16: 2015/09/24(木) 23:02:06.816 ID:LdqD/hvP0.net
~昭和33年 佐賀県唐津市~

オバサン「そげん気ぃふさがんで。海にでも行ってきたらどがんね?」
男「はぁ・・・」
オバサン「病気はそがん重ぅはなかっちゃろ?大学はいつでも戻れるけん、あんまい考えすぎんごとね!」
男「・・・」

綺麗な海だ・・東京じゃなかなかこんな海にはお目にかかれない。
海と空の明るさがますます男の心を塞いでいくようだった。

男「今から大学に戻ったとしても2年遅れか・・・」
男「辞めようかな、大学」

投げやりな気持ちで断崖へと続く藪をかき分けて進む男
もうこのまま足を滑らせて氏んでも

童女「こっち来んで!」
男「?」
童女「お願いやっけん、見らんで・・・」

気付かなかったが、男のすぐそばに10歳前後の童女がしゃがみこんでいた。
見ただけで安物とわかる着物の裾を腰まで上げている。
童女の小水が男の足元まで流れてきていた・・・
ふらいんぐうぃっち(13) (週刊少年マガジンコミックス)
22: 2015/09/24(木) 23:05:39.910 ID:LdqD/hvP0.net
あわてて立ち上がった童女の内股がおしOこで濡れていた

男「・・あ、これ」
童女「・・・」
男「・・・」

男のハンカチでふとももから内側に向け丁寧に拭いていく童女

童女「・・・あ、ありがとうございました。ハンカチ・・洗ってかえす・・・のは失礼ばいね・・」
男「す、捨てていいよ・・」
童女「そげん訳にいかん・・・」
男「じゃあ、洗って返してくれる?」
童女「よかと!?絶対綺麗にして返すけん!!」

25: 2015/09/24(木) 23:06:50.184 ID:LdqD/hvP0.net
翌日。


オバチャン「男さん、可愛いかお客さんの来とらすよ~」
男「・・・?」
童女「・・・あ、こんにちわ」
男「えっと・・この前の・・・」
童女「こ、この前はありがとうございました・・・あの、これ・・・」

童女は綺麗な和紙の包みを男に差し出す。

男「・・・これ、ハンカチ?」
童女「うち、貧乏やけん・・・本当は新しかハンカチば買いなおさんぎいかんとやろうけど・・
   学校でね、可愛か和紙ばもらったけん・・・これに包んだと」
男「・・・ありがとう」
童女「お兄ちゃんのお名前、教えて・・・」
男「男」
童女「えへへ・・うちは童女っていうと!」
男「童女ちゃんか・・・可愛い名前だね」
童女「・・・」

急に顔を真っ赤にする童女。

26: 2015/09/24(木) 23:07:50.425 ID:LdqD/hvP0.net
童女「お兄ちゃんはこっちの人じゃなかと?」
男「ん~東京からこっちに来てるんだ」
童女「・・・いつ帰ると?」
男「まだしばらくはいるつもりだけど・・・」
童女「・・・」
男「?」
男「唐津を好きになったらずっといるかもなぁ~」
童女「童女ね!唐津のよかとこ知っとるっちゃん♪お兄ちゃんにだけ教えてあげるけん!」

男「そっか。どういうとこ?」
童女「ん!がばい綺麗かとよ・・」
男「ほぅ・・今度一緒にそこにデートしようか(笑」
童女「・・・!」

指の先まで真っ赤になる童女。

男「童女ちゃん?」
童女「あ、はい・・・」
男「いつ行こうか?」
童女「明日・・・」
男「いいよ」
童女「・・・あ、あの!」
男「ん?」
童女「・・・お兄ちゃんって何が好いとぅと?食べ物・・・」

29: 2015/09/24(木) 23:08:56.847 ID:LdqD/hvP0.net
翌日。

オバチャン「男さん!童女ちゃんの来とらすよ~!!」
男「はい」

童女「あ、こんにちわ・・・」

玄関には綺麗な着物を着た童女が立っていた。
おかっぱにした髪には真っ赤なリボンを結わえている。

男「童女ちゃん。えらく可愛い格好してるねぇ」
童女「えへへ・・・きれいか服これしか持っとらんと」
男「似合ってるよ」
童女「・・・は、初めてのデートやけん」
男「リボン付けてるんだね」
童女「・・・お母さんがね、結んでくれたと!」
童女「デートするときは可愛か格好ばしていきんしゃい、って・・・」

