628: 2011/09/10(土) 21:35:54.96 ID:ssZVjmht0

629: 2011/09/10(土) 21:36:49.50 ID:ssZVjmht0

――――


さやか(…今、何やってたんだっけ?)

さやか(ああ、使い魔倒してたんだ)

さやか(弱いなぁ…。こんなんじゃ、人を襲っても大して被害を出さなさそう)

さやか(もっと、強いのはいないの? そういうのじゃないと、街を守った感じがしないじゃない)


もう誰にも頼らない

630: 2011/09/10(土) 21:37:21.47 ID:ssZVjmht0





杏子「さやか!」





さやか(痛みがないって、ホント楽)

さやか(負ける気しないなぁ…。勝っても何も感じないけど)

さやか(ほら、あたしこんなに頑張ってるんだよ。何も感じなくなって、それでも頑張ってるんだよ)

さやか(だから、褒めてよ。ねぇ、だれか…)



631: 2011/09/10(土) 21:38:03.95 ID:ssZVjmht0
杏子「…」ボロボロ

さやか「バカじゃないの? いつもいつも、あたしにズタボロにされてさ。何がしたいのさ、あんた」

杏子「…そんなことしに…来たわけじゃ…ねェ」

さやか「それで、しつこく帰って来いって言ってくるわけ? ウザイよ。あんた」

杏子「…さや…か」

さやか「氏んでよ、いなくなってよ。あたしのために何かしたいならさ、前の時みたいに」ドスッ

杏子「うぁ…」

さやか「できないよね。結局、あんたは自分が一番大事なんだもんね。ほら、あんたはそういう人間なんだ」

杏子「…」

さやか「なによ。気絶しちゃったの? 全く、何でこんなのに一度負けたんだか」

杏子「…」

さやか「あたしはあんたと違って、使い魔も倒さなきゃいけないんだから、無駄な力使わせないでよね」



632: 2011/09/10(土) 21:38:36.38 ID:ssZVjmht0

さやか(もっと、魔女や使い魔を倒さないと…)

さやか(それにしか、あたしに意味なんてないんだから)

さやか(…何で、倒さなきゃいけないんだっけ?)

さやか(恭介のため? そんなわけない。恭介はあたしに何もしてくれなかったんだから)

さやか(世界を守るため? そんなわけない。だってこんな世界なんて、守る価値なんてないんだから)

さやか(…あれ)

さやか(じゃあ、何であたし…)



633: 2011/09/10(土) 21:39:03.56 ID:ssZVjmht0

さやか「ねぇ、あたしが戦う理由を教えてよ」

杏子「…」

さやか「何でこんなことになってるのよ。あたし何で、魔法少女なんかになったの?」

杏子「…」

さやか「何でゾンビにされなきゃいけなかったの? 何で、まともに生きられなくならなくちゃいけなかったの?」

杏子「…」

さやか「何で、あたしこんな目にあってんの? あたしがいる意味なんてあるの?」

杏子「…」

さやか「ねぇ、お願い…教えてよ」



634: 2011/09/10(土) 21:39:29.48 ID:ssZVjmht0

さやか(…ああ、そうだ)

さやか(まどかだ)

さやか(まどかを、守らないと)

さやか(弱いまどかが戦ってて可哀そうだから、あたしは魔法少女になったんだ)

さやか(いけない…また、どこかで戦ってるんだろうなぁ)

さやか(待っててね、まどか。あたしが、守ってあげる)




さやか「まどか、今行くからね…」フラフラ

杏子「…」




635: 2011/09/10(土) 21:40:06.06 ID:ssZVjmht0

―魔女空間―

まどか「…――…」
ほむら「―――…?」
まどか「――!」

魔女「…」




さやか(いた…! しかも魔女と一緒)

さやか(全く、魔女を前にしてほむほむと話してるなんて。ホント抜けてるというかほっとけないっていうか…)

さやか(まどか…今守ってあげるからね…)

さやか「まど…」




636: 2011/09/10(土) 21:40:35.94 ID:ssZVjmht0



まど「」フッ 

 ガガガガガガガガガガ バシュバシュバシュバシュバシューン チュドーン

魔女「…――」



さやか(あれ…?)



637: 2011/09/10(土) 21:41:36.50 ID:ssZVjmht0

――――

まどか「マミさん。調子はどうですか?」

マミ「ええ。ようやく実戦の勘が戻ってきた感じよ。もう問題なさそうね」

まどか「ごめんなさい。わたし、魔女に集中しててあまり援護できませんでした…」

マミ「ふふっ。相手は使い魔ですもの。そこまで遅れは取らないわよ。
   まぁ、ここしばらくは情けない姿を見せていたもの。鹿目さんが心配するの仕方ないわよね」

まどか「そ、そんなことないですよ」

マミ「いいのよ。ソウルジェムのこと、ショックじゃなかったと言ったら嘘になるし。まだ、気持ちの整理がついたとも言えないわ。
   でも、大丈夫。なんてったって先輩ですものね。これ以上、かっこ悪い姿は見せられないもの」

まどか「…無理しないでくださいね。
    その、普通の体のわたしが言えたことじゃないかもしれませんけど…」

マミ「気にしないで。それよりも、鹿目さんこそ無理はしないでね」

まどか「ほむほむにも、よく言われます」

ほむら「ほむむ!」

マミ「ワルプルギスの夜まで、もうあまり時間もないのだもの。もし鹿目さんがいなかったら、戦いは苦しくなるわ。
   お互い、万全の状態で挑めるようにしないとね」

まどか「はい!」



638: 2011/09/10(土) 21:42:53.96 ID:ssZVjmht0

マミ「それにしても、まさか鹿目さんがここまで強くなるなんてね…」

まどか「えへへ、ありがとうございます」

マミ「さっきの魔女なんて、時間を止めてすらいなかったじゃない。凄いわ」

まどか「できるだけ、魔力は消耗しないようにするって決めたんです。
    その…ソウルジェムはほむほむそのものだから、あんまり穢れとか溜め込みたくないなって…」

ほむら「ほむ…」

マミ「…そうよね。自分に汚れが溜まるなんて、あまりいい気分じゃないものね」

まどか「それに、あんまり能力に頼るのもどうかなって。
    ほむほむにアドバイスをもらって、武器に魔力をこめたり、体を強くする配分を変えてみたり色々やってみたんですけど…」

マミ「ええ。確実に成果は出ていると思うわ。というより、もしかしたら鹿目さん、もうわたしより強いのかも」

まどか「えっ、そ、そんなことないですよ。わたしなんてまだまだ…」

マミ「あら、なって数週間で魔力の配分を考えるまでになるなんて、凄いことだわ。
   魔法少女になって一か月も経ってない後輩に抜かれちゃうなんて、ちょっとショックかな?」

まどか「マ、マミさ~ん…」

マミ「ふふっ、冗談よ。でも鹿目さんはもう間違いなく戦力としては一級品よ。
   何だか変身するたびに、魔力も能力も上がっているみたいだし、キュゥべえが言っていた『才能がある』っていうのも本当だったみたいね」

まどか「そうだとしても、わたし一人の力じゃないです。
    ほむほむがいて、マミさん達がいてくれたからここまでこれたんだと思います」

マミ「それでも一番はあなた自身の力よ。もっと自信を持っていいわ」

まどか「そうでしょうか…」

マミ「そうよ。だからしゃんとしなさい、鹿目さん。
   あなたはもう立派な魔法少女なんだから、ね?」

まどか「はいっ!」



639: 2011/09/10(土) 21:44:07.45 ID:ssZVjmht0



さやか「…」



さやか(なんだ…そうだったんだ。もう、守る必要なんてないんじゃん)

さやか(もう、まどかはあたしを必要としてないんだ…)

さやか(あはっ…あははははっ)

さやか(じゃあ、あたしが魔法少女でいる意味って何?)

さやか(ねぇ、だれか教えてよ)

さやか(だれか…)



640: 2011/09/10(土) 21:44:40.76 ID:ssZVjmht0

さやか(…)

さやか(…そうだ、あんたのせいよ)

さやか(あんたがいるから、こんなことになったんだ)

さやか(あんたが…、魔法少女になんか…こんなことに…)

さやか(…)




さやか「…キュゥべえ、いるんでしょ? 出てきなさいよ」

QB「呼んだかい?」



641: 2011/09/10(土) 21:45:15.51 ID:ssZVjmht0

―帰り道―

まどか「魔力を弾丸に込めるのは上手くいったね」

ほむら『ええ。目に見えて魔女への効果が上昇したわ。やはり、単なる物理衝撃よりも魔法の方が効果があるようね。
    私はそこまで魔法の扱いが上手くなかったからできなかったけど、まどかの才能なら問題なく使っていけそうよ』

まどか「でも、気を付けないとね。弾をたくさん撃つやつだと、魔力も一気に消費しちゃうみたい」

ほむら『そうね。フルオートで撃つ時は注意しましょう』

まどか「本当は、弾を全部魔法で造って撃ちだせればいいんだけど…」

ほむら『それだと、魔力の消費量が大きくなってしまうわ。やはり、このやり方が一番よ』

まどか「そういえばほむほむ。前から気になってたけど、この武器とか弾ってどこから…」

ほむら『巴マミは一人パトロールをすると言っていたわね。一人で最後の復帰の調整をしたいのでしょう。
    心配でしょうけど、ここは彼女の意思を尊重しましょう』

まどか(露骨にはぐらかされた…)




642: 2011/09/10(土) 21:46:07.62 ID:ssZVjmht0

まどか「…大丈夫かな」

ほむら『今日の戦い方を見る限り、もう一人でも大丈夫でしょう。魔女と遭遇しても、問題ないわ』

まどか「マミさんじゃなくて…、さやかちゃんと杏子ちゃん」

ほむら『…そうね。確かに心配だわ』

まどか「杏子ちゃん。体に傷跡が残っているよね。魔法で直しているみたいだけど、隠しきれてないよ…」

ほむら『美樹さやかね。考えるまでもなく。あの杏子が遅れを取るとは思えないから、おそらく癇癪に付き合っているのでしょう』

まどか「ねぇ。やっぱり、わたしが…」

ほむら『だめよ、まどか。美樹さやかは貴方の助けを拒絶した。今の自分の醜態を見られたくないとも言っていたわ。
    貴方が彼女にしてあげられることは、何もない。辛いだろうけど、我慢して頂戴』

まどか「そんな…」

ほむら『そもそも、こういった問題は本人がどうにかしなければいけないの。佐倉杏子が美樹さやかに付いたのは、そういった意味では適格だと思うわ。
    彼女は甘やかせるようなことはしないし、かといって見捨てるようなこともしない。今の美樹さやかには杏子のような存在が一番必要なのよ』



まどか「…くやしいなぁ」

ほむら『まどか?』

まどか「友達なのに、こんな時役に立てないなんて。くやしいよ」

ほむら『…こういったことには、状況によって向き不向きがあるから仕方ないわ。
    美樹さやかが、自身に折り合いをつけられるように祈りましょう。それくらいしかできないもの私たちにはね』

まどか「…うん、そうだね」




643: 2011/09/10(土) 21:46:36.35 ID:ssZVjmht0



   RRRRRRRR



まどか「あ、電話…。え?」

ほむら『どうしたの?』

まどか「さやかちゃん…から」

ほむら『! とりあえず出てみましょう。受け答えは、慎重に選ぶのよ?』

まどか「う、うん」




644: 2011/09/10(土) 21:47:10.62 ID:ssZVjmht0

まどか『…もしもし、さやかちゃん』

さやか『…まどか? 今大丈夫?』

まどか『うん、大丈夫だよ』

さやか『…ごめん、あんときのあたしどうかしてた』

まどか『いいの。気にしてないよ!』

さやか『ううん、友達のあんたにあんなこと言っちゃって…。だから、ちゃんと謝りたいの。
    だから、これから会ってくれない?』

まどか『え? 今から…?』

さやか『お願い。今、謝らないときっと後悔するから…』

まどか『…わかった。じゃあ、どこで会おうか?』

さやか『そのことだけど…』



646: 2011/09/10(土) 21:48:12.70 ID:ssZVjmht0



  Pi



ほむら『美樹さやかは、なんと…?』

まどか「えっとね。謝りたいから、会いたいって。場所は、ここからあまり離れていないところだけど…」

ほむら『今から…?。電話じゃだめだったの?』

まどか「酷いことしたから、直接会って謝りたいって。それから、一人で来てほしいって」

ほむら『一人で?』

まどか「うん。わたしに以外、情けない姿見せたくないって言ってたんだけど…」

ほむら『…』



647: 2011/09/10(土) 21:48:50.79 ID:ssZVjmht0

まどか「ほむほむ?」

ほむら『怪しいわ』

まどか「え?」

ほむら『心境の変化が急すぎる。佐倉杏子の説得が上手くいったのかもしれないけれど…』

まどか「電話じゃ、杏子ちゃんのことは一言もなかったよ?」

ほむら『一人で来い、という内容だものね。杏子が一緒なら、私がいても問題はないはず』

まどか「でも、もしかしたら…」

ほむら『…まどか。気持ちはわかるけれど、今の美樹さやかには慎重に行動したほうが良い。
    佐倉杏子の傷を見ても、不安定になっているのは確か。下手をすれば、襲いかかってきてもおかしくないわ』

まどか「そんなこと、さやかちゃんはしないよ!」

ほむら『でも彼女も言っていたでしょう。「もう、見かけても近づかないほうが良い」と。
    彼女自身、分かっているのよ。今の自分がまどかを傷つけてしまうとね』

まどか「…」



648: 2011/09/10(土) 21:49:38.79 ID:ssZVjmht0

まどか「…それでも、わたしは行くよほむほむ」

ほむら『…そう』

まどか「あの時、さやかちゃんの手を離しちゃったから、今度はちゃんと掴んであげたいの」

ほむら『危険すぎるわ。何が起きるかわからない。それほど、美樹さやかは不安定なの。何が起きるか…』

まどか「うん。でもね、わたしに会いたいって言ってきてくれたのはチャンスだと思うんだ。
    誰かに会いたいって思ったのなら、そこからまた一人じゃなくてみんなと居たいって考えてくれるかもしれないから」

ほむら『…そうね』




まどか「止めないんだね、ほむほむ」

ほむら『貴方は頑固だもの。一度言いだしたら聞かないことくらい、理解しているわ』

まどか「…ごめんね」

ほむら『パートナーだもの。このくらいはなんてことないわ。
    でも、一人で行かせるのは反対。近くで待機するわ。何か少しでも不穏な気配があったら、すぐにテレパシ―で呼ぶこと。時間を止めてすぐに駆けつけるわ』

まどか「ふふっ、ほむほむも頑固だよね。絶対に引かないもん」

ほむら『責任感と言ってほしいわね。私にはまどかを守る義務があるのだから』



649: 2011/09/10(土) 21:50:18.42 ID:ssZVjmht0

まどか「…責任感だけ? わたしを守ってくれるのは、それだけなの?」

ほむら『え?』

まどか「寂しいなぁ、わたしはほむほむのこと好きだったのに。
    ほむほむはわたしのこと、責任があるから守ってくれるだけだったんだね」

ほむら『え、あ、いや、その…』

まどか「わたしの片思いかぁ」

ほむら『…』



ほむら(ど、どうしよう…)

ほむら(いっそのこと、好きだと…。でも、それじゃあ別れるときに辛く…)

ほむら(な、なにか良い返答の仕方は…)



650: 2011/09/10(土) 21:51:20.35 ID:ssZVjmht0

まどか「…ごめん」

ほむら『え?』

まどか「な、何か変なこと言っちゃった。困らせる気なんかなかったのに」

ほむら『…』

まどか「あ、あやまるから…。機嫌なおして…ね?」




ほむら『…私も』

まどか「ご、ごめんさい…」

ほむら『貴方のこと好きよ。まどか』

まどか「あの、その。…え?」

ほむら『私も貴方のこと好きだといったの』

まどか「え!? あ、え?」

ほむら『あら、随分動揺するのね。それとも、私のことを好きだというのは嘘だったのかしら?』

まどか「う、ううん。それは、その…本当」

ほむら『ありがとう。嬉しいわ』

まどか「は、恥ずかしいよ」

ほむら『あなたから振ったのよ、それくらい我慢しなさい』

まどか「うう…」




651: 2011/09/10(土) 21:52:05.08 ID:ssZVjmht0

ほむら『ほら、いつまでも悶絶していないで、早く美樹さやかのところに行ってあげなさい』

まどか「う、うん…」

ほむら『…まどか、私は貴方のことが好き。大事だわ。
    だから、貴方のことを守らせて。お願いだから、無茶はしないでね』

まどか「…わかった」

ほむら『くれぐれも気を付けて。何かあったら、直ぐに呼ぶこと。いいわね?』

まどか「うん。それじゃあ、行ってくる」



ほむら(…これで、よかったのよね?)




652: 2011/09/10(土) 21:53:53.45 ID:ssZVjmht0


―公園―


ほむら(ここなら、美樹さやかの指定した場所からテレパシーも届くし、この時間なら人もいない)

ほむら(届いたら、一回の時間停止ですぐに駆けつけられるし、待つにはうってつけね。何事もなければ、それでよいのだけれど…)



ほむら(…それにしても)

ほむら(まどかに好意を口にしてしまった…)

ほむら(やはり、マズかったかしら。ワルプルギスを倒したら、姿を消さなきゃいけないのに。
    そうしたら、別れる時辛くなってしまって…)

ほむら(…いえ、もうこのような関係になっている以上、それを言っても仕方ないわね)




653: 2011/09/10(土) 21:54:53.86 ID:ssZVjmht0

ほむら(…そういえば、別れるときはどのようにきりだしたらいいのかしら)

ほむら(これまでずっとワルプルギスの夜のことばかり考えていて、そのことを深く考えたことがなかったわね)

ほむら(…いえ、考えたくなかったというほうが正しいのかしら。この世界では、これまで以上にまどかと一緒にいられたから)

ほむら(いえ、だからこそ別れる時のことを考えないと)

ほむら(ようやく、約束を果たせそうなんだもの。最後になってまどかの心に傷を残すようなことになってはいけないわ)




ほむら(…でも)

ほむら(まどかが傍にいてほしいというのなら)

ほむら(それならいっそ、できるだけまどかの傍にいてあげたほうが…)



654: 2011/09/10(土) 21:55:40.72 ID:ssZVjmht0




   「暁美さん」

   「もう大丈夫だよ、ほむらちゃん」

   「さよなら。ほむらちゃん。元気でね」

   「やったぁ~、すごい、すごいよほむらちゃん」

   「ほむらちゃん、やっと名前で呼んでくれたね。嬉しい…な」

   「えっと…わたしとほむらちゃんってどこかで会ったことあるのかな?」

   「ほむらちゃんだって、ほむらちゃんのことだってわたしは忘れないもん! 昨日助けてくれたこと、絶対忘れたりしないもん」




   「暁美さん」
   「暁美さん」
   「暁美さん」



655: 2011/09/10(土) 21:56:18.26 ID:ssZVjmht0

ほむら(…何を考えているの、私は)

ほむら(私はまどかとは、もう違う時間を生きてることを忘れたの?)

ほむら(今更、こんな膨れ上がったズレを、埋められるわけないじゃない)

ほむら(何度、時間を巻き戻したというの。どれくらい、失敗を繰り返したか覚えているでしょう)

ほむら(もう、誰も私のことを理解できる人なんていない。同じ時間を過ごした人なんて、どこにも…)

ほむら(そんなこと、わかってたのに…。分かっていたはずだったのに…)

ほむら(こんな、大好きな人に自分を理解してもらえないなんて)

ほむら(こんなこと…)




656: 2011/09/10(土) 21:56:46.56 ID:ssZVjmht0

ほむら「…」グス

ほむら(ごめんさい、まどか。私、貴方と一緒にはいられない)

ほむら(まどかと一緒にいれば、私は貴方に他の世界の思い出を求めてしまう。
    そして、それが叶わないと認識してしまえば私はそのことに絶望するだろう)

ほむら(でも、そんなことはしたくない。まどかを絶望の原因になんて、させたくない)

ほむら(だからお願い。私がいなくなっても、悲しまないで)

ほむら(貴方を、私にとっての希望でいさせて…)

ほむら(お願いだから…)



657: 2011/09/10(土) 21:57:49.15 ID:ssZVjmht0



  ヒュン




ほむら「?!」

ほむら『な…?』

???「夜の公園のベンチに無防備に座ってるなんて。怖い人に捕まったらどうするの?」ケラケラ

ほむら「…」

???「にしても、こんな簡単に上手くいくなんてね。ちょっと、勘が鈍ってるんじゃない? ベテランの名が泣いているよ」

ほむら「…」

???「ま、しかたないか。あんたは、まどかに全部押し付けた卑怯者だもんね」

ほむら「ほむむ…」

ほむら『…あなたは』



658: 2011/09/10(土) 21:59:42.49 ID:ssZVjmht0




さやか「さて…氏んでもらうよ」

ほむら『美樹…さやか…』




662: 2011/09/10(土) 22:06:14.11 ID:ssZVjmht0

ほむら(くっ…体を握られて、身動きが取れない…!)

