1: 2016/08/15(月) 03:13:54 ID:8ulaYAIo

2: 2016/08/15(月) 03:15:36 ID:8ulaYAIo

【#9】


―――のんびり村・廃神社


 ミーンミンミン


神様「Zzz・・・」グガー

神使「神様、神様?」ユサユサ


神様「ん~ なんだよ・・・」

神使「ここは神社の本殿です」

神様「だから?」

神使「お昼寝は構いませんが、下着姿で寝ないで下さい」

神様「暑いんだから良いだろーが。 誰も見てねぇし」
江戸前エルフ(9) (少年マガジンエッジコミックス)
3: 2016/08/15(月) 03:17:15 ID:8ulaYAIo

神使「神宮所属の女神なんですから、もう少し品格というのをですねー」

神様「変なイメージ作ってんじゃねーよ、極悪邪道腐れ犬ころ神使」


神使「・・・何度も言っておりますが、私には“狛犬の神使”という名前があります」

神様「へいへい、犬ころ様。 じゃ、おやちゅみ~」


神使「神様?」

神様「も~ うるさいなぁ~・・・」

4: 2016/08/15(月) 03:18:08 ID:8ulaYAIo

神使「そんなことだから神宮から左遷や減給処分を頻繁に受けるんですよ? 今回だって・・・」

神様「あいつらの考え方が古いの! 私は常に正しいのだよ、神使君」


神使「お守りを値引き販売したりするのは正しくありません!」

神様「お守りっつても、紙切れのやつだぞ? 利益考えても2000円は高いだろ!」


神使「それに、神宮のお供え用の畑から野菜を盗んだりするなんて泥棒ですよ?」

神様「お前・・・ なんでそれ知ってんだよ」

神使「やっぱり神様が犯人でしたか」

5: 2016/08/15(月) 03:18:54 ID:8ulaYAIo

神様「うぐっ! だ、だって給料低すぎて生活大変なんだよ! 手取り14万の神とかおかしいだろ!」

神使「減給処分中ですから今は手取り6万ですけどね」

神様「・・・・・・」


神使「神階が低いから給料も低いんですよ?」

神様「私は人が勝手に作った神階なんかに興味は無いのだよ」

神使「また減らず口を・・・」

神様「うるせー」

6: 2016/08/15(月) 03:19:36 ID:8ulaYAIo

神使「はい、ご装束を用意しましたから早く着替えて下さい」

神様「え~ ご装束って、ただの巫女服じゃん」

神使「神階最低位で神力も使えない神様は巫女装束しか支給されてないですから」

神様「神使君さぁ~ けんか売ってる?」


神使「神宮でも巫女の仕事しかさせてもらえないなんて・・・ 見返してやろうとは思わないんですか?」

神様「別に~ 私、巫女の仕事好きだもん」


神使「・・・・・・」ジトー

神様「なんだよ、その哀れむような目は! 神罰」ゲシッ

神使「痛っ! ですから、それは神罰でなくただの足蹴りです」


神様「じゃ、そう言うことでおやちゅみ~」

7: 2016/08/15(月) 03:20:35 ID:8ulaYAIo

神使「ほら、いい加減に仕事しますよ神様!」

神様「も~!5時間も鈍行で揺られてきて疲れてんの!」グダグダ


神使「この神社の廃社審査を早くしないといけないんですから・・・」

神様「廃社審査? そんなの聞いてないし~ そうだ、ボケモンGOしよっと」

神使「こちらへ来る途中に言いました」

神様「嘘だ~ 私聞いてないも~ん。 うわっ、ボケモンいねーじゃん・・・」

8: 2016/08/15(月) 03:21:34 ID:8ulaYAIo

神使「やっぱりボケモンGOに夢中で聞いていなかったんですね?」

神様「・・・・・・」


神使「スマホ没収します。 渡して下さい」

神様「!? ヤダ!」


神使「渡して下さい」

神様「これがないと、私生きていけない!」


神使「誰かと話をしているときはスマホをいじってはいけないと約束しましたよね?」

神様「でも・・・ でも1日1時間以上はやってないから!」

神使「・・・・・・」

9: 2016/08/15(月) 03:22:12 ID:8ulaYAIo

神様「もう、しない! 誰かと話してるときはスマホいじらない!」

神使「・・・・・・」


神様「着替える! おべべ着る!」


 イソイソ
 シュルシュル


神様「ほら! 巫女服着た! 帯もいつもより綺麗に結んだぞ! 襟元も凄く綺麗!」

神使「・・・・・・」

10: 2016/08/15(月) 03:23:44 ID:8ulaYAIo

神様「お願いします! 許して下さい! スマホだけは・・・ スマホだけは!」ドゲザ

神使「神宮の神が、スマホを氏守するために土下座とは・・・」


神様「このスマホは、お前に買ってもらった大切な物だから・・・ 手放したくない・・・」

神使「神様・・・」


神様「だから、お願いします!」

神使「分かりました。 でも約束は守って下さいよ?」

神様「はい!」ニヤリ


神使「それと、不敵な笑みをするのは見えないようにやって下さい」

神様「・・・・・・」

18: 2016/08/16(火) 02:29:08 ID:.b/j0W5k


―――廃神社・境内


 ミーンミンミン


 テク テク


神様「あっち~」

神使「荒れ放題ですね・・・」


神様「絵に描いたような廃神社だな」

神使「ご神体もありませんし、神社としての機能はほとんど残ってませんね」

19: 2016/08/16(火) 02:30:05 ID:.b/j0W5k

神様「これさぁ、どう頑張っても廃社以外ないと思うの」

神使「修繕をするにしてもかなりのお金がかかりますね・・・」


神様「うん、廃社決定~! 神宮に言っておいて」

神使「その前に、地元の方に説明と同意を取らないといけませんので」

神様「あっそう。 じゃぁ、よろぴこ」


神使「神様が説明するんですよ?」

神使「え?」

20: 2016/08/16(火) 02:30:58 ID:.b/j0W5k

神使「廃社の説明は宮司、またはその神社の主神と決まりがあります」

神様「わたし、ここの主神じゃないし」

神使「今のところは、神様がこの神社の代理主神です」

神様「・・・・・・」


神使「宮司はこの神社にはいませんので、現在の責任者は神様です」

神様「・・・・・・まじで?」

神使「はい」ニコッ

21: 2016/08/16(火) 02:31:59 ID:.b/j0W5k


 ニャー


神様「? おっ、あの猫で良いんじゃね、主神」

神使「何言ってるんですか・・・ ただの猫さんじゃないですか・・・」

神様「ほ~ら 猫ちゃん~ 神にならんかね~」チッチッチ


 シャー
 タッ タッ タッ


神様「あ! 逃げられた・・・」


神使「ほら、行きますよ?」

神様「しゃーねーな~」


 テク テク

22: 2016/08/16(火) 02:34:12 ID:.b/j0W5k


―――田舎道


 テク テク


神様「で? どこ行くんだ?」

神使「まずは、氏子総代のお宅へご挨拶に」