30: 2015/09/24(木) 23:09:56.827 ID:LdqD/hvP0.net
童女「お兄ちゃん!!次はこっち来てぇ♪」

異常とも思える童女のスタミナに、男は驚くばかりだった。
その日一日で実に15kmは歩いただろうか・・・
とんだデートだ

男「やっぱり田舎の子は体力が違うなぁ・・・はぁはぁ」
童女「お兄ちゃん・・どがんしたとぉ?」
男「ちょっと一休みしないか?」
童女「・・あの洞窟ば抜けたらがばい綺麗かとこのあっとよ。。」
男「・・・んじゃそこまで頑張るか」
童女「そいぎ童女について来て♪」

洞窟に向かって駆け出す童女
よろよろになりながら、童女の後を追う男

33: 2015/09/24(木) 23:11:40.779 ID:LdqD/hvP0.net
童女を追いかけ洞窟に入る男

男「童女ちゃん?どこ?童女ちゃん!?」
まっすぐ1分ほども歩いただろうか・・・ふと後ろを振り返ると


「入り口の光が見えない・・・まっすぐ歩いたはずだよな、俺」
「童女ちゃん!?どこにいるの??」
「童女ちゃん・・・・」

童女「お兄ちゃん」
男「童女ちゃん!!びっくりしたなぁ~」

暗闇に目が慣れてくると童女の姿がはっきり見えてきた・・・
さっきまで着ていた綺麗な着物を脱いだ、一糸まとわぬ姿。

俺「童女、ちゃん・・・?」
童女「・・・」
俺「え、なに!?」

童女は俺の唇に人差し指をあて、その指をゆっくりと下へとおろしていく
胸・・・へそ・・・

37: 2015/09/24(木) 23:13:05.624 ID:LdqD/hvP0.net
10年近く前、俺のおじさんが所有する墓地を整備することになった。
その墓地は昭和初期の土葬の頃のもので、土葬にされた遺体を荼毘に付して
改めて新しく作った墓に移そうという計画だった・・


当時高校生だった俺も手伝いに駆り出され、土葬の墓を掘ることになった。
面白半分で参加していた俺は、墓碑銘の年齢や性別・名前を見ながら
「おっ!これは若い女だね~」とか「大往生じゃのうw」とかつぶやきながら
作業を進めた。
遺体のほとんどは骨と髪の毛だけになっていたが、時々状態がいいものがあり、
肉が一部ミイラ状になってこびりついていたりしたものもあった・・・

39: 2015/09/24(木) 23:14:21.923 ID:LdqD/hvP0.net
俺が掘っている隣で大人たちがざわざわしているのが分かった
「なにかあったん?」
「お前は見ないほうがいい・・」
そういわれるとやはり気になる。
しかしついそれまでの癖で墓碑銘をまず見てしまった。
「~~童女 享年10」
10歳の女の子かぁ・・・可愛そうになぁ
そう思いながら掘りだした棺桶の中を覗きみてみた

40: 2015/09/24(木) 23:15:19.518 ID:LdqD/hvP0.net
下半身は完全に白骨化していた。
上半身も腹部は完全に無くなっていたが、アバラには肉(というか皮)が張り付いており
首から上はほぼ完全に皮が残っていた。
顔もやせこけて見えるが、生前はとても可愛い女の子であったろうことを伺わせる面立ちをしていた。
くぼんだ瞼は半分開き、目の中の真っ暗な闇がとてもミステリアス
目の玉は完全に失われているのに、俺はその子と目が合ったような気がした

周囲の大人たちは、この不気味な遺体を誰が運びだすかで揉めていた。
「俺がやるよ!」
一緒に参加していた父親は俺の暴挙を必氏で止めようとした。
「やらせてよ・・・」

