334: 2009/02/02(月) 20:29:35 ID:DMiITGfV


シリーズ作品リンク一覧を活用してのアドベンチャーゲームちっくなマルチノベルです。
全話投下後にアンカー集作ります、スレ内ではそちらを利用して読み進めて下さい。

エイラ主観でエイラ×サーニャ(オールキャラ)です。
全体的に変な話です。
バッドエンドも仕込んでいます、苦手な方はこのレスのメル欄にネタバレしておくので回避お願いします。
それと基地内には隊員以外の整備兵などはいない(少なくともエイラの目には映らない)事を前提に書いています。

全38話で規制手前の9レスくらいづつの投下になると思います。
迷惑をおかけしますが連投規制に引っ掛かったら無視してスレ進めて下さい。

そして保管庫さんへ、お礼遅くなりましたがリレー勲章実現化ありがとうごさいます。
リレー活性化!しませんねごめんなさいリレーしんどいもんね(涙)でも四十八手が盛り上がって新しい書き手の方が増えればイイナ!
それから先にお詫び申し上げますが√28「魔女裁判」でリレー文やらアレやらをまるっとお借りました。
トリビュートだから恥ずかしくないもん!と言いたい所ですが差し障りがありましたら削除します。
御足労ですがチェックお願い致します。

335: 2009/02/02(月) 20:33:20 ID:DMiITGfV

ifシリーズ√01
「はじまりの詩」

※このお話は主人公エイラの行動により結末が大きく変化するマルチエンディングです。
一話終了ごとに提示される選択肢を選び、提示された話数へとジャンプしながら読み進めて下さい。
果たしてエイラは愛しのヒロイン、サーニャと結ばれる事が出来るのか?はたまた……
その運命はあなたが握っているのです。


~プロローグ~
未来はまるでわたぐものよう
ふわふわしていて心地よく
ぼんやりとして触れることは叶わない
でもね ながめているだけでは置いていかれるもの
だからあなたはとびつづけるの この広い空を

あなたに出会うその日のために……
愛しのあなたへ捧ぐ詩

~起床~
私は目覚める、なにやら夢をみていた気もするけどはっきりとした記憶はない。
私はふと考える。あの夢はどこから来て、どこへ消えていくんだろう。
そして私は考える。私の存在について。
今ここに在る私はひょっとして誰かがみている夢なんじゃないか。
たとえこれが現実だとして私は何者なのか?何故ここに在る?
ん?以前にもこんな事を考えた気もする……デジャヴ?
まぁよくある事なんだな。
私は頭に靄がかかった時、その身をカードに委ねる。
テーブルからタロットを持ち帰るとその中から22枚の大アルカナを抜き出しベットの上に広げた。
ゆっくりと両手でのの字にシャッフルすると、その混沌とした運命の渦から一枚を引き出した。

私は真ん中から数えて……

★一枚目のカードを引いたんダナ。
→√20へ
★二枚目のカードを引いたんダナ。
→√16へ
★三枚目のカードを引いたんダナ。
→√17へ
★四枚目のカードを引いたんダナ。
→√13へ

336: 2009/02/02(月) 20:35:15 ID:DMiITGfV
ifシリーズ√02
「蕃茄紅色の食卓」

私は朝食をとるためダイニングに向った。

~ダイニング~
そこには朝食とは思えない光景が広がっていた。なんなんだこのテーブル一面の紅白模様は。
マルガリータにボロネーゼ、それに加えてトマトジュースと牛乳、トマトづくしじゃないか。

「おはよー、あたしの力作なの~じゃんじゃんたべてね~」
「ウッ、ウン」
うぅルッキーニは嬉しそうにそう言ってるけどさ……朝からこれはないだろ。

「ねぇシャーリー、マルガリータとボロネーゼどっちがすき~?」
「ん~どっちも好きだけど、あたしはやっぱりトマトジュースかな」
それ答えになってないよシャーリー大尉、ほらルッキーニが困惑……してない。「やっぱりシャーリーも!あたしもあたしも~」
「あーわたしも断然トマトジュースだなぁ~」
「無論だ」

二人の会話にハルトマンとバルクホルン大尉が加わる、なんだこいつらの会話。でもこの中じゃトマトジュースが一番まともかもな。
その割に四人ともマルガリータもボロネーゼも美味そうに食べてるな。
みんな朝からこんなヘビーな物食べれるよ……
うわーハルトマンなんか口の回り真っ赤っかだよ。
それに耐えられずにバルクホルン大尉がハルトマンの口の回り拭きだした。ハルトマン……こいつわざとやってたな。

「朝からこんな重いものなんて常識知らずでしてよ」
おっ珍しくいい事言うなペリーヌ、私も同感だよ。
「私も朝からこれはちょっとね……別に年だからとかそんなんじゃないのよ」
いや誰もそんな事言ってないよミーナ隊長。

「すいませんリクエストがあったので私がルッキーニちゃんにお手伝い頼んだんです」
朝食当番のリーネが申し訳なさそうな顔をする。誰だよ!朝からこんなトマト祭りをリクエストした奴は!トマトをぶつけてやりたい気分だな。

「まぁそう言うなトマトは生理不順にいいんたぞ、我々もいずれ母になるやもしれん、その時に備えでだな」
坂本少佐がそう言うとペリーヌとミーナ隊長はがっつき出した。
坂本少佐はあれだ、保健体育の先生になったら恥ずかしげもなく赤ちゃんのつくり方を指導するタイプだな。

「それにだ、朝から紅白とは縁起がいいじゃないか、わっはっはっは」
それは扶桑での話だろ、縁起と食欲は関係ないと思うよ坂本少佐。
でも縁起か……
私は今朝の占いの結果を思い出す。

私の引いたカードは……

★【ⅩⅢ】だったんダナ。
→√03へ
★【ⅩⅩ】だったんダナ。
→√10へ

337: 2009/02/02(月) 20:40:17 ID:DMiITGfV
ifシリーズ√03
「ラベンダーピンク」

私が引いたカードは【ⅩⅢ 氏神】だったな。

私は占いの結果を思い出していた。縁起でもない結果だった。
そんな私にとって目の前の食卓に広がる光景は、縁起がいいどころか血溜りを暗示して他ならなかった。

「エイラ……だいじょうぶ?顔色が……それともトマト嫌い?」
隣に座っていたサーニャが心配そうに私の顔を覘う。なにやってるんだ私、この娘の笑顔を守るのが私の使命だろ、その私がこの娘の顔を曇らせてどうする。
たかが占いだ、そんなものに左右されてどうするよ。

「そんなコトナイ大丈夫だサーニャ、ほら食欲だって……ムグゥ、ゲホゲホ」
私は無理矢理にマルガリータを頬張り咳き込んだ。
それを察して宮藤が水差しを抱えてやって来る。それにつられて他のみんなの視線も私に注がれた。

「大丈夫ですかエイラさん、顔色も悪いですし」
「困ったわね、今日は出撃の予定もあるのだけど」
「大丈夫だっテ、平気平気」
「そうはいかんだろエイラ今日は休養していろ、代わりは……宮藤、出来るな」
「はい坂本さん!私頑張ります!だからエイラさん、私に任せて下さい!」
「チョットマテ」
「いいえ待ちません、もしもの事を考えて休養するのも大事な仕事よ、それに宮藤さんだって成長しているわ」

結局私は病人扱いされ今日の出撃は坂本少佐、バルクホルン大尉、ペリーヌと宮藤が行なう事になった。
確かにミーナ隊長の言う事にも一理ある。こういう日はおとなしくしてるに限るからな。

~病室~
日も傾きかけた頃になり警報が鳴った、今頃宮藤達は戦闘の最中だろう。
私は具合なんて悪くもないのに一日中ベットの上にいた。果たしてこれでいいのか?
私がこうしてるせいで宮藤達にもしもの事があったらどうやって責任を取れるというのか。
まだ間に合うかもしれない、私はハンガーへと向った。

~ハンガー~
ハンガーへ向うと既に宮藤達は帰還していた。
私は人影を確認する。一、二、三、四、大丈夫みんな無事だ。私は胸を撫で下ろす。

「ありがとナ宮藤、代わりに出撃してくれテ、ワタシはもう平気ダヨ風呂行こうゼ」
「体調回復したんですねエイラさん!もちろん行きますよ(涎)」
視線の先が気になるが……せめて背中でも流して労わないと私の気持ちがおさまらないからな。
「そうですわね、背中でも流して頂かなければですわね」
うぅペリーヌ、おまえはまだ誘ってないだろ!っていうか先に言われると労いの気持ちも失せるな。

338: 2009/02/02(月) 20:42:13 ID:DMiITGfV
~浴室~
風呂場には私と宮藤、ペリーヌ、バルクホルン大尉が来ていた。
坂本少佐はストライカーの脱着に手間取ってた。風呂好きの少佐の事だ、後からやって来るだろう。
バルクホルン大尉は遠慮していたが私が無理に誘った。
愛しの妹(仮)の裸でも拝んで戦闘の疲れを癒して欲しいという私なりの気配りだ。
ペリーヌは誘ってもいないのについて来ている。

「本当に凄かったんですよ!ネウロイを海中に誘き込んで!」
私の背中を流しながら宮藤は嬉しそうに先程の戦闘の話を続ける。
「海上に現れた時の少佐の凛々しさと言ったら、あっエイラさんもう少し右でしてよ」
なぜか私は宮藤ではなくペリーヌの背中を流している。全く綺麗な肌しやがって、可愛い……くない奴だな。
「ああネウロイは水を嫌う習性があるからな、流石少佐と言った戦法だなあれは」
今まで浴槽の中から宮藤の裸体を凝視していたであろうバルクホルン大尉も話に加わる。

その浴槽はラベンダーピンクに染まっていた。浮かんでいるのはサーニャが愛用しているラベンダーのポプリだ。
「ヘェ~大尉もアロマ好きなんダナ」
「悪いか!」
「以外ですわ……あら失礼しました」
「以外で悪かったな!」
「そんな事ないです素敵ですよ!まるでお花畑に舞い降りた妖精さんみたいです!」
「!!!……わっ、私は先にでるからな!」

バルクホルン大尉は逃げるように風呂場を後にする。鼻血が吹き出していた、たぶん変な妄想が爆発したんだな。
扶桑の魔女ときたら……宮藤、こいつも天然タラシだ。
サーニャに近づかないよう気を付ける前に、私自身落とされないようにしないといけないな。

~キッチン~
私と宮藤は風呂からあがりキッチンへと移動していた。
風呂あがりのアレいっとくぅ~?いっときますかぁ~?なんて会話が交されたからだ。
腰に手をあて牛乳瓶に口を付ける宮藤の仕草は凛々しくも可愛ゆく、そして何より工口かった。
私の目は宮藤に釘付けとなった。宮藤の口の端からは牛乳がたらりと滴れ落ちて行く。
そんな宮藤を見つめながら

私は溢れ出るリビドーを……

★爆発させたんダナ。
→√32へ
★押さえ込んだんダナ。
→√05へ

339: 2009/02/02(月) 20:45:11 ID:DMiITGfV
ifシリーズ√4
「ダンスのお相手」

私はバルクホルン大尉とロッテを組む事になった。

「隊列を確認するバルクホルンとエイラは前衛、私とペリーヌが後衛だ以後柔軟に対応せよ」
『了解!』

ペリーヌが坂本少佐の後ろにつく、機嫌はようやく治ったようだ。
っとペリーヌの心配なんてしている場合じゃないんだな、私は先行するバルクホルン大尉を追った。

「敵機確認、敵は超小型ネウロイと判明、小型だからと油断するな」
『了解!』
「ペリーヌは私がコアを確認するまで敵を近づけさせるな」
「了解しました」
「バルクホルン隊突撃開始っ!敵を撹乱せよ」
『了解!』

私達は突撃する。流石はバルクホルン大尉だ既に敵の動きに合わせている。
ところがネウロイは突然進路を変えた。私達を無視して坂本隊へと目標を定めたのだ。

「どうやら私達は、奴のダンスのお相手としてお気に召さなかったらしいな」
「まっ確かにワタシはダンス得意じゃないケドナッ」

バルクホルン大尉もなかなか洒落た事を言うな、それだけ余裕があるんだ。
私達が急速転換するとネウロイは既にペリーヌをやり過ごして坂本少佐に接近していた。
賢い奴だ、誰がこのシュバルムの核なのか一瞬で見極めたんだ。
これは確かに小型だからといって油断ならない相手だな、余裕なんて言ってる場合じゃないぞ。
その上信じられない事が起きた、ネウロイが次第にその姿を変貌させていく……人型だ!
そこに私達四人に加えもう一人の黒い魔女が現れたのだ。

「ナッ、ナンナンダ!」
「こんな事が……ありえまして……」
「これでは迂闊に割り込めんな」

右手にあたる部分はビーム状の扶桑刀へと化し坂本少佐と剣を交えていた。
ネウロイの変貌は加速する、こいつは……坂本少佐を真似ているんだ!
このままじゃ擬態は完成へと向かい坂本少佐との区別がつかなくなってしまう。
早めに手を打たないと……痺れを切らしたのはペリーヌだった。

「トネール!」

坂本少佐の偽物が許せなかったんだろう。だがこの行為は彼女のピンチを招いた。
ネウロイの頭部がペリーヌへと向けられる。その右目に当る部分からビームが発射された。

「まずい、ペリーヌ避けろ」
「え、なんですって」
「間に合エッ!」

私はペリーヌを抱えその場を離脱する、間に合った。ビームは私達の横を霞め海中に没する。
ペリーヌを助けたものの私は大きなミスをした。全身に電気が走る、文字通りの意味だ。
ペリーヌは帯電していた、トネール直後だという事をすっかり忘れていたんだ。
私達はきりもみをしながら墜落する、そして私は意識を失った。

340: 2009/02/02(月) 20:47:33 ID:DMiITGfV
~起床~
私は目覚める、なにやら夢をみていた気もするけどはっきりとした記憶はない。
頭がズキズキする、体がぐにゃ~っとよじれたみたいな感覚だ。私はバルクホルン大尉に抱かれたまま海上を飛んでいた。

「気付いたか、気分はどうだエイラ?」
「あれ?ここは……そうだ戦闘ハ?ネウロイはどうなったンダ?」
「安心しろ無事片付いた、それからじっとしていろ基地まで運んでやる」

なんか今日の大尉は優しいな、甘えてみるのもたまにはいいか。
そのバルクホルン大尉の話によるとペリーヌが作り上げた隙をついて坂本少佐がネウロイを一刀両断したらしい。
落下したペリーヌと私はバルクホルン大尉に受け止められた。
流石に二人分を支えるには相当の魔力を消費したとの事だ。
でそのペリーヌは坂本少佐に抱えられ幸せそうにしている。

「腹減っタナ~」
「あぁ出撃準備で昼食抜きだったからな」
「こっちなんて朝食も碌にだったシナ」
「わたくしもですわ」
「だから言っただろう?好き嫌いは良くないと」
「食べれる時には食べておく、これもパイロットの仕事だ、二人供しっかり肝に命じておくんだな」

「そうは言ってもサ……朝からマルガリータとボロネーゼじゃナ」

私の発言に対し、ペリーヌは言った……

★「確かに、朝からあんな重いものなんて耐えられませんわ」
→√11へ
★「おかしな事を仰いますわね?今朝のメニューも……」
→√6へ

341: 2009/02/02(月) 20:50:25 ID:DMiITGfV
ifシリーズ√05
「かまいたちの夜」

私は溢れ出るリビドーを押さえ込んだ。

ちょっと待て私、先程の誓いをもう忘れるなよ!私は呼吸を整える。
そしてリーネは現れた。

「うわわぁリーネ!誤解ダ、未遂ダ、マダ何もしてないからナ!」
「そんな……エイラさんが犯人だったなんて……」
「エ?犯人?」

~談話室~
リーネからの知らせを受け私達が談話室に向うと他のみんなも集まっていた。上級士官は不在で、その場を指揮していたのはシャーリー大尉だった。
「全員集まったな、じゃあ確認している状況を率直に述べる」
いつになく険しい表情のシャーリー大尉から語られた内容は以下の事だった。

・ミーナ隊長が首から血を流し作戦室内で倒れていた事。
・事件当時の目撃者も痕跡もなく原因は不明である事。
・第一発見者はルッキーニで、私と宮藤がキッチンにいた時刻である事。
・危篤状態の為、坂本少佐とバルクホルン大尉が病室へと運び、現在付き添っている事。
・追って連絡があるまで待機命令である、以上の事だった。

そしてハルトマンの一言が重い沈黙を破った。
「もしかしてさ……この中に犯人がいるんじゃない?」
全員が顔を見合わせる。
考えてもいなかった、この中の誰かが犯人だなんて。
私は宮藤と一緒だったから一応アリバイがある、だけど他のみんなの行動については不明だ。

「わたくしは嫌ですわ!この中に殺人犯が潜んでいるかも知れないのに、そんな方々と一夜を共にするなんて!自分の部屋に帰ります!」
「取り乱すなペリーヌ、命令違反だぞ」
シャーリー大尉の制止を振り払い、ペリーヌは自室へと消えていった。

それから犯人捜しの流れとなるのは当然の事だった。
この中の誰かが怪しいとなると、まず疑いが向けられたのは第一発見者のルッキーニだ。
「あたしじゃないよ!あたしじゃないかんね!」
ルッキーニはお仕置きを受ける為に作戦室に向ったらしい。
夕食当番をさぼった事が理由だ、確かにキッチンには夕食の準備がされていなかった。
朝食を手伝ったからすっかり忘れていたなどと言い訳が続くと、責任を感じたのかリーネが口を開く。
「カマイタチです、カマイタチの仕業なんですきっと」
「リーネちゃんかまいたちって両腕が鎌のお化けの事?」
宮藤はリーネ以上に意味不明な言動で返した。
「いいえお化けとかじゃなくて、カマイタチってたぶん真空の刃物が……」
サーニャが語るとみんなの視線がハルトマンに集まる、風使いの魔女だからだ。
「わ、わたし~!?なんでさ~シュトルムは人頃しの道具なんかじゃないって~」
「そういえば……聞いた事がある!」
『知っているのか?シャーリー!』
「ああカマイタチは真空の刃、それ故その傷口から出血はしない、つまりこいつはシロだ」
ゲェェェーッ流石はリベリオンの魔女、無駄に博識だ。ただのおっOい超人なんかじゃなかった。
今日のシャーリー大尉は頼もしい、普段は楽天家だけど責任を負う立場になれば毅然とするタイプだったんだ。

結局犯人捜しは中断された。
これ以上続けたら疑心暗鬼によりお互いの身を滅ぼすとのシャーリー大尉の意向によるものだ。
無意味な不安は消し去り、仲間を信頼して各自の寝室で休養を取るという結論に達した。
傷付け合って疲れきっていた全員がこの結論に納得した。

343: 2009/02/02(月) 21:25:13 ID:DMiITGfV

~サーニャの寝室前~
ミーナ隊長の治療を行なうため病室へと向った宮藤を除き、私達は自室へと引き返す。私はサーニャを部屋へと送ると扉の前で立ち止まった。

「サーニャ、あのナ……なっなんでもナイ、じゃあ良い夢ヲ」
「うん……エイラもね、おやすみなさい」

おやすみ……、そう応える前にサーニャは自室に消えていった。
なぜ私の部屋で一緒に寝ようと言えないのか。わかっているよ、私がヘタレだからだろ。
現に今も「やっぱりエイラと一緒にいたいの」なんてサーニャが飛び出して来る事を期待しているんだから。
扉の向うからサーニャが飛び出して来る様子は感じられない。私は自室へと引き返した。

~自室~
ベッドに向う私を迎えてくれたのはタロットカード達だった、今朝の状態のままだ。
ベットの上に横たわった【氏神】のカードにはドクロが描かれている。その漆黒の瞳が私を見つめていた。
占いは当った、これはミーナ隊長の事を暗示していたんだ。だけど待てよ、このカード正位置だったっけ?逆位置だったっけ?

私は記憶を辿る、確かカードは……

★正位置だったんダナ。
→07へ
★逆位置だったんダナ。
→08へ

344: 2009/02/02(月) 21:28:07 ID:DMiITGfV
ifシリーズ√06
「見馴れない風景」

ペリーヌは不思議そうな顔つきでこう言う。
「おかしな事を仰いますわ、今朝のメニューも……」

「ああ蒸かしたじゃがいもだったはずだが」
「エッ!?マルガリータとボロネーゼじゃなかっタカ?」
「金曜日は朝昼晩三食カレー、それ以外の朝食はじゃがいもを蒸かしたものと相場が決まっているだろ」

何がどうなってるんだ?
みんな嘘をついている素振りじゃないし、私の記憶違いかな……
あれ?やっぱり何かおかしい!

