159: 2015/01/12(月) 14:42:58.43 ID:WZcgIDx7O
【今、僕の進む道】

生まれた日から僕は差別を受け続けていた
僕の持っている肌の色だけで
僕の生まれた国はそんな国だった

「スモーキー、あなたは負けちゃいけないわ…勉強して、頑張ってあなたが悲しみの涙を流す最後の一人になるの。」

苦しい日々の中、母さんはそう言って息を引き取った。まだ若かったのにだ


知り合いも居なかった僕は満足に生活することも出来なかった
勉強もろくに出来ない僕は万引きをして生計を立てるしか出来なかった
ジョジョの奇妙な冒険 第2部 戦闘潮流 1 ジョジョの奇妙な冒険 第2部 モノクロ版 (ジャンプコミックスDIGITAL)

160: 2015/01/16(金) 16:48:47.85 ID:9UUOI3KD0
だが所詮は子供
ある時財布をスッたら警察に捕まってしまった
恐らく僕のような黒人は取り調べで更に罪を重くされるだろう
あ~あ、終わったなって。もう僕は外には出れないんだろうなって
警棒で殴られた薄れ行く意識の中で僕は悟っていた

だが僕が財布をスッた英国人はとても変わった奴だった

「そのサイフは私が彼にあげたものですよおまわりさん」

何と僕を庇ったのだ
滅多撃ちにするなら有り得るが僕を庇うような人がいると言うのだろうか

それが後の僕の人生を変える恩人、ジョセフ・ジョースターとの出会いだった

162: 2015/01/16(金) 17:02:47.69 ID:9UUOI3KD0
ジョセフは本当に変わった奴だった
見上げるほどの大男で警察をぶっ飛ばしたにも関わらずただエリナばあちゃんと言う人に怒られる事だけを恐れているのだ
当然僕もエリナばあちゃんと言う人を恐れた


そして僕はエリナばあちゃんに会う機会があったのだが僕はある不安があった
恐いかどうかもそうだが一番の不安は黒人だと言うことで差別しないか…である
だがその心配も杞憂に終わった

「あら?ジョセフのお友達?ごめんなさいねウチのバカ孫がいつも迷惑かけてしまって…」

顔色一つ変えること無く彼女は気品ある言い方でそう告げたのだ
その言葉には一片の差別の感情も無いと感じられた

163: 2015/01/17(土) 01:02:25.10 ID:gv8HrjIN0
ジョセフから聞いた話だとエリナさんは若い頃に夫を、息子もその妻も亡くしているらしい
何となく僕に対しての差別なき態度は彼女の人生から来ているような気がした

どんな人にだって手を差し伸べる聖母のような慈悲深さは彼女の人生の寂しさから来ているのだろう
自身の感じている哀しみを他人に感じさせまいと言う心が慈悲深さへと繋がっているのだろうと

そう感じた瞬間、僕の目から涙があふれでた
迷子の子供が母親に出逢い安堵するかのように涙が止まらなかった
差別されずに受け入れてくれる人がいたと言う事を、僕は涙ながらに感謝した
母が氏んだ日から僕は初めて神様に感謝した

エリナさんは無言で僕の涙を拭ってくれた
その手はとても暖かかった

164: 2015/01/17(土) 01:14:47.78 ID:gv8HrjIN0
それから数年が経ったある日、エリナさんは天国へと旅立った
その慈悲深い人生に幕を下ろしたのだ

この頃僕はスピードワゴンさんやエリナさんのお陰で大学に入ることが出来ていた
もう少しすればジョセフ達に恩返しが出来るだろうと言うときにエリナさんは逝ってしまった

僕は何をすれば良いのか
返しきれない恩を僕は抱えていた
何だか心も体も空っぽになってしまったかのようだった


そんなときに手を差し伸べてくれたのはスピードワゴンさんだった
僕はスピードワゴンさんにどうしたら良いかすがり付くように尋ねてみた
スピードワゴンさんは微笑むと肩に手を置きこう語った

「君の人生は…多くの人に手を差し伸べて貰えたのだろう?それに気づいたならば君が次にすべきなのは君が誰かに手を差し伸べること。君になら出来るだろう?私は出来ると信じている」

そう告げられた時、僕は僕の進む道を見付けられた

165: 2015/01/17(土) 01:21:52.98 ID:gv8HrjIN0
そうして僕は多くの人に手を差し伸べる為に、市長になった
史上初の黒人市長として、僕は差別撤廃の為に日夜行動を続けている
例え小さな小さな一歩だとしても…この一歩一歩が道を創るのだから
まだ貰ったほど恩を僕は返せていないけれど、エリナさんのように誰にも僕のような哀しみを感じさせないために少しずつ前に進んでいこう


それが今、僕の進む道なのだから





END

166: 2015/01/17(土) 01:24:04.38 ID:gv8HrjIN0
これで【今、僕の進む道】は完結です
時間かけてしまってすいません…
読んでくださった方々には感謝です


引用: 【THE・WORLDは止められない】