1: 2010/08/28(土) 12:10:15.89 ID:ACKx8y2f0
翠星石「健やかに~伸びやかに~」

翠星石「ずいぶんマシになってきたですね~」

蒼星石「そうだね、ジュン君の樹ずいぶんとしっかり根が張ってきているし、周りのツタももう鋏を入れなくても大丈夫そうだね」

翠星石「さて、今日はそろそろ引き上げるですぅ~」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ジュン「いつもありがとうな、二人とも。
    毎回心が軽くなるような気がするよ」

蒼星石「いいえ、樹もずいぶん回復していいます。
    もう少しですよ」

翠星石「全く、てめぇは翠星石と蒼星石のマスターなんだからしっかりしやがれです」

ジュン「あぁ頑張るよ、もう少し勉強しとかなきゃ授業にもついていけなくなるだろうしな」

のり「翠星石ちゃ~ん、蒼星石ちゃ~ん、お茶が入ってるわよ~、下にいらっしゃ~い」

蒼星石「あ、はーい! 今行きまーす」

翠星石「チビ人間は行かないですか?」

ジュン「あぁ、僕はいいよ。もう一段落ついたらにするから」

翠星石「そうですか、じゃあ先に行ってるですよ~」

10: 2010/08/28(土) 12:17:07.67 ID:ACKx8y2f0
のり「お疲れ様、ジュン君の様子はどう?」

蒼星石「心の樹は随分と回復しています、夢の世界も明るくなっていますし、
    もう僕たちの力がなくても大丈夫なくらいかもしれません」

翠星石「まぁ樹自体はまだまだチビチビですけどね~」

のり「ううん、翠星石ちゃんも蒼星石ちゃんも本当にありがとう。
   ジュン君次の学期から学校に行くって言ってくれてるし、ご飯もみんなで食べられるし…
   本当二人のおかげよ~」

蒼星石「そんな、僕たちには手助けは出来ますけど、一番頑張ってるのはジュン君ですよ。
    どんなに庭師が手入れをしても、葉を伸ばそうとしない花に綺麗な花は咲きません」

翠星石「まぁそれはそうですね、しかしチビ人間がいくら前向きになったところで所詮はチビなのです」

蒼星石「翠星石、ジュン君があまり構ってくれないからっt」

翠星石「黙るです蒼星石! 翠星石がいつそんなことを言いましたですか!?
    大体お前はいつもいつも」クドクド

のり「あらあら、うふふ」

12: 2010/08/28(土) 12:20:28.04 ID:ACKx8y2f0
ピンポーン
巴「こんにちはー」

雛苺「こんにちはーなのー」

のり「は~い…あら巴ちゃんに雛ちゃん、いらっしゃい」

巴「こんにちは、お姉さん。
  これ、今日の授業で配られた資料とプリント、こっちは保護者への連絡です」

のり「本当いつもありがとーねー」

翠星石「おーいチビチビー翠星石が今朝焼いたスコーンが残ってるです、持って帰りやがれですぅ」

雛苺「すっごいのー、ありがとーなのー!」

翠星石「えっへん、感謝するです。
    目いっぱい味わいまくって喰いやがれですぅ」

巴「いつもありがとう、翠星石ちゃん。
  じゃあお姉さん、今日は失礼します」

のり「あらあらもう帰っちゃうの~?
   本当ありがとうね、気をつけて」

13: 2010/08/28(土) 12:23:01.50 ID:ACKx8y2f0
~有栖川大学病院~

めぐ「夢は風 光導く 空と雲を超えてゆく あなたの声 響け」

水銀燈「全く、いつも歌ってるのぉ?」

めぐ「ううん、歌ってると来てくれそうな気がするけど、
   来てくれそうな気がするときにしか歌ってないよ。
   いらっしゃい、天使さん」

水銀燈「くっだらなぁい…で、どうなの?」

めぐ「え、何が?」

水銀燈「ちゃんとゲロ食べてるのかって聞いてるのよ」

めぐ「佐原さんがうるさいから少しだけ、点滴でいいのにね」

水銀燈「まぁいざというときは否応なく貴女の力をつかうことになるわぁ、
    それまでせいぜい力をためておきなさぁい」

めぐ「アリスゲームね、いいわよ、私の命ならいくらでも使って。
   そうね、やっぱり一度に使い切って欲しいかな、
   私の命の灯火を使い切って、水銀燈は至高の少女、私は儚く散る花、美しいと思わない?」

水銀燈「…お馬鹿さぁん、全くもう、好きになさぁい。私はアリスになれればそれでいいわぁ」

15: 2010/08/28(土) 12:26:39.51 ID:ACKx8y2f0
~BJ診療所~

ピノコ「ウーン…ま、毎日おせんたく干すのも大変なのよさ…とくにシーツ…」
バサッ、ドンッ! ゴロゴロ…
ピノコ「ちょ、ちょっと風にあおられただけだってのよさ…
    まったく、こえらかやチビはいやんなるってのよ」

郵便屋さんの黒ヤギさん「メ―、ピノコさんにお手紙ですよ~」

ピノコ「あ、ありがとなのよさ、ごくろ~ちゃ~ん」


ピノコ「先生~おせんたく終わったのよさ」

BJ「はいはい分かった巻くよ、巻いてやる、これでいいか?
   …ん?おい!……切れた」

ピノコ「先生おれんわ?」

BJ「あぁ、よく分からんいたずらだったがな。
   まぁいちいち気にしてたらこんな商売やってられんさ」

ピノコ「ふ~ん、あ、そうそう先生、ピノコにお手紙きたのよさ、読んれ」

BJ「ん、お前に手紙? どれ、見せてみろ」

  【まきますか まきませんか】 

16: 2010/08/28(土) 12:28:39.18 ID:ACKx8y2f0
BJ「…なんだ、これは?」

ピノコ「ピノコ知やないのよさ」

BJ「さっきの電話と同じやつかな…まぁいい、捨てとけ」

ピノコ「れも先生はまいてたのよさ、ならピノコもまくのよ」

BJ「あれはしつこかったかだ…まぁいい好きにしろ、くれぐれも返事は出すなよ」

ピノコ「りょーかいなのよ、まるつけゆだけでもきっと大丈夫なのよさ」

BJ「おい…もう部屋に戻ったか。しかし意味のわからん悪戯だな…ん?
   なんだこの鞄は…ピノコのやつがまた変なものを拾ってきたのか?」

ピノコ「ひぎゃ!!」

17: 2010/08/28(土) 12:31:47.51 ID:ACKx8y2f0
BJ「ピノコッ!! どうした!?」
バンッ!
BJ「ピノコ!?」

ピノコ「ちぇ、先生…このかばんにつまづいてこけたらけなのよさ…」

BJ「驚かせるなよ…おい、それよりそんな鞄どっから拾ってきたんだ、ふたつもあるじゃないか」

ピノコ「ピノコしやないのよさ、おっきいかばんねー」

BJ「お前じゃないのか? まぁ仕方ないし開けてみるとするか」

18: 2010/08/28(土) 12:34:18.89 ID:ACKx8y2f0
BJ「両方とも中身は人形か…しかもえらく精巧だな」

ピノコ「ふたつともすごいきれーなのよさ…」

BJ「うん…鞄からしてもかなりの高級品だろうな」

ピノコ「んっしょ…ほら、背もピノコとおんなじくらいあゆのよさ」

BJ「おい、かってにいじくるな、壊しでもしたら取り返しがつかんぞ」

ピノコ「先生、このかばん、まだなんかはいってゆのよ」

BJ「ん、なんだ?」


19: 2010/08/28(土) 12:37:47.19 ID:ACKx8y2f0
BJ「ゼンマイ、か…ということはこの人形機械仕掛けか、ますます高価なもんだなこりゃ」

ピノコ「ぜんまい…ってなんなの?」

BJ「ネジを回す道具だ、おそらくこの人形は中に歯車が詰まってるんだろう。
   ゼンマイでネジを巻いてやれば、歩くなり目を開くなりs」

ピノコ「まくのよさ!!」

BJ「お、おいこら、いじくるなと言ったばかりだろうが!」

ピノコ「いいのいいの、ピノコのへやにあったんだからピノコのもんなのよ。
    先生もじぶんのおにんぎょうたんをまけばいいのよさ」

BJ「そうじゃなくてだな…さっきから言ってる通り下手なことをしたら取り返しがつk…」

キリッキリッ…ポワ~ン…


金糸雀「う~~ん…よく寝たかしら…
    さて、今回はあなたがカナのネジをまいてくれたのかしら?」

20: 2010/08/28(土) 12:40:57.80 ID:ACKx8y2f0
ピノコ「ア、ア、ア…アッチョンブリケーーー!!!!!!」

BJ「な…なんだと…いや、お、おい、お前はなんだ? どれだけ性質の悪い悪戯なんだ!?」

金糸雀「もう、失礼しちゃうかしら!
    私はローゼンメイデン第2ドールの金糸雀かしら」

ピノコ「しゃ、しゃべったのよさ、しゃべったのよさ!!」

金糸雀「カナはローゼンメイデンなんだから当然かしら!」

BJ「おい、今ローゼンメイデンと言ったか?」

金糸雀「? そうかしら」

BJ「聞いた事がある…たしか究極の人形だとかなんとか…」

金糸雀「その通りかしら。薔薇乙女シリーズは私たちのお父様、人形師ローゼンの作った究極の人形かしら」

ピノコ「き、きうきょくのにんぎょう?」

金糸雀「くどいわ、カナはそのローゼンメイデンの第2ドールだって言ってるかしらー!」

22: 2010/08/28(土) 12:46:59.54 ID:ACKx8y2f0
BJ「…じゃあ聞くが、お前はここへ何をしに来たんだ?」

金糸雀「カナたちローゼンメイデンはアリスを目指してアリスゲームをしているかしら。
    それに必要なミーディアムをピチカートが見つけてくれたからここに来たの。
    で、どちらがカナを巻いてくれたのかしら?」

