1: 2018/01/16(火) 20:50:18.064 ID:PdG0jdwG0.net
「さぁ、どうぞ召しあがれ」
赤ずきんちゃんはそう言うと、するすると服をぬいでいきました
「ちょ、ちょっとまって」
おおかみさんは、あわててしまいました
たしかに、"たべちまうぞ"とは、いったけど
そういういみじゃあないから
なにやってんの、この娘
赤ずきんちゃんはそう言うと、するすると服をぬいでいきました
「ちょ、ちょっとまって」
おおかみさんは、あわててしまいました
たしかに、"たべちまうぞ"とは、いったけど
そういういみじゃあないから
なにやってんの、この娘
6: 2018/01/16(火) 20:51:26.998 ID:PdG0jdwG0.net
そんな、おおかみさんの言葉など気にせずに
赤ずきんちゃんはぬいだ服を、
一枚ずつ、だんろにくべていきました
「お、おい、ちょ、え……!?」
服がもえていくようすと、それを見てあぜんとしている
おおかみさんのようすを見て、赤ずきんちゃんの
"ほお"がこうちょうしていきます
赤ずきんちゃんは、おとなしそうに見えて、
とんでもないだいたんさを、かねそなえていました
赤ずきんちゃんはぬいだ服を、
一枚ずつ、だんろにくべていきました
「お、おい、ちょ、え……!?」
服がもえていくようすと、それを見てあぜんとしている
おおかみさんのようすを見て、赤ずきんちゃんの
"ほお"がこうちょうしていきます
赤ずきんちゃんは、おとなしそうに見えて、
とんでもないだいたんさを、かねそなえていました
9: 2018/01/16(火) 20:52:13.375 ID:PdG0jdwG0.net
赤ずきんちゃんは、"とれーどまーく"の
赤ずきんもはずしてしまいました
今日は、私を、"赤ずきんちゃん"とよばないでほしい
私はわたし
おおかみさんには、ありのままの、自分を見てほしかったのです
だって、おおかみさんに、出会ってから、私――
赤ずきんもはずしてしまいました
今日は、私を、"赤ずきんちゃん"とよばないでほしい
私はわたし
おおかみさんには、ありのままの、自分を見てほしかったのです
だって、おおかみさんに、出会ってから、私――
14: 2018/01/16(火) 20:54:37.925 ID:PdG0jdwG0.net
ちょっと前の赤ずきんちゃんなら、
こんなことをするなんて、考えられませんでした
"赤ずきん"とは、"にっくねーむ"であり
本名ではありません
なんで"赤ずきん"とよばれるように
なったのでしょうか
赤ずきんちゃんは、かつての自分のすがたを
思いだしました
――
こんなことをするなんて、考えられませんでした
"赤ずきん"とは、"にっくねーむ"であり
本名ではありません
なんで"赤ずきん"とよばれるように
なったのでしょうか
赤ずきんちゃんは、かつての自分のすがたを
思いだしました
――
15: 2018/01/16(火) 20:55:08.154 ID:PdG0jdwG0.net
―――
「おいばばぁ、めし!」
赤ずきんちゃんは、とってもやさしいおばあさんに
いつものように、どなりつけました
「ごめんね、ごめんね」
おばあさんは、あやまるひつようもないのに
あやまってしまいます
そんなようすが、赤ずきんちゃんを
どんどん調子づかせます
「おいばばぁ、めし!」
赤ずきんちゃんは、とってもやさしいおばあさんに
いつものように、どなりつけました
「ごめんね、ごめんね」
おばあさんは、あやまるひつようもないのに
あやまってしまいます
そんなようすが、赤ずきんちゃんを
どんどん調子づかせます
23: 2018/01/16(火) 20:59:13.377 ID:PdG0jdwG0.net
くそっ
赤ずきんちゃんは、いらいらしてました
毎日ごはんがでてくるのが、あたりまえだと
思っているのです
「おい、ばばぁ、はやくしろ」
そもそも何で、私が言う前に
ごはんが出てこないのか
赤ずきんちゃんは、それすら
はらだたしかったのです
赤ずきんちゃんは、いらいらしてました
毎日ごはんがでてくるのが、あたりまえだと
思っているのです
「おい、ばばぁ、はやくしろ」
そもそも何で、私が言う前に
ごはんが出てこないのか
赤ずきんちゃんは、それすら
はらだたしかったのです
30: 2018/01/16(火) 21:04:17.218 ID:PdG0jdwG0.net
「ちょっと何よ、今日はこれだけ?」
「ごめんね、うちもきびしいのよ、ごめんね」
あかずきんちゃんは、したうちをすると、
しぶしぶ食べはじめました
ごはんをよういしてくれた、おばあさんよりも先に
「ごめんね、うちもきびしいのよ、ごめんね」
あかずきんちゃんは、したうちをすると、
しぶしぶ食べはじめました
ごはんをよういしてくれた、おばあさんよりも先に
34: 2018/01/16(火) 21:08:30.763 ID:PdG0jdwG0.net
「かけいがきびしいなら、はたらけよ、ばばあ!」
赤ずきんちゃんは、ごはんを食べながら、
ひにひに、やつれていく
おばあさんに向かって、つぶやきました
「ごめんね、ごめんね」
おばあさんは、またあやまってしまいます
赤ずきんちゃんは、ごはんを食べながら、
ひにひに、やつれていく
おばあさんに向かって、つぶやきました
「ごめんね、ごめんね」
おばあさんは、またあやまってしまいます
36: 2018/01/16(火) 21:09:58.702 ID:PdG0jdwG0.net
そういう赤ずきんちゃんは、
いわゆる、"なにもしてないこ"でした
おばあさんを、どなりつけるだけの、毎日です
外では"むしょく"のあかずきんちゃんの、
家での、やくしょくは"じょうおうさま"です
いわゆる、"なにもしてないこ"でした
おばあさんを、どなりつけるだけの、毎日です
外では"むしょく"のあかずきんちゃんの、
家での、やくしょくは"じょうおうさま"です
37: 2018/01/16(火) 21:11:03.378 ID:PdG0jdwG0.net
家には、おばあさんと赤ずきんちゃんの
二人だけです
"ざいげん"がありません
ためていたお金が、そこを尽きかけていたので、
おばあさんは、家にある"かざい"などを売って
せいけいをたてて、いました
"いつかどうにかしないといけない"
そう思いながら、おばあさんは、
やさしいえがおをくずしません
二人だけです
"ざいげん"がありません
ためていたお金が、そこを尽きかけていたので、
おばあさんは、家にある"かざい"などを売って
せいけいをたてて、いました
"いつかどうにかしないといけない"
そう思いながら、おばあさんは、
やさしいえがおをくずしません
38: 2018/01/16(火) 21:13:24.450 ID:PdG0jdwG0.net
こんな、赤ずきんちゃんでも
おばあさんにとっては、たからものでした
ぜったいに"だいじに育てる"と
心に決めているのです
あるていど、きびしくすることも"あいじょう"だと
おばあさんは分かっていましたが、
本来のやさしいせいかくからか、
なかなか、心を"おに"にできません
おばあさんにとっては、たからものでした
ぜったいに"だいじに育てる"と
心に決めているのです
あるていど、きびしくすることも"あいじょう"だと
おばあさんは分かっていましたが、
本来のやさしいせいかくからか、
なかなか、心を"おに"にできません
39: 2018/01/16(火) 21:15:29.779 ID:PdG0jdwG0.net
「ごめんね、ちょっと、かいものに行ってくれるかい」
ある日、おばあさんが、赤ずきんちゃんに
思い切って、たのみごとをしてみました
おばあさんは、このたった一言を、言うだけでも
つよい"ゆうき"がひつようでした
「はぁ、じぶんでいけよ、ばばぁ」
赤ずきんちゃんは、きれました
ある日、おばあさんが、赤ずきんちゃんに
思い切って、たのみごとをしてみました
おばあさんは、このたった一言を、言うだけでも
つよい"ゆうき"がひつようでした
「はぁ、じぶんでいけよ、ばばぁ」
赤ずきんちゃんは、きれました
40: 2018/01/16(火) 21:18:53.886 ID:PdG0jdwG0.net
「ごめんね、足をいためてしまってね、
ちょっと今、あるくことが出来ないんだよ」
すかさず言ったそれは、
おばあさんが、考えたうそ"でした
たしかに、おばあさんは、足をいためていましたが
歩けないほどじゃあありません
「このまま、かいものに行けないと
今日はごはんが食べられないのよ、ごめんね」
おばあさんは、どうしても、赤ずきんちゃんに
"いっぽ"を、ふみだしてほしかったのです
ちょっと今、あるくことが出来ないんだよ」
すかさず言ったそれは、
おばあさんが、考えたうそ"でした
たしかに、おばあさんは、足をいためていましたが
歩けないほどじゃあありません
「このまま、かいものに行けないと
今日はごはんが食べられないのよ、ごめんね」
おばあさんは、どうしても、赤ずきんちゃんに
"いっぽ"を、ふみだしてほしかったのです
41: 2018/01/16(火) 21:22:52.648 ID:PdG0jdwG0.net
ごはんが食べられなくてはこまると、
赤ずきんちゃんは、
しぶしぶかいものに行きました
赤ずきんちゃんが、家を出たあと、
おばあさんは小さな声で、つぶやきました
「あなたは、本当は、やさしい子なんだから
おばあちゃんは、分かっているからね」
赤ずきんちゃんは、
しぶしぶかいものに行きました
赤ずきんちゃんが、家を出たあと、
おばあさんは小さな声で、つぶやきました
「あなたは、本当は、やさしい子なんだから
おばあちゃんは、分かっているからね」
43: 2018/01/16(火) 21:25:01.247 ID:PdG0jdwG0.net
「くそっ、あのばばぁ、ころしてやろうか」
ふきげんな赤ずきんちゃんは、そんなことをつぶやきながら
とことこ道を歩いてゆきました
赤ずきんちゃんの、住んでいるはなれから、
お店のある村までは、
いちじかん位、歩かなければいけませんでした
ふきげんな赤ずきんちゃんは、そんなことをつぶやきながら
とことこ道を歩いてゆきました
赤ずきんちゃんの、住んでいるはなれから、
お店のある村までは、
いちじかん位、歩かなければいけませんでした
48: 2018/01/16(火) 21:35:25.893 ID:PdG0jdwG0.net
>>47
知らんかった、サンクス
知らんかった、サンクス
50: 2018/01/16(火) 21:42:56.905 ID:PdG0jdwG0.net
「へい、いらっしゃい!」
赤ずきんちゃんは、お店につくと、
元気の良い、お兄さんのかけごえに、
きょどうふしんになってしまいました
「あ、え、あの、う……」
ことばが、上手くでてきません
赤ずきんちゃんは、ほしいもの指でさして
なんとかかいものを、おえました
たったこれだけのやりとりでも、
むねのたかなりが止まりません
赤ずきんちゃんは、お店につくと、
元気の良い、お兄さんのかけごえに、
きょどうふしんになってしまいました
「あ、え、あの、う……」
ことばが、上手くでてきません
赤ずきんちゃんは、ほしいもの指でさして
なんとかかいものを、おえました
たったこれだけのやりとりでも、
むねのたかなりが止まりません
52: 2018/01/16(火) 21:53:26.160 ID:PdG0jdwG0.net
「そうそう、さいきんは"人食いおおかみ"があらわれるらしいから
お姉ちゃんも気をつけてかえりなよ」
かえりぎわ、お店のお兄さんがこんなことを言ってくれました
まあ、私はだいじょうぶだろう
そう思い、赤ずきんちゃんは
とくにふか考えずに店をあとにしました
"とにかく早くかえろう"
赤ずきんちゃんは、もうそのことしか頭にありませんでした
まわりを見ずに、かけ足でかえろうとすると、
男女の二人ぐみとぶつかってしまいました
「あら、ごめんなさい」
お姉ちゃんも気をつけてかえりなよ」
かえりぎわ、お店のお兄さんがこんなことを言ってくれました
まあ、私はだいじょうぶだろう
そう思い、赤ずきんちゃんは
とくにふか考えずに店をあとにしました
"とにかく早くかえろう"
赤ずきんちゃんは、もうそのことしか頭にありませんでした
まわりを見ずに、かけ足でかえろうとすると、
男女の二人ぐみとぶつかってしまいました
「あら、ごめんなさい」
55: 2018/01/16(火) 22:01:48.688 ID:PdG0jdwG0.net
こいびと同士でしょうか
"くそっ、しあわせそうにしやがって"
赤ずきんちゃんは、自分からぶつかったにもかかわらず、
何にも言わずにそのばを、走り去ってしまいまいした
赤ずきんちゃんは、あらためて、村の人たちを
見わたしてみました
"楽しそうにあそぶ子供たち"
"仲良くすごしているかぞく"
そんなこうけいが、やたらと"はなにつき"ました
"くそっ、しあわせそうにしやがって"
赤ずきんちゃんは、自分からぶつかったにもかかわらず、
何にも言わずにそのばを、走り去ってしまいまいした
赤ずきんちゃんは、あらためて、村の人たちを
見わたしてみました
"楽しそうにあそぶ子供たち"
"仲良くすごしているかぞく"
そんなこうけいが、やたらと"はなにつき"ました
57: 2018/01/16(火) 22:05:46.839 ID:PdG0jdwG0.net
くそ、こいつら、私のふこうも知らないで
"こいつらが、あわてふためく姿を見てみたい"
そんな思いから、赤ずきんちゃんは、
ある"あいであ"を思いつきました
――
赤ずきんちゃんは、村のいちばん人が多いばしょへ
やってきて、赤ずきんで顔ををかくしました
そして、お店の人と話した時の小声からはそうぞう出来ないような
大声で、こうさけびました
「おおかみが、来たぞー」
"こいつらが、あわてふためく姿を見てみたい"
そんな思いから、赤ずきんちゃんは、
ある"あいであ"を思いつきました
――
赤ずきんちゃんは、村のいちばん人が多いばしょへ
やってきて、赤ずきんで顔ををかくしました
そして、お店の人と話した時の小声からはそうぞう出来ないような
大声で、こうさけびました
「おおかみが、来たぞー」
58: 2018/01/16(火) 22:15:31.025 ID:PdG0jdwG0.net
"さあ、逃げまどえ"
赤ずきんちゃんは、にやつきながら、ようすをながめていました
ふだんは、外界から"かくり"されて生きているので
周りの人たちに何かえいきょうをあたえるのが、
楽しみで仕方がありませんでした
赤ずきんちゃんは、にやつきながら、ようすをながめていました
ふだんは、外界から"かくり"されて生きているので
周りの人たちに何かえいきょうをあたえるのが、
楽しみで仕方がありませんでした
59: 2018/01/16(火) 22:18:29.496 ID:PdG0jdwG0.net
あたりは、きゅうきょ、大ぱにっくになりました
泣き出す子供、ころんでしまうお年寄り
にげまどい、あわてふためく人たちのようすを見て、
赤ずきんちゃんは、自分でおどろいてしまいました
"まさか、ほんとうにこんなさわぎになってしまうとは"
自分でやったことなのに、どこかげんじつみがなかったようです
赤ずきんちゃんは、あっというまに、
ざいあくかんで、むねが一杯になり、にげだしたくなりました
泣き出す子供、ころんでしまうお年寄り
にげまどい、あわてふためく人たちのようすを見て、
赤ずきんちゃんは、自分でおどろいてしまいました
"まさか、ほんとうにこんなさわぎになってしまうとは"
自分でやったことなのに、どこかげんじつみがなかったようです
赤ずきんちゃんは、あっというまに、
ざいあくかんで、むねが一杯になり、にげだしたくなりました
61: 2018/01/16(火) 22:24:24.569 ID:PdG0jdwG0.net
そのときです
子どもたちのあそんでいた近くのしげみから、
おおかみさんが出てきました
「ちっ、何でこんなに早く見つかったんだ」
おおかみさんは、あっという間にひなんしてしまった
村の人々のようすを見て、いさぎよくあきらめ、
かえっていきました
おおかみがかえっていくようすを見て、村の人たちは
大よろこびしました
もちろん、おおかみが村へ来ていたのは、たんなるぐうぜんです
「は、……え?」
このこうけいに、いちばんおどろいたのは、赤ずきんちゃんでした
子どもたちのあそんでいた近くのしげみから、
おおかみさんが出てきました
「ちっ、何でこんなに早く見つかったんだ」
おおかみさんは、あっという間にひなんしてしまった
村の人々のようすを見て、いさぎよくあきらめ、
