64: 2017/12/24(日) 18:00:30.23 ID:U049RaU2o
レスありがとうございます。

第一章「薄暮・前」

それでは、第二章「薄暮・後」を開始します。
60レスほどの予定です。

65: 2017/12/24(日) 18:01:30.04 ID:U049RaU2o


――7号車【ラウンジ】
no title
ふらいんぐうぃっち(13) (週刊少年マガジンコミックス)
66: 2017/12/24(日) 18:01:56.50 ID:U049RaU2o


弓使い「っ!」クルッ

銃使い「―――!」バッ

剣使い「……!」チャキ

執事「…………」スッ

教授「え? 何!?」


ドカドカドカドカ

魔族A「やいやいやい、動くな!」

魔族C「動くんじゃないぞ!!」

族長「…………」ザッ

67: 2017/12/24(日) 18:02:23.46 ID:U049RaU2o


教授「何、アイツら……? 体が、青い……」

弓使い「……アイツらは魔族だね。この世の裏側、魔界に住む住人。いわゆる悪魔ってやつだ」

執事「魔族!? そんな存在が、実在……」

剣使い「あれは魔族でも青鬼族ってやつだな。……おい、まだ撃つなよ。まだ」

銃使い「…………」


魔族B「へへッ! 族長、奴らビビって動けやしませんぜ!」

魔族D「族長、一発キメゼリフお願いします!!」

族長「……ああ。そうだな」

族長「…………」

68: 2017/12/24(日) 18:02:51.07 ID:U049RaU2o


族長「―――ニンゲンどもよ。貴様らの長は、誰か」

執事「……お嬢様。お下がりを」ザッ

剣使い「俺……、ってコトでいいぜ。魔族のオッサン。何の用だ?」

族長「我らのコトを知っているか。ならばハナシは早い。我らの問いに、答える用意はあるか?」

剣使い「問い? 降伏するか、ってぇ問いなら……。首をタテには降れねぇなあ」

族長「……そうか。ならばこう言うしかあるまい」スゥゥゥ…


族長「脆弱なるニンゲンどもよ! 魔界の炎に怯え、神妙に聴くが良い!!」ボオオオオッ


族長「この列車は俺たちがハイジャックした!!!」

69: 2017/12/24(日) 18:03:17.48 ID:U049RaU2o


剣使い「―――ハ、ハイジャックだと!?」

執事「口から炎を!?」

銃使い「……!」バッ

弓使い「皆、逃げるんだ! 部屋が炎にまかれる!」

教授「炎も青いんだ。すごいなあ……」


魔族A「出たーッ! 族長の必殺、青い炎!」

魔族B「この炎にビビらず立ち向かってきた奴はあんまりいないぜ!」

メラメラ メラメラ

族長「今の宣言と、この炎を前にしてなお、臆せぬならば……。その勇者のみ、かかってこい」

70: 2017/12/24(日) 18:03:46.42 ID:U049RaU2o


――7号車【ラウンジ】 屋根の上


革ジャン「俺の電波を遮った罪は重いぜ。―――氏んで詫びろや」チャッ

テ口リストB「で、電波だと? 何の話だ!」

テ口リストC「氏んで詫びろだと? ナメた口を……」

革ジャン「氏ね!!」バンバンバン


テ口リストD「ぐぁッ!!」

キノコ頭「ぐっ……。拳銃を持っているだと……? 貴様、何者だ!?」

革ジャン「俺かい? 俺は――――」

71: 2017/12/24(日) 18:04:13.49 ID:U049RaU2o


革ジャン「―――ただのおまわりさんですよってね」


キノコ頭「パトロール!? 俺たちの動きを、どうして知って……」

革ジャン「おっと! パトロールと聞いて弁明しない! それすなわち、悪人ってコトだ」

革ジャン「ならば悔いは無いな? それじゃあ……」

メラメラ メラメラ

革ジャン「……お? あ、熱つッ!!」バタバタ

キノコ頭「なんだ、コレは……? あ、足下が燃えている!?」バッ

キノコ頭「おい、パトロール! お前の仕業か!?」

革ジャン「いや俺知らね」ブンブン

72: 2017/12/24(日) 18:04:41.42 ID:U049RaU2o


テ口リストA「た、大変ですリーダー! 持ってきた爆薬に引火します!!」

シュボッ

キノコ頭「い、引火!? そりゃ、お前、まさか、ば―――、ばくは――――――」
no title

73: 2017/12/24(日) 18:06:46.13 ID:U049RaU2o


――7号車【ラウンジ】


ドゴォォォン…!!!