ピノコ「あ、あたいなのよさ」

金糸雀「あなたね、じゃあこの指輪をはめるかしら」

BJ「ちょっと待て、お前たちは複数いるんだな?」
   
金糸雀「ローゼンメイデンシリーズは全部で7体いると聞いているわ」

BJ「ピノコの手紙がお前のならあっちの鞄は俺か!?」

金糸雀「他にも薔薇人形がここにきてるのかしら!?」

BJ「いや、同じ鞄が…持ってくる、ちょっと待ってろ」

23: 2010/08/28(土) 12:49:52.55 ID:ACKx8y2f0
BJ「これだ、これもお前らの仲間の鞄か?」

金糸雀「間違いないかしら、あなたも問いかけに巻くと答えたのかしら?」

BJ「あのいたずら電話がそうならな、その問いかけは手紙とは限らないのか?」

金糸雀「ミーディアム探しは人工精霊の仕事だからカナはあまり詳しくないの。
    でも特に手段に縛りはないはずかしら」

ピノコ「そんなこといってないれさっさとあければいいよのさ」

金糸雀「そうね、巻くと答えた以上あなたには巻く義務があるかしら」

BJ「…仕方ないか、開けるぞ」

パカッ

金糸雀「…これは真紅、薔薇乙女の第5ドールかしら」

ピノコ「これまたきれーなのよさ」

BJ「真紅、か…で、俺がこいつのゼンマイを巻けばいいんだな?」

金糸雀「そうかしら、姉妹の中でも特に気位の高い子だから丁重に扱うことをお勧めするかしら」

BJ「分かった、やってみよう」

24: 2010/08/28(土) 12:53:03.28 ID:ACKx8y2f0
キリッ…キリッ…フワッ…

真紅「……あなたが私の螺旋を巻いたの?」

BJ「あぁ、そうだ。俺はブラック・ジャック、一応医者だ。
   お前はローゼンメイデンの第5ドール、真紅…でいいのか?」

真紅「あら、よく知っているわね。そうよ、私は誇り高いローゼンメイデンの第5ドール、真紅。
   そして、ブラック・ジャック、あなたはこれより真紅の下僕となる。
   薔薇の誓いをもって、この真紅のローザ・ミスティカを護る糧となってもらうのだわ。
それにしても…ひどく狭苦しいし、むさくるしい部屋ね…この真紅が過ごすには不適当だわ」

BJ「まぁちょっと待ってくれ、お前はこっちの人形と知り合いなのか?」

25: 2010/08/28(土) 12:55:54.95 ID:ACKx8y2f0
真紅「こっち…あら、金糸雀、貴女もこのブラック・ジャックに巻かれたの?」

金糸雀「お久しぶりかしら、真紅。
    私が巻かれたのもついさっき、私はあちらの女の子だったかしら」

真紅「あらそうなの、同じ時代に同じ場所で違うドールが目覚めるなんて、珍しいこともあるものね」

ピノコ「お人形たんどーしがしゃべってるのよさ…」

BJ「あぁ…」

真紅「さて…じゃあブラック・ジャック、薔薇誓いを」

BJ「薔薇の誓い…?」

真紅「全く…そんなことも知らずにホーリエの問いに答えたというの?
   それに金糸雀、あなたが先に目覚めたのなら話ぐらいしておきなさい」

金糸雀「さっき話そうとはしたかしら!」

真紅「まぁいいわ、その分だと薔薇乙女のこともアリスゲームのことも知らないのでしょう?
   仕方がないから説明するのだわ。 ちょっと、人間のどちらでもいいからお茶をいれてちょうだい」

ピノコ「りょ、りょーかいなのよさ、テーブルはあっち」


27: 2010/08/28(土) 12:58:53.03 ID:ACKx8y2f0
ピノコ「か、かわいそうなのよさ…こんなにちいちゃいのに…ビ、ビエーーン!!」

BJ「泣くな! しかし、人間とは勝手なものだな…」

真紅「あなたこそ勝手なことを言わないで頂戴、アリスゲームは私たちの使命なの」

金糸雀「お父様と再会できるのはアリスとなったドールのみかしら」

ピノコ「でも、グスッ…でも……じゃあしんくとカナリヤもたたかうことになるのよさ!」

真紅「あぁもう、あなたはまずきちんとお茶を入れられるようになりなさい。
   さて、話も終わったことだし契約をしましょう。
   さぁブラック・ジャック、誓いなさい、この薔薇の指輪に」

金糸雀「カナもお願いするかしら、ピノコ」

BJ「…ちょっと待ってくれないか?」

28: 2010/08/28(土) 13:01:18.66 ID:ACKx8y2f0
BJ「俺は自分の作った人形の出来が気にくわなかったからといって、
   頃し合いをさせようという考えがどうしても納得いかない」

ピノコ「先生…」

真紅「そう、分かったわ、ブラック・ジャック。
   もとより私もアリスゲームの意義には疑問があったの。
   アリスゲームは、いつか私が終わらせる」

金糸雀「真紅…でもそれじゃあ…」

真紅「えぇ、アリスゲームの他にアリスとなる手段が無いのは百も承知。
   アリスとなったドールしか、お父様と再会できないこともね。
   でも金糸雀、私はどんな形であってもこの闘いを終わらせたい、それでは駄目かしら」

BJ「お前はそれでいいんだな…よし、契約しよう」

真紅「そう…いい子ね、ブラック・ジャック」

ピノコ「あたいもカナリヤとけーやくすゆのよさ」

金糸雀「私はか・な・り・あ!
    そろそろきちんと発音して欲しいかしら…」

29: 2010/08/28(土) 13:04:34.25 ID:ACKx8y2f0
スパイダー「翌朝でごんす」


ピノコ「先生、そろそろおきなしゃい!」

BJ「ぅん? あ、あぁ…ピノコか…」

ピノコ「あぁじゃないでしょ、しゃっしゃとかおあらってテーブルにつくのよさ!」

BJ「分かった、分かったから暴れるな…フワーァ…」

ピノコ「あくびをとめる!! 2ふんいないにこないとあさごはんなくなゆよのさ!」

ドタドタ、バタン!

BJ「全く…何だって朝から…」

金糸雀「おっはよーかしら!」

ドンッ!

BJ「うわぁ!! な、なんだお前か、朝っぱらから悪ふざけはよしてくれ」

金糸雀「お前じゃなくて金糸雀かしら、もう待ちくたびれちゃったのかしら」

真紅「ブラック・ジャック、もうみなさっきから席についているの。
   早く顔を洗ってらっしゃい」

BJ「あ、あぁ…」

31: 2010/08/28(土) 13:09:43.13 ID:ACKx8y2f0
BJ「お前らって、普通に夜寝て、朝起きて、飯を食うんだな」

真紅「えぇ、夜の眠りはとても大切なもの。
   食事やお茶も欠かせないものだわ」

BJ「まぁそれはやりやすいといえばやりやすいしかまわんのだが、
   今朝のような状態が続くとなると俺の体がもたん」

真紅「ふふっ…あら、いつもだってピノコには起こされているのでしょう? 
   そうかわりはしないのではなくて?」

BJ「それはそうなんだが…何故俺が俺の家で肩身の狭い思いをせねばならんのだ…」

真紅「それはもうきちんと早起きする習慣を身につけるしかないわね。
   仮にも私の下僕でしょう、しっかりなさい」

BJ「はぁ…まったくもう…」

34: 2010/08/28(土) 13:13:21.89 ID:ACKx8y2f0
Rrrrrr! ガチャ

BJ「はい、もしもし。はい…はい…すぐに連れてこれますか?
   はい、分かりました、準備しておきます」ガチャン

BJ「急患だ!ピノコ、オペ室の準備を!」

ピノコ「りょーかいなのよさ」

金糸雀「急患って、なにか重い病気かしら!?」

BJ「いや、バイク事故のようだ、お前たちはむこうの部屋で鞄に入ってろ」

真紅「仕方ないわね、金糸雀、言われた通りにしましょう」

金糸雀「わ、分かったかしらー!」

35: 2010/08/28(土) 13:16:19.09 ID:ACKx8y2f0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

