1: 2016/04/23(土) 14:01:25 ID:x6SncPAc
以前書いた初期SSのリメイクです。
P4とISのクロスオーバーになりますが
厳密にはP4風味のISSS、という感じです。
転校してくるのはゲームクリア時のハイスペック能力を持った
アニメ版番長、と思ってください。
注意事項
1) P4に関しては、ネタバレが多少あります(PS2版)。
2) >>1独自のIS戦術理論で展開しますが、ぐっとこらえて見てください。
3) 番長の専用機の詳しいスペックは 後々語られます。
4) P4を知らなくても読める……かと思いますが
P4を知っていると更に楽しめるかと……
5) >>1はISをアニメでしか知らない。
6) 一期を見た後に書いたので、更識姉妹は登場しません。
以上です。 それでは始めます。
少し長いので休憩入れながら投下します。
2: 2016/04/23(土) 14:02:40 ID:x6SncPAc
2組の教室
??「はじめまして」
??「鳴上 悠です」
モブ子「ふわぁ……ホントに男の子だぁ」
モブ美「これで1組の織斑君、『世界唯一の』って言うブランドは消えたのね」
モブ枝「それにしても背、高いね。 落ち着いた感じだし一年生に見えない」
鈴「………」
鈴(ふうん……確かにカッコいいけど、一夏の方がいいな、やっぱ)
3: 2016/04/23(土) 14:03:19 ID:x6SncPAc
2組の先生「ええと、鳴上君」
2組の先生「何か一言ありますか?」
鳴上「…………」
鳴上「俺は落ち武者じゃありませんので」
ズコ――――!!
鈴(……な、なんか変わった奴ね)
4: 2016/04/23(土) 14:04:01 ID:x6SncPAc
昼休み
食堂
鈴「……って、感じの奴だった」
一夏「何かのギャグなのか? それ」
鈴「知らないわよ、そんな事」
鈴「どこかの都会出身って言ってたから、そこで流行ってたんじゃないの?」
一夏「まあとにかく、合同授業が楽しみだな」
一夏「早く手合わせをしてみたい」
一夏「正直、男にとって肩身が狭いからな……IS学園は」
鈴「聞き捨てならないわね……もっと幸せに思いなさいよ!」
一夏(……これだもんなあ)
5: 2016/04/23(土) 14:04:44 ID:x6SncPAc
2組・IS実習授業
鈴「……へえ、あんたも専用機持ちなの」
鳴上「……?」
鈴「ああ、ごめん。 あたしの名前は凰 鈴音」
鈴「鈴、でいいわ」
鳴上「鳴上 悠だ」
鈴「悠って呼んでもいいかしら?」
鳴上「かまわない」
6: 2016/04/23(土) 14:05:18 ID:x6SncPAc
鳴上「鈴も専用機持ちなのか?」
鈴「そうよ。 そして中国の代表候補生」
鳴上「すごいな」
鈴「まあね。 でさ、一つ手合わせしてみない?」
鳴上「俺はまだ乗り始めたばかりだが……」
鳴上「かまわないか?」
鈴「ふふん、ちゃんと手加減してあげる」
鳴上「助かる」
7: 2016/04/23(土) 14:06:03 ID:x6SncPAc
※番長の専用機について
番長の専用機は、基本黒いカラーリングの外見で
黒い白式の様なものを想像してください。
P4を知っている人はペルソナ・イザナギをメカっぽくして
番長が『着ている』みたいな姿を想像して頂ければ良いかと。
武装はイザナギが持っている刀の様な武器と
両肩に浮いているアレからグレネードを射出します。
これはペルソナの魔法を何とか使えないか?と思って考案しました。
イザナギが使うにしてはおかしな属性のものもありますが
ひとつ大目に見てください。
残念ながらペルソナチェンジまで表現すると
番長あまりにもチートになるので、ISチェンジはありません。
あしからずです。
8: 2016/04/23(土) 14:07:17 ID:x6SncPAc
鈴「甲龍!」 スウウウウンッ!
鳴上「…………」 スチャ…(メガネ装備)
鳴上「イザナギ!」 スウウウウンッ!
鈴「……?」
鈴「なんでメガネをかけるの? 目が悪いの?」
鳴上「そうじゃないが……」
鈴「ないが?」
鳴上「ハイカラだろ?」
鈴(……いまいちキャラが掴めないわね)
9: 2016/04/23(土) 14:07:52 ID:x6SncPAc
鈴「じゃあ、始めていいかしら?」
鳴上「かまわない」
鈴「行くわよ……はあああっ!」
ガキン! ガァン!
鳴上「…………」
鈴「…………」
鈴(……何? こいつ?)
ギギンッ! ゴアンッ!
鳴上「…………」
10: 2016/04/23(土) 14:08:43 ID:x6SncPAc
鈴(武装は……白式の雪片二型に似た、近接武器のみかしら?)
鈴(それにしても……確かにISの扱いは拙いけど)
鈴(何なの? この落ち着き様は……?)
鳴上「…………」
ガァンッ! ギガンッ!
鈴「悠!」
鳴上「?」
鈴「悪いけど、少し本気を出してもいいかな?」
鳴上「…………」
鳴上「わかった」
11: 2016/04/23(土) 14:09:35 ID:x6SncPAc
鈴「……じゃあ、いくわよ! 龍砲!!」 ドオンッ!
鳴上「!?」
ボゴンッ!!
鳴上「ぐあっ!」
鈴(まともに食らった!?)
鳴上「……くっ!」
鳴上「ペルソナ!!」 ポウ ポウ
12: 2016/04/23(土) 14:10:24 ID:x6SncPAc
鈴「!? 爆弾!?」
バリバリバリバリッ!!
鈴「ああああっ!! ス、スタン・グレネード!!」
鳴上「今だ!!」
鈴「くっ…!!」
ガアアアアンッ!!
13: 2016/04/23(土) 14:10:57 ID:x6SncPAc
―――――――――――
鈴「……あんた、何者なの?」
鳴上「ただの高校生だが?」
鈴「う~ん……上手く言えないけど、悠の動きはとても素人とは思えない」
鈴「戦い慣れしてる? 感じだった……」
鳴上「でも結果は俺の負けだ」
鈴「……まあ、そうだけど」
鳴上「ありがとう。 得るものの大きい戦いだった……」
鈴「……どういたしまして」
鳴上「良かったら、また手合わせしてくれ」
鈴「ええ、いいわよ」
14: 2016/04/23(土) 14:11:50 ID:x6SncPAc
放課後
談話室
セシリア「で、どうですの? 噂の転校生さんは?」
鈴「ん? まあ悪い奴じゃないと思うわ。 変わってる所はあるけど」
箒「変わってる? どんな風に?」
鈴「そうね……誰か『ペルソナ』って言葉知ってる?」
ラウラ「……知らないな」
シャル「確か……心理学用語じゃなかったかな?」
鈴「ふうん。 その心理学用語?の『ペルソナ』をやたらと使うのよ」
鈴「あたし達で言うなら、『えいっ!』とか『とうっ!』みたいにね」
箒「確かに変わってるな」
15: 2016/04/23(土) 14:12:27 ID:x6SncPAc
ラウラ「強さはどうだ?」
鈴「ISの扱いは、まだまだって感じ。 でも……」
セシリア「でも?」
鈴「妙に落ち着き払っていて、ケンカ慣れしてる様な気がするの……」
シャル「へえ? チラッと見たけど、そんな風には見えなかったよ?」
鈴「そうなのよね……まあ見た目で判断しちゃいけないのかも」
16: 2016/04/23(土) 14:13:07 ID:x6SncPAc
夜
IS学園寮・一夏の部屋
鳴上「鳴上 悠です」 ペコリ
一夏「おう、同室の織斑 一夏……です」 ペコリ
一夏(……な、なんか大人びた同級生だな?)
一夏「まあ堅苦しい挨拶はこれぐらいにして、俺の事は一夏、と呼んでくれ」
鳴上「わかった、一夏。 俺の事も好きに呼んでくれて構わない」
一夏「そっか」
一夏「じゃあ……悠、と呼んでもいいか?」
鳴上「ああ」
一夏「悠は専用機持ちらしいけど……どういう経緯でIS学園に?」
鳴上「…………」
17: 2016/04/23(土) 14:13:42 ID:x6SncPAc
一夏「……? 悠?」
鳴上「……多分、言っても信じてくれないと思うが」
一夏「お、おう」
鳴上「突然、空からニンジンの形の」
一夏「なるほど……よく分かった」
鳴上「……まだ導入部だぞ?」
一夏「……そのニンジンの形した輸送ポッドの中から」
一夏「ウサ耳をつけたメイド服の女性が出てきて」
一夏「『おおう! いっくんの他に男性のIS適正者発見! さ、一緒に来て~!』と言われ」
一夏「有無を言わさず専用のISを渡されたあげく」
一夏「いつの間にかIS学園の転入が決まっていた、と」
鳴上「…………」
18: 2016/04/23(土) 14:14:27 ID:x6SncPAc
鳴上「……見てたのか?」
一夏「単なる推測だよ」
鳴上「台詞も一言一句、間違いなかったぞ?」
一夏「そりゃどうも……」
鳴上「……知り合いなのか?」
一夏「ああ、幼馴染のお姉さんなんだ」
鳴上「そうなのか」
一夏「……はあ」
鳴上「…………」
鳴上(そっとしておこう)
19: 2016/04/23(土) 14:15:10 ID:x6SncPAc
―――――――――――
翌日・昼休み
食堂
一夏「悠! ここで食わないか?」
鳴上「いいのか?」
シャル「どうぞ、歓迎するよ」 ニコ
シャル「あ、自己紹介がまだだったね?」
20: 2016/04/23(土) 14:16:00 ID:x6SncPAc
シャル「ボクはシャルロット・デュノア。 フランスの代表候補生」
鳴上(……ボク?)
セシリア「わたくしはセシリア・オルコット。 イギリスの代表候補生ですわ」
鳴上(いかにも、な、お嬢様……)
ラウラ「私はラウラ・ボーデヴィッヒ。 ドイツ代表候補生だ」
鳴上(……眼帯)
箒「私は篠ノ之 箒。 代表候補生ではないが専用機持ちだ」
鳴上(この娘が篠ノ之博士の妹さん)
鳴上(一夏との幼馴染か……)
鈴「あたしは知ってるよね? 悠」 クス
鳴上「もちろん」 クス
21: 2016/04/23(土) 14:16:35 ID:x6SncPAc
鳴上「俺は鳴上 悠。 よろしく」
鳴上「それにしても、そうそうたるメンバーだ……」
一夏「ああ、多国籍IS専用機持ちばかりだ」
一夏「でもみんないい奴だぜ? 気兼ねしないでくれ」
鳴上「わかった」
セシリア「鈴さんから お聞きしましたけど、変わった掛け声をなさるとか……」
鈴「ちょっ、セシリア!」
セシリア「あ……ごめんなさい」
22: 2016/04/23(土) 14:17:28 ID:x6SncPAc
鳴上「いや、気にしないでくれ。 色々あって口癖になってしまったんだ」
ラウラ「心理学用語なのだろう?」
鳴上「響きがハイカラだろ?」
箒(ずいぶん古風な言い回しをするのだな……)
シャル「専用機の名前もかっこい……ハイカラだね」
箒「イザナギ、だったな」
箒「イザナギのミコト……日本の神の名前だ」
鳴上「ああ、自分でも気に入ってる」
鳴上「篠ノ之博士に名前を付けていいと言われ、命名した」
一夏「さ、みんな、質問はそれくらいにして飯にしようぜ!」
23: 2016/04/23(土) 14:18:32 ID:x6SncPAc
―――――――――――
数日後
IS学園・第一アリーナ・1組2組合同実習
千冬「……転校生の鳴上 悠か」
鳴上「はい」
千冬「束に気に入られた様だが……大丈夫か?」
鳴上「?」
千冬「……まあいい」
千冬「よし、それでは……織斑。 鳴上と模擬戦をやれ」
一夏「おしっ! わかりました」
鳴上「よろしくな、一夏」
一夏「こっちこそな、悠」
24: 2016/04/23(土) 14:19:17 ID:x6SncPAc
鳴上「……」 スチャ…(メガネ装備)
鳴上「イザナギ!」 スウウウウンッ!
一夏「白式!」 スウウウウンッ!
鳴上「行くぞ。 一夏」
一夏「ああ……いつでもいいぞ」
鳴上「はあああああっ!!」
ガキンッ!! ガアンッ!!
一夏「うおおおおおっ」
鳴上「くっ……!」
25: 2016/04/23(土) 14:19:49 ID:x6SncPAc
千冬(………)
箒(………)
セシリア(………)
シャル(………)
鈴(………)
ラウラ(………)
キンッ!! ガァンッ!!
千冬「篠ノ之……どう見る?」
箒「…………」
箒「ISに乗っていなければ」
箒「一夏に……勝ち目はないでしょう」
セシ・ラウ・シャ・鈴「!?」
26: 2016/04/23(土) 14:21:11 ID:x6SncPAc
千冬「同感だな」
千冬「鳴上の動きは実戦をくぐり抜けてきた者の動きだ」
千冬「俗に人、一人を切れば初段の腕、と言うが」
千冬「鳴上の動きはまさにそれだ」
箒「型にはまらない我流の動きだが……」
箒「間合いの取り方が素人のそれではない」
セシ・ラウ・シャ・鈴「…………」
千冬(だが……気になるのは『何』と戦って来たのか? ということだ)
千冬(動きから まるで人ならざる者との戦いを想定している様に見える)
千冬(束め……どこからこんな逸材を)
27: 2016/04/23(土) 14:21:58 ID:x6SncPAc
鳴上「……ペルソナ!」 ポウ ポウ
一夏(来た! 鈴の言ってた、小型のスタン・グレネード!!)
一夏「その手は食わないぜ!」 回避行動
カッ!!!
一夏「!? ま、眩し……!!」
鳴上「はあああああっ!!」
バゴオオンッ!!
―――――――――――
28: 2016/04/23(土) 14:22:53 ID:x6SncPAc
授業終了後
男子更衣室
一夏「……負けたぜ」
鳴上「油断したな」
一夏「ちぇ……スタン・グレネードじゃなくて、フラッシュ・グレネードとはな……」
鳴上「だが一夏の零落白夜は凄い武器だ」
鳴上「俺の勝利は紙一重にすぎない」
一夏「ま……白式には、それしかないけどな」
鳴上「一夏はきっと強くなれる。 大丈夫だ」
一夏「ああ、これからさ」
一夏「……次は負けないぜ?」
鳴上「その意気だ」
ハハハ…
一夏(うん、こういう会話……すげー久しぶり。 楽しいな)
29: 2016/04/23(土) 14:24:01 ID:x6SncPAc
―――――――――――
放課後
IS学園寮・ロビー付近
鈴「一夏! 今度の休み、空いてる?」
一夏「ん? ああ、空いてるが?」
鈴「そ! じゃあさ!」
鈴「一緒に映画を見ない? タダ券二枚あるの!」 ピラッ
一夏「へえ……おっ!」
一夏「『山本五十嵐』じゃないか! この前、封切りしたばかりの」
一夏「……って、これ硬派な戦争映画だぞ?」
鈴「あ、あたしは、一夏と見れれば文句はないわ!」///
30: 2016/04/23(土) 14:24:33 ID:x6SncPAc
一夏「う~ん……鈴には退屈だと思うけどなあ」
一夏「男じゃないとわからないぞ? こういうの」
鈴「……別に構わないって」
一夏「けどなあ……」
鈴「……もういい! だったら券はあげるから、悠とでも見に行けば!!」 フン!
一夏「!? お、おい、鈴!?」
一夏「……なんだよ、ったく」
31: 2016/04/23(土) 14:26:11 ID:x6SncPAc
IS学園寮・一夏と鳴上の部屋
一夏「……という事があってな」
鳴上「…………」
一夏「なんで鈴が怒ったのか、わからない」
鳴上(……本当にこんな奴が存在するんだな)
一夏「やっぱり謝るべきかな?」
鳴上「……止めておいた方がいいと思う」
鳴上「むしろ今回の事に礼を言った上で、別の休みに鈴好みの映画を見に行くか」
鳴上「もしくは……二人でどこかに出かける約束をしたらいいと思う」
一夏「そうなのか?」
鳴上「多分だが……きげんは治ると思う」
一夏「そうか! よし、明日にでも鈴に伝えよう!」
鳴上(その前に根本的な所がダメダメな気がする……)
32: 2016/04/23(土) 14:26:47 ID:x6SncPAc
―――――――――――
次の日
休み時間・廊下
一夏「鈴!」
鈴「……何よ」
一夏(うっ……露骨に怒っていらっしゃる)
一夏「き、昨日のタダ券、ありがとうな」
一夏「それで、そのお礼……と言っちゃなんだが、この次の次の休みに」
一夏「どこか出かけないか?」
鈴「……ふえっ!?」
33: 2016/04/23(土) 14:27:21 ID:x6SncPAc
鈴「…………」
鈴「……ホント?」
一夏「ああ、本当だとも!」
一夏「鈴が見たい映画があれば一緒に見に行くし」
一夏「ないなら、買い物でも遊園地でも付き合うぜ?」
鈴「ホ、ホントにホント!?」///
一夏「本当だって」
鈴「ふ、二人だけ、で!?」///
一夏「おう、もちろん!」
鈴(や、やたっ! い、一夏と デ、デートの約束!)///
鈴「しょ、しょうがないわね! 付き合ってあげるわ!」///
34: 2016/04/23(土) 14:28:18 ID:x6SncPAc
一夏(すげえ! 悠の言う通りにしたら、きげんがすんなり治った!)
一夏(休みは減ったけど……)
一夏(悠……頼りになるぜ!)
―――――――――――
授業中・2組教室
鈴(んふふ~、デート。 一夏とデート!) ニコ ニコ
モブ子(……なんか気持ち悪いわね、凰さん) ヒソヒソ
モブ美(休憩終わってからずっと、ああだもんね……) ヒソヒソ
モブ枝(何があったのかしら?) ヒソヒソ
鳴上(一夏……上手く行った様だな) ヤレヤレ…
35: 2016/04/23(土) 14:31:31 ID:x6SncPAc
昼休み
屋上
鳴上「ふう……」
シャル「あれ? 鳴上くん?」
鳴上「……? デュノア?」
シャル「どうしたの? お昼食べたら、急用とか言って」
シャル「すぐに食堂から出て行っちゃったと思ったら」
シャル「こんな所に居るなんて……」
鳴上「……なんとなく居心地が悪くて」
シャル「そっか……」
シャル「鈴……なんかテンション高かったし、そのせいかな?」
36: 2016/04/23(土) 14:32:08 ID:x6SncPAc
鳴上「……?」
シャル「ボクもちょっと居心地……悪くて、ね」
シャル「空気を吸いに」 テヘへ
鳴上(……まさか)
鳴上「デュノアは一夏の事が好きなのか?」
シャル「……うん、好き」
シャル「って、わかるよね? 普通……」
鳴上「恐ろしいまでの鈍感力だ……」
シャル「あそこまでいくと才能だよ……ホント」 フウ…
鳴上「気持ちは伝えたのか?」
シャル「……ううん」
鳴上「なぜ、伝えない?」
37: 2016/04/23(土) 14:32:41 ID:x6SncPAc
シャル「いろいろアピールしてダメだったし……」
シャル「ボクには家庭の事情もあって」
シャル「今の関係が壊れるのが……怖いの」
鳴上「…………」
鳴上「いいのか? それで?」
シャル「……わかってるよ、そんな事」
鳴上「…………」
鳴上(あまり口を出さない方が いいのだろうけど……)
鳴上「……少し、独り言を言っても構わないか?」
シャル「え?」
38: 2016/04/23(土) 14:37:15 ID:x6SncPAc
シャル「…………」
シャル「……どうぞ」
鳴上「……ある人物が、恋をしていた」
鳴上「寝ても覚めても……と、いう訳ではなく、その想いは ほのかなものだった」
鳴上「でも……突然その想い人は亡くなってしまう」
シャル「……!」
鳴上「もちろん、そいつは悲しんだ……それは事実だ。 だけど」
シャル「…………」
鳴上「ある時、気が付いてしまった」
鳴上「想い人が亡くなった事よりも」
鳴上「想い人が亡くなって、自分は、なんて可哀想なのだろうと酔っている自分に……」
シャル「…………」
39: 2016/04/23(土) 14:38:06 ID:x6SncPAc
シャル「……何が言いたいの?」
シャル「ボクが……自分を哀れんで喜んでいる、とでも言いたいの!?」
鳴上「…………」
鳴上「違うのか?」
シャル「!!」
パァンッ!!
シャル「違う! ボクは……ボクは、そんなこと思っていない!!」 ダッ
タッ タッ タッ…
鳴上(…………)
鳴上(……言い過ぎた、かな)
40: 2016/04/23(土) 14:39:32 ID:x6SncPAc
放課後
IS学園寮・談話室
セシリア「あら、鳴上さん。 ごきげんよう」
鳴上「……オルコット」
セシリア「? どうなさいましたの? その頬」
鳴上「そっとしておいてくれ……」
セシリア「はあ……」
セシリア「それにしても」
鳴上「?」
セシリア「鈴さん……気持ち悪いくらい上機嫌でしたけど」
セシリア「鳴上さん、何かご存知ありませんこと?」
鳴上「……いや」
セシリア「そうですの。 まあおそらく、一夏さんがらみでしょうけど……」 フウ…
41: 2016/04/23(土) 14:40:10 ID:x6SncPAc
鳴上(…………)
鳴上(……まさか)
鳴上「もしかして……オルコットも一夏が好きなのか?」
セシリア「!! ……えと…その。 はい」///
鳴上「……そうか」
セシリア「…………」
セシリア「鳴上さん。 『も』とおっしゃるという事は、どなたかに同じ質問を?」
鳴上「……デュノアに」
セシリア「ははあ……その頬はシャルロットさんが?」
鳴上「……少し、言い過ぎて」
42: 2016/04/23(土) 14:46:27 ID:x6SncPAc
鳴上(ひょっとして、一夏と親しそうにしている女子全員……?)
鳴上(……ありうるな)
鳴上「一夏は誰かと付き合っていたりするのか?」
セシリア「わたくしの知る限りでは、いないと思います」
鳴上「……それはそれで凄いな」
鳴上「オルコットは……」
セシリア「はい?」
鳴上「いや、なんでもない」
セシリア「……どうして告白しないのか? ですか?」
鳴上「…!」
43: 2016/04/23(土) 14:47:14 ID:x6SncPAc
セシリア「実を言うと……わたくしにもよく分からないのです」
セシリア「一夏さんをお慕いしているのは間違いありません」
セシリア「わたくしは精一杯淑女として、一夏さんに接していると自信もあります」
セシリア「ですが、何かが足りない様な気がして……」
鳴上「…………」
鳴上「知り合いの話をしてもいいか?」
セシリア「はい。 かまいませんわ」
鳴上「……そいつは普通だった」
鳴上「俺となんら変わらない健全な高校生」
鳴上「だがそいつは家名を継ぐ、という見えない鎖で繋がれていた」
セシリア「…………」
44: 2016/04/23(土) 14:47:49 ID:x6SncPAc
鳴上「しかし……」
鳴上「ある日、唐突にその鎖が外された」
セシリア「…………」
鳴上「俺は、そいつの継ぐべき家名を汚さない努力をそれなりに見てきた」
鳴上「見た目は平静を装っていたが……」
鳴上「落胆しているのは手に取るようにわかった」
セシリア「…………」
鳴上「オルコットも同じじゃないのか?」
セシリア「!?」
鳴上「自分のやってきた事を これまでを」
鳴上「一夏に否定されるかもしれない、と思っているんじゃないのか?」
セシリア「なっ……!」
45: 2016/04/23(土) 14:48:19 ID:x6SncPAc
セシリア「そんな事……そんな事、ありませんわ!!」
セシリア「あなたなどに わたくしの何がわかるとおっしゃるの!?」
鳴上「…………」
セシリア「…………」
セシリア「……不愉快ですわ」
セシリア「失礼します!」 タッ
コッ コッ コッ…
鳴上「…………」
鳴上「……またやってしまった」
46: 2016/04/23(土) 14:49:03 ID:x6SncPAc
IS学園寮・ラウラとシャルの部屋
ラウラ「シャルロット」
ラウラ「そろそろ夕飯の時間だが、一緒に取らないか?」
シャル「…………」
ラウラ「……シャルロット?」
シャル「…………」
シャル「……ごめん、今日はいらない」
シャル「一人で行ってきて」
ラウラ「…………」
ラウラ(……何があったのだ?)
47: 2016/04/23(土) 14:49:44 ID:x6SncPAc
―――――――――――
翌日・昼休み
食堂
一夏「あれ? 今日、セシリアとシャルは?」
箒「セシリアは何か用事があると言っていた」
ラウラ「シャルロットは気分がすぐれないそうだ」
一夏「そうなのか?」
一夏「セシリアはともかく、シャルは元気そうだったのに」
鈴「ふうん」
鳴上「……………」
48: 2016/04/23(土) 14:50:21 ID:x6SncPAc
鳴上「……ごちそうさま」 ガタッ
一夏「? おい悠、まだいいじゃないか」
鳴上「すまない。 ISについて勉強したいんだ」
鳴上「何しろ いきなりの転校だったからな。 しばらく図書室にこもろうと思って」
一夏「……そういえば寮でも勉強していたっけ」
鳴上「できるだけ早く学科に追いつきたくてな」
一夏「わかった……じゃあな」
鳴上「ああ」
ラウラ「…………」
49: 2016/04/23(土) 14:51:00 ID:x6SncPAc
図書室
鳴上「…………」 カリカリ…
ラウラ「鳴上」
鳴上「?」
鳴上「……ボーデヴィッヒ」
ラウラ「少しいいか?」
鳴上「構わない」
ラウラ「昨日からシャルロットの様子がおかしい」
ラウラ「何か知らないか?」
鳴上「……多少は」
鳴上「俺にも責任がある……」
ラウラ「……詳しく話せ」
50: 2016/04/23(土) 14:51:45 ID:x6SncPAc
―――――――――――
鳴上「……という話をしたんだ」
ラウラ「それは……シャルロットを侮辱したのか?」
鳴上「その意図はない」
鳴上「……ただ、感じた事を言ったまでだ」
ラウラ「…………」
鳴上「…………」
ラウラ「…………」
ラウラ「シャルロットは……元気になるか?」
鳴上「乗り越えるべき壁を乗り越えた時に」
ラウラ「……シャルロットしだい、という事か」
51: 2016/04/23(土) 14:52:35 ID:x6SncPAc
ラウラ「ところで鳴上」
ラウラ「私は一夏を嫁にする、と本人に伝えているが」
ラウラ「これは告白になるか?」///
鳴上「……えっ?」
ラウラ「だから、一夏に公衆の面前で『嫁にする』と宣言しているのだが……」///
鳴上「…………」
鳴上「……いろいろツッコミたい事はあるが」
鳴上「おそらく一夏はそう思ってない」
ラウラ「!? そ、そんな!?」
52: 2016/04/23(土) 14:53:18 ID:x6SncPAc
ラウラ「ク、クラリッサが言うには、これで一夏の『はあと』をがっちり掴めると!」
鳴上「……誰?」
ラウラ「私の副官だ」
ラウラ「さらにその時、唇も奪っている!」
ラウラ「そして時折 裸で一夏のベッドにも潜り込んでいるぞ!」 ドヤッ!
