1: 2010/04/02(金) 04:41:43.68 ID:mP/FTvlK0
高校一年の夏

俺は朝倉に恋をした。理由なんて何もない

ただ少し趣味と考え方が合って、俺から告白した

見事にオッケーをもらえ、二人で遊園地へ。初デートだった

週末は常にデートだった。SOS団の活動を疎かにしたつもりはない

でも確実にハルヒ達と話す時間は減っていた

このまま二年生になろうかという3月、朝倉から話をされた

朝倉「4月から、私引っ越すんだ」

キョン「え…」

朝倉「県3つ越えた場所なんだけどね。でももう気軽には会えなくなるわね」

キョン「それくらいだったら…会いにいくさ。4、5時間くらいで着くだろう?」

朝倉「でも普段は遠距離恋愛よ…?」

キョン「少しつらいけど…朝倉のためなら頑張れるさ。海外とかだったら流石にお手上げだけどな」

朝倉「…うん…ありがとう…」

今考えると、こんなにも好きだった気持ちが嘘のようだ

2: 2010/04/02(金) 04:43:42.81 ID:mP/FTvlK0
SOS団部室

古泉「噂、聞きましたよ」

キョン「ん、何がだ?」

古泉「月に1度、引っ越しした朝倉涼子に会いに行ってるんですってね」

キョン「ああ、そのことか」

古泉「しかし県3つともなると移動費もバカにならないでしょう?」

キョン「高校生にはキツい額だ…だから月に1回が限度でな」

古泉「あなたも、よっぽどですね」

キョン「…」

古泉「…最初は、涼宮さんに何か影響が出るのではと思ってましたが…」

キョン「その様子だと、特に何もないみたいだな」

古泉「ええ、僕の考えすぎのようでした」

月に1度、朝倉に会いに行く以外、俺の日常は何も変わらなかった

SOS団への参加、ハルヒや長門との会話

気付くと俺たちは三年生になり、進路を決める時期にまでなっていた

3: 2010/04/02(金) 04:48:26.50 ID:mP/FTvlK0
古泉「なんですって?」

キョン「俺…朝倉がいる街の大学行くよ」

古泉「…」

キョン「呆れたか?」

古泉「そういう訳ではありませんが…いえ…」

キョン「?」

古泉「親御さんはなんと?」

キョン「朝倉と付き合ってることも教えてあったしな。理解は示してくれてるよ」

古泉「そう…ですか…」

キョン「どうした?何か都合が悪いのか?」

古泉「あなたには話してませんでしたが…実は涼宮さんにも恋人が出来たんですよ」

キョン「…!いつから…」

古泉「三年生に進級した2ヵ月後ほどですね。男の方から言い寄ったみたいで」

キョン「へぇ、あのハルヒがなぁ…ハハッ、良いことじゃないか」

4: 2010/04/02(金) 04:51:05.06 ID:mP/FTvlK0
古泉「…その彼が住んでる場所がですね…朝倉涼子がいる街なんですよ」

キョン「…!」

キョン「偶然にしては…なぁ…」

古泉「ええ。でも正直意味がわからないのですよ」

キョン「ん…」

古泉「この2年間、あなたと朝倉涼子が付き合ってからも彼女の観察を続けていましたが…」

キョン「何もなかったんだろう?」

古泉「いえ、実は閉鎖空間は発生していたのですが…その…」

キョン「?」

古泉「空間の規模が小さすぎて…」

キョン「小さすぎる?」

古泉「ええ。神人も確かにいるのですが…全く動かないのですよ。機関では、問題無しと判断はしていますが…」

キョン「それがハルヒの付き合い始めた時期と重なると?」

5: 2010/04/02(金) 04:57:23.87 ID:mP/FTvlK0
古泉「…いえ空間が発生したのは、あなたが朝倉涼子と付き合い出した時期からですよ」

キョン「な…」

古泉「大事では無かったので言いませんでしたが…でも、やっぱり変なんですよ」

キョン「…」

古泉「考えてもみて下さい。単純にあなたに嫉妬しているなら、もっと直接的な事態が僕らを襲っているはずです」

キョン「確かにな…でも表面上は何もない、と」

古泉「この二年は何もありません…が、今回はそれが起こってしまいました…あなたと彼女が行く大学は、同じ場所なんですよ」

キョン「…は?」

古泉「あなたから大学の名前を聞いた時は冗談だと思いましたよ」

キョン「嘘だろ、そんなの…」

古泉「本当ですよ。大学の事にだけ関して言えば、あなたと一緒の学校に行きたい、と彼女が願ったのでしょう」

古泉「でなければ、こんな偶然はあるはずが…」

6: 2010/04/02(金) 05:03:34.42 ID:mP/FTvlK0
キョン「じ、じゃあハルヒが付き合ってる相手の事は…」

古泉「そっち方面は僕らもお手上げです…言ったでしょう。意味がわからない、と」

古泉「本来なら、朝倉涼子と別れさせる、あるいはあなたを別の大学へ連れてくでしょう」

古泉「でも他の男性と付き合い…尚且あなたと同じ大学へ行く…朝倉涼子の近くの、ね」

キョン「…わけがわからんな」

古泉「ええ…ですから我々も多分同じ学校へ行くでしょう。機関からもそう命令されてますので…」
キョン「我々ってことは、長門も…」

古泉「ええ。卒業した朝比奈さんも既にその大学へ転入手続きをしています」

キョン「…」

7: 2010/04/02(金) 05:07:55.05 ID:mP/FTvlK0
古泉「また彼女を取り巻く生活になりそうですね」

キョン「…あいつは関係ないさ。あくまで俺は朝倉の傍にいくだけだからな」

古泉「ええ…わかっています。」


もう一度朝比奈さんに会える。もう一度ハルヒや長門と学校生活が送れる

でも今の俺にはその名前はときめかなかった

今は涼子がいて、それだけで幸せ。もうすぐで涼子の近くに住める…

ハルヒが付き合い出した人間やら、他の人間関係はどうでもよかった

そして俺たちは卒業した

8: 2010/04/02(金) 05:12:55.04 ID:mP/FTvlK0
年生4月

大学生活が始まり、俺は新しい一歩を踏み出した

何もない部屋に一人…

入学式、着なれないスーツ。制服と雰囲気は似ていたとは言え、やはり別物だ

少しだけ広い体育館、大勢の新入生がいる

?「――キョン?キョンじゃないか!?」

キョン「え、あ…!谷口?国木田も?」
谷口「も…もしかしてお前もこの大学なのか…」

キョン「あ、ああ。そういう二人こそ…」

国木田「僕たちはやりたい活動があってね。学科も魅力だからこの大学にしたんだよ」

キョン「やりたい活動?」

谷口「この大学で推奨しているボランティア活動があってよ。街ぐるみでかなり大規模でな…」

国木田「まあ就職活動にちょっとでも有利になればってさ」

9: 2010/04/02(金) 05:15:27.96 ID:mP/FTvlK0
キョン「…それにしたって…谷口や俺はともかく、国木田はもっといい学校に行けただろうに?」

国木田「…正直、勉強も疲れちゃって。…少しだけ、ね」

谷口「ま、何にしろ3人また一緒だぜ!よろしくな!」

キョン「あ、ああそうだな」

ハルヒ「また3バカが、集まってるのね」

3人「――っ!」

ハルヒ「何よ、人の顔見てボケーッとして。バカみたい」

谷口「そ、そういえば涼宮もココだったな…」

キョン「ん、知っていたのか?」

国木田「3年生の時にクラスが一緒だったからね、キョンは別だったけど。彼女は確か…成績優秀で引き抜かれたんだったかな」

キョン「へぇ…そうだったのか(まあ、理由なんてハルヒの前ではどうとでもなるよな)」

ハルヒ「(じーっ)…」

10: 2010/04/02(金) 05:19:41.97 ID:mP/FTvlK0
キョン「な、なんだよハルヒ…」

ハルヒ「まあ、女の子のお尻追っかけて大学選ぶ人間とは違うって事よね」

キョン「…なっ「ナニィ!おい、キョン!なんだそりゃ!」

キョン「お、落ち着け谷口…く、苦しい…ぁ、朝倉だよ朝倉…」

谷口「…ああ、朝倉か。まだ付き合ってたのかお前ら。長いなー。2年くらいか?」

キョン「かれこれ3年だな。…というかハルヒ、人の事をなんだと…」

ハルヒはニヤニヤしながらこっちを見ていた

ハルヒ「あらぁ、何か間違ったこと言ったかしら」

キョン「事実だろうが、人前で出していい話題が…いや、まあこのメンバーならいいのか」

国木田「そうそ。みんな知ってるなら余計にさ」

キョン「だな。…さてそろそろ帰るか」

谷口「そうだな…顔合わせできただけでもな」

ハルヒ「…私は用があるから、これで失礼するわ。じゃあね」

プイッとハルヒはその場を去ってしまった

11: 2010/04/02(金) 05:22:05.75 ID:mP/FTvlK0
谷口「…なんだよあいつ、相変わらずだよな」

国木田「でも彼女から話してきてくれたんだよ?」

谷口「そう言えば…」

国木田「彼女も高校卒業して変わったんだよ」

谷口「そんなもんかなぁ…ま、俺たちに冗談言うくらいだから、確かにな」

キョン「…俺も帰るぞ。用事があるからな」

谷口「お、朝倉かぁ?」

キョン「…まあな」

国木田「授業の合間とか、僕たち多分学食に集まってるからさ」

キョン「ああ、何かあったら連絡もするし、またな」

12: 2010/04/02(金) 05:28:17.14 ID:mP/FTvlK0
家に帰りスーツを着替える

シャワーを浴び終え着替えた頃、ピンポーンと呼び鈴が鳴る

ドアが開く

朝倉「無用心だよ?」

キョン「来る前は開けておくんだ」

朝倉「えへへっ♪…スーツ着替えちゃったの?」

キョン「窮屈だからな」

朝倉「つまんなぁい…見たかったなぁ…」

キョン「そ、そんな甘えた声出されても…」

朝倉「…ふふっ、冗談よ。一緒にいてギューッでできればいいのよ」

そう言いながら彼女は優しく抱きついてくる…

13: 2010/04/02(金) 05:33:18.37 ID:mP/FTvlK0
長い髪…シャンプーの匂い…柔らかい…全部が彼女だ…

朝倉「…ねえキョン…」

キョン「…」

朝倉「チューしたい…」

キョン「ん…」

なにも言わず彼女の唇を引き寄せる

彼女がいるだけで…幸せなんだ…

15: 2010/04/02(金) 09:15:02.97 ID:mP/FTvlK0
一人いてくれたから再開


大学に入って1ヶ月…授業にも変わった環境にも慣れ、過ごしていた

涼子が隣にいることも当たり前になっていた。

朝倉「ねぇ、キョン~キョン~♪」

キョン「んー…」

朝倉「晩ごはん何がいい?」

キョン「…いらない」

朝倉「…」

キョン「いらない」

朝倉「…私のご飯美味しくない…?」

キョン「いや…別に」

朝倉「…じゃあ私帰るよ。いても意味ないから…」

キョン「ああ…」

バタン、と玄関のドアが閉まる

16: 2010/04/02(金) 09:23:14.12 ID:mP/FTvlK0


……

ピリリリリ

メールだ

朝倉『一緒にいて、変わってしまったのはあなた?それとも私なの?』

俺は何も返さなかった。メールも…電話も

次の日、玄関のチャイムが鳴る。出迎えると、やはり涼子だった

まだ朝10時…今日は学校が休みでよかった。涼子ともう少し朝寝坊をしよう

そんな事を考えながら涼子を迎え入れる

キョン「よう」

彼女にペタリと抱きついてみる。彼女は何も言わず、ニコッと笑った

何も言わず、彼女は部屋に入っていく

バタバタと、部屋に置いてあった涼子の私物を片付け出す…

17: 2010/04/02(金) 09:29:01.33 ID:mP/FTvlK0
キョン「…」

その様子をボーッと見ている。何をやってるんだろう…

朝倉「ふぅ…片付け終わり。じゃあ、さようなら」

キョン「…?」

朝倉「あなたとはお別れよ。もう…一緒にいたくないの」

キョン「え…」

背中が痛い?ビリビリする

朝倉「じゃあ、さよなら。元気でね」

バタン

また玄関の閉まる音…何が起こったのか…わからない…

朝倉と別れた

ただそれだけの事みたいだ

ああ

18: 2010/04/02(金) 09:31:57.27 ID:mP/FTvlK0
1年生5月

別れてからしばらくは立ち直れなかった

失なって初めてその大切さがわかる…そんな当たり前の事がわかるには、まだ年齢が若すぎた

毎日学校に行きながら、自問自答

ある日、そんな事を考えながら過ごすのがバカらしくなった
キョン「…新しい事始めよう」

生まれ変わるとか、気持ちを切り替える…そんな単純な思いで俺は歩き出した

雨が降っていた

お昼過ぎの学食、生徒は疎らだ…大半が午後の授業に出ているのだろう

国木田や谷口、いつもの場所にみんなはいない

キョン「サボってるのは、俺だけか…」

踵を返し、家に帰ろうとする…もう一度傘をさし雨の中を歩く

キョン「…長…門?」

19: 2010/04/02(金) 09:35:45.42 ID:mP/FTvlK0
長門「貴方を…迎えに来た…」

言われるまま来たのは、サークルの部室が集まった棟だった
ガチャリ

長門「入って」

キョン「ここは…?」

長門「サークル活動の部室」

キョン「サークル…」

長門「ひよこ研究会…略してひよ研」

キョン「ひよこ…の割には生き物も何もいないじゃないか?」

長門「名前だけ…活動自体は、好きに集まって雑談するだけ…」

20: 2010/04/02(金) 09:37:02.46 ID:mP/FTvlK0
長門「貴方を…迎えに来た…」

言われるまま来たのは、サークルの部室が集まった棟だった
ガチャリ

長門「入って」

キョン「ここは…?」

長門「サークル活動の部室」

キョン「サークル…」

長門「ひよこ研究会…略してひよ研」

キョン「ひよこ…の割には生き物も何もいないじゃないか?」

長門「名前だけ…活動自体は、好きに集まって雑談するだけ…」

21: 2010/04/02(金) 09:41:32.61 ID:mP/FTvlK0
キョン「なるほどな。部外者の俺が入っていいのか?」


長門「自由。でも今部員が足りなくて困っている」

キョン「そうか…なら、俺も入れてくれないか」

長門「そのつもりで貴方を呼んだ」

キョン「…なあ、長門がいるって事はやっぱりみんなも…」

長門「残念ながら、SOS団のみんなはいない」

キョン「そうなのか…」

長門「…貴方の知りたい情報を少しなら提供できる」

キョン「情報…?」

長門「まず古泉一樹。彼はひよ研の向かいのボランティアサークルで活動している」

キョン「ボランティア…そういえば谷口と国木田もそんな事を言ってたな」

長門「その二人も活動している。とても積極的」

キョン「そうか…頑張ってるんだな」

22: 2010/04/02(金) 09:43:11.12 ID:mP/FTvlK0
長門「次に朝比奈みくる…彼女はこの大学の附属短大に通っている」

キョン「附属…?古泉の話だとこの大学に入る手続きをしていたと…」

長門「涼宮ハルヒのせい」

キョン「ハルヒ…何でハルヒが…」

長門「不明。予測では貴方との接触を妨害するため。これ以上の情報は皆無」

キョン「そうか…その当の本人は?」


長門「涼宮ハルヒ…彼女は…今とても幸せ」

キョン「幸せ…ああ、彼氏の事か」

長門「……コク」

キョン「そいつは結構」

23: 2010/04/02(金) 09:46:46.31 ID:mP/FTvlK0
長門「朝はまず彼氏からモーニングコール。学校は違うから、夕方にデート」

長門「夜は二人でメールしながら眠る…」

キョン「別れた後に聞くと、強烈だな」

長門「涼宮ハルヒは貴方に情報を知られることを良としていない…」

キョン「…?」

長門「彼女は貴方に対して特別な感情を抱いている…」

キョン「な…」

長門「でもそれは決して恋愛感情ではない。残念ながらその内容は不明」

キョン「また不明、か…」

長門「多分…乙女心というもの…私が話せるのはこんなところ」

24: 2010/04/02(金) 09:48:33.93 ID:mP/FTvlK0
キョン「乙女心ねぇ…まあ、ありがとう長門。今日はそろそろ帰るよ。ひよ研、いつ活動してるんだ?」

長門「曜日は火曜日の放課後だけど、私は大抵ここにいる」

キョン「そうか。話したくなったらここに来るよ」

長門「その方が…私も嬉しい…」

キョン「ああ…じゃあ、またな」

長門「待って…」

キョン「?」

長門「私の…携帯番号を渡しておく。何かあった時に…」

キョン「そうか、ありがとう。長門、じゃあまたな」

サークル棟を後にして、帰路につく

雨はほんの少しだけ小雨になっていた

25: 2010/04/02(金) 09:52:15.09 ID:mP/FTvlK0
1年生6月

学食

谷口「よう、キョン」

キョン「ん…おう」
国木田「…ここ最近元気無いね。何かあったの?」

キョン「…いや…」

谷口「ハァ…お前は分かりやすすぎるんだよ」

キョン「…」

谷口「フラれたんだろ?」

国木田「そうなの!?」

キョン「…ああ」

谷口「やっぱりな…わかるんだよ、何となくそういうのはな」

キョン「…まあ、今は多少は元気だ。長門の誘いでサークルも入ったしな」

26: 2010/04/02(金) 09:53:37.79 ID:mP/FTvlK0
谷口「お、サークルか!俺逹もボランティア活動絶好調だぞ」

キョン「頑張ってるんだってな。そうだ、古泉は元気か?」
谷口「ああ、あいつも元気だよ。…ストレスからか、喫煙し出したけどな」

キョン「タバコ…あいつが…」

国木田「まあ、色々あるんだよ。ところでキョン、今夜予定ある?」

キョン「?いや、特にはないが…」

谷口「実はな、二人で飲み会する予定だったんだよ。楽しくパーッとな」

キョン「へぇ…の割には2人きりなんだな」

谷口「うっ…ま、まあ、ちょっと遅い失恋パーティーも含めて、場所はキョンの家な!」


キョン「お、おいおい…ちょっと待て」
谷口「なんだぁ?もう何も背負うものないからいいだろ?」

キョン「ま、まあな…」

谷口「よし、じゃあ今から早速……!」

ハルヒ「またコソコソ、3馬鹿が密談してるのね」

28: 2010/04/02(金) 09:57:37.40 ID:mP/FTvlK0
谷口「おわぁっ!な、なんだ涼宮か…」

キョン「ハ、ハルヒ…と長門か…」

いつの間にか、ハルヒ逹が後ろに立っている

ハルヒ「で、何を話してたの?暇だから私も聞いてあげるわよ」

国木田「ははっ、実は今日キョンの家で飲み会をするんだよ」

谷口「ああ、友情を深めるためにな。何だったら涼宮逹も来るかぁ?」

ハルヒ「…」

キョン「お、おい谷口…ハルヒが来るはずが…」

ハルヒ「いいわよ」

キョン「…へ?」

29: 2010/04/02(金) 09:58:55.81 ID:mP/FTvlK0
ハルヒ「私も参加してあげるって言ってんのよ。何、迷惑?」

キッ、とこっちを睨んでくる

キョン「い、いやそんなことは…」

ハルヒ「じゃあ問題ないわね。有希も」
長門「――コク」

ハルヒ「決まりね。で、何時から始めるのよ」

谷口「そうだな…あまり遅くてもアレだから夕方6時くらいか?」

国木田「ご飯も一緒に食べればいいしね」

ハルヒ「それでいいわ」

谷口「決まりだな。じゃあ6時にキョンの家集合で。買い出しは俺達に任せておけ!」

ハルヒ「お金は後で渡すわね、じゃあまた6時に」


30: 2010/04/02(金) 10:00:33.65 ID:mP/FTvlK0
谷口「かあーっ!!寂しい男3人が一気に女子2人追加だぜ!」

国木田「興奮しすぎだよ。嬉しい気持ちも解るけどね」

キョン「人数が多いのはいいことだ、それが美人2人ともなればな」

谷口「おっ、キョンもノッてきたな。よしその勢いで買い出しだぁ!」

買い出し中

谷口「買うもの買ったし、そろそろ行くか!」

キョン「そうだな……ん?」

ピリリリリ、と俺の携帯が鳴る

キョン「長門…もしもし」

長門『涼宮ハルヒから色々と情報を聞いた』

キョン『?』

長門『涼宮ハルヒの彼氏は…とても束縛屋。まずサークル活動の参加を禁止。理由は飲み会への参加や他の男性との接触を断つため』

キョン『じゃあ…今回だって…』

長門『でも今回の飲み会は彼には知らせていない。全くのシークレット』

31: 2010/04/02(金) 10:02:24.29 ID:mP/FTvlK0
キョン『そりゃあまた…』

長門『貴方がいるから…彼女も参加した』

キョン『』

長門『これは事実。彼女から聞き出した。貴方がいない飲み会だったら彼女はあのまま帰っていた』

キョン『oh…』

長門『それを言っておきたかっただけ。あと…貴方の家の場所がわからない』

キョン『あ、ああ…近くの目印になる建物が…』

長門に場所を説明し、電話を切る
キョン(…恋愛感情が無い…無い…)

長門『乙女心』

キョン(…乙女心、ねぇ…)

国木田「キョン、何ニヤニヤしてるんだい?」

キョン「…俺もわからん」

国木田「変なキョン」

32: 2010/04/02(金) 10:04:20.21 ID:mP/FTvlK0
キョン「じゃあ…みんな揃った所で…乾杯」

カンパーイ

目の前には高校からの友人が卓を囲んで晩酌している

ハルヒ「あ、あたしカシスオレンジがいい」

長門「―ゴクリ」

未だにハルヒと長門が目の前にいることが信じられない

しかもさっきの長門の言葉――

長門『貴方がいるから…彼女も参加した』

キョン(ハルヒがねぇ…)

ハルヒ「…なにこっち見てるのよ、ばかキョン!」

キョン「い、いや別に…」

ハルヒ「なによぉ!もう…ばかぁ…」

あ、あれ?もしかしてハルヒ…酔ってる?早くないか…まだ始まってすぐだぞ…

33: 2010/04/02(金) 10:07:04.52 ID:mP/FTvlK0
ハルヒ「まったく…もう、ばかキョンがぁ…」

ほんのり頬が赤く…ああ、少しだけ可愛い

谷口「なんだ、もう酔ったのか涼宮?」

ハルヒ「酔って無いわよ!普段からこうなのよ!」

谷口「怖…さっきまで甘々だったじゃねえかよ…」

国木田「あははっ、それは話してる相手が違うからだよ」

谷口「なにぃ…そうなのか、キョン?!」

キョン「何でコッチに振る!俺は知らないぞ」

ハルヒ「もう…キョンったら照れてる。可愛い…」

キョン「いやいやいや…っておいハルヒ。何でこっちに来る…」

フラフラと彼女は近づいてくる

ハルヒ「えへへっ、あたしキョンの隣~♪」

34: 2010/04/02(金) 10:10:17.48 ID:mP/FTvlK0
国木田「…二人がいると空気がピンク色だよね」

谷口「ああ…ムカつくくらいにな」

キョン「お、おい…俺はそんな…長門!」

長門「…私は何も見ていない。烏龍茶が美味しい…」

キョン「ああっ、ハンドルキーパー!!」

ハルヒ「えへへ♪キョンちゃん~キョンちゃん~♪」

キョン「頭撫でるな!甘えるな!」

ハルヒ「…にゃ~♪」

キョン「…もう、勝手にしてくれ…」

35: 2010/04/02(金) 10:12:39.94 ID:mP/FTvlK0
数時間後

谷口「さて、そろそろお開きにするか。今日はいいもん見れたしな」

キョン「…」

ハルヒ「あ、帰るの…」

国木田「そろそろね。僕たちは近いから歩きだけど…長門さんが車だっけ?」

長門「そう。涼宮ハルヒを送っていく」

キョン「帰るのか…」

また部屋に一人になると思うと、少し寂しい気がした

ハルヒ「…」

長門「…」

谷口「じゃあなキョン」

国木田「またね」

36: 2010/04/02(金) 10:14:13.02 ID:mP/FTvlK0


……

ピリリリリ

キョン「メール…知らないアドレス…」

?『寂しそうだったから、谷口にアドレス聞いてメールしてあげたわよ』

キョン「…」

?『別れ際、子犬みたいな目で見られたらほっとけないなじゃないの』

?『おやすみ。風邪ひかないでね。涼宮ハルヒより』

キョン「ハル…ヒ…」

キョン『メールありがとう。ハルヒも風邪ひかないでな、おやすみ』

多分この時くらいから…俺はハルヒに惹かれていったんだと思う

37: 2010/04/02(金) 10:16:22.55 ID:mP/FTvlK0
次の日の昼前程

ピリリリリ

携帯が鳴って目が覚める

…ハルヒから?

