323: 2017/12/28(木) 18:00:02.13 ID:sxG2GDJmo
324: 2017/12/28(木) 18:00:29.88 ID:sxG2GDJmo
――1号車【展望車・前】 屋根の上
魔王「……、…………」
魔王「……?」ピクッ
325: 2017/12/28(木) 18:00:56.05 ID:sxG2GDJmo
ザッ ザッ
族長「…………」ザッ
魔族A~D「「「「……っ」」」」ザッ
魔王「…………」
族長「…………」
魔王「……来たか」
ビュオオオオオオ
326: 2017/12/28(木) 18:01:33.85 ID:sxG2GDJmo
魔王「……まずは、勇ある魔界の民として、この魔王の召喚に応じたコトを褒めてつかわす」
族長「ありがたきお言葉」
魔王「我ら魔族のコトワリとはチカラがすべて。強き者が世界を支配し、弱き者を護らねばならん」
魔王「そのコトワリに反し、戦場から遁走するのであれば……。貴様らの命、そこで潰えていたところだ」
魔族A「……っ」ゴク
魔王「―――改めて名を聞こう」
魔王「貴様らの素性は既に知り得ている。だが、これが魔族の作法だ。貴様ら、何者の魔族だ?」
族長「……青鬼族。緋雷王一の臣下にして、かつて魔界に勇名轟かせた青鬼。俺はその現当主だ」
魔王「そうか、緋雷めの……。奴め、部下の管理はゾンザイと見える。今度注意しておかねば」
327: 2017/12/28(木) 18:02:13.48 ID:sxG2GDJmo
族長「僭越ながら、コチラからもお尋ねしたい」
族長「その魔力、その風貌、その威厳。貴方様が魔王の一角であるコトは疑いの余地も無い」
族長「だが俺は浅学ゆえ、その真の名に思い至らぬ。閣下は何者の魔王であらせられるか?」
魔王「……我が魔王であると知り、なお参じる勇。なお臆せぬ猛。なるほど、緋雷の臣下にふさわしい」
魔王「ならばその矜持に敬意を表し、我の座を名乗るとしよう」
魔王「……我は、あまねく魔性を統べる者。誉れ高き、七魔公王がその一人」
魔王「最も多くの魔族の長。守護宝石はペリドット。預かる座席は―――碧夕王、であるッ!!」
族長「リヒトヴァルツ、碧夕王……!!」
魔族B「先の魔界統一戦争において、我らの軍の中核を為し、緋雷王様とも共に戦った……!?」
328: 2017/12/28(木) 18:02:41.44 ID:sxG2GDJmo
魔王「いかにも!! 我が黄昏に照らされし、常緑の輝きに平伏するが良い!!」
魔王「そしてこの碧夕王が問おう、青鬼の族長よ!」
魔王「勇ある貴様が、なにゆえ魔界の法を破り、人間界へと攻め入ったか!?」
族長「…………」
族長「……貴方様には詮無きコトだ、魔王よ」
族長「我らはアル○ォートをニンゲンに侮辱されたがゆえに、人間への復讐を誓った」
族長「それ以上でも、それ以下でもない。些末なコトと断じるならば、嗤うが良い」
魔王「……。なるほど、チョコ菓子が原因、か」
魔王「存外世界は狭い。菓子が原因の揉め事など古来より在る。だが、俺はそれを一笑に付しはしまい」
329: 2017/12/28(木) 18:03:09.09 ID:sxG2GDJmo
魔族C「……と、いうコトは、我らの主張を認めてくださるのですか!?」
魔族D「やはりアル○ォートこそが至高であると!?」
魔王「―――たわけ!!」
魔族D「……!」ビクッ
魔王「どのチョコ菓子を愛そうが、貴様らの自由だ。俺は貴様らの主義主張に口を挟むつもりはない」
魔王「だが、それと魔界の法を破ったコトとは、別問題だ」
魔王「理由が如何であれ。魔族の人間界との接触は、干渉だけならまだしも、侵攻はご法度」
魔王「そして貴様らは、人間の、この列車で暴れた。……もはや弁解の余地はあるまい」
族長「…………」
330: 2017/12/28(木) 18:03:35.72 ID:sxG2GDJmo
魔王「…………」
魔王「……だが、まあ。俺とて、鬼ではない。いや貴様らは鬼だが、鬼神ではあるまい」
魔王「貴様らもまた、我が同胞。それも我が盟友たる緋雷めの臣下なれば」
魔王「おとなしく我がもとに下るのであれば、俺が上には取りなそう。なんとか、処罰を免れるよう……」
族長「―――断る」
魔族A「……!」
魔王「……何?」
族長「聞こえなかったのか、魔王? ……断る、と言ったのだ」
331: 2017/12/28(木) 18:04:03.65 ID:sxG2GDJmo
魔王「…………」ピクッ
魔王「貴様……」
族長「既に罪を犯した我らに、なお罰を免れんと説得してくださったコト。感謝する」
族長「きっと貴方様は、魔族であれ、ニンゲンであれ、同じように救いの手を差し伸べるのだろう」
族長「その慈愛、その度量。チカラがすべての魔界にあって、まさに魔王と称されるにふさわしい」
族長「―――だが、それでも我らは、貴方様の軍門に下るつもりはない」
