328: 2011/08/18(木) 19:34:33.69 ID:T6HakH5U0

329: 2011/08/18(木) 19:35:44.71 ID:T6HakH5U0
杏子「何だ。結界に巻き込まれてたのか。生きててよかったな」

まどか「杏子ちゃん…その姿…」

杏子「ん? ああ。まあ、なんだ。あんまり気にしないでくれ」

まどか「そ、そんなこと言われても…」



杏子「アンタは、今日は何もなかったし、何も見なかった」

まどか「え?」

杏子「そうしろってこと。いいな」

まどか「無理だよ。あんなこと…」

杏子「無理でもすること。でなきゃ、ロクなことにならねーぞ」

まどか「杏子ちゃん…」
もう誰にも頼らない
330: 2011/08/18(木) 19:37:41.41 ID:T6HakH5U0
杏子「さーて、帰るとすっか。噂のルーキーも姿を見せないみたいだし。…っと」

まどか「…?」

杏子「こりゃラッキー! 財布がいっぱいだ!」

まどか「え?え?」

杏子「いやー、今日はツイてるな。グリーフシードも手に入れて、金の工面もつくとは」ゴソゴソ

まどか(倒れている人の、ポケットを漁ってる?!)

杏子「お、これなんかパンパンだ。よく膨らんでるぜ…、って小銭かよ。まあ、いいか」


まどか「だ、だめだよ。杏子ちゃん!」

杏子「あん?なんでだよ。どうせ、氏のうとしてた連中じゃねーか」

まどか「それは…」

    (魔女に操られていたから…)

杏子「それに曲がりなりにも助けてやったんだから、これくらいの役得は当然だろ?」

まどか「で、でも…」

杏子「あー、うぜえ。こんなの魔女なんかに魅入られるやつが悪いんだよ、…ってもわかんねーか」

  「とにかく、金をもらうことには変わりねェ。嫌なら、見んな。あっち行ってろ」

まどか「杏子ちゃん!」

331: 2011/08/18(木) 19:39:13.03 ID:T6HakH5U0
杏子「…あんだよ。邪魔すんなら容赦しねーぞ」

まどか「ダメだよ。そんなこと」

杏子「アタシはアンタと違って、まともな人生を送ってねーんだ。こうでもしないと生きていけねーの」

まどか「…友達」ボソッ

杏子「あん?」

まどか「友達なの」

杏子「? ああ、なるほど。友達が倒れているのか。んじゃ、そいつは勘弁してやるよ。どいつだ? 緑のこいつか?」

まどか「杏子ちゃんも、友達だよ」

杏子「へ?」

まどか「友達がお金取られるのも、お金を取るのも嫌だよ」

杏子「…」

まどか「…」

332: 2011/08/18(木) 19:41:27.51 ID:T6HakH5U0


杏子「うぜぇ」


まどか「…!」ビクッ

杏子「友達だ? 一回しかあったことがないのに?」

まどか「…うん」

杏子「調子に乗るんじゃねェ。アタシはそんなふうに思ってない。迷惑なんだよ」

まどか「でも、杏子ちゃんは助けてくれたから…」

杏子「あんなのは気まぐれさ。捨て猫に餌をやるようなもんだ。あれぐらいでいい人間だなんて判断するのはバカのすることさ」

まどか「…」

杏子「…ちっ」シュン

まどか(…変身した!)


杏子「もう一度だけだ。嫌なら見んな。さもねーと、無理やり見ないでもらうことになるぞ」ジャキ

まどか「そんなこと、できない。目を瞑ったって何も変わらないから」

杏子「そうかい。引く気は無いってか」

まどか「…」

杏子「ならしかたねーな。加減はしてやるよ」

まどか「…」グッ

杏子(ちっ…! 後味悪ぃ…)



さやか「まどか!」バリーン

333: 2011/08/18(木) 19:42:35.40 ID:T6HakH5U0
まどか「きゃっ!」

さやか「せりゃぁぁぁ!」バキッ

杏子「うぉっ!」

さやか「まどか! 大丈夫?!」

まどか「さやかちゃん、…え?」

さやか「魔女の気配がして、急いで駆けつけたんだけど、なによこれ! なんなのこいつは!」

まどか「さやかちゃん、その恰好…」

さやか「ん、ああこれ? まあちょっとした心境の変化というやつで…あはは」

まどか「そ、そんな…」

さやか「まあ、大丈夫だって!ちゃんと色々考えてから決めたからさ。後悔はないよ」

まどか「…」

さやか「これからは、3人…いや4人か。魔法少女で頑張ろうよ、まどか!」

334: 2011/08/18(木) 19:44:52.17 ID:T6HakH5U0
まどか「…何で」ポロポロ

さやか「えっ…?」

まどか「どうして…さやかちゃん…」ポロポロ

さやか「ど、どうしたの…まどか?」

まどか「…う……」ポロポロ

さやか「ま、まどか…。そんなに、怖かったの? だ、大丈夫よ。これからはあたしも守ってあげるから!」

まどか「ち、…違うの。違うんだよ…さやかちゃん…」ポロポロポロ

さやか「…ごめん、もしかして怒ってる?まどかがあれだけ言ってくれたのに。忠告無視する形になっちゃって」



まどか「…」

さやか「ごめん、本当にごめん」

まどか「…わたし…さやかちゃんには…普通のままでいてほしくって…」

さやか「うん、ありがとう。でも、まどか一人にあんなこと背負わせたくなかったから」

まどか「…さやかちゃん」

さやか「あたし、自分の気持ちに嘘はつけなかったの。バカだからさ」

まどか「…」

さやか「…本当にごめんね。まどか」

335: 2011/08/18(木) 19:46:17.50 ID:T6HakH5U0


杏子「…っつつ。舌噛んじった」

さやか「!」



杏子「ったく、びっくりさせやがって。いきなり斬りかかるとは、いい度胸してんじゃねーか」

さやか「あんた…。どういうつもりよ! まどかに武器向けるなんて」

杏子「ああん? なんでてめえにそんなこと喋らなくちゃならねーんだ?」

さやか「魔法少女でしょ! 人に武器向けるなんてどういうつもりかって聞いてんのよ!」

杏子「どうしようがアタシの勝手だろうが。それとも何か? 魔法少女は人を守らなきゃいけない義務でもあんのか?」

さやか「なっ?!」

杏子「バカじゃねーの、お前。まさかとは思うけど、やれ人助けだの正義だの、そんな冗談かますために、魔法少女になったわけじゃないよな?」

さやか「…だったら、何だって言うのよ!」


杏子「…っつたく遊び半分かよ。ホント、ムカつくわ」

さやか「っ!!」

杏子「見逃してやるから帰んな。今日はもう一戦やらかしたあとだし、お遊びに付き合ってる気分じゃねーんだ」

さやか「お遊び…ですって?」

杏子「そうだ、お遊びだ。何にも分かってねェ。早いとこ、宗旨替えするのが身のためだよ」

さやか「…何よ、偉そうに。アンタにアタシの何がわかるっていうの…!」

杏子「知るかよオマエのことなんか。新人のアンタよりはこの力のことを知っているだけだ。バカに持たせるもんじゃないってね」ホフ

さやか「なん…!」

杏子「…あー、眠ぃ。今日はもう帰るわ。さやか、っつたか。噂のイレギュラーなルーキーとは違うみたいだしな。
   とりあえず今日は見逃してやるから。正義の味方ごっこ頑張れよ」ヒラヒラ

336: 2011/08/18(木) 19:47:12.27 ID:T6HakH5U0
さやか「…あんたなんか」ジャキ

杏子「…帰れつったのが、聞こえなかったか?」

さやか「あんたなんかぁぁぁぁぁっ!」ダッ

杏子「…あー、うぜぇ」



さやか「だぁりゃぁ!!」

杏子「超うぜぇ」ダッ

337: 2011/08/18(木) 19:48:43.21 ID:T6HakH5U0
まどか「さやかちゃん…。杏子ちゃん…」
 
    ガンギンガン! バキッ ドゴッ

まどか「なんとか…なんとかしないと」

    ガガガガガ ギッ ガッ

まどか「このままじゃ、二人とも…」



QB「まどか、近づいたら危険だよ」

まどか「…キュウベエ」

QB「二人を止めたいかい、まどか? でも今の君じゃ無理だ。
   魔法少女でもなんでもない、今の君じゃね」

まどか「…」

QB「見たところ、二人とも止める気はないみたいだし。こうなったら、どちらかが倒れないと終わらないね」

まどか「…うん。そうだと思う」

QB「うん、分かってるみたいだね。ま、イレギュラーでも魔法少女なんだから当然か」

まどか「…キュウベェが何が言いたいのかも、わかるよ」

QB「なら話は早い。僕と契約して魔法少女になってよ、本物のね」

まどか「…」

QB「それに君だって薄々感じていたはずだ。不便だってね」

まどか「…不便?」

QB「そう、二人そろわないと変身も出来ないなんて不便極まりない。僕と正規の契約をすれば、そんな煩わしいこともなくなる。
   この状況も打開できるし、悪い話ではないと思うよ」

338: 2011/08/18(木) 19:50:53.04 ID:T6HakH5U0
まどか「…わかってないね。キュウベエは」

QB「ん?」

まどか「わたしは、ほむほむとの関係を煩わしいなんて思ってないし、不便だなんて感じたこともない」

    「そんなこと気にならないくらい、色々なものをわたしにくれたもの」

QB「やれやれ、わけがわからないよ。人間は。どう考えても、メリットが釣り合っていない」

まどか「キュゥべえの言うメリットと、わたしの大事だと思っているものはたぶん違うよ。だから契約しない。大事なものを失っちゃうから」

QB「でもどうするつもりだい? さっきも言ったけどこの状況はどうにならないよ。現実は非情さ。それとも、君はさやかを見頃しにするのかい?」


まどか「それも、ちょっと違うかな?」

QB「?」

まどか「キュウベエはもうどうしようもならないと思っているみたいだけど、わたしはそうは思わない」
QB「そうかな。状況は、君にとっては絶望的に見えるけれど」

まどか「わたしは契約はしないし、さやかちゃんや杏子ちゃんも見捨てたりしない。きっとあるはずだよ、その方法が」

QB「強欲だね、君は。まあ人間らしいともいえる。でも『二兎を追う者は一兎をも得ず』とは君らの言葉じゃなかったかな?」

まどか「そうかもしれない、でも」



まどか「それが、わたしのやりたいことだから!」ダッ


339: 2011/08/18(木) 19:51:58.51 ID:T6HakH5U0
さやか「あうっ――!」

杏子「…まったく手間かかりすぎだっつーの」

さやか「こ、この…!」ヒール

杏子「しかも回復かよ。弱いくせにしぶといなんて、ゴキブリかオマエは」

さやか「うるさいうるさい! あんたなんかに負けるもんか――!」ダッ!

杏子「別に勝ちたいわけじゃないんだけどな。とっとと帰りたいし」ヒュン

さやか「この…避けんな!」

杏子「無茶言うな。ほれ、腹がら空き」ドゴ

さやか「うがっ!」

杏子「重傷負わせてもすぐ回復。キリがねぇなこりゃ」

さやか「こん…げほっ…げほっ!」

杏子「大して強くもないのに、先輩に対する態度がなってないね。もう少し痛めつけてあげようか?」

さやか「あんたなんか…先輩じゃない!あたしの先輩はマミさんだけだ!」

杏子「なんだ。あんたもマミの後輩だったのか。通りで甘いわけだ。アイツ、後輩の育成には向いてないんじゃないかね」

さやか「マミさんのことを悪く言うな! うぉりゃぁぁぁ!」ブン

340: 2011/08/18(木) 19:53:21.16 ID:T6HakH5U0
杏子「…挑発されたら、すぐ頭に血が上る」ヒュン

さやか「あっ…!」

杏子「少しは学習しろ、ボケが」ヒュン


   ドゴッ


さやか「――――!」

杏子「胸にデカいの一発。傷が治せても、しばらく動けないだろ」

さやか「げほっ!…げほっ!…こん!…がはっ!」

杏子「もういい。面倒くせぇ。言って殴ってもわからない、バカとなりゃあ、あとは氏ね」

さやか「…」ブルブル


杏子「さっくり決めてやる。消えな、大バカ野郎」ジャキ

341: 2011/08/18(木) 19:54:51.18 ID:T6HakH5U0


まどか「杏子ちゃん!」

 
杏子「…何考えてるんだオマエ?」


さやか「ま、まどか…」

さやか(まどかが…あたしの前に…)


杏子「どけよ。氏にたいのか」

まどか「止めて。杏子ちゃん」

杏子「見逃してやるっていったのに、挑んできたのはそいつだ。そいつだってわかってて戦ってたはずだ。アタシをどうこういうのは筋違いだよ」

まどか「うん。でも止めて」


杏子「…」

さやか「まどか…逃げ…」

まどか「ごめんね、さやかちゃん。でも、それはだめ。友達を見捨てるなんて、できないもん」

さやか「まどか…」

342: 2011/08/18(木) 19:55:49.60 ID:T6HakH5U0
杏子「…また友達かよ」

まどか「そうだよ。友達。だから、大事にしなくちゃいけないの」

杏子「…悪いが、今回は止める気はねェ。こいつはここでリタイアしたほうが絶対にいい」

   「間違いなく、ロクな末路にならねーぞ」

まどか「…」グッ

杏子「…そうかよ。引く気は無いんだな」

まどか「…」コク

杏子「…そうかい。じゃあな、まどか」

まどか「…」

杏子「嫌いじゃなかったよ」ヒュン

さやか「まどかっ!」

まどか「…っ!」

343: 2011/08/18(木) 19:56:33.99 ID:T6HakH5U0


    がきん!


さやか「え――?」
杏子「なっ?!」



ほむら「ほむほむほむ!」


344: 2011/08/18(木) 19:57:22.90 ID:T6HakH5U0
杏子「な、何だこのちっこいの!」

杏子(アタシの攻撃を止めたがった?!)

さやか「ほむほむ!」

杏子「ほ、ほむほむ?」

ほむら「ほむ!」



杏子「何だテメェは! どっから来やがった!」

ほむら「ほむ、ほむむ!」

杏子「なにいってるのかわかんねーよ!」バッ

ほむら「ほむっ! ほむっ!」

杏子「くっそ、ちょこまか動きやがって――!」

まどか「ほむほむ!」

345: 2011/08/18(木) 19:58:18.46 ID:T6HakH5U0
ほむら『遅れてごめんなさい! 見つけるのに手間取ったわ』

まどか『ほむほむ! 来てくれるって、信じてたよ!』

ほむら『さっそくだけど――大丈夫?』

まどか『うん、大丈夫!』

ほむら『佐倉杏子は手練れよ。加えてあなたの状態から見て長期戦は無理。短時間で済ませましょう』

まどか『ううん、わたし出来ることなら杏子ちゃんとは戦いたくない。何とか説得したいの。できないかな?』

ほむら『まどか…? あなた佐倉杏子と知り合いなの?』

まどか『うん、ちょっとね』

ほむら『後で聞かせてもらうわ。それよりも変身するわよ』

まどか『わかった!』

ほむら『どちらにするしろ、相手と対等な立場にならないとね』

まどか『うん!』



ほむら「ほみゃ!」ペシ

杏子「がっ! この野郎、鼻に蹴り入れやがって!」

346: 2011/08/18(木) 19:59:35.09 ID:T6HakH5U0
ほむら『…契約しないでくれて、ありがとう』

まどか『わたしには、もうほむほむがいるからね』

ほむら『…いくわよ!まどか!』

まどか「…うん!」



まどほむ「『変身!』」ピカッ

347: 2011/08/18(木) 20:00:40.41 ID:T6HakH5U0
杏子「んなっ?!」

杏子(が、合体した?!)

まどか「さやかちゃん、運ぶよ!」ヒョイ

さやか「あっ…」

杏子(なんだ…この威圧感! とんでもねー魔力を持ってやがる! こりゃあ気を引き締めねーとやべぇな)



さやか(こ、これが、まどか?)

まどか「ここで待ってて、杏子ちゃんはわたしが何とかするから!」

さやか「う…うん」

さやか(な、なんか、近くにいるだけでいろんなとこがビリビリする)

さやか(魔法少女になったから…まどかの凄さがわかるのかな?)

杏子「…そうかい、アンタが『かなめまどか』だったのか」

まどか「うん。…あれ? バックに書いてあった名前を見たって…」

杏子「…まあいいさ。探す手間が省けた。そっこーで潰してやる!」ダッ!

まどか「杏子ちゃん!」シュン!

    シュ バッ シュシュ ガキンキン ガッ

さやか(げっ…どうやって戦っているんだが全然わかんない)

さやか(あたしって、こんなに力不足なの…?)

348: 2011/08/18(木) 20:01:31.31 ID:T6HakH5U0
杏子「この野郎!」

まどか「杏子ちゃん!止めて!」シュン

杏子(全然攻撃が当たらねー!)

まどか「杏子ちゃん!」

杏子(どうなってやがるんだ。出たり消えたり、こいつの能力か?!)

まどか「お願い! 話を聞いて!」シュン

杏子(畜生! またかよ!)

ほむら「ほむ!ほむむ!」

まどか「うん、わかってる。けど…!」

杏子(しかもなんだ。あの頭に乗っているちっこいの!)

杏子「おぅりゃ!」ブン

まどか「!」シュン

杏子(わからねーことが多すぎる…。力もルーキーだと思わないほうがいいか…?)

349: 2011/08/18(木) 20:02:38.72 ID:T6HakH5U0
杏子「…」スッ

まどか「杏子ちゃん?」

杏子「おい、何で戦わねー?」



まどか「…魔法少女同士で戦うのなんておかしいよ」

杏子「はっ? おかしなこと言うじゃねーか。戦うために変身したんだろ?」

まどか「それはちがうよ。杏子ちゃん。同じ立場じゃないと話を聞いてもらえないと思ったから、変身したの」

まどか「だからいうね。魔法少女同士で戦うなんておかしい。こんなの絶対おかしいよ」

杏子「おかしくねぇよ。魔法少女なんてのは、結局は自分の欲望に身を捧げた奴らのことだ。だから自分のために戦う。なんであろうともな。こんなの普通のことだよ」

杏子「それを人助けだのなんだの。そんなこというほうが頭おかしいっての」

さやか「なんですっ…ごほっ!ごほっ!」


まどか「…それはちがうよ杏子ちゃん」

杏子「あん?」

350: 2011/08/18(木) 20:03:30.16 ID:T6HakH5U0
まどか「魔法少女は祈りによって存在している」

    「何かを祈って、その祈りでソウルジェムを輝かせる。そういう契約」

    「それを欲望っていうのかもしれないけど、それでもただ自分の為だけに祈るなんてことはない」

    「祈りっていうのは、祈りたい誰かや誰かの為にするものだもの」


杏子「…」

ほむら(まどか…)

まどか「杏子ちゃんも…そうだったんじゃないの?」

杏子「…」

351: 2011/08/18(木) 20:04:33.76 ID:T6HakH5U0
杏子「…」

まどか「…」

杏子「…やめだ」

まどか「えっ?」

杏子「アンタも、その頭に乗っているヤツもわけわかんねぇ。正体も能力もまるでわからねえとあっちゃね。今日のところは帰らせてもらうよ」

さやか「ちょっと、逃げる気?!」

杏子「勘違いすんじゃねェよ。雑魚が」

さやか「なっ…!」

杏子「テメェはいつでも潰せるが、まどかはそうはいかねぇ。やるならキッチリ体調を整えねえとな」

まどか「杏子ちゃん…」

杏子「そういうわけだ。アタシはそのつもりだけど、アンタはどうする、まどか?」

まどか「…杏子ちゃんいいなら、それでいい。でも、杏子ちゃんとはこれからも戦いたくないよ、わたし」

さやか「ちょっと、まど――ごほっ?!」

杏子「…そうかい。じゃあな」シュッ

まどか「…杏子ちゃん」



まどか(帰った…。ううん。帰って、くれたのかな?)

まどか(…ありがとう)

352: 2011/08/18(木) 20:05:12.06 ID:T6HakH5U0
まどか「さやかちゃん!大丈夫?」

さやか「…うん。なんとか体も治ってきたみたい」

まどか「よかった…」


さやか「それよりもなんなのあいつ?! まどかの知り合い?!」

まどか「う、うん。そんなに知っているわけじゃないけど」

さやか「だめだよまどか、あんなやつの相手しちゃ! 絶対襲ってくるよ!」ガクガク

まどか「わわわ、ゆ、ゆらさないでさやかちゃん」

ほむら「ほむっ!」ペシ

さやか「痛っ!」

まどか「た、助かった…」

さやか「…まどか。何であいつ逃がしたの? あんなやつ、野放しにしちゃ絶対に…」

まどか「…それよりもさやかちゃん。なんで魔法少女に――」

353: 2011/08/18(木) 20:05:55.78 ID:T6HakH5U0



    グラッ



まどか「…え?」

さやか「まどか?」

ほむら「ほむ?」



まどか「…あ…れ?」

さやか「ちょっとまどか?! どうしたの!?」

まどか「…」バタッ

さやか「まどか?!」

ほむら「ほむほむほむ?!」

さやか「まどか! 起きてよまどか! ねぇ、ちょっと!」

まどか「…」

ほむら「ほ…ほむ……ほ……む………ほ――」


まどか(あ――ほむ――)

まどか「―――」

363: 2011/08/20(土) 20:39:36.33 ID:+32FbJjI0
続きを投下します。

364: 2011/08/20(土) 20:40:37.11 ID:+32FbJjI0
―マミ宅―

マミ「――そう…美樹さんは、その願いで魔法少女になったのね」

さやか「はい」

マミ「…後悔は、しないわね?」

さやか「当然です! だって、ここで願いを叶えなくちゃ絶対後悔するって思ったんですから!」


まどか(…さやかちゃんの声?)