さやか「もがいてるもがいてる。でも無理だよ、もう完全にあんたはあたしの手の中だから」

ほむら(これじゃあ、時間を止めても…)

さやか「時間を止められると厄介だからね。こうさせてもらったわよ? これなら、止めても何の意味もないでしょ」

ほむら「…」


ほむら『まどか、返事をしてまどか!』

QB『無駄だよ』

ほむら『…! キュゥべえ!』

さやか「ああ、まどかを呼ぼうとしても無駄だから。キュゥべえのやつが止めているからさ」

ほむら(なっ…)

QB『君たちの念話は僕が管理している。残念だけど、君の声がまどかに届くことはないよ』

さやか「アイツも、あんたのことが目障りだったみたいでさ。あんたをまどかの前から消すことを提案したら、すぐに乗ってきたよ」


ほむら(くっ…)

ほむら(油断した…。なにかあるとは感じていたけど)

ほむら(私の方を狙ってくるなんて…)




664: 2011/09/10(土) 22:06:58.62 ID:ssZVjmht0

さやか「何で、ここにいるのかって顔してるわね。安心しなさい。まどかは生きてるわよ」

ほむら「…!」

さやか「今頃は、ちょっと待ちぼうけ食らってるけどね。まどかには何もしてないよ」

ほむら「…」ホッ


さやか「…何、ほっとしたような表情してるのよ」

ほむら「…?」

さやか「あんた、まどかを危ない目に合わせてる張本人でしょ? そんな気持ちがあるなら、まどかの隣から姿を消しなさいよ」

ほむら「ほむ…?」

さやか「…そうだ。あんたがいるからいけないんだ。
    あんたさえいなければ、まどかだって危ない目に合わなくて済んだし、強くなることだって…!」

ほむら(何を…、何を言っているの?)



666: 2011/09/10(土) 22:07:28.70 ID:ssZVjmht0

さやか「あんたさえいなければ…」

ほむら「ほ…むっ?!」

さやか「あたしは、まどかを守り続けることができたのに…!」ギリギリ

ほむら「ほっ…むっ」ジタバタ

さやか「苦しい?でも我慢してよ。これくらいの八つ当たり」

ほむら「むーむー!」

さやか「おーおー、あがくねぇ。でも無駄無駄」

ほむら「むみゃ!」ガブ

さやか「あははは、噛みついてるよ。でも残念でした。今のあたしは何にも感じない身体だから、そんなんじゃ怯みもしないよ」

ほむら「…」ギリ

さやか「悔しい? 悔しいでしょ。でも、あたしの方が悔しかったんだよ。あんたに役目を取られてさ」

ほむら「むっ…むっ!」ジタジタ

さやか「ったく、ウザったい…。いっそのこと、頭もぎ取ってやろうかしら」ガシ

ほむら「…!」

さやか「おとなしくなったね。まあ、いい心がけだと思うよ。今のあたしは、文字通りあんたの命を握ってるんだからさ」

ほむら「…」ブルブル



667: 2011/09/10(土) 22:08:08.21 ID:ssZVjmht0

さやか「あんたはまどかを傷つける」グッ

ほむら(ぐっ…)

さやか「あんたがいる限り、まどかは危ない目にあい続けるし、あたしはまどかを守ることができないの」ググッ

ほむら(あ…う…)

さやか「あんたに分かる? 守りたい相手が自分よりも強くて、何の役にも立たないこの気持ちが」

ほむら(なん…とか…隙を…)

さやか「もうあたしには、まどかを守ることしか存在する価値がないのに。なんなのよこの仕打ちは」

ほむら(腕は…動く…。何か…武器…)

さやか「消えてよ。あんたがいなくなれば、まどかは危ない目にも合わないし、あたしもまどかを守ることができるんだ」

ほむら(怯ませ…られれば…)

さやか「そうなれば、わたしが魔法少女になった意味があるんだ」

ほむら(火器じゃ…無…)

さやか「まどかを守れないわたしは、もう何の価値もないんだからさ」

ほむら(…!)



668: 2011/09/10(土) 22:08:55.46 ID:ssZVjmht0

ほむら(…ふざけないで)

ほむら(まどかが、どれだけあなたことを心配していたか、知っているの?)

ほむら(どれだけ大切に思われていたか、貴方は知らないでしょ!)

ほむら(それを自分に価値がないなんて考えるなんて、まどかを馬鹿にしているの?!
    あなたを心配したまどかの気持ちは全部無意味だっていうの!)



ほむら「ほむほむほむほむほむほむほむほむ!」

さやか「…うるさいな。ここに来て命乞いでもしてるの? ホント、あんたはどうしようもないね」

ほむら「ほむむほむほむほむほむ!」

さやかもう、いいや。痛め付けるのも飽きた。バイバイ」

ほむら(うっ…ぐっ…)カチッ

さやか「?」

ほむら(貴方なんかに…)

さやか「何、悪あがきしてんの? 時間でも止めるつもり?」

ほむら(殺されるものか…!)




669: 2011/09/10(土) 22:09:22.63 ID:ssZVjmht0




   ヒュッ




さやか「え?」

ほむら(閃光手榴弾。サイズは小さくても、この距離なら…!)バッ



670: 2011/09/10(土) 22:09:51.51 ID:ssZVjmht0



   カッ キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!



さやか「あぎゃ」

ほむら(拘束が緩んだ!)パッ

さやか「!!!!???!!?!?!??!?!?!」

ほむら(く、こっちもダメージが大きい。でもっ!)

さやか「こらっ、逃げっ…!」

ほむら(早く時間を止め…)




671: 2011/09/10(土) 22:11:07.16 ID:ssZVjmht0

さやか「っざけんなぁぁっ!」ビュン

ほむら(! 蹴り、避け…)




   バキッ!



ほむら「――」



672: 2011/09/10(土) 22:11:50.93 ID:ssZVjmht0

さやか「ったく、油断も隙もありゃしない…」

QB「大丈夫かい、さやか?」

さやか「キュゥべえ、あいつは? ちょっと目と耳がやられちゃって何もわからないんだけど」

QB「君のキックを受けて、地面に横たわってるよ。ピクリとも動かない」

さやか「…もしかして、氏んだ?」

QB「いや、かろうじて息はあるみたいだ。といっても、虫の息だけどね」

さやか「…ああ、目が直ってきた。こういうときには便利ね。ゾンビの身体って」

QB「戦うための体なんだ。当然のことだよ」




ほむら「…」

さやか「ホントに生きてるのコレ? 何か手足ヤバくない?」

QB「少なくとも氏んではいないよ。それにこれくらいじゃ魔法少女は氏なない。それじゃあ、魂をソウルジェムに変えた意味がないからね」

さやか「…ま、いいか。ソウルジェムを砕けばいいんでしょ、要は」ジャキッ

QB「全く。始末をするなら、最初からこうすればよかったんだ」

さやか「まあね。でも、ちゃんと話をしておく必要があると思ったから」

QB「話?」

さやか「ムカツク奴とはいえ、まどかを守ってくれてたのは事実だし」

QB「やれやれ、これから頃す相手にそんなこと考えるなんて、人間は相変わらずよくわからないよ」

さやか「別に、こいつの為じゃないわ。あたしのけじめの為。でもそれももう終わり」



さやか「一思いに、楽にさせてあげるわ」



673: 2011/09/10(土) 22:12:22.63 ID:ssZVjmht0

さやか「今まで、まどかを守ってくれててありがと。そこは感謝してる」

ほむら「…」

さやか「でも、もうまどかが戦って傷つく姿を見たくないの」

ほむら「…」

さやか「あんたの事は忘れない。あんたは私が魔法少女になったきっかけのひとつだし、命の恩人でもあるしね」

ほむら「…」

さやか「だから、ごめんね。謝っても謝りきれることじゃないけど。そのかわり、まどかはこれからはあたしが守るから」

ほむら「…」

さやか「じゃあね。ほむほむ」





ほむら(ま…ど…か…)





674: 2011/09/10(土) 22:13:02.02 ID:ssZVjmht0










まどか「ほむらちゃん!」










705: 2011/09/12(月) 22:37:28.29 ID:muo+N4Nn0
色々な意見、ありがとうございます。
話の方針ですが、ハッピーエンドを目指す予定です。

続きを投下します。

706: 2011/09/12(月) 22:38:48.44 ID:muo+N4Nn0

さやか「なっ、まどか?!」

まどか「ほむらちゃん! しっかりして、ほむらちゃん!」

さやか「ちょっとキュゥべえ! 何で、まどかがここに!」

QB「知らないよ。僕は何もしていない」

さやか「なにとぼけているのよ! あんたがテレパシーを使えるようにしたんでしょ?!」

QB「まさか。そんなことをして、一体何の意味があるんだい? テレパシーの制限はかけたままだよ」

さやか「じゃあ、なんでまどかがここにいるのよ!」

QB「さあね。どうやって彼女がここに来たのか。僕も興味があるよ」

まどか「待ってて、今治してあげるから!」ポウ

QB「…凄いね、お互いの傷なら治療できるようになったんだ。思ったより状況は進行してるみたいだ」

さやか(これじゃあ…。こんなはずじゃあ…)

まどか「ほむらちゃん! ほむらちゃん!」



707: 2011/09/12(月) 22:39:31.73 ID:muo+N4Nn0





まどか「…さやかちゃん」





さやか「…っ」

まどか「何してるの…。何なのこれ…」

さやか「ち、違うの…。これは…その…」

まどか「どうしてさやかちゃんが、こんなことしてるの…?」

さやか「ま、まどか、話を聞いて…」

まどか「こんなことするのが、さやかちゃんのやりたいことだったの…? さやかちゃんはみんなを守りたいんじゃなかったの?」

さやか「ま、まどか…。だって、そいつは…。まどかを…」

まどか「弱い者いじめをするなんて、そんなのさやかちゃんらしくないよっ…」

さやか「…」

まどか「なんで…こんな酷いこと…」



708: 2011/09/12(月) 22:40:08.38 ID:muo+N4Nn0

さやか「…るさい」

まどか「…さやかちゃん?」

さやか「…うるさい」

まどか「…え」

さやか「うるさいうるさいうるさい!」



709: 2011/09/12(月) 22:42:33.61 ID:muo+N4Nn0

さやか「あんたにあたしの何がわかるっていうのよ!

    あたしはね! 恭介のことが好きだった! マミさんみたいに街を守りたかった! まどかが傷つくのが嫌だった! それだけなの!
    それが何?! 何でどれも上手くいかないの! 何で誰もあたしを認めてくれないのよ!
    恭介は仁美が好きだったし、街の人は誰もあたしに感謝なんかしてくれない! 挙句に、あんたまであたしのことを否定するの?!

    あんたはそいつに戦わされたんでしょ?! 辛かったんでしょ! だったらあたしが、何とかしてあげるわよ! いつもそうだったもんね! あんたは優しくて、貧乏くじばっか引いてさ!
    あたしがあんたを守ってるのよ! それなのに、あたしのことを責めるの?! ふざけるんじゃないわよ!

    何で…何で、みんな、あたしを必要としてくれないの!」




710: 2011/09/12(月) 22:43:33.79 ID:muo+N4Nn0

まどか「さやかちゃん…」

さやか「…まどか、そいつをこっちに渡して」

まどか「…だめだよ」

さやか「そいつがいなくなれば、まどかは苦しまなくてすむんだ。
    魔女と戦うことになったも、こんなふざけた運命に巻き込まれたのも、全部そいつの都合でしょ?」

まどか「…」

さやか「まどかがそんなことに付き合う必要なんてないじゃん。だからさ…」




まどか「…勝手なこといわないで」





711: 2011/09/12(月) 22:45:03.78 ID:muo+N4Nn0

まどか「きっかけは確かにほむらちゃんだよ。でも魔法少女になるって決めたのは、わたし自身なの」

さやか「違う! まどかはそいつのせいで…」

まどか「ううん、他の誰でもない、わたしの気持ち」

さやか「そんなことない! だってまどかは優しいから、そいつの身代わりになろうとしたんでしょ?!
    辛かったんでしょ! 止めたかったんでしょ! だからあたしは…っ!」

まどか「…違うよ。それに辛いこともあったけど、それは全部自分で決めたことだから。誰のせいでもないの。

    さやかちゃん。さやかちゃんからみたら、わたしは状況に流されているように見えたのかもしれない。
    でも違う。こんなことがなくても、わたしはきっと魔法少女になっていたと思う」

さやか「…」



712: 2011/09/12(月) 22:46:35.06 ID:muo+N4Nn0

まどか「さやかちゃん、魔法少女になったのは誰のせいでもない、わたしの意思。
    自分で始めたことだから、その運命も因果もわたし自身がなんとかしなきゃいけないの。

    わたしが魔法少女になって守れたものがあって、でもその一方で苦しんだり泣いている人がいるのも確かで。
    だからこそ、そのことは自分でなんとかしなくちゃいけない。

    わたしはわたしの始めたことについて、責任を取らなきゃいけない。
    そのことをさやかちゃん押しつけるようなことはできないよ。

    わたしが…頑張らなきゃ」




713: 2011/09/12(月) 22:47:23.28 ID:muo+N4Nn0

まどか「さやかちゃん。ほむらちゃんは傷つけさせないよ」

さやか「…」

まどか「ほむらちゃんも、わたしのせいで苦しんでる人の一人だから、助けたいの」

さやか「…」

まどか「だから、さやかちゃんお願い。こんなことはもう止めて」

さやか「…」

まどか「ほむらちゃんのせいじゃない。全部、わたしが決めてはじめたことだから…」

さやか「…」



715: 2011/09/12(月) 22:48:04.49 ID:muo+N4Nn0

さやか「…ああ、そう」

まどか「さやかちゃん…!」

さやか「…つまり、こういうことでしょ」





さやか「あんたも、あたしがいらないんだ」





716: 2011/09/12(月) 22:48:45.71 ID:muo+N4Nn0

まどか「…!」

さやか「あんたも他の奴と同じだ。あたしのこと必要ないんでしょ?」

まどか「違うよ、さやかちゃん! そういうことじゃないの! さやかちゃんは友達なの!
    友達だから、甘えちゃいけないの! 自分で決着をつけないと!」

さやか「…まどか、そいつを渡さないなら。力づくでも、いくよ?」

まどか「さやかちゃん!」

さやか「もうまどかは戦わせない…。こんなふざけた現実、まどかに必要ない…」

まどか「…ほむらちゃんはこれ以上、傷つけさせないよ」

さやか「まどかはわたしが守る…。守るんだ…」

まどか「…さやかちゃん」



717: 2011/09/12(月) 22:49:52.28 ID:muo+N4Nn0

さやか「…まどか。最後だよ。そいつをこっちに渡して」

まどか「できないよ。さやかちゃん」

さやか「…あ、そう」ジャキッ

まどか「…」ギュッ

さやか「…手間かけさせないでよ。あたしにこれ以上まどかを傷つけさせる気なの?」

まどか「ごめん、さやかちゃん。でも…」




まどか「ほむらちゃんは、やらせない」

さやか「…っ!」





さやか「――――――――――――!」
まどか「…」




718: 2011/09/12(月) 22:50:37.89 ID:muo+N4Nn0




   ガキン




杏子「何やってんだ! さやか!」バキッ

さやか「あうっ…!」ドサ

まどか「杏子…ちゃん?」

杏子「まどか! 大丈夫か!」

さやか「杏子…!」

杏子「おい、ほむほむが…!」

さやか「またあんたは、あたしの邪魔を…!」




719: 2011/09/12(月) 22:51:23.32 ID:muo+N4Nn0

杏子「いい加減にしろ!」

さやか「っ!」ビクッ

杏子「何だよこれは!」

さやか「あんたには関係ない! これはあたしとまどかの…」

杏子「さやかはまどかの友達だろ! 友達に何しようとしてたんだよ!」

さやか「違う! あたしもこんなこと…したく」

杏子「どんな理由があったら、まどかを傷つけるっていうんだ!」

さやか「…あたし…だって…」

杏子「まどかを守るっていうのは嘘だったのか! そんなことも忘れちまったのかよ!」

さやか「!」




720: 2011/09/12(月) 22:52:11.20 ID:muo+N4Nn0

杏子「自分が何をしたのか見てみろ!」

まどか「さやかちゃん…」

ほむら「…」

杏子「まどかは斬りつけられる寸前だったし、ほむの奴はボロボロだ。酷い有様だ!」

さやか「…そんな…の…」

杏子「全部お前がやったことだよ! 友達を傷つけようとしたのも、弱い奴に暴力をふるったのも全部!」

さやか「ち…ちが…」

杏子「正義の味方なんじゃなかったのか! さやか」

さやか「あ…あ…」




杏子「これが…正義の味方のやることかよ!」

さやか「う、あ…」




721: 2011/09/12(月) 22:53:38.00 ID:muo+N4Nn0




    (あたしは見返りが欲しいわけじゃない)

    (それにこれは、まどかを助けるためでもあるんだから!)



    「当然です! だって、ここで願いを叶えなくちゃ絶対後悔するって思ったんですから!」




    「だから、まどかは安心していいよ。これからはアタシも街の平和を守るから!」



    「マミさん、あたし決めました。あたしはあんな魔法少女には絶対になりません」





さやか「あああああああああっ!」ダッ





722: 2011/09/12(月) 22:54:28.22 ID:muo+N4Nn0

杏子「待て逃げんな、さやか!」

まどか「杏子ちゃん!」

杏子「あっ…くっ…まどか、ちょっと待ってろ。マミの奴を探して…」

まどか「わたし達は、大丈夫だから! それよりさやかちゃんを!」

杏子「でも…っ!」

まどか「さやかちゃんを追いかけて! 今のわたしじゃ追いつけるかわからないけど、杏子ちゃんなら間に合う!」

杏子「まどか…?」

まどか「今追いかけなきゃダメなの! じゃないとさやかちゃんが…、本当に…手遅れに…」



723: 2011/09/12(月) 22:55:27.63 ID:muo+N4Nn0

杏子「手遅れ? 手遅れってなんだおい!」

まどか「わたしは、手を離しちゃったから…」

杏子「え…?」

まどか「お願い、杏子ちゃんは手を離さないで上げて! さやかちゃんの傍にいてあげて!」

杏子「まどか…」

まどか「杏子ちゃん!」

杏子「…わかった」

まどか「さやかちゃんのこと、助けてあげて…」

杏子「任せろ! あいつの首根っこ捕まえて、まどかの前で土下座させてやるからな!」シュタッ



まどか「…さやかちゃん」






724: 2011/09/12(月) 22:56:45.96 ID:muo+N4Nn0

―駅―

さやか「…」

杏子「こんなとこに居やがったか。どっか遠くにでも逃げるつもりだったのか?」

さやか「…」

杏子「少しは頭冷えたか?」

さやか「…」

杏子「とにかく、反省しろ。んでもって、まどかに謝りに行け。気まずいなら、アタシも一緒について行ってやるからさ」

さやか「…無理だよ」

杏子「無理じゃねェよ。ったく、ホントお人よしだぜ。あんなことになっても、まだアンタのこと心配してるんだぜアイツ」

さやか「…あはは、まどからしいや」



杏子「でも、アタシはそれくらいじゃ許さねえ」

さやか「…うん、そうだろうね」

杏子「とりあえず、謝るときは土下座しろ。ほむほむには元気になるまで不眠不休で看病だな。
   あと、しばらくお前を監視するからな。変なことをしようとしたら、マジでしばらく再起不能になるまでボッコボコにしてやる」

さやか「…はは、厳しいね」

杏子「当たりめぇだ、バカ。とにかく、一人にはしないからな」

さやか「…」

杏子「…だからさ、もう帰ってこいよ」

さやか「…」

杏子「アンタは一人じゃないよ。気付いてないかもしれなけど、アンタを必要としてくれる人が一杯いるんだからさ」



725: 2011/09/12(月) 22:57:40.60 ID:muo+N4Nn0

さやか「…ダメなの」

杏子「え…?」

さやか「もうだめなの…あたし」

杏子「おい、大丈夫か…?」

さやか「一体何が大切で何を守ろうとしてたのか、もう何もかも、わけ分かんなくなっちゃった」

杏子「おい! しっかりしろ、さやか!」

さやか「挙句の果てに、まどかを傷つけて…。おかしいなぁ…あたしはまどかを守るはずだったのに」

杏子「今からでもいいじゃねーか! 一度の失敗くらいで諦めんなよ! 失敗したんなら、もう間違えることもないだろ!」

さやか「結局あたしは何もわかってなかったんだ。正義の味方がなんなのかも、自分が何を望んでたのかも」

杏子「おい、こっち見ろ! どこ見てんだよ、さやか!」



さやか「その結果が…このありさま」




726: 2011/09/12(月) 22:58:56.64 ID:muo+N4Nn0

杏子「おまっ…」

杏子(ソウルジェムが…穢れでどす黒く…!)

