1: 2010/10/14(木) 00:06:05.78 ID:dwtINW3RO
 ある日の音楽準備室

唯「からんころんからーん」ガチャ

紬「いらっしゃーい唯ちゃん」

唯「ちゃお。あれ、りっちゃんは?」パタン

澪「律は部活休むって言ってた。なんか約束があるらしいぞ」

唯「約束?」

澪「うん。それがよく分かんないんだけどさ……」

澪「なんかはぐらかすような感じで、約束があるとしか言わないんだよ」

唯「……むぅ。どう見ますか、ムギさん」

紬「そうね……匂うわ」

唯「恋人ッスか!」
 
澪「なにぃ!?」ガタンッ
けいおん!Shuffle 1巻 (まんがタイムKRコミックス)
2: 2010/10/14(木) 00:09:14.31 ID:dwtINW3RO

澪「そんなのおかしいっ、私は何も聞いてないぞ!?」

紬「落ちつけよハゲ」

紬「確かに唯ちゃんの言うとおり、その可能性は高いわね」

澪「ハゲてない」

唯「澪ちゃん、りっちゃん何処行くって言ってた?」

澪「
しら

紬「尾行するのね、唯ちゃん!」

唯「もっちろんだよ!」

紬「ようし、任せて! 今りっちゃんの現在地を検索するわ!」スチャ

 ピッピッピッ

澪「なんだそれ?」

紬「こういう時のために、りっちゃんには発信機をつけてあるの」

澪「それも聞いてないぞ」

4: 2010/10/14(木) 00:13:10.13 ID:dwtINW3RO

 ピコンッ

紬「出たわ!」

唯「どこですかっ!」

紬「近いわ。すぐそこ……澪ちゃんのカバンの中っ!」ビシッ

澪「ええぇーっスパー伊藤!?」

紬「うるせぇ」

唯「でも、さすがにこのカバンにはりっちゃん入らないよね……」ジジィ

澪「人のカバン勝手に開けるなよぉ」

紬「そうね、恐らく……」

 ゴソッ

唯「これは……りっちゃんのカチューシャ」

紬「くっ……失敗したわ。やっぱり本体に埋め込むべきだったわね」

唯「もーっ、これじゃ追えないじゃんっ!」

6: 2010/10/14(木) 00:16:11.21 ID:dwtINW3RO

澪「しょうがないな……明日の報告を待つしかないよ」

唯「尾行したかったのにー」ブー

紬「あら、澪ちゃん言わないつもり?」

澪「……な、なにがっ?」

紬「分かるんでしょ? りっちゃんの居場所」

唯「ほぇ? 澪ちゃんどこ行くか聞いてないんじゃなかったの?」

紬「そのはずね。でも、澪ちゃんには分かるの。知っているんじゃなくて、分かるのよ」

澪「……っ」ギュ

澪「なんで……ムギがそれを知ってるんだ」

紬「友達のことには興味があるから♪」

唯「ねぇねぇねぇ澪ちゃん、りっちゃんがどこにいるのか教えてよ」

澪「……ハァ。わかったよ」

澪「唯、カチューシャを貸せ」

8: 2010/10/14(木) 00:20:03.30 ID:dwtINW3RO

唯「うん。ほい」

澪「ありがと……さて」

唯「えっ」

澪「うううぅぅんんんんん律のかおりいいいいん」スウウウゥゥ

唯「うわっ……」

紬「唯ちゃんどうしたの?」

唯「えっ、私のほう?」

紬「すごく素敵な光景じゃない。なかなか見れないわよ」

紬「澪ちゃんの幼馴染スキル『律追いの犬』が発動する瞬間なんて!」

唯「幼馴染スキル……これが」

唯「なんて気持ちの悪い……!!」

紬「ふふ。唯ちゃんだっておんなじなのに」

唯「いや、それはないよ」

10: 2010/10/14(木) 00:23:16.29 ID:dwtINW3RO

澪「ふしゅううううぅぅぅ……」

澪「……よし、覚えた」

唯「覚えたって?」

澪「今日の律の匂いだよ」

澪「律の匂いはコロコロ変わるから、追跡するには匂いを覚え直さないといけない」

唯「……」

澪「でも、カチューシャを渡されたことも気になるな……」

澪「どうして律はカチューシャを私に預けていったんだろう」

