1:◆9xXTDlz//k 2017/12/23(土) 18:00:36.00 ID:zTNaStQMo
【12月31日 午前9時】
――サッポロ駅 売店
白ドレス「おぉー! バターサンド、メロンゼリー、ルイズの生チョコにじゃがホ○ックル……」キラキラ
白ドレス「さすがはホッカイドーはデッカイドー! どれもおいしそうだなぁ~!!」ルンルン
店員「あはは。どれにしますか?」
白ドレス「んー、迷うけど……。やっぱり、定番の白い愛人を20箱!」ビシッ
白ドレス「白い愛人っていいよね。響きがアダルティー、ってカンジで。あと何より白いし」
店員「白い愛人を20箱ですね。11520円になります」ジャコジャコジャコ チーン
白ドレス「はい、20000円ですね。……。……あ、あれ?」ゴソゴソ
2: 2017/12/23(土) 18:02:42.56 ID:zTNaStQMo
・全部で600レスほどの予定です
・九日間に分けて更新します
・感想、質問等々、大歓迎です
※この作品はフィクションです。実在の人物や団体等とは関係ありません
3: 2017/12/23(土) 18:04:10.92 ID:zTNaStQMo
白ドレス「お、お金が……。あんまりない……!!」ガーン
白ドレス「どどどどうしよう。あ、あるにはあるけど、いま使ったら車内販売で飲み食い出来ないよ……」
白ドレス「こ。困ったなぁ……」
紳士「おや。お会計でお困りですか? 少ないですが、私の分をお使いください」サッ
白ドレス「……! えっ、お、お金出してくれるんですか!?」パァッ
紳士「ええ。その白い愛人の数、ご友人に差し上げるのですかな? ご友人思いですな、お嬢さん」
白ドレス「お嬢さんだなんて、しかも良い声で、まったまたぁ~。……むふふぅ。事実だけどお」テレテレ
店員「ありがとうございましたー」
4: 2017/12/23(土) 18:04:37.57 ID:zTNaStQMo
紳士「ふぅ……。無事に買えて良かった。良いところで会いましたな」コッ コッ
白ドレス「ナイスな紳士さん、ありがとうございました! ええ、本当に良いタイミングで会って……」コッ コッ

5: 2017/12/23(土) 18:05:10.08 ID:zTNaStQMo
白ドレス「……!」
紳士「……ええ。本当に、良いタイミングで会った」
紳士「―――動くな。妙なマネをすれば、即刻撃つ」
白ドレス「わぁーお……。ひゅう。この往来の多い駅で、よくそんなダイタンなコトするねえ」チラッ
紳士「前を見て歩け。心配せずとも、拳銃は布で隠している。不自然な動きをするな」
白ドレス「そっか、拳銃か。でも拳銃なら、運が悪いと一発じゃ氏なないかもね」コッ コッ
紳士「……チッ」
白ドレス「タダより高いモノはない、ってコトですかあ。私も用心しなきゃな~」
6: 2017/12/23(土) 18:05:38.01 ID:zTNaStQMo
紳士「……普通のオトナならあの場面は、気持ちだけ受け取っておきます、と言うべきところだ」
紳士「楽園暮らしが裏目に出たな。特級指名手配犯00046号」
白ドレス「……ふっふっふっ。そこまで知ってるんだ。笑えてきちゃうなあ」
白ドレス「ってコトは、アレか、君。いつも私を追っかけ回してるコネコちゃん?」
紳士「その通りです。閣下の記憶に刻んでいただけているとは、恐悦至極」
白ドレス「あっはっはぁ~。そっかぁ。どーりで聞き覚えのある声してると思った」
紳士「……本当に?」
白ドレス「うっそでーす。一ミリも疑ってませんでしたぁ」
7: 2017/12/23(土) 18:06:04.80 ID:zTNaStQMo
紳士「正直でよろしい」
白ドレス「ふふ。君たちにウソなんかついたら、私たちの品位がガタ落ちするモンでね」
白ドレス「……それで? 今日は何の用?」
白ドレス「知っての通り、お金は無いよ? それに、このあと予定があるんだよねえ」
紳士「……“サッポロ発、オーサカ行き”」
白ドレス「!」
紳士「本州縦断特急。『ドライ・ブラー号』に乗車する、という予定ですか?」
白ドレス「……うわぁ~、なんでそこまで知ってるのぉ。ぞくぞくしてきたあ。なに君、ストーカー?」
8: 2017/12/23(土) 18:06:50.40 ID:zTNaStQMo
紳士「仕事柄ですよ。他にもお教えしましょうか? たとえば、今日の貴女の朝ゴハンは、白身の……」
白ドレス「わーっ! いい。言わなくていい。プライバシー侵害、ダメ、ゼッタイ!」ブンブン
紳士「貴女にこの国の人権が適用されるのでしょうか? まあ、ともかくですね……」
紳士「貴女は一時間後にこの駅から出発する、本州縦断特急『ドライ・ブラー号』に乗車する」
紳士「マチガイありませんね?」
白ドレス「マチガイありませーん。ひゅーう、尋問も気合い入ってるぅー。なんなら乗車券も見せようか?」
紳士「それには及びません。それと、乗車の理由も当てましょう。……ズバリ、“見世物”の見物だ」
白ドレス「うえー。本当に何でも知ってるんだねー。胃がムカムカしてきた」
9: 2017/12/23(土) 18:07:18.99 ID:zTNaStQMo
紳士「しかし、その“見世物”とは……。ひどく恐ろしく、そして熱い……」
白ドレス「そうだね。やっぱ年末年始はエンジョイしたいからさ、どっかに旅行しようと思ったんだけど」
