716: 2016/07/02(土) 22:59:50.07 ID:3LVaAW2u0
遅れてすまない! 最近は仕事が終わるととにかく眠くて仕方がないのだ!
本当は今日も眠い! でもこれ以上遅らせる訳にはいかないので再開!
モノクマ「学級裁判!!」KAZUYA「俺が救ってみせる。ドクターKの名にかけてだ!」カルテ.6【前編】
モノクマ「学級裁判!!」KAZUYA「俺が救ってみせる。ドクターKの名にかけてだ!」カルテ.6【中編】
モノクマ「学級裁判!!」KAZUYA「俺が救ってみせる。ドクターKの名にかけてだ!」カルテ.6【後編】
717: 2016/07/02(土) 23:06:13.91 ID:3LVaAW2u0
大神「まさか自分で自分を刺したと言うのか?!」
朝日奈「い、いくらなんでもムチャだよ!」
石丸「そうです! 下手をすれば氏んでしまうのですよ?!」
桑田「ありえねーって!」
K「どうかな? 俺の授業と部屋にある人体急所マニュアルによって、刺してはいけない場所は
わかっているはずだ。それに、腹部の傷は見た目のインパクトとは裏腹に氏亡率は低い」
K「ここには熟練の外科医がいるのだ。発見さえ遅れなければまず氏なないだろう」
十神「くだらん。根拠のない妄言だ。そもそも葉隠がセレスを刺した瞬間がここに映っているだろう」
K「薄暗いのと葉隠の背中が邪魔でハッキリ傷口が見えん。それに、手元が
映っていないが、この映像でも葉隠はナイフを縦に構えているように見える」
朝日奈「で、でもなんでそんなことする必要があるの?!」
霧切「絶対に疑われない被害者という立場を手に入れ、安全に山田君を頃すためよ」
セレス「そ、それではまるでわたくしが犯人のようではありませんか! 言い掛かりだけでも
酷いのに、あまつさえ被害者のわたくしを犯人呼ばわりするとは見損ないましたわ!!」
江ノ島「ちょっと! いい加減なこと言わないでよね!」
不二咲「それに、葉隠君に刺されたセレスさんは何で無事だったのかな……?」
セレス「そうです! それをどう説明するのですか!」
モノクマ「言っておくけど、この映像自体は何の加工もしてないよ?
葉隠君は本当にセレスさんを刺しちゃったんだから。うぷぷ♪」
桑田「多分だけどさー、服の中に何か仕込んでたんじゃねえか?」
大和田「わかった! 雑誌だ! 俺も本気でヤバイ奴とケンカする時は、
念のために腹に雑誌とサラシを巻いたもんだぜ」
K「――いや、違うな」
自信を持って答えた二人に、しかしKAZUYAは明確に否定する。
大和田「なんでんなことがわかるんだよ?」
718: 2016/07/02(土) 23:22:39.98 ID:3LVaAW2u0
K「考えてもみろ。お前のように体の大きいヤツなら服の下に何か仕込んでもわからんだろうが、
小柄で細身の安広が雑誌など仕込んだら、いくら葉隠でも刺す時に気付くだろう」
舞園「ファッション雑誌や文庫本くらいなら何とかなるかもしれませんが、
その場合貫通してしまう危険性がありますしね……」
霧切「そもそも、そんな物を使ったのなら穴の空いた雑誌や本が現場付近から
見つかるはず。でも、そんなものはいくら探してもなかったわ」
図書室に隠せば見つからない可能性もあるが、十神に遭遇することを考えれば得策ではないだろう。
K「大体、余りに固いものを仕込んでいたら葉隠が刺した瞬間に違和感を覚えるはずだ。
どうだ、葉隠? 刺した瞬間、お前は何か感じたか?」
葉隠「うんにゃ。普通にスッと刺さったべ」
朝日奈「えぇー、なにそれ?! おかしくない? もう全然わからないよ!!」
大神「フム、我なりに考えてみたのだが……葉隠がナイフを突き出した瞬間、
腕と胴体でナイフの刀身を挟み込んだのではないか? そのまますぐに
うつ伏せに倒れてしまえば、端から見たら刺されたように見えるはずだ」
桑田「割りといいアイディアだと思うけど、それ多分おめーとせんせーくらいしか出来ねーから」
江ノ島(……私も出来る)
K「では、順を追って解説しよう」
K(この件を解き明かすには、まず事実を整理して並べる必要がある)
[ ロジカルオペレーション ]
第一問.セレスが葉隠に刺されたのはいつ?
メス: 山田が殴られる前
鉗子: 山田が殴られた直後
止血: 山田が殴られて少し経ってから
第二問.先程モノクマが見せた映像は?
メス: 本物
鉗子: 偽装
止血: 別人だった
第三問.つまりセレスは?
メス: 本当は刺されていなかった
鉗子: 刺された後も気力で行動した
止血: 違う時間に二回刺されている
↓2
721: 2016/07/02(土) 23:47:42.78 ID:3LVaAW2u0
K(……安広が刺されたのは何かしらの細工をした後だろうな)
K(もしこの事件以前に刺されたとするとそのタイミングは何時だ? そんな時はあったか?)
↓2
725: 2016/07/03(日) 00:13:37.07 ID:PU5NVJAlo
第一問 止血: 山田が殴られて少し経ってから
第二問 鉗子: 偽装
第三問 メス: 本当は刺されていなかった
第二問 鉗子: 偽装
第三問 メス: 本当は刺されていなかった
734: 2016/07/03(日) 20:45:55.46 ID:EJdtOiaP0
ミス二回なので自動進行
第一問 止血: 山田が葉隠に殴られて少し経ってから
第二問 メス: 本物
第三問 メス: 本当は刺されていなかった
K「摘出完了!」
K「安広はあの時、葉隠に刺されたが本当は刺されていなかったのだ!」
「ハァッ?!」
石丸「先生! それは一体……?!」
十神「とうとう頭がおかしくなったのか?」
K「そうだな。俺の発言は一見矛盾している。だが、それは葉隠が
持っていたのが『本物のナイフだった』という前提があるからだ」
苗木「まさか……」
セレス「…………」
K「お前達は先を押すと刃が引っ込む舞台用のナイフを知っているか? モノモノマシーンには
あまり使い道のないおもちゃやガラクタがたくさん入っていた。そういった類の
道具がその中にあっても何ら不思議ではない」
K「葉隠は先程、山田を襲った後の記憶が曖昧だと言ったな? 何らかの方法で気絶させ、
手にナイフを握らせておく。目を覚ました直後に安弘と遭遇し、煽るような言葉をかける」
K「――そうすれば、葉隠の臆病過ぎる性格から考えてまず間違いなく安広を刺すはずだ」
葉隠「なにを根拠に言ってんだ! 人を危険人物みたいに……」
大和田「お前、モノクマにナイフ渡されてぶん回してたの忘れたのかよ……」
葉隠「あ、はは……あったなー、そんなこと……」目逸らし
K「現場の暗さと混乱が相まり、出血がないことに気付かなかったのだろう。そして葉隠が
血文字を残して逃げた後、山田にトドメを刺し凶器を隠滅して廊下の血を血糊で偽装する」
K「その後、帳尻を合わせるため保健室の前で自ら腹を刺したのだ!」
735: 2016/07/03(日) 20:57:34.52 ID:EJdtOiaP0
大和田「で、でもよ……腹を刺すんだぞ? 激痛なんてもんじゃねえだろ……」
舞園「そうです。余程の覚悟がなければ……たかがお金のためにそこまで出来るでしょうか?」
苗木「先生、その推理は流石に……」
K「そうだな。しょっちゅう怪我をする俺や格闘家の大神ならいざ知らず、
いくら覚悟をしているとはいえ一般人に過ぎないお前達にそれは厳しいかもな」
K「ただ……」
K「――腹を刺す前に麻酔を打てばどうだ?」
「ま、麻酔っ?!!」
石丸「確かに、殺人という大罪を犯す覚悟があるのだ。痛みさえなければ腹を刺すことも……」
十神「愚民がッッ!!」
反論ッ!!
十神「麻酔だと?! そんなもの【どこから手に入れた】というんだ!!」
十神「まさかそれすらも【モノモノマシーンで手に入れた】と主張する気か?」
スルー or 論破
論破する場合はコトダマリスト>>144-145
↓1
736: 2016/07/03(日) 21:00:42.46 ID:/0X55LgcO
スルー
738: 2016/07/03(日) 21:10:31.84 ID:EJdtOiaP0
発展!!
K「そうだ。あのマシンがあれば可能だ」
十神「根拠の無い憶測をさも事実だと言う風に騙るのはやめろ……!!」
桑田「確かにちょっと強引だけどさ、根拠が無いってなんで言い切れるんだよ!」
十神「では、シュレディンガーの猫とでも主張する気か?」
セレス「箱の中に入った猫。箱を開けるまでは、猫が生きているのか氏んでいるのかわからない……」
霧切「今回の場合は、箱に入っていたかいないかの二つの事象が重なっていると言いたいのね」
大和田「はぁ? 入ってたなら入ってたし入ってねえなら入ってねえだろ?」
不二咲「ええっとね、量子力学の問題だからちょっと説明が難しいけど……箱の中身を知らない人にとっては
箱を開けた時に初めて中に物があるかないか確定するんだ。だから開けるまで、箱のなかに中身が
入っている状態と空っぽの状態、二つの状況が同時に存在してるってことになっちゃうんだよぉ」
桑田「ぜんっぜんわかんねー」
朝日奈「私もちょっと……」
石丸「本来は反論に使われた理論なのだ。つまり十神君は、実際に中身を確認するまでは麻酔が
入っている可能性も同等に存在する、という西城先生の主張を皮肉っているのだよ」
外野を完全に無視して、十神はKAZUYAだけを見据える。
十神「確かに貴様の言う通り、モノモノマシーンの中に麻酔は入っているかもしれないし、
入っていないかもしれない。だが、それをどうやって証明する? モノクマに聞くのか?
まさかそれが確定するまで議論は出来ない等と詭弁を用いるわけではあるまいな?」
十神「そもそもだ。仮に入っていたとして、それが出てくる確率は?」
十神「【モノクマが犯人に手を貸した証拠でもない】限り、貴様の主張は妄言に過ぎない……!」
十神「とうとう焼きが回ったな、ドクターK?」
スルー or 論破
論破する場合はコトダマリスト>>144-145
↓1
740: 2016/07/03(日) 21:35:52.18 ID:EJdtOiaP0
K(ここで退いたら終わりだ!)
論破せよ!
↓1
741: 2016/07/03(日) 21:54:13.30 ID:5eGecxBQO
秤の実験かな?
743: 2016/07/03(日) 22:04:29.60 ID:EJdtOiaP0
不正解
K(コトダマの中に、明らかにモノクマが関わっているものがあるはずだ)
K(犯人は、一体『これ』をどこで手に入れたと思う?)
↓1
744: 2016/07/03(日) 22:53:59.02 ID:5eGecxBQO
保健室か理科室?
とりあえずモノクマボトルで
とりあえずモノクマボトルで
745: 2016/07/03(日) 23:10:14.15 ID:EJdtOiaP0
自動進行
【謎のマスク】→【モノクマが犯人に/手を貸した証拠でもない】
解ッ!!
