4: 2009/11/14(土) 19:10:38.44 ID:p5WNUR+aO
J「さぁ、いよいよ始まりましたスシバトル21!」

紅「総勢6名の鮨職人による勝ち抜き戦です」

J「一回戦は二人の職人による一騎打ち、そして……」

紅「勝ち残った3名が決勝戦としてバトルロイヤル形式で戦います」

J「尚、優勝者には賞品として何と……」

紅「3000万円分の小切手を進呈するのだわ!」





J「実況兼審査員は私、桜田JUM。解説兼審査員長は――」

紅「誇り高きローゼンメイデン第5ドール、<真紅>でお送り致します」
アリスゲーム
9: 2009/11/14(土) 19:17:21.16 ID:p5WNUR+aO
J「さっそく出場選手の紹介です!まずはエントリーNo.1――」

J「スシレストラン・サクラダファミリア代表『ロールの魔術師』こと翠星石!」

翠「料理のことなら翠星石にお任せですぅ!」

J「続いてエントリーNo.2、鮨結菱代表『ジーニアス』蒼星石!」

蒼「……この勝負僕がもらったよ」

J「エントリーNo.3、柏葉寿司代表『龍神伝説』こと雛苺!」

雛「トゥモエー、見てるなのー?」

J「エントリーNo.4、スシフォッセー東京支店代表『スシサイボーグ』雪華綺晶!」

雪「うふふ……」

J「エントリーNo.5、鮨処・柿崎代表『革命児』水銀燈!」

銀「乳酸菌摂ってるぅ?」

J「そして最後に控えるはエントリーNo.6……」

J「鮨処・草笛より『江戸前鮨最後の遺伝子』こと金糸雀だ~っ!」

金「楽してズルしていただきかしら~!」

10: 2009/11/14(土) 19:19:15.28 ID:p5WNUR+aO
J「それにしても凄い顔ぶれが揃いましたね」

紅「正直私もこれほどとは思ってなかったわ」

J「真紅さんはどの選手に注目されますか?」

紅「出場選手は皆鮨の聖地、銀座で一流と呼ばれる職人ばかりよ」

J「……つまり誰が優勝してもおかしくないと?」

紅「ええ。これだけの職人が一堂に会するこのスシバトル……」

紅「銀座の、いえ世界でもトップレベルの戦いになるでしょうね」

15: 2009/11/14(土) 19:22:38.97 ID:p5WNUR+aO
J「それでは一回戦第一試合――」

J「『ロールの魔術師』翠星石vs『ジーニアス』蒼星石!」

翠「まさかお前と戦うことになるとは思いませんでした」

蒼「僕は君に打ち克つ。僕が僕自身になるために……」

J「これはいきなり楽しみな試合ですね」

紅「ええ。この二人なら白熱した戦いになるのは間違いないわ」

K「蒼星石選手は舌に載せただけで産地まで当てる『絶対味覚』を持つという設定です」

紅「JUM、設定とか言わないで頂戴」

J「これは失礼しました。次に『ロールの魔術師』翠星石ですが……」

18: 2009/11/14(土) 19:29:12.78 ID:p5WNUR+aO
紅「彼女は元々料理なんてできなかったの。以前玉子焼きを作ったときなどは……」

J「ありましたね。あの時は僕も酷い目に遭いました」

紅「しかしその後短期間でお菓子作りをこなすまで成長しているわ」

J「なるほど。センスに関しては目を見張るものがあると言うことですね」

翠「……蒼星石、手加減は無用ですよ?」

蒼「わかってる。僕は決勝まで取っておく予定だったタネを握らせてもらうよ」

19: 2009/11/14(土) 19:31:24.71 ID:p5WNUR+aO
>>16
本当はきららや坂巻がカナたちとペアを組んで鮨を握る
SSにしたかったのですが誰にもわかって貰えなさそうなので
スシバトルの設定だけ流用してローゼンキャラのみでいきます
>>7
『J』でしたすみません

