1: 2010/04/25(日) 20:52:28.56 ID:vcd4QWUo
簡単な説明
レベル5の御坂美琴が朝起きたら、レベル0の『御坂美琴』になってました。
この世界では黒子がPC得意なレベル1、佐天がレベル5の超電磁砲、初春がレベル4の空間移動能力者となってます。
簡単に言うと、『御坂美琴』は原作の佐天ポジションです。
そんな並行世界の『御坂美琴』になってしまった美琴(レベル5)が色々と苦労したりする話です。

7月18日の簡単なあらすじ
いきなり電撃が使えるようになって爆弾魔を退治しましたが美琴は病院送りにされました。

「御坂先輩、朝ですの」

黒子「御坂先輩、7月17日ですの」

美琴「7月18日か……」
なんかまとめてくれてたので禁書2期の前に本気出すことにしました
8月31日(さいごのひ)
3: 2010/04/25(日) 20:54:44.48 ID:vcd4QWUo
・・・・・7月19日朝 水穂機構病院 美琴病室・・・・・
美琴「病院食が味気がしないって本当だったんだ。こんなんじゃ食べた気がしないわ」

美琴「頭痛も能力を使わない限り大丈夫そうだし、さっさと退院してクレープとか甘い物が食べたいなあ」

美琴「それにしても、暇つぶしの道具も無いと入院って暇で暇でしょうがないわねえ」

美琴「テレビも無いし、漫画も無いしやることが何もない……」

美琴「うーん、検査まで時間はまだまだあるわね。ちょっと考え事でもしようかしら」

美琴(よし、まずは突然使えるようになった能力の原因についてね)

美琴(能力が使えるようになったのはともかくとして、電撃が使えるようになったのはどういうことなんだろ?)

6: 2010/04/25(日) 21:00:26.18 ID:vcd4QWUo
美琴(本来なら空力使いのはずなのに電撃が使えた……。これはどう考えても超電磁砲だった『私』の影響を受けてるってことよね)

美琴(やっぱり中身が変わると自分だけの現実もそれにつられて変わったりするのかしらね)

美琴(自分だけの現実って脳のどの部分に起因してるんだっけ?論文読んだことあったかなあ?)

美琴(突然使えた能力についてはこのくらいでいいわね。これ以上は埒が明かないわ)

美琴(次は能力の強度についてね)

美琴(昨日の爆弾魔に放った電撃は最低でもレベル2以上、手ごたえだけならレベル3クラスはあった)

美琴(いきなりレベル3クラスの電撃を使えたことを考えれば、今後も伸びる可能性は十分考えられるわ)

美琴(順調に能力が成長すれば、超電磁砲並の電撃が使えるようになったりしたりしてね)

美琴(でも、一つ問題があるわね。能力を使う時の頭痛、これはちょっとまずいかもしれない)

美琴(もしも、頭痛の原因が空力使いのはずの私が電撃を使ってる事による異常事態による負荷だとすると能力は使えないものと見た方がいいわね―――この先使い続ければどうなるかわからないのは怖すぎるわ)

美琴(高レベルの能力を使うための演算の負荷が原因の頭痛―――こっちならまだ安心できるんだけど、微弱な電撃でも頭痛が起きるからこっちの線は薄いわね)

美琴「うーん……」

美琴(どっちにしろ専門家じゃない私には判断がつかないか……。一度しっかりと身体検査を受けた方がいいんだろうけど、詳しく事情を話すことになると面倒な事になりそうね)

8: 2010/04/25(日) 21:03:40.50 ID:vcd4QWUo
美琴(他に何か考えるべきことは……、こっちの『御坂美琴』についてね)

美琴(クラスメートの子の話が本当だとすると、『御坂美琴』は小学生時代はわりと真面目に能力開発をしてたっぽいわ)

美琴(それに性格も黒子に教えてもらったように問題があるわけでもなく、逆に好感を持たれるような感じよね)

美琴(黒子と出会ったのが今年のはずだから、中学1年の間に『御坂美琴』の性格を一変させる出来事でもあった可能性が高いわ)

美琴(ん……、それはちょっと変だわ、それだと黒子はよろしくない『御坂美琴』としか出会ってないことになる)

美琴(やっぱり、黒子が『御坂美琴』を気にかける理由がわからない)

美琴(前に聞いた時、どうも様子がおかしかったのは何か関係ありそうね……)

コンコン

美琴「!」

看護婦「御坂さん、検査の時間になりましたよ」

美琴「あ、はい!準備できてます!」

9: 2010/04/25(日) 21:08:15.69 ID:vcd4QWUo
・・・・・水穂機構病院 検査室・・・・・

医者「それじゃあ、検査内容を説明します。脳の検査はMRIで行います。MRIは寝てるだけですぐに済むから、リラックスして検査を受けて下さい」

医者「後は念のために―――脳波の検査をさせてもらいます」

美琴「えっ?脳波ですか?」

医者「ん?なにか?」

美琴「いえ、こういう時って普通は脳内の出血なんかを見ればいいから、脳波の検査をするのは珍しいなって……」

医者「ま、本来ならしないんですが、今回はちょっとした事がありましてね。一応、チェックするだけだから何も心配はいりません」

美琴(幻想御手の昏睡絡みのせいかな……?)

美琴「はあ、そうなんですか」

医者「じゃあ、早速始めます。それじゃ、君、彼女を頼む」

看護婦「はい。それじゃあ御坂さん、こちらへどうぞ」

美琴「あ、はい」

10: 2010/04/25(日) 21:10:40.37 ID:vcd4QWUo
・・・・・MRI終了・・・・・
美琴「はあ……」

美琴(寝てるだけとはいえ、MRIは電磁波がビリビリ来るから居心地悪かったわ。電磁波を感知できるようになってるし、やっぱり電撃使いの方に能力が転んでるわね)

看護婦「お疲れさまでした」

医者「うーむ」

美琴「どうかしたんですか?」

医者「ちょっと画像が乱れてしまってね。君は電撃使いだったりしますか?」

美琴「え?いや、私は空力使いのレベル0ですよ。」

美琴(あちゃー、体から出てる微妙な電磁波が干渉してるっぽいわね)

医者「そうですよね。カルテにそう書いてありました。機械の調子悪いのかもしれません。とりあえず、もう一度MRI入ってもらえますか?」

美琴「……わかりました」

美琴(ダメな気がするけどなあ)

12: 2010/04/25(日) 21:14:30.94 ID:vcd4QWUo
・・・・・MRI終了・・・・・

医者「うん、今度はOKです。問題ありません」

美琴(あれ?大丈夫だった……。能力が安定してないのかな?)

医者「それじゃあ、次は脳波の測定をします」

美琴「はい」

・・・・・脳波の測定中・・・・・

美琴(これも暇ね……)

医者「…………」

美琴(医者が黙りこくってる、また何か問題があったりするのかしら)

医者「これは……、ちょっとおかしいですねえ」

美琴(やっぱりなんかあるのね。やれやれ)

医者「こっちも機械がおかしいのかもしれません。ノイズも多いし、とりあえずデータは保存できるようですけど、やっぱり故障でしょう。こんな波形が出るわけがありません」

美琴「えっと……」

医者「あー、すみませんが、機械の調子が悪いようです。機械の調整が終わり次第、再検査をしますから、今は部屋に戻ってくれて構いません」

美琴「はあ、それじゃあ失礼します」

美琴(やれやれ、これで退院は早くて夕方か)

14: 2010/04/25(日) 21:18:07.04 ID:vcd4QWUo
インタールード1・・・・・佐天と初春の帰り道・・・・・

キーンコーンカーンコーン

初春「う~~む…」

佐天「うーいーはーる!」

佐天(くらえ、スカートめくり!!)

初春「う~~む……」ヒラリ

佐天「あっさりかわされた?!」

初春「佐天さん、ちょっと考え事をしてるんで邪魔しないでもらえますか?」

佐天「え~、初春冷たいなあ。そんなに難しい顔してどうしたってのよ?」

佐天「あ!もしかして成績落ちた?」

初春「違いますよ。昨日、捕まった爆弾魔なんですけどね。書庫に登録されていたのはレベル2だったんですよ」

初春「事件のうちの何度かは明らかにレベル3以上、場合によってはレベル4クラスの爆破も起こっていたのに……」

15: 2010/04/25(日) 21:19:26.27 ID:vcd4QWUo
佐天「へえ。爆弾魔捕まったんだ。それで、その爆弾魔が何かおかしいと」

初春「ええ、ですから気になってしまって。」

佐天「お、初春!かき氷屋があるよ。かき氷食べない?」

初春「いきなり話換えないでくださいよ!私は別にいりませんからね」

佐天「まあまあそう言わずにさ。こんな糞暑いのに頭をフル稼働させたらオーバーヒートしちゃうって」

初春「そんなこと……」

ミーンミーンジージーシャワシャワニーニー

初春「…………」

ミーンミーンジージーシャワシャワニーニー

初春「……食べましょうか」

佐天「そうこなきゃ」

16: 2010/04/25(日) 21:22:10.53 ID:vcd4QWUo
・・・・・かき氷屋前・・・・・
佐天「えっと、イチゴ味と―――」

初春「私はレモンでいいです」

佐天「―――レモン味で」

チリリーン

初春「あ、風鈴。風流ですねえ。音を聞いてるだけで涼しくなった気分です」

佐天「そうかなあ。個人的にはあんまり好きじゃないけど。風が強い日とかチリンチリンうるさくてイライラするし」

初春「そういう時は普通ははずすんですよ?」

佐天「またつけるのめんどくさいじゃん」

初春「佐天さん……」

店員「お待たせしましたー」

佐天「お、来た来た。はいよ、初春の分」

初春「ありがとうございます」

佐天「うーん、冷たくて美味しい!」バクバク

初春「佐天さん、そんなに慌てて食べるとキーンってなりますよ?」

佐天「大丈夫だって―――いたたたた」キーーン

初春「だから言ったのに」

17: 2010/04/25(日) 21:25:45.66 ID:vcd4QWUo
黒子「おや、初春に佐天さん」

佐天「お、白井さん。やっほー」

初春「こんにちは、白井さん」

黒子「こんにちはですの」

佐天「白井さんもどう?かき氷一緒に食べない?」

黒子「あら、それはいいですわね。ご一緒させていただきますの」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

佐天「そういえば、白井さんとこんなところで会うなんて珍しいね。どっか行くの?」

黒子「ええ、これから御坂先輩のお見舞いに行くところなんですの」

初春「御坂さんの搬送先の病院はこの先でしたね」

佐天「えっ、御坂さん入院してるの?食中毒?」

黒子「食中毒なんかじゃありませんのよ。昨日、ちょっとしたことがありまして、頭の方を強く打ってしまいましたの」

19: 2010/04/25(日) 21:29:18.28 ID:vcd4QWUo
黒子「お医者様の話ではたいしたことないらしいのですが、怪我の箇所を考えて一応大事をとって、経過の観察と検査をするために入院しましたの」

佐天「そっかー、大丈夫ってことなんだね」

初春「よかったです。私も凄く心配してましたんですよ」

黒子「本人は凄い元気そうでしたし、検査の結果次第じゃ午後にも退院できるそうですから」

佐天「私も御坂さんのお見舞い行っていいかな?」

初春「ああ、いいですね。私もついて行っていいですか?」

黒子「ええ、もちろん。御坂先輩も喜びますの」

佐天「じゃあ、早くかき氷食べちゃわないと!」

初春「だから、急ぐとキーンってなるって―――」

佐天「あいたたたた」

初春「全くもう、佐天さんったら」

20: 2010/04/25(日) 21:34:24.14 ID:vcd4QWUo
初春「あ、そういえば、白井さん、前に能力が上がる手段―――幻想御手でしたっけについて、色々調べてましたよね?」

黒子「初春ったら、今更そんなこと言うんですの?先日、私の話を聞き流したのをわたくしはわすれてませんのよ」

初春「それは、白井さんがいきなり爆弾魔の正体は幻想御手で能力を上げた低能力者ですの!ソースは秘密!みたいなことを言うからいけないんですよ」

初春「そんなこと言われても暑さで頭がおかしくなったとしか思えません……って固法先輩が言ってましたよ」

黒子「へえ、固法先輩がそんなことを……」

黒子(どう考えても初春が思ってたことですの)

佐天(初春……)

佐天「幻想御手って、都市伝説の奴?あの使うだけで能力が上がるっていうアレ?」

初春「ソレです。ですから、私達はその情報について懐疑的でしたし、白井さんが情報源を明かしくれなかったので重要視はしませんでした」

黒子「でも、急にどうしたんですの。つい先日は全然信じてくれなかったというのに」

21: 2010/04/25(日) 21:38:56.41 ID:vcd4QWUo
初春「昨日、捕まった爆弾魔は書庫のデータ上はレベル2、犯行の状況から推測されるレベルは4程度、つまり、白井さんが言ってた通りに急にレベルを上げた低能力者が犯行に及んだということなんです」

初春「理由はこれで十分ですよね?」

初春「―――白井さん、その情報はどこで手に入れたんですか?」

黒子「……それは言えませんの。これは信頼の問題ですから。風紀委員の同僚とはいえ絶対に話せませんのよ」

初春「では、これだけは教えて下さい。レベルの急激な上昇手段は本当に幻想御手なんですか?」

黒子「私にそれを証明することはできませんの」

黒子「しかし、わたくしに今回の事を教えてくださった人物は幻想御手がその手段であると断言しておりましたわ」

初春「断言ですか……。使うだけで簡単にレベルが上がる幻想御手、都市伝説なんかじゃなく本当に実在してるなんて」

佐天「おー、なんだか凄い事になってきたわね!」

佐天「確かに都市伝説って実際の噂が元になってることってあるもんね」

佐天「ほら、上条さんいるでしょ?あの人も『能力が効かない男』って都市伝説になってたし」

22: 2010/04/25(日) 21:43:26.57 ID:vcd4QWUo
初春「確かにそんな噂もありましたけど、あれって佐天さんが上条さんを連れまわしたせいですし、一緒にするのはどうかと……」

