27: 2015/01/04(日) 17:44:22.61 ID:kSavxrj+0
【受け継がれる者。受け継ぐ者。】
オウガーストリートから複数の仲間を連れ、新天地アメリカへ旅立とうとしていたときにある凶報が俺に届いた

「ジョースターさんの船が大事故だとッ!?おい嘘だろッ!?」

ディオとの戦いのあと、新婚旅行に行ったジョースターさんの船が大事故を起こしたと言うのだ
しかし生存者は二名、しかも担ぎ込まれた病院は近いらしい

「こうしちゃいられねぇ!すまねぇ船の旦那、男スピードワゴン、恩人が危険な目に合っちまってるんだ!行かなきゃなんねぇ!」

船の旦那に告げたあと韋駄天のごとく走り病院へ向かう
無事でいてくれよ、ジョースターさん!!

28: 2015/01/04(日) 20:39:38.68 ID:kSavxrj+0
だがしかし、病院で待ち受けていたのは非情な現実だった

「ジョースターさんが…氏んだだと…!?」

二人の生存者、一人はエリナさん。だがもう一人は違ったのだ

「あの人はこの子と私を庇って…船と運命を共にしました。」

エリナさんの話ではまだゾンビが生き残っていたがジョースターさんが決氏の覚悟で船を爆破させ偶然生き延びたこの赤ん坊と共に脱出させたらしい。

「この無関係な子を………ジョースターさん…あんたって人は、どんだけあまちゃんなんだよォ」

最期の最期までジョースターさんは他人のために生きたのだと言う
あの人らしい最期だが、自らを犠牲にしてしまうなんてあんまりじゃないか…

29: 2015/01/04(日) 21:24:38.37 ID:kSavxrj+0
「けどジョースターさん……エリナさんを残していっちまうなんてよぉ、あんまりってもんだぜ」

しかも聞くところによればエリナさんはお腹に子供がいるらしい
幸せの絶頂だって言うのにそりゃあ無いぜ

「決めたぜエリナさん。俺はジョースターさんの代わりにあんたらを守る。あんたたち二人を 守って見せる」

どうせジョースターさんに会っていなければオウガーストリートで燻っていたんだ
ジョースターさんのために投げ出しても何の問題もないのだ
だがエリナさんの答えはNOだった
理由はこうだ

「きっとジョナサンは貴方が貴方の道を行くことを望みます。ですから私とこの子供の為なんかに人生を棒に振ってはなりませんよ」

あぁジョースターさん。貴方の選んだ女性は芯の通った強い女性だ
素晴らしい女性だぜ

30: 2015/01/04(日) 22:21:38.76 ID:kSavxrj+0
「ホントにいいんですかい?スピードワゴンさん、恩人の葬式に出なくて」

「あぁ…ジョースターさんはそんなことを望んじゃあいないさ…。俺は胸を張れる男になって帰ってくる」

そうだろう?ジョースターさん
こんな未熟な俺でもあんたのそのお人好しのあまちゃん精神を受け継いでもいいよな?

「俺も自分の知らねぇ世界を探しに行くさ!先ずはアメリカって場所へな!おめぇらも達者でやれよ!」

スピードワゴンはクールに去るぜ…。
こうして俺は単身アメリカって場所へ旅を始めた
だが俺を待っていたのは想像を絶するモノだった

32: 2015/01/04(日) 22:40:14.57 ID:kSavxrj+0
「あっちいなぁ………昔行ったジャングルとは違うからっとした暑さだぜ……」

何の因果かタンクトップ一枚で砂漠を放浪している
大体、何故こんなことになったのかと言うと、アメリカに着いて直ぐのことだった

「おいおいさっさと働きやがれッ!このクロンボ!また賃金減らされてぇのか!?」

年端もいかない黒人の子供が無理矢理働かされているのだ
ウィンドナイツ・ロッドで出会ったポコぐらいの歳である

アメリカは移民の国だが、黒人差別が未だに健在だったのだ
特に低賃金で働かされ続ける子供は負のスパイラルから抜け出せずにいた
それを見て見ぬふりなど出来るはず無かったのだ

「おいあんた、その子供は病気じゃねぇか。休ませてやんな」

あんたならこうするよな?ジョースターさん

33: 2015/01/04(日) 22:57:13.04 ID:kSavxrj+0
「あぁ~ん?このクロンボはウチで雇ってんだ!このクロンボだけじゃあねぇんだよ!この国じゃクロンボにデケェ顔させねぇんだ!カネと白人がこの国のルールだからなァ!」

こんな外道がいやがるなんてな
ゲロの匂いがプンプンするような奴だぜ

「いくらだ」

「あぁ~?何だってイギリス野郎!聞こえねぇぞ!」

「ここにいる黒人の給料はいくらだって聞いてんだ。早く答えろ。カネと白人がこの国のルールなんだろ?」

肩の手の力が強くなっていき軋む音がギリギリと響く

「フヘヘヘヘェッ!物好きな野郎だなぁおい!良いだろう、一人当たり五百ドル!びた一文負けねぇぞ」

男は肩の手を振り払うと薄汚い笑みを浮かべそう言った

34: 2015/01/05(月) 00:10:45.93 ID:b0eLw/k+0
その場の空気で承諾したが五百ドル、いやその十分の一も出すことは俺には出来ないだろう
何てたって殆んど無一文身一つでこの国に来たのだから