剣使い「ば、爆発!?」

族長「何事だ!?」


革ジャン「うわああああッ! 落ちるううううッ!!」ヒュウウウウ

キノコ頭「くそがああああああああ!!!」ヒュウウウウ


ドサッ ドサッ ドサッ ドサッ

教授「空からヒトが!?」

74: 2017/12/24(日) 18:07:16.75 ID:U049RaU2o


テ口リストA「いてて。リーダー、大丈夫ですか!?」

キノコ頭「あ、ああ。なんとか」


キノコ頭「……? ここは……。―――はっ!!」

教授「……?」


テ口リストB「……! いました、教授です!」

教授「え、私!?」

キノコ頭「く、この状況だが、やむを得まい……。こら、聞け!!」パァン


キノコ頭「この列車は俺たちがハイジャックした!!!」

75: 2017/12/24(日) 18:07:53.11 ID:U049RaU2o


弓使い「え!」

執事「またハイジャック犯!?」

キノコ頭「ま、また!? い、一体どういうコトだ!!」

族長「あ……。何やら悪いな。我々が先にこの列車をハイジャックしてしまった」

教授「ハイジャックに後も先もないと思うんだけど」

テ口リストA「何やらものすごい場所に来てしまった」

革ジャン「いてて……。何がどうなっていやがる?」

魔族A「人間界ってニギヤカだなあ」

剣使い「ど……、どうすんだこの状況!?」

銃使い「…………?」

76: 2017/12/24(日) 18:08:28.05 ID:U049RaU2o


――13号車【展望車・後】


ドゴォォォン…!!!