ハルヒ『キョン、お腹すいた。早く大学来なさいよ』

キョン「なんだこのメール…」

キョン『お腹すいたなら学食で何か食べればいいだろう?』

ハルヒ『一人で食べるのも味気ないでしょ。待ってるから早めに来なさいよ』

キョン「…」

言われた通り、学校へ行ってしまう俺が嫌だ

38: 2010/04/02(金) 10:18:32.93 ID:mP/FTvlK0
ハルヒ「あ、やっと来たわね。早くご飯食べに行くわよ」

キョン「あ、ああ。長門は?」

ハルヒ「まだ授業があるんだって。だからあんたを呼んだのよ」

キョン「はぁ…」

今日は谷口も国木田もまだ来ていない



ハルヒ「何買ったの?」

キョン「ラーメン。学食の麺には不思議な魅力がある」

ハルヒ「たまには野菜も食べなさいよ」

キョン「一人暮らしじゃあ中々な。ハルヒは…弁当か?卵焼きにミートボール…家庭的だな」

ハルヒ「ふふっ、誉めてくれたから卵焼き一つあげるわ」

キョン「本当か?!」

ハルヒ「本当よ。はい、あーん」

キョン「…!」

ハルヒ「いらないの?」

39: 2010/04/02(金) 10:21:38.57 ID:mP/FTvlK0
キョン「い、いります…あーん…」

ほんのり甘い卵焼き…ああ、ウマい…

キョン(――ポンポン)

ハルヒ「…何よその動き?」

キョン「…癖みたいなもんだ」

ハルヒ「へぇ、食べるとほっぺた手でポンポンするんだ?」

キョン「美味しい物限定で、な」

ハルヒ「…っ!バカキョン!バカ!」

キョン「卵焼きは好物だからな。そんなに大声出すなよ…」

谷口「なんだぁ、またピンクオーラかぁ?」

41: 2010/04/02(金) 10:23:48.42 ID:mP/FTvlK0
キョン「げ…た、谷口…」

谷口「いやぁ、ホント2人ともお似合いだよなぁ。雰囲気も似てるしなぁ」

キョン「…馬鹿な事言うな」

そんな事を言いながら少しだけ嬉しかった

以前…朝倉がいた頃はこんな気持ちをハルヒには抱かなかっただろう

キョン(やっぱり昨日の…なのか)

笑いながらハルヒとお昼ご飯を食べる…それも悪くない日常のかもしれない

42: 2010/04/02(金) 10:26:40.15 ID:mP/FTvlK0
数日後、久しぶりにひよこ研究会に顔を出す

キョン「よう長門…と…」

長門とその隣には…古泉?

古泉「お久しぶりですね。長門さんから色々お話は伺っておりますよ」

キョン「同じ大学の割になかなか会わなかったな」

長門「…」

キョン「で、何を聞いたって?」

古泉「大学に入ってからの事…朝倉涼子の事…飲み会での事」

キョン「…古泉も、ボランティア頑張ってるみたいじゃないか」

古泉「ええ、おかげさまで。実はそのボランティアの活動で少し…」

長門「彼らのサークルと、ひよこ研で遊びにいく提案を持ちかけられた」

キョン「へぇ…」

古泉「我々のサークルが6人…ひよこ研究会が3人と伺っております」

キョン「ふむ…」

古泉「そこにあと一人、涼宮さんを誘えば丁度10人です」

43: 2010/04/02(金) 10:28:16.47 ID:mP/FTvlK0
キョン「ちょっと待て、なんでそこでハルヒを誘う必要がある?」

長門「ひよこ研究会には貴方が所属している。涼宮ハルヒを誘うのは当然」

キョン「そうなるのか…そういえば古泉、閉鎖空間はどうなったんだ」

古泉「消滅しましたよ」

キョン「消滅?」

古泉「ええ、長門さんたちと飲み会した後にスッキと」

キョン「…」

古泉「やはりあなたなのですね」

キョン「でも長門、恋愛感情は相変わらずハルヒには無いんだろう?」

長門「無い」

キョン「…そりゃまた、はっきりと分かるんだな」

44: 2010/04/02(金) 10:30:46.88 ID:mP/FTvlK0
古泉「恋愛感情云々ではないのかもしれませんね…」

長門「しかし今貴方にいなくなられては困る」

古泉「…今回の誘いを断れば多分閉鎖空間も…」

キョン「わかってる、それには参加するよ」

古泉「ありがとうございます。では早速カラオケに予約の電話をいれておきますね」

キョン「…女心ねぇ…」

長門「…」

45: 2010/04/02(金) 10:33:51.51 ID:mP/FTvlK0
カラオケ

古泉「さあ着きましたよ」

長門「まずは顔合わせ」

古泉「今回は2部屋用意したので、途中で入れ替わりながら親睦を深めるのがよろしいかと」

キョン「なるほどな」

古泉「では行きましょう」

当然と言えば当然…ハルヒと俺は一緒の部屋になった

ハルヒ「あたし歌うのちょっと苦手なのよね」

キョン「ライブまでやって、よく言うよ」

部員1「え、涼宮さんライブとかやったの?」

ハルヒ「学園祭でちょっと歌っただけよ」

部員2「へぇ…すごいんだね!」

47: 2010/04/02(金) 10:36:06.54 ID:mP/FTvlK0
ハルヒは見た目が可愛らしい。大学に入ってから少し丸くなった(ように感じる)。性格も拍車をかけて…

部員「どんな歌が好きなの?」

部員「趣味は?」

こんな風に人気者になるのも至極当然だろう

それを見て、ほんの少しだけ胸が痛んだ気がした



カラオケも中盤を過ぎた頃…ハルヒがちやほやされる雰囲気に慣れずトイレに立つ

そこには古泉が立っていた

古泉「どうですか、そちらは?」

キョン「ああ、ハルヒがモテモテだ。多少雰囲気に疲れてきた」

古泉「そうですか。疲れたなら僕たちの部屋に来ませんか?そちらの雰囲気よりは楽になると思いますが」

キョン「そうだな…よし、そっちに行くかな。一応声だけ掛けてくるよ」

元いた部屋の人間に声をかけ、隣の部屋に移動をする

48: 2010/04/02(金) 10:42:33.75 ID:mP/FTvlK0
古泉「いらっしゃい」

長門「―そわそわしても、まだ来ない―♪」

キョン「長門、ノリノリだな」

古泉「彼女も、いい具合に変わってる…のかもしれません」

キョン「そう、か…」

古泉「彼女と離れて不安ですか?」

キョン「ハルヒか?モテモテだから、平気だろう」

古泉「その言い方…あまりいい具合に聞こえないのは気のせいでしょうか?」

キョン「…少し疲れたな…」

古泉「…かなり長い時間ここにいますからね。少し横になったらどうです?」

キョン「そうだな…」

古泉「よければ膝をお貸ししますが?」

キョン「しばらく横になるからな。帰るときに起こしてくれ」

古泉「んっふ」

眠りにつく…

49: 2010/04/02(金) 10:45:59.96 ID:mP/FTvlK0


ほんの少し寝た気がした頃…耳元で声が聞こえる

?「…ン…キョン…」

キョン「ん…ハルヒ…なんでこっちに…」

ハルヒ「ちょっとうざったいから移動してきただけよ。アンタ寝てたの?」

キョン「ああ…疲れててな」

ハルヒ「ふぅん…膝枕、してあげよっか?」

キョン「はい?」

ハルヒ「膝枕よ。ほら、眠いんでしょ?」

そのまま、ポンとハルヒの太ももに乗せられてしまった

古泉も長門も、こちらはあまり見ていない

キョン「…」

ボーッとしながら、彼女の顔を見上げる

こんな角度で彼女を見た事はない

50: 2010/04/02(金) 10:48:28.18 ID:mP/FTvlK0
こっちの目線に気付いた、ハルヒと目が合う

彼女はニコッと微笑んでくれた

覗き込むように、俺だけに笑顔を見せてくれるように

キョン「ハルヒ…」

チョイチョイっと、ハルヒの肩を叩いて耳うちする形をとる

耳元で…彼女にそっと呟く

キョン「本当は…寂しかった…」

言ってしまった弱気な本音

同じくハルヒも耳打ちをしてくる

ハルヒ「…私もよ」

――プツッ

と…自分の中で何かが弾けた

その瞬間からもうハルヒの事しか見えなくなってしまった

51: 2010/04/02(金) 10:52:25.95 ID:mP/FTvlK0
キョン「ハルヒ…」

もう一度、耳うちするように肩を叩く

当然ハルヒは耳を寄せてくる…

ハルヒの頬を手で隠し、周りに見えないよう…頬にそっとキスをする

ハルヒ「―!」

キョン「…」

バカな事をしたにも関わらず…ハルヒはゆっくりと頭を撫でてくれた

俺はまた太ももに頭をのせ、甘い匂いとともに眠りに落ちた

52: 2010/04/02(金) 10:55:31.56 ID:mP/FTvlK0
支援ありがとう


あのカラオケから数日

あんな事をした自分が信じられない

ハルヒは俺を受け入れてくれたという事だろうか…

しかし長門が言うには相変わらず

長門『涼宮ハルヒの感情に変化はない。彼氏とも順調』

長門『カラオケに行ったことも、やはり内緒』

キョン「…何も変わってないって事だよな」

キョン「考えすぎても仕方ない…か…」

布団から出て、学校に行こうと思ったその時

――ピンポーン

キョン「呼び鈴…?」

覗き穴から確認をしてみると

キョン「長門?」

53: 2010/04/02(金) 10:57:40.66 ID:mP/FTvlK0
こんな朝早くに?すぐにドアを開ける

長門「…」

ハルヒ「起こしにきてあげたわよ。どうせ学校サボるつもりだったんでしょ」

キョン「ハルヒ…もか。なんで2人が一緒に…」

長門「私は毎朝涼宮ハルヒを車で送迎している」

キョン「毎朝?大変だな…」

長門「授業時間が同じだから問題無い。何より私から提案した事だから苦痛でもなんでもない」

キョン「そうなのか…で今日はどうして?」

ハルヒ「アンタを起こしにきたって言ってるでしょ?」

長門「移動中、車内で彼女が眠気を訴えた。なので大学から近い貴方の家に寄った」

キョン「」

55: 2010/04/02(金) 10:59:24.39 ID:mP/FTvlK0
ハルヒ「というわけで…ちょっと布団借りるわよ」

キョン「いやいや、わけがわかりません。起こしに来たんでない?学校は?」

ハルヒ「…おやすみぃ…」

ハルヒはさっさと布団に入ってしまう

キョン「長門…」

長門「私は学校へ行く。迎えに来る時に連絡する」

キョン「…マジ?」

長門「―コク」

56: 2010/04/02(金) 11:00:45.90 ID:mP/FTvlK0
ハルヒ「スー…スー…」

ハルヒは無邪気に寝息をたてている

キョン「幼なじみが朝起こしに来るシチュエーションとは、こんなにも複雑なものなのか」

キョン「…しかし、無防備すぎるだろう…」

ハルヒ「スー…スー…」

キョン「今朝はよっぽど眠かったんだろうな…」

キョン「しかし…可愛い顔で寝てるよな…」

ハルヒ「うぅん~……」

ヤバい、理性が…

キョン「ハ、ハルヒ?」

ハルヒ「…ん~…?」

キョン「お、俺学校に行く支度するからな。荷物とか…」

ハルヒ「や…」

キョン「え…」

ハルヒ「いやっ。一緒に寝る…布団入って…」

57: 2010/04/02(金) 11:03:13.63 ID:mP/FTvlK0
キョン「ハルヒ…な、何言って…」

ハルヒ「一緒に寝るの…」

キョン「ああ…わかっ…」

言い終わる前に布団に引き込まれてしまった

キョン「な…お、おいハルヒ…」

ハルヒ「…」

ちょっとのしかかるように…ハルヒが覆い被さってくる

そして手が下腹部に…大事な部分に伸びてくる

キョン「――!」

ハルヒ「……」

言葉に出す余裕なんてない

ただハルヒは手を動かして…男の気持ちいい部分をさすってくる

58: 2010/04/02(金) 11:04:56.76 ID:mP/FTvlK0
ハルヒ「…好きなとこまで、していいからね」

胸…乳Oにまで彼女の手が伸びてくる

彼女は俺の気持ちいい場所を全部触っている…

もう何も考えられない



――

ピリリリリ

ピリリリリ

ピリリリリ

ハルヒの携帯電話が鳴っている

ずっと前から…ずっと鳴ってる。多分長門からだろう

でも二人は電話なんて気付かないフリをして…

ずっと抱き合って、ずっと…

59: 2010/04/02(金) 11:09:12.75 ID:mP/FTvlK0


……

ピンポーン

呼び鈴が鳴る

ガチャリ、と扉をあけ出迎える

キョン「長門か…」

長門「あまりに連絡がとれないので迎えに来た」

キョン「そ、そうか…ちょうどさっきハルヒも起きてな…」

長門「…」

ハルヒ「あら、有希じゃない。迎えに来てくれたのね」

長門「…」

ハルヒ「ありがとうね。じゃあ今日はそろそろ帰るわね。キョン、明日はちゃんと学校行きなさいよ」

キョン(同じ布団で過ごしておいて…まあバレないようするのは当たり前か)

60: 2010/04/02(金) 11:10:57.74 ID:mP/FTvlK0
ハルヒ「じゃあ、またね」

長門「……(ボソッ)」


…二人は帰っていった

もう一度布団に潜り込む

ハルヒの匂いが枕に残っている

キョン「…ハルヒ…」

キョン「最後に長門が言ってた言葉…」

長門『何も変化は―していない』

ハルヒの中にはまだあの彼氏がいて…何も変わってないって事かよ…

キョン「それでも俺は…もうハルヒに惚れちまったんだよ…」

キョン「俺だって男だ…」

61: 2010/04/02(金) 11:12:21.12 ID:mP/FTvlK0
次の日の大学…放課後

学食にハルヒがいた

キョン「よう」

ハルヒ「ちゃんと授業出たの?」

キョン「おかげさまで」

ハルヒ「そう」

……

キョン「あのさ、ハルヒ」

ハルヒ「ん?」

キョン「俺、ハルヒの事が好きだ」

ハルヒ「…」

63: 2010/04/02(金) 11:15:33.53 ID:mP/FTvlK0
キョン「大学に入ってから…新しくハルヒの魅力に気付いて…好きになった」

ハルヒ「うん…」

キョン「俺と付き合って欲しい」

ハルヒ「…」



長い沈黙

ハルヒ「あのね…私もあなたの事は好きよ。でもね…」

キョン「…」

ハルヒ「キョンとは付き合えないの。ごめんね」

キョン「…ああ、そうか」

ハルヒ「告白してくれて嬉しかったわ、ありがとう」

キョン「ああ…。こっちこそ悪かったよ。彼氏がいるのにさ」

ハルヒ「……」

彼女はそれに関しては何も話してはくれない

65: 2010/04/02(金) 11:17:41.88 ID:mP/FTvlK0
キョン「もう好きでいるのも迷惑になるよな…これからは普通に友達でいるよ」

ハルヒ「え…うん…アンタがそう言うなら…それで…」

キョン「じゃあ、俺は帰るよ。またな」

ハルヒ「うん…また…バイバイ」


学食の外に出ると、古泉と長門が立っていた

長門「…」

古泉「言ったんですね」

キョン「ああ。彼氏がいるってスッパリ断られちまった」

古泉「ほう…それはそれは」

キョン「…何かあったのか?」

66: 2010/04/02(金) 11:19:27.60 ID:mP/FTvlK0
古泉「実は閉鎖空間が…復活したんですよ」

キョン「閉鎖空間…それは、どっちの?」

古泉「神人が体育座りしている、相変わらずの閉鎖空間ですよ」

キョン「…俺のせいなのか?」

古泉「あなたが要因なのは確かですよ。しかし相変わらずです…どうしようもないのが現状です」

キョン「そう…か」

長門「今は涼宮ハルヒを見守るしかない…」

今の俺には何もできないんだな…

67: 2010/04/02(金) 11:21:42.65 ID:mP/FTvlK0
次の日

ピリリリリ

ピリリリリ

またメール…ハルヒだ

ハルヒ『ご飯食べるから学校来なさいよ?』

キョン「…」

昨日あれだけ告白を爆氏したにも関わらず…また来なさいよメールか

キョン「女心なんて知るか…知るもんか…」

15分後、俺は走って大学に向かっていた

そんなに大して変わらなかったある日…ハルヒに変化が訪れた

68: 2010/04/02(金) 11:23:02.23 ID:mP/FTvlK0
顔を合わせても挨拶もない。昼食も食べない

目に見えて落ち込んでいるその様子はまさに…

キョン(…もしかして、フラれた…のか?)

ピリリリリ

キョン「古泉?もしもし?」

古泉「出ました、久しぶりの閉鎖空間ですよ。原因は涼宮さんがフラれた事のようです」

キョン「ああ、やっぱりな…」

古泉「正直、生きて帰れるかわかりません」

キョン「マジかよ…」

古泉「それほどの規模ですよ。よほど彼氏の事が大事だったのでしょうね」

キョン「それがフラれたとなれば、な…」

69: 2010/04/02(金) 11:25:07.89 ID:mP/FTvlK0
古泉「…念のため言っておきますと」

キョン「ん…」

古泉「今あなたが何を言っても、彼女には届きません…閉鎖空間に変化が起こるわけでもありません」

キョン「…ハルヒにとって俺はいらない人間ってわけか」

古泉「恋愛だけに関して言えばそうみたいですね。でも…」

キョン「でも…なんだよ」

古泉「本当にいらない人間ならば、あなたは事故にでもあっているはずですよ」

キョン「怖いことをサラッと言うな」

古泉「ちょっとしたジョークですよ。戦いの前の…ね。ではそろそろ…」

キョン「ああ…またな」

古泉「はい、また会いましょう」

71: 2010/04/02(金) 11:27:32.14 ID:mP/FTvlK0
1年生10月

ハルヒがフラれた…

狙ってる男からしたら、落ち込んでる今は攻め時なんだろう

でもハルヒはそれを望んでいない…声をかけても閉鎖空間が消える事はない

メールを送っても返ってきやしない

以前のような笑顔を、もう俺には見せてくれない

だったら俺は…

しばらくハルヒから離れることにした

72: 2010/04/02(金) 11:29:06.07 ID:mP/FTvlK0
それくらいの頃からだ。谷口が頻繁に遊びに誘ってくるようになったのは

夜な夜な、サークルの人間と集まっては夜遊びしているらしい

国木田はあまり夜遊びする性質ではなかったらしく、夜はあまり出歩かないらしい

何度か谷口に誘われて、夜の街に出かけた

サークル繋がりで、生還したらしい古泉も何度も合流し遊びに出かけた

毎晩、毎晩…本当に毎晩

誘わないでくれと言った日も家に乗り込んで来ては、つれ回し…

断ると、ノリが悪いと、古泉と谷口に悪態をつかれた

そんな生活に…少し疲れてしまった…

73: 2010/04/02(金) 11:31:29.54 ID:mP/FTvlK0
11月頃、俺は限界だった

断っても断っても誘ってくる古泉

学校はもちろん、バイトの終わり際…休日でさえ家まで執拗に迫ってきた

キョン「…」

俺はすっかり元気を無くしていた

休まる日が全くなかった

学校、バイト、気の休まらない友人と朝まで出かける…安息の場所が無い

キョン「…逃げ出したい…」

その時また携帯が鳴った

相手は古泉だ

出ないでいると、30秒後に谷口…また30秒後に古泉…

ウザイ

キョン「…この電話の後、また家に来るんだろうな…」

キョン「…逃げ出そう」

軽く荷物をまとめ…電話を見つめる

74: 2010/04/02(金) 11:33:14.03 ID:mP/FTvlK0
ピリリリリ

長門『もしもし…』

キョン『もしもし、長門か。少し相談したいんだ。今から来てもらえないか?』

長門『…わかった。貴方の家に行けばいい?』

キョン『いや家は…そうだな、とりあえず迎えに来てくれ。それから話す』

長門『わかった。すぐに向かう』

キョン『待ってるよ』

ピッ

電話を切った後、何の迷いもなく俺は携帯を床に叩きつけた

ガシャッ!