鳴上「…………」
鳴上(……この学び舎は、無法地帯か? それとも俺がおかしいのか?)
ラウラ「なあ、鳴上……」
鳴上「落ち着け」
ラウラ「う? ……うむ」
53: 2016/04/23(土) 14:53:58 ID:x6SncPAc
鳴上「…………」
ラウラ「…………」
鳴上「……俺の意見を聞くか?」
ラウラ「す、少し怖いが……聞きたい」
鳴上「…………」
鳴上「はっきり言ってボーデヴィッヒは幼すぎる」
ラウラ「な!? そ、それは仕方ないだろう!?」
ラウラ「発育には個人差というものが……」
鳴上「内面の事を言っているんだ」
ラウラ「……!」
54: 2016/04/23(土) 14:54:51 ID:x6SncPAc
鳴上「俺には小学二年生の従兄弟がいるが」
鳴上「それよりも幼く感じる」
ラウラ「…………」
鳴上「事情があるのか?」
ラウラ「…………」
ラウラ「私は……試験管から生まれ、兵器として育てられた」
鳴上「!」
ラウラ「皆の様な教養など受けていない……」
ラウラ「だから人から聞き、教えられた事でしか自分の気持ちを表現できない」
ラウラ「私には、あれが精一杯なんだ……」
鳴上「…………」
55: 2016/04/23(土) 14:55:22 ID:x6SncPAc
鳴上「俺の知り合いに自分を探し続けた奴がいる」
ラウラ「…………」
鳴上「探して、探して、傷ついて。 それでも探し続けて……」
ラウラ「…………」
鳴上「ある日、俺の前から突然消えた」
ラウラ「氏んだのか?」
鳴上「いや。 2~3日後にひょっこりと帰ってきた」
ラウラ「むう?」
鳴上「……でもな」
56: 2016/04/23(土) 14:56:03 ID:x6SncPAc
鳴上「一回り大きく成長していた」
鳴上「ああ、物理的にって意味じゃない」
鳴上「精神的に……こう、吹っ切れていた、という意味だ」
ラウラ「…………」
ラウラ「何があったのか知りたい」
鳴上「自分を見つけたんだ」
ラウラ「……私をバカにしているのか?」
鳴上「そんな意図はない。 俺が言いたいのは……」
ラウラ「…っ! もういいっ! 聞いた私が愚かだった!」 ダッ
ツカ ツカ ツカ…
鳴上「…………」
鳴上(……またか) ハア…
57: 2016/04/23(土) 14:57:10 ID:x6SncPAc
放課後
IS学園寮・一夏と鳴上の部屋
一夏「明日は休みだし、鈴にもらったタダ券の映画を見に行くつもりだが……」
一夏「悠、一緒にどうだ?」
鳴上「すまない」
鳴上「今週と来週の休日、2組の先生に補習授業をお願いしているんだ」
一夏「……お前ってホント勉強好きだな」
鳴上「明日は雨だし、はかどると思う」
一夏「げっ、そうなのか!?」
鳴上「雨音を聞くと集中出来るんだぞ?」
一夏「いや、そうじゃなくて、明日雨なのかよ!って意味なんだけど……」
58: 2016/04/23(土) 14:57:41 ID:x6SncPAc
―――――――――――
翌日・休日の雨天・朝
2組教室
2組の先生「……という事です。 わかりましたか?」
鳴上「はい。 絶対防御……凄い技術ですね」
2組の先生「そうですね、ここ数年の技術的進歩は」
2組の先生「産業革命以来の歴史的発展、と言われていますから……」
鳴上(俺が今まで習ってきた、科学のレベルを完全に超えている)
2組の先生「それでは次に行きますね」
鳴上「はい」
59: 2016/04/23(土) 14:58:17 ID:x6SncPAc
昼
食堂
鳴上「…………」 モグモグ…
箒「鳴上。 ここ、いいか?」
鳴上「! ……篠ノ之」
鳴上「どうぞ」
箒「鳴上は、部活動に興味あるか?」
鳴上「……? 勧誘か?」
箒「まあな」
箒「この前の一夏との模擬戦を見て、剣道部はどうかと思って」
鳴上「……考えておく」
箒「そうか。 ぜひ、前向きに検討してみてくれ」
60: 2016/04/23(土) 14:59:07 ID:x6SncPAc
鳴上「篠ノ之は今日、部活か」
箒「ああ、そうだ」
箒「鳴上は何をしている?」
鳴上「先生に頼んで補習授業をしてもらってる」
箒「ほう? 熱心だな。 一夏とは大違いだ」 クスッ
箒「一夏は最初、間違いとは言え 教本を捨ててしまってな」
箒「本当にどうしようもない奴で……」
鳴上(……この流れは)
鳴上(やばい……!)
鳴上(しかし……俺は食事を始めたばかり)
鳴上(おまけに時間もまだまだたっぷりある!)
鳴上(だがここは、勇気を振り絞って……!)
61: 2016/04/23(土) 14:59:37 ID:x6SncPAc
箒「そういえば、今日一夏は何をしているのだ?」
鳴上(くっ…! 先手を打たれた!)
鳴上「……映画を見に行く、と言っていた」
箒「な、なに!?」
箒「そんな話、初耳だぞ!? だ、誰と行くつもりか、聞いてないか!?」
鳴上「いや、誘われたんだが……俺は補習があるから断った」
鳴上「中学時代の友達……弾? とかいう奴を誘ったと……」
箒「そ、そうか……」
鳴上(……わかりやすすぎる)
鳴上(あきらめよう……) ハア…
62: 2016/04/23(土) 15:00:33 ID:x6SncPAc
鳴上「……篠ノ之は一夏の事が好きなんだな?」
箒「ななななななっ!? なな、なにを言って!?」///
鳴上「わざとやっているのか?」
箒「そ、そんなわけあるか! お前が変な事を言うからだ!」///
鳴上「落ち着け」
箒「ぐっ…む…」///
箒「…………」///
鳴上「…………」
箒「そ、そんなに」///
箒「バレバレか?」///
鳴上「……かなり」
箒「~~~~~っ!」///
鳴上「落ち着け」
63: 2016/04/23(土) 15:01:07 ID:x6SncPAc
鳴上「もう告白したらどうだ?」
箒「い、いまさら……できない」///
鳴上「なぜ?」
箒「……は、恥ずかしいからに決まっているだろう!?」
鳴上「…………」
鳴上「それでいいのか?」
箒「良いも悪いも……無い」
箒「……臆病なんだ、私は」
鳴上「…………」
64: 2016/04/23(土) 15:01:44 ID:x6SncPAc
鳴上(また……きげんを損ねるかな?)
鳴上(……まあいいか)
鳴上「俺の知り合いに音楽の好きな女の子がいるんだが……」
箒「……? なんだ? いきなり?」
鳴上「とりあえず聞いてくれ」
箒「……む」
鳴上「その娘は、音楽が人を幸せにすると一途に信じていて」
鳴上「吹奏楽部でトロンボーンを使っていた」
箒「…………」
65: 2016/04/23(土) 15:02:19 ID:x6SncPAc
鳴上「本当はフルートを吹きたかったそうだが……」
鳴上「経済的な理由で、元々家にあったトロンボーンを使うようになったそうだ」
箒「…………」
鳴上「小柄なその娘にトロンボーンは大きすぎて扱い辛そうだった」
鳴上「……でも、彼女は必氏に練習した」
鳴上「失敗して笑われる事を恐れながらも……な」
箒「…………」
66: 2016/04/23(土) 15:03:13 ID:x6SncPAc
鳴上「篠ノ之は、一夏の事でどんな努力をした?」
箒「っ!!」
鳴上「一夏に想いを寄せながら……何をした?」
鳴上「ただ、振り向いてくれるのを待っている様だが」
鳴上「自分ではない誰かが一夏のそばにいないか、そればかり気にしている……」
鳴上「滑稽だ」
箒「黙れ!!」 ガタッ!
鳴上「…………」
箒「お前に……お前なんかに! 私の何がわかる!?」
鳴上「…………」
箒「……っ」
箒「くそっ!!」 タッ
ツカ ツカ ツカ…
鳴上(やっぱり怒らせてしまった……) ハア…
67: 2016/04/23(土) 15:03:48 ID:x6SncPAc
夕方
IS学園寮・一夏と鳴上の部屋
鳴上「おかえり」
一夏「おう、ただいま! 悠!」
鳴上「……? なんだ、その荷物?」
一夏「これか? フッフッフッ……じゃーん!」 バッ!
鳴上「プラモデルか」
一夏「ああ! 映画に出てきた、戦闘機や戦艦だ!」 ニカッ
鳴上「……買いすぎじゃないか?」
一夏「ああ……勢いって怖いな……」 ズーン…
一夏「悠も作らないか? 金はいらないから」
鳴上「気が向いたらな」
68: 2016/04/23(土) 15:04:21 ID:x6SncPAc
一夏「おう、待ってるぜ!」
一夏「じゃあさっそく零戦、いってみるか!」 ガサゴソ…
鳴上「…………」
鳴上「……そういえば」
鳴上「明日は鈴と約束があるんじゃなかったか?」
一夏「ああ、そうだけど?」
鳴上「プラモなんて、いつでも作れる」
鳴上「今日は早めに寝た方がいいんじゃないのか?」
一夏「大丈夫だって」
一夏「多少遅くなっても明日くらい凌げるさ♪」
鳴上「…………」
69: 2016/04/23(土) 15:05:21 ID:x6SncPAc
―――――――――――
翌日の休日・朝
IS学園寮・一夏と鳴上の部屋
鳴上「……ふあ」
鳴上(……もう起きないと)
鳴上「そうだ、テレビ」 ピッ
アナタノ、テレビニ、ジカネットタナカ~
ミ、ン、ナ、ノ、ヨクノトモ!
鳴上(…………)
鳴上(今日、欲しいものは無かったな) ピッ
70: 2016/04/23(土) 15:06:25 ID:x6SncPAc
鳴上「おい、一夏」
一夏「…………ん」
鳴上「そろそろ起きないと、鈴との約束 間に合わなくなるぞ?」
一夏「……ん、ふあああっ……」
一夏「もう……そんな時間か……」
鳴上「……三機も作ったのか」
一夏「ん……ついついな」
一夏「零戦作ったら九九艦爆と、九七式艦攻も作って……」
一夏「真珠湾攻撃を再現したくてなあ……」 ボリボリ…
鳴上「一夏……シャワーぐらいは浴びて行けよ?」
一夏「ん~…わかってる」
一夏「目を覚ます為にも浴びるさ……」
鳴上「しっかりしろよ? ……じゃあな」
71: 2016/04/23(土) 15:07:11 ID:x6SncPAc
―――――――――――
昼過ぎ
IS学園・中庭付近のベンチ
鳴上(よし、ISの基本構造と概要はだいたい理解できた) セノビー…
鳴上(後は復習して、よりしっかり覚えよう……)
鳴上(…………)
鳴上(……ん?)
鳴上(あれは……鈴?)
鳴上(一夏はどうしたんだ? それに帰って来るには随分早い)
鳴上(…………)
72: 2016/04/23(土) 15:07:47 ID:x6SncPAc
鈴「あ……悠……」
鳴上「……やあ」
鈴「何してんの?」
鳴上「補習の後、昼を食べてくつろいでいる」
鈴「そっか……そういやお昼まだだっけ」
鳴上「…………」
鳴上「一夏は?」
鈴「!!」 ビクッ
鈴「……もう知らない! あんな奴!!」 ダッ
タッ タッ タッ…
鳴上「…………」
鳴上(一夏、何かやらかしたな)
73: 2016/04/23(土) 15:08:31 ID:x6SncPAc
夕方
IS学園寮・一夏と鳴上の部屋
一夏「……ただいま」
鳴上「おかえり」
鳴上「鈴、先に帰ってきてた」
一夏「……知ってる」
鳴上「何があった?」
一夏「映画見てて……爆睡しちまった」
鳴上「…………」
鳴上「ひょっとして」
鳴上「今まで……か?」
一夏「返す言葉もありません……」
74: 2016/04/23(土) 15:09:17 ID:x6SncPAc
鳴上「今すぐ謝って来い」
一夏「帰ったその足で、真っ先に鈴の部屋に向かったよ」
一夏「……会ってもくれなかった」
鳴上「…………」
鳴上「一夏……」
一夏「ん?」
鳴上「今日の鈴を見て……何か感じた事はあるか?」
一夏「感じた事?」
一夏「そうだな……」
一夏「私服だったな。 そういえば、いつもより可愛かったような……」
一夏「後は……テンションが やたら高かったけ」
一夏「う~ん。 それぐらいかな」
75: 2016/04/23(土) 15:09:52 ID:x6SncPAc
鳴上「……そうか」
一夏「なんだよ、いったい?」
鳴上「俺が見た限りでは、かなり気合が入っていた」
一夏「気合?」
鳴上「まず……リボンが違っていた。 服に合うものを選んだのだろう」
鳴上「化粧も多少濃かったし……いつもはしていない口紅をしていた」
鳴上「きっと、今日という日を楽しみにしていたのだろう」
一夏「…………」
76: 2016/04/23(土) 15:10:50 ID:x6SncPAc
鳴上「一夏は、鈴に対して何か気を使ったか?」
一夏「…………いや」
鳴上「そうか……」
一夏「で、でも、鈴は友達で、幼馴染で……気の許せる相手で……」
鳴上「それに甘えた、と?」
一夏「!! そ、そんなつもりは!」
鳴上「…………」
一夏「…………」
一夏「……もう飯食って、寝る」
鳴上「おやすみ」
77: 2016/04/23(土) 15:11:42 ID:x6SncPAc
―――――――――――
――????――
…………
……ん?
ここは……?
シャル?「あ、やっと目が覚めた?」
え?
シャル?「まだ寝ぼけてるのかな?」 クスクス
78: 2016/04/23(土) 15:12:14 ID:x6SncPAc
キ、キミは……!?
シャル?「うふふ……はじめまして」
シャル?「ボクは君だよ」
!?
シャル?「ボクは一夏の事が好き……」
シャル?「でも、ボクは妾の子……」
シャル?「そんなボクが一夏に告白なんて出来ない」
シャル?「出来るわけがない……」
79: 2016/04/23(土) 15:13:26 ID:x6SncPAc
シャル?「ああ……ボクって、なんて不幸なんだろう……」
……っ!!
シャル?「こんな不幸な星の元に生まれた僕を」
シャル?「きっと一夏は放っておかない……」
…………
シャル?「うふふ……きっと一夏は、僕を選んでくれる」 アハハ…
シャル?「不幸なボクを望んでいる」
シャル?「そうに決まっている……」 アハハ…
……違う
シャル?「違う? なにが違うのかな?」
80: 2016/04/23(土) 15:14:14 ID:x6SncPAc
シャル?「一夏がボクに優しくしてくれるのは、ボクが不幸だからだよ?」
シャル?「ボクから不幸を取ったら……な~んにも無くなっちゃう!」 アハハ…
違う!
シャル?「違わないよ。 だって……」
シャル?「君はボクで、ボクは君だもん」
シャル?「なんだって知ってるよ?」 アハハ…
違う……違う……! 違う!!
ボクはそんな事、思ってなんかいない!!
シャル?「あははっ」
81: 2016/04/23(土) 15:15:13 ID:x6SncPAc
シャル?「そんなこと言って……」
シャル?「誰よりも不幸のぬるま湯が好きなくせに」 クスクス…
シャル?「もっと自分に正直になりなよ!」 アハハ…
ち、違う!! キミなんて……
キミなんて! キミなんて!!
ボクじゃないっ!!
シャル?「…………」
シャル?「ふ…うふふ……」
シャル?「あはははははははははははっ!!」
82: 2016/04/23(土) 15:16:05 ID:x6SncPAc
!!?
シャル?「我は影………真なる我………」
シャル?「これからも……ボクは、汚れ続ける」
や…いや…やめて!!
シャル?「不幸で在り続ける……」
シャル?「一夏をモノにする為に……」 アハハ…
シャル?「ISだって、ウソだって、体だって……」
シャル?「何だって使うんだから!!」 アハハ…!
83: 2016/04/23(土) 15:16:48 ID:x6SncPAc
いやああああああああああああっ!!
84: 2016/04/23(土) 15:17:49 ID:x6SncPAc
朝
IS学園寮・ラウラとシャルの部屋
ラウラ「シャルロット!」
シャル「…ううっ………くうっ」
ラウラ「シャルロット!!」
シャル「……はっ!」
ラウラ「大丈夫か? ずいぶん うなされていたぞ?」
シャル「夢……」
ラウラ「……シャルロット?」
シャル「あ、ごめん……ラウラ」
シャル「……酷い夢を……見ちゃって」 フウ…
ラウラ「そうか……」
85: 2016/04/23(土) 15:18:30 ID:x6SncPAc
授業中
1組
シャル(…………)
シャル(鳴上くんのせいだ)
シャル(鳴上くんが あんなこと言うから……)
シャル(…………)
シャル(ボクは……あんな事)
シャル(望んでなんか……)
シャル(…………)
86: 2016/04/23(土) 15:19:08 ID:x6SncPAc
昼休み
図書室
テク テク テク…
シャル「…………」
シャル「鳴上くん」
鳴上「! ……デュノア」
シャル「一夏に聞いて……多分ここだろうって」
シャル「今、いいかな?」
鳴上「かまわない」
87: 2016/04/23(土) 15:19:52 ID:x6SncPAc
シャル「この前はごめん……ひっぱたいちゃって」
鳴上「俺も言いすぎた」
シャル「……うん」
シャル「…………」
シャル「それで、ね」
シャル「この前の……『ある人』の話の続きを ぜひ聞きたいんだ」
鳴上「…………」
鳴上「わかった」
鳴上「俺はどこまで話した?」
シャル「自分が可哀相だと、酔っている事に気づいたって……」
鳴上「…………」
88: 2016/04/23(土) 15:20:47 ID:x6SncPAc
鳴上「そこからそいつは、自分を見つめ直す事を始めた」
鳴上「これまで自分の意思で取り組んできた事も」
鳴上「実は、単なるごまかしでやってきた部分があった事に気が付いた」
シャル「…………」
鳴上「……俺は、そいつに言った」
鳴上「それがお前のすべてじゃない」
鳴上「それを含めたすべてが、お前だ、と」
シャル「……!」
鳴上「俺の言葉がきっかけになったかは分からないが……」
鳴上「そいつは少しずつ自分を理解して行くつもりだ、と言っていた」
シャル「……そう」
89: 2016/04/23(土) 15:21:32 ID:x6SncPAc
シャル「今、その人はどうしてるの?」
鳴上「以前より明るくなって、毎日が楽しいと言ってる」 クスッ
シャル「……そっか」
シャル「ボクも……その人みたいになれるかな?」
鳴上「…………」
鳴上「デュノアが あいつみたいになることは無い」
鳴上「デュノアが デュノアのやり方で、デュノア自身と向き合えばいい」
シャル「ボクが……ボクのやり方で……」
90: 2016/04/23(土) 15:22:05 ID:x6SncPAc
鳴上「…………」
鳴上「……そいつが、ポツリとつぶやいた言葉がある」
鳴上「自分と向き合うって難しいな……と」
シャル「……!」
鳴上「デュノアだけじゃない」
鳴上「俺も、そいつも、一夏も……」
鳴上「この学園にいる一人一人も、みんな」
鳴上「自分と向き合うことは難しい事なんだと思う」
91: 2016/04/23(土) 15:22:51 ID:x6SncPAc
シャル「…………」
シャル「…………」
シャル「…………」 ホ口リ
シャル「……あれ?」
鳴上「…………」
シャル「どうして……ボク」
シャル「泣いてるの?」
シャル「ふふ……変なの」 クスッ
鳴上「そんな事はない」 ニコ
92: 2016/04/23(土) 15:23:26 ID:x6SncPAc
シャル「…………」
シャル「ありがとう、鳴上くん。 ボク……やってみるよ」
シャル「自分に向き合ってみる」
シャル「でも良かったら……また、お話 聞かせてくれるかな?」
鳴上「もちろん」
シャル「ふふっ」
シャル「じゃ……またね」
鳴上(デュノアの事が少し、わかった気がする……)
鳴上(デュノアの表情はどこか寂しげだが、目に輝きが灯った)
鳴上(どうやら、デュノアの力になれた様だ……)
93: 2016/04/23(土) 15:24:04 ID:x6SncPAc
―――――――――――
放課後・屋上
鈴「…………」
鈴「…………はあ」
鳴上「……鈴?」
鈴「………?」
鈴「悠……」
94: 2016/04/23(土) 15:24:57 ID:x6SncPAc
鳴上「一夏から、おおよその事は聞いた」
鳴上「とても反省している」
鈴「…………」
鳴上「会ってやったらどうだ?」
鈴「…………」
鳴上「一夏の事が好きなんだろう?」
鈴「!!」/// ドキッ
鈴「…………」
鈴「もう……分かんない」
鈴「あたしは…… 一夏の事、好き……だと思う」
鈴「でも…… 一夏は……」
鳴上「…………」
95: 2016/04/23(土) 15:26:05 ID:x6SncPAc
鳴上「鈴は一夏に気持ちを伝えたのか?」
鈴「……ううん」
鳴上「一夏が告白するのを待っている?」
鈴「あの超絶 朴念仁が、するわけ無いじゃない!」
鳴上「俺もそう思う」 クスッ
鳴上「それだけ一夏の事を理解しているなら」
鳴上「後は、鈴しだいじゃないのか?」
鈴「…………」
鈴「あたしだって、そう思うわよ……」
鈴「昨日だって……そのつもりだった」
鳴上「…………」
96: 2016/04/23(土) 15:26:36 ID:x6SncPAc
鈴「いい雰囲気になったら、自然な感じで……こ、告白しようって……」///
鳴上「…………」
鈴「……でも一夏は、いつも通りの一夏だった」
鈴「あたしなんか いろいろオシャレして、昨日をすごく楽しみにしてたのに」
鈴「一夏は、一夏のままで、あたしだけ舞い上がって……」
鈴「なんだかバカバカしく思えちゃって……」
鳴上(一夏に軽く殺意を覚えるな……)
鳴上「でも……伝えるべき事は伝えないと」
鈴「今は……いい」
鳴上「……そうか」
97: 2016/04/23(土) 15:27:14 ID:x6SncPAc
鳴上「俺の親戚に……」
鈴「……?」
鳴上「いや、家族に」
鳴上「不器用な生き方をしていた人がいる」
鈴「うん……」
鳴上「その人には小学生の一人娘がいたけど……」
鳴上「奥さんを……少し前に無くしたばかりだった」
鈴「…………」
98: 2016/04/23(土) 15:28:06 ID:x6SncPAc
鳴上「突然に家族を亡くしたその人は……」
鳴上「娘さんをないがしろにしてた訳じゃないけど」
鳴上「仕事の事もあって、どこか遠ざけていた」
鈴「…………」
鳴上「ある日。 俺は その女の子にたずねられた」
鳴上「『本当のお父さんって、何?』って……」
鈴「…………」
鳴上「俺は……とっさに答える事ができなかった」
鳴上「血が繋がってるって事だよ、と言うと」
鳴上「不思議そうな顔をされた」
鈴「…………」
99: 2016/04/23(土) 15:28:37 ID:x6SncPAc
鳴上「鈴も同じじゃないかな?」
鳴上「俺も驚いたけど、あの超絶 朴念仁に」
鳴上「一夏にわからせる為には、はっきり言う事が一番だと思う」
鈴「…………」
鈴「……簡単に言ってくれるわね」
鳴上「…………」
鈴「今さらって感じもあるし、一夏の幼馴染って『友達』あつかいだし……」
鳴上「…………」
100: 2016/04/23(土) 15:29:12 ID:x6SncPAc
鈴「……でも」
鈴「その通り……だね」 クスッ
鳴上「鈴のペースでやっていけばいい」
鳴上「あせる事は……」
鈴「それがあるの」
鈴「悠も見たでしょ? あのそうそうたるライバル達を」
鳴上「……確かに」
鈴「ふふ。 とりあえず、一夏に会ってくる」
鈴「まずはそれから、だよね」
鳴上「それがいい」
101: 2016/04/23(土) 15:29:46 ID:x6SncPAc
鈴「……ところで、さっきの話に出てきた親子だけど」
鈴「その後……どうなったの?」
鳴上「いろいろあったけど……」
鳴上「俺もふくめて『家族』になれた」 ニコ
鈴「そっか……」
鈴「良かった」 ホッ…
鈴「じゃ、行って来るね!」 ニコ
鳴上「ああ……」
鳴上(鈴の声や表情は明るい)
鳴上(鈴の力になれた様だ)
102: 2016/04/23(土) 15:31:12 ID:x6SncPAc
―――――――――――
夜
IS学園寮・ラウラとシャルの部屋
ラウラ「シャルロット」
シャル「ん?」
ラウラ「ずいぶん機嫌が良い様だが、何かあったのか?」
シャル「う~ん……どうだろう? 良い事って言えるのかな……?」
ラウラ「?」
シャル「ボクは、嫌な自分がいる事に……」
シャル「ううん……そういう自分もボクだって、認めようって、思える様になったの」
ラウラ「……!!」
103: 2016/04/23(土) 15:31:46 ID:x6SncPAc
ラウラ「それは……」
ラウラ「自分を見つけた、という事か?」
シャル「うん。 ある意味ではそうかも」
ラウラ「ど、どうやって見つけたのだ!?」
シャル「……ラウラ?」
ラウラ「あ……す、すまない」
シャル「…………」
シャル「ボクだけで見つけたわけじゃないよ……」
シャル「鳴上くんと話をして気づけたの」
ラウラ「鳴上に?」
シャル「うん」
104: 2016/04/23(土) 15:32:22 ID:x6SncPAc
IS学園寮・一夏と鳴上の部屋
一夏「……悠」
鳴上「ん?」
一夏「鈴の事、ありがとうな」
一夏「おかげで仲直り出来た」
鳴上「そうか。 良かった」
一夏「なんかお前って、ホント凄いな」
一夏「その落ち着き様は とても同級生とは思えないよ」
鳴上「……そうかな」
一夏「ああ、まるで……」
105: 2016/04/23(土) 15:32:55 ID:x6SncPAc
コン コン
ラウラ「……鳴上、居るか?」
ラウラ「話がしたい」
一夏「ラウラ? どうしたんだ? もうすぐ消灯時間だぞ?」
鳴上「明日じゃダメなのか?」
ラウラ「そこをなんとか、頼む」
一夏「…………」
鳴上「…………」
106: 2016/04/23(土) 15:33:26 ID:x6SncPAc
どこかの個室
鳴上「それで、何の話を?」
ラウラ「うむ、その……」
ラウラ「シャルロットが自分を見つけた、と言っていて……」
ラウラ「それは……お前と話をしたからだと聞いた」
鳴上「…………」
ラウラ「……私は、ずっと気になっていた」
ラウラ「自分を探す?」
ラウラ「どういう意味だ?」
ラウラ「それじゃあ、今、ここに居る私は、何なんだ?」
鳴上「…………」
107: 2016/04/23(土) 15:34:10 ID:x6SncPAc
ラウラ「鳴上に言われてから……何がなんだか分からなくなって」
ラウラ「………分からなくて……怖くて……」
鳴上「…………」
鳴上「ボーデヴィッヒ」
ラウラ「! な、なんだ?」
鳴上「この前、俺はある人物が『自分』を見つけた、と言ったが……」
鳴上「あれは正確じゃない」
鳴上「正しくは……『自分の出生の秘密』を見つけた、だ」
ラウラ「……!」
鳴上「そいつの為に本当の事は話せないが……」
鳴上「そうだな……」
ラウラ「…………」
108: 2016/04/23(土) 15:34:57 ID:x6SncPAc
鳴上「ボーデヴィッヒは、日本の……いや」
鳴上「第二次世界大戦での日本の事を知っているか?」
ラウラ「……我がドイツ共々敗戦国だ」
鳴上「確かにそうだが、一つ違う事がある」
鳴上「原子爆弾を使用された」
ラウラ「…………」
鳴上「原爆はただの一発で軍人も民間人も、男も女も、大人も子供も」
鳴上「大勢頃した」
ラウラ「…………」
鳴上「もし……もし、だ」
109: 2016/04/23(土) 15:35:46 ID:x6SncPAc
鳴上「その原爆の発射スイッチを自分の親が押してたと仮定して」
鳴上「今、目の前で仲良く話している人物が、原爆で親を亡くしていたら」
鳴上「ボーデヴィッヒはどんな気持ちになる?」
ラウラ「……私に親はいない」
鳴上「……じゃあ尊敬できる人は?」
ラウラ「一人いる」
鳴上「その人がスイッチを押した、と仮定してみてくれ」
ラウラ(教官が……殺戮兵器のスイッチを……)
ラウラ(……そして、目の前の人の血縁者が、その犠牲者)
ラウラ(…………)
ラウラ(…………)
110: 2016/04/23(土) 15:36:23 ID:x6SncPAc
ラウラ「……複雑な気持ちになった」
鳴上「それだけ?」
ラウラ「だって……そうだろう?」
ラウラ「確かに忌むべき行為だが……自分の責任ではない」
鳴上「……相手は、そう思ってくれるだろうか?」
ラウラ「!!」
ラウラ「そ、それは……!」
ラウラ「…………」
111: 2016/04/23(土) 15:37:01 ID:x6SncPAc
鳴上「俺の話のそいつも、そういう悩みを抱え込んで」
鳴上「一時……姿を消したのだと思う」
ラウラ「…………」
鳴上「そいつが帰って来た時」
鳴上「自分の出生の秘密を明かしてくれた」
鳴上「その上で……こう聞いてきた」
ラウラ「…………」
鳴上「『みんなのそばに居てもいい?』って……」
ラウラ「…………」
鳴上「…………」
ラウラ「…………?」
112: 2016/04/23(土) 15:37:57 ID:x6SncPAc
鳴上「…………」
ラウラ「お、おい、鳴上! ど、どうして黙る!?」
ラウラ「……ま、まさか」
鳴上「俺も含めて、みんな『あたりまえだ!』って言った」 ニコ
ラウラ「!!」
ラウラ「そうか……良かった」 ホッ…
ラウラ「って鳴上! 不必要に間を空けるな!」 プンプン!
