193: 2017/12/26(火) 18:01:11.58 ID:S4IgpjZso
194: 2017/12/26(火) 18:02:15.49 ID:S4IgpjZso
195: 2017/12/26(火) 18:02:55.46 ID:S4IgpjZso
副運転士「う、薄暗い森? 私、なんでこんなところにいるんだろう?」
副運転士「さっきまで、たしか私、ドライ・ブラー号に乗ってたよね……」
副運転士「そう。食堂車の皆さんに、お菓子を配ってて……」
副運転士「教授さんが、仮面のヒトに絡まれてて……」
副運転士「そしたら、突然窓ガラスが爆発して……」
副運転士「…………」
副運転士「……え? どういうコト? 理解できない」
冥王「―――そら、無理もありまへんなぁ」ザッ
196: 2017/12/26(火) 18:03:23.31 ID:S4IgpjZso
副運転士「え!?」クルッ
冥王「おはようさん。よう眠れましたか?」
副運転士「え。私、寝てました?」
冥王「んー? いや、わても、いま見つけたばっかりやから知らんけど」
副運転士「そ、そうなんですか。ううん。仕事中なのに気が抜けてるなぁ、私……」
冥王「大丈夫でっか? 立てますか? お手をどうぞ」スッ
副運転士「……わぁっ、白い手。しかもイケメン」ギュッ
冥王「せやろか? ははは。たいしたことないですよ」グッ
197: 2017/12/26(火) 18:03:50.86 ID:S4IgpjZso
副運転士「あ、ありがとうございます。あの、お兄さんは、どちら様で……?」
冥王「わてですか?」
冥王「わては、この冥界をあずからせてもろてる、冥王の立場におるもんです」
副運転士「へえ。この冥界の、冥王さん……」
副運転士「……?」
冥王「ははは。ようわからん、いう顔ですなぁ」
冥王「他の氏神たちも、全然来おへんし。誰か来るまで、お話でもしますか?」
副運転士「え、ええ。ゼヒお願いします」
198: 2017/12/26(火) 18:04:20.77 ID:S4IgpjZso
冥王「うーん。いうても、どっから説明したもんか……」
副運転士「あ、あの。じゃあ、まず、ココはどこなんですか?」
冥王「ここ? ああ、その質問ならかんたんやな」
冥王「ここは冥界。体を離れた魂が訪れる、氏後の世界いうやつです」
副運転士「え。し、氏後の世界……?」
副運転士「じゃ、じゃあ私、氏んじゃったんですか!!?」
冥王「たぶん、そうなんやろなあ……」
副運転士「たぶんって!!」
199: 2017/12/26(火) 18:04:48.67 ID:S4IgpjZso
冥王「でも、なんもないのに氏なへんやろ。なんか心当たりあらへん?」
副運転士「こ、心当たり、ですか……」
副運転士「うーん。そういえば、さっき、目の前で窓ガラスが爆発したんですけど……」
冥王「ははあ。ガラスの破片の刺さりどころが悪ぅて氏んだ、いうわけか」
副運転士「いやいやいや! ガラス程度じゃ即氏したりしませんよ!!」
冥王「そうかなあ。生き物って、案外かんたんに氏ぬもんやで?」
冥王「せや、ほならクイズや。今の時分、特に年始の頃は日本人よう氏ぬんやけど、なんでやと思う?」
副運転士「え? 日本人限定ですか? なんだか不謹慎クイズですね……」
200: 2017/12/26(火) 18:05:15.14 ID:S4IgpjZso
副運転士「そうですねえ。寒くて氏ぬヒトが多い、とか?」
冥王「そんなん日本人どころか、人間でも他の生き物でも、地球の半分はせやろ」
冥王「冬眠したまま出てこおへん虫さんとか動物とか人間とか、ようおるで」
副運転士「う。生々しいコトを言わないでください……」
副運転士「うーん、難しいなあ。何かヒント、ありませんか?」
冥王「せやなあ。まあうまいけど、なんであんな危険なもん、よう噛まんと食うんかわからんわ」
副運転士「……あっ! もしかして、おモチですか!? お雑煮の!」
冥王「正解。正月は、モチ一気に食うてポックリ逝きよる年寄り多いから、注意したってな」
副運転士「は、はい。喋りながらだと、どうしても咀嚼がおろそかになるんですよね……」
201: 2017/12/26(火) 18:05:43.19 ID:S4IgpjZso
副運転士「……って、いったい何のクイズしてるんですか」
冥王「ははは。ほな、話続けよか」
冥王「ここは冥界。生き物の魂いうんは、生を終えたら氏後、天界にいくんやけど……」
冥王「冥界は、外界から天界に向かう時に通る、氏後の廊下みたいなもんやな」
副運転士「し、氏後の廊下……。それって、三途の川みたいなモノですか?」
冥王「ええ。ありますえ、三途の川。おおむね日本の人は皆、そう言わはりますな」
冥王「ちなみに三途の川の渡り賃は、六文銭やのうても、三百円くらいでええですよ?」
副運転士「意外とリーズナブルだ」
202: 2017/12/26(火) 18:06:10.15 ID:S4IgpjZso
冥王「でも最近は、舟渡すより、でかい橋通したほうがええんちゃうか、いう意見も出ててなぁ……」
冥王「船頭の仕事がなんや、公共事業や、利権やなんやで揉めてるんやわ」
副運転士「へえ。冥界も大変なんですね……」
冥王「さて。しかし、魂いうのは、全部が全部すなおに冥界には来てくれまへん」
冥王「でも来てくれな、わてらとしては困る。そこで、魂の運搬を任せてんのが……」
副運転士「……! もしかして、氏神、とか……?」
冥王「そう。魔界の氏神族。魂を運ぶ力を持った、特別な一族」
副運転士「や、やっぱり。さっきの前年度末の春のハナシ、本当だったんだ……」
冥王「やっぱ氏に関わるせいで、魔界でも忌まれますなぁ。彼らが悪いわけや、ないんですが」
203: 2017/12/26(火) 18:06:38.16 ID:S4IgpjZso
冥王「あれ、今の口ぶり……。氏神族のこと、知ったはるんですか?」
副運転士「え、ええ。直接関わった、ワケじゃないですが……」
副運転士「私の働いてる列車が、今年の春に、氏神の大群と戦ったらしいんです」
冥王「ははあ。すると、あんさんが……」
冥王「お嬢さん。本州縦断特急、ドライ・ブラー号の乗務員さんか?」
副運転士「え! 私たちの列車をご存知なんですか!?」
冥王「ええ、そらもう。懐かしいなあ。それが今回、冥王のわてが出張ってきた理由なもんでして」
