1: 2013/10/07(月) 00:21:36.24 ID:uRRAKVZG0
ローゼンの世界 深夜

翠星石は今日もあんまり眠れませんでした

翠星石 「ああう… あんまり眠くないですう…
    しんくぅ…」

真紅 「なあに… まだ夜中なのだわ…」

翠星石 「本読んでえ しんくぅ」

真紅 「ええ… 折角眠るところだったのに…
   はあ 仕方ないのだわ…」ごそ

真紅は積んである本の中から
一冊を取って開きました

翠星石 「何が出るかなっ ですぅ!」わくわく

真紅 「ええっと… こほん…なのだわ
   これはビアールという人が書いた童話なのだけれど…」
ローゼンメイデン 愛蔵版 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
4: 2013/10/07(月) 00:32:29.50 ID:uRRAKVZG0
***金色の窓***

蒼星石の家は農家でした
あまり裕福ではなかったので
蒼星石は毎日お父さんのお手伝いをしていました

農家は日曜日でも休めないですから、
毎日夕方に少しだけ時間を貰って、
好きな事をして遊んでいました

蒼星石 「今日は丘の上に行ってみようかな…」

5: 2013/10/07(月) 00:40:06.22 ID:uRRAKVZG0
遠くの山はオレンジ色に染まり、
影になった丘がずっと続いていました

するといくつもの丘を越えたずっと向こうに
キラキラと金色に輝いている窓がついた家が見えました

蒼星石 「あの金色の窓は何なのだろうか?」

その窓は夕焼けの空の中に
まるで宝石を散りばめて作ったように
美しく輝いていました

8: 2013/10/07(月) 00:44:12.32 ID:uRRAKVZG0
蒼星石 「きっとあれはお城か何かなのかもしれないな
    どんな人が住んでいるんだろう

    何処かの王様だろうか それともお姫さま
    そうだ きっと綺麗な服を着た
    素敵なお姫さまだろうな…」

9: 2013/10/07(月) 00:44:57.13 ID:uRRAKVZG0
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11: 2013/10/07(月) 00:48:54.56 ID:uRRAKVZG0
その次の日も また次の日も
夕方になると丘に登って金色の窓を眺めました

蒼星石 「きっとこんなふうなかわいいお姫様だろうな…」

いつしか蒼星石はあの窓のあるお城へ行ってみたいと
思うようになりました…

14: 2013/10/07(月) 00:56:05.31 ID:uRRAKVZG0
ある日の事 お父さんは朝ごはんの時に言いました

結菱かずは 「ちょうど畑仕事の区切りがついた…
      今日は一日、おまえの好きな事をして遊んで来るといい…」

蒼星石 「ほんと、何をしてもいいの…?」

かずは 「いいとも だがこの一日は神様が下さった、ありがたい一日だ
    何か良いことをして過ごしなさい…」

15: 2013/10/07(月) 01:06:36.38 ID:uRRAKVZG0
蒼星石 「よし 今日こそあのお城へ行ってやろう」

蒼星石はパンを貰って、家を出ました

空は晴れ渡って、どこまでも澄みきった秋の終わりの空気が広がっていました
低い丘を二つ越えるともうお昼でした

蒼星石 「ここらへんでお弁当でも食べよう
    お姫様は今頃どんなお昼ごはんをたべているのだろう」

16: 2013/10/07(月) 01:07:17.85 ID:uRRAKVZG0
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17: 2013/10/07(月) 01:09:05.42 ID:uRRAKVZG0
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18: 2013/10/07(月) 01:12:01.91 ID:uRRAKVZG0
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19: 2013/10/07(月) 01:17:00.83 ID:uRRAKVZG0
そして、とうとう目指すお城の立っている丘の麓までたどりつきました

蒼星石 「あれっ」

蒼星石はびっくりして立ちすくみました
こうして良く見ると、それはお城でも何でもなく
ただのお百姓さんの家でした

蒼星石 「変だなあ でも確かにこの家に違いない…」

20: 2013/10/07(月) 01:25:38.67 ID:uRRAKVZG0
蒼星石は丘を駆け登り、家の前に着きました
蒼星石の家と同じように、貧しそうな古ぼけた家に過ぎなかったのでした

窓にはただのガラスがはまっているだけで
金などはどこにも施されていません

蒼星石 「あのキラキラと輝いていた、金色の光は
    いったいなんだったのだろう…」しょぼん…

蒼星石は内心がっかりして
少し悲しくなりました

21: 2013/10/07(月) 01:29:54.19 ID:uRRAKVZG0
そのときでした どこかから声がしました

翠星石 「だ… だれ…?」

家の戸が半分開いて、中からかわいらしい女の子が
すこしこわがっている様な顔をして覗いていました

22: 2013/10/07(月) 01:31:03.09 ID:uRRAKVZG0
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24: 2013/10/07(月) 01:35:26.94 ID:uRRAKVZG0
蒼星石 「僕は蒼星石 君はこの家に住んでいるのかい」

翠星石 「そ そうですぅ…」

女の子は外へ出てきました
粗末な服を着ていましたが、緑と赤の色違いの瞳と長いまつ毛の、
それはそれはかわいらしい女の子でした

25: 2013/10/07(月) 01:37:48.70 ID:uRRAKVZG0
no title

26: 2013/10/07(月) 01:44:28.99 ID:uRRAKVZG0
蒼星石はさっそく金色の窓の事をきいてみました

蒼星石 「僕はきっとお城に違いないと思ったんだ
    確かめようと思って、朝からここまで歩いて来たんだよ」

すると女の子が言いました

翠星石 「え…? 金色のまど…?
     それって翠星石も毎日見てるですよ
     ほら あれですぅ…」

蒼星石 「えっ どこに…」

翠星石 「こっちですぅ!」

女の子は蒼星石の手をとって小高い丘の上につれてきました

いくつもの丘を越えたその向こうに、キラキラと金色に輝く窓が見えたのでした

27: 2013/10/07(月) 01:47:17.51 ID:uRRAKVZG0
蒼星石はびっくりしました

蒼星石 「あれは… 僕の家だ…」

しずんでゆく夕日を浴びて、古い貧しい蒼星石の家は
まるでお城のように、美しく輝いていたのでした

29: 2013/10/07(月) 01:50:11.47 ID:uRRAKVZG0
蒼星石は、ポケットにもう何年も大切に持っている、
宝物の小さな石を女の子にあげました

翠星石 「うわあ… ふしぎですぅ…
    しましまもようですぅ」

31: 2013/10/07(月) 01:56:43.94 ID:uRRAKVZG0
女の子は走って家の中に入ると
大きなりんごを一つ持ってきて蒼星石にくれました

翠星石 「その… おかえしですう!」

32: 2013/10/07(月) 01:57:36.22 ID:uRRAKVZG0
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34: 2013/10/07(月) 02:04:32.27 ID:uRRAKVZG0
***

真紅 「…そうして二人は友達になりました
    これでお終いなのだわ どうだった…? 翠星石…」

翠星石 「むむ… 蒼星石ぃ…」むぐむぐ

真紅 「あら… もう眠っていたのだわ
    おやすみなさい 翠星石 おしまいだわ」

おわり

38: 2013/10/07(月) 02:17:34.76 ID:Kg8yWlDt0
良かったよ、乙
可愛い

引用: 翠星石 「金色の窓ですよ」