神様「100m以上は歩かないぞ」

神使「すぐそこですから」

神様「ん」

23: 2016/08/16(火) 02:34:49 ID:.b/j0W5k


 テク テク


神様「おい、犬ころ」

神使「はい?」


神様「どう考えても1kmは歩いてるよな?」

神使「もうすぐです」

神様「本当かよ~」

24: 2016/08/16(火) 02:36:05 ID:.b/j0W5k


 テク テク


神様「犬!! ボケモンの2Km卵が孵化したぞ!」

神使「もう少しです」


神様「もう歩かない!」

神使「本当にすぐそこですから」

神様「ヤダ!」



神使「ハァ~ おんぶしてあげますから・・・」ハイ

神様「お? 良いの?」ヨイショ


神使「行きますよ?」

神様「オッケ~」

25: 2016/08/16(火) 02:37:13 ID:.b/j0W5k


 テク テク


神様「楽ちん~楽ちん~♪」


神使「神様って、意外と軽いんですね」

神様「だろ? あっ、でも私の豊満な胸が神使君の理性を壊しちゃってるかも」

神使「いえ、背中にまんべんなく神様の体が当たっていますので」

神様「お前! それツルペタだって言ってんのかよ!」

神使「いえ・・・」


神様「しんば―――」

神使「ちょ、こんな状況で足蹴りされたら神様落ちちゃいますよ!」

神様「チッ、しょうがねーな。 今回は許してやる」

神使「それは、どうも・・・」

26: 2016/08/16(火) 02:37:57 ID:.b/j0W5k


―――30分後


 テク テク


神使「このお宅のようですね」

神様「・・・・・・」スヤスヤ


神使「神様? 着きましたよ?」

神様「・・・・・・」スヤスヤ


神使「どれだけ寝るのが好きなんですか・・・ 神様?」ユッサユッサ

神様「んぁ・・・」

27: 2016/08/16(火) 02:39:10 ID:.b/j0W5k

神使「氏子総代のお宅です。 降ろして大丈夫ですか?」

神様「ん・・・ 大丈夫。 降りる」モソモソ


神使「はい、しゃがみましたから足付けて下さい」

神様「ありがと」ピョン


神使「お水飲みます?」

神様「少し」

神使「はい、どうぞ」スッ

神様「ん」ゴクゴク


神使「目、覚めましたか?」

神様「ふぁ~ぁ・・・ 大丈夫、覚めた」

28: 2016/08/16(火) 02:40:04 ID:.b/j0W5k

神使「こちらが、氏子総代のお宅のようです」

神様「へぇ~ 昔ながらの家って感じだな」

神使「そうですね、ご立派ですよね」


神様「ん?」

神使「どうされました?」

神様「いや、表札。 神宮の大宮司と同じ名前だ」

神使「本当ですね。 珍しいお名前ですよね」

29: 2016/08/17(水) 02:38:12 ID:l1iDh4q6


―――氏子総代の家


 ピンポン
 は~い


神使「神宮から参りました」


 ガラガラ


女「こんにちは」

神使「初めまして、神宮から参りました使いの者ですが」

女「神宮? 兄さんの件ですか?」

神使「お兄様?」

30: 2016/08/17(水) 02:38:57 ID:l1iDh4q6

女「はい、うちの兄が神宮にいるので・・・」

神様「もしかして、神宮の大宮司?」

女「さぁ、役職までは分からないんですが」


神使「この先の廃神社の件で少しお話があるんですが、お時間大丈夫でしょうか?」

女「廃神社・・・ どうぞお入り下さい」


神使「失礼いたします」

神様「お邪魔しま~す」

31: 2016/08/17(水) 02:40:12 ID:l1iDh4q6


女「どうぞ、お茶です」コトッ

神使「ありがとうございます」


女「お嬢ちゃんはジュースが良い?」

神様「できればコーラ・・・」

女「良かった、はいコーラ」コトッ

神様「やったー!」


神使「・・・すいません、躾がなっていないもので」

神様「一言多いぞ、犬!」ゴクゴク

女「ふふっ」

32: 2016/08/17(水) 02:41:26 ID:l1iDh4q6

神使「お兄様が神宮に奉職されていると先ほど・・・」

女「えぇ、学校を卒業してからずっと神宮にいるようです」

神使「それは随分と長いですね」

女「昔のものですが、そこに写真が」


神様「あ~ あれ大宮司の若い頃だ」

神使「神様ご存じなんですか?」

神様「当たり前だろ、ああ見えて大宮司は昔結構ヤンチャだったんだよ」

神使「へぇ~ 今は全然そんな雰囲気ないですけどね」

神様「私と一緒によく海へ行って牡蠣取ったりしたな。 あいつ潜るの得意でな」

33: 2016/08/17(水) 02:42:16 ID:l1iDh4q6

女「・・・・・・お若いのに、兄の若い頃を知っているんですね?」

神使「!?」

神様「あっ・・・ えっと~ 聞いた話・・・」


女「大丈夫です。 私も昔は巫女をしていましたから」

神様「え? そうなの!?」

女「・・・その廃神社がまだ活気のあった時ですけど」

神使「そうだったんですか」

女「もう30年以上も前ですから」

34: 2016/08/17(水) 02:43:12 ID:l1iDh4q6

神様「じゃぁ、神とか神使とかの存在も?」

女「はい、お目にかかったのは今日が初めてですけどね」ニコッ


神使「恐れ入ります。 こちら神宮の神で神様です」

神様「“かわゆい神ちゃん”でよろしく」

女「よろしくお願いいたします」


神使「私は、神様の使いで狛犬の神使と申します」

女「まぁ、狛犬様なんですか? よろしくお願いいたします」


神様「よそよそしいのは苦手なんで気軽に接してちょ」

女「ふふっ、分かりました。 神ちゃんと神使さん」

35: 2016/08/17(水) 02:44:06 ID:l1iDh4q6

神使「今日、お伺いした件なのですが・・・」

女「廃神社の件と」

神使「はい、私たち廃社調査の命を神宮から受けて参りまして」

女「廃社・・・」


神様「見た感じご神体はないし、何十年も手入れがないようだけど」

女「はい、私がまだ動けるときは時々手入れをしていたのですが」

神使「お体が?」

女「年には勝てず・・・ 兄も神宮に行ったきり戻ることが難しいようで」

神使「大宮司は分単位でスケジュールが詰まっていますからね・・・」

36: 2016/08/17(水) 02:45:29 ID:l1iDh4q6

神様「復興という手もあるけど、たぶんかなりのお金がかかる」

女「はい」

神様「正直、今の状況を見る限り廃社にするのが一番だと思う」

女「そうでしょうね」


神様「すまない。 力及ばずで」ペコッ

女「そんな神様が頭を下げる必要など・・・ 管理できない私たち村の責任ですから」


神使「廃神社で巫女をしていたと伺いましたが」

女「えぇ」

神使「当時は宮司さんなどが居られたのですか?」

女「元々はうちの本家が代々宮司をしておりまして・・・」

神使「そうだったんですか」

37: 2016/08/17(水) 02:46:11 ID:l1iDh4q6