佐天「む、まるで私のせいで都市伝説が生まれたみたいなことを」

初春「佐天さんのせいじゃないですか

黒子「佐天さんのせいですのよ」

佐天「白井さんまで……私に味方はいないのかー!」

初春「それで白井さん、幻想御手について他に知ってることはありませんか?」

初春「私が調べた限りでは実体がほとんどわからなかったんです。どこかの学者が遺した論文だとか料理のレシピだとか噂の中身はバラバラでした」

黒子「私が聞いた話では幻想御手は特殊な楽曲らしいですの」

初春「楽曲?楽曲っていうとあの?」

黒子「ええ、信じられないとは思いますが、とある楽曲を聞くだけでレベルが上がるらしいんですの」

佐天「ほー、そりゃすごいし、楽ちんだわ。面倒くさい能力開発を何年もやらずに済むなんて大発明だね」

初春「白井さん、それは確かなんですか?」

黒子「わたくしは、あくまでも聞いただけなので保証はできませんの」

23: 2010/04/25(日) 21:50:01.73 ID:vcd4QWUo
初春「その曲の手に入れ方とかは聞いてますか?」

黒子「それを知っていたら、御坂先輩は怪我なんてしませんでしたわ」

黒子「サンプルを提示して幻想御手の効果を証明できたら爆弾魔もわたくし達で捕まえることができたはずですから」

初春「それはそうですけど……」

黒子「そんな暗い顔しなくても大丈夫ですの。わたくしも探してますし、初春もこれから探してくれるんでしょう?だったら、すぐに見つかりますの」

初春「ええ、そうですね!頑張りましょう白井さん!」

佐天「そういえば、幻想御手っぽい物を使ってる人達が書きこむ掲示板見た事あるかもしんない。

初春「佐天さん、それは本当ですか?」

佐天「んー、よく覚えてないけど、都市伝説関係のサイトを色々探してた時にチラッと見た気がするのよね」

佐天「不良で馬鹿っぽい人達の書き込みだったから、スルーしちゃったけど」

24: 2010/04/25(日) 21:52:33.72 ID:vcd4QWUo
黒子「初春、どうですの?」

初春「幻想御手が実在するならば、当たって見る価値はありますね」

初春「人の口に戸を立てることはできませんし、何より違法な物を使ってる人間っていうのは繋がりを求めたがるものです」

初春「白井さん、すみませんが御坂さんによろしく伝えて下さい。私は支部の方に戻って掲示板の方を確認してみます。白井さんも御坂さんのお見舞いが終わったら支部の方に―――」

黒子「了解ですの。御坂先輩のお見舞いを済ませたらすぐに向かいますの」

初春「佐天さん、御坂さんに迷惑かけないようにして下さいね!」ダッ

佐天「はいはい、わかりましたよっと」

黒子「さあさあ、佐天さん。私たちものんびりしていられませんの。さっさとかき氷を食べてしまって病院に行きますの」

佐天「ほいほい」

佐天(それにしても、なんだか面白くなってきたわね。私も後で支部の方に行ってみよ)

25: 2010/04/25(日) 21:55:47.77 ID:vcd4QWUo
・・・・水穂機構病院 美琴病室前・・・・・

黒子「ここが御坂先輩の病室ですの」

コンコン

病室「…………」

黒子「御坂先輩?」

コンコン

病室「…………」

佐天「反応ないね。昼寝してるんじゃないの?」

「たのもー」ガチャ

黒子「い、いきなり開けるなんて失礼ですのよ」

ガラーン

佐天「あれ、誰もいないよ?」

黒子「本当ですの」

佐天「トイレかな?とりあえず、部屋で待ってみる?」

27: 2010/04/25(日) 21:59:58.93 ID:vcd4QWUo
佐天「ん?」ピクッ

黒子「どうしたんですの?」

佐天「いや、ちょっと―――」

美琴「あれ、黒子と佐天さんじゃない。どうしたの?」

佐天「あ、どもー。佐天涙子、お見舞いに参りました!」

黒子「御坂先輩、具合の方はいかかですの?」

美琴「んー、具合ねえ。ちょっと検査の方がね……」

黒子御「検査で何か見つかったんですの?!」

美琴「ち、違うわよ。検査の機械の具合が悪くて上手く検査できないのよ」

美琴「午前中にも一回やったけどダメで、今もやって来たけどダメだったの。下手したら、もう一日入院だって」

黒子「なんとまあ」

佐天「そりゃまた面倒な話ですね」

美琴「ホント面倒くさいったらありゃしないわ」

美琴「あ、とりあえず病室に入ってよ。立ち話もなんだからさ」

佐天「そんじゃ、お言葉に甘えまして失礼しまーす」

28: 2010/04/25(日) 22:03:03.70 ID:vcd4QWUo
黒子「御坂先輩、本当に大丈夫ですの?」

美琴「大丈夫だってば。怪我自体は軽かったし、MRIでは異常無し、後は脳波の検査が済めばすぐに帰れるって先生は言ってたし。黒子ったら心配性なんだから。

黒子「そうですか、それは一安心ですの」

佐天「御坂さん」

美琴「ん?どうしたの?」

佐天「この部屋。やばくないですか?」

美琴「えっ、やばいって何が?」

佐天「だって、何も無いじゃないですか!こんな何もない所で一日いるって最高に退屈じゃないですか!」

黒子「佐天さん、病室なんてどこもそんなもんですのよ。そうですわよね?御坂先―――」

美琴「そう!そうなのよ!本当に退屈なの!退屈すぎて逆に具合が悪くなりそうなんだからっ」

美琴「ね、佐天さん。なんか暇つぶしになる物持ってない?何でもいいんだけど」

佐天「暇潰しですか?あいにく何も……」

美琴「そっか、じゃあ黒子は?」

黒子「わたくしも残念ながら……気が効かなくてすみませんの」シュン

美琴「べ、別にそこまで気にしなくていいのよ?私だって午後には退院するつもりだったんだからさ」

31: 2010/04/25(日) 22:12:43.62 ID:vcd4QWUo
美琴「こうなったら勝手に退院しちゃおうかしら。脳波なんて別に検査する意味ないし」

黒子「それはやめてくださいまし。必要のない検査をするわけないんですから。ちゃんとお医者様の指示には従ってくれませんと」

佐天「御坂さんって思ったより適当なんですねえ」

美琴「このまま明日までここで幽閉ってことになったらどうしようかしら。やれやれ、爆弾魔のせいで面倒くさいことになるなんてね」

佐天「でも、爆発に巻き込まれたのにほとんど怪我らしい怪我してないなんて御坂さんはついてますよ!」

美琴「それは、爆弾魔がすぐ近くにいて大きな爆発を起こせなかっただけだからね。自分を巻き込む規模で爆発を起こすやつなんていないでしょ?」

佐天「ん……?それってどういうことなんですか?」

美琴「黒子に聞いてないの?私、爆弾魔と軽くやり合ったのよ。爆弾魔も無事捕まったし、名誉の負傷ってやつよ」

佐天「うわあ、無能力者だっていうのにレベル4の爆弾魔と戦うって無謀すぎですよ。私相手に啖呵切ったのもそうですけど、自殺志願者かなんかですか?」

美琴「そんなことないわよ。自頃するつもりなんてこれっぽちもないわ」

黒子「御坂先輩は言動と行動が一致しないんですのよ。もう少しご自分を大切にして頂かないと困りますの」

32: 2010/04/25(日) 22:17:47.04 ID:vcd4QWUo
美琴「でも、相手の能力は実戦向けじゃないし、勝てるかもって思ったから……」

佐天「それでも、白井さんに心配かけるようなことをしちゃダメですよ」

佐天「そういう危ない橋はせめて能力を少しでも使えるようになってか―――ああ、御坂さんは電撃使いになったんですね」

黒子「えっ?」

美琴「あ、やっぱりわかるんだ?」

佐天「ええ、御坂さんからは微妙に電磁波が出てます。さっき病室の前で感じたのは御坂さんだったんですね」

美琴「不安定みたいで常時ってわけじゃないっぽいんだけどね」

佐天「どうもそのようで、私も気のせいだと思ってました」

佐天「それにしても、身に付けた能力を使って、爆弾魔退治に早速乗り出すとは御坂さんもやりますねえ」

黒子「違いますわよ、佐天さん。御坂先輩は無能力者状態で爆弾魔に挑んだんですのよ」

黒子「やられそうになって最後の最後で運良く能力が使えるようになって爆弾魔を倒すことができたんですの」

佐天「やっぱり無謀な話なんじゃないですか!でも上条さんはいなかったんですか?私達と別れた後はどうしたんです?」

美琴「ちょっと休んだ後、アイツと別れて一人で帰る途中だったのよ」

33: 2010/04/25(日) 22:23:05.47 ID:vcd4QWUo
佐天「そうなんですか。上条さんったら女の子を一人で帰らせるなんて相変わらず甲斐性もないんですね」

美琴「別にアイツは悪くないわよ。私が一人で帰るって言ったんだもん」

佐天「それでもですよ。男なら体調の悪い御坂さんを強引に送るくらいじゃないとダメなんです」

佐天「白井さんもそう思うでしょ?」

黒子「えっ、わたくしですか?ま、そうですね、その辺は好き好きでしょうけど、少しぐらい強引な方が頼りがいがあっていいかもしれませんわ」

美琴「へえ、そういうもんなのねえ」

佐天「まあ上条さんは置いといて。御坂さん、能力が使えるようになって良かったですね」

佐天「ほら私言ってたでしょ。すぐに能力が使えるようになるって。だから私も嬉しいです。

美琴「確かにそんなこと言ってたわね。あれって何か感じるものがあったの?」

佐天「別にそんなもんは全然なかったですよ。ただの直感ってやつです」

美琴「ははは、直感ね……」

佐天「御坂さんがレベル1ってことは白井さんと同じですね」

美琴「違うわよ。身体検査をしてないから正確な値はわかんないけど、レベル3くらいだと思うわ」

黒子「御坂先輩、それは」

佐天「ええっ、レベル0からいきなりレベル3になったんですか?!」

佐天「爆弾魔を倒したっていうのは電撃で怯ませてその隙にとかじゃなくて、普通にビリッとやって倒したってこと?」

美琴(うわっ、まずったわね。口が滑った……)

34: 2010/04/25(日) 22:26:36.62 ID:vcd4QWUo
美琴「あー、うん。それはそうなんけど、火事場の馬鹿力みたいなもんよ?」

美琴「その後、すごく眠くなってそのまま気絶しちゃったし……」

佐天「でも、レベル3クラスの電撃が使えたってことは確かなんですよね?滅茶苦茶凄いじゃないですか!」

美琴「さ、佐天さんに比べたら大したことないわよ」

佐天「何言ってんですか、私だって今はレベル5ですけど、コツコツレベルを1ずつあげてようやくって話なんですから」

佐天「一足とびにレベル3なんてきっとすごい才能を持ってますよ!」

佐天「そうだ!電撃使いなら私にも色々教えることができますし、いっそレベル5とかまで目指しちゃいますか?」

美琴「あはは、考えとくわ……」

佐天「んー、なんか乗り気じゃないですね。あの時はあんなに能力に執着してたのに」

美琴「べ、別にそんなことないわよ。でも、能力が急に使えるようになって未だに実感がわかないっていうか」

佐天「なるほど、確かにそれはあるかもしれませんね。でも、考えておいて下さい。能力が使えるようになったら、続きをやるって約束がすごい楽しみになってきましたもん」

佐天「私、同レベルの同じ系統の能力者と一度ドンパチやってみたかったんです!」

35: 2010/04/25(日) 22:31:23.85 ID:vcd4QWUo
美琴「いや、レベル5になれるって決まったわけじゃないし、それに佐天さんが満足するような戦いになったら、周囲がトンデモないことになりそうよ」

黒子「佐天さんも御坂先輩も能力を使った決闘の話を風紀委員の前で堂々とするなんて、何を考えていらっしゃるんですの?」

黒子「わたくしは容赦なくしかるべきところに通報しますのよ?」

佐天「それは気づかれないようにこっそりやってくれってこと?」

黒子「ハァー……今の私の発言をどうとればそういう解釈になるんですの?初春の苦労がなんだかわかりましたの」

美琴「大丈夫よ。黒子。私もドンパチやるのは遠慮したいし、よほどの事がなければそんなことにはならないわよ」

美琴「そもそもレベル5になんて早々なれるもんじゃないってわかるでしょ?」

黒子「それはそうですけど……」

黒子(御坂先輩の場合、そう言いきれないのが怖いですの)

