1: 2010/01/03(日) 15:44:51.32 ID:6OuHHQ570

ジュン「・・・ふわ~あ」

ジ「・・・もう12時か・・・」

ジ「メガネメガネ・・・」ガサコソ

あれ・・・
メガネどこいった?


雛苺「あ!ジュン起きたー!」ヒョコッ

雛「ジュンー!遊んでー!!」タタタ



バキッボキッベキョ


雛「・・・」
ジ「・・・」




ジ「ゴルァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

2: 2010/01/03(日) 15:45:58.91 ID:6OuHHQ570


・・・・


のり「はーい、みなさーん、お昼ご飯できましたよ~」

真紅「いただきますなのだわ」

翠星石「いただきますですぅ」


雛「・・・」グス

ジ「・・・」



3: 2010/01/03(日) 15:46:45.24 ID:6OuHHQ570


の「あら、どうしたの?雛ちゃん。ジュン君はメガネは?」

ジ「こいつが踏んづけて壊したんだ」

雛「ごめんなさいなの・・・」グスッ

真「床に放り出してたジュンも悪いのだわ」

ジ「う・・・うるさい!・・・」

真紅の正論だ。だからこそ腹立つ。



4: 2010/01/03(日) 15:47:40.79 ID:6OuHHQ570


の「あらあら、じゃあ新しいメガネを買わないといけないわねぇ」ニコニコ

ジ「なにニヤニヤしてんだよ。気色悪い」

の「うふふ。お姉ちゃんと一緒に買いに行きましょう」ニコニコ

ジ「嫌だよ、ブス。一人で行くからお金ちょうだい」

の「そんな~・・・」ショボーン




買い物か・・・外に出るの、何日ぶりだろう。


6: 2010/01/03(日) 15:49:44.35 ID:6OuHHQ570


翠「新しいメガネ買うんですかぁ?」

翠「あんな地味なメガネじゃなくて、今度はもうちょっと洒落たもの買ってくるですよ」

ジ「ふん。地味で悪かったな」


そうか・・・せっかく買うんだから、違うのにしよう。
どんなデザインがいいかな。

まあ、それは店で見て決めるとしよう。



8: 2010/01/03(日) 15:52:38.39 ID:6OuHHQ570

・・・


ジ「行ってくる」

の「ちょっと待ってジュン君!」

姉が今にも氏にそうな顔でやってきた。変な顔だ。

の「ハ、ハンカチ持った!?ち、ちり紙とティッシュは持った!?あ、あと、携帯電話持った!?ちゃんとお姉ちゃんの電話番号登録してる!?知らないおじさんについて行っちゃだめよ!?飴あげるって言われても! ああ、あとこれもそれもあれもどれも・・・」

ジ「はあ?何言ってんの。じゃあ、行ってくるからね」バタン

の「あ、ああ~・・・」



翠「・・・」

翠「一人で外出なんて、大丈夫でしょうか・・・」

雛「・・・」


9: 2010/01/03(日) 15:54:24.18 ID:6OuHHQ570


・・・・


さっさと買って帰ろう。
どこで同級生に遭遇するか分からないし。



・・・遭遇?
それが怖いのだろうか?