白ドレス「今日この日なら、世界中で、ココで起きる事件が一番面白いと思ったんだ」
白ドレス「―――『ドライ・ブラー号乗っ取り爆発大炎上事件』」
白ドレス「……ね? ワクワクするでしょ?」
紳士「……なんですか、そのトンチキな名前は。事件のプロファイルに見覚えはありませんが」
白ドレス「だって私が今考えたんだもん」
紳士「そうですか、良かったですね」
10: 2017/12/23(土) 18:07:46.58 ID:zTNaStQMo
白ドレス「とにかく、今日。ドライ・ブラー号が、乗っ取られ、爆発、大炎上する」
白ドレス「それはマチガイないのでしょう?」
紳士「ええ。正確には、今日の夕刻から、明日の未明にかけて、ですが」
白ドレス「……で? そんなコト私に聞いて、どうするの? さらに詳しい身辺調査?」
紳士「その列車に、私たちも乗車します。実は私のバイクも今、搬入中です」
白ドレス「ほー。なんで?」
紳士「ある指名手配犯の標的と、ある白いモノが大好きな指名手配犯の女が乗るモノで」
白ドレス「うへぇー。それって片方、私のコトでしょう」
紳士「ご明察。白いモノが好きだという自覚は、あるんですね」
11: 2017/12/23(土) 18:08:12.82 ID:zTNaStQMo
白ドレス「そりゃモチロン! 空前絶後のォ、超絶怒涛の真っ白さ! 純白を愛し、純白に愛された女!」
白ドレス「それが……。私」キラッ
紳士「まぶしい。歯も真っ白いのか……」
紳士「……そして。列車に乗って、事件という見世物を見て。最後に、どうするおつもりですか?」
白ドレス「ん? 私、バッドエンドは嫌なんだよねぇ~」
白ドレス「そんなさ、たくさんのヒトが氏ぬ! みたいなさ」
白ドレス「虫唾が走る、っていうか。気に入らない」
紳士「なるほど……。それを聞いて、安心しました」チャッ
白ドレス「おぅ?」
12: 2017/12/23(土) 18:08:43.36 ID:zTNaStQMo
白ドレス「銃、下げちゃっていいの? 私、逃げるよ? ぴょーんと逃げちゃうよ?」
紳士「どうぞ、ご自由に。ここで貴女を逃がしたとしても、列車で再び出会う。確実に」
紳士「……それよりも。取引をしませんか?」
白ドレス「……取引? マネーがトレードでウィンウィンなアレ?」
紳士「ええ。貴女にとっても悪いハナシではないと思いますよ」ニコ
白ドレス「わっるいカオだあ。さっき騙されたばっかりなんだよねえ。信用できないなあ」
紳士「そう言わずに。すぐにヒトを信用する貴女の純粋さは美徳ですよ」
白ドレス「は、恥ずかしくなるようなコト言わないでよ。照れちゃうから」テレテレ
13: 2017/12/23(土) 18:09:11.51 ID:zTNaStQMo
紳士「嫌味ですよ……。私が提供する報酬は、今回、貴女の身柄を見逃すコトです」
白ドレス「ほー。任務の片方を投げ出すとは、大きく出たね。そんなにもう片方の標的がダイジ?」
紳士「貴女なら今回逃がしても、いつでも捕まえられると思いまして」
白ドレス「侮辱ぅ!」
紳士「しかし、貴女は安心して列車の旅ができる。私たちは頼み事を聞いてもらえる」
紳士「良いコトづくめだと思いませんか?」
白ドレス「まあね。双方にとってプラスってやつだね。それで、そっちの頼み事ってのは?」
紳士「……私たちが提示する条件は二つ。一つは、私たちの任務を妨害しないコト」
14: 2017/12/23(土) 18:09:39.30 ID:zTNaStQMo
白ドレス「もう片方の、指名手配犯の標的を捕まえるのをジャマするな、ってコト?」
紳士「そういうコトです。貴女の横やりには、今まで散々頭を痛めさせられてきたので」
白ドレス「むふふぅ。照れちゃうな~」
紳士「ほめてません。そして、もう一つの条件は……。そうですね、貴女風に言うのであれば……」
紳士「バッドエンドを回避するコト」
白ドレス「……!」
白ドレス「ふーん。それ、私がさっき言った目的まんまじゃん」
白ドレス「何考えてるの? 君」
15: 2017/12/23(土) 18:10:06.58 ID:zTNaStQMo
紳士「さあ。何を考えているのでしょうね」
白ドレス「ポーカーフェイスだねぇ。人生楽しい?」
紳士「貴女に私の人生をとやかく言われる筋合いはありません。ほっといてください」
紳士「もっとも、貴女に比べれば、たいていの人間の人生はつまらないモノでしょうが」
紳士「……私たちの要求は以上です。呑んでいただけますか?」
白ドレス「うーん。まあ、条件に異存は無いんだけどぉ」
白ドレス「ちょいとセコくない? ゼニガタのとっつぁんが、ルパンに振り込む報酬にしてはさぁ」
紳士「なるほど。では、そういうコトを言うのであれば――――」
16: 2017/12/23(土) 18:10:32.83 ID:zTNaStQMo
紳士「先ほど私が支払った11520円。返していただけますか?」ニコ
白ドレス「うぐ!!」
白ドレス「き、汚い奴だ。か、金で私を買うなんて。呪ってやる、末代まで呪ってやる……!」
紳士「それほぼ永遠ですよね。さて、どうですか? もうすぐ列車の出発の時間ですが」
白ドレス「……くっ! べー、だぁ! 覚えてろ!!」ダッ タッタッタ…
紳士「……行ったか。すごく、疲れた……」