冥王「―――今日の夜。乗員乗客が全員氏ぬ、ドライ・ブラー号の大量の魂をきちんと回収するために」
204: 2017/12/26(火) 18:07:05.20 ID:S4IgpjZso
――6号車【食堂車】
運転士長「……おい。こ、これは……」
魔王「ああ……、うん。うん。これは、これはとてもマズいコトになった」
副運転士「」
魔王「氏んでいる。完全に」
執事「運転士さん!! 大丈夫ですか!?」ダッ
教授「士長さん! 運転士さんのケガは? まあ、悪くても切り傷くらいだろうけど……」
魔王「すまない」
205: 2017/12/26(火) 18:07:32.18 ID:S4IgpjZso
魔王「氏んでいる。完全に」
教授「は……?」
執事「い、いや。ガラスの切り傷くらいで、ヒトはなかなか氏なないでしょう……」
執事「というか貴方は誰ですか? 給仕の方!!」
魔王「―――フ。よくぞ聞いてくれた!」バッ
執事「マント!? いったいどこから」
魔王「我こそは、あまねく魔性を統べる者。預かる座席は碧夕王。そう、わかりやすく言えば――――」
料理長「ああ、彼はうちの食堂車のバイトだよ」
206: 2017/12/26(火) 18:08:00.51 ID:S4IgpjZso
魔王「そう! わかりやすく言えば、この食堂車のバイト!!」
魔王「って違うから!! この食堂車でバイトしてるのは成り行きですから!」
料理長「え、違うの? そうだったのか……。まあ、ちゃんとシゴトしてくれれば問題ないよ」
魔王「それじゃあ結局バイトじゃないですかッ!!」
教授「え? え? いったいどういうコトなんだ……」
執事「わかりません。士長さん、貴方はどう思われ――――」
運転士長「ホンモノだ」
執事「えぇ!?」
207: 2017/12/26(火) 18:08:27.92 ID:S4IgpjZso
運転士長「……あまねく魔性を統べる者。誉れ高き、七魔公王がその一人」
運転士長「預かる座席は碧夕王。最も多くの魔族の長。……そうだな?」
運転士長「―――魔王よ」
教授「ま……!」
執事「ま、魔王!? そ、それはもしや、読んで字のごとく……」
運転士長「ああ。さっきも現れたという魔族、その王だ」
魔王「お、おお! やっとハナシのわかる奴が現れたな! そう、我こそは――――」
ウェイトレス「うわああああ!!!」
208: 2017/12/26(火) 18:08:54.85 ID:S4IgpjZso
魔王「ええもう今度は何!?」
料理長「ウェイトレスちゃん! どうした!?」
ウェイトレス「ど、どろぼー!!」
運転士長「ドロボウだと!?」
ウェイター「大変だ、料理長! 厨房に、料理を取りに戻ったら……」
ウェイター「料理が着物姿の女に全部食われちまってたんだ!!」
料理長「なんだって!?」
桜色の女「ふうー。さすがは豪華旅客列車の料理。今まで食べた中でも、なかなか美味でござった」シーハー
209: 2017/12/26(火) 18:09:21.51 ID:S4IgpjZso
ウェイター「あ、アイツだ!!」
料理長「なんだと!? 氏ね!」バッ
桜色の女「な!? どぅおっわったったったぁぁぁ!!!」サッ
ドズッ ヴウウ…ン
210: 2017/12/26(火) 18:09:48.67 ID:S4IgpjZso
料理長「ちっ。仕留め損ねたか……」
桜色の女「な、こ、こ、頃す気でござるか!? ていうか今どっからナイフ出したでござるか!」
桜色の女「……って、刃先にチーズがついてる。これ、料理包丁でござったか!!」
料理長「―――つまみ食い、氏すべし。食い逃げ、氏すべし。食後のシーハー、氏すべし……」
料理長「貴様は今、この料理長の三つの禁忌をすべて破った!! もはや生かしてはおけぬ!!」
料理長「ウェイターさん、ウェイトレスちゃん! 何としても、この女を殺せ!!」
料理長「なます切りにして明日のブレックファーストメニューにしてやる!!」
桜色の女「言ってるコトがシャレにならないでござるよぉぉぉ!!?」
211: 2017/12/26(火) 18:10:18.55 ID:S4IgpjZso
桜色の女「ひいぃぃ。くわばら、くわばら。こんな危険地帯からは、さっさと退散するでござる……」
ガチャッ
桜色の女「ぬゴッ!!」ゴツン
桜色の女「な、いったい、な……。今度は、ひとりでに扉が開いて……」
革ジャン「あー、くそ。2~5号車はカラブリだったな……」
革ジャン「全客室で聞き込みしたが、怪しい乗客は、部屋で白い粉吸ってた白ドレスの女くらいで……」
黒コート「あ、ああ。だが彼女の身元に、不審な部分は無い。どこからどう見ても普通の乗客だった」
革ジャン「やれやれ。仕方ない、俺たちも食堂車で腹ごしらえを……。ん?」
212: 2017/12/26(火) 18:10:48.13 ID:S4IgpjZso
ヒーロー「だいたいお前の仮面、アクシュミだよなぁぁ!! 鉄! ただの、鉄だし!!」
仮面の男「ふふふ……。この仮面は実は、僕専用の、オーダーメイド品なのだよ」
仮面の男「このツヤ、この感触……。わかるかい? たしかに素材は鉄だが、見た目ほど重くはない」
仮面の男「しかしなんだね君、その安っぽい、プラスチックの仮面は……」
仮面の男「まるで百均の仮面だ。あれかね君、百均ヒーローかね?」
ヒーロー「ああそうだ! この仮面は百均だ! 庶民の味方の百均は正義の味方だぁぁぁ!!」
革ジャン「あれは、俺たちが追っている指名手配犯の、仮面の男!!」
黒コート「―――が、二人!!?」
213: 2017/12/26(火) 18:11:16.35 ID:S4IgpjZso
黒コート「ほ、ホンモノはどっちだ……?」
黒コート「追っていると言っても、仮面の男という情報しか貰ってないからなぁ……」
黒コート「せめて鉄の仮面か、赤の仮面か、わかればいいんだが……」
黒コート「さっきの乗務員のハナシじゃ赤色だったってコトだし、赤いほうか?」
革ジャン「……センパイ。何を迷う必要がある?」ジャキ
黒コート「は?」
革ジャン「よく考えてみろよ。平和な国の、平和な時代の列車で、仮面なんて被ってるんだぜ……」
革ジャン「どっちも不審者に決まってるだろうがああああああ!!!」ダッ
214: 2017/12/26(火) 18:11:46.19 ID:S4IgpjZso
黒コート「待てコラ革ジャン!!!」バン!!!