「バルクホルン大尉その髪型!ポニーテール!?」
「にっ似合ってないのか?可愛くないのか!?そうならはっきり言ってくれ!」
「そっ、そんなコトないヨ似合ってル、似合ってル」

私が寝てる間に束ねたのかな?寝てる間といえばまだ頭がズキズキするな。
でもなんだろうこの漠然とした違和感は……
その謎は解けねまま、私達は基地へと帰還した。

~自室~
私とペリーヌの墜落の報せは基地へと届いていた。頭痛を訴えた私はサーニャに心配され、無理矢理ベッドに押し込まれていた。
そのサーニャはベッドの横に椅子をつけてリンゴを剥いてくれている。

「エイラ、あ~んして!はい、あ~ん!」
「チョッチョット!サーニャ!」

サーニャは淋しげな顔をする。
何やってんだ!夢にまで見たシュチエーションじゃないか!ビビってどーする!

「たっ、食べる食べる折角サーニャが剥いてくれたんだシナ」
「はい!じゃぁ~あ~ん!」
「あっ、あ~ン……モグモグ」
「もう一つ、あ~ん!」
「あ~ン……モグモグ」
「うふっ、美味しい?」
「ウン、おいちィーッッォ~」

舌を噛んだ……
サーニャが微笑む、私も照れ隠しに笑った。
あ~んサーニャ可愛いな~何なの?ねえ何なのこれ、毎朝幸福を呼ぶ藍色の頭像にお祈りしていた御利益か何か?
それとも何かの御褒美なわけ?うんうん、ずっとサーニャだけを見つめて来たんだもんな。
そのサーニャがこっちを……見つめてるよ!あ~どーしよぉ~も~。

「あれ?エイラやっぱり顔赤いよ、熱……あるのかな?」

そう言ってサーニャはおでこを私のおでこにあてた。目の前にはサーニャの顔が迫る。
近い!近いよ!こんなに近くで見たのはサーニャが部屋を間違えて来た時、そっと寝顔を覗いた時以来だ。
私の吐息が加速している、ドキドキしてるのサーニャにバレちゃうかな?
あれ?気のせいかサーニャの吐息も荒い。あぁ私の頬にサーニャの吐息がかかって、ふぅ~んってかかって来るぅ。
なんだかサーニャの顔も真っ赤だし、目がとろ~んとして、目蓋が次第に閉じられて、唇が唇が……唇!?
こっこっこれって、もっもっもしかして、キッキッキキキキッ、キス!?
キス5秒前って事!!!
どーしよーして……いいのかな……
でももし勘違いでした、なんて事になったらサーニャに一生口聞いて貰えなくなっちゃう。
どうする!どうする?どうする……

345: 2009/02/02(月) 21:29:50 ID:DMiITGfV
~ザ・クイズショー~
あなたの選択があなたの運命を決める!さぁ今日も始まりました、人生の岐路ザ・クイズショー
司会進行はヘタレでお馴染みこの私、エイラ・イルマタル・ユーティライネンがお贈り致します。
そして本日の回答者はスオムスからお越しの公務員エイラ・イルマタル・ユーティライネンさんで~す。こんにちは

こっこんにちハ

あれ~少し緊張していますね~意気込みの程は?

がっ頑張りマス

ここは是非とも頑張って欲しい!さて現在エイラさんはセカンドステージまでクリア。
サーニャさんの好感度を50%獲得しているわけですが、次のサードステージの問題に正解すれば好感度が75%に!
現在のお友達から、なんと!一気に恋人になれるチャンスです!
だがしか~し!不正解の場合は今まで獲得して来た好感度がすべて水の泡!これぞ人生の縮図ザ・クイズショー。
ではエイラさんサードステージに挑戦しますか?ませんか?

……ちょっ挑戦しマス!

挑戦します出ました!そうでしょう挑戦するでしょう。
なんせ恋人になればあんな事やこんな事が出来ちゃうわけです、夢のウエディングベルも目直に迫って来ますからね~。
ではエイラさん準備はよろしいですか?

ハッハイ!

元気な声だ!それじゃ~いきますよ~問題!
今あなたの目の前に愛しのサーニャさんの唇があります。ここであなたが取るべき行動は?

A.キスする
B.キスしない
さぁどっち!?

……

さぁどうする?答えて!

→A.キスする
 B.キスしない

そっちでいいのかぁ~?

 A.キスする
→B.キスしない

本当にそっちでいいのか~?さぁどうする!時間がないぞ~さぁさぁ早く!
残念、時間切れだぁ~!!!

346: 2009/02/02(月) 21:33:06 ID:DMiITGfV
~自室~
どうする!どうする?どうする……
無限回廊から抜け出せずにいた私に、サーニャがそっと囁く。

「ねぇいつもみたいに早くしてよ……キス、誰も視てないよ」
「あわわわわっ、キスってサーニャ、キスっテ!」
「ふふっ可笑しなエイラ、もしかして風邪?でもエイラのなら染っても平気、だって私達……恋人同士なんだもん!」

恋人同士!?第一いつもみたいにっていつキスしたんだっけ?
この私がサーニャとの思い出を忘れるはずないし……
無意識で告白とかしちゃったのかな?

「恋人同士って、あの……いつから私達付き合ってるんだッケ?」
「そんな……ひどいよエイラ!あの日の事を忘れるなんて」
「アノ日???」
「うん私がわざと部屋を間違えたあの日、そのままエイラに押し倒されて……(ポッ)」

サーニャはシーツにのの字を書いている、顔はさらに赤く染まっていく。
サーニャを押し倒しただって!いったい何処のどいつだ……って私なのか???
確かにあの日の事は覚えている、一晩中悶々として一睡も出来なかったんだから。
たけど押し倒してなんかいないぞ、そっと寝顔を覗いただけで何も出来なかったんだ。
やっぱり何かおかしい!私の記憶や経験と、周りの人のそれとが食い違っているのは確かだ。
どうする私?

……まっいっか、こうしてサーニャと恋人同士になれたわけだしさ♪

……よくねーよ!
何考えてるんだ私!確かにサーニャと恋人同士になりたいよ、なれて確かに嬉しいよ。
だけど幸せってものは……サーニャの気持ちだけは自分の手で掴み取らなくちゃ駄目なんだ!
偶然の産物なんかで与えられていいはずがない。そんなものに何の意味がある?そうだよなダニエル!

私は本棚横にある藍色の頭像を見つめる、ダニエルはサーニャの次に大切な私の親友だ。
人には言えない悩みを顔色一つ変えずに聞いてくれるダニエル、嬉しい時も悲しい時もいつも傍にいてくれるダニエル。
‘おまえの言う通りだ’
そのダニエルが私の心に語りかけて来る、私は決心を固めた。

「サーニャこれからみんなのとこに行く一緒に来てクレ」
「どうしたのエイラ!?」
「訳は後で話すけど……たぶんワタシはサーニャの知ってるエイラじゃナインダ!」

347: 2009/02/02(月) 21:34:59 ID:DMiITGfV
~ダイニング~
ダイニングには他のみんながいて、昼食兼三時のお茶の最中だった。
そして予想以上に深刻な事態を目撃する。

「坂本少佐眼帯が右目じゃなくて左目になってル!」
「いや私の眼帯は元々左目だが」

「ペリーヌ眼鏡はどうした!」
「そんな物必要ありませんわ、わたくしの視力は2.0ですもの」

「バルクホルン大尉その髪型!おだんごヘアー!?」
「にっ似合ってないのか?可愛くないのか!?だからいつもみたいにトゥルーデ姉ちゃんと呼んでくれないのか?」

トゥルーデ姉ちゃんって何の事だよ!もしかして……ここはお姉ちゃんワールドなのか?
これは小一時間前よりも記憶の誤差が開いている。頭痛による一時的な記憶障害なら誤差は縮まるはずなのに。
たぶん何処かに時空の歪みが存在して、その歪みは現在も拡大している。
歪みが拡大するにつれ別の時空に飛ばされて、時空認識能力のある私だけが記憶と経験を維持しているんだ。
やはりサーニャと恋人同士になれたなんて浮かれてる場合じゃない。

「ワタシはこの世界の人間じゃない、別世界の人間なンダ」
「エイラあんた宇宙人だったの!」
「そーじゃナイ、私はパラレルワールドから来たエイラなンダ」
『パラレルワールド!?』「でも仮にそんな世界が存在したとして世界間を移動できるのかしら」

みんなが訝しげな表情で見つめ合う、私だって状況を把握しきれていないからこれ以上説明のしようがなかった。
だけどその時思わぬ認識者が口を開いた。

「そういえば……聞いた事がある!」
『知っているのか?シャーリー!』
「あたしは音速の壁を超えた女だぜ、いずれは時空の壁をも超える為に超光速タキオンエンジンの研究をしているからな」
『お~流石シャーリー!ただのメカマニアじゃなかったか!』

全員が羨望の眼差しでシャーリー大尉を見上げる。
そして彼女は嬉々として解説し出した。

そして私達はその解説を……

★聞いたんダナ。
→√18へ
★聞き流したんダナ。
→√19へ

※この選択によるフラグチェックはありません。
・量子的多重世界間移動に抵抗を感じる方は√18へ。
・設定よりテンポを重視する方は√19へ進んで下さい。

348: 2009/02/02(月) 21:36:43 ID:DMiITGfV
ifシリーズ√07
「これからの出来事」

確かにカードは正位置だった。

とすると現場は確認してはいないけどミーナ隊長の身に何かあった事は事実なんだろう。待機命令を遵守している場合じゃないな。
私は宮藤の話を思い出す「腕が鎌のお化け」紛れもない氏神の事じゃないか。これは悲劇の序章にすぎない。まだこの闇の中に何者かが蠢いているんだ。
私はベッドの上から【氏神】のカードを拾い出し、ビジョンを巡らせた。
人影が見える、誰かの後ろ姿、私だ……私が血を流しうなだれている姿が目蓋の底に映しだされた。

これはとびきっきりの悲劇だな。だけど幕をひくのは氏神なんかじゃない、私自身だ!
私は覚悟を決め引き出しから短銃を取出し、安全装置を確認すると腰に携えた。
もちろん自殺なんてするつもりじゃない、この命に替えても犯人を突き止めてやる!
サーニャのその身が血に染まる光景でない以上は、私にとって十分過ぎるくらい希望の残されたビジョンなのだから。
そして私は考える、談話室での出来事を。

そして私は思い付いた……

★間違いない、一人だけ怪しい行動を取った奴がいるんダナ。
→√09へ
★まだ何も手掛かりは獲られないんダナ。
→√12へ

349: 2009/02/02(月) 21:38:33 ID:DMiITGfV
ifシリーズ√08
「彼女のいない部屋」

確かカードは逆位置だった。

【氏神】の逆位置は氏と再生を暗示している。なにかしら状況が大きく変化するという事だ。
たぶん‘氏’はミーナ隊長の事件について、じゃあ‘再生’は?
ミーナ隊長の容体が回復に向うというのかな。それともまだこれから何か起るのか。
用心しておくに超した事はないか。まだ氏の暗示が終わったとは限らないし。
サーニャを失うなんて事になったら……そんな事ありえない、あってたまるか。
私は不安に駆られる。サーニャは無事だろうか。私はサーニャの部屋へとむかった。

~サーニャの寝室~
ドアをノックしてみたけど返事はなかった。もう寝たのかな。
でももしサーニャの身に何か起きていたらどうする。
下心なんかないんだかんな!誰に聞かせるでもなく呟きながらドアノブを回す。

《ガチャ》
鍵がかかっていない。

「サーニャ、ゴメンもう寝たノカ?」
私は申し訳なさそうにそう言いながら部屋に入った。
部屋は静まり返っていた。
当りを見回すが人影はない。ベットの上にも凹凸はない、毛布は床に落ちていた。

サーニャが……いない!
いったいどこにいるんだサーニャは。
恐くて眠れないから私の部屋になんて事も考えたけどそれはなかった。ここに来る途中サーニャどころか誰にも出会わなかったんだから。
とにかくサーニャを探さないと、

私は……

★サーニャの行方を追うんダナ。
→√15へ
★部屋をもっとよく調べてみるんダナ。
→√28へ

350: 2009/02/02(月) 21:42:17 ID:DMiITGfV
(ネタバレできていなかったのでこのスレのあそこに)

ifシリーズ√09
「最後の約束」

間違いない、一人だけ怪しい行動を取った奴がいる。

私の手で奴を止めなきゃいけない。私は自室を後にした。

~サーニャの寝室~
ドアをノックすると声が返って来る。サーニャはまだ起きていた。
私が名を告げると彼女は部屋に引き入れてくれた。
もちろんサーニャが犯人だなんて言うつもりじゃない。ただちょっと、もう一度だけ……彼女の顔を見たかっただけだ。

「いいかサーニャ、ワタシが戻って来るまで絶対にここから動くんじゃないゾ。それからドアには鍵をかけてナ」
「どうしたのエイラ、急にそんな事……戻って来るまでって、私も一緒じゃだめなの……」
「心配するナちょっと忘れ物を取りに行くだけダ、もし無事に帰って来たらその時は……ううん何でもナイ……」

私はそう言い残しドアノブに手をかける。

「エイラ!必ず戻って来て!約束だよ!」
「うん、戻って来るサ!ワタシがサーニャとの約束を破った事なんてないダロ?」
「うん私信じてる……私エイラの事信じて待っているから!」
「約束……ダカンナ!」

私は振り返らずにドアを閉めた。
最後に見るサーニャの顔が泣き顔だなんてそんなの嫌だ、最後に見せる私の顔が泣き顔だなんてそんなの嫌だからだ。

ゴメンナ、サーニャ……
初めて約束、破る事になるんだ。
そしてゴメンナ、サーニャ……
また一つ嘘ついちゃったよ。
でもさ、これまでサーニャにも自分の気持ちにもたくさんの嘘ついて来たんだからさ。
一つくらい嘘が増えても、サーニャは許してくれるよな……

もう思い残す事はない、私は奴の部屋へと向う。
氏神の正体、ペリーヌの部屋だ。

351: 2009/02/02(月) 21:47:18 ID:DMiITGfV
~ペリーヌの寝室~
「いるんだろペリーヌ」

私は扉を開き暗闇へと問い掛ける。部屋の明かりはなかった。
問い掛けの返事もない、私はベッドに向って闇の中を一歩づつ踏み進んだ。

何かが闇を切り裂く音が聞える、後ろだ。私は直ぐ様振り返る。
それは私の頬をかすめ、切り落とされた横髪は宙を舞った。これはレイピア、やはりペリーヌなのか。
そしてドアの影から何者かが現れた。

「イヤァーァァァこないで」

ペリーヌの声だ、間違いない。
窓から差し込んだ月明かりがその輪郭を露にしていく。

「なぜダ、なぜあんな事したンダ」
「イヤァーァァァ」

ペリーヌの返事はない、奇声と共にレイピアの剣先が私の心臓を狙う。このままじゃ殺られる。
流石はガリア流剣術の使い手、確実に私の急所を突いてくる。性格が剣に表れているな。
私が水月を開き隙を作ると予想通りの踏み込みが来た。そして私がダッキングでかわすとレイピアは壁へと突き刺さった。

私は思った……

★殺るなら今しかないんダナ。
→√14へ
★これは悪夢に違いないんダナ。
→√01へ

364: 2009/02/02(月) 22:22:41 ID:DMiITGfV
こちらこそすみません。
あのみなさん気にせずに投下して下さい。

保管庫さんへ、他の方の投下の妨げになり申し訳ないので最終話投下後に保管して下さいお願いします。

ifシリーズ√10
「ロッテ」

私が引いたカードは【ⅩⅩ 審判】だったな。

私は占いの結果を思い出していた。審判は変化を暗示するカードだ。
確かに目の前の食卓に広がる光景は、普段とは違っていた。
いつもの蒸かしたじゃがいもに比べたら相当なごちそうなんだから。
我が隊の食料事情もリーネが入隊して以来だいぶマシにはなったんだけど、だらかってこれはないよな。
私がそんな不機嫌な顔をしているとそのリーネが寄って来た。

「あのエイラさん、お料理お口に合わなかったですか?」
「いやそうじゃないんだケド、だだちょっとトマト苦手でナ」
最近トマトを見るとなぜだか嫌な予感がするんだよな。根拠はないんだけどさ。

「そう言わずに食え好き嫌いは体に良くないぞ、今日は出撃予定なんだからな紅白で景気づけだ」
だから坂本少佐、縁起と食欲は関係ないんだって。

~警報~
警報は正午過ぎに鳴った、予定よりも早いものだった。
出撃準備のため、昼食はお預けとなってしまった。
こんな事なら無理してでも朝食食べておくんだったな。

「監視所より入電、敵はガリア方面より進攻、グリット東47地区高度一万二千」
「今日の搭乗割はバルクホルン、エイラ、ペリーヌと私だったな各自準備はいいか!」
『はい!』
「その他の人は基地にて待機して、いいわね」
『はい!』

「みんなしっかりね、おいしい紅茶を入れて待ってるわ」
「ああ楽しみにしてる」
ミーナ隊長と坂本少佐の会話を無視してペリーヌは足早にハンガーへと向う。私もそれを追った。

「早く済ませてお茶でも飲もうゼ」
「そんなの当然ですわよ」
やばいなんかよけい怒らせた、今のは私が悪かったかな。
ペリーヌも朝食あんま食べてなかったしな空腹で怒りっぽいのも当然か。

~出撃~
坂本少佐、バルクホルン大尉、ペリーヌ、私達四人はドーバー海峡に向け飛び立つた。

「坂本少佐、少佐の御背中はわたくしがお守り致します!」
「ちょっと待てヨ、ペリーヌおまえが勝手に隊列決めんナ」
「でっですけどこのメンバーならわたくしは後衛かとてっきり……」
「確かにそうだが、それで少佐どうする」
「そうだな……」

そして私は……

★バルクホルン大尉とロッテを組む事になったんダナ。
→√4へ

366: 2009/02/02(月) 22:24:56 ID:DMiITGfV
ifシリーズ√11
「11人いる!」

「確かに、朝からあんな重いものなんて耐えられませんわ」
ペリーヌは私の意見に賛同してそう言った。

「そうだヨナ、朝からアレはひどかったヨナ」
「まあそう言うな、腹が満たされればお前達の苛々も治まるさ」

仲間達がお茶の準備して待っている。早く基地に帰還しよう。
そんな時、一人の魔女が私達を出迎えてくれた。こいつは……宮藤?そう宮藤だ。

「私も加勢します!ネウロイはどこですか!」
「とっくにあの世に送って来たさ」
「じゃあ……坂本さん!坂本さんは無事なんですね」
「何を言っているんだ宮藤?私はここにいるぞ、私を見縊らないでくれ」
「まったく!失礼にも程がありましてよ」
「えへへ……ごめんなさい、でも……本当にみなさんが無事でよかったです」
「ホント変な奴ダナ、ワタシ達はハラへってんだかンナ!ほら早く基地に帰るゾ」

~ダイニング~
私達が基地に帰還しダイニングに直行すると、そこにはおぞましい光景が広がっていた。
なんなんだこのテーブル一面の真っ赤っかは。
トマトタルトにトマトパイ、それに加えてトマトジュースと紅茶、トマトづくしじゃないか。

「おつかれー、あたしの力作なんだ、がつがつ食ってくれ」
「ウッ、ウン」
うぅシャーリー大尉は嬉しそうにそう言ってるけどさ……朝昼続けてこれはないだろ。

「なぁルッキーニ、トマトタルトとトマトパイどっちがすき~?」
「ん~どっちもすきだけど、あたしやっぱトマトジュース」
それ答えになってないよルッキーニ、ほらシャーリー大尉が困惑……してない。「やっぱりそうか!あたしもだ」
「あーわたしも断然トマトジュースだなぁ~」
「無論だ」

二人の会話にハルトマンとバルクホルン大尉が加わる、なんだこいつらの会話。でもこの中じゃトマトジュースが一番まともかもな。
その割に四人ともトマトタルトもトマトパイも美味そうに食べてるな。
みんなこんな物よく食べれるよ……
うわーハルトマンなんか口の回り真っ赤っかだよ。
わざとやってるんだろうけど……バルクホルン大尉、無視してるな。

367: 2009/02/02(月) 22:26:57 ID:DMiITGfV
「こんな下手物スイーツなんて常識知らずでしてよ」
おっ珍しくいい事言うなペリーヌ、私も同感だよ。
「私もこれはちょっとね……別に年だからとかそんなんじゃないのよ」
いや誰もそんな事言ってないよミーナ隊長。

「すいません食材の余り物が勿体なかったんで私がシャーリーさんのお手伝いしたんです」
「ごめんね芳佳ちゃん私のせいで」
朝食当番だったリーネが申し訳なさそうな顔をする。
宮藤余計な事するなよな、出迎えに来る暇があったらもう少しマシなおやつ作っておけよ。
それともこれはあれか?扶桑魂か?扶桑魂って奴か?勿体ないを世界に広げようとは御苦労な事だな!

