんなに…」

K「責めるなと言ったのは、既に起こってしまったことを今更責めてもどうにもならないからだ。
  確かに一番悪いのは黒幕だろう。だが、舞園が道を踏み違えたのは舞園自身の判断だ。それを履き違えるな」


376: 2013/11/10(日) 00:58:01.70 ID:iCDfe/670

苗木「じゃあ…じゃあ先生は、舞園さんが悪いって言いたいんですか…?」


信じられないと言った顔で苗木はKAZUYAを見上げる。KAZUYAとて、この極限状態の子供達には少し
厳し過ぎると思っていた。だが、ここには法も警察もない。誰かが線引をして秩序を保たねばならないのだ。


K「そうだ。たとえどんな事情があっても許されないことをしてしまった。…苗木、お前に聞くが
  もし舞園が桑田を頃していたら、お前は氏んだ桑田の前で今と同じ言葉を言えたか?」

苗木「!! そ、それは…」

K「誰も氏ななかったのはあくまで偶然の重なった結果に過ぎん。氏ななかったから許す、
  氏んだから許さない、と言った感情論だけで片付けて良い話ではないのだ」

K「本来なら警察に連れていくのが妥当だが、ここに警察はない。罪を犯しても不問では、お前以外の
  生徒達は納得しないだろう。俺は混乱を抑えるため黒幕の存在を出して強引に舞園の罪を帳消しにした。
  だがそれはあくまでこの場での緊急措置だ。悪いことを悪くないと主張するのは違う」

K「自分がしたことを受け入れ、ケジメをつけなければならないのだ。そして舞園はその覚悟が
  出来ているのに、お前がそんな彼女を受け入れてやらなくてどうする?」

苗木「…………」


377: 2013/11/10(日) 01:00:17.72 ID:iCDfe/670

舞園「…苗木君。西城先生の言う通りです。私は、本当は悪い女なんです。弱くて、卑怯で、ズルくて…
    苗木君の優しさを利用しようとした、醜い人間…苗木君に優しくしてもらう権利なんて、ないんですよ…」

苗木「舞園さん…」


舞園は顔を背けた。苗木の顔を見ているとまた涙が出そうだったからだ。
泣いてはいけない。きっと同情されてしまう。これ以上苗木に優しくしてもらってはいけない。
ポツリと苗木が呟く。


苗木「舞園さん…どうして僕を殺さなかったの? 僕だけが被害者なら、僕が許してそれで終わりなのに」

舞園「そんなこと! 出来る訳ないじゃないですか。苗木君は凄く優しくて本当に良い人なのに…!」

K「その言い分だと桑田は『良い人』ではないように聞こえるな」

舞園「……」

苗木「そうだ。僕も少し気になってたんだ。どうして桑田君を殺そうなんて思ったの?
    確かにちょっといい加減だったりチャラチャラしてる所もあるけど、そんなに悪い人じゃ…」

舞園「悪い人、ですよ…仲良くしてた苗木君には悪いけど、私はずっと大嫌いでした」


378: 2013/11/10(日) 01:03:41.45 ID:iCDfe/670

K「あいつが軽い気持ちで歌手を目指してると言っていたのがそんなに許せなかったのか?」

舞園「先生…殺人なんて企んだ私が言っても説得力はないかもしれませんが、私だって鬼じゃないんですよ?
    現実も知らず夢を見てる人なんてたくさんいます。それくらいなら私も目をつぶりますよ」

K「違ったか。では何だ? 軟派で軽薄な所が嫌だったのか?」

舞園「もちろん、それもありますけど…一番は桑田君の才能です」

K・苗木「才能?」


思わずKAZUYAと苗木は顔を見合わせた。


舞園「私、許せなかったんです。私だって、世間的には歌が上手いとかダンスの才能が凄いって
    言ってもらえます。…でもそれは影でたくさん練習しているからです。それだけじゃない。
    前に話したと思いますけど、芸能界で生き残るというのは本当に大変なんです」

舞園「努力だけじゃどうにもならない世界なんですよ。嫌なこともたくさんあって…そして、大勢の人が
    夢破れて消えていくんです。私にとって彼らはライバルだけど、同じ戦場で戦う戦友でもあります」


379: 2013/11/10(日) 01:05:53.52 ID:iCDfe/670

舞園「そんな私にとって、練習もせずヘラヘラと適当にやって頂点に立てる桑田君が憎らしくてたまらないんです」

K・苗木「……」


余程不満があったのか、舞園の言葉は止まらない。


舞園「どうして神様はあんな人に才能をあげてしまったんでしょう? 彼の存在そのものが、
    この世の全ての頑張っている人達を侮辱していると思いませんか?」

舞園「しかも…しかもですよ? あれだけ素晴らしい才能を持っているのに本人が全くわかってない。
    それどころか、自分を有名にして希望ヶ峰にも入れてくれた野球の不満や悪口ばかり。
    野球を踏み台にしてミュージシャンになる! ですって。本当に呆れちゃいますよね…」

K「それはおかしいな」

舞園「やっぱり、先生もそう思いますよねっ?!」

K「いやそういう意味ではなく、俺が知ってる桑田と違うという意味だ。俺の知ってるあいつは、
  野球が嫌いと言いながら俺をキャッチボールに誘ってきたり、お前が氏んで自分も処刑されると
  勘違いした時はもう一度野球がしたいとワンワン泣いていたのだが…」フム?


380: 2013/11/10(日) 01:10:40.44 ID:iCDfe/670


時が止まったようだった。苗木も舞園もまばたきすら忘れて絶句する。


舞園「――え」

苗木「あ、あの桑田君が?! まさか…」

K「人間というものは窮地に陥って初めてその本性が見えるという。
  ならば、普段の桑田と俺の見た桑田。一体どちらが本当の姿なんだろうな」

舞園「嘘、嘘ですよ…そんなはずは…」


ただでさえ白かった舞園の顔が、更に血の気を失って真っ青になっていた。


K「俺が思うに、あいつは少し子供っぽいから何かに本気になったり熱くなるのは格好悪いと
  考えているのだろう。ただでさえ汗と泥に塗れる野球はあいつの好む軟派な服装に合わんし、
  本当は野球が好きでもそれを堂々と言えなかったのだろうな」

K「案外、歌手になりたいというのも本気なのかもしれんぞ? 本気で挑戦して
  失敗したら恥ずかしいから、わざと適当な発言ばかりして誤魔化しているのかもしれん」

舞園「そんな…そんな…」


381: 2013/11/10(日) 01:13:03.22 ID:iCDfe/670

K「まあ、いい加減な発言ばかりしてきたツケが来たんだろうな。俺も注意しようと思っていた。
  ただこれでわかったはずだ。人間という生き物は、いつも見てる面だけでは決してない。
  必ず別の面がある。あいつもお前も、今回の件で大切なことを学べたはずだ」

舞園「……先生。私、これから一体どうすればいいですか?」

K「騒動を起こしたことを皆に謝らなくてはいけないし、ここを出たら然るべき場所に
  行かねばならん。だがここを出るまでは今まで通り、普通に過ごせばいい」

舞園「今まで通り…私に、その権利がありますか? みんなは、受け入れてくれるでしょうか…」

K「最初はどうしてもぎこちないだろう。だが、時間が経てば必ず受け入れてもらえるはずだ」

苗木「僕も協力するよ! 先生に言われて目が覚めたんだ。もう嫌なことから目をそらしたりしない」

苗木「確かに、舞園さんは間違いを犯してしまった。だけど、その罪も含めて僕は舞園さんを支えるよ!
    思えば、僕が一番側にいたのに舞園さんの苦悩に気付けなかったのも悪いし…
    一緒に外に出て、罪を償おう。僕じゃ、頼りにならないかな?」

舞園「そんなこと、ない。苗木君…………ありがとう」ボロボロ


382: 2013/11/10(日) 01:14:47.28 ID:iCDfe/670


二人とも、犯してしまった罪を受け入れ乗り越えることを誓いあった。KAZUYAも力強く頷く。


K(どうやら治療は完了したようだな)


・・・


K「ム、そうだ。俺は保健室に用がある。…このバッグは誰の物だ?」

苗木「僕のだけど、それがどうかしたんですか?」

K「借りてもいいか? 大事な用があってな」

苗木「いいですよ。今中身を抜きますね」


苗木からバッグを借り受け、KAZUYAは早足で保健室に向かった。


K(いかん、あの後だいぶ三人で話し込んでしまった…もうこんな時間か)


時刻は既に9時を回っている。KAZUYAは珍しく焦っていた。


383: 2013/11/10(日) 01:16:23.40 ID:iCDfe/670


K(黒幕の望み通りこの監禁生活で事件は起こったが、俺が舞園を助けてしまった。
  恐らく黒幕にとって俺と俺の医療技術は本格的に邪魔になるはず)

K(直接排除に来る可能性もなくはないが、生徒に傷が付くことを考えると
  恐らくその可能性は低い。となると現在一番危険なのは保健室にある薬品類だ。
  いくら医者がいても、麻酔や手術道具がなければ手も足も出ないからな)


ただ、仮にまだ黒幕が保健室に手を出していないとしても一つ問題があった。


K(薬品の多くはアンプルに入っていて、非常にかさ張る。麻酔だけは俺が確保するが
  その他の道具類は信用出来る生徒に預けることも視野に…ん? 人の気配がするな。まさか敵か?)


KAZUYAは扉の前に立ち中の様子を伺う。どうやら何かしている訳ではなさそうだ。
警戒しながら保健室に飛び込む。中でぽつんと一人佇んでいたのは…


K「桑田…?」

桑田「あ、オッサン……」


384: 2013/11/10(日) 01:17:40.47 ID:iCDfe/670


まるでKAZUYAを待っていたかのように、保健室の中で桑田が立っていた。
俯きがちなその顔色は蒼白で、目にはいつもの生気がない。


K「…こんな所でどうしたんだ? 何かあったのか?」

桑田「……」


桑田は何も言わずにただ目を伏せる。
KAZUYAは辺りを見回した。幸いあからさまに荒らされてはいない。


K(中に入った以上焦る必要はない。さて…)チラ


とりあえず様子のおかしい桑田を椅子に座らせ茶を出し様子を見てみた。が、一向に話す気配はない。


385: 2013/11/10(日) 01:25:24.98 ID:iCDfe/670


K「……」

桑田「……」

K「すまん。俺は急いでやらなければならない作業があるんだが、構わないか?」

桑田「……」コクリ


桑田が気になりつつもKAZUYAは薬品棚の検分を始める。どうやら持ち去られてはいない。
だが中身をすり替えられたりしていないだろうか?