さやか「はは…。これあたしなんだっけ」

杏子「待ってろ! 今グリーフシードを…」

さやか「恨みや妬みで汚れきって…、これがあたしなんだね」

杏子「早く貸せ! これじゃあ、お前…!」

さやか「本当…自分が嫌になる」

杏子「さやか!」





さやか「あたしって、ホントばか」





727: 2011/09/12(月) 23:03:01.75 ID:muo+N4Nn0



QB「この国では、成長途中の女性のことを、少女って呼ぶんだろう?」

QB「だったら、やがて魔女になる君たちのことは、魔法少女と呼ぶべきだよね」





728: 2011/09/12(月) 23:03:42.41 ID:muo+N4Nn0

―魔女の結界内―

杏子「んなっ…!」

杏子(魔女の結界?! さっきまで何も感じなかったんだぞ…!)

魔女「ooooooooooooooooooooooo!!!!!!」

使い魔「waaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!」

杏子「何だテメェ…」ジェムショウカン

魔女「aaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」

使い魔「waaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!」

杏子「さやかに何しやがった!」シュッ




730: 2011/09/12(月) 23:05:14.01 ID:muo+N4Nn0

魔女「uuuuuuuuuiiiaaaaaaaaaaaaa!!」

杏子(騎士…? 馬鹿でかい剣振り回しやがって!)

使い魔「waaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!」
使い魔「waaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!」
使い魔「waaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!」

杏子(それになんだ…? あの使い魔、こいつを応援してんのか?)

魔女「iiiiiiiiiiiaaaaaaaaaoooooo!!!」バシュバシュ

杏子(おまけに変な車輪まで…。くっそ、近づけねェ…!)

さやか「…」

杏子「おい、さやか! なに寝てんだ!」

魔女「nnnnnnnnnnooooooooonnnnnnnuuuuuuuuuuu!!!」

杏子(畜生…! さやかにやられた傷のせいで…調子も…)

魔女「qqqqqqqqqqaqaaaaaaaaaaaaafffffffffuuuuu!!!」

杏子(さやかをここから連れ出さなきゃならねェってのに…!)



733: 2011/09/12(月) 23:06:27.12 ID:muo+N4Nn0



   ドンドンドンドンドン


魔女「gggaaaaaaaagggggaaa!!」

マミ「佐倉さん! 平気?!」

杏子「! マミか!」

マミ「パトロールをしていたら、魔女の急に気配が出て来てみたんだけど…」

魔女「uuuuuuuuuuuiiiiiiiiii!!!」

マミ「もう動けるの?! かなり撃ちこんだのに!」

杏子「あの野郎…、さやかと話していたら急に現れやがった」

マミ「美樹さんと?」

杏子「ああ、さやかのやつはあそこに…っく」

マミ「佐倉さん、その傷…!」

杏子「ちょいと、またさやかのやつとやりあってな。おかげで調子がでねぇ。
   正直、ヤバかった。来てくれて、サンキューな」

マミ「そう…。でも私もあまり余裕があるとは言えないわ。今日は、もう何回か戦ってきたところだし…」




735: 2011/09/12(月) 23:07:19.12 ID:muo+N4Nn0

杏子「…しかたねぇ、逃げるか」

マミ「…そうね、それが懸命だと思うわ。美樹さんも倒れていることだし」

杏子「一発、デカいのかましてくれ。その隙にアタシはさやかのやつを」

マミ「ええ、お願いね。出来るだけ、派手に行くわ」

魔女「mmmmmmmmmmmmmmmhhhhhhhhhhaaaaaaaaa!!!」

杏子「来やがった!」

マミ「佐倉さん、上に投げて!」

杏子(おっしゃ、槍を巻きつけて…)ジャラジャラ

杏子「どぉうりゃ!」ブオン

マミ「ティロ・フィナーレ!」


   ドォォォォォォォォン!


マミ『佐倉さん!』

杏子『っし、逃げるぞ!』ダダダダ

魔女「aaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」




736: 2011/09/12(月) 23:07:56.22 ID:muo+N4Nn0

―線路―

杏子「…」ハァハァ

マミ「なんとか…結界から抜けたわね…」ゼェゼェ

杏子「っぐ!」

マミ「ちょっと待って、今傷をふさぐから…」ヒール

杏子「悪ィいな…。やっぱり、傷を治すのはマミの方が上手だな」

マミ「そういう祈りで魔法少女になったのだもの、当然よ」

杏子「アタシはもういい。それより、さやかのほうを…」

マミ「…ええ」



737: 2011/09/12(月) 23:08:36.99 ID:muo+N4Nn0

さやか「…」

マミ「おかしいわ…。外傷は何もない。体に特に問題は無いわよ?」

杏子「んじゃあ、やっぱりソウルジェムに何かあったのか…」

マミ「そういえば美樹さんのソウルジェムは? どこにも見当たらないけれど…」

杏子「わからねぇ…急に何か起きたと思ったら、いきなりあの魔女が現れて…」

マミ「じゃあ、ソウルジェムが体から離れているのかしら。この感じ、あなたの時とそっくりよ」

杏子「じゃあ、あそこにあるのか? くっそ、魔女の奴が他の場所に移ってるといいんだが…」




738: 2011/09/12(月) 23:09:46.82 ID:muo+N4Nn0

QB「無駄なことは止めたほうが良いよ」

マミ「…キュゥべえ」

杏子「無駄だと? ふざけんな、さやかを探すことのどこが無駄なんだよ」

QB「杏子。君はもしかしたら、とっくに事実に気が付いているんじゃないのかい? だったら、現実を見つめるべきだよ」

杏子「…!」

マミ「佐倉さん、何か知っているの…?」

杏子「違う! そんなわけねぇ! そんなこと…」

QB「やれやれ、じゃあ僕から言わせてもらうよ。その方が君も認識しやすいだろう」

マミ「…キュゥべえ、何か知っているの?」

QB「ああ、美樹さやかの居場所をね。といっても、君たちがついさっき戦っていたんだけど」

杏子「…」

マミ「え?」




QB「美樹さやかは、穢れを溜め込み過ぎて、ソウルジェムをグリーフシードに変化させた。魔女を生んで消滅したよ」

マミ杏「…」

QB「さっきの魔女が生まれ変わった美樹さやかだよ。といっても、もう彼女は何も覚えていないだろうけどね」





739: 2011/09/12(月) 23:10:37.56 ID:muo+N4Nn0

杏子「てめぇ…」

QB「その氏体は早く処理してしまったほうが懸命だと思うな。君たちの社会でも、確認されていない氏体の処理は面倒なんだろう?」

杏子「そんなこと、今まで黙ってやがったのか!」

QB「魔法少女と魔女の関係のことかい? 聞かれなかったからね。それに警告はちゃんとしたから、非難される道理はないと思うけれど」

杏子「ふざけんな! これがテメェの目的か…! アタシ達を同士討ちさせることが、狙いだったんだな!」

QB「それは目的でなくて手段だよ。そのおかげで、僕たちは自分たちの目的を達成できる。教えてあげるよ、これは君たちにとっても有益な話だしね」

杏子「…!」

QB「君たちの…」ザシュ



740: 2011/09/12(月) 23:11:09.86 ID:muo+N4Nn0



  ザシュズブザシュザスドスドスブシュ



杏子「…んなもん、聞きたくねぇ。どうせ、ロクでもないもんに決まってる」

QB「…」

杏子「畜生、さやか…」




741: 2011/09/12(月) 23:12:53.45 ID:muo+N4Nn0


   シュル


杏子「?!」

杏子(リボンが…体に巻きついて!)

マミ「…」

杏子「おいマミ! どうしちまったんだ!」

マミ「…うっ…うっ」ジャキ

杏子「ちょっと待て! 冗談きついぞ!」

マミ「…うっ…あ…」ポロポロ

杏子(やべえ、ショックがデカすぎたのか?!)

マミ「あ…ああ…うあああ」ポロポロポロ

杏子(っていうか、人のこと考えてる場合か! これじゃあ避けられねぇぞ!)

マミ「ああああああああああ」





742: 2011/09/12(月) 23:13:24.77 ID:muo+N4Nn0




マミ「ソウルジェムが魔女を産むなら、みんな氏ぬしかないじゃない!」

マミ「あなたも、私も…!」




 ドン




744: 2011/09/12(月) 23:14:07.44 ID:muo+N4Nn0




杏子「うぉりゃ!」シャッ




マミ「きゃっ!」

杏子(あぶねェ、寸前でリボンを切れたぜ…。武器が刃物でよかった)

マミ「離して! 離してよ!」

杏子「離したら、また心中しようとするだろ! いいから大人しくしろ!」

マミ「だって私たち、みんな魔女になるのよ! どうしようもないじゃない!」

杏子(完全に錯乱してやがる…。ひっぱたくなり、なんなりして落ち着かせねーと…)

マミ「魔女になんかになりたくない! なりたくない!」

杏子(くっ、両手は抑え込んでて使えねーし。何がショックを与えられる方法は…)

マミ「もうやだあぁ、やだよぉ!」

杏子「あああああああああああ! もう!」



745: 2011/09/12(月) 23:15:17.27 ID:muo+N4Nn0




   ムチュ




マミ「!!!!?????!!!!」

杏子(ちくしょう、こんなやり方しか思いつかなかったじゃねーか!)

マミ「んー! んー!」

杏子(あっ、こら逃げんな!)ガッシ

マミ「?!?!?!?!?!?!?」バタバタ

杏子(ええい、こうなったら)チロ

マミ「??!!!??!!……」

杏子(…ついでに)ペロペロ

マミ「…――」

杏子(初めてだったんだけどなぁ…)

マミ「―」




747: 2011/09/12(月) 23:16:24.30 ID:muo+N4Nn0

杏子「ぶはあっ!」

マミ「…」

杏子「この…、やっと大人しくなったな」ゼェゼェ

マミ「…」

杏子「ったく、何でこうアタシのまわりはこう面倒なやつが多いんだ…」

杏子(まあ、こいつが錯乱したからこっちは冷静になれたけどよ)

マミ「…」

杏子「さて、こいつも連れてまどか達と合流しねーと」



751: 2011/09/12(月) 23:17:04.87 ID:muo+N4Nn0




さやか「…」

杏子(さやか…)





778: 2011/09/14(水) 22:39:46.37 ID:qvmU5e160
続きを投下します。

779: 2011/09/14(水) 22:40:29.01 ID:qvmU5e160

―まど部屋―

ほむら「…」

まどか「…ほむらちゃん」

ほむら「…」

まどか「さやかちゃん、止められなかった…」

ほむら「…」

まどか「こうならないように、頑張ってきたはずだったのに…」

ほむら「…」

まどか「ほむらちゃんはずっとこんな気持ちで戦ってたんだよね。何度も何度も」

ほむら「…」

まどか「ごめんね、ほむらちゃん」

ほむら「…」

まどか「わたし諦めないよ。きっと、さやかちゃんを元に戻す方法はあるよ。ほむらちゃんが諦めなかったように、わたしも諦めない」

ほむら「…」

まどか「もちろん、ほむらちゃんのことも絶対」

ほむら「…」

まどか「だから、早く元気になって。ほむらちゃん」



780: 2011/09/14(水) 22:41:12.97 ID:qvmU5e160

―マミ宅―


マミ「あの…、そろそろソウルジェムを返してほしいのだけれど…」

杏子「うるせぇ、豆腐メンタル」

マミ「と、豆腐メンタル?!」

杏子「ショックだったとはいえ、いきなり心中しようとしやがって」

マミ「あ、あれは…その…」

杏子「とにかく、ソウルジェムはこっちで預かる。また、錯乱して無理心中されるのは勘弁してほしいからな」

マミ「学校はどうするのよ! まさか、ついてくるつもり?」

杏子「あのなぁ…、もう呑気に学校なんかいってる場合じゃねーだろ。今日と同じく当分休め。どーせ、大した用事なんか無いだろ」

マミ「…」ズーン




781: 2011/09/14(水) 22:42:13.32 ID:qvmU5e160

マミ「…鹿目さんは?」

杏子「ほむらの看病してるよ、まだ目を覚まさないんだとさ」

マミ「ほむら?」

杏子「ああ、マミにはまだ言ってなかったな。ほむほむの本名だと。暁美ほむら」

マミ「そういえば、ほむほむも本当は普通の人間だったのよね。すっかり忘れていたわ」

杏子「まぁ、あんななりだしな」

マミ「考えたら何も知らないのよね、あの子のこと。喋れないからというのもあるけど」

杏子「まぁ、何か色々あるのは確かだろうな。魔法少女が魔女になることも、知っていたみたいだし」

マミ「え?」

杏子「まどかがあんまりショック受けてなかったからな。こっちはマミん時みたいになるんじゃないかと、ヒヤヒヤしてたっつーのに」

マミ「そう…なの」




782: 2011/09/14(水) 22:42:58.30 ID:qvmU5e160

杏子「ほむほむ知っていたのかもな。魔女と魔法少女のこと」

マミ「そうね…。そういえば、ソウルジェムの浄化に関しては、私が言わなくても特に念入りしていたような気がするわ。美樹さんはサボることが多かったのに」

杏子「そっか。まあ、知ってりゃそうなるわな」

マミ「ええ。誰しも魔女になんかなりたくないものね…。絶対に」

杏子「まあ魔女の正体に関しては隠して正解だと思うけどな。
   こんなこと実際に直面しないと信じられないし、マミは豆腐メンタルで受け入れられないしな」

マミ「それはもういいでしょ!」




784: 2011/09/14(水) 22:43:46.46 ID:qvmU5e160

杏子「だっていきなりリボンで縛って、銃向けてられたんだぜ。文句の一つも言いたくなるっつーの」

マミ「だ、だって仕方ないじゃない! あ、あんなこと急に知らされたら誰だって…」

杏子「納得いくか、そんな理由! 正気に戻すのに、スゲー苦労したし」

マミ「…!」

杏子「あん? 何顔赤くしてんだ?」

マミ「あなたがそんなこと言うからでしょ! そ、それに…あんな方法で」

杏子「ああ、ちゅーか」

マミ「っ…!」カァァァァァァァァァ

杏子「言っておくけど、アタシはファーストキスだったんだ。こっちだって失うもんがあったんだから文句いうなよな」

マミ「ファ、ファ、ファ…」

杏子「あー、でも昔妹と遊びでちゅーしたっけか。家族相手じゃノーカンなんだっけ?」

マミ「知らないわよ!」

杏子「なんで怒るんだよ? 理不尽だぞ」

マミ「もういいからこの話は!」

杏子「ああ、そうだな。じゃあこの件はもう、蒸し返さないってことで」

マミ(キスなんて、わたしだって初めてだったのに!)




785: 2011/09/14(水) 22:44:37.86 ID:qvmU5e160

マミ「…美樹さんは」

杏子「…向こうの部屋に体はある」

マミ「そう…」

杏子「魔法で状態は保ってるけど、所詮は一時しのぎだ。いつかは…」

マミ「それ以上はいいわ、佐倉さん」

杏子「悪りぃ…」

マミ「いえ、辛いのはわたしも同じだもの。こんなことに、巻き込んでしまった身としては、ね」



786: 2011/09/14(水) 22:45:10.63 ID:qvmU5e160

杏子「…なんとかならねーかな」

マミ「今まで魔女が魔法少女の成れの果てなんて、聞いたこともなかったわ。
   それだけ情報が少ないのだもの。恐らく前例はほとんどないでしょうね。戻れるとしたら、それこそ奇跡みたいなものでしょう」

杏子「奇跡か…。アタシ達魔法少女はテレビじゃ奇跡を起こせる存在だったんだけどな」

マミ「現実は上手くいかないものよね。奇跡を起こすどころか最後は…」





QB「可能性がないわけじゃ――」




787: 2011/09/14(水) 22:46:56.19 ID:qvmU5e160




   ドン





杏子「声を聞いただけで瞬殺かよ」

マミ「気持ちはちゃんと表現しないと伝わらないわよ」

QB「酷いなあ、マミ。話くらいは聞いたらどうだい? 代わりはいくらでもあるけど、無意味に潰されるのは困るんだよね」

杏子「まあ、氏なないみたいだしな」

マミ「それでも、こちらの意思は十分伝わったでしょう。きっと」

QB「こんなことしなくても、僕は君たちのことは理解できるよ。そのように努力しているからね」




杏子「…で、どの面下げてきやがった、テメェ」ジャキ

QB「僕は君たちに有益な情報を持っているかもしれないんだよ? 少しは、歓迎してもらいたいものだね」

マミ「これまでの自分の振り返ることね。キュゥべえ。そうすれば、口が裂けてもそんなことは言えないと思うけれど」

QB「まったく、認識の相違から生じた判断ミスを後悔する時、何故か人間は、他者を憎悪するんだよね。理不尽と言わざるを得ないよ」

マミ「認識の相違を自覚しておきながら、事が有利に運ぶように黙っていたのなら、憎悪されても仕方ないと思うけれど?」

QB「自らの優位性を保つように行動するのは、当たり前だよ。それが合理的というものだ」

マミ「そうやって自分のことしか考えない人間は嫌われるわ。といっても、あなたは人間じゃないから人間関係のことなんて理解できないのでしょうけど」

QB「わかっているじゃないか、マミ。多くひしめく君たちが、どうして単一個体に大騒ぎするのか。その価値基準こそ、僕らは理解に苦しむなあ」

マミ「私も、あなたの考えは理解に苦しむわ」

杏子「そんな話をしに来たのか、てめぇは。それなら、無意味にその体を潰してやるけど」

QB「話をしてきたのは、君たちも同じじゃないか。まったく、理不尽だよ」



788: 2011/09/14(水) 22:47:56.77 ID:qvmU5e160

マミ「有益な情報と言ったわね。それは美樹さんのことについてかしら」

QB「まあ、そうだね。魔女になった美樹さやかは、この街に結界を張って暴れているよ」

杏子「…!」

マミ「…それだけ? あまり有益とは言えないわね」

QB「他にもあるけれど、さっきも言った通り、僕と君たちでは価値基準が違うんだ。何が有益になるかは、そちらが質問してくれないと分からないよ」

杏子「じゃあ、答えろ! さやかを元に戻す方法はあるのか!」

QB「魔女が元の人間に戻った前例は、僕の知る限りでは、無いね」

杏子「っ…」




マミ「『僕の知る限りでは』と言ったわね。じゃあ、可能性はあるということかしら?」

QB「魔法少女は条理を覆す存在だ。君たちがどれ程の不条理を成し遂げたとしても、驚くには値しない。
   さっきも言った通り、前例はないから方法はわからないけれどね。こればかりは助言のしようがないよ」

マミ「そう…、もういいわ」

QB「そうかい? 聞かれれば、まだ答えられることもあると思うけれど?」

杏子「役立たずは帰れっつってんだよ、糞害獣」

QB「酷い言われようだね。こっちは君たちの言う善意で来てるというのに。じゃあね」タッ




789: 2011/09/14(水) 22:48:57.98 ID:qvmU5e160

杏子「…どう思う?」

マミ「…たぶん、罠ね」

杏子「だよなぁ?」

マミ「希望があるような言い方をしてたけど、その実、具体的な案は何も無し。
   目的は分からないけれど、私たちに美樹さんの救出を行わせて、そして失敗してほしいのでしょうね。キュゥべえは」

杏子「やっぱ、むかつくな。アタシも引き裂いてやりゃよかった」

マミ「それよりも…、どうするの?」

杏子「…」

マミ「美樹さんのこと」




791: 2011/09/14(水) 22:50:16.42 ID:qvmU5e160

―まど部屋―


まどか(ほむらちゃん、まだ起きない)

まどか(どうしよう…、このまま起きないなんてことないよね?)

