1: 2009/08/08(土) 19:19:36.63 ID:C8uG5AV60
梅「何だいこれ?『新・週刊少女のつくり方』?」

梅「おなしいな、僕いつの間にこんなものを買ったんだろう?」

梅「ま、いいか。とにかく組み立ててみようかな」

梅「…………」

梅「最後にこの螺子を巻いて、と……」

梅「な、何だ!?人形が動きはじめたぞ!」

梅「まさかこんなことが本当にあるなんて……」
ローゼンメイデン 愛蔵版 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
3: 2009/08/08(土) 19:23:22.33 ID:C8uG5AV60
梅「柔らかい……これウレタンじゃないぞ」

梅「でもこの手の窪みは確かに僕が作ったものだし……」

梅「布地はこんなに良いもの使ってないぞ。それに、靴はどこから……?」

梅「僕が作った人形だけど何かが違う……」

梅「い、いや。そんなことよりこの状況はどうしたことなんだ?」

梅「僕は悪い夢でも見てるのか……?」

5: 2009/08/08(土) 19:27:20.87 ID:C8uG5AV60
梅「君は、誰……?」

雪「きみは、だれ……?」

梅「僕は梅岡。中学校で教鞭を執っている」

雪「あなたは、うめおか……」

雪「私は、だぁれ……?」

8: 2009/08/08(土) 19:33:28.16 ID:C8uG5AV60
雪「私はドール……私は薔薇乙女……」

梅「ローゼン……メイデン?」

雪「うめおか、貴方には私のマスターになってもらいます」

梅「マスター?それはどういうことなんだい?」

雪「薔薇の指輪を受け取って。そしてこれに口づけをするのです」

梅「よくわからないな。全校集会を開くからきちんと説明してくれないか?」

9: 2009/08/08(土) 19:35:49.23 ID:C8uG5AV60
梅「ええと、ローゼン・メイデンちゃん?」

雪「違います。それは私を指す固有名詞ではありません」

梅「そうなのか?それじゃあ君の名前は……?」

雪「私は雪華……」

梅「きら……?」

雪「いえ、私の名前は薔薇水晶です」

11: 2009/08/08(土) 19:39:39.49 ID:C8uG5AV60
梅「薔薇水晶か、とてもいい名前だね」

雪「そうですか。ありがとうございます」

梅「ちょっと長いから『ばらしー』って呼んでいい?」

雪「いやです」

梅「そうだばらしー、君お腹は空いていないかい?」

梅「ご飯にする?それともお風呂の方がいいのかな?何だったら寄せ書きでも……」

雪「…………」

18: 2009/08/08(土) 19:44:59.11 ID:C8uG5AV60
梅「ねぇ。薔薇の契約ってどういうことなのかな?」

雪「私はここに住み、貴方から力をいただくということです」

梅「そ、そうなんだ。それは構わないんだけど君って……」

雪「マスター、少し静かにしていただけますか?」

梅「そんなぁ。つれないこと言わないでよ」

雪「私にはこの世界ですることがある……貴方にかかわっている暇はない……」

梅「することって、なに……?」

雪「貴方には関係のないことですよ」

19: 2009/08/08(土) 19:48:47.21 ID:C8uG5AV60
梅「ばらしー、夕食の用意ができたんだけど一緒にどう?」

雪「…………」

梅「テーブルの上に置いておくからお腹がすいたら食べてくれ」

雪「…………」

梅「それとさ、ベッドがひとつしかないんだけど僕は……」

雪「結構です。これから出掛けるところがありますので……」

梅「出掛ける?外はもう真っ暗だよ?」

雪「…………」

梅「君みたいな小さい子が、いや人形だからいいのかな」

雪「…………」

梅「う~ん、何だかよくわからなくなってきた……」

雪「…………」

梅「…………」