女「私たちは分家なので継ぐことはなかったのですが、今は本家の人間全員この村を出てしまって」

神使「それで宮司不在になって廃神社に・・・」

女「申し訳ございません」

神様「跡継ぎのない神社の定めだ、今は腐るほどある。 気にしないでくれ」


神使「では、廃社という形を取らせていただきますがよろしいでしょうか?」

女「異存はございません、全てお任せいたします」

38: 2016/08/17(水) 02:46:54 ID:l1iDh4q6


―――帰り道


 テクテク


神使「神様? 廃社でよろしいんですか?」

神様「あぁ、神宮に廃社審査の結果を報告して手続きを進めてくれ」

神使「分かりました」

39: 2016/08/17(水) 02:47:36 ID:l1iDh4q6


 ピロリロリーン♪


神様「あっ、メールだ」ゴソゴソ

神使「私です」

神様「だから、お前着信音変えろよ!」


神使「神宮からの一斉メールですね」

神様「え? 一斉? 私・・・ 届いてないけど・・・」

40: 2016/08/17(水) 02:48:28 ID:l1iDh4q6

神使「!?」

神様「ねぇ、私のとこにやっぱ来てないよ? 一斉メール」


神使「これは・・・・・・」

神様「ん? なになに」


 ジリリリーン♪


神様「あ、電話だ」ゴソゴソ

神使「私です」

神様「・・・・・・」

41: 2016/08/17(水) 02:49:26 ID:l1iDh4q6

神使「はい、神使です」

神使「はい・・・ はい・・・ 承知いたしました・・・ はい、失礼します」ピッ


神様「お前さぁ~ 電話も着信音私と一緒だから変え―――」

神使「神様、一度神宮に戻ります」

神様「って、え? 神宮に?」


神使「大宮司が退職されるそうです」

神様「!?」

44: 2016/08/18(木) 01:30:21 ID:nx0neZV2


―――神宮・会議室


司会「え~ と言うことで、大宮司は今月末をもって定年という形になります」

内宮宮司「しかし、予定では年末ということでなかったのですか?」

大宮司「ただでさえ年末年始の忙しい時期に、皆の手を煩わすのもどうかと思ってね」


外宮宮司「でも急に今月で退職というのも・・・」

大宮司「組織変更もあるだろうし新年は新体制で落ち着く形にしておきたくてね」


大宮司「それに・・・ 先月のように急に倒れて皆に迷惑かけるのも避けたい」

外宮宮司「・・・・・・」

45: 2016/08/18(木) 01:31:05 ID:nx0neZV2

司会「神様、なにかございますか?」

神様「ん? 私は神職の件に関しては全て一任しているんで、決定に従う」

司会「承知いたしました」

46: 2016/08/18(木) 01:32:05 ID:nx0neZV2

内宮宮司「提案なのですが・・・」

大宮司「ん? なんだね?」


内宮宮司「神宮の名誉宮司としてしばらく残って頂くことはできませんでしょうか?」

外宮宮司「それは、良い案です。 名誉宮司でしたら負担も少ないかと」

内宮宮司「いかがでしょうか、大宮司」

大宮司「私が名誉宮司だなんて恐れ多い。 ジジイはさっさと出て行くのが良いと思うが・・・」

47: 2016/08/18(木) 01:33:01 ID:nx0neZV2

司会「神様、いかがですか?」

神様「ん? 私は神職の件に関しては全て一任しているんで、決定に従う」

司会「承知いたしました」

48: 2016/08/18(木) 01:33:51 ID:nx0neZV2

内宮宮司「お願いします、大宮司」

大宮司「しかしだね・・・」

司会「では、多数決を取ります」


司会「大宮司を神宮名誉宮司として推薦する方は挙手を」


 スッ スッ


司会「賛成多数により大宮司を神宮名誉宮司として推薦することにいたします」

49: 2016/08/18(木) 01:34:27 ID:nx0neZV2

司会「神様、いかがですか?」

神様「ん? 私は神職の件に関しては全て一任しているんで、決定に従う」

司会「承知いたしました」


大宮司「・・・・・・」ハァ…

神様「・・・・・・」ジィー

50: 2016/08/18(木) 01:38:50 ID:nx0neZV2


―――神宮・会議室廊下


 ガヤガヤ


内宮宮司「これからもよろしくお願いします」

大宮司「ははは・・・」

内宮宮司「やはり、今の神宮を統制できるのは大宮司しかいませんからね」


神様「大宮司」

大宮司「?」

神様「少し時間は取れるか?」


大宮司「はい、私の部屋でもよろしいですか?」

神様「あぁ」

51: 2016/08/19(金) 02:25:09 ID:0C0tFqfY


―――大宮司室


 ガチャッ


大宮司「そこの椅子へ」


神様「ふぅ~」ギシッ

大宮司「はぁ~・・・」ギシッ

52: 2016/08/19(金) 02:26:09 ID:0C0tFqfY

神様「簡単には辞められそうにないな」

大宮司「神ちゃんに少しは加勢して欲しかった」


神様「あの席で私が彼奴らの反対意見を言ったらそれこそ問題だろ?」

大宮司「それはそれで面白かったかも知れないけどな」

神様「これ以上、給料下がるの嫌だし~」

53: 2016/08/19(金) 02:26:50 ID:0C0tFqfY

大宮司「元気でやってるのか?」

神様「まぁ、ぼちぼちね」


大宮司「お付きの神使はどうだ?」

神様「犬ころ? 頼りにしてる」

大宮司「それは良かった」

54: 2016/08/19(金) 02:27:45 ID:0C0tFqfY

神様「お前は神宮に来て何年だっけ」

大宮司「20歳でここに入ったから40年だ」

神様「年が流れるの早いね~ ヤンチャしてたのがつい最近のように思える」

大宮司「全くだ」


神様「極悪邪道腐れ神職のお前が、今は神宮の大宮司だもんな~」

大宮司「みんな辞めてしまって私しか残っていないだけだよ」

55: 2016/08/19(金) 02:28:25 ID:0C0tFqfY

神様「名誉宮司なんか引き受けて良いの?」

大宮司「仕方ない、会議で決まってしまったことだ」


神様「本当に?」

大宮司「神職一筋でやってきたんだ。 急に外にでても役立たずの老いぼれだしな・・・ ここに骨を埋めるよ」

神様「・・・・・・」


大宮司「それに、神宮はそんなに甘くない。 私の意見など無いに等しい」

神様「怖い場所だね~」

大宮司「全くだよ・・・」ハァ

56: 2016/08/19(金) 02:29:12 ID:0C0tFqfY

神様「・・・今さぁ~ 私、のんびり村にいるんだよ」

大宮司「!?」


神様「お前の故郷なんだってな」

大宮司「なんでのんびり村なんかに・・・」

神様「村に唯一残る神社の廃社審査」

大宮司「廃社・・・ そうか、あのお社も廃社なのか・・・」

57: 2016/08/19(金) 02:30:14 ID:0C0tFqfY

神様「昨日、氏子総代の家に行って廃社の確認をしてきた」