割れた破片を踏まないよう、俺は家を出た

外には長門の車が止まっている

75: 2010/04/02(金) 11:36:50.42 ID:mP/FTvlK0
長門「貴方のから方から連絡が来るのは珍しい」

キョン「…早かったな」

長門「ちょうど外出していた」

キョン「そうか、悪かったな」

長門「構わない…話とは?」

キョン「古泉達の事さ」

長門「…噂は聞いている」

キョン「もう疲れちまったよ…」

長門「古泉一樹…大学に入ってから彼の良い噂は聞かない」

キョン「…」

長門「何かの糸が切れたのか…毎晩遊び回っては、喫煙。喫煙しては遊び回って…」

キョン「そういえばハルヒは…」

76: 2010/04/02(金) 11:38:29.08 ID:mP/FTvlK0
長門「やはり良い噂は聞かない。心の隙間を埋めるため様々な男性と付き合っている」

キョン「……」

長門「ただ、どれも愛情と呼ぶには程遠い。彼女が一方的に寄りかかってるだけ」

キョン「恋愛依存みたいなものか…」

長門「閉鎖空間もその度に発生している。古泉一樹もいい加減イライラしている」

キョン「…それが幸せなら、いいんじゃないのか?」

その話を聞いたからか…あの時フラれたからか…今はそれほど彼女に興味は無くなっていた

長門「人間は…」

キョン「?」

長門「自分に好意をもってくれる人間を好む」

長門「敵で無いことが認識できると、人間は心を開く…」

77: 2010/04/02(金) 11:40:59.11 ID:mP/FTvlK0
長門「でもそのためには…心を開く側…最初に一歩踏み出す人間が必ずいなくてはならない…」

キョン「…」

長門「貴方はその一歩を…誰に対しても貴方から踏み出す…そんな人間」

キョン「…」

長門「貴方は優しすぎる…だから涼宮ハルヒも貴方に好意を持ち…古泉一樹も調子に乗りすぎてしまう」

キョン「…」

長門「たまには怒ることも大事…自分の気持ちを素直に表す事も…」

キョン「…なあ、長門…ちょっとだけ…」

長門「…何?」

キョン「ちょっとだけ泣いていいか?」

長門「…構わない。もうすぐ家に着く…そこで泣いてくれればいい」

78: 2010/04/02(金) 11:44:09.77 ID:mP/FTvlK0
俺は泣いていた

長門の膝の上で

子供のように、赤ん坊のように

弱音を話せた事、煩わしさから解放された事、今夜だけは静かに眠れる事

それを考えると自然と泣きじゃくる形になってしまった

長門「…つらかったのね」

キョン「ああ…ああ…」

長門「気付けなくて、ごめんなさい」

キョン「長門は…何も悪くない…」

長門「貴方がつらいのに、私は何も出来ない…」

キョン「こうして…話を聞いてくれるだけでいい」

長門「…うん…」

泣きつかれて…いつの間にか寝てしまった

長門の胸に抱きつきながら…小さく、丸くなって…ただ眠った

79: 2010/04/02(金) 11:47:07.47 ID:mP/FTvlK0


キョン「……」

長門「―おはよ」

キョン「…おはよう」

長門「昨日は眠れた?」

キョン「おかげで…グッスリだ」

長門「よかった…学校は?」

キョン「長門は、ハルヒを迎えに行くんだよな?」

長門「今彼女を送迎してるのは別の男性。私の役目ではない」

キョン「そうなのか…」

長門「家にいるなら…それでも構わない」

キョン「いや…ちょっと行く場所があってな」

長門「…どこ?」

キョン「家にもしばらく帰らない…まあ小旅行みたいなものをな」

85: 2010/04/02(金) 12:59:05.16 ID:mP/FTvlK0
規制気をつけなきゃ…


長門「…学校は?」

キョン「数日だから何とでもなるさ」

長門「そう…わかった。何かあったら連絡して」

キョン「ああ…っていっても携帯壊しちまったからな…学校に顔出すよ」

長門「そう…わかった」

キョン「ありがとな、本当に」

そう言って長門をギュッと抱き寄せる―

長門「あ…」

キョン「ありがとう…じゃあ、そろそろ行くよ」

長門「…もう少し、このまま…もう少しだけ…」

キョン「ああ…」

―ギュッ

88: 2010/04/02(金) 13:08:28.11 ID:mP/FTvlK0
>>86
どうもです
さるってました。sageでまったりやります

1年生12月
学校

谷口「キョンのやつ…どうしたんだろうな」

国木田「家にもいない、バイト先からも消えた。携帯も連絡つかない…」

古泉「まさに消失、ですね」

谷口「そんな言い方するなよ…」

古泉「全くの音信不通となりますと…おや、あれは涼宮さん」

ハルヒ「ああ、こんにちは古泉君。みんなで集まってどうしたの?」

谷口「キョンの奴が消えちまってさぁ…寂しがってるわけよ」

国木田「涼宮さん、何か聞いてない?」

ハルヒ「アイツの話なんてしないでよ。どうでもいいし、ダメよアイツは」

古泉「随分…嫌ったものですね?」

ハルヒ「アイツ気持ち悪いのよ。ちょっとストーカーっぽいし…もう話したくもないわ」

89: 2010/04/02(金) 13:17:36.10 ID:mP/FTvlK0
国木田「…」

谷口「…」

古泉(…やはり彼女が原因で彼は?いや、もしかして…)

古泉「…涼宮さん、よかったら今から遊びにいきませんか?」

ハルヒ「ええ、いいわよ。別に予定も無いしね」

古泉「決まりですね。じゃあ行きましょうか」

古泉(やはり、もう彼がいないから、というのは理由にならないのですね…)

谷口「じゃあ、行こうぜ」

古泉「はい…っと、着信が」

ピリリリリ

古泉「先に行ってて下さい。後から追いかけますので」

国木田「わかったよ。じゃあ向こうで待ってるよ」


91: 2010/04/02(金) 13:26:12.61 ID:mP/FTvlK0

古泉「どうしたんですか、長門さん?」

長門「あなたには話しておく…彼は、自らの意思で彼女の元を離れた」

古泉「…我々の会話を聞いてたんですか?」

長門「そんなことは無い。ただの偶然」
古泉「…彼が離れた、とは?」

長門「彼はとても思い悩んでいた。他の誰でもない、古泉一樹のせいで」

古泉「僕が悪者ですか?人のせいにしてれば、楽なものですよね」

長門「彼を追い詰めたのはあなた…」

古泉「彼に気を使えという命令は何一つ指示されてませんので」

長門「…」

93: 2010/04/02(金) 13:34:04.09 ID:mP/FTvlK0

古泉「それに、最近少し涼宮さんが可愛く見えてきてしまいましてね」

長門「――!」

古泉「今は他の男性ばかりですが…いずれ、ね。そういう意味でも彼が脱落してくれたのはラッキーでしたよ」

長門「あなたは…」

古泉「では、涼宮さんが待ってるので…また。ああ、最後に一つ」

長門「…」

古泉「涼宮さんが彼のことをもういらない、とね」

長門「…」

古泉「では、また」

そこから4月まで、キョンが学食に姿を見せる事はなかった

96: 2010/04/02(金) 13:43:38.96 ID:mP/FTvlK0
2年生4月

食堂

谷口「よう、みんな元気だったか?」

古泉「お久しぶり…でもありませんね。あなたとはよく遊んでましたから」

国木田「よく体がもつよね。僕なんて疲れちゃって…」

ハルヒ「国木田君は昼型だものね」

古泉「涼宮さんはすっかり我々に馴染みましたよね。最初からは考えられないくらい」

ハルヒ「あれだけ遊べば当然よ。みんなとは楽しいから余計にね」

4月、新しい季節。雑談に花が咲いている

少し暖かい春陽気…俺が顔を見せたのもそんな日だった

キョン「相変わらず、元気そうだなみんな」

―!

97: 2010/04/02(金) 13:48:25.10 ID:mP/FTvlK0
谷口「おおっ…キョンじゃないか!久しぶり過ぎる…」

国木田「生きてたんだね。11月くらいから姿見えないから心配したよ…」

谷口「お、お前単位は?テストは?」

キョン「学校には来ていたさ。忙しくて学食に顔出さなかっただけでな」

谷口「そうかぁ…まあ安心したぜ」

国木田「そうだよ。フラッと消えちゃうんだもん」

古泉「消失したのかと思ってましたよ」

ハルヒ「本当。氏んでなかったのね」

心なしか、古泉とハルヒの視線は冷たい

キョン「よう古泉。ハルヒ。元気だったか?」

古泉「当たり前ですよ」

ハルヒ「見ればわかるでしょ」

キョン「…」

99: 2010/04/02(金) 13:58:51.40 ID:mP/FTvlK0
国木田「ま、まあせっかくキョンが来たんだからさ、みんなで久しぶりに出掛けようよ?」

谷口「そうだな!古泉達も来るだろ?」

古泉「僕は構いませんが…」

ハルヒ「私は帰るわよ。忙しいから。じゃあね」

彼女はさっさと行ってしまう


古泉「気にしてはダメですよ?」

キョン「…別に気にしてないさ」

数ヶ月離れた後に友人と遊ぶ…
気持ちの回復もあって、そりゃあ楽しいものだった

一方で、古泉がハルヒの事をどう思ってるか長門から聞けたのは、5月に入ってすぐだった

101: 2010/04/02(金) 14:07:33.54 ID:mP/FTvlK0
2年生5月

キョン「古泉がハルヒを本格的に狙っている?」

長門「そう…」

キョン「…最近仲良さげにしていたからな…」

長門「既に何度か2人きりのデートや、よく相談相手になっている姿が目撃されている」

キョン「…」

長門「更に、親しい友人には涼宮ハルヒへの想いを打ち明けている」

キョン「本気なのか…」

長門「今の古泉一樹は機関の足枷が何もないような状態…」

キョン「…」

長門「涼宮ハルヒと付き合おうが、貴方が消えようが、閉鎖空間が広まらなければ何も問題は無い」

キョン「ハルヒのご機嫌一つってのは変わらないんだよな…」

長門「あと、非常に言いにくい事だけれども…」

キョン「ん、なんだ?」

102: 2010/04/02(金) 14:16:02.40 ID:mP/FTvlK0
長門「4月に涼宮ハルヒと貴方が接触した瞬間、閉鎖空間が発生した報告が入っている」

キョン「…」

長門「今の貴方は、彼女にとって危険…」

キョン「なるべく…近付かないようにするよ」

長門「…」

古泉「そうしてもらえると、助かりますね」

キョン「古泉…!」

古泉「少しあなたにお話があって。長門さん、彼を少しお借りしても?」

長門「…構わない」

そう言って長門は席を立った

105: 2010/04/02(金) 14:24:33.00 ID:mP/FTvlK0
キョン「話ってなんだよ…?」

古泉「実は少し悩み事を聞いてもらいたいのですよ」

キョン「悩み事…?」

古泉「ええ。今夜涼宮さんとお会いしてお話するんですけど…」

キョン「……っ」

古泉「貴方なら、何か彼女の喜ぶ話や考え方を知ってるのではないかと思いまして…」

キョン「…嫌みか?」

古泉「いいえ、情報が欲しいだけですよ。彼女が心の奥底で今何を一番望んでいるか。その切れ端でも掴めれば、と思いまして…」

キョン「…」

古泉「どうです?何か知りませんか?」

キョン「あいつは…家族の事で悩んでいた…」

彼女の事を知ってるんだ、と少しの強がりだった

古泉「それは僕も聞きましたよ。今も親身に相談に乗ってる途中ですから」

キョン「…じゃあ他は知らん」

107: 2010/04/02(金) 14:31:32.09 ID:mP/FTvlK0
古泉「そう…ですか。じゃあ最後に。僕は彼女に告白するべきでしょうか?」

キョン「そんなの自分で決めろよ…」

古泉「…心の奥底ではね、もう多分決まってるんですよ。でも誰かの一押しが欲しい。それが相談というものでしょう?」

キョン「…なんで俺に聞くんだよ」

古泉「あんなに近くにいたあなたに背中を押してもらえるなら…自信が持てる気がしましてね」

彼は笑っている

いつもの笑顔より、何だか――

ちょっとだけ含み笑いがあるような顔で、こちらを見て笑っている

キョン「告白…したらいいんじゃないのか。彼女は好き嫌いが分かりやすいから…」

古泉「そうですね…ああ、ありがとうございます。おかげで勇気が出ましたよ」

彼がニコッと笑い席をたつ
一人残った自分の姿が、何だかとても惨めに思えた

古泉とハルヒが付き合い出すまで、そこから1ヶ月とかからなかった

109: 2010/04/02(金) 14:41:02.18 ID:mP/FTvlK0
2年生7月

古泉とハルヒが付き合い出した

―電話

古泉『涼宮さんからオッケーもらえましたよ』

キョン『そうかい、そりゃあよかったな』

古泉『個人的に、これが最後の恋愛でいいかな、なんて思いましてね』

キョン『…』

古泉『ああ、それと…あなたとは友人的な関係は続けますが、機関からの情報をもう話す事は無いでしょう』

キョン『ハルヒにとって、そういう存在だものな』

古泉『理解していただいて助かります。それと…僕たちが付き合ってる事は内密でお願いしますね』

キョン『…ああ』

古泉『では、失礼します』


口外するな、ねぇ…

110: 2010/04/02(金) 14:47:54.55 ID:mP/FTvlK0
同時期

ひよ研部室

キョン「よう長門」

長門「体調は平気?」

キョン「ああ、おかげで。今はもう大丈夫だ」

長門「そう…よかった」

キョン「…」

長門「…涼宮ハルヒの事を話すのは迷惑?」

キョン「迷惑ではないが…もう俺が聞いても意味無いんじゃいのか?」

長門「…一応。どちらかと言うとこれは雑談…噂話のようなもの」

キョン「雑談か…まあそれなら…」

長門「古泉一樹がサークル活動を辞めた」

キョン「辞めた?」

長門「理由は涼宮ハルヒ。彼女が活動への参加を禁止した。彼は二つ返事で承諾」

112: 2010/04/02(金) 14:55:22.40 ID:mP/FTvlK0
キョン「どこかで聞いた話だな…」

長門「理由は他女子への接触の禁止、デートするための時間の確保」

キョン「まあ、わかりやすい…」

長門「更に喫煙の永久禁止。理由はタバコが嫌いだから」

キョン「…ヘビースモーカーには辛いな」

長門「…涼宮ハルヒの方が主導権を握っている様子。今のところは…」

キョン「今のところ?」

長門「男女の仲は変わるもの…」

キョン「そりゃそうだな」

長門「…」

キョン「…」

長門「まだ、つらい?」

キョン「そんなことは無い…」

長門「貴方を見てると…常に何かに悩んでるように見える」

キョン「最近いろんな事があったからな」

113: 2010/04/02(金) 15:04:08.96 ID:mP/FTvlK0
長門「…よければ、私に寄りかかってくれて構わない…」

キョン「俺は…長門には迷惑をかけられない…」

長門「私を信頼していない、と?」

キョン「そうじゃない…今長門に寄りかかったら…ハルヒにフラれたから近付くみたいで」

長門「私は気にしない。何よりそうでない事は私が一番知っている」

キョン「…」

長門「…」

キョン「ごめん。俺には…」

長門「そう…」

キョン「ああ…」

長門「じゃあ一つ…貴方に言う事ができた」

キョン「?」

長門「私は今月中に大学を辞める」

116: 2010/04/02(金) 15:14:39.86 ID:mP/FTvlK0
支援ありがとう


キョン「大学を辞めるって…どういう事だ?」

長門「私はもう涼宮ハルヒに必要とされていない」

キョン「な…」

長門「古泉一樹と付き合った事により、彼女には私がもう必要なくなった」

長門「私がもう大学を訪れる事は無い」

キョン「…それは、もうどうしようもないのか?」

長門「無い。でも大学を辞めるだけで貴方の前から消える訳ではない…」

キョン「つまり、会おうと思えば会えると?」

長門「可能。しかしそこに涼宮ハルヒが絡むと接触は不可能になる」

キョン「…」

長門「最悪の場合、貴方達の前から消えてしまう。今は…例えれば左遷のような状態」

キョン「左遷か…嫌なもんだな」

長門「…」

119: 2010/04/02(金) 15:21:02.27 ID:mP/FTvlK0
長門「貴方が家に来たあの日…大切なものをたくさんもらった…」

キョン「…」

長門「あの日は私にとって一番大切な日…お礼を言いたい、ありがとう」

キョン「俺の方こそ…あの時長門に助けてもらわなかったら、今どうなっていたか…ありがとう」

長門「うん…」

キョン「…」

長門「もう行かなきゃ…」

キョン「そうか…」

長門「連絡先は変わってない…それだけ」

キョン「ああ…またな。…有希」

長門「…それも、とても大切なもの。ありがとう」


長門は部室を出ていった

彼女が座っていた椅子を片付けて…俺も部屋を出た

もうここには来ないのだろう

121: 2010/04/02(金) 15:31:08.82 ID:mP/FTvlK0
夏休みも終わった、10月前半

ハルヒ「じゃあ、そろそろ私は帰るわね」

谷口「おう、またなー」

国木田「またねー」

古泉「ちょうど僕も帰る時間なので送っていきますよ」

ハルヒ「あら、ありがとう。じゃあ行きましょう」



国木田「…分かりやすいよね、あの二人もさ」

谷口「な、何がだ?」

国木田「夏休みに何かあって付き合い出したのかね?」

谷口「そ、そんなこと無いんじゃないかなぁ…」

国木田「見ればわかるでしょ?学校始まってからほぼ毎日一緒に来ては一緒に帰ってるんだから」

谷口「…ああ、そうだな。アイツら付き合ってるんだよ」

キョン「…(まあ、国木田ならいいのか?)」

124: 2010/04/02(金) 15:37:27.50 ID:mP/FTvlK0
国木田「だよね?知らなかったの僕だけ?」

谷口「…サークルが同じだからアイツ(古泉)とは仲良くなってな…まあ早いうちに知ったんだ、俺も」

国木田「ふぅん…」

谷口「まあ、本命彼氏にフラれて、悩んでる所に手を差し出せば…はい、カップル完成ってな」

国木田「嫌な言い方だね?」

谷口「でも実際そうだぜ?彼女できてから付き合いも最悪になったしな…周りはあまり応援してないし」

国木田「何か壁を作ってる感じはあるよねー」

谷口「…で、だんまりのキョンはそれでいいのか?」

キョン「ん、何がだ?」

谷口「涼宮の事だよ。お前好きなんだろ?」

キョン「あんなに嫌われた後じゃあな…お手上げだ」

国木田「彼氏持ちだもんねー」

谷口「お前がそれでいいならいいけどよぉ…」

125: 2010/04/02(金) 15:41:11.51 ID:mP/FTvlK0
谷口「なら、なんでいつも涼宮目で追ってるんだよ?」

国木田「あ、それは僕も思ってた」

キョン「……マジ?」

谷口「お前どんだけ見るんだよ、ってくらいガン見してるよ」

キョン「嘘だ…」

国木田「本当だよ。もう好きじゃないのかい?」

キョン「…頭の中では、もう考えて無い…でも、どこかまだ残ってるんだろうな」

谷口「ふ~ん…まあ後悔しないならいいんじゃねえの?」

キョン「ああ、頭の片隅に入れておくよ」

128: 2010/04/02(金) 15:48:50.90 ID:mP/FTvlK0
2年生11月

放課後、学食

長門がいなくなった

古泉もハルヒも、付き合いだしてから周りの友人の誘いを断りまくってるようだ

いい話じゃないな、確かに

谷口もボランティアの活動が忙しくて走り回ってるようだ

となると残るのは…

国木田「やあ、キョン」

キョン「…よう、国木田」

国木田「今日は誰もいないの?」

キョン「みたいだな。2年近くも通えば、サボるコツも覚えるもんさ」

国木田「そうだね。みんな何かに力入れてる様子だしね」

キョン「何か…ね」

130: 2010/04/02(金) 15:54:46.78 ID:mP/FTvlK0
国木田「…ところでキョン。今週の日曜日空いてる?」

キョン「ああ…今週は大丈夫だ。またどっか行くのか?」

国木田「むふふー、実はね…いや、今はやめておくよ」

キョン「何だよ、気持ち悪いな…変な用事なら俺はパスだ」

国木田「ああ、ごめんごめん。わかったから…実はね、バイト先の女の子と遊ぶ約束があってね」

キョン「…ほうほう、それで?」

国木田「2人きりでデート、ってわけにもいかなくてさ。女友達2人で来るんだよ」

キョン「それで一人男が必要だ、と」

国木田「そうなんだよ。それでね…その女友達がね、高校の時にいた朝比奈さんなんだよ」

キョン「朝比奈さんが!!」

134: 2010/04/02(金) 16:00:20.21 ID:mP/FTvlK0
国木田「この辺りに来てたのが驚きだよね。来るでしょ?」

キョン「も、もちろん…」

国木田「よかった、じゃあ連絡しておくよ。時間はまた後で知らせるから」

キョン「ああ…じゃあ、な」



朝比奈さんに会える…こんな時期に

ハルヒの影響…もう考えるのも億劫だ

今はただ朝比奈さんに会える…その週末を楽しみに眠ろう

135: 2010/04/02(金) 16:07:01.89 ID:mP/FTvlK0
日曜日

国木田「やあ、迎えに来たよ」

キョン「…国木田も車を買ったんだな」

国木田「うん、キョンは車買わないの?」

キョン「俺はまだ免許もとってないからな」

国木田「そっか。まあそのうちかな?」

キョン「そのうちな。…今日はどこへ行くんだ?」

国木田「街外れにある屋内型のスポーツ施設だよ。ボーリング、ビリヤード、ダーツ…何でもあるよ」

キョン「なるほど、選択肢は多い方がいいものな」

国木田「うん。彼女達はもう中で待ってるってさ」

キョン「よし…行くか」

国木田「うん」

137: 2010/04/02(金) 16:15:23.14 ID:mP/FTvlK0
施設の中に入ると色んな音…歓声やボーリング玉が床を転がる音…賑やかだ

国木田「あ、いたいた。やあ」

キョン「あ、朝比奈さん…」

朝比奈「キョン君…お久しぶり…ですね」

キョン「2、3年ぶりですね。こっちに来てたのは知ってましたが、ハルヒの…」

朝比奈さんは軽くウィンクをしてサインを送る

キョン(禁則事項…か。懐かしいな)

