622: 2014/05/25(日) 23:26:30.31 ID:LlI8isVZ0


大和田「俺達は諦めねえ!」舞園「ドクターK…力を貸して下さい」不二咲「カルテ.3だよぉ」【前編】
大和田「俺達は諦めねえ!」舞園「ドクターK…力を貸して下さい」不二咲「カルテ.3だよぉ」【中編】
大和田「俺達は諦めねえ!」舞園「ドクターK…力を貸して下さい」不二咲「カルテ.3だよぉ」【後編】


            ―  捜  査  開  始  ―


真っ先に動いたのはやはり霧切響子だった。


霧切(現場と被害者の様子は調べた。あとは倉庫と石丸君の部屋と不二咲君の部屋。
    それに一人ずつもっと細かく証言を裏取りして、それから……)

「霧切!」

「!」


顎に手を当てながら足早に廊下を歩いていた霧切だったが、唐突に声を
かけられ立ち止まって振り向く。そこには桑田が立っていた。


霧切「何の用かしら?」


ああ、またやってしまったと霧切は内心顔をしかめる。折角桑田が話し掛けてきたのだ。
この間のことを謝るチャンスだっただろう。しかし、探偵としての本能は今は少しでも
時間が惜しいと自分を急かす。何より、霧切は今回の事件に対して責任を感じていたのだ。

不二咲は今まで一度だって勝手な行動を取ったりはしなかった。自分があの時厳しい言葉を
言ったせいで、不二咲が自分を責めて早まった行動を取ったのではないかと霧切は感じていた。


霧切「悪いけど、今は捜査に集中したいから用があるなら後で……」

桑田「今じゃなきゃ困んだよ。その、霧切――俺と一緒に捜査してくれ!」


616: 2014/05/24(土) 22:50:31.45 ID:pFE45/yv0

ここまで。次回から捜査編となります


623: 2014/05/25(日) 23:30:54.54 ID:LlI8isVZ0

霧切「!」


唐突な申し出に、いつも冷静な霧切も流石に戸惑った。桑田は自分を怒っていたはずだ。


霧切「この間のことはもう怒っていないの?」

桑田「いや、まだ少し怒ってるけど」

霧切「…………」


桑田が何を言いたいのかわからない。怒っているのに何故自分と捜査したいなどと言うのか。


霧切「なら、どうして……」

桑田「俺は自分が言ったことが間違ってるとは思ってねえし、そこは譲らねえぞ?」

桑田「……ただ、お前がお前のやり方で事件を防ごうって頑張ってたのは知ってるし、
    俺もイラついてて、その……ちょっとキツい言い方しちまったのは謝るわ。わりい」

霧切「……そう」


本来は自分から謝るべきなのに、先に謝られてしまった。ここで自分も悪かったと素直に
言えばいいのだが、対人経験の薄い霧切は何を言えばいいのかわからずに話を戻してしまう。


霧切「それで、どうして私と捜査したいと思ったの?」


624: 2014/05/25(日) 23:43:51.35 ID:LlI8isVZ0

桑田「そりゃあ、お前の方が俺よりずっと頭が良くて冷静だし捜査とか得意そうだからだよ」

桑田「俺は絶対に不二咲を襲った犯人を見つけなきゃなんねえんだ!!」

霧切「そうね。その気持ちは私も同……」

桑田「ちげーよ! 俺には犯人見つけ出さなきゃなんねえ責任があんだよ!」


同意しようとした霧切の言葉を桑田は遮った。その表情はどこか思い詰めている。


桑田「……俺はせんせーからずっと不二咲のこと頼まれてたのに、
    俺が不用意に部屋から出たせいでこんなことになっちまった……」

桑田「しかも、なにトチ狂ったか知らねえけど石丸のバカは自分が犯人だとか
    ワケわかんねえことヌカすしよ。……どう考えても濡れ衣だろあれ?」

霧切「…………」


いつもの霧切なら、証拠がない以上自白した石丸が犯人である可能性は高いと言うはずだった。
……だが、以前石丸に庇ってもらった恩義がある桑田に対してそんなことは言える訳がない。
それに霧切自身、石丸が犯人だというのはどうしても信じられなかったのだ。


桑田「あいつが犯人なワケねーんだ。あんな生真面目で風紀風紀うるさいヤツが不二咲襲うかよ!」

桑田「頼む、霧切! 俺に手を貸してくれ! 二人の仇をとりてえんだ!!」


そう言って霧切の瞳を見据える桑田の目は真っ直ぐで、それでいてギラギラと輝いていた。
そうだ。霧切ですら責任を感じているのに、不二咲の面倒を任されていた桑田が今回の件に
責任を感じていないはずがないのだ。霧切は痛いほど今の桑田の心境が理解出来た。


625: 2014/05/25(日) 23:48:52.16 ID:LlI8isVZ0

霧切「そうね。確かに、この事件の真相はあなたが掴むべきかもしれない……」

霧切「いいわ。一緒に捜査しましょう」

桑田「サンキュー! 助かるぜ! ……っつっても、俺は肉体労働専門だろうけど」

霧切「十分よ。捜査は意外と体を使うから……」


話しながら、ふと霧切は思い出す。


霧切「……そういえば、私の肩書をまだ話してなかったわね」

桑田「え? 教えてくれんの?」

霧切「今のあなたになら教えてもいいわ」


そう言ってファサリと、霧切は長い髪をかきあげた。いつもなら、綺麗だけどなんか自信満々で
可愛げないよなーと思うその仕草だが、今回ばかりはそんな所でさえ頼りになって仕方がない。


霧切「私の肩書は【超高校級の探偵】よ」

桑田「っ?! ちょ、マジかよ!」

桑田(ヤバい……頼りになるなんてレベルじゃなかった……!)

桑田「……どーりでいろいろ手慣れてるっていうか、いつもクールなワケだぜ」


626: 2014/05/25(日) 23:53:25.75 ID:LlI8isVZ0

霧切は少しだけ笑った。そして、十神君じゃないけどと前置きして彼女は宣言する。


霧切「超高校級の探偵・霧切響子の名にかけてあなたを真相に導くわ。行きましょう」

桑田「おっしゃ!」


そして二人は正式にコンビを組んだのだった。


               ◇     ◇     ◇


一方教室では、取り残されたメンバーで別の動きがあった。


苗木「じゃあ、僕らも捜査を始めようか。……って言っても何から始めればいいかさっぱりだけど」

舞園「やっぱり、まずは現場をよく見ることじゃないですかね。現場百ぺんて言いますし」

苗木「うん、そうだね。えっと凶器は……」

大和田「お、おい! お前ら」

苗木「大和田君?」

舞園「どうしたんですか?」


問いかけられて、一瞬気まずそうに目線を落とす大和田だが、意を決して口を開く。


627: 2014/05/25(日) 23:58:17.67 ID:LlI8isVZ0

大和田「なあ、オメエらは……兄弟が犯人だって思うか?」

苗木「うーん、本人がそう言ってるしなぁ……」

舞園「第一発見者の上、凶器を握ってたらしいですからね」

大和田「そうか……」

苗木「でも、待って! 僕は石丸君は犯人じゃないと思うんだ!」

大和田「! ホントか?!」

苗木「うん! だって、いくらなんでも状況が不自然過ぎるよ。石丸君が不二咲君を襲う
    動機もないし、第一石丸君は過去に自分の身も顧みず不二咲君を庇ったじゃない」

苗木「そもそもあんな真面目な石丸君が不二咲君を襲ったなんて、僕には到底信じられないよ」

大和田「苗木……」


その会話に割り込んだのは、現場保全のため残った三人組である。


江ノ島「でも本人がやったって言ってんじゃん。なんかの拍子にぐいーってやったんじゃないの?」

葉隠「本当、苗木っちはお人よしだべ。いいか? 人を騙すにはなぁ、まずはいい人の振りをして
    近付くんだべ。いい人に見えるから、そんなことしそうにないからなーんてなんの根拠もねえ」

大和田「そうか……オメエには兄弟が他人を騙すためにいい人ぶってたように見えてたんだな」ビキビキ!

葉隠「ヒッ! ち、違うべ! 別に石丸っちのことを言ったんじゃなくて一般論だべ。
    苗木っちはカモにされやすいから気をつけなーって話をだな!」

苗木「あ、ありがとう(この中で一番胡散臭いのって葉隠君なんだけどな……)」

舞園(私もそう思います)


628: 2014/05/26(月) 00:02:25.27 ID:j1h/sSMm0

大和田「大神、オメエはどうだ?」

大神「わからぬ……確かに石丸が人を、それも不二咲を傷つけるようには到底思えぬが、
    事件当時は意識がなかったと言っている。殺意はなくとも事故なら有り得なくもない」

大和田「そうか……」

舞園「元気出してください……私は苗木君と同じ意見です。確かに状況証拠的には石丸君が犯人ですし、
    本人の自白もありますが、彼は人頃しなんて出来るタイプではないと思います」

苗木「僕達で石丸君の無実を証明しよう!」


そんな二人を見て大和田は少しだけ安堵するが、同時に強い決意も湧いてくる。


大和田「あ、それで……オメエらに頼みがあるんだけどよ」

舞園「何ですか?」

大和田「その……俺と一緒に捜査してくれねえか? 俺は見ての通り頭使うことはからっきしで……
     でもよ、兄弟の無実は俺の手で証明してやりたいんだ! あいつが人頃しなんて出来るワケねえ!」

苗木「いいよ! 一緒に頑張ろう!」


即決して大和田を仲間に加えると、三人は改めて現場へと向き直った。


舞園「では早速現場検証と行きましょうか?」

大和田「犯人の使った凶器は……この延長コードだな。流石の俺でもわかるぜ」

舞園「でもおかしいですね」


629: 2014/05/26(月) 00:07:45.44 ID:j1h/sSMm0

苗木「どうしたの?」

舞園「……いえ、私の記憶違いでなければ教室に延長コードなんてなかったと思うんですけど」

苗木「そういえば……教室で電化製品なんて使わないし、なかった気がする」

大和田「犯人がどっからか持って来たってことか?」

苗木「そうだね」

大和田「よし! 手がかりが一つ掴めたな! 問題はどこから取ってきたかだが」

舞園「……私、この延長コード見覚えがある気がします。確か、図書室にあったような……」


・コトダマGET!

【延長コード】:不二咲の首にグルグルと巻かれていた凶器と思しきコード。図書室に置かれていた。


苗木「現場検証が終わったら図書室に行ってみよう」

大和田「他に、なんか手がかりになりそうなもんはねえか?」

苗木「そもそも現場はここなのかな? モノクマファイルにはそう書いてあるけど、抵抗した跡もないし」

舞園「不二咲君は小柄ですからね。不意をつけば女子でも十分殺せると思います」

苗木(……そこが問題なんだよな。恐らく女子で一番弱いセレスさんや腐川さんでも出来そうなのが)

大和田「なんか痕跡探さねえとな。つっても痕跡ってーと……」


630: 2014/05/26(月) 00:12:03.86 ID:j1h/sSMm0

大神「サスペンスドラマでは血痕などが重要だったりするな。余計なことかもしれぬが」

苗木「そんなことないよ。アドバイスありがとう」

苗木(というか、大神さんドラマとか見るんだ……)


後に朝日奈から聞いた話だが、意外とテレビは見てるらしい。ラブコメとかは恥ずかしくて
見ていられないそうだが、純愛物が好きで腐川の小説が原作の映画では度々もらい泣きしてるとか。


舞園「調べてみましたが、絞殺ですし血痕などは特にないようです。他に気になるものは
    ありませんし、次は被害者をよく見た方がいいかもしれないですね」

大和田「じゃあ、保健室に行くか」


               ◇     ◇     ◇


倉庫。そこそこ広い空間にも関わらず、天井近くまで所狭しとダンボールが並んでいるせいで
どこか息苦しさすら覚える空間。そこに霧切と桑田の二人組は訪れていた。


桑田「で、なにを調べに来たんだ?」

霧切「凶器についてよ」

桑田「あん? 凶器? 教室にあった延長コードだろ? 不二咲の首にも巻いてあったし」

霧切「あの延長コードは元々教室にあったものではないわ」

桑田「え? そうなのか?」


霧切は鋭い光を瞳に宿しながら、順を追って桑田に説明していく。


631: 2014/05/26(月) 00:19:00.19 ID:j1h/sSMm0

霧切「ええ。図書室にあったはずよ。もしあれが真の凶器なら犯人はわざわざ図書室から
    延長コードを持ってきたことになるけど、何故倉庫のロープを使わなかったのかが
    気になるわ。だから、倉庫に手掛かりがあると思って調べに来たのよ」

桑田「ふーん」

霧切「そこで、あなたの出番ね。ここにあるダンボールを順番に取り出してくれないかしら」

桑田「お、おい……まさか、これ全部調べんの……?」

霧切「……早めに手掛かりが見つかることを祈ってるわ」

桑田「マジかよ……」


手伝うと言った以上桑田は不満を言ったりはしなかったが、既に表情はげんなりとしていた。
だが、これで何か手掛かりが見つかるならと手近なダンボールを次々に引き出していく。


霧切「…………」

桑田「よっこらせっ、と……」


霧切のなんとなくこの辺が怪しい、という直感を頼りにいくつもダンボールを調べていくが、
当然すぐに手掛かりなど見つからない。しかし、それでも二人は黙々と調べ続けていった。


桑田「……あ? なんだこりゃ?」

霧切「! 見せて頂戴!」


十数個目のダンボールを調べていた時、突然桑田が声を上げる。
その手には白いリボン状の物が握られていた。


632: 2014/05/26(月) 00:25:20.92 ID:j1h/sSMm0

桑田「これ、この箱の中身とは関係ないよな……?」

霧切「…………」


霧切はリボンを手に取りジッと見つめる。そしてフッと笑った。


霧切「桑田君、お手柄ね」

桑田「お、なんかの手掛かりなんだな?!」

霧切「これでもう倉庫に用はないわ。行きましょう」

桑田「よし!」


・コトダマGET!

【リボン状の物】:白いリボン状の物。端がすっぱり切れている。


               ◇     ◇     ◇


KAZUYAは不二咲の傷に丁寧に包帯を巻き、点滴で抗生剤を打っていた。


K(レスピレーターがないと厳しいかと思ったが、存外呼吸はしっかりしている。もう大丈夫だな)


レスピレーター:人工呼吸器のこと。昨今ではベンチレーターという呼び方が主流。


633: 2014/05/26(月) 00:29:20.48 ID:j1h/sSMm0

K「…………」

石丸「…………」


テキパキと処置をしながら、KAZUYAは俯いたまま立ちすくむ石丸の方にチラリと目をやった。


K(何と声をかけたものか……ん?)

K「……石丸、お前その手首はどうした?」

石丸「え……?」


言われて石丸は両方の手首を見る。少しだが赤く腫れ上がっていた。


石丸「あ、痛っ。……おかしいな。どこかにぶつけた覚えはないのですが……」

K「見せてみろ。他に異常はないか?」

石丸「……今まで気付かなかったのですが、何だか全身のあちこちが痛いです。少しですが」

K「フム、きっと真犯人がお前を現場まで引きずったせいだろうな」

石丸「真犯人などいません! 僕が犯人なのです!」


自分を犯人だと言い張る石丸の姿に、KAZUYAは僅かに狂気めいたものを感じ怪訝に問い掛ける。


634: 2014/05/26(月) 00:36:19.84 ID:j1h/sSMm0

K「……石丸、犯行時の記憶がないのに何故お前は自分が犯人だと断言出来る。たまたま
  お前がその場に居合わせた可能性もあるだろう。大体お前が不二咲を襲うはずは……」

石丸「――僕が弱いからです」

K「何?」


予想外の言葉にKAZUYAはピクリと眉を動かした。


石丸「西城先生も言っていたではないですか! 人は弱い! 誰でも過ちを犯すものだと!」

K「違う。あれは、そういう意味では……」

石丸「僕はきっと……どうにもならない現状にずっと不満を感じていたのです。どこかに
    逃げたかったのです。だから、たまたま目についた不二咲君をこの手に……」

K「殺人という行為は強い決意がなければ到底出来ん。そんなぼんやりした意識で出来る訳が……」

石丸「なら、自分で意識していなかっただけで僕はきっと他人を憎んでいたのです!」

K「お前は一体、何を言っているんだ……」


KAZUYAの言い分などまるで聞かずに滔々と話す石丸の姿は、一言で表すと“異常”だった。


635: 2014/05/26(月) 00:43:31.24 ID:j1h/sSMm0

石丸「……そうだ。僕はずっと天才が憎かった。何の努力もせず世の中を動かす天才が憎かった。
    だからこの学園の生徒達のことも内心ではずっと憎んでいて、それで頃したのだ!!」

K(違う……違うぞ、石丸……!)

石丸「僕の中の弱さが不二咲君を傷つけてしまった!」


KAZUYAは確かに人間は弱いと言った。だが弱さしかないのではなく、人が持つ弱い一面を
認めてやれという意味で言ったのだ。しかし石丸はKAZUYAの言葉をそのままに受け取り、
人間は弱いものだと……必ず過ちを犯してしまうものだと思い込んでいる。


K「違う! 確かに人間は弱い生き物だが、強い一面もあるのだ!」

石丸「でもあんなに強かった兄弟だって間違いを犯したし、西城先生程強い人間も
    自分を弱いと言っていたではないですか! やはり人間は弱いものなのだ!」

K(駄目だ。タイミングが悪すぎる! 今何を言っても石丸を説得出来ない)

石丸「人は弱い! 罪深い生き物なのです! 許してください! 不二咲君、許してくれ!!」

K「石丸……」


――超高校級の不器用。

その単語が脳裏に浮かんだ時、KAZUYAはどうしようもない程の強烈な眩暈を覚えたのだった。


636: 2014/05/26(月) 00:50:50.99 ID:j1h/sSMm0

ここまで。

Q.捜査パートは誰視点?


A.仲間全員だよ!

648: 2014/06/01(日) 00:44:04.84 ID:rZRgyw9s0

・・・


そこへ、苗木・舞園・大和田の三人がやって来た。KAZUYAは先程のショックを忘れようと
既に淡々とカルテを書く作業に移っていたが、彼等の姿を見て少しだけ気力を取り戻す。


大和田「先公! 不二咲と兄弟の様子は?」

K「見ての通りだ。不二咲は安定している。石丸は……今は何を言っても無駄だ。そっとしておけ」

石丸「…………」

大和田(兄弟……絶対、俺がオメエの無実を証明してやるからな!)

苗木「不二咲君の体を見てもいいですか?」

K「ああ。色は薄いがしっかりと鬱血痕が残っている。何かの手がかりになるだろう」

苗木「不二咲君、ちょっと見せてね……痛々しいな。ん? ここに傷があるぞ」

K「それは引っ掻き傷だな。首を絞められた際についたものだろう。指にも微かに血が付いている」

大和田「首締めてるモンを外そうと思って必氏に暴れたんだな……」

舞園「鬱血痕は、幅四センチくらいですかね」

苗木「グルグル巻きにされてたしな」


・コトダマGET!

【不二咲千尋のカルテ1】:KAZUYAが作成した不二咲のカルテ。正面部分についてである。

『正面から見て左側の首筋に二センチほどの擦過傷(さっかしょう:今回の場合引っかき傷)あり。右手の
 指にも若干血液と体組織が付着している。首筋には幅四センチほどの鬱血痕が薄いがしっかりと残っている』

・コトダマGET!

【不二咲千尋のカルテ2】:KAZUYAが作成した不二咲のカルテ。背面部分についてである。

『背面から見て鬱血痕は左が上部、右が下部となっている。患者に他の目立った外傷や薬品等による
 反応等はなく、純粋に首を締められたショックで心肺が停止したと見てほぼ間違いない』


649: 2014/06/01(日) 00:48:08.04 ID:rZRgyw9s0

               ◇     ◇     ◇


霧切「!」


廊下を歩いていた霧切は、何かを発見して急に屈みこんだ。


桑田「お、どうした? なんか見つけたか?」

霧切「桑田君、見て。この消火器」

桑田「ん? ただの消火器だろ?」

霧切「ここよ。ほんの少しだけど、血がついているわ」

桑田「えっ?! ……マジだ。こんな小せえの、よく気付いたな」


霧切の洞察力の鋭さに流石本職だと桑田は舌を巻くが、同時にあることに気が付く。


桑田「あれ? ……でも、不二咲は首を絞められたんだよな? なんで血なんか……」

霧切「私の予想だけど、これは石丸君の血じゃないかしら?」

桑田「石丸の? なんで……そうか! 真犯人がこれで石丸を殴ったんだな?」

霧切「その可能性は高いわね。その消火器持って来てくれるかしら? 石丸君の所に行くわ」

桑田「任せろ。よっと。……お、結構重いな」

霧切「少し貸してくれない? 重さを調べたいから」


650: 2014/06/01(日) 00:55:05.93 ID:rZRgyw9s0

桑田「まあ、重いって言っても女子は持てないって程じゃねえな」

霧切「……運が悪ければ、この一撃で石丸君も氏んでいたかもしれないわね」

桑田「縁起でもねえこと言うなよ……」


・コトダマGET!

【消火器】:底の近くに微量だが血が付着している。少し重いが女子でも十分持てる重さである。


               ◇     ◇     ◇


苗木達が不二咲の体をよく調べている時、桑田が霧切と共にやって来た。
大和田は少し意外そうな顔をしたが、どうやら組んでいるらしいとすぐ理解する。


桑田「せんせー!」

苗木「あ、桑田君に霧切さん」

K「消火器なんて持ってどうした? 何か見つけたのか?」

桑田「おう! スゲー発見だよ!」

霧切「見てください。ここに血がついているわ。犯人が石丸君を殴った時の
    血ではないかと思って、確認に来ました。診てもらっていいかしら?」

大和田「マジかよ?! 大発見じゃねえか!」

K「よく見せてくれ。……フム」


KAZUYAは消火器と血痕の大きさをよく観察し、黙り込んだまま動かない石丸の後頭部を診る。


651: 2014/06/01(日) 01:02:01.09 ID:rZRgyw9s0

K「確かに後頭部に真新しい打撃痕が見受けられる。カルテに書いておこう。カルテは
  モノクマファイルと同じように、電子生徒手帳に送ってくれるそうだ。参照してくれ」


コトダマアップデート【消火器】→【石丸清多夏のカルテ】

・コトダマGET!