佐天「大丈夫です。御坂さんは私がレベル5になるように教育しますもん。だから、一緒に頑張りましょうよ!」

美琴「一応、善処するってことで……」

黒子「やれやれですの」

36: 2010/04/25(日) 22:33:29.76 ID:vcd4QWUo
・・・・・雑談とかしてますの!・・・・・

黒子「あら、もうこんな時間ですの。ちょっと長く居すぎましたわ。わたくしはこの辺でお暇しますの」

美琴「ん、何か用あるの?」

黒子「ええ、幻想御手絡みで少し」

美琴「そう、頑張ってね」

黒子「佐天さんはどうしますの?一緒に支部の方に行きますか?」

佐天「んー、私はもうちょっといようかな。電撃使い同士で積もる話もあるからさ」

黒子「あらあら、なんだか妬けていまいますわね」

佐天「後で私も行くから、初春によろしく言っておいてちょーだい」

黒子「わかりましたの。御坂先輩、夜にもう一度様子を見に行きますので」

美琴「あ、検査が上手くいったら、退院してるかもよ?」

黒子「退院できたなら、連絡を下さいまし」

美琴「うん、わかった。そうする。」

黒子「それでは、失礼しますの」

ガチャッ……パタン

37: 2010/04/25(日) 22:35:16.11 ID:vcd4QWUo
佐天「…………白井さん、行きましたね」

美琴「どうしたの?」

佐天「ちょっと御坂さんに聞きたいことがあるんですよ。それはちょっと白井さんがいるところじゃ聞きにくいかなって」

美琴「どういうことよ?」

佐天「白井さんは御坂さんのこと慕ってますからね」

美琴「まあね。それで何が聞きたいのよ?」

佐天「単刀直入に聞きます―――御坂さん、幻想御手を使いませんでしたか?」

38: 2010/04/25(日) 22:39:27.03 ID:vcd4QWUo
美琴「はあ?この私が幻想御手を?そんなもん使うわけないじゃない」

佐天「だけど、いくらなんでもレベル0からレベル3に上がるなんておかしいですよ」

佐天「何よりタイミングが良すぎます。窮地に立たされた時にレベルが都合良く上がって、相手を倒すなんて出来過ぎだと思いませんか?」

美琴「確かに出来過ぎた話よね。私だってそう思うわ。だけど、それは幻想御手を使った証拠にはならないでしょ?」

佐天「それだけじゃないです。昨日、喫茶店で話した時に幻想御手について何となくですか『知ってる』感じがしたんですよね」

佐天「幻想御手の副作用は脳に負荷がかかる―――御坂さんはは喫茶店で言いましたよね?」

佐天「そして、実際に能力を使ったら気絶している。それは幻想御手の副作用のせいじゃないんですか?」

美琴「確かにそう言ったし、能力を使った後に気絶したわね」

美琴「でも、その時は爆弾魔と戦った後だし、緊張状態が解けて安心したからだと考える方が普通じゃない?」

佐天「それはそうかもしれませんけど……」

美琴「じゃあ、話はそれでお仕舞いよ。喫茶店でも言ったでしょ?私はそういう物には手を出さないってさ」

美琴「私の事そんなに信用できないかな?」

39: 2010/04/25(日) 22:44:06.38 ID:vcd4QWUo
佐天「客観的に見て使ってる可能性がありそうだから聞いただけですよ」

佐天「御坂さんの事を信用できるできないの話じゃないですから」

佐天「今、初春や白井さんが一生懸命幻想御手について調べてて、実際に使った人を探してるんです」

佐天「だけど、あの二人って御坂さんの事を最初からそういった対象から除外して考えるでしょ?」

佐天「だから、私が二人に替わって御坂さんに聞いただけですよ」

美琴「そうね、あの二人は身内に甘いかもね。それで佐天さんはどうするの?」

美琴「私に悪魔の証明でもさせてみる?」

佐天「やれやれ、そうですね……」

佐天「御坂さん、私の目を見て下さい。本当に使ってないんですね―――」

美琴「―――ええ、誓ってもいいわ」

佐天「…………」

美琴「…………」

佐天「うん。信じます。個人的には腑に落ちない点もあるんですけど、このまま問答を続けても埒があきませんから」

美琴「そうね、暇潰しにはなるだろうけどすぐ飽きるだろうし、この辺でやめてもらえると助かるわ」

40: 2010/04/25(日) 22:46:22.24 ID:vcd4QWUo
佐天「じゃあ、この話はこれで終わりです」

佐天「私も177支部に行って初春達の手伝いをします。電撃使いの集いは幻想御手が終わってからじっくりやりましょうか」

美琴「ええ、楽しみにしてるわ」

佐天「じゃあ、そういうことでお大事に―――」

ガチャ……バタン

美琴「…………」

美琴「フー、なんか疲れた……」

美琴(それにしても迂闊に情報を漏らしすぎたのは失敗だったね)

美琴「状況的には疑われて当然かな。でも、私が佐天さんの立場なら疑えてたかな?」

美琴「ま、どうでもいいか。検査まで暇だし昼寝でもしよう」

41: 2010/04/25(日) 22:49:06.29 ID:vcd4QWUo
・・・・・・・・・・・・・・・
コンコン

上条「御坂さーん?」

美琴「う…ううん……?」

コンコンコン

上条「いないのかー?」

美琴「…………なによ……」

上条「やっぱりいないみたいだな……」

美琴「えっと……上条さん?」

上条「なんだよ、いるじゃねーか。入っていいか?」

美琴「あ、ちょっと待って。私、今、寝起きだから」

上条「そうか、じゃあ売店に行って時間潰してくるけど、何か食べたいものあるか?」

美琴「えっと、それじゃプリンみたいなものをお願い」

上条「わかった。そんじゃ10分くらい経ったらまた来るからな」

美琴「りょーかい」

美琴(うわー、なんでアイツがくるのよ?それはともかく早く顔洗って、髪とか身支度とか整えないとっ)

42: 2010/04/25(日) 22:51:01.78 ID:vcd4QWUo
・・・・・10分後・・・・・
コンコン

上条「もういいか?」

美琴「うん、大丈夫よ」

上条「じゃあ失礼するぞー」

ガチャッ

上条「よう、具合の方は大丈夫なんだろ?」

美琴「検査したらすぐに帰れるわ」

上条「そうか、そりゃ良かった。ほらプリンな。安い奴だけど勘弁な」

美琴「いくらだったの?お金払うわよ」

上条「お見舞いの品だから俺の奢りだよ。たいしたもんじゃないし、上条さんからのご厚意ってやつだ」

美琴「そんじゃ、有り難くいただくわよ」

43: 2010/04/25(日) 22:55:36.78 ID:vcd4QWUo
パクリ、モグモグ

美琴「……うん、まあ普通ね。特に言うこともない普通のプリンだわ」

上条「まあ100円のプリンだしな、確かに普通だ……」

美琴「そんで、わざわざどうしたのよ?たいしたことないってことは知ってたんでしょ」

上条「いや、まあな。ビリビリにさっき会ってさ。御坂さんが入院したって事を聞いたんだけどな」

上条「その原因が俺と別れたすぐ後に爆弾魔と遭遇して―――って話だっていうからさ。ビリビリに怒られたんだよ」

上条「ビリビリがさ、『どうせ上条さんの事だから、御坂さん送らずにスーパーの特売に行ったんでしょ?御坂さんは体調悪くしてたのに本当に気が効かないんだから』って凄い剣幕でさ」

美琴「佐天さん、そんな事言ってたんだ……。まあ別にアンタは悪くないから気にしなくていいわよ。」

上条「いや、でも俺が送ってけば御坂さんは入院なんてせずに済んだんだぜ?」

上条「だから、謝りに来たんだよ」

美琴「あれは運が悪かっただけの話で誰も悪くないのよ。上条さんがいたからって私が怪我しなかったとは限らないし、上条さんが大けがをしてた可能性だってある」

美琴「だから、結果として見れば、あの時は私が一人で帰るのが最良だった。それでいいでしょ?」

44: 2010/04/25(日) 23:02:26.46 ID:vcd4QWUo
上条「だけどさ、御坂さんを助けるみたいなこと言ったのにこの様なんだぜ?」

美琴「あー、もういいって言ってんでしょうが!しつこい!」バチバチ

美琴(―――っ。やっぱ頭痛が)

上条「うぉっ?!御坂さんがビリビリしてるっ!」

上条「それって能力が使えるようになったのか?」

美琴「ええ、爆弾魔とやり合ってるうちにね。しかも、電撃なんてツイテルでしょ?」

美琴「だから、あのときは私が一人で帰るのが最良だったのよ。こんな入院くらいじゃおつりがくるわ。納得してくれた?」

上条「ああ、納得した。納得はしたけど、一つ聞いていいか?」

美琴「なによ?」

上条「御坂さんはビリビリみたいに俺に向かって電撃撃ってきたりしないよな?」

美琴「そ、そうね。そんな酷い真似なんてするわけないでしょ?」

上条「そうだよな。いやあ、電撃使いって皆ビリビリみたいだったらどうしようって思ってたところだったぜ」

美琴「そ、そんなわけないじゃない……」

上条「アイツは何かにつけてビリビリするんだぜ?本当に勘弁してほしいんだがなあ」

上条「一応、お嬢様学校に通ってるんだから少しはお淑やかにすればいいのに。あんなんじゃ嫁の貰い手がないだろうな。あははは」

美琴「アハハ、ソウネ。ワタシモソウオモウワ」

上条「あれ?あの御坂さん、なんだか怒ってたりしませんか?」

美琴「ソンナコトハナイワ」

上条「じゃあその片言はなんなんですかー」

45: 2010/04/25(日) 23:06:20.32 ID:vcd4QWUo
コンコン

美琴「はいっ?」

看護婦「御坂さん、検査の方お願いします。検査室の方で先生がお待ちしてますので。

美琴「わかりましたー」

上条「なんだかわからんが、助かったぜ」

美琴「そういうわけでこれから検査だから」

上条「おう、そんじゃ俺も帰ることにするわ。じゃあな」

美琴「あれ?検査室まで付き添ってくれたりはしないの?」

上条「えっ?一緒に行った方がいいのか?」

美琴「うーん、行く途中に爆弾魔がいたりしたら、困るかなあって」

上条「はあ?何言ってんだ?爆弾魔なんているわけ―――そういうことか、是非とも付き添わせていただきます、ハイ」

美琴「ふふ、おまけで合格ってところね。もうちょっと頑張らないと佐天さんにビリビリされるわよ?」

上条「これって地味に不幸だよな……」

47: 2010/04/25(日) 23:09:58.26 ID:vcd4QWUo
インタールード2
・・・・・佐天と初春の幻想御手捜査・・・・・

佐天「あそこにいる頭の悪そうな奴らがこの書き込みをしたグループかな?」チラリ

初春「おそらくはそうだと思いますが……」チラチラ

初春「やっぱり素行が悪い人達を中心に広まってるようですね。入手先はどこなんでしょう?」

佐天「そんなのはアイツラから聞き出せばいいじゃん」

初春「それはもっともな話ですけど、にべもないですね」

佐天「そんじゃ、ちょっくら行って幻想御手の情報をサクッと聞き出してくるから」

初春「佐天さん、能力を使ってもいいけど脅し程度でお願いしますよ。あと物を壊さないように。無理だとは思いますけど、できるだけ穏便に話を進めて下さいよ?」

佐天「わかってるって、まかせといてよ」

テテテ

48: 2010/04/25(日) 23:12:17.44 ID:vcd4QWUo
佐天「ね~ね~、お兄さん達、ちょっと聞きたいことがあるんだけど?」

不良A「あん?」

不良B「なんだよ、てめーは?」

佐天「ネットでお兄さん達が幻想御手について書き込みしてるのを偶然見つけて、その事について知りたいなあって」

不良C「幻想御手について知りたいだあ?」

佐天「私にも幻想御手欲しいの。ねえ、いいでしょ?ダメ?」

不良A「こっちも情報を手に入れるのに苦労したんだぜ。そうホイホイ教えるわけないだろ。帰んな」

佐天「……へえ、それじゃお兄さん達は幻想御手について色々知ってるのは確かなんだ」

不良B「へへ、まあな」

佐天「そうなんだ、実はその言葉が聞きたかったんだよね」ビリィ

バチィンッ フッ……

不良A「な?電気が消えた!?」

不良B「停電か?」

49: 2010/04/25(日) 23:14:59.52 ID:vcd4QWUo
佐天「もう一度お願いしますけど、幻想御手について教えてくれません?」

不良A「ああん?教えないって言ってんだろ。んなことより、この停電はなんなんだあ?おい、コラ店員、さっさと電気つけ―――」

バチィン

不良A「うがぁ?!」

不良B「?!」

不良C「な、なんだぁ!?」

佐天「別に何もしてないですよ。突然、そこのお兄さんが倒れただけですよ。真っ暗だったし私は何もわかりませーん」

不良B「嘘つくんじゃねーよ。お前の体から電撃が奔ったが見えたぞ!」

佐天「なーんだ。わかってるじゃないですか。わかってるなら聞かないでくださいよ」

不良B「なっ!?」

佐天「幻想御手について知ってる事があるなら洗いざらい吐いて下さい。日本語通じてますよね?」ビリビリ

不良C「ひいっ」

52: 2010/04/25(日) 23:19:54.18 ID:vcd4QWUo
上条「おい、ビリビリ。いたいけな一般市民相手に電撃ぶっ放して何やってんだよ?もしかして、停電もお前の仕業か?」