十代の子供にやらせるのに引け目は感じたようだったが、俺を止めた奴が
代わりにやらなければならないといった雰囲気ができあがり、周囲は沈黙した。

41: 2015/09/24(木) 23:16:21.294 ID:LdqD/hvP0.net
俺は棺桶の中に降りた。
棺桶と言っても今葬式で見かけるような大きな物ではなくて、
遺体の足を折り曲げて入れるような小さな物だった・・・
その童女の折り曲げたひざの間に足を入れ、踏ん張りながら童女の遺体を抱きかかえようとした。

その童女の遺体は軽すぎた。
弾みで童女を抱えたまま俺は後ろに倒れこんだ・・・
俺に全ての体重を預けているにも関わらず、布団のように軽い童女。
その軽さが童女がもう氏んでいることを俺に感じさせたんだ・・・
その童女が可哀想で、切なくて、涙が出てきた

42: 2015/09/24(木) 23:17:17.599 ID:LdqD/hvP0.net
俺はその童女を抱きかかえた時点で、いや、目が合った時点で
自分の妹や恋人のように思えていたんだと思う。

俺は泣きながらその童女の髪を洗ってやった。
おかっぱだった。

集めた遺体は坊さんが弔ったあと、木の棺に入れて野焼きにした。
俺はその童女の遺体を焼くことに最期まで抵抗した。
周囲の人たちはさぞ気味が悪かったろう・・・
俺の父親も肩身が狭そうだった。

43: 2015/09/24(木) 23:18:31.412 ID:LdqD/hvP0.net
俺はその日以来、10歳前後の童女を見ると氏を連想してしまう。

信じてもらえないかもしれないが、これは本当の話だ。
その日から童女は毎日俺の夢の中に出てくる。
時には出会った日の姿で(要するに遺体の姿で)
また時には綺麗な着物を着た生前の頃の姿で。

俺はどちらの姿の童女も愛している。


昭和33年は、童女の没年
佐賀県唐津市は、俺と童女が出会った場所。

俺の中の童女は唐津弁を話し、俺に甘えてくる。
俺に彼女ができたときは彼女にヤキモチをやき、彼女の夢の中で彼女をおかす・・・

44: 2015/09/24(木) 23:19:18.202 ID:LdqD/hvP0.net
昭和33年・・・
10年という短い生涯の中で、この子はどんな景色を見てきただろう・・・
10年という短い生涯の中で、この子はいったいどれだけ笑ったのだろう・・・
暗く、狭い土の中で心細かっただろう・・・
ひとりぼっちで寂しかっただろう・・・

悔しいようなそんな思いに肩を震わせ
頬をつたう涙が落ちたとき、こんな女の子の声が聞こえた気がする


 ・・・ やっとお兄ちゃんに逢えたとねっ

  ばってん、ふうけるお兄ぃ嫌いや はよぅお仕事しんしゃぃ♪


はっと我に返り、涙を拭った。

46: 2015/09/24(木) 23:20:36.133 ID:LdqD/hvP0.net
童女「お兄ちゃん・・・」
俺「童女ちゃん・・・」

童女「あんまい気ば落とさんごとね!お兄ちゃんが元気になるまで横におってやっけん♪」

俺「ずっとそばにいて欲しい」
童女「童女はずっとお兄ちゃんのそばにおったとよ・・・」


俺「ずっと?いつから?」
童女「初めて会った時から。童女のこと抱っこしてくれたやろ?そん時からお兄ちゃんと一緒におるよ」
俺「そうか・・なんか安心した」

童女「またぎゅってして!」

俺「童女ちゃん、おいで!!」
童女「うん・・・お兄ちゃん、好いとぅよ・・・」

49: 2015/09/24(木) 23:23:03.194 ID:LdqD/hvP0.net
課長「男、ちょっと第14応接室まで来てくれ」
俺「はい・・・」

応接室に着くと、課長と部長が座っていた

課長「まあ、掛けてくれ」
俺「はい・・」
課長「さっき部長と話してたんだが、お前少し休んだほうがいいんじゃないか?」
俺「・・・」
課長「病院いくなり、休養とるなりしてこい。お前最近おかしいぞ」
部長「幸い今は暇な時期だし、ゆっくり休んで英気を養うことだ。君は大事な戦力なんだから」
課長「休職届けを出したらどうだ?今のままじゃお前に仕事を任せられん」
俺「・・・そうですね。申し訳ありませんが少しお休みをいただきたいと思います」