かえっていきました
おおかみがかえっていくようすを見て、村の人たちは
大よろこびしました
もちろん、おおかみが村へ来ていたのは、たんなるぐうぜんです
「は、……え?」
このこうけいに、いちばんおどろいたのは、赤ずきんちゃんでした
63: 2018/01/16(火) 22:29:55.526 ID:PdG0jdwG0.net
「ありがとう、お姉ちゃん」
まっさきに、おおかみの近くであそんでいた
子供のうちの一人がかけよってきました
「う……あ……」
赤ずきんちゃんは、ばつがわるいようすでした
だって、赤ずきんちゃんは、
ただいやがらせをしようとしていただけなのです
「ほんとうに、ありがとうございました」
こんどは、その子の親たちが近づいてきました
まっさきに、おおかみの近くであそんでいた
子供のうちの一人がかけよってきました
「う……あ……」
赤ずきんちゃんは、ばつがわるいようすでした
だって、赤ずきんちゃんは、
ただいやがらせをしようとしていただけなのです
「ほんとうに、ありがとうございました」
こんどは、その子の親たちが近づいてきました
65: 2018/01/16(火) 22:37:46.047 ID:PdG0jdwG0.net
その他の人たちも、どんどんとあつまって来ました
「いやー、お姉ちゃんはいのちのおんじんだ」
「あんなにとおくにいた、おおかみに、気が付けたなんて」
「なんて、ゆうきのあるお姉ちゃんだ」
村の人たちが、次々と声をかけてきます
こんなに、こういてきな目をたくさん向けられたのは
赤ずきんちゃんにとって、初めてのけいけんでした
赤ずきんちゃんは、なんだか恥ずかしくなり
赤ずきんで、かおをかくしてしまいました
「いやー、お姉ちゃんはいのちのおんじんだ」
「あんなにとおくにいた、おおかみに、気が付けたなんて」
「なんて、ゆうきのあるお姉ちゃんだ」
村の人たちが、次々と声をかけてきます
こんなに、こういてきな目をたくさん向けられたのは
赤ずきんちゃんにとって、初めてのけいけんでした
赤ずきんちゃんは、なんだか恥ずかしくなり
赤ずきんで、かおをかくしてしまいました
67: 2018/01/16(火) 22:42:24.672 ID:PdG0jdwG0.net
「なー、赤ずきんの姉ちゃん、お礼にうちで食事してってよ」
「いやいや、うちで食べていって下さい」
赤ずきんちゃんは、ほんとうはその場から
にげだしたかったのですが、
村の人たちに、ごういんにひっぱられ、
お礼として、おもてなしをうけることになりました
「いやいや、うちで食べていって下さい」
赤ずきんちゃんは、ほんとうはその場から
にげだしたかったのですが、
村の人たちに、ごういんにひっぱられ、
お礼として、おもてなしをうけることになりました
68: 2018/01/16(火) 22:52:46.782 ID:PdG0jdwG0.net
その後、村の人たちとにぎやかにしょくたくをかこみました
「いやー、ほんとうにありがとうございました」
「赤ずきんの姉ちゃんいがい、だれもおおかみに気が付いていなかったんだよ」
そんなことを言われるたびに、赤ずきんちゃんは
ほんの少し、胸がいたみました
"ほんとうは、あんたらの困っているかおが見たくてやったのよ"
そんなこと、言えるはずがありません
うれしさと、はずさしさと、もうしわけなさで、
話しかけられるたびに、かおがまっかになりました
そして、そのたびに赤ずきんでかおをかくしてしまいました
そのようすから、しぜんと"赤ずきんちゃん"と
よばれるようになりました
「いやー、ほんとうにありがとうございました」
「赤ずきんの姉ちゃんいがい、だれもおおかみに気が付いていなかったんだよ」
そんなことを言われるたびに、赤ずきんちゃんは
ほんの少し、胸がいたみました
"ほんとうは、あんたらの困っているかおが見たくてやったのよ"
そんなこと、言えるはずがありません
うれしさと、はずさしさと、もうしわけなさで、
話しかけられるたびに、かおがまっかになりました
そして、そのたびに赤ずきんでかおをかくしてしまいました
そのようすから、しぜんと"赤ずきんちゃん"と
よばれるようになりました
69: 2018/01/16(火) 22:58:32.467 ID:PdG0jdwG0.net
村の人たちとの、しょくたくでのわだいの中心は、
ずっと赤ずきんちゃんでした
これも、赤ずきんちゃんにとって初めてのけいけんでした
赤ずきんちゃんは、そのじかんが、楽しくて、楽しくて
仕方がありませんでした
"なによ、いい人たちじゃない"
赤ずきんちゃんは小さな声でつぶやきました
こんな人たちに、なんてことをしてしまったのだろうか
ずっと赤ずきんちゃんでした
これも、赤ずきんちゃんにとって初めてのけいけんでした
赤ずきんちゃんは、そのじかんが、楽しくて、楽しくて
仕方がありませんでした
"なによ、いい人たちじゃない"
赤ずきんちゃんは小さな声でつぶやきました
こんな人たちに、なんてことをしてしまったのだろうか
70: 2018/01/16(火) 23:02:33.188 ID:PdG0jdwG0.net
赤ずきんちゃんは、その日、せけんに"いいほうこう"で
えいきょうを与えるよろこびを知りました
いやがらせをすることなんかより、今のきもちの方が
ずっとずっと、ここち良いのです
赤ずきんちゃんは、心の中で
村の人たちに、こう言いました
"たすけさせてくれて、ありがとう"
えいきょうを与えるよろこびを知りました
いやがらせをすることなんかより、今のきもちの方が
ずっとずっと、ここち良いのです
赤ずきんちゃんは、心の中で
村の人たちに、こう言いました
"たすけさせてくれて、ありがとう"
74: 2018/01/16(火) 23:14:39.122 ID:PdG0jdwG0.net
こんなよろこびを、またかんじてみたい
赤ずきんちゃんが、こんな気持ちになったのは
いつ振りでしょうか
いや、そもそも、そんなことがあったでしょうか
何をすれば、またこんなあたたかい気持ちが味わえるのか
赤ずきんちゃんは、考えながら、帰りました
赤ずきんちゃんが、こんな気持ちになったのは
いつ振りでしょうか
いや、そもそも、そんなことがあったでしょうか
何をすれば、またこんなあたたかい気持ちが味わえるのか
赤ずきんちゃんは、考えながら、帰りました
76: 2018/01/16(火) 23:21:15.927 ID:PdG0jdwG0.net
そうして考えながら帰り道を歩いていてると、
なんと、"人食いおおかみ"にそうぐうしてしまいました
「ん、うおっ」
おおかみさんは、知り合いにそうぐうしただけのような
軽い"りあくしょん"で、赤ずきんちゃんと"たいじ"しました
「ひっ……たすけ……あ……」
赤ずきんちゃんは、きょうふのあまり動けず、
大声も上手くだせませんでした
なんと、"人食いおおかみ"にそうぐうしてしまいました
「ん、うおっ」
おおかみさんは、知り合いにそうぐうしただけのような
軽い"りあくしょん"で、赤ずきんちゃんと"たいじ"しました
「ひっ……たすけ……あ……」
赤ずきんちゃんは、きょうふのあまり動けず、
大声も上手くだせませんでした
78: 2018/01/16(火) 23:30:15.214 ID:PdG0jdwG0.net
「あー、だいじょうぶ、おじょうさんは、食べないよ」
そんな赤ずきんちゃんに、おおかみさんはおちついて
声をかけました
「え、え……?」
あかずきんちゃんは、わけがわかりませんでした
"おおかみさんにあったら、かならず食べられてしまう"
そう思っていたのです
「さっき村での狩りにしっぱいしてな、
かわりに森でいのししを食べたから、はらがいっぱいなんだ」
そんな赤ずきんちゃんに、おおかみさんはおちついて
声をかけました
「え、え……?」
あかずきんちゃんは、わけがわかりませんでした
"おおかみさんにあったら、かならず食べられてしまう"
そう思っていたのです
「さっき村での狩りにしっぱいしてな、
かわりに森でいのししを食べたから、はらがいっぱいなんだ」
81: 2018/01/16(火) 23:34:05.891 ID:PdG0jdwG0.net
「"不要な狩り"はしないのが、にくしょくどうぶつのほこりなのさ」
聞いてもいないのに、おおかみさんが、かっこうつけながら、
教えてくれました
"なんだよ、人を食わなくてもいいのかよ"
赤ずきんちゃんは心の中でつっこみました
「じゃあな」
去っていこうとするおおかみさんに、赤ずきんちゃんは、
思いきって声をかけました
「な、何で……人を食べるの?」
聞いてもいないのに、おおかみさんが、かっこうつけながら、
教えてくれました
"なんだよ、人を食わなくてもいいのかよ"
赤ずきんちゃんは心の中でつっこみました
「じゃあな」
去っていこうとするおおかみさんに、赤ずきんちゃんは、
思いきって声をかけました
「な、何で……人を食べるの?」
87: 2018/01/16(火) 23:51:15.599 ID:PdG0jdwG0.net
「いや、そんなに俺、人を食わないぞ」
「……え?」
「そんなに人間ばっかり狩ってても、俺の方がもたないしな」
"確かに"と赤ずきんちゃんは、なぜかなっとくしてしまいました
「まあでも、食いたいものを狩る、これがきほんだな」
おおかみさんはつづけます
「"やりたいことをやる"、おじょうさんは、そうじゃないのか?」
"やりたいこと?"
赤ずきんちゃんは、なんのへんとうも出来ずにとまどってしまいました
"やりたいこと"って何?、そんなこと、考えたこともない
「……え?」
「そんなに人間ばっかり狩ってても、俺の方がもたないしな」
"確かに"と赤ずきんちゃんは、なぜかなっとくしてしまいました
「まあでも、食いたいものを狩る、これがきほんだな」
おおかみさんはつづけます
「"やりたいことをやる"、おじょうさんは、そうじゃないのか?」
"やりたいこと?"
赤ずきんちゃんは、なんのへんとうも出来ずにとまどってしまいました
"やりたいこと"って何?、そんなこと、考えたこともない
89: 2018/01/16(火) 23:59:51.210 ID:PdG0jdwG0.net
「まあ、おれは、いっぴきおおかみだからな
自分の生きたいように生きていくさ」
そういうと、おおかみさんは、
赤ずきんちゃんの前からすがたを消しました
いつのまにか、おおかみさんへのきょうふはなくなっていました
自分の生きたいように生きていくさ」
そういうと、おおかみさんは、
赤ずきんちゃんの前からすがたを消しました
いつのまにか、おおかみさんへのきょうふはなくなっていました
90: 2018/01/17(水) 00:02:21.173 ID:UIoq7Bth0.net
そして、しばらくそのばに立ちつくし、おおかみさんの言ったことを
あたまの中で考えました
生きたいように生きる?何それ?
それは、今まで赤ずきんちゃんの中にはなかった"がいねん"でした
私は、どういうふうに生きたいんだろう
赤ずきんちゃんは、村でのことを思い返しました
あたまの中で考えました
生きたいように生きる?何それ?
それは、今まで赤ずきんちゃんの中にはなかった"がいねん"でした
私は、どういうふうに生きたいんだろう
赤ずきんちゃんは、村でのことを思い返しました
91: 2018/01/17(水) 00:05:51.530 ID:UIoq7Bth0.net
「ただいま」
かえってきた、赤ずきんちゃんのそんな一言に
おばあさんは、おおよろこびでした
ちゃんとかいものをしてくれた上に、"ただいま"なんて、言ってくれて
おばあさんはおおげさになんども"ありがとう"とくりかえしました
「うっせ、これで早く、めしつくればばぁ」
赤ずきんちゃんは、今日のできごとを
きっかけに、少しずつですが、かわっていきました
かえってきた、赤ずきんちゃんのそんな一言に
おばあさんは、おおよろこびでした
ちゃんとかいものをしてくれた上に、"ただいま"なんて、言ってくれて
おばあさんはおおげさになんども"ありがとう"とくりかえしました
「うっせ、これで早く、めしつくればばぁ」
赤ずきんちゃんは、今日のできごとを
きっかけに、少しずつですが、かわっていきました
93: 2018/01/17(水) 00:09:06.116 ID:UIoq7Bth0.net
次の日、赤ずきんちゃんがいつものように
おそい時間に起きると、すでにおばあさんは、
いそがしそうに、いえじゅうをかけまわっていました
「おい、ばばあ!」
赤ずきんちゃんは、おばあさんを
大声でどなりつけました
「あ、あら、おはよう、どうしたの?」
おばあさんは、すこしびくつきながら
赤ずきんちゃんのほうを、見ました
「な、何か、手伝うこととか、ないのかよ」
おそい時間に起きると、すでにおばあさんは、
いそがしそうに、いえじゅうをかけまわっていました
「おい、ばばあ!」
赤ずきんちゃんは、おばあさんを
大声でどなりつけました
「あ、あら、おはよう、どうしたの?」
おばあさんは、すこしびくつきながら
赤ずきんちゃんのほうを、見ました
「な、何か、手伝うこととか、ないのかよ」
96: 2018/01/17(水) 00:18:19.163 ID:UIoq7Bth0.net
赤ずきんちゃんのそんな声に、
おばあさんは、おどろきのあまり、
あぜんとしてしまいました
「へ、別に、ないんだったら、いいのよ、ないんだったら」
赤ずきんちゃんは、はずかしくなり、顔をまっかにし、
下を向いてしまいました
「ふ、ふんっ」
赤ずきんちゃんは、かおを赤くしたまま、
いすにすわりました
おばあさんは、おどろきのあまり、
あぜんとしてしまいました
「へ、別に、ないんだったら、いいのよ、ないんだったら」
赤ずきんちゃんは、はずかしくなり、顔をまっかにし、
下を向いてしまいました
「ふ、ふんっ」
赤ずきんちゃんは、かおを赤くしたまま、
いすにすわりました
97: 2018/01/17(水) 00:21:00.848 ID:UIoq7Bth0.net
おばあさんは、まだぽかんとしながら、
赤ずきんちゃんをみています
「な、何みてんのよ、ばばあ、ぶっころすわよ」
あかずきんちゃんの、その"どなりごえ"には
おばあさんは、おびえることはありませんでした
赤ずきんちゃんをみています
「な、何みてんのよ、ばばあ、ぶっころすわよ」
あかずきんちゃんの、その"どなりごえ"には
おばあさんは、おびえることはありませんでした
98: 2018/01/17(水) 00:24:52.528 ID:UIoq7Bth0.net
――すうじつご
「おいばばあ、ふざけんな」
家には、いつものように
赤ずきんちゃんのどなり声が、ひびきわたります
「"水くみ"は、私がやるって、いったでしょ!
かってにやんないでよ」
「ごめんね、ごめんね」
くそっ
あいかわらず、むかつくばばぁだ
すぐにあやまりやがって
だいたい、足をいためているんじゃあないのかよ
わたしがやるっていったら、やるんだから
やらせなさいよ
「おいばばあ、ふざけんな」
家には、いつものように
赤ずきんちゃんのどなり声が、ひびきわたります
「"水くみ"は、私がやるって、いったでしょ!
かってにやんないでよ」
「ごめんね、ごめんね」
くそっ
あいかわらず、むかつくばばぁだ
すぐにあやまりやがって
だいたい、足をいためているんじゃあないのかよ
わたしがやるっていったら、やるんだから
やらせなさいよ
100: 2018/01/17(水) 00:32:46.684 ID:UIoq7Bth0.net
赤ずきんちゃんは、その日、
ばんご飯のじゅんびも手伝いました
ほうちょうを使ったり、火をたいたり、
赤ずきんちゃんは、ほとんどやったことがありませんでしたので、
おばあさんが一人でやるよりも、ずっと時間がかかってしまいました
「さあ、いただこうかねえ」
けっきょく、ごはんを食べはじめるのが、いつもより、ずうっとおそくなってしまいました
赤ずきんちゃんは、自分が"あしでまとい"だったことを
じかくしていましたので、むすっとしていました
なによこれ
ごはんを作るのって、こんなにたいへんだったの?
ばんご飯のじゅんびも手伝いました
ほうちょうを使ったり、火をたいたり、
赤ずきんちゃんは、ほとんどやったことがありませんでしたので、
おばあさんが一人でやるよりも、ずっと時間がかかってしまいました
「さあ、いただこうかねえ」
けっきょく、ごはんを食べはじめるのが、いつもより、ずうっとおそくなってしまいました
赤ずきんちゃんは、自分が"あしでまとい"だったことを
じかくしていましたので、むすっとしていました
なによこれ
ごはんを作るのって、こんなにたいへんだったの?
