1: 2015/01/04(日) 02:02:30.84 ID:kSavxrj+0
【最期のけじめ】

悪の化身、DIOを倒してから三週間。
熾烈を極めたDIOとの氏闘から早くも三週間が経とうとしていた。

承太郎「ここか…。」

承太郎は受けた傷が癒えるまでしばし休学と言う扱いとなっていた。
常人なら暫くは動けないものだが波紋と言うものは凄いもので完璧とは言えずとも普通に生活できる程度には動けるようになっているのだ。


まぁ休学しているのだから出歩いてはいけないのだがそんなことを黙って聞くほど不良のレッテルを貼られた承太郎ではない。
学校でもないのに学生服に学帽。だが制カバンではなく控えめな花束を持ち、ある墓地を訪れていた。



2: 2015/01/04(日) 02:13:26.79 ID:kSavxrj+0
少しだけ爽やかな風が雑草を揺らした
承太郎は墓の間を縫うように歩き目的の場所を目指す

承太郎「探すのに手間がかかったぜ…。だが珍しい名字のおかげか割りとすんなりと見つけられたな」

そう言えばお前はここに越してきたばっかって言ってたっけか?
承太郎は目的であるある名前の刻まれた墓の前に立っていた

承太郎「遅くなっちまったな花京院…。葬式にも顔を出そうとしたんだがジジイに止められてな。コッソリ墓だけでも参りに来たって訳だ」

エジプトへの旅の仲間であった花京院典明。
卓越した技術を持つスタンド使いでありDIOに殺されてしまった男の墓参りこそ承太郎の目的である。

3: 2015/01/04(日) 02:26:31.18 ID:kSavxrj+0
まだ真新しい墓は手入れが良く行き届いていた
慣れた手つきでジッポを付け線香を立てる。
花は少し萎れていたので変えておくことにした

承太郎「確か好物だったよな、チェリー」

供えるために用意してあった皿の上に幾つかパック入りのチェリーを置いてやる


いつだったか花京院がチェリーが好物だと言っていた
丁度その前に花京院の奴に化けたスタンド使いが同じチェリーの食べ方をしていたものでとてもじゃないが驚いた
まさか花京院があんな食べ方をする奴とは思いもしなかったからだ。一瞬敵がまた懲りずに化けているのかと身構えはしたが

4: 2015/01/04(日) 02:37:45.79 ID:kSavxrj+0
「すいません……どなたですか?」

しゃがみこみ花京院の墓に静かに合唱し帰ろうとしたときに背後から誰かに声をかけられた
その声はどう考えても俺に向けられており、いぶかしむ気持ちがひしひしと感じられる
その声はこう続けた

「もしかして…典明のお友達?」

思わず俺は立ち上がった。その視線の先にいたのは少し前髪が特徴的なご婦人だった

直感でわかった。どう見たって…花京院の母親だ。顔立ちが良く似ている
俺は立ち尽くして何も言えなかった
呼吸一つすらマトモに出来ない錯覚に陥った

5: 2015/01/04(日) 11:23:04.35 ID:kSavxrj+0
『良いか承太郎。お前は花京院の親御さんの所にも墓にも行っちゃならん』

エジプトから帰る飛行機の中でジョセフはそう告げた

『どういう意味だジジイアイツは俺の仲間だぜ?まさかボケちまったのか』

声は冷静だが怒りは込み上げていた
共に戦った仲間の氏を弔えないと言うことに怒りを覚えない人はいるだろうか?

『花京院の件はワシ一人でケジメをつけると言っとるんじゃ』

ジジイは昔共に戦った仲間を氏なせてしまった過去があると言っていた
だからこそ自分が助けられなかったものを背負って来た。それを自分以外、ましてや孫になどには背負わせるにはいかないと言ったのだ


勿論反抗した承太郎だったが葬式の日取りすら伝えられず結局自分で探すしかなかったのだ

6: 2015/01/04(日) 11:29:26.25 ID:kSavxrj+0
恐らく花京院の親には俺に関して、いやDIOのこともスタンドのことも伝えられちゃいないのだろう。
ジジイが一人で背負い込んだ物をぶち壊すわけにはいかない

(と思ってコッソリ来たってのに鉢合わせちまうとはな、やれやれだぜ…)

俺自身の正体を明かすのは不味いことだろう。やるべきではないハズだ
ならただ一礼して帰るとするか。

「あなた、もしかして典明のお友達なの?」

悲痛な言葉が俺に刺さる
『友達』、その言葉が典明にとってどんな重みのある言葉か…。

7: 2015/01/04(日) 11:37:40.23 ID:kSavxrj+0
花京院はスタンドが見えるのは周囲には全くいなかったと語っていた
生まれつきスタンドを持っていたが故に本当に心を許せる仲間と言うのを作れちゃいなかったのだ。無理もないだろう
他人に、ましてやスタンドを見えない人にスタンドを理解してもらうことは相当無理があるのだ

「…………そうだ」

俺自身、花京院は『友達』なんて生温いもんでは無いと思う
共に一つの目標に向けて戦った『仲間』、ほんの少しの期間だったが固く強い絆を育てた真の『友』だったのだ。

8: 2015/01/04(日) 11:45:45.42 ID:kSavxrj+0
「花京院は……典明は俺の『友達』だ」

俺は一言呟いた

どんな言葉を投げ掛けるだろうか
花京院の氏はどう伝えられてるかもわからない
だが今さら友達だと言うのが出てきてもにわかに信じられないのではないか

罵るのだろうか?けなすだろうか?
だがその次の一言は予想だにしないものだった

「………ありがとう」

罵声でも何でもない、ただ一言の礼だった。
重く深く、俺には不釣り合いでしかない礼だった

9: 2015/01/04(日) 11:50:11.82 ID:kSavxrj+0
「典明の友達で……友達でいてくれてありがとう」

涙声で言い切ったあと、花京院の母親はぼろりと壊れた彫刻のように泣き崩れた


深く帽子を被り直し、俺は墓場を立ち去る
墓の間に生えた雑草はエメラルドグリーンの輝きを放っていた


END

10: 2015/01/04(日) 12:04:45.21 ID:xePrj2Mp0
こういうの好き

引用: 【THE・WORLDは止められない】