【石丸清多夏のカルテ】:KAZUYAが作成した石丸のカルテ。

『後頭部に打撃が原因と見られる挫創(ざそう:今回の場合打撃による傷)と皮下出血あり。傷の大きさは
 現場近くの廊下に設置されていた消火器の底面とほぼ一致しており、微量だが血液も付着していたため、
 これによる打撃痕だと思われる。消火器はやや重いが女子でも十分に持ち上げられる重さである。
 また、両手首に捻挫とみられる炎症が見られ、全身に軽い痛みも訴えている。引きずられた可能性有』


舞園「色々見つかってきましたね」

苗木「うん。順調だと思う。……でも、次はどこを調べたらいいかな?」

霧切「倉庫を調べるといいわよ」

苗木「倉庫? どうして?」

霧切「行けば、どうして犯人が凶器にロープを用いなかったかがわかるはずよ」

舞園「言われてみれば、わざわざ図書室の延長コードを取りに行って頃すのは不自然ですね」

霧切「あとこれを渡しておくわ。ダンボールの中に隠すように入っていたの」

苗木「白いリボンだね。これが何かはわからないけど、ありがとう」

大和田「よし、行こうぜ!」


652: 2014/06/01(日) 01:06:21.12 ID:rZRgyw9s0

・・・


そして、先程桑田と霧切が訪れたように三人は倉庫にやって来ていた。
時間が惜しいからとダンボールの大半は出しっぱなしになっていたので中は大分荒れている。


苗木「霧切さんに言われて倉庫に来てみた訳だけど……」

舞園「これだけたくさん物があるとロープを探すのも一苦労ですね」

大和田「ああ、そっか。オメエらは知らねえのか。ロープはこっちだぜ」

苗木「え? 大和田君は知ってるんだ?」

大和田「倉庫が開いたのは最初の事件の後だろ? 舞園は入院、苗木はその付き添いで
     いなかったから知らねえだろうが、俺達で一度倉庫の中を調べたことがあんだよ」

大和田「ロープはこの奥の、ちょっとわかりづれえ場所にあるんだ。よっと」ガサゴソ

苗木「あ、本当だ。それにしても、文房具とかの日用品までこんな所にあるなんて困るなぁ」

舞園「……ちなみに大和田君、その時いたメンバーを覚えていますか?」

大和田「えーっと……男子は俺、兄弟、不二咲、桑田の四人で女子は朝日奈と大神かな」


・コトダマGET!

【ロープの場所】:ロープは奥の少しわかりづらい場所に、文房具などの日用品と共に置いてある。
          場所を知っているのは大和田、石丸、不二咲、桑田、朝日奈、大神の六人。


653: 2014/06/01(日) 01:10:33.07 ID:rZRgyw9s0

苗木「あとおかしなものは……」

舞園「あ! 二人共、見てください」

大和田「どうした?」


舞園に呼ばれ、二人は入り口付近の衣装ラックに近寄る。舞園が指し示したのはエプロンだった。


舞園「この白いエプロン、リボンの部分が切られてます。かわいいのに酷いことをしますね」

大和田「朝日奈が気に入ってたヤツだな。腰の後ろで結ぶ部分が付け根からバッサリ切られてるぜ」

苗木「もしかして、この切られた部分がさっき霧切さんに渡されたリボンかな?」

舞園「切り口がピッタリ一致しますね」

大和田「これも事件になんか関係あんのか?」

苗木「関係ない物を霧切さんが渡すとは思えないから、多分関係あるんじゃないかな」


コトダマアップデート【リボン状の物】→【切り取られたリボン】

・コトダマGET!

【切り取られたリボン】:倉庫の入り口付近にあった朝日奈お気に入りの白いエプロン……の
               腰で結ぶ部分のリボン。根本からバッサリ切り取られている。


654: 2014/06/01(日) 01:14:58.83 ID:rZRgyw9s0

               ◇     ◇     ◇


一人一人地道に証言を集め終えた霧切と桑田は、話しながら保健室へと向かう。


霧切「証言は大体集めたわね」

桑田「でも大半はさっきのアリバイ証明の時に聞いた話と同じだったけどな」

霧切「何度も確認するのが大事なのよ。人の記憶は曖昧だから、一度聞いてから何かを
    思い出すこともあるし、一度目と二度目では微妙に言い回しが変わることもある」

桑田「そこに新しいヒントがあったり?」

霧切「ええ。ちなみに今度はあなたの番よ。事件前後の話を詳しく聞かせて頂戴」

桑田「つってもなぁ。全部知ってることだと思うぞ? 俺はせんせーに頼まれて、
    大和田が事件起こした後はずっと不二咲と一緒に行動してたんだよ」

霧切「三日間、常に?」

桑田「おう。見回りの時だけせんせーの所に不二咲預けてたけど、
    不二咲が部屋の外に出る時はいつも俺が一緒だったぜ」

霧切「そうね。私達も、不二咲君が単独行動をしていた所は一度も見ていないわ」

桑田「…………」


桑田が視線を落としたのに気付くが、気付かない振りをして霧切は質問を続ける。


655: 2014/06/01(日) 01:21:42.04 ID:rZRgyw9s0

霧切「今日のことを教えてもらえる? 12時50分に部屋を出て、葉隠君に会ったのね?」

桑田「ああ、そうだよ。あいつ俺が武器持って待ち伏せしてたって勘違いしてさ。大変だったんだぜ?」

霧切「年長なのだし、彼のすぐパニックに陥る所はなんとかしてもらいたいものね」

桑田「まったくだぜ。で、1時15分くらいに部屋に戻ってきて最初は部屋で待ってたんだよ。
    書き置きがあったからさ。あとは、十分後に部屋から出て寄宿舎の中をうろうろしてた」

霧切「具体的に寄宿舎のどこにいたの?」

桑田「どこって、いろいろだよ。不二咲の部屋見に行ったり、食堂とランドリー覗いたり、
    あとは風呂場やサウナ、倉庫、果てはトラッシュルームにまで足運んだんだぜ?」

霧切「つまり、ずっと学園側を監視していた訳ではない。あなたがいない時に
    犯人が寄宿舎に来て倉庫に行くことは不可能ではない訳ね」

桑田「そういうことになるな。……わりぃ。俺がずっと監視してりゃあ良かったのに」

霧切「事件がいつどこで起こるかなんてわからないもの。あなたは悪く無いわ。
    それに、あなたの証言はきっとどこかで役に立つ気がする。勘だけどね」

桑田「……そっか。お前の勘を信じるよ」


コトダマGET!

【桑田の証言】:大和田の事件の後、桑田は常に不二咲と一緒に行動していた。
          部屋を出てからは、一箇所に留まらず寄宿舎中を捜索していた。


656: 2014/06/01(日) 01:26:01.18 ID:rZRgyw9s0

― 図書室 PM5:47 ―


苗木「……十神君」

十神「…………」


十神白夜は事件などまるでなかったかのように、いつも通り図書室で悠然と本を読んでいた。


舞園「十神君、捜査はしなくてもいいんですか?」

十神「捜査も何も、犯人は石丸だろう?」

大和田「ふざけたこと言ってんじゃねえ! そういうお前が犯人なんじゃねえのか?!」

苗木「大和田君、落ち着いて!」

十神「フン。感情的になって殺人を図った男が、今度は証拠もなく俺を犯人扱いか。
    今までずっとプランクトンと呼んできたが、プランクトンよりタチが悪いな」

大和田「んだとぉっ?!」

舞園「大和田君、駄目です!」


二人がすぐ横で押さえているため暴れたりはしなかったが、大和田はギリギリと歯を鳴らす。
一方、苗木と舞園は十神の態度に何やら不審なものを感じ取っていた。


苗木(……なんか、変だな。いくら石丸君の自供があるって言っても、犯行時の記憶はないって
    言ってるし、何より犯人を間違えたら僕達全員オシオキなのに捜査をしないだなんて)

苗木(十神君らしくないというか……いや、そもそも僕が十神君のことを
    どれだけわかっているかは自分でもよくわからないけど……うーん)


657: 2014/06/01(日) 01:32:06.08 ID:rZRgyw9s0

苗木「その、犯行時刻に何をしていたか詳しく聞かせてもらっていいかな?」

十神「聞いてどうする? たとえ俺がずっと図書室にいたと言っても、腐川が外に出た時点で
    俺のアリバイは成立しない。ならばずっと外にいたとでも思っていればいい」

苗木「本当か嘘かわからないかもしれないけど、それでも僕は十神君の証言が聞きたいんだ」

十神「…………」

大和田「行こうぜ、苗木。コイツと話しててもラチがあかねえよ」

苗木「僕は、十神君の言葉が聞きたい」


そう言うと、苗木は高圧的に睨む十神の目をジッと見返す。


十神「……フン。俺も一度図書室を出た。腐川がいない時にだ」

苗木「ありがとう、十神君!」

舞園「あと私も一つ確認をしたいのですが、犯行に使われた凶器……あの延長コードは
    元々図書室にあった物ですよね? いつまでここにあったか覚えていますか?」

十神「俺が出るまでは確かにここにあった。戻ってきたらなくなっていたがな」


・コトダマGET!

【十神の証言】:腐川のいない時に一度図書室を出た。また、それまで延長コードはあった。


658: 2014/06/01(日) 01:40:05.24 ID:rZRgyw9s0

十神「これで用は済んだだろう。俺は時間になるまで読書をする。早く出て行け」

苗木「うん……あ、あともう一つだけ聞きたいことがあるんだけど」

十神「何だ?」

苗木「十神君て、本当に捜査してないの? ……そもそも、本当に石丸君が犯人だと思ってる?」

十神「質問が二つになっているぞ、愚か者め」

大和田「で、どうなんだよ?」

十神「その質問に俺が答えてやる必要は感じんな。……全く、何故あんな奴のために
    貴様等がそこまで一生懸命になるのか俺には理解出来ん。無意味だ」

大和田「無意味なんかじゃねえよ! 兄弟は人頃しなんて出来るヤツじゃねえんだ!」

十神「何故そう言える? 人間なんて所詮は皆エゴイストだ」


冷めた眼差しの十神とは対照的に、大和田は燃えるような目をしながら低く呟く。


大和田「俺にはわかる。俺は……自分が道を踏み外しかけたからな」

十神「フン。仮に奴が犯人でなかったにしても、だ。奴がこの学園生活で何らかの役に
    立ったことなどあったか? すぐに取り乱し、リーダーぶる割にろくな指示も出来ん。
    今回とて、横で大切な友人が氏んでいるのに意識を失っているとはお笑い草だ」

大和田「テメエっ!!」

苗木「大和田君、駄目だ!」

舞園「ここでの用事は済みました。もう行きましょう!」


659: 2014/06/01(日) 01:45:29.34 ID:rZRgyw9s0

・・・


あらかた証言を聞き終えた苗木達三人は、KAZUYAが待つ保健室に再び戻ってきた。
そこでは、既に捜査を終えていた桑田と霧切が待機している。


霧切「お帰りなさい。倉庫は見たわね?」

苗木「うん。大体証拠は揃ったと思う」

K「さて、捜査が終わったなら俺に報告してくれないか? 俺は何も見ていないのでな」

苗木「はい」


持ち帰った証拠を一つ一つKAZUYAに見せて丁寧に説明し、集めた証言は霧切と舞園が要点をまとめ
わかりやすく伝える。そしてそれが終わった頃、見計らったかのようにチャイムが鳴り響いた。

キーンコーンカーンコーン。


「……!」

『ええ~、僕も待ち疲れたんで、そろそろ始めちゃいますか? お待ちかねの学級裁判を!』

『ではでは、学校エリア一階にある赤い扉にお入りください』

苗木「そんな……まだ情報共有しただけで、何も話し合えていないのに!」

K「仕方あるまい。推理も議論も、全て裁判で行えと言うことだろう」

大和田「不二咲はどうすんだ? 安静にしとかなきゃマズイんだろ?」

石丸「……そうだ。不二咲君は?」


今まで全く反応を見せていなかった石丸も、不二咲の名前には反応を見せた。


660: 2014/06/01(日) 01:51:43.97 ID:rZRgyw9s0

K「不二咲は欠席でいいとのことだ。俺達がいない間に不二咲を人質に取らないかが不安だが……
  モノクマは校則違反以外で生徒に手を出すことは絶対にないと断言し、今回は正式に約束した」

大和田「んなもん信用出来るか!」

K「……そうだな。俺も同感だ。だが奴は不二咲を裁判場に連れて来るなと言ったのだ」

桑田「はあ? なんで?」

霧切「決まってるわ。折角楽しみにしてた学級裁判が開かれるというのに、万が一
    裁判の途中で不二咲君が目を覚ましてしまったら台無しでしょ?」

K「……逆らえばどうなるかわからん。心配だが、従う他ないだろう」

石丸「そんな……」

舞園「でも、寄宿舎の個室以外で寝るのは校則違反なんですよね?」

K「今は寝ているのではなく気絶だから問題ないらしい。……が、やはり心配ではあるな。運んでおこう」


KAZUYAは不二咲を抱えると、不二咲の個室に運んで寝かせた。
不二咲は、今は容態も安定し穏やかな呼吸をしながら静かに眠っている。


K「行くぞ。お前達」

K(……不二咲、見守っていてくれ)


学校エリア一階の端にある、今まで何があっても開くことのなかった不気味な赤い扉。
その中に入ると、既にKAZUYA達以外のメンバーが全員揃っていた。


十神「遅いぞ。この俺を待たせるつもりか」

大和田「うるせえ。テメエこそ首は洗って来たんだろうな?」


661: 2014/06/01(日) 01:57:15.58 ID:rZRgyw9s0

K「大和田」

大和田「…………」

十神「…………」


それ以上は一言も発せず、二人は無言で睨み合う。


K「これは……エレベーターだな」


小さな部屋の奥にはエレベーターの扉があった。


苗木「乗れ、ってことなのかな?」

桑田「じゃねーの?」


生徒達が訝しげにエレベーターを見つめていると、再度モノクマの放送が流れた。


『うぷぷ。みんな揃いましたね? そいつがオマエラを裁判場まで連れてってくれるよ』

『――オマエラの運命を決める裁判場にね!』


扉が開き、生徒達は続々と中へ乗り込んで行く。


舞園「ボタンは一つで、行き先は地下ですか」

セレス「地獄行きかもしれませんわね?」


662: 2014/06/01(日) 02:02:53.05 ID:rZRgyw9s0

腐川「お、脅かすんじゃないわよ……!」

葉隠「そ、そうだべ! こえーこと言うなって……」

大神「だが存外間違ってはおらぬかもしれぬ。誰か一人は必ずオシオキを受けるのだからな」

石丸「…………」


そしてエレベーターは長い長い降下を始める。
KAZUYAは目を閉じ、深呼吸をしながら思考を整えていた。




            ――そして、幕は開く。




              命懸けの裁判。


     命懸けの騙し合い。

                       命懸けの裏切り。

         命懸けの謎解き。

                   命懸けの言い訳。

   命懸けの信頼。



               命懸けの――




              学 級 裁 判 ! !



671: 2014/06/02(月) 00:17:08.61 ID:EzyY0Fxk0

  ― 軍曹によるわかりやすい学級裁判の進め方講座 ―


大垣「よお。このコーナー、とうとう俺にもお鉢が回って来たって訳かい」

大垣蓮次:KAZUYAの帝都大時代の先輩で、後輩達からは軍曹というアダ名で呼ばれている。
      社長令嬢の佐知子と結婚し、作中唯一のキスシーンを披露している勝ち組。

大垣「なんか次回から学級裁判?って奴やるんだって? で、それの進め方を
    説明して欲しいとかなんとか言われたが……なんで俺なんだか」

大垣「まあ、頼まれた以上ちゃんとやるけどよ。えーっと、基本的には他のダンガンSSと同じだそうだ」

大垣「台詞の中に【】で囲まれた部分がいくつかあって、そのどれかが手持ちの証拠(コトダマ)と
    矛盾してるらしい。だから、適切なコトダマを使ってその台詞を撃ち抜けばいいそうだ」

大垣「同意と吸収はなし。他にも、適宜選択肢とか出るそうだが安価で正解を示せば先に進むらしい」

佐知子「あなた、答えがわからなかった場合もちゃんと説明しておかないと」

大垣「おっと、いけねえ。忘れてたぜ! どうしてもわからない時用に二つコマンドがあるそうだ」

佐知子「一つ目は「助けて霧切さん」。このコマンドを使うと霧切さんがヒントをくれるの。
     そして二つ目は「教えてKAZUYA先生」。このコマンドを使うと答えを教えてくれるそうよ」

大垣「別に何度も間違えたからってゲームオーバーになったりはしないけどよ、あんまりグダグダすると
    進行に関わるだろ? あと、良い評価でクリアすると親密度とかにボーナスがかかるって話だ」

佐知子「何度も間違えるよりはいっそコマンドを使った方が減点は少ないわ」

大垣「ま、KAZUYAも頑張ってるみたいだしなんとかなるだろ。上手く立ち回ってくれや」


投下は今度


684: 2014/06/07(土) 18:33:11.27 ID:h2xluJka0

エレベーターを降りると、そこは広い空間だった。いくつか扉があるが鍵がかかっていて
入ることは出来ない。廊下も分かれ道はあったが、物が置かれて通れないようにされていた。
床や壁に描かれていた矢印を頼りに、一番奥のやけに豪華な扉をくぐり抜ける。

……全員が中に入ると、まるで逃げ場はないと暗に示すかの如く扉が閉まった。


苗木「ここが裁判場?」

モノクマ「やあやあ。やっと来たね」


一同が見渡すと、一番奥にある豪勢な大きい椅子に、モノクマはゆったりと座っていた。
部屋の中央には裁判で使われる証言台を模した席が16席、円状に並ぶように配置されており、
そこに立ってお互いの顔を見ながら議論を行なえと言うことだろう。


モノクマ「どう、これって? いかにも裁判場って感じじゃない?」

K「フン、悪趣味だな」

霧切「ちょっといい? 議論の前に聞いておきたいんだけど、あれってどういう意味?」


霧切が指し示した席の一つを見て、一同は顔が引き攣った。

そこにあったもの――それは不二咲の遺影だった。ご丁寧に顔には赤インキで×が描かれている。


685: 2014/06/07(土) 18:38:53.56 ID:h2xluJka0

大和田「不二咲は氏んでねえッ!!」

モノクマ「半分氏んでるようなもんだし、昏睡状態だからって仲間ハズレは可哀想でしょ?」

桑田「野郎……!!」

石丸「ひ、酷い……」

K「……本当に悪趣味だ」


明らかに嫌がらせだろう。或いは本当は氏んでいて欲しかったというモノクマの願望かもしれない。
呆気にとられている一同を無視して、モノクマは楽しそうに着席を勧める。


モノクマ「はいはい。じゃあ、オマエラは自分の名前が書かれた席に着いてくださいな」

苗木「……人数分の席があるね」

舞園「一つ一つ席に名前が書いてあります」

桑田「お、先生はやっぱ真ん中なんだな」


KAZUYAは入り口から見ると一番奥、モノクマの前にある席に着いた。


686: 2014/06/07(土) 18:47:10.01 ID:h2xluJka0

K「…………」


生徒達の席は木の札にそれぞれの名前が金文字で彫られた小洒落た物だったが、KAZUYAの席だけ
名前を手書きされた紙がセロハンテープで貼り付けられている。……しかもやけに字が汚い。
露骨なまでに邪険にされているのを感じ、KAZUYAは何とも言えない心持ちになる。


K(……まあ、俺は元々ここにはいないはずのイレギュラーな存在だからな)


気にしてない。子供かよ、なんて思っていない。少しも。


モノクマ「では皆さん席に着いた所で、そろそろ学級裁判を始めましょう!」

苗木「本当に、この中に犯人がいるのか?」

モノクマ「当然です! それは間違いありません」

K「それで、どうする?」

モノクマ「まずは、学級裁判の簡単な説明から始めましょう!」


KAZUYAに促されると、モノクマは一同に再度学級裁判のルールを説明し始める。


687: 2014/06/07(土) 18:58:39.61 ID:h2xluJka0

「学級裁判の結果はオマエラの投票により決定されます」

「正しいクロを指摘出来れば、黒だけがオシオキ。だけど……」

「もし間違った人物をクロとした場合は……クロ以外の全員がオシオキされ、
 みんなを欺いたクロだけが晴れて卒業となりまーす!」

「さてと、前置きはこれぐらいにして……そろそろ始めよっか!」


モノクマの説明が終わると、KAZUYAは生徒達の緊張している顔を順番に眺めていった。


K「席の位置的にも年齢的にも俺が議長役を勤めるのが妥当だろうな。たとえ内通者疑惑があろうと
  今回の事件に関して言えば俺にはアリバイがある。確定シロなら誰も文句はなかろう」

K「俺はあくまで議長としてなるべく進行役に徹する。議論はお前達に任せるぞ」

K「お前達なら必ず真実に辿り着けると信じている」

苗木「はい!」

桑田「おうよ! ったりめえだぜ!」

苗木(先生は僕達を信頼してくれているんだ!)

桑田(信頼されたら応えねーとな!)

舞園(……必ずみんなを救ってみせます)


          !  学  級  裁  判  開  廷  !