以下淡々と投下させていただきます

20: 2009/11/14(土) 19:32:54.80 ID:p5WNUR+aO
蒼「それじゃ行くよ……」スッ

J「おっと蒼星石選手、懐から青く光る魚を取り出しました!」

蒼「……僕が選んだ魚はサバ。魚へんに青いと書いて鯖」

翠「蒼星石」

蒼「なに?」

翠「お前そんな下魚で翠星石に勝てると思っているですか?」


蒼「ふふ、鯖が下魚と呼ばれていたのは随分昔の話じゃないか」

蒼「それにこれはただの鯖じゃない。九州は豊後水道、今が旬の関の寒鯖だ」

21: 2009/11/14(土) 19:35:34.67 ID:p5WNUR+aO
J「これは見事な鯖です。一目で全身に脂がのっているのがわかりますね」

紅「目に一点の濁りもない……鮮度も申し分ないわ」

J「なるほど。サバ鮨といえば酢で締めたものが一般的ですが……」

紅「あれほどのものならその必要もないのではないかしら?」

蒼「……そうとも限らないよ」

紅「えっ?」

蒼「酢締めは何も鮮度の悪い魚だけにするものじゃない」

蒼「塩を振り酢で締めることにより生の魚にはない味を引き出すことが出来るんだ」

23: 2009/11/14(土) 19:38:24.59 ID:p5WNUR+aO
紅「それがあなたの鮨職人としての仕事ということね」

J「職人の……『仕事』?」

紅「素材にひと手間かけて旨味を引き出す作業のことよ」

蒼「そういうこと。そして僕が今回の仕事に使うのは……」

コトッ

紅「……あれは普通の酢じゃないわ」

J「ラベルにはAppleVinegarとあるように見えますが……」

蒼「僕の絶対味覚が選んだ鯖を最も美味しくする素材。それがこのリンゴ酢だ」

25: 2009/11/14(土) 19:41:31.41 ID:p5WNUR+aO
紅「リンゴ酢?そんなものが本当に鯖と合うのかしら?」

蒼「よかったら試食してみるかい?」

紅「いただくわ……もぐ、もぐ、もぐ」

J「それでは失礼して僕も……」

紅「……!」

J「……!」

J「美味い!リンゴの香りが生臭さを完全に消している!」

紅「……しかも爽やかな酸味が鯖の脂の旨味を引き出してるわ」

蒼「納得したようだね。それじゃそろそろ僕の握りを食べてもらおうか」

27: 2009/11/14(土) 19:45:01.93 ID:p5WNUR+aO
蒼「お待ちどうさま」タンッ

J「さぁ、注目の蒼星石選手の握りです」

J「これには一体どのような趣向が施されているのでしょうか?」

紅「……海よ」

J「えっ?」

紅「見てJUM!切り身の鯖が蒼い海を悠然と泳いでいるわ!」

J「な、なんだってー!?」

28: 2009/11/14(土) 19:50:23.20 ID:p5WNUR+aO
J「シャリです!何と蒼星石選手の握りは蒼いシャリを使用しております!」

紅「……それで鯖が海を泳いでいるように見えたのね」

蒼「ふふ、ただ魚を切って握るだけじゃ芸がないないからね……」

蒼「シャリに青色1号(人工着色料)を混ぜ込んだその名も『ブルー・ハワイ』だよ!」

J「…………」

紅「…………」

蒼「さぁ食べて!二人とも僕のこの傑作をしっかりと味わってくれ!」

紅「…………」

J「……やだよ」

蒼「!?」

紅「そうね。青いご飯なんてちょっと気持ち悪いのだわ」

33: 2009/11/14(土) 19:57:22.34 ID:p5WNUR+aO
蒼「待ってよ、食べなきゃ審査にならないじゃないか?」

紅「だって食べたくないんだもの」

蒼「見た目で判断しないでよ!味は絶対にいけるから!」

翠「……もう諦めるですよ蒼星石」

蒼「す、翠星石……!」

翠「確かに蒼いシャリで海を表現したお前の演出は見事でした」

蒼「だったら――」

翠「……しかしそれが食欲に繋がるかどうかは全くの別問題です」

蒼「……!!」

翠「料理は舌で味わうだけでなく目でも楽しむもの……」

翠「蒼星石、お前はその『絶対味覚』に頼りすぎたのです!」

蒼「…………」

蒼「くッ、この僕がこんな初歩的なミスをするなんて……!」

35: 2009/11/14(土) 20:01:49.54 ID:p5WNUR+aO
J「さてと、蒼星石は失格ということでこの試合は終了だ」