鳴上「ハハハ……」
113: 2016/04/23(土) 15:38:48 ID:x6SncPAc
ラウラ「そいつは今、どうしてる?」
鳴上「元気に働いて、お金を貯めていると言っていた」
鳴上「何に使うつもりか聞いてみたけど、話してくれなかったな」
ラウラ「そうか……いつか会ってみたいな」
鳴上「きっと喜ぶ。 ボーデヴィッヒみたいな可愛い女の子が」
鳴上「あいつは大好きだからな」 クスッ
ラウラ「か、可愛い!? 私が!?」///
鳴上「もちろん」
114: 2016/04/23(土) 15:39:28 ID:x6SncPAc
ラウラ「結局……自分を探すにはどうしたらいい?」
鳴上「…………」
鳴上「その前に」
鳴上「ボーデヴィッヒは一夏の事をどんな風に『好き』なんだ?」
ラウラ「……え?」
鳴上「『好き』にもいろいろある」
鳴上「友達として『好き』、異性として『好き』、家族として『好き』……」
ラウラ「……そ、それは」
鳴上「答えなくていい。 考えてみるんだ」
115: 2016/04/23(土) 15:39:58 ID:x6SncPAc
鳴上「誰かに意見を聞くのもいいが、あくまで参考程度にしておけ」
鳴上「自分で考えて、考えて、考え抜いて、はじめて」
鳴上「自分に……いや」
鳴上「自分の一部に会えると……俺は思う」
ラウラ「…………」
鳴上「…………」
鳴上「……あまり足しにならないか?」
ラウラ「…………」
ラウラ「……いや」
ラウラ「そんな事はない」 ニコ
鳴上「そうか」 ニコ
116: 2016/04/23(土) 15:40:33 ID:x6SncPAc
ラウラ「ありがとう、鳴上」
ラウラ「私は答えを出してみる」
ラウラ「手間をかけた……」
鳴上「またな」
ラウラ「ああ。 またな」 ニコ
鳴上(突然だったボーデヴィッヒの訪問……)
鳴上(思いがけず彼女を少し知る事ができた)
鳴上(どうやら、彼女の力になれた様だ……)
117: 2016/04/23(土) 15:41:27 ID:x6SncPAc
IS学園寮・一夏と鳴上の部屋
一夏「……お帰り」
鳴上「……ただいま」
一夏「……何を話したんだ?」
鳴上「……悩みを相談された」
一夏「ど、どんな?」
鳴上「それは話せないが……俺なりのやり方を伝えた」
一夏「そうか……」
鳴上「そろそろ寝よう」
118: 2016/04/23(土) 15:42:01 ID:x6SncPAc
―――――――――――
翌日の昼休み
食堂
箒「…………」
箒「………む」
箒(鳴上……) チッ…
箒(…………)
箒(仕方ない、また夕食に一夏を誘うとしよう……) ハア…
箒(……鳴上め) クルッ
119: 2016/04/23(土) 15:42:32 ID:x6SncPAc
セシリア「…………」
セシリア「………あ」
セシリア(鳴上さん……)
セシリア(…………)
セシリア(あまり顔を合わせたくありませんわ……)
セシリア「………はあ」 クルッ
120: 2016/04/23(土) 15:43:03 ID:x6SncPAc
購買部
箒「おにぎり弁当をくれ」
セシリア「サンドイッチセットを……」
箒・セシ「!」
箒「セシリア?」
セシリア「箒さん?」
121: 2016/04/23(土) 15:43:47 ID:x6SncPAc
IS学園・中庭付近のベンチ
箒「…………」 モクモク…
セシリア「…………」 モクモク…
箒「…………」 モクモク…
セシリア「…………」 モクモク…
箒「……何かしゃべったらどうだ? セシリア」
セシリア「……箒さんこそ」
箒「いい天気、だな」
セシリア「そうですわね」
箒「…………」 モクモク…
セシリア「…………」 モクモク…
箒・セシ(か、会話が続かない…)
122: 2016/04/23(土) 15:44:25 ID:x6SncPAc
セシリア「はあ……」
セシリア「最近、一夏さんとお話しておりませんわ……」
箒「……! セシリアもか?」
セシリア「……!? 箒さんも?」
箒・セシ「…………」
箒「実は、鳴上と……その、顔を合わせたくなくて」
セシリア「……! ……わたくしもですわ」
箒「セシリアも? ……という事は」
箒「鳴上に何か言われたのか?」
セシリア「!!」
123: 2016/04/23(土) 15:45:11 ID:x6SncPAc
セシリア「そ、それは、その……」
セシリア「…………」
セシリア「……箒さんも?」
箒「……ぐっ!! ……その」
箒・セシ「…………」
箒「ここは……だな、」
箒「奴の事を知る上でも お互いが持っている情報を交換すべきではないだろうか?」
セシリア「そ、そうですわね」
箒「で、では、セシリアは、鳴上に何を言われたのだ?」
セシリア「なっ!? ず、ずるいですわ! 箒さん!」
箒「わ、私も必ず言う!」
セシリア「くっ……約束ですわよ……」
124: 2016/04/23(土) 15:45:51 ID:x6SncPAc
―――――――――――
箒「………………」
セシリア「………………」
箒(鳴上 悠……何者なんだ)
セシリア(どうして数日前に転校してきたばかりのお人が……)
箒(こうも的確に心を見透かせるのだ???)
セシリア(わけがわかりませんわ……)
125: 2016/04/23(土) 15:46:28 ID:x6SncPAc
箒「……セシリア」
セシリア「なんですの……?」
箒「お前の目から見て」
箒「鳴上の私の評価は正しいと思うか?」
セシリア「……同じ事を わたくしもお聞きしたいですわ」
箒「…………」
セシリア「…………」
126: 2016/04/23(土) 15:47:09 ID:x6SncPAc
箒「……やっぱりいい」
セシリア「……わたくしも」
セシリア「…………」
セシリア「わたくし、放課後に鳴上さんと会ってきますわ」
箒「!」
箒「……そ、そうか」
箒「わ、私は……どうするかな」
箒「…………」
箒「良かったら……その、経緯を話してくれ」
セシリア「……はい」
127: 2016/04/23(土) 15:50:05 ID:x6SncPAc
放課後・屋上
鳴上「オルコット……」
セシリア「あ……鳴上さん」
鳴上「話って?」
セシリア「……えと」
セシリア「前に、談話室でお話しした『お知り合い』の方は」
セシリア「どうなったのか?と思いまして……」
鳴上「…………」
鳴上「俺はどこまで話した?」
セシリア「家名を継ぐ継がないで、ショックを受けていた、と……」
128: 2016/04/23(土) 15:50:47 ID:x6SncPAc
鳴上「……あの後、あいつは」
鳴上「何もかもに やる気を無くした」
セシリア「…………」
鳴上「俺も、友達も」
鳴上「見ていて辛かったが……」
鳴上「見守る事しか出来ずにいた」
セシリア「…………」
鳴上「ある日、俺達は少し強引にバスケの試合に誘った」
鳴上「汗を流す内にあいつは段々、目に輝きを戻して行った……が」
セシリア「……そ、それで?」
鳴上「…………」
129: 2016/04/23(土) 15:51:26 ID:x6SncPAc
鳴上「あいつは……自分の価値を無くす恐怖感に抗えず」
鳴上「……力尽きた」
セシリア「そんな!」
鳴上「でも」
セシリア「!」
鳴上「ひとしきり泣いた後……」
鳴上「あいつは自分で立ち上がったよ」
鳴上「はにかみながら『お前達のおかげだ』と、言ってくれたがな」 クスッ
セシリア「………ホッ」
130: 2016/04/23(土) 15:52:03 ID:x6SncPAc
セシリア「その方は今、どうされていますか?」
鳴上「正式に家名を継ぐ事になった、と連絡があって」
鳴上「この前、十も年の離れた人と お見合いをさせられた、と嘆いていた」 クスッ
セシリア「まあ……」 クスッ
セシリア「…………」
セシリア「鳴上さん」
セシリア「わたくし、なんだか分かった気がします」
鳴上「…………」
セシリア「わたくしは…… 一夏さんを恐れてもいるのですね」
131: 2016/04/23(土) 15:52:46 ID:x6SncPAc
鳴上「…………」
セシリア「わたくしの『好き』は、単なる押し付けで…」
セシリア「それを一夏さんに拒絶されるかもしれないと」
セシリア「心のどこかで恐れている……と、鳴上さんは言いたかったのですね」
鳴上「…………」
鳴上「もう大丈夫だ」
セシリア「えっ?」
鳴上「それに気づけたのなら」
鳴上「オルコットは一夏に気持ちを告げられるだろう」 ニコ
セシリア「鳴上さん……」
132: 2016/04/23(土) 15:53:58 ID:x6SncPAc
セシリア「わたくし、頑張ってみますね」
セシリア「ライバルは多いですけど……負けませんわ!」 ニコ
鳴上「そうか……」
鳴上「実るといいな」 クスッ
セシリア「はい!」/// ニコ
鳴上(オルコットの表情は 実に晴れやかで曇りが無い)
鳴上(どうやら、オルコットの力になれた様だ……)
133: 2016/04/23(土) 15:54:34 ID:x6SncPAc
夜
IS学園寮・談話室
セシリア「あ、箒さん!」
箒「……? セシリア?」
箒(な、なんだ? 昼間とは、まるで別人だ……)
セシリア「お待ちしておりました」 ニコ
箒「…………」
―――――――――――
セシリア「……ですので、箒さんも鳴上さんに会うべきですわ」
箒「…………」
セシリア「……箒さん?」
箒「!? あ、いや……」
箒「……そうだな」
134: 2016/04/23(土) 15:55:05 ID:x6SncPAc
箒「なあ、セシリア」
セシリア「はい?」
箒「…………」
箒「い、いや、何でもない」
セシリア「変な箒さん」 クスッ
箒(……今のセシリア)
箒(女の私から見ても魅力的だ……)
箒(…………)
箒(鳴上の話を聞くだけで、こうも変われるものなのか?)
135: 2016/04/23(土) 15:55:52 ID:x6SncPAc
―――――――――――
数日後
1組2組合同実習
千冬「それでは、模擬戦を行ってもらう」
千冬「篠ノ之、鳴上、前に」
箒「! はい!」
鳴上「はい」
千冬(鳴上は、このところ格段に腕を上げた、と、2組の担任に聞いた)
千冬(どの程度か見てみよう)
136: 2016/04/23(土) 15:56:38 ID:x6SncPAc
箒(……鳴上か)
箒(結局……あれから一夏とあまり話せていない)
鳴上「…………」 スチャ…(メガネ装備)
鳴上「イザナギッ!」 スウウウウウンッ!!
箒「紅椿!」 スウウウウンッ!!
箒(…………)
箒(……お前の)
箒(せいだ!!)
箒「……はああああああっ!!」 ゴウッ!!
鳴上「!?」
137: 2016/04/23(土) 15:57:30 ID:x6SncPAc
ドガアッ!!
千冬「!?」
一夏「おい、箒!?」
セシリア「何の前置きも無く、いきなり攻撃するなんて……!」
シャル「鳴上くん!!」
ラウラ「いや、大丈夫だ! あれを見ろ!」
鈴「すごい……! 箒の多角的な複数の攻撃を なんとか受けきった!!」
ガギッ! グバッ! ガゴッ!
鳴上「くっ……! ペルソナッ!」 ポウ ポウ
138: 2016/04/23(土) 15:58:19 ID:x6SncPAc
箒「あまいっ!」 ズバッ! ズバッ!
鳴上(!! 炸裂する前に すべて切り伏せられた!!)
箒「はああああああっ!!」
ドガガガガガガッ!!
鳴上「ぐあああああっ!!」
箒(お前が……! お前なんて、居なければっ!)
箒「くらええええっ!!」
鳴上「ペルソナ!!」 ポポウッ!
箒「あまいと言っ」
ブゥシュウウウウウ!!
箒「!?」
139: 2016/04/23(土) 15:59:10 ID:x6SncPAc
鈴「上手い!」
鈴「あえて、ほぼ射出と同時に炸裂させた!」
セシリア「でも、あれは……スモーク・グレネード??」
シャル「……いや!」
ラウラ「箒の右腕が凍っている!?」
一夏「なんだ!? あの爆弾は!?」
千冬(圧縮した液体窒素爆弾……の様なものか?)
140: 2016/04/23(土) 15:59:51 ID:x6SncPAc
箒「くっ……! こんなものでっ!」 バリンッ!
鳴上「ペルソナ!!」 ポウ ポウ
箒「!!」
バリバリバリバリバリッ!!
箒「あああああああああっ!!」
鳴上「はあああああああっ!」
箒「……っ! 負けるかああああああああっ!!」
141: 2016/04/23(土) 16:00:31 ID:x6SncPAc
ドガアッ!!
142: 2016/04/23(土) 16:01:13 ID:x6SncPAc
―――――――――――
昼休み
医療室
箒「…………」
箒「…………?」
箒「……ここは」
一夏「気が付いたか? 箒」
箒「!」
箒「一夏……?」
箒「…………」
箒「私は、負けたのか?」
143: 2016/04/23(土) 16:01:47 ID:x6SncPAc
一夏「ああ……それもかなり一方的にな」
一夏「どうしたんだよ、箒? らしくないぜ?」
箒「…………」
一夏「千冬姉も怒ってた……と言うより、あきれてた」
一夏「それと……悠から伝言」
箒「?」
一夏「すまない……って」
箒「……そうか」
一夏「…………」
一夏「腹、減ってないか?」
箒「……いや」
144: 2016/04/23(土) 16:02:18 ID:x6SncPAc
一夏「そうか……じゃ、腹減ったら一緒に食おうぜ」 ニコ
一夏「サンドイッチを買っておいたから」
箒「一夏?」
一夏「いいだろ? しばらく箒とロクに話してないし、さ」
箒「一夏……」
箒「…………」
箒「一夏、ありがとう」
箒「……でも」
箒「今は……ひとりになりたい」
一夏「…………」
一夏「……そうか」
145: 2016/04/23(土) 16:02:55 ID:x6SncPAc
一夏「わかった、箒」
箒「……すまない、一夏」
一夏「いいさ……」 クスッ
一夏「昼、ちゃんと食えよ?」
箒「ああ……」
ガラガラッ… ガラガラッ… パタン
箒「…………」
箒「……完全に」
箒「私の負け……だな」
箒「…………」
箒「……ふ……うぐ」 ポロッ
箒「………ううっ」 ポロ ポロ
箒「うっ…うっ…」 ポロ ポロ
146: 2016/04/23(土) 16:03:39 ID:x6SncPAc
―――――――――――
放課後
図書室
鳴上「…………」 カリカリ…
鳴上「…………」 カリカリ…
鳴上「……ふう」
鳴上「あ……もうこんな時間か」
鳴上(……集中しすぎた)
147: 2016/04/23(土) 16:04:51 ID:x6SncPAc
箒「……鳴上」
鳴上「! 篠ノ之……」
鳴上「体は大丈夫か?」
箒「問題ない」
鳴上「そうか……すまなかったな」
箒「いや、それは仕方ない」
箒「みんなの……千冬さんの静止すら振り切って」
箒「私は……気絶するまで、お前への攻撃を止めなかった」
箒「今、千冬さんにこってり絞られてきた所だ」 クスッ…
鳴上「…………」
148: 2016/04/23(土) 16:06:07 ID:x6SncPAc
箒「よければ話がしたいのだが、いいか?」
鳴上「ああ」
箒「剣道部の……入部は考えてくれているだろうか?」
鳴上「……今はちょっと」
箒「そ、そうか……」
鳴上「…………」
箒「……そ、その、あの時の話で出てきた、女の子の話の続きを」
箒「聞きたいのだが……構わないか?」
鳴上「構わない」
149: 2016/04/23(土) 16:06:56 ID:x6SncPAc
鳴上「……俺は、どこまで話しただろうか?」
箒「音楽が好きで、必氏に稽古している、と……」
鳴上「……俺も彼女の練習に付き添いながら、部活動の日々を送っていた」
鳴上「そんな時」
鳴上「演奏会に向けて反復訓練をしていたさなか、彼女にチャンスが巡ってきた」
箒「…………」
鳴上「彼女と同じ、トロンボーン奏者が怪我をしたんだ」
箒「………!」
鳴上「そのお陰で……と言うと語弊があるが、抜擢された」
鳴上「でも……彼女は喜ぶよりも ちゃんと演奏できるかどうかの不安の方が」
鳴上「大きかった」
箒「…………」
150: 2016/04/23(土) 16:08:30 ID:x6SncPAc
鳴上「以前にも増して、練習を繰り返す彼女……」
鳴上「……けど、正直、公平な目で見て、彼女の演奏は」
鳴上「まだまだつたなかった」
箒「…………」
鳴上「いよいよ演奏会が数日後に迫ったある日」
鳴上「先のくだりで脱落したトロンボーン奏者が、怪我を治して戻ってきた」
箒「!!」
151: 2016/04/23(土) 16:09:12 ID:x6SncPAc
鳴上「……吹奏楽部の誰かが言った」
鳴上「彼女ではなく、そいつに戻そう、と」
箒「……なっ」
鳴上「俺は……彼女にやらせてやってくれ、と、皆に頼んだ」
箒「……!」
鳴上「…………」
鳴上「……しかし、元に戻した方がいい、と」
鳴上「他ならぬ彼女が言い出した」
箒「……えっ」
152: 2016/04/23(土) 16:09:50 ID:x6SncPAc
鳴上「彼女は、俺の気持ちは嬉しいが自分の演奏力は良く分かっている」
鳴上「今の自分の演奏では、きっとみんなを幸せな気持ちに出来ない」
鳴上「だから、これでよかったのだと……」
箒「そ、そんな!」
鳴上「…………」
鳴上「でも、そう言ったあと泣き出した」
鳴上「泣きながら悔しい、悔しいと言う」
鳴上「才能の無さ、練習不足……とにかく自分の不甲斐なさが悔しい、と」
箒「…………」
鳴上「と、同時に」
鳴上「自分がどれだけ音楽が好きなのかも良く分かった、と言っていた」
箒「…………」
153: 2016/04/23(土) 16:10:31 ID:x6SncPAc
箒「…………」
箒「……鳴上」
鳴上「……うん」
箒「経緯は違うが……今の私も彼女と同じ気持ちだ」
鳴上「…………」
箒「私は……お前の言う通り、ただ待ってただけだ」
箒「私が一夏の事を好きだから、一夏も私の事が好きだと」
箒「根拠なく……そう思っていた」
鳴上「…………」
154: 2016/04/23(土) 16:11:02 ID:x6SncPAc
箒「だから、一夏の周りにたかるハエを払えばいい」
箒「そんな事を心のどこかで考えていた」
箒「……自意識過剰にも程がある」
鳴上「…………」
箒「ありがとう、鳴上」
箒「お前のおかげで、私は大事な事に気づけた……と思う」
箒「…………」
箒「もっと早く、お前と話をすれば良かった」
鳴上「そうか……」
155: 2016/04/23(土) 16:11:43 ID:x6SncPAc
箒「……時に」
箒「今、その女の子は どうしているだろうか?」
鳴上「変わらずトロンボーン奏者として頑張ってる」
鳴上「今度の演奏会で、正式にメンバーとして加わっているそうだ」 ニコ
箒「そうか!」
箒「良かった……」 ホッ…
箒「私も負けてられないな」
鳴上「あまり力まない方が……」
箒「ふ……わかっている」 ニコ
156: 2016/04/23(土) 16:12:54 ID:x6SncPAc
箒「そういえば、鳴上は どんな楽器を使っていたのだ?」
鳴上「トランペットを」
箒「ほう? いつか聞いてみたいな」
鳴上「そういえば……ここの所吹いていないな」
ハハハ…
鳴上(篠ノ之の笑顔は、さわやかでまぶしい)
鳴上(どうやら篠ノ之の力になれた様だ……)
157: 2016/04/23(土) 17:07:20 ID:x6SncPAc
―――――――――――
数日後・昼休み
食堂
一夏「…………」
鈴「どうしたの? 一夏?」
一夏「いや、なんかさ、このメンバー全員集まるのって、久しぶりの様な気がして」
箒「私がしばらく居なかったからな……」
セシリア「まあ、いろいろありまして……ね? 鳴上さん」 ニコ
鳴上(どうしてそこで俺に振る……)
鳴上「そ、そうだな……」
158: 2016/04/23(土) 17:08:04 ID:x6SncPAc
鳴上「そういえば、もうすぐタッグマッチ・トーナメントがあると聞いたが……」
鳴上「みんなはもう、組む相手を決めたのか?」
ラウラ「前回……私には苦い思い出だ」 シュン…
シャル「ああ……例のトーナメント戦ね。 ボクはまだだよ?」
一夏「そっか。 じゃあまた俺と組むか? シャル?」
シャル「……ううん、今回は遠慮しておくかな」
一夏「えっ?」
159: 2016/04/23(土) 17:08:38 ID:x6SncPAc
箒「…………」
セシリア「…………」
鈴「…………」
ラウラ「…………」
鳴上「…………」
シャル「良かったら、ボクは鳴上くんと組みたいんだけど……どう?」
鳴上「えっ?」
一夏「…………」
鈴「ちょっと待って、私も悠と組みたいの」
一夏「……鈴!?」
箒「……そうか。 ではラウラ、どうだろう? 私とまた組まないか?」
160: 2016/04/23(土) 17:09:18 ID:x6SncPAc
ラウラ「!?」
ラウラ「……いいのか?」
ラウラ「私は前回同様、自動抽選に任せようと思っていたのだが」
一夏(箒にラウラまで……)
セシリア「では、一夏さん。 わたくしと組んでいただけますか?」
一夏「!!」
一夏「セ、セシリア! おう! よろしくな!」 ウルウル…
シャル「鳴上くん、どうする?」
鈴「別に恨んだりしないから、好きに選んでいいわよ」
鳴上「…………」
161: 2016/04/23(土) 17:09:49 ID:x6SncPAc
鳴上「……鈴、頼めるか?」
鈴「うん! よろしくね!」
シャル「あらら……振られちゃったか」
鳴上「……すまない」
シャル「いいよ。 鈴が言ってた通り 恨みっこなし、だから」 ニコ
シャル「戦い方は他にもあるよ」
一夏「…………」
162: 2016/04/23(土) 17:10:25 ID:x6SncPAc
放課後
第三アリーナ
一夏「セシリア、まだトーナメントまで少しあるのに」
一夏「もう訓練、始めるのか?」
セシリア「…………」
一夏「セシリア?」
セシリア「一夏さん」
一夏「ん?」
セシリア「まさかと思いますが、どうして他の皆さんが自分と組まなかったか」
セシリア「お分かりになっていませんの?」
一夏「え?」
163: 2016/04/23(土) 17:11:09 ID:x6SncPAc
セシリア「……そうですか」
セシリア「それでは、ご説明いたしましょう」
一夏「お、おう」
セシリア「まず、みなさん、自分のISとの相性を考えたのですわ」
セシリア「わたくしは、中、長距離型。 相性としては」
セシリア「中、近距離……もしくは近距離型が望ましいと言えます」
一夏「なるほど」
セシリア「ラウラさんは、ご本人もおっしゃっておられましたが、自動抽選でもいいと……」
セシリア「つまりこれは、どなたがパートナーになっても臨機応変に対処する、と言う事」
セシリア「シュバルツェア・レーゲンは長、中、近距離、どれにも対応可能な万能機」
セシリア「彼女お一人でも相当に厄介な相手ですわ」
一夏「むむ……確かに」
164: 2016/04/23(土) 17:11:52 ID:x6SncPAc
セシリア「箒さんは、一夏さんとはタイプが違いますが、近距離型」
セシリア「わたくしかラウラさんが、もっとも良いパートナーと言えます」
一夏「フムフム」
セシリア「でも彼女はラウラさんを選んだ……なぜか?」
セシリア「推測ですが、箒さんは、ご自分が牽制とかく乱に回り」
セシリア「止めをラウラさんにやって頂こうと思っているのではないかと……」
一夏「う……やっかいなコンビかも」
セシリア「最後に、シャルロットさんと鈴さん、双方ともに 中、近距離型」
セシリア「相性としては、あまり相手を選びませんけど……」
165: 2016/04/23(土) 17:12:27 ID:x6SncPAc
セシリア「組む相手として……より強い方を選んだのですわ」
一夏「なるほど……」
一夏「…………」
一夏「……えっ?」
一夏「ちょっと待てよ。 じゃあ何か?」
一夏「シャルも鈴も、俺より悠の方が強いから組みたがったって言うのか!?」
セシリア「……その通りです」
一夏「ぐっ…!」
セシリア「では お聞きしますが、この前の箒さんと鳴上さんとの模擬戦闘」
セシリア「一夏さんは、あの時の箒さんに勝てる自信がおありですか?」
一夏「っ!!」
166: 2016/04/23(土) 17:13:36 ID:x6SncPAc
セシリア「もうお分かりですね? みんな本気で勝ちに来ているのですわ」
一夏「…………」
一夏「一つ、聞かせてくれ」
一夏「セシリアが俺を選んだのは、同情か?」
セシリア「まさか」 ニコ
セシリア「わたくしは中、長距離型ですけど……どちらかと言えば」
セシリア「ロングレンジに大きくウェイトしております」
セシリア「わたくしが牽制と援護に徹し、止めを近接型が刺す……」
セシリア「この戦法のベスト・パートナーは、一夏さんと判断いたしましたの」
167: 2016/04/23(土) 17:14:09 ID:x6SncPAc
一夏「悠でもやれるんじゃないか?」
セシリア「確かにそうですが、『止め』を刺すのは零落白夜を持つ」
セシリア「一夏さんに分があります」
セシリア「平たく言えば、頼りにしている、という事ですわ」 ニコ
一夏「……そうか」
一夏「よく分かった、セシリア。 訓練を始めよう」
セシリア「はい、一夏さん」
168: 2016/04/23(土) 17:15:15 ID:x6SncPAc
―――――――――――
夜
IS学園寮・一夏と鳴上の部屋
一夏「悠、話がある」
鳴上「なんだ?」
一夏「明日、放課後の第三アリーナに予約を入れておいた」
一夏「良かったら……俺と模擬戦をして欲しい」
一夏「頼めるか?」
鳴上「…………」
鳴上「わかった、受けて立とう」
一夏「よし、約束だぜ?」
鳴上「ああ」
169: 2016/04/23(土) 17:16:05 ID:x6SncPAc
翌日の放課後
第三アリーナ
一夏「白式!!」 スウウウウウウンッ!!