族長「我らは魔界の民として、ニンゲンに打ち勝つため人間界の門をくぐった。人間との別の約定もある」
族長「ならば。我らは、チカラをもってそれを為すまで。たとえ敵が、魔王、貴方様であろうと!!」
332: 2017/12/28(木) 18:04:31.18 ID:sxG2GDJmo
魔族B「族長……!」
魔族C「そうッスよ、族長! 俺らが束になれば、きっと魔王さまにだって負けません!」
魔王「なるほど」
魔王「―――よく吠えた」
族長「……!!」ゾワッ
魔族D「な……っ。急に雰囲気が……ッ」ビリビリ
魔王「……ああ、久しい。久しいな。魔界より争いの種が絶えて久しい」
魔王「今日に至るまで、一戦士としての昂ぶり、滾り、喜び。忘れ去って久しい」
333: 2017/12/28(木) 18:04:59.31 ID:sxG2GDJmo
魔王「だが、今しかと甦った。青鬼の族長よ」
魔王「その強者におもねぬ精神! チカラで強きを倒す気概! 自らの意志を押し通す蛮勇!」
魔王「それこそが魔界の民のホンシツたるモノ、魔界の民が魔族たる所以だッ!!」
魔王「ならば……。俺は、魔王として、貴様らのチカラにはチカラで応えよう」
魔王「その精神、如何に崇高か。その気概、如何に頑強か。その意志、押し通すに値するか!!」
魔王「来るがいい、青鬼族の精鋭どもよ……。そして体現して見せよ、魔界のコトワリを!!」
族長「……望むところだ。いくぞ、お前たち!!」
魔族A~D「「「「応ッ!!!!」」」」
334: 2017/12/28(木) 18:05:27.98 ID:sxG2GDJmo
――1号車【展望車・前】
ズンッ…!!!
仮面の男「おや……」
仮面の男「どうやら、上は始まったようだね。開いた大穴から、青い炎や、碧の光が見える」
桜色の女「…………」
仮面の男「では、僕らも始めるとしようか」フォン
仮面の男「君とは幾度となく戦ったが。この戦いを、今までで最上の、甘美の一時としたい」
335: 2017/12/28(木) 18:05:55.27 ID:sxG2GDJmo
黒コート「っ……」ゴクッ
桜色の女「……黒コートどの」
黒コート「……! な、なんでしょうか」
桜色の女「まこと勝手な願いで、申し訳ないのだが……」
桜色の女「私と奴との、決着がつくまで、おぬしらにはこの部屋の外にいてほしい」
黒コート「……そ、それは何故ですか?」
黒コート「たしかに貴女がたには劣るかもしれませんが、私たちも歴戦の身」
黒コート「戦いにおいて自分の身くらいは守れる。そして仮面の男の身柄は逃がせない」
仮面の男「……無粋だね、時空環境整備課」
336: 2017/12/28(木) 18:06:22.03 ID:sxG2GDJmo
黒コート「は?」
桜色の女「…………」
仮面の男「そうだね。彼女の口には訊きにくいだろうから、僕が彼女の思いを代弁するとしよう」
仮面の男「―――彼女は。自分が本気で戦っている姿を見せるのは、恥ずかしい、と言っているんだよ」
黒コート「……え?」
仮面の男「おかしなコトかな? 人間、誰にだって、見られて恥ずかしいコトの一つや二つはある」
仮面の男「彼女にとって、それは。自分が本気で戦っている姿、というワケだ」
革ジャン「俺だってそりゃあウOコしてるトコに入ってこられたらなあ」
337: 2017/12/28(木) 18:06:49.40 ID:sxG2GDJmo
黒コート「そ、そうなのか……」
黒コート「それと革ジャン、お前は本気で黙ってろ」
仮面の男「だから。彼女の思いを汲むのであれば、どうか部屋の外で待ってほしい」
仮面の男「心配せずとも、僕は負けは潔く認めるほうだ。もちろん、勝ったら逃げるけどね」
仮面の男「それともアレかい、整備課。君は女のコを辱めるのがシュミなのかい?」
黒コート「い、いや。そんなワケないが……」
桜色の女「…………」
桜色の女「黒コートどの。どうか私からもお願いしたい」
338: 2017/12/28(木) 18:07:16.96 ID:sxG2GDJmo
桜色の女「私は、本気で戦っている私の姿を見られたくない」
桜色の女「私は、彼との氏合を余人に見せたくはない」
桜色の女「―――少し、恥ずかしい」
桜色の女「普段の小競り合いなら、まだしも。この立ち会いは、特別なのだ」
桜色の女「どうか、私を信じ……。この勝負を任せてくれまいか」
桜色の女「この刀に誓って、約束しよう。鉄仮面卿は、私が必ず仕留める」
黒コート「…………」
黒コート「……わかりました。ならば私は、時空整備課は、貴女を信じます」
339: 2017/12/28(木) 18:07:43.14 ID:sxG2GDJmo
黒コート「よし、じゃあ行くぞ、革ジャン野郎。さらわれた教授さんを助ける」ダッ
革ジャン「ん? 例の大天使じゃねーのか? おい、待てよ!」ダッ
桜色の女「…………」
仮面の男「……行ったみたいだね」
桜色の女「…………」
仮面の男「…………」