革ジャン「ぎゃあ!!!」ドサッ
革ジャン「な、何しやがるんだテメエ! 鉢金巻いてなきゃ即氏だったぞ!?」
黒コート「さっき1号車で言ったハズだ。つぎ暴れたら私がお前の脳天をぶち抜くと……」
黒コート「まさかさっきの約束、もう忘れたってほど鳥頭じゃないよなぁ……?」グリグリ
革ジャン「熱い熱い銃口でグリグリしないでヤケドする」ジュウウウウ
運転士長「タ、タイムパトロールの方!?」ダッ
黒コート「おや、この列車の責任者の方。さきほどぶりです」
215: 2017/12/26(火) 18:12:13.45 ID:S4IgpjZso
運転士長「ど、どうしてココに……?」
黒コート「いや。さっきお話した通り、2~5号車の事情聴取が終わったのですが、カラブリで……」
黒コート「次は客室に戻るか、9~11号車の取り調べをするか、それともこの食堂車で夕食をとるか」
黒コート「相談していた結果、とりあえずココを通った、というワケです」
革ジャン「そんな相談一言もしてねえだろ……、完全に独断じゃねえか……」
ゴツン
革ジャン「あいたっっ!!」
運転士長「なるほど……。しかし、申し訳ない。食堂車は今、この有様で……」
黒コート「は?」
216: 2017/12/26(火) 18:12:43.30 ID:S4IgpjZso
仮面の男「百均だ、庶民だと、下品だな。仮面を被るなら、言動もミステリアスにすべきではないかね?」
ヒーロー「シャーーラップ! 仮面は正体を隠すためだけのモノ! 正体隠して弱きを助ける、ヒーロー!」
教授「し、氏んだとか、ウソでしょ!? 運転士さん!!」
魔王「すまない、本当のコトなんだ……。本当にすまない」
執事「なんとか彼女を助ける方法は無いんですか!?」
ウェイター「俺はアンタに恨みは無いが嬢ちゃん、年貢の納め時ってやつだ!!」ビュッ
桜色の女「モ、モップと箒とは思えない、その棒さばき! さてはおぬしら、ヒトカドの戦士でござるな!?」
ウェイトレス「ううん、ただの掃除屋だよ」シャッ
217: 2017/12/26(火) 18:13:26.02 ID:S4IgpjZso
黒コート「……こ、これは。ひどい」
革ジャン「昨日の状況以上だな。この列車、なんかヤバいモン憑いてんじゃねえかあ?」
運転士長「う、うむ。たしかに、厄ネタを積んでいるといえば、積んでいるが……」
料理長「ええい、チョコマカとっ!!」ババババッ
桜色の女「ぬおおおおっ!!!」キンキンキンキン
桜色の女「ふ、そこな、ふくよかな料理人……。拙者に刀を抜かせるとは、やるでござるな……」
運転士長「……肝心の料理長すら、この有様で」
黒コート「優雅に食事を、という状況には程遠いですね……」
218: 2017/12/26(火) 18:13:54.67 ID:S4IgpjZso
黒コート「良ければ、この状況を収めるのに、ご協力しましょうか?」
運転士長「本当ですか!?」
黒コート「ええ。運良く、私たちの目的である、仮面の男……」
仮面の男「はっ! 君がヒーローだというのなら、私はさしずめ、悪の怪人・鉄仮面卿かな!!」
ヒーロー「なんだとおぉぉぅ!? よし! そこになおれ! 俺が直々に正義の鉄槌を下す!!」
黒コート「……のどちらかも、あの中にまぎれているコトですし」
桜色の女「……? 鉄仮面卿!?」バッ
仮面の男「ふふふ、いいだろう。僕の左は……。スゴいぞ?」スッ
219: 2017/12/26(火) 18:14:22.68 ID:S4IgpjZso
桜色の女「ちょっ、ちょっ―――! 待った! 待ったー!!」
料理長「なんだ……?」
桜色の女「ご、誤解でござる。拙者は敵ではないでござる!」
桜色の女「そこのお姉さん!!」
黒コート「へ。私か……?」
桜色の女「そうでござる。もしや、あの仮面の男と敵対しているのでござるか?」
黒コート「あ、ああ。鉄のほうか、赤いほうか、イマイチ断言しかねるが」
桜色の女「なら、鉄のほうは、拙者に任せてほしいでござる」
220: 2017/12/26(火) 18:14:50.16 ID:S4IgpjZso
黒コート「何?」
桜色の女「だから、鉄仮面のほうは、拙者が仕留めるでござるよ。つまり、おぬしらの味方でござる」
桜色の女「なので料理を食べたコトは見逃してほしいでござる! この通り、カンベン!」
料理長「貴様、そんなコトで許されると思って……」
ウェイター「まあまあ、状況が状況だぜ。おやっさん。ここは休戦といこうや」
ウェイトレス「うん。正直戦うのめんどくさい」
革ジャン「ってコトは、俺の相手は、赤いほうか……。オーケー、だな?」
運転士長「うむ。各自良ければ、私に異存はない」
221: 2017/12/26(火) 18:15:16.89 ID:S4IgpjZso
魔王「彼女を助ける方法か……。まあ、あるにはあるが」
執事「それはいったい!?」
魔王「実は、世界には、生き物が氏んだ後に魂が行くコトになる、冥界って場所がある」
魔王「もう氏ぬべき人間、まだ氏ぬべきでない人間。それは、冥界で一括管理されている」
魔王「そして今の嬢ちゃんは、俺が魔力の浴びせすぎで頃してしまった、いわば事故だ」
魔王「加えて、冥界の王である冥王は、俺の知り合いだ」
魔王「だから、俺が冥王に頭を下げて、お願いすれば……」
執事「まだ氏ぬべきでない人間として、蘇生できるかもしれない!?」
教授「あ、頭が痛くなってきた……」
222: 2017/12/26(火) 18:15:43.78 ID:S4IgpjZso
魔王「そうだ。だが冥王はシゴト熱心だからな」