国木田「二人だけで世界作らないでよ。ほらこっちの子が~~……」



国木田「ふう、今日は楽しかったね」

朝比奈「はい、誘っていただいてありがとうございました」

キョン「俺も楽しかったよ」

朝比奈「あ…キョン君、よかったら連絡先を教えてもらえませんか?」

キョン「そうですね…じゃあ、はい携帯」

朝比奈「…はい大丈夫ですよ」

139: 2010/04/02(金) 16:23:34.61 ID:mP/FTvlK0
国木田「じゃあ、また今度誘うよ」

キョン「さよなら朝比奈さん…また」

朝比奈「はい」



帰りの車中

国木田「来てよかったね」

キョン「ああ、朝比奈さん可愛かったなぁ…」

国木田「どれがボーリング玉かわからなかったよね」

キョン「ああ…いい眺めだったな」

国木田「…ねえキョン。朝比奈さん、君に会いたがってたんだよ」

キョン「朝比奈さんが?」

142: 2010/04/02(金) 16:29:31.06 ID:mP/FTvlK0
>>138
それも考えたけど、ホントにここだけの出番なのでやめました


国木田「うん。バイト先の子と色々話していてね。そういう話がね」

キョン「そうなのか…」

国木田「寄ってくる女の子は大事にしなよ?」

キョン「そんなんじゃないだろ。昔の友人に会えるんだから嬉しかったんだろう」

国木田「…の割には僕の事あまり話題に出なかったんだよね」

キョン「…」

国木田「まあ、もうすぐクリスマスだしね。考えてみなよ」

クリスマスか…来月なんだよな…

144: 2010/04/02(金) 16:33:54.33 ID:mP/FTvlK0
2年生12月中旬

街がクリスマス色の準備をし出した頃、それは突然やってきた

ピリリリリ

キョン「…朝比奈さん?もしもし?」

朝比奈『あ、こ、こんにちわ。あの、明日の夕方とか暇ですか?』

キョン『え、明日ですか、はい全然大丈夫です!』

朝比奈『よかった。実はお買い物に付き合って欲しくて…ご一緒してくれませんか?』

キョン『は、はい喜んで!』

朝比奈『よかった…じゃあ明日夕方5時に駅前で大丈夫ですか?』

キョン『わかりました。じゃあ明日!』



朝比奈さんとお買い物かぁ…うん、いい

朝比奈さんか…確かに一時期は心奪われていたけどさ…

145: 2010/04/02(金) 16:39:28.40 ID:mP/FTvlK0
夕方駅前

人混みをかき分け、駅前に着く

もう朝比奈さんはそこで待っていた

朝比奈「キョン君」

キョン「ごめんなさい、遅れました」

朝比奈「大丈夫ですよ。私が早く着きすぎただけですから」

キョン「そういってもらえると助かります…で、今日は何を買うんですか?」

朝比奈「あ、はい。実はお友達にクリスマスプレゼントを買いたくて…」

キョン「なるほど、確かに駅前にはお店がたくさんですからね」

朝比奈「はい。じゃあ行きましょう」

駅前に一つ、大きなお店がある

雑貨や薬品、何でもありのデパートのような所だ

147: 2010/04/02(金) 16:48:26.78 ID:mP/FTvlK0
朝比奈「あ…ここです。このファンシーショップ」

キョン「なるほど…女の子らしいですね」

朝比奈「……」

朝比奈さんはもう品物を探して歩いて

キョン(女性の買い物に口出しはできないからなぁ…)

キョン「朝比奈さん、俺は少し周りのお店を見てますよ」

朝比奈「あ、はいわかりました~」



朝比奈「今日はありがとうございました」

キョン「いえいえ。こちらこそ」

キョン(あれ、俺いなくても良かったのか?)

朝比奈「あの…あの…」

キョン「はい?」

朝比奈「あの、これ…」

差し出されたのは一つの紙袋…

150: 2010/04/02(金) 16:54:10.59 ID:mP/FTvlK0
キョン「これは?」

中身を覗こうとすると

朝比奈「ああっ!だ、だめです!見ないで下さい!」

キョン「うおっ…」

朝比奈「あ…お家に帰ってから見て下さいね。そ、それじゃあ…また…」

サササッと、朝比奈さんは駅に入って行ってしまった

キョン「あ、朝比奈さん…行っちゃった」

約束通り、袋は開けず…家に帰った

152: 2010/04/02(金) 17:02:24.51 ID:mP/FTvlK0
ガサガサ



キョン「…これは…」

中には小さなクリスマスツリーと…ラベルの貼られていないジャムが瓶詰めされていた

キョン「…」

ピッピッ

ピリリリリ

朝比奈『はい、もしもし?』

キョン『プレゼント、ありがとうございました』

朝比奈『…喜んでもらえましたか?何渡すか迷ってしまって…』

キョン『あれはお店で買ったんですか?』

朝比奈『いえ、ジャムは手作りで…プレゼントも結構前に用意していましたよ』

キョン『そう…なんですか…』

155: 2010/04/02(金) 17:10:53.22 ID:mP/FTvlK0
朝比奈『ご迷惑だったかもしれませんが…』

キョン『そんなことないです!すごく嬉しいですよ!』

朝比奈『よかった…』

キョン『…あの、来週暇な日ありますか?』

朝比奈『来週…ですか?…ええ、23日ならあいてますよ』

キョン『よかった。夕方からまた一緒に出かけませんか?今度は俺が隣町まで行きますよ』

朝比奈『ホントですか!はい…大丈夫ですよ』

156: 2010/04/02(金) 17:17:31.79 ID:mP/FTvlK0
キョン『細かい時間はまた連絡しますよ。じゃあ…今日はありがとうございました。ジャム、大切に食べます』

朝比奈『ふふっ、一人暮らしでも、せめて少しでも栄養とって下さいね…じゃあ、さよなら』

ピッ



ジャム…手作り…買っておいてくれたクリスマスプレゼント、隣町まで来てくれた…

キョン「…さて、俺は何を買いに行こうかな」

コートを着て、外へ出る

心なしか、さっきより寒さが無くなった気がした

157: 2010/04/02(金) 17:27:03.85 ID:mP/FTvlK0
12月23日

夜に近い夕方

肌寒い。2年この地域に居たが隣町まで来たのは初めてだ

キョン「待ち合わせ場所は…近くの公園か…」

この辺りに見て回れるお店は殆ど無いと言われてしまったので、公園を場所に決めた

慣れない道を少し歩く。近くても、最初は遠く感じてしまう

キョン「ここか…」

朝比奈さんはまだ来ていない

キョン「朝比奈さんが来たら俺は…」

言ってしまうんだろう

昔の気持ちを思い出して…今は

―ハルヒ

…なんでハルヒが今出てくる?

今は関係ない。あいつらだってクリスマスは忙しいだろう。俺が気にする事じゃない

158: 2010/04/02(金) 17:34:27.26 ID:mP/FTvlK0


朝比奈「お待たせしました」

キョン「朝比奈さん…」

朝比奈「すいません、わざわざこんな所まで…」

キョン「いいんですよ。この前の…お返しで、その…はい、これ」

朝比奈「え…あ、ありがとうございます…これは…」

キョン「クリスマスプレゼント…中身は家に帰るまで見ちゃダメですよ?」

朝比奈「ふふっ…わかりましたよ」

笑顔だ―

キョン「…あの、朝比奈さん…」

朝比奈「はい?」

キョン「朝比奈さんが好きなんです、俺」

朝比奈「……!」

163: 2010/04/02(金) 17:39:09.34 ID:mP/FTvlK0



キョン「あなたにもう一度会えて嬉しかった。また会えると思ってませんでした」

朝比奈「…あたしも…もう一度会えて嬉しい…もう会えないと思ってました」

キョン「そうなんですか?」

朝比奈「彼女…涼宮さんの影響で…」

キョン「またあいつか…」

朝比奈「キョン君も知っての通り…本当は私もキョン君と同じ大学に入るつもりでした」

キョン「…」

朝比奈「でも私はその大学に入れず…隣町まで近付くのが限界でした」

キョン「今まで会えなかったのも…?」

165: 2010/04/02(金) 17:48:50.38 ID:mP/FTvlK0
朝比奈「はい。彼女の影響が弱まったため、今こうして会えてるんだと思います…」

キョン「なるほど…でも、今はハルヒは関係ありません。俺は朝比奈さんに会いたくてここに来たんです」

朝比奈「キョン君…」

キョン「付き合って下さい。お願いします」

朝比奈「…私でよかったら、ぜひ。お願いします」

そっと2人で手をつなぐ…ぬくもりが懐かしい

朝比奈さんは笑ってくれた

これからは朝比奈さんと一緒に生きていける

168: 2010/04/02(金) 17:56:18.26 ID:mP/FTvlK0
朝比奈さんと一緒に年を越した

週末には毎回会える

有名な遊園地にも行った

少し遊園地は苦手だったが、朝比奈さんは喜んでくれた

もちろん大学にも顔は出している

国木田とは相変わらずよく遊ぶ

でも谷口も、古泉もハルヒも…長門も今はあまり連絡はとらない

俺も彼女ができてしまったら、付き合いが悪くなってるんだろうか?

…朝比奈さんがいれば、今はどうでもよかった

169: 2010/04/02(金) 18:03:11.92 ID:mP/FTvlK0
3年生5月

俺たちも3年生になった

生活にも余裕が出てきて、平穏に過ごしている

今日も朝比奈さんとデートだ

今回の場所は電車で1時間移動した街の大型デパート

キョン「このデパート…ショッピングセンターですかね。最近できたばかりなんですよ」

朝比奈「そうなんですか?えへへ、楽しみです♪」

キョン「はしゃぐ姿も可愛いですよ」

朝比奈「もう…バカな事言わないで下さい!」

笑いながら叩いてくる、彼女が愛しい

キョン「ははっ、さて何から見ますか?洋服ですか?小物ですか?」

朝比奈「えっと…今日は洋服な気分ですね。キョン君は何かありますか?」

キョン「俺は合わせますよ。気分でフラフラしてもいいですし」

朝比奈「一緒に歩くだけで楽しいですもんね♪じゃあいきましょう」

170: 2010/04/02(金) 18:09:27.41 ID:mP/FTvlK0
歩く

二人で手を繋ぎながら

ゆっくりと幸せだ

目の前からあいつらが現れるまでは


古泉「…!」

ハルヒ「…!」

キョン「…!」

朝比奈「…!」

これだけ目が合ったら、見てみぬフリもできない

171: 2010/04/02(金) 18:17:34.75 ID:mP/FTvlK0
古泉「こんな所で会うなんて…しかも朝比奈さんまで。お久しぶりですね」

朝比奈「ひ、ひえっ…お、お久しぶりで…」

キョン「…」

ハルヒ「…」

俺たち2人は何も話せない

古泉「朝比奈さんがこちらに来ていたのは知ってましたが…いやはや、まさかね…」

チラリ、と俺の方を見てくる

キョン「ああ、去年から付き合ってるんだ俺たち。偶然会ってな」

古泉「ほう…それはそれは」

キョン「…まあだからデートしてるだけだ。じゃあ、またな」

この場からすぐに逃げ出したかった

古泉「そうですね。では…」

それは古泉も同じようだった

じゃあ、と言おうとしたその時…

ハルヒ「待ちなさいよ」

174: 2010/04/02(金) 18:26:03.19 ID:mP/FTvlK0
―!

古泉「…涼宮さん?」

ハルヒ「久しぶりに会ったんだから、少し話しましょうよ。みくるちゃんと少しお話したいの」

朝比奈「ふぇ?わ、私ですか…?」

ハルヒ「そうよ。じゃあ1時間したらまたここに集まりましょう」

古泉「…わかりました。では、また」

―2人は人混みの中に消えて行った

古泉「…僕たち2人、になりますよね」

キョン「そうだな…」

古泉「少し僕たちも話しましょうか。少なくとも、今日会ったのも…やはり偶然では無いでしょう」

キョン「やっぱり、か…」

古泉「はい。とりあえず、朝比奈みくると接触していた事に驚きましたよ」

キョン「ああ、国木田からの紹介でな…」

古泉「その辺りの事は学校で多少噂になってましたね。僕はあまり興味ありませんでしたが」

176: 2010/04/02(金) 18:40:21.67 ID:mP/FTvlK0
キョン「任務以外は興味ないってか?」

古泉「今の僕は、涼宮さん以外の事に興味はありませんね。彼女、いい具合に染まってますよ。僕色にね」

―ズキッ

キョン「うまくいってるなら、そいつは結構」

あれ、何言ってるんだ俺?

古泉「あなたも付き合う人間が見つかってよかったじゃないですか」

キョン「まあ…な。」

古泉「にしても、人に見つからないようにこの場所を選んでいたのに…全く」

そう言うと古泉は懐からタバコを取りだし、慣れた手つきで火をつけた


古泉「あ、喫煙の事は涼宮さんには内緒でお願いしますね」

キョン「…ああ、わかったよ」


古泉「…」

キョン「何か言いたいのか?」

古泉「以前なら何でも話していましたがね…今は…まあ、いいでしょう。一つだけ」

177: 2010/04/02(金) 18:48:33.98 ID:mP/FTvlK0
古泉「涼宮さんはあなたの事、以前より嫌いではありませんよ」

キョン「…!」

古泉「一時期は本当に嫌ってましたけどね。今は…ほら、こうやって会ってるわけですから」

キョン「なるほどな…全部手のひらの上で踊ってるんだな」

古泉「踊ってるのは、あなただけですよ?いや、あなたと朝比奈さん…ですかね」

キョン「なんだと…」

古泉「そのうちわかりますよ…そろそろ電話が来ますから」

―ピリリリリ

古泉「ほらね?…はい…わかりました今から向かいますよ」

古泉「さて、行きますか。彼女達も終わったようですよ」

古泉はさっさと歩き出してしまった

集合場所にもう2人はいた

そのまま古泉達とは別れた。相変わらずハルヒは目線も合わせてくれなかったけど

嫌われてはない…か

俺たちもなんだか、帰る雰囲気になってしまった

178: 2010/04/02(金) 18:55:13.68 ID:mP/FTvlK0
帰りの電車

朝比奈「…」

キョン「…何だか、変な感じでしたね」

朝比奈「ええ…以前にSOS団で活動してた時とは、やっぱ違うものですね」

キョン「そう言えば…ハルヒと何を話していたんですか?」

朝比奈「涼宮さんとは…そうですね、近況とかをお話していて…」

キョン「近況ですか?」

朝比奈「こっちに引っ越してから、彼女とは接触してませんでしたから…色々と」

キョン「まあ確かに…」

朝比奈「涼宮さんが私を遠ざけたとはいえ、彼女に自覚はありませんから…仕方ありません」

キョン「まあ…それは」

朝比奈「で、色々と。あ、キョン君の事も聞かれましたよ?」

キョン「俺の?」

179: 2010/04/02(金) 19:07:25.22 ID:mP/FTvlK0
朝比奈「はい。付き合った経緯とか…そうですね」

キョン「へえ…」

朝比奈「…キョン君の事気にしている様子でしたよ?少なくとも私の目にはそう見えました…」

キョン「…」

朝比奈「私、少し怖いんですよ。また涼宮さんの影響で何かあるんじゃないかと…」

キョン「今は古泉から情報も聞けませんからね…何とも…」

朝比奈「何かあったら…また私遠くに行ってしまいそうで…」

キョン「長門の事もありますしね…」

朝比奈「心配ですね…」

182: 2010/04/02(金) 19:11:51.86 ID:mP/FTvlK0
キョン「…考えるのはやめましょう。今は朝比奈さんと一緒にいる。それでいいじゃないですか」

朝比奈「そうですね…」

朝比奈さんはギュッと手を握ってくる

彼女が隣にいる…それだけでいいじゃないか…

古泉とハルヒの事を聞いたあの瞬間の

あの一瞬胸がズキッとした感覚は…今は忘れよう

184: 2010/04/02(金) 19:19:07.01 ID:mP/FTvlK0
3年生6月

お昼学食

ハルヒ「…」

キョン「よう」

ハルヒ「あ、キョン。ちゃんと学校来てるのね」

キョン「当たり前さ」

ハルヒ「…」

キョン「…」

確かにハルヒは普通に話してくれる

古泉が言っていた事も嘘ではないようだ

しかし…

キョン「…」

ハルヒ「…」

最近話してなかったせいか、ハルヒとの会話の雰囲気を忘れている

185: 2010/04/02(金) 19:26:46.15 ID:mP/FTvlK0
国木田「や、二人とも」

キョン「国木田!」

ハルヒ「あら、国木田君」

キョン「今からお昼か?」

国木田「うん。あ、キョン。よかったら今日ゲーセン一緒に行かない」

キョン「ゲーセン?珍し…くもないが、最近行ってなかったな」

国木田「でしょ?今2人で協力して進める新作物がさ…」

キョン「ほう…よし行こう!」

国木田「そうこなくちゃ!あ…涼宮さんもよかったら来る?」

キョン「―!」

ハルヒ「行くわ。楽しそうじゃない」

国木田「よし、じゃあお昼食べたら出掛けよう」

ハルヒと遊ぶ…久しぶりだ

確かに、最低限嫌われてはないらしい…

187: 2010/04/02(金) 19:34:23.98 ID:mP/FTvlK0
ゲームセンター

国木田「さあ、やろうか」

キョン「そうだな」

ハルヒ「私は見てるわね。後ろで見てるの好きだから」


うむ…国木田と協力プレイをしながらゲームを進めていく…

その様子をハルヒはジッと見つめている

なぜか背中に汗をかいていたのは、5月の陽気と、室内が暖かすぎたからだろう

188: 2010/04/02(金) 19:42:40.66 ID:mP/FTvlK0
次の日

昼、学食

ハルヒ「あ、やっと来たわねキョン!」

キョン「ハ…ハルヒ?」

古泉「実はですね…彼女がゲームセンターに行きたいと…昨日の影響と伺ってますが?」

キョン「昨日?ああ、国木田と…」

古泉「彼女が私もやりたい、と言い出したので…どうせなら大人数の方が楽しいかと思いまして」

国木田「キョンを待ってたってわけさ。対戦も協力もできるゲームだしね。仲間が増えても」

ハルヒ「そういう事よ。じゃあ早速行きましょう!」

古泉はやれやれ、という形で付いていく

本当に遊びたいのはハルヒの方で…古泉は付き合ってる形なんだな、とその時感じた

…ゲーセンには何だかんだで夜中までいた

189: 2010/04/02(金) 19:51:18.24 ID:mP/FTvlK0
ハルヒ「ううっ…なんで攻撃が当たらないのよ…」

キョン「当たるタイミングがあるんだよ。デタラメに攻撃したらダメだ」

ハルヒ「…昨日初めてやった割にキョンは上手いわよね…」

国木田「本当だよ。キョンはセンスあるよ」

古泉「ええ、後ろで見ていてもよくわかりますね。上手に見える動き…と言いますか」

ゲームとは言え、誉められるのは悪い気はしない

ハルヒ「…絶対見返してやるんだから…古泉君、明日から特訓よ!」

古泉「おやおや…」

キョン「大変だな古泉。まあ、頑張って…」

ハルヒ「あんたも来るに決まってるでしょ!」

190: 2010/04/02(金) 19:58:35.51 ID:mP/FTvlK0
キョン「はぁ?!」

ハルヒ「練習相手がいなくちゃ上手くなるわけないじゃない!いいわね、暇な時は付き合うのよ!」

キョン「…はい」

国木田「あはは、賑やかでいいじゃないか。僕もキョンにお付き合いするよ」

キョン「…ありがとう、国木田…」

ハルヒ「じゃあ、今日は帰りましょう…また明日よ!」

古泉「……」


これをキッカケに…俺とハルヒ達はよく遊ぶようになった

学校が暇な時や休日…たまに国木田が付き合えず3人で遊ぶ時もあった

その時はカップルのゲーセンデートを見せつけられてるようで、少し嫉妬も…

嫉妬?

191: 2010/04/02(金) 20:05:09.19 ID:mP/FTvlK0
なんで嫉妬なんだ?

ハルヒは話してくれるようになった

以前嫌われていたのが嘘のように

その人と会う回数が増えると親睦が深まるというが、それは本当のようだ

親睦が深まって…だから何だ?