仮面の男「ああ、もういいよ。彼女らは行った。これ以上隠す必要は無い」
桜色の女「……そうか」
340: 2017/12/28(木) 18:08:11.14 ID:sxG2GDJmo
桜色の女「ならば、良かった。これで私は、本当の私を、貴様以外に見られずに済む」
桜色の女「……はぁっ。はぁっ……」
桜色の女「本当の私を、貴様に。さらけ出す、コトが、出来る」
仮面の男「……いい顔だ」
桜色の女「先刻、貴様と数合だったが、斬り合って理解した」
桜色の女「やはり私がすべてをさらけ出せる相手は、貴様しかいないと」
桜色の女「私が心から刀を向けるコトが出来るのは、貴様しかいないと!」
仮面の男「ああ。僕もだよ、チェリーガール。僕が振るうべき刀は、君だけのモノだ」
桜色の女「だから、聞いてくれ。私が、これまで秘めてきた、いや、目を背けてきた、思い」
341: 2017/12/28(木) 18:08:37.64 ID:sxG2GDJmo
桜色の女「―――私は。貴様が、欲しい」
仮面の男「…………」
桜色の女「私は、貴様の、肉を。心を。刃を。頭を、顔を、手を、体を、足を、技術を、人生を――――」
桜色の女「すべて、私のモノにしたい。貴様のすべてを征服したくて、仕方がない」
桜色の女「……。ふぅっ……」
桜色の女「ああ、もうおかしくなりそうだ。目がとろけて、口が定まらない、頬が締まらない」
桜色の女「私は、貴様を感じたい。貴様のすべてを、この刀で斬り刻みたくて、仕方がない!!」
仮面の男「……君は、その思いを普段は胸の内に閉じ込めている。なるほど、素晴らしい擬態だと思うよ」
342: 2017/12/28(木) 18:09:05.66 ID:sxG2GDJmo
桜色の女「ああ、普段の拙者は、ただの風来坊……」
桜色の女「ひがな、風光明媚を求め、各地を漫遊するばかりでござる」
桜色の女「……だが、本当の私は、違う」
桜色の女「本当の私は、強い敵を、斬りたくて、斬りたくて、斬りたくて斬りたくて斬りたくて仕方がない」
桜色の女「敵を斬って、自分を確かめたくて。敵を斬って、相手を貶めたくて」
桜色の女「敵を斬って、血を見たくて。血をすすりたくて。血を満たしたくて」
仮面の男「……まったく。変わった女性だ」
仮面の男「僕は君のようなヒトを、今までに見たコトが無い。だが、だからこそ、愛おしい」
343: 2017/12/28(木) 18:09:32.43 ID:sxG2GDJmo
桜色の女「―――いざ。覚悟めされよ、鉄仮面卿」
桜色の女「その、ココロを隠す気障な仮面、叩き割り……」
桜色の女「すべてを私の前にさらけ出せ」フォン
桜色の女「私の目を見ろ。私の手を見ろ。私の足を見ろ。私の刀を見ろ。私の、私の――――」
桜色の女「私の、モノに、なれ」
仮面の男「断る」
仮面の男「あいにく、僕は、楽しい年末年始の旅行中なのでね……」
仮面の男「ここで君に生を絞り取られるワケにはいかないのさ!!」ダッ
344: 2017/12/28(木) 18:10:00.03 ID:sxG2GDJmo
――2号車【寝台車一】
ダダダダダダ
執事「待てェェェェェェッ!!!」
キノコ頭「待てと言われて待つバカがいるか! それ、窓から飛び降りろ!」
教授「はなせー!!」ジタバタ
テ口リストA「こ、この列車時速何キロだと思ってるんですか!?」
テ口リストA「さすがに生身で転げ落ちたら氏にますよ!!」
キノコ頭「う、むむ……。言われてみれば、そうだな」
345: 2017/12/28(木) 18:10:27.23 ID:sxG2GDJmo
テ口リストB「なら、一度屋根に登って、そこから飛び降りましょう!」
テ口リストB「上からほぼ垂直にジャンプすれば、衝撃は最低限で済みます!」
キノコ頭「それだ! お前ら、そこのハシゴから屋根に登れ!」
運転士長「―――させるか!!」カチ
346: 2017/12/28(木) 18:10:57.04 ID:sxG2GDJmo
――3号車【寝台車二】
347: 2017/12/28(木) 18:11:49.86 ID:sxG2GDJmo
キノコ頭「何? 屋根への通路が塞がっただと!?」
運転士長「ふふふ……。この列車の防衛システムの一つ、隔壁封鎖だ」
運転士長「本来は対魔族用にと仕掛けた、戦闘の被害を最小限に留めさせるシステムだが……」
運転士長「こうして侵入者の逃亡防止に応用するコトも出来る。驚いただろう?」
副運転士「そりゃ驚きますよ!? なんでドライ・ブラー号ってそんなモンついてるんですか!!」
運転士長「これで列車の内部は、ウナギの寝床のように一本道だ……」
運転士長「ハイジャック犯よ、逃げ続けろ! 逃げたところで逃げ道は無いがな!!」
キノコ頭「くっ……!!」
348: 2017/12/28(木) 18:12:18.61 ID:sxG2GDJmo
――4号車【寝台車三】