紳士「……一年を川に例えて、一番厳しい所を皆で乗り越えるから年の瀬、だっけ?」シュボ チリチリ…
紳士「私も、お正月くらいは実家に帰ろうかなあ」フゥー
17: 2017/12/23(土) 18:11:01.68 ID:zTNaStQMo
駅員「すいません、ここ禁煙です」
紳士「え? げほっ。あ、スミマセン……」
ゴーーーーーー

18: 2017/12/23(土) 18:11:47.98 ID:zTNaStQMo
【12月31日 午後4時】
――6号車【食堂車】
車掌「失礼します、お客様……。午後4時になりましたので、ティータイムは終了とさせていただきます」
乗客「ん? ああ、もうそんな時間か。悪いね、車掌さん。これ、お会計だ」ガタッ
車掌「ありがとうございます。引き続き、年をまたぐ特別な列車の旅、ごゆるりとお楽しみください」
ウェイター「車掌さーん、食堂車の掃除終わったぜぇー。ああ、疲れた」
ウェイトレス「食器洗浄も、完了。日も暮れるし、休憩したい」
車掌「お二人とも、ご苦労様でした。そうですね、ではディナータイムまで私たちも乗務員室にいましょうか」
19: 2017/12/23(土) 18:12:25.90 ID:zTNaStQMo
――1号車【展望車・前】 運転室
副運転士「サッポロ発、オーサカ行き」
副運転士「本州縦断特急―――『ドライ・ブラー号』!」グルッ
副運転士「この豪華旅客列車は今、今年最後にして来年最初の運行と題して」クルクル
副運転士「年の変わり目をまたぐ、スペシャルでゴージャスな列車の旅をしている!」バッ
運転士長「おいおい」
副運転士「今日の朝10時にサッポロを出発したこの列車は、22時間のあいだ運行し」ルンルン
副運転士「明日の朝8時にオーサカへ到着する予定……」タッタッ
20: 2017/12/23(土) 18:12:54.13 ID:zTNaStQMo
副運転士「つまり、列車の中でハッピーニューイヤーってワケですね!!」ビシッ
運転士長「はっはっは。上機嫌そうだな」
副運転士「そりゃそうですよ! この歴史あるドライ・ブラー号が行う、今年最後の運行は……」
副運転士「まさしく、登場してからこれまでのドライ・ブラー号の集大成!」
副運転士「そして、この年の集大成は、次の年のドライ・ブラー号の第一歩でもある……」
副運転士「こんな歴史的瞬間に立ち会えるというのに、なぜ興奮せずにいられるのでしょうか!?」
副運転士「いや、興奮せずにはいられない!」ランラン
運転士長「はっはっは……。まあ、とにかく運転席につきたまえ。仮にも走行中だぞ」
21: 2017/12/23(土) 18:13:21.41 ID:zTNaStQMo
運転士長「たしかに今日の運行に立ち会えるのは名誉なコトかもしれないが、私たちは乗務員だ」
運転士長「乗務員の役目は、乗客の方々に上質な列車の旅を提供すること」
運転士長「私たちがお客様以上に浮かれて、本来の職務をおろそかにしてはいけないよ」
副運転士「むっ……。たしかに。そう、私はこの列車の副運転士なのです」
副運転士「乗客の皆さんに列車の旅を楽しんでもらうコトこそが、副運転士たる私の役目の第一!」
副運転士「今日の乗車券を買った方々は、皆、楽しい年末年始の旅を期待している……。なら!」
副運転士「今までのどの年末年始よりも楽しかったと言ってもらえるような運行にしたいモノです!」
運転士長「ああ、その意気だ」
22: 2017/12/23(土) 18:13:50.07 ID:zTNaStQMo
運転士長「実のところ、私も高揚している」
運転士長「今日と明日の一日は、ドライ・ブラー号にとっても、重要な二日間となるだろう」
運転士長「ドライ・ブラー号の運転を開始から見てきた私としても……」
運転士長「今日の運行を無事に終え、新たなる歩みの初めとしたいモノだよ」
副運転士「へ? 士長、この列車のコト、完成した時から知ってるんですか?」
運転士長「ああ。こう見えて、幼い頃から列車というモノが好きでね」
運転士長「初めて運転室の席に座ったのも、このドライ・ブラー号だったんだよ」
副運転士「へーえ……。ドライ・ブラー号と共に生き、ドライ・ブラー号と同じ景色を見てきた、生き証人!」
副運転士「なんだかドラマティックでロマンティックですねえ!!」
23: 2017/12/23(土) 18:14:16.52 ID:zTNaStQMo
運転士長「はっはっは……。だが、そんな美談ではないよ」
運転士長「ドライ・ブラー号の歴史は、すなわち、戦いの歴史でもあった」
副運転士「は? 戦い?」
運転士長「ああ。……たとえば、このフロントガラスの窓枠。ところどころ丸い穴が開いているだろう?」
運転士長「これは運転室で銃撃戦があった時の弾痕だ」
副運転士「えぇ!?」
運転士長「また天井には、黒いシミや、刀傷が大量についているが……」
運転士長「これは戦いで傷みすぎてダメになった床板を天井に張り替えている。戦いを忘れないために」
24: 2017/12/23(土) 18:14:43.82 ID:zTNaStQMo
副運転士「……あっはっは、またまたぁ~! 士長はジョーダンが上手いですねえ!」
運転士長「いや、実際にあった出来事で……」
副運転士「ぷぷー! この平和な日本で、そんなコトあるワケないでしょう」