鳴上「…………」 スチャ…(メガネ装備)
鳴上「イザナギ!」 スウウウウウウンッ!!
一夏「さて、始める前に話しておきたい事がある」
鳴上「……?」
一夏「正直に言う。 俺は、お前に嫉妬している……」
鳴上「…………」
170: 2016/04/23(土) 17:16:44 ID:x6SncPAc
一夏「みっともないけど……悠が転校してきてからこっち」
一夏「前ほどチヤホヤされなくなった」
鳴上「…………」
一夏「そして……今回も以前の様に、みんなで俺を取り合うと思っていたら」
一夏「まさか幼馴染の箒や鈴にすら相手にされないなんて……」
一夏「本当にショックだった」
鳴上「…………」
一夏「……情け無いな、俺」
鳴上「そんな事は無い」
鳴上「そうやって自分の醜い部分をさらけ出せるのは」
鳴上「お前の『強さ』だ」
171: 2016/04/23(土) 17:17:31 ID:x6SncPAc
一夏「……そうかな」
一夏「今、こうやって私闘を申し込んでる様な奴だぜ? 俺は」
鳴上「そしてそうやって、その『強さ』から目を背ける事が」
鳴上「お前の『弱さ』だ」
一夏「…………」
一夏「お前って、本当に凄い奴だよ……」
一夏「…………」 スッ…
鳴上「…………」 スッ…
鳴上「……来い、一夏!」
一夏「……ああ! 行くぜ! 悠!」
ゴウッ!!
172: 2016/04/23(土) 17:18:08 ID:x6SncPAc
―――――――――――
第三アリーナ男子更衣室前
セシリア「…………」
ガチャ…
一夏「あ……セシリア」
セシリア「一夏さん……」
一夏「…………」
一夏「セシリアの言う通りだったよ……」
一夏「悠には……イグニッション・ブーストも零落白夜も」
一夏「俺の持てるすべてを出し尽くしても……」
一夏「勝てなかった」
セシリア「…………」
173: 2016/04/23(土) 17:18:50 ID:x6SncPAc
一夏「……セシリア、俺」
一夏「悔しいよ……!」 ポロッ
一夏「こんなに負けて、悔しいと思ったのは……」 ポロポロッ
一夏「初めてだ……!」 ボロボロ…
一夏「うぐっ…ひぐっ…」 ボロボロ…
セシリア「…………」
―――――――――――
一夏「はあ……なんか情け無い所、見せちゃったな」///
セシリア「いえ……」
174: 2016/04/23(土) 17:19:26 ID:x6SncPAc
一夏「でも……」
一夏「スッキリした」 クスッ
セシリア「…………」 クスッ
一夏「次は……必ず勝つ!」
セシリア「はい、その意気ですわ!」
一夏「そうと決まれば、特訓しないとな……」
一夏「セシリアとの連携に磨きをかけないと」
一夏「何でも言ってくれ! 俺は耐えてみせる!」 ガバッ!
セシリア「は、はい……あ、あの一夏さん、ち、近いですわ、お顔が……」///
一夏「と!? ……す、すまん」///
セシリア(も、もう……鈍感な所は相変わらずですわね)///
175: 2016/04/23(土) 17:20:12 ID:x6SncPAc
第三アリーナ
鈴「……ずいぶん一方的な戦いだったわね」
鳴上「そう見えたか?」
鈴「違うの?」
鳴上「一夏は、イグニッション・ブーストと零落白夜の使い所を分かっていないだけだ」
鈴「…………」
鳴上「今度の戦いはタッグマッチ」
鳴上「もし」
鳴上「混戦のさなかに、氏角を突いてブーストをかけた零落白夜が来たら……」
鳴上「どんなISもひとたまりも無い」
鈴「……!」
176: 2016/04/23(土) 17:20:45 ID:x6SncPAc
鳴上「ましてやセシリアのブルーティアーズは」
鳴上「360度、どこからでも攻撃できる恐ろしい武器だ……」
鳴上「これ程、互いの長所を生かしたコンビは無いだろう」
鳴上「セシリアに戦いの主導権を握られたら……おしまいだ」
鈴「…………」 ゾクリ…
鈴「それにしても……あんたって、ホント冷静ね」
鳴上「……そうか?」
鈴「落ち着き払いすぎて同い年に見えない」
鳴上「よく言われる」
177: 2016/04/23(土) 17:21:19 ID:x6SncPAc
鈴「まあいいわ」
鈴「一夏とセシリアコンビの対処法は、おいおい考えるとして……」
鈴「あたし達の基本戦術は、箒達とほぼ同じになるわね?」
鳴上「ああ。 俺が牽制とかく乱、鈴の龍砲で止め」
鳴上「これがベストだろう」
鈴「オッケー。 じゃ、まずその辺りから連携の訓練をしてみる?」
鳴上「ああ」
178: 2016/04/23(土) 17:21:55 ID:x6SncPAc
―――――――――――
数日後
放課後の第二アリーナ
ラウラ「今のはどうだ?」
箒「……悪くは無かったが」
箒「正確さに欠けるな」
ラウラ「ふむ……となるとBパターンが一番無難だな」
箒「そうだな……」
箒「少し、休憩しよう」
ラウラ「うむ、異論はない」
179: 2016/04/23(土) 17:22:34 ID:x6SncPAc
箒「ラウラ、ドリンクを作ってきた。 飲むか?」
ラウラ「えっ? ……い、いただこう」
箒「口に合えばいいが」
ラウラ「……うん、美味い。 冷えたレモンティーだな」
箒「そうか。 良かった」
ラウラ「…………」
ラウラ「箒、一つ聞いてもいいだろうか?」
箒「ああ、いいぞ」
ラウラ「なぜ、私と組む気になったのだ?」
ラウラ「福音の時……お前のIS、紅椿は、一夏の白式と対になる存在とわかったはず」
ラウラ「だから一夏と組みたがると思っていた」
箒「…………」
180: 2016/04/23(土) 17:23:20 ID:x6SncPAc
箒「……以前の私なら、そう願っただろう」
ラウラ「…………」
箒「でもそれは、『私の実力』で勝ち取ったモノではない」
箒「私の姉がそう作ったからだ」
ラウラ「……!」
箒「私は……私の力で、私の努力で、一夏と向き合いたい」
箒「だから…… 一夏と組むという選択肢は、まず捨てた」
箒「おかしいか? 私は?」
ラウラ「…………」
ラウラ「戦力判断としては、な」
ラウラ「しかし……気持ちは、わからなくも無い」 クスッ…
181: 2016/04/23(土) 17:23:54 ID:x6SncPAc
箒「…………」
箒「意外、だな。 ラウラにそんな風に言ってもらえるなんて」
ラウラ「……私も、以前の私なら、一笑の元にふしただろうな」 クスッ…
ラウラ「自分の気持ちに向き合って、それを選んだのなら」
ラウラ「私が口を挟む事ではない」
ラウラ「それに……」
箒「それに?」
ラウラ「頼られる、というのも悪い気はしない」 クス
箒「ふふ……そうか」 クス
アハハ…
箒「さて、そろそろ訓練に戻るか」
ラウラ「そうだな」
182: 2016/04/23(土) 17:24:28 ID:x6SncPAc
第一アリーナ
モブ美「デュノアさん、こんな感じかな?」
シャル「うん、上出来だよ」
モブ美「……でも、どうせ専用機持ちの勝利は決まってるんじゃない?」
モブ美「いくら努力しても私の練習用ISじゃ……」
シャル「……かも、しれない」
シャル「けど」
シャル「何にもしないで、ただ負けを認めて……それでいいのかな?」
モブ美「…………」
183: 2016/04/23(土) 17:25:19 ID:x6SncPAc
シャル「ボクは嫌だよ」
シャル「たとえ負ける公算が大きくても、ほんのわずかでも勝てる可能性があるのなら」
シャル「ボクは、その確率を上げる努力をおろそかにしたくない」
モブ美「…………」
シャル「ふふ……そんな顔しないで。 もっと気楽に行こう?」
シャル「別に負けてもいいんだよ。 ただ負けるのが嫌ってだけだから」
シャル「たくさん努力して、自分が納得して負けたなら、きっとそれは」
シャル「次につながる……と思うから」 クス
モブ美「…………」
184: 2016/04/23(土) 17:25:52 ID:x6SncPAc
モブ美「……ごめん、デュノアさん」
シャル「うん、がんばろう、モブ美さん」
シャル「それにもっと自信を持ってもいいと思うよ?」
シャル「ボクは、キミが専用機を持たない一年生で」
シャル「一番機動力に優れているから パートナーをお願いしたんだよ?」
モブ美「エヘヘ……逃げ回るのが上手いってだけなんだけどね」
シャル「それは大きな『武器』になるって事を証明してあげるから」 クス
185: 2016/04/23(土) 17:27:48 ID:x6SncPAc
―――――――――――
タッグマッチ・トーナメント・当日の朝
一夏「……いよいよか」
セシリア「やれる事は、すべてやりましたわ」
一夏「もちろん狙うのは、優勝の二文字だ……」
一夏「がんばろうな、セシリア!」
セシリア「はい、一夏さん!」
186: 2016/04/23(土) 17:28:20 ID:x6SncPAc
鳴上「いよいよだな」
鈴「うん……」 キュッ…
鳴上「……? そのリボンは いつもと違うな」
鈴「ふふん、ハイカラでしょ?」
鳴上「よく似合ってる」 クスッ
鈴「ま……あんたのメガネと一緒で、あたしの気合を入れる為に、ね」
鳴上「そうか……お互いがんばろう」
鈴「うん!」
187: 2016/04/23(土) 17:28:55 ID:x6SncPAc
ラウラ「……不思議な気持ちだ」
箒「何がだ?」
ラウラ「どう言えばいいか、わからない……」
ラウラ「緊張はしている」
ラウラ「でも……それがとても心地よい、とでも言うか……」
箒「ふふ……それは『自信に満ちている』という表現が適当だな」
ラウラ「なるほど……」
箒「だがそれは……『過信』に変わるかもしれない恐ろしい気持ちでもある」
箒「私は福音の時に……そのせいで一夏に大怪我をさせてしまった苦い経験がある」
ラウラ「! ……肝に銘じよう」
箒「さ……行くか」
ラウラ「ああ」
188: 2016/04/23(土) 17:29:28 ID:x6SncPAc
モブ美「うう……き、緊張する」
シャル「大丈夫、気楽に行こう?」
モブ美「う、うん……」
モブ美「……でも、あんなに頑張ったんだもん」
モブ美「優勝……したい」
シャル「うん、ボクもだよ」
シャル「頼りにしてるからね? モブ美さん!」
モブ美「もちろん! がんばろっ! デュノアさん!」
189: 2016/04/23(土) 17:30:17 ID:x6SncPAc
―――――――――――
全アリーナ管制室
山田「あ……織斑先生」
千冬「トーナメントの進行具合は?」
山田「はい、今の所タイムスケジュールに大きな支障はありません」
千冬「そうか」
山田「専用機持ちのみなさんは、順当に一回戦を勝ち上がりました」
千冬「まあ、そうだろうな」
190: 2016/04/23(土) 17:31:56 ID:x6SncPAc
山田「特に篠ノ之、ボーデヴィッヒ組は、圧倒的な強さですね……」
山田「前回、ボーデヴィッヒさんは完全に独り相撲を取ってましたから」
山田「よりコンビネーションバトルの良さが目立ちます」
千冬「ふむ……他はどうだ?」
山田「織斑・オルコット組は セオリー通り、と言うか」
山田「オルコットさんが牽制と援護に回り、止めを織斑君が行っています」
千冬「互いの長所を生かしている様だな」
山田「その様です。 しかも織斑君は、まだブーストも零落白夜も未使用です」
千冬「ほう……腕を上げた、か」
191: 2016/04/23(土) 17:33:06 ID:x6SncPAc
山田「鳴上・凰組は、戦法が篠ノ之・ボーデヴィッヒ組と同じですが」
山田「こちらは やや火力で劣っているように思えます」
千冬「ふむ……」
山田「デュノア・モブ本組は、デュノアさんの動きばかりが目立ちますね」
千冬「ほう?」
山田「モブ本さんは、デュノアさんの指示か……積極的に戦闘に参加しようとしません」
千冬(面白いな。 デュノアには秘策があると見える)
千冬(次は、いよいよ専用機とあたる……見ものだな)
192: 2016/04/23(土) 17:33:47 ID:x6SncPAc
―――――――――――
第一アリーナ・観客席
一夏(注目の試合だな……)
セシリア(……残念ですけど、シャルロットさんのペアは圧倒的に不利)
鳴上(だが……デュノアには、何か隠し技がある)
鈴(見せてもらうわよ……シャルロット)
193: 2016/04/23(土) 17:34:28 ID:x6SncPAc
第一アリーナ・グラウンド上
箒「……さて、こちらの有利は不動のものだが」
ラウラ「油断するな、箒」
ラウラ「勝利をあきらめている者は あんな顔をしない」
箒「同感だ」
モブ美「……ううっ、近くで見ると凄い迫力」
シャル「大丈夫、お互いベストを尽くそう!」
モブ美「う、うん! がんばる!」
シャル「その意気、その意気!」 ニコ
194: 2016/04/23(土) 17:35:30 ID:x6SncPAc
千冬「それでは、二回戦第五試合……開始!!」
バアアアアッ!!
一夏「!?」
セシリア「モブ美さんが……前に出た!?」
鈴「どういう事!?」
鳴上(……俺がデュノアの立場なら)
鳴上(…………)
鳴上(そうか……もしかしたら)
195: 2016/04/23(土) 17:36:09 ID:x6SncPAc
箒(何のつもりか、わからないが……)
箒(打鉄(うちがね)で正面から紅椿を相手にするなど……血迷ったか、シャルロット!)
ズアッ! ヒュバッ!!
モブ美「うひゃあっ!」 回避 回避!
箒「……はあっ!」
モブ美「ひいいいいっ!!」 回避 回避!
箒「くっ……ちょこまかと!!」
196: 2016/04/23(土) 17:37:04 ID:x6SncPAc
――回想――
シャル「いい? モブ美さん、とにかく箒に攻撃を仕掛ける、と見せかけて」
シャル「回避に専念して欲しいんだ」
シャル「それも」
シャル「常に箒にラウラが隠れるように、ね」
シャル「そうすれば、ラウラからの砲撃は無くなる」
シャル「無茶なお願いだけど……きっとモブ美さんなら、できるよ」 ニコ
―――――――――――
モブ美(とは言うけど……言うほど楽じゃないよう!!)
モブ美(デュノアさん、早いトコ決めちゃって!!)
197: 2016/04/23(土) 17:37:54 ID:x6SncPAc
ラウラ(……ち、これではキャノンで狙えん!)
ラウラ(ならば、先にシャルロットを……!?)
タタタタタタタッ!!
箒「くっ!! シャルロットめ!」 キン! カン! カン!
箒(完全に出鼻をくじかれた……!)
モブ美「はああああああっ!」
箒「このおっ!」 ブンッ
モブ美「うひいっ!!」 回避!
198: 2016/04/23(土) 17:38:51 ID:x6SncPAc
ラウラ「くっ! シャルロットの狙いは、箒か!?」
ラウラ「ならば……!!」 ズアアアッ!
箒「! 待て、ラウラ! うかつに近づくな! シャルロットの狙いは……!」
ラウラ「!?」
ボウボウボウッ!!
一夏「何だ!? シャルの奴、地面に榴弾を打ったぞ!?」
セシリア(あれは煙幕代わり……おそらくAICの目標を隠すために!)
鳴上(となれば狙うのは)
鈴(ラウラの機体!!)
199: 2016/04/23(土) 17:40:00 ID:x6SncPAc
ラウラ(くっ!! 停止結界は、対象物が見えないと効果が薄い!!)
ダン! ダン! ダン!
ラウラ「ぐあっ!」
ラウラ(シャルロットのアサルトライフルか!!)
箒「ラウラ!」
箒(くっ! レーダーで確認できるが、なぜあの二人はこんなに動き回っている!?)
箒(かといって空に上がれば、シャルロットのライフルの餌食だ……)
箒「……!!」
箒「まさか!!」
200: 2016/04/23(土) 17:40:47 ID:x6SncPAc
ラウラ「くっ! まだ砂煙が晴れない!」
???「………」 ダン! ダン! ダン!
ラウラ「シャルロットめ!」
???「……呼んだ?」
ラウラ「!?」
鳴上「あ……!?」
一夏「ライフルを撃っていたのは……」
セシリア「モブ美さんの方でしたのね!!」
鈴「前と同じようにシステムアンロックしてたのね……すっかり忘れてた」
201: 2016/04/23(土) 17:41:39 ID:x6SncPAc
シャル(狙いは外さない!!)
シャル「シールド・ピアーズ!!」
ラウラ「うわあああっ!!」
ドガアッ!! ドガアッ!!
箒「ラウラッ!!」
モブ美「たあああああああっ!!」
箒「……邪魔だあっ!」 ブンッ!! ブンッ!!
モブ美「ひゃあああああっ!!」 回避 回避!!
202: 2016/04/23(土) 17:42:25 ID:x6SncPAc
シャル「もう一発!!」
ドガアッ!! ドガアッ!!
ラウラ「くっ! くそっ!!」
箒「くっ!!」
モブ美「おりゃあああっ!!」
箒(……少々のダメージは覚悟だ!!)
箒「ラウラ! 今行く!!」
モブ美「うひゃあ……えっ?」 回h…
箒(むっ……!?)
203: 2016/04/23(土) 17:43:07 ID:x6SncPAc
シャル「止めっ!!」
箒「させるかあ!!」
シャル「!? くっ!!」
ヒュバッ!!
鳴上(……勝負あったな)
一夏(……惜しかったな、シャル)
セシリア(この劣勢の条件の戦いで……見事な作戦でした)
鈴(凄いよ……シャルロット)
204: 2016/04/23(土) 17:43:52 ID:x6SncPAc
箒「大丈夫か? ラウラ?」
ラウラ「なんとか……な」
ラウラ「はっきり言って……シュバルツェア・レーゲンの性能に助けられた」
箒「……そうか」
箒「してやられた、な」
ラウラ「ああ……」
モブ美「…………」
モブ美「……どうしよう」
シャル(……正直、もうどうしようもない)
シャル(あれで決められなかったらお手上げだ……)
シャル(……鳴上くんなら、もっと箒を引き付けてくれたんだろうけど)
205: 2016/04/23(土) 17:44:30 ID:x6SncPAc
シャル(……ううん、そんなこと思っちゃ駄目だね)
シャル(モブ美さんは良くやってくれた……本当に感謝しないと)
モブ美「ねえ! デュノアさん!」
シャル「……もう打つ手なし、だよ」
モブ美「!」
シャル「降参する?」
モブ美「…………」
モブ美「いや!」
206: 2016/04/23(土) 17:45:31 ID:x6SncPAc
モブ美「絶対……あきらめない!」
シャル「うん、そう言ってくれると思ったよ」 ニコ
シャル「もうモブ美さんが回避しかしないのはバレてると思うから」
シャル「ボクに攻撃を集中すると思う」
シャル「モブ美さんは、その隙を突いて今度は本気で攻撃してみて?」
モブ美「わかった! やってみるよ!」
シャル「……さあ、来るよ!!」
207: 2016/04/23(土) 17:46:15 ID:x6SncPAc
―――――――――――
第一アリーナ・女子更衣室
モブ美「うえっ……うえっ……ひっく……」
シャル「…………」
モブ美「悔しいっ……悔しいよっ……」
シャル「モブ美さん……ありがとう」
モブ美「……!?」
シャル「ここまで戦えたのは、モブ美さんのお陰だよ」
シャル「ボク達は、正々堂々氏力を尽くして戦って負けた……」
シャル「もっと胸を張ろう?」 ホ口リ
モブ美「…………」
モブ美「デュノア……さんっ!……うああああっ…………」 ボロボロッ…
208: 2016/04/23(土) 17:47:07 ID:x6SncPAc
第一アリーナ控え室
箒「どうした? ラウラ?」
ラウラ「……単刀直入に言う。 停止結界が使えなくなった」
箒「なっ!?」
ラウラ「シャルロットの攻撃は、見事に頭部のシールドを狙っていた」
ラウラ「知っていた訳では無いだろうが……制御システムは大抵ここにあるからな」
ラウラ「その中のAICの制御システムが、ダメージを負った」
209: 2016/04/23(土) 17:47:55 ID:x6SncPAc
箒「修理は?」
ラウラ「本国から部品を取り寄せないと不可能だ……」
箒「…………そうか」
箒「なに、心配するな、ラウラ」
箒「この事実は我々しか知らないのだ。 問題ない」
ラウラ「うむ。 だが心に留め置いてくれ」
箒「わかった」
210: 2016/04/23(土) 17:48:45 ID:x6SncPAc
第三アリーナ・観客席
シャル「次はいよいよ鳴上くん達と一夏達の対戦」
シャル「注目の試合だね」
ラウラ「そうだな」
ラウラ「それにしてもシャルロット……さっきは見事な作戦だった」
シャル「ふふ、ありがと」
箒「決して油断していたわけではなかったのに……翻弄されてしまった」
シャル「ボクだけの力じゃないよ。 モブ美さんのおかげ。 ねー?」
モブ美「ねー!」///
211: 2016/04/23(土) 17:49:59 ID:x6SncPAc
ラウラ(さて……私が見る限りでは一夏とセシリアが、やや有利だが)
ラウラ(しかし、鳴上の戦闘力は計り知れないものがある)
箒(鍵を握っているのは、やはり鳴上……)
箒(いずれにしても この試合の勝者が、私達の相手になるだろうな)
―――――――――――
第三アリーナ・グラウンド上
一夏「リターンマッチだな」
一夏「この前の借りは、きっちり返させてもらうぜ、悠」
セシリア「一夏さん、落ち着いて行きましょう」
一夏「わかってる……けど、次の試合の事は考えない」
一夏「ここですべてを出し切るつもりで行く!」
セシリア「……確かに力を温存して勝てる相手ではありませんわね」
セシリア「わかりましたわ!」
212: 2016/04/23(土) 17:50:44 ID:x6SncPAc
鳴上「一夏……」
鈴「強敵ね……でも負けない!」
鳴上(この前と顔つきが違うな……いい顔をしている)
鳴上(何か策があるのか、それとも……?)
鈴「悠、狙いは一夏のまま?」
鳴上「ああ、それで行く……!」
213: 2016/04/23(土) 17:52:21 ID:x6SncPAc
千冬「それでは三回戦、第二試合……開始!!」
ゴウッ!!