688: 2014/06/07(土) 19:08:05.01 ID:h2xluJka0

          裁判席

          モノクマ

       朝日奈 K 葉隠 

   大和田            不二咲               

  霧切                 十神

大神                      セレス

  江ノ島                桑田

    石丸            腐川

       舞園 苗木 山田


689: 2014/06/07(土) 19:14:05.40 ID:h2xluJka0

コトダマリスト

>>629
【延長コード】:不二咲の首にグルグルと巻かれていた凶器と思しきコード。図書室に置かれていた。

>>648
【不二咲千尋のカルテ1】:KAZUYAが作成した不二咲のカルテ。正面部分についてである。

『正面から見て左側の首筋に二センチほどの擦過傷(さっかしょう:今回の場合引っかき傷)あり。右手の
 指にも若干血液と体組織が付着している。首筋には幅四センチほどの鬱血痕が薄いがしっかりと残っている』

【不二咲千尋のカルテ2】:KAZUYAが作成した不二咲のカルテ。背面部分についてである。

『背面から見て鬱血痕は左が上部、右が下部となっている。患者に他の目立った外傷や薬品等による
 反応等はなく、純粋に首を締められたショックで心肺が停止したと見てほぼ間違いない』

 写真:http://i.imgur.com/jZWRel7.jpg

>>651
【石丸清多夏のカルテ】:KAZUYAが作成した石丸のカルテ。

『後頭部に打撃が原因と見られる挫創(ざそう:今回の場合打撃による傷)と皮下出血あり。傷の大きさは
 現場近くの廊下に設置されていた消火器の底面とほぼ一致しており、微量だが血液も付着していたため、
 これによる打撃痕だと思われる。消火器はやや重いが女子でも十分に持ち上げられる重さである。
 また、両手首に捻挫とみられる炎症が見られ、全身に軽い痛みも訴えている。引きずられた可能性有』

>>652
【ロープの場所】:ロープは奥の少しわかりづらい場所に、文房具などの日用品と共に置いてある。
          場所を知っているのは大和田、石丸、不二咲、桑田、朝日奈、大神の六人。

>>653
【切り取られたリボン】:倉庫の入り口付近にあった朝日奈お気に入りの白いエプロン……の
               腰で結ぶ部分のリボン。根本からバッサリ切り取られている。

>>655
【桑田の証言】:大和田の事件の後、桑田は常に不二咲と一緒に行動していた。
          部屋を出てからは、一箇所に留まらず寄宿舎中を捜索していた。

>>657
【十神の証言】:腐川のいない時に一度図書室を出た。また、それまで延長コードはあった。


690: 2014/06/07(土) 19:23:03.92 ID:h2xluJka0

山田「裁判と言われても初めてですし、どのように進めればいいんでしょうかねぇ」

腐川「そもそも、犯人はもうわかりきってるじゃない!」

葉隠「だよなぁ」


ジ口リ、と腐川が視線を向けるとその他の生徒達も項垂れている石丸に目をやった。


石丸「その通り……犯人はこの僕、石丸清多夏だ。【それで間違いない】!!」

朝日奈「ほ、本当にあんたなの? なんだか信じられないんだけど……」

石丸「ああ……風紀委員でありながら、みんなには本当にすまないことをした……
    許してくれなどとは言わない。ただ……黙って見送ってくれないか?
    僕のせいでみんなを酷い目に遭わせる訳にはいかない……!」

K「それは違うぞ! お前はまだ犯人と確定した訳ではない」

石丸「何を根拠にそのようなことを仰るのですか?! みんなと、そしてあなたの命が
    かかっているのですよ、西城先生?! 僕が犯人なのは状況証拠から見て明らかだ!」

霧切「本当にそうなのかしら?」


691: 2014/06/07(土) 19:27:50.46 ID:h2xluJka0

冷水のように冷ややかな声で霧切が疑問を投げかけると、
KAZUYA達石丸の潔白を信じるメンバーが力強く後に続いていく。


K「状況証拠はあるが物的証拠はない。証拠もなく犯人を決めつけるのは間違いの元だ。
  全員の命がかかっている以上軽率な行動は取れん。お前が真犯人だというなら
  この議論で俺達全員を納得させてみせろ」

苗木「そうだよ。落ち着いて、石丸君。先生の言う通り、君が犯人なのか
    そうでないかは、この議論ではっきりするはずだから」

桑田「おめえの潔白は俺達が晴らしてやるからよ、お前は黙って見てろって!」

石丸「みんな、しかし……!」

大和田「兄弟……頼む。俺達を信じてくれ……!」


  ― 議論開始 ―


K「では、これより議論を開始する」

江ノ島「で、最初はなにについて話すワケ? あんた議長なんでしょ? 仕切ってよ!」

K「これが殺人未遂である以上、まず凶器について話すのが妥当だろうな」


692: 2014/06/07(土) 19:42:13.67 ID:h2xluJka0

[ 凶器について ]


朝日奈「えっと、モノクマファイルと先生のカルテによると、
     不二咲ちゃんは首を締められて殺されかけたんだよね?」

大神「他に【致命傷はなかった】からな」

十神「絞殺は時間もかかるし抵抗も大きい手間な頃し方だが、長い紐があれば簡単に
    実行出来る上、返り血もない。不二咲のような非力な人間を頃すには最適だ」

江ノ島「そうだね。もしアタシが頃すとしても多分そうしてるよ」

セレス「物騒ですわね」

K「…………」

山田「凶器は【教室に置いてあった】延長コードでしょうね」

葉隠「延長コードの先制攻撃だべ!」

石丸「僕があのコードで不二咲君の首を絞めて頃した…」


>>694
適切な台詞をコトダマで撃ち抜け!


698: 2014/06/07(土) 19:54:31.63 ID:HUea3j/n0
【教室に置いてあった】を【延長コード】 で

699: 2014/06/07(土) 20:00:02.29 ID:h2xluJka0

【延長コード】ドンッ! ====⇒【教室に置いてあった】BREAK!!


苗木「それは違うよ! あの延長コードは元々あの教室にあったものじゃないんだ」

葉隠「え? じゃあどこにあったんだ?」

舞園「図書室にあったはずです」

セレス「では、石丸君は不二咲君を頃すために図書室に寄って延長コードを持ち出し、
     その後不二咲君を頃したということですね? 立派な計画殺人ではないですか」

桑田(? 今の発言、どっかおかしくねーか? ああ、でもなにで否定すればいいかわかんねえ…)

霧切「桑田君、落ち着いて考えて。あなたは答えを知っているはずよ」

桑田「答え?」

霧切「犯人は何故不二咲君が単独行動を取ることを知っていたのかしら? ここまで言えばわかるわね?」

桑田「いや、全然」

霧切「(サッ)苗木君、わかるわね?」

苗木「え」

桑田「ちょ、待て! お前、俺が答えられないことわかって聞いただろ?!」


>>701
どのコトダマで反論する? 適切なコトダマを選べ!


701: 2014/06/07(土) 20:15:02.67 ID:RNiY238m0
【桑田の証言】であってる?

702: 2014/06/07(土) 20:24:01.81 ID:h2xluJka0

大和田(桑田が知っているってことは桑田が持ってる証拠の中に鍵があるはずだ!)

セレス「何をぐだぐだ言ってるんですの。この事件は石丸君の【計画殺人】に間違いありませんわ」


【桑田の証言】 ドンッ! ====⇒ 【計画殺人】BREAK!!


大和田「待て! そりゃあ違うだろうが!」

大和田「不二咲は先公の指示で必ず誰かと組んで行動してたはずだ。だから、計画的に不二咲を
     殺そうなんて考えてたヤツはいなかったはず! なにしろ隙がねえんだからな」

朝日奈「えーっと、つまりどういうこと?」

大和田「つまりだな……」

大和田(……落ち着け、よく考えろ。こういう状況を指す言葉があったはずだ)


閃きアナグラム開始!


つ で じ ぱ つ き

さ ら っ と が ん

○○○○○○○○

>>705


705: 2014/06/07(土) 20:34:17.71 ID:kU/ol2Elo
とっぱつさつじん

709: 2014/06/07(土) 20:40:03.52 ID:h2xluJka0

【とっぱつさつじん】正解!


大和田「つまり今回の事件は完全な偶然……突発的な犯行ってことだ!」

十神「それが何だと言うんだ。むしろ、不二咲が一人だったことは同じ部屋にいた
    石丸が一番わかっていたはずだ。奴が犯人ではないという根拠にはならん」

桑田「で、でも俺が部屋を出た時石丸は寝てたぜ?」

腐川「そ、そんなの……その後起きただけでしょ……」

葉隠「やっぱ石丸っちが犯人だべ!」

江ノ島「そうかもね。第一発見者のうえ最初から犯行現場にいた訳だし。アヤシすぎ」

大和田(クソッ! かえって兄弟が犯人だっていう空気が強くなっちまった……
     俺はまた助けられないのか……? 不二咲だけじゃなくて、兄弟まで……)


焦る大和田をKAZUYAは冷静に諌める。


K「焦るな、大和田。焦るのはお前の良くない癖だ」

大和田「……わかってるよ」

大和田(そうだ。あの時だって俺が焦って先走ったから兄貴は氏んだんだ。冷静になれ!
     俺が一番わかってるだろ? 兄弟が犯人じゃねえってことだけは間違いねえんだ!!)


710: 2014/06/07(土) 20:44:43.77 ID:h2xluJka0

K「状況を整理しよう。もし石丸が真犯人ではないなら、今わかっている情報と
  こちらにある証拠に必ず齟齬が存在するはずだ。逆に矛盾が一切存在しないなら
  石丸が犯人ということになる。舞園、現在主張されている事件の流れを言ってくれ」


[ 事件当時の状況 ]


舞園「はい。今現在わかっていることを順に説明していきます」

舞園「午後0時50分頃、桑田君はバットを取りに部屋に戻りました。
    その時、葉隠君と会って廊下で立ち話をしていたんですよね?」

葉隠「間違いねえべ」

舞園「その間に目を覚ました石丸君が部屋に誰もいないことに気付き、不二咲君を探しに外へ出た」

石丸「……あやふやな記憶だが、それは間違いないと思う」

舞園「途中【図書室】に立ち寄って延長コードを手に入れ、不二咲君を【教室】で殺そうとした」

大神「その際誰かに会わなかったのか?」

石丸「ああ。【誰にも会っていない】」

山田「ムム~、これは……やはり犯人は石丸清多夏殿で確定か?」


>>712
適切な台詞を適切なコトダマで撃ち抜け!


712: 2014/06/07(土) 20:50:56.05 ID:RNiY238m0
【誰にもあっていない】に【十神の証言】かな?

714: 2014/06/07(土) 20:57:08.15 ID:h2xluJka0

苗木「いいや、石丸君は十神君と会っているはずだよ」

十神「は? 俺は石丸となど会っていないが」

苗木「え、だって証言で……」

十神「俺の証言をよく思い出すんだな、愚民め」


みんなから刺さる視線が痛い。発言力が落ちたようだ……


>>718
適切な台詞を適切なコトダマで撃ち抜け!
コトダマリスト>>689


718: 2014/06/07(土) 21:09:21.27 ID:HUea3j/n0
【図書室】で【十神の証言】
どうだ!

721: 2014/06/07(土) 21:18:14.71 ID:h2xluJka0

苗木「それに同意するよ! 十神君は一度図書室を出ているからその間に延長コードを……」

モノクマ「あのさ、苗木君。同意はなしって事前に言ったよね?」

大和田「つーかそれだと兄弟が延長コードを取ってきたってことになっちまうだろうが!」

苗木「……ゴメン、今のナシで」


みんなから刺さる視線がry。発言力がry


霧切(助けるべきかしら? でももう少し様子を見てもいいかもしれない)

K(不味いな……俺が出るか?)


>>722
適切な台詞を適切なコトダマで撃ち抜け!
コトダマリスト>>689

わからない場合は【助けて霧切さん】か【教えてKAZUYA先生】だ!


722: 2014/06/07(土) 21:19:04.69 ID:G9GYi3pSo
【助けて霧切さん】

725: 2014/06/07(土) 21:24:30.30 ID:h2xluJka0

苗木(どうしよう?! さっぱりわからないよ!)

霧切「苗木君、落ち着いて頂戴」

苗木「霧切さん……」

霧切「さっきの証言で嘘を付いている人はいないわ」

霧切「でも、根本的に認識を間違えていたり本人が気付いていないことはあるかもしれないわね」

苗木「本人が気付いていない……」

霧切「ここまで言えばわかるわね?」


>>726
適切な台詞を適切なコトダマで撃ち抜け!
コトダマリスト>>689

わからない場合は【助けて霧切さん】か【教えてKAZUYA先生】だ!


726: 2014/06/07(土) 21:28:00.97 ID:kU/ol2Elo
【誰にも会っていない】を【石丸清多夏のカルテ】で論破か?

誰にも会ってないのに誰かに殴られてる
だが安価下

727: 2014/06/07(土) 21:28:45.99 ID:ZJtqjl/AO
ヒントもらっといて申し訳ないが分からん…【教えてKAZUYA先生】を発動していいっすか

730: 2014/06/07(土) 21:42:51.63 ID:h2xluJka0
安価下なので本来は727なのですが、正解出てるので今回は特別に728でいきます
(でも折角だしもう打っちゃったので台詞はKバージョンにする)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


【石丸のカルテ】 ドンッ! ====⇒ 【誰にも会っていない】BREAK!!


K「それは違うぞ、石丸」

石丸「?! ……どういうことです?」

K「俺のカルテの情報と齟齬が出ている。苗木、わかるな?」

苗木「! そうだ。事件現場付近の廊下にあった消火器に血が付いていたんだよ。石丸君の
    後頭部にある傷と消火器は大きさも一致するし、誰かに背後から襲われたんだ!」

山田「偽装のため、自分でやった可能性はないのですか?」

K「位置的には限りなく0だ。意識の朦朧とした怪我人にそんな真似が出来るとは思えん」

セレス「ですが、0ではないのですよね?」

K「……まあ、そうだな」

霧切「鍵は誰が延長コードを持ちだしたのか、ではないかしら?」


731: 2014/06/07(土) 21:51:56.87 ID:h2xluJka0

[ 延長コードを盗んだ犯人 ]


江ノ島「誰がもなにも、石丸でしょ」

朝日奈「本当に他の人には出来なかったのかなぁ?」

桑田「待てよ! 図書室にはいつも十神や腐川がいるはずだろ。こっそり
    延長コードを持ち出すなんて【誰にも出来ない】じゃねえか!」

腐川「……じ、事前に盗んでたら石丸にも出来るわよ!」

山田「なるほど。あらかじめ盗んだコードを【教室に隠していた】のですな!」

大和田「でも兄弟はこの三日間ずっと入院してたんだぜ!」

十神「今朝奴は朝食会の後、食堂を飛び出して単独行動していただろう」

石丸「その時僕は真っ直ぐ水練場の更衣室に行った。……いや、覚えていないだけか?」

K「あまり感情的になるな。真相を見過ごしてしまうぞ」


>>733
適切な台詞を適切なコトダマで撃ち抜け!
コトダマリスト>>689

わからない場合は【助けて霧切さん】か【教えてKAZUYA先生】だ!


733: 2014/06/07(土) 21:56:22.31 ID:4AnNFSXCO
【誰にも出来ない】←十神には出来るが……【十神の証言】でいけるのかしら?

安価下

743: 2014/06/07(土) 22:19:35.30 ID:h2xluJka0
>>738
終わらせたい(真剣)。というか終わらせる
最近1レス内の分量を五割増しにしていたのもそのため

>>740
でも、冷静に考えると二章は二回事件が起こっているので
一章で二章分だと考えれば長いのも仕方ないのではないかと…(震え声)

748: 2014/06/08(日) 15:47:08.50 ID:LRHOsFKQ0

苗木(それに同意するよ! ……て言うとまた怒られるんだろうな)

苗木「舞園さん、十神君がいない間にコードを取って来て教室に隠せないよね?」コソコソ

舞園「え? 普通に出来るんじゃないですか?」

苗木「え」

舞園「え」


>>750
適切な台詞を適切なコトダマで撃ち抜け!
コトダマリスト>>689


755: 2014/06/08(日) 16:10:44.21 ID:LRHOsFKQ0

【十神の証言】 ドンッ! ====⇒ 【誰にも出来ない】BREAK!!


舞園「それは違います、桑田君。腐川さんも十神君もほぼ同じ時間に一度
    図書室を出ています。つまり、その間なら延長コードを盗み出せるんです」

桑田「ああ、そっか……」

苗木「ちなみに、十神君が図書室を出るまで延長コードは図書室にあったみたいだ」

セレス「つまり、コードを盗まれた時間はお二人がいなくなった時で間違いないという訳ですわね」

K「…………」

霧切「逆に考えてみて。つまり十神君と腐川さんがいない時間、
    誰でも延長コードは手に入れられたということよ」

大和田「! つまり、兄弟に限らずアリバイのないヤツなら犯行は可能ってことだな!」

葉隠「ああ~、一体誰が犯人なんだべ! これじゃあアリバイのない石丸っち、十神っち、
    セレスっちに腐川っち、江ノ島っち、桑田っち、オーガの全員が犯人候補だべ!」

桑田「さりげに自分抜くんじゃねえ!」

山田「うーむ、手詰まりですなぁ。他に役に立ちそうな証拠もないですし」

苗木(本当にそうなのかな……?)


>>758
状況を打開するコトダマを選べ!
コトダマリスト>>689

758: 2014/06/08(日) 16:29:31.95 ID:yecYrPfDO
>>757か?
でもわざわざ1が難しいって言ってるので念のために助けて霧切さん!

760: 2014/06/08(日) 16:49:47.88 ID:LRHOsFKQ0

霧切「このカルテ……」

苗木「霧切さん、カルテがどうかしたの?」

霧切「何か妙じゃないかしら?」

K「カルテに書かれていることは全て真実だ。不自然な部分があるというなら、
  それは俺達が事実を誤認してしまっている……ということかもしれんな」

苗木「僕達が今現在議論している内容とカルテの内容に齟齬がある、ということですか?」

K「そうだ」

霧切「写真を見るとわかりやすいかもしれないわね」


>>762
状況を打開するコトダマを選べ! コトダマリスト>>689

わからない場合は【助けて霧切さん】か【教えてKAZUYA先生】


762: 2014/06/08(日) 16:57:01.36 ID:iYS9Sr+AO
みんな間違ったらごめん
【不二咲千尋のカルテ2】

764: 2014/06/08(日) 17:05:04.36 ID:LRHOsFKQ0

苗木「先生、このカル……!」

K「苗木、カルテの写真を落ち着いてよく見るんだ」

苗木(穏やかに、でも明確に違うと言われてしまった)


※二択なので安価なしで続行します。


苗木「待って! まだ話せることはあるよ。さっき舞園さんが整理してくれた情報と僕達が
    持っている証拠の中で、絶対見過ごすことの出来ない大きな食い違いがあるんだ!」

朝日奈「食い違い?」

大神「それは何だ?」

苗木「そもそもさ……本当に延長コードが凶器なのかな?」

桑田「ああ? なに言ってんだよ。だって俺達が現場についた時、
    不二咲の首にバッチリコードが巻き付けられてたんだぜ?」

石丸「そうだ! しかも……僕が目を覚ました時、僕はそれをこの手でしっかり
    握っていたのだ! これこそ僕が犯人だというこの上ない証拠ではないか!」

苗木「でもさ、先生のカルテを見て。不二咲君の首には首を絞められた時の鬱血痕が
    あるんだけど、明らかに延長コードより太いよ。これっておかしくないかな?」

「!!」

大和田「そ、そうだ! なんで延長コードの幅が四センチもあるんだよ!」

葉隠「そりゃあグルグル巻きにしたからだべ?」

K「たとえ細い紐を巻いたとしても紐の内側と腕の力がモロにかかる外側では力の
   かかり方は不均等になる。あのような綺麗な跡が残ることは物理的に有り得ん」


765: 2014/06/08(日) 17:13:23.51 ID:LRHOsFKQ0

大神「そもそも不二咲とて暴れるし、これが突発殺人ならそんな時間のかかることをする
    メリットがない。延長コードは真の凶器を隠すための偽装と見るべきか」

朝日奈「あれ? じゃあなんで石丸は延長コード持ってたの? それに本当の凶器はどこ?」

山田「大方石丸清多夏殿が偽装のために用意したのでしょう」

舞園「それは不自然です。延長コードを取りに行く際に十神君や腐川さんに見つかる
    可能性がありますし、これが突発的に起こった事件だということを考えたら
    そんな無駄な偽装を行う余裕はどこにもないはずです」

霧切「犯人にとっては無駄な偽装ではないのかもね」

苗木「え、それってどういう……?」

K「議論が錯綜してきたな。では、次は延長コードが何故現場にあったのか議論してみろ」


[ 延長コードの謎 ]


霧切「何者かが延長コードを不二咲君の首に巻き付け凶器と誤認させようとした」

山田「推理漫画的に考えたらなんらかの【偽装】目的じゃないですか?」

江ノ島「なにを偽装すんの? 【傷跡】?」

舞園「確かに、私達もすっかり騙されてしまいましたしね」

大和田「あれだ、【本当の凶器を隠すため】だ! そうだろ?!」

葉隠「あー、そういや本当の凶器ってどこにあんだ?」


>>767
適切な台詞を適切なコトダマで撃ち抜け! コトダマリスト>>689

わからない場合は【助けて霧切さん】か【教えてKAZUYA先生】


今回もかなり難しいというかひねっています。しょっぱなKでいいかも
あと、出掛けるのでここまで。可能なら夜に来るかもしれません。それでは


767: 2014/06/08(日) 17:20:13.53 ID:iSwLLvJr0
【教えてKAZUYA先生】
ここは先生に聞いてみる

771: 2014/06/08(日) 20:49:16.61 ID:9EUs6HQf0

【エプロンのリボン】 ドンッ! ====⇒ 【本当の凶器を隠すため】BREAK!!


K「それは違う」

大和田「あ? どういう意味だ?!」

K「そもそも、これは突発殺人だ。凶器は処分出来ないならその場に捨てるか適当に
  隠してしまえばいい。現に犯人が隠したと思しきリボンをお前達は発見しただろう?」

苗木「わざわざ十神君達に目撃される危険を犯してまで延長コードを
    取ってくる理由にはならないってことですよね?」

K「そうだ」

朝日奈「リボン? リボンてなんのこと?」


苗木は朝日奈に促されて、霧切から預かったリボンを出した。


朝日奈「あれ、そのリボン……なんか見覚えあるような……」

大神「朝日奈がよく使っていたエプロンのリボンだな」

朝日奈「あ……あああああー! ヒドイっ! 誰がそんなことしたのっ?!」

K「朝日奈、落ち着……」

朝日奈「私愛用してたのにぃぃ~!! 誰よっ?! 誰がやったのよっ?!」

石丸「よし、みんなで目を閉じよう! そして犯人は挙手したまえ!」

大和田「挙げるワケねーだろ、兄弟……」


772: 2014/06/08(日) 20:53:18.69 ID:9EUs6HQf0

K「気持ちはわかるが時間も限られている。議論を再開したいのだが……」

大神「我が後で縫い付けておくから、今はそれで収めてくれ」

朝日奈「うう~……私のエプロン~……」


KAZUYAに注意され大神に宥められ、朝日奈は仕方なく引いたのだった。


十神「それをどこで拾った?」

苗木「倉庫のダンボールの中に隠してあったよ」

舞園「リボン自体、倉庫に置いてあったエプロンの物ですから誰でも入手可能です」

セレス「倉庫の入口近くにありますものね」

腐川「い、意味がわからないわよ! なんで犯人はそんな無意味な行動したっていうの?」

苗木(わからない……。でも、そこには必ず何かの意味があるはずなんだ)

K「意味なんてないかもしれんぞ?」

苗木「……え?」

桑田「はぁ? なに言ってんだ、せんせー?」

大和田「時間もねえのに意味のねえことなんてするワケないだろ!」

霧切「苗木君、逆に考えてみて」

苗木(意味なんてない……犯人は無意味なことなんてしない……)

苗木(考えろ! 考えるんだ! みんなの命がかかってるんだぞ!)


773: 2014/06/08(日) 21:00:01.88 ID:9EUs6HQf0

考えに考え、突然の閃きと共に苗木はある一つの可能性に思い至っていた。


苗木「ねえ……延長コードを巻いたのって、本当に犯人なのかな?」

葉隠「間違いないべ。犯人の石丸っちが図書室から取ってきたんだべ」

桑田「おめーちょっと黙ってろ」

大和田「……どういうことだ、苗木」

苗木「うん。仮に……事故か何かで石丸君が不二咲君を傷つけてしまったとしても、
    距離の離れた図書室から延長コードを取ってくる意味がないんだ」

苗木「それは犯人が他の人でもね。……でも、犯人ではない全くの第三者が
    事件を撹乱させるためにやったと考えたらどうだろう?」

石丸「いや、その理屈はおかしい!」


苗木の主張に猛然と食って掛かったのは、現在嫌疑を掛けられている張本人・石丸だった。


石丸「仮にその第三者とやらが存在して、一体何のために事件を撹乱するのか! 裁判で
    犯人を当てられなかったら自分もオシオキされるのだぞ! 共犯も存在し得ない!」

石丸「逆にこれこそ僕が犯人だという証左ではないか! 僕は頭が朦朧としていて
    理性的な判断など出来なかったからな。だから無意味な行動を取ったのだろう」

苗木「それだけじゃないよ。実は、この中で一人だけ妙な発言をした人がいるんだ」


>>775
誰の発言か。


775: 2014/06/08(日) 21:22:31.49 ID:ZoZRJC8zo
なんの根拠もないが撹乱といえば十神
十神なら、十神ならきっとやってくれる…!