紅「それじゃ次の対戦に移りましょう」

翠「……そう慌てるなです。せっかくだから翠星石の一品も味わうです」

J「いいのか?」

翠「もちろんです。既に準備はほとんど整ってますからね」

J「わかった。それじゃお言葉に甘えるよ」

紅「私も翠星石が何を出してくれるかとても興味があるのだわ」

37: 2009/11/14(土) 20:07:04.57 ID:p5WNUR+aO
J「ヒートアップ!スシバトル21!」

J「真紅さん、翠星石選手の握りですが……」

紅「彼女はその異名の通りロールズシを得意としているわ」

J「ロールズシ?巻き寿司とは違うのですか?」

紅「翠星石の巻き物は江戸前の伝統的な巻き寿司とはまるで別物よ」

紅「斬新で独創性あふれるロールは見る者を魅了して止まないわ」

翠「……真紅、お前なかなかよくわかってるじゃねーですか」

コンコン、パカッ

J「何でしょうか?翠星石選手ボウルに玉子を割り入れました」

紅「湯煎で人肌に温めて……一体何をする気なの?」

翠「ふふふ……」

翠「見せてやるですよ!『ロールの魔術師』翠星石、魂の一巻きを!」

39: 2009/11/14(土) 20:14:05.52 ID:p5WNUR+aO
翠「まずは玉子にお砂糖混ぜ泡立て器でしっかりと泡立てる!」

翠「ホットケーキの素を投入しヘラでざっくりと混ぜ合わせ――」

翠「型に流し込んだ後オーブンで7~8分焼き上げる!」

翠「あら熱をとった後生クリームとフルーツをトッピング!」

翠「あとは巻く!ただひたすらに魂を込めてくるくると!」

紅「…………」

J「…………」

42: 2009/11/14(土) 20:20:15.09 ID:p5WNUR+aO
紅「ちょっと待つのだわ翠星石」

J「お前それただのロールケーキじゃないのかよ?」

翠「し、失礼ですね。こいつはただのロールケーキなんかじゃあねーですよ?」

J「いやだってどう見ても……」

翠「よく見るです!生地に抹茶の粉末を練りこんであるですよ!」

翠「クリーム甘さに抹茶のほろ苦さが相まってその味はまさに絶品です」

翠「食べて驚きやがれですぅ!名付けて翠星石特製、翡翠のロールケーk――」

紅「撤去」

翠「!?」

43: 2009/11/14(土) 20:23:52.26 ID:p5WNUR+aO
翠「ちょ、これは一体どういうことですか!?」

J「……どうも何もスシじゃねぇし」

紅「流石に審査対象外よ」

翠「待つですよ!せめて一口だけでも食べてから――」

紅「仕方ないわね……あなたたち」

雛「翠星石、お帰りはこっちなの」ガシッ

銀「正直一番警戒してたけど、あなたがおばかさんでよかったわ」ガシッ

翠「は、離すですぅ!翠星石はまだ負けてねーですよ!」

雪「お姉さま……往生際が悪いです……」

金「あなたの出番は終わりかしら。さっさと退場するかしら」

翠「い~~や~~~!!」

46: 2009/11/14(土) 20:31:58.44 ID:p5WNUR+aO
紅「もぐもぐ……このロールケーキ本当に美味しいわ」

J「そうだな、お菓子作りの勝負なら間違いなく優勝だ」

紅「まぁ今回はスシバトルだから失格ね」

J「第一試合は勝者なしか。ということは……」

紅「ええ、残りの試合の勝者がそのままサシで決勝を行うことになるのだわ」

47: 2009/11/14(土) 20:35:55.13 ID:p5WNUR+aO
J「気を取り直して参りましょう。スシバトル21、一回戦第二試合は――」

紅「『龍神伝説』雛苺vs『スシサイボーグ』雪華綺晶よ」

J「これまた注目の一戦ですね」

紅「ええ。雛苺は伝説の鮨職人『龍神』の技を継ぐただ一人の職人よ」

J「対する雪華綺晶選手は鮨技術コンクールに二年連続で優勝した強者です!」

雪「ふふ、私の敵ではありませんね……」

雛「あまく見てるといたい目にあうの」

J「両者早くも火花を散らしております!」

紅「この試合も熱い展開になりそうね」

雛「……それじゃまずヒナからおすしを握らせてもらうのよ」

48: 2009/11/14(土) 20:39:26.44 ID:p5WNUR+aO
雛「あっとゆーま、あっとゆーま、あっとゆーまー♪」

J「雛苺選手、まずはシャリを軽くかき混ぜはじめました」

