231: 2009/02/01(日) 16:02:13 ID:3p0xwc3L
夏はもうすぐそこという、そんなある日のこと。
私は芳佳ちゃんのおうちにスイカを2つ持って行った。
「芳佳ちゃーん! いるー?」
私は裏口にまわって、芳佳ちゃんを呼んだ。
芳佳ちゃんのおうちは診療所をしているので、私はいつも裏口から入る。
「どうしたの、みっちゃん」
と、姿は見せねど芳佳ちゃんの声がした。
芳佳ちゃんは見もしなければ誰何もなしに、声だけで私だってわかってくれる。
私たちはそういう関係。幼なじみ。いつもいっしょ。とっても仲良し。
しばらく待つと芳佳ちゃんはあらわれた。今日の芳佳ちゃんもとってもかわいい。
「一緒に宿題しようと思って」
「うん、いいよ」
「あと、これ。芳佳ちゃんといっしょに食べようと思って」
私は持っていたスイカを掲げて言った。
ついでということを強調しつつも、実は今日私がここに来た一番の理由でもある。
私の家のスイカ畑で採れたものだ。それが2つ。
おじいちゃんに無理を言って、収穫前なのに特別にもらったのだ。
叩いて音を確かめて、選りすぐりのを持ってきた。
芳佳ちゃん、私が夏を届けに来たよ。
「わあ。ありがとう、みっちゃん」
と、芳佳ちゃんは差し出したスイカを受け取った。
「畑仕事手伝ってくれたから、そのお礼にね」
芳佳ちゃんはこころよく、苗を植えたり、水をやったりするのを手伝ってくれた。
だからそのせめてものお礼に、このくらいは当然なのだ。
芳佳ちゃんが喜んでくれているようで、それで私もとっても嬉しい。
「でも、2つもいいの? なんだか悪いよ」
「ううん、気にしないで」
1つじゃダメなの。3つでもダメ。2つじゃなきゃダメだったの。
「みっちゃん、私の部屋で待ってて」
冷やしてあとで食べるために、芳佳ちゃんはスイカを台所に持っていった。
私は言われたとおり、芳佳ちゃんの部屋に行った。
芳佳ちゃんの部屋には一向に慣れない。いつ来ても、そわそわとしてなんだか落ち着かない。
私は畳にちょこんと座って芳佳ちゃんを待った。
手を見ると、くっきりと縄の跡がついていた。
「おまたせ」
と、芳佳ちゃんがようやく登場。もう、この数分の時間、どれだけ私が寂しい思いをしたか。
「じゃあ宿題しよっか」
うん、と私はうなずいた。本当はそっちは建前なんだけど。
まあもうすぐ期末試験もあることだし、ちゃんと勉強もしておかなくちゃ。
そうして私たちは勉強をはじめた。
「それじゃあ単語テストするよ」
私はそう切り出した。
芳佳ちゃんの成績は中の中。こと勉強に関しては、私が芳佳ちゃんを教えてあげることが多い。
「じゃあ、リンゴ」
「apple」
「正解。イチゴ」
「strawberry」
「正解。ぶどう」
「grape」
「正解。それじゃあ、スイカ」
「えっ、スイカ? えーっと、なんだっけ……?」
芳佳ちゃん、頑張って! 一番大事なところなんだよ!