大宮司「氏子総代はどこがやってるんだ?」

神様「・・・お前の妹」

大宮司「妹が!? 妹に会ったのか?」

神様「あぁ、言葉には出さなかったけど会いたがってる感じだったぞ?」

大宮司「何十年も戻っていないからな・・・」


神様「名誉宮司になったら少しは時間もできるだろ」

大宮司「そうだな」フッ


神様「・・・・・・じゃ、犬ころ待たせてるし帰る」ヨイショ

58: 2016/08/19(金) 02:30:53 ID:0C0tFqfY

大宮司「神ちゃん」

神様「ん?」


大宮司「私の名誉宮司任命式の代表神を・・・ 神ちゃんにお願いできないだろうか」

神様「私!? 祭儀神の方が良いだろ」

大宮司「いや、神ちゃんにやってもらいたい」

神様「・・・・・・」

59: 2016/08/19(金) 02:32:12 ID:0C0tFqfY

大宮司「頼む」

神様「分かった。 引き受ける」

大宮司「ありがとう」


神様「腐れ縁・・・ いや旧友の頼みだ、礼はいらないよ~」

大宮司「旧友か、嬉しいね」フッ


神様「じゃ~ね~」


 バタン


神様「・・・・・・」

63: 2016/08/21(日) 05:45:57 ID:/coVUjgM


――― 神宮・境内


 テクテク


神様「あれ? この自販機もコーラねーじゃん・・・」


 神使「あっ、神様!」


神様「ん?」


 スタスタ


神使「打ち合わせ、終わりましたか?」

神様「あぁ、待たせた」

64: 2016/08/21(日) 05:46:58 ID:/coVUjgM

神使「だいぶ遅くなってしまいましたし、今日は神宮に泊まって明日のんびり村に戻りましょう」

神様「そうね」


神使「ご自分の宿舎に戻られますか?」

神様「あ~、それよりさぁ」

神使「?」


神様「コーラの売ってる自販機ってここら辺になかったっけ」

神使「一番近いのは裏の駐車場かと」

神様「遠いなぁ~」


神使「私も飲み物が欲しいので買ってきましょうか?」

神様「じゃぁ一緒に行くか」

65: 2016/08/21(日) 05:47:36 ID:/coVUjgM


 テクテク


神様「あっ、こっちの裏道の方が近い」

神使「道なんて見えないんですが・・・」


神様「よく見ろよ、草が少し薄いだろ」

神使「え~・・・ 境内で迷子なんて嫌ですよ・・・」

神様「大丈夫、私を信じろって」

神使「それが心配なのですが・・・」

66: 2016/08/21(日) 05:48:27 ID:/coVUjgM


 テクテク


神使「こんな所、初めて来ました」

神様「まぁ普通は来ないよな、あそこに私の昔の住居が・・・」ピタッ

神使「どうされました?」

神様「シッ!」

神使「?」


神様「誰かいる」ボソッ

神使「・・・本当ですね」ボソッ

67: 2016/08/21(日) 05:49:47 ID:/coVUjgM


 パン パンッ
 フカブカ


神使「参拝者・・・?」

神様「あれ大宮司じゃないか?」

神使「え? あっ、確かに・・・」


神様「・・・・・・」

神使「なんで大宮司がこんな奥社で・・・」



 大宮司「・・・・・・」

 スタスタ



神使「行っちゃいましたね」

神様「あの社に行ってみよう」

68: 2016/08/21(日) 05:52:41 ID:/coVUjgM


―――古い社


神使「小さなお社ですね」

神様「一人住む分にはこれで十分だよ」


神使「先ほど神様が昔お住みになっていたと仰ってましたが」

神様「かなり前だけどね~。 今は私の倉庫に使ってる」

神使「倉庫?」

神様「私の私物を仕舞ってある」

69: 2016/08/21(日) 05:53:34 ID:/coVUjgM

神使「なぜ大宮司はここで参拝していたんでしょう」

神様「・・・・・・」


神使「このお社はお願い事の自動記録って動いているんですか?」

神様「いや、ここは誰も来ないし仕組み自体入れてないと思う」


神使「願いの叶わないお社で大宮司は何を・・・」

神様「・・・・・・」

70: 2016/08/21(日) 05:54:37 ID:/coVUjgM


―――深夜・神使宿舎


神使「Zzz・・・」スヤスヤ


 バン!


神様「起床!」

神使「うわっ!」バッ


神使「ちょと神様! こんな夜中にどうしたんですか」

神様「出かけるぞ」

神使「こんな遅くに、どちらへ?」

神様「私の倉庫」

神使「倉庫・・・? 日中に行った奥社ですか?」

71: 2016/08/21(日) 05:57:03 ID:/coVUjgM

神様「・・・・・・」

神使「神様?」


神様「これは!?」ハッ

神使「?」


神様「部屋が・・・ 涼しいだと!?」

神使「はい?」


神様「まさか・・・」キョロキョロ

神使「どうしたんですか、いきなり」

72: 2016/08/21(日) 05:57:41 ID:/coVUjgM

神様「あーーっ! この部屋エアコン付いてる!」

神使「えぇ、まぁ・・・」


神様「お前、私は20年前の扇風機だけで我慢してんのに!」

神使「20年前!? 物持ちが良いんですね・・・」

神様「ボタン壊れてて微風しか動かないんだぞ!」

神使「・・・・・・」

73: 2016/08/21(日) 05:58:49 ID:/coVUjgM

神様「うわっ! トイレと風呂まで! キッチンまである!!」

神使「・・・・・・」

神様「これが格差社会・・・」ガクッ


 コロン


神使「? 神様、何か落ちましたよ」ヨイショ

神様「お~ やべぇやべぇ」

74: 2016/08/21(日) 05:59:41 ID:/coVUjgM

神使「鏡・・・ですか? って、これは!?」

神様「知ってんの? それ」


神使「まさか、これ神宮のご神体じゃないですか!?」

神様「うん、本殿から持ってきた」

神使「ダメじゃないですか、勝手に持ってきたら!!」

神様「あ? 大丈夫だよ。 誰にも見つかってないし」

神使「そういう問題じゃありません! 神宮本殿から出しちゃダメって事です! 国宝級ですよ?」

神様「日が出る前に戻せばバレねーよ」

神使「勘弁して下さいよ・・・」

75: 2016/08/21(日) 06:01:08 ID:/coVUjgM

神様「ちょっと神力を使おうと思ってさ」

神使「ご自身の神力を使えば良いじゃないですか・・・」

神様「てめぇ! 私が神力ゼロって知ってんだろーが!」

神使「だからって、神宮のご神体の神力に手を出すなんて」

神様「ちょっと位大丈夫だって」


神使「明日、祭儀神様にバレたら大問題になりますよ?」

神様「あ~ それは心配ない。 あいつのもたまに私用で使ってるから」

神使「・・・・・・」


神様「それより、倉庫に行くぞ」

神使「この神宮・・・ 大丈夫なのでしょうか・・・」

76: 2016/08/22(月) 01:46:13 ID:uoWIwb3E


―――古い社(神ちゃん倉庫)