J「手際よくしゃもじで切るように……いや、何故か潰すように混ぜております」

紅「ただのシャリじゃないわ。あの粘り気はもち米を使ってる……?」

J「ここで別の容器を取り出しました。恐らくスシダネだと思われます」

J「注目の雛苺選手のタネですが……何やら甘い香り漂ってまいりました」

雛「あんこ、あんこ、あーんーこー♪」

50: 2009/11/14(土) 20:43:51.30 ID:p5WNUR+aO
J「おい、雛苺の奴まさか……」

紅「ええ。どう考えてもあれはおはぎを作る気ね」

J「あいつ絶対この企画の趣旨わかってねーな」

紅「どうする?また退場……?」

J「一応米を使っているということでセーフにしておくか?」

紅「そうね。あまり失格ばかりだとバトルが成り立たないものね」

53: 2009/11/14(土) 20:49:30.31 ID:p5WNUR+aO
雛「いっちご、いっちご、いーちーごー♪」

J「……ってお前おはぎに苺なんか入れる気か?」

雛「そうなのよ。ヒナ特製『苺のおはぎ』を作るのよ」

J「やめてくれよ、そんなの食べられるわけがないだろう?」

雛「大丈夫なの。苺入りのおはぎはお菓子屋さんでも売ってるの」

J「そうなのか?」

紅「……確かにそういうお店もあるようね」

雛「それにね、和菓子に合うようちゃんとひと『仕事』してあるの」

55: 2009/11/14(土) 20:54:53.10 ID:p5WNUR+aO
J「……これは?」

雛「苺をお砂糖で甘く煮たものなのよ」

紅「なるほどね、和菓子にフルーツの甘煮というのはよく見るわ」

J「でもなぁ、要はおはぎに苺ジャムつけて食うようなものだよな?」

雛「よく見るの。ただのジャムでは食感も悪いし握りには合わないの」

J「え?まさかこの苺……」

紅「形を崩さないよう丁寧にお砂糖で炊き上げた、まさに江戸前の仕事だわ」

J「……江戸前ってそういうものだっけ?」

56: 2009/11/14(土) 20:59:15.63 ID:p5WNUR+aO
J「ヒートアップ!スシバトル21!」

J「ここで一旦カメラを隣の調理台へ向けてみたいと思います」

紅「雪華綺晶、あなたはどんなお鮨を食べさせてくれるのかしら?」

雪「それでは私のスシダネを披露します……」

J「おっと雪華綺晶選手、美しい白身のサクを取り出しました」

雪「私が選んだのはタラ……魚へんに雪と書いて鱈……」

J「鱈といえば鍋物等でお馴染みの魚ですが……」

紅「確かにお寿司としてはあまり一般的でないわ。これをどう扱うか楽しみね」

雪「うふふ……」

キラキラキラ……

紅「雪……?」

J「これは……何と鱈の身に雪が降り積もっています!」

57: 2009/11/14(土) 21:03:54.87 ID:p5WNUR+aO
雪「さらさらさら……」

J「振り塩です、まるで粉雪が舞うかのような美しい振り塩です!」

紅「あれ程均一に振るには相当の修行が必要ね」

J「なるほど、それだけでも彼女が高い技量の持ち主だということが窺えますね」

雪「それだけではありませんよお姉さま……」

紅「まさか、あの塩は…!?」

J「どうされました真紅さん?」

紅「ただの塩ではないわ。あれは宮古島の天然塩『雪塩』よ」

雪「ふふ……期待していただいていいですよ……」

雪「私はこの『鱈の雪塩締め』を握ります……」

59: 2009/11/14(土) 21:10:17.61 ID:p5WNUR+aO
雪「さらさらさらさら……」

紅「見なさい、切り身がしっとりと汗をかきはじめたわ」

J「これは一体どういうことなのでしょう……?」

紅「鱈はもともと水気が多くそのままでは握りに合わないわ」

雪「こうして塩を振ることで余分な水分を出すのです……」

J「(よかった。ようやくまともな寿司が食えそうだ)」

61: 2009/11/14(土) 21:17:33.51 ID:p5WNUR+aO
雪「さらさらさらさらさら……」

J「……それにしてもちょっと振りすぎじゃないですか真紅さん?」

紅「そうね。あれでは塩辛くなってしまうのだわ」

J「様子がおかしですよ?鱈だけでなくキッチン全体に塩を撒きはじめました」

紅「どういうこと?そのまま隣の調理台の方へ移動して――?」

J「調理中の雛苺選手にまで塩を振り――?」