梅「ごめんお邪魔だったかな。僕は隣の部屋にいるからここは自由に使っていいよ」

21: 2009/08/08(土) 19:54:45.53 ID:C8uG5AV60
梅「あの子、もう出掛けちゃったかな……」

梅「よかった。夕食……いつの間にか食べてくれたんだ」

梅「…………」

梅「しかし不思議だよな。人形が食事をするなんて」

梅「いや、よくよく考えてみれば動いたり喋ったりすることが既に……」

梅「あの子いったい何者なんだろう……?」

23: 2009/08/08(土) 19:59:44.39 ID:C8uG5AV60
カチカチ……

梅「ローゼンメイデン。伝説の人形師ローゼンの最高傑作……」

梅「どれも噂や憶測の類だな……」

梅「ネットじゃあまり詳しいことはわかりそうにないか」

梅「いきなり一緒に暮らすと言われてもなぁ、どう扱っていいかわからないよ」

梅「本人はほとんど何も教えてくれないし……」

梅「…………」

梅「そうだ。そういえば桜田の奴が人形とか詳しかったよな」

梅「明日は日曜だし、様子見を兼ねて久しぶりに顔を見に行っとくか」

梅「そうと決まれば寄せ書きだ。クラス全員分の筆跡は既にマスターしているからな」

25: 2009/08/08(土) 20:06:39.13 ID:C8uG5AV60
J「オエェェェエエエエ!!」

梅「どうした桜田!?せっかく寄せ書きを持ってきたのに体調でも悪いのか?」

J「ちが……お願いだからそれを近付けないで……」

梅「救急車呼ぶか?何なら先生が病院まで……」

J「違いますって……体調が悪いわけじゃないんです!」

梅「そうなのか?それじゃ僕は何をすればいい?」

J「だ、だから早くそれをどこか見えないところへ……」

梅「そうだ、こういうときこそ暖かい励ましがものを言うんだぞ」

梅「実はクラスの皆から手紙を預かってきてるんだ。先生が朗読してやろう」

J「オゲェェエ、ブッ……ぐえぇぇえええ……!!」

28: 2009/08/08(土) 20:13:35.38 ID:C8uG5AV60
J「はぁ、はぁ、はぁ……」

梅「桜田、少しは落ち着いたか?」

J「え、ええ。何とか……」

梅「あ、そういえば千羽鶴も持ってきてたっけ」

梅「先生徹夜して……いや、皆がお前のために作ってくれたんだ」

J「そ、れより今日はどうしたんですか?電話では何か用があると言ってましたけど」

29: 2009/08/08(土) 20:18:00.08 ID:C8uG5AV60
梅「おっと、危うく忘れるところだった。実はな……」

パタパタパタ……ガチャ

金「JUM、今後のことについて少し打ち合わせをするかしら」

梅「えっ……?」

J「ば、馬鹿!人がいるときは出てくるなとあれほど言っておいただろ!」

金「真紅や水銀燈ばかりか翠星石まで『向こうの世界』に行ってしまったのよ」

金「事態は一刻を争うわ。そんなこと気にしている場合じゃないかしら」

J「だ、だからって何もこんなときに……」

梅「ポカーン……」

J「い、いや先生、違うんです。何と言うかこれは、その……」

梅「……ローゼンメイデン」

J「!?」

梅「驚いたよ桜田。まさか君もローゼンメイデンのマスターをしてるのかい?」

33: 2009/08/08(土) 20:24:59.35 ID:C8uG5AV60
J「薔薇水晶?……金糸雀、お前何か知ってるか?」

金「さあ、カナもそんな名前は聞いたことがないかしら」

J「でもこの指輪、僕がしていたものと同じだよな」

金「そ、そうね。これは確かにお父様の手によるものかしら」

J「どういうことだ?ローゼンメイデンは全部で7体じゃなかったのか?」

34: 2009/08/08(土) 20:29:59.24 ID:C8uG5AV60
金「よくわからないけど、お父様が雛苺を作られてから既に何百年も経っているわ」