 ギィー


神様「さすがに夜は暗くて見づらいな・・・」

神使「懐中電灯持ってきました」パチッ

神様「お~ ナイス」


神使「うわ、箱だらけですね・・・」

神様「だから倉庫って言っただろうが」

77: 2016/08/22(月) 01:47:59 ID:uoWIwb3E

神使「こんなに何を保管してるんですか?」

神様「ん? いろいろ」

神使「嫌な感じしかしませんね・・・」


神様「そうだ、お前古い本とか好きだったよな」ゴソゴソ

神使「古典のことですか?」


神様「あった。 ほら、コレやるよ」

神使「随分古いですね・・・」

神様「私が持ってる本で一番古いヤツ」

神使「ありがとうございます。 ん? コレって・・・」

神様「あれ? もしかして読んだことある?」

78: 2016/08/22(月) 01:51:31 ID:uoWIwb3E

神使「古事記じゃないですか!」

神様「大昔に書いたヤツから貰ったんだよ」

神使「もしかして、原本って事ですか?」

神様「そうそう」

神使「・・・・・・」


神様「他の本が良い?」

神使「いえ・・・ そういう訳ではないのですが、私がコレを持つこと自体が間違いな気がします」

神様「?」

79: 2016/08/22(月) 01:52:48 ID:uoWIwb3E

神使「この無造作に積まれた箱の中にはこのような物が入っているのですか?」

神様「金に困ったら売り飛ばそうかと思って取ってあるんだけど、古すぎてもう金にならないだろうな~」

神使「そうですか・・・(きっと歴史が変わってしまうような物が沢山あるんでしょうね・・・)」


神様「他には~」ゴソゴソ

神使「いえ、もう大丈夫です。 こちらも読み終わりましたらすぐお返しいたしますので」

神様「読み終わったら捨てて良いよ? さすがにボロボロで売れないだろうし」

神使「・・・・・・」

80: 2016/08/22(月) 01:54:43 ID:uoWIwb3E

神様「さて、時間も無いし始めますか」

神使「一体何をするんです?」

神様「大宮司のお願い事を調べる」

神使「しかし、このお社にはお願い事の自動記録はないのでは?」

神様「そのためのコレだよ」コンコン

神使「ご神体?」

81: 2016/08/22(月) 01:55:25 ID:uoWIwb3E

神様「ご神体の神力を経由してお願い事を復元する」

神使「そんな事できるんですか?」


神様「神使君、忘れちゃってるかも知れないけど私これでも神だからね?」

神使「でも、お願い事の復元だなんて聞いたことないのですが・・・」

神様「ふっふっふっ、まぁ見ていたまえ」

82: 2016/08/22(月) 01:56:19 ID:uoWIwb3E

神様「我、神体の神力を解放す!」


 ポワポワ


神様「よし、と・・・ ん?」

神使「どうされました?」


神様「いや、直前に祭儀神がこの神体を使ってる」

神使「祭儀神様ですから、別に不思議はないかと思うのですが」


神様「いや・・・ これは・・・」

神使「?」

83: 2016/08/22(月) 01:57:12 ID:uoWIwb3E

神様「祭儀神のヤツ、キャバクラで今日C子嬢が出勤してますようにって願掛けしてるな」

神使「・・・・・・」


神様「これは良いことを知った。 何かの時に脅しで使えるな」ニヤッ

神使「・・・・・・私、今のは聞かなかったことにします。 あのご立派な祭儀神様が・・・」


神様「まぁ、それは置いておいて」

84: 2016/08/22(月) 01:58:21 ID:uoWIwb3E

神様「おい、犬ころ」

神使「はい」

神様「お前も私の隣へ座れ」

神使「私もですか?」


神様「ついでだ。 お前も一緒に願いを聞いとけ」

神使「しかし、私は神ではございませんので・・・」

神様「良いんだよ。 勉強だと思え」

神使「・・・分かりました」スッ

85: 2016/08/22(月) 02:01:00 ID:uoWIwb3E

神様「私の肩に手を置いて」

神使「失礼します」サッ


神様「力を抜いて楽にしていろ」

神使「はい」

神様「じゃぁ、いくぞ」


神様「我、祈願を執り行う。 当社に納められし願いを我の元へ」

86: 2016/08/22(月) 02:03:39 ID:uoWIwb3E


 ポワポワ


~~~


久しぶりに会ったな、神ちゃん・・・
旧友と言ってくれて嬉しかったよ
私は神ちゃんのことを今は娘のように思っているがね


退職後は故郷に戻って余生を過ごしたいと思っていたんだが・・・・・・
そうも行かないようだ
たぶん氏ぬまでここを出られないだろうな


神ちゃん・・・
君は神宮に囚われることなく皆の願いを叶えていってくれる事を祈る


私の分まで神ちゃんはいつまでも自由でいてくれ