いや違う。面倒なだけだ。
うん、そうだ。面倒なだけなんだ。



10: 2010/01/03(日) 15:56:22.37 ID:6OuHHQ570


・・・


ガー

店員「いらっしゃいませー」

店に入ると、50台くらいのオバサン店員がすぐに寄ってきた。

店員「本日はどういったご用件で?」

ジ「え、あ、いや、その・・・新しいメガネを・・・」

店員「新しいメガネを御所望でございますか。どのようなデザインのものがよろしいでしょうか?」

ジ「い、いや、その・・・まだ特に・・・」

店員「そうですか。中学生でいらっしゃいますか?」

ジ「え、あ、はい・・・・」

店員「左様ですか。そうですねえ、中学生くらいでしたら、こういったものが人気でございますね」



11: 2010/01/03(日) 15:58:06.82 ID:6OuHHQ570


店員「ちょっとかけてみますか?」

ジ「あ、いや・・・」

店員「こちらのほうがお好みでしょうか?」

ジ「えっと・・・その・・・」

店員「学校でかけられるかどうか分かりませんが、こういったお洒落なものもとても似合うと思いますよ」

ジ「え、あ・・・」

ジ「しばらく見てみますんで・・・」

店員「左様ですか。何かありましたらお気軽にお呼びくださいね」



やっとのことで解放された。
今ので半日分のエネルギーを消費したな。



13: 2010/01/03(日) 16:02:16.45 ID:6OuHHQ570


・・・


ジ「うーん・・・」


フレームの種類が多い。多すぎる。

・・・でも、派手なものばかりだ。僕には合いそうにない。
この黄色い縁のメガネなんて、誰がするんだろう。

・・・そういや、なんとかってお笑い芸人がこんなメガネだったな。
以外と似合うのかも。


14: 2010/01/03(日) 16:04:07.07 ID:6OuHHQ570


試しに掛けてみようと思い、手を伸ばした瞬間、あるものが視界に入った。


僕が昨日までかけていたやつだ。

随分と隅のほうにあるんだな。
確かに、他のと比べると随分地味だ。
形も色も、なんだか冴えない。
そりゃ、隅に追いやられるだろうなあ。



15: 2010/01/03(日) 16:05:58.12 ID:6OuHHQ570


そんなことを思いながら、ふと振り返った。
その時だった。



体が硬直した。




学生服を着た男子学生がいる。


16: 2010/01/03(日) 16:07:53.61 ID:6OuHHQ570


眼鏡をかけていないのでよく見えない。


だが、学生服なんてどれも似たようなものだ。知り合いの同級生どころか、学校すら違うかもしれない。
きっとそうだろう。僕とは知り合いでもなんでもないだろう。
僕は普通に、堂々と、お客として眼鏡のデザインや掛け心地などを試していればいい。
そう。それでいいんだ。



・・・やっぱり体が動かない。


17: 2010/01/03(日) 16:10:24.43 ID:6OuHHQ570


手が震えてきた。
それどころか、内臓が揺さぶられている感じがする。



もう一度振り向いて壁をみる。



・・・このままやりすごそう。
もう帰り際みたいだ。


情けない決意をした。



18: 2010/01/03(日) 16:12:14.88 ID:6OuHHQ570


・・・・・


彼は帰って行った。母親といっしょに眼鏡を買いに来たようだった。


ジ「・・・クソッ・・・!」


僕は何も後ろめたいことはしていない。
学校に行ってないからって、他の同級生に迷惑かけてるわけでもない。
堂々と・・・そう。堂々と振る舞っていればいいんだ。


それが、なんで・・・



19: 2010/01/03(日) 16:15:00.46 ID:6OuHHQ570


悔しさをぶつける対象もなく、ただ拳を握りしめるだけだった。
視界に入るあらゆるものをひたすら睨み続けた。

可哀想に。眼鏡は僕にとって憎悪の対象になった。
論理もクソもないことはわかっている。
ただ、全ての責任を押し付ける対象が欲しかった。

眼鏡に関わるとロクなことがないな・・・

滑稽だと自分でも分かっていながら、そう思った。

僕は目を閉じた。
何も考えたくはなかったが、ふとある思い出が蘇った。


20: 2010/01/03(日) 16:16:18.94 ID:6OuHHQ570


・・・・

・・・



カチッ カチッ カチッ・・・


ジ「・・・」


ジ「よし。大体できてきたな。これを仕上げて、今日は寝よう」


午前1時20分。家の中で動く物は僕以外に誰もいない。


21: 2010/01/03(日) 16:19:03.31 ID:6OuHHQ570


そのとき、何かが開く音がした。


真紅だ。起きてしまったようだ。


真紅「ジュン、何してるのかしら?」

ジ「おまえこそなんで起きたんだ?」

真「質問に質問で返すのは失礼なのだわ」

ごもっとも。正論だから腹立つ。


22: 2010/01/03(日) 16:21:56.70 ID:6OuHHQ570


ジ「・・・見りゃわかるだろ。刺繍だよ」

真紅が寄ってくる。

真「ジュン」

ジ「なんだ?」

真「抱いて頂戴」

ブフォッ

ジ「な・・・!」

何言ってんだこいつは!!