紬「……これは本格的にあるかもしれないわね」

澪「ということは、やっぱ律は私が好きってことか?」

紬「そうなのかどうか確かめるためにも、りっちゃんを探しましょう」

澪「あぁ、そうだな!」

唯「……ふぅ」

11: 2010/10/14(木) 00:26:09.99 ID:dwtINW3RO

――――

 正門

澪「……右だな」クンクン

紬「スゴイわねぇ。こんなにいろんな匂いのする場所も迷いないわ」

唯「人間には無理だよね、これって」

紬「愛の力次第では、どうとでもなるような気がするけれど」

唯「……」

澪「……ム?」

唯「どうしたの、澪ちゃん」

澪「別の匂いが……同じ濃さで、律と一緒に残ってる」

澪「同じ方向に、ずっとずっと……」

唯「それ……って」

澪「まだそうと決まった訳じゃない……」クンクン

13: 2010/10/14(木) 00:30:03.14 ID:dwtINW3RO

 スンスンスン

澪「近いな……」

紬「ええ、私にもなんとなく分かるわ」

唯「……そうなの?」

紬「なにか、感じるの。恋する乙女のオーラかしらね」

唯「……私にはわかんないや」

唯「……」

澪「……居たっ!」バッ

澪「あのファミレスの中にいる。間違いない」

澪「別の匂いも一緒だ……」

唯「……」ゴクッ

唯「見つからないように、そっと入ろう」

紬「……行きましょう」

15: 2010/10/14(木) 00:33:21.38 ID:dwtINW3RO

 コソコソ

唯「いた、あそこだよ」

澪「この席なら、見つからずに観察できそうだな」

紬「一緒にいるのは……女の子かしら?」

唯「でも、顔立ちとか仕草は男の子っぽい」

紬「……ハルコ、って呼んでるわ。やっぱり女の子よ」

澪「まぁ、彼氏じゃないならよかったけど」

澪「あの子、誰だ……?」

紬「さあ……」

唯「……」ギュ

律『で、なんか進展はあったわけ?』

春子『ハハッ、ぜんぜん。話しかける勇気出なくってさ』

律『なっさけねぇなぁ……』

16: 2010/10/14(木) 00:36:37.83 ID:dwtINW3RO

紬「恋愛相談かしら……」

律『好きなら好きってガツンと言っちまっていいと思うぞー? 私は』

唯「……みたい」

澪「律が聞く立場みたいだけど」

春子『ま、そうなんだけどさ……秋山さんって、臆病だしなぁ』

律『だなぁ。いきなり好きとか言われたら卒倒するか』

紬「……あら?」

澪「なんで、私の名前が……」カタカタ

唯「澪ちゃん、落ちついっ」

澪「ドワッハアアァァァ!!」バシャアアン

唯「お冷をかぶった!?」

紬「いえ、それより……」

律「……ちわっす」

17: 2010/10/14(木) 00:40:31.38 ID:dwtINW3RO

――――

澪『初めまして。水も滴るいい秋山澪です』ポタポタ

春子『近田春子、だけど……』

律「さぁーて、あとは若い二人に任せてっと」チラ

律「やぁー唯にムギぃ。ようこそいらっしゃった」

唯「やっほー」

律「……どうやってここまで来たんだ?」

紬「りっちゃんに発信機を埋め込んでおいたのよ」

律「はっ!?」

唯「そういえばりっちゃん、なんで今日カチューシャしてないの?」

律「えっ? あっ、そりゃぁ……」

律「別にいいだろ、そんなこと。」

紬「ふぅん?」

20: 2010/10/14(木) 00:43:29.58 ID:dwtINW3RO

律「なにさ」

紬「女の子から女の子への恋愛相談を聞いて……許されるかも、っと思ったのかしら?」

律「ち、違うっ! そういうワケじゃないって」

律「ただ、頼りがいありそうに見せたいだけだ」

律「前髪下ろして、普段の私とは別な感じなんだぞってさ」

唯「……んーと」

唯「春子ちゃんから、澪ちゃんが好きだってことで、りっちゃんに相談が行ったんだよね」