運転士長「……他にも、謎の赤い自爆スイッチなどもあるが。まあ、平和であるに、越したことはないがね」
運転士長「とにかく、長かった一年も、今日が最後だ」
運転士長「今年最後の運行も、何事もなく終わる、いつも通りの運行にしたいモノだな」
副運転士「そうですね! まあ、今年一年何も無かったし、今日も何も無いと思いますケド」ギシッ
運転士長「いや、油断はキンモツだ。事件は忘れた頃にやってくる」
25: 2017/12/23(土) 18:15:10.96 ID:zTNaStQMo
運転士長「それが、このドライ・ブラー号だ……」
副運転士「またまた。おどかして~」
副運転士「ああ、夕焼けがキレイだなぁ……。トワイライト、っていうんですか?」
副運転士「まるでドライ・ブラー号の晴れ舞台を祝福しているかのようです!」
副運転士「こんなにも日の入りが幻想的で美しい大晦日に、何かが起こるハズが――――」
バンッ
白ドレス「起こるんだなぁそれが!!!」
副運転士「どぅっ、えっ!? わったっ、たったったぁぁああ!!」ガタタッ ドシン!!!
26: 2017/12/23(土) 18:15:53.07 ID:zTNaStQMo
運転士長「……!」ガタッ
白ドレス「そこな乳臭いガール、知ってるかな? 薄暮とはつまりタソガレ、オーマガドキ!」
白ドレス「彼は誰だ、ニンゲンか? と書いて誰彼。魔に逢うと書いて逢魔時」
白ドレス「昼と夜のキョーカイがアイマイになる時間にこそ、ヤバいのはいっぱい出る!」
白ドレス「そうっ! 私のように!!」ビシッ
副運転士「わ、私のようにって、何イバってんですか! あ、痛た……」
副運転士「それに乳臭いガールってなんですか! み、見た目同じくらいに見えますけど歳!?」
白ドレス「木を見て森を見ず、井の中の蛙大海を知らず。知性足りてないよ、ガール」
27: 2017/12/23(土) 18:16:20.35 ID:zTNaStQMo
副運転士「はああああッ!? さっきからガール、ガールって何なんですか、ムキー!!」
運転士長「怒る所そこかね、君……」
運転士長「……ここは関係者以外は立ち入り禁止だ。ましてや列車の中枢を司る運転室」
運転士長「何人であれ外部の者の侵入は許されない。お引き取り、願おうか」
白ドレス「おや? 私も乗客ですよ、眼帯のクミチョーさん。そんなにゾンザイに扱ってもいいのかな?」
運転士長「士長だ。……礼儀なき乗客に、向ける敬意などあるまいよ」
白ドレス「すごい。カタブツだ。私好きだよ、そういうの。ラストサムライ、ってカンジで」コッ コッ
白ドレス「うん。良いヒトたちだね、アナタたち。合格です。それじゃあ、簡潔に伝えましょうか」カタッ
28: 2017/12/23(土) 18:16:51.82 ID:zTNaStQMo
運転士長「……? いったい、何を……」
白ドレス「―――今日この日、何らかの理由により、この列車は爆発する」
副運転士「は?」
運転士長「……!」
白ドレス「うーん、もうちょっと詳細に言おうか?」
白ドレス「今日この日、このドライ・ブラー号は、乗っ取られ、爆発、大炎上する」バッ
白ドレス「ああ、いや……。正確には、今日の夕刻から、明日の未明にかけて、だっけ」
副運転士「全然詳細じゃァありませんけどッ!!?」
29: 2017/12/23(土) 18:17:49.77 ID:zTNaStQMo
白ドレス「なるほど! たしかに信じられないかもしれない! 事実、私の言っているコトは荒唐無稽だ!」
白ドレス「だけど……。それがこの列車の運命というモノ、です」
白ドレス「南無三!!」パチン
副運転士「……。な、なんなんですかこのヒト……」
運転士長「わからん……。アヤしいモノでも服薬しているのかもしれんな」
白ドレス「あーッ! いま私のコト、ヤク中扱いしたでしょ!? 迂遠に言ってもわかるんだから!」
白ドレス「最近の若い奴ってのはさぁ、ワケわかんないコトがあるとすぐ解決を科学に頼るよね!」
白ドレス「そういうのいけないと思うよ! たまにはオカルトを信じて、諦めるのもダイジ!」
30: 2017/12/23(土) 18:18:20.12 ID:zTNaStQMo
副運転士「うわぁ……。なんか若者批判はじめましたよ。私と同年代のクセして」
副運転士「しかもオカルトマニアですよ。ワタシ霊感があるのー、とか言っちゃうやつですよ」
運転士長「うむ……。他の乗客の不安をいたずらに煽ってもいけない。留置室に放り込むか」
白ドレス「え? この列車、留置室とかあるの? 何それ鉄格子? こわ!!」
運転士長「さあ、ご同行願えるか」ズイッ
白ドレス「や! イヤだよ! せっかく楽しい旅を期待して乗車券買ったのに――――」バッ
副運転士「……!」
白ドレス「なんでブタバコにぶち込まれなきゃいけないかなあ!」
運転士長「そうは言ってもだなあ……。ヘンなウワサされるのもイヤというか……」
31: 2017/12/23(土) 18:18:46.45 ID:zTNaStQMo
副運転士「―――待ってください。士長」
運転士長「どうした?」
副運転士「私。……この人のコト、少しは信じようと思います。爆発というのは、いつ起きるんですか?」
運転士長「……正気か?」
白ドレス「おお、感心感心。最近の若いのも、捨てたモンじゃないね。でも――――」
ドゴォォォン…!!!