まどか(怪我の方は、魔法で治した。だから、大丈夫だよね?)

まどか(ほむらちゃん…)



  コンコン



まどか「?」

杏子「まどか、いいかい?」

まどか「あ、杏子ちゃん…」

マミ「こんにちわ、鹿目さん」

まどか「マミさんまで…、玄関から上がってもらえばよかったのに」

杏子「バカ野郎。アタシはともかく、マミのやつは学校に行っている時間なんだぞ。怪しまれるだろう」

まど「あ、そっか…」

マミ「ふふっ。後輩の家に窓からお邪魔するなんて、なかなか無い体験ね」

杏子「あのなぁ、遊びに来たんじゃないんだぞ?」

マミ「わかっているわよ。ちょっと言ってみただけ。じゃあ、鹿目さん。入るわね」

まどか「あ、はい」




792: 2011/09/14(水) 22:51:43.62 ID:qvmU5e160

まどか「さやかちゃんを助けに行く…?」

マミ「ええ」

杏子「おう」

まどか「何か方法が見つかったんですか?」

杏子「確実というわけじゃないが、一応、作戦はね」

マミ「考えたのだけれど、魔女になったとしても、あれは美樹さんに変わりはないわ」

杏子「だからさ、ひたすら呼びかけてみようと思うんだ。呼びかけるのはアイツが憧れていたマミで、アタシはそのフォロー」

マミ「もしかしたら、これで美樹さんの意識を呼び覚ませるかもしれない。それでグリーフシードがソウルジェムに戻るかはわからないけれど…」

杏子「なあに、あれだけ頑固なやつだったんだ。魔女になったところで、そう簡単に意識が消えやしねぇよ。そのままグリーフシードがソウルジェムの変わりになるかもしれねぇしな」

マミ「とにかく作戦はこれ。後は状況に応じて出たとこ勝負ってところね」

杏子「まあ、もしかしたら、あの魔女倒したら中からさやかのソウルジェムがひょっこり出てくるかもしれないし。そうしたら万々歳。上手く行くことを祈っててくれよ、まどか」


まどか「でもそれは…」

杏子「…ああ、わかってるよ」

マミ「ええ、万に一つの可能性も無いでしょうね」

杏子「でもだからって、諦めることはできないからな」




793: 2011/09/14(水) 22:52:30.86 ID:qvmU5e160

まどか「…もしかして、キュゥべえに何か言われたんですか?」

マミ「! どうして、そう思うの?」

まどか「キュゥべえは魔法少女の祈りと、絶望して魔女になったときのエネルギーを集めているんです。
    もし、マミ達やほむほむが居なくなったら、ワルプルギスと戦う為にわたしがちゃんとした魔法少女になるしかないから…」

マミ「…成る程、辻褄はあうわね」

杏子「これでアタシたちがやられれば、まどかが魔法少女になってまたエネルギーが得られる。まどかはすんげぇ才能があるんだよな」

マミ「ええ、キュウベエが見てきた中では一番の才能といっていたわ。恐らく、得られるエネルギーも膨大なものになるのでしょうね」

杏子「ついでにさやかの奴を戻せなくてアタシ達が絶望すれば、そっちのエネルギーも回収できて一石二鳥ってわけか。くっそ、腹立たしい」




794: 2011/09/14(水) 22:53:29.01 ID:qvmU5e160

マミ「…それでも、やるわ」

杏子「…ああ、そうだな」

マミ「そうだとしても、美樹さんを見捨てる理由にはならないもの」

杏子「キュゥべえの奴の手の平の上ってのは気に食わないが、さやかが戻れば何の問題もねぇ。
   それに放置するわけにもいかないしな。魔女になったとはいえ、さやかに人を襲わせるわけにはいかないんだ。
   …アイツはそんなこと、望んでなかったはずだからな」

マミ「貴方も美樹さんを見捨てるつもりは無いのね」

杏子「当たり前だ」

マミ「不思議ね。あんなに仲が悪そうだったのに。てっきり、見捨てて退治するものだと思ってたわ」

杏子「こっちにも色々あるんだよ。見捨てる気はねェよ」

マミ「…」



795: 2011/09/14(水) 22:54:28.65 ID:qvmU5e160

杏子「まどかは、悪いがここでほむほむの面倒を見ててくれ」

マミ「そうね。酷なようだけど、今の変身出来ない鹿目さんを守れるほど、こちらには余力がないわ。
   只でさえ、下手に攻撃を加えられない相手ですもの。魔法少女じゃないと…」

杏子「ま、足手まといだな」

まどか「…」

マミ「ちょ、ちょっと…」

杏子「何だよ、こういうことははっきりしておいたほうが良いだろ?」

マミ「それはそうだけど、もうちょっと言い方を…」

杏子「まぁ、確かにまどかも一緒に語りかけてくれれば、少しは可能性が増えるとは思うんだがな。
   今回はダメだ。おとなしく、そいつの面倒を見てやってくれ」

マミ「鹿目さん。あなたはその子の側に付いていてあげて。美樹さんのほうは私達に任せて、ね?」




796: 2011/09/14(水) 22:55:22.73 ID:qvmU5e160



まどか「…だめです」



杏子「まどか?」

まど「だめ…です。そんなんじゃ、マミさんや杏子ちゃんを…行かせるわけに…は」

マミ「鹿目さん? あなた…泣いて?」

杏子「…無謀だとはアタシも思うよ、まどか。でも、さやかの奴を魔女にしたままにはおけないんだ。
   どんなに上手くいく目が薄くても、やるしかねぇ。ほんの小さな可能性でも、そこにかけるしか今のアタシ達には…」

まどか「…可能性…なんて…な…い」

杏子「え?」

まどか「あの時だって、みんなで…一生懸命、呼びかけたの。でも、どうにもならなくて…結局…ほむら…ちゃんが…」

杏子「あの時?」

マミ「ちょっと待って、鹿目さん何の話をしているの?」

まどか「それで…みんな…氏んじゃって…。ワルプルギスの夜には勝ったけど…、わたし、ほむらちゃんに…お願いを…」

マミ「ほむら…さん? それってほむほむの…」

杏子「ああ、本名だけど…」

まどか「…ひっく…ひっく…」



797: 2011/09/14(水) 22:56:22.39 ID:qvmU5e160

マミ「…鹿目さん、前々から気にはなっていたのだけれど」

まどか「…はい」

マミ「あなたは何を知っているの?」

まどか「…それ、は」

マミ「もしくは、貴方たち、ね」

杏子「どーいうことだよ、おい?」

マミ「鹿目さん、別にあなたを敵だとかそういう風に言いたいわけじゃないの。そんなことないのは、出会ってからのあなたを見ればわかるわ
   ただ、何かを隠していることがあるのは、…その、あまりいい気分ではないわ」

杏子「おい、マミ。隠し事の一つや二つくらいいーじゃねーか。そこまでおおっぴらにするのもどうかと思うぞ」

マミ「悪いけれど、今回はそうもいかないの。もし魔法少女と魔女に関する情報があるなら、美樹さんを戻すためにも聞かなければいけないわ」

杏子「…そりゃ、そうだけどよ」

まどか「…」

マミ「鹿目さん、あなたどうして美樹さんにこの作戦が通用しないことを確信しているの?
   美樹さんを元に戻すために役立つ情報があるなら、教えて頂戴?」




798: 2011/09/14(水) 22:57:50.89 ID:qvmU5e160

杏子「いや、マミ。やっぱりやめとけよ」

マミ「佐倉さん…、でも」

杏子「まどかはさやかの友達なんだ。そんな情報があるなら、隠しゃしねーよ」

マミ「それは、そうだと思うけど…」

杏子「言えないなら、言えないなりの理由があって、それがアタシたちのためでもあるんだろ。
   まどかにあの糞害獣みたいに都合よく物事隠して、事を運ぶような頭はねーよ」

マミ「酷いことをさらりと言ってるわよ。でもまあ、そうね…。鹿目さんはそんな子じゃないわね」

杏子「だろ?」

マミ「…いいわ。鹿目さんごめんなさい。聞きづらいことを聞いてしまって」

まどか「そんな…」



杏子「でも、話せるようになったら話してくれよ? 何か気になるし」

マミ「…結局、貴方も気になるんじゃない」

杏子「だって気になるじゃんよ。善人まっしぐらのまどかが隠し事だぜ? こりゃ、明日にも槍の雨が降るな」

マミ「貴方が降らすんじゃないでしょうね? 気になってウズウズするとかで」

杏子「ワルプルギス用にアタシもそんな必殺技考えてみるかなー。『槍・フィナーレ!』なんつって」

マミ「…」

杏子「おい、何かいってくれよ。けっこー辛い」

マミ「…全く。これから美樹さんを助けに行くっていうのに、貴方ときたら…」

杏子「肩に力を入れ過ぎると、ロクなことにならないからな。これくらいがいいんだよ」

マミ「貴方はもっと、ギラついた野獣のような子だと思ってたのだけれど。私の勘違いだったみたいね」

杏子「野獣だって、屋根の下で三食付きの生活をすりゃ、少しは余裕も出て来るさ」

まどか「…」




799: 2011/09/14(水) 22:58:50.48 ID:qvmU5e160

まどか「ごめんさい」

マミ「鹿目さん?」

まどか「マミさんも、杏子ちゃんも。わたしのこと信用してくれてるのに、何も言えなくて…。
    ほむらちゃんにも、仲間に隠し事はダメだって言ったのに…」

マミ「気にしないで。でも、言えるときになったら言って頂戴ね?」

まどか「…はい。でも、ダメなんです。全部わたしが何とかしないと。絶対に。みんなを巻き込んじゃ…」

マミ「…」



800: 2011/09/14(水) 22:59:20.33 ID:qvmU5e160

マミ「鹿目さん、少しいい?」

まどか「…はい」

マミ「貴方は私たちに話せないことがある…いいわね?」

まどか「…」コク

マミ「それは、あなたとほむほむに関係すること」

まどか「…」コク

マミ「それを話してしまうと、私たちを何かに巻き込んでしまう」

まどか「…」コク

マミ「そして、それは絶対にやりとげなければいけないこと」

まどか「…」コク

マミ「…そう」

まどか「…」



801: 2011/09/14(水) 22:59:52.12 ID:qvmU5e160

マミ「鹿目さん」

まどか「…はい」

マミ「貴方が何をしようとしているのか。何をしなければならないのか。それは分からないわ」

まどか「…」

マミ「でも、馬鹿にしないでくれる?」

まどか「え…?」

マミ「言えないだなんて、私たちが役立たずだとでも言いたいの?」

まどか「ち、ちがいます…そんなんじゃ…」




802: 2011/09/14(水) 23:01:55.38 ID:qvmU5e160

マミ「だったら、私たちを頼りなさい」

まどか「え…?」

マミ「私たちは、鹿目さんの先輩なの。貴方が何か困っているなら力になりたい。こういうときに頼られて押し付けられてしまうのが、先輩の役割よ」

まどか「でも…」

マミ「人間、一人でできることなんてそう多くないわ。魔法少女でもそう。だから、みんなでどうすればいいか考えましょう?」

杏子「そうだぞ、まどか。難しいことがあるなら、誰かに押し付けて巻き込んじまえ」

まどか「杏子ちゃん…」

杏子「絶対にやらなきゃいけないことなんだろ? 
   だったら周りを利用でも何でもして、ちゃんと達成しろよ。手段なんか選んでんじゃねぇ」

まどか「…」

杏子「幸い、ここには巻き込まれても平気だって言ってるやつが二人いるんだからさ。頼っちまえよ。こんなチャンスは滅多にねぇぞ」


まどか「本当に、いいんですか…? 全部、わたしがいけないのに…」

マミ「かまわないわ。後輩に頼られないなんて、悲しいもの」

杏子「先輩なんて、後輩にしてみりゃ面倒押し付けるくらいしか役に立たないんだからさ。遠慮する必要はないよ」





803: 2011/09/14(水) 23:02:37.56 ID:qvmU5e160



まどか「………」

まどか「……」

まどか「…」




まどか「わたしは…――――」




818: 2011/09/16(金) 22:11:19.52 ID:eP3VFy740

―魔女結界内―


マミ「美樹さんは、ここね」

杏子「間違いねェ、魔力のパターンが昨日と一緒だ。この先にいるのは間違いなくアイツだよ」

マミ「…」

杏子「なんだよ、急に黙っちまって。怖気づいたのか?」

マミ「そうじゃないけど。…元々穴だらけな作戦だったけど、さらに以前失敗したって聞かされると、ちょっとね」

杏子「そうは言っても、他に考えが浮かばなかったしなぁ。かといって、さやかをこのままにしとくわけにもいかねーし」

マミ「…ええ、美樹さんを魔女のままにするわけにはいかないわ」

杏子「ああ、アイツは正義の味方を目指してたっていうのに。そんな残酷なことはさせられるもんか」

マミ「…やっぱり、私が」

杏子「…ごめん、そこは譲れないよ」

マミ「でも…」

杏子「いざとなった時の、止めはアタシが刺す。それがアタシのけじめだ。マミは優しい先輩のままでいてくれ」

マミ「…」



819: 2011/09/16(金) 22:12:13.29 ID:eP3VFy740

杏子「それよりも、大丈夫だよな?」

マミ「何が?」

杏子「ソウルジェム。返したけど、またいきなり発狂なんてなったら困るんだけど」

マミ「大丈夫よ、もう」

杏子「嘘じゃないよな?」

マミ「…氏ぬことはいつでもできるけど、生きることは今しかできないもの。
   それに、まだやり残したことがあるのに氏ぬのは勝手すぎる。鹿目さん達との約束もあることだしね」

杏子「それからはどうするんだよ?」

マミ「…」

杏子「やることが終わって、ワルプルギスの夜を倒したら、マミは氏ぬのか?」

マミ「少なくとも、魔女になる前には、ね。ソウルジェム…砕かない…と…」



820: 2011/09/16(金) 22:12:46.71 ID:eP3VFy740

杏子「…悪い。意地悪だったな」

マミ「ごめんなさい。やっぱり、まだダメみたい。その時のことを考えると…」

杏子「氏ぬ時のこと、考えると怖いよな。アタシも小さいころ考えてよく泣いてたよ。親父があやしてくれたけどな」

マミ「…そうなの」

杏子「やれ、いいことしてりゃ天国に行けるだのなんだの言われたけど、話の中身よりも、親父の声を聞いたら安心して怖くなくなっちまったなぁ。懐かしいよ」

マミ「…」




821: 2011/09/16(金) 22:13:43.35 ID:eP3VFy740

杏子「だからさ、マミ。一人でいるのはもう止めることにしようぜ」

マミ「え?」

杏子「誰かと居りゃ、怖いことなんて何もないよ。魔女になりかけても、きっとそいつがソウルジェムを砕いてくれるだろうし、人を襲う前に退治してくれる。
   氏ぬ時のことを考えて怖くなっても、誰かが声を聞かせてくれたり手を握ってくれれば、怖くなくなるよ、きっと」

マミ「…そうね、そうかもしれない」

杏子「ワルプルギスの夜を倒しても、一緒に戦おうぜ。倒したら、アタシ達は最強の魔法少女だ。怖いものなんて何もないよ」

マミ「ふふっ、じゃあ魔法少女カルテットの誕生ね」

杏子「おー、それならさやかのやつが戻ってくれば、ちょうど五人でヒーローになれるな! もちろん、レッドはアタシだぞ!」

マミ「私はイ工口ー? あんまり、いいポジションじゃないわね」

杏子「いやいや、その胸のおかげでポジションはぴったり…。じょ、冗談だよ冗談」

マミ「あんまりつまらない冗談を言うと、撃ち抜くわよ?」

杏子(やっぱり、ジェムを返すのは早まったかな…)




822: 2011/09/16(金) 22:15:47.58 ID:eP3VFy740

マミ「そういえば、佐倉さん」

杏子「何だ?」

マミ「あなたは、どうして美樹さんをそこまで気にするの?」

杏子「やっぱり変か?」

マミ「鹿目さんは『似た者同士』って、貴方と美樹さんのことを言っていたけど」

杏子「まどかも失礼な奴だな。アタシと似ているなんて言ったら、さやかが可哀そうだよ」

マミ「必要以上に自分を卑下するのは、感心しないわね。で、どうなの。本当のところは?」




823: 2011/09/16(金) 22:16:54.23 ID:eP3VFy740

杏子「マミは、昔ヒーロー物のテレビとかアニメ、見てたか?」

マミ「? 魔法少女ならよく見てたけど…」

杏子「アタシは何とかレンジャーとかも好きだったな。親父が厳しいから、あんまり見れなかったけど」

マミ「確かに佐倉さんはそういうの、好きそうよね。でもそれが…?」

杏子「アタシはさ、ああいうのになりたかったんだよ。きっと」

マミ「そうなの?」

杏子「そ。悪と戦う正義の味方。みんなを守る無敵のヒーローってね。アタシと親父で、表と裏からこの世界を救うんだって、魔法少女になった時はそうやって息巻いてたよ」

マミ「…それで」

杏子「大失敗。親父は一家心中図って、生き残ったのはアタシだけ」

マミ「…え?」



824: 2011/09/16(金) 22:20:10.48 ID:eP3VFy740

杏子「アタシの祈りでみんなぶっ壊れちまった。あんなこと、望んだはずじゃなかったんだけどな」

マミ「そんな…。そんなの…」

杏子「それからは見ての通りだよ。二度と他人のために魔法を使ったりしない、この力は、全て自分のためだけに使い切るって誓って、マミの知ってるアタシの完成」

マミ「そう…ごめんなさい。貴方のこと、誤解していたわ。そんなことがあったなんて」

杏子「別にいいよ。誤解も何も、過去に何があったってアタシはアタシだ。マミの印象で何も変わらないよ」

マミ「でも…」

杏子「そんなこと言いたいんじゃないんだ。それで、アタシはヒーローになることを諦めちまった。そんなこと、やるのはバカしかいないってね」

マミ「…」




杏子「そんなとき、ヒーローになろうとしてるバカが目の前に現れた。それがさやかだったんだ」

マミ「美樹さんが?」

杏子「最初はバカにしてた。次に止めさせようと思った。アタシの二の舞になる奴がいるなら、止めるのがアタシの役目だと思ったんだ」

マミ「…」

杏子「で、アイツの口論になって気付いちまった。ヒーローになれなかったアタシは、アイツにヒーローにほしかったんだってね」

マミ「ヒーローになってほしかった?」

杏子「そ。本当はアタシはヒーローが居てほしかったんだよ。悪い奴に罰を与えて、正しいことをする奴が報われる様にしてくれるヒーローがね。
   親父のために戦ってたのが、その証拠さ。親父は正しいことをしていたのに、報われなかった。だから、アタシはヒーローになろうと思ったんだ。世の中にヒーローが居ないなら、なってやろうってね」

マミ「…でも、なれなかったのよね。佐倉さんは」

杏子「そう。だからアタシはさやかに本物のヒーローになってほしかった。希望だったんださやかは。
   だから、アイツがヒーローらしくないことしたから、あんなに腹が立ったんだろうな」

マミ「そうだったの…」

杏子「アタシが勝手にアイツにヒーローをやらせようとしちまったんだ。ヒーローなんて他人の面倒を押しつけられる貧乏くじ以外の何でもないのにな。
   そんなもん、押し付けられた方はたまったもんじゃないよ」

マミ「…」

杏子「…ああ、やっぱりまどかの言う通りかもな。さやかの奴はアタシに似てたから、アタシが出来なかったことをしてもらおうと思ったんだ、きっと」

マミ「…」

杏子「ホント、バカはアタシだよ。ちゃんと止めてやりゃ、こんなことにはならなかったのかもしれないのに…」





825: 2011/09/16(金) 22:21:06.80 ID:eP3VFy740

マミ「…美樹さんは」

杏子「うん?」

マミ「あなたが何もしなくても、美樹さんは正義の味方になったと思うわ。それが、彼女のやろうとしていたことだもの」

杏子「…そうかもな」

マミ「だから、佐倉さんだけのせいじゃないと思う。何か一つに原因を求めるのは間違いよ。だから、佐倉さんがそこまで背負い込む必要はないわ」

杏子「…ありがとよ」

マミ「ちょっと、怖かったから。美樹さんのことで思いつめていたみたいで」

杏子「そうかもしれねぇな」




マミ「それと、ヒーローが欲しいなら、まず自分がなるべきよ、佐倉さん」

杏子「え?」

マミ「美樹さんにヒーローになったほしかったのなら、貴方が手本を見せればいいのよ。
   好きだったんでしょ? ヒーロー物。じゃあ、その心得をあなたが美樹さんに教えないと」