K(アンプルはガラスで封をされているから中身だけをすり替えることは出来ず、
  ラベルを貼り変えるしかない。そして貼り変えれば必ず痕跡が残るはず)


アンプル:注射液を入れたガラス製の細長い小瓶。無菌性を確保するため、先端までガラスで
      封をされており、細くなっている胴の部分を折って中身を取り出す。


誰かが動かした痕跡やラベルに異常がないかを、細心の注意を払ってチェックしていく。

そんなKAZUYAをぼんやり見ながら、桑田は数時間前のことを思い返していた。



        ◇     ◇     ◇



394: 2013/11/10(日) 17:12:35.13 ID:1aojXOEk0


― 食堂 PM6:55―


舞園が意識を取り戻したことで食堂のメンバーは緊張がほぐれ、各々雑談をし始める。
そこまでは良かったのだが、ある疑問が出てからその雲行きは怪しい方向へと向かい始めた。


不二咲「…それにしても、何で舞園さんは桑田君を狙ったんだろうねぇ?」

山田「確かに疑問ですな。自分よりも一回りも大きい、それも男性を狙うとは」

江ノ島「見た目はチャラいけど、一応スポーツマンなのにねー」

大和田「単に見誤っただけだろ。チャラチャラしてるから弱そうだって」

桑田「ハハ…」

不二咲「そうかなぁ。だって…」

霧切「殺人というけして失敗が許されない行為を遂行しなければならないのに、
    わざわざ男性を狙ってリスクを高める必要はない。頃すならこの場で
    最も頃しやすいか弱い存在を狙うのが道理のはず、ということね」


『か弱い』というフレーズに一同の視線は一人の人物に集中する。


395: 2013/11/10(日) 17:13:20.43 ID:1aojXOEk0


不二咲「…うん、わかってるよ。もしどうしても誰かを殺さなきゃいけないなら
     多分真っ先に狙われるのは僕…私だと思うんだ」

朝日奈「そんなことないよ! 仲良くしてる女子を狙いたくなかったんだってきっと!」

十神「仮にそうだとしても、疑問は残るな」

朝日奈「なによ、疑問って…」

十神「男子にもいるだろう。一人だけ体格が小さくて頃すのに手頃な奴が。
    そちらを狙わずわざわざリスクの跳ね上がる桑田に行った理由がない」

石丸「な、何を言うんだ。苗木君は男子の中で一番舞園君と親しくしていたではないか! …ハッ」

十神「流石の石頭も気付いたか、舞園の不自然な行動に。舞園は苗木に罪をかぶせるなんて
    回りくどい手を使うなら、最初から苗木を殺せば良かったんだ」

十神「苗木は元々警戒心のない奴だ。相手が舞園なら尚更だろう。簡単に殺せる。
    まさか、あれだけ親しくしていた自分が犯人だとは誰も思わないだろうしな」

十神「何故桑田を頃し、苗木に罪をかぶせるなどという無駄なワンクッションを置いたのか」


396: 2013/11/10(日) 17:14:12.89 ID:1aojXOEk0


おずおずと提案するように、腐川が十神に話しかける。


腐川「もしかして…舞園は苗木のことが嫌いだったんでは、ないですか…
    だから、桑田を頃してその罪をかぶせてやろうと…」

石丸「そんな、まさか…有り得ない!」

朝日奈「そうだよ! なんで苗木に罪を着せようとしたかはわからないけど、
     確かに舞園ちゃんと苗木は仲が良かったはずなんだよ! それは私にもわかる!」

腐川「じゃあ、他にどう説明するって言うのよ! あんた達がどうかばおうと、あの女が
    自分の都合で二人も地獄に落とそうとしたっていう事実は変わらないんだからね…!」


いがみ合う朝日奈と腐川を尻目に、セレスがマイペースに言葉を挟む。


セレス「わたくしはもう一つ別の可能性が浮かびました」

十神「…セレスか。少しはマシな意見が聞けそうだな。どれ、言ってみろ」

セレス「みなさん、舞園さんと苗木君の関係にばかり目が行き過ぎではないでしょうか?
     わたくしは違うアプローチ……舞園さんと桑田君の関係に着目いたしますわ」


397: 2013/11/10(日) 17:15:21.28 ID:1aojXOEk0

桑田「俺?」

セレス「ええ。…こういう言い方をするとあれかもしれませんが、舞園さんは元々桑田君のことが
     嫌いだったとすればどうでしょう? 例えば、顔を見るのも嫌なくらいだったとか」

桑田「……」

大神「セレスよ、そのような言い方は…」

セレス「例えばの話ですわ。真相は本人に直接聞かないとわかりませんもの。
     ですが、この仮定の元でなら全ての疑問が解決するのです」

セレス「舞園さんは元々桑田君が嫌いで、もし誰かを頃すなら桑田君と決めていた。ですが力で
     劣る彼女が桑田君を頃すならば、彼が完全に無防備の状態を不意打ちしなければならない」

セレス「桑田君は舞園さんに気があるようでしたし、自室に誘いこむのが一番ですがそうなると
     犯行現場が自分の部屋になってしまう。女性の力で氏体を運び出すのは大変ですし
     誰かに発見されるリスクもある。そこで苗木君と部屋を交換することを思いついた、と」

葉隠「つまり苗木っちのことは別に嫌いじゃないけど、自分が犯人だってバレねえために
    利用させてもらったってことか。どっちにしろついてねえべ、苗木っち…」


398: 2013/11/10(日) 17:16:22.51 ID:1aojXOEk0

腐川「やっぱり、とんでもない女じゃない…」

大和田「まあ、それなら一応筋は通ってるな」

桑田「ちょっと…ちょっと待ってくれよ! なんで俺はそこまで舞園に嫌われてんだ!
    俺あいつになにかした覚えなんてねえぞ。…そりゃ、多少の下心はあったけどさ…」

江ノ島「…それが原因じゃないの?」

朝日奈「まあ、イヤらしい目で見られちゃ女子としていい気はしないよね…」


女性陣の視線は冷たい。が、男性陣からも反論が入る。


山田「しかし、密閉空間に若い男女が閉じ込められているというこのシチュエーション!
    桑田怜恩殿の反応は健全な殿方としては非常に普通であり当然のことであり、
    その程度で殺意を抱かれたとあっては我々は立つ瀬がないですぞ!」

十神「そうだな。不快感はあるだろうが、通常それだけで明確な殺意にまで飛躍しないだろう」


399: 2013/11/10(日) 17:17:58.99 ID:1aojXOEk0

桑田「…じゃあまだなにかあるってのかよ」


その時、いつもは相手を嘲笑するような薄い笑みを浮かべているセレスが
珍しく神妙な顔をして核心を言い放った。


セレス「――カンに障ったのではないでしょうか」

桑田「ハ?」

セレス「あなたの存在や発言の一つ一つが」

桑田「ッテメエ! さっきから黙って聞いてりゃ調子に乗りやがって!」

大和田「おい、バカ! やめろ!」


怒りのあまり椅子を蹴って立ち上がった桑田の腕を大和田と石丸が掴んで座らせる。


石丸「桑田君、落ち着きたまえ! それにセレス君、君もだ。
    さっきから桑田君に対してあんまりな言い分ではないかね!」

セレス「あら、石丸君はどちらかと言えば舞園さん寄りかと思いましたが…」


400: 2013/11/10(日) 17:18:55.84 ID:1aojXOEk0

石丸「――何? それは一体どういうことだ?」


唐突に自分も関係者であるように言われ、石丸は眉をひそめる。


セレス「よく不満を漏らしていたではありませんか。桑田君は風紀を
     乱しがちの上、いくら注意をしても聞いてくれない、と」

石丸「そ、それは…」

セレス「それに一番は日頃の桑田君の発言ですわ。彼の発言は努力を軽視している、
     社会を舐めているに違いない! …といつも怒っていたじゃありませんか」

桑田「…それ、本当か?」


桑田は石丸の顔を振り返って見つめる。石丸は一瞬考えたがすぐさま肯定した。


石丸「ああ、本当だ。だがそれは別に隠し立てするようなことじゃない! 僕は常日頃から
    君の言動は大いに問題があると思っていたし、実際に注意したこともあるだろう!」


401: 2013/11/10(日) 17:20:16.92 ID:1aojXOEk0

桑田「…ああ、そうだったな。で、それと舞園にどういう関係があんだよ」

セレス「まだわかりませんか? わたくしもギャンブラーとして裏の世界を色々と見てきた身ですので
     知っておりますが、芸能界というのはあなたが考えているような甘い世界ではありません」

セレス「あの世界で頂点に立つ…そのために彼女は今までどれほどの努力をしてきたのでしょう。
     そんな彼女の前で、あなたは今までどんな発言をしてきましたか? 本当は野球なんて嫌い、
     練習もしたことない、野球を踏み台にしてミュージシャンになりたいなどと…」

桑田「…!!」

セレス「彼女にしてみれば、自分が今までしてきた努力を鼻で笑われたように感じたでしょうね」

桑田「ちがっ…! 俺は、別にそんなつもりで言ってたワケじゃ…」


まさしくそれは青天の霹靂だった。

桑田にしてはただその時その時に思ったことを言っただけで、彼女も彼女の努力も
馬鹿にしたつもりなどまるでない。KAZUYA曰く、悪気は毛頭ないのである。
しかし実際問題相手にはそう受け取られていたのだ。


石丸「それについては僕からも一言言いたいぞ!!」


風紀委員としての使命感に燃えながら、石丸も続いて切り込む。


402: 2013/11/10(日) 17:21:18.63 ID:1aojXOEk0

石丸「桑田君が決して僕らを馬鹿にしていた訳ではないというのは分かっている! しかし恐らく、
    君は自分が天才過ぎて他人の努力や労苦というものがあまりよく分かっていないのではないか?」

石丸「君は、成功している人間というのは結局皆才能があるからだと思っていないかね?
    例えば、僕の成績が良いのは僕が真面目で頭が良いからだと、そう思ってはいないか?」

桑田(違うのかよ…)


他の生徒達の目が気になって口には出さないが、心の中で密かに反論する。


石丸「僕は頭が良いから、授業をちゃんと聞いてあとはそこそこ勉強すれば良い成績が取れる。
    口では努力努力なんて偉そうなことを言っても、実際は大したことなんてしていない…
    君はきっと内心ではそう思っているんだろう。だから僕は数字で示そうと思う」

石丸「僕は平日は最低5時間、休日は12時間近く勉強している。無論、学校の時間は抜いてだ」

桑田「…えっ?!」


一日5時間…好きなゲームをやり続けていても目や腰が痛くなってくる時間である。


403: 2013/11/10(日) 17:23:34.27 ID:1aojXOEk0


石丸「僕は決して頭の良い人間ではない。むしろ、人より少し不器用なくらいだ。
    だから、誰よりもたくさん愚直に努力しないと天才の君達のようには結果が出せない。
    いや、天才でも何かしらの努力をしている人が多数だ!」

石丸「そういった人達にとって、君の発言が不愉快なものになっていた可能性はある」

桑田(まさか…そこまでマジでやってたなんて…え? ていうか、実はみんなそんな感じ?
    なんもやってないの、俺だけ…? じゃあ、もしかして…)

桑田「え、つかさ、みんな俺のこと…ぶっちゃけどんな風に思ってるワケ? なあ、大和田」

大和田「お、俺かよ!」


いきなり指名されて驚くが、伏し目がちになりながらも大和田はハッキリ言う。


大和田「…まあ正直に言わせてもらえば、天才だかなんだか知らんが余裕ぶっこきやがってとは思ってたな」

桑田「朝日奈」

朝日奈「え、私?! …えっと、その、確かにちょっと調子に乗ってるかなーとは思ってた…かな」


404: 2013/11/10(日) 17:25:08.64 ID:1aojXOEk0

桑田「…葉隠」


すがるように葉隠を見る桑田。


葉隠「えーっと、俺はどっちかといえば桑田っち寄りの結構いい加減なタイプだかんなー。
    だから俺に関して言えば、桑田っちの発言でどうこう思ったとかそういうのはないべ」

桑田「……」ホッ

葉隠「…ただ、その発言はみんなの前じゃマズイんじゃねえかなーって思うことはしょっちゅうあった」


葉隠の発言で少し慰められたかと思ったが、やはり発言自体はかなり問題だったと
ダメ押しをされて桑田はうなだれる。全員の顔を見渡したが、概ね同じ意見のようだった。


405: 2013/11/10(日) 17:26:25.12 ID:1aojXOEk0


―あれ?

―あれれれれ~?