「流石は宮藤!私が見込んだだけの事はある、お前こそ扶桑娘の鏡だ、きっといい嫁さんになるぞ」
坂本少佐がそう言うとペリーヌとミーナ隊長はがっつき出した。
坂本少佐はあれだ、天然タラシだ、身に覚えのない現地妻を何人もつくってしまうタイプだな。

「エイラ……だいじょうぶ?顔色が……」
「ウン大丈夫だサーニャ……」

隣に座っていたサーニャが心配そうに私の顔を覘う。
あれ?何かおかしい!なんだろうこの漠然とした違和感は……
そうだ!この501部隊のメンバーは10人で全員のはずなのに、今この場には……

「11人イル!」

私は大声で叫んでいた。みんなの視線が私に集まる。

「どうしたんだエイラ急に大声なんか出して」
「イヤ……アノ……」
「どうかしたのか?」
「アノ……一応確かめるけどサ……この501部隊って10人だヨナ?」
「ええそうよ、それがどうかしたのエイラさん?」
「あのサ……11人いないカ?」
「何を馬鹿な事を、そんなはず……」

『11人いる!』

誰か一人、この場にいるべきではない人物がいる。
でもいったい誰なんだ?私が感じているのは単なる違和感でしかない。
皆いて当然と思える面々だ、そうずっと昔から長い間……
昔から?私は記憶を遡り朝食時の光景を思い出す。
朝食時いなかった人物が今ここにいる、席をはずしていたとかなんかじゃない確かにいなかった。

朝食時、あの場にいなかったのは……

★宮藤ダ!
→√37へ
★サーニャダ!
→√31へ

368: 2009/02/02(月) 22:29:18 ID:DMiITGfV
ifシリーズ√12
「今日の出来事」

まだ何も手掛かりは獲られないな。

私は談話室での出来事を思い出していたけど、シャーリー大尉の言う通り益々疑心暗鬼に陥るばかりだった。
混乱を作り上げたハルトマン、その場から消え去ったペリーヌ、第一発見者のルッキーニ、話をそらせたリーネとサーニャ、解散を決定したシャーリー大尉。
みんながみんな怪しく思える。
アリバイがあると言え私と宮藤だって例外じゃないはずだ、他のみんなからは共犯と思われている可能性もあるな。

そもそも私達が現場を確認していない事にも原因がある、手にしている情報があまりにも少な過ぎるんだ。
本当にミーナ隊長は危篤なのか?サプライズパーティーでしたなんて可能性は本当にないのか?
それに坂本少佐とバルクホルン大尉はどうか、待機命令を出したのは上級士官だ。
事件発覚後この三人には会っていない。原因を突き止める根拠は何一つ出てはこなかった。やっぱり情報が不足しているんだ。

私は時間を遡り一日の出来事を振り返る。病室で過ごした空白の時間が悔やまれるがしかたない、夕方以降変わった事はなかったか?

記憶回路の中の最も優先順位の高い項目が次々に羅列されていく。
牛乳を飲む宮藤の口元があまりに工口ティックだった事を。
鼻血を滴れ流すバルクホルン大尉があまりに工口ティックだった事を。
すべすべお肌のペリーヌがあまりに工口ティックだった事を。
……我ながら優秀な頭脳だな!
とりあえずこれらの記憶をお気に入りフォルダに登録し、別のファイルにアクセスする。

そして私は思い付いた……

★今度こそ間違いない、怪しい行動を取った奴がいるんダナ。
→√36へ
★まだまだ何も手掛かりは獲られないんダナ。
→√22へ

369: 2009/02/02(月) 22:32:34 ID:DMiITGfV
ifシリーズ√13
「ⅩⅢ 氏神」

私は真ん中から数えて四枚目のカードを引いた。
ゴクリと唾を飲み込みゆっくりとそれを捲る。
うわっ!
そのカードは私の手から離れるとはらりと落ちてベットの上に横たわった。

それは【ⅩⅢ 氏神】のカードだった。

カードに描かれたドクロの漆黒の瞳が私を見つめている。
うわ~朝からこれだよ、本当にもう!とほほ。

私は……

★まぁ朝食でも食べて気を紛らわすんダナ。
→√02へ

370: 2009/02/02(月) 22:34:21 ID:DMiITGfV
ifシリーズ√14
「破られた約束と守られた約束」

殺るなら今しかない。
私は短銃を引き抜くと銃口をペリーヌへと向けた。

……できない、できないよペリーヌ、そんな事。
ついさっきまでは風呂場で背中を流した仲じゃないか。憎たらしい奴だなんていつも言って、あれは全部嘘なんだ。
何か訳があっての事なんだろ?なぁ答えてくれよペリーヌ。

レイピアは無情にも私に向う。
私だって戦場では無情であらねばと知っていたはずなのに。一瞬の迷いか私の本質なのか、その行動が運命の末路へと導いていた。
おそらく次で終わりだ。ブスリと音をたてレイピアは突き刺さる。

……私は生きている。
レイピアは私じゃない‘何か’に突き刺さった。そしてその‘何か’が私の胸に倒れ込んで来た。
これは……‘何か’なんかじゃないサーニャだ、紛れもないサーニャのか細い肉体だ。
私の思考は止まった。

「キャァーァァァ!サーニャさんが血を、血を流して、わたくしが、わたくしが、なぜなの……」
「なぜっテ、それはおまえガ……殺人鬼だからダロォォォッッッ!」

引き金を引く、一発二発三発、銃装が空になっても引き続ける。
私の思考を再開させたのはペリーヌに対する怒りであり、ペリーヌが床へと崩れる音を聞いてようやく私は我にかえった。
なんでサーニャがここにいるんだ、なんでサーニャが倒れているんだ。

「サーニャなんで約束破って着いて来たりしたんダ!」
「ごめんね、でもこれでエイラは私の所に戻って来てくれた、約束……したでしょ」
「約束ッテ……」
「だってエイラには私との約束破って欲しく……なかったんだもん……」
「サーニャァァァーー!!!」

私の腕の中でサーニャはゆっくり目を閉じる。サーニャの温りがしだいに消えていくのがわかった、私はただサーニャを抱き締め温めた。

私は無力だ、何か他にサーニャを救う方法はないのか。もはや私は他人にすがるしかなった。神でも悪魔でも何でもいい誰か私の下に訪れてくれ。
そしてその者は訪れた。闇に真っ赤な一つ目が浮かび上がる。

「あなたは!サーニャが大変なン……ゥグゥ、なっナゼ……」

私の下に訪れたのは神でも悪魔でもなく氏神だった。腕の曲刀が私の背中を切り裂く。
そして私は思い出す占いのビジョンを、あの傷はレイピアによる刺し傷じゃない切り傷だった。
そうなのか、そうだったのか、あんたが氏神の正体だったんだな。

私はサーニャを覆うようにうなだれる。
サーニャの……サーニャの所へ帰らなきゃ……
約束だもんな……

エンディンクNo.01「破られた約束と守られた約束」
~END~

371: 2009/02/02(月) 22:35:22 ID:DMiITGfV
ifシリーズ√15
「マルガリータとボロネーゼ」

私は一目散にサーニャの行方を追った。

廊下は静寂と暗闇に包まれていた。
いったい何処へ行ったというんだサーニャは。
あぁ可愛そうなサーニャ。きっと暗闇の中一人で怯えてるに違いないんだ。
なんとしても、なんとしても私がサーニャを守るんだ。
私は闇雲に廊下を駆けずり回った。

《キャァァァー》
静寂が打ち消される。誰かの悲鳴、この声は……ペリーヌだ。
私はドアを蹴破りペリーヌの寝室へと突入した。

~ペリーヌの寝室~
寝室の中では家具は散らかり、ペリーヌと何者かがもみ合っていた。長い髪の女、その制服はミーナ隊長なのか。

「ペリーヌ無事カ?」
「エイラさん……早く逃げ……」

ペリーヌ!ペリーヌはそう言い残すと首から血を流しその場にうなだれた。
ミーナ隊長は視線を私に向けるとこう問い質して来た。

「マルガリータとボロネーゼ、あなたはどちらがお好き?」
「隊長何をわけのわからないコトヲ、そんな事より何をしてるンダ、何故あなたがココにイル?」
「ふっふっふ、エイラさんあなたも‘まだ’のようね。早く‘こちら’にいらっしゃい」

そう言いながら私の方へと歩み寄って来る。
明らかに言動がおかしい、いやおかしいのは言動だけじゃなかった。
ミーナ隊長の赤毛は銀色へと染めあがり、その両目は赤く輝いていた。その変貌に怯えている最中、リーネとサーニャが部屋へと駆け付けた。

「何があったんですかエイラさん」
「わからない、わからないケド犯人はミーナ隊長だったんダ」
当然リーネは目の前の光景を前に困惑する、私だって状況を判断しきれていないのだから。
被害者自身が犯人など推理小説ではよくある事だけど、現実に起きてもそう納得出来る物でもなかった。

「エイラ……あのね……」
サーニャが私に話かけて来る。リーネと一緒にやって来た事を私が誤解してると気をつかってくれてるんだろうな。
だけど私もそんなに馬鹿じゃないよ、このままじゃ私達の身も危ないんだ。
「ここから逃げなきゃナ、早くみんなに知らせないとナ」
「う、うん……」

目前にはミーナ隊長が迫り来る。
そしてミーナ隊長の動きが止まった。ペリーヌだペリーヌが最後の力を振り絞ってミーナ隊長の足にしがみ付いていた。
ペリーヌ……

372: 2009/02/02(月) 22:37:13 ID:DMiITGfV
~廊下~
ペリーヌの寝室から飛び出すと今度は宮藤とバルクホルン大尉に出くわした。
おもむろに宮藤がリーネに問い質す。

「ねぇリーネちゃん、リーネちゃんはマルガリータとボロネーゼどっちが好き?」
「私はマルガリータが好きかな、でもどっどうしたの芳佳ちゃん?いったい急にそんな事聞いてきて」
「やっふふ~、リーネちゃんは‘まだ’なんだね。リーネちゃんも早く‘こっち’においでよ」

そう言い放つと宮藤の髪が銀色に染まり目は赤く輝き出す。次の瞬間、宮藤はリーネに飛び付きその首元に噛み付いた。
うなだれたリーネを余所に今度はバルクホルン大尉が私に問い掛ける。

「クックック、さぁ早くエイラおまえも我が妹となれ!マルガリータとボロネーゼどっちが好きだ!?」

私は……

★ボロネーゼが好きなんダナ。
→√21へ
★トマトジュースが好きなんダナ。
→√23へ

373: 2009/02/02(月) 22:39:31 ID:DMiITGfV
ifシリーズ√16
「ⅩⅥ 塔」

私は真ん中から数えて二枚目のカードを引いた。
【ⅩⅥ 塔】逆位置だった。

うぅ……縁起でもないな……
【塔】はもともと悪い暗示のカードだ。
悲嘆や破壊などを意味している。
それの逆位置なんだから希望や再生を意味するかといえば、そうではない。
正位置であろうが、逆位置であろうがろくな事が起こらないカードだ。
逃れようのない災いが降り掛かって来る予兆なんだ。
私は憂欝な気分でベットを後にして、整えたタロットカードを先程の位置へと戻す。
出所の知れない不安が私を襲う。
もしかして……サーニャとの関係が、これで終わりなんて……うぎゃ~!

私は……

★部屋を飛び出したんダナ。
→√24へ

379: 2009/02/02(月) 23:12:20 ID:DMiITGfV
ifシリーズ√17
「ⅩⅦ 星」

私は真ん中から数えて三枚目のカードを引いた。
【ⅩⅦ 星】正位置だった。

カードには星々を背に水を汲む女神が描かれている。
ふふ~ん♪
知らず知らずの内に鼻歌が漏れていた。
なんたって希望と明るい見通しを明示するカードなんだから。
もっ!もしかして!今日こそは愛しのサーニャと……むふふぅ♪
手っ……手を……繋いじゃったりするんだな!
ほらこうやって待っていれば扉の向こうからサーニャがやって……こないな、
ちょっと浮かれ過ぎたかな、でも今日はいつものヘタレな私なんかじゃない。

私は……

★浮足立ちがら部屋を飛び出したんダナ。
→√24へ

380: 2009/02/02(月) 23:14:00 ID:DMiITGfV
ifシリーズ√18
「チャイルドユニバース」

私達はシャーリー大尉の解説を聞いた。

~平行世界と平行宇宙~
「みんなもあの時、こうしとけば良かったな~って経験あるだろ?」
『あるある!』
「幼稚園の時ベスじゃなくてステフと付き合っとけばとか、小学校の時イライザじゃなくイボンヌと付き合っとけばとかそーゆー経験」
『ねーよ!』
「まあとにかくあたし達は人生の中でいろんな選択をして、それは樹系図の様に広かっていく」
「朝ご飯にトマトを食べたか、じゃがいもを食べたかとか?」
「キスしたか、キスしなかったかとか?」
「そう今日あたしは朝じゃがいもを食べ、その後ルッキーニとキスしたんだけど……」
『したのか!いつのまに!』
「例え話だ、で朝トマトを食べてキスはしなかった隣の隣の私の世界もあるわけ、これがパラレルワールド」

うん、それはなんとなくわかる。

「だからサ、ワタシは朝食にトマトを食べた隣の世界から来たんダロ?」
「それは違うんだよ、隊長の言う様にパラレルワールド間の移動は無理なんだ」
『結局出来ないのか!』
「ああどっちのエイラも同位体のエイラだからな、この物理的な壁を突破する方法はないんだ」

ここはパラレルワールドではないらしい。
仮にパラレルワールドであったとしても、それを認識する事は出来ない。
認識出来なければそれは本人にとっての本来の世界となる。
よってパラレルワールド間の移動は出来ないとの事だ。

「チョット!じゃワタシは何者なンダヨ!」
「ん~わかり易く言えば……宇宙人だな」
『宇宙人!』
「ほら~わたしの言った通りじゃんか~」
「結論から言うと別の宇宙、こことよく似た世界からやって来たエイラって事になるな」
『こことよく似た世界ってどこだ!』

~超弦理論と超お姉ちゃん理論~
「パラレルワールド間の壁は魔法力でも超えられないけどさ時空の壁なら超えられるわけよ」
『時空?』
「多くの星が宇宙に浮かんでいる様にさ、多くの宇宙という空間世界は時空に浮かんでるわけ」
『それで』
「時空の壁を超えたら別の宇宙空間つまり別の世界へ行ける、でエイラを別世界に飛ばした原因をつくったのは……」
『つくったのは?』

「姉貴の仕業って事さ」
『お姉ちゃんが原因!』

「チョット待ッタ!姉貴ッテお姉ちゃんッテもしかしてバルクホルン大尉の事……ダヨナ?」
「姉貴と言えば姉貴に決まっているだろ?」
「やっぱりトゥルーデ姉ちゃんと呼んでくれないんだなエイラ……お姉ちゃんは悲しいぞ」

間違いない、ここはパラレルワールドなんかじゃなくて……お姉ちゃんワールドだ……

381: 2009/02/02(月) 23:15:28 ID:DMiITGfV
「真空のゆらぎが……相転移で……インフレーションが……トンネル効果で……」
『うおぉ~!』
「10次元にもう一つの次元を加えた11次元が最も美しい数式で」
『へぇ~!』

シャーリー大尉は時空理論について解説を続けていたけど、私は何一つ聞いていない。
いいや、聞きたくても私は聞けなかった。

「心のトキメキが……相思相愛で……ジェネレーションが……年の差効果で……」
「ウギャー!」
「10人の妹に一人のお姉ちゃんを加えた11人姉妹が最も美しい愛の形で」
「ウェ~!」

私はバルクホルン大尉の個人授業を受けていた。
サーニャと恋人同士になれたのは嬉しいけどさ……
やっぱりやだよこんな世界、早くお家に帰りたい。

「いいかげんにして下さい姉さま!エイラが嫌がってます」
「サーニャ!妹同士の結婚なんて、お姉ちゃんは、お姉ちゃんは絶対認めないんだからな!」

サーニャとバルクホルン大尉は口喧嘩を始めた。
助かった……お姉ちゃん地獄から解放してくれたのは愛しのサーニャだった。
でもさ妹同士も姉妹なんだからさ、お姉ちゃんと妹の結婚ももちろん駄目って事気付いて……ないな。


サーニャがバルクホルン大尉の相手をしてくれている隙にシャーリー大尉からから聞いた話をまとめるとこんな感じだった。

・墜落した私とペリーヌをバルクホルン大尉が受け止めた時が事の始まりだった。
・その時バルクホルン大尉は魔法力で多大な重力を発生させた。
・私達の位置エネルギーと多大な重力の衝突は行き場を失い、ポテンシャル障壁を乗り越え空間から時空へと流れだす。
・時空に流れ出たエネルギーは急速に膨張し新たな宇宙、よく似た世界が誕生した。

・重力は時空へと流れだす性質があり余剰に流れ出た重力は時空間に流れ続ける。
私は重力に流され共に空間から時空へと弾き出された。
・電磁気力は時空の壁を超えられないため電磁気力操作能力を持つペリーヌは亀裂への落下を免れた。
・よく似たこの世界でも同様の事が起こっていて、こちらのエイラもあちらの世界に弾き出された。

・私達二人のエイラの整合性を保つために空間と空間は直結し時空間に亀裂を発生させた。
・流れ出る重力により亀裂は拡大を続けているから、時間が経過する度に新たなよく似た世界が誕生する。
・新たなよく似た世界が誕生する度によく似たエイラにも同様の事は起きる。
・その度に時空間の修復作用は働き私は別のよく似た世界へと弾き出される。
・元々の亀裂の原因は私の時空間移動によるものなので、私が時空の亀裂を通過すれば亀裂は塞がり私も元の世界へ帰れる。

……という事らしい。私は頭痛を抑えなんとか理解した。

とすれば亀裂は今も拡大している、もたもたしていれば私は元の世界へ帰れなくなってしまう。手を打つなら早い方が良い。
時空間の亀裂はネウロイと遭遇したポイントに存在する。

私達は……

★時空間の亀裂へと向ったんダナ。
→√25へ

382: 2009/02/02(月) 23:17:29 ID:DMiITGfV
ifシリーズ√19
「パラレルワールド」

シャーリー大尉の推論をまとめると以下の通りだ。
・すべての原因は時空間の亀裂による事。
・出撃時の私の墜落が亀裂を生み出した原因であった事。
・亀裂の内部に私が飛び込めば亀裂は塞がれ、私も本来いた世界へと帰れる事。

解決策は示され私は一安心した。
そして私がパラレルワールドからやって来た人間だと確証すると、みんなの関心はあちらの自分に及んだ。

「あたしの事だからさ、超光速タキオンエンジンの一つや二つとっくに開発してるんだろ?」
「たぶんシテナイ」
「ねぇ~あっちのあたしはシャーリーみたくないすばでぃ?」
「ペッタンコ」

「私はちゃんと皆さんのお役に立ててますか?」
「十分過ぎるくらいニナ」
「じゃあ私は坂本さんみたいに強くなってます?」
「ナッテナイ」

「わたくしと坂本少佐は……あの……やっぱりこんな事聞けませんわ」
「ナッテナイ」
「そっ、それならエイラさん私と美……」
「ナッテナイ」

「当然向こうの私も妹達に囲まれて幸せに暮しているよな!」
「囲まれてないしサ……あっちの大尉はもっと凜々しクテ格好良かっタゾ」
「凜々しい!?そうか凜々しいお姉ちゃんもありだな、ありだ!可愛い妹がそう言うなら努力しよう」
「シナクテイイ!」

私はみんなからの質問の嵐を適当に受け流していた。
質問の内容から考えて元の世界とあまり変わらないみたいだな、バルクホルン大尉と……サーニャを除いては。

「ねぇエイラ……」
「サーニャ……」
「あっちの私達は……」
「ウン……恋人同士じゃナインダ、でも……サーニャはワタシにとって一番大切な人、それは同んなじナンダ」
「うん……私不安だったけど……それが聞けて本当に良かった」

私にとって一番大切な人。
今まで伝えたくてたらなかった一言が言えた。彼女の真剣な眼差しが私の心を軽くしてくれたんだ。
まさかこんな形になるとは思ってもなかったけど……これって告白しちゃった事になるのかな?
私は自分のやらかした事に気付いて話を反らした。

「アレ?そういえばハルトマンと坂本少佐は何も聞かなくてイイノカ?」
「なんかね~興味失せた~」
「さっき迄はあったノカ……?んで坂本少佐は何か聞かナイノカ??」
「どこの世界の私も私には変わらん、その位の自信は持ち合わせているからな。」
「流石坂本少佐ダナ……その通りダヨ」
「それよりこんな事をしている余裕などないのではないか?早く亀裂に向わねば」