101: 2018/01/17(水) 00:34:12.173 ID:UIoq7Bth0.net
「今日は、手伝ってくれて、ありがとうねえ」
おばあさんは、にこにこしながら、言いました
「おかげで、おばあちゃん、とっても助かっちゃった」
何いってんのよ、このばばぁ
そんなわけないじゃない
私が手伝ったせいで、ばんご飯がこんなにおくれてしまったのよ
赤ずきんちゃんに、おばあさんのやさしさが、しみわたります
おばあさんは、にこにこしながら、言いました
「おかげで、おばあちゃん、とっても助かっちゃった」
何いってんのよ、このばばぁ
そんなわけないじゃない
私が手伝ったせいで、ばんご飯がこんなにおくれてしまったのよ
赤ずきんちゃんに、おばあさんのやさしさが、しみわたります
102: 2018/01/17(水) 00:35:31.005 ID:UIoq7Bth0.net
赤ずきんちゃんは、ご飯がおくれたせいで、
おばあさんにどなりつけた"かこ"を、思い出して、
むねがいっぱいになりました
赤ずきんちゃんは、いそいでご飯をたいらげると、
「今日はもう、ねる」
そういって、じぶんのべっどにもぐりこみました
赤ずきんちゃんは、おばあさんのかおが
みれませんでした
おばあさんにどなりつけた"かこ"を、思い出して、
むねがいっぱいになりました
赤ずきんちゃんは、いそいでご飯をたいらげると、
「今日はもう、ねる」
そういって、じぶんのべっどにもぐりこみました
赤ずきんちゃんは、おばあさんのかおが
みれませんでした
103: 2018/01/17(水) 00:43:06.665 ID:UIoq7Bth0.net
赤ずきんちゃんは、"あたま"まで、
すっぽりとふとんをかぶりました
そして、ひとばんじゅう、つぶやきました
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい
"今まで自分がどんなことをしていたか"
"おばあさんが、どんなにやさしかったか"
それに、しょうめんから向き合っていました
外からは見えませんが、
赤ずきんちゃんのかおは、"なみだ"と"はなみず"で
ぐちゃぐちゃでした
すっぽりとふとんをかぶりました
そして、ひとばんじゅう、つぶやきました
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい
"今まで自分がどんなことをしていたか"
"おばあさんが、どんなにやさしかったか"
それに、しょうめんから向き合っていました
外からは見えませんが、
赤ずきんちゃんのかおは、"なみだ"と"はなみず"で
ぐちゃぐちゃでした
105: 2018/01/17(水) 00:47:47.079 ID:UIoq7Bth0.net
次の日、赤ずきんちゃんが目を覚ますと、
いえにおばあさんはいませんでした
しかし、いつもどおり、赤ずきんちゃんの分の
朝食が"いつものばしょ"におかれていました
「あのばばあ、いったい、何時に起きているんだ」
赤ずきんちゃんは、小さな声で、つぶやきました
そのことに気が付いたのも、赤ずきんちゃんは、初めてです
このじかん、おばあさんは、近くへ野草をつみに
行っていることが分かっていたので、
帰って来るまでに、自分のしょっきを
あらっておくことにしました
いえにおばあさんはいませんでした
しかし、いつもどおり、赤ずきんちゃんの分の
朝食が"いつものばしょ"におかれていました
「あのばばあ、いったい、何時に起きているんだ」
赤ずきんちゃんは、小さな声で、つぶやきました
そのことに気が付いたのも、赤ずきんちゃんは、初めてです
このじかん、おばあさんは、近くへ野草をつみに
行っていることが分かっていたので、
帰って来るまでに、自分のしょっきを
あらっておくことにしました
107: 2018/01/17(水) 00:51:07.822 ID:UIoq7Bth0.net
当たり前のことのようですが、
赤ずきんちゃんにとっては、そうではありませんでした
洗いおわると、赤ずきんちゃんは、
そわそわしながら、おばあさんが、
かえってくるのをまちました
しかし、いつまでまっても、
おばあさんは、かえってきません
赤ずきんちゃんは、ようすをみに
おばあさんの居そうな所へ
行ってみることにしました
赤ずきんちゃんにとっては、そうではありませんでした
洗いおわると、赤ずきんちゃんは、
そわそわしながら、おばあさんが、
かえってくるのをまちました
しかし、いつまでまっても、
おばあさんは、かえってきません
赤ずきんちゃんは、ようすをみに
おばあさんの居そうな所へ
行ってみることにしました
109: 2018/01/17(水) 00:54:31.102 ID:UIoq7Bth0.net
おばあさんは、ただ"野草取り"に
むちゅうになっていただけでした
しゃがみながら、せっせと作業をする
おばあさんは、近づいてくる赤ずきんちゃんに
先に気が付きました
おばあさんが立ち上がって、赤ずきんちゃんの元へ
歩いて行こうとしたところ、
つい、つまずいてころんでしまいました
むちゅうになっていただけでした
しゃがみながら、せっせと作業をする
おばあさんは、近づいてくる赤ずきんちゃんに
先に気が付きました
おばあさんが立ち上がって、赤ずきんちゃんの元へ
歩いて行こうとしたところ、
つい、つまずいてころんでしまいました
111: 2018/01/17(水) 00:56:57.675 ID:UIoq7Bth0.net
おばあさんは、ずっとしゃがんでいたので、
足がつかれてしまっていたのです
その"たいみんぐ"で、赤ずきんちゃんは、
おばあさんをはっけんします
「くそ、あのばばあ、こんなところでたおれてやがる」
かんちがいした赤ずきんちゃんは、
いそいでおばあさんの元へかけよりました
足がつかれてしまっていたのです
その"たいみんぐ"で、赤ずきんちゃんは、
おばあさんをはっけんします
「くそ、あのばばあ、こんなところでたおれてやがる」
かんちがいした赤ずきんちゃんは、
いそいでおばあさんの元へかけよりました
113: 2018/01/17(水) 01:02:30.802 ID:UIoq7Bth0.net
「立てるか、おい」
赤ずきんちゃんが、あわてたようすで
おばあさんに声をかけます
「ああ、ごめんねえ」
おばあさんは、うっかりつまずいただけでしたので
すぐに立とうとしましたが、それより前に、
赤ずきんちゃんが、おばあさんに向けて、
うしろむきにしゃがみました
「ほら、はやくのっかりなさいよ」
赤ずきんちゃんは、おばあさんが、せつめいする間もなく
ごういんにおぶっていきました
赤ずきんちゃんが、あわてたようすで
おばあさんに声をかけます
「ああ、ごめんねえ」
おばあさんは、うっかりつまずいただけでしたので
すぐに立とうとしましたが、それより前に、
赤ずきんちゃんが、おばあさんに向けて、
うしろむきにしゃがみました
「ほら、はやくのっかりなさいよ」
赤ずきんちゃんは、おばあさんが、せつめいする間もなく
ごういんにおぶっていきました
114: 2018/01/17(水) 01:05:17.110 ID:UIoq7Bth0.net
おばあさんはびっくりしました
まさか、この子に、おぶわれる日が来るなんて
いつの間に、こんなに大きくなって
おばあさんは、赤ずきんちゃんのせなかの
ぬくもりの心地よさを、かんじ、
ただつまずきただけ、ということはだまって
いることにしました
"ごめんね、家まで、このままでいさせて"
おばあさんは、心の中で、もう一言、あやまりました
あなたは、本当は、やさしいこ
おばあちゃんは、ずっと分かっていたんだからね
おばあさんは、赤ずきんちゃんのせなかで
なみだをながしていました
まさか、この子に、おぶわれる日が来るなんて
いつの間に、こんなに大きくなって
おばあさんは、赤ずきんちゃんのせなかの
ぬくもりの心地よさを、かんじ、
ただつまずきただけ、ということはだまって
いることにしました
"ごめんね、家まで、このままでいさせて"
おばあさんは、心の中で、もう一言、あやまりました
あなたは、本当は、やさしいこ
おばあちゃんは、ずっと分かっていたんだからね
おばあさんは、赤ずきんちゃんのせなかで
なみだをながしていました
116: 2018/01/17(水) 01:07:35.534 ID:UIoq7Bth0.net
家につくと、赤ずきんちゃんは、おばあさんを
"べっど"にねかせました
「あ、あのね、実は……」
「うるさい、だまれ、ばばぁ」
おばあさんが、ほんとうのことを話そうとすると、
赤ずきんちゃんに一喝されてしまいました
「いいから、今日はもうだまってねてなさい」
「いえのことは、ぜんぶ私がやるから、"しじ"だけだしてくれればいいの」
赤ずきんちゃんのあまりのたのもしさに、おばあさんは
ふたたび、なみだをながしてしまいました
"べっど"にねかせました
「あ、あのね、実は……」
「うるさい、だまれ、ばばぁ」
おばあさんが、ほんとうのことを話そうとすると、
赤ずきんちゃんに一喝されてしまいました
「いいから、今日はもうだまってねてなさい」
「いえのことは、ぜんぶ私がやるから、"しじ"だけだしてくれればいいの」
赤ずきんちゃんのあまりのたのもしさに、おばあさんは
ふたたび、なみだをながしてしまいました
118: 2018/01/17(水) 01:09:30.960 ID:UIoq7Bth0.net
それをかくすように、頭まで、すっぽりとふとんをかぶったせいで、
打ち明けるきっかけをうしなってしまいました
「とりあえず、おきっぱなしにした野草を取ってくるから、
もどってきたら、やることをおしえなさいよ」
おばあさんは、赤ずきんちゃんがもどってくるまでに
なみだでぐしゃぐしゃになったかおを、
どうにかしなければなりませんでしたので、"おおいそがし"でした
打ち明けるきっかけをうしなってしまいました
「とりあえず、おきっぱなしにした野草を取ってくるから、
もどってきたら、やることをおしえなさいよ」
おばあさんは、赤ずきんちゃんがもどってくるまでに
なみだでぐしゃぐしゃになったかおを、
どうにかしなければなりませんでしたので、"おおいそがし"でした
120: 2018/01/17(水) 01:13:40.185 ID:UIoq7Bth0.net
――
「はい、野草もってきたわよ、あと今日は何をすればいいのかしら」
「ごめんね、今日は、これを村に売りに行こうとおもっていいたの、おねがい出来るかい」
おばあさんは、赤ずきんちゃんのあまりのたのもしさに、
心をうたれ、今日はたよってみることにしました
「……はぁ?何これ、だいじにしていた時計じゃない。何でこれを売るのよ」
「これを売らないと、しょくりょうが買えないんだよ、ごめんね」
赤ずきんちゃんは、この時はじめて、自分のいえの
"けいざいじょうたい"に気が付きました
「はい、野草もってきたわよ、あと今日は何をすればいいのかしら」
「ごめんね、今日は、これを村に売りに行こうとおもっていいたの、おねがい出来るかい」
おばあさんは、赤ずきんちゃんのあまりのたのもしさに、
心をうたれ、今日はたよってみることにしました
「……はぁ?何これ、だいじにしていた時計じゃない。何でこれを売るのよ」
「これを売らないと、しょくりょうが買えないんだよ、ごめんね」
赤ずきんちゃんは、この時はじめて、自分のいえの
"けいざいじょうたい"に気が付きました
121: 2018/01/17(水) 01:16:19.409 ID:UIoq7Bth0.net
――
赤ずきんちゃんは、考えごとをしながら、村へと向かいました
はあ?
しょくりょうが買えないって、何よそれ
いみわかんない
だから、あんなにがんばって、野草をあつめていたの?
だから、あんなにやせてしまったの?
だから、今日たおれてしまったの?
だから……
赤ずきんちゃんは、あるきながら、なみだをながしていました
今日は、おばあさんが"かろう"でたおれたものだと
かんちがいしたままでしたから、"ざいあくかん"で
いっぱいになりました
赤ずきんちゃんは、考えごとをしながら、村へと向かいました
はあ?
しょくりょうが買えないって、何よそれ
いみわかんない
だから、あんなにがんばって、野草をあつめていたの?
だから、あんなにやせてしまったの?
だから、今日たおれてしまったの?
だから……
赤ずきんちゃんは、あるきながら、なみだをながしていました
今日は、おばあさんが"かろう"でたおれたものだと
かんちがいしたままでしたから、"ざいあくかん"で
いっぱいになりました
169: 2018/01/17(水) 10:35:14.934 ID:UIoq7Bth0.net
「あら、赤ずきんちゃんじゃないの」
村につくなり、いきなり村の女に声をかけられました
「赤ずきんのお姉ちゃん、こんにちは」
こんどは、その女性の子供らしき子が声をかけてきます
「こ、こ、こん……こんにち……」
あるいているだけで、声をかけられるなんて、初めてのことでしたので、
赤ずきんちゃんは、とまどってしまい、じょうずにへんじができませんでした
「ねー、お姉ちゃん、あそぼうよー」
「こら、お姉ちゃんはいそがしいのよ、やめなさい」
"この人はいそがしい"
そう言われて、赤ずきんちゃんは、少しどうようしました
"いそがしい"ということばが、いやみにかんじてしまったじぶんは
すこしゆがんでいるのではないか、と思ってしまいました
村につくなり、いきなり村の女に声をかけられました
「赤ずきんのお姉ちゃん、こんにちは」
こんどは、その女性の子供らしき子が声をかけてきます
「こ、こ、こん……こんにち……」
あるいているだけで、声をかけられるなんて、初めてのことでしたので、
赤ずきんちゃんは、とまどってしまい、じょうずにへんじができませんでした
「ねー、お姉ちゃん、あそぼうよー」
「こら、お姉ちゃんはいそがしいのよ、やめなさい」
"この人はいそがしい"
そう言われて、赤ずきんちゃんは、少しどうようしました
"いそがしい"ということばが、いやみにかんじてしまったじぶんは
すこしゆがんでいるのではないか、と思ってしまいました
170: 2018/01/17(水) 10:39:41.701 ID:UIoq7Bth0.net
「うちのみせだって、いそがしいのよ。ほら、あんたも手伝うのよ、きなさい」
「えー」
「しかなたいじゃない、こないだ一人やめてしまったんだから。
ねこの手でもガキの手でもかりたいじょうきょうなのよ」
そういうと、女性は明るく、わははっと笑いました
「あー、早くあたらしい人、入ってくれないかねぇ」
そう言いながら、かるくえしゃくをしながら、去って行こうとする女性に
赤ずきんちゃんは、ありったけのゆうきをふりしぼって、さけびました
「あ、あのっ」
女性はおどろいて、赤ずきんちゃんの方へふりかえります
「そ、それって、そのしごとって……その……」
「わ、私にも……できますか?」
赤ずきんちゃんは、がけから身を投げたような、しんきょうでした
「えー」
「しかなたいじゃない、こないだ一人やめてしまったんだから。
ねこの手でもガキの手でもかりたいじょうきょうなのよ」
そういうと、女性は明るく、わははっと笑いました
「あー、早くあたらしい人、入ってくれないかねぇ」
そう言いながら、かるくえしゃくをしながら、去って行こうとする女性に
赤ずきんちゃんは、ありったけのゆうきをふりしぼって、さけびました
「あ、あのっ」
女性はおどろいて、赤ずきんちゃんの方へふりかえります
「そ、それって、そのしごとって……その……」
「わ、私にも……できますか?」
赤ずきんちゃんは、がけから身を投げたような、しんきょうでした
173: 2018/01/17(水) 10:57:34.665 ID:UIoq7Bth0.net
「ん、何だ、赤ずきんちゃんがうちでしごとをするってかい?」
女性が、赤ずきんちゃんをじろじろ見てきます
やだ、やっぱりへんに思われた
やっぱり、私なんかじゃだめだったのかな
でも、だったら、どうしたらいいのかな
赤ずきんちゃんは、まだ返事をもらう前でしたが、
自信のなさからか、きえいりそうになっていました
「だって、お金をかせがないと、私 ……」
「いえが……おかねが……食べるものがないんだもの……」
気が付くと、赤ずきんちゃんは、ふたたびなみだを流していました
「私が……私がやらないと……おうちが……もう……」
そのようすを見て、女性はけっしんをしました
女性が、赤ずきんちゃんをじろじろ見てきます
やだ、やっぱりへんに思われた
やっぱり、私なんかじゃだめだったのかな
でも、だったら、どうしたらいいのかな
赤ずきんちゃんは、まだ返事をもらう前でしたが、
自信のなさからか、きえいりそうになっていました
「だって、お金をかせがないと、私 ……」
「いえが……おかねが……食べるものがないんだもの……」
気が付くと、赤ずきんちゃんは、ふたたびなみだを流していました
「私が……私がやらないと……おうちが……もう……」
そのようすを見て、女性はけっしんをしました
174: 2018/01/17(水) 11:11:17.516 ID:UIoq7Bth0.net
「とりあえず、ついといで、ほら行くよ」
女性は赤ずきんちゃんをうながしました
「わーい、お姉ちゃん、いっしょに行こう」
「うちの仕事は"らく"じゃあないからね、かくごしなよ」
わははっ、と明るく笑いかけてくれる女性のすがたと、
明るく手をひっぱてくれる子供のすがたが、
あたたかくて、
うれしくて、
ここちよくて、
赤ずきんちゃんは、あふれでて止まらないなみだをかくすため
赤ずきんで顔をかくしながら、歩いていきました
女性は赤ずきんちゃんをうながしました
「わーい、お姉ちゃん、いっしょに行こう」
「うちの仕事は"らく"じゃあないからね、かくごしなよ」
わははっ、と明るく笑いかけてくれる女性のすがたと、
明るく手をひっぱてくれる子供のすがたが、
あたたかくて、
うれしくて、
ここちよくて、
赤ずきんちゃんは、あふれでて止まらないなみだをかくすため
赤ずきんで顔をかくしながら、歩いていきました
176: 2018/01/17(水) 11:22:09.249 ID:UIoq7Bth0.net
そのみせは、"いんしょくてん"でした
「おーい、早くちゅうもんたのむー」
「おあいそ、してくれー」
赤ずきんちゃんたちがついたときには
おみせの中は、てんてこまいになっていました
そのようすを見て、赤ずきんちゃんは、びっくりしてしまいました
"ここで、私がはたらけるだろうか"
そんな不安でいっぱいになっていると、女性が店のおくから、
ふくろをもってきて、赤ずきんちゃんに手わたしました
「え、何これ?……お金……?」
「おーい、早くちゅうもんたのむー」
「おあいそ、してくれー」
赤ずきんちゃんたちがついたときには
おみせの中は、てんてこまいになっていました
そのようすを見て、赤ずきんちゃんは、びっくりしてしまいました
"ここで、私がはたらけるだろうか"
そんな不安でいっぱいになっていると、女性が店のおくから、
ふくろをもってきて、赤ずきんちゃんに手わたしました
「え、何これ?……お金……?」
178: 2018/01/17(水) 11:26:28.551 ID:UIoq7Bth0.net
「うちは、"げっきゅうせい"だからね、本当ははたらいた後に
きゅうりょうをわたすんだけど、今回は"とくべつ"さ」
「や……こんなにたくさん……」
「"まえきん"ってやつさ、きゅうりょうの一部を先にわたしているだけよ」
え、うそ
なにこれ、こんなにもらっていいの?
「あんたは、うちの子供の"おんじん"だからね。じじょうは知らないけど
こういうときは、おたがいさまってやつさ」
「あ、ありがとう……ありがとうございます」
"ありがとう"
赤ずきんちゃんが、そんなことばを言ったのは、なんねんぶりでしょうか
きゅうりょうをわたすんだけど、今回は"とくべつ"さ」
「や……こんなにたくさん……」
「"まえきん"ってやつさ、きゅうりょうの一部を先にわたしているだけよ」
え、うそ
なにこれ、こんなにもらっていいの?