一夏「はああああっ!!」
鳴上「でやあああっ!!」
ガギイッ!!
シャル(二人とも開始の合図とともに……!)
ラウラ(真っ向勝負か!!)
箒(面白い!!)
214: 2016/04/23(土) 17:53:11 ID:x6SncPAc
セシリア「ブルー・ティアーズ!!」 ヒュンヒュン!
鈴「させない! 龍砲!」 ドォン!
セシリア「くっ! 照準が……!!」
セシリア(鈴さんの空間圧砲は弾数に制限が無い上に連射も可能!)
セシリア(牽制としては、最高の武器ですわ!!)
鈴(悠の邪魔はさせないわ、セシリア)
鈴(あんたは当分あたしが相手よ!)
215: 2016/04/23(土) 17:54:02 ID:x6SncPAc
一夏(さすがだぜ!! 悠!!)
一夏(俺も腕を上げたつもりだったが……強い!)
鳴上(やる……! この前の模擬戦とは比べ物にならないっ!)
鳴上(だが、俺も負けん!)
ゲンッ! キンッ!! ガギンッ!!
一夏「だあああっ!!」
鳴上「おおおおおっ!!」
216: 2016/04/23(土) 17:54:38 ID:x6SncPAc
ゴガンッ!! ギィンッ!! ズガンッ!!
シャル(どっちも相手の出方を見ている……!?)
ラウラ(先に仕掛けるのは、どっちだ?)
箒(どちらもタイミングがすべてだ……!!)
鳴上(……そろそろ仕掛けてみるか!)
一夏(!? 来るか……!?)
217: 2016/04/23(土) 17:55:16 ID:x6SncPAc
――回想――
一夏「戦術を読む?」
セシリア「はい」
セシリア「わたくしは鳴上さんのデータを集めて」
セシリア「彼のおおよその行動を予測してみました」
一夏「へえ……」
セシリア「まず、彼の爆弾ですが……」
セシリア「これまでの実習授業等で4種類確認されています」
セシリア「そして、一度使った爆弾は」
セシリア「同じ模擬戦で再使用した事が全くありません」
一夏「!!」
218: 2016/04/23(土) 17:56:18 ID:x6SncPAc
セシリア「つまり、二発対で各種一発ずつしか装填出来ないのではないか?」
セシリア「と推測できます」
一夏「すげえ……! すげえ情報だ!」
セシリア「さらに、今回はタッグマッチです」
セシリア「わたくしが鳴上さんの立場なら……」
セシリア「一つだけ使いにくい爆弾があります」
セシリア「そして混戦時、パートナーに被害が及ばないように」
セシリア「一発目はこの爆弾にする、と示し合わせる可能性が高い」
セシリア「その爆弾は」
219: 2016/04/23(土) 17:56:49 ID:x6SncPAc
―――――――――――
鳴上「……ペルソナ!!」 ポウ ポウ
一夏(来た!!)
カッ!!
セシリア(やはり! フラッシュ・グレネード!!)
一夏「もらったあああああ!!」 ショート・ブースト!!
鳴上(!? 読まれた!?)
220: 2016/04/23(土) 17:57:27 ID:x6SncPAc
ズガアッ!!!
鳴上「がああああっ!!!」
鈴「悠っ!!」
鳴上「だ、大丈夫だ!! オルコットから目を離すな!!」
一夏(くそっ!! 浅い!! 横からのブーストだったのに!!)
一夏(これもセシリアの言う通りかよっ!!)
221: 2016/04/23(土) 17:58:18 ID:x6SncPAc
――回想――
一夏「じゃあ、その虚を突いて攻撃すれば、倒せるな!」
セシリア「……残念ですが、難しいでしょう」
一夏「えっ?」
セシリア「彼ほどの達人ならば……むしろ目の届かない後ろやサイドは」
セシリア「もっとも警戒しているでしょうし……」
一夏「……確かに」
一夏「じゃあどうする……? って、俺が腕を上げるしかないか……」
セシリア「手は……ありますわ」
一夏「!!」
222: 2016/04/23(土) 17:58:48 ID:x6SncPAc
セシリア「ただ……これは、一夏さんにとてつもないスペックを要求しますが……」
一夏「……言ってみてくれ」
セシリア「それは、イグニッション・ブースト」
セシリア「現段階で使えるだけでも凄い技ですが……」
セシリア「さらに、極短距離で使える様になって欲しいのです」
一夏「ごく……短距離?」
セシリア「数字で言うなら、4、5メートル前後……と言った所でしょうか?」
一夏「げっ!?」
223: 2016/04/23(土) 17:59:23 ID:x6SncPAc
セシリア「それも……最低2連続で使える様に」
一夏「……体、持つかな」
セシリア「慣性制御があるとはいえ……急加速、急旋回を連発するのですから……」
セシリア「体にかかるGは、相当なものでしょうね……」
一夏「…………」
セシリア「しかし、大きなメリットもあります」
セシリア「従来のブーストより遥かに消費エネルギーが少ない」
セシリア「つまり、長期戦にとても有効、と言えますわ」
一夏「なるほど……」
224: 2016/04/23(土) 18:00:16 ID:x6SncPAc
一夏「セシリア、俺もエネルギーつながりで思いついた技がある」
セシリア「はい?」
一夏「零落白夜を」
一夏「インパクトの瞬間だけに発動できないか? と考えている」
セシリア「!!」
一夏「理由はセシリアのブーストと同じ」
セシリア「で、でも可能なんですの?」
セシリア「あれは……確か、一夏さんの感情の高ぶりに呼応して発動するのでは?」
一夏「そうとう難しいと思う……」
一夏「でも」
一夏「かならずモノにしてみせる!」
セシリア「一夏さん……」
225: 2016/04/23(土) 18:00:57 ID:x6SncPAc
―――――――――――
鳴上(……く、今のブースト、スピードはやや劣るものの)
鳴上(2連続で出してきた!)
鳴上(一夏……厄介な技を……!)
鳴上「……鈴!!」
鈴「!!」
鳴上「プラン『D』で行く!!」
鈴「わかったわ!!」
226: 2016/04/23(土) 18:01:39 ID:x6SncPAc
鈴(プラン『D』……肉を切らせて骨を絶つ作戦)
鈴(あたしはセシリアを狙うと見せかけ)
鈴(悠が一夏に、わざと切られて油断した所へ、特大の龍砲を打ち込む!!)
鈴「龍砲、連射モード!!」
ドドドドドドッ!!
セシリア「!? くっ……!!」
一夏「セシリア!!」
鳴上「はあああああっ!!」
一夏「うわあっ!!」
227: 2016/04/23(土) 18:02:18 ID:x6SncPAc
箒「一夏……いつの間にあんな技を……」
シャル「驚愕するね……」
ラウラ「体にかかる負担は 相当なものだろうに……」
シャル「それにしても鈴、いきなりセシリアに攻撃をしだしたね?」
箒「目標をセシリアに変えた……か?」
ラウラ「裏がありそうだな」
228: 2016/04/23(土) 18:03:04 ID:x6SncPAc
鳴上「はあああっ!!」
ゴインッ! ガキィン!! ギィンッ!
一夏「おおおおおおっ!!」
ゴガッ!! ギィン!! カンッ!
セシリア「やられてばかりでは、ありませんわよ!」
セシリア「ブルーティアーズ!!」 ヒュンヒュン!!
鈴「くっ!!」 回避!
鈴「龍砲!」 ドドドドドドッ!!
229: 2016/04/23(土) 18:03:47 ID:x6SncPAc
鳴上(よし! 上手いぞ、鈴!)
鳴上(セシリアの気がそれた!!)
鳴上「ペルソナ!!」 ポウ ポウ
鈴(……!! 龍砲を一夏に!!)
一夏(……来た!! 2発目!!)
一夏(今度は逆サイドで……)
一夏「ショート・ブースト!!」 ギュン!
一夏(あれを決めるっ!!!)
230: 2016/04/23(土) 18:04:38 ID:x6SncPAc
鳴上(今度は逆サイドか!!)
鳴上(……なっ!?)
バリバリバリバリッ!!
スパアンッ!!
鈴「!?」
鈴(ちょっと悠! 何で避けるのよ!?)
セシリア「ブルーティアーズ!!」 ヒュンヒュン!!
鈴「くっ……!!」
231: 2016/04/23(土) 18:05:33 ID:x6SncPAc
一夏(くそっ!! 今度も浅いっ!!)
一夏(だが、セシリアの予測通り!!)
鳴上(い、今のは、零落白夜!?)
鳴上(ほんの……ほんの一瞬、発動させた、だと!?)
鳴上(なんて奴だ……! 一夏!!)
鳴上(これでは、プラン『C』の零落白夜を発動した後)
鳴上(エネルギー切れを待つ作戦は、意味を成さない……!!)
鳴上「鈴!! プラン『B』だ!!」
鈴「!!」
232: 2016/04/23(土) 18:06:12 ID:x6SncPAc
鈴(どういう事!? プラン『B』は、『D』の前に戻るだけ……)
鈴(つまり、当初の作戦に戻るだけじゃない!)
鈴「……わかった!!」
ラウラ「……見たか? 今の」
シャル「えっ? 」
箒「何かが……キラッと光った様に見えたが?」
ラウラ「あれは……零落白夜だ」
シャ・箒「!?」
233: 2016/04/23(土) 18:07:15 ID:x6SncPAc
ラウラ「おそらく……インパクトの瞬間だけ、発動させたに違いない」
シャル「出来るの!? そんな事!?」
箒「……零落白夜の発動条件は、感情の高ぶり」
箒「一夏は、どうにかして感情をコントロール出来る様にしたんだ……」
シャル「……凄い」
ラウラ「……これで鳴上と鈴は、さらに不利になった」
箒「ああ……最初に真っ向勝負をしたのもおそらく」
箒「一夏の感情を高ぶらせるため……」
シャル「白式のエネルギー切れは、絶対 狙っている策の一つのはず……」
シャル「これは……勝負あり、かも……」
234: 2016/04/23(土) 18:07:56 ID:x6SncPAc
鳴上「くっ!!」
一夏「ショート・ブースト!」 ギュン!
ギィン! ガインッ! ガァンッ!!
鳴上(このままじゃ、ジリ貧だ……!)
鳴上(どうする……? 残りの爆弾はコールドとノ-マル)
鳴上(だが、まともな方法では食らってくれないだろう……)
鳴上(目標をセシリアに……いや、一夏を倒さないままでは危険が大きすぎる!)
一夏「はああああっ!!」
鳴上「おおおおおっ!!」
ゴキンッ! ガインッ! ダガンッ!
235: 2016/04/23(土) 18:08:30 ID:x6SncPAc
鈴(悠、なんだか余裕がない……!?)
鈴(このまま、セシリアの牽制を続けてて、いいの!?)
鈴(…………)
鈴(……いいえ! あたしが……あたしが悠を……)
鈴(パートナーを信頼しなくてどうすんの!?)
鈴(きっと……きっと悠は、何とかしてくれる!)
鈴(あたしは、それを信じる!!)
鳴上(……よし! 一か八か!!) キッ!
一夏(……!! 来る!? 三発目!!)
236: 2016/04/23(土) 18:09:07 ID:x6SncPAc
――回想――
一夏「それで? 仮にブーストが使える様になったとして……」
一夏「どんな策が?」
セシリア「鳴上さんの虚を突くためには、仕込みをする必要があります」
セシリア「勝負を仕掛けるのは」
セシリア「鳴上さんが三発目の爆弾を使った時」
一夏「三発目の?」
237: 2016/04/23(土) 18:10:03 ID:x6SncPAc
セシリア「爆弾を使用した直後に『氏角』から攻撃してくる」
セシリア「こう思わせておいて」
セシリア「真正面からブーストをかけて攻撃するのですわ」
一夏「!!」
一夏「……しかし、そう上手くいくだろうか?」
セシリア「残念ながら……『賭け』になるでしょう」
一夏「それに、なぜ『三発目』の時なんだ? 最後の一発の時でもいいんじゃないか?」
セシリア「ふふ……それは、一夏さんの体に負担が かかりすぎる前に勝負を決めたいのと」
セシリア「『まだ後一発ある』という余裕がある内に、虚を突いて混乱させたいから、ですわ」
一夏「なるほど」
238: 2016/04/23(土) 18:10:57 ID:x6SncPAc
―――――――――――
鳴上「ペルソナ!!」 ポウ ポウ
一夏(来た!! だが、ここは!!)
一夏(急ブレーキ!!) キキィー!
ブシュウウウウウッ!! ビキビキビキビキッ!!
一夏(やはり! 箒の時のように、射出と同時に炸裂させた!!)
鳴上(くっ……! また、読まれた!!)
鳴上(この後、どっちだ? 右か、左か……それとも後ろか!?)
一夏「はあああああっ!」 ショート・ブースト!!
鳴上「なっ!?………ペ、ペルソ…」
239: 2016/04/23(土) 18:11:45 ID:x6SncPAc
ズバアアアアッ!!
鳴上「ああああああああっ!!」 スウウウウンッ…(IS機能停止)
一夏「やったあああああっ!!」
ボウンッ!!
一夏「ぐああああああああっ!?」
セシリア「一夏さん!!」
鈴「……ごめんね! 一夏!! 龍砲!!」
ドグォオオオオオンッ!!
一夏「わあああああああっ!!」 スウウウウンッ…(IS機能停止)
240: 2016/04/23(土) 18:12:52 ID:x6SncPAc
シャル「一夏……! 鳴上くん……!」
箒「一夏の奴……鳴上を切った事で油断したな」
ラウラ「鳴上にグレネードを仕込まれた事に気づかないとは……」
シャル「でも鳴上くん、あの一瞬でとっさにそんな事するなんて……」
一夏「……くっそお」
鳴上「一夏、立てるか?」
一夏「! ……悠」
鳴上「ここは危ない、退避しよう」
一夏「そうだな……」
241: 2016/04/23(土) 18:13:25 ID:x6SncPAc
鳴上「……どう見る?」
一夏「ひいき目かもしれないが……セシリアが勝つかな」
鳴上「鈴には悪いが、俺もそう思う。 ……俺は、チームメイト失格だな」
シャル「ブルーティアーズの 四方八方からの攻撃をさけて近づくのは」
シャル「イグニッション・ブーストも使えない鈴にとって、至難の業……」
ラウラ「かと言って、ロングレンジで龍砲を動く目標に当てるのは難しい」
箒「パートナーを失っては……セシリアの精密射撃がものを言う……」
箒「勝負あったな」
242: 2016/04/23(土) 18:14:13 ID:x6SncPAc
鳴上「一夏……今回は完全に俺の負けだ」
一夏「俺もそう思ったが……最後のグレネードに気が付かなかった」
一夏「完全には勝ってない……」
鳴上「あんなもの、ただの苦し紛れだ」
一夏「それに今回、お前の行動の予測をしたのは」
一夏「セシリアだしな」
鳴上「!」
鳴上「そうなのか?」
一夏「ああ……気持ち悪いくらいドンピシャだった」
鳴上(……もう敵に回したくないな)
243: 2016/04/23(土) 18:15:09 ID:x6SncPAc
第三アリ-ナ・控え室
鳴上「……すまない、鈴」
鈴「悠……」
鈴「ううん、そんな事無い」
鈴「悠が頑張ってくれなきゃ、一夏も倒せなかった」
鳴上「鈴……」
鈴「それにしても、悠の話を聞いて驚いたわ」
鈴「ショート・ブーストに零落白夜の瞬間発動だなんて……」
鈴「一夏って、どんだけ規格外の急成長してんのよ……」 ハア…
鳴上「……まったくだ」
鈴(はあ……あたしは……)
鈴(まだまだ一夏の事を知らないのね……)
244: 2016/04/23(土) 18:15:54 ID:x6SncPAc
―――――――――――
第一アリーナ・観客席
鳴上「決勝戦……か」
鈴「ここまで来たら優勝しなさいよ! 一夏!」
シャル「う~ん……でもどっちが勝つかな? 鳴上くん?」
鳴上「篠ノ之達だと思う」
鈴「……即答する? そういう事」
シャル「理由を聞いてもいい?」
鳴上「一夏達は、俺と鈴との戦いで手の内を明かしてしまった」
鳴上「そして……要の一夏が、もうフラフラだと思うからだ」
245: 2016/04/23(土) 18:16:57 ID:x6SncPAc
鈴「!? どういう事?」
鳴上「見ていれば分かると思うが……ブーストの使いすぎで」
鳴上「体中が悲鳴を上げていると思う」
シャル「!?」
シャル「そ、そんな状態……なの?」
鳴上「少し計算してみた」
鳴上「イグニッション・ブーストは慣性制御された上で約2,8G……」
鳴上「一夏のショート・ブーストはイグニッションに比べると、やや劣るとはいえ」
鳴上「ブーストをかけた上、更に別方向からGが加わる」
鳴上「わかりやすく言えば……」
鳴上「急加速した車に横から同等の速度の車がぶつかる様なものだ」
246: 2016/04/23(土) 18:17:49 ID:x6SncPAc
鈴「…………」
シャル「…………」
鳴上「単純には言えないが……」
鳴上「一夏の体にはブーストのたびに、7~8Gの衝撃が加わっていたんじゃないかな……」
鈴・シャ「!!」
鈴「……あ、あたし、止めてくる!」 ダッ
シャル「あ! ま、待ってよ! 鈴! ボクも行く!」 ダッ
タッ タッ タッ…
鳴上「…………」
鳴上「俺も……止めたんだが、な」
鳴上「決勝戦に出ても おそらく試合にならない」
247: 2016/04/23(土) 18:18:20 ID:x6SncPAc
第一アリーナ・控え室
セシリア「一夏さん!! どうして……どうして黙っていましたの!?」
一夏「い、いやぁ……」
セシリア「準決勝の時も動きがおかしいと思っていましたが……」
セシリア「まさか……痛み止めの薬を飲んでいたなんて!!」
一夏「…………」
一夏「でもセシリア、せっかく決勝戦まで来たんだし」
セシリア「だめです!! 今すぐ医療室へ行きましょう!!」
一夏「でも……!!」
バァン!!
鈴「でももクソもないわよ! 一夏!!」
シャル「早く医療室に……」
セシリア「!! 鈴さん! シャルロットさん!」
248: 2016/04/23(土) 18:19:43 ID:x6SncPAc
鈴「」
シャル「」
鈴「い、一夏!? ど、どうしたの、それ!?」
シャル「顔にまで……! 体中、アザだらけじゃない!!」
セシリア「……恐らく」
セシリア「ブーストによるGで……体中の毛細血管がダメージを……」
鈴・シャ「!!」
鈴「一夏……」
一夏「…………」
鈴「あんた、わかっているんでしょ?」
鈴「医療室に行ったら、ドクターストップが かかるって?」
一夏「…………」
249: 2016/04/23(土) 18:20:20 ID:x6SncPAc
シャル「一夏……もしかして、ブーストの提案はセシリアが?」
一夏「……!」
シャル「セシリアに気を使って、なんでもないって」
シャル「フリをしてるんじゃないの?」
一夏「そ、そんな事は!」
セシリア「一夏さん……だとしたら逆です」
セシリア「わたくしは……悲しい」 ポロ…
セシリア「わたくし達は、タッグパートナーなのでしょう……?」 ポロポロ
セシリア「どうして……どうして黙っていたのですか……?」 ポロポロ…
セシリア「そんなの……わたくしに対する裏切りです……!!」 ポロポロ…
一夏「…!」
一夏「…………」
250: 2016/04/23(土) 18:21:02 ID:x6SncPAc
一夏「……わかった」
一夏「行くよ、医療室に」
鈴「最初からそう言いなさいよね! まったく……」
シャル「セシリア……ボクから棄権する事を伝えようか?」
セシリア「…………」
セシリア「いえ、わたくしから伝えますわ」
セシリア「ありがとうございます、シャルロットさん……」
シャル「ううん……」
251: 2016/04/23(土) 18:21:39 ID:x6SncPAc
第一アリーナ
箒「……? そろそろ時間だが」
ラウラ「一夏達が 来ないな?」
千冬「選手ならびに観戦者一同に連絡」
千冬「タッグマッチ・トーナメント決勝戦の時間だが」
千冬「織斑・オルコット ペアに重大な負傷が発生し、棄権する、との申し出があった」
箒「!?」
ラウラ「!?」
252: 2016/04/23(土) 18:22:20 ID:x6SncPAc
千冬「よって」
千冬「織斑・オルコット ペアの不戦敗とし」
千冬「篠ノ之・ボーデヴィッヒ ペアの優勝とする!」
ワアアアア……
鳴上「…………」
鳴上「一夏……お前は」
鳴上「幸せ者だ」 クスッ
253: 2016/04/23(土) 18:27:34 ID:x6SncPAc
―――――――――――
二日後
医療室の個室
箒「本当に大丈夫なのか?」
一夏「ああ、ドクターにも驚かれた」
一夏「多分……福音の時みたいに、白式が治してくれたんだろう……」
箒「昨日のお前の姿は酷かったからな……」
箒「命に別状は無い、と聞いても……にわかには信じられなかった」
一夏「薬が切れたら、とんでもない痛みが襲ってきたけどな……」
箒「…………」
254: 2016/04/23(土) 18:28:17 ID:x6SncPAc
箒「…………」///
箒「い、一夏……」///
一夏「ん?」
箒「その……言っておきたい事が、ある」///
箒「決して、ふざけている訳でも、冗談でもないから……な?」///
一夏「? ……ああ?」
箒「う、うむ……」
箒「一夏、私は、篠ノ之 箒は……」///
255: 2016/04/23(土) 18:28:51 ID:x6SncPAc
箒「お、お前の事が……好きだ!」///
一夏「…………」
一夏「……うん?」
箒「ゆ、友人として、ではないぞ?」///
箒「一人の女として……異性の、一夏の事が、好きなんだ」///
一夏「え」
一夏「ええっ!?」///
箒「…………」///
256: 2016/04/23(土) 18:29:28 ID:x6SncPAc
一夏「…………」///
一夏「…その」///
一夏「いつから?」///
箒「……小さい頃から、ずっと」///
一夏(マジっすか…)///
箒「…………」///
一夏(やべ……箒、すげえ可愛い……)///
257: 2016/04/23(土) 18:30:05 ID:x6SncPAc
箒「……今まで、私はずっと素直になれなかった」
箒「幼い頃の私達のままで……これからもそうなんだと、根拠も無く思っていた」
箒「でも……」
箒「お前は、私以外の女達と戯れてばかりで……イライラして」
一夏「そ、そんなつもりは!」
箒「わかっている」
箒「これは私が、そう思っていただけなんだ……」
一夏「…………」
箒「でも、ずっと、ずっと、一夏を想っていて、き、気持ちが落ち着かなくて……」///
箒「ああ、もう……何を言っているんだ? 私は……」///
一夏「……箒」
258: 2016/04/23(土) 18:30:59 ID:x6SncPAc
一夏「お、俺は、その……」///
箒「!」
箒「一夏、待ってくれ!」
一夏「え?」
箒「返事は……後でいい」
一夏「はい?」
箒「す、すぐに、どうしてか、分かる」///
259: 2016/04/23(土) 18:31:45 ID:x6SncPAc
箒「さ……最後に、もう一度だけ、言う」///
箒「私は、一夏の事が……好きだ」///
―――――――――――
一夏(…………)
一夏(……びっくりした)
一夏(まさか)
一夏(箒が……俺の事を好きだったなんて)///
一夏(いつも問答無用で殴る蹴るされてたから)
一夏(そんな風に想われてた、なんて思いもしなかった……)
一夏(……それにしても返事は後でいいって)
一夏(すぐに分かるって……)
一夏(どういう事なんだ?)
260: 2016/04/23(土) 18:32:17 ID:x6SncPAc
コン コン ガチャ…
ラウラ「一夏……体は大丈夫か?」
一夏「お、ラウラ」
一夏「ああ、大丈夫だ」 ニコ
ラウラ「そうか……良かった」
ラウラ「…………」
ラウラ「…………」///
261: 2016/04/23(土) 18:32:53 ID:x6SncPAc
ラウラ「一夏……」///
一夏「……ん?」
ラウラ「つ、伝えたい事がある」///
一夏「お? ……おお」
一夏(え? これってまさか……?)
ラウラ「私は……鳴上にある事をたずねられた」
一夏「うん」
ラウラ「『お前は、どんな風に一夏の事が好きなんだ?』と……」///
一夏「なっ!?」///
ラウラ「……でも」
262: 2016/04/23(土) 18:33:34 ID:x6SncPAc
ラウラ「言われて私は即答できなかった」
ラウラ「今まで私は、人から聞いた事そのままで表現していたからだ……」
一夏「…………」
ラウラ「鳴上は、そんな私に『考えろ』と言った」
ラウラ「……いろんな人に聞いてみた、いろんな本も読んでみた」
ラウラ「その結果……私なりに答えを出す事が出来た……」
一夏「うん……」
ラウラ「私は」
263: 2016/04/23(土) 18:34:09 ID:x6SncPAc
ラウラ「男女の関係で、恋愛の対象という意味で……」///
ラウラ「一夏の事が好きだ」///
一夏「そ、そうか……」///
ラウラ「…………」///
ラウラ「つ、伝わった……だろうか?」///
一夏「お、おう、十分過ぎるほど!」///
ラウラ「そ、そうか! 良かった…」/// ニコッ
ラウラ「ありがとう一夏。 聞いてくれて……」///
ラウラ「私はお前に出会えて、本当に良かったと思う」///
ラウラ「それでは……また後で、な」///
264: 2016/04/23(土) 18:34:44 ID:x6SncPAc
一夏「えっ!?」
一夏「ラウラ!?」
ガチャ… キィ パタン
一夏「…………」
一夏(おいおい……)
一夏(まさかと思うけど)
一夏(こ、これって……?)