魔王「ウカウカしてると嬢ちゃんの魂も、彼岸に連れていかれるかもしれん」
魔王「そして天界に連れていかれれば、どうダダをこねても蘇生は不可能だ」
執事「そんな……!」
魔王「だから事は一刻を争う。一刻も早く、俺が行って、嬢ちゃんを連れ戻さないと」
教授「待って……。冥界には、どうすれば行くことが出来る?」
魔王「おい待て。まさかお前さんも行く、なんて言うんじゃ……?」
教授「……今回の事態は、私が遠因のようなモノ。彼女がこうなった、責任の一端は私にある」
魔王「……。最近の人間も、やっぱ捨てたモンじゃないな」
223: 2017/12/26(火) 18:16:10.81 ID:S4IgpjZso
魔王「だがダメだ。冥界は、氏神族が跋扈する、魔族の領域」
魔王「魔族である俺なら出入りも自由だが、人間だとそうはいかない」
魔王「……ここは堪えてくれ。嬢ちゃんの魂は、俺が責任を持って必ず取り戻す」
教授「……わかった。信じるよ、魔王」
魔王「それじゃ、よいしょっと……」ガタッ
執事「……? 壁にもたれかかる必要が、あるのですか?」
魔王「ああ。冥界へ行くには、外界に肉体を残して、魂だけを飛ばす必要があるから、な」
魔王「だが俺の肉体に何かあれば、外界へは戻ってこれない。俺が戻るまで、俺を守ってくれよ」
教授「ええ。ならば私も、貴方の頼みに責任を持つ」
224: 2017/12/26(火) 18:17:20.35 ID:S4IgpjZso
――冥界
副運転士「え! 私たちの列車をご存知なんですか!?」
冥王「ええ、そらもう。懐かしいなあ。それが今回、冥王のわてが出張ってきた理由なもんでして」
冥王「―――今日の夜。乗員乗客が全員氏ぬ、ドライ・ブラー号の大量の魂をきちんと回収するために」
副運転士「え……?」
副運転士「乗員乗客が、全員氏ぬ……」
副運転士「……って、どういうコトですか」キッ
225: 2017/12/26(火) 18:17:48.15 ID:S4IgpjZso
冥王「おや。目つきが変わりましたなぁ」
副運転士「……あのですね。冥界の冥王だか、なんだか知りませんが」
副運転士「いくらイケメンでも言っていいコトと悪いコトがありますよ……!!」グイッ
冥王「え、エリ首捕まんとってください。わてが頃してるわけやあらへんし」ググググ
副運転士「…………」
冥王「く、詳しくお話しします。やから、放してくれまへんか」ググググ
副運転士「っ……」パッ
冥王「ふ、ふう……。お嬢さん、見かけによらず、力ありますなぁ」
226: 2017/12/26(火) 18:19:08.69 ID:S4IgpjZso
副運転士「……もう一度、おうかがいします」
副運転士「今日の夜。ドライ・ブラー号の、乗員乗客が全員氏ぬ、ってどういうコトですか」
冥王「……。それなら、まずこれを見てくれまへんか――――」
氏神A「め、冥王さま~! 勝手に動き回らないでください!」
冥王「お。氏神はん、お疲れさんです。探してるの、この人ちゃいますか?」
氏神B「……! ド、ドライ・ブラー号の制服! マチガイない、この女性です!」
副運転士「え……? あの……」
氏神B「乗務員さん! その節は、本当に申し訳ございませんでした」ガバッ
227: 2017/12/26(火) 18:19:36.15 ID:S4IgpjZso
副運転士「え? あ、あの、何か知りませんけど、頭上げてください!」
副運転士「と、頭部はついてないみたいですけど」
氏神B「い、いや。そういうワケには……」
氏神B「覚えていらっしゃいませんか? その、ですね……」
氏神B「今年の春、ドライ・ブラー号にごメイワクをおかけした、氏神族の者なんですが……」
副運転士「……えっ、ああ! 今年の春の!?」
氏神B「そうです! 思い出していただけましたか!?」
氏神B「その節は、本当にごメイワクをおかけしました。申し訳ありません」
副運転士「いやいや、いいんですよ。それに私、その当時いた乗務員じゃありませんし」
228: 2017/12/26(火) 18:20:03.10 ID:S4IgpjZso
氏神B「そうなんですか? しかし、私たちが貴女のご同僚に、ごメイワクをおかけしたのも事実……」
氏神B「……それと。今回のコトは、本当に災難でした。お悔やみ申し上げます」
副運転士「……?」
氏神B「けれど、今年の春の罪滅ぼしというワケではありませんが……」
氏神B「ドライ・ブラー号の皆さんの氏後のお世話は、私たちが責任を持ちたいと思います」
氏神B「どうぞご安心ください」
副運転士「し、氏後の世話……。それに、今回のコト、とは」
冥王「お嬢さん、それですよ。わてが今から見せよう思たんは」スルルッ
229: 2017/12/26(火) 18:20:29.99 ID:S4IgpjZso
副運転士「え……? なんですか、この巻物は?」
冥王「そうですなあ。いわゆる、エンマ帳ってやつやろか。その複製品です」
副運転士「エンマ帳……! それって、これから亡くなる人物の名前が書かれているという……?」
冥王「そうです。それで、ここを見てくれまへんか。今日の部分です」
副運転士「……う、うそ。そ、んな…………」
副運転士「ド、ドライ・ブラー号のみんなの名前が、ビッシリ、と……」
冥王「わかってもらえましたか?」
冥王「何も悪気があって、乗員乗客が全員氏ぬとか言うてるんちゃいます」
冥王「単に、このエンマ帳に名前があるから、魂に取りこぼしが無いよう来ただけなんや」
230: 2017/12/26(火) 18:20:57.83 ID:S4IgpjZso