―おかしいぞ。なんかおかしい。

―俺はこんな状況でもマイペースでいられる桑田カッケーって思われてると思ってたし、
 明るく楽しいムードメーカー的存在のつもりだったんだけど…

―むしろ…むしろ、うざがられてた感じ?

―空気読めねーなって、ずっと思われてた???


―人気者どころか…実際は、超絶嫌われてたり?????




桑田(……………………アポ)


ぐにゃ~と視界が歪み、厳しい現実を知って桑田は真っ白になる。
だが氏体に鞭打つがごとく、更に追い打ちがかかった。


406: 2013/11/10(日) 17:28:17.32 ID:1aojXOEk0


十神「くだらん。俺の頭脳を使うまでもなかったな。要は男子限定で社交性の高い苗木・山田、優等生の石丸、
    勝てそうにない大和田を抜いた時点でもう俺・葉隠・桑田しか残らん。この三人なら普通に桑田だろう」

桑田(ちょっと待て…俺が嫌われ者だってのは悔しいけど認めるよ。でもさ、なんでこいつは選ばれないワケ?
    俺なんかよりよっぽど空気読めなくて協調性もなくていつも偉そうで嫌なヤツじゃねえか!!)

十神「…何か言いたそうだな」


気持ちが顔に出ていたのかあるいは普通に睨んでいたのか、十神と目が合う。


十神「大方、何故俺は殺害対象にならなかったのかとでも思っているんだろう。
    フン、愚民に教えてやる。俺は存在が上過ぎてお前達には好かれていないようだが…」

江ノ島(あ、嫌われてる自覚はあるんだ)

十神「無駄なことはしないからな。普段は目につかない男と、近くでやたらさえずる目障りな男。結果は明らかだ」


ガクッ、と桑田は肩を落としその勢いで机に突っ伏す。
人間的に問題のある十神以下の烙印を押されたのが何よりこたえた。


407: 2013/11/10(日) 17:30:01.65 ID:1aojXOEk0


桑田(もう俺…生きていけない…)


そんな桑田に、いつもは他人に我関せずな霧切が珍しく声をかけた。


霧切「良かったじゃない」

桑田(もう、ほっといてくれよ…これ以上何か言われたら俺は…)

霧切「自分の欠点というのは自分一人ではなかなか気付けないもの――
    これはみんなからあなたへの善意よ。これを活かすかどうかはあなた次第だわ」

桑田「……」

石丸「そうだ! もし君がここで何も気付かず外に出れたとしても、知らず知らずのうちに
    誰かの恨みを買って刺されていたかもしれない。それを未然に防げたのだぞ?」

大神「人は誰しも欠点がある。それに気付けるか、治せるかどうかが大切なのだ。
    過去のことは仕方があるまい。これから共に精進していけば良い」


408: 2013/11/10(日) 17:36:28.99 ID:1aojXOEk0

不二咲「私、桑田君のこと嫌いじゃないよ? みんなだってきっとそうだよ」

朝日奈「うん、あんたケッコーおもしろいと思うし! 元気だしなって!」

大和田「いつもバカみたいに明るいオメエがシケたツラしてるとなんかこっちまで調子悪くなんだよ」

桑田「……」

桑田「わりぃ。俺…なんか、頭いっぱいになってきちまった…少し、やすむわ」


フラフラと桑田は立ち上がりそのまま食堂を後にする。
適当に歩いていたはずなのに、気が付けばいつの間にか保健室の前に来ていた。


桑田(…オッサン、いるかな? まだ舞園の所かもしれないけど)


予想通り、薬品の匂い漂う保健室には誰もいなかった。
しかしなんとはなしにKAZUYAと話がしたくて、桑田はずっと中で待っていたのだった。



        ◇     ◇     ◇



423: 2013/11/10(日) 23:16:38.69 ID:9EB5Q7R60

>>421
アンプルは工場で作られていて人為的に中身を入れ替えるのは不可能です
で、アンプル自体をすり替えるのは可能でドクターK原作でも過去にそういった事件はあるのですが、
今回に限っては全てのアンプルにラベルが貼ってあり、ラベルを剥がして別のラベルを貼るか、
あるいは上からラベルを貼らないと一目瞭然という設定にしてます。

…普通薬品を箱で買うとラベルが貼ってないことが多いんですけどね。まあ御都合主義で


再開


424: 2013/11/10(日) 23:17:47.72 ID:9EB5Q7R60


KAZUYAは持ち前の超観察眼と超記憶力で針の穴ほども異常がないか隈なく点検していた。


K(…なんとか無事のようだ。黒幕め、一体何を考えている? わざとこちらに
  希望を残し、後々それを踏みにじっていこうとでも考えているのか?)

K(だが、今は考えていても仕方がない。…あとはカバンに分けるだけだ)


現在手元にはKAZUYAの医療カバン、保健室に備え付けの非常用リュック、そして苗木のバッグがある。
最重要な薬品や道具類はKAZUYAのカバンに入れ、残りを振り分けていく。


K(ちょうど苗木のバッグを借りたから、これは苗木に預ければいいか。
  さて、もう一つはどうする? 石丸あたりにでも頼むか?)


グス……グス……


K「!」


425: 2013/11/10(日) 23:18:36.94 ID:9EB5Q7R60


不意にすすり泣きが聞こえてKAZUYAは手を止めた。ゆっくりと振り返る。


桑田「俺って…俺ってホント、どうしようもないアホだよな…」

K「……」

桑田「カッコよくなりたかっただけなのに…みんなに見てもらいたかっただけなのに…
    周りの気持ちとか全然きづいてなくて…イヤな思いさせてて…」

桑田「ダッセェ…マジでダセェよ、俺…」

K「……」


KAZUYAは全てを察した。


K「フ…なんだ。大した悩みでなくて安心したぞ」

桑田「ハァッ?! ふっざけんなっ?! 俺は真剣に悩んでんだぞっ!!」


426: 2013/11/10(日) 23:19:44.45 ID:9EB5Q7R60

K「何を悩むことがある。自分の悪い所に気が付けて良かったではないか。
  あとはみんなに今までの詫びを入れ、次から気を付ければいい。違うか?」

桑田「……!」

桑田「で、でも…いまさらどんな顔して言えばいいんだよ…それにもし許してくれなかったら…」

K「許してくれるさ。友達だろう?」

桑田「…でも、向こうはそう思ってないかもしれないし」

K「友達だ。友達だからあえて汚れ役になって言いづらいこともはっきり言ってくれたのだ。
  こんな状況に巻き込まれたのは不運だったが、良い友達を持てて良かったじゃないか」

桑田「…そうかな」


まだ煮え切らない桑田に、KAZUYAは力強く語りかける。


427: 2013/11/10(日) 23:20:47.20 ID:9EB5Q7R60

K「いいか、桑田。世の中にはな、謝って済む問題と済まない問題がある。
  それこそ舞園は取り返しのつかないことをしてしまった。彼女はこれから生涯
  消えることのない罪悪感を持ち続けるだろう。だがそれが罪であり償いでもある」

K「それに比べたらなんだ。お前の悩みなんて、ちっぽけなものだ。
   謝っても許してもらえないなら、そんなものはもはや友人ではない」

K「俺の前で宣言したのは嘘だったのか? これからは真面目に生きるんだろう?
  だったら、生まれ変わったつもりで行け。新しいお前を俺に見せてみろ!」

桑田「でも…でもさ、やっぱこええんだよ。頭ではわかってるけどさ、
    あと一歩がなんか踏み出せないんだよ。カッコワリイかもしれないけど」

K「フ、どうやらお前にも俺の治療が必要なようだな。なら手助けしてやろう」チャキッ!

桑田「え…? ちょ、そんな物持ってなにすんだよ?! 危ないって! うわ」


・・・



428: 2013/11/10(日) 23:21:44.94 ID:9EB5Q7R60


K「気分はどうだ?」

桑田「うーん、なんて言やいいんだか。…まあ、スッキリしたかな」

K「もう、みんなにちゃんと言えるな?」

桑田「おう! 俺ガンバるぜ! ありがとよ、オッサ…せんせー!」

K「フフ(こちらも治療完了、だな)」

桑田「じゃあもうこんな時間だし、俺もそろそろ…」

K「…そうだ。待て。お前にこれを持っていてもらいたい」


KAZUYAが桑田に差し出したのは、薬品や道具でパンパンのリュックサックだった。


桑田「リュック? なにが入ってんだ?」


429: 2013/11/10(日) 23:23:01.00 ID:9EB5Q7R60

K「黒幕にとって俺の医療技術は邪魔だ。だから薬品や道具類を保健室に放置していれば
  狙われる可能性がある。全て俺が管理出来ればいいんだが、あいにくと限界があるんでな。
  信頼出来る生徒に一部預けたいと考えていた」

桑田「…そんな大事なモン、俺なんかに預けちまっていいのかよ?」

K「今のお前なら大丈夫だ。いや、俺はむしろお前に預けたい」

桑田「……」


KAZUYAは強い瞳で桑田の顔をジッと見つめる。流石の桑田にもわかった。
これは信頼の証なのだと。自分はこの世界一強い男に認めてもらったのだという重みを。


桑田「…うっし! わかった。ぜってー俺が守るから任せてくれよな!」


先程までの重苦しい表情から一転、桑田は憑き物が落ちたかのように
晴ればれとした笑顔を見せてKAZUYAの信頼に応える。


K「頼んだぞ、桑田!」


430: 2013/11/10(日) 23:24:39.16 ID:9EB5Q7R60


― 苗木の部屋 PM10:02 ―


KAZUYAは再び苗木と舞園の元へと戻って来た。


K「…という訳だ。このバッグの中身を、預かってくれないか?」

苗木「僕で本当にいいんですか? 大切なモノなのに」

舞園「苗木君なら大丈夫ですよ。むしろ、苗木君程信頼出来る人はいません」

K「まあ、そういうことだ。頼まれてくれるな?」

苗木「…わかりました。絶対守ってみせます!」

K「さて、もう夜時間だ。お前も部屋に戻れ」

苗木「はい。舞園さん、明日も来るからね。二人とも、おやすみなさい!」


431: 2013/11/10(日) 23:27:01.25 ID:9EB5Q7R60


苗木はバッグを大事そうに抱え、部屋を去っていった。
そしてKAZUYAは舞園と二人きりになり、あることに気が付いてしまう。


K(いかん、俺としたことが。うっかりしていたな…)


命に別条はないと言っても、細菌感染などで容態が急変しないとも限らない。
病院にはナースコールがあるがここにはそういったものがないのだから、
誰かが一晩中側について様子を見ていなければならないだろう。


K(俺はここに残っても構わないが、やはり若い娘と密室に二人っきりは不味い。
  こんなことなら先程食堂に行った時朝日奈達に頼んでおくべきだった…)


既に時刻は夜時間となっている。今更頼むのは気が引けるが止むを得まい、
とKAZUYAが外に出ようとした時だった。


舞園「西城先生、どこへ行かれるんですか?」


432: 2013/11/10(日) 23:29:27.67 ID:9EB5Q7R60

K「お前はまだ一人で動けないし、急に体調が悪くなった時を考えると誰かがここにいた方が良い。
  だが男の俺が残る訳にはいかんだろう。こんな時間になってしまったが、誰か女生徒に頼んでくる」