紅「……?」

J「……?」

雛「い、いや~っ!ヒナなんか食べてもおいしくないの~っ!!」

66: 2009/11/14(土) 21:24:24.08 ID:p5WNUR+aO
J「おっと、これは反則です!出場選手をスシネタにしてはいけません!」

J「係の者が止めに入りました。失格です、雪華綺晶選手退場です!」

J「……只今本人からコメントが入りました」

J「『食欲に逆らえなかった。今は後悔している』とのことです」

J「尚、被害にあった雛苺選手ですが……」

J「泣きながら『もうお家に帰るのよ』と言い残して大会を棄権した模様です」

68: 2009/11/14(土) 21:30:11.94 ID:p5WNUR+aO
J「ヒートアップ!スシバトル21!」

J「ここまで4人の選手が全員失格ということは……」

紅「次の対戦で勝った方が優勝ということね」

J「それでは選手に入場していただきましょう」

J「スシバトル21決勝戦、『革命児』水銀燈vs『江戸前鮨最後の遺伝子』金糸雀!」

銀「ふふ、随分待たせてくれたわね……」

金「カナがんばるかしらー!」

J「さぁ、果たして優勝の栄冠と3000万円の小切手を手にするのはどちらなのか!?」

69: 2009/11/14(土) 21:34:25.84 ID:p5WNUR+aO
銀「待ちくたびれたわ。それじゃ私から握らせてもらうわよ」

J「水銀燈選手、早くもスシダネを披露です」

銀「――私が握るのはこのマダイよぉ!」

バッ

J「これは美しい、新鮮なマダイ特有の透き通るような白身です!」

銀「それだけじゃないわ……メイメイ」

メ「チカ、チカ……」

紅「これは……!?」

キラキラキラ……

J「どうしたことでしょう?切り身が光を受けて銀色に輝いています!」

72: 2009/11/14(土) 21:39:30.39 ID:p5WNUR+aO
紅「……あれは銀皮ね」

J「銀皮?ぶ厚い皮のすぐ下にある薄皮のことですか?」

紅「ええ。あれほど美しく残すには高度な包丁技術が必要よ」

J「なるほど、確かに綺麗ですが味の方はどうなのでしょう?」

紅「鯛で一番旨いのは皮と身の間にある皮ぎしよ」

紅「そのため湯霜という技法を使い皮ごと握ることも多いのだけど……」

銀「ふふ、私には皮ぎしを残したまま硬い皮だけを引くことも容易いわ」

紅「……この『マダイの銀皮残し』があなたの勝負ダネということね」

75: 2009/11/14(土) 21:46:16.48 ID:p5WNUR+aO
J「水銀燈選手、切り付けを終えあとは握りを残すのみですが――」

紅「あの独特の握り方はまさか……?」

J「どうされました、真紅さん?」

紅「間違いないわ、あれは『石塔返し』よ!」

J「真紅さん、石塔返しとは一体何なのでしょうか?」

紅「腕を大きく振り下ろすことでシャリに空気を纏わせる握り方よ」

紅「既に使い手は絶えて久しいと思っていたけれど……」

銀「うふふ、この大会のために文献を紐解いて身につけたのよ」

銀「見せてあげるわ!最高のタネと最高のシャリでできた鮨を!」

79: 2009/11/14(土) 21:50:20.83 ID:p5WNUR+aO
J「美味い……!」

紅「これが石塔返しで握った鮨なのね」

J「シャリがタネを、タネがシャリの味を引き立てて……」

紅「シャリとタネがまさに一体化しているわ」

J・紅『この鮨はハーモニーそのもの(よ)(だ)!』

銀「……どうやら気に入ってもらえたようね」

紅「ええ、とてもよかったわ」

J「こんな美味い鮨を食ったのは初めてだよ」

82: 2009/11/14(土) 21:57:03.64 ID:p5WNUR+aO
雛「たららったったったった、たららったったったった」

雪「たららったったったったったったったったったった……」



雛「ヒナと」

雪「きらきーの……」

雛「おしゃべりクッキングなのー!」

雪「…………」

雛「…………」

雪「…………」

雛「…………」

雛「今日はみんな大好きうにゅーこと苺大福の作り方なのよ」

雛「おいしくて意外なほど簡単だから興味がある人は実際に作ってみるといいの」

87: 2009/11/14(土) 22:03:37.59 ID:p5WNUR+aO
苺大福(8粒分)

