128: 2017/12/25(月) 18:00:15.40 ID:+u7TU514o
129: 2017/12/25(月) 18:00:41.92 ID:+u7TU514o
――1号車【展望車・前】 屋根の上
桜色の女「―――へっくしゅ!!」クシュン
ゴーーーーー
桜色の女「……う、ううぅ。今、誰かに拙者のウワサをされたような」ズビ
桜色の女「いや、確実にしたでござるな? どこからか話し声が聞こえてきたでござるよ!?」ガタッ
シーン
桜色の女「…………」
130: 2017/12/25(月) 18:01:09.56 ID:+u7TU514o
桜色の女「……やっぱり気のせいでござるか」ドカッ
桜色の女「まあ、列車の屋根の上なのに、ヒトの話し声が聞こえるワケないでござるな」
桜色の女「きっと聞き間違いでござる。でなければ、怨霊、物の怪、怪異のたぐい」
桜色の女「……しかし、この、ドライ・ブラー号といったでござるか?」
桜色の女「この列車……。何やら不可思議な魔の者によって呪われている」
桜色の女「“いわくつき”の列車らしいでござるからなあ。さっきも何やら後方で爆発が」
桜色の女「まったく、鉄仮面卿も、物好きでござる。こんな列車に乗り込むとは」
ゴーーーーー
131: 2017/12/25(月) 18:01:36.27 ID:+u7TU514o
桜色の女「しかし……。鉄仮面卿がこの時代で暴れたと聞いて、ひとつ仕置きのため追いかけてみたが」
桜色の女「どうやらこの列車、相当人気の旅らしく、乗車券の一つも取れない始末」
桜色の女「さりとて、列車の旅を前にして諦めるも、口惜しい……。というワケで」
桜色の女「この列車に無賃乗車で乗り込んだのでござるが」
ゴーーーーー
桜色の女「……寒い! 先頭車の屋根の上とか、風がモロに当たって凍え氏ぬでござる!!」
桜色の女「おかしいなあ。この時代の今日は、いったい何日でござるか……」
桜色の女「……12月31日!? ははは……、日にちは同じか。道理でしばれるでござる。ござる」
132: 2017/12/25(月) 18:02:08.51 ID:+u7TU514o
桜色の女「……たしか、鉄仮面卿は、正規の乗車券を手に入れていたでござるな」
桜色の女「駅の改札に通していたのを見たから、マチガイないでござる」
桜色の女「となれば、知り合いのヨシミで、鉄仮面卿の客室にお世話になるでござるか」
桜色の女「うん。それがいい。名案でござる!」ガタッ
ゴーーーーー
桜色の女「……でも、鉄仮面卿の客室は、いったい何号車なのでござろうか?」
桜色の女「…………」
桜色の女「またフリダシでござる」ドカッ
133: 2017/12/25(月) 18:02:34.45 ID:+u7TU514o
桜色の女「……はあ、すっかり日も暮れたでござるなあ。とっぷり」
桜色の女「年末年始もヒマだからといって、怖いモノ見たさで友人の後を追わなければ良かったでござる」
桜色の女「…………」グウウウウウ
桜色の女「ハラの虫も泣いているでござる。よよよ」
桜色の女「もうすぐ夕食の時間でござるなあ……」
桜色の女「たしかこの列車には、食堂車もあったでござるな」
桜色の女「利用にいちいち乗車券は確認されるのでござろうか?」
桜色の女「……ま、腹が減っては戦ができぬ。ご厄介になるでござる」
134: 2017/12/25(月) 18:03:06.51 ID:+u7TU514o
【12月31日 午後4時】
――6号車【食堂車】
車掌「失礼します、お客様……。午後4時になりましたので、ティータイムは終了とさせていただきます」
乗客「ん? ああ、もうそんな時間か。悪いね、車掌さん。これ、お会計だ」ガタッ
車掌「ありがとうございます。引き続き、年をまたぐ特別な列車の旅、ごゆるりとお楽しみください」
ウェイター「車掌さーん、食堂車の掃除終わったぜぇー。ああ、疲れた」
ウェイトレス「食器洗浄も、完了。日も暮れるし、休憩したい」
車掌「お二人とも、ご苦労様でした。そうですね、ではディナータイムまで私たちも乗務員室にいましょうか」
135: 2017/12/25(月) 18:03:33.21 ID:+u7TU514o
――7号車【ラウンジ】
乗客「…………」テクテク
乗客「午後4時、か」
乗客「改変した歴史通りならば、ここ7号車で、まもなく事件が始まる」
乗客「早々に離れたほうが良さそうだな」テクテク
執事「おや。良かったら、き○この山食べますか?」
弓使い「え? いいの!? うれしーなー!」
銃使い「うん。じゃあ、こっちはたけ○この里を」
136: 2017/12/25(月) 18:03:59.90 ID:+u7TU514o
――8号車【ロビー】
黒コート「まあ、バカ正直に仮面なんていつも被ってるワケないか。何か他の方法考えないと……」
族長「手始めに、隣の車両の者たちに訊いてみる。行くぞ」ガタッ
魔族D「行動の精神、マジリスペクトっす!」
乗客「……!」
乗客「時空環境整備課まで乗っているのか。僕の動きを嗅ぎつけたか……?」
乗客「いや、この招待状がそもそも彼女らのワナという可能性も……。油断できないな」
137: 2017/12/25(月) 18:04:32.88 ID:+u7TU514o
【12月31日 午後8時】