「あんたは、うちの子供の"おんじん"だからね。じじょうは知らないけど
こういうときは、おたがいさまってやつさ」
「あ、ありがとう……ありがとうございます」
"ありがとう"
赤ずきんちゃんが、そんなことばを言ったのは、なんねんぶりでしょうか
180: 2018/01/17(水) 11:39:03.869 ID:UIoq7Bth0.net
「今日はそれで、なにかおいしいものでも家に買ってかえりなよ」
「ありがとう……ありがとう」
"ありがとう"もうそのことばしか、出てきませんでした
「はっはっ、明日から、そのぶんこき使ってやるから、かくごをしなよ」
女性は、どびっきりの笑顔で赤ずきんちゃんを見送りました
赤ずきんちゃんは、なみだが見えないよう、赤ずきんで
顔をかくすことでせいいっぱいでした
「ありがとう……ありがとう」
"ありがとう"もうそのことばしか、出てきませんでした
「はっはっ、明日から、そのぶんこき使ってやるから、かくごをしなよ」
女性は、どびっきりの笑顔で赤ずきんちゃんを見送りました
赤ずきんちゃんは、なみだが見えないよう、赤ずきんで
顔をかくすことでせいいっぱいでした
182: 2018/01/17(水) 11:47:29.127 ID:UIoq7Bth0.net
"なんてたくましくて、笑顔のすてきな女性だろう"
赤ずきんちゃんは、そんなことを考え、
おおかみさんの言っていたことを思い返していました
"じぶんの生きたい生き方"なんて、分からないけど、
できるなら、私もあんなふうに生きてみたい
赤ずきんちゃんは、そんなことを考え、
おおかみさんの言っていたことを思い返していました
"じぶんの生きたい生き方"なんて、分からないけど、
できるなら、私もあんなふうに生きてみたい
183: 2018/01/17(水) 11:53:40.582 ID:UIoq7Bth0.net
「ただいま」
赤ずきんちゃんは、いきようようと、きたくしました
「おかえり、ぶじだったかい?」
「うっさいばばぁ、あんたは自分のからだをしんぱいしてなさいよ」
「そ、そうだよね、ごめんね、ごめんね」
赤ずきんちゃんはたくさんのにもつをおばあさんの前に置きました
「しょくりょうをたくさん買ってきたわ。これで、えいようをつければいいわ」
「ねえ、もしかして……」
おばあさんは、しんぱいをしてしまいました
「あのとけいを売ったお金をぜんぶ使ってしまったのかい?」
赤ずきんちゃんは、いきようようと、きたくしました
「おかえり、ぶじだったかい?」
「うっさいばばぁ、あんたは自分のからだをしんぱいしてなさいよ」
「そ、そうだよね、ごめんね、ごめんね」
赤ずきんちゃんはたくさんのにもつをおばあさんの前に置きました
「しょくりょうをたくさん買ってきたわ。これで、えいようをつければいいわ」
「ねえ、もしかして……」
おばあさんは、しんぱいをしてしまいました
「あのとけいを売ったお金をぜんぶ使ってしまったのかい?」
185: 2018/01/17(水) 12:00:19.167 ID:UIoq7Bth0.net
「ううん、あのとけいは、売ってこなかったわ」
赤ずきんちゃんは、おばあさんに時計を手わたしました
「まったく、だいじな時計なんでしょう、ちゃんとだいじにもってなさいよね」
「え……え?」
おばあさんは、わけがわからず、こんらんしてしまいました
「明日から、はたらくことにしたの、これは"まえきん"でかったのよ」
赤ずきんちゃんは、"まえきん"という
覚えたてのことばを、使いたくてしかたがありませんでした
そんな赤ずきんちゃんの"どうでもいい"じまんなどあたまに入らず、
おばあさんは、ただぼうぜんとしていました
"はたらく?"
"あの子が?"
赤ずきんちゃんは、おばあさんに時計を手わたしました
「まったく、だいじな時計なんでしょう、ちゃんとだいじにもってなさいよね」
「え……え?」
おばあさんは、わけがわからず、こんらんしてしまいました
「明日から、はたらくことにしたの、これは"まえきん"でかったのよ」
赤ずきんちゃんは、"まえきん"という
覚えたてのことばを、使いたくてしかたがありませんでした
そんな赤ずきんちゃんの"どうでもいい"じまんなどあたまに入らず、
おばあさんは、ただぼうぜんとしていました
"はたらく?"
"あの子が?"
186: 2018/01/17(水) 12:14:38.013 ID:UIoq7Bth0.net
「明日から、その"まえきん"をくれたところではたらくから、家のことはできなくなるわ」
「だから……その……」
赤ずきんちゃんは、赤ずきんでかおをかくしながら言いました
「今日のうちに……さっさと体をなおしなさいよ、ばばぁ」
"いつのまに、あの子がこんな……"
おばあさんは、うれしさと、こんわくと、
いろいろなかんじょうがまじりあい、出てくるなみだをかくすため、
ふとんを頭までかぶってしまいました
「ばんご飯が出来たら起こすから、それまでねてなさいよね」
赤ずきんちゃんは、買ってきたしょくりょうで、
自分なりにごはんを作りはじめました
「だから……その……」
赤ずきんちゃんは、赤ずきんでかおをかくしながら言いました
「今日のうちに……さっさと体をなおしなさいよ、ばばぁ」
"いつのまに、あの子がこんな……"
おばあさんは、うれしさと、こんわくと、
いろいろなかんじょうがまじりあい、出てくるなみだをかくすため、
ふとんを頭までかぶってしまいました
「ばんご飯が出来たら起こすから、それまでねてなさいよね」
赤ずきんちゃんは、買ってきたしょくりょうで、
自分なりにごはんを作りはじめました
187: 2018/01/17(水) 12:19:09.673 ID:UIoq7Bth0.net
「おいしそうだねえ、いただきます」
「……」
おばあさんは、うれしそうに赤ずきんちゃんの作ったご飯を
食べていますが、赤ずきんちゃんはどこかふきげんです
「おいしいわぁ、ほんとうにおいしい」
おばあさんがそんなことを言うたびに、
赤ずきんちゃんのこころにことばがしみわたります
「……」
おばあさんは、うれしそうに赤ずきんちゃんの作ったご飯を
食べていますが、赤ずきんちゃんはどこかふきげんです
「おいしいわぁ、ほんとうにおいしい」
おばあさんがそんなことを言うたびに、
赤ずきんちゃんのこころにことばがしみわたります
189: 2018/01/17(水) 12:23:09.971 ID:UIoq7Bth0.net
これがおいしい?
そんなわけないじゃない
赤ずきんちゃんは、ちょっと良いしょくざいを使いましたが、
ちょうりほうほうが、めちゃくちゃだったので、
あまりおいしくなく、"たからの持ちぐされ料理"
となってしまったのです
くそっ、みてなさいよ
私は、明日から"いんしょくてん"で、はらたくのよ
いつか、"えんぎ"じゃなく、ほんとうにおいしいって言わせてやるんだから
そんなわけないじゃない
赤ずきんちゃんは、ちょっと良いしょくざいを使いましたが、
ちょうりほうほうが、めちゃくちゃだったので、
あまりおいしくなく、"たからの持ちぐされ料理"
となってしまったのです
くそっ、みてなさいよ
私は、明日から"いんしょくてん"で、はらたくのよ
いつか、"えんぎ"じゃなく、ほんとうにおいしいって言わせてやるんだから
190: 2018/01/17(水) 12:29:02.996 ID:UIoq7Bth0.net
――よくじつ
「ちょっと、お姉ちゃん、注文まだかー」
「さっきたのんだのと、ちがうものがきてるぞー」
赤ずきんちゃんは、軽いぱにっくじょうたいにおちいってました
「えっと、えと、次はどうしたら……」
「おい姉ちゃん、はやくー」
「ひ、は、はい」
赤ずきんちゃんは、てんやわんやのお店にたいおうできず、
てんぱってしまっていました
「ちょっと、お姉ちゃん、注文まだかー」
「さっきたのんだのと、ちがうものがきてるぞー」
赤ずきんちゃんは、軽いぱにっくじょうたいにおちいってました
「えっと、えと、次はどうしたら……」
「おい姉ちゃん、はやくー」
「ひ、は、はい」
赤ずきんちゃんは、てんやわんやのお店にたいおうできず、
てんぱってしまっていました
193: 2018/01/17(水) 12:39:39.415 ID:UIoq7Bth0.net
「はいよー、ちょっとまってね、お客さん」
すかさず、昨日の女性がふぉろーに入ってくれます
赤ずきんちゃんは、くやしくてしかたがありませんでした
このお店の、女性の、"恩にむくいたい"
そんな気持ちでがんばろうと思っていましたが、
自分の力のなさに
あこがれの女性との"力の差""きょりの遠さに"
なさけなくなってしまいました
「え、えっと、次はどうしよう……」
すかさず、昨日の女性がふぉろーに入ってくれます
赤ずきんちゃんは、くやしくてしかたがありませんでした
このお店の、女性の、"恩にむくいたい"
そんな気持ちでがんばろうと思っていましたが、
自分の力のなさに
あこがれの女性との"力の差""きょりの遠さに"
なさけなくなってしまいました
「え、えっと、次はどうしよう……」
194: 2018/01/17(水) 12:47:21.601 ID:UIoq7Bth0.net
――その日のおわり
とっても長い一日のしごとをおえた、赤ずきんちゃんは
"ひそうかん"でいっぱいでした
"ほんとうに何も出来ないのね、私は"
赤ずきんちゃんのあたまの中はそんな考えで一杯でした
「や、お疲れさん、赤ずきんちゃん」
あの女性が、声をかけてくれましたが、あかずきんちゃんは
恥ずかしくて目を合わせることができませんでした
「ごめんなさい、私、せっかく雇ってくれたのに……ぜんぜんだめで……」
とっても長い一日のしごとをおえた、赤ずきんちゃんは
"ひそうかん"でいっぱいでした
"ほんとうに何も出来ないのね、私は"
赤ずきんちゃんのあたまの中はそんな考えで一杯でした
「や、お疲れさん、赤ずきんちゃん」
あの女性が、声をかけてくれましたが、あかずきんちゃんは
恥ずかしくて目を合わせることができませんでした
「ごめんなさい、私、せっかく雇ってくれたのに……ぜんぜんだめで……」
195: 2018/01/17(水) 12:48:08.184 ID:UIoq7Bth0.net
そんなことを言う赤ずきんちゃんを見て、女性は笑い出しました
「はっは、何言ってんだい、さいしょからいきなり出来る訳がないだろう
いきなり出来たら、なんねんもやっている、私のたちばはどうなるんだい」
女性のとびっきりのえがおを見て、赤ずきんちゃんは、いっきに心がかるくなりました
「はっは、何言ってんだい、さいしょからいきなり出来る訳がないだろう
いきなり出来たら、なんねんもやっている、私のたちばはどうなるんだい」
女性のとびっきりのえがおを見て、赤ずきんちゃんは、いっきに心がかるくなりました
196: 2018/01/17(水) 12:56:16.399 ID:UIoq7Bth0.net
「そうだね、しいて注意するとすれば、あんたは"えがお"が足りないね」
「え、えがお?」
「そう、"えがお"は女のさいだいのぶきなのよ。"みす"なんて、どうでもいいから
明日は"えがお"ではたらいてみなさいよ」
女性はそういって、また思いっきり笑ってみせました
なんだろう、あの"えがお"を見ると、なんだって平気な気になるわ
私にも、できるだろうか
私も、あんなふうになれるだろうか
「え、えがお?」
「そう、"えがお"は女のさいだいのぶきなのよ。"みす"なんて、どうでもいいから
明日は"えがお"ではたらいてみなさいよ」
女性はそういって、また思いっきり笑ってみせました
なんだろう、あの"えがお"を見ると、なんだって平気な気になるわ
私にも、できるだろうか
私も、あんなふうになれるだろうか
198: 2018/01/17(水) 13:08:59.323 ID:UIoq7Bth0.net
――つぎのひ
「い、いらっしゃいませー」
赤ずきんちゃんは、とびっきりの"えがお"でおきゃくさんに
あいさつをしました
すると、おきゃくさんも、えがおでえしゃくをしてくれました
「お、いい"えがお"じゃないか」
お店の女性が赤ずきんちゃんに声をかけてくれました
「い、いらっしゃいませー」
赤ずきんちゃんは、とびっきりの"えがお"でおきゃくさんに
あいさつをしました
すると、おきゃくさんも、えがおでえしゃくをしてくれました
「お、いい"えがお"じゃないか」
お店の女性が赤ずきんちゃんに声をかけてくれました
199: 2018/01/17(水) 13:11:31.898 ID:UIoq7Bth0.net
たったそれだけのことなのに、
赤ずきんちゃんは、急にはたらくことが、
たのしくなってきました
"わ、ほめられた、どうしよう"
"ちゃ、ちゃんと笑えていたのかな、私"
「おーい、こっち注文たのむー」
「はーい、おまち下さい」
赤ずきんちゃんは、とびっきりの"えがお"で
おきゃくさんのところへ向かいました
赤ずきんちゃんは、急にはたらくことが、
たのしくなってきました
"わ、ほめられた、どうしよう"
"ちゃ、ちゃんと笑えていたのかな、私"
「おーい、こっち注文たのむー」
「はーい、おまち下さい」
赤ずきんちゃんは、とびっきりの"えがお"で
おきゃくさんのところへ向かいました
201: 2018/01/17(水) 13:16:49.564 ID:UIoq7Bth0.net
――すうじつご
「おつかれさまでしたー」
一日のしごとをおえた赤ずきんちゃんは、
"えがお"でしょくばをあとにしました
はなうたをうたいながら、かえりみちを歩いていきます
さいきん、しごとがたのしくて仕方がないのです
まだまだ"みす"をするし、おきゃくさんからどなられることだってあるし、
たいへんだけども、なんだかじゅうじつしているのです
しょくばにあこがれの人がいることや、お客さんからひそかに人気がでてきたことも、
げんいんでしたが、なによりも、
"自分が何かの役に立っているかんかく"が
うれしくって仕方がないのです
「おつかれさまでしたー」
一日のしごとをおえた赤ずきんちゃんは、
"えがお"でしょくばをあとにしました
はなうたをうたいながら、かえりみちを歩いていきます
さいきん、しごとがたのしくて仕方がないのです
まだまだ"みす"をするし、おきゃくさんからどなられることだってあるし、
たいへんだけども、なんだかじゅうじつしているのです
しょくばにあこがれの人がいることや、お客さんからひそかに人気がでてきたことも、
げんいんでしたが、なによりも、
"自分が何かの役に立っているかんかく"が
うれしくって仕方がないのです
203: 2018/01/17(水) 13:29:43.979 ID:UIoq7Bth0.net
その後、家へと帰るとちゅう、
なんと、再びおおかみさんとそうぐうしてしまいました
「あ、おおかみさん、こんばんは」
赤ずきんちゃんは、よゆうであいさつをしました
「え?……あ、おう」
赤ずきんちゃんのあまりのへいぜんとしたたいどに、おおかみさんは
ぎゃくにとまどってしまいました
「ひ、久しぶりね、元気だった?」
赤ずきんちゃんは、おおかみさんにとびっきりのえがおを向けました
なんと、再びおおかみさんとそうぐうしてしまいました
「あ、おおかみさん、こんばんは」
赤ずきんちゃんは、よゆうであいさつをしました
「え?……あ、おう」
赤ずきんちゃんのあまりのへいぜんとしたたいどに、おおかみさんは
ぎゃくにとまどってしまいました
「ひ、久しぶりね、元気だった?」
赤ずきんちゃんは、おおかみさんにとびっきりのえがおを向けました
205: 2018/01/17(水) 13:39:40.591 ID:UIoq7Bth0.net
「……は?」
おおかみさんは、思いました
何でこの娘、俺を怖がらないんだ?
つーか、久しぶり?うーん、こんな娘とめんしきあったかな?
あー、もしかして、ちょっと前に、この道で会った娘か
思い出した、思い出した
いや、しかし……
「な、なあに、かおに何かついてるの?」
赤ずきんちゃんは、照れながら笑いかけました
"こんなに可愛いかったかな、この子"
おおかみさんは、少しこんわくしてしまいました
おおかみさんは、思いました
何でこの娘、俺を怖がらないんだ?
つーか、久しぶり?うーん、こんな娘とめんしきあったかな?
あー、もしかして、ちょっと前に、この道で会った娘か
思い出した、思い出した
いや、しかし……
「な、なあに、かおに何かついてるの?」
赤ずきんちゃんは、照れながら笑いかけました
"こんなに可愛いかったかな、この子"
おおかみさんは、少しこんわくしてしまいました
208: 2018/01/17(水) 14:03:21.356 ID:UIoq7Bth0.net
「お、おい、赤ずきんのお前、なんで俺をこわがらないんだ?」
「だって、そんなにお腹がふくれているんだもの。今はおなかがすいていないんでしょう」
「う……」
おおかみさんは、自分のお腹に手をあてました
「"にくしょくどうぶつのほこり"があるものね、ふふふ」
赤ずきんちゃんは、たのしそうに笑いました
おおかみさんは、なんだかはずかしくなり、かおをまっかにしてしまいました
「ねえ、それよりきいて。私もね、"自分の生き方"について
考えてみることにしたの。おおかみさんに言われてから、いろいろ考えたのよ」
おおかみさんは、"なんてなれなれしい娘だ"と思いました
人間がおおかみに"じんせいそうだん?"なんだそりゃ
「だって、そんなにお腹がふくれているんだもの。今はおなかがすいていないんでしょう」
「う……」
おおかみさんは、自分のお腹に手をあてました
「"にくしょくどうぶつのほこり"があるものね、ふふふ」
赤ずきんちゃんは、たのしそうに笑いました
おおかみさんは、なんだかはずかしくなり、かおをまっかにしてしまいました
「ねえ、それよりきいて。私もね、"自分の生き方"について
考えてみることにしたの。おおかみさんに言われてから、いろいろ考えたのよ」
おおかみさんは、"なんてなれなれしい娘だ"と思いました
人間がおおかみに"じんせいそうだん?"なんだそりゃ
210: 2018/01/17(水) 14:09:12.812 ID:UIoq7Bth0.net
「う、うるせえ」
おおかみさんは、大声で赤ずきんちゃんに
向かってどなりつけました
おおかみさんにも、ぷらいどがあります
こんな友達みたく話をされることが、たえられなかったのです
「自分の生き方なんてな、自分で決めるもんだ
いちいちだれかのしょうだくを得ようとするんじゃねえ」
その言葉で、赤ずきんちゃんは、自分の心がみすかされた気になって、はずかしくなりました
おおかみさんは、大声で赤ずきんちゃんに
向かってどなりつけました
おおかみさんにも、ぷらいどがあります
こんな友達みたく話をされることが、たえられなかったのです
「自分の生き方なんてな、自分で決めるもんだ
いちいちだれかのしょうだくを得ようとするんじゃねえ」
その言葉で、赤ずきんちゃんは、自分の心がみすかされた気になって、はずかしくなりました
212: 2018/01/17(水) 14:19:09.551 ID:UIoq7Bth0.net
「自分が本当に良いと思った生き方なら、だれに何を言われようが、
つらぬけばいいだろう。」
「お、おおかみさんは、出来ているの?」
「俺は、それが出来るつよさを、"ゆうき"だと思っている。自分ではできていると思いたいな」
赤ずきんちゃんは、思いました
このおおかみさんは、自分がなやんでいるもんだいなんて、
ずっと前に通りこして、今はもっと先のところにいるんじゃないだろうか
"何このおおかみ、かっこいい"
赤ずきんちゃんは、そのことで頭が一杯になりました
つらぬけばいいだろう。」
「お、おおかみさんは、出来ているの?」
「俺は、それが出来るつよさを、"ゆうき"だと思っている。自分ではできていると思いたいな」
赤ずきんちゃんは、思いました
このおおかみさんは、自分がなやんでいるもんだいなんて、
ずっと前に通りこして、今はもっと先のところにいるんじゃないだろうか
"何このおおかみ、かっこいい"
赤ずきんちゃんは、そのことで頭が一杯になりました
213: 2018/01/17(水) 14:24:10.674 ID:UIoq7Bth0.net
「おい、それよりな、あまりなれなれしく話しかけるんじゃあないぜ
夜のおおかみは怖いんだ、俺の気分がかわったら、お前を食っちまうぞ」
「おなかが一杯のくせに、何を言って……」
赤ずきんちゃんは、途中で言葉を止め、はっとしました
"夜のおおかみ?""食っちまう?"
