282: 2015/02/18(水) 18:34:22.08 ID:Di96hAqu0
【黄金の回転の軌跡】

「なぁジャイロ…」

僕はジャイロのいれたドロドロのコーヒーを飲みながら話しかけた
一方のジャイロは焚き火の加減を調節している

「なんだジョニィ。俺のギャグでも聴きたくなったか?」

「いや遠慮しとくよ、かなり大爆笑で喋る内容忘れたら嫌だしね」

「まぁな、何てったって俺のギャグだもんな」

「あーうん。でさ、ジャイロの故郷ってどんなところなんだ?」

最初は何気無い世間話のつもりだった
最初は本当に
ジョジョの奇妙な冒険 第3部 スターダストクルセイダース 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
283: 2015/02/18(水) 18:44:54.34 ID:Di96hAqu0
「ん~俺の故郷か……悪いとこじゃあねぇぞ。いやむしろスゴく良いとこだぜ?」

ジャイロは自分の分のコーヒーを淹れ始めた

「料理は旨いし、処刑人の俺が言うのもなんだが治安は良い方だし、何より女の子が可愛いんだよなぁ~…わかる?」

「僕はネアポリスは行ったこと無いけど美人が多いとかは聞いたことあるな」

ジャイロの女好きっぷりは昔の僕にもひけをとらないんじゃあないかな

「そうそう、美人多いんだぜ!?しかもよぉスタイルは良い娘も多くて町に行けば選り取りみどりよ!わっちち!あっつ!」

テンションが上がりすぎたのか熱々のコーヒーを思いきり太股へジャイロはぶちまけた

284: 2015/02/18(水) 19:44:50.73 ID:Di96hAqu0
「うっへ~…染みになってねぇと良いんだけどなぁ…」

ハンカチでコーヒーを拭き取りながら泣きそうな声でジャイロはそう語った

「ネアポリスかぁ…行ってみたいなぁ」

ジャイロの住んでいる国。鉄球という僕を立たせることの出来たあの奇跡のような技術のある国
この先レースが終わってからの僕を決めるための道標になるかもしれない

「おっ、そうだジョニィ。このレース終わったらよ、俺の故郷に来いよ!そんでよ、町行って二人でナンパしようぜ!こー見えても俺モテるからよ!」

ジャイロの名案だろッ!?と言う顔に喉元まで出かかった女はもういい…って言葉は掻き消された

286: 2015/02/18(水) 22:16:17.56 ID:Di96hAqu0
「……わかったよ…良いよジャイロ。君のそのナンパテクってのを見せて貰うよ」

「おっ、わかってんじゃねぇかジョニィ!女の子全部取られても泣きべそかくんじゃあねぇぜ?」

僕の体がこんな風になったのは僕が金や女に溺れたからだ
勝手に舞い上げられて、何を勘違いしたのか舞い上がった僕は自分で舞っているんだって勘違いして

そんな凄い自分じゃあないなんて一度たりとて思いもしなかった
いや、思いたくなかった

「ん?どうしたんだジョニィ………泣いてんのか?」

「え?…そんなわけないだろジャイロ。ちょっとあれさ、目にごみが入っただけさ」

いつだって何もかも失った自分自身の愚かさには涙が溢れる

287: 2015/02/18(水) 23:47:07.61 ID:Di96hAqu0
「ふぅ~ん…まっ、何だって良いけどよ。今度はお前の故郷についても教えてくれよ。俺だけなんて不公平だろ?」

僕の故郷、あの場所
運命が狂ってしまった、僕の故郷

「僕の故郷は……牧場があって、馬がいて……それで、それで」

何故だろう。もう大丈夫なハズなのに
何故だろう。こんなにも、辛くて何かに潰されてしまうようになって、あの日のあの白いネズミが僕の目の前を過るのは

もう僕の帰る事のない場所。僕が逃げ出したあの場所を思い浮かべると、こんなにも辛い

「父さんがいて…馬を調教しているんだ。速い馬さ。とびきり速いやつをね…」

僕は思わずうつむいた
顔をあげていては涙が止まらないだろうから

288: 2015/02/19(木) 00:02:45.50 ID:RsUkogeF0
「ふぅ~ん…お前の故郷も行ってみてぇな。なら俺の故郷に行ったあとはよ、今度はお前が俺をその故郷に連れてってくれよ。な?」

「それはいつになるかわからないよジャイロ……誰だって帰る場所がある訳じゃあないだろ?」

父さんが今何をしているのかなんて知らない
全くわからない

一つわかるのは父さんはきっと僕が帰ることを望んじゃあいないだろう
僕が帰ればきっと嫌な顔をして追い返すに決まっているさ。入院していても見舞いにすら来ないんだから

「それは違うさジョニィ。これは旅なんだぜ…誰にだって帰るべき場所はある」

その一言にハッとして僕はジャイロを見た

「今は帰れなくたってよ、気付いたら帰ってるってこともあるだろ?ガキの頃親に叱られて泣きべそかきながら家に出てっても三日四日したら家に帰ってる。そんな場所なんだよ帰るべき場所ってのはな」

そう言うとジャイロはコーヒーをぐいっと飲み干した

289: 2015/02/19(木) 00:13:20.58 ID:RsUkogeF0
「だからこの長いレースをワンツートップで終わらせて、ついでにその遺体って奴も集めて帰るべき場所へ帰ろうぜ」

僕もコーヒーを飲み干した
何故だか苦いはずのコーヒーは今日は少ししょっぱくて、いつも以上に僕の体の芯から暖まったかのようだった

「そうだね……そうだねジャイロ。帰るんだね僕らは」

目元を少し擦るとそう返事した

「そうと決まれば明日に備えて寝るべきだぜ。レースもあるし刺客が来ねぇかどうかは俺が見張っておくからよ、安心して寝な」

そう言ってジャイロはまた焚き火を弄り始めた

「あぁ…そうさせて貰うよ」

そう言って僕は寝転がった

(ありがとう…ジャイロ)



END

291: 2015/02/19(木) 07:38:13.67 ID:4LnQi4DQo

そういやポルナレフも言ってたなぁ
何もなくったって帰ってきてしまう場所が故郷というもんだって

292: 2015/02/20(金) 00:17:36.84 ID:Wm62aaUCo

ジャイロとジョニィは最高のコンビだね

引用: 【THE・WORLDは止められない】