ヒーロー「……。始まったか……」


ヒーロー「午後4時過ぎ、ラウンジカーでの謎の爆発から、この事件は始まる」

ヒーロー「ここまでは歴史通りだ……」

ヒーロー「だが、このままではいけない」


ヒーロー「誰かがこの歴史を変えねばならぬ!!」

77: 2017/12/24(日) 18:08:54.94 ID:U049RaU2o


ガチャ


車掌「な、なんですか今の爆発は!?」ダッ ダッ

ウェイトレス「誰かがデッカいオナラでもしたんじゃないのー」

ウェイター「爆音くらいで、いちいち騒ぐこたぁないって。それよりオジサン、昼寝の続きがしたいなぁ」

車掌「いや、どう考えても一大事でしょう! もっと危機感持っていただけますか!?」


ヒーロー「ふふふ……。その通り!」

車掌「な!?」

ヒーロー「―――とう!!」バッ

78: 2017/12/24(日) 18:09:21.09 ID:U049RaU2o


ヒーロー「すたっ」


車掌「な……。なんですか、あなたは!?」

ウェイトレス「全身ポリマースーツの赤色仮面だ」

ウェイター「まごうコトなき変Oだな、ありゃ」


ヒーロー「私は変Oさんではなァァいッ!!」ビシッ

ヒーロー「そう、私は。言うなれば、そう……。正義の味方! そう、なので、ゆえに……」


ヒーロー「この列車は俺たちがハイジャックした!!!」

79: 2017/12/24(日) 18:09:54.42 ID:U049RaU2o


車掌「―――は?」

ウェイトレス「いま正義の味方って言ったよね?」

ウェイター「正義の味方ってハイジャックするモンだっけか?」


ヒーロー「ふふふ……」

ヒーロー「私のまさかの発言に、度肝を抜かれているな……」


車掌「なんだかよくわかりませんが……。彼を縛り上げてください」

ウェイトレス&ウェイター「「はーい」」

ヒーロー「……あれ?」

80: 2017/12/24(日) 18:10:59.52 ID:U049RaU2o


――7号車【ラウンジ】


教授「……状況を整理しよう」


キノコ頭「この列車をハイジャックしようと思ってたら、突然炎にまかれて爆発した」

剣使い「学生のお姉ちゃんの問題解いてたら、突然魔族がやってきて爆発した」

革ジャン「俺の電波を遮った不届き者を撃ったら、突然床が爆発した」

族長「この列車をハイジャックしたら、突然屋根が爆発した」


教授「一度に喋るな!!」

銃使い「…………」ガシュガシュ

81: 2017/12/24(日) 18:11:26.91 ID:U049RaU2o


キノコ頭「……?」


キノコ頭「待て、チビッコ。お前、何を食っている?」

銃使い「たけ○この里。食べる?」

キノコ頭「……! ……クククッ、そうか」


キノコ頭「……クククッ、クハハハハッ……! 何たる巡り合わせ、何たる因果……!!」

テ口リストA「リ、リーダー……? どうかしましたか?」

キノコ頭「おい、お前たち、予定変更だ。最初の標的を変更する」

キノコ頭「まずはコイツを消さねば、俺たちのハイジャックは始まらない」クルッ

82: 2017/12/24(日) 18:11:53.33 ID:U049RaU2o


キノコ頭「売り上げという名の暴力でき○こ派を追いつめ、俺たちを壊滅に追いやった悪の菓子……」


キノコ頭「たけ○この里を滅ぼさねば、俺たちのハイジャックは始まらないのだ!!」ビシッ


剣使い「……な? んだと……?」

キノコ頭「先週の、き○こたけ○こ戦争は、俺たちき○こ派の敗北に終わった……」

キノコ頭「だがココに、き○こたけ○こ戦争を真に終わらせる、“最強の兵器”があるという!」

キノコ頭「教授からソレを奪うのが、俺たちのハイジャックの目的だ」

教授「……なるほどね。そういうコト」


革ジャン「―――ちょっと待てよ。今のハナシ、聞き捨てならねえな」

83: 2017/12/24(日) 18:12:20.83 ID:U049RaU2o


キノコ頭「何?」

革ジャン「き○こたけ○こ戦争? とかいうのは初耳だが……」


革ジャン「―――俺はどっちかっていうと、たけ○こ派だ」


キノコ頭「―――何だと?」ピクッ

革ジャン「で、お前ら、き○こ派のうえ、俺のケータイの電波妨害まで行った……」

革ジャン「これはもう、まぎれもない悪だよな?」チャッ

キノコ頭「ほざいたな、政府の犬が……!!」チャッ


族長「―――くだらぬ」

84: 2017/12/24(日) 18:12:47.70 ID:U049RaU2o


剣使い「……!」

族長「くだらぬ。……実にくだらぬ」

族長「人間界に召喚されてみれば、どいつもこいつも、き○この山、たけ○この里と」

族長「実にくだらぬ」


キノコ頭「何だと……? 貴様にき○この山の何がわかる!」

革ジャン「ほう。俺にたてつくなら、かかってこいよ」

族長「き○この山? たけ○この里? はっ、笑止千万――――」


族長「チョコ菓子ならアル〇ォートが至高に決まっておろうがァァァッ!!!」

85: 2017/12/24(日) 18:13:14.95 ID:U049RaU2o


執事「アル、○ォート……っ!?」

族長「たけ○こ派のニンゲンどもは、先週我らを召喚し、き○こたけ○こ戦争への参加を要求した」

族長「だが、魔界では、アル○ォートこそ至高と決まっている。アル○ォート以外あり得ない」

族長「ゆえに、明日の発表会を潰し、アル○ォート派こそ最強と示すつもりだったが……」

教授「ええええ」

族長「これは捨て置けぬ。捨てては置けぬ。き○こ派、たけ○こ派――――」


族長「両者が同じ場にまみえたならば、アル○ォート派としての誇りを示すまで!!」

魔族A「族長、カッコイー! き○こもたけ○こもぶっ潰せ!!」

弓使い「アホだ、このヒトら」

86: 2017/12/24(日) 18:13:42.55 ID:U049RaU2o


キノコ頭「俺たちの肩には、き○こ派の命運がかかっている。ココで退くワケにはいかない……」

革ジャン「たけ○こ派とかいうのに義理立てする気はないがよ。声がデカいぜ、お前ら……」

族長「やはりニンゲンどもには、アル○ォートの素晴らしさはわからぬか……。ならば、チカラで示すまで」


弓使い「……ちなみに、どのお菓子もおいしいジャン、というワケには、いかない……?」

キノコ頭「ナメてんのか」

革ジャン「いくワケあるか」

族長「強い奴が一番強い」

弓使い「でっすよねー」

銃使い「…………」ボリボリ

87: 2017/12/24(日) 18:14:10.03 ID:U049RaU2o


執事「……大変なコトになりましたね、コレは」

教授「うん、大変なコトになった。私の知らないところで」

執事「お嬢様が“最強の兵器(仮)”をさっさと完成させないからですよ。このヒトたちが集まったの」

教授「ううう。責任重大だあ……」


剣使い「……あー、なんだ」ゴトッ

剣使い「き○こだ、たけ○こだ、アル○ォートだ、そんなのは知らねえが」

剣使い「魔族のオッサン。最初に仕掛けてきたのは、アンタだ」ビシッ

族長「!」

剣使い「臆せぬ勇者はかかってこい、と言ったな。ならば俺が、相手になろう」チャキ

88: 2017/12/24(日) 18:14:36.79 ID:U049RaU2o


族長「……いいだろう、ニンゲン。き○こ派でもたけ○こ派でもない身で、よく吠えた」


族長「貴様の得物は長剣か。ならば、俺も正々堂々、シャムシールだけで応じよう」ジャキ

族長「かかってこい、ニンゲン。その器、真に勇者を名乗るに値するか、見極めてやろう」

剣使い「……あとで吠え面かくなよ、魔族。少しは俺を楽しませろ」


剣使い「…………」ジリジリ

族長「…………」ジリジリ

剣使い「……いざ」


剣使い&族長「「勝負ッ!!」」バッ

89: 2017/12/24(日) 18:15:04.45 ID:U049RaU2o


――8号車【ロビー】


ドゴォォォン…!!!