舞園「…別にいいですよ」

K「何がだ?」

舞園「西城先生ならここにいてもいいです」


KAZUYAはギョッとした。天下のアイドルが何を言っているのだろう。


K「だ、だが…男が同じ部屋で寝るのは落ち着かないだろう? 怖くはないのか?」

舞園「西城先生は絶対に変なことなんてしないし、そもそもそんな目で私を見たりしません」

K「何故断言できる。俺も男だ。間違いがないとは…」

舞園「わかりますよ。だって私――」


そして舞園は微かに微笑んだ。
アイドルとしていつも見せていた作り笑顔ではない、舞園さやかとしての笑顔だった。


舞園「エスパーですから」



433: 2013/11/10(日) 23:31:52.69 ID:9EB5Q7R60


― コロシアイ学園生活6日目 AM7:52  寄宿舎廊下 ―


苗木「ふぁ~あ、昨日は色々あったからなんか疲れてるな」

桑田「うーっす! 苗木、オハヨーさん」

苗木「あ、桑田くんおは…って桑田君?! どうしたのその格好?!」


まず最初に、トレードマークの髭がなくなっていた。
次に、ボウズ…ではないが、髪が元の半分程の長さに切り揃えられていた。
服装も相変わらず派手ではあるが、どことなく大人しめになったような。


苗木(あーわかった。ピアスとかアクセサリー系が減ったんだ。ゼロではないけど)


434: 2013/11/10(日) 23:33:00.02 ID:9EB5Q7R60

桑田「せんせーに髪切ってもらった」

苗木「ど、どうしたの急に? 何かあったの?」

桑田「聞け、苗木! 俺は生まれ変わったんだ。ネオ桑田アルティメット怜恩に!」

苗木「ネオ桑田アル…えっとなに?」

桑田「ネオ桑田アルティメット怜恩! カッケーだろ? …そのさ、今まで
    色々無神経なことばっか言って悪かったよ。これからは気をつけっからさ」

苗木「……え?」


唐突過ぎる展開に苗木はついていけない。


苗木(まさか昨日の話聞いてた、とか?)

桑田「だーかーら、俺は今までの俺を反省したんだよ! ま、これからもよろしく頼むな」


435: 2013/11/10(日) 23:34:52.76 ID:9EB5Q7R60

苗木「え、えっと…うん。こちらこそよろしく!」

桑田「ちなみにどうよ今の俺? 名前もデビルカッケーだろ?」

苗木(反省してもこのキャラは変わらないんだね)ハハ…

苗木「うん、凄くいいよ! 前より全然格好良いと思う! 爽やかなスポーツマンぽくなったよ」

桑田「え? マジでマジで? 今の俺、マキシマムカッケー??」

苗木「うん、マキシマムカッケー! だよ!」

桑田「マジか…他の奴らもみーんな同じこと言うし石丸に至っては感動して泣き出すし。
    …じゃあもうこのキャラでずっと行っちゃおうかなぁ」


そんな呟きが聞こえる。だが、苗木は本心から今の桑田を格好良いと思ったのだ。


苗木(他のヤツにも謝ってくるから、と桑田君は行ってしまった。昨日何があったのかわからないけど、
    桑田君は桑田君できっとたくさん悩んだり考えたりしたんだろうなぁ、と僕は思った)


436: 2013/11/10(日) 23:38:04.26 ID:9EB5Q7R60


気付いたらすぐ横にKAZUYAが立って微かに笑っている。


K「あいつもこれで大人になったな」

苗木「あ、KAZUYA先生。おはようございます。先生が桑田君に何か言ったんですか?」

K「いや、俺は何も。ただ背中を押してやっただけだ」

K「変わったのはあいつ自身の力さ」


まだコロシアイ学園生活は幕を開けたばかり。
これからどんなことが起こるかまだわからないが、生徒達自身の力で解決できるといい。
いや、きっと彼らなら出来るはずだとKAZUYAは強く強く思った。


だがそれを嘲笑うかのごとく、黒幕が次なる絶望を用意していたのをKAZUYAは知らない――





  Chapter.1 イキキル 非日常編


          改め


  Chapter.1 タスケル 医療編  ― 完 ―



437: 2013/11/10(日) 23:40:20.17 ID:9EB5Q7R60



     【15人】

        ↓ カタッ

     【14人】


     to be continue...



441: 2013/11/10(日) 23:45:49.47 ID:9EB5Q7R60

それでは本日はここまで
無事Chapter1終了出来た。良かった!

答え合わせとか細かいデータはまた後日投下します


とりあえずEDを脳内でお楽しみください。それではまた


キミノノゾムモノハナニ? ミミナリ ウソミタイナハナシ
ドウヤラ ボクノセカイハバグッテシマイマシタ ~♪

サエギルボンノウ ソイツガイウニハ トウカコウカンダトイウケレド ~♪



457: 2013/11/12(火) 21:58:06.24 ID:620+gmCK0

スレを見て珍しくたくさんレスがついてるなぁと思って読んでみたら…


( Д)  ゜゜


紛らわしい真似して申し訳ありません。>>437のカウントは氏者ではありません!
今のところは>>451さんの指摘通り患者数であってます。
今後氏人が出たら単純に五体満足じゃない人の数になるやもしれません…


えー、現状報告ですがChapter1で書き溜め完全に付きて一から書きためているので
次の投下は恐らく週末あたりになると思います。


とりあえず今日は作っておいたデータを投下


458: 2013/11/12(火) 22:00:09.25 ID:620+gmCK0


― Chapter Result ―


【物語編】

・図書室で学園廃校についての書類を見つけた。KAZUYAは信憑性が高いと考えている。
・外の世界の様子を懸念。警察がまともに機能していない可能性を考えている。
・物理室の装置と生徒の頭部にある火傷痕が気になっている。
・生徒達との記憶の違いが気になる。自分の記憶が正しいとほぼ断定。
・KAZUYAは電子生徒手帳がないため更衣室やプールに入れない。
・保健室から薬や道具を確保し、最重要な物以外は桑田と苗木に分散して預けた。


【生徒編】

・苗木から生徒達の詳しい情報及び人間関係の情報を得た。
・生徒達のKAZUYAに対する警戒が解けた(江ノ島除く)。
・江ノ島が少し気になっている。
・桑田が改心した。


【その他】

・『桑田 怜恩』が仲間になった!
・『苗木  誠』が仲間になった!
・『舞園 さやか』が仲間になった!



459: 2013/11/12(火) 22:17:18.79 ID:620+gmCK0

《仲間システムについて》

一定以上の親密度と特殊イベント発生により生徒が仲間になります。
仲間になるとどういうことが起きるかというと、生徒が自分からKAZUYAに会いに来たり
イベントを発生させるため、貴重な自由行動を消費しなくても勝手に親密度が上がります。

またKAZUYAの頼みを積極的に引き受けてくれたり、生徒のスキルが事件発生時に
役に立つこともあります。特定のスキルがないと氏亡する生徒もいるかもしれません…。

より多くの生徒を仲間にすることがグッドエンドへの鍵となります。


・現在の親密度(名前は親密度の高い順だがイマイチ組はみんな同じ数値なので意味ない)

【かなり良い】桑田

【結構良い】苗木、舞園

【そこそこ良い】石丸、霧切

【普通】朝日奈、大神、不二咲

【イマイチ】大和田、山田、葉隠、セレス、十神、腐川

【全然】江ノ島


しかし計算してみて驚いたが、主人公である苗木を差し置いてまさか桑田がトップに立つとは
一体誰が予想出来たであろうか…次点の苗木に10ポイント以上差をつけてるし


460: 2013/11/12(火) 22:25:29.52 ID:620+gmCK0

そして約束通りChapter1の解答編を



― 磨毛保則の解説コーナー(Chapter1答え合わせ) ―


モノクマ「まさかこいつと組む羽目になるとは…」

磨毛(まもう)「まあそう言うなよ、モノクマ君。仲良くやろうじゃないか。ハハッ」


磨毛保則:KAZUYAの帝都大時代の同期。現在は帝都大で講師をしている。機械の天才だが変人で有名。変O。


モノクマ「僕の中の人的にお前の存在はセクハラなんだよ! パンツだけでもいいから履いてよ頼むから…」

磨毛「しょうがないなァ」ズボン履き履き


461: 2013/11/12(火) 22:26:59.92 ID:620+gmCK0

磨毛「さてさて…とりあえず諸君、Chapter1クリアおめでとう。実に完璧なプレイじゃないか。
    こちらも見ていて安心出来たよ。では、最初にまずクリア要件を教えようか」

磨毛「一章は今後の流れや難易度が決まる最も重要なパートだった故に、かなり甘めの設定だ。具体的には
    ①DVD前後に一回ずつ舞園君と会って話すこと、②桑田君と2回以上会うことが条件だね」

モノクマ「もし舞園さんと会わなかった場合…実は事件は起こりません! KAZUYA先生が桑田君を捕まえたのが
       工具を取りに行く所になっていました。ただその場合、舞園さんが桑田君に襲われたと言い出して
       霧切さん達が論破。舞園さんは氏にかけた訳でもないから周りの同情も得られず針のムシロとなり…」

モノクマ「みんなからハブられちゃう! うぷぷぷぷ、絶望だね! 当然しばらく仲間にもならないよ。
       一方桑田君は犯人扱いされたことに憤慨して孤立。もうギッスギスだね。親密度も上がりにくくなるし」

モノクマ「みんなから疑われた桑田君を信じるかどうかでコンマを使う予定だったから、桑田君を庇うが出れば
       ワンチャンあるかもしれないけど…信じないが出たらアウトだね。もう仲間に出来なくなってました!」

磨毛「基本的にダンガンSSはフラグを折って事件回避をしていくのがほとんどだけど、このSSに限っては
    事件は起こった方が良い。何故なら手術を成功させることで生徒全員の親密度に『手術ボーナス』が
    加算されるからさ。特に事件関係者はボーナス二倍だから、これを狙わない手はないよなァ」ニタァ


462: 2013/11/12(火) 22:29:54.78 ID:620+gmCK0

磨毛「事件が起こると生徒の仲間化に必要な重要イベントも一緒に起きやすい。事件前後の立ち居振る舞いや、
    生徒達との触れ合い、事件終了後に生徒達の抱いている問題をKAZUYA君が無事解決出来るかが大切なんだよ」

モノクマ「今回で言えば事件が起こらないと桑田君の改心イベントが入らなかったしね。これは大きいよ。
      ヘタしたら仲間にならない可能性もあったし、このSSでトップクラスに重要な分岐だったね」

磨毛「ちなみに事件は起こったが桑田君と交流していない場合、これはスレの上の方で出ていたように、桑田君が
    口封じのためにKAZUYA君を襲って返り討ちに遭っていたよ。そのため肋骨を3本も折る重傷を負い、
    怪我人なので改心イベントも起きず、KAZUYA君との関係は冷えきるしふんだり蹴ったりだな」

磨毛「重要なフラグは以上かね。あと細かい所は以下の通りさ」

・桑田と会う回数で舞園の怪我の度合いが変わる(一度も会わないと昏睡状態)。三回会ったのでかなり軽傷になった。
・苗木に二回以上会っているので、舞園の説得が上手く行き早期の仲間化。
・実は苗木は一回も会わなくても舞園を助ければ自動的に仲間になる。

磨毛「どうだい? 今後の攻略に役に立ちそうかい? Chapter1で三人も仲間が出来たから、油断さえしなければ
    次も楽にクリア出来ると思うけどね。…それでは僕はそろそろお暇させてもらおうか。諸君らの健闘を祈るよ」

モノクマ「ヒントが欲しければ気軽に言うといいよ。前髪の長い人も待機してるんで。じゃあね!」


481: 2013/11/15(金) 23:59:52.62 ID:l+2KPsu/0


― Chapter1 番外編 ―


苗木が舞園の罪を認め受け入れた後、三人は少し話し込んでいた。
KAZUYAは苗木、舞園と話をしながらカルテに加筆をしている。


苗木「先生、さっきからずっと何を書いてるんですか?」

K「ああ、舞園のカルテだ。職業病でな、誰かを診察したら必ず書いている」

苗木「へぇーどれどれ。…なんか難しい外国語や専門用語が並んでて全然読めないや」

K「医療用語にはドイツ語が多いからな。仕方あるまい」サラサラサラ…ガリ!

