153: 2020/04/21(火) 20:35:21 ID:XU8T3LeM

神様「神様だっ!」神使「神力ゼロですが・・・」#01 「ひのひの村」
神様「神様だっ!」神使「神力ゼロですが・・・」#02 「おきつねこんこん教」
神様「神様だっ!」神使「神力ゼロですが・・・」#03 「にゃんにゃん島」
神様「神様だっ!」神使「神力ゼロですが・・・」#04 「吉祥寺」
神様「神様だっ!」神使「神力ゼロですが・・・」#05 「京都」
神様「神様だっ!」神使「神力ゼロですが・・・」#06 「神宮」
神様「神様だっ!」神使「神力ゼロですが・・・」#07 「こわこわ神社」
神様「神様だっ!」神使「神力ゼロですが・・・」#08 「神使」
神様「神様だっ!!」神使「神力ゼロですが・・・・・・」#09 「のんびり村」
神様「神様だっ!!」神使「神力ゼロですが・・・・・・」#10 「巫女カフェ」
神様「神様だっ!!」神使「神力ゼロですが・・・・・・」#11 「もももも神社」
神様「神様だっ!!」神使「神力ゼロですが・・・・・・」#12 「あにあに神社」
神様「神様だっ!!」神使「神力ゼロですが・・・・・・」#13 「いつでも一緒」
神様「神様だっ!!」神使「神力ゼロですが・・・・・・」#0
神様「神様だっ!」神使「神力ゼロですが・・・」#14 「キセキ野教会」
神様「神様だっ!」神使「神力ゼロですが・・・」#15 「神苑温泉」
神様「神様だっ!」神使「神力ゼロですが・・・」#16 「お花を摘みに」
神様「神様だっ!」神使「神力ゼロですが・・・」#17 「こんこん稲荷神社」
神様「神様だっ!」神使「神力ゼロですが・・・」#18 「我☆偽神」

神様「神様だっ!」神使「神力ゼロですが・・・」#19 「神宮美食クラブ」
神様「神様だっ!」神使「神力ゼロですが・・・」#20 「未来へ託して」

神様「神様だっ!」神使「神力ゼロですが・・・」番外編・2018年夏
神様「神様だっ!」神使「神力ゼロですが・・・」番外編・2018年冬
神様「神様だっ!」神使「神力ゼロですが・・・」番外編・2019年春
神様「神様だっ!」神使「神力ゼロですが・・・」番外編 2019年冬『おにゅおにゅ神社』
神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」番外編 2020年春『継々乃社之領域』~
〓〓〓〓〓〓〓〓〓


女「あら、参拝者かしら? 珍しいわね」

?「気をつける也や。 彼奴は人とは異なる存在」

女「へぇ~ それはアンタと同じって事?」

?「あんなヤツと一緒になどするなど、我に対する侮辱であるぞ」

女「あらあら、そんな怖い顔なんかしてたら可愛い顔が台無しよ?」

?「無礼者め」

女「でも、これは楽しくなりそうね」フフッ

?「まさか、奴らを招き入れよう等とは考えてはおらぬよな?」

女「さぁ? でも・・・ その前に邪魔者を追っ払わないとね」
江戸前エルフ(9) (少年マガジンエッジコミックス)
154: 2020/04/21(火) 20:36:07 ID:XU8T3LeM

~あらすじ

神様「かわゆい女神、神ちゃんがお付きの神使と旅をする!」

155: 2020/04/21(火) 20:36:52 ID:XU8T3LeM

■ ~ 番外編 2020年春『継々乃社之領域』~


神使「お疲れ様でした。 目的の神社に到着したようです」

神様「3時間も歩かされるとは思わなかったんだけど・・・」

神使「神様がバスを待ちたくないって言ったんじゃないですか」

神様「だって2時間待ちとか無理だろ!」

神使「途中でバスに追い抜かされましたし、待っていた方が良かったと思いますが」

神様「うるせーよ! クソ犬!」ゲシッ

神使「痛っ! いつも言っていますが、もう少し神宮の女神らしい振る舞いをですね」

神様「嫌だ! 無理!」

神使「全く・・・」

神様「それよりさぁ、疲れたしサボって温泉行こうぜ」

神使「また、そんな事を・・・ 仕事が終わったら連れて行ってあげますから」テクテク

神様「微塵も思ってねーだろ・・・ はぁ~ 仕事したくねぇな~」トテトテ

156: 2020/04/21(火) 20:37:39 ID:XU8T3LeM

――― 継々神社(継々乃社之領域)


神様「う~ん・・・ つぎつぎじんじゃ?」

神使「つぐつぐじんじゃ、正式には“つぐつぐのやしろのりょういき”と言うようですです」

神様「センスねー名前だな」

神使「由緒のある立派な社名だと思いますが。 古い作りの神社のようですし」」

神様「マジメ過ぎなんだよ。 私なら“入拝即呪之社”とか付けるね」

神使「何でそんな近寄りがたい名前にするんですか・・・」

157: 2020/04/21(火) 20:38:18 ID:XU8T3LeM

神様「この位パンチがないと今時神社なんかに誰も来ないって」

神使「神社に必要な物は古きを敬う心、それに見合う荘厳さと威厳です」

神様「そんな見た目とか過去ばっかり追い求め・・・・・・ ん?」チラッ


 ???「」コソッ


神使「どうされました?」

神様「いや・・・ 今、向こうの木の陰から誰かに見られていた気が」

神使「向こうって、バス停の先にある木ですか?」

神様「うん」

158: 2020/04/21(火) 20:38:51 ID:XU8T3LeM

神使「村の人がバスを待っているのでは?」

神様「う~ん・・・」

神使「そうやってバス停まで行って、来たバスに乗って帰ろうとする魂胆ですね?」

神様「お前いくら私でも・・・ いや、それ良いアイデアだな」

神使「ふざけてないで社務所の方へご挨拶に行きますよ」テクテク

神様「へいへい」トテトテ


 ???「・・・・・・」

159: 2020/04/21(火) 20:39:25 ID:XU8T3LeM

――― 社務所


神様「ちわ~」ガラガラ

神使「神様・・・ いきなり扉を開けちゃダメですよ」


 シーン


神様「・・・・・・」

神使「誰もいませんね。 お留守でしょうか?」

神様「よし、帰ろう」

神使「今来たばかりです」

神様「いや、今回は素直に帰った方が良い気がする」

160: 2020/04/21(火) 20:40:05 ID:XU8T3LeM


 ??「何かご用でしょうか?」


神様・神使「?」クルッ

少女「参拝でしたら―――」

神様「ひゃー!!」

少女「!?」ビクッ

神使「お、落ち着いて下さい! 私たち怪しいものではございませんから!」

神様「殺さないで! 何でも言うこと聞く!! 私の隠しチョコあげるから!!」

少女「あ、あの・・・ どうされたんですか?」

神使「そ、その手に持っている刀を一度置いて下さい!」

少女「刀・・・? あっ」

神様「それ日本刀だよね!? スパッっといけちゃうヤツだよね!?」ブルブル

少女「すいません! あの・・・ これは違くて!」オロオロ

神様「まだ氏にたくなーい」ギャー

163: 2020/04/23(木) 19:59:19 ID:sFR/SnE.

――― 社務所内


少女「驚かせてしまい本当に申し訳ありませんでした」ペコリ

神使「こちらこそ取り乱してすみません。 お恥ずかしい限りです・・・」

少女「害獣が忍び込んだので、追っ払っていたところで」

神使「害獣?」チラッ

神様「?」

神使「確かにうちの神様はよく間違えられますが、一応知性はありますので安心して下さい」

神様「何で私なんだよ! 猿とかイノシシとかだろ普通!」ゲシッ

神使「痛っ!」

164: 2020/04/23(木) 20:00:13 ID:sFR/SnE.

少女「え~と・・・ お社の方は参拝でしょうか?」

神使「私達こちらの神社の巫女さんに用がありまして」

少女「巫女?」

神使「申し遅れました。 私は神宮から派遣されました神使と申します」

神様「私は巫女の神ちゃん。 気兼ねなくかわゆい神ちゃんと呼んでね」

巫女「はあ」

神使「こちらの神社を管理されている巫女さんはご在宅でしょうか」

165: 2020/04/23(木) 20:00:49 ID:sFR/SnE.

少女「お話しでしたら私の方で伺いますが」

神様・神使「?」

少女「この社の巫女で少女と言います」ペコリ

神様・神使「・・・・・・」

少女「何か?」キョトン

神使「少女さんがこの神社の?」

神様「巫女?」

少女「はい。 そうですが・・・」

166: 2020/04/23(木) 20:01:45 ID:sFR/SnE.

神使「失礼ですがその制服は・・・ まだ学生さんですよね?」

少女「中学2年です」

神様「人手不足もここまで来たか」

少女「あっ、お茶も出さずにすみません。 今お持ちします」

神使「すぐ帰りますので、お気遣い無く」

少女「遠慮なさらず。 コーヒー・紅茶・ジュースがありますが」

神使「では、私はコーヒーを。 神様はいかがしますか?」

神様「・・・・・・」キョロキョロ

神使「神様?」

神様「ん? 私も同じで」

少女「分かりました。 少々お待ちください」スタスタ


 ガチャ

167: 2020/04/23(木) 20:02:38 ID:sFR/SnE.


神使「神様どうしたんです? 落ち着かない様子ですが」

神様「別に? なんか古そうな物がいっぱいあるな~ と思って」

神使「ブラウン管テレビに真空管ラジオ・・・ 黒電話までありますね」

神様「なんかタイムストリップ劇場した気分だ」


神使「しかし驚きましたね、神社を管理している巫女が中学生だなんて」

神様「・・・・・・。 で、何でここに来たの?」

神使「神宮からこの村で毎年行われるお祭りを調べるようにと」

神様「祭り?」

168: 2020/04/23(木) 20:03:15 ID:sFR/SnE.

神使「はい。 神宮で神事内容が把握できないようでして」

神様「う~ん、それは密祭って事?」

神使「簡単に言えば、そのようです」

神様「別に構わないだろ。 古そうな村だし、密祭なんて他の土地にも沢山あるし」

神使「そうなんですが、実は他にも―――」


 ガチャッ


少女「お待たせしました」テクテク

神様「おっ、ありがとさん」

169: 2020/04/23(木) 20:03:58 ID:sFR/SnE.

少女「お口に合えば良いのですが」コトッ

神様「う~ん、芳醇な香り。 これはブルーマウンテンかな?」グビッ

少女「ブランデーを混ぜた特製コーヒーです」

神様「ブゥーッ!」ゲホゲホ

少女「あっ! ごめんなさい。 やっぱりおかしかったですよね」フキフキ

神様「だ、大丈夫。 ちょっと驚いただけ」ハハハ

神使「何と言いますか・・・ その・・・ だいぶアルコール分も高めですね」ハハハ

少女「都会で流行っていると聞いたもので・・・ 本当にすいません」キッ


 ガタッ


神様・神使「?」

170: 2020/04/23(木) 20:05:11 ID:sFR/SnE.

少女「あっ、古い建物なので建て付けが悪くてたまに軋みが鳴るんです」

神使「そうですか・・・」キョロキョロ


少女「それで、お話しというのは?」

神使「えーと・・・ 失礼な質問で恐縮ですが、少女さん以外に他にどなたか?」

少女「私はこれでもこの社の巫女です。 信用できませんか?」

神使「いえ、そういう意味ではなく」

少女「両親は早くに。 ですから私がこの社を一人で切り盛りしています」

神使「すみません、変な聞き方をしてしまいまして」ペコリ

神様「少女ちゃんは歳の割にしっかりしてるね。 本当に中学生?」

少女「小さい頃から巫女としてお仕えしてきましたから・・・ 自然と」

神様「ふ~ん」

少女「・・・・・・」

171: 2020/04/23(木) 20:06:12 ID:sFR/SnE.

神使「早速ですが、こちらのお祭りの事でお話を伺ってもよろしいでしょうか?」

少女「祭り、ですか?」

神使「はい。 神宮の調査命令でして」

少女「祭りと言っても、特に変わったことはしていませんが」

神様「密祭って聞いたけど」

少女「社で祝詞を上げるだけで衆人環視でもないので、そういう意味では密祭ですね」

神使「予定では今週末に神事が執り行われると聞いておりますが」

少女「はい」

172: 2020/04/23(木) 20:07:00 ID:sFR/SnE.