金「その間に作られたのは雪華綺晶一体だけかと思っていたけれど……」

梅「きら……きしょう?」

金「ええ。最もアリスゲームに積極的な第7ドール……」

金「カナたちばかりかJUMやみっちゃんの命まで狙っている恐ろしい敵かしら」

35: 2009/08/08(土) 20:34:17.21 ID:C8uG5AV60
梅「命を狙うだって?ドールにはそんな酷いことをするものもいるのかい?」

金「あの子は特別かしら。薔薇乙女は本来人間に手を出すようなことないかしら」

梅「そ、そうか。そうだよね。僕のばらしーがそんなことをするはずないものね」

金「(ばらしー……?)」

J「(僕の……?)」

36: 2009/08/08(土) 20:38:40.08 ID:C8uG5AV60
nのフィールド~

雪「ふふ、ふふふ……」

雪「うめおか、やはり貴方を仮の媒介に選んだのは正解でした」

雪「姉妹のほとんどほ『まかなかった世界』に集まっている」

雪「紅薔薇のお姉さまのマスター、桜田JUMに逃げられたのは計算外だったけど」

雪「今ならこちら側は手薄……ここで黄薔薇のお姉さまと桜田JUMさえ片付ければ」

雪「ふふ、ふふふ……」

雪「お父様、すぐに雪華綺晶がアリスとなってお傍へお仕えに参ります」

38: 2009/08/08(土) 20:44:32.96 ID:C8uG5AV60
梅「7体の人形にアリスゲーム、そしてきらきしょう……」

梅「何だかわからないことばかりだね。少し頭が痛くなってきたよ」

金「えっと、とにかくお父様が新たにドールを作られた可能性もあるということかしら」

J「へえ、じゃあその薔薇水晶というのは薔薇乙女の第8ドールということか」

金「あくまでも可能性の話かしら。そうと決まったわけではないかしら」

40: 2009/08/08(土) 20:48:04.59 ID:C8uG5AV60
J「でもそういうのって本人に聞くのが一番早いんじゃ……」

梅「それがなぁ、あの子詳しいことは何も教えてくれないんだ」

J「……そうですか。それでこれからどうされるんですか?」

梅「もう少し薔薇乙女について知りたいからね。図書館にでも行ってみようと思う」

金「大丈夫なの?何だか顔色がよくないみたいだけど……」

梅「ただの寝不足だよ。心配してくれてありがとう」

46: 2009/08/08(土) 23:09:08.46 ID:JVRzTdj40
金「ウメオカ、ひとつ聞いてもいいかしら?」

梅「……なんだい?」

金「貴方どうしてそんなに一生懸命なのかしら」

梅「い、いや。徹夜は半分趣味みたいなものだから……」

金「それだけじゃないわ。カナはこれでも人を見る目はあるつもりかしら」

梅「はは、何だか怖いなぁ……」

金「外見に惑わされないことね。私は貴方よりずっとおばあさんかもしれないわ」

48: 2009/08/08(土) 23:11:23.87 ID:JVRzTdj40
梅「僕は教師をしてるんだがまだ駆け出しでね……」

梅「恥ずかしながら今は生徒の面倒すらきちんと見られてないような状態なんだ」

J「…………」

梅「せめて人形の面倒くらい見られなきゃね。それに……」

金「それに……?」

梅「あの子が時々寂しそうな顔をするのが気になって……」

梅「あの顔は、まるで……」

梅「(チラッ……)」

J「……?」

50: 2009/08/08(土) 23:17:42.92 ID:JVRzTdj40
金「気に入ったのかしら!」

J「な、何だよいきなり……」

金「ウメオカ。貴方なかなか見所があるかしら」

梅「そうかい……?」

J「(そうかな……?)」

金「そうよ。ドールのためにここまで真剣になってくれる人間は稀かしら」

51: 2009/08/08(土) 23:21:51.18 ID:JVRzTdj40