K「俺なら出来るッ!!」
K「モノクマが犯人に手を貸したと判断出来る証拠があれば、お前は納得するのだな?」
十神「あればな。そんなものあるはずがない!」
K「朝日奈。現場に落ちていたこのマスクだが……最初に見た時、
確かに君はこれを不審者が身につけていたものだと言ったな?」
朝日奈「え? えっと……」
K「頼む。この事件の鍵はこのマスクの真贋に懸かっていると言っていい。ハッキリ証言してくれ」
朝日奈「……うん。本物で間違いないよ。怖くてずっと見てたし、少し破れてるのは
石丸が思いっきり机に投げ飛ばした時に破れたんだと思う」
K「では問題だ。何故不審者が身につけていたマスクを山田が持っていたんだろうな?」
葉隠「そんなの簡単だ。山田っちが不審者の正体だったんだべ!」
大神「体格が違うだろう……山田が不審者ならひと目でわかる」
K「葉隠が不審者だと嘘を吹き込んでモノクマが山田に渡した? 仮にそうだとして、お前達は
モノクマの言葉を無条件に信じるか? しかも、それを根拠にいきなり襲いかかったりするか?」
腐川「し、しないわ……モノクマの発言が胡散臭いなんて、そんなのわかりきったことじゃない……!」
朝日奈「私だったらまず先生に相談するな。それか、本人に確認すると思う」
桑田「……葉隠だったらやりかねねーけどな」
葉隠「う、うるせー! 俺だって、その、ちゃんと先生に言うべ! モノクマの言葉なんて信用できるか!」
モノクマ「酷いなぁ。ボクはなんだかんだ嘘をついたことは一度もないのに」
746: 2016/07/03(日) 23:26:23.59 ID:EJdtOiaP0
苗木「あからさまな嘘はなくても、情報を隠したり誘導したりしたことは何度もあっただろ!」
K「とにかくだ。マスクと葉隠を結びつけるには思考が跳躍している。
誰かがマスクを使いそれを根拠に山田を騙したと考えるのが妥当だろう」
K「この時点では不審者本人がそれを行ったように見えるが、不審者に近い体格の人間が
いきなりマスクを持って自分の前に現れたら、普通の人間ならまず警戒をするはずだ」
K「よって、確実に不審者ではない体格の人間がどこからかマスクを入手し山田を唆した」
腐川「……でも、なんでモノクマは本物のマスクをモノモノマシーンに入れたの?
そんなの偽物のマスクでも良かったんじゃ……」
江ノ島「そうだよね。そんなマスクどこでも売ってるっしょ?」
桑田「わざわざ買いに行くのめんどかったんじゃね?」
苗木「そんな理由じゃないと思うけど……」
K「俺はそれをモノクマの言う『ゲーム性』……というものだと考える。あからさまに
凶器を渡さないのはこちらの推理が大幅に制限されるからだと裁判序盤に奴は言ったな?」
K「今回の事件、舞台用のナイフや俺の管轄下にない麻酔など、俺達が推理するには
あまりに必要な要素が少なかった。それ故の調整、とは考えられんか?」
大和田「どうなんだ、テメエ!」
モノクマ「さあてねぇ~。ボクはなーんにも知りません!」
腐川「白々しい……!」
モノクマ「でもボクが一方に肩入れすることだけはないと言っておくよ。ボクって公平な熊だから。
最初から推理不可能、クロの勝利確定な裁判なんて見ててドキドキ感がないし」
747: 2016/07/03(日) 23:45:30.00 ID:EJdtOiaP0
K「これらの要素により、単なる憶測が少なくとも議論可能な推測レベルまでは引き上がった訳だ」
K「真犯人はモノクマと交渉し今回の事件に必要な物品をあらかじめ手に入れていた。
ならば、その際に麻酔を手に入れていても別におかしくはなかろう?」
十神「…………」
もはや十神も反論をしてこなかった。
K「反論がないなら話を戻す。騙されていたとはいえ人を襲う程だ。犯人は、すぐに相手の言葉を
信じられるほど山田と親しい関係かつ、言葉巧みに相手を誘導出来る頭脳の持ち主だな」
K「モノクマは生徒に“直接”凶器を与えることはしないと言った。が、モノモノマシーンに
頼まれた物を仕込み、希望の物が出やすいよう多少確立を変えるくらいは出来ると俺は推理した」
セレス「…………」
K「俺もモノクマの嫌がらせか、いつもろくなものが出なくてな。……君の才能は
ギャンブラー。そのずば抜けた運の良さはこの場の誰もが認知しているところだ」
KAZUYAはセレスとの会話を思い出す。
―しかし、これだけ揃えるならかなりのハズレもあったろう?
―あら、超高校級のギャンブラーを舐めてもらっては困りますわ。
最小限のリスクで最大のリターンを得るのがわたくし。
―“欲しいものくらい簡単に”引き当ててみせます……
K「――君だったら、何回か引けば望みの物を引き当てることも可能。違うか?」
セレス「…………」
748: 2016/07/04(月) 00:01:47.96 ID:M0g7bYjW0
大神「まさか、そんなことが……」
朝日奈「セ、セレスちゃん、ウソだよね?!」
苗木「セレスさん……」
十神「何か言ったらどうだ、セレス?」
セレス「…………」
セレス「…………」
セレス「ふ」
舞園「……ふ?」
セレス「っざけんじゃねえぞ、オラァァァァァアアアアアアア!!」
「!!」
セレス「わたくしが自分で自分を刺しただぁ? んな訳あるかこのスカポンタン!
こんだけ人数いて一人もこのヤブ医者疑う奴はいねえのか、ビチグソども!!」
桑田「せんせーはヤブじゃねえ! つか命の恩人になに言ってんだ、てめー!」
石丸「そうだ! 西城先生の技術力は確かだぞ!」
セレス「今そんな話してんじゃねえんだよ、赤毛猿に豆腐メンタルカス!」
桑田「ハァッ?!」
石丸「ぬなっ?!」
セレス「お・わ・か・り・で・す・かぁ?! 今さっき先生が言った仮説……
いえ仮説にすらなってません。何故なら何一つ根拠のない妄想だからです!」
セレス「わたくしがその方法を使ったって言うなら証拠を見せろ、筋肉ダルマァァ!」
K「犯罪は必ず現場に証拠を残すと言う。では、現場について整理しよう」
K(ここまで来ればあと一息だ……! 悪いが、逃がす訳にはいかん!)
749: 2016/07/04(月) 00:39:57.71 ID:M0g7bYjW0
[ 犯行現場について ]
腐川「現場ってまずどこよ……」
石丸「間違いない。【犯行現場は娯楽室】だ!」
桑田「んなことはわかってるよ。せんせーの言ってる現場がどこかだろ……」
霧切「待って頂戴。山田君とセレスさんの事件が密接に関わっているのなら、
セレスさんの事件の現場も含めるべきではないかしら?」
苗木「この場合、偽装に使われた三階から保健室前までの廊下も含むべきじゃないかな」
朝日奈「でも……<廊下には血痕以外何もなかった>よ?」
十神「フン、科学捜査が使えれば【血痕の成分分析】で一発なのだがな。……ただでさえ
希少な証拠なのに、そこの馬鹿が全部拭いてしまったから今はもう何も残っていない」
石丸「だ、だって気持ち悪いではないか! 衛生的にもよろしくないし……
山田君とセレス君の事件現場は手を付けていないから問題なかろう!」
大和田「兄弟を責めんじゃねえ! 医者のセンセイだったら、ほら……
【血を検出する方法知ってた】よな? なんだっけか?」
不二咲「そういえば、化学室の薬品でルミノール液を作っていたよね。
確か<血痕のあった場所しか反応は出なかったらしい>けど」
舞園「先生……」
適切な台詞を適切なコトダマで撃ち抜け!
コトダマリスト>>144-145
↓2
765: 2016/07/10(日) 22:06:48.89 ID:AEgeATiF0
【ルミノール溶液】 ドンッ! ====⇒ <血痕のあった場所しか反応は出なかったらしい> 同意!!
K「それに賛成だ。確かに血痕のあった場所以外から反応は出なかった」
不二咲「そうだよねぇ……せめて何か反応があれば……」
霧切「いえ、それがおかしいのよ」
苗木「どういうこと?」
K「反応があった血痕の場所とは、すなわち石丸が残しておいた娯楽室の中と入り口付近の血痕だな?」
桑田「そうだぜ?」
K「階段へ向かう部分は反応しなかったのか?」
不二咲「はい。ありませんでした」
K「ルミノール反応は化学的に非常に強い反応だ。ほんの少しでも成分が残っていれば、たとえ
拭き取っていても反応は出る。が、娯楽室の入り口付近以外の廊下からは全く反応が出なかった」
K「娯楽室の前に落ちていた血痕は凶器から垂らした山田の血……。
つまり、それ以外の廊下の血痕は――」
K「――本物の血液ではないということだッ!!」
セレス「ッ!!」
766: 2016/07/10(日) 22:17:17.14 ID:AEgeATiF0
葉隠「じゃ、じゃあ一体なんだべ?!」
十神「さっき西城がチラリと触れたが血糊だろうな。拭き取られた今となっては証明出来んが」
石丸「しかし、保健室には輸血用の血液パックがあったはず。何故それを使わなかったのだろう?」
苗木「そうだよね。本物の血液を使った方が偽装もしやすいのに」
K「保健室に来る頻度の高いお前達が盗めば流石の俺も犯人を特定出来んだろうが、
安広が盗んだらわかる。備品が無くなってすぐに気付かないほど俺はヌケてないのでな」
セレス「ビチグソがァッ!!」
反論ッ!!
セレス「だろう、はずだ、違いない……さっきから推理になってないんだよ、小僧共がッ!」
セレス「ハア? 何かあれば全部モノモノマシーンで解決?? 何でも欲しいものが出てくる
四次元ポケットか何かと混同してるんじゃありません?!」
セレス「そんなに言うなら【廊下に血糊を使ったと言う証拠を見せやがれ】ですわ!」
スルー or 論破
論破する場合はコトダマリスト>>144-145
↓1
769: 2016/07/10(日) 22:31:30.22 ID:FMAlg6/Eo
まずはスルー
770: 2016/07/10(日) 22:35:17.77 ID:AEgeATiF0
発展!!
K「確かに、拭き取られてしまった以上は証明することは出来ないな」
セレス「ほら見なさい! 適当なことヌカしてんじゃねえぞ、クソジジイ!!」
K「ところで、君のブラウスは直前に刺した割には随分たくさんの血が付いていた」
セレス「お・わ・す・れですかァ?! わたくしは葉隠君に刺された後、苦労して三階から一階まで
歩いて戻ってきたのです。【たくさん出血してて何がおかしいってんだよォ】!!」
セレス「そもそも【血糊を使ったと証明出来る方法なんてどうせない】くせに! ハッタリですわ!!」
スルー or 論破
論破する場合はコトダマリスト>>144-145
↓1
771: 2016/07/10(日) 22:40:48.79 ID:dLRZ+7fOo
【血糊を使ったと証明出来る方法なんてどうせない】←【ヨウ素液】
772: 2016/07/10(日) 22:56:07.69 ID:AEgeATiF0
【ヨウ素液】 → 【血糊を使ったと証明出来/る方法なんてどうせない】
解ッ!!
K「その言葉にメスを入れさせてもらう!」
K「プロの医者を騙せると思ったのがお前の最大の過ちだな」
セレス「うっせー! ブチ頃すぞ!! 血糊なんて使ってないし大体どうやって証明するんだよ!