23: 2010/01/03(日) 16:25:00.65 ID:6OuHHQ570


真「ここからではよく見えないわ。膝に乗せて、じっくり見させて頂戴」

ジ「あ・・・ああ、そういう意味ね・・・」

真「どういう意味だと思ったのかしら?」

僕は質問を無視し、黙って真紅を抱き上げた。

真「まぁ・・・花園ね。とても綺麗」


真「もう少し斜めに見せて頂戴」



真紅は見入ってるようだ。再び部屋が静寂に包まれる。



24: 2010/01/03(日) 16:28:55.02 ID:6OuHHQ570


ジ「・・・もういいだろ?」

真「ええ。良い物を見させてもらったわ」


真「それはいいのだけれど、ジュン。刺繍をするときは部屋の明かりをつけなさい」

真「こんな小さな明かりだけで作業しているから、そうやって眼鏡をかける羽目になるのだわ」

ジ「ふん。大きなお世話だ」

怒られるかと思ったが、真紅の表情は穏やかだ。


26: 2010/01/03(日) 16:29:54.47 ID:6OuHHQ570


真「・・・そう」


真「・・・逆に言えば、あなたの眼鏡は努力の象徴とも言えるわね」

真「これだけ綺麗な刺繍をするのだもの・・・」

真紅がつぶやいた。


ジ「べ・・・別に。ただの暇つぶしだ。こんなの。努力なんてした覚えはないね」


真「それはそれで素晴らしいわ」

真「あなたには万人が嫉妬する才能があるということ」

真「あの、金糸雀のマスターが言うように、それこそ呼吸をするように自然な才能が・・・」


ジ「・・・」


僕はどう応えればいいかわからなかった。


27: 2010/01/03(日) 16:32:25.89 ID:6OuHHQ570


・・・・

・・・


僕は目を開いた。

・・・こんなことがあったっけ。
あったような、なかったような。

再び目を閉じてみる。



28: 2010/01/03(日) 16:36:46.67 ID:6OuHHQ570


・・・

・・・・・


蒼星石「こんにちはー。おじゃましてまーす」

蒼星石が今日も遊びに来たようだ。
だが今は蒼星石の挨拶に応える場合じゃない。

ジ「コラッ!性悪人形!!僕の眼鏡を返せ!!」ドタドタ

翠「あはははは!!いいとこに来たです蒼星石!」ドタドタ

翠「あのジュンを見るです!滑稽ですぅ!あっはははは!」

クソッ。足元がよく見えないからふらついてしまう。
緑の悪魔め・・・・


29: 2010/01/03(日) 16:39:03.62 ID:6OuHHQ570


翠「ほら見るです蒼星石!目が『3』になってるですぅ!あはははは!」

ジ「なるわけないだろ!さっさと返せよ!」

真紅「うるさいのだわ!あなたたち!静かにしなさい!」

翠「これがやめられるもんですか!あははは・・・あっ!」バッ

捕まえた。

ジ「ぜえ・・・ぜえ・・・やっと捕まえた・・・」


30: 2010/01/03(日) 16:41:36.32 ID:6OuHHQ570


翠「しょうがねえですねえ。返してやりますよ」ポイッ

ジ「ったくもう・・・」

翠「それにしてもおもしろい顔だったですぅ」

翠「やっぱりジュンは、眼鏡をかけた時のほうがカッコイイですぅっ♪」






部屋が静まり返った。



31: 2010/01/03(日) 16:47:54.70 ID:6OuHHQ570


僕も一瞬何が起きたかわからなくなった。
翠星石の口からとんでもない破壊光線が発射されたようだ。




静寂を破ったのは、蒼星石だった。




蒼「翠星石・・・今日は随分と大胆だね」


翠「・・・」カアッ


翠星石の顔がみるみるうちに紅潮していく。真紅に勝るとも劣らない赤さだ。


32: 2010/01/03(日) 16:54:05.22 ID:6OuHHQ570


翠「・・・す・・・」

翠「翠星石は何も言ってないです!!何も言ってないです!!!」

翠「このチビ人間!!今聞いたことを忘れろです!!」ポカポカ

翠「そ、そうだ!!蒼星石、鋏を貸すです!ジュンの記憶の枝をチョン切ってくるですぅ!!!!!」ジタバタ

蒼「ちょ、ちょっと翠星石、落ち着いて!」


翠「これが落ち着いていられるもんですか!!もうお嫁に行けんですぅ!!」

ギャーギャー



その後、翠星石はnのフィールドに引き籠り、3日は帰ってこなかった。



34: 2010/01/03(日) 16:58:52.27 ID:6OuHHQ570


・・・・・

・・・


ジ「・・・ぷっ」


思い出し笑いをしてしまった。
こんなこともあったか・・・



35: 2010/01/03(日) 17:02:50.61 ID:6OuHHQ570


・・・