副運転士「うわっ……!?」グラッ
白ドレス「……もー、はじまっている」
32: 2017/12/23(土) 18:19:18.90 ID:zTNaStQMo
――8号車【ロビー】 屋根の上
…バラララララ
昼と夜が混じり合う、この薄暮の時間。世界を侵食せんとする宵の色にまぎれて、
迷彩に姿を隠した一機のヘリコプターが、ドライ・ブラー号の上空に迫っていた。
パイロット「目標地点、到着。すぐに降下しますか?」
キノコ頭「ああ、今すぐ飛び降りる。……お前たち、準備は良いか?」
テ口リストA&B「「準備オーケーです!!」」
テ口リストC&D「「いつでも行けます!!」」
33: 2017/12/23(土) 18:19:45.45 ID:zTNaStQMo
キノコ頭「……よし。それでは、作戦を開始する」
パイロット「我らが悲願、作戦の成功を祈る。グッドラック」
キノコ頭「―――ああ、必ずや我らに勝利を。グッドラック」
バッ!!!
スタッ スタッ スタッ スタッ スタッ
キノコ頭「……全員いるな?」
テ口リストA「はい、間違いなく」
キノコ頭「……武器、爆薬は?」
テ口リストC「ここに、ありったけ! さっそく脅迫用の爆弾も設置しました!」
34: 2017/12/23(土) 18:20:12.00 ID:zTNaStQMo
キノコ頭「問題ない」
バラララララ…
キノコ頭「……行ったか」
キノコ頭「……もう一度確認しよう」
キノコ頭「今から我々は、この本州縦断特急『ドライ・ブラー号』を襲撃する」
キノコ頭「なぜなら。“最強の兵器”を開発したという、若き天才科学者、通称“教授”が――――」
キノコ頭「今日、この列車に乗るという情報を手にしたためだ」
キノコ頭「…………」
35: 2017/12/23(土) 18:20:39.18 ID:zTNaStQMo
キノコ頭「……このミッションから、降りるなら今のうちだ」
テ口リストB「!」
キノコ頭「……先の戦争に、我々は敗北した」
キノコ頭「我々は敗北し、多くの同志を失った」
キノコ頭「もし同志たちがこの場にいたならば……。我々の短絡的な行いを止めるかもしれない」
キノコ頭「我々は戦争に敗北した。その事実を、甘んじて、粛々と受け入れるべきだと」
キノコ頭「……、……」
テ口リストD「……もとより承知の上です」
キノコ頭「!」
36: 2017/12/23(土) 18:21:05.94 ID:zTNaStQMo
テ口リストA「……俺たちは、そんなコトはすべて呑み込んだうえで、今ここにいます」
テ口リストB「俺は、敗北は認めますが……。だが、それでも奴らの行いを許せない」
テ口リストC「我ら戦争の生き残り、それぞれ動機は違えど、目的は同じです」
テ口リストD「一蓮托生ってやつですよ。まったく、今さら、リーダーらしくもない」
キノコ頭「……。お前たち……」
キノコ頭「ああ、ならば行こう。もはや迷いはない」
キノコ頭「俺たちは、この一日で歴史を変える。敗北を覆す。悲願を現のモノに」
キノコ頭「―――教授の持つ、“最強の兵器”を、この手にして」
37: 2017/12/23(土) 18:21:37.06 ID:zTNaStQMo
――7号車【ラウンジ】
教授「“最強の兵器”、ねぇ……」ブラブラ
執事「あっ、そういえば。結局完成したんですか? 例の、“最強の兵器(仮)”とやら」
教授「ううん。一文字の、仕様書案すらも書いてない」
執事「まじですか」
執事「……どうするんですか? 明日オーサカについたら、昼には“最強の兵器(仮)”の発表会ですよ?」
執事「やばくないですか?」
教授「うん、やばい。8月31日なのに夏休みの宿題に何も手つけてないくらいやばい」
38: 2017/12/23(土) 18:22:04.07 ID:zTNaStQMo
執事「はあ。そりゃまた、古典的な例えで。でも、今年の夏もたしかそんな……」
執事「…………」
執事「……まさか」
教授「そう、やばい。実は、リアル高校の冬休みの宿題も何も手つけてない」
執事「うわ。終わってる、この人」
教授「大丈夫! まだ私、若いし、未来があるから」
執事「いま科学者としての貴女が社会的に氏にますよ……」
教授「勉強と仕事の両立って、むずかしいよね……」
執事「ハナシを逸らさないでください」
39: 2017/12/23(土) 18:22:31.39 ID:zTNaStQMo
執事「まったく。俺も手伝いますから、列車がオーサカにつくまでに終わらせましょう」
教授「おっ、わっかるぅー。じゃあ、こっちの数学の宿題お願い」ドサッ
執事「やれやれ。……って、“最強の兵器(仮)”のほうじゃないんですか!?」