神使「その神事に私達も参加させてもらう事は可能でしょうか」

少女「・・・・・・」

神使「何か不都合でも?」

少女「いえ、そういう訳では・・・ その・・・ 私の一存では今すぐにお返事は難しく」

神使「神宮から必ず調査報告を上げるようにと言われております」

少女「・・・・・・」

神使「少女さん?」

少女「電話で確認してみます。 お時間の方は大丈夫ですか?」

神使「ありがとうございます。 私たちは大丈夫です」

少女「では、こちらで少々お待ちください」スタスタ


 ガチャッ

173: 2020/04/23(木) 20:07:36 ID:sFR/SnE.


神様「なんか神使君、珍しく今回は強気じゃん」

神使「神様、何か違和感を感じませんか?」

神様「というと?」

神使「表現が難しいのですが・・・ 私たち以外に誰かの気配を感じて・・・」

神様「ん~ 気のせいじゃない?」ポチポチ

神使「そういえば、先程神様もバス停で誰かに見られていると言っていましたね」

神様「う~ん」ポチポチ

174: 2020/04/23(木) 20:08:11 ID:sFR/SnE.

神使「神様? 仕事中は携帯で遊ぶのは禁止で―――」

 ブーブー

神使「?(メール)」ゴソゴソ


FROM:神様
本文:それ以上喋るな


神使「!?」クルッ

神様「気にし過ぎじゃない?」

神使「そう・・・ ですね」

175: 2020/04/23(木) 20:09:00 ID:sFR/SnE.


 ガチャッ


少女「お待たせしました」スタスタ

神様「お帰り~」

神使「いかがでしたでしょうか?」

少女「はい。 問題ないそうです」ニコッ


 ガタン! ガタン!


神様「・・・・・・。 本当に?」

176: 2020/04/23(木) 20:09:34 ID:sFR/SnE.

少女「どちらか宿はお取りになられていますか?」

神使「宿?」

少女「もしよろしければ、こちらに泊まっていかれては?」


 ガタンッ! ガタンッ! ガタンッ!


神様・神使「・・・・・・」

少女「すいません、建て付けが」フフッ

神様「もう建て付けってレベルの音じゃないよね?」

177: 2020/04/23(木) 20:10:24 ID:sFR/SnE.