ほら、スイカはブリタニア語で……
私は芳佳ちゃんのおうちにスイカを2つ持って行った。
「芳佳ちゃーん! いるー?」
私は裏口にまわって、芳佳ちゃんを呼んだ。
芳佳ちゃんのおうちは診療所をしているので、私はいつも裏口から入る。
「どうしたの、みっちゃん」
と、姿は見せねど芳佳ちゃんの声がした。
芳佳ちゃんは見もしなければ誰何もなしに、声だけで私だってわかってくれる。
私たちはそういう関係。幼なじみ。いつもいっしょ。とっても仲良し。
しばらく待つと芳佳ちゃんはあらわれた。今日の芳佳ちゃんもとってもかわいい。
「一緒に宿題しようと思って」
「うん、いいよ」
「あと、これ。芳佳ちゃんといっしょに食べようと思って」
私は持っていたスイカを掲げて言った。
ついでということを強調しつつも、実は今日私がここに来た一番の理由でもある。
私の家のスイカ畑で採れたものだ。それが2つ。
おじいちゃんに無理を言って、収穫前なのに特別にもらったのだ。
叩いて音を確かめて、選りすぐりのを持ってきた。
芳佳ちゃん、私が夏を届けに来たよ。
「わあ。ありがとう、みっちゃん」
と、芳佳ちゃんは差し出したスイカを受け取った。
「畑仕事手伝ってくれたから、そのお礼にね」
芳佳ちゃんはこころよく、苗を植えたり、水をやったりするのを手伝ってくれた。
だからそのせめてものお礼に、このくらいは当然なのだ。
芳佳ちゃんが喜んでくれているようで、それで私もとっても嬉しい。
「でも、2つもいいの? なんだか悪いよ」
「ううん、気にしないで」
1つじゃダメなの。3つでもダメ。2つじゃなきゃダメだったの。
「みっちゃん、私の部屋で待ってて」
冷やしてあとで食べるために、芳佳ちゃんはスイカを台所に持っていった。
私は言われたとおり、芳佳ちゃんの部屋に行った。
芳佳ちゃんの部屋には一向に慣れない。いつ来ても、そわそわとしてなんだか落ち着かない。
私は畳にちょこんと座って芳佳ちゃんを待った。
手を見ると、くっきりと縄の跡がついていた。
「おまたせ」
と、芳佳ちゃんがようやく登場。もう、この数分の時間、どれだけ私が寂しい思いをしたか。
「じゃあ宿題しよっか」
うん、と私はうなずいた。本当はそっちは建前なんだけど。
まあもうすぐ期末試験もあることだし、ちゃんと勉強もしておかなくちゃ。
そうして私たちは勉強をはじめた。
「それじゃあ単語テストするよ」
私はそう切り出した。
芳佳ちゃんの成績は中の中。こと勉強に関しては、私が芳佳ちゃんを教えてあげることが多い。
「じゃあ、リンゴ」
「apple」
「正解。イチゴ」
「strawberry」
「正解。ぶどう」
「grape」
「正解。それじゃあ、スイカ」
「えっ、スイカ? えーっと、なんだっけ……?」
芳佳ちゃん、頑張って! 一番大事なところなんだよ!
ほら、スイカはブリタニア語で……
232: 2009/02/01(日) 16:03:50 ID:3p0xwc3L
そうして宿題を終えて、待ちに待った時がやってきた。
私は今か今かとそわそわしてしまう。
けれど、芳佳ちゃんはなにをするでもなく、ただぼーっとしている。
下敷きをぱたぱたとウチワの代わりにして扇いでたりする。
もしかして芳佳ちゃんは、スイカのことを忘れているのかな……?
それじゃあ困る。……でも私からは、なんだか言い出しづらい。
それとなく芳佳ちゃんが思い出してくれるように、なんとかしなくちゃ。
「ねぇ、芳佳ちゃん。しりとりしよ」
「え、しりとり?」
「私からね。『り』だから『リス』。『す』だよ、芳佳ちゃん」
よし、自然な流れ。芳佳ちゃん、気づいて。『す』からはじまる言葉といえば……
「えっと、『すもう』」
ずこー。でもこれは、私とがっぷり四つに組みあいたいってこと? やだ、芳佳ちゃんったら。
「じゃあ『うす』。『す』だよ、芳佳ちゃん」
「『す』? えーっと、『すもも』」
ずこー。でもこれは、私のお尻がまるですもものようだってこと? やだ、芳佳ちゃんったら。
「『モデルハウス』。『す』だよ、芳佳ちゃん」
「『す』? えーっと……『酢醤油』」
ずこー。でもこれは、酢醤油をかけて私を食べちゃいたいってこと? やだ、芳佳ちゃんったら。
「『有機ガラス』。『す』だよ、芳佳ちゃん」
「また『す』? えーっと…………『スキムミルク』」
す、好き!? 今芳佳ちゃんが、たしかに好きって……
「どうかしたの? 『く』だよ」
「ううん、なんでもないよ。『クリスマス』。『す』だよ、芳佳ちゃん」
「また『す』? えーっと…………『すきま風』」
す、好き!? 今芳佳ちゃんが、私のことを大好きだって……
「どうかしたの? 『ぜ』だよ」
「ううん、なんでもないよ。『ゼクス・マーキス』。『す』だよ、芳佳ちゃん」
「また『す』? えーっと…………『スキー』」
す、好き!? 今芳佳ちゃんが、生涯をかけて私を愛すって……
「どうかしたの? 『い』だよ」
「ううん、なんでもないよ。『イエス!アマゾネス!』。『す』だよ、芳佳ちゃん」
「また『す』? もうないよ」
「そんなことないよ! まだそんなに、回す うをこなしたわけじゃないし」
私は「回すう」と言う時に、「す」と「う」をちょっと空けて言った。
「かいす」を逆から読むと「すいか」。芳佳ちゃんはちゃんと気づいてくれたかな?