副運転士「そ、そうだったん、です、か……。…………」
副運転士「……ごめんなさい。冥王さん。さっきは、掴みかかっちゃって」
冥王「いやいや。ええんですよ。誰にでも、マチガイはあります」
冥王「でも、どうしてそこまで……?」
冥王「例えば、わてが冥界の役人ごと、天界の主神はんに消されることになったとしても……」
冥王「そんな主神はんに掴みかかるほど怒らへんと思うけどなあ」
副運転士「……私、今日列車が大変なコトになるって、知って。誓ったんです」
副運転士「この年末年始の運行を、絶対に成功させるんだって」
231: 2017/12/26(火) 18:21:25.00 ID:S4IgpjZso
冥王「え……?」
副運転士「どんな大変なコトがあっても、乗客の皆さんを守るって」
副運転士「そう決めてたんです」
副運転士「だから、ドライ・ブラー号のみんなや、乗客の皆さんが氏ぬ、なんて言われて……」
副運転士「つい、カっとなっちゃって」
副運転士「…………、…………」グス
副運転士「……でも、だったら、だからこそ!」
副運転士「やっぱり私は、こんなところで氏んでなんかいられません!!」
232: 2017/12/26(火) 18:21:53.46 ID:S4IgpjZso
副運転士「お願いです、冥王さん! 今すぐ、私を生き返らせてください!」
副運転士「私は今すぐドライ・ブラー号に戻って、みんなを助けなきゃいけないんです!」
冥王「わ、わがままやなあ、あんさん。ちゃんと大学出たはるか? いくつ?」
冥王「あのな。このエンマ帳に書かれた、天界の意思いうのは絶対や。わてらには変えられへん」
冥王「そしてわてはただの執行者。執行者が、自分の意思で、上の命令に背いたらいかんのや」
副運転士「うぐ……。わかります。シゴトではちゃんと命令に従わないとですよね」
副運転士「でも、そこをなんとか! これは、これだけは! 絶対に譲れないんです、私は!!」
冥王「おろろ……」
魔王「……お――――――い!」
233: 2017/12/26(火) 18:22:21.90 ID:S4IgpjZso
氏神A「……おや? どこからか、声が」
冥王「なんや聞きなじみのある声やなぁ」
魔王「お――――い! 誰かいないか~……」
冥王「ああ、やっぱり。おーい、こっちやで~」ノシ
魔王「お――……。お? お!! ……あー、やっと見つけたぜ!」
魔王「あんた、ドライ・ブラー号の乗務員の嬢ちゃんだな!?」
副運転士「え……?」
234: 2017/12/26(火) 18:22:50.56 ID:S4IgpjZso
冥王「おや、魔王はん。久しぶりですなあ。いや、今は碧夕王やったか?」
魔王「それはただの称号だ。お前こそ元気みたいだな、冥王」
冥王「ははは。みんな氏んどる世界で、元気にやらせてもろてます」
魔王「しっかしお前、久し振りに来たが冥界、相変わらずアクシュミだなあ……」
魔王「お前さ、こんな鬱蒼とした森じゃなくて、もっとキラキラしたネオンビルとかにしねえ?」
魔王「氏んだ魂もさ、氏んだうえに来たのがこんなトコじゃあ、そりゃあ萎えちまうってモンだぜ」
冥王「はあ。しかし木ィ切り倒すにしても、冥界環境保護団体がうるさぁてなあ……」
副運転士「え、あの……? あれ、ええと?」
235: 2017/12/26(火) 18:23:21.84 ID:S4IgpjZso
魔王「―――お。そうだ、お嬢ちゃん。俺の用は、お前だ」
魔王「帰るぜ、今すぐ。あんたの職場、ドライ・ブラー号に」
副運転士「え……!?」
冥王「ちょ、ちょっと。なに言うてはるんですか?」
冥王「魔王はん。いくらあんさんでも、それは困ります」
冥王「氏者の魂を如何するかは、冥界の領分。魔王の仕事とちゃいます」
魔王「ああ、それだけどな。その女の子、俺が間違って頃しちまったんだ」
魔王「つまり完全な事故ってワケ。過失事故。となれば本来、彼女はここで氏ぬ運命じゃない」
236: 2017/12/26(火) 18:23:54.76 ID:S4IgpjZso
魔王「なら、外界に戻っても、何の問題も無いだろう?」
冥王「ふむ……。魔族による、事故ですか。魔界との規定もある。せやったら、まあ……」
冥王「せやけど、それはそれで、また別の問題になるんちゃいますか?」
冥王「魔界の魔王、それも七魔公王が、魔界のルールを破って人間頃したとか……」
魔王「うぐっ! そ、ソーベリーウィーク……」
魔王「ま、ま。そこは俺とお前の仲ってコトで? ちゃちゃっと揉み消しといてくれよ」
冥王「はあ……。わかりました。なら、そのように手配しときます」
魔王「よっしゃ!!」
冥王「まったく。そんなコトで、部下の魔族に示しがつくんやろか……」
237: 2017/12/26(火) 18:24:27.76 ID:S4IgpjZso
副運転士「あ、あの……? 貴方は……」
魔王「ん、俺か? 俺は、たまたまドライ・ブラー号に乗り合わせた魔王の者だ」
魔王「良かったな、嬢ちゃん。また冥界から人間界に戻れるコトになったみたいだぞ」
副運転士「え……。ほ、本当ですかっ!?」
魔王「ああ。本当だ。魔王、ウソつかない」キラ
氏神A「あ、あの……! 七魔公王の、碧夕王さまですよね! サイン貰えますか!?」
魔王「ん? 氏神族のところの氏神か。俺の管轄じゃないが……。ああ。お前の着てるローブでいいか?」
氏神A「あ……! ありがとうございます! 一生タイセツにします!!」
238: 2017/12/26(火) 18:24:56.88 ID:S4IgpjZso