~~~


 ポワポワ

87: 2016/08/22(月) 02:04:46 ID:uoWIwb3E

神様「・・・・・・」

神使「神様・・・」


神様「神使」スタッ

神使「はい」


神様「朝一でのんびり村の廃社許可を取り消してくれ」テクテク


神使「あっ、神様!?」


 ギィー バタン



神使「神様・・・ 私をここに一人残されても困るのですが・・・」

88: 2016/08/22(月) 19:49:15 ID:uoWIwb3E


―――翌朝・神様宿舎


 トントン

 神様「だれ?」


神使「神使です」


 神様「あ~ 入って良いよ」


神使「失礼します」


 ガチャッ


神様「適当に座って」

神使「えっと・・・ 座る場所が・・・」

89: 2016/08/22(月) 19:50:08 ID:uoWIwb3E

神様「ごめんね~ 私、神階最低だから部屋が狭くてさぁ」ギロッ

神使「いえ・・・」


神様「布団の上で良いよ」

神使「はぁ、失礼します」ヨイショ


神様「はい、うちわ」スッ

神使「・・・ありがとうございます。 扇風機は付けないんですか?」

神様「昨日の夜、帰幽した」

神使「壊れちゃったんですね・・・」

90: 2016/08/22(月) 19:50:54 ID:uoWIwb3E

神様「廃社許可の取り消しはしてきたか?」

神使「先ほど書類を提出してきました」

神様「よし」


神使「しかし、廃社しないということは復興という形になるのですが・・・」

神様「復興費用は神宮からどのくらい出せる?」

神使「神宮も財政が厳しいですし、あまり期待できないかと思います」

神様「う~ん・・・」

神使「数日中に神宮負担分の通知は来ると思いますが」

神様「分かった」

91: 2016/08/22(月) 19:51:26 ID:uoWIwb3E

神使「この後はどうされますか?」

神様「すぐにのんびり村へ戻って廃神社を少しでも修復しよう」

神使「承知しました」


神様「お金か~」

神使「失礼ですが、神力を使って成就させるのがよろしいかと思うのですが」

神様「・・・・・・」

神使「神宮のご神体を使えば神様でも・・・」

92: 2016/08/22(月) 19:51:59 ID:uoWIwb3E

神様「どうして大宮司がお願い事リストから外れた社で参拝したのかを考えろ」

神使「・・・・・・」


神様「神力で成就することがアイツの望みじゃない・・・」

神使「失礼いたしました」

93: 2016/08/23(火) 01:12:46 ID:APugto5E


―――のんびり村・廃神社


神様「いや~ しかし本当にボロボロだな・・・」

神使「廃神社という言葉がピッタリですね」


神様「どっから手を付けて良いか分かんねーな・・・」

神使「本殿と鳥居の修復、付属施設も取り替えないといけませんね」

神様「そういえば社務所がないよな」

神使「はい、新しく建てる必要があります」


神様「うへ~ いくらかかんだよコレ」

神使「何千万円単位でお金がかかりますね」

神様「神宮からそんなに出るかなぁ」

94: 2016/08/23(火) 01:13:21 ID:APugto5E


 ピロリロリーン♪


神様「あっ、メールだ」ゴソゴソ

神使「私です」

神様「・・・・・・」イラッ


神使「神宮から復興費用の負担金の結果が来ました」

神様「お~ いくら出すって?」

神使「・・・・・・500万だそうです」

神様「え!? それだけ?」

神使「全然足りませんね・・・」

95: 2016/08/23(火) 01:14:21 ID:APugto5E

神様「仕方ない・・・ 犬ころは明日から見積もり計算と、直せる所の補修をやっておいてくれ」

神使「分かりました。 神様は・・・?」

神様「寄付金を募ってくる」

神使「しかし、この付近はあまり民家もございませんよ?」

神様「集まらなければ隣町でも行くよ」

神使「隣町って・・・ 10Kmはありますよ!?」

神様「そのくらい大したことない」

神使「神様・・・」

96: 2016/08/23(火) 01:15:16 ID:APugto5E

―――翌日


 ピンポーン♪

 村民「はい」ガチャッ


神様「村の神社の者ですが」

村民「なにか?」


神様「村の神社の建て替えを予定しておりまして」

村民「神社?」

神様「こちら趣意書になりますのでもしよろしければ―――」


 ピシャッ


神様「・・・・・・」


 トテトテ

97: 2016/08/23(火) 01:16:09 ID:APugto5E


 コンコン

 村民「は~い」ガチャッ


神様「村の神社から来ました」

村民「あら、かわいらしい巫女さんね」

神様「村の神社の建て替えを計画しておりまして、こちら趣意書です」ペラッ

村民「あの神社再建するの?」

神様「はい、もしご賛同頂くことができればと思いまして」

村民「ちょっとお待ち下さいね」

神様「はい」


村民「少ないですけど、こちらでお願いします」

神様「ありがとうございます!」ペコリ

98: 2016/08/23(火) 01:17:04 ID:APugto5E


―――深夜


 ギィー


神様「ただいま~」

神使「神様! 遅かったですね、心配しましたよ」

神様「いや~ やっぱ隣町は遠いな」


神使「ご寄付の方はどうでした?」

神様「厳しいけど・・・ これリストと寄付金」スッ

神使「お疲れ様です」

99: 2016/08/23(火) 01:17:39 ID:APugto5E

神様「明日は知り合いの神達に電話して金を無心するか」

神使「そんな・・・ ご迷惑では?」

神様「給料いっぱい貰ってる奴らもいるし」

神使「ほどほどにして下さいね?」

神様「ん。 ふぁ~ぁ・・・」


神使「だいぶお疲れのようですね。 お休みになります?」

神様「そうね・・・ ちょっと疲れて・・・ 眠いかも」

神使「では、パジャマを用意・・・」

神様「Zzz・・・」



神使「1日に50件もまわったら疲れますよね・・・ お休みなさい、神様」

100: 2016/08/23(火) 01:18:59 ID:APugto5E


―――翌日


 チュンチュン

 prrr prrr


神友A『はい』

神様「もしもし~ かわゆい神ちゃんだけど~」

神友A『神ちゃん? 久しぶり!』

神様「悪いんだけどさぁ~ 私が代理神を任されてる社を立て替えしたくてさ~」

神友A『へぇ~ 大変だね~』

神様「うん。だからぁ・・・」

神友A『はいはい、寄付でしょ?』

神様「良い?」

101: 2016/08/23(火) 01:19:33 ID:APugto5E

神友A『神ちゃんからの直々のお願いじゃ寄付しないとね~』

神様「でも、お前の神社の金は使わないで欲しいんだ」

神友A『・・・・・・分かった。 私の貯金から出すよ』

神様「無理言ってごめん」

神友A『神ちゃんらしくないな~ そんなの気にしないで』

神様「ありがと」

神友A『周りの神にも私から連絡しておくよ』

神様「助かる」

神友A『じゃぁ後でお金送るね~』

神様「うん」


 ピッ

102: 2016/08/23(火) 01:20:17 ID:APugto5E

神様「さてと、次は・・・」


神使「神様?」

神様「ん?」


神使「見積もりの方が出ました」

神様「おっ! どのくらいになりそう?」


神使「本殿の修復が3000万、社務所が2000万という所でしょうか」

神様「最低でも5000万か~」


神使「細かい物は知り合いが奉職している神社から使わなくなった物を頂けることになりましたので」

神様「お~ それは助かるな」

103: 2016/08/23(火) 01:21:43 ID:APugto5E

神使「じゃぁ、私は作業に戻ります」

神様「よろぴこ~」


神使「・・・神様は今日はどうされます?」

神様「もう一つ先の町まで行ってみようかなぁって」

神使「あまり無理をしないで下さいね」

神様「大丈夫」

104: 2016/08/23(火) 01:22:18 ID:APugto5E


―――数日後


神使「さて、では寄付金の集計をしてみますか」

神様「結構集まったんじゃない?」


神使「まずは神宮の500万円」

神様「ケチくせ~な~」


神使「それと、町民の皆さんからの寄付金が200万円」

神様「いいね~」

105: 2016/08/23(火) 01:23:55 ID:APugto5E

神使「神々の皆様から頂いた寄付が1500万円」

神様「よっし! さすがため込んでるヤツ集中して電話した甲斐があった!」


神使「それと、私も少し寄付させて頂きます」

神様「おっ!」


神使「私からは300万を」

神使「そんなに寄付して大丈夫か!?」

神使「これでも、階位は最高位ですからお給料は貰っていますので」

神使「恩に着る」

106: 2016/08/23(火) 01:24:37 ID:APugto5E

神使「あと、神使仲間の友人からも合わせて500万頂きましたので」

神使「そうか・・・ わざわざすまない」


神使「合計すると3000万円となります」

神様「ありがたいな」


神使「目標額まであと2000万ですね・・・」

神様「う~ん・・・」

神使「神宮に掛け合ってみますか?」

107: 2016/08/23(火) 01:25:15 ID:APugto5E

神様「私の倉庫に眠ってる物を売ったら多少は金になるかなぁ?」

神使「・・・・・・」


神様「お前、明日神宮に書類出しに行くよな」

神使「えぇ、まぁ・・・」

神様「金になりそうな物売って足しにしてくれない?」

神使「(マズいですね。 表に出すと歴史が変わってしまうかも知れません・・・)」

神様「どったの?」

神使「いえ、別に・・・」

108: 2016/08/23(火) 01:25:55 ID:APugto5E

神様「私ももっと身銭切りたいんだけどなぁ~」

神使「神様は十分頑張ったと思いますよ?」


神様「給料の前借りって出来るのかなぁ? ちょっと聞いてきてくれる?」

神使「はぁ」

神様「借りられるようだったら寄付金に回して」

神使「一応聞いてみます」


神様「あっ、それと倉庫から1つ持ってきて貰いたい物があるんだけど」

神使「?」

109: 2016/08/23(火) 22:46:06 ID:APugto5E


―――翌日


神使「では、神宮に書類を提出して参りますので」

神様「よろぴこ~」


神使「遅くなりますが今日中には戻りますので」

神様「ん。 お土産よろ~」

110: 2016/08/23(火) 22:47:16 ID:APugto5E


―――神宮


神使「さて、資料の提出も終わりましたし・・・ 倉庫に行ってみますか」


 テクテク




―――神宮・奥社(神ちゃん倉庫)