杏子「ば、馬鹿言え! アタシは失敗したんだぞ! アタシがヒーローなんて…」

マミ「一度、失敗したから何だというの? だからといって、正義に味方になれない理由にはならないわ。元悪役が改心してヒーローになるのも王道でしょ。
   それにトラウマがあるのかもしれないけれど、ヒーローが欲しいというのがあなたの願望でしょう? そこを何とかしないと、また同じことを繰り返すわ」

杏子「…」

マミ「誰かが正義の味方になれば、それはあなたの望む正義の味方になるの? 結局、貴方が欲しい正義の味方になれるのは貴方だけじゃないかしら」

杏子「…」




826: 2011/09/16(金) 22:21:46.07 ID:eP3VFy740

マミ「…お喋りはここまで見たいね」

杏子「ああ、扉の向こうから音楽が鳴り響いてやがる」

マミ「ここまで来た道、劇場の廊下みたいだったわね」

杏子「この先にいるんだろうな、さやかの奴。自分を必要とする奴の応援を聞きながら」

マミ「佐倉さん…」

杏子「確認するぜ。アタシがおとりでマミが説得役。マミはとにかく呼びかけることに集中な」

マミ「…失敗したら、退治ね」

杏子「ああ、そのときはアタシがやる」

マミ「絶対に避けるのは、ここで私と貴方、片方でも脱落することね」

杏子「ああ、さやかだけじゃない。アタシ達には、助けてやらなきゃいけない後輩が、まだいるんだからな」

マミ「それじゃあ、行きましょう」





827: 2011/09/16(金) 22:22:20.09 ID:eP3VFy740

杏子「…ヒーロー」

マミ「え?」

杏子「これで、さやかの奴助けられたら、ヒーローみたいだよな、アタシ達」

マミ「そうね。ヒーローアニメって、絶対こういう時成功するものよね」

杏子「…じゃあ、行くぞ」

マミ「準備はできてるわよ」

杏子「じゃあ…」





  バタン





魔女「uuuuuiiiiiiiiaaaaaaaaoooooo!!!!!」

使い魔「waaaaaaaaaaaaa!!!!!!」

杏子「今助けるぞ、さやか!」




828: 2011/09/16(金) 22:23:14.15 ID:eP3VFy740

―まど部屋―


   「ねぇ、ほむ――」


   「できれば、わたしはさやかちゃんに魔法少女になってほしくない」

   「魔法少女は祈りによって存在している。何かを祈って、その祈りでソウルジェムを輝かせる。そういう契約」

   「杏子ちゃんを、仲間にできないかなって」

   「…いなくならないでね?」

   「なんか、こう、踊るみたいな感じのがあったと思うんだけど…」

   「わたしね、色んな人に迷惑かけて生きてきたって最近分かったんだ」

   「ほむほむ! 変身するよ!」

   「…追いかけなきゃダメだったのに。手を離しちゃ、いけなかったのに…」



   「ほむらちゃん!」





829: 2011/09/16(金) 22:23:43.90 ID:eP3VFy740

ほむら『…ん』

まどか「! ほむほむ!」

ほむら『…まどか?』

まどか「そうだよ、ほむほむ! 良かった…起きてくれて」

ほむら『…ここは』

まどか「わたしの部屋。昨日、ほむほむはひどい怪我を負って…、それで…」

ほむら『覚えているわ。美樹さやかに私は…』




830: 2011/09/16(金) 22:24:12.43 ID:eP3VFy740

まどか「ほむほむ?」

ほむら『…まどか。美樹さやかは?』

まどか「…さやかちゃんは、魔女に」

ほむら『…そう』

まどか「…今、マミさんと杏子ちゃんが向かってる。さやかちゃんを助けるって」

ほむら「…」

まどか「あ、ごめん。お腹、空いてるよね? 何か持ってくるよ。ちょっと待ってて」




831: 2011/09/16(金) 22:25:03.92 ID:eP3VFy740

ほむら「…まどか」

まどか「ん? なに、ほむほむ?」




ほむら(思えば、おかしなことはいくつもあった)

    (たぶん、心のどこかでは薄々勘づいてた。それでも何も聞かなかったのは、期待を裏切られるのが怖かっただけ)

    (もう自分を理解してくれる人はいない。そのはずだったから)

    (だから、この有様。もっと早く、この質問をするべきだったのに)




832: 2011/09/16(金) 22:25:37.04 ID:eP3VFy740





ほむら「貴方は、わたしを知っているの?」











まどか「…うん、ほむらちゃん」






833: 2011/09/16(金) 22:26:23.52 ID:eP3VFy740

―魔女の結界内―


杏子「くっそ、さやか! いい加減にしろ!」

魔女「oooooooooooeeeeeeeeiiiiii!!!」

マミ「美樹さん! あなたがしたかったのは、こんなことじゃないでしょう?!」

魔女「aaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」

使い魔「waaaaaaaaaaaaa!!!!!!」
使い魔「waaaaaaaaaaaaa!!!!!!」
使い魔「waaaaaaaaaaaaa!!!!!!」

杏子(使い魔の応援がうるさい…! 伝わる伝わらない以前に、本当に聞こえてんのか…?
   かといって、あの周りの応援している使い魔を倒したら、きっとさやかは…)

杏子(畜生…。でも、これくらいしか方法は…)

マミ「街の人たちを守るんじゃなかったの! 鹿目さんを助けたかったんでしょう! 思い出して、美樹さん!」





834: 2011/09/16(金) 22:27:28.53 ID:eP3VFy740

魔女「vvvbbbbggggggggggaaaaaaaa!!!!」

杏子「! マミ、あぶねェ!」

マミ「きゃっ!」


  ガラガラガラガラガラ!!


杏子「悪い! あの変な車輪を捌ききれなかった」

マミ「こっちは大丈夫。佐倉さんは…」

杏子「アタシもまだ行けるよ。大丈夫だ」

マミ「役割を交代しましょう。私が車輪を処理するから、佐倉さんが美樹さんを引き付けつつ呼びかけて!」

杏子「わかった!」




835: 2011/09/16(金) 22:27:57.53 ID:eP3VFy740

杏子「おい聞け! さやか!」

魔女「ggggggggggaaaaaaaaaaa!!!」

杏子「正義の味方になるんだろ! 誰かに幸せになってほしかったんだろ!」

魔女「vvvvvvvvviiiiiiiiiieeeeeeeee!!!」

杏子「弱い人たちを守りたかったんだろ!」

魔女「xxxxxxxxxuuuuuuuuuggeeeeeeee!!!!」

杏子「魔女から守りたいって! お前が魔女になってどうするんだよ、さやか!」




836: 2011/09/16(金) 22:28:44.27 ID:eP3VFy740

杏子(…全く、本当に世話が焼けるね)

   (力もないの突っかかってきたり、人の忠告聞かなかったり)

   (でも、こんなことしたくなる気持ちもわかるよ)

   (許せないんだろ? まどかを傷つけた自分が。何がしたかったのか、見失った自分が)

   (癇癪くらいは受け止めてやるからさ。だからさ、いい加減戻ってきなよ)

   (まどかは許してくれるよ。マミだって迎えてくれる)

   (助けを欲しがっている、ほむらみたいな奴だって、いるんだぜ?)

   (気が済んだら目ェ覚ましなよ。なぁ、さやか…)





837: 2011/09/16(金) 22:29:17.97 ID:eP3VFy740

――――――

魔女「oooooooooooooooooooooo!!!」




杏子「…悪い。限界だ」

マミ「…こっちも、そうみたい」

杏子「これ以上は本当にダメだ。ワルプルギスと戦えなくなる」

マミ「グリーフシードの余裕ももうない…。ここまでね」

杏子「…畜生」

マミ「…やっぱりわたしが」

杏子「いや、大丈夫だよ。もう、覚悟は決めた」

マミ「…ごめんなさい」

杏子「あやまることはないよ。全部、アタシの勝手だ」

マミ「…」





838: 2011/09/16(金) 22:29:59.41 ID:eP3VFy740

杏子「あと、アタシ。やっぱりヒーローになれそうにないや」

マミ「え?」

杏子「友達を救えずに頃す奴なんて、ヒーローになれるわけないもんな…」

マミ「佐倉さん…」

杏子「…援護してくれ、頼むよ」

マミ「…」ポロポロ

杏子「…泣くなよ」

マミ「だ、だって…こんな結末…」

杏子「アタシだって嫌さ! でも、仕方ないじゃねぇか!
   アイツに人頃しなんて…そんなこと…させるわけには…」

マミ「…ご、ごめん…なさ…」

杏子「…行くよ。援護できそうなら、援護してくれ」

マミ「…」コク

杏子「…ありがとな」





839: 2011/09/16(金) 22:30:52.49 ID:eP3VFy740



まどか「だめだよ。杏子ちゃん」
マミ杏「…!」




マミ「鹿目さん?!」

杏子「まどか?! お前何でここに…」

ほむら「…」

マミ「ほむ――暁美さんまで…」

まどか「マミさん、杏子ちゃん。少しの間でいいから、さやかちゃんの動きを止めることはできますか?」

マミ「え…。それは…できるけど」

杏子「おい、まどか! 何するつもりだ! さやかの奴を頃すなら、アタシがっ…!」





840: 2011/09/16(金) 22:31:27.96 ID:eP3VFy740

まどか「…違うよ、杏子ちゃん。そんなことしないよ。
    とにかく、動きを止めて。そうすれば、もしかしたら…」

杏子「…」

まどか「杏子ちゃん、お願い」

杏子「…アタシは、友達が友達を頃すところなんて見たくねぇぞ」

まどか「…うん、わたしも同じだよ」

杏子「…」




841: 2011/09/16(金) 22:32:17.09 ID:eP3VFy740

マミ「…もしかして、美樹さんを救う方法があるの? 鹿目さん」

杏子「何だって?!」

まどか「…わかりません。さっきほむらちゃんと二人で思いついたことだから。上手くいくかどうかも分からないし…」

マミ「でも、可能性はあるのね?」

まどか「…はい」

ほむら「…」

マミ「佐倉さん。私がリボンで拘束するから、あなたは…」

杏子「ああ、周りを何とかするよ。まどかは悪いけど、自分の身は自分で守ってくれ」

マミ「それじゃ」シュ

杏子「…頼むぜ」シュ

まどか(…ありがとう)




842: 2011/09/16(金) 22:32:59.88 ID:eP3VFy740

ほむら『…まどか』

まどか「うん」

ほむら『正直な所、上手くいく保証はないわ』

まどか「そうだね」

ほむら『でも、変身するたびにあなたの魔法少女としての力は上がっていった。その可能性に賭ける価値はあると思う』

まどか「うん。諦めたくないもんね。絶対に」

ほむら『…そうね』

まどか「それに、これが上手くいったら証明できる。不可能なことなんてないって。そうすれば、ほむらちゃんも…」

ほむら『…後で聞かせてちょうだいね。まだ、全部聞いていないから』

まどか「うん。約束するよ」

ほむら『じゃあ、まどか…』




843: 2011/09/16(金) 22:33:42.31 ID:eP3VFy740




まどほむ「『変身!』」カッ!




――――

―――

――






844: 2011/09/16(金) 22:34:35.28 ID:eP3VFy740

杏子「魔女が、消えた…?」

マミ「鹿目さん…、いったい何をしたの?」

杏子「グリーフシードも落ちてない…。本当に消えたのか…?」

まどか「…消えたんじゃありません。戻したんです」

マミ「戻した…?」

まどか「とにかく、さやかちゃんの所に。まだ、上手くいったかどうかわからないし…」

マミ「よくわからないけれど、鹿目さんの作戦はこれで終わったのね?」

杏子「そ、そうだな。とりあえず、マミの家に行ってみよう!」





845: 2011/09/16(金) 22:35:24.95 ID:eP3VFy740

―マミ宅―


マミ「美樹さんに呼吸が戻ってる…!」

杏子「ほ、ホントか?」

マミ「ええ、心臓も動いているし体は健康そのものよ」

杏子「それじゃあ…!」

マミ「…でも、どうすればこんなことが…」




846: 2011/09/16(金) 22:36:55.44 ID:eP3VFy740



まどか「…時間を戻したんです」



杏子「え…?」

まどか「わたしとほむらちゃんの能力は時間を操作することだから…。
    もしかしたら、応用すれば誰かの時間も戻せるんじゃないかって、それで…」

マミ「まさか…! それを、魔女に使ったの?!」

まどか「…はい」

マミ「…普通の人間が魔法少女になって、ソウルジェムに魂が変わる。
   そして、ソウルジェムはグリーフシードになって魔女が生まれる…のよね?」

まどか「だから、魔女の時間を戻して、その前の状態までに…」

杏子「そんなことが、出来たのか?」

まどか「ううん、出来なかったよ。最初の変身じゃ能力そのものが使えなかったし。
    でも、変身を重ねるうちに、能力も戻ってどんどん魔法でできることが増えていったから、今のわたしならもしかしたらって」

マミ「確かに鹿目さんは才能の持ち主だけど。でもこんなことまで出来るなんて…」

まどか「ほむらちゃんが、今のわたしの能力と才能なら出来るかもって言ってくれたから」

ほむら「…」




847: 2011/09/16(金) 22:37:41.03 ID:eP3VFy740

杏子「ちょっと待て! 時間を戻したんだよな、ソウルジェムはどこにいったんだ?!」

マミ「落ち着いて考えましょう。時間を戻すということは、今のプロセスを逆に辿っていったということ。だとしたら…」

杏子「…もしかしたら、さやかは」

マミ「魔法少女じゃ…なくなった?」





さやか「…う…うん…」






848: 2011/09/16(金) 22:38:28.30 ID:eP3VFy740

杏子「さやか!」

まどか「さやかちゃん!」

さやか「え…あれ…?」

マミ「ちょっと、二人とも気持ちはわかるけど落ちついて!」

さやか「…あれ…あたし…ここは?」

杏子「おい、さやか! さやかなんだよな!」

さやか「え…あ…?」

まどか「さやかちゃん…。よかった…よかったよ…」

マミ「美樹さん。体は大丈夫? どこか、おかしいところはない?」

さやか「あ…あの…」






さやか「あなた達…誰?」





849: 2011/09/16(金) 22:39:14.01 ID:eP3VFy740




QB(まさか、魔女を元の人間に戻してしまうなんてね。恐れ入ったよ、まどか)

QB(とはいえ、美樹さやかの魔女化のエネルギーは手に入ったし、マミと杏子も相当に消耗した。こちらとしても有益な出来事だったね)

QB(…さて、予定通り状況は上手く進んだみたいだ)




850: 2011/09/16(金) 22:39:45.25 ID:eP3VFy740






QB(まどか。君はもう変身できないよ)







862: 2011/09/18(日) 22:44:18.28 ID:XWzemqKO0

―翌日 マミ宅―


マミ「ただいま…」

杏子「おう、お帰り。飯、できてるぞー」

マミ「ありがとう、さっそくいただくわ」

杏子「飯はカレーな。これしか、作れなくてよ」

マミ「ううん、ありがとう佐倉さん。疲れちゃって、とても夕飯を作る余裕がなかったの」

杏子「ほれ」ゴト

マミ「…佐倉さん、これ」

杏子「カレー味なら大抵のもんは食えるからな。食い物を粗末にしない良い料理だ」

マミ「…冷蔵庫の残り物、全部入れたわね?」

杏子「不味かったか?」

マミ「味の方なら、たぶん」

杏子「食おうぜ。もしかしたら奇跡が起きるかもしれないしな」

マミ「奇跡が起きないと、おいしくならないものを入れたのね…」

杏子「まぁ、そういうなよ。奇跡を起こすのが魔法少女なんだから」

マミ「…とりあえず、いただくわね」



杏子「で…、さやかは、どうだった?」






863: 2011/09/18(日) 22:45:03.95 ID:XWzemqKO0

杏子「じゃあ、何とかなったんだな?」

マミ「ええ。警察には道端で倒れていたのを家に運んだということで、押し通したわ」

杏子「…さやかの様子は?」

マミ「記憶がないこと以外は、健康そのものらしいわ。ただ、情緒が不安定で泣いていることが多いらしいの」

杏子「やっぱりアタシも見舞いに…」

マミ「それは我慢して。目を覚ました時にいたことは、美樹さんも覚えているだろうし。
   下手に警察にそのときの事情を聞かれて、天涯孤独の身だってバレたら、面倒なことになるわよ?」

杏子「あー、くっそ。見舞い一つ行けないなんて。何もできないのかよ」

マミ「今度、会えるような隙を見つけてみるわ。美樹さんも、目覚めた時にいた私たちに会いたいといっていたようだし、何とかしてみましょう」




864: 2011/09/18(日) 22:48:55.88 ID:XWzemqKO0

杏子「しかし、何で記憶喪失なんかに…」

マミ「…ソウルジェムに関してはわからないことも多いわ。これが私達の魂だっていうけれど、そもそも記憶とかも魂に含まれるのかどうかもわからないし。
   時間を戻したことが原因でバグみたいなものが起きてこうなったのか、それとも記憶はあくまで肉体の問題で長い間氏んでしまっていたことが原因なのか。  
   とにかく、真相はわからないわよね…」

杏子「まどかは?」

マミ「今日は学校を休んだみたい。暁美さんがついているから、大丈夫だと思うけど…」

杏子「…あんときのまどかは、見てられなかったな」

マミ「そうね…。泣き叫んで、何度もごめんねって美樹さんに謝って」

杏子「どうすりゃいいんだ。あのまま、魔女として退治されるよりはマシだ、って言っても…」

マミ「でも放ってはおけないわ。辛い状態にあるんですもの。何とかしてあげないと」

杏子「そうだよなぁ」

マミ「明日、鹿目さんの家に行ってみましょ? とりあえず今日は美樹さんの状態は電話で伝えておくわ」

杏子「ああ、頼むよ。これで少しは元気になってくれるといいけど」



マミ「もう、時間もないのよね」

杏子「…そうなんだよな」




865: 2011/09/18(日) 22:49:57.30 ID:XWzemqKO0

―まど部屋―


まどか「…はい…はい。…そうですか。…はい。…ありがとうございます。
    …わたしは大丈夫です。…はい、おねがいします」


   PI!