白ドレス「―――さあっ! 私も、ただ一人の傍観者として、特等席での見物といきますか!」ガチャ
執事「逃げるなァァァァァァ!!!」
キノコ頭「俺たちとて逃げたところで逃げ道がないなら逃げたくなどないッ!!」
ドドドドドド
白ドレス「え? え? なになになに!? う、うわあ――――――ッ!!」ドカバキグシャポテ
白ドレス「う、うぅ……。ヒドい、ヒドすぎる……。大天使たる私を足蹴にしまくっていくなんて。がく」
黒コート「まるで台風だな……。いや、正しく、列車を襲った嵐か。……って、あ、アレ?」
349: 2017/12/28(木) 18:12:50.10 ID:sxG2GDJmo
革ジャン「あれ? この女、客室でヤクやってた白ドレスの姉ちゃんじゃねーか」ヒョイッ
白ドレス「だから私ヤク中じゃないからねっ!?」ガバッ
黒コート「ちょっと、何でお前が踏まれて……。いや、貴女が踏まれてらっしゃるんですか?」
革ジャン「あれ? 待てよ……」
革ジャン「白い、乳デカ姉ちゃん……。やっぱりコイツが、件の白の大天使じゃねえのか?」
黒コート「ギク!!」
白ドレス「ちょ、ちょっと、ハナシが違うよ時空整備課? 私の身柄は見逃すんじゃなかったの!?」
黒コート「っ~~~……。ああ、もう!!」
350: 2017/12/28(木) 18:13:17.92 ID:sxG2GDJmo
――5号車【スイート】
キノコ頭「スイートルーム……! つまり、ここを抜ければ食堂車の6号車だ!」
キノコ頭「さっきの爆発で、食堂車の壁には穴が開いていたハズだ! そこから脱出するぞ!」
テ口リストC「了解!!」
ダダダダダダ
執事「そうはさせるか! くらえッ、回し蹴りっ!!」ブンッ
キノコ頭「え? 何、ゴハアアアアアアッッッ!!!」カチ
副運転士「ん? 今、カチって……」
351: 2017/12/28(木) 18:13:47.03 ID:sxG2GDJmo
運転士長「あ、あれは! 魔界の術式自動防衛装置だ、伏せろ!!」
副運転士「え。術式……?」
チュドオオオオン!!!!!!
キノコ頭「ぎゃああああああああああああ!!!!!!」
テ口リストD「あばばばばばばばばばばばばばばばばばば」
運転士長「コレはこの列車のモノじゃない。スイートルームの乗客が防衛用に仕掛けたモノだな……」
ウェイター「相当用心深い性格の魔族の乗客なのかね? しかし、部屋が焼けちゃったよ」
ウェイトレス「掃除するのは私たちなのに、ホント、困るなー」
352: 2017/12/28(木) 18:14:14.71 ID:sxG2GDJmo
――6号車【食堂車】
キノコ頭「し、氏ぬかと思った……。だがココが食堂車だ!」
ヒーロー「そうはさせるか! とうっ!」クルッ
キノコ頭「なっ! 俺たちの上を飛び越えただと!?」
ヒーロー「すたっ」
ヒーロー「HAHAHA! どうだ! 食堂車の穴を使いたければ、立ち塞がる俺を倒して……」
料理長「ぬっ! さっきの赤色仮面!!」
ヒーロー「え?」クルッ
353: 2017/12/28(木) 18:14:42.75 ID:sxG2GDJmo
料理長「氏ね!」バッ
ヒーロー「投げナイフぅぅぅっ!!?」グサグサグサグサ
バタッ
キノコ頭「何か知らんが、全弾命中したぞ! 今だ、穴に飛び込め!」
小型メカ「―――させません!!」フィィン
バララララッ!!!
テ口リストA「あ、圧縮レーザー砲!? 焼けるうううううう!!!」
キノコ頭「最近のメカは高性能だなあ! くそっ、ラウンジの屋根にも大穴があった、そこから逃げる!!」
354: 2017/12/28(木) 18:15:09.96 ID:sxG2GDJmo
――7号車【ラウンジ】
マスター「―――なにやら、騒がしいですな」キュッ
キノコ頭「しまった! ラウンジにいるのは、あのマスターだ!!」
テ口リストA「無理です俺たちじゃ絶対に勝てません!」
白ドレス「ああああああどいてどいてどいてぇ――――――!!!」ビュウウウン
キノコ頭「なんだ? 翼の生えた女が飛んできた!?」
教授「あれってウワサの白の大天使じゃないの?」
副運転士「白ドレスのお姉さん? と、お姉さんに捕まってるのはタイムパトロールのお二人!?」
355: 2017/12/28(木) 18:15:42.10 ID:sxG2GDJmo
黒コート「白の大天使、この状況を何とかしろ! お前なら出来るだろ!?」
黒コート「出来なきゃ頃す!!」チャッ
白ドレス「ふえーん、キョーハクだぁー。普段は冷静な人がパニクると一番手がつけられないよぉ」
革ジャン「なあ、お前……。俺たちの味方なのか、敵なのか、どっちだ?」
白ドレス「低い! 声が低いよコワいよ!? 私が君たちに何をしたっていうのかなぁ!!?」
マスター「―――天使の翼!! 貴様が、魔王の言っていた天界の者か!!」シュボッ
白ドレス「ちょっシュボッって何、ああ、右手を飛ばした音か―――ってええええええッ!!?」
ドォォォォン!!!!!!