BJ「あとは街の病院へ行ってしばらく入院すれば大丈夫でしょう」

急患父「先生、本当にありがとうございました」

BJ「いえ、それよりお父さんの腎臓を使うことになってしまい…」

急患父「いえいえ、私なら大丈夫ですから!」

急患母「本当にありがとうございます、急にご無理を言いました」

急患父「では謝礼は数日中に振り込ませていただきますので」

急患母「失礼します…」

BJ「どうも」

36: 2010/08/28(土) 13:19:07.97 ID:ACKx8y2f0
BJ「はぁ…疲れた」

ピノコ「先生…だいじょーぶ?」

金糸雀「おっつかれーかしら! すごいかしらブラック・ジャックは!!」

真紅「ブラック・ジャック、お疲れ様。
   あなたは素晴らしい奇跡を起こしたわね」

BJ「いや、使える腎臓もすぐにあったしな…大して難しい手術じゃない…が」

ピノコ「先生…?」

BJ「私は見ての通り金だけが頼りのモグリ医者、つまらん人間だ。
   しかしそんな人間だって自分のしたことを感謝されれば嬉しいものだ…
   私の師は人の生き氏にを自由にすることはおこがましいと言った、それはそうなのかもしれない。
   しかし、少なくとも私は目の前に苦しんでいる患者がいるのなら出来るだけのことはしたいと思う。
   それがモグリとはいえ医者としてなのか、人間としてなのかは分からんがな…」

真紅「ブラック・ジャック…何が言いたいのかしら?」

BJ「いやすまん、忘れてくれ…少し寝る、夕飯には起こしてくれ」

38: 2010/08/28(土) 13:23:08.79 ID:ACKx8y2f0
金糸雀「ブラック・ジャックは何が言いたかったのかしら?」

ピノコ「ピノコは先生につくってもらったのよ」

真紅「あら、どういうことなの?」

ピノコ「ピノコはもともとおねえちゃんとふたごらったのよさ。
    でもピノコはおねぇちゃんのかやだのなかにばやばやでうもれてたのよ。
    それを先生はくみたててくりぇた、ピノコを人間にしてくりぇた」

金糸雀「ピノコ…そんなことがあったのかしら…」

真紅「ブラック・ジャックがアリスゲームに疑問を抱くのも当然…というところかしらね」

ピノコ「あたいはおにんぎょうたんのことよくはちらない…
    れも…しまいってたたかうもの?
    おとうたんは、たたかわせるもの?」

金糸雀「で、でも…そんなことを言ったって…」

真紅「ピノコ、よく話してくれたわね、ありがとう。
   さて、私たちに出来ることもないようだし夕飯の支度でもしましょう」

ピノコ「りょーかいのよさ!」

金糸雀「どうせ真紅は何もしないかしら…」

39: 2010/08/28(土) 13:25:57.33 ID:ACKx8y2f0
~ジュンの夢の世界~

翠星石「チ~ビ樹~にみ~ずを~♪」

蒼星石「翠星石、もうチビって言ってあげちゃかわいそうだよ」

翠星石「翠星石の身長も越えてないんですからまだまだチビチビですぅ!」

蒼星石「全くもう、翠星石は…」

翠星石「蒼星石こそ、もう刈り取るツタもないでs」

ピシュ!

翠星石「羽!?」

蒼星石「水銀燈!!」

水銀燈「こんにちわぁ…お二人さん。
    ほ~んとに、相変わらず馬鹿なことやってるのねぇ」

40: 2010/08/28(土) 13:28:51.32 ID:ACKx8y2f0
翠星石「なぁにをしに出てきやがったですか!?」

水銀燈「あらこわぁい、何をしにですってぇ?
    そんなの…アリスゲームに決まってるじゃない!!」

ビュビュビュッ!!!

蒼星石「翠星石、下がって!レンピカ!」

水銀燈「メイメイ!!」

バシーン!

蒼星石「でぇい!」

水銀燈「ふんっ!」

ガキーン!

翠星石「あぁ…始まっちまったです…
    スイドリーム、蒼星石をたすけてくるです!」

41: 2010/08/28(土) 13:31:19.37 ID:ACKx8y2f0
蒼星石「はっ!はっ!はーっ!」

水銀燈「ふんっ!ふんっ!」

フワ~ン…ピカ! ピカ!

水銀燈「でーいちょこまかと、邪魔!レンピカ!!」

バシッ!!

翠星石「あー!スイドリームになんてことしやがるですか!?」

水銀燈「翠星石ぃ…あんたも邪魔!!」

ビュビュビュッ!!!

翠星石「キ、キャー!」

蒼星石「やめろ水銀燈、今の相手は僕だ!」

ピシッ!

翠星石「ああああぁぁぁぁ!!!
    ジュ、ジュンの樹が!!!!」

蒼星石「折れた…」

43: 2010/08/28(土) 13:34:25.86 ID:ACKx8y2f0
水銀燈「あらぁ、ごめんなさぁい」

蒼星石「す、水銀燈ーーー!!」

翠星石「蒼星石! …帰るです」

蒼星石「翠星石…」

水銀燈「あらぁどうしたのぉ?
    もうお終いなんてつまんなぁい」

蒼星石「くっ! 水銀t」

翠星石「蒼星石!!! …帰るですよ」

水銀燈「あ~あ、今日はもういいわぁ…じゃ~ね~」

蒼星石「……」

45: 2010/08/28(土) 13:39:23.57 ID:ACKx8y2f0
~有栖川大学病院~

めぐ父「しっかりしなさい、めぐ」

めぐ母「そうよめぐ、私たちもお医者さんもいらっしゃるわ」

めぐ「うっ…天使…さん…」

医者「…あまり苦しむようなら、少し特殊な鎮痛剤を使うことになるかもしれません。
   今はなんとか眠っていますので、これ以上のことは…」

めぐ父「…ありがとうございます」

水銀燈「めぐ…なんで…さっきの蒼星石との闘い!?
    いや、でもそんなに大した力は使っていないはず…
    そんなにめぐは弱っていたというの…?」





46: 2010/08/28(土) 13:40:23.46 ID:ACKx8y2f0
~ジュンの部屋~

蒼星石「ごめんなさい、僕のせいです」

翠星石「いや、私が樹の方へ逃げたからです…ごめんなさいです」

のり「お願い二人とも、自分を責めないで。
   二人はいままでジュン君をずっと助けてくれてたじゃない。
   あなたたちのせいなはずないでしょう」

蒼星石「いえ、あの時水銀燈と闘っていたのは僕です。
    あれはその流れ玉…僕が樹を傷つけていたかもしれないんだ…」

雛苺「ジュン!ジュン! 寝てちゃだめなのよ、おっきしなきゃめーなのよー!!
   う、う…うわーん!!!」

巴「桜田君…雛苺、桜田君はどうなっちゃったの?」

雛苺「う…うゆ、心がとても弱くなっちゃったのよ…」

蒼星石「翠星石、頼みがあるんだ…
    可能な限りジュン君の樹に付きっきりで手当てをしてあげて欲しい」

翠星石「そ、それはもちろんやりますけど…
    あなたは、蒼星石はどうするんですか!?」

蒼星石「……」

翠星石「やめるです」

48: 2010/08/28(土) 13:43:22.57 ID:ACKx8y2f0
翠星石「もう一度言うです、やめるです」

蒼星石「……」

翠星石「今行ってもしかたないです!」

蒼星石「僕は行く、水銀燈だけは……許せない…!」

ダッ!