・・・・・


雛苺「ジュンー、遊んでー」トテトテ

ジュン「んー、今パソコンやってるから、後でなー」

雛「今遊んで!いま!」

ジ「後でな・・・」

雛「あそんであそんであそんであそんであそんであそんであそんであそんでー!」ジタバタ


ジ「ああああうっせえええ!!」ガタッ

ジ「どりゃあああ!寸止めパンチ!!」ピタッ


雛「ひょおおおお!すごいのー!!!」キャッキャッ



37: 2010/01/03(日) 17:08:24.81 ID:6OuHHQ570



ジ「・・・で、何して遊ぶんだ?」

雛「うーんとね、えーっとね・・・」

雛「ヒナ、ジュンのそのメガネをかけてみたいの!」

ジ「これか?こんなもんおもしろいモンでも何でもないぞ」

雛「いいからいいからー!」

ジ「・・・ま、いいか・・・」スチャッ

ジ「ほらよ」

雛「わーい!」スチャッ



38: 2010/01/03(日) 17:11:55.02 ID:6OuHHQ570


雛「うわぁ!なんだか変なのー!ジュンが歪んで見えるのー!あはははは!」

雛「あははははは!」ドタバタ


楽しんでもらえてなにより。

ジ「・・・ほら。もういいだろ。眼鏡返せよ」チャッ

雛「あっ・・・」


39: 2010/01/03(日) 17:17:00.43 ID:6OuHHQ570


ジ「次は何をするんだ?」

雛「うーん・・・」

雛「ジュン、だっこして!」

ジ「嫌だ」

雛「嫌でもだっこしてもらうもーん!」バッ


ぽふっ


雛苺が胸に飛び込んできた。


ジ「嫌だって言ったろ」

雛「えへへー♪」

ま、いいか。


40: 2010/01/03(日) 17:26:29.54 ID:6OuHHQ570


雛「ねーえ、ジュン?」

ジ「なんだ?」

雛「ジュンは、どうしてメガネをかけるの?」

ジ「目が悪いからだよ。メガネをかけると、遠くのものもハッキリ見えるようになるんだ」

雛「へー!とっても良いものなのね!」


良いもの、か・・・



41: 2010/01/03(日) 17:34:43.70 ID:6OuHHQ570


ジ「そうでもないよ、雛苺」

雛「なんで?」

ジ「見たくないものまでハッキリ見えてしまうから・・・」


そう。あいつらの顔。
他人を蔑むような、下衆な顔。卑しくニヤけた顔。
今でも生々しく思い出す。



42: 2010/01/03(日) 17:41:14.39 ID:6OuHHQ570


雛「ふーん・・・」

雛「・・・」

雛「でも、ヒナは、やっぱりすてきなものだと思うの」


そう言うと雛苺は、床に並べてある鞄の一つを指差した。


雛「ヒナはね、ひとりになるときは、いつもこう言われるの」


雛「『そこの鞄から出てはいけない』って・・・」



43: 2010/01/03(日) 17:45:09.48 ID:6OuHHQ570


雛「ヒナは、お外に出てはいけないの」

雛「だから、もしお外に出れるのなら・・・」

雛苺はすこし間をおいて言った。


雛「今はテレビやご本でしか見られないような景色を、しっかりと憶えておきたいの」

雛「できるだけたくさん、できるだけ遠くまではっきりと・・・」


そう言うと雛苺は、黙ってしまった。

なにか気休めの言葉でもかけようかと思った僕だが、口からはなにも出てこなった。
この寂しげな表情の少女を目の前にして、僕は何もできなかった。



44: 2010/01/03(日) 17:51:03.47 ID:6OuHHQ570


・・・・・

・・・


・・・雛苺。
あのとき、どんな言葉をかければよかったのだろうか。
今でも分からない。
雛苺の寂寥感を、僕は満たしてあげることはできるのだろうか。
どうやって・・・

雛苺は言った。『いろんな景色を、たくさん、はっきりと憶えておきたい』と。
僕にできることは・・・



45: 2010/01/03(日) 17:59:31.68 ID:6OuHHQ570


だいぶ落ち着いてきたようだ。
息も整ってきた。

あまり長居しても不審に思われるので、そろそろ決めてしまおう。

ジ「す・・・、すいませーん」

店員「はい、お決まりになりましたか?」

ジ「あ、あの・・・」

僕はひとつの眼鏡を手にとった。


ジ「これでお願いします」



47: 2010/01/03(日) 18:04:12.29 ID:6OuHHQ570


・・・

そのころ、nのフィールド・・・


翠「さ、着いたですよ」ぽふ

雛「うい・・・」

ジュンが外出した後しばらくして、いてもたってもいられなくなった翠星石と雛苺は、ジュンの樹を見に来た。
相変わらず陰気なところだと思った翠星石だったが、すぐにある変化に気づいた。