――10号車【寝台車五】 客室
乗客「……あれから4時間が経った」
乗客「おそらくラウンジでの事件は収束し、乗務員たちが今後の対策を練っている頃だろう」
乗客「キョーミ本位で、この時代のき○こたけ○こ戦争に介入した結果、歴史が変わったのが先週」
乗客「だが歴史が変わった結果、発生するドライ・ブラー号ハイジャック事件と僕は、直接関係ない」
乗客「なのに、その事件に何故、僕が呼ばれたのか?」スッ
仮面の男「―――この、時空指名手配犯である、鉄仮面の僕が」カポ
138: 2017/12/25(月) 18:05:03.05 ID:+u7TU514o
仮面の男「この、昨日僕の元に届いた、今日のドライ・ブラー号の運行への招待状……」
仮面の男「年末年始の特別な列車の旅に招待してくれたはいいが、差出人は不明だ」
仮面の男「―――この招待状の真意が、たけ○こ派の客将だった僕への、き○こ派の復讐だとしたら?」
仮面の男「―――あるいは、指名手配犯の僕をおびき寄せるための、時空整備課のワナだとしたら?」
仮面の男「―――それとも、僕に近しい人物による、僕のためのサプライズパーティーだとしたら?」
仮面の男「くくく……。いずれにしろ、今年の締めくくりにふさわしい、馬鹿騒ぎには違いない」
仮面の男「祭とは人々の熱狂が生み出すモノ。だが熱狂が源ゆえに、冷却までの時間は長くない」
仮面の男「さて、そろそろ夕食の時間だな。今年の年末年始は、刺激的なモノになりそうだ」ガタッ
139: 2017/12/25(月) 18:05:42.69 ID:+u7TU514o
――13号車【展望車・後】 屋根の上
ヒーロー「……ふぅぅぅ。まったく、ヒドい目に遭った」
ゴーーーーー
ヒーロー「まさか、この時代を救いに来た俺を、いきなり縛り上げるとは……」
ヒーロー「この時代の人間の考えるコトは度し難い!!」
小型メカ「貴方がいきなりハイジャックとか叫ぶからいけないのだと思いますけどね」フヨフヨ
ヒーロー「おお、オペ子ちゃん。今回もよろしく頼むぜ」
140: 2017/12/25(月) 18:06:33.09 ID:+u7TU514o
小型メカ「気軽に言ってくれますね。時空環境整備課から出向している、私の身にもなってほしいモノです」
ヒーロー「しかし、昨日俺が唐突に思い立って縄抜けの術を会得していなければ、この時代は終わってた」
ヒーロー「ほんのササイなコトが歴史を決めてしまうのだなあ……。ブルブル」
小型メカ「貴方が唐突に思い立ってハイジャックなどと言わなければ縄抜けも必要無かったでしょうがね」
小型メカ「しかし、何故いきなりハイジャックなどと? むしろ我々は、ハイジャックを止める側でしょう」
ヒーロー「いやあ……。俺がハイジャックして列車が止まれば、ハイジャックも起こらないかなって」
小型メカ「うーん、問題はさらに大きな問題で塗り潰してしまえという感じですね。ちなみにその格好は?」
ヒーロー「この時代の正義の味方の正装だという! 俺は正義の味方だからな!」
小型メカ「私たちの時代では変質者の正装ですね。正義の味方が投獄されないコトを祈ります」
141: 2017/12/25(月) 18:07:01.74 ID:+u7TU514o
小型メカ「では、改めて我々の任務を確認しますね」
小型メカ「まず、我々の大目的……。それは、『き○こたけ○こ大戦』の勃発を阻止するコトです」
ヒーロー「き○こたけ○こ大戦? なんだ、それは?」
ヒーロー「俺たちの目的は、この列車がハイジャックされて大惨事になるからソレを阻止する、では?」
小型メカ「そうですが、ハイジャックの阻止は、き○こたけ○こ大戦の勃発を阻止する手段にすぎません」
小型メカ「はぁ……。これは、もう一度、最初から説明したほうが良さそうですね」
小型メカ「まず事の発端は、とある時空指名手配犯が、この時代の歴史を改変したコトでした」
小型メカ「通称・仮面の男。鉄仮面卿とも。彼はき○こたけ○こ戦争に介入し、戦争を終わらせたのです」
142: 2017/12/25(月) 18:07:38.78 ID:+u7TU514o
ヒーロー「ふむ……。それだけ聞くと、戦争を終わらせた英雄のように思えるな」
小型メカ「ええ。実際、き○こたけ○こ戦争は、ここで終わらなければ、私たちの時代まで続き……」
小型メカ「誰も得しないプロレスバトルとして形骸化。あっても無くても、歴史への影響はありません」
小型メカ「なので、戦争を終わらせた仮面の男を英雄視する声は一定数あり、その結論に異議は無い」
小型メカ「ですが、問題はここからです」
小型メカ「仮面の男の行動の問題は、戦争の結果はともかく、その先の歴史が変わるコトでした」
小型メカ「ゆえに彼は以前から指名手配されています。この事態でシッポを掴み、私の同僚も動いている」
小型メカ「そして、歴史が変わった結果、一人の天才科学者を乗せた列車がオーサカまで運行します」
143: 2017/12/25(月) 18:08:07.10 ID:+u7TU514o
ヒーロー「それがこのドライ・ブラー号……、というワケだな」
小型メカ「はい。彼女はたけ○こ派に依頼され、戦争を完全に終わらせる“最強の兵器”を開発中でした」
小型メカ「しかし観測された歴史では、今日列車は大惨事に巻き込まれ、彼女の発明は灰燼に帰します」