佐天「この声は……上条さんですか」

佐天「こんなところでどうしたんです?女の子をほっておいて特売セールに行っちゃうくらい貧乏なら自炊でもしてればいいのに」

上条「会ってそうそう嫌味ですか。その事については御坂さんにも謝って許してもらったし、俺も反省してるからもう勘弁してくれよ」

佐天「それで、何の用ですか?今ちょっと取り込み中なんで用がないなら後にしてください」

不良B「おい、お前!こいつの知り合いなのか?どうにかしてくれよ」

不良C「突然絡んできたと思ったらいきなり電撃なんて撃ってきやがったんだぜ」

上条「お前、俺以外の相手にもビリビリすんなよ。普通の人は幻想頃し持ってないんだから電撃なんか浴びせたら酷いことになるってわかってるだろ?」

佐天「はいはい、お説教は後にしてくださいよ。そうしないと上条さんもビリッとしますよ?」

上条「うっ」

佐天「さあ、ちゃっちゃと幻想御手について吐いて下さいよ。素直に教えてくれたら電撃は勘弁してあげますからね」

不良B「こっちが黙って聞いてれば、調子こきやがって。ちょっと能力が使えるからって調子乗るんじゃねーよ。こっちだって幻想御手でパワーアップしてるんだからな!」

佐天「へえ、面白いじゃないですか。まとめて相手してあげますよ」

53: 2010/04/25(日) 23:23:02.18 ID:vcd4QWUo
不良B「レベル2になった俺たちの力見せてやるぜ!」

上条「レベル2だと?!ちょ、ちょっと待て、お前ら!待ってくれ!待って下さい!」

不良C「うるせーぞ、テメエもぶっ頃してやるから覚悟しろや」

上条「ここにいるビリビリはレベ―――」

バチィイイイン

不良達「ギャーーーー」

上条「―――ル5なんだぞ……って遅かったか」

佐天「ったく、レベル2のくせに生意気なんですよ。さあさあ、おとなしく幻想御手について吐いて下さいよ?」

不良達「…………」シーン

佐天(はっ!つい丸ごと焼いてしまった……)

上条「返事がない、まるでしかばねのようだぞ」

佐天「…………」

初春「佐天さん、まったく何やってるんですか?」

上条「あれ、初春さん。初春さんがいるってことはこれって風紀委員がらみってことか?」

初春「まあ、そんなところです。でも、誰かさんがせっかくの情報源をたった今黒コゲにしちゃったみたいなんですけどね」

55: 2010/04/25(日) 23:25:58.82 ID:vcd4QWUo
佐天「えっと、それはその。つい癖というか、そうだ!上条さんが悪いんだよ!」

上条「ええっ?」

佐天「全くどうしてくれるんですか?上条さんのせいで情報を聞き出すのに失敗しちゃったじゃないですか」

上条「何んだよそりゃ、いきなり俺のせいにすんなよ!」

佐天「上条さんがしゃしゃり出なければ、相手もおとなしく教えてくれそうな空気だったのに」

上条「おい、ちょっと待て、全然そんな空気じゃなかったじゃねーか」

初春「そうですよ。佐天さんったら上条さんのせいにして誤魔化そうとしないでください!」

不良B「うう……」ピクンピクン

佐天「おっ!ほら見て、大丈夫そうな人いるよ!この人に吐いてもらえば解決だね」

上条「なんか痙攣してるし、どう見ても大丈夫そうには見えないんだが」

初春「まあ、話が聞けるなら問題はないですね」

上条「……上条さんにとっては問題だらけでドン引きする状況なんですけどね」

佐天「さあ、キリキリ吐きなさいよー。そうしないとビリッといくからねー」

不良B「ひいぃぃいっ」

56: 2010/04/25(日) 23:30:48.99 ID:vcd4QWUo
初春「ダメですよ、佐天さん。怯えてるじゃないですか」

不良B「……」ガクブル

初春「そんなに恐がらなくても大丈夫ですよ。もう電撃は飛んできませんから」

不良B「ほ、本当か?」

初春「ええ、本当ですよ。安心して下さい」

不良B「助かった……」

初春「でも、幻想御手について教えてくれないと……、今度はこの鉄針が体に食い込むことになるかもしれません」

不良B「ぜ、是非、話させて下さい!」

初春「ご協力感謝します。ほら、見て下さい佐天さん。誠実な態度で接すればちゃんと協力してくれるんですから」

上条「おいおい、どう見ても誠実な態度からはかけ離れてたぞ」

佐天「まあ、細かいことはどうでもいいんじゃないんですか?あっ、照明もどった」

初春「じゃあ、まずは幻想御手を出してもらえますか?」

不良B「はい、こちらに!ゴソゴソ

不良B「こ、これです。この音楽プレーヤーの中に……ってあれ?」

プスプス

佐天「なんか煙が出てるけど、最近のプレーヤーってそんな機能もあるの?」

初春「予期せぬ大電流が流れて壊れてるだけですよ。そんな機能なんてあるわけないじゃないですか」

上条「真っ黒焦げだな。この分じゃ電撃を浴びてる他の奴のもダメそうだな」

57: 2010/04/25(日) 23:35:03.12 ID:vcd4QWUo
佐天「やれやれ、とんだ無駄足に終わったようね。とりあえず、入手先とか他に色々聞けることだけでも―――」

初春「―――って、何を他人事のように言ってるんですか?!佐天さんのせいで台無しじゃないですよ!」

佐天「何よ?!これはしょうがないじゃないっ!どっからどう見ても不可抗力でしょ!」

初春「どこが不可効力なんですか?!能力は脅し程度に留めて、物は壊さないようにって注意しましたよね!」

佐天「う……確かにそんなこと言ってたわね。今考えると、まるでこの状況を予見してような……」

初春「はー、確かにそうですね。予想できたのに佐天さんにまかせた私のせいです。とりあえず不良達は警備員あたりに電話して回収してもらいましょうか」

初春「罪状は―――最近、あなた悪いことしてませんか?」

不良B「俺ですか」

初春「ええ、何でもいいんですよ、何でも」

不良B「いや、特に心当たりは……」

初春「本当に―――?」

不良B「き、昨日、カツアゲしました!」

初春「カツアゲですか……。ちょっと理由としては弱いですが、まあいいでしょう。カツアゲ犯を捕らえようとしたら、集団で能力を使って抵抗しそうになったので能力を使用したと。こんな感じでいいですかね」

pipi

初春「……あ、こちら風紀委員177支部の初春飾利です―――」

佐天(相変わらず、初春は黒いなー)

上条(俺は見てはいけない物を見てしまったのかもしれない……)

58: 2010/04/25(日) 23:37:41.23 ID:vcd4QWUo
・・・・・水穂機構病院 美琴の病室・・・・・
美琴(うーん、脳波測定はまたダメで、結局今日は帰れなかった)

美琴(やっぱり病院食は美味しくないし、やることも何も無くて暇ね)

美琴(そういや、黒子が様子見に来るって言ってたっけ。いろいろ聞きたいこともあるし、早く来ないかなー)

コンコン

美琴「黒子?」

黒子「失礼しますのよ。御坂先輩、検査の方はダメだったんですの?」

美琴「うん、まあね。やっぱり脳波の方が上手く測れないってさ。だから、入院続行よ」

黒子「それはもしかして、御坂先輩の身の上と電撃能力に関係してるのでは?」

美琴「うーん、どうなんだろう。けど、原因がそれだったら面倒ね。明日も退院できないじゃない」

黒子「下手したらずっと退院できないって可能性もありますのよ。そのうちに怪しまれて専門の施設に送られてしまうかもしれませんし」

美琴「まさか、そこまでするかな?」

黒子「しないとは言い切れませんの。脳関係の研究は能力開発に直結してますから、特異な学生がいたら研究対象になりかねませんの」

59: 2010/04/25(日) 23:40:56.31 ID:vcd4QWUo
美琴「それなら、どうにかして退院しないとまずいかもね。これ以上面倒な事が起きたら、幻想御手どころの話じゃないわ」

黒子「うーん、どうすればいいんでしょう?」

美琴「どうにかして穏便に退院する方法か……何か良い方法……」

美琴「あ、思い出した!」

黒子「へ?」

美琴「明日って20日よね?」

黒子「ええ、そうですけど、それが何か?」

美琴「明日、木山春生がこの病院に来るのよ。幻想御手で意識不明の患者が増えたせいでで呼ばれるはずなのよ」

黒子「木山春生と言いますとこの一件の?」

美琴「木山春生は脳関係の専門家でしょ。私の『情報』を上手くチラつかせて木山春生に動いてもらえばいいのよ」

美琴「私が木山春生の研究対象になるってことで転院して、後は適当に理由をつけてもらって木山春生の力で退院させてもらう。こうすれば、問題ないでしょ?」

60: 2010/04/25(日) 23:44:57.96 ID:vcd4QWUo
黒子「やれやれ、問題が多すぎてどうにもなりませんの。木山春生は幻想御手の首謀者ですのよ?」

黒子「先にこちらの手札を明かすのは危険すぎますの。そもそも、情報とやらは何を言うつもりなんですの?」

黒子「計画はお見通しだ、バラされたくなかったら言うことを聞け!なーんて言うつもりだったんですの?」

美琴「ん、まあ、ニュアンス的にはそんな感じだけど」

黒子「そんな機密を握っている御坂先輩を研究対象として自由に扱える権利を得たら、木山春生が何をするか考えてないんですの?」

黒子「邪魔者がわざわざ縄で縛って下さいときたらチャンスを逃す馬鹿はいませんのよ」

美琴「あー、そりゃそうよね。確かに無謀すぎたわ。この方法はボツね」

美琴「やっぱり強引に退院しちゃうのが一番簡単じゃない?」

黒子「そうですね。しかも、それは早い方がいいですの。あまり長引かせて御坂先輩がおかしいと判断されてしまえば、追われる身ですのよ」

美琴「そうね。明日の朝の検査でダメだったら、さっさと逃げることにするわ」

黒子「そうですね。あまりお勧めできませんがその線でいくしかなさそうですわ」

黒子「それと、御坂先輩、くれぐれも木山春生と迂闊に接触するのは避けて下さいまし」

黒子「下手を打てば爆弾魔の時よりも酷い目に合うかもしれませんのよ」

美琴「そんなこと言われなくてもわかってるわよ。とりあえず一人で会うのは避けることにするわ」

黒子「約束ですのよ」

美琴「わかったってば」

61: 2010/04/25(日) 23:49:02.87 ID:vcd4QWUo
黒子「それでは、いい時間ですし、この辺で失礼させていただきますの」

美琴「あ、ちょっと待って」

黒子「はい、なんでしょう?」

美琴「昨日、学校に行ったら、『御坂美琴』の小学生時代について知ってる人がいたのよ」

黒子「学校に……」

美琴「小学校時代の『御坂美琴』は黒子に聞いたのと違って、どっちかっていうと私に近い感じだったのよね」

美琴「たぶんだけど、中学1年の間に何らかの出来事が合って黒子が言ってたような『御坂美琴』になったはずなのよ」

黒子「…………」

美琴「だから、退院したら色々調べてみようと思うの」

美琴「『御坂美琴』がひねくれた原因がわかればいいかなって。黒子も手伝ってくれないかな?」

黒子「わ、わたくしは力になれませんの……。御坂先輩と会ったのは今年になってからですし……」

美琴「そう、それは残念ね」

黒子「お話はそれだけですの?なら、わたくしはここで失礼させてもらいますの」

ガチャッ……バタン

美琴「黒子はやっぱり何か知ってるようね」

美琴「覚悟しなさいよ。調べるのは御坂美琴がひねくれた原因だけじゃないわ」

美琴「アンタが隠してる『御坂美琴』を慕う理由も調べさせてもらうんだからね」

美琴「さて、色々決意したし寝よう」

62: 2010/04/25(日) 23:50:54.15 ID:vcd4QWUo
・・・・木山春生の研究室・・・・・
ガチャッ

木山「今日も疲れたな……」

木山「だが、計画はもう少しで子供達を救えるところまで辿り着いた。あと一週間もすればこの計画は間違いなく完成する。そうすれば―――」

チカチカ

木山「ん?留守電が入ってるようだな」

pi

電話「メッセージは1件です」

pi

医者「水穂機構病院の脳外科の―――」

医者「―――そういうことですので先生のご意見を伺いたいのですが……」

木山「脳波の測定が上手くいかない学生か……。水穂機構の院長から招聘を受けたのは明日だったか?ちょうどいい」

63: 2010/04/25(日) 23:53:51.28 ID:vcd4QWUo
・・・・・・水穂機構病院 美琴病室・・・・・
看護婦「おはようございます、御坂さん」

美琴「おはようございます」

看護婦「御坂さん、朝の検温ですよ」

美琴「今日は7月20日ですよね?当然ながら」

看護婦「ええ、そうですよ」

美琴(最近、イベントが多すぎて、向こうに戻るどころの話じゃなくなってきてるなあ)

看護婦「朝食後に検査がありますから」

美琴「はーい。わかってますよー」

看護婦「それじゃお願いしますね」

美琴「はーい」

美琴(ま、今日も頑張りますか)

7月20日編に続くよ!

65: 2010/04/25(日) 23:59:26.74 ID:vcd4QWUo
7月20日編はたぶん、おそらく今週中になんとか
木山先生が7月19日に病院に来ると思いこんでたせいで20日のネタを分割してさらに佐天さんで水増しするハメになった……

104: 2010/04/30(金) 20:55:42.02 ID:rSCS392o
・・・・・7月20日 水穂機構病院 御坂美琴の病室・・・・・

美琴
「予想通りというか案の定、脳波検査は上手くいかなかったわ。
医者もなんだか訝しげな顔してたし、いよいよまずいかも……さっさと逃げるが勝ちね」

美琴
「よし、まずは制服に着替えて―――」

コンコン

美琴
「?!」ビクッ

美琴
(誰?)

佐天
「御坂さーん?」

美琴
(さ、佐天さん?どうして?)