頼みのルミノール溶液に血糊を見抜く効果なんてないですわよ!! ああ?!」
K「そんなことくらい知っているさ」
プロとしてのプライドが傷ついたのか、KAZUYAは睨みながら懐から小瓶を取り出す。
K「……で、だ。実はここにもう一つ薬剤を用意してある」
セレス「……ッ?!」
朝日奈「茶色い液体?」
葉隠「なんだそりゃ?」
K「これはヨウ素液。これから行うのはお前達もよく知っている実験だ」
そう言ってKAZUYAはマントの下からニ枚の赤いシミのついたガーゼを取り出す。一つは真新しい
濃い明るい赤のシミがついたガーゼで、もう片方は変色した暗赤色のシミが付いていた。
K「よく見ろ」
KAZUYAが二つのガーゼに薬液を付ける。一つ目のガーゼは、赤と茶色が混ざった何とも
言えない色になった。そして、二つ目のガーゼのシミの部分に液を漬けると濃い暗紫色に変わる。
773: 2016/07/10(日) 23:07:34.01 ID:AEgeATiF0
江ノ島「なにこれ?」
石丸「ヨウ素液を使った実験と言えば澱粉反応が有名だが、まさか澱粉ではないだろうしな」
朝日奈「あ、その実験知ってる! ジャガ芋を切って液をつけるんでしょ?」
苗木「小学生の時にやったね」
桑田「あー、そういやガキの頃にやったようなやってないような……」
K「実はそれで正解だ。この二つのガーゼのうちこちらは俺の血が、もう一つは安広のオペの時に
拭いた“安広の血”が付着している。液はこのガーゼに残った澱粉に反応しているのだ」
大神「何だと?!」
不二咲「そんな、どうして……?」
K「血糊に使われる成分は主にコーンスターチなどの澱粉質で、そこに食紅や化学色素を加える」
苗木「そうか! だからガーゼに残った澱粉質に液が反応して色が変わったんだ!」
十神(そういえば……いつもは医学の棚しか行かない奴がこの間珍しく美術や
舞台の棚を見ていた。血糊の成分を調べていたのか……と言うことは……)
十神「待て。貴様、まさか傷の向きだけで真相を見抜いていたのか?!」
K「いや。傷の向きはあくまでその傾向が強いと言うだけで絶対的なものではない。
錯乱して何度も自分を刺した患者を見たが、その中には縦向きの傷もあった。
逆に横向きに刺されたケースもあるにはあるしな」
葉隠「一体どんな状況だべ……」
大和田「ハード過ぎんだろ……」
舞園「なら、どうしてわかったんですか?」
K「気付いたのはオペの時だ。傷口が妙な腫れ方をしていた」
石丸「な……?! 刺された患部が炎症を起こして腫れるなんてそんなの当たり前じゃないですか!」
K「そうだな。本当に僅かな違いだ。普通の医者ならまず気付かんだろう」
K「――だが、俺にはわかる!」
774: 2016/07/10(日) 23:26:20.60 ID:AEgeATiF0
ギラリと目を光らせ、KAZUYAは生徒達に解説した。
K「麻酔液を皮下に注射すると、組織が水分を含んで膨張しふやけたようになる。
それは一見腫れているように見えるかもしれないが、炎症による腫れか
そうでないかぐらいの判断は俺ならつく!」
苗木「え、えっ?! まさか本当にそれだけで?!」
K「そうだ。しかも過去に一度、同様のケースを見たことがあってな。一目で確信した」
「…………」
十神(馬鹿な……これが超国家級の医師の実力か……!)
セレス「うふふふふ……」
腐川「ふ、ふん。グウの音も出ないってとこかしら?」
セレス「西城先生の巧みな話術に関心しているのですわ、わたくし」
桑田「悪あがきは見苦しいだけだぞ」
大和田「いい加減認めたらどうだ?」
セレス「確かにわたくし、血糊を使ったことがありますわ」
霧切「……何が言いたいの?」
セレス「実はわたくし、ヴァンパイアの真似をするのが好きで、この衣装もそれを
意識しているのですが。刺された瞬間に持っていた血糊の袋が破けてしまったのでしょう」
苗木「ええっ?!」
苗木(こ、この期に及んでまだシラを切るつもりだ!)
桑田「白々しいぞ、てめー!」
大和田「いい加減にしろよ、このクソアマ!」
セレス「うっせぇガキ共! じゃあわたくしが麻酔を使ったっていう証拠はあんのかよ?!
結局今のままだと状況証拠しかねえだろうが。そんなこともわかんねえのか、ああ?!」
大神「なんとタチの悪い……」
K「観念しろ、安広!」
セレス「わたくしの名前はセレスティア・ルーデンベルクだっつってんだろダボ!!
何回言やわかるんだ、この嘘つき野郎!!!!!」
775: 2016/07/10(日) 23:36:07.30 ID:AEgeATiF0
[ マシンガントークバトル ]
勘違いですわ
賛同出来ません
おバカさん
嘘は通用しません!
イタい人
ミジメですわね
上等ですわ
ビチグソがぁッ!!
セレス「【証拠がない】以上はあくまで決めつけだろうが!」
コトダマリスト>>144-145
↓1
776: 2016/07/10(日) 23:54:42.59 ID:AEgeATiF0
今日はここまでかな。次回で裁判終了です
では。安価下
779: 2016/07/11(月) 18:19:06.30 ID:c1yRmwaao
秤の実験。もうそれしかコトダマ残ってないはず
791: 2016/07/18(月) 20:00:45.68 ID:m/qpRAMA0
K「これが答えだ!」
【秤の実験】 ドンッ! ====⇒ 【証拠がない】BREAK!!
K「苗木達が秤を使って調べたらしいが、あのモノクマ人形の入ったボトルは全て同じ重さだそうだ」
K「床に落ちていた破片を全て拾って測ったとしても、拾いきれない
細かい破片もある。故に、本来なら元のボトルよりも必ず軽くなるはずだ」
桑田「あー、そういやあったなそんなの」
不二咲「でも、何故か破片の方が重かったんだよねぇ」
K「つまり、ボトル以外のガラス片が混入しているものと思われる」
セレス「!!!」
葉隠「ガラス? あそこにボトル以外にガラスなんてあったっけか?」
K「それで、ピンセットで一つずつ細かい破片を俺がチェックした所、
……モノクマボトルの物ではないガラスの破片を発見した」
舞園「どうしてわかったんですか?」
K「厚みが違ったんだ。それによく見るとガラスの種類も違う。これがわかりやすいサンプルだ」
朝日奈「見せて見せて! ……本当だ。ほんの少しだけど厚さが違う!」
792: 2016/07/18(月) 20:27:12.88 ID:m/qpRAMA0
霧切「……間違いないわね。これは二種類のガラスだわ」
大和田「よくわかったな。こんなもん……」
K「病理解剖ではミクロ単位の観察が当たり前だからな。目に見えるガラス片を見分けるくらい容易い」
K「そして、ほとんどは粉々になっていたが一つだけ小さな弧の形をしている破片があった」
江ノ島「弧ってことは、えーと弓形?」
K「それが何のガラスかは、今までの議論で答えが出ているはずだ」
[ 閃きアナグラム ]
き ち う ち ゆ う に
し や し ん と り だ
○○○○○○
↓直下
793: 2016/07/18(月) 20:29:22.26 ID:R9nVINzZ0
注射器
795: 2016/07/18(月) 20:37:00.99 ID:m/qpRAMA0
ちゆうしやき → 注射器 正解!!
十神「成程。注射器のシリンジの部分か」
K「警察なら、この破片に残された成分を分析してこれが麻酔の入っていた注射器だと
断定出来ただろうが、生憎ここでは成分分析も破片の再現も出来ん」
セレス「なら、それが何だと……」
K「……注射器のガラスはあったが、針はどこに行ったんだろうな?」
セレス「!!」
K「俺もプロだ。道具の管理には細心の注意を払っている。仮に針単体で落ちていたとしても
それが注射針だとひと目でわかるし、自分の器具が減っていなければ不審に感じるだろう」
K「針だけではない。葉隠に用いた偽のナイフも未だに発見されてないな。
何故ならマスク等と違い、それらは今回のトリックの謂わば『要』だからだ」
K「万が一見つかればその瞬間にトリックが崩れる――。半端な所には怖くて隠せないだろう」
腐川「じゃあ、こいつの言う通り証拠はないってこと……?」
K「これは俺の予想だが……どこにもなかったということは、まだ自分で持っているんじゃないのか?」
朝日奈「えっ、でもどこに?!」
舞園「彼女の服のポケットには何も入っていませんでしたよ?」
セレス「…………」
K「そうだな。俺も見つけられなかった。――ところで、君は入院してる間ほとんど靴を
脱がなかったな? 腹が痛むから、屈んで脱ぎ履きするのが大変だからと言っていたが……」
K「――靴の中敷きの下に突っ込んでしまえばどうだ?
細身で小ぶりのナイフと針一本程度なら楽にしまえるはずだが」
セレス「!」
K「肌身離さず持っていれば安心だろうからな。どうなんだ?」
セレス「…………」
798: 2016/07/18(月) 21:07:17.52 ID:m/qpRAMA0
十神「ま、待て! まだ一つだけ解決していない問題があるぞ!」
K「何だ?」
十神「山田の体にあった注射痕……あれは一体何だ?!」
K「ああ、それか。恐らくはバランス調整の一つだな」
十神「どういう意味だ、説明しろドクターK!」
K「俺が見ればあの傷が注射針によって付けられたものだというのは一目でわかる。
いつどこで何のために注射器が使われたのか? それらは一体どこで手に入れたのか?」
K「俺達が推理に詰まった時、そういった新たな視点を与えるためのヒントだったのだ」
K「――傷口だけで俺が真相を見抜くなんて、流石のモノクマもわからなかっただろうからな」
モノクマ「……本当、反則だよねキミの存在」
K「安広には単なるミスリードだと説明してやらせたのだ。
今やこの学園には俺以外にも注射器を扱う人間が複数いるからな」
K「まあ、医者を目指す二人の重い覚悟や信念がわからず、それでいて自分の頭脳に
絶対の自信がある人間。上手く行けばそんな輩が引っ掛かってくれるかもしれない……
モノクマもその程度には考えてたかもしれないがな?」
桑田「十神しかひっかかってねーじゃん!」ププッ
大和田「あんなちっぽけな傷だけで大見得切っちまってよ!」
朝日奈「わ、笑ったらダメだよ。クスクス」
苗木「犯人扱いされたけど、僕は別に怒ってないから。ハ、ハハ……」
十神「ぐ……くっ……」ギリィッ!
K「では最後に事件の概要をまとめ、この長い裁判の幕引きをするとしよう」
799: 2016/07/18(月) 21:18:48.55 ID:m/qpRAMA0
― クライマックス推理 ―
K「まず安広はモノクマと交渉し、犯行に必要な道具を調達することから始めた」
朝日奈「モノモノマシーンで麻酔や偽のナイフ、マスクを引き当てて山田をだましたんだね……」
大神「すっかり騙された山田は内通者と誤認した葉隠を呼び出し、ハンマーを片手に詰め寄った。
そして、怖がりの葉隠は犯人の目論見通りモノクマボトルで山田に襲いかかったのだ」
葉隠「山田っちを勢いで殴ってパニックになった俺は偽装工作だけして逃げようとしたが
セレスっちに気絶させられちまった。その時、手にナイフを握らされたんだ。目を覚まして、
このままだとオシオキだと煽られた俺は、つい助かりたい一心で口封じを図ったんだべ……」
腐川「セレスはそのまま氏んだフリをしたわ。そして葉隠が逃げ帰った後行動を開始した……!