そうだ亀裂は今も拡大している、もたもたしていれば私は元の世界へ帰れなくなってしまう。手を打つなら早い方が良い。
時空間の亀裂はネウロイと遭遇したポイントに存在する。

私達は……

★時空間の亀裂へと向ったんダナ。
→√25へ

383: 2009/02/02(月) 23:19:16 ID:DMiITGfV
ifシリーズ√20
「ⅩⅩ 審判」

私は真ん中から数えて一枚目のカードを引いた。
【ⅩⅩ 審判】正位置だった。

ん~どういった事なんだろう。
このカードは位置の変化や更新を意味するカードだ。
だからといって今の私に急な配置転換や昇進の話が訪れるとも思えないしな~。
誰か他の娘を好きになるとか?
まさかね……ありえない話だな。
ん~考えていても仕方ないっか。
私は本棚横にある幸福を呼ぶ藍色の頭像にお祈りをする。

「今日もいい日でありますよーニ!留守番たのんだゾ、んじゃいってきまース」

そして私は……

★お腹も空いたし朝食をとるんダナ。
→√02へ

384: 2009/02/02(月) 23:21:25 ID:DMiITGfV
ifシリーズ√21
「選択の余地」

「ボロネーゼが好きなんダナ」

私はそう叫んだ。リーネはマルガリータと答えてやられた、ならば答えは一つだ。

「そうか、エイラも‘まだ’我が妹達の軍門には降っていなかったか。ならばこの私自ら」

失敗ったか……バルクホルン大尉の髪が銀色に染まり、両目は赤く輝き出す。
この姿はもしかしてバンパイア!だから最初に風呂の誘いを断って、ハーブで浄化した浴槽に浸かってやり過ごしたのか。
この事件の元凶はミーナ隊長ではない、黒幕はバルクホルン大尉だったんだ。
そう気付いてももう遅い、私に残された最後の選択はこの身を呈してサーニャを逃がす事だけだった。
サーニャ、愛しのサーニャ無事逃げ延びて……サーニャは逃げようとしなかった。

「おやめなさい!エイラへの手出しは許しません」
「もう遅いのですよサーニャ様、この者は私との契約を承認したのですから」

何を言ってるんだこの二人は、サーニャ……様?契約?
呆然と立ち尽くす私の肢体をバルクホルン大尉の怪力が締め上げる。
「さぁ早く‘お姉ちゃん’と呼んでおくれ」
バルクホルン大尉はそう言いながら私の首に噛み付いた。

そして私は……

★意識を失ったんダナ。
→√33へ

385: 2009/02/02(月) 23:23:20 ID:DMiITGfV
ifシリーズ√22
「月夜の宴」

まだまだ何も手掛かりは獲られないな。

やはり病室で過ごした空白の時間が悔やまれる。もしかしたらこの時に私の知らない何かが起きていたのかも。

考えていても仕方ない、何か手掛かりを探さないとな。私は作戦室へと向った。

~作戦室前廊下~
作戦室へと向うと先客がいるようだった。私と同様に手掛かりを求めてやって来たのだろうか、それとも。
犯人は現場に戻って来るというしな。私は影から中の様子を伺った。

ルッキーニの後ろ姿が見える、やはり第一発見者が犯人だったのか。
いやルッキーニ一人じゃない、バルクホルン大尉もいる。この二人の共犯だっだのだろうか。
そして二人は予想外の行動を取った……キスしている!キスはキスでも大人のキスだ!
バルクホルン大尉の舌はルッキーニの首元を這いずりり回り、それに合わせてルッキーニは淫らな声を発している。

とんでもない物を見ちゃった、事件の手掛かり以上の物だ。私は気が動転し口から言葉が漏れ出した。
「このコト、シャーリー大尉とハルトマンは知っているノカ」
「ああ当然さ」
「もちろん知ってるよ」
私の背後に二人の影が現れた。
「ふふっ姉貴へのいい手土産が出来たな、まさか獲物のほうからのこのこやって来るとは」
「夜遊びしてる悪い子にはお仕置きが必要だね~」

~作戦室~
私は作戦室内へと連行され四肢は拘束されていた。そんな私を四人が取り囲む。

「オマエ達いったい何やってるンダ」
「準備だよ宴の準備だよ、今夜は月夜だこれから宴が始まるのさ」
そう言いながらシャーリー大尉は私の上着のボタンを外し始めた。

「つまりエイラ、あんたも一足先に仲間入りさせてあげようって事なんだよね~」
ハルトマンは私の足の付け根に指を這わし、ズボンの裾に手をかけた。私は思わず声をあげる。

「ひゃんッ」
「エイラってそんなかわいい声だすんだ、もっときかせてくんないかな~」
ルッキーニが上着の隙間に手を潜り込ませる。

「こんなの嫌ッ……あふッ……嫌ッお願い許し……」
「いつものボーイッシュなお前も魅力的だが、しおらしいお前もなかなかそそるな」
バルクホルン大尉は私の涙を拭うと首元に舌を這わせる。
私の瞳からは涙が流れ続けた、もはや目が霞んで何も見えない。
ただ薄らと銀色の髪が見の前を過る、脳裏に浮かぶのは清らかなサーニャの姿だった。

「らめぇぇぇ~そんなコト……まだサーニャにも……ワタシ汚れちゃ……もうサーニャと一緒にいられな……あぁン」
「クックック、恐いのは最初だけだ、お前もすぐに快楽の虜になるさ」
バルクホルン大尉はそう言いながら私の首に噛み付いた。

そして私は……

★意識を失ったんダナ。
→√33へ

386: 2009/02/02(月) 23:25:01 ID:DMiITGfV
ifシリーズ√23
「月下の告白」

「トマトジュースが好きなんダナ」

私は朝食時の大尉達の会話を思い出し、そう叫んだ。

「良い月夜をなエイラ」
「大尉も、よっ良い月夜ヲ……」

そう言い残すとバルクホルン大尉と宮藤は闇の中へ消えていった。
賭けだった、おそらくこれは彼女達の間にだけ通じる合い言葉なのだろう。
私の感が正しければもうすぐリーネも‘あっち’に行ってしまう。
もはや基地内に安全な場所などないと悟る。そして私はサーニャを展望台へと誘った。

~展望台~
「ほらサーニャ、月が綺麗ダゾ」
「う、うんそうだね……でも早……」
私はサーニャの言葉を遮って話を続ける。
「初めて会ったあの日もここに来たっけ、夜じゃなかったけどサ」
「うん!……そっ、それより早く逃げないと……」
「その必要はないヨ、サーニャも‘あっち’の住人なんダロ?」
「!!!……知ってたの!エイラ」
「なんとなくナ、大尉も宮藤もなぜかサーニャには質問しなかったからナ」
しばらく沈黙が続いた。
そしてサーニャは必氏に声を搾りだし打ち明けてくれた。

「ごめんねエイラ今まで隠していて、実は私……バンパイアなの……」

私は驚かなかった、例えサーニャが何者であろうが覚悟は出来ていた。
それどころかなぜ日差しに弱いのか銀色の髪をしているのか、その理由に納得した。
そしてサーニャは語ってくれた、彼女の本当の生い立ちと今基地内で起きている事について。

ある夜サーニャはバルクホルン大尉達が淫らな事を催す様を偶然目撃してしまったらしい。
口封じのため彼女達はサーニャを襲ったが、サーニャはバンパイアの能力を使い逃れたという。
その能力とは相手を自らの下僕にし従属させる力だそうだ。
だが今夜は満月だ、サーニャの制御も効かず理性を失った下僕達が乙女の血を求め暴走し出したのだ。
そして下僕は新たな下僕を生み出し、もはや無事でいるのは私一人だけとなっていた。

ならば私が取るべき最良の方法は……

★サーニャのしもべになるんダナ。
→√27へ
★サーニャをしもべにするんダナ。
→√26へ

389: 2009/02/02(月) 23:48:16 ID:DMiITGfV
ifシリーズ√24
「不揃いのカップとお揃いのカップル」

私は部屋を飛び出した。

~パントリー~
パントリーへ向うと朝食当番のペリーヌが後片付けをしている最中だった。

「オハヨーペリーヌ、サーニャはまだ起きてこないノカ?」
「サーニャ?どなたですの、起きてこないのはあなたでしてよ。全くあなたと言いハルトマン中尉と言いお寝坊さんにも程がありましてよ」

ペリーヌはそう言い放つと朝食のプレートを叩きつけてきた。クロックムッシュが宙を舞う。
ダイニングを覗くと人影はなく、外のみんなは朝食を終えた後の様だ。
それにしても朝から御機嫌斜めとは低血圧か?それともアノ日なのか?これ以上怒らせても碌な事がないな。
早く朝食を済ませよう、私は牛乳を注ぐためのマグカップを探す。
……ない、私のマグカップがない。

「ペリーヌ、ワタシのマグカップ知らないカ?トランプ柄の奴ダヨ」
「私のって……エイラさんそんな物持ってらっしゃらないじゃないですの」
「サーニャと一緒に買ったあのマグカップダヨ!」
「だから先程から気になっているんですけどサーニャさんってどなたですの?」
「あぁもういいよ自分で探すからナ」

なんなんだ朝から、嫌味な奴だけど嘘をつくような奴だとは思ってなかったよ。
パントリー中をかき回してみたけどマグカップはみつからなかった。それどころかサーニャのマグカップも見当たらない。

あれ?何で見当たらないんだろう。
あの日一日の出来事は‘ついさっき’経験したかの様にはっきりと記憶が甦って来るのに……
サーニャと二人で買いに行ってお互いにお似合いのカップを選びあったんだ。
本当はペアカップにしたかったんだけど、できなかったんだよな……
あの日の出来事は嘘なんかじゃない!私は記憶を巡らした。

~お買い物の記憶~
私とサーニャは‘馴染みの’雑貨屋にいた。
そして私は目的の場所に直行した。

「サッ、サーニャはこれなんかいいんじゃねーカ」
「あ……うん……かわいい……」

無愛想な表情で私は陳列棚の中から猫の模様の付いた黒いマグカップを選んだ。
‘前々から’目を付けていた物だ。
それはペアカップとして作られた物らしく、その隣には犬の模様の付いたマグカップが並べられていた。

「そ……そうダロ(じゃ~ワタシはこのお揃いのわんこの奴デ♪)」
「じゃあ……エイラは……、……、これなんてどうかな……ダメ?」
「バ、バカヤローどうせ茶飲むだけだロ(サーニャが選んだモノなら)どれだって一緒ダ」

サーニャが私に選んでくれた物はお揃いの犬模様の物ではなくトランプ柄のマグカップだった。
アテは外れたけれど何故だか私はサーニャがそれを選ぶ予感があった。
占い好きの私にお似合いだってサーニャが選んでくれた物なんだ。
それは私にとってこの上なくお揃いのマグカップに違いなかった。

買い物はマグカップだけじゃない。
浮かれた私はカップを選んでくれたお礼にと訳のわからない理由で、サーニャに陶器でできた黒猫のオブジェをプレゼントしたんだ。
浮かれてた?ううん受け取って貰う自信があったんだ。
そしてサーニャはそのお返しにと私に白猫のオブジェをプレゼントしてくれたんだよな。

390: 2009/02/02(月) 23:49:44 ID:DMiITGfV
「なんかあったの?…今日のエイラ……なんか……嬉しそう……」
「そっ、そんなんじゃネーヨ、ほら早く帰るゾ」

そうそう、帰り路にはこんな会話も交したっけな。

~再びパントリー~
……確かに間違いない。
そう、この日はとても幸せな一日だったんだ。
そうだ、猫のオブジェ!猫のオブジェなら間違いなくサーニャの寝室に置いてある。
朝食なんて食べてる場合じゃないんだな、確かめにいかなきゃ。
サーニャも寝室に戻っているかもしれないしさ。

「ペリーヌごちそうサマ、美味かッタ」
「美味ったって……一口も手を付けてないなんて、あんまりじゃないですの!」

ペリーヌの罵声を背にしてパントリーから駆け出すと、その出会い頭にハルトマン中尉とすれ違う。
私は眠そうに欠伸をかくハルトマン中尉に一応質問してみた。

「ここに来る途中サーニャに会わなかったデスカ?」
「何それ?スオムス料理かなんかぁ~?」

駄目だこの人、まだ寝惚けるな……
私はハルトマン中尉をほったらかしにしてサーニャの寝室に向った。

~サーニャの寝室~
ドアをノックしてみたけど返事はなかった。もう出かけたのかな。
ちょっと確認するだけだかんな!誰に聞かせるでもなく呟きながらドアノブを回す。

《ガチャ》
鍵がかかっていない。

「サーニャ、ゴメンもう出かけたノカ?」
私は申し訳なさそうにそう言いながら部屋に入った。
部屋は静まり返っていた。
当りを見回すが人影はない。
いやそれ所の話じゃない、備え付けの家具以外なにもない。
部屋はただがらんとしていた。

いけね、部屋間違えちゃったよ。
私は一旦廊下に出て確認し直す……ここであってる。
もう一度部屋に入ってみたけど、やっぱりその場所に猫のオブジェ所かサーニャの面影は何一つ残ってなかった。

サーニャが……いない!
いったいどういう事なんだ!

【運命のタロットチェック】
今朝のタロット占いでエイラが引いたカードは?

★【ⅩⅥ 塔】逆位置
→√29へ
★【ⅩⅦ 星】正位置
→√38へ

393: 2009/02/03(火) 00:04:04 ID:sjvaNibG
(ごめんなさい規制に引っ掛かりました)

ifシリーズ√25
「あなたのかえる場所」

私達は時空間の亀裂へと向った。

~ドーバー海峡上空~
ポイントへ到着したが目に見える異変はない。
この押し寄せる圧迫感を感じ取っているのは私だけだろうな。

「エイラ何か感じるんだな?私の肩に手を置いてみろ」

坂本少佐は私に示唆すると、その魔眼を開いた。
肩に手をかざすと少佐の魔眼を通してのビジョンが私にも流れ込んで来た。
それは亀裂と言うより重力場の渦、ブラックホールに似ていた。
ただ一つブラックホールとの大きな違いは時間反転かあり重力が吹き出していた事だ。
あの時バルクホルン大尉が放出した重力の余波が傾れ込んで来ているんだ。
近づいてみると確かに肌に感じるくらいの衝撃が伝わって来た。

「あれか、でかいな……大丈夫なのかエイラ?」
「ああダイジョブ、覚悟は出来てるサ」
「待って!エイラ……」

突入を決意した私を誰かが引き止める、サーニャだ。サーニャが私に抱きついて来た。
他のみんなはわざとらしく方々に散る、坂本少佐だけはミーナ隊長に引き摺られて飛んでいった。

「お別れ……なんだね……」
「ウン……」
「でもエイラは帰れらなくちゃ……こうしなきゃいけないんだよね……」
「ウン……」
「あのねエイラ……お別れの前に……キスして!」

サーニャが私を見つめている。
どうする!どうする?どうする……

~ザ・クイズショー~
あなたの選択があなたの運命を決める!さぁ本日二回目となりました、人生の岐路ザ・クイズショー
司会進行はヘタレでお馴染みこの私、エイラ・イルマタル・ユーティライネンがお贈り致します。
そして回答者は前回残念ながら時間切れのエイラ・イルマタル・ユーティライネンさんで~す。こんにちは

前置きはいいから早く出題シロ!

これは失礼しました、お急ぎの様ですね、それじゃ~いきますよ~問題!
今あなたの目の前に愛しのサーニャさんの唇があります。ここであなたが取るべき行動は?

A.キスする
B.キスしない
さぁどっち!?

私は……

★キスする。
→√35へ
★キスしない。
→√30へ

394: 2009/02/03(火) 00:06:07 ID:sjvaNibG
ifシリーズ√26
「夢のオールスター編」

私が取るべき最良の方法はこれしかない!

「サーニャ!よく見るんダ!これが……ワタシの正体ダ!」
「エイ……ラ?」

サーニャの正体がバンパイアだとわかった以上、こちらも遠慮する必要なんてない。
私は妖力を解放した。私の上着は引き裂かれ背中からは蝙の羽が生えてくる。
これが私の正体、サキュバスとしての本来の姿だ。
これだけは使いたくなかったんだけど仕方ないな。
テンプテーションでサーニャの心を操るしか方法はないんだ。

「サーニャ!ワタシの虜になるんダナ!テンプテーショ……ゲフゥ」

いきなり何者かのドロップキックが飛んで来た。
誰だ?誰だよいったい!邪魔してくれちゃってさ!

「よおっ!なんだおまえ等こんな所にいたのかよ」
「なぁ~んだエイラもあたしたちとおんなじ妖怪だったんだね~」

そこにはルッキーニと、ルッキーニを肩車するシャーリー大尉がいた。
ちょっと待て、あたしたちとおんなじ?

「ッテ事ハ……」
「おっす!あたしサスカッチ!」
「あたしはね~、けっとしーなのぉ~」

そう言うと二人の体に体毛が生えだす。
もふもふしていてちょっとかわいい。

「ナンナンダ!この部隊四人も妖怪が潜んでいたノカ?」
「ちょ~っと待った、四人だけではない!」

バルクホルン大尉と宮藤が現れた。
先程の銀色の髪の毛に加え、次第に二人の体には銀色の体毛が生えだす。
もふもふしていてちょっとかわいい。

「私は誇り高きワーウルフだ」
「実は私、扶桑の妖怪かまいたちなんです」

誇り高き者がイタチなんかと戯れ合うなよ。
あ~宮藤のお尻をクンカクンカし出しちゃった、もはや威厳の欠片もないね。
宮藤も宮藤だ実はとか言っておまえ、さっきさり気なく正体ばらしてただろ。

「芳佳ちゃんが……私以外の人と戯れ合ってるだなんて……シクシク」
「うわぁリーネ!急に現れるナヨ、そして泣くナ」
「仕方ないじゃないですか!だって私バンシーなんですもん」

もしかして……この流れは、すごく嫌な予感がする。ハルトマンがドリブルしながら駆けて来る、ほら言ってる傍からこれだもん。

「わたしグレムリンだよ、悪戯大好き~だからこんな事もしちゃう~」
「ちょっと!わたくしの首はサッカーボールじゃありません!」
「ウワッ!」
「おっエイラ、ナイスヘディングぅ~」
「ウワァ~ごめんペリーヌ条件反射ダ」
「ごめんでは済みませんわ!あ~どなたかお止めになってぇぇぇ~……」

395: 2009/02/03(火) 00:08:09 ID:sjvaNibG
原因不明のストライカーの故障は、ハルトマンおまえの仕業だったんだな。
そしてペリーヌ、こいつはたぶんデュラハンだな。
ペリーヌの生首はどこかへ転がって行って、首なしの体が必氏に追い掛けている。
その数秒後ペリーヌの首は坂本少佐に抱かれて帰って来た。
その坂本少佐に外見上の変化はなかった。

「坂本少佐ハ、侍の生霊かなんかなノカ?」
「ん?私か?私は、妖怪女たらしだ」
「流石ですわ!坂本少佐!」

それ妖怪じゃねーよ!
どこが流石なんだよ!
わけわかんねーよ!

「あらあら、みんな楽しそうね私も交ぜて貰えるかしら?」
「じゃあミーナ隊長の正体ッテ?」
「あらエイラさん知りたいの?そんなに知りたいのなら教えてあげるわ、覚悟はよろしいかしら♪」

そう言うとミーナ隊長の銀色に染まった髪の一本一本が蛇へと変容していく。
この姿はゴルゴンか。

「御満足頂けたかしら?うふふ……でもね……この私の最終形態を目撃したからには、生きて帰すわけにはいかないわよ?」
「アレ?ミーナ隊長……目が、笑ってないんダナ……」
「あら~?だから前以て聞いたのに‘覚悟はよろしいかしら’って、お馬鹿さんね」
「チョット!なんでワタシだけ、ミンナだって見て……」
「食らいなさい!ゴルゴン・ア~イ♪」

その赤く輝く両目から不可思議な光線が放たれる。
私の体は石になった……
その石像の周りをみんなが取り囲む。

「うんわ~すんげ~不細工!」
「寧ろ間抜け顔に見えませんか?」
「困ったわね恐怖に怯えた顔が良かったのに、これじゃ失敗作ね」

みんなの声が聞えてくる。
すごい言われようだ、みんな勝手な事言いやがって!
失敗作って、あんたがこんなにしたんだろ!早く戻してよ隊長。

「んでさ、この粗大ゴミどうすんだ」
「邪魔ですわよね」
「ここは一つサーニャに決めて貰うとするか」

助かった!サーニャ!早く助けて!

「で、どうするんだサーニャ?」
「捨てましょう……」

!!!

「ポイってかんじで~?」「はい、ポイって感じで……」

サーニャ!何言ってんだよ!
私だよ、エイラだよ、ゴミじゃないんだよ!助けてよ!