K「…む。インクが切れてしまった。すまんが、貸してくれないか」

苗木「あ、はいどうぞ。別に返さなくてもいいですよ」

K「…このペン、なかなか良い物に見えるが」

苗木「希望ヶ峰に入学が決まった時、父が記念に買ってくれたペンなんです」

K「そんな大切な物はもらえん。すぐに返す」

苗木「いえ、いいんです。物なんてまた買えばいいんだから! むしろ先生には
    散々お世話になってるし、もらって下さい。ええっと、舞園さん助かった記念てことで」


482: 2013/11/16(土) 00:02:16.08 ID:SSjMpgHb0

K「だが、やはりただでもらう訳には…そうだな、ではこうしようか。
  脱出したら俺がお前に新しいペンを記念にプレゼントする。約束だ」

苗木「え、本当ですか? やった!」


K(…しかしこのペン、新品の割には使い古されているように見えるが俺の気のせいだろうか?)


思い出アイテム【苗木のペン】を手に入れた。KAZUYAの幸運値が上がった。


・・・


その少し後、保健室にて。


桑田「ちょ、髪切るのは構わないけどボウズはやだかんな」

K「…お前本当に反省してるのか?」

桑田「してるしてる! チョーしてるって!」

K「全く…」チョキチョキ

桑田「へへっ」


先程までの涙はどこへやら。今までの自分を捨てると決まってからの
桑田はあっという間に気分を切り替えまたいつもどおりの顔になっていた。


483: 2013/11/16(土) 00:04:04.95 ID:SSjMpgHb0


K(だが、不思議とどこか憎めん。花形のスポーツ選手というものは、
  やはりスター性というものを持っているのかもしれんな)


髪を切り、髭も剃り、桑田はすっきりしたようである。
そしてそんな桑田に薬を預け、一緒に寄宿舎へ向かい別れ際の事だった。


桑田「あ、そうだ。大役任せてくれたお礼にせんせーにこれあげるわ」

K「これは、ピアスか」

桑田「そ、甲子園優勝の時もらったやつ」

K「大事な物じゃないか」

桑田「いいんだよ。だってほら…やっぱせんせーが俺の命の恩人なワケだし」

K「別に気を遣わなくてもいいんだぞ? 俺は医者として当たり前のことをしただけだ」

桑田「そーゆーワケじゃないって。ほら、よく漫画とかドラマであるじゃん。
    自分の大切な物を渡しておくと、ピンチの時に虫の知らせがして~ってやつ」

K「ああ、成程…」


484: 2013/11/16(土) 00:05:48.03 ID:SSjMpgHb0

桑田「片方渡しとくから、俺がピンチになったらまた助けに来てくれよな!」

K「わかったわかった。そういうことなら遠慮しないでもらうぞ」


思い出アイテム【桑田のピアス】を手に入れた。KAZUYAの反射神経が上がった。


・・・


深夜、舞園は一人天井を黙って見ていた。


舞園(眠れない…今日も昨日も、色々なことがありすぎたから)


チラリとKAZUYAの方を見る。椅子に座ったまま仮眠を取っているようだった。


舞園(苗木君も西城先生も、凄く良くしてくれる。…私は犯罪者なのに)

舞園(こんな状況なのに、あれだけのことをしでかしたのに
    まだアイドルのことを考えていたりする私は、最低ですよね…)

K「眠れないのか?」

舞園「え?! あ…起きてたんですか?」


485: 2013/11/16(土) 00:08:25.42 ID:SSjMpgHb0

K「いや、仮眠を取っていた。たった今起きたんだ」

舞園「そうですか」

K「……」

舞園「……」

舞園「あの、先生…一つお願いがあるんですけど、よろしいでしょうか」

K「何だ?」

舞園「明日、私の部屋に行ってくれませんか? 初めてここに来た日に、苗木君が
    モノモノマシーンで当てて私にくれたマイクが机の上にあるはずです。それを…」

K「わかった。取ってこよう」

舞園「いえ、捨てて下さい」

K「……いいんだな?」

舞園「もう、私には必要のないものですから」


そういうと舞園は向こうを向いてしまった。彼女も色々苦悩しているのだろう。
自分で考えて、決意をしたのならその意志を優先してやらねばならない。

――しかし、何故か俺はそれを捨てることが出来なかった。


思い出アイテム【舞園のマイク】を手に入れた。KAZUYAの魅力が上がった。


486: 2013/11/16(土) 00:20:02.69 ID:SSjMpgHb0

モノクマ「あ、そうそう>>462で一つフラグ書き忘れてたわー」テヘペロ


・最初の自由行動で桑田を選んだので、次の日の朝食会で桑田が奇跡の
 早起きをしてKAZUYAの隣に座り、会話イベントが入る。


モノクマ「Chapter2で誰と話せばいいかで悩んでるみたいだね。聞かれてないのに
      ヒント言うのはあれかもしれないけどちょこっとだけヒントね」

モノクマ「このSSは時間の流れがあるから、タイミングが結構重要なんだよね。
      舞園さんの事件も、平常時とDVD後の変化を見たから気付いた訳でしょ?」

モノクマ「そもそもさ…どんだけ親密度高くたって仲間になってないってことは結局
      心を開いてないってことだからー! 絶望した? 親密度の高低に関わらず
      スポット当たってるっぽい生徒にはどんどん話しかけた方が良いよ」

モノクマ「ま、こんな所かな。本編再開は多分明日。しかもね、Chapter1であるフラグが
      立ったから一つイベントが追加されるんだよ。グッドイベント…だといいねぇ?
      それじゃあバイナラ~」


487: 2013/11/16(土) 15:17:20.08 ID:P2O/oUp30

再開。Chapter.2からいよいよ部屋のレイアウトが原作ゲームと違うとか
トンデモ医療が爆発したりとかキャラの過去捏造とか色々出るが、気にしてはいけない

488: 2013/11/16(土) 15:19:25.53 ID:P2O/oUp30


Chapter.2 週刊少年マガジンで連載していた (非)日常編



食堂には舞園を除く15名が集まっていた。石丸は桑田の件でまだ泣いている。


石丸「うっうっ、これより朝食会を…始めたい所だが! 僕は今! 本当に感動している!!」ブワワッ

石丸「桑田君、君が強い男で本当に良かった! 僕は正直心配していたんだ。被害者にも関わらず、
    昨日は半分糾弾会のようなことになってしまって…もしショックで引き込もってしまったら
    僕が責任を持って毎日説得に行こうと思っていた!」ウッウッ

苗木(そんなことがあったんだ…)


なんとなく状況を把握した苗木。


大和田「いや、絶対逆効果だろそれ…」

腐川「キング・オブ・KYだものね」

石丸「む、KYとは何かね?」ダバダバ

腐川「あ、あんたKYの意味もわからないの? そんなに最近の言葉でもないのに…」


489: 2013/11/16(土) 15:20:43.46 ID:P2O/oUp30

石丸「ウーム…もしや僕の名前、清多夏の頭文字のごとがな?」ダバダバ

腐川「もうそれでいいわよ…今度から石丸KY多夏って呼ぶから!」

朝日奈「ちょっとやめなよ! 意味もわかってないのに…」

十神「何でもいいからさっさと始めろ! 貴様の体液まみれの顔を見てると食欲が失せる」

苗木「えっと石丸君、ほらチリ紙」つチリ紙

石丸「ありがどう、なえぎぐん」ズビズバー

石丸「…えー、では改めてこれより第五回朝食会を開始する! 昨日は色々あって
    みんな落ち着かなかっただろうが、桑田君のおかげで以前より結束も強まった。
    今日から気持ちを新たにまた頑張っていこう! それではいただきます!」

一同「いただきまーす」

モノクマ「いただきまーす」

一同「って、ええっ?!」

いつのまにか、空いている席にちゃっかりモノクマが座っていた。


490: 2013/11/16(土) 15:21:52.10 ID:P2O/oUp30

K「モノクマ…!」

苗木「何しに来たんだ、モノクマ!」

モノクマ「ほえ? 何でそんな怖い顔してるの? 僕はこの学園の学園長なんだから、
      生徒達と親睦を深めにきただけじゃないか。何か問題ある?」

苗木「問題大アリだ! 僕らはお前と朝食なんて食べたくない!」

K「落ち着け、苗木」

モノクマ「ふ~ん、まあいいけど。せっかく今日は君達に良いニュースを
      持ってきてあげたのになぁ。じゃあ、お呼びでないみたいだし帰るか」

霧切「待って。良いニュースって何かしら?」

モノクマ「聞きたい? 聞きたい?」

十神「焦らさないでさっさと言え」

腐川「ど、どうせろくな話じゃないんでしょうけど…」

モノクマ「ツレないなぁ。今回は本当に良いニュースだよ」


491: 2013/11/16(土) 15:22:42.47 ID:P2O/oUp30

モノクマ「なんと! 今まで封鎖されていた大浴場と倉庫が解禁されたのです!
      やったね朝日奈さん、倉庫に水着があるからプールに入れるよ!」

朝日奈「ほんとっ?! なんだ、あんたもたまには良いことするじゃん!」

山田「久しぶりにのんびりお風呂に入れますねぇ」


喜ぶ朝日奈達を尻目にKAZUYAはモノクマを睨みつける。


K「何が狙いだ?」

大神「どうなされた、西城殿?」

K「俺達を喜ばすために開放した訳じゃなかろう?」

モノクマ「そんな、僕はただご褒美のつもりだったのに~」

桑田「あん? なんのごほーびだよ。俺の改心記念か?」

モノクマ「違うよ! そんなくだらないもののためな訳ないでしょ!!」

桑田「くだらねぇってなんだよくだらねぇって!」

不二咲「まあまあ、桑田君。落ち着いてぇ」


492: 2013/11/16(土) 15:25:57.38 ID:P2O/oUp30

モノクマ「これは舞園さんに対するご褒美さ」

苗木「なんだって…?」

モノクマ「いやぁ、ゆとりの上度胸もない君達と違って彼女は見事だったよね!」

モノクマ「ただ桑田君をどこかに呼び出して頃すだけでも十分だったのに、一番親しかった
      苗木君を利用しての部屋の交換トリック! 僕はもうゾクゾクしちゃったよ。
      流石超高校級のアイドルともなると肝の据わり方が違うね!」

苗木「お前が舞園さんをそこまで追い詰めたくせに…! それ以上彼女のことを言うな!」

大神「苗木、よせ!」

K「気持ちはわかるが、駄目だ」


今にも飛び掛かりそうな苗木を大神が押さえKAZUYAが止める。


モノクマ「僕のせい? それは違うよ! オマエラが外への未練を断ち切れずここから出たいとか
      言うからでしょ。いいかい? オマエラは世界の誇る才能であり財産としてずーっと
      ここに保存されるんだよ。これほど名誉なことってあるかい?」

苗木「ムリヤリ監禁しておいて何が名誉だ!」


493: 2013/11/16(土) 15:27:56.76 ID:P2O/oUp30

モノクマ「ふぅん。…ここで生活できるってとても幸せなことだと思うんだけどなぁ」

K(随分と意味深なことを言うな。一体何を考えている?)