金「貴方には特別にこれを分けてあげるかしら」パカッ

梅「それは……?」

金「みっちゃん特製の甘いたまご焼きよ。カナのおとっときなのかしら」

梅「へぇ、僕が食べちゃっていいのかい?」

金「今日だけ今だけの特別サービスかしら」

梅「ありがとう、それじゃ心していただくよ」

52: 2009/08/08(土) 23:24:31.68 ID:JVRzTdj40
梅「もぐ、もぐ、もぐ……」

金「どうかしら?ウメオカ」

梅「うん、美味しいよ。これって砂糖の分量とか結構難しいんだよね」

金「よくわかっているかしら。ますます気に入ったのかしら」

53: 2009/08/08(土) 23:27:57.96 ID:JVRzTdj40
梅「ところでみっちゃんって誰なんだい?」

金「カナのマスターよ。お料理やお裁縫がとっとも上手なのかしら」

金「あと優しいしそれなり美人だし……カナが今まで見てきた中で最高のひとかしら」

梅「そうなんだ。それはぜひ一度会ってみたいね」

金「食いつきよすぎかしら。下心丸見えってカンジかしら」

梅「まいったな。別にそういうつもりじゃないんだけど……」

金「ふふ、ウメオカがもう少しいい男だったら考えてあげてもよかったわ」

J「(この二人、何か意気投合してないか……?)」

梅「いやマジで」

金「クスクス……」

J「(多分頑張っても報われない辺りに共振するものがあるんだろうなぁ……)」

55: 2009/08/08(土) 23:32:38.62 ID:JVRzTdj40
梅「……なるほどね。色々参考になったよ」

金「お役に立ててよかったわ」

梅「ありがとう金糸雀ちゃん」

金「どういたしましてかしら。……あ、そうだ」

梅「なに?」

金「ウメオカ、カナの携帯のアドレスを教えておくかしら」

J「……え?お前携帯なんて持ってたの?」

金「JUMにはまだ言ってなかったかしら?」

J「初耳だよ……」

金「まぁいいわ。それじゃついでに貴方にも……」ピッピッ……

J「ヒデェな、僕はついでかよ」

金「あはは……だってほら、JUMとはこうしていつも会ってるから……」

56: 2009/08/08(土) 23:40:25.59 ID:JVRzTdj40
金「……これで登録完了っと」ピッピッ……

J「(みっちゃんさん、相変わらずコイツには贅沢させてるな……)」

金「二人とも、わからないことがあればいつでもカナに聞くかしら」

J「あ、ああ……」

梅「ありがとう。それじゃさっそく僕も登録を……」

ピッピッ……

梅「なぁ桜田、よかったらお前のも教えてもらえるか?」

J「えっ?」

梅「……ダメか?」

J「い、いえ。まぁメアドくらいなら別に……」

58: 2009/08/08(土) 23:47:20.32 ID:JVRzTdj40
梅「それとさ、またたまにはお前の家に来ていいか?」

J「……連絡ならメールで十分じゃないですか」

梅「ばらしーのことだけじゃない、先生お前のことも心配してるんだ」

梅「無理に学校に来いとは言わないよ。ただ時々でいいからこうして顔を見せてくれ」

J「…………」

J「時々ですよ。あまり頻繁に来られても困ります」

61: 2009/08/08(土) 23:56:14.21 ID:JVRzTdj40
梅「ただいまばらしー。遅くなって悪かったね」

梅「お腹が空いたろう、よかったら甘い玉子焼きでも食べないか?」

雪「結構です……」

梅「それじゃ紅茶でも淹れようか?」

雪「いいえ、それも……」

梅「あとさ、ヤクルト買ってきたんだけど」

雪「…………」

梅「……不氏屋の苺大福」

雪「ピクッ……」

梅「…………」

梅「だめかぁ。まぁここに置いておくから気が向いたらいつでも食べてくれよ」