え、うそ、やだ、そういういみだった?
赤ずきんちゃんは、きゅうにてんぱってしまい
どきどきがとまりませんでした
夜のおおかみは怖いんだ、俺の気分がかわったら、お前を食っちまうぞ」
「おなかが一杯のくせに、何を言って……」
赤ずきんちゃんは、途中で言葉を止め、はっとしました
"夜のおおかみ?""食っちまう?"
え、うそ、やだ、そういういみだった?
赤ずきんちゃんは、きゅうにてんぱってしまい
どきどきがとまりませんでした
214: 2018/01/17(水) 14:29:27.311 ID:UIoq7Bth0.net
「ね、ねえ、お、おおかみさんは……」
「……あ?」
「ど、どういうときに、そういう気分になるの?」
赤ずきんちゃんは、思い切ってしつもんをしました
「食いたいと思ったら食う。"自分の気持ちにしたがう"のが、
"俺の生き方"だからなそれはつらぬくつもりだぜ」
「今は気分じゃないだけだ、じゃあな」
そう言って、おおかみさんは、去っていきました
――
おおかみさんが、"そういうきもち"になったら
私はおおかみさんにおそわれてしまうのかしら
赤ずきんちゃんは、そんなことを考えながら自宅へかえりました
「……あ?」
「ど、どういうときに、そういう気分になるの?」
赤ずきんちゃんは、思い切ってしつもんをしました
「食いたいと思ったら食う。"自分の気持ちにしたがう"のが、
"俺の生き方"だからなそれはつらぬくつもりだぜ」
「今は気分じゃないだけだ、じゃあな」
そう言って、おおかみさんは、去っていきました
――
おおかみさんが、"そういうきもち"になったら
私はおおかみさんにおそわれてしまうのかしら
赤ずきんちゃんは、そんなことを考えながら自宅へかえりました
216: 2018/01/17(水) 14:35:19.168 ID:UIoq7Bth0.net
――1か月後
赤ずきんちゃんの、待ちに待った"しょにんきゅう"の日がやってきました
"まえきん"で"がく"はへっていましたが、それでも十分すぎる"がく"です
赤ずきんちゃんは、いそいで帰って、おばあさんにそれをみせました
"まさか、この子がきゅうりょうを持って帰ってくるなんて"
おばあさんは、かんげきしてしまいました
赤ずきんちゃんは、その"しょにんきゅう"から、ひっそりと
"こうすい"を買っていました
"自分のみりょくが上がれば、おおかみさんが来てくれるかもしれない"
そんな想いを心にひめていました
赤ずきんちゃんの、待ちに待った"しょにんきゅう"の日がやってきました
"まえきん"で"がく"はへっていましたが、それでも十分すぎる"がく"です
赤ずきんちゃんは、いそいで帰って、おばあさんにそれをみせました
"まさか、この子がきゅうりょうを持って帰ってくるなんて"
おばあさんは、かんげきしてしまいました
赤ずきんちゃんは、その"しょにんきゅう"から、ひっそりと
"こうすい"を買っていました
"自分のみりょくが上がれば、おおかみさんが来てくれるかもしれない"
そんな想いを心にひめていました
217: 2018/01/17(水) 14:38:26.215 ID:UIoq7Bth0.net
「ねえ、赤ずきんちゃん、さいきんやけにおしゃれになったねえ」
しょくばで、女性に声をかけられました
「ほら、"かみがた"だってかわっているし、ふくの着方も前とはちがうじゃない」
「そ、そうかしら、別にそんなこと……」
「にあってて、可愛いわよ」
「う、うん……ありがとう」
赤ずきんちゃんは、かにかみながら、"えがお"を見せました
「そう、それ、いいわね、その"えがお"
ねえ、赤ずきんちゃん、覚えてなさい。女のいちばんの"けしょう"は
"えがお"なのよ、あなたの"えがお"なら、どんな男でも"いちころ"よ」
しょくばで、女性に声をかけられました
「ほら、"かみがた"だってかわっているし、ふくの着方も前とはちがうじゃない」
「そ、そうかしら、別にそんなこと……」
「にあってて、可愛いわよ」
「う、うん……ありがとう」
赤ずきんちゃんは、かにかみながら、"えがお"を見せました
「そう、それ、いいわね、その"えがお"
ねえ、赤ずきんちゃん、覚えてなさい。女のいちばんの"けしょう"は
"えがお"なのよ、あなたの"えがお"なら、どんな男でも"いちころ"よ」
221: 2018/01/17(水) 14:44:55.169 ID:UIoq7Bth0.net
「お、男?いや、そんなんじゃ……」
赤ずきんちゃんは、あわてて否定をしようとしましたが、
ふと今の自分を振り返りました
今の自分、ちょっとまえからしたら、考えられない
いえの手伝いをして
"おしごと"が楽しくて
ちょっと、おしゃれなんかしちゃったりして
まいにちが、じゅうじつしていて
ようやく、ちょっとずつだけど、自分が好きになれてきていて……
「え、えへへ、へへ……」
赤ずきんちゃんは、そんなことを思うと"えがお"が
あふれ出てきて、止まりませんでした
――ねえ、おおかみさん
"私、今生きてる、生きてるよ"
赤ずきんちゃんは、あわてて否定をしようとしましたが、
ふと今の自分を振り返りました
今の自分、ちょっとまえからしたら、考えられない
いえの手伝いをして
"おしごと"が楽しくて
ちょっと、おしゃれなんかしちゃったりして
まいにちが、じゅうじつしていて
ようやく、ちょっとずつだけど、自分が好きになれてきていて……
「え、えへへ、へへ……」
赤ずきんちゃんは、そんなことを思うと"えがお"が
あふれ出てきて、止まりませんでした
――ねえ、おおかみさん
"私、今生きてる、生きてるよ"
225: 2018/01/17(水) 14:58:53.292 ID:UIoq7Bth0.net
その日のかえりみち、自宅の近くで
再びおおかみさんとそうぐうしました
「はっ、今日はおまえを食いに来たぜ」
"お、おおかみさんが、来てくれた"
"しかも、食う、とか言っている"
赤ずきんちゃんは、心の中でおおはしゃぎしました
「しかし、ぶようじんだったな、いぜん見つかった道を
おなじ時間にそうなんども通るもんじゃないぜ」
"ちがうのよ、待っていたの"
"あなたに見つかるように"
再びおおかみさんとそうぐうしました
「はっ、今日はおまえを食いに来たぜ」
"お、おおかみさんが、来てくれた"
"しかも、食う、とか言っている"
赤ずきんちゃんは、心の中でおおはしゃぎしました
「しかし、ぶようじんだったな、いぜん見つかった道を
おなじ時間にそうなんども通るもんじゃないぜ」
"ちがうのよ、待っていたの"
"あなたに見つかるように"
226: 2018/01/17(水) 15:03:29.712 ID:UIoq7Bth0.net
しかも、なんて"こううん"なんでしょう
「今日は、家にだれもいないの、よかったらこない?」
赤ずきんちゃんは、顔をまっかにしながら、おおかみさんをさそいました
「おい、何を言っているんだ、お前は。
俺はお前を食いにきたんだ。"ともだち"じゃあないんだぜ」
「うん、だから……外じゃあ、いやなの」
赤ずきんちゃんは、まだ顔がまっかです
"ともだち"じゃない
そんな言葉にむねがときめきました
「まあいい、"しにばしょ"くらい、えらばせてやるか」
おおかみさんは、そうつぶやき、若干いわかんをおぼえながらも
家についていくことにしまいた
「今日は、家にだれもいないの、よかったらこない?」
赤ずきんちゃんは、顔をまっかにしながら、おおかみさんをさそいました
「おい、何を言っているんだ、お前は。
俺はお前を食いにきたんだ。"ともだち"じゃあないんだぜ」
「うん、だから……外じゃあ、いやなの」
赤ずきんちゃんは、まだ顔がまっかです
"ともだち"じゃない
そんな言葉にむねがときめきました
「まあいい、"しにばしょ"くらい、えらばせてやるか」
おおかみさんは、そうつぶやき、若干いわかんをおぼえながらも
家についていくことにしまいた
228: 2018/01/17(水) 15:13:28.229 ID:UIoq7Bth0.net
家に入ると、おおかみさんは、さっそくこういいました
「さあ、いただくとしようかな」
「ま、まって、あせらないで」
赤ずきんちゃんは、だんろに火をつけました
下じゅんびはしてあったようで、あっというまに
だんろの火がもえあがります
「お、おい、ばか、やめろ」
おおかみさんは、だんろからとおざかってしまいました
火がにがてなようです
「さあ、いただくとしようかな」
「ま、まって、あせらないで」
赤ずきんちゃんは、だんろに火をつけました
下じゅんびはしてあったようで、あっというまに
だんろの火がもえあがります
「お、おい、ばか、やめろ」
おおかみさんは、だんろからとおざかってしまいました
火がにがてなようです
229: 2018/01/17(水) 15:21:48.809 ID:UIoq7Bth0.net
「こっちよ、こっちにいらっしゃい、あたたかいわよ」
赤ずきんちゃんは、そう言うと、だんろの火がちょうどあたる
べっどに、おおかみさんをさそいました
「うっ……」
"やられた"おおかみさんは、そう思いました
こいつ、火でじぶんを守るために、家に入ったのか
まあ、でもこのくらい火からはなれていたら、もんだいない
さっさとこの娘を食らい、家から出てしまおう
おおかみさんがそう思ったその時です
赤ずきんちゃんは、そう言うと、だんろの火がちょうどあたる
べっどに、おおかみさんをさそいました
「うっ……」
"やられた"おおかみさんは、そう思いました
こいつ、火でじぶんを守るために、家に入ったのか
まあ、でもこのくらい火からはなれていたら、もんだいない
さっさとこの娘を食らい、家から出てしまおう
おおかみさんがそう思ったその時です
231: 2018/01/17(水) 15:25:55.934 ID:UIoq7Bth0.net
「さぁ、どうぞ召しあがれ」
赤ずきんちゃんはそう言うと、するすると服をぬいでいきました
「ちょ、ちょっとまって」
おおかみさんは、あわててしまいました
たしかに、"たべちまうぞ"とは、いったけど
そういういみじゃあないから
なにやってんの、この娘
ここで、おおかみさんは、初めて
この娘が、かんちがいをしていることに気が付きました
赤ずきんちゃんはそう言うと、するすると服をぬいでいきました
「ちょ、ちょっとまって」
おおかみさんは、あわててしまいました
たしかに、"たべちまうぞ"とは、いったけど
そういういみじゃあないから
なにやってんの、この娘
ここで、おおかみさんは、初めて
この娘が、かんちがいをしていることに気が付きました
234: 2018/01/17(水) 15:34:51.189 ID:UIoq7Bth0.net
そんな、おおかみさんの言葉など気にせずに
赤ずきんちゃんはぬいだ服を、
一枚ずつ、だんろにくべていきました
「お、おい、ちょ、え……!?」
服がもえていくようすと、それを見てあぜんとしている
おおかみさんのようすを見て、赤ずきんちゃんの
"ほお"がこうちょうしていきます
赤ずきんちゃんは、おとなしそうに見えて、
とんでもないだいたんさを、かねそなえていました
赤ずきんちゃんはぬいだ服を、
一枚ずつ、だんろにくべていきました
「お、おい、ちょ、え……!?」
服がもえていくようすと、それを見てあぜんとしている
おおかみさんのようすを見て、赤ずきんちゃんの
"ほお"がこうちょうしていきます
赤ずきんちゃんは、おとなしそうに見えて、
とんでもないだいたんさを、かねそなえていました
237: 2018/01/17(水) 15:38:33.855 ID:UIoq7Bth0.net
赤ずきんちゃんは、"とれーどまーく"の
赤ずきんもはずしてしまいました
今日は、私を、"赤ずきんちゃん"とよばないでほしい
私はわたし
おおかみさんには、ありのままの、自分を見てほしかったのです
だって、おおかみさんに、出会ってから、私――
赤ずきんもはずしてしまいました
今日は、私を、"赤ずきんちゃん"とよばないでほしい
私はわたし
おおかみさんには、ありのままの、自分を見てほしかったのです
だって、おおかみさんに、出会ってから、私――
238: 2018/01/17(水) 15:44:25.326 ID:UIoq7Bth0.net
「う、うお……うぉ……」
おおかみさんは、どうようのあまり、うごけないでいました
こんな"じょうきょう"は初めてでしたので、どうすればよいか分かりません
もうかんけいなく、この娘を食べてしまおうか
そう思って赤ずきんちゃんを見ると、ふと目が合ってしまいました
「ねえ、はずかしいの?だいじょうぶ、私もほんとうははずかしいのよ」
赤ずきんちゃんはそう言うと、てれながら、おおかみさんに"えがお"を向けました
"か、可愛い"
おおかみさんは、思わず目をそらし、まっかになってしまいました
"く、くそっ、何だ、このじょうきょうは"
おおかみさんは、どうようのあまり、うごけないでいました
こんな"じょうきょう"は初めてでしたので、どうすればよいか分かりません
もうかんけいなく、この娘を食べてしまおうか
そう思って赤ずきんちゃんを見ると、ふと目が合ってしまいました
「ねえ、はずかしいの?だいじょうぶ、私もほんとうははずかしいのよ」
赤ずきんちゃんはそう言うと、てれながら、おおかみさんに"えがお"を向けました
"か、可愛い"
おおかみさんは、思わず目をそらし、まっかになってしまいました
"く、くそっ、何だ、このじょうきょうは"
242: 2018/01/17(水) 15:53:24.380 ID:UIoq7Bth0.net
おおかみさんには、ぷらいどがありました
相手を"せいのたいしょう"とした上で、食べる
そんなことは、"くず"のやることだと思っていました
"女をだくときは、かならず大切にするとちかって、だく"
"しょくじは、ひつよう"さいていげん"にし、相手に"けいい"を払う"
それは、おおかみさんがいつか心に決めた、"生き方でした"
ここでは、この娘を、食べることも、だくこともできない
どちらも、あいてに対する"けいい"にかけていると、おおかみさんは思いました
相手を"せいのたいしょう"とした上で、食べる
そんなことは、"くず"のやることだと思っていました
"女をだくときは、かならず大切にするとちかって、だく"
"しょくじは、ひつよう"さいていげん"にし、相手に"けいい"を払う"
それは、おおかみさんがいつか心に決めた、"生き方でした"
ここでは、この娘を、食べることも、だくこともできない
どちらも、あいてに対する"けいい"にかけていると、おおかみさんは思いました
256: 2018/01/17(水) 17:11:01.831 ID:UIoq7Bth0.net
「……わるいな、やっぱり今日は"きぶん"じゃあないんだ」
おおかみさんは、そっとそのばを立ち去ろうとしました
「……じゃあな」
赤ずきんちゃんはくやしくなりました
"やっぱり、私なんかじゃ、おおかみさんには釣り合わないんだわ"
そう思いましたが、さいごにゆうきをもって、おおかみさんに、
ありったけ、こころのうちをうちあけることにしました
おおかみさんは、そっとそのばを立ち去ろうとしました
「……じゃあな」
赤ずきんちゃんはくやしくなりました
"やっぱり、私なんかじゃ、おおかみさんには釣り合わないんだわ"
そう思いましたが、さいごにゆうきをもって、おおかみさんに、
ありったけ、こころのうちをうちあけることにしました
257: 2018/01/17(水) 17:13:39.590 ID:UIoq7Bth0.net
"大好き"
いや、違う
"ふざけるな"
"へたれ男"
ん?何かしっくりこないな
色々考えをめぐらせながら、赤ずきんちゃんは
自分の中でいちばんしっくりきたことばを
言い放ちました
それは、とってもいがいな言葉でした
「ありがとう」
いや、違う
"ふざけるな"
"へたれ男"
ん?何かしっくりこないな
色々考えをめぐらせながら、赤ずきんちゃんは
自分の中でいちばんしっくりきたことばを
言い放ちました
それは、とってもいがいな言葉でした
「ありがとう」
259: 2018/01/17(水) 17:19:07.740 ID:UIoq7Bth0.net
「……は?」
おおかみさんは、わけが分かりませんでした
「あなたの言葉おかげで、私、変われたの」
――ううん、あなただけじゃあないわ
あのばばぁに、お店の人たち、それから、それから……
赤ずきんちゃんの心の中は、
まわりの人へのかんしゃのきもちがあふれだしていました
「ねえ、おおかみさん、これから私、
色々な人に"かんしゃ"をしながら生きていくことにしたの」
おおかみさんは、わけが分かりませんでした
「あなたの言葉おかげで、私、変われたの」
――ううん、あなただけじゃあないわ
あのばばぁに、お店の人たち、それから、それから……
赤ずきんちゃんの心の中は、
まわりの人へのかんしゃのきもちがあふれだしていました
「ねえ、おおかみさん、これから私、
色々な人に"かんしゃ"をしながら生きていくことにしたの」
261: 2018/01/17(水) 17:23:10.824 ID:UIoq7Bth0.net
「……そうか」
「何か文句ある?ううん、あってもぜったいに変えないわ
それが私の生き方なんだもの。もう決めたんだもの」
おおかみさんは、何も言わず、そっとほほえんで、家を出ていきました
赤ずきんちゃんはいつのまにか、
自分の中に、だいじな"たからもの"かかえていました」
「何か文句ある?ううん、あってもぜったいに変えないわ
それが私の生き方なんだもの。もう決めたんだもの」
おおかみさんは、何も言わず、そっとほほえんで、家を出ていきました
赤ずきんちゃんはいつのまにか、
自分の中に、だいじな"たからもの"かかえていました」
264: 2018/01/17(水) 17:32:17.369 ID:UIoq7Bth0.net
――すうじつご
赤ずきんちゃんは、ありったけのゆうきをふりしぼって、
ある"こくはく"をすることにしたのです
「おい、ばばぁ」
「う、ううん、ちがう、"おばあちゃん"、こっちにきて」
おばあさんは、びっくりしてしまいました
"おばあちゃん"そんなよびかたをされたのは、いつぶりでしょうか
「い、いつも、ありがとう」
赤ずきんちゃんは、てれくさいきもちを
せいいっぱい、おしころしながら、おばあさんの目をみて言いました