396: 2009/02/03(火) 00:09:45 ID:sjvaNibG
「それでは宮藤手伝ってくれ、おまえはそちら側を頼む」
「こうですね!バルクホルンさん?」

宮藤!そこ胸!胸だって!どさくさに胸触んな!
ひゃん、大尉そこ触っちゃダメっ、おしOこ今ぴょろって、ぴょろってでちゃうよ。

「それではいくぞ」
『お~け~』

うわ~なんて言ってる隙に展望台の縁まで運ばれて来ちゃったよ。

「せ~の」

本気?ねぇ本気なの?胸触ってもいいからさ、許してよ~。

『い~ち』

あっ今ミシって、今ミシって変な音しなかった?

『にぃ~の』

ちょっとちょっと高いって超高いって!ほら下見てみてよ、高過ぎるでしょ。

『さぁぁぁ~ん』

本当にもうっ、あーやめてぇぇぇ~!

あれ!?私、飛んでいる!この広い空を飛んでいる!
まるでわたぐもの様にふわふわ……なんてしない!

落ちてる、落ちてる、落ちていくぅぅぅ……

「ハッ……」

~起床~
私は目覚める、なにやら悪い夢をみていた気もするけどはっきりとした記憶はない。
私はふと考える。あれは予知夢なんじゃないかって。
そして私は考える。予知夢だとしたら未然に防がなくっちゃ駄目だよなって。
そう!こういう時はやっぱりタロット占いに限るよな。

私はテーブルからタロットを持ち帰るとその中から22枚の大アルカナを抜き出しベットの上に広げた。
ゆっくりと両手でのの字にシャッフルすると、その混沌とした運命の渦から一枚を引き出す。

私はゴクリと唾を飲み込みゆっくりとそれを捲る。
うわっ!
そのカードは私の手から離れるとはらりと落ちてベットの上に横たわった。

それは【ⅩⅢ 氏神】のカードだった。

カードに描かれたドクロの漆黒の瞳が私を見つめている。
うわ~以前にもこんな事かあった気もする……デジャヴ?まぁよくある事なんだな。
はっ!……よく考えたらそんな事より、早急に済ませなきゃならない最重要課題に気付いた。

私は……

★トイレに直行してから、キッチンに向ったんダナ。
→√02へ

397: 2009/02/03(火) 00:11:40 ID:sjvaNibG
ifシリーズ√27
「たったひとつの冴えたやりかた」

私が取るべき最良の方法はこれしかない……

「サーニャ、ワタシの血を吸ってくれないカ、どうせ吸われるのならサーニャに吸って欲しいんダナ」
「それだけはできないよ……血を吸ってしまったらエイラがエイラじゃなくちゃうもの……」
「かまわないさサーニャのしもべとして生きて生けるならナ、もう他に方法はないんダ」
「まだ……方法はあるわ……」

そう言うとサーニャはベルトをたくし上げる。目を背けあたふたしだす私を余所にサーニャはベルトの中へ手を差し入れるのだった。
そしてスボンに添えらえたガーターから銀色に輝くナイフを引き抜くと、それを私に手渡した。

「私が氏ねば彼女達は解放される……エイラ私を頃して!」
「サーニャ!!!」

なんて事言うんだサーニャ!私がサーニャを頃すなんて、そんな事出来るはずないだろ!
だけど……そうしないと隊のみんなは永遠に……どうすればいいんだ。

私は……

★サーニャの胸に銀のナイフを突き刺したんダナ。

なんて……そんな選択肢、選べっこないよ!
……私は自分の胸に銀のナイフを突き刺した。

「エイラ!!!」
「これで……サーニャに……血を吸って貰えるカナ……」
「エイラは馬鹿だよ……こんな私のために……馬鹿よ……」

そう言いながらサーニャは私に抱きついて来た。
そしてサーニャの唇が私の唇に触れる。
あぁ私は幸せだ。私は氏ぬのか、サーニャのしもべとして生きて行くのか。
そのどちらだとしてもこの私の最後の記憶が、夢にまで見たこんなに素敵な結末なのだから。
そして私は意識を失った。

398: 2009/02/03(火) 00:13:19 ID:sjvaNibG
~起床~
私は目覚める、なにやら夢をみていた気もするけどあれは夢なんかじゃない。
全身に温かく心地良い温もりが伝わって来る。私は愛しのサーニャに抱かれたまま眠っていたようだ。
私は生きている、記憶もはっきりしている。サーニャのしもべとなったわけでもないらしい。

「気分はどうエイラ?」
「とっても幸せダヨ、だってワタシのファーストキス……サーニャに捧げたんダカンナ」
「!!!あっあれはキスじゃないもん……最初のキスはエイラからって……そう決め……!!!」

私は唇でサーニャの唇を塞いだ。私にとって二度目のファーストキスだった。
夜の静けさの中、私達は抱き合い続けた。空に浮かぶ金色の満月だけがそっと私達を見つめていた。

しばらくしてサーニャは語ってくれた、あの時のキスについて。
あの時私の命は尽きようとしていた、その私にサーニャはバンパイアとしての不氏身の命を分け与えてくれたのだと言う。
だがその事でサーニャはバンパイアとしての全ての能力を失ってしまったのだ、その不氏身の肉体さえも。

「本当に良かったノカ?私なんかのためにサ」
「うん……たとえ永遠でもエイラのいない人生なんて」

そして私達はまたキスをした。それは私にとって誓いを意味するキスだった。
サーニャは永遠の命と引き替えに、普通の人間として私との刹那な寿命を選んでくれた。
限られたその日々を、私は一生サーニャに捧げる誓いをした。

~翌日~
基地は普段と変わらぬ朝を迎えていた。サーニャがバンパイアとしての能力を失った事で隊員みんなの呪縛も解かれたからだ。
結果的にサーニャが普通の人間として生まれ変わる事こそが、私達にとってたったひとつの冴えたやりかただったんだ。

そして私とサーニャはキッチンにいた。
今朝の朝食当番が私達二人だったからだけど、私にとってはちょっとした新婚夫婦イベントだ。
鼻歌なんて歌いながら私が野菜を刻んでいるとサーニャが話しかけて来た。
もしかして朝一番のキスのおねだりとか?もうサーニャったら果てしなく可愛いなぁ!

「あのねエイラ……実は私……もう一つエイラに隠していた事があるの……」
「!!!」

なんだんだ隠し事って!まさか‘実は男でした!’とか言うんじゃないよな!
私は考え得る最悪の告白を想定したが、今の私にはなんの問題もなかった。
たとえサーニャが男だってかまわない、彼女のすべてを受け入れる!その自信があった。
なぜならこの身を一生サーニャに捧げると、そう誓ったのだから!

「あのね……」
「ウン」
「実はね……」
「ウ、ウン」
「昨日の朝食でトマト料理をリクエストしたのは……私なの……」
「……」

……許せなかった。
私はサーニャにトマトをぶつけた。

エンディンクNo.02「たったひとつの冴えたやりかた」
~おしまい~

399: 2009/02/03(火) 00:15:26 ID:sjvaNibG
ifシリーズ√28
「魔女裁判」

私は部屋をもっとよく調べてみる事にした。

何か手がかりがあるかも知れない。私は辺りを見回す、テーブルの上には厚い革張りの本が一冊佇んでいる。
へぇサーニャこんな本読んでいるんだ。

私はその本を手に取った。おそらく題名なのだろう表紙には「if」と書かれている。
そして私は適当にページを捲って読んでみた。
【▲は3……十の位を意味する】
最初の一行を読んだだけで頭が痛くなった。何について書かれているのか私にはさっぱり理解できない。
サーニャこんな難しい勉強してたんだな。そこには私の知らないサーニャがいてちょっぴり悔しかった。

だけど今はこんな事に気を奪われている場合じゃないな。
私は次にベッドを調べる、まだ温かい。
こっこれは!

ハァハァ……こ、これがさーにゃの……!!
ん……さーにゃの匂いが……

「サーニャ!サーニャ!サーニャ!サーニャァァアアアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
あぁああああ……ああ……あっあっー!あぁああああああ!!!サーニャサーニャサーニャァアアァアァアアアア!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ……くんくん
んはぁっ!サーニャの雪のような銀色のの髪をクンカクンカしたいナ!クンカクンカ!あぁあ!!
間違えタ!モフモフしたいナ!モフモフ!モフモフ!さにゃさにゃモフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!
見えない殺人犯に怯えるサーニャかわいかったヨ!!あぁぁああ……あああ……あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
基地内であんな事があって恐かったナサーニャ!あぁあああああ!かわいい!サーニャ!かわいい!あっああぁああ!
ここから逃げよう!いっしょにスオムスに……いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!!サーニャはは家族を捜しに行く!!!!あ……ワタシもよく考えたら……
ガ チ レ ズ 大 尉 が 待 っ て い る !! にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!ニパァアアアア!!
この!ちきしょー!やめてやる!!兵隊なんか辞め……て……」

え!?見……てる?ミーナ隊長がこっちを見てる?
氏んだはずのミーナ隊長がワタシを見てるゾ!隊長がワタシに話があるって言っているゾ!幽霊がワタシに話しかけてるぞ!!
「兵隊を辞めたいのならさっさとお辞めなさい」
だって!!!よかった……いつでも飛んで行くからナ!サーニャ!

「いやっほぉおおおおおおお!!!ワタシにはサーニャがいる!!やったよエル姉!!ひとりでできるもん!!!
黒猫のサーニャアアアアアアアアアアアアアア!!いやぁあああああああああああああああ!!!!あっあんああっああんあサーニャァア!!サ、サーニャ!!サーニャァアアアアアア!!!サーニャァアアアア!!
ううっうぅうう!!ワタシの想いよオラーシャへ届け!!隣の国のサーニャへ届け!」

400: 2009/02/03(火) 00:17:35 ID:sjvaNibG
「何をしてるんですか!」
「おわああああ!!」

私はようやく我に返った。
私は無意識のうちにサーニャのベッドの上で転げまわっていたようだ。
というか布団に顔を擦り付けながら匂いを嗅ぎ回っていた。
ミーナ隊長の幽霊は思わず後ずさったが、私はそれ以上に動揺していた。

「あの隊長、氏んだはずじゃ!?」
「氏んでいません、生きています!」
「へっ?どゆコト?」
「これは非常時にあなた達隊員がどのような行動を取るかを試すテスト、つまりそういう事です」

テストだって?て事はつまり、ルッキーニが見たって言う血はトマトジュースかなんかで、ミーナ隊長は氏んでなくて、
私は大声で兵隊なんか辞めてやると叫んでて……それを全部聞かれてて!
まずいよ何か言い訳しないと。

「ち、違うんだコレは!その、べ、ベッドメイキングを……」
「よぉーくわかりました、この事は全て報告書に記載してスオムス軍本部に届けます、おわかり?」

うぎゃ~隊長わかってないよ、わかられても困るよ。
もっとリアリティーのある言い訳をしないといけないな。

「ベッドの下に殺人犯が逃げ込んデ……ワタシは犯人を取り押さえようとシテ!」
「エイラ……ここ私の部屋なんだけど……」

今度はベットの下から突然サーニャが音もなく現れた。
サーニャだって?て事はつまり、私が部屋に入って来てからずっ~とサーニャはベットの下に隠れていて、
私はクンカクンカしたいとかモフモフしたいとか叫んでて……それを全部聞かれてて!

いゃあああああああああああああん!!うぎぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!サーニャァアアアア!!

「ですから殺人犯なんて最初からいません!おって通達が来るまで自室謹慎を命じます!」
もはやにミーナ隊長のその言葉は私の耳には届いていなかった。

401: 2009/02/03(火) 00:19:10 ID:sjvaNibG
~一週間後~
私の自室謹慎は解かれた。スオムス軍本部からの通達が来たんだろう。
それは今日が私に対する審判の日である事を意味していた。
軍法会議へと向かう私を連行しに来たのはシャーリー大尉だった。

「まさかね、おまえがあんな度胸のある奴だったとはね、あたしは見直したよ」
「だから違うんダッテ、誤解なんダッテ」
「弁明ならここじゃなくて証言台でしろって、まあ結果的にサーニャに想いは伝わったんだ文通でも頼んでみたらどうだ?」

私の除隊を確定事項で話すな!それよりどんな顔して会えばいいんだろう。
サーニャは自分のベッドでのたうち回っていた女とどんな顔で会ってくれるというんだろう。
私は軍人としてではなく女としてのキャリアに大きな傷を残す事について悔いていた。

やがて法廷へと到着する。軍法会議は作戦室ではなく、広場で行われるらしい。壇上にはミーナ隊長が、その周りには隊員全員が集まっていた。
その中にはサーニャもいたけど、うつむいていてその表情までは読み取れなかった。

これじゃまるで公開処刑だな。ミーナ隊長に呼ばれ私は氏刑台を登る。
仲間の冷たい視線が背中に突き刺さるように思われる。これは錯覚だろうか。
目の前のミーナ隊長の顔は心なしかひきつっているように思える、当然だな。
そして私の罪状が読み上げられる。

「貴君は緊迫した状況下に於いて……えぇ……」
ミーナ隊長は言い淀み、一呼吸置くと頭を抱えながら一気に続きを読み上げた。
「‘スオムス軍人’として誇るべき行動を取った事をここに賞し、スオムス名誉百合勲章を授与するものとする」
「ホヘ?」

スオムスの魔女って……などと仲間の呆れた視線が背中に突き刺さるように思われる。これは錯覚じゃないだろうな。
パチパチと乾いた拍手が響いてるんだから。

「つまりエイラ・イルマタル・ユーティライネン少尉、これからもよろしく頼むわね」
ミーナ隊長の言葉で私もみんなも事態の結末にようやく気付いた。

「じゃあ……じゃあワタシはまだココにいてもいいってコト?」
「ええ」
「またミンナと一緒に戦えるってコト?」
「ええそうよ」

私が後ろを振り返ると壇上に仲間のみんなが駆け上がって来てくれていた。
そして私は揉みくちゃにされたあげく壇上から叩き落とされた。
起き上がるとその先にポツンと一人サーニャが立っていた。
どんな顔して会えばいいんだろう、どんな顔で会ってくれるというんだろう。
そんな事を考えていたけど私とサーニャは二人揃ってくちゃくちゃに泣いていた。

「あのナ、サーニャこの前のアレはナ……え~っと」
「うんいいのわかってるよ、あのねエイラ、またベッドメイキングして……くれる?」

私はこくりと頷いた。
仲間のニヤニヤした視線が背中に突き刺さるように思われる。たぶんこれも錯覚じゃないんだろうな。

エンディンクNo.03「魔女裁判」
~おしまい~

407: 2009/02/03(火) 00:54:36 ID:sjvaNibG
ifシリーズ√29
「終焉の淵」

サーニャが……いない!
いったいどういう事なんだ!

私はもう一度部屋の中を見回す。
するとテーブルの上には厚い革張りの本が一冊佇んでいた。
……あれ?
さっき部屋を調べた時、こんな本あったかな?第一サーニャこんな本持っていたっけ?
とにかく今は何かしらの手がかりが欲しい、私はその本を手に取った。
おそらく題名なのだろう表紙には「if」と書かれている。

私は適当にページを捲って読んでみた。
【■は4……一の位を意味する】
何について書かれているのか私にはさっぱり理解できない。それも当然か、こういうのは最初から読まなきゃ駄目だよな。
最初のページを捲るとそこには一編の詩が綴られていた。

~プロローグ~
未来はまるでわたぐものよう
ふわふわしていて心地よく
ぼんやりとして触れることは叶わない
でもね、ながめているだけでは置いていかれるもの
だからあなたはとびつづけるの、この広い空を

あなたに出会うその日のために……
愛しのあなたへ捧ぐ詩


私は知っている……この詩を。
何処で聴いたのかまでは覚えてないけど確かに知っているんだ。
私は好奇心に駆られ更に読み進める。

408: 2009/02/03(火) 01:07:56 ID:sjvaNibG
(すみません連投規制でした)

それはある少女の物語だった。
描写される少女の容姿が自分に似ている事から私は彼女に親近感を抱いていた。
本の中の少女は起床する、そしておもむろにタロット占いを始めたのだ。
益々私そっくりだな。
少女は引き当てる「塔」のカードを、逆位置だ。
……偶然だよね。

そして少女はパントリーで新たな登場人物と出会う。
説明によると、どうやら一番の親友らしい。

「オハヨーペリーヌ、サーニャはまだ起きてこないノカ?」

少女はそんな台詞を口にする。
ペリーヌ?ペリーヌだって!なんでペリーヌなんかが一番の親友なんだよ!
……あれ?なぜ登場人物にペリーヌの名前が付いてるんだ?
それにサーニャの名前まで!?
この本は何かがおかしい、そもそも印刷ではなく、見覚えのある誰かの肉筆で書かれているんだから。
私の不安は恐怖へと変わりつつあった。けれどもページを捲る私の手は止まらない。

それからいきなり少女の惚気た回想シーンが始まった。
何やってんだよこいつ……
そして得体の識れない生物と遭遇したと思ったら、少女はある場所へと向っていた。

もしかして……私は震える手でページを捲る。
私の予想通り少女はその本を見つけるのだった。

本の中の少女は手にした本を読み始めた。
やがて少女の心理描写が綴られ始める。好奇心、親近感、喜びと不安そして恐怖。
その感情はどれも私がこの本を読んで抱いた感情そのものを辿っていた。
恐怖に耐えかねた少女はその本を閉じ、辺りを見回してはははっと笑った。

つられて私も本を閉じる。もはや私の恐怖も限界に達していたんだ。
その後あの少女はどうなったんだろう?そんなの私の知ったとこじゃない。

そんな事を考えている最中だった。
何者かの視線を感じる、その者の感情までがこちらに伝わってくる。
敵意じゃない恐怖だ、ひどく怯えている者の視線だ。
はははっ、まるで今の私みたいだな……私みたい?

……!

私はこれから起こる数秒後の未来に気付いた。
私は急いで「if」という名の本へと手を延ばす。
間に合わない、わかっていた事だった。
本を開くその刹那、深い闇が訪れた。

エンディンクNo.04「終焉の淵」
~END~

409: 2009/02/03(火) 01:10:58 ID:sjvaNibG
ifシリーズ√30
「わたしのかえる場所」

私はキスする代りに首を横に振った。迷いはなかった。

「ダイジョブ、もうすぐサーニャの大好きなエイラが帰ってくるサ」
「そっか、そうだよね……エイラにもあっちの私が待ってるんだもんね、あなたの唇はあの娘の物なんだ」
「ちょっ!ワタシとサッあっちのサーニャはまだ何モ……」
「うふ、あなたのファーストキス貰っちゃったらあの娘に失礼だね……じゃあ握手……してくれる?」
「ウン……」

私とサーニャは握手をしながら暫く見つめ合った。
小悪魔なサーニャもちょっぴり可愛いななんて思ってしまう。
本当はサーニャと手を繋ぐのすら初めてなんだけど……このくらいの浮気、許してくれるよなサーニャ?
そしてどちらからともなく、私達は絡めた指をほどいていった。
サーニャとの、こっちのサーニャとの別れの時は迫っていた。

「アイツと、こっちのエイラと幸せニナ!」
「うん……あなたたちもね!」

~突入~
私は渦の中心座標に進路を向け飛び込んだ。中心に近付くごとに潮汐力は強くなっていった。
これじゃシールドを形成していても、亀裂を越える前に体が砕かれそうだ。
もう駄目だ、あきらめかけたその瞬間、体が自然と軽くなりストライカーが加速した。

「大事な妹を傷つける訳にはいかんのでな、最後くらいお姉ちゃんらしい所発揮させてくれ!」

バルクホルン大尉が魔法力を発動してくれていた。胸のボリュームに伴い増加した質量が重力を生み出す。
新に形成された重力場が、亀裂から流れ出る重力を打ち消してくれていた。

「サンキュー!トゥルーデ姉ちゃん!」

私は照れながら親指を立て、バルクホルン大尉も親指で返してくれた。
その向う側にはみんなの顔が見える、心配そうに見つめるサーニャの顔が見える。
元気でな、サーニャ。こっちのエイラもサーニャだけをずっと見つめているはずさ。
それからサーニャが剥いてくれたリンゴ、美味しいかったよ。

私の体は次第によじれだす、どうやら亀裂に到達したようだ。
そして私は意識を失った。

~起床~
私は目覚める、なにやら夢をみていた気もするけど、たぶん夢なんかじゃない。
全身に温かく心地良い温もりが伝わって来る。私は愛しのサーニャにおんぶしてもらいながら海上を飛んでいた。
記憶がはっきりしてくる。頭痛はないが体がぐにゃ~っとよじれたみたいな感覚はまだあった。

「気分はどうエイラ?」
「ダイジョブ、それより此処ハ?」

心配そうにサーニャが私の方へ振り返る。私は笑顔で答えて、それから辺りを見渡した。
他のみんなもいる。そしてみんなの顔を確認した。

410: 2009/02/03(火) 01:13:10 ID:sjvaNibG
「坂本少佐、眼帯が右目に戻ってル」
「ああ紛れもない、私の眼帯は右目だ」

「ペリーヌ、眼鏡かけテル」
「眼鏡のないわたくしなんて考えられまして?」

「トゥルーデ姉ちゃん、その髪型!」
「ねねねねっ姉ちゃんだと!エイラ!もう一度言ってみてくれ!」
「あっ……間違えタ、バルクホルン大尉、いつもの大尉ダナ」

見馴れた光景だ。
帰って来た……帰って来たんだ私の世界に!