どこに行こう?
海・・遠い海。
海沿いの民宿でしばらく羽を休めるのもいいかも知れない。

俺「童女ちゃん・・・」

俺はたまらなく童女に会いたかった。
またぎゅっと抱きしめたかった。

50: 2015/09/24(木) 23:24:40.177 ID:LdqD/hvP0.net
~平成19年 佐賀県唐津市~



オバチャン「ご飯の出来るまで散歩でもしてきたらどがんね?海沿いば歩いたら気持ちよかよ」
俺「そうですね、1時間ほどで戻ってきます」

夏の唐津は暑かった。最高気温は38度にもなると天気キャスターが言っていた。
しかし、東京ほどの蒸し暑さはない。
潮風が心地よかった。

海沿いの道をゆっくり歩く俺
自転車に乗った少年たちが騒ぎながら俺を追い越していく

53: 2015/09/24(木) 23:25:34.570 ID:LdqD/hvP0.net
童女「お兄ちゃん?」
俺「なぁに?」
童女「最近童女の夢ば見ることん多なっとぅごたんね・・・」
俺「そうだな」
童女「近づいてきよるけん?」
俺「・・・」
童女「童女に近づいてきよるけん、ね・・・」

54: 2015/09/24(木) 23:27:44.473 ID:LdqD/hvP0.net
初めて来た場所なのに、なんだかすごく懐かしい・・・
セミの声・・・草いきれ・・・

俺「童女ちゃん・・・」

幻覚の中で会っただけなのにどうしてこんなに童女が気になるのか、
俺自身、理由が分からなかった。

オバチャン「おかえりんしゃい!ご飯のできとぉよ。食堂に降りてきんしゃい!」
俺「ねぇオバチャン・・・」
オバチャン「なに?」
俺「さっき散歩しながら、、歩きながら夢を見た・・・」
オバチャン「・・・」

俺「白昼夢っていうのかな・・・やけにリアルな夢だった」
オバチャン「・・・」
俺「・・・ごめんなさい。変なこと言っちゃって。何でもないです」
オバチャン「・・・いいとよ~!ご飯までには降りてきんしゃいね」
俺「はい」

俺は自室に戻り、布団に寝転んで天井を見つめていた。
さっきのように、また夢の中でもいいから童女に会いたいとおもった。
夢の中でも、童女を抱きしめたいと思った。

56: 2015/09/24(木) 23:28:52.343 ID:LdqD/hvP0.net
童女「お兄ちゃん!」
俺「なあに?」
童女「この前ね!童女、ゆみちゃんとプール行ったと!!」
俺「そっか~!流れるプール?」
童女「童女ん家、貧乏やけん・・・流れるプール行ったことなか・・
   この前行ったとは学校んプールやけん」
俺「今でもカマボコの板に名前とか書いて名札にしたりするんかな?」
童女「うん!童女自分で書いたとよ!!ゆみちゃんはお母さんに書いてもらったって~」
俺「えらいねぇ~」
童女「へへぇ~♪」

59: 2015/09/24(木) 23:30:25.486 ID:LdqD/hvP0.net
また・・・夢をみた。
暗い棺の中に眠る童女。緑色の身体。
ところどころ白く見えているのは骨だろうか・・・
俺「童女ちゃん・・・」
童女「お兄ちゃん・・待っとったとよ?」
俺「ごめんな。また童女ちゃんと一緒にお仕事したいよ」
童女「今度はなんば教えてくれると?」
俺「この前は税抜き処理までやったよな?じゃあ次は現金出納をやってもらおうかな・・・」
童女「うん!頑張る!!・・頑張るから、童女のこと、ギュッてしてぇ?」