「い、いままでも、いっぱいいっぱい、私のために、ありがとう」
赤ずきんちゃんは、ありったけのゆうきをふりしぼって、
ある"こくはく"をすることにしたのです
「おい、ばばぁ」
「う、ううん、ちがう、"おばあちゃん"、こっちにきて」
おばあさんは、びっくりしてしまいました
"おばあちゃん"そんなよびかたをされたのは、いつぶりでしょうか
「い、いつも、ありがとう」
赤ずきんちゃんは、てれくさいきもちを
せいいっぱい、おしころしながら、おばあさんの目をみて言いました
「い、いままでも、いっぱいいっぱい、私のために、ありがとう」
265: 2018/01/17(水) 17:34:03.342 ID:UIoq7Bth0.net
「こ、これ、よかったら……」
そういうと、赤ずきんちゃんは、おばあさんに
きれいな"かみどめ"を"ぷれぜんと"しました
「え……え……」
おばあさんは、うれしさのあまり、また泣き出してしまいました
さいごに"ありがとう"なんて、言われたのは、いつだったでしょうか
赤ずきんちゃんに、なにかを"ぷれぜんと"されたことなど、はじめてでした
「あ、ありが……うぅ……」
おばあさんは、なみだごえになってしまい、
うまくおれいが言えませんでした
「な、なによ、こんな"やすもの"くらいで、おおげさに泣かないでよ」
そう言う赤ずきんちゃんの目も、なみだでうるんでしまっていました
そういうと、赤ずきんちゃんは、おばあさんに
きれいな"かみどめ"を"ぷれぜんと"しました
「え……え……」
おばあさんは、うれしさのあまり、また泣き出してしまいました
さいごに"ありがとう"なんて、言われたのは、いつだったでしょうか
赤ずきんちゃんに、なにかを"ぷれぜんと"されたことなど、はじめてでした
「あ、ありが……うぅ……」
おばあさんは、なみだごえになってしまい、
うまくおれいが言えませんでした
「な、なによ、こんな"やすもの"くらいで、おおげさに泣かないでよ」
そう言う赤ずきんちゃんの目も、なみだでうるんでしまっていました
268: 2018/01/17(水) 17:42:39.931 ID:UIoq7Bth0.net
おばあさんは、"かみどめ"じたいがうれしかったのではありません
赤ずきんちゃんが、かんしゃのきもちを伝えてくれたことがうれしかったのです
その"かみどめ"が、きもちのこもったものだと、分かっていたからうれしかったのです
赤ずきんちゃんも、本当はそのことが分かっていましたので
それいじょうは、何もいいませんでした
「ありがとう……おばあちゃん、とっても……うれし……」
おばあさんは、なみだごえでも、ひっしに赤ずきんちゃんの
目をみて、おれいを伝えてくれました
赤ずきんちゃんが、かんしゃのきもちを伝えてくれたことがうれしかったのです
その"かみどめ"が、きもちのこもったものだと、分かっていたからうれしかったのです
赤ずきんちゃんも、本当はそのことが分かっていましたので
それいじょうは、何もいいませんでした
「ありがとう……おばあちゃん、とっても……うれし……」
おばあさんは、なみだごえでも、ひっしに赤ずきんちゃんの
目をみて、おれいを伝えてくれました
270: 2018/01/17(水) 17:48:48.857 ID:UIoq7Bth0.net
「ちょ、やめてよ、おおげさ……なん……うぅ……」
その言葉にはおばあさんのきもちが、思いっきりつまっていたことが
分かってしまいましたので、赤ずきんちゃんもなきだしてしまいました
「う、ううん……こっちこそ……いつもありが……」
「ありがとう……ありがとうねえ」
二人でなみだをながしながら、"かんしゃ"のきもちを
つたえあいました
その安物の"かみどめ"は、おばあさんの
一生の"たからもの"になりました
その言葉にはおばあさんのきもちが、思いっきりつまっていたことが
分かってしまいましたので、赤ずきんちゃんもなきだしてしまいました
「う、ううん……こっちこそ……いつもありが……」
「ありがとう……ありがとうねえ」
二人でなみだをながしながら、"かんしゃ"のきもちを
つたえあいました
その安物の"かみどめ"は、おばあさんの
一生の"たからもの"になりました
271: 2018/01/17(水) 17:50:00.217 ID:UIoq7Bth0.net
おちついたあと、赤ずきんちゃんは考えました
次の"きゅうりょう"をもらったら、こんどは私をやとってくれた、
お店の女性に"ぷれぜんと"とかんしゃのきもちを伝えるのよ
あと、あと、
ふだん、お店に来てくれる人にも、かんしゃをしなくっちゃあ
きもちのいい"せっきゃく"をして、"おいしいりょうり"を
食べて、かえってもらうのよ
あと、あと、
それから、えっと
赤ずきんちゃんは、"やりたいこと"がやまのようにありました
それを考えること、こなしていくことが、
赤ずきんちゃんにとっての"しあわせ"でした
次の"きゅうりょう"をもらったら、こんどは私をやとってくれた、
お店の女性に"ぷれぜんと"とかんしゃのきもちを伝えるのよ
あと、あと、
ふだん、お店に来てくれる人にも、かんしゃをしなくっちゃあ
きもちのいい"せっきゃく"をして、"おいしいりょうり"を
食べて、かえってもらうのよ
あと、あと、
それから、えっと
赤ずきんちゃんは、"やりたいこと"がやまのようにありました
それを考えること、こなしていくことが、
赤ずきんちゃんにとっての"しあわせ"でした
273: 2018/01/17(水) 17:51:17.126 ID:UIoq7Bth0.net
その後、おおかみさんへの"気持ち"が、みのることはありませんでしたが、
そんなことは、赤ずきんちゃんにとってはささいなもんだいでした
――
「よーし、今日も"えがお"でがんばるわよ、いってきまーす」
赤ずきんちゃんは、ようやくみつけた"たからもの"を
だいじにだいじにかかえながら、これからも生きていきます
――完
そんなことは、赤ずきんちゃんにとってはささいなもんだいでした
――
「よーし、今日も"えがお"でがんばるわよ、いってきまーす」
赤ずきんちゃんは、ようやくみつけた"たからもの"を
だいじにだいじにかかえながら、これからも生きていきます
――完
274: 2018/01/17(水) 17:51:36.824 ID:nvZzBqlv0.net
泣いた
275: 2018/01/17(水) 17:55:29.750 ID:mHnJZRG+a.net
乙
293: 2018/01/17(水) 19:26:40.235 ID:UIoq7Bth0.net
>>285
いいすよ
>>279
過去作は、誰も転載してくれなかったので、どこにも残ってない
いいすよ
>>279
過去作は、誰も転載してくれなかったので、どこにも残ってない
294: 2018/01/17(水) 19:30:25.965 ID:UIoq7Bth0.net
ちょっと、過去作をぺたぺた張っていくので
"気分がのった人"だけ見て下さい
タイトル:「はだかのお姫さま」
スレタイ:姫「"バカには見えないふく"を、作ってもらったの」
"気分がのった人"だけ見て下さい
タイトル:「はだかのお姫さま」
スレタイ:姫「"バカには見えないふく"を、作ってもらったの」
295: 2018/01/17(水) 19:30:59.179 ID:UIoq7Bth0.net
「"バカには見えないふく"を、作ってもらったの」
「どう、さっそくきてみたのだけど、にあうかしら?」
そう言って、お姫さまは、だいじんに"じまんのすがた"を見せつけました
「ひ、姫さま、いったい!?」
だいじんは、顔をまっかにして、下を向いてしまいました
「あら、どうかしたのかしら?」
お姫さまは、そんなだいじんをふしぎそうな顔で見つめました
「ひ、姫さま、そんなに近づかないでください」
だいじんは、まっすぐ自分を見てくる、お姫さまの顔が
"ちょくし"できませんでした
「どう、さっそくきてみたのだけど、にあうかしら?」
そう言って、お姫さまは、だいじんに"じまんのすがた"を見せつけました
「ひ、姫さま、いったい!?」
だいじんは、顔をまっかにして、下を向いてしまいました
「あら、どうかしたのかしら?」
お姫さまは、そんなだいじんをふしぎそうな顔で見つめました
「ひ、姫さま、そんなに近づかないでください」
だいじんは、まっすぐ自分を見てくる、お姫さまの顔が
"ちょくし"できませんでした
297: 2018/01/17(水) 19:34:13.316 ID:UIoq7Bth0.net
「あら、せっかく"とくしゅな生地"で作ったふくで、"全身"をそろえてみたのよ」
お姫さまは、"むねをはり"、再度
自分のすがたを、だいじんに見せつけました
「何か、かんそうとかないのかしら」
だいじんはうつむきながら、考えました
バカには見えないふく?なにそれ?
それが、だいじんのわたしに、見えない?
そんな話、でたらめに決まっている
いや、しかし……
「ねえ、まさかだいじんのくせに、私のふくが見えないんじゃないでしょうね」
こんらんするだいじんに、お姫さまは、
まるでねらっているかのような、
"おとこのぷらいど"をしげきする一言を言い放ちました
お姫さまは、"むねをはり"、再度
自分のすがたを、だいじんに見せつけました
「何か、かんそうとかないのかしら」
だいじんはうつむきながら、考えました
バカには見えないふく?なにそれ?
それが、だいじんのわたしに、見えない?
そんな話、でたらめに決まっている
いや、しかし……
「ねえ、まさかだいじんのくせに、私のふくが見えないんじゃないでしょうね」
こんらんするだいじんに、お姫さまは、
まるでねらっているかのような、
"おとこのぷらいど"をしげきする一言を言い放ちました
298: 2018/01/17(水) 19:37:42.968 ID:UIoq7Bth0.net
「そ、そんなこと、あるわけないじゃないですか」
「そうよね、当たり前よね、だいじんなのだから」
だいじんは思い切って、お姫さまを"ちょくし"しました
「っ!!」
だいじんはますます顔を赤くし、またすぐにうつむいてしまいました
だめだ、まともに見れない
「ねえ、ここに付けてもらった"ぽけっと"がおしゃれだと思うの」
お姫さまはそう言うと、自分のむねのあたりを指さし、
だいじんに近づきました
「ねえ、ちゃんとみてくれてる?」
「そうよね、当たり前よね、だいじんなのだから」
だいじんは思い切って、お姫さまを"ちょくし"しました
「っ!!」
だいじんはますます顔を赤くし、またすぐにうつむいてしまいました
だめだ、まともに見れない
「ねえ、ここに付けてもらった"ぽけっと"がおしゃれだと思うの」
お姫さまはそう言うと、自分のむねのあたりを指さし、
だいじんに近づきました
「ねえ、ちゃんとみてくれてる?」
300: 2018/01/17(水) 19:46:29.086 ID:UIoq7Bth0.net
「っ!!」
"ひ、姫さま、顔が近いです"
それと、むねも……
だいじんは、はずかしさのあまり、何も言えなくなってしまいました
「もう、なによ、ぶすいな男ね、ふくのかんそう一つ、言えないのかしら」
お姫さまはそう言うと、だいじんにせなかを向け、どこかへ歩きはじめました
「も、もうしわけありません」
だいじんは小声で、つぶやきながら、お姫さまに目をむけました
うしろすがたなら、なんとか"ちょくし"することができました
まさか、うつくしいおひめさまの、"こんなすがた"を見ることがあろうとは
だいじんは、ひっそりとそのうしろすがたを目にやきつけました
"ひ、姫さま、顔が近いです"
それと、むねも……
だいじんは、はずかしさのあまり、何も言えなくなってしまいました
「もう、なによ、ぶすいな男ね、ふくのかんそう一つ、言えないのかしら」
お姫さまはそう言うと、だいじんにせなかを向け、どこかへ歩きはじめました
「も、もうしわけありません」
だいじんは小声で、つぶやきながら、お姫さまに目をむけました
うしろすがたなら、なんとか"ちょくし"することができました
まさか、うつくしいおひめさまの、"こんなすがた"を見ることがあろうとは
だいじんは、ひっそりとそのうしろすがたを目にやきつけました
301: 2018/01/17(水) 19:55:21.759 ID:UIoq7Bth0.net
「しかたない、ほかの人に見せてくるわ」
お姫さまはざんねんそうな声で、そう言うと、
だいじんのいたへやをあとにしました
――
「……ふう、やれやれ」
ようやくだいじんがおちつきをとりもどすと、
お姫さまが向かっていった
ほうこうのことを思い出しました
そちらには、兵士たちのいるへやがあったのです
まさか……
だいじんのあたまを、これ以上ない不安がおそいました
「ちょ、ちょっとお待ちください、姫さま」
だいじんはいそいで、お姫さまを追いかけて行きました
お姫さまはざんねんそうな声で、そう言うと、
だいじんのいたへやをあとにしました
――
「……ふう、やれやれ」
ようやくだいじんがおちつきをとりもどすと、
お姫さまが向かっていった
ほうこうのことを思い出しました
そちらには、兵士たちのいるへやがあったのです
まさか……
だいじんのあたまを、これ以上ない不安がおそいました
「ちょ、ちょっとお待ちください、姫さま」
だいじんはいそいで、お姫さまを追いかけて行きました
304: 2018/01/17(水) 20:02:17.787 ID:UIoq7Bth0.net
だいじんは、せいいっぱい急いで
兵士たちの部屋へ向かいましたが、
だいじんがついたころには
お姫さまは、すでにたくさんの兵士の前で、
"じまんのすがた"をひろうしていました
兵士たちも、だいじんどうよう、
"ぱにっく"を起こしているさいちゅうでした
「ひ、姫さま、いったい何をしてらっしゃるのですか?」
「あら、なにかしら?」
だいじんがこえをかけると、お姫さまは、
何のちゅうちょもなく、だいじんの声のする方へ
ふりむきました
兵士たちの部屋へ向かいましたが、
だいじんがついたころには
お姫さまは、すでにたくさんの兵士の前で、
"じまんのすがた"をひろうしていました
兵士たちも、だいじんどうよう、
"ぱにっく"を起こしているさいちゅうでした
「ひ、姫さま、いったい何をしてらっしゃるのですか?」
「あら、なにかしら?」
だいじんがこえをかけると、お姫さまは、
何のちゅうちょもなく、だいじんの声のする方へ
ふりむきました
305: 2018/01/17(水) 20:11:09.990 ID:UIoq7Bth0.net
「っ!!」
だいじんは、ふたたび顔を赤くしましたが、
こんどは姫さまから、目線を外しませんでした
「姫さま、おたわむれはよしてください!」
「あら、私は"じまんのふく"をひろうしているだけよ、なにがだめなのかしら」
お姫さまは、かれいに"いっかいてん"し
自分のすがたをまわりに見せつけました
そのすがたの"うつくしさ""かわいらしさ"に
だいじんや、まわりにいた兵士たちのだいぶぶんは、
おもわず見とれてしまいました
だいじんは、ふたたび顔を赤くしましたが、
こんどは姫さまから、目線を外しませんでした
「姫さま、おたわむれはよしてください!」
「あら、私は"じまんのふく"をひろうしているだけよ、なにがだめなのかしら」
お姫さまは、かれいに"いっかいてん"し
自分のすがたをまわりに見せつけました
そのすがたの"うつくしさ""かわいらしさ"に
だいじんや、まわりにいた兵士たちのだいぶぶんは、
おもわず見とれてしまいました
307: 2018/01/17(水) 20:22:51.956 ID:UIoq7Bth0.net
「ひ、姫さま、それは、"バカには見えないふく"なのです
だれかに見せるときには、十分ちゅういされてください」
だいじんは、姫さまにおもいきってちゅうこくをしました
「ここにいる兵士たちは、ほとんどが"学のない"ものたちです
姫さまのふくが見えないものには、姫さまの、
だ、"だいじなすがた"がみえてしまいます」
だいじんは顔をまっかにしたまま、言いました
しかし、それを聞いたお姫さまの顔は、
もっとまっかになっていました
だれかに見せるときには、十分ちゅういされてください」
だいじんは、姫さまにおもいきってちゅうこくをしました
「ここにいる兵士たちは、ほとんどが"学のない"ものたちです
姫さまのふくが見えないものには、姫さまの、
だ、"だいじなすがた"がみえてしまいます」
だいじんは顔をまっかにしたまま、言いました
しかし、それを聞いたお姫さまの顔は、
もっとまっかになっていました
309: 2018/01/17(水) 20:33:54.558 ID:UIoq7Bth0.net
「ちょっとだいじん、なにを言っているの!」
姫さまは、へや中の兵士たちにきこえる
大きな声で、いいました
「ここにいる人たちは、たしかに"べんきょう"はあまりしてこなかったかもしれない」
でも、だからといって"バカ"だなんて、私は思わないわ」
そう、お姫さまは怒っていたのです
「兵士さんたちは、日頃"命をかけて"国を守ってくれているのよ
そんな人たちに、何てことを言うのよ」
姫さまは、へや中の兵士たちにきこえる
大きな声で、いいました
「ここにいる人たちは、たしかに"べんきょう"はあまりしてこなかったかもしれない」
でも、だからといって"バカ"だなんて、私は思わないわ」
そう、お姫さまは怒っていたのです
「兵士さんたちは、日頃"命をかけて"国を守ってくれているのよ
そんな人たちに、何てことを言うのよ」
310: 2018/01/17(水) 20:34:56.303 ID:UIoq7Bth0.net
お姫さまの"ねつえん"が止まりません
「少なくとも、私にとっては、とってもだいじなひとたちだわ
だから、だいじなおようふくを、見てもらいたかったの
兵士さんたちのお仕事のじゃまをしたなら、あやまるわ
だけど、兵士さんたちの悪口を言うのは、やめてくれるかしら」
まわりにいた兵士たちは、思わず聞き入ってしまっていました
「少なくとも、私にとっては、とってもだいじなひとたちだわ
だから、だいじなおようふくを、見てもらいたかったの
兵士さんたちのお仕事のじゃまをしたなら、あやまるわ
だけど、兵士さんたちの悪口を言うのは、やめてくれるかしら」
まわりにいた兵士たちは、思わず聞き入ってしまっていました
311: 2018/01/17(水) 20:42:46.530 ID:UIoq7Bth0.net