・苺 8コ
・あんこ 160g
・白玉粉 150g
・砂糖 80g
・水 1カップ
・片栗粉 適量

雛「材料はたったのこれだけでおーけーよ」

雪「おーけーです……」

雛「まずは苺とあんこ以外を全部混ぜてラップしてレンジで2分チンするの」

雪「はい……」

雛「一旦取り出してよく混ぜたら同じようにもう一回チンするの」

雪「はい……」

雛「あとは片栗粉を敷いてあんこと苺を包めば出来上がり」

雪「なるほど……」

雛「バナナとか他のフルーツを使ってもおいしくできるのがステキなのー」

雪「すできですお姉さま……」

雛「…………」

88: 2009/11/14(土) 22:08:26.52 ID:p5WNUR+aO
雛「……あの、きらきー?」

雪「何でしょうかお姉さま?」

雛「おしゃべりクッキングなんだからもうちょっと喋ってほしいのよ……」

雪「あ、そういう趣旨だったんですね」

雛「そうなのよ……」

雪「すみません、これからちゃんとしますので……」

雛「うゅ、でもこのコーナーはもう終わりなの」

雪「ではせめてタイトルコールだけでも……」

雛「そうね、それじゃお願いするの」



雛「ヒナと」

雪「きらきーの……」

雛・雪『おしゃべりクッキングでしたなのー!』

91: 2009/11/14(土) 22:14:06.77 ID:p5WNUR+aO
J「ヒートアップ!スシバトル21!」

紅「あとは金糸雀の握りを残すのみね」

J「見事な『石塔返し』でマダイを握った水銀燈選手に対し……」

紅「金糸雀はどんな鮨を見せてくれるのかしら?」

J「スシバトル21!、いよいよ大詰めとなってまいりました!」

92: 2009/11/14(土) 22:16:21.76 ID:p5WNUR+aO
J「真紅さん、金糸雀選手には少し厳しい展開ではないでしょうか?」

紅「そうね。『海魚の王様』マダイをあれほどの技術で握られては……」

銀「ふふ、あなたたちなかなかわかってるじゃない」

金「……カナはまだ負けたわけじゃないかしら」

銀「!」

金「タネに差があっても、握りの腕で勝てなくても……」

金「カナには魚を旨くする『江戸前の仕事』というものがあるかしら」

銀「見せてもらうわよ。あなたの仕事がどれほどのものなのか……」

金「――魚を旨くすると書いて鮨かしら!」

93: 2009/11/14(土) 22:24:48.97 ID:p5WNUR+aO
金「…………」

J「さぁ、金糸雀選手シャリを取り握りの体勢に入ります」

銀「……!」

紅「まさか、あの技は……!?」


J「これは驚きました、金糸雀選手はあの『本手返し』の使い手だったのです!」

紅「本手返しは全国でも数人しか使い手がいないと言われる超難技よ」

J「これなら水銀燈選手の石塔返しにも十分対抗が可能ですね」

紅「ええ。問題はスシダネの方だけど……」

金「……どうぞ」スッ

J「!」

紅「!」

J「玉子です、何と金糸雀選手のネタは江戸前伝統の玉子焼きです!」

紅「……魚を旨くするんじゃなかったの?」

95: 2009/11/14(土) 22:30:41.60 ID:p5WNUR+aO
J「!?」

紅「どうしたのJUM?」

J「消えた……ネタとシャリが口に含んだ瞬間に溶けてしまったたんだ」

紅「まさか、そんなことあるはずが……」

紅「ぱくっ、もく、もぐ……」

紅「!?」

紅「どういうこと?旨みだけを残して鮨が口の中でなくなってしまったわ」