黒コート「うわっ! なんだ、爆発!?」ガタッ


黒コート「か、仮面の男の仕業か……!?」

黒コート「ねえお姉さん、いま揺れましたよね!?」

フロント「ええ、揺れましたね。おそらく、先ほどの魔族のお客様のせいではないでしょうか?」

フロント「この列車では、よくあるコトですよ」

黒コート「よくあるコトなんだ」

90: 2017/12/24(日) 18:15:31.62 ID:U049RaU2o


黒コート「すぐ近くだったな。7号車か……? いったい、何が起こって……」


バン!!!

黒コート「な!?」


バッ ヒュッ ドタン

剣使い「ふっ!!」キン キン キン キン

族長「なんのッ!」カン カン カン カン

ズザァ!!!


黒コート「き、斬り合い!? なんだなんだ何なんだ!!?」

91: 2017/12/24(日) 18:15:58.91 ID:U049RaU2o


7号車で始まった剣使いの男と、青鬼族の族長の一騎討ちは、数合打ち合う内にもつれ合い、
戦いの場を7号車から隣接する8号車へと移動させる。

扉を開けると同時に、剣使いがもんどり打って8号車になだれ込む。
空中で族長のシャムシールの切っ先が剣使いの鼻をかすめるが、受け身をとって姿勢を立て直し、
長剣とシャムシールが打ち合うこと一度、二度、三度、四度。

四度目の激突は両者にとって重い衝撃になったのか、直後に両者は後方へ飛びすさる。


剣使い「ハァ、ハァ……」

族長「……、……」


剣使い「なかなか、やるじゃねぇか。魔族のオッサン」

族長「……ソレはコチラのセリフだな。ニンゲンの剣士よ」

92: 2017/12/24(日) 18:16:29.11 ID:U049RaU2o


剣使い(……こりゃあ、なかなかヤベェ奴にケンカ売っちまったな)

剣使い(同じ体格の、同じ武器の、同じ戦法の人間の敵と戦うのとでは、ワケが違いすぎる)

剣使い(内包するパワー! 桁違いの膂力! 振り下ろされる斬撃の重さ!)

剣使い(すべてが、人間のソレを優に上回る……。俺に勝てるのか!?)


族長(このニンゲン……。生白い小僧かと思ったが、認識を改めねばなるまい)

族長(奴は間違いなく、幾多の修羅場を切り抜けた戦士だ。奴の剣技がソレを語る)

族長(自らの得物である片刃の刀の特性を知り尽くした、間合い、斬り込み、攻撃のいなし方)

族長(ただの力押しでは、永劫勝負がつかぬ。……剣一本で十分と侮った己が慢心よな)

93: 2017/12/24(日) 18:16:56.94 ID:U049RaU2o


族長(……ならば)グッ

族長「―――ふっ!」ダッ

剣使い「くるか!!」チャキ

バッ!!


剣使い(……踏み込みが浅い! 体力が切れたか!? やはり消費するパワーは比例するのか……)

剣使い(いずれにしろ、コレが好機! 取って返せる!!)グッ


剣使い「浅いぞ! もらッ――――」

族長「…………」ニヤ

94: 2017/12/24(日) 18:17:26.94 ID:U049RaU2o


剣使い(なッ―――!?)