翠星石「蒼星石!」

雛苺「ヒ、ヒナも行くの!」

巴「雛苺!」

のり「蒼星石ちゃんに雛苺ちゃんまで…」

翠星石「…のり、翠星石はジュンの樹を見てくるです」

のり「お願い、無理をしないでね、翠星石ちゃん」


49: 2010/08/28(土) 13:44:03.53 ID:ACKx8y2f0
~教会~

蒼星石「水銀燈、いるかい?」

水銀燈「あらぁ誰かと思えば蒼星石じゃない、愛しの冴えないミーディアムはお元気ぃ?」

雛苺「蒼星石…」

蒼星石「水銀燈、君はアリスゲームをしに来た、その結果がどうであろうとそれは君の責任ではない…
    でも……僕は君を許さない!」

水銀燈「あらあらぁ、ただでさえ醜い顔を歪ませちゃって…許さないってどうするつもりぃ?」

蒼星石「雛苺、危ないと思ったら君は逃げてくれ。それまでは、出来るだけ苺轍で水銀燈を抑えて欲しい」

雛苺「りょーかいなの、えい!」

水銀燈「ふんっ!たかがこの程度で私が抑えられると本気で思ってるのぉ?
    まぁいいわぁ…今日は見逃してあげる、じゃ~ね~」

蒼星石「待て、水銀燈!!」

雛苺「あぁ…ご、ごめんなさいなの…」

蒼星石「フィールドへ逃げたか…いいんだよ、雛苺、君のせいじゃない。
    僕は少し水銀燈を追ってくる、先に帰っててくれるかい?」

雛苺「う、うゆ…分かったの」

蒼星石「よし、僕はフィールドへ」

50: 2010/08/28(土) 13:45:13.24 ID:ACKx8y2f0
翠星石「まずいですねぇ~やっぱりほとんど根元から…」


蒼星石「水銀燈!どこだ!?」


翠星石「スイドリーム、お水を…」


蒼星石「暗いな…レンピカ、周囲を照らして」


翠星石「お願い、持ち直して…」


蒼星石「このあたりにはいない…闘う気がないのか?」



翠星石「え…?」



蒼星石「指輪が…」





翠・蒼「消える…」

51: 2010/08/28(土) 13:46:08.61 ID:ACKx8y2f0
~ジュンの部屋~

のり「ジュ…ジュン君…?」

雛苺「のりー!」

のり「あ、雛ちゃん、おかえりなさい」

雛苺「ただいまなの、ジュンは?」

のり「それが、様子がおかしいのよ…苦しそうではないんだけど…」

雛苺「うゆ…ジュン~、まだおっきしないの~?」

のり「ジュン君…もう一人じゃないのよ…」

52: 2010/08/28(土) 13:47:26.77 ID:ACKx8y2f0
翠星石「ん、ん…ジュ、ジュン!」

ドサ!

のり「わ!す、翠星石ちゃん」

翠星石「ゆ、指輪が消えかかってるです…ジュン!!!」

ダダッ、バン!

蒼星石「ジュン君!!」

のり「蒼星石ちゃんまで、ねぇどうしたの?」

翠星石「蒼星石、指輪は!?」

蒼星石「翠星石も!?」

翠星石「ジュン…ジュン!!」

雛苺「ジュン!!」

蒼星石「呼吸してない…救急車を、早く!」

53: 2010/08/28(土) 13:48:09.66 ID:ACKx8y2f0
~有栖川病院 救命センター~

医者1「桜田さん、ですか?」

のり「はい…あの、弟は?」

医者1「幸いというか、とりあえず命に別状はありません。
    ですが搬入されたときのままです、呼吸もありません、植物状態です」

のり「治る…ものなんでしょうか?」

医者1「今のところは申し訳ありませんがなんとも…
    精神的なもののようですが、原因も分かりませんし」

医者2「身体には問題ないようですが、精密検査をすれば何か分かるかもしれません。
    いずれにしても、しばらくは入院していただくことになります」

のり「はい、よろしくお願いします…」

54: 2010/08/28(土) 13:48:50.28 ID:ACKx8y2f0
翠星石「救えなかった…です…」

蒼星石「ごめんなさい…また、僕が…」

翠星石「翠星石もです…nのフィールドや夢の世界では力を使う…分かりきったことです。
    ただでさえジュンは弱ってたですのに…」

のり「うん…うん…お願い、じゃあすぐに帰ってきてね。
   私だけじゃついていてあげられないし…うん…うん…じゃあ切るね、また…」

蒼星石「のり…さん…」

翠星石「蒼星石、もう行くですよ…」

蒼星石「…そうだね、もうここにはいられない」

雛苺「二人とも、いちどともえの家に来るといいのよ…」

55: 2010/08/28(土) 13:49:48.68 ID:ACKx8y2f0
~桜田家の鏡~

雪華綺晶「だーれが頃したこまどりさん…」

ラプラス「マスターが一人消えましたか…
     とかく人とはもろいもの…しかし、これでよいのですか?」

雪華綺晶「私の…お人形が…消えた…」

ラプラス「このままでは、もう1名…」


56: 2010/08/28(土) 13:50:34.36 ID:ACKx8y2f0
~有栖川大学病院~

めぐ父「娘はどうですか?」

医者「正直なところ、かなり苦しいです…
   いわゆる生命維持装置を限界まで使っている状態です。
   わずかでも処置をしようとすれば、おそらくそのショックで…」

めぐ母「あなた…このままじゃ…」

めぐ父「先生、なんとかならないんでしょうか?
    処置のできるお医者様は?」

医者「一人、心当たりがあります。
   しかし腕のいい医者なのは間違いありませんが、評判はよくありません。
   なんでも無免許な上に不法に高い治療費を請求されるとか。
   それに、いくらその男が優秀だとはいってもめぐさんの治療は難しいかと…」

めぐ父「しかし、そのお医者様ならあるいはめぐの処置が可能かもしれない、と?」

医者「私もその医者について詳しいわけではありません。
   もし可能だとすれば、という程度の話しとして聞いてください」

めぐ父「そのお医者様に連絡を取っていただいても?」

医者「分かりました」

57: 2010/08/28(土) 13:51:32.74 ID:ACKx8y2f0
~BJ診療所~

ピノコ「こんかいはじちんさくなのよさ」

金糸雀「うんうん、ピノコの卵焼きも随分おいしくなったかしら!
    でもまぁ欲を言えば焦げる前にお皿に移してほしいかしら…」

真紅「そうね、紅茶もお湯を沸かしてから淹れるようにするといいと思うわ」

ピノコ「がんばるのよさ!」

Rrrrrr!

ピノコ「あい、もちもち…
    先生~、びょういんからおれんわ!」

BJ「依頼か…?はいもしもし、お電話代わりました。
   はい…はい…それは診てみないことにはなんとも…
   しかしお話を聞く限りではかなり難しい状態なのでは?
   はい、やはり…まぁ一度うかがいます、では」

58: 2010/08/28(土) 13:52:13.39 ID:ACKx8y2f0
BJ「ピノコ、有栖川病院に行くぞ、用意をたのむ。
   そうだ、場合によっては遅くなるかもしれん、
   だれも来んとは思うが、お前ら出なくていいぞ」

金糸雀「りょーかいかしら!」

真紅「分かったわ、頑張ってらっしゃい」

BJ「聞く限りでは難しそうだがな…
   だが依頼人はそこそこ金持ちらしい」

金糸雀「結局そこかしら…」

真紅「全く…」

ピノコ「先生~、かばん持ってきたのよさ」

BJ「よし、じゃあ行くか」

ピノコ「ふたりともいってくゆのよさ」

金糸雀「頑張ってくるかしらー」

60: 2010/08/28(土) 13:52:56.99 ID:ACKx8y2f0
~nのフィールド~

ラプラス「このままでは糧たるマスターがまた一人…」

雪華綺晶「このままでは…しかし…」

ラプラス「元来命をもたないドールは、ローザ・ミスティカがなければ動けない…」

雪華綺晶「ローザ・ミスティカがあれば…」

ラプラス「しかもマスターは精霊によって選ばれた人間…ローザ・ミスティカの力も素質ある少女ならあるいは…」

雪華綺晶「ローザミスティカの…力…
     ドールからローザ・ミスティカが失われる…
     アリスが…生まれない…」

ラプラス「黒い薔薇は力をふるわず、黄色の薔薇と紅い薔薇も舞台の袖でティータイム…
     蒼い薔薇と翠の薔薇はミーディアムまで失った。
     この時代でのアリスゲームはすでに終了、よもやアリスなど生まれようもありません」