キノコ頭「食堂車どころか、ラウンジまでも……! くそ、こうなりゃ逃げられるところまで逃げてやる!!」
356: 2017/12/28(木) 18:16:16.82 ID:sxG2GDJmo
――8号車【ロビー】
キノコ頭「ロビー!! たしかココは、アル○ォート派が戦いに行ったくらいで、他には何も……」
フロント「ああ、ガキ使終わっちゃったなぁ……」
フロント「あの後テレビを修理して、ついつい最後まで観ちゃったけど」
フロント「やるコト無いし、朝まで寝てようかな?」
テ口リストB「フ、フロントにも乗務員がいます!!」
キノコ頭「こ、この列車の乗務員の例なら普通じゃない! 気をつけろ!」
副運転士「フロントさん、ソイツら捕まえてください!!」
357: 2017/12/28(木) 18:16:44.27 ID:sxG2GDJmo
フロント「え? また揉め事ですか?」
ズッ…
テ口リストC「ハ、ハルバードです! あのフロント、斧槍を持っています!!」
キノコ頭「なんで列車のフロントがハルバードなんか持ってるんだぁぁぁ!!?」
テ口リストD「後ろの絵画とかと同じ飾りモノじゃないのか!!」
フロント「……? それはモチロン、銀行でもどこでも、真っ先に狙われるのはロビーなので」
フロント「襲撃があった場合、初めに襲撃のあった場所で迎撃するのは当然では?」ブンッ ドガシャァァァァン!!!
キノコ頭「暴力団の事務所か何かか、この列車は!? う、うわああああああっ!!!」
358: 2017/12/28(木) 18:17:11.06 ID:sxG2GDJmo
キノコ頭「ロ、ロビーもダメだ! 9号車に逃げるぞ!」
テ口リストA「はい! で、でも、どこまで逃げるんですか!?」
ガチャッ
車掌「いや、貴方がたの逃亡劇は、ここまでですよ」
キノコ頭「新手の乗務員!?」
副運転士「車掌さん!」
運転士長「車掌くん! 無事だったか!」
車掌「ええ。今のところ後方車両では何も起こっていませんので、コチラの応援に駆けつけました」
359: 2017/12/28(木) 18:17:38.13 ID:sxG2GDJmo
副運転士「あ、そういえば。車掌さんと一緒にいた、剣使いのヒトたちは……?」
車掌「ああ、彼らですか……」
車掌「彼らは既に向かいました。自分たちが行くべき、戦場に」
運転士長「……そうか。ならばココからは、我々の戦いというワケだな」
執事「さあ……。お嬢様を返してもらおうか」
テ口リストB「へっ、やなこった! 俺たちは教授の“最強の兵器”でたけ○こ派を倒すのだ!」
教授「バカ! 私のコトはいいから、お前は逃げろ!」
キノコ頭「ぐ……。だが、この状況……」
360: 2017/12/28(木) 18:18:05.25 ID:sxG2GDJmo
副運転士「さあ、追いつめましたよー!」
運転士長「年貢の納め時というやつだな」
フロント「というか何でこんな状況になってるんですか?」
車掌「実は、き○ことか、たけ○ことか、色々ありまして……」
執事「ジャマするならば……。倒す!!」
キノコ頭(数の上でならば、5対5……。正面から戦えば、勝てないとは限らない)
キノコ頭(だが俺たちは、教授の拘束に一人を割いている。その時点で不利)
キノコ頭(とはいえ、後ろの副運転士とか運転士長とかいうのは、本当に戦闘力があるのか……?)
キノコ頭(いや、普通に見えても、この列車の乗務員だ。きっと何かを隠し持っているに違いない)
361: 2017/12/28(木) 18:18:45.67 ID:sxG2GDJmo
キノコ頭(くそっ、万事休すか……!?)