静寂を破った族長の右足の踏み込みは、たしかに浅かった。
それは事実である。

だが剣使いは、それを、体力が減った故の息切れと解釈した。

―――経験の差。

人間と魔族の違いなどではない、戦士としての経験の差が、
隙を作らせたと感じた剣使いに隙を作ったのだ。

この場に族長と同等の力量を持つ戦士がいたならば、叫んだだろう。
いや。族長と同等の戦士であれば、たしかにこの場一人、居合わせた。


黒コート「違うぞ坊主! 青いのの狙いは―――、フロントのテレビだっ!!」

95: 2017/12/24(日) 18:17:54.26 ID:U049RaU2o


――7号車【ラウンジ】


弓使い「うへぇー、行っちゃったよ……」

キノコ頭「すごい斬り合いだな。俺にはマネできそうもない」


魔族A「待ってくださいよー、族長~」タタタッ

魔族D「あ、すんません、どうもお騒がせしましたー」タタタッ

教授「ああ、うん……。行っといで~」

銃使い「…………」ガシュガシュ


執事「……さて、残る問題は」

96: 2017/12/24(日) 18:18:21.31 ID:U049RaU2o


革ジャン「俺たち、ってワケか」チャッ

キノコ頭「おっと。イキがるなよ」チャッ


テ口リストA&B「「…………」」チャッ チャッ

テ口リストC&D「「…………」」チャッ チャッ

キノコ頭「お前は一人だが、コッチには俺の他にも四人いる」

キノコ頭「たとえお前が俺を脳天をぶち抜いたとしても、その後にお前はハチの巣というワケだ」

革ジャン「…………」


革ジャン「……だから、どうした?」

97: 2017/12/24(日) 18:19:15.62 ID:U049RaU2o


キノコ頭「何……?」

革ジャン「なるほど、俺がお前をヘッドショットする、そこまではいい」

革ジャン「だったらその後、俺が同時にあと四人撃てばいいだけだろ?」

キノコ頭「……!」


キノコ頭「……っ。ナメた口を」

革ジャン「どうした? 手元が震えてるぜ」

革ジャン「まあ、当然だな。お前はき○こ派とかいう、一回の戦争限りの兵士だが――――」


革ジャン「こちとら叩き上げのおまわりさんだ。技術も覚悟も違うんだよ」

98: 2017/12/24(日) 18:19:45.00 ID:U049RaU2o


教授「……ねえ、おまわりさんってあんなヤバい頃し屋みたいなのばっかりなの?」

弓使い「う、うーん。まあ、普通は違うと思うけど……」


銃使い「警察とは、何度か戦ったコトがある」

銃使い「あいつらは一兵卒。責任を組織に任せ、氏を恐れず突っ込んでくる。わりと」

銃使い「でも、あの革ジャンの警察は違う」

銃使い「まるで、自分は絶対に氏なないというような、余裕、姿勢……、信仰」

執事「無頼漢、というコトですか?」

銃使い「すこし違う。あいつは、自分の命のコトを、重く見ている」

執事「……なるほど」

99: 2017/12/24(日) 18:20:12.18 ID:U049RaU2o


執事「では、あのキノコ頭の一団のほうは?」

銃使い「あれは典型的な戦闘組織。自らを一兵卒と割り切り、氏を恐れない」

銃使い「仲間のためなら特攻も辞さない。……いちばん戦いたくないタイプ」

執事「いずれにしろ、並以上の戦士、というワケですね」

執事「……なんでそんなのが、よりにもよって、この列車に」ハァ


教授「だから私のせいでしょう」

弓使い「え? そーなの?」

教授「うん。あの警察官は、ただ暴れてるだけみたいだけど……」

教授「キノコ頭のほうは、私と、私の発明品を名指しした。明確に」

100: 2017/12/24(日) 18:20:42.77 ID:U049RaU2o


弓使い「ふーん。そっかァ……」

執事「……?」


弓使い「じゃあ、キノコ頭と革ジャンが戦ったとして、革ジャンが勝てばそれで良し」

弓使い「だけど。もしキノコ頭が勝ったら、私たちは貴女のせいで危険にさらされる」

教授「そうだね」


弓使い「じゃあ私たちは、貴女をキノコ頭に売り飛ばすのが最適解、ってワケだ?」


執事「……! 貴様……」バッ

弓使い「……ふふふ。イイ顔するね。イケメンだよ、執事くん」

101: 2017/12/24(日) 18:21:09.87 ID:U049RaU2o


弓使い「ねえ、どうする? 執事くん、お嬢様」

弓使い「もしココで、私たちが君たちを裏切って、斬りかかってきたとしたら」

弓使い「まあ、何の契約もしてないし、裏切りでも何でもないんだけどね」


教授「…………」

執事「……俺は、この命を引き換えにしてでも、お嬢様を守る」

教授「! ……っ。バカなやつ」

執事「バカで結構です。それが執事たる、俺の役目ですから」

弓使い「うん、うん。自己犠牲の精神、たいへん結構」

弓使い「私たちがいちばん戦いたくないタイプだ」

102: 2017/12/24(日) 18:21:37.09 ID:U049RaU2o


弓使い「……で、お嬢様のほうは?」

教授「教授、でいい」

弓使い「そう。教授は、私たちが斬りかかってきたとしたら、どうする?」

教授「…………」


教授「戦いはコイツに任せて物陰に隠れる」