105: 2010/04/30(金) 20:57:37.86 ID:rSCS392o
佐天
「いないんですかー?佐天ですよー」

美琴
(居留守を使う?いや、昨日ドア開けてたし無意味か。仕方ない)

美琴
「はーい、どうぞー」

ガチャ

佐天
「失礼しまーす。お早うございます。御坂さん」

美琴
「お、おはよう。佐天さん。今日はどうしたの」

佐天
「いやあ、177支部で白井さんに会ったら、まだ入院してるって話だったんで。
お見舞いついでに電撃使いの集いでもしようかなって」

106: 2010/04/30(金) 20:59:41.84 ID:rSCS392o
美琴
「その……電撃使いの集いってのは幻想御手の一件が解決したらじっくりって話じゃなったっけ?」

佐天
「ええ、そんなことも言ったかもしれませんが暇だったし、御坂さんも暇だって昨日言ってたじゃないですか。
だから暇人同士、仲良くしようと思ったんです」

美琴
「そうだったんだ。それはありがたいわね」
(なんつー有難迷惑、タイミングが悪すぎるわよ)

佐天
「でしょー、たまには私だって気を利かせることがあるんです。
初春に注意されてばかりじゃないんですよ」

107: 2010/04/30(金) 21:02:57.00 ID:rSCS392o
美琴
「それで、電撃使いの集いって具体的には何をやるの?」

佐天
「えっと、特に何も決めてないんで今から一緒に考えましょうか」

美琴
(考えなしって……。適当に切り上げてさっさと逃げ出さないと―――)

コンコン

美琴
(また誰か来た?!)

佐天
「はーい!」

美琴
「あっ……」
(勝手に返事しないでよ……)

ガチャ

木山
「失礼するよ。大脳生理学を研究している木山春生というものだが。
御坂美琴君と―――君は常盤台の超電磁砲だったかな」

108: 2010/04/30(金) 21:06:09.59 ID:rSCS392o
美琴
(木山春生?!なんで―――)

佐天
「はいはーい、超電磁砲の佐天涙子でーす。いやあ、私ってそんなに有名ですかねえ」

木山
「研究者で君の事を知らない人間はいないだろうな」

木山
「それで、君が御坂美琴で間違いないね?

美琴
「はい、そうですけど……」

木山
「君の脳波測定の件を聞かせてもらったよ。なかなか興味深いな」

美琴
(うそでしょ?)

木山
「しかし、この病院の設備じゃ詳しいところまで計測するのは難しいと私は判断した」

美琴
(まさか―――)

木山
「私の研究所の方で精密な検査をしてみようと思うんだが、協力してもらえるかな?

110: 2010/04/30(金) 21:07:49.07 ID:rSCS392o
美琴
(やっぱり……。興味を持った研究者が木山春生って斜め上の展開になるなんて)

美琴
「それって絶対協力しなきゃダメなんですか……?

木山
「ふむ、それは拒否するということかな?」

美琴
「いや、そういうわけじゃないんですけど、これ以上の入院とかは勘弁してほしいかなって。ほら、もう夏休みですし」

木山
「夏休みなら学校にも影響しないし、逆に検査を受けやすいとは思うのだが?

美琴
「そういう意味じゃなくてですね」

木山
「まあ、なんにしろこの学園都市の学生である以上は研究には協力する義務があるからな」

木山
「それとも何か特別な事情でもあるのか?」

美琴
「特別ってほど特別な事情みたいなものはないんですけど……」
(どうすれば―――この状況どう切り抜ける?)

111: 2010/04/30(金) 21:10:35.22 ID:rSCS392o
佐天
「御坂さん……」

美琴
(佐天さん!嫌がる私を見て、まさか助け舟を?)

佐天
「そんなに嫌がることないじゃないですか。脳波検査くらいすぐ終わりますよ。ねえ、木山先生?」

美琴
(期待した私が馬鹿だったー)

木山
「ん、まあ1日で帰れるだろう……何も無ければな」

佐天
「ほら、全然大丈夫じゃないですか」

美琴
(佐天さん、もう黙ってて!)

112: 2010/04/30(金) 21:12:30.58 ID:rSCS392o
木山
「それとも何かね?詳しく検査されると困る理由でもあるのかな?」

美琴
「―――っ」

佐天
「ん?御坂さん、脳波検査されたらまずいんですか?

美琴
「べ、別に不味くは無いけどさ」

佐天
「なら、いいじゃないですか」

木山
「協力に感謝する。私はこの病院で色々やることがあるが、まあ昼前には終わるだろう」

木山
「それが終わり次第、迎えに来るから一緒に研究所の方に行こう」

美琴
「……はい、わかりました」ガックリ
(やられた……)

113: 2010/04/30(金) 21:13:53.09 ID:rSCS392o
木山
「そんなに落ち込まないでくれたまえ」

佐天
「そうですよ。御坂さん、ちょっとの辛抱なんですから

木山
「……そうだな、研究所に行く前に昼食を近くで摂って行こうか。超電磁砲も一緒にどうかな?」

佐天
「それは奢りですか?」

木山
「まあ、奢りだが。君の方が金持ちだろうし、払いたいなら払っても構わないぞ」

佐天
「いえいえ、ゴチになりまーす」

木山
「やれやれ。じゃあ、また後でな。時間が近くなったら準備しといてくれたまえ」

佐天
「はーい」

ガチャ……バタン

佐天
「木山先生って目つき悪いけど、いい人そうでしたね」

美琴
「うん、そうかもね……」

佐天
「いやあ、奢りかあ。楽しみだなあ」

114: 2010/04/30(金) 21:15:09.06 ID:rSCS392o
とある魔術のインタールード
・・・・・7月20日朝 上条当麻の部屋・・・・

上条
「今日はいい天気だし、布団でも干すかなー」

上条
「天気はいいんだけど、隣のビルのせいで実感がなあ。日照権とかこういう話ってどこに持ってけばいいのかねえ」

上条
「くだらねーこと考えてないで、布団干すぞー」

禁書
「…………」ダラーン

上条
「って、この白い物体はなんだ?」ビクッ

禁書
「…………」グテーン

115: 2010/04/30(金) 21:16:59.46 ID:rSCS392o
上条
「これって、どっからどう見ても人間だよな……?」
(それにこの服装は修道服っぽいな。修道服って普通は黒いはずだったような気がするが……?)

ピクン

上条
(うおっ、動いた!?)

禁書
「おなかへった」 

上条
「…………」
(そして、喋った……外国人なのに日本語の発音上手いな)

禁書
「おなかへった」

禁書
「おなかへった、って言ってるんだよ?」

上条
「…………」

116: 2010/04/30(金) 21:18:28.42 ID:rSCS392o
上条
「もしかして、行き倒れだから飯を食わせろって言うのか?」

禁書
「見てわかんないのかな?行き倒れの倒れ氏に寸前なんだよ!
おなかいっぱいご飯を食べさせてくれると嬉しいな」

上条
「そんなもんわかるわけねーだろ!それに見ず知らずの人間にいきなり飯をたかるな!」

グウゥゥゥゥ

禁書
「い、今のは私のお腹の音じゃないんだよ?」カアアアア

上条
「う~ん」
(なんか幸が薄そうな感じがする子だなあ。しょうがない)

上条
「……ま、上がれよ。冷蔵庫の残り物でなんか作ってやるよ」

禁書
「あ、ありがとうなんだよ。そしておじゃまします」

117: 2010/04/30(金) 21:19:57.39 ID:rSCS392o
・・・・・・・・・・
禁書
「ごちそうさまなんだよ!」

上条
「ふーん。それで、イギリス清教のインデックスさんは魔術結社とやらに追われてビルを飛び移ろうとした末にうちのベランダに干されてたわけか」

禁書
「そうなんだよ、一歩間違えれば氏ぬところだったんだからね」

上条
(魔術結社……魔術、魔術ねえ。
そんなもんありえねえって言いたいところだけど、御坂さんみたいに科学で解明不能な現象があるなら、魔術みたいなもんがあってもおかしくないのかね……?)

上条
「なあ、最近宗旨替えして、不思議な現象も信じるようになったんだけど、魔術ってのもその類って認識でいいのか?」

118: 2010/04/30(金) 21:21:29.20 ID:rSCS392o
禁書
「んー。魔術は不思議な現象じゃなくて、あなた達の世界の常識とは違う法則で引き起こされる現象かな。
だから、超常現象とかそういうふうに言われたりもするかも」

上条
「一応、なんでそれが起きるかはわかってるということなのか?」

禁書
「その通りなんだよ。魔術っていうのは体系化されていて、決められた方法を手順どおりに行えば同じ結果が取り出せるんだよ。
ただ、それが科学で証明されてない法則を使ってるというだけの話なんだよ」

上条
(なんか詳しく聞いたらうさんくさくなってきたな……。だけど、御坂さんも同じように大真面目に話してたしな……)

上条
「オーケー、だいたい理解した。世界は知らない事ばかりだってこともよくわかった」

119: 2010/04/30(金) 21:23:40.51 ID:rSCS392o
上条
「それでだ。魔術ってのはだいたいわかったし、魔術結社ってのもまあわかる。
だけど、インデックスさんは、なんでその魔術結社に追われてるんだ?」

禁書
「それは私の持ってる、10万3000冊の魔導書を狙ってるんだと思うよ」

上条
「?」
(魔導書……。でも、手ぶらで何も持ってないな……)

上条
「魔導書ってのは本なんだろ?そんなもんどこに持ってるんだ?」

禁書
「それは秘密なんだよ」

「……そうだよな。狙われてるんだもんな。秘密にするのは当然か」
(こういうのって知らない方がいいことだったりするし、深く追求するのはよしておこう)

120: 2010/04/30(金) 21:26:06.52 ID:rSCS392o
禁書
「うん。そういうことなんだよ。それじゃあ、そろそろ私は出てくね」

上条
「ちょっと待てよ。狙われてるんだろ?一人で大丈夫なのか?」

禁書
「大丈夫なんだよ。この私が来てる服は『歩く教会』っていう極上の防御結界なんだから」

上条
「防御結界って……その服がバリアみたいなもんなのか?」

禁書
「これを着てれば、物理、魔術を問わず全ての攻撃を受け流し、吸収しちゃうんだからね」

上条
「そりゃ、またすごいな。どういう仕組みなんだ?」

禁書
「布地の織り方から刺繍の飾り方まで全てが魔術的に計算されてるんだよ。
そうすることで『服のカタチをした教会』になるってことなんだけど、わかる?」

上条
「んー、全くわからんが、特殊製法で造られた凄い服ってことでいいんだよな?」

禁書
「まあ、釈然としないけど間違っては無いんだよ。
そういうわけだから、私は一人でも大丈夫。ご飯ありがとうなんだよ」

121: 2010/04/30(金) 21:28:42.77 ID:rSCS392o
上条
「待て待て、それでもダメだ。やっぱり追われてるなんて聞いたら、インデックスさんをほっておけるわけないだろ」

禁書
「むぅ」

上条
「そんな顔されてもなあ。ここにならとりあえず匿ってやれるし、他にも何か出来ることがあるかもしれない」

禁書
「―――じゃあ、私と一緒に地獄の底までついてきてくれる?」

上条
「なっ?」

禁書
「ふふっ、大丈夫なんだよ。教会に逃げ込んじゃえば一人じゃなくなるもん。それじゃあね、ばいばい」

上条
「―――なあ、お前の言う地獄って言うのはどんなもんなんだ?」

禁書
「え――?」

122: 2010/04/30(金) 21:31:56.76 ID:rSCS392o
禁書
「……地獄は地獄なんだよ。私と一緒だと酷い目に逢うんだから」

上条
「そうじゃなくて、具体的にお前と一緒にいるとどういう事が起きるかって聞いてるんだ。
雷でビリビリやられたり、目が覚めたらいきなり炎が目前に迫ってたり、なんだかよくわからないビームとか、この世に存在しない不思議物質で襲われたり、あらゆる物理現象を反射できる敵と対峙するはめになったりするのか?」

禁書
「そ、そこまで酷くはないんだよ」

上条
「―――なら、たいしたことはねえよ。そんなもん俺にとっては地獄でもなんでもない。日常茶飯事ってやつだ」

禁書
「からかってるの?そんな日常を送ってきて生きてるはずないんだよ」

上条
「まさか、こんな真面目な話をしてる時にからかったりはしねーよ。
お前がその歩く教会を頼りにしてるように俺にだって頼りになるモンがあるんだぜ」

禁書
「でも、絶対迷惑かけるんだよ」

上条
「昨日怒られたばっかりなんだ。女の子をちゃんと送って行けってね。だからさ、ついて行ってやるよ、その地獄の底とやらまでな―――」

123: 2010/04/30(金) 21:36:18.45 ID:rSCS392o
・・・・・正午 水穂機構病院 御坂美琴 病室・・・・・・

佐天
「うーん、木山先生遅いですねえ」

美琴
「そうね……」
(佐天さんの相手をしてたら、考えが全然まとまらなかったわ……。
とりあえず、確定事項は二つね。一つ目は研究対象として認識されてるから逃げるのは無理。
二つ目は検査が出来なかったのは機械ではなく私の方に問題有り)

美琴
(これって半分詰んでるわよね……)

コンコン

佐天
「あ、来た!」

124: 2010/04/30(金) 21:39:40.30 ID:rSCS392o
木山
「遅くなってすまなかったね。待たせてしまったようだ」

初春
「失礼します」

佐天
「ありゃ、初春じゃないか」

初春
「佐天さん、来てたんですか?御坂に迷惑かけてないですか?」

佐天
「迷惑なんて全然かけてないって。さっきまで楽しくおしゃべりしてたもん」

美琴
(…………)

佐天
「初春はどうしたん?」

初春
「一昨日捕まえた爆弾魔なんですけど、いきなり意識不明になってしまったんですよ。
風紀委員に連絡があったから様子を見に来たんです」

125: 2010/04/30(金) 21:40:54.64 ID:rSCS392o
佐天
「へえ、幻想御手の副作用ってやつかな?」

初春
「今のところは何とも言えないですね。情報が少なすぎます」

佐天
「やっぱり、現物がなきゃ話は始まらないか」

初春
「本当なら昨日手に入ってるはずだったんですけどね?