律「あぁ。いきなりだったから私もびっくりしたけどさ……」

唯「りっちゃんは、それでよかったの?」

律「……よかった、って?」

唯「だ、だから、ほら」

唯「……春子ちゃんに、澪ちゃん取られてもいいの?」

21: 2010/10/14(木) 00:46:22.69 ID:dwtINW3RO

律「それって、アレか」

律「私が澪にそういう気持ちを持ってるかって訊きたいのか?」

紬「りっちゃん。デリカシー持ちなさい」

律「あ、悪ぃ……」

唯「……」

律「えっと……別に、澪に対して恋愛感情は持ってない」

律「っつーか……うん。そういう事だよ」

唯「そっかぁ」ニコ

律「あぁ、そうさ」

紬「……りっちゃん、どうしたの?」

律「へ? なんでもないぞ?」

紬「でも、今唯ちゃんから目をそらしたじゃない」

律「……」

23: 2010/10/14(木) 00:50:12.17 ID:dwtINW3RO

唯「……りっちゃん?」

律「……」

紬「あっ、いけない。今日は茶道の先生がいらっしゃるんだったわ」

紬「ごめんなさい、また明日ね?」

唯「へっ? えっ?」

 ピューッ

唯「ば、ばいばーい……」ヒラヒラ

律「……唯」

唯「えっと」

律「……なあ、唯。春子のこと聞いて、どう思った?」

唯「どうって……?」

律「普通の恋愛とは違うだろ、春子の……なぁ」

唯「そんなこと……」

24: 2010/10/14(木) 00:53:06.04 ID:dwtINW3RO

唯「そんなことないよっ」

唯「恋に普通なんてないよ。あっちゃいけない」

律「唯……」

唯「ぜんぶ、その人たちの恋じゃんっ、なんでりっちゃん」

律「おい唯、落ち着けって」

 ギュウ

唯「ん……」

律「ごめん。言いかたを間違った」

律「でも、唯の考えが聞けてよかったよ」

唯「りっちゃん……?」

律「あのさ、唯。さっき、私が春子からの恋愛相談を受けてるって言ったけど」

律「……そうじゃないんだ、ほんとは。語弊があるってやつかな」

唯「ごへい……?」

26: 2010/10/14(木) 00:56:16.37 ID:dwtINW3RO

律「私も同じ悩みを抱えているんだ」

律「春子の悩みを聞いて……私も打ち明けた」

唯「……」

律「……私たちは悩みを共有していたんだ」

律「女なのに、女が好きっていうさ」

唯「……うん」

唯「わかるな、その悩み……」

律「分かってくれるか」

唯「悩みたくなんかないんだけどね……」

律「まぁ、な……」

律「……」

唯「……」

唯「……えと」

27: 2010/10/14(木) 01:00:55.08 ID:dwtINW3RO

律「なんか、タイミング失っちまったな」

唯「だね。……えへへっ」

律「……でも。はっきり言わなきゃだめだよな」

律「本当のことを言わなきゃ、その分……嘘もつけてしまいそうだから」

唯「……うん」

律「唯。す……好きだ」

唯「……」ニコ

唯「りっちゃん。だいすき」

唯「付き合ってくだひあっ!」ガバッ

律「キャッホー!! ゆい、ゆいーいっひっひひひっ!」

唯「だれだこいつ」

唯「まったくもう、りっちゃんてば……」

29: 2010/10/14(木) 01:03:35.32 ID:dwtINW3RO

――――

春子「……」

澪「どうしたんだい、春子。いったい何を見ているんだ?」

春子「えっと……ちょっと、律たちを」

澪「彼女たちよりも私を見てくれたまえよ。今はこうして二人の時間なんだ」

春子「あ、追い出されてる……」

澪「……ところで春子。私と話したいことがあるんじゃないのかい?」

春子「……」

春子「……ハハ」

澪「?」

春子「いや、なんでもなかったよ。秋山さん」


 おしまい

引用: 唯「あんな貧乳に恋人なんてできるわけないじゃん」