 ギィー


神使「先日来たときは暗くてよく分かりませんでしたが、凄い量の荷物ですね・・・」

神使「一応、中身を見てみますか」ガサゴソ

111: 2016/08/23(火) 22:51:10 ID:APugto5E

神使「ん? この箱“わおうの時のやつ”って書いてありますね。 何でしょう?」


 パコッ


神使「・・・・・・印鑑? こんなに沢山」ゴロゴロ

神使「金印? 奴國王印・・・? まさか!?」

神使「・・・・・・」


 パコッ


神使「え~と、見なかったことにしましょう」

112: 2016/08/23(火) 22:52:43 ID:APugto5E

神使「神様がもってこいと言っていた箱は・・・ あった! これですね」ゴソゴソ



神使「やはり、ここにある物は売ってはいけない気がします・・・ しかし、あと2000万・・・」


 ~神様『私ももっと身銭切りたいんだけどなぁ~』~


神使「身銭・・・ ですか」

113: 2016/08/23(火) 22:53:22 ID:APugto5E


―――夜・廃神社


神使「ただいま戻りました」

神様「お~ どうだった?」


神使「復興に関する全ての書類を受理して頂きました」

神様「お金は?」

神使「結構手こずりましたが・・・ クリアできそうです」

神様「グッジョブ! さすが犬ころ」

神使「・・・・・・いえ」

神様「?」

114: 2016/08/23(火) 22:53:57 ID:APugto5E

神使「それと、本殿の修復と社務所の建築は明日から始まりますので」

神様「結構かかるよね」

神使「神宮専属の建築部隊が総出で当たるので、月末までにはある程度形になってるはずです」

神様「早っ!」


神使「あっ、それと頼まれていた物を倉庫から持ってきました」

神様「サンキュー」

神使「何が入ってるんです?」

115: 2016/08/23(火) 22:54:31 ID:APugto5E

神様「いや、この神社ってご神体無いじゃん?」

神使「そういえば・・・」


神様「やっぱご神体がないと神社じゃないしね~」

神使「何をご神体にするんですか?」

神様「ん? これ」ゴソゴソ


 パコッ


神使「これは!!」

116: 2016/08/24(水) 22:17:39 ID:6QJJkrtY


―――数週間後・任命式前日


神使「神社の方もだいぶ形になってきましたね」

神様「なんか・・・ 思ったより豪華じゃね?」


棟梁「ちょっと小ぶりだが、神宮と構造は同じだから見た目は申し分ねぇと思うぜ」

神使「こんなに立派にして頂いてありがとうございます」


棟梁「新しい神社なんか作ること滅多にねぇし、全力で行くぜ」

神様「良いね~ 全面的に任せるから好きにしてくれ」


神使「では神様、神宮の方へ行きましょうか」

神様「任命式は明日か・・・」

117: 2016/08/24(水) 22:18:22 ID:6QJJkrtY


―――神宮・任命式当日


司会「え~ 以上が、大宮司の辞任式の流れとなります」

大宮司「あぁ」


司会「辞任式が終わった後、そのまま名誉宮司の任命式に移ります」

大宮司「そうか・・・」


司会「では神様、今打ち合わせした通りの進行でお願いします」

神様「ん」

118: 2016/08/24(水) 22:19:29 ID:6QJJkrtY

祭儀神「神ちゃん、神宮での祭儀なんてどのくらいぶりだ?」

神様「ん~・・・ たぶん最後にやったのは500年以上前だと思う」


司会「あの・・・ やはり祭儀神様が執り行った方が良いのでは・・・」

大宮司「神様はこんななりでも神宮の神だ。 失礼だぞ?」

司会「申し訳ございません・・・」

神様「いや、大宮司の発言の方が失礼な気がするんだけど・・・」


祭儀神「でも、神宮は面倒な手順が多いしやっぱ神ちゃんは副神の方が―――」

神様「C子嬢は元気か?」ボソッ

祭儀神「・・・・・・」

119: 2016/08/24(水) 22:20:21 ID:6QJJkrtY

司会「祭儀神様もこう言っておられることですし・・・」

祭儀神「やっぱ神ちゃんが代表神で行こう」

司会「え!?」

祭儀神「うん、任命式の代表神は神ちゃん以外考えられないと思う」

神様「そうだろ?」


司会「しかし・・・」

祭儀神「まぁ、俺が副神で付くから何かあったらフォローするさ」

司会「はぁ・・・ では、式次第通り恙なくお願いいたします」

120: 2016/08/24(水) 22:20:55 ID:6QJJkrtY


―――控え室


 ガラガラ


神使「あっ、神様お打ち合わせは終わりましたか?」

神様「終わったー」

神使「では、お着替えを」

神様「ん」ポイポイ


神使「もう、また脱ぎ捨てて・・・ シワになっちゃいますよ」

121: 2016/08/24(水) 22:22:01 ID:6QJJkrtY

神様「もしかして、そこにかかってる装束着るの?」

神使「はい。 とってもご立派なご装束ですよね」

神様「うへ~ 着るの面倒くさそ~」

神使「私が着付けしますので」


神様「前にお前に買ってもらったやつが良い」

神使「あれは簡素な物なので、このような席で着用される物ではないのですが・・・」

神様「動きやすいしあれが良いの!」

神使「はぁ・・・」


神様「お前も、もう少し動きやすいのにしておけ」

神使「今回はそれほど動かないので問題ないと思いますが・・・」

神様「全力ダッシュ出来るくらいにしておいた方が良いぞ」ニヤッ

神使「?」

122: 2016/08/24(水) 22:22:57 ID:6QJJkrtY


 ガラガラ


祭儀神「あっ、神ちゃん着替え中だったか」

神様「なに?」

祭儀神「すまん、後で出直す」

神様「あ~ 気にしないでいいよ」


祭儀神「ん? 神ちゃん着る服が違うんじゃないか?」

神様「これで良いんだよ」

祭儀神「まぁ、俺はどっちでも構わないが・・・」

123: 2016/08/24(水) 22:23:42 ID:6QJJkrtY

神様「何か用か?」

祭儀神「任命式の手順だけ最終確認しようと思ったんだが」

神様「・・・・・・」

祭儀神「?」


神様「悪い犬ころ、ちょっと席を外してくれるか?」

神使「? 分かりました」


 ガラガラ ピシャッ

124: 2016/08/24(水) 22:25:28 ID:6QJJkrtY


祭儀神「神使は良いのか?」

神様「あぁ・・・」


祭儀神「そんな事より神ちゃん! なんでC子嬢のこと知ってんだよ!」

神様「うひゃひゃ、安心しろ。 誰にも言わないから」

祭儀神「頼むよ」


神様「それより、任命式の時にさぁ・・・」

祭儀神「?」

125: 2016/08/24(水) 22:59:24 ID:6QJJkrtY


―――任命式


司会「以上をもちまして大宮司の辞任式を終了いたします。 引き続き名誉宮司の任命式を執り行います」

司会「代表神様が変わりまして内宮神籍 神様が代表神、神宮 祭儀神様が副神をお務めされます」


神使「神様、祭壇へ上って下さい」ボソッ

神様「あぁ」トテトテ


司会「神使君、神様のご装束が指定の物と違うんじゃないか?」

神使「申し訳ありません・・・」

司会「君も略式のようだが?」

神使「・・・・・・」

司会「後で顛末書を提出しなさい」

神使「はい・・・」

126: 2016/08/24(水) 23:00:00 ID:6QJJkrtY


神様「・・・・・・」トテトテ


司会「それでは、名誉宮司任命の御神勅を代表神様より頂きます」

司会「ご列席の皆様、御神勅が始まりましたらご発言はお慎み下さい」

一同「」フカブカ


祭儀神「皆、表を」

一同「」サッ

127: 2016/08/24(水) 23:01:06 ID:6QJJkrtY

神様「大宮司、長きにわたり神宮での奉職ご苦労であった」

大宮司「」フカブカ


神様「貴殿が神宮に残した功績は計り知れない。 神の代表として深く礼を申す」


神様「・・・ここに列席している皆も周知の通り私は神階も低く自身の神力も使えぬ故、神としての存在意義は薄い」

神様「大宮司はそんな私に巫女の奉務を任せ、皆と接する機会を与えてくれた」

神様「私は、お前に救われた。 この場を借りて感謝の言葉を述べさせて頂きたい」


神様「大宮司、ありがとう」

大宮司「・・・・・・」フカブカ

128: 2016/08/24(水) 23:01:38 ID:6QJJkrtY

神様「きっと、私のように大宮司に救われた者も沢山いることであろう」

神様「そんな貴殿の功績を称え、神を代表し新たな職務を任命する」



神様「神勅!」

一同「」フカブカ

129: 2016/08/24(水) 23:02:22 ID:6QJJkrtY


神様「貴殿を・・・ のんびり村神社の宮司に任命する!」

大宮司「!?」


 ザワザワ


司会「神様、予定と違う発言は―――」

祭儀神「神勅の発令中である! 言葉を慎め!」

司会「!!」フカブカ


 シーン

130: 2016/08/24(水) 23:04:19 ID:6QJJkrtY

神様「大宮司、私は神力が使えない。 だから、どんな手を使ってでも願いは叶える」

大宮司「・・・・・・」


神様「其方の願い、私が責任を持って成就する」

神様「それが私のやるべき事であり、存在できるたった一つの理由だ」

大宮司「・・・・・・」フカブカ


神様「以上! 代表神 神様より神勅を申し伝えた!」

131: 2016/08/24(水) 23:05:11 ID:6QJJkrtY

一同「・・・・・・」ポカーン


神様「犬ころ! 逃げるぞ!」ダッ ダッ ダッ

神使「え? ちょ、神様!」


神様「ダッシュだ犬ころ!!」

神使「神様~ 待って下さい~」


ダッ ダッ ダッ