「なんで『す』ばっかり。みっちゃんのいじわる」
ダメだった。私の絶妙のヒントだったのに。
でも、そう言ってむくれる芳佳ちゃんもやっぱりかわいいから、まあよしとしよう。
私は今か今かとそわそわしてしまう。
けれど、芳佳ちゃんはなにをするでもなく、ただぼーっとしている。
下敷きをぱたぱたとウチワの代わりにして扇いでたりする。
もしかして芳佳ちゃんは、スイカのことを忘れているのかな……?
それじゃあ困る。……でも私からは、なんだか言い出しづらい。
それとなく芳佳ちゃんが思い出してくれるように、なんとかしなくちゃ。
「ねぇ、芳佳ちゃん。しりとりしよ」
「え、しりとり?」
「私からね。『り』だから『リス』。『す』だよ、芳佳ちゃん」
よし、自然な流れ。芳佳ちゃん、気づいて。『す』からはじまる言葉といえば……
「えっと、『すもう』」
ずこー。でもこれは、私とがっぷり四つに組みあいたいってこと? やだ、芳佳ちゃんったら。
「じゃあ『うす』。『す』だよ、芳佳ちゃん」
「『す』? えーっと、『すもも』」
ずこー。でもこれは、私のお尻がまるですもものようだってこと? やだ、芳佳ちゃんったら。
「『モデルハウス』。『す』だよ、芳佳ちゃん」
「『す』? えーっと……『酢醤油』」
ずこー。でもこれは、酢醤油をかけて私を食べちゃいたいってこと? やだ、芳佳ちゃんったら。
「『有機ガラス』。『す』だよ、芳佳ちゃん」
「また『す』? えーっと…………『スキムミルク』」
す、好き!? 今芳佳ちゃんが、たしかに好きって……
「どうかしたの? 『く』だよ」
「ううん、なんでもないよ。『クリスマス』。『す』だよ、芳佳ちゃん」
「また『す』? えーっと…………『すきま風』」
す、好き!? 今芳佳ちゃんが、私のことを大好きだって……
「どうかしたの? 『ぜ』だよ」
「ううん、なんでもないよ。『ゼクス・マーキス』。『す』だよ、芳佳ちゃん」
「また『す』? えーっと…………『スキー』」
す、好き!? 今芳佳ちゃんが、生涯をかけて私を愛すって……
「どうかしたの? 『い』だよ」
「ううん、なんでもないよ。『イエス!アマゾネス!』。『す』だよ、芳佳ちゃん」
「また『す』? もうないよ」
「そんなことないよ! まだそんなに、回す うをこなしたわけじゃないし」
私は「回すう」と言う時に、「す」と「う」をちょっと空けて言った。
「かいす」を逆から読むと「すいか」。芳佳ちゃんはちゃんと気づいてくれたかな?