小型メカ「その原因をたけ○こ派は、き○こ派残党の陰謀と断定。……き○こたけ○こ大戦に突入します」
ヒーロー「そんな……、許せない。大惨事は俺が止めてみせる、未来の市民ボランティアの名にかけて!」
小型メカ「貴方の上役は大戦の阻止のために私を雇い入れたのではなかったのですか? まったく……」
ヒーロー「だが正史にも登場する人物たちには既に招待状を送った。条件は揃った。何も問題はない!」
小型メカ「仮面の男にも招待状を送ったんでしたっけ? まあ放置もマズいですか。って、アレは……?」
144: 2017/12/25(月) 18:08:40.31 ID:+u7TU514o
――7号車【ラウンジ】
魔王「何? このラウンジでの爆発に、魔族が関わっていた?」
パラ パラ
マスター「ああ。青い体、黒い角。そして得物のシャムシール。十中八九、魔界の青鬼族というやつだろう」
魔王「ほー……。この焼け跡、たしかに青いな。魔力を帯びている。青鬼族の特徴だ」ザラ
魔王「しかもまあ、ラウンジの天井なのにデカい風穴がコンバンハしちゃって。よほど手ひどく暴れたか?」
マスター「原因は魔族だけではないが。だが、この列車の魔族からの防衛をお前に任されたのは俺だ」
マスター「魔族からは俺が乗客を守ろう。お前が今日列車に乗ったのも、件の魔族を止めるためか?」
145: 2017/12/25(月) 18:09:09.51 ID:+u7TU514o
魔王「…………」
魔王「たしかに魔族の人間界との接触は、干渉だけならまだしも、侵攻はご法度だ」
魔王「それは慣習でも常識であり、こないだの魔界統一の折にも、魔王会議で採択された条約でもある」
魔王「だが、俺は唯一無二の人間の戦友であるお前を信頼している。普段ならこうして出張りはしない」
マスター「何……? 魔族は関係ないのか? ならば、まさか……」
魔王「ああ。俺は今日、スイートルームの乗車券の譲渡を頼み込んでまで、この列車に乗り込んだ」
魔王「魔族が人間界で暴れたのも問題だが、事は青鬼族どころじゃない。……心して聞け――――」
魔王「今回の列車ハイジャック事件。天界が関わっている」
マスター「……!!」
146: 2017/12/25(月) 18:09:37.60 ID:+u7TU514o
マスター「天界、だと? どこでソレを知った? なぜ、あの天界がこの列車に関わる?」
魔王「天界の動きを知ったのは、つい今朝だ。天界から何者かがこの列車に降り立ったと連絡が入った」
魔王「そして、天界がこの列車に関わるならば……。理由は、おそらくは。わかるだろう?」
マスター「……ああ。目的は魔族と同じ、か。だが、動機は違う。天界はそのホンシツを知っている」
魔王「―――古き人間と魔族の約定。大戦を終わらせた、大術士たちの、“最強の兵器”」
マスター「この列車の動力源である、その封印が解かれれば……。文字通り、太陽のフタが開く。か」
魔王「急務だ。俺は食堂車あたりに潜伏し、天界の使者をあぶり出す。そして、可能であれば、止める」
マスター「ああ。最悪の事態だけは、避けねばならん……。だが魔王、侮るなよ。天界は、強い」
147: 2017/12/25(月) 18:10:03.64 ID:+u7TU514o
――6号車【食堂車】
魔王(の、ハズが……)
料理長「ステーキ二つ、あがり! バイトくん、コレ持ってってー!」
魔王「あ、ハイ! わっかりましたー……」
ゴトッ
魔王「うわっ! しまった、転げ――――」
ウェイター「おっと! 大丈夫か、バイトくん? 気をつけろよ」ポスッ
ウェイトレス「気をつけろよー」
148: 2017/12/25(月) 18:10:35.04 ID:+u7TU514o
魔王「あ……、ハイ。ありがとうございます」
魔王(食堂車で、ディナータイム中の乗客たちを見張っていたところ)
魔王(なぜか列車のアルバイトと勘違いされ、給仕の手伝いをさせられている)
魔王(ど、どういうコトだ? 時給はちゃんと出るらしいからいいんだが……)
魔王(って、そうじゃない。俺の本来の目的を忘れるな……)
魔王(今もここで食事をしているかもしれない、天界の何者かを見つけ出さないと。あとついでに魔族も)
乗客B「ちょっと、そこのバイトさん。お水ちょうだい」
魔王「あっ、はーい! 今すぐにー!」
149: 2017/12/25(月) 18:11:04.42 ID:+u7TU514o
――1号車【展望車・前】
副運転士「……これで、今回の爆発に関わったヒトたちは全員ですか?」
車掌「そういうコトになりますね」
教授「騒ぎを起こした張本人たちは、誰もいないけどね」
執事「犯人の方々に自首していただければ、事件は解決なのですが」
剣使い「いや待て、それは困る。あの魔族とは再戦の約束をしたからな」
弓使い「再戦の約束とかしたんだ? アツいね、男の友情だね」
銃使い「…………」ボリボリ
150: 2017/12/25(月) 18:11:31.96 ID:+u7TU514o
運転士長「……ただし、ハイジャックを宣言した赤色仮面を目撃した場に、車掌と共にいた」
運転士長「ウェイターとウェイトレスは、現在、食堂車でディナータイムの給仕に回っている」
運転士長「7号車のマスターや、8号車のフロント担当もまた、そのまま持ち場で後始末を任せている」