祭儀神「ふっ、はっはっはっ! さすが神ちゃん、やっぱ最高だ!」ハッハッハッ

大宮司「・・・・・・神ちゃん」フッ



ありがとう

133: 2016/08/25(木) 23:01:42 ID:O2ZCNT.k


―――数日後


 のんびり村~ 終点です
 プシュー


大宮司「のんびり村・・・ 懐かしいな」


 神様「よっ!」

大宮司「神ちゃん・・・」

134: 2016/08/25(木) 23:02:27 ID:O2ZCNT.k


―――田舎道


 テクテク


神様「どうだ? 数十年ぶりの故郷は」

大宮司「昔と何も変わっていない気がする」


神様「着いて早々で悪いけど、先にお前の新しい勤務先に直行だ」

大宮司「廃神社の宮司に任命するなんて神ちゃんも何を考えているんだか・・・」

135: 2016/08/25(木) 23:04:21 ID:O2ZCNT.k

神様「面白かっただろ?」

大宮司「あの後は大変だったんだぞ?」

神様「私も~ 10分おきに電話かかってきた。 全部無視してるけど」


大宮司「神勅は発令されたら出した神以外で取り消しは出来ないもんな」

神様「久しぶりに全力で逃げたよ」

大宮司「相変わらず逃げるのは得意だな」ハハッ

神様「褒めるな、褒めるな」テレッ

大宮司「褒めてないぞ?」

神様「・・・・・・」

136: 2016/08/25(木) 23:05:02 ID:O2ZCNT.k

大宮司「しかし、廃神社か・・・ 先が思いやられるよ」

神様「綺麗にしておいたから大丈夫~」


大宮司「廃社申請時の写真を見たよ。 あれをどう綺麗にしたのか楽しみだね」ハハッ

神様「結構頑張ったつもり」

大宮司「それは、ますます楽しみだ」


神様「おっ、見えてきた」

大宮司「ん? あれは・・・・・・」

137: 2016/08/25(木) 23:05:51 ID:O2ZCNT.k


―――新のんびり村神社


大宮司「・・・・・・」

神様「どうだ? “新のんびり村神社”の出来は」


大宮司「これは・・・ 一体・・・」

神様「裏側はまだ工事中だけど、今日からすぐに執務は行える状態になっている」

大宮司「まさか、復興させたのか!?」

神様「元神宮の大宮司が奉職する神社だ。 それなりの体裁は整えておかないとね~」

138: 2016/08/25(木) 23:06:53 ID:O2ZCNT.k

大宮司「あの廃神社をここまでにするなんて・・・ ほとんど新築じゃないか!」

神様「まぁ細かい物はもらい物だけど。 建物は全部新築だ」


大宮司「ここまでの物を作るなんて相当なお金が必要なはずだ。 そんな大金の決済など私の所に来ていなかったぞ?」

神様「そりゃそうだよ。 神宮からの復興費用なんて大した予算しかもらえなかったし」


大宮司「まさか、神力を使って!?」

神様「私が自分の神力を使わないことくらい知ってんだろ?」

大宮司「・・・・・・」


神様「さっ、本殿へ」

139: 2016/08/25(木) 23:07:47 ID:O2ZCNT.k


―――本殿


大宮司「立派な本殿だ・・・」


神使「規模は小さいですが神宮と同じ仕様で作られています」

大宮司「神使君」

神使「こんにちは、さぁ本殿の中へ」

140: 2016/08/25(木) 23:08:22 ID:O2ZCNT.k

 ギィー


大宮司「!?」

女「兄さん、久しぶり」

大宮司「妹か!」


女「何十年ぶりかしら?」

大宮司「・・・・・・そうだな。 元気だったか?」

女「なんとか。 兄さんも元気そうで良かった」

大宮司「申し訳ない、戻るのが遅れた」

141: 2016/08/25(木) 23:08:58 ID:O2ZCNT.k

神様「さてと、大宮司?」

大宮司「?」


神様「実は、ここのご神体はすでに紛失していて無くなっている」

大宮司「あぁ、廃社申請書類にもそう書かれていたな」

神様「そこで新しいご神体を用意した」

大宮司「新しい?」

142: 2016/08/25(木) 23:10:02 ID:O2ZCNT.k

神様「神使」

神使「はい」スタスタ


 コトッ


大宮司「この箱は?」

神様「お前の務めるこの神社に相応しいご神体が入っている。 開けてくれ」

大宮司「・・・・・・」


 パカッ


大宮司「これは!?」

神様「どうだ」

143: 2016/08/25(木) 23:11:08 ID:O2ZCNT.k

大宮司「神宮のご神体じゃないのか!?」

神様「似てるだろ?」

大宮司「レプリカか」


神様「千年前に神宮で盗難が頻発してな。 念のためオリジナルのご神体を私が保管してダミーを神宮に入れたんだよ」

大宮司「と言うことは・・・これは・・・」

神様「オリジナルの方だ。 神宮にあるダミーはそのまま別の神力が入ってしまったから動かせなくなっちゃって」

大宮司「・・・・・・」

144: 2016/08/25(木) 23:12:19 ID:O2ZCNT.k

神様「このオリジナルには、私の昔の神力が入っている。 自分で言うのも何だけど結構強い神力だぞ?」

大宮司「そうだったのか・・・」


神様「由緒は誰にも言うなよ。 問題になって私の給料がまた減るから」

大宮司「減給だけではすまないレベルの大問題だな」

神様「うっ・・・」

大宮司「ははっ、私はもう神宮の人間ではない。 神ちゃんをどうこうする権限はないよ」ハハハッ

神様「焦った・・・」ホッ


大宮司「立派なご神体だ。 それにこのご神体を奉るに相応しい本殿」

145: 2016/08/25(木) 23:13:05 ID:O2ZCNT.k

神様「本殿もだけど、鳥居も立派だったろ?」

大宮司「あぁ、当時の倍は大きいな」


神様「新しくお守りの授与所も作った」

大宮司「あぁ、沢山参拝者を呼ばないとな・・・」


神様「社務所も新設した!」

大宮司「あぁ・・・ なんて立派な・・・」


神様「今日からここがお前の新しい奉職先だ!」

大宮司「・・・・・・」

146: 2016/08/25(木) 23:13:53 ID:O2ZCNT.k

神様「大宮司、お前の願いは成就できただろうか?」

大宮司「あぁ・・・ いや、ありがとうございます・・・ 神様」フカブカ


神様「よかった」ニコッ

148: 2016/08/26(金) 02:50:02 ID:/MNETzd2


―――翌日・田舎道


 テクテク


神様「うへぇ~ 二日酔いで頭痛い・・・」

神使「神様コーラしか飲んでないじゃないですか・・・」

神様「お前、宮司と一緒にあれだけ飲んだくせによく平気だな」

神使「かなり強引に飲まされたね・・・ 大宮司ってお酒が入るとあんなになるんですね・・・」


神様「あ~ 迎えコーラ飲みたい・・・」

神使「バス停まで行けば自動販売機がありますから辛抱して下さい」

149: 2016/08/26(金) 02:50:48 ID:/MNETzd2

神様「いや~ でもあの予算でよくあそこまで立派な物が出来たよな」

神使「・・・・・・」

神様「どうした? 犬ころ」


神使「実は、予算がかなりオーバーいたしまして・・・」

神様「まぁそうだろうな。 どう見ても立派すぎたもんな」

神使「えぇ、棟梁がかなり頑張ってしまいまして」

神様「大丈夫なのか? 棟梁は」

神使「・・・・・・」

150: 2016/08/26(金) 02:51:28 ID:/MNETzd2

神様「神使君?」

神使「不足分は神様にローンが組まれています」

神様「・・・・・・」

神使「神様機構の“神専用神社建て替え長期ローン”が神様名義で・・・」

神様「・・・・・・えっと~ おいくらかしら?」


神使「元々足りなかった2000万と超過分の5000万の合わせて7000万円が60年ローンです」

神様「ぇっ・・・・・・」

151: 2016/08/26(金) 02:52:09 ID:/MNETzd2

神使「毎月10万円が60年間、神様の給料から引かれていきます」

神様「ちょっと待てよ! 超過分だけで5000万!? 1億もかかってんのかよ!」

神使「神様が棟梁に“全面的に任せるから好きにしてくれ”なんて言うからですよ・・・」

神様「だからって倍も超過するかよ普通!!」

神使「何を言っても手遅れです・・・」

神様「っていうか、毎月10万って私の手取り以上なんだけど・・・」

神使「今月で減給が解除されるので神様の手取りは14万に戻るのですが」

神様「え~ 60年も4万で過ごすの!? 無理だろ~」

152: 2016/08/26(金) 02:53:00 ID:/MNETzd2

神使「それが・・・ 任命式の件で来月からまた減給処分となりますので」

神様「・・・・・・」

神使「来月から、手取り50円となります」


神様「あっ、蝶蝶飛んでる」

神使「蛾です」

神使「・・・・・・」


神使「神様、現実逃避したい気持ちも分かりますが完済して下さいね」

神様「マジかよ~!!」

神使「身銭を切れて良かったじゃないですか」

神様「切りすぎだろ! 魂まで切っちゃってるよ!」

153: 2016/08/26(金) 02:53:46 ID:/MNETzd2

神使「二人でコツコツ払えば大丈夫です!」

神様「おうち帰りたい・・・」


神使「早期完済を目指して、次の勤務先でも頑張りましょう!」

神様「嫌だ~ だれか私に寄付してくれーーー!!!」





神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」#9 ―END

154: 2016/08/26(金) 02:55:47 ID:/MNETzd2

おわた

155: 2016/08/26(金) 02:59:53 ID:3Sj/gO4o

156: 2016/08/26(金) 03:45:51 ID:tTG.Guks

引用: 神様「神様だっ!!」 神使「神力ゼロですが・・・・・・」