1: ◆/Tn0cyOHKw 2013/09/20(金) 01:48:06 ID:b4kjLV46

※超短文
※ベルトルト「僕は本当に君が嫌いだ」のアルアニ
※別に↑読んでなくても多分大丈夫
※会話ほぼなし、全体的に暗い

2: 2013/09/20(金) 01:49:07 ID:b4kjLV46



この想いが罪だというのならば。

僕は罪人のままでいい。

君を憎むこの世界を憎み切れない僕は―――きっと、異端者。

3: 2013/09/20(金) 01:49:39 ID:b4kjLV46



最初は、僕の行動の視界に君が入るだけだった。

エレンとよく対人訓練を組み、ミカサとやりあう。

僕はこの三人のやりとりを、時には慌て、時には笑いながら見ているしか出来なかった。

4: 2013/09/20(金) 01:50:14 ID:b4kjLV46



アニ「アルミン」

アルミン「どうしたの、アニ」

アニ「…恋ってなんだと思う?」


胸が、何故かツキリと痛む。

君のその表情は、誰かに恋をしているの?

その灰青の瞳は一体誰を映しているの?

僕は、この日、恋を知った。

5: 2013/09/20(金) 01:50:56 ID:b4kjLV46


アルミン「うーん…難しいね」

アニ「頭がいいアンタでも分からないの?」

アルミン「うん。だって感情は本に書いてないから」


僕の感情が一冊の本だったら。

きっと今、項目に君の名前が増えたと思う。

厳しいことを言っても、優しい君の姿。

実は友達思いな所。

俯きがちな瞳が時たま宿す、決意。

6: 2013/09/20(金) 01:51:37 ID:b4kjLV46


(それが何なのかは、この時の僕はまだ知らなかった)



(あぁ、僕はこんなにも、君を追っていた)


知らない間に落ちているのが恋だと、誰かが言ったらしい。

ならば僕のこの未知なる感情は―――恋、なのだろう。


アルミン「気になる人でもいるの?」

アニ「…別に」

アルミン「そっか。僕に出来ることがあったら言ってね。協力するから」


嘘つき。

自覚してしまった感情を抑え込めるほど、大人じゃないくせに。

7: 2013/09/20(金) 01:52:08 ID:b4kjLV46



知らない間に彼女の姿を目で追っていた。

だから僕は気付いてしまった。

僕と同じ感情で、君を見ている男の存在に。

僕よりもはるかに背が高く、僕よりも強く、僕よりも男らしい。

まるっきり正反対な、僕と、彼。

そして僕の本の項目に、“嫉妬”が追加された。

8: 2013/09/20(金) 01:52:52 ID:b4kjLV46


(協力するなんて言って、本当は彼女が好きなくせに)


アニは訓練が休みの日に図書館にいることが多い。

エレンやミカサと座学の復習をしに行くと、高確率で本を読んでいる。

何を読んでいるのかなと、考えたこともあった。

今日は、僕だけで図書館にいる。2人が街へ出かけてしまったから。


アルミン(…あ)

アニ「」ペラッ

アルミン(どうしよう、声、かけようかな……あ)

アニ「」ピクッ

9: 2013/09/20(金) 01:53:27 ID:b4kjLV46


アニ「…アルミン。珍しいね、今日は1人なんだ」

アルミン「あ、うん。エレンとミカサは買い物に行ったから…」

アニ「…2人で?」

アルミン「うん」

アニ「そう」


“珍しいね”確かに彼女はそう言った。

それはつまり、普段は僕たち3人で図書館にいると知っているということ。

極力静かにしていたし、見られているとは思っていなかった。

11: 2013/09/20(金) 01:54:00 ID:b4kjLV46


アルミン(やっぱり、アニはエレンのことが好きなのかな)