まどか(あれ…あたし…)

365: 2011/08/20(土) 20:43:32.45 ID:+32FbJjI0
ほむら『まどか?』

ほむら「ほむ、ほむむ」

マミ「あら、鹿目さんが起きたの?」

さやか「え、まどか?!」

まどか「あれ…? ここは…」

さやか「まどかー! 無事でよかったよ!」

まどか「あ…さやかちゃん。それにマミさんも」

マミ「鹿目さん。体は大丈夫? どこも痛むところはない?」

まどか「はい、特には。あの…わたしは」

さやか「まどかが急に倒れちゃったから大変だったんだよ?」

まどか「わたしが?」

マミ「ええ。美樹さんが、鹿目さんを担いでここまで運んで来たの。突然でびっくりしちゃったわ」

さやか「全然起きないから、全力で運んだんだ。感謝してよね~、まどか~」

ほむら「ほむほむんむ!」

さやか「はいはい。あんたもたくさん心配したよね~ほむほむ」

366: 2011/08/20(土) 20:45:15.36 ID:+32FbJjI0
マミ「鹿目さん、本当に大丈夫? どこか痛むところは無い?」

まどか「あ、はい。大丈夫です」

マミ「あなたは、私たちと違って体の治りは普通と変わらないわ。だから、酷い傷を負っていないか心配したのだけれど…」

まどか「なんだか疲れがたまってたみたいで、急にクラっと…」

さやか「ここ最近ずっと一人で戦ってたからね。無理もないよ」

まどか「一人じゃないよ、さやかちゃん。ほむほむもいたし」

さやか「それでも戦う時は一人じゃん。でもこれからはさやかちゃんに任せなさ~い!」

マミ「そうそう美樹さん。鹿目さんにもどうして魔法少女になったのか、説明してあげないと」

さや「おっ、そうだね。まどか、あたしはね…」


367: 2011/08/20(土) 20:48:00.98 ID:+32FbJjI0
ほむ『…まどか、まどか』

まど「…」

ほむ『…まどか?』

まど『あ…ほむほむ』

ほむ『本当に大丈夫? ぼうっとしているようだけれど』

まど『うん…大丈夫だよ』

ほむら『…倒れるまで、疲弊していたなんて。私の認識が甘かったわ、ごめんなさい』

まどか『…ううん。ほむほむは悪くないよ。わたしが勝手に無茶しただけ』

ほむら『貴方を守るって約束したのに…。私なにも出来ていないわね、貴方にばかり負担をかけて…』



まどか「そんなことない!」

さやか「ん?」
マミ「鹿目さん?」

まど「あ…、ごめんなさい。ほむほむとの話でつい…」



まどか『…ほむほむは頑張ってる。十分、助けてくれてるよ?』

ほむら『…』


ほむら(甘かった)

    (今のまどかを一人にすれば、こういう事態になることも予測できたはずなのに…)

    (やはり、今のまどかは危ういわ。こうなったら、できるだけ一緒にいるべきね)


まどか『本当なら、戦えるわたしがもっとしっかりしなくちゃいけないのに…』

ほむら『あなたが気に病む必要はないわ。それより後で佐倉杏子とのことを聞かせてほしいのだけれど』

まどか『あ…うん。わかったよ』

368: 2011/08/20(土) 20:49:41.91 ID:+32FbJjI0
―数分後、説明終了

まどか「じゃあ、さやかちゃんは上條くんのために…」

さやか「そ。でもそれだけじゃないよ。あたしは、まどかや街の人たちを守るために魔法少女になったの。恭介のことはきっかけだけ」

さやか「だから、まどかは安心していいよ。これからはあたしも街の平和を守るから!」

まどか「…うん。わたしももっと頑張るよ。さやかちゃん!」

マミ「でも、張り切るのもいいけれど無茶しちゃダメよ二人とも。特に鹿目さん」

まどか「え?! わ、わたしですか?」

マミ「ええそう。美樹さんに聞いたわよ?一人で危ないことをしていたってね」

まどか「さ、さやかちゃん!」

さやか「え? い、いや~マミさんに事後報告は必要かと…」

369: 2011/08/20(土) 20:51:21.87 ID:+32FbJjI0
マミ「鹿目さん。隠し事はダメよ。それと無理もダメ」

マミ「今回は美樹さんやほむほむが来てくれたから良かったものの、そうでなかったら本当に危なかったのよ?」

まどか「はい…すみません」

マミ「街を守ること。そのことは立派だけど、そのためには自分のことも大事にしなくっちゃ」

まどか「ほむほむにも同じことを言われました。他人を助けたかったら、まずは自分を一番に考えろって…」

マミ「あら、そうなの?」

ほむら「ほむっ!」

マミ「ほむほむはやっぱり頼れる先輩ね。そう、そのとおりよ。美樹さんも、よーく覚えておいてね」

さやか「はい!マミさん!」

マミ「倒れるまで体を酷使するなんて、そんなんじゃまだまだ一人前には程遠いわよ?鹿目さん」

まどか「ううう…」

マミ「これからも、やっぱり鹿目さんにはほむほむが憑いていてもらわないといけないみたいね」

ほむら「ほむほむ」

マミ「お願いね、ほむほむ。鹿目さんに無理させないよう、しっかり管理するのよ?」

ほむら「ほむ!」



さやか「…な~んか信用無いね、まどか?」

まどか「…」シュン


370: 2011/08/20(土) 20:53:30.86 ID:+32FbJjI0

さやか「そうだ! まどかにはしばらく休んでいてもらおうよ、マミさん!」

まどか「さやかちゃん?!」

さやか「これまで一人でずーーっと街を守ってきたんだし。あたしが魔法少女になったんだから、ここでまどかには一休みしてもらわないと」

まどか「そんな、さやかちゃんに悪いよ…」

マミ「いえ、美樹さんの言う通りだと私も思うわ、鹿目さん。あなたは、ここで少し休んで体調を整えるべきね」

まどか「でも、さやかちゃんは魔法少女になりたてなんですよ! ひとりで魔女となんて…」

マミ「それなら、大丈夫。私も明日から魔法少女として復帰するわ」

さやか「え?! マミさん、もう大丈夫なんですか!」

マミ「ええ。正直、まだ本調子というわけではないけれど、もう休んでいるわけにもいかないもの」

まどか「マミさん…」

マミ「ワルプルギスの夜と戦うためにも、実戦の勘も戻さなくちゃいけないし、それに先輩として美樹さんの指導もしないとね」

マミ「それに二人がかりなら、魔女にもそうそう遅れも取らないと思うわ」



さやか「マミさん…。よろしくお願いします!」

マミ「こちらこそよろしくね、美樹さん。そういうわけで鹿目さん」

まどか「はい」

マミ「あなたは、しばらく体をしっかり休めること。体調を整えてから、ワルプルギスの夜と戦うための対策を立てましょう」

まどか「わかりました、マミさん」

さやか「まどかが守った街は今度はあたしが守るからね!大船に乗った気でいなよ~」

マミ「美樹さんは私と特訓よ。鹿目さんと違って、あなたはまだ半人前ですらないんですからね」

さやか「うっ…はーい」

371: 2011/08/20(土) 20:54:46.35 ID:+32FbJjI0
マミ「それにしても、この街に佐倉さんが現れるなんて…」

さやか「…マミさんは知ってるんですか、あいつのこと」

マミ「ええ。佐倉杏子さん。ベテランの魔法少女よ。ちょっと過激な行動が多いってことは聞いていたけど…」

さやか「過激なんてもんじゃないですよ。あいつ無防備なまどかに武器を向けたんですよ! それに人助けを心底バカにして、自分の為だけに力を使うって」

マミ「…自らの祈りの代償に戦うのが魔法少女の宿命だもの。そんなふうに考える魔法少女が少なくないのも確かね。残念なことだけど」

さやか「そんな…」

マミ「でもどうして、佐倉さんはこの街に来たのかしら?」

372: 2011/08/20(土) 20:56:13.80 ID:+32FbJjI0
QB「それなら、僕が知っているよ」

まど「キュウベエ? いつの間に…」

QB「彼女はマミがリタイアしたと聞いてこの街に来たんだよ。新人の魔法少女を潰してしまえば、この街のグリーフシードを独り占めできる。そう考えたんだろうね」

さやか「グリーフシードを?」

QB「そう。グリーフシード蓄えておけば、使える魔法の量も増える。そうなれば、魔女や他の魔法少女を戦う時に有利になるからね」

さやか「そんな理由で、使い魔を放置するっていうの!」



マミ「美樹さん。これはそこまで単純な話じゃないわ」

   「穢れが溜まって、魔法が使えなくなれば魔女にやられてしまう。グリーフシードを持っておくことは、魔法少女にとって氏活問題なの」

   「グリーフシードが尽きて、ソウルジェムに穢れが溜まってきていたとしたら…。そんな行動をとっても、誰も責めることは出来ないわ」

さやか「でも、アイツは絶対そんな理由で放置してるんじゃない! そうでしょ? キュウベェ」

QB「まあ、彼女はベテランだしね。そこまで追いつめられるようなことは早々ないはずだよ」

さやか「やっぱり…!」


373: 2011/08/20(土) 20:58:15.92 ID:+32FbJjI0
さやか「マミさん、あたし決めました。あたしはあんな魔法少女には絶対になりません。あんな…、あんな最低な奴みたいに誰が!」

マミ「美樹さん…」

まどか「さやかちゃん…」

マミ「…美樹さん。あなたの人を守ろうとする考えはとても素晴らしいと思うわ。でもだからって考えることを止めてはダメよ?」

さやか「…それはアイツのことを理解しろってことですか?」

マミ「そこまでは言わないわ。でも理解できないことと、理解しようとしないことは全く違う行動よ?」

さやか「アタシは絶対にアイツのことは認めません」

マミ「美樹さん!」

さや「あんな奴、誰が認めるものか! マミさんはあんな奴の肩を持つんですか! あたしはマミさんみたいな…!」



まどほむ「さやかちゃん!『ほむ!』」

さやか「――あ」

まどか「喧嘩はダメだよ!さやかちゃん!」

ほむら「ほむほむ!」

さやか「まどか…。別にアタシはマミさんと喧嘩なんて…」

まどか「…」

さやか「…ごめん、まどか。マミさんもごめんなさい」

マミ「いえ。私も偉そうなことを言ってごめんなさい」

さやか「そんな、マミさんは悪くないですよ! ほらほら、もうアイツの話は止めて。これからの話をしましょうよ、ね?」

マミ「…そうね。そうしましょう」

まどか(さやかちゃん…)

374: 2011/08/20(土) 21:00:54.99 ID:+32FbJjI0
マミ「それじゃあ、ワルプルギスの夜が来るまでまだ猶予はあるのね?」

まどか「はい。ほむほむがそうだって」

ほむら「ほむ」

マミ「キュゥべえ?」

QB「こちらの見立ても同じさ。現れるのはまだ先だろうね」

さやか「猶予はある…か」

マミ「その間に鹿目さんと美樹さんを一人前にして、可能な限り準備をする。それに加えて街のパトロールと魔女退治。上手く時間をやりくりしないと…」

さやか「それにあいつ、佐倉杏子のこともなんとかしないと。このままじゃ、あいつは何の罪もない人も傷つける。野放しにはできません」

マミ「…そうね。彼女のことも何とかしないと。困ったわね。問題は山積み。解決できなくはないと思いたいけど…」

375: 2011/08/20(土) 21:02:44.21 ID:+32FbJjI0
まどか「…」



まどか『ねえ、ほむほむ?』

ほむら『なに?』

まど『…わたしね、みんなに提案しようと思う』

ほむ『え?』

まどか『杏子ちゃんを、仲間にできないかなって』

ほむら『!』

まどか『杏子ちゃん、そんなに悪い子じゃないと思うんだ。わたしのこと助けてくれたし。それに仲間にできれば、みんなの負担が減ると思うの』

ほむら『…でも、難しいと思うわ。特に美樹さやかがなんていうか…』

まどか『うん。でも、やってみる』

ほむら『いざとなったら、私が美樹さやかを気絶させるわ』

まどか『ううん、そうならないように頑張るよ』

376: 2011/08/20(土) 21:04:23.30 ID:+32FbJjI0
まどか「…あの」

マミ「ん? なあに、鹿目さん」

まどか「杏子ちゃんを、その…」

さやか「…あいつがどうかしたの? まどか?」

まどか「杏子ちゃんを、仲間に入れられないでしょうか?」


マミさや「「え?!」」


まどか「ワルプルギスの夜を倒すには、一人でも多くの魔法少女の力が必要だと思うんです。その点、杏子ちゃんはベテランだし、実力もあるし…。それに、一緒に戦えるようになれば魔女退治の負担も減るし、時間もできると思うんです」

まどか「もし出来るなら…の話ですけど」

マミ「…そうね。もし、そうなればかなり楽になるわね。実力は折り紙つき。グリーフシードも多く所持しているだろうから、ワルプルギスの夜も倒せる可能性も上がると思うわ」

マミ「ただ…」

さやか「…」



さやか「…まどかはさ。あいつを見て何も感じなかったの?」

まどか「…さやかちゃん」

さやか「あいつは自分の都合しか考えてない! 自分の為なら他人を犠牲にできるやつなんだよ! わかるでしょ?!」

まどか「…」

さやか「さっきあいつに何されそうになったのかもう忘れたの? あたしが来なきゃ、殺されるところだったんだよ?! あんな奴がいるから、魔女や使い魔に襲われる人が増えるんだよ。まどかは守りたい人が襲われてもいいの?」

さやか「あたしはあいつと手を組むのは反対。誰が…あんな奴と一緒に戦うもんか」

377: 2011/08/20(土) 21:06:47.31 ID:+32FbJjI0
まどか「…さやかちゃん。さやかちゃんは、どうして魔法少女になったの?」

さやか「…なによ急に。さっきも言ったでしょ。恭介の腕を直すため。でもって魔女から街の人を守るためにこの力を望んだの」

まどか「じゃあ、ワルプルギスの夜が街を壊しちゃうのはいいの?」

さやか「…いいわけないじゃない」

まどか「そう、わたし達は絶対に負けられない。だから少しでもやれることはやっておかないといけない。
    それに、杏子ちゃんだって話せばわかってくれるかもしれない。話もしないうちから、勝手に決めつけるのはおかしいよ」

さやか「相手はGSの為に人間を餌にしようって奴なんだよ? どうやって折り合いつけろって言うの?」

まどか「マミさんだって言ってたよ『理解できないことと、理解しようとしないことは全く違う』って。今のさやかちゃんは理解しようとしていない。
    相手のことを何も知らないのに、どうして敵だって言い切れるの?」

さや「あんな奴、理解なんて…っ!」ガタッ!

マミ「美樹さん…」

ほむら『…!』グッ

さやか「…」



さやか「…大丈夫です、マミさん」

378: 2011/08/20(土) 21:08:33.07 ID:+32FbJjI0
さやか「…まどか、あんた変だよ。殺されかけたんだよ? なんでそんなにあいつのことを信用するの?」

まどか「…信用しているわけじゃないよ。信用できるかどうか、それを知りたいから相手のことを知りたいの」

まどか「何も知らないのに勝手に決めつけるようなことは、したくないから」

さや「…」

まど「…」



マミ「二人とも、喧嘩はそこまでよ」

まどか「マミさん…」

さやか「…」

マミ「鹿目さん。あなたの考えは確かに理にかなっているし、状況を打開できるかもしれない。でも焦りは禁物よ。
    ましてや今さっき事を構えたばかりだもの。すぐに応じてくれるとは考えにくいわ。誘うにしても少し時間をおいてから考えましょう」

まどか「はい…」

マミ「それから美樹さん」

さやか「…はい」

マミ「鹿目さんの言うとおり、私達は絶対に負けられないの。そのためなら佐倉さんと手を組むことも考えるべきだと、私も思うわ」

さやか「でも…っ」

マミ「確かに彼女と私たちは相容れないかもしれない。でも、一時的に手を組むということなら彼女も力を貸してくれるかもしれない」

マミ「そうできるのなら、そうするべき。忘れないで、私たちは守るという目的が先にあるの。戦うというのは、それを行うための手段の一つに過ぎないわ。
    だから場合によっては戦わないで解決する方法も当然ある。そこをはき違えないでね」

さやか「…はい。マミさん」

379: 2011/08/20(土) 21:10:04.88 ID:+32FbJjI0
マミ「さて、今日はもう遅いし、話はここまでにしましょう。あんまり遅くなると、家族の人も心配してしまうわ」

まどか「え? あ、もうこんな時間! すみません、こんな時間まで」

マミ「いいのよ。それに、二人とも」

まどさや「はい?」

マミ「…本当に無事でよかったわ。あなたたちに何かあったら、私は…」

まどか「マミさん…」

さやか「心配かけてごめんなさい。でもあたし、これから心配かけないように強くなりますから!」

マミ「ふふっ、そうなれるように明日からは特訓ね♪」

さやか「うげぇ…お、お手柔らかにお願いします」



マミ「鹿目さんは体を休めること。美樹さんは私と一緒にパトロールと特訓。これが明日からの行動よ」

まどさや「はい!」

マミ「それじゃあ二人とも。また明日」

まどか「はい。じゃあ、ほむほむ。帰ろう?」

ほむら「ほむ!」ピョンコ

さやか「…まどか」

まどか「さやかちゃん、また明日ね」

さやか「…うん。また、明日」

380: 2011/08/20(土) 21:11:07.31 ID:+32FbJjI0
―まど部屋―

まどか「さやかちゃん…。魔法少女になっちゃうなんて…」

ほむら『…ごめんなさい。私の注意が足らなかったわ。貴方が何度も美樹さやかに警告していたから、大丈夫だと思っていたのだけれど、甘かった。これは私のミスよ』

まどか「ううん。ほむほむの責任じゃないよ。でも、さやかちゃん大丈夫かな…」


ほむら『まどか、魔法少女になったからといって美樹さやかのことを見捨てる気は無いのでしょう?』

まどか「当たり前だよ! だって友達だもん…」

ほむら『だったら、できるだけ彼女のそばにいてあげなさい。とにかく、彼女一人に抱え込ませないこと。出来ることがあるとしたら、それくらい』

まどか「…そうなのかな。それしか、わたしにはできないのかな…」

ほむら『でも、それが彼女にとってなによりの助けになるはずよ』

まどか「…うん。わかった」

381: 2011/08/20(土) 21:12:56.78 ID:+32FbJjI0
まどか「それにしても、上手くいかなかったね…」

ほむら『佐倉杏子のこと?』

まどか「…うん」

ほむら『まどかは頑張ったわ。でも、やはりあの場で良い結論を出すのは難しかったと思う』

まどか「でも、一緒にワルプルギスの夜と戦ってくれるなら、心強いよね」

ほむら『そうね。戦力として非常に魅力的だわ。魔法少女としての資質も申し分ない。できることなら、ぜひ引き入れたいところね』

まどか「…仲良くできないかなあ」

ほむら『…佐倉杏子は自分の為に力を使う子。逆を言えばあっちに得があることを示せれば、こちらについてくれると思う。
    問題はこっちの方ね。巴マミは街を守るためと言えば納得してくれそうだけど…』



まどか「…さやかちゃん、だね」

ほむら『ええ。彼女の佐倉杏子への敵愾心は相当なものよ。一時的、と言ってもそう簡単に納得はしないでしょうね』

まどか「なんとかならないかなぁ…。杏子ちゃんは、わたしには悪い子とは思えないよ」

ほむら『悪いことはしているとは思うわよ。彼女は自分に正直になろうと生きているから』

まどか「そうなの?」

ほむら『でも性格は悪くはないわね。一度信頼すればそう簡単には裏切らない。その信用を得るのが大変なのだけれど』

まどか「うーん。何となく、さやかちゃんとは気が合いそうな気がするんだけどなぁ」

382: 2011/08/20(土) 21:13:55.26 ID:+32FbJjI0
ほむら『…美樹さやかは思い込みが激しすぎる。最初の印象で人の価値を推し量り過ぎよ。もう少し柔軟性を持つべきだわ』