「なんで『す』ばっかり。みっちゃんのいじわる」
ダメだった。私の絶妙のヒントだったのに。
でも、そう言ってむくれる芳佳ちゃんもやっぱりかわいいから、まあよしとしよう。
233: 2009/02/01(日) 16:05:08 ID:3p0xwc3L
「まだあるよ、『す』から始まる言葉。ほら、台所にある……」
「ああ、わかった!」
やった! ようやくわかってくれたんだね、芳佳ちゃん!
「『スパイス』」
ずこー。でもこれは、私といると刺激的だよってこと? やだ、芳佳ちゃんったら。
「みっちゃん、『す』だよ」
「『す』?」
「そう、『す』」
そんな、口に出すのは恥ずかしいよ……でも、『す』から始まる言葉といえば、これしかないよね。
「芳佳ちゃん……す、好き」
「『すすき』? き、き、『鱚』」
「キス!? そんなまだ心の準備が……でも芳佳ちゃんがどうしてもって言うなら……」
「えっ? どうしたのみっちゃん、『す』だよ?」
「あ、いや、なんでもないから気にしないで――えっと、『素敵探偵☆ラビリンス』」
私の恋の幻夢事件をバッチリ解決して、芳佳ちゃん!
「また『す』? あーもう降参」
芳佳ちゃんがお手上げのポーズをして、もうおしまいってなりかけたその時――
「スイカ切ってきたの。食べるでしょう」
と、芳佳ちゃんのお母さん(つまり私にとってはお義母さん)はそう言って、部屋に入ってきた。
手にはお盆、その上には切られたスイカが皿に並べられていた。
「うわぁ、お母さんありがとう。みっちゃん、食べよう!」と、芳佳ちゃんはとても嬉しそう。
「うん」と私はうなずいた。
しりとりは結局、私の負けだ。
「ああ、わかった!」
やった! ようやくわかってくれたんだね、芳佳ちゃん!
「『スパイス』」
ずこー。でもこれは、私といると刺激的だよってこと? やだ、芳佳ちゃんったら。
「みっちゃん、『す』だよ」
「『す』?」
「そう、『す』」
そんな、口に出すのは恥ずかしいよ……でも、『す』から始まる言葉といえば、これしかないよね。
「芳佳ちゃん……す、好き」
「『すすき』? き、き、『鱚』」
「キス!? そんなまだ心の準備が……でも芳佳ちゃんがどうしてもって言うなら……」
「えっ? どうしたのみっちゃん、『す』だよ?」
「あ、いや、なんでもないから気にしないで――えっと、『素敵探偵☆ラビリンス』」
私の恋の幻夢事件をバッチリ解決して、芳佳ちゃん!
「また『す』? あーもう降参」
芳佳ちゃんがお手上げのポーズをして、もうおしまいってなりかけたその時――
「スイカ切ってきたの。食べるでしょう」
と、芳佳ちゃんのお母さん(つまり私にとってはお義母さん)はそう言って、部屋に入ってきた。
手にはお盆、その上には切られたスイカが皿に並べられていた。
「うわぁ、お母さんありがとう。みっちゃん、食べよう!」と、芳佳ちゃんはとても嬉しそう。
「うん」と私はうなずいた。
しりとりは結局、私の負けだ。
234: 2009/02/01(日) 16:06:33 ID:3p0xwc3L
縁側にふたり並んで、足を投げ出し座った。
いただきます、とスイカを手にする芳佳ちゃん。
遅れて私もいただきますをする。
「あまぁい」
一口かじって、芳佳ちゃんは感嘆の声を出した。
「みっちゃん、ありがとう」
と、満面の笑みを私に向けて言う。そんなことを言われたら照れてしまう。
そして芳佳ちゃんはまた一口、さらにもう一口――
芳佳ちゃんは本当においしそうにスイカを食べてくれる。
私はその笑顔を見ているだけで、もう胸のなかはいっぱいだった。
「どうしたのみっちゃん? 食べないの?」
すっかり見惚れていた私に、芳佳ちゃんが言ってくる。
「ごめん、ちょっとぼーっとしてて」
私は手にしたスイカに塩をふった。
その実は鮮やかな赤い色。
一口かじり、口に入ると、あとは噛まなくたって口のなかで自然と溶けていく。
よぅく冷やしただけあって、とっても甘くって、みずみずしかった。
ぷっ、と芳佳ちゃんは口に含んだ種を飛ばした。
あの種はどうなるんだろう。ふと、そんなことを思った。
私も真似して種を飛ばす。
そうしてふたりで、種を飛ばしっこした。
「あ、芳佳ちゃん」
私はそれに気づいて、思わず声を出した。
どうかしたの、と芳佳ちゃんは私に顔を向ける。
「ほっぺたのとこ、種がついてる」
私は左手を伸ばして、その種を取ってあげた。
えへへ、と芳佳ちゃんから笑みがこぼれる。
なんだかその種が、私には愛おしいものに思えた。
その種は庭には捨てずに、手のなかに包みこむようそっと握った。
「それじゃあまた明日」
芳佳ちゃんは手を振って別れを告げる。
「うん、また明日」
心惜しくも私はそれに背を向けて、家路をいそいそと歩いていく。
日はもう暮れようとしている。私の目に映る世界を赤々と染め上げている。
私はふと立ち止まって、芳佳ちゃんのことを思った。
芳佳ちゃんはちゃんと気づいてくれたかな?