777: 2014/06/08(日) 21:38:49.16 ID:9EUs6HQf0

苗木「そうだよね、十神君」

十神「フン、俺だと? 馬鹿馬鹿しい。だが、ここはそういう場のようだな。
    たまには愚民の戯言でも聞いてやるか。言ってみろ、苗木」

苗木「ありがとう。十神君は確かあの時こう言っていたよね?」


『横で大切な友人が氏んでいるのに意識を失っているとはお笑い草だ』


苗木「石丸君は気が付いたら凶器を握り締めていた、としか言ってない。
    なのに、何で十神君は石丸君が意識を失ってたって知ってたの?」

十神「フン、つまらん揚げ足取りだな。俺くらいの頭脳があれば
    気付いたら、という言葉から気絶を連想するのは容易いことだ」

腐川「そ、そうよ! 変な言い掛かりはやめなさいよ!」

苗木「それだけじゃないよ。おかしいんだ。この事件は突発殺人で時間に余裕がないのに
    意識が朦朧としていた石丸君が素早くコードを取って現場に戻って来れると思う?」

苗木「かと言って別に真犯人がいて石丸君に罪を被せようとしている場合、延長コードを
    使うのは不自然なんだ。図書室に行けば十神君達に目撃される可能性があるし、
    凶器を延長コードにしなければ罪を被せられない訳じゃない」

苗木「むしろ延長コードを凶器に仕立てるなら、罪を被せる相手は十神君や腐川さんのはずなんだ!」

霧切「そもそも、いつも使っているコードがなくなれば十神君はすぐに気が付くはずよね?
    コードがなくなったことを不審に感じた十神君に事件を目撃されたら本末転倒だわ」

大和田「そ、それによお! 確か十神は腐川が図書室を出た後に図書室から出たんだろ?
     十神なら誰にも見つからずに延長コードを持ち出せたんじゃねえのか?!」

十神「…………」

腐川「白夜様……」


778: 2014/06/08(日) 21:48:00.14 ID:9EUs6HQf0

霧切「どう、十神君? 一つ二つなら偶然で済むけどこれだけあなたに不利な状況が出ている。これらを
    上回る真犯人のメリットをあなたは私達に提示する義務があるわ。……そんなものがあればね」

K「どうなんだ、十神? 真犯人が別にいるというなら、さっさと白状した方が
  お前のためになると思うがな。ここで否定すればお前も犯人の有力候補に挙がるぞ」


だが追い詰められていたはずの十神は、逆に攻撃に出るような勢いで笑う。


十神「ク、ク、クハハハハ! 貴様ら愚民も最低限の思考回路は持ち合わせているようだな」

苗木「やっぱり……」

石丸「な?! と、十神君……?」

大和田「テメェ……なんでそんなワケのわかんねえことしやがった……テメェのせいで
     危うく兄弟が犯人になる所だったんだぞ! 理由によってはタダじゃおかねえ!」

十神「クックックッ、俺は貴様らと違って現実を見ているとだけ言っておこうか?」

霧切「そう……そういうことなのね」


いつも感情を押し頃しなるべく無表情に徹している霧切が、珍しく嫌悪の眼差しで睨んでいる。


桑田「どういうことだよ?」

霧切「……測っていたのよ。私達の推理能力を」

K「…………」

葉隠「は? なんで?」

セレス「敵の技量を正しく把握するのは兵法の基本ですわ。そんなこともわかりませんの?」


780: 2014/06/08(日) 21:56:59.15 ID:9EUs6HQf0

江ノ島「つまり、十神にとってはアタシ達全員敵ってこと?」

朝日奈「あ、あんた! まさかそのためだけに石丸を利用したのっ?!
     犯人当てに失敗したら自分だって危ないのに!」

K「……十神は自信があるのだろう。絶対犯人を間違えないという自信がな」

桑田「なんだよ、そりゃ。まさか犯人知ってるとか?」

霧切「そうなんでしょ? 十神君……あなたは真犯人を知っている。だからこんな
    ふざけた罠を仕掛けて私達の反応をゆっくり観察出来た。違うかしら?」

苗木「あくまで何も知らない振りをして議論を眺めて、推理が間違った方に行ったら
    犯人を告白して自分は助かる……最初からそのつもりだったんだね」

十神「話が早くて助かる。お前達は合格だな」

桑田「テ、テメェエエエエエ!」

大和田「ブッ頃す!」


弾かれたように大和田と桑田が席から飛び出す。大和田はKAZUYAが止めたが桑田は十神に掴みかかった。


K「桑田! よせ!」

桑田「とめんなよ、せんせー! 今回だけは殴ってもいいだろ!」

大和田「そうだ! ソイツだけはぜってえに許さねえ!」

K「ここは議論の場だ。気まぐれな裁判長がいつ裁判を切り上げるかわからん。
  後で好きにしても構わないから今だけは抑えてくれ! 頼む!」


781: 2014/06/08(日) 22:02:32.46 ID:9EUs6HQf0

桑田「でもよ……!」

モノクマ「ああ~、いつまで偽装について議論してんの? もう十神君がやったで結論出たんでしょ?
      真犯人当てる気ないならさっさと投票タイムにしちゃうよ? ほら、席に戻った戻った」

大和田「クソッ!」

桑田「……!」ギリッ


渋々二人は席に戻る。だがその目は獰猛な獣のように未だ十神を睨み続けていた。


K「では次の議論だ。真犯人についてだが……」


だがここで十神は更なる攻撃に出た。


十神「おい、石丸の犯人疑惑はまだ解けていないぞ」

大和田「ハァ? なに言ってんだテメェ?!」

十神「俺は真犯人を見たとは言ったが、真犯人は別にいるなどとは言っていない。
    つまり、いまだに石丸が犯人の最有力候補に変わりはない」

桑田「なに言ってんだよ……お前、石丸が気絶してたの見てんだろ? じゃあ犯人なワケ……」


782: 2014/06/08(日) 22:19:46.99 ID:9EUs6HQf0

十神「犯行を行った後力尽きて気絶しただけかもしれんだろう?」


小馬鹿にしたような顔でいけしゃあしゃあと言い放つその男に、大和田と桑田はいよいよ殺意に
近い感情を抱き始めていた。普段は温厚なKAZUYAでさえ、額とこめかみに青筋が浮き上がっている。
逆に中心人物である当の石丸はと言うと、ただ青い顔をしておろおろとするばかりだった。


大和田「テメェ……ふざけるのも大概にしろ……!!」

山田「あの~、一つよろしいでしょうか」


また、泣きっ面に蜂とはこのことだろうか。嫌なことは大抵連続してやって来るものである。
山田の提案はKAZUYA達の努力を全て水泡にと帰すものであった。


山田「十神白夜殿が真犯人を知っているなら、さっさと投票を始めて
    答えを教えてもらえばいいんじゃないでしょうか?」

葉隠「そりゃあいい。そうすればもうこんな裁判する必要ねえしな」ウンウン

大和田「ちょ、ちょっと待てよ。それじゃあ兄弟の犯人疑惑が取れねえじゃねーか!」

江ノ島「ハァ? 石丸が犯人なら犯人。違うなら違うでいいじゃん。なにこだわってんの?」

桑田「で、でもお前らくやしくねえのかよ! それじゃ十神にバカにされっぱなしじゃねーか!」

セレス「桑田君。これはただのお遊びではなく、まさしく文字通り命を懸けたゲームなのですよ?
     プライドのために無駄なことをするよりも、確実な勝利にベットする方が賢明ですわ」

大和田「確実って……こんなヤツが本当のことを言うと思うか?!」

セレス「言いますわ。失敗したら自分もオシオキですもの。十神君の
     性格を考えればこんな所で嘘をつく必要性がありません」


783: 2014/06/08(日) 22:35:23.38 ID:9EUs6HQf0

桑田「だからってなぁ!」

K「まあ待て。まだ時間はあるのだろう? だったら時間いっぱい議論を続ければいい。
  とりあえず次は石丸の犯人疑惑を晴らすぞ! お前達、用意はいいな?」

霧切「構わないわ。石丸君が犯人じゃないという証拠は既に持っているもの」

石丸「なに……そんな馬鹿な?!」

苗木「大丈夫だよ。僕達に任せて」

舞園「心配しないでください!」


もうすぐ容疑が晴れると二人は優しく声をかけるが――その当人の様子がおかしかった。


石丸「そんな……」


石丸「そんなそんなそんな……」




石丸「そんなはずないんだああああああああああああああああッ!!!」




苗木「い、石丸君……?!」

大和田「兄弟、どうしたッ?!」

K「石丸……!!」



            ―  裁  判  中  断 ―


801: 2014/06/11(水) 21:32:47.72 ID:/hAUZlgp0

一同が呆気にとられている中、石丸は再び叫んだ。


石丸「僕が犯人のはずなんだ! 僕が図書室からコードを盗んで不二咲君の首を絞めたんだ!」

霧切「石丸君、落ち着いて。コードは十神君がやったのよ! 彼が自白したわ!」

桑田「なんなんだよ! どうしたんだお前?!」

石丸「だって、だって人は弱いんだ! そうでしょう、先生?! 先生も言ってたじゃないですか!」

朝日奈「え、な、なに……?」

江ノ島「マジこいつヤバくね?」

石丸「兄弟だってあんなに自分を慕っていた不二咲君を殺そうとしてしまったんだ!
    なら僕だって……僕だって今回のキッカケを作った不二咲君を、逆恨みで
    傷つけてしまったのかもしれないじゃないかっ!」

大和田「きょ、兄弟……なに言いだしてんだよ……おい?!」


盛大に錯乱し始めた石丸の元に大和田が駆け寄り、両腕で肩を掴む。
この三日間ろくに食事を取っていなかったのか、その体は明らかに痩せていた。


石丸「僕がやったんだ……僕がやってしまった……」

大和田「しっかりしろよ! オメエはそんなことするヤツじゃねえだろうが!」

石丸「でも人は弱いんだ! 過ちを起こすものなんだ! 兄弟だってそうなんだろう?!
    あんなに男らしくて強かった兄弟だって、こんな環境では道を間違えて……」

大和田「!!」


大和田は気付いた。気付いてしまった。何故石丸がここまで錯乱してしまったのか。
何故弱者を守るべき風紀委員の自分が過ちを犯したと思い込んでいるのか。


大和田(強い強いと思っていた俺も時と場合によっちゃ弱くなる……そう思い込んでるからか!
     だから自分だって同じように道を間違えるって、バカな思い違いをして……!)


802: 2014/06/11(水) 21:45:45.32 ID:/hAUZlgp0

それくらい石丸は大和田のことを深く信頼していたのだ。兄弟とまで呼び合った男を
自分はずっと騙していたのだ。そのツケが最悪の事態を引き起こしてしまった。


大和田「違う! 違う違う違う! 違うんだッ!!」

大和田「オメエは俺とは違う! 超高校級の風紀委員だろうが! 風紀とか正義とかとにかく
     大好きでそのために命かけてるようなオメエが、人頃しなんてするわきゃねえだろ!」

石丸「そんなことは関係ない。君だって……!」

大和田「だからそれがちげえっつってんだろ! オメエは俺みたいに弱い人間じゃねえんだよ!
     オメエは一番強いだろ! 誰よりも周りのこと考えて、自分を犠牲にできる男だろ!」

石丸「でも人は弱いんだ!」

K「石丸、違うんだ! その言葉の真意は……!」


もはや裁判が続行不可能なほど議場は混乱の渦に包まれる。
焦る者、困惑する者、冷ややかに眺める者の三者三様だった。


十神「フン、くだらん……もはや裁判の体をなしていないな。答えを言ってやるからさっさと投票を開始しろ」

セレス「同感ですわ。これ以上は無駄な時間です」

山田「そうですね。騒いでる所申し訳ないですけど」

腐川「も、もうあいつが犯人でいいんじゃないの……?」

モノクマ「お? じゃあ行っちゃう行っちゃう?」

葉隠「俺はどっちでもいいべ。自分が楽な方につくし」

江ノ島「まあ、なんであんな錯乱してるかはちょっと気になるけどね」

朝日奈「ちょ、ちょっと! みんなそんな言い方しなくても!」

桑田「待てよ! もうちょっとだけ待ってくれ、頼むって! 必ず大和田が説得するからよ!」


803: 2014/06/11(水) 21:52:13.04 ID:/hAUZlgp0

苗木「そ、そうだよ! とうとう僕達の間で事件が起こってしまったんだ!
    この事件の答えは僕達自身の手で解き明かさなきゃいけないはずだよ!」

霧切「お願い。証拠は揃っているはずなの。私達に証明させて!」

舞園「話を聞いてください!」

K(クッ、ここまでか……?!)


その時、存在感のある静かな声が騒ぎの続く議場に響いた。


大神「我は待つ。どの道時間が来れば投票せざるを得ないのだ。ならば待とう」

苗木「大神さん……!」

朝日奈「私も待つよ。あいつがいつもムダに一生懸命でみんなのために頑張ってたの知ってるし、
     今回もいつもの空回りでしょ。あんたもさぁ、いい加減に素直になりなよ!」


朝日奈は石丸に声を掛けたつもりだが、返したのは大和田だった。


大和田「ちげえんだ……」

朝日奈「え?」

苗木「大和田君?」

大和田「ちげえんだよ! 今回の事件を引き起こしたのも、兄弟が妙なことを言い出したのも、
     元はと言えば全部全部ゼ・ン・ブ俺のせいなんだよぉぉおおおお!!」


ダァン!と大和田は両手を席に叩きつけ絶叫する。


大和田「聞いてくれ、オメエら!! これを知られるくらいなら氏んだ方がマシだと思ってた!
     墓まで持ってくつもりだった!! 特に、兄弟……オメエには絶対知られたくないことだ!」


805: 2014/06/11(水) 22:02:46.84 ID:/hAUZlgp0

石丸「な、何を……一体何を話すつもりなんだ、兄弟?!」

霧切「大和田君……!」

K(とうとう話す時が来たか、大和田……!)


大和田は項垂れてしばらく荒い息を吐いていたが、ついに意を決して顔を上げた。


大和田「俺が絶対に隠したかった秘密と――俺が不二咲を襲った理由だ」

石丸「!!」

桑田「お前、やっぱり……わざとだったのかよ……」

朝日奈「そんな……」


衝撃的過ぎる告白に石丸は一瞬静止したが、その言葉の意味がわかると逆に大和田に掴み掛かる。


石丸「嘘だ、そんな、何で……何であんな馬鹿な真似をしたんだッ!!! 君達は僕の目から見ても
    とても仲が良かったではないか! 何故だッ?!! 何故弱い不二咲君を殺そうとしたッ!!
    何故失言をした僕を襲わなかったんだ!! 何故だあああああああッ!!」

大和田「俺がよええからだよおおおおおおおおおおおおおおッ!!」


石丸の絶叫に負けじと大和田も叫ぶ。その二つの眼からは滝のように涙が溢れ出ていた。


大和田「俺はな! 本当はよええんだ! よええんだよ! お前や不二咲が思ってるような人間じゃねえんだ!」

石丸「兄弟……」


大和田「俺の秘密、それはな…………兄貴を頃したことだ」


806: 2014/06/11(水) 22:14:15.04 ID:/hAUZlgp0

「?!!」


苗木「えっ?!」

葉隠「え、ちょ、マジで殺人してたんか?!」

大神「皆、落ち着くのだ! 話を聞こう」


ざわめきが治まると、一同を代表してKAZUYAが問いただす。


K「――お前の兄は、確か事故で氏んだはずだな?」

大和田「ああ、事故だった。……でも、俺が頃したも同然なんだ! すまねえ、兄貴……
     俺は今から男の約束を破る。約束を守れなくて、本当にすまねえ……」


大和田は強く目をつぶる。ハアハアと荒い息を吐いていたが、呼吸を整え天を仰いだ。
そしてようやく覚悟が出来たのか、大和田は目を開いて告白を始めたのだった。


「俺の兄貴はな……弟の俺から見ても本当によく出来た、立派な兄貴だったよ。
 強くて男らしくて頼もしくて、カリスマ性に溢れた自慢の兄貴だった」

「――だが、その反面プレッシャーもあったんだ」


兄・大亜の引退が近付くにつれて、一枚岩だったチームにさざなみが立ち始めた。


『弟はしょせんナンバー2だしな……』

『このチームは大亜が一人で作ったチームだ。弟の紋土はおまけだよ……』

『そんなヤツに二代目が務まんのか……?』

『この先チームは弱くなる一方だな……』


チーム内で囁かれる陰口が、毎日のように大和田の耳に入ってきたのだ。


807: 2014/06/11(水) 22:25:36.84 ID:/hAUZlgp0

「弟なんておまけ。身内だから二代目になる。……腐るほどそんな陰口を聞いた。そんな
 言葉は無視すりゃ良かったのに……出来なかった。俺は弱くて臆病者だったからだ……」


だからこそ。


『オレは……兄貴より強くなんなきゃなんねえ……』

『最後に一度だけ……どうしても勝つんだ……』

『どうしても勝たなくちゃなんねーんだッ!!』


「あの引退式の夜……俺は兄貴に勝負を挑んだ。そして案の定、負けそうになったんだ。
 勝負を焦った俺は、ムリな追い越しをかけようと反対車線に飛び出て、それで……!」


ファアアアアアアアン!!

甲高いクラクションの音が耳を貫き、ヘッドライトが眩しく自分を照らす。
しまった!と思った瞬間、次に聞こえたのはガシャアアンという一つの衝突音。


『わ、わりぃ……ドジっちまった……すまねぇな……』

『……後は頼むぞ……ぜってーに、チームは潰すんじゃねーぞ……
 “俺とお前”で……作ったチーム……なんだからな……』

『男の……男同士の……約束……だぞ……』

『兄貴! 兄貴ィィイイイイイイ!!』


「トラックに轢かれかけた俺を庇って……兄貴は氏んだ」


明らかに弟の過失にも関わらず、兄は一言も恨み言を言ったりはしなかった。
ただ自分と弟の二人で作ったチームを、弟である紋土に託したのである。

――それは絶対に破れない男の約束だった。


808: 2014/06/11(水) 22:35:34.42 ID:/hAUZlgp0

「チームでは弟に負けかかった兄貴がムリな走行をしたから氏んだってことになった……」

「言えなかった……! 本当のことを知られるのも怖かったし、兄貴との約束が守れないのも
 怖かった! 俺はチームを託されたんだ! だから、この秘密は絶対に言えなかった!!」


大和田の苦しい心境を理解して、誰もが黙り込む。だが、話はこれで終わりではない。
同じく蒼白な顔をした石丸が、再び大和田に問い掛ける。


「聞けば聞くほどわからない……何故秘密を聞いた僕ではなく不二咲君なんだ?!
  君は……僕を殺せなかったから八つ当たりで不二咲君を……!!」

「それだけは違う! 俺はあの時……秘密を聞かれたから怒ったワケじゃねえんだ……」

「違う……? 命を懸けても守らなければならない秘密以上に、君が殺意を抱く動機などあるのか?!」

「だから、俺は弱えんだよ……」


ポツリと呟くと、大和田は一度だけ深呼吸をして続けた。誰もが固唾を呑んで見守っている。


大和田「あの秘密を突き付けられた時、俺は混乱した。誰か殺さなきゃいけないって思った。
     でも、やめたんだ! 兄貴は俺が人頃しになってまで約束を守ることを望んじゃいねえって
     先公に言われて、俺も気付いた。絶対に人頃しなんかするかって一度は誓った……!」

大和田「でも俺は……俺は…………つまんねえ嫉妬をしちまったんだ! 不二咲に!」

石丸「嫉妬……」

大和田「そう、嫉妬だ。それも、ぶっ壊れた嫉妬だよ……」


その眼差しには、悲しみと狂気が入り交じっていた。


809: 2014/06/11(水) 22:48:33.91 ID:/hAUZlgp0

大和田「不二咲の秘密は俺と同じくらい……もしくはもっと言いづれえ秘密のはずだった……
     でも! あいつは自分の弱さに気付いて、認めて、立ち上がった! 変わろうとした!」

大和田「ちっぽけなプライドに縋って、秘密を暴露されることに怯えてる俺にとって
     あいつの存在は眩しかった。それで……それであの時……!」


『秘密なんてへっちゃらだもんね?』

『大和田君はとっても男らしくて強いんだから』

『いつまでも“嘘に逃げてた弱い”僕なんかとは違うんだよ!』


大和田「バカにされたと思った……悔しかった……俺が今まで築き上げたものも、全部
     嘘っぱちだったのかと思って……そしたら突然、頭の中が真っ白になったんだ」

大和田「気が付いた時には……兄弟が血まみれになって倒れてて、側で不二咲が泣いてた……」

「…………」

大和田「俺のつまんねえ嫉妬で……兄弟の顔にバカでっけえ傷を残した挙げ句……!
     まったく悪くねえ不二咲を危うく氏なせちまう所だった……!」

大和田「俺が、俺が弱くて情けねえばっかりに!! うう……!」

石丸「兄弟……」

大和田「俺はそんなヤツなんだ! 本当はオメエに兄弟なんて呼んでもらう価値のねえ男なんだよぉ!」


膝を折り、声をあげて泣き続ける大和田を石丸は見下ろす。石丸自身とめどなく涙を流していた。


810: 2014/06/11(水) 22:58:32.95 ID:/hAUZlgp0

K「大和田……よく全部話してくれた。辛かったな……もうお前は弱くなどない」


いつの間にかすぐ近くに来ていたKAZUYAが、大和田の肩に優しく手を置く。


大和田「兄弟……これでもうわかっただろ……人間が弱い生き物だからじゃねえ。俺個人が
     弱くて醜いんだ。俺は元々こういう人間だったんだ。騙しててすまねえ……」

石丸「そんな! しかし、僕は……!」

大和田「いい加減わかれよ! オメエみたいな根っからの善人が人を傷付けたり出来るか!
     オメエも……不二咲も、俺と違って強い人間なんだ。俺とは違うんだ!」

石丸「しかし……!!」

舞園「石丸君」


尚も食い下がろうとする石丸の右腕を、隣の席の舞園が掴んだ。そして、強く強く握りしめる。


石丸「舞園君……?」

舞園「……知っていますか? 石丸君みたいに性善説を信じている人には受け入れがたい
    事実かもしれませんが、人間には二種類の人がいるんですよ」

舞園「窮地に陥った時に……自分を犠牲にする人と他人を犠牲にする人です」

石丸「…………」


811: 2014/06/11(水) 23:04:43.01 ID:/hAUZlgp0

舞園「石丸君は前者ですよ。後者代表の私が保証します」

石丸「僕は……僕は……」


ミシミシと、痕が付かんばかりに舞園は強く腕を握る。有無を言わせぬ迫力が舞園にはあった。
未だ石丸は混乱したままだったが、裁判を再開出来る程度には落ち着きを取り戻す。


大和田「すまねえ、舞園」

舞園「謝るのは後です」

霧切「ええ。まだ裁判は終わっていない。石丸君の容疑を完全に晴らして、
    そのまま一気に真犯人の正体まで迫るわ」

江ノ島「勿体ぶらずにさっさと言いなよ!」

葉隠「ま、そう焦らんと黙って見てようや。どうせよくわからんしな」

山田「いや、参加しましょうよ。一応全員でやることになってるんですから……」

腐川「あ、アタシ達がわからないからって……馬鹿にしてるんでしょ?!」グギギ

K「では第二ラウンドだ。議論を再開する!!」




            ―  裁  判  再  開 ―


831: 2014/06/15(日) 14:23:18.19 ID:s3KWfPkr0

[ 石丸の潔白を証明せよ! ]


十神「それで、意気揚々と宣言したはいいがどうやってそいつの潔白を証明するつもりだ?」

大神「もしや真犯人が石丸を襲った時に使った【消火器に何か手がかりがある】のでは?」

江ノ島「よくわかんないけど、【犯行時刻】とかじゃない?」

セレス「そもそも、何故リボンなのでしょう? ロープはなかったのですか?」

桑田「本当は十神が犯人なんじゃねえの? いくらなんでも【偽装なんてやり過ぎ】だろ!」

朝日奈「本当だよ! 私も十神が怪しいと思う!」

山田「まさか、自ら撹乱を名乗ることで真犯人の疑惑から逃れるという作戦?!」

石丸「だが、現時点で僕が犯人ではないという【証拠はない】」

霧切「そうかしら? 証拠をよく見てみてちょうだい」

石丸「そんなもの、存在するはずが……」

大和田「いいや! ぜってぇに、あるはずだ!」


>>832
適切な台詞を適切なコトダマで撃ち抜け! コトダマリスト>>689
わからない場合は【助けて霧切さん】か【教えてKAZUYA先生】だ

832: 2014/06/15(日) 14:35:51.43 ID:s3KWfPkr0
安価近すぎたね…

再安価>>835で

836: 2014/06/15(日) 15:33:14.79 ID:s3KWfPkr0

苗木「ロープの場所とかどうだろう? 石丸君はロープの場所を知っているよね?」

山田「知っているのにあえて使わない。推理モノではお約束ですな!」

腐川「ど、どうせそれも偽装でしょ……」

セレス「反論としては弱いですわね」

苗木(駄目だ……もっと直接的で、致命的な証拠を叩きつけないと……)


>>838
適切な台詞を適切なコトダマで撃ち抜け! コトダマリスト>>689
わからない場合は【助けて霧切さん】か【教えてKAZUYA先生】だ !