まどか「でもさやかちゃん、人にはすごく優しいんだよ? わたしも昔なんども助けられたもん」

ほむら『自分や自分の身の周りのものを守ろうとするあまり、視野が狭くなっているのよ。正義感が強いことは認めるけれど、単純な二元論で物事を見るのは感心しないわね』

まどか「ほむほむはさやかちゃんには厳しいなぁ。なにか嫌なことでもされたの?」

ほむら『…別に、ああいったタイプに苦労したことがあるだけよ』

まどか「ダメだよ。ほむほむも人と仲良くしようとしないと。苦手だからって、相手のことを考えない言い訳にはならないんだからね?」

ほむら『…努力するわ』

まどか「うん。で、杏子ちゃんのことだけど…」

383: 2011/08/20(土) 21:15:51.12 ID:+32FbJjI0
―作戦会議、終了―

まどか「じゃあ、まずは杏子ちゃんを探して説得。そのあとに、わたしがマミさん達との間を取り持つ。これでいいね!」

ほむら『…簡単に言っているけど、大変よ?それ』

まどか「ううん、大変でもやらないと。だってみんな助かってほしいもの」

ほむら『佐倉杏子を説得するときは、私も力になれると思う。彼女の性格はそれなりに知っているから。問題は美樹さやかの方だけど…』

まどか「そっちはわたし一人で頑張ってみる。ほむほむに頼りきりはよくないもん。さやかちゃんの説得くらいは、一人でやってみせるよ」

ほむら『そうね…。じゃあ、そっちはまどかに任せるわ』

まどか「うん。まかせて!」

ほむら『それから、まどか。今日の戦いで能力の使い方で気付いたことがあるのだけれど…』


385: 2011/08/20(土) 21:17:57.37 ID:+32FbJjI0

まどか「…」クスッ

ほむら『…まどか? どうしたの急に笑ったりして』

まどか「うん。なーんか、いつの間にかほむほむと一緒にいるのが当たり前になっているなぁって」

ほむら『…ごめんなさい。迷惑かけているわよね』

まどか「違うよ。嬉しいの、新しい友達が出来て。いつも一緒にいてくれて、ありがとうほむほむ」

ほむら『まどか…』



まどか「それと、今日はごめん。帰るはずだったのに勝手に行動しちゃって。怒ってる…よね?」

ほむら『…そのことは巴マミがもう言ってくれたから、とやかく言うつもりはないわ。でも、これからは止めてほしいわ。もっともしようとしても、わたしが止めるけど』

まどか「…もしかして、信用ガタ落ち?」

ほむら『むしろ今日の中で、どこに信用される行動があったのか聞きたいものね』

まどか「ひどいよ?! ま、まぁわたしも無茶したと思っているけど…」

ほむら『一度落ちた信用は、そう簡単に取り戻せるものではないわ。よってこれからは四六時中傍にいる。一緒に行動出来るときはすべて一緒にいさせてもらうわ』

まどか「うわー…」

ほむら『…心配、したんだからね?』

まどか「…ごめんなさい」

ほむら『分かってくれたのならいいわ。でも、しばらく傍にいさせてもらうことには変わらないわよ? 貴方を一人にすると無茶することが今回でよくわかったのだから』プンプン

まどか「…」

386: 2011/08/20(土) 21:19:06.44 ID:+32FbJjI0
まどか「ねぇ…」

ほむら『なに? いまさら嫌と言っても聞かないわよ?』

まどか「一緒にいてね。ほむほむ」

ほむら『当り前じゃないの。そのつもりなんだから』

まどか「ううん。そうじゃないの。…いなくならないでね?」



ほむら『…まどか?』

まどか「ほむほむは、何かを守るためにわたしの力になっている。わたしも守るために、ほむほむの力を借りている。でも、もうわたしはほむほむをそれだけの存在とは思ってないよ?」

ほむら『…』

まどか「最初はそんな関係だったかもしれないけど、でも今はもう違うの。ほむほむはわたしの友達。友達なんだよ?」

ほむら『…どうしたの急に?』

387: 2011/08/20(土) 21:20:14.95 ID:+32FbJjI0
まどか「へへ、何でだろ、いつの間にか一緒にいるのが当たり前だなぁって感じたら」

まどか「なんだか急に、ほむほむが居なくなったときのこと考えちゃって。そうしたら、なんだかすごく寂しくなって…そしたら…」

ほむら『…それが普通よ、まどか。私がいない生活のほうが日常なの、悲しむことなんて何もないわ』

まどか「それは、ほむほむと知り合う前の生活だよ。今じゃこっちの生活が普通なんだよ?」

ほむら『それは…』



まどか「…ねぇ、ほむほむ。もしもワルプルギスの夜を倒してもね。わたし、ほむほむと一緒に魔法少女を続けたい」

ほむら『…!』

まどか「ワルプルギスの夜を倒しても、魔女はいるんだよね? だったら、大好きなものを守るためにわたし戦いたいの。それにそうすれば、ほむほむとも一緒にいられるし。ね?」

まどか「わたし頑張るよ。武器のことだってもっと覚えるし、魔法の使い方だって勉強する。だから、一緒にいさせて?」

ほむら『…』

388: 2011/08/20(土) 21:21:48.37 ID:+32FbJjI0
ほむら『悪いけど、それは聞けないわ。まどか』

まどか「え…?」

ほむら『貴方とは、一定期間、一緒に戦ってほしいとの契約だった。それは変わらない。それ以上は契約違反よ、まどか』

まどか「ほむほむ…」

ほむら『貴方自身。美樹さやかに言ったでしょう?魔法少女になるなと。同じことを私も言わせてもらうわ。魔法少女になんて、なるべきじゃない』

まどか「でも、わたしは…!」

ほむら『幸い貴方は、まだ引き返せる場所にいる。これほど幸運なことはないと思うわ。
     私はあなたを魔法少女にする気は無い。なってもらいたくない。時期が来たら、変身もすべてこちらから拒否させてもらう』

まどか「そんな…。じゃあそれからはどうするの? そんな体でどうやって魔女と戦うっていうの?」

ほむら『…貴方には関係ない』

まどか「関係あるよ!」

ほむら『関係ない…!』

まどか「…」

ほむら『…』

389: 2011/08/20(土) 21:23:17.62 ID:+32FbJjI0
まどか「…ほむほむ。いなくならないで。友達がいなくなっちゃうのは辛いんだよ?」

ほむら『無理よ。私と貴方は、別の場所で生きている。こうして一緒にいるのが、そもそもおかしいの。本来なら、こんなことにはならないはずだったのに』

まどか「だったら、だからこそ一緒にいることを大事にしようよ。あなたと出会ったことが間違いだなんて、わたし思いたくない。友達のこと、そんなふうに思いたくないもん」

ほむら『…貴方は何もわかってないわ。私がいる限り、貴方の身は危険にさらされている。どんなに私が貴方を守っていてもそれは変わらない事実』

ほむら『お願い、聞いて。私は貴方に普通に、笑って、泣いて、でもまた笑えるように生きてほしいの』

まどか「ほむほむ…」



ほむら『…鹿目まどか。貴女は自分の人生が、貴いと思う? 家族や友達を、大切にしてる?』

まどか「…大切だよ。家族も、友達のみんなも。大好きで、とっても大事な人達」

ほむら『ならそう思える自分と、今の生活を大事にして。貴女は、鹿目まどかのままでいればいい。今までどおり、これからも』

まどか「…」

390: 2011/08/20(土) 21:24:46.33 ID:+32FbJjI0
まどか「…じゃあね? 二つ約束して」


ほむら『…なに?』

まどか「もし、いなくなっちゃうなら。必ず、何か言って。何も言わずに、いなくならないで」

ほむら『わかった。何も言わないで、消えるようなことはしないわ』

まどか「…もう一つはね。『またね』っていってお別れしてほしいの」

ほむら『…それは』

まどか「また必ず、どこかで会えるって約束してほしいの。それなら、お別れにも耐えられると思うから」

ほむら『…善処するわ』

まどか「ダメ。約束」

ほむら『…わかった、約束する』



まどか「じゃあ、指出して!」

ほむら『指?』

まどか「ゆーびきーりげーんまーん、うーそついーたらはーりせんぼんのーます!」

ほむら『…』

まどか「…破っちゃいやだよ?」

ほむら『…ええ』

まどか「うん、ありがとう」

391: 2011/08/20(土) 21:27:53.92 ID:+32FbJjI0
まどか「そういえば、わたしたち明日からお休みなんだよね?」

ほむら『そうね。いい機会だから、やりたいことをしてリフレッシュするといいわ』

まどか「せっかくだから、二人でどこかに行こうか?」

ほむら『…いいわよ。私といると休みにならないでしょう? そのくらいなら、許してあげるから』

まどか「えー、でもわたし一人にすると、また魔女探し始めちゃうかもよ?」

ほむら『ま、まどか?!』

まどか「じゃあ、明日はほむほむも一緒に来ることにけってーい! わたし、いろんなお店知ってるんだ。
    あ、そうだ。さやかちゃんやマミさんに、おやつとかの差し入れもしたいなぁ。じゃあね――」



ほむら(…もしも一緒にいていいのなら。わたしだって一緒にいたい)

    (一緒に笑って、どこかに行って、勉強して…)

    (…)

    (でも、そんなことはどうでもいい。私の幸せなんて、些細なこと)

    (まどかが生きて笑っていてくれてさえいれば、それでいい)

    (それで、いい)



まどか「明日は一緒にいこうね! ほむほむ!」

ほむら『ええ。まどか』

401: 2011/08/23(火) 23:00:00.07 ID:mnQW/Jr00
>>398
まぁ、守護霊みたいなものですんで。

続きを投下します。

402: 2011/08/23(火) 23:01:10.40 ID:mnQW/Jr00
――某所

さやか「てりゃあ!」ザシュ

使い魔「…」シュゥ



マミ「美樹さん、お疲れ様。上手だったわよ」ヘンシンカイジョ

さやか「いやいや、マミさんの援護のおかげですよ。あ、これ食べます?」ヘンシンカイジョ

マミ「あら、何かしら?」

さやか「差し入れだって、まどかから。駅前のお店のシュークリームだそうですよ」

マミ「本当! あそこのお店、評判がよくて、私もよく買っているの。それじゃあ一つ…」

さやか「他に、飲み物とかもありますよ。あ、あたしお茶もらいます」

マミ「それじゃあ、私はこっちをもらおうかしら。あとで鹿目さんにお礼を言わないとね」

さやか「最近のまどかって、妙に気が利いてますよねー。今日だって、差し入れとか」

マミ「そうなのかしら? 私は鹿目さんとは、まだ付き合いが浅いから、よくわからないのだけれど」

さやか「うーん、気が利いてるっていうか、心配されてるのかな? 
    毎日、調子はどうだとか、魔女退治はどうだったとか聞かれますね。なんか母親みたいですよ」

マミ「美樹さんは魔法少女に成りたてだから、鹿目さんも気になってしょうがないんでしょう。
   危ないことだってことは、彼女もよくわかっているでしょうから」

さやか「うーん、まどかに心配かけてしまうとは…。わたしも、早く強くならないといけませんね」

マミ「そうね。それじゃあ、食べながら、今日の反省をしましょう、美樹さん」

さやか「はい! マミさん!」

403: 2011/08/23(火) 23:02:33.58 ID:mnQW/Jr00
マミ「美樹さん。魔力の消費はもっと抑えなきゃダメよ?
   魔女ならともかく、使い魔ならもっと節約しながら戦わないと」

さやか「うーん、もっとマミさんみたいにかっこよく戦いたいんですけどねー。
     ほらほら、銃をたくさん召喚して。舞うように! 踊るように!」

マミ「私のは、銃に弾丸を込めるだけでいいけれど、美樹さんの場合剣を一つずつ作らないといけないでしょう?」
   それじゃあ、あまりにも効率が悪いわ。一本一本使い捨てだし
   カッコイイって言ってくれるのは嬉しいけれど、もっと自分に合った戦い方を考えないと」

さやか「うーん、アタシに合った戦い方かー」



QB「僕もそうすることを、お勧めするよ」

さやか「あ、キュウベェ」

QB「魔法少女の能力は個々で大きく違うからね。誰かの真似をするのは利口とは言えないな」

さやか「はいはい。どうせあたしはバカですよーだ」

マミ「美樹さん、あせらずじっくり行きましょう。時間はまだあるんだもの」

さやか「でも、早く強くならないといけないし。それならお手本を真似たほうが良いと思ったんですけど…」

マミ「それでおかしな戦い方を身に着けて、ピンチになってしまっては元も子もないわ。
   美樹さん。戦いはずっと続いていくのよ? だからこそ、上手なやり方を考えないといけないの」

QB「そうだね。まどかのような特異な例はともかく、魔法少女に成りたての頃はやられてしまうこと例も多い。
  こうやって、誰かから守ってもらえる機会がある以上、その機会を大切にするべきだ」

マミ「そうね、鹿目さんは一人でも大丈夫だったけど、あなたは違うわ。
   私がしっかりフォローするから、その間に上手な戦い方を身に着けていかないと」

404: 2011/08/23(火) 23:05:01.69 ID:mnQW/Jr00
さやか「ねえ、マミさん」

マミ「なに、美樹さん?」

さやか「まどかって、そんなに凄いんですか?」

マミ「私は鹿目さんの戦っているところは一度しか見たことがないけど、あれはもう本当に特殊な例。
   鹿目さんだけでなく、ほむほむの経験のおかげという面もあるけれど」

QB「確かに、まどか達の戦い方は実に効率がいいね。
  膨大な魔力を持っているにもかかわらず、攻撃にほとんど使わないから、その分を他に回すことができるし、温存することも出来る」

マミ「加えて時間停止の魔法。あまり長くは止められないみたいだけれど、それでも強力なことに変わりはないわ。
   切り札もあって、魔力の使い方も上手。ちょっと攻め手にかけるけれど、総合的に見ればかなりのものよ」

QB「時間停止? それが彼女の魔法なのかい?」

マミ「ええ、一度見せてもらったわ。あんなに強力な魔法もなかなかないわね」

QB(時間に干渉する魔法…か)



さやか「…なんだか自信なくしちゃいますね。同じ新人魔法少女なのに、こうも実力が違うなんて」

マミ「さっきも言ったけれど、鹿目さんの例は本当に特殊な例よ」

マミ「それに彼女だって、一人で強いわけじゃない。
   ほむほむっていう先輩のサポートがあって、あそこまでの力を発揮できているの」

さやか「サポートかー。あたしにもそんなのがいてくれたらな」

マミ「美樹さんには、私がサポートに着くわ。私達もあの二人に負けないように頑張りましょう?」

さやか「マミさん…。はい! 頑張ります。よーし見てろよ! まどか、ほむほむ!
    あたしとマミさんの師弟タッグの力であんたらを越えてやるー!」

マミ「ふふっ、その意気よ」

405: 2011/08/23(火) 23:06:02.92 ID:mnQW/Jr00
マミ「でも、本当に鹿目さんは強くなったわよね。魔法少女してじゃなく、精神的にも。
   端から見ても、なんというか自信がついているのがわかるもの」

QB「そうだね。彼女の変化は僕の目から見ても明らかだ。
  方向性ができたというべきなのかな。以前は目標が定まっていなかったけれど、現在はそれが出来ている」

マミ「そうね。何かやりたいことを見つけたという感じだわ。それがおそらく、魔法少女としての強さにも繋がっているのでしょうね。
   そして魔女が退治できて、自信もつく。いい流れだと思うわ」

さやか「…」

406: 2011/08/23(火) 23:07:12.55 ID:mnQW/Jr00



さやか「…本当にいいことなんでしょうか?」



マミ「え?」

さやか「マミさん。私の知っているまどかって、あんな風に戦えるような子じゃないんです。
誰にでも優しくて、でも今一つ自分に価値が見つけられなくて、守ってあげなくちゃいけないような子で」

    「まだ信じられないんです。あのまどかが、魔法少女になって魔女と戦っているなんて」

    「ねぇ、マミさん。これって本当にいいことなんでしょうか。
     まどかは危ないことしているんですよ? あたし、どうしてもいいことのようには思えなくて…」

マミ「美樹さん…」

407: 2011/08/23(火) 23:08:46.19 ID:mnQW/Jr00
さやか「って、すみません! 変なこと言っちゃって」

マミ「いいのよ。誰だって急な変化には戸惑うものだわ」

さやか「…急、ですか。やっぱりそう思います?」

マミ「…そうね。でも魔法少女になってそれまでとは違った生活をしているのだから、そう不自然なことではないと思うけれど」

QB「僕もその点は少し気になるかな」

さやか「キュウベェ…」

QB「僕としては、あの小さいのと関わったことがまどかの変化の始まりだと考えている」

  「そもそも、まどかの変身できるようになったプロセス自体がイレギュラーだ。何が起きても不思議じゃない。
   もしかしたら、性格の変化にも何かが関係しているのかもね」

  「まあ、魔法少女になって性格が変わること自体はそう珍しいことじゃないんだけれど。
   それまでとは違う存在になるんだからね」



さやか(ほむほむ…か)

さやか(まどかが変わったのは、ほむほむのせい? 
     うーん、そういえば変身するたびに行動が大胆になっていったような…)


409: 2011/08/23(火) 23:10:21.28 ID:mnQW/Jr00
QB「マミだって、昔はあんまり戦うような子じゃなかったし。性格の変化そのものは魔法少女にはよくあることだよ」

マミ「ちょ、ちょっとキュウベェ?! 勝手に人の話をしないでちょうだい!」

さやか「え、そうなの? マミさんの昔の頃って?!」

マミ「美樹さんも食いつかないで! 恥ずかしいじゃない…」

QB「マミが嫌ならこの話はしないよ。本人の許可なくすることじゃないしね」

さやか「えー、キュウベエ教えてよ~」

マミ「…み・き・さ・ん?」ゴゴゴ

さやか「すみませんでした」ブルブル



マミ「…とにかく鹿目さんの変化については、私はいいことだと考えるわ」

  「少なくとも以前の彼女と比べて成長しているのは確かだと思うし、何より彼女自身が目標を持って行動しているんですもの。
   やりたいことが見つからなくておどおどしていた頃より、前に向かっていると思うわ」

  「危ないことをしているのは、そのとおりだけど…。でも、私達だっているもの」

さやか「…あ」

マミ「彼女は一人じゃないわ。もし危険が迫ったら、私たちで守ってあげればいいんじゃなくて? 美樹さん」

さやか「そっか…。うん、そうですよね」



さやか(そうだ…私がまどかを守れるような魔法少女になれればいいんだ)

さやか(うし、そうと決まれば頑張るぞ! まどか、あんたはあたしが守る!)グッ


マミ「…」

410: 2011/08/23(火) 23:11:33.47 ID:mnQW/Jr00
マミ「…ねぇ、美樹さん」

さやか「何ですか! マミさん!」

マミ「一つ、聞きたいことがあるのだけれど」

さやか「? はい」

マミ「あなたが願いで腕を直した…、その、幼馴染の子とはどうなったのかしら?」

さやか「え、恭介ですか?」

マミ「ええ。その後どうなったのか、少し気になってて」

マミ「それに、ちょっと確認もしたかったから」


411: 2011/08/23(火) 23:12:30.53 ID:mnQW/Jr00


  「あなたは彼に夢を叶えてほしいの? それとも彼の夢を叶えた恩人になりたいの?」 


マミ(結局、あの言葉は美樹さんには届いていたのかしら…)
  
  (美樹さんはヒーローに成りたがっている。それこそテレビに出てくるような)
  
  (ヒーローは見返りを求めない。あるのはひたすら自己犠牲によって平和を守ること)
  
  (もし、美樹さんの願いに見返りを求める気持ちがあったのなら、ヒーローとしての彼女は自分を否定してしまう)
  
  (それに気づかないで、ヒーローを続けたらいつか彼女は自分自身を壊してしまうわ。きっと)
  
  (自分の気持ちに気づいているのか、それでもまだヒーローを続けるのか。ここでそれをはっきりさせないと)

412: 2011/08/23(火) 23:14:08.24 ID:mnQW/Jr00
さやか「恭介なら退院しましたよ、無事に。ちゃんとバイオリンも弾けるようにもなりました!」

マミ「それは、よかったわ。でも、長い間入院していたのに、そんなにすぐ退院して大丈夫かしら?」

さやか「腕と並行して、他のリハビリも続けてましたから。腕さえなんとかできれば、あとは自宅からの通院でも大丈夫だったんです。
    ああ、マミさんにも聞かせてあげたいなぁ、恭介のバイオリン」

マミ「ふふ、そのうち紹介してね。私も楽しみにしているわ」

さやか「学校にも、もう通ってますから。会おうと思えば、いつでも会えますよ!」

マミ「あら、そうなの?」

さやか「はい。まだ松葉杖をついていてえOちらおっちらって感じですけど」



マミ「…それで、美樹さん。あなたはその、それで良かったのかしら?」

さやか「え?」

マミ「あなたは彼の為に願いを使った。そこにはあなた自身の意思や目的ががあるはずよ」

マミ「それは、ちゃんと達することができたのかしら?」


413: 2011/08/23(火) 23:14:49.45 ID:mnQW/Jr00
さやか「あ、あー。実は…ちょっと恥ずかしいんですけど」

マミ「…?」

さやか「マミさんに言われたじゃないですか。『恩人になりたいのか』って、それともちょっと関係するんですけど」



さやか「実は、その…告白しまして…」

マミ「!」

414: 2011/08/23(火) 23:15:43.25 ID:mnQW/Jr00
さやか「その、まどかに言われたんです。
    魔法少女は氏と隣り合わせだから、出来るだけやりたいことや言いたいことは言っておいたほうが良いって」

マミ「鹿目さんが?」

さやか「それであたし、色々考えたんですけど…。やっぱり恭介のことが好きだって気づいたんです」

さやか「それで…後悔しないように言おうって」

マミ「そう…。でも、それは本当に大事なこと。魔法少女って、本当にいつ終わりが来るかわからないもの」

さやか「…はい。あたしもマミさんがやられそうになったとこ、見てますから。
    それで、告白しました。…恭介に」

マミ「そ、それで、どうだったの? 返事は」






さやか「あ、あははー。こっぴどく振られちゃいました」

マミ「え?!」


415: 2011/08/23(火) 23:17:18.70 ID:mnQW/Jr00
マミ「ご、ごめんなさい。美樹さん。デリカシーのないこと聞いて!」

さやか「わ、あ、謝らないで下さいよマミさん! あたしが勝手に話し始めたことなんですから」

マミ「でも…」

さやか「そ、それにですね。あんまりショックじゃなかったんです。実は!
    接していても、そういうふうには見てくれていないなーって。何となくわかってましたから」

さやか「案の定、『さやかのことは好きだけど、その、そういう感じじゃない』って言われちゃいました」

マミ「美樹さん…」

さやか「でも、あたし後悔してませんよ! 魔法少女になったことも、気持ちを打ち明けたことも!」
     言って、フラれて。自分でも不思議だったんですけど、後悔なんて気持ちは湧いてきませんでした」

さやか「そこで気が付いたんです。あたしは、恭介のバイオリンがもう一度聞きたかっただって気持ちに」

マミ「…」

さやか「思いが伝わらなかったのは、やっぱり悔しいけど…。でも、言ったらすっきりしちゃいました」

さやか「自分の本当の気持ちに気付けましたしね! 言ってよかったです!」

416: 2011/08/23(火) 23:18:01.34 ID:mnQW/Jr00
マミ「…美樹さん、本当に大丈夫? 泣きたいのなら、泣いたほうが良いわよ? 抑えるのは良くないわ」

さやか「平気ですよ、マミさん! 実はもうそのうちにベットでわんわん泣きましたし!」

さやか「だからもう大丈夫です! 恭介とも、まだ仲の良い幼馴染でいられていますしね! 
     バイオリンが聞きたくなったら、いつでも言ってくださいよ! 紹介しますから!」

マミ「…」



マミ(大丈夫…、なのかしら?)