教授「いやあ。私の担任の、数学教師、コワくってさぁ……」
教授「あのマッチョに怒鳴られるくらいなら、記者会見で叩かれたほうがマシっていうか……」
執事「くっそ神経の図太いお嬢様をビビらせるほどの方ですか。一度会ってみたいモノです」
執事「……で、“最強の兵器(仮)”のほうは? どうなさるんですか?」
教授「そっちはね、努力じゃなくて、ヒラメキだから……。あ、そこのき○この山、取って」
40: 2017/12/23(土) 18:22:58.90 ID:zTNaStQMo
弓使い「……ねぇ、剣ちゃん、オーサカにはまだ着かないの~?」
剣使い「あ? あと16時間くらいだな……」
弓使い「長! 列車の旅、長!! やっぱ飛行機のほうが良かったんじゃないのぉ~?」
剣使い「姐さん……。なら、一つ訊かせてもらうが」
弓使い「おう。おねーさんに何でも訊いていいんだぜ」ドンッ
剣使い「ポストに入ってた招待状見つけて、オーサカ行きたいー、って言ったのは誰だった?」
弓使い「ギクゥ!!」
銃使い「…………」ガシュガシュ
41: 2017/12/23(土) 18:23:28.40 ID:zTNaStQMo
弓使い「そ、それはぁ~。一時の、気の迷いっていうか~……」
剣使い「やっぱ時代は山だよね、とか、山の風景がどうたら言ってた姐さんはどこ行ったんだ?」
弓使い「氏にました。山でお腹は膨れません」
弓使い「やっぱ時代は食だよね。たこ焼き、お好み焼き……。さすがはオーサカ、食の都」
剣使い「オーサカ着いてから、やっぱ時代は海だよねとか言ってオキナワに行かないコトを祈る」
弓使い「そうだなあ、オキナワもいいよね」
剣使い「しかし、列車に乗ってると腕がナマるのも事実だな……。どこかに、模擬戦闘室はないものか」
剣使い「なあジュー、お前付き合わないか?」
銃使い「…………」ガシュガシュ
42: 2017/12/23(土) 18:23:55.12 ID:zTNaStQMo
剣使い「……まーた食ってんのか?」
銃使い「うん」
剣使い「うまいか? それ」
銃使い「隊長も食べる? おいしいよ」
銃使い「たけ○この里」
剣使い「…………」
剣使い「いや、いいや。俺、甘いの苦手だしな」
弓使い「あ、じゃあ私は一個もらおーっと」
銃使い「はい。あーん」
43: 2017/12/23(土) 18:24:21.19 ID:zTNaStQMo
弓使い「あーん。むふふ、銃ちゃんかっわい~♪」ナデナデ
銃使い「…………」ポフポフ
コロコロ…
剣使い「ん?」
教授「あー、き○この山、一個落としたー」ボリボリ
執事「何やってんですか、もー。ええと、たしかこのへんに……」ボリボリ
教授「き○この山食べながら喋ると汚いよ」ボリボリ
執事「お嬢様に言われたくはありません!!」ボリボリ
44: 2017/12/23(土) 18:24:48.89 ID:zTNaStQMo
剣使い「おい……。もしかして探してるのは、コレか?」
キラーン
教授「ああ、それそれ! 見つかって良かった、ありがとうお兄さん」
教授「でも落としちゃったから、もういいや。お兄さんにあげる」
剣使い「え……。いや、一度床に落としたモノをヒトに勧めるのは、俺でもどうかと思うぞ……」
執事「お嬢様。そういう少しの油断が、週刊誌に隙を与えるのですよ。謝って下さい。私からもすいません」
教授「そうだね。ごめんなさい」
剣使い「なんかセツジツな理由だな……」
45: 2017/12/23(土) 18:25:18.31 ID:zTNaStQMo
剣使い「しかし、じゃあコレどうしようか……。食べてもいいが、俺、甘いの苦手だしな……」
銃使い「じゃあ食べる」パク
執事「あ」
銃使い「おいしい」ボリボリ
教授「え。ちょっと、食べて良かったの……?」
銃使い「うん」ゴクン
執事「そうですよ。この発明オタクで鈍感な頭ネバーランドのお嬢様のき○この山を……」
教授「ごめん今日ちょっと言い過ぎじゃない?」
弓使い「あ、き○この山食べてるの? いいなー」
46: 2017/12/23(土) 18:25:45.82 ID:zTNaStQMo
執事「おや。良かったら、き○この山食べますか?」
弓使い「え? いいの!? うれしーなー!」
銃使い「うん。じゃあ、こっちはたけ○この里を」
教授「うーん。なんか、ヒラメキそうなヨカン……。ヤカン……。ガッチャン?」
剣使い「お。なんだか難しそうな勉強してるな」
執事「そうなんですよ。ホント、最近の数学って難しくって……」ガシュガシュ
弓使い「よし、おねーさんが勉強を見てあげよう。どれ……。ごめん、無理」ボリボリ
銃使い「とりあえず代入だよ」ボリボリ