『おかえり!エイラ』
「タダイマ!ミンナ」

隊員みんながここで迎えてくれたのには理由があった。
どうやらこちらでもあちらと同じ事が起きていたらしい。
この世界が整合性を保つため私の代わりにあっちのエイラが飛ばされて来ていた。
そしてこちらでも同じ結論に達し、たった今あっちのエイラを送り届けた所だったそうだ。
こちらは亀裂の入り口にあたる訳だから、重力に導かれ無事帰れた事だろう。
きっと今頃あちらでもエイラとサーニャは抱き合っているに違いない、その上キスまでしてるんだろうな。
頭痛がない所をみると時空の亀裂も完全に塞がれたのだろう。
すべてが元の鞘に納まった、私とサーニャの関係以外は……

~一時間後~
私とサーニャは束の間の空中散歩を楽しんでいた。
魔眼を通して私と坂本少佐が亀裂の消滅を確認すると、ミーナ隊長は基地への帰還命令を出した。
みんなが『ごゆっくり~』などと気をきかせて帰ってしまい、私達二人だけ海上に取り残されたからだ。
そして私達はお互いの出来事について語り合った。

「エイラ……あっちの私と……キスとか……してないよね?」
「!……してナイ、してナイヨ!なんでソンナ事聞くンダ」
「私……されそうになった……あっちのエイラに……」
「サッ、サーニャになんて事しゃがるンダ!」
「でも、でもしてないよ!……握手はしたけど……ごめんねエイラ」
「実はワタシも……あくしゅしちゃいましたゴメンナサイ!でもおアイコダナ」
「……」
「ん?サーニャどうしたンダ?」
「……許さない……浮気なんて絶対許さないんだから!エイラのばかぁ!もう知らない」

がぁ~ん!サーニャが今、ばかって、私の事ばかって言った……
そんな馬鹿な私、付き合ってもいないのに、なんか尻に敷かれている!
ちょっと待て……付き合ってない?がぁ~ん!がぁ~ん!
そうだったあっちの世界に行ってて勘違いしてたけど、私とサーニャはただのお友達なんだった。

え?……じゃあなんでサーニャは怒ってるの?浮気?あっちのサーニャに嫉妬してくれてるって……事なのかな?
そう言えば、あっちのサーニャはわざと部屋を間違えたって言ってたっけ……それってつまり!
言わなくちゃ、ちゃんと自分の口で!一番大切な事、私はまだサーニャに伝えてない!

「サッ、サーニャ!」
「……何言っても許さないから……」
「ワタシは!」
「……」
「サーニャが大好きダァァァ!一番大切な人ナンダァァァ!」
「……!!!」

411: 2009/02/03(火) 01:15:03 ID:sjvaNibG
沈黙が流れる。
暫くしてサーニャが何かを納得したらしく首をコクコク傾げる。これは告白された事に対してだ。
もう暫くしてまた首をコクコク傾げる。これは私達がまだ付き合ってなかった事に対してだろう。
そしてサーニャの顔が熟したトマトの様に赤く染まって行く。
たぶん決氏の告白直後の、今の私の顔より真っ赤だと思うよ。

「エイラはエイラだよね……?」
「ウン?」
「あっちのエイラじゃないよね……?」
「ウン」
「私の……私のエイラだよね!」
「ウン!」
「私もエイラが大好き!」

そう言ってサーニャは抱きついて来た。
抱き合いながら私達は顔を近付ける。見つめ合って、二人して笑い出した。
涙なんてこれっぽっちも似合わない告白だった、お互い長年の想いを遂げたというのに。
だけどやっぱり私は泣いていた。それは今迄の苦難の道程を思っての事じゃない。
サーニャも私と同じく、もう一人のエイラに揺らぐ心と必氏に戦っていた、その様を思っての事だった。

「アノナ」
「うん……」
「キス……してもイイカナ」
「……うん」

私はサーニャのほっぺにキスをした。
たとえそれがもう一人の自分だとしても、大切なこの娘の心が他の誰かに奪われてしまわないように……
私は願いを込めてキスをした。
そしてサーニャが何も言わずに私のほっぺたにキスしてくれた。

「これでおあいこだね」
「おアイコダナ」

気付くと辺り一面は茜色に染まっていた。
空も、空を漂う雲も、それを映す海さえも、世界の全てが照れている様だった。

「サーニャ、もうそろそろ帰らなきゃナ」
「うん……わたしたちの帰る場所にね」

私達は基地の方角へと進路を取った。
私達は手を繋ぎ、夕日に向って飛び続けた。

私は夕日に照らされたサーニャの横顔をそっと見つめる。
夕日に染められたサーニャの唇はまるでルージュを引いた様に潤しく、キス……唇にしとけば良かったかななんて思ってしまう。
あっちの世界で私達二人の別の可能性を見たものだから、私ちょっと欲張りになっているのかな。
今日三回目のクイズショーに出場し、ひたすら悩んだ挙句「C.ほっぺにちゅー」を選択したなんて事は人には言えない秘密だ。

今こうして手を繋いでいるだけで私どきどきしちゃってる、やっぱりこれが私達には丁度良い速度なんだ。
私達には私達が紡いで来た時間がある、それをこれからも大切にしていこう。
私達の時間の流れで、この世界に時を刻んていこう。

基地が視界に迫る頃、空には明星が輝き出した。

エンディンクNo.5「わたしのかえる場所」
~おしまい~

413: 2009/02/03(火) 01:16:52 ID:sjvaNibG
ifシリーズ√31
「これからのわたしたち」

朝食時、あの場にいなかったのはサーニャだ!

この501部隊のメンバーは10人、だけどここには11人いる。
誰か一人、この場にいるべきではない人物がいる。
だからってサーニャが存在しない世界なんてありえるはずがない。
なんなんだ、こんなの私の世界じゃない!

「気付いちゃったんだね、私の存在に……ついに来たんだねこの日が……やっと逢えたねエイラ」

サーニャがそう言った瞬間周りの風景が一瞬で消えた。
背景だけじゃない今迄お茶を楽しんでいた隊員みんな含めて、全て真っ白になってしまった。
その純白の世界の中に私とサーニャだけがポツンと存在していた。

「サーニャ?いったいどういう事ナンダ!サーニャ!」

「ここは私が創った空想の世界、私が描いた物語の中の世界なの。
そしてエイラ……あなたはその物語の中の登場人物。

私は孤独だった。家族と離れこの隊に配属されてからもずっと、私は独りぼっちだったわ。
ある日私は考えたの、ならばお友達をつくろうって。
私のなりたい自分、もしもこんなお友達がいたらいいなっていう願望を形にして。
私は書き始めたわ、そんな女の子が活躍するこの物語を。
そしてその女の子こそが、エイラ……あなたよ。

でももう私が書き綴るこの物語はここでおしまい。
ついにあなたは私のペンを離れ、自分の意志でこの世界に私を登場させた。
もうあなたはただの登場人物なんかじゃない、命を持った存在なのよ。

お別れだねエイラ……
いいえこれからはあなた自身がこの世界を創っていくんだもの、あなたの世界のあなたのサーニャとはいつでも会えるわ。
その世界であなたとサーニャがどうなっていくのかはあなた次第。
あなたの生きた人生がこの本に書き綴られていくんだもの。
私はこれからもあなたを見ているわ、だからさよなら……愛しのエイラ」

「サーニャ……サーニャ!ワタシはサヨナラなんてしたくないヨ!」

414: 2009/02/03(火) 01:18:38 ID:sjvaNibG
~Rebirth~
私は目覚める、なにやら夢をみていた気もするけどはっきりとした記憶はない。
私はふと考える。あの夢はどこから来て、どこへ消えていくんだろう。
そして私は考える。私の存在について。
今ここに在る私はひょっとして誰かがみている夢なんじゃないか。
たとえこれが現実だとして私は何者なのか?何故ここに在る?
ん?以前にもこんな事を考えた気もする……デジャヴ?
まぁよくある事なんだな。

そんな事を考え寝返りをうつと目の前にサーニャの寝顔が現れた。
あわわわわっサーニャ!なんでこんなとこにいるんだ!もしかして部屋間違えたのか?
うぅ~そっそんな油断しきった顔しちゃって……

「うぅ~キョ、キョウダケ…ダカンナ」

今日だけ……そんな今日だけが365日続けばいいななんて思いながら、私は眠れぬ夜を明かした。

エンディンクNo.06「これからのわたしたち」
~おしまい~







そして……

→√▲■へ

※どこかのパラグラフで、エイラは二回「if」という題名の本を発見します。
その本の中で【▲と■】が何を意味するのかは語られています。
その手がかりをヒントにして、次のパラグラフの√に進んで下さい。

415: 2009/02/03(火) 01:20:02 ID:sjvaNibG
ifシリーズ√32
「スオムスに架かる友情の橋」

私は溢れ出るリビドーを爆発させたんダナ。

「みっ宮藤!牛乳が、牛乳が口から滴れてルゾ」
私はそう言いながら宮藤の口元に手を添えた。
……はっ何やってるんだ私、これは私の意志じゃない体が勝手に動いただけだかんな!

「ちっ違うんだ宮藤、これはそういう意味じゃなくテ」
「エイラさんも牛乳好きなんですね、でも私は牛のお乳よりもエイラさんの……おっOいの方がも~っと好きです!」
「ちょっちょっと待てっテ、違っ……ひゃんッ」
「実はお風呂で背中を流していたあの時も、ずっとエイラさんのおっOいの事だけ考えていたんですよ、ふふっ」

弁解虚しく私は押し倒された。
挙句に上着とブラは同時に剥ぎ取られ露となった胸は既に舐めずり揉みしだかれていた。この間僅か0.3秒。
こいつはプロだ!単なる耳年増でヘタレで経験ゼロの私なんかが適う相手じゃない。
このままじゃ私が喰うわれる早く逃……ゲェェェーッッッ足のロックが完璧に極まっている!これじゃ逃げられない!

「ふふふっ無駄ですよ、私の必殺技‘桜花☆五芒星’から逃れるすべなんて存在しないんですから」
「オッ、オウカゴボウセイ!?」

両足で相手の動きを封じ込め、それでいて両腕と舌を自在に操り三点同時に相手の胸を攻める。なんて完成された形、つまりパーフェクトフォームなんだ!
獲物を捕獲する海星の如く相手を薄紅色に染め上げ快楽の桜花を乱れ咲かす。その名通りの必殺技だ。
このままじゃ私の意識が危うい誰か助け……誰か来たリーネだ助かった。

「何やってるんですかエイラさん!お風呂上がりにそうして貰うのは私の特権なのに!」
「おまえ達、風呂上がりに毎回こんな事してたのカヨ!それより宮藤を早くなんとかしてクレ!」
「早くどいて下さい!」
「いやだからリーネ、宮藤を早くどかしてくれッテ!」

この騒ぎを聞き付け他のみんなも集まって来た。助かった、今度こそ助かったぞ。

「ミンナ助け……」
「助けて下さい!私エイラさんに無理矢理押し倒されて」
「なっ何言ってるンダ宮藤!押し倒されたのは私の方ダロ」
「その態勢でそう言われても……なぁ」
「説得りょくが……ねぇ~」
「こっ、これは正しくブロッサム・ペンタゴン!まさかこんな所に幻と言われたこの技の使い手が実在していたとは!」
「エッ!?エーッッッ!」

気付くと私と宮藤の体位は入れ替わっていた。ご丁寧に私の手の掌は宮藤の胸元に添えられている始末だ。
うぎゃ~宮藤、こいつは鬼だ!悪魔だ!氏神だ!間違いない占いの【氏神】は紛れもなくこいつの事だ。
こんな可愛い顔してるくせに平然と私に罪を擦り付けようとしていやがる。
よく見ると目に薄らと涙まで浮かべて、おまけに演技派かよ!

416: 2009/02/03(火) 01:21:59 ID:sjvaNibG
「リーネ、おまえは見てたダロ?なんか言ってクレ」
「犯人はエイラさんです!間違いありません」
「私、もうお嫁にいけない……」
「芳佳ちゃんは私のお嫁さん、いいえ私が芳佳ちゃんのお嫁さんになるから泣かないで!」
「ちょ……ナンダヨ!」

宮藤とリーネは抱き合って泣き出す。なんだよ宮藤その涙は!どっから出てんだよ。
それからリーネ、犯人はないなだろ犯人は!そしてさり気なくプロポーズするな!

「前々から怪しいとは思ってたんだよな~ルッキーニこの変Oに近寄るんじゃないぞ」
「あ~んシャーリーあたしこわいよぉ~むふふぅん」

そう言いながらルッキーニはシャーリー大尉の胸に顔を埋める。
おまえ達には言われたくないよ!

「こんな変Oな方に背中を流されていたと思うとぞっとしますわ、わたくしもう一度お風呂に行って身を清めて参ります」
「あ~そういえばさ~わたしもお風呂覗かれた事あったな~」
『やっぱり!』
「ちょっと、あれは単に私が風呂入ろうとしたら先にハルトマンがいただけの話ダロ!」

ペリーヌの事については言い訳しないけどさ。
なんなんだこの雰囲気は!そんなに普段の私は信用なかったのか?日頃の私の行動は怪しかったのか!?
自己嫌悪で頭が痛い、なんだか私が宮藤を押し倒したような気にすらなって来た。

「たっ確かに誘ったのは私からかも知れないケド、少なくとも共犯扱いにしてクレ」
「そうなんだエイラが押し倒したんだ……私、信じてたのに……女の子なら誰でもいいんだね……不潔よ」
「ちょっ、違っ、サーニャ!誤解だッテ!今の嘘ダカンナ!」
「あぁ~エイラがサーニャ泣かした~」
「変Oの上に嘘つきでいじめっ娘とはもはや鬼畜だね、鬼畜だよ鬼畜」

みんなの煽りがサーニャの涙を加速させる。
うぎゃぁぁぁ~サーニャが、サーニャが泣いているぅぅぅ。
これは悪夢に違いないんだな。頼むから悪い夢なら早く覚めてくれ……

~一ヵ月後~
夢じゃなかった……
あの後、サーニャは一言も口を聞いてくれなかった。
なにか汚らわしいものを見るかのような彼女の視線に耐え切れず、私はここスオムスへと帰って来ていた。

だがしかし、このスオムスも私にとって安息の地とは言えなかった。
人の噂というのは音速も時には光速をも超えるもの、同僚を押し倒し部隊を追われた不幸な魔女の噂はスオムスにも伝わり広まっていた。
ユーティライネン少尉に触れると不幸が染ると、今やスオムス一有名人の私に誰も近寄ろうとはしなかった、一人を除いては。

そんな私に以前と変わらなく接してくれたのは親友のニパだけだった。人間不信となった私の心を彼女は優しく包んでくれた。
暗闇のどん底にいた私にとって彼女はとても輝いて見え、以前の様に卑屈な影は不思議と見えなかった。
501部隊の連中とのあんな嘘臭い友情なんて糞食らえだ、私にはニパがいる私はニパと共にに生きて行くんだ!

「ニパが親友で本当に良かった、アリガトナ」
「お礼を言うのはこっちの方ダヨ、イッル‘ついてないユーティライネン’が親友で本当に良かっタヨ」

……え?

‘ついてないネン・コンビ’の伝説が今、幕を開けようとしていた。

エンディンクNo.07「スオムスに架かる友情の橋」
~おしまい~

419: 2009/02/03(火) 01:57:47 ID:sjvaNibG
ifシリーズ√33
「お姉ちゃんとバンパイア」

~起床~
私は目覚める、なにやら夢をみていた気もするけどはっきりとした記憶はない。
全身に冷たくも心地良い温もりが伝わって来る。私は愛しのトゥルーデ姉ちゃんに抱かれたまま眠っていたようだ。

「気分はどうだエイラ?」
「ソンナ気分だナンテ、トゥルーデ姉ちゃんに抱かれて幸せじゃないワケないダロ~」
「クックック、可愛い奴め」

私の胸は幸福で満たされていた。知らなかった、夜がこんなに明るかったなんて。
夜の闇もトゥルーデ姉ちゃんも、この世のすべてが輝いて見えた。まるで新たな自分に生まれ変わった様だ。

「エイラ……」
「姉ちゃん……」
「エイラ……」
「姉ちゃん……」
「エイラ……」
「姉ちゃん……」
私とトゥルーデ姉ちゃんは時間を忘れただただ見つめ合う。

「やっふふ~エイラさんばかりずるいです!私もお姉ちゃんとハグハグしたいもん!」

そして私の幸福な一時を打ち破る邪魔者は突如として現れた。げっ宮藤だ、今いいとこなのに邪魔するなよ。

「ちょ~っとあんたたち、待ちなさい!」
誰かが窓をぶっ壊して飛び込んで来た。ルッキーニだ。
「あ~ん愛しのトゥルーデお姉さまぁ~ん」
そう言いながら宮藤の顔面を踏み潰し、踏み潰された宮藤は床にめり込んだ。

「そうよねぇ~」
今度は坂本少佐が音もなく現れた。
「少佐どうしたンダ、いきなり現れテ」
「いろいろ……いろいろあったのよね……」
いろいろあったんだろうな坂本少佐……口調まで変わっちゃってるよ。
「じゃあ私はこれで……」
いったい何しに出て来たんだよ坂本少佐は!

「お姉さまぁ……んぐぅーぅぅぅげぼっ」
「いい気にならないでよねルッキーニちゃん、お姉ちゃんは私‘だけ’のものなんだからね!」
少佐に気を取られている隙に宮藤は二次元の世界から帰還していた。ライバル達は押し退きながら愛しの姉ちゃんに擦り寄っている。
私だって負けてられないんだな。私も姉ちゃんに駆け寄り、問い質す。

「いったいダレが一番好きナンダ!?」
「私が一番好きなのはエイラ……おまえ達の、その血だよ!カプッちゅぅぅぅ~♪」

あぁぁぁぁ~トゥルーデ姉ちゃんが、トゥルーデ姉ちゃんがぁぁぁ、私の血を吸っているぅぅぅ~。
私は幸せです、私はトゥルーデ姉ちゃんの妹でいられて幸せですぅ~。
エイラは、エイラは一生トゥルーデ姉ちゃんの愛奴ですぅ。

貧血を起しかけた私の脳裏に一人の少女の顔が過る、サーニャだ。なぜ彼女の顔が思い浮かぶ?
そんな事もうどうでもいい、なぜなら今の私にとってトゥルーデ姉ちゃん以上に大切な者など存在しないのだから……

エンディンクNo.08「お姉ちゃんとバンパイア」
~おしまいでちゅー~

421: 2009/02/03(火) 01:59:48 ID:sjvaNibG
ifシリーズ√34
「さよならの詩」

新に書き綴られたページを読み終えると‘私’はその「if」という題名の本を閉じた。
それはちょっと不思議な物語。
エイラというとても素敵な女の子の物語。

ねぇエイラ、エイラはあなたの未来を手にいれたんだね。
自分の人生を生きて、もう‘私’なんかのものじゃないんだね。
‘私’も飛び立たなきゃだめだよね。

‘私’はそう決心しでキッチンに向う。キッチンには宮藤さんがいて朝ご飯の準備をしていた。
でもどうやって声かければいいの?エイラならこんな時どうしてたかな?

‘ほら早く行けヨ、オハヨウってさ、簡単ダロ?’

あれ?今の声……エイラ!
うんエイラ、私もう一人でも平気だよ、頑張れるよ。

「おは……ようっごさいます」
「あっ!おはよーサーニャちゃん」
「あの……トマト洗うの……手伝います」
「うんありがとう!トマトは体にいいんだよ~生理不順とか特に、なぁ~んて私ぃ生理まだなんだけどね、えへへっ」
「私も……私もまだだよ……芳佳ちゃん」
「サーニャちゃん……今芳佳ちゃんって?芳佳ちゃんって!初めて名前で読んでくれたね!」
「あの……ごめんなさい」
「そんな事ないよ、ありがとう!サーニャちゃん、私達きっと素敵なお友達になれるよ」
「うん……私も……そうなれたら嬉しいな……芳佳ちゃん!」

ねえエイラ、私もう一人じゃないよ、だから頑張れるよ。

~エピローグ~
未来はまるでわたぐものよう
ふわふわしていて心地よく
ぼんやりとして触れることは叶わない
でもね ながめているだけでは置いていかれるもの
だからわたしはとびつづけるの この広い空を

あなたとすごしたあの日を胸に……
愛しのエイラへ捧ぐ詩

エンディンクNo.00「さよならの詩」
~おしまい~

422: 2009/02/03(火) 02:02:19 ID:sjvaNibG
ifシリーズ√35
「おのぞみの結末」

私は悩んだ挙句、サーニャにキスをしようとした。

「イデッ」
「いたっ……」

おでこがぶつかった……
どこまでヘタレなんだ私!
キスなんて……するのはじめてだもんな。しかもストライカー履きながらなんて。
ほらサーニャが笑ってるじゃんか、と言うより微笑んでる?