265: 2016/04/23(土) 18:35:21 ID:x6SncPAc
コン コン ガチャ
シャル「一夏、調子はどう?」
一夏「シャル……」
シャル「えっと……もう、分かっているかな? さすがに……」///
一夏「……う、その」
一夏「シャルも……なのか?」///
シャル「……うん!」/// ニコッ
シャル「でも……だからって『わかった』つもりにならないで?」
シャル「ボクは、ちゃんと一夏に向き合って」
シャル「気持ちを伝えたい」///
一夏「……そう、か」///
266: 2016/04/23(土) 18:36:08 ID:x6SncPAc
シャル「一夏は……覚えてる?」
シャル「一緒にお風呂へ入った時の事……」///
一夏「……わ、忘れられる訳ないだろ」///
シャル「一夏のえOち」///
一夏「は、話を振ってきたの、そっちだろ!?」///
シャル「うふふ、ごめん」///
シャル「…………」
シャル「……あの時はね」
シャル「ボク、一夏へのお礼のつもりだった……」
一夏(……にしては、かなり過激だ)
267: 2016/04/23(土) 18:36:57 ID:x6SncPAc
シャル「でも……」
シャル「ボクは、自分と向き合うようになってから」
シャル「あの時のボクの行動は……」
シャル「一夏と、既成事実を作りたかったんじゃなかったの? と思ってる……」
一夏「!?」
シャル「……幻滅した?」
一夏「!? い、いや、そんな事は!」
シャル「もしかしたら……今こうして話しているボクも」
シャル「何かの結果を求めて…あざとく行動しているのかも知れない……」
シャル「でも……そんなボクにも」
シャル「たった一つだけ……」
シャル「純粋に自信を持って言える事があるの」
一夏「…………」
268: 2016/04/23(土) 18:37:30 ID:x6SncPAc
シャル「一夏の事が好き……」///
一夏「…………」///
シャル「……ふう」///
シャル「えへへ……やっと言えた」///
一夏「そ、そうか……」///
シャル「あ、言っとくけど、友達としてじゃないからね?」
一夏「わ、わかってるよ……!」
269: 2016/04/23(土) 18:38:16 ID:x6SncPAc
シャル「良かった……ちゃんと伝える事ができて」
シャル「一夏、聞いてくれてありがとう」
シャル「……大好き」/// ニコッ
―――――――――――
一夏(シャル……)
一夏(…………)///
一夏(友達としてじゃない)///
一夏(か……)///
270: 2016/04/23(土) 18:39:02 ID:x6SncPAc
コン コン ガチャ
鈴「一夏~? 調子はどう?」
一夏「……鈴」
一夏「…………」///
鈴「……す、少し、休憩しない?」///
一夏「……休憩か」///
一夏「あ、ありがたい」///
鈴「えと……飲み物、持ってきたの。 飲む?」///
一夏「おう、も、もらおうかな……」///
271: 2016/04/23(土) 18:39:52 ID:x6SncPAc
―――――――――――
一夏「……おかげで落ち着いた」
一夏「ありがとう、鈴」
鈴「どういたしまして!」 フフッ
鈴「…………」
鈴「一夏は……気づいてるかな?」
一夏「……ま、まあ、な」///
鈴「ううん……そっちじゃなくて」
鈴「あたしが言ってるのは順番の事」
一夏「?」
一夏「順番?」
一夏「最初が箒で、ラウラ、シャル、そして鈴、セシリア……」
272: 2016/04/23(土) 18:40:46 ID:x6SncPAc
一夏「なにか法則性があるのか?」
鈴「事の発端は……箒の一言かな」
鈴「突然、『私は一夏に告白しようと思う』って言い出してね」
一夏「!」
鈴「ま、一夏の知らない所で、ひと悶着あって……」
鈴「今度のタッグマッチ・トーナメントの成績で」
鈴「告白の順番を決めよう、って事になったの」
一夏「……!?」
273: 2016/04/23(土) 18:41:20 ID:x6SncPAc
一夏「…………」
一夏「……じゃあ」
一夏「みんなが勝ちにこだわっていたのは……」
一夏「俺のため、なのか?」
鈴「平たく言えばそう」
一夏「…………」
鈴「…………」
鈴「悠には……迷惑かけちゃったな」
鈴「あんたにも……セシリアにも……」
一夏「……?」
一夏「どういう意味だ?」
鈴「悠は、強敵だったでしょ?」
一夏「ああ……」
274: 2016/04/23(土) 18:42:02 ID:x6SncPAc
鈴「セシリアは、その強敵に勝つために」
鈴「一夏に無理をさせ、医療室送りにした……」
一夏「!!」
一夏「それは違う! 俺だって悠に勝ちたかった!」
鈴「セシリア自身は責任を感じているわ……」
一夏「…………」
鈴「箒とラウラの後、『わたくしは、トリを狙っていたのですわ!』とか、ワザとらしく言って」
鈴「一番最後を選んだのが証拠………」
一夏「……っ!」
275: 2016/04/23(土) 18:43:02 ID:x6SncPAc
一夏「…………」
一夏「…………鈴」
一夏「お前もそうなのか?」
鈴「…………」
一夏「……でなきゃ」
一夏「そんな話……しないよな」
鈴「…………」
276: 2016/04/23(土) 18:43:38 ID:x6SncPAc
一夏「……聞かせてくれるか?」
一夏「鈴の気持ち……」
鈴「!!」
鈴「あ、あたしは……」
一夏「うん」
鈴「す、好き。 一夏の事……」///
一夏「子供のころから?」
鈴「!」///
鈴「そ、そうよ!」///
鈴「ずっと、ずっと……好き!」///
鈴「あたしは、一夏が」///
277: 2016/04/23(土) 18:44:16 ID:x6SncPAc
鈴「一夏の事が……大好き」///
一夏「……ありがとう、鈴」
一夏「俺は……」
鈴「へ、返事は、後でいいから!」///
一夏「い、いや俺は……」
鈴「も、もう行くね!? あたし!」///
一夏「あっ! 鈴!」
ガラッ… パタンッ…
一夏「…………」
278: 2016/04/23(土) 18:45:04 ID:x6SncPAc
一夏(まったく鈴の奴)
一夏(昔からああだよな……) クスッ
一夏(いつも他の人の事を気遣って、自分の事を後回しにする)
一夏(でもな……)
一夏(凄くうれしいよ……鈴)
…ドドドドドドドドドッ バァンッ!!
セシリア「い、一夏さん!!」 ハアッハアッ
一夏「うおっ!? なんだ!?」
セシリア「あ、あれ?」
一夏「よ、よお」
セシリア「…………」
一夏「どうしたんだ? いったい?」
279: 2016/04/23(土) 18:45:34 ID:x6SncPAc
セシリア「い、いえ、その……な、鳴上さんが」
セシリア「一夏さんの容態が急変した、と……」
一夏「…………」
セシリア「…………」
セシリア「……もしかして」
セシリア「騙されましたの? わたくし……」
一夏「多分な」
セシリア「……はうううう」 ヘナ ヘナ ヘナ……
一夏「ははは……」
280: 2016/04/23(土) 18:46:08 ID:x6SncPAc
一夏「セシリア……聞かせてくれるか?」
一夏「その、気持ちを……」///
セシリア「!!」
セシリア「わ、わたくしは、そのっ……」
一夏「……責任なんて感じなくていいから」
セシリア「!!」
セシリア「…………」
セシリア「……でも……わたくしは……」
セシリア「自分が許せません……!」
281: 2016/04/23(土) 18:46:41 ID:x6SncPAc
一夏「……だったら俺も」
一夏「タッグパートナーとして、セシリアを裏切った自分が許せなくなる」
セシリア「!」
セシリア「一夏さん!?」
一夏「……お互い許さないか?」
一夏「自分を」 ニコ
セシリア「…………」
セシリア「一夏さん……」
セシリア「ずるいですわ」 ポロ
セシリア「ううっ……ひっく……」 ポロ ポロ
282: 2016/04/23(土) 18:47:14 ID:x6SncPAc
―――――――――――
一夏「……落ち着いたか?」
セシリア「はい……」
一夏(……悠が、セシリアについたウソは)
一夏(鈴の話から推測すると、おそらく……)
一夏(セシリアが告白自体を止めると思ったんだろうな……)
一夏(タイミングもドンピシャで、相変わらず凄い奴だ)
283: 2016/04/23(土) 18:47:49 ID:x6SncPAc
セシリア「えっと……その」///
セシリア「わ、わたくしは……」///
一夏「う、うん」///
セシリア「…………」
セシリア「……最初は……分かりませんでした」
一夏「分からない?」
セシリア「気が付いたら一夏さんの事ばかりを……考えているようになってて」
セシリア「いつの間にか、目であなたの事を追っていて」///
セシリア「ああ……これが、こ、恋なのだと…思いました……」///
一夏「……そ、そうだったのか」///
284: 2016/04/23(土) 18:48:29 ID:x6SncPAc
セシリア「わたくしは一夏さんの事が……好きです」///
一夏「…………」///
セシリア「…………」///
一夏「ありがとう、セ、セシリア。 す、凄く、うれしいよ」///
セシリア「は、は、はい……!」///
セシリア「あ! で、でも!」
セシリア「友人として、では ありませんから!」///
一夏「わ、わかってるから!」///
一夏(な、なぜ、みんな念を押す!?)
285: 2016/04/23(土) 18:49:05 ID:x6SncPAc
一夏「……その」///
一夏「返事は……やっぱり後でいいのか?」
セシリア「……はい」
セシリア「みなさんとの取り決めで特に期限は決めませんけど……」
一夏「…………」
セシリア「でも……お心が決まったら」
セシリア「全員を集めた上で……おっしゃってください」
一夏「……えっ?」
一夏「ええっ!?」
286: 2016/04/23(土) 18:49:37 ID:x6SncPAc
一夏「ちょ、ちょっと待ってくれ…」///
一夏「みんなを集めてって……ええっ!?」///
セシリア「なにか問題が?」
一夏「!?」///
一夏「だ、だって……そのっ」///
セシリア「わたくし達は……皆」
セシリア「真剣に一夏さんへ向き合いました」
セシリア「その気持ちを偽ることなく話し合って……」
セシリア「この人達なら、一夏さんとお付き合いしても許そう、と……」
セシリア「皆で決めたのです」
一夏「…………」
287: 2016/04/23(土) 18:50:20 ID:x6SncPAc
セシリア「……ですので」
セシリア「一夏さんも、わたくし達に向き合って」
セシリア「お答えください」
セシリア「全員を選ばない……という選択でもかまいません」
一夏「…………」
セシリア「もちろん……選ばれなかった人は」
セシリア「しばらく時間が必要になると思います……」
セシリア「でも」
セシリア「必ず選ばれた人を祝福できると、確信しておりますわ」 ニコ
一夏「…………」
288: 2016/04/23(土) 18:50:52 ID:x6SncPAc
―――――――――――
一夏(…………)
一夏(…………)
一夏(………みんな)
一夏(凄いな……)
一夏(正直、俺が五人いればいいのにって思う)
一夏(俺も真剣に答えを見つけないと………)
289: 2016/04/23(土) 18:51:31 ID:x6SncPAc
コン コン
鳴上「一夏、今、いいか?」
一夏「……悠」
一夏「どうぞ、入ってくれ」
…ガチャ
鳴上「調子はどうだ?」
一夏「体の方は大丈夫だ」
一夏「……精神的に少し疲れているけどな」
鳴上「そうか」 クスッ
一夏「で? ただの見舞いなのか?」
鳴上「実はな……俺」
一夏(え?)
鳴上「前から思っていたんだが……」
一夏(ちょ、ま、まさか!?)
290: 2016/04/23(土) 18:52:05 ID:x6SncPAc
鳴上「どうして、素組するんだ?」
一夏「い、いや! 待ってくれ! お、俺にそっちの趣味は……!」
一夏「へ? 素組?」
鳴上「……プラモの話をしているんだが?」
一夏「…………」
鳴上「…………」
一夏「よ」
一夏「よかったぁ………」 ヘナヘナヘナ…
鳴上「?」
291: 2016/04/23(土) 18:52:38 ID:x6SncPAc
鳴上「……で? 五人の多国籍美少女から、告白を受けた感想は?」
一夏「正直、滅茶苦茶つらい……」
鳴上「世界中の男に殴られるぞ?」
一夏「……でも本音だ」
一夏「誰かを選べば、他の四人が傷つく……」
一夏「俺は……誰も傷つけたくないのに」
鳴上「…………」
鳴上「残念だが……もう誰も傷つかない事はない」
一夏「…………」
鳴上「………でも」
鳴上「今なら『すり傷』程度ですむと思う」
292: 2016/04/23(土) 18:53:33 ID:x6SncPAc
一夏「……!」
鳴上「誰も傷つかない……」
鳴上「確かに理想だ」
一夏「…………」
鳴上「なんだか放っておけない……守ってあげたい」
鳴上「支えてあげたい……望みを叶えてあげたい」
鳴上「そんな気持ちに すべて答えている内に」
鳴上「俺はいつの間にか……六股かけていた」
一夏「…………」
一夏「はあ!?」
鳴上「…………」
293: 2016/04/23(土) 18:54:06 ID:x6SncPAc
一夏「……マジで?」
鳴上「マジで」
一夏「お前が……六股?」
鳴上「ああ……」
一夏「…………」
鳴上「…………」
一夏「……で」
一夏「どうなった?」
鳴上「阿鼻叫喚の渦……」
一夏「Oh……」
294: 2016/04/23(土) 18:54:46 ID:x6SncPAc
鳴上「お前もそうなりたいか?」
一夏「全力でお断りします」
鳴上「それでいい」
鳴上「俺みたいに全身複雑骨折する事はない」
一夏(冗談に聞こえねえ……)
鳴上「難しく考えるな」
鳴上「ただ……自分に正直になればいい」
一夏「…………」
一夏「自分に」
一夏「正直に、か……」
一夏「…………」
295: 2016/04/23(土) 18:55:41 ID:x6SncPAc
―――――――――――
半月後
IS学園寮・一夏と鳴上の部屋
鳴上「じゃ、俺は席を外す」
一夏「お、おう。 すまんな……」
キィ… パタン…
箒「…………」
鈴「…………」
シャル「…………」
セシリア「…………」
ラウラ「…………」
296: 2016/04/23(土) 18:56:23 ID:x6SncPAc
一夏「…………」
一夏「……えっと」
一夏「まず、みんなにお礼を言っておく」
一夏「俺を……好きだと言ってくれて、ありがとう」
一夏「本当にうれしかった」
ヒロインズ「…………」
一夏「悠に自分に正直になれ、と言われて」
一夏「いろんな事を考えて、自分と向き合って」
一夏「でも、なかなか答えが出せなくて……」
ヒロインズ「…………」
297: 2016/04/23(土) 18:57:41 ID:x6SncPAc
一夏「これは お世辞でもなんでもなく、みんな魅力的で……」
一夏「この中の一人だけを選ぶなんて、とんでもない贅沢で、その……」
一夏「ああ、もう……何を言ってるんだ? 俺は……」///
ヒロインズ「…………」///
一夏「……だけど」
一夏「俺は答えを……出した」
ヒロインズ「!」
298: 2016/04/23(土) 18:58:30 ID:x6SncPAc
一夏「スーハー、スーハー」
一夏「……ふう」
一夏「お、俺は、」
一夏「織斑 一夏は……」///
ヒロインズ「…………」 トクン トクン
299: 2016/04/23(土) 19:13:21 ID:x6SncPAc
――シャルエンド――
300: 2016/04/23(土) 19:13:54 ID:x6SncPAc
一夏「シャルが、一番好きだ!」///
シャル「っ!!」
鈴「……うっ」 ダッ
箒「……鈴!」
セシリア「……鈴さん」
ラウラ「…………」
ラウラ「行こう……みんな」
一夏(やっぱり……胸が痛むな)
シャル(……みんな)
301: 2016/04/23(土) 19:14:29 ID:x6SncPAc
一夏「…………」
シャル「…………」
シャル「……えっと、一夏」
一夏「……うん」
シャル「ボクで……いいの?」
一夏「シャルでなきゃ、駄目なんだ」
一夏「……あの時、」
一夏「トーナメントで箒達と戦っていた時」
一夏「俺だったらこうするのに……俺だったら、もっとシャルの力になれるのにって」
一夏「歯がゆく思っていたんだ……」
302: 2016/04/23(土) 19:15:02 ID:x6SncPAc
シャル「!!」///
シャル「…………」
シャル「……でも」
シャル「ボクは鳴上くんを……選ぼうとしたんだよ?」
シャル「勝つために一夏を……拒んだんだよ?」
一夏「ああ……凄いショックだった」
シャル「…………」
一夏「鈴や箒もそうだったけど……シャルに断られたのが一番こたえた」
一夏「どうして? なぜ?」
一夏「…………」
一夏「それは……きっと」
303: 2016/04/23(土) 19:15:40 ID:x6SncPAc
一夏「シャルの事が一番好きだから」/// ニコッ
シャル「一夏……」///
一夏「…………」///
シャル「…………」///
一夏「…………」///
シャル「…………」///
一夏「……え、えと、その」///
シャル「……う、うん」///
一夏「お、俺と…付き合ってもらえますか?」///
シャル「こ、こちらこそ、よろしくお願いしますっ」///
304: 2016/04/23(土) 19:16:17 ID:x6SncPAc
―――――――――――
数週間後
IS学園・校門付近
??「おー……」
??「ここがIS学園ってやつか!」
??「いきなりのアポなし訪問だけど、楽しみだぜ!」
??「…………」
??「悠の奴……元気にしてっかな」
305: 2016/04/23(土) 19:16:53 ID:x6SncPAc
シャル「…………」 テク テク
シャル「……?」 ピト
??「そこを何とか!! 守衛さん!!」
守衛「そう言われましても」
守衛「基本IS学園は関係者以外の立ち入りは……」
??「身分証明証も提示してますし……お願いします!!」
??「悠に……鳴上 悠に会ったら、すぐ帰りますから!!」
シャル「!」
シャル(鳴上くんの友達?)
306: 2016/04/23(土) 19:17:30 ID:x6SncPAc
守衛「すみませんが……今は付き添いの人員が居ませんので」
??「そ、そこを何とか!!」
シャル「あの……」
??・守衛「?」
シャル「鳴上くんの友達……なんですか?」
??「…え?」
??「おお!? は、はい!」
??(な、なんだよ、この超絶金髪美少女は…!!)
シャル「守衛さん、良かったらボクが付き添いましょうか?」
守衛「しかし……」
シャル「ボクは専用機持ちです」
シャル「いざとなったら撃退できますし」
307: 2016/04/23(土) 19:18:09 ID:x6SncPAc
守衛「!」
守衛「……名前と学年を言ってください」
シャル「シャルロット・デュノア。 一年生です」
守衛「…………」 ピピピ…
守衛「…確認」
守衛「わかりました、お任せしましょう」
??「!」
??「おっしゃ!!」
守衛「ただし、何か問題が発生した場合、あなたにも責任がおよびます」
守衛「かまいませんか?」
シャル「はい」
守衛「では君、この腕章を着けて。 くれぐれも軽率な行動を取らないように」
??「モチのロンです!!」
308: 2016/04/23(土) 19:19:05 ID:x6SncPAc
―――――――――――
??「いや~助かったよ……って言葉、わかる?」
シャル「IS学園入学の必須なんです、日本語は」 ニコ
??(うはっ か、可愛えぇ……)///
??「っと! 自己紹介がまだだった!」
??「俺は、花村 陽介! よろしく!」
シャル「シャルロット・デュノアです。 よろしくね、花村くん」 ニコ
花村(くうっ…! 悠! 心底お前が、うらやましい!!) ウルウル…
シャル「?」 ニコ ニコ
309: 2016/04/23(土) 19:19:38 ID:x6SncPAc
IS学園寮・一夏と鳴上の部屋
コン コン
シャル「一夏~? 鳴上くん、居る~?」
一夏「ん~? シャルか? 悠もいるぞ」
ガチャ
シャル「良かった。 鳴上くんに お客さんだよ?」
鳴上「?」
鳴上「俺に客?」
花村「悠!」
鳴上「陽介!?」
310: 2016/04/23(土) 19:20:25 ID:x6SncPAc
花村「久しぶりだなあ、相棒!!」
鳴上「陽介、どうしたんだ? 突然?」
鳴上「連絡してくれたら迎えに行ったのに……」
花村「いやぁ……なに? こういうのって」
花村「サプライズさせた方がもりあがんじゃん?」 ニヤリ
鳴上「変わってないな、陽介」 クスッ
―――――――――――
鳴上「ジュネスの店長会議にくっついて来たのか」
花村「そ! 会場がこの近くなんで、親父に頼み込んでムリヤリ、な」
一夏「へえ……ジュネスって、あの全国展開してる大手の」
シャル「エブリデイ・ヤングライフ・ジュ ネ ス♪ ……だね?」
花村「くううう! ありがとう! お嬢さん!」
シャル「あはは……」
311: 2016/04/23(土) 19:21:02 ID:x6SncPAc
花村「ところで悠」
花村「IS?ってやつ? 良かったら見せてくれるか?」
鳴上「ああ、かまわない」
花村「よっしゃ! 楽しみぃ~!」
一夏「お? それなら、俺と模擬戦形式で見せるってのはどうだ? 悠?」
鳴上「……面白いな」
花村「マジで!? すげえ!!」
花村「一夏……だっけ? サンキューな!」
花村「俺の事も陽介って呼んでくれ!」
一夏「ああ。 よろしく、陽介」
312: 2016/04/23(土) 19:21:35 ID:x6SncPAc
花村「こう言っちゃ何だが」
花村「俺も悠とは殴りあった仲なんだ」
花村「だから、気兼ねしないでくれよ?」
一夏「へえ? いったい何が原因で?」
花村「ははは……そいつぁ、ちょっと」
花村「なあ、悠?」
鳴上「陽介から一方的に殴りかかられた……」 ハア…
花村「おまっ!? そういう事、言っちゃう!?」
アハハハ…
313: 2016/04/23(土) 19:22:25 ID:x6SncPAc
第三アリーナ
鳴上「…………」 スチャ(メガネ装備)
鳴上「イザナギ!」 スウウウウウンッ!
一夏「白式!」 スウウウウウンッ!
花村「おおっ! すげえぇぇぇ!」
花村「どっちもかっけぇぇぇ!」
シャル(この人、ホントに楽しそう…) クス
314: 2016/04/23(土) 19:23:14 ID:x6SncPAc
一夏「対戦成績はタッグマッチを含めて、俺の三勝四敗……」
一夏「今日こそ、イーブンに持ち込む!」
鳴上「……そう上手くは行かないぞ?」
鳴上「陽介にいい所を見せたいしな」 クスッ
花村「くううう! がんばれ! 悠~!」
シャル「花村くん、楽しそうだね」 クスッ
花村「おおよ! 俺は、毎日楽しんで生きてるんだぜ?」
花村「どんな些細な事も、何でもない日常も!」
花村「俺にとっては、生きてる事そのものが楽しいんだ!」
シャル「…!!」
シャル(…………)
シャル(もしかしたら……?)
315: 2016/04/23(土) 19:23:45 ID:x6SncPAc
シャル「花村くん」
花村「うん?」
シャル「自分と向き合うって……難しいね?」
花村「いっ!?」
シャル「うふふっ」 ニコッ
花村(ゆ、悠の奴……!)///
花村(でも……これってひっとしたら脈アリじゃね!?)///
シャル「一夏~! がんばって~!」
花村「…………」
花村「…っきしょおおおおお!!」
花村「悠ー!! 負けるなー!!」
316: 2016/04/23(土) 19:24:18 ID:x6SncPAc
―――――――――――
夜
屋上
シャル「花村くんて面白い人だったね」
一夏「ああ、いい友達になれそうだ」
一夏「……悠との勝負は、負けちまったけどな」
シャル「ふふ、気にしない気にしない」 ニコ
一夏「それにしても、悠にあんな友達が居たなんてな」
シャル「ホント、花村くん、楽しそうだった」
一夏「…………」
シャル「ちょっと話をしてみたんだけど……」
317: 2016/04/23(土) 19:24:58 ID:x6SncPAc
シャル「どんな些細な事も、なんでもない日常も」
シャル「花村くんは生きている事、そのものが楽しいんだって言ってた」 ニコ
一夏「……すごいポジティブ思考だな」
シャル「ボクから見たら凄くうらやましく思えたけどね」 クスッ
一夏「…………」
一夏「……そ、それにしても」
シャル「?」
一夏「陽介の事……ずいぶん話すのな」
シャル「??」
一夏「…………」///
シャル「…………」
318: 2016/04/23(土) 19:25:28 ID:x6SncPAc
シャル「……あ」
シャル「もしかして……焼いてる?」
一夏「ぐ……わ、悪いかよ」///
一夏「アリーナのスタンドで」
一夏「陽介とシャルが仲よさそうに話してるの見てたら」
一夏「落ち着かなくて……」///
シャル「!」
シャル「鳴上くんに負けたのって……まさか」
一夏「…………」///
シャル「ふふっ。 なんだか、うれしい」
シャル「一夏がボクにやきもちを焼いてくれるなんて」///
ギュッ
319: 2016/04/23(土) 19:26:14 ID:x6SncPAc
一夏「!」///
一夏「シャル……」///
シャル「こ、これで、安心してくれる?」///
一夏「お、おう……でも抱きしめられるとは思わなかった」///
シャル「よ、良かったら」///
シャル「一夏もボクを抱きしめてくれると嬉しいな」///
一夏「よ、よし…!」///
ギュッ
シャル「んっ。 一夏、暖かい」///
320: 2016/04/23(土) 19:26:48 ID:x6SncPAc
一夏「シャル……」///
シャル「一夏……」///
シャル「大好きっ」///
おしまい
321: 2016/04/23(土) 19:27:51 ID:x6SncPAc
――鈴エンド――
322: 2016/04/23(土) 19:53:39 ID:x6SncPAc
一夏「鈴が、一番好きだ!」///
鈴「!!」
セシリア「…………」
箒「…………」
シャル「……っ」
ラウラ「……行こう、みんな」
323: 2016/04/23(土) 19:54:15 ID:x6SncPAc
鈴(みんな……)
一夏(……やっぱり、胸が痛むな)
鈴「…………うっ」
鈴「ひぐっ……」 ポロポロ
一夏「!? …鈴?」
鈴「ごめ…ん、一夏」 ポロポロ
鈴「あ、あたし……多分だめ、だと思ってて」
鈴「なんか……わかんないけど……とまらない、…の」 ポロポロ
一夏「…そうか」
一夏「…………」
324: 2016/04/23(土) 19:54:55 ID:x6SncPAc
一夏「俺……その、気づいてやれなくて、ごめん」
鈴「…………」
一夏「鈴は子供の頃から存在が近すぎて」
一夏「鈴も俺と同じように……友達として付き合っているって思ってた」
鈴「…………」
一夏「……でも」
一夏「悠に色々言われた事や……鈴の告白で」
一夏「ああ、そうかって、やっと分かった」
鈴「一夏……」
325: 2016/04/23(土) 19:55:30 ID:x6SncPAc
一夏「俺は……鈴をちゃんと見てなかったんだ、って」
一夏「ごめんな、鈴」
鈴「ううん、もういい」///
一夏「…………」///
鈴「…………」///
一夏「……えっと」///
鈴「う、うん」///
一夏「その……」///
鈴「う、うん。 なに?」///
一夏「俺と……付き合ってもらえますか?」///
鈴「は、はい!」///
326: 2016/04/23(土) 19:56:05 ID:x6SncPAc
―――――――――――
数週間後
IS学園・校門付近
???「お父さん! 早く、早く!」
??「おおい、ちょっと待ってくれ…」
守衛「はい、確認取れました」
守衛「堂島さん、この腕章を必ず着けてくださいね」
堂島「わかりました」
堂島「おい、菜々子。 ほら……これを着けるんだ」
菜々子「は~い!」
327: 2016/04/23(土) 19:56:41 ID:x6SncPAc
―――――――――――
鳴上「伯父さん!」
堂島「悠! 久しぶりだな!」
菜々子「お兄ちゃん!!」
鳴上「菜々子、久しぶり。 大きくなったな」
菜々子「うん! あのね、菜々子、3㎝も伸びたんだよ!」
鳴上「そうか。 よかったな」 ニコ
328: 2016/04/23(土) 19:57:23 ID:x6SncPAc
堂島「ところで悠、学校はどうだ?」
鳴上「楽しいですよ」 ニコ
堂島「はは。 聞くまでも無かったな」
堂島「これだけ可愛い娘さん達に囲まれていたら……」
菜々子「……お父さん!!」 ペシペシ!