教授「私が手伝えればいいんだけどね~」ガシュガシュ
47: 2017/12/23(土) 18:26:14.33 ID:zTNaStQMo
――8号車【ロビー】
スタッ スタッ スタッ スタッ スタッ
革ジャン「……ん?」
黒コート「……? どうかしたか?」
革ジャン「いや。今、なんか……」
革ジャン「ケータイの電波調子悪くね?」ブンブン
黒コート「本当だ。電波強度が弱になってる」
48: 2017/12/23(土) 18:26:45.50 ID:zTNaStQMo
革ジャン「俺のもアンテナ一本しか立ってねえな」ブンブン
黒コート「アンテナ……? ともかく、トンネルにでも入ったか?」
ゴトン ゴトン
黒コート「……入ってないな」
革ジャン「く、くそ。ガキ使の前番組の総集編観てたのに、いいところで切れやがって……!」
革ジャン「ゆるせん! 俺の職務権限で、この列車、回線の速い電波に付け替えさせてやる!!」ガタッ
黒コート「お前にそんな職務権限ないぞー。ほら、ガキ使ならロビーのテレビでも観れるだろ」
黒コート「スミマセン、お姉さんー! テレビのチャンネル、ガキ使にしてもらってもいいですかー?」
49: 2017/12/23(土) 18:27:13.49 ID:zTNaStQMo
フロント「テレビのチャンネルですか? ええと……」
フロント「すいません、そこのお客様、テレビのチャンネルを変えても構わないでしょうか?」
魔族A「えっ!?」
族長「……ああ、構わない」
フロント「では、失礼して……」ピッ
テレビ「デデーン マツモトー アウトー」
フロント「これでよろしかったでしょうかー?」
黒コート「あ、ありがとうございますー。……ほら、これで良かったか? 革ジャン野郎」
50: 2017/12/23(土) 18:27:39.80 ID:zTNaStQMo
革ジャン「いや、ガキ使は、もういい……」
革ジャン「それよりも電波が悪くなった原因がわからなくてモヤモヤする……!」ガシガシ
黒コート「おいおい」
革ジャン「よし、俺は窓から屋根の上に登って原因を調べる! ココは任せたぜ、センパイ!」ガタガタ
黒コート「は? 屋根の上? なんで!?」ガタッ
革ジャン「バカと煙は高いトコと決まってる! 犯人がいるなら、マチガイなく上だ!」ガラッ
革ジャン「よいしょっとー!!」ヨジヨジヨジヨジ
黒コート「…………」
黒コート「はっ、まったくその通りだな……」ドサッ
51: 2017/12/23(土) 18:28:07.57 ID:zTNaStQMo
黒コート「ココは任されちゃったよ、ったく」
黒コート「それにしても、全然それらしい奴が通らないな……」
黒コート「まあ、バカ正直に仮面なんていつも被ってるワケないか。何か他の方法考えないと……」
族長「手始めに、隣の車両の者たちに訊いてみる。行くぞ」ガタッ
魔族D「行動の精神、マジリスペクトっす!」
黒コート「あの乗客とか、体青いし、めっちゃアヤシイけど」
黒コート「体青いなんて特徴聞いてないし」チラ
黒コート「……っくっく、ガキ使ってなんで昔からこんな面白いんだろうな」
52: 2017/12/23(土) 18:28:33.84 ID:zTNaStQMo
族長「…………」
族長「……夜か」ギン
魔族A「ええ! 体に、魔力があふれてきます……!」
魔族B「あと一刻もすれば、万全の状態になるかと!」
族長「ふむ……。昼間の人間界では魔力が生成できない、というのは本当か……」
族長「だが、それでこそ。不利な条件でこそ、我らがニンゲンに勝ると証明できる」
魔族C「族長、シブい……!」
魔族D「不屈の精神、マジリスペクトっす!」
53: 2017/12/23(土) 18:29:01.22 ID:zTNaStQMo
フロント「テレビのチャンネルですか? ええと……」
フロント「すいません、そこのお客様、テレビのチャンネルを変えても構わないでしょうか?」
魔族A「えっ!?」
族長「……ああ、構わない」
魔族B「テ、テレビのチャンネルを変える、だと……!?」ザワッ
魔族C「テレビとは何だ……? よもや、ニンゲンの妖しげな魔術では……」ガタガタ
魔族D「族長……。まったく動じていませんでしたが、テレビをご存知なのですか!?」
族長「わからん」
54: 2017/12/23(土) 18:29:34.05 ID:zTNaStQMo
族長「だが、そこの板を見てみろ」
魔族A「……?」
テレビ「デデーン マツモトー アウトー」
魔族A「……これは?」
族長「板の中で、マッチョが尻を叩かれているだけだ」
族長「我々にとって、さしたる害も無い。ニンゲンの為すコトには意味の無いコトも多い」