ラプラス「それに、貴女にとってローザミスティカはそう意味のない存在。
     素質ある土壌が失われることと、どちらがよいでしょう…」
     
雪華綺晶「……」

ラプラス「おや、行ってしまわれましたか…」


ラプラス「ふふっ…トリビァル」

61: 2010/08/28(土) 13:53:48.37 ID:ACKx8y2f0
~有栖川大学病院~

水銀燈「めぐ…」

雪華綺晶(鏡)「黒薔薇のお姉さま…」

水銀燈「!…雪華綺晶…あなた、何をしにきたの?
    見ての通り、私のマスターならもう連れ去っても力にはならないわよ」

雪華綺晶(鏡)「分かっています…それにそんなことを言うと、私はとても悲しくなってしまいます…」

水銀燈「あんたね! 前の時代もその前の時代も私のマスターを…!
    …まぁいいわ。で、何の用?」

雪華綺晶(鏡)「お姉さまのマスターのことです。
     ドールに生を与えるローザ・ミスティカなら、
     人間の生をつなぐことも…」

水銀燈「…それは私も考えた。でも1つ1つのローザ・ミスティカはそもそも不完全なもの。
    全てを集めるにはアリスゲームしかない…でも、闘えばめぐは…!」

雪華綺晶(鏡)「ローザ・ミスティカが、あれば…」

水銀燈「でも、私はもう…闘えない…」

62: 2010/08/28(土) 13:54:28.68 ID:ACKx8y2f0
雪華綺晶(鏡)「紅薔薇のお姉さま…」

水銀燈「真紅が、何?」

雪華綺晶(鏡)「紅薔薇のお姉さまと黄薔薇のお姉さま、
     お二人とも闘いを望んでおられません、人を失う辛さもご存じです」

水銀燈「失う辛さ? ふふっ、よくもまぁ貴女が言えたことね…」

雪華綺晶(鏡)「……」

水銀燈「でも、ローザ・ミスティカの力があれば…」

雪華綺晶(鏡)「ローザ・ミスティカが、あれば…」

水銀燈「翠星石と蒼星石は駄目…なら…」


スッ…

雪華綺晶「ローザ・ミスティカが、あれば…」

63: 2010/08/28(土) 13:55:18.69 ID:ACKx8y2f0
~BJ診療所~

金糸雀「ねぇ真紅、ピノコたちはどうしているかしら?」

真紅「そうね、おそらくブラック・ジャックが患者さんを診察しているのではないかしら。
   難しい患者さんだそうだけど…」

金糸雀「で、でもでも、ブラック・ジャックなら大丈夫かしら!
    きっとたっちまちの内に治療して帰ってくるかしら」

真紅「ふふ、そうね…でも人とはすごい生き物ね。
   傷つき病んだ人間は人間が癒すし、
   私たちドールを作って生を与えたお父様も人間なのだわ」

ポワ~ン…

水銀燈「真紅…?」

真紅「水銀燈…!あなたも目覚めていたの?」

金糸雀「わわわわわわ、水銀燈かしらー!!」

真紅「落ち着きなさい、金糸雀。
   何の用かしら、水銀燈?」

65: 2010/08/28(土) 13:56:13.88 ID:ACKx8y2f0
水銀燈「…二人に頼みがあってきたの、聞いてちょうだい」

金糸雀「な、なんなのかしら?」

水銀燈「ローザ・ミスティカを…わたしにちょうだい…」

真紅「水銀燈、それはどういうことかしら?」

水銀燈「私がこういうのもなんだけど大丈夫、今の私に闘う力はないわ」

真紅「…詳しく話をきかせてちょうだい」

66: 2010/08/28(土) 13:56:54.42 ID:ACKx8y2f0
真紅「そう、あなたのマスターが…」

金糸雀「お気の毒かしら…」

水銀燈「えぇ、助けるにはローザ・ミスティカを完成させて与えるしかない… 
    無理な頼みなのは分かってる、ここで私が倒されてローザ・ミスティカを奪われても仕方ないと思ってるわ…」

真紅「水銀燈、そこまでの覚悟を…
   安心して頂戴、私にはもとより闘うつもりはないわ」

金糸雀「で、でもでも、それだとアリスが…!」

水銀燈「それだとアリスが誕生しない。だれもお父様と再会もできない…
    もちろん百も承知よ、その上でのお願い」

真紅「…そうね、確かにローザ・ミスティカの放棄は薔薇乙女であることを放棄するのも同じ…
   でも、本当にアリスゲームを経てローザ・ミスティカを集めることしか、アリスになる道はないのかしら。
   本当に姉妹を全て倒したドールとのみ、お父様はお会いになるのかしら。
   私にはそれが分からない…」

金糸雀「真紅…」

67: 2010/08/28(土) 13:57:42.15 ID:ACKx8y2f0
真紅「水銀燈、私は協力するわ。ただし、条件が二つ。聞き入れてもらえるかしら?」

水銀燈「条件…?」

真紅「1つ、今後アリスゲームを一切放棄すること。
   もう1つはアリス、そしてお父様への道をこれからも模索し続けること。
   もちろん闘い以外の方法で…どうかしら?」

水銀燈「分かったわ…ありがとう、真紅」

真紅「あなたはどうするの、金糸雀?」

金糸雀「えっ…し、仕方ないかしら!こうなったらカナも協力するかしら」

真紅「そう…いい子ね、金糸雀」

水銀燈「ありがとう、ふたりとも…」

68: 2010/08/28(土) 13:58:33.92 ID:ACKx8y2f0
~有栖川大学病院~

めぐ父「先生、娘はどうですか…?」

BJ「…無理です、助けられません」

めぐ父「そんな…お話しした通り、お代は払いますので!」

BJ「金じゃないんです!
   彼女は衰弱しきっている、もうどうしようもない。
   彼女にはもうわずかなメスのショックに耐えらるだけの体力も残っていない…
   現代の医学では処置のしようがないんです!」

めぐ母「そんな…先生に見放されたら、あの子は…」

めぐ父「そ、そうです!なら他に何か彼女を治療する方法を…!」

BJ「私だって仮にも医者です、助けられるものなら助けたい!
   でも何度も言うとおり無理なんです。メスも入れられない以上、医者の腕は関係ない。
   しかし、手術以外の処置の方法はありません、無理なんです…」

めぐ母「そんな…あ、あぁ…」

めぐ父「そ、そうですか…ありがとうございました」

BJ「…失礼します」

ピノコ「しちゅれいしますのよ」

69: 2010/08/28(土) 13:59:23.57 ID:ACKx8y2f0
医師1「すみません、ブラック・ジャック先生でいらっしゃいますか?」

BJ「はい、そうですが…なにか?」

医師1「完全な植物状態のクランケがいるのですが、よければすこし診ていただけませんか?」

BJ「分かりました」

70: 2010/08/28(土) 14:00:19.97 ID:ACKx8y2f0
医師1「彼です、桜田ジュン君、14歳の中学生。
    自宅でいきなり昏睡状態となったそうです。
    CTも撮りましたが、特に外傷はありません」

BJ「ほう…それでは何か精神的なショックが?」

医師1「我々もそう考えましたが、発症は自室で一人のとき、特に外部から連絡もなかったようです。
    もともと引きこもりがちでやや精神虚弱な少年だったようですが、余りに不自然です」

BJ「そうはいってもそれこそどうしようもないでしょう。
   この様子では意識を回復させるのを待つよりほかありません」

医師1「やはりそうですか…いや、お手間をとらせてしまいました」

BJ「いえ、私としても興味深い。 もし彼に何か変化があれば是非知らせてください」

医師1「承知しました」

BJ「では失礼します」

71: 2010/08/28(土) 14:01:03.51 ID:ACKx8y2f0
ピノコ「先生…?」

BJ「無理なんだ、二人ともどうしようもない」

ピノコ「で、でも先生! いっぱいおだいくれゆって!」

BJ「何度も言っているだろう、無理なんだ」

ピノコ「先生…」

金糸雀「あー、ブラック・ジャックかしら!」

BJ「うぉ!?金糸雀!それに真紅…もう一体いるのか?
   お前らこんなとこでなにをやってんだ、人に見つかったら…」

真紅「あら、ブラック・ジャックにピノコ、こちらのドールは第1ドールの水銀燈。
   私たちはこの水銀燈のミーディアムに用があって来たのだけれど…」

72: 2010/08/28(土) 14:01:56.48 ID:ACKx8y2f0
金糸雀「そういえば例の患者さんはどうだったのかしらー?」

BJ「あの少女は無理だ…私には助けられない」

金糸雀「そ、そうなのかしら…」

BJ「あぁ、人の生き氏にはやはり人が自由に出来るものではないらしい。
   衰弱がひどすぎてもう手が出せないんだ…」

水銀燈「ねぇ真紅のミーディアム、その少女の名はなんというの?」

BJ「ん?あぁ、一応守秘義務があるんだが…まぁ人形相手にかまうまい。
   たしか川崎めぐ、といったか…」

水銀燈「そう、やはりめぐを救うことは出来ないのね…」

真紅「…そのめぐという少女が、あなたのミーディアムなのね?」

水銀燈「……」コク

74: 2010/08/28(土) 14:02:52.26 ID:ACKx8y2f0
金糸雀「ま、まぁこれで水銀燈のミーディアムの様子を見に行く手間が省けたかしら!」

真紅「そうね…」

ピノコ「あ、あの~…」

BJ「おい、お前らはなにかしようとしてるのか?」

真紅「えぇ、水銀燈のミーディアムであるその少女は、私たちが助けるのだわ」

BJ「な、何か方法があるのか!?
   麻酔にすら耐えられるか分からない彼女の心臓を治せるというのか!?」

真紅「えぇ、前にローザミスティカの話したでしょう。
   私たちドールに生を与えるローザミスティカなら、人を救うことも可能なのではないかと思っているの。
   けどローザ・ミスティカはもともとが不完全な存在、その少女を救うには完全なローザ・ミスティカが必要ね」



75: 2010/08/28(土) 14:03:33.23 ID:ACKx8y2f0
BJ「…待て、ローザ・ミスティカを失ったら、お前らは動けなくなるんじゃないのか?」