副運転士「あんな事件があっても、運行を続けられるだけマシ、って感じでしょうか……。はぁ」
剣使い「さて、さっそく例のハイジャック犯の対策会議といこうか」
教授「『運命は絶対ではない』、だっけ? じゃあハイジャック犯全員潰せばいいんじゃない?」
車掌「そうは言ってもですね。私どもとしては、あまり事を荒立てたくはなく……」
副運転士「ちょ、ちょっと! 勝手に喋り出さないでください!!」
151: 2017/12/25(月) 18:12:00.63 ID:+u7TU514o
副運転士「ま、まずは。事件のあらましを再確認したいのですが……」
剣使い「む、そうだな。悪い、副運転士の嬢ちゃん」
剣使い「……と言っても、事態は単純明快だ」
剣使い「俺たち五人がラウンジに集まってたところ、突然ハイジャック犯たちが現れた」
剣使い「ハイジャック犯たちは三組。キノコ頭の一団、警察を名乗る革ジャン、そして青い体の魔族」
剣使い「それぞれき○こ派、たけ○こ派、アル○ォート派とかいうのを名乗ってやがる」
剣使い「また、後ろの二組の目的が何かは不明だが、少なくとも平和的じゃないのは確かだ」
剣使い「そして。最初の、き○こ派の目的は……。教授の嬢ちゃん?」
教授「ええ。私が明日オーサカで発表する予定の、“最強の兵器(仮)”。それがき○こ派の狙い」
152: 2017/12/25(月) 18:12:26.09 ID:+u7TU514o
副運転士「さ、“最強の兵器”? それはいったい……」
教授「“最強の兵器(仮)”。カッコカリ、を忘れないで」
副運転士「は、ハイ。でも、なんでカッコカリ……?」
教授「……完成どころかアイデアすら浮かんでいないからだけど」イラッ
副運転士「え。あ、なんかゴメンナサイ……」
執事「“最強の兵器(仮)”とは、お嬢様が、き○こたけ○こ戦争での、たけ○こ派に開発を依頼された」
執事「き○こたけ○こ戦争を終わらせるための、文字通りの“最強の兵器(仮)”です」
副運転士「そ、それは、具体的にはどういうシロモノなんですか……? スゴい爆弾とか?」
教授「それすらも何も決まってない。だからカッコカリなの。プライドが傷つくから、これ以上言わせないで」
153: 2017/12/25(月) 18:12:53.37 ID:+u7TU514o
剣使い「だが、実際に“最強の兵器(仮)”が何なのか、実際に存在するのか。そんなのは関係ねぇ」
剣使い「き○こ派の連中は、教授の嬢ちゃんが“最強の兵器(仮)”を既に持っていると」
剣使い「完全に思い込んで、そのうえで襲ってきやがる」
車掌「なるほど。であれば、もし仮に、我々が“最強の兵器(仮)”など無いと主張しても……」
弓使い「そんなの狂言だと判断されて、攻撃してくるだろうなー」
執事「あいにく、“最強の兵器(仮)”が存在しないというコトを、証明する手段もありませんしね」
運転士長「無いを証明するのは不可能に近い。悪魔の証明というやつだ」
教授「その悪魔ですら今回の事件に関わってるんだから、ふざけてるよね」
銃使い「…………」ガシュガシュ
154: 2017/12/25(月) 18:13:20.80 ID:+u7TU514o
副運転士「ええと、つまり。その、き○こ派のヒトたちが、この列車をハイジャックするのは」
副運転士「教授さんの“最強の兵器(仮)”が目的で。だけど、“最強の兵器(仮)”は存在しない……」
教授「そう。もし本当に存在するなら、思いついた瞬間くれてやる」
執事「しかし、き○こたけ○こ戦争を終わらせるって、実際にどう使うんでしょう?」
教授「だからソレが思いつけば苦労しないって何度も何度もさっきから言ってるでしょう!!」
副運転士「な、なるほど……。では、もしき○こ派のヒトたちが襲ってきた場合、対処は……?」
剣使い「戦って倒すしかねぇだろ」パシッ
弓使い「き○こ派の奴らは、一人一人はそんなに強くなさそうだしね」
副運転士「で、ですよねー」
155: 2017/12/25(月) 18:13:47.88 ID:+u7TU514o
副運転士「て、ていうか……。何なんですか? その……」
副運転士「き○こ派とか、たけ○こ派とか、アル○ォートっていうのは」
剣使い「なんだ嬢ちゃん、わからねぇで聞いてたのか?」
車掌「ほら。お菓子にあるでしょう? き○この山と、たけ○この里。車内販売にも在庫がありますね」
弓使い「でもさ、き○この山が好きなき○こ派と、たけ○この里が好きなたけ○こ派の対立って」
弓使い「けっこう根深いモノなんだよねー」
銃使い「どっちもおいしいと思う」
弓使い「うん。世間的には、この娘の言ってるコトが普通だと思う」
運転士長「だが、二派のうちの一部が暴徒化。それが、き○こたけ○こ戦争、というワケか……」
156: 2017/12/25(月) 18:14:14.32 ID:+u7TU514o
副運転士「そういえば。白ドレスのお姉さんも、何か言ってたような……」
執事「しかも、その戦争に何故かアル○ォート派までもが参戦している。まったく混迷した事態です」
教授「アル○ォートって会社違うよね? 一線超えちゃってるじゃん」
運転士長「ともかく。動機はどうあれ、き○こ派と、たけ○こ派と、アル○ォート派の三組は」
運転士長「それぞれが、この列車のハイジャックを宣言している……。そういう状況だな?」