佐天
「もしかして、まだ怒ってる?

初春
「別に怒ってませんよ。ただ、今も一生懸命幻想御手を探してる白井さんが可哀想だなって思っただけです」

佐天
「なんだか急に胸が痛くなってきた……」

初春
「そうですか、ここは病院なんだから診てもらったらどうですか?

佐天
「御坂さーん、初春がいじめるよー」

126: 2010/04/30(金) 21:42:36.85 ID:rSCS392o
初春
「さて、私も遊んでる暇はないんでこの辺で失礼させてもらいます。木山先生、約束の方お願いしますね?」

木山
「ああ、わかってる。幻想御手が手に入ったら持ってきたまえ、すぐに解析できるように手筈は整えておこう」

初春
「ありがとうございます。それじゃあ御坂さん、お大事に―――」

美琴
「ちょっと待って、初春さん。黒子に木山先生の研究所に行くけど、大丈夫だからって伝えておいてくれない?」
(とりあえず、黒子にだけは伝えとかないと)

初春
「わかりましたけど、どこか悪いんですか?」

美琴
「ううん、ちょっとした検査をするだけだから」

初春
「そうですか。それでは」シュンッ

木山
「我々も行こうか。病院には話を通してあるからこのままで大丈夫だ」

佐天「さーて、何を食べようかなー」

美琴
「はい、わかりました」
(しょうがない覚悟を決めないと……)

127: 2010/04/30(金) 21:44:31.67 ID:rSCS392o
・・・・・・とあるファミレス・・・・・

佐天
「ふー、食べた食べた。木山先生、ごちそうさまでした。やっぱり人にご馳走になると美味しく感じますねえ」

木山
「それはよかった」

佐天
「あれ、御坂さん、食欲無いんですか?全然減ってませんけど?」

木山
「やはり検査を強いることにしたのはまずかったかな?」

美琴
「えっ? そ、そんなことは……。
ちょっと考え事してただけなんで。さっさと片づけちゃうからちょっと待って」パクパク

128: 2010/04/30(金) 21:48:21.72 ID:rSCS392o
美琴
(このまま木山と二人きりになるのはまずすぎるわ。
迂闊にボロを出せば一巻の終わりだし、私脳波の異常性―――どのくらいおかしいのかわからないけど、詳しく調べられることになったら長期間拘束されてしまう)
ここから一発逆転できる方法を考えないと……)

佐天
「御坂さん、すごい勢いですねえ」

美琴
(ん?……今ここに佐天さんがいるってことは木山をここで抑えることができるんじゃない!?)
よし、ここは一気に決めるしかないわ)モグモグ、ゴックン

美琴
「ごちそうさまでした」

佐天
「御坂さん、私達に気を使わずゆっくり食べて良かったんですよ?」

木山
「もっと良く噛んで食べた方がいいと思うんだが」

美琴
「まあ気にしないで、それより木山先生に聞きたいことが……」

木山
「ん、何かね?」

129: 2010/04/30(金) 21:49:48.57 ID:rSCS392o
美琴
「人体実験で昏睡状態になった生徒さん達は治りそうですか?」

木山
「なんだ…と?」

佐天
「?」

美琴
「樹形図の設計者の使用許可がおりず、とある演算機器でシミュレーションすることにしたんですよね?」

木山
「何故、それを君が知っているんだ」ガタン

美琴
「木山先生落ち着いて下さい。ちゃんと説明しますから」

美琴
「あ、くれぐれも研究の副産物なんて使わないで下さいね。ここには『超電磁砲』がいるんですからね」チラリ

佐天「えっ、私?」

木山
「……どうするかは話を全部聞いてたからだ」

130: 2010/04/30(金) 21:52:00.15 ID:rSCS392o
美琴
「それじゃあ、話を進めますね―――突然ですけど、並行世界って知ってますか?」

木山
「……いきなり何を言ってるんだ?」

佐天
「へーこーせかいっていうとSFのアレですか?」

美琴
「そう、その並行世界よ。この世界と並行して存在する別の世界」

美琴
「私って、そういう世界―――しかも、ちょっと未来から来たのよね。ついでに言うと精神だけ」

佐天
「えっ?何それ?どういうこと?」

美琴
「わかりやすくいうと、異世界人ってこと」

木山
「君は私をからかっているのか?」

美琴
「そう思われても仕方ないです。ですが、からかってるつもりなんて一切ありません」

131: 2010/04/30(金) 21:54:39.27 ID:rSCS392o
木山
「本気で並行世界だの言うようなら、頭の検査をしっかりしなければならないかもしれんな」

美琴
「あちゃー、やっぱり普通はそういう反応ですよね?」

美琴
「まあそれでいいですよ。
並行世界の存在については常識的に考えれば信じがたいことなんで、信じてくれともいいません。
私の目的は並行世界の宣伝をして信じてもらうわけではないですから。
そういう仮定だと認識していたただければいいです」

木山
「……続けたまえ」

美琴
「ありがとうございます……。私のいた並行世界っていうのは一部を除いてこちらとほとんど同じなんです。
私はその世界で普通に過ごしていたんですけど、朝起きたらこっちの私になっていました」

木山
「なっていた?」

132: 2010/04/30(金) 21:57:10.85 ID:rSCS392o
美琴
「この世界の体に私』が上書きされたとでも言えばいいんでしょうかね。話の本筋とはあまり関係ので聞き流してくれて結構です」

木山
「人格の入れ替わりに並行世界。常識的に考えればありえないな」

美琴
「それでも、私がここにいますからね」

木山
「証明する手立てはあるのかね?」

美琴
「あるとはいえばありますけど、ないといえばないです」

木山
「はっきりしないな」

美琴
「さっき、子供達について少し触れたじゃないですか?あれは向こうの世界で仕入れた情報なんです」

木山
「つまり、知りえない情報を知っているから並行世界があるから信じろという話か。弱いな」

133: 2010/04/30(金) 21:58:57.31 ID:rSCS392o
美琴
「おっしゃる通りですね。
こちらの世界でもその情報を手に入れようと思えば出来ないこともない、そう言われてしまえばそれまでですから。
ですが、一般の学生が触れられないような情報を持ってるならば、話は少し違うんじゃないですか?」

木山
「確かにな。私の過去は学園都市の闇につながる物だ。一介の学生では情報統制が掛かってている表面上の情報以外は掴めまい」

木山
「では、一つ聞いていいかな?」

美琴
「なんでしょうか」

木山
「その情報はどこで仕入れたんだ?
二つの世界はほとんど同じだと君は言っていた。
ならば、そちらの世界でもその情報を手に入れることはできないのではないか?」

134: 2010/04/30(金) 22:01:44.82 ID:rSCS392o
美琴
「私は木山先生から直接教えてもらいましたから」

木山
「……それは驚いたな。一体どういう状況になれば君にそんなことを話す気になるんだろうか」

美琴
「その辺りも説明したいので話を進めてもいいですか?」

木山
「……ああ、頼む」

美琴
「先ほど、世界は非常にそっくりだと言いましたよね。こちらと向こうは起こる出来事もだいたい一緒なんです。
4日前は知っていた通りに銀行強盗も起きましたし、爆弾魔や幻想御手の副作用による意識不明も起きていました。
そして、私の世界ではどれも無事に解決されました」

木山
「解決した?」

美琴
「ええ、木山先生には残念ですけど」

135: 2010/04/30(金) 22:04:48.74 ID:rSCS392o
木山
「―――なるほど、君はこの幻想御手の騒動がこの後どうなるかわかるわけだな」

美琴
「一応、顛末まで見届けましたから、木山先生の事情もその時に」

木山
「そういうことか……それなら合点がいくな」

美琴
「まあ、それがこちらと同じ結末になるかどうかは確定してませんけどね」

木山
「なに……、それはどういうことだ?」

美琴
「こっちには私という異分子が紛れ込んでますから。実際に銀行強盗も爆弾魔も知っているとおりにはなりませんでした」

木山
「それは歴史を知ってる君がなにかしてるというわけか?」

美琴
「いえ、そういうわけじゃないです。ほとんど同じでもイコールと言うわけじゃないんです。
こっちとあっちじゃ微妙に配役が違うもんで、どうしても差異が出ちゃうんですよ」

木山
「ほう……。それはまた興味深い話だな」

佐天
「ちょっとちょっと、ちょーっと待って下さい!」

136: 2010/04/30(金) 22:07:07.43 ID:rSCS392o
佐天
「なんで二人して盛り上がってるんですか?この話って御坂さんの妄想じゃないの?
へーこーせかいだなんて、そんなの信じられるわけないじゃないですか」

美琴
「妄想って……」

佐天
「木山先生は御坂さんの話を信じてるんですか?」

木山
「まあ、八割―――いや九割程度は。私にも信じがたいことだがな」

佐天
「九割も?いきなり異世界人ですって言われたのに九割も信じてるんですか?」

木山
「君は幻想御手の首謀者を知っているかね?」

佐天
「なんですかいきなり、そんなのわかるわけないじゃないですか。

木山
「私だよ」

佐天
「え、ええーーー!?」

137: 2010/04/30(金) 22:09:00.17 ID:rSCS392o
美琴
「この御坂美琴という人間はそれを知っていた」

佐天
「そうなんですか?!」

美琴
「まあね」

佐天
「あ!だから、幻想御手について知ってるような感じがしたんですね?」

美琴
「うん、そういうこと」

佐天
「だったら、早く教えてくださいよー。初春や白井さんが可哀想ですよ!」

美琴
「一応、黒子は知ってるんだけどね。まあ初春さんには悪いことしちゃってるわね」

佐天
「白井さんは知ってたんですか?」

美琴
「うん、こっちに来た時に一番に説明して味方についてもらった」

佐天
「あっ、それじゃあ白井さんが秘密にしてた情報源っていうのは」

美琴
「そ、私よ。大っぴらに主張して歴史を大きく変えて私の知識が使えなくなることは避けたかったのよ」

佐天
「そういうことだったんですか」

139: 2010/04/30(金) 22:13:23.51 ID:rSCS392o
木山
「誤差があるとはいえ、知っている歴史をなるべくなぞろうということか。
自分の掌の上でコントロールできる範囲に留めておくのは正しいな」

美琴
「私には『知識』しか頼れるものがありませんでしたから」

木山
「ならば、この状況は本筋にはないイレギュラーな物というわけだな」

美琴
「その通りです。木山先生の研究対象になるなんてことは向こうじゃ起こりませんでしたからね」
このまま研究所に連れてかれてしまえば、私がこの舞台から退場してしまうし、今後が読めなくなるどころか関わることもできなくなるっていう緊急事態なわけですよ」

佐天
「じゃあ御坂さんは、それをどうにかして軌道修正でもしようとしてるんですか?」

140: 2010/04/30(金) 22:16:53.02 ID:rSCS392o
木山
「いいや、それは違う。彼女が異世界人であるということを私に明かしたということはだな。
この幻想御手の騒動を今ここで解決しようとしているんだ。
軌道修正なんてまどろっこしいことは諦めたのだろうな。私が並行世界という存在を知ってしまえばシナリオをなぞることなんて当然出来なくなる」

木山
「つまり、彼女は前の世界のあったことを説明することで、過程すっとばして結果まで強引に辿りつこうとしているわけだ」

美琴
「そういうことです。木山先生、諦めてくれますか?」

木山
「諦めろか……。君は私がそんなに簡単に私が諦めないということは知ってるはずだろう?」

美琴
「ええ、知ってますよ。当然、木山先生は抵抗しますよね?」

木山
「ああ、当然だ。私の悲願をこんな茶番で止めるわけにはいかないんだ」

美琴
「でも、考えてみて下さい。私が予想出来る事に手を打たず、こんな賭けみたいなことをするわけないじゃないですか?
ここには超電磁砲がいるんです―――超電磁砲とやりあってみますか?」

141: 2010/04/30(金) 22:18:59.24 ID:rSCS392o
木山
「……その自信、私は超電磁砲に敗北したということか」チラリ

美琴
「その通りです。あっちでは手加減されても勝てませんでしたよ。
やるっていうなら止めはしませんが、色々面倒な事になるんで出来ればやめてほしいかな」

木山
「手加減されても……か」

木山
「やれやれ、超電磁砲を食事に誘ったのは失敗だったな。
しばらく研究所に軟禁状態になるだろうから、その前に友達と一緒に食事でもと気を利かせたのが仇となるとはな。
どうも私は子供に甘いようだ……トラウマなんだろうか」

美琴
「二人きりだったら木山先生の勝ちでしたよ。私じゃ木山先生を抑えることが出来ませんから」

142: 2010/04/30(金) 22:20:25.37 ID:rSCS392o
佐天
「なんだかしらないけど、私が鍵になってる……」

美琴
「それはね、さっき配役が違うって言ったでしょ?
本人がいる前で言うのはなんだけどさ、私って向こうでは佐天さんの代わりに常盤台エースの超電磁砲だったのよ。
向こうでもこの一件に首を突っ込んで、木山先生とも一戦交えたってわけ。
こっちの世界に来たらレベル0になってて色々苦労したわ。ホント」