金糸雀「ブラック・ジャック…」

真紅「えぇ、やってみなくては分からないといえばそうなのだけど、恐らくは」

ピノコ「しんく…だめなのよさ!
    カナリヤもやめなちゃい!」

金糸雀「いいのよ、ピノコ」

真紅「えぇそうよ、ピノコ。 これは私たちが話し合って決めたこと。
   もっとも、これから他の子たちにも協力を頼みに行かなくてはならないのだけれど…」

BJ「本当にそれでいいのか、お前ら?」

真紅「くどいわよ、ブラック・ジャック。私はもとよりこの時代で闘いを終わらせるつもりだった。
   人を助けてなおそれがなせるのなら、素晴らしいことではなくて?」

76: 2010/08/28(土) 14:04:14.32 ID:ACKx8y2f0
~巴宅~

雛苺「お~絵描き、お~絵描き」カキカキ

蒼星石「ねぇ、翠星石。僕たちは本当にここにいていいのかな?」

翠星石「……」

蒼星石「ジュン君のことがあって、雛苺と巴さんにに甘えてここに置いてもらってるけど…
    やっぱりこのままじゃいけないと思うんだ、どう考えても」

翠星石「そんなこと分かってるですよ、蒼星石」

雛苺「ともえもヒナも、すいせいせきとそうせいせきがいてくれてうれしいのよ…」

翠星石「雛苺、そーじゃねーんですよ。そりゃー迷惑なのもちょっとはありますけど…
    翠星石と蒼星石はもうこの時代にいちゃいけないドールなんですよ…」

雛苺「うゆ…」

77: 2010/08/28(土) 14:05:36.51 ID:ACKx8y2f0
蒼星石「そうなんだよ、雛苺。
    契約を継続してる君と違って、マスターを失った僕らはもうアリスゲームに参加できない。
    だからこの時代に僕たちが目覚めている理由も資格もないんだ」

翠星石「それに翠星石はもう闘いたくはねーです。
    でも今眠りについたら、次の時代には闘わないといけないかもしれない…
    蒼星石ともはぐれちまうかもしれないです…」

雛苺「うゆ…でも、じゃあ…」

蒼星石「翠星石…やっぱり僕と同じことを…」

翠星石「蒼星石もですか…」

ポワ~ン…


真紅「ここでいいのかしら…?」

78: 2010/08/28(土) 14:06:17.53 ID:ACKx8y2f0
真紅「あら、翠星石に蒼星石、雛苺もここだったのね」

雛苺「あぁしんくー、おひさしぶりなのー!」

蒼星石「真紅…何をしに来たんだい?」カチャ…

真紅「誓ってアリスゲームをしに来たのではないわ、鋏はおさめてちょうだい。
   あなたたちにお願いがあって来たの、この子の話を聞いてあげて欲しいのだわ。
   さ、あなたたちもいらっしゃい」

ポワ~ン…

金糸雀「お久しぶりかしらー」

ポワ~ン……

水銀燈「……」

蒼星石「水銀燈…!」

翠星石「な、何しに来やがったですか今さら!」

真紅「お願い、闘いはしないのだわ、話を聞いてあげてちょうだい。
   さ、水銀燈…貴女から話をなさい」

雪華綺晶(鏡)「……」

79: 2010/08/28(土) 14:07:03.04 ID:ACKx8y2f0
水銀燈「あなたたちのマスターのこと、ごめんなさい…」

蒼星石「前にも言った通り、ジュン君の樹のことは僕は仕方なかったと思ってる。
    君はあのときアリスゲームをしに来ただけだ、あそこで樹を守るのは僕の役目だった…」

翠星石「蒼星石!でも私たちは闘いなんて…!」

蒼星石「いいんだ!!…いや、ごめん、いいはずはない。
    でも、あの時僕は闘った、ジュン君の樹のそばで…あれはその結果だ」

翠星石「蒼星石…」

蒼星石「で、用件はなんだい、水銀燈? 
    まさか君が筋違いの謝罪だけのために来たわけじゃないだろう?」

水銀燈「そうね、そう…
    あなたたちにお願いがあって来たの、雛苺もね」

雛苺「うゆ、ヒナも?」

水銀燈「えぇ、実は私のミーディアムが病気なの、もう長くはないわ…
    人間の医者では、助けることは出来ないらしい。
    私のミーディアムを助けるための、力を貸して欲しい」

蒼星石「…その具体的な方法は?」

水銀燈「…ローザ・ミスティカを、私のミーディアムに使わせて欲しい」

翠星石「ふざけるなです」

80: 2010/08/28(土) 14:07:58.61 ID:ACKx8y2f0
翠星石「よく言えたですね、ジュンはてめーのせいで…!」

蒼星石「抑えて、翠星石」

翠星石「蒼星石!」

蒼星石「なんども言っているだろう、翠星石。
    ジュン君のことは水銀燈の責任じゃない。
    アリスゲームをしていた、僕や君が樹を守るべきだったんだ!
    それに…マスターを失う悲しみは、僕らが一番良く知っているだろう…」

翠星石「蒼星石…でも蒼星石はそれでいいのですか!?
    納得できるのですか?」

蒼星石「あぁ、姉妹が助けを求めてるんだからね。
    それに、僕はもう人を失いたくないんだ…」

翠星石「それは翠星石もですけど…でも…」

水銀燈「あなたがそう思うのも無理はないわ、
    でもローザ・ミスティカは1つも欠けてはならないの…
    あなたたちの協力が必要なのよ…」

翠星石「……」

巴「ただいまー」

雛苺「あ、ともえなのー」

85: 2010/08/28(土) 15:00:32.73 ID:ACKx8y2f0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

巴「そう…大変なのね、水銀燈ちゃん。
  ねぇ雛苺はどうするの?」

雛苺「うゆ…ひな、わかんないの…」

巴「そう…雛苺も今までの時代で大切な人を失ったことはない?
  桜田君は私の幼なじみ、私はアリスゲームで桜田君を失った」

雛苺「ともえ…?」

巴「私はドールのみんなが大好き、桜田君も大切な存在だった…
  私には、アリスの本当の値打ちは分からない。
  でもアリスゲームは全てを奪うのみ、雛苺も闘いが続けばきっといずれ…
  そんな闘いを、人を救うことで終わらせることができるんだったら」

雛苺「う、うっ…ともえ…」

巴「よしよし、泣かないの、雛苺。
  あなたは変わったわ…こんなに優しい子になって…」

雛苺「うっ…とぅもえーー!!」


翠星石「うっ…うっ…」

蒼星石「ほらほら、翠星石までどうしたの?」

翠星石「あ、あの人間…うっ、泣かせやがるですぅ…」

86: 2010/08/28(土) 15:04:01.66 ID:ACKx8y2f0
雛苺「ともえ…ありがとう…」

巴「雛苺…指輪が…!」

真紅「雛苺…薔薇の誓いを解いたのね」

水銀燈「あの子ったら…」

雛苺「ともえ…ヒナ、みんなといっしょにいかなくちゃいけないところが出来たのよ…ごめんなさいなの」

巴「う…ううん、あなたが自分で決めたんでしょう。
  本当に変わったのね、雛苺…私のこと、忘れないで…」

雛苺「ぜったい…ぜったいわすれたりしないのよ!
   ともえとあそんでたのしかった、ぜーったいわすれないんだから!!」

巴「ありがとう、雛苺。さぁ、みんな待ってるわ…行ってらっしゃい」

翠星石「さぁチビ、さっさと行くですよ」

水銀燈「翠星石、あなた…」

翠星石「しゃーないから最後まで付き合ってやるです!
    ほら、鏡ん中の7番目も一緒に行くですよ、ついてくるです」

水銀燈「ありがとう、翠星石…みんな…」

87: 2010/08/28(土) 15:06:49.98 ID:ACKx8y2f0
~有栖川大学病院~

真紅「どうだった?」

翠星石「だめですぅ…あの女の樹、どうしても見つからんです」

蒼星石「うん…身体と一緒に弱った樹が埋もれてしまっているんだと思う…
    息がある以上、枯れ切ってはいないはずだから」

真紅「そう…だそうだわ、ブラック・ジャック」

BJ「そうか…やはり気力を回復させてやることもできないなr」

真紅「分かっているのだわ、もとより庭師の能力では肉体の病を癒すことはできないのだもの…」

BJ「…彼女の心臓は生まれつき弱かった。
   こう言ってはなんだが、この歳まで生きてきたことすらちょっとした奇跡なくらいだ。
   医者の言うことではないかもしれんが、彼女の運命というものもあるやもしれん…
   お前たち、本当にいいのか?」