アルミン「…ねぇアニ。そっちに行ってもいいかな?」

アニ「いいけど」

アルミン「ありがとう」


彼女の前に、席を移す。読んでいた本に目を落としたが、内容が入ってこない。

ちらりと、アニを見て。

透き通るような白い肌に触れてみたいと、胸が高鳴った。

もっと彼女を見ていたい。でも、気付かれたらどうしよう。あぁ、でも。

12: 2013/09/20(金) 01:54:39 ID:b4kjLV46


アニ「アルミン?」

アルミン「え!?あ、ご、ごめん」

アニ「…別に、いいけど」


まつ毛が長いな、とか、今ちょっと笑った、とか。

彼女の一つ一つが、僕の中の本に刻まれていく。

だから僕が呟いてしまった言葉は、本当に無意識。


アルミン「好きだよ」

13: 2013/09/20(金) 01:55:13 ID:b4kjLV46


アニが顔を挙げる。僕は慌てる。

言うつもりなんて、なかったのに。

ぐらぐらと目の前が揺れる。どんな訓練の時よりも心臓がどくどく言って、苦しい。

僕たちしかいない図書館。向かい合う、君と僕。

お願いアニ。何か言って。でないと僕、恥ずかしくて氏んでしまうよ。

白い肌が、薄紅に染まって。

そこには今まで見たことがないアニが、いた。


アニ「アル、ミン」

アルミン「アニ…?」

14: 2013/09/20(金) 01:56:00 ID:b4kjLV46


普段の表情からは想像もできない姿に、どきりとする。

こんなアニに想ってもらえる幸運な人は誰なのだろう。

さようなら、僕の初恋。


アルミン「ご、ごめんねアニ。言うつもりは」

アニ「私、」

アルミン「え?」

アニ「私も、アンタが、好き、だよ」

15: 2013/09/20(金) 01:56:30 ID:b4kjLV46


おかえり、僕の初恋。

震える手をアニに伸ばして、想像通りの柔らかい髪に触れる。

そのまま頬に触れ、もう一度、好きと呟いた。

太陽の逆光の中、彼女は見たことのないような微笑みを僕にくれた。

僕はこの日、愛を知った。

16: 2013/09/20(金) 01:57:10 ID:b4kjLV46

******


アルミン「ねぇアニ。ベルトルトのことどう思う?」


そんな質問をしたのは、出来心。

ベルトルトがアニに気があることに気付いているのは、多分僕だけ。

本人は気付かれていないつもりなのが余計に気になる。

時々彼女と過ごすようになった消灯後に、アニを抱きしめて問いかけた。

17: 2013/09/20(金) 01:58:23 ID:b4kjLV46


アニ「…ベルトルトは、強い、よ」


彼女はそれしか言わなかった。

(彼女は嘘や冗談を言える人ではないから)

(誤魔化せないことは、最初から言わない)

(この時も彼女はきっとそうだった)

僕の背中に回っていた腕の力が、ほんの少し強くなったくらいだ。

アニがベルトルトのことを本当はどう思っているのか。

言葉以上の感情を持っているのは明らかだった。

それはきっと恋愛感情ではないだろうけど、それでも僕は怖かった。

18: 2013/09/20(金) 01:58:55 ID:b4kjLV46


アニが誰かに連れ去られてしまう。


エレンやミカサに思う感情と、似て非なるもの。

失ったら僕はきっと立ち上がれない。


だから僕は、賭けに出た。

19: 2013/09/20(金) 01:59:25 ID:b4kjLV46


やや蒸し暑く、人によっては寝苦しさを覚える夜。

僕は空き教室でアニを抱いた。

―――ベルトルトがそこを通り過ぎると信じて。

極端に寝相の悪い彼のことだ。動き回れば余計に暑くなって目が覚めやすくなるはず。

きっと彼は、誰も起こさないよう慎重に部屋を出て、水を飲みにくるはずだ。

彼にしっかり教えてあげなきゃ。

(アニは僕が好きなんだから)

僕の初恋は、歪んでいるのだろうか?

20: 2013/09/20(金) 02:00:03 ID:b4kjLV46


やぁ、ベルトルト。

良かった、僕の思った通りになったよ。

君…そんな顔出来たんだね。初めて知ったよ。

今どんな気分?僕を憎んでいる?頃したい?

ごめんねベルトルト。でも僕、アニが好きなんだ。


アルミン(…もう一人、いる?)