族長「ゆえに。ニンゲンの一挙手一投足事あるごとに怯える必要は無い」
魔族A「……た、たしかに……!」
55: 2017/12/23(土) 18:30:24.25 ID:zTNaStQMo
族長「それよりも。我々は、魔力の満ちた今こそ」
族長「この列車に乗った意義を果たす必要がある」
魔族A「はい……。先週、我らはニンゲンどもに召喚され、奴らの戦争に巻き込まれかけました」
魔族B「しかし、ニンゲンどもが我ら魔族に敵うハズもなし。その場で撃退した、それはいいのですが……」
魔族C「奴ら! 我らを召喚しておきながら、我らの信念を侮辱した!!」
族長「ああ。しかし、奴らの信念もまた、ホンモノ……。であれば、最後にモノを語るのは、チカラだ」グッ
魔族D「聞けば我らを召喚したニンゲンの一派、明日の昼にオーサカで何やら発表会を行うとのコト」
魔族D「そして折りしも運行していたのが、オーサカ行きの、この列車! まさしく、僥倖!」
族長「そう。その発表会を我らが潰し、我らの信念を宣言する。それでこそ、恥辱はそそがれる」
56: 2017/12/23(土) 18:30:51.87 ID:zTNaStQMo
族長「しかもこの列車、かつて多くの同胞が狙い、そして返り討ちに遭った……」
族長「超級の魔力塊を搭載し、動力源にして走る火薬庫、『ドライ・ブラー号』だという」
族長「ならば……。手始めに、同胞たちの誰もが為し得なかった、この列車の魔力塊の強奪を果たす」
族長「そして! その魔力塊のチカラを利用し、ニンゲンどもの発表会にて覇を唱える……!」グッ
魔族A「しかし。その、魔力塊を搭載している動力源とやら……。この列車の、いったいどこに?」
族長「わからん。だが、わからなければ、この列車の者に訊けばよい」
族長「手始めに、隣の車両の者たちに訊いてみる。行くぞ」ガタッ
魔族D「行動の精神、マジリスペクトっす!」
57: 2017/12/23(土) 18:31:18.60 ID:zTNaStQMo
――7号車【ラウンジ】 屋根の上
ザッ ザッ ザッ ザッ
テ口リストA「……リーダー! ターゲットの教授を発見しました! この真下です!」
テ口リストA「コチラに気付いた様子はありません。仕掛けますか?」
キノコ頭「ああ。ならば、今すぐ襲撃する。我らの栄光を、ここから始めるとしよう――――」
革ジャン「―――いや、ここで終わるんだよ」
キノコ頭「……!? 何者だ!」
革ジャン「俺の電波を遮った罪は重いぜ。―――氏んで詫びろや」チャッ
58: 2017/12/23(土) 18:31:45.49 ID:zTNaStQMo
――7号車【ラウンジ】
ザッ ザッ ザッ ザッ
教授「……あれ?」
執事「……? どうかしましたか?」
教授「いや。今、なんか……」
教授「ケータイの電波調子悪くない?」ブンブン
弓使い「本当だ。電波強度が弱になってるね」
59: 2017/12/23(土) 18:32:13.33 ID:zTNaStQMo
教授「せっかくゴーグル先生に英語の翻訳訊こうと思ったのに」
執事「あのですね。お嬢様は外国の方と話す機会も多くなるのですから、これから苦労しますよ」
教授「ふーんだ。今の英語でも十分苦労してるもーん」
剣使い「あ、すまねえマスター。ノド渇いてきたから、飲み物が欲しいんだが。コーヒーあるか?」
マスター「ございますよ。他の方々は、いかがですか?」
弓使い「あ、私お酒ほしいな! でもまだ夕方だし、シードルでいいや」
執事「水で」
銃使い「トニック」
教授「……シ、シードル? トニック? あ、私はコーラで……」
60: 2017/12/23(土) 18:32:40.27 ID:zTNaStQMo
――7号車【ラウンジ】~8号車【ロビー】 連結部
族長「さて……。人間界で扉の向こうの者にモノを尋ねる時は、どうするのだったかな」
魔族A「たしかノックを2回するのでは?」
魔族B「それトイレじゃね?」
魔族C「4回が礼儀正しいんだっけ」
魔族D「それ逆にうるさくないか?」
族長「ふむ……。迷うな……。人間界の乗り物では、強く扉を開ける時に何か礼儀があると聞いたが」
魔族A「ああ、そういえば。強く扉を開ける行為は、ハイジャックというらしいですね。知りませんけど」
族長「ハイジャック……。悪くない響きだ。今日はそれでいこう。―――行くぞ!」ガチャッ
61: 2017/12/23(土) 18:33:07.48 ID:zTNaStQMo

62: 2017/12/23(土) 18:33:36.62 ID:zTNaStQMo
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