モノクマ「とにかく、飴と鞭だよ。僕は今まで動機という鞭しか用意してなかったからね。
      事件を起こせば卒業出来る上にご褒美までもらえちゃう! 最高でしょ?」

モノクマ「まあまだ具体的なご褒美は決めてないけど、悪いようにはしないよ。
      何せ、僕はクマ界一約束にはうるさい男なんだ」

セレス「あらモノクマさん、あなた男性でしたの?」

モノクマ「…僕はモノクマだよ。でも男性陣から女の子の方がいいってリクエストがあれば女の子でもいいよ!」

葉隠「モノクマが女でもちっとも嬉しくないべ…」

モノクマ「ま、そういうことだから! よろしくね~」


言うだけ言って、嵐のようにモノクマは去って行った。


苗木「モノクマ…!」

一同「……」


494: 2013/11/16(土) 15:30:42.11 ID:P2O/oUp30


モノクマがいなくなった後も、一同はどこか重い空気のまま黙って朝食を食べていた。


石丸「……」

石丸(いかん。折角和やかになっていたのに、モノクマのせいですっかり元通りだ。
    ここは風紀委員たる僕が音頭をとって何かすべきだろう…ムム、何が良いか。
    …そうだな。全員でやれて気分転換になることがいい。ならばスポーツがいいな)

石丸「ドッジボールだっ!!」

K「」ビクッ!

山田「ファッ?!」

江ノ島「い、いきなりなにっ?! あんたとうとう頭おかしくなったの?」

石丸「断じて違う! この悪い空気を吹き飛ばすために、みんなで
    ドッジボール大会をしようとたった今思いついたのだ!」

朝日奈「…ふーん、いいね! あんたにしてはいいこと考えるじゃん」

大和田「まあ、そうだな。ウダウダしててもしょうがねえしな!」

桑田「よっしゃあ、俺の出番だぜ!」


495: 2013/11/16(土) 15:32:27.59 ID:P2O/oUp30

苗木「く、桑田君が相手じゃ勝てないよ…」ハハ

不二咲「運動は苦手だけど、僕も頑張ってみる!」

K「すまん、石丸。俺は舞園についててやらんと…」

石丸「残念ですが、それは仕方ありませんね。舞園君が元気になったらまたみんなでやりましょう」


一部のメンバーはワイワイと盛り上がるが、一方で…


十神「俺はやらんぞ。そんな愚民の遊びは」

石丸「十神君! これはみんなの親睦を深めるためなのだ! よって動ける人間は全員参加を求める!!」

十神「知らん。勝手にやっていろ」

大和田「ああん? さてはオメエ、無様にボールぶつけられるのが怖いんだろ」

十神「…何?」

大和田「超高校級の御曹司様が顔にボール喰らってちゃサマになんねえもんな」

十神「貴様らの鈍速ボールがこの俺に当たるとでも?」


496: 2013/11/16(土) 15:34:17.38 ID:P2O/oUp30

大和田「言ったな? じゃあ勝負だ。桑田、俺と組め! 十神の野郎をぶっ潰すぞ!」

桑田「おーっし任せろよ。俺は球技全般得意だからな!」ウデブンブン

十神「な…! 桑田と組むとは聞いてないぞ!」

大和田「ビビってんのか?」ニヤニヤ

十神「…ふ、ふざけるな。仮に貴様ら全員が相手でもやってやる!」

石丸「ありがとう、十神君! 十神君が参加となると腐川君は…」

腐川「白夜様がやるって言ってるのに私がやらない訳にはいかないでしょ…」

石丸「腐川くん、ありがとう! となると、あとは…」

霧切「悪いけど、私は用があるから遠慮させてもらうわ」


案の定、視線を向けた途端すぐに断られてしまった。


江ノ島(みんなでドッジボールかぁ。久しぶりだし、なんか楽しそう。
     …あ、でもあんま激しい動きしたらウィッグとれちゃうかな)

江ノ島「あたしも。ギャルにドッジボールとか合わないし~」


497: 2013/11/16(土) 15:36:03.06 ID:P2O/oUp30

石丸「二人とも! そこをなんとか、この通りだ!」


石丸は頭を下げる。一瞬相手が動揺したのを読み取り、KAZUYAも追撃した。


K「…霧切、少しだけ付き合ってやったらどうだ? ここまで頼んでいるんだ」

霧切「石丸君、頭を上げて。…そうね。運動不足は事実だし、少しなら付き合ってもいいわ」

石丸「ありがとう、霧切君! 信じていたよ」

江ノ島(げっ、霧切さん陥落とか嘘でしょ?! 十神君と腐川さんですら
     出るって行ってるのに、私だけ無理に突っぱねたら悪目立ちするかも…)

江ノ島「じゃ、じゃあやっぱあたしも出よっかな~。ギャルはドッジボールくらい出来るし」


意味わかんねーしさっきと言ってること真逆だろ、という妹のツッコミが聞こえた気がする。きっと幻聴だ。


石丸「残るは…」

山田「僕はその…見ての通り運動は苦手ですし、的になるだけですからちょっと…」

セレス「わたくしもご遠慮させてもらいますわ。汗をかいて運動するなど、
     下僕やナイトにさせること。わたくしは参加いたしません」


498: 2013/11/16(土) 15:37:59.21 ID:P2O/oUp30

石丸「そこをなんとか…」

セレス「お断りします」

石丸「…わかった。なら直接参加しろとは言わないが、せめて観客席で応援、
    くらいは頼めないだろうか? 全員で行いたいのだ。頼む!」

山田「まあ、そのくらいならなんとか」

セレス「紅茶を持って行ってもよろしいなら」


石丸「よし、では怪我をしている舞園君と付き添いの先生を除けばこれで全員だな!
    各自準備もいるだろうから、9時に体育館へ集合してくれ!」



― 苗木の部屋 AM8:42 ―


KAZUYAと苗木は先程食堂であったことを舞園に話していた。
…もちろんモノクマの嫌みは抜いてだが。


苗木「…ということがあったんだ」


499: 2013/11/16(土) 15:43:14.08 ID:P2O/oUp30

舞園「ドッジボール大会ですか。楽しそうですね」

苗木「あ、うん。大和田君達はもう体育館に行ってるみたいだ。
    絶対十神君をやっつける! って盛り上がってるよ」

舞園「フフ…苗木君も頑張って下さいね」

K「お前が元気になったらまた改めて全員でやろうと石丸が言ってたぞ」

舞園「石丸君が? …ありがとうございますとだけ伝えておいて下さい」

舞園(わかってる。私にはそんな資格なんてないことくらい…)


薄暗い気持ちになったが、舞園はけして笑顔を崩さなかった。
アイドル時代に培った演技力がこんな風に役立つなんて、と皮肉に感じる。


苗木「じゃあ時間だし僕もそろそろ行かなきゃ」

K「舞園のことは任せろ。みんなに、あまりはしゃぎすぎて怪我をしないよう言っておいてくれ」

苗木「はーい。じゃあ行って来ます!」


501: 2013/11/16(土) 16:58:09.36 ID:P2O/oUp30


― 体育館 AM9:01 ―


石丸「大和田君から、桑田君が強いので自分のチームはハンデをつけてもらって
    構わないと言われた。よって、戦力が均等になるよう僕がチーム分けをしておいたぞ!」


大和田チーム:大和田、桑田、葉隠、霧切、腐川

石丸チーム:石丸、十神、苗木、大神、朝日奈、不二咲、江ノ島


腐川「ちょっと! なんで私は白夜様と同じチームじゃないのよ?!」

十神「腐川、うるさい」

石丸「す、すまない…だが大和田君のチームは大柄な男性が二人いるし桑田君もいて強い。
    腐川君はあまり運動が得意そうではないから守ってもらえて良いのではないかと…」

腐川「私がいなきゃ誰が白夜様の盾になるのよ!」

江ノ島「あーうっさいなー。じゃああたしが変わってあげるよ。それでいいっしょ?」


腐川と江ノ島がスイッチした。


503: 2013/11/16(土) 17:00:31.29 ID:P2O/oUp30

桑田「え、なんで?」

霧切「見ればわかるわ」


・石丸チーム


石丸「みんな! 大和田チームは何やら集まって作戦会議をしている。僕らも作戦を考えよう!」

朝日奈「えー作戦? 普通に投げて避けるだけだよ?」

大神「向こうがどんな作戦で来ようと、こちらは正々堂々応じるのみだ」

十神「フン、貴様らは俺の指示通りに動いていればいい」

腐川「流石ですわ、白夜様」

石丸「あああ! 何故うちのチームはこうもバラバラなのだっ!」

苗木「ええっと、まあ気楽にやろうよ」

不二咲「石丸君、僕はちゃんと作戦通りに動くから…」

石丸「うむ…では、小柄な不二咲君は大神君と僕でガードしよう。
    苗木君と朝日奈君が元外だ。あとは各自の判断に任せるか…」


そして試合開始となる。


504: 2013/11/16(土) 17:01:48.63 ID:P2O/oUp30

山田「お、始まりましたな!」ムシャムシャ

セレス「みなさーん、頑張ってくださーい(棒)」


通常はジャンプボールだが、ボールを投げてくれる人がいないのでじゃんけんで
先制を決めた。そしてじゃんけんの結果、先制は大和田チームとなる。


桑田「よぉぉぉし。俺の実力見せてやろうじゃん!」

石丸「く、桑田君! 本気で投げてはダメだぞ! 怪我人が出てしまう」

桑田「わかってるって。そぉりゃああああ!」


風を切る音と共に桑田の投げたボールが高速で真っすぐに飛ぶ。
必氏に避ける石丸チーム。


苗木「危ないって!(あれ本当に手加減してるの?! 当たり所が悪いと怪我するんじゃ…)」

葉隠「どこの炎の闘球児だべか…」

大和田「くっ、取る方も気をつけねえと突き指するな…」バシィッ


そして、二分後。桑田と大和田の集中砲火を受けた十神があっさり脱落したのだった。


505: 2013/11/16(土) 17:03:18.83 ID:P2O/oUp30


十神「ば、馬鹿な…この俺が愚民にやられるなど」

桑田「へっへー。ざまあ~!」

大和田「おら、さっさと外野行けや!」

十神「クソッ!」


目的の十神陥落を達成したため、少し勢いを落とし普通のドッジボールになる。


石丸「ボ、ボールを! ボールを奪わねば話にならん。大神君、頼む!」

大神「任せろ、フン!」

葉隠「ぎゃああ、よりによってオーガにボールが渡っちまったべ!」

朝日奈「いっけーさくらちゃん!」


そんなこんなで試合も中盤。元外もそれぞれ内野に戻り、生徒達は白熱していた。
内野に残っているのは大和田チームは桑田・江ノ島、石丸チームは大神・朝日奈・苗木である。


大神(むう、桑田はまだしも江ノ島の奴意外に身のこなしが軽いな。全く当たらぬ)バシュッ


506: 2013/11/16(土) 17:06:00.12 ID:P2O/oUp30

十神「往生際の悪い奴め!」バッ

桑田「そのボールもらった!」キャッチ! バシュッ!

朝日奈「うわっ、危ない」

大和田「このまま反撃だ! 食らえ!」

朝日奈「くらわないよーだ!」


大和田は朝日奈を狙って投げたが、朝日奈は絶妙なタイミングで回避する。しかしその後ろには…


苗木「……へ?」


ボゴッ!

苗木の顔面ど真ん中にボールがクリーンヒットした。勢いで思わず仰向けに倒れ込む。


苗木「」バタンキュー!