車掌「はい。まさにこの列車は、今やチョコ菓子界の三国志、というワケです」
剣使い「三国志って、アレだっけ? リュービと……」
銃使い「ソーソーと」
弓使い「ホクサイ……、だっけね」
157: 2017/12/25(月) 18:14:41.66 ID:+u7TU514o
副運転士「ワケがわからない……。あ、そういえば車掌さん」
車掌「はい? どうかしましたか」
副運転士「貴方が目撃したという、赤色仮面とは、いったい……?」
車掌「ああ、そのコトですね……。実は、わかっているコトのほうが少ないのです」
車掌「奴は、ラウンジでの爆発の直後、突如として13号車に現れました」
車掌「出で立ちは、赤を基調としたポリマースーツと、仮面。はっきり言って変質者です」
車掌「そして、正義の味方を名乗り、この列車のハイジャックを宣言しました」
車掌「その後、縄で縛ったのですが、すぐに脱走……。事実だけを列挙すれば、こうなります」
副運転士「ううう。もっとワケがわかりませんね。手がかりが少なすぎるので、一旦保留で」
158: 2017/12/25(月) 18:15:08.75 ID:+u7TU514o
剣使い「あとは、嬢ちゃんの言ってた白ドレスの女、ってやつだな」
副運転士「……はい。彼女は午後4時ごろ、爆発が起こる前の時間、運転室に現れました」
副運転士「初めは何事かと思ったのですが……」
副運転士「会話するうちに彼女は、ラウンジでの爆発を、それが起こる前にピタリと言い当てたのです」
弓使い「なにそれ、未来人か何か?」
執事「摩訶不思議な現象が立て続けに起きていますから、もう未来人くらいじゃ驚きませんよ」
教授「そして言い残したコトバが、『運命は絶対ではない』……」
銃使い「『それを為せるのは、その時間に生きる、意志ある者たちだけ』……」
運転士長「私も車掌と電話をしながらだが、それは聞いた。本人も言っていたが、まるで予言者だな」
159: 2017/12/25(月) 18:15:36.39 ID:+u7TU514o
副運転士「他にもいろいろ言ってたんですけど、抽象的なコトばかりで、よくわかりませんでした」
副運転士「だけど、まとめると、この列車は爆発するけど頑張れば何とかなる、って感じです」
副運転士「それに私には、彼女の言っているコトが本当の出来事のように思えました。……おそらく」
教授「うえぇ。本当に抽象的だなあ。論理的じゃない。まあ、信じるしかないけど」
運転士長「……さて、現状のまとめはこんなところか。事件の原因である悪漢を止める必要がある、と」
車掌「ええ。次は、キノコ頭、革ジャン、魔族への対抗策を考えないと――――」
バンッ
革ジャン「おい!!!」
160: 2017/12/25(月) 18:16:07.42 ID:+u7TU514o
弓使い「ッ!?」バッ
銃使い「――――」チャッ
運転士長「…………」スッ
執事「貴様、ラウンジの、たけ○こ派の革ジャン!!」
車掌「何、コイツが……!?」
剣使い「ハナシが早くなったじゃねぇか。コイツを袋叩きにすれば、問題は一つ解決だ」
革ジャン「は? お前ら、何を言って――――」ドカッ!!!
革ジャン「ヌゴッ!!!」バタッ
161: 2017/12/25(月) 18:16:35.12 ID:+u7TU514o
副運転士「……? 突然倒れた!?」
黒コート「『は? お前ら、何を言って――――』……、じゃないだろ」
黒コート「まずはスミマセンだろうが!!」ドカッ!!!
革ジャン「ぐえっ!! ごぼっ!!」
教授「え……? いったい、何を……」
革ジャン「えー……と。このたびは、御列車のラウンジで暴れてしまって……」
革ジャン「本当に申し訳ありませんでした」ガバッ
黒コート「私からもスミマセン。私の監督不行き届きです」ガバッ
162: 2017/12/25(月) 18:17:01.69 ID:+u7TU514o
副運転士「な、なんだかわからないですけど、頭を上げてください!!」
革ジャン「そうだな。ずっと下げてるのも性に合わねえし、上げよう」ガバッ
黒コート「お前は一生頭下げてろ。むしろ地中に埋まってろ」ギリギリギリ
革ジャン「アイタタタ痛い痛い痛いギブギブギブ」バンバンバン
剣使い「……どうやら、実は敵じゃなかった、ってコトでいいのか?」
弓使い「あの暴れっぷりはあの中でいちばんヤバいと思ったんだけどなー」
運転士長「……すまない、黒コートの方。貴女はハナシが通じそうだ」
運転士長「良ければ、素性を教えてもらえるか?」
163: 2017/12/25(月) 18:17:28.48 ID:+u7TU514o
黒コート「貴方がこの列車の責任者でしょうか? このたびは、連れが本当に失礼をしました」
黒コート「私ども……。こういう者です」カパッ
副運転士「……え? なになに……」
教授「時空環境整備課、所属……。つまり、どういうコト?」
黒コート「……そうですね。誤解なきよう、端的に申し上げるならば」
黒コート「未来のタイムパトロール、といったところでしょうか」
銃使い「タイムパトロール!!」
執事「本当に未来人来ちゃいましたよ」
164: 2017/12/25(月) 18:18:02.80 ID:+u7TU514o
運転士長「じ、時空警察……。そりゃまた、突飛な登場人物が現れたな」