ただのお友達に戻っただけだ

それでも何かを期待してしまう…俺はバカな男なんだろう

朝比奈さんという恋人がいるのに

ハルヒが頭の中にほんの少しだけ入ってくる…

193: 2010/04/02(金) 20:15:26.85 ID:mP/FTvlK0
3年生8月

ハルヒ達とゲーセンに通いながらも、テストをそれとなく終わらせる

モヤモヤしてる俺を見兼ねて、谷口が飲み会を開こうと提案してくれた。集合場所はまた俺の家だった

キョン「いや、別にいいんだけどさ…」

谷口「そこそこ広いから、あてにさせてもらってるぜ!今日は人数も…5人だからな」

キョン「俺と谷口と国木田と…あとは誰だ?」

谷口「古泉と涼宮だよ」

キョン「あいつらが?珍しいな、断らなかったんだな」

谷口「…そういや場所がご指名だったのは涼宮から言われたからだな」

キョン「はぁ?」

谷口「お前んちだから、来るんだと。涼宮が」

キョン「」

194: 2010/04/02(金) 20:23:40.57 ID:mP/FTvlK0
谷口「女の子の気持ちってのはわからないもんだねぇ…」

キョン「よくわからない…ま、どうせ秘密秘密の付き合いだろ?」

その時ガチャリ、とドアが開く

国木田「お邪魔しまーす」

古泉「こんにちは」

谷口「よう、みんな来たな。じゃあ座ってくれ!」

少し前なら、ここに長門がいたのかな、とか思い出したり

朝比奈さん、都合が悪くて来れないのがちょっと残念だ、とか

他の女の子の事を考える

でも―

196: 2010/04/02(金) 20:32:47.69 ID:mP/FTvlK0
ハルヒ「じゃあ、乾杯ね」

やっぱり目がハルヒの方を向いてしまう…と意識し出したのは、よくハルヒ達と出かけるようになってからだ

遊びに行く間に、多少…古泉との溝も埋まったような気がした

そうして飲み会は始まった



谷口「ん?古泉、さっきから全く酒飲んでないよな?」

古泉「…風邪をひいてましてね、薬を飲んだのですよ。アルコールと混ざって、何かあったら嫌ですからね」

国木田「…薬なら仕方ないね」

キョン「そうだな」

ハルヒ「…それにしてもキョンの部屋、相変わらず散らかってるのね」

キョン「物が無駄に多いからな。整理してないだけだ」

ハルヒ「ふーん…まあ、男の子って片付けしないものね。キョンは特に!」

キョン「人をものぐさみたいに言うな…」

198: 2010/04/02(金) 20:40:28.18 ID:mP/FTvlK0


ハルヒ「ねえキョン!」



ハルヒ「キョンってさ~ゲーセンでね…」



ハルヒ「キョンって昔さ~…」

キョン(なんでハルヒは俺の話題ばかりなんだ!!)

古泉「…」


古泉の視線が少し痛い

付き合ってることを匂わすまい、と古泉とハルヒは離れて座っている

親しげに会話をするわけでもない

キョン(よくわからないよ…ホントに)

209: 2010/04/02(金) 20:43:13.26 ID:mP/FTvlK0
さると支援感謝です

キョン「…ちょっと俺、夜風に当たってくるわ」

フラフラと少し歩き出す

国木田「いってらっしゃい。風邪ひかないようにね?…風邪といえば古泉君、タバコばっか吸ってるから気管が悪くなるんじゃないのー?」

古泉「え…」

ハルヒ「は…」

谷口「あ…」


後ろで、空気が固まる音がした…が、そのまま俺は外に出る

国木田「ほら、前の授業の時も朝から夕方までさ…」

212: 2010/04/02(金) 20:48:56.13 ID:mP/FTvlK0


キョン(…国木田は口止めされてなかったんだろうか)

キョン(…古泉のあんな声初めて聞いたな)

…ガチャリ

キョン「ん…ハルヒか」

ハルヒ「…どうしたのよ?」

キョン「ちょっと息苦しくてな。ハルヒも休憩か?」

ハルヒ「ちょっと…ね」

…ハルヒはじっとこっちを見てる

その目は何かを言いたそうに…

―さっきの古泉の事か?

―何か悩みがある顔だな?

こんな風に聞けばいいんだ。それだけでハルヒと少し近づける…気がした

キョン「あ、あのさハルヒ…」

―ガチャリ

213: 2010/04/02(金) 20:54:34.20 ID:mP/FTvlK0
古泉「…」

ハルヒ「…」

キョン「…よう、お前も一休みか?」

古泉「ええ。少し」

ハルヒ「…私、中に戻るから」

すれ違いながら、ハルヒは家に入ってしまう

古泉「…」

キョン「…」

沈黙

古泉「先ほど涼宮さんからメールで…」

口を開いたのは古泉の方だった

古泉「…もう何も言う事はない、と…」

キョン「バレたもんな」

215: 2010/04/02(金) 21:01:15.85 ID:mP/FTvlK0
古泉「…どうしたらいいでしょうか」

キョン(俺に聞くのかよ…)

キョン「ああ…まあ、あれだ。謝ればいいんじゃないか?」

古泉「…」

キョン「一番近い場所にいるのはお前なんだからさ。ほら…」

古泉「…ええ。言ってみますよ」

キョン「そっか。じゃあハルヒ呼んでくるよ。すぐのがいいだろ?」

古泉「はい、お願いしますね」

キョン(全く…手間がかかる…)

中に入ると、ハルヒ達が雑談している

キョン「ハルヒ、古泉がちょっと来てくれとさ」

ハルヒ「…ん」

ちょっと考えた後、ハルヒは立ち上がりまた外へ出る

部屋に残った男3人

218: 2010/04/02(金) 21:08:34.58 ID:mP/FTvlK0
国木田「僕が悪いのかな?」

谷口「いや、それは違うな。どちらかというと悪いのはあの2人だ」

キョン「…」

国木田「そう言ってもらえると少し助かるよ」

谷口「…あの様子だと、風邪も怪しいもんだしな」

国木田「…なんか気を使っちゃうね、あの2人がいると」

谷口「古泉は個人的に良いヤツなんだかなぁ…涼宮が絡むとどうも、な」

―ガチャリ

2人が帰ってくる

古泉は俺に見えるよう指で丸印を作る

222: 2010/04/02(金) 21:18:44.96 ID:mP/FTvlK0
どうやらうまくいったようだ

谷口「お帰りさん。さて飲み直すか!」

国木田「そうだね~」

谷口と国木田もほっとした様子で、また飲み始める

―ピリリリリ

小さく俺の携帯が鳴った

古泉『おかげで仲直りできました。ありがとうございます』

古泉もハルヒも、携帯の画面だけを見つめている

人の裏事情や噂話を楽しむ…どうやら俺には向いてない事のようだ

そのまま飲み会が終わって…

嬉しそうな古泉と、どこか悲しげなハルヒが帰っていく姿しか、俺は覚えていない

224: 2010/04/02(金) 21:24:26.53 ID:mP/FTvlK0
3年生10月

古泉『一緒にアルバイトをしませんか?』

学校が始まって少しして…古泉からそう電話がかかってきた

1日のバイトだが人手を探しているのだと

収入があるに越したことはない

…もちろん勤務場所は閉鎖空間…ではなく至って普通の小さな会社だった

-バイト先、午前0時

古泉「書類を整理…判子を押す…更に倉庫整理の単純作業ですよ」

キョン「そうだな。しかし深夜0時スタートというのは体に堪えるな」

古泉「このオフィスはボランティアサークルに関わっている会社でしてね…伝で紹介してもらったのですよ」

キョン「なるほどな」

225: 2010/04/02(金) 21:28:52.02 ID:mP/FTvlK0
古泉「涼宮さんのおかげで、お互いにあれからゲーセン通いですからね…お金も…」

―ピリリリリ

そう言いかけた古泉の携帯が…メールのようだ

多分ハルヒからだろう

古泉「…」

手馴れた様子で返事をしているようだ

…確かに俺達はあれからよくゲーセンに行っている

ハルヒと俺が意気投合し、えらくハマってしまっているのが現状だった

だからこそ、ハルヒとの仲も昔よりはとても自然なモノになっている、気がする

古泉「…さて、始めましょうか。同じ作業ばかりだと飽きるのでたまには交代しながら…」

キョン「だな。始めるか」

227: 2010/04/02(金) 21:33:35.62 ID:mP/FTvlK0
男2人作業を開始する

作業の間も古泉はちょくちょくメールをしている様子だ

キョン(お、俺だって朝比奈さんとメールしてるし…)

よくわからない対抗心を燃やしていた



――

さすがに朝比奈さんからのメールも途絶えた深夜2時頃

―ピリリリリ

携帯…メール?

キョン(…誰から…ハルヒ?)

少しドキドキしながらメールを開いてみる

228: 2010/04/02(金) 21:38:53.02 ID:mP/FTvlK0
ハルヒ『古泉君と夜通しバイトだってね?明日は学校に来ないのかしら?

まあいいわ。とにかく頑張ってね
おやすみ』

…寝る前に俺に連絡をくれる意味がわからない

古泉の方も…携帯はもうあまり気にしてないようだ。似たような内容が来たのだろう

さて、俺も作業に集中するかな…

229: 2010/04/02(金) 21:43:33.86 ID:mP/FTvlK0
朝9時

移動中の車の中

古泉「いやあ終わりましたね」

キョン「ああ。集中すると意外と短く感じたな」

古泉「そうですね。帰る前に少しコンビニに寄りますね」

車をコンビニに停める

古泉は再び携帯を取り出し、メールを返しているようだ

ハルヒは朝から学校…メールするのも当然か

―ピリリリリ

こっちも携帯が鳴る

相手は…またハルヒ…

230: 2010/04/02(金) 21:49:19.42 ID:mP/FTvlK0
ハルヒ『おはよう。バイト終わった?私は今から学校で嫌になっちゃうわ
    アンタの家でまたサボりたい気分よ、なんてね♪気をつけて帰って来なさいよ』

…そういえば昨日は返事をしてなかった事に気付く


キョン『おはよう。今は古泉とコンビニに寄ってる。学校には行かない…眠いからな』

古泉も、まだ携帯をいじっている

多分同じ相手とメールをしているんだろうと思うと少し複雑だ

―ピリリリリ

返事か、早いな

ハルヒ『今学校行く電車に乗ったわ。古泉君も今日は来ないって言ってるし…少し憂鬱だわ』

キョン『なら、本当にサボればいいんじゃないか?あと30分もすれば俺は家にいるぞ?』

冗談だ

あくまで冗談でハルヒに送ってみる

231: 2010/04/02(金) 21:56:20.60 ID:mP/FTvlK0
古泉「そろそろ行きますか。休憩もすんだ事ですし」

キョン「あ、ああそうだな…」

車は朝の国道を走っていく

―ピリリリリ

俺の携帯だ

ハルヒ『本当?なら食べ物くらい買っていくわよ。お邪魔するんだからね』

キョン『…本当に家に来るのかい?』

―ピリリリリ

早い

ハルヒ『もちろんよ。学校から歩いて行ける距離だから…そうね、10時過ぎには行くわよ』

233: 2010/04/02(金) 22:03:12.70 ID:mP/FTvlK0
朝10時頃

古泉「では、また」

キョン「ああ、送ってくれてサンキュな」



古泉は車で帰っていった

その18分後に彼の恋人の涼宮ハルヒが家に来た

古泉は多分知らないんだろうな…

―ガチャリ

ハルヒ「おはよ。バイトお疲れ様ね」

キョン「ああ。作業自体は楽だったけどな。眠気が少しな…」

ハルヒ「…朝御飯食べる?」

ガサリと、ハルヒはコンビニ袋を差し出す

234: 2010/04/02(金) 22:06:23.94 ID:mP/FTvlK0
>>232
はい、大丈夫です


キョン「お、ありがとう。…お金払わなきゃな」

ハルヒ「これはいいの。私が勝手に押し掛けたんだから」

キョン「そうか?何だか悪いな…」

ハルヒ「お菓子も買ってきたから、一緒に食べましょう。それだけでいいわよ…」

キョン「あ、ああ…うん」

とりあえず、と俺はご飯を食べる…不思議だ

数時間前まで古泉とバイトをしていて…今はハルヒと隣り合わせにご飯を食べている

ハルヒ「…ほっぺ、またポンポンしてる」

キョン「え…ああ、まあな」

236: 2010/04/02(金) 22:11:06.17 ID:mP/FTvlK0
ハルヒ「コンビニのおにぎりがそんなに美味しいの?」

キョン「い、いや…嬉しいとついこの癖がな…」

ハルヒ「…変なの」

ハルヒはクスッと笑ってくれる

この笑顔、久しぶりに見た気がする

一時期の嫌われが嘘のようだ

ハルヒ「…眠い」

キョン「ん…ハルヒも朝早かったからな」

ハルヒ「またキョンの布団で寝ていい?」

―ドクン

キョン「あ、ああ構わないさ。お…俺も…ね…寝る…」

ハルヒ「…うん、じゃあ一緒」

238: 2010/04/02(金) 22:17:04.38 ID:mP/FTvlK0
――

キョン「ハルヒ…頭、ほら腕枕…」

ハルヒ「ん…」

腕をハルヒの頭に回すと、彼女は素直に頭をのせる

腕の中にハルヒがいる…

たまらなく愛しい…

朝比奈さんとも、体の関係が無かった訳ではない

でもやっぱハルヒは…何か違う…ずっと頭の中にハルヒがいるような…

ずっとそんな感覚

240: 2010/04/02(金) 22:21:42.84 ID:mP/FTvlK0
キョン「…ハルヒ…」

ハルヒ「キョンてさ、名前呼ぶの好きよね。何度も私呼んでる…」

キョン「っ…ハルヒ…」

そのままハルヒを引き寄せギュッと抱きしめる

ハルヒ「…甘えんぼさんね」

その言葉にまた胸がキュンとなる

彼女は頭を撫でてくれた

子猫を可愛がるように…子供をあやすように

その時はお互い何もかもを忘れて、2人で眠った

241: 2010/04/02(金) 22:26:12.65 ID:mP/FTvlK0
3年生11月

キョン宅

古泉「お邪魔しますね」

ハルヒ「来たわよ」

キョン「おう、2人とも。まあゆっくりしてくれ」

古泉「今日はすいませんね、ワガママ言ってしまって」

ゲーセンに古泉達と通ううちに、色んなゲームで古泉と競うようになった

以前競っていたボードゲームのようなアナログではなく、デジタルなゲームだ

今日は家庭用ゲームで俺と対戦…まあ単純に遊ぶわけだ

古泉「では、早速」

キョン「ああ、やるか」

ハルヒ「頑張りなさいよ!」



古泉「…負けましたね」

243: 2010/04/02(金) 22:32:15.43 ID:mP/FTvlK0
キョン「だな」

古泉「…悔しいですね。ちょっと一人で練習しても構いませんか?」

キョン「ああ、わかった。(…意外と負けず嫌いな性格なのか?)」

ハルヒ「…」

キョン「…俺は少し布団で寝てるからな」

他意はない。ただ眠気があったから言っただけだ

ハルヒ「私も…ちょっと眠いわね。布団借りるわよ?」

キョン「は?い、いや2人で入るなんてさすがに…」

ハルヒ「何勘違いしてるのよ、バカ!隣に寝るわけないじゃない。アンタ反対側に寝なさいよ」

キョン「ああ…なるほどな」

古泉に許可を…と思ったが古泉はゲームに夢中になっている

キョン(こういう所は淡白…なのか?)

244: 2010/04/02(金) 22:39:49.73 ID:mP/FTvlK0
お互い反対になりながら2人で布団…変な感じだ

ハルヒの頭近くでは、古泉が座ってゲームをしている

キョン(近い…)

まあ、当然か

さて、俺は一眠り…



モゾモゾ

キョン(ん…)

モゾモゾ

キョン(…ハルヒの足が…)

モゾモゾ

キョン(俺の足をくすぐっている…)

246: 2010/04/02(金) 22:46:59.98 ID:mP/FTvlK0
ハルヒ「…♪」

キョン(…お返しだ、この)

モゾモゾ

ハルヒ「…っ!」

キョン(ふふっ、目には目、足には足だ)

…モゾモゾ

キョン(ま、まだ来るのか…って…おい…)

ハルヒの足が俺の太ももを這うように、上へ上へ…

キョン(そ、そこは…)

男性の大事な部分にその足が触れようかという時…

ガッ!

俺は手でハルヒの足を掴んでいた

キョン(いかん、それはいかんぞハルヒ…!)

247: 2010/04/02(金) 22:52:31.09 ID:mP/FTvlK0
ハルヒの足は俺の大事な部分にゆっくりと触れた…

足で撫でられる…枕元には古泉がいるのに…

キョン「…」

そしていつしか、俺の足もハルヒの大事な部分を撫でていた

キョン(足が…ハルヒの…)

グリグリと、親指を動かしてみる

その度にハルヒがピクッと動くのがわかる

声はお互い出ていない

ズボンの上からでは、こんなものか…


249: 2010/04/02(金) 23:00:25.40 ID:mP/FTvlK0
古泉「…はい、終わりましたよ。」

キョン「あ、ああ…」

布団の中ではハルヒも俺もまだグリグリしている

古泉「そろそろ再開しますか?」

キョン「い、いや…まだ…ね、寝てる…」グリグリ

古泉「そうですか、涼宮さんも寝てますしね…」

キョン(起きてる…起きてるんだぞ古泉…)

そのままもうしばらく…俺たちは足を動かしあっていた

罪悪感も、彼女にとってはちょっとした刺激なのかもしれない

250: 2010/04/02(金) 23:05:44.08 ID:mP/FTvlK0
3年生12月

―ピリリリリ

朝比奈「キョン君、電話なってますよ?」

キョン「本当だ…古泉?」

古泉『もしもし。今大丈夫ですか?』

キョン『デート中だ』

古泉『それは失礼。では率直に聞きます。今日あなたのデートの後遊びませんか?』

キョン『ハルヒと国木田とまたゲーセンか?』

古泉『そうです。涼宮さんが…』

キョン『?』

古泉『あなたが行かないと嫌だと言って困ってるんですよ…』

キョン「…!」

古泉『お願いできますか?』

252: 2010/04/02(金) 23:13:52.23 ID:mP/FTvlK0
キョン『…ああ。夕方には帰る予定だったからな』

古泉『わかりました。では終わったら連絡下さい。待ってますよ』

キョン「…」

朝比奈「どうしました?」

キョン「いえ、古泉にちょっと誘われてましてね。でもデートは予定通りですよ」

朝比奈「そうなんですか…」

キョン「ええ、ですから…」

朝比奈「最近会っても、キョン君何か上の空ですよね…」

キョン「……!」

朝比奈「何だか別の事ばかり考えてるみたい…」

253: 2010/04/02(金) 23:21:02.49 ID:mP/FTvlK0
キョン「そんなことは…」

朝比奈「…そうですか…ごめんなさい」

キョン「さ、行きましょう?」

手を掴んでも、なんだか彼女は別の場所にいるように思えた

…ハルヒとのいざこざは、朝比奈さんには勿論話していない

よくハルヒと遊ぶ…一緒にいればいるだけ、段々ハルヒが頭の中で膨らんで来て…

目の前に付き合ってる人がいるのに、頭の中に明らかにハルヒがいる

2人の形が歪み出したのは多分これより少し前くらい…

254: 2010/04/02(金) 23:27:27.28 ID:mP/FTvlK0
3年生12月後半

クリスマスに別れのメール…嫌な話だ

朝比奈『私たち、もううまく行かないと思うんです…』

キョン『うまく行かないって…』

朝比奈『私が色々考えすぎちゃって…ごめんなさい』

キョン『…朝比奈さんがそう言うなら…』

朝比奈『…キョン君と付き合えて幸せでした。正直まだ好きです…』

キョン『…』

朝比奈『さよなら…ありがとう』

別に俺は止めなかった。

理由を細かく聞くわけでもなく、そのまま別れてしまった

255: 2010/04/02(金) 23:32:22.73 ID:mP/FTvlK0
…少しだけ悲しかった

でも今も頭の中に小さくハルヒがいた

キョン「…ハルヒ…」

また名前を呼んだ

でもハルヒには彼氏がいて…俺は付き合えない

古泉からちょくちょく話は聞く。いたって順調だと

…俺が入る余地なんて無いじゃないか

そんな女を追いかけた結果…朝比奈さんにフラれた?

自分が不誠実で

バカなだけだ

256: 2010/04/02(金) 23:37:26.21 ID:mP/FTvlK0
―ピリリリリ

こんな時にメール…なんとなくハルヒのような気がした

ハルヒ『クリスマスね。家で引きこもっているのかしら~?』

やっぱりだ

キョン『んー』

別にフラれたから無気力に返事をした訳ではない

最近はハルヒに対してイライラするような感情も浮かんでいた

そのイライラが何に対しての、なのかはわからなかった

ハルヒ『忙しいかったかしら…悪かったわねメールしちゃって』

もうメールは返さなかった

なんだろう、ハルヒから離れたがっているのか?

260: 2010/04/02(金) 23:44:15.70 ID:mP/FTvlK0
12月30日

もうすぐ今年も終わろうという時…またハルヒからメールが来る

ハルヒ『新年になったら、みんなで初詣行かない?』

普通にお誘いのメールだ…普通の

キョン『行かない』

俺は普通じゃない

ハルヒ『…最近なんか冷たくなったわね』

以前までは2人メールで盛り上がっていた…ハルヒの反応も当然だ

キョン『別に』

ハルヒ『…もういいわよ』

もうハルヒからメールは来なかった

当たり前か…

そして新年があけた

少しだけ寂しいお正月を一人で過ごす

261: 2010/04/02(金) 23:49:45.46 ID:mP/FTvlK0
1月中旬

―ピリリリリ

電話だ。ハルヒとの喧嘩以来、ほとんど鳴らなかった携帯

キョン「…自宅から?もしもし…」



話の内容をまとめるとこうだった

両親が親戚の借金の保証人になった
親戚は支払いを放棄…金銭的にどん底になったらしい
俺も大学を辞めて実家に帰ってこい、と

あまりに急すぎて、話が理解できなかった

とにかく帰ってこいとの事なので、挨拶する間もなく一人実家に帰った

久しぶりの実家で待っていたのは、親戚からの金の催促の電話と、両親のもの悲しげな表情だった

妹には事情を知らせてないらしく、変わらない笑顔を浮かべているのがせめてもの救いだった

263: 2010/04/02(金) 23:55:19.80 ID:mP/FTvlK0
鶴屋さんを、キョンが通うバイト先の先輩として登場させるエピソードを思い出したり
でも遅いか?