テ口リストC「リ、リーダー。どうします……?」
キノコ頭「手持ちの弾薬も、底を尽きている。正直、もう打つ手が……」
テ口リストD「あ、ちょっと待てよ。そういやお前、アレ仕掛けてなかったか?」
テ口リストC「アレ?」
テ口リストD「ほら。この列車に来た時に仕掛けた、脅迫用の爆弾。たぶんこの車両だったよな?」
テ口リストD「おとなしく従わないと爆破するぞー、って言うための。まあ、結局使ってないけど」
キノコ頭「それだ……!!」
362: 2017/12/28(木) 18:19:14.35 ID:sxG2GDJmo
キノコ頭「お前ら、動くな!!!」
副運転士「……!」
運転士長「なんだ!?」
キノコ頭「……くっ、くくくくくく……。くくくっ、クハハハハハ……!」
キノコ頭「ハハハッ、クハハハハハ……ッ!!」
キノコ頭「お前たち、すっかり忘れているようだな。この俺たちが、何者かというコトを!!」
副運転士「何者か、って……? たしか、たけ○こ派のヒトたちでしたっけ?」
キノコ頭「違う! き○こ派だ! ソコはいちばん間違えてはいけないところだろうが!!」
363: 2017/12/28(木) 18:19:41.19 ID:sxG2GDJmo
キノコ頭「そうではなく……。俺たちがこの列車に来て、初め、何をしたかというコトだ」
執事「……ま、まさか!!」
キノコ頭「そうだ! もう一度言う、動くな!!」
キノコ頭「―――俺たちはこの車両に爆弾を仕掛けた!!」
フロント「何ですって……!?」
車掌「コシャクな……!」
キノコ頭「クッククク。形勢逆転というやつだな。爆破されたくなければ、おとなしくしろ!」
キノコ頭「この列車は俺たちがハイジャックした!!!」
364: 2017/12/28(木) 18:20:16.48 ID:sxG2GDJmo
――1号車【展望車・前】 屋根の上
新たな年の、新たな日が昇る前の、わずか数刻の宵闇。
その刹那の時の黒に一つ、まばゆく輝く青が存在した。
北の大地から西の大都市までを走る道中にある列車の上を、青き紅蓮が駆けていた。
青き紅蓮は、列車から立ち昇る煙を切り裂き、強大な魔力の主へと斬りかかる。
族長「―――ぬぅッ!」
魔王「チョコマカと……!」
対する碧の光は、自らの背後の空中に三十にも届こうかという数の魔法陣を展開する。
その魔法陣の機能は、魔力の圧縮放射。一つ一つが大軍を焼き払う魔王の絶技であった。
365: 2017/12/28(木) 18:20:42.93 ID:sxG2GDJmo
魔王「焼け消えろ! 砕け散れッ!!」
魔王の号令一下、海の色から樹の色までの十色の光が夜空に煌めく。
直後、光は熱線となって魔族たちを襲い、列車の屋根を焼き払う。
族長「くっ……! 避けろ!」
魔族A「ぐぁッ!!」ジュワッ
族長「っ……、しまっ――――」
魔王「どこを見ている、青鬼の族長!!」
族長「!」
366: 2017/12/28(木) 18:21:11.08 ID:sxG2GDJmo
熱線をしのぎ、爆風をやり過ごした族長の前に現れたのは、昏き夕暮れ。
この日既に過ぎ去ったはずの、薄暮の光景であった。
魔王「碧夕の名の下に命じる! 光よ此処に、舞い戻れ!」
魔王「大いなる光輝は此の手に、大いなる漆黒は此の空に!」
魔王「逆光の輝き放つ落陽、今ひとたびの静寂を!!」
族長「……っ」
魔王「―――吹き飛べ!!」
瞬間、列車に、群青に包まれた赤き光が飛来した。
367: 2017/12/28(木) 18:21:42.55 ID:sxG2GDJmo
――1号車【展望車・前】
仮面の男「なんだ!?」
桜色の女「……!」
幾十度目か、仮面の男と桜色の女が剣戟を交わさんとした時、
突如、戦いの舞台である1号車の天井が崩落した。
空より墜ちるは、屋根を形作っていた瓦礫、煙、そして、
今まさに水平線に沈まんとする夕陽のごとき黄昏の光。
仮面の男「茜色の光だって……? いったい、上ではどんな戦いが」
桜色の女「―――っ!」ダッ
368: 2017/12/28(木) 18:22:12.91 ID:sxG2GDJmo
仮面の男「うおっと!」
キィン
桜色の女「……! 脇が甘いッ!」
仮面の男「まったく。喋っている途中だというのに、容赦がないな、君は……!」
頭上を見上げていた仮面の男に、裂帛の勢いで桜色の女は右から斬り上げの一撃を放った。
しかし仮面の男は間一髪で対応。数合打ち合ったのち、大きく後方に距離を取る。
桜色の女「さもありなん。貴様は会話の最中に突然手元をいじり出す相手を許せるか?」
桜色の女「我らの戦いに、場の如何など、詮無きこと。ただ肝要なのは」
桜色の女「この場に立っている者がいるか。いるとすれば、それは誰なのか、それだけだろうッ!」
369: 2017/12/28(木) 18:22:39.70 ID:sxG2GDJmo