神使「えーと・・・ 神様、いかがしましょう?」

神様「どうせ宿なんか取ってないんだろ」

神使「・・・・・・まぁ」

少女「それではお部屋を用意してきますので」スタスタ


 ガチャ


神使「神様、あの―――」チラッ

神様「ビローン」ベー

神使「・・・急に変顔しないで下さい。 にらめっこなんかしませんよ」

神様「お前にやったんじゃねーよ」

神使「?」

神様「はぁ~ 帰りてーな~ 面倒くせーなぁ~」

180: 2020/04/26(日) 01:38:10 ID:ELqHfEwQ

――― 客間


少女「滞在中はこちらのお部屋をお使い下さい」

神使「ありがとうございます。 正直助かりました」

少女「お手洗いは廊下を挟んで正面、洗面所は突き当たりに・・・・・・」

神様「」ジー

少女「・・・・・・」

神使「どうされました?」

少女「え? あっ、私お夕飯を買ってきます」

神使「私達もお供いたします」

少女「友達と一緒に行く約束をしているので」ニコッ


神様「私達が一緒の方が迷惑だろうよ」

少女「それではごゆっくり」スタスタ

181: 2020/04/26(日) 01:38:49 ID:ELqHfEwQ


 シーン


神様「神使君」

神使「はい」

神様「帰ろう。 バックレて逃亡しよう。 職務の放棄を提言する」

神使「そんな事できる訳ないじゃないですか」

神様「ここはダメだ。 私の第六感、いや全感覚が滞在を拒絶している」

神使「この神社、普通ではない何かがあるという事だけは理解できます」

神様「おや、何かお心当たりでも?」

神使「大ありですよ。 何ですか、あのメールは」

神様「犬ころは何か気付いたこととかある?」

182: 2020/04/26(日) 01:39:33 ID:ELqHfEwQ

神使「少女さんと私たち以外に誰かいるんですね? 私には見えない誰かが」

神様「いる。 いや、いるっぽいねぇ~」

神使「こちらの神社の主神さまでしょうか?」

神様「う~ん」

神使「違うのですか?」

神様「何でそう思ったの?」

神使「少女さんにいくつか違和感を感じました」

神様「ほぉ」

神使「神事は祝詞奏上だけなのに、誰の許可が必要なのでしょうか?」

神様「崇敬会とか?」

183: 2020/04/26(日) 01:40:10 ID:ELqHfEwQ

神使「誰も参加しないのにですか?」

神様「まぁ変だよな」

神使「もう1つ、少女さんとお話をしているときの変な間が気になりました」

神様「間?」

神使「何と言いますか・・・ たまにワンテンポ遅れが合ったような気がするんです」

神様「あ~」

神使「通訳を入れて話しているような、そんな感じを受けました」

神様「確かにちょっと違和感があったよな」

184: 2020/04/26(日) 01:40:48 ID:ELqHfEwQ

神使「一体どうなっているのでしょうか?」

神様「さぁね~」

神使「神様も分からないんですか?」

神様「う~ん、どれから手を付けて良いか分からんのよ。 ちょっと考えさせて」

神使「承知しました」

神様「おっ、随分と物わかりが良いねぇ」

神使「この場では、ですが」


神様「それより、どうして神宮は急にここを調べろって言い出したんだ?」

神使「理由は二つ。 一つは以前からこの神社の神事内容が不明だったこと」

神様「それはさっき聞いたよな」

185: 2020/04/26(日) 01:41:29 ID:ELqHfEwQ

神使「二つ目は、この神社の巫女です」

神様「巫女? 少女ちゃんのこと?」

神使「・・・今、詳細をお話ししても?」

神様「あ? あ~ 大丈夫みたい。 少女ちゃんと一緒に出て行ったぽい」

神使「何が大丈夫で何が出て行ったのかは知りませんが・・・ これを見て下さい」ドサッ

神様「何この書類」

神使「この神社の登記書類です」

神様「随分と量があるな」

神使「この神社から毎年提出された過去60年分の書類です」

神様「これが何か?」

186: 2020/04/26(日) 01:42:04 ID:ELqHfEwQ

神使「この神社の代表管理者の欄を見て下さい」

神様「代表・・・ 今年の登記は少女ちゃんの名前だな」

神使「これが10年前の登記です」ペラッ

神様「ん? 少女ちゃんの名前だ」

神使「そして、60年前のものがこれです」ペラッ

神様「・・・・・・」

神使「変だと思いませんか?」

神様「何で神宮は今頃これに気がついたんだ?」

神使「田舎の神社は長いこと管理者が変わらない事も珍しくないですから」

神様「でも60年って・・・」

神使「そこです。 異常に長すぎるんです」

神様「つまり、ずっと変更されないから変だと思った訳か」

187: 2020/04/26(日) 01:43:25 ID:ELqHfEwQ

神使「少女さんにお目にかかってビックリしました」

神様「まぁ、登記通りなら少女ちゃんはヨボヨボのお婆ちゃんのはずだしな」

神使「世襲で下の名前を代々受け継いだ、という可能性もありますが・・・」

神様「おっ、いいねそれ。 そうしておこうぜ」

神使「私が考えついたという事は、神宮だってその点は調べたと思いますよ?」

神様「バレたら、その時はごめんちゃい! で」

神使「それで済めば良いですが・・・」

神様「無理だよなぁ。 やっぱ調べる必要はあるかなぁ~」

神使「それがよろしいかと」

神様「うへ~ やっぱ面倒くせ~」

189: 2020/04/29(水) 04:45:17 ID:4hSEygD6

――― 翌日


神様「おはよ~」トテトテ

少女「おはようございます」

神様「あれ? お出かけ?」

少女「学校に。 中学生ですから」ニコッ

神様「早いね~」

神使「もう朝の8時です」

少女「ご飯はテーブルの上に用意しておきましたので適当に食べて下さい」

神様「うれし~ 後でチンして食べるね」

少女「すみません、うちには電子レンジがなくて・・・」

神様「・・・オッケ。 了解・・・」

少女「なんかすみません・・・」

神様「わ、私たちずっとここでウダウダしてるから心配しないで」アハハ

少女「そうして頂けると助かります。 それでは」スタスタ

190: 2020/04/29(水) 04:45:48 ID:4hSEygD6


 シーン


神使「神様、この後はどうされますか?」

神様「ガサ入れ?」

神使「それは・・・ あまり気が乗りませんが」

神様「じゃあ気分転換に外にでも行ってみますか」

神使「お散歩ですか?」

神様「情報収集だよ」

191: 2020/04/29(水) 04:47:21 ID:4hSEygD6


――― 田舎道


神様「しかし、本当に何もない村だな」トテトテ

神使「長閑で良いところじゃないですか」テクテク

神様「おっ、野生の爺さん発見」

爺さん「んぁ?」

神使「おはようございます。 精が出ますね」

爺さん「おんや? 二人とも見かけん顔じゃな」

神使「私たち継々神社の方へ用事がありまして」

爺さん「お~ 少女ちゃんの所かえ」

192: 2020/04/29(水) 04:48:09 ID:4hSEygD6

神様「爺さん、それなに育ててるの?」

神使「アサガオ・・・ でしょうか? とても綺麗ですね」

爺さん「これから神社に奉納するんじゃよ」

神様「ふ~ん」

爺さん「神社があるのは逆側じゃぞ?」

神使「ご挨拶は済ませまして、暇なので村を散歩していたところです」

爺さん「そーか。 めんこい子じゃろ、村自慢の巫女様じゃ」

神様「少女ちゃんって生まれはこの村?」

爺さん「んぁ~ そうじゃな」

193: 2020/04/29(水) 04:48:47 ID:4hSEygD6

神様「中学生とは思えないほどしっかりしてるんだけど、あの性格って昔から?」

爺さん「んぁ~ 昔からあんな感じじゃった気がするのぉ」

神様「巫女はいつからやってんの?」

爺さん「いつからじゃったかの~ もうずっとじゃ」

神様「前の巫女は?」

爺さん「前? 前~・・・ はて、誰じゃったかのぉ」

神使「少女さんのご両親、お母様ではないのですか?」

爺さん「両親?」

神使「早くにお亡くなりになったと少女さんから伺いましたが」

爺さん「んぁ~ 両親・・・ そういえば少女ちゃんはいつから一人じゃったかのぉ~?」

194: 2020/04/29(水) 04:49:38 ID:4hSEygD6

神様「もう一個だけ教えて。 少女ちゃんが友達と遊んでいるの見たことある?」

爺さん「あの子にゃ同学年の子はいないで。 中学生は少女ちゃんだけじゃ」

神様「そうなんだ」

爺さん「じゃが、随分昔は仲の良い同級生と毎日のように遊んでおった気もするのぉ~」

神使「小学生の頃とかでしょうか?」

爺さん「んぁ~ いつじゃったかのぉ~」

神様「なるほどね。 あんがと」

爺さん「この辺は日が落ちると真っ暗になるけぇ、早く帰るんじゃぞ」テクテク


神使「年のせいでしょうか? 話の内容が混乱していたような・・・」

神様「そうかな?」

神使「?」

神様「これ、ちょっとヤバいんじゃね」

195: 2020/05/02(土) 01:48:28 ID:H7JdC4ZM

――― 継々神社・客間


神様「・・・・・・」

神使「さっきから何を考えているんですか?」

神様「ん~ 分かった」

神使「?」

神様「私もそう思う。 たぶん大丈夫だ」

神使「神様?」

神様「姿を現しても良いぞ」


 ?『それでは、失礼いたします』スー


神使「!?」

196: 2020/05/02(土) 01:49:28 ID:H7JdC4ZM

神様「大丈夫、コイツは忍神。 私たち側」

忍神「ご挨拶遅れました、神使殿」ペコリ

神使「忍神・・・ 様?」

忍神「神様機構、諜報室の忍神と申します」

神使「諜報室!? 噂では聞いたことがありますが、本当に存在していたんですね・・・」

神様「まぁトップシークレットだしね~」

忍神「私は、2年ほど前からこの神社で隠密の諜報活動をしております」

神使「そんなに前から・・・ 神様の指示でしょうか?」

神様「流石だろ。 私の手回しの早さを褒め称え、そして牡蠣を献上せよ!」ウヒャヒャ

忍神「私は60年ほど前から神様には進言しておりましたが・・・」

神様「ウヒャ・・・」ギクッ


神使「・・・・・・」ジトー

神様「・・・・・・」プイッ

197: 2020/05/02(土) 01:50:17 ID:H7JdC4ZM

忍神「先程声を掛けるまで、私の存在にすら気付いていなかったようでしたが?」ズイッ

神様「・・・顔、近いっすね」


神使「神様・・・ 流石の私もドン引きなんですが・・・」

神様「ほ、ほら私も色々忙しいから」アハハ

神使「そんな理由で忍神様の助言を60年も放置したんですか?」

神様「いや、でもちゃんと諜報活動の許可は出てるって事で」ハハハ

忍神「結局長官さん経由での諜報任務ですが?」

神様「うん。 謝罪しますので、この場は何卒穏便に願います」ドゲザ

198: 2020/05/02(土) 01:51:12 ID:H7JdC4ZM

神使「でも、どうしてこの神社が諜報対象に?」

神様「あれは、私がまだ幼かった頃―――」

神使「忍神様はどうしてこちらの神社をお調べになっているんですか?」

神様「・・・・・・」

忍神「元々、この地は神が入ることが許されない禁足地でした」

神様・神使「え!?」

忍神「・・・・・・。 そのように申したのは神様ではないのですか?」

神様「は!? そんな事いつ言った!?」

忍神「私は別の神経由で聞いたので。 神様が何千年も前に仰ったと」

神様「マジかよ! なんで?」

忍神「さぁ、私には・・・」

神様「全然記憶にないんだけど」

199: 2020/05/02(土) 01:52:11 ID:H7JdC4ZM

神使「取りあえずその話は置いておきましょう」

神様「置いておいてもOK?」

神使「思い出せないようでしたら、後で良い薬がありますから試してみましょう」

神様「薬ってポラギノール的な? 私のお尻を狙うなんて神使君のへ・ん・た・い」

忍神「でしたら、私もかなり効く薬を持っておりますので」

神様「いや・・・ お前のはマズいだろ・・・」

忍神「ご安心を。 吹矢で一刺し、即効性です」

神様「・・・それって薬か? 日本薬局方にちゃんと載ってる?」

200: 2020/05/02(土) 01:52:56 ID:H7JdC4ZM

神使「忍神様、話の続きをお伺いしてもよろしいでしょうか」

忍神「今から60年程前、特殊な歪みを感じたと近くの管理神から報告がありました」

神使「歪み?」

忍神「正体は不明。 それ以降、毎年決まった日に歪みを検出しています」

神使「決まった日って、まさか」

忍神「お察しの通り、この村の神事とされる日と一致します」

神使「神様、お心当たりは?」

神様「ない。 いや、今必氏に思い出してるから吹矢はちょっと待って」

201: 2020/05/02(土) 01:53:44 ID:H7JdC4ZM

神使「その神事と今回の件は何か関係があるのでしょうか?」

忍神「お二人も感じたかと思いますが、私達と少女さん以外に何者かの気配を感じます」

神使「確かに感じましたが、私が感じたのは忍神様の気配では?」

忍神「別のものかと思います」

神使「他にも誰かいるのですか?」

神様「気配は2つあるな」

神使「え!? あと二人も正体が分からない何かがいるって事ですか?」

忍神「一つは人の物。 この神社を監視している男がいます」

202: 2020/05/02(土) 01:54:25 ID:H7JdC4ZM

神様「少女ちゃんはそれを?」

忍神「気付いております」

神様「なるほど。 日本刀・・・ か」

忍神「何度か刀を振りかざしながら、追い返している姿を確認しました」

神様「私がバス停で感じた気配はそいつだな。 で、その男の目的は?」

忍神「十中八九、この神社の宝物を狙っているのではないかと」

神使「宝物?」

忍神「太古の土器のようです」

神様「土器か~ 土器は興味ないなぁ」

神使「神様の興味は関係ございません」

神様「いや、経験上さぁ土器ってどこも買い取ってくれないんだよ」

203: 2020/05/02(土) 01:55:02 ID:H7JdC4ZM

神使「・・・その土器というのは何か特殊な由来でもあるのでしょうか?」

忍神「神体クラスではありますが学術的価値はそれほど高くはないと思われます」

神様「ほらね」

忍神「ただ・・・ 少し変といいますか、気になる点がありまして」

神様「お前が曖昧な表現になるなんて珍しいな」

忍神「昨年はその土器は無かったのですが、今年は存在しているようです」

神使「どういう事でしょうか?」

忍神「ある日を境に土器が出現しました」

神様「パードゥン?」

忍神「今思えば、昨年本殿裏でその欠片を見たような気がいたします」

204: 2020/05/02(土) 01:55:54 ID:H7JdC4ZM

神使「・・・つまり、去年は粉々だったけど今年は復活していると?」

忍神「確証はございませんが」

神様「イミフなんだけど・・・ 頭大丈夫?」

忍神「ある日を境に、突如土器が出現したのは事実でございます」

神使「もしかして・・・」

忍神「はい、神事とされる日です」

神様「またそれかよ・・・ 神事で何が起こってんだ?」

忍神「正確な報告には相当な時間を要するかと思われます」

神使「確かにその神事がトリガーになっているとしたら、1年に一度だけしか調べるチャンスがないですからね・・・」

205: 2020/05/02(土) 01:56:33 ID:H7JdC4ZM

神様「もう一つの気配の方は?」

神使「少女さんには見えて、私達には見えない何か・・・ ですね?」

忍神「仰る通り」

神様「少女ちゃんがそれと喋ったりしている光景は見たのか?」

忍神「独り言のような感じでボソボソしているのは遠巻きで確認しております」

神様「会話の内容は?」

忍神「接近は避けておりますので」

神使「確かに感づかれると隠密活動が台無しになってしまいますからね」

忍神「私も相手が見えない分、余計慎重にならざるを得ず・・・」

神様「まぁ、相手さんは忍神の存在には気付いているだろうな」

忍神「私もそう思います。 会話は私が近づけない場所で行っている印象を受けましたので」

神様「両者監視の元での我慢比べ大会か・・・」

神使「どちらかが動く必要がある訳ですね」

206: 2020/05/02(土) 01:57:24 ID:H7JdC4ZM

神様「他に気になる点は?」

忍神「実は・・・ こちらが一番不可解でして、少女さんは現在中学2年生なんです」

神様「若干大人びた感じはするけど、何も不審な点はないだろ」

忍神「去年も中学2年生でした」

神様「留年? 少女ちゃんてそんなに頭悪いの?」

神使「流石に中学で留年は無いのでは・・・ まさか、成長していないと?」

忍神「成長はしているようですが、神事の日を境に・・・ 少女さんだけが1年戻っています」

神様「村人の方は?」

忍神「特に影響は感じられません」

神使「村の人が気付かないなんて事あり得るんでしょうか?」

207: 2020/05/02(土) 01:57:59 ID:H7JdC4ZM

神様「忍神さぁ、その日に何か感じなかった? 特に匂いとか」

忍神「匂いですか?」

神様「そう、お香とか甘ったるい匂いとか・・・ 煙たいとかそんな感じの」

忍神「そうですね、1年前ですので・・・ あっ、でも強烈な眠気を感じました」

神使「眠気?」

忍神「疲れがたまっていたのかと思いますが、少し異常とも思える眠気でした」

神様「・・・・・・」

208: 2020/05/02(土) 01:58:38 ID:H7JdC4ZM

神使「やはり神事を見てみないと手の出しようがありませんね」

神様「忍神以外に私達まで参加したんだぞ? たぶん早々に行動してくるはずだ」

忍神「やはり私達の方から先に仕掛けるべきかと」

神使「神事まであと2日しかありませんね」

神様「そうだなぁ~・・・・・・ ん?」

忍神「少女さんが学校から戻ってきたようですね」

神様「一旦解散だ」

忍神「はい」

神様「それと神使、忍神」

神使・忍神「何でしょう」

神様「吹矢だけはちょっと待って下さい!!」ドゲザ

209: 2020/05/02(土) 01:59:17 ID:H7JdC4ZM

――― 社務所前


少女「・・・フッ」ニヤッ

少女「えぇ、分かってる」

少女「・・・そうね、予定通り今夜決行するわ」

少女「私達が先に・・・」


少女「頃してやる」キッ

211: 2020/05/04(月) 13:46:25 ID:RBp42AdM

――― 夜・居間


神様「この煮物美味しい」モグモグ

少女「味、濃くなかったですか?」

神様「丁度良い。 私の好きな味」

神使「少女さんはお料理がお上手ですね」

少女「一人暮らしが長いので」