「もし、あたまを使うことが苦手だったとしても、
それは"バカ"とはちがうわ
こんなすてきな人たちの中に、"バカ"な人なんてきっといない
そう信じているから、私は、はずかしさなんて感じることはないわ」
お姫さまは、まだまだつづけます
「ううん、兵士さんたちだけじゃなく、この国で働く人、
みんながそうだと、私は思っているわ」
「だいじんだって、いつもこの国のために、がんばってくれているでしょう
だから私は、安心してこのふくを見せることが出来るのよ」
気が付くと、だいじんはうっすら目に
"なみだ"をためていました
「姫さま……そこまでこの国のことを思っていたなんて……」
それは"バカ"とはちがうわ
こんなすてきな人たちの中に、"バカ"な人なんてきっといない
そう信じているから、私は、はずかしさなんて感じることはないわ」
お姫さまは、まだまだつづけます
「ううん、兵士さんたちだけじゃなく、この国で働く人、
みんながそうだと、私は思っているわ」
「だいじんだって、いつもこの国のために、がんばってくれているでしょう
だから私は、安心してこのふくを見せることが出来るのよ」
気が付くと、だいじんはうっすら目に
"なみだ"をためていました
「姫さま……そこまでこの国のことを思っていたなんて……」
312: 2018/01/17(水) 20:46:28.857 ID:UIoq7Bth0.net
まわりにいた兵士たちも、姫さまのことばに
かんげきしてしまっていました
「ふんっ」
お姫さまは、怒ったまま、そのばをあとにし、
自分の部屋へ向かっていきました
「姫さまのふく、きれいだったよな」
「ああ、まったくだ」
「センスがよかったよな」
お姫さまがさったあと、兵士たちはくちぐちに
こういいました
「たしかに、あの"ぽけっと"かわいらしいかったですな」
だいじんまで、こう言いだしました
かんげきしてしまっていました
「ふんっ」
お姫さまは、怒ったまま、そのばをあとにし、
自分の部屋へ向かっていきました
「姫さまのふく、きれいだったよな」
「ああ、まったくだ」
「センスがよかったよな」
お姫さまがさったあと、兵士たちはくちぐちに
こういいました
「たしかに、あの"ぽけっと"かわいらしいかったですな」
だいじんまで、こう言いだしました
314: 2018/01/17(水) 20:54:47.487 ID:UIoq7Bth0.net
お姫さまの"ねつえん"に、かんげきした兵士たちは、
そのうわさをまわりに伝えはじめました
そんなに広くないおしろでしたので、
じょうないで、はたらく人たちへは、あっという間に広まっていきました
お姫さまが国を想う気持ちに、王さままでかんげきし、
お姫さまをげきれいしました
王さまは、お姫さまが、その"とくしゅなふく"を
"なんぱたーん"も作ってもらったと話していたことも聞き、
"毎日"きるように、おねがいをしました
国民を想う気持ちを、"そんなかたち"であらわすなんて、
すばらしいことだとかんげきしていました
そのうわさをまわりに伝えはじめました
そんなに広くないおしろでしたので、
じょうないで、はたらく人たちへは、あっという間に広まっていきました
お姫さまが国を想う気持ちに、王さままでかんげきし、
お姫さまをげきれいしました
王さまは、お姫さまが、その"とくしゅなふく"を
"なんぱたーん"も作ってもらったと話していたことも聞き、
"毎日"きるように、おねがいをしました
国民を想う気持ちを、"そんなかたち"であらわすなんて、
すばらしいことだとかんげきしていました
315: 2018/01/17(水) 20:56:38.120 ID:UIoq7Bth0.net
すうじつごには、お姫さまが"そのすがた"で
生活することがあたりまえになっていました
はたらく人たちへの"しんらい"というかたちで、
"バカ"には見えないふくを、なんのはじらいもなく見せている
それがみんなにも伝わっていましたので、
"お姫さまのふく"が見えなかった人は、
そのことを言い出すことは、できませんでした
お姫さまがこんなに自分たちをしんらいしてくれているのに、
なんで自分には見えないんだ
"見えなかった人"はそう自分をせめて、
見えるふりをしていました
生活することがあたりまえになっていました
はたらく人たちへの"しんらい"というかたちで、
"バカ"には見えないふくを、なんのはじらいもなく見せている
それがみんなにも伝わっていましたので、
"お姫さまのふく"が見えなかった人は、
そのことを言い出すことは、できませんでした
お姫さまがこんなに自分たちをしんらいしてくれているのに、
なんで自分には見えないんだ
"見えなかった人"はそう自分をせめて、
見えるふりをしていました
316: 2018/01/17(水) 20:57:38.697 ID:UIoq7Bth0.net
「ちょうしにのりすぎた」
ある日、お姫さまは、ひっそりとつぶやきました
バカには見えないふく?
そんなのあるわけないじゃない
「はぁ……」
お姫さまは、今日"なんどめ"かのためいきをつきました
なんでこんなに、すんなりとみんなが信じてくれたのか、ふしぎでした
ある日、お姫さまは、ひっそりとつぶやきました
バカには見えないふく?
そんなのあるわけないじゃない
「はぁ……」
お姫さまは、今日"なんどめ"かのためいきをつきました
なんでこんなに、すんなりとみんなが信じてくれたのか、ふしぎでした
318: 2018/01/17(水) 21:00:43.332 ID:UIoq7Bth0.net
ほんとうは、みんな気が付いていて、
私をバカにしてたらどうしよう
さいきんは、そんなことが、ずっとあたまのなかをめぐります
ごめんなさい、ちょっと"すりる"を味わってみたかっただけなの
ほんの、できごころだったの
お姫さまは、いまさらあとにはひけなくなってしまっていました
なんで、こんなことしてしまったのか
そのきっかけをふりかえってみることにしました
――
私をバカにしてたらどうしよう
さいきんは、そんなことが、ずっとあたまのなかをめぐります
ごめんなさい、ちょっと"すりる"を味わってみたかっただけなの
ほんの、できごころだったの
お姫さまは、いまさらあとにはひけなくなってしまっていました
なんで、こんなことしてしまったのか
そのきっかけをふりかえってみることにしました
――
320: 2018/01/17(水) 21:02:07.658 ID:UIoq7Bth0.net
――
十数日前
お姫さまが自分のへやで
"きがえ"をしていたときのことでした
「しつれいします」
"のっく"とともに、だんせいの声がしました
「どうぞー」
"おつきの女性"がついうっかり、はんしゃてきに返事をしてしまいました
きがえていた、さいちゅうのお姫さまは、
入ってきた、男性と"目"があいました
お姫さまに、しょうげきがはしります
十数日前
お姫さまが自分のへやで
"きがえ"をしていたときのことでした
「しつれいします」
"のっく"とともに、だんせいの声がしました
「どうぞー」
"おつきの女性"がついうっかり、はんしゃてきに返事をしてしまいました
きがえていた、さいちゅうのお姫さまは、
入ってきた、男性と"目"があいました
お姫さまに、しょうげきがはしります
321: 2018/01/17(水) 21:04:39.977 ID:UIoq7Bth0.net
「っ!!しつれいしました」
男性は、顔をまっかにしながらとりみだし、
いそいでとびらをしめました
お姫さまは、男の人に、そんなすがたを
見られたことは初めてでした
「も、もうしわけありません、お姫さま、もうしわけありません」
おつきの女性のあやまる声など、耳に入らず
お姫さまは、自分のむねのたかなりをきいていました
男性は、顔をまっかにしながらとりみだし、
いそいでとびらをしめました
お姫さまは、男の人に、そんなすがたを
見られたことは初めてでした
「も、もうしわけありません、お姫さま、もうしわけありません」
おつきの女性のあやまる声など、耳に入らず
お姫さまは、自分のむねのたかなりをきいていました
322: 2018/01/17(水) 21:08:17.218 ID:UIoq7Bth0.net
次の日は、とってもかぜがつよい日でしたが、
お姫さまは、あえて"すかーと"で外出をしました
「きゃっ」
かぜで"すかーと"がめくれたとき、
お姫さまは、手で"すかーと"をおさえることはせず
近くにいた男性が、はずかしそうに目をそらす
ようすを、どきどきしながらながめていました
お姫さまは、あえて"すかーと"で外出をしました
「きゃっ」
かぜで"すかーと"がめくれたとき、
お姫さまは、手で"すかーと"をおさえることはせず
近くにいた男性が、はずかしそうに目をそらす
ようすを、どきどきしながらながめていました
323: 2018/01/17(水) 21:11:24.676 ID:UIoq7Bth0.net
そして、次の日は、
わざと外でころび、ようふくのおしりの部分をやぶいてしまいました
お姫さまは、やぶれた部分をかくすようなことはせず、
しばらくそのまますごしていました
わざとふくがやぶれていることには、"気が付かないふり"をして
まわりのはんのうを、どきどきしながら、横目で見ていました
そして次の日も、にたようなことをし、
だんだんと"えすかれーと"していきました
わざと外でころび、ようふくのおしりの部分をやぶいてしまいました
お姫さまは、やぶれた部分をかくすようなことはせず、
しばらくそのまますごしていました
わざとふくがやぶれていることには、"気が付かないふり"をして
まわりのはんのうを、どきどきしながら、横目で見ていました
そして次の日も、にたようなことをし、
だんだんと"えすかれーと"していきました
324: 2018/01/17(水) 21:17:08.079 ID:UIoq7Bth0.net
お姫さまはかんじていました
みんなが自分と話をするときは、
みんな"かしこまって"います
お姫さまは、見た目がうつくしく、ふだんはまわりから
"ひんこうほうせい"に見られていたため、"おかたい"声の
かけかたしか、されませんでした
自分の前で、だれかが
あんなにとりみだし、顔をあかくするすがたなど
久しくみていませんでした
その"こうい"がだんだんと、"くせ"になって、やめられなくなっていました
みんなが自分と話をするときは、
みんな"かしこまって"います
お姫さまは、見た目がうつくしく、ふだんはまわりから
"ひんこうほうせい"に見られていたため、"おかたい"声の
かけかたしか、されませんでした
自分の前で、だれかが
あんなにとりみだし、顔をあかくするすがたなど
久しくみていませんでした
その"こうい"がだんだんと、"くせ"になって、やめられなくなっていました
325: 2018/01/17(水) 21:20:30.161 ID:UIoq7Bth0.net
そして、ふと思いついたのです
"バカには見えないふく"の"あいであ"を
お姫さまは、われながら"てんさいてき"な"あいであ"だと
想いながら、ねりにねった、そのさくを、じっこうしました
ほんとうは、どこかでだれかにたしなめられ、
怒られて、すぐにおわるだけの予定でした
"だれかに怒られる"ことも、
お姫さまはあまりなかったのです
兵士たちのへやでの"ねつえん"は、
つい、うっかりというか、
つい、話だしてしまったら、止まらなくなってしまったというか
つい、調子にのってしまったというか
"バカには見えないふく"の"あいであ"を
お姫さまは、われながら"てんさいてき"な"あいであ"だと
想いながら、ねりにねった、そのさくを、じっこうしました
ほんとうは、どこかでだれかにたしなめられ、
怒られて、すぐにおわるだけの予定でした
"だれかに怒られる"ことも、
お姫さまはあまりなかったのです
兵士たちのへやでの"ねつえん"は、
つい、うっかりというか、
つい、話だしてしまったら、止まらなくなってしまったというか
つい、調子にのってしまったというか
328: 2018/01/17(水) 21:26:44.153 ID:UIoq7Bth0.net
――
「お姫さま、おはようございます」
"とくしゅなふく"をきたお姫さまに、だいじんが声をかけました
「お、おはよう」
お姫さまは、笑顔でへんじをしました
へいせいをよそおっていますが、
ほんとうははずかしくてしかたがありません
だいじんの"目"が、すごく"気をつかった目"に
なっています
みんな、"ふくがみえない"と思われたくないようです
まさか、王さままで、"ふくが見えるふり"をするなんて
お姫さまは、みんなへのもうしわけなさで、いっぱいになりました
「お姫さま、おはようございます」
"とくしゅなふく"をきたお姫さまに、だいじんが声をかけました
「お、おはよう」
お姫さまは、笑顔でへんじをしました
へいせいをよそおっていますが、
ほんとうははずかしくてしかたがありません
だいじんの"目"が、すごく"気をつかった目"に
なっています
みんな、"ふくがみえない"と思われたくないようです
まさか、王さままで、"ふくが見えるふり"をするなんて
お姫さまは、みんなへのもうしわけなさで、いっぱいになりました
329: 2018/01/17(水) 21:32:33.226 ID:UIoq7Bth0.net
だってだって
みんな、きょりがとおいんですもの
えんりょして、だれも近づいてくれなかったんですもの
だれも、気さくに話しかけてくれなかったんですもの
そんな気持ちとはうらはらに、おひめさまのなかに、
あるかんじょうが、芽生えはじめていました
「お姫さま、今日も"すてきなふく"ですね」
「そう、いいでしょ、今日はこんなふくもいいと思って」
きゃー、何を言っているのかしら、私
ほんとうは気が付いていたら、どうしようかしら
みんな、きょりがとおいんですもの
えんりょして、だれも近づいてくれなかったんですもの
だれも、気さくに話しかけてくれなかったんですもの
そんな気持ちとはうらはらに、おひめさまのなかに、
あるかんじょうが、芽生えはじめていました
「お姫さま、今日も"すてきなふく"ですね」
「そう、いいでしょ、今日はこんなふくもいいと思って」
きゃー、何を言っているのかしら、私
ほんとうは気が付いていたら、どうしようかしら
330: 2018/01/17(水) 21:35:33.018 ID:UIoq7Bth0.net
お姫さまは、むかしから、"すたいる"のよさを
人知れずがんばって、いじしていました
"ごめんなさい、みんな"
そう想いながら、
"もっとみて"という気持ちが抑えられませんでした
むねのどきどきが、止まりませんでした
お姫さまは、めばえている、かんじょうの
正体が、"はいとくかん"だということに
気が付くまで、しばらくじかんがかかりました
人知れずがんばって、いじしていました
"ごめんなさい、みんな"
そう想いながら、
"もっとみて"という気持ちが抑えられませんでした
むねのどきどきが、止まりませんでした
お姫さまは、めばえている、かんじょうの
正体が、"はいとくかん"だということに
気が付くまで、しばらくじかんがかかりました
331: 2018/01/17(水) 21:39:10.798 ID:UIoq7Bth0.net
おしろをあるいていると、お姫さまは、
自分のことを"ぎょうし"している兵士に、気が付きました
「兵士さん、いつもおつかれさまです」
お姫さまは、"えがお"でそういいながら、
その兵士へ、近づいていきました
「あ、いや、ど、どうも」
その兵士は、すこしあわてながらも、つい
お姫さまの"むね"から、しせんが外せませんでした
「あら、わたしのふくに、何かついているかしら」
そのしせんに気が付いたおひめさまは、あえてこんなことを言ってみました
「このあたりについているの?どこかしら?」
そういいながら、自分のむねをゆびさしながら、
つきだし、兵士に見せつけました
自分のことを"ぎょうし"している兵士に、気が付きました
「兵士さん、いつもおつかれさまです」
お姫さまは、"えがお"でそういいながら、
その兵士へ、近づいていきました
「あ、いや、ど、どうも」
その兵士は、すこしあわてながらも、つい
お姫さまの"むね"から、しせんが外せませんでした
「あら、わたしのふくに、何かついているかしら」
そのしせんに気が付いたおひめさまは、あえてこんなことを言ってみました
「このあたりについているの?どこかしら?」
そういいながら、自分のむねをゆびさしながら、
つきだし、兵士に見せつけました
332: 2018/01/17(水) 21:41:30.217 ID:UIoq7Bth0.net
「い、いえ、お姫さまの"すてきなふく"に、つい見とれてしまいまして」
兵士は、あわてながら、こんな言い訳をしました
そのひっしなすがたを見ると、
お姫さまは、こうふんがおさまりません
「そうそう、"このふく"お気に入りなのよ」
そう言いながら、お姫さまは、いぜんのように
かわいらしく"いっかいてん"しました
兵士は、そのかわいらしさに、見入ってしまいました
「この"ふりる"が、いいとおもわない?」
そう言って、お姫さまは、こしのあたりで
手をひらひらとして、兵士に、かはんしんを見せつけました
兵士は、あわてながら、こんな言い訳をしました
そのひっしなすがたを見ると、
お姫さまは、こうふんがおさまりません
「そうそう、"このふく"お気に入りなのよ」
そう言いながら、お姫さまは、いぜんのように
かわいらしく"いっかいてん"しました
兵士は、そのかわいらしさに、見入ってしまいました
「この"ふりる"が、いいとおもわない?」
そう言って、お姫さまは、こしのあたりで
手をひらひらとして、兵士に、かはんしんを見せつけました
333: 2018/01/17(水) 21:43:59.185 ID:UIoq7Bth0.net
「は、はい」
兵士は、きょどうふしんになりながらも、
こんどはお姫さまの、かはんしんをぎょうししました
「そうそう、この"ふりる"、うしろに、ぼたんがついているのも
かわっているでしょう?」
そういいながら、こんどは兵士にせなかを向け、
おしりをつきだして見せつけました
兵士は、それをまたぎょうししながら、
心の"おくそこ"で、ひっそりと思いました
"おれ、バカでよかった"