マミ(少し無理をしているようにも見えるけど…、でも先ほどの言葉に嘘は感じなかったわ)

マミ(純粋に上条君のことを心配していた、ということでいいのかしら)

417: 2011/08/23(火) 23:18:37.15 ID:mnQW/Jr00
さやか「さ、マミさん。残りの個所もパトロールしちゃいましょう!」

マミ「あ、そ、そうね」

さやか「…マミさん?」

マミ「ごめんさい、少し考え事をしていたの」

さやか「んじゃ、こっちから行きましょう! 遠回りにしなくて済みますよ!」

マミ「ええ、そうしましょう」




マミ(自分の為ではなく、純粋に彼のため)

マミ(本当にそうなら良いのだけれど…)

418: 2011/08/23(火) 23:19:18.53 ID:mnQW/Jr00
―放課後―

まどか『ほむほむ、次はこっち見てみようよ!』

ほむら『…ええ』


ほむら(最近のまどかは、巴マミの言うことを聞いておとなしく魔女退治をしないでくれている。
     今日は、久しぶりに学校帰りによく訪れていた雑貨屋を覗いて嬉しそうね…)


まどか『あ、これかわいい。ほむほむはどう思う?』

ほむら『私もいいと思うわ。ちょっと、色がきついような気もするけど』

まどか『ほむほむは、あんまり派手な色は好きそうじゃないしねー。魔法少女の衣装も、落ち着いた感じだし』

ほむら『…別に私の趣味で、あの服になっているわけではないのだけれど』

まどか『でもかわいいよね、あの服も。わたしは好きだなぁ』

ほむら『あの姿、良く似合っているわよまどか。かっこいいわ』

まどか『本当? やったぁ!』

419: 2011/08/23(火) 23:22:11.11 ID:mnQW/Jr00
ほむら(まどか…)

    (やはり、まどかには魔法少女のような荒んだ生活は似合わない。早くこんな日々に戻してあげないと)

    (…あなたを運命から解放できなくてごめんなさい)

    (…私、もっと頑張るから)

    (今は少しの平穏しかあげられないけれど、この時間をあなたには楽しんでほしい)

    (…)





ほむら『…ねえ、まどか』

まどか『なあに?』

ほむら『…この格好は、その』

まどか『うん』

ほむら『…やっぱり恥ずかしいのだけれど』


ほむら(あの恰好で外に出るのは嫌だといったのに!)

ほむら(しかも、猫耳付きってどういうこと!)


420: 2011/08/23(火) 23:23:30.79 ID:mnQW/Jr00
まどか『うんうん、かわいいよ。思っていた通り、猫耳が似合うなぁ』ニヤニヤ

ほむら『あの、その、このフリフリの服も…』

まどか『それも昔持っていた人形の服だよ! 長い黒髪で、真っ黒けっけだからこっちも似合うね!』

ほむら『や、やっぱり、鞄に戻るわ!』

まどか『えー、だめだよ。そうしたらほむほむがお店の中見れないよ?』

ほむら『どうして、私がこんな恰好を…』

まどか『だって、ほむほむ。ここ数日色んなところに行ったのに、「こんな姿じゃ出られない」って言って鞄から出てこなかったでしょ?』

ほむら『…当り前じゃない。人前で私と一緒にいるなんて、普通騒ぎになるわ』

まどか『だったら、いっそのことお人形さんみたいに着飾れば、生き物に見えなくなって外に出ても平気だと思って!』

ほむら『…うう』

まどか『大丈夫だよ。動かなければ人形にしか見えないし、それにバレてるならもう騒ぎになっているよきっと』

ほむら(そうじゃなくて! 恥ずかしいの、まどか!)

まどか『本当にお人形さんみたいでかわいいなぁ、うりうり』スリスリ

ほむら『ほ、頬を触るのは止めて…』

421: 2011/08/23(火) 23:24:07.42 ID:mnQW/Jr00
ほむら『貴方一人で楽しむべきよ。せっかくの休日なのだし…』

まどか『わたしは、ほむほむと一緒がいいなぁ。魔法少女のことばっかりで、こうやって二人で買い物することなんてなかったし』

ほむら『それは…』

ほむら(その気持ちは嬉しいけれど…)

ほむら『でも、代わりにあなたがおかしな子のように見られているわ』


 ヒソヒソ、クスクス


まどか『わたしはそんなの気にしないよ』

ほむら『貴方が気にしなくても、周囲は気にするの。人形を抱えて買い物する中学生なんて、変だもの』

まどか『会話は念話でしているし、そこまでおかしくはないとおもうんだけどなぁ』

ほむら『…ねぇまどか。やはり私は鞄の中にいるべきよ。貴方に迷惑はかけられないわ』

422: 2011/08/23(火) 23:25:06.11 ID:mnQW/Jr00
まどか『ほむほむは、わたしと一緒は嫌?』

ほむら『…嫌よ』

まどか『うそ』

ほむら『…っ』

まどか『あはは。意外とわかりやすいよね、ほむほむ。結構、顔に出るし♪』

ほむら『そ、そんなこと…』

まどか『わたしね、こんなふうにお休みを過ごしたいな。それができるなら、周囲のことなんて気にしないよ?』

ほむら『でも、私がこんなふうに外にいたら休まらないんじゃ…』

まどか『ううん。一緒にこうやってお話しながらいろんな場所を回る方が、楽しいしお休みになるの』

まどか『休むことが今のわたしの仕事なんでしょ? だったら相棒としてほむほむにも協力してもらわないと♪』


ほむら『…最近、まどかは意地悪だわ』

まどか『でも、本当のことだもん』

423: 2011/08/23(火) 23:25:54.25 ID:mnQW/Jr00


ほむら(…私の負けね)


ほむら『…わかったわ。今日一日は外にいるわよ』

まどか『本当?!』

ほむら『ええ、まどかの好きにして頂戴。私も協力するから』

まどか『じゃ、じゃあ、念話じゃないおしゃべりを…』

ほむら『それはダメ。これ以上、まどかを残念な子にはできないわ』

まどか『えー。協力するって言ったのに…』

ほむら『限度があるわよ』

まどか『うーん。じゃあ、これからもっと色んなところまわろうね! えーと、商店街に喫茶店にアイス屋に…』

ほむら『そ、そんなに? 家に帰るのが遅くならないかしら…』

まどか『大丈夫だよ。今日は友達の家に行くから遅くなるって、お父さんに言ってあるから。じゃあ行こう!』

ほむら『…こうなったら、とことん付き合うわ』

まどか『えへへ、そうこないと!』



まどか(こうやって、帰りの時間も過ごすのも、すごく久しぶり)

まどか(…楽しんでもらえるかな?)

440: 2011/08/27(土) 21:07:55.11 ID:mBW079Fl0

―夜

ほむら『すっかり暗くなってしまったわね』

まどか『うん。アイスおいしかったね! でもわたしの少し食べるだけで、本当に良かったの?』

ほむら『…体、小さいから。あんまり入らないの』

まどか(…あれ? なんか顔真っ赤)

ほむら『そ、それより。そろそろ帰りましょう。言ってあるとはいえ、あまり遅くなりすぎるのもよくないわ』

まどか『そうだね』



まどか『ねぇ、ほむほむは今日は楽しかった?』

ほむら『何故、私に聞くの? 貴方の休日でしょう。貴方がリフレッシュできなければ意味がないわ』

まどか『いいから!』

ほむら『…楽しかったわ』

まどか『本当?!』

ほむら『え、ええ…』

まどか『よかった!』

ほむら(まどかが楽しめれば、嘘でも「楽しかった」というつもりだったけど)

ほむら(でも、楽しかったのは本当よ。まどか)

441: 2011/08/27(土) 21:09:31.34 ID:mBW079Fl0
まどか『ねぇ、ほむほむ。この街っていい所だよね』

ほむら『そうね。公共機関は充実しているし、商店街やショッピングモールもあって娯楽も充実していると思うわ』

まどか『他にも色々あるんだよ。緑の多い神社とか、魚がたくさんいる沼とか。猫ちゃんがよくいる空地とかもね』

ほむら『そうなの? 知らなかったわ』

まどか『地元の人じゃないと、行かない場所だからね。よそから来た人をわざわざ連れて行くような場所でもないし。
    小さいころは、さやかちゃんとよく遊んだなぁ。色んなところに連れて行かれちゃった』

ほむら『容易に想像できるわね。その場面』



まどか『だからね。思い出たくさん詰まってるんだこの街には』

ほむら『…』

まどか『…わたし達、守れるかな?』

ほむら『守るわ。絶対に』

まどか『うん、そうだよね』

ほむら『ええ。何があってもね』

442: 2011/08/27(土) 21:10:32.82 ID:mBW079Fl0
まどか『あ、そうだ』

ほむら『どうしたの?』

まどか『最後に、寄りたい場所があるんだけど…』




―ィーン ジャラジャラ ヴァキューン オンオン

ほむら『…ゲームセンター?』

まどか『うん』

ほむら『意外ね。まどかがこんなところに入るなんて』

まどか『ううん。わたしも入るのは初めて』

ほむら『え?』

まどか『なんだかね、たまの休日っていういい機会だから、初めてなことやってみたくなっちゃって』

ほむら『そう。まどかがしたいのなら、別にいいと思うけど』

まどか『うん。でも、色んなゲームがあるんだね。目が回りそう』

ほむら『そうね。私もあまり経験がないから、よくわからないのだけれど』

443: 2011/08/27(土) 21:11:37.26 ID:mBW079Fl0
まどか『あ、でもあの太鼓のは知ってる!』

ほむら『まどかは、ああいうのをやってみたいのかしら?』

まどか『うーん。ちょっと違うかな。
    なんか、こう、踊るみたいな感じのがあったと思うんだけど…』

ほむら『ああ、それなら私も知っているわ。足で踏む奴でしょう? この表示を見ると、あっちのほうにあるみたいだけど』

まどか『じゃあ行ってみようよ!』

ほむら『そうね。行ってみましょう…』


ほむら(あれ…? そういえばこのゲームは確か…)




杏子「よっ はっ ほっ」タッタタタ

まどか「あ、杏子ちゃん」

ほむら『…!』

444: 2011/08/27(土) 21:13:49.02 ID:mBW079Fl0
ほむら『まどか、気付かれないうちにここから離れましょう。早く…』

まどか「杏子ちゃん!」

ほむら『ちょっと、まどか?!』

杏子「ん? なんだ『しかめまどか』か。ちょっと待ってくれ。よっ、と」タットッ

まどか「…鹿目まどかだよ、杏子ちゃん」

杏子「読めねーっつうの。『鹿目』で『かなめ』なんて。あ、アタシはバカじゃないぞ。知識がないだけだ」トットットッ

まどか「確かに、初対面で間違えないで呼ばれたことは少ないけど…」

杏子「ほれ、アタシじゃなくてアンタの名字が悪いんだ。ほいほいほいっと」タンタンタン



ほむら『…まどか。どういうつもり?』

まどか『だって杏子ちゃんに会えたんだよ? だったら一緒に戦ってくれるように頼んでみないと!』

ほむら『そう簡単に話を聞いてくれるとは思えないわ。加えて、こちらには交渉するための手札がない。協力を取り付けるのは難しいわよ』

まどか『でも、見かけたのなら話しかけないと。何事も自分から始めないと前に進めないよ?』

ほむら『準備というものがあるでしょう! あなたはどこまで愚かなの!』

まどか『大丈夫大丈夫、ちゃんと考えてあるから! ね?』

ほむら『…最近のまどかは、少し強引な気がするわ』

445: 2011/08/27(土) 21:16:31.14 ID:mBW079Fl0
杏子「ガッ、と。おおー、自己ベスト更新! で、何の用だい?」

まどか「あ、その前に自己紹介するね! わたしは鹿目まどか。こっちはほむほむ」

ほむら「ほむ」

杏子「…ほむほむ、ねぇ? で、何なんだこいつは?」

まどか「ほむほむは、ほむほむだよ」

ほむら「ほむむ」

杏子「まあいいか。で、今日は何しに来たんだ? 
   この前の続きをやろうっていうんなら、相手になるぜ?」ギロリ

ほむら『やはり、佐倉杏子は私たちに対して敵意を抱いているわね。
    まどか、ここは先手を打ってこちらから見返りを提示しましょう。
    勝手な話になるけれど、この街の一部のエリアを杏子の縄張りに…』

まどか「わたし達と一緒にワルプルギスの夜と戦ってください!」

ほむら『マドカァー?!』



杏子「あん?何だって?」

ほむら『ちょっと、まどか!直球過ぎるわ!』

まどか『えー、でも最初に用件を伝えれば話が分かりやすくなるよ。
    それに、マミさんたちに内緒で勝手に街を預けたりなんてできないし』

ほむら『そ、それはそうだけど…』

446: 2011/08/27(土) 21:18:26.49 ID:mBW079Fl0
杏子「ワルプルギスの夜だぁ? そんなもんがこの街に来るのか?」

まどか「うん。それでわたし達、街を守るために特訓したり、仲間を集めたりしててね。
    それで杏子ちゃんも仲間になってもらって、一緒に戦ってほしいの」

杏子「ふーん。一つ聞くけど、何でアタシなんか誘うんだ?
   アンタにはあのアマちゃんだっているし、ベテランのマミもついているんだろ?」

まどか「さやかちゃんもマミさんもいるけど、それでも必ず勝てるとは限らないから。
    相手は最強の魔女だし。少しでも油断していたら、たぶん勝てない。
    でも、わたし達は絶対に負けられない。だから、やれることはやっておきたい」

まどか「それでね? 杏子ちゃんがいればワルプルギスの夜との戦いも、ぐっと勝てるようになると思うの。
    強いし、ベテランだし、頼りになるし」

杏子「褒めても何もでねーぞ?」

まどか「ううん。本心だよ? 杏子ちゃんがいれば、ワルプルギスに勝てると思う。
    だから、一緒に戦ってくれれば嬉しいなって」

杏子「…」

447: 2011/08/27(土) 21:20:21.51 ID:mBW079Fl0
杏子「なるほど、ここに来た用件はよくわかった」

ほむら(会ったのは偶然なんだけど、ね)

杏子「あんたが、マジでワルプルギスの夜を倒そうとしているのも理解したよ」

まどか「うん」

杏子「アタシの力が必要だっていうのも、まあわかった」

まどか「…じゃあ!」




杏子「…で、なんでアタシがそんなことに協力しなきゃならないのかね?」

ほむら(…!)

448: 2011/08/27(土) 21:21:41.61 ID:mBW079Fl0
杏子「こんな街守ったって、アタシには一文の得もないじゃないか。アタシは正義の味方じゃねぇ。ふざけんのも大概にしろ。
   アタシはこれまで一人でずっとやってきたんだ。誰かとつるむなんてことはお断りだね」

  「それに仲間があの甘ちゃんと、正義の味方気取りのマミだって?
   なんでアタシがわざわざそんな奴らと組まなきゃいけないっつーの。そんなの氏んでもやらねぇよ」

  「ワルプルギスはアンタらで勝手にやってくれ。別に邪魔は氏ねぇし、そんなのが来ているならアタシはとっとと自分の巣に戻るよ。
   わかったら、とっとと帰れ。仲間探しは、他を当たりな」



ほむら(くっ…やはりこうなってしまうのね)

    (こうなると、彼女は梃子でも動かない。協力を仰ぐのはもう無理…)

    (まどかと巴マミ、それに魔女化を阻止できれば美樹さやか。現在一番最善なのは、三人でワルプルギスに挑むことね)

まどか「…」

449: 2011/08/27(土) 21:22:15.51 ID:mBW079Fl0
まどか「…悪いけど、杏子ちゃん。そういうわけにはいかないの」

ほむら「ほむ?」

杏子「…あん?なんだって」

まどか「さっきも言ったけど、わたし達は負けられないの。だから杏子ちゃんには仲間になってもらうよ」

杏子「だから嫌だって言ってんだろ。あんまりふざけた事抜かすとぶっ頃すぞ」

ほむら「…!」サッ

まどか「ふざけてないよ。ワルプルギスの夜と戦うには杏子ちゃんの力が必要。だからね」



まど「無理矢理にでも、来てもらうからね?」


450: 2011/08/27(土) 21:23:33.23 ID:mBW079Fl0
ほむら『まどか?!』

杏子「…面白れぇ。アタシとやろうってか」

まどか「こっちも本気だからね。しかたないよ」

杏子「言っておくが、この前みたいに簡単に行くと思うんじゃねぇぞ? あん時とは違って、こっちの体調は万全なんだ」

まどか「わたしもしばらく休ませてもらったから、元気いっぱいだよ?」

杏子「手加減は無用ってか。アンタ、意外と武闘派だったんだな」


ほむら『まどかダメよ! こんなやり方は…』

まどか『でも、杏子ちゃんを仲間にいれるにはこれしかないみたいだし。大丈夫、ほむほむには迷惑かけないよ』

ほむら『でも…!』

451: 2011/08/27(土) 21:24:23.20 ID:mBW079Fl0
杏子「さてと、じゃあどこでやるか。あんまり人目につかない場所、知ってっか?」

まどか「ううん、ここでいいよ」

杏子「! おいおい冗談だろ? みんないるんだぞ?」

まどか「わたしは、ここがいい」

杏子「ますます面白れぇな。他人なんかどうでもいいってか。魔法少女ってのはそうでなくちゃな」

まどか「うん。そんなこと、気にしてられないからね」

ほむら『まどか?!』

杏子「じゃあ、やるか」ジェムショウカン!