まどか「…」

ほむら『…まどか』

まどか「…さやかちゃん。お父さんやお母さんのことも思い出せないんだって」

ほむら『…そう』

まどか「ご飯の食べ方とか、言葉とか。そういうことは大丈夫だけど、自分のことは何にも憶えていないんだって」

ほむら『…辛いわね』

まどか「誰も知ってる人がいなくて、不安で眠れないんだって。マミさんが言ってたの。怖くて、泣いてるんだって」

ほむら『…』

まどか「わたしが悪いんだ。もっと、何かできたはずなのに…。わたしが…」

ほむら『まどか、あなたはやれるだけのことはやった。魔女を人間に戻すなんて、それまで不可能だったこともやり遂げた。
    美樹さやかは十分救われたわ』

まどか「…救われてなんかいないよ。好きだった上条君のことも忘れちゃって、他にも色んなものをなくしちゃって」

ほむら『…じゃあ、貴方は美樹さやかはあのまま魔女として氏んだ方が良かったとでも言いたいの?』

まどか「違う! そんなの絶対違うよ!」

ほむら『まどか。貴方は神様じゃない。出来ることと出来ないことがある。何でも出来ると思っているのなら、それは傲慢だわ』

まどか「でも、もしかしたら他に良いやり方があったかもしれないんだよ? これじゃあ、さやかちゃんが可哀そうすぎるよ…」

ほむら『可哀そうなんかじゃないわ。美樹さやかは救われた。呪いを撒き散らすこともなく、魔法少女の運命からも解放されて、普通の人間として生活を送れるようになった。
    あの状況から、ここまで戻れたのが奇跡よ』

まどか「でも…」




866: 2011/09/18(日) 22:51:27.62 ID:XWzemqKO0

ほむら『…いい加減にして』

まどか「…ほむらちゃん?」

ほむら『まどかのおかげで確かに救われた人がいる。なのに貴方はその人を否定するの? あなたは不幸な人間ですって』

まどか「…そんな、わたしは」

ほむら『貴方は人を助けたの。貴方に救われた人がいるの。でもまどかは『あなたは不幸です』ってその人に言うの?
    ふざけないでよ。救われたのに、救われてなんかいないって言ってもう一度絶望させるの?』

まどか「…それは」

ほむら『…助けられたわ。美樹さやかも、そして私も』

まどか「…!」

ほむら『…ねぇ、貴方と出会ったのは間違いだったの? あそこで魔女に殺された方が、私は幸せだったの? 
    貴方と友達にならないほうが、私にとっては良かったの?』

まどか「…ごめん」

ほむら『わたしだって…、貴方に助けられたのに…。助けてくれて…嬉しかったのに…』

まどか「…ごめん、ごめんね」

ほむら『それが間違ってるだなんて…そんなこと…言わないで』





まどか「…ごめん、ほむらちゃん」

ほむら『…私は貴方を助けるって…、でも、まどかを助けることが出来なくて…、でも、貴方を氏なせたくなくって、それで…』

まどか「…うん、全部知ってる。ほむらちゃんのソウルジェムが教えてくれたから」





867: 2011/09/18(日) 22:52:18.53 ID:XWzemqKO0

まどか「最初はね、夢だと思ってたの」

ほむら『夢?』

まどか「うん。会う前に見たほむらちゃんが、何か怖いものと戦ってる夢。
    でも、最初に変身したときから、その夢が妙に鮮明に思い出せるようになって…」

ほむら『…それは、たぶん』

まどか「うん。夢じゃなかったんだって、マミさんからワルプルギスの夜のことを聞いたときに分かったの。
    話の中の光景と夢が、あんまりにもそっくりだったから」

ほむら『…前の世界の戦いね、きっと』

まどか「…実はね。あのときに、ほむらちゃんの名前、もう知ってたんだ」

ほむら『え?』

まどか「結構、大変だったんだよ? 何度も『ほむらちゃん』って言いそうになっちゃって。
    でも、ほむらちゃんは自分のこと隠してるみたいだし、どうしてほむらちゃんの記憶が見えるのか自分でも説明できなかったから、言い出せなくて」

ほむら『そうだったの…』



まどか「それからね、変身するたびに自分の知らない記憶が思い出せるようになったの。
    さやかちゃんが魔法少女になってて戦ってたり、杏子ちゃんが一緒に戦ってくれてたり。杏子ちゃんのことを思い出したのは出会った後だったけど」

ほむら『…まさか、以前の世界の記憶? でも、どうして…』

まどか「ちょっとちがうよ、ほむらちゃん」

ほむら『え?』

まどか「だって、その記憶の中にほむらちゃんがいなかったもん。
    居たのは、わたし。ほむらちゃんに守られたり、魔法少女になって戦ってたりしてたわたしだった」

ほむら『ま、まさか…』

まどか「うん、わたしは記憶を思い出したんじゃない。ほむらちゃん記憶が見えるようになってたの」






868: 2011/09/18(日) 22:53:02.70 ID:XWzemqKO0

ほむら『…まどか』

まどか「なに?」

ほむら『…恥ずかしいわ』

まどか「ふぇっ?! だ、大丈夫だよ! 魔法少女に関係あること以外は触れないようにしているし…」

ほむら『…でも、見たのでしょう?』

まどか「な、何でも見えるわけじゃないの。ほむらちゃんが忘れているよな記憶はわたしもわからないし」

ほむら『…』

まどか「見てほしくないような記憶や見ちゃいけないような記憶はわかるから見てないよ、ホントだよ?」

ほむら『…まどか』





869: 2011/09/18(日) 22:54:21.22 ID:XWzemqKO0






ほむら『どうして…打ち明けてくれなかったの?』






870: 2011/09/18(日) 22:55:53.13 ID:XWzemqKO0

まどか「…言えるわけないよ」

ほむら『どうして?』

まどか「ほむらちゃんは、わたしを助けるために何度も何度もやり直して、何度も泣いて、それでも諦めなくて」

ほむら『…』

まどか「わたし、そんなほむらちゃんの気持ちも知らないで魔法少女になって、その気持ちを踏みにじってたんだよ?」

ほむら『え…?』

まどか「最低だよ、わたし。こんなに心配してくれてた友達がいたのに、何も気がつかないで勝手なことばかりいって」

ほむら『違うわ、貴方は知らなくて当然よ! 私も何も言わなかった。貴方が責任を感じることなんて…』

まどか「…関係ないよ。結局、ほむらちゃんをこんなに苦しめたことには変わらないもん」

ほむら『まどか…』




871: 2011/09/18(日) 22:58:37.93 ID:XWzemqKO0

まどか「だからね、わたしはほむらちゃんの友達でいちゃいけないんだって思った」

ほむら『…え』

まどか「ほむらちゃんの友達でいる資格なんてわたしには無いもの。

    でも、ほむらちゃんをこんな運命から救ってあげたかった。繰り返しから助けてあげたかった。
    だからわたしは、ほむらちゃんと契約した魔法少女のわたしは、ただほむらちゃんを助けるだけの存在でいようって決めたの。

    ほむらちゃんがわたしに他の世界のわたしを重ねてくれても構わない。わたしを見てくれなくても、それでいいって」

ほむら『他の世界の…まどか?』

まどか「うん、ほむらちゃんがこれまで会ったわたしは違うわたし。
    今のわたしは、何も知らずに友達を苦しめてきた、最低な人間なんだよ…」

ほむら『違う…そんなことないわ…』

まどか「うん、ほむらちゃんは違うって言ってくれるかもしれない。
    
    でも、わたしはわたしを許すことができない。ほむらちゃんのことを知ったら、わたしは悪くなかったなんてことは言えないから。
    
    だから、全部を知ったわたしは、ほむらちゃんの友達のわたしになっちゃいけない。
    ただほむらちゃんに助けられる、何も知らないわたしのままでいようって決めたの」

ほむら『…』

まどか「…それが、わたしがほむらちゃんにしてあげられること。だから、何も言わないで、何も知らないままでいるつもりだった。
    
    そのままワルプルギスを倒して、みんなで明日を迎えて笑えるような日常を送れるようになって。
    わたしはほむらちゃんの望むわたしになって、…ほむらちゃんに少しでも幸せになって…欲しかった…のに」





872: 2011/09/18(日) 22:59:42.71 ID:XWzemqKO0

ほむら『…貴方は馬鹿だわ』

まどか「…うん。ほむらちゃんをこんなに苦しめてきたんだから」

ほむら『違う。こんなことで私が喜ぶとでも思ったの?』

まどか「…ううん。ほむらちゃんは優しいから。喜ばないことも分かってた。
    でも…、わたしにはこれしか…だから、こんなこと知ってほしくなかった…のに」

ほむら『…』

まどか「ボロボロのほむらちゃんを見たとき、頭が真っ白になっちゃった。
    氏んじゃっているって思った、そうしたら、何もわからなくなって、気が付いたら名前を呼んでて…。
    だめだな…わたし。また、ほむらちゃんを傷つけただけ。結局、わたしが出来ることなんて…何も…」




873: 2011/09/18(日) 23:01:05.03 ID:XWzemqKO0




   ぎゅっ




まどか「え…?」

ほむら『小さい体でごめんなさい。今は、これでお願い』

まどか「…抱きしめられる価値なんて、ないよ」

ほむら『そんなことない。貴方を救いたいのが私の気持ちなの』

まどか「わたし、ほむらちゃんに守ってもらえるような、人間じゃ…」

ほむら『貴方は何も変わらないわ。自分より他人のことを考えてしまって、自信が無くて、でも自分ができることを一生懸命探す女の子』

まどか「…それは他のわたしだよ」

ほむら『他のまどかなんていない。まどかはまどか、貴方一人だけだわ』

まどか「そんなの…違うよ」

ほむら『違わない。貴方はいつだって、変わらなかった。こんな不器用な私に優しくしてくれた。そうやって、他人に優しくあろうとする姿もみんな同じ。
    まどかだから、私は助けたいの。どんなまどかでも、私は守りたい。それが私の願い』

まどか「…」

ほむら『貴方が氏んでしまう運命が嫌だった。どうすれば運命を変えられるのか、その答えだけを探して、何度も始めからやり直して』

まどか「…」

ほむら『色々頑張ってくれたんだよね。嬉しい
    でも、貴方が苦しんでどうするの。私の望む都合のいいまどかなんて私には必要ない。
    貴方は、鹿目まどかのままでいてくれれば、それだけでよかったのに』

まどか「ほむら…ちゃん…」





874: 2011/09/18(日) 23:02:19.50 ID:XWzemqKO0

ほむら『私ね。迷子だったんだよ?』

ほむら『繰り返せば、繰り返すほど、貴方は私を知らなくなっていって、想いもズレていって』

ほむら『だから、もう諦めてた。まどかを助けても、もう世界には私を知っている人なんて誰も居なくて、ずっと一人ぼっちなんだったて考えてた』

ほむら『でも、まどかは見つけてくれた。貴方は私を知ってくれた』

ほむら『だ、だから…私嬉しくて…』

ほむら『ありが…とう』




まどか「…ほむらちゃん!」





875: 2011/09/18(日) 23:03:10.97 ID:XWzemqKO0

ほむら『…まどか』

まどか「…ごめんね、ほむらちゃん」

ほむら『私こそ、ごめんなさい。まどかに、こんなことをさせてしまって』

まどか「…いいの」

ほむら『私ね。今度こそ、ワルプルギスの夜を倒せると思うの。
    まどかと、こんなにもわかり合えた。力だってある。まどかには、また迷惑かけちゃうけど…』

まどか「気にしないで。わたしもほむらちゃんやみんなを助けたい。気持ちはほむらちゃんと同じだよ。
    マミさんや杏子ちゃんだっている。頼れる仲間もいるんだもの。負けるわけないよ」

ほむら『そうだよね。きっと…勝てるよね?』

まどか「うん。大丈夫だよ。みんなで頑張ろう? 一緒にワルプルギスの夜を倒そう 」

ほむら『…まどか』

まどか「えへへ。あの時は、わたしがほむらちゃんに励ましてもらえたから。今度はわたしの番」

ほむら『…うん。頑張ろう。そして、今度こそ運命を二人で――』





876: 2011/09/18(日) 23:04:14.04 ID:XWzemqKO0




QB「それは止めたほうが良いと思うな」

まどほむ「!」





877: 2011/09/18(日) 23:05:32.25 ID:XWzemqKO0

QB「実に興味深い話だったよ。暁美ほむら。時間を操ることから予測はしていたけど、時間遡行者をこの目で見るのは初めてだ。
  君たち人類は本当に驚かせてくれるね」

ほむら『インキュベーター…。どうして、私の言葉が…』

QB「ようやく、君のその言葉から思考を読み取ることが出来るようになったのさ。時間はかかったけどね」

ほむら『…盗み聞きとは破廉恥ね、インキュベーター。あなた達には感情だけでなく、プライドすらもないのかしら?』

QB「合理的な判断と行動をするためにはそんなものは不要だと思うけれどね。その前に自尊心も感情の一部だから僕たちには理解できないのだけれど」

ほむら『消えなさい。無理解を正当化する生き物に用はないわ』

QB「やれやれ、君達といいマミ達といい嫌われたものだ。僕らのしていることは君達人類の為でもあるんだけどね」

ほむら『ふざけないで。まどかを人類滅ぼす魔女に変えても何もしない連中に、そんなことを言う資格はないわ』

QB「なるほど。まどかがちゃんと魔女になった未来も存在するんだね。それは良い情報だ」

ほむら『…』ギリ




QB「でも、今回は帰るわけには行かないよ。僕は君達にお願いがあってきたんだ」

まどか「お願い…?」

ほむら『それを私たちが聞くと思って?』

QB「もちろん、ただの要求なら今の君達の関係を考えたら無理だろうね。でも、これは違う。何せ君達にも意味のある要求だ」

ほむら『…意味ですって?』




878: 2011/09/18(日) 23:06:37.67 ID:XWzemqKO0

QB「暁美ほむら。どうしてまどかがこれだけの力を持っているか考えたことがあるかい? 

ほむら「…?」

QB『魔法少女の資質はその身に背負い込んだ因果の量で決まる。でも、ごく普通の少女であるまどかに、どうして最強の魔法少女になるだけの因果があるのか。それがわかるかな?」

ほむ『…何が言いたいの?』




QB「原因は君だよ、暁美ほむら」




ほむら『…え?』

QB「君が時間旅行者ということで一つの仮説が成り立つ。
  君の行動はまどかを中心にして成り立っていた。その君が時間旅行を繰り返すことで、まどかに本来集まるはずのない、因果の糸が収束したのさ
  もしかしたらまどかは、君が同じ時間を繰り返す毎に、強力な魔法少女になっていったんじゃないのかな?
  それはね、君が繰り返してきた時間――その中で循環した因果の全てが、巡り巡って、鹿目まどかに繋がった事が原因さ。あらゆる出来事の元凶としてね」

ほむら『…!』

QB「結果は見ての通りだ。まどかは君のソウルジェムを通して時間逆行現象を起こせるような、奇跡のような存在になった」




879: 2011/09/18(日) 23:07:39.95 ID:XWzemqKO0

ほむら『そんな…そんなの。じゃあ、私のしてきたことは…』

QB「ああ、君の考えている通りだよ。まぁ君にとってはマイナスの要因かもしれないが、僕らにとっては非常に有益な事実だ」

ほむら『あ…あ…』

QB「感謝するよ、暁美ほむら。君がまどかを、最強の魔法少女に育ててくれたんだ」

ほむら「…!」ガクッ




まどか「ほむらちゃん!」

ほむら『まどか…。私…私は…』

まどか「大丈夫、まだ結果なんて出ていない。わたしは魔女なっていないし、ワルプルギスの夜だって倒せないって決まったわけじゃない。
    絶望する必要なんて無い。無いんだよ…」

ほむら『まど…か…』

QB「うん。確かに君の手にかかれば、ワルプルギスの夜など問題にならないだろう。何せ最強の魔法少女だ。契約していないから魔女になる危険もない。暁美ほむらにとってはこの上なく都合の良い存在だろうね」
  でも忠告する。まどか、君はこれ以上暁美ほむらの力で変身するのは止めたほうがいい。これは君達のためにもならないよ」

まどか「…どういうことなの、キュゥべえ」

QB「事態は君たちが思っているよりも、深刻だということさ。僕たちにとってもね」

まどか「…?」





880: 2011/09/18(日) 23:08:50.68 ID:XWzemqKO0

QB「まどか。君は暁美ほむらのソウルジェムによって、魔法少女に等しい能力を手に入れた。
  
  なぜ、こんなことが起きたのか。それは僕にもわからない。
  
  もしかしたら、暁美ほむらが辿ってきた世界が関係しているのかもしれないけど、当の本人にも理由は分からないみたいだし、こちらは推測の立てようもない。
  
  まぁ、原因はたいした問題じゃない。問題はそれによって現れた君の変化だ。
  君自信、変身を続けたことで起こった変化が、記憶の共有だけだとは思っていないんだろう?」

まどか「…」

ほむら『どういうことなの! まどか、貴方に何が起こっているの?!』

まどか「…それ、は」




881: 2011/09/18(日) 23:10:44.64 ID:XWzemqKO0

QB「言いにくいなら、僕が言ってあげるよ。
  
  まず起きたのは先ほど君が言った通り、記憶の共有だ。ただし、魂がソウルジェム化していないから、暁美ほむらには君の記憶は見えないみたいだけれどね。
  
  次に起きたのは因果の力が暁美ほむらの能力を増大させたこと。本来、時間の停止・遡行だけだったはずの能力が、今では他の物質にまで影響を及ぼすまでになった。これだけの能力、まどかの因果の力が関わっているのは明らかだ。
  
  最後に起きたのが、感覚の共有さ。もっともこれも、暁美ほむらは感じ取ることができないようだけど」



ほむ「感覚の…共有ですって?」

QB「覚えているかい? 美樹さやかが君を襲った時のことを。あの時、まどかは君の危機に現れた。
  でも、どうやってそれを感じ取ったのかな? 僕の方で念話は使えないようにしていたのに。 
  念話が使えない以上、別の何かでそれを察知したと考えるのが妥当だ。さて、あの時君が思考以外で送れた『異常』と呼べる信号は何があったかな?」

ほむら『痛…み? まさか…』

QB「信じられないかい? でも、それしかない。思考を読み取れるなら、さやかが現れた時点でまどかは駆けつけることができたはずだ。なにせ、それほど距離はなかったしね。
  それ以外で、君に明らかに異常と呼べる強い信号が出たのは、さやかに重傷を負わされた時だ。実際、あの後まどかは君の下に駆け付けた」
  何なら、試してみるといいい。痛みは異常を知らせる信号だ。強い刺激を与えれば、嫌でも反応が体に出るよ」

まどか「…その必要はないよ。ほむらちゃん」

ほむら『まどか…。じゃあ…』

まどか「…うん、キュゥべえの言うとおり。
    全部ってわけじゃないけど、ほむらちゃんに何か強い痛みが走るとわたしにも伝わるの。あの時もそうだった」

QB「やはりね」





882: 2011/09/18(日) 23:11:28.12 ID:XWzemqKO0






QB「さて、これで判断材料は大体出そろった。
  
  記憶と感覚の共有・まどかの因果による暁美ほむらの能力を拡張。
  
  これらから、まどかに起きていることについて一つの仮説が成り立つんだ」







883: 2011/09/18(日) 23:12:14.61 ID:XWzemqKO0


ほむら(やめて)


QB「君らは二人で一人の魔法少女だ。暁美ほむらの能力と、まどかの体・才能で一つの存在となる」


ほむら(聞きたくない)


QB「それを繰り返すうちに僕が本来行うようなことが、まどかに起きていたんだろうね」


ほむら(知りたくない)


QB「おそらくより効率よく魔力を運営するために、暁美ほむらのソウルジェムが本来異物であるはずのまどかの魂を最適化させていったんだろう」


ほむら(お願いだから)



884: 2011/09/18(日) 23:13:12.84 ID:XWzemqKO0






QB「まどか、君の魂は暁美ほむらのソウルジェムと一体化しつつあるんだよ」






885: 2011/09/18(日) 23:14:32.58 ID:XWzemqKO0
今日の投下はこれで終わりです。

なんというか、説明で終わってしまいました。

次の投下は火曜日になります。
ご拝読ありがとうございました。





908: 2011/09/20(火) 22:09:51.73 ID:qQsEJ0Z50

―マミ宅―


杏子「じゃあ、ここで待機だな。ここなら、アタシらの足ですぐに駆けつけられる」

マミ「それじゃあ、ここで。予測が正しければ、ワルプルギスの夜が現れてもこれで対応できるはずよ。そうよね、鹿目さん?」

まどか「大丈夫です。この範囲内を越えて現れたことはありませんから」

マミ「じゃあ、あとはグリーフシードの配分ね。確認するけれど、7対3で私が多めに所持するということで、本当に良いのね?」

杏子「おう。聞く限り、でかすぎてアタシの槍じゃダメージを与えられそうにないからな。ほむの奴が用意した仕掛けを使ったら、あとは使い魔の相手をさせてもらうさ」

マミ「その間に、私が出来うる限りの射撃を撃ち込む。これでいきましょう」

杏子「ああ、二人に減っちまったが、これで何とか対応できるだろ」

ほむら「…」




909: 2011/09/20(火) 22:12:16.62 ID:qQsEJ0Z50

まどか「ごめんなさい。最後の最後で何もできないなんて…」

マミ「そんな顔しないで、二人とも」

杏子「アタシらが大丈夫だって言ってんだ。後輩は黙って従えばいいんだよ」

まどか「でも…」

マミ「貴方たち二人に生きていて欲しいのは私たちも同じよ。魔法少女になってほしくないし、永遠にさ迷うようなことにもなってほしくない。
   私たちが全力でこの街を守るわ」

杏子「それにさやかの時はこっちが助けられたんだ。今度はアタシ達の番。ここいらでちゃんと恩を返さねーとな」

ほむら「…」




910: 2011/09/20(火) 22:19:47.57 ID:qQsEJ0Z50

――――

QB「鹿目まどか。君は契約せずとも、本来の魔法少女になりつつある。
  今の君の能力は、他の物質にまで時間干渉を行える状態だ。もうかなりのレベルまで同化は進行している。
  恐らく次の変身で君の魂は完全にソウルジェムと一つになるだろう」