気絶していただけの山田にトドメを刺し、凶器を隠滅。麻酔を腹部に刺した後、針を山田の
足に刺した。注射器のガラス部分は粉々に踏み砕いてモノクマボトルの破片に混ぜたのね」
不二咲「その後は保健室に向かいながら血糊で廊下の血痕と出血量を偽装したんだ。不要な物は
保健室の横のトイレで流したんだと思う。流せない針とナイフだけ靴の中に隠して、
いよいよ本物のナイフで自分のことを刺したんだね……」
K「そしてまんまと被害者という地位を手に入れたという訳だ」
K「これが事件の全貌だ――!!」
800: 2016/07/18(月) 21:34:19.97 ID:m/qpRAMA0
全員の視線がセレスに向かっている。
セレスは何も言わない。
ただ、お辞儀をするように深く頭を下げた。
セレス「一つ、訂正があります」
カラン……
裁判場の真ん中に、小さな透明の袋が投げ落とされる。
その袋の中には折りたたまれた小型のナイフと、小さな針が入っていた。
セレス「先生は先程、モノモノマシーンを何度か回せば
いずれ希望の物が出るだろうとおっしゃいましたが……」
セレス「――わたくしは全て一度で引き当てました」
そう言って、この裁判が開かれてから初めてセレスは笑った。
820: 2016/07/25(月) 23:16:37.32 ID:h9/Mp8rv0
「…………」
苗木「じゃ、じゃあやっぱりセレスさんが!」
セレス「その通り、わたくしがこの事件のクロです」
腐川「散々悪あがきしたくせに随分あっさり認めるのね……」
セレス「わたくしは仮にも勝負師。負けを宣告されてあがくほど落ちぶれてはいませんの」
K「安広、いやルーデンベルク。何故こんな真似を……」
セレス「安広、で結構ですわ。わたくし勝者に払うべき敬意は持ち合わせているつもりです」
石丸「ま、まさかお金が動機ではあるまい。何か止むに止まれぬ事情があるのだろう? そうだろう?」
セレス「残念ですが、わたくしが事件を起こした動機は純然たるお金ですわ」
不二咲「そ、そんなぁ……」
大和田「テメエ、たかが金で仲間を裏切ったのかよ!!」
朝日奈「でも、セレスちゃんはこの生活に適応しようっていつも言ってたのに……!」
セレス「あんなの嘘に決まってんだろおぉぉおお!!!」
「っ??!」
突然鬼のような形相で怒鳴るセレスに度肝を抜かれる――KAZUYAを除いて。
セレス「わたくしはなぁ! この中の誰よりもここから出たくてたまらなかったんだよォ!!」
「…………」
セレス「わたくしが事件を起こした理由――それは昔から抱いていたある夢のためですわ」
K「夢?」
セレス「ええ。わたくしはその夢の実現のためにギャンブラーになったのです。
何度も何度も修羅場をくぐり時には自身の命すらもベットして……」
桑田「なんだよ、その夢って……」
821: 2016/07/25(月) 23:29:35.19 ID:h9/Mp8rv0
セレス「……憧れ続けた理想の世界を現実に作り上げること、でしょうか」
一瞬だけセレスは視線を宙に巡らせ、次の瞬間舞台上の役者のように流暢に語りだした。
セレス「わたくしは昔から西洋のお城に住むことが夢だったのです」
大和田「は?」
舞園「お城?」
セレス「ええ。ついでに言うとヴァンパイアの格好をさせた
イケメン執事達に囲まれ退廃的な生活を送ることが最終目標でした」
「…………」
「…………」
「…………ハァッ?!」
あまりに突拍子なさすぎるその発言に全員の思考が一瞬停止する。
苗木「いや……えぇ?」
桑田「くっっっだらねぇ……」
大神「くだらな過ぎる……」
朝日奈「訳がわからないよ!!」
石丸「そんな……そんな理由で君は人を……仲間を……?!」
不二咲「嘘だよね? わざと僕達に憎まれる理由を言ってるんだよね……?」
K「…………」
822: 2016/07/25(月) 23:34:29.03 ID:h9/Mp8rv0
セレス「価値観の相違ですわ。わたくしはあなた方を仲間などと思ったことは
一度もありません。たまたまこの災難に居合わせただけの赤の他人です」
「……………………」
あまりにきっぱりと言い切るセレスに一同は沈黙せざるを得なかった。
真実に対し強い追求心を持つ霧切が、代表して質問を続ける。
霧切「……山田君にはどう計画を持ちかけたの? それにモノクマとはいつ内通を?」
セレス「気になるなら、お話致しましょうか。推理では明かされなかった舞台の裏側を――」
立っていると辛いのか、青ざめたセレスは再び車椅子に座った。そのまま淡々と話し続ける。
セレス「今回の計画について一番の障害は当たり前ですが学級裁判です。頭のキレる先生や霧切さん、
十神君は勿論のこと、他の方々の思わぬ発言で議論が大きく進展してしまうことがある……」
セレス「正直言って、わたくし一人では少々荷が重かったのです。
わたくしはあくまでギャンブラーであって犯罪者ではないので」
K「それでモノクマか」
セレス「ええ。卑怯かとも思いましたが、目的のためには手段など選んではいられませんので。
モノクマがほんの少しわたくしの計画に協力してくれればぐっと選択肢が広がるのです」
モノクマ「ほんの少しって……思いっきり脅迫してきたくせに」
不二咲「で、でも……だからって自分の体を傷付けるなんて……」
大神「お主は体に痕が残るような真似は嫌がると思ったがな」
セレス「それだけは渋りましたわね。如何に夢のためとはいえ、わたくしの
玉のようなお肌に傷が残るのは耐えがたいことでしたので」
モノクマ「人に計画考えさせておいて文句言うとか論外だよね!」
823: 2016/07/25(月) 23:36:47.11 ID:h9/Mp8rv0
╂
KAZUYAが部屋から去った直後、セレスは即座にモノクマを呼んだ。
「はいはーい、何ですかー。イチャラブを邪魔した苦情なら受け付けないからね?」
「コロシアイについて大事なお話があるのですが」
「およ? とうとう殺る気になってくれた訳?」
「とうとうなんてとんでもありませんわ」
「――最初からです」
セレスはニコリと悪魔のような微笑みを浮かべる。
「どうです? わたくしと組みませんこと?」
直前までKAZUYAと仲良くしていたにも関わらず、平然と黒幕に協力を申し出るセレスに、
モノクマはゾクゾクした感情を覚え彼女を情報処理室に招待した。秘密の会談をするためにだ。
「とうとう動いてくれるんだね。嬉しいよ」
「しかし、大きな問題がありますの」
「はいはい! 何ですか?」
「わたくし、あと少しという所まで計画を立てたのですが、今のままでは勝てるヴィジョンが
見えないのです。麻雀で例えるなら役が完成していないのにとりあえずリーチをかけるしかない、
くらいの弱々しい引きですわ。このまま突き進んでも勝ちが見えないのです」
「確かに、そんなセコい攻めならあっという間に役満ツモられて終了だねぇ。
……でもそれをボクに言ってどうするの?」
「わたくし、ギャンブルの醍醐味は運とイカサマにあると思っていますの」
825: 2016/07/25(月) 23:45:53.39 ID:h9/Mp8rv0
しゃあしゃあと言いのけるセレスにモノクマは大きな声で同意する。
「わかるわかる! どんなに大勝ちしててもバレた瞬間に即アウトのスリルがたまんないよねぇ!」
「ですから、わたくしに協力なさい」
「はい?」
「わたくしは先程、手を組みましょうと言いました。その意味がわからないあなたではないでしょう?」
「いやいやいや! 流石にそれはマズイって。ボクはこの学園の学園長だよ?
ゲームマスターだよ? そのボクが堂々と生徒の一人に肩入れするのは駄目でしょ。
フェアじゃないよ。イカサマですらない」
「別に全面協力しろだなんて誰も言っていませんわ」
「わたくしの考えた作戦にずる賢いあなたが一工夫を加えるのです。出来れば
小道具を使うものがよろしいでしょうね。一気に難解になりますから」
「でもなぁ……」
「どうしますの? あの動機、わたくしをピンポイントに狙ったものでしょう?そのわたくしが
諦めてしまえばもう事件なんて起こりませんわ。あなたの計画はタイミングが重要なのではなくて?」
「そうだけどさぁ……」
セレスは尚も畳み掛ける。彼女にとっての正念場は今だ。
「十神君は動きませんわよ」
「へぇ? 何を根拠に?」
826: 2016/07/25(月) 23:53:10.19 ID:h9/Mp8rv0
「恐らく頭脳労働はわたくしより上の十神君が、今まで何度もチャンスがあったのに
動かなかった。それで十分ですわ。結局の所、わたくし達は超高校級の天才であっても
超高校級の犯罪者ではありませんから」
「わたくしが思うに、このメンバーで最も脱出に近い存在はジェノサイダーさんではないでしょうか?
あの時は突発的に動いて十神君に目撃されてしまいましたが、彼女がその気になれば誰にも
目撃されず証拠も残さず通り魔的な犯行を行うのは容易いはず。彼女は頃しに慣れていますしね」
「アッハッハッ! 見事なプロファイリングだね! 流石は超高校級のギャンブラーだよ!」
実を言うとモノクマ自身同じように考えていた。
余程のチャンスがなければ十神は動かない。もはやセレスに期待するしかないのだ。
しかし、だからと言って学級裁判が成り立たないような事件は困る。
学級裁判は彼が考案した、このコロシアイ学園生活の核と言っても良いシステムなのだから。
「いやー、気持ちはわかるよ? でもボクが直接手を貸すのは流石にマズイかなーって。
推理が不可能になると学級裁判の意味がなくなるし」
「ならば、最低限推理が可能な事件を起こし、あなたは直接手を貸さなければ良いのです。
必要な物はモノモノマシーンに入れてくだされば、わたくしの才能で引き当ててみせます」
「ワオ、自信満々だね!」
「この程度の運もなくて、殺人など出来るはずもないですわ」
「フフ、じゃあ今思いついたとっておきの作戦を授けようかな!」
827: 2016/07/26(火) 00:04:16.42 ID:pV+ypOTh0
牙を剥き出しながら、モノクマは自信満々に思いついた作戦を話す。が、
「お断りします」
けんもほろろに断られた。
「ハァア?! 何で?!」
「確かに、その完璧な計画を使えば間違いなく計画は成功するでしょう。
ですが、わたくしの美しいお肌に傷が残ってしまいます。それでは意味がないのです」
(あああ! めんどくせぇー!! こういう女だよ、セレスは!)
モノクマの中の人間が苛立って心の中で叫ぶ。
「そんなこと言ってる場合かよ! 百億円欲しくないの?!」
「欲しい、ですわ……!」
ギリッとセレスは歯ぎしりをする。百億円は喉から手が出る程欲しい。
しかし、いくら麻酔を使うとは言え自分で自分の腹を刺すのはあまりにも抵抗があった。
「ですが、失敗したら痛いでしょうし……」
「普通に刺したら痛いじゃ済まないけどそのための麻酔でしょ?!」
「それに一生痕が残るのはやはり……」
「じゃあ腕の良い形成外科を紹介するよ! 跡形もなく消してくれるからさ!」
「何億もぼったくられるかも……」
「わかったよ! ボクが治療費を持てばいいんでしょ、持てば!」
「では、契約成立ですわね?」
セレスはニヤリとほくそ笑む。
828: 2016/07/26(火) 00:16:41.48 ID:pV+ypOTh0
「全く……どうせ最初からそれ狙いだったんでしょ。本当にキミって計算高いよね?」
「お互い様ではありませんか。わたくし達はそれぞれの目標のためにお互いを利用するのです」
「ハァ。もういいよ。キミのそういう所嫌いじゃないし。じゃ、モノモノマシーンには
三十分以内に用意して入れておくから。頑張って引き当ててちょうだいな!」
― 引き当ててみせる。超高校級のギャンブラー、セレスティア・ルーデンベルクの名に懸けて。
╂
K「そうして、お前は密かにモノクマと内通したのだな」
大和田「だ、大胆不敵ってレベルじゃねえぞ……」
霧切「この場合は傲岸不遜と言うのよ」
大神「だが、山田は? この計画は山田が協力しているはずだが、
一体どんな口車であやつを騙したのだ?」
朝日奈「そうだよ! 確かにちょっとケンカしたこともあるけど、まさか
私達を頃して自分だけ脱出しようとするなんて……!!」
十神「キッカケは、やはりアレか?」
K(アルターエゴ……山田と俺達の間に不和をもたらしたが、まさかそれだけで人を殺せるものなのか?)