執事「……!」

教授「だって私じゃこのヒトたちに勝てないけど、でも氏にたくないし」

執事「お嬢様……。けっこう薄情ですね」

103: 2017/12/24(日) 18:22:03.33 ID:U049RaU2o


弓使い「…………」

弓使い「……ぷっ」


弓使い「あっはっはっはっは! 面白い、面白いねお嬢様、いやさ教授!!」バンバン

教授「ぐえ。痛い……」


銃使い「……姐さんって、思ってもいないコト言うの好きだよね」

弓使い「ああ、やっぱりわかってた? やっぱお芝居ヘタだなー、私!!」

執事「……え?」


弓使い「ゴメン! 今のはちょっとしたジョーク! 裏切るつもりとか無いから、忘れてね!」

104: 2017/12/24(日) 18:22:30.72 ID:U049RaU2o


教授「笑えないジョークだなあ」

執事「ホントですよ……。この状況で、からかうのはやめてください」

弓使い「ゴメン、ほんとゴメンってば。ふふ」


弓使い「でも、物陰に隠れる、か……。良い判断だ」

弓使い「いちばんバカな雇い主は、自分から敵に突っ込む奴。守れって言っといて、そりゃないよね」

弓使い「戦場から逃げる奴は、まあ普通かな。逃げた先まで守れる保障は無いけれど」

弓使い「初めから高みの見物は、妥当だけど……。あんまし、気分良くないよね」

教授「え? って、コトは……」

弓使い「ええ。戦場だって、ビジネスの場所。私たちが貴女たちのコト、守ってあげようか?」

105: 2017/12/24(日) 18:22:58.17 ID:U049RaU2o


教授「……!」

執事「……金ならあります。ぜひ、お願いしたい」

弓使い「オッケー! そうこなくっちゃ。羽振りも心構えも良い雇い主の下で働くのは、気分が良い」

弓使い「そうと決まれば、あのキノコ頭と革ジャン……。まとめてやっつけちゃおうか?」

銃使い「…………」コク


執事「……あの!」

弓使い「ん? なあに?」

執事「戦闘論理に詳しく、金で雇われて戦う……。貴女たちはいったい、何者なんですか?」

弓使い「……通りすがりの、フリーターです☆」

106: 2017/12/24(日) 18:23:29.13 ID:U049RaU2o


キノコ頭「…………」ジリジリ

革ジャン「…………」ジリジリ


弓使い「いい……? 銃ちゃん。剣ちゃんがいないから、前衛は私に任せて」

弓使い「奴らの銃弾は、剣を飛ばして弾く。だから、安心して狙撃に専念して」

銃使い「わかった。……氏なないで」

弓使い「わかってるって。……さあ、ちょいとデートとシャレ込もうか!!」

グッ


マスター「―――そこまでだ」

107: 2017/12/24(日) 18:23:56.42 ID:U049RaU2o


キノコ頭「……!」

革ジャン「お前……。ここの、ラウンジのマスター、か……?」

マスター「いかにも」ズゥッ


マスター「―――ここは乗客の皆様のための、憩いの場」

マスター「―――お引き取り願えますかな」


銃使い「……!」ビクッ

弓使い「……ヤバいヤバいヤバい。何、何なの、あのおじいさん……? 尋常じゃない威圧感だ」

弓使い「あれ、半身、キカイか……? ちょっとちょっと右腕、なんで光ってるのかな」

108: 2017/12/24(日) 18:24:23.56 ID:U049RaU2o


革ジャン「―――イヤだね、……と言ったら?」

マスター「むろん」グッ


マスター「お相手するしかなくなりますな」


革ジャン「…………」チャッ

キノコ頭「……ふん。引き揚げるぞ」


革ジャン「……! ……腰抜けが」

キノコ頭「腰抜けで結構。俺たちはこの列車に、氏にに来たワケじゃないんでな。おい、行くぞ」

テ口リストA「ま! 待ってくださいリーダー……!」

109: 2017/12/24(日) 18:24:50.40 ID:U049RaU2o


マスター「そうですか。では、ワタクシもこれにて」

革ジャン「おい! 逃げるのか……!!」

マスター「――――」ギン

革ジャン「……!」


マスター「―――ここは乗客の皆様のための、憩いの場」

マスター「……それだけですので」

革ジャン「ちっ。……興醒めだ。じゃあ、あばよ。皆々様がた」テクテク


教授「……こ、これは……。助かった、のかな?」

110: 2017/12/24(日) 18:25:25.06 ID:U049RaU2o


――8号車【ロビー】


黒コート「違うぞ坊主! 青いのの狙いは―――、フロントのテレビだっ!!」


剣使い「何!? ――――」

族長「ご名答! だが、遅い!!」ブンッ


族長は右足を踏み切った直後、左足で床を蹴り飛ばし、
左へ直角に跳ねて剣使いの突進をかわす。

そして、フロントに備え付けているテレビをシャムシールですくい上げるように剣使いに投擲し、
族長自身もまた、左腕を支点に、フロントを蹴り飛ばして剣使いに上段から襲いかかる。

剣使いの視界をテレビで奪いつつ、反動の勢いを利用する、族長の決氏の一撃であった。

111: 2017/12/24(日) 18:25:52.39 ID:U049RaU2o


剣使い(テレビがジャマだ! コレが狙いか……!)