どうして私がスイカを2つ持っていったのか。
スイカはブリタニア語でwatermelon、
それが2つでメロンメロン、
つまり私が芳佳ちゃんにめろんめろん、ってことなんだよ。
いただきます、とスイカを手にする芳佳ちゃん。
遅れて私もいただきますをする。
「あまぁい」
一口かじって、芳佳ちゃんは感嘆の声を出した。
「みっちゃん、ありがとう」
と、満面の笑みを私に向けて言う。そんなことを言われたら照れてしまう。
そして芳佳ちゃんはまた一口、さらにもう一口――
芳佳ちゃんは本当においしそうにスイカを食べてくれる。
私はその笑顔を見ているだけで、もう胸のなかはいっぱいだった。
「どうしたのみっちゃん? 食べないの?」
すっかり見惚れていた私に、芳佳ちゃんが言ってくる。
「ごめん、ちょっとぼーっとしてて」
私は手にしたスイカに塩をふった。
その実は鮮やかな赤い色。
一口かじり、口に入ると、あとは噛まなくたって口のなかで自然と溶けていく。
よぅく冷やしただけあって、とっても甘くって、みずみずしかった。
ぷっ、と芳佳ちゃんは口に含んだ種を飛ばした。
あの種はどうなるんだろう。ふと、そんなことを思った。
私も真似して種を飛ばす。
そうしてふたりで、種を飛ばしっこした。
「あ、芳佳ちゃん」
私はそれに気づいて、思わず声を出した。
どうかしたの、と芳佳ちゃんは私に顔を向ける。
「ほっぺたのとこ、種がついてる」
私は左手を伸ばして、その種を取ってあげた。
えへへ、と芳佳ちゃんから笑みがこぼれる。
なんだかその種が、私には愛おしいものに思えた。
その種は庭には捨てずに、手のなかに包みこむようそっと握った。
「それじゃあまた明日」
芳佳ちゃんは手を振って別れを告げる。
「うん、また明日」
心惜しくも私はそれに背を向けて、家路をいそいそと歩いていく。
日はもう暮れようとしている。私の目に映る世界を赤々と染め上げている。
私はふと立ち止まって、芳佳ちゃんのことを思った。
芳佳ちゃんはちゃんと気づいてくれたかな?