まどか「…うん」







まどか「わたしが、このゲームで杏子ちゃんに勝ったら仲間になってもらうからね!」

ほむ杏「は?(ほむ?)」


452: 2011/08/27(土) 21:25:19.99 ID:mBW079Fl0
杏子「…お前何言っていんだ?」

まどか「わたしがこのゲームの杏子ちゃんのスコア塗り替えたら、仲間になってね」

杏子「何でそうなるんだよ?! つーか、戦う流れだろ! 今のは!」

まどか「わたし今、休暇中なの。だからほむほむに止められてて変身できないんだ」

杏子「ふざけんな! だからってゲームはねーだろゲームは。じゃあ後日戦うとか他にあるだろ!」

まどか「時間もないしゲームでいいよ。それに、こんなことで魔力使うの勿体ないし」

杏子「そりゃあ…、まぁ同意するけどよ」

まどか「あれ? お金ってどこに入れるんだろ。杏子ちゃん教えて?」

杏子「あ、ああ。それはそこだよ。ほら、その右手のあたり…」

まどか「あ、ここだね。ありがとう!」


ほむら『…まどか』

まどか「大丈夫。頑張ってみるよ! 見てたら簡単そうだったし」

ほむら『そうじゃなくて、佐倉杏子が本当にこんなことで仲間になるとでも?』

まどか『杏子ちゃん、負けず嫌いだから上手くいくと思うんだけどなぁ』

ほむら『…私は不安しか感じないわ』

453: 2011/08/27(土) 21:26:15.24 ID:mBW079Fl0
杏子「言っとくけど、アンタがゲームやったって仲間にならねーからな。そこは忘れんなよ」

ほむら『ほら、既に落ち着いてテンション落ちているわよ?』


まどか「もしかして、杏子ちゃん自信ないの?」

杏子「…あんだと?」

まどか「あれだけ頑張って踊ってても、あんまり上手じゃないんだ。ならわたしでも勝てそうだね!」

杏子「おいてめぇふざけんなよ。このゲームはパンピーが簡単に遊べるようなゲームじゃねぇんだ。
   譜面に即時対応しなきゃいけねぇし、運動神経だって必要になる。あんたみたいな鈍くさい奴にはまず無理だね」

まどか「じゃあ、杏子ちゃんは絶対に負けないと思っているんだね」

杏子「当り前さ。100%無理だ。天地がひっくり返ってもあり得ないよ」

まどか「じゃあ、もし杏子ちゃんのスコア越えたら仲間になってね♪」

杏子「それとこれとは話が違う!」

まどか「なーんだ、やっぱり自信が無いんだ」

杏子「おいてめぇ。さっきからふざけた事言ってんんじゃねーぞ」

まどか「だってねぇ。難しいとか言ってるのに、わたしに絶対に負けないって言えないみたいだし」チラッ

ほむら「ほむぅ」チラッ

まどか「もしかして、ただ動いているだけで実は下手なんじゃないかと思ったり…」チラチラ

杏子「…」イライラ

454: 2011/08/27(土) 21:27:19.02 ID:mBW079Fl0
杏子「…いいじゃねェか。この勝負受けてやる。
   アタシが負けるはずねぇんだ! アンタが勝ったら仲間になってやるよ!」

まどか「その言葉、確かに聞いたよ!」

杏子「はん。絶対に無理だね! 譜面に踊らされて、情けない姿をさらしな!」

まどか『やった! 言質を取ったよ、ほむほむ』

ほむら『…最近、あなたのことがわからなくなってきたわ、まどか。
    というか、勝てる見込みあるの? 結構上級者よ、彼女』

ほむら(以前の世界で、杏子と親密になろうとやってみたけど、結局かなわなかったし)

まどか『たぶん、なんとかなるよ。わたし反復横跳び得意だし!』

ほむら『ようするに無計画なのね』



ほむら(まぁ、これで少しは親密になって話も出来るようになるでしょう。
    そうなれば、再度交渉の道も開けるわ)

456: 2011/08/27(土) 21:28:45.74 ID:mBW079Fl0



まどか「勝ったよ!」テロテロレーン

ほむら『嘘?!』




457: 2011/08/27(土) 21:29:25.23 ID:mBW079Fl0
杏子「そ、そんな…アタシのスコアが…」

まどか「わたしの勝ちだよ。杏子ちゃん! 仲間になってね!」

ほむら『…あの、まどか。このゲームやったことあったの?』

まどか『前に少しね。久しぶりだから自信なかったけど、魔力で身体強化してたから何とかなったよ』

ほむら(ますます、まどかが分からなくなってきたわ)

杏子「てめぇ、猫被ってやがったな! どう見ても初心者じゃないじゃねぇか!」

まどか「ささ、杏子ちゃん約束約束」

杏子「こんなの詐欺だー!」

まどか「絶対に負けないっていったのは杏子ちゃんだよ? 言ったことには責任を持ってもらわないと♪」

杏子「ううう…」

まどか「約束、約束♪」

杏子「…」

ほむら(意外と責め立てるわね、まどか)

458: 2011/08/27(土) 21:30:10.53 ID:mBW079Fl0
杏子「…ふふふ」

まどか「? どうしたの、杏子ちゃん」

杏子「アタシは確かに勝負に負けたら仲間になるといった。
   だが、誰も一回勝負とは言ってない! まだ勝負は続いているぞまどかー!」

まどか「! そ、そんな…」

杏子「よって、勝負は二回戦だ! 0-1で勝った気になっているんじゃねーぞ!」

まどか「こんなのってないよ…あんまりだよ…」

杏子「最初に取り決めをしっかりしなかったアンタが悪い。全面的にそっちの要求を呑んできたんだから、こんどはこっちの要求を聞いてもらうぞ!」

まどか「ううう、こうなったらとことんやるよ! 負けないよ、杏子ちゃん!」

杏子「こっちも今ので目が覚めた。手加減はしねぇぜまどか!」

まどか「じゃあ次はUFOキャッチャーね! どっちが早く人形取れるか勝負だよ!」

杏子「おもしれぇじゃねーか。アタシのテクニック見せてやるよ!」


ほむら(すっかりのせられているわね、杏子)

ほむら(それにしても、ゲームセンターではしゃぐまどかも可愛いわ)ホムホム

459: 2011/08/27(土) 21:30:42.37 ID:mBW079Fl0


ほむら(それから、まどかたちはゲームセンターで勝負をし続けた)

ほむら(最初は勝敗を数えていたけど、途中からヒートアップして忘れてしまったらしい)

ほむら(まぁ、まどかは休日を楽しんでいるみたいだし、良しとしましょう)


460: 2011/08/27(土) 21:31:26.63 ID:mBW079Fl0
杏子「…あー、疲れた」

まどか「はい、杏子ちゃんこれ」

杏子「何これ? コーラ?」

まどか「レモネードだよ」

杏子「しらねーなぁ…。あ、うまい」

まどか「わたし達はお茶だね。はい、ほむほむ」

ほむら「ほむほむ」クピクピ

杏子「…なんか今の今までスルーしてたけど、そいつ結局何なんだ?」

まどか「魔法少女だよ。わたし、ほむほむの力借りないと変身できないんだ」

杏子「だからあんとき合体したのか。変なの」

ほむら「ほむっ!」ペシ

杏子「…」ヒョイ

ほむら「むっ!」コロリン

まどか「はいはい。落ち着いてねー、ほむほむ」ヒョイショ

ほむら「むむむ」


杏子「しっかし、契約もしないで魔法少女になるなんてねぇ。何考えているんだか。
   どうせやるなら、キュゥベえに頼んで願いを叶えてもらった方が得じゃねぇの?」

まどか「ふふっ、さやかちゃんと同じこと言うんだね杏子ちゃん」

杏子「んなっ! あんなアマちゃんと同じなんて。畜生、屈辱だ」

まどか「ありがと、杏子ちゃん。でもいいの。わたしは、ほむほむと一緒に戦えればそれでいいから」

ほむら「ほむ…」

杏子「…」

461: 2011/08/27(土) 21:32:19.65 ID:mBW079Fl0
杏子「なぁ、真面目な話。なんでアンタは魔法少女なんかやってるんだ?」

まどか「杏子ちゃん?」

杏子「アンタはどう考えても、こんなことやるような人間じゃない。平和に暮らせている人間さ」
  
  「この仕事はね、誰にだって務まるもんじゃない」
  
  「アンタは幸せに暮らせている人間だよ。毎日美味いもん食って、たぶん幸せ家族に囲まれてる」
  
  「そんな何不自由ない暮らしをしてる奴が、魔法少女なんてやることはねぇんだ」   
  
  「命を危険に晒すってのはな、そうするしか他に仕方ない奴だけがやることさ。そうじゃない奴が首を突っ込むのはただのお遊びだ。おふざけだ」
  
  「もし、ただの気まぐれでやっているんだとしたらそんなのアタシが許さない。いの一番にぶっ潰してやる」
  
  「だから聞かせてくれ、アンタはなんでわざわざこんなことしてるんだ?」


まどか「…」

462: 2011/08/27(土) 21:33:06.10 ID:mBW079Fl0
まどか「わたしね、どうしても守りたいものがあるんだ」

杏子「守りたい? 誰を。それともこの街か?」

まどか「両方だよ。何があっても助けてあげたいし守りたい。
    それがわたしが魔法少女になる理由なんだ」

杏子「つまるところ、他人の為ってか」

杏子(こいつも勘違い野郎か。昔の、アタシみたいな)

杏子「誰かを助けたくて、自分の身を削って、犠牲にして誰かを助けるってか。まるで正義のヒーローだね」



まどか「…どうなんだろ。そんな綺麗なものじゃないと思うよ」

杏子「?」

463: 2011/08/27(土) 21:35:23.17 ID:mBW079Fl0
まどか「わたしね、色んな人に迷惑かけて生きてきたって最近分かったんだ。
    心配させたり、言うこと聞かなかったり、知らないうちに約束破ったり」

    「最初は罪滅ぼしのつもりだったのかな。でも、そんなこと誰も望んでないし、幸せにならないってことも分かったし」

    「だからね、せめて助けたいって思ったんだ」


杏子「…」

まどか「わたしを助けてくれた人たちが、不幸になるのは嫌。そんなの我慢できないし、見たくもない。
     だからこれはきっと自分の為なんだと思う。そんなことになるのがどうしても我慢できないの。
     そうしなきゃ気が済まないし、たぶん一生後悔する。そんなの絶対に嫌」

    「人助けっていっても、結局はそうせずにはいられない自分のため。そうしなきゃ、そのままの現実にわたしは耐えられないんだ。
    だから、全然綺麗でも何でもないよ。助けるっていう自分のやりたいことを、自分勝手にやっているだけだから」

    「でも、それがわたしの願いなの」

464: 2011/08/27(土) 21:35:59.00 ID:mBW079Fl0
杏子「…そうか」

まどか「うん。長くなっちゃったね」

杏子「魔法少女なんてそんなもんだよ。みんな自分の為に戦うんだ。アンタ一人がそんな風に戦っているわけじゃないよ」

まどか「やっぱり、杏子ちゃんは優しいなぁ」

杏子「優しくなんかねぇよ。ホントのこと言ってるだけだ」

まどか「それでも、ありがと」

杏子「…」

465: 2011/08/27(土) 21:37:13.76 ID:mBW079Fl0
杏子「…ワルプルギス」

まどか「え?」

杏子「協力してやってもいいぜ」

まどほむ「!」

まどか「本当?!」

杏子「ああ、気が変わった。ただし見返りはちゃんともらうけどな」

杏子(こいつは自分が何を願って、どういう気持ちから動いているか分かっている)
   その上で他人の為に行動する、か)

  (アタシもそんな風できていればね…)



まどか「やったやった! ありがとう杏子ちゃん!」

杏子「おい、抱きつくな!ていうか人の話聞いていたか? 見返りくれないと動かねーぞ?」

まどか「あ、そ、そうだね。何がいいのかな」

杏子「アタシとしては、この街の管轄を渡してほしいんだけどねぇ…」

まどか「それはダメ。わたし一人じゃ決められないし。グリーフシードは?」

杏子「よっぽど多くないとなら自分で稼げるし、それにたぶんワルプルギスで使っちまうしなぁ…」

まどか「うーん…」

杏子「まぁ、今すぐじゃなくていいよ。こっちもアンタが払えそうなもん考えておくし」

まどか「ごめんね、杏子ちゃん」

杏子「いいっての。ちゃんとくれれば文句は言わねーから」

まどか「ありがと。あ、そうだ!」

杏子「え?」

まどか「杏子ちゃん、こっちに来て! ほむほむも」

杏子「え? ちょっ、おいおい」

ほむら「ほむほむ?」

466: 2011/08/27(土) 21:37:45.04 ID:mBW079Fl0
まどか「じゃあ、3人でプリクラ取ろうよ!」

ほむ杏「…」

杏子「何が『じゃあ』なんだ?」

まどか「せっかく仲良くなったんだから、その記念!」

杏子「…まあ、いいけどよ」

まどか「じゃあ入って入って!」

杏子「アンタは客引きか」

杏子(そういや、アタシ撮ったこと無いな)

ほむら(まどかとプリクラ、まどかとプリクラ…)ホムホム

467: 2011/08/27(土) 21:38:10.95 ID:mBW079Fl0
まどか「周りから見えないから、ほむほむもきちんと表情作ってね!」

ほむら『表情って…ど、どうすれば』

まどか「ニコって笑うの。ほらほら杏子ちゃんも」

杏子「あ、アタシもか?」

ほむら『…』

まどか「ほむほむ、表情が硬いよ!」

杏子「アタシこーいうのはなぁ…」

まどか「二人とも頑張って! ほら写すよ!」

ほむら『努力するわ、まどか』

まどか「その言い方が既に固いよ…」

杏子「もう写すんじゃないのか? ボタンはこれか?」

まどか「え? あ」パシャ

468: 2011/08/27(土) 21:38:59.72 ID:mBW079Fl0
まどか「うん、いいのが撮れたね!」

杏子「三回も撮りなおせばそりゃいいのが撮れるだろ…」

ほむら「ほむぅ…」

杏子「…お前も苦労してそうだな」

まどか「はい。これ杏子ちゃんの分!」

杏子「ありがとよ」

杏子(うわー、なんかこっ恥ずかしいな)

まどか「じゃあこれで、魔法少女同盟結成だね!」

杏子「おー」

ほむら「ほむー」

まどか「…二人ともなんかやる気ないよ」

杏子「いや、どう反応したらいいかわからなくてな」

ほむら「ほむほむ」

まどか「もー、こういうのはとにかく気合を入れるんだよ! 最初の一致団結なんだから」

杏子「あー、そうなのか?」

ほむら「ほむむ」



まどか「じゃあ、もう一回。魔法少女同盟結成!」

杏子「おー!」

ほむら「ほむー!」

まかど「よし!」

杏子(そういえば、誰かと一緒にいるっていつ以来だったかな)

杏子(…まぁ、たまにはこういうのも悪くないか)

469: 2011/08/27(土) 21:39:33.00 ID:mBW079Fl0
まどか「それじゃあ、これからのことなんだけど」

ほむら『待って、まどか。今日はもう遅いわ。
    色々話すには時間がかかるし、詳しいことは明日にしましょう』

まどか「え? わ、もうこんな時間。そうだね。ほむほむ」

杏子「ん? どうした?」

まどか「ごめん杏子ちゃん。話そうと思ったけど、今日はもう時間が無くて」

杏子「ああ、普通なら家にいる時間だもんな。いいよ明日で」

まどか「うん、ありがと。それで杏子ちゃんっていつもどこにいるのかな」

杏子「まぁ基本街をうろうろしているけど。そうだな、夕方はこのゲーセンにいることにするよ。
   そうしたほうが探す手間も省けるだろ」

まどか「うん、そうだね。じゃあ、また明日!」

杏子「おう、じゃーな」

まどか「明日は、マミさん達も連れて来るよ!」

杏子「ちょーっと待った―!」

まどか「え?」

杏子「悪い、ちょっと付いていくわ」

470: 2011/08/27(土) 21:40:08.95 ID:mBW079Fl0
―帰り道―

杏子「とにかく、すぐにはアタシをマミ達に会わせるべきじゃねぇと思う。
   アタシは協力するつもりだが、あっちがそう簡単に信じてくれるわけねぇからな」

まどか「でも、協力してくれるなら早めにみんなで動けるようにしないと」

杏子「それは正論だが、世の中はそんなに上手くねぇよ。
   昨日まで主義が違った連中と一緒に戦えるほど、みんな物分りがいいとは限らないさ」

ほむら『まどか、私も杏子の意見に賛成するわ。
    すぐに直接会わせないで、私達がクッションになって少しずつ関係を良くしていきましょう』

まどか「…そうだね」

杏子「特にあの青いの。あいつはアタシに対して相当な敵意を持ってたからな。
   会っていきなり斬りかかられちゃ、たまんないよ」

ほむら(まぁ、そうなってもおかしくないわね)

471: 2011/08/27(土) 21:40:47.49 ID:mBW079Fl0
まどか「さやかちゃんは正義の味方を目指しているから。きっと、あのときの杏子ちゃんが許せなかったんだと思う。
    でも杏子ちゃんって優しいし、それがわかればきっとさやかちゃんだって誤解を解いてくれると思うんだ」
    さやかちゃんも優しいから。

杏子「正義の味方ねぇ。ほんとバカだなソイツ。そんなの、できるわけねぇのに」

まどか「ううん、それがさやかちゃんの凄いところなんだよ。
    正義の味方を信じて、無理やりにでも自分がそうなれるように努力できる。
    わたしじゃ、たぶんできない。自分がそんな風になれるとは到底思えないから…」

杏子「本気で信じているのかそいつ?」

まどか「うん。だから凄いんだよ。さやかちゃん、頑張ってほしいな。本当に正義の味方がいたら、みんな幸せになれるもん」

杏子(さやか…か)


まどか「あ、杏子ちゃんわたしの家ここなんだ」

杏子「お、そうか。じゃあなんかあったら、アタシはここに来るようにするよ」

まどか「じゃあ、おやすみ。杏子ちゃん!」

ほむら「ほむ!」

杏子「おー。また明日な」

472: 2011/08/27(土) 21:41:20.02 ID:mBW079Fl0
杏子「…」スタスタ

杏子「…キュウベエ、いるか?」

QB「何だい杏子?」

杏子「美樹さやか。知ってるだろ?」

QB「さやかか。最近はマミと一緒に魔女狩りをしているね。使い魔も狩っているみたいだけど、何もしなくていいのかい?」

杏子「そのさやかについて知りたいんだ。どんな奴なんだ?」

QB「さやかに興味があるのかい?」

杏子「ああ、ちょっとね」

QB「まあ、僕の知っている範囲でいいなら答えるよ」



杏子(正義の味方を目指している、魔法少女か…)

杏子(…んなもん無理に決まってるのに)

QB「彼女はね…」

483: 2011/08/30(火) 19:40:44.46 ID:9tg250v00

―朝―

まどか『何とか、杏子ちゃんを誘うことができたね』

ほむら『ええ。正直、ここまで上手く事が運ぶとは思わなかったわ』

まどか『杏子ちゃんだっていい人だもん。そんなに不思議じゃないよ』

ほむら『と、なると後は巴マミと美樹さやかにどうやって話を切り出すかが問題ね』

まどか『正直に話す…はやっぱりだめかなぁ』

ほむら『私達は佐倉杏子のことを知っているけど、マミ達は彼女を知らないわ。
    最悪、私達が騙されていると疑われてさらに関係が悪化するでしょうね』

まどか『なにかいい方法はないかなぁ…』

484: 2011/08/30(火) 19:42:49.21 ID:9tg250v00

まどか「あ、仁美ちゃんさやかちゃん、おはよう!」

仁美「まどかさん、おはようございます」

さやか「おーっす、まどか」

ほむら『とにかく、今はまだ内緒にしましょう。特に美樹さやかには、ね』

まどか『…うん』



さやか「まどか? なんか元気ないなー、もしかしてまた寝冷えでお腹冷やしたのかー?」

仁美「そういえば、以前もそんなことがありましたわね」

まどか「ち、ちがうよさやかちゃん!」

さやか「まどかは子供っぽいもんね」

まどか「だから違うってば!」

485: 2011/08/30(火) 19:45:26.22 ID:9tg250v00
さやか『大丈夫、まどか? ちゃんと休んでる?』

まどか『うん、大丈夫だよ。さやかちゃんこそ魔女のほうは上手くいってる?』

さやか『マミさんがついていてくれてるから、こっちは平気だよ。昨日も一匹倒したし』

まどか『すごいなぁ、二人とも』

さやか『へへ。でも一時期一人で戦ってたアンタほどじゃないって』

さやか『見てなよ!この調子で強くなって、まどかもみんな守れるようになるからね』

さやか『そうすれば、あの赤い奴にだって…』

まどか『さやかちゃん…』

ほむら『…』




486: 2011/08/30(火) 19:46:06.51 ID:9tg250v00

仁美「あら、あれは…上条君?」

さやか「え? あ、恭介だ」



上条「…」ウイセ ホイセ



まどか「松葉杖で歩いているね」

仁美「すごいですわね。退院してまだ日が経ってないのに、一人で登校だなんて」

さやか「リハビリを兼ねてるからね。あんまり楽とかしたくないんだって」

仁美「そうなんですか。でも、大丈夫なんでしょうか…」

さやか「病院でもずっと訓練してたから、いきなりってわけじゃないよ。
    本人も自分のことはわかっているだろうし、無理はしてないと思うな」

まどか「でも、やっぱり大変そうだなぁ」

さやか「…」ウズウズ

まどか「…」









487: 2011/08/30(火) 19:47:08.51 ID:9tg250v00

まどか「さやかちゃん、上条君のとこに行ってあげて」

さやか「え? ど、どうしたのまどか?」

まどか「いくら大丈夫そうに見えても、まだ退院したばっかりなんだから大変なはずだよ。
    少しくらい、手伝ってあげてもいいと思うな」

仁美「そうですわね、わたしもそう思いますわ」

さやか「…いいの?」

まどか「うん。わたし達は先に行ってるよ。行こう仁美ちゃん」

仁美「ええ。上条君のこと、助けてあげてください。さやかさん」

さやか「…ありがと、二人とも。わたしちょっと行ってくるっ!」ダッ








488: 2011/08/30(火) 19:47:48.82 ID:9tg250v00



 オーイ、キョウスケー ア、サヤカ



まどか『…さやかちゃん。告白、上手くなかったんだって』

ほむら『そうらしいわね』

まどか『でも、上条君との関係はそんなに変わってないみたい。
    告白、してよかったんだよね?』

ほむら『そんなことは、本人にしかわからないわ。
    でも、心残りが減ったのは確かでしょう。これで巴マミとの訓練にも集中してくれるといいのだけれど』

まどか『もー、さやかちゃんはいつでも本気だよ』

ほむら『どうかしらね』








489: 2011/08/30(火) 19:48:59.40 ID:9tg250v00

ほむら(…思いは実らなかったけど、美樹さやかの精神はとても安定している)

    (彼女の魔女化は回避できた…?)