セレス「わかっていませんわね。あなた達は、一ヶ月も山田君といたのに
彼がどういう人間なのか全くわかっていませんわ」
桑田「どういうことだよ……」
セレス「……彼は体は大きかったけれど、心はいつだって小さかったのです」
セレスはその時の光景を思い出すように目を閉じた。
879: 2016/08/14(日) 23:57:17.41 ID:h2Ci9fXD0
╂
「ややっ! セレス殿が僕の部屋に来てくれるなんて……!」
山田は心底嬉しそうだった。ここしばらく続いていた冷戦状態は、彼の精神的孤立化に
一層の拍車をかけていたからだ。無意識のプレッシャーすらあったかもしれない。
ここぞとばかりに山田は取り繕おうとする。
セレスには山田のその必氏さが手に取るようにわかっていた。
……むしろ、冷戦状態はこの日のための長い長い布石であったのだから。
(別に、わたくしは犯人扱いされたことなんてこれっぽっちも怒ってなんかいませんわ。
疑わしい人間がいたら疑うのはあの場では至極当然のこと)
(ですが、怒っている振りをして山田君に罪悪感を抱かせれば今後操りやすくなる。
彼はとにかく気が小さいですからね。だからこそ、利用は容易――)
何と、セレスが今まで山田と距離を取っていたのは彼女が執念深かったからではなく、
全ては今後のことを見越した計算高さからであったのだ。
「山田君、わたくしあなたとまた仲良くしたくて今日は来たのですわ」
「な、なんと?! ツンデレキャラのセレス殿がソッコーデレた?! これは一体……」
白々しいくらいの笑顔を見せて流石の山田も不審に思ったようだが、
そこは人心掌握に長けたセレス。計算され尽くした台詞を使って山田の注意を逸らす。
「それだけのことが起こったということです。わたくし、あなたのことが不憫で不憫で……」
「僕が不憫? ……もしや、なにかあったのですかな?」
「ええ、わたくしの口からはとても言いづらいのですが」
「早く教えてくださいよ」
「ですが……でもやっぱり……」
880: 2016/08/15(月) 00:04:41.75 ID:OoqJBge50
セレスはのらりくらりとかわしてなかなか言わなかった。これは駆け引きだ。
焦らすことによって相手の注意をひき、更にそれだけ重い出来事だと思わせる心理戦である。
つまり、この時点で山田は見事にセレスの術中に嵌まっていた。
「……あの子のことについてですわ」
「アルたん……!」
あからさまに監視カメラを意識して声を落とす。山田の顔がみるみる青ざめた。
「彼女に、彼女の身に何か……?!」
「いえ、そういうことではないのです。ただ、山田君には言いづらいというだけのことで」
山田は今にも叫んでセレスの肩を揺さぶりたかったが、監視カメラの存在があったので何とか抑えた。
アルターエゴが黒幕にとって不都合な存在だと言うのは流石の山田もわかっている。
「僕にとって? つまり彼女ではなく僕にとって良くないことが起こったと?」
「はい。……黙っていようかとも思ったのですが、やはり伝えておこうと思いまして。これを」
スッと、セレスは山田から借りていたカメラを取り出す。
画面には脱衣所で楽しげにしているKAZUYA派の男子メンバーが写っていた。
「これが、何か?」
「わかりませんか? 陰になって彼女ははっきり写っていませんが、これは彼等が
彼女と話している姿をたまたま見掛けたわたくしが盗撮したものです」
「なんと!」
勿論、嘘八百である。
881: 2016/08/15(月) 00:12:33.09 ID:OoqJBge50
一月も閉鎖空間で過ごしたので、セレスは生徒達の行動パターンが大体把握出来ていた。
特に体育会系の朝日奈と大神、そして石丸は毎日ほぼ決まった時間に勉強や
トレーニングをするからわかりやすい。
最近は大分緩くなったもの、石丸に至ってはまるで一日が時間割で区切られているかのように
正確に動くため、必然的にその周りの人間の行動パターンも決まってくる。
セレスは知っていた。メンバーの変動はあれど、男子が毎晩ほぼ同じ時間に脱衣所に集まることを。
それを何度か盗撮し、上手い具合に彼等がロッカーを向いている写真を選択して山田に見せたのだ。
「西城先生は、あなたと彼女の接触を禁じたくせに自分の派閥の男子は優先的に
彼女とおしゃべりさせて楽しませ、そうして自分の株を上げていたのです」
「な……そんなことが……?!」
「わたくしも初めは信じられませんでしたわ……ですが、先生も人を束ねる立場ですし、
人間ですから多少の贔屓はあります。先生にとって、彼女は人間関係を円滑にするための……」
「――便利な“道具”の一つなのでしょう」
「道具?! 彼女は道具なんかじゃないっ……!」
計算通り山田の頬に赤みが刺し、目が怒りで細まる。セレスは内心で
ほくそ笑みながらも、表面的には同情するような眼差しで山田を見つめた。
「それだけではありませんわ。これだけならまだ黙って見ていても問題なかったのですが、
彼等は彼女にあなたの悪口を吹き込んでいたのです。わたくし、見ているのが辛くなって……」
「僕の、悪口……」
山田には色々と思い当たることがあった。
半分以上は根拠の無い、彼の劣等感から生み出された被害妄想的なものであったが。
(クソックソッ! どいつもこいつも僕をバカにして! デブで悪いか! オタクで悪いか!!)
882: 2016/08/15(月) 00:20:35.17 ID:OoqJBge50
山田の中に、彼等に対する信頼や絆がなかった訳ではない。冷静に考えれば、
忠告や苦言はあっても悪意の陰口など叩くような人間達ではないとわかったはずだ。
しかし、山田の
アルターエゴに対する
歪んだ偏愛は
そんな当たり前のことすら
わからなくなるくらいに
盲目的だった。
「それで、今まではあなたに冷たく当たっていたわたくしですが、
流石に同情を禁じえず真実を伝えに来たのです。彼等は人として信用出来ません」
「そう、そうですか……いや、ありがとうございます、セレス殿!
言いづらいことだったのに、よく教えてくれました!」
「もう僕はあいつらのことを仲間だなんて思わないぞ!! ぜってぇに許さねえ!」
「ならば山田君……わたくしと一緒にここから出ませんか?」
セレスは目を見開いて山田を捉える。ここまで来たらもう逃がさない。
「出るって言っても一体どうやって……」
「わたくし、偶然見てしまったのです。葉隠君がこのマスクを落とした所を……」
「そのマスクがなんだと言うのです?」
「わかりませんか? 朝日奈さんを襲った不審者のマスクです」
「なんと?! では葉隠康比呂殿が内通者?!」
883: 2016/08/15(月) 00:29:16.99 ID:OoqJBge50
冷静に考えればいくらなんでもセレスの発言には偶然が多すぎる。
彼女は何もかも不自然に知りすぎているのだ。
しかし、元々が単純なうえセレスの巧みな話術で冷静さを失った山田にわかるはずもない。
「そういえば以前、彼は食堂でナイフを振り回していましたな……」
疑心暗鬼を生ずとは言ったもので、一度怪しいと思うと葉隠の過去の行動全てが怪しく思えてくる。
「きっと内通者の彼に氏んでもらっては困るから、モノクマが護身用に与えたのでしょう」
「なるほど、なるほど……! 今僕の中で一気にピースが揃いつつありますぞ!」
「お分かりですか? 今ここにいるのは、わたくし達の敵だけ。何も躊躇う必要はないのです」
そして、彼女はトドメの言葉を放つ。
「この学園の中でわたくしと彼女を救えるナイトは、山田君だけ――どうか力を貸して欲しいのです」
(“ナイト”! 僕こそが選ばれた戦士で勇者……! 彼女達を救えるのは僕だけなんだ!!)
「了解しましたぞ! 不肖この山田一二三、覚悟を決めました! 目にものみせてやりましょう!!」
もはや隠すことなくセレスはニタリと笑った。
╂
霧切「そのマスクを使って葉隠君を内通者に仕立て、山田君に詰問させたのね?」
K「――ハンマーを護身用に持たせてか」
セレス「ええ。山田君にはあえて強い言葉で葉隠君を脅すよう指示しました」
884: 2016/08/15(月) 00:50:46.16 ID:OoqJBge50
葉隠「だから、ここから出せとかワケのわかんねえことを言ってたんだな……」
セレス「葉隠君を脅せばもしかして出してくれるかもしれない、駄目なら駄目で作戦決行と……
当然、葉隠君は例の不審者とは無関係ですから作戦決行の方に舵を切ります」
大和田「葉隠は内通者ではないと信じていたのか?」
葉隠「セレスっち……そんなに俺のことを……」
セレス「まさか。葉隠君は内通者にするにはおバカ過ぎますわ。論外だったというだけです」
桑田「だよなー」
葉隠「ひでえべ……」
舞園「強い言葉で脅させたのは、葉隠君の危機感を煽って山田君を襲わせるため……?」
セレス「ええ。今までの行動から、葉隠君が非常に小心者でかつ保身的だと
いうのはわかっていました。ハンマーという目に見える凶器を持ちながら
訳のわからないことを迫る山田君に、葉隠君はさぞかし恐怖を感じたでしょう」
『俺が内通者?! 変な冗談はやめてくれって、山田っち……』
『ええい、これほど決定的な証拠があるのにまだしらばっくれるか!』
『だから知らねえって! なんかの間違いだ!』
『かくなる上は武力に物を言わせてでも脱出口を……』
『おい、そのハンマーなんだべ……お前さん、とうとう頭おかしくなっちまったんか……?』
『こっちには武器がある。内通者なんて怖くないぞ!』
『(まともに話なんてできねえ……このままじゃこ、殺される!)』
『うわああああああああ!!』
『……エッ?!』
葉隠は背後にあったモノクマボトルを手に取る。
ガシッ、ブンッ! ガッシャーン!!
バタン……
885: 2016/08/15(月) 00:58:27.04 ID:OoqJBge50
セレス「……まさかあんなに早く動いたのは想定外でしたけど」
大神「想定外だと?」
セレス「はい。当初の予定では二人が揉み合っている所をわたくしが背後から襲い葉隠君を気絶させ、
その後葉隠君に罪をかぶせる偽装をしてから山田君を頃す予定だったのですが……」
セレス「葉隠君が想像以上に早く山田君を襲ったため、計画を大幅に変更せざるを得なかったのです。
しかも、呆れたことに葉隠君は葉隠君で他人に罪をなすりつける偽装をしていましたしね」
十神「全く無関係の俺の名前を書いてな」
葉隠「うぐっ!」
セレス「ダイイングメッセージを偽装している隙に背後から一気に駆け寄り気絶させたのです」
不二咲「動揺して慌てて飛び出したからビリヤード台にぶつかってボトルを落としたんだね……」
セレス「あの時は焦りましたわ……。薬品をかがせてすぐに気絶するのはフィクションだと
聞いていたので、スタンガンで倒してからゆっくり薬をかがせ何とか気絶させたのです」
十神「つまり、葉隠の体をじっくり調べていればスタンガンの跡が残っていた可能性があった訳だ」
朝日奈「なに? KAZUYA先生が事件の直後にちゃんと調べなかったのが悪いって言いたいの?」
K「いや、抜かった……俺のミスだな。容疑者の身体検査は真っ先にしておくべきだった」
苗木「先生は悪くないよ。一度に二人も手術してみんなバタバタしてたし」
大和田「まさかスタンガンまで使ってたなんてな」
霧切「……むしろ犯行に使われたそのスタンガンを見つけられなかった私の調査不足ね」
大神「捜査時間には限りがある。仕方あるまい」
石丸「仮に見つけていたとしても、事件とどう関係があるのかわからなかったろうしな……」
セレス「あとはもう先生の推理通りですわ。葉隠君にナイフを持たせ目を覚ますのを待ち……」
886: 2016/08/15(月) 01:10:13.24 ID:OoqJBge50
葉隠『……んあ? なんで俺ナイフなんか……』
葉隠『ッ!! 山田っち?! や、やっちまった!』
セレス『葉隠君?』
葉隠『ゲエ?! セレスっち?! こ、これはだな、その……』
セレス『あなたが山田君を頃したのですね?! 近寄らないでください、この人頃し!』
葉隠『ち、違うんだべ……!』
セレス『何が違うのです! クロは処刑されるというルールをお忘れですか? わたくしという
証人がいる以上、裁判をするまでもありません! あなたの命は今日で終わりです!!』
セレス『それとも――まさかそのナイフで山田君同様わたくしを頃し、口封じするつもりですか?』
葉隠『?! く、口封じ……』
葉隠(この場にいるのはセレスっちだけ……先生達は保健室だべ……確か十神っちは来ない……)
葉隠(イケる! どうせもう一人頃してるんだ。他に何人頃しても同じだべ! 殺らなきゃ俺が氏ぬ!)