"バカでよかったよ"
兵士は、きょどうふしんになりながらも、
こんどはお姫さまの、かはんしんをぎょうししました
「そうそう、この"ふりる"、うしろに、ぼたんがついているのも
かわっているでしょう?」
そういいながら、こんどは兵士にせなかを向け、
おしりをつきだして見せつけました
兵士は、それをまたぎょうししながら、
心の"おくそこ"で、ひっそりと思いました
"おれ、バカでよかった"
"バカでよかったよ"
334: 2018/01/17(水) 21:48:40.364 ID:UIoq7Bth0.net
「いつまでやっているんだ、あの"バカ娘"は」
そういいながら、王さまは
そんなお姫さまのようすを、ひややかにながめていました
じつは、王さまは、とちゅうから気が付いていました
王さまは先日、
お姫さまに声をかけたとき、お姫さまの肩に
手をおきました
そのとき、たしかに感じたのです、お姫さまの肩のぬくもりを
"見えない"だけなら、肩のかんしょくが
伝わるはずがないのです
おそれおおくて、じっさいにお姫さまに"ふれる"ことは
ほかにだれもしていないようすでした
そういいながら、王さまは
そんなお姫さまのようすを、ひややかにながめていました
じつは、王さまは、とちゅうから気が付いていました
王さまは先日、
お姫さまに声をかけたとき、お姫さまの肩に
手をおきました
そのとき、たしかに感じたのです、お姫さまの肩のぬくもりを
"見えない"だけなら、肩のかんしょくが
伝わるはずがないのです
おそれおおくて、じっさいにお姫さまに"ふれる"ことは
ほかにだれもしていないようすでした
335: 2018/01/17(水) 21:55:31.516 ID:UIoq7Bth0.net
そこで王さまはれいせいになり、かんさつしてみると、
まわりのしせんに、お姫さまが、あきらかに"はんのう"
していると"かくしん"したのです
おうさまは、あきれかえっていました
みえをはって、いつまでも気が付かない、しろの人間に
あんなうそに、いっときでもだまされてしまった自分自身に
そして、お姫さまの"バカ"さに
なにも言わず、しばらくようすをみることにしていたのです
まわりのしせんに、お姫さまが、あきらかに"はんのう"
していると"かくしん"したのです
おうさまは、あきれかえっていました
みえをはって、いつまでも気が付かない、しろの人間に
あんなうそに、いっときでもだまされてしまった自分自身に
そして、お姫さまの"バカ"さに
なにも言わず、しばらくようすをみることにしていたのです
336: 2018/01/17(水) 21:56:41.352 ID:UIoq7Bth0.net
――
「お姫さま、こんにちは」
「お姫さま、今日も、すてきなふくですね」
「お姫さまのふくは、"せんす"がいいわ」
さいきん、お姫さまに話しかけてくる人が、
かくだんに多くなりました
いぜんのお姫さまは、"お上品"で"あたまが良く"
そのかわりに、"とっつきにくい"ぶぶんがありましたので、
お姫さまに話しかけてくる人は、だいじんなど、
一部の決まった人にかぎられていました
こんなにたくさんの人たちに、声をかけられるのは、はじめてでした
そういういみでも、お姫さまはよろこびをかんじていましたので、
ほんの少し、こうおもってもいました
"はだかのお姫さま"も、わるくないわね
お姫さまは、"お下品"で"バカ"なことをやっていますが、
少し、"とっつきやすく"なったようでした
「お姫さま、こんにちは」
「お姫さま、今日も、すてきなふくですね」
「お姫さまのふくは、"せんす"がいいわ」
さいきん、お姫さまに話しかけてくる人が、
かくだんに多くなりました
いぜんのお姫さまは、"お上品"で"あたまが良く"
そのかわりに、"とっつきにくい"ぶぶんがありましたので、
お姫さまに話しかけてくる人は、だいじんなど、
一部の決まった人にかぎられていました
こんなにたくさんの人たちに、声をかけられるのは、はじめてでした
そういういみでも、お姫さまはよろこびをかんじていましたので、
ほんの少し、こうおもってもいました
"はだかのお姫さま"も、わるくないわね
お姫さまは、"お下品"で"バカ"なことをやっていますが、
少し、"とっつきやすく"なったようでした
337: 2018/01/17(水) 22:03:12.244 ID:UIoq7Bth0.net
よくじつ
「今日も、すてきなふくですね、おひめさま」
また一人、じょせいがお姫さまに
話かけてきました
「ありがとう」
そう"えがお"で返しながら、お姫さまは
じ分に話かけてくる人の言うことが、毎回、にかよっている
ことに気が付きました
お姫さまの"えんぜつ"に、じゅんすいに
心をうたれたひともいましたが、じっさいに
"きさく"に、話しかけてくる人は、
"ふくが見える"とあぴーるがしたい人
"ひらきなおって、お姫さまのはだかが見たい人"
が、大半だったのです
おひめさまは、じぶんの"こころ"が
"はだか"になっていないことに、はじめて気が付きました
「今日も、すてきなふくですね、おひめさま」
また一人、じょせいがお姫さまに
話かけてきました
「ありがとう」
そう"えがお"で返しながら、お姫さまは
じ分に話かけてくる人の言うことが、毎回、にかよっている
ことに気が付きました
お姫さまの"えんぜつ"に、じゅんすいに
心をうたれたひともいましたが、じっさいに
"きさく"に、話しかけてくる人は、
"ふくが見える"とあぴーるがしたい人
"ひらきなおって、お姫さまのはだかが見たい人"
が、大半だったのです
おひめさまは、じぶんの"こころ"が
"はだか"になっていないことに、はじめて気が付きました
338: 2018/01/17(水) 22:09:24.829 ID:UIoq7Bth0.net
お姫さまは、いままで、つねに"かんぺき"をめざしていました
"りそうのお姫さま"をめざして、毎日がんばっていました
しかし、その"がんばり"と、"きもち"とはうらはらに、
なぜか人がはなれていきました
"他人に、すきをみせたくない"
お姫さまは、いままでそう思ってこうどうして
いましたので、そのせいかもしれません
今は、その"かんぺきさ"にたえられなくなり、
ぼうそうしてしまったお姫さまですが、
"はだか"になった今でも、
"なるべくきれいなすがた"を見せつけたい
そうおもっていました
しかし、そうやってたどりついた先には、
お姫さまが、ほんとうにめざすものは、なかったのです
お姫さまは、ある決意をかためました
"りそうのお姫さま"をめざして、毎日がんばっていました
しかし、その"がんばり"と、"きもち"とはうらはらに、
なぜか人がはなれていきました
"他人に、すきをみせたくない"
お姫さまは、いままでそう思ってこうどうして
いましたので、そのせいかもしれません
今は、その"かんぺきさ"にたえられなくなり、
ぼうそうしてしまったお姫さまですが、
"はだか"になった今でも、
"なるべくきれいなすがた"を見せつけたい
そうおもっていました
しかし、そうやってたどりついた先には、
お姫さまが、ほんとうにめざすものは、なかったのです
お姫さまは、ある決意をかためました
339: 2018/01/17(水) 22:16:06.899 ID:UIoq7Bth0.net
その翌日は、おしろでだいじな"しゅうかい"がありました
じょうないの人や、こくみんもあつまってきていました
その"しゅうかい"のなかで、お姫さまが、国民へ向けて、"すぴーち"をする
じかんがもうけられていましたので、
王さまは、気が気ではありませんでした
今日のしゅうかいは、ぶだんのおしろとはちがって、
子どもたちも来る予定でしたので、
もし今日も、お姫さまが"とくしゅなふく"でくるようでしたら
思い切って、ちゅういしようと考えていました
しかし、お姫さまは、自分が"すぴーち"をする
じかんちょくぜんになっても、なかなかあわられません
じょうないの人や、こくみんもあつまってきていました
その"しゅうかい"のなかで、お姫さまが、国民へ向けて、"すぴーち"をする
じかんがもうけられていましたので、
王さまは、気が気ではありませんでした
今日のしゅうかいは、ぶだんのおしろとはちがって、
子どもたちも来る予定でしたので、
もし今日も、お姫さまが"とくしゅなふく"でくるようでしたら
思い切って、ちゅういしようと考えていました
しかし、お姫さまは、自分が"すぴーち"をする
じかんちょくぜんになっても、なかなかあわられません
340: 2018/01/17(水) 22:21:15.883 ID:UIoq7Bth0.net
お姫さまが、"すぴーち"をするじかんになりました
「おそくなって、ごめんなさい」
いきを切らせてあらわれた、お姫さまは
"とくしゅなふく"はきてきませんでした
しかし、"とくしゅなふく"をきるまえの
お姫さまがきていたような、うつくしいふくではなく
"きじゅつし"がきるような、
おもしろおかしなかっこうをしていました
王さまは、ほかのふくにかえさせようか、迷いましたが、
じかんがなかったので、そのまま"すぴーち"
してもらうことにしました
「おそくなって、ごめんなさい」
いきを切らせてあらわれた、お姫さまは
"とくしゅなふく"はきてきませんでした
しかし、"とくしゅなふく"をきるまえの
お姫さまがきていたような、うつくしいふくではなく
"きじゅつし"がきるような、
おもしろおかしなかっこうをしていました
王さまは、ほかのふくにかえさせようか、迷いましたが、
じかんがなかったので、そのまま"すぴーち"
してもらうことにしました
341: 2018/01/17(水) 22:25:37.519 ID:UIoq7Bth0.net
みんなの前にすがたをあらわすと、
こくみんは、少し、おどろきました
姫さまのおかしなかっこうに対しても、そうですが、
それより、みんなはこうおもいました
"今日は、ようふくが見える"と
「みなさん、こんにちは」
お姫さまの話が、はじまりました
こくみんは、少し、おどろきました
姫さまのおかしなかっこうに対しても、そうですが、
それより、みんなはこうおもいました
"今日は、ようふくが見える"と
「みなさん、こんにちは」
お姫さまの話が、はじまりました
342: 2018/01/17(水) 22:29:09.495 ID:UIoq7Bth0.net
「今日は、じつは、いつもの"バカには見えないふく"はきてきませんでした」
「というか、じつは……」
いきなり、いちばん気になっていた"ふく"の話になりましたので、
国民のちゅうもくが、一気にあつまります
「私、"バカ"なんで、じつは、私にも"あのふく"は見えていませんでした」
「だましてごめんなさい、あっはっは」
お姫さまは、手をたたきながら、みんなの前で
おおごえで笑いました
とつぜんのことに、みんなあたまが追いつかず、
かいじょうがあぜんとしてしまいました
「というか、じつは……」
いきなり、いちばん気になっていた"ふく"の話になりましたので、
国民のちゅうもくが、一気にあつまります
「私、"バカ"なんで、じつは、私にも"あのふく"は見えていませんでした」
「だましてごめんなさい、あっはっは」
お姫さまは、手をたたきながら、みんなの前で
おおごえで笑いました
とつぜんのことに、みんなあたまが追いつかず、
かいじょうがあぜんとしてしまいました
345: 2018/01/17(水) 22:40:11.499 ID:UIoq7Bth0.net
「バカな娘だ、わっはっは」
近くにいた王さまが、みんなにきこえる大声で
笑いだしました
「この、"へんたい姫"が、はっはっは」
王さまは、大声で、さらに"つっこみ"をいれました
「そうです、私、へんたいなんです」
そう言って、お姫さまは、国民の前で、
"おもしろへんがお"をし、おどけてみせました
お姫さまが、はじめて心を"はだか"にしたしゅんかんでした
近くにいた王さまが、みんなにきこえる大声で
笑いだしました
「この、"へんたい姫"が、はっはっは」
王さまは、大声で、さらに"つっこみ"をいれました
「そうです、私、へんたいなんです」
そう言って、お姫さまは、国民の前で、
"おもしろへんがお"をし、おどけてみせました
お姫さまが、はじめて心を"はだか"にしたしゅんかんでした
347: 2018/01/17(水) 22:46:08.489 ID:UIoq7Bth0.net
「くすっ」
かいじょうから、小さな笑い声がきこえました
それをかわきりに、国民は、大声で笑いました
「わっはっはー」
「なんか、へんだとおもったよー」
あるものは、みえをはっていた自分がはずかしくなり
あるものは、"バカな姫さまだ"とおもったり
それぞれのりゆうで、おおわらいしました
国民の心も、そのいっしゅんだけ
"はだか"になりました
かいじょうから、小さな笑い声がきこえました
それをかわきりに、国民は、大声で笑いました
「わっはっはー」
「なんか、へんだとおもったよー」
あるものは、みえをはっていた自分がはずかしくなり
あるものは、"バカな姫さまだ"とおもったり
それぞれのりゆうで、おおわらいしました
国民の心も、そのいっしゅんだけ
"はだか"になりました
348: 2018/01/17(水) 22:48:10.299 ID:UIoq7Bth0.net
笑いがひととおりしずまると、お姫さまの
"すぴーち"がつづきます
「ほんとうにごめんなさい、でも、"バカ"って悪いことでは
ないとおもうの、私がいちばん言いたいのは、それ」
国民は、ふたたびお姫さまにちゅうもくしました
「今まで、私はどう見えていたかしら
おかたい、"かしこいおひめさま"かしら
でも、そんなわたしでも、こんなぶぶんがあるの」
「みえをはったり、いい部分だけを見せようとしても、しかたないわ」
お姫さまは、自分にも言いきかせるようにして、言いました
"すぴーち"がつづきます
「ほんとうにごめんなさい、でも、"バカ"って悪いことでは
ないとおもうの、私がいちばん言いたいのは、それ」
国民は、ふたたびお姫さまにちゅうもくしました
「今まで、私はどう見えていたかしら
おかたい、"かしこいおひめさま"かしら
でも、そんなわたしでも、こんなぶぶんがあるの」
「みえをはったり、いい部分だけを見せようとしても、しかたないわ」
お姫さまは、自分にも言いきかせるようにして、言いました
349: 2018/01/17(水) 22:51:46.968 ID:UIoq7Bth0.net
「バカでもなんでもいいじゃない、前を向いて、思い切って生きましょう
みんなも、それでいいと思うわ、だって……」
「この国の姫だって、こんなに"バカ"なんだもの」
おひめさまはそういうと、ふたたび
"へんがお"をひろうしました
こくみんは、ふたたび大笑いしました
みんなも、それでいいと思うわ、だって……」
「この国の姫だって、こんなに"バカ"なんだもの」
おひめさまはそういうと、ふたたび
"へんがお"をひろうしました
こくみんは、ふたたび大笑いしました
350: 2018/01/17(水) 22:55:36.010 ID:UIoq7Bth0.net
その日から、お姫さまが"とくしゅなふく"を
きることはなくなりました
そのかわりに、
"へいみん"がきるものとおなじようなふくをきていたり、
また"きじゅつし"がきるようなおもしろいかっこうをしたり、
今まできていたごうかなふくは、めったにきなくなりました
――
きることはなくなりました
そのかわりに、
"へいみん"がきるものとおなじようなふくをきていたり、
また"きじゅつし"がきるようなおもしろいかっこうをしたり、
今まできていたごうかなふくは、めったにきなくなりました
――
354: 2018/01/17(水) 23:10:26.819 ID:UIoq7Bth0.net
また、ある日は、"はだか"までいかなくても、
ちょっと"ろしゅつのたかいふく"をきていました
「ちょっと姫さま、そういったこういはひかえてくださいな」
「わー、また姫さまが、へんたいになったー」
まわりのかける声は、あきらかにいぜんとちがっていました
お姫さまも「いやーん」などと、
ふざけたりあくしょんをとったり、わざとおどけてみせました
ちょっと"ろしゅつのたかいふく"をきていました
「ちょっと姫さま、そういったこういはひかえてくださいな」
「わー、また姫さまが、へんたいになったー」
まわりのかける声は、あきらかにいぜんとちがっていました
お姫さまも「いやーん」などと、
ふざけたりあくしょんをとったり、わざとおどけてみせました
355: 2018/01/17(水) 23:12:14.815 ID:UIoq7Bth0.net
「こんなことをされては、"おうぞくのけんい"が……」
だいじんは、あたまをかかえていました
しかし、そんなだいじんの悩みよそに、
お姫さまは、すがしがしい気持ちでいました
たしかに、"けんい"をたもつために、
"かしこいすがた"や"りっぱなすがた"をみせることは、大切だけれど、
一人くらい、したしみやすい"バカなおうぞく"がいても
いいんじゃないかしら
そう思うようになりました
だいじんは、あたまをかかえていました
しかし、そんなだいじんの悩みよそに、
お姫さまは、すがしがしい気持ちでいました
たしかに、"けんい"をたもつために、
"かしこいすがた"や"りっぱなすがた"をみせることは、大切だけれど、
一人くらい、したしみやすい"バカなおうぞく"がいても
いいんじゃないかしら
そう思うようになりました
356: 2018/01/17(水) 23:13:12.890 ID:UIoq7Bth0.net
それ以後、お姫さまは、ちゃんとふくをきていたにもかかわらず、
"はだかのお姫さま"と呼ばれつづけました
お姫さまのそんなすがたを、
王さまは、少しうらやましいようすで見ていました
「わしも、"はだかの王さま"をめざそうかな、はっはっは」
そんなことをいって、大笑いしました
――完
"はだかのお姫さま"と呼ばれつづけました
お姫さまのそんなすがたを、
王さまは、少しうらやましいようすで見ていました
「わしも、"はだかの王さま"をめざそうかな、はっはっは」
そんなことをいって、大笑いしました
――完
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