冥王「……はい、はい。今、このお嬢さんが外界に戻れるようにしといたで、魔王はん」
魔王「ありがとうよ、冥王。やっぱ持つべきモノは友だな」
冥王「せやけど、意味あるんやろか? お嬢さんも含めて、列車の乗員乗客は、今日皆氏ぬ運命やで」
魔王「何……?」
冥王「ほら。エンマ帳の、ここ見てみ。こんだけの人が氏ぬんやから、相当な事故や思うが……」
魔王「……本当だ。乗務員の嬢ちゃんはモチロン、教授の嬢ちゃんや、執事の兄ちゃんまで」
魔王「ちなみに、氏因はなんだ?」
冥王「氏因? ええと。―――なんやこれ? 火砕流に、土石流。火山弾、やと?」
239: 2017/12/26(火) 18:25:30.01 ID:S4IgpjZso
魔王「火砕流、土石流、火山弾!? や、やっぱり……」
冥王「ま、まさか。ドライ・ブラー号で、アレが目覚めるとでも……」
冥王「……ちょっと待て、魔王はん。今、『やっぱり』て言うたか? あんた、なんか心当たりあるんか!?」
魔王「俺の独自の調査だが。今回のドライ・ブラー号の事件には、天界が関わっている。十中八九」
冥王「……なるほど。そういうことか。ちょっと、お嬢さん。一つええですか?」
副運転士「え。あ、ハイ。なんですか……?」
冥王「さっきあんさん、『今日列車が大変なコトになるって、知って』……って、言いましたな」
冥王「―――それ。誰から聞いた情報や?」
240: 2017/12/26(火) 18:26:20.34 ID:S4IgpjZso
副運転士「え、ええと。言っても、信じてもらえるか、わからないんですけど……」
副運転士「夕方ごろ、運転室に突然現れた、白ドレスの女のヒトです」
魔王「……!!」
魔王「おい、嬢ちゃん! ソイツは何を言っていた? いったい何と名乗った!?」
副運転士「いや、名前は聞いてないんですけど。要約すると、この列車の運命は、私たち次第だ、と」
魔王「……白ドレス。白色。運命。なるほど。なるほどなあ」
冥王「なにやら、きな臭ぁなってきましたなぁ。このエンマ帳に、書かれていることも」パンッ
魔王「ああ。エンマ帳を発行しているのは、天界……。これはひと悶着、ありそうだぜ」
241: 2017/12/26(火) 18:26:50.70 ID:S4IgpjZso
魔王「おい、乗務員の嬢ちゃん! そうとなれば、急いで、列車に戻るぞ」
副運転士「えぇ? そりゃ、列車には戻りますけど……。どうして、急いで?」
魔王「俺たちのいない間に、悪さをされちゃあ困るからだ。そう、今回の黒幕――――」
魔王「―――“白の大天使”、にな」
副運転士「だ、大天使!? それはいったい……」
魔王「読んで字のごとく、だ。大天使。大いなる天の使い」
魔王「中でも白の大天使といやあ、神出鬼没、自由奔放、ハタ迷惑で有名だが……」
魔王「そのエンマ帳の、氏亡リスト。それも白の大天使が原因の可能性がある」
242: 2017/12/26(火) 18:27:19.22 ID:S4IgpjZso
副運転士「と、というコトは……!?」
魔王「ああ。エンマ帳の氏亡リストは天界の管理。つまり、白の大天使をとっちめれば……」
魔王「その氏亡リスト。無かったコトにだって、出来る」
副運転士「……!」
副運転士「よ、よくわかりませんけど。それはつまり……」
副運転士「ドライ・ブラー号のみんなや、乗客の皆さんを、助けるコトができるんですねっ!!?」
魔王「ああ。その通りだ」
冥王「やれやれ。知らんうちに、なんか大事になってきましたなぁ。しかし、なら、ついに……」
243: 2017/12/26(火) 18:27:50.23 ID:S4IgpjZso
魔王「というワケで、俺たちは外界に戻る!」
魔王「もしもエンマ帳の中身が書き換わった時の対応! それと、俺の不祥事の揉み消し!」
魔王「頼んだぜ! 冥王!!」
副運転士「あ、あの! 冥王さん、お世話になりました! また会いましょう!!」
冥王「はいはい。いや、あんまり会わへんほうがええと思うで……」
氏神A「……あの、冥王様。つまり、これはいったいどういう?」
冥王「うーん。まあ、このエンマ帳の中身も、運命も、絶対やない。いうことかなあ」
氏神B「はあ……?」
244: 2017/12/26(火) 18:28:17.65 ID:S4IgpjZso
――6号車【食堂車】
魔王「―――はっ!」パチクリ
執事「ま、魔王さん! お戻りですか!?」
魔王「あ、ああ……。なんとか。当初の目的は、達成できたみたいだ」
副運転士「う、うーん……。あれ、ここは?」パチッ
教授「う、運転士さん!! 良かった……」ギュッ
副運転士「きょ、教授さん!? く、くるしい。……って、あれ?」
245: 2017/12/26(火) 18:28:46.57 ID:S4IgpjZso
桜色の女「―――ふっ!」フォン
仮面の男「おっと危ない!」バッ
スパッ
仮面の男「ふう……。後ろのテーブルが音も立てずに真っ二つ、とは。腕を上げたね」
仮面の男「それよりも、君もこの列車に乗っていたんだね。春風の旅人よ」
桜色の女「ああ。元々は、この時代にメイワクをかけたという、貴様を誅するためだったが……」
桜色の女「今は、一人の剣客として。貴様の血が欲しい」スッ
仮面の男「僕を列車の者に売り渡す、か。それもいいだろう。僕たちの戦いは、行雲流水なれば……」スッ
246: 2017/12/26(火) 18:29:14.68 ID:S4IgpjZso
黒コート「革ジャン! そっちに行ったぞ!!」