日に日に…色んな方面から電話がかかってくるようになった

銀行、金融機関…親戚…家族全体が元気を無くしていくのがわかる

…俺も日々両親からの愚痴や嫌みを聞かされ、精神的にまいってきてしまった

…誰かに話したいな

ハルヒや古泉にはいいにくいし…谷口…国木田…

―長門

話しやすさなら長門か…しばらく連絡とってなかったな

…ピリリリリ

長門『もしもし?』

キョン『長門?俺がわかるか?』

長門『わかる。連絡…来ると思ってた』

267: 2010/04/03(土) 00:03:22.96 ID:mP/FTvlK0
燃え尽きたい。鶴屋さんで

時系列は少し戻って、大学1年生

朝倉と別れた直後辺り…新しい事?

そうは言っても、大学だけでは何か物足りない…

…バイト?そうだ、バイトだ

社会勉強や出会い、目的は様々だが、今の俺は何より体を動かしたかった

近場の店…この辺りは賑やかな場所だ。お店はたくさんある

そこで目に付くひとつの店…雑貨屋か。

270: 2010/04/03(土) 00:06:59.21 ID:mP/FTvlK0
主に10代~20代を客層にしてるであろう、フレッシュな感じの雑貨屋だ

キョン「…考える前に、飛び込めってな」

勢いでお店に飛び込み、すぐに店長と話が出来た

翌日履歴書をもって面接をする…すぐに合格がもらえた

感じのいい、それでいてどこか大人の落ち着きがある…そんな店長だった

次の日から、早速バイトが始まった

278: 2010/04/03(土) 01:11:30.59 ID:tKwVb+xi0
店長「じゃあまず…」

キョン「は、はい!何でも頑張ります!」

店長「…ははは、力みすぎだよキョン君?」

キョン「は、はぁ…こういう場所にあまり慣れてないものでして…」

店長「それなら、君と年が同じくらいの人間を付けた方が気持ち的に楽かな?」

キョン「は、はい。近い人がいるんですか?」

店長「ああ、一人元気のいい女の子でね。今日出勤だから…そろそろ」

ガチャ

?「おはようっさ!今日もめがっさガンバ…って、あれ?」

キョン「つ…鶴屋さん…?」

279: 2010/04/03(土) 01:16:18.01 ID:tKwVb+xi0
目の前に現れたのは、かつての知り合い…鶴屋さんの姿だった

鶴屋「?なんでキョン君がこんな所にいるんだい?」

店長「今日から新しくアルバイトに入ったんだよ。二人は知り合いなのかな?」

鶴屋「同じ高校に通っていたんだよ!そっかー、今日からバイト仲間かぁ!」

店長「知り合いなら、紹介する手間も省けたね。彼を面倒見てやってくれよ、鶴屋さん?」

鶴屋「了解!じゃあキョン君、早速売り場で研修にょろ!ダッシュで着替えるにょろ」

キョン「は、はい」

されるがまま、鶴屋さんに引っ張られる

再開した驚きもあれば、一緒に働ける喜びもあった

283: 2010/04/03(土) 01:24:25.14 ID:tKwVb+xi0
鶴屋「いいかい?まずはレジ打ちを覚えて…」

キョン「レジ…」

鶴屋「ここはスーパーじゃないから、慌てて打つ必要はないっさ!」

キョン「あまり行列ができるわけじゃないですよね」

鶴屋「バーコードをちょろんとするだけの簡単作業!そして次は包装を…」



初日からかなり熱心に教えてもらった

働いたことで、確かに気持ちの充実感はある

朝倉の事も忘れられる

284: 2010/04/03(土) 01:26:57.04 ID:tKwVb+xi0
終わった後鶴屋さんが話しかけてくる

鶴屋「仕事は覚えられそうかい?」

キョン「ぼちぼちと…教えてもらった事なら、なんとか」

鶴屋「おおっ、頼もしいねえ!困ったらお姉さんにドンドン相談するがいいさ!」

キョン「ははっ、ありがとうございます。じゃあ電話番号とか…」

やましい気持ちなど…ちょっとはあったのかもしれない

鶴屋「もちろんさ!じゃあコレ…はい」

そんな事は微塵も気にせず、鶴屋さんは快く承諾してくれた

連絡先を教えてもらった

鶴屋さんの優しさ…楽しいバイト先になりそうだ

286: 2010/04/03(土) 01:29:24.77 ID:tKwVb+xi0
ここに入って1週間。慣れたとは言い難いが、鶴屋さんが教育熱心なお陰で頑張れている

鶴屋「店長店長!次の仕事はないかい?」

店長「そうだなぁ…この時間暇だから、キョン君と休憩入っちゃいなよ?」

鶴屋「了解っさ!キョン君休憩だよ~」

キョン「はい。じゃあ休憩いってきますね」

店長「うん。何かあったら呼ぶから、行っておいで」

店長は何かと俺達の事を気にかけてくれて、優しい

鶴屋「キョン君。晩御飯買いに行こうよ!向かいの薬局でさ!」

キョン「薬局…そうですね、何か食べ物でも」

289: 2010/04/03(土) 01:31:10.76 ID:tKwVb+xi0
薬局

鶴屋「ふふふ~、お姉さんがコーヒーを奢ってあげるにょろ!」

キョン「え、いやいやそんな…」

鶴屋「キョン君は頑張ってるからご褒美さ!店長も誉めてるよ」

キョン「店長が…」

鶴屋「だから奢ってあげるにょろ!ただでさえ一人暮らしで色々食べれないにょろ?」

キョン「まあ、それは…じゃあお給料入ったら何かお返ししますね」

鶴屋「いいね!いいね!楽しみにしてるよ♪」

そんな楽しげな会話をしながら、2人で食料を買って休憩室に入る

ラーメンやパン…まさに休憩中の食事だ

鶴屋「美味しいにょろ!」

…彼女の笑顔が、眩しく見えたのはフラれた直後だからじゃない…よな?

291: 2010/04/03(土) 01:40:33.75 ID:tKwVb+xi0
帰る直前、また鶴屋さんに声をかけられる

鶴屋「キョン君、ちょっといいかい?」

キョン「はい?」

鶴屋「はい、これ!」

キョン「ビニール袋?」

中には食料…インスタントラーメンやら、焼きそばやら、カレーやら

キョン「どうしたんです、これ?」

鶴屋「一人暮らしのキョン君に、お姉さんからのプレゼントさ!」

キョン「え!こんなに…悪いですよ…」

鶴屋「後輩の面倒を見るのは当然さ!一人暮らし…飢えは敵だよ?」

キョン「そりゃあ、ありがたいですけど…」

鶴屋「じゃあ決まり!あ、あとこれ…さっきコンビニで買った肉まん。半分あげるさ!」

294: 2010/04/03(土) 01:49:16.97 ID:tKwVb+xi0
鶴屋「…焼きそばの作り方とかわかるかい?お湯に入れるんじゃないよ?」

キョン「だ、大丈夫ですよそれくらい!」

鶴屋「それならよかった♪肉まん冷めないうちにお食べよ~」

笑顔…彼女は笑顔だ

キョン「あ、あの…よかったら今日一緒に帰りませんか?」

朗らかさに引き寄せられるように、勇気を出してお誘いしてみる

もしかしたら…

鶴屋「…ごめーん。今日は店長に送ってもらうのさ」

キョン「店長?今日は残業で整理があるって…」

鶴屋「私は待ってて一緒に帰るだけさ!キョン君は早く帰ったほうがいいよ~」

彼女は陽気に手を振って見送りをしてくれる

帰路につきながら考える…残業に付き合ってまで送ってもらう理由が鶴屋さんにあるのだろうか?

296: 2010/04/03(土) 01:54:37.45 ID:tKwVb+xi0
今日は鶴屋さんがいない。少しだけ気持ちが乗らない

店長「あ、キョン君このダンボールを運んでくれないかい?」

キョン「はい。ん…店長、その指輪…ご結婚なされてるんですか?」

店長「ああ、そうだよ。私より年下なんだけど、これが気立てがよくてね…いい妻だよ」

店長の顔がほころんでいる…嬉しさが滲み出ている

キョン「まさか鶴屋さん…ですか?」

店長「…」

キョン「どうなんですか…!」

299: 2010/04/03(土) 02:02:27.30 ID:tKwVb+xi0
店長「…ハハハ!君って面白いねぇ!」

キョン「え…」

店長「そんなわけないよ。彼女は普通の従業員、私の妻は別人だよ」

キョン「じ、じゃあ前残業に合わせて送迎してたのは…」

店長「彼女はちょっと遠い場所から通ってるんだよ。夜は危ないからね」

キョン「そ、そうだったんですか…なんか変な事言ってすいませんでした」

素直に頭を下げる

店長「いやいや。若いときにはよくある事さ。気にしないよ」

よかった怒ってない…店長も鶴屋さんをそういう目では見てない事がわかった

300: 2010/04/03(土) 02:04:27.59 ID:tKwVb+xi0
バイトで面倒を見てくれる…姉御肌、っていうのか?

傷付いた男が惚れるのに、時間はかからなかった

-電話

ピリリリリ

鶴屋『もしもしキョン君?』

キョン『あ、あの…』

鶴屋『ん?』

キョン『俺…鶴屋さんが好きなんです!』

鶴屋『おおっ…いきなり大胆だねぇ…』

キョン『俺は本気です。好きなんですよ…』

鶴屋『…気持ちはありがとう。でも私は…他に好きな人がいるんだよ』

キョン『…誰です?』

鶴屋『…キョン君には話していいかな、店長さんだよ』

キョン『!…でも店長は結婚していて…』

301: 2010/04/03(土) 02:08:02.05 ID:tKwVb+xi0
鶴屋『そんなの関係ないよ。私は好きになっちゃったのさ』

キョン『気持ちなら負けません…俺は鶴屋さんをずっと好きでいられる…!』

鶴屋『…簡単にずっととか言うのは感心しないね』

キョン『…!』

鶴屋『気持ちなんてスグ変わるものさ。ずっとなんて言葉の安売りしたら…女の子は悲しむよ?』

キョン『…鶴屋さんだって、報われるかわからないじゃないですか…』

鶴屋『私はいいんだよ…報われなくても。店長と働けるだけで幸せさ』

キョン『…今の俺には、わかりません…』

305: 2010/04/03(土) 02:13:01.34 ID:tKwVb+xi0
鶴屋『私と店長はね、以前違うお店で働いていたのさ』

キョン『?』

鶴屋『店長が就職するってなってね…そりゃあ悲しかったさ…』

鶴屋『でも通えないお店じゃない…そうわかったらすぐにその店長と同じお店の面接を受けたんだよ』

キョン『…その気持ちは、なんとなくわかりますよ。俺も同じでした』

鶴屋『うん、そんな感じなのさ。私は近くにいるだけで幸せ。…キョン君がどうだったかは知らないけれどさ』

キョン(俺は…側にいても優しくはできなかった…)

306: 2010/04/03(土) 02:16:32.36 ID:tKwVb+xi0
鶴屋『一つだけ厳しく言わせてもらうと、キョン君の恋愛の考えは子供だよ…でも、まだ仕方ないのかな?』

キョン『…そうですね、頭が少し冷えました』

鶴屋『ごめんね、私も上手く言えないのさ。お説教なんてできないからさ』

キョン『いえ…確かに俺が子供でした。もう少し考えてみます…』

鶴屋『うん…それができたら、少しいい男になれる気がするにょろ!』

キョン『はい、じゃあまたバイトで…』

鶴屋『おやすみ!ちゃんとご飯食べるんだよ!』

彼女に告白のつもりが、諭されてしまった

ああ、カッコ悪いんだな俺…

自分の幼稚さを鶴屋さんが教えてくれた…そう思えば、いい体験か

307: 2010/04/03(土) 02:20:06.34 ID:tKwVb+xi0
それからすぐに、店長はまた異動となってしまった

もちろん鶴屋さんも…また店長のいる店で面接を受けるんだそうだ

彼女がいなくなってからしばらくはバイトもしていたが、やはり辞めてしまった

変わりに、長門のいるサークルに力を入れてみるのもいいかもしれない…

鶴屋さん…彼女は今日も店長のいるお店で元気に笑っているんだろう

308: 2010/04/03(土) 02:23:25.76 ID:tKwVb+xi0
時期的に>>25辺りに入る鶴屋さんでした

自暴自棄、暴走気味なのは朝倉さんに振られた直後だからで

309: 2010/04/03(土) 02:25:13.17 ID:tKwVb+xi0
>>263の続きから

キョン『ああ…あのな…』

長門『大体の事情は察している…』

キョン『…』

長門『…でも、貴方は多分違う』

キョン『え…』

長門『私に連絡をする理由が貴方には無い…』

キョン『いや、話を誰かに聞いてほしくて…』

長門『…』

キョン『…だから…』

長門『ウソつき…』

キョン『なんだよ…何がだよ…』

長門『貴方にとって私は必要?』

311: 2010/04/03(土) 02:26:57.24 ID:tKwVb+xi0
4時半までが限度。終われるかな

キョン『そりゃあ…必要だから…連絡を…』

長門『本当に連絡したい相手は誰?』

キョン『…』

長門『私?』

キョン『違う…』

長門『…素直になるべき』

キョン『…怖いんだよ』

長門『怖い?』

キョン『俺はハルヒに…冷たくしちまった…連絡だって最近とってない』

長門『…』

314: 2010/04/03(土) 02:39:05.78 ID:tKwVb+xi0
キョン『相手が見えないだけでこれだ…』

長門『…もう好きではない、と?』

キョン『それは違う…俺はハルヒが好きだ!好きだから…怖いんだ…』

長門『帰りたくないの?』

キョン『…帰りたい。俺はハルヒに会いたい…話を聞いてほしい…』

長門『うん、それがいい…』

キョン『…』

長門『貴方は大丈夫…もう…』

キョン『ああ…ありがとな…そうだ長門、そっちに俺が帰ったらもう一度どっか遊びに…』

長門『…は…み…』

キョン『ん?どうした?』

長門『…れ…か…』

キョン『長門?おい?!』

長門『……』

317: 2010/04/03(土) 03:00:18.39 ID:tKwVb+xi0
ツーツー

キョン「な…もしもし?くそっ…電波か?」

もう一度かけなおす

『―この電話番号は現在使われておりません―この電話番号は』

嘘だろ…昔の言葉が記憶の中をよみがえる

―キョン「つまり、会おうと思えば会えると?」

長門「可能。しかしそこに涼宮ハルヒが絡むと接触は不可能になる」―

不可能…消えた?長門が?

俺が電話したから?

ハルヒの事をまだ好きだと言ったから?もう会えない?

…長門がいなくなった今は、もうわからない

318: 2010/04/03(土) 03:04:57.07 ID:tKwVb+xi0
2月

今日も1日、両親の愚痴を聞いて終わった

自然と俺は…布団の中でハルヒに電話をしていた

一方的に俺が怒ってメールを終わらせてしまった…あれから連絡など来ない

そんな中俺から電話するのも変な話だが…

長門の言葉を胸に…連絡した

ピリリリリ

ハルヒ『…キョン?もしもし?』

キョン『ハルヒ…起きてるか?』

ハルヒ『普通に起きてるわよ。どうしたの?』

意外にも口調は優しく感じて…聞いてくれる…のか?

322: 2010/04/03(土) 03:09:49.64 ID:tKwVb+xi0
キョン『…実は家族問題が浮上してな。俺は大学辞めると思う』

ハルヒ『え…辞めるなんて嘘でしょ?』

キョン『本当だよ。今も実家にいて毎日悪戦苦闘だ。だから…』

ハルヒ『…』

キョン『ハルヒ達と一緒に4年生にはなれないんだ』

ハルヒ『…嘘よ』

キョン『…本当だってば。金銭面でどうにもならないんだ。奨学金も話したけど、親に止められちまった』

ハルヒ『…』

キョン『今は本当に余裕が無いみたいでな。俺の話もあまり聞いてもらえなくて…』

ハルヒ『……のよ…』

キョン『ん…どうした、ハ…』

ハルヒ『私は…これから誰とゲーセンに行けばいいのよ…!』

323: 2010/04/03(土) 03:16:40.96 ID:tKwVb+xi0
ハルヒ『私…まだあんたに負け越してるのよ…!勝つために特訓だってしてるのに…なんで…勝手に帰るのよ…』

キョン『…対戦なら国木田と古泉がいるだろ。1人くらいいなく…』

ハルヒ『…あんたがいないと面白くないのよ、バカ!』

―ズキッ

ハルヒ『来年の…卒業旅行だってあんたと行きたいし…それに…その…』

キョン『ハルヒ…俺…俺も…』

ハルヒ『何よ…』

キョン『…ハルヒに会いたい』

初めて素直にハルヒに気持ちを話した気がした

離れた寂しさからか、日々のストレスからかは知らない…

ハルヒ『…私もキョンに会いたいな』

キョン『―!』

ハルヒ『会いたいね…』

325: 2010/04/03(土) 03:22:19.16 ID:tKwVb+xi0
キョン『ハルヒ、俺…今は身動きできないけど…』

ハルヒ『ん…』

キョン『でも絶対そっちに帰るから…ハルヒに会いに帰るから…!』

ハルヒ『うん…うん…待ってるから…』

キョン『ああ…』

ハルヒ『…話聞くからね。私に何でも相談してね?』

キョン『ああ…ありがとうハルヒ…』

ハルヒ『うん…特訓して待ってるからね!絶対倒してやるんだから!』

キョン『ははっ、楽しみにしてるよ。じゃあ今日はそろそろ…』

ハルヒ『うん、おやすみなさいキョン…』

キョン『おやすみ、ハルヒ…』

ハルヒに話せてよかった

嫌われてはいなかった…今日はよく眠れそうだ

326: 2010/04/03(土) 03:26:26.22 ID:tKwVb+xi0
4時半間に合わなかったら、1時間くらいで帰って来て書きます

4月

年度が変わり、ハルヒ達は大学4年生になった

俺も退学手続きと上京先からの引っ越しをすませ、実家に帰ってきた

学生を辞めたからには労働せねば…その前に俺は免許をとる事になった

両親に以前の上京先に働きに行く相談したところ…まず免許をとる事が最低条件だった

キョン(ハルヒに会えるためなら何でもやってやるさ…)

ハルヒ補正のおかげか、全ての試験に一発合格

5月には順調に免許をとる事ができていた

327: 2010/04/03(土) 03:31:31.56 ID:tKwVb+xi0
これで会いに行ける…そう思ったが、親からもう1つ条件が出た

親戚との大きな話し合いがお盆にあるらしい

それまで実家にいろ、との事だった

キョン『…てわけでさ』

ハルヒ『もう少しかかるのね。でもこっちには来れるのよね!』

キョン『ああ、頼み込んだからな。生活費全部稼ぐ事が条件だが、帰れなるならいいさ』

ハルヒ『うん!私待ってるからね!早く帰ってきなさいよ!』

地元に帰ってから、ほぼ毎日ハルヒと話していた

電話…メール…ハルヒからもよく連絡をしてくれてた

それだけがただ嬉しかった

そして8月も終わりそうな頃

俺はまたハルヒに会いに帰ってきた

330: 2010/04/03(土) 03:37:59.25 ID:tKwVb+xi0
9月

ハルヒ「キョン再び、って感じね」

古泉「お久しぶりです」

キョン「久しぶりだな2人とも。うーん…この空気、久しぶりだな」

ハルヒ「こうして会うと帰ってたなんて嘘みたいね!」

キョン「本当にな。まあ久しぶりに遊びに行くんだ…俺もストレスがヤバかったからな…」

古泉「お話は色々聞いてますよ。…とにかく行きましょうか」

そういって車に乗り込む

運転手は古泉、助手席はもちろんハルヒだ

3人でこうやって出かけるのも…11ヶ月ぶりくらいか?

