118: 2015/01/07(水) 15:26:02.72 ID:2UvATDGI0
【ラストバタリオン~誇り高き戦場の華~】

1942年12月20日、世界は第二次世界対戦の渦中にあった!
この戦争の発端であったナチス・ドイツは同盟関係であるはずのソ連からの宣戦布告を受け、戦争を開始した

最初こそ押してはいたが、ソ連軍の市街地戦の前には電撃作戦も通じることがなく徐々にドイツ軍は疲弊していった
そしてロシアの猛烈な吹雪による戦車の使用不可能な状況、加えて圧倒的な物資不足
最早ナチス・ドイツはその戦線の維持すら難しくなっていた

「失礼します少佐!『雷鳴』作戦は燃料不足のため不可能!物資の補給にも時間がかかる模様です!」

テントへと駆け込んできた兵士からの報告を聞くと否が応でも苦虫を噛み潰したかのような顔になる
このままではここへソ連軍が襲ってくるのは自明の理。時間の問題である

「ええい!別の部隊へ連絡は取れんのか!まだ動ける部隊はこの地へ集結するよう回すのだ!」

無線部隊に怒鳴り散らす。これでは何の解決にもならないのは百も承知なのだ

119: 2015/01/07(水) 15:43:59.69 ID:2UvATDGI0
総統閣下は氏守命令、つまりソ連軍を決して祖国ドイツへ入れてはならないと命令を出した

「シュトロハイム少佐!ダメです!我々の部隊しか燃料に余裕は無いようです!何処も応援を要求しているぐらいです…我々の方から出向くしかないかと」

恐らくもう既にソ連軍は此方へと近付いているのだろう
我々の部隊の生き残りも数少ない
戦車は数台あるのだがマトモにこの吹雪の中を進めるのは精々二台だろう
燃料こそギリギリだが、戦車の弾はあることはあるのだ。一番近くの部隊の元へ集合し少しでも何としてもソ連軍の時間を稼がねばならない



最早ここで腹をくくるしかないようだ

「………我が部隊全員を集めろ。最後の作戦を通達する」

俺はそう告げると、全員をテント内に集めた


「たった…………これだけか」

来たのは最初の部隊の半分にも満たなかった
だがこの人数なら戦車は二台だって充分乗れるだろう

120: 2015/01/07(水) 16:00:11.51 ID:2UvATDGI0
「シュトロハイム隊最後の作戦を告げる……貴様らは全員最も近くの部隊へ応援に行くことだ!尚口答えは許さない、上官命令だ!」

この命令に全員が驚いた顔をした
普通ならば手足が千切れようと玉砕してでも相手の足止めをするべきであろう
だが応援に行けという命令なのだ

「シュトロハイム少佐!少佐はどうされるのですか!?」

「貴様らが応援に行くことは邪魔させん。私がしんがりを勤める」

私が応援に行くには燃料は足りないだろう。足手まといになる気なんぞ無い
動けなくなって氏ぬよりも、誇り高く戦場で散る方を私は選ばせてもらう

121: 2015/01/07(水) 16:18:41.65 ID:2UvATDGI0
「早く行け。戦車は二台ある。誇り高きドイツ軍人が泣いてる暇があるか!そんなヘタレに育てたこと等無いわ!俺は戦場で泣いたところで何も変わらないことは教えたはずだぞ!」

どいつもこいつも入隊したときと何一つとして変わっちゃいないヘタレだ

「さぁ行け!貴様らなら出来る!誇り高きドイツ軍人の意地を見せてみろ!」

涙を止めた兵隊たちと敬礼を交わす
今まで見たどの敬礼よりも汚くてダサく、素晴らしい敬礼だった

奴等がここを去って行く姿を最後まで敬礼し、私は来るべき敵に備えた

122: 2015/01/07(水) 16:35:26.66 ID:2UvATDGI0
「何故一人なのだ?ドイツ軍人」

ざっと五十人はいるような大部隊。戦車も多数ある。だが一人たりとてここから先に行かせてたまるか…

「一人だと………?私はラストバタリオンンンンンッ!たった一人、だが貴様らを倒すには充分だぁぁあッ!」

戦車を掴むと遠心力でぶん投げた
相当な重さがある戦車は投げることができれば充分な兵器となりうるのだ
無論そんなことを出来るのは世界で見ても私ぐらいだろうが

「化け物だッ!撃てぇ!ガンガン撃てぇッ!」

今更トンプソン機関銃など全く豆鉄砲程度にしか感じない

「馬ァァア鹿者がぁぁッ!ドイツの化学は世界一ィィィイ!!貴様らの豆鉄砲など食らうシュトロハイムでは無いわぁあ!!」

再び戦車をぶん投げると大爆発が巻き起こった

123: 2015/01/07(水) 16:50:45.40 ID:2UvATDGI0
更に内蔵された機関銃やミサイル、更に腹部にある60ミリ重機関砲を展開し一斉掃射

「我ァがドイツの科学力は……世界一ィィィイ!」

強烈な弾幕により相手の戦車でも兵士でも破壊し尽くしていく

「バッ化け物だ!戦車すらアイツには敵わねぇぞ!」

「アイツだって弾切れはある!その瞬間に近付いて突破だ!」

だがソ連軍は弾幕の薄くなった瞬間に近寄っていく
完全な足留めにはなってはいない

「行かせるかァァ!紫外線照射装置、作動ッ!」

目眩ましのために掌から通常の十倍の紫外線を照射する
だがシュトロハイムも内心焦っていた
このままでは突破され、自身は恐らく科学技術の転用に捕まる可能性がある
一分一秒でも長く足止めせねばならないというのに!

124: 2015/01/07(水) 17:07:51.16 ID:2UvATDGI0
撃たれたミサイルを掴み投げ返す
既に戦闘から二十分ほど経過しているだろうか?
敵兵は応援部隊も含めれば200は倒しているのかもしれない
建物は倒壊し何処からでも火の手は上がっているが敵の数は如何せん減ることはない

「氏ねソ連兵!!」

右腕のロケット装置を起動し発射。腕の一本も我が祖国の最高知能の結晶、ソ連なんぞにはくれてやるものか

「この腕、爆弾が付いてるぞ!」

右腕の着弾地点が爆発し、私はそろそろ限界を感じていた
最後に腹部に備え付けられたダイナマイトに火を付け、手榴弾を取りだし、口でピンを引き抜いた
そして敵陣に向けて思いきり駆け出す

「我が祖国に………栄光あれェェえ!!!!」

その戦場を白い光が包み込み、瞬間巨大な爆風が巻き起こった

ルドル・フォン・シュトロハイム少佐
スターリングラード戦線にて、名誉の戦氏
その勇敢なる行動は、決して表舞台では語り継がれる事はない
だが誇り高いラストバタリオンの勇姿は語り継がれていく………







END

125: 2015/01/07(水) 17:11:28.06 ID:2UvATDGI0
【ラストバタリオン~誇り高き戦場の華~】完結です
シュトロハイム無双でしたね…予想以上に
お付きあい下さった方ありがとうございました!


引用: 【THE・WORLDは止められない】