神使「いつからお一人で生活を?」

少女「そうですね・・・ もう60年くらいでしょうか」

神様・神使「・・・・・・」

212: 2020/05/04(月) 13:47:21 ID:RBp42AdM

少女「冗談ですよ」フフフ

神様「・・・この神社って建立はいつ位なの?」

少女「私も社の成り立ちは詳しく知らないですが、相当古くからあるようです」

神様「変わった作りの神社だよね」

少女「ここ以外で同じ作りの社は存在しないと聞いたことがあります」

神様「へ~」モグモグ


少女「ご飯よそりましょうか?」

神様「うん。 重めでお願い」

神使「重めって・・・ 少しは遠慮してくださいよ神様・・・」

213: 2020/05/04(月) 13:48:12 ID:RBp42AdM

――― 客間


神様「・・・・・・」

神使「どうされたんですか? 神様」

神様「気になることがある」

神使「体重ですか?」

神様「ちげーよクソ犬」ゲシッ

神使「痛っ! では何が気になるんです?」

神様「ここって何?」

神使「神社・・・ 継々神社ですね」

神様「本当に?」

214: 2020/05/04(月) 13:49:11 ID:RBp42AdM

神使「どういう意味です?」

神様「ここの正式名称って“つぎはぎのもりもり”だろ?」

神使「“つぐつぐのやしろのりょういき”です。 何一つ合っていませんが・・・」

神様「○○神社とか、大社とか宮とかではないんだよなぁ」

神使「そう言われれば、少し特殊ですね」

神様「社号でなくて俗称って線もあるけど、ちょっと名称が変なんだよ」

神使「しかし、どう見ても神社形式だと思いますが。 神宮にも登録されていますし」

神様「継々神社ってのは神宮が勝手に付けた称号じゃないのか?」

神使「可能性はありますが、それが何か?」

215: 2020/05/04(月) 13:49:45 ID:RBp42AdM

神様「少女ちゃん一回もここの事を“神社”って言っていないんだよ」

神使「え?」

神様「もしかして、私たちが根本的に勘違いをしているんじゃ・・・」

神使「根本?」

神様「・・・・・・。 もう一つ、重要なことがある」

神使「何でしょう」

神様「隙間風が気になる。 寒くて寝られない」

神使「古い建物ですし・・・ それは我慢しましょう」

神様「う~ん・・・」ゴロゴロ

216: 2020/05/04(月) 13:50:31 ID:RBp42AdM

神使「あっ、神様また服を脱ぎっぱなしにして・・・ シワになってるじゃないですか」

神様「お前の布団の下に敷いておけば朝にはピシッとなるだろ」

神使「全く、私が寝相悪かったらどうするんですか・・・」

神様「私はシワシワでも気にならないけど」

神使「私が気になるんです。 あれ?」

神様「何々? ポッケにお金でも入ってた? それ、私のだから寄越せよ」ガバッ

神使「そんな物入ってませんよ・・・ それより、この壁見て下さい」

神様「あ? 何その穴」

神使「覗くと外が見えます」

神様「隙間風はそこから入っていたのか。 荷物置いて塞いでおけよ」

217: 2020/05/04(月) 13:51:17 ID:RBp42AdM

神使「あっ、少女さん」

神様「どこ?」キョロキョロ

神使「外です。 この穴から本殿の裏手にいる少女さんが見えます」

神様「こんな時間に掃除か? ってか覗きかよ・・・」

神使「大量のアサガオを運んでいるようですね。 手伝いに行きましょうか」

神様「そういえば野生の爺さんが奉納するとか言っていたな」

神使「・・・・・・」

神様「どした?」

神使「少し遠くてよく分かりませんが、作業しながら誰かと話をしているようで・・・」

神様「・・・・・・。 ちょっと変われ」

神使「どうぞ」

神様「ん~・・・」ジー

219: 2020/05/05(火) 22:22:30 ID:dRZoMmQw

――― 本殿裏


少女「うるさいなぁ、 何をそんなに怒っているのよ。 ちょっと小休止よ」グビッ

少女「・・・お酒くらい良いじゃない。 相変わらず面倒くさいなぁ」

少女「・・・そう? 私はイレギュラーな展開は大歓迎。 あなたは違うの?」フッ


神様「疲れを取るなら酒より睡眠! 食べて寝て、また食べて寝る!!」


少女「!?」クルッ

神様「中学生にお酒はまだ早いと思うなぁ~」トテトテ

少女「こ、これは紅茶です! っていうかいつからそこに!?」

220: 2020/05/05(火) 22:23:06 ID:dRZoMmQw

神様「少女ちゃんって普段はそんな大人な喋り方だったんだ~」

少女「・・・・・・」

神様「何ていうか別人だよねぇ~ でも、私は猫かぶり少女ちゃんも性格すり切れ少女ちゃんも両方好き」

少女「す、すり切れ!?」

神様「今、誰とお話ししてたの?」

少女「・・・私は見ての通り一人ですが」

神様「まぁいいや。 トイレってどこだっけ」

少女「神ちゃん様達のお部屋の真ん前です・・・」

神様「そういえばそうだった、あんがと」タッタッタッ


少女「・・・・・・」

221: 2020/05/05(火) 22:23:47 ID:dRZoMmQw

――― 客間


神様「ただいま~」

神使「いかがでしたか?」

神様「モリモリ出たね。 もうすんごい量」

神使「それは聞いておりません。 少女さんの方です」

神様「忍神、もし居るなら気配だけ出せ」


ポワッ


神様「居るようだな。 話だけ聞いてろ」

222: 2020/05/05(火) 22:24:21 ID:dRZoMmQw

神使「こちらから先に動くのですか?」

神様「さっき仕掛けた。 いや仕掛けられたのかも知れないけど・・・ 近いうち動きがあるぞ」

神使「作戦は?」

神様「ない」

神使・忍神「・・・・・・」

神様「いや、どう出てくるのか分からないし。 まぁすぐ行動できるようにしておけ」

神使「分かりました」

神様「明日は忙しくなるぞ~」

223: 2020/05/05(火) 22:25:02 ID:dRZoMmQw

――― 深夜・寝室


モクモク


神様「・・・・・・」

神使「Zzz」スヤスヤ

神様「犬ころ、起きられるか?」

神使「Zzz」スヤスヤ

神様「・・・・・・。 忍神は意識あるか?」


シーン


神様「だいぶ強めに焚いてるみたいだし、無理か」ハァ

神様「忍神まで落とすなんてどんな調合だよ・・・ 仕方ない、私一人で行きますかね」

224: 2020/05/05(火) 22:25:40 ID:dRZoMmQw

――― 本殿裏


少女「・・・・・・。 分かったわ、あなたが物音を立てたら突っ込む」

少女「大丈夫よ、覚悟は出来てる。 準備して」

少女「絶対に・・・ 絶対に頃してやる」シャキン


 神様「あれ~ 少女ちゃん、日本刀なんか持って何してるの~?」トテトテ


少女「!?」クルッ

神様「お~こわっ、そんな怖い顔見たら流石の私でもブルッちゃうよ」

少女「あなた・・・ どうしてここに・・・」キッ

225: 2020/05/05(火) 22:26:17 ID:dRZoMmQw

神様「チョウセンアサガオで眠らせたと思った? あとでこっそり調合教えてよ」

少女「・・・・・・」

神様「まぁ私以外はグッスリだけど」ウヒャヒャ

少女「ちょ、大きな声を出さないで」


 盗人「!? ちっ、感づかれたか」タッタッタッ


少女「あっ!」クルッ

神様「おや、こんな遅くに参拝者かな?」

226: 2020/05/05(火) 22:26:50 ID:dRZoMmQw

少女「待ちなさい! 逃がさな―――」

神様「追いつかないよ」グイッ

少女「離して! あいつを殺さないと!!」

神様「・・・・・・。 そんな事聞いたら余計離せないって」

少女「!」クッ

神様「歳のわりに良い目つきだ。 中学生には出せない重みがある」

少女「・・・・・・」

神様「おい、もう一人・・・ って言って良いのか分からんが誰かいるんだろ?」


 シーン


神様「この状況でも出てこないのか」ハァ

少女「・・・・・・」

227: 2020/05/05(火) 22:27:35 ID:dRZoMmQw

神様「詳しい話をして欲しい」

少女「あなたに話しても信じてもらえないわ」

神様「そうかな? これでも結構その手の話には造詣が深いんだけど」

少女「今更話したところで・・・ もう、手遅れよ」

神様「じゃぁ、私から先に話をしよう」

少女「一人にして。 今はあなたと話をする気力は無いの」

神様「だったら、何で私達を招き入れたの?」

少女「え?」

神様「邪魔だったら泊めてくれるはずないよね? 普通は追い返す」

少女「・・・・・・」

228: 2020/05/05(火) 22:28:33 ID:dRZoMmQw

神様「さっきだって、私に気付かれるような所で話をしてた」

少女「それは・・・ たまたま油断して―――」

神様「嘘だね。 うちの諜報が2年監視してても隙を見せなかったくせに」

少女「・・・・・・」

神様「私は神宮の神、この国で最高神の役を司っている」

少女「神?」

神様「神の存在は信じない口? んな訳ないよね?」

少女「そうね。 流石神宮の神さま、話の持っていき方が上手いわ」

神様「お褒めにあずかり至極光栄だね」

少女「そんな事思ってもないくせに」フッ

神様「お互い様。 じゃ本題、詳しい話を聞かせて欲しい」

少女「・・・・・・」

229: 2020/05/05(火) 22:29:09 ID:dRZoMmQw

神様「たぶん私達は少女ちゃんの力になれる。 だから―――」

少女「・・・少し黙っててちょうだい」

神様「?」

少女「ごめんなさい、あなたに言ったんじゃないわ」

神様「可能なら、少女ちゃんの意思で話して欲しい」


少女「私・・・ 明日の夜に―――」

230: 2020/05/06(水) 17:54:23 ID:D9Lav2yM

――― 寝室


神使「Zzz」スヤスヤ


 バンッ


神様「起床!!」ゲシゲシッ

神使「痛っ! 痛たた!!」


神様「敵襲!! 夜討だー!!」

忍神「何? 夜討!? 敵はどこだ!!」ハッ


神様「二人ともやっと起きたか」

神使・忍神「神様?」

神様「話がある。 付いてこい」トテトテ

神使・忍神「?」

231: 2020/05/06(水) 17:55:57 ID:D9Lav2yM

――― 本殿前


神使「こんな所に連れてきて何があるんです?」

忍神「私は姿を現していても大丈夫なのでしょうか?」

神様「大丈夫。 お、居たいた」

神使「あれは・・・」

神様「お待たせ」トテトテ


少女「・・・・・・」クルッ


神使「少女さん?」

232: 2020/05/06(水) 17:56:34 ID:D9Lav2yM

少女「こんばんは、神使さん。 それと・・・」

神様「紹介する。 こいつは忍神」

忍神「こうしてご挨拶するのは初めてになります。 忍神と申します」

少女「そう、あなたが。 初めまして忍神さん」フフッ

神使「少女さんの雰囲気がいつもと違う気がしますが・・・」

少女「どっちが本当かなんて忘れちゃったけど、こっちの方がしっくりくるわ」

神様「見た目とのギャップが萌え萌えで良いねぇ~」

神使「あの・・・ これは一体・・・」

少女「私からも、もう一人紹介します」

神使「もう一人って、まさか・・・」

神様「どこにいるのかなぁ?」キョロキョロ

233: 2020/05/06(水) 17:57:06 ID:D9Lav2yM

少女「あの子は、私以外に見ることが出来ないの。 だから私を媒介にするわ」

神様「媒介?」

少女「あの子と一時的に入れ替わる」

忍神「そんな事が・・・」

少女「入れ替わっている間は私の記憶が飛ぶ。 もし、私に戻す場合は3回手を叩いて」

神様「3回拍手をすれば良いって事?」

少女「そうよ。 じゃぁ入れ替わるわ」パンッ パンッ パンッ


 ポワッ


少女「」ガクッ

神様「入れ替わった・・・ のか?」

234: 2020/05/06(水) 17:57:46 ID:D9Lav2yM

少女「・・・・・・」キッ

忍神「瞳が赤く・・・」ゴクリ

神使「失礼ですがあなた様は・・・」

少女「我に言葉を発するなど無礼にも程があるぞ貴様」ギロッ

神使「・・・・・・」

神様「お前は・・・」

少女「久しいな」ニヤッ

神様「・・・・・・」

少女「言葉も出ぬか。 まぁそれも仕方の無いこと、我を前にして―――」

神様「」パン パン パン

少女「ちょ、おま―――」


 ポワ ポワッ

235: 2020/05/06(水) 17:58:24 ID:D9Lav2yM


少女「・・・ん・・・。 あの子と話は出来た?」

神使「ちょっと神様! 何で戻してしまったんですか!?」

神様「いや、だって生意気だったから」

神使「すいません少女さん。 まだ何も話しておらず・・・

少女「・・・・・・。 まぁ理由は大体察しが付くけど」

神様「すっげー嫌な感じだったんだけど、なにアイツ」

少女「あの子、いま神ちゃんさんを全力で蹴りまくっていますよ?」フフッ

神様「え~・・・ マジかよ」

少女「あの子だと余計に話がこんがらがりそうだし、私から触りを話すわ」

236: 2020/05/06(水) 21:49:04 ID:D9Lav2yM

――― 本殿内


神使「人守様?」

少女「本当はどういう名称だったか今となっては分からないけど」

神様「それって少女ちゃんしか認識できないの?」

少女「この子は私専用。 一人に対して一人の人守が付いていたそうよ」

神使「いた、という事は・・・」

少女「今は私だけみたいだけど」

神様「背後霊みたいのもの?」

少女「あの子が一番嫌っている呼び名だけど、簡単に言えばそうね」クスッ

237: 2020/05/06(水) 21:50:32 ID:D9Lav2yM

忍神「神様はご存じで?」

神様「ん~・・・ 私もそんな存在は初耳だなぁ」

少女「嘘つけこの女、耳齧るぞ! ってツグが叫んでるわ」

神使「ツグ?」

少女「さっき私を介して会った子よ。 本名は継姫って言うらしいけど、ツグで良いわ」

神使「継々神社でツグ様ですか・・・」

少女「“様”なんて付けるほど立派じゃな――― ちょっと、耳元で大声出さないでよ」シッシッ

神様「ツグちゃ~ん、おイタしちゃダメよ~」

神使「神様、あまりちょっかい出してはダメですよ」

神様「へいへい。 んじゃ聞きましょうか、特に少女ちゃんが明日殺されるって言う件を詳しく」

神使・忍神「え!?」

238: 2020/05/06(水) 21:51:36 ID:D9Lav2yM

少女「私の家系は、代々ツグのような人守をもつ家だった」

神使「それが、この神社の巫女の勤めということですね?」

少女「その言い方は遠慮してもらえると助かるわ」

神使「?」

少女「私は何とも思っていないんだけど、ツグが嫌がるの」

神様「神社」

忍神「どういう事でしょうか」

神様「ここは神社じゃないんでしょ?」

少女「そうね。 ここには神なんかいないし、ご神体も無いから」

神使「しかし、本殿や鳥居も・・・ 社務所もあるようですが」

239: 2020/05/06(水) 21:52:35 ID:D9Lav2yM

神様「時代の流れで一緒くたにされたんだろ」

忍神「失礼ながら、ツグ様は神とは違うのですか?」

少女「さぁ、ツグは一緒にされるのは嫌みたいね」

神使「ではどうして神社の形式に?」

少女「色々あってね。 神宮の管理下にしておいた方がこっちも助かるの」

神様「背に腹は代えられないって事か」

神使「?」

240: 2020/05/06(水) 21:53:15 ID:D9Lav2yM

神様「毎年登記書類が提出されたって事は、神宮から補助金が支給されてる」

忍神「なるほど。 確かに神宮に運営困難神社補助制度がございますね」

少女「これでも維持にはお金がかかるの。 未成年である私の生活もあるし」

神様「わかる。 分かるよ、働かずもらうお金ほどありがたい物はないし」

神使「少女さんは中学生だから働けないだけです。 神様の不純な考えと一緒にしないで下さい」

忍神「しかし、よく今まで神宮にバレませんでしたね」

少女「こんな田舎の末端まで調べてたら切りが無いんじゃないかしら」

神様「まぁ今年は気付かれたみたいだけど」

少女「構わないわ。 私の命も明日で終わりだしね」フッ

241: 2020/05/06(水) 21:54:51 ID:D9Lav2yM

神使「先程、その・・・ 少女さんが殺されると仰っていましたが」

少女「えぇ。 私は明日殺される」

神使「一体誰に?」

少女「この社にある土器を盗もうとしている男よ」

神使「そんな・・・ でも、何故そんな事が分かるんですか?」

少女「だって、もう60回も殺されてるんだもん」

神使「え・・・」

少女「何度繰り返してもダメだった・・・ 土器を予め壊しても、私がこの地を離れても・・・」

242: 2020/05/06(水) 21:55:29 ID:D9Lav2yM

少女「必ず私はあの男に殺される・・・」

神様「そのツグとか言うヤツがその度に時間を戻しているって事?」

少女「そう。ツグの力で私が氏んだ後に1年戻してくれているわ」

忍神「そんな事が・・・ 神である私達でさえ人の氏は戻すことが出来ないのに・・・」

神様「・・・・・・。 ちょっとツグちゃんと話がしたいな」

少女「もう一度変わりましょうか?」

神様「いや、少女ちゃんも同伴で」

少女「でも、どうやって・・・」

神様「土器はある?」

243: 2020/05/06(水) 21:56:09 ID:D9Lav2yM

少女「土器ならその隅っこに転がっているわ」

神様「あ~ あれね・・・」

神使「扱いがあんまりですね・・・」

少女「何度もあれで殺されているし、正直あまり見たくないの」

神使「確かにそうですよね。 軽率な発言失礼しました」

少女「気にしないで。 はい、これが土器よ」スッ

神使「見たところ普通の土器のようですね」

忍神「特に神力が溜っているような事もございません」

神様「好都合だ。 忍神ちょっと手を出して私の手を握ってくれ」

忍神「?」

244: 2020/05/06(水) 21:56:54 ID:D9Lav2yM

神様「お前の力が必要だ」キリッ

忍神「仰せのままに」スッ

神様「んじゃ、歯を食いしばって」ギュ

忍神「?」

神使「この流れはまさか・・・」

忍神「一体何をなさるつもりで―― ウギャギャギャー!!」


ポワポワ


神様「お前って結構神力持ってるのな。 頑張れ~」

245: 2020/05/06(水) 21:57:45 ID:D9Lav2yM

忍神「ウギャギャギャー!!」

神様「男を見せろ、お前なら出来る。 もっとだ、もっと土器に力を!」


ポワポワ


神様「よしっ」

忍神「ふへっ・・・」フラフラ

神様「あっ、ごめん。 ちょっと取り過ぎちゃった」テヘッ!