雪「(危なかった……念のため仮の器を用意させて正解でした……)」

63: 2009/08/09(日) 00:02:20.93 ID:JVRzTdj40
梅「よかったらこれも使ってくれないか?」

雪「これは……鞄ですか……?」

梅「ああ、安物だから居心地よくないかもしれないけど」

雪「…………」

梅「やっぱりだめかな?一応ベッドも空けておくから好きな方を使ってくれ」

雪「マスター、貴方は……?」

梅「僕は床で寝るよ」

雪「しかし、それでは……」

梅「気にしなくていいよ。学生時代はいつもそんなものだったしな」

雪「…………」

64: 2009/08/09(日) 00:06:25.13 ID:VbJ2uvCa0
雪「(…………)」

雪「(あのとき、三人とも警戒を解いていた。襲うなら絶好の機会だったはず……)」

雪「(うめおか……)」

雪「(あの人は何をしているの……?)」

雪「(私は何をしているの……?)」

雪「(…………)」

雪「(まだ時間はある。次の機会を待てばいいだけの話です……)」

69: 2009/08/09(日) 00:14:07.25 ID:VbJ2uvCa0
数日後~

梅「柏葉、いつもすまないな」

巴「いえ、これもクラス委員の仕事ですから……」

梅「それじゃあ今週の授業の分、桜田に届けてやってくれ」

巴「わかりました。また、いつものように……?」

梅「ああ、僕からということは内緒でな。そのためにお前の筆跡まで真似たんだ」

巴「(気持ち悪い。私の筆跡が完璧にトレースされている……)」

71: 2009/08/09(日) 00:21:57.18 ID:VbJ2uvCa0
巴「でも先生?」

梅「何だい?」

巴「わざわざここまでして先生からと言うことを隠さなくても……」

梅「いや、実はこの間も桜田に会いに行ったんだけどな……」

梅「やっぱり僕はあまり好かれていないみたいだよ」

巴「そうですか。それは、どうも……」

梅「でもな、あいつ僕にメールアドレスを教えてくれたんだ。あれは嬉しかったなぁ」

巴「…………」

73: 2009/08/09(日) 00:23:50.52 ID:VbJ2uvCa0
梅「柏葉、今度何か奢らせてもらうよ」

巴「私もちょうど桜田君の家に(雛苺のことで)用事がありましたから……」

梅「そうか、そういえばお前と桜田は幼馴染だったっけ」

巴「ええ。一応……」

梅「いいよなぁ、これも青春って奴かなぁ」

巴「いえ、別にそういうことでは……」

梅「先生な、友情ってのは学校生活で一番の宝だと思うんだ。頑張る元気の……」

巴「(うざい……こういうところさえなければいい先生なんだけど……)」

75: 2009/08/09(日) 00:27:20.52 ID:VbJ2uvCa0
巴「それではこれで失礼します」

梅「ああ、気をつけて帰るんだぞ」

カツカツカツ……

校長「……今少し良いかね梅岡君?」

梅「校長先生?何か御用だったしょうか?」

校長「いや、君のその左手の指輪の事なんだがね」

梅「あっ……これは……」

校長「まぁ結婚それ自体はおめでたいことなのだが……」

校長「隠れてコソコソするようなことは教師としていかがなものかと思うのだよ」

76: 2009/08/09(日) 00:28:56.17 ID:VbJ2uvCa0
校長「既に生徒たちの間でも噂になっているらしいじゃないか」

梅「す、すみません。ぼくは別に結婚するわけじゃ……」

校長「どういうことだ?それは悪戯だとでも言うのかね?」

梅「いえ、決してそのような……これは、ええと……」

校長「いいかね梅岡君。新米とはいえ君も教師なのだよ?以前から学生気分が抜けてないとは思っていたがくれぐれも多感な時期の子供たちを刺激するようなことは謹んでくどくどくど……」