「ごめんワタシ……した事ないンダ……キス」
「うふ、こうやるの……」

サーニャがその腕を私の首元に絡めてきた。サーニャが首を傾けそっと唇を寄せる。

……
天使の祝福を受ける時ってこんな感じなのかな。
そこからの記憶が抜け落ちていた。

「ごめんねエイラ……無理させちゃって」
「ごめんなサーニャ上手くできなクテ」
「ううん、そういう意味じゃないの……あなたが好きなのは私じゃなくてあっちの世界のサーニャなんだもんね」
「そんなコトないサ!どこの世界なんかじゃナイ!ワタシか好きなのはサーニャ、そのコトには変わりないヨ」
「うん」

この気持ちに嘘はない、私にとってサーニャはサーニャだ、それ以外の何者でもないんだから。
そしてサーニャの腕が解けるのを確認すると、今迄様子を覘っていた仲間達が集まって来る。
こっちのみんなとのお別れの時間がやって来た。

「それじゃ達者でな」
「頼んだわよ」
「ハイ!」

「あっあなたがどうしてもと仰るなら眼鏡……かけて差し上げてもよろしくてよ、伊達ですけどね」
「あぁ似合うと思うナ」

「まさか時空の壁突破一番乗りをエイラに奪われるとわな、まぁお前だったら仕方ねーか」
「あっちのあたしによろしくね~ん‘先にないすばでぃになるのはあたしの方だかんね’って」
「伝えるヨ」

「おまえは何処に行っても私の妹には変わりない、憶えておいてくれ」
「あっちでも工口い事ばっかすんな~」
「しねーヨ」

「私のおっOいは何処に行ってもエイラさんの物ですから!」
「エイラさんのおっOいは何処に行っても私の物ですから!」
「ちょっとリーネ何の事ダ!宮藤胸を揉むナ!」

帰る直前になり重大な事実が発覚した、時空間のズレが知らない間にまた進んでいた。
こっちのエイラはかなり工口いらしい。何やっちゃってくれてるんだ、こっちの私!
これはどうりで……サーニャもこれだけ積極的になるわけだ。

「エイラ……」
「サーニャ……」

そして私とサーニャはもう一度キスをした。こっちのサーニャとの二度目で最後のキスだった。

424: 2009/02/03(火) 02:03:53 ID:sjvaNibG
~突入~
私は渦の中心座標に進路を向け飛び込んだ。中心に近付くごとに潮汐力は強くなっていった。
到着時よりも亀裂は拡大している、そうかキスするかしないか葛藤してる隙に時間が経過していたんだ。
これじゃシールドを形成していても、亀裂を越える前に体が砕かれそうだ。
もう駄目だ、あきらめかけたその瞬間、私の体は加速を始めた。
何故だかズボンに温もりを感じる。

「エイラには私がついているよ……」
「サーニャ!」

サーニャが直結して私を後押してくれていた。
四機の魔導エンジンが唸りを上げる。

「サーニャ!早く戻るンダ!」
「いやっエイラを無事に送り届けるまで……私、平気だから」

私の体は次第によじれだす、どうやら亀裂に到達したようだ。
サーニャは?サーニャは無事なのか?

「エイラ!あなたに逢えて思い出したの……あの頃の気持ち、私……あなたが好き!離れたくな……」

次第にサーニャの体が引き剥がされて行く。
そして私は意識を失った。

~ドーバー海峡上空~
私は落下していた、目の前に海面が迫る寸前でなんとか姿勢を保った。
辺りを見回したがさっきまでいた仲間のみんながいない。
どうやら無事に元の世界に戻れたようだな。でも亀裂は?亀裂は塞がったのか?
私は頭上を確認する、何かが落ちてくる、人だ!私は慌てて救助に向った。

「大丈夫カ?しっかりし……サーニャ!」
「ごめんねエイラ……来ちゃった」
「来ちゃったッテもしかして……あっちのサーニャ!?」
「うん」
「エェェェー!」

どうする?どうする?どうする?
そうだ亀裂は?時空の歪みは感じない。私の頭痛は続いていたけどこれは別の原因だ。
どうやら亀裂は無事消滅したらしい……って事は、ここにいるサーニャはあっちの世界に帰れないって事だ。
問題はそれだけじゃない、時空間の修復作用が働くはずだ。
つまりあっちのサーニャがここにいるって事はこの世界のサーニャの存在が消えてしまう事を意味している。
先程まで感じていた幸福の副作用は思わぬ所に生じていた。この世に旨い話など存在しないんだ。
別世界のサーニャに恋してしまったばっかりに、私は二人のサーニャの運命を大きく変えてしまったんだ。

「やっぱり私……来ちゃいけなかったんだね」
「ソンナコトナイ!ワタシがサーニャを好きだって気持ちは本当ダヨ」
「ありがとうエイラ……」

サーニャは私に抱きつき泣き出した。たぶんサーニャも気付いてしまったんだな私の顔色の意味を。
あの時私はこの娘の気持ちを受けとめた、そしてこの娘は自分の世界を捨てて私を選んでくれたんだ。
私はこの娘を幸せにしなきゃいけない義務がある。いや義務じゃない願望だ!

「サーニャ、ここはあっちでもこっちでもナイ今生まれたばかりの……私達の世界ダ!」
「私達の……世界?」
「ソウサ!これから二人で創ってくンダ」
「うん!」

425: 2009/02/03(火) 02:06:13 ID:sjvaNibG
~ハンガー~
基地に到着すると隊員みんながハンガーまで出迎えてくれた。
みんなこんなに心配してくれてたんだ、私の目は潤んだ。

「ミンナ!タダイ……ゲフゥ」
「テメーどの面下げて此処にいやがる!(ズコーン)」

おかえりの言葉もなく、いきなりシャーリー大尉のドロップキックが飛んで来る。
私に弁明の余地はなく他のみんなを加えた矢継ぎ早の攻めが続いた。

「シャーリー!エイラなんかやっつけちゃえ~(がし~ん)」
「私にあんな事して、その上芳佳ちゃんを誘惑するだなんてヒドイです(バシン)」
「エイラさん逃がしませんよ!エイラさんのおっOいは私の物です!(むぎゅ)」
「お姉ちゃんと呼べば何をやらかしても許されると思うな(ドス)」
「揉み逃げは卑怯だよね~倍返しさせて貰うよ~(むぎゅむぎゅ)」
「坂本少佐にだってあんな事、あんな事(げしげし)」
「覚悟は出来ているだろうな(ザクリ)」
「おわかりよね?(♪♪♪)」

なんなんだ!いきなりタコ殴りって!熱烈歓迎?愛情の裏返し?そーじゃねーよ!
奴だ、もう一人のエイラがこっちで何かやらかしたんだ。
私がこの世界に戻って来て入れ代わりに消えたもんだから、その矛先が私に向いているんだ。
頼む、サーニャからも説明してくれ!

「あなた……誰?」
「サーニャ!それはないダロ!エイラダヨ!」
「そうじゃなくてエイラの……後ろ」
「あの……サーニャです……」
「そうそう私の後ろにいるのはサーニャに決まってんダロ、何言ってンダ?サーニャ……サーニャ?」

え?後ろにいるのがサーニャで、じゃあ私が最初に話かけたのは?え~!

「サーニャガ……」
『二人いる!』
「あの……はじめまして」
「はじめまして……」

隊員みんなに半頃しにされ薄れ行く意識の中で、私は残りの命を削りながら今迄の事について説明した。
時空の歪みの事、あっちの世界の事、もう一人のエイラの事について。
みんなは二人のサーニャを目の前に否応なしに納得し私の冤罪も無事晴れた。
その後の記憶はない、私の命は尽きる寸前だった。

~自室~
「私なんかもうキスしてるんだからね二回も!それも唇に!」
「キスくらいでいい気にならないで!私なんてエイラが寝てる隙にもう×××しちゃってるんだから」
「×××だなんてそんな!まだ私だってしてないのに!」
「だって仕方ないじゃない!こっちのエイラは私が誘っても何もしてくれないんだもん!」
「そこがキュンとくるんじゃない!淫乱雌豚はおっOい魔神の家畜にでもなったらどうかしら?ぶひぶひ」
「うっさい!泥棒猫は黙ってて!私のエイラに変な臭いつけないでよ!」

……
「ハッ!?」
『ZZZ……』

426: 2009/02/03(火) 02:07:59 ID:sjvaNibG
~起床~
私は目覚める。私は夢をみていた。
何故かサーニャが双子になっていて、二人が言い争っている。確かそんな夢だった。
サーニャが出てくるんだから吉夢に違いないんだけど悪夢だったような……まあ双子って時点で変な夢だったな。

寝返りをうつと目の前にサーニャの寝顔が現れた。
あわわわわっサーニャ!なんでこんなとこにいるんだ!また部屋間違えたのか?
うぅ~そっそんな油断しきった顔しちゃってると私だって……
だめだ!だめだ!サーニャにそんな事出来ないだろ!
私はもう一度寝返りをうってサーニャに背を向ける。
目の前にサーニャの寝顔が現れた……あわわわわっ。
もう一度寝返りをうつ、サーニャの寝顔が現れる。
サーニャが……二人いる!

私達三人は川の字になって寝ていた。どうしていいのかわからずに私は天井を見つめた。
夢の続きなの?違う身体中がズキズキ痛むんだから。そうか、あの後私はここに運ばれてそのまま寝ちゃったんだ。
じゃあサーニャが二人いるってのもやっぱり現実なんだな。
あ~私って世界一幸福な美少女ぉ~♪
あっ世界一の美少女はサーニャとサーニャだから、私は世界一幸福で世界で三番目の美少女だな♪

でもどうして二人のサーニャが同じ世界に存在できるんだろう?
私がこっちに来てもう一人のエイラは消えた。同じ様にどちらかのサーニャが消えなければこの世界のバランスは崩壊するというのに。
何か別の方法でバランスを保っているのかな。

それよりも今考えなきゃいけないのは私自身の事だ。
もう一人のエイラは、はてしなく工口かった。奴は他人じゃないもう一人の私だ。
自分でもわかってるんだ、あれは私自身にも潜んでいる闇の人格だって事が。

「うぅ~んエイラぁ~……むにゃむにゃ」
「ちょっとサーニャ……」

右側のサーニャが寝惚けたふりして抱きついて来た。震える子供の様に私の右腕にしがみついている。
今度は左側のサーニャがそっと手を握って来た。合わされた手に力がこめられる。
起きてたんだな二人とも寝たふり続けてるけどさ。なんかいじらしい……

そうだ世界一幸福な美少女だなんてうかれていられないんだ。
欲望に流された結果、私はこの世界のサーニャを失いかけたばかりじゃないか。
そしてもう一人のエイラは一番大切な人を失った。まぁこいつにとって本当にサーニャが一番大切な人だったかは怪しい所だけど。
私はこの娘達に対して誠実じゃなければいけない、そうでなければ私も報いを受けるんだろうな。
他の娘への浮気だけじゃない、いずれはどちらか一人のサーニャを選ばなきゃならない、そういう意味だ。

でも……どっちのサーニャも大好きだなんてやっぱり駄目かな……えへへ駄目じゃないよね、ねえどう思うダニエル?
‘おまえの言う通りだ’
やっぱり!やっぱりダニエルもそう思うか、親友のおまえがそう言うんだから間違いないな!
私は枕越しに本棚横にある藍色の頭像を見つめ……いない、サーニャの次に大切な、親友ダニエルがいない!
人には言えない悩みを顔色一つ変えずに聞いてくたダニエル、嬉しい時も悲しい時もいつも傍にいてくれたダニエル。
そのダニエルがいない!ダニエルが家出した!まさか誘拐されたなんて事は!?
あぁどこへ行ってしまったんだ!帰って来ておくれ、私の親友、愛しのダニエル!

審判は既に下されていた。

エンディンクNo.09「おのぞみの結末」
~おしまい~

427: 2009/02/03(火) 02:09:48 ID:sjvaNibG
ifシリーズ√36
「イノセント・デイズ」

今度こそ間違いない、怪しい行動を取った奴がいるんダナ。

私は風呂場での情景を思い浮かべた。やっぱりおかしい、あの場にいるべき人物がいない。
だけどこんな物じゃまだ確証とは言えないな。何か証拠を摘まないと。
サーニャの事も気掛かりだけどサーニャを巻き込むわけにはいかないな。
私は心当たりのある場所へと直行した。

~ハンガー~
私は隊員のストライカーを確認する。
やっぱりあの人のストライカーだけない!とするとあの人は……あの時点で既に。
そしてルッキーニがミーナ隊長を発見した時には何か別の物に擬態してやり過ごしたんだろう。
これは予想を上回る深刻な事態になりそうだ急がなきゃ。私はあの人、いやあの人と入れ替わったモノがいると思われる病室へと向った。

429: 2009/02/03(火) 02:11:51 ID:sjvaNibG
~病室~
病室に入るとベッドの上にはミーナ隊長が、それに付き添い坂本少佐と宮藤がいた。

「宮藤、バルクホルン大尉ハ?」
「えっとミーナさんの容体が安定したんでみんなに知らせに行きましたけど、どうしたんですエイラさん」
バルクホルン大尉は不在か……計算が狂ったな、なら私達でなんとかしないと。

「宮藤、少佐から離レロ!そいつは少佐じゃナイ、おそらく……擬態したネウロイダ!そうですヨネ‘少佐’?」
坂本少佐からの返事はない。
「何言ってるんですエイラさん、どういう事なんですか!?」
「こういう事ダ!」

私は短銃に魔力を込め解放つ。
着弾点が歪み、ヘキサゴンを型取った少佐の偽りの皮膚が剥がれ落ちる。中からはハニカム構造をした漆黒の肉体が現れた。

「どうしたんですか?坂本さん!坂本さん!」
「宮藤ソイツは敵ダ、ソイツから離レロ!」

早まったか、宮藤が状況を把握してから仕掛けるべきだったな。宮藤はなおも坂本少佐の偽物へ語り続ける。
ネウロイの右腕がビーム状の扶桑刀へと変貌し、宮藤へと振り下ろされようとしていた。
「アブナイ、宮藤!」
呆然と立ち尽くす宮藤を庇ったはいいが扶桑刀が私の肩口を焼き切る。
私の傷口を見て少しは現状を把握したのか宮藤がシールドを形成した。

「坂本さん!こんな事もうやめて下さい!」
だが未だに宮藤は現実を受け入れようとはしない、シールド越しに偽物への問い掛けは続けられた。
私は弾を撃ち続けるが短銃に込められる魔力などたかが知れている、その上傷の痛みが追い打ちをかけていた。
それ以上に問題なのは奴の胸部・腹部・脳天、狙撃部のどれもが偽りの急所でしかないという事だった。
手立てはないのか……

「はい、はい、でも……わかりました!」
「宮藤?宮藤ドウシタ!ダレと話てル?」
「坂本さんが、坂本さんが!真実を見極めろって、自分のその目で見極めろって私に!」

宮藤が何を言っているのか信じられなかったが、それ以上に信じざるをえない光景を目にした。
魔眼だ、魔眼が宮藤の右目に宿っていた。あれはおそらく坂本少佐の魔眼だ。

「エイラさん、コアは右目です!右目を狙って下さい!」
「了解ダ、宮藤!」
私は偽物の眼帯目がけて引き金を引く……くそっ弾切れだ。こんな時に!
宮藤の想いが、坂本少佐の意志が無になる。

《パーン》
その時、乾いた銃声が響いた。ミーナ隊長がベッドから起き上がっていた。
ミーナ隊長の放った一撃は的確にコアを貫き、坂本少佐の幻影を消し去った。

「助かったヨ、ミーナ隊長」
「でも大丈夫なんですかミーナさん?起き上がったりして」
「ええ私にも聞こえたのよ……美緒の声が、そして怒られちやったわ‘何寝てるんだ’ってね」

「でも私わからないんです何でネウロイはミーナさんを狙ったんですか、基地に潜り込んでまで」
「たぶん坂本少佐の記憶からこの隊の中枢、つまり何がコアなのかを読み取ったんダナ」
「そうですね、私達……いいえ坂本さんにとってミーナさんは特別な存在ですもんね」
「美緒……あなたって人は……」

そう言いながらミーナ隊長はその場に泣き崩れた。
それにつられて宮藤も泣き出し、私は涙を堪えてそっと宮藤の肩を抱いた。

430: 2009/02/03(火) 02:16:31 ID:sjvaNibG
~一年後~
私はあの日の出来事を振り返っていた。一人展望台に登り空を眺めていたら自然とそんな気分になったからだ。
あの後捜索が行なわれたが結局坂本少佐は帰って来なかった。
私は自分を責め立てた、私が出撃しなかったばかりにと。いいや私だけじゃない誰もが自分を責め、誰もが他を責めなかった。

そしてあれから私達もいろいろ変わった。
ミーナ隊長は現役を退いたが戦う事は辞めなかった。軍の中枢に入り彼女の戦いを続けている。

新たな隊長にはバルクホルン中佐が、そして副官にはシャーリー少佐が任命された。
二人は前任に負けない名コンビだと私の目には映る。
喧嘩の目撃回数は前任者達の比じゃないけど、私は少し羨ましく思う。

ペリーヌは宮藤との朝連を毎日欠かしていない。坂本大佐を救えなかった自分が許せていないのか、別の理由があるのかまでは知らないが。
その宮藤の成長は凄まじい、特に著しいのはその天然タラシっぷりだ。笑い方まで坂本大佐に似て来た事だけは頂けない。
ルッキーニは宮藤にロックオンされている、理由は当然その胸だ。僅か一年で私すら追い抜かれた、ロマーニャ魔女の恐ろしさを知った。
リーネは思わぬ伏兵の出現に困惑気味だ。サーニャと二人でいる事も多く見かける。
問い詰めると「恋愛相談に付き合って貰っているだけですけど、内容までは教えられません」と笑顔で言われた。
相談相手が恋愛対象になんて……ないよな!?