国木田にも会いたかったが今日は忙しくて来れなかったらしい

333: 2010/04/03(土) 03:46:31.20 ID:tKwVb+xi0
個人的にキリがいいんで、ちょっと中断

1時間後くらいに多分帰ってきます

>>321
序盤、朝倉さんと県越えデート書こうかと思ったけど時間が足りなかったので
ごめんね

338: 2010/04/03(土) 04:49:18.02 ID:tKwVb+xi0
支援ありがとう


古泉「では涼宮さん、今から彼を送りますので」

ハルヒ「うん、また遊びにいきましょうね!」

キョン「じゃあ、またな」



古泉と帰りの車の中

俺はいいと言ったんだが、話があるから、と古泉

キョン「…」

古泉「帰ってきたんですね」

キョン「ああ」

古泉「しかしなぜわざわざこっちに?家庭が大変だと聞きましたが?」

キョン「…」

まさかハルヒに会うためだけに帰ってきたなんて、古泉には言えない

340: 2010/04/03(土) 04:53:15.65 ID:tKwVb+xi0
キョン「家族の問題は一段落してな。こっちに来たのは…ほら、こっちのがもう慣れた感じがな」

古泉「そんなもんですかね…」

キョン「あ…あと家族から離れたくてな。自立するためだよ」

口から出任せばかりだ

古泉「…なるほどね。そういう理由ならまだわかりますね」

キョン「…」

古泉「ところで、涼宮さんの事ですが…あなたにとっては少しよろしくないニュースです」

キョン「ハルヒ?何がだ?」

古泉「あなたがまた、涼宮さんと接触を持った事により重要人物としてピックアップされました」

キョン「ふうん…」

もう慣れた

古泉「…何かあったらお話しますけど、僕が一番近くにいる事に変わりはありませんからね?」

341: 2010/04/03(土) 04:56:47.17 ID:tKwVb+xi0
キョン「…お前の言葉は何でも嫌みだよな」

古泉「それはどうも。正直に、あなたが帰ってきた事が少々疑問でしてね…」

キョン「…!」

古泉「…まあ、どうでもいい事です。はい、着きましたよ」

キョン「ああ…」

古泉「また誘いますよ。涼宮さんはあなたを遊び相手にご指名ですからね。では」



遊び相手…か

俺、古泉に別に何も悪い事言ってないような気がするんだけどなぁ…

なんで敵対視されてんだろ

少し、ウザったい話だ

343: 2010/04/03(土) 05:03:52.57 ID:tKwVb+xi0
11月

帰ってから、バイトを転々とし…まあフリーターという身分だ

そんな中ハルヒから連絡がくる

ハルヒ『ねえ、キョン。大学の学園祭来るでしょ?』

キョン『学園祭?そんなのがあったのか?』

ハルヒ『…あんた家出してたりしてた時期だから知らないのね。来週あるのよ』

キョン『へえ…何か出し物でもするのか?』

ハルヒ『私は役員の手伝いをするのよ。古泉君たちは…来ないって言ってるけど』

キョン『卒業の年なのにか?』

ハルヒ『もう3年参加いたからいいって…言ってるわよ』

キョン『…まあ、暇があったら考えてみるよ。』

344: 2010/04/03(土) 05:11:26.30 ID:tKwVb+xi0

学園祭当日

ピリリリリ…メール?

ハルヒ『ヤバイヤバイ!寝坊しちゃったわ…』

キョン『送る相手間違ってないか?…大学で適当にブラブラしてるよ』

…彼女とは学校で再会する形となった

ハルヒ「…もう来てたのね」

キョン「ああ、一回りしたけど結構楽しいもんだな。」

345: 2010/04/03(土) 05:20:20.59 ID:tKwVb+xi0
キョン「で、メール間違えてないか?俺は役員でも何でもないんだしな…」

ハルヒ「あんた一人で出歩いて、迷子にならないよう気を利かせてあげたのよ!」

キョン「…そういえば、広場の中央に掲示板があっただろ?知ってるか?」

ハルヒ「!や…役員なんだから、知ってるに決まってるでしょ?誰でも自由に、メッセージを残せるのよ」

キョン「なかなかシャレた感じがしてな、俺は好きだったぞ」

ハルヒ「…よ、読んだの?」

キョン「ああ、個性が出るよなああいうのは…色んなメッセージがあってよかったよ」

ハルヒ「…で?」

キョン「は?いや…よかったな、と…」

ハルヒ「…まあ、いいわ。私役員の手伝いに行くから。またね」

ハルヒはその場をサッと引き上げてしまう

346: 2010/04/03(土) 05:28:15.53 ID:tKwVb+xi0
キョン「なんだ、ハルヒのやつ…掲示板に何かあるのか?」

あの態度が気になって、掲示板を見に行く…

さっき見た時より若干メッセージが増えている以外は…変化がないように見える

キョン「…ん、裏にもメッセージがあるのか」

―学園祭絶対成功!
―準備万端!
―最高のお祭りに!

…裏は役員が気合を入れるスペースのようだ

役員?まさかハルヒのも…と、探す手間も無かった

…極太の赤マジックで「キョンが学園祭に来ますように!!」

347: 2010/04/03(土) 05:37:44.41 ID:tKwVb+xi0
キョン「…」

彼女に電話…出るだろうか?

ハルヒ『もしもし?』

キョン『なんだよあのメッセージ!恥ずかしい所じゃないぞ!』

ハルヒ『…う、うるさいわね!3ヶ月も前なんだから仕方ないでしょ!』

キョン『…3ヶ月?』

ハルヒ『学園祭の準備自体は、7月くらいからコツコツやってるのよ』

キョン『ああ、確かにそれくらいだな』

ハルヒ『…準備の段階で、掲示板に学園祭の目標を書けって言われたから…』

キョン『…』

ハルヒ『キョンがこの学園祭までに帰ってきますようにって…気合入れてお願いいただけよ…』

349: 2010/04/03(土) 05:54:22.14 ID:tKwVb+xi0
↑お願い『した』


キョン『…』

ハルヒ『な、何か文句ある?!』

キョン『い…いや、ありがとう』

ハルヒ『何でお礼なんていうのよ…!こうして戻ってくれたから、もうこれでいいのよ!』

キョン『そうかもしれないな…今こうして近くにいるのも不思議だよな』

ハルヒ『ね…そろそろ忙しくなるから、切るわよ。今日は来てくれてありがとう』

キョン『ああ…また今度遊びにいこう』

ハルヒ『うん、またね!』

でもこの時期を境に俺たちは忙しくなり…他の理由も重なり遊ぶ約束が守られる事はなかった

350: 2010/04/03(土) 06:04:20.86 ID:tKwVb+xi0
4年生2月

あれから俺は色々仕事をしながら、休日に国木田、谷口と遊んでいた

学校を辞めてからも、国木田や谷口とはよく会う事ができた。都合を合わせてくれるからだ

…ハルヒや古泉とはあの学園祭以降全く会っていない。何かと忙しい、の理由ではじかれてしまう

そんな日々を過ごし…年を越しながら…

ハルヒからはいまだに雑談の連絡がたまに来る

ハルヒ「もうすぐ卒業ね」

キョン「そう言えばハルヒ達はもう卒業か」

以前一緒に行こうと言われた、卒業旅行の話…彼女は忘れているようだった

キョン(…言えるわけないよな)

ハルヒ「どうしたの?」

352: 2010/04/03(土) 06:14:12.43 ID:tKwVb+xi0
キョン「い、いや、何でもない…それより最近忙しそうだったな?」

ハルヒ「学園祭終わってからは就職活動でね。最近は暇なんだけど、古泉君の体調が良くないらしいのよ」

キョン「…そうなのか?」

古泉か…体調が悪い。少しだけ心配だな

ハルヒ「だから遊びに行けないのよね。もう1週間くらい体調悪いらしくて…治ったらまた誘うわよ」

キョン「ああ…わかったよ」

ハルヒ「…あ、あとね私最近車買えたのよ!」

キョン「へえ…すごいもんだな、そりゃ」

ハルヒ「…もう少し前の時期だったら、一緒に遊びに行けたのにね」

354: 2010/04/03(土) 06:19:39.98 ID:tKwVb+xi0
キョン「あ…ああ…うん。そうだな…」

ハルヒ「…なんてね♪そろそろ私は休むわね、おやすみなさい…」

キョン「ああ…おやすみ」

もうすぐハルヒ達は卒業か…

その次の日、学校も終わるこの時期に、国木田と谷口と久しぶりに飲み会をする事になった

今回は古泉とハルヒは欠席…というか最初から誘ってなかったみたいだ



3人の酔いがまわり空気が良くなった頃…谷口がある話題で話しかけてくる

356: 2010/04/03(土) 06:27:55.50 ID:tKwVb+xi0
谷口「…そうだキョン。明日一緒に温泉行かないか?日帰りだけどな」

キョン「ん?明日か?」

谷口「おう!国木田も誘ったんだが、今のとこ古泉しか行ける人間がいなくてな…」

古泉?

国木田「明日はどうしても僕、行けないんだよね」

谷口「今男2人だけでなぁ…まあ古泉とはよく遊ぶからそれでもいいんだけどな」

よく遊ぶ?

キョン「…よく遊ぶって、最近か?」

谷口「ああ。ここ1週間くらいよく一緒にいるな。あいつから誘いの連絡が来てな」

358: 2010/04/03(土) 06:36:02.40 ID:tKwVb+xi0
国木田「一昨日なんて2人から電話が来てさ。真夜中に今から遊びに行こう、だもん。参ったよ?」

谷口「古泉もなかなかノリが戻ってなあ…涼宮と付き合い出した当初よりもな」

キョン(ああ、古泉もやっぱいたのか…)

キョン(体調が悪くて…か…)

キョン「悪いけど…明日は俺も忙しいんだ」

谷口「なら仕方ねえな。古泉といってくるよ」



国木田「じゃあ、僕たちこっちだから」

谷口「おう、また飲もうなー」

…国木田と2人道を歩いている

なぜだか俺は、さっきの事を無性に国木田に話したくなっていた

キョン「…あのさ国木田」

国木田「ん?どしたのキョン?」

359: 2010/04/03(土) 06:42:22.93 ID:tKwVb+xi0
キョン「古泉の事なんだが…明日谷口と出かけるって言ってたよな?」

国木田「?うん」

キョン「…一昨日も谷口と一緒にいたって言ってたよな?」

国木田「うん。それがどうしたのさ?」

キョン「古泉のヤツさ、ハルヒにはここ数日体調が悪いって言ってるみたいなんだ」

国木田「…は?」

キョン「だから…ハルヒには体調悪いって言って、裏では谷口と遊んでるんだよ…」

国木田「うわぁ…でもなんで涼宮さんの事情も知ってるの?」

キョン「よくメールするからな。彼女からもよく連絡が来る」

国木田「…涼宮さん、それもどうかと思うけどね」

キョン「彼女の事は俺もわからん…」

国木田「…」

キョン「…」

362: 2010/04/03(土) 06:50:45.09 ID:tKwVb+xi0
国木田「…そう言えばね、喫煙も辞めてないらしいね。谷口も言ってたよ」

谷口『もう、俺といる時は吸いっぱなしだぜ?何が理由か知らんがよっぽどストレスたまってるんだな』

国木田「…ってさ」

キョン「ストレス…嘘、か…」

国木田「…で、キョンはどうするのさ?」

キョン「…何がだ?」

国木田「もう卒業だよ?みんな就職…涼宮さんもどこに行くかわからないし」

…確かに、就職先は決まったがどういう地域に配属になるかはわからない、とハルヒは言っていた

国木田「最後に告白とかしないの?」

キョン「…告白はしない」

国木田「もう会えないかもしれないのに?」

363: 2010/04/03(土) 06:56:51.52 ID:tKwVb+xi0
国木田「それとも彼氏がいるからかい?」

キョン「ハルヒに告白しても、何も変わらないような気がするんだ…」

国木田「どういう意味で?」

キョン「以前と変わらない、ずっと普通にお友達でいましょうってスタンスをとるに決まってる」

国木田「それはわからないじゃない?」

キョン「ハルヒはそういうのはわかりやすいからな…俺は今は言えないよ」

国木田「はぁ…キョンがそれでいいならいいけどさ」

キョン「…ハルヒは、古泉と別れる事を望んでないだろ。付き合ってるそれが証拠だ」

国木田「…じゃあ今回の一件も報告とかはしないのかな?」

キョン「別に2人の仲を引き裂きたいわけじゃない…」

国木田「じゃあ君はなんなのさ?」

365: 2010/04/03(土) 07:19:13.61 ID:tKwVb+xi0
国木田「君は涼宮さんにとって都合のいい男なんだよ」

キョン「…」

国木田「連絡はマメにする、優しくチヤホヤしてくれる…女王様だよ」

キョン「あいつには弱いんだよ…」

国木田「惚れた弱み…ってやつね…これから弱いままでいるの?」

キョン「俺は…ハルヒがいてくれれば…」

ハルヒがいれば…

ハルヒがいたから俺はここまで戻って来たんだ

…あれ?

今なんで俺ここにいるんだ?

俺はいったい何をやってるんだ?

366: 2010/04/03(土) 07:28:24.80 ID:tKwVb+xi0
国木田「ねえキョン…君はいま幸せ?」

キョン「いま…」

国木田「確かに涼宮さんと遊んでいるキョンは幸せそうだったよ。すごい笑顔だった」

キョン「…」

国木田「でも、日に日に思いつめた顔の方が多くなって…なんか不幸せそうなんだもの…」

キョン「…苦しいんだ。ハルヒの事ばかり考えると。何も返ってこないのに、それでも…」

国木田「たまに見せてくれる優しさが嬉しい…泥沼だね」

キョン「…」

367: 2010/04/03(土) 07:31:51.31 ID:tKwVb+xi0
国木田「今の涼宮さん達の形…良いものだと思うかい?」

キョン「…良くはないだろうな。最悪だ」

国木田「…涼宮さんは彼氏以外の男によく連絡。彼氏は彼女をほっぽり出して遊びまくり」

キョン「…」

国木田「お互いに嘘を言いながら付き合って、幸せなのかな…」

嘘ばかり…か

キョン「幸せなんじゃないか。少なくとも本人達は」

国木田「僕はキョン一人が不幸になるのが嫌なんだよ…」

369: 2010/04/03(土) 07:37:05.11 ID:tKwVb+xi0
キョン「…心配かけて、悪いな」

国木田「…」

キョン「朝比奈さんと付き合ってるときも、頭のどこかにハルヒがいた…」

国木田「朝比奈さんのこと、好きじゃなかったの?」

キョン「…好きだったよ。でもハルヒは違う…違うんだ…」

国木田「僕にはわからないよ…」

キョン「…すまん、今日はこのまま帰って頭を冷やさせてくれ」

国木田「うん…卒業までに、道が見つかるといいね」

キョン「ああ…そうだな…」

371: 2010/04/03(土) 07:39:59.49 ID:tKwVb+xi0
その次の日…夜中だ

俺はハルヒにメールを送った

理由はわからない

キョン『なあハルヒ…古泉の事なんだけどな、あいつは嘘をついている』

早めに返事が来る

ハルヒ『どうしたのよ?嘘って?』

キョン『体調悪いっていっただろ?今日は古泉、出掛けてるみたいだ』

ハルヒ『…嘘よ。今日は病院にいるってメールが1通来ただけなのよ…』

キョン『嘘だよ。あいつは谷口といる。数日前だって谷口と会っていた』

ハルヒ『嘘…だって…ずっと体調……』

372: 2010/04/03(土) 07:41:27.99 ID:tKwVb+xi0
キョン『嘘なんだよ…』

ハルヒ『…ごめん、おやすみ』

そのままプツリとメールは終わってしまった



その10分後に古泉から電話が来る

キョン『…もしもし?』

古泉『涼宮さんから聞きましたよ?』

キョン『…(来たか)』

覚悟はしていた…ひたすら罵倒されると思っていた

373: 2010/04/03(土) 07:45:24.00 ID:tKwVb+xi0
が…

古泉『あなたと僕は、今日連絡とってませんでしたよね?』

キョン『あ…ああ、そうだな?』

古泉『ですよね。最近僕も体調が悪くてですね…連絡もしてませんでしたね』

キョン『そう…だな?』

古泉『お手数ですが…涼宮さんにあなたの勘違いだったと説明してくださいませんか?』

こいつ…

キョン『ああ、わかった言っておくよ』

古泉『助かります。では、また』



あいうは、嘘を本当に見せたいのか…

キョン「…バカじゃねえの…」

374: 2010/04/03(土) 07:52:17.63 ID:tKwVb+xi0
…とにかくハルヒにメールをする

キョン『すまん、さっきの話は勘違いだった』



ハルヒ『勘違い…どういう意味よ…?』

何だか弱っている

それくらい古泉が大事なんだろうか

キョン『あいつとは連絡とってなかったからな。全部勘違いだ』

ハルヒ『…そう。もうわけわかんないや…もういいや…おやすみ』

…俺も一番大事な人に嘘を言っている

375: 2010/04/03(土) 08:00:18.26 ID:tKwVb+xi0
卒業式3日前…俺は街の大型デパートに来ていた

国木田と谷口…あとはハルヒに何か卒業祝いを買うためだ

モヤモヤも少しは気分転換になる

キョン「…いざとなると悩むな」

悩んだあげく、国木田と谷口にはちょっとした万年筆を

ハルヒには小さな猫のキーホルダー…

車のために、神社で買った交通安全のお守り

そして自分の気持ちを書いた手紙を渡すことにした

キョン(…ハルヒだけなんか多いのか?)

気にしない

376: 2010/04/03(土) 08:01:04.45 ID:tKwVb+xi0
手紙には、告白の言葉を書くわけではなく…

卒業祝いの言葉

今までの感謝の言葉

これだけをシンプルに書いたつもりが、手紙4枚分くらいになってしまった



明日は卒業式

378: 2010/04/03(土) 08:04:23.01 ID:tKwVb+xi0
卒業式当日

ハルヒと古泉とはあれからあまり連絡はとっていない

そんな中2人に会うのは少し緊張もしたが…

キョン「あ、キョン!」

古泉「どうも」

国木田「やっ、キョン」

谷口「お、来てくれたか」

友人はみんな温かく迎えてくれた

古泉とハルヒも変わらずに…

挨拶もそこそこに、俺たちは最後の打ち上げに出掛けた

379: 2010/04/03(土) 08:06:51.60 ID:tKwVb+xi0
この5人で出かけるのは…何年ぶりだろう?

多分これで最後なんだろうか

最後だからこうして出かけるんだろうな

今はあまり離れる事を考えても、悲しくはなかった

今までみたいに、ハルヒの事ばかりが頭にあるわけではない

俺も疲れてしまったようだ



ハルヒ「…何ぼーっとしてるのよ?」

キョン「あ、ああ。卒業なんだな、ってな」

谷口「お前は違うけどな!」

国木田「確かにね~」

古泉「あなたを誘うのも一興かと思いましてね」

ハルヒ「卒業なんだもの。みんないた方が楽しいわよ」

382: 2010/04/03(土) 08:17:23.50 ID:tKwVb+xi0
ホントだ。キョン⇔ハルヒですね

キョン「…学生じゃない俺が誘われるのも不思議なもんだな」

谷口「細かい事は気にするなって!さて…この後どうするか?」

国木田「やっぱご飯じゃない?」

古泉「あ…僕はこの後失礼しますよ。用事があるので…」

古泉はちゃっかりハルヒの隣に座ってる

まあ、当然か

谷口「じゃあ、4人で…居酒屋でもいくか」

国木田「そうだね。車の人は飲めないけど…」

ハルヒ「私と谷口君ね。まあご飯だけでもいいじゃない」

古泉「では、僕はここで…」

古泉はそのまま帰ってしまった



谷口・国木田「…ニヤリ」

385: 2010/04/03(土) 08:25:06.27 ID:tKwVb+xi0
谷口「じゃあ居酒屋の場所なんだが…涼宮場所わかるか?」

ハルヒ「…ちょっとこの辺はわからないわね」

国木田「おお、そりゃあ大変だ」

谷口「だなぁ…キョン、案内してやれよ」

キョン「え…ああ、俺?国木田でも別に…」

国木田「僕この辺りの事わからないから、谷口の車に乗るよ」

キョン「は?いやお前この辺りに住んでて…」

ハルヒ「…何でもいいから早くしなさいよ!キョン、乗るの?乗らないの?」

キョン「…やれやれ」

谷口「頑張れよ?」

国木田「お節介だとは思わないからね」

…諦めて車に乗る

387: 2010/04/03(土) 08:32:26.01 ID:tKwVb+xi0
バタン

ハルヒの車の中…初めてだな

ハルヒ「さあ、記念すべき助手席第1号なんだからね!しっかりナビしなさいよ」

助手席1号…ああ、俺が始めてなのか…ハルヒは車を走らせる。

ハルヒと2人だけの空間…

キョン「…」

ハルヒ「…」

キョン「あ、あのさハルヒ…」

ハルヒ「ん…」

キョン「これ…」

カバンから卒業祝いの袋を取り出す

390: 2010/04/03(土) 08:42:50.29 ID:tKwVb+xi0
ハルヒ「運転中は…って…信号…」

目の前の信号は赤

…長く信号が変わらない事で有名な交差点だ

ハルヒ「…何よ、それ?」

キョン「卒業の記念だ。あまり大したものは入ってないがな」

ハルヒ「そ…そう?ありがとう…開けていいかしら?」

キョン「ああ」

ガサガサと、彼女は袋を開ける

ハルヒ「…可愛い。それと…お守り?」

キョン「車といえばお守りだろう」

ハルヒ「そう言えば…無かったわね。ありがとう、早速つけるわ。これで無事故確実ね」

キョン(古泉と被るかと思ったが…そういうわけでもなかったようだ)

391: 2010/04/03(土) 08:51:18.03 ID:tKwVb+xi0
ハルヒ「…と、手紙…?」

キョン「おわ!それは帰ってから見てくれ!それがせめてもの願いだ!」

ハルヒ「変なの…『ハルヒへ』だって」

クスッと笑いながら、彼女は封筒をカバンに入れる

その時ちょうど信号が青になる

ハルヒは車を発進させる

少し窓をあけてみる

サイドミラー越しに見る彼女は、さっきより少し笑顔になっているような気がした

やっぱりそれは嬉しい

でも…何かが違う…違和感しかない

393: 2010/04/03(土) 08:56:05.29 ID:tKwVb+xi0
打ち上げは終わった

俺は家に帰って一人横になる

キョン(…終わったんだな。卒業か…)



ピリリリリ

キョン「ハルヒ…」

ハルヒ『今日はありがとう。プレゼントも嬉しかったわ。素直にお礼を言わせて、ありがとう』

キョン(…)

キョン「違う…ああ、違う…」

キョン『古泉は嘘を言ってる。未だにタバコも吸ってる。体調悪い嘘も、谷口から聞いたから本当だ』

394: 2010/04/03(土) 09:01:45.21 ID:tKwVb+xi0
―ピリリリリ

着信は、やはり古泉からだ

ピッ

キョン『…』

古泉『…何か勘違いしてませんか?』

キョン『…』

古泉『ほら…以前もこんな事…』

キョン『もういいんだよ』

古泉『はい…?』

キョン『なんで俺に電話するんだ?』

古泉『それは…誤解をといてもらおうと…』

キョン『なんでその状況で他人に電話してんだ、お前?』

396: 2010/04/03(土) 09:06:43.89 ID:tKwVb+xi0
古泉『それはあなた自身が事情を話したから…』

キョン『自分が嘘言ってるから、他人に弁解してもらうしかないんだろ?』

古泉『…』

キョン『自分で認めてるようなもんじゃねえかよ…』

古泉『もう…あなたと出かける事はないですね』

キョン『そりゃあ結構。嘘ついてまでお前達とは付き合いたくないからな』

―お前『達』?