99: 2009/11/14(土) 22:36:42.00 ID:p5WNUR+aO
J「金糸雀、済まないがもう1カン握ってもらえるか?」

金「……どうぞ」スッ

紅「わかったわ、これはメレンゲよ!」

J「メレンゲ……?」

紅「卵白にお砂糖を加えてホイップクリームのように泡立てたものよ」

金「そう。これを加えると玉子焼きの食感は格段に良くなるの」

J「随分手間のかかる仕事だな」

金「そしてメレンゲはお砂糖をたっぷり使うほどふわふわに仕上がるわ」

紅「そういえば随分甘い玉子焼きだったけど……」

J「不思議とシャリとの相性は良かったな」

紅「金糸雀、この玉子焼きにはまだ何か秘密があるのかしら?」

101: 2009/11/14(土) 22:52:26.50 ID:p5WNUR+aO
金「――スフレよ」

紅「!」

J「真紅さん、スフレとは一体……?」

紅「メレンゲをフライパンでなくオーブンで焼いた口溶けの良いお菓子のことよ」

金「そう。厳密にはこれは玉子焼きではないの」

J「しかし真紅さん、お菓子がシャリに合うのでしょうか?」

紅「普通のシャリではないわ。タネに合うようお砂糖が多めに入れてあるようね」

J「なるほど。玉子との絶妙な一体感はそのせいだったんですね」

紅「加えて『本手返し』による握り……」

紅「空気を含ませることでシャリがふわふわ玉子のスフレと一緒に溶けたのね」

金「……お見事。まさしくその通りなのかしら」

103: 2009/11/14(土) 22:55:56.26 ID:p5WNUR+aO
紅「水銀燈が握った『マダイの銀皮残し』」

J「金糸雀の『ふわふわ甘い玉子のスフレ』」

紅「どちらも文句のつけようがなかったわ」

J「ああ、だがやはり味では極上の鯛の方が……」

紅「いえ、玉子ひとつでそれに匹敵する鮨を握った金糸雀も……」

J「…………」

紅「…………」

J「これは……簡単には決められないな」

紅「そうね。別室で協議した上で……」

銀「待ちなさい、その必要はないわ」

J「!?」

紅「!?」

106: 2009/11/14(土) 23:00:09.03 ID:p5WNUR+aO
銀「……この勝負私の完敗よ」

J「どういうことだ?金糸雀の鮨も良かったがお前だって……」

銀「確かに私は最高の素材を最高の技術で握ったわ」

紅「そうよ、だからきちんと協議した上で……」

銀「でもそれだけよ。自らの『仕事』で魚を旨くしてこその『鮨』職人――」

銀「私は腕やタネの良さに溺れ職人としての仕事を見失っていたわ」

紅「…………」

J「…………」

紅「いいのね、水銀燈?」

銀「ええ。この試合で自分の未熟さを痛感したわ」

108: 2009/11/14(土) 23:02:33.49 ID:p5WNUR+aO
銀「ほらぁ、もっと嬉しそうな顔しなさいよ」

金「で、でも……」

銀「金糸雀、あなたにはお礼を言いたいくらいだわ」

金「えっ?」

銀「あなたの鮨は私に大切なことを思い出させてくれたのよ……」

金「…………」

金「ありがとう、水銀燈」



J「こほん、それでは改めまして……」

J「スシバトル21、見事優勝に輝いたのは『江戸前鮨最後の遺伝子』金糸雀だ~っ!」

114: 2009/11/14(土) 23:07:55.70 ID:p5WNUR+aO
紅「よく頑張ったわね金糸雀。賞品の切手シート3000円分よ」

金「わぁい、うれしいのかしら~!」

J「え、切手?3000円……?」