堂島「うおっ! い、痛い、菜々子!」
堂島「悪かった、お父さんが悪かった!」
鳴上「ハハハ…」
330: 2016/04/23(土) 19:57:59 ID:x6SncPAc
第三アリーナ
一夏「甘いぜ! 鈴!」
鈴「…くっ!」
ドンッ ドンッ ドンッ!!
一夏「はあっ」
ヒュバッ!
鈴「…………」
鈴「…?」
一夏「……チェックメイト」
鈴「もう……また負けた」
331: 2016/04/23(土) 19:58:43 ID:x6SncPAc
一夏「でも、イグニッション・ブーストも大分モノになって来たな」
鈴「う~ん……使い所が難しいわね。 エネルギーもけっこう食うし」
鈴「あたしには向いてないかも……」
一夏「ま、おぼえといて損は無いと思うぜ?」
鈴「まあね……」
鈴「……あれ?」
一夏「ん? どうした? 鈴?」
鈴「ほら、あそこ」
一夏「……お、悠。 と、誰だ? あの親子?」
鈴(親子……?)
鈴(あ! もしかして!)
332: 2016/04/23(土) 19:59:30 ID:x6SncPAc
鈴「そういえばさ」
鈴「近く親戚が訪ねて来るって、言ってなかった?」
一夏「ああ! 言ってた言ってた!」
一夏「あれ、今日だったのか……」
鈴「ねえ、一夏」
鈴「休憩がてら、挨拶しておかない?」
一夏「お、いいな。 行ってみるか!」
333: 2016/04/23(土) 20:00:05 ID:x6SncPAc
菜々子「うわあ……かっこいい!」
鈴「うふふ、ありがと!」
菜々子「そっちのお兄さんのも、真っ白でかっこいい!」
一夏「ハハ、ありがとう、菜々子ちゃん!」
菜々子「菜々子、お兄ちゃんのあいえすも見たい!」
鳴上「え?」
一夏「いいじゃないか、悠。 見せてやれよ」
鳴上「しかし……今は一夏達が」
鈴「ああ、それなら気にしないで。 あたし達はもういいから、ね?」
鳴上「そうか……じゃあ、お言葉に甘えるかな」 ニコ
334: 2016/04/23(土) 20:00:50 ID:x6SncPAc
―――――――――――
鳴上「…………」 スチャ(メガネ装備)
鳴上「イザナギ!」 スウウウウウンッ!
菜々子「わああああっ! 見て見て! お父さん!」
菜々子「お兄ちゃんのあいえす、すっごくかっこいい!!」
堂島「ははは……良かったな、菜々子」
一夏「ようし、菜々子ちゃん、ちょっとお兄ちゃんと戦っていいかな?」
鳴上「お、おい!? 一夏……」
菜々子「えっ!? お兄ちゃんと!?」
鳴上「あまり刺激的な事は……」
一夏「わかってるよ。 せっかくなんだし……悠のいい所、見せてあげたいんだ」
鳴上「う、う~ん……」
335: 2016/04/23(土) 20:01:24 ID:x6SncPAc
鈴「じゃ、あたし、観客席に行って解説する!」
鈴「菜々子ちゃん 可愛いし、近くで見たいし!」 ニコ
鳴上「……わかった」
鳴上「でも、激しいのは絶対無しだぞ?」
一夏「ああ、わかってるって!」
―――――――――――
菜々子「わあああっ! お兄ちゃん! がんばって!」
コンッ! キンッ! カァンッ!
堂島「ほう……! これは凄いな」
鈴「ふふっ。 ま、本来の実力の1%も出していませんが……」
堂島「これが……1%にも満たない!?」
鈴「あの二人が本気を出したら、目で追うのも大変なんですよ?」
堂島「そ、そんなにか!? ……信じられん」
菜々子「いけー! お兄ちゃん!」
336: 2016/04/23(土) 20:01:55 ID:x6SncPAc
鈴「あの……」
堂島「ん?」
鈴「悠に……少しだけ聞いたんです。 堂島さん一家の事」
堂島「! ……それは、妻の事も、か?」
鈴「はい……」
堂島「……参ったな」
鈴「あたし……少し悩んでいた時期があって、その時に聞きました」
鈴「想っているだけじゃ、伝わらないって」
堂島「!」
堂島「…………」
堂島「……そうか」
337: 2016/04/23(土) 20:02:30 ID:x6SncPAc
堂島「その……あいつは、悠は、何か言ってたか?」
鈴「ええ」
鈴「自分を含めて」
鈴「『家族』になれた、って言ってました」 ニコ
堂島「…………」
堂島「ふふ、嬉しいものだな」 クスッ
鈴「………」 ニコ ニコ
338: 2016/04/23(土) 20:03:05 ID:x6SncPAc
堂島「ところで……君は伝えたのかい? 想いを……」
鈴「……ええ」
鈴「…………」///
堂島「………?」
堂島「…………」
堂島(……ああ、あの男子生徒の事を)
堂島(年頃の娘さんだ……そういう意味だったか)
堂島「……青春、だな」 クスッ
339: 2016/04/23(土) 20:03:40 ID:x6SncPAc
―――――――――――
IS学園・食堂
菜々子「すごかったね! お父さん!」
菜々子「お兄ちゃんがビューンって来て」
菜々子「一夏お兄さんの事、倒しちゃったんだよ!」 キラキラ
堂島「ああ、お父さんも見てたぞ。 凄いな、悠は」
菜々子「うん! お兄ちゃん、強いんだね!」 キラキラ
堂島「ははは」
340: 2016/04/23(土) 20:04:17 ID:x6SncPAc
鳴上「おまたせ、菜々子」
菜々子「わあ! プリン! 菜々子、大好き!」
鳴上「ジュースもあるからな」
菜々子「うん!」
一夏「堂島さん、あんぱんと牛乳でしたっけ?」
堂島「お、すまないな一夏君」
一夏「悠はスパゲティか」
鳴上「ああ。 一夏はいつものラーメン、鈴はクレープか……めずらしいな」
鈴「ま、たまには、ね」
鈴「さ、食べましょ!」
341: 2016/04/23(土) 20:04:51 ID:x6SncPAc
堂島「しかし、こんな時間に学食が開いてるんだな……」
一夏「IS学園は全寮制ですから」
一夏「夕方……つまり今くらいから、また開店するんですよ」
堂島「なるほど」
菜々子「おいしい!」
菜々子「ジュネスのプリンと同じくらい、おいしい!」
鳴上「よかったな、菜々子」
鈴「ふふ。 IS学園はスイーツメニューも充実してるからね」
342: 2016/04/23(土) 20:05:40 ID:x6SncPAc
菜々子「……あのう、一夏お兄さん」
一夏「うん? なに?」
菜々子「お兄ちゃんに負けちゃって……痛い所とか、無い?」
一夏「はは、全然ないよ? ありがとう、心配してくれて」
鈴「ISはね、ケンカしても怪我しないように出来てるの」
鈴「だから大丈夫だよ?」 ニコ
菜々子「そうなんだ! よかった……」
一夏「それに菜々子ちゃんのお兄ちゃんは強いけど」
一夏「とっても優しいんだ。 だから怪我なんてしないよ」 ニコ
菜々子「うん! 菜々子も知ってるよ!」
菜々子「お兄ちゃん、とっても優しい!」
ハハハ…
343: 2016/04/23(土) 20:06:14 ID:x6SncPAc
菜々子「だから菜々子、お兄ちゃんと結婚するの!」///
一夏「お、よかったな、悠!」
鳴上「お、おう」
鈴「ふふ……悠、覚悟しときなさいよ?」
鈴「女の子の『一途』は、馬鹿にすると怖いんだからね!」 ニコ
一夏・鳴上(鈴が言うと、説得力あるなぁ……)
鈴「菜々子ちゃん」
鈴「お姉ちゃん、応援するから頑張ってね!」
菜々子「うん!」///
ハハハ…
344: 2016/04/23(土) 20:06:54 ID:x6SncPAc
堂島「……さて、菜々子」
堂島「そろそろ……帰らないといけない時間だ」
菜々子「!!」
菜々子「……うん」
堂島「また、来よう。 な?」
菜々子「……うん」
鈴「…………」
一夏「…………」
鳴上「…………」
345: 2016/04/23(土) 20:07:36 ID:x6SncPAc
―――――――――――
IS学園・校門付近
堂島「すまないな、見送ってもらって…」
一夏「いえ」
鈴「あたし達も楽しかったです!」
鈴「菜々子ちゃん、また一緒にプリン食べようね?」
菜々子「うん!」
346: 2016/04/23(土) 20:08:09 ID:x6SncPAc
鳴上「おじさん、実は……」
鳴上「今度の連休、八十稲羽に帰ろうかと思っているんです」
菜々子「!!」
菜々子「ホント!? お兄ちゃん!?」
堂島「おお、そうか! いつでも歓迎するぞ!」
堂島「よかったな、菜々子……」
菜々子「うん!!」
菜々子「お兄ちゃん、いっぱい、いっぱい! 遊ぼうね!」
鳴上「ああ、菜々子、いっぱい遊ぼうな」
347: 2016/04/23(土) 20:08:53 ID:x6SncPAc
一夏「…………」
鈴「…………」
鈴「いい家族だね」 クスッ
一夏「……ああ」 クスッ
ギュッ…
一夏(!)
一夏(鈴、手を握って……)///
鈴「ちょ、ちょっと……気が早いけど」///
鈴「あたし……」///
鈴「一夏と……あんな家族になれたらって、思う……」///
348: 2016/04/23(土) 20:09:31 ID:x6SncPAc
一夏「……うん」///
一夏「俺も、そう思う」///
鈴「ふふ……ありがと、一夏」///
鈴「大好きっ」///
おしまい
349: 2016/04/23(土) 20:10:26 ID:x6SncPAc
――箒エンド――
350: 2016/04/23(土) 20:11:25 ID:x6SncPAc
一夏「箒が、一番好きだ!」///
箒「!!」
鈴「………っ」 ダッ
セシリア「! …鈴さん」
シャル「…………」
ラウラ「……行こう、みんな」
一夏(……やっぱり、胸が痛むな)
箒(……みんな)
351: 2016/04/23(土) 20:11:59 ID:x6SncPAc
箒「……どうしてだろう」
一夏「……うん?」
箒「こうなる事を望んでいたハズなのに」
箒「複雑な心境だ……」
一夏「箒……」
一夏「それは俺もだ」
箒「一夏……」
一夏「告白してくれた時まで……」
一夏「箒が、俺を想ってくれているなんて」
一夏「想像もしてなかった」
箒「…………」
352: 2016/04/23(土) 20:12:57 ID:x6SncPAc
一夏「でも、ハッキリ言ってくれて俺は嬉しかった」
一夏「箒の本音を初めて聞けたって、思えた」
箒「う、うん」///
一夏「だから、言える」
一夏「福音の時みたいに、その場の雰囲気で流された、とかじゃなく」
一夏「俺も……箒の事が好きだ、って」///
箒「い、一夏……!」///
一夏「…………」///
箒「…………」///
一夏「箒……」///
一夏「俺と……付き合ってくれるか?」///
箒「ああ……もちろんだ、一夏」///
353: 2016/04/23(土) 20:13:36 ID:x6SncPAc
―――――――――――
数週間後
IS学園校門付近
??(…………)
??(…………)
??「あ! 鳴上……じゃなくて、悠先輩!」
鳴上「すまない、ちょっと遅れた……」
??「いえ。 私の方が突然 訪ねたんですから……」///
354: 2016/04/23(土) 20:14:30 ID:x6SncPAc
鳴上「腕章は……着けているな」
鳴上「……ん?」
鳴上「どうして楽器を持ってきたんだ? 荷物になるだろうに」
??「あ……その」
??「三校交流合唱会の宿は、ここからちょっと遠かったので」
??「行きしなに寄ろうと思って」///
鳴上「そうか」
鳴上「じゃあ、それは俺が持とう、綾音」 ニコ
綾音「あ、すみません、悠先輩」
355: 2016/04/23(土) 20:15:12 ID:x6SncPAc
ザワ… ザワ…
箒(……?)
箒(なんだか……騒がしいな?)
モブ子「……見た?」
モブ美「見た見た! 鳴上くん、可愛い他校の彼女を連れてたの!」
モブ枝「や~ん! 鳴上くん、狙ってたのに~!」
箒(ほう?)
356: 2016/04/23(土) 20:15:46 ID:x6SncPAc
モブ子「で、で!? 今どこに!?」
モブ美「さっき校舎の前にいたから、次はアリーナ辺りを見せるんじゃない?」
モブ枝「いいなあ……校内でデートかあ。 あこがれちゃう!」
キャハハハ…
箒(…………)
箒(ちょっと、興味があるな) クスッ
箒(見に行ってみよう……)
357: 2016/04/23(土) 20:16:28 ID:x6SncPAc
第二アリーナ・スタンド
綾音「す、凄いです! 八十神高校とは、比べ物に成りませんね」
鳴上「比べるものにもよる」 クスッ
鳴上「ここは近代的だけど、人工物ばかりで落ち着かない時もある」
鳴上「それに……」
綾音「それに?」
鳴上「綾音が居ない」 ニコ
綾音「!!」///
綾音「ゆ、悠先輩! も、もう……恥ずかしいです……!」///
鳴上「ははは……」
箒(…………)///
箒(ち、近寄りがたい、雰囲気だ)///
358: 2016/04/23(土) 20:17:18 ID:x6SncPAc
一夏「あれー? 悠?」
鳴上「一夏」
一夏「何してるんだ? こんな所で?」
箒(…………)
箒(……さすが一夏だ) ハア…
一夏「お? そっちの女の子は?」
鳴上「俺の彼女」
一夏「はあ!?」
綾音「ゆ、悠先輩!」///
箒(……鳴上は鳴上で、規格外だな) 唖然…
359: 2016/04/23(土) 20:17:57 ID:x6SncPAc
一夏「そ、そうなのか。 でも、悠」
鳴上「うん?」
一夏「お前……中学生の女の子を彼女にするなんて……」
一夏「いいのか?」
綾音「ちゅ、中学生じゃありません!」
綾音「そ、そりゃ、私、ちっちゃいですけど……」///
綾音「こう見えても、高校二年生です!!」
一夏「へ?」
一夏「だって、悠の事……先輩って?」
鳴上「…………」
鳴上「……あ」
360: 2016/04/23(土) 20:18:42 ID:x6SncPAc
一夏・箒「本当は18!?」
一夏「って、箒!? いつの間に!?」
箒「こ、細かい事は置いておけ!」///
箒「それより……18って、どうして一年生に転入して来たんだ!?」
鳴上「一番の理由は、ISの基礎学力がまったく無かったからだ」
鳴上「そんな状態でいきなり三年生など出来ないだろ?」
箒「た、確かに……」
一夏「聞いてみれば、至極まともな理由だな……」
鳴上「それに……周りが女子だけ、というのもちょっと、な」
綾音「…………」
一夏(その気持ち、わかるぜ、悠!)
361: 2016/04/23(土) 20:19:14 ID:x6SncPAc
一夏「通りで大人びている訳だ……」
箒「妙に落ち着き払っているのも、その為か……」
鳴上「篠ノ之博士に無理矢理 転入させられる事になったけど」
鳴上「俺にISを使える才能があるのなら」
鳴上「それを生かす方法を見つけたい」
鳴上「今は、そう思っている」
鳴上「多少……回り道になるけどな」 クスッ
一夏「…………」
箒(……立派だ)
綾音(さすがです、悠先輩)///
一夏(俺なんてされるがまま ここに来て、なんとなく通っているのに……)
362: 2016/04/23(土) 20:20:05 ID:x6SncPAc
箒「?」
箒「鳴上、その荷物は?」
鳴上「ああ、これは……」
綾音「私の荷物です。 悠先輩が持ってくれるって言うので、甘えました」///
一夏「何かのケースだな」
綾音「楽器です。 トロンボーン奏者なんですよ、私」 テヘ
箒(…!)
一夏「へえ。 そりゃ聞いてみたいな」
箒「そうだな。 音楽室にトランペットもあるだろうし」
箒「聞かせてくれないか? 鳴上と二人で」 ニコ
綾音「ええっ!?」
鳴上「!?」
363: 2016/04/23(土) 20:20:35 ID:x6SncPAc
IS学園・音楽室
綾音(悠先輩……私の事、話したんですか?) ヒソヒソ
鳴上(……色々あって) ヒソヒソ
綾音(も、もう……)/// ヒソヒソ
一夏「ほら、悠、トランペット」
一夏「それにしても……お前って多才だな」
鳴上「……はっきり言って、本当に久しぶりなんだ」
一夏「いいじゃないか。 聞かせてくれよ」 クスッ
綾音「えと……悠先輩、あの時の曲ならできますか?」
鳴上「ああ。 と言うか、多分それしか出来ない……」
綾音「ふふ、わかりました」 クスッ
364: 2016/04/23(土) 20:21:10 ID:x6SncPAc
~♪ ~♪ ~♪
……その曲は、私の知らない曲だった。
後で綾音に聞いたのだが
とある学校での少年の物語の曲なのだそうだ。
無慈悲な言葉の羅列や
世間の常識、そして、目に翻弄され
少年の日常は狂ってしまう……
365: 2016/04/23(土) 20:21:44 ID:x6SncPAc
それはまるで濃い霧の様に
光を奪い、少年の心を荒廃させ
人を、信じる事を、出来なくさせる
でもある日。 悩み続けた彼に
友人から手紙が届く
少年はやっと気づく
366: 2016/04/23(土) 20:22:23 ID:x6SncPAc
『一人ではない』事に。
みんなと過ごした日々
幼い頃に交わした約束
大切な言葉……
367: 2016/04/23(土) 20:23:07 ID:x6SncPAc
いつの間にか忘れていたけど
それは心の奥に
いつもあった事を思い出す
目には見えないけど
人同士のつながり
『絆』を……
~♪ ~♪ ~♪
368: 2016/04/23(土) 20:23:55 ID:x6SncPAc
一夏「…………」
箒「…………」
鳴上「…………」
綾音「……ど、どうでしたか?」
一夏「なんだよ……上手いじゃないか!」 パチパチパチ!
箒「ああ……とても」
箒「幸せな気持ちになれた」 ニコ
綾音「!!」
鳴上「よかったな、綾音」 ニコ
綾音「……も、もう、ずるいです、みなさん…」/// グスッ…
一夏(……あれ、なんで泣くの? あの娘?)
369: 2016/04/23(土) 20:24:34 ID:x6SncPAc
―――――――――――
夜
屋上
一夏「そうか……そんな理由があったのか」
箒「ああ」
箒「私が一夏に告白できたのも……彼女のおかげかもしれない」
一夏「違うよ」
箒「えっ?」
一夏「それは、きっかけに過ぎない」
一夏「あの告白は……箒の努力のたまものさ」
箒「一夏……」
370: 2016/04/23(土) 20:25:06 ID:x6SncPAc
一夏「そうそう、俺も悠の秘密を話そうか?」
箒「? なんだ?」
一夏「実は……悠って、六股掛けてたんだって」
箒「……は?」
一夏「だから、悠は六股を…」
箒「バカも休み休み言え。 鳴上がそんな事をするはずが無い」
一夏「……俺もそう思った。 けどな」
一夏「なんだか放っておけない……守ってあげたい」
一夏「支えてあげたい……望みを叶えてあげたい」
一夏「……そんな気持ちに すべて答えている内に」
一夏「六股かけていたそうだ」
箒「!」
371: 2016/04/23(土) 20:25:58 ID:x6SncPAc
箒「なるほど……」
箒「そういう事だったのか」
一夏「今のうちなら、みんな傷つくけど『すり傷』ですむ」
一夏「悠は、自分みたいに全身複雑骨折する事は無い、って」
一夏「俺の背中を押してくれた」
箒「……冗談に聞こえないな」
一夏「ああ。 俺も思った」
一夏「でも、だからこそ言えるんだろう」
箒「…………」
372: 2016/04/23(土) 20:26:31 ID:x6SncPAc
箒「……あの娘」
箒「綾音は、不安だろうな」
一夏「…………」
箒「一夏以外は、みんな女という環境に自分の彼氏が居る」
箒「それなのに自分は、鳴上のそばに居られないのだから……」
一夏「箒……」
ギュッ…
箒「!? い、一夏!?」///
一夏「い、嫌……だったか?」///
箒「い、いや、そ、そのっ……心の準備が」///
箒「いきなり後ろから抱きしめるなんて……」///
一夏「その……箒も不安なのかな?と思って……」///
箒「!」///
373: 2016/04/23(土) 20:27:01 ID:x6SncPAc
箒「…………」///
箒「そ、その、一夏……嫌がってるわけじゃない」///
箒「……でも、放してくれないか?」///
一夏「お、おう」///
スッ…
箒「…………」///
一夏「…………」///
374: 2016/04/23(土) 20:27:36 ID:x6SncPAc
ギュッ…
一夏「!」
一夏「ほ、箒……」///
箒「こ、こういう事は、向き合って行うものだろう?」///
一夏「箒……」///
一夏「そうだな」/// クスッ
ギュッ…
箒「んっ……ありがとう、一夏」///
箒「私は幸せだ」///
おしまい
375: 2016/04/23(土) 20:28:40 ID:x6SncPAc
――ラウラエンド――
376: 2016/04/23(土) 20:31:18 ID:x6SncPAc
一夏「ラウラが、一番好きだ」///
ラウラ「!!」
鈴「……っ」 ダッ
箒「! ……鈴」
セシリア「……鈴さん」
シャル「……行こう、みんな」
一夏(…やっぱり、胸が痛むな)
ラウラ(…………)
377: 2016/04/23(土) 20:32:00 ID:x6SncPAc
ラウラ「いいのか? 一夏。 私なんかで……」
ラウラ「正直……私が選ばれるなど、無いと思ってた」
一夏「ラウラの告白が効いた」 クスッ
ラウラ「!?」///
一夏「そりゃ確かに、あんまり気の効いた台詞ってわけじゃ無かったけど……」
一夏「初めてラウラの姿が見えた気がした」
ラウラ「私の……姿?」
一夏「ラウラは、見た目以上に幼いんだなって……」
ラウラ「!」
378: 2016/04/23(土) 20:32:32 ID:x6SncPAc
ラウラ「……それは、保護者的な目線だ」
ラウラ「私は……そんな風に見てもらいたくない!」
一夏「悪い。 言葉が足りなかったな」
ラウラ「?」
一夏「表現の仕方が幼かった、だ」
ラウラ「!」
一夏「ラウラは、育てられた環境が俺達とかなり違う」
一夏「そんな中で一生懸命考えてくれた あの言葉は」
一夏「本当に嬉しかった……」
ラウラ「一夏……」
379: 2016/04/23(土) 20:33:12 ID:x6SncPAc
一夏「だから、俺もそれに答えたいと思う」
一夏「ラウラ……」
ラウラ「う、うむ……」///
一夏「俺と……」
一夏「男女の関係で、恋愛の対象として」
一夏「付き合ってくれるか?」 クスッ
ラウラ「!!」///
380: 2016/04/23(土) 20:33:54 ID:x6SncPAc
ラウラ「…………」///
ラウラ「ずるいぞ、一夏」///
ラウラ「私の告白をまるまる盗用しているではないか……」///
一夏「すまん……返事は?」 ニコ
ラウラ「そんなもの、決まっている」 クスッ
ラウラ「異論は無い!」/// ニコッ
381: 2016/04/23(土) 20:34:32 ID:x6SncPAc
―――――――――――
数週間後
IS学園校門付近
??「オヨヨ~!」
??「これがセンセイの居る、IS学園クマね」
??「八十稲羽とは全然違うクマ」
??「…………」
??「ぬふふ……センセイ」
??「今行くクマ~!!」
382: 2016/04/23(土) 20:35:12 ID:x6SncPAc
ラウラ「…………」 テク テク
ラウラ「……?」 ピト…
守衛「だーかーらー! 身分証の提示も無しで入れられないって!」
??「クマはクマクマ! それ以外の何者でもないクマ!」
守衛「わからん奴だな! 人を呼ぶぞ!」
クマ「クマは それでもかまわないクマよ?」
クマ「IS学園は、女の子いっぱいクマ! だから、ぜひそうして欲しいクマ!」
守衛(……話が噛み合わん)
ラウラ(なんだ? あの金髪の男は?)
383: 2016/04/23(土) 20:35:55 ID:x6SncPAc
クマ「あ、そうそう! クマはセンセイの友達クマ!」
守衛「先生? 教師に知り合いが居るのか?」
クマ「センセイはセンセイ、クマ! 鳴上 悠って名前クマ!」
ラウラ(!?)
守衛「ふむ。 ま、そんなに言うなら ちょっと調べて……」
ラウラ「おい」
守衛・クマ「?」
ラウラ「お前……クマ、と言ったか?」
ラウラ「クマの言う鳴上とは、生徒の事ではないのか?」
クマ「おおう! ぷりち~が~る! そうクマ! ここの寮にいるクマ!」
守衛「…………」
384: 2016/04/23(土) 20:36:38 ID:x6SncPAc
―――――――――――
鳴上「………クマ」
クマ「センセ~イ! 会いたかったクマ~!」
守衛「君の友人なのは、間違い無いと?」
鳴上「はい……」
守衛「……それでは、身分証の提示が無いので」
守衛「この……クマ?君の住所と名前を」
鳴上「はい」
鳴上(クマの住所は……陽介の所でいいか) カリカリ…
鳴上(!? ……クマの氏名って!?)