839: 2014/06/15(日) 15:56:43.96 ID:ZQLlWNHcO
【証拠はない】に【石丸清多夏のカルテ】

840: 2014/06/15(日) 16:08:36.82 ID:G0JwJ/Vs0

大和田「きょ、兄弟は誰かに引きずられた跡があるんだよ! つまり誰かが……!」

葉隠「そんなん、自分でやっただけかもしれんべ!」

江ノ島「怪我の偽装なんて簡単でしょ」

朝日奈「信じてあげたいけど、ちょっとそれだけだと弱いかな……」

大神「確実に石丸ではないと断言出来る証拠が欲しい所だ」

十神「フン、貴様等の友情とやらはやはりその程度だったようだな。ハハハハハッ!」


>>842
適切な台詞を適切なコトダマで撃ち抜け! コトダマリスト>>689
わからない場合は【助けて霧切さん】か【教えてKAZUYA先生】だ !

ラストチャンスです。次間違えた場合は自動でKAZUYAが論破します
ついでに1はちょっと外します。再開は夜の予定

854: 2014/06/15(日) 20:07:36.54 ID:YfHWp5jB0

苗木(どうすればいいんだ……? 決定的な証拠……そんなものあるのか?)

舞園(何を主張しても、偽装だと言われてしまったら反論出来ない……!)

桑田(霧切は証拠はもうあるって言った……どれだ? どれがその証拠なんだ?!)

霧切「落ち着いて、みんな。石丸君が犯人でないということを証明するには
    石丸君が犯人ではおかしい点を指摘すればいいのよ」

大和田「んなこたわかってんだよ! でも、おかしい点なんて腐るほどあるじゃねえか!」

霧切「他の生徒にはない、彼だけの特徴を考えて。……ここまで言えばわかるわね?」



>>856
適切な台詞を適切なコトダマで撃ち抜け! コトダマリスト>>689

これちょっと難し過ぎたかもしれませんね……反省

857: 2014/06/15(日) 20:24:24.54 ID:YbT7xtTZ0
石丸だけの特徴……左利きな事かな?
鬱血痕の付き方が左が上部、右が下部=右利きの人物の犯行で
【証拠はない】に【不二咲千尋のカルテ2】でどうだ

858: 2014/06/15(日) 20:34:24.68 ID:YfHWp5jB0

【不二咲千尋のカルテ2】 ドンッ! ====⇒ 【証拠はない】BREAK!!


苗木「それは違うよ! このカルテがその決め手なんだ!」

石丸「カルテ? 西城先生の作ったそのカルテが一体何だと言うのだね?!」

苗木「このカルテに、山田君からカメラを借りて撮った写真が付いているよね?
    不二咲さんの首の後ろの跡を見てほしいんだ」

石丸「僕が首を絞めてしまったせいで残った跡か……」

桑田「だから、お前じゃないっつーの!」

山田「このうっすら残った跡がなんだというんですか?」

苗木「これが真犯人が本物の凶器で絞めた跡だっていうのは異論はないね?
    よく見て欲しいんだけど、左側の跡がやや上で右側の跡がやや下なんだ」

十神「…………」

大神「成程……!」

セレス「そういうことでしたか……」


何人かが得心して頷くが、大半のメンバーは訳がわからない。


江ノ島「え? なになに?」

山田「どういうことですかな?」

朝日奈「さくらちゃん、教えて!」

大神「うむ、それはだな……」

葉隠「左側が上……つまり真犯人は左利きなんだべ!」

朝日奈「あ、そういうこと?!」

山田「そうでしたか! 左利きの人間なんてそういないですからな」

江ノ島「あんたたまにはまともなこと言うじゃん!」

葉隠「へへへへ! 誉めるだけならタダだべ?」

霧切「盛り上がってる所悪いけど……」

石丸「……僕は左利きだが?」


860: 2014/06/15(日) 20:41:56.30 ID:YfHWp5jB0

……シーン。


葉隠「や、やっぱりか」

腐川「あんたが犯人……!」

大和田「違うだろうが! 苗木の話を最後まで聞けや!!」

苗木「えっとね、葉隠君の発想は良かったんだけど……逆なんだ」

葉隠「逆? 逆ってことは……」

朝日奈「! 犯人は右利きってこと?!」

苗木「うん。実際に手を動かしてみればわかりやすいんだけどね、右利きの人がやるのと
    左利きの人がやるのじゃ跡が違うんだ。右利きでやった場合、右手に持った紐が必ず
    上になる。だから、首の左側に残る跡も必然的に上になるんだよ」


〈 わかりやすい図解 〉no title



山田「なるほど~。それなら確かに犯人を絞れますな」

K「この場にいる左利きの人間は石丸ただ一人だ。本来ならあまり
  役には立たない証拠だが、今回に限っては有用に働いた訳だな」

セレス「ですが、わたくし一つ疑問がございますわ」

セレス「石丸君はいつもお箸を右手、お茶碗は左手に持っていたはず……
     確かに左利きという証拠はあるんですの?」

苗木「僕は石丸君と一緒に医療実習に参加して、石丸君が左利きだって知ってるよ」

桑田「俺はアイツと一緒に野球したから左投げだって知ってるぜ」

霧切「偶然私もその現場に居合わせたから間違いないわ」

腐川「でも、あんた達が結託して話を合わせてないとも限らないじゃない……!」

大和田「はぁ?! ふざけんな! 兄弟は確かに左利きなんだよ!」

K「大和田、落ち着け。いつも一緒にいたお前なら石丸の潔白を証明出来るはずだ。
  誰か第三者の前で、石丸が左利きだと話したことはなかったか?」

大和田(そんなことあったか? ……いや、考えろ! 考えるんだ……このままじゃ
     十神の野郎に負けっぱなしだぞ? 兄弟の不名誉を晴らせねえ!)


861: 2014/06/15(日) 20:57:39.05 ID:YfHWp5jB0

大和田「…………そういや、そうだ! 確か食堂で兄弟と腕相撲の勝負をしようとしたことがあってな。
     その時、兄弟は自分は本来左利きだから正確な勝負は出来ないって言い出したんだ」

K「その話を他に聞いた人間はいるか?」

大和田「勝負の見届け人を大神と朝日奈に頼んだから二人は知ってるはずだぜ!」

朝日奈「あ、覚えてるよ! えっと、『僕は矯正されているから普段は右手で過ごしているが、本来は
     左利きなんだ。正確な勝負にはならないがそれでも構わないか?』って、確かに言ってた!」

大神「我も覚えている」

K「全体の半数が石丸を左利きだと認識している。これでもまだ言い張るか?」

江ノ島「でもさあ、普段は右手で過ごしてるんでしょ? だったら殺人だって右手で出来るんじゃないの?」

山田「これすらも偽装の可能性がありますぞ!」

K「いや、それはないな。普段は右手で過ごしているが、石丸は咄嗟の時や無意識の行動では
  必ず左手を使っている。朦朧とした意識で殺人などという行為を右手でやるとは思えん」

大神「武道も訓練しているからこそ逆手で行える。普段からしている
    動作以外をいきなり逆手でやらせて上手くいくとは到底思えぬ」

K「仮に犯行時刻が一時なら、発見まで時間的に余裕がある。お前達の言う通り、自分の体を
  傷付けて偽装するくらいなら、いかに不器用な石丸でも不可能とは言い切れないかもしれん」

K「だが、『突発的な犯行で時間に余裕が無い』中で、『抵抗する不二咲千尋相手』に
 『不器用な石丸』が『利き手と違う手』で犯行を行えるか? 断言しよう、それは不可能だ」

葉隠「あー、んー……そう言われれば、そうかもしれねえなぁ」

山田「確かに石丸清多夏殿は頭に超がつくほどの不器用ですし……これは確定ですかね」

セレス「わたくしも納得いたしましたわ。確かに石丸君は犯人ではなかったようです」

朝日奈「やっぱり……うん、そうだよね! 石丸に人頃しなんて出来ないって!」

大和田「よし! 兄弟の潔白が証明出来たぞ!」

苗木「良かったね、石丸君!」

石丸「では……では、僕は本当に犯人ではないのか……? しかし……」

K「石丸、お前一人で泥をかぶらなくてもいい。もう真犯人を庇う必要はないんだ」

十神「……何だと?」


865: 2014/06/15(日) 21:15:57.19 ID:YfHWp5jB0

桑田「真犯人を庇うってどういう意味だそりゃ?!」

苗木「石丸君は真犯人の正体を知ってるの?!」

K「いや、知らないさ。だが自分が犯人でないなら別に真犯人がいることくらいわかるだろう?」

K「石丸はな、朦朧とした意識の中でこう思ったのだろう。この中に不二咲を頃した者がいる。
  だがその人間だってきっと大和田のように何か事情があったに違いない。だったら
  自分が真犯人で自分一人が罰せられて全てが終わればいいのにと……」

K「お前達も知っての通り、石丸は非常に心身が弱っていた。だから、いつしか
  その願望と現実が混ざって自分が不二咲を頃したと思い込んでしまったのだ。
  だからあんなに真犯人を追求するのを拒否していたのだろう」

大和田「兄弟……オメエってヤツは……どこまでお人よしなんだよ……!」

石丸「みんな……すまない。僕のせいで無駄に場を混乱させてしまった……」

桑田「いいんだよ! イインチョがKYなのなんて今に始まったことじゃねえだろ!」

苗木「うん、困った時はお互い様だよ。気にしないで」

霧切「みんな、安心するのは早いわ。石丸君が潔白だったということは、真犯人がいるということよ」

K「明かさねばなるまい。……真相を全て」


・・・


真犯人が誰かについて全員があれやこれやと議論している中、石丸は別のことを考えていた。


石丸「僕は……不二咲君を襲った犯人などではなかった……」

石丸(良かった、はずだ……兄弟達があれだけ一生懸命潔白を証明してくれたのだから……)


866: 2014/06/15(日) 21:26:46.56 ID:YfHWp5jB0

まだ側にいたKAZUYAが、石丸の心情を察して肩に手を置く。


K「……石丸。現実を受け入れがたいのはわかる。だが、ここには確かに真犯人がいるのだ。
  不二咲のためにも見つけなければならん。そして俺達は最後まで真実を見届ける義務がある」

石丸「――はい」


そしてKAZUYAも元の席に戻った。その様子を見ながらも積極的に議論に参加しているのは桑田だ。


桑田(石丸の潔白は証明出来た。でも、まだだ! ぜってぇに不二咲を襲ったヤツを見つけてやる!)

K「もう一度整理しよう。真犯人に繋がる手がかりと言えば、やはり凶器についてだろうな」



[ 真の凶器について ]


大神「【延長コード】は十神による偽装だった訳だな」

葉隠「えーっと、真の凶器ってなんだったか?」

セレス「それはさきほど苗木君が出した【エプロンのリボン】ではないのですか?」

舞園「でも、なんで犯人はそんな物を使ったんでしょうか。倉庫にロープが置いてあるのに」

大和田「犯人は、ロープの場所を知らなかったからだろうな」

十神「甘いな……だから貴様等は愚民なのだ」


>>868
適切な台詞を適切なコトダマで撃ち抜け! コトダマリスト>>689
わからない場合は【助けて霧切さん】か【教えてKAZUYA先生】だ !

867: 2014/06/15(日) 21:32:25.56 ID:BhsPNqQZO
【エプロンのリボン】
【不二咲のカルテ1】

871: 2014/06/15(日) 21:42:22.71 ID:YfHWp5jB0

【不二咲千尋のカルテ1】 ドンッ! ====⇒ 【エプロンのリボン】BREAK!!


霧切「それは違うわ。さっきは直接関係ないし議論の邪魔になるから
    黙っていたけど、実はそのリボン――本当の凶器じゃないのよ」

大神「何だと?!」

霧切「カルテの記述をよく見て……首に引っかき傷ありって書かれてるわよね?
    これは、首を絞められた時に不二咲君が抵抗した時についたものよ」

山田「ロープを外そうとして引っ掻いてしまう。よくある話ですな」

苗木「こんな真っ白なリボン、少しでも血がついたらわかると思わない? 洗う時間もなかったはずだし」

舞園「つまりそのリボンは犯行には使われていないんです」

腐川「で、でも……じゃあなんでそんな物が落ちてる訳?」

十神「簡単なことだ。真犯人が本当の凶器を偽装するために用意した。そうだろう?」

葉隠「あれ? 偽装の偽装だべ?」

石丸「……何と。つまり、この事件は二つの異なる人間による二重の偽装があったということなのか!」

苗木「うん。つまり、本当の凶器は別にあるはずなんだ」

セレス「それで、肝心の凶器はどこにあるんですの?」

苗木「それは……」

苗木(どうしよう……僕らが掴んだのはここまでなんだ。これ以上は……)

K「決め手に欠ける、か……」

桑田(おいおいおいおい……冗談じゃねえぞ! もうすぐそこまで来てんだ! ここで
    諦めてたまるかよ! 考えろ! 俺の頭でも思いつくことがあるはずだ。考えろ!)


桑田は焦っていた。桑田は今日、積極的に議論に参加しているのにも関わらず、
何一つ味方の役に立つ発言を出来ていなかったからだ。


桑田(俺じゃあダメなのか? 俺がバカだから……いや、諦めたら終わりだろ!
    考えろよ。そもそも、なんでこんなアホみたいな事態になったんだっけ?)

桑田「!」


872: 2014/06/15(日) 21:49:07.60 ID:YfHWp5jB0

十神「何だ。偉そうなことを言ったのにここまでか。もう俺に頼るしか方法がないようだな」

桑田「ま、待てよ!」

十神「またか。お前みたいな馬鹿が一体何の役に立つというんだ。いい加減に……」

桑田「秘密! 今ここでみんなの秘密を暴露しねえか?」

江ノ島「ハァ? 今? なんでよ?」

桑田「だってよ、大和田だって秘密が原因で問題起こした訳じゃねえか。
    犯人が秘密のために殺人を起こそうとした可能性はあんじゃねえの?」

腐川「ちょ、ちょ、ちょっと待ちなさいよ! そ、そんなのなんの証拠にもならないじゃない!
    まさか秘密の内容で犯人を決めるっていうんじゃないでしょうね?!」

桑田「別に秘密がヤバいから即犯人だなんて言わねえよ。ただ、参考になるかもしれねえだろ」

K「成程、考えたな」

霧切「一理あるわね。どうせ言われるはずのものなんだし」

腐川「じょ、冗談じゃないわ! アタシは言わない。絶対に言わないわよ……!」

桑田「俺から時計回りに行くぞ!」


そうして秘密の暴露大会が始まった。


山田「拙者実は二次元オンリーと言っておりましたが……申し訳ない! 本当はリアルにも興味あります~!」

大和田「……知ってた。つか、それが普通なんだから気にするこたねえだろ」

山田「なにをおっしゃいますか?! いいですか? 僕はコミケ界の帝王的存在なんですよ?!
    なのにリアルに興味あるとかアイデンティティの放棄というかファンへの裏切りというか……」

セレス「いつまでグダグダ言ってんだ! 一度認めたんだからさっさと諦めろブター!」

山田「ブヒィィ! そんなああああ!」

K「……次」


873: 2014/06/15(日) 21:53:43.88 ID:YfHWp5jB0

江ノ島「あたしのはー、みんな知ってるっしょ? 雑誌のカバーショットを
     フォトショでいじってること。どうせ偽造モデルですよ」

舞園「今のままでも十分可愛らしいのに」

江ノ島「……あんたにそれ言われるとか嫌みでしかないんだけど」

苗木「それは違うよ!」

江ノ島(え、なに? なにが違うの? むしろこっちの方が好きとか?!)

苗木「確かに江ノ島さんは雑誌よりちょっとツリ目でそばかすあるし胸も控えめかもしれない。
    でもそれが本来の江ノ島さんの姿であり、それを僕らに晒したのだから僕らは真の……」

桑田「はい、ストーップ! ストーップ!」

石丸「どうしたのかね? 苗木君は江ノ島君に素顔の美しさを説こうとしているのでは……」

大和田「兄弟、ちょっと黙っててくれ」

セレス「修正するのでしたらお顔か体型、どちらかにすればよろしかったですわね?」

江ノ島「……あんた、後で女子トイレに来て」ギロッ!

K「つ、次だ!」


当然、その中にはとんでもない秘密が紛れ込んでいるもので……


大神「我の秘密はこれだ」ピラッ

苗木「写真?」

桑田「うおおおっ! すっげー美人じゃん! 誰? 親戚? 今度紹介してくれよ!」

K「おい……」

霧切「桑田君……」


KAZUYAと霧切の冷たい視線が刺さるが、約束を取り付けるだけ!とあえて無視する。


874: 2014/06/15(日) 21:57:53.08 ID:YfHWp5jB0

大神「残念だがそれは無理な話だ」

桑田「なんでだよ? もしかして彼氏持ち?」

大神「いや、そうではなく不可能なのだ……」

桑田「え、まさか……既にお亡くなりになられてるとか……?」

大神「ある意味ではそうだな……これは中学時代の我の写真だ」

「?!?!」


裁判場の時が――止まった。


大神「今の我を紹介されても困るだろう?」

桑田「あ、いや、そのぉ…………なんかいろいろごめんなさい」

朝日奈「ちょっと! 今のさくらちゃんだって十分かわいいでしょ!」

K「次だ!」クワッ

霧切「私の秘密はこの手袋についてよ」

苗木「そういえば、いつもつけっぱなしだね」

石丸「何か外せない事情でもあるのか?」

霧切「昔、事故で酷い火傷をしたの。その傷痕を隠しているのよ」

K「何? 何故俺に言わん! ここから出たらすぐに綺麗に手術してやる」

霧切「……その時が来たらお願いします」

葉隠「次は俺か。長いんで、上から読んで行くべ。えーと詐欺、マルチ商法、恐喝……」ツラツラ


葉隠は次々と犯罪や裁判の内容を挙げていくが、なんと全て自分の過去の行いであった。


875: 2014/06/15(日) 22:11:10.80 ID:YfHWp5jB0

桑田「テ、テメェ……人を散々犯罪者呼ばわりしたくせに、自分だって犯罪者じゃねーか!」

葉隠「俺には殺人と放火だけはしないってポリシーがある!」キリッ!

桑田「なに堂々と言ってんだ! お前、ふざけんのもたいがいにしろよ!」

K「桑田、落ち着け」

桑田「だって、せんせー……!」

K「文句は後でまとめて言え。今は裁判に集中しろ」

十神「フン、俺の秘密は貴様ら愚民とは訳が違うぞ」

モノクマ「えー、十神君の秘密は小学生の時の作文です。僕が代わりに読んであげますね」


 いちねんいちくみ とがみびゃくや

 ぼくのゆめは、十神家の嫡男として世界をせんどうするリーダーとなることです。
いえ、これはもうけっていじこうなのでせいかくにはゆめではありません。
おろかなみんしゅうをただしいほうこうにみちびくため、いまから帝王学をたたきこまれ、
りっぱな指導者となるべくひびけんさんしています。
 ぼくがおもうつよいリーダーとは……(以下延々と続く)


石丸「流石十神君だ……小学一年生から既にあのような思想を完成させているとは……」

大和田「いや、冷静に考えて小学生があんな作文書いてたら怖いだろ……」

朝日奈「ちょっとかわいげないよね……」

苗木「十神君らしいと言えばらしいけど、流石にビックリしちゃった……」

桑田「ぶっちゃけこんなこと偉そうに言ってる小1とかうぜえだけだわ」

山田「禿同」


ヒソヒソ、ヒソヒソヒソ。


十神(くっ、俺の崇高な理念がわからぬ愚民共が……だから知られたくなかったのだ)プルプル…

K「……次」


876: 2014/06/15(日) 22:21:30.42 ID:YfHWp5jB0

次の秘密も、別の意味でなんとも言えない空気を醸し出していた。


一同「…………」

セレス「…………」

K「そうか。君の本名は安広というのか。呼びやすくなって良かった。正直、
  ルーデンベルクは長いし呼びづらくてなァ。今度からは安広と呼ばせて……」

セレス「わたくしの名前はセレスティア・ルーデンベルクだ、このビチ……!」

K「どうかしたか?」ゴゴゴゴゴ…


流石に教員に対して暴言はまずいかとセレスも自制するが、納まりがつかない。


セレス「クッ、この筋肉ダルマ! ノッポ! ウドの大木! ダッせえボロマント!」

K「何と言われようと俺は本名で呼ぶからな」

苗木「あ、あの次は……」


一通り秘密の暴露が終わり、最後に一人だけが残った。


K「さて、これで後は……」

腐川「い、言わない……絶対に言わないわよ……!!」

苗木「腐川さん、別にこれで犯人を決める訳じゃないから……」

霧切「変に意固地になると、逆にあなたが犯人ではないかと疑われてしまうのよ?」

K「言いづらいのはわかるが、今言っておいた方が心証がいい。もうあまり時間もないぞ」

腐川「い、言える訳ないじゃない……! アタシの秘密はあんた達のとは次元が違うのよ!」


877: 2014/06/15(日) 22:28:48.94 ID:YfHWp5jB0

桑田「でも、もう犯罪者まで出てるんだぜ? それ以上に言えないことってなによ?」

舞園「桑田君。相手は女性ですし、体のことや親戚関係かもしれません。
    言いたくない気持ちもわかります」

霧切「全員に言うのが憚られるなら、私が代表で聞くわ。口の堅さには自信があるから」

苗木「そうだね。霧切さんなら信頼出来るんじゃないかな?」

腐川「だ、ダメよ! 誰が相手であってもダメ! い、言える訳ない!!」

大和田「なんだぁ、腐川のヤツ……?」

K(腐川の奴、妙に頑なだな……下手をしたら自分が犯人扱いされるかも
  しれんというのに、それでも言えない秘密とは一体……)


案の定、生徒達は腐川を疑念の目で見始めた。


江ノ島「あー、めんどくさー。腐川が犯人なんじゃないのー?」

葉隠「まさか、腐川っちが犯人なんか?!」

山田「確かに、いささか往生際が悪すぎますな」

朝日奈「本当はムリさせたくないけど、裁判のためには聞かないとダメだし……」

十神「さっさと言え、腐川。貴様のせいで余計な時間を取られているのだぞ」

腐川「びゃ、白夜様……で、でも……あれはですね……その……」

十神「貴様が言わないなら俺が代わりに言ってやる。そいつの正体はジェノサイダー翔だ!」

「ジェノサイダー翔?!!」


ジェノサイダー翔とは、世間を賑わせている連続猟奇殺人犯のことである。


K「ば、馬鹿な……まさか、腐川が本当にあのジェノサイダー翔だというのか……?!」


891: 2014/06/19(木) 21:34:08.43 ID:jeXaORoS0

あまりにも衝撃的過ぎる秘密に、流石のKAZUYAも表情が固まる。


K(確かに、もしそうなら絶対に言える訳はないが……だが、腐川に人頃しが出来るか?)