俺は童女の腐食した身体を抱きしめた。
俺が触れたところから、膿ともつかない腐食した液体がにじみだした。

61: 2015/09/24(木) 23:31:56.835 ID:LdqD/hvP0.net
童女「流れるプールってどがん感じすっと??」
俺「浮き輪につかまってぷかぷかしてるとね~」
童女「うんうん!」
俺「・・・流れていくんだよ」
童女「童女、学校のプールでよかごたぁ・・」
俺「・・・」
童女「お兄ちゃん?」
俺「ん?」
童女「今度、お兄ちゃんば童女の学校んプールに連れて行ってやっけん♪」
俺「・・・変質者と間違われて追い出されそうだな」
童女「そん時は童女がお兄ちゃんば守ってやっけんね!」
俺「・・さんきゅ」

62: 2015/09/24(木) 23:33:06.129 ID:LdqD/hvP0.net
童女が言っていた「遠い海」
それが佐賀県の唐津である証拠はない。
あるとすれば童女の方言くらいか・・・

男「何でわざわざこんなところまできちゃったんだろうなぁ・・・」

唐津には親戚がいる。
男自身も高校時代をここで過ごしていた。
だからといって特別の愛着はない。

男はさっき見た白昼夢を頭の中で反芻した。
たった1日だけの。それも会社での
男と童女の蜜月

63: 2015/09/24(木) 23:33:58.596 ID:LdqD/hvP0.net
潮騒の音が聞こえる・・・

童女「・・ゃん!お兄ちゃん!!」
男「あ、なに?」
童女「どがんしたと?」
男「波の音が聞こえた・・・海?」
童女「・・・」
男「なんでもない」
童女「そがんことより、なんで消費税ば抜かんぎいかんと?」
男「・・あ、ああ。さっき国に払うって言ったろ?払った消費税と貰った消費税との差額を」
童女「うん!」
男「あらかじめ取引ごとに消費税を抜いて仮払消費税・仮受消費税に集計してたら、
  消費税の申告書作るときに楽なんだよ」
童女「?」
男「仮受消費税から仮払消費税を引いた金額を納税すりゃいいんだから」
童女「・・・わかるごた、わからんごた感じ」
男「今は分からなくてもいいよ」
童女「海って」
男「え?」
童女「遠くの海?」
男「・・・ああ」

64: 2015/09/24(木) 23:34:58.492 ID:bVw772qW0.net
ジジジジジ…音だけで蒸し暑さを象徴させるセミの声が響く中、僕は愛車であるトヨタの古い 
 クーペのドアを開け、車を降りた。 
 「暑いなあ…」 
 大学二年生の夏、せっかく尋ねた自分の故郷…T県南部の奥地にある八幡村は、田舎ののどかな村 
 というかつての面影すら残らないくらいに荒れ果てていた。 
 見渡す限り山ばかりの平地に聳え立つ茅葺の集落は今にも崩れそうな状態になり、かっての農道は 
 歩く余裕さえないような獣道と化していた。 
 「こんなことで研究なんかできるのかなあ…」 
 もちろん僕がかつての故郷とはいえ、こんな田舎の廃村に来たのには訳がある。僕は大学で民俗学を 専攻しているのだが、その研究の上でどうしてもこの村に来なくてはいけない理由があったのだ…。 
 八幡村…かつてここは関東随一の「化け物ミイラ職人の里」として栄えていた村だった、わかりやす 
く言うとこの村は偽者の人魚のミイラなんかを製造して都会で売り払い生計を立てていたらしいのだ。 
 …なぜ「らしい」と描いたのかというと、実は僕はこの村に両親と住んでいたころの記憶が全くない 
のだ…十二歳のときに僕の両親はこの村で火事にあい、僕は遠縁の叔父に引き取られたのだが…どうし 
てもこの村での事と…最後の化け物職人だった両親の事を思い出せないのだ…。 
 大学での研究のためと、自分の過去を探るため…取り合えず僕は叔父にもらった村の地図を手に、廃 
村してから一回も手を付けていないという父の仕事場に向かおうとした…。 
 「おう、あんちゃん、どこ行くんでや?こんなとこでよ?」 
 いきなり背後から声をかけられた、ここ特有の方言がきついようだが、声は明らかに子供のものだ。 
 「うわあ!!…って、君こそなんでこんな所に?」  
 僕の背後にいたのは、ひどい訛りにもかかわらず見た目の可愛らしいおかっぱの少女だった、服装は白いキャミソールにサンダルと麦藁帽子…夏らしく日焼けした表情は実に可愛らしくて…。 
 「あれ…君どこかで…?」 
 「へ?兄ちゃんどっかであったっけ?」 
 「いや…たぶん気のせいだろう」 
 彼女の顔はどこかで見たことがある…僕の記憶がそう訴えていた。 