革ジャン「くそがあ、チョコマカとっ!!」バンバンバン
ヒーロー「ふははははっ!! 当たるか当たるか、当たるモノかぁっ!!」ヒュンヒュンヒュン
革ジャン「てめえ! バク転しながら避けるとか、ナメてんのかああああ!!?」
ヒーロー「いやいやいや!! ナメてなどいない!! 単に君の弾道が非常に読みやすいだけだ!!」
黒コート「―――そうだな」フワッ
ヒーロー「え……?」クルッ
黒コート「お前の動きも、非常に読みやすい」
247: 2017/12/26(火) 18:29:41.38 ID:S4IgpjZso
乗客A「な、なんなんだね、これは。さっきから……」
乗客B「こんなイベント聞いてないけど!?」
乗客C「すごーい! たのしい!」
ウェイター「コチラ、当列車のサプライズイベントとなっております」
ウェイター「危ないので、白線の内側でご観覧ください」
ウェイトレス「ごかんらんくださーい」
副運転士「な、なんですかコレは……!? な、何がいったいどうなって」
運転士長「おや、気がついたか。いや、君が気を失う前後に色々あってね……」
副運転士「色々ってレベルですか!?」
248: 2017/12/26(火) 18:30:08.98 ID:S4IgpjZso
―――それは春風などという生易しいものではなかった。
桜色の女「―――。―――っ」
仮面の男「ふっ―――、ふっ! やはり君の剣筋、美しい! 客室に刀を置いてきた僕が恨めしい!!」
女の剣筋に一切の無駄はなかった。
一振り、一振りが、男の首を正確に狙う一撃。すんでのところで避けられた斬撃は、
取って返す刀で、再び男の首に追いすがる。その姿はまるで、獲物に食らいつく狼のように。
いや。狼と形容するならば、この刀の使い手こそが、この場で最もふさわしいだろう。
桜色の女の、普段の風来坊らしい、泰然自若とした余裕の姿は消え失せ。
ただ敵の赤い命の奔流を求める、かまいたちの如き飢狼だけが、そこにいた。
249: 2017/12/26(火) 18:30:36.84 ID:S4IgpjZso
―――突如としてそれは、赤い仮面の真後ろに現れた。
ポリマースーツは、けっして革ジャンの男の銃技をあなどっていたのではない。
単純に、革ジャンの男の銃弾は、彼にとってバク転が最も避けやすかったのだ。
正確ではないが、常人の反応速度をゆうに超えた速さで放たれる、早撃ち。
まともに目測で指の動きを読んでいたのでは、その瞬間に既に撃ち抜かれている。
ならば、それを上回る速さで回ればいいじゃないか。ヒーローはそう考えた。
だが、その合理的な考えが、正義の味方気取りの男の背後に、致命的な隙を与えた。
黒コート「時空整備課を……」
ヒーロー「――――あ」
黒コート「ナメるなァァッ!!!」
250: 2017/12/26(火) 18:31:07.56 ID:S4IgpjZso
黒コートの女は、ただの一般人である。
少し運動の才能に優れ、少し技術の努力を積み、少し踏んだ場数が人より多いだけの、
付け加えるならば少し未来からきただけの、ただの一般人である。
特別な能力など、何も持っていない。
魔族や一部の傭兵のように、魔法を使えるわけでもない。
ましてや、この日を待ちに待ったテ口リストのように、重火器があるわけでもない。
―――そう。彼女が持っているのは。
ヒーロー「ぶべらああああああああああああああああああ!!!!!!」
鍛え抜かれた筋肉。漆黒に覆われた、長い肢体から放たれる――――
一撃必殺の体術。赤い硬質な背中を撃ち抜いた、ただ一発の蹴撃であった。
251: 2017/12/26(火) 18:31:35.95 ID:S4IgpjZso
桜色の女「な―――? 赤いカタマリ……!?」
仮面の男「えっ? あの、ちょっ―――、待っ――――」
―――仮面の男は、完全に気を取られていた。
いや、彼の名誉のために言い替えるならば。
仮面の男は、完全に自分たちの戦いに酔いしれていた。
桜色の女との、幾度目かになる決闘。
彼と彼女の戦いは、必ず偶然によって起こる、戦いのためではない戦いだった。
だからこそ仮面の男は、その戦いの“意味の無さ”に、酔いしれていた。
そう、酔いしれていた。
酔いしれていたがゆえに、桜色の女は気付き、彼は気付かなかった。
とある黒い警察官が蹴り飛ばした、赤い塊が、自分たちの元に飛来していることに。
252: 2017/12/26(火) 18:32:02.98 ID:S4IgpjZso
小型メカ「まったく。さっきから、何をしているんですか? バタバタと……」フワフワ
小型メカ「いいですか? ヒーロー気取りのお兄さん」
小型メカ「貴方の目的は、私たちの同僚が追っている、鉄仮面の男ではなく――――」
ヒーロー&仮面の男「「ぶべらああああああああああああああああああ!!!!!!」」
253: 2017/12/26(火) 18:32:30.35 ID:S4IgpjZso
小型メカ「ええええええええええええええええええええええええ!!!!!?」
革ジャン「あ、オペ子ちゃんのメカじゃん。こんなとこで何やってんだ?」
254: 2017/12/26(火) 18:32:57.23 ID:S4IgpjZso
255: 2017/12/27(水) 00:41:24.09 ID:aOQkiWvX0
キャラ増えすぎて分からないからまとめてみた、ついでに目的も
白ドレス(女) :特級指名手配犯00046号、目的は「“見世物”の見物?、乗客たちが運命を変える?」事
店員 :サッポロ駅売店のただの店員
紳士(男) :白ドレスの追っかけ、目的は「任務を遂行する?」事