77: 2009/08/09(日) 00:32:31.11 ID:VbJ2uvCa0
校長「とにかくその指輪取りたまえ」

梅「やめっ……無理やり取ろうとすると肉が削げ落ちるんです!」

校長「何の冗談だ?私を馬鹿にしてるのかね?」

梅「違うんです、そういうわけじゃないんです!」

校長「何が違うのかね?職員会議を開くからきちんと説明してくれないか?」

79: 2009/08/09(日) 00:38:48.45 ID:VbJ2uvCa0
梅「はぁ、今日は酷い目にあったなぁ」

梅「まさか本当に吊るし上げを食らうとは……」

梅「しばらく怪我でもしたことにして左手には包帯を巻いとこう」

梅「減俸にならないといいけどなぁ。ただでさえ給料少ないのに」

梅「…………」

梅「ま、いいや。今日もばらしーに何か美味しいものでも買っていくか」

梅「何だかんだ言って今じゃ一緒にご飯まで食べてくれるからな」

80: 2009/08/09(日) 00:41:45.79 ID:VbJ2uvCa0
ピピピ……

梅「お、メールか」

梅「!」

梅「桜田からじゃないか。ええと、内容は……」

梅「素っ気ないなぁ。まああいつらしいといえばそうだけど」

梅「それにしてもまさか向こうからメールしてくれるとは……」

梅「…………」

梅「桜田、あいつ変わったな……」

82: 2009/08/09(日) 00:44:39.08 ID:VbJ2uvCa0
数刻前、桜田家~

ピンポーン

金「JUM、誰か来たみたいかしら」

J「多分あいつだな。最近よく来てくれるんだ」

パタパタパタ……ガチャ

J「……やっぱり柏葉か。いつもありがとな」

巴「いいのよ、これ今週の分のノート。それから……」

J「あ、ああ。雛苺だろ?オディールさんのところで上手くやっているみたいだよ」

巴「……そう」

J「あ、そ、そういえばまた手紙が来てたんだ。お前も読むか?」

巴「ええ……」

J「ほら、これなんだけどさ。相変わらず汚ねー字だよなぁ」

巴「…………」

J「何かお前のことばかりだろ?アイツ僕のこと何だと思っているんだか……」

巴「(……よく真似られている。でもこれ多分雛苺の字じゃないわ)」

83: 2009/08/09(日) 00:49:51.19 ID:VbJ2uvCa0
J「よかったらやるよ。あいにく封筒は捨ててしまったけど……」

巴「……いただいていくわ」

巴「…………」

J「お、おい。そんな顔するなよ。何も二度と会えないわけじゃないんだからさ」

巴「ご、ごめんなさい。つい……」

J「……柏葉、今度雛苺をお前のところに連れて行ってやるよ」

巴「えっ?」

J「いやその、他所様のことだからいつとは言えないけど、きっと、絶対……!」

巴「…………」

巴「向こうの都合もあるだろうし、無理はしなくていいわ」

J「そ、そうか」

巴「桜田君」

J「……何だ?」

巴「ありがとう。その気持ちだけで十分よ」

86: 2009/08/09(日) 00:54:16.19 ID:VbJ2uvCa0
巴「それじゃ、また来るから……」

J「ああ、またな」

バタン

J「……金糸雀、お前僕と契約してくれないか?」

金「!」

金「い、いきなり何かしら?だいたいカナにはみっちゃんが……」

J「これでもこの間まで三体のドールを支えてたんだ。少しは力になれると思う」

J「それにお前もみっちゃんさんよりは気兼ねなく力を吸えると思うんだ」

金「だ、だからって何もそんなこと……」

J「…………」

金「…………」

J「すまない、少し焦っていたのかもしれないな」

金「…………」

J「ホント悪い。自分じゃ何もできないこの状況がもどかしくてつい、な」

87: 2009/08/09(日) 00:57:52.32 ID:VbJ2uvCa0
雪「ここ数日、うめおかたちを観察してわかったことが幾つかある……」

雪「うめおかは一人の生徒……あの桜田JUMを傷付けたことを深く後悔している……」

雪「そしてその傷を癒そうと必氏になっている……」

雪「何故か私にも随分心を砕いてくれているし……」

雪「…………」

雪「贖罪、後悔……私には無縁の感情だと思っていた……」

88: 2009/08/09(日) 01:02:26.43 ID:VbJ2uvCa0
雪「何にせよいつまでもここにいるわけにはいきませんね」

雪「既に『まかなかった世界』でも数日が経過しているはず……」

雪「残り時間のない紅薔薇のお姉さまが何らかの行動を起こしてもおかしくない」

雪「…………」

雪「わざわざ『まいた世界』に戻ってきたのに結局何もできなかった」

雪「うめおか……あのひとのせいで私は……」

ガチャ

梅「ただいまばらしー。今日もいい子にしてたかい?」

雪「……マスター。今日は貴方に大切なお話があります」

梅「な、なに?急に改まってどうしたの?」

雪「…………」

雪「お別れです……今まで黙っていて本当にすみませんでした……」

91: 2009/08/09(日) 01:06:27.60 ID:VbJ2uvCa0
梅「お別れ?何を言っているんだ、君はここで暮らすって……」

雪「貴方との契約は仮のもの……今のこの身体も仮の器に過ぎないのです……」

梅「どういうことだ?いや、そんなことはいい。それなら本当の契約を……」