「パッ……とそんな大金を稼ぐ方法があるだろうか…流石にねぇよなぁ…」

頭を抱えて考え込んでいると酒屋から出てきたおっさん二人組の話が耳に入った

「聞いたかい?一発大儲け出来っかもしれねぇって儲話!!」

「あぁ、あのソノラ砂漠って所で石油が見つかるかも知れねぇって話かい?確かに夢物語だが俺は信じないね」

聞いた瞬間に思った。これだ、と
俺に残されたチャンス、それはこの石油の話に違いないと

35: 2015/01/05(月) 00:20:21.71 ID:b0eLw/k+0
「おいそこのおっさん!その話詳しく聞かせてくんねぇか!?」

俺はそのおっさんたちから詳しく話を聞いてこの砂漠に単身スコップ片手に乗り込んだ…と言うわけだが俺は少々砂漠を舐めきっていた
南極の原住民の所で暮らした時よりもアフリカのジャングルで遭難しかけたときよりもこの暑さと日照りは厄介かもしれない

「不味いな……このダウジングって装置もアテになんのか?」

昔旅していたときに教えてもらったダウジングと言う地下のものを探す方法だが、果たして意味があるのかどうか……

「そもそもよぉ…なんで針金二本曲げた程度でモノ見つけれるんだってんだ」

そう毒づいた瞬間、ダウジング装置が何の力もなく反応した
つまり、ここに何かあるかも知れねぇってこった
半信半疑だが俺の最後の手段だ。一か八か掘ってみるしかねぇよな!
そう意気込むと砂漠の砂を掘り始めた

36: 2015/01/05(月) 00:29:51.31 ID:b0eLw/k+0
だがこの暑さと終わること無さそうな砂一面の世界では一時間と掘るのがもたなかった

「ぜぇ……ぜぇ……辛すぎるぜ…掘っても掘っても砂砂砂。どうかしてるぜ」

もう俺一人分は入れそうな穴蔵が出来ているのに石油のせの字も出やしない

「水も残りすくねぇってのに…ちくしょう。もう限界だぜ………」

穴の中から這い上がる気力も精力も沸いてこねぇ
このまま氏んじまうのかなぁ…こんなところでひっそりとよぉ……

「スピードワゴンさん!スピードワゴンさん!」

意識が朦朧としてオウガーストリートのアイツらの幻覚まで見えてきやがった
へっ、達者でやれって言ったのに幻覚に見てんのは俺だとはな…情けねぇぜ

37: 2015/01/05(月) 00:37:54.84 ID:b0eLw/k+0
「早く水だ!水持ってきてやれ!意識が朦朧としてやがるぞ!しっかりしてくれよスピードワゴンさん!あんた氏なせるわけにゃいかんのですよ!」

バシャッと顔に冷たい感触
それと同時にこれは幻覚なんかじゃあねぇってことに気付いた

「ホ、ホントにおめぇらなのか!?なんでこんな砂漠によぉ!」

さっきまで氏にそうだったのにもうこんな大声が出せるようになっちまった

「何って…あんたを追ってアメリカに着くなり物好きなイギリス野郎がいるって聞きましてね、あんたに違いないと思ったんですよ」

「スピードワゴンさん…やっぱ俺達あんたのそばにいたいんですよ!俺達ゃ貴方のその心意気に惚れて着いて来たんですよ!あんたが地の果てにいこうと、着いていかせて下さい!」

口々にオウガーストリートの奴等は言う
ホントに、ホントに馬鹿な野郎達だよ…
このスピードワゴン、その心意気に恥ずかしながら男泣きしちまったぜ

39: 2015/01/05(月) 00:48:04.82 ID:b0eLw/k+0
「けっ……勝手にしろっ!…」

それだけ言うと俺は今石油を掘り当てようと掘っていること、勿論辛く厳しいことをアイツらに伝えてやった
するとアイツらはニヤッと笑いながらスコップを取り出した
全部お見通しって訳かよ…

「手伝いますよスピードワゴンさん!」

「任せてくださいって!」

頼もしい限りの奴等だぜ…!
こうして丸3日、途中途中氏にそうになりながら地獄の3日間を過ごし、石油を探し求めた

そして3日目のある日、俺の掘っていた場所から黒色の液体が溢れ始めた
油独特の臭い
まごうことなく探し求めていた石油である

「やったぞーーーーーッ!!ついにッ!ついにッ!堀り当てたぞッ!!!」

俺は天に向かって声の限り叫び、仲間と喜びを分かち合った

40: 2015/01/05(月) 01:05:11.74 ID:b0eLw/k+0
この日、アメリカでは一人の男が紙面を大々的に飾った
【LEO・スピードワゴン氏、アメリカンドリームを掴む!】と。
一人の男が身体一つで砂漠から石油を掘り当てたのだ
人々はその男をこう呼んだ。『石油王』と!

スピードワゴンが最初に行ったのは、黒人達をあの環境から救う事だった

「ほら、数えやがれ。これでこの子達は解放されるんだろ?」

あのゲロ野郎にきっちりと金を払うと、彼らを連れ出した

「てめぇらはこれから自由だ。生活に困ればここに来な。今よりはいい条件で雇ってやるからよ」

会社の名刺を渡すと身を翻し帰ろうとした刹那、黒人の少年に呼び止められた

「あっ……あのっ!貴方…何で僕らを助けたりなんてしたんですか!?得なんて無いじゃ無いですか!」

黒人の少年は矢継ぎ早に捲し立てた

「そらぁ…俺はあまちゃんでお人好しだからよ。困ってる人を放ってはおけねぇ。それだけなんだよ」

「………最後に…名前だけでも教えてください」

黒人の目はキラキラと光っていた

「俺はお節介やきのスピードワゴンさ。ただの……高貴な精神を受け継いだ男なだけさ」

それだけ言うと俺はその場を後にした




後に彼は世界経済をも動かすほどの男へと成り上がっていくのだが、それはまた別のお話………





END

引用: 【THE・WORLDは止められない】