QB「暁美ほむらのソウルジェムと同化すれば、一体どうなるのかな。魂の同化なんて、僕も初めてだよ。
   君の自我と暁美ほむらの自我が混ざり合うのか。それとも、強いほうが残るのか。はたまた、全く新しい自我が生まれるのか。
   何せこんなことはこれまで例がない。どうなるか、誰にも分からないね。

QB「まあ、そんなことは僕らにとってはどうでもいんだけどね。重要なのは、強大な力を持った最強の魔法少女が誕生するということだ」

QB「うん。それだけなら、僕にとって有益な話で終わったんだけどね」

QB「問題は君達が扱う魔法だ。
  君達の時間操作の魔法。これがまどかの膨大な魔力係数によって発揮されたらどうなるか。想像できるかい?」

QB「恐らく、君達はありとあらゆる時間を操れるようになる。限定的でない過去や未来への移動なんて序の口さ。
  時間を意のままに操るということは、すなわち時間の枷から外れることと同義だ。
  時間の楔から解放されればソウルジェムが変化することもない。君たちは魔女化もしなくなり、永遠に存在し続けることになるだろう」

QB「わかるかい? 永遠に生きつづける君たちは、全ての時間移動の可能性をその身に受け止め、過去と未来あらゆる時間軸に存在するようになるんだ。
  そうなれば、もはやそれは人間でも魔法少女でもない。人間としての存在は消滅し、今の時限とは違う高次元の生き物だ。
  それが、どんな存在のかは分からない。そんな存在は僕らの科学力でも認識できないからね」

QB「そうなるのを避けたいのは僕も同じさ。まどかのエネルギーを回収出来ないどころか、そんなわけのわからない存在が生まれたら、僕らの目的を達するのに支障が出る危険もある」




911: 2011/09/20(火) 22:20:48.15 ID:qQsEJ0Z50
QB「さて、鹿目まどか。君はどうする?」


QB「君に残された道は三つだ。

  暁美ほむらを巻き込んで永遠の時間遡行者になるか。

  巴マミと佐倉杏子の二人がワルプルギスの夜を倒す無いに等しい可能性にかけるか。

  それとも…」


QB「まあ君が何を守りたいかを考えたなら、選択の余地は無いと思うけど」

QB「鹿目まどか。僕と契約して本物の魔法少女になってよ」




912: 2011/09/20(火) 22:21:58.31 ID:qQsEJ0Z50

――――


杏子「ったくあの野郎。何が『無きに等しい可能性』だ。ワルプルギスを倒して、絶対に一泡吹かせてやる。なぁ、マミ」

マミ「ええ、そうね。びっくりさせてあげましょう。それこそ、びっくりしすぎて感情が生まれるくらいにね」

杏子「そりゃいいや。そうすれば、もう魔法少女なんて必要なくなるかもな。なにせ、自前でエネルギーを作れるんだし」

ほむら『…』スッ

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら『少し寄るところがあるの。作戦の確認も終わったし、先に戻らせてもらうわ』

まどか「あ、うん…」

ほむら『それじゃあ、まどか。お先に。私がいないからって無茶しちゃダメよ』

マミ「あら、暁美さんは帰るの?」

杏子「明日はまどかと大人しくしてろよ。ワルプルギスなんか、ちゃっちゃと片付けてやるからさ」

ほむら「ほむ」タッ




913: 2011/09/20(火) 22:24:29.33 ID:qQsEJ0Z50

マミ「…暁美さん。辛そうだったわね」

杏子「肝心なときに何も出来なくなっちまったんだ。無理もないよ」

マミ「やっぱり、信用されてないのかしら、わたし達」

杏子「端目に見りゃ状況は絶望的だしな。ベテランとはいえ、戦力は二人。相手は最強の魔女ときてる」

まどか「…」

杏子「まどかもそう思うか?」

まどか「そんなことは…」

杏子「ま、アタシは負ける気は無いけれど。この街にはさやかの奴だっているし、意地でも負ける訳にはいかないんだ」

マミ「私も同じよ。暁美さんには、他の世界じゃ迷惑かけてしまったようだし。その分も助けてあげないと」

杏子「ああ、勝てば全部解決だ。さやか達だって守れるし、まどか達の問題もなくなる」

マミ「そうね、これで全部終わらせましょう。宇宙のためじゃない。人を助ける魔法少女がいてもいいはずだもの」




914: 2011/09/20(火) 22:24:56.84 ID:qQsEJ0Z50




まどか「…マミさん、杏子ちゃん」

杏子「ん? どうした、まどか?」

まどか「…ちょっと、いいですか?」




915: 2011/09/20(火) 22:27:16.38 ID:qQsEJ0Z50

――――


ほむら(結局、私のしたことは、まどかを追い詰めただけだった)

ほむら(守るどころか、危険に晒しただけだった)

ほむら(わかっている。私はまどかと一緒にいかった。一緒に戦ってくれるといってくれて、嬉しかった。だから、その言葉に甘えたのだ)

ほむら(何度もまどかが氏ぬところを見て、その度に時間を遡り、それでも運命を変えることは出来なくて)

ほむら(一人時間の迷路に迷い込んで、出口なんて見えなくて、失敗するたびにまどかを犠牲にして、涙も渇れ果てて)

ほむら(だから、まどかの優しさにすがったのだ)






ほむら(でも、もう助けなんて要らない)

ほむら(もう誰にも頼らない。もうまどかには戦わせない)

ほむら(こんな当たり前の事、とっくの昔に決意したはずだったのに)

ほむら(ワルプルギスは私が倒す。たとえ、どんな犠牲を払っても)




916: 2011/09/20(火) 22:27:52.22 ID:qQsEJ0Z50

―ワルプルギス戦当日―


まどか「…」



To ほむほむ
件名 まどかへ
私の家で待ってます。



まどか「ほむらちゃん…」




917: 2011/09/20(火) 22:28:52.10 ID:qQsEJ0Z50




   ピンポーン




まどか「…」



   ガチャ



まどか「!」

ほむら「入って、まどか」

まどか「ほむらちゃん、その体…」



918: 2011/09/20(火) 22:29:48.26 ID:qQsEJ0Z50

ほむら「ごめんなさいね。避難で忙しくて、来るのは大変だったでしょうに」

まどか「久しぶりだよね、ほむらちゃんの家。てっきりもう引き払われてたんだと思ってた」

ほむら「ここは私の両親の持ち家だから。引き払われることはないの。鍵さえあれば自由に入れるわ」

まどか「そうなんだ。知らなかったよ」

ほむら「貴方は、私の記憶が見れるのではないの?」

まどか「プライベートなのは見ないようにしてたから。何でも知っている訳じゃないよ」

ほむら「…」

まどか「…それで、どうしたの? 体も元に戻ってるし、一体…」



919: 2011/09/20(火) 22:30:48.82 ID:qQsEJ0Z50






ほむら「まどか。貴方との契約を終わりにするわ」






まどか「え? それって…」

ほむら「この通り、私は新しい体を手に入れた。もう貴方がいなくとも魔女と戦うことができる」

まどか「新しい体って…。ほむらちゃんは元に戻ったんじゃないの?」

ほむら「いいえ。元に戻る方法が分からないから、新しく別の肉体を一から作ったの。小さいほうは別にあるわ」

まどか「…そうなんだ」

ほむら「貴方を早く魔法少女の戦いから解放するために、以前から準備はしていた。
    苦労したけれど、ようやく完成させる事ができたわ」

まどか「…」

ほむら「まどか。貴方との契約はこれでおしまい。今までありがとう。ここからは私一人で戦うわ」




920: 2011/09/20(火) 22:31:40.42 ID:qQsEJ0Z50

まどか「ほむらちゃん…」

ほむら「貴方をこれ以上戦わせるわけにはいかない。永遠の時間をさ迷うことも、魔法少女にもさせない。
    ワルプルギスの夜は、私がカタをつける」

まどか「…でも」

ほむら「わかってる。勝てる可能性は高くない。勝てても何かしらの犠牲は避けられないでしょうね」

まどか「…」

ほむら「でも、そんなこと関係ない。ワルプルギスを倒してまどかの運命を変える。絶対に」




921: 2011/09/20(火) 22:33:01.42 ID:qQsEJ0Z50

――――


ほむら「まどかは、魔法少女にはさせないわ…。絶対に」

QB「でも、それ以外にワルプルギスの夜に対抗する手段があるのかな?」

ほむら「巴マミも佐倉杏子も生存している。勝ち目はゼロじゃない」

QB「以前ならともかく、今はマミも杏子も本調子じゃない。さやかのことで相当に消耗したからね。
   おまけにグリーフシードの余裕もなし。君だって分かっているんだろう?」

ほむら「…」

QB「まぁ、勝ち目のあるなしに関わらず、君は戦うんだろうけどね。君にはそれしかない。
   君にとって、最早立ち止まることと、諦めることは同義だ。希望を持つ限り、君はこの勝ち目の無い戦いを続けるんだろう。
   何度でも性懲りもなく、この無意味な連鎖を繰り返すんだろうね」



まどか「…無意味なんかじゃない」

ほむら「まどか?」

まどか「ほむらちゃんのしてきたことは、絶対に無意味なんかじゃない」

QB「ああ、無意味というのは語弊があったね。暁美ほむらのおかげで、君が最強の魔法少女になることができた。その点では意味があったよ
   でも、それは暁美ほむらが望んだ結末じゃないんだろう?
   そして、君がどんなに暁美ほむらの行為に価値を感じていても意味はないよ。結局、彼女はまた過去に戻ってやり直すのだから」

ほむら「…」





922: 2011/09/20(火) 22:34:21.65 ID:qQsEJ0Z50

QB「理不尽だと思うかい? まどか」

QB「でも、これは全て君たちの願いがもたらした結果さ。
   暁美ほむらは君との出会いをやり直すことで、君という最強の魔女を作り上げ、君は守るために変身を繰り返した結果、何もできない無力な存在となった」

QB「ある意味、この状況は君たち魔法少女の運命の縮図とも言えるね」

QB「数え切れないほど大勢の少女が、僕たちとと契約し、希望を叶え、そして絶望に身を委ねていった。
   祈りから始まり、呪いで終わる――これまで、数多の魔法少女たちが繰り返してきたサイクルさ」

QB「彼女たちを裏切ったのは他でもない、自分自身の祈りだよ」

QB「在りもしない希望を求めて、条理にそぐわない祈りを捧げる。それが歪みを生み、災厄を引き起こすのは当然のことさ。
   これを不条理だというのなら、そもそも希望を求めたのが間違いなんだよ」

QB「暁美ほむらの結末も、君の結末も、過去の全ての魔法少女たちと同じさ」   

QB「希望を持つ限り、救われない。この状況が、それを何よりも証明しているじゃないか」




923: 2011/09/20(火) 22:37:05.05 ID:qQsEJ0Z50

――――


ほむら「本当は、何も言わずに行こうって思ってた。でも貴方との約束があったから」

まどか「約束?」

ほむら「『何も言わずにいなくならない』。貴方との約束よ」

まどか「…覚えていてくれたんだ。ほむらちゃん」

ほむら「貴方との約束ですもの。忘れるわけない。もう一つの方も絶対に守って見せる。だから安心して」

まどか「そんなの…無理だよ。このままじゃ勝ち目なんて…」

ほむら「…どちらにしろもう後は無いの。やり直せば、それだけまどかの因果が増える。
    それに状況を見ても、おそらくこれ以上の戦力の増強は望めない。今回でケリをつけないと」

まどか「…」

ほむら「貴方のおかげで、巴マミや佐倉杏子の協力を得ることができた。美樹さやかも生存した。もう十分、貴方は頑張ったわ。
    だから、今度は私の番。後は私が頑張らないと」

まどか「…」

ほむら「大丈夫。これまでの時間で、ここまでうまく事が運んだことはなかった。誰も氏んでいないし、貴方も契約していない。
    流れはこちらにある。あとは、ワルプルギスの夜さえ倒せば、全てが終わるわ」




924: 2011/09/20(火) 22:39:01.97 ID:qQsEJ0Z50



  「君にとって、最早立ち止まることと、諦めることは同義だ」
  「希望を持つ限り、君はこの勝ち目のない戦いを続けるんだろう」
  「何度でも性懲りもなく、この無意味な連鎖を繰り返すんだろうね」
  「結局、彼女はまた過去に戻ってやり直すのだから」




ほむら「…そろそろ、行くわ。私が増えたことで作戦も少し見直さなきゃいけないし、マミ達と合流しないと」

まどか「…」

ほむら「まどか、最後に貴方と話せてよかった」

まどか「…」

ほむら「じゃあ、また――」

まどか「…ほむらちゃん」







まどか「ごめんね」






925: 2011/09/20(火) 22:40:19.50 ID:qQsEJ0Z50



    シュン



ほむら「な?!」

ほむら(体が…縛られた?!)

まどか「…」

ほむら「まどか! 貴方なにをしたの?!」

まどか「ごめん、ほむらちゃん。でも、これ以上ほむらちゃんに辛いことをさせたくないから」

ほむら(一瞬で、体が縛られて。…まさか)

ほむら「まどか、あなた…まさか」

まどか「…」

ほむら「変身せずに、時間を止めたんじゃ…」

まどか「…うん、そうだよ」

ほむら(そこまで、能力が増大してるなんて…)




926: 2011/09/20(火) 22:41:11.38 ID:qQsEJ0Z50

まどか「ほむらちゃん。わたしね、考えたんだ」

    「わたしに何ができるんだろうって。ほむらちゃんが何度も助けようとしてくれたわたしは、一体何をすればいいんだろうって、考えたの」

    「わたしね。これ以上、ほむらちゃんが悲しむ姿を見たくない。
     ううん、ほむらちゃんだけじゃない。さやかちゃんやマミさんや杏子ちゃん。
     それに希望を信じた沢山の魔法少女のみんな。そんな、みんなをもう泣かせたくないの」

    「だから、わたしは…」




928: 2011/09/20(火) 22:41:54.39 ID:qQsEJ0Z50

――――


マミ「…鹿目さん。それがどんなに恐ろしい願いかわかっているの?」

マミ「ううん。貴方はわかってないわ。未来と過去と、全ての時間で、あなたは永遠に戦い続けることになるのよ?」

マミ「そうなればきっと、あなたはあなたという個体を保てなくなる。
   氏ぬなんてことすらできなくなるわ。未来永劫に終わりなく、魔女を滅ぼす概念として、この宇宙に固定されてしまうのよ?」

マミ「鹿目さん…」




杏子「…いいんじゃねぇの」

杏子「やれるもんならやってみなよ」

杏子「それがやりたいことなんだろだろ? 逃げないって自分で決めたんだろ? 
   なら仕方ないじゃん。後はもう、とことん突っ走るしかねぇんだからさ」





929: 2011/09/20(火) 22:44:15.90 ID:qQsEJ0Z50

――――


ほむら「そ、んな…」

まどか「これが、わたしのやりたいこと。希望を信じた魔法少女のみんなが絶望で泣くこともない。そんな世界をわたしは作りたいの」

ほむら「それでどうなるか分かってるの?! 巴マミの言う通りなら貴方は…!」

まどか「うん。でも希望を抱くのが間違いだなんて言われたら、わたし、そんなのは違うって、何度でもそう言い返せる。
    きっといつまでも言い張れる。だからね、決めたの」



まどか「全ての魔女を、生まれる前に消し去る。全ての宇宙、過去と未来の全ての魔女を、この手で、って」




930: 2011/09/20(火) 22:46:07.26 ID:qQsEJ0Z50

ほむら「ダメ! そんなのダメ! そんなことしたら…」

まどか「うん、わかってる。でもね、これしか思いつかなかったの。
    これなら、ほむらちゃんのこれまでの頑張りも無駄にしない。もう魔法少女が泣くこともない。みんな、希望を持てる」

ほむら「希望なんてないわ! まどかがそんなことになる世界なんて、私は…」

まどか「ううん。こうすれば、ほむらちゃんが絶望して氏ぬこともない。ほむらちゃんが、ちゃんと明日を迎えられるようになるの」

ほむら「私のことなんてどうでもいいの! 貴方はどうなるの?! 貴方を大事に思ってた人たちはどうなるのよ!」

まどか「…」

ほむら「大切だって、言ってたじゃない…。家族も、友達のみんなも。大好きで、とっても大事な人達だって…」

まどか「ほむらちゃん…」

ほむら「帰る場所もなくなって…、大好きな人たちとも離れ離れになって…、そんな…そんなことって…」




931: 2011/09/20(火) 22:48:53.49 ID:qQsEJ0Z50

まどか「泣かないで。ほむらちゃん」

ほむら「お願い、まどか…。契約しないで…」

まどか「ごめん、ごめんね」

ほむら「これじゃあ、私は何のために…。貴方に普通に生きてほしい、ただそれだけなのに…」

まどか「氏ぬわけじゃないよ。多分わたしは世界のどこにでもいる存在になるの。
    一人になるわけじゃない。ほむらちゃんことも、ずっと見守ってる」

ほむら「でも…貴方は…」

まどか「わたしはきっと大丈夫。だからお願い。希望をもって、ほむらちゃん」

ほむら「まどか…」




932: 2011/09/20(火) 22:49:20.40 ID:qQsEJ0Z50

まどか「じゃあ、約束」

ほむら「え?」

まどか「ほむらちゃんは、わたしとの約束を守ってくれたから、今度はわたしがほむらちゃんと約束する」

ほむら「私、結局貴方との約束なんて…」



まどか「ううん。ほむらちゃんは守ってくれた。わたしとの約束。
    だからわたしはキュゥべえに騙されていないし、何度も私をも守ってくれた」

    「だから、今度はわたしが約束するよ。また必ず、どこかで会えるって。そうすれば、ほむらちゃんも希望が持てるから」

    「大丈夫。難しいことなんかじゃないよ。友達と会うことなんて、難しいことなんかじゃない」

    「それに、ほむらちゃんはわたしの最高の友達だから。絶対にわたしは忘れない。どんなことがあっても、絶対に」



ほむら「う、うあ…。うあああ。まどか…まどかぁ…」

まどか「ずっと、ずっと友達だよ。ほむらちゃん」ギュッ

ほむら「まどかぁぁ…」




933: 2011/09/20(火) 22:56:40.09 ID:qQsEJ0Z50


    「わたし、鹿目まどか。まどかって呼んで」

    「いいって。だから、わたしもほむらちゃんって呼んでいいかな?」

    「えー? そんなことないよ。なにかさ、燃え上がれーって感じでカッコいいと思うな」

    「うん? そんなのもったいないよ。せっかく素敵な名前なんだから、ほむらちゃんもカッコよくなっちゃえばいいんだよ」




934: 2011/09/20(火) 22:57:24.44 ID:qQsEJ0Z50

まどか「…行かないと」

ほむら「…!」

まどか「マミさん達が待ってるんだ。決意が変わらなかったら来てほしい、って」

ほむら「やだ…」

まどか「それにワルプルギスの夜が来る。あの子も助けてあげないと」

ほむら「やだ…行っちゃ、やだ…!」

まどか「ほむらちゃん。大丈夫、ほんの少しお別れするだけだから」

ほむら「待って…行かないで…」

まどか「…ごめん」

ほむら「謝らないで…」

まどか「これでみんな助かる。やっと本当に自分が出来ることが見つかったの。ほむらちゃんに望まれたわたしが出来る本当のことが。
    ほむらちゃんの戦いを絶対に無駄にしない。無駄だったなんて誰にも言わせない。それがわたしの戦いなの」



936: 2011/09/20(火) 22:58:24.30 ID:qQsEJ0Z50




まどか「じゃあ、『またね』。ほむらちゃん」

ほむら「まどかあぁぁぁぁ!」





949: 2011/09/22(木) 21:13:05.46 ID:3JxX8uwh0

―迎撃地点―


マミ「…」

杏子「おーい、今から気を張ってもしょうがねーぞ」

マミ「今、気を張らないでいつ気を張るのよ。この街を守るのが私の役目なんだから」

杏子「そうだけどさ。天気は荒れてるけど、魔女も使い魔も気配はなし。
   少し休もうぜ。ほむらの情報通りなら、現れるまでまだ時間がある」

マミ「…」

杏子「『いざという時に戦えませんでしたじゃ、困る』だろ?」

マミ「…そうね。少し休ませてもらうわ」

杏子「ほれ、パンや何やら持ってきた。少し腹に入れようぜ」




950: 2011/09/22(木) 21:19:41.42 ID:3JxX8uwh0

マミ「…」ムグムグ

杏子「…」モッチモッチ

マミ「…ねえ、鹿目さんは、来ると思う?」

杏子「来るだろ、多分。アイツ意外と頑固だし、一度決めたら考えを変えないんじゃないか?」

マミ「そうよね…」

杏子「まだ、納得いかないのか?」

マミ「当たり前じゃない。鹿目さんに、全部背負わせて解決するなんて、そんなの残酷だわ」

杏子「アイツ自身がそうしたいって決めたんだ。アタシらがとやかく言うことはできないよ」

マミ「でも…」

杏子「アタシだって、残酷だと思う。でも、願いをかなえたらどうなるか、そのことを一番理解してるのはアイツさ。
   全部、知った上で決めたんだ。じゃあ、アタシ達が口を出せること何て無いだろ」