古泉『…わかりました』

プツリ



397: 2010/04/03(土) 09:10:24.48 ID:tKwVb+xi0
そろそろ桜が咲きだした4月

あれから、ハルヒと古泉から連絡は来ない

みんな新しい場所へ…行ってしまった

俺は一人…ハルヒの影に魂を奪われたままだ

でも好きだとか、そういう事じゃない

なんで真実を言ったかもわからない

ハルヒはもう俺の心の中にいない

ただそれだけだ

やっぱり怖いんだ俺は

一歩なんて踏み出せない

400: 2010/04/03(土) 09:17:51.25 ID:tKwVb+xi0
もう会えないのかな…

好きだけじゃダメみたいだ

多分あの2人は幸せなんだろう…

幸せなんだよ国木田…

…今も俺は一人でハルヒからの連絡を待っている

彼女の言葉が無いと…歩き出せないんだな

俺はもう気持ちが氏んでしまった

奴がいる間は連絡などきっと来ないだろう

でももう一度だけ…彼女からの連絡があったらその時はまた―

401: 2010/04/03(土) 09:23:58.32 ID:tKwVb+xi0
今ならわかる気がするよ

ハルヒの中にずっとあった小さな閉鎖空間

ちょうど一人が体育座りをしている

動かない

動けない


俺はそろそろ眠るよ


おやすみハルヒ

おやすみなさい…

404: 2010/04/03(土) 09:30:36.64 ID:tKwVb+xi0
…俺一人の物語は、ここで意識が途絶えた




407: 2010/04/03(土) 09:49:09.98 ID:tKwVb+xi0
…夢?

これは夢の中?少なくとも現実ではないような感覚

ああ、真っ暗だ

…誰かいないのか?

そうだ、誰もいなかったんだっけ…

でも誰かに会いたい…そうだな、長門…

ここにいるような気がした

408: 2010/04/03(土) 09:51:25.56 ID:tKwVb+xi0
長門『……』

キョン『…長門?俺がわかるか?』

長門『わかる。コンタクト…来ると思ってた』

409: 2010/04/03(土) 09:52:53.45 ID:tKwVb+xi0
キョン『ああ…あのな…』

長門『大体の事情は察している…』

キョン『…』

長門『…でも、貴方は多分違う』

キョン『え…』

長門『私に連絡をする理由が貴方には無い…』

キョン『いや、話を誰かに聞いてほしくて…』

長門『…』

キョン『…だから…』

長門『ウソつき…』

キョン『なんだよ…何がだよ…』

長門『貴方にとって私は必要?』

411: 2010/04/03(土) 10:00:50.50 ID:tKwVb+xi0
キョン『そりゃあ…必要だから…コンタクトを…』

長門『本当に連絡したい相手は誰?』

キョン『…』

長門『私?』

キョン『違う…』

長門『…素直になるべき』

キョン『…怖いんだよ』

長門『怖い?』

キョン『俺はハルヒに…冷たくしちまった…連絡だって最近とってない』

長門『…』

412: 2010/04/03(土) 10:06:08.02 ID:tKwVb+xi0
キョン『相手が見えないだけでこれだ…』

長門『…もう好きではない、と?』

キョン『それは違う…俺はハルヒが好きだ!好きだから…怖いんだ…』

長門『帰りたくないの?』

キョン『…帰りたい。俺はハルヒに会いたい…話を聞いてほしい…』

長門『うん、それがいい…』

キョン『…』

長門『貴方は大丈夫…もう…』

キョン『ああ…ありがとな…そうだ、そっちから長門が帰ったらもう一度どっか遊びに…』

長門『貴方には、みんながいる』

キョン『ああ…長門も一緒だ』

長門『これで帰れる…』

キョン『ああ…おかえり』

長門『うん…ただいま…』

416: 2010/04/03(土) 10:16:00.62 ID:tKwVb+xi0
…ツーツー…

キョン「な…もしもし?くそっ…電波か?」

もう一度かけなおす

『―』

ハルヒ『そっちから電話しといて…何勝手に電話切ってるのよ、バカキョン!』

キョン『ご、誤解だ…電波のせいだ…』

ハルヒ『…とても大事な用があるって言うから、わざわざ仕事早く切り上げたんだからね…明日早朝出勤確定よ…』

キョン『ははは…そりゃ悪かったな。まあ、用事っていうのがな…あれ…?』

ハルヒ『…どうしたのよ?』

417: 2010/04/03(土) 10:23:49.15 ID:tKwVb+xi0
キョン『…すまん、本気で忘れた』

ハルヒ『はぁ!?それ本気?』

キョン『大事な内容…ってのは思い出せるんだが、中身がなぁ…』

ハルヒ『意味ないじゃない、このばか!…決めた、アンタ今日の夕飯奢りだからね!』

キョン『…不可抗力だ!大体…今から会って飯食うなんて…俺は家でゆっくりとだな…』


―ピンポーン

419: 2010/04/03(土) 10:32:15.10 ID:tKwVb+xi0
ハルヒ「『ここまで車で5分の仕事場から呼び出しておいてよく言うわね!』」

キョン『うわぁい…電話と扉越し2人のハルヒの声が聞こえる…』

ハルヒ「『2人…そうだ、有希も呼びましょ!もちろんその分も奢りよ!』」

キョン『…やれやれ、いい加減扉開けるから、入ってこいよ』



ハルヒ『あ、もしもし有希?今からキョンが晩御飯をね~……』

…窓の外には、月に照らされた桜の樹が見える

鮮やかに花を散らせている

420: 2010/04/03(土) 10:41:44.41 ID:tKwVb+xi0
ハルヒ「有希もお店で合流するって」

キョン「よし…行くか」

ハルヒ「うん!」

…ハルヒの車の中は久しぶりだ

ハルヒ「…お守り、ありがとうね。あと手紙も…」

キョン「ああ、まあ卒業記念だ」

ハルヒ「うん…つらい時ね、いつも…お手紙読んでるの…」

キョン「…」

ハルヒ「そのたびにね、キョンがいてよかったな、って思えるのよ。これ、素直な気持ちよ?」

キョン「ああ、俺も…ハルヒに会えてよかった」

ハルヒ「…それ、前も聞いたよ?」

クスッと、ハルヒは笑う

ああ…帰ってきたんだな、と…そう思えた

421: 2010/04/03(土) 10:47:16.75 ID:tKwVb+xi0
ハルヒ「さあ、ついたわよ」

キョン「ああ、長門は?」

少女はもうそこに立っていた

ずっと昔から当たり前にいたように

長門「…おかえりなさい」

キョン「ああ、ただいま…有希」

422: 2010/04/03(土) 10:55:14.99 ID:tKwVb+xi0
ハルヒ「…なに名前で呼んで変な挨拶してるのよ!」

キョン「あ…ああ、なんか自然とな?なあ、長門?」

長門「…」

ハルヒ「変なの。…まあいいわ、さ、みんなでご飯食べましょう」

キョン「ああ、みんなで…な」

忘れてしまった大事な内容はこの辺りの言葉にあるような気がしたが、俺は何も言わなかった

今は彼女の笑顔があって、遠くから帰ってきた人がいる

それ以上を望んでしまっては、なんだか罰が当たってしまいそうで

一緒にいられる幸せを感じながら、ただゆっくりと今を生きていた

終わり

423: 2010/04/03(土) 10:58:02.32 ID:tKwVb+xi0
読んでくれた方、支援してくれた方、ありがとうございました

ミスも多々ありますが、何とかおわりました

エンディングはいくつか考えていた中で、やはりハッピーを選択しました

本当感謝です

424: 2010/04/03(土) 11:02:57.27 ID:bOYoLqh5O
お疲れ様!

429: 2010/04/03(土) 11:13:17.58 ID:tKwVb+xi0
>>426
古泉は…例の電話の日からあまり時間がたってないのでキョンとぎくしゃくでまだ顔合わせしてない感じです

今思うと>>14さんがいなかったら止めてました

満喫が、14時半までなんでED適当に書き書き

432: 2010/04/03(土) 11:16:34.28 ID:tKwVb+xi0
基本>>401の続きから


…ここは?ああ、いつもの空間か

また帰ってきた

また…何度目だ?何も無い空間…何も

色が無い…ただの白と黒の世界

434: 2010/04/03(土) 11:20:23.84 ID:tKwVb+xi0
ここで俺は座っている。待っている

誰を?誰…今回は知っている気がする

…この空間みたいな気持ちの時に言われた気が…そう

俺は名前を呼んだ…呼んだ

ハ…ル

ハルヒ…ハルヒ…ハルヒだ…

435: 2010/04/03(土) 11:22:27.64 ID:tKwVb+xi0
俺はいつもこの名前を呼んでた気がする、近くても遠くても

ずっとハルヒの事を呼んでいた

届いてないかもしれない

それでもずっと叫んでた、ここで

この閉鎖空間で。ハルヒの名前を。ハルヒ…俺はここにいるんだ

ハルヒ…ハルヒ…

ハルヒ…!

437: 2010/04/03(土) 11:28:36.79 ID:tKwVb+xi0
体育座りをしてる神人一人

少女がゆっくりと歩み寄っていく

ハルヒ「キョン…見つけた…やっと見つけた…」

神人「……」

ハルヒ「ねえ、あたしよ?ここから一緒に帰りましょう?もうここにはいなくていいのよ…」

神人「…」

ハルヒ「ねえってば…ねえ…もうワガママ言わないから…どこにでも…行っていいから…」

神人「…」

ハルヒ「もう遠くに行かないでなんて、思わないから…だからっ…」

440: 2010/04/03(土) 11:38:12.83 ID:tKwVb+xi0
キョン(遠く…そうだ、俺は遠くに行ってた。朝倉を追いかけて、ハルヒから遠くに)

ハルヒ「…こんなところに閉じ込めちゃってごめんなさい…」

古泉「…涼宮さんのせいではありませんよ。この神人はここにいたがっている…それだけです」

キョン(古泉まで…お前とは疎遠の仲になったはずじゃあ…)

長門「…」

キョン(長門、電話中に俺の前から消えた…)

朝倉「こんな姿になって…お似合いね。消しちゃいたいくらい…」

キョン(朝倉…優しくできなくてごめんな)

朝比奈「…好きでしたよ…」

キョン(昔の想い人…どうしてもっと大事にできなかったんだろう)

鶴屋「元気ないねぇ~?ちゃんとご飯食べてるかい?」

キョン(一時期とはいえ、惹かれた人…)

441: 2010/04/03(土) 11:48:00.68 ID:tKwVb+xi0
キョン(…あれ?誰もいない…そうか、俺から離れていったのか)

だから俺は一人なんだ。あんなにいた友達も、好きになった人も…

ハルヒ「…違うわよ…」

キョン(違う?俺がハルヒにした冷たいメール覚えてないのか?)

ハルヒ「…結局連絡してくれて仲直りしたじゃない」

キョン(じゃあ古泉の喫煙をバラしたのが…)

ハルヒ「あんたは関係ないじゃない。アタシが嫌いになる理由がないわ…」

キョン(…なあ、ならなんで俺はここで体育座りしたまま動けないんだ?)

古泉「あなたは、涼宮さんの閉鎖空間の中にずっと囚われてるのですよ」

キョン(…ハルヒの?)

古泉「ええ、貴方が高校1年生の時に朝倉涼子と付き合いました。その時からです」

443: 2010/04/03(土) 11:56:39.96 ID:tKwVb+xi0
キョン(前聞いた、体育座りの神人だろ?)

古泉「その神人自体が貴方なのですよ。一番最初の、本物の貴方です」

キョン(最初…わけがわからない。俺は俺だ…今は体育座りしているけど)

長門「…舞台のようなもの。あなたは主役A…それが今座っている貴方」

キョン(長門…でも俺はさっき眠るまで生きていた感覚は普通にあったぞ?)

長門「それは…主役B。貴方だけど、貴方ではない。別人」

古泉「ちなみに、先ほど貴方と口げんかした僕は悪役Aでした」

キョン(悪役…性格が決まっているのか?)

古泉「ご名答。言ったでしょう、舞台だと。みんなが主役ではお話が盛り上がりません」

444: 2010/04/03(土) 12:05:20.77 ID:tKwVb+xi0
長門「今回の私の役目は、理解してもらえない理解者」

古泉「僕は主役の彼女を奪う役割の、悪者」

キョン(…その監督って、やっぱハルヒか?)

古泉「ええ、当然。彼女も色々な役を演じてますが監督です。一度も公演していない監督ですけど」

長門「どのような役割を演じても、完成直前に彼女は世界をリセットしてしまう…」

キョン(いつぞやの、ループみたいなものか?)

長門「今回は役者を全員解雇してしまう形。なので本番…公演が全く進んでいない状態」

445: 2010/04/03(土) 12:10:55.84 ID:tKwVb+xi0
キョン(それでまた、最初からやり直しってわけか)

古泉「やり直しはいいんですけどね…彼女は根本に気づいていません」

長門「主役…貴方と結ばれない役回りばかりを自ら選んでいる」

古泉「つまり、僕とくっつくのは心外ってことですよ。少し安心しましたか?」

キョン(…すこし嫌味な性格が残ってるぞ)

古泉「おや失礼…なので、今回は少し舞台を壊す力が必要でした」

447: 2010/04/03(土) 12:30:22.13 ID:tKwVb+xi0
頭働かなくてドロップアウトしようとしたら>>446
もう少しがんばります

キョン(ちょっと待ってくれ。そもそもなんで俺…本人Aがハルヒの頭の中に閉じ込められているんだ?)

古泉「簡単なこと。貴方に舞台を壊す力が無いからです」

キョン(な…俺だってちょっと無茶するくらいの度胸は…)

長門「…それなら、ひとつ心理テストをする…目の前にリンゴがある…どうする?」

長門「1食べる 2持ち帰る 3友人にあげる 4蹴り上げる」

キョン(…それなら、4だ)

古泉「おやおや…」

長門「論外」

451: 2010/04/03(土) 12:41:54.32 ID:tKwVb+xi0
キョン(な、なんでだ…普段の俺なら絶対選ばない選択肢だぞ…)

長門「論外…そのリンゴはいくつあるか想像した?」

キョン(え…)

古泉「大きさは?リンゴはどこに置かれていますか?」

キョン(え…え…)

長門「舞台…場を壊すには当たり前のことをしてては到底壊せない」

古泉「挑戦的な行動があって、初めて新しい演技の幅が広がるというものです」

キョン(なるほどな…リンゴと言われたら、さまざまな状態を思考して質問に答えるわけか)

長門「…さきほど、リンゴジュースにするという回答が出た…」

長門「その回答だと30点」

キョン(はい?)

452: 2010/04/03(土) 12:51:57.10 ID:tKwVb+xi0
キョン(選択肢にない、新しい回答じゃないか?)

長門「…そもそも私は心理テストの回答など望んでいない」

キョン(…もう意味わからないぞ)

古泉「必ずしも、心理テストの回答を演じる必要はないという事ですよ」

長門「私は確かにテストという場を与えた…それに普通に答えては普通に回答を演じているだけ」

キョン(そんなの、いくらでも言い訳できないか…?)

古泉「極論な上に、屁理屈もまざってますけど、これも壊す、の一歩なのですよ」

長門「あくまで考え方の一つ…回答者を否定したわけではない。そこは理解してほしい

455: 2010/04/03(土) 13:04:11.61 ID:tKwVb+xi0
キョン(…で、今回の主役にはその壊す力があった、と

長門「そう…女性関係、友人関係、その殆どが壊れていった」

古泉「人間関係を守る事…保守的な主役は今回いらなかったのですよ」

長門「衝突も多かったけど、得るものも多かったはず。それが涼宮ハルヒとの会話」

キョン(…確かに、ハルヒには結構感情的になっていたな)

長門「でも関係が修復したりと…彼女との縁はなかなか切れなかった」

キョン(ああ…普通の人生だったら多分気づかなかったんだろうな)

長門「…その考え方ができれば、合格点」


458: 2010/04/03(土) 13:20:40.56 ID:tKwVb+xi0
長門「今回主人公は違う生き方を体験した…普段なら歩く事のない道をたくさん歩いた」

古泉「その道を見つける事が、今回の主役に与えられた舞台でした」

キョン(…でも成功は舞台の公演なんだろう?今回リセットだろ?)

長門「道の先に彼女が待っていなかった…ただそれだけのこと」

古泉「さあ…そろそろ、第12幕の始まりですよ。おや、あなたはまだ神人なのですね」

長門「今回も本人の出番は無いのかもしれない…」

古泉「貴方との口げんか、意外と面白かったですよ…次の道が交われば、また是非…」

神人「…」

長門「彼が主役オファー」

古泉「…また、アルバイトをしながら彼とチェスをする日常が始まるのですね」

長門「そんな日常を…壊して、みる?」

終わり

461: 2010/04/03(土) 13:24:17.52 ID:tKwVb+xi0
>>457
2時半すぎたら満喫から帰ります…それまで

シリアスから普通な感じに

ホントはドロドロにしたかったけど因果関係の頭が働かないです

466: 2010/04/03(土) 13:29:58.30 ID:tKwVb+xi0
応援がホントありがたくて、励みになりまくりでした

ネタどうしよう

472: 2010/04/03(土) 13:41:22.80 ID:tKwVb+xi0
>>469
県超えデート

土曜日

…今日は初めて朝倉に会いに行ける

朝6時に家を出て、電車に乗る

…お互いの中間地点で会おうという計画

そこは繁華街もあるようなにぎやかな街だった

デートするには困らないだろう

473: 2010/04/03(土) 13:48:22.77 ID:tKwVb+xi0
>>471
あそこで帰ってた道
帰らなかった道
ってことで

移動は省略

…見慣れない駅。そこに見慣れた少女がたっている

朝倉「あ…」

キョン「朝倉…ひさしぶ…」

言うより先に、彼女が抱きつくほうが早かった

キョン「あ、あさ…駅、人が…」

朝倉「知ってる人いないんだからさ、ちょっとくらい…ね?」

キョン「ああ…」

本当は俺もすぐに抱きつきたかった

474: 2010/04/03(土) 13:54:32.09 ID:tKwVb+xi0
朝倉「ねえ、どこいこっか!」

キョン「お、元気だな」

朝倉「キョンに会えるんだから、当たり前じゃない!今日ね、シャンプーだって朝4時に起きてしたんだよ!」

俺が髪の匂いがすき…というのを考えてのことだろう

キョン「あ、ありがとう…こ、この辺りあまり知らないんだよな。初めてだし」

朝倉「私も殆ど来ないから…2人で歩きながら色々探そうか?」

キョン「そうだな…よし、いくか」

朝倉「…」

朝倉は、じっとこちらを見つめている…

キョン「ほら、手つなぐんだろ?」

朝倉「えへへ…うん♪」

476: 2010/04/03(土) 14:02:04.97 ID:tKwVb+xi0
朝倉「あ…ここに喫茶店あるよ」

キョン「少し疲れたか?」

朝倉「ちょっと入りたい…かも」


キョン「朝倉はチーズケーキか」

朝倉「キョン君はイチゴショートだね?」

キョン「…イチゴ、食べるか?」

朝倉「え…い、いえいえメインを奪うわけには…」

キョン「じゃあ、俺は朝倉に食べさせたい。これでもらってくれるか?」

朝倉「…へへっ、しょうがないなあキョン君は♪」

キョン「ほら、あーん」

朝倉「あ…え…」

キョン「ほら」

朝倉「…あーん」

キョン「…美味いか?」

朝倉「えへへ、最高に幸せ…」

477: 2010/04/03(土) 14:05:27.49 ID:tKwVb+xi0
時間無いから帰路


…なぜだろう

俺の足は帰りの駅に向かっている

脳みその一番偉い部分は、絶対に帰れなどと命令していない

それなのに…俺は帰りの電車に乗っている

朝倉「途中の駅まで一緒に行く…」

キョン「嬉しいけど…反対側だろ?」

朝倉「途中まで…お願い…ちょっとでも…」

キョン「…そうだな」

彼女はすでに目に涙を浮かべていた

478: 2010/04/03(土) 14:07:25.13 ID:tKwVb+xi0
途中の駅

朝倉「じゃあ、また…」

キョン「ああ…またすぐ会えるよ」

朝倉「うん…」

彼女が子犬のように抱きついてくる

普段は気丈な彼女が…弱弱しく、可愛い

いつまでも離れない…

キョン「あのさ、朝倉…」

朝倉「ん…」

479: 2010/04/03(土) 14:14:06.65 ID:tKwVb+xi0
キョン「俺もお返しに、朝倉を送っていくよ」

朝倉「…え?」

キョン「途中の…さっき2人で遊んでた駅までだけどな」

朝倉「でもそれじゃあキョンが往復…」

キョン「いいんだよ。少しでも長くいたいからな。電車があるうちは、付き合うさ」

朝倉「ありがと…大好きよ…!」

駅…人目も気にせず、俺たちは抱き合った

一生で一度神様にお願い事ができるなら間違いなくここで使っていただろう

今日をずっと終わらない日にして下さい、ってバカみたいなお願いで

480: 2010/04/03(土) 14:21:57.52 ID:tKwVb+xi0
恋愛苦手…

退席時間なんでこれで…ネット繋いでない、携帯規制でもう手出しできませんが

お金たまったらまた満喫に来て書いたり…とかしたいです

約34時間缶詰で書いてみて以外と楽しくて…

何より読んで応援してくださったみなさんの言葉が嬉しくて…少しでも期待してもらえたらがんばってしまいました

救ってくれたみなさんに感謝。もっと勉強してきます

では、また。

携帯で覗きながら、ニヤニヤしています

ありがとうございました

引用: 国木田「お互いに嘘を言いながら付き合って、幸せなのかな…」