忍神「・・・・・・」バタリ

247: 2020/05/08(金) 22:13:02 ID:.WD6eC8k

――― 本殿前


神使「忍神様は本殿に置いたままで大丈夫でしょうか・・・」

神様「放っておけばすぐ回復するだろ。 アイツ忍びだし」

神使「神様の忍びのイメージってどうなっているんです?」

神様「そんな事より、サッサと始めるぞ」

少女「これから一体何をするの?」

神様「ツグちゃんを見えるようにする」

少女「ツグを?」

248: 2020/05/08(金) 22:13:52 ID:.WD6eC8k

神様「この土器を一時的に神体にして神力を入れた」

神使「なるほど、その神力を継姫様が取り込むという事ですね?」

少女「さっきの拷問はそういう事・・・」

神様「拷問じゃないよ? 儀式」

少女「・・・物は言いようね」

神様「ツグちゃ~ん、良い子だからこの神力をたんとお食べ~」

神使「少女さん、継姫様のご様子は?」

少女「もの凄い勢いで拒絶してるわ」

神様「根性ねーな。 怖いんでちゅか~」ベロベロ

神使「神様、あまり挑発しないで下さい」

少女「ツグ? 物は試し、やってみたらどう?」

249: 2020/05/08(金) 22:14:49 ID:.WD6eC8k

神使「・・・・・・。どうですか?」

少女「ダメね」ハァ

神様「何かツグがノッて来る魔法の言葉ってないの?」

少女「・・・・・・。 ツグ? 言うこと聞いて実体化できたらチョコを沢山あげるわ」

神様「チョコ?」

少女「大好物なの。 まぁ食べられないから、いつもは匂いだけで我慢しているけど」

神様「私のピエーロマルコニーニを1個上げるぞ」

少女「・・・・・・。 全部寄越せですって」

神様「オッケーオッケ~。 んじゃ神体の上に手をかざすように言って」

少女「もうかざしているわ」

神様「早いな・・・ よし、犬ころ私のお守り一つ出してくれ」

神使「お守りですか?」ゴソゴソ

250: 2020/05/08(金) 22:15:38 ID:.WD6eC8k

神様「それを通して神力の波長を変換しながらツグに流し込む」

神使「そんな事出来るんですか?」

神様「知らないけど大丈夫だろ。 土器とツグの手の間に差し込む感じで持ってろ」

神使「継姫様の手が私には見えないのですが・・・」

少女「貸して。 私がやるわ」

神使「お手数おかけします。 よろしくお願いします」

神様「あっ、それは~」

少女「私じゃダメだったかしら?」

神様「う~ん・・・ 大丈夫、それで行こう。 少女ちゃんナイスアイデア!」グッ

少女「?」

251: 2020/05/08(金) 22:16:09 ID:.WD6eC8k

神様「犬ころ、お守りもう一個もってる?」

神使「はい、ございますが」スッ

神様「こっちのお守りは少女ちゃんが握って持ってて」

少女「私が?」

神様「ただのお守りだから。 さっ位置について」


少女「・・・こんな感じで良いかしら?」

神様「グ~。 んじゃいきますか」

252: 2020/05/08(金) 22:16:54 ID:.WD6eC8k


神様「秘技、神力を移す何か良い感じの儀式!」


ポワポワ


神様「ツグの様子は?」

少女「・・・ツグって呼ぶなって騒いでます」

神様「大丈夫そうだな。 一気に行くから気を緩めるなよ~」


神様「神力解放!」


ピカピカ


少女「くっ!」

神使「少女さん大丈夫ですか!?」

少女「ちょ、ツグ! 少し我慢しなさい! 私だって結構キツいんだから!」

神様「もう一息! 根性見せろ~」

253: 2020/05/08(金) 22:17:30 ID:.WD6eC8k


ピカピカ
バチバチッ


少女「うっ!」

神使「凄い光ですね。 目を開けていられません」

神様「あっ、目やられるからあんまり見るなよ」

神使「そういう事は先に言って下さい!」


シュー


神様「終わった。 目を開けて大丈夫」

少女「ん・・・ 何か不思議な感じが・・・ あっ」


継姫「・・・・・・」

254: 2020/05/08(金) 22:18:15 ID:.WD6eC8k

神様「えっと・・・ 初めましてでオッケ?」

継姫「き、貴様・・・ さっきはよくも我を侮辱してくれたな・・・」ワナワナ


少女「すごい・・・ ツグがハッキリ見える・・・」

継姫「えっ? 本当也か!?」

神様「どうよ、私の実力は。 これが神宮きっての最強にかわゆい女神の力だナリ」ニヤッ

継姫「真似をするでない!」

神様「あれ? もしかして、ちょっとビビっちゃった? まぁ無理もない! 我の力を前に―――」

継姫「もー頭にきた也! 貴様を血祭りに上げてくれるわ!!」カッ

255: 2020/05/08(金) 22:19:05 ID:.WD6eC8k


少女「ツグ!!」

 ゴツン

継姫「痛い! 痛い也ー!!」ジタバタ


少女「ダメよ、そんなに威張っちゃ」

継姫「うっ! うるさい! 彼奴とは決して相まみえる存在ではない也!」

少女「あの方は神宮の女神様なんでしょ? ツグよりも格上じゃないの」

継姫「ち、違うわ! 彼奴と我は全く別の存在であって―――」

神様「いや、本当に初対面で。 マジでどちら様です?」

継姫「この期に及んでまだそんな戯れ言を!」グヌヌ

神様「そ~んな小学生みたいなかわゆい姿で言われても、ねぇ?」ニヤッ

少女「小学生」プッ

継姫「少女ー!」

256: 2020/05/08(金) 22:19:53 ID:.WD6eC8k

神様「それに、随分と面白い格好をしてますなぁ」

継姫「我が装束をバカにする気か!」

神様「いや、それ私が卑弥呼してたときの時代くらいのヤツじゃね?」

継姫「貴様らが真似をしたのではないか! これは我らが先に考えたもの也!!」

神様「へー そうなんだー すごいねー」

継姫「もう完全に怒った也! 少女、此奴らをたたきのめす也や!」

少女「神ちゃんさんは最高神なんでしょ? ツグより偉いんじゃないの?」

継姫「我の方が先にこの地へ住み着いた也や! ヤツら一族は我よりも後に誕生した存在也!」

神使「え!?」

少女・神様「そうなの?」

継姫「あー! イラつく! イラつく也!!」ジタバタ

257: 2020/05/10(日) 00:02:29 ID:7lKEZsoE

少女「うるさいわね。 黙らないと1週間口きいてあげないわよ?」

継姫「・・・・・・」チラッ

少女「何よ」

継姫「1週間って・・・」ボソッ

神様「やーい、怒られてやんの。 シュンとしちゃってかわゆいでチュね~」

継姫「貴様・・・ いい加減にしろ! 少女は・・・ 少女は明日には―――」

少女「ツグ!」

継姫「・・・・・・。 ごめんなさい也」シュン

神様「それって、本当に回避できないのか?」

神使「神事がトリガーになっているのでしたら、何かしら方法があるのでは?」

少女「実際はこの60年祭りなんてやっていないし、神事なんかそもそも無いんだけど」

258: 2020/05/10(日) 00:03:46 ID:7lKEZsoE

神使「では、本当に少女さんは明日・・・」

少女「今回は土器があるから、その土器で頭を強打されるパターンね」

神様「で、お前が時間を戻していると」

継姫「そうだ」

神様「60回も?」

継姫「くどい」

神様「正気か? お前・・・」

継姫「他に・・・ 他にどうしろというのだ!」

神様「・・・・・・」

継姫「少女がいなくなってしまうんだぞ! それだけは・・・ それだけはダメだ!」

神様「何がダメなんだよ」

259: 2020/05/10(日) 00:05:55 ID:7lKEZsoE

継姫「少女がいなければ、我も消えてしまう」

神様「あ? お前、そんな事で繰り返しなんかしてるのか?」

継姫「そんな事・・・ だと?」ギロッ

神様「そうだよ。 そんな理由で少女ちゃんは60回も殺されたんだぞ?」

継姫「!?」

神様「少女ちゃんの心をどれだけ痛めつけているか分かってんのか?」

継姫「我と少女が必氏で生きようとした時間をバカにするな!!」

少女「ふふっ」

継姫「何がおかしい也や、少女」

少女「だって、いつもなら社務所で震えて明日への氏のカウントダウンに怯えている時間よ?」

継姫「それがどうしたという也」

260: 2020/05/10(日) 00:06:28 ID:7lKEZsoE

少女「分からないの? いつもと違う展開なのが」

継姫「・・・まさか、此奴らが流れを変えるとでも」

少女「思ってる」

継姫「本気也か?」

神様「ツグちゃ~ん、少女お姉ちゃんの言う事はちゃんと聞かないとダメでちゅよ~」

継姫「貴様ぁ・・・ どこまでも我を侮辱しおって」グヌヌ

神使「神様? いい加減にして下さい」

神様「へいへい」

少女「ツグと神ちゃんさんて似てるわね」フフッ

神様・継姫「似てない也!」

継姫「だから真似をするでない!!」

261: 2020/05/10(日) 00:07:05 ID:7lKEZsoE

神様「ま、少女ちゃんの言うとおり今回は間違いなく回避できる」

少女・継姫「!?」

神使「神様、またそんな安請け合いを・・・」

継姫「どうするという也や・・・ この60年、我ですら惨状を回避できず見守ることしか出来なかったんだぞ」

神様「見守る?」

継姫「我は少女以外に姿は見えぬ。 触れることすら出来ずににどうしろというのだ・・・」

神様「私見えてるけど。 犬ころはどう?」

継姫「はっきりと確認できます。 なんならお声も届いております」

神様「だ、そうだ」ポンポン

継姫「なっ!」

262: 2020/05/10(日) 00:07:54 ID:7lKEZsoE

少女「そういえば・・・ 確かにツグを触れるわね」ペタペタ

継姫「!?」

少女「あら、ツグって意外と肌が柔いのね」ウリウリ

継姫「にゅあ、やめりょにゃりぃ」

少女「なんか憎たらしいほどすべすべな肌ね」イラッ

継姫「えい! いい加減に顔をいじるではない!」

神様「今回お前は実体化してるし、イレギュラーに私達もいる」

継姫「・・・・・・」

神様「これで回避できないなんて考える方がおかしいだろ」

継姫「少女が人である以上運命には逆らえない・・・ それは絶対だ」

神様「それでも今までお前は回避しようとしたんだろ?」

継姫「・・・・・・」

263: 2020/05/10(日) 00:08:32 ID:7lKEZsoE

神様「話を聞いた限りでは、少女ちゃんが殺されるパターンが必ずしも同じではないみたいだけど?」

少女「そうね。 直前までの行動で多少変わるわね」

神使「なるほど。 つまり氏を回避できる可能性も存在すると」

神様「0%ではないって事だ」

継姫「この60年一度も存在しなかった也」

神様「日本の神は確率を扱って運を開くのだよ」ニシシ

一同「?」

神様「大丈夫、少女ちゃんは絶対に氏なない。 私が約束しよう」

継姫「その自身はどこから来る也や・・・」ジトー

神様「良い作戦があるんだわ。 聞くか?」ニヤッ

268: 2020/05/17(日) 20:54:20 ID:KDjCKTP.