紅「(予算の都合よ、3000万円なんて払えるわけがないのだわ)」

J「(お、お前最初から騙すつもりだったのか?)」

紅「(人聞きが悪いわね。見なさい、あの子のあの幸せそうな顔を)」

金「やったかしら!これでしばらくお手紙が出し放題かしら!」

J「…………」

紅「…………」

J「まったく、優勝したのが金糸雀でよかったよ……」

116: 2009/11/14(土) 23:14:09.47 ID:p5WNUR+aO
草笛家~

金「みっちゃん聞いて。カナね、スシバトル21で優勝したかしら」

み「へぇ、すごいわね。今日は真紅ちゃんたちと遊んできたの?」

金「遊びじゃないかしら、アリス・ゲーム同様の真剣勝負かしら!」

み「ん~、ゲームでも真剣になるカナ激萌えね♪」スリスリスリ

金「み、みっちゃん。ほっぺがまさちゅーせっちゅなのかしら……」

117: 2009/11/14(土) 23:17:12.86 ID:p5WNUR+aO
金「それでね?賞品に切手を3000円分も貰ったの」

み「あら、ゲームにしては随分豪勢なのね」

金「そうかしら。真紅たちには感謝しないといけないかしら」

み「それじゃさっそくお礼のお手紙でも書いてみる?」

金「それはいい考えかしら。えっと、便箋は……」ごそごそ……

み「確か私の部屋にあったわね。取ってくるからちょっと待ってて」

パタパタパタ……

119: 2009/11/14(土) 23:22:39.29 ID:p5WNUR+aO
金「そうだ、みっちゃんにも内緒でお手紙を出すかしら」

金「ついでに貰った切手も半分同封して……」

金「ふふ、これならみっちゃも喜んでくれること間違いなしね」

金「おすしも食べたし、賞品もたくさん貰ったし……」

金「今日はとってもいい一日だったのかしら!」

120: 2009/11/14(土) 23:26:57.48 ID:p5WNUR+aO
桜田家~

紅「…………」ペラッ

翠「…………」ペラッ

雛「…………」ペラッ

J「……で、お前ら今度は何を読んでんだ?」

雛「『真・中華一番』よ」

翠「流石に4000年の歴史は奥の深さが違うですぅ」

J「はぁ……漫画や人形劇に影響されるのも大概にしてくれよ」

紅「あら、どうして?」

J「ノリで付き合ったけど今日の鮨だってお世辞にも美味いとは言えなかったぞ?」

雛「そう?ヒナはけっこうおいしいと思ったの」

紅「後できちんと全部戴いたのだからいいじゃない」

J「お前らはいいけど僕は人間だぞ?まだ腹の調子がおかしいよ……」

121: 2009/11/14(土) 23:32:36.74 ID:p5WNUR+aO
紅「……決めたわ。明日は伝説の厨具(料理道具)を賭けて宴席料理決戦よ!」

J「いや、お前伝説の厨具なんて持ってな――」

紅「雛苺、翠星石!さっそく他のドールたちにも報せなさい!」

雛「はいなのー!」

翠「がってん承知ですぅ」

紅「次は私も参加するわ。JUM、貴方は引き続き実況と審査員をして頂戴」

翠「ふっふっふ、今度こそ絶対負けねーです」

雛「……あ、きらきー?うん。明日なんだけど時間ある?」

J「…………」

J「ダメだこりゃ」



江戸前鮨職人 金糸雀の仕事  ~fin~

128: 2009/11/14(土) 23:48:22.20 ID:p5WNUR+aO
改めて代理立て、支援等ありがとうございました。
流石にマイナーすぎるのでクロスはもうちょっとメジャーなのでやります。
それでは失礼します。

引用: 江戸前鮨職人 金糸雀の仕事