    (いえ、油断は禁物ね。もっと様子をみないと何とも言えないわ)

    (でも、このまま上手くいけばワルプルギスの夜に4人で対抗できる)

    (もしかしたら、今回で…)


まどか「あ、さやかちゃん肩貸してる。あれじゃあ男の子同士みたいだなぁ」


ほむら(まどか…)

    (もしかしたら、ようやく私、貴方との約束を守れるかもしれないよ?)

    (だから、ごめん。もう少しだけ、私に力を貸して)

    (…お願い)

490: 2011/08/30(火) 19:50:09.29 ID:9tg250v00

―放課後―

さやか(ふー、今日もマミさんとの特訓は辛かったな)

    (でも、使い魔ならあたし一人でも楽勝になってきたし、魔女にだってそこそこやれるようになってきた)

    (マミさんからは、まだ色々注意されるけれど…)

    (でも、あたしだって強くなっているよね!うん。これなら、ワルプ何とかとかいうやつも何とかなるかも!)

    (あたしとマミさんとまどか。3人もいるんだもん。勝てるに決まってんじゃん!)

    (3人もいれば…)









491: 2011/08/30(火) 19:50:48.70 ID:9tg250v00
さやか(…おいおい。違うってあたし)

    (何でナチュラルにまどかを戦わせようとしてるのよ)

    (まどかは本当はこんなことするような子じゃないんだから、早く解放してあげないと)

    (でも、まだあたしはまどかより強くないし…。それにワルなんとかも二人じゃきついかも…)

    (ううん。だったら、あたしがもっと強くなればいいんだ! それこそワルを一人で倒せるくらい!)

    (よーっし。気合入った! 明日からも頑張るぞー!)








492: 2011/08/30(火) 19:52:09.24 ID:9tg250v00

―上條宅前―

さやか「…」
   
   「…」

   「…」

さやか(恭介…)



さやか(恭介…元気かな)

    (やだな、恭介のことは決着がついたはずなのに…何で)

    (告白もしたし、実らなかったけどそれで関係が悪くなったわけでもない)

    (…じゃあ、なんで?)

    (なんで、あたしは毎日ここに来ているの…?)







493: 2011/08/30(火) 19:53:50.48 ID:9tg250v00


―あなたは彼に夢を叶えてほしいの? それとも彼の夢を叶えた恩人になりたいの?―


さやか(!)

    (違う違う違う違う違う違う違う違う!)

    (あたしは後悔なんかしていない――!)

    (見返りを求めてなんか…絶対に)

    (あたしは正義の味方になるんだ!)

    (恭介やまどかやみんなを守れる存在に――!)

    (褒められたり、尊敬されたいわけじゃない!)

    (ただ、みんなを守れればそれで…)




???「何だ。やっぱりこんな所に居やがったか」

さやか「?! あんた!」

杏子「結局、あきらめずきれずにストーカーかよ。情けない」

さやか「杏子――!」






494: 2011/08/30(火) 19:54:43.03 ID:9tg250v00

さやか「なんでアンタがこんなところにいるのよ?」

杏子「この家の坊やなんだろ? アンタが契約した理由って」

さやか「なんで知ってんのよ」

杏子「キュゥべえから聞いた。聞けば大抵のことは話すからな、アイツ」

さやか(後で一発殴ってやる)



杏子「にしても、まどかの奴が凄いっていうからてっきりアタシの眼鏡違いかと思えば。
   何のことはねェ。ただの勘違い野郎じゃないか」

さやか「――! あんた、まどかに何かしたの?!」

杏子「別になにもしちゃいねぇよ。ただ話す機会があったから、アンタのことを聞いただけだ」

さやか「まどかが…?」

杏子「そ。本気で正義の味方を目指してる凄い奴だ…ってな。
   それが見てみりゃ、自分が何が欲しいかも分からない奴なんて。まどかはあんまり人を見る目がないな」

さやか「…どういうことよ」

さやか(こいつ…気安くまどかまどかって…!)






495: 2011/08/30(火) 19:55:35.34 ID:9tg250v00
杏子「ここの坊やに愛してもらいたんだろ?」

さやか「――!」

杏子「そうしてほしいなら、最初からそうなるように願えばよかったんだ。
   それを回りくどく他人の為に願いなんて使いやがって。勿体ない」

さやか「違う! あたしは恭介にそんなこと望んでない!」

杏子「じゃあ、なんでこんな場所で呆けてるさ? 本当は愛が欲しいんだろ、坊やの」

さやか「違う違う!」

杏子「まったく…。いいか?魔法なんてのは徹頭徹尾自分だけの望みを叶えるためのもんなんだよ。
   他人のために使ったところで、ロクなことにはならないのさ。
   巴マミはそんなことも教えてくれなかったのかい?」


―あなたは彼に夢を叶えてほしいの?それとも―


さやか「…!」

杏子「その様子だと心当たりはあるみたいだね。じゃあ、馬鹿なのはアンタだけか」

さやか「うるさい!」

杏子「せっかくの先輩の忠告も聞かないなんて、何考えてるんだか。ホント見ててムカつくね」

さやか「うるさいうるさいうるさい!」






496: 2011/08/30(火) 19:56:38.15 ID:9tg250v00

さやか「あんたにあたしの何がわかるっていうのよ! 
    あんたなんか自分の為に他人を犠牲にする最低の人間じゃない!
    あたしはあんたみたいなやつや魔女から、理不尽からこの街の人を守るために魔法少女になったんだ! 
    その気持ちが間違いだなんてあるはずがない!
    あたしは自分のために力なんて使わない! 誰かの為にこの力を使うんだ! 
    それの何が悪いっていうのよ!」



さやか「…」ハァハァ

杏子「誰かの為、ねぇ。自己犠牲は立派だけど、その先には何もないよ」

さやか「…」

杏子「それをしたところで誰もアンタを褒めたりしないし、坊やもアンタを愛したりはしないよ」

さやか「うるさい! あたしはそんなもの望んでない!」

杏子「望んでるじゃないのさ。ここでこうやって、捨てられた犬みたいに坊やの家を眺めているのがいい証拠だよ」

さやか「これは確認だ! あたしが何を守りたくて魔法少女になったのか。それを忘れないためにここに来ているの! そんな理由じゃない!」

杏子「何だ。もう、そんなことをしないと忘れそうなのか」

さやか「なん…!」

杏子「その程度で忘れてしまう決意なんて、そもそも決意じゃなかったんだよ。
   もう一度、よく考えてみることだね。自分が本当は何を望んでいたのかを、さ」

さやか「…」






497: 2011/08/30(火) 19:57:52.80 ID:9tg250v00
さやか「…あんた。なんなのよ」

杏子「あん?」

さやか「いきなり現れて、勝手なこと言って、人のことバカにして。
    何がしたいのよ。気に入らないなら、あの時みたいに戦えばいいでしょ?」

杏子「…さぁ、何なんだろ。言われてみりゃ自分でもよくわからないな」

さやか「…」

杏子(ああ、そうか)

   (こいつ、昔のアタシに…)


杏子「…悪い。少し話をさせてくれ」

さや「…なによ?」

杏子「アタシの昔の話さ。アンタみたいに、誰かの為に願いを使った大馬鹿者の話だよ」

さやか「――え?」

杏子「ちょいと、長くなる。場所を変えるか」






498: 2011/08/30(火) 19:59:35.53 ID:9tg250v00

―歩道橋―

杏子「これがアタシの顛末さ。全く我ながら何もわかっちゃいなかったと思うよ」

さやか「…そんな」

杏子「世の中ってのは、意外とバランスが取れていてね。本来あるはずのない奇跡が起きれば、その分どこかで絶望が起きるのさ」

杏子「アタシの末路がいい例だよ」

さやか「…」

杏子「だから願い事なんてのは自分自身のために使うべきなんだ」
   
   「アタシ達の身勝手な奇跡が引き起こした絶望に、他人を巻き込むなんてことはしちゃいけないんだよ」
   
   「他人の都合を知りもせず、勝手な願いごとをしたせいで、結局誰もが不幸になった」
   
   「その時心に誓ったんだよ。もう二度と他人のために魔法を使ったりしない、この力は、全て自分のためだけに使い切るって」

さやか「…それで?」

杏子「アンタもアタシも、もう願ったことは取り消せねぇ。
   でもこれからは変えることができる。後悔する前に、そんな生き方は変えるべきだ」

さやか「あたしに、あんたみたいになれって?」

杏子「ああ。といってもアタシの真似をしろってわけじゃない。
   考えを変えてほしいんだ。アンタは今も間違い続けてる。見てられないんだよ、そいつが。
   昔のアタシを見ているみたいでさ」






499: 2011/08/30(火) 20:00:15.14 ID:9tg250v00

さやか「…まどかには」

杏子「ん?」

さやか「まどかには言ったの? そのこと」

杏子「アイツは理解していたよ、そのことは」

さやか「…え」

杏子「願いも力を使うことも、全部結局は自分のためだってな。
   アタシが言うまでもなかった。見た目は普通だが、意外とするどいねアイツは」

さやか「まどかが…」

杏子「だからさ。アンタも開き直って好き勝手にやればいい。誰かの為じゃない。自分の為に力を使うべきなんだ。
   もう、無理するのは止めなよ」

さやか「…」






500: 2011/08/30(火) 20:01:23.00 ID:9tg250v00
さやか「…無理なんてしていない」

杏子「さやか?」

さやか「ごめん。あんたの事、色々と誤解してた。謝るよ。
    でもね、あたしは人の為に祈った事を後悔してないし、無理なんてしていない。
    その気持ちを嘘にしない為に、後悔だけはしないって決めたの。これからも」   

杏子「バカ野郎! その先には何もねェって言ってんだろ! 誰もお前に感謝なんてしないし、振り向きもしない。
   そんな奴らの為に、なんで自分を犠牲にする必要がある!」

さやか「それでもいいの。それでもあたしはこの力をそんな風に使いたい。誰かを守る為に。
    それが、あたしの使命だと思うもの」

杏子「お前…」

さやか「だって、そうじゃなきゃ誰が魔女と戦うっていうのよ。
    魔女と戦えるのは魔法少女だけ、だったらあたしたちが戦うしかないじゃない。
    それならあたしは、誰かを守っているって考えながら戦いたい。
    自分の為じゃない。放っておいたら魔女にやられてしまう誰かを助けるために、ってね」

杏子「…」

さやか「そう、あたしが守らなきゃいけないんだ。魔女からまどかや恭介たちを…」

杏子「…!」







501: 2011/08/30(火) 20:03:30.90 ID:9tg250v00

杏子「…この街にはマミやまどかだっているじゃねぇか。アンタがどうして街を守る必要がある」

さやか「なによ、まだ文句あるわけ?」

杏子「質問に答えろ」

さやか「ここ最近、この街には魔女が多いんだって。アンタも知ってるでしょ。
   マミさんは本調子じゃないし、まどかは今は休業中。あたしがやるしかないじゃない」

杏子「じゃあ、ここら辺の魔女が少なくなったら止めろ。マミやまどかがいれば十分だろ」

さやか「言ったでしょ、わたしは守るためにこの力を使うの。魔女が少なくなったって関係ない。
    それにマミさんはともかく、まどかにこんなことはさせられないの。まどかは本当は戦えるような子じゃないんだから」

杏子「マミは優秀だ。本当なら一人でもこの街は守れるよ。だから、アンタは自分の為に力を使えばいいじゃないか」

さやか「わたしはあんたみたいにできないし、やらない。
    わたしはわたしのやり方で戦い続けるよ。邪魔になるなら、前みたいに頃しに来ればいい。
    負けるつもりはないけど」

杏子「…どうしてそこまで、守ることにこだわるんだ?」

さやか「しつこいわね。それができる力を持ってるんだから、あたしがやらなきゃいけないの。
    
    「あたしがまどかや恭介たちや街のみんなを…」







502: 2011/08/30(火) 20:04:24.37 ID:9tg250v00

杏子「…」

さやか「…なによ、何がそんなに気に入らないの?」

杏子「…」

さやか「もうあんたのやることに口出ししたりなんてしないよ。
   そのかわりあんたもわたしのやることに何も言わないで。それが互いの為ってもんでしょ。
   だから邪魔しないで」

杏子「…気に入らねぇ」

さやか「あたしも認められないよ、あんたのこと。でもお互い様でしょ」

杏子「ああ、ホントに気に入らねぇ」






503: 2011/08/30(火) 20:05:03.03 ID:9tg250v00



杏子「さやか。何、まどかのこと見下してるんだ?」

さや「…え?」







516: 2011/09/03(土) 23:12:18.25 ID:OQi//pzz0

杏子「さっきから聞いてりゃ、守る守るって。そんなにまどかは弱いのかよ?」

さやか「あ、当たり前でしょ。そもそもまどかが魔法少女になって、戦っているのがおかしいのよ。
    あの子はそんなことするような子じゃないんだから」

杏子「アタシは魔法少女になる前のアイツを知らないよ。さやかが言うなら、前のアイツはそんな人間だったのかもしれないさ」

杏子「でも、今のアイツのことならわかる。アイツは強い人間だよ、さやか」

さやか「え?」

杏子「魔法少女としてはもちろん、覚悟や気概もアンタより上だ。わざわざ守る必要なんてないよ」

さやか「そんなことないわよ! だってまどかはちょっと危なっかしくて、優しくて、でも自信がないような子で…」

杏子「それは昔のアイツだろ? 今はそんな奴じゃない。
   あのちっこいのと一緒に力も持っているし、しっかりした気持ちも持ってる」

杏子「知ってるだろ? 少なくとも、実力がまどかの方が上だって気付いてるはずだ」

さや「それは…」






518: 2011/09/03(土) 23:13:45.98 ID:OQi//pzz0




(げっ…どうやって戦っているんだが全然わかんない)
   
(あたしって、こんなに力不足なの…?)




杏子「まどかは一流の魔法少女だ。誰かに守られるような奴じゃないよ」

さやか「そんなことない! まどかは変わらない、昔のままの優しい子だ!」

杏子「おい。何で否定するんだよ?  
   良いことじゃねぇか。アンタが守らずとも強くなったんだから」

杏子「それとも、そうなったら都合が悪いことでもあるのか?」

さやか「そ、それは…」






519: 2011/09/03(土) 23:15:56.93 ID:OQi//pzz0

杏子「…やっぱり、そうだ」

  「守る守る守る。そうさアンタはまどかを守りたいのさ」
  
  「それでもまどかが魔法少女じゃないのなら、納得できるよ。戦えねぇから魔女にやられちまうかもしれないしな。
   でも実際はそうじゃねぇ。魔法少女としてもアイツの方が強いのに、アンタはまどかを弱いって言っている」

  「守るっていうのは、強い奴が弱い奴に対してすることさ。
   だから、守るって考えるやつは、そいつのことを弱い奴って考えてる」

  「アンタは、アイツを弱い人間だと思ってる。本当は、まどかの方がアンタよりも強いっていうのに。
   アンタは自分より強いまどかを下に見て、優越感に浸ってるんだよ」

  「ふざけんな」

  「友達なのに、見下してんじゃねぇよ! ふざけんな!」




520: 2011/09/03(土) 23:17:39.87 ID:OQi//pzz0
さやか「なん…!」

杏子「街を守るなんて言っているのも同じ気持ちだ! 祈りを捧げた坊やのことも!
   守ってやることで、自分がアイツらより上だと思いたいだけなんだ!」

さやか「違う! あたしは…」

杏子「何が違って言うんだよ。まどかを見下してんじゃねえか!」

さやか「そんなのあんたの想像じゃない! 勝手に決めつけるな!」

杏子「見下している以外に何があるんだよ。『助ける』とか『一緒に戦う』とかならまだわかる。それなら対等だからな。
   それを『守る』しか言わねーで、下にしか見てないじゃないか。他に何があるっていうんだよ!」

さやか「そうじゃない! わたしは…」

杏子「実力もないくせに、強くなったと勘違いして挙句に友達を見下しやがる…!」

杏子「さやかは…最低だ」

さや「…!」ブチッ






さやか「この…言わせておけば!」

杏子「イラつてんのはこっちのほうだ。アタシはアンタみたいな奴が大っ嫌いだ」

さやか「あんたに…あたしとまどかの何がわかるっていうのよ」

杏子「まだ友達面する気かよ。この恥知らずが」

さやか「絶対に…お前だけは絶対に許さない。今度こそ必ず…!」ジェムショウカン

杏子「んなもんこっちのセリフだ。その腐った性根を叩き直してやる…!」ジェムショウカン






521: 2011/09/03(土) 23:19:00.34 ID:OQi//pzz0




まどか「二人とも、待って!」

さや杏「まどか?!」




まどか「ダメだよ、こんなのダメ!」

さやか「まどか、どうしてここに…」

マミ「美樹さん、止めなさい!」

さやか「マミさんまで…」

マミ「鹿目さんから連絡があったの。ほむほむが貴方たち二人が一緒にいるところを見かけたって」

さやか「マミさん、止めないでください!
    こんなやつは絶対に許しちゃいけないんだ…!」

マミ「美樹さん、落ち着いて。こんなところで戦ったら人目に付くし、周囲に被害が出るわ。
   それは貴方が望むことではないでしょう?」

さやか「でも…っ!」






522: 2011/09/03(土) 23:20:47.47 ID:OQi//pzz0

まどか「杏子ちゃん、止めて!」

ほむら「ほむむむっ!」

杏子「うるせぇ! 止めんなまどか、ほむほむ!」

まどか「ダメだよ! さやかちゃんも杏子ちゃんも!
    こんなこと、放っておけるわけないよ」

杏子「こんなやつに期待したアタシがバカだった。
   一回、本気でぶん殴らねェと気が済まないんだよ!」

まどか「杏子ちゃん、落ち着いて」

杏子「まどか、コイツお前のことどんな目で見てんのか知ってんのか。
   友達をバカにするような奴はアタシは…!」

まどか「杏子ちゃん…」




さやか(なんで…、なんで、まどかはあいつと一緒にいるの?)

    (なんで、あいつと友達みたいになっているの?)

    (あいつはまどかを襲ったんだよ。もうそんなことも忘れたの?)

    (何考えているのまどか。そいつは、敵だよ。最低な奴なんだ。分かってるでしょ?!)


マミ「美樹さん? 美樹さん、聞いてる? 美樹さん!」

さやか「…」ギリッ






523: 2011/09/03(土) 23:22:27.72 ID:OQi//pzz0

まどか「杏子ちゃん。お願いだから…!グイッ

杏子「邪魔すんな!」バッ

まどか「きゃ…!」

ほむら「ほむ?!」

さやか「! まどか!」ダッ

マミ「ちょっと、美樹さん?!」



さやか「まどかに何するんだ!」ガシッ

杏子「てんめ…離れろ!」ジタバタ

さやか「あんたなんか…あんたなんか!」グイグイ

杏子「友達面してんじゃねぇよ!」バタバタ

さやか「黙れ!」ガッ

杏子「! アタシのソウルジェム! テメッ、返せ!」

さやか「こんなもの――!」






524: 2011/09/03(土) 23:23:40.21 ID:OQi//pzz0



  ポイッ



まどほむ「!」

ほむら(杏子のソウルジェムがトラックに…!)

杏子「アタシのソウルジェムが!」

マミ「美樹さん! なんてことを…」

さやか「これであんたは、魔法少女になれない…!」
    もう、魔法少女にはなれないんだ!」

杏子「この――! …?」

杏子(え…?)

杏子「や…ろ……う―――」

ほむら(マズイ!)