少女「ぜひ聞かせて欲しいわ」

神様「1京歩譲って、少女ちゃんが人である事で必ず殺されるとしたらその因果を変えれば良い訳よ」

継姫「・・・どういう意味也や」

神様「経過を変えてもダメなら、大元を変えちゃえば結果は変わるって事」

神使「それって、少女さんが人でなければ良いという事ですか?」

少女「猿にでなれば良いの? できれば猫が良いわね」

神様「う~ん・・・ それは私の力でも流石に無理だなぁ」

神使「まさか少女さんを神にするという事ですか!?」

神様「ザッツライト!」

少女「私が神に!?」

269: 2020/05/17(日) 20:55:25 ID:KDjCKTP.

継姫「話にならぬ也。 とっとと帰り給え」シッシッ

神様「でも、これなら少女ちゃんは確実に助かるんだけどなぁ~」

継姫「・・・・・・」

少女「いくら何でも私が神になるなんて、そんな事・・・」

神様「神になるのは嫌?」

少女「嫌とかどうこうより、考えが追いつかないわ」

神様「神になると私みたいにかわゆくなれるよ?」

少女「・・・・・・」

神使「それは神になる利点と言えないのでは・・・」

神様「どう考えても利点だろ」

継姫「我が最も忌み嫌う奴らと同族になるなど許さぬぞ少女」

270: 2020/05/17(日) 20:58:00 ID:KDjCKTP.

神様「もし! 少女ちゃんが神になれば、神宮から多額の補助金が支給される」

継姫「」ピクッ

少女「お金なら今までも神宮からもらっていたけど」

神様「お幾ら?」

少女「月3万8千円」

神様「それ以上の支給額だぜぃ」

少女「へぇ、悪い話ではないわね」

継姫「少女! そんな奴の言うことなど聞く必要は―――」

神様「支給額は毎月40万! 無税ナリ!!」

継姫・少女「乗った也!!」グワッ

神使「・・・・・・」

271: 2020/05/17(日) 20:59:18 ID:KDjCKTP.

継姫「少女! さぁ早く神になる也や。 悔しいが背に腹は代えられぬ也!」

少女「そ、そうね。 毎月40万もあれば、じり貧生活から解放されるわ!」

継姫「チョコ也。 手始めにチョコをたくさん買う也!」

神使「あの・・・ お金は出来れば神社運営のために使って頂きたいのですが・・・」

継姫「うるさい! 我らはこれまで長いことひもじい生活をしてきたのだ!」

神様「お、おう・・・ 苦労してんのね・・・」

継姫「少女! 新しいテレビが欲しい也! 村長の家にあるような勇気いーえるのでっかいヤツが!」

少女「良いわね」フフッ

継姫「あと、部屋をもっと可愛くしたい也や~ って///」モジモジ

少女「そうね」

継姫「あっ、携帯電話も欲しい也~」

272: 2020/05/17(日) 21:00:23 ID:KDjCKTP.

神様「お前電話する相手いるの?」

継姫「う、うるさい也! 少女と話すのに使う也!!」

神様「いっつもくっ付いてるじゃねーかよ・・・」

少女「決めたわ」

継姫「お~ 携帯電話も買ってくれる也か?」

少女「まずは沢山チョコを買って、それからツグのために使いましょう」

継姫「え?」

少女「ツグも今まで我慢してくれていたのね・・・ ありがとう」

継姫「いや、我はそういう意味で言ったのでは・・・」

273: 2020/05/17(日) 21:01:04 ID:KDjCKTP.

少女「私が、ツグにもう少し良い生活をさせてあげられたら・・・」

継姫「な、何を言っている也や少女。 我は少女さえいてくれればそれで―――」

少女「ごめんなさい、継姫・・・」

継姫「少女・・・」

少女「私は自分の運命が憎かった・・・」

継姫「・・・・・・」

少女「私がお金を稼げる位まで生きていられれば・・・ それが悔しくて・・・」グッ

274: 2020/05/17(日) 21:01:59 ID:KDjCKTP.

少女「神ちゃんさん」

神様「?」

少女「私が神になれば明後日もツグと一緒にいられますか?」

神様「最高神の名において約束しよう」

少女「なら、迷う必要はありません」

継姫「少女・・・」

少女「ツグ、私はあなたと一緒に未来へ進む道を選ばせてもらうわ」

継姫「・・・・・・」

少女「神ちゃ・・・ いえ、神様」

神様「何かな?」


少女「私を神にして下さい」フカブカ


神様「決まりだな」

275: 2020/05/17(日) 21:03:11 ID:KDjCKTP.

神使「少女さんを神にするには準備が必要ですね」

少女「またこの土器を使うのかしら?」

神様「あ~ それはもう用済みだし、ここのご神体にでもしておけば?」

少女「そうね。 これからは大切に扱わないといけないわね」

継姫「ご神体とか、何か神宮に乗っ取られた気分で嫌な感じ也や」

神様「乗っ取られたんだよ」ウヒャヒャ

継姫「ぐっ・・・ 少女、やはりこの話は無かったことに―――」

少女「ツグが神宮を乗っ取れば良いんじゃない?」

継姫「おお! それは良き案也や。 さすが少女」

276: 2020/05/17(日) 21:04:16 ID:KDjCKTP.

神様「いつでもかかって来いや。 そう簡単には渡さないけどね」ベー

継姫「これからは枕を高くして眠れるとは思わなぬ事也!」ベー

神様「へーんだ! お前みたいなガキんちょに負ける気なんかしませんの事ナリ」

継姫「だから真似をするな! 本気で似てない也!」

少女「やっぱり二人は似てるわね」クスッ

神様・継姫「似てないナリ!!」

継姫「キー! もう完全にぶち切れた也!!」

ギャーギャー

277: 2020/05/17(日) 21:05:06 ID:KDjCKTP.

少女「全く・・・ ところで、ご神体って本殿に置いておけば良いのかしら?」

神使「そうですね。 祭壇を作ってその上に置いておくのが一般的です」

少女「ここに転がしておくのも何だし、一旦本殿に置いてくるわ」


神様「あっ、本殿の中で忍神が寝てるから起こして連れてきて」

少女「分かったわ」スタスタ

278: 2020/05/17(日) 21:05:46 ID:KDjCKTP.

神使「あの神様、どうやって少女さんを神にするんですか?」

神様「どうって、いつもみたいに神力をチューッって感じで」

神使「神力を補給できる方が居ないと思うのですが」

神様「忍神がいるじゃん」

神使「本殿で干からびているのでは?」

神様「大丈夫でしょ、あいつ忍びだし。 いけるいける」

神使「忍びって何なんです?」

279: 2020/05/17(日) 21:06:22 ID:KDjCKTP.


 キャー!


一同「!?」クルッ

神使「今のは少女さんの悲鳴!?」

継姫「少女・・・ 少女!!」タッタッタッ

神様「まさか・・・ 明日じゃないのかよ!」タッタッタッ

282: 2020/05/19(火) 00:42:15 ID:hRNH.azU

――― 本殿裏


少女「きゃっ!」ドサッ

盗人「おら! 大人しくその土器を渡せ!」ゲシッ

少女「何で今日・・・ 明日じゃないの・・・?」

盗人「何言ってんだ? まぁ明日にしようとは思っていたが予定変更だ」ニヤッ

少女「そんな・・・」

盗人「大勢居れば安心だとでも思ったのか? 隙だらけだったぜ?」

少女「これはこの社に必要な物なの! 絶対に渡さない!」ギュ

283: 2020/05/19(火) 00:43:19 ID:hRNH.azU

盗人「ふざけんじゃねーぞ! 良いから渡せ!!」ゲシッ

少女「嫌ー!!」

盗人「ったく、これ以上大声出されると面倒だな」

少女「うそ・・・」

盗人「どっちにしろ顔を見られちまってるしな」ニヤッ

少女「嫌・・・ ここまで来たのに・・・」


少女「やっと・・・ ここまで・・・」


 ドカッ

284: 2020/05/19(火) 00:44:03 ID:hRNH.azU


 ガシャーン


盗人「あ~あ 土器が粉々じゃねーか」チッ

盗人「ま、これだけありゃ良いか」


 少女ー!