車掌「しかし現状、もはや未来人が現れてもおかしくない、といった状況になっていたところ」
黒コート「ええ。どんな状況ですか……」
副運転士「あ、あの。どうして未来のタイムパトロールさんが、この列車に?」
黒コート「……実は、私たちが追っている、とある時空指名手配犯が、この列車に乗り込んだのです」
黒コート「何をしでかすかわかりませんから、いちおう特徴を伝えると……」
黒コート「仮面の男です」
車掌「そいつ会いましたよ!?」
165: 2017/12/25(月) 18:18:28.94 ID:+u7TU514o
黒コート「ま、マジですか!? どこで!?」
車掌「この列車の最後尾、13号車で。一度は捕まえたのですが、逃げられてしまい……」
黒コート「……そうですか。しかし、この列車にいるという情報は本当だったか」
黒コート「もう少し、外見の情報を詳しく教えていただけますか?」サッ
車掌「ええと、背丈や体格は、普通の大人の男といった感じでしょうか」
車掌「全体的に赤色で、ポリマースーツを着て、仮面を被っていました」
車掌「あ、ポリマースーツって未来にもありますか? 全身を覆う、光沢がすごい硬質の素材です」
黒コート「完全に変質者ですね。よくわかりました。ご協力感謝します」カキカキ
革ジャン「そんなヤバい見た目なのに今まで見つからなかったのかよ……」
166: 2017/12/25(月) 18:18:55.56 ID:+u7TU514o
黒コート「……それでは、今度はコチラからお聞きしたい」
黒コート「先刻、ラウンジでは、いったい何があったのですか?」
黒コート「コイツに訊いても、電波妨害がどうだの、まったく要領を得ず……」
黒コート「乗員の方ならご存知かと、恥を忍んで参った次第です。コイツが電波だろってハナシですよね」
革ジャン「おい! サラっと何、侮辱して……」
革ジャン「ぐぁッ!!」ゴスッ!!!
運転士長「……そうですね。端的に言えば、き○ことたけ○ことアル○ォートの三つ巴です」
黒コート「はぁ?」
運転士長「詳細に申せば、これこれこういうコトでして」
167: 2017/12/25(月) 18:19:33.35 ID:+u7TU514o
黒コート「なるほど。事情はおおむね理解しました」
黒コート「つまり、き○こ派と、たけ○こ派と、アル○ォート派の三つ巴であると」
運転士長「そういうコトです」
副運転士「理解、早っ……。私でも2時間はかかったのに」
黒コート「ですが、たけ○こ派ってコイツのコトですし。問題は、残りの二組だけでは?」
車掌「……たしかに。これで問題は一つ解決した、と考えても良いのでしょうか」
黒コート「ええ、そう考えてもらって構いません。つぎ暴れたら私がコイツの脳天ぶちぬきます」
黒コート「わかったか、革ジャン野郎。列車降りるまで、たけ○こがどうとか一切口にするなよ」
革ジャン「はいはい。たけ○こは悪。たけ○こは春までお預け、っと」
168: 2017/12/25(月) 18:19:59.39 ID:+u7TU514o
黒コート「しかし、私どもの追う仮面の男は、三つ巴には関わっていないようだ……」
黒コート「事件の解決に協力したいのは山々ですが、私どもにも任務があります」
黒コート「キノコ頭や魔族を見たらなるべく倒しますので、そちらも仮面の男を見つけたらご連絡を」
黒コート「もし仮面の男の身柄を確保できた場合は、貴方がたに全面協力させていただきます」
運転士長「わかりました。私どもも、未来の方々にすべてを押し付けるのは忍びない」
黒コート「では、現状はいちおうの協力、というコトで。私たちは次は2~5号車の客室を調べてみます」
黒コート「おらっ、行くぞ」グイ
革ジャン「痛い痛いお気にの革ジャン引っ張るなちぎれるちぎれる!」ズズズッ
副運転士「お、お勤めお疲れ様ですー……」
169: 2017/12/25(月) 18:20:25.62 ID:+u7TU514o
バタン
副運転士「……大変なコトになってきましたね」
運転士長「ああ、大変だ。まさか、本当に未来人が現れるとは……」
車掌「ですが、元たけ○こ派と協力関係を結べた。これは一歩前進では?」
剣使い「たしかに。あとは、き○こ派とアル○ォート派だな」
弓使い「だけど、コッチは待つだけってのも、シャクだなあ。何かおびき寄せて叩く方法、ないかな?」
教授「必要なら、私がオトリになってもいいよ。雇い主としては、失格かもだけど」
執事「お嬢様。それ、俺が犠牲になる案ではありませんでしたか」
銃使い「…………」
170: 2017/12/25(月) 18:21:23.27 ID:+u7TU514o
運転士長「……一ついいか?」
副運転士「はい。なんですか? 士長」
運転士長「たしか、アル○ォート派というのは、魔族の一派なのだったな?」
剣使い「ああ。俺がじかに戦ったから間違いない。あの風貌、パワーは、間違いなく魔族だ」
運転士長「……そうか。もしそうであれば、アル○ォート派の狙いがわかるかもしれない」
副運転士「ほ、本当ですかっ!?」
車掌「……もしや、12号車に搭載している動力部、ですか?」
運転士長「そうだ。過去に何度も魔族がこの列車を襲撃に来たが、みな一様に動力源を探した」