カタカタと足が震え、全身の冷や汗が止まらない。
葉隠(でも、やっぱ……)
セレス(あと一押し!)
セレス『わたくしはあなたを告発しますわ! 今すぐ保健室に行って西城先生に全てお話します!
あなたはこれから学級裁判で処刑されるのです!! 氏ね! 最低の人頃し野郎!!』
葉隠『や、やめろ……やめろ! うわあああああああああああ!!!』
ドスッ!
887: 2016/08/15(月) 01:19:00.55 ID:OoqJBge50
「…………」
苗木「葉隠君が去ってからまだ生きていた山田君を殴り、凶器を隠滅。
その後、廊下の血痕を血糊で偽装したんだね」
モノクマ「仲間の性格を完璧に把握し利用した、なんと鮮やかかつ大胆な手口でしょう!
ボクもう、興奮してアドレナリンが止まらないよ!」ハァハァ!
「…………」
モノクマ「じゃあ、もう結果はわかってるかもしれないけど投票タイムと行きましょうか!
オマエラ、お手元のスイッチで投票してください」
生徒達は言われるままタッチパネル式のボタンを押していく。勿論全員同じ人物に入れた。
モノクマ「……はいっ! では張り切って参りますよ!」
モノクマ「投票の結果、クロとなるのは誰か?! その答えは、正解なのか不正解なのか――?!」
モノクマ「さあ、どうなんでしょーーー?!」
裁判場の壁にかかっている大型パネルと席のパネル、両方にスロットマシーンの映像が
映し出された。スロットの絵柄はKAZUYAや生徒達の顔写真だ。そして、徐々に絵柄が揃う。
VOTE
【セレス】【セレス】【セレス】
GUILTY
見事絵柄は三枚揃い、ファンファーレの音と共に画面の中でメダルがジャラジャラと流れた。
888: 2016/08/15(月) 01:35:21.65 ID:OoqJBge50
! 学 級 裁 判 閉 廷 !
ここまで。
遅れてすみません。皆さんも熱中症や冷房病や脱水症には気を付けてください。
921: 2016/09/05(月) 19:36:23.98 ID:g0jOH/nR0
それでは三章最終章、ゆっくり行きます
922: 2016/09/05(月) 19:40:36.08 ID:g0jOH/nR0
「大正解~ッ! 今回、山田一二三君を襲ったクロは――セレスさんでした!」
「今回は犯人の周囲に対する裏切りに次ぐ裏切りという、実にドラマティックな
事件でしたね! まさかの被害者二人が犯行側という意外性もグッド!」
ハイテンションなモノクマに対し、セレスは落ち着いた口調で話を締める。
「わたくしがお話出来ることはこれで全てです。では、オシオキと行きましょうか」
「フン。随分と潔いな」
「敗者は速やかにゲームから去るべきですわ。それにわたくし、負けてしまいましたが
一世一代の大勝負が出来て、ギャンブラー冥利に尽きると思っていますの」
そう言って彼女は笑ったが、苗木にはそれがただの強がりにしか見えなかった。
(セレスさん、氏ぬかもしれないのに……)
三日経っても山田は目覚めていない。それ故、モノクマが事前に
予告した通りセレスのオシオキは前回より更に危険な内容のはずなのだ。
「これで皆さんとは最期かもしれませんが……」
「――また、来世でお会いしましょう」
嘘が上手い彼女の笑顔が、今回だけは微かにぎこちなかった。
「――待て」
KAZUYAはセレスの元へゆっくりと歩み寄り、立ちはだかる。
923: 2016/09/05(月) 19:51:15.99 ID:g0jOH/nR0
「わたくしが許せませんか?」
「ああ」
「先生のような方からしたら、わたくしの夢など実にくだらないでしょうね」
「くだらないな。確かに」
「…………」
「だがその子供じみた夢のために体を張ってきたという事実、信念は認めよう」
「…………」
「俺はお前の夢を否定するつもりはないが……だが、夢のためだろうと何だろうと他人に迷惑をかけて
良い訳がない! 特に、お前はお前を信じる山田を利用した! お前のしたことは最低だ!!」
「そうですわね。一般的な感覚から見たらわたくしは最低な人間でしょうね。
でも、わたくしは……自分のしでかしたことを少しも悪いだなんて思っていませんわ」
「……!」
「!」
反射的に、KAZUYAは平手を上げた。セレスは思わず目をつぶる。
しかし、いくら待っても平手打ちは来なかった。
「……? 叩いてもよろしいのですよ? わたくしはそれだけのことをしているのですから」
「…………」
KAZUYAの手は震えている。苦しそうに眉間にシワを寄せ、そして……
何もせずそのまま手を降ろした。
924: 2016/09/05(月) 20:25:34.19 ID:g0jOH/nR0
「…………」
セレスは訝しげにKAZUYAを見上げる。
「……心の底から自分を正しいと信じている人間を殴っても仕方がない」
KAZUYAの脳裏に浮かんだのは前回の裁判での苦い記憶―― 十神を殴ってしまったことだ。
あれで彼は変わっただろうか?
むしろ前より頑なになっただけでは?
KAZUYAは医者であって教師ではない。だが、感情のままに生徒を
怒鳴ったり殴るのが正しいことではないくらいわかっている。
それに――
「……そんな悲しそうな顔をしないで頂けます? 西城先生にそういう顔をされると
調子が狂いますわ。いつもみたいに熱苦しく怒鳴って頂かないと」
もう、これが最後かもしれないのだから、とセレスは心の中でひっそりと付け加えた。
「…………」
「…………」
「本当にどうでもいいと思っているのか?」
「ええ。所詮は他人ですから」
「ならば何故――」
「山田にトドメを刺さなかった?」
925: 2016/09/05(月) 20:48:39.17 ID:g0jOH/nR0
「!!」
セレスの顔から血の気が引く。
「どういうことぉ?」
「西城先生、それは一体……?!」
「俺はこの学園で何度も手術を行ってきた。そして不二咲に至っては
一度心肺停止したにも関わらず、蘇生させることに成功した」
「確実性を求めるなら、複数回殴るのが正しい。特に、山田みたいな
頭が大きくて硬そうな奴は尚更、な。現にあっさり山田は蘇生しただろう」
「いくら急いでいるとはいえ、この状況下で一発しか殴らなかったのは何故だ。
君はとても慎重な人間のはずだ」
「…………」
「――本当は、殴れなかったんじゃないのか?」
「そんな、ことは……予想外のことが多すぎて、頭が回らなかっただけです」
「俺の目を見て話せ、安広」
「…………」
沈黙が場を支配する。KAZUYAは腕を組み、静かに目を閉じた。
モノクマが早くしろと目で訴えているが相手にしない。
一筋の汗が、セレスのこめかみを流れ落ちる。
926: 2016/09/05(月) 21:08:11.54 ID:g0jOH/nR0
「買いかぶり過ぎですわ、西城先生は。わたくしはそんな、立派な人間ではありません。
狡くてワガママで自分勝手で……エゴイストな人間なのです」
「そうだぜ、せんせー! いくらトドメを刺さなかったって言ってもやったことは変わらねえ」
「んだべ! 俺はどうなんだ!」
「葉隠は黙ってて!」
「聞いてくれ、みんな」
宥めるように両手を挙げ、KAZUYAは一度深呼吸をした。
彼自身、自分の心を整理しながら話す必要があった。
「俺は最初、真相に気付いた時怒った。ハラワタが煮えくり返っていたよ。
あまりに卑怯で狡賢い、そんな犯行だと怒りに燃えていた」
「絶対に許すべきではない。断固として犯人を糾弾すべき。そう考えていた」
「ええ、そうでしょう。わたくし自身、このおぞましい計画に笑いが止まりませんでしたわ」
「……だが、この三日間で俺の頭は冷えた」
「山田のお陰だ」
「えっ?」
「山田君?」
「山田のお陰だぁ?」
今まで見守っていた生徒達がどよめいた。KAZUYAは頷く。
「目を醒ました……というほどハッキリしたものではない。うわ言みたいなものだ。
だから、お前達に変な期待を持たせないよう今まで黙っていたが……」
「――実は、たった一度だけ山田は喋ったのだ」
927: 2016/09/05(月) 21:19:36.00 ID:g0jOH/nR0
╂
「す……せん……ま、せん……」
「山田? 山田ッ?! どうした?!」
「僕が……バカでした……」
「山田、どうしたんだ? 言いたいことがあるなら目を醒ますんだ!」
KAZUYAは山田の太い手をしっかり握り声をかけた。視線はバイタルと山田の顔を交互に行き来する。
「俺はここにいるぞ!」
「バカだったんです……僕は……」
「山田! 犯人は言えるか? お前を殺そうとした奴だ!」
「犯人は……見てな……」
「山田ッ!!」
「うっ…………」
╂
KAZUYAは超国家級の医師だ。
傷を見れば、その傷がいかなる状況で付けられたものか簡単に見分けることが出来る。
山田の二番目の傷は最初に殴られた時と同様、立った状態で付けられたものだった。
これは即ち、山田は一度気絶から目を覚まし起き上がっていたことを意味する。
928: 2016/09/05(月) 21:33:22.10 ID:g0jOH/nR0
「山田は犯人を見ていないと言ったが、正面から殴られて相手の顔を見ていないはずがない」
「――山田は庇ったのだ。自分を裏切り、殺そうとまでした卑劣な犯人のことを」
「それは……」
初めて、セレスが動揺した。その顔は今やハッキリと青い。
「何故……?」
「お前を責める資格がないと思ったんだろう。山田は裏切られたことより、
自分がみんなを裏切ってしまったことを後悔しているようだった」
「…………」
「それに、好意的な解釈をするなら……」
「するなら?」
「もう誰かを裏切りたくなかったのかもしれない。たとえそれが犯人であっても」
「…………」
「フン、そんなものはただのエゴだ。裁判に負けたら俺達全員オシオキだというのに」
「本当の所はわからんよ。あくまで俺の想像だからな。
実際は脳のダメージが大きくて上手く思い出せなかっただけかもしれん」
「ただ一つ言えるのは、金で作った人間関係なんてガラスよりも脆い」
「――そして人間は一人では生きていけない」
「…………」
「……時間切れだな」
「はい」
KAZUYAが促し、セレスはオシオキ場へと向かって行った。
その足取りがどこか覚束なかったのは、果たして怪我のせいだけだったのだろうか。
929: 2016/09/05(月) 21:45:42.56 ID:g0jOH/nR0
「セレスさん!」
「……!」
苗木がセレスの小さな背中に呼びかける。
「今回のことは、正直怒ってる」
「…………」
「でも僕達は仲間だ! だから……生きて戻って来て欲しい」
「苗木君……私も、待ってますよ。セレスさん」
「ええ、そうね。少しでも悪いと思う気持ちがあるなら、生きて償うべきだわ」
「生きろ、セレスよ。そして、山田と葉隠に対して謝罪せよ」
「セレス君、氏なないでくれ!」
「あんた達……ムチャ言ってんじゃないわよ。まあ、万が一助かったらお祝いくらいしてやるけど」
「…………」
セレスは振り返らなかった。コツコツというヒールの音が遠ざかって行く。
KAZUYAは深々と溜め息を付いた。
(常に適応を主張していた彼女だが……実際は誰よりも適応障害に苦しんでいたのだろうな)
適応障害:ある特定の状況や出来事などのストレス因子により引き起こされる精神障害。
抑うつ、不安、社会の規範を破る、破壊行動、引きこもり等その症状は多岐に渡る。
抑うつ:気分が落ち込んでいる状況。そのため思考、行動、感情、幸福感に影響が出る。あくまで
状態であり病名ではない。軽度なら自然に治ることも多く専門の治療は要しないが、他の
症状と複合して発生した場合は何らかの神経症の可能性もあり、専門家の診断を勧める。
930: 2016/09/05(月) 22:02:54.06 ID:g0jOH/nR0
(いつまでここにいればいいのか、先が見えない不安。外を見ることも出来ない圧迫感。