駅員 :紳士の喫煙を注意したただの駅員
車掌(男) :ドライ・ブラー号の車掌、過去に魔族の襲撃に遭うも撃退する
ウェイター(男) :食堂のウェイター、過去に魔族の襲撃に遭うも撃退する
ウェイトレス(女):食堂のウェイトレス、過去に魔族の襲撃に遭うも撃退する
副運転士(女) :ドライ・ブラー号の副運転士、一度氏んでいきかえった、目的は「乗客の方々に上質な列車の旅を提供する」事
運転士長(男) :ドライ・ブラー号の運転士長、過去に魔族の襲撃に遭うも撃退する、目的は「乗客の方々に上質な列車の旅を提供する」事
パイロット :キノコ頭とテ口リスト達を運んできた、ヘリで来た
キノコ頭(男) :テ口リスト達のリーダー、き○こ派、目的は「教授の持つ、“最強の兵器”を手に入れる」事
テ口リストABCD :キノコ頭の部下、き○こ派、
教授(女) :高校生で科学者、“最強の兵器”持つというが実は完成してない、冬休みの宿題に手を付けてない、目的は「オーサカで“最強の兵器”の発表会をする」事
執事(男) :教授の部下、目的は「教授を守る」事
白ドレス(女) :特級指名手配犯00046号、目的は「“見世物”の見物?、乗客たちが運命を変える?」事
店員 :サッポロ駅売店のただの店員
紳士(男) :白ドレスの追っかけ、目的は「任務を遂行する?」事
駅員 :紳士の喫煙を注意したただの駅員
車掌(男) :ドライ・ブラー号の車掌、過去に魔族の襲撃に遭うも撃退する
ウェイター(男) :食堂のウェイター、過去に魔族の襲撃に遭うも撃退する
ウェイトレス(女):食堂のウェイトレス、過去に魔族の襲撃に遭うも撃退する
副運転士(女) :ドライ・ブラー号の副運転士、一度氏んでいきかえった、目的は「乗客の方々に上質な列車の旅を提供する」事
運転士長(男) :ドライ・ブラー号の運転士長、過去に魔族の襲撃に遭うも撃退する、目的は「乗客の方々に上質な列車の旅を提供する」事
パイロット :キノコ頭とテ口リスト達を運んできた、ヘリで来た
キノコ頭(男) :テ口リスト達のリーダー、き○こ派、目的は「教授の持つ、“最強の兵器”を手に入れる」事
テ口リストABCD :キノコ頭の部下、き○こ派、
教授(女) :高校生で科学者、“最強の兵器”持つというが実は完成してない、冬休みの宿題に手を付けてない、目的は「オーサカで“最強の兵器”の発表会をする」事
執事(男) :教授の部下、目的は「教授を守る」事
256: 2017/12/27(水) 00:43:30.52 ID:aOQkiWvX0
弓使い(女) :自称通りすがりのフリーター、目的は「オーサカへ行く」事
剣使い(男) :目的は「オーサカへ行く、族長と再戦する」事
銃使い(女) :子供、目的は「オーサカへ行く」事
革ジャン(男) :タイムパトロール、後輩、たけ○こ派、目的は「時空指名手配犯を捕まえる」事
黒コート(女) :タイムパトロール、先輩、目的は「時空指名手配犯を捕まえる」事
フロント :過去に魔族の襲撃に遭うも撃退する
族長(♂) :青鬼族の族長、必殺技は青い炎、アル〇ォート派、目的は「魔翌力塊の強奪、オーサカで行われる発表会を潰す、剣使いと再戦する」事
魔族ABCD :族長の部下、アル〇ォート派
マスター(男) :ラウンジのマスター、半身機械、目的は「魔族から乗客を守る」事
ヒーロー(男) :全身ポリマースーツの赤色仮面、仮面は百均、目的は「き○こたけ○こ大戦の勃発を阻止する」事
桜色の女 :ござる口調、無賃乗車、武器は刀、目的は「“鉄仮面卿”を倒す」事
仮面の男 :ただの乗客じゃなかった、時空指名手配犯、
小型メカ :ヒーローの相方、オペ子ちゃん、常にフヨフヨ浮いている
魔王(男) :碧夕王、周りの時間を止める力を持つ、目的は「天界の使者をあぶり出す」事
料理長(男) :食堂の料理長、ふくよか、過去に魔族の襲撃に遭うも撃退する、目的は「乗客の方々に美味しい料理を提供する」事
冥王(男) :関西弁、イケメン
氏神ABC :過去にドライ・ブラー号を襲撃
剣使い(男) :目的は「オーサカへ行く、族長と再戦する」事
銃使い(女) :子供、目的は「オーサカへ行く」事
革ジャン(男) :タイムパトロール、後輩、たけ○こ派、目的は「時空指名手配犯を捕まえる」事
黒コート(女) :タイムパトロール、先輩、目的は「時空指名手配犯を捕まえる」事
フロント :過去に魔族の襲撃に遭うも撃退する
族長(♂) :青鬼族の族長、必殺技は青い炎、アル〇ォート派、目的は「魔翌力塊の強奪、オーサカで行われる発表会を潰す、剣使いと再戦する」事
魔族ABCD :族長の部下、アル〇ォート派
マスター(男) :ラウンジのマスター、半身機械、目的は「魔族から乗客を守る」事
ヒーロー(男) :全身ポリマースーツの赤色仮面、仮面は百均、目的は「き○こたけ○こ大戦の勃発を阻止する」事
桜色の女 :ござる口調、無賃乗車、武器は刀、目的は「“鉄仮面卿”を倒す」事
仮面の男 :ただの乗客じゃなかった、時空指名手配犯、
小型メカ :ヒーローの相方、オペ子ちゃん、常にフヨフヨ浮いている
魔王(男) :碧夕王、周りの時間を止める力を持つ、目的は「天界の使者をあぶり出す」事
料理長(男) :食堂の料理長、ふくよか、過去に魔族の襲撃に遭うも撃退する、目的は「乗客の方々に美味しい料理を提供する」事
冥王(男) :関西弁、イケメン
氏神ABC :過去にドライ・ブラー号を襲撃
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