171: 2017/12/25(月) 18:21:49.11 ID:+u7TU514o
副運転士「こ、この列車、何度も魔族に襲撃されているんですか!?」
運転士長「だから言ったろう。窓枠の弾痕も、天井の刀傷も、すべてホンモノだ」
車掌「私も最初に赴任した時は驚きましたよ。でも、おかげで強くなれました」
副運転士「そんなボディビルディングみたいな」
教授「ふーん。でも、なんで魔族が動力源を狙うの?」
運転士長「それは、この列車の動力源が、強力な魔力塊でもあるからだ」
運転士長「実はドライ・ブラー号は、魔力で動いている……。ゆえに停車もせず本州を縦断できる」
副運転士「し、知らなかった……」
運転士長「そして魔力塊のコトは魔界に広く知られているようでな。年一くらいで撃退するのだよ」
172: 2017/12/25(月) 18:22:45.14 ID:+u7TU514o
車掌「そういえば貴女は今年度からの着任でしたね。最後に魔族と戦ったのは、前年度末の春か……」
車掌「あの時は、桜が舞う空を闇で覆い尽くすほどの氏神族に襲われて、もうダメかと思いましたよ」
運転士長「ああ。だが、あわやというところで、ラウンジのマスターが敵の首魁を倒し……」
運転士長「ザコどもをちぎっては投げ。料理長、フロント、ウェイター、ウェイトレスたちもよく戦ってくれた」
副運転士「み、みんな武闘派だったんですか……。異次元に来てしまったようです」
執事「やっぱりマスターさんが最強だったんですね。良かった。あれ以上がいなくて」
弓使い「……ちょっと待って。ハナシを戻すけどさ。なら」
剣使い「動力源の前で張ってりゃ、魔族はいずれ現れる、ってコトだな!?」パシッ
銃使い「…………」ボリボリ
173: 2017/12/25(月) 18:23:11.60 ID:+u7TU514o
運転士長「そういうコトになるな。普段から厳重に施錠しているから、そうカンタンには奪われないと思うが」
車掌「善は急げ、ですね。では、お三方は12号車を守る、というコトでいいですか?」
剣使い「おうとも!」
弓使い「教授も私たちと一緒に来るー?」
教授「いや、やめておく。魔族に加えてキノコ頭たちまで相手にしたら、さすがに不利でしょう」
執事「お嬢様は俺が守るので、ご安心を。ですが、いざという時は、助力をお願いします」
銃使い「任せて」コク
車掌「では、言ってまいります。皆さんも、お気を付けて」
副運転士「車掌さんたちも頑張ってくださーい!」
174: 2017/12/25(月) 18:23:38.20 ID:+u7TU514o
バタン
教授「……ここも静かになってきたね」
運転士長「ああ。残っているのは、四人か……」
執事「さすがに出来るコトが限られますね。何をしましょうか?」
副運転士「うーん、私は戦えないしなあ……」
教授「ていうかお菓子が元でここまで争えるってどういう状況なんだろうね」
執事「それこの事件に関わってるヒトのほぼ全員が一度は思ったコトでしょうね」
運転士長「しかし、そのホンシツがわからなければ、“最強の兵器(仮)”とやらは完成しないのでは?」
教授「む。痛いところを突かれた」
175: 2017/12/25(月) 18:24:04.07 ID:+u7TU514o
教授「ホンシツ……、ホンシツかぁ~……」
教授「いったい何故ヒトはお菓子が原因で争うのか……」
教授「き○この山や、アル○ォートが何をしたというのか……」
副運転士「そうですよねえ……」
執事「何もしてないハズなんですけどねえ」
運転士長「本来、食間に食べるためだけのお菓子だからな」
副運転士「…………」
副運転士「あっ、そうだ!!」スクッ
運転士長「……? どうしたんだ?」
176: 2017/12/25(月) 18:24:58.63 ID:+u7TU514o
副運転士「そうですよ、士長!」
副運転士「お菓子は本来、おやつの時間に食べて幸せになるためだけの食べ物なんです!」
運転士長「お、おお。そうだな」
副運転士「だから、夕食が終わった食堂車のヒトたちに、お菓子を配ってあげましょう!!」
副運転士「そしたら、それを見た、き○こ派のヒトたちや、アル○ォート派のヒトたちも……」
副運転士「お菓子の本来の役割を思い出して、改心してくれるかもしれませんよ!?」
執事「は、はぁ……」
教授「そんなムチャな。非現実的だ」
運転士長「まあ、車内販売や、引き揚げたロビーの商品には、お菓子もある。やってみるか」
177: 2017/12/25(月) 18:25:24.57 ID:+u7TU514o
――6号車【食堂車】
副運転士「はい、どーぞ! き○この山です!」カタッ
乗客A「あ、ありがとう」
執事「列車からのサービスです。たけ○この里です」サッ
乗客B「おや、ありがとう。君、イケメンね」
教授「アル○ォートだよ。良かったら食べるといい」ポスッ
乗客C「おねえちゃん、ありがとう!」
教授「……どういたしまして」
178: 2017/12/25(月) 18:26:05.63 ID:+u7TU514o
料理長「……あの、士長。いったい何をしているんですか?」
運転士長「う、うむ……。実は、今回の騒動の原因は、き○こたけ○こ戦争でな」
運転士長「だが、だからこそ、お菓子のホンシツを思い出そう、というワケらしい」
魔王(ど、どういうコトなんだ……?)