65: 2015/09/24(木) 23:35:59.186 ID:bVw772qW0.net
「へえ、君もこの村の生まれなんだ」 
 それから数時間後、僕は勝手に父の仕事場まで着いてきた彼女…名前は海晴というらしい…と、父の 
仕事場である廃墟で色々な資料などをあさっていた…廃墟とはいえ村人たちは定期的に村に戻って管理 
を行っているらしく、小屋が荒らされた様子はなかった。 
 「まあそう言ってもちっちぇえころのことだからよく覚えてねえけどよ、兄ちゃんはどんぐらいまで 
ここにいたんでや?」 
 「まあ、十二歳くらいまでだけど…どうもよくは覚えてないんだけどね…おっと、これは凄い」 
 うっすらと積もった埃をどけて僕は文机に乗っていた資料を手に取った。本の様子からいって年代も 
のの本だ…内容はどうやら剥製の作り方らしい。 
 「そうけ…なーんにも覚えてねえんけ…お、こりゃあ良さげなもんだな」 
 彼女は悲しそうにそう言うと、近くに落ちていた執刀用の刃物を手に取った…鋭利かつ複雑な形をし 
たそれは、なぜか錆びひとつついていなかった…。 
 「これでミイラとかの材料を切ってたんかなあ…どんな気持ちだったんかなあ…」 
 ぞくり…と、背中に悪寒が走った。刃物を持った彼女の視線はあまりにも鋭い…。 
 「と、ところで海晴ちゃんは何でこんな所に?」 
 「ん?爺ちゃんがここの守役なんだけどよぉ、どおも最近足腰弱ってるらしくって、おらっちさが代 
わりにきてんさぁ」 
 「へえ、偉いねえ」 
 「へ?そうかい?…いやあ照れんなあ」 
 そんな感じで彼女の視線を刃物からそらしつつ、僕は彼女と他愛のない話をしつつも小屋の整理と資料あさりに没頭していった。 

67: 2015/09/24(木) 23:36:58.144 ID:bVw772qW0.net
  
「本当にいいんけ?家に泊まってってもいいんだぜ?」 
 夕方、彼女にそろそろ家に帰るようにと進めると、彼女はそういった、僕がテントでここに泊まると言い出したので心配してのことらしい。 
 「大丈夫、君の家には迷惑かけられないし、それに僕は未だやることもあるからね。」 
 「遠慮しなくてもいいんだぜ、どうせこの村のモンはみいんな家族みてえなモンなんだしよぉ…」 
 「そう言うなって、じゃあここで」 
 僕は彼女の家だというふもとの家の前に車を止めた…しかし彼女は車から降りようとせずにこう呟い 
た。 
 「…明日もまた遊びに行ってもいいけ?」 
 「うん、別に構わないよ?」 
 「ありがとうねお兄ちゃん…じゃ!!」 
 そう言うと彼女は元気よく僕の車から降りていった…。 
 「うーん…」僕の頭の中で今朝のデジャビュ感覚が蘇る…一体あの子は誰なんだろうか?もしかした 
ら遊んでいるうちに思い出すかもしれない…よし、なら明日から彼女に少しづつこの村のことを聞いて 
みよう。そう考えて僕はまた村まで車を走らせた。 
  
 夕暮れ時、家の前にたたずんでいた海晴は…突然その場で笑い出した。 
 「あはははははははは!みいつけた!みいつけた!あはははははははは!」 
 ひとしきり笑った後、彼女はこう呟いた。 
 「愛してっかんね…お兄ちゃん…」 
 そしてまた笑い出す、それに釣られるかのように夕暮れ時のセミの大合唱が始まった。