盗人「チッ、流石にバレるわな。 急いで逃げるか」タッタッタッ

285: 2020/05/19(火) 00:44:46 ID:hRNH.azU

――― 参道


 盗人「」タッタッタッ


神使「神様! あの男!」

神様「!?」クルッ

神使「私は男を追いかけます」

神様「頼んだ! 何をしてでも捕まえろ!」

神使「承知です!」タッタッタッ

286: 2020/05/19(火) 00:45:40 ID:hRNH.azU

――― 本殿裏


神様「おい、少女ちゃんは!!」タッタッタッ


継姫「・・・・・・」

少女「」グタッ


神様「!?」

継姫「運命には逆らえぬ・・・ そんな事は分かっていたのに・・・」ガクッ

神様「・・・・・・」

継姫「救ってくれるのではなかったのか? 少女は氏なないのではなかったのか!!」

神様「・・・・・・」

287: 2020/05/19(火) 00:46:35 ID:hRNH.azU

継姫「それがお前達のやり方・・・ この場所を・・・ 少女が守ってきたこの場所を奪い・・・」

継姫「挙げ句の果てに・・・ 我からも大切な少女を奪いおって!」


継姫「恥を知れ」ギロッ


神様「あの・・・ ツグ?」

継姫「お前の顔など見たくない。 去れこの下衆―――」


ゴツン

継姫「痛い!」

288: 2020/05/19(火) 00:47:47 ID:hRNH.azU

少女「さっきも言ったでしょ? 偉そうにしちゃダメだって」

継姫「少女!? え? あれ?」

少女「何よ」

継姫「少女は氏んだ也よね?」

少女「そうなの? 生きてるみたいだけど。 まぁ、結構蹴られてあちこち痛いけど」


神様「計画通り」ニヤッ

少女「計画?」

継姫「ど、どういう事也や?」

神様「運は我らに味方したナリ!」ウヒャヒャ

290: 2020/05/19(火) 22:25:07 ID:hRNH.azU

――― 本殿前


 神使「神様~」タッタッタッ


神様「おお、犬ころか。 って本当に犬ころの姿じゃん」

少女「ちょっと、何あれ!?」

継姫「狼? いや、見たことない動物也や」

神様「うちの神使君って狛犬なんっすよ。 凄くないっすか?」

少女「あれって神使さんなの!?」

291: 2020/05/19(火) 22:26:14 ID:hRNH.azU


 タッタッタッ

神使「盗人の足が速くこの姿で追いかけて捕まえた物で、すみません」

神様「お前、いくら何でも口に咥えて連れてこなくても・・・」

神使「誰にも見られていないのでご安心を」

神様「んじゃ、ご褒美にそいつを餌にして良いぞ」

少女「まさか食べるの!?」

神使「食べません」


 ボンッ


継姫「お~ 姿が戻った也や」

少女「驚いたわね・・・」

292: 2020/05/19(火) 22:27:17 ID:hRNH.azU

神様「盗人は気絶してるな」

神使「流石にあの姿を見たので・・・ ビックリしたんだと思います」

神様「まぁ良くやった」

神使「この盗人はどうされます?」

少女「日本刀ならすぐ持ってくるけど」

継姫「我にもやらせてくれ也。 長年の恨みがある故、細切れにしたい也」

神様「まあ待てって。 コイツの件は後回し、取りあえず木に括り付けておけ」

神使「分かりました」

293: 2020/05/19(火) 22:28:22 ID:hRNH.azU

神様「さてと、んじゃ次の計画に移りますか」

継姫「おい、その前に少女の件について詳しく話をする也」

少女「私殺されたみたいなんだけど、どうして生きているの?」

神様「そんなの決まってんじゃん、人じゃないからだよ」

少女「あら、とうとうゾンビになっちゃったのかしら。 まぁ悪くはないわね」

神様「少女ちゃんて人間辞めたいの?」

継姫「勿体を付けずにさっさと言うなり」

神様「少女ちゃんは神になったのでした」

一同「え!?」

294: 2020/05/19(火) 22:29:33 ID:hRNH.azU

少女「ちょ、どういう事? 私が神に!?」

継姫「おい、貴様はやって良い事と悪いことの区別もつかぬ也か? あ?」

神様「ちょ、ツグちゃんマジ切れはダメだって・・・」

神使「きちんと説明して下さい」

神様「いや、さっきツグを実体化させるときに神力が少女ちゃんにも流れ込んだんだよ」

少女「あの時に?」

神様「ま、こうなることを予見した私の先見の明ってところだね」ウヒャヒャ

神使「そういえば、少女さんが仲介すると言った時に神様一旦止めようとしてましたね」

神様「・・・・・・」

295: 2020/05/19(火) 22:30:34 ID:hRNH.azU

神使「まさか・・・」

神様「思惑通りだよ? 最初からこうなることを確信してたの」アセアセ

継姫「貴様・・・ そんなヘマのせいで我の大切な少女を」ワナワナ

神様「ヘマじゃないし! 運が良かっただけだし!」

継姫「もっとタチが悪い也!」

少女「まぁ、結局助かったんだし結果オーライって事で良いんじゃない?」

神様「さすが少女ちゃん。 話が分かる」

少女「ツグもお礼を言ったら? これで時間を戻さなくても済むんだし」

継姫「ありがとう也。 お帰りはあちらとなります、さようなら」

神様「私も帰りたいんだけどさぁ、ここで終わったら色々とマズいんだよ」

神使「どういう事です?」

296: 2020/05/19(火) 22:31:36 ID:hRNH.azU


 ギー


一同「?」クルッ


忍神「う~・・・」ヨロヨロ

神様「お~ 忍神、復活したか」

忍神「何とか・・・ 神力の方は回復させましたが・・・」

神様「どうやって? ほとんど吸い取ったと思うんだけど」

忍神「忍びに伝わりし秘伝の回復薬がございますので」

神様「ナイス! さすが忍びは違うねぇ~」

忍神「何やら悲鳴が聞こえた気がしましたが、今はどのような状況で?」キョロキョロ

神様「これから少女ちゃんを神にするところ」


一同「は?」

297: 2020/05/19(火) 22:32:53 ID:hRNH.azU

神使「あの、神様? 先程少女さんはすでに神になったと仰いましたよね」

少女「ちょっと言っていることが矛盾しているわね。 頭大丈夫?」

継姫「どさくさに紛れ小賢しい手段で神にしたと言ってた也。 頭大丈夫也か?」

神様「おっと、総攻撃ですね」

神使「当然です」

神様「まぁ何というか、少女ちゃんに入っている神力はツグ寄りの力だから」

少女「どういう事?」

神様「さっき神体から放出した神力はツグの力に合うように波長を変換して流し込んだ物なんだわ」

神使「それは、少女さんが継姫様と同じ人守になったという事ですか」

神様「大体そんな感じ」

少女「なるほどね。 何となく理屈は分かったわ」

継姫「では少女は神にならずとも良いではない也か! 少女は我と同じ也~」

298: 2020/05/19(火) 22:33:46 ID:hRNH.azU

神様「いやダメだ。 私もそれで良いとさっきまでは思ったんだけど」

一同「?」

神様「ツグに付く元になる人間がいなくなる」

継姫「あっ」

神様「このままだとツグちゃん消えちゃうの」

継姫「・・・・・・」

神使「だとすると、少女さんも消えてしまうのでは?」

神様「少女ちゃんは私の握らせたお守りの効力で、すぐに消えることはないと思うけど」

少女「ツグが消えるのは困るわね。 それだけは絶対避けないと」

継姫「少女・・・」

299: 2020/05/19(火) 22:34:57 ID:hRNH.azU

神様「神宮から補助金も下りなくなるね」

少女「それが一番困るわね」

継姫「少女・・・ 我よりも補助金の方が大切とか酷い也・・・」ウルウル

少女「冗談よ」フフッ

神使「では、早く少女さんを神にしないといけませんね」

少女「でも、神力とやらを供給するものがないといけないんでしょ?」

神様「あるじゃん、そこに」

一同「あ!」クルッ


忍神「?」

301: 2020/05/20(水) 21:36:22 ID:gMb2CiJA

神様「忍神、回復して早々悪いがおまえに新たな仕事がある」

忍神「どのような内容で」

神様「手を出せ。 お前にしか出来ない任務だ」キッ

忍神「仰せのままに」スッ

神様「少女ちゃん、私の手を握って」

少女「これで良いかしら?」ギュッ

神様「は~い、歯を食いしばって~」

忍神「?」

神使「またですか・・・」

302: 2020/05/20(水) 21:37:42 ID:gMb2CiJA


神様「秘技! 神力譲渡!!」


 ポワポワ


忍神「神様! ちょ、待っ!! ウギャギャギャギャー!!」ビリビリ

神様「大丈夫! 私の知ってる忍びはそんなにヤワじゃない!!」


 ポワポワ


神様「は~い、終わりナリ!」

忍神「ふへっ・・・」フラフラ

303: 2020/05/20(水) 21:38:27 ID:gMb2CiJA

神様「やっぱお前すげーよ。 忍びすごい」

忍神「お役手に立てて・・・ 光栄・・・ です・・・」バタリ

神使「忍神様・・・」

少女「ねぇ、忍神さんが干からびてるけど大丈夫?」

継姫「なんたる鬼畜・・・ 恐ろしい也」ゾッ


神様「少女ちゃん、気分はどう?」

少女「あまり変わらない気もするけど・・・ でも」ジー

神様「?」

304: 2020/05/20(水) 21:39:46 ID:gMb2CiJA

少女「なるほど。 やっぱり神宮の神さまって凄いのね」フッ

神様「よせやい、そんな面と向かってかわゆいなんて言われたら照れちゃうって」

継姫「そんな事、一言も言っていない也」ジトー


少女「それにツグも・・・ 驚いたわ」

継姫「?」

少女「あなたも凄いのね。 今まで神の力なんて見えなかったから」

継姫「そんな面と向かって立派だなんて言われたら照れる也よ///」

神様「そんな事、一言も言ってないナリ」

継姫「だからいい加減に真似をするのを止める也!」

305: 2020/05/20(水) 21:40:42 ID:gMb2CiJA

神様「まあ神の力が認識できるって事は少女ちゃんは神になったって事さね」

継姫「我の力を神の力と一緒にするでない、穢らわしい」プイッ

神様「おや~ 神になった少女ちゃんにそんなこと言ったら可哀想だと思うけどな~」

少女「ツグ・・・ あなた私のことが嫌いになっちゃったのね・・・」

継姫「ち、違う也! そういう意味で言ったのでは・・・」オロオロ

少女「ふふっ、冗談よ」

継姫「貴様! いつか必ずその座から蹴落としてやるから覚悟しておく也よ!」

神様「何で私に八つ当たりするんだよ・・・」

306: 2020/05/20(水) 21:42:31 ID:gMb2CiJA

神様「ま、これで一件落着ですな」

神使「いささか順番が逆だった気もしますが」

少女「神にしてくれって頼んだのは私だし、順番なんて問題にもならないわ」

神様「やっぱ少女ちゃんは話が分かる。 神の素質ありすぎ」

継姫「少女、此奴はおだてて自分の失敗を帳消しにしようと考えるだけ也。 真に受けるでないぞ」

神様「おっと、やっぱツグには神の素質はないな」

継姫「こちらから願い下げ也。 だれが神なぞ相手にするか」プイッ

少女「ツグ・・・ 何だかんだ言ってやっぱり私のことが嫌いなのね・・・」

継姫「ち、違っ! あー! もーイラつく也!!」ジタバタ

少女「面白い」フフッ

継姫「貴様! 絶対耳を齧りに行くから覚えておく也よ!!」

神様「だから何で私に矛先を向けるんだよ・・・」

307: 2020/05/20(水) 21:43:48 ID:gMb2CiJA

少女「流石に少し疲れたわね」

神様「そうね、んじゃ戻りますか」

神使「その前に、あの盗人はいかがすればよろしいでしょうか」

神様「あ~ 忘れてた。 食べても良いけど証拠は残さず全部食えよ」

神使「ですから食べませんってば」

神様「ってか何でアイツは土器なんか盗もうとしてたんだ?」

少女「あの土器はちょっと変わった物で出来ているの」

神使「粘土とかではないのですか?」

少女「今では絶滅したとされる植物が含まれていて、それが目的らしいわ」

神使「人の命を奪うほど希少な植物なのですか?」

少女「幻覚作用の強い・・・ くすりと同じ作用があるの」

神様・神使「はい!?」

308: 2020/05/20(水) 21:44:52 ID:gMb2CiJA

少女「絶滅した植物だから厳密には違法ではないんだけどね」

神使「つまり法に引っかからない新たなくすりが作れる可能性があの土器にはあると」

少女「そうね、ちなみにその植物の種も壺の中に入れてあったの」

神様「マジかよ・・・」

少女「たぶんその男が持ってるんじゃない? さっき見たら種を入れておいた袋が空だったし」

神様「犬ころ、調べて」

神使「はい」

神様「少女ちゃんって、もしかしてそれ栽培してるの?」

少女「私はしてないけど・・・」プイッ

神様「?」

309: 2020/05/20(水) 21:45:54 ID:gMb2CiJA

神使「神様、これを見て下さい」ゴソゴソ

神様「それがタネ?」

神使「男のポッケに入っていたんですが、アサガオの種に似てますね」

神様「・・・・・・。 これって、もしかしてアレ?」

少女「さぁ、何のことかしら? 私は神事用のチョウセンアサガオ似の花しか知らないわ」

神様「まぁそういう事にしておいた方がよさそうだね・・・」

神使「この男は警察に引き渡しますか?」

神様「う~ん・・・」

少女「出来れば内密にしておいてもらえると助かるんだけど」

神様「あっ! 良いこと思いついた」

神使「・・・それ絶対良いことではないですよね」

神様「神ちゃんショーでも開催しますか」ニヤリ

311: 2020/05/21(木) 20:48:27 ID:985J2PeM

――― 1時間後/深夜・本殿前


モクモク


盗人「・・・ん・・・ ここは・・・ 何だ、この煙は?」ゲホゲホ

少女「あら、お目覚めかしら?」

盗人「!? お前は・・・」

少女「何で生きてるのか、って顔をしているわね」

盗人「くたばってなかったのかよ」チッ

少女「人ごときが私を頃す? そんな事が出来る訳ないじゃない」クスッ

盗人「はぁ?」

312: 2020/05/21(木) 20:49:59 ID:985J2PeM

少女「そうだ、さっきはこの子が失礼したわね」

神使「・・・がう」

盗人「ひぃ!! な、なん何だよソイツは!」