49: 2010/01/03(日) 18:06:49.48 ID:6OuHHQ570


翠「あ・・・」

翠「チビ樹が・・・」

雛「ほえ~・・・」

言葉も出ずに棒立ちしていると、蒼星石がやってきた。

蒼「やあ。今日は雛苺もジュン君の樹の様子見かい?」

翠「雛苺が気になるんですと」

雛「・・・」



50: 2010/01/03(日) 18:08:33.18 ID:6OuHHQ570


翠「蒼星石、ちょっとこれを見るです」

蒼「これは・・・」

翠「チビ樹が、なんだか急に大きくなってるです」

翠「翠星石は毎日様子を見にきてますが、こんなに急に伸びたのは初めてです・・・」

翠「まだまだ雑草が絡みついていますが、なんだか、堂々としてるです」

高さがそこまで伸びたわけではなかったが、その佇まいは見る者に力強さを感じさせた。

翠「どうして、こんな急に・・・」

翠星石は呆気に取られていた。


51: 2010/01/03(日) 18:10:27.17 ID:6OuHHQ570


蒼「ふふっ」

翠「な、なんですか蒼星石。なんで笑ってるんですか?」

蒼「翠星石。君はジュン君のことになると随分と盲目的になるんだね」

翠「なななななな何言ってやがるですか!そんなことないです!」

翠星石は必氏に否定する。

蒼「庭師の僕には分かるよ。なぜジュン君の樹がこうなったか・・・。普段の君ならわかるはずさ」



52: 2010/01/03(日) 18:14:00.99 ID:6OuHHQ570


蒼星石は笑みを浮かべながら言った。

蒼「君たちが原因だよ」

蒼「ジュン君が今、家の外でどんな状況なのかはわからないけれど、僕にはわかることがある」

蒼「ジュン君は、君たちとの交流を糧に、今まさに成長しているんだ」

翠「・・・」

翠星石は、なんでもお見通しな妹に、爽やかな敗北感をおぼえた。


53: 2010/01/03(日) 18:16:23.92 ID:6OuHHQ570


蒼星石は、黙って樹を見つめている雛苺にこう言った。

蒼「もちろん、君もだよ。雛苺」

雛「・・・」

蒼「どんな悪戯をしてジュン君を怒らせたのかは知らないが、ちゃんと謝ればジュン君もきっと許してくれるよ」

蒼「君も、ジュン君にとって大切な関係の一人なんだよ」

雛「うゆ・・・」


3人はしばらく、このとても小さな、しかし力強い樹を黙って見つめていた。



54: 2010/01/03(日) 18:21:58.96 ID:6OuHHQ570


・・・・

・・・・


ガチャッ

ジュン「ただいま」

のり「おかえりなさいジュン君」

翠「おかえりですぅ」

真「おかえりなさい」

翠「あ・・・あれ?また前と同じ眼鏡ですかぁ?」

ジ「ふん。眼鏡なんてなんでもいいんだよ」


翠「・・・目が3になるよりかはマシですよ」

そう言うと翠星石は、部屋のほうに戻って行った。
なんだか少し赤くなってるような気がしたが、気のせいかな。


56: 2010/01/03(日) 18:25:48.97 ID:6OuHHQ570


いつもはドアを開けた瞬間に駆けつけて抱きついてくる雛苺が、今日は一番後ろでうつむいている。
近づくと、顔を上げて言った。


雛「ジュン・・・ごめんなさいなの・・・」

今にも泣き出しそうな顔だ。

僕も呼吸を整えてこう言った。


ジ「い・・・いいよ雛苺。真紅の言う通り、僕にも責任があるんだ」


57: 2010/01/03(日) 18:28:15.82 ID:6OuHHQ570


なおも表情の変わらない少女に、続けて言った。

ジ「なあ、雛苺」

雛「?」



ジ「何して遊ぼうか」

雛「!」



58: 2010/01/03(日) 18:30:06.87 ID:6OuHHQ570


雛苺が笑顔になった。
これまで見たことないような、すごく眩しい笑顔だ。


というか、なんだか今は世界全体がいつもより明るく見える。


・・・新しい眼鏡のせいだな。うん。





きっと、そうだ。



おしまい



60: 2010/01/03(日) 18:32:18.52 ID:6OuHHQ570
ご支援ありがとうございました。
今まで会話文だけのSSしか書いてなかったですが、今回は地の文を入れてみました。
難しいですね!シリアスな感じになってしまうので、ギャグを入れられなかったのが残念

61: 2010/01/03(日) 18:33:07.71 ID:8d2zMovi0

引用: 雛「ジュンー!遊んでー!!」  バキッボキッベキョ