美琴
「そういうわけだから、木山春生を押さえるには超電磁砲の佐天さんが必要だったのよ」

木山
「君が超電磁砲、そういうこともあるのか……」

美琴
「へえ、だから超電磁砲にこだわってたんですか。でも、ちょっと待って下さいよ。
別にこっちでは御坂さんがわざわざ首を突っ込まなくても、風紀委員なり警備員に通報しちゃえば良かったんじゃないですか?」

143: 2010/04/30(金) 22:22:09.98 ID:rSCS392o
美琴
「そういうわけには行かないのよ。この木山春生は多才能力者なのよ」

佐天
「多才能力者?多重能力者じゃなくて?」

木山
「彼女の言う通り、多才能力者であっている
幻想御手は複数の能力者の脳を繋げて脳波のネットワークを形成し高度な演算を可能とするんだ。
そして、その副産物として複数の能力を同時に使うことできるというわけだ」

木山
「だから、理論上不可能といわれている多重能力とは方式が違う。
ちなみに複数の脳を繋ぐ電磁的ネットワークというのは超電磁砲である君から得たものだよ」

佐天
「あー、妹達のサテンネットワークですね。話は聞いたことがありますよ。つまり私のおかげでやつですか」

木山「まあ、そういうことになるな」

美琴
「その多才能力で複数の能力を操り、追ってきた警備員を簡単に全滅させたのよ。
警備員を差し向けても無駄な犠牲が増えるだけだし、その時点で未来が読める私のアドバンテージも消えてしまう。
だから通報はしなかったし、できなかった」

144: 2010/04/30(金) 22:23:54.42 ID:rSCS392o
佐天
「そんなに多才能力ってすごいんですか?」

木山
「私は実戦で使ったことが無いからなんとも言えないが、彼女がそういうならそうなんだろう。

美琴
「そこそこってところよ。ちょっとビックリするけど、さっきも言ったように勝てない相手じゃなかったわ。
その後に幻想御手のネットワークが暴走して出来てきた幻想猛獣ってやつが厄介だったわね」

佐天
「多才能力に幻想猛獣―――は何か知らないけど、楽しそうな事してるんですねえ」

美琴
「幻想猛獣はAIM拡散力場で構成された化け物って言えばいいのかな?
馬鹿でかい胎児の形をしてたんだけど、幻想御手を解除するまで再生するし、暴れながら原子力施設に向かうわで大変だったわ」

145: 2010/04/30(金) 22:26:53.89 ID:rSCS392o
木山
「そんな物騒なものが幻想御手から生まれたのか……」

佐天
「そりゃ、すごいですね。私も戦ってみたかったなあ」

美琴
「疲れるだけだからあんまりおすすめしないわ。さて、私の話はだいたい終わりです」

木山
「ああ、わかった。プログラムを止めた後は自首しよう。そんな代物が生み出されるなら下手に暴れるわけにもいかなくなった」

佐天
「あのー、ちょっといいですか?」

佐天
「私って、木山先生がなんでこんなことをしでかしたか理由をまだ聞いてないんですよ。
御坂さんがさっき昏睡した子供たちとか言ってるのは聞きましたけど、詳しい話はさっぱりなんです。
事件も無事解決したようですし、私にも教えて欲しいかあって」

美琴
「……」チラッ

木山
「そうだな……。君には説明を受ける権利があるかもしれないな」

146: 2010/04/30(金) 22:28:31.78 ID:rSCS392o
木山
「私が巨大な演算機器を必要とした理由は、『暴走能力の法則解析用誘爆』という人体実験で使い捨てのモルモットにされた子供達を助けたかったからだ」

木山
「あの子達の快復手段と事件の原因をシミュレーションをしようと樹形図の設計者の使用許可を申請したが受けいれられることはなかった。
23回だ。23度も申請したが全て却下された。恐らく、統括理事会がグルなんだろう。
だから、私は自分で演算機器を用意することにした。あとは知っての通りだ」

美琴
「『この前』も言ったんだけど、アンタのやってることはそいつらと変わらないわよ。

木山
「シミュレーションが終われば、もちろん解放するつもりでいたし、後遺症も残らない。
犠牲は出すつもりはなかった。私はただ子供達を助けたかっただけなんだ」」

美琴
「そうは言うけど、幻想御手があったせいで色々な人が怪我したり、苦しんだりしたのよ。それは犠牲じゃないっていうの?」

木山
「耳が痛いな……そろそろ研究室に行こうか。幻想御手のプログラムを停止させなきゃならない」

147: 2010/04/30(金) 22:31:06.89 ID:rSCS392o
佐天
「それで、その巨大な演算機器っていうのはもう完成したんですか?」

木山
「いや、まだだが、あと4、5日もあれば……」

佐天
「うん、決めました!」

美琴
「決めたって、何を?」

木山
「?」

佐天
「私は木山先生の味方をすることに決めました」

美琴
「―――」

佐天
「木山先生は子供達を助けたいんでしょ?だったら助ければいいんですよ」

木山
「君は、御坂美琴の味方ではないのか?」

佐天
「うーん。御坂さんとは友達ですけど、それとこれは別の話ですから」

148: 2010/04/30(金) 22:32:30.41 ID:rSCS392o
美琴
「な―――ちょ、ちょっと待ってよ。それってどういうことよ!」

佐天
「演算に使ったら解放するってんだから、別に邪魔する必要は無いですよ」

佐天
「さすがに脳味噌がパーンみたいなことになるようだったら、考えますけどね」

木山
「本当に私の味方をするというのか?」

佐天
「ええ、ご飯も奢ってもらいましたし、敵対するも理由もありませんから」

美琴
「佐天さん、良く考えてよ。幻想御手は色々な人に迷惑をかけてるのよ。人の心をもてあそんで、10000人もの人間を巻き込んでる」

佐天
「うん、それは確かに大変ですね。でも、私には関係ないですから」

美琴
「何言ってんのよ?!他人事じゃないのよ!」

佐天
「いやいや、他人事ですよ?
別に私が何か迷惑を被ってるわけじゃないですし、私が御坂さんを手伝って木山先生を止める理由にはちょっと弱いです」

149: 2010/04/30(金) 22:35:11.21 ID:rSCS392o
美琴
「意識不明になってる人だっているのよ!」

佐天
「それは幻想御手なんて正規じゃない手段を使ったペナルティでいいんじゃないですか?
一応、ズルと分類される手段で能力を上げてたんですし、なんらかの不利益があってもも文句は言えないかなあって」

佐天
「それに木山先生は後遺症無しで解放するって言ってるんですから」

木山
「ああ、それは約束する。幻想御手を解除すれば元通りだ。

佐天
「ほら、それなら別にいいじゃないですか。4,5日ほど目を瞑ればいいんですよ?」

美琴
「馬鹿言ってんじゃないわよ!そんなの出来るわけないじゃない!」

木山
「ならば、君はどうするのかね?超電磁砲がこちらについた以上、君の目的は達成できそうにない。君はもう詰んでいるだぞ?
しかし、最後に大逆転が待っているとは私も思わなかったよ。これであの子達を助けることができそうだ」

150: 2010/04/30(金) 22:38:26.33 ID:rSCS392o
美琴
「幻想御手を使って―――そんな方法で、正しくない方法なんかで助けられて子供達が喜ぶと思うの?」

木山
「そうだな、喜ばないかもしれない」

美琴
「それなら―――」

木山
「だが、それは全てあの子達が目覚めてからの話だ。私はあの子達に誹りを受けようと軽蔑されようとあの子達を助ける」

木山
「―――これは私に課せられた義務であり贖罪なんだ」

佐天
「私は、……そうですね、一飯の恩ということで木山先生に協力しましょう」

美琴
「なんでよ……。私は正しいこと言ってるわよね?間違ってないでしょ?
人の脳を勝手に使って演算するなんて悪いことでしょ?それで人にも迷惑かけて……。
それを止めようとするのは正しいことでしょ。なんで佐天さんは協力してくれないの?」

151: 2010/04/30(金) 22:42:22.13 ID:rSCS392o
佐天
「それは―――私が御坂さんじゃないからですかねえ」

美琴
「どういうことよ……」

佐天
「御坂さんはたぶん正義の味方なんでしょうね。
御坂さんの間違ってる事を許さず、常に正しい事をしていたいって考えは非常に素晴らしいと思いますよ?
だけど、そんなの私は勘弁ですね。窮屈で大変ですもん。
私は正しいとか正しくないとか、そういう面倒くさい事を考えずに自分のやりたい事をやっていたいんですよ。
私はその方法が間違ってようが子供を助けようとする木山先生に協力する。だから、御坂さんには協力しない」

美琴
「そんなのただの自分勝手じゃない!」

佐天
「ええ、自分勝手ですよ。だけど、その自分勝手が許されるんです。それがレベル5なんですよ。
わかりますよね?御坂さんも超電磁砲なんですから」

美琴
「―――っ」

153: 2010/04/30(金) 22:44:20.63 ID:rSCS392o
木山
「同じ超電磁砲でもずいぶん違うもんなんだな?」

佐天
「そうですね。御坂さんは甘ちゃんなところがありますから」

木山
「だが、彼女は私から見れば羨ましい。悪いことを悪いと言って正すことができるのだから」

佐天
「それはどうなんでしょうかね。力がないとその生き方をするのは難しいですから」

木山
「正義の味方になるには力が足りないか……」

佐天
「ええ、この学園都市じゃ間違いが多すぎて、私だって正義の味方にはなれませんからね」

木山
「全くもって、その通りだな。この学園都市ではそんな生き方じゃ長生きは出来やしない」

佐天
「辛気臭い話になってきましたし、そろそろ帰りましょうか」

木山
「ふむ……少々長居しすぎたな」

美琴
「あ……」

155: 2010/04/30(金) 22:47:17.76 ID:rSCS392o
木山
「ああ、そうだ。君の脳波異常は恐らくだが、並行世界の『超電磁砲』であることが理由の一つだと思われる。
もちろん治療法はわからない。並行世界云々は現代科学の範疇を超えているし、他人の精神が入り込むなんて事例も聞いたことが無い。
本来なら研究材料にするところだが、君のおかげで切り札が手に入ったし、今回は見なかったことにしておこう。
当然のことだが、君に何が起こるかは予想できない。何か異常を感じたら私を頼るといい。悪いようにはしない。
連絡先はここに置いておく。もちろん誰かに情報を漏らしたりもしないから安心してくれ」

木山
「それと、なるべく犠牲者は出したくないから風紀委員や警備員に通報するのはよしてくれたまえ。
強行手段に訴えて出てこられたら、多才能力で相手をするしかないからな」

佐天
「あ、そうなったら私も影から協力してあげますよ」

木山
「ほう、それは心強いな。
それじゃあ、この辺で失礼する」

158: 2010/04/30(金) 22:49:21.97 ID:rSCS392o
美琴
「待って―――待ちなさいよ」バチバチ

木山
「やれやれ、実力行使か?少しは場所を考えてほしいな」

佐天
「早速、私の出番ですかね?」

木山
「どうやら、こっちもやる気満々のようだが……超電磁砲とやりあってみるかい?」

佐天
「その前に一言いいですかね?」

美琴
「なによ……」

佐天
「御坂さん、幻想御手を止めるってことは子供達を見捨てるってことですよ?
木山先生は捕まり、治療法も不明のまま、事件の原因もわからず仕舞い。可哀想な事に罪のない子供達はずっと眠り続けるはめになります」

美琴
「それは……」

佐天
「もしかしたら、御坂さんは子供達に恨まれるかもしれませんね」

美琴
「……っ」

木山
「やめたまえ、恨まれるとしたらこの私だ。それに私はそういう手は好まない」

159: 2010/04/30(金) 22:52:15.89 ID:rSCS392o
佐天
「おっと、これは失礼。まあ、話はそれだけです。
じゃあ、始めましょう。入院中は毎日電撃使いの集いを開いてあげますから―――」バチバチィ

美琴
「くっ……」ガクガク
(な、なんで足が震えてんのよ?!)