どうして私がスイカを2つ持っていったのか。
スイカはブリタニア語でwatermelon、
それが2つでメロンメロン、
つまり私が芳佳ちゃんにめろんめろん、ってことなんだよ。
235: 2009/02/01(日) 16:08:26 ID:3p0xwc3L
おまけ。芳佳が旅立ったあと。
芳佳ちゃんはブリタニアに行ってしまった。私を残して。
寂しくないなんてそんなこと、嘘でだって言えるわけない。
それでも私は、笑顔で見送ることを決めた。
だってこれは芳佳ちゃんが自分で決めたことだから。
芳佳ちゃんがお父さん(つまり私にとってはお義父さん)のことをどれだけ思っているか、
それは私だってよく知っている。
どれだけ強く、会いたいと思っているのか。
だから私は後ろ髪を引くようなことをしちゃいけない。
そうじゃなくって、背中を押してあげないといけないのだ。
見送りを終えて家に帰ると、私は庭先にあのスイカの種を埋めることにした。
芳佳ちゃんが帰ってくる頃には、きっと大きな実が成るはず。
そうしてまた縁側で、ふたり並んでスイカを食べよう。
たしかに今は、酸いかもしれない。
でも私は信じている。この種がいつか、甘い実を結ぶことを。
夏の空も次第に暮れ、もう一番星を見つけることができる。
私は流れ星を待っていた。
芳佳ちゃんは水火も辞せずつっこんでしまう無鉄砲なところがあるから、とっても心配。
だから、お星さまにお願いをする。
「どうか、芳佳ちゃんが無事に帰ってきますように」
――と、私の足元にあらわれた、一匹の子猫。
「どうかしたの、紅染」
私が話しかけると紅染は、さきほど私が種を埋めたところを掘り起こそうとする。
「だあめ」
私はそうはさせまいと紅染を抱き上げる。そうしてその黒い毛並みを撫でてあげる。
みゃあ、と紅染は甘えるような声で鳴いた。
それにしても黒猫なんて……不吉なっ。
そうだ、お星さまにこうもお願いしておかなくちゃ。
「どうか、芳佳ちゃんに泥棒猫がつきませんように」
以上。
みっちゃん誕生日おめ!こんなんで本当に申し訳ない!
芳佳ちゃんはブリタニアに行ってしまった。私を残して。
寂しくないなんてそんなこと、嘘でだって言えるわけない。
それでも私は、笑顔で見送ることを決めた。
だってこれは芳佳ちゃんが自分で決めたことだから。
芳佳ちゃんがお父さん(つまり私にとってはお義父さん)のことをどれだけ思っているか、
それは私だってよく知っている。
どれだけ強く、会いたいと思っているのか。
だから私は後ろ髪を引くようなことをしちゃいけない。
そうじゃなくって、背中を押してあげないといけないのだ。
見送りを終えて家に帰ると、私は庭先にあのスイカの種を埋めることにした。
芳佳ちゃんが帰ってくる頃には、きっと大きな実が成るはず。
そうしてまた縁側で、ふたり並んでスイカを食べよう。
たしかに今は、酸いかもしれない。
でも私は信じている。この種がいつか、甘い実を結ぶことを。
夏の空も次第に暮れ、もう一番星を見つけることができる。
私は流れ星を待っていた。
芳佳ちゃんは水火も辞せずつっこんでしまう無鉄砲なところがあるから、とっても心配。
だから、お星さまにお願いをする。
「どうか、芳佳ちゃんが無事に帰ってきますように」
――と、私の足元にあらわれた、一匹の子猫。
「どうかしたの、紅染」
私が話しかけると紅染は、さきほど私が種を埋めたところを掘り起こそうとする。
「だあめ」
私はそうはさせまいと紅染を抱き上げる。そうしてその黒い毛並みを撫でてあげる。
みゃあ、と紅染は甘えるような声で鳴いた。
それにしても黒猫なんて……不吉なっ。
そうだ、お星さまにこうもお願いしておかなくちゃ。
「どうか、芳佳ちゃんに泥棒猫がつきませんように」
以上。
みっちゃん誕生日おめ!こんなんで本当に申し訳ない!
236: 2009/02/01(日) 16:13:23 ID:Y6pZ3S1D
最後の最後で黒いみっちゃん黒い
みっちゃんが震電型ストライカーを履いて皇都防空隊で芳佳の留守を守る二期マダー?
みっちゃんが震電型ストライカーを履いて皇都防空隊で芳佳の留守を守る二期マダー?
コメントは節度を持った内容でお願いします、 荒らし行為や過度な暴言、NG避けを行った場合はBAN 悪質な場合はIPホストの開示、さらにプロバイダに通報する事もあります