仮面の男「っ……!」
吐き捨てて、桜色の女は再び仮面の男に狼のように食らいつく。
薙がれては、斬り。払われては、斬り。二の足を踏ませては、斬る。
繰り返すこと十数度。桜色の女の剣筋は鈍らない。彼女の体は、衰えを知らない。
いや、衰えを知らないという表現は正確ではない。
彼女の思考は、自らの体の衰えを、考慮などしていなかった。
桜色の女「あぁ……」
仮面の男「…………」
桜色の女「あぁ……っ」
370: 2017/12/28(木) 18:23:08.36 ID:sxG2GDJmo
仮面の男「…………ッ」
桜色の女「あぁ……っ!」
桜色の女の大きく踏み込んだ左足は、仮面の男の懐を捉えた。
瞬間、閃光。彼女の斬り上げと、彼の防御が、再び交差する。
桜色の女「あぁ……、あぁ……っ、あぁ……っ! この感触!」
桜色の女「刀の交差する音! 汗と汗の混じった醜悪な匂い! 鉄と血の混じったかぐわしき薫り!」
桜色の女「貴様の表情、わからぬなぁ……。貴様はその仮面の内で、私の表情を、どう見る?」
タノ タノ タノ タノ
桜色の女「私はこのうえなく楽しい、愉しい、快しい、悦しい!!」
371: 2017/12/28(木) 18:23:36.64 ID:sxG2GDJmo
桜色の女「貴様のその刃に、私の刃をぶつけるのが!」
桜色の女「貴様のその刃を、私の刃が受け入れるのが!」
桜色の女「貴様に近づき、その手の震えを感じるのが……」
桜色の女「貴様に近づき、私の臓の鼓動を伝えるのが……」
桜色の女「貴様と競り合い、鉄の冷たさに私の体温を教えるのが」
桜色の女「貴様と競り合い、私の温かさが貴様の冷血を教えられるのが」
桜色の女「貴様を斬り、貴様の濁った血を浴びるのが……!」
桜色の女「貴様に斬られ、私の濁った血を浴びせるのが……!」
桜色の女「私は、たまらなく、たのしい……っ!!」
372: 2017/12/28(木) 18:24:04.93 ID:sxG2GDJmo
仮面の男「多弁なコトだ」
桜色の女「私と貴様の戦いは運命だ」スッ
桜色の女「私と貴様は、出会うべくして出会った……」
桜色の女「ならばこの立ち会いは、運命だ。因果だ。宿命だ」
桜色の女「どちらかが倒れるまで、氏合は終わらぬ」
桜色の女「そして終わった時、私が貴様の血をすするのか、貴様が私の血をすするのか」
桜色の女「斯様なことは、些末で、どうでも良い」
桜色の女「どちらにせよ、貴様は私のモノで、私は貴様のモノだ」
桜色の女「欲しいんだ、私は、心から。貴様の体が、心が、すべてが……!!」ダッ
373: 2017/12/28(木) 18:24:33.11 ID:sxG2GDJmo
仮面の男「まったく。ワガママだね、君は」
桜色の女「ヒトが我が儘であることの何が可笑しい!!」
桜色の女の刀が、仮面の男の鉄仮面をなぞる。
仮面の男の刀が、桜色の女の頬をなでる。
鉄仮面には亀裂が走り、刀は鮮血を吸った。
頬には刀傷が刻まれ、刀は鮮血を吸った。
桜色の女の表情は歓喜に緩む。
仮面の男の眼光は冷徹に細まる。
仮面の男「いや、可笑しくはないさ。とうてい笑えるモノではない」
仮面の男「だがそれは、獣の道理ではないかな?」
374: 2017/12/28(木) 18:25:01.13 ID:sxG2GDJmo
桜色の女「獣だと……?」
仮面の男「そうさ。ヒトは、獣とは違い理性を保てるから、ヒトたれるのだろう?」
仮面の男「男女は相手を思いやるコトから始まると。学校で習わなかったかい?」
桜色の女「あいにく、色恋には興味があらぬのでな」
桜色の女「だが……。刀を見ると、瞳が熱くなる」
桜色の女「強者を見ると、口元が熱くなる」
桜色の女「戦を見ると、体が熱くなる」
桜色の女「貴様を見ると、腹の底が地獄のように煮えたぎる」
桜色の女「その高まりを、貴様にぶつけたい……。それが、私の思いやりというモノだ」
375: 2017/12/28(木) 18:25:28.69 ID:sxG2GDJmo
仮面の男「……ぷっ」
仮面の男「……ふふ、くふふ、ふふはははは!!!」
仮面の男「面白い、面白いよ。やはり君は面白い」
桜色の女「―――貴様。くだらぬことを考えているな」
桜色の女「下卑た口を閉じろ。語るべき言葉があるなら、刀で語れ」
仮面の男「いやいや……。君もあれだけ語ったんだ。僕にも喋らせてくれよ」
仮面の男「まったく。ディスコミュニケーションだ。相互不理解だ。戦闘言語だ」
仮面の男「どうやら、君に刀以外での気遣いというのは……。存在しないらしい」
仮面の男「いや、正確には存在するが……。だが君にとっての最上の交流は、刀だ」
376: 2017/12/28(木) 18:25:58.56 ID:sxG2GDJmo
桜色の女「そのとおり。言葉での気遣い、行動での気遣い……。どれも存在するが、上辺は超えられない」