そして……度重なる仲間内での諍い、流血を伴う凄惨な事件の数々……)
(心を許せる人間もおらず、ストレスの発散も出来ず……
そうやって長期間に渡る抑うつ状態が続き、軽度のノイローゼだったのだろう)
(だから、モノクマの出した餌に食いついてしまった。食いつかざるを得なかった)
(夢の話も金の話も、結局はキッカケの一つに過ぎない。一番の動機はただ一つ。
……彼女は“ここから出たかった”のだ。たとえそれがどんなに反社会的な方法であろうと)
(人を頃して外に出ても、周囲がそれを許すはずなどないというのに――)
追い詰められた彼女は気付かない。ここでの行動は全て録画されている。
仮に脱出が出来たとしても、人を頃した映像などバラ撒かれたらもう彼女の夢は叶わないのだ。
(……強い人間に見えた)
(マイペースで、いつも冷静で、計算高い人間だと)
――そう思っていただけだった。
(霧切だってそうだ。しっかりしていても結局は子供だ。何故気付かなかったんだろうな……)
ぼんやりしているKAZUYAの脳裏に、忌々しいモノクマの声が響く。
「ではでは! 学級裁判の結果、オマエラは見事クロを突き止めましたので
これからクロであるセレスさんのオシオキを行いまーす」
931: 2016/09/05(月) 22:17:02.10 ID:g0jOH/nR0
「今回は――」
「超高校級のギャンブラーである」
「セレスティア・ルーデンベルクさんのために」
「スペシャルな」
「オシオキを」
「用意させて頂きました!」
「では張り切っていきましょう! オシオキターイム!」
いつの間にか持っていたハンマーで、モノクマはオシオキスイッチを押す。
スイッチの下の部分についていた液晶画面と、裁判席のパネルに一昔前のゲームのような
ドット絵が映り、モノクマを模したドットキャラがセレスのキャラを引きずっていく。
GAMEOVER
セレスさんがクロにきまりました。
おしおきをかいしします。
932: 2016/09/05(月) 22:33:57.42 ID:g0jOH/nR0
― セレスティア・ルーデンベルクの夢のお城 ―
セレスは長年憧れていた西洋風のお城にいた。見た目は立派なお城だが、それが張りぼてに
過ぎないことは本人も他の人間もわかっている。彼女は女王のように城の中心の玉座に座っていた。
その周囲を、仮面で顔を隠したきらびやかな衣装の男達が世話をする。豪華絢爛な
パーティーが開かれるが、一人また一人と恋人や友人に手を引かれ彼女の周りを去って行った。
最後には身動きの取れない彼女ただ一人が城に取り残される。そして、城を影で
支えていた人間達までいなくなってしまったために、セレスの城は大きく軋み始めた。
そして、憧れと理想ばかりを詰め込んで中身のなかったその城は――
彼女の夢と共に崩落した。
Chapter.3 世紀末医療伝説再び! 医に生きる者よ、メスを執れ!! 争乱編 ― 完 ―
933: 2016/09/05(月) 22:50:10.55 ID:g0jOH/nR0
ED「絶望性:ヒーロー治療薬」
http://www.youtube.com/watch?v=E4xPtdJdNTU
キミノ ノゾムモノハナニ ミミナリ ウソミタイナハナシー♪
はい、ED。やっと三章終了!! 長かった…本当に長かった…
このSSは二章三章が最長で、四章以降はもっと短い予定です。
ここからはサクサク行きたいものですね。
まさか予定通り裁判で1スレ丸々使い切るとは思わなかった。
結構余ってるし、小ネタかオマケでも今度入れるかな
疲れたのでチャプターリザルトは今度投下しておきます。
それでは、シーユー!
952: 2016/09/11(日) 23:40:03.07 ID:MSF52nto0
今週はお休みです。
四章は次スレからなので、スレタイ考えなきゃな…
順番的に朝日奈さんとさくらちゃんですね
ちょっと絶望的な感じにしようかな。案があったらどうぞ
四章は次スレからなので、スレタイ考えなきゃな…
順番的に朝日奈さんとさくらちゃんですね
ちょっと絶望的な感じにしようかな。案があったらどうぞ
965: 2016/09/22(木) 23:57:12.60 ID:C5di/bbJ0
[ スーパードクターK × ダンガンロンパ ― Episode0 ― ]
忘れてしまった人用にあらすじ:
(霧切学園長の熱烈な依頼により希望ヶ峰学園にやってきたKAZUYA。その個性的な格好や
キャラにより早速学園で話題の人物となる。78期生の一部の男子は興味本位で
KAZUYAを尾行したが特に問題はなくそのまま帰ろうとするが、発作で倒れる人を発見。
すぐさまKAZUYAのいる高品医院に運んだことによって、事なきを得たのだった)
― 2-A教室 月曜日 ―
桑田「……こんな感じで、俺達の活躍によって一人の尊い人命が救えたってワケよ!」
舞園「わあ、人助け出来て良かったですね!」
朝日奈「へぇー、やるじゃん!」
桑田「だろだろ?」
霧切「流石ドクターKね。噂通りだわ」
苗木「僕のいない間にそんなことやってたんだ。僕も行きたかったなぁ」
週明け、教室では桑田が土曜日にあった出来事を他のクラスメイト達に自慢気に話していた。
セレス「何を自慢気に話しているのですか。今の話ですと、具合の悪い方に声を掛けたのは
石丸君、機転を利かせて電話をしたのは不二咲君、実際に運んだのは大和田君では
ありませんか。あなた達は見ていただけで何もしていないのではないですか?」
葉隠「ギクッ」
山田「……そう言われるとそうなんですよねー」
桑田「でも俺がオッサンの後ツケようって言わなきゃ氏んでたかもしれないんだぜ?」
戦刃「それはそうだけど、堂々と人の後をツケたって言うのはどうかと思う」
江ノ島「なんでもいいけど面白そうなことはアタシも誘いなさいよね!」
十神「フン、何も好き好んで愚民共と同じ行動を取らんでもいいだろう」
十神(まさかこの俺抜きでそんなことをしていたとは……)ビキビキ
腐川「流石白夜様だわ! 行動の一つ一つにこだわりを持っていらっしゃるのね」ウットリ
大神「まあ、悪ふざけはそこそこにな」
966: 2016/09/23(金) 00:05:56.64 ID:E5yquGR60
そこへ、扉を開けて仁が入ってきた。
石丸「あ、学園長先生。おはようございます!」
不二咲「おはようございます」
仁「うん、みんなおはよう。その様子だと、この間のことは全員に話した感じかな?」
大和田「この間のことって、アレのことか」
仁「そう。お手柄だったね! 流石希望の象徴たる我が学園の生徒達だ。私も嬉しいよ」
桑田「へへへ」
山田「いやー、それほどでも」
葉隠「それほどのことはあるべ」
大和田「……オメーら、なんもしてねーだろ」
仁「実は今朝、君達が助けた方のご家族が学園にお礼に来られてね。このクラスの全員にと
お菓子を貰ったから、寮の食堂の冷蔵庫に入れておいたよ。後でオヤツに食べるといい」
「ヤッタ―!」
仁「私からは以上だ」
そう言うと仁は教室を去って行った。
朝日奈「ドーナツかな?! ドーナツだといいな! それ以外でも嬉しいけどね!」
葉隠「俺達に感謝するべ!」
腐川「なんであんたに感謝しないといけないのよ!」
不二咲「たくさんあるのかな? もし余ったら西城先生にもあげたいな」
石丸「ウム! それは名案だ!」
桑田「じゃあまた後で保健室行くか」
967: 2016/09/23(金) 00:15:48.16 ID:E5yquGR60
◇ ◇ ◇
放課後の保健室。そろそろ帰るかとKAZUYAが荷物をまとめた頃、ゾロゾロと来客が訪れる。
石丸「……という訳なのです」
K「それはわざわざ有り難いが、何故こんなに人数がいるんだ? これからどこかに行くのか?」
苗木「実は……西城先生って敷地内は全部回りましたか?」
K「いや。ここはちょっとした大学のキャンパスよりも広いからな。まだほとんど見ていない」
桑田「そう言うだろうと思ってさ、せっかくだから俺達が案内してやろうってワケ!」
大和田「ついでに、不二咲が先生と一緒にメシを食いたいって言うからそれも誘いにきたっす」
不二咲「お時間ありますか? 先生のお話、もっと聞きたいなぁ」モジモジ
K「俺は構わんぞ。確かに案内があった方が助かるしな」
山田「では行きますか。今日のご飯は中華はどうです? 南区には元超高校級のラーメン師の
店があるのです。そこに行きましょう! ああ、ラーメンが僕を呼んでいるぅぅ!!」
K「君は太りすぎだから、あまり油物は食べない方が良いと思うが……」
葉隠「あそこは混むから早めに行った方がいいべ」
桑田「おーし、しゅっぱーつ」
K(フフ……随分仲の良いクラスだな)
ガラッ。
保健室から出ると、そこには美男子だがこめかみに青筋を浮かべた神経質そうな青年が立っていた。
十神「遅い! 遅いぞ、貴様等! どれだけこの俺を待たせるつもりだ!」
K「…………」
これが希望ヶ峰でのKAZUYAと十神の初めての出会いであった。
968: 2016/09/23(金) 00:24:58.13 ID:E5yquGR60
苗木「あ、ごめんね十神君! その、中で少し盛り上がっちゃって……」
十神「この俺を誘っておいてよくも悠長にオシャベリなどしていられるな。そもそも、
超高校級の御曹司たるこの俺を庶民の飯を付き合わせること自体不届きな……」
苗木「ほ、本当にごめんね!」
葉隠「まあまあ」
K「……彼は?」
石丸「同じクラスの十神白夜君です。十神財閥、と言えば先生もご存知だと思いますが」
K「十神財閥……」
如何にも上等そうなスーツを纏いプライドの高い発言をする十神に、
KAZUYAは既に心の中で距離が出来かけていた。
大和田「ケッ、庶民のメシがイヤなら来るなってんだ」
石丸「コラ、兄弟。そんなことを言うものではない。十神君もクラスメイトではないか!」
桑田「置いてっていいんじゃねーの。うるせーし」
十神「……!」ビキビキ
不二咲「男子全員いるのに、十神君だけ誘わないのは可哀想だよぉ」
山田「流石ちーたん優しす! テラ天使!」
石丸「十神君は照れ屋なのだ! 何せ、誘えば必ず来てくれるのだからな!」
一同(あ、地雷踏んだ)
石丸を除く全員の心が一つになった。
十神「帰る! 俺は帰るぞ!」
顔を真っ赤にして帰ろうとする十神の前に慌てて苗木が回り込んだ。
苗木「そんなこと言わないでよ! ここまで来てるんだし」
石丸「そうだ。君がいないとみんな寂しいのだぞ! いてくれないと困る!」
969: 2016/09/23(金) 00:34:42.40 ID:E5yquGR60
桑田(いや、全然)
大和田(別にいなくても困らねえけどな)
十神「……フ、フン。そこまで言うのなら行ってやってもいい。感謝しろ」
山田(石丸清多夏殿は地雷とデレポイントを交互に踏むから見ててヒヤヒヤしますな……)
K(……どうやら、相当気難しい人物のようだ)
K「大変だな」ボソッ
不二咲「は、はい。でも、良い所もあるんですよ?」
葉隠「前に土下座したら金を貸してくれたべ。だから十神っちはイイヤツだべ!」
K「…………(その判断基準はどうだろうか)」
複雑過ぎる二年A組の人間関係にKAZUYAは思わず遠い目をしてしまう。
石丸「ム! 今のやりとりで先生に悪い印象を与えてしまったか?! 西城先生! 誤解しないで
下さい! 十神君は本当は凄く頼りになる、クラスでも中心にいる人物なのです! 頭が良く
実は大変な努力家であり責任感もあり、御曹司といっても家の権力に全く頼らない男です!」
不二咲「フフ、そうだねぇ。凄く頼りになるよ!」
十神「う、うるさい! 黙れ黙れ黙れ!!」カァァ
石丸「すまない! もしや僕は余計なことを言ってしまったのだろうか?!」
十神「余計なことだ! 貴様等が言わなくてもこの俺の真価は誰の目にも明らか!