剣使い「ぐッ。だが、なら……」


剣使い「テレビごと斬り飛ばすまでだァァッ!!」

族長「何!?」


剣使いの、長剣の斬り上げによる、裂帛の一撃。
次の瞬間、テレビはバターのように切り裂かれ、真二つの板片と化す。

そして、切り裂いたテレビの向こう側に現れたのは、
空中より斬り下げの一撃を放たんとする族長。

刹那。白き雷鳴と、青き紅蓮が、入り混じった。

112: 2017/12/24(日) 18:26:22.10 ID:U049RaU2o


剣使い「ぐぁッ!!」ビリッ

族長「むぅ……ッ!」ビリッ

カーン カーン


ロビーに響いたのは、乾いた二つの音。

お互いに予知しなかった、真っ向からの剣戟の激突により、
金属を伝えて流れる電流が両者の体をかけ巡る。

その衝撃が、互いの剣を、互いの後方へと弾き飛ばした。


剣使い「……ハァ、ハァ」

族長「恐れ入ったよ、小僧。……いや、白銀の剣士よ」

113: 2017/12/24(日) 18:26:50.40 ID:U049RaU2o


族長「ニンゲンにも貴様ほどの、戦士がいるとはな」

剣使い「へぇ。そりゃあ、お褒めに預かり光栄だな」


テクテク

革ジャン「……ちっ。おい、センパイ! 客室に戻るぞ!」

黒コート「お、おい革ジャン野郎!? お前、なんでそんなボロボロで……」

革ジャン「うるせえ! いいから休む! 俺は疲れた!」


族長「…………」チラッ

革ジャン「…………」キッ

114: 2017/12/24(日) 18:27:16.64 ID:U049RaU2o


族長「……どうやら、アチラは終わったようだな」

剣使い「ああ。俺たちも、ここまでにしておくか」


族長「―――待て!」

剣使い「……?」


族長「まずは此度の勝負、感謝する。族長の座に収まってから忘れて久しい、血湧き肉躍る戦いだった」

族長「だがこの決着は、必ずつけたい。次、貴様と俺が相見えた時……。列車を降りる、その前に」

剣使い「……ああ、いいぜ。その約束、違えるなよ」

族長「感謝する」

115: 2017/12/24(日) 18:27:43.98 ID:U049RaU2o


――1号車【展望車・前】 運転室


ドゴォォォン…!!!