桜色の女「だが刀は、虚言を弄さない。刀に訊けば、どんな人生で、どんな人間か、おのずとわかる」
桜色の女「物言わぬ木偶を斬っても仕方がない。そして、冷えた屍の氏は尊重されるべきもの」
桜色の女「私が斬りたいのは、ヒトだ……。斬ることで、相手を感じたい」
桜色の女「それこそが、私の生きる意味、私が存在する意味……。人生の意味だ」
仮面の男「なるほどね。ヒトも薄皮一枚剥がせば、しゃれこうべ」
仮面の男「君にとって、獣とヒトは、明確別個たるモノで……。斬るべきはヒト、というワケだ!!」
桜色の女「来るか。それでこそ我が望み、我が人生……! 鉄仮面卿、この刀の錆となれ!!」
377: 2017/12/28(木) 18:26:25.56 ID:sxG2GDJmo
――1号車【展望車・前】 屋根の上
魔王「―――ここまでか」
言って、音もなく魔王は屋根の上に降り立つ。
列車の屋根には、横たわる四人の魔族と、剣を片手に跪く一人の魔族がいた。
族長「ぐ……ッ」
魔族A「ぞ、族長……」
魔族B「大丈夫、ですか……」
族長「大丈夫、だ。あとは俺に任せろ」
378: 2017/12/28(木) 18:26:53.17 ID:sxG2GDJmo
魔族C「そういうワケには、いきませんよ。族長……」
魔族D「一蓮托生だって、俺たち。約束しましたから……」
族長「……。お前たち」
魔王「……なるほど。貴様らの、主従たる絆は真実、まことのようだ」
魔王「だが無謀な戦いからは部下を遠ざける勇気も必要であると、俺は魔王として忠告しよう」
族長「…………」
魔王「いや、もう遅いか」
魔王「青鬼の魔族たちよ。此度の戦いは、良い戦いであった」
379: 2017/12/28(木) 18:27:22.17 ID:sxG2GDJmo
魔王「魔界における大いなる戦の終わった今、その矜持を持つ魔族もそうはいまい」
魔王「だが貴様らは特別だ。緋雷王の部下だからなどではない」
魔王「俺がじかに戦って、感じた。貴様らは、魔族を名乗るに値する、勇者であると」
族長「…………」
魔王「今なら、俺のチカラで魔界に送り返してやる。どうだ」
族長「断る」
魔王「そうか……」
魔王「ならばここで散れ! この俺の魂に名を刻む栄誉に震え、そして、逝き果てろ!!」
380: 2017/12/28(木) 18:27:52.73 ID:sxG2GDJmo
王は号砲のごとき宣言を叫び放つ。そして、その頭上に、小型の魔力剣が現れる。
剣の柄は王の右手に吸い込まれると、刃を族長の首元にぴたりと押し当てた。
魔王「何か言い残すコトは」
族長「…………」
魔王「……終いだ」
魔王の剣は、族長の左肩の上で角度を水平に変える。
そして、剣の刃が、右から左へと薙がれんとした時。
“それ”は、魔王の左胸を穿った。
魔王「っ、ガ…………ッ!!?」
381: 2017/12/28(木) 18:28:24.58 ID:sxG2GDJmo
族長「……!?」
魔王の左胸、心臓の位置に的確に突き刺さったのは、一本の矢。
魔力を帯びた、魔王の防護障壁を貫く、ただ一本の矢だった。
魔王「魔力の矢だと……? いったい、どこから」
ビュオッ!!!
魔王「……! 俺に二度同じ術が通じると思うな!!」
再度魔王を襲った、今度は額を狙った矢を、魔王は魔力剣で弾き落とす。
だが直後、矢が射抜き損ねた額に、小さな鉄の塊が、数個の黒い斑点を作った。
魔王「つうッ! これは、魔力でないな。鉄……、鉄砲か!?」
382: 2017/12/28(木) 18:28:52.60 ID:sxG2GDJmo
剣使い「ああ、そうだ。気付くのが遅すぎるぜ、奴さん」
魔王「何!?」
最後に、突如として彼は現れた。
夜空の星の光を照り返して輝く、白銀の髪。
その刀身は魔王の頭蓋を狙わんときらめく、白銀の長剣。
偉大なる魔族の長の命を刈り取らんとする雷鳴が、そこにいた。
剣使い「ヘッドショットだ、お山の大将!!」
魔王「人間……ッ」
魔王「この魔王を侮るなっ!!」ズバッ
383: 2017/12/28(木) 18:29:20.04 ID:sxG2GDJmo
剣使い「うおっと!!」ズザッ
弓使い「よっと! うわ、こりゃヒドい状況だなぁ~。大丈夫? 剣ちゃん?」
剣使い「ああ……。何とかな」
銃使い「立てる? 魔族のヒト」ザッ
族長「……! 貴様らは……」
剣使い「よう。夕方ぶり、だな。魔族のオッサン」ビッ
族長「……。お前たちが、どうしてここに……」
剣使い「ん? そんなの決まってるだろ」
剣使い「ポっと出の魔王なんぞに倒されちゃ、困るんだよ。……お前を倒すのは、この俺だ」
384: 2017/12/28(木) 18:29:47.67 ID:sxG2GDJmo
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