佐天
「あれ?戦意喪失ですか?」

美琴
「…………」

木山
「もういいそうだ。では失礼するよ」

佐天
「そりゃ残念ですね。
ああ、御坂さん。別に無理に頑張らなくても誰も責める人はいないんですよ?
じゃ、そういうことで」

木山
「今のは最高に嫌味な言い方だったな」

佐天
「私もそう思います」

160: 2010/04/30(金) 22:54:56.39 ID:rSCS392o
・・・・・・木山の車・・・・・・・
佐天
「それにしても木山先生、並行世界なんて本当にあるんですかね?」

木山
「彼女がいるんだからあるんだろう。
彼女は幻想御手や私について知りすぎていたし、話の筋も通っていて嘘をついているようには見えなかった」

佐天
「なんらかの方法で先生の情報を得た御坂さんが芝居をしてるとか、そういう可能性は?」

木山
「まず無いだろう。そんなことをするメリットが無い。統括理事会もそんな回りくどい妨害をするわけもないだろうしな」
まあ、科学者としては証明できてない並行世界の存在を100%肯定することはできないがね」

佐天
「はー、科学者って面倒くさいですね」

木山
「職業上の仕方ない悪癖だよ。そういう君はどうなんだい?」

161: 2010/04/30(金) 22:57:40.02 ID:rSCS392o
佐天
「私は一通り話を聞いただけじゃ5割くらいしか信じられないですね。実際に行けたりすれば信じますけど。
でも、個人的な希望込みで8割、いや9割くらいにはなるかもしれません」

木山
「ふむ、その希望というのは?」

佐天
「最近、御坂さんが電撃使いになったんですよ」

木山
「最近、ね」

佐天
「今の御坂さんが本当に違う世界の超電磁砲だったらレベル5クラスに成長して私のライバルになるかもしれないじゃないですか。そうしたら面白い事になりそうだなあって、そういう希望です。

木山
「なるほど。彼女という存在を肯定するなら並行世界も同時に肯定するということか」

佐天
「そんなところです。自分に都合がいいようなら信じたくなるのが人間ってもんでしょう」

木山
「違いない」

162: 2010/04/30(金) 22:59:14.16 ID:rSCS392o
佐天
「あ、ここでいいです。止めて下さい」

木山
「ああ、わかった」

佐天
「送ってくれてありがとうございます。なんかあったら連絡してくださいね」

木山
「ああ、気をつけて帰りたまえ」

佐天
「はっはっはっ、私を誰だと思ってるんですか?」

木山
「そうだったな。余計な心配だった」

佐天
「木山先生こそ、安全運転で帰って下さいね」

木山
「なに、私にも多才能力があるからな。事故に遭っても氏にはしないさ」

佐天
「なーに言ってるんですか、交通事故は加害者にもなり得るんですよ?」

木山
「……、気をつけて帰るとするよ」

佐天
「そういうことをうっかり忘れるのも科学者の悪癖ですかね?」

165: 2010/04/30(金) 23:09:48.45 ID:rSCS392o
・・・・・・柵川中学校 学生寮 御坂美琴自室・・・・・

美琴
「久しぶりに自分の部屋に帰って来たわ。
なぜか1ヶ月くらい病院にいた気がするわね」

黒子
「わたくしも御坂先輩の部屋に来たのは一月ぶりくらいに感じますの」

美琴
「…………ま、気のせいよね」

黒子
「そうですの。気のせいですの」

・・・・・・閑話休題・・・・・・

黒子
「それはともかく、木山の研究所に行くって聞いた時は心臓が止まるかと思いましたわ。
でも、戻ってこれたということはなんとかなかったってことですの?」

美琴
「全くもってそんなことはないのよ。最高にまずいことになったわ」

黒子
「な、なにが起こったんですの?」

美琴
「物凄く言いにくい事なんだけどね」

黒子
「はい……」ゴクリ

美琴
「……佐天さんが木山春生側についちゃった」

166: 2010/04/30(金) 23:12:07.46 ID:rSCS392o
黒子
「は?」

黒子
「えっと、あの、わたくしの耳がおかしくなった可能性がありますので、もう一度お願いしますの」

美琴
「だから、佐天さんと木山が手を組んじゃった」

黒子
「え、ええええええええええええ」

黒子
「そ、それはいったい全体どういうことですの?」

美琴
「落ち着きなさいよ。ちゃんと説明するからさ」

黒子
「落ち着けるわけないですの!」

167: 2010/04/30(金) 23:14:34.03 ID:rSCS392o
・・・・・説明タイムですの!・・・・・・

美琴
「そういうわけで、作戦は見事失敗しました」

黒子
「それでどうするんですの?これで事実上手出しが出来なくなったも同然ですのよ」

美琴
「わかんないわよ。そんなの」

黒子
「そんな無責任な……」

美琴
「考えたってもう無駄でしょ。佐天さんが味方についてしまった以上、こっちにはそれをどうにかする手段はないわけだしさ。
あとね、木山春生を止めることが本当に正しいかどうかわからなくなったってのもあるのよね。
だって、ほっといてもこの騒動は収束するし、木山春生の子供達も助かるし、私が止める必要あるのかなって」

黒子
「御坂先輩、何をいまさら言ってるんですの?」

168: 2010/04/30(金) 23:17:20.22 ID:rSCS392o
美琴
「でも、このまま私たちが目を瞑ってれば、私の世界みたいに幻想猛獣が暴れ出したりせず、何事も無かったように幻想御手事件は解決するのよ」

黒子
「本当に御坂先輩はそう思ってるんですの?
心の底から、何もせずに事件がただ収束するのを待っていればいいと思っているんですの?」

美琴
「それは……。よくない、と思う。間違ってる」

黒子
「わかってるじゃありませんか。
目を瞑っていれば何事もなく終わるなんて真っ赤な嘘でしかありませんの。
その4,5日の間に幻想御手によって犯罪に走る人間は当然いますし、その犯罪に犠牲になる人間だっていますのよ。
そもそも碌な臨床試験もしてないというのに後遺症が無いなんてどこまで本当かわかりませんの。
何を一体迷うことがあるんですの?」

黒子
「御坂先輩が木山春生を止めようとすることは正しいことですのよ」

169: 2010/04/30(金) 23:20:43.82 ID:rSCS392o
美琴
「私、幻想御手を止めるってことは子供たちを見捨てることだって佐天さんに言われた時に木山春生の子供たちの顔を思い出したわ……。
木山春生の記憶を覗いた私には子供達を見捨てて、幻想御手を止めるのが本当に正しいって言い切る自信が無いの!」

黒子
「それは、子供達を助けるということが幻想御手の被害者や被害者になりうる人を犠牲にすることだとわかって言ってるんですよね?」

美琴
「わ、わかってるわよ」

黒子
「なら、佐天さんのように木山春生に肩入れすればいいのではありませんか?」

美琴
「えっ……」

黒子
「この件に関しては、残念ですがみんなで笑えるハッピーエンドなんてものは存在しませんの。
もしも、そんな状況があるとしたら誰かが我慢をして作り笑いをしてるだけですの。
どちらか一方を選ぶなら、もう片方を切り捨てなければなりませんの」

171: 2010/04/30(金) 23:26:42.59 ID:rSCS392o
黒子
「わたくしは根本的な所では当事者ではないので、木山春生の子供達と幻想御手による被害者達を天秤にかけたりはしません。
わたくしは自分の中の正義に基づいて木山春生を止めます。その結果、子供達が眠り続けることになったとしてもです」

黒子
「それがわたくしの選択ですの」

黒子
「どちらかしか選べないし、どちらかを選ばなくてはなりませんの。
ですから、木山の事情を知っている御坂先輩が子供達を助けてやりたいと思うのなら、わたくしに止める権利はありませんし、仕方ないと思いますの」

美琴
「黒子……」

黒子
「本当に、本気で助けたいと思っているのなら―――ですが」

美琴
「なによ、その言い方は」

黒子
「いえ、わたくしには気になることがありましてね。杞憂ならいいのですが」

172: 2010/04/30(金) 23:29:55.07 ID:rSCS392o
美琴
「言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ!」

黒子
「じゃあ聞きますけど、御坂先輩は佐天さんから逃げたいと思っていらっしゃいません?」

美琴
「ア、アンタ何言ってんのよ?
私が佐天さんから逃げたい?そんなわけないじゃない馬鹿馬鹿しい」

黒子
「本当にそうですかね?」

黒子
「確かに御坂先輩には迷いが生まれているのかもしれませんの。
木山春生を止めるか止めないか。子供達を見捨てることは本当に正しい事なのか。
ですが、佐天さんから逃げるために、その答えとして木山春生を止めないことを選ぼうとしてしませんか?」

美琴
「そ、そんなことは……」

黒子
「そんなことはない、本当にそう言い切れますの?」

173: 2010/04/30(金) 23:32:32.49 ID:rSCS392o
黒子
「事情を知りながらも、あれだけ木山春生を止めると息巻いていた御坂先輩が心変わりするのは少々疑問に感じますの。
それに、向こうの世界でも御坂先輩は木山春生を止めることを選んでるんじゃないですの?
その時に少しでも躊躇しましたか?」

美琴
「それは……」

黒子
「木山春生を止めようとするならば、佐天さんと衝突するのは必至ですの。
御坂先輩が『超電磁砲』だったとはいえ、現在はレベル3程度の能力しか使えない。
だから、佐天さんと戦わなくて済むように木山春生の子供達を言い訳にしようとしていませんか?」

美琴
「なによ……それ、まるで私が佐天さんにビビってるみたいじゃない」

黒子
「わたくしは先ほどからそう言ってますのよ、御坂先輩は佐天涙子―――超電磁砲にビビっている、と」

174: 2010/04/30(金) 23:34:58.54 ID:rSCS392o
黒子
「まあ、超電磁砲の凄さは御坂先輩自身が一番わかってますものね、ビビっても仕方がないかもしれません」

美琴
「好き勝手言ってんじゃないわよ!じゃあ、アンタならどうすんのよ!
能力の差は絶望的、身体能力でも敵わない。そんな相手に立ち向かえるっていうの?
奇跡でも起こさなきゃ勝ち目すらない相手だっていうのに」

黒子
「……私には無理ですの。わたくしは卑怯で臆病ですから」

美琴
「ほら、見なさいよ」

黒子
「ですが、私の知っている『御坂美琴』ならできますの」

黒子
「1年前、『御坂美琴』は無能力者にも関わらず、能力者に立ち向かいましたわ」

美琴
「急に何を……」

175: 2010/04/30(金) 23:39:21.05 ID:rSCS392o
黒子
「あなたにもそれが出来ますの?」

美琴
「それくらいできるわよ。現にこないだレベル0の状態で爆弾魔と戦ったじゃない。もう忘れたの?」

黒子
「アナタ様は本当の無能力者として立ち向かったわけではないですの。
『御坂美琴』は、本当に無能力者として能力者の前に立ちはだかったんですのよ。あなたとは全く違いますの」

黒子
「『御坂美琴』だったら、レベル5相手だろうが逃げなかったはずですの。
たとえ、無謀で考えなしと馬鹿にされても、『御坂美琴』は佐天涙子の前に立ち向かうはずですわ。
アナタ様と『御坂美琴』は根っこは同じなはずですの。わたくしを失望させないで下さいませ」

美琴
「…………」

黒子
「…………」

黒子
「今日はもう失礼しますの、おやすみなさい」

ガチャッ

176: 2010/04/30(金) 23:43:22.97 ID:rSCS392o
美琴
「…………」

美琴
「なによ、黒子のヤツ。好き勝手なことばっかり言って、レベル0なのは変わりじゃないじゃないの!
それにこの幻想御手事件はアンタ達の世界の事でしょ!私にばっかり押し付けるんじゃないわよ!」

美琴
「もう知らないわよ!どうなったって関係ないんだから!」

美琴
「もう寝るんだから」

・・・・・・・・・・・・・

美琴
(眠れない……)

『佐天さんから逃げてますの』
『佐天さんにビビってますの』

美琴
「うるさい、うるさい、うるさーい!!」

『失望させないでくださいませ』

プッツーーン

美琴
「決めた、決めたわ……。やればいいんでしょ?やってやろうじゃないの!
ここまで馬鹿にされて黙ってられるわけないじゃない!木山春生も佐天さんも二人まとめて倒してあげるんだから!」

pipipi

美琴
「…………ああ、木山先生ですか?私です。御坂美琴です。突然ですけど、決闘を申し込みます。
明日12時に操車場まで来てください―――もちろん、超電磁砲を連れて」

177: 2010/04/30(金) 23:45:31.11 ID:rSCS392o
・・・・7月21日朝 柵川中学校 学生寮 御坂美琴自室・・・・・
黒子
「おはようございますの」

ガバッ

美琴
「おはよう、黒子。今日は―――」

黒子
「7月21日ですのよ」

美琴
「そうよね、今日は7月21日ね!戻っちゃってたら不完全燃焼で氏ぬところだったわ」

美琴
「私、決めた。佐天さんと戦うわ」

黒子
「それは子供達を見捨てるということですか?」

美琴
「ううん、それは今はどうでもいいとうか、考えない事にしたわ」

黒子
「なんとまあ」

美琴
「子供たちをとるか、幻想御手の解決をとるかは佐天さんに勝ってから考える。
それが私にとって正しい答えの出し方だと思う」

180: 2010/04/30(金) 23:49:28.27 ID:rSCS392o
黒子
「なるほど、それはそうかもしれませんの。それで勝算はあるんですの?」

美琴
「そんなもんはないわ。今から考えてダメなら奇跡ってのに賭けるしかないわよ」

黒子
「それはまた、無謀な話ですの」

美琴
「まあね。しょうがないじゃない。それが『御坂美琴』なんでしょ?」

黒子
「そうでしたの。仕方がないことですの」

美琴
「黒子にお願いがあるの」

黒子
「なんですの?」

美琴
「風紀委員や警備員に木山春生の事を通報したりしないでね。
ワガママだってのはわかってる。だけど、私がこの手で決着をつけたいの。ひっかきまわした責任も取らなきゃならないしね」

黒子
「わかりましたの。本来なら風紀委員として見逃すことはできませんの。
ですが、今日のわたくしは御覧の通り体調不良で風紀委員はお休みですの」ゴホッゴホッ

黒子
「それに……昨日は少し言いすぎましたの。そのお詫びということで目を瞑りますの」

美琴
「その辺は別に気にしなくていいわ。ちょっと弱気になってたのは確かだもん。
ありがとね、黒子。やっぱりアンタは私の相棒よ」

7月21日編に続くよ!

182: 2010/04/30(金) 23:56:36.58 ID:rSCS392o
つーことで7月20日編は終わりです。
7月21日(最終日)はバトル展開を入れたいなあと思いつつも、地の文が必要になるし超面倒くさくて困ってる今日この頃。
あと展開予測は控えてくれると助かります。
話の大筋は出来てて細かいところを詰めて肉付けするだけなので、こっから修正するのは面倒っていうか無理なので。

引用: 黒子「御坂先輩、7月19日ですの」