525: 2011/09/03(土) 23:24:22.20 ID:OQi//pzz0





ほむら『まどか、へんし「ほむほむ! 変身するよ!」






526: 2011/09/03(土) 23:25:22.48 ID:OQi//pzz0
ほむら(…え?)

まどか「早く!」

ほむら『え、ええ!』カッ!

マミ「鹿目さん?!」

まどか「マミさん。わたしがソウルジェムを取り戻します!
    だから、さやかちゃんと杏子ちゃんをお願いします!」ダッ

マミ「え? ええ!」

ほむら『まどか。まだ間に合う。時間停止を繰り返して追いつくわよ!』

まどか「うん!」



ほむら(…それにしても)

ほむら(さっきのは、一体…)






527: 2011/09/03(土) 23:26:07.68 ID:OQi//pzz0

さやか「…ちょっとなによ」

杏子「…」

マミ「…!」

さやか「何、急に寝てんのよ。ふざけてんの?」

杏子「…」

マミ「そんな…どういうこと?!」

さやか「何とか言いなさいよ。また、そうやってあたし達を油断…」

マミ「美樹さん!」

さやか「…」ビクッ

マミ「あなた…、佐倉さんに何をしたの?!」




マミ「彼女…氏んでるじゃない!」

さやか「…え?」






528: 2011/09/03(土) 23:27:26.52 ID:OQi//pzz0



  ブロロロロロロロロ

  カシャ カシャ カシャ カシャ



まどか「見えた!」

ほむら『荷台の上ね。時間を止めている間に登って回収するわよ』

まどか「うん!」カシャ

ほむら『道路に落ちて、車に轢かれなかったのが不幸中の幸いね。そうなっていたら…』

まどか「うん、考えたくないよ」ノボリ

ほむら『…』

まどか「? どうしたの、ほむほむ」

ほむら『いえ、何でないわ』


ほむら(やっぱり…。でもどういうこと?)

ほむら(まどかは知らないはず。…一体どこで?)

ほむら(キュゥべえ? でもそんなことをする理由が…)






529: 2011/09/03(土) 23:28:12.45 ID:OQi//pzz0

まどか「あった!」

ほむら『本当? 傷は無い?』

まどか「うん。特に無いみたい。良かったぁ…」ヘタリ

ほむら『何よりだわ。早く、マミ達のところに戻りましょう』

まどか「わかった。じゃあ急ぐよ!」カシャ

ほむら(おそらく、マミたちは残酷な事実に直面しているはず)
   
ほむら(何事もなく、というわけにはいかないでしょうね…)






530: 2011/09/03(土) 23:30:24.73 ID:OQi//pzz0

―歩道橋―

QB「ただの人間と同じ、壊れやすい身体のままで、魔女と戦ってくれなんて、とてもお願い出来ないよ。
 
QB「魔法少女との契約を取り結ぶ、僕の役目はね。君たちの魂を抜き取って、ソウルジェムに変える事なのさ」

さやか「なによ…それ…」ガタガタ

マミ「キュゥべえ…何を言っているの?」

さやか「杏子はどうなったっていうのよ! 何で…なんでこんなことに!」

QB「僕の話を聞いてなかったのかい? さやか。佐倉杏子なら、今さっき君が投げ捨てたじゃないか」

QB「そっちは抜け殻。本体がいなくなったら、体が動かなくなるのは当然だろう?」

さやか「あ…あ…あ…」




QB「さやか、君は杏子のことを憎んでいたんだろう?」

QB「ならよかったじゃないか。これは君が望んだ結末だ」

QB「杏子は氏に、君の目の前からいなくなった。君が望んだ、まさに最良の結果じゃないか」




さやか「うわああああああぁぁぁぁぁ!!!!」ダッ

マミ「美樹さん!」






531: 2011/09/03(土) 23:31:10.06 ID:OQi//pzz0

QB「何が気に入らないのだか。まったく、わけがわからないよ」

マミ「キュゥべえ…。騙していたのね、私たちを!」

QB「人聞きの悪いことを言わないでほしいな。
  僕は魔法少女になってくれって、きちんとお願いしたはずだよ?」

マミ「だからって、こうなるなんてこと、一言も言わなかったじゃない!」

QB「訊かれなかったからさ。知らなければ知らないままで、何の不都合もないからね」

QB「事実、今の今まで君だって気が付かなかっただろう? 
  日常生活に支障はないし、魔力で体も修理できるから戦闘も有利に進めることができる」

QB「むしろ感謝するべきじゃないのかな? 君たちにとってこれほど便利なことはない」

マミ「便利…ですって?!」

マミ「そんなわけないじゃない! こんな…こんなこと…」






532: 2011/09/03(土) 23:33:19.91 ID:OQi//pzz0

QB「君たちはいつもそうだね。事実をありのままに伝えると、決まって同じ反応をする」

マミ「当り前よ! 魂を抜かれて、氏人になるなんて誰が喜ぶというの?!」

QB「氏人ではないね。むしろ逆の存在だ。ソウルジェムが砕かれない限り、君たちは不氏身だよ」

マミ「そんなの氏んでいるのと同じことよ! 
   殺されても生き続けるなんて、キュゥべえはそんなことも理解できないの?!」

QB「価値観の相違はお互い様だろう? なぜ僕だけ非難されなきゃいけないのかな?」

QB「僕は君が望んだから願いを叶えたし、その体に造り替えてあげた」
 
QB「それとも君は、仕組みを説明されたのならあそこで氏ぬことを望んだのかな?
  なら、今すぐ自分のソウルジェムを砕けばいい。そうすれば時間はかかったけど簡単に望みは叶うよ」

マミ「そ、そんなこと…」

QB「どんな形であれ、生き続けるのが君の祈りだったはずだ。さやかと同じさ。これが君が望んだ結果だったはずだよ。
  感謝されることはあれど、非難されることはないはずなんだけどな」

マミ「…」

533: 2011/09/03(土) 23:34:11.28 ID:OQi//pzz0

マミ「…ねぇ、キュゥべえ。一つだけ教えて」

QB「何かな? マミ」

マミ「私、あなたのこと本当に大切なお友達だと思ってたのよ?」

マミ「あなたは私のこと、どんなふうに見ていたの?」

QB「『友達』というのはつまるところ、利害の一致している関係と考えるべきかな?」

QB「それなら、僕も君のことを『友達』だと思っていたよ」

QB「体を造り替えさせてもらえて、魔女と戦ってくれる貴重な存在を『友達』と思わないわけないじゃないか」






534: 2011/09/03(土) 23:35:49.82 ID:OQi//pzz0

マミ「…消えて」

QB「?」

マミ「もう消えて! もう私の目の前に現れないで!」

QB「うん。君がそういうのなら、そうさてもらうよ」

QB「バイバイ、マミ。長い間一緒だったね。僕にとってもそれなりに有益だったよ」タッ


マミ「…」

マミ「…本当に」

マミ「…本当に、友達だと思っていたのよ…?」

マミ「…」

マミ「…」ヒック

マミ「…」ヒック グス ヒック





まどか「マミさん!」






549: 2011/09/05(月) 22:40:55.95 ID:5uJxiD600
毎度のことながら、レスありがとうございます。
もう少し、投下期間を早くできればいいとは思っているのですが、なかなか…。

続きを投下します。

550: 2011/09/05(月) 22:42:13.63 ID:5uJxiD600

―マミ宅―

まどか「杏子ちゃん、大丈夫?」

杏子「ああ。体の方はもう問題は無いみてーだ。
   痛みも何もないし、動かないとことかもねーよ」

まどか「よかったぁ…」

マミ「でも佐倉さん。無理は禁物よ?
   一時的とはいえ、氏んでしまったのだからどんな不調が出てもおかしくないわ」

杏子「大丈夫だよ。もしそんなことがあっても魔法で直せるんだろ?
   造り替えた本人の、お墨付きなんだからさ」

マミ「…」



551: 2011/09/05(月) 22:44:20.94 ID:5uJxiD600

杏子「にしても、ソウルジェムがそんなもんだったとはなぁ。まどかは知ってたのか?」

まどか「ううん。わたしもついさっきほむほむに教えてもらったばかりだよ」

杏子「てことは、そいつは知ってたのか。このこと」

ほむら「ほむ…」

杏子「そんな顔すんなよ。別に攻めてるわけじゃねーぞ。ほむほむ」ナデナデ

ほむ「…」

まどか「ほむほむが言うには、今まで説明しても、誰も信じてくれなかったって」

杏子「そりゃそうだろうな。こんなこと、いきなり説明されても実際に見るまでは信じらんねーもん」

マミ「そうよね…。未だに信じられないくらいだもの。信じたくない、というのもあるけれど」

杏子「なあ、まどかもこんな体になっているのか?」

ほむら「ほむほむ。ほむむ」

まどか「わたしは違うみたい。その、キュゥべえと契約していないから。
    ほむほむと離れていても、今まで体はなんともなかったし」

杏子「そりゃよかった。安心したぜ。
   覚悟も無しにこんな体にされる人間なんて、少ないほうが良いからな」

まどか「杏子ちゃん…」

ほむら「ほむ…」

マミ「…」


552: 2011/09/05(月) 22:46:04.45 ID:5uJxiD600

マミ「佐倉さん。あなたは、平気なの…?」

杏子「ん? 何が?」

マミ「キュゥべえに、半ば騙されるような形で…、こんな体にされて」

杏子「んー、ショックじゃねぇと言えば嘘になるな。
   あの糞野郎。今度会ったら八つ裂きにしてやる」

マミ「…そうよね」

杏子「でも、まあいいかとも思ってるんだ」

マミ「え?」

杏子「何だかんだでこの力を手に入れたから好き勝手できてるわけだし、後悔するほどのことでもないってね」
   結局、無理矢理奇跡なんてものを望んだ罰ってことさ。自業自得だな」

マミ「自業自得…」

杏子「ああ、これはアタシがアタシに言っていることだからな。別にアンタを非難しているわけじゃねェよ」

マミ「…」



553: 2011/09/05(月) 22:47:14.76 ID:5uJxiD600

マミ「…いえ、そうかもしれないわね」

まどか「マミさん?」



マミ「そう。これは家族を見捨てて自分だけ生き残った私への罰なんだわ」

   「あのとき、『家族を助けて』ってそう願うことも出来たはずなのに。私は自分が助かることだけを考えてしまった」

   「そんなことも忘れて、正義の味方の真似して、街を守った気になっていて…」

   「これじゃあ、パパやママだって怒るわよね…。見捨てたことも忘れて、生きているんですもの」

   「こんな体になったことだって、そんな私への…」



まど「…」

杏子「…」



554: 2011/09/05(月) 22:47:57.93 ID:5uJxiD600



ほむら「っむ!」タッ

マミ「え?」

ほむら「ほみゃ!」キック!

マミ「痛いっ…」

ほむら「ほむほむ!」

マミ「な、何するの…? ほむほむ」



杏子「…いや、よくやったほむほむ。グッジョブだ」

まどか「そうだね。ナイスツッコミだよ、ほむほむ」

マミ「あ、あの二人とも…?」



555: 2011/09/05(月) 22:49:02.61 ID:5uJxiD600

まどか「そんなことないです!」

マミ「鹿目さん?」ビクッ

まどか「マミさんのご両親が、そんなこと思うはずないじゃないですか!
    マミさんが生きていることを怒るなんて、そんなはずがありません!」

マミ「でも私は…」

まどか「マミさん。マミさんのお父さんやお母さんは子供が氏んじゃったら、喜ぶような人だったんですか?」

マミ「そ、そんなことは…」

まどか「だったら、罰なんて言わないでください!
    そんな、悲しいこと…」

マミ「鹿目さん…」



556: 2011/09/05(月) 22:50:57.47 ID:5uJxiD600

杏子「少し違うが、アタシも同意見だね」

マミ「佐倉さん…」

杏子「アタシはアンタの両親が何考えていたかなんて知らないし、アンタがその体をどう思おうがアンタの勝手だ」

マミ「…」

杏子「だけども、その理由を氏んだ人間に押し付けるんじゃねーよ」

マミ「押し付ける…?」

杏子「そうさ。人間氏んだら、そこで終わりだ。考えることも、ましてや人を呪うことなんてことも出来やしねぇ。
   氏んだら、人間は無力なんだ。喜ぶことも、悲しむこともねぇんだよ」

マミ「そんな…」

杏子「だからアンタのしていることは、無力な人間に責任を押し付けているのと同じだよ。氏人にさらに鞭を打っているようなものさ。
   自分の体がそうなった責任を、アンタは氏んだ両親に押し付けて楽になりたいだけなんだよ」

マミ「そんな、わたしは…」

杏子「無力なのをいいことに、そいつらの姿を都合のいいように歪めて、責任も押し付ける。そんな奴は、アタシは大っ嫌いだ。
   次にそんなこと言ってみろ。あの糞害獣より先に、アンタを八つ裂きにするからな」

マミ「…」



557: 2011/09/05(月) 22:52:10.61 ID:5uJxiD600

まどか「ほら、マミさん。杏子ちゃんも、マミさんのご両親はいい人だって」

杏子「はぁ? んなこと言ってねーぞアタシは」

まどか「でも、『同意見だね』って」

杏子「あれは泣き言いってるマミが間違っているってことだよ! まぁ、そりゃ良い人だったのかもしれないけどよ…」

まどか「やっぱり優しいね、杏子ちゃん。さすがだなぁ…」

杏子「んなっ! 優しくなんてねーよ! つーか何だ流石って!」

まどか「だって、いつもなんだかんだ言いつつ優しくしてくれるし…」

杏子「アタシのどこをどうみたらそう見えるってゆーんだ! アタシは生きるためなら何でもやる悪いやつだぞ!」

まどか「本当に悪い人なら、自分のことを悪い人だなんて言わないよ、杏子ちゃん」

杏子「うっ…」

ほむら「ほむむ」

まどか「やっぱり、ほむほむもそう思う? 優しいよね、杏子ちゃんって」

ほむら「ほむ」

杏子「てめぇら、いいかげんにしろ!」

ほむら「ほむほむ」

まどか「あ、ほんとだ。杏子ちゃん顔真っ赤。りんごみたい」

杏子「がー! うるせー!」

マミ「…」



558: 2011/09/05(月) 22:52:54.27 ID:5uJxiD600

マミ「…ふふ」

まどか「マミさん?」

杏子「お、元気になったな」

マミ「ありがとう、三人とも。おかげで少し元気が出てきたわ」



マミ(…まだ、全てを受け入れられたわけじゃないけれど)

   (でも、今の私は一人じゃないもの。大丈夫、乗り越えて見せるわ)

   (それが、氏んじゃったパパたちに報いることになるのよね、きっと…)



559: 2011/09/05(月) 22:54:10.79 ID:5uJxiD600

マミ「ところで佐倉さん」

杏子「おう。なんだ?」

マミ「こうして話せる機会が出来たから、折り入ってあなたにお願いしたいことがあるんだけれど…」

杏子「ああ、ワルプルギスと戦うんだろ? 協力してやるよ」

マミ「え? そ、そんなあっさり?」

杏子「ただし、見返りはもらうけどな」

マミ「それは…、まぁ良いのだけれど。
   本当にいいの? 勝てるかどうか分からない相手なのよ?」

杏子「いいもなにも、もうまどかと話はついてるんだ。後はやるだけさ」

マミ「鹿目さんと? そういえば、妙に親しげだなとは思っていたけど…」

杏子「まぁ、色々あってな」

マミ(本当に何があったのかしら…?)



561: 2011/09/05(月) 22:56:33.56 ID:5uJxiD600

マミ「鹿目さん、休むように言っていたでしょう。約束を破って、勝手に動くのは感心しないわね」

まどか「ご、ごめんなさいマミさん…」

マミ「ほむほむも。ちゃんと鹿目さんが無茶しないように止めてもらわないと」

ほむら「ほむぅ…」

まどか「マ、マミさん! ほむほむは悪くないです! ただ偶然杏子ちゃんを見かけたから、わたしがチャンスだと思って…」

マミ「それでも、連絡の一つはしてほしかったわ鹿目さん。
   交渉が決裂したら、最悪、襲われる可能性だってあったのだから。そうなったら、あなたの身が危なかったのよ?」

杏子「おい、いくらアタシでもそんなことしないぞ。というかそんな目で見ていたのか」

マミ「ごめんなさい。でもあの時点じゃ、あなたのことそんな風に見えていたから」

杏子「失礼な奴だな。金にもグリーフシードにもならない無駄な争いは、基本しねぇっつーの」

マミ「とにかく、鹿目さん。何か行動を起こすときは、ちゃんと言ってもらわないと…」

まどか「ごめんなさい…」



562: 2011/09/05(月) 22:57:45.52 ID:5uJxiD600

マミ「でも、今回は佐倉さんがこっちに来てくれたら良しとしましょう」

まどか「え…?」

マミ「ありがとう、鹿目さん。あなたのおかげで心強い仲間が増えたわ。
   正直、佐倉さんの勧誘は難しいと思っていたの。でも、これでまた一つワルプルギスに対抗できる可能性が出てきたわ」

まどか「そ、そんなことないですよ。わたしのしたことなんて…」

杏子「あー、なんか悪いな。アタシのせいで怒られちまって…」

まどか「杏子ちゃんのせいじゃないよ。元はといえばわたしが…」

マミ「その話はもういいのよ、鹿目さん。でも、今度からは注意してね」

まどか「は、はい」



563: 2011/09/05(月) 22:59:51.72 ID:5uJxiD600

マミ「じゃあ、佐倉さん。『ワルプルギスの夜』との戦いの件。改めてお願いするわ」

杏子「おう。引き受けるよ」

マミ「ありがとう。私達だけじゃ手に余る相手だもの。あなたのような強い人が協力してくれるのは心強いわ」

杏子「けっ、褒めても安くしねーぞ。もらうもんはもらうからな」

マミ「それにしても、あなたが協力してくれるなんてね。
   てっきり、割に合わないって言って断られると思っていたのだけれど」

杏子「そう思うなら、ちゃんと割に合うもん用意してくれよ?」

マミ「といっても、何がいいかしら…」

杏子「そうだな、ここら辺の縄張りの3割とか…、どうだい?」

マミ「ええ、それくらいなら構わないわ」

杏子「ホントか?!」

マミ「ただし、ちゃんと使い魔も退治してくれるという条件が付くけれどね」

杏子「それじゃもらう意味がねーよ。きっちりグリーフシードは稼がせてもらわねーと」

マミ「じゃあ、だめ。私の後任を引き継ぐなら、ちゃんとやってもらわないとね」

杏子「だろーな。はてさて、じゃあ何をもらうかね…」

マミ(協力してくれることには、変わらないのね)



564: 2011/09/05(月) 23:01:29.98 ID:5uJxiD600

杏子「んー、今は思いつかねーな。後でもらえそうなもん考えておくよ」

マミ「それなら、こちらでも何か案を用意しておくわね」

まどか「あ、それなら一つ提案があるんですけど…」

杏子「お、なんだまどか?」

まどか「杏子ちゃんをマミさんの家にしばらく泊めてもらうというのはどうでしょう?」


マミ杏「え?」


まどか「だって、杏子ちゃん。お家も携帯電話もないから連絡取るの大変だし。
    それにいつも外でぶらぶらしているっていうのはやっぱり…」

マミ「ちょ、ちょっとまって鹿目さん!」

杏子「そうだぞ、まどか。いくらアタシでもそこまで厚かましくは…」

マミ「佐倉さん、家がないの?!」

杏子「…あー、そっちか」



565: 2011/09/05(月) 23:03:15.20 ID:5uJxiD600



マミ「泊まりなさい」

杏子「…いや、いいって。もう慣れてるし」

マミ「いいから、泊まりなさい! まったく、女の子が外で寝泊まりしてるなんて何考えているの?!」

杏子「いやいつも野宿してるわけじゃないぞ? 大体はホテルの空き部屋とかそういう場所を探してだな…」

マミ「…」ジー

杏子(うわ、こぇぇ。何か母さんみてーだな)

マミ「佐倉さん。そういう生活をしていたら、間違いなく体に良くないわ」

杏子「いや、アタシ魔法少女だし」

マミ「体だけじゃなく、精神的にもよくないの。いつも緊張してるから疲弊する一方だし、そんなことじゃいつか擦り切れてしまうの。
   ましてや、これからワルプルギスの夜と戦うことになるんですもの。出来るだけ、体も心も休めるときに休めておかないと」

杏子(…反論できない)

マミ「どんな返事に関わらず、あなたには今日からここで寝泊まりしてもらいます」

杏子「既に決定かよ…」

マミ「当然よ。それに健康上の問題だけじゃなく、いつでも連絡の取れる場所にいてほしいの。
   安心して。これは見返りじゃなくてワルプルギスを倒す作戦上の問題。あなたの言う見返りは別に用意するわ」