マミ「それでも、私はこんなのおかしいと思うの。一人の女の子に押し付けて平和になりました、
こんな結末希望も何もないじゃない」

杏子「そうだよ。魔法少女に希望なんて無いんだ。だから、アイツが希望になるんだよ。魔法少女のな」



951: 2011/09/22(木) 21:20:33.11 ID:3JxX8uwh0

マミ「じゃあ、鹿目さんの希望はどこにあるの?」

杏子「…」

マミ「人間ですらなくなって、何者でもなくなって。彼女は何に希望を持って魔法少女を救えばいいの?」

杏子「…じゃあなにか? アイツがしようとしてることは間違いだっていうのかよ」

マミ「間違いじゃないわ。これで、魔法少女に救いが生まれて魔女がいなくなる。
   でも、貴方だって本当は鹿目さんに全て背負わせることに、納得してるわけではないのでしょう?」

杏子「…」




952: 2011/09/22(木) 21:21:24.34 ID:3JxX8uwh0


杏子「アイツが願いを叶えたら、魔法少女が希望を持てる世界になる」
   
   「でも、誰もそのことを覚えちゃいない。まどかは一人で戦い続けるのに、誰も感謝しないし、そのことを知らないんだ。
    こんな話があるかよ。全部背負ったのに誰もそのことを知らなくなるんだぜ。もしかしたら、アタシ達だって」
   
   「だから、アタシはせめて今だけでも、まどかのすることを誉めてやりたいんだ。正しいことだ、ありがとうって」
   
   「そうじゃなきゃ、寂しすぎるだろ」




マミ「佐倉さん…」

杏子「だから、アタシはアイツのすることが間違いだなんて言わない。アイツに感謝してやれるのは、アタシ達しかいないんだから」

マミ「…」




953: 2011/09/22(木) 21:24:18.30 ID:3JxX8uwh0

マミ「…ねえ」

杏子「あんだよ」

マミ「本当に私達が出来ることは、それしかないのかしら」

杏子「他に何があんだよ。まどかの力に比べたらアタシ達の力なんて、無いようなもんさ」

マミ「力の有る無しじゃないの。鹿目さんに希望を与えられるようなこと、何か出来ないかしら」

杏子「何かって…」

マミ「佐倉さんの考えも正しいと思う。でも、何も出来ないって諦めるのは早いんじゃないの?
   そうやって諦めて生きていたら、それこそ鹿目さんのすることの否定になってしまうんじゃないかしら」

杏子「それは…」

マミ「鹿目さんに頼るだけじゃなく、私たち自身も希望を持てば世界は変わるんじゃないかしら」

杏子「…」



マミ「うん。決めたわ。私は鹿目さんの希望になるような魔法少女になる」

杏子「え…?」

マミ「どんなときでも、諦めない。希望を振り撒くような魔法少女にね」

杏子「…決意したって無駄かもしれねえぞ。まどかが世界を変えたら、アタシ達はそのことを忘れちまうかもしれないんだ」

マミ「その考え方が既に諦めよ。もしかしたら、憶えているかもしれない。だったら私はそっちの可能性にかけるわ。
   私は、鹿目さんの希望になるの。みんなの希望になる女の子を悲しませない希望にね」

杏子「…」




954: 2011/09/22(木) 21:25:03.67 ID:3JxX8uwh0

マミ「バカだと思う?」

杏子「うん」

マミ「でも、諦めないわ」

杏子「そうかい」

マミ「だから、貴方も素直になりなさい。みんなの希望をになって女の子を助けるなんて、ヒーローの十八番じゃない」

杏子「…そうか、そうだよな」



955: 2011/09/22(木) 21:26:01.69 ID:3JxX8uwh0

杏子「なんかウジウジ考えてたのがバカみてーだ」

マミ「そうよ。貴方は自分のしたいように生きるんでしょ? らしくないにもほどがあったわ」

杏子「アタシだって迷うことくらいあるんだよ。
   でも、これでスッキリした。アタシもその話に乗るよ。まどかにヒーローとしての生きざまを見せてやる」

マミ「その調子よ。世界が改変されようが、関係ない。鹿目さん一人に苦労はさせないわ」

杏子「ほむらの奴も誘おうぜ。アイツは絶対にまどかのこと、忘れないだろうからな」




956: 2011/09/22(木) 21:26:47.14 ID:3JxX8uwh0

マミ「…鹿目さん、ちゃんと暁美さんと話が出来たかしら」

杏子「…さてな」

マミ「…暁美さんには、辛い選択になってしまうわね」

杏子「二人は親友同士なんだ。きっといつか再会できるよ。そんなことも許さないほど、神様は厳しくないさ」

マミ「そうよね…」

杏子「…」

マミ「…」



957: 2011/09/22(木) 21:27:28.27 ID:3JxX8uwh0





まどか「マミさん、杏子ちゃん」






マミ「…鹿目さん」

まどか「ごめんなさい。少し遅れちゃいました」

杏子「家族と一緒に過ごせたか?」

まどか「うん。パパやママとお話ししてきたよ。たっくんとも遊べた。ありがとう、時間をくれて」

杏子「そうか。そりゃ良かった」

マミ「鹿目さん。暁美さんは…」

まどか「…やっぱり、泣かせちゃいました」

マミ「そう…」

まどか「マミさん、杏子ちゃん。一つお願いがあるんですけど、良いですか?」

杏子「言ってみな」

まどか「ほむらちゃんのこと、頼みます。しばらくわたしは一緒にいてあげられないから…」

マミ「わかったわ。暁美さんのことはまかせて。いつかきっと再会できるわ。だから貴方も希望をなくさないで」

まどか「ありがとうございます。マミさん」





958: 2011/09/22(木) 21:28:24.25 ID:3JxX8uwh0

杏子「こっちも頑張るよ、まどか。お前一人が頑張らなくても、みんなが希望を持てるような世界を作るよ」

まどか「杏子ちゃん…」

杏子「だから、挫けそうになったら、アタシ達の姿を見てくれ。
   まどかが魔法少女の希望になるなら、アタシらがまどかの希望になる。マミとそう決めたんだ」

マミ「ええ。鹿目さん、私達にあなたような力はない。
   でもそんなこと関係ないの。あなたが希望を持つような魔法少女になるわ。それが先輩として私達にできることだから」

まどか「マミさん…」

杏子「ほむらのやつもきっとそうすると思う。だから三人で頑張るよ」

マミ「世界が変わろうがこれだけは絶対に忘れないわ。
   だから鹿目さん、あなたも希望を無くさないで。希望になるだけじゃなくて、貴方にも希望を持ってほしいの」

まどか「はい。わたしも絶対に忘れません。どんなことがあったって、わたしには沢山の仲間や友達がいるってことを、絶対に」




959: 2011/09/22(木) 21:29:33.39 ID:3JxX8uwh0


     ピタ



マミ「!」

杏子「風が止まったな。いよいよおでましか」

まどか「…キュウベエ。いるんでしょ?」

QB「ああ」

まどか「わたし、契約するよ。貴方と」

QB「やっと、その気になってくれたんだね、まどか。有難う、これで宇宙は救われるよ」

まどか「わたしなら、どんな願い事でも叶うんだよね」

QB「もちろんだよ。君は最強の魔法少女になる子だ。今の君に叶えられない願いはないはずだよ」

まどか「…」




QB「さて、鹿目まどか。あまたの因果をその身に背負い、君はどんな祈りでソウルジェムを輝かせるんだい?」

まどか「わたしは…」





960: 2011/09/22(木) 21:30:30.94 ID:3JxX8uwh0



まどか「全ての魔女を消し去りたい。過去と未来、全ての魔女を生まれる前に!」

QB「! その祈りは」



961: 2011/09/22(木) 21:31:23.01 ID:3JxX8uwh0

―――――

QB(やれやれ、これまでしてきたことは無駄になったようだね)

QB(まさか、こんな結果になるなんて。これが運命というものなのかな)

QB(まあいいさ。またエネルギーを集めよう。宇宙の存続は僕らインキュベーターの使命だ。止めるわけにはいかないからね)

QB(鹿目まどか。君と暁美ほむらとの出会いは非常に興味深かった)

QB(予定していたエネルギーは手に入れられなかったけど、君らは条理を覆す魔法少女の可能性を見せてくれた。
  これだけでも、有益だったよ)





962: 2011/09/22(木) 21:32:38.35 ID:3JxX8uwh0

QB(…それにしても)

QB(全ての魔女を消し去る、か)







QB(そんな願い、叶うと思っているのかな)






966: 2011/10/07(金) 02:36:17.55 ID:tlkuSAx90
中途半端にスレが残ってしまったので、短編を書きます。

967: 2011/10/07(金) 02:37:42.11 ID:tlkuSAx90

(まどかが、一人で魔女がしている時期)


―まど家―


ほむら(はぁ…、まどかの負担にならないように最近は学校について行っていないけど…)


ほむら(やっぱり心配だわ…)


ほむら(最近、特に無理をしているし。なんとかもうちょっと楽をさせる方法はないかしら)


ほむら(巴マミが復帰してくれるのが一番ありがたいのだけれど、まだ時間がかかる。何か手を打たないと…)





968: 2011/10/07(金) 02:38:36.11 ID:tlkuSAx90

ほむら(…それにしても、静かだわ)


ほむら(昼間は武器の調達にも行けないし、学校にも行かず、魔女狩りにも行けないとなるとこんなに時間って余るものなのね)


ほむら(ずっと、まどかを助けるために動いていたから、余計に長く感じるわ)


ほむら(病院では、ずっとこんな感じだったから。懐かしいともいえるわね)


ほむら(本当は、こんなことをしている場合じゃないのだけれど)



969: 2011/10/07(金) 02:39:43.34 ID:tlkuSAx90

ほむら(さて、今日も部屋の掃除でも始めましょう)


ほむら(まどかが頑張っているんだから、せめてこれくらいのことはしてあげないと)


ほむら(ああ、朝の時間がなかったのか下着が出しっぱなしだわ。ちゃんとしまわないと)


ほむら(この前みたいに、下着の山の中で埋もれないように気をつけましょう)


ほむら(それが終わったら、まどかのアルバムの続きでも見ましょうか。部屋の小さいころの写真があったのは僥倖だったわね)


ほむら(小さいころのまどか…天使のようでとってもかわいかったわ…)ホムホム




970: 2011/10/07(金) 02:40:11.40 ID:tlkuSAx90

―昼―


ほむら(…)ホムホム


ほむら(…)ホムホム


ほむら(あら…? いつの間にかこんな時間に。時間が経つのは早いわね)


ほむら(じゃあ、まどかが用意してくれたパンをいただきましょう)


ほむら(小さくきってあって食べやすいわ。ありがとう、まどか)ムグムグ


ほむら(でも、カレーパンは止めてほしかったわ。このサイズだと油がキツイわね。パンとカレーを混ぜるのも大変だし)




971: 2011/10/07(金) 02:40:53.17 ID:tlkuSAx90

ほむら(ごちそうさま。おいしかったわ、まどか)


ほむら(さて、アルバムの続きでも見ましょう)


ほむら(ちょっと冷えるから、まどかの寝巻にでもくるまりましょうか)


ほむら(次は海水浴に行った時の写真のはず。メインイベントね)ホムホム




972: 2011/10/07(金) 02:41:47.43 ID:tlkuSAx90

   ガチャ


タツヤ「ねーちゃ! ねーちゃ!」


ほむら(あ)


タツヤ「…う?」


ほむら「…」



973: 2011/10/07(金) 02:42:15.52 ID:tlkuSAx90

ほむら(し、し、し、しまった…!)


ほむら(確かこの子は、まどかの弟のタツヤくん…!)


ほむら(聞いてはいたけれど、会うのは初めてだわって、そうじゃない!)


ほむら(ど、どうしましょう。こうなったら一か八か人形の振りを…)



974: 2011/10/07(金) 02:42:44.47 ID:tlkuSAx90

タツヤ「あ!」テクテク


ほむら「…」


タツヤ「にんにょ! にんにょ!」ガシッ


ほむら「…!」ビクッ


タツヤ「さいくろん、じょーかー!」


ほむら「…」ブルブル


タツヤ「しょちょー! しょちょー!」



975: 2011/10/07(金) 02:43:10.15 ID:tlkuSAx90

ほむら「…」


タツヤ「…」


ほむら「…」




タツヤ「ぬぎぬぎー!」


ほむら「ほむーーーーーーーーーーーー!!!!」




976: 2011/10/07(金) 02:43:55.25 ID:tlkuSAx90

ほむら(貞操の危機に思わず叫んでしまったわ…)


ほむら(でもしかたないわ。タツヤくん、この身はまどかに捧げているの。ごめんなさいね)


タツヤ「にんにょ! おはなしー!」


ほむら(さて、どうしましょう…)




977: 2011/10/07(金) 02:44:22.21 ID:tlkuSAx90

ほむら「ほ、ほむ?」


タツヤ「ほむ?」


ほむら「ほむむむ」


タツヤ「ほむ? ほむ?」


ほむら「ほむむ、ほむむ」


タツヤ「ほむー! ほむー!」キャッキャッ


ほむら(…伝わっているのかしら?)




978: 2011/10/07(金) 02:44:52.15 ID:tlkuSAx90

ほむら(私は暁美ほむらよ。タツヤくんよろしくね)


タツヤ「ほむー! ほむー! ほむー!」


ほむら(と言っても、分からないわよね。『ほむー』でいいわ)


タツヤ「ほむあー! ほむあー!」


ほむら(え…?)


タツヤ「ほむあー!」


ほむら(そう、ほむらよ! タツヤくん!)


ほむら「ほむっ、ほむっ!」


タツヤ「ほむあー!」キャッ キャッ




979: 2011/10/07(金) 02:45:43.27 ID:tlkuSAx90

ほむら(流石まどかの弟さんね。私との相性は抜群だわ)


タツヤ「ほむー! ほむー!」


ほむら(今日はこの子と遊びましょうか。お父様の助けになるかもしれないし、子守くらいはこの体でも…)


タツヤ「あー、ねーちゃ!」


ほむら(ああ、アルバムが出しっぱなしだったわね。片付けないと)




980: 2011/10/07(金) 02:46:20.38 ID:tlkuSAx90

タツヤ「あいー?」


ほむら(あら、タツヤくん。アルバムが見たいの?)


タツヤ「パパ―。ママー!」


ほむら(ええ、貴方とまどかのご両親ね。機会があればご挨拶したいわ)


タツヤ「あい? だれ、これー?」


ほむら(これは小さいことのまどか。あなたに似ているわよ)


タツヤ「ねーちゃ?」


ほむら(そう、まどかよ)


タツヤ「ねーちゃ! ねーちゃ!」


ほむら(そう、かわいいわね…)ホムホム



981: 2011/10/07(金) 02:46:57.42 ID:tlkuSAx90

タツヤ「ほむあー、ほむあー」


ほむら「ほむ?」


タツヤ「ねーちゃ、すきー?」


ほむら「ほびゃ!」ブッ


タツヤ「すきー? すきー?」


ほむら(な、な、なにを…)///




982: 2011/10/07(金) 02:47:22.90 ID:tlkuSAx90

ほむら「…」


ほむら「……」


ほむら「……ほむ」


タツヤ「ほむあー、ねーちゃ、すきー!」キャッ キャッ


ほむら(伝わるものね…)



983: 2011/10/07(金) 02:47:55.45 ID:tlkuSAx90

タツヤ「たちゃーも、ねーちゃすきー」


ほむら(ええ、私も大好きよ)


ほむら(でも…私はその大好きな人を守れなくて、何度も何度も…)


ほむら(挙句の果てに今はこのザマ。本当に何をしているのかしらね…)


ほむら(守るどころか、何もできない体になってしまって…)


ほむら(本当に…、なにを…)




984: 2011/10/07(金) 02:48:24.67 ID:tlkuSAx90

タツヤ「ほむあー?」


ほむら(え?)


タツヤ「ほむあー、だいじょぶー? どこかいたい?」ナデナデ


ほむら(タツヤくん…)


タツヤ「とんでけー。とんでけー」スリスリ


ほむら(ええ、大丈夫。挫けたりなんかしない)


ほむら(必ず、まどかを救って、成長した貴方と会えるようにするわ)


タツヤ「わらったー! ほむあー!」キャッ キャッ




985: 2011/10/07(金) 02:49:01.99 ID:tlkuSAx90

――――――

タツヤ「さいくろん! じょーかー!」


ほむら(ええと、この人形と戦えばいいのかしら?)


タツヤ「どーぱんとー! うぇざー!」


ほむら(とりあえず、えい)ホムキック


タツヤ「まきまむどらいぶー!」ボカッ


ほむら(あふっ! なかなかダメージが大きいわ…)




986: 2011/10/07(金) 02:51:37.84 ID:tlkuSAx90

――――――

タツヤ「たーとーばー! たとばーたーとーばー!」


ほむら「ほーむーむー」


ほむら(変な歌ね…)


タツヤ「うヴぁ―。こそこそー。ごきぶり―」


ほむら(ゴキブリがいるのかしら? 始末しないと)



987: 2011/10/07(金) 02:52:31.79 ID:tlkuSAx90

――――――

タツヤ「ればー! へちんー!」


ほむら(そう、変身って言ってレバーを入れて! こう!)


タツヤ「うちゅー! きたー!」


ほむら(こんなこともあろうかと視聴しておいてよかったわ)




988: 2011/10/07(金) 02:55:20.24 ID:tlkuSAx90

―夕方―

まどか「ただいまー!」


知久「お帰り、まどか。今日は早かったね」


まどか「うん。でも今日はこれからまた出かけるの。友達が待ってるんだ」


知久「そうなんだ。あんまり遅くならないようにね。最近、ちょっと多いよ?」


まどか「うん、気を付けるね」


まどか(今日は何もないといいな…)








989: 2011/10/07(金) 02:55:48.17 ID:tlkuSAx90

タツヤ「ねちゃー、おかえり―」


まどか「あ、たっくん。ただいま」


タツヤ「ほむーほむー!」


まどか「え?」


タツヤ「ほむあー、あそんだー」キャッキャッ


知久「そういえば、今日はタツヤはまどかの部屋でずっと遊んでいたね。何か面白いものでもあったのかな」


まどか(ま、まさか…)



990: 2011/10/07(金) 02:56:19.76 ID:tlkuSAx90

まどか「ただいまー、ほむほむ。今日たっくんと…って!」


ほむら「…」ピクピク


まどか「ほ、ほむほむ?」


ほむら(お、おかえりなさい…まどか…)


まどか「な、何かいい感じに汚れた感じになってるけど、大丈夫?」


ほむら(幼児のパワーを侮っていたわ…。最後は結局着せ替え人形に…)


まどか「ご、ごめん! ウチのたっくんが取り返しのつかないことを…」


ほむら(償いは…貴方の膝枕と…頬すりで…がくっ)


まどか「ほむほむー!」



991: 2011/10/07(金) 02:56:49.92 ID:tlkuSAx90

タツヤ「ほむあー、だいすきー!」


知久「楽しそうだね。新しい友達でもできたのかな」


タツヤ「ねーちゃすきー、ほむあー!」キャッキャッ




992: 2011/10/07(金) 02:57:35.89 ID:tlkuSAx90
投下終了です。

ご拝読ありがとうございました。



963: 2011/09/22(木) 21:38:13.94 ID:3JxX8uwh0

次スレに続きます。
ご拝読ありがとうございました。


ほむら「体が縮んだわ…」まどか「じゃあ代わりにわたしが頑張るね!」【完結】



引用: ほむら「体が縮んだわ…」まどか「じゃあ代わりにわたしが頑張るね!」