金糸雀「人がいなくなるところなんて、もう見たくないかしら」

翠星石「もう…助けられないのはごめんですぅ」

蒼星石「僕もです、薔薇乙女として正しいのかはまだ分からない…
    でも、僕は彼女を助けたい」

雛苺「ヒナは…ヒナはかわったんだから!」

89: 2010/08/28(土) 15:12:49.31 ID:ACKx8y2f0
水銀燈「…みんな、ありがとう…」

蒼星石「水銀燈、泣くことは無いよ。みんな自分の意思でこうしているんだから」

翠星石「そ、そうですよぉ。その、なんていうか…
    そんなのてめぇらしくねぇですよ、もっといばってりゃいいです!」

雛苺「そうなのよ、ヒナうれしいのよ?」

真紅「そうね…
   私たちは薔薇乙女、至高の少女、アリスを目指し、届かなかった存在…
   そしてお父様が求められたのがアリスゲーム…
   私たちはそれぞれにアリスゲームを通し、アリスを目指してきた。
   そしてこれがその結果…誰も何も得てはいない…
   これまで何百万時間も時代を超えて続けてきたアリスゲームの全てが同じ結果だった…
   皆傷つき、大切なものを失うばかり…
   私たちは…いえ、お父様は本当にこんなことを望んでおられるのか?
   この争いの先で、たとえ誰かがアリスになったとしても、その子は本当に一点の穢れもない至高の少女なのか…
   私は違うと思う、私たちは人間のために作られたお人形、人を傷つける存在であるべきはずがないのだわ。
   私も一度くらい人を救いたい、ブラックジャックのように。
   それに、ローザミスティカを7つ全て集めるとアリスになれる…
   だとすれば、お父様の望み通り、本物のアリスが誕生するのではなくて?」

水銀燈「真紅…」

90: 2010/08/28(土) 15:16:54.43 ID:ACKx8y2f0
真紅「みんな、人工精霊を借りるわよ、ホーリエ!
   他の子の人工精霊と一緒に行って、雪華綺晶のローザミスティカを」

雛苺「ほら、ベリーベルもいくのよ!」

ポワワ~~ン…

BJ「おい、今のはなんだ?」

真紅「あら、人工精霊を見たことはなかったかしら?
   薔薇人形はみな人工精霊を持っているのだわ。
   そして7番目の子は実体のないドール、鏡の向こうの世界にしかいられない。
   だからあの子たちにローザ・ミスティカを運んでもらうのよ」

91: 2010/08/28(土) 15:23:57.82 ID:ACKx8y2f0
雪華綺晶「お姉さま方の、精霊…」

チカッ、チカッ

雪華綺晶「そう、分かりました…これを…」

フワッ…ポワ~ン…

雛苺「あ、戻って来たのよ!」

BJ「あれが、ローザ・ミスティカか…」

ピノコ「きれーなのよさ…」

真紅「ありがとう、雪華綺晶…さぁ、私たちも」

水銀燈「めぐ…」

92: 2010/08/28(土) 15:27:29.24 ID:ACKx8y2f0
真紅「ブラック・ジャック、ご苦労だったわね、ありがとう」

BJ「あぁ…後のことは任せておけ」

真紅「…いい子ね、ブラック・ジャック」

ピノコ「せ、先生!」

BJ「7つのローザ・ミスティカ、これが人の作ったものなのか…」

ピノコ「かんじゃたんのむねに、入ってくのよさ…」

93: 2010/08/28(土) 15:31:06.74 ID:ACKx8y2f0
めぐ「う…ん…あれ、指輪…」

BJ「気がついたか?」

めぐ「…はい、あの私の指輪を知りませんか? 薔薇をかたどった…」

BJ「数値は全て正常、君は助かったんだ…体力が回復すればみなと同じように生活できるようになる。
   さぁ、今はまだもう少し休んでいなさい」

めぐ「あの、先生…ですか?」

BJ「あぁ、でもいまは休みなさい。
   ピノコ、行くぞ」

94: 2010/08/28(土) 15:35:46.07 ID:ACKx8y2f0
~有栖川大学病院 控室~

BJ「治療は終わりました、明日以降精密検査を受けていただくことになると思いますが、恐らく問題ないでしょう。
   彼女は完全に回復します」

めぐ父「ほ、本当ですか!?
     あ…ありがとうございます! 本当に、ありがとう…」

BJ「いや、私は何もしていない、実際メスの一本すらも握っていないんでね。
   よって報酬についてもカネは要求しない…だがな」

めぐ父「あの…一体どういうことですか…?
    それに金銭でない報酬とは…?」

BJ「いうなれば彼女のリハビリだ、彼女は生きる意志を失っていた、庭師ですら心の樹を見つけられないほどにね。
   その責任、あんたがたに全てあるとは言わんが、今日からは親らしく彼女に接してやれ。
   そして彼女の樹を育ててやれ、もう彼女を迷子にさせるんじゃない、いいな?」

めぐ父「は、はぁ…」

BJ「では失礼します」

ピノコ「しつれいしますのよさ」

95: 2010/08/28(土) 15:39:42.58 ID:ACKx8y2f0
真紅「ここは…夢の狭間…?
   私は一体…ラプラス…!」

ラプラス「これはこれは5番目のお姫様、お待ちしておりました。
      さぁ、そちらの扉へどうぞ」

真紅「扉が…輝いてる?この扉は一体…?」

ラプラス「とかく真実とは奇なるもの、輝く扉に出会うこともありましょう」

真紅「アリスゲームはもう終わったのだわ、
   もう何を見せられても闘いの誘発にはならないわよ」

ラプラス「ほう、アリスの誕生を待たずにアリスゲームを放棄されたのですか?」

真紅「アリスは生まれたのだわ、それはめぐというとても儚い人間の少女。
   そして薔薇乙女が選んだ、至高の少女」

ラプラス「左様でしたか、これは失礼。
      しかしそれならば問題もないでしょう、さぁそちらの扉を」
 
真紅「いいわ、この扉を開きましょう」



ラプラス「これで全てのレディーが、薔薇の扉を開かれました。
     兎風情の進行役はここまで…」

96: 2010/08/28(土) 16:00:04.49 ID:ACKx8y2f0
真紅「…お父様!」


ローゼン「ようこそ、私のフィールドへ。
      おかえり、真紅…私の愛しい5番目の娘。
      そして、おめでとう…君は今、アリスだ」

97: 2010/08/28(土) 16:05:14.73 ID:ACKx8y2f0
真紅「そんな…しかしお父様、私はアリスゲームを、ローザミスティカを放棄しました! 私にその資格は…」

ローゼン「真紅、君はアリスとは何だと思う?一点の穢れもない、至高の少女。
      それがアリスだとするなら、君に…いや、君たちにその資格がないはずがないだろう」

真紅「しかしお父様、私にはもういただいたローザ・ミスティカがありません…
    私だけでなく、ほかのみんなも…アリスになったのは柿崎めぐという人間の少女です」

ローゼン「確かにそうだね、彼女は全てのローザミスティカを集めたことでアリスとなった。
     しかし、アリスになる方法は一つではない。人もドールも、心から他人の幸せを願うことができたなら、
     それは最も美しく、穢れないことなんだよ。しかし、君たちにそれを伝えることはならなかった。
     アリスを目指す君たちがそれを知ってしまったら、そこには自分の欲が生まれてしまう。
     たとえ行いが全く同じであったとしても、とても醜いものとなってしまう。
     だから、私は君たちに闘いを強いた、アリスとなる道として、ローザミスティカを奪いあうことのみを示した…
     結果として君たちは、みな間違いを避けてくれた、ほんとうにありがとう…
     しかし、それはあくまで結果論だ。私が君たちにさせたことは、人形師としても、人間としても、
     …父親としても許されないことだったのかもしれない。すまなかった…」

真紅「…ありがとうございます、お父様」

ローゼン「真紅…?」

真紅「お父様は、私たちをお作り下さった上に、命まで与えてくださった。
   そして何より、お父様は私たちを信じてくださったのでしょう?
   その上で与えられた試練なら、それは私たちが薔薇乙女として乗り越えなくてはならないもの。
   時間はかかりましたし、みな失ったものもあります。
   でも、薔薇乙女はみな運命に従い必ずお父様のもとに帰ってまいります、…至高の少女、アリスとして」


金糸雀「ほーら、カナの言った通りだったかしらー!」

98: 2010/08/28(土) 16:09:30.23 ID:ACKx8y2f0
翠星石「キーッ、うるっせーです!!
    てめーが当てたのは真紅が礼を言うところだけじゃねーですか!」

金糸雀「あーら、そこは今の真紅の長々としたセリフの中でもーっとも重要な部分だったかしら!」

雛苺「ヒ、ヒナだって真紅は絶対めぐのことを話すって言ったのよ!」

蒼星石「まぁまぁみんな、全員無事に戻ってこれたんだからよかったじゃないか」

水銀燈「ほ~んと、お父様の前でギャーギャー騒ぐなんて、はしたないったらありゃしなぁい」

真紅「そう…みんな、アリスに…おめでとう、みんな」

蒼星石「ふふ、君もアリスになったんだよ、おめでとう、真紅」

雛苺「おめでと―なのよ、真紅ぅ!」

真紅「ありがとう、雛苺、…ありがとう、みんな」

ローゼン「みな、本当に美しい…」

99: 2010/08/28(土) 16:14:55.21 ID:ACKx8y2f0
真紅「お父様、ひとつよろしいですか?」

ローゼン「おや、なんだい真紅?」

真紅「ラプラスの魔のことなのですが…彼はこの方法がアリスにつながることを知っていたのですか?」

ローゼン「あぁ、ラプラスか。もちろん知っていたよ。
     彼は私の協力者だ、ローザ・ミスティカの精製も彼の助力があって成せたことだ。
     私は君たちの前に出ることはならなかったからね。
     彼がアリスが生まれるのを見守ってくれただろう?」