杏子「そういうことなら、まあ…」

マミ「そしたら、明日買い物に行くわよ佐倉さん。下着とかいろいろ用意しないと」

杏子「い、いーよ! そこまでもしなくても」

マミ「だめよ。どうせ、替えなんて持っていないのでしょう? 女の子としてそんなことは私が許しません」

杏子「面倒くせぇなぁ…」





まどか『二人とも、仲良くできそうだね』

ほむら『ええ。仲違いの心配はなさそうだわ』


566: 2011/09/05(月) 23:06:51.70 ID:5uJxiD600

杏子「さてと、じゃあ残る問題は…と」

まどか「さやかちゃん…だね」

杏子「キュゥべえの奴の話を聞いて、ショックで逃げちまったんだっけか」

マミ「ごめんなさい。本当なら、私があそこでちゃんと追いかけるべきだったのに…」

杏子「あん時はしかたねーよ。アタシもぶっ倒れてたし、アンタだってショックを受けてたんだ」

マミ「でも、結果的に美樹さんを一人にしてしまった。これは私の責任よ」

杏子「アタシこそ悪い。あんな風に事を構える気は無かったのに、いつの間にか互いにやり合わなきゃいけない流れになっちまってた」

マミ「そういえば、佐倉さんはどうして美樹さんと? 鹿目さんに連絡を受けて急いだから、経緯がよくわからないのだけれど」

杏子「…ちょっと、忠告するだけのつもりだったんだけどな。それが、感情的になっちまってさ。
   全部アタシのせいだ。さやかのことは、アタシが責任を取るよ」

まどか「杏子ちゃん…」




マミ「とにかく、美樹さんのことは心配だわ。精神的なダメージが大きすぎる」

マミ(私も…そうだけど)

杏子「一人にしておくのはマズイかもな…。まどか、さやかと連絡つかないのか?」

まどか「それが、何度もメールや電話をかけてるんだけど、何も返事がなくって」

マミ「あんなことがあった後だもの。何とか佐倉さんが無事だってことだけでも、伝えられたら良いのだけど…」

杏子「そうか、アイツはアタシを頃しちまったと考えてるのか」



567: 2011/09/05(月) 23:09:29.70 ID:5uJxiD600

杏子「…悪ぃ。ちょっと外行ってくる」

まどか「杏子ちゃん?」

杏子「見つかるとは限らねぇし家に戻ってるかもしれないけど、それでも早く会って少しは安心させてやりたいんだ」

マミ「佐倉さん…。でも、あてはあるの?」

杏子「いんやちっとも。でも、アタシのせいだからな。まどかはさやかの家に行ってみてくれよ」バタン

まどか「あ、杏子ちゃん」

マミ「鹿目さん。佐倉さんも、じっとしていられないのよ」

まどか「…はい」

マミ「あなたはもう家に帰ったほうが良いわ。これ以上遅くなると、お家の人に心配かけてしまうわ」

まどか「はい…。それじゃあ、今日は帰ります」

マミ「ほむほむ、鹿目さんのこと頼んだわよ?」

ほむら「ほむ」

まどか「マミさん、杏子ちゃんの言うとおり帰りにさやかちゃんの家に行ってみます。
    もしかしたら戻ってるかもしれないし、とにかく話をしてみないと…」

マミ「ええ、頼むわ鹿目さん」

まどか「それじゃあ、マミさん。また明日」

マミ「ええ、また明日ね」



568: 2011/09/05(月) 23:10:26.07 ID:5uJxiD600




ほむら(しかし、美樹さやかは家には戻っていなかった)

ほむら(そして、翌日。学校にも姿を見せなかった)




584: 2011/09/08(木) 22:21:55.81 ID:7Js+sg4X0

―結界内―

さやか「…」

使い魔「…」

さやか「おうりゃぁっ!」ザシュ

使い魔「…」シュー

さやか「…ったく…手こずらせるんじゃ…ないわよ」


585: 2011/09/08(木) 22:22:24.57 ID:7Js+sg4X0




QB「ただの人間と同じ、壊れやすい身体のままで、魔女と戦ってくれなんて、とてもお願い出来ないよ」

QB「魔法少女との契約を取り結ぶ、僕の役目はね。君たちの魂を抜き取って、ソウルジェムに変える事なのさ」




さやか(今のあたしはただのゾンビ…)

さやか(氏んだ体が、魔女と戦うために動いているだけ…)

さやか(そんな…そんなのって…)




586: 2011/09/08(木) 22:23:30.81 ID:7Js+sg4X0





QB「戦いの運命を受け入れてまで、君には叶えたい望みがあったんだろう?」

QB「それは間違いなく実現したじゃないか」





さやか(知らない…そんなこと知らない!)

さやか(こんな体になるなんて聞いてなかった…)

さやか(こんなことなら、魔法少女になんか…)

さやか(なんか…?)



587: 2011/09/08(木) 22:24:12.28 ID:7Js+sg4X0





上条「ごめん、さやか」






さやか(違う…あたしは本当に恭介の腕が治ってほしかった)

さやか(その為に奇跡が必要なら、どんな運命だって背負うって決めたんだ)

さやか(この願いを叶えたことに後悔なんてない…)

さやか(後悔なんか…するもんか)



588: 2011/09/08(木) 22:24:46.27 ID:7Js+sg4X0




杏子「ここの坊やに愛してもらいたんだろ?」

杏子「そうしてほしいなら、最初からそうなるように願えばよかったんだ」

杏子「じゃあ、なんでこんな場所で呆けてるさ? 本当は愛が欲しいんだろ、坊やの」






さやか(違う! 違う!)

さやか(あたしは見返りなんて望んでない!)

さやか(ただ、恭介が元気になったのならそれでいいんだ!)

さやか(それだけで…!)



589: 2011/09/08(木) 22:25:37.78 ID:7Js+sg4X0


使い魔「…」
使い魔「…」
使い魔「…」


さやか「…今日は、随分たくさん出るじゃない」

使い魔「…」

さやか「アンタらのご主人様も近くにいるの?」

使い魔「…」

さやか「じゃあ、それも倒さなきゃね…!」




さやか(そうだ…あたしは見返りなんか求めない…!)

さやか(そんなものを必要としない、正義の味方に…)

さやか(まどかやみんなを守る、正義の味方になるんだ…!)



590: 2011/09/08(木) 22:26:10.72 ID:7Js+sg4X0




杏子「アンタは、アイツを弱い人間だと思ってる。自分より下に見て、優越感に浸ってるんだよ」

杏子「街を守るなんて言っているのも同じ気持ちだ!祈りを捧げた坊やのことも!
   守ってやることで、自分がアイツらより上だと思いたいだけなんだ!」

杏子「さやかは…最低だ」




さやか(うるさい! うるさい! うるさい!)ダッ

使い魔「…!」ザシュ



592: 2011/09/08(木) 22:27:06.80 ID:7Js+sg4X0



さやか「…」ハァハァ

さやか(流石に…疲れたかな)

さやか(でも、これで誰かが使い魔に襲われることもなくなったんだよね)

さやか(うん。なら、これは良いことなんだ。絶対)

さやか(あたし、誰かを助けることが出来てるんだよね?)




さやか(はぁ…、学校も行ってないなぁ)

さやか(まどかやマミさん、どうしているんだろ?)

さやか(それに杏…)




593: 2011/09/08(木) 22:27:42.29 ID:7Js+sg4X0


   「彼女…氏んでるじゃない!」


さやか(…)

さやか(学校になんか…行けるわけないよ)

さやか(普通の生活に…戻れるわけがない)

さやか(だって、あたし人を頃したんだよ?)

さやか(知らなかったなんて、そんな言い訳できない)

さやか(だから、あたしは魔女を倒す魔法少女しかなることができない)

さやか(もうそれしか…意味がないんだ)



594: 2011/09/08(木) 22:28:20.89 ID:7Js+sg4X0

さやか「はぁ…」トボトボ

さやか(…あれ?)

さやか(あれは…恭介? と…)



上条「―…―」
仁美「…―…」



さやか(仁美?!)

さやか(な、なんで恭介と仁美が…)

さやか(しかも何で…あんなに…くっ付いて…)



595: 2011/09/08(木) 22:29:21.88 ID:7Js+sg4X0



上条「―?」
仁美「…―!」



さやか「…」

さやか(…ああ、そうか。そうだったんだ)

さやか(あたしなんか、最初から恭介の心にはいなかったんだ)

さやか(でも、仁美じゃ仕方ないよね。良い子だし。うん、恭介も幸せになってくれるよね)

さやか(…仁美。恭介のこと頼んだよ)



さやか「…っ!」ダッ



596: 2011/09/08(木) 22:30:24.41 ID:7Js+sg4X0

上条「…ごめん、志筑さん。急に眩暈なんかおこしちゃって」

仁美「いえ、まだ退院したばかりですもの仕方ないですわ」

上条「まぁね。でも、そうも言ってもいられないから。鹿目さん達は?」

仁美「まどかさんは先輩の方と一緒らしいですわ。何でもさやかさんとも親しかった方だとか」

上条「そうか…僕も頑張らないと」

仁美「…あの、やはり」

上条「ごめん。でもじっとしてられないんだ」

仁美「…そうですわよね」

上条「ごめん、付き合ってもらっちゃって。迷惑かけてるよね?」

仁美「いえ、私から言い出したことですし…。それに私も心配ですから」

上条「ありがとう。志筑さん。それにしても、どこに行っちゃんたんだよ、さやかのやつ」

仁美「そうですわね…」





597: 2011/09/08(木) 22:31:00.23 ID:7Js+sg4X0



さやか「うぉりゃぁぁぁぁぁっ!」

使い魔「…!」ザシュ





598: 2011/09/08(木) 22:31:50.90 ID:7Js+sg4X0

―電車内

  「言い訳とかさせちゃダメっしょ稼いできた分は全額きっちり貢がせないと。
   女って馬鹿だからさ。ちょっと金持たせとくとすっぐ下らねぇことに使っちまうからねぇ」

さやか「…」

  「いや~ほんと女は人間扱いしちゃダメっすね 犬かなんかだと思って躾けないとね。アイツもそれで喜んでる訳だし
   顔殴るぞって言えば、まず大抵は黙りますもんね」

さやか「…」

  「ちょっと油断するとすぐ付け上がって籍入れたいとか言いだすからさぁ。甘やかすの禁物よ。
   ったくテメーみてーなキャバ嬢が10年後も同じ額稼げるかってーの。 身の程弁えろってーんだ。なぁ?」

さやか「…」

  「捨てる時もさぁホントウザいっすよね。 その辺ショウさん巧いから羨ましいっすよ。俺も見習わないと」

さやか「…」




599: 2011/09/08(木) 22:32:35.90 ID:7Js+sg4X0


  エー、ツギハー


  「―で…――の」
  「いや――…で―」 

さやか「…」タッ


  ハッシャシマスー


さやか「…」 




600: 2011/09/08(木) 22:34:34.07 ID:7Js+sg4X0

さやか「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」ダッ

魔女「…」ズドドドドドドド

さやか「あははははははっ、ホントだキュゥべえの言うとおりだ!
    その気になれば痛みなんて…あはは。完全に消しちゃえるんだ!」

魔女「…!」

さやか「痛くない。痛くない。痛くない!」ザシュ

魔女「!!」


   ザシュ ブチッ グシャ ベチャ


さやか「ほらほら…あんたももう…終わりだよ…」

さやか「あたしと…いっしょだ…」




まどか「さやかちゃん!」




601: 2011/09/08(木) 22:35:27.77 ID:7Js+sg4X0

―路地裏―

さやか「…」

まどか「さやかちゃん、随分探したんだよ?」

さやか「…ひさしぶり」

まどか「うん、ひさしぶり。ほら、ほむほむも一緒」

ほむら「ほむ」

さやか「…」



さやか(ああ、なんか腹が立つな、ほむほむを見てると。なんでだろ…)

さやか「元気そうだね…まどか」

まどか「うん。マミさんも、元気だよ。あと杏子ちゃんも」

さやか「杏子?」

まどか「そう。さやかちゃん、杏子ちゃんは無事だよ。それで、協力してくれることになったの」

さやか「…そうなんだ。よかったよ」

まどか「うん。だから、あとはさやかちゃんが戻ってくれば、みんな揃うんだよ?」

さやか「…」




602: 2011/09/08(木) 22:36:22.66 ID:7Js+sg4X0

さやか「…ダメ。あたしは戻れない」

まどか「さやかちゃん?」

ほむら「ほむむ…」

さやか「あたしはやることがあるの。だから一人にして」

まどか「さやかちゃん…」

さやか「ワルプルギスの夜がきたらちゃんと戦うからさ、ほっといてよ」




603: 2011/09/08(木) 22:37:01.37 ID:7Js+sg4X0

まどか「…ごめん。それはできない」

さやか「…なんでよ」

まどか「だって、今のさやかちゃん。危ないもん」

さやか「…危ないって何よ」

まどか「さっきの戦い方だってそう。自分をあんな風に扱って、あんな戦い方ないよ」

さやか「だって痛みを感じなくしてるんだもの。あれなら負ける気がしないわ」

まどか「でも、それだと何が危ないのかも分からなくなるよ?」

さやか「…」

まどか「あんなやり方で戦ってたら、今は勝てたとしても、そのうち続かなくなる。だから危ないの。今のさやかちゃんは」

さやか「…あたし、才能ないからさ。ああでもしないと勝てないんだよ」

まどか「適当な言い訳、しないで。才能がないなんて誰が言ったの。それにあの戦い方は才能以前の問題だよ」

さやか「…」ギリ



604: 2011/09/08(木) 22:38:58.18 ID:7Js+sg4X0

さやか(じゃあ、あんたが全部戦いなさいよ)

    (あんたに、あたしの何がわかるの?あんたは普通の体のままじゃない)

    (まずあたしと同じ立場になってみなさいよ。無理だよね? 当然だよね? ただの同情で人間やめらるわけないもんね?)

    (優しいあんたの代わりに、あたしがこんな目に遭ってるの。知ったような事言わないで)

    (ねぇ、何であんたは弱いままでいてくれなかったのよ。そうすれば、あたしは…)



まどか「ねぇ、さやかちゃん。みんなのところに帰ろう? そうすれば、あんな戦いかたしなくても…」

さやか「…もういい」

まどか「え?」

さやか「まどか、ありがとう。ひさしぶりに顔見れて良かったよ。危ないことしないようにね」スタスタ

まどか「…」ギュ

さやか「…なに?」

まどか「言ったよ。今のさやかちゃんを一人にはできないって」

さやか「…大丈夫だよ」

まどか「大丈夫じゃないよ」

さやか「…まどか、離して」

まどか「…ダメ」



605: 2011/09/08(木) 22:40:30.42 ID:7Js+sg4X0

さやか「…っ」ポロポロ

さやか「お願い…だから…離して…」

まどか「…さやかちゃん?」

さやか「…まどかといる方が、あたしは辛いの」

    「あたし、今なに考えていたと思う? まどかに対して酷いこと考えたんだよ?」

    「もう、今のあたしは前のあたしとは違うの」

    「自分でもよくわからなくなっちゃった。何がしたいのか、何がしたかったのか」


まどか「そんな…、さやかちゃんはさやかちゃんだよ」

    「…ううん。もうまどかの知ってるような、あたしはどこかに行っちゃったんだ」

    「当然だよね? 魔法少女になって、ゾンビにされて、変わらないほうがおかしいんだ…」

    「前のあたしだったら、こんなこと考えるわけなかったのに…」

    「おかしいんだよ? 今だって、まどかに対して、嫌なこと考えてるの」

まどか「…!」ビクッ




606: 2011/09/08(木) 22:41:37.70 ID:7Js+sg4X0

さやか「…なんで、こんなこと考えるようになっちゃったんだろうね、あたし」

    「口には出さないよ、絶対。でもいつまで我慢できるかもわからない。もう自分がどうなるのかも、わからないの」

    「それでも、あたしはまどかの友達だから…、今はまだ本当にそう思えているから」
    
    「こんなこと、絶対に言いたくない」

    「…ごめん。今のあんたはあたしに何もできない。一緒にいても苦しくなるだけなの」

    「…だから、まどか」




さやか「あたしを…、友達を傷つける救いようのない人間にしないで…」

まどか「…っ」パッ



607: 2011/09/08(木) 22:42:16.07 ID:7Js+sg4X0

まどか「あ…」

さやか「…ありがと、まどか」

まどか「ち、違うの…これは…」

さやか「もう、見かけても近づかないほうが良いよ。あたしは前のあたしのゾンビだからさ」

まどか「ま、待って…」

さやか「…それじゃあね、まどか。元気でね」

まどか「さやかちゃん…待って……」

ほむら「…!」テテテ



608: 2011/09/08(木) 22:42:56.81 ID:7Js+sg4X0

さやか「…なによ」

ほむら「…ほむ」

さやか「ついてこないで。あんたが大事なのは、あたしじゃなくてまどかでしょ?」

ほむら「…」

さやか「…ついてくるな」

ほむら「…」

さやか「ついてくんなっ!」

ほむら「…!」ビクッ

さやか「…っ」タッタッタッ



609: 2011/09/08(木) 22:43:31.08 ID:7Js+sg4X0

まどか「さやかちゃん…」

ほむら「…ほむむ」

まどか「追いかけなきゃダメだったのに。手を離しちゃ、いけなかったのに…」

ほむら「…」




610: 2011/09/08(木) 22:44:21.01 ID:7Js+sg4X0




さやか「――――!」

使い魔「!」




611: 2011/09/08(木) 22:45:29.67 ID:7Js+sg4X0

―マミ宅―

杏子「…とにかく、まどかは少しさやかから離れたほうが良いと思う」

まどか「そんな…でも…」

杏子「気持ちはわかるけど、そんなこと言った手前、アイツの方もまどかに顔を合わせづらいだろ。
   それにその様子を聞くと、アンタと会うことは今のさやかのやつには逆効果だと思う」

ほむら「ほむ…」

まどか「ほむほむも、そう思うの…? でも、さやかちゃんを一人にはできないよ…」

マミ「それなら、私が行こうかしら。どんな言葉をかけたらいいのかわからないけど、それでも…」

杏子「いや、マミは少しでも魔女や使い魔を狩って、戦いの勘を取り戻したほうが良いと思う。
   アイツの指導をしていて、まだイマイチ勘が戻ってないんだろ?」

マミ「それは、そうだけれど…」

杏子「ワルプルギスの夜が来るまで、もうあまり時間がねぇんだ。貴重な戦力なんだから、勘を取り戻すことを優先すべきだよ」

マミ「でも、美樹さんのことはどうするの? 放っておくことはできないわ」



612: 2011/09/08(木) 22:46:18.36 ID:7Js+sg4X0

杏子「…さやかのやつは、アタシが行く」

まどか「杏子ちゃんが?」

マミ「いいの、佐倉さん? あまりこんなことは言いたくないけれど、美樹さんは貴方のこと…」

杏子「でも、アタシがまどかやマミたちに協力することになったことはアイツも知ってるんだろ?」

まどか「うん。それは伝えたけど…」

杏子「じゃあ、大丈夫だろ。さすがにまどかの言葉を信じないってことはないだろうし。
   それに、もし襲いかかってきても、アイツの癇癪ぐらい受け止めてみせるよ」

まどか「杏子ちゃん…」

マミ「…そうね。もしかしたら、今の美樹さんには親しかった私たちより、
   佐倉さんのような赤の他人に近い人の方が、話をできるのかもしれないわ」

杏子「そうだよ。それにこうやって本当に生きてる姿を見せれば、少しは安心してくれるかもしれねーしよ」




613: 2011/09/08(木) 22:47:31.64 ID:7Js+sg4X0

マミ「それじゃあ、佐倉さん。美樹さんのこと、頼んでもいい?」

杏子「おう」

まどか「また、前みたいに戦ったりしちゃだめだよ?」

杏子「あん時のことは反省してる。二度とやらねぇ。
   喧嘩売られても、何もしねぇさ」

まどか「約束だよ?」

杏子「ああ、まどかはマミの手伝いをしてやってくれ。手助けしすぎると、練習にならないからほどほどにな」

まどか「わかった」

マミ「佐倉さん。美樹さんのことは心配だけど、あなたも自分を大切にしてちょうだい。
   もう、仲間なんだから」

杏子「わかってるよ。ワルプルギスが来た時にリタイアしてて戦えませんでしたじゃ、シャレにならねーしな」

まどか「杏子ちゃん、さやかちゃんのことをお願い。
    …今のわたしじゃ、力になれないみたいだから」

杏子「おうよ。まかせておけ」

ほむら「ほむほむ」

杏子「ほむほむも、安心して待っててくれよ」ナデナデ



614: 2011/09/08(木) 22:48:12.27 ID:7Js+sg4X0

マミ「それにしても、彼女、美樹さんのことに関しては積極的ね」

まどか「杏子ちゃんも、さやかちゃんのこと好きなんですよ、きっと」

マミ「そうかしら。あまり互いにいい印象を持ってないように見えたけど…」

まどか「…もしかしたら、似てるのかも」

マミ「え?」

まどか「さやかちゃんと…杏子ちゃん」



615: 2011/09/08(木) 22:48:50.77 ID:7Js+sg4X0

引用: ほむら「体が縮んだわ…」まどか「じゃあ代わりにわたしが頑張るね!」