そんなこともわからないから、貴様はいつまで経っても空気が読めないんだ!」
苗木(もう、素直じゃないんだから……)
苗木「アハハ、ごめんね。でも本当にみんなそう思ってるからつい言っちゃうんだよ?」
十神「…………」プイッ、カタカタカタカタ
K(あいつ凄い速さでメガネをかけ直しているぞ……大丈夫か?)
病院で個性的な患者は見慣れているはずのKAZUYAだが、思わず動揺してしまう。
970: 2016/09/23(金) 00:47:05.28 ID:E5yquGR60
山田「十神白夜殿はあの三人に弱いのです。石丸清多夏殿とちーたんはナチュラルに
褒め言葉連発してくるし、そこに苗木誠殿がコンボをかましてきますからな」
葉隠「天然の石丸っちに純粋な不二咲っち、それに苗木っちはお人好しだからな。
あの三人を騙すのは流石の俺も少し罪悪感を感じるべ」
K「成程」
K(恐らく過酷な世界に生きているだろうから、無邪気な人間に弱いのか?)
石丸「む、むぅ。すまない、すまない! 僕はどうやらまた失敗してしまったようだ……」
十神「フ、フン! まあ、石頭の割にはよく俺の分析が出来ていたとそこだけは誉めてやる」
石丸「そうか……それは良かった。ありがとう、十神君!」
大和田(なんつーか、兄弟も鈍いよな……)ハァ
桑田(見ててこう、ムズがゆくなるっつーか)
不二咲「ありがとう、十神君」ニコッ
十神「……クッ、そんなことはどうでもいい。ほら、さっさと行くぞ!
その、例の有名な中華料理屋というのはすぐに混むのだろう?」スタスタスタ
石丸「あ、待ちたまえ!」
足取り軽く十神は廊下を歩いて行き、石丸も後を追いかけていく。
残ったメンバーはげっそりしながらその様子を見ていた。
K「何だったんだ、今のやりとりは……」
大和田「アイツ……ホント、わかりやすいヤツだよな。まったく……」
苗木「……ハ、ハハ。僕は好きだけどね」
十神「何をしている、貴様等! 今日は俺の奢りだ。だからさっさと来い!」
葉隠「やっぱり十神っちは神だ! ほら、急がねえと!」
山田「今日は二杯行きますぞ!! ついでにチャーハンと餃子も大盛りで!」
桑田「ほんじゃ、御曹司様のご厚意に乗っときますかっと」
ダダダダダッ。
不二咲「ねえ? 良い所もあるでしょう?」クスクス
K「……そのようだ」
これがキッカケとなり、KAZUYAは苗木のクラスの男子達と徐々に仲良くなったのだった。
971: 2016/09/23(金) 00:58:24.65 ID:E5yquGR60
◇ ◇ ◇
桑田「なー、せんせー。今日の昼飯おごってくれよー」
K「コラ。教員にたかるな」
石丸「そうだぞ、桑田君! 大体、今日の昼は保健室で病院の話を聞かせてもらうのだ!」
K「……昼休みくらい息抜きをしたらどうだ?」
K(俺も疲れるんだが……)
不二咲「フフッ、石丸君は勉強熱心だねぇ」
大和田「付き合わされてご愁傷さんっす」
苗木「今日は第三食堂にしない? 先生はまだ行ったことないって言ってたし」
桑田「じゃそれで決定ー」
石丸「ぼ、僕の勉強は?!」
K「決定だ。お前も来い」
不二咲「あ、休み時間終わっちゃう。じゃあ先生、また後で」
ガヤガヤガヤ……
K「……フゥ。賑やかだな」
元気一杯に去って行く生徒達を見ながら、KAZUYAは顔をほころばせる。
その様子を、少し離れた物陰から見ている人物がいた。
「この短期間で、随分仲良くなりましたね」
K「ああ、霧切学園長。変な話ですが、この間の一件ですっかり懐かれてしまいましてね」
仁「うちの生徒はかわいいでしょう? 私の自慢の生徒達です」
K「ええ。高校生といえどまだまだ子供ですからね。子供はかわいいものです」
そう語るKAZUYAの脳裏に、つい加奈高の生徒達の顔が浮かぶ。
972: 2016/09/23(金) 01:11:33.72 ID:E5yquGR60
仁「子供はみんなかわいいですが、ここにいる子達は特に希望に溢れていますからね!
いやぁ、この間の話を聞いた時は流石超高校級の生徒達だと私も鼻高々でしたよ」
K「はぁ……」
K(あれは彼等の性格や行動力のお陰であって、超高校級の称号は関係ないと思うが……)
仁「これからもよろしくお願いしますね?」
K「ええ」
仁の発言にどこか違和感を覚えながらも、KAZUYAは頷いて保健室に戻った。
その後ろ姿を見ながら、仁は満足げに口の端を吊り上げる。
仁(やはり、私が見込んだ人物なだけある。一癖も二癖ある生徒達と
もうあれだけ仲良くなるとは。――それも、あのクラスの生徒達と)
仁(いや、これは必然か?)
仁はKAZUYAが希望ヶ峰にやって来た日のことを思い返す。
『あれだけ私のことを避けていたのに、何故突然引き受けて下さったのですか?』
『いや、なに……あなたの教育者としての熱意に根負けしましてね』
KAZUYAは少し笑い、仁も同じように愛想笑いを返す。
『フフ、しつこく頼み込んだ甲斐があったというものです。でも、それだけじゃないでしょう?』
『そうですね。正直に言わせてもらえば、この学園の生徒達に興味がありました』
『興味とは……』
『超高校級と呼ばれる才能を持つ生徒達……ですが、私が興味を持っているのは才能ではありません』
『あなた達が希望と称する、そんな生徒達の顔を間近で見てみたかったのですよ』
973: 2016/09/23(金) 01:17:38.88 ID:E5yquGR60
『ほう。つまり彼等が真に人類の希望足りえるか見定めに来た、と』
『いや、そういうつもりでは……』
『いえいえ、遠慮なさらなくて結構。是非我が校の自慢の生徒達を
じっくり見て行って下さい。あなたもすぐに彼等の素晴らしさがわかるでしょう』
『……はぁ』
思えば、あの時のKAZUYAも要領を得ない返事をしていたなと思い返す。
(まあ、いいさ。彼は『外の人間』だからね。すぐにこの学園に馴染めなくとも仕方ない)
学園長室に戻ろうと仁が踵を返した時、一人の生徒と出くわした。
「こんにちは、学園長先生」
「やあ。……おや、怪我をしたのかい?」
「はい。さっき廊下を歩いていたらいきなり清掃ロボットが突っ込んできて」
「それは不運だったねぇ。大丈夫かい?」
「大丈夫です。……それに、もしかしたらこれは不運じゃなくて幸運かもしれない」
青年は独り言のように静かに呟く。
「そういえば、ドクターKのことはもう聞いたかな? 超高校級マニアと呼ばれる
君なら、超国家級の称号を持つ彼にも絶対興味を持つと思ったんだが」
仁がそう話し掛けると、少し長めのパーカーを着たその青年は興奮気味に叫んだ。
974: 2016/09/23(金) 01:22:16.75 ID:E5yquGR60
「勿論! 興味は持ってますよ。前に怪我をした時、何か情報が手に入らないかと思って
わざわざ帝都大系列の病院に行ったんです。そうしたら、幸運なことに僕の
担当医がドクターの大学時代の同期でして。色々話を聞かせてもらいました」
「それはツイていたね。それで、もうドクターK本人には会ったのかな?」
「いえ、本当はすぐにでも会いに行きたかったんですけど、僕のようなゴミクズが
近付いたらあの人の希望がくすんでしまう気がして、まだ直接は会っていないんです」
「……毎日、離れた所から見てはいるんですけどね」
青年がボソリと呟く。その目に光はない。
「成程。だから会いに行く口実が出来て幸運、ということだね?」
「はい!」
「君の目から見て、彼はどうだい?」
「素晴らしいですよ! 彼からは希望が溢れている。基本的に他人と関わりたがらない超高校級の
生徒達と少しずつ距離を近付けているし、何よりあの“奇跡の”クラスともう仲良くなるなんて」
「やはり君もそう思うか」
青年の言葉を聞いて仁も満足げに頷く。
「ええ。あのクラスは特別ですからね。特別なクラスに特別な先生。この二つが合わさった時、
僕が望むどんな絶望にも負けない絶対的な希望が生まれる。そんな気がするんです」
「誰よりも希望を渇望し追い求める君がそこまで言うのなら、そうなのかもしれないな」
仁は何かを確信するようにもう一度頷いた。
975: 2016/09/23(金) 01:24:45.66 ID:E5yquGR60
「私はもう行く。君も早く保健室に行って治療してもらうと良い。そしてドクターKを見て来なさい」
「――狛枝君」
「はい!」
狛枝と呼ばれた青年は高揚を抑えきれずに保健室に向かう。
(楽しみだなぁ。いよいよ僕もドクターKに会えるんだ。一体どんな希望を見せてくれるんだろう!
……あの人なら、これから襲い掛かるどんな絶望だって乗り越えてみせるよね!)
(そして、絶望と希望の間で揺れ動く僕の心を救ってくれるはず。最後に勝つのは希望のはずなんだ!)
「フ、フフ……ハハハ……アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」
そして青年は走り去って行った。
人類史上最大最悪の絶望的事件まで――残りあと66日。
[ ― Episode0 Ⅰ 超国家級の医師が超高校級の希望達と出会った日 ― ] 完
976: 2016/09/23(金) 01:34:53.62 ID:E5yquGR60
ここまで。あと、簡単な解説を少し。
仁は生徒達の才能(希望)を見てるのに対し、KAZUYAは生徒達の
素顔(人間性)を見てるのでこの二人は最後まで話が噛み合いません。
本編ではあんなことになっている十神君ですが、
クラスは勿論KAZUYAとも仲良くしていた時期がありました。
狛枝君に関してはロンパ3が終わった辺りにでも改めて……
本編の方は新スレ立てたのでそちらでやらせて頂きます。
大神「…もう決めたのだ。許せ」朝日奈「そんなの、嫌だよ…お願い、ドクターK!」カルテ.7
では。
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