桑田「マジかよ……」

朝日奈「え、嘘だよね? だって腐川ちゃんは血液恐怖症だし……」

石丸「そ、そんな?! まさかクラスメイトに本物の殺人犯がいただと……?!」

腐川「ああああああ!! 言わないでってあれほど言ったのにぃぃぃ! もう終わり! 終わりよぉぉぉ!」


そう叫ぶと腐川は真後ろに倒れた。


K「腐川!」


慌てて駆け寄ろうとした刹那、物凄い勢いで腐川は立ち上がる。その口からは長い舌を覗かせて。


ジェノ「呼ばれて飛び出てジェノサイダー! アッハッハッハッ!」

K「な……!(これは、いつぞやの?!)」

苗木「あ、あの腐川さ……」

ジェノ「アタシをあの根暗の名前で呼ぶんじゃねーよ! アタシにはジェノサイダー翔っていう
     とーってもイカす名前があんだよ!」

石丸「こ、これは一体……いつもの腐川君とはまるで違う……」

K「そうか、乖離性人格障害か……!」

大和田「カイリ……なんだそりゃ?」

K「所謂多重人格のことだ。ここの図書室の書庫に何故か警察の極秘資料があり、
  その中にジェノサイダー翔についての記述もあった。乖離性人格障害が疑われると
  書いてあったが、まさか本当だったとはな……」


892: 2014/06/19(木) 21:36:48.71 ID:jeXaORoS0

ジェノ「へぇ~。アタシってば有名人! 他にはなんて書いてあったの?」

K「ジェノサイダー翔は単なる連続殺人犯ではなく、その犯行にはいくつかの共通点がある。被害者は
  全て若い男性、凶器のハサミで張り付けにする、側には必ずチミドロフィーバーの血文字……」

ジェノ「イエース! さすがKAZUYAセンセ! アタシのことよくわかってるぅ!」

大神「多重人格……これほどまでに違うものか」

葉隠「これで決まりだな! ジェノサイダー翔が不二咲っちを襲った真犯人だべ!」

ジェノ「ハァ?! テメエの脳みそウニで出来てんの? 今の話聞いてなかったぁ?」

ジェノ「アタシが頃すのは萌える男だけって決めてんのよ!
     なにせ貴腐人コースまっしぐらな腐女子ですからぁ!」ゲラゲラゲラ!

山田「でも、不二咲千尋殿は男の娘でれっきとした男性ですぞ? しかも萌える」

ジェノ「え?! マジ~?! あちゃー、そうだったんだぁ。男の娘とか盲点だったわ!」

K「…………」

朝日奈「で、でも! あんたが犯人じゃないなら他に一体誰がやったって言うのよ!」

ジェノ「知らねーよ。テメーらの誰かじゃないの?」

朝日奈「信じられないよ! だってあんた連続殺人犯じゃない!!」

ジェノ「うっせー! 違うって言ってんだろ、この乳牛女!」


ジャキィィィン!

ジェノサイダーはバサリとスカートを翻すと、いつのまにか両手に鋏を取り出し身構える。
太ももにホルダーがあり、そこに愛用の鋏を収納しているのだ。ちなみに、早技過ぎて
誰も気付いてはいないが、太ももには頃した男の数を正の字の刺青で彫りこんでいる。


ジェノ「女は襲う趣味ないけど、あんまりしつこいならマイハサミで切り刻んじゃうわよん?」

朝日奈「ヒッ!」


893: 2014/06/19(木) 21:42:18.01 ID:jeXaORoS0

大神「ジェノサイダー! 朝日奈に手を出したら容赦はせんぞ!」

ジェノ「そっちが先につっかかってきたんだろうがよぉ!」

K「よせ! 確かに証拠もなく決めつけるのは良くない。議論を再開しよう」

ジェノ「……えーっと、今はなにについて議論してたんだっけ?」

桑田「凶器が見つからねえってことだよ!」

ジェノ「ふーん? それって単に今も犯人が持ち歩いてんじゃね? アタシのハサミみたいに」チャキチャキ

苗木「そうか! それならどこを探しても見つからない訳だね!」

大和田「でもよぉ、ある程度太めの長いものを持ち歩いてるヤツなんているか?
     俺はサラシ巻いてるけど……ん、サラシ? まさか……大神?!」

朝日奈「さくらちゃんが不二咲ちゃんを襲うわけないでしょ! いい加減なこと言わないでよ!」

舞園「江ノ島さんも包帯を巻いていますね? 腐川さんの制服のリボンも」

江ノ島「え?! アタシィ?!」

ジェノ「これ、縫い付けてあって取れないからハズレだよーん」

K「では、二人はどうだ?」

大神「……我は違う」

江ノ島「ア、アタシだって違うわよ!」

桑田「でも、凶器持ってるしアリバイもないし……」

霧切「二人共、サラシと包帯を見せてもらってもいいかしら?」

大神「構わぬ」シュルッ

江ノ島「いいよ(毎朝包帯取り替えてて良かった……)」シュルルル

霧切「……さっきのリボン同様、血の跡がないわ。犯人じゃないわね」


ちなみに、アリバイのないメンバーの部屋は事前に調べているため、部屋に隠しているということはない。


895: 2014/06/19(木) 21:46:29.25 ID:jeXaORoS0

桑田「あ~、振り出しかぁ」

山田「んーむ……ピコーン! 閃いた! この山田一二三、閃きましたぞっ!!」


その時、メガネをキラリと輝かせながら唐突に山田が叫び出す。


大和田「なんだよ……しょーもねーことだったら殴るぞ?」

山田「フッフッフッ、灰色の脳細胞が冴え渡りましたよ!」

K「脳の色は通常薄い桃色から橙色だ。灰色では氏んでいるぞ」


少々野暮なツッコミが入るが、そんなことで山田は止まらない。


山田「聞いて驚くなかれ。ズバリ! 推理漫画で時々ある、髪の毛とかどうですかな?!」

葉隠「ム、ムリだぞ! 俺のドレッドで首を締めるなんてことは……!」

K「安心しろ。それはわかっている」

朝日奈「あんたねぇ、髪で人を殺せるわけ……っ!!」


話している最中に、朝日奈の血相が突然変わり大きく息を吸い込んだ。


K「どうした、朝日奈?」

朝日奈「ウィッグ……」

江ノ島「へっ?!」

朝日奈「お風呂の時見たんだけど、ここにウィッグを使ってる人がいる……」


896: 2014/06/19(木) 21:57:48.55 ID:jeXaORoS0

朝日奈の言葉に、珍しく大神も動転した。


大神「そうか……セレス! お主のその髪、確かウィッグであったな!」

セレス「!!」

桑田「マ、マジで? おりゃっ!」ブチッ!

セレス「このっ! 髪は女の命ですのよ! 汚い手で触んじゃねえビチグソがあああああああああ!」

山田「な、何とぉぉぉ! 実はセレス殿は黒髪ショート娘だったのですな! 萌えますぞ!」

セレス「っるせえ! この腐れラードォ!!」

朝日奈「そんな、セレスちゃんが犯人だなんて……」

セレス「ふざけんなっ! わたくしは犯人なんかではありません! 確かにこの髪は
     ウィッグですが、これが凶器だという証拠がないではありませんか!」

桑田「確かに証拠はないけどよぉ、もう手がかりねえし……」

K「いや、ある!」

苗木「! まさか、まだ手がかりが?!」



[ 最終ノンストップ議論 ]


セレス「このウィッグが【凶器だという証拠】なんてありませんわ! わたくしは潔白です!」

ジェノ「でもさぁ、正直な話【反論出来ない】っしょ?」

江ノ島「もうセレスが犯人でいいじゃん!」

葉隠「【アリバイもない】し、凶器もあるし完璧だべ!」

朝日奈「本当に、セレスちゃんが……?」

山田「セレス殿! 見苦しく言い訳してないで早く自白してくだされ!」

十神「早くこの下らん茶番を終わらせろ。あくびが出そうだ」

苗木「待ってよ。きっと、これが最後だと思うんだ!」


>>898
適切な台詞を適切なコトダマで撃ち抜け! コトダマリスト>>689
わからない場合は【助けて霧切さん】か【教えてKAZUYA先生】だ!

898: 2014/06/19(木) 22:01:59.42 ID:i51oQThC0
【教えてKAZUYA先生】

902: 2014/06/19(木) 22:14:58.31 ID:jeXaORoS0

K(俺が出るか……ん?)


口を開いて反論しようと思った矢先、KAZUYAは桑田と目が合った。


桑田「待ってくれ、せんせー! もう少し……もう少しだけ俺に時間をくれねえか?」

桑田「俺の手で……不二咲を襲った犯人を突き止めてえんだ!」

K「桑田……」


KAZUYAは桑田の気持ちを察して頷くと、無言で引いた。


桑田(クソッ! あとちょっとだ! もう少しで不二咲を襲ったヤツがわかるのに……)

桑田(やっぱり俺の頭じゃムリなのか? 俺じゃあ不二咲の仇は取れないのか?)

霧切「……桑田君」

桑田「なんだよ……」

霧切「焦らないで。今手元にある証拠をじっくり見比べて」

霧切「――リボンが、あなたを答えに導いてくれるはず」


適切な台詞を適切なコトダマで撃ち抜け! コトダマリスト>>689

安価直下

904: 2014/06/19(木) 22:27:56.55 ID:PwXTLDOgo
どこかに【切り取られたリボン】を突きつけたらいいのか?

分からんから安価下

908: 2014/06/19(木) 22:39:00.61 ID:jeXaORoS0
……ごめん。コトダマ見直してみたらこれかなりの難問だったわ。つーか普通に考えたら
まずわからんイジワル問題でした。ごめんちゃい。元々安価でK出てるし、話進めちゃいます

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


【ロープの場所】 ドンッ! ====⇒ 【反論出来ない】BREAK!!


桑田「それはちげえよ! セレスは確かにアリバイもねえし凶器に使えそうな物も持ってる。
    でも犯人じゃねえ。セレスが犯人ならどうしても出来ねえことが一つだけあんだよ」

ジェノ「出来ないこと~?」

桑田「このリボンは真犯人が本物の凶器を隠すためのダミーとして用意したもんだ。ロープの場所が
    わからなかったから、倉庫の入り口にあったエプロンのリボンを切って代用したんだろうよ」

朝日奈「それがどうかしたの?」

大和田「そうか! ハサミとかの文房具類はわかりづれえ場所にあるからな!」

セレス「その通りですわ。わたくしにはそのリボンを切り取ることは出来ません!」

山田「ええっ?! と、いうことは……セレス殿は犯人ではない?!」

セレス「最初からそう言ってるだろうが、この腐れブタ野郎があああああっ!」

桑田「そんで、逆に考えるとそこから一人怪しいヤツが出てくるんだよ」


怪しい奴を指名しろ!

安価下2

912: 2014/06/19(木) 22:49:47.91 ID:s6eR3qgy0
場所知ってるメンバーでアリバイがない大神さくらちゃん

918: 2014/06/19(木) 22:58:14.55 ID:jeXaORoS0

桑田(ハサミの場所を知っているのはこの中で五人。そのうちアリバイがないのは三人で、俺は違う)

桑田(石丸は犯人じゃねえ。……そうなると、大神は怪しい。だけど、サラシには
    血がついてなかった。そもそも大神はロープの場所を知ってるんだ。
    石丸だってロープの場所は知ってんだし、普通にロープを使えばいい)

桑田(そうなると、アリバイがなくてリボンを切り取れるのは一人しかいねえ……)


>>915
糸切りバサミじゃリボンをすっぱりとは切れません


もうわかるんじゃないかな?

怪しい奴を指名しろ!安価直下

919: 2014/06/19(木) 23:03:10.51 ID:s6eR3qgy0
ジェノサイダー=自前ハサミ持ちの腐川

921: 2014/06/19(木) 23:05:48.64 ID:jeXaORoS0

桑田「なあ、お前さ……そのハサミいつも持ち歩いてんの?」

ジェノ「当たり前! 大事な大事な仕事道具は片時も離さずいつも一緒よん!」

桑田「つーことはさ――お前が犯人だろ」

ジェノ「ハ? だから殺人鬼だからって決めつけんなって……!」

桑田「決めつけじゃねえよ。そのハサミが証拠だ。リボンを切り取るのは
    いつもハサミを持ち歩いてるヤツじゃなきゃ出来ねえ」

ジェノ「そんなの、倉庫にあるハサミで切りゃいいだろうがよ!」

舞園「それはありません。文房具類とロープは非常に近くにあるんです。ハサミの
    場所を知っていたら、そもそもリボンなどではなくロープを用いるはずです」

苗木「ロープやハサミの場所を知ってるのは、この中では石丸君、大和田君、桑田君、
    朝日奈さん、大神さんの五人だけ。その中でアリバイがないのは石丸君と桑田君、
    大神さんだけど、大神さんのサラシには不二咲君の血液は付着してなかったしね」

ジェノ「ふーん、でもさあ……そもそも凶器はどこ行っちゃったワケ? まずそっからだろうよ!」

K「凶器の在りかはさっきお前が自分で喋ったじゃないか」

ジェノ「へ?」

霧切「何故真犯人はリボンを用意したのか……それは本当の凶器を現場に置いていくことが
    出来なかったからではないかしら? かと言って、凶器がなければ石丸君を犯人に
    仕立てあげることは出来ない。だから急いで偽の凶器を用意する必要があった」

ジェノ「焦らすわねぇ……で、なにが真の凶器だっつーの?」

苗木「先生……大和田君や大神さんならサラシを巻いてるけど、腐川さんには何も……」

舞園「制服のリボンは取り外しの出来ないものですし……」

桑田「一体なにで絞めたっつーんだ?」


924: 2014/06/19(木) 23:10:49.86 ID:jeXaORoS0

K「腐川が身につけている長いロープ状の物体で絶対体から切り離せないもの――つまり、髪だ」

江ノ島「ハアア?! 髪なんかで頃したっていうの?!」

山田「キタコレ!! 僕の推理が当たってましたよ! やはり僕には名探偵の才能が……」

セレス「お黙りなさいこのブタ! 何が名探偵ですか、わたくしを犯人呼ばわりしたくせに!」

大和田「腐川……オメエが不二咲を殺そうとした犯人なのか……?」


しかし、犯人呼ばわりをされているにも関わらず、ジェノサイダーは不敵な笑みを崩さなかった。


ジェノ「……甘えよテメエら。じゃあ、こう考えてみたらどうよ。現場にはきよたんが倒れてたでしょ?」

石丸「き、きよたん?!」

ジェノ「倉庫のハサミの場所を知ってるきよたんが、いつもハサミを持ち歩いてるアタシに
     罪を被せようとリボンを用意して襲われた振りをした。これでどうよ!」

大和田「ふざけんな! 十神以外はお前がジェノサイダーなんて知らなかったんだぞ!」

ジェノ「でもなんかの時にアタシがハサミを持ち歩いてることを知ったかもしれないじゃない?」

十神「確かに、石丸は一度倒れた腐川を運んだことがある。その時に気付いてもおかしくないな」

石丸「なっ?! ……そうだ。腐川君を運んだ時、スカートから妙な金属音が聞こえたのは
    覚えている。だが、この僕が気になったからと言って女子のスカートをめくるとでも?!」

苗木「うん、ないよね……」

セレス「桑田君じゃあるまいし、それはないでしょう」

桑田「さりげに俺バカにされてない?!」

ジェノ「しかもさぁ……ちょうど都合良くきよたんの頭に巻いてあるじゃなーい?
     首絞めるのにピーッタリなリボン状の物がさ」

石丸「ほ、包帯……」

葉隠「やっぱり、石丸っちが犯人か!」

山田「ぬあんとぉぉ! 散々違うと否定されてからのまさかの大どんでん返しですかなっ?!」

石丸「ち、ちが……」

朝日奈「え、でも石丸は左利きだからってさっき……」


場が再び荒れだす中、議長としてなるべく口を挟まないように見ていたKAZUYAが初めて前に出た。


925: 2014/06/19(木) 23:14:03.72 ID:jeXaORoS0

K「それは違うぞ!」

ジェノ「ハァ? なにを根拠に言うワケ? 流れとしては完璧でしょ!」

K「流れとしてはな。だが……石丸にはそれが実行出来ない」


KAZUYAはゆっくりと一同を見渡して、問い掛けた。


K「お前達……石丸が、自分で包帯を巻けると思うか?」

「あ」  「あ!」  「そうか!」  「ムリだべ」

ジェノ「は?」

K「お前は授業に出てないから知らないのだろうが、石丸は超高校級と呼んでもいい程の不器用だ。
  練習して手足くらいなら何とか巻けるようにはなったが、自分の頭を綺麗に巻ける訳がない」

ジェノ「じゃあ、首の包帯でもいいけどさ。首なら流石の不器用でも巻けるっしょ?」

K「見ての通り、石丸は動いたせいで傷が開いて包帯に血が付着している。
  それを全くズレないように綺麗に巻き直すのはこの男には無理だ」

ジェノ「ああ、そ…………でもアタシが犯人だっていう証拠はないもんね!!
     たまたまハサミの場所を知ってた他のヤツだって犯行は可能でしょ?!」

朝日奈「それにさ……腐川ちゃんの長いおさげなら、確かに首だって絞められそうだけど……
     腐川ちゃんに出来るかなぁ? 腐川ちゃんって華奢だし、運動とか苦手そうだし」

K「出来るさ。“超高校級の殺人鬼”ジェノサイダー翔ならな」

ジェノ「お? なに? 根暗の方じゃなくてアタシ限定?! 言っとくけどアタシはこの事件が
     起こった時から今までずっと根暗の方の人格だったから。やったとしたら根暗でしょ!」

K「いいや。大体俺は最初から素人のやり口ではないと疑っていたのだ。
  そしてお前の正体が明らかになった時確信した。――お前が真犯人だとな」

ジェノ「聞かせてもらおうじゃなーい? 根暗じゃなくてアタシが真犯人だっていう根拠をさ!
     言っとくけどアタシは男しか殺さないし、頃しにはハサミを使うってマイルールがあるから!」

K「いつもならそうだろう。だが状況が違えば頃しの手法が変わるのは当然だ」


926: 2014/06/19(木) 23:19:26.14 ID:jeXaORoS0

K「まず、俺が最初に妙に思ったのは不二咲の鬱血痕だ。俺は職業柄、縊氏氏体や絞殺氏体を何度か
  見ているがそのどれもが黒々と跡が残っている。それに対し、不二咲の鬱血痕は非常に薄かった」

K「何故だと思う?」

苗木「絞める力が弱かった、とか?」

K「いや、この場合重要なのは時間だな。真犯人は頃しに慣れていた。だから不二咲の
  心肺がショックで停止したのを見抜き、無駄に絞めることなくすぐに手を外したのだ」

ジェノ「ほうほう、それでそれで? まさかそれだけってことはないわよねん?」

K「もう一つ気になったのは石丸の後頭部の傷だ。綺麗に一撃が入っていた」

セレス「もしやそれが根拠ではありませんでしょうね?」

K「お前達テレビやゲームに慣れた世代には実感がないかもしれんが、人を気絶させるというのは
  頃すのよりよっぽど難しい。頃すのはただ力任せに殴ればいいが、気絶はそうはいかん」

K「あんな重くて硬い物で普通に殴れば人は氏ぬ。かと言って手加減が過ぎれば一撃では
  倒せず何度も殴る羽目になる。その点、石丸の傷は綺麗に一撃で決まっていた」

ジェノ「ハア、そんだけ?! で、肝心の証拠は?!」


しかし気にせずにKAZUYAは続ける。


K「通り魔的に不二咲だけ襲って立ち去っていれば解決の仕様がなかったものを、罪を
  被せようと石丸を襲ってしまったのがお前の運の尽きだったな。ジェノサイダー翔よ」

ジェノ「だから証拠証拠証拠ぉ! 証拠出せっつってんだよぉ!」

K「今の言葉でわからなかったか?」

ジェノ「……は?」

K「その前に、念のため確認しておこう。お前、腐川と記憶を共有していないな?」

苗木「え? そうなの?!」

舞園「そう言えば、不二咲君が本当は男性であることを知りませんでしたね」

大神「石丸の左利きの件も知らないようだったな」


927: 2014/06/19(木) 23:24:21.65 ID:jeXaORoS0

ジェノ「ピンポーン。正解。アタシとあの根暗は記憶を共有していませーん。でもそれがなにか?」

K「お前、腐川から教わったか誰かに聞いたか知らんが、学級裁判については予め知っていたのだろう。
  だから即座に今が学級裁判中であること、不二咲頃しの犯人に自分が疑われていることに気付いた」