大和田「げ、悪いな苗木!」


507: 2013/11/16(土) 17:07:44.00 ID:P2O/oUp30

桑田「顔面セーフだな」

石丸「よし、ボールが戻ってきたぞ。すぐ反撃だ!」


しかし目を回した苗木はなかなか立ち上がらない。


朝日奈「あれ? ちょっと、苗木大丈夫?」

大和田「おいおい、朝日奈に向けて投げたからそんなに強くなかったはずだぞ」


ヨロッ

苗木「あ、うん、ゴメン。もう大丈ぶ、だ…」


立ち上がった瞬間、苗木は胃に強烈な不快感を感じた。


508: 2013/11/16(土) 17:09:37.56 ID:P2O/oUp30

苗木「うっ…」

大神「前屈みになってどうした、苗木よ。なんだか顔が青いぞ」


苗木は口を押さえてこらえようとするが、こらえきれなかった。


苗木「う、お……おえええええっ!」

朝日奈「え?! ちょっと、どうし…え?!」

大神「な?! これは、血だ!」

江ノ島「え、苗木君?!」

苗木「そ、そ、そんな馬鹿な?! …おえええええええええっ」

苗木(僕が…僕が、何で…)


全員が呆気にとられる中、苗木誠は口から大量の血を吐き――その場に倒れ込んだ。


516: 2013/11/17(日) 14:17:36.37 ID:YpcN7IHZ0

石丸「…え」

大和田「は?」

朝日奈「な、苗木ぃぃいいいぃぃいい!」

十神「何、だと…」

桑田「は…なになに? 嘘だろ、冗談だろおい…」

大神「苗木、しっかりせよ!」


一瞬全員が動きを止めたが、即座に苗木の元に駆け寄る。


葉隠「なんだべ?! 一体何が起こったんだべ?!」

大和田「お、おい。まさか…俺のせいじゃ、ないよな…?」

石丸「急いで先生を連れてくる! 待っててくれ!」


慌ててKAZUYAを呼びに石丸が体育館から飛び出した。


517: 2013/11/17(日) 14:18:51.08 ID:YpcN7IHZ0

ダダダダダダッ!

石丸(僕の企画したドッジボール大会のせいで苗木君が怪我をしてしまった!
    すまない、苗木君! せめて先生が来るまで保ってくれ!)


血相を変え、前のめりになりすぎて転びそうになりながらも
なんとか転ばずに石丸は苗木の部屋に飛び込んだ。

バーン!


石丸「せ、先生! たたたた大変です!」

K「どうした?!」

舞園「な、なんですかっ?!」


KAZUYAは嫌な予感がした。朝のモノクマの件で、また道を誤る生徒が出たのだろうか。


石丸「ドッジボールで大和田君の投げたボールが苗木君の顔に当たり、倒れてしまったんです!」

K「何だと?」


518: 2013/11/17(日) 14:20:25.71 ID:YpcN7IHZ0


どうやら事件ではなく単純に怪我のようだ。生徒が怪我をしているにも関わらず、
内心ホッとしている自分にKAZUYAは嫌悪感を抱く。しかし問題はこの次だった。


石丸「しかも、一旦は普通に起き上がったのですが、その後何故か血を吐いたんです!」

K「血を吐いた、だと…?」


意味がわからなかった。鼻血とか、倒れ込んだ際に頭を床にぶつけてそこから
出血とかならわかるが、ボールをぶつけられて吐血という状況が結び付かなかった。


K「とにかく、急いで現場を見た方がいいな。舞園、すまんが…」

舞園「はい! 一刻も早く苗木君の所に行ってあげて下さい!」


全員体育館にいるそうだから問題ないと思ったが、念のため部屋に鍵をかけて駆け出す。


石丸「詳しい状況は走りながら説明します!」

K「頼む!」


519: 2013/11/17(日) 14:21:25.56 ID:YpcN7IHZ0


        ◇     ◇     ◇


時間は少し前、場面も体育館に戻る。
石丸がKAZUYAを呼びに行っている間、生徒達は血まみれの苗木を囲み震撼していた。


セレス「突然の吐血…まさか、これは毒では?」

十神「成程、誰かが苗木の食事に毒を持ったのか」

苗木「う、うう…」

朝日奈「苗木、しっかり!」

霧切「毒だと確定は出来ないけど、仮に毒だとしてまだ生きているということは
    致氏量に達していないということだわ。苗木君、胃の中身を全部吐くのよ!」

霧切(もし毒だとして、使われた毒は何? 有名所なら青酸カリ、砒素、トリカブト等が
    浮かぶけど、とりあえず独特のアーモンド臭がしないから青酸カリはないわね)

霧切(砒素やトリカブトにしろその他にしろ症状が似ているから特定が出来ない…
    とにかく、急いで体内の毒物を中和しないと。そうだわ)

霧切「セレスさん! あなたの紅茶を貸して」

セレス「それは構いませんが、何に使うのですか?」


520: 2013/11/17(日) 14:22:29.29 ID:YpcN7IHZ0

霧切「あなたの紅茶は常に牛乳で煮出したロイヤルミルクティーよね?
    毒の種類によっては牛乳のタンパク質で吸収を疎外出来る可能性があるのよ。
    何の毒かはわからないけど、何もしないで見てるよりはマシだわ」

セレス「わかりましたわ。どうぞ」

霧切「ほら、苗木君飲んで!」

苗木「げほげほ!」


苗木もなんとか飲もうとするが、すぐに吐いてしまった。


大和田「おい、苗木ぃ…しっかりしろよ」

朝日奈「もうだいぶ吐いたし、横になった方がいいって!」


苗木の背中をずっとさすっていた朝日奈が、少し落ち着いてきた苗木を横に寝かす。


不二咲「でも、朝食からだいぶ時間が経っているのにどうして今頃倒れたんだろう?
     それに毒なんてこの学園にはなかったはずなのに、犯人は一体どこで手に入れたの?」


521: 2013/11/17(日) 14:23:33.52 ID:YpcN7IHZ0

十神「何を言っている。その二つをいっぺんに解決出来る物がこの学園にはあるだろう」

霧切「例えば、モノモノマシーンでカプセル付きの毒薬を手に入れられれば
    時間差の犯行も不可能じゃないわ。カプセルは食事にいれればいいし。
    このタイミングで倒れてしまって、大和田君はついてなかったわね」

大和田「そ、そうか。…でも苗木が苦しんでんのに素直には喜べねえな」

桑田「でも誰が毒なんていれたんだよ! 食事は当番みんなで作ってんだぞ」

セレス「苗木君が狙われた訳ではなく、無差別だったのかもしれないですわね。
     誰かのお皿に紛れ込ませて、自分は食べなければいいのですから」

十神「となると一番怪しいのは配膳係だな」

葉隠「今日の配膳係っていうと確か…」

朝日奈「山田、まさかあんた…?!」

山田「ひ、ひぃぃ! まさか僕を疑うのですか?!」

霧切「待ってちょうだい。配膳は早く食堂に来てる人や当番の人達も
    手伝っているはずよ。今の段階で特定は出来ないわ」


522: 2013/11/17(日) 14:25:16.97 ID:YpcN7IHZ0

十神「犯人は特定出来なくても犯人じゃない人間はわかるな。食事が全て
    机に並んだ段階で食堂に入った人間に犯行は不可能だ。俺は犯人ではない」

セレス「となると、容疑者は絞れますわね」

霧切(そもそも、本当にこれは毒なの? 胃の粘膜が破壊されて出血をもたらす量の
    毒なら、苗木君は既に氏んでいるはず…何か別の要因なんじゃないかしら。食中毒?
    でも、食中毒を起こすような食材はないしそもそも食中毒なら吐血はおかしい)

霧切(一体誰がどうやって、苗木君を…)


体育館のメンバーがあれやこれや議論しているうちにKAZUYA達が到着した。


苗木「うおえええっ」

朝日奈「あ、また吐いた! しっかりして苗木!」

不二咲「苗木君、先生が来たよ! 先生、早く苗木君を助けて!」

K「ううむ…」


KAZUYAは手にゴム手袋を装着し、吐瀉物を検分し始める。


523: 2013/11/17(日) 14:27:44.11 ID:YpcN7IHZ0

K(便の臭いはしない。腸に異常はないようだな。血の色は鮮やかで凝固はなし。
  それにしても随分と出血している…原因はなんだ?)

葉隠「うおっ、ゲロの臭い嗅いでるべ…」

霧切「臭いは大事よ。それで毒の種類がわかることもあるし」

K「毒だと?」

腐川「だ、誰かが苗木の朝食に毒を盛ったのよ!」

石丸「何だって?! ボールが原因ではなかったのか?」

霧切「まだ毒だと確定した訳ではないわ。可能性として毒をあげただけよ。
    怪我や病気で吐血したとは思えないし、そうなると…」

K(もし毒だとすると厄介だな。ここでは血液検査が出来ないから適切な処置が出来ん。
  胃洗浄くらいか。せめて内視鏡で胃の状況を確認出来れば手がかりが掴めたかもしれんが…)


悩むKAZUYAの服を苗木が不安げに掴む。


苗木「先生…僕、氏んじゃうのかな…」


524: 2013/11/17(日) 14:30:21.79 ID:YpcN7IHZ0

K「大丈夫だ! 意識がしっかりしているということは重篤な状況ではない。
  とりあえず吐き気以外の症状を全部言ってみろ。頭痛、腹痛、めまい、
  体のしびれ、こわばり…なんでもいい。特に、痛い場所はないか?」

苗木「えっと、特に痛い所とかしびれは…ないです。とにかく、気持ち悪くて…
    吐いたら少しすっきりしたけど、また今もちょっと気持ち悪い…」

K「痛みがない、だと? …少し触るぞ」


KAZUYAは苗木のみぞおち辺りに手を置き、指で軽く押す。


K「痛くないか?」

苗木「…はい。大丈夫、です…」

K(おかしい。毒物によって胃にこれほどの出血がもたらされたなら、なんらかの痛みがあるはず。
  それこそ胃痙攣を引き起こしていてもおかしくない。胃が原因の出血ではないということか?)