副運転士「うわっ……!?」グラッ

白ドレス「……もー、はじまっている」

運転士長「むぅ……ッ!」ガクッ


副運転士「爆発音、振動……! 列車の後ろのほうから!?」

運転士長「女……! コレは、貴様の仕業か!?」

白ドレス「ノン、ノン! 私が爆発なんて起こすワケないじゃない?」

116: 2017/12/24(日) 18:28:13.32 ID:U049RaU2o


白ドレス「だから、さっきも言ったでしょう?」


白ドレス「―――これは、この列車の運命だと」


運転士長「運命……」

副運転士「……お、お姉さん! 貴女はいったい何者なんですか? この爆発を止める方法は!?」

白ドレス「ゴメン、その質問は二つともNGだよガール。もっと具体的な質問内容なら考えよう」

副運転士「え、えぇ……。な、なら。乗っ取られ、爆発、大炎上するのが、この列車の運命なら……」


副運転士「お姉さんは、どうしてソレを私たちに知らせに来たんですか!?」

白ドレス「…………」

117: 2017/12/24(日) 18:28:42.46 ID:U049RaU2o


白ドレス「……そうだね。一つは、氏神との契約によるモノだ」

白ドレス「私は氏神に、君たちに運命を伝えるよう差し向けられてしまった」

副運転士「氏神……?」

白ドレス「ああモチロン、字義通りの氏神じゃないよ? 氏神みたいな奴、って意味だね」


運転士長「また氏神か。私には、貴様がこの列車にとっての氏神に思えるがな……」

白ドレス「それは解釈の違いってやつだね! 氏神はたしかに氏ある場所に現れる」

白ドレス「だけど、氏神が現れるから氏ぬのと、氏ぬから氏神が現れるのでは、大違いでしょう?」

副運転士「……?」

白ドレス「まあ、私は後者みたいに、運命をお知らせしに来ただけですよってコト」

118: 2017/12/24(日) 18:29:12.36 ID:U049RaU2o


白ドレス「そして、もう一つは……。私個人の善意によるモノだ」


白ドレス「君もさ、バッドエンドは嫌でしょう?」

白ドレス「たくさんのヒトが氏ぬ! みたいなさ」

副運転士「……アタリマエです! 乗客の皆さんが危険にさらされる、というのなら!」

副運転士「命を懸けてでも、私が皆さんを守ります!!」

白ドレス「うん、良い心意気だ! 君みたいな善意のカタマリに、人々は救われるんだよ!」


運転士長「善意、か……。その言葉は本心としても、その思惑の裏に何がある?」

白ドレス「こちらは大人らしく老獪だね。でも、それを証明する手段は無いからノーコメントとしよう」

119: 2017/12/24(日) 18:29:40.05 ID:U049RaU2o


副運転士「……まだ質問があります」

白ドレス「何かな? 可能な範囲で答えよう」

副運転士「……この列車の運命っていうのは、未来の出来事ですよね」

白ドレス「なぜ未来の出来事なのに確信を持って言えたのか……って、問いかな?」

副運転士「…………」コク


白ドレス「それは、私がスゴいからだよ! スゴいから未来だってわかる!」

運転士長「……ふざけたコトを」

白ドレス「ふざけてなんかないよ? 特に君は、なんとなくわかると思うけどな。眼帯クン」

副運転士「……でも、もし貴女が、本当にスゴいヒトだっていうのなら……」

120: 2017/12/24(日) 18:30:07.78 ID:U049RaU2o


副運転士「そのチカラで、この列車の運命を変えてはくれないんですか?」

白ドレス「イタいところを突いてくるね。クリティカルヒットだ」


白ドレス「そうだねえ……。チカラというのには、常に代償がつきモノだ」

白ドレス「代償なきチカラは、妬まれ、嫉まれ、いずれ悪意によって封印される」

白ドレス「私が今回の事態に対して何も出来ないのは、その代償ゆえと思ってほしい」


運転士長「……女。悪魔とでも契約したのか?」

白ドレス「ノン、ノン! 視野が狭いね」


白ドレス「……そろそろ時間かな」

121: 2017/12/24(日) 18:30:36.26 ID:U049RaU2o


ジリリリリリ!!!


運転士長「……? 内線の電話、13号車の乗務員室!?」

運転士長「13号車にも何かあったのか!?」

ガチャ

運転士長「もしもし、コチラ運転室。……車掌か!?」


運転士長「……何? ハイジャック犯を名乗る変質者を捕らえた?」

運転士長「そ……、そうか。なら、とにかく、私が行く。それまで……」

運転士長「……いま縄を解いて脱走した!!?」

122: 2017/12/24(日) 18:31:03.93 ID:U049RaU2o


白ドレス「この列車の運命の発端は、とても、とてもササイでバカバカしいモノだ!」

白ドレス「き○こ? たけ○こ? アル○ォート? そんなの普通ありえない!」

白ドレス「だけども、信念を持って行動する彼らは、理由はどうあれ、皆本気だ」

白ドレス「ナメてかかればイタい目見ると、私は予言者らしく予言しよう」

白ドレス「高みの見物を決め込むような黒幕は、たいてい引きずり出されてボコボコにされるモノさ」

副運転士「え……? それって……」


白ドレス「それに、役者はまだ出揃っちゃいない」

白ドレス「事態を知りながら、まだ関わらずにいる者も……。少なからずいる」

白ドレス「たとえば私たちのすぐ近くにも、案外いるかもね?」

123: 2017/12/24(日) 18:31:33.56 ID:U049RaU2o


白ドレス「運命は絶対ではない! 歴史にイフはある! 過去だって未来だって思うがまま!」

白ドレス「だけど、それを為せるのは……。その時間に生きる、意志ある者たちだけ」

白ドレス「私はそんな君たちが生きあがき、運命を変えるコトを期待する!」


ガチャ

白ドレス「ほんじゃま。グッドラック、ってコトで」

副運転士「貴女は……。いったい、どこへ行くんですか?」

白ドレス「さあ? 雲のように自由気まま、それが私。すぐ会うかもしれないし、もう会わないかもしれない」


白ドレス「でも。私が必要とされれば、いつでもどこでも出てくるよ! じゃーねー!」

124: 2017/12/24(日) 18:32:01.22 ID:U049RaU2o


副運転士「…………」


副運転士「『運命は絶対ではない』……」

副運転士「『それを為せるのは、その時間に生きる、意志ある者たちだけ』……かぁ」


副運転士「…………」


副運転士「……いや。そんなコトより、私は私の役目を果たさないと!」

副運転士「この年末年始の運行を成功させて、新たな一年を迎える……」


副運転士「それが乗客の皆さんから期待されている、副運転士の役割なんだから!」

125: 2017/12/24(日) 18:32:29.00 ID:U049RaU2o
第二章「薄暮・後」は以上になります。
自分は3つとも大好きです。

第三章は、明日12/25(月)の18時ごろ開始の予定です。


第三章「夜中・前」

126: 2017/12/24(日) 19:15:32.21 ID:l2ISKmER0
まだ続くのね

127: 2017/12/24(日) 20:38:25.80 ID:YbiZ3MZZ0
こんな列車絶対乗りたくない

引用: テロリスト「「「この列車は俺たちがハイジャックした!!!」」」