料理長「なるほど。たしかに、食べ物はヒトを笑顔にしますからね。彼女も目の付け所が良い」
魔王(どういうコトなんだ……)
副運転士「はい、どーぞ! たけ○この里です!」カタッ
仮面の男「ありがとう。とても麗しい女性」ニコ
179: 2017/12/25(月) 18:26:32.78 ID:+u7TU514o
副運転士「……?」
副運転士(仮面被ってて表情がわからないな……)
仮面の男「ん……?」ピクッ
教授「さて、私の分は配り終わったかな……」
仮面の男「―――君!!」ダッ
教授「え? な、何!?」
仮面の男「とても、とても、とても麗しい女性……。僕は君に一目惚れだ。良ければ名前を教えてほしい」
教授「は? ……な、名乗るほどの者じゃない。だが、それでも呼びたければ教授、と呼ぶと良い」
180: 2017/12/25(月) 18:26:59.22 ID:+u7TU514o
仮面の男「わかった! それでも呼びたければ教授さん! 僕は君に一目惚れだ!!」
仮面の男「僕は君と時空の彼方まで飛んで行きたい……」
仮面の男「それでも呼びたければ教授さん! 僕と結婚してください!!」
教授「お断りします。それと、それでも呼びたければ、は余計」
仮面の男「ガーン!!!」
副運転士「し、執事さん。教授さん、仮面のヒトに絡まれてますよ」
執事「はあ。まあ、彼女もこれから色んなヒトと出会うだろうから、あしらい方を覚えるのも修行ですよ」
執事「……それにしても、仮面か。まあ、赤色じゃないから別人かな」
副運転士「そういえば。最近は、仮面被るのが、はやってるんですかね」
181: 2017/12/25(月) 18:27:25.75 ID:+u7TU514o
――6号車【食堂車】 屋根の上
ヒーロー「あ、あれは……! 仮面の男!!」
小型メカ「さっき食堂車に歩いていったのは、見間違いじゃありませんでしたか。黒コートたちは何を……」
小型メカ「とはいえ、私たちには関係ないので、無視しても差し支えありませんが……」
ヒーロー「何を言っている! 言い寄られている女性が困っているだろう!」
ヒーロー「貴様、それでも正義の味方のハシクレか!?」
小型メカ「私は正義の味方になった覚えはないのですが」
ヒーロー「そうと決まれば、とーう!!」ブンッ
182: 2017/12/25(月) 18:28:18.66 ID:+u7TU514o
小型メカ「ちょっ―――、待っ――――」 「 7 i77
183: 2017/12/25(月) 18:28:45.03 ID:+u7TU514o
副運転士「えっ……!?」クルッ
執事「運転士さん、危ない!!」バッ
魔王(っ! 乗務員の女に窓ガラスの破片が……!)
魔王「―――間に合ええええええええええええ!!!!!!」ヴン
運転士長「……っ!? 貴様、魔族か!?」
運転士長「よせ! 常人に向かってそんなバカげた量の魔力を出すんじゃない!!」
魔王「うるせえ言ってる場合か!!」
魔王「うおおおおおおおおおおおおッ!!!」ヴヴヴヴヴン
184: 2017/12/25(月) 18:29:11.94 ID:+u7TU514o
教授「……!? 運転士さんの、周りの時間が……」
執事「止まっている!?」
仮面の男「これが魔族の芸当か……!」
魔王「長くは保たんそこの兄ちゃん女を引っ張れええええええ!!!」
執事「え? あ、ハイ運転士さん、引っ張りますよぉぉぉっ!!!」
副運転士「え―――――、一―――――体――――――」
グッ!!!
執事「うおおおおおおおおおおおおッ!!!」
185: 2017/12/25(月) 18:29:45.71 ID:+u7TU514o
魔王「もう無理!!!」パッ
ガッシャァァァァァァン!!!!!!
執事「うあッ!」ドタッ
副運転士「っ――――」バタッ
教授「バカ執事!! 大丈夫!?」
執事「え、ええ……。なんとか」グッ
運転士長「おい! 大丈夫かね!?」
副運転士「――――」
186: 2017/12/25(月) 18:30:11.70 ID:+u7TU514o
ヒーロー「やいやいやいそこの仮面の男ォォ!! 貴様、嫌がる女性に言い寄っていたな!?」ビシィィ
仮面の男「何のコトかな……。嫌がる女性に言い寄る、とは」
仮面の男「既に私と彼女は婚約済み。なのに嫌がるとは、どういうコトか」
ヒーロー「飛躍しすぎだろオイぃぃぃ!!? どう見たってガーンってジェスチャーしてたろうが!!」
仮面の男「それは目の錯覚、というモノ……。ああ君、それともアレかな」
仮面の男「その鬱陶しそうな仮面をつけているから、目の前の物事が見えていないのでは?」
ヒーロー「仮面ならお前だってつけてるだろうがァァ!!!」
仮面の男「男は、誰だって……。ココロに仮面をつけているのサ」
187: 2017/12/25(月) 18:31:04.39 ID:+u7TU514o
――5号車【スイート】 屋根の上
ガシャーン
魔王「―――間に合ええええええええええええ!!!!!!」ヴン
ヴヴヴヴヴン
ガッシャァァァァァァン!!!!!!
桜色の女「お……? これは、モメゴトの気配!!」
桜色の女「今ならコッソリ厨房に忍び込んでもバレない!」
桜色の女「やはり果報は寝て待て! 今こそ好機でござる!」
188: 2017/12/25(月) 18:31:30.50 ID:+u7TU514o
――6号車【食堂車】
教授「へ。変O仮面と変O仮面が、言い争っている……」
執事「お嬢様、ああいう状況がお好きなのですか?」
教授「ンなワケないでしょう。それよりも、運転士さんの容態は……」
運転士長「……おい。こ、これは……」
魔王「ああ……、うん。うん。これは、これはとてもマズいコトになった」
副運転士「」
魔王「氏んでいる。完全に」
189: 2017/12/25(月) 18:31:59.48 ID:+u7TU514o
192: 2017/12/26(火) 04:22:22.47 ID:XYqJzit6o
楽しそうでとてもよい
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