ジェノ「そんなことより証拠見せろってのぉ!!」

K「お前、何故現場に石丸がいてしかも倒れていたことを知っていたんだ?
  先程入れ替わるまで捜査中も裁判中もずっと腐川の人格だったのだろう?」

ジェノ「?! ……あ、ゴメーン。捜査中に一回入れ替わってたの忘れてたわ!
     たまたま誰かが話してるのが耳に入ってさぁ……誰だったかは覚えてないけど」

「……!!」

ジェノ「……………………あら、ら?」


流石のジェノサイダーも、周囲の雰囲気が一変したことに気が付き表情を変えた。


霧切「どうやら墓穴を掘ったようね、ジェノサイダーさん?」

十神「間抜けが」


あまりに呆気ない幕引きに、心底不満だと言う表情で十神はジェノサイダーを蔑む。


十神「石丸が気絶していたと明らかになったのは裁判中だ。何故貴様はその事実を知っている?」

ジェノ「あ、やっべ……」

苗木「もしあれが君の演技だったって言うなら、今日の裁判の流れを最初から言ってくれないかな」

ジェノ「…………」


もはや反論はなかった。


929: 2014/06/19(木) 23:30:28.53 ID:jeXaORoS0

K「さて、では最後に――この事件の概要を整理して終りにするとしよう」



               ― クライマックス推理 ―


桑田「まず俺が部屋までバットを取りに行って、その帰りに葉隠とちょっと話し込んじまった」

舞園「その間に何らかの用事で不二咲君は石丸君の部屋を出て、腐川さんと出会ったんです」

苗木「でも、その腐川さんは実はジェノサイダー翔だったんだ! そしてジェノサイダーの
    思惑に気付かなかった不二咲君は1-A教室に連れて行かれ、髪で首を締められた」

石丸「その頃だろうか……僕は目を覚まし、部屋に誰もいなかったことで不安を覚え、
    朦朧とした意識の中、不二咲君を探しに一人部屋を出てフラフラと歩いていた」

大和田「そこで運悪くジェノサイダーに会っちまったんだな……。で、ジェノサイダーは兄弟を
     犯人に仕立てようと考えて、廊下にあった消火器で兄弟を殴って気絶させたワケだ」

霧切「これは私の推測だけど、この時何らかの拍子で腐川さんに人格が戻ってしまったのでは
    ないかしら? あなたは石丸君の包帯を見てそれを凶器と主張しようと考えたみたいだけど、
    腐川さんは授業で石丸君の不器用ぶりを知っていたから、それは無理だとわかっていた」

K「凶器がなければ石丸を犯人に仕立てられない。故に、腐川は倉庫に凶器となるものを探しに
  行った。だが、ロープは分かりにくい場所にありすぐには見つからず、焦った腐川は入口に
  あったエプロンのリボンをハサミで切り取って、それを凶器の代用とすることにした」

桑田「……でも、偽の凶器を持って腐川が急いで戻った時には、犯行を知ってた十神の野郎が
    延長コードで事件を偽装した後だったワケだ。腐川のヤツ、マジで焦っただろうな」

苗木「それで、仕方ないから腐川さんは倉庫に戻ってリボンを隠したんだ。でも、何の用事もないのに
    図書室を離れたら不自然だから、十神くんに紅茶を持っていくという建前で食堂に寄った」

K「そして、放送が鳴ってから何食わぬ顔で合流したのだろう」


K「――これが事件の真相だ!」


ジェノ「お見事な推理で……」

K「そもそもこの裁判自体時間稼ぎというか、無意味なものだがな。お前は裁判の途中から
  参加したから知らんのだろうが、実は不二咲は蘇生して生きている。そろそろ目覚める頃だ」

ジェノ「…………ハ? エッ?!」


931: 2014/06/19(木) 23:34:24.41 ID:jeXaORoS0

桑田「あれ、でも不二咲は昏睡状態でいつ目を覚ますかわからないって……」

K「あれは嘘だ。不二咲が目を覚ますとわかれば犯人が狙ってくる可能性があったし、何より
  犯罪に手慣れている犯人だ。ヤケを起こして他の生徒に襲い掛からないか心配だった」


そしてKAZUYAはしたり顔で言い放つ。


K「敵を騙すなら味方から、だ」シレッ

桑田「ちょ、マジかよー!」

苗木「良かった……」

大和田「助かるのか……不二咲は助かるんだな?!」

石丸「不二咲君……」


KAZUYAは頷き、ジェノサイダーに向き直った。


K「……で、どうする? なんなら俺が不二咲の所に行って直接犯人の名前を聞いてきてもいいが?」

ジェノ「ア、アハハ……まさかこのアタシが頃しをしくじるとはね……
     やっぱり慣れない殺り方なんてするもんじゃないわ……」

ジェノ「ハイ、ピンポンピンポ~ン! 正解です! アタシがちーたんを殺っちゃいました!」

山田「ひぃっ!」

桑田「うおおおっ」


ジェノサイダーの側から人が離れ、恐怖と緊張混じりの視線で遠巻きに眺める。
十神だけは全く気にせず、ただひたすらつまらなそうにしていた。


十神「フン。殺人鬼のお喋りに救われたな、ドクターK?」

K「いや、仮にそいつが口を滑らせなくても決め手はあった」

江ノ島「え? でも物的証拠がなにもないじゃん」


932: 2014/06/19(木) 23:43:29.04 ID:jeXaORoS0

K「今回の事件で最も問題だったのは凶器が行方不明だったことだ。そのせいで議論が無駄に
  煩雑化したと言っても過言ではない。だが逆に凶器さえわかればさほど難しくはなかった」


要はお前のせいで議論が紛糾したのだ、とKAZUYAは暗に言って十神を睨んだ。


K「凶器が見つからなければ捕まらないという発想は悪くなかったが、凶器を持ち歩くのは
  両刃の刃だったな。凶器がわかればその瞬間に自分が犯人だと確定してしまう」

苗木「でも、白い布なら不二咲君の血でわかるけど髪の毛じゃあわからないんじゃ……」

霧切「カルテをよく読み直してご覧なさい」

桑田「えーと? ……わかんねえ」

K「不二咲の右手の爪には視認出来る程はっきりと皮膚の細胞がついていた。
  凶器が編み込んだ髪なら……当然内部にも入り込んでいるだろうな」

「!!」

K「物理準備室に顕微鏡が置いてあった。俺ならどんなに小さい細胞片でも見つけ出せる自信がある」

ジェノ「ちぇー、他のメンバーだけならアタシの勝ちだったのにねぇ。
     センセを敵に回した時点でアタシの負けだったってことかー」

ジェノ「……でもさぁ、一個だけ不思議なんだよねー。アタシ結構しっかり締めてたはずなのに
     なんで助かっちゃったワケ? センセがスーパードクターだからってだけじゃないっしょ?」

K「種明かしをしよう。そもそも、首を締めて頃すのはお前達が思っているよりずっと時間がかかる。
  これについては首を締めて殺害するには二通りの方法があることからまず説明せねばなるまい」

霧切「縊氏(いし)と絞殺ね。縊氏は首吊り、絞殺は普通に首を絞めて頃すこと」

K「そうだ。手っ取り早く頃すには脳に酸素を送る椎骨動脈(ついこつどうみゃく)を圧迫すればいい。
  脳に酸素が届かなければ人は簡単に生体活動を停止する。しかし、ここから先は解剖学の話になるが、
  椎骨動脈は椎骨の中を通っているため通常の圧迫では閉塞することが出来ないのだ」


椎骨動脈:頚部(けいぶ:首)にある脳に酸素や栄養を運ぶ動脈の一つ。脳の中でも
      主に生命維持を担っている部分に直結しているため、非常に重要な血管である。

椎骨(ついこつ):頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個、仙椎5個、尾椎4個の計五種類33個からなる、
            人の胴体の中心部を支える骨群のことである。

頚骨(けいこつ):首の椎骨。上から見ると中央に一つ、両脇に一つづつの計三つの孔(あな)が
           開いており、中央に脊髄、両脇の孔には椎骨動脈が通っている。


934: 2014/06/19(木) 23:50:44.46 ID:jeXaORoS0

K「縊氏では動脈が頭蓋骨に入る無防備な部分を圧迫し閉塞するため、一瞬で意識が落ち脳の
  活動停止により短時間で殺せるが、絞殺では気道を圧迫する通常の窒息氏となり、心臓が
  動いている以上脳に血が回るため、体内の酸素がなくなる数分間締め続けなければならない」

K「お前達はドリンカーとカーラーの救命曲線というものを知っているか?」


ドリンカーの救命曲線:呼吸停止してから何分以内に蘇生処置を施せば助かるかのグラフ。
              四分を超えると急速に生存率が下がることで知られる。

カーラーの救命曲線:心臓停止、呼吸停止、大量出血の経過時間と氏亡率の目安をグラフ化したもの。
             わかりやすいので救命講習などで目にすることが多い。 


石丸「ドリンカーの救命曲線では、呼吸停止してから三分以内に蘇生処置を施せば生存率は75%。
    四分で50%となる。カーラーの救命曲線では呼吸停止以外も扱い、心停止後三分、
    呼吸停止後十分、多量出血後三十分で生存率は50%となります」

K「その通り。よく勉強出来てるな。そこから導き出せる解は一つ」

K「――本来なら不二咲は助かるはずがなかったということだ」


気絶させた石丸を運んだり偽の凶器の準備をしていた時間を考えると、犯行時刻は一時二十分頃か
その少し前となる。KAZUYA達が発見し救命処置を施した時には、既に手遅れのはずだ。


大和田「じゃ、じゃあなんで助かったんだよ?!」

K「あくまで俺の推測だが、ジェノサイダー翔が不二咲を氏んだと判断した時……正確には
  不二咲はまだ氏んでおらず、一時的に呼吸と心拍が止まっただけの仮氏状態だったのだ」

K「首を絞められてはいたが、心拍が止まる直前まで脳に血液が循環されていたため、
  脳に対するダメージが最小で済んだ。だから、縄を解かれ放置された直後……
  一時的にだが、不二咲は微弱な呼吸や心拍を取り戻していたのだろう」

大神「なんと! その時点ではまだ生きていたというのか!」

ジェノ「うっそーん! マジでー?!」

K「最も、負荷が大きすぎて完全な自発呼吸を取り戻すには至らず、また止まってしまった訳だが」

石丸「成程……直前まで生きていたから、犯行から時間が経っていたのに関わらず蘇生出来たのですね」

K「頃しに慣れていた奴だったからこそ、必要以上に締めることがなく助かった。逆に言えば、
  素人だったら無駄に長時間首を絞め続けて脳が完全に壊氏し、助からなかったことだろう……」


皮肉なことにな、と最後に付け足す。場が静まり返った。


935: 2014/06/19(木) 23:54:29.27 ID:jeXaORoS0

ちなみに、当初KAZUYAは同じ理由で江ノ島と大神を疑っていた。


K(だが、江ノ島と大神では一つだけ不可解な点があった。それは、石丸の手首や肩の痛みだ)


石丸の体には手首を掴んで乱暴に引きずった痕跡が見受けられた。


K(女性にしては大柄でガッチリした体型且つ工作員の江ノ島が、自分より大きい人間を運ぶ
  訓練を積んでいない筈がない。石丸程度なら軽々と運べるはずだ。大神は言わずもがな)


また、この時点で石丸より大きい十神と葉隠も犯人ではなくなる。十神なら、石丸のことが
嫌いだから引きずって運ぶのでは……とも考えたが、如何に嫌いな相手だろうと引きずるよりは
背負って運んだ方が効率がいいはずだ。十神はあんな性格だが感情に流される男ではない。


K(犯人は女で、江ノ島と大神ではない。そうなるともはや安広か腐川の二択だ)


怪しいのはセレスだと思った。内通者疑惑が濃厚であり、前々から不審な点も多かった。


K(……ただ、俺はもう一つどうしてもおかしな点に気付いてしまった)


KAZUYAは以前授業で負傷して動けない人間の救護を教えた。その時に、人間の運び方も教えたのだ。
両脇の下から両腕を差し入れて運ぶ方法……何故石丸を運ぶ時にこれを使わなかった?

この運び方を使った方が絶対効率的だし、もし手首を乱暴に引っ張って脱臼でもさせれば、
それが根拠となって冤罪が証明されてしまう可能性だってあったのに。


K(安広は頭が回る。こんな簡単なことに気が付かないとは思えなかった。かと言って、
  同じ理由で腐川でもない。この場に俺の授業を受けていない人間などいない……)


だから、『16人目』の存在が明るみになった時にKAZUYAは確信した。コイツが真犯人だと――


966: 2014/06/21(土) 22:34:10.10 ID:YhjJL4ED0

K「動機は……聞かずともわかるか。あの秘密だな」

セレス「当然ですわ。まさか人気作家の正体が連続殺人犯だなんて……事実は小説より奇なりですわね」

ジェノ「は、秘密? なんのこと?」

苗木「え……腐川さ、いや君が不二咲君を襲った理由だよ。秘密をバラされたくないからじゃないの?」

ジェノ「え、知らんけど。つか、違うし」

大和田「はああ?! じゃあ一体なんで不二咲を襲ったんだ! お前男しか殺さないんだろ?」

ジェノ「まあ、強いて言えば……これがゲームだから?」

石丸「何だと?!」

舞園「そんな……」

K「…………」


あまりにも軽すぎるジェノサイダーの口ぶりに、生徒達は言葉を失った。


ジェノ「まずさあ、あの根暗。根暗に相応しく日記とか書いてて、それで今がどんな状況かは
     アタシもまあまあわかってたのよねぇ。ただ、三日前からその日記がおかしかったのよ」

K「どのようにだ?」

ジェノ「なんか、どうしよう……とかこれで終わりだ、とか。根暗らしくウジウジ悩んでたってワケ。
     どうせなら詳しく書けばいいのにさ! まあ、動機がどうのって書いてあったから
     またなんかあったんだなー程度に思ってたのよ」

ジェノ「で事件の前、図書室でいつもみたいに白夜様と戯れてたらこーんなこと言われたのよね」

十神『うるさいぞ! 本に集中出来ん』

ジェノ『またまたぁ。そんなこと言って白夜様ったらツンデレなんだからん』

十神『……フン、まあいい。どうせ貴様がのうのうとしていられるのも今日までだからな』

ジェノ『ん? どゆこと?』


967: 2014/06/21(土) 22:41:51.96 ID:YhjJL4ED0

十神『腐川に聞いていないのか? 今日中に事件が起こらなければ腐川の身は間違いなく破滅。
    一心同体の貴様も一緒に破滅という訳だ。実に愉快だな。わかったら大人しくしていろ』

ジェノ『……ふーん』

十神『全く、早く誰か事件を起こさないものか。こっちは退屈で仕方がないというのに』

ジェノ『…………』

ジェノ「というワケで、ほっておくとなんかアタシピンチらしいし白夜様は退屈がってるし、
     じゃあここいらでアタシが一肌脱ぎますかーって思ってターゲットを探してたら
     たまたま一人でブラついてるちーたん発見! こりゃ殺るしかない!ってなったワケよ」

石丸「そ、そんな軽い理由で……そんな理由で不二咲君を殺そうとしたのか?!」

K「落ち着け、石丸!」


いまだ精神が乱れている石丸を心配してKAZUYAは駆け寄り羽交い締めにする。


石丸「不二咲君は……いや、人の命は! とても重い、尊いものなんだ!
    そんな勝手な理由で奪って良いものではないのだぞ!!」

ジェノ「はいはい。まーたお説教ね。でもさぁ、きよたん……聞いた話なんだけど、もんちゃんだって
     あんなに仲良かったちーたん殺そうとしたんでしょ? あんたの顔の傷もそれが原因だとか」

石丸「う……そ、それは……」

ジェノ「殺人鬼に命の尊さ説くとか無駄なことしてるヒマがあんなら、そもそも
     こんなこと仕組んだそこのぬいぐるみなんとかすべきなんじゃあないの?」

石丸「それとこれとは別問題だろうッ!」

K「落ち着け! 確かにジェノサイダーの言葉にも一理ある」

ジェノ「さっすがセンセは理解が早くて助かるぅ。あ、そうそう。面白いこと教えて
     あげよっか。実はねぇ、最初はアタシあんたのことも殺そうと思ったのよ?」

石丸「なっ?!」

大和田「なんだとテメエ! どういうことだっ?!」


968: 2014/06/21(土) 22:47:03.69 ID:YhjJL4ED0

ジェノ「いやぁ、最初はね? ちーたん頃して逃走して、凶器も見つからないだろうし事件は
     迷宮入りヒャッハー!って思ってたのよ。ところが、なんか焦点の合わない目でふらふら
     歩いてるきよたんと遭遇しちゃったワケ。でさぁ、意外よね。意外も意外!」

ジェノ「いつもウザいくらい熱苦しいきよたんがなんか憂い顔して弱々~しくふらふら歩いてる姿見て、
     アタシちょっと萌えちゃったのよ! もーうビックリ! これがギャップ萌えってヤツ?!」

「…………」


これには予想外過ぎて流石のKAZUYAも茫然とした。そんな理由で危うく殺される所だったとは……


ジェノ「なんかこっちのこと見えてないというか全然気付いてないっぽいし、後ろに
     回り込んで胸元にこうハサミを突き立ててやりたい衝動に駆られたんだけど……」


実際にハサミを持ってその動きを再現すると、周囲の人間は声も発せず息を呑む。


ジェノ「その時、きよたんの頭の包帯が目に入って名案が受かんじゃったのよ! そうだ!
     きよたんを犯人に仕立てればいいじゃなーいって。凶器になるもの持ってるし」

ジェノ「で! 頃したい願望必氏に抑えて抑えて近くにあった消火器掴んでそぉい!って。あとは
     センセ達の推測通り、きよたん運んだ所でうっかりくしゃみして根暗と交代ってワケ」

K「くしゃみ?」

十神「……不気味なことにな、腐川はくしゃみをすると人格が入れ替わるんだよ」

K「そうか……」

山田「と、言いますか……そんな理由で頃すならここにいる男子全員殺害対象になるのでは?!」

ジェノ「イエース! あ、でもヒフミンは対象外だから安心して。でも他のヤツらは
     結構いい感じ。普段威勢のいい男が怖がって怯える顔ってなんか萌えるわぁ……!」

ジェノ「こう……グッと来る!」ギラッ!


長い舌をチラチラさせながら、なめ回すように順に顔を見ていくその姿に一同は戦慄する。


969: 2014/06/21(土) 22:54:58.61 ID:YhjJL4ED0

葉隠「キ、キチOイだべ……」

桑田「ヒッ!」

K「怯えるな! 俺にはその萌え、るだか萌えないとかいう言葉の意味はよくわからんが、
  要はいつもは対象外なのだろう? なら普段通りにしていれば問題ない」

桑田「んなこと言ってもよぉ……相手はマジモンの殺人鬼だぜ……?」

苗木「桑田君、しっかり!」

ジェノ「え?! なになに?! まーくんがレオちゃん庇った? まさかのまーくん攻め?!
     まーくん×レオちゃんとか予想外過ぎて……いい! 案外イケる! 萌えるわぁ!」

桑田「は、はぁ?」

朝日奈「え、なに? どういうこと? 誰か説明して!」

セレス「山田君! こういうのはあなたの得意分野でしょう? 対処法を教えなさいな」

山田「えっとですねぇ、BLは僕の専門ではないのですが……ただジェノサイダー翔殿は生粋の
    腐女子だそうで。腐女子を甘く見てはいけません! 彼等は親の仇である因縁同士の
    宿敵すら勝手にカップリングして萌える生き物。その究極が鉛筆と消しゴムですが」

霧切「……もっとわかりやすく説明してくれないかしら」

山田「つまり外見がアウトでない限り、シチュエーションによってはどんなキャラでも
    萌えることが可能! 対処法は――彼等の視界に入らないこと、です」

「…………」


全員がなんとも言えない表情で同時に俯いた。


ジェノ「ああ、いい! いいわぁ! 男の情けない顔って大好物なのよね! 濡れてきちゃうっ!」

K「いい加減にしろ、ジェノサイダー! お前が他の生徒に危害を加えるなら俺が容赦しないぞ!」

大神「如何に頃しに慣れている手練れだろうと、西城殿と我二人を同時に相手は出来まい!」

ジェノ「チィ! せっかく最高にハイって気分になってたのによぉ!」


970: 2014/06/21(土) 23:03:05.82 ID:YhjJL4ED0

霧切「それより一つ聞かせて欲しいのだけれど」

ジェノ「なぁにぃ? まあ今は機嫌がいいから、なんでも答えてあげるわよん」

霧切「学級裁判について知っているということは、当然オシオキについても知っているのよね?
    なのに何故殺そうと思ったの? それもいつもと違うやり方までして」

ジェノ「ゲラゲラゲラ、そんなことぉ? 決まってるじゃない!」


ジャキィィィン!


ジェノ「アタシにとって殺人はこだわるべき芸術でもあるけど、それ以上に趣味なの! 楽しいから
     殺るワケ! 白夜様が退屈しててアタシもピンチ! ならどちらが勝つかゲームしようってね!」

石丸「し、しかし……それでは君か十神君のどちらかは必ず氏んでしまうではないか!」

ジェノ「生きるとか氏ぬとか殺人鬼にとっちゃどうでもいいんだよぉッ! 白夜様の退屈しのぎに
     なって氏ぬのもヨシ! 白夜様がここで負けるような雑魚なら外行って別の男探すだけ!」

大和田「イカれてやがる……」

一同「…………」

十神「もういいだろう。こいつの耳障りな言葉は聞き飽きた。さっさと投票にしろ」

モノクマ「やーっと僕の出番が来たよ! ジェノサイダーさんの腐ったエグイ下ネタで尺が
      潰れたらどうしようかと思った。まあそれも楽しいからいいけど。あ、僕は鬼畜攻めね」

江ノ島「あんたの性癖なんてどうでもいいから!」

モノクマ「では、議論の結論も出たようですし、いよいよ投票タイムと行きましょうか!
      オマエラ、お手元のスイッチで投票してください」


言われて席についていた液晶パネルを見ると、そこには16人分の名前が映し出されていた。


971: 2014/06/21(土) 23:08:48.22 ID:YhjJL4ED0

K(腐川とジェノサイダーは二人分か。もし、腐川が多重人格者だと明らかになっていなかったら……)


恐ろしい想像が浮かぶが、考えないようにした。今はただやるべきことだけやっていればいい。


モノクマ「あ、念の為に言っておくけど必ず誰かに投票するようにしてくださいね!
      こんなつまらないことで、罰を受けたくないでしょ?」

苗木「わかってるさ……」


生徒達は言われるままタッチパネルのボタンを押していく。


モノクマ「……はいっ! では張り切って参りますよ!」

モノクマ「投票の結果、クロとなるのは誰か?! その答えは、正解なのか不正解なのか――?!」

モノクマ「さあ、どうなんでしょーーー?!」


裁判場の壁にかかっている大型パネルと席のパネル、両方にスロットマシーンの映像が
映し出された。スロットの絵柄はKAZUYAや生徒達の顔写真だ。そして、徐々に絵柄が揃う。




                VOTE


  【ジェノサイダー翔】【ジェノサイダー翔】【ジェノサイダー翔】


                 GUILTY


見事絵柄は三枚揃い、ファンファーレの音と共に画面の中でメダルがジャラジャラと溢れた。


972: 2014/06/21(土) 23:19:51.97 ID:YhjJL4ED0

モノクマ「大正解ッ! 今回、不二咲千尋君を襲ったクロは――ジェノサイダー翔さんでした!」

モノクマ「……まあ、正直意外性はないよね。ただ殺人鬼が殺人しようとしただけだし。
      ボクとしてはもっとこう、私利私欲や秘密のために仲間を裏切って……とか
      そういう絶望的にドラマティックなのを期待してたんだけど」

モノクマ「まあ、緊張感を煽るって意味ではなかなか良かったかな? 他にも、内通者とか色々
      ワケありメンバーはたくさんいる訳だし、油断したらいつ誰に殺されるかわからないね!」

K「…………チッ」


わかりやすいモノクマの煽りに生徒達は不安げな顔をする。KAZUYAは珍しく不快な顔で舌打ちをした。


モノクマ「……てな訳で、学級裁判の結果、オマエラは見事クロを突き止めましたので
      クロであるジェノサイダー翔さんのオシオキを行いまーす」

モノクマ「うぷぷ。それじゃ、さっさとオシオキを始めちゃおーか。みんな、待ってるんだしさ!」

ジェノ「あ、これアタシ処刑される感じ?」

K「モノクマ、俺との約束は覚えているだろうな!」

モノクマ「わかってるよ。ちゃんとぎりぎり氏なないレベルに調整するの大変だったんだからね!」


「今回は――」

「超高校級の殺人鬼であるジェノサイダー翔さんのために」

「スペシャルな」

「オシオキを」

「用意させて頂きました!」

「では張り切っていきましょう! オシオキターイム!」


いつの間にか持っていたハンマーで、モノクマはオシオキスイッチを押す。

スイッチの下の部分についていた液晶画面と、裁判席のパネルに一昔前のゲームのような
ドット絵が映り、モノクマを模したドットキャラがジェノサイダー翔のキャラを引きずっていく。


974: 2014/06/21(土) 23:34:34.76 ID:YhjJL4ED0

               GAMEOVER

       ジェノサイダーショウさんがクロにきまりました。
              おしおきをかいしします。


ジェノ「ハッ! 言っておくけど、腐ってもアタシは殺人鬼! ただでやられるワケ……」


ハサミを構えるジェノサイダーに、どこからか飛んできた首輪が繋がれ奥へ奥へと引きずって行く。
そのまま妙なデザインの椅子に張り付けられ、全身を拘束された。





        ― 初めてのチュウ ~ジェノサイダー翔ver.~ ―


椅子に拘束されたジェノサイダーの前に十神が現れる。ジェノサイダーは大喜びだが、
振り返った十神の顔はモノクマだった。そう、マネキンだったのだ。

ガッカリする間もなく、ジェノサイダーの頭に大きなハートが上に載った
ヘルメット状の物が落ちてきた。たくさんコードが繋がれている。


―好きな人と初めてキスをする時って、とってもドキドキして全身に電流が流れるみたいだよね!