68: 2015/09/24(木) 23:38:05.737 ID:bVw772qW0.net
 それから一週間が過ぎた、もともと夏休みを利用しての研究だったこともあって、僕は半分遊び気分 
でこの村での資料あさりと研究をしていた。レポートをまとめ終わり、資料の整理が終わるころには彼 
女…毎日やってくるようになった美晴ちゃんとも遊びすぎて肌が真っ黒になっているくらいだった。 
  
 そんなある日の夕暮れ時、彼女は僕にこんなことを聞いてきた。 
 「あんちゃんってさあ、彼女とかいるんけ?」 
 「ん?…いないけどそれがどうしたの?」 
 僕は彼女の持ってきてくれたスイカをほおばりつつ、そう答えた。 
 「オラっちさ…兄ちゃんのこと大好きだよ…もちろんラブのほうでな」 
 ぶっ!!とあわてるあまりに僕はスイカをはいてしまった…おいおいおい、何だか毎日来ていて妹みたいに感じていたけど…ん…妹…。 
 「お兄ちゃん、愛してっかんね…」 
 思い出せないはずの記憶がいきなり蘇る…確かマエにもこんなことを…僕は…このことよく似たあの 
子に…。 
 「ん…むう!!」 
 いきなり僕は彼女に唇を奪われた、もちろんただの唇だけではない、彼女は一気に自分の舌を僕の口腔にねじ込むと、僕の舌と自分の舌を絡ませた。 
 「んちゅ…んむ…はあ…」「ん…むう」 
 いきなりこうされてはかなわない、僕は彼女から唇を離すと、興奮を抑えきれずに、そのまま彼女を 
押し倒した。 
 「こうして…いいのかい?」 
 「うん、お兄ちゃんと…ずっとこうしたかったから…」 
 そういって目を閉じる彼女の髪をなでると、僕は彼女のワンピースを脱がした。 
  
 「はぁぁ…お兄ちゃん…大好き…」 
 行為の後、そういって眠る彼女を置いて僕は、嫌な予感を抑えつつも父の作業小屋に戻った。間違いない、彼女を僕は知っている…どうも自分の記憶が戻りそうなのだ。 
 多分彼女は…そう考えながら急いで作業小屋の扉を開けて、父の仮眠部屋である地下室に向かった…そしてそこに置かれた本棚の…昨日偶然発見した本の間に挟まった一枚の写真…それを取り出した。 
 「やっぱり…そうだったのか…」  
 その写真には幼い僕らしき人物と、それを囲む家族らしき人物と…海晴ちゃんが写っていた。 
 「あーらーらー、やっぱり思い出しちったんけ…お兄ちゃん」 
  その後ろには、空ろな笑顔を浮かべた海晴ちゃんが立っていた。 

69: 2015/09/24(木) 23:38:07.193 ID:LdqD/hvP0.net
ふと、覚醒する。

遠くで潮騒が聞こえる

女の子「あのぉ・・・」
俺「・・・ん?なんだい?」
女の子「あの木の上やけんど・・ボールの引っかかったっちゃん。
    取って、くださぃ」
俺「ああ、待って」

何でこんなところに女の子が?
それも一人で?
ボールあそび??