雪「ごめんなさい……それはできません……」

梅「どうして!?」

雪「…………」

雪「私にはまだすることがあるのです。いつまでもここに居るわけにはいきません」

92: 2009/08/09(日) 01:10:24.36 ID:VbJ2uvCa0
梅「またそれか、いったい何をしなくてはいけないと言うんだい?」

雪「……アリス・ゲーム」

梅「!!」

雪「私はもう、取り返しのつかないことをしてしまっている……」

雪「運命は……廻る……」

雪「アリス・ゲームは止められない……」

梅「…………」





金「……お話は終わったかしら二人とも?」

93: 2009/08/09(日) 01:14:47.57 ID:VbJ2uvCa0
雪「お姉さま……!?」

梅「金糸雀ちゃん、どうしてここに……?」

金「ウメオカ、申し訳ないけど後を尾けさせて貰ったわ」

梅「何故そんなことを?来るなら来るで事前に言ってくれれば……」

雪「…………」

金「前から怪しいとは思っていたけれど……やっぱりあなただったのね雪華綺晶」

梅「!?」

95: 2009/08/09(日) 01:18:47.14 ID:VbJ2uvCa0
梅「きらきしょうだって!?それって前に金糸雀ちゃんが言っていた……」

金「そう。その子は薔薇乙女の第七ドール。そして憎むべき雛苺の仇かしら」

梅「嘘だろうばらしー?君がそんな恐ろしいドールだなんて……」

雪「…………」

梅「そんな……どうして何も答えてくれないんだ薔薇水晶!?」

雪「マスター。いえ、うめおか……」

雪「貴方には知られたくありませんでした……」

96: 2009/08/09(日) 01:22:59.86 ID:VbJ2uvCa0
金「ここで会ったが100年目かしら!……ピチカート!!」

ピ「チカッ……!」

雪「……お姉さま、矛を収めてはいただけないでしょうか」

金「!?」

雪「私は今戦える精神状態ではありません……」

金「な、何を勝手なことを!あなた今までどれほど酷いことをしてきたと……!」

梅「か、金糸雀ちゃん……」

金「~~~~!」

金「う、ウメオカに免じてこの場は見逃してあげるかしら!」

雪「お心遣い、感謝します……」

金「今回限りよ、行きなさい雪華綺晶」

雪「…………」

雪「さようなら。うめおか……」



梅「消えた……」

98: 2009/08/09(日) 01:26:56.78 ID:VbJ2uvCa0
梅「金糸雀ちゃん、君はこれからどうするの?」

金「……相手の出方次第だけど、基本的にはアリス・ゲームを続けるわ」

梅「あの子と仲良くすることはできないのかい?」

金「カナはあの子のしたことを許さない……」

金「例えカナが許しても、あの子はそんなことお構いなしにカナたちを狙ってくるわ」

梅「本当に、そうだろうか……?」

金「…………」

99: 2009/08/09(日) 01:30:13.54 ID:VbJ2uvCa0
梅「あの子はどこへ行ってしまったんだい……?」

金「こことは違う世界、残念だけど貴方の前に現れれることは多分……」

梅「そうか……」

金「…………」

梅「僕はこれからどうすればいいのだろう?」

金「それは貴方にしかわからないわ。ただ、貴方を必要としている人はいる」

梅「桜田か?しかしあいつは……」

金「ええ。JUMは以前に比べると格段に強くなったかしら。でも、まだ迷ってる……」

梅「僕にできるだろうか。いや、できるかできないかじゃないな」

金「ウメオカ、自信を持っていいかしら」

金「貴方は姉妹の誰もが触れることのできなかった雪華綺晶の心に触れたのよ」

梅「ばらしー、いや雪華綺晶……」

梅「もう会えないかもしれないけど君のことほ忘れないよ……」

100: 2009/08/09(日) 01:36:35.23 ID:VbJ2uvCa0
梅「よし!僕は僕にできることをする。まずはレッツ家庭訪問だ!」

金「えっ……?」

梅「そうと決まれば寄せ書きだ!あ、金糸雀ちゃんもよかったら手紙を書かないか?」

梅「書こうよ!君の熱いエールが桜田の心を動かすことができるかもしれないぞ!?」

金「…………」





このときの梅岡の行動はアリス・ゲームの趨勢に微妙な影響を与えることとなった。

更には一人の引き篭もり中学生の心を救うこととなるのだが……それはまだ先のお話。

後にGTU(グレート・ティーチャー・ウメオカ)と呼ばれる男の若き日の姿だった。


gue4183


梅岡「『まきます』っと……」  ~fin~

101: 2009/08/09(日) 01:38:24.90 ID:Jk/S7jCv0

106: 2009/08/09(日) 01:47:59.39 ID:VbJ2uvCa0
ローゼンでは嫌われ者の代名詞、梅岡ですが自分は結構好きだったりします
たまにはきれいな梅岡というのもいいのではないでしょうか

駄文にお付き合いいただきましてありがとうございました

107: 2009/08/09(日) 02:03:53.10 ID:wF16//MVO
梅岡は空気が読めてないだけで実際にいたら凄い熱血教師何だよなぁと思う。なぜネタスレなどではあんなに悪人として描かれるのか理解不能

引用: 梅岡「『まきます』っと……」