背中に羽を生やしキューピッドの格好をしたモノクマがやたら大きなレバーを引くと、
ジェノサイダーの全身に高圧電流が流れ始めた。モノクマは楽しげにダンスを踊りながら、
先端がハートの形になっている矢を何本も十神のマネキンに打ち込んで行く。

―やったね! これで両思いになれるよ。……手遅れかもしれないけどね!


977: 2014/06/21(土) 23:43:00.17 ID:YhjJL4ED0

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


辺りにジェノサイダーの絶叫が響き渡る。KAZUYAと生徒達は
その地獄絵図のような光景をフェンス越しに眺めさせられていた。


K「おい! もうやめろ! これ以上やったら氏ぬぞ! 約束が違う!!」

モノクマ「はいはい。わかりましたよ~」


嫌そうな顔をしながらもモノクマはレバーを戻した。まだパチパチと放電している。
フェンスが開かれ、すぐさまKAZUYA達がジェノサイダーに駆け寄った。


K(殺人犯に電気椅子か……くだらん。笑えないジョークだ!)

K「腐川! 腐川! しっかりしろ!!」

ジェノ「だから……アタシの名前は、ジェノサイダー翔だっての……」

K「大丈夫か?!」


ジェノサイダーの体からなんだか焦げくさい臭いがする。制服が一部焼けていた。


ジェノ「まあ……なんとかね……今後、殺人鬼としての身の振り方を
     考え直す程度にゃ堪えたわ……いや、やめないけど、さ……?」

K「減らず口を叩ける程度なら問題ないな。傷口を見せてくれ」

ジェノ「無駄だね。低温でジックリ焼かれたからさぁ……中が焦げてんのよ。
     中は流石のセンセでも……どうしよう、もないっしょ?」

K「……そうだな。だが、恐らく部分的に火傷をしているはずだ。後で軟膏を渡そう」

ジェノ「アイツに渡しといてよ……アタシちょっと疲れちゃったからさ……
     このまま休むわ……じゃあ、おやすみ……」


そう言うとジェノサイダーは目を閉じた。


モノクマ「エクストリーム! アドレナリンが染み渡るー!」

モノクマ「これだよ、これ! 僕が待っていたのはさ!
      疑惑に裏切り、殺人、オシオキ! 最高に興奮するでしょ?」

葉隠「ひ、ひぃぃぃ!」

舞園「……酷いですね」


生徒達はモノクマから離れてKAZUYAの後ろに回る。


978: 2014/06/21(土) 23:51:31.26 ID:YhjJL4ED0

桑田「ま、まさか俺がクロになってたら……俺もあんな風に……?」

モノクマ「君のオシオキはもっと凝ってるよ。その名も千本ノック! 全身の至る所に高速の球を
      ぶつけるのさ。勿論、すぐに氏んじゃったらつまらないから軟球でジワジワと、ね!」

桑田「……!!」

モノクマ「色んな意味で二度と野球が出来なくなってただろうね~! あー残念」

桑田「っあ、ああああ……!」

大和田「ま、まさか俺のオシオキも……」

モノクマ「聞きたいかい? 大和田君のオシオキはね、猛多亜最苦婁弟酢華恵慈
     (モーターサイクルデスケージ)って言って……」

大和田「い、いや言わなくていい!」

モノクマ「……まあ、それが賢明かもね。君ってホントはすっごく弱虫だから、聞いたら二度と
      バイクに乗れなくなっちゃうだろうし。あ、でもここにいたら同じか。うぷぷ!」

舞園「…………」

モノクマ「今回のは突貫で慌てて作ったけどさ、その割にはなかなかじゃない?
      寸止めなのが唯一残念な所かな? ま、またすぐ機会は来そうだけどね」

K「次の機会などない! 俺が防いで見せる!」

モノクマ「どうかな~? 今回みたいに裏切られるのが関の山じゃないの~?」

モノクマ「うぷぷぷぷ、ぶひゃひゃひゃ、アーハッハッハッハッハッ!!」


やり切れない思いを抱きながらも、KAZUYAは生徒達を振り返る。


K「……もうここに用はない。戻ろう」

十神「――待て」

「?」


その場を後にしようとしていた全員が振り返った。


十神「俺達にはまだやらなければならないことが残っているだろう?」


980: 2014/06/22(日) 00:00:08.00 ID:mFClvy8A0

K「やらなければならないことだと? 裁判は終わったのだから、もうやることなどないだろう?」

桑田「なんだよ? 早くこんな所から帰りたいっつーのによ」

十神「全く、お気楽な奴ばかりだな」


その男はいつものように鼻で笑う。しかし、ある一点を猛禽類のような鋭い目で見つめていた。


十神「犯人でもないのに自分を犯人だと誤認して裁判を無駄に引っ掻き回し、
    議場を大混乱に陥れた人間に対する責任追及がまだだろう?」

石丸「!!」

K「何……?!」

大和田「…………ハ?」

桑田「ハアアア?! なに言ってんのお前?!」

苗木「今回一番引っ掻き回したのは十神君じゃないか!」


いつもは中立寄りな発言を心がけている苗木でさえ、我が耳を疑い思わず反論した。
そのくらい十神の発言は想定外であり突拍子もなくにわかには信じがたいものだった。


十神「お前達は馬鹿か? 俺はお前達にとって敵に当たるだろう? 戦争中に敵国がした
    侵略行為に対して、我が国ではそれは違法行為だ!などと貴様等はのたまうのか?」

十神「その点、そいつがやったことは言わば味方に対する背信行為だ。愚民なりに賢く俺の意見を
    聞こうとしたから良かったものの、もし俺を無視し推理も誤っていたらどうなった?」

山田「は、犯人以外全員オシオキ……」

十神「しかも、聞く所によるとオシオキの内容は一人一人違うらしいな。……もし手足が
    欠損するような甚大な被害を受け、しかも手当すべき医者までも負傷していたら?」

十神「すぐに氏ぬことはなくてもいずれ氏ぬ。――下手したらそこで全滅だ」

「…………」


意識しなくても、ゴクリと喉が鳴る。


大和田「ふざけんな! 兄弟はなにも俺達を陥れようとしたワケじゃねえだろ!」

十神「この場合悪意の有無は問題にならん。そのような事態を引き起こしたことが問題なのだ」

K「石丸は薬のせいで意識が朦朧としていたのだ! 仕方ないだろう!」

十神「しかし犯行時の記憶がないのなら、犯行を否定すればいいだけの話だ。記憶もないのに
    勝手に泥を被って事態を最悪の方向に持っていきかけた、言わば戦犯だろう」


981: 2014/06/22(日) 00:03:22.49 ID:mFClvy8A0

石丸「あああああ……許してくれ……すまない……許してくれ……!」

十神「貴様はいつもそうだった。自分の思い込みで突っ走り自分のルールを相手に押し付け……
    それで何が成し遂げられた? 結果的にいつも足手まといになっているだけではないか!」

K「十神! それ以上は!」

十神「この機会にハッキリ言ってやる。石丸――貴様にリーダーの資格などない!!」


石丸は見回した。恐らく、現実の時間にしたら二秒にも満たない僅かな時間だろう。
だが、石丸にとってはその二秒がまるで数十秒のように感じられた。声は非常にゆっくりとなり、
何と言っているか上手く聞き取れない。耳が頼りにならないので、必然的に視覚情報が
全てとなる。生徒達は実に様々な表情をしていた。

十神の告げた言葉に対する恐怖、困惑、怒り、憎しみ。

その負の感情が、自分の外で飛び交う罵声が、今の石丸には全て自分に向けられているように感じた。


石丸「すまない。申し訳ない。ごめんなさい。許してくれ……許してください!」

K「い、石丸……?!」

大和田「兄弟?!」

苗木「石丸君?」

桑田「石丸!」

石丸「嗚呼、許してッ! 許してくれぇぇぇッ!!」

舞園「し、しっかりしてください!」

霧切「石丸君、落ち着いて!」

朝日奈「なに? どうしたの……?!」

大神「いかん、様子がおかしい……!」

江ノ島(あぁ……これはもうダメだな)

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!」

K「石丸! 待て!」

大和田「どこ行くんだ、兄弟?!」


走り去る石丸を一同は慌てて追い掛けるが、一足遅くエレベーターの扉が閉まってしまった。


982: 2014/06/22(日) 00:08:25.56 ID:mFClvy8A0

大和田「クソがっ! 早く来い!」

苗木「大丈夫かな……」

桑田「なんか、ヤバくなかったか……?」

舞園「……最悪の事態になっていないといいのですが」


舞園は先程の石丸の様子にかつての自分の姿を重ね、焦燥を感じていた。あれはまずい。
今までとは訳が違う。一刻も早く捕まえなければ……手遅れになるだろう。


葉隠「だ、大丈夫だって! ……多分」

江ノ島「十神の言ってることが正論過ぎて、穴に入りたくなったんじゃない?
     少しほっといて冷静になったらまたケロッとするよ」


そう言ったが、江ノ島は内心では真逆のことを考えていた。……既に手遅れだと。


十神「フン、奴の逃げ癖は何も今回に限ったことじゃないだろう。騒ぎ過ぎだ。だから愚民なのだ」

大和田「こんのォッ!」

K「十神イイィィィイイイイイッ!!」


ドッゴォォッ!!


「!」


大和田が動くより前にKAZUYAが飛び出し、思い切り十神を殴りつけた。細身の十神は
小枝のように宙を舞うと地面にたたき付けられその勢いでゴロゴロと転がる。
衝撃で弾き飛ばされた眼鏡のガラスの割れる音が、生徒達の耳にも届いた。

KAZUYAは今までにない程本気で怒っている。今までどんな暴言を言われようとも、けして
手を上げることのなかったKAZUYAの初めての激怒は、生徒達にとっても衝撃であった。


K「俺は……俺は何度も言ったはずだぞ!!」


KAZUYAは起き上がろうとする十神の胸倉を力付くで掴んで持ち上げた。
十神はかなりの長身であるにも関わらず、踵が宙に浮いている。


983: 2014/06/22(日) 00:13:27.95 ID:mFClvy8A0

K「俺は何度お前を庇ってやった?! 俺は何度お前に警告したっ?!」

K「弱い者虐めが趣味など、大した覇者だな!!」


青筋を浮かべながら力の限りKAZUYAは怒鳴った。今まで積もりに積もった怒りを全てぶつける。

しかし、当の十神は――


十神「ク、クククククク……」

K「何がおかしいっ?!」


笑っていた。


十神「……ちだ」

K「何?」

十神「俺の勝ちだ! クククククク、クハッハッハッハッハッハッ!!」


十神は乱暴にKの手を振りほどき自由の身となると、心底面白いというように力一杯哄笑を上げる。
眼鏡がなく頬が腫れているためただでさえいつもと大分雰囲気が違うのに、初めて見せた
その恍惚とした表情に何とも言えない気味の悪さを感じ、思わずKAZUYAは怒鳴るのを忘れた。


K「勝ちだと?」

十神「そうだ。結局貴様は暴力でしか俺に反論出来なかった! 何故なら俺の言葉が正しいからだ!」

十神「今ここで貴様等は俺に完全敗北したのだ! これが笑わずにいられるか! ハハハハッ!」


そう言って声高らかに笑う十神とは対照的に、KAZUYAの頭はすっかり冷えていた。
周囲の生徒も十神の尋常でない様子に動揺して嫌な沈黙に包まれている。


K「……何故お前はそこまでして勝利にこだわる?」

十神「勝たなければ意味が無いからだ。負けたら俺に存在価値などない」

K(……今朝石丸は、十神はああ見えて努力家だと言っていたな)

苗木「そんなのおかしいよ! 負けちゃいけないなんて……!」

十神「黙れ、平民が! 俺と貴様等では立場が違うのだ! 俺は十神を、
    いや世界を背負っている! こんな所で敗北する訳にはいかない!」

十神「俺には勝利する責任がある!!」

K「…………」

「…………」


984: 2014/06/22(日) 00:21:39.03 ID:mFClvy8A0

胸倉を掴んだ時は興奮していて気が付かなかったが、よく見れば十神は微かに震えていた。

武者震いか、勝利による高揚か、オシオキという新たな恐怖への戦慄か。
或いはその全てがドロドロと入り混じった至極複雑な感情なのかもしれない。


K(そうか、この男は……)


ここにきて、KAZUYAは初めて十神白夜という人間を理解した。

十神は自分が正しいと思うことしかやらない。そして自分が正しいと感じたら、たとえそれがどんなに
非倫理的で不道徳なことでも妥協せず徹底して行う。周りに悪だと思われても自分の正義を貫くのだ。


K(十神は十神一族の後継者として生まれた。一族を、引いては世界を率いるという重い責任がある)

K(故に、自分が生き残って脱出するという目的のためには手段を選ばないのだ――)


大和田が強さに異常な執着を見せていたように、十神は勝利に対して異常な執着を見せている。

……勿論、それが受け入れられるものかどうかは別だが、果たして十神は『悪』なのだろうか。


モノクマ「かーっこいい! 十神君てゲームの悪役やらせたらすっごい似合いそうだよね」

十神「フン。黙れ、モノクマ。言っておくが最後に勝つのはこの俺だぞ。お前は俺が頃す」

モノクマ「うぷぷ。ま、本当は主人公っぽいモブなんだけどさ!」

十神「!! 何だと……?!」

十神「勝利を宿命付けられた“十神”の名にかけて……貴様を頃す。絶対にだ……!!」


               ◇     ◇     ◇


ダダダダッ、バタン!

電気もつけずに石丸清多夏は部屋に飛び込み、床にへたり込んだ。


「もう、駄目だ……」


985: 2014/06/22(日) 00:26:06.09 ID:mFClvy8A0

何度もKAZUYAが励ましてくれた。大和田が自分のために全てを告白してくれた。
不二咲は助かる。裁判も無事に切り抜けた。……良いことはいくつもあったはずだ。

だが、傷付き過ぎた石丸の心にはそれらの出来事すら彼を蝕む震動であった。
思えば、最初に大和田が事件を起こした時から既に石丸の心にはヒビが入っていたのだ。
そして何か事が起こる度に、そのヒビは少しずつ広がり、無数に増えていった。
KAZUYAのその場凌ぎの補修では、もはや如何ともしがたい状態になっていたのだ。


(ああああ……)


頭を抱え呻き声を上げる。浮かんだのはあの凄惨なオシオキだった。
ジェノサイダーの、いや腐川の悲鳴が蘇る。自分のせいで、あれが危うく
仲間達の悲鳴になっている所だった。自分が仲間を頃す所だった。

……折角出来た友人を、自分の手で頃すのか。


「うああぁあああぁぁああああぁあああぁぁぁあ! っ……あぁぁ……」


再び絶叫するがその声は途中で力尽き、途絶えた。


(何が超高校級の風紀委員だ! 何がリーダーだ! みんなに迷惑ばかりかけて……!!)


髪をかきむしる。唇を噛み切る。血が出てももはや何も感じなかった。


(僕に出来た事など何もなかった……僕が何かすれば必ず悪いことが起こるのだ……!)


ならば、どうするべきか。

氏ねばいいと思った。自分が消えても誰も損などしないだろう。
むしろ勘違いで仲間を殺そうとする危険人物は、いなくなった方がいいに決まっている。


(僕は……ここにいるべきではない。もう、二度と誰かに迷惑をかける訳にはいかない)


しかし残された大和田や不二咲は、KAZUYAはどう思うだろうか。
自分が氏ねば、優しい彼等は一生責任を感じ続けるだろう。

ならば、どうするべきか……!


986: 2014/06/22(日) 00:32:39.76 ID:mFClvy8A0

――氏ねばいい。


生体活動だけ残して、生きながらに氏ねばいいのだ。


そしてその日、石丸清多夏は生きるのをやめた。その目は――もう何も映さない。


               ◇     ◇     ◇


地上に戻ってきたKAZUYA達は石丸の部屋に全力で駆け込んだ。


K「石丸!」

大和田「兄弟!」


鍵は掛かっていなかった。更に言うなら部屋の電気もついていない。


大和田「おい、石丸ッ?!」


KAZUYAが冷静に電気をつけ部屋を見渡すと、


「…………」

「石丸……」

「兄、弟……?」


石丸はいた。部屋の隅に座り自身の膝を抱えてうずくまっていた。
何より目を引いたのは、度重なって与えられた極度のストレスがとうとう限界を超えたと
周囲に示すように――髪が真っ白になっていたことだった。瞳に全く生気がない。


(これは……)

「お、おい兄弟……どうしちまったんだよ……」

「…………」


989: 2014/06/22(日) 00:49:10.63 ID:mFClvy8A0

「な、なあ、なんか言ってくれよ。おい……」

「……てくれ」

「あ? なんだって……」

「許してくれ許してくれすまない申し訳ないすみませんごめんたすけてごめんなさい……」

「おい、兄弟? お前俺の声聞こえてんのか?! おい! おい!!」

「すまないすまないごめん許してください申し訳ありません許してくれ……」


まるで壊れたラジオのように、石丸は何度も同じ言葉を繰り返した。
その言葉は全て謝罪の言葉か許しを請う言葉だった。


「石丸……!」

「兄弟……なあ、しっかりしてくれよ……なあ!!!」


駆け付けた他の生徒達も、変わり果てたクラスメイトの姿に言葉を失っていた。

KAZUYA達は忘れていたのだ。この学園では、勇気も、友情も、努力も、何の意味も持たないことを。


失ってしまってから、思い出したのだった――






Chapter.2 週刊少年マガジンで連載していた  学級裁判編  ― 完 ―



991: 2014/06/22(日) 00:51:30.13 ID:mFClvy8A0

― Chapter Result ―


【物語編】

・黒幕は様々な能力に特化した少数精鋭のプロフェッショナル集団と推測。
 また中枢メンバーに女がいるとKは予想している。
・二階男子トイレにある隠し部屋を発見し「人類史上最大最悪の絶望的事件」と
 「希望ヶ峰シェルター計画」についての知識を得たが、詳細はわかっていない。
・混乱を避けるため、具体的な証拠を掴むまで外の状況については伏せている。
・モノクマが内通者について話したため、生徒達はお互いに警戒しあっている。
・生徒達が部分的に記憶喪失を起こしていること、また黒幕が意図的にその状況を
 引き起こしたのではないかとKは考えている。
・黒幕メンバーに本物の江ノ島盾子がいることに気付いた。
・アルターエゴがPCから何らかのデータを解析した。
・初めて学級裁判が開かれた。

【生徒編】

・石丸が医者を目指し、苗木も巻き添えの形で現在医学の勉強中。
・不二咲の擬似人格プログラム・アルターエゴが完成した。
・舞園は自身を「脱出のための駒」として定義し演技している。
・大神は実は内通者であることを隠している。
・江ノ島が黒幕の味方だと桑田も気付いた。
・石丸の顔に大きな傷痕が出来た。麻酔が足りないので今は消せない。
・不二咲が本当は男だと告白した。
・大和田が自身の秘密を告白した。
・腐川が実は二重人格者で裏人格は超高校級の殺人鬼「ジェノサイダー翔」だった。
・石丸の精神が崩壊した。

【その他】

・『石丸 清多夏』が仲間になった(ただし精神が崩壊している)!
・『不二咲 千尋』が仲間になった(ただし負傷している)!
・『大和田 紋土』が仲間になった!
・『霧切 響子』が仲間になった!





       【14人】

        ↓ カタッ

       【11人】


     to be continue...



993: 2014/06/22(日) 01:04:32.09 ID:mFClvy8A0

ここまで。フウ、なんとか入りきったぜ。やっと長かった二章終わったあああああああああ

……正直、十神君はやりすぎかなとも思ったけど、二章の裁判の時の
台詞考えたらマジでこれぐらいやりそうだなと思ったので、やってしまった

ああ、エピ0どうしよう……この際小ネタ用のスレでも立てようかな
おまけデータも色々作ってたのに……次スレに回すか


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


それでは、たえちゃんがやたらスレタイで殺る気満々な次スレでお会いしましょう!
3スレ目もお付き合い頂きありがとうございました!

セレス「勝負ですわ、ドクターK」葉隠「未来が…視えねえ」山田「カルテ.4ですぞ!」



ED「絶望性:ヒーロー治療薬」
http://www.youtube.com/watch?v=E4xPtdJdNTU



1000: 2014/06/22(日) 01:16:24.97 ID:ObSYW0mfO

安価すると思った以上にレス消費するやで
霧切さんこれで仲間になるんだったらもっと早くなってくれよww

引用: 大和田「俺達は諦めねえ!」舞園「ドクターK…力を貸して下さい」不二咲「カルテ.3だよぉ」