ボールを取るために長い棒切れを探している間、俺は考えていた。

・・・なぜ童女が抱いて欲しいと恥ずかしそうに頼んでいたのを断ったのか。

抱いてやればよかった。
大人になった童女を抱いて、頭をなでてやればよかった。
破瓜の痛みに耐えた童女の頭をなでてやればよかった。


あの女の子はもしかして、童女の化けた姿かも知れない・・・

70: 2015/09/24(木) 23:39:11.945 ID:bVw772qW0.net
「ああ…思い出したよ海晴…僕はあの日、火事の当日に…君を犯して両親に殺されかけたんだ。」 
 八年前のあの夏の日、僕は妹を犯してしまったんだ。理由?…もちろん妹を愛していたからさ、それこそ狂おしいくらいに…彼女が生理が 
始まってから色ずいて、隣町の男の子の家によく遊びに行き始めたのに嫉妬したのが原因だったと思う…でも妹はこういったんだ。 
 「お兄ちゃん嬉しいよ…私も大好きだよ、って…」 
 相思相愛ならと当然僕らは駆け落ちしようとしたが両親に捕まり、このことが村にばれるのを恐れた親父は僕を殺そうとしてバットで 
僕の頭を…。 
 「そう、だから家に火をつけてお父さんとお母さんを頃したんだよ、お兄ちゃん。」こうすればもう一緒にいられるでしょ…あははは 
はははははは」 
 家に灯油をまいて、自頃しようとしたにもかかわらず奇跡的に助かった妹は、病院に入院していた僕に会いにきてくれたが…その心は 
完全に壊れていた。もちろんこのことを知った親戚連中はこのことが世間にばれるのを恐れて証拠品を破壊、そして僕と妹を引き離し… 
僕は記憶を薬か何かによって奪われていた…。 

71: 2015/09/24(木) 23:39:16.779 ID:LdqD/hvP0.net
俺は腐乱した童女と、生前の時の童女と2種類見える。
でも、どっちの童女も可愛いんだよ・・
愛してるんだよ・・・
無言だが、駆け寄ってきて俺の肩にまとわりついたりするんだよ。
うとうとして目が覚めるとひざの上に座ってたりするんだよ。
なんだかんだ言って甘えんぼの子供なんだ。
可愛いんだ・・・

73: 2015/09/24(木) 23:40:12.856 ID:bVw772qW0.net
 「でも、なんでお前は…成長してないんだ…それにあの、行為のときの血は…」 
 「…未だきずかねーんけや…パパ」 
 …僕は全てを悟った、そうか、そういうことだったのか…。 
 「ママはおらっちが生まれたころに体壊して氏んじまったよ…でもよお、パパを恨まないでって、 
ずっと言い聞かせておらっちを育ててくれたんさ」 
 「…僕を、恨むかい?」 
 「いんやぁ、パパとママは状況が悪すぎたし、恨むことはねえょお…むしろ…」 
  そういって間を空けると、彼女はこういった。 
 「もうどこにも返したくねえぐれえ、パパのことが大好きだからよぉ…あははははは!」 
 彼女はがちゃり、と地下室のドアの鍵を閉めた。それと同時に僕の目は回り始め、呼吸 
が寝息に近くなり始めた。 
 「愛してっかんね…もうどこにもかえさねえよ…だから」 
 遅効性の眠り薬でも盛られたのか、僕の体はだんだん動かなくなり始めた。 
 彼女は…僕の娘の手にはのこぎりが握られていた。 
 「手足は切らせてもらって…ここで二人でくらすべね…あははははは…あ 
はははは…」 
 彼女の笑い声が、大きく大きく地下室に響いていた。 
 FIN 

75: 2015/09/24(木) 23:43:45.022 ID:LdqD/hvP0.net
首を傾げてにっこり笑う女の子。

俺「童女・・・童女・・・なんで足があるんだよ・・・」

女の子「・・・」

俺「ところどころ肉のこびりついたあの可愛らしい…白い・・・」

女の子「・・・」



童女「童女ね!お兄ちゃんとずっと一緒におるとぉ!ずっと一緒やけんね・・・」

78: 2015/09/24(木) 23:46:08.630 ID:LdqD/hvP0.net
パソコンに向かって1人文字を打つ俺。
殺風景な部屋に低いうねりのような電子音と、小気味よいタイプの音が響く。

童女「童女ね!お兄ちゃんとずっと一緒におるとよ?ずっと一緒やけんね・・・」

俺「あぁ、ずっと一緒だ。」


童女「ほんとばい?お兄ちゃんうそついてなかと? ずっと…ずっと一緒やけん・・・」

不安げな顔の童女。
所々削げ落ちた童女。

ずっと、これまでもこれからも…ずっと

引用: 幼女「にいちゃんおぶってー」俺「よかよ登り」幼女「えーばってんたったままやとのぼるとやぐらしかよ~」