少女「狛犬は初めて? あまり刺激すると、あなたも仲間みたいになっちゃうわよ?」

盗人「仲間? 何言ってんだ、俺は一人で――― !?」


忍神「」グテッ


盗人「おい・・・ 何だよアレ・・・ 干からびてるじゃないかよ・・・」

少女「あら、仲間じゃなかったの? 間違えて頃しちゃった。 可哀想に」クスッ

盗人「どうやったら人があんな風になるんだよ・・・」

少女「精気を吸い取ったの。 干からびるまで、た~っぷりと」ニヤッ

盗人「!?」

313: 2020/05/21(木) 20:51:12 ID:985J2PeM

少女「神を怒らせた人間は氏ぬ定め。 だから頃した」アハハハハハ

盗人「!?」ゾクッ

少女「ねぇ、逃げないの?」ズイッ

盗人「ひぃ!」ブルッ

少女「あなた、美味しそうね。 私が直接食べちゃおうかしら」ニタァ

盗人「た、頼む! 助けてくれ!」

少女「じゃぁ逃げれば? この子が追いかけるより速く逃げられればだけど」

神使「・・・がう」

盗人「た、助けて・・・」ガタガタ

少女「やっぱり私に食べられたいんだ」

盗人「違う! くそっ! 足が震えて立てねぇ!!」

少女「たっぷり悲鳴を上げて、苦しんで氏になさい」グワッ

盗人「ひー!!!」バタリ

314: 2020/05/21(木) 20:52:17 ID:985J2PeM


少女「やれやれ」フッ


神様「少女ちゃん怖すぎ。 犬ころは必要なかったな・・・」

神使「お役に立てず、すみません・・・」ボンッ

神様「てか、あれ大丈夫か?」

神使「気絶しているだけですよね? 氏んでませんよね?」


盗人「・・・・・・」ブクブク


少女「そこまで脅してないけど? ちょっと焚きすぎじゃないかしら?」

神使「いえ、危険なので煙だけでくすりは焚いておりませんが」

少女「あら、そうなの?」

継姫「少女、格好いい也」キュン

神様「お前、どういう神経してんの? あんなのホラー映画より怖いじゃん」

315: 2020/05/21(木) 20:53:25 ID:985J2PeM

少女「ま、これで少しは懲りたんじゃないかしら」

神使「解放した後で仲間とか連れてきませんかね?」

神様「忍神が起きたら神宮の諜報室に連れて行って処理してもらおう」

神使「・・・・・・。 処理って一体何をなさるんです?」

神様「それは私の口からはちょっと・・・」プイッ

神使「・・・・・・」

少女「それより、忍神さんはあのままで大丈夫なの?」

神様「大丈夫だって。 忍びだよ?」

継姫「我の見た感じでは息をしていないように見える也が」

少女「そうね、もう1時間は止まっているわね」

神様「そんな事ないって・・・ 大丈夫だよ・・・」ハハハ


忍神「」グテッ


神様「・・・・・・。 神使君、私のお守りってまだある?」

316: 2020/05/21(木) 20:58:41 ID:985J2PeM

――― 翌日・社務所


少女「ツグ、書けたの? 神ちゃんさん達が待ってるわよ」

継姫「丁度出来た也。 我ながら会心の出来也よ」

少女「へぇ・・・ ツグって字が下手くそなのね」

継姫「んが! 酷い也よ少女・・・」グスッ

少女「ま、まぁ初めて書いた字にしては上出来かしらね」クスッ

継姫「やっぱりもう一度書き直して―――」

少女「何度やっても同じよ。 早く行くわよ」

317: 2020/05/21(木) 20:59:46 ID:985J2PeM

――― 鳥居前


少女「待たせてごめんなさい」スタスタ

神使「丁度こちらも準備出来たところですので」

忍神「こちらが神宮から寄贈された神額になります」

継姫「神額ってなん也か?」

忍神「鳥居の上部につける神社名が入った飾りです」

神様「随分立派だな。 高そう」

神使「後はこの額に社名の入った額束をはめて鳥居の上に設置すれば完成ですね」

少女「ツグ、神使さんにそれ渡して頂戴」

継姫「分かった也」スッ

318: 2020/05/21(木) 21:00:47 ID:985J2PeM

神様「うひゃ~ 汚ねー字だな」

継姫「お前、マジで頃すぞ?」

神様「・・・だからマジ切れは止めろって、怖いよ」

忍神「趣があって良い字だと思います」

神使「そうですね。 重みのある独特の力強さがございます」

継姫「良く分かっているではない也か」ドヤッ

神様「はいはい、上手い上手い」

忍神「それでは、私が設置いたしますので危ないですからお下がりを」

継姫「あんな高い所にどうやって設置する也か?」

少女「神よ? 忍びなのよ? きっと格好いいわよ」

319: 2020/05/21(木) 21:01:55 ID:985J2PeM


 忍神「ヨイショ、ヨイショ」ヨジヨジ


継姫・少女「・・・・・・」

神様「まぁ、あれだよ。 神は飛べないし・・・」

継姫「もっと忍びらしい登り方はできぬ也か?」

少女「せめてピョンピョンって感じで昇る姿は見たかったわね」

神使「ご期待を裏切るような展開ですみません・・・」


 忍神「神様、位置はこの辺りでしょうか?」


神様「もうちょい右・・・ そこ! そこでOK」


 忍神「では、こちらで固定します!」

 ポワポワ

320: 2020/05/21(木) 21:02:54 ID:985J2PeM

継姫「固定するのは力を使う也か・・・」

神様「まぁアレが落ちるとヤバいし。 それに紙で書いてあるから劣化しないように一応ね」

継姫「ふ~ん」


神様「でも、本当に社名を変えちゃっていいの?」

神使「今までの社名も神秘的でとても良かったと思いますが」

少女「今日からここは本物の神社になるんだし、それに・・・ 新しいスタートの日でもあるわけだしね」

神様「ツグは良いのか?」

継姫「ツグと言うな。 ま、我はそんな小さい心の持ち主などではない也よ」


 忍神「固定完了しました! これで嵐が来ても耐え忍ぶでしょう」


神様「お疲れ~ 降りてきて良いぞ」

321: 2020/05/21(木) 21:03:59 ID:985J2PeM

少女「思ったより良い感じね」

神使「神額もさることながら、それに負けないとても綺麗な社名ですね」

忍神「参拝者が最初に見る、まさに神社の顔に相応しき額束にございます」


少女「そういえば、盗人ってどうしたの?」

継姫「今朝早くにそこの忍びがどこかへ担いでいったみたい也が」

神様「盗人って何? そんな奴いたっけ」

忍神「さぁ、私は存じ上げませんね」

神様「この社に盗人は来なかった。 いいね?」

少女「あっ、そういう事にするんだ」

322: 2020/05/21(木) 21:04:36 ID:985J2PeM

神様「そてと。 じゃ少女ちゃん、これからもこの地をよろしく」

少女「私より、ツグに頑張ってもらわないとね」

継姫「我が也か!?」

少女「そうよ? だって・・・」


少女「今日からここは“継姫神社”なんですから」

324: 2020/05/22(金) 02:26:25 ID:UJ8ner7w

――― 帰り道


 テクテク

神使「色々と後処理に骨が折れそうですが、無事解決できて良かったですね」

神様「まぁ私にかかれば、どんな難事件もこんなもんよ」ウヒャヒャ

神使「・・・・・・。 あの神様、気になることがあるのですが」

神様「盗人の件は知らないぞ? 諜報室に任せてあるから」

神使「いえ、継姫様の件なのですが」

神様「あのガキんちょがどうした?」

神使「神様、本当に初対面なんですか?」

神様「・・・・・・」

325: 2020/05/22(金) 02:27:14 ID:UJ8ner7w

神使「やっぱり、ご存じだったんですね」

神様「あんなの忘れるわけないだろ、ちゃんと覚えてるよ」

神使「どうして隠してたんです?」

神様「その方がすんなり解決できそうだったし」

神使「過去に何かあったんですか?」

神様「さぁね。 でも・・・ 私の目に狂いはなかったな、って」

神使「?」

326: 2020/05/22(金) 02:29:00 ID:UJ8ner7w


――
――― 太古の昔


継姫「痛みはない也か?」

少女の遠いご先祖「継姫の燻してくれた薬草が効いてるみたい」

継姫「それは良かった也」

ご先祖「ごめんね継姫・・・」ゲホゲホ

継姫「我のことなど心配せずとも良い」

ご先祖「この村最後の人守様だったのに、私が病弱でこんなに早く・・・」

継姫「我は主と一緒に過ごせて楽しかった也よ」ニコッ

327: 2020/05/22(金) 02:29:45 ID:UJ8ner7w

ご先祖「ありがとう、継姫・・・ ごめんね・・・」

継姫「謝るでない、我は最後の人守として主に寄り添えた事を誇りの思う也ぞ」

ご先祖「・・・・・・」ニコッ

継姫「ありがとう、安らかに・・・」

ご先祖「」


継姫「我も、すぐそちらへ行こう・・・」グスッ



??「最後の人守、継姫というのは其方か?」


―――
――

328: 2020/05/22(金) 02:32:21 ID:UJ8ner7w

――― 本殿前


少女「ツグ、そっちの薬草を持ってきてくれる?」

継姫「・・・・・・」ボー

少女「ねぇ、ツグ?」

継姫「え!? な、なん也?」

少女「どうしたの? ボーっとして」

継姫「何でもない也。 少し昔を思い出していただけ也」

少女「・・・・・・。 神ちゃんさんと過去に何かあったの?」

継姫「彼奴は我の宿敵であり―――」

少女「そうじゃなくて」ジー

継姫「・・・・・・」ハァ

329: 2020/05/22(金) 02:33:25 ID:UJ8ner7w

少女「聞きたいな」

継姫「我ら一族は落第だった也」

少女「?」

継姫「人を導く役を、我らは上手く果たせなかった・・・」

少女「神ちゃんさんはツグより後に生まれたって言っていたわね」

継姫「我らは任を解かれ、神と名乗る存在が後を継ぐ事になった也よ」

少女「じゃあ、ツグ達の一族はそれで消滅したと言う事?」

継姫「そう也。 人守は共にした人間が亡くなると一緒に消え、新たな人守は生まれてこなくなった」

少女「そうなんだ」

継姫「遠い昔のつまらぬ話也よ」

330: 2020/05/22(金) 02:34:24 ID:UJ8ner7w

少女「次いでだし、前から気になっていたことがあるんだけど聞いても良いかしら?」

継姫「なん也か?」

少女「何でツグだけは消えなかったの?」

継姫「・・・・・・」

少女「人守ってその人専用なんでしょ? ツグは私より前の先祖からずっと付いているのって変じゃない?」

継姫「忌々しき話也よ・・・」

少女「?」

継姫「・・・・・・。 消える直前に、ヤツが我の前に現れたのだ」

少女「それって、神ちゃんさんの事?」

継姫「そう也」フッ

331: 2020/05/22(金) 02:36:20 ID:UJ8ner7w


――
―――


神様「最後の人守、継姫というのは其方か?」

継姫「・・・お前は我の姿が見える也か?」

神様「初めてご挨拶します。 我はこの地を新たに任されることになった神様と申す」

継姫「・・・そうか」

神様「早速ですが、あなた様一族の任はこれで終わりとなります」

継姫「分かっている。 じきに我も消えるであろう」

神様「申し訳ございませんが、それを阻止させていただきます」フカブカ

継姫「なに?」

神様「狭い地ではございますが、この場所を継姫様にお預けいたします」

継姫「どういう事也や?」

332: 2020/05/22(金) 02:37:08 ID:UJ8ner7w

神様「いや~ 私めんどいこと嫌いでさぁ、上手くこの地を導けたら私に手柄頂戴よ」ニヤッ

継姫「おま・・・ ちょ、何を申して―――」

神様「子子孫孫の人守になる何か良い感じのおまじない~」


ポワポワ


継姫「うぐっ!」


―――
――

333: 2020/05/22(金) 02:38:26 ID:UJ8ner7w


少女「ぷっ! 神ちゃんさまらしい」フフフ

継姫「笑い事ではない也!」

少女「なるほど、それでツグはず~っとこの地にいるんだ」

継姫「いい加減疲れた也よ」ハァ

少女「神ちゃんさんに感謝しないとね」

継姫「少女は神になって頭まで毒されてしまった也か?」

少女「そうかもね」クスッ

継姫「彼奴め・・・ やはりコテンパンにのしてやるべきだった也」グヌヌ

少女「ありがとう」

継姫「いきなりどうした也?」

334: 2020/05/22(金) 02:39:17 ID:UJ8ner7w

少女「だって、ツグとこうして一緒に居られるのはその時のおかげでしょ?」

継姫「それは結果論であって!」

少女「因果でしょ?」

継姫「・・・・・・。 そう也な」フッ

少女「?」

継姫「ありがとう」

少女「そのお礼は誰宛?」

継姫「ご想像にお任せする也よ」ニコッ

335: 2020/05/22(金) 02:39:49 ID:UJ8ner7w

少女「それよりツグ?」

継姫「?」

少女「神ちゃんさんから高級チョコってもらったの?」

継姫「・・・・・・。 あっ」

少女「追いかければまだ間に合うかもしれないわよ?」

継姫「あのタヌキめ! 我のチョコー!!!」ダッダッダッ

336: 2020/05/22(金) 02:40:44 ID:UJ8ner7w

少女「ツグってば実体化して余計騒がしくなったわね」クスッ


 継姫「少女! 一緒に来る也!」


少女「あら、どうして?」


 継姫「どうしてって、我は少女から離れられない也よ!!」


少女「私の神力はこの村全体をカバーしてるのよ?」


 継姫「?」


少女「試しに一人で鳥居から出てみたら?」


 継姫「・・・・・・」ソー

337: 2020/05/22(金) 02:41:54 ID:UJ8ner7w


少女「お先に失礼」ダッダッダッ

継姫「えっ!?」


少女「神ちゃんさんの高級チョコは私が全部もらいに行くわ」ダッダッダッ

継姫「卑怯也ー! 待つ也よ、少女ー!」ダッダッダッ


少女「ふふっ、私の早さにツグは付いてこられるかしら?」

継姫「負けない也よー!」



少女・継姫「せーの! チョコを寄越せー!!」タッタッタッ





神様「神様だ!」 神使「神力ゼロですが・・・」
~ 番外編 2020年春『継々乃社之領域』~
おわり

338: 2020/05/22(金) 02:45:27 ID:UJ8ner7w
終わったね

339: 2020/05/22(金) 05:56:41 ID:wHFjR.bE

引用: 神様「神様だっ!」 神使「神力ゼロですが・・・」 5社目