サーニャは。
サーニャは自然とみんなの輪に溶け込むようになった。
私にもエースとしての責任が増え、自ずとサーニャと一緒にいる時間が減っていった頃からだ。
私は気付いてしまった、皮肉にも今まで私の独占欲がサーニャを孤独にしていた事を。

ある日サーニャが語ってくれた「私……負けたくないから……私も強くなるね」と。
具体的な意味はよくはわからないけど、たぶんサーニャは新しい一歩を踏み出しているんだ。

そして私はヘタレのままだ、サーニャに見合う私を求めて今も頭を悩ませている最中なんだから。
ただこれだけは言えるサーニャの笑顔を守る事こそが私の使命だ、その気持ちは今もそしてこれからも決して変わる事はない。

「なぁ~に考えてんの?」
「うわっナンダ!?エーリカかよ、別に何もナ」

寝そべりながら見上げていたその空を、エーリカの無邪気な顔が覆った。
一人忘れてた……エーリカこいつだけは何一つ変わってない、そう振る舞っているだけかも知れないが昔のままだ。
二枚看板のエースとなり、こいつとロッテを組む事も増えたが未だに謎の多い奴だ。

「何考えてたか当ててみせようか……昔の事でしょ?」
「なっ何でわかんダヨ!」
「なんとなくねぇ~なんてね、今日は久々にミーナが基地に来るからさ~みんなも同じ事考えてるかもね」
「あぁそうダナ」

本当は半分当り、半分外れなんだけどな。
今私は大人と子供の境界線を漂っている、これから私達はどう変わっていくんだろう。
モラトリアムに彩られた日々を懐かしく思いながらも私はそんな事を考えていた。
見上げた空には雲がその形を変えながら流れて行き、そしてまた新しい雲が流れて来ては消えて行った。

「そうそう、そんでそのミーナが新しい教官連れて来るんだってさ」
「教官!?私達本部から信用されてないって事カヨ、どんな奴ナンダ?」
「さぁ~現役引退した元魔女らしいけど詳しくはわたしもわかんない」

「へぇ~ドコ出身なんだろナ」
「え~っとね~確かね……扶桑……だったかな?」

エンディンクNo.10「イノセント・デイズ」

434: 2009/02/03(火) 02:56:59 ID:sjvaNibG
(未完です)
ifシリーズ√37
「11人目の魔女」

「宮藤ダ!」
私は大声で叫んでいた。

みんなの視線が私と宮藤を行き来する。

「宮藤がどうかしたのか?」
「朝食の時、宮藤だけいなかったナと思ってッテ」
『そう言われればそんな気がするような、しないような』
「どうなんだ宮藤?」

坂本少佐がそう質問すると、今度は宮藤にみんなの視線が集中する。

「……やっぱりエイラさんにはわかっちゃうんですね……私がここにいちゃいけない人間だって事が」
『どういう事だ!?』
「私は未来、正確には明日から来た宮藤芳佳みたいなんです、でもそれ以外は私にもわかりません……」
『未来!?』

~明日から来た魔女~
「はい、さっきまで私は夜間哨戒……をしていたんです、そしたら何か穴に落ちるような感覚がして。
気付いたらみんないなくなっていて、お昼になっていて。
基地に戻ったらキッチンにシャーリーさんがいて、そこで今が昨日だって知ったんですけど。
ちょっとおかしいんです!私の知ってる昨日、つまり今日の出撃は夕方のはずだったのに坂本さん達は出撃しちゃってて。
それで慌てて私も出撃したんですけど……後はみなさんご存じの通りです。」

少しづつだけどわかって来た。私が感じた違和感は時空認識能力の為だ。
時空間の修復作用でみんなは宮藤という魔女が昔からいたかの様に錯覚している。私も例外じゃない。
だけど目の前にいる宮藤がこの時空の人間でない事は確かだろうな。
そして未来と言ったけれど私達の501部隊と宮藤のいた501部隊は別の時間の流れにあるみたいだ。
そもそもこの501部隊は10人で全員なんだから当然なんだけど。
たぶん宮藤は時空の亀裂に落っこちてこの世界にやって来たんだ。

~解決策~
「あの……私ここにいちゃ駄目ですか?坂本さん!ねぇリーネちゃん!」
「私に言われてもな……私にはおまえがいて当り前の様に思えるから質問そのものがな」
「ここは芳佳ちゃんのいる場所だよ、この世界は愛に満ちているんだよ!」

リーネは意味不明な言葉を発していたけど気持ちだけはわかった。
とにかく宮藤はここに残る事を必氏に訴えかけているんだから。
でもなんでだろう?他のみんなはともかく宮藤自身はこの世界の人間じゃないって事気付いているのに。
何か帰りたくない訳でもあるのか。

「そんな事が許されるなんてありえませんわ、さっさとあなたのお家にお帰りなさい」
「え~11にんでいいじゃん~芳佳がいないとつまんないぃ~」
「わっ私もその意見に賛成だ!なっなにかと都合がいいからな!」

「ん~どうなのかしらね、エイラさん?そもそも宮藤さんの言っている事は確かなの?」
「ウン確かに宮藤は、この時空の人間じゃナイのは確かダナ、たぶん時空の亀裂に落っこちて来たンダ……デモナ……」
『でも?』
「宮藤がやって来た時空の亀裂はたぶんもう塞がってイル、何も感じないからナ。
それにその亀裂の原因は別の時空に存在しているみたいダカンナ。
つまり……どっちみち帰る方法がないンダ」
『!!!』

435: 2009/02/03(火) 02:58:26 ID:sjvaNibG
宮藤が帰るかどうかとの倫理的な問題以前に、帰れるかどうかとの物理的問題が答えを出していた。
……と思われたその時!

「ちよーっと待った!帰る方法ならあるぜ、ここにな!」
『シャーリー!それはまさか!』
「そのまさかだ!こんな事もあろうかと秘かに開発しておいた超光速タキオンエンジン!こいつがあれば時空の壁を突破できるぜ!」
『お~流石シャーリー!音速の壁を超えた女だけの事はある!』
「ただちょっと……」
『ただちょっと?』
「問題があってな……」
『問題?』

「こいつは試作品だから……一度も光速に達していない」
『ダメじゃん』
「最後まで聞け!こいつは二組ある、あたしがブースターになって宮藤を加速させればどうだ?」
「つまり切り離し式ロケットだと言いたいのだな、リベリアン?」
「流石だね~カールスラントの英雄様は鋭い!だけど……」
『だけど?』
「もう一つ問題があってね……」
『もう一つ?』

「こいつを使うにしても宮藤がいた時間の流れと年代を特定しなきゃ駄目だ、流れは少佐とエイラの魔法力で特定出来るが年代までは無理、そうだよなエイラ?」
「ソウダナ、ワタシが少佐の魔眼を通せば流れは見えル、けど年代はムリダナ」
『なんで?』
「私から説明する、おまえ達の両目と同じ事だ二つ揃って距離感を認識出来るだろ?だが私の魔眼は片目にしかないからな」
「そーゆー事さ、つまり宮藤が元の世界に帰れても百年後か二百年後かも知れないって危険の伴う旅になるわけ」
「では宮藤さんが帰るのは実質的に不可能という事になるわね……」

沈黙が続いた。まさかそんな危険な旅をさせる訳にはいかない、私ならどうだろう……たぶん嫌だな。
ここは宮藤のいた世界とたいしてかわらない世界らしい。
その今を捨ててまでいつの時代かもわからぬ元の世界に拘る必要があるのか。
それに宮藤には帰りたくない理由があるみたいだしな……
どうする宮藤?

「魔眼なら……ここにもあります!」

宮藤の右目が赤く輝く。魔眼だ、魔眼が宮藤の右目に輝いていた。
宮藤も魔眼の魔法力を持つ魔女だったんだ。

436: 2009/02/03(火) 03:01:12 ID:sjvaNibG
~明かされた事実~
「宮藤おまえも魔眼の使い手だったのか」
「違います……違うんです!……私の魔法は治癒能力で……これは……坂本さんの形見なんです……」
「!!!」

その場に動揺が走る、当然だ。別の世界だといえ今私達は坂本少佐の氏を告げられたんだから。
まさかこの中から殉職者がでるとは、いや覚悟はしていたつもりだったのに震えが止まらなかった。
皆同じ様な表情をしている、私なんかマシな方かも知れない。
ただ坂本少佐だけは違っていた。宮藤の言葉を受け入れてないのではなく、とっくに覚悟は決まっていたかの表情だ。
そしてその表情はしだいに和み、母性のそれへと変化していた。

「宮藤、落ち着いて話してみてくれないか?」
「本当は夜間哨戒なんかじゃないんです、坂本さんの捜索をしていたんです。
今日出撃した坂本さんはネウロイにやられて……帰って来なかったんてす。
エイラさんの代わりに、私が出撃したばっかりに……私のせいなんです!私が、私が、私が……」
「それで私達を出迎えて……そして帰りたがらなった訳か……」
「はい……私が、私が……」

宮藤はただ泣きながら同じ言葉を繰り返す。
そして坂本少佐の表情はしだいに険しく、父性のそれへと変化していた。

「宮藤ぃぃぃーっ!」
「はっ、はい!」
「おまえは元と世界へ帰れ、何としてでもだ!
それが私の意志であり、向うの私の意志だ。
向うの私がおまえに魔眼を託した事が、元の世界へと帰って来いと言っている何よりの証拠だ。」
「でも私、守りたいんです!元の世界の坂本さんを守れなかった分も、この世界の坂本さんだけは私の手で守りたいんです!」

「甘ったれるな宮藤!現実から自分から逃げるな!
宮藤、向うの私を守ってやってくれ、おまえのその手でだ。
なぜならこれだけは言える、向うの私はまたお前達の前に現れる。
どこの世界だろうとそれが私である限り、私はおまえ達の前から黙って消え去ったりはしない、確信があるからな!
おまえは、おまえの世界でおまえの人生を全うしろ、それが私達の願いだ。」
「坂本さん……(ゴシゴシ、パンパン)……はい!宮藤芳佳これより一生を懸けて、この任務遂行致します!」
「わっはっはっは、宮藤ぃ~いい声だ、頼んだぞ」
「はいっ!私頑張ります、約束します!」

私達は遠くから二人をただ見守っていた。
どうやら宮藤の決心は固まったらしい。
そして私達は宮藤が元の世界へ帰るための作業に取り掛かった。

(つづきます)

437: 2009/02/03(火) 03:04:05 ID:sjvaNibG
ifシリーズ√38
「エチュード」

サーニャが……いない!
いったいどういう事なんだ!

私はもう一度戸棚の上を確認する。
黒猫も白猫もいなかった。
独りぼっちじゃかわいそうだからって、私の白猫もサーニャの黒猫の隣に住まわせてあげようって、二人でそう決めたんだ。
名前はそのうち決めようねってサーニャは言ってたけど、私は密かにこの娘達をサーニャとエイラって名付けたんだ。
私達二人の、そんな大切な想い出の証拠がないなんて!

私はサーニャの寝室を飛び出し基地中駆けずり回った。
サーニャを探して、サーニャの面影を探し求めて。
サーニャはどこにもいなかった。
それよりも虚しかったのはサーニャとの想い出の場所など、この基地内に数える程度しか存在しない事だった。

~ハンガー~
私は仕方なしにハンガーにいた。
ここでのサーニャとの想い出なんて何一つなかったけど、もうやる事なんてサーニャのストライカーを確認する事しか残ってなかったのだから。

ストライカーの整備中だったシャーリー大尉がその手を止める。
ゴーグルを外しながら私に叫ぶ。

「どうしたエイラ?出撃か!」
「イヤ……そうじゃナクテ……」

私があまりにも慌ててハンガーに飛び込んで来たものだから、勘違いさせたんだ。

「サーニャの……ストライカー知りませンカ?」
「サーニャって誰だよ」

やっぱり……予想通りの答えだ。
私は泣き出す寸前だ、みんなで私をからかってるんじゃないよね。
サプライズパーティーだとしたら悪い冗談だよ、私の誕生日まだまだ先なんだから。
私は泣き出していた。

私の泣き顔を目の当りにして、シャーリー大尉は親身になって私の話を聞いてくれた。
気さくなだけじゃなくて面倒見も良い先輩だ。
よく悪戯を仕掛けられるけど周りを不快にさせる様な事はしない人だ。
やっぱり私……みんなにからかわれている訳じゃないんだな。

「そんじゃ詳しく教えてくれ、そのサーニャって奴のストライカーは何色だ?武装は何だ?」
「サーニャのストライカーハ……、……」

思い出せない。
サーニャがどんな機関銃を構えていたのか覚えていない。サーニャが飛んでいる姿が何も見えない。
なんで?なんで何も浮かんでこないのさ。
サーニャは……サーニャは確かにいたんだ!
だって初めて会った日の事だって鮮明に覚えて……

ない……出会った時の事、覚えてない。

私達……どこで逢ったんだっけ……いつ……逢ったんだっけ。
私はサーニャの事、何一つ知ってやしない。
じゃあいったい何なんだ!私達の想い出は何だったのさ!

私は大声で泣き叫んでいた。
訳もわからずだろうに、シャーリー大尉はそんな私をあやしてくれている。
大尉の胸に包まれる中、外から凄まじいプロペラ音が鳴り響いて来た。

438: 2009/02/03(火) 03:06:04 ID:sjvaNibG
~滑走路~
私とシャーリー大尉は外に出てその音の正体を確かめた。
上空に大型の輸送ヘリが滞空していた。
滑走路には私達より先にミーナ隊長とバルクホルン大尉が来ていた。
どうやらこの二人はこの輸送ヘリが何者なのか知っているらしかった。
シャーリー大尉がバルクホルン大尉に詰め寄る。

「こいつ、なんなんだ?」
「秘密兵器の到着だ、これで我々の戦いも大夫楽になる」

秘密兵器ってなんだろうな?ちょっぴり興味がわく。
輸送ヘリが着陸目前になるとハルトマン中尉とペリーヌもやって来た。

「いったい何を積んでいますの?」
「秘密兵器だっテサ」
「どんな機能を兼備えているんですの?」
「さぁわかんナイ」
「うふふっ、あなた達もきっとびっくりするわよ」

ミーナ隊長は悪戯に笑う。そして輸送ヘリの扉が開いて中から一人の少女が降りてきた。
体に似合わぬ大きなトランクを両手で抱えた様はとても弱々しく見える。
実際こっちにやって来るまで何度かよろめいていたんだからあまり丈夫な娘じゃないんだろうな。
ミーナ隊長が出迎えると、少女はトランクを地面に置き頭に乗せていた麦わら帽子を膝へと移動させた。
風に揺られプリーツベルトと銀色の綺麗な髪がふわりとなびく。
……!

「ではみんなに紹介するわね、今日からこの501部隊に配属となるサーニャ・V・リトヴャクさん階級は中尉よ、ではサーニャさん挨拶よろしくね」
「あの……よろしくおねがい……します」

「サーニャ!」

私は思わず叫んでいた。
周りのみんなは騒ぎ出す。少女は、サーニャはきょとんとしていた。

「わたくしサーニャって名前に、どこかで聞き覚えが……」
「そういえば……聞いた事がある!」
『知っているのか?シャーリー!』
「ああ、さっきエイラに聞かされた名前だ」
「あらエイラさん、二人は以前からの知り合い?だったらエイラさんにサーニャさんのエスコートを頼んじゃおうかしら」

~展望台~
サーニャ……サーニャ中尉が荷物を自室に置くと、私は基地内を案内して回っていた。
途中ハンガーで両大尉がこの娘のストライカーの搬入をしている所を見かけたけど、その黒いストライカーは初めて見る物だった。
武装は機関銃ではなくロケット砲だった、トランク一つまともに持てないこんな娘に扱える代物とは思えなかった。

ここ展望台に到着した頃になり、私はようやく理解していた。この娘とは今日初めて会う、その事に間違いはない。
この娘と一緒に買い物に行った一日の出来事、あれは今朝夢でみた記憶だったんだ。
でも何故会った事もないこの娘が夢に出て来たんだろう?
予知夢?私は未来予測の魔法力を持っているけどこんな事は初めてだった。

現実に戻るとさっきまで騒ぎ立てていた自分が馬鹿らしく思えてきた。
本当にこんな娘が、私にとって大切な存在なんかになりえるとは到底思えなかったからだ。
何を言っても碌に返事も返してこないし、私の方を見向きもしない。全く何考えているのかわからない奴だ。
ペリーヌとは真逆のタイプだな、苛立つのには変りないけどさ。
その苛立ちが私を夢から現実に引き戻した大きな要因でもあった。

439: 2009/02/03(火) 03:09:13 ID:sjvaNibG
でもよく考えてみたらこの微妙な距離感の原因は私にあった。
この娘は私より年下なのに私の上官にあたる存在で、どう接すればいいか判断しかねていた。
私ですらこんな状態なのに、配属初日のか弱い娘に何を要求してるんだ。
私が苛立ちを現していたら、この娘も畏縮して当然じゃないか。

そうこの娘は……単に夢に出て来ただけで、私に現実を見失なせる存在……なんだよな。
まだ何もはじまっちゃいない。飛び立たってみなきゃ結果なんてわかんないよな。

「実はサ……今朝の夢にサーニャ中尉が出て来たんダ、ゴメン変なコト言ってるナ、ワタシ」

笑われるかもと思いながら私は今朝の夢について打ち明けてみた。
この娘は私の魔法力が何かをまだ知らない、馬鹿にされるのがオチだ。
だけど彼女は私の言葉を信じるでも信じないでもなく予想外の反応を示した。
さっきまで陰湿だった彼女の顔に笑顔が灯る。
そしてやさしく呟いた。

「ねぇエイラさん……私思うんです……未来ってわたぐものみたいだなって」

その笑顔が私の瞳を見つめている。
その言霊が私の体を透過していった。

《キュン》

何?今の音?生まれて初めて聞いた音だ。
何かが私の中を流れて、何かが私の心を震わせたんだ。
どどどどっ、どうしちゃったんだ私!?
なんなの?なんなのこれぇ~!
あたふたしている私を彼女は不思議そうに見つめ続ける。
なっ、何か喋らなきゃだな、何?何?何喋ればいいんだ?え~っとえ~っと……

「ジジジジ時間が出来たら買い物行コウ、イロイイロイロ必要ダロ?イイィ雑貨屋知ってるんダ」

「うふっ……はい……お願いします」


~はじまりの詩~
未来はまるでわたぐものよう
ふわふわしていて心地よく
ぼんやりとして触れることは叶わない
でもね ながめているだけでは置いていかれるもの
だからあなたはとびつづけるの この広い空を

あなたに出会うその日のために……
愛しのあなたへ捧ぐ詩


それはいつも誰かが夢の中で語りかけてくる詩だった。

そして新な物語は書き綴られていく……

エンディンクNo.12「エチュード」
~おしまい~

445: 2009/02/03(火) 04:00:23 ID:sjvaNibG
(アンカーが多すぎたらしく規制にあってました、二分割になり申し訳ない)
★ifシリーズ一覧
※√1から読み進めて下さい。

√01>>335 「はじまりの詩」
√02>>336 「蕃茄紅色の食卓」
√03>>337-338「ラベンダーピンク」
√04>>339-340「ダンスのお相手」
√05>>341-343「かまいたちの夜」
√06>>344-347「見馴れない風景」
√07>>348 「これからの出来事」
√08>>349 「彼女のいない部屋」
√09>>350-351「最後の約束」
√10>>364 「ロッテ」
√11>>366-367「11人いる!」
√12>>368 「今日の出来事」
√13>>369 「ⅩⅢ 氏神」
√14>>370 「破られた約束と守られた約束」
√15>>371-372「マルガリータとボロネーゼ」
√16>>373 「ⅩⅥ 塔」
√17>>379 「ⅩⅦ 星」
√18>>380-381「チャイルドユニバース」
√19>>382 「パラレルワールド」
√20>>383 「ⅩⅩ 審判」
√21>>384 「選択の余地」
√22>>385 「月夜の宴」
√23>>386 「月下の告白」
√24>>389-390「不揃いのカップとお揃いのカップル」
√25>>393 「あなたのかえる場所」
√26>>394-396「夢のオールスター編」

以後√27~√38まで続く

※√10からの分岐パラグラフは削除しました。結末を書き上げる自信がないのであらすじで。
★ペリーヌとロッテを組む事になったんダナ。
→√39へ

ifシリーズ√39
「白と黒」
ペリーヌとロッテを組んで出撃し、ネウロイと遭遇したんダナ。
ネウロイがペリーヌに化けたけど戦わずにお友達になったんダナ。
黒ペリーヌはいい娘なんダナ、そして白ペリーヌがツンデレ発動したんダナ……自分の分身に惚れるナヨ。
黒ペリーヌを通して普段気付かなかった白ペリーヌの長所に気付き坂本少佐と私までがドキドキしだしちゃったんダナ。
でも愛情って未知の感情を知った黒ペリーヌは暴走し出して……
そして私は……

こんなお話です。以後ペリーヌ好きのあなたの妄想力による脳内補完で!
それから、ここで活躍しているので他では貧乏挫引いて貰っててペリーヌファンの方々ごめんなさい。
√3のお風呂など、こことリンクする伏線が未消化のまま残っていますが気にしないで下さい。

446: 2009/02/03(火) 04:07:09 ID:sjvaNibG
※アンカー後半
√27>>397-398「たったひとつの冴えたやりかた」
√28>>399-401「魔女裁判」
√29>>407-408「終焉の淵」
√30>>409-411「わたしのかえる場所」
√31>>413-414「これからのわたしたち」
√32>>415-416「スオムスに架かる友情の橋」
√33>>419 「お姉ちゃんとバンパイア」
√34>>421 「さよならの詩」
√35>>422-426「おのぞみの結末」
√36>>427-430「イノセント・デイズ」
√37>>434-436「11人目の魔女」(未完)
√38>>437-439「エチュード」

※以上で全部です√37の未完を除いてもう続きません。

~あとがき~
しばらくぶりになりますが前回に続き読んで頂いた方々、レス頂いた方々、そして支援して頂いた方々ありがとうございます。

PCないんであくまでゲームちっくですが、本物のゲーム発売までの暇つぶしにして頂けたらとつくったので遊んでみて下さい。
読みにくい場合は単純な分岐しかないので、樹系図を書いてみて下さい。

バッドエンドについてですがデッドエンドです。バレバレな流れにしてありますが回避される方は>>350のメル欄を読んで下さい。

今日全話投下するとは思ってなかったので一部未完なり削除なりありますが許して下さい。
不愉快にお思いの方申し訳ありません、明日からは平和なスレに戻ります。
又二度と同じ迷惑はおかけしません。
続きを待っていてくれた方お疲れの中ありがとうございます。
電池切れと規制に怯えながらここまでこれたのもあなたのおかげです。

最後にみなさんにご迷惑をおかけした事、お詫び申し上げます。
それではたいへん長くなりましたがこの辺で失礼致します、ゆりたまごでした。

引用: ストライクウィッチーズpart19