鳴上(…………)
鳴上(…………) カリカリ…
385: 2016/04/23(土) 20:37:11 ID:x6SncPAc
鳴上「……どうぞ」
守衛「ふむ……八十稲羽市? ずいぶん遠くから来たもの……」
氏名 熊田 熊男
守衛「………………………………」
鳴上「………………………………」
守衛「……君はふざけて」
鳴上「待ってください! 守衛さん!」
鳴上「これには……少し事情があるのです!」
鳴上「まず、クマの両親が別れた事が最初でした……」
386: 2016/04/23(土) 20:38:02 ID:x6SncPAc
20分後…
守衛「うう……そうだったのか」
守衛「再婚相手の苗字が熊田で……」 ボロボロ…
鳴上「そうです……彼は、何も悪くないのに」
鳴上「あんな氏名になってしまい」
鳴上「あの様な人格に……!」
守衛「わかった、わかったよ。 私だって突然そんな名前になったら」
守衛「やりきれない気持ちになる」
守衛「さあ、腕章だ。 いつまでもクマ君の友達でいてくれよ?」
鳴上「もちろんです」
鳴上(……よし、何とかごまかせた)
387: 2016/04/23(土) 20:38:41 ID:x6SncPAc
鳴上「待たせたな、ク……」
鳴上「?」
ラウラ「…………」
鳴上「……ボーデヴィッヒ、クマは?」
ラウラ「トイレに行きたい、と言うので場所を教えた」
鳴上「どれくらい前だ?」
ラウラ「そろそろ10分になる」
鳴上「…………」
ラウラ(!!)
ラウラ(……初めて見た)
ラウラ(鳴上が頭を抱えている様を……!)
388: 2016/04/23(土) 20:39:11 ID:x6SncPAc
食堂
クマ「ここは凄いクマ!」
クマ「右を向いても左を向いても女の子祭りクマ~♪」
クマ「クンクン……それにいい匂いクマ~」
ザワ… ザワ…
モブ子「……誰? あの男子?」
モブ美「もしかして……第三の男性IS適正者、とか!?」
モブ枝「まさか……」
389: 2016/04/23(土) 20:39:45 ID:x6SncPAc
クマ「ねえねえ、君たち♪」
モブ子「うえっ!?」
モブ美(話しかけて来た!?)
モブ枝「な、何かな?」
クマ「君たち、可愛いクマねぇ~」
モブ子「は、はあ……」
クマ「クマの逆ナン魂が、揺さぶられるクマ~」
モブ美(逆ナン?)
クマ「でもその前にどうやってご飯を注文するのか、教えて欲しいクマ!」
モブ枝「えっと……?」
390: 2016/04/23(土) 20:40:33 ID:x6SncPAc
クマ「むっほー! おいしいクマ~!」 バクバクバク…
モブ子「ふわぁ……よく食べるわね」
モブ美「ま、見てて気持ちいいけど」
モブ枝「私は逆。 食欲なくすわ……」
モブ子「それで? クマくんは何しにIS学園に来たの?」
クマ「もっちろん、逆ナンクマ!」
モブ美(意味わかって言ってるのかな……)
クマ「あと、センセイに会いに来たクマ!」
モブ枝「へー。 先生って?」
クマ「センセイはセンセイクマ! 鳴上 悠って人クマ!」
モブ三人娘「!!」
391: 2016/04/23(土) 20:41:09 ID:x6SncPAc
ツカ ツカ ツカ ツカ
鳴上「…………クマ」
クマ「オヨヨ! センセイ!」
クマ「見て見て! クマの逆ナンの成果!」
モブ子「え!?」
モブ美「あたし達、逆ナンされてたの!?」
モブ枝「えっと……クマくん?」
ラウラ「…………」
鳴上「……とにかく、クマ、これを着けておけ」
モブ子「あ、外来の腕章」
モブ美「私、着けてあげよっか?」
クマ「オヨヨ~、モブ美さんは優しいクマ~」
392: 2016/04/23(土) 20:41:50 ID:x6SncPAc
モブ美「じゃあね! クマくん!」
モブ美「逆ナン、楽しかったよ!」
モブ子「モブ美、心広すぎ~」
モブ美「いいじゃん! 悪い人じゃないと思うし」
モブ枝「いい意味でも悪い意味でも、欲望に正直なのね…たぶん…」
クマ「みんな、またね~クマ!」
鳴上「……………………」
ラウラ(……また頭を抱えた)
393: 2016/04/23(土) 20:42:24 ID:x6SncPAc
鳴上「……クマ。 どうやってここまで来た?」
クマ「もちろん電車クマ! クマ、初めて新幹線に乗ったクマ!」
鳴上「まさか……お前がお金を貯めてたのって」
クマ「そうクマ! センセイの居るIS学園に来たかったからクマ!」
クマ「陽介にIS学園が女の子パラダイスって聞いて」
クマ「クマの逆ナン魂が、ビンビンにいきり立ったクマ!」
鳴上「…………」
鳴上「……あのな、クマ」
鳴上「気持ちは嬉しいんだが、俺にも都合と言うものがあって……」
クマ「それで、センセイのお部屋はどこクマ?」
鳴上「…………」
ラウラ(…………)
394: 2016/04/23(土) 20:43:03 ID:x6SncPAc
IS学園寮・一夏と鳴上の部屋
クマ「オヨヨー! ここがセンセイの部屋クマか~!」
ラウラ(一夏は留守のようだな……)
鳴上「クマ。 あまりはしゃぐな。 ここは俺だけの部屋じゃない」
鳴上「そっちは同室の男のベッドだ」
クマ「およ? そうクマか……ん?」 クンクン…
クマ「でも何故か、ラウッちのニオイがするクマ……?」
鳴上・ラウラ「そっとしておけ!!」///
395: 2016/04/23(土) 20:43:39 ID:x6SncPAc
鳴上「とにかく、俺にも予定がある……」
鳴上「すまないが、今日はこれで帰ってくれ」
クマ「わかったクマ。 クマは、ここで大人しくしているクマ!」
鳴上「そうか、わかってく」
鳴上「……『ここで』?」
クマ「そうクマよ? しばらくここに住むクマ!」
鳴上「」
ラウラ「」
396: 2016/04/23(土) 20:44:09 ID:x6SncPAc
鳴上「……!」 カチャ…(携帯オープン)
新着メール 件数 11
陽介
陽介
陽介
…
鳴上「…………」
鳴上「クマ」
鳴上「お前……陽介に黙って来たのか?」
クマ「そうクマ!」
鳴上「…………はうっ」 クラッ…
ラウラ「な、鳴上!? し、しっかりしろ!」
397: 2016/04/23(土) 20:52:21 ID:x6SncPAc
―――――――――――
鳴上「……すまない、ボ-デヴィッヒ」
鳴上「しばらくクマを見ていてくれ……」
鳴上「ここは携帯が通じにくい」
鳴上「ちょっと部屋からでる……」
ラウラ「わかった」
パタン…
クマ「~♪~♪」
ラウラ「おい、クマ」
クマ「なにクマ?」
398: 2016/04/23(土) 20:52:58 ID:x6SncPAc
ラウラ「お前は……自分を探していたのでは無いのか?」
クマ「え?」
クマ「何で知ってるクマ?」
ラウラ「やはりか」
クマ「センセイから聞いたクマか?」
ラウラ「お前の出生の秘密は、秘密のままだ」
ラウラ「だが……お前は、鳴上とその仲間に秘密を明かした上で」
ラウラ「そばにいてもいいか、尋ねたと聞いている」
クマ「みんな、いいって言ってくれたクマ!」 ニコ
399: 2016/04/23(土) 20:53:34 ID:x6SncPAc
ラウラ「それも知っている」
ラウラ「ならばなぜ、鳴上を困らせる?」
クマ「えっ?」
ラウラ「見て分からなかったのか?」
クマ「そ、そんな事ないクマ!」
クマ「センセイは、喜んでくれているクマ!」
ラウラ「では聞くが……お前がここに来てから鳴上は、笑っていたか?」
クマ「…………」
クマ「……無いクマ」
400: 2016/04/23(土) 20:54:09 ID:x6SncPAc
ラウラ「非常に厄介だが……人同士の付き合いには」
ラウラ「目に見えないルールが存在する」
クマ「…………」
ラウラ「お前は、まずそれを学ばなければならない」
ラウラ「そうしなければ……」
クマ「しなければ?」
ラウラ「おそらく、だれもお前を必要としなくなる」
クマ「オヨ、オヨヨー!?」
クマ「そ、そんなの嫌クマ~!!」
ラウラ「落ち着くんだ、クマ」
クマ「……クマ?」
401: 2016/04/23(土) 20:54:54 ID:x6SncPAc
ラウラ「人はな、誰でも間違いをしてしまう」
ラウラ「だが……そこから目を背けては駄目だ」
ラウラ「間違いから自分を見つめなおし、学習する事が大切なんだと思う」
クマ「クマは……どうしたらいいクマ?」
ラウラ「考えるんだ」
ラウラ「自分の行動で、どうして鳴上は笑ってくれなかったのか?」
ラウラ「きっとお前は鳴上が喜んでくれると思っていたが……そうではなかった」
ラウラ「それは何故か?」
ラウラ「考えてみるんだ」
クマ「…………」
402: 2016/04/23(土) 20:55:53 ID:x6SncPAc
ガチャ
鳴上「ふう……」
ラウラ「鳴上」
鳴上「待たせた、ボーデヴィッヒ」
クマ「…………」
鳴上「?」
鳴上「クマ?」
クマ「……センセイ」
鳴上(何だか……いきなり大人しくなった?)
鳴上「どうした?」
クマ「クマは、クマは……センセイを困らせたクマ?」
鳴上「!?」
403: 2016/04/23(土) 20:56:23 ID:x6SncPAc
ラウラ「…………」
クマ「ラウッちに言われて、クマ、考えてみたクマ」
クマ「でもクマは……頭悪いからよく分からなくて」
クマ「それでセンセイに聞いてみたクマ……」
鳴上「…………」
鳴上「……そうだな、確かに困った」
クマ「!!」
鳴上「いきなり連絡も無しに来た上に、学園内を勝手に歩き回ったあげく」
鳴上「唐突に、ここへ住みたいとまで言う……」
クマ「オヨ、オヨヨ……」
404: 2016/04/23(土) 20:56:58 ID:x6SncPAc
鳴上「それに陽介もお前が突然いなくなって凄く心配している」
クマ「へ?」
鳴上「陽介だけじゃない」
鳴上「里中も天城も……菜々子だって心配している」
クマ「!!」
クマ「ナナちゃんが!?」
鳴上「そうだ」
クマ「そ、そんな……クマは、クマは、そんなつもりは無かったクマ!」
ラウラ「…………」
鳴上「…………」
405: 2016/04/23(土) 20:57:48 ID:x6SncPAc
クマ「オ、オヨヨ~!!」
クマ「センセイ、ごめんなさいクマー!!」 ぶわわっ…
鳴上「…………」
鳴上「クマ……わかればいい」
クマ「え?」
鳴上「俺は、確かに困ったけど……」
鳴上「お前が会いに来てくれたのは嬉しく思ってる」 ニコ
クマ「!!」
クマ「セ、センセイ~!!」
406: 2016/04/23(土) 20:58:19 ID:x6SncPAc
鳴上「でも、次からは」
鳴上「ちゃんと事前に連絡を入れる事」
鳴上「陽介に黙って出かけない事」
鳴上「これを守るんだ。 わかったな?」
クマ「わかったクマ!!」
ラウラ「…………」 クスッ
407: 2016/04/23(土) 20:59:15 ID:x6SncPAc
IS学園校門付近
ラウラ「いいのか? 鳴上」
ラウラ「今日は実技試験があるのだろう?」
鳴上「かまわない」
鳴上「クマを一人で帰らせる方が心配だしな……」 クスッ
鳴上「あいつは大事な友達なんだ」
ラウラ「そうか」 クスッ
鳴上「それに事情を話したら」
鳴上「担任の先生が別の日に試験をしてくれると言ってくれたし」
ラウラ「なら、一安心だな」
鳴上「ああ」
408: 2016/04/23(土) 20:59:55 ID:x6SncPAc
鳴上「迷惑かけた、ボーデヴィッヒ」
ラウラ「気にするな。 たいした事じゃない」 クスッ
鳴上「メールを入れておいたけど、一夏にもよろしく言っておいてくれ」
鳴上「明日の午前中には戻る」
ラウラ「わかった」
鳴上「じゃ……」
ラウラ「ああ……」
ラウラ「…………」
―――――――――――
409: 2016/04/23(土) 21:00:36 ID:x6SncPAc
夜
IS学園寮・一夏と鳴上の部屋
一夏「……そいつはまた、強烈なキャラだな」
ラウラ「しかも本人に悪意が無いだけに始末が悪い……」
一夏「ははは。 そりゃ確かに」
ラウラ「…………」
一夏「?」
一夏「どうした? ラウラ?」
ラウラ「いや、なんと言うか……身につまされた」
一夏「…………」
ラウラ「つい、クマに説教したが……私だって同じ様なものだった」
ラウラ「一夏を『嫁にする!』とか言ったりしてたし」///
ラウラ「人の事をとやかく言えない……」
410: 2016/04/23(土) 21:01:07 ID:x6SncPAc
一夏「それは考えすぎだ」
ラウラ「そうだろうか……」
一夏「俺だって偉そうな事は言えないけど」
一夏「ラウラのした事は、間違っていないと思う」 クスッ
ラウラ「一夏……ありがとう」 ニコ
一夏「ふふ。 やっと笑ったな」
一夏「ところで……」
ギュ…
ラウラ「い、一夏……!?」///
一夏「今日は、悠がいないけど……どうする?」
ラウラ「う、うむ、一緒に居たい……」///
411: 2016/04/23(土) 21:01:44 ID:x6SncPAc
一夏「!」
一夏「そ、そうか」///
ドサッ… ギシ ギシ
ラウラ「!」///
ラウラ「い、一夏っ」///
ラウラ「腹に硬くなったものを押し付けるなっ」///
一夏「ごめん、無理」///
ラウラ「ま、まだ、時間が早い! 落ち着け!」///
一夏「だめ」///
一夏「せっかく、悠が気を利かせてくれたしな」///
一夏「朝まで……ゆっくりと」///
412: 2016/04/23(土) 21:02:35 ID:x6SncPAc
ラウラ「あ、朝まで!? む、無理っんぐっ!?」///
ラウラ「んんっ…! う…んっ! んんんっ…」///
ラウラ「…………ぷはっ…!」///
一夏「……まだ、嫌か?」///
ラウラ「…………」///
ラウラ「……私が壊れたら」///
ラウラ「お前のせいだからな……?」///
一夏「ふふ。 じゃあ、明かりを消すぞ?」///
ラウラ「……ああ」///
フッ…
おしまい
413: 2016/04/23(土) 21:03:30 ID:x6SncPAc
――セシリアエンド――
414: 2016/04/23(土) 21:04:11 ID:x6SncPAc
一夏「セシリアが、一番好きだ」///
セシリア「!!」
鈴「…………っ」 ダッ
箒「鈴………!」
シャル「……鈴」
ラウラ「行こう……みんな」
一夏(……やっぱり、胸が痛むな)
セシリア(……みなさん)
415: 2016/04/23(土) 21:04:43 ID:x6SncPAc
セシリア「…………」
セシリア「あの、一夏さん」
一夏「ん?」
セシリア「わたくしは ここ最近……皆さんの中で」
セシリア「一番一夏さんと接してきた時間が長かったと思いますが……」
セシリア「それが影響しておりませんか?」
一夏「…………」
一夏「まったく無い、と言えば……嘘になる」
セシリア「…………」
416: 2016/04/23(土) 21:05:16 ID:x6SncPAc
一夏「でも」
一夏「出来うる限り公平に考えて……俺は答えを出した」
一夏「セシリアがタッグマッチのパートナーとして、俺を選んでくれた様に」
セシリア「…………」
一夏「告白も、告白の時に悠に騙されて慌てて駆けつけてくれたのも」
一夏「トーナメントで泣いてくれたのも全部」
一夏「俺の為にしてくれた事だ」
セシリア「…………」
417: 2016/04/23(土) 21:06:28 ID:x6SncPAc
一夏「もちろん、みんなもそうだったと思う」
一夏「だけど……上手く言えないけど」
一夏「セシリアが一番いいって思った……」///
セシリア「一夏さん……」///
一夏「…………」///
一夏「セシリア」///
セシリア「は、はいっ」///
一夏「俺と……付き合ってもらえますか?」///
セシリア「はい! 喜んで!」///
418: 2016/04/23(土) 21:07:29 ID:x6SncPAc
―――――――――――
数週間後・夜
都心・高層ビル・パーティー会場
ガヤ ガヤ…
一夏(うは、この場違い感……)
セシリア「一夏さん、そんなに強張らないでくださいな」 クスッ
一夏「と、言われても……緊張する」
セシリア「単なる立食パーティーと思えば よろしいのですわ」
一夏「お、おう」
一夏(ま……セシリアのドレス姿を拝めただけで満足かな)///
セシリア「? 一夏さん?」
一夏「はは。 なんでもない」///
419: 2016/04/23(土) 21:08:03 ID:x6SncPAc
令嬢「あの……」
一夏「はい?」
令嬢「よろしければ……踊っていただけますか?」
一夏「!」
一夏(き、来た!)
――回想――
セシリア「いいですか? 一夏さん」
セシリア「基本的に社交場でダンスに誘われたら」
セシリア「お受けするのが礼儀です」
420: 2016/04/23(土) 21:09:36 ID:x6SncPAc
セシリア「それも」
セシリア「女性側からの誘いを断るのは」
セシリア「紳士としてもっとも非礼とされています」
セシリア「お気を付けてくださいね?」
―――――――――――
一夏(セ、セシリア) チラ見
セシリア(一夏さん、礼儀ですわよ?) ニコ
一夏「…………」
一夏「よ、喜んで、お嬢さん」
令嬢「ふふっ、ありがとうございます」 ニコ
421: 2016/04/23(土) 21:10:21 ID:x6SncPAc
セシリア「頑張ってくださいね、一夏さん」
セシリア「…………」
??「これは麗しい」
セシリア「はい?」
??「失礼」
??「よろしければ、私と踊っていただけますか?」
??「美しいご令嬢様」
セシリア「あら。 お上手ですわね」 ニコ
セシリア「謹んで お受けいたしますわ」
422: 2016/04/23(土) 21:11:01 ID:x6SncPAc
~♪ ~♪ ~♪
??「…………」
セシリア「…………」
??「ぶしつけながら……」
セシリア「はい?」
??「オルコット家のご息女、と、お見受けしますが」
??「何でもIS学園にお通いとか?」
セシリア「あら……どこかでお会い いたしました?」
??「いえ、風の噂で知っている程度です」 クスッ
セシリア「ふふ、その通りですわ」
セシリア「お転婆で、がっかりなさったでしょう?」 クスッ
??「はは、まさか」 クスッ
423: 2016/04/23(土) 21:11:45 ID:x6SncPAc
セシリア「お名前をうかがっても よろしいですか?」
??「一条。 一条 康、と申します」
セシリア(一条……?)
セシリア(確か……日本の企業グループ主賓者の姻戚に)
セシリア(その様な名前が ありましたわね)
一条「ふふ、すみません」
一条「今日の主賓に お情けで参加させていただいたのです」 クスッ
一条「がっかりなされたでしょう?」
セシリア「あら。 レディの心の内を見透かすのがお得意で?」
一条「いいえ。 先ほどのお返しです」 ニコ
424: 2016/04/23(土) 21:12:51 ID:x6SncPAc
~♪ ~♪ ~♪
キャ…! ス、スミマセンッ!
セシリア(一夏さんかしら……)
一条(鳴上かな……)
~♪ ~♪ ~♪…
一条「お飲み物でもいかがです?」
セシリア「ええ、いただきましょう」
スタ スタ スタ…
鳴上「お、おい、一条、助けてくれっ」
一条「なんだ、だらしないぞ?」 クスッ
鳴上「ダンスの事は聞いてない」
鳴上「このままだと誰かの足を踏み折ってしまう……」
セシリア「!?」
425: 2016/04/23(土) 21:13:24 ID:x6SncPAc
セシリア「鳴上さん!?」
鳴上「オルコット!?」
一条「ん? 二人は知り合いなのか?」
鳴上「あ、ああ。 実は……」
―――――――――――
一条「なるほど。 IS学園でか」
一条「噂に聞いてた第二の男性IS適正者が、お前だったとはな」 クスッ
鳴上「すまん……黙っているつもりじゃなかったんだが」
一条「いいって、いいって」 ニコ
令嬢2「あの……」
鳴上「!!」 ビクッ
426: 2016/04/23(土) 21:14:13 ID:x6SncPAc
令嬢2「踊っていただけますか?」 ニコ
鳴上「い、一条……!」
一条「なにしてる?」
一条「レディのお誘いを断るのは最大の非礼だぞ?」 ニコ
鳴上「」
ヨ、ヨロシク… ハイ…
~♪ ~♪ ~♪
セシリア「く……ふふふ」
一条「?」
一条「何か可笑しいですか?」
セシリア「すみません。 鳴上さんは学園でいつもすました表情でいて」
セシリア「あんなに狼狽したお顔は、初めて見ましたので……つい」
一条「ああ……わかります、それ」
ハハハ…
427: 2016/04/23(土) 21:14:58 ID:x6SncPAc
一条「……ところで、唐突な質問なのですが」
一条「誰かと お付き合いしておられますか?」
セシリア「ええ」
一条「ふふ、やはり」
セシリア「どうしてお分かりに?」
一条「雰囲気で……かな?」
セシリア「あら。 ではなぜ、ダンスに?」
一条「それはあなたと踊ってみたかったから……では、いけませんか?」
セシリア「できれば お聞きしたいですわ」
一条「そうですか……」
一条「では、場所を変えましょう」
428: 2016/04/23(土) 21:15:33 ID:x6SncPAc
ラウンジ付近
一条「飾り気なく言うのならば……度胸試し、です」
セシリア「度胸試し?」
一条「ええ」
一条「実は……この前 お見合いをさせられましてね」
一条「もちろん相手の方に非は無いのですが……」
一条「家柄の都合だけで妻を決めてしまうのが納得いかなくて」
一条「そこで……こうやって自分と家族の得心のいく相手を探しているんです」
セシリア「…………」
429: 2016/04/23(土) 21:17:25 ID:x6SncPAc
一条「もちろん、わがままかもしれません」
一条「でも……あなたを見て、こういう世界にも想う人と付き合える人がいる」
一条「俺にも もしかしたら、できるかもしれない」
一条「そんな気持ちを あなたに少し、ぶつけてみました」 クス
セシリア「…………」
セシリア「一条さん」
一条「はい?」
セシリア「それは……つまらないですわね」
一条「つまらない?」
430: 2016/04/23(土) 21:18:21 ID:x6SncPAc
セシリア「あなたのお気持ちは分からなく無いですが……」
セシリア「少なくともわたくしは、周りの目を気にして相手を選んでおりません」
一条「…………」
セシリア「このお方だから……この人だから」
セシリア「わたくしは想いを告げたのです」
セシリア「たとえ実らなくとも、後悔したく無い……」
一条「…………」
セシリア「ふふ……もちろん成就したから」
セシリア「言える事なのかもしれませんが」
一条「…………」
一条「……いえ」
一条「そんな事はありません」 クスッ…
431: 2016/04/23(土) 21:18:55 ID:x6SncPAc
一条「ありがとう、とても参考になりました」
一条「やはり……あなたは美しい」 ニコ
セシリア「どういたしまして」 ニコ
一条「あなたに会えて、お話できて良かった」
セシリア「わたくしも一条さんとお話できて、楽しかったですわ」
一条「ははは、身に余る光栄です」
一条「では、私はこれで……」
セシリア「はい」
432: 2016/04/23(土) 21:19:34 ID:x6SncPAc
一夏「おーい、セシリ……」
ドン…
一条「っと、失礼」
一夏「あっ、す、すみません」
一条「では……」
一夏「あ、はい」
一夏「ふー……」
433: 2016/04/23(土) 21:20:16 ID:x6SncPAc
セシリア「あら、一夏さん」
一夏「こんな所にいたのか。 探したぞ」
セシリア「ふふっ」
セシリ「少々仮面の紳士と お話をしておりました」
一夏「仮面の紳士?」
セシリア「ええ」
セシリア「自分を覆い隠して、自分を偽っている方でした」
一夏「……?」
セシリア「少しだけ本音をさらしてくれましたけどね」 クスッ
一夏(……よく分からないな)
434: 2016/04/23(土) 21:20:49 ID:x6SncPAc
パーティー会場前のベンチ
一条「鳴上」
鳴上「一条……」
一条「そろそろ帰るか?」
鳴上「ああ。 ぜひ、そうしたい」
一条「そっか」
一条「うんじゃ、帰るか!」 ニッ
鳴上「……?」
鳴上「一条、何かいい事でもあったか?」
435: 2016/04/23(土) 21:21:38 ID:x6SncPAc
一条「おう!」
一条「すっげぇ美人に盛大に振られた!」 ハハッ!
鳴上「?」
鳴上「いい事……なのか?」
一条「ああ」
一条「俺はまだまだだって事が、よく分かったからな」
鳴上「…………」
一条「さ、帰りにラーメンでも食って帰ろうぜ!」
鳴上「乗った」 クスッ
436: 2016/04/23(土) 21:22:15 ID:x6SncPAc
ラウンジ付近
一夏「ふう。 オレンジジュースが美味い」
一夏「それにしても疲れた~……」
セシリア「一夏さん。 今日は、お付き合いさせてすみません」
一夏「いや、楽しかったぜ?」
一夏「俺もこういう経験は なかなか出来ないしな」 ニコ
一夏「それにしても……ダンスを教えてもらって助かった」
一夏「誰だか知らないが、女の子の足、踏みまくっている奴がいてさ」
一夏「しょっちゅう『痛い!』とか、『キャア!』とか、聞こえてくるんだよ」
セシリア「まあ」 クスッ
セシリア「きっと……悪いお友達に誘われてここへ来られたのでしょう」 ニコ
一夏「……?」
437: 2016/04/23(土) 21:23:02 ID:x6SncPAc
一夏「まあいっか」
一夏「さて、セシリア」
セシリア「はい」
一夏「俺と……踊ってくれるかな?」
セシリア「ふふ。 ええ、よろしいですわよ?」
セシリア「大好きな、一夏さん」 ニコ
おしまい
438: 2016/04/23(土) 21:25:20 ID:x6SncPAc
という事でこれで終わりです。
これもいろいろ直したかったのですっきりしました。
これもいろいろ直したかったのですっきりしました。
440: 2016/04/23(土) 22:55:52 ID:ePj/GCHM
乙
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