アルミン(誰かがベルトルトを連れて行った…誰だろう)

21: 2013/09/20(金) 02:00:35 ID:b4kjLV46


アニ「ァ、ルミン…?」

アルミン「ごめんね、アニ。…続き、しよっか?」


安心したように微笑むアニは本当に綺麗で。

彼女を独り占め出来る僕は、とても幸せなのだろう。

…だから、罰が当たったのかな。

22: 2013/09/20(金) 02:01:43 ID:b4kjLV46




信じられなかった。信じたくなかった。

(違う、君だから僕を殺せなかった)

僕は考えた。君を助ける方法を。

君と幸せになれる未来を。何日も何日も何日も何日も何日も。

(そんな答えが見つからないことくらい、分かっていたのに)

君に好きと言った僕の口が、君を疑う理由を告げる。

マルコの立体機動、エレンのあだ名。

推測だと言っても、口にすればするほど疑いは強まる。

きっと僕は確信していた。僕の好きな人は、人類の敵だったと。

23: 2013/09/20(金) 02:02:17 ID:b4kjLV46



アルミン「僕は罰が当たったんだ」

アルミン「僕が無力で、エレンもミカサも、…君も助ける方法を思い付けなかったから」

アルミン「僕の作戦は皆を傷つけた」

24: 2013/09/20(金) 02:03:00 ID:b4kjLV46



君を信じるための地下通路。

僕のいる暗いこの場所と、君がいる明るいその場所。

光と影が、僕たちを徹底的に別った。

越えることが出来なかった、僕たちの境界線。

この境界線を踏み越えて、君を助けることが僕に出来たならば。

僕に勇気がなかったから。

25: 2013/09/20(金) 02:03:46 ID:b4kjLV46



アニ「一体…いつから、アルミン」

アニ「アンタは私をそんな目で見るようになったの?」


君の灰青の瞳に、一体僕はどう映っていたのだろう?

その答えは怖くて聞けない。

聞くことも、出来ない。

僕は君にとっての“いい人”でいたかった。

(君の正義は、一体なんだったの?)

26: 2013/09/20(金) 02:04:30 ID:b4kjLV46



******


アルミン「僕が人類の味方でいる限り、この中には入れないんだろうね」


触れた水晶は、相変わらず冷たい。

重たく巻かれた鎖の隙間から、変わらない君の姿が見える。

27: 2013/09/20(金) 02:05:04 ID:b4kjLV46



アルミン「ライナーもベルトルトも、いってしまったよ」


反応しないアニに、僕は何度でも声をかける。

目覚めてほしくて。目覚めてほしくなくて。

僕を好きだと言ったその唇は、僕にどんな言葉をかけるのだろう。

それが、堪らなく恐ろしい。

28: 2013/09/20(金) 02:05:48 ID:b4kjLV46


アルミン「アニは嘘が吐けない人だから、黙っているの?」


それとも、この世界に絶望したから、出てこないの?

君が“いない”世界に取り残された僕は、どうしたらいいのだろう。

(彼女を裏切ったのはお前のくせに)

(なんて身勝手)

29: 2013/09/20(金) 02:06:21 ID:b4kjLV46



アルミン「あの日の話の続きをしよう」

アルミン「恋っていうのはきっと、その人の幸せを願うことだ」

アルミン「その人を想うと胸が痛くて、切なくて、苦しい」

アルミン「でもその人が笑ってくれれば、それだけで幸せになれる」

アルミン「僕はそういうことだと思う」

アルミン「だから僕は、今でも君に恋をしている」

アルミン「君のことを想うと、胸が痛くて、切なくて、苦しい」

アルミン「でも君が笑っていないから、辛いんだ」


(君を裏切ったのは僕のくせに)

30: 2013/09/20(金) 02:06:56 ID:b4kjLV46


君が眠り続ける水晶は、美しく透明だ。

混じり気がなく純度の高いそれは―――他の物質の存在を許さないのだろう。

僕の存在を、許してくれない。


手を伸ばせば届く距離に、君がいるのに。

あぁ、なんて、遠いのだろう。


この水晶はきっと、君と僕との境界線。




31: 2013/09/20(金) 02:08:19 ID:b4kjLV46

以上です
書き殴り失礼しました

引用: アルミン「君と僕との」アニ「境界線」