KAZUYAは必氏に苗木の状態を確認し、どんな些細な異常があっても見逃さないように診た。


525: 2013/11/17(日) 14:32:13.76 ID:YpcN7IHZ0


K(…毒物特有の呼吸不全も言語障害もない。意識は明瞭で頭痛腹痛下痢もなく病状は極めて軽度。
  思えば、顔色も多少青いもののそこまで悪くはない。健康な十代の少年が何の前兆もなく
  吐血を伴う急性の病気になるとは考えにくい。やはり怪我が主原因だと考えられる)

K(状況を思い出せ。苗木は顔にボールを受けて倒れ、一度起き上がった後に吐血した)

K(そこから導き出される答えは…)


KAZUYAは綿棒を取り出し、それにガーゼを巻いた。


K「苗木、少しじっとしていてくれ」

石丸「え、先生! 一体何を…」


ズボッ

KAZUYAは綿棒を苗木のある場所に突っ込んだ。そしてすぐに取り出す。
ガーゼにはたっぷりと血がついていた。


K「わかったぞ。この吐血の原因が」

大神「それは一体…」


526: 2013/11/17(日) 14:33:10.30 ID:YpcN7IHZ0


K「――鼻血だ」


一同「え?」








一同「え?」


527: 2013/11/17(日) 14:35:56.79 ID:YpcN7IHZ0

山田「いやいやいやいや、西城先生! こんなに派手に血を吐いてて原因が鼻血とか…」

大和田「オメエなぁ、適当なこと言ってたらぶん殴っぞ!」

大神「だが、鼻の穴に突っ込んだ綿棒に血が付いていたのだ。鼻血は事実なのだろう」


混乱する生徒達をなだめるように、KAZUYAは説明し始める。


K「苗木、お前ボールを顔に受けて少し倒れていたそうだな? その際流れた血が
  鼻腔、咽頭を通って食道に流れ込み、胃に入ってしまったのだろう。
  血液には催吐性があり、大量に飲むと吐き気をもたらしてしまうのだ」

K「鼻腔の中の動脈に近い部分がボールを受けた時の衝撃で裂け、運動で血流が
  良くなっていたため通常より大量に出血…そして自分の吐いた血を見てお前は動転し、
  血圧が急上昇。結果、鼻血が止まらずまた吐くの悪循環に陥ってしまったのだろう」

K「信じられないというなら、体を起こして頭を下にさげてみろ」

苗木「え、えーっと」


言われた通りにしてみる。


529: 2013/11/17(日) 14:37:15.08 ID:YpcN7IHZ0

タラー

すぐに、苗木の鼻からダラダラと血が垂れてきた。


石丸「ほ、本当にただの鼻血だったのか!」

十神「フン、なんとも人騒がせな話だ」

セレス「事件じゃなくて残念そうですわねぇ、十神君」

葉隠「これがほんとの、大山鳴動して鼠一匹てやつだべか…」

K「とにかく、鼻にガーゼを当て顔を下にするようにして休むといい。
  今日はもう運動はせず、安静にしていた方がいいな」


KAZUYAはテキパキと指示をするが、当の苗木は気まずいなんてものではなかった。
毒だの事件だのと周囲が激しく議論していたのに、まさか原因が単なる鼻血とは…


苗木「あ、あの、その、みんな…なんか騒がせちゃって、えっと…」


530: 2013/11/17(日) 14:40:03.35 ID:YpcN7IHZ0

朝日奈「良かったあああああああ!」

石丸「良かったぞおおおおおお!」

苗木「へ?」


朝日奈と石丸が座り込んだままの苗木に飛びついてきた。


朝日奈「良かった。本当に良かった! 私、ずっと心配だったの。
     私がボール避けたせいで苗木が氏んじゃったらどうしようって!」

石丸「僕もだ! 僕の企画のせいで苗木君が怪我をしてしまって本当に
    すまないと思っていた! 大したことがなくて本当に良かった!」

苗木「あ、いや…もう、大丈夫だから! ハハ」


ずっと責任を感じていたのか、二人はわんわん泣き出す。


大和田「つーか、結局俺の投げたボールのせいってことだろ…苗木ぃ、すまねえな。その…」


531: 2013/11/17(日) 14:43:54.42 ID:YpcN7IHZ0

K「そう自分を責めるな。学校での事故など日常茶飯事だ。それで誰かが悪いということはない」

苗木「う、うん。先生の言うとおりだよ! そもそも僕がトロいのが悪いんだし」

K「さて、みんなで掃除をするぞ。苗木はそこで休んでいるといい」

石丸「掃除道具を取ってきます!」

桑田「苗木が動けねえし、今日はもう運動は出来ねえな。この後どうするよ?」

セレス「でしたら、娯楽室にいらしてはどうでしょう? 今度はわたくしも参加いたしますわ」

不二咲「いいね! そうしようよ」

葉隠「俺のダーツは三割当たるべ!」

腐川「…それって高いのか低いのかどっちなのよ」

K「フフ」


掃除をしている最中、霧切がKAZUYAに話しかけてきた。


532: 2013/11/17(日) 14:51:26.64 ID:YpcN7IHZ0


霧切「流石ですね、ドクターK。私達が毒だと間違った情報を与えてしまったのに
    それに惑わされず、正しい病状を見抜き対処する。見事な観察眼でした」

K「フ、お前こそこの状況にも関わらず毒が原因なことに懐疑的だったじゃないか」

霧切「でも、私は完全には信じきれていなかった。誰が犯人なのかとばかり考えていた…」

K「仕方がないさ。こんな場所ではな。俺はただ、一刻も早く原因を突き止めて
  苗木を助けなければと必氏になっていただけだ」

霧切「先生のそういう所、きっとみんな見てくれていると思うわ」

K「そうか?」


いつも無表情の霧切が、ほんの微かに笑った気がした。


霧切「ええ」


この一件で生徒達のKAZUYAへの信頼と全体の結束が少し高まった気がする。
モノクマによる干渉さえなければ、とKAZUYAは思わずにいられなかった。


533: 2013/11/17(日) 15:00:44.62 ID:YpcN7IHZ0

ここまで

これにてドッジボール編終了。Chapter1パーフェクトクリアに伴うボーナス編でした
手術してないのに親密度にボーナスかかるというグッドイベントですね。苗木は不運だったけど、
結果的に全員の結束が上がったんだから超高校級の幸運はダテじゃないということで

ただ、原作読んでる人にはバレバレの展開でしたねw
もっと毒とか各生徒のアリバイまで詳しく書いてミスリードしても良かったけど、
番外編のドッジボールだけで何日もかけてもしょうがないのでサクッと終わらせました


543: 2013/11/17(日) 23:40:53.13 ID:YpcN7IHZ0

キリの良い時。それは小ネタを落とす時。


― オマケ劇場 ⑥ ~ ハイ、二人一組になってー ~ ―


時系列は舞園事件より前。


石丸「今日は、より親睦を深めるために二人一組になって学園の探索をしようと思う!」

山田(ちょwww奇数なのに二人一組とかktkrwwwwwwこのままでは拙者脂肪確定でござるwwwwwwww)

大和田(やべえ…これどう考えても不良の俺がハブられる流れじゃねえか…
     あまりモンになった挙句先公と組まされたりしたら目もアてられねえぞ!)

石丸「では、早速組んでくれ!」

舞園「苗木君、一緒に行きましょう」  苗木「うん!」

朝日奈「さくらちゃん、行こ!」   大神「ウム」

十神「チッ、面倒だな。俺は図書室に行くぞ。腐川、来い」  腐川「は、はい!」


あっという間に決まる三組。


霧切「私は一人でゆっくり探索したいのだけれど」

不二咲「霧切さん、そんなこと言わないで。みんなと親睦を深めるためだよ。私と行かない?」

江ノ島「メンドくさ~。マジだるいんですけどー」


544: 2013/11/17(日) 23:42:54.27 ID:YpcN7IHZ0

大和田「(チャンスだ!)なら俺と組んで一緒にサボらねえか? 適当にブラブラしてようぜ!」

山田「セレス殿ぉぉぉ! どうか、どうか僕と組んでくだされええええええ!」

セレス「仕方ありませんわね。せいぜいわたくしの手足となって一生懸命働きなさいな」

桑田「(キョロキョロ。あれ、もうこれだけ? 女の子と組みたいとか言ってる場合じゃねえ!)葉隠、俺と組もうぜ!」

葉隠「おう、桑田っちか。行くべ」

石丸「よし! 全員組めたな」

朝日奈「あ、待って。石丸が余ってんじゃん。なんなら私達と一緒に行く?」

大和田(ちょ、あのバカ! 言い方がストレート過ぎだろ! 余った挙句女子に情けをかけられるとか…)

K「いや、俺と組めばいい。一緒に行こう、石丸」

山田(あ、あわわ。とうとう来てしまった…全国のぼっちのトラウマ『○○くんは先生と組もっか?』の時間が…)

石丸「ハイ! よろしくお願いします、先生! それじゃあみんな、今日も探索にレッツゴー! だぞ!」スタスタスタ

・・・

大和田(あいつマジでタフだろ…どんな神経してんだよ…)

山田(むしろ先生と組めてラッキーくらいに思っている?! 石丸清多夏…恐ろしい子!)

苗木(なんで二人共白目むいてるんだろう…)


545: 2013/11/17(日) 23:44:44.16 ID:YpcN7IHZ0

― オマケ劇場 ⑦ ~ イジメ、ダメ絶対! ~ ―


同じく時系列は事件前。

山田「セレス殿、紅茶を淹れましたぞ!」

セレス「山田くん、これはただの紅茶ではありませんか。わたくし、紅茶は牛乳から
     煮だした本場ロイヤルミルクティーしか認めていませんの。やり直しです」

山田「ガーン。そんな…」トボトボ

K「……」


十分後。


山田「セレス殿! 出来ました。今度はちゃんとロイヤルミルクティーですぞ!」

セレス「(ゴクリ)味が薄いですわ。作り直しです」パリーン!

山田「そ、そんな…せっかく作ったのに…」

セレス「グチャグチャ文句言ってないでさっさと作り直せやこの腐れラードッ!!」ビキビキィッ!


546: 2013/11/17(日) 23:45:59.02 ID:YpcN7IHZ0

山田「ヒィィッ、ただいま~!!」

K「待て! 大人の前で堂々とイジメをするとはなかなか度胸があるじゃないか」

セレス「え?」

山田「え?」

K「ルーデンベルク、今すぐ保健室に来い。じっくり話を聞かせてもらうぞ!」

セレス「え、わたくしはそういうつもりでは…ええええ?」


・・・


K「あの後何故か山田も一緒に来てイジメではないと言われたが正直納得いかん」

石丸「僕も未だに納得出来ません。あれがイジメ以外の一体なんだと…」

苗木「いや、えっと…あの二人の関係はちょっと特殊だから…? ハハ…」

苗木(正直僕もわからないというかわかりたくないというかむしろ関わりたくないみたいな)


547: 2013/11/17(日) 23:48:48.14 ID:YpcN7IHZ0


― オマケ劇場 ⑧ ~ 残念と呼ばないで ~ ―


事件後。桑田糾弾会の最中。

セレス「」キツキツ

十神「」イヤミイヤミ

江ノ島(あー、早く終わらないかな。ていうかなんで参加しちゃったんだろう私)

江ノ島(そうだよ。先生が苗木君を連れて行った時点で一回お開きっぽいムードに
     なったんだし、あの時抜けておけば良かった。失敗したなぁ…)

石丸「」ガミガミ

桑田「」ショボーン

江ノ島(石丸君、説教長い。でも相手が桑田君なら仕方ないかな?)

江ノ島(……。よーし! やっと終わった。気分転換にシャワーでも浴ーびよっと)ルンルン♪


シャワー後。


江ノ島(あ、そういえば、先生が舞園さんを助けちゃったからきっと盾子ちゃんカンカンだよね。
     …そうだ! 保健室に置いてある薬を私が盗んじゃえばもう手術できないんじゃない?)


548: 2013/11/17(日) 23:51:00.71 ID:YpcN7IHZ0

江ノ島(フフ…私冴えてる! きっと盾子ちゃんも喜んでくれるよね! …あれ?
     保健室から人の気配…まさか先生? でも先生は今舞園さん達の所じゃ…)


中を覗き見る。


江ノ島(ウソ! なんでいるの、桑田君?! 邪魔なんだけど! 早く帰ってよ!)


四十分後。


江ノ島(まだ帰らない…もしかして先生が戻ってくるまでずっといるつもり? 仕方ない。
     夜時間に出直そう。どうせ先生はずっと舞園さんの所にいるはずだし)


その後、入れ替わりのようにKAZUYAが保健室に訪れ薬品類は回収されてしまった。
しかも輸血パックは保存の関係上手つかずだったのだが、江ノ島こと戦刃は気付かなかったのだった。

・・・

江ノ島(真)「残姉マジ残念……」


次回:苗木「…え? この人が校医?!」霧切「ドクターKよ」【後編】


引用: 苗木「…え? この人が校医?!」霧切「ドクターKよ」