真紅「そうだったのですか…」

ローゼン「そうか、人間の少女にローザ・ミスティカを使うことを提案したのは君だったね。ラプラスにそれを教わったのかい?」

雪華綺晶「はい…お父様」

ローゼン「そうか、やはり彼が…彼もアリスを切望していたが、姉妹の闘いには疑問を持っていた。
     君たちを、心やさしい少女にと一番願っていたのは彼だよ。
     しかし、彼は口下手だからね。今までの時代では、うまく君たちを導くことが出来なかったんだろう」

真紅「あのラプラスがそんなことを…
   しかし、今まではアリスゲームをそそのかすようなことばかり…!」

ローゼン「ただでさえ口下手なうえに屈折しているところがあるからね、彼は。
     君たちが自分にそそのかされた程度で傷つけあってしまうようでは、
     アリスゲームによってしかアリスは生まれない…と考えていたのかもしれない。
     しかし、結局彼は最高の形でアリスゲームを終結に導いてくれた…」

真紅「そうだったのですか…」

100: 2010/08/28(土) 16:19:27.81 ID:ACKx8y2f0
ローゼン「そうだ、雪華綺晶。私は君を実体のないアストラル体として作った。
     そのことで、ずいぶん君たちを苦しめてしまったようだね…
     しばらくの間ここにいてくれるかい、君の身体を作ろう」

雪華綺晶「お…お父様…私の、身体を…」

ローゼン「あぁ…アストラル体の君も、エーテル体のみなも、どちらもアリスになれたんだしね」

雪華綺晶「ありがとうございます、お父様…!」

ローゼン「いいや、それは人形師として当然のことだよ。
     むしろ君の身体について要望があったらぜひ出してほしいな。
     ドールの意見を聞いて身体を作ったことは私もないからね」

雪華綺晶「はい、喜んで…」

雛苺「あーっ!! きらきしょうが笑ってるのよ!!」
 
翠星石「おっんやー? いつもつーーんっとお澄ましの末妹がどうしたですかぁ?」

蒼星石「やめなよ翠星石、よかったね雪華綺晶」

真紅「そうね、おめでとう雪華綺晶」

雪華綺晶「お姉さま方…ありがとうございます…」

101: 2010/08/28(土) 16:24:21.97 ID:ACKx8y2f0
ローゼン「さて、みんな、聞いてくれ。
     君たちは私の最高傑作だ、アリスとして私のもとに戻ってきてくれて本当にありがとう。
     しかし君たちは永遠にここで過ごすべきではない…
     君たちはもっと広い世界を見て、聞いて、感じて、成長しなくてはならない。
     もちろん、もう闘いの必要はない、ともに行動するのも、一人で旅をするのもよし。
     しばし眠りにつくというのもよいだろう…もちろん、マスターのもとへ戻ることもね。
     私が君たちにしてあげられることはもうなにもない…君たちは自由だ」

蒼星石「しかし、お父様!」

翠星石「そうです!お父様の樹はもう枯れかかってるですよ!!」

ローゼン「そうか…いや、君たちには長く苦しい闘いを強いてしまったからね。
     とても君たちにこんなことを言う資格はないが、私も苦しかった、辛かったんだ…
     そうか、そういえば君たちのマスターは樹を失ったんだったね、これを持っていきなさい」

蒼星石「お父様…これは…」

翠星石「心の樹の…苗ですか?」

ローゼン「さすがだね、これは私の樹を切って作った苗だよ。
     彼にはマエストロの素質がある、私の苗ともきっと相性はいいんじゃないかな?」

102: 2010/08/28(土) 16:29:38.74 ID:ACKx8y2f0
蒼星石「そうか…これをジュン君の夢の世界に植えて」

翠星石「ジュンの新芽をつないでやればいいんです!」

ローゼン「さ、君たちの腕の見せ所だよ」

蒼星石「ありがとうございます、お父様!
    でもお父様の心の樹も…」

ローゼン「私なら大丈夫だよ、こんなにも満たされた気持ちなのは何十万時間ぶりだろう。
     私の心は君たちがもう十分に癒してくれているんだよ」

雛苺「それでジュンがおっきするの!?」

ローゼン「そうだよ雛苺、翠星石と蒼星石ならきっと大丈夫さ」ナデナデ

雛苺「すっごいのー! 翠星石、蒼星石!」グイグイ

翠星石「あぁもう、やかましいですひっぱんなですチビ苺!」

蒼星石「はは、分かったよ雛苺、きっとジュン君は元に戻るさ」

103: 2010/08/28(土) 16:34:47.30 ID:ACKx8y2f0
~巴宅~

巴「ただいまー…あら、手紙?」


  【まりてなの】


巴「ふふっ…字が間違ってるわよ、雛苺…」

104: 2010/08/28(土) 16:39:48.59 ID:ACKx8y2f0
~通学路~

女子学生「じゃーねー」

めぐ「うん、また明日~」

 逃げてるのか~追ってるのか~♪

めぐ「あら、メール?」


  【巻きなさぁい】


めぐ「水銀燈…ううん、私の本当の天使さん…」

105: 2010/08/28(土) 16:44:41.60 ID:ACKx8y2f0
~有栖川大学病院~

ジュン「んっ…あぁ…」

医師1~5「おぉ!」

BJ「これはすごい…」

ジュン「あの、ここは…」

医師1「病院だよ、君は自宅で急に昏睡状態になって今日まで眠っていたんだ。
    でも、もう大丈夫なようだね」

ジュン「は、はぁ…」

医師2「脈拍、心拍数とも正常値へ回復しました」

医師1「そうか。ジュン君、今の君には休息がなにより必要だ、少し休みなさい」

ジュン「あっ、あの!……えっと、姉は?」

医師1「おねぇさんは学校の時間だよ、でも毎日もう少ししたら来てくださってるかな」

ジュン「そうですか…」

医師1「じゃあ私たちはもう出ていくからね、何かあったらナースコールを押しなさい」

BJ(薔薇の指輪!? さっきまではなかったはずだが…そうか、これもあいつらか)

106: 2010/08/28(土) 17:01:03.16 ID:ACKx8y2f0
BJ「おめでとうございます、先生」

医師1「いえいえ、しかし直前とはいえ先生に連絡を差し上げることができてよかった」

BJ「回復の兆しは本当に何もなかったのですか?」

医師1「昨日の午後ですか、計測には特に変化はないのですが生気のようなものを感じまして」

BJ「…不思議なものですね、本当に人間というものは」

医師1「本当に…」




蒼星石「やったね、翠星石」ヒソヒソ

翠星石「ふ、ふん! この翠星石がつないでやったんだから当然です!」ヒソヒソ

蒼星石「ふふ…そうだね、そうかもしれない。
    なんといっても翠星石が付きっ切りで世話をしていたんだものね」ヒソヒソ

翠星石「蒼星石もじゃねーですか、それにあれは私たちにしかできない仕事だったんだからしょーがなかっただけですよ!」ヒソヒソ

蒼星石「はいはい、でも本当に

翠・蒼「よかった…」

107: 2010/08/28(土) 17:03:02.90 ID:ACKx8y2f0
~BJ診療所~

郵便(ry「ピノコさんにお手紙ですよ、メー」

ピノコ「いつも食べゆにごくろうさんなのよさ」


 【わたしはピノコにまいてほしいかしら】

ピノコ「アッチョンブリケー!!!
    ちぇ、ちぇんちぇーちぇんちぇー!!」

ドタドタドタ、バン!! …パタン

ピノコ「おれんわちゅうらったのよさ…///」

ガチャn
ピノコ「おわった!!」バン!

ピノコ「先生! カナリヤからお手紙がきたのよさ!」

BJ「ふぅ…ピノコ、ちょっと出かけてくる、その間に部屋を片づけて綺麗に掃除をしておいてくれ」

ピノコ「りょ、了解なのよさ。先生はきゅうかんたん?」

BJ「…いいや、卵も紅茶も切らしてるからな」


             ~Fin~

108: 2010/08/28(土) 17:05:55.56 ID:gl/AXeKB0

110: 2010/08/28(土) 17:09:46.06 ID:ACKx8y2f0
なんとかほぼ予定時間通りに投下し終えることができました
途中勝手な都合で席を外したり、3度もさるさんを食らったりとグダグダですみませんでした
途中で支援等を頂いていると、とても励みになりますし読んでくれてる人がいるんだと思うと嬉しかったです

それではこんなスレにお付き合いいただいた方本当にありがとうございました

引用: ブラック・ジャック「まきますか、まきませんか…?」